SNSでの手書きメッセージの投稿などで、美しい文字がたびたび話題になっている河井ゆずるさん。実際に直筆のお手紙を書いていただきながら、河井さんと手書きの歴史、そして文字に込める想いを伺いました。河井ゆずるさんと手書きの関係。熱と想いを、文字に込めて。バラエティ番組のフリップや、インスタグラムに投稿された手書きメッセージの文字が美しいことで話題となった、アインシュタインの河井ゆずるさん。どこで習得したのかと尋ねると、なんと独学だったことが判明!「教室に通ったりしたことはないんです。小学生でひらがなを習った時に、“なんでお手本どおりに書かれへんのやろ…”と不思議で、どうにかして同じように書きたいという気持ちが漠然とあって。チラシの裏に文字を書いて練習してましたね。性格も大きいと思います。先生が黒板に書いたものをノートに書き取る時に、ノートの罫線やマス目から文字がはみ出るのが気持ち悪くて、うまく収まるまで消して書き直していました。“きれいに書けるまで次にいかれへん”みたいなルールが自分の中にできて、先生が黒板を消し始めたのに書き直し続けて、写すのが間に合わないことも(笑)」アルバイト先での経験も大きな影響を与えることになる。「18歳の時に働き始めたレストランバーのオーナーがメニューを手書きしていて、いわゆる美しい字とは少し違う素敵な文字やったんですけど、魅力的でいいなと思ったんです。その後、オーナーが新しく立ち上げた居酒屋の社員になり僕がメニューを書くようになってから、明らかに字が変わりました。『蓮根』は漢字にしようとか、ちょっと漢字が多いから崩したひらがなを入れてみようとか、全体のバランスを見ながら毎日1時間半くらいかけて書いていましたね。自己流ですけど、筆ペンの使い方も身につきました。しんどかったですけど、楽しかったです」書いていて気持ちのいい文字は、「道」だという。「そもそも『しんにょう』を書くのが好きで、なかでも『道』はバランスがとりやすいんです。難しいのは『な』で、いまだに納得できるものが書けない。『井』とか『川』みたいな単純な配列のものもなかなか大変ですね。基本的には崩すことはせず、見た人に“ていねいに書いているな”と思ってもらえるような字を目指していますね。逆に、大喜利でフリップに回答を書く時はあえて崩すようにするというか、あまりきれいに書かないようにしています」人が書いた文字もよく見ている。「お寿司屋さんの看板とかは観察しちゃいますね。いいなと思うものもあれば、“なんでこんな感じにしたんやろ”と思うこともあります(笑)。好きなのは書道家の武田双雲さんの字。美しくて読みやすいのに、はらいなど、いろいろな部分に個性を感じるところがすごいなって思います。カラオケで、めちゃめちゃうまいのになんか響かんなぁって思う歌の人っているでしょ?トットってコンビの多田(智佑)がそうなんですけど(笑)、それは文字でも同じ。ピカソの絵じゃないですけど、基礎がしっかりとできている上で、オリジナリティがある字に惹かれます」もらったファンレターには、できるだけ手書きで返信するようにしているという河井さん。「想いを込めたい時は、やっぱり手書きするようにしています。多分、手書きのメッセージをもらって嬉しくない人っていないんじゃないですか。誕生日やクリスマスみたいな特別な日じゃなくても、たとえば、ごちそうしてもらったお礼にハンカチやお菓子と一緒にメッセージカードを添えたり、そういうことをしても喜ばれると思いますよ!」かわい・ゆずる1980年11月28日生まれ、大阪府出身。お笑いコンビ・アインシュタインのツッコミ担当。『ラヴィット!』(TBS系)の火曜レギュラー。YouTube「アインシュタインのYouTubeシュタイン」を配信中。メガネ¥54,230(オプティカルテーラークレイドル/オプティカルテーラークレイドル青山店 TEL:03・6418・0577)その他はスタイリスト私物※『anan』2024年4月24日号より。写真・Marco Perboniスタイリスト・津野真吾(impiger)ヘア&メイク・伏屋陽子(ESPER)取材、文・重信 綾(by anan編集部)
2024年04月23日万城目学さんの小説『鴨川ホルモー』は、ホルモーと称した謎の競技に興じる大学生たちの青春を描いた作品。今回、舞台化を手掛けるのは、ヨーロッパ企画の上田誠さん。かもめんたるのおふたりは、昨年上田さんが脚本・演出を務めた舞台『たぶんこれ銀河鉄道の夜』に続いて上田作品出演に。1000年続く謎の競技・ホルモーに興じる大学生たちの青春が舞台に。槙尾ユウスケ:稽古が楽しいんですよね。結構自由にやらせていただけるし。岩崎う大:僕は自分の劇団で作・演出もやってるんで、役者だけやらせてもらえてご褒美みたいな感覚です。槙尾:う大さん、めっちゃ自由にアドリブしまくってますもんね。岩崎:逆にそのぶん、プレッシャーもあるんだけど…。たぶん演出家側からしたら、作・演出もする役者を使うストレスもあると思うんです。だからそのぶんのメリットも作品に対して提供できたらなとは思って。――気になるのは、オニ語を駆使し1チーム1000匹のオニを使役して戦うホルモーを舞台でどう描くのか。岩崎:そこは全部上田さんが考えるわけで、こちらは体験できるのをただ楽しみにしてます(笑)。槙尾:きっとすごいプロジェクションマッピングを使ってくるんだろうけど、さらに何か仕掛けを考えてるかもしれないですよね。オニ語も最初は違和感ありましたけど…。岩崎:僕はわりとすぐに入ったし、すんなりやれてる気がする。槙尾:でもそれも上田さんマジックなのかもしれないです。この間の稽古で、誰かが言った「ぐああいっぎうえぇ」ってオニ語に、上田さんが「そこの“ぎうえぇ”はそんなに力が入らないです」って言ってて。上田さんの中に、映画版とも違う、オニ語のイントネーションの正解っていうのがあるんだと思って。岩崎:上田さんにはホルモーが見えてるのかもしれないよね。そもそもこの題材を選んだということは、上田さんには勝機が見えているんだろうから。結局この作品の魅力って、ストーリーの中に描かれる人間の群像劇としての面白さだと思うし。槙尾:恋愛がかなり絡んでくる作品ですが、その辺もしっかり描こうとしているのを感じます。岩崎:物語自体、大学生の若さとかエネルギーがずっと1か所で循環してるような感じがあって、それがいろんなノイズを起こしていくところが面白いのかなと感じてて。だからもう25年くらい前だけど、大学生の頃の感じを再現できたらなと。槙尾:確かに。演じてると大学時代を思い出しますよね。岩崎:僕らは早稲田だったから、高田馬場の駅前の集団の騒がしさとか、無秩序な感じとかね(笑)。ニッポン放送開局70周年記念公演『鴨川ホルモー、ワンスモア』京大1回生の安倍(中川大輔)が勢いで入ったサークル「京大青竜会」の正体は、1000年の歴史を誇る謎の競技「ホルモー」をするサークルだった。伝統を引き継ぐ先輩と同期、激しくぶつかり合うライバル校、迸る恋のバトル…ってかそもそも「ホルモー」って何!?青春群像劇、開幕。4/12~29 池袋・サンシャイン劇場原作/万城目学(『鴨川ホルモー』『ホルモー六景』/角川文庫)脚本・演出/上田誠(ヨーロッパ企画)出演/中川大輔、八木莉可子、槙尾ユウスケ(かもめんたる)、岩崎う大(かもめんたる)ほか一般平日¥8,500土・日・祝日¥9,800ほか公演事務局contact2@pragmax.co.jp大阪公演あり。かもめんたる岩崎う大(左)、槙尾ユウスケ(右)からなるお笑いコンビで、2013年にキングオブコント優勝。’15年に劇団かもめんたるを旗揚げし、劇団員を迎えて演劇公演も精力的におこなっている。※『anan』2024年4月17日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2024年04月17日家で、楽しく、そして時には厳しく腹筋を鍛えることができるグッズをご紹介。とてつもない高さの開脚ジャンプがトレードマークの山口コンボイさんと頭脳派の仁木恭平さんが体を張って試します。お笑いコンビ・ケビンスが体験!いま気になる、腹筋鍛えグッズ。【ドリーム】下腹スリムスイング Jabooon中に入れる水の量を変えて、負荷を重くもできるのがイイ。膨らませたビニールの輪に水を入れ足にセット。転がして下半身をひねることで、下腹部の筋肉を追い込み、体幹に負荷をかける!「足を軽く開いて足首に固定するんですが、その時点で結構お腹にくるんですよ…」(仁木さん)。¥9,900(ドリーム TEL:0120・559・553)【ショップジャパン】バウンズシェイプ座って弾んで引き締めて!1セット30秒でOKです。座る部分がバランスボールのように不安定になっており、その上で簡単なエクササイズを行うだけで、お腹や体幹が鍛えられます。「バランスを保とうとすると結構腹筋にきますよ」(仁木さん)。¥12,980(ショップジャパン)【アールオーエヌ】プランクパッドプロあのキツいプランクが、きっと、楽しくなるはず。両腕で全身を支え筋肉を鍛えるプランク。こちらはスマホゲームと連動しプランクができるギア。「ゲームに合わせて板の角度を変えるんですが、キツい(笑)。でもプレイは短時間なのでコスパは良さそう」(コンボイさん)。¥13,200(アールオーエヌ TEL:048・434・5352)【mizuno】腹筋プルレプラスなんと前後に1回揺れれば腹筋1回分の運動量に!座って前後にゆらゆらするだけで、骨盤を整え、腹直筋に集中アプローチ。「かわいいクッションみたいな見た目ですが、腹筋への負荷はものすごい。さすがスポーツ用品メーカーのmizunoさんって感じです」(コンボイさん)。¥10,780(mizuno TEL:0120・320・799)【ジヴァスタジオ】イコエル スピードシェイプ“ながら”でお腹まわりをスッキリさせられる。人気ヨガクリエイターのayaさん監修。巻くだけでぽっこりお腹を押さえてスタイルアップ。さらにEMSで腹斜筋を刺激できるベルト。「巻くとお腹&腰まわりがシャキッとする。EMSも気持ちいい」(コンボイさん)。¥19,800(ジヴァスタジオ)腹まわりに悩む30男子、使ってみた感想は?――お二人は、腹筋やウエストに関して最近思うことは?仁木:30歳を越えた頃から肉がつくようになってきましたねぇ。僕は32歳なんですが、最近シャワー中に体を見ると、「これがかつて自分が“おじさん”と思っていた体だなぁ」と思ってます(笑)。コンボイ:僕は仁木の2つ下で、いま30歳ですが、少し前からウエストまわりにぐるっとぽよんとした肉…いわゆる“浮輪”ってやつが出てきまして。仁木:それは酒だね?コンボイ:酒だね…(笑)。仁木:やっぱりウエストまわりがスッキリしていないと、Tシャツを着たときにカッコ悪い。コンボイ:僕の場合は、コンボイジャンプをするときに肉が揺れます。階段を下りるときにも揺れる。仁木:だから僕らも夏まで3か月、腹筋鍛えたいです!――今日試していただいたグッズ、いかがでしたか?仁木:部屋に置きやすく、かつ片付けやすいものばかりでしたね。コンボイ:なのにどれも、やってみるといい意味で結構キツい。仁木:僕はラクしたいタイプなので(笑)、EMS付きのベルトで3か月がんばりたいです。コンボイ:えー、ズルい!(笑)じゃあ僕は逆に、かわいい顔してかなり効きそうな「腹筋プルレプラス」にする。1回やるだけでかなりキツいからこそ、達成感が相当味わえそうなので、それ!3か月後を待ってろよ…(笑)。左・仁木恭平さん、右・山口コンボイさん。2021年に仁木さんがコンボイさんを誘いコンビ結成。その年に『M‐1グランプリ』準々決勝、翌年には準決勝進出している。※『anan』2024年4月17日号より。写真・内山めぐみ(by anan編集部)
2024年04月16日『M‐1グランプリ2023』の決勝で、足し算や掛け算などの四則演算に、“数字と数字を見せ合わせてどう思うか”で計算する「見せ算」を加えるというネタを披露。優勝は逃すも、大きな衝撃と存在感を残し、広く名前を知られることになったさや香が、この春、ついに東京進出です!右・石井(いしい)さん、左・新山(にいやま)さん。――なぜ、今のタイミングで東京進出をしようと思ったのですか?新山:『M‐1』も2年連続で最終決戦に行きましたし、来年は勢いがあるかもわからないですから。2022年から悩んでいたけど、昨年はまた違う爪痕を残せたのもあって今のうちにという感じです。石井:東京に行きたい、という感覚はそんなになくて。かといって絶対に行かん!というわけでもなく。自分ら的にも周りとしても自然に、いい時期ちゃう?って。新山:東京は家賃が高いですね…。働かないとあかんって思いました。――順風満帆という感じですが、現在地をどう見ていますか。新山:僕は、最初の想定に結構近いかもしれないです。結成10年くらいで『M‐1』で優勝したいと思っていたから、それに近いところで2位と3位を取れて、誤差の範囲かな、みたいな。一生、居酒屋で喋れる話もできたし、ある種成功していると思います。ただ、今はテレビもどうなるかわからんし、YouTubeがメジャーになったりと、いろいろ変わってきていて。以前は芸人さんが浮気の話をしていても否定されなくて、それでいけるんや!と思って芸人になったけど、今は違うし…。石井:ふふふ(笑)。新山:目標やゴールみたいなものが時どきの状況で相対的に変わるから、そもそもゴール地点ってどうなっていくんやろうって。石井:僕は自分が今いる状況とかが、ゴールに着いてみないとわからへんという感覚が強くあるんです。先のことを考える力もなくて。ほんまにまだわからないですね。――コンビ結成時のことを教えてください。新山:余りもん同士の二人というか。同時期に前のコンビを解散し、他のみんなは誰かとコンビになっているからと、接点がないままコンビを組んだんです。石井:同期やけど、マジで、ほんまに、舞台の袖とかで1回、会話をしたくらいでしたからね。もともと僕はボケやったけど、ツッコミをやりたくて前のコンビを解散して。そんな時にボケ希望のやつがいると聞き、トニーフランクという芸人が繋げてくれたんです。――今年で結成10年になります。新山:僕としては、ちょうど10年くらいですね。長いとか短いではなく、肌感覚ぴったりの感じです。石井:そっか、10年やってるんや…。すごいっすね。僕は部活とか他の何かがこんなに長く続いたことがなくて。(新山さんは)ライブやネタのことを考えていて、僕はそれについてきてる感覚やったんで。もう10年か、が一番です。新山:全然ちゃいますね(笑)。――新山さんは、どんなふうにネタを作っているのでしょう。新山:作業という感じでやっています。メモしておいた単語の中からテーマを決めて、設定を作って、4~5分のネタにする。淡々としてます。大阪にお笑いブロガーのおばちゃんがおるんですけど。いろんなライブを観ては、「さや香免許返納」みたいに、ネタのタイトルだけをブログにいっぱい書いていて、その中から僕が引っかかったものをメモしていく。だから、おばちゃんがお笑いを見るのをやめたら僕らも終わりです(笑)。――新山さんがネタ作りをしている間、石井さんはどんなふうに過ごしているのでしょうか。石井:漫画の新刊待ち、みたいな感じですよね。先生にプレッシャーをかけることなく、とりあえず座って待っているというか。――原稿を待つ編集者のような?石井:そうですね。新山:えー、読者でしょ(笑)。編集者っていうたらなんか…。石井:だって、ただ読むだけではないし、ネタを見る側じゃないので。早めに欲しいけど、モチベーションは下げたくないですからね。新山:じゃあ、編集者じゃなくて、せめて紙に印刷する人ですよね。石井:(スルーして)だから何も言わずに待つ、という。新山:ははははは。さやか石井(いしい)1988年5月28日生まれ、大阪府出身。新山(にいやま)1991年10月17日生まれ、大阪府出身。2014年結成。ネタでボケとツッコミが変わる。第49回NHK上方漫才コンテスト優勝。『M‐1グランプリ』2017年、2022年、2023年ファイナリスト。『さや香の違和館ヤバない?』(テレビ大阪、YouTube)が放送・配信中。※『anan』2024年3月27日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)インタビュー、文・重信 綾(by anan編集部)
2024年03月24日『M‐1グランプリ』の決勝に2度進出する実力を武器に、近年テレビ界でも躍進中のモグライダー。テレビと舞台を横断する二人の語る魅力的な人、そして唯一無二の相方の魅力とは。“何か起こるかも”という予感も見てもらえる一因に。左・芝大輔さん、右・ともしげさん。――テレビで見ない日はないといえるほどの人気ぶりです。重宝されている理由は何だと思いますか。芝:僕たちにはおなじみのくだりやギャグみたいなものがないし、ともしげは別にボケてるわけでもなくて。そこに、構えずともずっと見ていられる要素があるのかな、とは思います。現象として存在し、たまに跳ねる時があったらラッキーくらいの、優しい気持ちで置いてもらっている感じでしょうか。手応えも、そんなにないですからね。ともしげ:僕に至ってはもっとないですから。決められた文章は読めないし、ボケやツッコミをやるわけでもなく…。みなさんが思うイメージ通りでありたいと思うものの、最近は「イメージと違う」と言われたりもして、乖離をどうしたらいいのかと勉強中の段階です。芝:俺が15年、言い続けていることですけどね(笑)。ともしげ:細部まで教えてよ。芝:たとえば、第一印象は可愛いとか言われるけど、よく見ていくと、爪鋭いじゃん、めちゃ交尾するじゃん、獣じゃん、みたいな。自分の欲が抑えられないようなところはあって、だんだんとめくれてきているというか。ともしげ:それはそうですね。クロちゃんとかナダルみたいな方向に行くべきか、でもそこまでじゃないか、という葛藤もあって。どのタイプにも当てはまらないなって思ってますけど。芝:多分、“お前はどこに当てはまるんだ”ということを、長い期間かけて試されていることが、ずっと使ってもらえている一因だと思うよ。でも、先輩方や伊集院光さんが、僕たちはコント55号さんに近いという話をしてくださったりして。その時だけのものをバンバン生み出そうとするところとか。ともしげ:極楽とんぼさんも、コント55号さんみたいなスタイルだと言われていたことがあったよね。芝:ヒヤヒヤする感じが近いのかもしれない。たしかにライブでも、“これどうするの?”という誰も手を出したくない時に、こっちを見られているなという意識はあって。それをギリギリすくい上げる姿を楽しんでもらえているということは、自覚していましたね。――お互いの魅力を教えてください。芝:どう転ぶかわからないのが、ともしげを使う上で難しいところ。でも、それが表裏一体で魅力でもあるので。計算できるものではないから、邪魔になる時もあれば、いて助かる時もあるという。約束ができないこのタイプがこの世界で長く生きていくことは、普通、絶対に無理なはずなんです。それでも唯一、置いてもらえているのは、僕が15年間以上にわたって賭けてきた彼の魅力みたいなものに共感する人が、だんだんと増えてきたのかなと。――ともしげさんがテレビに出ていると集中して見てしまいます。芝:僕たちは、いつ面白いことが起こるかわからない、見逃したくないというワクワク感のある昔のテレビがすごく好きだったんですけど、ともしげは、そういうものなんじゃないですか。ブラウン管みたいに四角いし(笑)。ともしげ:でかいしね。芝:最悪、何も起きなくても、何か起こるかもしれないという“予感”があれば見ていられるし、それは僕らの芸風にもなっているので。一度、めっちゃ面白い漫才ができても、二度はできないということの繰り返しです。ともしげ:芝くんには、僕がウケているのは本当に偶然だから、私生活が真面目じゃないと、噛んだりしても笑えなくなるからとよく言われます。芝:本人が真剣だという振りがあるから、ミスが笑いとして成立するので。ともしげ:でも、僕は芝くんが相方でよかったです。本の通りにできないからネタにならないし、作品性を求める人とはうまくいかない。付き合ってくれているので、本当に感謝ですよ。芝:付き合うというか、天気と一緒じゃないですか。ずっと見ていれば備えることはできるし、雨が降っちゃったら、傘を差すか、濡れたままにするか、意外と降らなかったな~となるか。そういう感じなんですよね。――芝さんは、「俺たちを誰も知らない漁村で漫才をやってもウケたいよ」とおっしゃっていたそうですが。芝:漫才って、知らない人が見ても笑える喋り方とか技とか様子のことだから、それは忘れずにいなければいけないなと。ネタに意識がいきすぎると、本当に“面白い”になるのかなぁと思いますし。理想の漫才は、1時間でも一日中でもやり続けられる輪郭のないもので。中川家さんや同じ事務所のナイツさんは、きっと朝から晩までできる人だし、見る人も見ていられる。“今ネタに入りました”という野暮ったさも一切ない、喋り出したところから漫才というものがいいですよね。――魅力のある芸人はどんな人ですか。芝:上っ面じゃない優しさがある人じゃないですか。人を楽しませる仕事だから、目の前の人や画面の向こうにいる人の気持ちを考えられる人が残っている感じがする。営業妨害かもしれないけど、永野さんは容赦なく世の中の人に向かっていくけど、根が優しいからこそ、言えるものがある。結構、優しさと残酷さは紙一重だと思うし、だからこそ笑えるんだろうなと。有吉(弘行)さんとかも、辛辣なことを言うけど、それは、自分がしんどい経験をしているから言えることでもあって。ともしげ:僕が変な感じになった時も、すごく助けてくれましたから。芝:辛辣なことを言ってウケるのが芸。ネットのつぶやきとの違いですよね。――同じ企画に登場する、ヤーレンズさんの魅力を教えてください。芝:こんなにうまい漫才師がいるのかという最初の印象が、ずーっとあるコンビです。お互いのネタを交換してやる機会があったんですけど、まー、難しかったですから。十分にうまいというところは通り越して、うまいをずっと突き詰めていったからこその苦しい時期もあったと思うんです。一番うまいのに売れることから遠かった時期もあったし。根性がありますよね。ともしげ:努力と向上心、やる気がすごくて、ネタ見せをした時も、ちゃんと人の意見を受け入れていましたね。ネタに向き合わなければいけないことを教えてくれたのもヤーレンズです。芝:それこそ、ヤーレンズと錦鯉と虹の黄昏の4組でオールナイトライブをやっていたんですけど、他のコンビが何もしないから、ヤーレンズが会場手配やお金のこととか全部、担当してくれて。むちゃくちゃ楽しかったし、今の4組でやったら当時とは違うものにもなって楽しいだろうなと、話したりもしていますよ。実現したいですね。モグライダーネタ作り担当の芝大輔(左)と、ともしげ(右)のコンビ。2009年結成。『ジョンソン』『ラヴィット!』(共にTBS系)、『月ともぐら』(テレビ東京)、『金曜日のメタバース』(テレビ朝日系)、『しずおかごはんが食べたい!』(テレビ静岡)など数々の番組にレギュラー出演。※『anan』2024年3月20日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)取材、文・重信 綾(by anan編集部)
2024年03月18日昨年の『M‐1グランプリ』で準優勝し、今、世間の支持を集めるヤーレンズ。自分たちの考えるコンビの魅力や、芸人の世界における「魅了される人」などについて、話を伺いました。ちゃんと積み重ねてきた魅力があるコンビです。左・楢原真樹さん、右・出井隼之介さん。――まず、お二人が魅力的だと思う芸人さんを教えてください。楢原真樹さん(以下、楢原):『ONE PIECE』のボア・ハンコックですね。出井隼之介さん(以下、出井):たしかに魅力はあるけど、芸人じゃないですよ。楢原:身長が1m90cmくらいある海外のモデルさんみたいなスタイルで。出井:あの、ちゃんと答えてもらっていいですか?でも、確実に言えるのは、芸人は笑いを取らなきゃいけないということ。そして、芸人に愛される人は、キャリアや笑いの種類、笑いに向き合う姿勢など、表だけじゃなく裏の部分も含めてリスペクトを集めている人だと思う。ハリウッドザコシショウさんとかがそうですよ。楢原:後輩のことを考えてだろうけど、賞レースの審査員とか、いろいろな仕事もされていて。みんなに好かれている自負があるからこそできることだと思うけど、そこもカッコいいですよ。出井:よく見たら男前だし、体型も赤ちゃんみたいだよね。楢原:ギャップがチャームになってる。でも、若い世代の芸人が尊敬するのはどんな人なのか、聞いてみたいよね。ネタが面白いという1点で評価をする印象があって、僕たちの世代とは少し違う気がするんだけど、何が変わったんだろう。時代?それとも政権?出井:政権は変わりましたけど、またすぐ戻りましたからね。楢原:じゃあ、年号?――テレビに引っ張りだこの自分たちの今の状況をどう見ていますか。楢原:『M‐1』の影響はやっぱりすごいと思いましたね。出井:ただ、何か1つ世に出るきっかけがあれば忙しくなることはわかっていたし、そう信じていたからやっていたという気持ちもあります。ようやく思っていた感じになってきたのかな。――ご自身が思うヤーレンズの魅力はどんなところでしょうか。出井:“積み重ねてきた魅力”だと思います。自分たちで言うのはあれですけど、『M‐1』でやった漫才は、漫才歴2~3年ではできないものですから。年齢の説得力も含めて、漫才や風貌、話す言葉から、ちゃんと積み重ねてきたコンビだと伝わっているのかなと。昨日今日に出てきたけど、絶対に昨日今日に始めたわけではないところが、興味を引いているように思います。楢原:マイクを1本立てて、「何か面白いことを1時間やれ」と言われた時に、一番満足度が高いものができるコンビだと思っていますから。だからこそ、『M‐1』のチャンピオンになって箔を付けたいとも思っているんです。――これまでにコンビとして潮目が変わったと感じた瞬間はありましたか?楢原:えー、なんでしょう。潮のことは漁師が知ってるんじゃないですか?出井:金比羅丸船長のこと?楢原:それは長野(誠)さんでしょ?『SASUKE』の人でしょ?毛ガニの人でしょ?出井:元祖完全制覇の元毛ガニ漁師、秋山(和彦)さんとごっちゃになってますね。って、『SASUKE』の話じゃなくて潮目の話をしましょうよ。でも、コロナが一番大変だった時、それまで死ぬほどやっていたライブがなくなって、二人で公園に集まって喋っていたんです。普段はそんなに洗いざらい喋らないんですけど、不満も含めて本音を言い合い、相互理解が深まったことで関係性が良くなって、それが漫才に生きるようになったんです。そうして自分たちのキャリアや年齢、心境などの全部が2022年にバチッと重なった感じがあって、それから1段分厚く、ウケるようになりましたね。――人を魅了することに関して、テレビと劇場での違いはありますか?楢原:どちらがいいとか悪いとかではなく、単純に笑いを取っている人数でいうと、テレビの収録スタジオにいる人より、劇場の人の方が多いなという感覚です。僕はやっぱり、笑いを取るために芸人をやっているので。出井:劇場はウケないと話にならないですしね。難しいけどやりがいがあるし、それをやってこそ芸人というか。テレビがうまい人は凄腕そば職人と同じで、違うジャンルのリスペクトしている人、という感じです。――お互いの魅力を教えてください。出井:真面目さと、継続する力が高いところですね。Tポイントが2万ポイント貯まっているし、やっていないゲームもログインボーナスだけはもらい続けていますから。でも、芸人にもかかわらず、笑いや“面白い”の判断基準が、自分ではなく圧倒的に外にあるところは変わっている人だと思う。その割にプライドや気難しさもあって、ややこしいんですよね。俺の魅力は?楢原:ねぇ!出井:いやいや、僕に憧れて生きているでしょ?1秒でも長く僕といたい人だし、実際、いつもべったりです。楢原:あー、うぬぼれがすごい!常にポジティブなところが素晴らしい!自己肯定感が高くて羨ましいな~。出井:そう、僕は自己肯定感は高いけど、自己評価は普通くらい。でも相方は、自己評価は高いのに自己肯定感が低く、外からの評価がないとストレスに苦しみ、自分のことも嫌いになるんです。僕のことは好きっていうのもおこがましいくらい憧れてるはず。いいな、俺も憧れの人と漫才したいな~。楢原:お笑いのことや適性を教えたのは僕ですよ?しかし、よく僕みたいなお笑いの化け物についてきたな!出井:お前こそ、よく俺みたいなNo.1ツッコミをつかまえたよ!――最後に、同じ企画に登場するモグライダーさんの魅力を教えてください。楢原:僕は相方に対して“こういうことを言ってくるだろうな”という信頼があるけど、芝さんはともしげさんに対して、そういう信頼はないというか。出井:“予想の範囲外のことをしてくるぞ”という信頼だからね。楢原:ともしげさんも、実は自分で笑いを取ろうとしていて。「芝くんに感謝してる」と言いながら、芝さんの活躍を見て歯ぎしりをするような人間味があるんです。お互い何が起こるかわからないと思っているはず。出井:原始的な漫才の形は、バカな方が大間違いを起こし、もう一人が訂正してツッコむというものですけど、モグライダーはまさに漫才の保守本流だと思います。芝さんは、「俺たちのことを誰も知らない漁村で漫才をやってもウケたいよ」と言っていたけど、モグライダーは可能だと思います。芝さんが思い描くレールに乗った時に取る笑いを何度も目の当たりにしていますが、どんだけウケんねん!って思うくらい、本当にすごいですから。ヤーレンズボケとネタ作り担当・楢原真樹と、ツッコミ担当・出井隼之介のコンビ。2011年に結成、2度の改名を経てヤーレンズに。共にサザンオールスターズの大ファン。『ラヴィット!』(TBS系)不定期出演。『ヤーレンズのラジオの虎』が毎週木曜20時にGERAで配信中。※『anan』2024年3月20日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)取材、文・重信 綾(by anan編集部)
2024年03月17日いつも飄々と、でも思慮深い雰囲気も漂わせながら笑いを繰り出してくる、漫才コンビ〈ナイツ〉のボケ担当、塙宣之さん。実は塙さんは芸人とは別に、漫才協会の会長という肩書をお持ちです。え、塙さんって実はすごく偉い人…?――塙さんは、マセキ芸能社という芸能事務所に所属しながら漫才協会にも所属していますが、漫才協会ってどんな団体なんですか?塙宣之さん(以下、塙):ねぇ…、どういう団体なんですかね(笑)。漫才協会は、漫才好きの親睦会というか、文化として漫才を残していこうっていう有志の集まりみたいなものです。どなたかが「東京にも漫才専用の劇場を作ろう」と音頭を取り、1935年に帝都漫才組合というものを作ったのが始まり。その後いろいろありまして、1955年に漫才研究会が発足、後日漫才協団に改称し、2005年に現在の漫才協会という名前になりました。――長い歴史があるんですね。塙:そうですね。で、浅草に浅草フランス座演芸場東洋館という“いろもの寄席”を連日開催する演芸場がありまして、漫才協会に所属すると、そこの舞台に立てるんです。なので漫才協会は、東洋館に出る人たちをまとめている組織、ともいえます。――ナイツはいつから所属してるんですか?塙:2001年にマセキ芸能社に入ったときに、会長から「浅草に行け」と言われたんですよ。――浅草の笑いにご興味が?塙:ないですないです。ていうか、浅草に演芸場があることすら知りませんでした。テレビに出ることしか考えてませんから、選択肢にすら入ってなかった。――なぜ会長は、ナイツを浅草に行かせたんですかね?塙:会長は、浅草でスターを作りたかったんですよね。昔浅草って、今の渋谷みたいに賑やかで、スターがどんどん生まれてた。それをもう一度やりたかったんです。だから会長は、バカリズムさんにもいとうあさこさんにも、「浅草に行ってくれよ」って声をかけたらしいんですけど、「いえ、テレビがいいです」ってずーっと断られていた、と。もちろん僕らも「いやです」って言ったんですけど、なぜか「駄目だ、行け」って(笑)。――反発しました?塙:しましたし、腐ってましたよ。最初は「やめたい、やりたくねぇ」とか文句ばっかり言ってました。で、東洋館に出るには漫才協会に入らなきゃいけなくて、当時は漫才協会に入るには誰かの弟子にならなきゃいけなかった。それで内海桂子に弟子入りしたんです。でも思っていた師匠と弟子の関係性と違って、別に鞄持ちや住み込みといったこともなく、他の師匠たちも優しくて。今思うとすごく守られていた感じはありますね。――不本意な形で浅草に行った塙さんが、昨年漫才協会の会長になり、今回映画『漫才協会 THE MOVIE~舞台の上の懲りない面々~』の監督まで務められた。これまたどんな心境の変化が…?塙:“浅草の漫才”という文化がなくなっちゃうのはいやだなっていうのはありますね。僕は相撲が好きなんですが、今でも江戸時代と変わらない形でやっている、あの様式美が好きなんです。浅草の漫才にも同じ様式美を感じます。それを僕らの時代でなくしてしまうのはいやなんです。僕らの少し上の世代から、お笑いをやりたいならまずNSCなどの養成所に入るのが当たり前になったので、師匠に弟子入りする人がもういない。そうすると、師弟制度で成り立っていた劇場は、出る人が本当に誰もいなくなってしまうわけです。でも、70歳くらいの漫才師がいっぱい出る劇場があることって、たぶん大事なことだと思うんですよ。そのためには僕ら世代を増やしていくのが一番いい。だからハマカーンとか磁石、三拍子を誘って、協会に入ってもらったんですよね。――ということは、好きなんですね、東洋館や漫才協会が。塙:そう、僕は好きなんです。僕らが入った頃の、たくさんいる師匠を若手がいじったりして、その雰囲気がすごく好きだった。あと、今は僕らも運良くテレビとか出ていますけれど、いつ何が起こるかわからないのもわかっていますし、いろんな苦しさもわかる。35歳くらいになると、ライブに出るのもおじさん扱いされたりして、やりづらくなるんですよね。そういうときに、東洋館に出てネタができるってすごくいいと思う。居場所があるって大事ですよね。僕20代の頃から「漫才協会入りなよ」っていろんな芸人に言ってたんです、半分ギャグで。当時は「誰が入るか!」みたいなリアクションだったんですけど、30代になると「入ろうかなぁ」になり、40代では入ってますからね(笑)。若いときはみんな、テレビで冠番組が取れると思って頑張りますけれど、そんなに世界は甘くない。でもお笑いが好きで、ずっとネタを作り続けている仲間たちのためにも、いろいろできる場所として東洋館は存在し続けてほしいと思う。――いわゆるお笑い好き以外にとって、お笑い=テレビだと思うんです。でも映画を拝見し、お笑いには舞台というフィールドがあることを改めて認識させられました。塙:今テレビのバラエティって、ネタ番組と、面白いリアクションが求められるタイプの番組があって、後者では〈作家が考えた笑い〉を面白く作り上げられる芸人が重宝されます。一方で、作家が考えた笑いを面白く作れない芸人も結構いるんです。今のテレビには芸人より優れた作家がたくさんいるから、すべてを自分たちで…という芸人には正直席がない。でも、舞台でやる漫才やコントは、誰かに「こうしろ」とか言われることなく、自分たちだけで好きに作れる。そういう意味でも、劇場は大事なんです。もちろん、テレビと劇場、どっちが上でどっちが下、みたいなものはないですけれど。――舞台は芸人にとって原点的なものなんですかね。塙:そう、そうなんじゃないですかね。MCやってたり、ひな壇で大活躍している芸人も、ほとんど全員がネタを作ってライブで披露するってところから始まってるわけですから。(ビート)たけしさんだってそうですからね。『漫才協会 THE MOVIE~舞台の上の懲りない面々~』。漫才や曲芸など落語以外の芸が見られる寄席を連日開催する、浅草の東洋館。そこに出演する漫才協会所属の芸人の魅力や悲喜こもごもに迫ったドキュメンタリー映画。監督は塙宣之(ナイツ)、ナレーションを小泉今日子、土屋伸之(ナイツ)、エンディングテーマはザ・ハイロウズが担当。現在、大好評公開中。はなわ・のぶゆき1978年3月27日生まれ、千葉県出身。2000年に土屋伸之と漫才コンビ〈ナイツ〉を結成。内海桂子の弟子として活動。’07年に最年少で漫才協会の理事、’23年には会長に就任。第39回浅草芸能大賞 大賞受賞。文筆家や俳優としても活躍しており、ドラマ『警視庁・捜査一課長』シリーズの奥野親道役でもおなじみ。※『anan』2024年3月13日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)(by anan編集部)
2024年03月09日代替肉は「エシカル」だけでなく、肉を求める食欲も満たすのか──。この問いに答えるべく、欲望に忠実な男・鈴木もぐらが下北沢に現れた。ヴィーガン中華料理店『Oscar』で最新のプラントベースフードを食べた彼を驚かせたのは、まさかの“魚介”だった…?What ‘s PLANT-BASED FOOD?植物由来原料の食べ物は環境負荷の軽減にも!植物由来の原料で肉や魚などを再現した食品のこと。大豆ミートやオーツミルクが代表的。アレルギーや宗教的理由で限られた食の選択肢を広げたり、一般的な食肉より生産時のCO2排出量や水資源の使用量が少ないなど、サステナブルな面でも注目を集めている。再現度の高い代替肉やエビに驚愕&大満足!ある晴れた日の昼下がり、お笑いコンビ・空気階段の鈴木もぐらさんが下北沢に現れた。「以前は下北の劇場でライブをしていましたね」と話す彼が本日訪れたのは、ヴィーガン仕様のアメリカンチャイニーズ料理が楽しめるダイナー『Oscar』だ。ミントグリーンのテーブルやネオン管、たくさんの料理写真パネルが目を引く店内は、ウォン・カーウァイ監督の作品をイメージしたもの。店に入ったもぐらさんは、興味深そうに料理が並ぶショーケースの前へ。アメリカンチャイニーズの魅力の一つは、油をたっぷりと使った、食欲をダイレクトに刺激するパンチあるメニューの数々だが、『Oscar』では動物性食材を使わず、代替食で再現している。料理を見た瞬間、「え?肉使っていないの?」と驚きの表情を見せる。普段はフライドライスやチャオメインなどの「サイド」と「メイン」と呼ばれるおかずを組み合わせて注文するが、今回は特別にいろいろなメニューを食べることに。まずは〈スイート&サワー“ポーク”〉から。「うんまい!!!」「これは肉です!」と目を見開く。続く〈オレンジ“チキン”〉は、「ついていない鶏皮の存在を感じます…」、〈“ビーフ”&ブロッコリー〉は「こんなに牛みたいな食感が出るんですか」と、信じられない様子。合間にはフライドライスとチャオメインを食べ、「ねぎの油がうまい。後味もいいですね」としみじみ。〈マーポートーフ〉を食べた時は、「完全にひき肉です!」と、あのポーズを披露。そして、「問題はこいつでしょう。第一印象から気になっていました」と手を伸ばしたのが〈“ミート”ボール〉だ。「持った感じも肉団子です」と言いながらかじりつくと、「外カリッ!中じゅわ!肉じゃないのに?」と大興奮。また、あまりの衝撃を受けたからか、「これは大豆がすごいんですか?それともマスターの技がすごいんですか?アメリカで勉強した?え、独学?」と、マスターを質問責めに。最後に食べたのは〈“ハニー”ウォルナッツ“シュリンプ”〉。「エビは無理でしょう」と言いつつも、一口食べた途端、「プリッとしてる!うそー!」「こんにゃくを使っているんですか。こんにゃく芋を作っている人がめちゃくちゃびっくりすると思いますよ。俺、エビ作ってるじゃんって」と、箸が止まらない。「中華料理に海老マヨがあったことが勝利ですね」と嬉しそうな表情を浮かべていた。ちなみに最近ダイエットに成功したもぐらさん。体の変化についても教えてくれた。「痩せると耳がよく聞こえるようになり、目覚ましの音で起きられています。あと、基本的に電車に乗ると寝ちゃうんですけど、一番痩せていた時は、ずっと起きていられたことがあって。高校生以来でしたね。今、ロレックスが盗まれるような物騒な事件もありますから、そのほうが安心です。あ、俺は持ってないですけど。でも、ダイエットをして思ったのは、三大欲求なんていいますけど、性欲も睡眠欲も食欲には勝てません。街を歩けば食の誘惑ばかり。AIに支配されることを恐れる以前に、俺たちはメシに支配されているんだと気がつきましたね」また、今号の特集テーマであるSDGsについては、「すべての資源は限りあるものだと思うので、リサイクルは意識しています。昔はその辺に捨てていたハズレ馬券も、燃えるゴミに入れるようにしています」と教えてくれた。この日、ご飯と麺含め11品の料理を食べ終えたもぐらさん。「これまでプラントベースフードを食べる時は、50%くらい、“これは肉だ”と自分に思い込ませながら食べる感覚がありました。でも、今日の料理は全部、普通の肉としか思えないものばかり。しかも、味もうまいし、がっつりだし、大満足です!特に〈“ハニー”ウォルナッツ“シュリンプ”〉を食べた時は、これはとんでもないことになった…という感じがしました。肉だけでなく魚介にまで手を出していることに驚きだし、いつか“プラントベースうな丼”が生まれ、松でも800円で食べられる時代がくるといいですよね。肉でいうと、プラントベース焼き肉や、しゃぶしゃぶが現れたら、到達点という感じがします」代替肉は大豆が主な原料だと聞き、もともとあった大豆への尊敬の念が、さらに強まったとも話す。「味噌や醤油、納豆の原料である時点で、大豆のすごさは世界ランキング上位だと思っていましたが、さらにランクが上がりました。穀物ランキングなら1位です。あ、米もすごいんだけど…。(10秒くらい悩んで)米は米にしかなれないですから。子どもに肉や魚だと言ってプラントベースフードを食べさせて育て、20歳の時に、『お前が食べてきたものは全部、豆なんだ!』と言うこともできるようになりそうですね。でも、プラントベースフードを本当の肉やエビと変わらない感覚で食べられるのは、マスターをはじめ、作る人の努力や日々の研究の成果だと思います。本当にすごいですよ!」と、作り手への敬意を熱くマスターに伝えたもぐらさん。そして、お腹をさすりながら満足そうな表情を浮かべて、店を後にした。オレンジ“チキン”鶏肉の代わりに弘陽食品の「分離大豆たんぱく」(台湾)大豆タンパクでできたチキンを使用。約45分茹でた後に手で裂いたものをニンニク&生姜と炒め、油を加えてジューシーさをプラス。さらに片栗粉で練りながら仕上げている。サクッとした歯ごたえや香ばしさ、オレンジソースの甘く爽やかな風味の絶妙なバランスがクセになる。“ビーフ”&ブロッコリー牛肉の代わりにネクストミーツの「NEXTカルビ2.0」(日本)オイスターソースの代わりに金蘭の「精進オイスターソース」(台湾)ほどよい歯ごたえのある“ビーフ”の正体は、大豆から作られた“カルビ”。それをニンニクで香り付けした油で炒め、さらに転化糖と大豆、小麦、シイタケ抽出物などで作られたヴィーガンのオイスターソースで味付けした、食欲をそそる一品。ブロッコリーたっぷりで、食べ応えもばっちり。“ミート”ボールひき肉の代わりにネクストミーツの「NEXTミンチ2.0」(日本)大豆から作られた玉ねぎ入りミンチに、さらに玉ねぎとクワイを加えてタネを作った、大ぶりサイズが嬉しい〈“ミート”ボール〉。弾力があり、噛むほど口の中に旨味が広がっていく。ソースには、とろみと酸味が特徴的な黒酢と、野菜だしなどを使っていて、コクと深みを感じる味わいに。“ハニー”ウォルナッツ“シュリンプ”エビの代わりにグリーンカルチャーの「ヴィーガン対応冷凍ベジ小エビ」(日本)マヨネーズの代わりにケンコーマヨネーズの「ノンエッグマヨネーズタイプ」(日本)こんにゃく粉と、馬鈴薯やタピオカ、小麦のデンプンなどで作られた“むきエビ”とくるみを、卵不使用のマヨネーズで和えたエビマヨ。エビが愛される理由の一つであるあのプリプリ感が見事に再現されていて、一口食べた瞬間に驚くこと間違いなし。お箸が止まらなくなるメニューです。Oscar東京都世田谷区代田2‐36‐15(BONUS TRACK内)TEL:03・6823・749611:30~21:00不定休詳細はインスタグラム(@oscaramericanchinese)で。注文は、麺や米の「サイド」から1種(orハーフ&ハーフ)と、おかず系の「メイン」から選ぶ。メイン1種のボウル¥1,210、メイン2種のプラッター¥1,430、メイン3種のデラックス¥1,760。すずき・もぐら1987年5月13日生まれ、千葉県出身。空気階段の主にボケ担当。『空気階段の踊り場』(TBS ラジオ)などに出演中。『別冊少年チャンピオン』(秋田書店)で「空気階段の手すりに掴まれ」を連載中。※『anan』2024年3月13日号より。写真・吉松伸太郎取材、文・重信 綾(by anan編集部)
2024年03月08日東京ホテイソンの全国ライブツアー「銀鼠」がこの3月からスタート。「洒落柿」「孔雀緑」と色の名前が付けられた単独公演も、今回で3回目を迎える。――前回の公演はいかがでしたか。たける:地元の岡山は客席に知り合いが多くて超やりづらかったです。ショーゴ:あのツッコミを親の前で全力でやってスベるとキツいだろうなと思います(笑)。たける:去年は、親が一番前に座ってましたからね。――今回の見どころとしては?ショーゴ:今、ちゃんと漫才に向き合おうというモードになっていて。今までツッコミを際立たせるためにそこ以外のところで笑いを取るのは避けていたんですけど、そういうのはやめて、ちゃんと漫才らしい漫才をやろうかなと思っています。元ゾフィーの上田(航平)さんが構成に入って、いろいろ見てくれています。――改めて、本誌初登場とのことで、お互いについて紹介してください。たける:ショーゴは、体を鍛えていて、ネタを書いたりYouTubeの企画を考えたりしている“筋肉頭脳マン”ですね。あと、軽自動車を13分割で買うというケチな男です。ショーゴ:たけるは“声デカマン”。まず最初に人から言われるのが「声がデカい」っていうことですね。声がデカくて、クラスの人気者。生徒会長、バンド、漫才…人前に出ることを全部学生時代に経験していて、芸人が余生だと思っているぐらいの人です。――結成時から変化したことは?ショーゴ:たけるはやっぱり体型ですよね。いつ痩せるんだって。たける:これでも毎日、走ってはいるんですよ。ショーゴ:走ってもそのぶん食っちゃってるから痩せないんだよ。たける:(目の前に置いてあるお菓子を指し)これ4つ持って帰っていいですか?ショーゴ:これ1個で炭水化物30g入ってるから。こうなったら、逆に一回極限まで太ってみてほしいですね。そうしたら顔が可愛くなるかもしれない。今、中途半端なので。――ショーゴさんも鍛えて見た目が変わられましたよね。ショーゴ:変化量で言ったら、僕の方が大きいかも。筋肉を生かしたネタをもっとやりたいと思っていて、単独ライブでもコントでやるつもりです。たぶん、今年も脱ぐと思います。(テーブルに置かれた見本誌を見ながら)僕、セックス特集の表紙になるのが夢なんですよ。いつかお願いします!たける:無理よ、カッコいいアイドルとかがやるやつなんだから!(笑)東京ホテイソン第3回単独公演『銀鼠(ぎんねず)』東京ホテイソンの3回目となる単独公演。3月5日の東京・渋谷からスタートし、仙台、大阪、岡山、福岡、名古屋、札幌を巡った後に東京・中野で最終公演を開催。元ゾフィーの上田航平を構成に迎え、新作の漫才やコントなど充実のステージをおくる。幕間のVTRなども見どころたっぷり!左・たける1995年3月24日生まれ、岡山県出身。右・ショーゴ1994年2月1日生まれ、東京都出身。2020年の『M‐1グランプリ』決勝進出をきっかけにブレイク。現在は『ラヴィット!』(TBS系)金曜レギュラーのほか、多数の番組に出演中。※『anan』2024年3月6日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・野村 文(by anan編集部)
2024年03月04日押し付けがましくない、さりげない気遣いに思わずホッとしたことはありませんか?いま目指すは優しいユーモア溢れる人!気まずい場面を綻ばせ、悪意も笑顔ではね返す“いい人”あるあるをご紹介。これをマネすれば、対人関係がスムーズに!?身近にいる人の細かすぎる“あるあるモノマネ”で活躍中のお笑い芸人・たつろうさんが、“いい人”のあるあるをリアル実演!【いい人】心をほっこりさせる、こんな人になりたい!謎の理由をつけて多く払ってくれる人誰が支払いをするのか論争になった時、これを言ってくれる人がいたらそれはかなりの“いい人”。おばちゃんたちの奢り合い合戦を平定するイメージで、まさに猛者。こう言われて多めに払ってくれたら、悪い気はしない。【なりたいポイント!】「割り勘のタイミングで多めに出してくれる理由が、“会えて嬉しかったから”って言われると、この人、いい人だな~って思いません?楽しい思い出になるし、謎な理由だからこそ、素直に甘えちゃおうって思える。ただ奢るだけでなく、『遅刻しちゃったから、多めに払うね』など、1個理由をつけるだけで、相手に気を使わせないテクニシャンな“いい人”に」優しすぎて語尾が「に」になる人職場や学校で疲れている人に対し、何か優しい言葉をかけてあげようと気遣いした結果、語尾がなんだか柔らかい響きになってしまう人。優しくしようとしすぎて無意識に「に」になってしまう、相当な“いい人”の可能性大。【なりたいポイント!】「『元気かにぃ~』など、語尾が「に」になっている言葉を言われたら心がちょっと和みますよね。不思議だけど、嫌な感じはしない。実際にやれば、癒し系のマスコット的存在になれると思います。言葉のニュアンスや響きに気を使う人は、人の心の痛みを理解できる人。緊張している人に対してや、空気がギスギスしている場でマネしてみては?」遅れてきた友達に何の話をしてたか教えてくれる人集まりに遅れて参加する人に対して、親切にこれまでの話の内容を説明して輪に入れてくれる“いい人”。後から「何の話をしているの?」と聞くのは場の空気を壊しそうで言えない…。そんな時の救世主となってくれそう。【なりたいポイント!】「何も聞かれないのに何の話をしていたのか要約して教えてくれる人は、めちゃくちゃ優しい人。グループで過ごす時間を、みんなで楽しく共有しようと立ち振る舞えるのは素晴らしいですよね。何の話か分からないまま、時間が流れていくのをやり過ごすのは仲間外れ感半端ないですから。自分もこんなふうに振る舞えたら理想的だなと思います」敬語とタメ口のバランスが上手すぎる後輩先輩に対して基本は敬語を話しつつ、絶妙な匙加減でタメ口を差し込んでくるフレンドリーな後輩。世間話をしている時のさりげないタメ口は場の空気を明るくし、先輩の懐にも入りやすく、スムーズな人間関係を築ける。【なりたいポイント!】「テクニックでやると“あざとい”と思われるかもしれないですが(笑)。いじってほしい先輩や、ツッコんでほしい先輩には『なんでやねん』とタメ口でツッコミを入れると仲良くなれることが。敬語で話してほしい人でなければ『えっ、マジ?』『スゴイ!』など、フランクな相槌を打つことで距離感は縮まります。もちろん先輩へのリスペクトを忘れずに!」嫌みをポジティブで返す人職場で派手なネイルアートをしている人が「なに、その爪?」と聞かれた時に返せたら無敵なセリフ。“とにかくポジティブなギャル”のイメージを持って、嫌みを明るく返せるようになればあなたはもう凄腕の“いい人”。【なりたいポイント!】「ネイルは本人が楽しんでやっているんだなということが伝われば、“じゃあ、まっ、いいか…”という気持ちになりますから、とにかくポジティブに返すこと。確実に嫌みを言われているなと感じた時に卑屈になると相手の思うツボ。ネイルを楽しむ余裕があって、返す言葉も上手い。そんな“いい人”になれたらかっこいい」会話の間を埋めるために2回言ってくれる人会話の相槌に2回同じことを言う人は、相手と話す時に変な間を作りたくなくて2回言ってくれている気遣いマスター。同じことを繰り返し言うことで、その場にいる人が次の話題を考える時間が生まれるという効果も。【なりたいポイント!】「相手に『コイツ、同じことを2回言うな~』と癖がバレてしまう可能性もありますが(笑)。話の内容をよく分かってない人に対して2回言ってあげる優しさもありますし、大人数で集まった時の会話で『こんなに大勢いるのに誰も喋んないの?』っていう静寂が訪れたら、感情を込めて2回目を言うと、ちょっとだけ場の空気が和みますよ」いい人に近づくための、たつろうアドバイス「僕が思う優しい人は、人の気持ちを考えて発言できる人。誰かの言葉で傷ついた経験があるからこそ、相手にも優しくできるのだと思います。特に、繊細な人は、表情や喋り口調など、細かいところまで敏感。同じ言葉を放っても、状況によって優しく聞こえる時もあれば、キツく届くこともあるので、自分自身は普段どんな表情でどんな話し方をしているのか。どんな言葉をよく言っているのか。客観的に自分を見つめ直すと、“いい人”に近づけるはず!」モノマネは人間関係を救う!?なりたい自分で起こすアクション。十八番のあるあるネタは、実体験が元になっているという芸人のたつろうさん。「ネタを作ることは、自分と向き合うこと。“嫌な男”のネタを考えるうちに、反省すべき自分が見えてきて、人の気持ちが以前より分かるようになりました」元々は、自分自身が傷つきやすく繊細な性格だったという。「芸人仲間など普段の人間関係では割り切って、なるべく気心知れた相手との関係を大事にするようにしています」では、避けられない“面倒な人”の言葉に傷ついた気持ちを励ますには?「友達に話すなど、“ネタ”に昇華すること。言葉は、言った本人の感情とは違う場合もあるから、それだけを重く受け止めないで。モノマネとか、笑いに変えれば、傷ついた思い出じゃなくなります」対人関係が苦手な人は、今回の“いい人あるある”のような、なりたい!と思う人の言動をマネするといいのだそう。「僕も、苦手な人との仕事や、知り合いがいない初めての場でどうしてもコミュニケーションが必要な場合は、人と関わるのが上手い誰かのモノマネをします」モノマネが得意な芸人ならではの対人関係の攻略法。そこには、かつての自分のような繊細な人に届けたい想いも。「自分はこうだから…と暗いままでいると何もできない。まずはマネでもいいから、理想の“なりたい自分”を演じると、コミュニケーション上手な“いい人”に近づけます。ただし、マネばっかりしてると自分を見失うので気をつけて(笑)」たつろうさん吉本興業所属のお笑い芸人、YouTuber。1984年、富山県生まれ。日常を切り取ったあるあるネタとモノマネが得意。ヨシモトブックスから、これまでのあるあるネタを集めた『嫌な男あるある じわじわムカつく言葉200』が好評発売中。※『anan』2024年3月6日号より。写真・小笠原真紀イラスト・別府麻衣取材、文・福田恵子(by anan編集部)
2024年03月03日通称・“国民的地元のツレ”ことヒコロヒーさんが、初めての、恋愛小説の短編集『黙って喋って』を上梓。ページをめくるたび、「あぁこの感情、知っている」と“心当たり”に胸がチクリ。切なく、魅力的な作品です。リアルな描写に、心当たりが…。ヒコロヒーさんが恋愛小説を書いた。朝日新聞のウェブマガジンにて、4年にわたって短編の恋愛小説を書いてきたヒコロヒーさん。今回その短編が1冊の書籍になりました。「小説執筆は、20代の女の子たち向けのウェブマガジンの編集の方から、“読者に向けた恋愛のお話を書いてみませんか?”と声をかけてもらったことがきっかけでした。それまでエッセイのようなものは書いていたんですが、小説は初めてで。でも“小説のような大げさなものではなく、8000文字前後のちょっとした物語を”というお話だったので、それなら気楽にできるかな、と。ほんの軽い気持ちで引き受けたんです」もともと、コントの台本は自ら書いているヒコロヒーさん。ゼロから人物を作りセリフを言わせ展開を考える…という行為は、小説における〈物語の構築〉と似ている部分もあり、その部分での苦労はなかったそう。そしてテーマが決まっていたことも、自身にとっては功を奏した、とも。「テーマがあることによって書くことに枠ができますが、私はむしろ、“何を主題にしてもいいですよ”と言われたら、自由すぎて書けなかったかもしれません」与えられたテーマは“恋愛”。ヒコロヒーさんは恋愛を、「普遍的なものであり、だからこそモチーフとして面白い」と言います。「いわゆる恋愛の〈惚れた腫れた〉は、なんだかんだとほとんどの人が通るもの。普遍性があるものはやっぱり面白いと思いますし、だからこそ恋愛は、落語や漫才、コントなど、お笑いの世界のあらゆるところで話のモチーフになっているんだと思います」この一冊に収録されているのは、出てくる人たちも、シチュエーションもすべて異なる18の恋物語。テンポの良い会話と絶妙な角度からの描写で展開するストーリーは、恋を知る人の心の琴線を密かに震わせ、気がつけば、かつて胸のどこかに染み込んだ“あの感情”が浮かび上がり、“この恋、私にも心当たりが…”と思わされる。そんな魅力的な一冊です。「モデルがいる、ということはないですが、友達の恋愛話からちょこちょこいろんな要素はもらったかもしれません。恋愛話を聞くときって、“で、どうなったん?”って、次の展開を考えながら聞くんですが、私が想像しなかった展開になることが多いんですよ。“え、なんでそこで付き合わんの?!”みたいな(笑)。だからもしかしたらここに収録された物語は、私が思う、〈叶わなかったもうひとつの恋の展開たち〉みたいな感じなのかも」ヒコロヒーさんにとって恋とは、ままならないからこそ面白く、そんなわかりやすいものなら誰も恋愛にここまで熱狂しないだろう、とも言います。「お互い別の人間だから、そもそもなにもかもがままならない。コミュニケーションにおいて言葉は重要で、特に恋愛ではより言葉への依存度が高くなる。会話って、腹の中の探り合いみたいなところがあるじゃないですか。それによって相手との距離を測ることもできるし、本心で言っている場合もあるから、真に受けていいときもある。つまり、わかり合えないからこそ、互いに喋らなあかんし、同じように黙らなあかん、ということなんです」他愛のない物語、だからこそ胸にくる。『黙って喋って』ヒコロヒー朝日新聞出版1760円女たらしのバンドマン、かつても今もその一歩が踏み出せない彼、「あと十分一緒にいたい」と言い出せない彼女、別れた彼の結婚に心をかき乱される女性…。初の小説とは思えない、完成度の高い恋愛小説が楽しめる。ヒコロヒーさんピン芸人。1989年生まれ、愛媛県出身。著書にエッセイ集『きれはし』(Pヴァイン)が。好きな恋愛小説は、O・ヘンリーの『魔が差したパン』、坂口安吾の『二十七歳』。※『anan』2024年2月21日号より。写真・内山めぐみ(by anan編集部)
2024年02月17日毎年ひとつずつ新しい趣味を始めると決めて、ゴルフ、ギター、料理など、次々と挑戦しているコカドケンタロウさん。そんなコカドさんが、2022年の趣味として始めたのがミシン。ミシンを使った裁縫活動の様子をSNSで配信したり、作品をインスタにアップし、そのプロ並みの腕前とセンスの良さが話題になっている。趣味のミシンも笑いにつながっている。「芸人になる前に古着屋で働いていたり、昔から洋服が好きでミシンにも興味がありました。裁縫なら自宅でひとりでもできるやろと思って、バッグから始めて、半年後にはショートパンツやシャツなど洋服も手掛けるようになり、最近は女性用のギャザースカートを作りました。気が付いたらインスタがほぼ裁縫アカウントになっていた(笑)。フォロワー数とか数字は全く気にしていませんが、今の世の中、趣味を仕事にしている人も多いし、僕も趣味のミシンのことを発信して、多くの人に笑ってもらえているのが素直に嬉しい」マイルール3か条は、ミシン好きでいるために重要な要素だそう。「一生夢中でいるために、ゆる~く続けていきたいですね」これがわたしの“MY RULE”やりたくないことはやらない他の何かと比べない自分のペースでやる相方の中岡さんに贈ったのは…。ミシンデビューして約4か月後、骨折治療中の相方・中岡創一さんからの依頼で作ったのが足カバー。かかと付きで歩きやすいのも特徴。「サポーターの上からガバッと履けるような足カバーを作ったら大好評やった。中岡君にも喜ばれたし、その完成品をインスタにアップしたら『裁縫好き男子ステキです』『天才すぎます』と嬉しいコメントがたくさん届いて、自信につながりましたね。それ以来、芸人仲間とかに自分が作ったものをプレゼントすることが増えました」一度やり始めたら、時間を忘れてしまうぐらい夢中に。ミシンの使い方や裁縫のやり方は、YouTubeを見て真似たり、本を参考にすることも。「それでもわからないことがあれば、洋服屋の友達に教えてもらいます。今はミシンに触れない日はないですね。朝起きてすぐに始めて、気づいたら夕方になっていて、1回ラジオの仕事に遅れたことも(笑)。夢は、ミシンと刺繍で完全オリジナルのスーベニアジャケットを作ること!」コカドケンタロウさんお笑いコンビ、ロッチのネタ作り担当。『ロッチと子羊』(NHK Eテレ)、『世界の何だコレ!?ミステリー』(フジテレビ系)など、多数のテレビやラジオ番組にレギュラー出演中。【YouTube】ロッチ Official YouTube Channel【Instagram】@kokado_kentaro【X】@kokadokentaro※『anan』2024年2月7日号より。文・鈴木恵美(by anan編集部)
2024年02月04日“運も実力のうち”といわれるお笑い界、今年最も引きの強い“福男”は誰!?TBS特番『お笑いアカデミー賞』の“とにかく芸人としての運のみを競う”戦いに勝利した強運の持ち主が、本誌登場です!“持ってる”芸人が残る運頼みのガチ勝負。ランダムで落ちてくる金ダライ、予測不能なダイビングマシン、福引き…。運のみが試される「福男ゲーム」により「最優秀福男芸人」を選ぶ企画が、年イチのTBS特番『お笑いアカデミー賞』内で開催!’21年から始まったこの企画、過去の放送で決勝戦に勝ち残ったのはオードリー・春日俊彰、パンサー・尾形貴弘、コットン・西村真二、ニューヨーク・屋敷裕政…と、不思議と人気者ばかり。この「福男ゲーム」の結果から、今後さらに飛躍する芸人が分かるというウワサも…!?すでに人気者の芸人たちの中でも、さらに強い運の持ち主が「福男」ということで、その引きの強さを目撃しに、収録現場を取材しました!START…残り56人やす子、ヒコロヒー、囲碁将棋、鬼越トマホークなど、参加した芸人たちは総勢56人。一同、名前の入ったお揃いの緑ジャージに着替え、体を張った運試しに挑戦することに。ちなみに、過去の第1回、第2回ともに、パンサー・尾形が「最優秀福男芸人賞」をもぎ取り、2連覇中と絶好調!今回も存在感を示すか!?スタジオ入り競争…56人55人「収録開始は5分後」と事前に伝えられ、スタジオ外の打ち合わせホールで待つ芸人たち…でしたが、ここからすでに運試しがスタート。「収録スタジオに入るのが一番遅いような、気の抜けた人は参加資格なし」とのことで、余裕の表情で最後にやって来た見取り図・盛山が最初の脱落者に!金ダライ宝釣り…55人10人次なる種目には56人分の金ダライがずら~り。ダウンタウンがどれか一つの金ダライに繋がった紐を引くと、金ダライが落下。頭に当たった芸人は次に進める。ここで勝ち抜けるのはなんと10人。「“持ってない”芸人には、なぜか落ちてこない」というジンクスがまことしやかに囁かれているとか。金ダライが当たった“持ってる”10人は、アインシュタイン・河井、NON STYLE・井上、ジャングルポケット・太田、ちゃんぴおんず・大崎、パンサー・菅、ヒコロヒー、マヂカルラブリー・村上、見取り図・リリー、宮下草薙・宮下、やす子。ラッキーダイビングマシン…10人2人次は残った10人が2組に分かれ、ダイビングマシンに挑戦。ダウンタウンがボタンを1つ選び、押すと1人だけ落下防止の装置が外れ、滑り落ちたら“持ってる”人。傾斜の角度がグングン上がり、体重100kgを超えるマヂカルラブリー・村上のハーネスがちぎれそう…。福引き3本先取…2人1人勝ち進んだのはアインシュタイン・河井と見取り図・リリー!一方の鼻フックが吊り上がるくじなどの福引きを、3本先に引き当てた方が「福男」に!熱々ローション風船…尾形vsリリー福引き3本先取の勝者・リリーが福男…と思いきや、2年連続福男のパンサー・尾形からの「待った」が入る!最終決戦の舞台は熱々の青いローション入り風船。風船が割れ、ローションを浴びた方が勝ちということで、見事、最も運のいい芸人に輝いたのは…!?運だけでどんどん勝ち上がる姿に注目してほしい。’24年真の福男芸人見取り図・リリー――「最優秀福男芸人賞」受賞、おめでとうございます!リリー:ありがとうございます。盛山:ありがとうございます。リリー:おい!(笑)――盛山さんは、最初に脱落されて…。盛山:コンビの片方が福男で、もう片方が最初に脱落するっていう。2022年のコットンもそうでしたね。リリー:確かに。すごい奇跡。――早速、福男になられたリリーさんの今年の抱負を教えてください。リリー:ダウンタウンさんの番組で福男になったんで、今年は“ポスダン”ですね。ポスト・ダウンタウンになります。盛山:言いすぎや!リリー:強運なんで。お笑い界も芸能界も、僕がどんどん運で勝ち上がっていく姿に注目してほしいですね。盛山:運のみで。なんかダサいなあ…。リリー:運は大事ですから。――強運の持ち主ということで、普段からゲン担ぎしていることは?リリー:毎朝、起きたら太陽を見て、今日もよろしくお願いします、平和に過ごせますようにって、心の中で唱えてますね。もう10年以上前から続けてます。盛山:ルーティン怖いな!……え、大丈夫?なんか辛いことある?――そんなモーニングルーティンから生み出されるリリーさんの強運にあやかる方法はありますか?会える場所とか…。盛山:リリーと会える開運スポットね。リリー:それこそライブとか劇場なら、僕らといつでも会えますので、来ていただきたいですね。あとは東京の麻布十番らへんをうろちょろしてるんで…。盛山:ほんまにしてるやつやん!見取り図リリー、盛山晋太郎からなるお笑いコンビ。『ジョンソン』(TBS系、月曜21:00~22:00)、『ラヴィット!』(TBS系、月~金曜8:00~9:55)の水曜レギュラーのほか、『スタンド・バイ・見取り図』(TBSラジオ、日曜23:00~23:30)などで活動中。『お笑いアカデミー賞』’21年から始まった年に一度の“笑いの祭典”。総合司会を務めるダウンタウンの二人が、各部門において、その年最もお笑い界を盛り上げた芸人の功績を讃える。表彰される部門は「最優秀多忙賞」「最優秀推され芸人賞」「最優秀高額買い物賞」など。※『anan』2024年1月17日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)構成、文・間野加菜代(by anan編集部)
2024年01月16日2024年も楽しく笑って過ごしたいところですが、笑いに取り憑かれる生を送ることになってしまったある男の実話が映画化。ラジオ番組や雑誌へのネタ投稿で圧倒的な採用回数を誇り、“伝説のハガキ職人”と呼ばれたツチヤタカユキさんの私小説をもとにした話題作『笑いのカイブツ』がまもなく公開を迎えます。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。岡山天音さん【映画、ときどき私】 vol. 628映画『キングダム』シリーズや『沈黙のパレード』、『ある閉ざされた雪の山荘で』など話題作への出演が続き、実力派俳優として注目を集めている岡山さん。劇中では、5秒に1本ネタを考え続ける生活を送り、笑いにすべてを捧げた不器用なツチヤを見事に演じ切っています。今回は、自身も味わった苦しい過去や“演技のカイブツ”だと思う俳優仲間のこと、そして好きなお笑いなどについて語っていただきました。―精神的に追い込まれるような大変な役どころだったと思いますが、どのようなお気持ちで現場に挑まれましたか?岡山さん前回主演を務めたときからはだいぶ時間がたっていて、その間に経験値も増えていたので、どうしたら面白い作品になるかというのを事前に滝本(憲吾)監督といろいろ相談させていただきました。脇役のときだったら踏み込まないような領域にまで入ることになりましたが、それが主演としての責任ではないかなと思ったので。普段よりもリーチするべき範囲が広かったぶん、撮影前から監督とは信頼関係が築けたと感じています。ツチヤとは“同じ星に生まれてしまった人”みたいな感覚―とはいえ、現場では引き裂かれそうになる日々を経験されたとか。役作りで苦労したのはどのような部分でしたか?岡山さんツチヤが強烈な個性を持って生まれてしまった人物ということもあり、どうやっても社会とうまく混ざり合えないので、何をするにしても息苦しい感じはありました。ツチヤはただそこに存在しているだけで、とてつもない異物感みたいなものがありますからね。でも、僕自身がもともと持っている性質も完璧主義というか極端なところがあるので、ツチヤの行動原理はわりと最初からスッと入ってきたほうかなと。ツチヤのようなことはしないまでも、“同じ星に生まれてしまった人”みたいな感覚はありました(笑)。―監督も岡山さんのことを「いい意味で変」とおっしゃっているようなので、おふたりに近いものを感じていたのでしょうか…。ご自分でも変わっているなと思うことはありますか?岡山さん他人の身体に乗り移れないのでわかりませんが、自分が感じていることをみんなも感じているんだろうなと思っていますし、「自分だけ特別」ってことはないと考えています。でも、なぜか「変だもんね!」とはよく言われますね(笑)。その人のなかでどうしてそういう判断になったのかはどこに着目しているかによっても違うかもしれませんが、そんなふうに強烈な孤独というか誰ともわかち合えない瞬間を味わうことはあります。「何考えているのかわからない」とか「心を開いてくれないよね」みたいなことも言われることが多いですが、自分としては「けっこう開いているけどな…」と思うことも。なので、「この人も僕のことをそう思っていたんだ」と気付かされる日々です。10代は芝居にのめりこみすぎて地獄の日々も経験した―ご自身も若い頃は、オーディションに全然受からない“地獄の時期”があったとか。そういう部分でも、ツチヤには重なるところがあったと思いますが、岡山さんはどのようにしてつらい時期を乗り越えましたか?岡山さんツチヤと近い人間である感覚がありながら圧倒的に違うのは、僕はわりと周りに混ざることができますし、自分と異なるものにも美しさや面白さを見い出せます。自分のなかの“正義”がはっきりしているツチヤに比べると、僕はまだ定まっていない部分があったので折り合いをつけられる余白があったのかなと。外側からもらったものが自分のなかに根付いていることもあるので、そういう部分での差はあると感じています。―とはいえ、笑いに取り憑かれているツチヤのように、演技や役にのめりこみすぎて日常生活に支障が出たことはありませんか?岡山さんそれは、けっこうありますね(笑)。特に10代の頃は、周りが求めているお芝居に到達しなきゃと思うあまり、あがいていた時期があったので、あのときは本当に地獄の日々でしたね…。先入観で勝手に作り上げてしまったり、「芝居とはこういうものだ」と安易に考えて抽象的なものを追いかけてしまったりしていたので、そのときは生活を後回しにしていました。なので、一緒に暮らしていた家族にはすごく気を遣わせてしまいましたし、当時は支障だらけだったと思います。いまのマイブームは、人間を“研究”すること―ということは、いまはそういう経験を踏んで、うまく切り替えられるようになったと。岡山さんそうですね。仕事とプライベートをわけないと、どんどん自分が貧しくなりますし、そこを面白くしないと日常の延長線上にあるお芝居も枯渇してしまうとわかったので。「生きているからにはいろんなことを味わわないともったいない」と気付いてから、どうしたら価値のある日常にできるのかを考えるようになりました。と言っても、まだ試行錯誤の日々ですが、「お芝居だけ鋭くできればいいんだ」という方向性からは変わってきているのを感じています。―ちなみに、ツチヤにとってのお笑いくらい、ハマっていることはありますか?岡山さん基本的に熱中することが好きなので、読書するとなったら、ずっと本を読み続けたりします。エンタメに関係するものはどれも好きですが、最近は人を見るのが面白いですね。昔だったら、時間があると台本と向き合ってばかりいましたが、いまはいろんな人と会うようになりました。長く付き合いがある人でも頻繁に会うと知らなかった側面が見えたり、イメージと違ったりすることもあるので、それが見えるのが面白いなと感じています。しかも、相手の反応によって、自分自身の内側や根っこを知ることに繋がりますからね。ここ数年は、そんなふうに人間を“研究”するのが僕のブームです。自分の好きなことの“奴隷”になっている人が好き―そのなかで、「この人は“演技のカイブツ”だな」と思った方がいたら教えてください。岡山さんそれは、本作でも共演した仲野太賀くんですね。初めてご一緒したのは10代半ばくらいですけど、テストや段取りのときだけでなく、セッティング中もどういうふうに集中力を高めて本番にピークの瞬間を持っていくか、というのをすごく丁寧にされています。僕は年齢を重ねるとともに、お芝居との向き合い方も現場での立ち振る舞いも変わってきた部分がありますが、太賀くんは青い炎が静かに揺らいで燃えているようなたたずまいが子どものときから変わっていない。単純に同じ質量のモチベーションをずっと保てていることがすごいですよね。それだけお芝居や周りに対して愛があるということでもありますが、僕の抱く人間像では測れない領域まで来ているので、そこに彼のカイブツじみたものを感じています。―なるほど。また、岡山さんは「ユーモアを持って日々を過ごすことを大事にしている」とお話されているようですが、ご自身の“笑いのツボ”は何ですか?岡山さんこれはお笑いに限らずですが、自分の好きなことの“奴隷”みたいになっている人が好きですね(笑)。表現が強く聞こえるかもしれませんが、周りがついていけない速度が出ていたとしても自分の本能のままに振り切って突き進んでいる人をみると爆笑してしまいます。その人のなかにしかない文脈で意味がわからなくても、もはやわからなさすぎて面白い。そういう人のお笑いを見ると純度100%という感じがして、自分も笑ってしまうことが多いです。いい悪いだけで判断せずに、その瞬間を楽しんでほしい―お気に入りの芸人さんはいらっしゃいますか?岡山さんずっと好きなのは、永野さん。バラエティ番組などに出られていると、みんなが永野さんの脳みそにお邪魔しているような状態になるので、そういう瞬間は至福のときですね。あと、若手芸人の小松海佑さんという方も、すごい角度のある企画をYouTubeとかでされているので見ています。その人だけの世界に連れて行ってくれるような芸人の方がすごく好きです。―それでは最後に、今年で30歳を迎える岡山さんから同世代のananweb読者に向けてメッセージをお願いします。岡山さん僕もいろんなことがよくわからないなと思うことが多いですね。日によって仕事も恋愛も肯定的に見つめられたり、そうじゃないときもあったりしますから。ただ、その瞬間に抱いている好きとか嫌いとか、ポジティブとかネガティブとかは、外側の常識から来るものだったりするので、それはあまり気にしなくていいと思っています。本来、感情の色味みたいなものはたくさん種類があるので、その瞬間ごとにしかない色合いを味わって楽しんでいけばいいのではないかなと。いい悪いだけで判断して終わらせてしまうのではなく、角度を変えたら面白い部分も見えてくるので、僕自身もみなさんと一緒に楽しんでいきたいです。インタビューを終えてみて…。穏やかな空気感をまといつつ、ときおり覗かせる鋭い視点と独特なワードセンスで楽しませてくださった岡山さん。監督が褒め言葉として「いい意味で変」とおっしゃっていたのも腑に落ちるほど、岡山さんワールドに引き込まれるような感覚がありました。本作では、演技のカイブツぶり全開の熱演を見せる岡山さんをぜひ堪能してください。魂を揺さぶり、笑いよりも涙が込み上げる!ヒリヒリするほどまっすぐな思いに突き動かされ、ほとばしる熱量に圧倒される本作。傷ついても、痛みを伴っても、好きなことに立ち向かっていくからこそ味わえる人生の面白さを体感させてくれる必見作です。新たな年を迎えたいまこそ、自分のなかに眠る“カイブツ”も目覚めさせてみては?写真・園山友基(岡山天音)取材、文・志村昌美ヘアメイク・森下奈央子スタイリスト・岡村春輝トップス¥15,400(キート)、パンツ¥33,000(ウィザード/ともにティーニー ランチ 03-6812-9341)、その他(スタイリスト私物)ストーリー何をするにも不器用で、人間関係も不得意な16歳のツチヤタカユキ。唯一の生きがいは、大阪で暮らしながらテレビの大喜利番組にネタを投稿し、「レジェンド」になることだった。狂ったように毎日ネタを考え続けて6年、お笑い劇場で才能が認められ、念願叶って作家見習いとなる。しかし、笑いだけを追求し、常識から逸脱した行動をとり続けるツチヤは周囲から理解されず、志半ばで劇場を去ることに。自暴自棄になりながらも笑いを諦められないツチヤは、ラジオ番組にネタを投稿する“ハガキ職人”として再起をかける。次第に注目を集めると尊敬する芸人・西寺から声が掛かり、構成作家を目指して上京を決意するのだが…釘付けになる予告編はこちら!作品情報『笑いのカイブツ』1月5日(金)テアトル新宿ほか全国ロードショー配給:ショウゲート、アニモプロデュース(C)2023「笑いのカイブツ」製作委員会写真・園山友基(岡山天音)
2024年01月03日DMM.comが運営する総合動画配信サービス「DMM TV」は2024年1月19日より、『インシデンツ2』をDMM TVオリジナル作品として独占配信します。同作は、「DMM TV」オリジナルコンテンツのこけら落としとなったシリーズ1作目『インシデンツ』に続く、第2弾。企画総合プロデューサーは、引き続き佐久間宣行氏が務め、完全新作として超刺激的な“脱法コント”を届けます。■はぐれ者たちで贈る超刺激的な“脱法コント”独占配信決定!2022年12月23日より配信された『インシデンツ』。タブーとされた過激なネタを取り上げ、豪華キャストで地上波のコントでは放送することができない挑発的な内容は衝撃と笑いを引き起こし、話題を呼んだコント番組です。今回、新たなキャストを迎えスケールアップした完全新作『インシデンツ2』として生まれ変わりました。■新たにメンバーが加わりバージョンアップシリーズ1作目『インシデンツ』メンバーから、森田哲矢(さらば青春の光)、東ブクロ(さらば青春の光)、伊藤健太郎、ヒコロヒー、みなみかわが続投し、新キャストに加藤浩次を迎えた完全新作『インシデンツ2』。昨今、配信映像コンテンツが数多く存在する中で、その中でも異形で超刺激的なコントが誕生しました。“タブー”というテープを剥いで叫ぶ森田哲矢、伊藤健太郎、加藤浩次。そして不穏な表情で何か言う気満々な東ブクロ、ヒコロヒー、それに触発され今にもテープを剝がそうとするみなみかわ。この6人を中心に、いったんどんな“脱法コント”が見られるのか、期待が高まります。■作品概要『インシデンツ2』DMM TVにて2024年1月19日より配信開始※PG12※配信スケジュール1月19日第1話・第2話・第3話/1月26日第4話2月2日第5話/2月9日第6話(最終話)作品ページ:【制作スタッフ】(敬称略)企画総合プロデュース:佐久間宣行構成:オークラ脚本:オークラ、土屋亮一コント脚本:岩崎う大、渡辺佑欣監督:住田祟【出演者】(敬称略)森田哲矢(さらば青春の光)東ブクロ(さらば青春の光)伊藤健太郎ヒコロヒーみなみかわ加藤浩次他※番組の視聴にはDMMプレミアム会員への登録が必要となります。(エボル)
2024年01月01日日常に溢れる“あるある”ネタ動画で注目を集め、YouTubeの登録者数が36万人を突破したお笑い芸人のたつろうさんの『嫌な男あるある』はSNSで反響の大きかったネタを中心に200個収録。うっすら嫌な男のリアルすぎる再現にイラッとしながらも笑ってしまう一冊だ。じわじわムカつく一言が“あるある”と分かれば、心が救われるはず。「これまでYouTubeでやってきたネタだけでなく、日常編、会社・バイト編、飲み会編など、シーン別で“なんか引っかかりを感じる言葉”を綴っています。ネタの多くは、自分の体験を再現したもの。『彼氏と深い話できてる?』という言葉は、僕がリアルによく言うフレーズです(笑)。『それ、今じゃなきゃダメ?』や『ねぇ、あの子何もできないよ!』は、昔の辛いバイト時代に言われたことを思い出して、ちょっとヘコみますね(笑)」注目は、嫌な言葉を放った時の表情やしぐさを自身がモデルとなり、全力で再現していること。「2日間かけて膨大な量を撮影したんですが、セリフと表情がちゃんとマッチしている自信があります(笑)。素の表情で撮ったおしゃれなグラビアページもあって、“鍵をなくした”とか、そのシチュエーションにハマる言葉が添えられているのもポイント。写真が上がった後にキャッチフレーズみたいに考えたので、まるで写真大喜利状態でしたよ(笑)」「芸人としてネタを作ることは、自分と向き合うこと」と言うたつろうさん。嫌な男のネタを考えるうちに、自分を客観視する習慣がつき、人の気持ちが分かる人間になったそう。「家に帰ってシャワーを浴びている時に『今日はちょっと嫌な言い方をしちゃったな』って思い出して、ウワーッてなることがあって。一人反省会した内容がそのままネタに。おかげで空気を読める人間になりました。もちろん人間観察から生まれるネタもあるので、人が放つ言葉に敏感。先輩芸人からは『お前と喋ると、ネタにされそう』って怖がられます(笑)」身近にいる人を思い浮かべながら読むなど、楽しみ方は十人十色。「人の言葉に敏感で傷ついてしまう人は、この本を読んで、自分が言われたあの嫌な言葉が、“あるある”だと分かれば、心がちょっと救われるはず」たつろう『嫌な男あるある じわじわムカつく言葉200』33歳で又吉直樹さんにネタをホメられたことがきっかけで“あるある”ネタを武器にしてきたというたつろうさんの“嫌な男あるある”を書籍化。ヨシモトブックス1540円たつろう吉本興業所属のお笑い芸人、YouTuber。1984年、富山県生まれ。日常を切り取ったあるあるネタとモノマネが得意。『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』(フジテレビ系)などで活躍中。※『anan』2023年12月27日号より。写真・小笠原真紀(たつろうさん)インタビュー、文・福田恵子(by anan編集部)
2023年12月27日シーズン2も大人気のNetflixコメディシリーズ『トークサバイバー!~トークが面白いと生き残れるドラマ~』。企画・演出・プロデュースを務める佐久間宣行さんに聞く、今作の大ヒットの裏側とは?佐久間さんに聞く、『トークサバイバー!』に夢中にさせる3つのポイント。ドラマはノブさんのツッコミありきで組み立てています。あえてドラマ的には「間の悪い編集」なんです。『ゴッドタン』の“キス我慢選手権”企画で、メインの人はマジなのに外から芸人たちがツッコミを入れるスタイルが面白いという、ある程度の成功体験がありました。これを千鳥でやればもっと面白くなるだろう、と思ったのがこの企画の趣旨でもあります。大前提として演者はもちろん、演出含めスタッフ全員が“ボケを狙ってはダメ。芝居を大袈裟に、大マジにやることが最大のボケ”という共通認識を徹底。その上で台本に“ここノブさんのツッコミ入りそう”と最初から記しておき、編集で間を調整してもらっています。だから普通のドラマに比べたら、テンポは悪いはず。ノブさん独自のツッコミありきで、ドラマパートの構成を組み立てています。「基本は芸人さんの面白いトーク」というシンプルな構造。シーズン2は“トークのストック”以外から生まれる、新たなトークのシステム作りに挑戦しています。ドラマっぽくトークするというのは他の番組でもやっていて、面白くなるのは最初からわかっていましたが、基本は芸人さんたちのトークが面白い、というシンプルな構造が強みだと思っています。ただ、シーズン1ですでにトークのパターンはいろいろ試してしまった。だからシーズン2を作る時に、芸人さんがただテーマに沿って個人のトークのストックを披露するのではなく、大喜利とトークの合間ぐらいの新しいシステムを投入しました。例えば“アン ミカが言わなそうな一言”で大喜利をして、アン ミカさん本人に演じてもらうとか、トークではなく大声でメッセージを叫ぶなど、毛色の違うスタイルを入れて、笑いの多面性を追求したのも新しい試みです。芝居の上手い芸人さんをちゃんと入れて、ヘタが売りの芸人さんの人数は調整しています。ドラマの中でトークするという発想は、ある恋愛リアリティショーを見ていた時に生まれたもの。イケメンがつまらない話をカッコつけて喋っているのを見て、面白い!芸人がカッコつけて喋るのもありだな、と思いました。ドラマ部分のこだわりはいくつかありますが、芝居の上手い人とヘタな人の数をキャスティングの段階でバランスよく入れることもその一つ。例えば劇団ひとりさん、塚地さん(ドランクドラゴン)、じろうさん(シソンヌ)、平子さん(アルコ&ピース)などの芝居上手を入れつつ、西田さん(笑い飯)や橋本さん(銀シャリ)などヘタをネタにできる人たちを入れて、ノブさんがツッコミまくる。それで両方が引き立ち、笑いが成立するんです。『トークサバイバー!~トークが面白いと生き残れるドラマ~』シーズン2ドラマとお笑いのトークを融合したNetflix発の新感覚バラエティ。スリル満点の本格ドラマに出演する芸人たちが、台本なしのシーンではトークを展開。トークが面白くなければ即刻ドラマ降板!生き残りをかけたトークバトルを繰り広げる。佐久間さんが企画・演出とプロデューサーを務め、シーズン1に続いて出演者を代えてシーズン2が配信中。千鳥ほか芸人が多数出演。城田優、近藤芳正など俳優も参加。Netflixにて独占配信中Netflixコメディシリーズ「トークサバイバー!~トークが面白いと生き残れるドラマ~」シーズン2 独占配信中さくま・のぶゆきテレビプロデューサー、ラジオパーソナリティ、演出家などさまざまな肩書を持ち、多くのメディアで活躍中。【WORKS】バラエティ『ゴッドタン』(テレビ東京)バラエティ『あちこちオードリー』(テレビ東京)ドラマ『生きるとか死ぬとか父親とか』(テレビ東京)Netflixシリーズ『「LIGHTHOUSE」~悩める2人、6ヶ月の対話~』Netflixシリーズ『トークサバイバー!~トークが面白いと生き残れるドラマ~』DMMTV『インシデンツ』ラジオ『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送)YouTubeチャンネル「佐久間宣行のNOBROCK TV」※『anan』2023年12月27日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)取材、文・若山あや(by anan編集部)
2023年12月22日日曜朝のテレビ画面いっぱいに広がるビッグボディ。ロバートの秋山竜次さんとアルコ&ピースの平子祐希さんが、体格ブラザーズとして自慢の体躯で笑いを生み出している。鍛えたりシェイプアップする代わりに、気の向くままに食べて寝る。そんな二人の体からは、ありのままのボディを全肯定してくれる、ポジティブなパワーが放たれていました。体格ブラザーズ(ロバート・秋山竜次×アルコ&ピース・平子祐希)――今回、「バランスバストのつくり方。」特集に合わせて、素晴らしいバストをお持ちの体格ブラザーズのお二人に登場いただきました。リュウ(秋山竜次):(シガールを葉巻のように指に挟んで)すみません、これ、やりながらでいいですか?ユウ(平子祐希):(ケータリングのおにぎりを手にとって)みなさんもね、食べながらやりましょう。――召し上がってください。さっそくですが、お二人はバストを仕上げるために何かされていますか?ユウ:「仕上げる」っていうのは何か作為的な言い回しだね。ちょっと乱暴だよな(おにぎりを食べる)。リュウ:今、答えが出てるじゃないか。どんなときも食い続けてゴロゴロして、ジムにも通わず欲望のままに生きる。それが良いバストが仕上がる秘訣なのかもしれねぇな。ユウ:だから、貪りが足りてないよね。バストっていうのは貪りが育むものなんだ。仕上げるとか鍛えるとか、俺らに言わせるとちゃんちゃらおかしいわけよ。リュウ:バストってのは脂肪も大事だからな。バキバキに鍛えて胸筋をつけるんじゃなく、人間らしい脂肪がある程度乗ってないと。――「鍛える」や「痩せる」ではなく、「体格」をポジティブワードとして使われているところにオリジナリティを感じます。「体格ブラザーズ」という名前を手に入れたとき、どう思われましたか?リュウ:自然と引き寄せられたんだろうね。普段は別のグループに属している俺たちがひょんなことから一緒になって、「おぉ、体格似てるなぁ。どういう食生活?同じじゃないか。年齢?同じじゃないか。通ってきたカルチャーは?同じじゃないか。兄弟じゃねぇか!」で、体格ブラザーズ結成さ。そう書けよ。――はい。ユウ:たまたま俺ら二人にそういう名称がついたのであって、これを読んでいる人たちには気づいてほしい。個々に異なっているけれど誰もが体格を持ち合わせて生きていて、何かを貪ってどこかに怠惰があって、必ず共通項がある。なりたいんだったら、お前らも明日から体格ブラザーズであり体格シスターズなんだよ(2つ目のおにぎりを食べる)。リュウ:これが俺たちのマジの姿なんだ。食いたいがままやってきた二人が出会ったら、メディアさんがそれを映像として映してくれて、そのうち反響が出てきてよ。今じゃ街で「体格ブラザーズだ」って言ってくる人も増えた。不思議なもんだよな。ユウ:シェイプアップだの筋トレだのがこれだけはやっている中で、言ってみれば反動分子だったんだ。地下で力を蓄えていたのが今こうして地上に出てきて、おたくらがそれをカメラで追っている。体格ブラザーズってのは現象なんだ。時代が生み出した化け物だよ。リュウ:すごいぜ、このユニットは。――お互いの体格で好きなポイントはありますか?リュウ:そりゃああるよ。ユウって、ラグビーをやっていた体がベースなんだよね。その上に脂が乗っかってる。ラグビーをやり続けたんじゃなくて、その後にダラダラした生活を送ったのが全部出てるっつうか。ユウ:ラグビーをやめ続けたらこうなれるね(サンドイッチを食べる)。リュウ:「いや、ラグビーやめたなぁ!」って感じ。昔の体が下に透けて見えるのがいいよ。ユウ:俺は「体格」って漢字を象形文字に戻したらグニャ~ッと曲がっていってリュウの体になるんじゃねぇかなって思ってるよ。昔の中国で漢字を考えた偉い学者さんたちがいるとしたら、リュウのような体の持ち主を描写して「体格」って文字をつくったんだと思う。それぐらいオリジンだよね。リュウ:言いすぎだよ。ありがとうな。俺は銭湯でおっさんに「体格いいなぁ!」って言われたくて生きているから、「体格」イコールこの体っていうのは嬉しいよ。鍛えている人のことも「体格がいい」って言うけど、やっぱり風格がないとダメなんだ。「格」って文字があるんだから。それってつまり、ほどよく腹が出て脂が乗った恰幅の良さなんだよ。――秋山さんの「体モノマネ」のように、芸人さんにとって体格はひとつの武器になると思います。体格と笑いの関係をどう捉えていますか?ユウ:体格の膨らみって表現方法の膨らみでもあるのよ。ガリガリにできること、筋肉質にできること、そのすべてを賄えるのが体格なわけでしょ。だからオールマイティのジョーカーみたいなものだよね。リュウ:最初っから体格があれば、カメラマンさんになんとか頑張ってもらって細く見せることもできる。捏造はいくらでもできるんだよ。でも痩せているやつを太らすのは嘘くせぇんだ。ユウ:体の横をパテで埋めてデカくするわけにもいかないだろ。リュウ:ただ、俺もまだ体格に憧れていない時代はあったよ。「細いラインがモテるんじゃないか」と思って、デビューして数年は着替えるときも腹を極力隠していた。腹なんて見せていじられたくないって思ったさ。ションベンくせぇよな。今は1秒でいいから服を脱がしてほしいよ。ユウ:昔は青くさかったね。俺も肌の露出は極力控えて雰囲気をつくって、空気感を重んじるコントをつくり続け、その結果あえいであえいで。リュウ:空気感に憧れて、いつまでもニン(※外見や人柄まで含めた「その人らしさ」のこと)に合ってないことをしてるやつを見ると思うよな。「一発、体見せりゃいいのによ」って。そうするとリミッターがぶっ壊れるから。――最後に、読者へのメッセージをお願いします。リュウ:やっぱり俺たちを見て思ってほしいよね。「あ、体格って活かせるんだ」って。彼氏や旦那さん、お父さんの腹を見て「だらしない体だな」って思っている人もいるかもしれないけど、一つ見方を変えればとてつもない武器になるわけだからな。痩せさせたら「なんだかつまらない」って後悔するときがくるぜ?ユウ:今これを読んでいる細いやつ、鍛えすぎて悩んでるやつ、俺らはすべての人に門戸を開いてる。誰しもが、体格ブラザーズセピアなんだ。君たちの挑戦を、俺たちはいつだって待ってる。リュウ:腹と腹でぶつかろうじゃねぇか。読者のみなさん、体格に関するお悩み、そして水回りのことは体格ブラザーズに…。リュウ・ユウ:(同時に)お任せください。/お任せあれ。リュウ:「ください」で来いよ。それは“勘定奉行”なんだよ。ユウ:「お任せあれ」は“勘定奉行”の専売特許ではないから。リュウ:あとお前、取材の間にケータリング何個食った!?5個!?ユウ:あー、おいしかった。ごちそうさまでした。体格ブラザーズ日曜朝の情報番組『シューイチ』のコーナー企画として結成された、ロバートの秋山竜次さんとアルコ&ピースの平子祐希さんによる体格ユニット(番組内での互いの呼び名は「リュウ」と「ユウ」)。食べて寝てお風呂に入って、“体格”を“仕上げ”ていくのがコンセプト。最近は行政とのコラボやアジア進出を狙うなど、体格も活動も幅を広げている。『シューイチ』は毎週日曜7:30~10:25、日本テレビ系で放送中(「体格ブラザーズ」は不定期放送)。あきやま・りゅうじ(写真左)1978年生まれ、福岡県出身。お笑いトリオ、ロバートのボケ担当。『キングオブコント2011』王者。ソロとしての活動に「ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル」など。自称・市民プール愛好家。ネックレス¥22,000(マリハ TEL:03・6459・2572)その他はスタイリスト私物ひらこ・ゆうき(写真右)1978年生まれ、福島県出身。お笑いコンビ、アルコ&ピースのボケ担当。高校のラグビー部時代は東北選抜に選出され強化指定選手として活躍。愛妻家としても知られる。相方の酒井健太と共にサウナ好き。ネックレス¥18,700(マリハ)その他はスタイリスト私物※『anan』2023年12月13日号より。写真・森山将人(TRIVAL)スタイリスト・鹿野巧真ヘア&メイク・坂西 透取材、文・斎藤 岬撮影協力・BACKGROUNDS FACTORY(by anan編集部)
2023年12月13日芸能界随一の鍋好きとして知られるZAZYさんに、ハマったきっかけや魅力、楽しみ方の極意までを教えてもらいました。今すぐ試したくなる作り方のコツやひと手間にも注目!巷で話題!ZAZYさんが語る、ぽかぽか鍋愛!大学時代、お酒を飲むことが大好きだったので、運動をしない飲みサーを作ろうという動機から鍋サークルを作りました。そう、順番が逆なんです(笑)。家で鍋をすれば1人1000円とかで結構飲めるし、冬だったのでちょうどええやん、と。でも、鍋サークルを名乗るからにはちゃんとやろうと。レシピ本とかを買って作り始めるうち、あれ、鍋が好きかも?となったんです。僕はもともとロジックがあるものに興味があって、料理も好き。“鍋のネギは斜めに切るもの”という無意識のうちに刷り込まれていたルールが、繊維の断面積が増えることでスープを吸いやすくなり、ネギ感がまろやかになるからと知って、全てに理由があるんや!と面白くなった。鍋作りに夢中になったのはそれからです。初めてスーパーで鶏ガラを買った日のことも覚えていて。本に「スープの素でも可」と書いてあったけど、大学生で時間もあるからとやってみたら、すごく美味しかった。鶏ガラを処理する作業も楽しくて、いろんな鍋に挑戦するきっかけにもなりました。最近も、週に3~4回は鍋をしています。逆に、みなさんは自宅で鍋以外の何を食べているんですか?と聞きたい。やっぱり楽ですもん。面倒くさい日は、肉と野菜を1種類ずつ入れるだけでも成立しますからね。今は、レシピは見ず、スーパーをうろうろして、「今日は里芋が安いから入れよう」みたいに決めていく。誰かと食べる時も、「海鮮のさっぱりしたやつ」「鶏が食べたい、こってりがいい」などヒントをもらえたら、それに応じて作れます。anan読者のみなさんにおすすめしたいのは、生姜やニンニク、豆板醤などの調味料を使い、フライパンで一度しっかりと作った豚キムチを入れるキムチ鍋です。キムチを炒めることで酸味が少しマイルドになって甘みと旨味が増し、豚肉に焦げ目がつくことで香ばしさとコクが生まれて味がボケません。あと、つくねをひき肉から作る時は、ネギの端や白菜の芯、シイタケの軸など鍋に使わない部分をみじん切りにして入れると、彩りがきれいやし、ほら、SDGsにもなりますよ?今の季節はスープに生姜を入れると温まりますね。思っているよりもたっぷり、がポイント。みじん切りや薄いスライス、すりおろしなど、お好みでどうぞ。と、いろいろ言いましたけど、鍋はテキトーに作ることをおすすめします。よっぽど変なものを入れない限り、「なんそれ!」と大失敗することはないですから(笑)。実験的にやって、美味しかったら採用、ダメやったらやめる、くらいでいい。トライアンドエラーを繰り返すことも、鍋の醍醐味のひとつやと思います。ZAZYさんのプライベート鍋ショット!実際に人にふるまった鍋たち。「白菜やキャベツをギチギチに敷き、上に飾り切りにした野菜やメインの肉を置くときれい。スープをそっと入れると崩れにくいです」ZAZY’s 楽しい鍋のコツ【POINT 1】グツグツしすぎないスープの温度が高くなると、お肉類が硬くなったり、野菜から水分が出すぎたりもするので注意してください。グツグツと沸き立っているのは、100°Cで沸騰している状態なので避けること。80°Cくらいにキープする努力を。【POINT 2】実験的精神でテキトーに作るレシピを忠実に再現する面白さもあるけど、縛られすぎたら新しい鍋や味に出合えない。“この間はシイタケを半分にカットしたから今日は丸ごと1つに”“お豆腐を厚揚げにしよう”など、小さなことからチャレンジを。【POINT 3】鍋奉行になりすぎない人に美味しい鍋を食べさせようとして、「肉、いま食べて!」と、盛り上がっているトークを遮る鍋奉行は、あんまり好きじゃない。やっぱり鍋は空気感が大事じゃないですか。火力の調整もできるだけ、しれっとやります。ざずぃー1988年6月27日生まれ、大阪府出身。紙芝居芸を得意とするピン芸人。ラジオ『ZAZYの週明けにイチャモン』(stand.fm)が月曜22時~配信されている。※『anan』2023年12月6日号より。写真・内山めぐみ取材、文・重信 綾(by anan編集部)
2023年12月03日Google Mapsの検索窓に、行きたい、あるいは探したい場所のキーワードを入れれば、瞬時にその場所が示される。もはやそれが普通の世の中で、わざわざ、しかも白地図に、地元の人におすすめスポットを書き込んでもらい、“地図に書かれたところにしか行けない”というのが、この『秋山ロケの地図』。しかも白地図をショッピングモールに掲示するお知らせは、なんと折り込みチラシで。やれデジタルだ、AIだという社会の真逆をいく、超絶アナログな番組です。天然のエキストラみたいな人と、町でコントをやりたいんです。「もともと僕は、地方ロケでは前日にその土地に入り路地を歩き回って、喫茶店でお茶をしたり、洋品店で翌日の衣装を買ったりするのが大好き。だからこの番組、もう楽しくて仕方がないんです。ロケの冒頭、びっしり書き込まれた地図を見る瞬間は、心からワクワクします」と言うのは、この番組の主役であるロバート秋山さん。良い意味でクセのある冠番組を多数やってきた秋山さんからしても、「かなり変わった番組です」とのこと。「最初に企画を聞いたときから、“面白そう!”とは思いました。ただ、本当に皆さんが書き込んでくれるのか、という不安もありました。書いてくれないと番組始まりませんし(笑)。でも、1回目は今年の春の単発企画で千葉県の九十九里町にお邪魔したんですが、もうね、初回から最高だったんですよ。地元の人しか知らないディープな場所はもちろん、“気になるので確認してきてくれ”とか、お使いじゃないか、みたいなものもあって。最近すごかったのは、“やめちゃったパートの制服を返し忘れたから、一緒に返しに行ってくれませんか?”って(笑)。あと自分の家の自慢のソファに座りに来てほしい、という中学生とか、とにかくものすごく自由!だからめちゃくちゃ楽しいです」どの場所に行くかはすべて秋山さんの気分次第。地図を見て、綴られた文章や文字の雰囲気を見て、ピンときたところを訪ねていく。来るか来ないかは、まさに神のみぞ知る、なのが面白い。「だいたい皆さん、“もしかしたら来るかな、でも来ないよな”的な気持ちなんですよね。で、実際行くと、“どうせ来ねえんだろ?”とか“もう夕方5時過ぎたから来ねえだろ?”みたいな顔だったのが、僕を見ると、“ホントに来るんだ!”って表情になって、ワッと歓迎してくれる。あのガチ感は、他の番組では絶対ないですね」また秋山さんと住民の方々とのコミュニケーションの中に、リアルさとコントっぽさが奇跡のようなバランスで混在しているのも愉快。「もともと僕は、地元のおっちゃんとかおばちゃんに話しかけるのが好きで、みんながちょっと警戒するような名物親父みたいな人にも全然行っちゃうタイプなんです。また、基本的にどこでもコントをやりたいので、だからこそこの番組では一般の方々にミニコントをさせたい。でね、やっぱりゴロゴロいるんですよ、町の中には、素晴らしい天然のエキストラが。そういう人を見つけたときはもう、遠慮なしに行きます(笑)」九十九里はカフェの情報が書かれることが多かった、三崎は改めて大根の町だと思った…など、その土地の姿が浮かび上がるのも面白い、と秋山さん。「ネットでサラッと検索しただけでは出てこない、面白い場所や人がうじゃうじゃいるんだろうなと、ワクワクしてます。番組の知名度が上がると、書き込まれる情報の種類やテイストが変わるような気もしていて、そのあたりもとても楽しみです」『秋山ロケの地図』事前にロケ地に白地図を設置し、住民がおすすめスポットを書き込んだ地図を見ながらロケをする番組。秋山さんは毎回地元中学のジャージを着用。この日は、神奈川県・三崎のロケ帰りだったため、三崎中のジャージ&本物の白地図とともに取材&撮影。毎週火曜23:06~、テレビ東京系で放送中。©テレビ東京あきやま・りゅうじ芸人、俳優、お笑いトリオ・ロバートのメンバー。コントや歌ネタ、憑依芸には定評が。YouTube「ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル」はNetflixにも進出し人気。来年は大河ドラマにも出演予定。※『anan』2023年11月29日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)(by anan編集部)
2023年11月27日未だ解けない定理やその背景など、数学の超難問をパンサーの尾形貴弘さんが笑い封印で解説する、『笑わない数学』のシーズン2が放送中。すべては理解できずとも、文系の人でも知的好奇心が刺激される番組だ。パンサー尾形が体当たりで数学の難問に挑む!「高校も大学もスポーツ推薦で、知ってる公式は底辺×高さ÷2くらい。一日中山を登ったり、7時間半落とし穴にいたり、一生体を張り続けるんだと思っていたのに、NHKで数学番組のMCですよ。でも、収録でやることといえばカンペ読むだけですからね。…って、ここは否定してもらわないと!数学に縁遠い僕でも、ちゃんと頭を使ってるんです。その証拠に、糖分を使い果たして、収録後はどの番組より疲れる…。でも、それが心地よくもあるんです」MCの人選では、どんな無茶ブリも嫌がらず、突き進んでいく尾形さんしか思いつかなかった、と制作スタッフ。シーズン2ということで、カンペ読みもだいぶ上達したが…。「逆に、抑揚のつけ方とか上手くなるなって言われるんですよ!」制作側の意図としては、数学の知識や理屈を超越して「なんだかすごい!」といった感動を、素の尾形さんに届けてほしいからなのだとか。確かにその真っすぐなMCぶりには、知識をひけらかすようないやらしさが微塵も感じられないのがいい。「学生時代にこの番組を見ていたら数学を好きになっていたかも。でも、頭のいい人がやっていたら、見ていなかった気がします。最初はドッキリかと思ったけど、僕がMCに選ばれた理由ってそういうことかもしれませんね。びっくりするんですけど、子供にも『見てる』と声を掛けられるのは、『パンサー尾形がやってるなら、自分にも分かるだろう』って思われてるからなのかな」天才数学者でも難しい問題を視聴者に30分で伝えるのは至難の業。スタッフは様々な参考文献や原論文にあたり、複数の専門家にも話を聞く。ここまでで2~3か月はかかるそう。尾形さんは、収録前に約1時間のレクチャーを担当ディレクターから受ける、いわば最初の視聴者だ。「さすがに全部は理解できないけど、スタッフのみなさんが開いてくれる勉強会にだいぶ助けられています。テーマを見つけてくるのも、僕がなんとか分かるところまでもっていくのも、すごく大変なはず。映像にもものすごいこだわりが感じられますし。だから簡単には言えないですけど、あえて言いたい。シーズン3も絶対にやりましょう!この番組のスタッフの方々って、センスがあるんですよ。でなければ、そもそも『笑わない数学』なんてタイトル思いつかない。僕より大喜利得意なんだろうな(笑)。悔しいわ~!!」数か月の準備と収録ののち、さらに1~2か月かけてCGを駆使した編集や映像制作を行い、ようやく完成。広いスタジオにタレントは尾形さんただひとり。「数学にとりつかれた数学者の切ない物語にも注目を」『笑わない数学 シーズン2』シーズン1は、「斬新な教養バラエティ番組」と評価され、ギャラクシー賞テレビ部門の2022年9月度月間賞に選出された。NHK総合毎週水曜23:00~放送中。NHK Eテレで毎週土曜21:30~、毎週火曜24:55~再放送。放送後1週間は、NHKプラスで見逃し配信も。おがた・たかひろ1977年4月27日生まれ、宮城県出身。2008年、お笑いトリオ・パンサーを結成。決め台詞は「サンキュー!」。『デカ盛りハンター』(テレビ東京系)に出演中。※『anan』2023年11月1日号より。写真・土佐麻理子インタビュー、文・小泉咲子(by anan編集部)
2023年10月31日同期の仲良し芸人3人がシェアハウスで暮らし、日常的な小ボケやツッコミをTikTokで配信したら、SNSでバズった「板橋ハウス」。そんな彼らも、一緒に暮らしてもうすぐ3年目に突入。衣食住を共にしてきた3人に、シェアライフの楽しさを聞いてきました。共同生活をシェアTikTokフォロワー数64万人、YouTubeチャンネル登録者数58万人以上の「板橋ハウス」は、それぞれ違う相方とコンビを組む吉本芸人の吉野裕介さん、竹内智也さん、住岡遼太さんによる動画コンテンツ。シェアハウスに住む3人が普段の生活でふざけている動画を何気なくSNSにアップしたら、予想を超えた人気コンテンツに!左からお掃除リーダー・竹内智也さん、部屋の汚さNo.1!?・住岡遼太さん、どこでも寝られる・吉野裕介さん。――吉野さん、竹内さん、住岡さんは、3人でルームシェアを始めて約3年になりますが、そもそもなぜ一緒に住むことに?竹内智也(以下、竹内):最初は僕と吉野で話してたんです。ライブ終わりに、吉野がバイクで僕の家まで送ってくれて、その時に「最近、お笑いがあんまりできてない」「ルームシェアしてる芸人は、家でもお笑いしてるから強い」「もっと頑張りたい」みたいな話をずっとしていて。吉野裕介(以下、吉野):家の前で3時間くらい喋ったよね。竹内:そう。ただ、その時は一緒に住もうみたいな話にはならずに解散したんです。でも、僕はやっぱりルームシェアしたいって気持ちがすごくあって…。だから思い切って誘ったんです。住岡を。――あれ?吉野さんではなく?吉野:そう思いますよね。竹内は3時間アツく語った僕じゃなくて、住岡を誘ったんです。竹内:吉野は一緒に住めるタイプじゃないと思ったので。吉野・住岡:あはは!竹内:吉野は当時、胸ぐらを掴むみたいな荒いボケが多かったので、一緒に住んだら胸ぐら掴まれるかも。ちょっと怖いかなと。住岡遼太(以下、住岡):その点、僕は胸ぐらを掴まないので(笑)。とにかく僕と竹内で一緒に住もうということになったんですけど、芸人のルームシェアって、2人ではなく3人っていうパターンが多いんですよね。竹内:だから、ほかにも誰か誘おうという話になって。住岡:実は僕と吉野は、ここでルームシェアをする前にも、何人かの芸人仲間と一緒に住んでいたことがあったので、また吉野に声をかけようかなと思ったら…。吉野:僕と竹内が奇跡的にそんな話をしていたという(笑)。――3人はNSC(吉本総合芸能学院)東京の同期なんですよね。もともと仲は良かったんですか?竹内:3人が、というより同期が全員、仲が良かったんです。僕は吉野と住岡がルームシェアしていた家にもよく行ってましたし。吉野:けっこう珍しいほど仲良かったよね。同期の誰とルームシェアしても不思議じゃないくらいに。竹内:この3人だったのは、たまたまタイミングが合ったからかも。吉野:最初はそうだったかもね。――部屋を探す時は、どんな条件を重視していたのでしょう。竹内:吉野のバイト先が赤羽で、そこをどうしても辞めたくないと言うので、赤羽の近くということになりました。吉野はバイト先が大好きすぎたんだよね。吉野:いや、どちらかというとバイト先が僕のことを大好きだったんです(笑)。男子大学生が15人いたんですけど、みんな僕のことを好きだから、辞められなくて。住岡:あとは個室が3部屋あることも希望で。でも、なかなか…。吉野:家賃のことも考えると、難しかったよね。最初、不動産屋の人も条件を聞いて「ないですね~」みたいな感じで諦め半分だったんです。でも、いや待てよと。1件だけあるっていうのでこの物件に連れてこられたら、リビングが1部屋としてカウントされていて。「じゃあ僕がリビングを使います」って言ったらその人、「いいんですか!?」って驚いてました。自分で連れてきておいて(笑)。――じゃんけんで負けてリビングになったとかそういうことでなく、自ら進んで選んだんですね!吉野:そうです。部屋割りを決める時、ひと揉めもなかったです。僕はどこでも寝られるし、プライバシーとか気にならないので。竹内:逞しいっすね。ワイルド!吉野:風呂を出たらすぐにリビングだから、僕が寝ていると、二人が体を拭いている水しぶきが飛んでくる!でも、寝てます。住岡・竹内:わははははは!よしの・ゆうすけ1994年2月3日生まれ、福岡県出身。お笑いコンビ「めぞん」のボケ担当。「板橋ハウス」の動画ではお題を考えることが多い。すみおか・りょうた1993年6月22日生まれ、大阪府出身。「つるまる」の名前で、お笑いコンビ「軟水」のツッコミを担当。愛称は「すみ」。マンガ好き。たけうち・ともや1995年1月6日生まれ、愛知県出身。お笑いコンビ「ピュート」のツッコミ担当。美容&健康オタクで常に様々なグッズを試している。※『anan』2023年10月18日号より。写真・内山めぐみ(by anan編集部)
2023年10月14日「オールナイトニッポン」シリーズで8年以上、パーソナリティを務めている三四郎さん。ラジオを愛するお二人に、長~くリスナーとの関係性を築き続ける言葉の秘訣を伺いました。左・相田周二さん、右・小宮浩信さん。――『三四郎のオールナイトニッポン0(ZERO)』『三四郎のオールナイトニッポン』と、2015年よりシリーズ通算8年以上、パーソナリティを務めている三四郎さん。小宮浩信さんと相田周二さんにとって、この番組はどのような存在ですか?小宮浩信(以下、小宮):今は二人で飲みに行く機会が少なくなったし、僕らはYouTubeとかもやっていないので、ラジオはお互いの近況やプライベートを知れる場所。学生時代の休み時間に戻ったような感覚です。相田周二(以下、相田):飲みに行っちゃうと、ここで話すことがなくなっちゃいますから(笑)。ほぼ毎日仕事で会っていますが、一人暮らしをするとか、車を買うなどの報告はラジオで。まあ、僕らのホームですよね。――当初、8年も続くと思っていましたか?相田:1年で終わると思っていました。それが2年目もいきますってなって、もう1年できるんだ!って。その後も3年、4年と続いて。今度は、逆に長く続けなくちゃいけないなって思いますね。――それだけ愛されているってことですね。長く聴いてくれているリスナーについては、どのように思われていますか?小宮:テレビにゲストで呼ばれても、あまり自分たちのことは時間を割いて喋れないんですけど、ラジオだと長尺で好きな話ができる。しかも生放送だから、オンタイムでリアクションメールが届くので、新鮮な感想を聞けて面白いですね。例えば「5年前も同じ話してたよ」なんてツッコミのメールが来たりも(笑)。ああ、昔から聴いてくれているし覚えてくれているんだな、って嬉しくなります。相田:テレビって、別に僕ら目当てで見ている人ばかりではない。でもラジオは、僕らの話を聞きたい人しかいないですから。小宮:「テレビ見てます」って言われるよりも「ラジオ聴いてます」って言われた方が嬉しいし、何か特別な発表がある時は、一番にラジオで喋りたいんです。――様々なお仕事をされている中で、ラジオで話すことならではの面白さを教えてください。小宮:テレビと違うのは、疲れてるとか眠いことも赤裸々に伝えられるところ。テレビよりもゆるいトーンで話すことができるイメージはあります。あとは予定調和ではなく、生放送ならではの流れに任せたりすることも。まあこれは、ラジオというよりは、生放送の面白さでもあります。そして流れに任せた結果、よくない方向に行くこともありますけど(笑)。そうやって、悪いところもリスナーと一緒に共有していくのも面白い。相田:責任は僕たちが取らなくちゃいけないですけどね(笑)。でも、リスナーとの距離が近いのもいいところです。――深夜なのに聴き続けてしまうという、中毒性を感じています。フリートークのテーマなど、どのように決められているんですか?小宮:オープニングテーマは作家と相談しながら決めて、フリートークは個々に自分たちで。最近気になっていることや、この一週間のニュースについて喋る感じです。相田:作家との打ち合わせは全部で20分ぐらいじゃないですかね。流れをざっくり確認する程度。――リスナーにとって、生放送の利点はどんなことでしょうか。相田:ラジコやポッドキャストなんかでも聴けるようになったことで、ラジオがより身近になったのは嬉しいけど、3時まで起きていてくれて生で聴くのと、次の日に収録(radikoタイムフリー)を聴くのとでは鮮度や面白さが全然違う。例えば、小宮の結婚発表を聞き逃したリスナーは相当悔しかったと思います。まあ深夜なんで、仕方ないんですけど(笑)。――テレビと違って喋り方で意識していることや、これまでに勉強になったことありますか?小宮:テレビは画面を通して動きで伝えられますが、ラジオは声と言葉だけで表現しなければいけないのが大きな違い。ジェスチャーを封印して言葉で説明するようにとか、あと、例えば「女」ではなく「女性」と言うようにするなどの時代の変化もあります。間の取り方に関しては感覚で身についていて、無意識にやってるかも。相田:初めて聴く人のために、あるあるのネタでも一回おさらいするような、説明を入れるのも大事。小宮:勉強になったのは、先ほども流れに任せるという話をしましたが、フリートークはがっつり決めすぎないこと。その場に届いたリスナーのメールや遊びを入れると、面白くなりやすいんです。だから押さえるべきポイントだけ押さえて、一度流されてみるのも、生感が出ていい感じになります。――その辺はもうプロですね。小宮:昔、ダウンタウンの松本人志さんが「売れてない芸人は、古谷実の漫画で言葉を勉強しろ」って言っていたので読んでみたら、すごく面白い言葉選びをしていて。養成所時代に先生からも「言葉選びはボキャブラリーがすべて」と言われていたんですが、言葉や角度を変えて喋ると、同じ話でも断然面白くなったりするんですよね。だから古谷さんの漫画は、芸人としてすごく勉強になりました。相田:僕の場合は、好きなことについてテンション高く熱弁する方が面白くなるみたいで。「もうちょっと砕けて喋るといいかも」とか、作家に伝えてもらいながら、自分に向いている方法を考えたり意識したりはします。小宮:あと、喋りのテンポは、テレビよりは遅くなるかもしれませんね。ゆっくり喋れば、聞こえにくいこともありませんから。――小宮さんは以前、欠けた前歯がトレードマークで、滑舌の悪さをネタにしていましたが…。小宮:歯を治したのは、この番組を始めて2年目ぐらい。ここだけの話、前歯が欠けていることがビジュアル的に面白いと思っていたので、わざと治してなくて(笑)。でもラジオを始めて、トークが面白いと言ってもらえることが増えたんです。トークだけで面白いなら歯を入れてもいいだろうって思えたのも、この番組のおかげ。『三四郎のオールナイトニッポン0(ZERO)』2014 年の『オールナイトニッポンGOLD初笑いSP』にて優勝し、翌年から『オールナイトニッポン0(ZERO)』のパーソナリティに。以来『オールナイトニッポン』含め、オールナイトニッポンシリーズで8年以上、パーソナリティを務めている。現在は、毎週金曜深夜3時~5時、ニッポン放送で生放送中。さんしろう中学時代からの同級生で2005年に結成したお笑いコンビ。小宮浩信(こみや・ひろのぶ)1983年9月3日生まれ、東京都出身。ツッコミ(またはボケ)、ネタづくり担当。相田周二(あいだ・しゅうじ)1983年5月2日生まれ、東京都出身。ボケ(またはツッコミ)。『有吉の壁』(日テレ系)ほか出演中。※『anan』2023年10月11日号より。写真・内田紘倫取材、文・若山あや(by anan編集部)
2023年10月05日迷彩服と“はい~”という口ぐせ、そしてチャーミングでピュアなキャラクターで愛されるやす子さん。ここまでの歩みから芸名のことなどを教えてくれました。この日、撮影場所の公園へ向かう途中、すれ違う人たちから「やす子~!」と声をかけられたり、手を振られるやす子さん。そのすべてに「ありがとうございます~」と丁寧に応え、一緒に写真を撮ってほしそうにしている小学生の男の子には自ら声をかけに行く姿に人柄の良さが滲み出て、お茶の間に愛される理由が伝わってくる。――2023年上半期ブレイク芸人ランキング1位を獲得するなど大人気です。ありがたいです。でも怖いです。昨年4位だったので嬉しいですが、今年初めのテレビ番組のネクストブレイク芸人ランキングでは3位だったのでどういうこと~!?ブレイク芸人だったはずなのに~!?って。ずっとループし続けて、来年はネクストブレイクに入っている可能性があります。とにかく今の仕事を継続できるように頑張ろうという感じです。はい~。――ここまで愛されている理由は何だと思いますか?えぇ~、わからないです。何を求めているんだ~。だけど、一般的な職業よりはお金を多くもらうので、なんだろう、人としては良くならないといけないなとは思いますし、感謝を忘れたら終わりだなって。もし私が、「おい、水買ってこい!」「炭酸にしろよ~」とか言い出したら止めてください。――絶対にそうはならないお人柄だと思います。忙しい日々の中で体や気持ちは疲れていませんか。22時~朝4時までのロケが月に4~5回入ることがあって、それが続くと大変だったりします。マネージャーさんの口癖も「はい~」なので、なんでも受けちゃうんです。「はい~、はい~」って。でも、きっと今売れている方はみんな、この道を通ってきていると思うし、自分の場合は来年何もなくなっている可能性があるので、一つ一つ大事に頑張りたいです。――疲れた時のリフレッシュ法や元気を出す方法はありますか?ひと月のうち20日くらいはコンビニの夜ごはんを食べるんですけど、そこで牛乳プリンを買うことが今の幸せです。家では何もしてないですね。帰ってバーン!と寝て、バーン!と起きて、仕事~!っていう。なんのためにお金を稼いでいるのかわかりません。洗濯物がどんどん溜まっていくばかりです。でも、皆さんの方がずっと忙しいと思います。人生の全部において断り方がわからないんです。――やす子さんは、友だちに誘われて芸人になられたそうですね。はい~。自衛隊を辞めた後、中学校の用務員さんをしていた20歳の時に、友だちに「漫才をしたいんだよね」と言われて。自己主張をしない子だったのでびっくりしました。ずっと家にテレビがなく、自衛隊時代もまったくメディアを見ていなくて何も知らなかったから「いいよ」と言えちゃったところがあります。今、あの時に戻れたら絶対に断ります。無理無理無理無理って。その後、友だちがいろんな事務所に履歴書を送って今の事務所のソニー・ミュージックアーティスツに入りました。当時はお笑い部門には年齢制限がなく、文字が書けたら誰でも入れて、芸人の墓場と呼ばれていたんです。アキラ100%さんやハリウッドザコシショウさん、バイきんぐさんとか本当にハゲと裸しかいなくて。友だちはそれが嫌だったみたいで、初めてのライブに来ず、ピン芸人でやることになりました。本名は安井かのんというんですけど、芸人として舞台に出るのはこれが最初で最後、この舞台に出たことは誰にも知られたくないと思って、やす子という名前をつけて。はい~。だから今もピン芸人としての名前を考えています。――では、今は、やす子(仮)なんですか?変えるチャンスを逃してここまで来ちゃいました。はい~。――ネタをやらずに帰る選択はしなかったんですね。ライブが始まる前にスタッフの方が“暗転板付き”とか用語を教えてくれたりと、どんどん場が進んでいって、順番にやらないといけない空気があって。自衛隊にいたから、上官の命令は絶対じゃないですか。だから断り方がわからないんです。人生における全部においてそうで、マッサージの力が強くて首が取れちゃいそうだと思っても「大丈夫です」と言ったり、エアコンが強いなと思っても言えなかったりするんです。最初のライブは多分、1分くらいで終わったと思います。もともと音楽をするための場所だったので、私の声もお客さんの笑い声も吸収されて、本当に真っ黒の虚無に向かってしゃべっている感じでした。――その後も続けたのですね。初めて舞台に出た後、“さぁ、かーえろ!”と思っていたら作家さんのアドバイスを聞かないといけなくて。さらに「来月はこの日だから」と、ライブのスケジュールと手売りしなければいけないチケットを渡されて、上官の命令は絶対なので断れなくて。あと、毎週水曜日にネタ見せがあり、そこで芸人の知り合いができたことも大きいです。でも、「辞めたい」が言えなかったことが一番です。――今、お仕事は楽しいですか?5年目になるんですけど、こんなに長く続いたものが人生において初めてなので、もしかしたら自分の中ではやりやすいのかなと思います。学校とかで話しかけられるタイプじゃなかったんですけど、平場(ネタ以外の部分、トークやロケなどのこと)の時は、ビジネスですけど話しかけてもらえるので嬉しいです。“やす子”は自分のなりたい人間なので、お仕事でそんな自分になってケラケラ話すのは、めっちゃ楽しいです。やすこ1998年9月2日生まれ、山口県出身。2019年から芸人としての活動を開始。’21年にブレイク芸人の登竜門である『ぐるナイおもしろ荘』に出演。以後、多くのバラエティ番組やCMに引っ張りだこ。宇部ふるさと大使を務めている。今年7月には「はじめてのきょく」「なんもないアンモナイト」など配信限定シングルをリリースして話題に。※『anan』2023年10月4日号より。写真・吉松伸太郎インタビュー、文・重信 綾(by anan編集部)
2023年09月30日読書家であり、これまでに数々のSF小説を読んできたというティモンディの前田裕太さん。世界中で一大ムーブメントを起こし、Netflixでの実写化も話題の『三体』をはじめとするSF小説の魅力を語ってくれました。理論に基づいた現実にありそうな物語が好き。――最初に触れたSF作品は何でしたか?筒井康隆先生の『時をかける少女』です。先にアニメを見ていたのですが、僕が好きな『現代語裏辞典』を書いている人が原作者なんだと知り、興味が湧いて読みました。すると、科学的な裏付けや人間ドラマが熱く描かれていて楽しくて。それが高校3年生くらいの時でした。――前田さんが思うSF作品の魅力とはどんなものでしょうか。幼少期には『ハリー・ポッター』や『バーティミアス』などファンタジー作品を読んでいたんですけど、SF作品は、“F=フィクション”に“S=サイエンス”がついているように、理論や理屈があって作られた“本当にあるかもしれない”と思わせてくれるストーリーが面白いです。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の世界が近づいてきた時に似たワクワク感があるというか。しかも、毎年、さまざまなSF作品が発表されますから、“ようやくあの作品の世界に現実が近づいてきた”と思っていた矢先に、さらに想像を超えた新しいアイデアで描かれた作品が登場するから、結局、いつまでも追いつけない。追いかけても手に入らない好きな人、みたいな魅力もあります(笑)。――近年、中国の作家・劉慈欣の手がけた『三体』シリーズが、世界で大きな話題になっています。バラク・オバマ元米大統領がスピーチで『三体』の話をしているのを聞いて読んでみたら、とんでもなかったです。まさに、出合えて嬉しい作品ですね。『三体』は3部作で、1部が『三体』、2部が『三体II 黒暗森林』、3部が『三体III 死神永生』となっています。それぞれに異なるSFのいいところがグッと色濃く出ていて。1部は歴史を絡めた少し難解な部分があり、2部と3部に関しては、SF要素と、激しいバトルシーンが登場するなどエンターテインメント性が増していきます。1部を読んだ後に、これを超える作品はあるのだろうかと思っていたら、2部で軽く超え、さらに3部でも超えていったので恐ろしいなと思いました。3部の途中からうれションが止まらなくなり(笑)、読み終わった後は30分くらい放心状態になって現実に戻ってこられませんでした。人間の脳みそが、ここまで面白くて楽しいものを考えつくんだなと。想像を裏切るとかではなく、誰も想像のつかない展開が繰り広げられる。つまり、全読者が1000%裏切られるし、リアリティゆえのゾッとする感じも体験できる。エンターテインメント性の高いSF作品の中でもトップクラスに面白いです。世界中のファンたちがこぞって二次創作をしていますが、作品の余白の部分を自分なりに想像して楽しめる、“はかどる”作品でもあると思います。二次創作が熱いというのは、元の作品が最高だという証拠でもありますから。『三体』の出版社が、二次創作作品の中から「これは公式と言っていい」というものにお墨付きを与え、『三体X 観想之宙』として出版しているのも面白いです。――日本でここまで人気になった理由は何だと考えますか?作者の劉慈欣先生は、検閲のために日本の作品を読むことが難しかった時代が終わったタイミングで、小松左京先生の『日本沈没』や、星新一先生の作品に触れ、日本にこんなに面白い作品があるんだと思ったそうで。『三体』の源流を辿ると、日本のSF作品にインスピレーションを受けた部分があることは間違いないとも公言しています。だから日本人は、『三体』で描かれているものに馴染みがないわけではなく、作中で起こる突飛な出来事に対しても、“意味がわからない”で終わらない何かがあると思います。日本のSF黄金世代の源流を濃縮し、劉慈欣先生の味付けをした、エンターテインメントの原液みたいなものが『三体』ではないでしょうか。――内容や言葉が難解で、途中で止まっているという人も少なくありません。前田さんはどのようにして読んでいったのでしょう?結構、いろいろな部分を読み飛ばしながら読みましたね。科学的な部分は本当に何を言っているかわからないところも多く、最初は理解しようと頑張って調べたりもしましたが、個人的には“調べたとて…”くらいだったんです。何度も繰り返し読んでいますが、ちゃんと理解している理論は2割くらいしかないし、それでもめちゃくちゃ楽しめます。難解な部分は、物語の展開に根拠や裏付けがあるよ、適当なことを言っているわけじゃないよ、と伝える時間だと考えています。思っているよりも適当に読んでいいと思いますよ。翻訳をしている大森望先生ですら、「読み飛ばしてますよ」と言っていますから(笑)。登場人物たちの名前も難しいと感じるかもしれませんが、極論を言うと、物語が壮大すぎて一回しか名前の出てこない人もたくさんいます。そういう人は“誰だっけ?”のままでよく、“よく出てくるな”という人だけ覚えておけばいいのかなと。本に主要人物の名前が書かれた小さな冊子が付いているので、気になった人がいたらそれを見れば大丈夫。“地球の歴史で考えたら一人一人の名前なんて覚えられない”くらいの気持ちでいてください(笑)。――ついに実写化もされます。こんな面白い発想や壮大な世界が実写映像化できるのか、どのように描くんだろうか、と思いました。世界中に多くのファンがいるということはプレッシャーもすごいでしょうし、制作側の腕も試されるでしょうし。でも、SF小説を実写化した作品を見ると、本では難解で不明瞭だった描写が、映像で見るとすぐにわかることも多くて。たとえば、「重力に耐えるために接合部分がどうのこうの~」みたいな表現が、映像では部品を映して終わりとか。『三体』も、小説では“わかる人にはわかる”だった部分を、視覚表現によってみんなが理解できるものにしてくれそうだという期待があります。100%、楽しみです!『三体』アジア初のヒューゴー賞受賞作。文化革命で父を亡くし、人類に絶望した女性科学者の葉文潔は、宇宙に向けて電波を発信、それが惑星「三体」の異星人に届く。すると彼らは地球への侵略活動を開始、とんでもない災厄に襲われることになる。『三体II 黒暗森林』『三体III 死神永生』と続く3部作。実写版がNetflixで来年1月から配信予定。劉慈欣 著立原透耶 監修大森望、光吉さくら、ワン・チャイ 訳早川書房まえだ・ゆうた1992年8月25日生まれ、神奈川県出身。芸人。『ハレバレティモンディ』(札幌テレビ)、『天才てれびくん』(NHK Eテレ)、ラジオ『ティモンディの決起集会』(FM愛媛)などにレギュラー出演中。エッセイの連載も。※『anan』2023年8月30日号より。写真・小笠原真紀取材、文・重信 綾(by anan編集部)
2023年08月27日今年1月にスタートして以来、あっという間にお茶の間に浸透した生放送バラエティ『ぽかぽか』。毎日見たくなる、楽しさの秘密を探ります。毎週月~金曜日のお昼に放送されているバラエティ番組『ぽかぽか』が、いま面白いと話題に!MCをつとめるのは、お笑いコンビ・ハライチとフリーアナウンサーの神田愛花さん。楽しくも、時に鋭い切れ味や奇想天外な展開を見せるトークや、シンプルながら攻めている他では見られないコーナー企画。そして、生放送ならではのハプニングなど、見る者を楽しませるエッセンスが、約2時間の中にギュギュッと詰め込まれている。“お昼だから『ぽかぽか』を見よう”と多くの人がテレビをつけるこの番組の魅力を、潜入ルポやディレクターのインタビューを交えながら紹介します!気になる現場をルポ。『ぽかぽか』の生放送に潜入!生放送中の『ぽかぽか』の会場に突撃取材を敢行。最初から最後まで笑いがあふれる現場の様子をお届け!潜入したのは金曜日の放送回。フジテレビ7階の「ぽかぽかパーク」には多くの観覧者が集まり、放送が始まる前からスタッフの方がみなさんを盛り上げ、温かいムードを作っている。そして11時50分、チャラン・ポ・ランタンが歌うオープニングテーマが流れると、MCであるハライチの岩井勇気さんと澤部佑さん、神田愛花さんが登場!会場は賑やかな雰囲気に。さらに金曜日のレギュラーメンバーであるアンジャッシュの児嶋一哉さん、犬飼貴丈さんも出てきて、軽妙なトークが繰り広げられた。まずは、「ぽいぽいトーク」からスタート。この日のゲストは船越英一郎さんで、「ドラマの現場で怖い経験したことあるっぽい」「日本一崖を知ってるっぽい」など、サスペンスドラマの帝王らしいイメージが続出。完成度の高い船越さんのトークに対して、岩井さんが「こすりたおした話っぽい」とフリップを出し爆笑をさらう場面も。そして、「パパvsパパ麻雀牌手積みサドンデス」では想定外の事件が発生…!パパ同士が欲しいものを懸けて麻雀牌を手積みするこのゲーム。どちらのパパも譲らない息をのむ攻防戦が繰り広げられ、会場が妙な緊張感と高揚感に包まれることに。戦いが長引いた結果、その後の進行が駆け足になるものの、これも生放送ならではの楽しい展開の一つ。最後のコーナーは、文化服装学院の学生が“神田さんに着てほしい服”をテーマに衣装を作る「神田さん、来週着てください!」。リボンのついた「真実の口」のようなセットに入り、ハイレベルな作品に迷いながらジャッジをくだす神田さんはなんともキュートだった。そして約2時間の放送が、あっという間に終了。印象に残ったのは、ハライチのお二人と神田さんが、テレビに映っていない瞬間も会場内外の観覧者に声をかけたり、手を振ったりと盛り上げていたところ。また、出演者のサインを懸けたじゃんけん大会が行われるなど、観覧者を巻き込みながら一緒にいい番組を作ろうとする姿にも胸が熱くなる。『ぽかぽか』が人気なのは、面白いことはもちろん、会場のいいムードがテレビ越しに伝わっていることも大きな要因だと感じられた。ユニークで楽しい!コーナーの一部を紹介「ぽいぽいトーク」ゲストのイメージの真偽やいかに。日替わりゲストが登場してMCとのトークを繰り広げる全曜日共通企画。ゲストに「っぽい」という勝手なイメージを投げかけ、正誤を教えてもらいながら人柄を掘り下げる。岩井さんと神田さんのフリップ芸も見どころの一つ。「目指せ300g牛肉ぴったんこチャレンジ」景気がよくて楽しい肉塊カット。約2kgのお肉の塊に包丁を入れ、300gに切り分けることを目指す。ぴったりなら2kg全部、誤差±10g以内であればカットしたお肉を持ち帰ることができる。成功したら大盛り上がり、失敗しても笑いが生まれる斬新で平和なコーナー。『ぽかぽか』ディレクター・鈴木善貴さんを直撃!――お昼の生放送、しかも帯番組のディレクションを担当することは大変そうですがいかがですか?他の番組もですが“やってみないとわからない”というところがありまして。僕自身が楽観主義なこともあり、悲観的な気持ちも危機感もなく、会社員だしやるしかないな、と(笑)。僕が提案したことを実現するスタッフが大変です。――トークから始まる一連の構成は、どのように決めたのですか?最初は3時間放送で。12~13時、13~14時、14~15時の3つに分けて企画を考えていました。各時間帯の視聴者層は、それぞれ少しずつ違う気がしたんです。最初の1時間はランチを食べながらしっかり見る方が多そうだから、後ろにいくにつれて、より深く考えずに見られるものにしよう、とか。最初と後ろの1時間の企画を何となく僕が考え、間の1時間の企画を各曜日のディレクターに考えてもらいました。最初にゲストを迎えるトークコーナーを設けたのは、逃げじゃないですけど、1週間、毎日やって飽きられない企画は、これしかないと思ったからです。ゲストが変わると新鮮味が生まれるし、MCの3人がうまくやってくださるので、僕はあまり汗をかいてません(笑)。――『ぽかぽか』といえばユニークなコーナーが大きな魅力です。企画を考える時に大事にしていることや軸はあるのでしょうか。まずは、お昼の番組をかじりついて見る人は少ないので、他のことをしながらの流し見でも理解できるように、複雑な内容にしないながらも、普通の企画一辺倒にはならないよう、スパイシーさを入れることは大事にしています。あと、シンプルな構造の中で自由に遊ぶという、ハライチの漫才構造というか、岩井くんのお笑い理論にちょっとだけ寄せている部分はあるかもしれません。岩井くんがノって笑うと会場に一体感が生まれますしね。そのために、どこかにカタルシス、ベタな言葉でいうと作り手の熱を入れてほしいと伝えています。想いを持ってやっている企画は視聴者にも届いている気がするので。――生放送の様子を見ましたが、MCの3人には一切の隙がなく、感動しました。神田さんは、人とは違う、いい意味で偏った視点から見るスキルが素晴らしいです。ハライチの二人は本当にテレビ慣れをしていて。編集しなくても編集したかのような会話のラリーが本当に見事です。澤部くんはテレビが大好きで、ダウンタウンさんやとんねるずさん、明石家さんまさんなどを見てきて、“こう振る舞えばいい”ということが頭に入っているんでしょうね。そこに岩井くんの毒が入り、心地のいい関東風の番組になっているのかなと思っています。――一般の方が登場する企画も多いです。それも、必ずやりましょうとスタッフと話していたことの一つです。『(笑って)いいとも!』イズムであったり、僕は『アウト×デラックス』を担当していましたが、面白い一般の方が好きだということも影響しているんですけど。生放送特有の“何が起こるかわからない”部分を生み出すには、一般の方に出ていただくのが早い方法ということが大きいです。『あっぱれさんま大先生』が僕の根底にあるのですが、想像を超える子どもの発言のような、台本に書けない笑いが大好きで。それは、『ぽかぽか』を作る時にも大事にしています。生放送に関していうと、失敗やハプニングはすべて面白い、おいしいことになると考えています。たとえシーンとなったとしても、後で「あれは何だったんですか?」と言って笑いになったりもしますから。神田さんも言っていますが、ドキュメントとして見てもらえたらいいなと思います。ディレクター・すずきよしたか1980年生まれ。総合演出を担当。『笑っていいとも!』『ホンマでっか!?TV』『さんまのお笑い向上委員会』『アウト×デラックス』などに携わる。『ぽかぽか』毎週月~金曜11:50~13:50、フジテレビ系で放送。1週間分の放送回をTVerで見逃し配信。※『anan』2023年8月30日号より。写真・内山めぐみ取材、文・重信 綾(by anan編集部)
2023年08月26日“ナナナナ~”でおなじみのジョイマンが今年、コンビ結成20周年を迎えました。国民的ラップネタの誕生に低迷期からの復活、今の円熟した関係性までを語ってくれました。独特のリズムと、「ありがとうオリゴ糖」をはじめとする韻を踏むラップネタで大人気となり、老若男女から愛されているジョイマン。お二人は現在、コンビ結成20周年を記念したサイン会ツアー真っ最中。――東京でのサイン会を終えられたばかりですが、いかがでしたか。池谷和志:青森など遠方から来てくれた方もいれば、ジョイマンが好きなおばあちゃんのために来たという方もいて。高木が「ムーミン永眠」とラップを添えていて、よくないなと思いましたけど。高木晋哉:反面教師というか長生きしてほしいという意味を込めました。池谷:サインに書いたラップは声に出して発表するので、並んでいる方にも楽しんでもらえたはず。高木:高校の時の担任の先生が来てくれたりとドラマもありました。次は47都道府県を回りたいです。――2014年には、ファンが一人も来ない“サイン会0人事件”もありました。高木:ちょうど仕事がなくなっていく最中の出来事だったので、芸能界の底はここなんだと。逆に、地に足がついたというか、這い上がる覚悟をする転機になりました。池谷:僕から解散話をしたことも。でも、だんだん笑けてきてね。高木:エレカシ(エレファントカシマシ)さんの「悲しみの果て」じゃないけど、涙の後には笑いがある。エレカシはジョイマンだよ。池谷:最近、その話、気に入ってるよね(笑)。高木さんがツイッターに会場の写真を上げたのも、底まできたからなんだよね。高木:営業が減る可能性があるので普通は隠すんですけど。自分の中で抱えきれなくて、誰かに言わないとダメだと思って、世間に発表することにしました。池谷:でも、かわいそうだと思った人から仕事が来るようになったんです。0人の話をするためにテレビに出たりとか。一時期、最高月収と最低月収だけを言って帰る、みたいなことも多かったです。高木:だから、ツイッターで恥ずかしい部分を発信してよかったなと思いました。それまではプライドもあり、カッコつけてたので。池谷:恥ずかしいことを言って笑ってもらえる職業なんだとあらためてわかった瞬間でしたね。でも最近、高木さんの発信に哀愁が足りない気がしていて。ファンの方はもっと、切ない高木さんを求めていると思うよ。“あ、今幸せなんだな”とバレてるはず。フォロワーが減っちゃうかもよ?高木:幸せってバレちゃいけないんですか(笑)。どんな地球だよ、どんな惑星だよ…。――(笑)。大変だった時に解散を踏みとどまったのはなぜですか。池谷:2011年くらいだったか、仕事がない時に高木が結婚して子どもが生まれて。僕からコンビを組むことを誘ったし、高木は自分から解散しようと言えないタイプなので、もう辞めない?と言ったんです。絶対にしんどいはずだから。すると、「解散するなら、その理由はお金じゃなくない?」と言ったので、こいつ、すごいなと。嬉しかったし、それ以降、解散のことを言うのはやめました。高木:まず、芸人自体、稼げると思ってやっていないんですよ。ネタがウケないとか、心が折れて続けられないという理由ならわかるけど、まだ何かできるんじゃないかという気持ちがあったんです。――ジョイマンさんといえば韻を踏むラップネタが有名ですが、どのように誕生したのでしょうか。高木:コンビを組んだ当時は『M‐1グランプリ』の影響もあって正統派漫才をやっていたんですけど芽が出ず。何年かして急に、漫才の中にギャグみたいなものをポンと入れたんです。僕が何か言われて怒り出した後に「トゥントゥントゥ~ン」っていう…(立ち上がり、動きを見せようとする)。池谷:雑誌じゃわからないから!高木:で、池谷が「なんだそれ!」とツッコむという流れがあり、そこだけがウケて。そこから「山田優~セクシ~山田なのにセクシ~山田優~契約~CM契約2、3本~2、3本~イ・ビョンホン~ペ・ヨンジュンペルー人~ペルー人~ウォンビンビール瓶~クリントン20トン!」と一気にできたんです。――すごいです!池谷:『おもしろ荘』というテレビ番組のオーディションの時に、ディレクターさんに言われてコントにしたんです。その時にすぐ会議室に入り、2~3時間後には「ヒウィゴーカモン」と高木が現れる流れができました。高木:そのまま10何年やっています。でも、最初は「ナナナナ~」じゃなくて「ララララ~」だったんです。でも、世の中に「ラ」のつくものが少ないことに気づいて。池谷:“やっていくなら、「ナ」だ!”とその時に背負ったんだね。高木:あとはジャンプ力も上がり、池谷の「なんだこいつ~!」というツッコミの声も大きくなるなど、変化や成長もあります。池谷:営業とか生の舞台になると、高木さんがテンパったり、高く跳ぼうとしてネタが飛んだりもして。高木:ジャンプの頂点の時にはネタがもういなくなってますから。池谷:でも、芸能界の底にいた時は、自分たちがネタに飽きていて、力を抜いたり、ラップを言わずにスカしたりもして。でも、レイザーラモンHGさんやムーディ勝山さんなど、“一発屋オールスターズ”の先輩たちに、もっと堂々とやったほうがいいとアドバイスをいただいて、ちゃんとやるようになったんです。高木:今は楽しくやってますね。――韻を踏む時の言葉選びで意識をしていることはありますか?高木:お客さん100人中、15人でも知らない人がいる言葉だと笑いが減るので、極力100%の人が知っている言葉を使います。正直、大変なのは言葉よりも体力で。ジョイマンはスポーツだと思うくらい疲れますから。池谷:サイン会の場合は5~6時間と長いので、スタミナ切れしてましたね。でも、それを超えるとラッパーズハイになり、覚醒して、本当に怖いくらい韻を踏みます(笑)。「追いラップ」までしたり。高木:でも、会話の中で「今、ジョイマンさんぽかった」と言ってくれる方もいて嬉しいですね。「ありがとうオリゴ糖」くらいの長さの単語が並ぶとジョイマンに見えてくる人は多いのかも。池谷:みんなの中に、ジョイマンがいるんです。高木:地上波のテレビだけなら、R-指定さんより韻踏んでるしね。コンビ結成20周年記念「ジョイマンの全国サイン会ツアー2023 ありがとう 日本列島」を、全国の蔦屋書店・TSUTAYAで開催中。これから大阪(8/18・19)、愛知(8/20)、広島(9/9)、福岡(9/10)、北海道(10/7)、神奈川(10/8・9)を巡る。オリジナルサイン色紙(¥2,200)を購入して参加を。Tシャツやフェイスタオルなどのグッズも販売。右・池谷和志(いけたに・かずゆき)1981年2月18日生まれ、神奈川県出身。左・高木晋哉(たかぎ・しんや)1980年8月18日生まれ、神奈川県出身。2003年結成。池谷さんがツッコミ、高木さんがボケを担当。今年「ジョイササイズ」を配信限定リリース。YouTube「ジョイマンチャンネルだけど 池谷のみ(飲み)時々、高木」を配信。※『anan』2023年8月16日‐23日合併号より。写真・内山めぐみインタビュー、文・重信 綾(by anan編集部)
2023年08月11日「安心してください、はいてますよ」の決めゼリフでおなじみ、全裸ネタで一躍有名になったピン芸人のとにかく明るい安村さん。イギリスのオーディション番組『ブリテンズ・ゴット・タレント(BGT)』で英語バージョンの裸芸を披露し、約3000人の観客を爆笑させて話題に。そんな異例の凱旋を果たした安村さんを直撃!――BGTでのパフォーマンスは、とにかく終始笑顔で、堂々と振る舞っているように見えましたが、あまり緊張しなかったですか?予選は、会場の雰囲気もイギリス人がどんな反応をしてくれるかも全く読めなかったので、さすがに緊張しました。でも準決勝や決勝は、予選で手ごたえを感じ、受け入れられた感触があったので、堂々と振る舞えた気がします。――最初にステージに立った時の率直な感想を教えてください。バスローブを着て、「ハロー、ロンドン!」とか言って大声ではしゃぎながらステージに立ち、パンツ一丁になったんですが、審査員も会場中の観客も誰も僕のことを知らない状態でネタを披露するのは久しぶりだったので、すごく興奮しました。英語も話せないし、まともにコミュニケーションもとれないから、通用するかどうか不安はありましたけど、まぁスベったらスベったでしょうがないし、どうとでもなれって感じでしたね。――映画『007』のジェームズ・ボンドの真似や、スパイス・ガールズの大ヒット曲「Wannabe」に合わせてノリノリでダンスするなど、イギリスらしさを意識したネタを披露。「ドントウォーリー、アイムウェアリング」の決めゼリフに対して、審査員や観客たちが「パーンツッ!」と叫ぶ、異例の待遇を受けましたが、この反応はうれしかったですか?最初は何が何なのかよく分からなかった(笑)。審査員のアマンダが「パーンツッ!」と言い出して、それがどんどん広がっていった感じで、準決勝の時には会場中が反応してくれて。3000人の歓声は凄まじくて、目の前で「パーンツッ!」と言われているような圧を感じましたね。でもステージ上では、なんでみんながそう叫んでいるかも分からず、イギリス人はテンション高いなぁぐらいにしか思っていなかったんです。だって日本で、「はいてますよ」と言った後にそんな反応されたことは一切なかったし…。それが実は「アイムウェアリング」は不完全な文章で、「ウェア」が他動詞なので、目的語が必要だということを日本に帰ってきてから知ったんです。全く予想していなかった反応だったけど、審査員や観客の人たちが「パーンツッ!」と叫ぶことでネタが完成したからこそ、あんなにウケたのかもしれませんね。――たしかにあのやり取りがあったから、会場の一体感がどんどん強まった感じがしますよね。でも紳士淑女の国というイメージがあるイギリスで、スタンディングオベーションが起こり、審査員のアリーシャからも「あなたはおそらく全シリーズの中でも、私の一番のお気に入りの出演者だわ」と称賛された。これほどまでにウケたのは想定の範囲内?いや、こんなにも笑いが起こるとは思っていなかった。イギリス人のノリの良さはもちろんあるけれど、こんなネタをするようなコメディアンはイギリスには存在しなかったから、文化の違いが相まって、その振り切った感じが良かったのかも。実は以前から「超新塾」のアイクぬわらと、アメリカで英語バージョンの裸芸を披露したらウケるかもしれないねって話はしていたんです。実際に、BGTのアメリカ版への出場も決まっていたのですが、コロナ禍でその話自体がなくなってしまって…。イギリスから帰ってきた後にアイクから、アメリカでは「パンツ」のことを「アンダーウェア」と言うから、アメリカだったら、これほどまでにウケなかったかもねと言われました。――いろんな奇跡が重なり、日本人初の決勝進出を決めました。“日本人初”という称号を手に入れたのは生まれて初めてなんで、率直にうれしかったですね。準決勝で敗れてワイルドカードで決勝に進めることになったんですが、準決勝で“おいしい負け方”をしていたから、もうそれで満足だったし。準決勝では上位3組まで残り、決勝に行けるのはそのうちの2組なんですが、僕のほかに、マジシャンの男の子とバレエダンサーの女の子が残っていて、視聴者投票で男の子がトップ通過した。そして残りの1枠を女の子と争うという展開になり、それを決めるのは審査員。もうこんなの絶対に女の子に軍配が上がるじゃんって思っていたら、案の定そうなった。僕はオーバーめに悔しがり、それもそれでウケて爪痕残せたから良かったぞ、と思っていたんです。その後、打ち上げで火鍋を食べていたら、マネージャーから決勝進出が決まったと連絡が来て、うれしい半面、決勝でやるネタないじゃん!って焦った(笑)。――不安をよそに、決勝では、スパイダーマン、バットマン、スーパーマンなどの“スーパーヒーローネイキッドポーズ”を中心に披露し、最後に、QUEENのフレディ・マーキュリーのポーズで会場中の爆笑をさらいましたね。決勝はアメコミ風のステージで、ダンサーもつけるということだったので、スーパーヒーローをテーマにしたんです。BGTのスタッフも協力的で、一緒にネタを考えてくれたおかげですね。その場で、現場の衣装チームがマントとかを作ってくれたんですが、スーパーマンの「S」を、僕の芸名の「TONIKAKU」の「T」にしてくれたりと超ノリノリで。あと、実は準決勝と決勝ではいたパンツには、ラインストーンがついているんです。あれも衣装チームからの提案で、パンツをそんなキラキラさせて卑猥にならないか!?と心配だったんですけど…。――パンツは自前ですよね?はい。僕がはいているパンツって、大事な部分が見えてしまわないように、実は前側が生地多めなんです。裸芸をやり始めた頃は、市販のパンツを前後逆にはいていましたが、今は特注で作ってもらっています。だから衣装チームにパンツを渡した時も、みんな普通のパンツだと思っているから、生地が少ない方にラインストーンをつけようとしていて、「違う違う、逆」って教えてあげて。そのパンツはその後出番がなく、家に眠っていますが、でも現場の方が面白おかしく僕を調理してくれたので、優勝はできなかったけれど、決勝で満足できるネタを披露することができた。決勝が終わって翌日空港で現地の人に声をかけられた時に、すごいことをしたんだなって、やっと実感が湧いてきました。芸人たちがお題に沿った芸を披露する『有吉の壁』(日本テレビ系、毎週水曜19:00~)に出演中。7月より放送が始まった「Singing おしゃべり歌謡喫茶『うたフレ』」(BSよしもと、毎週土曜19:00~)レギュラー。“歌手と友だちに!”“歌手を身近な存在に!”をコンセプトに、ゲスト歌手とフレンドリーにおしゃべりをするトークバラエティのMCを務める。とにかくあかるいやすむら1982年3月15日生まれ、北海道出身。2014年、ピン芸人として活動開始。「全裸に見えるポーズ」の持ちネタを披露し、’15年『R‐1ぐらんぷり』で決勝進出。『有吉の壁』(日本テレビ系)など、数々のバラエティ番組で活躍。今年6月『ブリテンズ・ゴット・タレント』決勝進出で、再ブレイクを果たす。※『anan』2023年8月9日号より。写真・小笠原真紀ヘア&メイク・天野誠吾インタビュー、文・鈴木恵美(by anan編集部)
2023年08月05日体重189kgの着ぐるみ級ボディがなんとも愛らしいボケの大鶴肥満さんと、神戸大卒の頭脳を生かした語彙力が光るツッコミの檜原洋平さん。大喜利ライブで出会いコンビを結成した二人は、キングオブコントやM‐1グランプリで準決勝まで勝ち進むなど、芸人として着実に成長中。看板フレーズである「まーごめ」を引っ提げてお茶の間にジワジワと進出しているママタルトの、規格外にBIGな可能性とその魅力の源に迫ります。総体重、約270kg。太くて重たい漫才コンビ。――お二人はもともと別々のコンビだったそうですね。檜原洋平:僕が前のコンビを解散した時に、芸人のZAZYから「次はめっちゃ太ってるとか、特徴のある人と組んだ方がええで」と言われたんです。その翌日に出た大喜利ライブに、大鶴肥満がいて。“ZAZYの導きや!”と思って、「俺が君を王様にするから一緒に組もう!」と熱弁を奮って誘いました。大鶴肥満:その当時、別の相方とコンビを組んでいたんですが、解散を考えてた時期で。――一緒に王を目指すのではなく、「王様にしてあげる」というスタンスだったんですね。檜原:その頃『ONE PIECE』にハマってたんです。海賊王を目指してたエースっていうキャラクターが「俺は自分よりも王になってほしい人に出会ったんだ」と言って海賊の部下になったシーンに感動してた時期なので、「俺なら大鶴くんの体を生かしたボケをもっと考えられるぞ」と押し切りました。――ネタ作りは檜原さん担当?肥満:僕は基本的に“自分がやりたいお笑いよりも、相方のやりたいお笑いの方が強ければそっちで行こう”というスタンス。ひわちゃんの場合は大喜利力に圧倒されたので信頼してますね。――結成後は順調でしたか?肥満:賞レースの成績だけでいうと前年より落ちたことはないんです。緩やかに上がってる。檜原:ただ、やっぱりバイトをしてた時期は体力的に大変でした。月50本ライブに出てもギャラが2万円ぐらいだったので、朝から晩までバイトするしかなくて。バイトとバイトの合間や休憩中にライブやオーディションを詰め込む生活でしたね。肥満:忙しかったけど、アルバイトの仕事は好きだったんですよ。僕は金券ショップでひわちゃんはピザ屋だったけど、二人とも自分の店を1番にしてやるって気持ちで働いてました。――大変だった時期に心が折れたりはされなかったんですか?檜原:「ママタルトは面白いから大丈夫」って先輩方が褒めてくださっていたから、売れてなくても腐りはしなかったですね。肥満:キングオブコントの準決勝に行ったのが5年目なので、「あり得ないスピードだからな」って先輩方から言われます。――たしかに!昨年から漫才協会に所属していますが、意識の変化はありましたか?檜原:僕、自分のおばあちゃんとすごく仲がいいんですよ。なので、ご年配の方に観てもらう機会が増えてありがたいですね。肥満:協会に入らなかったら絶対に会わなかったであろう芸人さんと会話できるのは、芸人冥利に尽きる感じがします。檜原:72歳の東(あずま)京平師匠は、出番の時に昭和の歌やCMソングのイントロを歌って、お客さんに曲名を当てさせるんですよ。観客を楽しませる演芸って、漫才以外にもいろんなアプローチがあるんだなって感じます。――ママタルトのドキュメンタリー作品『まーごめ180キロ』が劇場公開されたのも、かなり新しいアプローチですよね。肥満:もともとは“まーごめ”をめぐるドキュメンタリー風の映像を撮って、それをひわちゃんたちが会場で見てツッコむ、映像ライブ用だったんです。檜原:ライブ後に“大鶴肥満の知らなかった部分がたくさん見られてよかった”っていう反響をたくさんいただいて、映画館で流すことになりました。――なるほど。次は檜原さんに着目した作品も作れそうですね。檜原:今、撮ってるんですよ。少しフィクション寄りですが。肥満:僕も『大鶴肥満の結婚前夜』っていう2作目を撮影中です。好きな人ができて破れる姿をずっと追っかけられていて…。――人生がコンテンツですね。肥満:そういう人生を歩んでいる先輩がクロちゃんさんしかいないから、何が正解かわからないまま模索しつつやってます。――新時代を切り開くお二人から見て、今後どういった芸人さんが支持されると思いますか?肥満:もう解散してしまったんですが、スタンダップコーギーさんっていうコンビの解散ライブがすごく面白かったんですよ。檜原:途中からネタじゃなくて本音の言い合いになっていく感じの漫才が26分間続くんです。肥満:そういう愚直なくらい人間味のある方が面白いと思う。――人となりがポイント?檜原:今は芸人がYouTubeとかでも自分のラジオ番組を持ってるから、それを聴くだけでどんな人かを知ることができちゃう。なので、そこからさらに引き込むくらい魅力の器も大きくないといけないのかなって。肥満:不思議ですよね。SNSは短い方が流行ってるのに、お笑いはディープな方に行ってる。なので、大勢の目には触れてないけどコアなファンがいるっていう感じになってきてるのかな。――お二人が芸人として目指すのはどんなスタンスですか?肥満:僕は大勢の人に観てほしい気持ちが強いですね。『こち亀』の両さんが理想なので。檜原:「おっ、まーごめ。最近、嫌なことがあったんだよ」みたいに、知らない人から声をかけられる街の人気者。芸人でいうと、オードリーの春日さんみたいな“スター”に憧れますね。――そういった次世代のスターになるためのお二人の強みは?檜原:大鶴肥満の類を見ない大きさ。芸人界で最重量ですから。肥満:189kgだけど膝は痛くないし、50m走も9秒64。この体って、とんでもないんだなって(笑)。ボケの動きは迫力が違うと思います。――檜原さんのツッコミも独特の魅力がある気がします。檜原:僕は大阪の中でも方言がキツいエリアの出身なんですよ。その後神戸の大学に行って、東京で宅配ピザのバイトをしたら、聞いたことのない関西弁になって。それが独特な節だと評してもらえることはありますね。――今後さらに売れたら生活もガラリと変わりそうですが、どんな芸人人生が理想ですか?肥満:M‐1で優勝すると、3か月は眠れないっていうじゃないですか。そういう経験もしてみたいけど、3か月でいいかな。檜原:忙しいと、大鶴肥満の色が悪くなっちゃうんですよ。去年も脚が紫色になった時期があって、僕がずっと揉んでたんです。なので、適度に休みを取りつつ楽しく働けたら幸せですね。もっとママタルトを知りたい人はこちらをチェック。『ママタルト本物チャンネル』“大鶴肥満の頭皮ツアー”や“料理好きひわらのこだわり満載「肉マシマシバーガー」が完成”など、二人のキャラが伝わるほのぼの企画が充実したYouTubeチャンネル。毎日更新。『まーごめ180キロ』昨年のライブで上映され、劇場公開もされた“まーごめ”の全貌に迫るドキュメンタリー。「俺が泣きながらマック食って『うまい』と言っている映像が一部で話題に」(肥満)『ママタルトのラジオ母ちゃん』お笑いラジオアプリ「GERA」で3年以上継続中の冠ラジオ番組。毎週木曜20時より最新エピソードを公開。「プロの芸人も投稿している大喜利コーナーがオススメです」(檜原)『芸人Boom!Boom! ママタルトのラジオまーちゃん』音声プラットフォーム「stand.fm」で毎週火曜23時に配信されるラジオ番組。「ラジオを2本やってるので、話のネタがない時はくだらないケンカで時間を使いがち(笑)」(肥満)ママタルトお笑い芸人。左・檜原洋平(ひわら・ようへい)大阪府出身。右・大鶴肥満(おおつる・ひまん)東京都出身。共に1991年生まれ。2016年コンビ結成。挨拶代わりの万能ギャグ「まーごめ」は、大鶴肥満の芸名の元になった大鶴義丹さんが浮気の謝罪会見で発した「まーちゃんごめんね」を縮めたもの。※『anan』2023年8月9日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)ヘア&メイク・浜田あゆみ取材、文・真島絵麻里(by anan編集部)
2023年08月05日ミュージシャンが歌う姿を大袈裟にデフォルメしたり、芸能人をロボットに見立てて動いたりと、独自のものまね芸で爆笑を巻き起こすものまねタレントのコロッケさん。実は、自身の芸風はディズニー作品から大きな影響を受けていると教えてくれた。エンターテインメントのお手本たち。――タレント・コロッケさん。「ディズニーとの最初の出合いはミッキーマウスのデビュー作『蒸気船ウィリー』。僕、ネズミ年生まれなのでミッキーが大好きなんですよ。この頃のミッキーは、今よりも少し自由奔放なところがいいですね。僕のちょっとふざけた芸風はいたずら心いっぱいのミッキーにインスパイアされています。『ファンタジア』はミッキーが魔法をかけて、ほうきが動き出すシーンが、いま観ても斬新。この作品はクラシックの名曲とアニメーションを融合していて、その画期的な作風にも驚きました。自分のコンサートでは、ものまねとオーケストラを組み合わせたステージを披露することがあるのですが、そのアイデアはここから来ているんですよ。花が自由に動いたり、恐竜が音に合わせて戦っているように見えたり。現実ではありえない動きに心掴まれました。本人がするはずのない動きをする、という僕のデフォルメ的表現もここから生まれたんです」ディズニー作品の魅力はなんといっても、躍動感のある動きにあると言う、コロッケさん。「止まっていても動きの余韻を感じたり、足を一歩踏み出すだけでも首がカックンと動いたり。ディズニーキャラクターにしかない動きがたくさんある。それをどうやって再現できるかと練習してきたことが表現の幅に繋がったと思っています。操り人形が動き出す瞬間に心がときめいた『ピノキオ』、部屋で大はしゃぎしていたおもちゃが男の子が入ってきた瞬間ぴたりと動きを止める『トイ・ストーリー』など、とにかくキャラクターの動きに目がいってしまう。子どもに体をつかまれたウッディが目だけをキョロキョロと動かすところなんてたまらないです」動きにフェイントをかけたり、歌いながら顔を激しく動かしたりするコロッケさんのパフォーマンスは、ディズニーがお手本。そして、ディズニー作品を観ていると、人として忘れてはいけないことにも気付かされるという。「人間も動物もおもちゃも、みんな等しく愛情たっぷりに描かれているんですよね。誰かを思いやり、助け合うことの素晴らしさを思い出させてくれます」【Disney】『蒸気船ウィリー』(1928)いたずら心いっぱいのミッキーマウスが魅力的。貨物船をご機嫌で操縦するミッキーマウス。ミニーマウスが持っていた楽譜と楽器を山羊に食べられてしまったため、動物を楽器に見立てて、演奏を始めてしまう。冒頭の口笛シーンはウォルト・ディズニー・アニメーション作品のオープニングロゴタイトルとして使われている。© 2023 Disney【Disney】『ファンタジア』(1940)魔法の力でほうきが動き出す瞬間にワクワクする。クラシックの名曲にアニメーションを融合。セリフはなく、映像、色彩を通して物語が語られる革新的な作品。指揮は“音の魔術師”として知られるレオポルド・ストコフスキー、演奏は世界屈指のオーケストラのフィラデルフィア管弦楽団が担当。© 2023 Disney【Disney】『ピノキオ』(1940)「星に願いを」は大好きな曲。これだけはふざけずに歌います。玩具屋の店主ゼペットは男の子の操り人形にピノキオと名付け、自身の子どものようにかわいがる。本物の人間になることを夢見るピノキオの心象を名曲「星に願いを」が豊かに表現。「ものまねアレンジでカバーしようと試みたこともありますが、まじめに歌っています」© 2023 Disney【PIXAR】『トイ・ストーリー』(1995)おもちゃやぬいぐるみたちの、コミカルな動きがたまらない。アンディのお気に入りのおもちゃだったカウボーイ人形のウッディとバズ・ライトイヤーがタッグを組み、冒険を繰り広げる。“もし、自分の知らないところでおもちゃが動いていたら?”という空想を完璧な世界観で形に。誰もが子ども時代の自分と重ね合わせて観られる作品。© 2023 Disney/Pixar掲載作品は、すべてディズニープラスで配信中視聴には、月額990円、年額9900円の2プランがあり。詳しくはCroket1960年生まれ、熊本県出身。’80年『お笑いスター誕生!!』(日本テレビ)でデビュー。五木ひろし、美川憲一、谷村新司など300種類以上のものまねレパートリーを持つ。ものまね番組の出演のほか、全国各地でコンサートや座長公演を務めるなど精力的に活動し、新境地を開拓し続ける。※『anan』2023年7月26日号より。取材、文・浦本真梨子構成・野尻和代(by anan編集部)
2023年07月23日