江崎グリコはこのほど、日本顎咬合学会と協力して行った最近のむし歯事情についてのアンケート調査の結果を発表した。調査は10月9~29日の期間に同学会所属の歯科医師を対象に行われ、503名から回答を得た。歯が酸に溶かされることで起こるむし歯(う蝕)。同社によると、子どもでは歯を覆う表面部分の「エナメル質」にむし歯(エナメル質う蝕)ができるが、大人になると歯の「根元」にむし歯(根面う蝕)ができることが多くなるという。そこで、「5年前と比較して、来院される方のう蝕(1次う蝕)は、エナメル質う蝕に比べて根面う蝕の割合が増えていると感じますか? 」と質問した。結果は、57%の人が「根面う蝕の方が増えている」と答えた。次に、歯磨き粉、歯ブラシ以外のむし歯予防用品のうち、現在すすめている、もしくは将来すすめたいものについて調査したところ、1位は「フロス」(85.2%)となった。次いで、「歯間ブラシ」(82.9%)、「マウスウォッシュ」(45.9%)と続いた。また、「歯科診療や保健指導において、かむことの指導が必要であると感じていますか? 」という質問には92%の人が「はい」と回答。同社はかむことについて「唾液の洗浄力で歯の健康を保つ」「脳の発達、運動機能を維持する」「消化を助けて胃腸の働きを促進して、栄養の偏りや不足を防いで全身の健康を保つ」などの機能があるとしている。同協会は今回の調査結果を受けて、「『歯周病』対策だけでなく歯を支える根元のむし歯である『根面う蝕』対策も大切だということがわかりました」とコメント。その上で、「『根面う蝕』は、むし歯になってから進行が早く、治療法も限られていますので、その前段階からの予防が大事になってきます。歯磨きと合わせて日頃からのセルフケアで再石灰化・再結晶化力を高めておきたいものですね」とアドバイスしている。
2015年11月05日シュガーレスのお菓子ならむし歯にはならない!?トローチなら!?むし歯への疑問、うわさは尽きません。本当のところはどうなのでしょうか。歯学博士で歯科・口腔衛生外科の江上歯科(大阪市北区)院長・江上一郎先生に検証をお願いしました。<検証1>シュガーレスのお菓子ならむし歯にはならない?江上先生お菓子の成分を確かめなければ何とも言えませんが、砂糖が入っていないということであれば、むし歯になる確率は低いでしょう。砂糖は歯を打撃します。歯垢(しこう。プラーク)の中のむし歯菌が食べ物に含まれる「糖質」を材料に酸をつくり、歯のエナメル質を溶かしはじめます。これがむし歯です。つまり、砂糖はむし歯菌の栄養です。シュガーレスというのは、文字通り、砂糖、糖質が含まれない食べ物だと認識してください。<検証2>甘い物を食べないとむし歯にはならない?江上先生甘くなくても、でんぷんでできているお菓子、小麦粉など炭水化物を含むお菓子は糖質ですから、砂糖と同じく、むし歯菌が酸をつくります。甘い、辛いだけで判断するのではなく、糖質かどうか、で判断しましょう。また、むし歯は「酸」によってエナメル質が浸食されることで起こるため、砂糖と同じく歯に打撃を与えるものに、コーラや黒酢飲料、スポーツ・ドリンク、レモン、オレンジなど、酸性度が高い飲食物があります。これらを口に含んでいると、歯は酸に浸っていることになり、酸の攻撃を受け続けることになります。「糖質を含む食べ物」、「酸性が高い飲食物」がむし歯をつくるのです。<検証3>トローチをなめてもむし歯にならない?江上先生トローチはのどの炎症止めという役割のほかに、口腔(こうくう)内の殺菌、消毒効果があり、なめることで細菌数は減少します。よって、トローチをなめてもむし歯にはなりません。ただし、甘味料など砂糖が添加されている場合は、もちろん、むし歯の原因になりますから注意してください。<検証4>寝る前に甘い物を食べるとむし歯になる?江上先生起きているときよりも、なりやすいでしょう。むし歯の発生を抑える役割をする唾(だ)液の分泌量は、寝ている間には激減します。砂糖が歯に付着したまま寝ると、むし歯菌は喜んで酸をつくり、歯に打撃を与えます。<検証5>カルシウム入りのお菓子は歯によい?江上先生砂糖が添加されていなければ、よいと言えるでしょう。歯は酸の攻撃を受けると少しずつ溶け始め、これを「脱灰(だっかい)」といいます。食後しばらくたつと、唾液の効果によって口の中が中性に戻ります。すると酸によってとけた歯の表面に、唾液中のカルシウムがくっついて修復をし始めます。これを「再石灰化(さいせっかいか)」と呼び、早期のむし歯はこの再生力でもって自力で治っていきます。カルシウムを含む食べものは、この再石灰化を促します。江上先生はこう説明を加えます。「むし歯になるのは、砂糖や酸が歯に付着することです。極端に言えば、砂糖をオブラートに包んで飲み込めば歯に付着しないため、むし歯にはなりません」つまり、砂糖や酸が歯に付着しないために、唾液の力で流し込む、まめに歯磨きをする、食後にキシリトール入りのガムをかむなどをすれば、むし歯にはなりにくいということです。歯の表面に付着する食べものに注意したいものです。監修:江上一郎氏。歯学博士。専門は口腔(こうくう)衛生。歯科・歯科口腔外科の江上歯科院長。江上歯科大阪市北区中津3-6-6阪急中津駅から徒歩1分、御堂筋線中津駅から徒歩4分TEL:06-6371-8902藤井空/ユンブル)
2012年11月15日小学生のとき、学校の歯の健診で、「C-1、C-2……」などと、むし歯をカウントされた記憶があります。あの「C-1」などの呼び方は一体何を表すのでしょうか。歯学博士で歯科・口腔衛生外科の江上歯科(大阪市北区)院長・江上一郎先生にお話を伺いました。■C-2で歯が痛みだすむし歯の進行度を示す言葉について、江上先生は次のように分かりやすく説明します。「C-1、C-2、というのは、歯科医が表現する、むし歯の進行度のことです。『C』とは『Caries(カリエス)』の略で、英語でむし歯を表します。また、歯科医学的には、むし歯は「う蝕(しょく)」と言います。学校の健診は、平成16年に『C』だけでチェックするようになりましたが、歯科治療ではもちろん、現在もこの表現が使われています。歯は、表面がエナメル質で覆われていますが、そのなかには象牙(ぞうげ)質、その奥に歯髄(しずい。神経)、根っこには歯根(しこん)があります。むし歯になると、その表面から順にう蝕が進んでいくことになります。当然、進行するにつれて痛みが出てきます」「C0→C1(エナメル質)→C2(象牙質)→C3(歯髄)→C4(歯根)の順番にう蝕が進みます」という江上先生は、進行順の症状について次のポイントを挙げます。COシーオーと読みます。シーゼロではありません。オーはオブザベーションの略で、「要観察歯」のこと。歯の表面(エナメル質)からカルシウムが溶け出している状態。表面に白い斑点ができますが、エナメル質には神経が通っていないため、痛みなどの自覚症状はありません。歯磨きなどで、むし歯が元に戻ることも(再石灰化)。C1むし歯の初期。エナメル質がやや黄色くなります。この部分のう蝕ではまだ自覚症状がありません。治療は、むし歯部分を削除し、修復材を詰めるなど。C2むし歯がエナメル質を超えて象牙質に広がっている状態。象牙質には神経が通っているため、冷たいもの、甘いものがしみます。治療法はC1と同じですが、歯髄に近づいている、むし歯が大きいと金属などの詰め物が必要。C3歯髄=神経まで進んだむし歯。持続的に痛み、うずき、激痛になることも。治療は、歯の神経をとることに。放置すると神経が死んで痛みを感じなくなることがありますが、しばらくすると根の先が化膿(かのう)し、歯肉が腫(は)れて激痛が起こります。この場合は「根管(こんかん)治療」が必要となり、治療時間を要することに。歯茎を切開して膿(うみ)をとる手術や抜歯となることも。C4根までむし歯が進み、歯ぐきから上の歯冠部がなくなっていることも。根が残っていればさし歯に、なければ抜歯となります。根にたまったうみを摘出する手術が必要な例も多くあります。■自己ケアは、COの段階まで江上先生は、自己ケアできるのは、「COの段階までです。C1になると、歯磨きで一時的に改善することはあっても、すぐにまた進行します」と言います。COの段階では痛みがないそうですが、どのようにして、むし歯が始まっていることに気付けばいいのでしょうか。「歯を自分の目で確かめて、上部の筋の色が濃くなっている、変色していると、むし歯の始まりです。重点的に歯磨きをしましょう。むし歯を早期発見するにあたって一番いい方法は、定期的にかかりつけの歯科医に健診に出向くことです。健診では一般的に、『歯磨きができているか』、『歯垢(しこう。プラーク)を取り除く』、『二次カリエス(う蝕の進行)』、『歯周病』のチェックを行います。むし歯の元となる歯石をとる作業を含め、所要時間は約30分~1時間、費用は自費で3,000円~5,000円になります。健診でむし歯をCOやC1までの段階で発見して治療をすると、痛みがありません。時間も費用も苦痛も軽くなります」(江上先生)定期健診の時間、費用を考えると、美容院の感覚です。歯を健康的に長く維持するコツは、半年に一度は健診を受け、C1までのうちに治療をしてしまうことだと言えそうです。監修:江上一郎氏。歯学博士。専門は口腔(こうくう)衛生。歯科・口腔外科の江上歯科院長。江上歯科大阪市北区中津3-6-6阪急中津駅から徒歩1分、御堂筋線中津駅から徒歩4分TEL:06-6371-8902藤井空/ユンブル)
2012年10月24日