筋トレの方法をストーリーに組み込んだ、そんなマンガ、意外とあります。登場人物に思いを馳せているうちに、いつの間にかあなたも筋トレがしたくなる…。サブリミナル効果、期待しましょう。鍛える気持ちを刺激します!おすすめ筋肉ライブラリー。筋トレ社長原作・Testosterone漫画・たむらあやこひ弱な大学生が筋肉隆々の社長と、出会った…。「筋肉がこの世の全てを解決する」と信じる社長が、偶然出会った筋肉ゼロな大学生・星野くんを、めくるめく筋トレの世界に誘う物語。社長が言う決めゼリフに説得力があり、思わず鍛えそうになってしまうのがすごい…。全1巻¥605/KADOKAWA©たむらあやこ/Testosterone/KADOKAWA好きピのために腹筋割りたいギャル輪立さく大好きな筋トレYouTuberの彼のために、腹筋、割ります。主人公は女子大生・シノ。同じゼミにいる筋トレYouTuberのマジ本のタイプは“腹筋が美しい人”。彼が大好きシノは、意を決して腹筋を割るために筋トレを開始。筋トレ内容をきちんとわかりやすく紹介してくれるので、ガイド本としても使える。全1巻¥693/講談社©輪立さく/講談社全てを筋肉で解決する童話赤信号わたるみんながムキムキなら、世界は平和…なのか?シンデレラやかぐや姫、一寸法師など、お馴染みの童話の登場人物がもしマッチョだったら…?というオムニバス作品。赤ずきんは〈赤ず筋〉、浦島太郎は〈浦島筋肉太郎〉など、名前にも筋肉が。こちらは筋トレ要素は薄めです。全1巻¥990/双葉社©赤信号わたる/双葉社筋欲のカノジョ岡田幸士周囲にバレずにこっそり筋トレするOLの物語。一見ごく普通のOLに見える丹練子、実は筋トレ大好き女子。ジムに行く時間がないゆえに、オフィスや会議室などで、今日も周囲にバレないようこっそり筋トレ中。思わず笑っちゃうコメディですが、それぞれのメソッドは役立ちます!全2巻電子版 各¥693/小学館©岡田幸士/小学館※『anan』2024年4月17日号より。写真・内山めぐみ(by anan編集部)
2024年04月17日昨今の辞書ブームや、校閲者が主人公の作品などが人気を博し、校閲という仕事が広く知られるようになってきた。本書『くらべて、けみして 校閲部の九重さん』もまた、そんな校閲の世界にスポットを当てた楽しいコミック。著者のこいしゆうかさんは、取材に1年ほどかけたそうで、現在も文芸誌『小説新潮』で連載中。校閲の世界の奥深さに触れるコミック。タイトルの意味がわかると、痺れる!「こういうミスがあった、こういうやりとりがあったなど、作家さんと校閲者さんとの間で起きた実際のエピソードを交えながら、ストーリーの部分は、校閲者さんたちの日常や、ひとりひとりが持つ校閲の哲学のようなものをどうやったら織り込めるかなと考えていきました」舞台は、老舗出版社〈新頂社〉の校閲部文芸班。社歴10年目の九重(くじゅう)心さんを中心に、新入社員の瑞垣さん、校閲部OGのとっとこちゃんこと月山さん、ストイックな丹沢さん、校閲部のレジェンドと呼ばれる矢彦さんなど、個性的な面々揃い。彼女たちが実直に語り合う言葉が、どれも興味深い。「九重さんをはじめ、ほとんどのキャラはお会いした校閲部の方の印象をミックスしています。最初は、比較的もの静かな方が多いなと思っていたのですが、ちょっとしたこだわりなどに触れると話が止まらないこともあり、そういう人間らしさも参考にしています。瑞垣さんには、仕事のあり方についてシロウト感覚で質問していく、いわば読者目線に近い役割をしてもらいました。矢彦さんだけは実在の人物を描いています。校閲への哲学や考え方が明確で、そのまま漫画に出したいと思ったんです」校閲者がゲラ(校正紙)を読んでいて疑問に感じた部分などを指摘することを「鉛筆を入れる」「鉛筆書き」などと言うのだが、そこにも個性が出る。誤植を見つけたり、ファクトチェックしたりするのは、もちろん仕事として求められる部分ではあるのだが、同時に、文芸の校閲には、実は「これという正解がない」といわれているのが驚きだ。「校閲者さんはみな作家さんの気持ちや意図を汲むのですが、それゆえに葛藤します。鉛筆の入れ方を経験を積みながら学び、九重さんの言うように、〈百年後に残す一冊を作っていくという意志〉で、さらに次の世代へ技術を引き継いでいく。まさに職人仕事なんだなと。校閲者さんは編集者さんとは違うけれど、作品をより良くするために親身になって一緒に考えてくださっているし、私自身も一著者として、自分が考えた世界について誰よりも真剣に考えてくれる人が一人でも多いのはありがたい。編集さんだけではなく校閲者さんも味方なんだなと思うと、心強いです」プロの仕事ぶりを堪能されたし。『くらべて、けみして 校閲部の九重さん』新潮社校閲部および編集者(OB含む)が全面協力。実際に校閲部に所属する方々のミニコラムも収録。続刊では、フリーの校閲者にもスポットを当てる予定。新潮社1265円©こいしゆうか/新潮社こいしゆうか漫画家、キャンプコーディネーター。ゆるいタッチで難しいことをわかりやすく伝える漫画を得意とする。主な書籍に『ゆるっと始める キャンプ読本』など。※『anan』2024年4月3日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2024年04月02日夫・翔太に隠し子発覚…!あなたが奥さんなら、どうしますか?まさかの事実に動揺する恵。友人からは「娘の目的がお金なら大金を払うことになるかもしれない」と言われ、恵は現実的な問題を考え始めます。翔太とともに夫婦で背負うべきものなのか…悩んだ末、恵は翔太を呼び出します…。■夫の隠し子に動揺 友人に相談するも… 夫に高校生の子どもがいたということを知らされ、動揺する恵は友人に相談。友人は、お金が目的で翔太に会いに来たのではないかと言います…。■一緒に乗り越えたい!妻の決意友人から、結婚前の行いをこれから恵も背負っていくのかという現実を指摘され、冷静になる恵。翔太としっかり向き合うことを決意します。恵は翔太と一緒に乗り越えていくということを伝え、自分も相手の子どもと母親と会って真意を確かめたいと伝えます。そうして恵たちは、2人を呼び出したのですが…。こちらは投稿者のエピソードを元に、ウーマンエキサイトで公開された漫画です。漫画に対する読者からのコメントを紹介します。■夫に隠し子による妻の立場に読者は…まずは、ウーマンエキサイトの公式Instagramから「みなさんが妻の立場なら…どうしますか?」という質問に対しての意見です。・どんな理由があろうと母親が知ってるかどうかも不明のまま子どもにお金を渡すこと自体間違ってる。まず母親と現状を確認し、その後どうしていくかを決める。母親も養育費が欲しいなら初めっから消えたりしなかっただろうし。・認知してもない状況で知らぬ間に生まれた子を今更認知しろとか言ってもねー…。・徹底的に調べます。また、恵が友人に相談した際に出た「養育費」についての読者の見解です。まだ高校生の子どもに渡すということに対して批判の声が集まりました。・お友だちの「大学の費用を出させたい」が合ってる気がする。私の妄想だけど、家庭環境の悪かった母親が、真優ちゃんの父親と結婚して苦労したから自分はちゃんとした道を歩むために気弱そうでフリーのエンジニア(お金ありそうに見える)な誠さんを狙ったんじゃない?・養育費が何たるかをこの場で説明できるなら払ってやるわ。・お金出すだけじゃなく教育するのも親の仕事だから、そんな態度なら出さないとはっきり言ったら良い。養育費とお小遣いは別。・認知してないなら養育費の支払いは不要。・児童相談所に連絡すれば、女の子の母親にすぐ連絡つくのではないでしょうか。真相を確認するには手っ取り早い。そして、本当に子どもなら養育費は払うべきだと思う。最後に、翔太に同情する声や夫婦関係の良さについての読者の考えです。・妊娠も知らされずに勝手に自分の子供を出産されてても、母子が本気出せば強制認知で養育費払わないといけないのかな…怖い…。妊娠は2人の責任だけど、流石に男性側に同情する。・素敵な奥さんで良かったね。でも今までの夫としての父親としての積み重ねが、奥さんにそう思わせてくれたんだから、それも素敵な話。向き合うと決めた恵の決意…そしてこの後どのような展開を見せるのでしょうか。▼漫画「優しい夫の秘密は何?」
2024年03月30日今回ウーマンエキサイト編集部ライターの独自目線とあらすじを交えてご紹介するコミックは「凝り性の夫が迷惑過ぎる!」です。友美は夫と娘の3人家族。夫の健太は凝り性で、育児でさえも放棄し、趣味の動画作りや動画視聴に没頭してしまいます。夫は料理に凝るも、まだ幼い娘が食べられるものを考えず自分本位。夫婦ふたりの時は、そんな少年のような夫が面白く魅力的に思えていた友美ですが…。■凝り性で自分本位の夫にイライラ夫の凝り性気質は子どもが生まれてからも変わらなくて、友美はイライラしていました。料理に凝るも、まだ幼い娘が食べられるかどうかも考えずマイペースな夫。しかも洗い物は友美に任せるのでした…。■不安的中!出産後も変わらない夫夫婦2人での時から、凝り性だった夫。中華料理に魅せられた時は、鍋を買ってきてあっというまに本格的な中華料理を作ったのでした。さすが!と思う反面、基本的に自分本位のため困ることも…。産後も夫の気質は変わることがなく…。こちらは投稿者のエピソードを元に、ウーマンエキサイトで公開された漫画です。ここからはネタバレ!? ライターが気になった場面をピックアップします!■私のこと見てる? 夫の反応は…凝り性で自分本位の夫に振り回される友美。この後、夫の暴走が度を過ぎ、家の購入を勝手に決めてしまいます。これには、さすがに怒り爆発の友美なのでした…。今回、友美がなぜ起こっているのか分からず謝る夫に、友美が不満を明かす場面をピックアップしました。友美は夫に、引っ越そうとしたときに「私と娘の気持ちを考えたか」とうこと、「娘のお世話で必死な私を見ているか」ということを訴えます。夫だけが楽しいということに、夫自身が気が付いた場面です。凝り性な人って「自分本位」から「家族のため」にと切り替えれば、持ち前の器用さで子育ての強い味方になるかもしれませんよね!この後、夫がこれまでの探究心を子どものため家族のために発揮してくれるようになります。果たしてその変化とは…?▼漫画「凝り性の夫が迷惑過ぎる!」
2024年03月23日誕生日ディナーに家族で向かう途中、もらい事故で両親を亡くした主人公の平沢実斗(みと)。自分は指に後遺症が残りバンドデビューの夢も潰えた。思い出の詰まった家も、新しい所有者となった作家の浅賀から〈加害者が集うシェアハウス〉になると告げられてしまう。だが、実斗は、ひょんなことからその家で加害者たちと一緒に暮らすことに…。被害者と加害者はふれ合うことで何かを変えることができるのか。夕海さんの『ノラの家』は、そんな深遠なテーマを内包した意欲作。対話は悲劇のストッパーになり得るか。予測不能の物語がここから始まる。「ハードな設定だと言われるのですが、一見真逆の立ち位置に見える被害者と加害者って、実は同じような葛藤を抱えているように思うんです。誰にも自分の気持ちをわかってもらえないとか、居場所がなくて孤立するとか。それでも腹を割って話したら相容れないと思っていた相手を少し理解できたりもするのではないかと。対話せざるを得ないような状況って何かなと考えたとき、共同生活をさせようと思いつきました」かくて浅賀が集めたルームメイトは、実斗を含めて5人。1巻ではまだルームメイトたちがどんな加害をしたのかの詳細はわからないが、交通事故加害者が交じっているらしいことや、実斗を過剰に敬遠する人間がいることなどは描かれ、今後の伏線がたっぷり詰まっている。「誰が何をやったのかの秘密を、だいたい1巻につきひとりくらいずつ明かしていく予定です。実斗は、周囲に愛されて何の不自由もなく生きてきた分、甘ったれだろうし心も弱っていると思いますが、彼が恵まれた環境の中で育ててきた優しさとかポテンシャルが、誰かを救うこともあるかも…と期待しています。私自身の過去を振り返って、自分がこうできたらよかったなと思うことを、実斗にしてもらっているというか。あと、この作品は登場人物が多いので、パッと見の造形をなるべく変えるなどの工夫はもちろん、しぐさのクセやポーズもその人らしさが出るように意識していますね。部屋の中の生活感にも“その人”が出ると思うので、背景でも“人”を描くことができたらいいなと思っています」実斗は亡父が遺した「人との縁を大切にするんだよ」という言葉とどう向き合っていくのか。これが本作の底に流れる大きなテーマだ。「私自身が父に言われた言葉なんですね。孤独や絶望に囚われてしまいそうなとき、ひとりではないと思えることの安心感があったら、自棄にならないでいられるかもしれません。簡単には答えが出ない重い問いだからこそ、考えるきっかけにしてもらえたらうれしいです」夕海『ノラの家』1ルームメイトのバックボーンのみならず、家のオーナー浅賀の真の目的も気になる!『ヤングアニマルZERO』にて、本作を連載中。待望の2巻は春頃発売の予定。白泉社715円©夕海/白泉社ゆみマンガ家。東京都出身。日本大学藝術学部美術学科卒。2015年に講談社にてTHE GATE奨励賞、’16年、ちばてつや賞大賞を受賞しデビュー。※『anan』2024年3月20日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2024年03月20日大のマンガ好きとして知られる麒麟・川島明さん。彼が惹かれるマンガの主人公とは?『寄生獣』泉 新一高校生の等身大の主人公を通していろいろ考えさせられる作品です。泉新一は、マンガ界において数多くいる“普通の少年”といわれる主人公の中でも、本当に一番なんでもない人物ではないでしょうか。だって、ほんまにただ寝ていただけの、できるだけ何もしたくない高校生が、寄生生物であるミギーに寄生されるところから物語がスタートしますから。でも、戦う使命が生まれたことやミギーの影響もあり、どんどんワイルドになり、周りの人から雰囲気が変わったと言われるくらい、すごい男になっていきます。本作には無駄な描写が一切なく、また、えげつないシーンもたくさん出てきます。“なぜ動物は食べるのに人間は食べないのか”という問いを寄生獣が投げかけてくるなど、世界や人が抱える問題を泉新一という等身大のキャラクターの目を通じて描いた、考えさせられる作品でもあります。メッセージ性は強いのに難しくなく読めるというバランスも、すごくいいんですよね。『新装版 寄生獣』岩明 均突如、宇宙から地球に飛来した、人間の脳を乗っ取り他の人間を食い殺す寄生生物たち。その一つであるミギーと共存関係になった新一は、寄生生物と激しい戦闘を繰り広げることに。アフタヌーンKCDX全10巻各770円/講談社©岩明均/講談社『ジョジョの奇妙な冒険 PART4 ダイヤモンドは砕けない』東方仗助(ひがしかた じょうすけ)虹村億泰(にじむら おくやす)ヤンキーで未熟な二人ですけど、「ジョジョ」で一番好きなキャラ!「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズはどれも大好きなんですが、主役という意味ではPART4の東方仗助が一番ですね。『ビー・バップ・ハイスクール』のようなヤンキー漫画も読んでましたが、それを“ジョジョ風”に味付けすると、仗助や(虹村)億泰みたいになるんだろうなと。メルヘンチックでSF的な架空の街で巻き起こるスタンド使いの話に、非常に昭和なリーゼントと短ラン姿のやつがいる(!)というのは面白いですよね。それに、リーゼントをけなされるとキレたり、妙な罠に簡単に引っかかってしまう仗助と億泰は、すごくかわいいんです。ダメで未熟な二人やからこそ力を合わせたらすごいというところも魅力的やし、僕は二人ともが主役やと思っています。亡くなったと思われた億泰が、空間を削り取るという強いスタンドである“ザ・ハンド”と共に登場するシーンなんて、しびれますから。登場人物が全員いい!「PART4の登場人物たちはみんな、個性豊かで魅力的。全員がいいんですよね」と川島さん。PART3の主人公であり、仗助に迫る危機を伝えるため杜王町にやってきた空条承太郎、真面目な広瀬康一と彼に想いを寄せる狂気的な山岸由花子などが登場。また、スピンオフが作られるほど人気を博すキャラクターである漫画家の岸辺露伴や、仗助とラストバトルを繰り広げることになる殺人鬼の吉良吉影など、クセの強い人物が揃っている。『ジョジョの奇妙な冒険 PART4 ダイヤモンドは砕けない』荒木飛呂彦ジョースター一族の運命を綴る、壮大なスケールの物語。PART4は、スタンド使いが集まる杜王町と、そこに暮らす温厚な高校生である東方仗助に迫る危機を描くサスペンス。ジャンプコミックスDIGITAL全12巻各792円/集英社©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社『機動警察パトレイバー』泉 野明(のあ)運命のライバルと1対1で戦う主人公を応援したくなります。小学生の頃、兄貴がハマっていたのをきっかけに途中まで読んでいたのですが、40歳になってようやく全巻読み終えました。主人公の泉野明は、“レイバー(汎用人間型作業機械)”による犯罪を取り締まるために開発された“パトレイバー”の新人操縦士。仕事の面ではあまり優秀ではないけど、勝ち気で強い女の子です。彼女にはバドという敵というかライバルがいて、最後まで読むとわかるんですけど、本作を簡単に言うと二人の喧嘩の話なんですよね(笑)。ずーっと決着がつかない状態が根底にあるなかで、いろいろな出来事が起こるんですけど、最後は、野明vsバドの戦い、いわゆる武蔵と小次郎みたいな展開に。やっぱり、この戦いをやらなければいけなかったんやな…としびれます。最後までこの二人で走りきる勇気もすごいと思うし、ストーリー的には単純なんですけど、野明を応援したい気持ちになります。ここが鳥肌シーン!川島さんがめちゃくちゃ心を掴まれたという、野明と最強のライバルであるバドとのラストバトルがこちら。「特に最後の2巻は、すべてを取っ払った二人だけの戦いになるので必見です。しかも、取っ組み合いで終わるというところも、すごくいいんですよね」『機動警察パトレイバー』ゆうきまさみレイバーが普及した近未来の東京。新たな社会的脅威となったレイバーの犯罪に対処するため、警視庁は特殊車輌二課を創設。そこの第2小隊に配属された警察官たちの活躍の物語。少年サンデーコミックス全22巻各528円/小学館©ゆうきまさみ/小学館『ひらやすみ』生田ヒロトマイペースにゆったりと過ごすヒロトくんを見て癒されています。最近の作品ですごく好きなのが『ひらやすみ』です。周りに慌ただしくしている人が多いなかヒロトくんだけマイペースに過ごしているんです。ボーッと釣り堀で働いていたり、ちょっと気になる子ができたりと、ゆったりと日常を送る姿を見ているだけでホッとするし、癒されてます。また、真造圭伍先生だからこそ描ける、コマをぜいたくに使った画を見ていると、呼吸が整うというか、深呼吸ができるというか。それでもたまに、キュッと胸を締め付けてくるような表現や展開もあったりして。それも先生らしいなぁと思います。このシーンが好き!マイペースに過ごすヒロトだが、過去に何かがあったことを匂わせるような描写も登場する。「芸能界にいて、とんでもないショックを受けたことがあるようです。これから明らかになるんでしょうけど気になります」このコマ割りが好き!読んでいて気持ちがいい構図やコマ割りにも癒されているという川島さん。「ヒロトくんが働く釣り堀のワンシーンを見開きで描くなど、ページをゆったりと使った、真造先生にしか描けない画が本当に素晴らしいです」『ひらやすみ』真造圭伍人柄の良さだけで、近所に住むおばあちゃん・和田はなえから家を譲ってもらったヒロト。お気楽に暮らす彼と、その周りに集まってくる、生きづらさを抱えた人たちの物語。ビッグ コミックス1~6巻各715円/小学館©真造圭伍/小学館かわしま・あきら1979年2月3日生まれ、京都府出身。『ラヴィット!』『ベスコングルメ』(共にTBS系)、『川島・山内のマンガ沼』(読売テレビ系)などレギュラー番組多数。※『anan』2024年3月20日号より。写真・土佐麻理子取材、文・重信 綾(by anan編集部)
2024年03月20日大のマンガ好き芸人として有名な、麒麟・川島明さん。好きな作品は「今でも読み返しますね」と言う川島さんに、今も魅了され続けるバイブル的な名作の主人公を教えていただきました!大のマンガ好きとして知られる麒麟・川島明さん。今や朝の顔にもなり多くの人を魅了している彼が惹かれるマンガの主人公とは?「『あしたのジョー』の矢吹丈や『ピンポン』のペコなど、どんなにすごい人間でもスランプやエアポケットがあり、それを乗り越えて初めてヒーローになれると教えてもらえる主人公が好きです。圧倒的に強すぎる人もいいんですけど、絶対的エースじゃないからこそ応援したくなるし、欠点やコンプレックスなどの人間味が、ファンが魅了される部分になると思うんです。僕自身、そうした主役の“欠片(かけら)”を持ちながら、日々、頑張っている感じがしています」『あしたのジョー』矢吹 丈背中を押してくれるジョーはずっと一番好きな主人公です。小学生の時に出合った矢吹丈が、原点というか、いまだに一番好きですね。ジョーは特殊能力で悪を懲らしめるような絶対的主人公ではなく、人道に反する少年で未熟なところから始まるけれど、強くなりたいというピュアな思いがあり、また、力石徹やカーロス・リベラなどとの出会いを通じて負けられない理由もできる。そんな成長物語を読むのが初めてで、こんな主人公もいるんだと衝撃を受けました。力石と戦い、彼が亡くなって生きる目標を失い、長いスランプ期間に陥りますが、その長さや行動の描写はめちゃくちゃリアル。一度どん底まで落ちたことで、カーロス・リベラと戦って野性を取り戻すというその後の展開がよりドラマティックになるし、深みも増すんですよね。本作がなければ芸人になっていなかったかもしれないと思うくらい背中を押してくれた作品で、自分がブレていると思った時に読み返します。『あしたのジョー』原作/高森朝雄漫画/ちばてつや矢吹丈が、力石徹やホセ・メンドーサなどの強敵と戦い、葛藤しながらも成長する様を描く。魅力あふれる登場人物、名台詞や名場面がめじろ押しの、ボクシング漫画の金字塔。講談社コミックス全20巻各385円/講談社©高森朝雄・ちばてつや/講談社『ピンポン』ペコとスマイル復活をとげたペコと幼馴染みのスマイルの決勝戦に胸打たれます。主人公のペコは天才でありながら、次第に、どんどん潰れていきます。彼がいなくても卓球界は当たり前に回り続けるけれど、彼を意識しているドラゴンやアクマなどの選手たちみんなが、ヒーローの戻りを待望し続け、復活するというストーリーがすごくいい。そして最後に、幼馴染みのスマイルとやり合うという展開も胸を打つ。単純にスポーツ漫画とはいえない素晴らしい作品です。卓球って、描くには結構スピード感が求められる展開が続くんですけど、一枚一枚の絵が素晴らしくて画集のようだし、躍動感もある。NSC時代に出合い、マンガの概念を覆されました。当時、自分たちでネタを作って先生に見せていましたが、発表前日の夜に本作を読んだせいで“もっとちゃんと深く描かないとダメだと”思い、作ったネタを一回捨てたことも(笑)。あれだけクオリティの高い作品を読むと、背筋が伸びますよね。このキャラも好き!川島さんが「お気に入りのキャラです」と名前を挙げたのが、ペコとスマイルの前に立ちはだかる強豪校の主将であり、卓球に人生を捧げてきたドラゴン(風間竜一)。最後の大会でスランプを克服したペコと戦うことに。この表紙が好き!川島さんが所有するビッグ コミックス版の表紙は、1巻はスマイルで、5巻にペコが登場する。「最終巻にようやくヒーローであるペコが出るところも、物語と同じ“おまたせ”感があって好きです。松本先生が計算していそうです」『ピンポン』松本大洋卓球に絶対的な自信と愛を持つペコ(星野裕)と、暇つぶしだというスマイル(月本誠)はじめ、卓球に打ち込む5人の高校生を描いた青春ドラマ。ビッグ コミックス全5巻 961円~、小学館文庫全3巻各734円/小学館©松本大洋/小学館『BLUE GIANT SUPREME』宮本 大(だい)夢に向かってピュアに走る大は、令和の時代にこそ必要な人です。本当に真っすぐな意味で大好きなのが「BLUE GIANT」シリーズ。今は第4部が連載中ですけど、どれも最高でしかないです。主人公の宮本大は“久しぶりに昭和のど真ん中の気持ちいいやつが出てきたな”と思いました。勢いと努力だけで夢に向かって突き進んでいく彼は、何かを諦めていた周りの人をも引っ張っていく。根拠のない“大丈夫”という言葉がなかなか言いづらくなった令和の時代に、すごく必要な人なんだろうなと思わされました。とにかくピュアに走り続ける姿も“これぞ主役”という感じだし、ある種、『ドラゴンボール』の孫悟空みたいともいえる存在です。そして、大を見て心が熱くならないなんて嘘やろ!と思うくらい、見ているだけで何かを始めたくなるカンフル剤みたいな人物でもあって。僕自身、初めて読んだ時は思わず走り出しましたし、なんならサックスも始めましたから(笑)。このキャラも好き!大が単身で乗り込んだドイツで出会った、ウッドベーシストのハンナが好きだと川島さん。「女がジャズをやるな、体が小さいから向いてないなどいろいろ言われながらも、努力を重ねる姿に感銘を受けます。ぶつかり合うけど最終的に大と組んだバンドがうまくいってよかった」『BLUE GIANT SUPREME』石塚真一ジャズに魅了されサックスプレイヤーになった宮本大の挑戦の物語。川島さんが特に好きという第2部にあたる本作は、ドイツはじめヨーロッパが舞台となっている。ビッグ コミックス スペシャル全11巻各770円/小学館©石塚真一・NUMBER 8/小学館かわしま・あきら1979年2月3日生まれ、京都府出身。『ラヴィット!』『ベスコングルメ』(共にTBS系)、『川島・山内のマンガ沼』(読売テレビ系)などレギュラー番組多数。※『anan』2024年3月20日号より。写真・土佐麻理子取材、文・重信 綾(by anan編集部)
2024年03月20日ananwebで連載された本作『そうです、私が美容バカです。』は、美容をテーマにしたマンガのなかでも異彩を放っている。まんきつさんは、美肌作りに20年以上励んできた筋金入りの美容オタクだ。「キレイになりたい」思いが暴走!笑えて、タメにもなる美容法。「美容マンガはいつか描きたいなと思っていたんです。だから柳川さんからお話をいただいたときは、跳び上がるくらい嬉しかったです」柳川さんとは「おヤナさん」として登場する担当編集。美容入門者のおヤナさんが、まんきつさんにさまざまな美容法を教えてもらうスタイルで話が展開していく。今すぐ始めたくなる手軽なもの、本格的な施術、真似しないほうがよさそうなトンデモ系が入り乱れるカオスっぷりだ。「難しい説明より、マンガとして読んで面白い内容を意識しました。ネタ決めのときは、柳川さんと本当によくしゃべりましたよね。雑談がほとんどでしたが、好き放題に語り合うその自由さも出せた気がします」「まんきつさんは本当にいろんな美容法を試されていて、なぜこんなバカなことを!?と言いたくなるものや、マンガには描けないことも結構あるんです(笑)。ガチガチの美容法の間に、笑えるけど、誰でもどこでもできて、お金もかからないようなネタを挟んだりして、メリハリをつけています」(柳川さん)絵を描きながら発見した美しさのバランスを、自分の体で再現しようとしたり、脱毛器でおでこを広げて後悔したり。情熱と行動力は頭が下がるほどだが、ストイックすぎず、サボるときはしっかりサボるのも親近感が湧く。後半、ページを割いているのが、余分な皮膚を切って顔のタルミを引き上げる「切開リフト」。やると決めるまでの葛藤や、その顛末を赤裸々に綴っている。「柳川さん含め身近な人から『本当に描くの!?』と言われたのですが、エッセイマンガなのだから、正直に描かなければと思っていました。何をやるときもそうなのですが、物事にハマっている自分がいつつ、いいネタができたことを客観視している自分もどこかにいるんですよね」美容に執着する様をユーモアたっぷりに描きながら、ふと頭をよぎるのは、「誰のため」「何のため」にここまでやるのか、という問い。「行き着くのは自己満足なんです。傍から見たら大して変わらないかもしれないけど、自分はやってよかったと思えるし、元気になれるので」美容だけでなく、何かしら沼落ちしたことのある人にはわかりすぎる悲喜こもごもが、詰まっている。『そうです、私が美容バカです。』キレイになりたくて必死な様子が失笑と共感を呼ぶ、美容エッセイ。安くできる美容法にこだわる著者の体験談が満載。新シリーズも再開予定!マガジンハウス1210円©まんきつ/マガジンハウスまんきつマンガ家。1975年生まれ。『アル中ワンダーランド』『湯遊ワンダーランド』『犬々ワンダーランド』などのコミックエッセイが人気。※『anan』2024年3月6日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2024年03月06日『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』をより深く楽しむため、ここまで烏野と音駒の両校がたどってきた道のりを、プレイバック。日向翔陽「バレー好き?」孤爪研磨「別に なんとなくやってる…嫌いじゃないけど…」(1期/第11話)日向と研磨の初の邂逅は、ほんの偶然から。烏野高校バレーボール部に入部してまもなく、ロードワークに出た日向が道端で出会ったのが、座り込んでゲームをしていた研磨だった。そのときは名前も素性も知らず、カバンの中のバレー用のシューズを見て、嬉しくて声をかけただけ。しかしそのすぐ後、練習試合の相手だったことを知り、互いに興味を惹かれるように。いま思えば、人見知りの研磨が見ず知らずの日向と会話してたことがすごい。夜久衛輔「彼だって相当レベルの高いリベロなのに慢心するどころかひたすら上だけを見てる…恐いっスねェ」夜久衛輔「3番さんのレシーブ凄かったっス」(1期/第13話)ハイレベルなリベロ同士だからこそのリスペクト。初めての音駒との練習試合で、その守備力の高さに苦しめられた烏野。試合後、音駒のリベロ・夜久に話しかける機会を窺っていたのは、烏野で同じくリベロの西谷だった。てらいなくまっすぐに称賛の言葉を口にする西谷に、リベロというポジションへの誇りと、バレーへの真摯な姿勢を感じた夜久。この時点ですでに夜久は、西谷が現状に甘んじず、さらに進化していくことを確信していたはずだ。田中龍之介「なんだお前!けっこうイイ奴だな!」山本猛虎「…お前もな」(1期/第13話)烏野女子マネージャーの美しさを通じて一気に親密に。烏野の田中と音駒の山本は、どちらも熱血で硬派で仲間を大切にする一方、血の気が多く、敵となれば威嚇するという似た習性の持ち主。それゆえ当初は何かというと対立していたが、山本が田中に烏野のマネージャー・清水潔子の名前を尋ねながらも、「(本人に)話しかける勇気は無い」と素直にぶっちゃけたことから一気に打ち解け、互いに意気投合。その後、ライバルながらも固い絆で結ばれた友人関係に発展。日向翔陽「次は… 絶対…必死にさせて俺達が勝ってそんで―“悔しかった”とか“楽しかった”とか「別に」以外のこと言わせるからな!!」(1期/第13話)日向と研磨の因縁はまだまだ始まったばかり。初の烏野vs音駒の練習試合は、3戦やって烏野の全敗。たとえ練習でも勝ちたい日向は、圧勝しながらも淡々としている研磨が不思議でたまらない。「今日勝ってどう…思った?」と尋ねると、返ってきたのは「…別に普通…かなあ」と、やっぱり淡々とした様子。それは、烏野がまだ研磨を熱くさせるほどの対戦相手ではないということでもある。ここから徐々に研磨が変化していく姿が興味深い。黒尾鉄朗「君MB(ミドルブロッカー)ならもう少しブロックの練習した方がいいんじゃない?」(2期/第7話)いまいち本気にならない月島を黒尾がわざと皮肉で挑発。インターハイ予選で青葉城西高校に敗退した烏野は、さらなる成長を求めて、音駒高校と梟谷学園高校、森然高校、生川高校がおこなっている合同合宿に参加することになる。陽が落ちるまで練習した後も、みんなが自主練を続ける中、月島だけはひとり冷めたまま。身長にも頭脳にも恵まれながら、あと一歩を踏み出そうとしない月島のことをもったいないと感じた黒尾は、発奮させようと挑発を試みる。月島蛍「僕は純粋に疑問なんですがどうしてそんなに必死にやるんですか?」(2期/第8話)月島が烏野のブロックの要へと成長を遂げるきっかけに。幼馴染みの山口に「頭脳もセンスも持ってるくせに、どうしてこっから先は無理って線引いちゃうんだよ!」と詰め寄られるも必死になれない月島は、自主練中の黒尾らの元へ赴き、「たかが部活」になぜそんなに必死になるのかと疑問を投げかける。そんなやり取りをきっかけに、黒尾からブロックの技術を学ぶようになった月島は、いつしか烏野のブロックの要へと成長を遂げていく。孤爪研磨「根性って多分最終奥義精神と体力を鍛えてきた者が満を持して発動できるもの」(4期/第18話)つねに淡々と冷静な研磨が語るチームへの信頼。春の高校バレー2回戦で、早流川工業と対戦した音駒。早流川の作戦は、音駒の頭脳である研磨を疲れさせるというもの。体力のない研磨は、敵の作戦通り第2セットで疲労のピークに。しかし、じつはそれも敵の策に乗ったと思わせ相手を翻弄する研磨の戦略だった。粘りと集中力を必要とする作戦だが、「できるよ。みんなは根性の使い手だから」との研磨の言葉に、チームメイトへの信頼が滲む。黒尾鉄朗「チームワークがハマる瞬間ってのは多分お前が思ってるよりずっときもちいいぞ」(OVA『ハイキュー!! 陸VS空』「ボールの“道”」)ひとりよがりだったリエーフがチームワークに目覚める。全国大会への出場権をかけた春の高校バレー東京都予選で、自分がいかに活躍するかばかりを考えているリエーフに対して、チームで勝つことの面白さを説いた黒尾。当初はピンときていなかったリエーフだが、3位決定戦の戸美学園との試合中、すべてのプレーがチームメイトとの連携により成り立っていることを自覚。同期の芝山優生との連係が成功したことで、チームワークの大切さと面白さに気づく。いざ、決戦の舞台へ!(4期/ 第25話)激戦を勝ち抜き、ついに訪れた決戦のとき。春の高校バレー2回戦で、優勝候補と謳われた稲荷崎高校を接戦のうえで破った烏野。そして同じく2回戦で、研磨の見事な戦略により早流川工業を倒した音駒。前日に激闘を制した両校が、決戦の朝、会場前で顔を合わせる。ここまで共に切磋琢磨を重ねてきた両校が、ついに約束の地で邂逅する。互いの長所も短所も知り尽くした好敵手。その結末は、劇場でぜひ目撃してほしい。『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』原作/『ハイキュー!! 』古舘春一(集英社 ジャンプ コミックス)監督・脚本/満仲勧キャラクターデザイン/岸田隆宏総作画監督/千葉崇洋アニメーション制作/Production I.G全国公開中©2024「ハイキュー!!」製作委員会©古舘春一/集英社※『anan』2024年3月6日号より。構成、取材、文・望月リサ(by anan編集部)
2024年03月04日『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』ついに公開!烏野vs音駒、因縁の行方は?ひたむきにバレーボールに打ち込む高校生たちの青春を描く『ハイキュー!!』。その魅力は勝者に目が注がれがちなスポーツの世界にあって、バレーを愛するすべての人に光が当てられているところ。主人公・日向翔陽が影山飛雄という相棒を得てチームの要になったように、対戦相手や練習試合の相手、マネージャーやOB、応援団…あらゆるものがそのプレーや勝利を支えている。そのあたたかい視点があるからだ。そんな『ハイキュー!!』で、初期から描かれてきたのが、主人公が通う烏野高校と音駒高校との長年の因縁。これまで何度も練習試合を重ね切磋琢磨してきた両校が、今回の劇場版「ゴミ捨て場の決戦」で初めて公式試合で対戦する。制作陣の熱量に圧倒される!劇場版『ハイキュー!!』のここがすごい。たかがバレーの試合。それでも何かに打ち込んだ経験がある人なら、きっと心震わす瞬間があるはずだ。長きにわたる因縁・ゴミ捨て場の決戦がついに開幕。もともと宮城の烏野と東京の音駒がライバル関係になったのは30年前。現在、烏野のコーチを務める烏養繋心の祖父・烏養一繋と音駒の猫又育史監督とは中学時代にバレーでしのぎを削った仲。しかし高校では直接対決が叶わず、母校の監督となってから、いつか全国大会でと約束していた。すでに退任した一繋の志を孫の繋心が引き継ぎ、過去の約束が果たされると思うと、より胸アツ度が増す。劇場版だからこそ描ける大迫力の試合シーンに注目。アニメ『ハイキュー!!』の魅力のひとつは、バレーの試合を動きのある絵で見られること。テレビシリーズでもあらゆる角度から、さまざまな手法で臨場感のある試合を見せてくれていた。そして今回の劇場版はそこからさらにパワーアップ。迫力たっぷりの映像に、手に汗握ること間違いなしだ。研磨と黒尾の出会いから現在までの歴史に泣ける。今回の主人公ともいうべき存在が、音駒のセッター・孤爪研磨だ。子供の頃から他人と関わるのが苦手で家に引きこもりがちだった研磨。しかし黒尾鉄朗と出会ったことで、気が進まないながらもバレーを始め、体を動かすことが苦手なのにもかかわらずここまで続けてきた。今回、ふたりの歴史が回想シーンで描かれることで、多くを語らない研磨の心情に迫ることができ、共感度は一層増すはず。それぞれの努力の軌跡が進化となってあらわれる。今回描かれる試合は、春の高校バレー3回戦。両校とも、ここにたどり着くまでにさまざまなライバルと対戦し、その中で自らの弱点や多くの課題にぶち当たってきた。もっと上を目指すために、それぞれがその課題と真摯に向き合い、地道な練習を重ねてきた成果、その成長の跡が、試合の中で発揮される。あのときのあの悔しさも、進化のためには必要だったんだと思える。それこそが本作の魅力だ。お馴染みのキャラクターたちも多数登場し場を盛り上げる。両校の戦いには、多くのライバルや仲間たちも注目。上段左からシーンごとに、音駒のリエーフの姉・アリサと猛虎の妹・あかね。音駒と東京予選を戦った戸美学園の大将優と恋人の美華。烏野の田中の姉・冴子。烏野や音駒と合宿をおこなった森然高校の千鹿谷と小鹿野、生川高校の強羅。烏野と宮城大会決勝を戦った白鳥沢学園の五色、天童。月島の兄・明光、烏野OBの滝ノ上、嶋田。両校のライバル校・梟谷学園の赤葦と木兎。知ってる顔が登場するだけでアガる。『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』原作/『ハイキュー!!』古舘春一(集英社 ジャンプ コミックス)監督・脚本/満仲勧キャラクターデザイン/岸田隆宏総作画監督/千葉崇洋アニメーション制作/Production I.G全国公開中©2024「ハイキュー!!」製作委員会©古舘春一/集英社※『anan』2024年3月6日号より。構成、取材、文・望月リサ(by anan編集部)
2024年03月04日アニメ化が決定している大ヒット作『チ。―地球の運動について―』では、異端とされた地動説の証明に命を賭けた人々を描いた、魚豊さん。最新作『ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ』のテーマは陰謀論なのだが、世界を揺るがしたふたつの出来事が創作のきっかけになっている。深読みしすぎて迷宮入り!?恋と陰謀論が行き着く先とは。「ひとつは、2021年にアメリカで起きた議事堂襲撃事件。あまりにもセンセーショナルで驚いたのと同時に、陰謀論にまつわるこれほど大きな事件は、今後起こりようがないだろうと思いました。だけど翌年に、ロシアとウクライナの戦争が始まって。ほぼリアルタイムで送られてくる戦地の映像に対して、SNSなどでは『これは陰謀で、ウクライナではそれほど人は死んでいない』なんてコメントを見かけたりする。戦争という大惨事すら呑み込んでしまうくらい、陰謀論は大きな事象になっていて、なくなるどころか、もはや人間がずっと付き合っていかなければならないものだと思ったんです」そもそも、陰謀論にハマりやすいと自覚している人なんていないはず。主人公の渡辺も例外ではなく、食肉の冷凍倉庫で積み下ろしのアルバイトをしながら、人生を好転させようと自己啓発セミナーに参加していたものの、まんまと騙されてしまう。失意のどん底にいた彼を救うのが、飯山さんという女性だった。「陰謀論に陥る人は、物事を深読みしがちなところがあるらしいんです。その情報の奥に本当のことがあるのではないかと必要以上に疑ってしまう心理は、恋愛に置き換えてみると意外と身に覚えがあったりしますよね。陰謀論を信じる人の気持ちはイメージしにくいけど、恋と絡めれば身近なこととして描けるかもしれない。この発見は大きかったです」裕福な家庭に育った大学生の飯山さんは、世の中を良くしたいという高い志を持っている。フリーターの渡辺とは、いわば住む世界が違うのだが、“恋は盲目”状態の彼にはそれさえも燃料になってしまう。「経済的・文化的格差は、残酷な現実としてあらゆる場面に存在していますが、心だけは平等だと思うのです。渡辺と飯山さんのようにたとえ格差があったとしても、通じ合うことはできるっていうのも、描きたかったことのひとつだったりします」恋心が暴走して渡辺はやがて謎の組織と接触するのだが、1巻は序章としてもたっぷりの読みごたえ。「よくわからない存在として陰謀論者を切り捨てるのではなく、共感できなくても認知はするというような、エンパシーが今の時代は大事だと思うんです。3作目にこのテーマで作品を描くチャンスを頂けたことを誇らしく思います」魚豊『ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ』1「人生が始まってる気がしない」19歳青年が、意識の高い女子大学生を好きになり、世界を揺るがす陰謀論と出合う、前代未聞のラブコメ。3月12日に2巻発売予定。小学館715円©魚豊/小学館うおとマンガ家。2018年「ひゃくえむ。」で連載デビュー。『チ。―地球の運動について―』で第26 回手塚治虫文化賞マンガ大賞など数々の賞を受賞。※『anan』2024年2月28日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2024年02月27日今回ウーマンエキサイト編集部ライターの独自目線とあらすじを交えてご紹介するコミックは「うちのダメ夫 達也の場合」です。20代後半の専業主婦、萌。夫の達也とは職場が同じで、仕事をテキパキとこなす姿に惹かれていたのですが…。出産後、夫の家事育児はうまくいかず。怒ってばかりいる萌なのでした…。■理想的な旦那さん でも育児は大変過ぎて…萌は職場で見る達也のテキパキとした仕事姿がカッコいいと思っていました。二人は授かり婚をし、妊娠中も達也はパパママ教室に一緒に通って、理想的な旦那さんでした。しかし、出産後の家事育児は大変で…。■家事育児 夫に任せたものの…疲労困憊の萌を見て、達也が家事育児を頑張ってくれていたのですが…。「オムツがズレた」「ゲップしてくれない…」と、事あるごとに寝ている萌を呼びます。泣きつく達也を見て、萌は呆然とするのでした…。こちらは投稿者のエピソードを元に、ウーマンエキサイトで公開された漫画です。ここからはネタバレ!?ライターが気になった場面をピックアップします!■出来ない夫に激怒 見方を変えると…?出産間もない家事や育児、慣れない事ばかりで親としても体力的にも辛い時期ですよね…。そんなとき、頼りにしていた夫が仕事は出来るのに、家事や育児が全くダメって、もう…!萌の気持ちも分かりますが…。今回は、育児を頑張ろうとする達也の空回りをピックアップしました。激怒していた萌の変化にも注目です!萌は姉に言われて、協力的な達也のダメな部分ばかりに目が行っていたことに気が付きます。赤ちゃんの育児の時は色んな事にナーバスになるものですね。命にかかわることとなると激怒する萌の姿に共感する読者もいるのではないでしょうか。達也の優しさに気が付いた萌。この後、萌は達也にどう歩み寄っていくのでしょうか…。▼漫画「うちのダメ夫 達也の場合」
2024年02月27日同じクラスの前後の席になったことがきっかけで、少しずつ距離を縮め、はじめての彼女/彼氏の関係になった荻野美穂と村田くんの恋の行方を描く『きらきら、あおい』が大バズり中のitoさん。主人公と同じ世代はもちろん、初恋から遠くなった大人たちの心もくすぐる繊細な作品だ。テーマははじめての恋愛。ふたりのピュアさや不器用さに胸キュン必至。「前作『だけどやっぱり彼が好き!』の試し読みとしてふたりの短編をインスタに載せたところ、『続きが読みたい!』とのお声をたくさんいただいたんです。もともと高校生の恋愛物語を描きたい気持ちはボンヤリとあったのですが、フォロワーさんからの言葉がなければ描けていなかったかもしれません。感謝しています」1巻で描かれるのは、はじめての告白、はじめての手つなぎ、はじめてのキス…ややスローに関係が深まっていくふたりの1年数か月。自分の体験と重ねて、あるいは憧れて、ドキドキしたりじれったかったり、読者にいろいろな思いを抱かせる。「自分的には大勢が共感できるものをというよりも、超“主観”を意識しています。ふたりの恋愛模様を描いているのですが、物語の進行は美穂の一人称視点を徹底させました。等身大の素直な思いを描くことでリアリティが出たらいいなと」水彩画のような柔らかなitoさんのタッチが、このみずみずしい初恋物語によく合っている。itoさんはイラストレーターとしても活躍しているが、マンガを描くときとどんな意識の違いがあるのだろう。「大きく違うのは人物の表情ですかね。俳優とモデルの違いに近いのかなと個人的に思っているのですが…。漫画は人物の感情を伝えるために表情を描きますが、イラストは他の大切な情報を伝えるための補助の役割であることが多いので、最初に顔に目が行くような主張はしすぎないようにするのが重要かなと。意識としては真逆なのでとても難しいですが、奥が深くて楽しいです」物語が進むにつれ、ふたりの恋愛に対するスタンスや価値観の違いなどが見え始め、ハラハラ感が加速。「恋愛って最初のドキドキ期間が終わったら、どこまでも現実的な人間関係になっていくというか、あらゆる人づきあいにおいて根本的に大切なことは同じ。ありがとうやごめんなさいが言えるかとか。いわば人間力が試されるので、高校生のふたりには大きな試練。ふたりの成長を見守るつもりで描いています」ito『きらきら、あおい』1恋人とのありふれた情景がいかに忘れがたいものだったかを思い起こさせてくれる極上のコミック。Webコミックメディア「路草」にて連載中。トゥーヴァージンズ979円©ito/トゥーヴァージンズイトマンガ家。高知県生まれ。2017年からInstagramにマンガやイラストをアップするようになり、’19年に初単行本『だけどやっぱり彼が好き!』を刊行。※『anan』2024年2月21日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2024年02月19日今回ウーマンエキサイト編集部ライターの独自目線とあらすじを交えてご紹介するコミックは「義父母がシンドイんです! 愛の場合」です。愛は仕事好きで、どちらかというと隠し事が嫌いで思ったことは口にすぐ出てしまうタイプ。夫は逆で、人の面倒をみるのが好きで、頼まれると断れず自分で抱え込んでしまいます。優しい性格の夫と気が強い愛とは相性が良く二人は結婚生活にとても満足して過ごしていました。義母と義妹が来るまでは…。■聞いてない!義母たちと突然の同居愛は夫と家でのんびりしていると…。突然、義母と義妹が家にやってきます。夫が愛に相談なしに、義妹の結婚相手を探すため上京して3カ月の同居を決めてしまいました。夫は愛に迷惑は掛けないと言いますが…。■ズレてる? 義妹の婚活義妹は結婚するなら兄が良いと言うほど夫の事が大好き。兄の家で婚活したいと言い出すもなかなか結婚相手を見つけられないでいました。家事の負担も増え、愛の怒りはピークに…!こちらは投稿者のエピソードを元に、ウーマンエキサイトで公開された漫画です。ここからはネタバレ!?ライターが気になった場面をピックアップします!■最悪の状況を打開 義妹への助言とは?妻に内緒で、夫が義母と義妹との同居を決めてしまったという状況にビックリ!妻の立場からすると「ありえない!」ですよね…。しかも義妹の婚活って?3カ月限定って長い!など読んでいて突っ込みどころ多すぎです!妻に内緒で…という箇所も、気になりますが…。今回注目したのは、愛が義妹へアドバイスする場面です。婚活が上手くいかない義妹。愛の助言によって、義妹の心境に変化が生まれます!どんな風に変わっていくのか…!?▼漫画「何かズレてる義母と義妹のおしかけ同居で大混乱…私たちどうなっちゃう?」
2024年02月01日デビュー作の『先生と僕~夏目漱石を囲む人々~』や『漱石とはずがたり』など、漱石やその弟子たちを描くコミックなどを多く手がけてきた香日ゆらさん。最新作『JK漱石』は、漱石が没後100年の現代に、なぜか女子として生まれ変わってしまったという転生モノ。朝日奈璃音(りおん)という名で、女子校の人間関係に右往左往したり、友だちと一緒にお茶をしたりと、女子高生ライフを堪能している。文豪が現代に生まれ変わったら?女子高生になった夏目漱石の運命は。「漱石については人物史からこぼれ話までだいぶ描いたので、これ以上は難しいかなと思っていたのですが、漱石であって漱石でない人物としてなら、また一から漱石を知ってもらうために描けるかなと。また、漱石や文学に興味のない人にも読んでもらえるかも、と思ったんです」文豪と女子高生。一見、真逆の存在だが、香日さん曰く、「資料などを見てもわかるんですが、結構身だしなみなどに気を遣うし、身のこなしも上品な方だったようです。なので案外、ギャップや違和感はなかった」そうだ。キャラデザは、漱石は天然パーマでタレ目なので、璃音はストレートヘアでつり目にするなど、漱石の特徴をキャッチアップして反転させて作り上げた。「とはいえ、璃音の地は漱石なので、顔の造作が違っても漱石の表情をさせる。そういうのがポイントかなと。苦虫を噛みつぶしたような表情をさせたり(笑)」ストーリーは基本的に1話完結。毎回、流行のスイーツを友だちと食べたり、推し話をしたりと、女子あるあるの出来事を軸に展開する。「今回は漱石の作品よりも、談話や評論などをネームに活かしています。実在の人物を元にしているので、絶対ひっくり返してはいけないポイントがあって、その点をどう結ぶか、璃音や彼女の周辺の女の子たちの日常をどう絡めていくか、という点を工夫しました」2巻では、漱石が可愛がっていた若き芥川龍之介とのエピソードなども登場。マジメな文学談義がある一方で、漱石と璃音がオーバーラップすることで醸し出されるコメディパートも楽しい。「漱石は同時代に生きていた人にも後世の人にもすごく影響を与えた、まさに文豪です。私もファンになったことでマンガ家になる人生なんて想定していなかったのになってしまって、メンタルのみならず物理的に人生が変わったんです。あらためてすごい存在だなと思いますね」『JK漱石』2自他ともに認める漱石マニアの香日さん。膨大な資料と深い読解で作り上げた独特の漱石ワールドが、本作でも軽やかに炸裂。今年中に3巻を刊行予定。KADOKAWA682円©香日ゆら/KADOKAWAこうひ・ゆらマンガ家。青森県出身。同人活動で細々と漱石をめぐるマンガを描いていたところ、編集者から声を掛けられ、2009年に商業誌デビュー。※『anan』2024年1月31日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2024年01月30日“息が合う”ことの難しさと喜びを描く、吹奏楽青春譚。山本誠志さんによる『宇宙の音楽』をご紹介します。本作のタイトルになっているのは、吹奏楽の超難曲とされる曲。宇宙(たかおき)零はこの曲を聴くと、病室と消毒液の匂いを思い出す。有望視されるトランペット奏者だった彼は、持病のぜん息で夢を阻まれてしまったのだ。「吹奏楽の本質は“息を合わせる”ことですが、それができない主人公にしようと思いました。僕も小さいときに軽いぜん息を経験しているので、感情を込めて描けるかなという思いもあったんです」と、著者の山本誠志さん。零はあえて吹奏楽部がないはずの高校に進学するが、創部したての吹奏楽部と、部長で独特の感性を持つ星野水音(みお)と出会い、彼女の導きで指揮者を志すことに。「音楽はひとりでできると思っていた零が、ほかの奏者がいないと成立しない指揮者になる。その過程を通して、人と共にいる喜びを知る姿を描こうと意識していました」挫折を味わっているものの、音楽の才能に溢れる零は生意気で理屈くさく、社交的なタイプではない。そんな彼が1年生ながら、創部して日が浅いチームを指揮者としてまとめようとしても、もちろんそう簡単にはいかないのだが、それぞれの巻で見せ場となるのが演奏シーン。読み手も呼吸を重ねながらページをめくっていく高揚感を味わえる。「海外では吹奏楽をウィンドバンドと呼んだりするのですが、息が集まって風が吹き抜けるような爽やかさや力強さを表現したかったんです。マンガの大前提として音を出すことができないので、音以外の周辺の部分を丁寧に描くことを心がけていました。それこそ音楽以外の場面で、たとえばマンガを描いていても編集さんと息が合う瞬間があったりするので、そういう感覚も後半のほうでは特に大事にしていましたね」演奏の難しさと喜びが生き生きと表現されているのは、山本さん自身が吹奏楽経験者であることも大きいだろう。本作が連載デビューになるのだが、これまでも一貫して吹奏楽を題材にしたマンガを描いてきた。「『アイシールド21』や『SLAM DUNK』のようなスポーツマンガに対する憧れと、中学で始めた吹奏楽に夢中になる気持ちが重なって、好きなマンガで、好きな吹奏楽を広めたいと思ったのがきっかけです」そんな山本さんにとっても指揮者は未知の部分が多い存在で、チャレンジングな設定だったようだ。「スポーツでいったら監督的な立場なので、高校生だと学生が指揮棒を振ること自体が少ないんです。でも責任が重いぶん、最も成長できるポジションなのかなとも描きながら思ったので、この作品を機に指揮に興味を持つ人が増えたらいいですね」山本誠志『宇宙の音楽』3音楽と孤独に向き合っていた少年が、再び皆で奏でる喜びを味わう青春物語。コンクールを控え練習に励むなか、最大のピンチに遭遇する最終巻を見届けよう。講談社836円©山本誠志/講談社やまもと・まさしマンガ家。「先輩とクラリネット」で月刊少年マガジン新人賞準入選。最新作は「ホルンは後ろに鳴く」。自身もクラリネット奏者。※『anan』2024年1月24日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2024年01月24日『大奥』『きのう何食べた?』など近年は長編作品が続いていた、よしながふみさん。『環と周』は1巻完結の連作オムニバスだが、構想自体は16~17年ほど前からあったのだそう。時代も関係性も異なる環と周のかけがえのない巡り会い。「最初の現代の話と最後の江戸時代の話は、大まかに考えていました」しかし先述の2作の連載が予定以上に長引いて、このタイミングに。「当初は恋愛関係の男女を描くイメージでしたが、環(たまき)と周(あまね)の性別が時代によって入れ替わったりして、より幅広い関係性になったのは、今だからこその変化といえますね」現代編では、中学生の娘と同級生の女の子のキス現場を目撃する妻と、それを報告される夫の反応が描かれる。誰にも打ち明けていないものの、夫の初恋相手も実は同性で……。明治時代編では女学校で出会い、結婚後も文通を続ける2人の女性が。’70年代編は余命わずかの中年女性と、同じアパートに住む少年の交流が。戦後編では、帰還したかつての上官と部下が闇市で助け合って生きる姿が。江戸時代編では、仇討ちのために再会する幼馴染みの男女が登場。「それぞれの時代の人にとっての普通の感覚を意識しました。たとえば明治時代の女性は、親の決めた相手との結婚に疑問すら持たなかったかもしれませんが、女学校という今までなかった世界でお友達を作ることが可能になるわけです。不自由さだけに目を向けず、できることが増えていたのだと想像して描きました」環と周、同名の人物が出てくることと、“好き”を描いていることだけが共通項に思える各話が、どうつながるのか。大恋愛のようにドラマティックでなくとも、どんな人生もかけがえのない出会いに溢れていると思わせてくれる読後感が心地よい。「あのときあの人に出会わなかったら、今の自分はなかったと思えるような出会いって、たくさんあると思うのです。たとえ悲しい別れ方だとしても、どの話もこの人に会えてよかったという喜びを前面に出そうと思いました。冒頭の現代の夫婦が一番平凡なんですけど、彼らは平凡だからいいのかなという気がします。そう考えると自分の隣にいる職場の人や同級生なども、実はすごくご縁のある人かもしれないですよね」久しぶりに短編を描いたことについては「楽しかった」と振り返る。「5つの短編で見えている景色がすべて違うので、描き手としてもいい経験ができてありがたかったです」よしながさんの短編を、読み手としても久々に堪能できる喜びを!よしながふみ『環と周』家族、恋人、友人などさまざまな関係性で綴られる、“好き”のかたち。どんな時代にもあったはずの、かけがえのない出会いと喜びに光を当てた連作オムニバス。集英社748円©よしながふみ/集英社よしながふみマンガ家。1994年デビュー。昨年後半は『大奥』『きのう何食べた?』のドラマも放送。2024年より芸能界を舞台とした新連載を『ココハナ』で開始予定。※『anan』2024年1月17日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2024年01月17日■前回のあらすじ突然、イケ杉から「俺たち付き合わへん?」と告白され、動揺するパチ美。しかしイケ杉は、一緒にいて楽しいし、歌っている横顔を見てたら付き合いたいと思ったと、サラリと追い打ちをかける。そして、「電話ジャッジ」をクリアしたから、パチ美にとっても問題ないはず、と言い出す。実は、待ち合わせの際に電話をしていたのは嘘で、“電話をしている自分の姿を見て、もし彼氏候補にならなければ、相手が電話中に帰れる”ということらしい。本人は「メンちゃんメソッド」と名付けてご機嫌な様子だが、パチ美は会話の内容や思考が子供っぽいと感じてしまう…が、相手は爽やかすぎるイケメン!細かいことは気にせず、付き合うことになり…。この後、地獄が待ってるとも知らず、浮かれポンチだったというパチ美さん。いや、突然イケメンと付き合うことになったら、そうなっちゃいますよね。徹夜でイケ杉さんの顔を眺めているなんて、どれだけイケメンなんだろう?と想像力を掻き立てられます。そして、イケ杉さんから届いたお誘いのメッセージ。さぞ楽しいカップル生活がスタートするかと思いきや…。次回に続く「ヤバすぎるイケメン彼氏と縁切り神社で縁切った話」(全43話)は22時更新!
2024年01月14日ウェブマンガの最前線を知りたいなら、“このキーワードを知っておけ、ベスト4”!マンガ界隈、いま気になることニュースをお届けします。「お前との婚約を破棄」で幕が開く!一時期のウェブマンガといえば、現代人が不慮の事故で異世界の令嬢に転生し…という、“転生モノ”が花盛りでした。そこにも流行があるようで、ここ最近は、下の4つの要素のいずれか、あるいはすべてを含んでいる作品が増加中。「主人公は小さい頃に親から定められた婚約者(だいたい第一王子)とそろそろ結婚できる年齢になった令嬢。令嬢はみな魔力があるといわれる世界で、なんと主人公には魔力がない。そんな主人公を軽んじていた彼女の妹(魔力持ちの聖女)が姉の婚約者をそそのかし、王子は姉との婚約破棄を宣言、妹と結婚。でも実は姉は、妹より強い魔力を持つ(本人自覚なし)聖女であった…」的な展開が多く、「婚約破棄を宣言する!」というセリフで物語が始まると、「来た!来た!」とワクワク。このお約束が気持ちよく、そしてクセになるから危険です!!キーワード“ベスト4”【聖女】魔法に近い特別な力を持ち国や民のためにその力を使う神聖な存在。【婚約破棄】幼い頃からの許婚から突然婚約破棄を言い渡され、物語が始まる。【姉妹】実の妹や義妹に、主人公が婚約者や恋人を奪われる設定も多数。【魔力】敵を倒したり結界を張るなどの特別な能力。スキルとも呼ばれる。キーワードを含む、人気作を4つご紹介。『誰にも愛されないので床を磨いていたらそこが聖域化した令嬢の話』漫画・皐月 文原作・ひだまりキャラクター原案・双葉はづき家族の愛もスキルもない。妹に婚約者を奪われ修道院に入ったステラは、引きこもり王子と出会い…。1~2巻704円~/双葉社マンガがうがうなどで11話まで配信中。©皐月文・ひだまり/双葉社『完璧すぎて可愛げがないと婚約破棄された聖女は隣国に売られる』漫画・綾北まご原作・冬月光輝キャラクター原案・昌未歴代最高の聖女といわれたフィリア。婚約破棄をされた挙げ句、隣国に売られてしまう。1~4巻各726円/オーバーラップコミックガルドなどで21章まで配信中。©綾北まご・冬月光輝/オーバーラップ『「赤毛の役立たず」とクビになった魔力なしの魔女ですが、「薬草の知識がハンパない!」と王立研究所に即採用されました。』漫画・天宮こなつ原作・糸加薬草工房をクビになった、魔力のない魔女のルジェナ。偶然知り合った貴族のエーリクに王立研究所に誘われ…。1巻737円/白泉社マンガParkなどで12話まで配信中。©天宮こなつ・糸加/白泉社『精霊魔法が使えない無能だと婚約破棄されたので、義妹の奴隷になるより追放を選びました』漫画・多花葉ねみ原作・めぐめぐ(エブリスタ)精霊魔法が使えない無能力者の公爵令嬢・エヴァ。婚約者と義妹の画策で国外追放になり、使用人たちと隣国を目指す。1巻715円/集英社各電子書店で7話まで配信中。©多花菜ねみ・めぐめぐ(エブリスタ)/集英社※『anan』2024年1月3日‐10日合併号より。写真・土佐麻里子多田 寛(by anan編集部)
2024年01月10日お金のない人でもツケ払いで食事ができるとうわさの千田食堂。その善意は本当で、タダめしにありつけると、水津竜丸らグレた3人の男子高校生たちのたまり場に。千田おじいさんの優しさに触れるほど、おじいさんに憎まれ口を叩くようになる竜丸。そんなある日、食堂の扉が閉まっていて…。優しさを掛け違いながらも互いに関わり、成長していく人たちの物語『マイ・リグレット』に、ほろりとする。その著者が砂糖野しおんさん。後悔から立ち直ることはできる。そんな希望を抱かせてくれる感動作。「やさぐれ主人公に、強烈な後悔を植え付けることから始めたいと思ったんです。“食べること”は生きるのに必要不可欠な欲求であり、年頃の少年たちが集まる十分な理由になると考えたんです。そこから食堂という案を思いつきました。返す当てもないツケ払いでごはんを食べ、罪悪感を覚えながらも千田おじいさんの優しさから抜けられなくなり、罪悪感を抱えたまま優しい居場所だけを突然失う…。言ってみれば自業自得だけれど心痛い始まりは、この物語でしか描けなかったと思います」千田おじいさんには、繊細すぎて社会になじめず、引きこもってしまった孫の千田涼介がいる。おじいさんの愛情に甘えていたのは竜丸も涼介も同じなのに、最初は互いを〈社会のゴミ〉〈クソニート〉と罵り合う犬猿の仲。だが、言い合いをするたびにそれぞれが自分に何が足りないのかに気づいていく。少しずつ変化していく彼らの心情が細やかに描かれ、読む者の心を揺さぶる。「竜丸と涼介は“後悔”という共通点こそありますが、年齢も性格も価値観も全然違う者同士。パッとすぐには分かり合えない方がリアルですよね。なかなか仲良くならないのでじれったくもありますが(笑)」登場人物の表情が豊かで、その表現力にも引き込まれる。「作画では、喜怒哀楽だけでなく、それ以外の言葉にしにくい表情など、そのときどきの感情に合わせた行動なども描くように意識しています。たとえば竜丸は人前で泣いてしまったのが恥ずかしくて、俯いたり顔を隠したりしていますが、そういったそのキャラクターならではの仕草を描くのが好きです」優しくされても、その感謝を適切な形で相手に伝えられず悔やんだような経験は誰にでもあるだろう。「私にも、その当時はそうするしか自分らしくいられなかったと思う経験があり、そこから広げて生まれた作品です。取り返しのつかない後悔で苦しくなったときや、ふと立ち止まりたくなったときに、この物語がそっと寄り添えるような存在になっていれば幸いです」『マイ・リグレット』2竜丸の仲間である勇仁や大和、涼介のお母さんなどサブキャラもみな魅力的。特に、竜丸の変化に疎外感を感じる勇仁のジレンマには共感必至。全2巻。KADOKAWA770円©砂糖野しおんさとうの・しおんマンガ家。愛知県出身。少女マンガ誌『Cookie』に読み切り作品を投稿。受賞を経て、2022年、「COMIC it」にて本作で商業デビュー。※『anan』2024年1月3日‐10日合併号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2024年01月09日紙のコミックスだけでなくデジタル配信も増え、マンガにまつわるシーンはますます活況。そんな中で人気マンガアプリ&ウェブ担当者に聞く、anan読者に今読んでほしいオリジナルマンガをご紹介!無料作品も多数、使わないと損です!コミックスのページをめくるのも楽しいけれど、手軽なのは、スマホやタブレットによる読書。ただアプリの数も増えているため、久しぶりにマンガを読もうと思った時に、「どのアプリを使えばいいの…?!」となる人も多いはず。ということで、女性向けマンガが充実しているアプリ&ウェブサービスを、今回改めてご紹介。「Palcy」と「マンガMee」「マンガPark」は出版社が提供しているマンガアプリで、「コミックシーモア」「ブックライブ」「Renta!」は、オリジナル作品と出版社系の両方が読める、書店のようなウェブサービス。さらに各サービスの担当者に、おすすめのオリジナル作品を教えてもらいました。どれもオリジナルの作品が多数揃っており、また“1話”ごとに購入できる作品が多いのも特長。さらに、いずれも無料で読めるサービスも充実。気になるアプリ、全部入れてみて!【Renta!】10円からレンタル可能。気軽&お安く電子書籍が借りられる、電子書籍レンタルサービス。1話10円から借りられる作品もあり、買うより気軽と人気(アプリ版とブラウザ版はサービスに違いがあります)。「魔寄せ宮女、孤高の祓魔師に拾われました」原作・柊 一葉著者・HAOJIASI MANGA SHOKUNIN STUDIO「累計閲覧冊数130万冊を突破した、大人気中華ファンタジーマンガ。全ページフルカラー、国内外のファンから“美しい!”と大絶賛されています」(担当者)。1話40円~65話まで配信中。©柊一葉・HAOJIASI MANGA SHOKUNIN STUDIO/Rentaコミックス【ブックライブ】マンガを含め100万冊以上!1冊丸ごと無料の作品も多く、会員登録することなくすぐに読める、電子書籍の総合書店。割引クーポンが充実している(アプリ版とブラウザ版はサービスに違いがあります)。「『きみを愛する気はない』と言った次期公爵様がなぜか溺愛してきます」漫画・水埜なつ原作・三沢ケイ「年間ランキングで2年連続1位の大人気作。政略結婚をした冷淡な次期公爵と頑張り屋なヒロインが、少しずつ心を通わせる展開にときめきます」(担当者)。単話版18話まで配信中。©水埜なつ/三沢ケイ/フレックスコミックス【コミックシーモア】なんと’24年で20周年!国内最大級総合電子書籍サイト。各出版社作品に加えオリジナルも充実。ランキングなどから“流行りのマンガ”にすぐリーチ(アプリ版とブラウザ版はサービスに違いがあります)。「デブとラブと過ちと!」ままかり「元々は超ネガティブな夢子が、事故で超ポジティブ人間に生まれ変わって巻き起こす、楽しいドタバタラブコメ。ドラマ化され、さらにアニメ化も決定」(担当者)。1~54話まで配信中。©ままかり/ソルマーレ【マンガPark】白泉社のマンガはお任せ。『花とゆめ』や『LaLa』など女性向けマンガに加え、『ヤングアニマル』など男性向け作品も網羅。さらに声優のラジオも限定配信中。もちろん連載の最新話、オリジナル作品や過去作も充実。「君となら恋をしてみても」窪田マル「この秋テレビドラマ化もされた、話題の人気作です。舞台は江ノ島、男子高校生たちのもどかしくもピュアな恋物語をぜひ楽しんでください」(担当者)。1~4巻770円~136話まで配信中。©窪田マル/白泉社【マンガMee】集英社の少女マンガが集合。『別冊マーガレット』『ココハナ』などでお馴染み、集英社の少女・女性マンガが読めるアプリ。雑誌連載中、過去作はもちろんオリジナルも豊富で、『サレタガワのブルー』はドラマ化も。「おとなの恋は、やぶさかにつき。」たまこ「憧れシチュエーションたっぷり、世話焼きな駒子と冷徹だけど素顔は破壊力抜群の上司・森崎とのオフィスラブ。不器用な大人の恋模様をご堪能あれ!」(担当者)。1巻715円22話まで配信中。©たまこ/集英社【Palcy】講談社の女性マンガアプリ。’23年に5周年の、少女・女性マンガに特化したアプリ。オリジナル作品に加え、レジェンド作、雑誌連載中の作品のほぼすべての最新話が読める。また全話開放などのイベントも多数。「世界の果ては深愛」中野まや花「“僕のすべてを、好きにしていいんだよ”と言う、愛が重い弟と姉の禁断のラブストーリー。溺愛ならぬ〈深愛〉をぜひ楽しんでほしいです!」(担当者)。1~2巻各550円9話まで配信中。©中野まや花/講談社※『anan』2024年1月3日‐10日合併号より。写真・土佐麻里子多田 寛(by anan編集部)
2024年01月09日年末年始、のんびりおうちで過ごすときのお供といえば、やっぱりマンガ。今の空気感を感じさせてくれる注目のマンガをご紹介。変わり続ける恋愛マンガ、変化球気味な作品を楽しんで。さまざまなジャンルのマンガが出てきてはいるものの、やっぱり恋愛マンガは外せない。注目はこの6作品!男×男、SNS時代の片思いラブ。『インターネット・ラヴ!』売野機子東京に住むネイリストの天馬は、パリで同じホテルに宿泊していた韓国人のウノくんのインスタを偶然見て、かわいい笑顔で踊る動画を公開していた彼に一目惚れ。以来1度も会うことなく、5年間“ネトスト”状態。でもウノくんから突然リプライが!一度も会ったことがない二人の関係はリアルになる?1巻814円/祥伝社©売野機子/祥伝社 FEEL COMICS難儀な女性たちの自意識&恋愛との攻防戦。『スルーロマンス』冬野梅子元・売れない役者のマリとフードコーディネーターの翠。高校の同級生で32歳の二人が、互いに失恋したタイミングでばったり再会、同居を始めることに。マリはお調子者で自己中心的、一方翠は慎重で頭でっかち。恋愛に七転八倒する二人の姿は、面白く、そしてちょっと身につまされる。1~2巻各759円/講談社©冬野梅子/講談社恋…になるのかな、ならないのかな…?『いやはや熱海くん』田沼 朝高校1年の熱海くんは美形ゆえに女子から告白されるのが日常。でも実は彼が好きなのは同性でしかも惚れっぽい。校舎の裏で出会い親しくなった先輩の足立さん、急に話しかけてきたクラスメイトの綿野くん、風変わりな級友の辻くんなど、彼を取り巻く男子たちとの、ゆるく深い会話劇が心地いい。1~2巻748円~/KADOKAWA©田沼朝/KADOKAWA2人の女子による、妙なムードのイケメン観察。『霧尾ファンクラブ』地球のお魚ぽんちゃん女子高生の三好藍美と染谷波は、揃ってクラスメイトの“霧尾くん”のことが好き。友人、そして恋のライバルでもある二人は、一方的に彼を好きになり、妄想を膨らませ、花粉症の霧尾くんのために「花粉になりてェね…」と思いを募らせる。暴走する二人のやり取りが最高に楽しい。1~3巻各770円/実業之日本社©地球のお魚ぽんちゃん/実業之日本社なんと、中国人作家が描く王道少女マンガ。『片思い1 暗恋(AN LIAN)』著・吉 川流翻訳・串山 大中国の人気漫画スタジオ『幕星社』所属の吉川流による、高校生のもどかしいラブストーリー。スマホのメッセージ1つで心が揺れて、背中を見るだけでも妄想が膨らむ…。中国も日本も、片思いのドキドキは同じなのね…と、ほっこり。こちらの作品、累計PV4.6億回という大人気作。中国人パワーすごい!1巻1430円/KADOKAWA©Ji Chuan Liu 2021/KADOKAWA美女&美男子の騙し合いラブコメ。『恋せよまやかし天使ども』卯月ココ学園に入学する前から話題になるほどの美少女、しかも学級委員長を務める桂おとぎは、彼女に引けを取らないビジュアルを持つ副委員長の一刻(にのまえ・とき)に一目惚れ。学校では完璧な二人だが、とあるきっかけで互いの“裏の顔”が露呈。恋愛強者であるはずのおとぎが、刻に翻弄される姿がかわいい。1巻550円/講談社©卯月ココ/講談社※『anan』2024年1月3日‐10日合併号より。写真・土佐麻里子多田 寛(by anan編集部)
2024年01月08日今回ウーマンエキサイト編集部ライターの独自目線とあらすじを交えてご紹介するコミックは「夫がセクハラ加害者に!」です。セクハラやパワハラなど、ハラスメント行為に社会の目が一段と厳しくなってきているこの頃。サチコ自身は幸いにも職場の人間関係に恵まれていたため、他人事に感じていました。しかし、まさか夫がセクハラの加害者になるとは…!■元気のない夫 話を聞くと…アキコは夫と5歳の娘の3人暮らし。ある日、普段はお調子者の夫が元気のない様子で仕事から帰宅。話を聞くと、夫にセクハラの被害届がきているという。夫は大げさだと言うのですが…。■夫にセクハラ被害届 本人自覚無し!?夫は酒が入ると調子に乗るタイプ。アキコは他になにかあったのでは?と問いただします。すると、アキコの不安的中…!夫が失態を犯していたのでした…。こちらは投稿者のエピソードを元に、ウーマンエキサイトで公開された漫画です。ここからはネタバレ!?ライターが気になった場面をピックアップします!■夫婦で乗り越えた 解決策とは?セクハラをしていることに気づいていなかった夫。冷静に行動を促す妻の存在が頼もしい!妻の協力でセクハラを認めた上での謝罪文や再発防止などを書き、夫が人事に提出。その後の展開は本編で!最終的に自分が良かれと思っての行動が相手を傷つけることがあるということを知った夫なのでした。まさか自分の夫が加害者になるなんで想像もつきませんよね。でも誰もが気を付けなくてはならない問題だということを思い知るお話でした。今回は夫婦で乗り越え一件落着でしたが、現実に上司と部下の関係で悩んでいる人は少なくないでしょう。最後に記載されているとおり弁護士や各窓口へ相談することが必要な場合もあります。▼漫画「夫がセクハラ加害者に!」
2024年01月06日「第14回ananマンガ大賞」。’23年も例年通り準大賞に4作品を選出。今回はいずれも恋愛物語。主人公が男子や吸血鬼のマンガに、画風に度肝を抜かれる作品も!ふじもとゆうき『寿々木(すずき)君のていねいな生活』一見強面なのに、趣味は料理と手芸。“見かけによらない”純朴な高校生の、ピュアで優しい青春物語。主人公の寿々木くんは、理不尽な因縁をつけられがちな外見の高校1年生。ルックスとはかけ離れた内面ゆえに中学では辛い目に遭った彼が、高校で友人・春名と出会い、少しずつ自信をつけていく。一方彼が思いを寄せるのが、妹が通う保育園の桜子先生。実は彼女にも見た目とは全く違う“裏の顔”が…。1巻の終わり、中学時代の友人と再会するシーンでの、春名の優しさ溢れる行動は胸に刺さります。1巻693円/白泉社©ふじもとゆうき/白泉社雁 須磨子『ややこしい蜜柑たち』三角関係の次はストーキング?!面倒くさい性格の男女が繰り広げる、思考が読めないカオスなラブストーリー。同性の親友・初夏に執着した結果、初夏の彼氏・白柳を寝取ってしまった美人の清見。初夏との距離感はバグり、さらに白柳とは急接近。そしてすべてを知った初夏は姿を消した…。5年後、仕事の現場で清見と白柳が再会するが…。タイトルどおり、ややこしい人たちが続々登場。キャラクターたちの思考が良い意味で謎すぎて、気がついたら読んでいる自分も恋愛の渦に巻き込まれている、そんな感覚の作品。1~2巻814円~/祥伝社©雁須磨子/祥伝社 FEEL COMICS鈴木ジュリエッタ『推しに甘噛み』オタ活のために日本にやってきた、純度100%のアニオタ吸血鬼女子。なんと隣人が推しにそっくりな男子だった!!30年引きこもりだった吸血鬼のヒナは、日本で放送されている吸血鬼アニメに夢中になり、日本で一人暮らしをすることに。いざ暮らし始めたら、隣に住む甘夏くんが推しのアニメキャラ・マオくんにそっくり!!が、中身は超絶毒舌キャラで、「アニオタ?キメェ!」とヒナに毒づきまくり。でも、なにかとヒナを助けてくれる甘夏くん。この気持ちは推しへの思い?それとも甘夏くんへの恋心…?1~3巻各528円/白泉社©鈴木ジュリエッタ/白泉社嵐田佐和子『キラキラとギラギラ』可憐なヒロインが転校してきた学校は、生徒が全員劇画調というびっくり環境。画風が違う幼馴染みの彼との恋、どうなる!?主人公の姫路ルルが煌々学園から転入した獄門高校は、生徒全員が劇画調のルックス&しかもこの時代なのに、クラスには番長がいる。しかしその番長、もしかしたらルルが10年前に好きだった、幼馴染みの極楽寺くんかもしれない!?ストーリーはちょっと古風な純情恋愛物語なのですが、荒ぶる劇画調の作画が令和にはとにかく新鮮で、出てくるキャラも強烈。ページをめくる手が止められない!1~2巻748円~/KADOKAWA©嵐田佐和子/KADOKAWA※『anan』2023年1月3日‐10日合併号より。写真・土佐麻里子多田 寛(by anan編集部)
2023年12月31日「第14回ananマンガ大賞」に輝いた『太陽よりも眩しい星』の河原和音先生に特別インタビュー!受賞の感想や、作品に込めた思いなどを伺いました。長年恋愛マンガを描いてきた作家ならではのお話も。河原和音『太陽よりも眩しい星』小学生の時から体が大きく、平均より頑丈だった岩田朔英。1年生の時に出会ったか弱くて小さな神城光輝に、それ以来ずっと片思い中。中学で背が伸びてイケメンになった彼と、同じ高校に進学するが…。数々の名恋愛マンガを描いてきた作者の最新作。1~7巻484円~/集英社©河原和音/集英社物事の流行よりも、普遍的な気持ちを描きたい。――まずは受賞の感想を。河原和音先生(以下、河原):実は自分のミスで落ち込んでいたところに編集者さんからメールで受賞のお知らせをいただき、凹んでいた気持ちが一気に盛り上がり、元気になりました(笑)。ananといえば、昔、人口3万人くらいの市の高校生だったとき、誌面に載っている未知のあれこれを見てワクワクしていた思い出が。’23年も気になる特集を買いました。何を買ったかは内緒です(笑)。――長年『別冊マーガレット』で、高校生の恋愛ストーリーを描いていらっしゃいますが、『太陽よりも眩しい星』の連載を始めるときには、どんな思いを込めてスタートされたのですか?河原:特にテーマはなかったのですが、当時の担当編集から「恋の相手は、ハードル高めの男子にしてほしい」とお話がありました。そうなるように頑張って描いていますが、神城がそうなれているかどうか…(笑)。ちなみにデビューした頃、当時の担当編集から“少女マンガの男子とは”的なことをものすごく勉強させてもらったのですが、最近ようやく、どんな男の子でも“魅力”が必要なんだ、ということに気がつけた気がしています。個人的に男子が男子同士でいるときのわちゃわちゃした感じが好きなので、神城の描写も、そこを意識して描いています。――朔英ちゃんの性格やキャラ設定は、どんなところから?河原:私の周囲にいる女の子を見ていると、優しいけれど不器用で、自己肯定感があまり高くなく、遠慮がちなタイプが多い。なので読者の人には、身近なお友達みたいに感じてもらえると嬉しいです。あと、私の姪っ子のたくさん食べる姿が愛らしかったので、朔英も食いしん坊になりました。――今までたくさん恋愛作品を描いてこられたと思うのですが、ご自身の中で今作は、どんな作品ですか?河原:読者の方に、「少女マンガっていいよね」と思ってもらえるマンガが描きたいと思って、私はずっとやってきたのですが、改めて今回は、初心に返って〈少女マンガ〉と向き合っている、そんな作品です。高校生の物語なので、実際いま何が流行っているか、のようなことも気になりますが、それよりも、普遍的な人の気持ちを描きたいです。恋愛がメインの少女マンガって、特に大人になるとちょっと軽んじられるところがなきにしもあらずですよね。でも人を好きになったり、そのことで自分を見つめ直したり、恋のために変わろう、変えようと行動するのは、人が生きる上で価値があることだと思うし、マンガで恋愛ストーリーを読むことでも、恋をするのと同じように心が動かされたり、大切な何かを思い出すこともある、と私は信じています。願わくば私の作品も、恋愛マンガを好きな人に喜んでもらいたいし、そしてあまり読まない人が手に取ってくれたときにも、面白いと思ってもらえる作品でありたい。そんな気持ちで描いています。――このページを読んで、初めてこの作品を読む人に、メッセージを!河原:高校生のお話なので、ご自身の高校時代を思い出しながら楽しく読んでほしいですね。あと、神城の友達の鮎川という男子がいるのですが、歴代の担当編集者が鮎川を好きだと言ってくれているので(笑)、サブキャラたちのお話も楽しんでいただけると。ネタバレになるかもしれませんが、悲しい気持ちにはならない作品なので、安心して読んでください(笑)。河原先生に聞く制作秘話1、「神城がなぜその言動をとるのか、その理由をなかなか描けないのが辛かった…」神城は“朔英を好きそうな行動”をとるものの、気持ちの部分はほとんど描かれないので、読者はヤキモキ!「私は作者なので彼の心がわかるけれども、展開的にそれを長い間描けないのが辛かった。この構成の作品は、連載ではもう二度と描きたくない(笑)」2、「気持ちが通じ合ったあとは、“もう全部描いていいんだ~!”と解放感に溢れました(笑)」ネタバレではありますが、二人の関係は、とある学校のイベントをきっかけに変化します。「特にそのエピソードの回は、それまでの“描いちゃいけない”から解放されて、本当に気持ちよかったです。自分でこの構成にしたので、私が悪いんですけれど(笑)」3、「小学生のムーブや言葉を描くのは、本当に本当に楽しいです」随所に出てくる小学生時代のシーンが、周囲の友達も含め、めちゃかわいい!「小学生のムーブや発言が大好きなんです。あと、ランドセルとか紅白帽などが昭和と令和で変わっていて、その変化を描くのも楽しい」かわはら・かずねマンガ家。1991年に『別冊マーガレット』にて読み切りでデビュー。代表作に『高校デビュー』『青空エール』など。『俺物語!!』の原作者(作画・アルコ)としても知られる。※『anan』2023年1月3日‐10日合併号より。写真・土佐麻里子多田 寛(by anan編集部)
2023年12月30日anan的年末の恒例企画、マンガのお祭りがやってまいりました!編集部が独断で選ぶ大賞の発表です。「第14回ananマンガ大賞」に輝いたのは、『太陽よりも眩しい星』です。河原和音『太陽よりも眩しい星』自分より小さかったあの子が、成長し、小学校から好きなこの気持ち、高校で、どうなる?今回の大賞作品は、これぞ王道の少女マンガ、な名作。大人の女性におすすめの、旬なマンガを紹介する「ananマンガ大賞」ですが、ありがたいことに14回目を迎えることに。大賞の選考基準は、(1)ラブストーリーであること、(2)現在連載中であること、(3)カッコいい恋の相手、または主人公が出てくること、(4)読んだ後に前向きな気持ちになれること、の4つ。この基準に照らし合わせ編集部のマンガ好きスタッフが厳正に審査をした結果、今回の大賞は河原和音さんの『太陽よりも眩しい星』に決定!雑誌『別冊マーガレット』で連載中のこの作品は、大きな体に繊細なハートを持つ主人公の女の子と、小学校時代から思いを寄せている男の子との、初恋ストーリー。幼馴染みの男子がいつの間にか超絶イケメン&モテ男になっていた…という、意外とみんな経験している設定で、物語が始まります。作品の魅力を、4つのポイントで解説1、出会いは小学校の入学式。牛乳嫌いな男の子・神城に、主人公の朔英は一目惚れ。朔英が「私が飲んであげるよ」と言うと、神城は満面の笑顔に。それを見た瞬間に、朔英の片思いは始まった。それ以来6年間同じクラスで机を並べ、一緒に勉強したり、遊んだり。体の小さな神城を、朔英は何かと気遣う。2、密かに好きだった神城が、今や身長183cmのイケメンに!中学でも、進学した高校でも、クラスや学年を越えモテており…。男子と女子、小学生時代は仲良しでも、中学では距離ができるもの。その上、小さかった彼は、今や学校中の女子がキャーキャー言う存在に。自分だけの推しだったのに、大スターになってしまったみたいな気分。切ない…。3、朔英は昔から“大柄&頑丈な女子”。でも心は繊細で、傷つくことも多い。神城が朔英を気遣うのは、ただの優しさ? それとも…?なんと二人、同じ高校へ進学。当然神城は女子から大人気。神城に好きな人がいると聞いた朔英は片思いを諦め距離を取ろうとするが、「大事な友達だから離れるのは寂しい」と神城。え、思わせぶりなの、なんなの?!4、朔英の仲良し、翠と美織。性格は三人三様、そのやりとりが、とにかくかわいい&楽しい。K‐POPのアイドルのようなかわいいルックスの翠ちゃんと、クールでマイペースな美織。そこに控えめ&気遣いの朔英が加わった仲良し3人組の友情は、随所に尊いやりとりがあり、大人が読んでも胸がキュンとします。河原和音『太陽よりも眩しい星』小学生の時から体が大きく、平均より頑丈だった岩田朔英。1年生の時に出会ったか弱くて小さな神城光輝に、それ以来ずっと片思い中。中学で背が伸びてイケメンになった彼と、同じ高校に進学するが…。数々の名恋愛マンガを描いてきた作者の最新作。1~7巻484円~/集英社©河原和音/集英社かわはら・かずねマンガ家。1991年に『別冊マーガレット』にて読み切りでデビュー。代表作に『高校デビュー』『青空エール』など。『俺物語!!』の原作者(作画・アルコ)としても知られる。※『anan』2023年1月3日‐10日合併号より。写真・土佐麻里子多田 寛(by anan編集部)
2023年12月28日桶職人、刀鍛冶、畳刺しなど、職人の仕事ぶりや気概、矜恃にフォーカスした『神田ごくら町職人ばなし』。一度読んだら虜になる傑作だ。その著者が坂上暁仁さん。1ページ、1ページに見惚れる。伝統の手仕事を担う職人のリアル。「江戸の町を細部から大枠まで実際にその手を動かして生み出しているのは職人さんたちだと思っています。江戸という世界観に肉薄してストーリーを練り、作画するためには、必要な知識やビジョン、アイデアが脳内に沈殿できた段階でやっと執筆に取りかかれるんです。どの職人さんを題材にするかを決めたら、ネットや図書館などで資料を集め、毎回ゼロ知識から勉強しています。最近ではYouTubeやSNSなどで情報発信をされている職人さんや組合も多いですし、刀鍛冶の名工や藍染め工房など実際に職人さんたちの作業工程を見たり、お話しさせていただいたこともありました」各編の主人公が女性というケースも多く、いっそう興味深い。「史実では女性の職人はそんなにポピュラーではないですが、都の奥御殿を修理する女大工の話が『西鶴諸国ばなし』に載っていたという記述を本で見かけたことはあります。“仕事”や“技能”を描くにあたって、ジェンダーや性別を、自分は特段意識していません。杉浦日向子さんの『百日紅(さるすべり)』やNHKの『眩(くらら)~北斎の娘』にでてくるお栄を見て、着るものもかまわず仕事に没頭する女性が出てくる時代劇があってもよいのかもしれないと思いました」まず、カバー絵をじっくりご覧あれ。その一枚だけでうっとりだが、ぺージを開くたびに、タッチの美しさに見入ってしまう。「たとえば、風雨や日光にさらされた柱の木目、い草を隙間なく組んだ新品で真っ青の畳表など、それらをマクロレンズレベルで描くことによって、その後カメラを引いてもなんとなく触感や匂いなどがその世界に充満しているように読者は感じるのではないか。そういったマテリアル表現が、こうした世界観への没頭を手助けしてくれると考え、意識しています。なので、そういう雰囲気を表現するためであれば、道具はアナログでもデジタルでも何でも使いたいと考えています」本作は「トーチweb」で連載中。今後はどんな職人さんたちが登場?「都市部だけではなく、地方にも原材料になる木を育てたり鉄をつくったり、自然界と人間社会をつなげる大切な役割を担っている職人さんがいると思っています。〈神田ごくら町〉というタイトルではありますが、ときどき江戸の外に出て、そういった職人さんたちにもクローズアップしていきたいですね」坂上暁仁『神田ごくら町 職人ばなし』〈一〉神田ごくら町という架空の場所を舞台に描く、江戸職人技巧。繊細で熱量のあるディテール描写に圧倒される。読み切り4編と3話の連作「左官」を収録。リイド社1100円©坂上暁仁/トーチwebさかうえ・あきひと1994年、福岡県生まれ。武蔵野美術大学卒。2014年から同人活動を開始、7号まで刊行。’17年、第71回ちばてつや賞一般部門入選。※『anan』2023年12月27日号より。写真・中島慶子取材、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2023年12月27日シリーズ累計発行部数1000万部(デジタル版含む)超の大ヒット漫画、『ダンジョン飯』。ファン待望のアニメ化を手掛けるのは実力派スタジオTRIGGER(トリガー)。監督が語る、制作の裏側とは。見ているだけで気持ちいい!迫力映像で話題のスタジオ。スタジオの立ち上げ以降、アニメ好きを唸らせるハイクオリティな作品を制作し続けているTRIGGER。なんといってもその魅力は圧倒的な映像美だろう。緩急の利いた動きやビビッドな色使いはシンプルにカッコ良く、普段アニメを見ない層であっても「何か、技術的にものすごいことが起きているぞ!」と直感的に分かるはず。そして、彼らの本領はド派手なアクションだけではない。今作『ダンジョン飯』では、見ているだけでお腹が減ってくる調理シーンにシズル感たっぷりの料理カットと、新境地を開拓している。トップアニメーターは、どんなジャンルを描いても上手い…そんな事実を噛みしめさせられる。TRIGGER・宮島善博監督インタビュー原作漫画を読んだときの感動を共有したい!「アニメ業界で『ダンジョン飯』を最も愛しているのは僕です!」と断言する宮島善博監督は、10数年来の九井諒子ファン。「九井先生の初長編、しかもダンジョン×ごはん!?と驚きつつ連載開始時から愛読していた『ダンジョン飯』。1巻が出た2015年当時、僕の役職は制作進行だったんですが、TRIGGER社内でアニメ化の希望を出しました。そこから約9年、念願叶って監督を任せてもらえることになりました」ドラゴン、冒険者、魔法などファンタジー濃度増し増しの作品世界のもうひとつの主役ともいえるのが、美味しそうな魔物料理だ。「モンスターが倒され、解体されて食材に、調理されて料理に変わっていく。現実にない食材で作る料理を描くためにモンスターをデザインすることから始めました。解体したらどうなるか、調理の過程でどんな音がするか、味や食感は何に似ているかなどをデザイナーと作画監督陣で話し合い、音響効果担当にも無茶振りをして。イラストレーターさんに料理のイメージボードを描いてもらってそこから逆算するなど、いろいろな方向からアプローチしています。音響監督が現場にサソリを持ってきたときはさすがに驚きましたが(笑)、アニメをご覧になる方たちにも、代用品を探しながらダンジョン飯を作る楽しみを共有してもらえるんじゃないかと思います」ライオス、マルシル、チルチャック、センシを筆頭に、キャラクターたちは度々ごはんを食べる。「食事や調理中の手つきや身ぶりには、そこからキャラクター性が見えるくらいこだわっています。トールマン、エルフ、ハーフフットにドワーフなどの種族間の差や分かり合えなさは、作品の基調ともいえる部分。例えば長身のライオスと彼の膝の高さほどのチルチャックを同じ絵に収めることには苦労もあります。でも、それを活かした構図や演出を考え、重厚に膨らんでいく作品テーマをより深く表現することを目指しました」来年1月に始まるTVアニメ放送とそれに先立つ劇場上映。監督イチオシの場面やエピソードは?「絵コンテ、作画監督、アニメーターもみんな気合十分で臨んでいるのでひとつを選ぶのは難しいんですが…個人的には第3話の“動く鎧”かな。アクションも料理のシーンも、洗練された作画に音楽ががっちりハマって、カッコいい仕上がりになりました。原作漫画ファンにも、アニメで『ダンジョン飯』に出合った方にも、僕が初めてこの漫画を読んだときと同じくらいの感動を覚えていただけたら嬉しいです!」『ダンジョン飯』読めばお腹がすいてくる!迷宮グルメ漫画ついに完結。原作は九井諒子による漫画。地下深く、謎多き大迷宮を行くライオス一行。妹ファリンを食ったドラゴンを倒すため、魔法使いのマルシル、鍵師のチルチャック、魔物料理に精通するセンシと自給自足の旅を続ける。KADOKAWA/全14巻 各792円TVアニメ『ダンジョン飯』食うか、食われるか。ダンジョンに潜む魔物たちとの冒険活劇が動き出す!12月8日~3週間限定の劇場先行上映中。TVアニメは2024年1月4日より全国28局にて連続2クール放送。Netflixほかで順次配信予定。©九井諒子・KADOKAWA刊/「ダンジョン飯」製作委員会映像制作会社TRIGGER 2011年設立のアニメ制作会社。『新世紀エヴァンゲリオン』などで知られるスタジオ〈ガイナックス〉に所属していた3人によって立ち上げ。初のテレビアニメ作品『キルラキル』はダイナミックな映像とけれん味たっぷりのスタイリッシュな演出で大きな話題に。以降も、コンスタントに話題作を生み続けている。監督・宮島善博TRIGGER作品の制作進行、演出、絵コンテ、助監督などを経て、2023年『劇場総集編SSSS.DYNAZENON』で監督デビュー。’22年『サイバーパンク: エッジランナーズ』7、8話に参加。※『anan』2023年12月27日号より。取材、文・鳥澤 光(by anan編集部)
2023年12月24日梅サトさんによるコミック『人生最大の噓ついた』をご紹介します。アートとは?才能とは?嘘から始まる、30代の自分探し。タイトルで心がざわつくが、冒頭数ページでその内容が明かされると、間抜けで笑える半面、他人事ではないという思いも芽生えてくる。主人公の前田と同様、美術大学出身で油絵を描いていた著者の梅サトさんは、前田のついた嘘をこう説明する。「テレビなどで、例えば小学生と有名アーティストの作品を並べて、どちらが“アート”か当てる企画がありますよね。美術を学んだ側からすると、美術史や鑑賞ルールを知らなかったら、判断が難しいのはしょうがないと思うのです。だけど美術の世界にいる張本人が、勘違いで評価されたものを否定せず、『これはアートです』と言ってしまうのは、ユーモラスに描いているものの、結構罪深いことだと私自身は思っていて。だからこそ前田は悩み、罪悪感に押しつぶされそうになるんです」前田は30代半ばになっても画家として成功できないことに焦り、単身ニューヨークへ。相変わらず底辺でもがいていたが、とある行動が著名クリエイターの目に留まり、天才芸術家として一躍注目されるように。帰国後、母校で非常勤講師の職を得るが、メッキが剥がれる不安に襲われてしまう。そして彼の前に現れる、学食で働く同い年の津崎さんは、嘘で傷つけられた過去を持っていた。「津崎さんは正直な人で、身の丈に合わない嘘をついた前田に、爽快な風を吹き込んでくれる女性というイメージです。前田の作品やその変化に対しても、新鮮な反応をしてくれる鑑賞者の役割も担っています」手のひらを返すように変わった、前田への評価を通して思うのは、才能のある・なしは誰がどう決めるのかということ。直接は描かれていないが、誰もがバズることのできるSNS社会の功罪も透けて見える。「才能っていうのは自分に向ける言葉ではなく、他者が使う言葉だと私は思っています。これまで『才能がある』と言われてこなかった前田が才能を追い求めるときは、自信を追い求めるときでもあるんですよね」美大を舞台にした作品は、それこそ若き才能と情熱がほとばしるようなものが多いが、本作は30代半ばの惑いを描いているのも興味深い。「それなりの選択をしてきた20代があるぶん、後悔したり焦ったり、でも何かを悟ってしまうにはまだ早い年齢ですよね。私としても、美術は今だから向き合えるテーマ。そういう意味でも前田と伴走できることが嬉しいですし、この人のあがきをちゃんと伝えなきゃと思っています」『人生最大の噓ついた』1世界中に天才芸術家だと勘違いされる前田。嘘が嫌いな津崎さん、真のアーティスト・泉など、激変した人生を同世代の存在が揺さぶる、自分探しラブコメ。小学館715円©梅サト/小学館うめ・さとマンガ家。2013年『増刊flowers』掲載の「竜巻の日」でデビュー。主な作品は、『緑の罪代』『お兄ちゃんは今日も少し浮いてる』など。※『anan』2023年12月6日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2023年12月04日感動ではなくても、人の心が動くものを…。担当編集者のリクエストがきっかけになったという『君と宇宙を歩くために』。そして心が動くことの意味を、泥ノ田犬彦さんはある舞台を観て体感する。“普通”ができないふたりでも、手を取り合えばできること。「役のひとりが本当に愛おしくて、立っているのを見ているだけで泣けてしまうような存在感があったんです。『君がそこにいるのが嬉しい』みたいな心の動きって、膨大なエネルギーが渦巻いているんだなと思って、自分の中にあるその感覚と人生経験をベースにしながら、ストーリーの肉付けをしていきました」勉強が苦手で、バイトも覚えが悪くて長続きしない小林は、乱暴なヤンキーとして周りから疎ましがられている。ある日、同じクラスに転入してきた宇野は、素直で明るいのだが、知らない人がたくさんいるところや、ルーティンではない状況が苦手で、日常のルールや困ったときの対処法を細かく記したノートを、肌身離さず持ち歩いていた。「小林は『助けなくても何とかなるだろう』と第一印象で遠ざけられそうな子を想像して作りました。宇野くんに関しては、“人とは違うところ”をエンタメにしたいわけではないので“キャラクターにしすぎない”ことを意識しています。宇野くんの苦悩や喜びもできるだけ等身大に描くようにして、彼をどう捉えるかは読者の方々に委ねています。異質だと思っていた人の中に自分と同じものを発見したときの動揺を大切にしたいので、ギャップとして表現できていたら嬉しいです」自分に自信がなく挑戦や努力を避けてきた小林は、失敗が怖くてしかたない。けれども、日常という宇宙を歩こうとする宇野に刺激を受ける。「それぞれ自分なりのプライドを持っていることを一番大切にしています。劣等感や恥ずかしさはプライドがあるから発生する感情だと思うので、ダサく見えたとしても葛藤を蔑ろにしないようにしたいです。お互いを『かっこいいぜ!』と思っているふたりなので、支え合うというよりは影響し合って、経験値を積んでいく感じにしていきたいです」1巻の後半では異なるタイプの新キャラクターも登場し、彼らの宇宙も少しずつ広がっていく。「人間が大人になるまで人生を歩き続けるのは、とても難しくてすごいことだと感じています。彼らのその後も、大事件や大活躍みたいなものはあまりないかもしれませんが、でも人生波瀾万丈だよね……というのが描けたらよいなと思っています」泥ノ田犬彦『君と宇宙を歩くために』1ヤンキーの小林と、変わり者の転校生・宇野。“普通”ができないふたりが、楽しく生きるために奮闘する友情物語。Webマンガサイト「&Sofa」で連載中。講談社946円©泥ノ田犬彦/講談社どろのだ・いぬひこマンガ家。アフタヌーン四季賞2022年秋のコンテストにて「東京人魚(トーキョー・マーメイド)」が準入選してデビュー。※『anan』2023年11月29日号より。写真・中島慶子取材、文・兵藤育子(by anan編集部)
2023年11月29日