NODA・MAPの新作公演がいよいよ始動!高橋一生、松たか子の顔合わせだけでも鉄板だが、さらに多部未華子、秋山菜津子、大倉孝二、大鶴佐助、山崎一と、いつものごとく豪華なキャストが勢揃いだ。もちろん作・演出の野田秀樹も出演する新作公演、その中身は……!?高橋、松、野田の御三方から少しでもヒントを得るべく粘っても、「分かっちゃったら、つまらないでしょ」(by 野田)と、今回もやはり秘密のヴェールは厚かった。笑い満載の会話からニュアンスを嗅ぎ取っていただき、想像を膨らませていただくための“ほぼ実録”インタビューをどうぞ。潰れかかった遊園地が舞台の劇中劇「のような」お話――現段階で私たちが知らされているのはタイトルのみ。ぜひ出来る限りの情報を語っていただけたらと思います。野田一昨年の『フェイクスピア』が終わった後ぐらいから、少しずつ構想を重ねていった感じですかね。役者さんにもちょっと前に少しだけ台本を渡して。台本はいつもよりは時間的に早く、今のところは出来ています。ま、タイトルから想像していただくのが一番よろしいかと思います(笑)。NODA・MAP第26回公演『兎、波を走る』キービジュアル――『兎、波を走る』を調べると、諺としてふたつの意味が出て来るのですが。野田あ、諺は関係ないです。『不思議の国のアリス』の世界です、ってことでいいんですかね? まずはね。高橋はい。野田そういうことです。そこに、潰れかかった遊園地みたいなのがありまして、そこの廃れた舞台で劇中劇が行われる……のかな、どうなのかな〜っていう感じですよね?高橋はい。野田劇中劇にはなってないけど、劇中劇のようなお話、そんな感じですかね。――今回も作品のためのワークショップをされたとか。野田そうですね。結構皆が来てくれたので、とても有意義な時間でした。いろんなことを試すことが出来たっていうかな。試すと同時に、役者さんも自由にいろいろやってくれて、面白いアイデアをいただきました。――高橋さん、松さんに台本を読んだ印象をお聞きしたいです。野田渡した部分を読むだけだとちょっと分からないので、少しだけ、どういう方向に向かっていくかという話はさせてもらいました。高橋どうでしょう。アリス…の話…なんですね…。(一同笑)寓話的な話ととらえると、すぐに出て来るのはアニメのイメージでしょうか。よくよく解体してみると、寓話って怖い、ちょっとゾクッとするところがあって、いったいどういう思考の人が書いているんだろう…ということを、野田さんからいただいた台本に照らし合わせながら読みました。松そうですね、私も、アリス……なんだあって。(一同笑)野田こういうところで話すには「アリスの話なんです」って言って、お客さんを導入していただくのがいいのかな〜と思って。ま、アリスの話じゃないですもんね!高橋ハハハハ!松……ないけど、アリスを使うんだ…っていうのかな。野田ま、実はアリスだけではなくて、ある著名な劇作家たちとか、そういう世界もありますよね。松ワークショップで別のキャラクターが飛んでいるのも見ましたし(笑)、試みとしていろいろ、それも使える……というか用いるんだな、へえ〜!って思っている状態です。野田あのね、昨日ワークショップでやっていたヤツ、あれよかったと思うよ。高橋そうですか?野田うん、ト書きの部分とうまく融合できるな〜と思って。本人が走ってるのは、やっぱりいいよな。高橋そうですね!野田あ、すいません、ちょっと業務連絡でした。(一同笑)忘れられてしまうことを作品として残す――ここまででまったくつかめていませんが……ストーリーを追ってはいけない?野田ストーリーは……。高橋追えるんじゃないでしょうか。野田まあ追えるでしょうね。アリスの世界ですから。ただ、アリスの世界が、アリスの話のように進まないので……っていうようなことかな。――高橋さんがおっしゃったように、寓話のような世界だけれど、見ていくうちに私たちが生きる現実世界とリンクするとか。高橋……そうだと、思います。そういうふうに視点を少しだけシフトしながら観る方もいらっしゃるのではないかとは思います。松そういったアリスのようなおとぎ話の世界もあり、現実世界ももちろん出て来るんですけど、私個人にとっては現実なんだけど、知らない世界だったり…。現実にあるということを、信じろ!って言わないと分からないくらいの現実が、まだあるな、という感覚。それを突きつけられると、うわ〜それを現実と思わなきゃいけない!?って持っていかれちゃうので…。どこまでファンタジーで、どこまで現実で…というのが、私は読んだだけではまだ分からないことがいっぱいで、すごく頭の整理がつかない感じでワークショップを終えたので(笑)、台本はいったんスタッフの方にお返ししました。もう持っているのが怖くて、「一回ちょっと出直します!」みたいな気持ちで、とりあえず返そうと。ちょっとまだ受け止め切れない…、そんなふうに感じて、楽しいワークショップを終えました(笑)。野田フフフ、この話がどこに行き着くかはもうふたりとも知っているけど、そこはいま言えないから言葉が濁っちゃうんだよね。松そう!ワークショップの終わりに全体に向けて「台本のお取り扱いに気を付けてください」みたいなことを言われて、持っているのが怖いからもういいや〜と思って(笑)。野田落としちゃったりしたら?松落とさないけど(笑)。早く完成形をいただくために一回、お返ししたんです。野田中途半端じゃダメだよ、ってことですね。プレッシャー(笑)。松いや、やっぱり今回、今まで以上に緊張感はあるのかなと。だから、本当に気をつけなきゃ!と思った時に自然とそうなりました。その言葉は、持っておくにはちょっと私には大きくて。――おふたりの役柄や、ほかにどんな人物が登場するのか、伺ってもいいですか?松私はアリスじゃないです。野田松さんはアリスに近しい関係の役ですね。で、高橋さんは○○○ということになっています。高橋はい、…ということになっています。野田ほかにふたりの劇作家とか、いろいろと出て来ますけど。でもね、観る日に知ってほしいかな。――今回の作品を構想したきっかけとは?野田まず、「これを書いてもいいものだろうか」っていうのがひとつあって。それで本や資料をいろいろ読んで、どうかな〜と。非常に口籠もってしまうんだけど。――「これ」というのは、例えば『フェイクスピア』におけるボイスレコーダーのようなものでしょうか。野田そことはまたちょっと違うな。今度のものは、そういうものではないんです。年齢もあると思うのですが、自分が書いておくことで少しでも残るのであれば、後々それを読む人にとっていいんじゃないかなと思ったんですね。少なくとも、あらゆるものが忘れられてしまうよりは。だからここ半年くらいは毎日そのことを考えていて、「俺はこの世できっと、当事者の人くらい考えているな」と言えるだけの自信はありますね。しかも、朝起きた時からず〜っとそのことばかり考えているので。それを意識しているか、していないかはちょっと大きいような気がする…といったものかな。私の中でね。皆が知っていることではあるんだけど。高橋そうですね。――幕が開いたら、ああ、あのことか!と皆が分かることでしょうか。野田それはこれからの書きようではあるけれども、分かるようには書いています。――今のお話の「忘れられぬよう、書き残さなければ」といった使命感のようなものは、なぜ出て来たのでしょうか。野田やっぱり歳を取ったからかな。作品って残るんだよな、ってことをあらためて考えて。例えとしていいのか分からないけれど、(十八代目、中村)勘三郎さんのお葬式の時に坂東三津五郎さんが弔辞で「役者は辛い、本人がいなくなったら全部なくなってしまうから」ということをおっしゃっていて、そうか、でも俺は少しだけ違う立場にいるなと思ったんですね。役者は肉体がなくなったら終わってしまうけれど、自分はそれとは違うところで芝居と向き合っているのだろうなと。そんな気はしていますね。預けた言葉をちゃんと肉化してくれる――松さんはNODA・MAPは今回が6作目の出演で、高橋さんは『フェイクスピア』に続く2作目です。ワークショップに参加された際に、今回の作品に関して、何かこれまでの野田作品と違った新たな感触などはあったのでしょうか。松いや、まだ分からないです。でも一生くんを始めキャストの方たちは…、大鶴佐助くんとは初めてご一緒するんですけど、すごい人たちが集まったカンパニーで、どうしよう〜と(笑)。個人的にお芝居を観たときに「うわ、すごいな!」って一回は思わされた人たちだらけなんですよ。その中でこのお芝居に向かっていけるのは、とても幸せですね。だから、あとはいつも通りにただただ必死になるでしょうし、私はそれしか出来ないので。野田さんの言葉を埋もれさせないために頑張ろうと思います。高橋『フェイクスピア』では作っている過程も含めて、これまでにない充実感があったんです。野田さんは俳優でもあるから、お芝居を作る過程の楽しみ方が、演出のみされる方とは決定的に違うんじゃないかなと僕は感じていて。演者としても、演出としてもその場にいてくださる中で、まずは自由に芝居を見てくれる。僕にとっては心強かったなという感覚があったので、今回もお話をいただけてとても嬉しかったです。――『フェイクスピア』に続く今回で、「また来たか!」みたいな衝撃がありましたか?高橋おお!という感じで、「また」ではないですね。違うものではあるんですけれど、現実と地続きになる世界観を感じることが多くなって来ている気がするんです。寓話的というか……、それがファンタジーなのかディストピアなのか、分かりませんが、そういうものがだんだん近づいて来てしまっている、その表裏のようなものが曖昧になって来ている感じはするんです。とくにこの3年で。それで今、野田さんが言っていた、アリスとしての世界と現実が続いてしまう瞬間が、劇構造の中に組み込まれたりするのかな、と思っています。――なんとなく、先ほど松さんがおっしゃった「現実と思わなきゃいけない」怖さの感覚と繋がって来たような気が。やっぱり何かドカンと衝撃的なものが提示される、そんな予感がしますね。野田今回のワークショップで、ちょっとひとシーンやってみた後の、たかちゃん(松)の顔が「やめてよ〜」っていう顔で(笑)。松フフフフ。野田一生は、今回のワークショップで初めて見たでしょ?高橋初めて見ました。野田あれやると、大体みんな同じ顔になるのよ。…って謎だらけでスミマセンね。でもここで言ってしまって書かれてしまうと、見た人がその瞬間に、本当に感じられないだろうから。高橋そうですよね。だから、こういう取材は難しいです。――はい、ここまでのお話で想像しながら本番を待ちます。野田さんに、本作にこのおふたりを誘った理由を教えていただきたいです。野田だって、ふたりとも素晴らしいじゃないですか。預けた言葉をちゃんと肉化してくれる、その力があるふたりです。あと共通するところがあるとすれば、役者ってどうしても自分の目線からだけ入るけれど、ふたりともに作品全体を見ることが出来る役者さんですよね。出しゃばらないで、ちゃんと世界を作る人たち。……って自分がそう、俺は出しゃばってナンボの役者だから、なんだけど(笑)。一生は『フェイクスピア』の時に圧倒的な身体能力を見せてくれて、今回のワークショップでもやっぱりすごいなと思ったし。身体性は、たかちゃんも強い、こう見えて……って言っちゃいけない。(一同笑)松たか子が出る時はいつも、「お〜い」とか「あ〜」とか、悲鳴のような長〜い声が出るように書いてる。松ハハハ!野田去年の『Q』でも「お〜い」って台詞を、そこまで長くしなくてよかったのに、負けず嫌いだから「お〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜いっ」って(笑)。松え、そうだったんですか!? そう言ってくだされば…(笑)。野田いやいや、あれは助かってるんです。舞台装置を外さないといけないから、「お〜い」が長いとありがたい。高橋そんな裏話が(笑)。野田ま、たかちゃんが持っている声の高さ、伸びというのは、自分が表現をしたい世界のものだからね。――昨夏の高橋一生さんの一人芝居(『2020』)のパンフレットに、野田さんが高橋さんのことを「不安をいつも持っている」と談話を寄せていました。勝手ながら、高橋さんにはつねに冷静沈着、どこか飄々とされている印象を抱いていたので意外に感じたのですが。野田不安というのは持っていないとダメでしょう。たかちゃんだって、不安だから台本を突っ返しちゃうわけだ。松ハハハ!野田不安のない人は、信用出来ない。自信満々で表現している人で、いい表現者はいないんじゃないですか。高橋そうかもしれません。お客さんに見せるものは違うかもしれないけれど。野田そう、本番の舞台で台詞をオロオロ読んでいたりしたら、それはまた別の不安だから(笑)。モノ作りの過程で「自分がこれをどういうふうにやれるかな」といったことだね。舞台初共演のふたり。お互いの印象は・・・?――高橋さんと松さんは舞台では初共演ですね。お互いにどんな魅力を持った俳優と見ていらっしゃるのか、その印象と期待をお話しいただきたいです。松私は今回の初共演が本当に楽しみで。『フェイクスピア』を観た時に、物語自体の衝撃はもちろんありましたが、お芝居としてものすごく感動したんですね。目が覚めたと言いますか。ここにまた戻りたいな! と思わせてくれた、その舞台に彼が出ていて。初めてのNODA・MAPでああいうふうに舞台の真ん中に立つ俳優さん、素敵だなと思って、野田さんに変なメールを送ったんです(笑)。「私なんかが真ん中で長台詞とか言うのはおかしい気がする!一生くんがいいですよ!」みたいな(笑)。なんて言いますか…、「頑張ってます!」じゃない主役でいてくれたことに感動して。もちろんすごく頑張っていたと思いますけど。本当にご一緒出来るのが楽しみでしたし、すでに若干、迷惑をかけ始めていますが(笑)、かけないようにしたいと思います。野田たかちゃんからああいう、作品に関するメールが来ること、まずないからね。高橋そういう感想って、俳優同士では送ってはいけない暗黙の了解でもあるのかなと思うくらいあまりないんです。けれど松さんはすぐに連絡をくださって。そのリアクションを受けて、僕は感動しました。あ、こんなふうに思ってくれる人が同業者でもいるんだと。以前にドラマでご一緒した時も、ちゃんと“そこにいてくれる”、素敵な女優さんだなと感じて。さっき野田さんが「出しゃばらない」とおっしゃっていたように、主張するのではなく、空間に、そこにいる人。一緒に芝居をしていてとても楽しかった記憶があるので、また野田さんの作品でご一緒出来て本当に嬉しいです。さっき褒めていただいただけに、「……あ、コイツの力じゃなかったな」って思われないようにしなきゃなと。松ハハハ!不安同士が、すごくビクビクしながら挑んでいきます(笑)。――本番当日まで、謎は謎のままに。それでも最後にひとつだけ、観終わったあと、どんな気持ちになりそうでしょうか。野田多部ちゃん(多部未華子)との取材の時に、やっぱり同じような質問が来て「台本を読むかぎり、重くて、ハアアア〜!」って多部ちゃんが(笑)。つまりその「ハアアア〜〜〜!」というようなことじゃないかなと思います(笑)。取材・文:上野紀子撮影:You Ishiiスタイリスト:伊賀大介(band)ヘアメイク:赤松絵利(ESPER)<公演情報>NODA・MAP第26回公演『兎、波を走る』【東京公演】2023年6月17日(土)~7月30日(日)会場:東京芸術劇場プレイハウス一般発売日:5月28日(日) 10:00【大阪公演】2023年8月3日(木)~8月13日(日)会場:新歌舞伎座一般発売日:7月8日(土) 10:00【博多公演】2023年8月17日(木)~8月27日(日) 博多座一般発売日:7月8日(土) 10:00チケット情報:・MAP公式ホームページ★【よくばり❣ぴあニスト】限定NODA・MAP第26回公演『兎、波を走る』大阪公演のアプリユーザー向け先行抽選を実施中!受付期間:6月25日(日) 23:59まで詳細は こちら() から
2023年03月17日公演初日を迎えた奏劇vol.2『Trio~君の音が聴こえる』のフォトコール及び取材会が15日、東京・大手町のよみうり大手町ホールで行われ、三宅健、大鶴佐助、藤木直人、岩代太郎(原案・作曲)が出席した。同舞台は、作曲家・岩代太郎が新たなフィールドでクリエーションを行いたい、という想いのもとに発案されたプロジェクトの第2弾。原案の岩代と同じく、人の心の模様を「音」で感じとる才能を持ち、ピアノを通して人の心を描写することができるサム役に三宅健、心理カウンセラーとなってサムと共にカウンセリングを生業とするトムを藤木直人、その2人から孤立して突如2人の前に現れたキムを大鶴佐助が演じる。孤児院で育ちで大人になった彼らが再会してそれぞれの道に突き進む姿を、バンドネオン界の新風・三浦一馬、チェリストの西谷牧人、ピアノを担当する岩代太郎の伴奏に合わせて描き出す。公演初日を迎えたこの日は報道陣向けのフォトコールと取材会を実施。主演の三宅は「僕自身は朗読劇も経験したことがなかったので、朗読劇でもなく演劇でもない、その中間というか本当に"奏劇"だと思うんですが、演奏家の方々が奏でてくださる曲に役者陣が発する言葉に音楽家の方々が寄り添ってくれて、お互い奏でるハーモニーで一つの役になっていくという感覚は今回初めての経験でした」と感想を。本公演ではステージ上で普段の演劇とは異なり台本を手にしながら演技をしており、「大変です。肩が凝ります(笑)」と苦笑いを見せつつ、「演出家の深作健太さんから言われたのは、『(セリフを)覚えてしまって腹に落ちてしまうとそれは違う』ということなので、完全に覚えきらないでやらなければいけないのは難しいですね。読んでいて気づかないうちに覚えてしまうので」と難しさも感じているという。三宅は、大鶴佐助や藤木直人と幼なじみの役を演じる。最年長の藤木が「精神年齢が幼いのでちょうど良いんじゃないかな」と問題がないことを強調し、三宅も「(稽古が)短かったんですが、ちゃんと幼なじみになれているんじゃないかと思います」と手応えを掴んでいる様子だった。12月も半ばということで、残り2週間ちょっととなった2022年を振り返ってもらうと「充実した1年でした。本当にコロナという環境の中でファンの方々と直接会える機会をたくさん設けていただいたので、自分にとっては幸せなことでした」とコロナ禍とはいえファンとの対面イベントを多く開催できたことに笑顔。続けて「今日も見に来てくれるお客さんと奏劇でお会いできるのは自分にとっては嬉しいことです」とファンとの再会を待ち望んでいる素振りで、「今回はキャパの問題もあって中々激戦で見に来られる方は少ないと思いますが、チケットを手にした方々には新しい"奏劇"という芸術の形を贅沢な音楽とともに楽しんでいただけたらと思います」とアピールしていた。奏劇vol.2『Trio~君の音が聴こえる』は、12月15~24日(20日休演)に東京・大手町 よみうり大手町ホールで公演。
2022年12月16日舞台芸術・奏劇 vol.2『Trio~君の音が聴こえる』が、2022年12月15日(木)から12月24日(土)まで東京・よみうり大手町ホールにて上演。原案 / 作曲は岩代太郎、主演は三宅健が務める。言葉と音楽で届ける“奏劇”の第二弾「奏劇」は、映画『キネマの神様』『あゝ、荒野』など数々の映画音楽を手がけてきた岩代太郎が手掛ける、“言葉と音楽”で一つの物語世界を構築する舞台芸術。2018年には國村隼主演で、奏劇 vol.1『ライフ・コンチェルト ある教誨師の物語〜死刑執行までのカウントダウン』が上演された。そんな奏劇の第2弾のタイトルは、『Trio~君の音が聴こえる』。孤児院で兄弟のように寄り添いながら育ち、大人になって再会したサム、トム、キムの3人を中心に物語が展開される。三宅健×藤木直人×大鶴佐助が朗読人の心の模様を「音」で感じとる繊細な青年・サムを朗読として演じるのは、舞台『陰陽師 生成り姫』などに出演し、アイドルだけでなく俳優としても才能を見せる三宅健。さらに、心理カウンセラーとして周囲の人の心を癒すトム役として藤木直人が、二人を兄のように慕っていたキム役として大鶴佐助が参戦する。岩代太郎や三浦一馬による生演奏奏劇は物語と音楽が切り離すことのできない舞台。第33回国際ピアソラ・コンクールで日本人初、史上最年少で準優勝を果たしたバンドネオン奏者・三浦一馬や、ジャンルを超えて演奏活動を展開するチェリスト・西谷牧人が、舞台における“言葉=音楽”を生演奏する。また、原案・岩代太郎によるピアノ競演は必聴だ。奏劇 vol.2『Trio~君の音が聴こえる』登場人物■サム(三宅健)…人の心を「音」で感じ取り、自分の気持ちをピアノを弾いて表現する青年。孤児院で育ち、共に支え合ってきたトム、キムを兄弟のように慈しむ。トムのカウンセリングのサポートをしている。■トム(藤木直人)…心理カウンセラー。トムのカウンセリングとサムのピアノで、訪れる患者たちの心を開き、癒してきた。■キム(大鶴佐助)…サム、トムと共に孤児院で育った青年。数年前姿を消したが、突然二人の前に現れる。■大金持ちの企業家(サヘル・ローズ)…トムの診療所に訪れた患者の一人。若い頃に娘を生み、捨てたことを悔やむ。■歌手(黒田アーサー)…トムの診療所に訪れた患者の一人。愛を見失い歌えなくなってしまう。あらすじピアノを通して人の心を描写することができる青年・サム。心理カウンセラーのトムの診療所で、訪れる患者たちの心をピアノの音色で癒している。ある日、“自殺者が急増している”というニュースが飛び込んでくる。その自殺者の中には、かつてトムがカウンセリングを行った患者の名前もあった。心を痛める二人の元に、突然キムが現れる。サム・トム・キムの三人は同じ孤児院で育ち、かつては互いに慈しみ合いながら兄弟のように支え合った仲だった。数年ぶりに戻ってきたキム。再会を喜び、幼少期を懐かしむ三人だったが、キムが戻ってきた本当の目的は一体…?公演概要奏劇 vol.2『Trio~君の音が聴こえる』原案 / 作曲:岩代太郎脚本:土城温美演出:深作健太出演:三宅健、大鶴佐助、黒田アーサー、サヘル・ローズ、藤木直人演奏:三浦一馬(バンドネオン)、西谷牧人(チェロ)、岩代太郎(ピアノ)■東京公演上演期間:2022年12月15日(木)~12月24日(土)会場:よみうり大手町ホール住所:東京都千代田区大手町1-7-1 読売新聞ビルチケット料金:9,500円(全席指定)一般発売日:10月16日(日)チケット取扱い:チケットぴあ、ローソンチケット、イープラス
2022年09月08日奏劇 vol.2『Trio~君の音が聴こえる』が、12月15日から24日に東京・よみうり大手町ホールで上演されることが決定した。数々の映画音楽を手がけてきた岩代太郎が、演劇と音楽による新たな舞台芸術を目指し、2018年に初上演した「奏劇」シリーズ。その第二章となる『Trio~君の音が聴こえる』は、「人には誰にも音があり、私は相手の印象をハーモニーで感じ取ろうとすることがある」と語った岩代の言葉を元に創作され、孤児院で互いに寄り添いながら育った3人、サムとトムとキムを中心とする物語となっている。人の心の模様を「音」で感じとる才能を持ち、ピアノを通して人の心を描写することができるナイーブで繊細なサム役を三宅健、心理カウンセラーとなり、サムとともに人の心を癒す手伝いをするトム役を藤木直人、さらに、このふたりを兄のように慕っていたものの、やがて孤立し、また突如としてふたりの前に舞い戻ったキム役を大鶴佐助が演じる。そのほか黒田アーサーとサヘル・ローズもキャストとして名を連ねている。また、今回の「言葉」をライブで演奏するのは、第33回国際ピアソラ・コンクールで日本人初、史上最年少で準優勝を果たし、バンドネオンの新風となっている三浦一馬。さらにバッハからジャズ、タンゴ、ポップス、自作自演までジャンルを超えた演奏活動を展開するチェリストの西谷牧人。そして岩代が自ら作曲した楽曲を、彼らとともにピアノで競演する。■岩代太郎(原案 / 作曲)コメント常日頃から数多くの映画作品において、「演じるように奏でる音楽」を綴りたいと願うようになった私は、「奏でるような演技」に魅了されることも多々ございます。そんな私だからこそ、でしょうか。この両者をコンセプトとした新しい舞台芸術にも探求心を抱くようになりました。そんな志を「奏劇」と名付けたのです。「演じるように奏で、奏でるように演じる。」そんな新しい舞台芸術が息吹く喜びを、多くの皆様と共に分かち合い、21世紀ならではのレボリューションへと昇華させたいのです。「何故、そこに音楽が必要なのか」作曲家が生涯をかけて問いかける果ての先に、どうかご期待下さい。■三宅健 コメントプロットを読んだ段階で、とても刺激的な戯曲になると感じていました。音楽家の方々は楽器を奏でる、役者陣は声を楽器として台詞と物語を奏でる。同じ舞台上に、音楽家と役者が立つことである種、表裏一体となり、演奏者と役者で1人の人間を演じる。新しい形の表現に出会えることをとても光栄に思います。僕自身も一体全体どう言う作品になるのか全く見当がつかないので、今からワクワクと心を躍らせています。観に来てくださる皆様には、得体の知れないこの作品の目撃者となっていただければ幸いです。■大鶴佐助 コメント最近はいろんな先輩方と共演させていただく機会が多く、カンパニーのメンバーと一つの作品を作ることに対して、自分でも柔軟性が出てきたかな?と現場が終わるたびに感じています。今回共演させていただく三宅健さん、藤木直人さんは、お二人とも年齢もキャリアも大先輩です。役柄的には幼馴染という心の部分では近しいところで芝居をしなければならない、純粋ゆえの狂気をお二人がどう演じられるのか、そこに入って自分がどんな芝居をするのか、どう噛み合っていくのかが楽しみです。プロットを読んだ感じでは、生演奏に助けられるというか多重構造的な作品なので、リーディングとはいってもお芝居ではあるし、どこにたどり着くのか自分としてもとてもワクワクしています。■黒田アーサー コメントこの度、音楽と言葉を結ぶ新たな舞台「奏劇」に素晴らしい演者の皆さまとご一緒できる事が何よりも楽しみです。そして台本を読んでみても、奥深くて、どのような作品なるのか楽しみで仕方がありません。新たなチャレンジをさせて頂く事にワクワクしておりますし、期待を裏切らない作品ですので、観に来て下さる皆さまには楽しんで頂きたいです!■サヘル・ローズ コメントコトバを紡ぎ、コトバと繋がる。生まれ変わるなら、『コトバ』になる。これは、私の夢。生まれたてのコトバと生まれたての音楽が交わる。素晴らしい皆様と共に全身全霊で挑みます。また、私は日本語が母語ではないですが、国籍の壁を越えていく事にも挑戦をしたいです。私のコトバが月夜に浮かび上がりますように。■藤木直人 コメント原案・作曲の岩代太郎さんとは相当前ですが、ドラマでご一緒させていただいたことがあります。奏劇は、非常に贅沢な試みですよね。生でミュージシャンの方がライブで演奏してくれるので、普通の朗読劇ではないというか、なにか化学反応が起きるんじゃないかと思います。また、岩代さんも出演されるとのことなので、まさか共演できるとは!と楽しみです。作品に素晴らしい音楽をつけて下さって、より一層作品を高みに導いてくださる心強さはありますけど、同じステージに立つというのは想像つかないので、ステージ上の岩代さんも楽しみです。非常に複雑だし、難解だけど、きちんと観に来て下さる方々に分かりやすく届けなければいけないな、と感じています。せっかくクリスマスシーズンにできるということなので、みんなが楽しみに来てほしいし、来て下さる方の期待を裏切らない素敵な時間を提供したいと思います。■三浦一馬(バンドネオン)コメント音楽や演劇をはじめ、アートというジャンルは、常々その「枠組み」というものを意識しすぎるが故か、ひとつひとつが分断して扱われることも多い。物事が細分化してこそ洗練されていくという側面もあるのだろうが、本来はもっと多様性があるものではないだろうか?この総合芸術としての舞台「奏劇」で、どのような世界が拓けていくか…どうぞご期待ください。■西谷牧人(チェロ)コメントこの度、奏劇「Trio」に「音楽のTrioの1人」として参加させて頂くことになり、ワクワクが止まらない。青春時代に夢中で観ていたドラマや映画の音楽を作られたのが岩代太郎さんで、その音楽を自分でピアノで弾いてみては世界観に浸っていた事がある。今回、岩代さん、三浦一馬さん、そして素晴らしい出演者の皆さんとの共演の舞台、チェロを続けてきて良かったと喜びを噛み締めている。<公演情報>奏劇 vol.2『Trio~君の音が聴こえる』12月15日(木)~24日(土) 東京・よみうり大手町ホール原案 / 作曲:岩代太郎脚本:土城温美演出:深作健太出演:三宅健大鶴佐助黒田アーサーサヘル・ローズ藤木直人演奏:三浦一馬(バンドネオン)西谷牧人(チェロ)岩代太郎(ピアノ)チケット料金:9,500円(全席指定・税込)一般発売日:10月16日(日)購入リンク:公演に関するお問い合わせ:tsp Inc.contact@tspnet.co.jp(mailto:contact@tspnet.co.jp)※お問い合わせの際、メールの件名に必ず「奏劇」とご記入ください。公式サイト:
2022年08月26日太平洋戦争開戦前夜の長崎で、考古学者のカナクギ(片岡亀蔵)の助手であるオズ(大鶴佐助)が遺跡を発掘する。それは、若く美しいヒメ女が治めていたが滅亡した古代王国だった。現代と古代の世界が折り重なり、やがてとんでもない古(いにしえ)の秘密が明かされていく。野田秀樹さんが1999年に書き下ろし、これまでタブー視されてきたテーマに真っ向から切り込み、壮大なスケールで描かれた戯曲『パンドラの鐘』。今作で葵わかなさんが演じるのは古代の女王・ヒメ女。「最初に脚本を読んだとき、キャッチーな作品だなと思ったんです。時代が行き来するので、最初は少し混乱もするけれど読み進めばわかってくるし、小説のようにいろんなところに伏線が張り巡らされていて、最後にそれがわかるとすっきりする。それでいて、観る人によっていろんな捉え方ができる物語だと思います。答えがひとつじゃないというか、定まった答えを提示するのではなく、伝えたいことをニュアンスで描いて、大事なことは言葉にしきらないんです。そこがお洒落だし、明確な言葉を使わないことが逆に、そのテーマに対して敬意を払っているように感じました。今の社会情勢や人々が抱えているものに対して、いろんな角度から寄り添ってくれるような物語だと思うし、そういう側面がありながら、コメディチックなセリフやテンポ感で進んでいったりもする。そのちぐはぐ感が魅力的ですよね」演出を手がけるのは、若手の気鋭として注目を集める杉原邦生さん。初演時は、野田さんと蜷川幸雄さんが同時期に本作を上演。まるで違う演出で上演されたことで、戯曲の多面的な魅力がより浮き彫りにされた。今回の杉原演出版は、「華やかな舞台になりそう」とのこと。「セットだったりダンサーの方の動きだったりは、イメージの中に歌舞伎の要素も入っているようで、和洋がミックスされているんじゃないかと思います。かと思えば、音楽は現代がミックスされた不思議な雰囲気で、それが爆音で流れたりもして」ヒメ女は、兄・狂王の幽閉により女王に担ぎ上げられるが、次第に自分の役割を自覚していく。「14歳の女の子がどうやって成長していくのか、その過程をどう作るかが大事じゃないかと思っているんですよね。最初は14歳の少女らしく不安定さがあって無知で。でも大人になっていく中で、純粋の塊ゆえに出会うものすべてからいろんなことを吸収して、ときには間違ったりしながらも女王としての覚悟を持っていく。真っ白なものが徐々に色づいていく感じを、今はまだどう表現できるかわからないですけれど、素敵に演じられたらと思っています」3年前にミュージカル『ロミオ&ジュリエット』で初舞台を踏んで以来、舞台出演がコンスタントに続く。「ミュージカルに参加できたとき、自分が知らなかった舞台に立つ楽しさを教えてもらったんですよね。その後に経験したストレートプレイの舞台では、自分が思っていた価値観が総入れ替えされるくらいの刺激をもらって、視野をものすごく広げてもらえたんです。ドラマで描かれるような身近に起こりそうな物語もすごく好きですけれど、それとはまた違う別の刺激や興奮を舞台では味わわせてもらえている気がします」COCOON PRODUCTION 2022 NINAGAWA MEMORIAL『パンドラの鐘』古代王国の女王・ヒメ女(葵)のために葬式屋のミズヲ(成田)が持ち帰った「パンドラの鐘」が、現代の長崎で掘り起こされる。鐘に記された、王国滅亡の秘密とは?古代の閃光の中に浮かび上がった〈未来〉の行方とは?6月6日(月)~28日(火)渋谷・Bunkamura シアターコクーン作/野田秀樹演出/杉原邦生出演/成田凌、葵わかな、前田敦子、玉置玲央、大鶴佐助、柄本時生、片岡亀蔵、南果歩、白石加代子ほかS 席1万1000 円ほかBunkamuraチケットセンター TEL:03・3477・9999(10:00~17:00)大阪公演あり。あおい・わかな1998年6月30日生まれ、神奈川県出身。最近の出演作にドラマ『女の戦争~バチェラー殺人事件~』『インフルエンス』『年の差婚』、舞台『冬のライオン』、ミュージカル『The PROM』など。Tシャツ¥56,100パンツ¥108,900(共にマルニ/マルニ ジャパン クライアントサービス TEL:0800・080・4502)ピアス¥11,000(マナ ローザ ジュエル/マナ ローザ TEL:011・616・0106)靴¥255,200(クリスチャン ルブタン/クリスチャン ルブタン ジャパン TEL:03・6804・2855)※『anan』2022年6月1日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・岡本純子ヘア&メイク・竹下あゆみインタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2022年05月29日鄭義信が結成し、大鶴佐助が座長を務める劇団ヒトハダの旗揚げ公演『僕は歌う、青空とコーラと君のために』が、4月21日に開幕。前日に行われたゲネプロの様子をレポートする。戦後の米軍御用達キャバレーに集う人々の切なくもおかしい人間模様が、1940年代のアメリカンポップスに乗せて綴られる本作。いつか日劇アーニーパイルの舞台に立つことを夢見るロッキー、ファッティー、ハッピーによる3人組のコーラスグループに、キャバレーのママが連れてきたゴールドが加わる。順調に活動するも、ハワイの日系二世であるハッピーの朝鮮戦争出兵によって、ルーツの異なる4人の絆は大きく揺らいでいく──。作・演出を鄭が手がけ、キャストは大鶴のほか、団員の浅野雅博、尾上寛之、櫻井章喜、梅沢昌代が名を連ねている。事前のインタビューで、鄭が「キャスト一人ずつソロ歌唱シーンを設けた」と話していた通り、群像劇の見せ場をヒット曲が彩る。中でもハッピー役の大鶴は、言葉と音の数が膨大な「Boogie Woogie Bugle Boy」(The Andrews Sisters:1941年)を英語詞で披露し、序盤から客席を湧かせた。朝鮮戦争から戻ったあと、心身ともに満身創痍の状態でこの陽気なナンバーをどうリプライズするか、鮮やかに揺れ動く感情の行方をぜひ見届けて欲しい。浅野は、太平洋戦争の特攻帰りである罪悪感を拭えずにいるロッキー役。これに加え、さらなる十字架を背負っている。その重さを仲間に打ち明け、懺悔する場面で見せる表情に注目だ。そんなロッキーを優しく見守るキャバレーのママ・ジーナには梅沢。コーラスグループの新人・ゴールドは朝鮮人。戦地へ向かうハッピーは敵国のアメリカ人にあたるが、これまでに育んだ友情が脳裏をよぎる。「それでも生きていて欲しい」というジレンマを、演じる尾上はハッピーに直情的にぶつけ、確かな存在感を残した。豊かな体躯で喧嘩シーンを圧倒するファッティーには櫻井。シリアスな展開の中に笑いをもたらすコメディリリーフ的な役割をまっとうしていた。上演時間は約120分(休憩なし)。公演は5月1日(日)まで、東京・浅草九劇にて。感染症対策を講じて上演される劇場公演のほか、PIA LIVE STREAMでは4月23日(土)17:00開演回の「オンライン生配信」を実施。48時間後の25日(月)16:59までアーカイブ視聴できる。チケット販売中。取材・文:岡山朋代
2022年04月22日鄭義信が結成し、大鶴佐助が座長を務める劇団ヒトハダの旗揚げ公演『僕は歌う、青空とコーラと君のために』の初日が迫る。戦後の米軍御用達キャバレーに集う人々の切なくもおかしい人間模様が、1930〜50年代のアメリカンポップスに乗せて綴られる群像劇だ。開幕を約20日後に控えた稽古場で、作・演出を務める鄭、そしてハワイの日系二世ハッピー役の大鶴がインタビューに応じた。劇団は「自分たち主体で何かを発信したい」という初期衝動の形(鄭)――鄭さんは劇団結成の経緯を「もう無縁だと思っていた劇団を、皆さんの熱意にほだされ結成することになりました」とコメントされました。作品をつくって上演するなら別の形もあるかと思いますが、あえて“劇団”にした意図を教えてください。鄭プロデュース公演が主流の中で「劇団をつくろう」という気は最初まったくなかったんですよね。飲み屋で話しているうちに、そういう流れになって。オファーを受け取って作品に参加するだけでなく、「自分たち主体で何かを発信したい」という強い初期衝動みたいなものが根底にありました。自分たちがやってみたいことに小回りの利く形でトライできる場、という文脈です。大鶴僕は櫻井(章喜)さんにお誘いいただき、結成のモチベーションをお聞きして共感しました。鄭さんと初めてご一緒した三人芝居の『エダニク』(2019年)に櫻井さんが観客としていらしていて。そのあと食事をご一緒した時にヒトハダの話をされていたので、「それ何のお話ですか?」と首を突っ込んだら……櫻井さんが「入る?」って。鄭もともと劇団は、僕が作・演出した『赤道の下のマクベス』(2018年)のキャストだった浅野(雅博)くんとヒロ(尾上寛之)が意気投合して生まれた話だったんです。「二人芝居を書いてもらえませんか?」と酒場に呼ばれて、ベロベロに酔っ払ううちに……いつの間にか劇団ができていた(笑)大鶴その御三方にどうして櫻井さんが加わることになったのか、いま劇団メンバー全員で話しても誰もわからないんです! でも櫻井さんがいなかったら僕は参加していないし、梅沢(昌代)さんだって……そうですよね?鄭みんなの間でよく話題に挙がるよね、「サク(櫻井)さんはいつからいるの?」って。僕とサクさんは『焼肉ドラゴン』(2016年)で一緒になったけど、ヒトハダ参加の経緯は誰も知らないんです。早くも劇団七不思議のひとつですね(笑)劇団の座長として、僕は何をすればいいですか?(大鶴)――劇団旗揚げのお知らせは最初、鄭さんお一人で行われました。そのまま主宰の座に就かず、大鶴さんを座長に据えたのはどういった経緯だったのでしょうか?鄭多数決です。普通は作・演出が座長になるのかもしれないけど……逃げました(苦笑)。言い出しっぺの浅野くんやヒロもやらないと言うし。「じゃあ誰がやる?」となった時に「いちばん若い佐助が適任では?」って。多数決したら全員一致で佐助に決定!大鶴僕、その場にいなかったんですよ? それで次の日に「佐助、座長になったからよろしく」って事後報告を受けました。最初はジョークだと思ったけど、どうやら本気らしく。――欠席裁判みたいですね(笑)。座長って何をされているんですか?大鶴僕もそれを知りたいくらいです。いろんな方に「座長って何をすればいいですか?」と聞いて回っているんですが……明確なことを誰も教えてくれません(笑)鄭あはは(爆笑)! まぁ、追い追いだよね。いろいろ責任をかぶることになるんじゃないかな。大鶴脅かすのやめてくださいよ!――たとえばオファーを受けて参加することになった現場と比べて、座長だと作品に取り組むスタンスが何か異なるのでしょうか?大鶴(しばらく思い浮かべて)……特に違わないですね。――じゃあ、なおさら「座長とは?」と迷宮入りしますね(笑)大鶴ホントですよ! 誰か教えてください(苦笑)――お父さまの唐十郎さんは状況劇場や唐組と大所帯を率いていましたが、大鶴さんにとって初めて携わる“劇団”はいまのところ、どんな場所でしょうか?大鶴父の劇団を指しているわけじゃなく、僕の勝手なイメージですが……劇団ってトラブルが多発するイメージがあるんですよね(苦笑)。いい意味でも悪い意味でも喧嘩があったり。でもヒトハダは劇団員がみんな優しく、人肌のように温かい。「こんなに平和で居心地のよい劇団あっていいんだ」と感じるほどです。芸達者な先輩たちから、いろんな刺激をたくさん頂戴したいと思っています。一人一曲、見せ場にソロ歌唱があります(鄭)――鄭さんは、大鶴さんの俳優としての魅力をどんなところに感じていらっしゃいますか?鄭まだ若いので飲み込みが早く、柔軟ですね。頭がやわらかすぎるのか、演出の要求に対して「それでいいんか?」って変化球を投げてきます。たとえば僕が「現状こうなのを、こういう風に変えてみて」と要求したことに対して、こちらの想像より一歩二歩違ったところに着地するというか。演劇DNAというか、思考回路が本当におもしろい。思わず「どんどんやれ」って助長してました(笑)――大鶴さんは『エダニク』でご一緒された時に感じた鄭演出の魅力をどのように感じましたか?大鶴静かな会話劇だと思って、本読みの時にストレートにやっていたら……鄭さんから「もっと声を出してみて」とか「今度は東北のおばあちゃんが孫に語りかけるように」といろんなパターンでセリフを言うことを求められました。実際にやってみたら、最初に一人で台本を黙読していただけでは想像もつかなかった人物像が立ち上がっていて。そこからすごく楽しくなりましたね!――鄭さんの戯曲に挑戦するのは本作が初めてですよね? 大鶴さんが『僕は歌う、青空とコーラと君のために』をお読みになって感じたことを教えてください。大鶴戦後の進駐軍クラブに出入りしている、ハワイの日系二世や在日朝鮮人が組んだコーラスグループの物語です。登場人物すべて、戦争に対して抱えているわだかまりや屈託のグラデーションが異なっていて。各自のルーツが異なることに起因するんですが、それでも同じ歌を口ずさみ、歌声で共鳴し合っている。それが素敵だなって思いました。シリアス一辺倒かと思えば、笑えるシーンもあって。緊張と緩和が効果的に活用されていて、ご覧になっている方は感情を揺さぶられるんじゃないかと思います。鄭前々から進駐軍のキャンプまわりにいたコーラスグループの存在に興味があったので、彼らを題材にした物語をつくりたいと構想していました。そこに普段からよくテーマにしている在日外国人やマイノリティを登場させることで、僕らしさを発揮できるのではないか、と思って。それと劇団の“旗揚げ公演”だから、キャストの歌声やピアノの生演奏で華々しく盛り上げたいという気持ちもあって、メンバーには台本よりも先に「あなたの役が歌うソロパートの楽曲はこれです」ってタイトルを渡しました。一人一曲、見せ場にソロ歌唱があるんです。大鶴鄭さん、執筆前に「みんな歌えるよね?」って確認してましたよね。僕、本格的なミュージカルではないけれど「音楽劇なら」とお答えしたら、おそらく登場するナンバーの中でダントツに難しい「Boogie Woogie Bugle Boy」(The Andrews Sisters:1941年)を充てがわれて(笑)。歌詞は英語で言葉数も多いわ、テンポも速いわで……大変です。はじめは「あれヤバい、歌いこなせるか?」って不安でしたけど、練習を重ねるうちに楽しめるようになりました。鄭そうだね、少しずつサマになってきたんじゃない?役人物として揺れ動くのが楽しみ(大鶴)――配役はどのように考えられたのでしょうか?鄭メンバーの顔を見渡して、少しだけハードルの高い役割をそれぞれに与えました。各自苦労するポイントもあると思いますが、これから稽古で詰めていきます。佐助が演じるハワイの日系二世ハッピーには、彼のちょっとトボけたところを乗せてみました(笑)――大鶴さんのハッピーにはどんなハードルを課したのでしょうか?鄭ハッピーは途中でコーラスグループを抜け、朝鮮戦争へ行くんですね。そこから帰って来て、どういう人間に変化しているか。これが佐助にとって、ハードルになるでしょうね。きちんとハッピーを掴んで演じ切ることができたら、いつもよりオトナな佐助を見ていただけるんじゃないでしょうか。大鶴そうですよね。彼を掴むために、ここ2週間くらい鄭さんからお借りした『ハワイ日系二世の太平洋戦争』という資料を読んでいました。敵として日本と向き合うことになった彼らは戦争をどのように受け止め、生きてきたのか書かれた本です。彼らはローマの百四十高地で同僚の兵士がバンバン死んでいく悲惨な状況を体験したうえで、また朝鮮戦争に駆り出される。そりゃハッピーの心はボロボロになりますよね。――しかもアメリカ人のハッピーに対して、コーラスグループのメンバーはアメリカの敵国である朝鮮人なわけで。大鶴そうなんです。この歴然とした事実を受け止めて、自分の中にものすごく大きな根を張らないと……虚構に見えてしまうんじゃないか、と思いました。でないと、単なるハッピー野郎になってしまう(笑)鄭ハッピー野郎!(爆笑)――深い根を張るために、鄭さんからお借りした資料をお読みになったのですね。大鶴はい。知識を得たので、これから稽古でどんどんアウトプットしていきたいです。資料を読んでおもしろいと思ったのが、ハワイの日系二世ってそんな凄惨な戦争体験をしたと感じさせないくらい、普段はあっけらかんとしていること。これ、わりと誰にも当てはまる普遍性なんじゃないかと思いました。人間ってずっと過去にとらわれて生きているわけじゃない。ツラいことを忘れるために、矛盾を抱えることだってありますよね。――ハッピーの人物造形にも当てはまりそうなお考えですね。大鶴そういう人間くさいところを、鄭さんは日常と地続きに描いていらっしゃいます。コーラスグループの愉快な掛け合いをしたかと思えば、急にシリアスになって場をまとう空気の色が変わる。すごくリアルな台本だと思いました。そんな劇世界の中で、いまからハッピーとして揺れ動くのが楽しみでなりません。取材・文:岡山朋代撮影:川野結李歌ヒトハダ旗揚げ公演『僕は歌う、青空とコーラと君のために』(劇場公演/配信公演)チケット情報はこちら
2022年04月15日2022年2月に東京・東京芸術劇場 プレイハウス、大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TT ホールにて、古川雄大主演で上演することが決定した『シラノ・ド・ベルジュラック』のメインキャストと公演の詳細が発表された。『シラノ・ド・ベルジュラック』は17世紀フランスに実在した詩人にして、剣豪で、勇気のあるシラノを主人公にした、エドモン・ロスタン作の戯曲。大きな鼻のコンプレックスに悩みながらも、ひとりの女性を慕い続けた壮麗で高潔無比で自由な精神を持つシラノの永遠の愛の物語は、1897年に初演されて以来、世界各地で上演が繰り返され、たくさんの人を魅了してきた。そして、2019年秋~2020年までロンドンのプレイハウス・シアターでジェイミー・ロイドの演出によって上演された際に、マーティン・クリンプによって現代的な脚色がなされ、前代未聞の全く新しい『シラノ・ド・ベルジュラック』が誕生。ローレンス・オリヴィエ賞でリバイバル賞を受賞し、世界中から絶賛された。このマーティン・クリンプ脚色版の傑作をついに日本で初めて上演する。先日発表された通り、美しい心を持つ英傑なシラノを演じるのは、確かな演技力で話題の古川雄大。今回ミュージカルの舞台から満を持して、ストレートプレイにて10年ぶりに主演を務めることになった。また美しくて理知的なロクサーヌを演じるのは、モデルをはじめ、ドラマや映画で主演を務めるなど幅広く活躍し、多彩な演技力を持つ馬場ふみか。口下手で学識のないクリスチャンを演じるのは、見る人を惹きつける確かな演技力で数々の舞台やミュージカルに出演している浜中文一。シラノの仲間であるリニエール役には、古典から現代劇までジャンルの垣根を超えた役を演じ、柔軟な演技力が持ち味の大鶴佐助。シラノの頼りになる親友、ル・プレ役には翻訳劇から井上ひさし作品まで広く出演し、様々な演出家からの信頼も厚い実力派俳優の章平。シラノを敵対視する横暴な伯爵ド・ギーシュ役には、俳優としてだけではなく放送作家としても活躍しマルチな才能を持つ堀部圭亮。さらに、恋するロクサーヌを支えるマダム・ラグノを演じるのは、“最後のアングラ女優”とも言われ、変幻自在な演技力でドラマや映画など多彩に活躍し、確固たる存在を確立している銀粉蝶が務める。個性豊かなキャストが贈る、『シラノ・ド・ベルジュラック』にぜひ期待してほしい。【公演概要】『シラノ・ド・ベルジュラック』作:エドモン・ロスタン脚色:マーティン・クリンプ翻訳・演出:谷賢一<出演者>シラノ・ド・ベルジュラック……古川雄大ロクサーヌ……馬場ふみかクリスチャン……浜中文一リニエール……大鶴佐助ル・プレ……章平ド・ギーシュ……堀部圭亮マダム・ラグノ……銀粉蝶他●東京公演日程:2022年2⽉7⽇(月)〜2⽉20⽇(日) ※2⽉7⽇(月)はプレビュー公演会場:東京芸術劇場 プレイハウス東京公演チケット料金:通常 10,500円 / プレビュー 9,500円(全席指定・税込)★プレビュー公演とは…稽古場での創作をお客様の前で上演し、改良や修正を加えながらさらに作品の完成度を高めるための公演です。●大阪公演日程:2022年2月25日(金)~2月27日(日)会場:COOL JAPAN PARK OSAKA TT ホール大阪公演チケット料金:11,000円(全席指定・税込)一般発売日:12月26日(日)チケット取り扱い:近日公開お問合せ:東京公演……ゴーチ・ブラザーズ03-6809-7125(平日10:00~18:00)大阪公演……キョードーインフォメーション0570-200-888(11:00〜16:00 日・祝休業)公式サイト: 主催:「シラノ・ド・ベルジュラック」製作委員会
2021年11月22日ともだち、ってなんだろうか。自分は相手のことを「ともだち」と思っていても、相手は自分のことを「ともだち」と見てはいないんじゃないだろうかとか。「ともだち」という言葉を口にすること自体、気恥ずかしく感じるようになったりとか。「ともだち」はいつも心をほっこり温かくさせて、心をぎゅっと締めつける。そんなふうに「ともだち」について考えたのは、この戯曲を読んだからかもしれない。『髪をかきあげる』で第40回岸田國士戯曲賞を受賞した劇作家・鈴江俊郎の代表作のひとつ『ともだちが来た』。大学1年の夏、蝉の鳴く蒸し暑いアパートで、とりとめのない会話を繰り広げる<私>と<友>。そんなありふれたひとときが、せつなさとなって胸をせり上げる。<私>と<友>を演じるのは、稲葉友、大鶴佐助、泉澤祐希の3人。まもなく30代。誰がどう見ても「大人」だ。だけどまだどこか「大人」の据わりが悪くて、「若者」との間を行き来しているような3人だからこそ、この戯曲がよく似合う。演出家はつけない。どちらが<私>と<友>を演じるかも、本番当日、舞台上で行うコイントスによって決定する。そんな挑戦的な企画を引っさげ、公演に臨む3人は、今この戯曲についてどんなことを考えているのだろうか。朝ドラに1シーンだけゲスト出演するような感覚です(笑)――今回は、稲葉さんのリクエストで大鶴さんと泉澤さんに声をかけたそうですね。大鶴さんとは、2019年、今回の劇場と同じ浅草九劇で『エダニク』に挑みました。大鶴あのときの稽古場が結構ハードで。稲葉本当に(笑)。果てましたよね。大鶴おかげでぐっと仲良くなった。同じ修羅場をくぐった仲というか。稲葉『エダニク』が終わったあと、2人で浅草で飲んで。大鶴本当は本番中も飲みたかったんだけど、ハードすぎてそんな余裕がなくて。稲葉だから終わったら絶対飲もうって話をしてて。毎日、いわゆるホッピー通りに並んでいる飲み屋を「絶対ここで佐助と飲むんだ」って思いながら劇場に向かってた(笑)。大鶴で、無事に全公演が終わったあと、1日で今までの分を取り返すぐらい飲んだ(笑)。稲葉あのときはマジで飲んだ。何軒ハシゴしたか覚えてない(笑)。――泉澤さんとは共演経験はないですよね。稲葉直接共演はしてないんだけど、祐希と同じ事務所の伊藤沙莉と僕が共演して。そのつながりで3〜4年前に2回くらい飲んだことがあって。つながりと言えるつながりはそれくらいなんだけど、今回、『ともだちが来た』を読んだときにパッと顔が思い浮かんだのが祐希だったんですよね。泉澤なんで浮かんだんですか?稲葉なんでって。浮かんじゃったんだから、しょうがないじゃん(笑)。泉澤それはもうありがたい話ですけどね(笑)。稲葉空気感が大きいかな。作品の空気と祐希がリンクしたというか。わりと理屈じゃないところの話になるけど。泉澤お話をいただいたとき、びっくりしましたもん。本当飲んだだけで、そのあと一緒に遊びに行ったりしていたわけじゃないから。大鶴でも確かに僕も読んだとき泉澤くんがパッて浮かびましたけど。泉澤本当ですか。大鶴実は僕も泉澤くんと20歳のときに居酒屋で会ったことがあって。そのときの印象もそうだし、やっぱり泉澤くんというと等身大の役をよくやっているのを映像作品で観ていたので、稲葉くんから名前を聞いたときにぴったりだなと。泉澤ありがとうございます、うれしいです(照)。――今回は、共演経験がある稲葉さんと大鶴さんの間に、泉澤さんが飛び込んでいくかたちになりますね。泉澤そうですね。朝ドラにちょこっと1シーンだけゲスト出演するみたいな感覚です(笑)。稲葉ちょこっとじゃないから、ずぶずぶに引きずりこんでいくから。泉澤何回かリモートで話したり本読みをしたりしてるんですけど、すごいいいカンパニーだなっていう感触はもうすでにあるので、2人と芝居をするのは初めてなんですけど、いけそうだなっていう手応えは感じています。演じる人によって形が変わる本だと思う――リモートでもうコミュニケーションをとっているんですね。稲葉そうですね。ここ1ヶ月くらいはよくこの3人でグループ通話をしながら本についての話をしたり。泉澤そのときの佐助くんの感じがめっちゃ好きなんですよ。ボトルのままワイン飲んでて(笑)。稲葉そう。リモート画面越しに海賊がいる(笑)。大鶴あの場なら許されるかと思って(笑)。稲葉わりとゆるい感じでやってて。稽古場でもないし、演出家もいないし。毎回、何を話そうと決めるわけでもなく。プライベートの話になったらプライベートの話でいいし、本の話になったら本の話でもいいし。むしろ酒がちょっと入ってるくらいの方が会話の調子もいいっていう。泉澤そのときに改めて思ったんですけど、稲葉くんは圧倒的なトーク力がある。頭の回転が速いんですよ。戯曲の読み解き方も、稲葉くん独特の視点から理論立てて説明してくれるから、すごくよくわかる。演出家がいない分、今回はそういうディスカッションをいっぱいしていくことになるだろうから、頼りにしています。稲葉そうやって改めて言われると恥ずかしいね。――本読みをやってみて感じたこの戯曲の面白さについて聞かせてください。大鶴哀愁が漂っている作品ですよね。演じる人によって形が変わる本だと思う。特に今回は公演当日にコイントスで配役を決めるから、何が出来上がるかは僕たちですらわからないだろうなって。稲葉なんか、今しかできないなって思っちゃって。大鶴いや、20代のうちにやれてよかったと思う。泉澤楽しみです。めちゃめちゃ怖いですけど。稲葉怖いのはいいことだと思って。怖い方が人間って備えるし、バッドな意味じゃなく追い込まれるから、それはそれでいいかなって。この本のいいところは、余白がすごくあるんですよね。佐助の言う通り、誰が演じても違う形になるだろうけど、それでも本として壊れないのは、骨格がしっかりしているから。今はまだその骨組みを理解しようとしているところ。デカい屋台骨をうっかり見落としていることにならないように、俳優3人であーだこーだ言い合っています。大鶴一緒に本読みしているだけで、発見があるんですよね。ここの台詞をそういう声色で来るんだって驚くところがいっぱいあるし、それに反応して自分の音や感情も1人で読んでいたときとは全然違うものになる。稲葉同じ<私>と<友>でも3人それぞれ違っていて、こんなに違っていいんだってうれしくなるし、自分がやるときのヒントにもなる。1人2役って大変だけど、3人で2役をつくるのってめちゃくちゃ脳みそが煮詰まるというか、贅沢だなって思う。泉澤ずっと<私>と<友>の2人だけの会話が続くんですけど、その会話がリアルというか。わざと会話を噛み合わなくさせるところとか、この会話、友達としたことあるぞみたいなのがいっぱいあるんですよ。1本まっすぐな線が伸びているところを、あえてそこから脱線させて。逸らした線上でまた会話を重ねていくことで、その線が何本にも枝分かれしていく。どうなるかはわからないですけど、それが最終的に1本の線になればいいのかなって。今はそんなイメージで考えています。大鶴たぶん終わったときにこの話をハッピーととるかバッドととるかはお客さん次第。そこはお客さんに任せるとして、僕たちはこの作品の持っている温度感をちゃんと届けられたらいいのかなと思います。無意識に蓋をした記憶を、優しく開けてくれる作品――この<私>と<友>のやりとりを通して、「ともだち」について何か想起されるものはありましたか。大鶴僕にも幼稚園とか小学校のときにめちゃくちゃ仲が良くて、でも今は全然連絡をとっていない男友達がいて、そいつのことが浮かびました。時々元気かなって思い出すけど、だからと言って何かアクションを起こすわけでもなく、そのまままたふっと忘れるみたいな昔の友達なんですけど。たぶんみんな共通でそういう相手っていると思うんですよね。だからと言って、じゃあこの『ともだちが来た』を観ても今すぐ会いたいとなるわけではないけど。稲葉わかる。会いたいとはならない。そういう距離感だよね、<私>と<友>って。自分の人生だったら<友>は誰だろうって考えるのは結構大事なことで。僕の場合も、こいつか〜っていう人の顔が浮かんできた(笑)。変な話、この本を読まなきゃ思い出さなかったレベルの、ギリギリ名前を覚えてるくらいの関係なんだけど。大鶴うんうん。稲葉やっぱり人生、生きているといろんな人と関わりを持つし。いろんな記憶を全部覚えているとキツいから、人って色濃い記憶でも無意識のうちに蓋をしているところがあって。たぶん観た人も何かしら蓋をしている記憶があると思うんですけど、それを優しく開けてくれる作品だと思う。泉澤自分が<友>だったら、たぶんこの人に会いに行くだろうなというのは僕にもあって。だから、このお話って全然不思議な話じゃないと思ったんですよ。むしろすごい現実味を帯びている話だし、わかるって感じがしました。大鶴これってさ、<私>が<友>に持っている感情と、<友>が<私>に向けている感情って違うじゃない?稲葉たぶん違う気がする。泉澤<私>は<友>のことを本当に「ともだち」と思っているのか、それは2人だけにしかわからないものがあって。でも少なくとも<友>にとって<私>はものすごくデカい存在だったのかなって。高校を卒業して、しばらく会っていない間も心の拠り所になっていた。そういう人はみんなたぶん1人はいるんだなって思いましたね。――台本を読んだとき、<友>の視点で読んでいたので、その友情の非対称性にせつなさを感じました。大鶴不思議なのが、最初は<友>の方に感情移入するんですね。稲葉俺も、最初やるなら<友>だと思った。泉澤俺もっす。稲葉なんだろう。めめしいのかな、俺たち(笑)。泉澤<友>の方が意図がはっきりしているから。<私>は感情が複雑だから、わかりづらいんですよね。大鶴でもこの間、3人で本読みしたときに、<私>がわかりやすくなって、逆に<友>の方が難しいのかなって感じがした。稲葉結構前に書かれた本ではあるんですけど、今にも通じるものがあるなって思うし。友達の関係性っていろんな定義づけがされる時代じゃないですか。「ともだち」って何?親友とどう違うの?みたいな。同じクラスだったけど、「ともだち」かと言われたらと微妙だからクラスメイトって呼んだり。先輩でも仲が良かったら「ともだち」っていう関係値だったり。いろんな考え方があるけど、そこを踏まえて『ともだちが来た』っていうタイトルがすごい好きで。「友が来た」じゃなくて、『ともだちが来た』っていうところに余白を感じるんですよね。その余白の埋めるところは埋めて、空けるところは空けて、観た人に持って帰らせてくれるものがいっぱいあるものを劇場でお届けできたらと思います。大鶴この間までセミが鳴いてたじゃないですか。それを聞きながら<私>と<友>はこういう状況だったのかって思ったりした。稲葉俺はコオロギが鳴いているのを聞いて思った、あ、夏が過ぎたって。――蝉の鳴き声が聞こえるアパートという設定がいいですよね。自分は経験したことがないのに、なつかしさを感じるというか。稲葉原風景ってすごいな、めちゃくちゃパワーあるなと思いました。――実際には、エアコンをガンガンかけてたはずなのに(笑)。稲葉そう(笑)。でも、この2人がいる部屋にエアコンがあったら嫌だなとか勝手に思う。扇風機もいらない。そういうのがない方が、動くものが多いというか。大鶴自転車とかもね。ここにあるのは人力のものですね、全部。稲葉そう、電動自転車じゃないし、おしゃれな折り畳み自転車でもなく。大鶴ト書きにもいわゆるママチャリって書いてましたね。わざわざそう書くということは、鈴江さんの中で絶対的なビジョンがあるんだろうなっていう。――ト書きが独特ですよね。稲葉ト書き、独特なんですよ(笑)。大鶴ここまでリアルにト書きを書いてあるということは明確な意味があるんだと思う。稲葉めちゃくちゃ意図があるよね。大鶴「勝ってしまう者は負けてしまう者にどんないたわりをかけてやれる資格も持たないのだから」っていうト書きがあったり。なぜそれをここに書いてあるんだろうとか。よく3人でト書きの話もするよね、どういう意味かなって。稲葉めちゃくちゃでかい楔として置かれているような気がする。ト書きに乗っかって、ちょっと動きながらやってみると、感情が引っ張られるところがあって。大鶴まだ本を読んだだけでそれだけ動くものがあるから、実際に立ち稽古に入ったときにどういう形になっていくかは、すごい楽しみ。泉澤しかも演出家もいないですからね。3人でそういうのも全部決めていけるのはすごい面白いだろうなと思います。大鶴たぶん人のやっているのを見て、なるほどなって新しいアイデアが生まれたりするんだろうな。稲葉演出家がいて、俳優としての自分がいると、それぞれの役割に徹することが大事だから、本のここがどうっていう話を現場でする時間があんまりとれなかったりする。それを考えると、こんなにオープンにディスカッションして試せる現場があるというのは楽しいし、ありがたいなって。大鶴年が近い分、気を遣わず話しやすいしね。稲葉みんな正解じゃないけど、みんな正解だしっていうスタンスで話せているのが、今、すごくいいのかなと思っています。大鶴真ん中の道筋は通すとして、たとえば俺が<私>、稲葉くんが<友>のパターンもあれば、その逆のパターンもあって、俺が<私>、泉澤くんが<友>のパターンもあれば、その逆のパターンもある。本当、何通りの芝居になるんだっていう。このやってみないとわからない感じに、今すごくワクワクしてる。稲葉作品としての芯を1本通して。誰がどう演じても、そこに帰って来られればいいという着地点だけ決めておけば、あとは自由。その自由度を活かして、好き勝手やるけど、でもちゃんと地に足ついたものを今回はつくりたいし、この3人ならその工程を楽しんでやれると思う。つくるのは超大変だけど、超楽しい現場になる予感がしています。ぴあアプリ限定!アプリで応募プレゼント稲葉さん、大鶴さん、泉澤さんのサイン入りポラを2名様にプレゼント!【応募方法】1. 「ぴあアプリ」をダウンロードする。こちら() からもダウンロードできます2. 「ぴあアプリ」をインストールしたら早速応募!【公演情報】『ともだちが来た』作:鈴江俊郎監修:中山祐一朗出演:稲葉友、大鶴佐助、泉澤祐希企画:稲葉友●10/27~11/7◎浅草九劇〈料金〉劇場観劇チケット:4,800円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)取り扱い:チケットぴあ オンライン生配信チケット:2,500円(税込・24時間アーカイブあり)取り扱い:PassMarket撮影/奥田耕平、取材・文/横川良明
2021年10月22日原田マハの小説『リボルバー』が舞台化。『リボルバー~誰が【ゴッホ】を撃ち抜いたんだ?~』として、2021年7月10日(土)から8月1日(日)まで東京・パルコ劇場で、8月6日(金)から8月15日(日)まで大阪・東大阪市文化創造館で上演される。主演は、関ジャニ∞の安田章大が務める。原田マハの小説『リボルバー』が舞台化『リボルバー』は、「ひまわり」などの作品で親しまれる有名画家フィンセント・ファン・ゴッホの死をめぐる謎に、現代のオークショニストが迫るアートミステリー小説。同作品を舞台化した『リボルバー~誰が【ゴッホ】を撃ち抜いたんだ?~』では、原作者である原田マハ自身が戯曲を手掛け、謎に満ちたゴッホとゴーギャンの愛憎入り混じる関係にフォーカスする。<あらすじ>パリの小規模なオークション会社に勤めるオークショニスト・高遠冴はゴッホとゴーギャンについての論文を準備中だった。そんな彼女のもとに古びた拳銃が持ち込まれた。出品者はゴッホの自殺に使われたものだという。その真実を探るために冴は、ゴッホとゴーギャンの謎に満ちた関係の調査を始める。そして、誰も知らない歴史上の真実を掘り当てる。それは、ゴッホの死にゴーギャンが関わっているという驚くべきものだった…。ゴッホ役に関ジャニ∞の安田章大『リボルバー~誰が【ゴッホ】を撃ち抜いたんだ?~』で、ポスト印象派の画家としてフランスで活動したゴッホを演じるのは、関ジャニ∞としてはもちろん、俳優としても活躍する安田章大だ。池内博之や北乃きいも出演また、ゴッホのライバルであり一時期は共に創作活動をしていたゴーギャン役には、『アウトレイジ 最終章』『食べる女』などの池内博之を起用した。その他、ゴッホとゴーギャンの謎に迫るオークショニスト・冴役を北乃きいが務めるほか、大鶴佐助、相島一之、細田善彦、金子岳憲、東野絢香も参戦。若手からベテランまで実力派の俳優陣が、孤高のアーティスト・ゴッホの謎に満ちた生涯を描いた作品に挑む。演出に『世界の中心で、愛をさけぶ』『劇場』の行定勲演出は、『世界の中心で、愛をさけぶ』『劇場』など映画監督として数々の名作を生みだしてきた行定勲が担当。15年に演出を務めた「タンゴ・冬の終わりに」で第18回千田是也賞に輝くなど高い評価を受けている行定が、6年ぶりに舞台演出を手掛ける。詳細『リボルバー~誰が【ゴッホ】を撃ち抜いたんだ?~』期間・会場:・2021年7月10日(土)~8月1日(日):パルコ劇場・2021年8月6日(金)~8月15日(日):東大阪市文化創造館 Dream House 大ホール作:原田マハ演出:行定勲出演:安田章大、池内博之、大鶴佐助、北乃きい、細田善彦、金子岳憲、東野絢香、相島一之美術:堀尾幸男音楽:斎藤ネコ照明:佐藤啓音響:井上正弘衣裳:伊藤ハンス衣裳スーパーバイザー:阿部朱美ヘアメイク:鎌田直樹演出助手:長町多寿子舞台監督:本田和男■チケット<東京>発売日:2021年6月12日(土)チケット料金:12,000円(全席指定・税込)プレイガイド:チケットぴあ、ローソンチケット、イープラス※チケットの申し込みは、一人1公演につき2枚まで※各プレイガイドでのチケット取扱いは先行販売、一般発売ともウェブのみとなる問い合わせ先:パルコステージTEL 03-3477-5858(時間短縮営業中)<大阪>発売日:2021年7月3日(土)チケット料金:S席12,000円A席11,000円(全席指定・税込)プレイガイド:チケットぴあ、ローソンチケット 、イープラス、CNプレイガイド問い合わせ先:キョードーインフォメーションTEL 0570-200-888(11:00~16:00/日祝休業)
2021年06月05日5月15日(土)よりアンコール公演が予定されている、渡辺謙主演、宮沢氷魚共演の舞台「ピサロ」より、稽古場の様子を写した写真が公開された。昨年3月、PARCO劇場オープニング・シリーズ第1弾公演として開幕する予定だった本作は、コロナ禍により初日を延期、さらに45回予定のところ、わずか10回の上演となってしまった。そこで観劇が叶わなかった多くの人々のリクエストに応えて、今回アンコール公演が行われる。本作は、16世紀、167人の寄せ集めの兵を率いて2400万人のインカ帝国を征服した、成り上がりのスペインの将軍ピサロの物語。日本初演は36年前の1985年PARCO劇場。山崎努がピサロを、渡辺さんがインカ帝国の王・アタウアルパを演じた。そして今回、自身に「俳優を一生の仕事とする」覚悟を決めさせる一本となった本戯曲に、渡辺さんがタイトルロールとして帰還。ピサロに対峙する太陽の子・インカ王アタウアルパは、宮沢さんが務める。公演に向けて感染予防対策を講じ、一丸となって全力投球中の稽古場から到着した写真では、並々ならぬ熱量が感じられるようだ。公演が止まってしまったとき、すぐさまリベンジ公演をやろうと声を上げたのは、主演の渡辺さん。その願いが実現して4月、大階段のセットが組まれた稽古場に、総勢29名のキャストが結集。初演をともに立ち上げたメンバーに加え、一部新顔も迎えての再始動。演出のウィル・タケット、演出助手兼振付のシドニー・アファンデル=フィリップスの姿もあった。この日の稽古は、戦いによる大殺戮が繰り広げられた一幕のラスト、その鮮烈な余韻を残しての二幕頭からスタート。回想する老マルティン(外山誠二)が見つめる中、おぞましい光景を見たことに打ちひしがれ、嘔吐する小姓マルティン(大鶴佐助)。副隊長デ・ソト(栗原英雄)がそんな彼を励ますところに、ピサロの一喝が刺さる。渡辺さんの険しい眼光、雷鳴のような一声に稽古場中の息が止まった瞬間、タケットが立ち上がって芝居を止め、一気に緊張が解かれ、穏やかに指示する。そして、囚われの身となったアタウアルパとして、大階段の上に座っていた宮沢さんが降りて来て、そのやりとりを集中して聞く姿がなんとも印象的。さらに、ピサロが初めてアタウアルパと対話するシーンの稽古へと続き、黄金よりも太陽の子アタウアルパに惹かれ始めているピサロの心の動きを、鋭利な視線を放って豪気に、かつ俊敏に、多彩な表現で魅せていく。そして宮沢さんが醸し出す肝の据わった安定感には驚きを隠せない。初演で見せた神々しく透明感あるその姿に、さらに太い芯が備わったように感じられた。「ピサロ」あらすじ西暦1531年。齢60を超えた粗野な成り上がりの将軍ピサロは、彼の人生の最後の遠征となるインカ征服への準備を始めた。集まった兵士は一攫千金を夢見る平民たち。そんな傭兵を含む167名を率いて、ピサロはペルー征服へと出発。6週間をかけ、森をぬけ、2週間かけてアンデスを超える過酷な行軍の末に、数千人のインディオを虐殺し、自らを太陽の子と謳うインカの王アタウアルパを生け捕りにする。ピサロは、アタウアルパを釈放する代償として莫大な黄金を要求。そして、莫大な黄金を手にしたピサロとスペイン人たちは――。PARCO PRODUCE 2021「ピサロ」は5月15日(土)~6月6日(日)PARCO劇場にて上演。(cinemacafe.net)
2021年05月06日渡辺謙主演、宮沢氷魚共演で注目を集めながら、昨年、わずか10回きりの上演となった舞台「ピサロ」が5月15日(土)~6月6日(日)アンコール上演されることが決定した。「ピサロ」(原題:ザ・ロイヤル・ハント・オブ・ザ・サン)は16世紀、167人の寄せ集めの兵を率いて、2400万人のインカ帝国を征服した、成り上がりのスペインの将軍ピサロの物語。「アマデウス」「エクウス」などで、トニー賞最優秀作品賞、ニューヨーク劇作批評家賞など数多くの賞を受賞した英国を代表する劇作家ピーター・シェーファーによる傑作戯曲。2020年3月、PARCO劇場オープニング・シリーズ第1弾公演として華々しく開幕する予定だったが、コロナ禍により初日を延期、45回予定のところ、わずか10回の上演となっていた。今回、観劇が叶わなかった多くの方々のリクエストに応え、2021年5月にアンコール公演が決定。日本初演は36年前の1985年PARCO劇場。当時まだ無名だった渡辺さんがインカ帝国の王・アタウアルパを演じ、観客に鮮烈な印象を残した。昨年、渡辺さんは、自身に「俳優を一生の仕事とする」覚悟を決めさせる1本となった本戯曲に、タイトルロールとして帰還。スケールと情熱を湛え、人間存在の深みを共感させる素晴らしい演技を披露した。ピサロに対峙する太陽の子・インカ王アタウアルパ役を演じたのが宮沢さん。2018年、三島由紀夫最後の長編小説を舞台化した「豊饒の海」でも進境著しい演技をみせた宮沢さんが挑んだアタウアルパは、その気品と風格が舞台に輝きをもたらした。そして1年後の本年5月、渡辺さん、宮沢さんに加え、栗原英雄、大鶴佐助、長谷川初範、外山誠二ら実力ある俳優陣が再び結集。演出は、英国ロイヤル・バレエで長く活躍し、「ウィンド・イン・ザ・ウィローズ」で2014年ローレンス・オリヴィエ賞ベスト・エンタテイメント賞を受賞したウィル・タケットが担当。「必ずリベンジ公演するぞと皆と話しておりました」という渡辺さんは、「念願が叶い、再びこの難敵と向かい合う機会を得ました。ウィル・タケットのダイナミックな演出の舞台を是非ご覧下さい」とコメント。宮沢さんも再上演を喜び、「再演できる奇跡とまた舞台の上に立てる喜びを噛み締めながら毎公演頑張ります。沢山の困難を乗り越え、パワーアップしたこの作品をぜひ観に来て下さい」と期待を寄せる。そして、演出ウィル・タケットは「多くの方々にとって困難な一年ではありましたが、演劇が、観客の皆様へもたらす力を、パルコのような製作者が信じ続けているということに、私は大いに勇気づけられました」とコメント。「この作品の為に、またあの多くの出演者たちが結集し、創作を共にできるかと思うと、興奮を抑えきれません。寛大で、素晴らしい俳優である渡辺謙氏が見せる、驚異的なピサロの演技は、皆を触発しますし、共演者も卓越したパフォーマンスを見せてくれます」と語り、「視覚的な驚異をも伴う、大きな旅路の物語の中、演者達ひとりひとりが、人間の魂の持つ強さや脆さを、鮮烈に描き出してくれることでしょう」と再結集に自信を見せている。PARCO PRODUCE 2021「ピサロ」は5月15日(土)~6月6日(日) PARCO劇場にて上演。(text:cinemacafe.net)
2021年03月01日ジャニーズJr.の原嘉孝が主演を務める舞台『両国花錦闘士』の公開ゲネプロおよび取材会が5日、東京・明治座にて行われ、原、大鶴佐助、大原櫻子、紺野美沙子、りょうが参加した。漫画家・岡野玲子氏の相撲漫画『両国花錦闘士』を初舞台化した本作。力士であることに高い誇りを持ちながらも、美形でやせ型のナルシストである、“日本一セクシーなお相撲さん”昇龍を主人公に、歌あり、ダンスあり、笑いあり、そして、相撲ありのエンターテインメントを届ける。原は当初、昇龍の兄・清史ほかを演じる予定だったが、ひき逃げの疑いで逮捕(10月30日に釈放)された俳優・伊藤健太郎の降板を受け、昇龍役を務めることに。「コロナで大変な時期に無事に初日を迎えられることはすごく幸せなことで、やっとお客さんに届けられるなと、うれしい気持ちでいっぱいです」と初日を迎えた心境を語った。また、「昨日の夜、ついに明日迎えると思ったらいろんな気持ちが家でこみ上げてきて、思わず(大鶴らに)連絡しちゃいました」と明かし、「うれしさと、不安も昨日までは感じてましたけど、今日起きて、不安なんか感じる必要なくて、みんなで稽古あれだけやってきたじゃんって、根拠のない自信があって、『自信を持って真ん中に立ちます』とみなさんにお伝えしました」と語った。主演の話を聞いたときの心境を聞かれると、「僕でいいのかなと思いましたし、素晴らしいことだと思うんですけど、いい意味でやることは変わらなくて、座長であってもなくても、役と向き合う、それしかできませんとプロデューサーに伝えましたし、それでいいと言われたので、今は不安なく堂々と立っていればいいかなと…」と答え、「その日のうちにその場で『やらせてください』と言いました」と明かした。まわし姿で力士を演じる原。「見た目よりもぎゅって締まるんです。1人でつけるわけじゃなくて、横から引っ張ってもらうので、自然と気持ちも引き締まるというか、やったろ! と思います」と感想を語った。体づくりについて聞かれると、「もともと2月くらいからトレーニングを始めていて、力士役をやるにあたって、プロデューサーさんからは『もうやめてくれ。これ以上やらなくていい』と言われて。炭水化物とか脂質を抜いた食生活をしていたので、プロデューサーとかりょうさんとかが、お弁当を稽古場に作ってきてくれて」と説明。「食べないとダメ」と言われていたという。体重の変化は「7~8キロ筋肉で増えて、昇龍役になってからは絞ったので2キロくらい減りました」とのこと。相撲好きで知られる紺野が、実在の力士に例えると昇龍は「千代の富士さん」と言うと、原は「千代の富士さんに寄せるにはもっと食べないといけなかったんですけど、鍛え上げた肉体を見せたいという欲が出てしまいまして、絞ってしまいました。すいません」と謝って笑いを誘った。今年を漢字一文字で表現すると「知」。「コロナで大変な世の中になって、舞台に立てるありがたみを改めて知ったり、今回に関しては、一つの舞台に携わるスタッフさんが多くて、たくさんの人に支えられて立てるんだなと改めて知ったいうのはプラスな面でした。表に出るのはキャスト24人ですけど、スタッフさん含めて102人。この作品は102人のパフォーマンスだと思って、みんなの気持ちを代表する気持ちでセンターに立っています」と述べ、「いろいろありましたけど、無事初日を迎えること、そして千秋楽まで、一致団結して突っ走るので最後まで応援よろしくお願いします」と呼びかけた。舞台『両国花錦闘士』は、12月5日~23日に明治座で東京公演、2021年1月5日~13日に新歌舞伎座で大阪公演、2021年1月17日~28日に博多座で福岡公演が開催される。(c)2020『両国花錦闘士』撮影:田中亜紀
2020年12月05日『両国花錦闘士(りょうごくおしゃれりきし)』の制作発表記者会見が行われ、主演の伊藤健太郎をはじめ、キャストの大鶴佐助、大原櫻子、紺野美沙子、りょう、作・演出の青木豪が登壇した。明治座・東宝・ヴィレッヂのプロデューサー3人による「三銃士企画」の第1弾として上演される本作。1989~90年に連載された岡野玲子の相撲マンガを青木が舞台化し、音楽を和田俊輔、振付を梅棒、主題歌をデーモン閣下が手がける。バブル期だった原作の時代背景に対して、青木いわく今回は「新型コロナ問題が起きなかった架空の2020年」──。荘厳で神秘的な角界が、歌にダンス、そして“相撲”を交えながら「1990年代にフィーチャーしたパラレルワールド的な世界観」でポップに描かれる。伊藤が演じるのは、痩せ型で美形の力士・昇龍(しょうりゅう)。全裸に一本のまわしを抱えた話題のビジュアルをもとに、記者から体づくりについて問われると「まわし姿が舞台映えするような体に仕上げたい」と意気込む。そのため、ジム通いで筋肉痛になっている日常を明かしつつ「このまま筋肉を鍛え、きちんと食事を摂ることで今68kgくらいの体重を72kgまで増やしたい」と目標を掲げた。これに「じゃあ僕は(太って見えるように)襦袢を付けて……」と答えたのは、昇龍のライバルであるぽっりゃり型の力士・雪乃童(ゆきのわらべ)役の大鶴だ。コメントを受け、伊藤は笑いながら「それは話が違うでしょ!」とすかさずツッコミ。好対照の役柄を演じる二人ならではのかけ合いで、報道陣の笑いを誘う。相撲雑誌の記者・橋谷淳子役の大原は、出演に際して実際の取り組みへ足を運んだエピソードを披露。「淳子は相撲が嫌いな設定なのに、(現実の私は)知れば知るほどその世界に魅了されています」と話す大原を、長年の相撲ファンである紺野は「キラキラした若い俳優さんとスタッフ陣が一堂に会して“お相撲エンタテインメント”ができるとは……感無量です!」と嬉しそうに見つめた。昇龍を誘惑する大手芸能事務所の社長・渡部桜子役を演じるりょうは、自身の役どころを「数多くの男性をほしいままにしてきた、力強くクレイジーな女性」と紹介。これから行われる衣裳合わせのアイテムに「歌手のマドンナが身に着けるようなボンテージがあると聞いています」と期待を覗かせ、「見た目のイメージに負けないほどパワフルに演じたいですね」と笑顔を見せた。公演は、12月5日(土)~23日(水)に東京・明治座にて。その後、年が明けた2021年1月5日(火)~13日(水)に大阪・新歌舞伎座、1月17日(日)~28日(木)に福岡・博多座と巡演する。ぴあでは現在、座席指定できる東京公演のチケットを販売中。取材・文:岡山朋代
2020年10月22日俳優の伊藤健太郎が21日、都内で行われた主演舞台『両国花錦闘士』の製作発表記者会見に、共演の大鶴佐助、大原櫻子、紺野美沙子、りょう、作・演出の青木豪氏とともに出席した。『ファンシイダンス』『陰陽師』などで知られる漫画家・岡野玲子氏の相撲漫画『両国花錦闘士』を初舞台化。“日本一セクシーなお相撲さん”昇龍を演じる伊藤は「お相撲さんと聞いて自分で大丈夫なのかなと思ったんですが、台本を読ませていただいてなるほどなと感じました」とオファーを受けたときの心境を告白。「ダンスや歌だったり、僕もチャレンジになるのではないかなと。初めてのこともたくさんあるのでそれを楽しみにしながら、素敵なキャスト・スタッフの皆さんとこういった時期に舞台ができる喜びを分かち合いながら、しっかりと稽古をしていきたいと思います」と話した。また、「舞台で歌うのも踊るのも初めてですし、歌に対する苦手意識が強いものがあったので大丈夫かなと、いまだに思っている」と歌への苦手意識を明かしつつ、「音楽がすごくかっこよくてロック。僕も個人的にロックな曲が好きなので、自分が歌う歌を好きになれるというのは大きなポイントかなと思いながら、歌稽古やみんなで一緒に歌ったりするのは楽しく稽古させていただいています」と充実した表情を見せた。歌手・女優として活躍しミュージカル経験も豊富な大原が、“歌のプロ”としてコメントを求められ「全然わからない」と答えると、伊藤は「大原さんがわからないって言ったら、俺どうしたらいいの?」と発言し、会場から笑いが。大原は「力士の方と歌う楽曲があって、この間、皆さんと一緒に歌ったんですけど、まだ稽古に入っていないのにその歌だけで力士の方と歌っているという感覚があったので、みなさんもう出来上がっているんだろうなと感じております」と伊藤らの歌の仕上がり具合を称賛していた。舞台『両国花錦闘士』は、12月5日~23日に明治座で東京公演、2021年1月5日~13日に新歌舞伎座で大阪公演、2021年1月17日~28日に博多座で福岡公演が開催される。(C)2020『両国花錦闘士』 撮影:田中亜紀
2020年10月21日俳優の伊藤健太郎が21日、都内で行われた主演舞台『両国花錦闘士』の製作発表記者会見に出席。力士役としての体づくりで体重が4キロ増えたことを明かした。『ファンシイダンス』『陰陽師』などで知られる漫画家・岡野玲子氏の相撲漫画『両国花錦闘士』を初舞台化。伊藤は、力士であることに高い誇りを持ちながらも、美形でやせ型のナルシストである、“日本一セクシーなお相撲さん”昇龍を演じる。伊藤は「最初このお話をいただいた時に、お相撲さんということを聞いて、自分で大丈夫なのかなと思ったんですが、台本を読ませていただいてなるほどなと感じました」とオファーを受けたときの心境を明かし、「ダンスや歌だったり、僕もチャレンジになるのではないかなと。初めてのこともたくさんあるのでそれを楽しみにしながら、素敵なキャスト・スタッフの皆さんとこういった時期に舞台ができることをともに喜びを分かち合いながら、しっかりと稽古をしていきたいと思います」と話した。第1弾ビジュアルでは、“裸セクシー”をコンセプトに、昇龍に扮した伊藤が廻しを肩に担ぎ、土俵に見立てた円形の真ん中で凛と佇む姿を披露。MCの中井美穂から「チラシのインパクトがあまりにもすごくて。駅とかに貼ってある…」と言われると、「ぜひやめていただきたい」と話して笑いを誘い、「友人からも連絡が来てすごいねって言われまして。撮影をしていたときもほぼ全裸なんですけど、顔だけはファッション誌を撮っている顔でいてくださいって言われて。でもいい反応をいただけてうれしく思っています」と撮影の裏話を明かした。廻し姿への抵抗を聞かれると、「全くございません」ときっぱり。「なんでかわからないんですけど、この仕事をしていると感覚がおかしくなっちゃって、恥ずかしいとか抵抗という感覚がなくて、廻し姿で舞台上に立つのは全然抵抗はないです」と話した。出演発表時に「身体づくりはしっかりとやりたい」とコメントしていたが、「もう2、3週間くらいはジムに通ってやっているので、筋肉痛の毎日で大変です」とすでにトレーニングを開始。「徐々に(筋肉は)ついてきていますが、もうちょっとですかね。もっともっと頑張らないといけないので、12月の初日までには、みなさんの前に廻し姿で立ったときに恥ずかしくない体に仕上げたいと思っています」と語った。さらに、「体重は4キロくらい増えました」と告白。本番までにどれくらい増やす計画か聞かれると、「体重というより見た目としてバシッとついていればいいかなというのもあるので。今、68キロくらいなので……ここで言うと絶対やらなければみたいに」と明言するのに躊躇しつつ、「72キロまでいきます」と宣言した。舞台『両国花錦闘士』は、12月5日~23日に明治座で東京公演、2021年1月5日~13日に新歌舞伎座で大阪公演、2021年1月17日~28日に博多座で福岡公演が開催される。製作発表記者会見には、大鶴佐助、大原櫻子、紺野美沙子、りょう、作・演出の青木豪氏も出席した。(C)2020『両国花錦闘士』
2020年10月21日宮沢氷魚と大鶴佐助による二人芝居『ボクの穴、彼の穴。』が東京芸術劇場プレイハウスで上演中だ。劇場公演のほか、本日9月21日(月・祝)18時開演の公演は、有料動画配信サービス「PIA LIVE STREAM」でも配信される。本作は、戦場の塹壕に取り残され、お互いを「モンスター」だと思い込み、見えない敵への恐怖と疑心暗鬼にさいなまれる孤独な兵士の物語。デビッド・カリ(原作)、セルジュ・ブロック(イラスト)、松尾スズキ(翻訳)による同題絵本をノゾエ征爾が翻案・脚本・演出を手掛けて舞台化した作品で、2016年に旧PARCO劇場のファイナルを飾った「クライマックス・ステージ」の一作として初演された。『ボクの穴、彼の穴。The Enemy 』 舞台稽古より撮影:阿部章仁4年ぶりの再演となる今回もノゾエが演出を担当。初演は塚田僚一(A.B.C-Z)と渡部秀が出演したが、今回は宮沢氷魚と大鶴佐助という若手俳優として活躍めざましい2人が登場。『豊饒の海』、『ピサロ』に続いて3作目の共演となる。ノゾエは「4年前にもやった演目だけど、今こそでしょって。読み返すと、今の状況だからこそ考えさせられるところ山ほどアリ。涙拭いながら頑張った初演のキャストさんが作り上げてくれた部分も山ほどアリ。それがあっての今、この生活下だからこそにじみ出るものを全て作品に乗せて、真正面から戦いましょうぞ、この素晴らしきお二人と」とコメント。『ボクの穴、彼の穴。The Enemy 』 舞台稽古より撮影:阿部章仁宮沢は「今回の作品は、見えない敵との戦争。お互いを『モンスター』だと思い込み、相手を憎み、疑い、軽蔑する。自分を正当化し、相手に全ての不幸をなすりつける。まさに今の世の中と重なります。僕は今だからこそこの作品をやる意味があると思います」と語った上で、「初めての二人芝居を親友の大鶴佐助と演じられる幸せ、そして、初舞台の劇場であるプレイハウスで再び芝居ができることを本当に嬉しく思っています」。『ボクの穴、彼の穴。The Enemy 』 舞台稽古より撮影:阿部章仁一方の大鶴も「今この状況下で『ボクの穴、彼の穴』を上演することに、僕はとても意味があると思いました。物語の登場人物が目に見えない不確かなモノに怯え、疑心暗鬼になってく様が今の日常ととても通じており、虚構と現実が地続きになっている印象を受けました」。そして、「相手の宮沢氷魚くんとは気心の知れた仲なので、稽古場でノゾエさんの演出を一緒に浴び、もがきながら作品の旅をしていきたいです」と話していた。『ボクの穴、彼の穴。The Enemy 』 舞台稽古より撮影:阿部章仁上演時間は約1時間20分予定。公演は9月23日(水)まで。有料動画配信サービス「PIA LIVE STREAM」による配信は、24日(木)23:59まで見逃し配信あり。チケット発売中。【キャスト・演出家コメント】●宮沢氷魚コメント今年の春に、『ピサロ』という作品に出演していたのですが、残念ながら10公演で中止となってしまい、それ以来の作品ということですごく楽しみにしていました。このようなご時勢なので、本当に幕が開くのか不安もありましたが、今日こうして無事に初日を迎えられることを嬉しく思っています。最近は一人になることが簡単になってしまって、一人でいても生活はできるし、人とコミュニケーションをとることや、他人の人生に関わるということがおろそかになる可能性が高い状況だと思うんです。個と個で、相手の存在というか、相手が生きていることを確かめて安心する。当たり前だからこそ忘れてしまうことに面と向かったこの作品に出演できて、光栄です。舞台は5作目ですが、こんなに肉体的にも精神的にも追い込まれたのは初めてです。二人芝居で、セリフの量も想像以上でしたが、稽古はしんどいけど楽しく、稽古や演劇が好きなんだなと再確認しました。僕、佐助、そしてノゾエさんで作品を作り、人前で披露する。その当たり前のことがやっと始動できるようになり、嬉しいです。でもまだ、観客の皆さんも感染予防に気を付けて来てくださると思いますし、僕たちも体調管理に努めて万全の状態で、毎回新しく楽しい公演をお送りしたいと思います。●大鶴佐助コメント今、やっと長い稽古の末にゲネプロが終わって、どれだけ稽古場で稽古をしていても、観てくれる人がいるって全然違うなって、感慨深いものがあります。今日の夜が初日ですので、実際にはここから(スタート)ですが、「ゲネプロ終わったな!」とほっとしています。戦争を体験していない僕たちが演じて、観に来てくださるお客さんも戦争を体験していない方が多いと思います。目に見えないモンスターは、そんな僕たちがこの作品の中で共有できるもののひとつだと思っていて。共有できるからこそ、目には見えないものを僕たちが実体をもって演じていないと、お客さんは納得してくれないんだろうなと、ノゾエさんと氷魚くんとディスカッションして稽古してきました。普段は舞台を観て、お芝居を観に行ったという感覚になるかもしれませんが、この作品はかなり現実と地続きになっていると思うので、お客さんに「そんなもん?」と思われたら僕たちの負けだなと思いますね。舞台は毎回同じものがないというか、毎公演ふたりで役を生きて、その日のお客さんとその日の僕たちで作り上げる作品だと思うので、その1回限りの作品を毎回大事にしたいと思います。●ノゾエ征爾(演出)コメントずっと公演が中止となっており、この公演が今年初めての本番ということでとても感慨深いです。劇場は、こうやって人が集まることで息遣いが生まれてくるのだなと改めて感じました。いったい何が起きていて、何を信じればいいのか、そして人と関われないという生活にみんなが追い込まれて行く時に、今作の穴の中にひとりでいる状況がリンクして、4年前の初演時は普遍的なテーマでみなさんに共感していただけるかなと思っていたのですが、この時期になった時に多くの方がどこかで似たような感覚を持ち、登場人物を見られるんじゃないかなと思いました。このような状況下で、ひとつの公演を立ち上げていくといった時に、演劇はこれだけ多くの大人たちが、色々なことに気を使いながら、本気になって、模索して作り上げているのだと改めて肌で感じた稽古でしたし、キャストのおふたりがその大人たちの期待を一身に背負って、舞台上で生きる生き様を毎回稽古の時から楽しみにしていました。(規制緩和を受けて)これから段々と客席が埋まっていくことで、彼らがどう息衝いていくのか千秋楽まで見届けたいと思います。(以上、9月17日(木)取材会より)『ボクの穴、彼の穴。The Enemy 』 舞台稽古より撮影:阿部章仁文:五月女菜穂
2020年09月21日「春に出演していた舞台が、当初の予定の4分の1しか公演できずに中止になってしまいました。悔しさと、有り余ったエネルギーとでモヤモヤしている最中に今回の舞台のお話をいただいて…。ここにすべてをぶつけようと気持ちを切り替えました」穏やかな口調の奥に、宮沢氷魚さんの強い覚悟すら感じる。コロナ禍にある今の時世に立ち上げられたのが、舞台『ボクの穴、彼の穴。』。演じるのは、戦場で塹壕にひとり取り残された兵士の役だ。「見えない敵と戦うというのが大きなテーマなんですが、いま上演する意味がすごくある気がするんです。僕らが生きている世界でも、コロナをはじめ災害や人種差別…もっといえばSNSなどでの誹謗中傷とか、正体のわからないものと戦うことが多くなっています。そういうものに対し、どう立ち向かってどう乗り越えたらいいかを考えさせられる作品じゃないかと思います」孤独のなか死の恐怖に怯え、戦争のマニュアルに書かれた敵の姿を想像し、猜疑心を募らせていく。「家にいるだけで必要なものは何でも手に入るぶん、孤立するのが簡単な時代です。でも自分の世界に閉じこもることで見えなくなってしまうものも多い。自分の穴から一歩踏み出して、他者を理解しようと歩み寄る姿勢というのが、これまで以上に大事なんじゃないかと思うんです」出演者はたったふたり。主人公と同じように塹壕にひとり残った敵方の兵士を、2度の共演経験のある大鶴佐助さんが演じる。「佐助くんは言葉をものすごく大事にする役者さん。セリフのひとつひとつに、書かれている理由があって、それをしっかりと意識して発しているのがわかります。毎日稽古場ですばらしい芝居を届けてくれるので、それにすごく刺激を受けています」ふたり芝居というハードル以外にも今回は、「これまでとはちょっと違う不安と戦っている」とも。「装置や小道具が最低限しかなくて、舞台上には僕らだけ。間違いなく、自分の身体なり、言葉や佇まいで劇場の空間を埋める表現が大事になってくる。物語はいきなり戦争の最中から始まるんですが、その緊迫した精神状態とか切迫感とか、家で脚本を読んでいると近づけているように思っていても、稽古場に来ると全然足りていないのがわかるんです。自分の頭の中だけでは、太刀打ちできない世界なんですよね。セリフ自体は簡単な言葉ですが、だからこそ、気持ちをきちんとのせないと薄っぺらく聞こえてしまうんです。言葉をちゃんと自分のものにして、稽古場で生まれる全部を体で感じながら、セリフを発していくことを大事にしたいと思っています」宮沢さんにとって、これが5作目の舞台出演となる。「初めて舞台に立つ時に、ある方から『一回舞台に立ったら、たぶん一生やるよ』って言われたんです。その時は、毎日重圧と戦わなきゃいけないのにと半信半疑でしたけど、いまは少しわかってきました。すごくしんどいんですけれど、それに勝る喜びとか感動とか達成感を肌で感じて、自分がすごく充実するんです」『ボクの穴、彼の穴。』戦場の塹壕に取り残された兵士(宮沢)。殺すか殺されるか、穴の中にじっと身を潜める彼は、「戦争のしおり」に書かれたモンスターのような敵の姿を想像し、自らの妄想に恐怖心を煽られていく。敵方の兵士(大鶴)もまた同じ状況とは知らず…。9月17日(木)~23日(水)池袋・東京芸術劇場 プレイハウス原作/デビッド・カリ訳/松尾スズキ(千倉書房より)翻案・脚本・演出/ノゾエ征爾出演/宮沢氷魚、大鶴佐助全席指定8000円(税込み)サンライズプロモーション東京 TEL:0570・00・3337みやざわ・ひお1994年4月24日生まれ。アメリカ出身。モデルの傍ら、今年公開の『his』で映画初主演するなど俳優として着実にキャリアを重ねている。公開待機作に映画『騙し絵の牙』。※『anan』2020年9月23日号より。写真・小笠原真紀ヘア&メイク・阿部孝介(トラフィック)インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2020年09月20日9月17日(木)から23日(水)まで東京芸術劇場 プレイハウスにて上演される舞台『ボクの穴、彼の穴。 The Enemy』のライブ配信が決定した。【チケット情報はこちら】ライブ配信されるのは9月21日(月祝)18 時公演。PARCO劇場がオンラインで演劇の魅力を伝えるプロジェクトPARCOSTAGE@ONLINE として東京芸術劇場で上演中の舞台のライブ配信が行われる。本作は、松尾スズキが初めて翻訳を手掛けて話題となった絵本をもとに、 ノゾエ征爾が翻案、脚本、演出を手掛け、2016年、旧PARCO劇場の「クライマックス・ステージ」を飾った傑作舞台の再演。前作に引き続き、演出はノゾエ征爾。新たな「ボク」と「僕」には、新生PARCO 劇場のオープニング・シリーズ第一弾『ピサロ』にて、太陽の息子・インカ王アタウワルパを堂々と、神々しく演じた宮沢氷魚。そして同作品で将軍ピサロの小姓マルティンを繊細に表現した大鶴佐助が演じる。舞台『ボクの穴、彼の穴。 The Enemy』ライブ配信<ライブ配信期間>9月21日(月・祝) 開場 17:30/開演 18:00※アーカイブ(見逃し)配信:9月24日(木)23:59 まで<視聴チケット料金> 3,000 円(税込)<販売期間> 2020 年 9 月 14 日(月)12:00~9 月 24 日(木)20:00 まで
2020年09月11日初演から4年。松尾スズキが翻訳した絵本をもとに、ノゾエ征爾が翻案、脚本、演出を手掛けた舞台『ボクの穴。彼の穴。The Enemy』が、キャストを新たに再演される。戦場の塹壕にひとり残され、互いに見えない敵と戦う孤独な兵士を演じるのは、宮沢氷魚と大鶴佐助。注目の若手俳優が、今この作品を演じる意味を真摯に受け止め、二人芝居に挑む。【チケット情報はこちら】過去に、『豊饒の海』(18年)と『ピサロ』(19年)で共演しながらも、これまでは芝居をやりとりするシーンがなかったという二人。それだけに、「ようやく二人で絡むことができる」(宮沢)、「それも二人芝居という贅沢な環境で」(大鶴)と、うれしさを隠せない様子である。互いを良きライバルと感じてもいる。「僕はいつも、稽古場で佐助の芝居を見ていて悔しくなるんです。スキルの高さもそうですし、自分では想像もつかなかったような角度から切り込んでいったりするので」(宮沢)「氷魚ちゃんは芝居に対する向き合い方が本当に誠実。発する言葉がすごく美しいんです。タイプもアプローチの仕方も違いますけど、いつも“いいねぇ!”と思っています」(大鶴)。そんな二人が丁々発止の芝居を見せるのは、戦場の塹壕に残された兵士の物語。“戦争のしおり”というマニュアルに操られ、見えない相手がどんどん大きなモンスターとなっていき、恐怖と疑心暗鬼にさいなまれる。「今回のコロナ禍でもそうですが、世界中で排他や差別の風潮があると思うんです。どんな時代もプロパガンダで人を操作することもなくならない。だから、そういう問題に面と向かっていくこの作品を、今このタイミングでやることは、すごく意味があると思うんです」(宮沢)。「目に見えないものに怯えて、どんどん疑心暗鬼になって、どんどん壁を作っていく。まさに今の僕たちのことだと思うので、その怖さを伝えられたらと思います」(大鶴)。ともに観客の前で演じるのは久しぶりのことになる。「無観客配信も経験しましたけど、やっぱりお客さんがいることで力をもらえていたんだと実感しました」と大鶴。宮沢も、「お客さんの熱は間違いなく役者に届いていて、劇場で生まれるものが間違いなくある」と語り、こう決意する。「まだまだ先行きが見えなくて手探り状態ですが、こうして佐助と二人芝居ができるというのはちょっと光が見えた感じがあるので。その光を消さないように進んでいきたい」。大鶴も「より覚悟を持って芝居したい」と声を合わせる。役者も劇場も観客も、切なる思いは同じである。取材・文:大内弓子宮沢氷魚 メイク:阿部孝介(トラフィック)
2020年08月31日俳優の伊藤健太郎が主演を務める舞台『両国花錦闘士』の第2弾ビジュアルが24日、公開された。同作は『ファンシイダンス』『陰陽師』などで知られる漫画家・岡野玲子氏の相撲漫画『両国花錦闘士』の初舞台化作。伊藤は、力士であることに高い誇りを持ちながらも、美形でやせ型のナルシストである、“日本一セクシーなお相撲さん”昇龍を演じる。第2弾ビジュアルでは、軍配を持った行司を真ん中にし、女性たちを扇形に配置。役柄に関係なく、男性は裸でまわしを着け、女性も負けずにボンテージを着用し、原作にも出てくるディスコを意識してミラーボール風のカラフルな雰囲気と、バブル全盛期の華やかな世界観を表現している。ただのお相撲スポコン物語ではない、キャスト・スタッフ一丸となって挑む、ケレンとスペクタクルに満ち溢れた、歌あり、ダンスあり、笑いあり、相撲ありの、極上エンターテインメイントを予感させるビジュアルとなった。キャストは伊藤の他、大鶴佐助、大原櫻子、原嘉孝(宇宙Six/ジャニーズJr.)、入江甚儀、徳永ゆうき、岸本慎太郎(ジャニーズJr.)、根岸葵海(ジャニーズJr.)、大山真志、橘花梨、加藤梨里香、市川しんぺー、福田転球、伊達暁、紺野美沙子、りょうが出演する。(C)2020『両国花錦闘士』
2020年06月24日俳優の柄本明が、オンライン型劇場としてリニューアルした浅草九劇(東京・浅草)で、6月5日と6日に一人芝居『煙草の害について』を上演することが決定。動画配信プラットフォーム・Vimeoを通じて、有料配信される。本作は、柄本が1993年に構成・上演して好評を博した作品。その後も再演を重ね、今回、浅草九劇での上演が決定した。アントン・チェーホフの原作は上映時間20分程の短編だが、柄本は他のアントン・チェーホフ作品を部分的に取り入れつつ新たに書き加え、1時間程に仕上げている。チケット(2,000円税込)は、電子チケット販売プラットフォーム・PassMarketを通じて販売。その他、浅草九劇では、6月7日に福井晶一によるトーク&ライブ『It’s Sho-Time』、6月17日と18日に大鶴佐助と大鶴美仁音による二人芝居『いかけしごむ』、6月24日から26日に中村まこと&藤間爽子、山口森広&町田マリーによる二人芝居『タンスのゆくえ』をそれぞれ上演する。長谷川京子、真木よう子、新垣結衣らが所属する芸能事務所・レプロエンタテインメントは22日、運営する浅草九劇を「オンライン型演劇場」としてリニューアルすると発表。新型コロナウイルスの影響でオンライン配信需要が高まったことを受け、浅草九劇では設備やスタッフを常設していることから今後は配信の企画やサポートにも力を入れ、「オンライン配信を通じて『エンタテインメントの再開を心待ちにしているお客様一人ひとりと、クリエイターとが手を取り合うことのできる』、そんな劇場を改めて目指します」と宣言していた。■柄本明コメント演劇人としてまた俳優として、何かやらなければと考えていたところ浅草九劇から声をかけていただきました。よろしくお願いします。■福井晶一コメント今こそ文化、芸術の力が試される時。「オンライン型演劇場」としてリニューアルした九劇の今後の可能性に大いに期待します。初めての試みでどうなるかわかりませんがゲストの坂元健児さんと共に楽しい時間をお届けできたらと思います。■大鶴佐助コメント最近夜にタバコを吸いに外へ出ると人影が全く無く東京なのに寂れた空気を感じる事があります。そういう時僕は、もしかしたらこの世界に今存在しているのは自分だけなのではないかと錯覚して人を見つけるまで少し歩きます。通りに出れば人なんてすぐ見つけ僕は安心し少し後悔します。「いかけしごむ」はそういう空気や匂いの漂いが最近の夜に似てるものを感じました。暗い夜の街のもっとも深いところへ姉と行ってみたいと思います。■田村孝裕コメント演劇のエンジンをそろそろかけようと思います。しかし乗ったことのない新車です。九劇さんが用意した新車とともに、新たな演劇の形を模索します。全力でアクセルを踏みますので一緒に体感していただけたら幸いです。
2020年05月29日2月28日(金)今夜の「A-Studio」は、俳優の宮沢氷魚を迎えてオンエア。本番組初登場となる宮沢さんが、幼少期からデビューにいたる日々やプライベートなどをトーク。舞台「ピサロ」で共演する渡辺謙と大鶴佐助が語った宮沢さんの姿とは!?アメリカ・カリフォルニア州に生まれ、東京で育った宮沢さんは2015年、第30回メンズノンノ専属モデルオーディションでグランプリを獲得しモデルデビュー。2017年にはドラマ「コウノドリ」で俳優デビューを飾ると、翌年放送の「R134/湘南の約束」でドラマ初主演。「僕の初恋をキミに捧ぐ」や『賭ケグルイ』シリーズなどを経て、昨年夏に放送された「偽装不倫」では脳腫瘍に侵されたカメラマン役で鮮烈な印象を残した。また先日公開された主演映画『his』も話題を振りまいたのも記憶に新しい。そんな宮沢さんだが幼少期は照明スタッフに憧れていたという。父がミュージシャンをしていたこともあり、芸能界入りするもオーディションに落ち続けたというデビュー当初の苦悩などを語ってくれるほか、最近ひき肉のカレーにハマり中だという“料理男子”ぶりや、大学の卒論テーマが「東京都の川の環境変化について」だったという“川好き”な一面も明かされる。番組お馴染みの家族や親友への取材では、幼稚園から高校まで通ったインターナショナルスクールの同級生と野球部の先輩に極秘取材。仲間内で使う“インター語”とは!?カラオケでは沢田研二のモノマネも…!?さらに3月に開演する舞台「ピサロ」で共演する渡辺さんと大鶴さんへの取材では、渡辺さんの案内のもと鶴瓶さんと上白石さんがこっそり稽古場にも潜入する。舞台「ピサロ」は1985年にPARCO劇場で上演された伝説の舞台を復活させるもので、インカ帝国征服を主軸にした物語。85年当時インカの王アタワルパを演じた渡辺さんが今回ピサロを、当時渡辺さんが演じていたアタワルパを宮沢さんが演じるほか、栗原英雄、和田正人、大鶴佐助、首藤康之、長谷川初範ほか総勢約30名の出演者が壮大な歴史絵巻を描き出す。公演は3月13日(金)~4月20日(月)まで、PARCO劇場にて。宮沢氷魚のナチュラルな魅力がたっぷり詰まった「A-Studio」は2月28日(金)今夜23時~TBS系でオンエア。(笠緒)
2020年02月28日木ノ下歌舞伎の『三人吉三』が5~6月に上演される。出演者の大鶴佐助に話を聞いた。【チケット情報はこちら】今回の出演を「ワクワクします」と喜ぶ大鶴。歌舞伎や文楽など日本の古典演目を現代演劇として上演し、役者にもファンの多い木ノ下歌舞伎。その中でも『三人吉三』は代表作で、演目自体の初演(江戸時代)から約150年ぶりという「地獄の場」を含む三幕・5時間に及ぶ完全通し上演も話題を呼んだ作品だ。演じる側になると大変なことも多そうだが、「上演時間が5時間以上になる作品は初めてです。でもそんな作品ってやりたくてもやれないことのほうが多い。それを自分がやってどういう心境になるのかも楽しみですし、歌舞伎もやってみたかったので」と語る。歌舞伎をやりたかったのは、唐十郎の息子である大鶴のルーツと重なる理由。「僕はテント(芝居)をやっているのですが、テントって現代歌舞伎みたいな感じだと思っているんです。今は伝統芸能になってますけど、きっと江戸時代とかはこういう感じだったんじゃないかなって。だからやりたかった。あとは純粋に、どうなるかがわからないからやってみたかったというのもありますけどね」今回「まず楽しみ」と言うのが、木ノ下歌舞伎の特徴“完コピ稽古”。演目をより深く理解・研究するために、まずは実際に上演された歌舞伎の所作や台詞回しを出演者が“完コピ”し、そこからどう現代的に解釈し演じるかクリエイションしていくという稽古スタイルだ。「役をやるうえで“真似る”って普段は遠ざける気持ちがありますが、逆に完コピして、その型を破っていく。そこでどんなものが芽吹くのか…面白そうです」作品については「今まで三人の吉三郎の話だと思っていたのですが、木ノ下歌舞伎では群集劇だと感じました。すべての因果が絡み合い、因果応報ってこういうことか、というラストに繋がっていく…残酷だけど面白い」。その中で大鶴が演じるのは三人の一人・お坊吉三。「彼は身を持ち崩しているけど、ところどころで自分に甘いところがある(笑)。坊ちゃんだからなって、かわいらしく思います。ただ僕も少し坊ちゃんなところがあるので(笑)、そこがどうリンクしてくるかは稽古場で、ですね」。これまで蜷川幸雄や福原充則、木野花ら幅広い演出家の作品に出演し、3~4月には新生PARCO劇場オープニング作品第一弾 舞台『ピサロ』への出演も控えるなど、変幻自在の魅力を持つ大鶴。今作でどんな姿を見せるのか楽しみにしたい。今回、木ノ下裕一が再補綴に取り組み、演出は初演から引き続き杉原邦生が手掛ける『三人吉三』は、5月30日(土)から6月7日(日)まで東京・東京芸術劇場 プレイハウス、6月に長野・まつもと市民芸術館にて上演。取材・文:中川實穂
2020年02月18日劇団☆新感線の高田聖子が、“劇団とは違う新しい試みに挑戦する”をテーマに、活動を続ける演劇ユニット「月影番外地」。その6度目の上演が決定、共演者の竹井亮介とともに話を聞いた。【チケット情報はこちら】竹井が月影に参加するのは、その4『つんざき行路、されるがまま』以来2度目。高田は、「俳優さんって、正直面倒くさい人が多いんです(笑)。でも竹井さんにはそれがない。これはとても重要なこと!」と、竹井に独自の観点から信頼を置く。一方の竹井は、それまで“新感線=怖い人”というイメージを抱いていたようで…。「でも実際はものすごく物腰が柔らかい方だったので、それにギャップ萌えというか(笑)。すごく驚いたのと同時に、すごく面白いと思いました」と明かす。小劇場を舞台に、バカバカしくも濃密な人間ドラマを生み出してきた月影。これまで脚本を手がけてきたのは、千葉雅子が3作(前ユニット「月影十番勝負」含む)、福原充則が3作。そして今回、「どんなに好きな作家さんでも、逢瀬は3度までかしら (笑)」という高田のこだわりから、新たに「はえぎわ」のノゾエ征爾に白羽の矢が立った。「ノゾエさんの作品って、肌ざわりが独特で、吸引力がすごいんです。脚本だけ読むのと、舞台を観た感じがまた違うというか。だから今回木野(花)さんが演出することで、今までのノゾエさん作品とはまた違うものになるんじゃないかという期待をしています」ノゾエの脚本を初めて木野が演出する。それこそ月影ならではの取り合わせ。竹井は「木野さんってすごくダイナミックな演出をされるイメージがあるんですけど、逆に緻密な匂いがするのがノゾエさん作品。それを木野さんがどう立体化されるのか、すごく楽しみです」と期待を寄せる。さらに高田は「福原さんには木野さんと近いものを感じていましたが、ノゾエさんはまた違うタイプ。きっと今回は木野さんにとっても新しい挑戦になると思います」と続ける。詳しい内容についてはまだノゾエのみぞ知るところだが、「とりあえず車が出てきます!」と高田。竹井の役どころに関しては、「いろいろ活躍する人ですけど、なぜそうなんだろうということがポイントで…」と言葉を濁す。すると「それは初めて聞いたので、また楽しみが増えました!」と竹井。共演者には入江雅人、大鶴佐助、川上友里、池谷のぶえが名を連ねる。この組み合わせも月影ならではなだけに、何とも幕開けが待ち遠しい。公演は12月3日(火)から12日(木)まで、東京 ザ・スズナリにて。チケット一般発売は10月5日(土)10時より。取材・文:野上瑠美子
2019年09月20日鄭義信が演出を手掛け、稲葉友、大鶴佐助、中山祐一朗(阿佐ヶ谷スパイダース)が出演する舞台『エダニク』が6月22日に東京・浅草九劇で開幕、7月15日(月・祝)まで上演中だ。【チケット情報はこちら】食肉加工センターを舞台にした本作。開幕に際し演出の鄭は「この作品の中には“人が生きるために、肉を食べなくてはならない”という大きなテーマが隠されているのですが、そのことが笑いの中から少しずつ染みていく形で、最後に観客にどう伝わっていくのか、今からとてもドキドキしています」とコメント。横山拓也(iaku)が2009年に書き下ろし、以降、さまざまな演出家、出演者によって再演を重ねられている脚本について鄭は「とてもしっかり書き込まれている作品なので、その中で役者がどれだけ自由にのびのびと遊べるかというのが、今回の演出の大きなテーマでもあります」と語る。その言葉通り、今作は、脚本を読んだだけでは想像できない、あらゆる意味で“稲葉、大鶴、中山、そして鄭だからこそ”と思わされる仕上がりに。そういう意味でも、もちろん芝居の面でも、演劇のおもしろさを堪能できる作品となっている。3人芝居となっており、稲葉は「男3人の丁々発止なやり取りと鄭義信さんならではの演出がギッシリと詰まった劇を楽しんでいただけたら嬉しいです。多面的なテーマを持った演劇ですので何がどこでどうお客様に響くのかこちらも楽しみにしております」。大鶴は「3人の登場人物が持つそれぞれの思いや願いが交差し合い濃密な空間が舞台上を支配すると思うので、そこにお客さんも巻き込み、汗だくになって帰ってもらいたいです。ジェットコースターのような展開の中、3人それぞれの真実を見逃さないで欲しいです」。中山は「屠場(とじょう)という牛や豚を解体する場所での劇です。そこによくわからない兄ちゃんが入ってきて、帰ってほしいのに全然帰ってくれないというなかで色々な事件が起こる仕掛けとなっていて、元々の会話劇の面白さにアングラの鄭さんの演出が加わりパワフルなコメディとなっていますので大変観やすくて誰にもオススメです」とそれぞれコメント。笑いもあって観やすいのに、それだけでは終わらせない3人にぜひ注目してほしい。また、この劇場サイズだから届く熱気や空気、見える表情の変化、香る食べ物の匂いも、本作をより濃密なものにしている。劇場でぜひ体験してほしい。公演は7月15日(月・祝)まで東京・浅草九劇にて上演中。取材・文:中川實穗
2019年06月28日稲葉友、大鶴佐助、中山祐一朗(阿佐ヶ谷スパイダース)による3人芝居『エダニク』が6月22日(土)に東京・浅草九劇で開幕する。その稽古場に潜入した。【チケット情報はこちら】『エダニク』は横山拓也(iaku)が2009年に書き下ろし、さまざまな演出家、出演者によって再演を重ねられている作品。今作では、鄭義信が演出を手掛ける。とある食肉加工センターを舞台に、そこで働く若者・沢村(稲葉)と同僚のベテラン・玄田(中山)、そして取引先の新入社員・伊舞(大鶴)が休憩室で一緒になり、屠畜という作業への言及や、企業間の駆け引き、立場の保守など、各々のアイデンティティに関わる問題をぶつけ合い議論を白熱させる――。と、あらすじを書くとやや硬質なイメージになってしまうが、稽古場ではとにかく笑わされた。稲葉が演じる沢村は、ラジオから流れる音楽に合わせて激しくカップ焼きそばを作るシーンからおもしろく、けれど戯曲を読んでみると、そんなスタイルで作ることは書かれていなかった。つまりこれが鄭バージョンということだろう。中山演じる玄田のキャラも新鮮。マイペースさと図太さとミステリアスさがごっちゃになったような男を、中山にとって初めてという関西弁で演じている。大鶴が演じる伊舞は、そんなふたりとは一線を画すキャラクター。軽く、ゆるく、おっとりしていて、けれどやや癇に障る話し方が強烈だ。彼が会話に参加すると、ことごとく稲葉と中山の会話のテンポが崩れていくのがおかしい。それぞれの芝居は濃厚で、どこか楽しそう。例えば伊舞が「30歳までニートで、つい最近就職した」と聞いて思いっきり先輩風を吹かせるも、伊舞の秘密を知った沢村は、気が動転して能のような口調で謝り始める。その姿はおもしろいのだが、“急に態度を変える調子がいい若者”というより“家族のために仕事をクビになりたくない父親”に見えるのがさすがだった。また、秘密を知っても特に態度が変わらない玄田にも「こういうふうに生きてきた人なんだろうな」と思わせる説得力があるし、それぞれの反応に対する伊舞の案外わかりやすい表情も見どころ。そういったひとつひとつの積み重ねで、この芝居がどんどん深みを増していくのを感じた。ドタバタでありながらも、そこが屠場、つまり豚などの家畜を殺し、解体し、食肉として整えていく場であることで、話題は「命」「生き物」「食べ物」「仕事」も絡む議論に発展していく。生々しい題材だが、この3人だからこそ何を語るのか聞きたい、と思わされる稽古場だった。『エダニク』は6月22日(土)から7月15日(月・祝)まで東京・浅草九劇にて上演。チケットは発売中。取材・文:中川實穗
2019年06月20日作・iaku横山拓也、演出・鄭義信の舞台『エダニク』が6月から7月に東京・浅草九劇で上演される。出演者の稲葉友、大鶴佐助、中山祐一朗(阿佐ヶ谷スパイダース)に話を聞いた。【チケット情報はこちら】『エダニク』は、横山が2009年に書き下ろした、食肉加工センターを舞台にした三人芝居。初演以降、さまざまな演出家により再演を重ねられている作品で、鄭が演出を手掛けるのは今回が初。本作について稲葉は「三人芝居、ワンシチュエーション、会話劇…きっと密度が濃いものになるはず。それをどれだけ楽しめるかですよね。この本が鄭さんの演出でどんなふうに変わっていくかも楽しみです」。大鶴は「屠殺場の話ということもあり、直接的ではないにしろ、死の臭いみたいなものがずっと空気中にあるようなイメージです。そんな中3人しか登場しない人物達も、それぞれ抱えてるモノが違う。ひとつの空間が物凄い密度になるんだろうなと思いました」。中山は「最初は真面目な話なのかと思ったのですが、徐々に滑稽になっていく感じがいいなと思いました。最初は真面目に観始めて、“あれ?これはおもしろい芝居に発展するんじゃない?”と思い、“やっぱりそうだった!いい芝居観たな”という感じで。お客さんも楽しめるんじゃないかなと思います」とそれぞれの印象を語る。自身の役柄について、食品加工センターの若手作業員を演じる稲葉は「嫁がいて子供がいるという役も初めてですし、屠殺場で働いている人は身体が大きいのでそういうビジュアルもつくっていかなきゃいけない。今までにないアプローチになりそうです」。取引先の若手社員を演じる大鶴は「純粋なのかひねくれてるのか分からない様な所があるので、そこも楽しみたいです」。センターのベテラン作業員を演じる中山は「おっさんの役は、実はあまりやったことがないので楽しみです。役が関西弁なのですが、今までは僕が稽古場で関西弁を話すと“その設定やめよう”と言われてきたのでビビッてます。なんとか関西弁の似合う強面なおっさんをやりたいです」とコメント。鄭の演出は舞台『すべての四月のために』(2017年)ぶりの稲葉は「鄭さんはご自身のことを“アジアで二番目にしつこい演出家”と言っているのですが、本当にしつこいんですよ(笑)。稽古がすごく濃密。そのなかでさまざまな変化があると思うので、そこも楽しみにしています」と意気込んだ。『エダニク』は6月22日(土)から7月15日(月・祝)まで東京・浅草九劇にて上演。取材・文:中川實穗
2019年04月05日東出昌大の3年ぶり2度目の主演舞台となる『豊饒の海』が11月7日より東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて開幕した。本作は、三島由紀夫が自決する直前まで書いていた全四部からなる長編小説を、てがみ座・長田育恵が一つの演劇作品として練り直したもの。演出は、ロンドンで活躍するマックス・ウェブスターが担い、三島作品への新たな挑戦として、注目を集めている。ここでは、7日に行われた同劇場にて初日前会見と芝居の一部を披露する公開フォトコールについてレポートする。【チケット情報はこちら】元々、三島由紀夫の作品を愛読していたという東出は、今回は三島作品の「美」の象徴とも言うべき主人公・松枝清顕役に挑戦。公演に向けての意気込みを問われると、「三島作品というものを全く汚すことなく舞台上に表出させることができるという確信がある」と自信を覗かせた。東出演じる清顕の生まれ変わりである飯沼勲役を演じる宮沢氷魚は、「豊饒の海を全て舞台化するという無謀な挑戦ではあったが、稽古を通して素晴らしい作品になり、皆さんにお届けできるのがすごく楽しみになっていたので、初日を迎えられて嬉しい」とし、同じく生まれ変わりの安永透役を演じる上杉柊平は、「この作品は、僕にとっても、観に来られる皆さんにとっても、人生に持って帰っていただけるものと自信を持って言える」と各々作品の仕上がりについてアピールした。また、次々と生まれ変わる清顕の人生を見届ける本多繁邦を、青年期・中年期・老齢期に分けて3人の俳優が演じるのも本作の試みのひとつ。青年期を演ずる大鶴佐助が「興奮と恐怖が入り混じった気分であるが、言葉と頼もしい共演者を信じて、瞬間瞬間を楽しんでいきたい」と語ると、中年期を担う首藤康之も、「ひとつひとつの美しい言葉を、丁寧に喜びを持って発していきたい」と語った。老齢期の本多は、生前の三島と親交があり、実際に三島手ずから演出指導を受けたことがある笈田ヨシが演じる。「三島先生に最後にお会いしたときに、いろいろと先生のご決意などを伺い、それ以来早48年間の年月が流れ、先生の祥月命日である11月にこの芝居をやらせていただくのは、感無量である」と感慨にふけった。マックスの手により、四部作を通して三島が描いた人間の生きていく姿、その崇高さ、美しさが表現されているという本作。東京公演は12月2日(日)まで上演。その後12月8日(土)・9日(日)と大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演予定。チケット好評発売中。
2018年11月14日長田育恵脚本、マックス・ウェブスター演出で初演される『豊饒の海』。三島由紀夫最後の長編小説の舞台化とあって、全容が注目される舞台だ。本番を1週間後に控え、熱を帯びる稽古場を取材した。稽古前、ウェブスターが「楽しんでいきましょう」と全員に声をかけ、1幕の通しがスタート。小説『豊饒の海』は、松枝侯爵の令息・清顕のはかない生涯を描いた第1作『春の雪』と、清顕の親友・本多が清顕の生まれ変わりと信じる3人の人物、勲、ジン・ジャン、透をそれぞれ主軸とする『奔馬』『暁の寺』『天人五衰』の、全4作からなる60年の物語。今回の舞台版では冒頭、清顕役の東出昌大、勲役の宮沢氷魚、ジン・ジャン役の田中美甫、透役の上杉柊平が登場する。まず東出が前に立ち、続いて宮沢が竹刀を構え、次に田中が俊敏にポーズを決め、そして上杉が現れ……。ひとりひとり、他の者に入れ替わるかたちで前に出る。小野寺修二のステージングで物語全体を象徴的に表すオープニングだ。やがて再び東出が歩み出て、場面は『春の雪』に。優美な環境で育った清顕の憂いと倦怠感を、東出は美しく表現。そんな清顕と華族の聡子(初音映莉子)の一筋縄ではいかない恋を、大鶴佐助演じる本多が、誠実に、そして心配げに見守る。ただし、この舞台は時系列通りには進行しない。大鶴の後ろから、同じ本多の老年時代を演じる笈田ヨシが姿を現す。そして始まるのは、老人となった本多が友人・慶子(神野三鈴)を伴い、透のもとを訪れる『天人五衰』の場面。上杉が演じる、16歳らしい若々しさと苦労を経験した者ならではの落ち着きを併せ持った透の脇腹に、本多は清顕と同じ3つの黒子を発見する。しばらく『春の雪』と『天人五衰』の場面が交互に展開した後、舞台上には、本多の中年時代を演じる首藤康之の姿が。今度は『奔馬』の場面だ。神社で行われた剣道の奉納試合で精彩を放つ勲と出会う本多。宮沢が演じる危ういほどに真っ直ぐな勲の脇腹に、本多は3つの黒子を見つけ……。つまりこの舞台では、複数の時代の物語が並行して進んでいく。2幕ではさらに『暁の寺』の物語も加わって、クライマックスへと向かうようだ。これら全ての目撃者となるのは、大鶴、首藤、笈田の3人が演じ繋ぐ本多。大鶴演じる本多が清顕を相手に100年後について語る場面を、笈田は舞台脇から真剣な眼差しで見つめていた。三島が、死に魅入られていく清顕らを能のシテ、全てを見つめる本多を能のワキに見立てたと言われる本作。それだけに、今回の舞台美術は、下手側に通路のついた、能舞台を思わせるものとなっている。聡子が手折る草花や清顕が手にする木の枝を演者がその場で差し出すなどの演出にも、能に通じる部分がありそうだ。夢の場面などで繰り広げられる舞踊的な黙劇も見どころとなるだろう。身体と言葉で幻想的に紡がれる舞台『豊饒の海』。その生々流転のドラマから、目が離せそうにない。公演は11月3日(土・祝)より、東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて。取材・文:高橋彩子
2018年11月02日