1900年に発行されたシュニッツラーの『輪舞』を原作に、範宙遊泳の山本卓卓が、現代の東京を舞台に書き下ろす話題作。10組のカップルの情事前後のやり取りがリレー形式で綴られていき、ふたりの俳優が演じ分ける。そこで山本と演出・美術の杉原邦生に、企画立ち上げの経緯から現段階における構想まで、たっぷりと語り合ってもらった。その人たちの生き方を肯定も否定もしないリアリティ――おふたりがタッグを組むことになった経緯は?杉原「デヴィッド・ヘアー作の『ブルールーム』をやりませんか?」と、パルコさんから提案されたのがそもそもの発端です。1998年にロンドンで初演された『ブルールーム』は、シュニッツラーの『輪舞』をアダプテーションさせた作品なんですけど、2001年に日本で上演された舞台を、たまたま僕も観ていてすごく印象に残っていたんですよね。で、これは面白そうだなと思ったものの、『輪舞』はもちろん、『ブルールーム』にも時代的な距離を感じてしまって。これはちゃんと今の作家にリライトしてもらいたいなと。そんな時に(山本)卓卓くんの『バナナの花は食べられる』(21年初演、23年再演)を観て、すごく“ナウ”だと思ったんです。言葉の質感とかリズム感、コミュニケーションのあり方みたいなものがまさに現在で。それで卓卓くんにお願いしたところご快諾いただき、やった!って感じでした(笑)。山本僕は今回のお話をいただいた時、『ブルールーム』側に断られたんだと思ったんですよ。杉原違う、違う!全然断られてないよ(笑)。山本あ、本当ですか?僕、自尊心低いので(笑)、それでこっちにオファーが来たんだと思っていて。まずはそれが聞けて良かったです。邦生さんとは結構長いおつき合いですが、あまり僕に興味がなさそうだなと思っていたんですよね。だから声をかけてもらえたのは本当に嬉しくて。書きながら対話していくうちに、僕が書くものをめちゃくちゃわかってくれた上でオファーしてくれたんだなってことが感じられて、それも嬉しかったです。――“ナウ”の視点から10組のカップル像を描くに当たり、山本さんはどんなことを意識されたのでしょうか?山本事前にパルコさんの方で、『輪舞』と『ブルールーム』の比較表みたいなものを作ってくださっていたんです。現代に置き換えたイメージもあって、それはすごく助けになりました。そこから今の東京に「兵士」はいないけど、明日食うにも困る人はいっぱいいる。つまり生きるか、死ぬかの過酷な状態にある人として、「兵士」を「十代」に置き換えよう、とか。そうやって今の人たちを見つめた時に矛盾が起きないよう、さらに最先端の人たちが出てくるよう、そんなことを意識しながら書き進めていきました。杉原僕が卓卓くんにお願いしたのは、『輪舞』の構造を踏襲して欲しいということ。それと、単純な男女二元論の話にはしたくないよね、と提案させてもらったこと。そのふたつだけです。で、上がってきたものを読んだら、想像を遥かに超えた台本になっていて。さっき言ったような置き換えのことを“ずらし”と卓卓くんは言っていますが、それが憎いほどうまい。しかも登場人物たちの生き方というものを、肯定もせず否定もせず、そのまま提示している。非常にリアリティがあって、面白いなと思いました。作家と演出家の間には独特の“ラブ”がないとうまくいかない――リレー形式で描かれる10の情事の風景。その登場人物たちを演じ分けるのは、髙木雄也さんと清水くるみさん。たったふたりだけです。杉原おふたり共、舞台上ですごく存在感がありますよね。髙木くんは三浦大輔さんの作品(=22年『裏切りの街』)でもそうでしたけど、すごく体が生々しくて。舞台上に立っていても全然気負ってる感じがない。逆にくるみさんは、そういう体の状態を自分から作れる人というか。だから相性はすごくいいんじゃないかなと思っています。山本僕はまだ2回しかおふたりに会ったことがないんですが、髙木さんは本当にピュアだし、動物的というか、感覚的にやってくださる方のような気がします。一方で清水さんは、テキストを深く理解してくれているのが伝わってきますし、非常に理知的。そういう意味で、髙木さんといいバランスなんじゃないかと思いました。――メインキャストのおふたり以外に、8名のステージパフォーマーも参加されます。その狙いは?杉原シーンがころころ変わっていくので、その連なりを輪舞(ロンド)のように、踊るように変化させたいと妄想しています。そこできちんと身体性を持った人たちが空間を動かし、彩ることによって、踊り続けるように場面転換が出来るんじゃないかと思っていて。さらに振付には僕が信頼する北尾亘くんが入ってくれているので、大いに力を借りたいと思っています。――山本さんの劇団「範宙遊泳」では、作・演出を兼任されることがほとんどです。ただ本作同様、『心の声など聞こえるか』(21年)では作に専念されました。そのことによって新たに見えてきたことはありますか?山本やっぱり自分が作・演出を兼任しちゃうと、書きながら、「あ、これ演出するのやっかいかも」って思ってひっこめちゃう瞬間が必ずあるんですよね。それは絶対に良くないと思っていて。作演を分けてそれぞれに専念するためには、作家と演出家の関係性が非常に重要で。一定の信頼関係というか、独特の“ラブ”がないとうまいことマッチングしない。そういう意味で邦生さんは、自分にとっては“お兄ちゃん”みたいな存在。安心して任せられるし頼れる、「お兄ちゃんお願い!」みたいな感覚があって(笑)。そういう人と一緒に作品を作れるっていうのは、とても楽しい作業ですよね。――杉原さんは演出だけではなく美術も手がけられます。現段階の構想は?杉原この作品ってふたりの密室というか、ふたりきりの空間が続いていくわけですよね。それを表すために、東京のどこか一角にあるであろうその空間を、ひとつの四角いセットで表現しちゃおうかと思っていて。それが動いたり、光ったり、物が入れ替わったり。『ブルールーム』にかけて「東京ルーム」(笑)。それが今回の美術のテーマです。でも、あくまで現段階の構想なので、全く違うものになるかもしれませんけど(笑)。取材・文:野上瑠美子撮影:藤田亜弓<公演情報>PARCO PRODUCE 2024 『東京輪舞』原作:アルトゥル・シュニッツラー作:山本卓卓演出・美術:杉原邦生出演:髙木雄也清水くるみ【東京公演】2024年3月10日(日)~3月28日(木)会場:PARCO劇場(渋谷PARCO 8F)【福岡公演】2024年4月5日(金)~4月6日(土)会場:久留米シティプラザ ザ・グランドホール【大阪公演】2024年4月12日(金)~4月15日(月)会場:森ノ宮ピロティホール【広島公演】2024年4月19日(金)会場:広島上野学園ホールチケット情報:()公式サイト:
2024年02月20日2024年3月に東京・PARCO劇場にて、PARCO PRODUCE 2024『東京輪舞』が上演されることが決定した。原作は、オーストリアの劇作家アルトゥル・シュニッツラーが1900年に発行し、当時のウィーン社会にセンセーションを巻き起こした問題作『輪舞』(La Ronde)。人間の普遍的な関係性と欲望を描いた本作は時代が変わっても支持され続け、1950年、64年、73年と三度映画化され、93年にはオペラ化もされた。本公演では、『輪舞』を「現在」「東京」に翻案し上演。台本は「範宙遊泳」を主宰し、22年に『バナナの花は食べられる』で第66回岸田國士戯曲賞を受賞した山本卓卓(すぐる)。演出は、プロデュース公演カンパニーKUNIOを主宰し、演出家・舞台美術家として活躍する杉原邦生。KUNIOによる『更地』『グリークス』などの上演に留まらず、木ノ下歌舞伎をはじめとするさまざまなプロデュース公演で高い成果をあげてきた杉原が、2021年の『藪原検校』以来3年ぶりにPARCO劇場に帰ってくる。出演は髙木雄也と清水くるみ。それぞれ5人の“男”と“女”、計10人の登場人物を演じ分け、10の情事の風景をリレー形式で描いていく。<スタッフ・キャスト コメント>■作 山本卓卓キックオフミーティングの時に、杉原さんやパルコスタッフのみなさんに「私は私の言葉と物語に責任を持ってこの戯曲を書く」と宣言してしまったので、私は私の言葉と物語に責任を持って『東京輪舞』を書いています。つまりそれはシュニッツラーや杉原さんに責任を押し付けるようなことは絶対にしないということなのですがそれってめちゃくちゃキツくて苦しいっす。でも山本卓卓いいもの書きます。楽しみにしていてください。■演出 ・美術 杉原邦生新作『東京輪舞』は、「シュニッツラーの問題作を〈現在の東京〉で上演する」という、野心に満ち満ちた企画です。ならば、作家は山本卓卓くんにお願いしたいと思いました。知り合ってすでに10年以上になりますが、卓卓くんが択ぶ日本語のセンス、その組み合わせによって生まれる独特のリズム、テキストから漂う息が詰まるような現代日本の空気感、そして人と人との交わりに冷静に寄り添う作家としての知性、それらがこの作品には必要だと思ったからです。二人の俳優が5役ずつを演じ分け、10組のカップルによる情事の前と後、そのダイアローグを舞い踊るように繋いでいく───そんな挑戦的な作品に髙木雄也さん、清水くるみさんが共に挑んでくれることになりました。お二人とも舞台での存在感の強さは言うまでもなく、ご自身の表現に貪欲な姿勢を感じられるので、稽古場でのクリエーションがとても楽しみです。着々と準備を進めているいまもまだ、ドキドキしています。このドキドキはきっと、客席のお客様のドキドキへとつづいていくはずです。その鼓動をぜひ劇場で体感してください!■髙木雄也今回パルコさんからお話をいただき、『東京輪舞』に出演させていただきます。この作品は1人で5役を演じることになりますし、役の幅も広いので、今の自分にできるのかと悩み、お受けするまで少し時間がかかりました。でも自分が諦めて誰かがこの作品に出演し、それを見て後悔するぐらいなら、自分自身が努力して自分の幅を広げれば良いと思い挑戦しようと決めました!演出の杉原邦生さん、そして清水くるみさんと時間をかけながら、1つ1つの役をしっかり作っていけたら良いなと思います!みなさん僕の挑戦を是非劇場に見に来てください!■清水くるみいつか挑戦してみたいと思っていた2人芝居ですが、こんなにも早く機会をいただけるとは思っていなかったので、正直驚きました。しかも1人5役ということでかなりハードですが、小悪魔少女から、今まで演じたことのない挑発的な女性まで、これまでの経験を活かしつつ、チャレンジすべき課題が非常にたくさんあることにワクワクしています!髙木さんとは初めましてなのですが、どんなキャッチボールになるのか全然想像できないので、稽古が本当に楽しみです。ご一緒したかった演出の杉原さん、脚本の山本さん、もう既に出来上がっている前半の脚本がおもしろいのでプレッシャーですが、きっときっとおもしろい作品になる!してみせる!ので、是非是非、観にきてほしいです!<公演情報>PARCO PRODUCE 2024 『東京輪舞』原作:アルトゥル・シュニッツラー作:山本卓卓演出・美術:杉原邦生出演:髙木雄也清水くるみ■東京公演2024年3月 PARCO劇場(渋谷PARCO 8F)■地方公演2024年4月 福岡、大阪、広島公式サイト:
2023年12月05日KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『SHELL』が、11月11日(土) にKAAT 神奈川芸術劇場<ホール>で開幕。それに先駆けゲネプロが行われ、舞台写真とコメントが到着した。本作は、倉持裕と杉原邦生が初タッグを組んで描く青春ファンタジーで、特異な人間が存在する現代社会を舞台にした群像劇。舞台上は照明や機材が剥き出しの状態で、セットも無造作に置いてある。普段なかなか見る機会のない舞台機構や、床やセットに使われている鮮やかな緑色が印象的だ。そこに開演前から生徒役のキャストが一人、またひとりと現れ、ステージ後方にある椅子に座って雑談を始める。休み時間のような雰囲気とポップな中にも不穏さを感じさせる音楽で、これから始まる作品への期待が高まっていく。物語は、高校生たちがある日突然学校に来なくなった「松田先生」について話し合っているシーンからスタート。同時に、ガラの悪い場所に出入りする娘を心配する中年男・高木、飼っていた何かを逃してしまったらしい盲目の女性・長谷川という、一見なんの関係もない人たちの姿が描かれる。学生たちのリーダー的存在の未羽は、街で見かけた中年男の高木が同級生の希穂に見えるという体験をし、この世界には「いくつもの顔を持つ人間」が一定数存在することを知る。そこから本来は絶対に交わることのない人々が意図しない繋がり方をし、それぞれの日常が変わっていく。今回は希穂を演じる石井杏奈と未羽を演じる秋田汐梨によるW主演。石井の凛としていながらどこか儚さを感じさせる佇まいで、対する秋田は誰に対しても真正面からぶつかる等身大の女子高生を好演している。また、希穂と未羽を中心とする高校生たちがメインだが、高木(岡田義徳)や長谷川(原扶貴子)の物語も魅力的だ。年齢も立場も様々な人の視点を通して他者と関わることが描かれ、それぞれの言葉が胸に迫ってくる。教室やビル、アパートといったセットの移動や入れ替えもキャストによる身体表現と共に行われ、単なる場面転換だけではない意味や意図を感じさせるのが本作の特徴の一つ。また、若手音楽家・原口沙輔による音楽も大きな魅力。美しいが硬質で緊張を孕んだメロディ、不穏な空気を増幅させるような音が、それぞれの場面をより印象的に演出している。『SHELL』は11月26日(日) まで同所で上演後、12月9日(土)・10日(日) に京都・京都芸術劇場 春秋座で上演される。■演出:杉原邦生 コメント『SHELL』は高校生たちが主役の物語です。ひとつのことだけにがむしゃらになれたあの“蒼(あお)き時期(とき)”に思いを馳せていたからでしょうか、今年の秋は少しだけ、高校時代に戻ったような日々でした。「毎日文化祭がやりたい」と演劇をはじめた僕にとってそれは、原点回帰のような時間でもありました。僕の創作の根っこにはいつも、高校時代のあの匂いとエネルギーがあるのです。カンパニーメンバー全員がただただ「あたらしくておもしろい演劇をつくりたい」というひとつの想いで創作に向かっていました。それはシンプルなことのようで、とても難しいことだったりします。舞台稽古をしながら、その想いが着実に舞台上で“貌(かたち)”づくられていく様に興奮しています。ぜひ、この作品を劇場で体感してください。ご来場お待ちしています!■伊藤希穂役:石井杏奈 コメントいよいよ舞台『SHELL』が開幕となります。舞台では初の主演という立場で、しっかりと責任を持って舞台に立つという覚悟とともに稽古に参加したのを昨日のことのように覚えています。明るく楽しい学生たちと、優しさで包み込んでくれる大人キャストの皆さんと、そして助け合い寄り添ってくださるスタッフの皆さんとひとつになって創り上げた作品です。お芝居だけでなく、歌や踊り、それぞれの体での表現、照明、音楽、セット、全てが魅力的です。皆様にお伝えしたいことはただひとつ。「是非その全てを劇場で体感してください!!」■沢木未羽役:秋田汐梨 コメントついに開幕します!一カ月以上の稽古で、自分の知らなかった感情に出会う機会がたくさんありました。自分の気持ちに素直な未羽を演じていると毎回違う発見があり、最初に自分で考えていた未羽とは全く違うものになっています。そこがまた演じていて面白くもあり、これからもどんどん新しい発見があるんだろうと思うと、これから始まる本番がとても楽しみです。お芝居だけではなく照明や音響、セットなどからも『SHELL』の世界観が存分に表現されているので、その不思議な世界観にどっぷりと浸かっていただけると嬉しいです!■高木憲一役:岡田義徳 コメント一カ月の稽古を終えて遂に本番を迎えます。若い方たちの吸収率や成長を日々感じながら、その成長にプレッシャーを感じたり、学ばせてもらったりして稽古期間を過ごしました。杉原さんの演出により、若い世代の方が生き生きと舞台上で生きる時間を観て頂きたい。演劇を知らない、観た事がないという方にも是非、この不思議で生々しく、とにかくカッコ良い空間、時間を体感しに来てください。撮影:引地信彦<公演情報>KAAT 神奈川芸術劇場プロデュース『SHELL』作:倉持裕演出:杉原邦生音楽:原口沙輔【出演】石井杏奈 秋田汐梨石川雷蔵 水島麻理奈 成海花音 北川雅 上杉柚葉 キクチカンキ 香月彩里 近藤頌利 笠島智 原扶貴子 岡田義徳藍実成 秋山遊楽 植村理乃 小熊綸 木村和磨 古賀雄大 出口稚子 中沢凜之介 中嶋千歩 浜崎香帆【公演日程】2023年11月11日(土)~26日(日) KAAT 神奈川芸術劇場<ホール>2023年12月9日(土)・10日(日) 京都芸術劇場 春秋座チケット情報:公式サイト:
2023年11月13日倉持裕×杉原邦生が初タッグを組んで描く青春ファンタジー『SHELL』。特異な人間が存在する現代社会を舞台にした群像劇だ。 2023年11月11日(土)からの開幕に向け、ゲネプロが行われた。舞台上は照明や機材が剥き出しの状態で、セットも無造作に置いてある。普段なかなか見る機会のない舞台機構や、床やセットに使われている鮮やかな緑色が印象的だ。そこに開演前から生徒役のキャストが一人、またひとりと現れ、ステージ後方にある椅子に座って雑談を始める。休み時間のような雰囲気とポップな中にも不穏さを感じさせる音楽で、これから始まる作品への期待が高まっていく。物語は、高校生たちがある日突然学校に来なくなった「松田先生」について話し合っているシーンからスタート。同時に、ガラの悪い場所に出入りする娘を心配する中年男・高木、飼っていた何かを逃してしまったらしい盲目の女性・長谷川という、一見なんの関係もない人たちの姿が描かれる。学生たちのリーダー的存在の未羽は、街で見かけた中年男の高木が同級生の希穂に見えるという体験をし、この世界には「いくつもの顔を持つ人間」が一定数存在することを知る。そこから本来は絶対に交わることのない人々が意図しない繋がり方をし、それぞれの日常が変わっていく。今回は希穂を演じる石井杏奈と未羽を演じる秋田汐梨によるW主演。石井の凛としていながらどこか儚さを感じさせる佇まいに惹き付けられた。対する秋田は誰に対しても真正面からぶつかる等身大の女子高生を好演している。また、シリアスなシーンや鋭い言葉のやりとりが多い中、石川雷蔵演じる咲斗の優しさにホッとする。咲斗と希穂の初々しく温かい会話が緩衝材のようになっていると感じた。また、希穂と未羽を中心とする高校生たちがメインだが、高木(岡田義徳)や長谷川(原扶貴子)の物語も魅力的だ。年齢も立場も様々な人の視点を通して他者と関わることが描かれ、それぞれの言葉が胸に迫ってくる。教室やビル、アパートといったセットの移動や入れ替えもキャストによる身体表現と共に行われ、単なる場面転換だけではない意味や意図を感じさせるのが本作の特徴の一つ。 また、若手音楽家・原口沙輔による音楽も大きな魅力。美しいが硬質で緊張を孕んだメロディ、不穏な空気を増幅させるような音が、それぞれの場面をより印象的に演出している。芝居を引き立て、想像力をさらに膨らませる音楽と照明、舞台美術や演出により、不可思議な世界が実に魅力的に描き出される。劇場に入った時は簡素に見えた舞台上で、次々に繰り出される豊かな表現に驚かされた。俳優とクリエイター陣が織りなす不思議でほろ苦い青春ファンタジーを、ぜひ劇場で見届けてほしい。また、開幕にあたって演出の杉原とメインキャストからのコメントも到着した。<コメント>演出 杉原邦生『SHELL』は高校生たちが主役の物語です。ひとつのことだけにがむしゃらになれたあの“蒼(あお)き時期(とき)”に思いを馳せていたからでしょうか、今年の秋は少しだけ、高校時代に戻ったような日々でした。「毎日文化祭がやりたい」と演劇をはじめた僕にとってそれは、原点回帰のような時間でもありました。僕の創作の根っこにはいつも、高校時代のあの匂いとエネルギーがあるのです。カンパニーメンバー全員がただただ「あたらしくておもしろい演劇をつくりたい」というひとつの想いで創作に向かっていました。それはシンプルなことのようで、とても難しいことだったりします。舞台稽古をしながら、その想いが着実に舞台上で“貌(かたち)”づくられていく様に興奮しています。ぜひ、この作品を劇場で体感してください。ご来場お待ちしています!伊藤希穂役 石井杏奈いよいよ舞台『SHELL』が開幕となります。舞台では初の主演という立場で、しっかりと責任を持って舞台に立つという覚悟とともに稽古に参加したのを昨日のことのように覚えています。明るく楽しい学生たちと、優しさで包み込んでくれる大人キャストの皆さんと、そして助け合い寄り添ってくださるスタッフの皆さんとひとつになって創り上げた作品です。お芝居だけでなく、歌や踊り、それぞれの体での表現、照明、音楽、セット、全てが魅力的です。皆様にお伝えしたいことはただひとつ。「是非その全てを劇場で体感してください‼︎」沢木未羽役 秋田汐梨ついに開幕します!一ヶ月以上の稽古で、自分の知らなかった感情に出会う機会がたくさんありました。自分の気持ちに素直な未羽を演じていると毎回違う発見があり、最初に自分で考えていた未羽とは全く違うものになっています。そこがまた演じていて面白くもあり、これからもどんどん新しい発見があるんだろうと思うと、これから始まる本番がとても楽しみです。お芝居だけではなく照明や音響、セットなどからも“SHELL“の世界観が存分に表現されているので、その不思議な世界観にどっぷりと浸かっていただけると嬉しいです!高木憲一役 岡田義徳一ヵ月の稽古を終えて遂に本番を迎えます。若い方たちの吸収率や成長を日々感じながら、その成長にプレッシャーを感じたり、学ばせてもらったりして稽古期間を過ごしました。杉原さんの演出により、若い世代の方が生き生きと舞台上で生きる時間を観て頂きたい。演劇を知らない、観た事がないという方にも是非、この不思議で生々しく、とにかくカッコ良い空間、時間を体感しに来てください。KAAT神奈川芸術劇場プロデュース 『SHELL』作:倉持裕演出:杉原邦生音楽:原口沙輔出演: 石井杏奈 秋田汐梨石川雷蔵 水島麻理奈 成海花音 北川雅 上杉柚葉 キクチカンキ 香月彩里近藤頌利 笠島智 原扶貴子岡田義徳藍実成 秋山遊楽 植村理乃 小熊綸 木村和磨 古賀雄大 出口稚子 中沢凜之介 中嶋千歩 浜崎香帆スタッフ舞台美術:佐々木文美 照明:吉本有輝子 音響:稲住祐平 衣裳:丁瑩 ヘアメイク:国府田圭振付:北川結、仁科幸 演出助手:日置浩輔 舞台監督:藤田有紀彦 制作進行:ycoment会場: KAAT神奈川芸術劇場日程: 2023 年 11 月 11 日(土)~26 日(日)◇=S 席平日夜割開場は開演の 30 分前◎託児サービスあり 公演一週間前までに要予約・有料(マザーズ 0120-788-222)チケット料金(全席指定・税込):S 席:6,800 円 S 席平日夜割:6,500 円 A 席:4,800 円神奈川県⺠割引(在住・在勤/S 席のみ):6,000 円U24 チケット(24 歳以下):3,400 円 高校生以下割引:1,000 円 シルバー割引(満 65 歳以上):6,300 円※神奈川県⺠割引は、チケットかながわの電話・窓口にて 8 月 26 日より取り扱い(前売のみ、枚数限定、要 住所確認)※U24・高校生以下・シルバー割引はチケットかながわの電話・窓口・WEB にて、9 月 9 日より取り扱い(前売のみ、枚数限定、要証明書)※車椅子でご来場の方は、購入前にチケットかながわにお問い合わせください。※未就学児の入場はご遠慮ください。 ※営利目的の転売禁止。※公演中止の場合を除き、チケットの変更・払い戻しはいたしません。チケット取り扱い:チケットかながわ 0570-015-415(10:00-18:00)窓口:KAAT神奈川芸術劇場 2 階(10:00-18:00)チケットぴあ [P コード:520-384]イープラス ローソンチケット [L コード:31365]お問合せ: チケットかながわ 0570-015-415(10:00-18:00) 公式サイト: 主催・企画制作:KAAT神奈川芸術劇場助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会ツアー[京都公演] 京都芸術劇場 春秋座 2023年12月9日(土)15時開演、10 日(日)13 時開演主催:京都芸術大学 舞台芸術研究センターお問合せ:京都芸術大学 舞台芸術研究センター 075-791-9207 撮影:引地信彦 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2023年11月11日KAAT神奈川芸術劇場プロデュースによる舞台『SHELL』の稽古が進んでいる。初日まで約3週間というタイミングで実施された稽古取材会では、石井杏奈、秋田汐梨をはじめとする俳優たちの、若々しいエネルギーをほとばしらせる姿が強い印象を残した。長塚圭史芸術監督によって掲げられたKAAT2023-2024メインシーズンのシーズンタイトル「貌(かたち)」のもとに実現したのは、作・倉持裕、演出・杉原邦生という注目の初タッグだ。年齢も性別も違ういくつもの人生を、いくつもの顔をもって同時に生きる特異な人々が登場する摩訶不思議な世界を描くというこの作品。倉持と杉原という二つの才能がかけ合わさって、さて、どんな世界が生み出されるのか──。この日公開された稽古は、冒頭から第3場まで。一人、また一人と現れて無造作に置かれた学校椅子に座っていく俳優たち。一人ひとりがその個性をもって、このドラマの担い手であることを表明しているかのようで、ワクワクさせられる。教室での“告白”、突然学校に来なくなった松田先生のことや、この学校の問題について話し合う生徒たちの姿、突然鳴り響く非常ベルの音は、まさに“青春ファンタジー”の始まりらしい甘酸っぱい雰囲気だが、盲目の女性と隣人とのぎくしゃくしたやりとり、ビルから突然落ちてくるマネキン──と、観客に物語の焦点を探らせる時間は実にスリリング。落ちてきたマネキンを手にしたのは、岡田義徳演じる中年男の高木。その場に居合わせた未羽(秋田)には、それが友人の希穂(石井)に見えた。そうしていよいよドラマが動き出し──と思った瞬間、なだれ込むようにして始まるオープニングシーン。観る者を物語の世界へと引き込む、杉原ならではの迫力ある場面だ。音楽を手がけるのは、20歳の新進気鋭の若手音楽家・原口沙輔。その躍動感あふれるサウンドが、心地よく響く。「若き俳優たちの溢れるエネルギーと瞬発力、少しだけ先輩な俳優たちの豊かな発想と安定感、そして、スタッフたちの惜しみない情熱と技術により稽古場は躍動し続け、日々がアッという間に過ぎていきます」とコメントを寄せた杉原。彼のもと、若い俳優たちが生き生きと力を発揮する、魅力的な舞台が期待される。公演は11月11日(土)から26日(日)、KAAT神奈川芸術劇場 ホールにて。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2023年10月27日KAAT 神奈川芸術劇場プロデュース『SHELL』が、11月11日(土) から26日(日) にKAAT 神奈川芸術劇場<ホール>で上演される。このたび、キャスト・スタッフが一丸となって取り組む熱気溢れる稽古場の様子が公開された。『SHELL』は、倉持裕と杉原邦生という注目の初タッグで、現代を舞台に特異な⼈間が存在する不思議な世界を描く青春ファンタジー。キャストには石井杏奈、秋田汐梨ら若手から岡田義徳といったベテランまで個性豊かな俳優陣が名を連ねている。この日行われたのは、冒頭から3場まで。あることをきっかけに交錯する、学生たち、盲目の女性、娘との関係に悩む父という3つの軸に関する導入とOPのダンスシーンまでの流れだ。「流してみようかと思います」という言葉にキャスト陣から「やってみよう!」「いけるいける!」と明るい声が返り、和気あいあいとした雰囲気で稽古がスタートする。希穂役の石井は、クールな雰囲気を放ち、静かながら目を惹きつける存在感がある。咲斗との会話で見せる穏やかさ、未羽たちと言い争う時のどこか一線を引いているような佇まいが印象的だ。未羽役の秋田は、ハキハキとした強気な態度で、短いシーンでも彼女の性格やクラスでの立ち位置を表現。高木と出会う場面では、これから何が起きるのかというワクワクを感じさせてくれる。また、SEや音楽が雰囲気を一瞬で変えるのが面白い。「松田先生が突然学校に来なくなった」という事件についての生徒たちの話し合い、盲目の女性・長谷川と隣人の会話、高木と娘の気まずい空気など、ひりついたシーンに様々な音が臨場感や深みを与えていた。ここから3つの世界がどう交わり、ストーリーがどう展開していくのか期待が高まる。キャストの人数が多く、椅子を使った動きなどもあるため、安全に気を付けながらフォーメーションや移動時のタイミングを細かく確認・修正していく。OPのダンスにおいても作品のテーマや世界が伝わるように話し合いながら振りを変えたり、意図しない意味が生まれないように調整したりと、こだわりを持って進めていた。緊張感があり動きも激しいダンスのため、休憩に入るとキャスト陣からは安堵のため息や「疲れた!」という声も上がるが、すぐに各所で振り付けの練習や小物の設置場所についての確認が始まる。また、杉原の「移動するときもう少し忍者っぽくできないかな」という声を受けて各々がイメージする忍者走りを試したり、変更箇所について杉原に「すぐやって大丈夫?」と聞かれた秋田が「大丈夫じゃないです!」と素直に答え笑いが起きたりと、気軽にアイデアや意見を発信できる環境が見て取れる。クリエイター陣が丁寧に指示を出してブラッシュアップしていくと同時に、キャスト陣も主体的に動いて作品を練り上げている印象を受けた。併せて、杉原、石井、秋田、岡田からコメントが到着した。■演出:杉原邦生 コメント若き俳優たちの溢れるエネルギーと瞬発力、少しだけ先輩な俳優たちの豊かな発想と安定感、そして、スタッフたちの惜しみない情熱と技術により稽古場は躍動し続け、日々がアッという間に過ぎていきます。さらに、次から次へと届く原口沙輔くんのオリジナリティ溢れる音楽によって新たな視点が加わり、これまでの演出作品にはない大きな手応えを感じています。初日までの残り約3週間、稽古場で試せることを試し尽くして、お客様に刺激的な時間をお届けしたいと思っています。ぜひ楽しみにしていてください!■伊藤希穂役:石井杏奈 コメント伊藤希穂役の石井杏奈です。10月からキャスト、スタッフの皆様と素敵な作品を作るべく稽古に取り組んでいます。物語を濃くするために照明や音楽と同様に、踊ったり触れ合ったり人間で魅せる表現が沢山あり、見応えのある舞台になっています。演出家の杉原さんや大人の役者さんたちもとても優しく、同世代の役者さんも多く笑顔の絶えない稽古場です。日常の中に非日常が存在する不思議な世界のお話ですが、もしかしたら現実でもそれぞれ見えている世界が違っていて自分の生活と重ねながら楽しめる舞台になっていると思います。みんなで作る物語が多くの方に届くことを願っています。■沢木未羽役:秋田汐梨 コメント具体的なセットや小道具などをあまり使わずに、人や音楽で空間を作り上げるという舞台になっています。私が今までに経験したことのない体の使い方をして空間を表現しなければならず、日々筋肉痛と闘いながらお稽古に励んでいます。私が演じる未羽は、学校を変えたいという強い正義感を持つ女の子です。高木が希穂に見えたことから、物語がジェットコースターのように進んでいくのですが、感じたままの感情を表現することを意識しつつ、広い会場で後方の方のお客様にも感情が伝わるようにはどうしたら良いのか、日々模索しています。観る人それぞれが各々の思う世界観を投影してもらえる様になっているので、その不思議な世界観を楽しみに見に来てくださると嬉しいです。■高木憲一役:岡田義徳 コメント台本を頂いた時、倉持さんの不思議な世界観を杉原さんがどう演出するのかワクワクしました。実際、今、稽古をしていますが、若い皆さんと沢山のディスカッションを重ねて一場、一場、丁寧に作っています。日々、成長をしているキャストを観ていると自分も色々と勉強をさせてもらいながら共に成長しているのを感じています。SHELLこの舞台を観てくださる方が、観終わった後、何かしらを感じ持って帰って頂けたらと思います。<公演情報>KAAT 神奈川芸術劇場プロデュース『SHELL』作:倉持裕演出:杉原邦生音楽:原口沙輔【出演】石井杏奈 秋田汐梨石川雷蔵 水島麻理奈 成海花音 北川雅 上杉柚葉 キクチカンキ 香月彩里 近藤頌利 笠島智 原扶貴子 岡田義徳藍実成 秋山遊楽 植村理乃 小熊綸 木村和磨 古賀雄大 出口稚子 中沢凜之介 中嶋千歩 浜崎香帆【公演日程】2023年11月11日(土)~26日(日) KAAT 神奈川芸術劇場<ホール>2023年12月9日(土)・10日(日) 京都芸術劇場 春秋座チケット情報:公式サイト:
2023年10月20日倉持裕と杉原邦生という注目の初タッグで、現代を舞台に特異な人間が存在する不思議な世界を描く青春ファンタジー『SHELL』。 キャストには石井杏奈、秋田汐梨ら若手から岡田義徳といったベテランまで個性豊かな俳優陣が集結した。公演まで1ヶ月を切ったタイミングで、キャスト・スタッフが一丸となって取り組む熱気溢れる稽古場の様子が公開された。この日行われたのは、冒頭から3場まで。 あることをきっかけに交錯する、学生たち、盲目の女性、娘との関係に悩む父という3つの軸に関する導入とOPのダンスシーンまでの流れだ。「流してみようかと思います」という言葉にキャスト陣から「やってみよう!」「いけるいける!」と明るい声が返り、和気あいあいとした雰囲気で稽古がスタートする。希穂役の石井は、クールな雰囲気を放ち、静かながら目を惹きつける存在感がある。咲斗との会話で見せる穏やかさ、未羽たちと言い争う時のどこか一線を引いているような佇まいが印象的だ。 未羽役の秋田は、ハキハキとした強気な態度で、短いシーンでも彼女の性格やクラスでの立ち位置を表現。高木と出会う場面では、これから何が起きるのかというワクワクを感じさせてくれる。また、SEや音楽が雰囲気を一瞬で変えるのが面白い。 「松田先生が突然学校に来なくなった」という事件についての生徒たちの話し合い、盲目の女性・長谷川と隣人の会話、高木と娘の気まずい空気など、ひりついたシーンに様々な音が臨場感や深みを与えていた。ここから3つの世界がどう交わり、ストーリーがどう展開していくのか期待が高まる。キャストの人数が多く、椅子を使った動きなどもあるため、安全に気を付けながらフォーメーションや移動時のタイミングを細かく確認・修正していく。OPのダンスにおいても作品のテーマや世界が伝わるように話し合いながら振りを変えたり、意図しない意味が生まれないように調整したりと、こだわりを持って進めていた。緊張感があり動きも激しいダンスのため、休憩に入るとキャスト陣からは安堵のため息や「疲れた!」という声も上がるが、すぐに各所で振り付けの練習や小物の設置場所についての確認が始まる。また、杉原の「移動するときもう少し忍者っぽくできないかな」という声を受けて各々がイメージする忍者走りを試したり、変更箇所について杉原に「すぐやって大丈夫?」と聞かれた秋田が「大丈夫じゃないです!」と素直に答え笑いが起きたりと、気軽にアイデアや意見を発信できる環境が見て取れる。クリエイター陣が丁寧に指示を出してブラッシュアップしていくと同時に、キャスト陣も主体的に動いて作品を練り上げている印象を受けた。稽古場取材会に合わせてオフィシャルコメントも到着した。演出杉原邦生若き俳優たちの溢れるエネルギーと瞬発力、少しだけ先輩な俳優たちの豊かな発想と安定感、そして、スタッフたちの惜しみない情熱と技術により稽古場は躍動し続け、日々がアッという間に過ぎていきます。さらに、次から次へと届く原口沙輔くんのオリジナリティ溢れる音楽によって新たな視点が加わり、これまでの演出作品にはない大きな手応えを感じています。初日までの残り約3週間、稽古場で試せることを試し尽くして、お客様に刺激的な時間をお届けしたいと思っています。ぜひ楽しみにしていてください!伊藤希穂役石井杏奈伊藤希穂役の石井杏奈です。10月からキャスト、スタッフの皆様と素敵な作品を作るべく稽古に取り組んでいます。物語を濃くするために照明や音楽と同様に、踊ったり触れ合ったり人間で魅せる表現が沢山あり、見応えのある舞台になっています。演出家の杉原さんや大人の役者さんたちもとても優しく、同世代の役者さんも多く笑顔の絶えない稽古場です。日常の中に非日常が存在する不思議な世界のお話ですが、もしかしたら現実でもそれぞれ見えている世界が違っていて自分の生活と重ねながら楽しめる舞台になっていると思います。みんなで作る物語が多くの方に届くことを願っています。沢木未羽役秋田汐梨具体的なセットや小道具などをあまり使わずに、人や音楽で空間を作り上げるという舞台になっています。私が今までに経験したことのない体の使い方をして空間を表現しなければならず、日々筋肉痛と闘いながらお稽古に励んでいます。私が演じる未羽は、学校を変えたいという強い正義感を持つ女の子です。高木が希穂に見えたことから、物語がジェットコースターのように進んでいくのですが、感じたままの感情を表現することを意識しつつ、広い会場で後方の方のお客様にも感情が伝わるようにはどうしたら良いのか、日々模索しています。観る人それぞれが各々の思う世界観を投影してもらえる様になっているので、その不思議な世界観を楽しみに見に来てくださると嬉しいです。高木憲一役岡田義徳台本を頂いた時、倉持さんの不思議な世界観を杉原さんがどう演出するのかワクワクしました。実際、今、稽古をしていますが、若い皆さんと沢山のディスカッションを重ねて一場、一場、丁寧に作っています。日々、成長をしているキャストを観ていると自分も色々と勉強をさせてもらいながら共に成長しているのを感じています。SHELLこの舞台を観てくださる方が、観終わった後、何かしらを感じ持って帰って頂けたらと思います。本作は11月11日(土)よりKAAT神奈川芸術劇場ホールにて開幕。新進気鋭のクリエイター陣と俳優たちが生み出すオリジナル作品に期待しよう。KAAT神奈川芸術劇場プロデュース 『SHELL』作:倉持裕演出:杉原邦生音楽:原口沙輔出演: 石井杏奈 秋田汐梨石川雷蔵 水島麻理奈 成海花音 北川雅 上杉柚葉 キクチカンキ 香月彩里近藤頌利 笠島智 原扶貴子岡田義徳藍実成 秋山遊楽 植村理乃 小熊綸 木村和磨 古賀雄大 出口稚子 中沢凜之介 中嶋千歩 浜崎香帆スタッフ舞台美術:佐々木文美 照明:吉本有輝子 音響:稲住祐平 衣裳:丁瑩 ヘアメイク:国府田圭振付:北川結、仁科幸 演出助手:日置浩輔 舞台監督:藤田有紀彦 制作進行:ycoment会場: KAAT神奈川芸術劇場日程: 2023 年 11 月 11 日(土)~26 日(日)◇=S 席平日夜割開場は開演の 30 分前◎託児サービスあり 公演一週間前までに要予約・有料(マザーズ 0120-788-222)チケット料金(全席指定・税込):S 席:6,800 円 S 席平日夜割:6,500 円 A 席:4,800 円神奈川県⺠割引(在住・在勤/S 席のみ):6,000 円U24 チケット(24 歳以下):3,400 円 高校生以下割引:1,000 円 シルバー割引(満 65 歳以上):6,300 円※神奈川県⺠割引は、チケットかながわの電話・窓口にて 8 月 26 日より取り扱い(前売のみ、枚数限定、要 住所確認)※U24・高校生以下・シルバー割引はチケットかながわの電話・窓口・WEB にて、9 月 9 日より取り扱い(前売のみ、枚数限定、要証明書)※車椅子でご来場の方は、購入前にチケットかながわにお問い合わせください。※未就学児の入場はご遠慮ください。 ※営利目的の転売禁止。※公演中止の場合を除き、チケットの変更・払い戻しはいたしません。チケット取り扱い:チケットかながわ 0570-015-415(10:00-18:00)窓口:KAAT神奈川芸術劇場 2 階(10:00-18:00)チケットぴあ [P コード:520-384]イープラス ローソンチケット [L コード:31365]お問合せ: チケットかながわ 0570-015-415(10:00-18:00) 公式サイト: 主催・企画制作:KAAT神奈川芸術劇場助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会ツアー[京都公演] 京都芸術劇場 春秋座 2023年12月9日(土)15時開演、10 日(日)13 時開演主催:京都芸術大学 舞台芸術研究センターお問合せ:京都芸術大学 舞台芸術研究センター 075-791-9207 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2023年10月19日KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『SHELL』が2023年11月11日(土)~26日(日)まで同劇場で上演される。脚本家の倉持裕と、演出家の杉原邦生という演劇シーンを牽引する二人の初タッグ作品として注目したい。倉持は「(同劇場芸術監督である)長塚(圭史)さんから『貌』というテーマを言われて。『家族のカタチ』といった観念的なものを示そうかとも思ったが、直接的に『顔を変えて生きている人間』を主人公にすることにした。ただ、変身を便利に使ってしまうとヒーローものになってしまうから、それが枷になっている話にしようと思い......」などと本作の着想を語る。本を託した杉原に対しては「本当に楽しみ。邦生くんの演出はオシャレだから。彼の演出で、舞台の空間に余白がいっぱいある美しい作品を観てきたので、観客の想像に委ねるところも多い本作にも合う気がする」。一方の杉原は「議論を重ねていく中で世界観がクリアになっていったが、『これはどうなるんだ?』という謎も増えていって。そういう不条理さも説明しすぎずに突っ走った方が、劇としては面白いのではないかということに落ち着いた。面白い本だなと思う反面、演出は難しそう」。倉持については「今回改めて新作を読むと、無駄がないことがすごいなと。つい演出家の“クセ”で、カットできそうな部分を探しながら読んでしまうが、必要な言葉だけが描き込まれている」と評した。石井杏奈や秋田汐梨らのキャストは「いい意味で色がなく、透明感がある」(杉原)。若手音楽家の原口沙輔も「無理なく等身大の感覚で音楽を作っている気がする。同時に外に開いていく意識も見えて、こういう音楽家が舞台音楽をやったら面白い化学変化が起きるのでは」(杉原)と期待される。観客に対して、倉持は「今回はプロットを組まずに、悩み苦しみながら書いた。その分、打ち合わせを重ねての改稿の時間は楽しかったし、どんどん良くなっていった。丁寧に作られた本という実感があり、ほかにはない芝居になるのでは」。杉原は「芸術は、普段出会えないものに出会える場。ちょっと不思議で不条理な世界観だが、今僕たちが抱えている社会の問題が見え隠れするし、共感できる部分もいっぱいあると思うので、楽しみに劇場に来てほしい」と語った。京都公演は12月9日(土)、10日(日)。取材・文:五月女菜穂
2023年10月13日KAAT神奈川芸術劇場プロデュース 『SHELL』が、2023年11月11日(土)に上演される。倉持裕(作)と杉原邦生(演出)の初タッグが注目のこの作品は、現代を舞台に特異な人間が存在する不思議な世界を描く青春ファンタジー。小劇場の劇団からキャリアをスタートした倉持は、舞台の脚本・演出にとどまらずテレビドラマの脚本も手がけるなど、近年その活躍の場を広げている不思議な世界観が魅力の戯曲家。プロデュース公演カンパニーKUNIOで活動する杉原は、『オイディプスREXXX』(’18)、『オレステスとピュラデス』(’20)といったKAAT神奈川芸術劇場プロデュース公演ほか、COCOON PRODUCTION 2022 / NINAGAGWA MEMORIAL『パンドラの鐘』(’22)、ホリプロ『血の婚礼』(’22)、今年8月の歌舞伎座『新・水滸伝』、上演中の木ノ下歌舞伎『勧進帳』を手がけるなど、今最も精力的に活動する演出家だ。主人公の高校生キャストには、2012年の女優デビューから注目作に次々出演し注目を集める石井杏奈、集英社「Seventeen」の専属モデルとしてティーンエイジャーに支持され女優としても活躍の場を広げる秋田汐梨、コンスタントに映画・TVドラマ・舞台に出演し今年芸能生活30周年を迎える岡田義徳らが名を連ねる。KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『SHELL』キャスト話題のZ世代が集結していることにも注目されるこの舞台。音楽を手がける新進気鋭の20歳若手音楽家・原口沙輔の初めての舞台音楽参加は、演出の杉原によるラブコールがきっかけで実現したコラボ。また、公演メインビジュアルのイラストは、様々なアーティストのMVを手掛け、多岐にわたる活躍をみせる、今、最も話題のクリエイター・藍にいなが手掛ける。長塚圭史芸術監督のもと、KAAT神奈川芸術劇場プロデュースとして3年目となる2023-2024メインシーズン最初のホール公演として上演される本作。シーズンタイトルとして挙げられている「貌(かたち)」に対し長塚は「目に見える「かたち」、触れて確かめる「かたち」、聞こえてくる「かたち」もあるかもしれません。(中略)あくまで「かたち」に過ぎないのに。けれど抗い難く「かたち」に囚われるのが人間です。」と話す。人間の「貌(かたち)」とは何かをめぐる新作公演は、11月11日(土)〜26日(日)の期間、KAAT神奈川芸術劇場<ホール>にて上演される。チケットの一般発売は9月9日(土)より。【あらすじ】とある高校の放課後の教室。そこには生徒の未羽(みう)、希穂(きほ)、咲斗(さくと)と数名の友達たち。彼らは、突然学校に来なくなった松田先生について、そしてこの学校の問題について度々話し合っている。ある日、未羽は通りがかったビルからマネキンが落ちてくる現場に遭遇する。そのマネキンを抱きかかえていたのは中年男の高木だが、未羽には高木でもあり希穂の顔にも見えるという不思議な体験をする。同じ人間がいくつものを持っている。それは、一部の者だけが知っている世界だったのだが、未羽にはそれを見抜く力があった。希穂たち以外にも、いくつものをもっている人々が分かる未羽。様々な登場人物たちがうごめく中で、顔を見抜けて「絶対他者」を繋げてしまう未羽、顔を持つ人々、そして全く分からない人々との間に、摩擦が生じていく…【作:倉持裕コメント全文】KAATより「『貌=かたち』というテーマで若者たちを主人公にした話」というお題を頂き、いくつか提案したところ、おそらく最も想像がつかないという理由で、この『SHELL』という物語が選ばれた。それは一言で言うと、姿かたちを変えながら生きている若者と、それを見破ることができる若者の話である。こちらで提案しておきながら自分でも展開が想像できなかったため、執筆はとても苦労したが、芸術監督の長塚さん、演出の杉原さん、KAATのスタッフの皆さんからご意見を頂きながら何度も書き直すうち、この奇妙な物語の向かうべき場所がはっきり見えてきた。苦労のかいあって、何にも似てない、どこにもない話ができた。現実ではありえない状況に置かれた主人公たちの心境を想像する作業は楽しかった。今のところ文字の塊にすぎないこの異様な世界が、杉原さん始め、キャスト、スタッフの力によってどんな「かたち」を獲得するのか、非常に楽しみだ。【演出:杉原邦生コメント全文】劇作家との新作づくりは毎回刺激に充ち溢れています。作家の描き出す〈言葉〉、その〈言葉〉たちによって立ち上がる〈物語〉、そしてその〈物語〉から湧き出てくるイメージ―――まさに〈演劇〉が生み出されるその最初の瞬間に立ち会えているような、驚きと興奮と喜びがあるからです。初顔合わせとなる倉持裕さんとディスカッションを重ね、本を練り上げていく作業も、やはり刺激に充ち溢れています。今回の作品は、誰しもそれぞれ持っている幾つもの〈顔〉とその役割についての物語です。そしてこの物語が、蒼あおき時期ときの只中にいる高校生の視点で描かれることで、その切実さはさらに色濃く迫ってくるように思います。その切実さが現代社会へ投げかける“問い”は決して小さくない意味を持つんじゃないか、そんな気がしています。KAAT神奈川芸術劇場<ホール>のダイナミックな劇場空間で、フレッシュかつエネルギッシュなキャスト&スタッフと共に、観る者の身体に刻まれるような強烈な演劇体験を創造したいと思っています。【音楽:原口沙輔コメント全文】実を言うと、演劇や映画などは苦手です。嫌いという意味ではなく、むしろその逆で、作品を観ている最中から様々な感情が胸に突き刺さり、しばらくその余韻に支配されてしまうのです。どうにかその感情を音や言葉、音階などで表現できないかと思い、他のことが手につかなくなってしまうのです。今回、音楽制作のオファーをいただき、脚本を読ませていただいた後、もう既にこの作品が頭から離れず、その世界にまるで自分も居るかのような気分になっています。その余韻や感情や世界観を遂に自分の頭から外に出せる。それを最高の形で皆さんにお届けできるよう腕によりをかけるつもりです。この度はお声がけいただき本当にありがとうございます。好きになった作品に直接音を付けられる機会をいただけてとても嬉しく思っています。<公演情報>KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『SHELL』作:倉持裕演出:杉原邦生音楽:原口沙輔出演:石井杏奈秋田汐梨石川雷蔵水島麻理奈成海花音北川雅上杉柚葉キクチカンキ香月彩里近藤頌利笠島智原扶貴子岡田義徳ほか【神奈川公演】2023年11月11日(土)~26日(日)会場:KAAT神奈川芸術劇場<ホール>【京都公演】2023年12月9日(土)・10日(日)会場:京都芸術劇場 春秋座チケット情報公式サイト
2023年09月07日倉持裕×杉原邦生、注目の初タッグでお送りする 現代を舞台に特異な人間が存在する不思議な世界を描く、青春ファンタジー!長塚圭史芸術監督のもと、3年目となる2023-2024メインシーズンのシーズンタイトルは「貌(かたち)」。この“貌”という漢字には、顔だち、容姿、物のすがた、外観、等の意味があります。長塚は、このシーズンタイトルについて、『目に見える「かたち」、触れて確かめる「かたち」、聞こえてくる「かたち」もあるかもしれません。(中略)あくまで「かたち」に過ぎないのに。けれど抗い難く「かたち」に囚われるのが人間です。』と話します。メインシーズン「貌」では、多彩なラインアップを通して、さまざまな角度から「貌」を見つめます。メインシーズン最初の<ホール>公演は、人間の「貌(かたち)」とは何かをめぐり、様々なエピソードで現代に生きる私たちを投影する、作:倉持裕×演出:杉原邦生による新作公演『SHELL』です。戯曲を手がける倉持裕は、小劇場の劇団からそのキャリアをスタートし、近年では舞台の脚本・演出にとどまらず、テレビドラマの脚本も手がけるなど活躍の場を広げています。今回、「若い時期ではないと得られない熱気あふれる若者たちの世界を描いてほしい」という長塚芸術監督の依頼により、倉持ならではのシュールさで女子高校生を中心とする現代の世界をリアルに描いた本作が生まれました。演出を担当する杉原邦生は、プロデュース公演カンパニーKUNIOでの活動のみならず、『オレステスとピュラデス』『パンドラの鐘』『血の婚礼』といった記憶に新しい作品を手掛けるなど、今、最も精力的に活動する演出家です。年齢も性別も違ういくつもの人生を、いくつもの顔をもって同時に生きる特異な人々が登場する摩訶不思議な世界を描く本作。不思議な世界観が魅力の倉持の戯曲を、杉原がダイナミックに演出する新作公演に、ぜひご期待ください。音楽の原口沙輔、出演の石井杏奈、秋田汐梨をはじめとするZ世代が集結!音楽を手掛けるのは、SNSを通じて国内外から注目される20歳の新進気鋭の若手音楽家・原口沙輔。杉原のラブコールにより実現したコラボレーションで、原口の初めての舞台音楽参加にも期待が高まります。主人公の高校生キャストには、2012年の女優デビューから注目作に次々出演し注目を集める石井杏奈と、集英社「Seventeen」の専属モデルとしてティーンエイジャーに支持され、女優としても活躍の場を広げる秋田汐梨が決定。また、映画「THE3名様」や、舞台『私の一ヶ月』(22年)、『歌うシャイロック』(23年)などコンスタントに映画、TVドラマ、舞台に出演し、今年芸能生活30周年を迎える岡田義徳が、Z世代を代表する若き才能とともに、舞台を創り上げます。今回新たに、年代や性別を往来し、いくつもの「顔」を持つ人々が登場する本作をイメージしたビジュアルが完成。イラストは、様々なアーティストのMVを手掛け、多岐にわたる活躍をみせる、今、最も話題のクリエイター・藍にいなが手掛けました。あらすじとある高校の放課後の教室。そこには生徒の未羽(みう)、希穂(きほ)、咲斗(さくと)と数名の友達たち。彼らは、突然学校に来なくなった松田先生について、そしてこの学校の問題について度々話し合っている。ある日、未羽は通りがかったビルからマネキンが落ちてくる現場に遭遇する。そのマネキンを抱きかかえていたのは中年男の高木だが、未羽には高木でもあり希穂の顔にも見えるという不思議な体験をする。同じ人間がいくつものを持っている。それは、一部の者だけが知っている世界だったのだが、未羽にはそれを見抜く力があった。希穂たち以外にも、いくつものをもっている人々が分かる未羽。様々な登場人物たちがうごめく中で、顔を見抜けて「絶対他者」を繋げてしまう未羽、顔を持つ人々、そして全く分からない人々との間に、摩擦が生じていく…コメントKAATより「『貌=かたち』というテーマで若者たちを主人公にした話」というお題を頂き、いくつか提案したところ、おそらく最も想像がつかないという理由で、この『SHELL』という物語が選ばれた。それは一言で言うと、姿かたちを変えながら生きている若者と、それを見破ることができる若者の話である。こちらで提案しておきながら自分でも展開が想像できなかったため、執筆はとても苦労したが、芸術監督の長塚さん、演出の杉原さん、KAATのスタッフの皆さんからご意見を頂きながら何度も書き直すうち、この奇妙な物語の向かうべき場所がはっきり見えてきた。苦労のかいあって、何にも似てない、どこにもない話ができた。現実ではありえない状況に置かれた主人公たちの心境を想像する作業は楽しかった。今のところ文字の塊にすぎないこの異様な世界が、杉原さん始め、キャスト、スタッフの力によってどんな「かたち」を獲得するのか、非常に楽しみだ。作:倉持裕劇作家との新作づくりは毎回刺激に充ち溢れています。作家の描き出す〈言葉〉、その〈言葉〉たちによって立ち上がる〈物語〉、そしてその〈物語〉から湧き出てくるイメージ―――まさに〈演劇〉が生み出されるその最初の瞬間に立ち会えているような、驚きと興奮と喜びがあるからです。初顔合わせとなる倉持裕さんとディスカッションを重ね、本を練り上げていく作業も、やはり刺激に充ち溢れています。今回の作品は、誰しもそれぞれ持っている幾つもの〈顔〉とその役割についての物語です。そしてこの物語が、きの只中にいる高校生の視点で描かれることで、その切実さはさらに色濃く迫ってくるように思います。その切実さが現代社会へ投げかける“問い”は決して小さくない意味を持つんじゃないか、そんな気がしています。KAAT神奈川芸術劇場<ホール>のダイナミックな劇場空間で、フレッシュかつエネルギッシュなキャスト&スタッフと共に、観る者の身体に刻まれるような強烈な演劇体験を創造したいと思っています。演出:杉原邦生実を言うと、演劇や映画などは苦手です。嫌いという意味ではなく、むしろその逆で、作品を観ている最中から様々な感情が胸に突き刺さり、しばらくその余韻に支配されてしまうのです。どうにかその感情を音や言葉、音階などで表現できないかと思い、他のことが手につかなくなってしまうのです。今回、音楽制作のオファーをいただき、脚本を読ませていただいた後、もう既にこの作品が頭から離れず、その世界にまるで自分も居るかのような気分になっています。その余韻や感情や世界観を遂に自分の頭から外に出せる。それを最高の形で皆さんにお届けできるよう腕によりをかけるつもりです。この度はお声がけいただき本当にありがとうございます。好きになった作品に直接音を付けられる機会をいただけてとても嬉しく思っています。音楽:原口沙輔公演概要KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『SHELL』作:倉持裕演出:杉原邦生音楽:原口沙輔出演:石井杏奈秋田汐梨石川雷蔵水島麻理奈成海花音北川雅上杉柚葉キクチカンキ香月彩里近藤頌利笠島智原扶貴子岡田義徳藍実成秋山遊楽植村理乃小熊綸木村和磨古賀雄大出口稚子中沢凜之介中嶋千歩浜崎香帆スタッフ舞台美術:佐々木文美照明:吉本有輝子音響:稲住祐平衣裳:丁瑩ヘアメイク:国府田圭振付:北川結、仁科幸演出助手:日置浩輔舞台監督:藤田有紀彦制作進行:ycoment会場:KAAT神奈川芸術劇場<ホール>日程:2023年11月11日(土)~26日(日)◎託児サービスあり公演一週間前までに要予約・有料(マザーズ0120-788-222)チケット料金(全席指定・税込):S席:6,800円S席平日夜割:6,500円A席:4,800円神奈川県民割引(在住・在勤/S席のみ):6,000円U24チケット(24歳以下):3,400円高校生以下割引:1,000円シルバー割引(満65歳以上):6,300円※神奈川県民割引は、チケットかながわの電話・窓口にて8月26日より取り扱い(前売のみ、枚数限定、要住所確認)※U24・高校生以下・シルバー割引はチケットかながわの電話・窓口・WEBにて、9月9日より取り扱い(前売のみ、枚数限定、要証明書)※車椅子でご来場の方は、購入前にチケットかながわにお問い合わせください。※未就学児の入場はご遠慮ください。 ※営利目的の転売禁止。 ※公演中止の場合を除き、チケットの変更・払い戻しはいたしません。チケット発売:一般発売:9月9日(土)KAme(かながわメンバーズ)先行発売:8月26日(土)チケット取り扱い:チケットかながわ 0570-015-415(10:00-18:00)窓口:KAAT神奈川芸術劇場2階(10:00-18:00)チケットぴあ [Pコード:520-384]イープラス ローソンチケット [Lコード:31365]お問合せ:チケットかながわ0570-015-415(10:00-18:00) 公式サイト: 主催・企画制作:KAAT神奈川芸術劇場助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会ツアー[京都公演]京都芸術劇場春秋座2023年12月9日(土)15時開演10日(日)13時開演主催:京都芸術大学 舞台芸術研究センターお問合せ:京都芸術大学 舞台芸術研究センター 075-791-9207 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2023年08月30日KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『SHELL』の全キャストが発表された。『SHELL』は、倉持裕が作劇、杉原邦生が演出を担当する新作公演。「若い時期ではないと得られない熱気あふれる若者たちの世界を描いてほしい」という長塚圭史芸術監督の依頼を受け、倉持ならではのシュールさで女子高校生を中心とする現代の世界がリアルに描かれる。石井杏奈、秋田汐梨、岡田義徳のほかに、今回の発表で石川雷蔵、水島麻理奈、成海花音、北川雅、上杉柚葉、キクチカンキ、香月彩里、近藤頌利、笠島智、原扶貴子の出演が決定。音楽は、SNSを通じて国内外から注目される20歳の音楽家・原口沙輔が手がける。『SHELL』は、11月11日(土) から26日(日) にKAAT神奈川芸術劇場<ホール>で上演後、12月9日(土)・10日(日) に京都芸術劇場 春秋座でも上演される。<公演情報>KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『SHELL』11月11日(土) ~26日(日) KAAT神奈川芸術劇場<ホール>ツアー公演:12月9日(土)・10日(日) 京都芸術劇場 春秋座作:倉持裕演出:杉原邦生音楽:原口沙輔【出演】石井杏奈 秋田汐梨石川雷蔵 水島麻理奈 成海花音 北川雅 上杉柚葉 キクチカンキ 香月彩里近藤頌利 笠島智 原扶貴子岡田義徳藍実成 秋山遊楽 植村理乃 小熊綸 木村和磨古賀雄大 出口稚子 中沢凜之介 中嶋千歩 浜崎香帆詳細はこちら:
2023年07月13日杉原邦生による演出、木村達成、須賀健太、早見あかり、安蘭けいらが出演する舞台『血の婚礼』が、9月15日に東京・Bunkamuraシアターコクーンで初日を迎えた。スペインの伝説的劇作家、フェデリコ・ガルシーア・ロルカによる最高傑作とも謳われる官能的な愛の悲劇『血の婚礼』。本作は、スペインのアンダルシア地方で実際に起きた事件を元に1932年に執筆され、世界中で上演が繰り返されている名作戯曲。この古典とも呼べる作品を、独自の感性で観客に新鮮な驚きを与える気鋭の演出家・杉原邦生が、全く新しい『血の婚礼』を創り上げた。花婿:須賀健太母親:安蘭けい舞台美術家でもある杉原が、トラフ建築設計事務所と共に創り上げた舞台美術がこの作品の独創性を表す。舞台上に敷き詰められたスペインを思わせる赤土と、頭上の照明機材のアンバランスさが印象的。二幕ではそれがガラリと変わる。レオナルド:木村達成花嫁:早見あかりスペイン最高の詩人とも言われたロルカの戯曲は韻文…詩的な言葉の連続となるセリフが特徴的だが、それを時に歌で、時にコンテンポラリーダンスに合わせ、はたまたじっくりと言葉だけで聞かせるなど、様々な手法で熱量高く言葉を届ける。左から)レオナルドの妻:南沢奈央、レオナルド:木村達成望まぬ結婚をし、過去に愛した女性を忘れられず葛藤するレオナルドは、ミュージカルの新たなスターとして大作の主演を務め、映像作品でもその実力を魅せる木村達成。今までにない色気を漂わせ、愛に苦しむ男を演じる。結婚式当日に、花嫁を奪われレオナルドと対峙することになる“花婿”は、数々の映像作品で活躍しながらその演技力を舞台でも発揮している須賀健太。心優しい息子が狂気へと走る姿が印象的だ。早見あかりは、抑圧から逃れようと大胆な決断をする“花嫁”を神々しい力強さで演じる。そして、過去に囚われ息子を縛る“花婿の母親”の安蘭けいは、この世界の加害者でもあり被害者でもある女性を体現し、もう一人の主役とも言える。母親役:安蘭けい中央左から)安蘭けい、須賀健太“愛”に対する力強いエネルギーと、抑圧された環境から抜け出そうとする葛藤が感じられる『血の婚礼』。“男らしさ・女らしさ”という因習に縛られたがゆえに悲劇を招く様子は、 アイデンティティを発信していく時代へと変化の真っ只中にある現代の私たちに、新鮮な発見を与えてくれる作品となりそうだ。左から)花婿:須賀健太、花嫁:早見あかり『血の婚礼』は、10月2日までBunkamuraシアターコクーンで上演後、10月15日・16日に大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティで上演される。撮影:宮川舞子、サギサカユウマ最終舞台通し稽古を終えた演出家・キャストコメント■演出:杉原邦生ゲネプロを観ていて、 自分の中で何かが滾(たぎ)っていく感覚を覚えました。素晴らしい俳優とスタッフによって劇場にいま立ち現れた『血の婚礼』の世界は、遠いようで確かに目の前にあり、わからないようで確実に自分の中にもある。そんな作品になっていると思います。人と人とがどうしようもなく生身でぶつかり合う様を、ぜひ劇場でともに体感していただきたいです。皆さまのご来場をお待ちしております!■木村達成(レオナルド役)杉原邦生大将の下、約5週間の稽古を経て、つい先ほど最終舞台稽古を無事に終えることができました。みなさまに、美しく、よごれた、けがれのない魂を堪能していただきたいと心から願っています。劇場でお待ちしてますね。■須賀健太(花婿役)まず、無事初日を迎えられる事をなにより嬉しく思っています。この作品の根本にあるのは、人間の持つ様々な感情や、人と人が作用し合うことの面白味だと感じています。この戯曲が書かれた時代から変わらず人間の奥底にある気持ちの高まりを客観的に感じて頂けたら嬉しいです。大変な状況が続いていますが、ぜひ劇場にお越しください。■早見あかり(花嫁役)まずは無事にゲネプロが終わり、明日の初日を迎えられることに一安心です。こんなに悩んで考えて、台本が見辛くなるほど文字を書き込んだのは初めてでした。その度に助けてくれた杉原さん、カンパニーの皆さんには感謝の気持ちでいっぱいです。正直お客さまにどう届くか、楽しみであり少し不安です。でもあとはやるしかない。とにかく観に来てください。全力のエネルギーをお届けします。■安蘭けい(母親役)劇場入りして、衣裳を着てセットを組んでいる舞台に立つと、緊張感と集中力が高まり、稽古場では出来なかったことがゲネプロでできました。初日に向けてとても手答えを感じています。『血の婚礼』という作品の、また新しい形の舞台が出来上がっていると思うので、ぜひ期待を膨らませて劇場に来て頂きたいです。その期待に応えられるような舞台が出来てると思いますので、楽しみにしてください。<公演情報>舞台『血の婚礼』舞台『血の婚礼』ビジュアル【東京公演】期間:9月15日(木)~10月2日(日)会場:Bunkamuraシアターコクーン【大阪公演】期間:10月15日(土)・16日(日)会場:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ【スタッフ】原作:フェデリコ・ガルシーア・ロルカ翻訳:田尻陽一演出:杉原邦生音楽:角銅真実、古川麦【キャスト】木村達成須賀健太早見あかり南沢奈央吉見一豊内田淳子大西多摩恵出口稚子皆藤空良澤田理央 / 脇山桃寧(Wキャスト)安蘭けい【演奏】古川麦HAMA巌裕美子舞台『血の婚礼』ダイジェスト映像<東京公演イベント情報>■シークレットムービープレゼント対象日程(終了分は割愛)9月21日(水) 13:309月21日(水) 18:309月22日(木) 13:30内容:稽古や舞台裏などここでしか見られないキャストの貴重な様子など■アフタートークイベント対象日程9月16日(金) 13:30(登壇者:木村達成、須賀健太、安蘭けい)9月22日(木) 13:30(登壇者:木村達成、須賀健太、南沢奈央)9月24日(土) 17:30(登壇者:木村達成、須賀健太、杉原邦生(演出))★追加9月27日(火) 13:30(登壇者:木村達成、須賀健太、早見あかり)詳細はこちら:■ホリプロステージ☆デジタルスタンプラリー取得スタンプの数によってメッセージボイスやクリアボトル、サイン入りパンフレットをプレゼントいたします。詳細はこちら:チケット購入リンク:関連リンク公式HP::
2022年09月16日スペインの劇作家、フェデリコ・ガルシーア・ロルカの傑作悲劇『血の婚礼』を、杉原邦生が演出。実力派の俳優たちとオリジナル音楽の生演奏を加え、現代へと甦らせる。そこで稽古中の杉原に、作品の面白みや俳優陣の魅力、さらに自らの演劇観について、たっぷりと語ってもらった。感情をぶつけ合うことで、結果が出ることが大事――ロルカの名作『血の婚礼』ですが、杉原さんが手がけることになった経緯とは?いくつか戯曲をご提案いただいた中に『血の婚礼』があり、今やるのは面白いかもしれないと思いました。まず僕が翻訳劇をやるのが久しぶりなことと、翻訳劇の中でも近代古典と言われる作品にはほとんど触れてこなかったこと。あとはやはりロルカの詩的な世界が面白かったんです。1幕2幕はわりとシンプルな物語展開なんですが、3幕になると急に詩的で、前衛的な世界観になる。こういう視点が介入してくる戯曲なら、学生時代に前衛劇から出発して小劇場中心に活動してきた僕みたいな人間でも(笑)、面白くやれるんじゃないかなと。また人と人とがすごく感情をぶつけ合うお芝居なので、コミュニケーションというものが変容している現代の社会において、ある種の憧れとか希望みたいなものを抱いてもらえるのではないかと思ったんです。――ただ本作における感情のぶつかり合いは、決して前向きなものばかりではなく、現代においては少しきついと感じる部分もあるかもしれません。確かにそうかもしれません。でもコミュニケーションって、やはり一度ぶつかり合わないと始まらないと思うんです。間接的なコミュニケーションだけでスルスルと逃げ続けてしまうと、前進にも後退にもならない。ひとつの結果を見出すということが大事であって、その結果がダメだった時には、じゃあどうするかを考えることがプラスに繋がる。そこに僕はポジティブなものを感じるんです。新しい課題が目の前に現れると、楽しいし燃える――台本を読まれて改めて感じたことは?難しいホンだなと思います。僕はスペクタクル要素のある作品とか、歌舞伎などもやっているので“ケレン味”のある演出が好きなんですが、このホンってそういうやりどころがほとんどない。今は新劇的にと言いますか、台本の世界観を地道に立ち上げていく精神力を鍛えるトレーニングをしているような感じです(笑)。だから最近の僕の作品を観てくれた方からすれば、「これ同じ演出家かな?」と思うかもしれません。――それはどういった点で?僕自身、ちょっとギアが違うからですね。ギリシャ悲劇のコロスをラップにしたり、スーパー歌舞伎にストリートファッションを取り入れるなど、一見相反するものを融合させる、みたいなことが僕の演出の特色として挙げられると思うんですが、今回はそういう大仕掛けで攻めていない。ただこれまでも大仕掛けがやりたくてやっているわけではなく、常に戯曲に寄り添い、現代のお客さまにわかりやすく、面白く、カッコよく伝えるためのベストな選択をしているだけ。だからこのロルカの詩的で官能的な世界を、当時スペインで上演された時のセンセーショナルな感覚を、どうやったら劇場に集まってくださるお客さまに伝えられるのか。それを考えた結果が、今回のギアだったわけです。――そのギアは初めて入れるものですか?いや、なんか懐かしい感じかもしれないですね。大学時代に「KUNIO」という自分のカンパニーを立ち上げた時、小説家で詩人のラディゲ作『ペリカン家の人々』(2004) という作品を演出したんですが、その時の感覚に似ています。もちろん今とは経験値がまったく違いますが、同じような手触りがあるな、と。だから僕の近作が苦手な人にとっては、「あれ、今回はいいじゃん」って思ってもらえるかもしれません(笑)。――ただ杉原さんにとっては、そのどちらもやりたいことではあるのですね?もちろんそうですね。結局演出家も人間ですから好みがあるので、どうしてもマンネリ化してくる。だから常に新しい引き出しや扉を自分から開けていかないと、ダメになっていく気がするんです。そうすることで新たな好みが見つかることもありますし。――その危機感みたいなものが、今回の作品選びにも影響していると言えますか?それはあるかもしれないですね。自分の手が届かないところに手を伸ばそうとすると、実際に世界が伸びて広がっていく感覚があって。新しい挑戦とか、新しい課題が目の前に現れると、楽しいし燃えるんです。まぁしんどいことではあるんですけどね(笑)。詩的な言葉と美しい俳優たちが絡み合う清々しさ――レオナルドを木村達成さん、花婿を須賀健太さん、花嫁を早見あかりさんが演じられますが、この役者陣の体を通すことで、役にどういう魅力や面白さが加わっていると思いますか?『血の婚礼』メインビジュアル左から)木村達成、早見あかり、須賀健太木村くんのレオナルドは、僕にとっては新鮮な驚きがありました。僕はわりと常に情熱的な役柄だと思っていたんですが、木村くんのプランには情熱に同居している冷静さもあって。そういうものが出てきたので、すごく面白いと思いました。花婿は、須賀くんのキャラクターからも、お利口ちゃんの箱入り息子だってことは想像しやすいと思います。でもそこに僕は、母親の血から引き継いだ不安定さや繊細さといった表現も求めていて。そうすることで、これまでにない新しい花婿像を造形してくれるのではないかと期待しています。早見さんの花嫁は、すごく現代的ですね。彼女がやることで古臭く見えないし、「どうせ昔の話でしょ?」って感じにならない、それは今回の上演のために田尻陽一先生と新訳台本を作った点も大きいと思います。――音楽も本作を彩る大切な要素ですが、それを生演奏にされた狙いとは?やっぱり生演奏ってライブ感があっていいですよね。人と人とが直接感情をぶつけ合う話なので、音楽もお客さまに直接訴えかけるものでないといけないんじゃないかなと。生の楽器の音が入ると、ダイレクトに音が身体に伝わってくる。それはすごく心地いいし、俳優もスタッフも奮い立つものがあるんですよね。――では最後に、公演へのお誘いのメッセージをお願いします。ちょっと取っつき難い内容かな、と思っていらっしゃる方もいるかもしれませんが、「結婚しようとしているカップルの花嫁が、式の当日に元カレが好きだって言って駆け落ちしちゃう」というすごくシンプルで単純なお話です(笑)。だけどそこにロルカの詩的な言葉と、美しい俳優たちが絡み合い、愛情にドロドロになっていく姿は、悲劇的な内容ではありますが、本当に美しく、清々しいものになると思います。少しでも面白そうだと思っていただけましたら、えいや!と、チケットぴあをクリックしていただき、劇場に足を運んでもらえたら嬉しいです。ぜひ生で体験してください。取材・文=野上瑠美子撮影=源賀津己<公演情報>『血の婚礼』【東京公演】2022年9月15日(木)~10月2日(日)会場:Bunkamura シアターコクーン【大阪公演】2022年10月15日(土)・16日(日)会場:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ原作:フェデリコ・ガルシーア・ロルカ翻訳:田尻陽一演出:杉原邦生音楽:角銅真実 / 古川麦出演:木村達成 / 須賀健太 / 早見あかり / 南沢奈央 / 吉見一豊 / 内田淳子 / 大西多摩恵 / 出口稚子 / 皆藤空良 / 安蘭けい『血の婚礼』チケット情報はこちら:
2022年09月13日9月15日よりシアターコクーンにて開幕を迎える『血の婚礼』。スペインの伝説的な劇作家、フェデリコ・ガルシーア・ロルカによって1932年に執筆されたこの物語は、ひとりの女をめぐってふたりの男が命がけで戦う悲劇。8月10日、キャストの木村達成、須賀健太、早見あかり、安蘭けいと演出家の杉原邦生が揃い、トークイベントが開催された。ふだん稽古場で行う、カンパニーが関係を深める様子をそのまま見せるというコンセプトのこのイベント。お互いに質問を投げかけあい、さまざまな話が繰り広げられた。安蘭ペディアが大活躍!会場となる東京會舘のステージに、お揃いの『血の婚礼』Tシャツを着て登場した5人。昨日急遽MCに指名されたという須賀健太が「僕だけ(Tシャツの上に)ジャケットを着てきて、輪を乱してすみません」と挨拶する。慣れないMCに懸命に取り組む須賀に対して木村達成、早見あかり、安蘭けいが次々にツッコミを入れてゆく。早見は「ご覧のとおり、陽キャの集まりです」と観客に伝えた。自己紹介のあとは、ひとりずつにスポットを当ててのクロストーク。安蘭は「みんなに質問しなきゃと思って、事前にみんなのことをWikipediaで調べたの」と言い、ミュージカル経験豊富な木村には「小池修一郎先生の洗礼を浴びてここにやってきているんだなあ、どんな人なんだろうと楽しみ」と話す。以降も全員のプロフィールにふれる安蘭を、須賀が「安蘭ペディア(あらぺでぃあ)」と呼ぶように。木村は「これまでは『セリフを歌わない』『ナチュラルに自分の言葉で話す』ことに重きを置いていた。でも今回はガラッと変わりそうな予感」と『血の婚礼』に対する期待を語る。「ロルカはもともと詩人なので、戯曲もかなり詩的な言葉で綴られているところがある。詩のようにリズムよく書かれている部分は、セリフのテンポを意識しながら表現してほしいなと思っています」と杉原が言う。「ラップそのものを入れる予定はないですが、ラップバトルのような気持ちでやるシーンはありそうです」という話に安蘭は「ラップやりたい!」と直訴した。早見は木村に、髪を伸ばしている理由を質問。「僕が演じるレオナルドの名前はライオンから来ているそうなので、『百獣の王』感を出したいと思って。ロルカの理想の男性であるレオナルドの色気を出したい。色気といったらロン毛かなと」と答えると、杉原は「いいと思うよ!」とお墨付きを与えた。早見&木村、安蘭&早見の意気投合次に、早見に対して杉原が「早見さん演じる花嫁は、結婚相手がいながら元彼と逢引していて、結婚式の日に駆け落ちしてしまう。そんな役柄ですが、パーソナルな部分と重なるものはありますか?」と質問。「花嫁の愛に対する欲望とか熱量は私は持っていないです。私たちが持っている100%の愛と、この作品に登場する人たちの100%の愛は絶対的に違うと感じていて……。そういう愛の強さは私は持っていないけど、ただ、人生において私は誰かに迷惑をかけても、『ごめんね』と思いながら自分の好きな道を突き進むという生き方をしてきて。『どれだけこの人生楽しめるか』を考えて生きるのは似ているかも」と語る早見に、安蘭が「すごい!」と声をあげ、須賀も「一気にトークイベントらしくなりましたね」と感心していた。その早見の話を受けた木村は「僕も自分の嗅覚を信じて、楽しい方向を選んできたから、めちゃめちゃ似てる」と言い、ふたりは意気投合。その様子を見て「前のめりに突き進んでくれる人のほうが見ていて楽しい」と杉原。安蘭に対して早見が「どうしたら安蘭さんのようにかっこよくなれるんですか?」と質問すると、「(宝塚の)男役やってたから」と即答。「かっこよく見せる研究もするけど、もともとの性格が男勝りなのもあったかな」と話す。木村も「僕も男から見てもかっこいい安蘭さんにその秘訣を聞きたかった!」というが、安蘭は「逆に支えてあげたいとか、手を差し伸べたいみたいな女性に憧れる」と言い、早見も「わかります!」と共感していた。「かわいい」須賀健太の反抗期「僕に質問ありますか?」と須賀が聞くと、一瞬全員が静かになる時間が。「あってくれ!」と叫ぶ須賀に笑いが起こる。「だって、ぜんぶ知ってるから」と答える木村。須賀演じる花婿の母役の安蘭が「長い芸能生活で、やめようとか、違う道に行こうと考えたことは?」という質問に、「高校時代はあまり仕事していない時期があって、そのときに改めて『この仕事が好きだな』と立ち止まって考える時間がありました」という須賀。しかし助監督などの裏方に興味を持ったことはあるという。杉原が「ロルカの母子関係をそのまま投影したのが『血の婚礼』の母と花婿。須賀くんはお母さんに対してどんな気持ちですか?」と問うと、須賀は「めちゃくちゃマザコンですね」と言う。反抗期もなかったらしいが、その代わり16歳ころまでずっとついていた女性マネージャーに対して反抗期があったと告白。しかしその内容は「泊まりがけの撮影のとき、別の共演者の人の部屋で遊びたいってゴネたりして」というもの。木村も早見も「それって反抗期?」「かわいい」と、予想以上にマイルドな反抗に笑いが起きた。締めくくりに「海外戯曲で難しいイメージを持たれている方もいるかもしれませんが、杉原さんから一言」と須賀から促され、「よくある恋の話だし、シンプルな物語なんです」と改めて伝える杉原。「でもこの作品がスペインで初めて上演されたときにはすごい衝撃だったと思う。今回は違った衝撃を舞台を観た方たちに与えられたら」「美しい舞台で美しい人たちが泥まみれ、血まみれになっていく姿を鮮烈に描きたい」と語り、観客の期待が大きく膨らんだところでトークイベントは締めくくられた。取材・文=釣木文恵撮影=源賀津己<公演情報>『血の婚礼』【東京公演】2022年9月15日(木)~10月2日(日)会場:Bunkamura シアターコクーン【大阪公演】2022年10月15日(土)・16日(日)会場:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ原作:フェデリコ・ガルシーア・ロルカ翻訳:田尻陽一演出:杉原邦生音楽:角銅真実 / 古川麦出演:木村達成 / 須賀健太 / 早見あかり / 南沢奈央 / 吉見一豊 / 内田淳子 / 大西多摩恵 / 出口稚子 / 皆藤空良 / 安蘭けいチケット情報はこちら:
2022年08月30日9月15日(木) からBunkamuraシアターコクーンで上演される舞台『血の婚礼』。それに先立ち、8月10日(水) にキャストらによるトークイベントが開催された。『血の婚礼』は、スペインの伝説的劇作家、フェデリコ・ガルーシア・ロルカの代表作。ひとりの女性を巡り、命をかけて戦うふたりの男の姿、その愛と衝動を描く。今回はトークイベントに先立って行われた取材会から、キャストの木村達成、須賀健太、早見あかり、安蘭けい、そして演出を担当する杉原邦生の声をお届けする。ーー舞台『血の婚礼』の見どころを。杉原スペイン演劇を専門とされている田尻陽一先生といっしょに新訳の台本をつくりました。今回はみなさんに届きやすい言葉で『血の婚礼』をお届けできると思います。この美しいキャストの皆さんがドロドロの悲劇を演じる、そのけがれっぷりに注目いただけたら、きっと楽しんでいただけるんじゃないかと思います。木村出てくるキャラクターがそれぞれの欲望を持って突っ走っていく作品です。僕はレオナルドという、この物語のなかで唯一名前を与えられている役。翻訳を担当された田尻さんとお話をしたところ、レオとはライオン、つまり百獣の王であり、作者であるロルカが思い描いた理想の男性だと聞きました。たくましく、自分にしかないオーラを持って、この作品をつくっていきたいと思います。木村達成須賀この作品のなかでは、僕が演じる「花婿」が、いちばんお客様に親近感を持っていただける、物語の入口のような役柄だと思っています。ストレートに言ってしまえば、奥さんを奪われてしまう役。でもそれがただ「かわいそう」なだけにならないよう、頑張っていきたいと思います。早見この作品は、本当にどのキャラクターもエネルギー、愛に対する熱量がすごいんです。まだ稽古がはじまったばかりで、立ち稽古にも入っていない本読みの段階なのに、稽古終わりはどっと疲れてしまうくらい。それほど演じる側にもパワーが必要な作品です。だからこそ、舞台でやることに意味があると思っています。わたしたちが持つ熱量をお客様に感じていただけるよう、稽古を重ねていければ。よく寝てよく食べて、一生懸命稽古をしたいと思います!安蘭稽古に入る前、ひとりで脚本を読んでいるときには、「なんてセリフが多いんだろう、これ本当に覚えられるのかな?」と不安になっていました。でもみんなと本読みをして、それぞれの役のセリフをそれぞれの声で読んでいるのを聞いたら、自然に物語が自分の中に入ってきて。「これなら覚えられるかも」と明るい兆しが見えました。20代の3人のパワーをいただきながら、それ以上のパワーで「母親」役に挑めれば。この暑さに負けないくらいに熱い熱い舞台がお届けできるんじゃないかと思います。ーー杉原さんが「ドロドロの悲劇」とおっしゃいましたが、具体的にはどんなドロドロ具合でしょうか?杉原早見さんが演じる花嫁と須賀さんの花婿は婚約しているんですが、花嫁と元カレであるレオナルド……木村さんですね、実はこいつら、夜な夜な逢引してるんです。須賀言い方(笑)。杉原そしてこともあろうに、結婚式当日にふたりは駆け落ちしちゃうんですよ。それくらいドロドロです。まあ結婚式の日ということはないまでも、最近でも案外ありがちな話だったりしますよね。そういう愛の欲望につっぱしっていく若者たちの姿は、一方で清々しくもあり、かっこよくも美しくもあるんじゃないかなと僕は思っていて。そういうところを見せられたらと思っています。杉原邦生ーーロルカはスペインの劇作家ですが、台詞回しにスペイン独特のものはありますか?杉原あ、とくにスペイン独特のものはないですね。ただ、新訳で俳優さんも話しやすい、観客も聞きやすいセリフになってはいるので、物語に入っていただけると思っています。木村セリフ回しについては、ちょうど昨日の稽古で杉原さんから「韻文と散文」について話がありました。口ずさんでしまいたくなるようなセリフで、それでいて、そこに魂もこもっていて。かっこいいセリフがたくさんつまっているので、ぜひ注目していただけたらと思います。ーーこの作品は愛がテーマということですが、最近愛を感じたことは?杉原今年の2月にコロナに感染したとき、友人や周りの人が、食べきれないほどいろんなものを送ってくれたり、食料を持ってきて玄関にかけておいてくれたりして。それに愛を感じました。早見私は娘がいまして、家で台本を読んでいても、何をしていても「ママ!ママ!」と呼ぶんです。そのたびに「ママでーす!」と答えていたら、なんでも真似する時期の娘がそれも真似するようになりまして、最近はずっと「ママでーちゅ!」と言っていて。かわいいなあと。愛してやまないものといったら今はやっぱり娘ですね。早見あかり須賀いや、このエピソードは超えられないでしょう!木村そうだね……。日々愛は感じていますが、「これ!」というものが今思い浮かばないので、身近な方々、僕に愛をください(笑)。須賀僕はけっこうよく行くお寿司屋さんで、うに1種、いくらが2種のどんぶりを注文したら、先日うにが3種乗ってきました。 愛です!安蘭私は、愛ってなんだろうな、と日々思います。須賀深っ(笑)!安蘭よく「自分を愛さないと人を愛せない」って言うじゃない? でもなかなか自分を愛すのって難しい。ということは、人に愛を与えられていないのかな? と思ったりします。もっと自分を愛さなきゃいけないですね。安蘭けいーーこの作品は生演奏とともに上演されると伺いました。またキャストの皆さんも歌われると聞いています。どのような音楽が奏でられるのでしょう?杉原音楽は角銅真実さんと古川麦さんにお願いしています。角銅さんは過去にもご一緒していますが、彼女の音楽には、包み込むようなやさしさやおおらかさと、とがった部分との両方があるんですよ。『血の婚礼』という作品は愛の物語ですが、愛というものも、やさしい部分と、行き過ぎると狂気になってしまうような部分と、両方あるじゃないですか? ですので彼女の音楽が交わることで、この作品の魅力をまた引き出してくれると思います。ーー曲はもうできあがっているのでしょうか?杉原まだ数曲ですが。昨日ちょうど歌稽古をやったんですよ。リズムが4分の5拍子という摩訶不思議なもので、さらにそこに難しいメロディがのっかっている。みんなで苦戦しながら1、2時間やりました。安蘭みっちりやったよね。杉原でも、これが俳優さんの身体に入って舞台上に音楽としてのると、すごくかっこよくていいものになる予感がしました。だからメロディーも拍子も変えずに、キャストのみなさんに頑張ってもらおうと昨日心に誓いました。早見初めて聞いたときは、何もわからない状態だったんです。でも2時間でも練習して耳に染み込んでいくと、すごくクセになる。もしかしたらお客様も口ずさんで帰るんじゃないかなというくらい。まだまだみんな譜面を一生懸命見て、お互いに様子見しながら歌っている状態ですが、素敵なものになりそうで楽しみです。木村たしかに、不思議な魔力があるよね。スペインの作品をやる上で、音楽は切っても切り離せないと思うんです。僕はミュージカルをやることが多いんですが、まだまだ難しい曲ってあるんだなと今回思いました。これからこの歌がこの作品にどんな変化を与えてくれるのかワクワクしています。須賀皆さん譜面を見て「ここ、こうなってるんだ」とか言ってたんですけど、個人的には何もわかってなくて。まず、譜面が読めない(笑)。だから早く追いつきたいです。でも生演奏って、役者からすると感情に寄り添ってくれる感じがあるので、それが楽しみです。須賀健太安蘭私は本当に昨日の歌稽古がすごく楽しかった。スペインやこの作品のイメージとは一見違うんだけど、すごく心地よくて。杉原さんが「もう1回!」「もう1回!」と何度も繰り返させるんですよ。「あ、杉原さんってこういうタイプなんだ」と発見でした。杉原けっこうスパルタでしたよね。安蘭でもすごく楽しかった。早見そうそう、「お願いします!」って部活みたいに。木村このタイミングでみんなで歌稽古をして、まずグルーヴを作れたのはよかったですよね。杉原僕、高校の時「学校行事王」だったので、昨日はそのノリが出てしまいました。木村僕はそのとき、「男子ちゃんとやって!」って言われるタイプ。須賀僕は学生時代、合唱コンクールとかでは指揮者をやってたんです。僕が指揮をするので、杉原さん、本番も客席から歌ってください(笑)。取材・文=釣木文恵撮影=源賀津己<公演情報>『血の婚礼』【東京公演】2022年9月15日(木)~10月2日(日)会場:Bunkamura シアターコクーン【大阪公演】2022年10月15日(土)・16日(日)会場:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ原作:フェデリコ・ガルシーア・ロルカ翻訳:田尻陽一演出:杉原邦生音楽:角銅真実 / 古川麦出演:木村達成 / 須賀健太 / 早見あかり / 南沢奈央 / 吉見一豊 / 内田淳子 / 大西多摩恵 / 出口稚子 / 皆藤空良 / 安蘭けいチケット情報はこちら:
2022年08月19日23年前、当時のシアターコクーン芸術監督であった蜷川幸雄の依頼により、野田秀樹が書き下ろした『パンドラの鐘』。本作は両者それぞれの演出により連続上演され、それは今なお演劇界の事件として語り継がれている。そんな名作が、気鋭の演出家・杉原邦生の手で甦ることに。古代を生きるミズヲとヒメ女を演じるのは、成田凌と葵わかな。稽古の日々を重ねる3人に、本作に寄せる想いを語ってもらった。パンドラの鐘に込めた“希望”をどう未来に繋ぐか――蜷川幸雄さんの依頼を受け、野田秀樹さんが1999年に書き下ろされた作品ですが、新たに杉原さんが演出される上で意識していることは?杉原基本的にこの物語は、現代で発掘された“パンドラの鐘”の謎を解くというサスペンスと、古代のミズヲとヒメ女のラブストーリーというふたつの軸が同時に進行していき、最終的には長崎に落とされた原爆の話へと集約されていきます。そこで野田さんがパンドラの鐘に込めた“希望”を、僕ら今の人たちがどう未来に繋いでいけるのか。そういうことを考えながら作品を立ち上げていきたいと思っていて。重いテーマを扱ってはいますが、取り立ててそこを強調するわけではなく、とはいえなんとなくお客さんに引っかかるようなフックを要所要所に作りつつ、終盤へと繋げていきたいと思っています。杉原邦生――成田さん演じるミズヲと、葵さん演じるヒメ女。役に対して、現段階ではどうアプローチされていますか?成田蜷川さん演出版と野田さん演出版の映像を拝見させてもらいましたが、勝村(政信)さん、堤(真一)さん共に、ものすごいエネルギーを感じました。ちょっとおふたりの芝居がすご過ぎて、打ちひしがれる思いというか……(苦笑)。ただそれでは今回の共演者の方々に失礼なので、ミズヲってものを皆さんと一緒に作っていきつつ、過去のおふたりとはまた違う自分のエネルギーを発信出来たらと思います。成田凌葵すごい作品、すごい役ではありますが、野田さんがコメントで「好き勝手やって欲しい」ということをおっしゃってくださったんです。だから演出の(杉原)邦生さんを始め、今この時に作ろうとしている私たちとしては、ちょっと無鉄砲でも、例え見栄だったとしても、堂々としていたいなっていう気持ちがあります。ただ稽古が進めば進むほど、この役が難し過ぎて……。過去公演の映像を私は観ていないのですが、今、観たくて観たくてしょうがない状態です(笑)。葵わかないろんなイメージが乱反射した野田の言葉の世界――かつての蜷川さん版、野田さん版の舞台は、ビジュアルなどまったく異なる印象でしたが、杉原さん版ではどういった舞台になりそうですか?杉原おふたりと同じことはしたくないので、やっぱり僕なりの、そして今回集まったキャスト、スタッフの皆さんと一緒に作る、新しい『パンドラの鐘』にしたい、というのが一番です。まずはパッとイメージが沸いた歌舞伎の『娘道成寺』と能の『道成寺』、このふたつの世界と現代劇の世界観をない交ぜにしたような空間を作ろうと思っていて。さらにそこにm-floの☆Taku Takahashiさんの現代的な音楽が重なり、日本の文化に魅入られた海外デザイナーのAntos Rafalさんの衣裳が加わる。野田さんの言葉の世界っていろんなイメージが乱反射しているので、それを空間的に体現しつつ、古代と現代を行き来する物語を、日本の演劇における古典と現代を意識する世界観の中で構築していきたいと思っています。――演出家としての杉原さんとは?成田とても優しいです。優しいにもいろいろタイプがあると思うんですが、しっかりと芯の通った優しさというか。例えるならすごくいいベッド(笑)。柔らかいけどしっかりしていて、ずっと寝ていたいと思う。そういう包み込んでくれる優しさと、視野の広さ、頭の良さを持った方だと思います。葵ベッドってすごくいい例えですね(笑)。私はさらにしなやかな印象があって。今までお会いしたことがないタイプの方ですし、とても不思議な、でも心から信頼出来る演出家さんです。――では役者としてのおふたりの魅力は?杉原成田くんはちょっとクールな印象があったんですが、稽古に入ってみたら、かなり前のめりに熱い人なんだってことを強く感じました。しかもマインドがいつもオープンで、なんでも吸収しよう、なんでもやってみます!みたいな。葵さんはいい意味で真面目で、自分なりの意見を持って稽古に臨まれるのですが、僕がなにか言うことで、今までの自分を自分から壊すことが出来る。破壊と創造がちゃんと出来る人というか。だから舞台を一緒に作っていく方としては、おふたり共すごくやりやすいですし、なにも心配はなくて。初日までに絶対、いいミズヲとヒメ女を作ってくれるだろうという信頼があります。いい作品には、必ず現代にリンクする部分がある――最後に、公演を楽しみにされていらっしゃる読者にメッセージをお願いします。成田作品的に難しい部分もありますが、それは全部僕らがやりますので(笑)。お客さまには物語的にも、視覚的にも楽しんでいただけると思いますし、壮大なエンターテインメントをお届け出来ると確信しています。葵23年前の作品ですが、やっぱりいい作品には現代にリンクする部分があって。それは悲しいことでもありますが、私たちが信じるエンタメの持つパワーがこの時代に作用し、なにか少しでも今を生きる方々にお届け出来たらなと思います。杉原こういった社会状況の中で、ライブのエンターテインメントを観に行くということ自体、尻が重くなっているような時代かもしれません。だからこそ観に来てくれた方には、必ず「観てよかった」と思っていただけるようなものにする。それを使命と感じて僕らは稽古を続けていきますので、ぜひ劇場に、生のエンターテインメントを体験しに来ていただきたいです。取材・文=野上瑠美子撮影=源賀津己<公演情報>『パンドラの鐘』【東京公演】2022年6月6日(月) ~6月28日(火) シアターコクーン【大阪公演】2022年7月2日(土) ~7月5日(火) 森ノ宮ピロティホールチケット情報はこちら:
2022年05月23日舞台『パンドラの鐘』の取材会がこのほど行われ、W主演の成田凌、葵わかな、演出の杉原邦生が取材に応じた。同作は1999年に蜷川幸雄の指名で野田秀樹によって産み落とされた。2016年にこの世を去った前芸術監督・蜷川幸雄の七回忌を迎える2022年に、“NINAGAWA MEMORIAL”と題し、初演以来23年ぶりにBunkamura シアターコクーンで上演される。葬式屋のミズヲを、今作が初舞台となる成田凌、そして古代の女王・ヒメ女役葵わかなが演じる。2人は17年放送のNHK連続テレビ小説『わろてんか』以来の共演で、葵の息子役を年上の成田が演じていた。成田が「ずっと『お母ちゃん』と言ってましたもんね」と言うと、葵も「1回も下の名前で呼ばれたことなかったと思うんです」と苦笑。成田は「本当に立ち姿から何から違うので、前のことも気にしてないというか。お互い知り合いではあったけど、独特かもしれないです」と印象を明かした。朝ドラ時には19歳、現在は24歳になったという葵について、成田は「5年前くらい。全然違う」としみじみ。一方で「成熟された人間だなと思うんですが、10代の頃からすごくちゃんとしてる人だと思って。すごく無邪気でちゃんとわかってて、人間的なバランスの取れている人だなと思います。柔軟だし、確固たるものを確実にあるし」と表し、「バランスのいいというのは、自分の中のすごくいい言葉なんです。最上級」と称えた。逆に葵は「昔からひょうひょうとしているイメージですけど、クールに見えて実はすごい熱いみたいな印象で、今も変わらない」と言いつつ、今回の共演では「テンポ感というか、波長が猫みたいだと思ってました」と成田の印象を明かす。「話してても全然聞いてないとか、逆に『この話、つまんなかったな』と思ったらすごい乗ってくるとか。『不思議だな、この人』いう印象が強かったんですが、今回の役とリンクして見える」と語った。演出の杉原は、同作について「現代に発掘されたパンドラの鐘の謎を解くサスペンスと、古代のミズヲとヒメ女という2人のラブストーリー、2つの軸が同時に進行して言って、最終的には長崎に落とされた原爆の話に集約されていく」と説明する。「パンドラの箱には希望だけが残ったっという逸話がありますが、野田さんが伝えたいメッセージというものを、僕らが今の人たち、そして未来にどうやってつないでいけるかなっていうことを考えながら、作品立ち上げていきたいなと思っています」と意気込み、「演劇はエンターテイメントなので、見て華やかで楽しいものであってほしいと僕は思っていて、それを第一に考えながら、豪華なキャストの皆さん、素敵なスタッフの皆さんが集まってくださっているので、必ず楽しんでいただけるようになるんじゃないかな」と期待を煽った。公演はBunkamura シアターコクーンにて、6月6日〜28日。
2022年05月12日明治大学先端数理科学インスティテュート(MIMS)の杉原厚吉 研究・知財戦略機構研究特別教授制作の錯視研究作品が、現在、新潟県南魚沼市の池田記念美術館で展示されています。展示期間は、2022年3月12日(土)から5月8日(日)までです。杉原先生の錯視研究作品は、世界錯覚コンテスト2020(Best Illusion of the Year Contest 2020)にて、4回目の最優秀一位を獲得しました。今回の特別展では、受賞作品「立体版シュレーダー階段図形」も展示されています。立体版シュレーダー階段図形の詳しい解説はこちらをご覧ください。 新潟県南魚沼市 池田記念美術館春季特別展示 第5回 錯覚展2022 杉原教授の不思議な世界■展覧期間2022年3月12日(土)~5月8日(日)■休館日毎週水曜日※展示替え休館日:4月15日(金)~20日(水)※5月4日(水・祝)は開館■開館時間午前9時~午後5時(入館は閉館の30分前まで)※4月14日(木)は午後3時閉館■入館料大人500円、各種割引あり、高校生以下無料 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年03月24日「お金は、人生のパートナーです。株式投資をしたからこそ叶った夢や目標がたくさんあります」そう力強く話してくれたのはタレントの杉原杏璃さん(39)。グラビアアイドルとして知られてきた杉原さんだが、投資家の一面を持ち、23歳から始めた株式投資で得た利益はなんと1億円以上!経験から得た知識を生かし、最近では著書『マンガでよくわかる株1年生 億り人 杉原杏璃と一緒に』(かんき出版)を上梓したばかり。また株で捻出した資金を元手に、補正下着ブランドを立ち上げた実業家でもある。タレント、投資家、実業家の顔を持つ彼女は、経営者や実業家たちとの交流も多い。そんな杉原さんに自身の株式投資の経験や周囲のお金持ちを見てきたこれまでの経験から、“お金持ちの共通点”を聞いてみた。すると挙げてくれたのは3つのこと。「チャレンジャーであること」「堅実であること」「お金が好きであること」だ。■お金持ちの共通点《1》「チャレンジャーであること」「お金持ちの人たちは、やりたいと思ったことを行動に移している人が多いと思います。そういう方たちに相談すると、『なんでやってみないの?』『失敗してもそれが人生なんだからチャレンジしなさい』という答えが返ってきますね」そう話す杉原さん自身からもチャレンジ精神の強さを感じる。人によっては尻込みをしてしまう株式投資を23歳で始めた、というのもそうだ。「19歳で広島から200万円の貯金を持って上京したんですが、芸能の仕事が入らず貯金が底をつき始めてしまったのがきっかけでした。オーディションは日にちや時間がバラバラでアルバイトもなかなかできないなか、“どうにかお金を生み出すことを考えないと”と思っているときに、仕事の関係者や知人から『株をやってる』という話を聞いて、“私もやろう!”と。生活の足しになればいいという気持ちで、最初は30万円程度の金額から始めました」その後、失敗もあったというが、経験と勉強を重ねながら、投資による資産を増やしていったという。しかしながら、人とは違うことをする“チャレンジャー”には横槍が入るのが世の常。30代に入って株式投資をやっていることを公表すると思わぬ言葉を受けることに。「『なんでそんなことするの』『危ないからやめなよ』って、よく言われました。そもそもグラビアの仕事を始めたときも、『水着で出るなんて恥ずかしくないの』とか、売れる前には『もう諦めたら?』なんて言われることもありましたから。それでも私は突き進みましたけど(笑)」そういった横槍への対策は「『気にしない』と切り替えること」。「『変だ』と思われるのは、他の人たちと違うことをやっているからですよね。経営者やお金を持っている人たちからは『うまくいく人はだいたい否定的なことを言われるから大丈夫だよ』『変な人になりなさい』とも聞いたので、むしろ変な人だと思われよう、と思っていました(笑)」■お金持ちの共通点《2》「堅実であること」「いっぽうで堅実であることも大切だと思います。お金がたくさん入ってきても、好きに使っていたら残りませんから。お金持ちと言われる人たちは、締めるところは締めて、使うべきところではしっかり使っている。お金の使い方が上手だと感じます」杉原さんも「もともと物欲がない」ほう。16歳から芸能の仕事をしてきたというが、その出演料や、幼少期からのお年玉、お小遣いを貯めていて、上京した19歳の時点で200万円の貯金があったという堅実さ。お金に対する価値観は昔からしっかりしていたのだろうか。「倹約については母から自然に学びました。『お菓子ならコンビニじゃなくて、スーパーで買いなさい』と言われたり。『本当にそれは必要なの?』とも常々聞かれました。その代わり、本当に欲しいものだったら、いくつでも買ってくれたので、何が必要かしっかり判断できるようになった気がします」ちなみに、株で失敗する人には“堅実”でない傾向があると感じているようで……。「ギャンブルのように、一か八かで100万円とか1,000万円とか、ひとつの銘柄に掛けてしまう人は失敗することが多い気がします。もちろん大成功することもあります。でも大損にもつながるので、失敗した場合はそのまま投資をやめてしまう方も……。何事もバランスが大事だと思います」■お金持ちの共通点《3》「お金が好きであること」杉原さんいわく、お金持ちの共通点の大前提として「お金を好きであること」があるという。「お金に興味がないとお金に関する話も入ってこないし、投資や事業でお金を生み出すこともできないと思います」とはいえ、“お金や投資は怖いもの”と思ってしまう人も一定数いるだろう。「家庭環境や周囲の言葉によってそういう固定観念がついている可能性もありますよね。でも、怖がらずお金と向き合うことが大切だと思います。そういう私も投資を始めたころは、株価の動きに一喜一憂して楽屋で悲鳴を上げたり、少し損するとネチネチたらればを話していた時期もあったんですよ(笑)。でも何年もやっていると慣れていくもので、だいぶ冷静になりました。自分に合っているか合っていないか、できるかできないかは、一度やってみないとわからない。株価に一喜一憂するのも楽しめたらいいですよね。それでも『やっぱり怖いし嫌だ』と思ったらやめればいいですし。『投資は怖いものだからやらない』と決めつけてしまうのは、少しもったいないと思ってしまいます」ただし、お金にまつわる話はやはり厄介ごともあるようで……。「株式投資をやっていることを公表してから、投資の話が持ち込まれることが格段に増えました。『動物の抗体のなんとかに投資しませんか』とか(笑)。たとえばそれが知り合いからのお話だったら、うまくいかなかったときに疑ったり、嫌いになりたくないので手を出さないようにしています。お金が絡むと人間関係が複雑になりがちなのは仕方がないことだと思っています。投資によって精神的にもかなり鍛えられましたね(笑)」
2021年12月17日●コンサートで子どもたちの“好き”を実感タレントのつるの剛士、フジテレビの杉原千尋アナウンサーが、2022年1月8日に埼玉・さいたま市民会館おおみや 大ホール、2022年2月27日に神奈川・鎌倉芸術館 大ホールにて開催される「チャギントン ファミリーコンサート」のリハーサル終了後に取材に応じ、同コンサートへの意気込みを語った。『チャギントン』は世界で人気の子供向け鉄道CGアニメ。フジテレビの子供番組『GO!GO!チャギントン』(毎週日曜6:15~ ※関東ローカル)では、つるのが2010年からナビゲーターを務め、今年3月には地上波放送10周年を記念し「チャギントン ファミリーコンサート」が東京・よみうりホールにて初開催された。そして来年、同コンサート2度目の公演が決定。今回は、2019年から1年間、同局の井上清華アナとともに7代目ナビゲーターを務めた杉原アナがつるのと再タッグを組み、おなじみのキャラクターたちと歌やショーを繰り広げる。マスコミ向けに公開されたリハーサルでは、つるのと杉原アナが制作スタッフと当日の流れや振付を確認。序盤こそ「えっ、そんな流れだったっけ?」と戸惑っていたつるのだったが、実際に音楽を鳴らし、体を動かしていくうちに「完全に思い出しました」とニヤリ。前回の公演映像をチェックする際には、余裕すら感じられた。一方の杉原アナは同コンサート出演は初挑戦ながら、リハーサル中も持ち前の明るさを存分に発揮。前回コンサートに出演した8代目ナビゲーター・佐久間みなみアナウンサーとはまた違った大胆な演技を見せ、つるのが思わず「佐久間アナと全然違う!」「お姉さんのタイプが変わっちゃう!」と吹き出してしまう場面もあった。○■つるの剛士、杉原千尋アナウンサーインタビュー――リハーサルを行なってみて、いかがでしたか?杉原アナ:つるのさんと2時間みっちり稽古をして、「懐かしいな〜」という感覚になりました。ナビゲーターの衣装を着させていただくのも久しぶりで、すごく楽しかったです。久しぶりなんですけど、スッと『チャギントン』の世界に入り込めたのかなと思います。(つるのさんは)いかがでしたか?つるの:「はい、はい。千尋さんのこの感じね」となりました(笑)。歴代のナビゲーターにはいない三枚目キャラ。(杉原アナは)芸人枠なんで(笑)。このイベント自体は3月に一度やらせていただいたのですが、子どもたちの反応もすごく良くて、絶対続けていきたいと思っていたので、今はまだこういった社会状況で大変な中ではありますけど、またコンサートを開催できることが嬉しいです。――生の舞台はやはり感触が違いましたか?つるの:そうですね。10年(ナビゲーターを)やらせていただいているのですが、スタジオから出る機会はほとんどなくて。子どもたちの反応がどんな感じなのかなと思っていたんですけど、みんな『チャンギントン』を大好きでいてくれていることが実感できました。あと個人的な話なんですけど、今、幼稚園教諭の免許を取るために短大に通っていて、ちょうど最近まで幼稚園の教育実習に行っていたのですが、実習先の幼稚園でも「ジャンケントレイン」ダンスを伝導してきました(笑)。●公演本番は「千尋お姉さん」で――リハーサル中、つるのさんが杉原アナの演技に「お姉さんのタイプが変わっちゃう!」とツッコミを入れているのが印象的でした(笑)。つるの:(本番も)あれだったら怒るからね(笑)!杉原アナ:本番はやっぱり、もっとお姉さんぽく、おしとやかに。杉原千尋アナウンサー(本来のキャラ)を消して、千尋お姉さんを出していけたらと思っておりますので、お楽しみに(笑)。2年前から(杉原千尋アナウンサーの部分が)たまに出てましたよね?つるの:ずっと出てたよ?杉原アナ:あっ! ずっと出てたらしいです(笑)。それを引き続きこの2年間も貫き通したので、杉原千尋アナウンサーの部分を包み隠せるか分からないのですが、千尋お姉さんとして親しみを持ってもらえるように頑張りたいと思います。――杉原千尋アナウンサーの部分が多めに出てしまうと、つるのさんが笑いを堪えるのが大変そうです(笑)。つるの:とりあえず1回、無言で舞台袖にはけさせてもらいます(笑)。僕は好きなノリなんですけど、子どもには多分伝わらないですよね……。杉原アナ:ステージ上でどう出るか!? お楽しみにしていただければ(笑)。つるの:ドキドキするわ!――杉原アナにとっては久しぶりのダンスになりますが、今日のリハーサルで踊ってみていかがでしたか?杉原アナ:知らない曲が多くて、てんやわんやしちゃいました。――佐久間アナに交代してから新しく出来た曲も多いですもんね。杉原アナ:「ジャンケントレイン」も私の時は2番がなかったですし、他の2曲も初めてでした。これからダンス練習に入るんですけど、パンクしそうです……。つるのさんは2回目なんだから、ちゃんとしてくださいよ!つるの:何がよ!杉原アナ:演出家さんに「つるのさんに付いて行ってください」って言われたから付いて行ったら、違うかったじゃないですか! もお〜、頼みますよ〜(笑)。つるの:勝手に付いてきて「あなた間違えてますよ」って何よ! ちゃんと自分を持ってください。お願いします(笑)。――素晴らしいコンビ仲ですね(笑)。つるの:やっぱり太田プロ同士ですからね。杉原アナ:フジテレビの社員です(笑)!つるの:あっ、そっか! 間違えちゃった(笑)。●実習先の幼稚園で“ガチ”ウルトラマンファンと邂逅――先ほど幼稚園の実習に行っていたと話されていましたが、つるのさんを見た子どもたちの反応はどんな感じだったんですか? 「『チャギントン』のお兄さんが来た!」となりましたか?つるの:子どもたちはそんな感じが全くないんですけど、親御さんがすごく喜んでくださって。子どもたちにYouTubeで僕の映像を見せてくれた方も多いみたいで、子どもたちが「昨日こんなの見たよ!」と報告してくれたり、どんどん僕の情報量が増えるという不思議な状況でした(笑)。――実習に来た先生が、実はウルトラマンダイナってスゴいことですよね。つるの:子どもたちはどうかな……? 子どもたちより、同じ時期に教育実習に来てた男の子がいたんだけど、その子がガチのウルトラマンファンで、僕が職員室にいたら「えーー!」「な、なんでここにいるんですか……?」って泣き出しちゃって! 先生たちも爆笑で(笑)。普段は別のクラスを担当してたんだけど、トイレ掃除とかで会ったりしたら、その子がブルブル緊張しながら話しかけてくれて。子どもたちじゃなくて、その子が一番興奮してくれてましたね。園長先生いわく、「すごく感動しながら帰っていきました」と(笑)。――大ファンだったら、そうなります(笑)。では最後に、来年に控えた「チャギントン ファミリーコンサート」の見どころを教えてください。つるの:やっぱり、『チャギントン』のチャガーが生で出てくるところですかね。(杉原アナは)どうですか?杉原アナ:私自身初挑戦のことなので、どんな感じになるのか全く想像がつかないんですけど、大勢のお友だちと触れ合えることがまずすごく楽しみです。色々な振付を一緒に踊ったり、絵描き歌もあったり、ぜひ楽しんでもらえたらと思います。つるの:あとはガチャピンとのコラボレーションですね。11年ぶりの再会なので、とても楽しみです。
2021年12月15日インクリメントP株式会社(本社:東京都文京区、以下「インクリメントP」)の代表取締役社長 CEO 杉原 博茂が2021年12月1日に東北大学グリーン未来創造機構の特任教授(客員)に就任したことをお知らせいたします。東北大学は東日本大震災の復興及び日本の新生に寄与するプロジェクトをはじめとする「社会にインパクトがある研究」を推進してまいりました。これらの研究や取り組みを基盤に、防災や脱炭素社会の実現を加速させる目的で2021年4月に新たに「東北大学グリーン未来創造機構」が設立されました。本機構では安心・安全で持続可能な未来社会に向けた教育・研究・社会連携活動を推進することにより、地球温暖化をはじめとする環境及び社会問題を解決することを掲げています。さらに、自然災害や感染症等のあらゆる災害に対してレジリエントで、且つ人々が心豊かに暮らすことのできるグリーン未来社会を実現することが期待されています。インクリメントP 代表取締役社長 CEO 杉原は、IT業界のリーダーとして約40年にわたる経験と、最新のテクノロジー技術への探求心を持ち続けています。「人のために」という信念に基づいて、最先端のテクノロジーを使いこなすことで、社会課題の解決と事業の成長を実現してまいりました。これからは、「地球のために」というより大きな視点で、地球温暖化をはじめとする環境問題や、自然災害や新たな災害など複雑で多様化した課題に対し、当社が保有する膨大なデータと最先端テクノロジーの融合により、地球で起こる現象を予測する“Geo-Prediction”な世界を実現することで課題解決へと導いていく所存です。さらに特任教授(客員)として、産学連携を強化し、これまで杉原が培ってきた知見と経験を、未来を担う教育や研究に活かし、俯瞰的な視点から研究成果を社会実装していくためのアドバイザーとして貢献することを目指します。■「東北大学グリーン未来創造機構(Green Goals Initiative)」について東北大学がこれまでに推進してきた東日本大震災からの復興及び日本の新生に寄与するプロジェクトや、東北大学が掲げるSDGsである「社会にインパクトある研究」の30プロジェクト等、これまでの活動を基盤として、さらに社会課題の解決へ挑み、グリーン未来社会の実現に向けた取り組みを加速させる目的として、2021年4月に設置されました。自然災害や感染症等のあらゆる災害に対してレジリエントで、且つ人々が心豊かに暮らすことのできるグリーン未来社会の実現を目指していきます。URL: ■インクリメントP株式会社について1994年、カーナビ用のデジタル地図事業をスタート、日本全国の地図整備からサービス提供まで一貫して手掛け、カーナビ向けの地図データや地図更新ソフト開発の他、「MapFan」ブランドで地図サービスを展開しています。現実世界の膨大な変化点をスピーディに収集、抽出、更新する独自の革新的な地図制作技術をもとに、高鮮度かつ高精度な地図の提供を実現するとともに、高度な自動運転の実現に不可欠な高精度地図の提供も行っています。さらに、人流データをはじめとする多様なビッグデータ・リアルタイムデータと地図を掛け合わせ、ロケーションインテリジェンスによる新たなサービスの創出に取り組んでいます。<2022年1月20日付で「ジオテクノロジーズ株式会社」に社名変更予定>私たちは2022年1月20日付で「ジオテクノロジーズ株式会社(英語名:GeoTechnologies Inc.)」に社名を変更いたします。新社名の「ジオテクノロジーズ」には、地球(Geo)と先端技術・テクノロジーを融合し、予測(Prediction)可能“Geo-Prediction:ジオプリディクション”な世界を目指す想いが込められています。少子高齢化、脱炭素、自然災害など、地球が抱える様々な課題を解決していく一助となるため、先を読むこと、”Geo-Prediction”を標榜し、社名に恥じないよう、地球のため、社会や人々のために心新たに努力してまいる所存です。デジタル地図・位置情報ソリューション、高精度地図の基幹事業においては今後も更なる強化をお約束すると共に、高鮮度、高精度、高品質なコンテンツデータを提供してまいります。そして当社が有するデジタルネイティブなビッグデータと最先端技術との融合によって、Metaverse(メタバース)の世界とSociety 5.0の実現を牽引し、 “Geo-Prediction”による、ESGに配慮した経営を目指してまいります。URL: 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2021年12月01日杉原邦生が既存の戯曲を中心に様々な演劇作品を演出する場として、2004年に立ち上げたプロデュース公演カンパニー“KUNIO”、9年ぶりの上演となるKUNIO10『更地』が、10月9日、京都・京都芸術劇場 春秋座で開幕した。杉原の大学時代の恩師でもある太田省吾の代表作のひとつ『更地』は、バブル経済崩壊期の1992年、太田自身の演出によって初演され、阪神・淡路大震災の翌96年に再演。家の解体を終えた更地で過去の記憶を辿る夫婦の姿が観客の胸を打ち、大きな話題となった。杉原は自身のカンパニーKUNIOにて、東日本大震災の翌2012年に上演。戯曲の設定と異なる若い俳優をキャスティングし、ふたりの男女が「未来」の希望へと向かう新たな物語として再創造。京都のみの公演でありがなら注目を集めた。9年ぶりの上演となる今回も、安定した演技で舞台での活躍目覚ましい南沢奈央と、杉原とは『オレステスとピュラデス』(2020年)以来2度目のタッグとなる濱田龍臣というフレッシュなふたりが初の二人芝居に挑む。初日公演を追えて、南沢は「ジェットコースターのようでした」と述べ、「緊張もしていましたが、どんどん楽しくなっていく感覚もあって、達臣くんと一緒にどんどんノッていったな、という感覚があった。稽古の時にはないようなノリが生まれたような感じがします」と語り、みどころについては「台詞ひとつひとつに意味があって、深い事をいっていたりとか、男と女で主張が違ったり。男女関係なく、男性が女性の意見に共感したり、観る人によっても感じ方が違うし、一つひとつの言葉を自由にキャッチしてみていただきたい」とし、さらに「今回更地でまっさらなところから始まって、ふたりでどんどん創り上げていって最後は全然違う姿に変わる舞台美術が本当に素敵なので、自分も客席から観てみたい。お客様には是非客席からそれ(舞台美術)も楽しんでもらいたい」と加えた。濱田も「今回もあっという間でした。いつのまにかカーテンコールで、お客様に拍手をいただいて、すごく幸せな時間でした」と初日公演の感想を述べ、「更地と言う場所においてふたりぼっちの人間は何をできるのだろうか、という事をみせてくれる舞台。ひとりじゃないという事だけでも人は強く、優しくいられる生き物なのかな、ということを自分は演じながら実感することができた。観てくださるお客様は(演じている自分とは)また違った面でそこを観ることができるのではないか」と本作の魅力を語った。KUNIO10『更地』の上演時間は約80分。今後の公演は10月30日(土)・りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館公演、11月7日(日)~14日(日)に東京・世田谷パブリックシアター公演を予定している。
2021年10月11日演出・杉原邦生、主演・市川猿之助の舞台『藪原検校(やぶはらけんぎょう)』が2月10日(水)~3月7日(日)、PARCO劇場で上演される。それに際して最終リハーサルでの舞台写真、また出演者代表からのコメントが公開された。1973年のオープン以来、渋谷PARCO建替えまでの43年間プロデュース公演の先駆けとして、様々な名作や話題作を送り出してきたPARCO劇場(オープン当時の名称は西武劇場)。本作『藪原検校』は、PARCO劇場のオープン当初の名称・西武劇場での「オープニング記念・井上ひさしシリーズ」として1973年に初演された、当劇場とも大変ゆかりの深い傑作舞台である。ストーリーは生まれつき盲目で性根の曲がった男が殺しに殺しを重ね、藪原検校にまで上りつめる悪党一代記だ。初演の演出は木村光一、その後、蜷川幸雄、栗山民也といった演劇界の巨匠たちが演出してきた。そして今回手がけるのは、スーパー歌舞伎II『新版 オグリ』や、木ノ下歌舞伎『勧進帳』などの演出を務めてきた気鋭の若手演出家・杉原邦生。劇中歌もすべて刷新して、稀代の悪党・杉の市を演じる市川猿之助をはじめ、三宅健、松雪泰子、川平慈英ほか、異彩を放つ豪華キャスト陣と共に『藪原検校』が新たによみがえる。キャスト・スタッフからのコメントは以下の通り。市川猿之助新しいPARCO劇場での藪原検校ということですが、この情勢の中なんとか初日を迎えられるようなので、あとはひたすら、無事に千秋楽を迎えられることをいまはただただ祈るばかりです。東京はもちろん、地方にも行きますので、最後はみんなで手を取り合って笑って、いい公演ができたねといえる芝居になることを祈っております。念には念を入れて、準備万端で、その場その場で燃えていきたいです。健ちゃん(三宅健)には遊んでもらって、みなさんにも楽しくしていただいて、稽古も楽しく一か月乗り切れました(笑)。井上(ひさし)さんは稀代の悪人を描いてはいますが、必ずしも生まれたときからの悪ではないんです。悪人でも赤ちゃんの時の笑顔はあっただろうし、家庭環境もあっただろうし、悪人の様々な面を描いています。今回のラストは杉原くんなりの解釈で、杉の市の悲しさがでていると思います。スタッフさんも、照明さんもスーパー歌舞伎のときと一緒で、ツーカーの仲なので杉原くんがやりたいことの飲み込みが早く、みんなが同じ方向を向いていて、とてもやりやすかったです。いろんなジャンルの俳優が、異種格闘技のような、舞台の上での演技のいい意味での戦い、それが良いほうに化学反応を起こして、従来の藪原検校をご覧になった方々には驚きだろうし、初めて観るかたにも驚きだろうと思います。この時代にしかできない、杉原邦生が、やりたいことを我々を使ってやった芝居ですので、若さと若いアイデアにあふれた古典作品と言っていいこの『藪原検校』を隅から隅まで味わい尽くしていただきたいです。三宅健猿之助さんとの共演は本当に楽しいです。今は猫を被っていますが、チャーミングな方で毎日毎日笑顔が絶えない現場です。健ちゃん、猿ちゃんと呼び合い、健猿の仲です(笑)。僕が小学4年生なら、猿之助さんは小学2年生です。歌舞伎の技術、技がふんだんにこの舞台に活かされていて、そういった意味でも、これまで上演されてきた『藪原検校』とは違うと思いますし、渋谷の街と猿之助さんの技と、いろんなものが融合して、まったく新しいものが渋谷で生まれるんだなと感じています。猿之助さんのファンの方々も楽しくて楽しくて仕方がないのではないかと、そして観に来てくださった皆さんが猿之助さんの虜になって帰っていくんだろうなと思います。手放しでぜひ観に来てくださいといえる状況ではないですが、僕たちは粛々と芝居をやっていくしかありません。キャスト、スタッフはじめ、観に来てくださる方々も感染対策をしっかりしていらっしゃると思いますので、千秋楽の日まで無事に終えられるように努めたいと思います。松雪泰子三宅さんもおっしゃったように、皆さん同じ気持ちだと思いますが、最後まで無事に千穐楽まで完走できることを祈っております。今回のカンパニーならではの『藪原検校』になっていると思います。今回は杉の市の愛人ということで、精いっぱい杉の市に絡みついていきたいと思っております。稽古場で生まれ積み上げてきたものを信じて演じていきたいです。約20年ぶりに三宅さんとも共演させていただいて、映像と舞台の現場では環境も全然違いますから、稽古場では三宅さんの新たな魅力をたくさん拝見しながら、お稽古をしておりました。三宅さんの魅力はぜひ作品を観ていただければ感じていただけると思います。川平慈英演出の杉原さんが大変エキセントリックで、猿之助さんバージョンの今作はポップな『藪原検校』です。僕は語り部なので一回舞台に上がったら一秒たりともはけない。役者になってはじめてくらいのセリフ量の多さで、今さらながら何で引き受けたんだろうと…(笑)。すごくチャレンジングなお仕事をいただいて感謝しています。僕は歌舞伎のカルチャーと舞台の上で組ませてもらうのは初めてなので、お稽古場では本当に目からうろこなことばかりでした。すごくセンセーショナルで稽古が楽しかったです。これをこうやってやるんだ!と発見が多く、すごく勉強になり、いろんなアイデアをいただけました。このご時勢、エンターテイメントを観に来るのは本当に難しいと思います。コロナ渦で、なかなか人に優しくなれない、寛容になれない毎日だと思いますが、観に来てくださったお客様には楽しんで、笑顔になって、寛容になれるような作品になっていると思います。この素敵なメンバーで完走できたら、こんな幸せなことはないです。杉原邦生(演出)約1年前のラインナップ発表会見で舞台に立った時には、考えもしなかった社会状況になっているなと、いま改めて感じています。今回は素晴らしいキャスト、スタッフの皆さんが、僕のアイデアの種を稽古場でふくらませ、育ててくれて、現代の人に伝わる『藪原検校』になっていると思います。稽古中も稽古が終わってからも、猿之助さんにLINEでここはこうしようかとか、こうしたらいいんじゃないかとアイデアをいただいて、僕のほうで噛み砕いて演出に反映させた場面もありますし、猿之助さんが歌舞伎の演出を丸ごと持ち込んでいるような演技をなさっているところもあります。歌舞伎俳優の猿之助さんが主演で、周りにいろんな出自の俳優さんがいて、作品の芯に井上ひさしさんの本がある世界観で、いいバランスですべてが融合しているなと感じながら稽古をしていました。そして、劇場に来て、実際に舞台美術が立って、いい意味で我ながらこれは「やっちまったな」という気がしています。井上ひさしさんは地方と都市をテーマにずっと作品を描いてきた方で、今作も杉の市が東北から江戸に出てきて成りあがっていく話です。都市の象徴である渋谷の街の一角で上演したらおもしろいのではないかというアイデアから、このような現代的なセットになっていて、でも衣裳は江戸中期のもので、普通では融合しない2つが皆さんの力で融合しています。今までにない『藪原検校』だし、井上ひさしさんの作品がこんなふうになるとはだれも想像しなかった世界観になっているので、いろんな批判も出てくるのではとドキドキしていますが、ぜひ楽しんでいただきたいです。■公演情報PARCO劇場オープニング・シリーズ 『藪原検校』作:井上ひさし演出:杉原邦生音楽・演奏:益田トッシュ出演:市川猿之助、三宅健、松雪泰子、髙橋洋、佐藤誓宮地雅子、松永玲子、立花香織、みのすけ / 川平慈英東京公演:PARCO劇場(渋谷PARCO 8F)2月10日(水)~3月7日(日)<地方公演>名古屋:日本特殊陶業市民会館・ビレッジホール3月9日(火)・10日(水)石川:こまつ芸術劇場・うらら3月13日(土)・14日(日)京都:京都芸術劇場春秋座3月18日(木)~3月21日(日)
2021年02月10日PARCO劇場オープニング・シリーズ『藪原検校(やぶはらけんぎょう)』が2021年2月10日(水)に開幕する。主演の市川猿之助に話を聞いた。井上ひさしの戯曲である本作は、『西武劇場(PARCO劇場のオープニング当時の名称)オープニング記念・井上ひさしシリーズ』として1973年に初演され、これまで木村光一、蜷川幸雄、栗山民也といった演劇界の巨匠たちが演出してきた傑作舞台。今回は演出・杉原邦生、主演・市川猿之助というタッグで上演されることになるが、スーパー歌舞伎Ⅱ『新版 オグリ』でも杉原とタッグを組んだ猿之助は「『新版 オグリ』は一緒に演出を手掛けたので、僕の色になりましたが、今回は杉原の色を出してほしいし、料理されてみようと思います」と語る。井上ひさし作品は『雨』(’11)に出演経験がある猿之助。「井上ひさしさんの作品は日本人の心を打ち、日本人でなければできない精神が描かれているように思います。日本のいい面も悪い面も見ておられて、それをお書きになって、さらに言葉の持つ怖さ、大事さ、重要さを大切にされている」と印象を語り、今作では稀代の悪党‘杉の市’を演じるが、「井上作品に出てくるほどの悪党はなかなかいませんから。だからこそ演じるのが面白いなと思います」と楽しみにしているそう。猿之助に加え、三宅健や松雪泰子、川平慈英ら豪華キャストが出演する本作。猿之助は「画面の向こうにいる人たちですからね。皆さんと、例えば食事はできるかもしれないけど、お芝居はなかなかできないわけで。でも、役者って“芝居での会話”ってあるんですよ。それができるのが嬉しいです」。三宅とは顔も合わせたそうだが「三宅さんは歌舞伎をお好きだと聞きましたし、何度か劇場でもお見かけしたことがあります。その時も熱心に観ていらっしゃった。そして第一線で活躍し続けるスターですからね。そういう方とのお芝居は、歌舞伎ではできないことですから。こういう機会をいただいたことは感謝です」。今作でこだわりたいことを問うと「上演時間」というこれまでにない答え。「お客様の安全が第一だし、僕らの安全も第一だから。この状況の中で公演を無事に続けるために考えたい。お客様も演者も安心して過ごせるように上演時間にはこだわりたいです」。公演は2021年2月10日(水)から3月7日(日)まで東京・PARCO劇場にて上演後、名古屋、石川、京都を巡演。文:中川實穗
2020年12月23日演出・杉原邦生、主演・市川猿之助の舞台 『藪原検校(やぶはらけんぎょう)』が2021年2月10日(水)~3月7日(日)、PARCO劇場で上演される。それに先駆けて、出演者のビジュアルが公開された。1973年のオープン以来、渋谷PARCO建替えまでの43年間プロデュース公演の先駆けとして、様々な名作や話題作を送り出してきたPARCO劇場(オープン当時の名称は西武劇場)。本作『藪原検校』は、PARCO劇場のオープン当初の名称・西武劇場での「オープニング記念・井上ひさしシリーズ」として1973年に初演された、当劇場とも大変ゆかりの深い傑作舞台である。ストーリーは生まれつき盲目で性根の曲がった男が殺しに殺しを重ね、藪原検校にまで上りつめる悪党一代記だ。初演の演出は木村光一、その後、蜷川幸雄、栗山民也といった演劇界の巨匠たちが演出してきた。そして今回手がけるのは、スーパー歌舞伎Ⅱ『新版 オグリ』や、木ノ下歌舞伎『勧進帳』などの演出を務めてきた気鋭の若手演出家・杉原邦生。劇中歌もすべて刷新して、稀代の悪党・杉の市を演じる市川猿之助をはじめ、三宅健、松雪泰子、川平慈英ほか、異彩を放つ豪華キャスト陣と共に『藪原検校』が新たによみがえる。リリースされたビジュアルは各人各様に放つオーラが、本作の圧倒的な雰囲気を醸し出す出来栄えだ。また12月12日(土)から、いよいよ東京公演のチケットが発売となる。■公演情報PARCO劇場オープニング・シリーズ 『藪原検校(やぶはらけんぎょう)』作:井上ひさし演出:杉原邦生音楽・演奏:益田トッシュ出演:市川猿之助、三宅健、松雪泰子、髙橋洋、佐藤誓宮地雅子、松永玲子、立花香織、みのすけ / 川平慈英東京公演:PARCO劇場(渋谷PARCO 8F)2021年2月10日(水)~3月7日(日)チケット料金:13,000円(全席指定・税込)U-25チケット=6,000円(観劇時25歳以下対象、要身分証明証、当日指定席券引換 / チケットぴあにて前売販売のみの取扱い)※未就学児入場不可チケット発売日:2020年12月12日(土)<チケット取扱>ローソンチケット: (Lコード:34699)チケットぴあ: (Pコード:503-763)イープラス: ※各プレイガイドでのチケット取扱いは先行販売、一般発売ともWebのみとなります。<地方公演>名古屋:日本特殊陶業市民会館・ビレッジホール2021年3月9日(火)・10日(水)石川:こまつ芸術劇場・うらら2021年3月13日(土)・14日(日)京都:京都芸術劇場春秋座2021年3月18日(木)~3月21日(日)
2020年12月10日杉原邦生が手掛けるギリシャ悲劇シリーズ『オレステスとピュラデス』が11月28日(土)よりKAATで幕を開ける。オイディプス王をラップで彩った『オイディプスREXXX』、トロイア戦争を主軸とした物語を実に10時間の上演時間で描いた『グリークス』に続き、最終章となる今回は「失われた(現存しない)」ギリシャ悲劇を描き出す。主人公のオレステスを演じる鈴木仁、その無二の友人であるピュラデスを演じる濱田龍臣に話を聞いた。「描かれていない」ギリシャ悲劇への挑戦――まずは『オレステスとピュラデス』のオファーを最初に聞いたときの感想から教えてください。鈴木僕は舞台自体が初めてで、しかも題材がギリシャ悲劇という現代の日常とかなり距離のあるもの。だから楽しみも不安も、とても大きかったです。今はとにかくこの舞台に貢献して、お客さんに届けられるように頑張ろうと思っています。濱田自分は今年2作目の舞台になるんですが、今回は何度も共演していて、同じ歳の仁さんと一緒ですごく心強いなと思いました。自分もそうだったように、今回初舞台の仁さんにもいろんな方からいろんなことを教えてもらって、舞台の楽しさを知ってもらえたらいいなと感じています。――オレステスは、杉原さんが前回演出した『グリークス』で描かれたトロイア戦争のギリシャ軍大将・アガメムノンの息子であり、神託を受けて母を殺します。今作ではその後、復讐の女神の呪いに苛まれたオレステスが、それを解くために母殺しを手伝った親友ピュラデスとともに旅をする物語と聞いています。瀬戸山美咲さんによって新たに紡がれた戯曲を読んでみて、物語やご自分たちの役柄についてどんなふうに捉えていますか?鈴木ギリシャ悲劇の中でも描かれていない物語ということは、もちろん難しさもありますが、新しいものを自分たちでイチから作りあげられる自由さもあるなと思っています。ギリシャ悲劇の世界に触れてみて感じたのは、現代とは人を殺す感覚がちょっと違うのかな、ということ。戦争もありますし、オレステスのように親子の間での殺し合いもありますし。もちろん、オレステス自身は母を殺したことを深く捉え、罪悪感を覚えて囚われて生きていますけど、今の自分に単純に置き換えるのとはちょっと違う面があるのかなと思いながら脚本を読みました。濱田そうですね。昔の作品ということもあって、人間の感情がすごくストレートにあらわれているという印象が強いです。それが直接行動にもつながっていきますし。現代だと、どうしてもSNSをはじめとして、感情を間接的に表すことが多い。人対人で、直接感情がぶつかり合うのが新鮮だし、その豊かさが作品の面白さにつながっていくんじゃないかな、と思います。復讐に囚われているふたりが、どうやって周りと感情をぶつけあって視野を広げていくのかというのは、稽古をしていてもすごく楽しみな部分ですね。日々進化する作品――稽古場の雰囲気はどうですか?鈴木初めての舞台稽古なので他と比べることはできませんが、演出の杉原さんは、「こういうセリフ回しはどうですか?」とか「こういう演技で大丈夫ですか?」といった僕たちの差し出すものに、すごく的確に応えてくださるんです。だからセリフへの理解を少しずつ深められるし、素直に楽しみながら稽古に取り組めています。濱田台本では真面目なシーンにもくすっと笑えるセリフが入っているんですが、そのときの邦生さんがすごい楽しそうな、本当に無邪気な少年みたいに笑うんですよね。それによってすごく稽古場の雰囲気がよくなっているなと思います。もちろん演劇に対してすごく熱いものをもってらっしゃるので、毎日話し合って、日々作品が進化していくのを感じられるのはすごく楽しいですね。――同年代のおふたり、舞台経験では濱田さんが先輩になりますが、鈴木さんにアドバイスをすることは?鈴木もう、大先輩です!濱田いやいや、アドバイスなんて大層なものはないですが、「喉気をつけてくださいねー」とか「これいいらしいですよー」とか、僕自身が先輩に教えていただいた受け売りを話したりしています(笑)。鈴木僕、喉がすごく弱くて、稽古が始まった頃に喉を1回壊してしまって。たっちゃんだけでなく、周りの先輩方から「これ飲んだほうがいいよ」とか「この漢方効くよ」とかたっくさん教えていただいたんです。いままであまり意識を向けたことのなかった自分の身体と向き合うところから僕の舞台は始まりました。そういう基本中の基本からみなさんに教えていただけたのは本当によかったなと思います。まっすぐセリフをぶつけることで成り立つ関係――オレステスとピュラデスのふたり旅を軸として物語が進む、ロードムービーのような作品ということですが、稽古中にふたりで役について話し合うことはありますか?鈴木それはあまりないですね。ただ、稽古中の席が横並びなので、自然と読み合わせがはじまります。濱田「ここはこうしよう」と事前にしゃべるよりも、実際に芝居としてぶつけたほうが説得力があるかなと思うので。自分が考えてきたピュラデスを、稽古で邦生さんと仁さんにぶつけていく感じです。鈴木シーンごとに違うオレステスの感情って、言葉で説明するのが難しくて。登場人物たちは感情をまっすぐ伝える人ばかりだから、セリフに潜む感情を説明するより、セリフそのものをぶつけちゃったほうが成り立つのかなって思います。――ふたりのぶつかり合いで作品が作られているんですね。鈴木そうですね。日々悩んで、正解はわからないけれど、でも正解に近づけるように戦っています。オレステスってピュラデスに甘えるというか、かなり頼りっぱなしなんですよね。僕自身は実生活では弟がいて長男なので、あまり甘えたり頼ったりする感覚がなくて。だから難しさを感じつつ、日々新鮮な感覚で稽古しています。でも、できてるのかな?どう?濱田大丈夫(笑)。濱田たしかに、自分自身との違いという点で言えば、僕はこれまでたくさんの作品でいちばん年下のポジションが多くて、周りに甘える立場だったというのはありますね。こんなふうにお芝居全編で「ついて来いよ」という感じで引っ張るキャラクターは僕にとっても新しい挑戦です。ちゃんとできてるか、僕も心配……。鈴木しっかりしてるから大丈夫だよ!――おふたりの関係性が、作品にもいい形で反映していきそうですね。「ここはぜひ注目してほしい」というポイントやシーンがあれば教えてください。鈴木もちろん物語そのものを味わいつつ、僕らはずっと舞台上を走り回っていると思うので、「走ってるな〜」と楽しんでいただけたら、と思います。マスクをつけながら稽古しているんですが、その状態で走り回っているので、ちょっとした高山トレーニングのような状態で(笑)。濱田かなりハードですね(笑)。でもそんな状況の中、役者たち一人ひとりがもがきながら一生懸命走り回っているのを見ていただけたらと思います。役者たちがぶつかりあって熱量の高い舞台になると思うので、ぜひ観て「演劇っていいな」と感じていただけたら嬉しいです。鈴木仁さんと濱田龍臣さんのサイン入りチェキを1名様にプレゼント! ぴあアプリを ダウンロード(dpia-app://contentAll?contentId=95a5b70b-a855-4c54-9aef-d2865605e069&contentTypeId=2) すると、この記事内に応募ボタンがあります。取材・文:釣木文恵撮影:杉映貴子公演情報KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『オレステスとピュラデス』作:瀬戸山美咲演出:杉原邦生音楽:Taichi Kaneko振付:北尾亘出演:鈴木仁 / 濱田龍臣 / 趣里 / 大鶴義丹 / 内田淳子 / 高山のえみ / 中上サツキ / 前原麻希 / 川飛舞花 / 大久保祥太郎 / 武居卓 / 猪俣三四郎 / 天宮良 / 外山誠二2020年11月28日(土)~2020年12月13日(日)会場:KAAT 神奈川芸術劇場 ホール■本公演を映像作品として配信予定(詳細は公式サイト にて後日発表)■ポストトーク開催!開催日:登壇者・12月3日(木):山形治江(ギリシャ悲劇研究家・翻訳家)、杉原邦生(演出)・12月4日(金):瀬戸山美咲(作)、杉原邦生(演出)・12月7日(月):白井晃(演出家・俳優・KAAT神奈川芸術劇場芸術監督)、杉原邦生(演出)・12月9日(水):鈴木仁、濱田龍臣・12月11日(金):鈴木仁、濱田龍臣、趣里
2020年11月25日鈴木仁が、KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『オレステスとピュラデス』に出演する。これまで雑誌モデルや映像をメインに活動してきた鈴木にとって初めてとなる、舞台作品への挑戦。開幕を約2週間後に控え、稽古に励む現在進行形の思いに耳を傾けた。杉原邦生がKAATで演出してきたギリシャ悲劇シリーズの最終章として、『オイディプスREXXX』『グリークス』に続いて上演される本作。瀬戸山美咲が台本を手がける今回は、太陽神アポロンの神託を受け、母親殺しを行ったオレステスの行く先が“新たな”ギリシャ悲劇として創作される。劇中では、復讐の女神による呪いから解放されようとタウリケに向かうオレステスと、その親友ピュラデスの旅路がロードムービー的に展開。二人の若者が、冒険によって成長する姿が描かれるという。今回、タイトルロールのオレステスを演じる鈴木は「初舞台でいきなり主人公をやることになるとは……」と臆しつつも、旅の相棒となる親友ピュラデス役に濱田龍臣がキャスティングされたことに心強さを感じている様子。ドラマ『花のち晴れ~花男 Next Season~』(2018年)など、3度にわたって共演している濱田に対して「親友同士を演じるのに、もともと龍臣を知っているのは大きなアドバンテージ」「稽古でも無理せず、自然と息が合うタイミングがあって安心できる」と心を寄せた。初めて臨む稽古に対しても「その場で瞬間的に生まれたアイディアを大切にする邦生さんの演出に乗って、キャストの皆さんが台本上で未知数だった余白をどんどん満たして、作品を豊かにしていく過程が本当にすごいんです!」と興奮まじりに観察する。特に、趣里と大鶴義丹に対しては「瞳の色を変えてお一人あたり“5役”を演じられる姿に、ぜひご注目ください」と華を持たせた。頼りになるキャストやスタッフに囲まれ、オレステス役をどのように立ち上げようとしているか──。最後にそう尋ねると、鈴木は「これまで自分の信じる価値観だけで生きてきたオレステスが、旅での出会いやピュラデスの存在を通じて世界を広げていく姿を見届けていただければ」とコメント。図らずもオレステスの冒険譚は、鈴木自身の俳優としての成長とも重なりそうだ。公演は11月28日(土)~12月13日(日)に、神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 ホールにて。チケット販売中。取材・文:岡山朋代
2020年11月24日PARCO劇場で上演される、演出・杉原邦生、主演・市川猿之助の舞台『藪原検校』のキャストと公演日程が発表された。日程は、2021年2月10日(水)~3月7日(日)となる。1973年のオープン以来、渋谷PARCO建替えまでの43年間、プロデュース公演の先駆けとして、様々な名作、話題作を送り出してきたPARCO劇場(オープン当時の名称は西武劇場)。本作『藪原検校』は、「西武劇場オープニング記念・井上ひさしシリーズ」として1973年に初演された舞台。この縁深い作品を、新生PARCO劇場のオープニング・シリーズの一作として上演する。これまで木村光一、蜷川幸雄、栗山民也といった演劇界の巨匠たちが演出してきた本作。今回手がけるのは、気鋭の若手演出家・杉原邦生。スーパー歌舞伎II『新版 オグリ』や、木下歌舞伎『勧進帳』などの演出を務めてきた杉原が、劇中歌もすべて刷新し、市川猿之助をはじめとする異彩を放つキャスト陣とともに、相貌も新たに甦らせる。主演の市川に加え、三宅健、松雪泰子、川平慈英ほかが出演。スーパー歌舞伎II『新版 オグリ』でも演出の杉原とタッグを組んだ歌舞伎界の若き重鎮・市川は、PARCO歌舞伎『決闘!高田馬場』に出演、同劇場の『狭き門より入れ』で現代劇に初出演するなど、PARCO劇場とも深い縁がある。その市川が、PARCOオープニング・シリーズにふさわしい本作で、落語や講談、歌舞伎でも描かれてきた稀代の悪党・杉の市を演じる。さらに三宅が、杉の市の処刑を進言する塙保己一ほか数役を演じ分け、松雪泰子が杉の市の愛人お市を、川平が物語の語り部となる盲太夫を演じる。そのほかにも、高橋洋、佐藤誓、宮地雅子、ナイロン100℃の松永玲子、同じくナイロン100℃所属でミュージシャンとしても活躍するみのすけほか、舞台・ドラマ・映画と様々なジャンルで活躍する俳優陣が、それぞれひとり複数の役で江戸の人物たちを演じ分けていく。舞台『藪原検校』PARCO劇場2021年2月10日(水)~3月7日(日)※高橋洋の「高」は「はしごだか」が正式表記。
2020年10月26日木ノ下歌舞伎の『三人吉三』が5~6月に上演される。出演者の大鶴佐助に話を聞いた。【チケット情報はこちら】今回の出演を「ワクワクします」と喜ぶ大鶴。歌舞伎や文楽など日本の古典演目を現代演劇として上演し、役者にもファンの多い木ノ下歌舞伎。その中でも『三人吉三』は代表作で、演目自体の初演(江戸時代)から約150年ぶりという「地獄の場」を含む三幕・5時間に及ぶ完全通し上演も話題を呼んだ作品だ。演じる側になると大変なことも多そうだが、「上演時間が5時間以上になる作品は初めてです。でもそんな作品ってやりたくてもやれないことのほうが多い。それを自分がやってどういう心境になるのかも楽しみですし、歌舞伎もやってみたかったので」と語る。歌舞伎をやりたかったのは、唐十郎の息子である大鶴のルーツと重なる理由。「僕はテント(芝居)をやっているのですが、テントって現代歌舞伎みたいな感じだと思っているんです。今は伝統芸能になってますけど、きっと江戸時代とかはこういう感じだったんじゃないかなって。だからやりたかった。あとは純粋に、どうなるかがわからないからやってみたかったというのもありますけどね」今回「まず楽しみ」と言うのが、木ノ下歌舞伎の特徴“完コピ稽古”。演目をより深く理解・研究するために、まずは実際に上演された歌舞伎の所作や台詞回しを出演者が“完コピ”し、そこからどう現代的に解釈し演じるかクリエイションしていくという稽古スタイルだ。「役をやるうえで“真似る”って普段は遠ざける気持ちがありますが、逆に完コピして、その型を破っていく。そこでどんなものが芽吹くのか…面白そうです」作品については「今まで三人の吉三郎の話だと思っていたのですが、木ノ下歌舞伎では群集劇だと感じました。すべての因果が絡み合い、因果応報ってこういうことか、というラストに繋がっていく…残酷だけど面白い」。その中で大鶴が演じるのは三人の一人・お坊吉三。「彼は身を持ち崩しているけど、ところどころで自分に甘いところがある(笑)。坊ちゃんだからなって、かわいらしく思います。ただ僕も少し坊ちゃんなところがあるので(笑)、そこがどうリンクしてくるかは稽古場で、ですね」。これまで蜷川幸雄や福原充則、木野花ら幅広い演出家の作品に出演し、3~4月には新生PARCO劇場オープニング作品第一弾 舞台『ピサロ』への出演も控えるなど、変幻自在の魅力を持つ大鶴。今作でどんな姿を見せるのか楽しみにしたい。今回、木ノ下裕一が再補綴に取り組み、演出は初演から引き続き杉原邦生が手掛ける『三人吉三』は、5月30日(土)から6月7日(日)まで東京・東京芸術劇場 プレイハウス、6月に長野・まつもと市民芸術館にて上演。取材・文:中川實穂
2020年02月18日KAAT神奈川芸術劇場の2020年度ラインアップ発表会が行われ、同劇場芸術監督の最終年度を迎える白井晃、2019年から参与を務める長塚圭史のほか、本年度の公演に携わるクリエイター計10人が登壇した。【チケット情報はこちら】冒頭で白井は「大きく揺らぐ過渡期の日本で“忘れられがちだが大切なこと”に着目する、社会的な題材のプログラムを前半に揃えました」とコメント。その筆頭として、白井は自身の演出作『アーリントン〔ラブ・ストーリー〕』、音楽家の清水恒輔が「発展しすぎた資本主義が現代に通じる」と述べた『メトロポリス 伴奏付上映会 ver.2020』、演出家・桐山知也によるリーディング公演『ポルノグラフィ』の3作品を紹介した。白井いわく、「シーズン後半はKAATの10周年企画が続きます」──。自身が1995年に青山劇場の10周年記念で演出した音楽劇『銀河鉄道の夜』、芸術監督の就任後に取り組み続けたブレヒト劇の集大成となる『コーカサスの白墨の輪』、任期ラストを飾るミヒャエル・エンデ原作のオペラ『モモ』に懸ける思いを語る。地点×KAATの第3弾企画に新作『君の庭』を書き下ろす松原俊太郎は「今回は法廷劇」と構想を明かした。谷賢一はベストセラー『サピエンス全史』に想を得た『人類史(仮)』で「ヒトの起源を探りたい」とひと言。日韓共同製作に定評のある多田淳之介は『外地の三人姉妹(仮)』でチェーホフ劇の翻案に臨む思いを「日韓の芸術交流を粛々と進める」とした。長塚は『セールスマンの死』再演に対して「新作の消費より1本をゆっくり見つめ直して」と呼びかける。岡田利規からは「ザハ・ハディドと高速増殖炉もんじゅを主人公に据えた夢幻能『未練の幽霊と怪物』をつくる」という映像コメントが到着。ギリシャ悲劇をもとにした新作現代劇(作:瀬戸山美咲)に挑戦する杉原邦生も映像コメントで「大スタジオより広いホールをどう活用するか」と思いを巡らせた。なお、野村萬斎の演出版が2018年に多数の演劇賞を獲得した『子午線の祀り』もラインアップされている。サン=テグジュペリの名著『星の王子さま』をダンス化する森山開次は「哲学的な言葉をどう身体表現で見せるか」を課題に掲げ、小野寺修二は「“わからないけど魅力的なもの”に好奇心を向けさせる作品を」としてルーツのパントマイムに立ち返る点を強調。現代美術家の冨安由真は「現実と非現実の境が曖昧になるインスタレーションを」と意気込んだ。キッズ・プログラムは2本。昨夏、山本卓卓によって上演された『二分間の冒険』は全国7会場の巡演ツアーとして復活。初の子ども向け作品に挑戦する松井周からは映像コメントが到着し、「白石加代子さん演じる認知症の老婆が子どもと記憶を探す物語」である『さいごの1つ前』が紹介された。就任当初から「事件を起こせる劇場でありたい」と目指すKAAT像を設定し、2020年度もラインアップに落とし込んだ白井。ラストイヤーの芸術監督ぶりから目が離せない。取材・文:岡山朋代
2020年02月07日