「パリ グラフィック展」@三菱一号館美術館

2017年11月20日

三菱一号館美術館で開催中の「パリ グラフィック ロートレックとアートになった版画・ポスター展」ブロガー内覧会へ参加して来ました。

ロートレックと聞いて思い浮かぶのはやっぱりポスター。好きな色使い、特徴的で一見単純明快な(そう見えるだけで実際は違う)モチーフは、すごく見慣れた感じがするけれど、多くの作品を一堂に展示したのをちゃんと見たのは初めて。



展覧会についてのお話を聞いたのは今回設けられている撮影OKエリア。それまで複製の手段で絵画より下に見られていた版画・ポスターが、リトグラフ(石版画)の発達で大きなサイズでの表現・幅広い色彩・大量印刷が可能になった19世紀末。

ロートレック、ボナールなど世紀末芸術家たちにより芸術まで高められ、それまで芸術を楽しんでいた階級とは違う労働者層、大衆が芸術を楽しむようになり人々の暮らしにまで浸透しパリの街を飾った…そんな情景を味わえるような、ポスターを通して時代の躍動、都市文化を感じるような、時代そのものを感じる展示です。

HIGH(高尚)からLOW(低俗)つまりエリートからストリート。展示の構成も
 第1章 庶民向けの版画 Prints for the Street
 第2章 知的階層向けの版画 Prints for the Elite
の2部構成で、展示最後には同時代に活躍し、同じく日本の浮世絵版画に魅せられ親交のあったゴッホが所有していた浮世絵の数々も展示されています。

※ 美術館より特別に写真撮影の許可を頂いています ※



左から「コンフェッティ」(1894)
アンリ・ド・トゥルーズ=ロートレック三菱一号館美術館
「フランス=シャンパン」のためのポスター(1891)
ピエール・ボナール ファン・ゴッホ美術館

今回の展覧会はアムステルダムのファン・ゴッホ美術館と三菱一号館美術館所蔵の版画コレクションからリトグラフ・ポスターを中心に、油彩・挿絵本など合計約140点。大衆の目を惹くため、個人の密かな楽しみのために制作されたポスターなどの数々は、色彩、レタリング、モチーフと、約130年経った現代でも色褪せず十分惹かれますね、まさにアートになったポスター。逆に、これらが130年も前のものだということに改めて驚き、こういった広告が街に溢れていたなんて、なんてこったパリ。何て羨ましい時代。



「シンプソンのチェーン」(1896)アンリ・ド・トゥルーズ=ロートレック 三菱一号館美術館




※ 美術館より特別に写真撮影の許可を頂いています ※
上左:「『ラ・デペッシュ・ド・トゥルーズ』紙のためのポスター」(1892)
モーリス・ドニ ファン・ゴッホ美術館 
下左:ジョルジュ・フラジュロール『月の光』上演のためのポスター(1887)
アンリ・リヴィエール ファン・ゴッホ美術館右奥:ジャヌ・アヴリル(ジャルダン・ド・パリ)(1893)
アンリ・ド・トゥルーズ=ロートレック 三菱一号館美術館




人気歌手や踊り子、カフェ・コンセール(演芸喫茶)やキャバレー、酒場など大衆娯楽の情景や男女のドラマなどを描いた作品は、どれもサラッと描いたように見えながら、そこに登場する人物の内面や印象、場面の特徴や事柄のイメージ、その背後にある社会の内情を実に良く捉えていて、絵画のようにじっくりと影やら光やら描き手の心を見ずとも、ひと目でテーマに辿りつける分かりやすさは広告そのもの、そして尚且つアート。

ロートレックも浮世絵の影響を大きく受けた1人、その平面的さゆえなのか、描かれている人物の顔が西洋人なのにおめめクリクリで彫りが深いわけでもなく、サラッとしていてしつこくないさっぱり顔、何だか親近感が湧くような(笑)。



左「コーデュー」(1893)
中「アリスティド・ブリュアン、彼のキャバレーにて」(1893)
右「エルドラド、アリスティド・ブリュアン」(1892)
共にアンリ・ド・トゥルーズ=ロートレック 三菱一号館美術館

ブリュアンはモンマルトルの人気歌手。帽子・マント・マフラーに不敵な顔つき。アクの強い歌手だったそうで、ぎゅっと結んだ口元、顎をあげて堂々と立つ姿は彼の内面が捉えられ気迫まで感じられるよう。ブリュアンはロートレックの作品を自身の店の広報紙「ル・ミルリトン」に掲載するなどバックアップをした親友だったとのこと。

この当時のパリの風景にポスターが飾られ音楽が流れる3F中ほどの展示室。当時の街の雑踏や香りの中へ浸れるいい雰囲気なんです。



左「ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ」(1891)
アンリ・ド・トゥルーズ=ロートレック 三菱一号館美術館右「シャ・ノワール巡業公演のためのポスター」(1896)
テオフィル・アレクサンドル・スタンラン ファン・ゴッホ美術館 



左「メイ・ベルフォール」(1895)
右「メイ・ミルトン」(1895)
共にアンリ・ド・トゥルーズ=ロートレック 三菱一号館美術館

※ 美術館より特別に写真撮影の許可を頂いています ※
ロートレックをはじめその他の画家たちが見た世紀末のパリを、ポスターや版画を通して見た気分。



さて、次からは第2章のエリートが愛した作品の数々。リトグラフ(石版画)の技術が発達し大衆が芸術を楽しめるようになった一方で、版画が芸術の域まで高められ価値が認められるようになったことにより、エリート層は官能的なもの、1点ものの希少なものなど、個人で密かに楽しむ版画を求め、また街に貼られていたポスターもコレクターズアイテムになっていったそう。

上の写真、左はロートレック「夜明かし」楽譜のための石板、右はジャン=エミール・ラブルール《洗濯》のための版木。これからパリ世紀末の街を飾った数々の作品を作り出した元、版画の価値を変えた元、と思うと有り難いというか石板さまさま(笑)。



右「レスタンプ・オリジナル」第1年次の表紙(1893)
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 三菱一号館美術館
左「レスタンプ・オリジナル」第2年次の表紙(1894)
カミーユ・マルタン 三菱一号館美術館

レスタンプ・オリジナルは版画集で、その表紙のどちらも描かれているのは印刷機や印刷機を使って印刷をする光景。

右のロートレックの作品の女性、ロートレックお気に入りの歌手なんだそうで、何だか顔つき目つきが浮世絵風(笑)。一緒に描かれているのはお気に入りの刷り師だそう。左のアール・ヌーヴォーの作家ミーユ・マルタンの作品は、風にのって印刷機の中へ舞い落ちた枯葉が印刷された紙葉となって現れるというものだそうで、これはもうデザインですよね。



※ 美術館より特別に写真撮影の許可を頂いています ※

バロットンの白黒の木版もやっぱり目を惹きますね、というかあの白黒のバランスに吸い込まれるというか。暫し立ち止まって見ている人が多かった気がします。左上の写真は小さいけれど、ヴァロットンの男女の親密な関係、駆け引きを描いた連作「アンティミテ」。このシリーズは限定30部のみしか刷られ、希少性を高めるために版木を廃棄したそう。



右上は詩人ポール・ヴェルレーヌ「平行して」(1900)のピエール・ボナールによる官能的な挿絵。ガラスケースに展示されている貴重な本を見て(あぁ、ページをめくってみたい)という欲望に駆られるあなたを満足させる、ファクシミリ版が隣に展示されてます。但し備え付けの白手袋をして。こういうの、いいですね。



そうそう、こういう19世紀末から20世紀初頭に撮影された、書斎や仕事場にいる文筆家や芸術家の書斎の写真も"世紀末の室内"としてみることが出来ます。エリート層の人々が、壁紙やタビスリーで飾られ絵画や彫刻で満たされた重厚な室内で版画やポスターを個人的に楽しんだとのこと。



ロートレックの版画集「彼女たち」の連作。これ、見る時は結構サラッと見たのだけれど何となく心に残っているのです。

彼は由緒ある貴族の家庭に生まれ、思春期に2度にわたる骨折で下半身の成長が止まって不自由な体になり、最終的に36歳で短い短い生涯を終えたそうで、よく"身体障碍者として差別を受けていたから娼婦や踊り子といった夜の世界の女性たちに共感した"と言われているけれど、そうだったんだろうか?もし、もし彼が平均寿命ぐらいまで命があったとしたら、歳を経てどんな彼女たちを描いたのだろう?と考えてしまったり。

でも、この連作を見ていると、女性をとびきり美人に描くわけではないけれど、彼女たち=娼婦や踊り子の懐にポンと入っていって信頼を得てしまうような人間性だったのかなぁ、なんて感じるんです。



※ 美術館より特別に写真撮影の許可を頂いています ※

ダンサーのロイ・フラーを描いた多色刷りのリトグラフ。同じものでも色が違います。この作品は60部刷られたそうで、その全ての色を変え、刷った後に銀粉や金粉を手作業で加えたそう。平面をペッタリと塗った商業的ポスターとは明らかに違います。

エリートからストリートへと、パリの街角を飾った大衆向け版画は、自宅で個人的に楽しむことを好んだ愛好家たちのために、収集家向けの限定の豪華の出版、室内装飾向けの大判版画が登場するなど、ふたたびエリート層向けの芸術版画にもなっていったそう。エリートの欲は尽きないんですねぇ。



順路を示す矢印にも、作品の説明にも、そして廊下の窓にも、ロートレックが描いた人たちのシルエットが仕込まれていて、なかなか凝ってますね。



それから販売されているグッズが充実していて、ロートレックのポスターがラベルになったミニボトルワイン、ヴァロットンのてぬぐい…ふむ、買いたくなってしまうもの沢山。

そういえば、「アフター5女子割」というお得なサービスもあるんですね。毎月第二水曜日は開館時間を20時まで延長、17時以降の女性の入館料が一律1000円!だそう。女子だけお得ですみません。11/8は過ぎてしまったので、次は12/13…仕事帰りにまた行きたいなぁ…。

「パリ グラフィック ロートレックとアートになった版画・ポスター展」
会  期:2017年10月18日(水)~ 2018年1月8日(月・祝)
開館時間:10:00~18:00(但し、祝日を除く金曜日、
     11/8、12/13、1/4、1/5は21:00まで)
休 館 日:月曜休館(但し、1/8と「トークフリーデー」の
     10/30、11/27、12/25は開館)
年末年始休館:2017/12/29~2018/1/1
Text & Photo by 
いぬのおなら

色使いがとても素敵☆100年以上も経った作品だとは思えないものばかり(^^♪割引サービスもあるようなので気軽にお出かけしたいですね☆

ウーマンエキサイト編集部 はぴこ

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