大反響の「ゆるゆる人生相談」を一挙108本収録した、世界一ゆるい自己啓発本『笑われる勇気』(光文社・900円+税)も発売中の“世界一ゆるい70代”となった蛭子能収(73)が、読者からの相談に答える!【Q】「14歳の中学生の娘がまったく本を読みません。小さいときから読書が趣味だった私としては、本は心を豊かにするものだと。どうしたら娘が本を読むようになるのでしょうか?」(ポムさん・63・パート・埼玉県)【A】「オレは生涯で1.5冊しか本を読んでない」(蛭子能収)オレと一緒ですね。(マネージャー「蛭子さんは70年以上生きていて、1冊しか本を読んだことがないんですよね」)あ、そうですよ、安部……なんとかの、なんとかの女。(マネージャー「安部公房の『砂の女』です」)映画を見て衝撃を受けて原作を読んだんです。あと美輪明宏さんの本も、半年かけて半分読んだことがありますから生まれてから読んだ冊数は1.5冊ですね、うへへ。それにしても、最近はもの忘れがあって、頭がボーっとしている、しかも本を読んだことがないオレに相談しますかね。この人は心が広いかもしれませんが、視野はすごく狭そうですね。本を読むかどうかは娘の自由だと思いますけどね。強制的に読ませる必要はありませんよ。オレは読書しないことで、苦労したことはありません。少し恥ずかしいことぐらい。そんなのどうでもいいことですね。でも、50年以上、スポーツ新聞の競艇のコーナーは読み込んでいます。選手の戦績や天候などを考えながらレースを予想する。きっと視野が広くなりますよ。「女性自身」2020年11月3日号 掲載
2020年10月26日幼稚園時代にひらがなとカタカナが読めるようになったのに、まったく本を読まない息子。この春小学生になり、もう少し本に興味を持ってくれないかとあれこれ試行錯誤を繰り返した結果、なんとか自ら本を手にとらせることに成功しました。今回はわが家で効果があった対処法を紹介します。本よりYouTube!現代っ子な息子赤ちゃんの頃から、寝る前は絵本の読み聞かせを続け、年少の時には絵本でひらがなを覚えた息子。ひらがなも覚えたし、そのうち自分で本を読んでくれるだろうと思っていたのですが、いつまで経っても自ら本を読みません。私は子どもの頃から本が大好きで、二宮金次郎像のようにいつも本を読んでいる子どもだったため、息子が本に興味をもたないのが理解できず、どうやったら息子が本に興味をもつのか想像がつきませんでした。寝る前の読み聞かせの時や、機嫌のいい時に、「今日は自分で読んでみたら?」と促しても断固拒否。理由を探ると、どうやら普段からYouTubeやアニメなどが好きで、情報をスピーディーに取り入れることに慣れているので、自分で本を読んだ時の情報を取り入れるスピードの遅さが気に食わない様子でした。まさに現代っ子!?マンガでも興味を示さず大失敗ムリヤリ読ませて本が嫌いになっても困ると思い、マメに図書館や本屋に行って本に触れさせる作戦に。しかし、何度行っても、図書館では「これ読んで」としか言わないし、本屋ではおもちゃにばかり目を向け、本には興味を示しません。そこで、ハードルを下げてみようと、息子の大好きなドラえもんやポケットモンスター、名探偵コナンのマンガを買ってきて渡してみたのですが…。パラパラとページをめくりはしたものの、「アニメで見るほうがいい!」と、やっぱり読まず大失敗…。必要だったのは環境でした現代っ子は情報媒体が豊富とは言え、本を読むことは学ぶことの基本中の基本。たくさん読まなくてもいいから、せめて自分で手にとるようになってほしい!と思う私。ならば最終手段と、物理的に息子と本の距離を縮めてみることにしました。リビングのソファの後ろに大きな本棚を置き、読んでほしい本を並べてみることに。本棚を置いたことで、元々広くないリビングがすっかり狭くなりましたが、ソファに座れば手が届く距離に本が並んでいる状態になりました。すると、ソファで休んでいる時に、自ら本に手を伸ばすように!一緒に調べものをするのも効果的特によかったなと感じるのは、背もたれに一番近く、すぐに手の届くところには図鑑や辞書を並べたこと。テレビなどで分からない物事が出てきた時に、一緒に読んで調べるようにしてみたところ、少しずつ自分で本を読む面白さが分かってきたようです。そのうち、好きなポケットモンスターの本などもソファで寛いでいる時に手にとり、キャラクターの解説を読み込むようになりました。さらに、自分の本の好みも徐々に分かってきたようで、「〇〇の図鑑を読んでみたい」とか、「このシリーズがもっと読みたい」、「この本を書いた人の他の本も読んでみたい」などと言うようになりました。図書館や本屋にもすすんでつき合うようになり、一緒に本を選ぶ時間も楽しめるように。私も時間がある時は、横に並んで本を開き、息子と読書の時間を楽しむようになりました。親子ともどもネット環境から少し離れる時間を持つことが効果を促進しているように感じます。普段から、大人の策略に敏感で、その策略を察するとすぐに拒否反応を示す息子。私としては、自然な形で本を勧めていたつもりですが、息子からすると、押しつけられているというふうに感じていたのかもしれません。相変わらず本よりYouTubeの方が好きなようですが、それでも環境を整えることで、自ら本に手を伸ばすというのは、親としても勉強になりました。子どもが本にまったく見向きもしない!というときは、ぜひ試してみてください。<文・写真:ライター芳賀千歳>
2020年10月07日息子が小学6年生の時の出来事小学校6年の冬、息子は季節性のインフルエンザにかかりました。病院で処方された抗ウイルス薬を服用した後も高熱は暫く続きました。夜、私と娘が話をしていると、隣の部屋で寝ていた息子が何か訴えてきました。「どうした?しんどいの?話し声がうるさかった?」娘との話を中断し息子の部屋に向かうと、息子がドアの前に立っていました。何やら不穏な様子息子はこちらの問いに答えず、唸り声を上げていました。「吐き気がするの?トイレに行く?」私は息子をトイレに誘導しましたが、背中をさすっても息子は上手く吐くことができないようでした。唸り声は徐々に大きくなっていき、息子は便器に顔を突っ込んだまま便座の蓋の開閉を始めました。「ちょっと⁉頭、挟まってるよ!危ないって!」私が制止しても息子はやめる気配がありません。唸る息子が自ら“便器怪獣に食べられてるような仕草”を繰り返すのを見て私は思いました。「これは熱せん妄かも…」知識はあったけれど1~10才台の子どもが発熱に伴って異常な行動をとる『熱せん妄(もう)』は、ニュースなどで見て知ってはいました。実際、娘が小さいときに、インフルエンザの高熱でうなされながら布団の中で足をバタバタさせていたのを(私も横で寝込みながら)目にしたことがありました。2才の幼児が布団の中で足をバタバタするぐらいなら「熱でうなされているのかな?怖い夢でも見たのかな?寝ぼけているのかな?」と思う程度ですが、11才の男子が立ち歩いて大声を上げる様子を目の当たりにすると、知識はあってもやはり動揺します。救急外来を受診幸いそのときは家に主人がいたので、叫び声を発しながら便器に頭を突っ込んで便座の蓋を開閉する息子を主人に押さえてもらい、その間に私は救急に電話をしました。救急隊の人に支えられ救急車に乗り込む頃に息子は落ち着き始め、受け答えもできるようになっていました。病院に着いて医師の診察を受けたときには日時や名前、自分がいる場所なども言えていました。医師によるとインフルエンザの流行時期だったこともあり、その日は息子と同じような症状の子どもが10人ほど救急外来を訪れ、そのうち何人かは経過観察の為そのまま入院になったそうです。息子は会話もできるようになっていたので、解熱剤を処方され帰宅することになりました。ただ、今後も同じような症状が起こり得るので、暫くは大人が傍で様子を見ているように言われました。熱が高い間は要注意熱が続いた数日間は、医師に言われた通りできるだけ私か主人が息子の傍にいるようにしました。玄関や窓はダブルロックをし、台所のコンロもロックを掛けました。熱せん妄と思われる症状はその後2回ありました(いずれも寝起きの時)。目は開いているのですが、やはりこちらの呼び掛けには応じることはありません。2度目以降は“便器の蓋パカパカ”はありませんでしたが、トイレの前で叫んだり、廊下で頭を抱えてうずくまったりしました。私は息子が落ち着くまで背中をさすりしました。落ち着くと息子は再び布団に戻り眠りました。私は息子の様子から、「身体は起きているけど脳は眠っていて夢を見ている状態なんだろうな」と思いました。熱せん妄よりも私が驚いたこと息子が回復した後、私は息子と熱せん妄を起こしたときの話をしました。本人にはその時の記憶ほとんどありませんでした。息子「最初の時だけ少し覚えてる。多分夢だと思うんだけど、部屋の中に何人か人がいて、その人の頭の上にしずくの形をした魂みたいのが見えたんだ。」私「そりゃ怖いね。逃げ出したくもなるね。」息子「でもその後は記憶ないな。俺、どんな様子だったの?ホントに大声出したりしたの?」私はそのときの様子を絵に描いて息子に見せました。すると...Upload By 荒木まち子息子「・・・。俺、障害になっちゃったのかな?」私「!?」息子「だって姉さん、暴れてた時あったじゃん。」私は息子のこの言葉にとても驚きました。暴れる=障害!?数年前、娘が高校生のとき、家で暴れていた時期がありました。息子はそのとき、小学校の低学年でした。それまでの姉からは想像できないほどの豹変ぶりを彼は目の当たりにしていました。そのときの様子がよほど印象深かったのでしょう。息子は今回自分が暴れた原因が、姉と同じように障害由来ではないかと心配したようです。それは“きょうだい児ならでは”の発想なのでしょう。私は息子に熱せん妄の説明をし、姉が暴れた原因とは違うことを伝えました。思春期の息子に対し今年中学生になった息子は、「親に自分の部屋に入って欲しくない」「友達に姉の障害の事を知られたくない」と思うようになってきています。親を疎ましく思い、友達に大きく左右されるといった典型的な思春期を迎えています。また、精神的にも知的にも息子は姉を追い越し始めてきています。息子が私に「姉さんに対してどう接したら良いかわからないときがある」と言ったこともあります。小学生の時とは明らかに違ってきています。今まで事あるごとに娘や主人に対して障害の特性について対話を重ねてきたのと同様に、これからはきょうだい児である息子に対しても、娘の障害について丁寧に話をしていく必要があると感じています。おまけ息子が回復するまで同じ部屋で寝たり、日中そばでずっと見守ったり、熱せん妄をおこした際には抱きしめたり体をさすったり、と濃厚接触をしていたにも関わらず他の家族にインフルエンザは感染りませんでした。マスク、消毒、手洗い、うがい、換気などの対策をすれば、家庭内感染の予防はできるんだなぁ、と実感できたできごとでもありました。おしまい
2020年09月16日こんにちは!甥&姪大好きおばバカ平八です。今回は「子どもが答えやすい絵本の感想の聞き方」についてのお話です。わが家の甥と姪は絵本が大好き!子どもたちが退屈した時にはサッと絵本を出せば大体なんとかなるので、絵本はもう必須アイテム。外出を控えるようになってからも、図書館はうちにとって救世主です。そんなわが家では絵本の読み聞かせが日々の習慣となっているのですが、最近絵本を読んだ後の甥の“感想”に少し変化が現れました。「面白かった本」だけでなく「興味のない本」についても話をするようになったのです。それまで、「大好きな本」に関しては何度も読み聞かせのリクエストがあるのでわかりやすかったのですが、「それなりに面白かった本」と「興味のない本」については何もアクションがなかったため、傍から見ても区別がつきませんでした。甥は冒険活劇が好きですが、日常を題材にしたお話も嫌いではないようです。姪用に借りた低年齢向けの絵本にも興味のあるものとないものがあるようで、普通に読み聞かせた反応を見ただけでは甥の好みは把握できませんでした。甥の場合は答えるのが面倒なのか、質問とは関係のない謎の回答を返すことも多く…。読み聞かせ後に大人からあれこれと突っ込んで感想を聞くのも、子どもが絵本の余韻に浸れないためNGと聞いたことがあります。それでも、なんとなくで良いから読んだ本がどのくらい面白かったのか聞いてみたい!甥の負担にならない方法で感想を引き出せないものか。そこで考えついた感想の聞き方は…。5段階評価で聞いてみることにしました!甥にはこのやり方が合っていたらしく、質問に答えやすいようです。回答は大体「1」「3」「5」のどれかですが、絵本を読んだ甥が「面白かった」のか「普通」だったのか「つまらない」と感じたのか、ある程度の好みを把握することができます。何度か聞いてみると、意外な本を面白いと感じていたり、好きそうだと思っていた本が案外そうでもないということに気付けました。絵本は不思議な内容やぶっ飛んだ内容のものも多く、それに対し「甥はどう感じたのか」気になった時に聞くのも面白いです。甥の機嫌や状態によっては5段階評価すらうっとおしく感じるようなので、毎回は聞けませんが、甥の考えを知る手段として活用してみようと思います!
2020年06月02日私は物心が付いたころから、母親からのきょうだい間の対応の差を感じていました。私はずっと「私は親からきょうだい差別を受けている」と思っていました。でも、大人になってからは「あれは、区別だったのかも」と思うことも。しかしどちらにしても、私にとってはつらい経験でした。 幼いころから感じていた「差」私は幼いころから、私と弟に対する母の対応に差を感じていました。例えば、おもちゃ。おもちゃ箱の中には、弟のプラレールやトーマスのおもちゃがたくさん詰まっていました。でも、私のおもちゃはないのです。弟のおもちゃで遊んだ記憶はあるのですが、自分のおもちゃで遊んだ記憶はありません。 私に向けられたものは、本棚に立てられた幼児教育の教科書だけでした。写真を見ても、これは私の記憶違いではなさそうでした。 弟は褒められるのに、私は…少し成長してからは、「弟は褒めてもらえるのに、私は褒めてもらえない」と思うことが多くありました。 例えば、学校のテスト。私が90点台を取ると、「どうしてこんな問題を間違えたの!? ちゃんと勉強しなかったからでしょ!」と怒られました。一方、弟が50点台を取ると、「ここも、ここも、できたね! 頑張って勉強したからだね! すごいね!」とやさしく褒められていました。それを見た私は大ショックです。私のほうが良い点数なのに、なぜ私は怒られるのか。なぜ弟は褒められるのか。 とてもつらかったことを覚えています。 母は私のことが嫌いなのだと思ったなぜ母は「きょうだい差別」をするのか。幼い私が考え出した答えは、「ママは私のことが嫌いだから」でした。「ママは弟のほうが好きなんだ」「私はいらない子なんだ」そんなことを考えると、つらくて悲しくてたまりませんでした。 しかし、今になって考えると、あれは「差別」ではなく「区別」だったのではないかと思うこともあります。母は私に「あなたは何でもひとりで、じょうずにできた。でも弟は何をやらせても遅いし、下手だった」と言っていたことがあるからです。 平等に接してほしかったもしかしたら母は、こう考えたのかもしれません。 「姉には遊びより教育を与えたい。弟には教育より遊びを与えたい」「もし50点で良いと姉を褒めたら、姉がそれで良いと勘違いして怠けてしまうかもしれない。逆に、90点を取れないからと弟を叱るのは、弟には酷だ」 確かにその子の個性、その子の個性に合わせた対応をすることは大切なことです。しかし子どもの私にとって、それはとてもつらい出来事だったことに変わりはありません。 私も親となった今、子どもへの接し方の難しさがわかるようになりました。でもやはり、あからさまにきょうだい間の対応を変えることは、子どもの心を傷付けることに繋がると感じています。 子どもの個性に合わせた対応をした結果、傷つく可能性があるくらいなら、みんな同じように接してあげたいと感じます。私は現在第二子妊娠中です。第二子が生まれたあとは、自分のつらかった経験を思い出し、どちらも「差別されている」と感じないよう、平等に接してあげたいと思っています。 イラスト:ののぱ監修/助産師REIKO著者:丸川朋一女の母。出産を機に仕事を退職。子育てのかたわら、妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆中。現在第二子妊娠中。
2020年05月22日おしゃれの悩みを解決するMOOK本が登場!2020年5月9日、宝島社から、ファッションブロガー日比理子の新刊『どんな服を着てもおしゃれに見えない! がなくなる方法教えます。』が発売された。同書は、今日から取り入れられる簡単なおしゃれテクニックが満載。「自然体なおしゃれ」が楽しめるようになる1冊だ。販売価格は1,320円(税込み)。楽天ブックスやAmazon.co.jpなどで購入することができる。いつも同じようなコーディネートになってしまう人やファッションが苦手な人、ファストファッションの活用方法が知りたい人などにオススメだ。元国内系客室乗務員の日比理子日比理子は1980年生まれ。客室乗務員として10年間勤務した後、アパレル業に転身。「ファッションを教養に!自分らしいファッションで人生をより楽しく豊かに輝かせる」をモットーに、ファッションブロガー、ライター、カラーコーディネーターとして活躍している。オフィシャルブログのフォロワー数は40,000人以上、著書には『色と着こなしの微差で一生おしゃれな人になる』『MY FASHION BOOK 色あわせと着こなしでいつもの服がおしゃれに見える!』などがある。(画像は日比理子オフィシャルブログより)【参考】※日比理子オフィシャルブログ※楽天ブックス※Amazon.co.jp
2020年05月15日長引く休校休園、きょうだいが揃って家にこもっていると、ケンカが絶えないのが多くのママの悩みではないでしょうか。うちの小2の息子と年中の娘も、いつも以上にケンカが増え困っていたのですが、最近、ある方法でピタっと止まりました。今回はきょうだいゲンカの時に親がすべき対応と、うちの子どもたちのケンカが止まった方法をお伝えします。きょうだいゲンカが起こるのは「素」になるからうちの子たちの様子や、子どもの友達のママたちの話を聞いて感じるのは、学校や幼稚園では友達とケンカをすることがほとんどない子も、きょうだいとはケンカになることが多いということ。それは家では、それぞれが「素」になっているからだと思います。外では自分1人でできていることも、家では「ママやって~」と甘えてしまうのと同じで、外では友達に対して遠慮したり、ガマンできることも、きょうだいに対しては感情のままに行動してしまうようです。そう考えると、いつも外でがんばっている子どもたち、きょうだいゲンカはおおらかに受け止めてあげたいところ。理想的な親の対応は、双方の話をしっかり聞くことわが家できょうだいゲンカが起きた場合、基本的には自分たちで解決してもらいたいと思い、できるだけ介入しないようにしています。私が止めに入るのは「お兄ちゃんがぶった~」と娘が泣きついてくるタイミングが多いです。その時に気をつけているのは、一方的に息子を悪者にしないこと。泣かせた方が悪い、叩いた方が悪い、というように親がジャッジしてしまうと、不満が解消されず、ストレスからさらにケンカが増えてしまいます。そこで、どうしてそうしてしまったのか、双方から話を聞くようにしています。そして、「そうだったの、それはイヤだったね」と、どちらの気持ちにも共感してあげることで、子どもたちもお互いに相手の立場になり、気持ちを知ることができます。忙しい時には明るくピッピー!ポッポー!しかし、理想的な対応をいつもできるわけではなく、実際は繰り返されるきょうだいゲンカに、「いいかげんにしなさーい!」とイライラしてしまうことが多々あります。特に手が離せない時にケンカが起きると、双方から話を聞いて…などしている時間はとれません。うちでは夕飯作りの忙しい時間にケンカが起きがちで、困っていました。ある日、いつものように子どもたちが言い合いになりかけたので、咄嗟に私が大声で「ピッピー!そこまで!」と叫びました。すると驚いて顔を見合わせた子どもたち。「ママ何言ってるの~」「ピッピーって笛の音?ヘンなの~」と笑ってケンカは終わったのでした。それからは、「ポッポー!」と言ったり「ブッブー!」と言ったり。子どもたちが思わずふき出しそうな音をチョイスしてキッチンからケンカを止めています(笑)。お互いにちょっとしたことが譲れず、意地になってしまっているだけなので、気をそらすだけでも効果抜群。自分が手が離せない時の奥の手として、険悪になる前に明るく止めてしまうのもありだと思いました。一日中絶えないケンカにママの心が折れる…それでも外出自粛・休校休園が長引き、退屈な日々が続くと、ケンカが一日中絶えず起きるように。私にとってそれは大きなストレスでした。夜にはぐったりで、いつもは子どもたちと添い寝をしているのですが、くっつかれるだけでイライラするように。そこで子どもたちに、「ケンカばかりするから、一緒に寝たくない」と素直に話をしました。「そんなのイヤだ!」と大ブーイングでしたが、私は「ママは、〇〇(息子)を叩く子とも、〇〇(娘)を叩く子とも、一緒に寝たくないんだよ。今日は絶対に一緒に寝ない」と言い張りました。すると子どもたちは「ケンカしなかったら一緒に寝てくれるの?明日は絶対しない!」と言い出しました。プチご褒美でケンカがピタッとそうは言ってもどうせケンカするんだろうなと思いつつ、「じゃあ明日、ケンカが3回までだったら、一緒に寝るって約束ね」「わかった、ケンカは3ポイントまでね」と言って約束し、その日は別々に眠りました。そして、翌日。驚くことにケンカがピタっとなくなったのです。いつものように言い合いになると、「あ!ケンカの1ポイントがついちゃう!」と息子が気づき、娘も「そうだった!」と言って仲直りするのです。うっかり手が出てしまっても「今のは違う違う!」「ね!」と言い合ってケンカが続くことはなく、結局夜まで仲良く過ごしました。前日までいくら「ケンカしないで!」「いいかげんにしなさい!」と叱っても効果がなかったのに、びっくりです。今までは当たり前だった添い寝が、ケンカをしなかったご褒美のようになり、「今日はケンカが0ポイントだよ!寝る時ぎゅう~ってしてね」と大喜びするようになりました。ママの負担を減らし、家族の笑顔を最優先に私は普段「ケンカをすることで、相手との関わり方を学んでいくもの」と思っています。それを考えると、ご褒美のためにガマンして、きょうだいにやさしくするのは、決していいことではないとも思います。しかし長期休みの今は、ずっと家にいるので、外でがんばらなきゃいけない時間がない状況。プチご褒美のおかげで、ケンカをしないことが「兄妹、2人で力を合わせて頑張ること」に変わったことはよかったと思っています。プチご褒美は、ケンカしなかったら、「夕飯は子どもの好きなメニューにする」「おやつを一品プラス」などちょっとしたことでも充分。他にも、ポイントカードを作ってご褒美シールをためていくのも楽しそうです。高価なオモチャなどでなくても、ケンカにならないようにがんばるきっかけ作りになればいいのです。わが家でも寝る前の「ぎゅう」がマンネリになってきたら、プチご褒美の内容を変えて、子どもたちのケンカが少ない状況を今後もキープしていけたらいいなと思っています。今、ママたちは本当に大変な思いで毎日を過ごしていることと思います。中でもきょうだいゲンカのストレスは大きいもの。こんな事態なので、できる限りママの負担を減らし、家族の笑顔を最優先に、少しいつもの育児と考え方を変えてみるのもいいのではないでしょうか。私も引き続き工夫して、楽しいお家時間を過ごしていきたいと思います。<文・写真:ライターnicoai>
2020年05月14日「赤ちゃんのころから必死に読み聞かせをしているのに、ちっとも本に興味を持ってくれない……」「日ごろから『本を読みなさい!』と言い続けているのに、だんだん本が嫌いになってきているみたい……」そんな悩みを抱えている親御さんは多いといいます。そもそも、どうして私たちは自分の子どもが「読書好き」であることを、こんなにも求めてしまうのでしょうか。それはきっと、本を読むことで得られるメリットがたくさんあることを知っているから。今回は、これまでにご紹介してきた「読書」にまつわる記事のなかで、特に人気の高かった6本をまとめました。「子どもに本好きになってほしい」「読書習慣を身につけてほしい」と願う親御さん必読の記事ばかりですよ。「読書」おすすめ記事1■我が子に“読書好き”になってほしいなら。ぜひ身につけさせたい「読み癖」とは麻布中学・高校の国語科教師である中島克治先生は、「子どもが本当に時間を気にせずに本と向き合えるのは小学生まで」と断言します。それは、中学生や高校生になると勉強や部活、友だち付き合いなどで忙しくなり、本を読む時間が取れなくなるから。さらに、本を読むことによって「学習面でのメリット以上に、“ある力”を養うことができる」とも。読書は子どもにたくさんのものを与えてくれます。(中略)読書をして語彙が増えれば、教科書の内容や先生の話をしっかり理解できるのですから、学力の向上にもつながります。また、読書によって増えた語彙は、感情コントロールという点でも力を発揮します。というのも、言葉によって自分の感情を相対化して見つめ直すことができるようになるからです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|我が子に“読書好き”になってほしいなら。ぜひ身につけさせたい「読み癖」とは)この記事では、「わが子に本好きになってもらいたい」と願う親御さんに向けて、子どもが自分から進んで本を読むようになる実践的なアドバイスが多数紹介されています。まず重要なのが、“親が読んでほしい本”を無理にすすめるのではなく、“子ども自身が興味を持っているジャンルの本”を与えてあげること。中島先生は、「野球やサッカーが好きな子なら、野球雑誌やサッカー雑誌でも構わない」と述べています。たとえどんな本でも、興味があるからこそ読み続けることができ、その結果「読み癖」が身につくそうです。また、子どもに本への興味を持たせる最も簡単な方法は、「親が子どもを連れて書店や図書館に行く時間を増やすこと」だといいます。親と一緒に本に囲まれた場所に行くことで、子どもは「お父さんやお母さんは本に興味を持っていて、本を大切なものだと思っている」ことを体で感じ取ることができるそう。それが本好きの道を進む第一歩になるんですね。「読書」おすすめ記事2■「つまらない本」を知ることも大事。図書館での“3千冊の乱読”から子どもが養う大事なもの子どもには「良い本」を読んでほしい。でも世の中には膨大な量の本があり、その中から子どもに適した本を選ぶのは至難の技です。この記事では、「子どもの脳を耕す本選びのコツ」や「本と向き合う姿勢」について、児童文学評論家の赤木かん子さんに深く語っていただいています。子ども時代は、とにかくたくさんの本に触れることが大事。だからこそ赤木さんは、子どもたちに「乱読」をすすめているのです。たくさん読んだなかには、子どもがワンシーンだけ、1ページだけ好きになる本もあれば、1冊丸ごと気に入ってしまうような完成度が高い本もあるでしょう。一方で、全然子どもの気に入らない本があるのも当然のことです。つまらない本を知らないと「この本はおもしろいんだな」ということがわかりません。子どもには膨大な時間がありますから、乱読することで感覚やものを見る目を養わせましょう。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「つまらない本」を知ることも大事。図書館での“3千冊の乱読”から子どもが養う大事なもの)赤木さんは、「子どもに読書をさせるなら物語を読ませないといけない、と思っている親御さんが多いですが、そんなことはないんですよ」といいます。特に低学年では図鑑が好きな子どもが多い、という例を挙げ、「低学年のうちは、答えがないようなものや範囲の広いものは理解できない」とし、図鑑は「脳を耕す=畑にたくさん栄養を入れてふかふかにしている」時期である低学年にぴったりだと述べています。そして小学4年生くらいから徐々に前頭葉が発達し、「自分とは違うけれど、こういう暮らしや生き方をしている人がいる」ということを理解し始めます。そこで物語や伝記などを好んで読むようになってくるわけです。赤木さんは、「低学年で耕した頭に、高学年から種をまきはじめて、実の収穫ができるようになるのは高校卒業くらい」とも述べています。いずれ大きな実が収穫できるように、小さいうちからたくさんの本に触れさせて、子どもの可能性を広げてあげたいですね。「読書」おすすめ記事3■読書習慣は親の影響が大きい!子どもが “本好き” になる、家庭の本棚の作り方最新の国際学習到達度調査(PISA)によると、日本の子どもの読解力が著しく低下していることがわかったそうです。その中で、読書習慣のある生徒は、ない生徒に比べて読解力の平均点が高かったことから、読解力低下の背景には「読書量の減少」が関係していると読み取れます。この記事では、家庭内でできる「子どもを読書好きにする方法」をたっぷり紹介しているので、ぜひ参考にして取り入れてみてください。大人でも「この本を読みなさい!」と強引に押し付けられたら、内心では反発したり、億劫になったりするのではないでしょうか。子どもならなおさらです。(中略)そこで、おすすめしたいのが「アラカルト本棚」です。“アラカルト”という呼び名どおりに、文化系、理系、雑誌、漫画、小説、絵本、世界地図など、なんでも、あらゆるジャンルの「おすすめ本」を並べてしまうのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|読書習慣は親の影響が大きい!子どもが “本好き” になる、家庭の本棚の作り方)この「アラカルト本棚」をおすすめするのは、偏差値35から読書週間の改善で東大合格を果たした西岡壱誠さん。西岡さんが東大生100人にアンケートをとったところ、親が作った「アラカルト本棚」によって好奇心が刺激されたり、読書が好きになったりした学生が多かったのだとか。また、カリスマ家庭教師の西村則康さんによると、「親子で本棚を共有したほうがいい」とのこと。その理由は、親の難しそうな本を眺めているうちに、子どもは「いつか読めるようになりたい」と向上心をもつからです。アラカルト本棚を作ったり、本棚を家族で共有したりすることで、子どもは広い視野をもって本選びをすることができます。さらには、「この本、どういう内容なの?」「難しいところは教えてあげるから読んでみたら?」など、親子の会話が弾むきっかけにもなりそうですね。「読書」おすすめ記事4■読書量が算数の成績を左右する!?子どもの学力を上げるために「1日数分」からできること読書量と国語の成績が比例することは誰にでも想像がつきますが、じつは近年、「数学の基礎知識」や「ITスキルの高さ」にも影響を及ぼしていることが判明しました。この記事では、さまざまなデータから、家庭の読書環境と子どもの読書量が、いかに算数の成績に影響するかをくわしく説明しています。なかでも注目すべきは算数の結果です。どの教科よりも、「読書量が多い」グループと「まったく読書をしない」グループの偏差値に大きな差が開いたのです。この結果を受けて、ベネッセ教育総合研究所は「(読書によって)与えられた問いや条件を性格に読み取る力を高めているのではないか」という見解を示しています。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|読書量が算数の成績を左右する!?子どもの学力を上げるために「1日数分」からできること)小学5年生を対象にしたこの調査では、国語・算数・理科・社会の学力テストを実施し、読書量の違いが結果に影響するかを調べました。すると、まったく読書をしない生徒に比べて、読書量が多い生徒ほど良い成績をおさめ、平均1.9ポイントも偏差値に差が出たそうです。算数が苦手な子は、もしかしたら計算問題よりも文章を読み解く力が弱いのかもしれません。読書による成績アップの効果はすぐには現れませんが、いずれ必ず、読書で培った読解力や論理的思考力が役立つはずです。また、記事内では「親の読書量が子どもの読書量に比例する」というデータも紹介しています。つまり、親自身に本を読む習慣がなければ、子どもにいくら「本を読みなさい」と言ったところで意味がないということ。教育評論家の親野智可等氏によると、「1日10分からでも、親子で毎日決まった時間に読書をするだけで、大きな違いが生まれる」らしいですよ。「読書」おすすめ記事5■子どもを本嫌いにする【親のNGワード&行動】と【子どもが本好きになる方法】この記事では「わが子に本を好きになってもらいたい!」と願うすべての保護者に向けて、日常で取り入れられるちょっとしたコツを伝授しています。また、親の伝え方次第では、かえって子どもを本嫌いにしてしまうかもしれない“落とし穴”についても、くわしく解説しています。子どもを本嫌いにさせる親のNG行動&NGワードは、主に3つあります。1.「本を読みなさい」・・・読書を強制する2.「もう絵本は卒業しようね」・・・読む本を大人が決める3.「どんなことが書いてあったの?」・・・完璧な理解を求める(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもを本嫌いにする【親のNGワード&行動】と【子どもが本好きになる方法】)どれも何気なく言ってしまいそうですが、これらの言葉によって、子どもは本を嫌いになってしまうことも。本を読むことを強制したり、また読む本を勝手に決めて押し付けたりすると、「読書=つらい記憶=本が嫌い」と脳にインプットされてしまうというのです。すでに読書が苦手になりつつあるお子さんには、まずは読書の楽しさを知ってもらう工夫を。どんなに「本が嫌い・苦手」であっても、読みたい気持ちが強い子どもは多いそう。そういった子は、何を読めばいいのかわからない、最後まで読めずに挫折したら……と考えて、躊躇しているパターンもあるといいます。家の本棚だって、工夫次第で子どもを本好きにする魔法をかけることができます。一級建築士のすはらひろこ氏によると、「子どもの目線に自然と本が見える高さにする」「本を取り出しやすいように扉はつけない」「居間や階段の踊り場に親子共通の本棚を置く」などを取り入れると、本に触れる機会が増えて効果的だそう。子どもを本好きにするきっかけは、親子の会話や家の本棚にあふれています。「読書」おすすめ記事6■子どもを “本好き” に育てよう。読書習慣を身につけさせるために実践したい3つのこと子どもを本好きにするのは簡単なことではありません。だからこそ、子どもが自然に本に興味を持つように、小さいうちから本を身近に感じさせる工夫が必要です。この記事では、子どもに読書習慣を身につけさせるための“3つのポイント”をわかりやすく解説しています。子どもでも大人でも、本嫌いの人はいますが、その最大の原因は本の魅力をまだ知らない、いわゆる「本の読まず嫌い」なのだとか。本の中には何でも入っているのに、その広い世界と自分の世界が結びついておらず、本はつまらないと思い込んでいるだけなのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもを “本好き” に育てよう。読書習慣を身につけさせるために実践したい3つのこと)ポイントは、「興味のあるテーマの本をテンポよく与える」こと。大人でも興味のないジャンルの本を読むのは苦痛ですよね。子どもならなおさらです。そこで、子どもが好きなアニメのキャラクターや動物、乗り物の図鑑などを本棚に並べてみましょう。興味の延長線上で、活字に親しむきっかけづくりができれば成功です。成長とともに子どもの興味や関心は変化していきます。読書を習慣づけるには、親がその変化に柔軟に対応する必要があるでしょう。その時々の子どもの興味に合わせて、並べる本を変化させるのはもちろんですが、「読書が習慣になってきたな」と感じたら、少し背伸びした本を混ぜるとより効果的だそう。また、子どもに読書習慣をつける一番の近道は、普段から親が読書を楽しんでいる姿を見せること。子どもが読んでいる本を親が読んでみるのもいいですね。親子で同じ本を共有することで、内容について話し合ったり、どう感じたのか意見を交わしたりと、充実したコミュニケーションの一助にもなるでしょう。***ご紹介した記事に共通しているのは、「本選びには子どもの興味・関心を優先させること」「親も普段から読書に親しむこと」の2点です。興味があれば、子どもは自然と本を手に取ります。また、親御さんが楽しそうに本を読んでいれば、「そんなにおもしろいのなら自分も本を読んでみよう」と思うはず。子どもを本好きにするのは、それほど高いハードルではありません。普段の生活の中に、自然に本を取り入れることを心がけてみませんか?
2020年03月22日未然に防ぎたいトラブル...弁護士がまとめた事例と対策『事例で学ぶ発達障害の法律トラブルQ&A』発達障害のある人が生活していく中で、当人同士では解決できないトラブルが起こったとき、法律に照らし合わせて解決するとどうなるか、34の事例とQ&Aの形で分かりやすくまとめられた書籍が発売されました。発達障害のある人のトラブルを多く扱う弁護士、鳥飼康二さんの著書です。お金や仕事、恋愛でのトラブルから、「いじめ被害にあった場合」「合理的配慮を学校に求める」など学齢期に起きる可能性のあるものまで、当事者にとっても保護者にとっても他人事ではない事例が並びます。法律に関する内容ときくと難しそうに感じますが、法律の解説、解決のヒントが易しい言葉で書かれているので、専門知識がない人にも読みやすい書籍です。トラブルは未然に防ぎたいもの。読んでおくと、トラブルを防ぐために日常生活の中で気をつけたいポイントも見つけられそうです。わが子に合った手立てを考えるヒントがたくさん!『発達障害&グレーゾーンの小学生の育て方』発達ナビユーザーに向けて実施したアンケートから、ニーズの高かったお悩みについて、どのように考えて対応していくとよいかを紹介している書籍です。鳥取大学大学院教授の井上雅彦先生が監修しています。ユーザーアンケートがもとになっているので、取り上げられているお悩みは家庭生活から対人関係に関する内容まで、小学生の生活の中で困りごととしてあがりやすいものばかり。「やることの優先順位付けや時間配分が苦手」「同じ質問や確認を何度もする」「人と協力して何かをすることが難しい」など、気になる内容が並んでいます。それぞれのお悩み事例につき3つの対策が提案されていますが、それらはあくまで例であり、お子さんに合う方法はこの3つ以外のものかもしれません。本に書いてあることを参考にしながら、ご自身のお子さんの得意や苦手にあわせたサポート方法はどのようなものか、考えていくきっかけとなる一冊です。当事者であり支援者でもある。だからこそ伝えられるメッセージ。『こちら、発達障害の世界より』自閉スペクトラム症とうつ病の当事者であり、支援者でもある著者の難波寿和さんが、当事者・支援者の2つの目線からみた発達障害の世界についてまとめています。子どものころから生きづらさを感じていた難波さんが、発達障害であると診断されたのは大人になってから。診断を受けたあと、支援者として仕事を続けるかどうか葛藤した胸中、二次障害のこと、再び支援者として活躍するようになるまで...当事者としての日々が赤裸々に綴られています。後半には支援者として活躍する難波さんの支援に対する思いや自身のライフハック術が紹介されています。根底に当事者としてのスタンスがあるためとても具体的で支援者としての信念も伝わってきます。最後には当事者に向けてのやさしいメッセージも書かれており、当事者がみる世界を改めて捉え直したいときに読みたい一冊です。育児で絶望した日々を経て、後輩ママたちへ伝えたい『そのママでいい発達障害の子を育てるあなたに贈る43のエール』発達障害のある人やその家族が生きやすい社会になるよう活動している、発達障害コンサルタントの橋口亜希子さん。前向きに社会に向けて発信を続ける橋口さんにも、過去には子育てに悩み辛い日々を過ごしていた時期がありました。過酷な日々の中で抱えた葛藤や、気になった周りの人の目。現在はイキイキと活動している姿が印象的な橋口さんは、壮絶な毎日からどのように前を向いていったのでしょうか。そのきっかけとなった人との出会いやお子さんからの言葉、現在に至るまでと、20年の子育ての経験がありのままに綴られています。現在の活動に込める思いや原動力などにも本の中で触れており、その中にも1人のママとしての経験、後輩ママへの思いが溢れていることが分かります。辛いことや不安が尽きない日々の子育てに悩んでいるママたちを包み込み、勇気づけてくれるような一冊です。
2020年01月21日「子どもの絵本をどう選んだらいいのかわからない……」「自分が気に入った本ばかり読んでいて、親が読んでほしい絵本を手にとってくれない」「オススメの絵本が知りたい!」このように、読書に関するお悩みを抱えてはいませんか?今回は、「本選びのプロ」である書店員さんに、「書店の活用方法」「絵本選びの極意」そして「書店員おすすめの1冊」をお伺いしました。子どもを本好きにする、書店の活用方法今回、お話を伺ったのは、丸善 丸広百貨店飯能店にお勤めの福島さん。福島さんは、子どもと書店へ行くときに大切なのは「時間がたっぷりあるときに行くこと」だと言います。書店へ行くときは、時間に余裕を持って「基本的なことですが、子どもと書店へ行くときに大切なのは、時間がたっぷりあるときに行くことです。私たちの書店でも、時折、パパ・ママから『どの本にするの!?早く決めて!』と急かされて泣き出してしまうお子さんを見かけます。しかし、それはお子さんにとって酷な話です。膨大な量の本の前で(我が書店では、児童書だけでも3万冊は置いています)突然「どれでも選んでいいよ」と言われると、子どもは喜びながらも『なんでも買ってもらえるなら、なるべく豪華な本がいいかな』『読みたい本はあれなんだけど、ここは、うーん……』などと悩んでしまうもの。そんななかで『早く決めなさい!』と急かされると、放心状態になってしまいます。まずは、お子さんがよく吟味して本を選べるよう、じっくり待ってあげましょう」特に、絵本は厚さが薄いため、表紙が見えない状態で棚に陳列されると、途端に輝きが損なわれてしまう悲しい側面があるのだそう。本当はなるべく表紙を見てほしいものの、スペースの都合上、どうしても多くの本は棚に入ることになってしまうと福島さんは言います。親御さんは、極力たくさんの絵本を棚から引き抜いて、お子さんに表紙を見せたり、パラパラとめくってみせたりしてあげるといいですね。まずは、子どもの興味に付き合うまた、本を選ぶときには、その子が興味を抱いている本を選ぶことが大切だと福島さんは言います。「本選びに限った話ではありませんが、何をするにも無理強いは絶対にNG。子どもが本を嫌いになってしまう可能性が高まります。子どもの興味の発露を待ちましょう。以前、3歳になったばかりの男の子のお母様に、『この子、てんとう虫が好きなのですが、てんとう虫の本を何冊か出してくれませんか?』と声をかけられたことがあります。書店員の腕の見せ所!物語、写真絵本……とありったけのてんとう虫の本を用意しました。しばらく経った頃、『今度はコアラに興味が移ったようで、コアラの本を……』とお母様。私もとことん付き合います。なんでも、庭でてんとう虫を見つけたことがきっかけでてんとう虫にハマり、上野動物園でコアラを見てからはコアラに夢中になったのだとか。お子さんの興味は生活に密着していて、子どもの知的好奇心の豊かさに感激しました。またしばらく経った頃、『今度は、カワウソを好きになったので、カワウソの本を……』。お母様の郷里の旭山動物園でカワウソを見てから、カワウソにのめり込んでしまったのだそう。さあ腕まくり!旭山動物園の飼育係から絵本作家になったあべ弘士さんの『かわうそ3きょうだい』(小峰書店)のシリーズに、アーノルド・ローベルとナサニエル・ベンチリーの『かわうそオスカーのすべりだい』(好学社)などなど……。あらゆる本をご用意しました。子どもの興味は、このようにどんどん広がっていきます。大切なのは、その好奇心にとことん付き合うこと。そうすることで、読書の幅もみるみる広がっていきます。私たち書店員も、日々勉強しています!ぜひ、気軽に書店員に声をかけてみてくださいね」子どもの興味はコロコロ変わるもの。子どもを本好きにするためには、「この間○○の本を買ってあげたばかりなのに」などと怒ることなく、子どもの興味にとことん付き合ってあげることが大切なのです。その際には、書店員さんに相談するなど、書店を有効活用したいですね。絵本はどうやって選ぶべき?「絵本の選び方がわからない」という親御さんも多いことでしょう。福島さんは、以下のようなロングセラー作品をひとつは持っておくことを勧めています。『エルマーのぼうけん』ルース・スタイルス・ガネット 作/ルース・クリスマン・ガネット 絵/渡辺 茂男 訳(福音館書店)『ひとまねこざる』H.A.レイ 著/光吉 夏弥 訳(岩波書店)『はらぺこあおむし』エリック・カール 作/もりひさし 訳(偕成社)『ぐりとぐら』中川 李枝子 作/大村 百合子 絵(福音館書店)『だるまちゃん』シリーズ 加古 里子/作(福音館書店)『こぐまちゃん』シリーズ わかやま けん/作(こぐま社)「ほかにもいろいろありますが、上記のようなロングセラー作品を、ひとつは持っておくのがおすすめです。幼稚園・保育園に行くと必ずと言っていいほどお目にかかる本ですから、お友だちと知っていることを共有する喜びも味わうことができますよ。ロングセラー作品以外でも、ワクワクするような楽しい物語、ことばあそびの絵本、いつまで見ていても飽きない繊細で緻密な作品(安野光雅さんによる福音館書店『もりのえほん』『旅の絵本』など)、起承転結が明確な昔話絵本なども、子どもに愛されますね」また、以下のような優れたブックリストを活用することもおすすめだそう。『本へのとびら――岩波少年文庫を語る』宮崎 駿 著(岩波書店)『子どもと本』松岡 享子 著(岩波書店)『そして、ねずみ女房は星を見た』清水 眞砂子 著(テン・ブックス)しかし、何よりも大切なのは、子どもの興味を尊重することだと福島さんは言います。「無口な子、おしゃべりな子、素直な子、反発する子……。大人と同じく、子どもの個性も十人十色です。我が子にいろいろな望みをかけるのは親として当然かもしれませんが、子ども自身のペースを尊重することを大切にしましょう。本は、賢くなるために読むものではありません。特に幼いうちは、自分の読みたいものを純粋な楽しみのために読めばいいのです。主人公に寄り添って冒険をして、ハラハラ・ドキドキしたり、ともに涙を流したり、苦しみを乗り越えたり、喜びに胸を高鳴らせたり……。そういった経験は、実学というところにつながると私は思います」絵本選びについて悩んでしまう親御さんは多いことと思いますが、福島さんいわく、はじめは、子どもの読みたい本を買ってあげればいいのだそう。「その際は、親が「読ませたい」と思う本も同時購入し、本棚にさしておくと良いでしょう。必要なときが来れば、本は開かれると私は思っています」書店員オススメの1冊子どもが読みたい本を読ませてあげるのが一番だと話す福島さん。そんな福島さんが、ある印象的なエピソードをお話しくださいました。売り物ではない本を『欲しい!』と手放さない少年がいた「『あまがえるのかくれんぼ』(世界文化社)は、当初、園向けの直販商品でした。著者のかわしまはるこさんは、我が丸善書店のある街、埼玉県飯能市にお住いの絵本作家です。ご縁があってご本人にお会いしたのがきっかけで、『地元の絵本作家さんにこんな素敵な人がいます』と店頭にコーナーを設け、非売品としてソフトカバーの『あまがえるのかくれんぼ』をご紹介していました」そんなある日、一人の少年が「この本が欲しい!」とレジに持ってきたのは、非売品の『あまがえるのかくれんぼ』。「『この本は売り物じゃないのよ』彼のお母様と一緒に説得しようとしましたが、少年は本を離しません。ふと見ると、その子のTシャツにも靴にもかえるの絵。『本当にかえるの絵本が欲しかったのだな』と感じた私は、かわしまさんから自分用にと頂いていた1冊を、彼にプレゼントすることにしました」その後、彼を皮切りに、子どもたちから、お父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃんまで、何人ものお客様がひっきりなしに「この本が欲しい」と言いに来るようになったのだそう。福島さんは「この本は非売品で……」と断り続けることにやるせなさを感じていたと言います。そこで、出版のために行動を起こすことを決めたのだとか。「こんなにもたくさんの人に求められる本なのだからと、署名活動をし、ハードカバー化してもらえるようお願いすることにしました。その結果、なんと、たった1ヶ月の間に419人もの署名が集まったんです。署名を世界文化社さんにお送りしたところ、すぐに会議にかけてくださり、この本の出版が決まりました」署名活動を始めた際、「うまくいくか、いかないかは考えなかった」と福島さんは語ります。こんなにもたくさんの人の心を動かす本を、多くの人の手に届けたい一心だったそう。「きっかけがどうであれ、本自身の持っていた力だと思っています」非売品でありながら、多くの人の心を動かし、惹きつけた『あまがえるのかくれんぼ』。ぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。『あまがえるのかくれんぼ』 舘野 鴻 作/ かわしま はるこ 絵(世界文化社)⠀小さなあまがえるのラッタ、チモ、アルノーは今日もかくれんぼをして遊んでいます。すると、ラッタの体の色が変わってしまい……。生物画家のかわしまはるこさんは、約10年間もあまがえるを飼育・観察していらっしゃるそう。繊細で美しく、愛にあふれた絵は、見る者の目を楽しませてくれます。さらに小学館児童出版文化賞受賞作家の舘野鴻さんによる文章はあたたかく、不安を乗りこえ成長していく小さな3匹の心の変化を鮮やかに描き出します。豊かな物語を楽しみながら、カエルの生態についても学べる貴重な一冊です。⠀***お子さんを本好きにするために大切なのは、無理強いをしないこと、そして、お子さんの興味にとことん付き合うことです。お子さんに「読ませたい」本はそっと本棚にさしておき、お子さんが「読みたい」本は積極的に読ませてあげましょう。
2020年01月12日初めての育児に不安を抱えているママ・パパは少なくありません。そんなママ・パパの大きな助けとなってくれるのが、先人の知恵が詰まった子育てについて書かれた本の存在です。日々新しい情報を取り入れることも、もちろん大事ですが、基本の育児本を一度読むことには大きなメリットがあります。育児本を読むメリット子育て、家事、仕事に…と、本を読む時間もなかなか確保できませんよね。しかし、質の良い本を読むことで得られる知識は、想像以上に大きなものといえるでしょう。育児本に手を伸ばす最初のきっかけとして、まずは育児についての本を読む具体的なメリットから確認していきましょう!赤ちゃん・子どもとの付き合い方が分かる育児本を読むメリットとして、まずあげられるのが『赤ちゃん・子どもとの付き合い方が分かる』というものです。核家族化が進み、大人になってから赤ちゃんや子どもと接する機会が少なく、気軽に相談できる祖父母・親族が身近にいない世帯が増えた現代では、赤ちゃんや子どもとの接し方がわからず、何もかも手探りの状態になりがちです。赤ちゃんの命を預かっていることへの不安で、ママ・パパが精神的に不安定になってしまうというのも珍しいことではありません。そんなとき、大きな助けになってくれるのが『育児本』の存在です。育児本を通じて赤ちゃんのお世話の仕方や健康管理の知識を学ぶことで、赤ちゃんを育てることへの不安が少なくなります。育児本は、子育てのマニュアルとしてだけでなく、ママ・パパの心の支えとしての役割も担ってくれる存在なのです。成長の目安、発達段階を確認できる多少の個人差はありますが、『首すわり』『寝返り』『ハイハイ』など、赤ちゃんの発達過程を知ることで、次に赤ちゃんができるようになることを知ると共に、それに応じた安全な環境を整えられるでしょう。場合によっては、成長の遅れや偏りから隠れた疾患に気付き、早期受診につなげるきっかけとなることもあります。赤ちゃんの健やかな成長のためにも、ぜひ1冊手元に置いておきたいものですね!【定番】おすすめベストセラー3選では、いよいよ実際におすすめの育児本を見ていきましょう!まずは、育児本の定番ともいえるベストセラーを3冊紹介します。はじめてママ&パパの育児―0~3才赤ちゃんとの暮らし 気がかりがスッキリ!人気育児誌『Baby-mo』の現役ママ編集者チームが、日々成長する赤ちゃんの育児に知りたいことを網羅した1冊です。オールカラーでわかりやすく、赤ちゃんの体と手指の発達&赤ちゃんの気持ちカレンダー、心と言葉の発達+ママ&パパの語りかけシートなども好評で、初めて育児をするママとパパに、まずは1冊おすすめです。 はじめてママ&パパの育児―0~3才赤ちゃんとの暮らし 気がかりがスッキリ! (実用No.1シリーズ) 最新! 育児新百科「この時期の赤ちゃんは何ができるものなの?」「ウンチの回数はこれくらいが普通なのかな?」そんな小さな疑問を一つ一つ解消してくれるのが『最新! 育児新百科』です。月齢別の0~3歳までの子どもの発育・発達から、ホームケアの方法・予防接種などの情報がこの1冊にまとめられているので、いざというときもあれこれ調べ回る必要がありません。手元にあると安心な基本の子育て本といえるでしょう。 最新! 育児新百科 (ベネッセ・ムック たまひよブックス たまひよ新百科シリーズ) 子どもが育つ魔法の言葉『子どもが育つ魔法の言葉』は、世界22カ国で販売され、世界的に高い支持を集めている人気の子育て本です。自身も3人の子どもを持ち、家庭教育や子育てのコンサルタントを長く務めてきた著者が紡ぐ言葉は、子育てに悩むママの心を優しく解きほぐしてくれるでしょう。「私の子育ては間違っている…?」そんな不安に襲われたときにぜひ手に取ってみたい1冊です。 子どもが育つ魔法の言葉 (PHP文庫) パパにも読んでほしい子育て本3選子育て本は、決してママだけのものではありません。パパが上手に子育てに参加する方法や、知っておきたい情報が手に入るおすすめの3冊をチェックしていきましょう!嫁ハンをいたわってやりたい ダンナのための妊娠出産読本『嫁ハンをいたわってやりたい ダンナのための妊娠出産読本』は、ドラマ化もされた話題の漫画『コウノトリ』の主人公のモデルともなった産婦人科医が、新米パパに向けて書き下ろした実用的な1冊です。『妊婦との付き合い方のバイブル』といわれるだけあって、つわりや陣痛など、男性にはピンときにくい問題が分かりやすく解説されているため、妻が妊娠中の夫婦関係を円満に保つという点でも大きく役立ってくれるでしょう。関西弁交じりの軽妙な文体で、肩ひじ張らずに読み進めるのもうれしいポイントですね! 嫁ハンをいたわってやりたい ダンナのための妊娠出産読本 (講談社+α新書) 子どもを伸ばす父親、ダメにする父親「積極的に子育てに参加したいけれど、具体的にどうしたらよいのか分からない」そんなジレンマを抱えるパパは少なくありません。『子どもを伸ばす父親、ダメにする父親』は、『我が子をメシが食える大人にするために父親が果たすべき役割』をテーマに、父子の関わり方や遊び方の具体例を示した実践的な育児本です。子どもの成長をサポートするだけでなく、親子のコミュニケーションの取り方を学ぶ上でもぜひ一読しておきたい1冊といえるでしょう。 子どもを伸ばす父親、ダメにする父親 (角川oneテーマ21) 男が育休を取ってわかったこと自主的に育児に向き合おうとするパパの中には、育休の取得を検討している人もいるのではないでしょうか。実際に決断する前に、1つの参考事例として目を通しておきたいのが『男が育休を取ってわかったこと』です。育休の取得法から給付金・赤ちゃんの肌のケア方法まで、現役皮膚科医が自身の経験をもとに書き下ろした1冊は、大切な選択をする上でとても大きなヒントを与えてくれますよ。実際に育休を取るにせよ、取らないにせよ、たくさんの大切な学びを得られる育児本といえるでしょう。 男が育休を取ってわかったこと 悩んだときの1冊を手元に!『赤ちゃん・子どもとの付き合い方が分かる』『成長の目安が分かる』『父親の育児参加について考えるキッカケになる』などのメリットを持つ育児本は、新米ママ・パパのサポート役として大きな役割を果たしてくれます。子育てに絶対の正解はないのですが、知識を知ることで事故を防いだり、著者の考え方に触れて前向きな気持ちを取り戻したり、場合によっては疾患に気付く貴重なきっかけを得られたりすることもあります。ママ・パパそれぞれ、お互い協力し合いながら子育ての時期を楽しんでいけますように!
2019年12月17日映画『スケアリーストーリーズ 怖い本』が、2020年2月28日(金)より新宿バルト9ほかにて全国公開される。読むな危険!1冊の本が誘う、恐怖の物語ハロウィンの夜。高校生のステラたちは、忍び込んだ古い洋館の地下室で1冊の本を見つける。そこには美しい手書きの文字で物語が綴られていた。しかし、それは決して持ち帰ってはならない危険な本だった。持ち帰った次の日から、子どもがひとりまたひとりと消える。そしてその“怖い本”には、夜ごとに新たな物語がひとりでに綴られてゆくのだ。次に消えるのはだれなのか? そして子どもたちはどこへ消えたのか? 血のように滲みだす物語に誘われ、恐怖が現実のものとなる──ギレルモ・デル・トロが企画・製作『スケアリーストーリーズ 怖い本』の企画・製作を務めたのは、『クリムゾン・ピーク』や『シェイプ・オブ・ウォーター』を手掛けたギレルモ・デル・トロ。彼が10代の折に影響を受けた、本作と同名の児童書は、全米でベストセラーとなるも、子どもたちにトラウマを与えたとして学校図書館に置くことも禁じられたシリーズだ。そうした“曰く付きの本”から、デル・トロはストーリーを起こした。監督としてデル・トロとタッグを組むのは、怪奇現象に襲われる検死官親子を描いたホラー映画『ジェーン・ドゥの解剖』などを手掛けたノルウェー人監督、アンドレ・ウーヴレダル。背筋の凍るような映像表現、ダークユーモアの才能を活かし、“本の中から現れる恐怖”を描く。子供たちを恐怖に陥れるモンスター“ペール・レディ”『シェイプ・オブ・ウォーター』で、半魚人と人間の禁断の恋を描いたデル・トロだが、本作では子供たちを恐怖へと陥れる新たな“モンスター”像に情熱を注いだ。原作イラストでも知られる、そのモンスターの名は「ペール・レディ」。脂っこく黒いロングヘアに、青白くブヨブヨの肌、そして小さな目。遠目ではマスコットのような可愛らしささえ感じられる彼女だが、その無機質な表情とふくよかな体型のアンバランスさには、何とも言えない不気味さが漂っている。一体彼女の正体とは何なのか…⁈その答えは是非スクリーンで確かめてみて。詳細『スケアリーストーリーズ 怖い本』公開日:2020年2月28日(金)より新宿バルト9ほか全国公開原題:Scary Stories to tell in the dark監督:アンドレ・ウーヴレダルストーリー原案・製作:ギレルモ・デル・トロ出演:ゾーイ・コレッティ、マイケル・ガーザ、ガブリエル・ラッシュ、オースティン・エイブラムズ、ディーン・ノリス、ギル・ベローズ、ロレイン・トゥーサント字幕翻訳:金関いな配給:クロックワークス2019 / アメリカ / 英語 / 108分 / カラー / シネマスコープ / 5.1ch / G
2019年11月03日年の近いきょうだいがいると、毎日のようにケンカをしませんか?「ケンカするほど仲がいい」という言葉があるように、きょうだい間でケンカが勃発することは総じて普通のことなのですが、親からすると「うるさーい!」と言ってしまいたくなりますよね。そこで、心理カウンセラーであり、3人の子どもをもつ母でもある私が、きょうだいゲンカが早く収束するようになった方法をお伝えします。子どものケンカは子ども同士で…では解決が難しいわが家には8歳の長男、5歳の長女、1歳の次男がいます。1歳児に関してはまだケンカに参入することはありません。問題は上の子2人です。「おもちゃを貸してほしいのに貸してくれない」「ぶつかってきたのに謝らない」「やめてって言っているのにやめてくれない」など、子どものケンカあるあるは限りなく、いつもわが家ではどちらかが泣くという結末を迎えていました。ケンカが始まると、2人とも親に告げ口をしてくるタイプだったので、片方が「おもちゃを貸してくれない」と言ってくると、もう片方が「だって、まだ使い始めたばっかりだから!なのに邪魔してくるんだよ!」と言ってくる。子どものケンカは子ども同士で解決してほしいと思っていた私は、「それは2人の問題だから2人で解決して」と間には入ろうとしなかったのですが、最終的にはこじれるばかり。考えてみれば、まだ人生数年しか過ごしていない子どもにとって、自分の主張を通そうとするのは当然のことです。解決できるようになるためには、自分の気持ちを伝えたり、相手のことを考えるという感覚が必要です。しかしながら、「あなただって、反対の立場だったらイヤでしょう?」という言葉は、小さい子どもにとっては理解しにくいところ。子どもは多くを体験から学びます。言葉だけで想像しろというのは、非常に難易度の高い問題なのです。介入ではなく、気持ちの確認作業を行うそこで私は、それぞれが「相手の気持ちがわかる」ようにするにはどうしたらよいか考えました。私がとった作戦は「きょうだいゲンカが起こったときには、2人の話を聞き、相手の前でどんな気持ちなのかを聞かせる」というもの。例えば妹が「お兄ちゃんがおもちゃを貸してくれない」と言いにきたら、私は「そっか、おもちゃを貸してくれないから悲しくなったんだね」。兄が「だって、まだ使い始めたばっかりだから!なのに邪魔してくるんだよ」と言えば、「遊んでいるのに邪魔されるから、イヤだったんだね」という具合です。このあとに続くのは、たいてい妹の「でも私は1回も遊んでないよ!」です。ここにも反応するようにします。「1回も遊んでないから、遊びたいんだね」。そうなると兄は「僕が遊び終わったら貸してあげるよ」となるため、「貸してあげるつもりだから、待っていてほしいんだね」と話します。「でも今遊びたいの!」と妹。そこで私は「今遊びたいから、お兄ちゃんが今使っているのがイヤなんだね」と声をかける。こうして話をしているうちに、兄が「もういいよ、じゃあ3回使ったらまた貸してね」とおもちゃを妹に貸してくれます。いやいや、そんなにうまくいかないでしょ、と思われるかもしれませんが、たいていはこの時点ですでに2人とも落ち着いており、ケンカは収束しています。このやりとりの中には、2つのポイントがあります。言葉のオウム返しと感情の代弁ひとつ目は、子どもの話をよく聞くことです。話を聞いてもらうことで気持ちがスッキリすることは、大人でもよくあるのではないでしょうか。相手が何をしてくれるわけでもないのに、聞いてくれるだけで気持ちがラクになる。これは大人でも子どもでも同様なのです。スッキリする理由は、自分の気持ちをアウトプットすることで、自分自身が抱えている感情を整理することができるから。自分が何に対して怒っているのか、悲しんでいるのか、自分自身で何に悩んでいるのかを理解することができます。具体的に親が子どもに行うときには、①子どもの言った言葉をオウム返しにする②感情を代弁するオウム返しは、親は子どもの話をちゃんと聞いているというサインになります。子どもも話を聞いてもらっているとわかれば、落ち着きを取り戻すことができます。そして感情を代弁すること。子どもは心に湧き上がる感情に対して、相手にうまく伝えることができません。それを親が言葉にすることで、子どもは「自分の気持ちを理解してくれている」と安心することができ、さらにケンカしている相手に対して、感情を伝えることができます。どちらが悪いかの判断はせず、双方の気持ちを聞く2つ目は、どちらか片方だけの気持ちを聞くのではなく、双方に対して行うということです。親としては、きょうだいゲンカを見る限り、どちらが悪いか判断したくなることもあるでしょう。しかし親はどちらか一方の肩をもつのではなく、気持ちを確認し、代弁するだけです。大変そうに感じるかもしれませんが、これを繰り返すことで、同じようなケースが起こったときや反対の立場になったとき、相手の気持ちを理解することができるようになり、「じゃあどうしようか?」と、解決するためにどうすればいいかを考えられるようになっていきます。実際にわが家では、1年ほど前には「1日に何度ケンカするのだろう」と思っていたのが、今ではケンカをする回数が減り、1日平和に過ごす日も珍しくありません。ケンカになっても、自分たちで解決するので、親が入ることも少なくなりました。ちなみに、私は親は基本的に子どものケンカに介入すべきではないと考えていますので、子どもが親を必要としないケンカの場合には、危険が及ばないようにだけ見守っていけばいいと思います。親が止めに入ったり、ケンカ両成敗にするのは、子どもに不満を残すだけでなく、社会性を身につけるチャンスを奪ってしまうことになります。子どもはケンカを通して、相手の気持ちを考えたり、解決法を見出したりできるようになります。子どもの成長を阻害することのないよう、親としての役割を果たしていきたいところですね。<文・写真:ライター沖田かへ>
2019年10月10日子どもへの読み聞かせは、いつ頃まで続ければよいのでしょうか。読み聞かせによって得られる効果をチェックして、読み聞かせを続ける期間を考えるヒントにしましょう。上手な読み聞かせのコツや、おすすめの本についても紹介します!読み聞かせで期待できる効果読み聞かせは、子どもにさまざまなよい影響をもたらすものといわれています。しかし、日々読み聞かせを実践しているママの中には、その具体的な効果についてよく分からないという人が少なくありません。読み聞かせの効果をより高めるためにも、まずは読み聞かせで期待できる効果についてしっかりと確認していきましょう!自然な学力の向上読み聞かせには、子どもの学力を自然な形で向上させる効果があるとされています。絵本を通じ、子どもはたくさんの新しい言葉を覚えます。語彙力の向上は読解力の向上につながるため、国語力はもちろんのこと、さまざまな教科で学ぶ上で役立つ基礎学力も鍛えられるでしょう。また、人の脳には、多角的に情報を取り込むことで、その内容をより強く記憶するという特徴があります。『文字』『絵』『読んでもらう声』など、複数の感覚を同時に刺激できる読み聞かせは、子どもの『学び』のベース作りに大きく役立ってくれるでしょう。想像力・感性が豊かに読み聞かせを続けることで期待できる効果の1つに、『子どもの想像力・感性を豊かにする』というものがあります。絵本を読み聞かせてもらう中で、子どもはその場面を頭の中で想像し、まるで自分がその世界の住人であるかのようにたくさんの感情を味わいます。日常生活ではあまり感じる機会のないさまざまな感情に触れることで、子どもの感性は強く刺激され、豊かな内面が育まれていくのです。「人の痛みの分かる、思いやりのある子になってほしい」そう考える親にとって、絵本の読み聞かせはぜひ実践したい習慣といえそうですね!親子間のコミュニケーションにも何かと忙しい日々の中で、思うように子どもと触れ合えないことに焦りや不安を感じているママは少なくないのではないでしょうか。絵本の読み聞かせは、そんな親子のコミュニケーションを充実させるツールとしても役立ちます。子どもにとって、読み聞かせの時間は、ただ絵本を読んでもらうだけの時間ではありません。大好きなママを独占し、愛されていることを実感できる『心を満たすための時間』でもあるのです。なかなかゆっくり向き合う時間の取れない親子こそ、コミュニケーションの手段としてぜひ積極的に読み聞かせを取り入れていきましょう!いつからいつまでするものなの?子どもが少しずつ文字を理解できるようになってくると、「読み聞かせはいつまで続けるものなんだろう?」という疑問が自然に湧いてくるものです。読み聞かせに適した時期を改めて確認していきましょう!赤ちゃんの頃からスタートしてもOK読み聞かせを始めるのに適した時期には諸説ありますが、基本的には赤ちゃんの頃からスタートしてOKです。ママ・パパの中には、「まだ言葉の意味も分からない、目もよく見えない赤ちゃんに読み聞かせをしてもあまり意味がないのでは?」と考える人もいるでしょう。しかし、たとえ言葉の意味が分からず、絵もよく見えていなかったとしても、赤ちゃんの耳には読み聞かせをしてくれる優しいママ・パパの声が届いています。赤ちゃんの頃はコミュニケーション手段として、やがてコミュニケーション+学力や内面の豊かさを育む手段として、そのときどきによって得られるものが変わるのも読み聞かせならではのメリットなのかもしれませんね。卒業は1人読みを始めてから読み聞かせを卒業する時期は、子どもが1人読みを始めたタイミングを目安にするのがおすすめです。ただし、子どもが1人読みを始めたからといって、一方的に読み聞かせをやめてしまうのはおすすめできません。子どもが読み聞かせに求めるものは、『朗読者』ではなく『親とのコミュニケーション』です。子ども自身が求めてこなくなるまでは、ぜひ前向きに続けてあげたいものですね!楽しんでもらえる読み方のコツとは「子どもに読み聞かせを楽しんでもらいたいけれど、上手に読むコツが分からない…」そんな悩みを持つ人もいるでしょう。読み聞かせの時間をより充実したものにできるよう、子どもに楽しんでもらえる読み方のコツを2つ紹介します!控えめな抑揚と間を大切に子どもへ読み聞かせをする際は、『控えめな抑揚』と『間』を意識しましょう。よくある誤解として『抑揚を付ければ付けるほどよい』というものがありますが、実はこれは正しくありません。読み聞かせを通じて、子どもは驚くほどの想像力を働かせています。大人による意識的な抑揚は、そんな子どもの想像力を妨げる障害となってしまう可能性があるのです。たとえ抑揚は控えめでも、文節やページをめくる際の『間』を意識することで、子どもをワクワクさせたり、好奇心を刺激したりすることは十分可能です。『控えめな抑揚』と『間』を上手に組み合わせながら、どこまでも自由で刺激的な想像の世界を子どもにプレゼントしてあげましょう!オーバーな表現・アドリブは基本的にNG読み聞かせをする際に、ついつい声色や身振りでオーバーな表現をしたり、アドリブを加えたりしてしまうという人は多いのではないでしょうか。しかし、こうした行為は基本的にNGです。子どもへのサービス精神からとはいえ、親のアクションが際立ってしまうと、子どもはそちらに気を取られてしまい、本の内容に集中できません。また、本というのは、プロの作家が推敲に推敲を重ねた文章の集合体です。そんな言葉の結晶ともいうべき物語を子どもにじっくり味わってもらうためにも、オーバーな表現やアドリブはできる限り控えてあげたいものですね。昔話? 童話? 読み聞かせにおすすめの絵本では、実際におすすめの絵本にはどのような物があるのでしょうか。たくさんの親子に愛読されている人気作品を3つ紹介します!いない いない ばあベストセラーとして知られる『いない いない ばあ』は、かわいいキャラクターとのいないいないばあ遊びを楽しめることで子どもに大人気の絵本です。絵と言葉のリズムがメインのため、生まれて初めての読み聞かせ用としてもおすすめですよ!まだ言葉の分からない小さな赤ちゃんとのコミュニケーションにピッタリの絵本といえるでしょう。商品名: いない いない ばあ価格: \756(税込) いない いない ばあ 詳細はこちら 公式HP: 商品ページ 三びきのやぎのがらがらどん物語に対する理解力が身に付いてきた4歳ごろからの読み聞かせには、ノルウェーの昔話をもとにした『三びきのやぎのがらがらどん』がおすすめです。絵本内に登場する化け物『トロル』は、子どもにとって恐怖心をかきたてられるキャラクターですが、そんなトロルに立ち向かうヤギの勇気と驚きの結末は、好奇心旺盛な子ども心を鷲づかみにしてくれますよ!子どもの表情の変化を楽しみながら、何度も読み聞かせてあげたい絵本といえるでしょう。商品名: 三びきのやぎのがらがらどん価格: \1,296(税込) 三びきのやぎのがらがらどん 詳細はこちら 公式HP: 商品ページ しろくまちゃんのほっとけーき『しろくまちゃんのほっとけーき』は、カラフルな色彩と、ホットケーキが焼けていく過程の詳しい描写が特徴的な人気の絵本です。『しろくまちゃんがお母さんと一緒にホットケーキを作り、こぐまちゃんと食べて、片付けをする』というシンプルなストーリー展開で、文字の読めない時期の子どももスムーズに物語の世界に入っていけますよ。読み聞かせの後、絵本を真似て子どもと一緒にホットケーキを作ってみるのもおすすめです!商品名: しろくまちゃんのほっとけーき価格: \864(税込) しろくまちゃんのほっとけーき 詳細はこちら 公式HP: 商品ページ 読み聞かせの時間を大切にしてみよう子どもへの本の読み聞かせには、『自然な学力の向上』『想像力・感性が豊かになる』『親子間のコミュニケーションが深まる』などの効果があるといわれています。子どもの想像力を引き出すような読み聞かせ方を意識することで、より一層子どもを楽しませられる読み聞かせができるでしょう。読み聞かせを卒業するタイミングは、『1人読みができるようになったら』が基本ですが、これはあくまでも目安です。読み聞かせは、子どもにとって大好きなママ・パパと触れ合える特別な時間です。たとえ十分に1人読みができるようになったとしても、子ども自身が望む限り続けてあげられるとよいですね。子どもの学力や情緒を育てながら親子のきずなも深められる…そんな読み聞かせの時間をぜひ大切にしていきましょう!
2019年09月26日赤ちゃん連れの外出は、ときに途方にくれるサバイバルに出かけたような気分にさせられることもしばしば。「おむつが汚れた」「お腹が空いた」と泣きわめく赤ちゃんを抱えて、おむつ替えや授乳ができるスペースを探して奔走することもあれば、子連れでの外食は「何が食べたい」より「どこでなら食べられるのか」が判断基準。しかも全国で最も人口が集中する東京都内での子育ては、人混みも多く、常に忙しい空気感が漂うなかで、ママ・パパ自身が周りへの過度な気遣いを抱えながら外出を強いられることもあります。そんな「不便」を大前提とした赤ちゃん連れでの外出を快適にサポートしてくれるのが、東京都が子育て支援の一つとして推進している 『子育て応援とうきょうパスポート』 です。今回は、本事業の担当者である東京都福祉保健局 少子社会対策部の桑田さんと加藤さんに、実施に至るまでの経緯や現在抱える課題をはじめ、今後東京都が目指す子育ての未来像についてもお話をお伺いしました。『子育て応援とうきょうパスポート』とは?企業・店舗等が、善意により、都内在住の18歳未満のお子様がいる子育て世帯や妊娠中の方がいる世帯に対して、おむつ替え・授乳スペースや割引サービスなどを提供する仕組みです。本事業に協賛する企業や協賛ステッカーを掲示している協賛店でサービスを受けられます。景品の提供、ポイントの付与及び商品の割引等のサービスを利用する際など、協賛店等からパスポートの提示を求められた場合に、アプリなどで取得できる「デジタルパスポート」をスマートフォンで表示するか、区市町村庁舎などで交付される「紙パスポート」を提示します。「サービスの利用方法」や「パスポート入手方法」は コチラ ■実施までの経緯は?課題解決に邁進する日々ーーまずは『子育て応援とうきょうパスポート』実施に至った経緯を教えていただけますか?桑田さん(以下、桑田):これまで東京都内では、区市町村が主体となって子育て世帯向けの優待事業は実施しており、東京都はあくまで財政的に支援するという形をとってきました。しかし、平成27年5月に内閣府の旗振りで、協賛店舗や企業が子育て世帯対象に優待サービスや外出支援・応援サービスを行う「子育て支援パスポート事業」を全国共通展開する施策が打ち出されたことで、状況が変わりました。各自治体が実施している事業を県をまたいでも使えるようにするには、実施主体が都道府県でないといけないという縛りができたのです。そこで東京都としても、「子育て支援パスポート事業」を立ち上げ、『子育て応援とうきょうパスポート』として展開することになりました。ただ東京都では、おむつ替えや授乳スペースなどを提供する 『赤ちゃん・ふらっと』 という事業を平成20年から推進していますので、このような既存の事業といかに整合性を取りながら事業を進めていくかが課題となり、実施の決断までには時間を要しました。ーー現在4,675店舗(2019年9月2日時点)が協賛店舗として参加されていますが、協賛店舗を広げていくにあたり、ご苦労や現状の課題などはありますか?桑田: 『子育て応援とうきょうパスポート』事業自体、補助金は出ないため、例えばおむつ替えスペースをこれから作るとなったとしても、すべて事業者側の自己負担となります。東京都は、何か事業を進めたいと思ったとき、比較的補助金を出すケースが多いため、誤解が生じないよう事業者の方には補助金が出ないということを慎重に説明する必要がありました。また、最近の課題となっているのが、おむつ替えスペースなどの設備はあるけれど割引サービスがないという店舗についてです。協賛店になることで、割引サービスがないということへのクレームを受けるのでは…という懸念を感じ、協賛店になることに二の足を踏んでしまうということがありました。今後は、そういった面をどうバランスをとっていくのが課題なのかなと思っています。■多くの人に知ってもらいたい!情報発信に込めた工夫桑田: 現在、区市町村にご協力いただいて妊娠届けを提出した際に母子手帳と一緒に受け取る「母と子の保健バッグ」の中に、『子育て応援とうきょうパスポート』のチラシと「紙パスポート」を入れて周知を行なっています。平成30年度以降に妊娠された方については全員にチラシが行き届いている形にはなっていますが、事業自体がまだ若いというのもあり、まだまだ知名度が低い状況です。また、『子育て応援とうきょうパスポート』は高校生まで使えるサービスではあるものの、中高生のお子さんを子育て中の方への周知や情報発信がまだまだ弱いという側面もあります。ーーやはり知名度は一番の課題ですか?そうですね。都庁のなかでも協力してもらえそうな局に声をかけて、人目につきやすそうなところにポスターを貼ってもらうという周知活動も行っています。それ以外にも 『とうきょう子育て応援ブック』 という冊子のなかで『子育て応援とうきょうパスポート』についてご紹介しています。『とうきょう子育て応援ブック』は、東京都が実施している子育て支援のサービスを網羅的に紹介している冊子です。2年前からは、東京都内の国公立小学校で配られていて、小学校1年生の2学期になると必ず受け取れるようになっています。もともとこの冊子は、東京都がやっている色々な子育て支援サービスの情報が本当に助けが必要な家庭に届いていないという課題のなかで、学校から配られるプリントなら保護者も目にするという調査結果が出たことで、学校にお願いをして配らせていただけることになったのです。■『子育て応援とうきょうパスポート』が担う本当の目的ーー『子育て応援とうきょうパスポート』のサービスを開始後、周囲の反応はどのようなものがありましたか?加藤さん(以下、加藤):平成30年2月からアプリの配信を開始したことで、普段スマートフォンで使っているクーポンと同じ感覚で使用できるようになり、周りからも「使っているよ」と声をかけてもらうことが増えました。子連れで外出するとなるととにかく荷物が多いので、スマホでパッとパスポートを出せると使い勝手がいいなというのは私自身も子どもと外出の際に使っていて思いますし、周りからも使いやすいという声が多く届いています。ーー現在、アプリのダウンロード数はどのくらいですか?桑田: 2019年7月31日時点で4万9,505件です。やはり利用規模が大きければ大きいほど、協賛店にも魅力を感じてもらいやすいというメリットがあります。ただ、東京都としてはこのパスポート事業は、単にお子さんや子育て世帯がちょっとお得なことができるというだけでなくて、このステッカーを掲示している店舗や施設が増えることで、「子育てを地域と社会で見守っているよ」というサインになるようにやっていきたいと思っています。サービスの中身だけでなく、そういった子育てへの肯定的な意思表示みたいなものを大事にしていきたいと思っているので、その部分を今後しっかり啓発していきたいなと考えています。■東京都が目指す未来の子育てとは?ーー東京都ではさまざまな取り組みを行っているということですが、現在力を入れている子育て支援事業を教えていただけますか?桑田: まずはパスポートの関連事業としてご紹介させていただきたいのが 『子育て応援とうきょう会議』 です。さまざまな分野の関係機関・団体が連携しながら、社会全体ですべての子どもと子育て家庭を支援できる環境を作ることを目的に設置されたものです。「子育て応援とうきょう会議」では、子育て応援のポータルサイト 『とうきょう子育てスイッチ』 も開設し、様々な子育て情報を発信しています。民間団体や企業に協働会員になっていただくことで、ここをプラットフォームにして情報発信をすることができます。協働会員は現在600団体ほどで、民間の色々な取り組みを東京都として支援するということを行っています。また2019年8月1日からは、児童虐待を防止するためのLINE相談 『子ゴコロ・親ゴコロ相談@東京』 を通年で本格実施することになりました。電話相談は昔からありますし、児童相談センターや子ども家庭支援センターのように、行って相談する窓口もかなり整備されてはいます。しかし、若いお父さん、お母さんや中高生のお子さんのコミュニケーション手段がSNSがメインになってなっているなかで、相談するハードルが低いツールを使って悩み事が深刻になる前にSOSの声を上げていただきたいので、こういった取り組みも合わせて進めています。ーー今後子育て世代を取り巻く環境、少子化など色々問題はありますがこんな未来像があったらいいなというものはありますか?桑田: 知事も再三申し上げていることかと思いますが、「子どもを産み育てたい」という希望を持つ人たちが安心して子どもを産んで育てられる東京の実現というのが一番の目標です。社会全体が子育てをしていない人も含めて、子どもと子育て家庭を「応援」とまで言わなくても、「見守る」くらいから始めて、そういうやさしい気持ちになってくれるような色々な取り組みを進めていきたいなと思います。加藤:今、自分が子育ての当事者として様々なことをリアルタイムで感じていますが、その中にはいいこともあれば、ネガティブなこともあると思います。いいことはもちろん次の世代にも引き継いでいきたいと思っていますし、ネガティブなことは自分の代でおしまいにしたいという気持ちで今後も事業に取り組んでいきたいと思っています。
2019年09月09日『シンデレラ』『ベイビー・ドライバー』など、その美しさと愛らしさで世界中を虜にしたリリー・ジェームズが主演する『ガーンジー島の読書会の秘密』から、リリーが本作で演じたジュリエットというキャラクターや、劇中で鍵を握る本や手紙について思いを語るインタビュー映像が到着した。『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』や『スリー・ビルボード』を世に送り出したプロデューサー陣が再びタッグを組んで贈る本作。リリーは、戦争で両親を亡くした寂しさを抱えながらも、あふれる好奇心とまっすぐな気持ちのままに未来へと進むジュリエットを生き生きと等身大で演じている。届いたインタビュー映像では、原作に触れ「読み終わる頃には泣いていた。脚本も涙なしには読めなかったわ」と告白。また、本作を「典型的な恋愛映画でも戦争映画でもない」と表現する。演じた役柄については、「冒頭でのジュリエットは葛藤を抱えているの。前を向いて進みたいと思っているけど、戦争を生き延びたことに罪悪感を覚えているのよ。みんな大きな犠牲を払ったし、新たな世界はお祭り騒ぎに思える。戸惑っているのね。カリスマ性のある男性と情熱的な恋に落ちるけど、どこかで役を演じている作家だからお手のものよ」とコメント。さらに、「手紙を読むことで主人公たちは恋に落ちる。読書は映画の核として重要な働きをするの」と語り、手紙を書くことについても「文通というのはロマンチックね。机に向かって手紙を書き、待っている相手のことを考えながら投函するのよ。その習慣が薄れたのは残念だわ。私はお礼状を出すのが好きだから頻繁にハガキを書くけど…手書きの機会が減ったせいか字が汚いわ」と、キュートな一面も覗かせている。そんなリリーをはじめ、マシュー・グード、ペネロープ・ウィルトン、ジェシカ・ブラウン・フィンドレイといった英国の傑作TVシリーズ「ダウントン・アビー」でお馴染みのキャスト陣に、「ゲーム・オブ・スローンズ」のミキール・ハースマンも参加、海外ドラマファンからも熱い視線が送られている。『ガーンジー島の読書会の秘密』は8月30日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ガーンジー島の読書会の秘密 2019年8月30日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開© 2018 STUDIOCANAL SAS
2019年08月27日きょうだいゲンカ、止める?止めない?あんふぁんWebの「どっちだポン!」コーナーで「きょうだいゲンカ、止める?止めない?」と聞いたところ、約6割は「止める」、約4割は「止めない」と回答。それぞれの理由を聞きました。激しくなっていくので【止める】■ 姉妹ですが、最後には下の子が噛む、叩くなどして、いつも乱闘状態へ。激しくなりそうなら、止めに入ります。(ドドリゲスさん/36歳)■ きょうだいゲンカは難しいですよね。兄は口で攻めるから、弟は結局手を出す。叩き合っても取っ組み合いになっても基本的には止めませんが、物を使い出したらストーップ!!!です。ケガする前に一回止めています。あとはさりげなくケンカさせる環境も作ったりしています(笑)。きょうだいゲンカはたくさんしていい!と思ってる母なので。そのかわり、仲のいい時はほほえましいほど仲良しです!(まいまいさん/34歳)■ 姉(5歳)と弟(2歳)の2人兄弟です。弟がだんだんと凶暴化してきて、遊びがヒートアップすると暴力に発展してしまいがち…。一方、姉はマイペースで暴力は絶対にふるわないタイプなので、やられっぱなしで弟に泣かされることが多く悩んでいます。弟がひどいようなら止めに入っていますが、やられっぱなしの姉にどう教えたら良いか悩んでいます。(Tさん/42歳)■ どちらかが泣くか、どちらかが手を出した時点で止める。(ゆうけんさん/41歳)■ お友達にはなかなかハッキリと言えない性格の娘。 きょうだいゲンカくらいはさせたいと思っています。でも、ついこちらに余裕がない時は、うるさい!と怒鳴りつけて、止めてしまうことも…。自分達で解決できるようになってほしいのですが、なかなかうまくいきません!(アヤコさん/35歳)■ 9歳男の子、7歳女の子、5歳男の子の3人。 いつまででもケンカを続けるのでとりあえず、「うるさいーい!」で、止めてからそのあと理由を聞きます。(くみさん/33歳)■ 止めます。自由なことと、しつけがなっていない、ガマンがきかないことは別だと思うので。(すいすいさん/38歳)■ 13歳、10歳、6歳がガチでケンカします。それぞれ理由はあるかもしれないけど、ひたすらうるさい。ので、「うるっさーーーい!」で止めます。うるさいことや、人にケンカの声を聞かせて嫌な気持ちをさせることが悪いから止めるというのも充分止めるに値する理由だと思ってます。(ゆう子さん/41歳)■ 叩いたり手を出した時点で声がけする。泣いても助けない。当人同士でなんとかさせる。基本兄弟大好きな子たちだから、ひどく叩いたりしないし、泣いたら慰めるから声かけだけですんでるかな。(SAKIさん/35歳)■ 悪いことに気づかないので、ひと言助ける。下の子にも上の子にも平等にしてるつもりも、上の子に当たりやすい私。(むらさんさん/38歳)疲れるし、キリがないから【止めない】■ あまりにもヒドくなったら止めるけど、ある程度は静観します。(ゆうちょりんさん/33歳)■ どちらかが泣き出すまで止めない。途中で止めてもやめないし、こっちも神経質になるのは疲れるしキリがない。(ちーさん/40歳)■ 男の子きょうだいで毎日のように大ゲンカ。 やられてやり返して、痛さを覚えて加減を覚えていくものかと止めずに見ています。 さすがに腕や指を折りそうになったら止めますが。でも最終的には襖を壊して全員正座です。 (mieさん/36歳)■ 基本きょうだいゲンカは止めません。きょうだいのどちらかが親に言いに来ない限りは、子どもたちにまかせています。(きなこもっちさん/40歳)■ 長女9歳、長男4歳、次男3歳。男同士が、叩いた、蹴った、取った、取られた…でいつもやりあっています。基本、私は静観。なぜならキリがないから…。最後はママより怖い長女の喝!で終了(笑)。長女よ、いつもありがとう!(れいにいさん/40歳)投票期間/2019年7月31日〜8月21日<あんふぁんWeb編集部>
2019年08月26日最近は歌姫としての話題よりも、その振る舞いなどに批判も多く集まっていた彼女。《事実に基づくフィクション》としてはいるものの、ここへきての“暴露本”に多くの人が驚きと注目を寄せています。40歳になった今、なぜ20代の栄光を語る必要があるのか。そしてそれによって、周囲はあゆに痛々しい印象を抱くのか。今回その“問題作”を読んだ感想と、今後のあゆについて少し思いを馳せてみたいと思います。■A to M!禁断の恋愛回想録本書を手に取ったことの無い方に向けて少し内容をご説明しますと、ここで書かれている「浜崎あゆみが愛したM」とはエイベックス・ホールディングス株式会社・代表取締役会長CEOである松浦勝人氏(54)のこと。あゆがどうして松浦氏と出会い、そして愛するようになったのか。愛を隠しながら歌姫へと変身を遂げたのか。そして愛し合っていた2人がなぜ別れたのか。20年ほど前のキラキラとしたラブストーリーが、ロマンチックな文体と共に綴られています。まあ簡単に言えば、2人はソウルメイト的な運命を感じたのでしょう。そこはどの程度リアルかは知る由もありません。本書では、あゆが綴った初期の詩はすべて松浦氏に向けたものだと書かれています。「poker face」「YOU」「WHATEVER]「appears」「Trust」「vogue」「Boys&Girls」そして「M」。黄金期の曲の多くは松浦氏への愛の歌であった。これは当時夢中で曲を聴いていた人からしたら、ある人は落胆し、そしてある人は懐かしさと同時に答え合わせを楽しむような気持ちになったことでしょう。■40歳の浜崎あゆみの壮大なプロモーション活動のスタートなのか?甘やかでロマンチック。それでいて時代を築き上げるエキサイティングな関係だった2人。しかし次第に心も時間もすれ違い、関係は終焉を迎えます。とここで、冷めた意識がサッと走ります。酒に溺れる松浦氏と対象的に、浜崎あゆみが関係悪化によって自堕落だったり悪く書かれていたりすることが一切ないのです。あゆが孤独や不安を感じて涙したりホテルに逃げ込んだりした描写はあっても、怒りを顕にしたり罵声を浴びせたりといった生々しい対話は描かれていません。「そうか。これは40歳から再始動するあゆの壮大なプロモーション活動なのか」そう思ったら、なんだか全てに納得感がいくわけです(そもそも本人公認商品なのですから、もっと早くに気づくべきなのですが)。キラキラとしたストーリーの中に組み込まれた青春を思い出す等身大の詩。これからも歌い続けたいと宣言する、40歳のあゆ。そして松浦氏との再会と、再度一緒に歩むことが書かれた今(ここでいう歩むとは、恋愛関係になるのかビジネスパートナーとして歩むのか、詳細は触れていません)。正直、当初予想していた“痛々しい暴露”は1ミリもありませんでした。輝かしい平成の時代にあった愛の物語。それを出し切ること自体、令和になってさらに進むという浜崎あゆみなりの新たなプロモーションの一歩なのかもしれません。本書を読み終えた私は今、初期の浜崎あゆみのアルバムを聞き直しています。やはりドンピシャ世代の心に居座る、あゆの曲への特別感はいまだ健在。だからこそ、令和の浜崎あゆみはどうなるの?そんなワクワクを思わせてくれる一冊でした。(文・イラスト:おおしまりえ)
2019年08月08日きょうの鉄分葉酸ヨーグルト アロエ登場「きょうの鉄分葉酸ヨーグルト アロエ」が2019年7月23日(火)よりオハヨー乳業株式会社より発売された。数量限定発売の商品となっており、価格は税抜き110円。沖縄県を除く全国のファミリーマートで販売中だ。オハヨー乳業では今年3月、「みんなの保険ノート カラダと鉄分の話し」を公益財団法人 日本学校保健会の協力の下、全国の学校に無償配布する活動を行っている。また、過去に鉄分を売りにした商品を販売するなど、鉄分の大切さを積極的に広めている。きょうの鉄分葉酸ヨーグルト アロエの特長「きょうの鉄分葉酸ヨーグルト アロエ」は成人女性が1日に必要な鉄分と葉酸を補える商品となっており、現代人が抱える鉄分不足を解消してくれる。また、汗をかくことにより、鉄分やミネラルが排出される夏場、毎日の習慣として摂取しやすい、ライチ風味のフルーティーな味わいとなっている。アロエの葉肉も入っており、食感も楽しむことが可能だ。簡単に1日に必要な鉄分と葉酸を摂取できる「きょうの鉄分葉酸ヨーグルト アロエ」。朝の食卓やおやつの時間に活躍することが期待される。(画像はプレスリリースより)【参考】※オハヨー乳業株式会社のニュースリリース
2019年07月25日上の子供がまだ小さかった頃、日本に住む私たちのところへ、イギリスの義父母から一冊の本が届けられました。ジャン・ピエンコウスキーの Haunted House (日本語版:『おばけやしき』)という、飛び出す絵本です。その年にイギリスで出版された絵本の中から特に優れた作品に与えられるケイト:グリーナウェイ賞を1979年に受賞して以来、長い間愛されてきました。「日本語の絵本には興味を示すのだけれど、英語のものにはだんだん興味がなくなってきたみたいで……」と相談した後のことでしたから、心配してくれたのかもしれません。子供が一人でも遊べるポップアップ絵本の魅力義母は長いことイギリスの学校で、様々な理由で読書が苦手な子供たちの支援をしていました。そもそも英語が第一言語でない子供や、なんらかの識字障害を抱えている子供もいたようですが、そうした経験から、いろいろ考えて選んでくれたようです。「本ってね、本当に読めない子は、小学校に上がった時点で、どちらから開くとか、一ページずつめくるとか、そういうこと自体わかっていなかったりするのよ」まさか、と思いましたが、確かに縦書きの日本語の本と横書きの英語の本では、開き方が違います。移民の多いイギリスで、小学校に上がってくる子供たちの中に、一定人数、英語の本そのものを見たことがない子供がいてもおかしくはないのでした。「だからね、一人で開いて遊んでも楽しそうな絵本を選んだわ」子供に本を与える時に、私はついついお話の中身だけに気をとられていましたが、義母の視点には目からウロコが落ちる思いでした。現に上の子が英語の本を嫌がっていた時期も、この本だけは何度も手にとって、ボロボロになるまで眺めていたものです。まずは本の形をしたものに慣れさせることからまずは本の形をしたものに慣れさせること。そういえば、義母はよく子供と一緒に料理の本を眺めては、目次から食べたいお菓子を選ばせていました。「目次や索引をどうやって使うかについて知っているだけで、ずっと敷居が低くなるでしょう?」読み聞かせに適した素敵な本もたくさんありますが、むしろ本を「使って」様々な体験ができるインタラクティブな絵本の方が、子供が本に苦手意識を持ち始めた時には良いようです。さらに「読み聞かせ」においても、単純に親が読んで子供が聞くだけでなく、親子の対話を誘発するような仕掛けがされた絵本が数多くあります。今回は、受動的にただ読むだけでなく、能動的に楽しめるインタラクティブな絵本をご紹介しましょう。どこで何がしたい? 「親子の対話」を引き出す絵本Haunted House に続いて義母から送られた本書、You Choose もその一冊です。見開きに様々な絵があります。「どんな家?」と書かれたページには、様々な家が。「何が食べたい?」のページには、いろいろな料理が。文章は驚くほど短く、カラフルなイラストがぎっしりつまっています。単に読み聞かせるのでなく、むしろ、子供が指をさしながら「これがいいよ、だって……だから」と、話をすることが主眼の絵本です。日本語版は出ていませんが、使われている英語は単純なものですから、家庭で子供と一緒に指さしながら、日本語で話してみても楽しいかもしれません。ナンセンスな組み合わせが面白い!上下に分かれた絵本こちら、Ketchup on your Corn Flakes も英語の絵本です。先ほどと同じイラストレーターが挿絵を担当しています。絵本は実は上半分と下半分に分かれていて、「○○に△△はいかが?」というパターンを踏んでいきます。「コーンフレークスに牛乳はいかが?」でしたら普通の文ですよね。ところが、「コーンフレークスにケチャップはいかが?」「レモネードに歯磨き粉はいかが?」というようなナンセンスな文と挿絵が出来上がってしまうのが、この絵本の面白いところです。4歳ぐらいの頃、上の子がお腹を抱えて笑い転げていたことを覚えています。これもまた、一人でパラパラめくっては笑っているのを何度か見ることになりました。使われている英語は非常に簡単なものですし、絵がほとんどですから、日本語で読んでも面白いかもしれません。子供にも役目がある! 参加型の読み聞かせ絵本下の2冊は「読み聞かせ」に特化した本です。けれども、ただの読み聞かせではありません。子供が反応して返事をすることが組み込まれているのです。本書『ハトにうんてんさせないで』(Don’t Let the Pigeon Drive the Bus!)は2003年に、アメリカで出版された優れた絵本に与えられるコールデコット賞の次点となり、コールデコットオナー賞を受賞しています。最初のページをめくると、バスの運転手さんが、ちょっと車を離れるから見ててね、と読み手に頼みます。そして言うのです。ハトに運転をさせないでね、と。次のページからハトが出てきて、読み手に「お願いだから運転させて」と頼みます。あの手この手でおねだりをしてくるハトに、「ダメ!」「絶対ダメ!」と言うのが子供の役目。ささやかな仕掛けですが、これは盛り上がります。普段「ゲームはだめですよ」「甘いものはダメですよ」などと色々なことを禁止されている子供にとっては、あの手この手で(それこそ小さな子供のようなロジックで)バスを運転したがるハトに「ダメ!」と言うこと自体が、とても楽しいようなのです。将来、絵のない本を読む下準備として最適な絵本『えがないえほん』(The Book With No Pictures)は、日本でも20万部を突破した、大人気絵本です。個人的には、子供がより真面目な、「文字ばかりの本」をいつか手に取るときのために、これ以上に素晴らしい下準備はないと思っています。何度か下の子供の小学校にボランティアで読み聞かせにもいきました。有名なアンデルセンの物語と同じ題名ですが、内容は全く違います。『ハトにうんてんさせないで』同様、子供がダメ出しをするのが楽しい、読み聞かせ用の一冊です。文字通り、絵の全くない絵本で、絵がない本なんて真面目でつまらなそうに見えるでしょう?という問いかけから始まります。でもね、本っていうのは、書いてあることは全部読まなくちゃいけないものなんだ……。実はこれは、大人が普段だったら出さないような馬鹿げた音を出したり、馬鹿げたことを言ったりするのを子供が大喜びで聞く、という趣旨の絵本なのです。途中に何度か「ねえ、もう読むのをやめていい?」と尋ねなければならない箇所があります。「だめー!」と大声で答える子供たちの嬉しそうなこと。この本をある年のクリスマスにプレゼントされて以来、しばらく息子に「どれを読んであげようか」と聞くたびに、本書をリクエストされて、苦笑したものでした。著者が実際に子供の前で読み聞かせをしている動画もあります。子供たちの食いつきの良さにきっと目を見張るはずです。実は読み聞かせるのはなかなか疲れる本なのですが、この経験が「絵のない本」への子供の抵抗感を減らしてくれるのであれば、万々歳です。インタラクティブな絵本は、普段本好きでない子も虜にしてくれる本の面白さや楽しさを多角的に子供に紹介する、こうしたインタラクティブな絵本は、普段だったらそれほど本に興味を示さない子供たちの心をも鷲掴みにしてくれます。子供たちがこうした本を愛するのはほんの数年間のことですが、ゲームや動画といった競合メディアが多い現在の子供たちの間で、インタラクティブな本が非常に愛されていることに、ホッとすると同時に嬉しくもなるのです。(参考)Jan Pienkowski, Haunted House, (Walker Books, 2005)ジャン・ピエンコフスキー 著, でんでんむし 訳(2005),『おばけやしき』, 大日本絵画.Pippa Goodhart, Nick Sharratt, You Choose, (Puffin, 2018)Nick Sharratt, Ketchup on Your Cornflakes?, (Scholastic., 2006)Mo Willems, Don’t Let the Pigeon Drive the Bus!, (Disney Book Group, 2003)モー・ウィレムズ 著, 中川 ひろたか 訳(2005),『ハトにうんてんさせないで。』, ソニーマガジンズ.B. J. Novak, The Book With No Pictures, (Puffin, 2016)B・J・ノヴァク 著, 大友剛 訳(2017),『えがないえほん』, 早川書房.
2019年06月28日中学生の発達障害当事者が綴る、心の様子ー『発達障害な私の頭の中。』著者は軽度の自閉症やHSPで、うつ病や不登校も経験している中学3年生です。物事の捉え方や苦手なもの、自分の心の状態や経験談などが自らの言葉で綴られているほか、過去のエピソードを家族とともにどのように乗り越えてきたのかが母との対談によって記されています。味方となって接してくれる周囲の人々への感謝なども綴られており、繊細であたたかい著者の心の様子があらわれています。普通とは何か、いじめをなくすにはどうしたら良いのかなどの答えを出すのが難しいテーマについても、これまで乗り越えてきたことや自己分析を踏まえながら丁寧に考え、綴っています。発達障害やうつ病でつらい思いをしているお子さまに接する大人も、自分自身やクラスの友だちとの関係で悩む子どもも、読むと新しい視点が得られそうです。物語をかくことが好き、という著者。物語の短編集のように、著者の心の様子が詰まった一冊です。生きるのがしんどい...そう感じる環境にいる子どもたちへー『生きる冒険地図』この本は、さまざまな理由で頼れる大人が周りにおらず、「生きるのがシンドイ」と感じている子どもたちのために描かれたものです。手書きの文字とイラストで構成されており、必要なときに必要なページだけ開けばいい、まさに生きるための地図のように使える一冊です。著者は心の不調や発達に凸凹のある親とその家族、子どもたちを応援する活動を行うNPO法人に所属しています。誰かに悲しい言葉をかけられたらどうしたらいい?怖いと感じたときはどうしたらいい?学校生活でピンチのときは...?など、子どもが一人で抱え込んでしまいそうなさまざまな場面について、対処法が柔らかいイラストとともに描かれています。描かれる対処方法はどれもとても具体的ですが、ときには肩の力を抜いて考えられるようなものも。保護者の精神障害や家族の不和で悩む子どもにはもちろん、自分で自分を守りながら生きていくという観点では、今が息苦しいと感じている多くの子どもたちにとってヒントになる情報が詰まっています。心理発達相談に特化した、相談支援のガイドブック『発達が気になる幼児の親面接』子どもたちが特性に合わせた適切な支援を受けるため、またその家族の生活を支えるためにも、心理発達相談は非常に重要です。本書は、相談支援の中でも子どもの心理発達相談支援に焦点を当て、そのポイントをまとめた支援者向けのガイドブックです。子どもたちを取り巻く環境について適切にアセスメントするために重要な保護者のタイプにあわせた面接の進め方や、保育園・幼稚園をはじめとする他機関との連携の際に心がけたい点などがまとめられています。また具体的に子どもの発達に関する相談支援の事例も複数紹介されており、アセスメントや相談支援にあたってのポイントを実践の中でのどう生かしたのかを実例から知ることができます。心理発達相談は、子どもの発達についての正確な理解や家族やきょうだい児への支援、関係機関連携等、幅広い知識を総合して行われます。日頃心理発達相談に関わる人もこれから関わりたいと思っている人も、支援者として必要な技量や考慮すべき観点などを確認する際に活用したい一冊です。パソコンやゲームが大好きなお子さまに!はじめてでも大丈夫『使って遊べる!Scratchおもしろプログラミングレシピ (ぼうけんキッズ)』機械やパソコン、ゲームが好きなお子さまの世界を広げられる、Scratchの入門書が発売されました。Scratchは、マサチューセッツ工科大学のメディアラボ・ライフロングインダーガーテングループの運営するプロジェクトで、無償で利用できるオンラインのプログラミング環境です。本書ではScratchのアカウントを作るところから説明が始まり、「手づくりメッセージカード」「みんなで使える伝言メモ」「Scratch福笑い」など使える、遊べるプログラミングレシピが15作品紹介されています。実際の画面の図に合わせて手順が書かれているので、初めてプログラミングを体験するお子さまや、パソコンがちょっと苦手で教えられるか心配...という親御さまも一緒に取り組むことができます。全編ふりがな付きなので、お子さまが自分で読み進めることもできるかもしれません。夏休みも近づき、まとまった時間で好きなことに思いっきり取り組ませてあげたい!そう考えるご家族も多いのではないかと思います。お子さまがパソコンやゲームが好きなら、親子で一緒にプログラミングに取り組んでみてはいかがでしょうか。
2019年06月07日私は物心が付いたころから、母親からのきょうだい間の対応の差を感じていました。私はずっと「私は親からきょうだい差別を受けている」と思っていました。でも、大人になってからは「あれは、区別だったのかも」と思うことも。しかしどちらにしても、私にとってはつらい経験でした。 幼いころから感じていた「差」私は幼いころから、私と弟に対する母の対応に差を感じていました。例えば、おもちゃ。おもちゃ箱の中には、弟のプラレールやトーマスのおもちゃがたくさん詰まっていました。でも、私のおもちゃはないのです。弟のおもちゃで遊んだ記憶はあるのですが、自分のおもちゃで遊んだ記憶はありません。 私に向けられたものは、本棚に立てられた幼児教育の教科書だけでした。写真を見ても、これは私の記憶違いではなさそうでした。 弟は褒められるのに、私は…少し成長してからは、「弟は褒めてもらえるのに、私は褒めてもらえない」と思うことが多くありました。 例えば、学校のテスト。私が90点台を取ると、「どうしてこんな問題を間違えたの!? ちゃんと勉強しなかったからでしょ!」と怒られました。一方、弟が50点台を取ると、「ここも、ここも、できたね! 頑張って勉強したからだね! すごいね!」とやさしく褒められていました。それを見た私は大ショックです。私のほうが良い点数なのに、なぜ私は怒られるのか。なぜ弟は褒められるのか。 とてもつらかったことを覚えています。 母は私のことが嫌いなのだと思ったなぜ母は「きょうだい差別」をするのか。幼い私が考え出した答えは、「ママは私のことが嫌いだから」でした。「ママは弟のほうが好きなんだ」「私はいらない子なんだ」そんなことを考えると、つらくて悲しくてたまりませんでした。 しかし、今になって考えると、あれは「差別」ではなく「区別」だったのではないかと思うこともあります。母は私に「あなたは何でもひとりで、じょうずにできた。でも弟は何をやらせても遅いし、下手だった」と言っていたことがあるからです。 平等に接してほしかったもしかしたら母は、こう考えたのかもしれません。「姉には遊びより教育を与えたい。弟には教育より遊びを与えたい」「もし50点で良いと姉を褒めたら、姉がそれで良いと勘違いして怠けてしまうかもしれない。逆に、90点を取れないからと弟を叱るのは、弟には酷だ」 確かにその子の個性、その子の個性に合わせた対応をすることは大切なことです。しかし子どもの私にとって、それはとてもつらい出来事だったことに変わりはありません。 私も親となった今、子どもへの接し方の難しさがわかるようになりました。でもやはり、あからさまにきょうだい間の対応を変えることは、子どもの心を傷付けることに繋がると感じています。 子どもの個性に合わせた対応をした結果、傷つく可能性があるくらいなら、みんな同じように接してあげたいと感じます。私は現在第二子妊娠中です。第二子が生まれたあとは、自分のつらかった経験を思い出し、どちらも「差別されている」と感じないよう、平等に接してあげたいと思っています。著者:丸川朋一女の母。出産を機に仕事を退職。子育てのかたわら、妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆中。現在第二子妊娠中。
2019年05月09日人生において、忘れられない出会いというのは、人に対してだけでなく、映画や本にも言えるもの。そこで今回ご紹介するオススメの映画は、本によって人生が変わったひとりの女性を描いた感動作です。それは……。素朴さと美しさの詰まった『マイ・ブックショップ』!【映画、ときどき私】 vol. 219戦争で夫を亡くしたフローレンス。長年悲しみに沈んでいたが、夫との夢であった書店を小さな海辺の町に開くことを決意する。しかし、町の有力者であるガマート夫人による邪魔が入り、フローレンスは頭を悩ませることに。そんななか、ようやくオープンの日を迎えて幸せをかみしめていると、フローレンスのもとへ町で唯一の読書家で40年以上引きこもっている老紳士のブランディッシュ氏から注文の手紙が届くのだった。書店も軌道に乗るかと思われていたが、ついにガマート夫人の徹底攻撃が始まろうとしていた……。本作は2018年のスペイン・ゴヤ賞で作品賞をはじめ、監督賞や脚色賞を受賞し、高い評価を得ていますが、今回はこちらの方に見どころなどについてお話を伺ってきました。それは……。スペインが誇る女性監督のイザベル・コイシェ監督!これまでに、『死ぬまでにしたい10のこと』や『エレジー』、『しあわせへのまわり道』といった人気作を生み出してきたコイシェ監督。今回は、英ブッカー賞受賞作家でもあるペネロピ・フィッツジェラルドの小説『The Bookshop』の映画化に挑んでいます。そこで、原作への思いや読書の大切さについて語ってもらいました。―まずは原作との出会いから教えてください。監督10年前にたまたまロンドンの古本屋さんで見つけたの。もともと私は本を読むことも本屋さんに行くことも大好きだから、「ブックショップ」と付くタイトルなら、私が買わなきゃと思って手に取ったのよ。まさに、本が私を見つけてくれた感じだったわ。―ネットで本を買うのが主流のいまでは味わえない運命的な出会いだったんですね。監督そうね、本屋さんで本を買うというのは冒険でもあるのよ。だから、私はネットで本を買うのが大嫌いなの(笑)。なかでも必要ないのは、「これに興味がある人は、ほかにもこんなものを読んでいます」という表示。いまの世の中がアルゴリズムで動いているのはわかっているけれど、私にはまったく関係ないことだわ。本を読むことで得られるものとは?―確かに、本屋さんでしか味わえないことが失われつつありますが、そういう意味ではいまの活字離れに関しても危機的なものをお感じになっていますか?監督危機でもあるけれど、非常に愚かな状況でもあると感じているわ。だって、本を読むということは、自分のなかにある建設的な批評家精神を養う方法でもあり、世界の見方を教えてくれるものなのよ。だからこそ、私にとっても本はとても重要な存在であり続けているし、ときには孤独や愚かさというものに対する薬の役割も果たしてくれていると思うわ。―本への強い情熱を感じますが、監督がこれまでに影響を受けた作家や本はありますか?監督まず日本の作家だと、川端康成、大江健三郎、村上春樹、村上龍、小川洋子、吉本ばななかしら。あとは、ヴィクトル・ユーゴー、トルストイ、パトリック・モディアーノ、ホルヘ・ルイス・ボルヘス、フリオ・コルタサル。とにかくたくさんいるわね。読書の魔法というのは、他人の人生に触れられること。そして、それが自分の人生の一部となり、新しい “声” を持っている人と繋がりを持てるところが魅力的なのよ。だから、読書が好きじゃない人はかわいそうだと感じているくらい。―では、原作者であるペネロピ・フィッツジェラルドの魅力はどんなところですか?監督彼女はすごく変わった経歴を持っていて、60歳になってからはじめて作品が出版された人。しかも、3人の子どもと病気の夫と船でイギリスのテムズ川に暮らしていたんだけれど、船が沈んでしまって、すべてを失ったこともあるようなつらい人生を送っていたの。本当に素晴らしい作家だから、もっと多くの人に知られて欲しいと思っているわ。フローレンスには深い繋がりを感じた―映画化するにあたって、意識されたことはありますか?監督今回はこの物語にある核の部分を忠実に描きたいという思いはあったわ。ただし、エンディングだけは原作よりも希望を持てるような形に変えることにしたの。なぜなら、いまの時代、映画で観客に希望を感じさせたいと思ったから。その部分に関しては、ご家族に許可をお願いしたわ。―主人公のフローレンスに対して、監督はこれまでにはない深い繋がりを感じているそうですが、その理由は?監督フローレンスは本当に性格がよくて、とてもイノセントな人間。でも、自分の行動によってどういう結果が引き起こされるかということをまったく自覚していないわよね。とはいえ、どんな逆境にあっても、どんな結果になっても、自分のやりたいことを形にしようと戦う人に私はとても敬意を持っているのよ。自分とは人生が違うかもしれないけれど、そういう姿に心を動かされるものがあり、小説を読んでいるときから、彼女と繋がりを感じていたわ。―ということは、監督自身もフローレンス同様に、やりたいことは貫くタイプですか?監督そう言えるわね。ただし、ときにはブランディッシュみたいにただ読書に没頭して、世界のことをまったく気にしないでいたい瞬間もあるわよ(笑)。でも、基本的にはフローレンスに近いんじゃないかしら。―そのフローレンスを演じたエミリー・モーティマーも素晴らしく、キャスティングも絶妙でしたが、決め手を教えてください。監督当初はプロデューサーが違う女優の名前を挙げてきたこともあるけれど、私のなかでは最初から「エミリーでいきたい」という強い思いがあったわ。それは彼女が英国らしい資質を持ち、知的であったから。そして、甘すぎない甘さを持ち合わせていて、さまざまな美徳がちょうどよく混ざり合っていることを感じさせてくれる人だったからよ。しかも、彼女はロシア文学の修士号も持っていて、本が彼女の人生の一部であるというのも大きかったわね。やっぱりこの役は本を心から愛している俳優じゃないとできなかったと思うわ。それに、私は人が本を手にしたときに、その人が読書家かそうではないかすぐにわかるのよ。人の顔と手からは読み取れるものがある―では、ブランディッシュ役の名優ビル・ナイについてはいかがですか?監督彼を選んだ理由は、はじめからこのキャラクターはビルの顔がぴったりだと思っていたし、彼の所作や彼のなかにある静の部分がすごく好きだったの。エミリーとビルはそれまで面識はなかったけれど、出会った瞬間から相性もよかったから、すごく美しいシーンが撮れたと自負しているわ。―監督は写真家としても活動されていて、俳優たちの表情をとらえている写真を「フェイス」と題した展覧会で発表されていましたが、ビルの顔に惹かれたように、人間の顔に興味を持つ理由はどのようなところですか?監督顔はとても魅力的なものよね。だから、「私にとって人の顔というのは風景であり、森であり、庭である」といつも言っているの。あと、同じく興味があるのは、人の手。人がどんなことを考えているのかとか、どんな人なのか、というのは表情や手から読み取れることができるわよね。だから、映画のなかでも重要なのは、顔のアップや表情。美しいロケーションで撮影しようが、何もないところで撮影しようが、顔の表情で伝えられることのほうが大きいものだから。―今回は映像もとても美しかったですが、衣装や美術の色使いでこだわったところはありますか?監督色みや質感については、かなりリサーチを重ねて作っていったわ。特に色彩設計は、物語やフローレンスの心情に合わせて変化していくように意識しているのよ。だから、衣装に関しても、フローレンスが何を感じているのかという心象風景をワードローブで表現してもらったわ。それから、本屋の建物についても空き家を使って自分たちで全部作り込みをしていったものよ。あと、本棚に並べている本については、「ロリータ」を含め、いくつかは実は本物の初版なの。でも、俳優たちが手にしているものは、全部複製。なぜなら、小道具として彼らが扱うには貴重すぎるものだったから(笑)。事前に仕事相手をきちんと選ぶことが大事―各スタッフとの見事な連携によって生み出された部分が大きかったと思いますが、とはいえご自身もフローレンスのように周りからの協力を得られないような経験もありましたか?監督私は事前に仕事する相手をきちんと選んでいるから、現場で大変な思いをすることはないわね。だから、私が映画学校で講義をするときに学生に言っているのは、「どんなものを作ろうと思っても構わないけれど、一緒にコラボレーションする相手だけは慎重に選びなさい」ということ。私が仕事相手を選ぶうえで大切にしているのは、人柄の良さ、才能があって仕事ができること、そしてユーモアがあるかどうかということかしら。あと、自分よりも専門的な知識があることも重要ね。そういう人たちと一緒に仕事をするには、もちろんそれだけ自分にも強さが必要にはなるけれど、私にとっては楽なものなのよ。温かい感動が胸に広がる!人はつねにあらゆる選択をしながら生きていくものですが、フローレンスの勇敢な姿に女性としての強さや自分らしく生きるとは何かを感じさせられるはず。そして、活字離れをしているようならば、人としてさらなる輝きを増すためにも、この機会に本を読むことの大切さも味わってみては?心に届く予告編はこちら!作品情報『マイ・ブックショップ』3月9日(土)よりシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMA他にて全国順次ロードショー配給:ココロヲ・動かす・映画社© 2017 Green Films AIE, Diagonal Televisió SLU, A Contracorriente Films SL, Zephyr Films The Bookshop Ltd.
2019年03月07日兄弟姉妹のいる家庭では、子ども同士それぞれに秘めた思いがあるものです。「お姉ちゃん(お兄ちゃん)はいいのに、どうして自分はダメなの?」「長女(長男)だからって、どうして自分ばっかり我慢しなきゃいけないの?」といった言葉が、子どもの口から出てくることもあるでしょう。ママのなかには「もしかしたら私の接し方が、きょうだい差別を感じさせているのかも…」と不安になる人もいるでしょう。今回は、子どもたちにきょうだい差別を感じさせないための声がけ法について考えてみたいと思います。■ドキッとする子どもの言葉「きょうだい差別を感じさせているかも…」兄弟姉妹がいると「愛情に偏りが出ないよう気をつけている」というお母さんも少なくありませんよね。ただ、以下のような言葉を子どもが口にしたら、「不平等な扱いをしたつもりはないのに…」と不安になってしまうこともあるでしょう。・「お姉ちゃんばっかりひいきして、ズルい!」・「なんでお兄ちゃんはいいのに、私はダメなの?」・「弟なんていらない!」・「妹になりたい」子どもは、親の何気ない言葉を聞き逃さず、「ほかのきょうだいと自分は扱いが違うのだ」と敏感に感じることがあります。例えば、こんな言葉を子どもにかけたとしましょう。「お姉ちゃんはかわいいからモデルになれるかもね。あなたはパパに似たけど…」容姿について、直接的な優劣をつける言葉ではないので、ママに悪気はなかったのかもしれません。しかし、姉妹を持つ母としては少々デリカシーのない言葉といえるでしょう。こう言葉をかけられた子はどんな気持ちを抱くのでしょうか。言われた側は、容姿の優劣はもちろん「私よりママはお姉ちゃんが好きなんだ」という感情を抱くでしょう。何気なく放ったひと言でも、子どもは敏感にきょうだい差別を感じ取ります。そんな出来事が過去になかったでしょうか? 先に紹介した言葉を子どもが口にするようなら、ママ自身の言葉かけが間違っていたのかもしれません。■親子の「感情のズレ」あって当たり前と自覚するあるママは「お姉ちゃんは髪を結んだほうがかわいいけど、下の子はおろしたほうがかわいい」と思い、下の子の髪は結ばなかったそうです。親は良かれと思ってしたことでしたが、下の子はそのとき「私も結んでほしいのに、どうして?」と悲しい気持ちを抱いていたそう。このような感情のズレから、子どもに悲しみや寂しさを感じさせてしまうこともあります。また、きょうだいがいるママのなかには「長女だから我慢ばかりさせられた」「いつもお姉ちゃんばかりほめられた」といったきょうだい差別を感じて育った人もいるでしょう。その場合、「自分が長女でたくさん我慢してきた」と思っている人は、長子に対して甘くなってしまう傾向があります。また、「兄(姉)ばかりほめられた」という気持ちを抱いたことのある人は、無意識のうちに長子をほめることにブレーキをかけてしまうケースも。そんなあなたの態度に対して何も言わないからといって、子どもに不満がないわけではありません。かつての自分がそうであったように、子どもは何も言わず我慢をためています。ですから、「自分の子ども時代の感情を満たすために付き合わせてごめんね」と自覚し、反省することもときには必要です。きょうだい差別を感じさせてしまうのは、こうした親と子の感情の行き違いが引き金になっているケースも多いようです。■子どもの不満別、きょうだい差別をはねのける3つの方法わが子がきょうだい差別を感じているようなメッセージを発したら、どのような対応をすればよいのでしょうか。今からできることは「子どもの気持ちに意識を向け、望むとおりにする」ことです。わが子の言葉から何を不満に感じているかを読みとり、子どもの要望にこたえてあげるのです。それが、不満解消の近道となるでしょう。子どもの不満別に、以下のような声がけ、働きかけを試してみてください。【生まれ順についての不満】例:「お姉ちゃん(お兄ちゃん)になりたい!」「弟(妹)になりたい!」上の子になりたい、下の子になりたいと言うなら、まずは子どもがそう思う理由を探してみます。たいていは上の子だけにしがちなこと、下の子だけにしがちなことが原因のようです。例えば、「お姉ちゃんみたいになりたい!」と言うときは、上の子にしていることをそっくりそのまましてあげます。同じ髪形にしてあげたり、同じ洋服を買ってあげたり、同じ習いごとをさせてあげるのも良いでしょう。また、我慢することが多い上の子に「お姉ちゃん(お兄ちゃん)が欲しかった」と言われたら、我慢させることを一切やめ、思いきり甘えさせてはいかがでしょうか。【性差についての不満】例:「お兄ちゃんみたいに、男の子っぽい服が着たい!」妹が兄の服装やいで立ちを好み「自分も同じようにしたい」というときは「女の子なのに…」と考えず、好きなようにさせてあげます。黒い色を基調としたコーディネート、トレーナーにズボンなどのカジュアルな服装も満足するまで着させてあげます。また弟が「お姉ちゃんみたいな人形遊びがしたい」といったときも「男の子のくせに」とは言わず、まずはやらせてあげましょう。【外見を含めた個性についての不満】例:「お姉ちゃんみたいにかわいくないから」「弟みたいにできないから」もし、わが子がほかのきょうだいほど評価されていない、比べられて低く見られていると感じたら、「あなたはかわいい」「あなたはできる」と何度も口にしましょう。周囲から評価されなくても、ママさえ認めていれば、子どもがきょうだい差別を感じる度合いは薄まります。また、例えば上の子が「お兄ちゃんは足が速いからリレーが楽しみね」などと周囲から期待されていたとします。それを聞いた下の子が「お兄ちゃんばかりほめられる」と感じているようなら、「あなたの運動会も楽しみだね」「早く応援したいな~」と声がけをしてみましょう。そうすることで「ママは僕のことも気にかけてくれている」という気持ちが生まれ、きょうだい差別を意識しにくくなるはずです。「子どもの要求を何でも聞くわけにはいかない」と感じるママもいるでしょう。でも、ときには子どもがやりたいということを「うのみ」にし、思いっきりやらせてあげることも大切です。子どものやりたい気持ちは一時的な場合が多く、やってみたらどんなものかが分かり、満足して気がすむことがほとんどです。大切なことは、子どもの言葉を認めること、実際に一度経験させることだと思います。
2019年03月07日「本選びのプロ」がとっておきの情報を教えてくれる連載『まなびの本棚』第3回です。寒さが本格的になり、子どもたちも家にこもる時間が増えてきたのではないでしょうか。家で過ごす時間が増えたら読書を習慣づけるチャンスです!これまで時間がなくて読めなかった本や、時間があるときに読もうと思っていた少し難しい本に挑戦することで、子どもが自分自身と向き合うきっかけになります。この連載では、日販図書館選書センターで選ばれた本のランキング、そして選書のプロ・コンシェルジュによるコラムをご紹介します。きっと子どもの本選びのお役に立つはずです。選書センターについて、詳しくはこちらをお読みください→図書館司書や教育関係者が足繁く通う『日販図書館選書センター』って知ってる?2018年人気図書ランキング1位鳥獣戯画を読みとく五味文彦 監修岩崎書店2位学校プールのヤゴのなぞ星輝行少年写真新聞社3位失敗図鑑いろは出版編著いろは出版4位鉱物・宝石のひみつ松原聰岩崎書店5位辞書びきえほんもののはじまり陰山英男ひかりのくに(※2018年4月1日~11月30日累計)近ごろは空前の図鑑ブームですが、中でも3位にランクインした『失敗図鑑』は、立派な偉人たちの失敗を知ることで元気と勇気をもらえると評判です。しかも、ココ・シャネルやベーブ・ルース、徳川慶喜といった歴史上の人物だけではなく、いきものや発明品にまつわる失敗など、計320個ものさまざまなエピソードがつまっているので、読み応えも抜群!子どもが壁にぶつかったとき、失敗をして落ち込んだとき、親御さんからの励ましの言葉にプラスして、この図鑑をめくってみましょう。きっと「この失敗は成功するために必要なんだ!」と前に進む力になるはずです。コンシェルコラム"本選びのプロ"選書センターコンシェルジュのおすすめの本あの有名な物語が裁判のテーマに。視点を変えると昔話の印象がガラリと変わる!非現実的な昔話を法律の観点から読み解く……というこれまでにない斬新なテーマで、子どもたちだけではなく大人たちの間でも話題になったNHK Eテレの番組『昔話法廷』。今回は、この番組を本にしたシリーズの第2弾をご紹介します。たとえば『3匹のこぶた』では、オオカミは最後に鍋で煮込まれてしまいますよね。しかしこの法廷では、それは子ぶたたちの計画的犯行ではないかと疑われてしまうのです。果たして子ぶたたちは殺人罪に問われてしまうのか?それとも正当防衛で無罪になるのか?視点の面白さもさることながら、「なぜオオカミが入るほどの鍋があったのか」という鋭い指摘に、これまでまったく意識せずに読んでいた昔話の中に潜んでいる「謎」や「気づき」がどんどん明らかになっていきます。「もしかして……」と、大人でも考えさせられる内容なので、親子で一緒に読んだあとに意見を出し合ってみてもいいかもしれませんね。子どもたちが裁判員裁判について考えるきっかけになる図書としてもおすすめです。『昔話法廷 Season2』オカモト 國ヒコ金の星社
2018年12月29日きょうだいの多い親としての悩みの種は「きょうだいゲンカ」。きょうだいだからこそケンカすることもありますね。友達とはケンカなんてめったにしないわが子たちも、家ではきょうだいという甘えもあって小さなケンカは絶えません。特に小さい時期やケガをしそうなときは、親が仲裁や注意をしていますが、最近のわが家では、親は話は聞くけれど「ノータッチ」をベースに対応しています。きょうだいケンカの仲裁は、年齢や年齢差にもよるので、わが家の場合のうまくいった対応を紹介します。3歳までの対応…落ち着くまで引き離す3歳までのきょうだいケンカはモノの取り合いが圧倒的に多かったのですが、そんな時に有効だったのが「気をそらす」こと。3歳以下同士の場合、落ち着くまで引き離すのが一番。どちらに味方することなく、まさしく「仲裁」ということで、「まぁまぁ、まぁまぁ、落ち着いて」と間に入ってなだめることが多いです。結果、子どももその方が安心するようです。幼稚園児時期の対応…状況の確認と解説幼稚園時期の子どもの場合、「状況を確認して、解説する」ようにしました。まずは子どもの話を聞きますが、うまく伝えられないことの方が多いです。細かいことは置いておいて、状況をざっくり把握したら、「こうだったんだね」と状況を確認し、その上で「相手は痛いんだよ、相手はほしいんだよ、相手はこうだと思うんだよ」と相手の思いを説明するようにしています。3歳以下と幼児の場合は、上の子にお兄さん、お姉さんとしての対応をお願いしてみることも多いです。まだ、下の子は幼稚園にも入れないくらい小さい子なんだということを説明します。幼児同士の場合も、年長と年少の場合は、下の子はまだ「幼稚園に入ったばかりの〇〇組さんなんだよ。〇〇組さんのほかのお友達だったら、そういうことしていいのかな」と「年齢差」があるということを特に上の子に自覚してもらうようにお願いしてみます。その時は納得できなくても、あとで「〇〇(下の子)ちゃんはまだ小さいもんね!」と思いやりの言葉や態度につながることもありますよ。小学生時期の対応…本人たちに任せる小学生になれば、わが家の場合「ノータッチ」が基本です。話は聞いて「アドバイスはする」けれど、仲裁や親の判断を告げるようなことはほぼありません。といっても、言い合いが多いので、「うるさい」と伝えることはありますが。幼児と小学生の場合は、幼稚園時代と同様、上の子に下の子はまだ小さいのだということを認識してもらいます。また、小学生同士の場合は学年は違っても「本人たちに任せる」ようにしています。それは、小学生になればすでにお互いに学年の違いを認識しているということに加えて、私自身が上の子で「お姉ちゃんだから我慢しなさい、お姉ちゃんが悪い!」とケンカは上の子が折れるべきという親の対応で傷ついてきた経験もあるからです。小さい時は差が激しく、上の子に譲歩してもらわないと仕方がないことも多くあります。だからこそ、下の子が小学生になったなら、両成敗もしくは、どっちの味方もせず、本人にお任せを貫いています。こうすることで、今のところ上の子は「いつも自分ばかり叱られている感」は持っていないようです。年の差による対応の違い1歳差の場合は対等な対応になることも多いでしょうが、2‐3歳差の場合、この子は下なんだという意識を持ってもらうことで、上の子にお兄さん、お姉さんな対応を「お願い」してみることが多いです。4‐5歳差の場合は、未就園児と小学生ほどに離れているので、やっぱり上の子を「諭す」ことになります。6歳以上の年の差の場合になると、ケンカというより「モノを取られて返してくれない」「いたずらされた」という上の子の被害の訴えが多くなります。わが家では、あらかじめ、きちんと下の子が届かないところに自分が管理するべき・配慮するべきと教えていますので、上の子への注意となります。もちろん下の子にも、「ダメなこと」として教えますよ。きょうだいケンカへの親の介入は、後々に子どもの心にわだかまりを残すようなこともあると思うので、わが家では必要最低限にしています。ママ友同士できょうだいゲンカについて話してみると、いろいろとナイスな対応を聞くことができるかもしれませんね。<文・写真:フリーランス記者小柳結生>
2018年12月15日「本選びのプロ」がとっておきの情報を教えてくれる連載『まなびの本棚』第2回です。長かった夏も終わり、すっかり秋も深まってきました。食欲の秋、スポーツの秋、そしてなんといっても読書の秋!みなさんはどんな本を読んでいますか?読書欲が高まるこの時期に、ぜひたくさんの本を読みたいですね。この連載では、日販図書館選書センターで選ばれた本のランキング、そして選書のプロ・コンシェルジュによるコラムをご紹介します。きっと子どもの本選びのお役に立つはずです。選書センターについて、詳しくはこちらをご覧ください→図書館司書や教育関係者が足繁く通う『日販図書館選書センター』って知ってる?今月の人気図書ランキング1位ギネス世界記録2019クレイグ・グレンディ角川アスキー総合研2位鳥獣戯画を読みとく五味文彦 監修岩崎書店3位虫のしわざ探偵団新開孝少年写真新聞社4位鉱物・宝石のひみつ松原聰岩崎書店5位車いすの図鑑高橋儀平金の星社(※このランキングは2018年10月に集計したものです)2位は先月に続き『鳥獣戯画を読みとく』がランクイン。「日本最古の漫画」とも称される鳥獣戯画は、知れば知るほど奥深く、不思議な絵巻です。3位の『虫のしわざ探偵団』は、自然の中で見かける変なモノ=「虫のしわざ」の謎を解き明かすユニークな設定を、たっぷりの写真とわかりやすい解説で紹介しています。コンシェルコラム"本選びのプロ"選書センターコンシェルジュのおすすめの本ひみつの計画の果てにある恐怖子どもの心に刻まれる平和の意味今回は選書センターの常設フェア「YA」の棚から、2018年上半期ランキング絵本部門第10位に選ばれた注目の翻訳絵本をご紹介します。砂漠の小さな町の学校が閉鎖され、跡地に建てられた研究所。アメリカ政府によって、優秀な科学者たちが秘密の発明を完成させるために集められます。タイトルとキレイな絵から、ワクワクするようなストーリーが想像できますが、読み進めるうちに、何やら不穏な空気に胸がザワザワ。そして、最後に訪れる恐怖。絵も文章もない、真っ黒な見開きページで物語は終わります。この“計画”が、この“秘密”が何だったのか明らかになったとき、みなさんは何を思うのでしょうか。大人も子どもも、著者・訳者のあとがきまで読んで考えてもらいたい一冊です。『この計画はひみつです』ジョナ・ウィンター 文/ジャネット・ウィンター 絵さくま ゆみこ 訳鈴木出版
2018年11月24日子どもへの絵本の読み聞かせ、していますか?「小さいころに比べて、読む本の数が減ってしまった」というママもいるかもしれませんね。しかし数をこなすことよりも、子どもと絵本を一緒に分かち合う「いっしょ読み」の姿勢が大切なのだそうです。絵本との付き合い方を、「いっしょ読み」の視点から探っていきましょう。お話を聞いたのは:秋田喜代美さん東京大学大学院教育学研究科教授。教育心理学・発達心理学専攻。発達心理の観点から、子どもと絵本の関わりについてさまざまな研究を行っている。『絵本で子育て』(岩崎書店、共著)など、著書多数。「いっしょ読み」とは絵本の本来の役割を表した言葉「子どもに絵本を読んでも、最後まで集中して聞いてくれない」「途中で『これなぁに?』と質問されると、話が脱線してしまう」。ママたちからはこうした悩みをよく聞きます。「読み聞かせ」という言葉のイメージから、「しっかり読んで聞かせなきゃ」と思うのでしょう。でも、本来絵本の役割は「聞かせる」ことではなく、絵や言葉、世界観を「一緒に分かち合う」ことにあります。図書館司書など読み聞かせに携わる人の中には「絵本を読むとき、ママの視線の7割は子どもの表情に注いでほしい。話を追うのは残りの3割でいい」と言う人もいます。幼児期はどうしても「やめなさい」という禁止の言葉と、「やりなさい」という要請の言葉が多くなりがち。でも絵本を読む時は、「◯◯ちゃんも、この絵本に出てくるくまさんみたいにブランコが大好きだよね」と話したり、笑い合ったり、うなずき合ったりする時間が自然と増えます。親子で同じものに目線を向けて楽しめるという役割に注目し、本来の絵本との向き合い方を表現したのが「いっしょ読み」という言葉なのです。あんふぁん読者アンケートからQ.お子さんは絵本をどのように読んでいますか?(複数回答)Q.読み聞かせをしているかたにお聞きします。どのくらいの頻度で読み聞かせをしていますか?アンケート実施期間:2018年7月4日~8月8日、有効回答数1228人「いっしょ読み」の体験が子どもの一生を支えてくれる読者アンケートでは8割以上の人が「親が読み聞かせをしている」と答えていますね。たいへん素晴らしい回答率です。一方、少し気になるのは、年齢が上がるにつれて一緒に絵本を読む頻度が減っていること。幼児が一人で読むと、字を追うのに集中してお話の世界を想像する余裕がなくなります。小学校低学年くらいまでは親と読む時間を大切にしましょう。幼児期から中学生の時期までの間に「忘れられない絵本」との出合いがある人は、大人になっても読書好きだという調査もあります。いっしょ読みの体験は、その子の一生を支えるのです。もう一つ大切にしてほしいのは、最後まで通して読むことにこだわり過ぎないこと。「子どもが絵に気を取られて話に集中してくれない」という悩みをよく聞きますが、そもそも「絵に言葉がついている」のが絵本。小説の挿絵とは違います。子どもの興味が絵に向かっているなら、その世界を丁寧に味わって。学びに向かう力も「いっしょ読み」の中で育まれる絵本を通して育まれる、代表的な力を紹介しましょう。■01.語彙力同じ「ピンク」でも、「薄桃色」「桜色」など多様な表現に出合うことで、物に対しての認識も深まります。■02.想像力挑戦や葛藤、友達とのけんかや仲直りのシーンを通じて、相手の気持ちを想像できます。■03.体験を秩序立てて語る力過去の出来事やその時の自分の気持ちの語り方は、絵本を通して自然と身に付きます。ただし、これらの力を身に付けさせようとして無理強いしたのでは意味がありません。まずは絵本の時間を楽しいものにすること。親子が安心して寄り添う空間の中で、学びの力も育まれていくのです。「いっしょ読み」に大切な3カ条1. 子どもの表情を見るのが7割、話を追うのが3割2. 小学校低学年まではいっしょ読みをする3. 最後まで通して読むことよりも子どもの興味を大切にするうまくいかない!こんなときどうする?絵本のいっしょ読みQ&Aあんふぁん読者に「読み聞かせで悩んでいること」をアンケートで聞いたところ、ママたちの愛情と、熱意のほどが感じられる回答が集まりました。その中でも、特に多かったお悩みに秋田さんが答えます。Q.子どもに読み聞かせるとき抑揚をつけるのが苦手です。登場人物の個性が出るように声色で特徴を出したり、臨場感を出したりしたいけど、どうもニガテ…。(北海道・年長ママ)A.あまりオーバーだと逆効果の場合もありますママ自身は淡々と読んでいるつもりでも、自然と抑揚はついているもの。たとえ淡々とした語り口でも想像力を広げられる力が子どもにとっては大切ですし、オーバーに抑揚をつけ過ぎると想像の世界を邪魔してしまう場合も。抑揚を気にするよりも、お子さんの表情を見てからページをめくることや、言葉のリズムをかみしめながら読むことを大切にしてほしいと思います。Q.きょうだいで好みの本や読むスピードが合いません。お兄ちゃんのレベルに合わせると妹が飽きて邪魔が入り、妹に合わせるとお兄ちゃんが退屈してしまいます。(千葉県・年中ママ)A.上の子には読む係のお手伝いをさせても1日おきに交代でもいいので、どちらかの好みに偏るのではなく、それぞれに合った絵本を読んでください。下の子に読んであげるときは、上の子に読んでもらってもいいですね。「さすがお兄ちゃん、すごいねぇ」と労いの一言も忘れずに。パパにお願いできるなら分担して読んでもらいましょう。子どもと遊ぶのが苦手というパパにこそ、絵本は「読むだけ」なのでおすすめです。Q.そもそも絵本に興味がなく途中で集中が切れてしまいます。4歳ごろまでは絵本が大好きだったのに、最近はまるで興味なし。どうすればまた興味を持ってもらえる?(大阪府・年長ママ)A.焦らなくて大丈夫。そのうち絵本に興味が出ますもしかするとママの選ぶ本とお子さんの好きな本が違うのかもしれないので、試しに図書館でお子さんに絵本を選ばせてみてもいいですね。絵本そのものに興味がない子もいますが、焦らなくて大丈夫。例えば虫の好きなお子さんなら、飼い方や生態について知りたいと思えば自然と絵本を手に取るでしょう。好きな遊びに打ち込むことが、絵本とのいい出合いができる近道です。Q.何回も同じ話を読まされます。違う話に変えた方がいい?1冊につき3回は繰り返し読んでいます。親としてはいろいろなジャンルの本に触れてほしいのですが…。(東京都・年少ママ)A.読んでもらった数だけ物語との出合いがあります同じ話でも子どもは毎回違うところに興味を向けているので、できればその気持ちを大事にしてほしいですね。ママの方が「もう勘弁して!」というときは、パパやおじいちゃん、おばあちゃんに読み手をお願いしてはどうでしょうか。パパはアクションを付けながら読む、おじいちゃんはゆっくりしたテンポで読むなど、読み手の数だけバリエーションが増えるのも絵本の魅力です。お友達への「おすすめ体験」も子どもにとっての宝物に私の知っているある園では、ひとりずつ自分の好きな本を家から持ってくるという取り組みをしています。読み聞かせの時間、先生が「今日は◯◯くんがおすすめしてくれた絵本を読みます」と言って、みんなの前で読んでくれるのです。自分の本が読み上げられた子はとてもうれしそう。自分の好きな絵本の世界をお友達と分かち合うという経験は、子どもたちの体験をさらに豊かにしてくれると思います。読者おすすめの絵本も紹介年齢別 絵本選びのコツどんな絵本を選べば良いかは、読書経験やその子の興味にも左右されますが、基本的な年齢別の絵本選びのコツを秋田さんに聞きました。読者から挙がった「わが子が大好きな絵本」も参考にしてくださいね。年少【繰り返しが多い】 【あまり長くない】 【生活習慣がテーマ】物語の先を予測できるようになるので、同じ展開が繰り返される話がおすすめ。また、食事や着替えなどの身近なテーマの話も楽しめます。読者の人気No1: しろくまちゃんのほっとけーき(こぐま社)ホットケーキを作る12工程がイラストに。「ぷつぷつ」「ふくふく」など言葉のリズムも楽しめます。ほかにもこんな本が人気!●くれよんのくろくん(童心社)●ねられん ねられん かぼちゃのこ(福音館書店)●だるまさんが(ブロンズ新社)●ねずみくんのチョッキ(ポプラ社)年中【起承転結がある】 【ファンタジーもの】 【昔話】文字に興味を持つ子も増える年齢。起承転結のある長めの話も楽しめます。物語があまり好きではない子は、科学がテーマの絵本や図鑑を選んでみて。読者の人気No1:ぜったいに おしちゃダメ?(サンクチュアリ出版)絶対に押しちゃダメなボタン。つい誘惑に負けて押してみると…?何度でも繰り返し読みたくなる絵本です。ほかにもこんな本が人気!●はじめてのおつかい(福音館書店)●はらぺこあおむし(偕成社)●バムとケロシリーズ(文溪堂)●パンダ銭湯(絵本館)年長【シリーズもの】 【少し字が多い話】 【科学的なテーマ】シリーズものや、複数の話が収録された昔話がおすすめ。ただし、あまり字が多い本を選び過ぎず、絵本の世界をたっぷり楽しんでください。読者の人気No1:おしりたんてい(ポプラ社)子どもの心をぐっとつかむ、おしりたんていのビジュアル。物語があまり好きではない子でも、きっと最後まで読み終えるはず。ほかにもこんな本が人気!●100かいだてのいえ(偕成社)●かいけつゾロリシリーズ(ポプラ社)●ノラネコぐんだんシリーズ(白泉社)●ミッケ!シリーズ(小学館)illustrationSHIBATA Keiko
2018年11月08日発達障害のある子と定型発達の子の子育ては、天と地ほどの差がある私は息子が生まれてすぐに、発達障害のある子どもと定型発達の子どもの子育てには天と地ほどの差があると知りました。・抱っこしても海老反りせず身を任せてくる・発語のない0歳の時でもこちらの言っていることは解っている・長時間泣かない・外出時、自ら手を握ってくる定型発達の子どもを育てている親御さんには当たり前のことでも、1人目の子どもが発達障害だった私にはすべてが新鮮でした。そして「世間一般の人が体験する子どもの夜泣きや迷子、発語の遅さはこの程度なのか。何て楽なんだろう」と感じたものでした。まだ小さいのに、気遣いができるなんて!息子にとって「お姉ちゃん」は生まれたときから「傍にいて当たり前」の存在でした。小さいころはゲームの取り合いなどで喧嘩もよくしましたが、自分より知識があり色々なことを教えてくれる姉を尊敬していました。息子が小学校に上がったころからでしょうか、娘が近くに来ると、それまで私の横に座っていた息子が遠い席に移動するようになりました。後で理由を聞くと、「僕とお母さんが仲良くしているとお姉ちゃんが寂しく思っちゃうから」と言いました。小学校低学年なのにそんな気遣いをするものなのかと、驚いたものです。息子8歳、高校生の娘は反抗期真っ盛り娘が高校生だったころ、何を言っても全否定!という時期がありました。いつものように、私と娘がバトルをしていたときのこと。息子が険悪な母娘の横で、お笑い番組をつけたのです。Upload By 荒木まち子息子がテレビをつけたことで、娘は気持ちの転換ができ、落ち着いたのでした。息子に話を聞くと…Upload By 荒木まち子息子10歳、深刻そうな顔をして…息子が深刻そうな顔をして、話しかけてきました。息子「今日、学校で友達が『障害者ってウザいよね』って言ったんだ。その言葉がすごく嫌だったんだけど、俺そのとき、黙っちゃったんだ」私「そうなんだ」息子「ムキになって『そんなことない』って言うのもどうかと思ってさ。でも友達のその言葉が心に突き刺さってホント嫌な気持ちになったんだ」私「うん、その気持ち分かるよ」息子「…お姉ちゃんってさ、障害あるんだよね?検査とかしてるの?」私「発達検査のこと?しているよ」息子「してたんだ。診断名は何?」私「自閉症だよ」息子「ふうん、自閉症か。俺、実は本とかで調べたんだ。いつからそうなの?」私「生まれたときからだよ。小さいころから周りの子と違うと感じてたんだ」息子「へぇ、お母さんは分かってたんだ?俺、ずっと気づかなかったよ。何が原因なの?」私「脳の伝達機能の問題らしいけど、まだはっきりとは解明されていないんだよ」息子は娘が病院に通っていることを知っていましたし、私が娘と進路や将来のことなどを話すのを聞いていました。でも生まれてからずっと一緒に暮らしてきた彼は・計算は苦手だけど絵が得意・本が好きで色々なことを知っている・泣いたり怒ったりもするけど、一緒に笑ったり冗談を言い合える・不器用だけどサボらず真面目・寂しがり屋で優しいという“個性”を持つ姉として彼女を受け入れていました。成長するにつれ、姉が自分や周りの友達と違うことに気づき始めた息子は、内緒で図書館やネットで姉の症状について調べたのでしょう。思春期の入り口に立った息子に私は息子の話を聞き彼の気持ちを受け止めます。質問に答えます。でも私は娘に関することについて「息子にはこうして欲しい」などの要望は言わないようにしています。なので、この日私は息子に「5、6年になると、そういうこと口にする子もいるよね」「それってどうなんだろうね」とだけ言いました。初めての発達障害児の子育ては分からない事ばかりです。それは、きょうだい児の子育ても同じです。私がしていることが正しいのかは分かりません。先日私は会話の中で息子にあるヒントを出しました。「私が『障害者の親の会』に参加しているのは知ってるでしょ?そこで私は経験した人にしか分からない悩みや情報を共有したり、笑い話をしたりして元気をもらっているんだ。世の中には他にも『認知症の親を持つ子の会』とか『がんの当事者会』とかいろいろな会があるんだけど『きょうだい児の会』っていうのもあるんだよ」障害がある子の親がそうであるように、きょうだい児にはきょうだい児にしか分からない悩みや苦労があるはず。苦しくなったり、壁にぶち当たったり、一人で抱え込めなくなったとき。そこに足を運べばきっと気持ちが楽になる、そんな場所があるんだよ、と。これから本格的な思春期を迎える息子の悩みが少しでも軽くなれば良いな、という願いを込めて。
2018年10月19日「発達障害の子に手がかかって、きょうだいに我慢を強いているのではないか?」「障害のあるなしに関わらず、きょうだいで平等に扱わなければいけないのに、それができてない」など。発達障害児と健常児のきょうだいを持つお母さんで、健常児のきょうだいとの関係に悩んでいるお話を時々耳に挟みます。発達障害児の子育てでは、発達障害児とお母さんにスポットが当たることが多いのですが、最も近しい存在である、発達障害児のきょうだいはどう感じているのか? また、きょうだいへの対応はどうしたらいいのか?きょうだい児(=病気や障害を持った子のきょうだいのこと)について考えるべく、法人マーブル代表・国沢真弓さんにお話をうかがいました。国沢さんは、健常児の娘と自閉症の息子、2人のお子さんのお母さんでもあり、ご自身の経験やさまざまな相談事例をもとにお話してくださいました。■発達障害児よりも難しい?「きょうだい児の対応」――今回は、発達障害児への対応法ではなく、発達障害児をきょうだいに持つ、きょうだい児の対応法についてお伺いしたいと思います。国沢真弓さん(以下、国沢さん):発達障害児については、その子の特性がわかれば、ある程度、接し方のコツを学ぶこともできるのですが、きょうだい児の場合はそう簡単にはいきません。きょうだい児のタイプ、発達障害児のタイプ、きょうだい児の性別・順序・年齢差・人数、友人関係、両親の性格、家庭環境などで対応もガラリと変わるので、むしろ、発達障害児への対応よりも難しさがあるかもしれません。どんなお子さんにも効く「魔法の杖」のような回答はないという前提で、私の経験や相談事例などをもとにお話させていただければと思います。――本当、その通りだと思います。ただ、それでも、きょうだい児について共通に浮かび上がってくる課題のようなものがあるようにも感じます。例えば、私の周囲では「発達障害児に手がかかり、きょうだい児に我慢を強いてしまっているのでは?」と、お母さんがきょうだい児に罪悪感を持ってしまうことが多いように感じています。国沢さん:そのように感じてしまうお母さんは多いと思います。こういうお悩みは、きっと専門家に相談すると、「きょうだい児とだけの時間を持つようにしてください」とか「きょうだい児に『あなたのこともちゃんと見ているよ』というメッセージをしっかり伝えてください」などとアドバイスをされると思います。もちろん、そのアドバイスは正しいですし、私も同じように思います。ただ、お母さんの立場を考えると、少し心配な思いもあります。――心配な思いというのは?国沢さん:お母さんの課題がどんどん山積みになってしまうという点です。発達障害児の子育てだけでも、専門家などから「こうした方が良い」という課題で日々大変なのに、きょうだい児の子育てまで専門家からアドバイスをもらうことで、山積みの課題を前に疲れ果ててしまう…。「そうした方が良い」と頭ではわかっていても、お母さんも一日24時間しかない。これは私も経験ずみなのでよくわかるのですが(苦笑)、「あれもやらなくちゃ、これもやらなくちゃ」と奮闘し過ぎて、燃え尽きてしまうお母さんも少なくないのです。――確かに、日々の忙しい暮らしの中で、専門家のアドバイスを忠実に実践していくのはなかなか簡単ではありませんよね。国沢さん:たとえ時間が取れなくても、「あなたの〇〇なところがすごい良いと思うよ」とか「いつも〇〇してくれてありがとう。すごく助かっているよ」などと、きょうだい児の存在意義や感謝の気持ちを言葉や態度で伝えることだけでもずいぶん違ってくると思います。また、「ママが時間とれたらどこに行きたい?」と、きょうだい児の希望を3つくらい聞いて書きとめておき、時間がある時に実践するのもおすすめです。この時、書きとめておく姿をきょうだい児に見せることがポイント。お母さんは聞き流さず、ちゃんと気にしていることが伝わると思います。そして、お母さんの「時間」と「気力」と「経済面」などがすべてOKになった時に、「ずっと待たせてごめんね! 今日この3つの中で〇〇だったら行けるかも!」と誘ってみてはどうでしょう?――課題の山に追いたてられるのではなく、「時間がある時に実践する」くらいのゆるさが必要ということですね?国沢さん:きょうだい児のケアはもちろん必要ですが、お母さんが余裕のないなか無理して時間を取ると、敏感なきょうだい児は「お母さん、本当に楽しんでいるのかな?」「休みたいんじゃないのかな?」と気にしてしまう子もいるようです。きょうだい児のケアと同じく、お母さん自身も「自分の時間」をとって、自分をケアし、ねぎらってあげることも必要です。そして、そのことに罪悪感を持たないこと! 頑張っている自分にご褒美をあげるつもりでいいと思いますよ(笑)。また、最初は難しいかもしれませんが、障害がわかってから何年か経っていくと、専門家や周囲のアドバイスのいいとこ取りができるようになり、自然ときょうだい児との時間も取りやすくなってくると思います。そして、きょうだい児もいろいろな意味で成長して、また違った関係性になっていくのだと思います。■きょうだいの発達障害「友だちにからかわれた」親はどうする?――国沢さんは自閉症の息子さんの5歳上に健常のお姉さん(現在は成人)がいますが、お姉さんが子どもの頃はどんな風に感じていたのでしょう?国沢さん:今回、きょうだい児の取材を受けるうえで、娘の意見も聞いてみました。娘によると、そもそも「きょうだい児に我慢させている」なんて思わないでほしいとのこと。そう思われるのは、自分の存在が負担になっているようでイヤだと言われました。――お母さんが罪悪感を持つこと自体が、子どもにとって負担になるということですね?国沢さん:娘が8歳の頃、よその人から「お姉ちゃんは弟君に障害があって大変だね。お姉ちゃんはいっぱい我慢していてえらいね」と言われたことがあります。その時、娘は「我慢しているとか、そういう言い方はしないでください。私はかわいそうな子じゃないから」と言って、相手をドン引きさせたことがあります(汗)。きっと、相手は親切心から言ってくださったのだと思いますが、娘にとって、こういった言われ方は、自分が哀れに思われているようで、イヤだったそうです。――頼もしいですね(笑)。そんなしっかり者のお姉ちゃんでも、つらかった時はあったのでしょうか?国沢さん:娘が子どもの頃、一番つらかったのは、弟がパニックになっている時だったそうです。お父さんとお母さんが弟のパニックをおさめるために集中していて、周囲の人が冷たい目で見ているのに、自分はなにもできずに傍観者となっている時。成長して、一緒に弟のパニックを抑える側になってからは、楽になったと言っていました。ちなみに、娘の方が息子のパニックを収めるのは、私より上手かもしれません(笑)。社会人になった娘は今、「弟のおかげで、私はリスク管理能力が半端ないほど身についた」と自負していましたよ。強い…(笑)。――自分が協力者側になってから、つらい思いがなくなったのですね?国沢さん:きょうだい児について、たくさんの相談を受けてきた中で感じたことがあります。きょうだい児には、私の娘と同様、気持ちが強いタイプと、ナイーブなタイプと、2パターンあるということです。ナイーブなお子さんの場合、例えば、発達障害児のきょうだいのことを、お友だちにからかわれたことがきっかけになり、学校に行きづらくなったり…。あるいは、「お母さんに甘えたい」という思いを伝えられず悩んでいたことが、あとでわかる…といった相談もよく聞きます。――発達障害児のきょうだいのことをお友だちにからかわれてしまった時などは、親はどう対処したらいいのでしょう?国沢さん:娘も、学校でお友だちに弟のことをからかわれて、泣いて帰ってきたことがあります。入学式のシーンとした状況で、弟が大きな声で歌ってしまって、お友だちから「おまえの弟うるさかった」と言われてしまって。私の場合は、その日の夕方、娘の担任の先生にお話しに行きました。先生への伝え方で気をつけたのは、まず、お友だちが言ったことは事実なので、その子を責めるつもりではないということ。ただ、セレモニーなどで緊張すると大きな声を出してしまう子がいるということ、また、たとえ事実だとしても指摘されるときょうだい児は悲しく思うこともある、ということをわかってもらえたら…と伝えました。――わが子を守るためと思うと、親はついヒートアップしてしまいがちですが、非常に冷静であたたかい対応ですね。国沢さん:余談ですが、娘が泣いたのは、言い返せなかった自分に腹が立ったからだそうです。その後も、同じ学校の支援学級にいる弟のことで、時々からかわれることがあったようですが、たくましく言い返していましたよ(笑)。――頼もしいですね(笑)。でも、お姉ちゃんのように言い返すことができない子はどうしたらいいのでしょう?国沢さん:ひとつの方法として、「きょうだい児の会(きょうだい児を支援するための団体)」に参加してみることをおすすめします。同じような立場のきょうだい児と出会って話をすることで、なんらかの解決法が見えてくるかもしれません。「自分だけじゃない」と孤立感を減らしたり、「自分の気持ちを素直に言っていいんだ」と思えるようになったり、そういった経験の中で「感情表現」のスキルを磨いたり、日常生活の工夫を学んだり…そうしているうちにプクプクと浮上してくる子もいます。また、障害児がいると普段は行きにくいようなアミューズメントパークなどに連れて行ってもらうなど、きょうだい児の体験不足を補う活動をしているところもあります。■発達障害児のこと「きょうだい児になんと説明したらいい?」――きょうだい児が小学生くらいになると、自分のきょうだい(発達障害児)について疑問に思うことも出てくると思うのですが、親はどう説明したらいいのでしょう?国沢さん:わが家には子ども向けの専門書もたくさんあったのですが、そういった学説が文字で書かれたものより、娘は、『光とともに…』(自閉症児の育児を描いた漫画。全15巻。戸部けいこ著/秋田書店)という漫画が一番わかりやすかったと言っていました。ヒカル君という人物像や日常生活での困りごと、パニック時の突飛な行動、お父さんとお母さんの苦労、周囲の人たちの言動など、発達障害の特徴を抽出して説明するような専門書と違い、発達障害児を取り巻く生活全般がつかめて、すごくわかりやすかったみたいです。また、小さい頃は、発達障害児の苦手な部分だけではなく、得意な部分とセットで伝えていくと、悪いイメージだけに引っ張られないと思います。ついでに、「あなたもここは得意だけど、ここはちょっと苦手だよね」などと、みんな同じように凸凹があるということを認識してもらう。そして、「その困りごとを少なくするために、今、療育で練習しているんだよ」と、なにもしてないわけではないことも伝えると、「お母さんも、〇〇も頑張っているんだな」と感じてもらえると思います。――程度の差はあれど、誰もが凹凸を抱えていることは知っておいてほしいですね。国沢さん:きょうだいに発達障害児がいるのは、大変なことも多いかもしれません。ですが、娘を見ていると、大変なことだけではなく、良い面もあると感じています。きょうだい児は親よりずっと小さい頃から、発達障害児と一緒に育ちます。きっと親以上に、多様な「価値観」や「対処の力」が育まれるでしょう。また、障害にとらわれずに人を見ることができたり、自分のきょうだいだけでなく、ほかの障害を持つ人たちにも寛容な心が育ったり…。それは「効率」や「生産性」ばかりが優先されがちの今の世の中で、とても大切なことだと思います。わが家にも、国沢さんと同じきょうだい構成の、きょうだい児がいます。娘が成長していく中で、弟の障害をどう受け止め、自分との関係を整理し対応していくか、そして困難をプラスに変えていける心を育てるために、親として家族として何ができるか、模索し続けたいと思います。国沢真弓さん プロフィールフリーアナウンサー、自閉症スペクトラム支援士、一般社団法人 「発達障がいファミリーサポートMarble」 代表理事<役職>ペアレント・メンター、三鷹市相談支援事業「ママサロン」相談員 、三鷹市知的障害者相談員、三鷹市発達障害児親の会「モンブランの会」会長、社会福祉法人「清陽会」評議員、社会福祉法人「みたか福祉会」評議員、児童発達支援施設「すこっぷ」家族支援アドバイザー、「三鷹市教育支援推進委員会」委員、「三鷹市社会福祉協議会」地域支援部会長。<経歴>都立新宿高校、聖心女子大学文学部歴史社会学科を卒業。富士通株式会社を3年勤務後、アナウンサーに転向。NHKテレビ「きょうの料理」「婦人百科」等の進行を約10年務めたほか、多数のテレビ・ラジオ番組に出演。海外特派員、番組企画構成も担当。ナレーション・司会は各500回以上務め、厚生労働省主催「世界自閉症啓発デイシンポジウム」の総合司会を毎春担当。「3歳までの子育ての裏ワザ」「こんな時どうする?子どもの友達・親同士」(PHP出版)など共著多数。<現在の活動>一般社団法人「発達障がいファミリーサポートMarble」代表理事として、「発達障害」や「伝える力UP」といったテーマでの講演を、全国で行っている。また、「ペアレントメンター」として保護者や支援者の相談に応じるほか、障害児の家族が気軽に参加できるイベントやお喋り会の開催等を行い、家族の元気を応援している。(詳しくはホームページをご覧ください)。取材・文/まちとこ出版社N
2018年10月02日