【音楽通信】第125回目に登場するのは、数々のドラマやアニメの主題歌を担当し、あらゆるパフォーマンススタイルで日本だけでなく海外でもライブ活動を行っている伊江島出身のシンガーソングライター、Anly(アンリィ)さん!ロックが好きな父の隣で歌やギターに親しむ【音楽通信】vol.125沖縄本島からフェリーで約30分、北西に浮かぶ人口約4,000人という、風光明媚な伊江島出身のシンガーソングライター、Anlyさん。英語と日本語で綴られる歌詞や、さまざまなジャンルの音を楽曲の随所に感じさせるミックスサウンドが特徴。ループペダルを駆使したライブ、バンド編成ライブ、アコースティックギターでの弾き語りなど、イベントや会場にあわせてパフォーマンススタイルを変え、日本国内だけでなく、香港、台湾、ドイツなど海外でもライブを行っています。2017年リリースのテレビ東京系アニメ『NARUTO-ナルト- 疾風伝』の主題歌「カラノココロ」は現在、ストリーミングで4,000万再生を超える異例のヒットを記録。以降も数々のタイアップ作品があるなかで、人気アニメの主題歌もリリースされ、アニメファンからも高い支持を得ています。そんなAnlyさんが、2022年10月12日にニューアルバム『QUARTER(クォーター)』をリリースされたということで、お話をうかがいました。――幼少時に音楽にふれたきっかけから教えてください。わたしは沖縄県の離島の伊江島出身で、小さい頃から、父が夕暮れになると家の縁側に座って、夕ご飯になるまでギターを弾く時間がありました。その時間に父の隣に座って、歌を歌ったり、ギターを弾いたり。音楽の一番古い記憶はそこですね。その4、5歳ぐらいのときから、ギターをおもちゃがわりに遊んで弾いていました。――お父さまは音楽がお好きだったんですね?そうですね、父は60年代や70年代のロックが好きで、母は民謡が好きで。いろいろな音楽が家で流れている環境でした。父はプロではありませんが、趣味でときどき友人たちとバンドをやって、ライブ活動もしていましたね。――ギターもお父さまから教わったのでしょうか。ギターに関しては、いくつかコードを教わったあとに、父と一緒に弾くよりは自分で好きな曲をひたすら聴いて「コードは何を弾いているのかな?」と耳コピしていました。――では、音楽の道を志したのはいつ頃になりますか。小さい頃から歌うことは好きでしたね。職業として歌手やシンガーソングライターを意識し始めたのは、中学校2年生のときです。歌手になるにはどうしたらいいのかと、それであれば自分で曲も作れたほうがいいということで、まず歌詞を書き溜めて。ノートの端々に思いついたことを書いて、そのノートがいっぱいになるまでやっていました。伊江島にいるときは、カバー曲を歌って、知り合いのライブに参加することも。自分のオリジナル曲を歌い出したのは、高校2年生のときです。最初に書いた曲は「虹」という曲で、「EMERGENCY」(2016年発売)というシングルのカップリングに入っています。この曲が、中学時代からノートに書き溜めていた歌詞をあわせて完成させた曲ですね。――2015年にメジャーデビューされてからは、日本以外にも香港、台湾、ドイツなど海外でもライブを行っていますね。ずっと海外でライブをしてみたいと思っていました。最近は、ループペダルというエフェクトを使いながら演奏するスタイルが多いので、その場で音楽を作っていく工程が海外の方も楽しんでくれている様子が、とくに台湾に行ったときに感じられて。2018年には、アジア各国を代表して選出された新人アーティストが競って、パフォーマンスをする大会「香港アジア・ポップミュージックフェスティバル」に出演し、優勝させていただきました。よりいっそう、また海外にもライブへ行きたいと思いましたね。――海外のライブは日本とは違う感じもありますか。盛り上がり方が、日本より一段階高めといいますか。歌を聴いても言葉はわからないことも多いと思うんです。でも、グルーヴやリズム感、メロディで楽しんでくださっているというシンプルなところを体感できますね。――そういった海外活動を経て、デビューから変わった点、変わらなかった点はありますか。変わった点で言うと、沖縄から上京してきて、東京を拠点に活動しているので、制作している楽曲が作り方も生まれ方も変わってきましたね。東京に来てからはスピード感のある楽曲も作れるようになりましたし、言葉がたくさん詰まったような、メロラップのような楽曲も増えました。変わらない点は、最近、伊江島のなまりが戻ってきました(笑)。ちょこちょこ自分のなかで、伊江島のなまりは好きなところで、「伊江島の人ということは変わってないな」って。コロナ禍で、前よりも両親と電話をすることが多くなったからだと思いますが、それは自分自身でもうれしかったです。あたためていた曲も収録した4thアルバム――2022年10月12日に、4枚目のアルバム『QUARTER』をリリースされました。いつ頃からか制作していたのですか。今年、4月から7月にかけて47都道府県をまわるツアーをやっていたので、それが終わってから追い込みで仕上げていきました。でもけっこう、数年前からできていた曲もあって、あたためていた曲を仕上げていったという感じですね。――タイトルの意味はなんでしょうか。『QUARTER』というタイトルは、わたしが日本とアメリカのクォーターというところ、25歳というところ、100歳まで生きるとして4分の1を過ごしたというところという複数の意味があって。さらにアルファベットでクォーターの「Q」は、最近キーアイテムにしているふうせんの形に似ていて、そういったいろいろな理由から、このタイトルをつけました。――ハードな印象の曲からゆったりと聴かせる曲まで、多彩な楽曲が収録されていますが、5曲目「Angel voice」はAnlyさんのシルキーボイスが堪能できるバラードですね。わたしの楽曲をよくアレンジしてくれているアリーザというアレンジャーさんが、ロサンゼルスにいて。コロナ禍が始まるよりだいぶ前に、L.A.に行ったときに、わたしが元ネタを持っていってアレンジしてもらうのではなく、一緒にアリーザと「曲を作ろう」となってできた楽曲です。その後、NHK『見たことのない文化財』(BS8K)のテーマ曲を書き下ろすことになって、歌詞を書き上げました。――9曲目「VOLTAGE」は、テレビ東京系アニメ『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』(テレビ東京系 毎週日曜 午後5:30)の1月クールのエンディングテーマでしたし、10曲目「カラノココロ – Matt Cab & MATZ Remix」は、2017年発売の『NARUTO-ナルト-疾風伝』オープニングテーマのリミックスと、NARUTOシリーズとご縁がありますね。今回収録している「カラノココロ」は、5年前にリリースした楽曲をリミックスしています。『NARUTO-ナルト-疾風伝』のオープニング曲として書き下ろした後、主人公ナルトの息子ボルトが主人公になった『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』のために、「ボルトとVOLTAGEって言葉が似てる」ところから始まって、ボルトたちのキャラクターたちに向けての応援歌として、アニメの世界観にあわせて書き下ろしました。それまでは自分の生活にあるものを曲に組み込みたい、という気持ちが強かったのですが、「VOLTAGE」は真正面からアニメのためだけに書き下ろして、作っていくうちに自分にもどんどん曲がなじんできました。自然に「わかるな、この気持ち」「この言葉、元気出るな」って。良い作り方だったんじゃないかなと思っています。――アニメといえば、アルバムのラストを飾る13曲目「星瞬〜Star Wink〜」は、歌もストリングスも優しく染みる楽曲で、2021年公開のアニメ映画『夏目友人帳 石起こしと怪しき来訪者』の主題歌でしたね。夏目友人帳の世界観に向けて書いたところもあるのですが、2021年にシングルとしてもリリースしていた曲で、でも「星瞬〜Star Wink〜」はもともとあった楽曲なんです。沖縄で楽曲制作をしているすきまに散歩に行ったら、飛行機雲が空にあって、そこから歌詞が降りてきて。「あ、歌詞できそう。歌ができそう」と思い、「空には君の足跡」というワードが頭に浮かんで、そのまま歌詞を書きました。――6曲目「Homesick」は切ない恋心を歌った曲ですし、7曲目「KAKKOII」はリアルな心情のような歌詞が面白く、それぞれ曲調も異なり聴き手を楽しませてくれる印象です。いつも曲作りはどのようにしているのですか。先ほどお話ししたように降りてくるときもあれば、自分でトラックメイキングをして、「これすごく良いな、メロディつけておこう」とつけて置いておくこともあります。でも結果的には、自然に作ったものから曲を組み立てていくことが多いですね。――2022年10月から12月まで全国をまわるアルバムツアー「Anly “Loop Around the World”〜Track4/QUARTER TOUR〜」を開催されます。どのようなステージになりそうでしょうか。今回、ループペダルを使って、全国をまわっていくスタイルになります。ステージ上でギターを叩いた音とか、コーラスを録音してリピート再生させながら、それにあわせて曲を演奏する“ループペダルセット”として披露しています。だから、アルバムに収録している音源とは、またちょっと違ったアレンジでお届けすることになるかなあと。初めてライブに来る方は、「あの曲がこんなふうになるんだ」と、最初はもしかしたらびっくりするかもしれないですが(笑)。逆にそれは楽しみにもなってくると思うので、わたしもそういう気持ちでループペダルセットをやって“純度100パーセントAnly”というライブになっています。一緒に音楽を作っていく空間を楽しんでもらえたらうれしいですね。目標は故郷の伊江島で音楽フェスを開催すること――普段、日課になっていることやハマっているものがあれば教えてください。最近は、チョコレートプラネットさんとか、レインボーさんとか、お笑い芸人さんのYouTubeをよく観ます。発想豊かな人たちのものを観るのが好きで、日常で見過ごしているこういう人いるねとか、普通の言葉をゲームにできるんだという発明ぽいものを観ることができるので、よく観ていますね。――お気に入りのコスメやメイクがあれば教えてください。わたしの肌に合うんだろうなと、気づいたら『ケイト』のコスメばかり使っています。血色が良く見えるので、アイシャドウやチークは、オレンジ系にすることが多いですね。スキンケアは『イソップ(Aesop)』のスクラブ洗顔やクレンジングがお気に入りです。――食事やダイエットなど、美容面で気をつけていることはありますか。実は数年前まで、自分の体型を気にしすぎて、あまりご飯が食べられなくなったことがありました。その後、拒食からの過食になって。ご飯を食べること自体の意識をちょっと変えたんです。太るから食べないんじゃなくて、逆にいっぱい食べてみて感じたんですが、人間はそんなにすぐには太らないと知りました。それはわたしのなかで画期的な発見。ご飯を食べる量が、そこからは普通になったんですよ。おいしくご飯を食べたら、生活するうえでポジティブにもなるし、食べたいものを食べたいぶん食べることを肯定すると、いきすぎた量にならないんです。だから、いま体型を気にしすぎている女の子がいたら、心が苦しい気持ちがすごくよくわかるから、一緒にご飯を食べてあげたいって思います。好きなものを食べてほしいですし、体質にもよるかもしれませんが、「そんなすぐ太らないから大丈夫だよ」と女の子たちに言いたいですね。――では最後に、今後の抱負をお聞かせください。いままで通り、ジャンルにとらわれずに、自分の中で生まれた音楽をしっかりみなさんに届けられたらいいなと思っています。あとは、故郷の伊江島で、音楽フェスができたらいいなという目標があるので、これからも頑張ります。取材後記ドラマウォッチャーとして釘付けになって観ていたドラマの主題歌が、力強いボーカルとサウンドが印象的なAnlyさんのデビュー曲「太陽に笑え」でした。ananwebの取材では、音楽との出会いから今後の目標まで、いろいろなお気持ちを聞かせてくださいました。そんなAnlyさんの4枚目のアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみりAnly PROFILE1997年1月、沖縄県伊江島生まれ。2015年11月、シングル「太陽に笑え」でメジャーデビュー。以降、コンスタントに作品を発表し、国内だけではなく海外でもライブ活動を行う。2022年、初の47都道府県ツアー「Anly“いめんしょり”-Imensholy Tour 47- 」を完遂。10月12日、ニューアルバム『QUARTER』をリリース。10月から12月まで全国をまわるアルバムツアー「Anly“Loop Around the World”〜Track4/QUARTER TOUR〜」を開催。InformationNew Release『QUARTER』(収録曲)01.Alive02.Welcome to my island03.Do Do Do04.IDENTITY05.Angel voice06.Homesick07.KAKKOII08.CRAZY WORLD09.VOLTAGE10.カラノココロ – Matt Cab & MATZ Remix11.KOMOREBI12.Saturday Kiss13.星瞬〜Star Wink〜2022年10月12日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)SRCL-12265(CD)¥3,300(税込)(初回生産限定盤)SRCL-12263~4(CD+DVD)¥6,500(税込)【DVD収録内容】Anly “いめんしょり”〜Imensholy〜Tour 47 SECRET FINAL LIVE at 伊江島 (2022/7/10)Anly “いめんしょり”〜Imensholy〜Tour 47 -Behind the scenes-“Loop Around the World ~Track3~”東京公演 @渋谷 duo MUSIC EXCHANGE(2021/11/28)取材、文・かわむらあみり
2022年10月19日【音楽通信】第124回目に登場するのは、ボカロP「バルーン」としても活躍しながら、現在は自分の声で歌うシンガーソングライターとしても活動し、とくに若い世代から絶大な人気を誇る、須田景凪(すだけいな)さん!ドラムに魅せられたのちボーカロイドの世界へ【音楽通信】vol.1242013年から「バルーン」名義でボカロPとして活躍、代表曲「シャルル」はセルフカバーと合わせて1億4000万回の再生回数を記録、3年連続で10代カラオケランキング1位になるなど若い世代の方を中心に絶大なる支持を獲得するなか、2017年からは自身の声で歌う「須田景凪」として活動を開始された須田景凪さん。バルーンとしても、須田景凪としても、注目を集めているなか、2022年10月7日に公開のアニメーション映画『僕が愛したすべての君へ』の主題歌と挿入歌となる両A面シングル「雲を恋う(くもをこう)/落花流水(らっかりゅうすい)」を配信リリース。さらに、声優としてもゲスト参加されたということで、お話をうかがいました。――そもそも須田さんの音楽との出会いから教えてください。ずっと音楽が流れている家庭で育ちました。両親ともに洋楽をよく聴いていた気がします。小学生のときに、幼馴染みから「かっこいい人たちがいる」とポルノグラフィティさんの曲「アポロ」を聴かせてもらって、その存在を知って。当時、アニメ『鋼の錬金術師』(MBS・TBS系ほか 2003〜04年)をよく観ていたんですが、ポルノグラフィティさんがオープニング曲を担当していた「メリッサ」という曲があって、そこで「音楽ってめちゃくちゃかっこいいな」と感じました。その後、中学2年生のときに同じ幼馴染みから、ポルノグラフィティさんのライブDVDを観せてもらって。サポートのドラマーの方がめちゃくちゃかっこよくて、その影響で自分でもドラムを習うようになりました。ドラムって全身を使ってダイナミックに動くじゃないですか。そこにすごく惹かれて、自分で楽器をやるようになったのは、それが入り口です。中学2年生から、高校、大学と長くドラムをやっていましたね。――ドラムをされていたら、バンドを組みたいという方向にはいかなかったのでしょうか。高校1年生から、組んだバンドがあって。そのバンドで売れたいから音大に行くというぐらい、本気でやっていましたね。大学は音大に行きましたが、そのぐらいの熱量を持って、ずっとドラムをやっていました。――では作詞作曲はいつ頃から?大学2年生ぐらいからですね。先ほどお話ししたバンドは、自分と高校の先輩とのツーピースバンドで、先輩が曲を作っていました。その当時はまだ自分自身では作曲のイロハも何もわからないときだったので、「ここをもっとこうしたらかっこいいんじゃないか?」というアイデアをわからないなりに先輩に話していたのですが、先輩と後輩という上下関係もあって、作曲する人は全員こだわりがあるのでことごとくアイデアが通らなくて。そんな状態が2年ぐらい続いて、ふと、そのアイデアだけで何曲か作れるんじゃないか?と思ったんです。その当時、自分はニコニコ動画というプラットフォームでゲーム実況の動画をよく観ていて。だから、ボーカロイドの存在も、もちろん知っていました。ボーカロイドカルチャーにはいろんな方がいらっしゃいますが、1週間前に作曲を始めました、というような人もいて。間口がとても広い環境なんです。しかも、ボーカロイドだったら、自分の音楽におけるワガママを100パーセント歌ってくれるというところから、「ボカロを用いて作曲したい」と思うようになりました。その頃はドラムしかしたことがなく、コーラスさえもしたことがなかったので、そもそも歌うという選択肢がなかったんですよね。作曲と同時にギターやピアノも始めたんですが、鼻歌で歌いながら曲作りをしていくなかで、それを続けていくと歌うことも好きになって、いまにつながるという感じです。――もともと音楽の才能をお持ちだったんですね。才能というものをあまり信じていないんですが、もともと一人っ子ということもあって。昔から、一人遊びをするのが好きなんです。淡々とした作業を黙々とやるのが好きで、自然と没入していったんだと思います。――ボカロPのバルーン名義で発表された代表曲「シャルル」は大ヒットされましたが、活動においてターニングポイントになった曲ですよね。そうですね、あの曲があったから、その後いろいろな可能性が広がっていきました。それと同時に、良い意味でボーカロイドカルチャーも変わった、と言っていただけることもあるので、「シャルル」という曲を書くことができて良かったです。――2017年10月には、ご自身で歌う「須田景凪」での活動を開始されました。「バルーン」から「須田景凪」へ活動スタイルを切り替えたきっかけは何だったんでしょうか。「シャルル」のセルフカバーは多くの方に聴いていただいていますが、ほかのバルーン名義の曲も、実は以前からときどきセルフカバーをしていました。例えば「朝を呑む」という曲とか。歌いたいから歌ってみたら、考えていたよりも何十倍もの方々に聴いていただいて、ありがたかったと同時に、考えるようにもなって。自分のなかで、バルーンというボカロPの楽曲は、誰が歌ってもカッコいいものを目指しているんです。でも「シャルル」は、8割くらい、自分が歌うために書いた曲だったので、それだと伝え方も変わってくると思いました。最初に曲を作るときに、ボーカロイド名義で歌うもの、自分で歌う名義のもの、と分けるようにして。それを決めないと、自分自身が混乱してしまう時期があったから。もうひとつの理由は、これはあくまで自分個人の考えなんですけど「ボカロPとしてのバルーンという人間を好きでいてくれる方がいたとして、ずっと追っていったら気づくともう自分の肉声でしか歌わない時期が生まれたら、それはもうボカロPじゃないよね」と自分では思ってしまって。僕は同時にいろいろなことをするのが苦手なので。それならしっかり名義を分けたほうが自分的にもリスナーの方的にも健全なのかな、と思い名義を分けました。どちらの名義でも、「良いものを書く」ことは、変わらない。ただ、須田景凪としての活動のほうがよりいっそう、自分の気持ちをのせやすいものを書いています。アニメーション映画の主題歌と挿入歌を配信リリース――2022年10月7日に両A面シングル「雲を恋う/落花流水」を配信リリースされました。「雲を恋う」は、映画『僕が愛したすべての君へ』の主題歌のオファーをいただいてから、そのときは映画を作る前の段階だったので、原作の小説を読ませていただいてから書き下ろしました。その後、主題歌を書き終わってから、絵コンテを見せていただく機会があって。挿入歌となった「落花流水」も作らせていただきました。この“僕愛”と同時に公開される、もうひとつの映画『君を愛したひとりの僕へ』では、“僕愛”で主題歌だった「雲を恋う」が挿入歌になっています。――2曲とも映画にぴったりで、とても物語の世界観を大事に、曲を描かれていますね。“僕愛”と“君愛”のどちらの作品を読んだときも、どちらも「自分」という核が強くあったうえでその後のストーリーの展開が起きていて。あえて「雲を恋う」では一人称、完全に自分目線で、青く未熟なさまを書きたいという気持ちが強くありました。このタイトルは、ことわざの「籠鳥雲を恋う(ろうちょうくもをこう)」からきています。とらわれている存在が自由な境遇に憧れているさまという意味なんですが、映画の主人公が感情を吐露できないもどかしさとリンクする部分があり、そこからつけましたね。そして仮に同じ人と何百年一緒にいたとしても、100パーセントわかりあうことは絶対にできないと思っていて。あくまで、ひとりとひとり、という部分は変わらない。でも、深い関係になるほど、ふたりだけにしか伝わらない空気感、密度だけでしか成り立たないものが増えてくるので、そういう部分にフォーカスして書きました。――では、「落花流水」はどのように曲作りされましたか。「雲を恋う」が一人称だとしたら、「落花流水」は三人称、俯瞰で見ている曲です。曲調は、挿入歌を初めて担当させていただくので、「雲を恋う」のミディアムスローな曲調よりもちょっとギャップがあったほうがいいなというところから、ストレートなJ-ROCK、J-POPを目指してできあがりました。――今回、映画にはゲスト声優としても参加されたことのみが発表されていますが、須田さんのせりふがどこなのか、観ていて最後までわかりませんでした(笑)。ということは、作品に馴染んでいたんでしょうか…。そういう意味では良かったです(笑)、初めてアフレコをさせていただいて、めちゃくちゃ難しかったです。歌も演技的要素はあるとは思うのですが、声優さんは100パーセント演技なわけじゃないですか。そこを振り切ってやるのって、当たり前ですが、すごい作業だなあと思いました。あと、担当させていただいたのは、本当につぶやくようなひとことだけのせりふなんですが、実際につぶやくだけだと映画で観たときに何を言っているか聞こえないし…。その空気感を推し量るのも難しくて、新鮮な作業でした。アニメーションと合わせてしゃべる、というのもすごく難しかったですね。――須田さんのファンの方には歌以外にも、映画のどの場面で声優としての声が聴けるのか、探すのも楽しみのひとつになりますね。では続いて、今回のシングルのジャケ写についても、お聞かせください。以前から好きな映像作家のtoubou.さんに描いていただきました。今年の3月に、toubou.さんが自主制作で出された『さざなみの少女たち』という、声や音楽以外、すべておひとりで作られて完結されている作品があって。それがめちゃくちゃ素敵で、単純にいちファンとして観ていて、今回のお話をしたら快く引き受けてくださいました。――“僕愛”と“君愛”の映画のトークショーに、主人公の暦の声優をされた宮沢氷魚さんと、“君愛”の主題歌を担当したSaucy Dogさんとともにご出演されていましたね。ライブ以外で人前に出るというのは非常に珍しいのではないですか。そうなんですよ。基本的に人前に出るときは歌うときなので、まさかトークだけで出るなんて(笑)。――宮沢さんとはもともと面識はあったのですか。宮沢さんは、「昼想夜夢」という僕のワンマンライブに来てくださったことがあって、ご挨拶させていただいて。そのときはライブが終わって5分後ぐらいだったので、記憶がだいぶ曖昧なんですが(笑)、とても親しみやすい方だなと思った印象があります。トークショーで久しぶりにお会いできて良かったです。誰が聴いても「いいよね」というポップスを追求――お話は変わりますが、最近ハマっているものはありますか。ダメージ加工のファッションが好きで、穴があいているデニムやスウェットも好きなんです。でも穴があいていなくても、「このパンツに穴があいていたらいいのにな」と思って、最近は自分で穴をあけていて(笑)。加工するときは、諸説あるんですがいろいろと調べまして、段ボールカッターで切ると、ダメージ加工ぽくなるかなあと試しています。――スタイリッシュな印象のある須田さんですが、今日もピアスがたくさんついていて、アクセサリーにもこだわりがありますか。今日は全部の穴にピアスをつけていませんが、全部で10個、耳に穴があいていますね。身につけているアクセサリーなどは、すべて私物です。ファッションは、そのときに着たいものを着て、アクセサリーもそのときにつけたいものを選んでいて。指輪はもっとつけたいですが、ギターを弾くときに邪魔になるので、必要最小限だけにしています。とくに左手はコードを押さえなくてはいけないので、多くはつけられません(笑)。でも、指輪をつけると気持ちが切り替わって、オンモードになれます。――シルバーアクセサリーがお好きなんですか?アイテムとしての色味だと、本当はピンクゴールドが一番好きなんですが、自分には似合わないので。結果的に、自分でもつけて好きなのは、くすんだシルバー系ですね。――ときどきInstagramなどで猫ちゃんの写真をアップされていますね。もう3〜4年前から飼っている、サイベリアンという種類の猫です。「ふとん」という名前です。小学1年生ぐらいから、ずっと実家で猫を飼っていました。たとえば、街に一軒、猫屋敷ってあるじゃないですか?僕の家がそうだったんです(笑)。家の外には常に5、6匹猫がいて、家の中にも5、6匹いて、だから猫がいるのが当たり前で、いないほうがソワソワしてしまいますね。でも猫は、ただ家にいて別の生活をしている存在、という認識なので、飼っているという認識もあんまりないところが楽ですし、好きですね。――いろいろなお話をありがとうございました! では最後に、今後の抱負をお聞かせください。5月にワンマンライブがあったり、夏はフェスにも初めて出演させていただいたり、そこで来てくださった方々が、「シャルル」をはじめとして曲を知っていて反応してくれたことがすごくうれしかったんです。自分のやっている音楽はポップスだと思っているんですが、ポップスって誰が聴いても「いいよね」と思える力があるものだと感じているので、そういうものを自分でももっと突き詰めていきたいです。それが結果的に、自分の活動にプラスにつながっていったらいいなと思います。取材後記ボーカロイドカルチャーが変わるほどのヒット曲を生み出すボカロP「バルーン」としても、ご自身の声で歌う「須田景凪」さんとしても、数々の多彩な楽曲を聴かせてくださる須田さん。ananwebの取材時、撮影ではミステリアスな魅力を放ちながらも、インタビューでは柔和な物腰でひとつずつ丁寧に応えてくださいました。そんな須田さんのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・山本嵩取材、文・かわむらあみりヘアメイク・牛玖文哉スタイリング・荒木大輔ジャケット¥68,200(税込)、スウェット¥85,800(税込、ともにstein)問合先:ENKEL tel.03-6812-9897須田景凪PROFILE2013年より「バルーン」名義でニコニコ動画にてボカロPとしての活動を開始。2016年に発表された代表曲「シャルル」はセルフカバーバージョンと合わせ、YouTube での再生数は現在までに1億4000万回の再生を記録。JOYSOUNDの2017年発売曲年間カラオケ総合ランキングは1位、年代別カラオケランキングの10代部門では3年連続1位を獲得し、現代の若者にとって時代を象徴するヒットソングとなった。2017年10月、自身の声で描いた楽曲を歌う「須田景凪」として活動を開始。2021年2月、メジャー1stフルアルバム『Billow』をリリースし、オリコンウィークリーチャート7位にランクイン。作詞作曲編曲のすべてを手掛け、ベットルームで音源制作からレコーディング、音源発表まで行い、多くの若者から支持を集めている。2022年10月7日、ニューシングル「雲を恋う/落花流水」配信リリース。InformationNew Release「雲を恋う/落花流水」(収録曲)01. 雲を恋う02. 落花流水2022年10月7日発売写真・山本嵩 取材、文・かわむらあみり ヘアメイク・牛玖文哉 スタイリング・荒木大輔
2022年10月09日【音楽通信】第122回目に登場するのは、圧倒的な歌声が幅広い世代に支持されている、日本を代表するシンガー、Toshlさん!小学校の全校生徒の前で歌ったことが歌の原風景【音楽通信】vol. 122その卓越した表現力や一瞬で心をつかむハイトーンボイスなど、圧倒的な歌声が多くの人たちに支持されている、日本を代表するシンガーのToshlさん。音楽活動はもちろんのこと、絵画展を開催するなど、クリエイティブな才能を発揮し続けています。近年は多くのバラエティ番組への出演によって、お茶の間でも注目が集まり、世代を超えてファンが増加しています。そんなToshlさんが、2018年から発表している名曲カバーアルバム“IM A SINGER”シリーズの第3弾となる『IM A SINGER VOL.3』を9月28日にリリースされるということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。――あらためてToshlさんの幼い頃の音楽環境から教えてください。母親がピアノ講師で、自宅でピアノ教室を開いていたものですから、小さい頃から家ではピアノの音が鳴っていました。ですが、ピアノを習ったことはなく、歌いたいがために独学でコードを練習するという環境。兄はフォークギターを弾いていたので、10歳ぐらいのときには、自分でも必然的にギターを弾きはじめるようになって。当時は、テレビの音楽番組やラジオの歌謡番組が好きで、よく観て聴いていた子どもでした。楽器を弾いたり、歌を歌いたいときは、当時はまだカラオケがない時代で、自分で伴奏をするしかなかったんです。その頃はアイドルが出ている雑誌『平凡』などを買うと、付録に歌本といわれるヒット曲の歌詞やコードが書いてあったので、知っている曲も知らない曲も、勝手に弾いて歌い始めた、というのが“自分で歌うことの始まり”だったと思います。――歌うことが楽しいと思った理由はなんだったのでしょうか。当時、バスに乗って下水処理場などを社会見学するような「学習旅行」というものがありまして、バスの中でみんなで歌うので、マイクがまわってくるんです。そのときに二葉百合子さんという、浪曲の歌手の方が発表した当時大ヒットしていた曲「岸壁の母」を歌ったんです。すると、大喝采を浴びまして。僕が女性の高い声でこぶしで歌うような曲を歌ったものですから、担任の先生がいたく感激をされて「あなたは今度、全校朝会で歌いなさい」と言われて、当時は全校生徒が1,500人ぐらいいたのですが、全校生徒の前で歌って1,500人から拍手喝采を浴びました。それから何度か、そういった機会を先生が設けてくださったので、何度も歌を歌って。「気持ちいいもんだな」「人前で歌うと拍手をもらえるんだ、歓声を受けるんだ」ということが、子ども心にすごくうれしかった。それが歌うということの原風景になっていると思います。――歌番組はもちろん、近年ではバラエティ番組にも参加されていますが、もともとバラエティ番組へ出演するきっかけはあったのでしょうか。歌を歌うことや人間関係について、行き詰まりを感じていた時期に、「新しいことにチャレンジしてみたい」と思ったことがきっかけですね。とはいえ、新しいことにチャレンジするときは不安もありましたが、まわりの信頼できるスタッフが後押しをしてくれたので、重い腰を上げて。そうすると「こういうオファーが来ています、こんな企画も」と、スタッフがバラエティへのチャレンジに誘ってくれたんです。最初は、僕がスイーツ好きだということを調べてくださった番組の方からの企画で、スイーツのロケをする番組でした。「スイーツのロケ?」と、最初はイヤイヤ参加していて(苦笑)。ですが、現場に行ったときに、スタッフのみなさんが一生懸命番組を作っていらっしゃる姿を目にして、考えが変わりました。その現場では、僕がテレビに出始めた頃と違って、カメラマンもアシスタントの方も、音声さんも音響さんも、ディレクターもプロデューサーも女性の方が多くて。スタッフの半数くらいの方が、女性という現場だったんです。その女性のスタッフの方々が汗をびっしょりかきながら、重い荷物を持って、一生懸命やってくださっているのを感じて、自分がイヤイヤそこにやらされる感いっぱいで参加しているのが恥ずかしくなって。みんなこうやっていい番組を作ろうと汗水たらしているのに、自分はなんなんだと。参加するには、みんなでいい番組を作らなくてはと反省しました。そこからですね。いまでも葛藤があるときもありますが、やると決めたら、音楽でもバラエティ番組でもなんでも、どんな仕事にしてもみんな真剣にやっているんだから、自分もそれ以上の気持ちでやらないとダメだと思って取り組んでいます。そこから始まったことが、いまの活動につながっています。――わが家の小学生の子どもも、バラエティ番組のToshlさんの歌を聴いて「あの歌のすごい人だ」と言っていますし、幅広い年代の方から反響があるのではないでしょうか。本当にうれしいですね。長い間歌ってきたなかで、いまが一番ポピュラリティーがあるとありがたく感じています。おっしゃってくださったように、子どもたちが応援してくれたり、「歌がうまいおじちゃん」と言ってくれたり(笑)、老若男女世代を超えたさまざまな方々の声はSNS等でメッセージを拝読することもあります。それが推進力にもなりますし、自分の殻を破って楽しくチャレンジしていくと、その先に必ず新しい感動があるんだな、と肌で感じていて。少しずつでも前に進んでいくこと、チャレンジすることは尊いことだなと思っています。ディズニー3部作が原点となったカバーアルバム――2022年9月28日に、カバーアルバムの大ヒット企画「IM A SINGER」シリーズの第3弾『IM A SINGER VOL.3』をリリースされます。前作から3年ぶりのタイミングとなりますね。いままで1年に1枚カバーアルバムを出してきたのですが、コロナ禍になりまして、全世界的に閉塞して萎縮する事態に直面して、一度アルバムの制作を延期にしていて。やっと第3弾が完成しました。歌いたいのに歌えない、届けたいのに届けられない、声を出したいのに出せないとなると、気持ちがヒリヒリしましたが、逆に、歌を歌うようになって以来一番「歌いたいんだ」という思いが湧き上がってきました。じゃあ、この状況のなかで歌うようにするには、どうしたらいいかとなったときに、今しかできないこと、今だからこそやりたいことを考えました。まず、最初に、キャンセルで空きが出ていた大きなコンサートホールをお借りして、たったひとりだけのお客さまの前で歌を歌うコンサートを開催する企画をしました。僕がお客さまになったら、たったひとりでコンサートホールを独り占めにして、推しのアーティストの歌をじっくり聴いてみたいですから。こんなこと、今しかできないな、と思いつきました。また、自粛ムードであらゆる仕事などもキャンセルとなり外出も憚れるような時期はひたすら絵を描いて、金沢21世紀美術館で美術展を、人数を制限させていただきながら開催させていただきました。どんな逆境でも匍匐前進して、運命を切り開いてやると決め、「プロジェクト運命」と名づけて、関係者の方々のご協力やファンのみなさんの心強い応援もいただきながら表現活動を続けることができました。深く感謝しています。そして今回、『IM A SINGER VOL.3』を届けることができてうれしいです。――今作には、ディズニー3部作が収録されていますね。音楽番組『題名のない音楽会』(テレビ朝日系 土曜午前10時)で披露され、同番組の司会者で俳優の石丸幹二さんとのデュエット曲「美女と野獣」、「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」、新たにカバーされた「スピーチレス~心の声」。ディズニーの名曲を歌いたいお気持ちが強かったそうですね。今回のアルバムに収録したい曲、歌いたい曲はたくさんあって当初悩みましたが、まずはやっぱりディズニーの曲が歌いたいと強く思いました。レコード会社の方がディズニーさんに打診してくださって、3曲歌ってもいいですよ、と言っていただいて。「3曲も歌っていいの!?」となって(笑)、厳選したのが今回の3曲です。今作は、ディズニーの音楽が、最初のスタート地点。世界中で多くの方が知っている楽曲であるということと、自分が感動した音楽であること、映画ももちろん素晴らしいということ。一番思い出深い曲は、「美女と野獣」なんです。24歳の時に、アメリカのロサンゼルスに渡って暮らしていたことがありました。その頃、ロサンゼルスのダウンタウンというエリアで、「ビューティー・アンド・ザ・ビースト」というミュージカルが公開されて。さっそく観劇したところ、ものすごく感激しまして、その後も何度も劇場に通いました。その帰り道に、ロサンゼルスのハリウッドにあるタワーレコードでミュージカルのサントラのCDも買って。その舞台で披露される英語が聞き取れるようになり、歌えるようになりたい、ということろから、自分の挑戦が始まりました。サントラを聴き込んでいましたね。さまざまな困難や葛藤の中でも、一生懸命やっていた青春の思い出もあり、ストーリーからは勇気や感動をもらって、背中を押してくれたあるいはなぐさめてくれた曲でもあって。ディズニーの中で一番好きな曲ですし、ディズニーのプリンセスの中では、(美女と野獣のヒロイン)ベルが一番憧れの女性でもあります。――石丸幹二さんとの「美女と野獣」のデュエットはいかがでしたか。石丸さんは日本でのミュージカル『美女と野獣』で、当時劇団四季にいらして、実際にビースト役を演じられた方。今回も楽しくデュエットさせていただきました。前作「VOL.2」のときに、キャッツの「メモリー」という曲を歌っていて、NHKの番組で披露するときに初めて石丸さんと出会ってデュエットさせていただいたことがありました。同年代で同郷ということでも盛り上がって、その際石丸さんが司会をなさっている「『題名のない音楽会』に出させてください」と自分からアピールしたところ、番組に何度も呼んでくださいました。また、石丸さんのラジオ番組に1か月間にわたりゲストとして招いていただき、ご縁が深くなって。石丸さんはアドバイスや心のうちを語ってくださるなど、プライベートなお話をさせていただくなかで、とても共鳴し、ともに高め合えるような関係となりました。今回デュエットで歌うときに、やはり石丸さんに歌っていただきたいと心よりお願いさせていただきました。――VOL.1と2では、男性曲と女性曲のカバーでしたが、今回VOL.3ではすべて女性シンガーのカバー曲です。選曲の決め手はどのようなものでしたか。選曲するときに、歌いたい曲ばかりで収集がつかなくなるんですよね。ただ、今回は最初に選んだディズニーの3曲が全部女性アーティストの曲だったので、まず女性の楽曲であることをカテゴリーにしようと選んでいきました。歌ってみたい曲、感銘を受けた曲などを自分で厳選していきまして、今回のラインナップになりました。絞るのが大変だったんですが、素敵な曲をみなさん歌ってもいいよ、と許可くださったので、ありがたかったですね。――カバー曲の一方で、今回はToshlさんの美しく切ないオリジナル楽曲「葉ざくら」も収録されていますが、どのようなシチュエーションで生まれた曲ですか。レコーディングを半年ほど、長い期間をかけて進めてきた間に、アレンジャーやレコード会社のスタッフの方など、みんなとコミュニケーションを取る時間を大事にしていて。僕が必ずスイーツを買っていって、レコーディング中に「モグモグタイム」と名付けて、いろいろな会話をするようにしました。そこでインスピレーションを受けて書こうと思ったのが、「葉ざくら」ともうひとつのオリジナル曲「しあわせになるんだよ」です。「葉ざくら」は、アレンジを担当してくれた川口大輔さんのプライベートスタジオでのモグモグタイムの際、遺影が飾られていたことに気づきました。「お父さまですか?」というお話から「そうなんです、こういう父でこうだった」という思い出のお話を拝聴した際、レコード会社のスタッフの方も加わって、他界した自分の父のことも思い出しながら切なくなりながら話して。一緒にいま作ってくれている大切なスタッフの思いも込めた楽曲を書きたい、そうすれば僕だけではなく、みんなの曲になるからという思いから作った曲です。「にゃんたろう」というワンちゃんを飼っているんですが、桜並木を一緒に散歩するのが好きで。その頃はちょうど桜の花が蕾から徐々に咲いて、やがて満開になり、そして散っていく桜の季節でした。葉ざくらになった頃、太い樹の幹からも、可憐な花が咲いていて、その周囲に新しい小さな芽が出ているのを見つけたんです。時の流れとともに、親から子へ、そして孫へ、さらにその先へ、連綿と続いてく命の連鎖を感じて、にゃんたろうを抱きながら何か「じ〜ん」とする感覚がありました。そこから「葉ざくら」のアイデアが生まれました。――オリジナル曲「しあわせになるんだよ」は、以前、ニンゲン観察バラエティ『モニタリング』(TBS系 毎週木曜午後8時)の企画で林家たい平さんとのコラボレーション曲としても披露されたウエディングソングですよね。そうなんです、番組のオーディション企画でたい平さんを選ばせていただきました。ふたりで歌わせていただく場合、どういうシチュエーションがいいかなと考えると、自分が好きなモニタリングはサプライズで結婚式をするとか、プロポーズするとか、新曲を披露するなら感動的なものがいいなと。たい平さんは娘さんがいらっしゃることも知り、そこで、娘さんへの思いをスタッフ複数人からもうかがって、父親になるとこういう気持ちになるんだなという思いと、自分の想いも重ね合わせ、親子の想いを書きました。――今回、カバー曲とオリジナル曲の両方を収録されていますが、歌唱する際はカバー曲よりもオリジナル曲のほうが歌いやすいなどの違いは感じるものでしょうか。歌いやすい曲というのはありません。カバーをさせていただくというのは、とてもプレッシャーがあります。本番のボーカルレコーディングの前に自分のスタジオでも練習レコーディングして、プリレコーディングを重ねています。カバー曲は、その楽曲自体や、その楽曲を歌われている歌手の方や、その楽曲のファンのみなさまになるべく失礼のないように準備をする、というのが礼儀だと思っています。楽曲を研究し、探求し、練習し、リスペクトを持って歌わせていただくために、しっかり準備をしてからレコーディングに臨みます。楽曲に対して心身を削るように深く取り組めば取り組むほど、自分へ返ってくるものも深くなるような気がしていて、それが自分の表現を進化、深化させてくれる大切なエレメントとなっているのかなとも思っています。挑戦を続け、日々何かを感じる心を大切に育む――お話は変わりますが、普段のご様子も教えてください。曲作りのお話の際もお名前が出ておりましたが、愛犬のにゃんたろうちゃんはインスタグラムにもときどき登場しますね。縁があって僕のところに来てくれて4年ぐらい経ちますが、にゃんたろうには、いつも救われています。――ワンちゃんですが、「にゃんたろう」というお名前なのですね?ニャンちゃんも好きなんですが、ワンちゃんなので(笑)。それから、にゃんたろうは「ワン」とは鳴かなくて、たまに鳴くときは「ぶ〜」と鳴きます。背中の模様だけ見ていると、ニャンちゃんにも見えるときがあります。「なんかどっちつかずだな、おまえ、犬なのか猫なのかはっきりせい!」というところからも「にゃんたろう」と名付けました(笑)。歌を歌ったり、絵を描いたり、日々クリエイティブなことをすると精神的にも肉体的にも疲弊することが多くて。そんなときに、にゃんたろうとの時間は、僕にとっての癒しであり、「にゃんくんのためにも頑張ろう!」と思えるかけがえのないパートナーです。――オリジナル曲「しあわせになるんだよ」に、「チワワの刺繍」という歌詞も出てきますよね。そうなんです、入れておきました(笑)。――音楽活動以外では、絵画展を開催されるほど絵を極めていらっしゃいますが、ご趣味というと絵のほかには、スイーツ作りでしょうか。最近はなかなかスイーツ作りができないんです。やるとすれば、料理は餃子を焼くぐらいはしますね(笑)。趣味とは言えないかもですが、絵をずっと描き続けています。先日も、何か月もかけて100号のキャンバス10枚を使用した大作の絵を完成させました。実は、数年前から山形県内に新しく建造する音楽ホールのプロデュースをさせていただいて、その会場の入り口正面に飾る絵を描かせていただきました。音楽ホールを作るという大きなプロジェクトに関わらせていただいたので、音響や音楽ホールの建築の勉強もして、プロデュースもさせていただきました。これも僕の新たな挑戦でもありました。自分でプロデュースしたコンサートホールでコンサートができることも夢のような話で、今からワクワクしています。ananwebの読者の方は女性が多いと思うので、みなさんもご興味があるかもしれませんが、実は僕、化粧品の研究をしています(笑)。これも趣味と言えるかわかりませんが、お肌のトラブルで悩んでいた時期もあり、とても興味があって。たとえばコンサートグッズなども、デザインなども含めなるべく全部自分で作るようにしています。音楽も絵もグッズなども創作作品という意味で同じだと思っていて、すべて自分でやれるところはやりたい。祖父が畳職人だったせいか、職人気質が好きで、何事にも自分の心を宿したいという気持ちがあって、それはお肌に対しても同じ。――すごくお肌がきれいですね。ありがとうございます。数年前から、「どういうものがどうお肌にきくのかな?」と、いろいろと試行錯誤しています。自分でいいものを作れないかな? と、化粧水や乳液、美容液について専門家の方にもお話をうかがったり、調べたりしています。歌でもアートでもグッズでも化粧品でも、なんでも、結局、みなさんが喜んでくださるようなものを創り出すことが楽しくて嬉しいし、それが自分の喜びなんです。――襟元のカメオも素敵ですが、こだわりがあるんでしょうか。8年ほど前に茶道を始めて、人に対するおもてなしの心や所作を学ばせていただいています。人になるべく嫌な思いをさせないよう、相手に対しての敬意が大事。身なりや立ち居振る舞いなどはできる限り、失礼のないように心掛けています。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。今回、ひとつのアルバムという作品が生まれました。たとえば『題名のない音楽会』で石丸さんと一緒に歌わせていただいた様子が先日オンエアされましたが、アルバムのレコーディングを経て、また新たに歌った「美女と野獣」は、自分の中でなんとなく成長しているようにも感じます。そうやって経験するたびに日々アップデートしてくのは、音楽も絵も、また、人との関わりもそう。ですから、常に挑戦を続けていくことにはゴールがないんですよね。日々、新しい何かに気づけたり出会えたりすることがあるので、そういう新鮮な感動を感じる心をこれからも大切に丁寧に育んでいきたいです。ananさんに出るのは30年ぶりぐらいなので、また出していただけるようにもっともっと張り切ってがんばります。取材後記ロックからポップスまで、多彩な楽曲で表情豊かに歌声を聴かせてくださるToshlさん。撮影では白いスーツを華麗に着こなし、さまざまなポーズをとってくださり、インタビューではひとつずつ真摯にお応えくださいました。圧巻の歌声は、新作でもたっぷり堪能することができます。そんなToshlさんのカバーアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・山本嵩取材、文・かわむらあみりToshlPROFILE2010年より本格的に「Toshl」名義での活動をスタート。聴き手の心をとらえて話さない圧倒的なボーカルで、名実ともに日本を代表するシンガーとして不動の地位を確立。2018年には20年ぶりのメジャーレーベル作品となる初のカバーアルバム『IM A SINGER』を全世界リリース。続編に期待する多くのファンの声に応えてリリースした、2019年のカバーアルバム第2弾『IM A SINGER VOL.2』は瞬く間にヒット。2020年には日本テレビ系ドラマ『ギルティ~この恋は罪ですか?~』主題歌「BE ALL RIGHT」を配信限定でリリースした。2022年9月、人気のカバーアルバム第3弾『IM A SINGER VOL.3』をリリース。また、2018年からは「龍玄とし」名義により表現活動において絵を描くことにも注力し、全国各地での個展を成功させた。音楽活動はもとより、バラエティ番組などへの出演により、マルチな才能を発揮。老若男女、世代を超えた新たなファン層が増え続けている。InformationNew Release『IM A SINGER VOL.3』(収録曲)01.タマシイレボリューション(Superfly)02.イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに03.美女と野獣※石丸幹二とデュエット04.三日月(絢香)05.難破船(中森明菜)06.葉ざくら(オリジナル曲)07.Hero(安室奈美恵)08.桃色吐息(高橋真梨子)09.スピーチレス~心の声10.You raise me up(ケルティックウーマン)11.しあわせになるんだよ(オリジナル曲)2022年9月28日発売*収録曲は全形態共通。*全形態ともに初回プレス分のみ封入特典あり。先着で特製トレカ(5種のうち1枚ランダム封入)付き、無くなり次第終了。(通常盤)TYCT-69244(CD)¥3,300(税込)(初回限定盤)TYCT-69243(CD+DVD)¥5,500 (税込)【DVD収録内容】「葉ざくら」MUSIC VIDEO /「葉ざくら」MUSIC VIDEO Making & Short Interview / Toshl SELF LINER NOTES OF “IM A SINGER VOL.3”/「葉ざくら」(弾き語り Live) /「桃色吐息」(弾き語り Live)/「しあわせになるんだよ」(弾き語り Live)写真・山本嵩 取材、文・かわむらあみり
2022年09月27日【音楽通信】第121回目に登場するのは、でんぱ組.incやももいろクローバーZへの楽曲提供や、ほかのアーティストとのコラボでも話題の弾き語りトラックメイカーアイドル、眉村ちあきさん!ライブの対バン相手により音楽に興味が湧く【音楽通信】vol.1212019年より“弾き語りトラックメイカーアイドル”として活動している、眉村ちあきさん。自身の音楽活動はもちろんのこと、でんぱ組.incやももいろクローバーZへの楽曲提供や、他アーティストとのコラボレーション曲を発表するなど、多彩な才能を発揮しています。そんな眉村さんが、2022年7月7日に初のEPをリリース。さらに、10月30日には、東京・LINE CUBE SHIBUYAでのワンマンライブを控えているということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。――幼少時に音楽にふれたきっかけから教えてください。父が沖縄出身なので、家ではいつも沖縄民謡や沖縄のラジオが流れていました。でも、小さい頃に音楽に興味を持つことはなく、気になるようになったのは高校3年生から。K-POPが流行りだして、クラスのみんなで聴いたり踊ったりしていた普通のJKとして過ごしていました(笑)。そんななかで、テレビに出ているアーティストの方の歌を聴いて「これぐらいだったらわたしも歌えそう」と、なぜか自分でも歌える気がして。高校を卒業してから、縁あってアイドルグループに入ってライブ活動をするようになりました。ライブをするうちに対バン相手の音楽を細かく聴くようになっていって、「こういうジャンルがあるんだな」といろいろな音楽に興味を持ちはじめたので、ちゃんと音楽を聴きはじめたのは高校を卒業してからだといえますね。――いまは弾き語りトラックメイカーアイドルとしてご活躍中ですが、もともとご自身で楽器を始めたのはいつ頃だったのでしょうか。アイドルのときは歌だけに集中していたので、ギターを始めたのは20歳ぐらいからです。ソロになって最初の頃は、打ち込みのトラックメイクから始めて、遊ぶように音楽を作っていました。曲ができるとひとりでライブをするようになって、グループと違ってひとりだと何をしたらいいのかわからないから、楽器でも始めようかと。――もともと人前に出ることがお好きだったのでしょうか。そうですね、目立つことが好きかもしれないですね。保育園のときのお遊戯会では、客席にいる保護者たちの前に登場して、ひとりで歌う役をやって「なんて気持ちいいんだろう」と思っていました。親の会社の忘年会で、小学生のときからマイクを持って「みんな聞いてー!」とMCをしたことも(笑)。学校で合唱するときは、他の子のパートにつられて音程がはずれてしまう子もたまにいましたが、「なんでつられてるの?」と内心思っていましたね。大勢よりも、ひとりで歌ったほうが楽だなって。でも、高校生時代の自分のカラオケ動画を観ると、いまよりすごく下手なんです。だから、自分で歌がうまいと思って歌っているイタい人なんですが(笑)、自信だけはずっとありました。――2019年にデビューされましたが、節目の3年を超え、現在4年目を迎えられて心境はいかがですか。曲を作るうえで、気持ちいいものをひたすら求める、というスタンスはデビュー当時から何も変わっていません。でも、パフォーマンス面においては、まったく意識が違いますね。ブレスをマイクに入れるか入れないか、ひと息にも集中するようになりましたし、ライブの本番前に何を飲むか気をつけるようにもなりました。ひとつのライブに対しての意識が全然違いますね。事前に対バン相手にまつわるものを調べて、イントロで音に組み込んだら向こうのお客さんがうれしいんじゃないかとか、おもてなしの心が芽生えて。どうやったらもっと楽しんでもらえるかを以前の百倍ぐらい考えるようになりました。わたしの歌は1年前より百倍うまくなった――2022年7月7日にEP『マルコッパ達』を配信されました。現在放送中のTVアニメ『ちみも』(テレビ東京系 毎週木曜 深夜1時30分)の主題歌「マルコッパ」も収録されていますね。お話をいただいてから、初めてアニメのオープニング曲を書き下ろしました。アニメの曲といえば、有名な「おどるポンポコリン」が思い浮かぶんですが、0歳から100歳まで歌えるような、一度聴いたら忘れられないようなこの曲を超えたいなと。キャッチーな曲を作るのは得意なので、自分のなかのキャッチーさを全部「マルコッパ」に込めました。――2曲目の「レイニーデイ」は、ご自身でも歌うのが難しかったそうですね。ピッチを当てるのが難しいメロディを作ってしまったんです(笑)。たとえば「イエーーーイ!」と大きい声を伸ばし続けるのは、わたしとしては簡単なんですが、小さい声で細かく歌うのは音がズレやすいから難しくて、集中しないと歌えない。でも一見、小さい声より、大きい声で「イエーーーイ!」と歌う人のほうが声が出ていてうまいと思われやすいんですよね。本当はわたしもそっち派なんですが(笑)、それは簡単にできるから、今回は難しいメロディを歌うというのが新鮮でした。――EPの収録曲として、急きょ作った楽曲なんですか?いえ、EP用に作ったわけではなかったんですが、偶然EPの制作時期にできました。曲はいつも作りたくなったら作る感じなんです。この曲は、雨の日に聴けるような、気分が上がるような曲がほしいなと思って作って。それも友人の(歌手の)南波志帆ちゃんとご飯を食べているときに、ふと曲のイメージが浮かびました。彼女に「どんな顔がタイプなの?」と聞かれて、「目がギョロギョロしている人がスキ」と答えたら、「ああ〜後ろから後頭部をポンって叩いたら、ポロって落ちちゃうくらいに目が出てる人ね」と言われて。もしも本当にポンと叩いて両目が落ちて、その目玉がふたりで旅をしたらどうなるんだろう……ということを考えていたら、そこからこの曲ができたので、実はこの曲は目玉の旅の歌なんです(笑)。――目玉らしき言葉は歌詞に出てきませんが(笑)、お友達と食事中にフッと湧き出たイメージから曲ができたんですね。はい。だから、南波志帆ちゃんに、ありがとうって思っています。――ご本人もうれしいんじゃないですか、ふたりの会話から曲ができたこと。いえ、まだリリースしたことも言っていません(笑)。自分でも「そんなところから?」というところからイメージが湧くので、そんなときはすぐ「曲を作らなきゃ!」という気持ちになります。――3曲目は旧友という、音楽プロデューサーのTACOS BEATSさんと共作された「浜で聴くチューン」ですね。この曲は、TACOS BEATSさんのスタジオに遊びに行ったときにできた曲です。お茶やお菓子を持ってパーティをするつもりで行ったら、「ちょうどいま作ってるビート」と曲を聴かせてくれて、「じゃあメロディ入れていい?」と返してすぐ作りました。TACOS BEATSさんは、わたしが全然作らないベクトルの音楽を作っているので、新鮮です。わたしは歌詞とメロディをすぐ作ってしまうんですが、「あとはここの部分作ってね」と言うと「ちょっと時間ちょうだい」と言われて。翌週、スタジオに遊びに行ったら、曲が完成していました。――アーティストの方によって、曲作りのペースは違うこともありますよね。TACOS BEATSさんは、ビートはすぐに作ることができる方なんですが、わたしはビート作りに時間がかかるんです。人には人のやり方があるなと思いつつ、共作はすごく楽しかったですね。TACOS BEATSさんは、わたしがアイドルグループをやめてからやった、1回目か2回目のソロライブのときのPAさんだったんです。そこで仲良くなって、「眉村ちゃんはもっと曲をたくさん作ったら売れるよ」と言ってくれていて。まだ持ち曲が4曲ぐらいしかなく、お客さんもゼロのときでしたが、その言葉をモチベーションにして家に帰って曲を作る日々でした。トラックメイカーでもあるTACOS BEATSさんがプロデュースしていたアイドルグループと対バンしたのですが、彼の作った曲を彼女たちは歌っていて。いつかTACOS BEATSさんのようなトラックメイカーになりたい、いつか共演できるようにがんばると言っていたので、まさか一緒に曲を作る日がくるとは。いまは友達のように遊んでくれていますが、共作がリリースされることは、お父さんのように喜んでくれています(笑)。――ほかの方とのタッグという意味では、今年2月に発売されたアルバム『ima』ではシンガーソングライター堂島孝平さんとのコラボ曲がありましたし、堂島さんの8月発売のアルバムにも新コラボ曲「てんてん」が収録されていますよね。はい。堂島さんは、びっくりするぐらい考え方もすべてが似ていて、まるで自分としゃべっている感覚になるぐらいです(笑)。同じというのも恐縮ですが、メロディラインの作り方やライブのパフォーマンスにおいても、共感できるといいますか。もし同世代だったら、絶対負けないぞと火花がバチバチだったかもしれません。だから、実際には世代も違ってちょうどいいところが、仲良しの秘訣かも(笑)。でも、ステージの堂島さんしか知らないんです。プライベートの話は一度も聞いたことがないので、もしも一緒にご飯に行って、「あれ? 違うんだけど」となるのも怖いので、これ以上は深堀りしません(笑)。――いまが絶妙な距離感なんですね。コラボといえば、日米ロックユニットのザ・リーサルウェポンズと眉村さんのコラボ曲「サムライディスコ feat.眉村ちあき」も9月28日にリリースされます。この曲は演歌なんですよ。レコーディング当日に「演歌っぽく歌ってみて」と突然言われて、「え?演歌は聴いてきてない」と(笑)。ふたりの理想の形になるよう苦労しましたが、新しいジャンルを作ろうとしているその姿勢に刺激を受けました。――コラボ以外にも、でんぱ組.incとももクロのニューアルバムに楽曲提供されていますね。もともと相手の要望を聞くということができないタイプだったんですが(笑)、この2年ぐらいで映画の挿入歌や番組のテーマ曲を担当させていただく機会があって、相手の求めているものを作りながら自分の色を出す、というやり方を覚えて。今回、その経験をでんぱちゃんとももクロちゃんの2組に生かすことができました。2組とも女の子グループですし、わたしにしかできない歌詞に仕上げてもわかってくれるかなと。2組とも、取材などで歌詞について「すごくわかる」と言ってくれているので、こちらの気持ちが伝わっていてうれしいです。――2022年10月30日には、東京・LINE CUBE SHIBUYAでバンド形態のワンマンライブ「眉村ちあきの音楽隊 – Episode 2 -」を開催されますね。昨年2021年9月の東京・中野サンプラザの「- Episode 1 -」公演を経ての今回となります、どのようなステージになりそうですか。今回も音楽隊のメンバーは同じで、この1年で増えた新曲をこのバンドで披露します。わたしがレベルアップしたぶんだけ、レベルアップした曲をみなさんに聴いていただけますし、リハーサルで細かい部分まで指摘できるのも楽しみですし。音のひとつひとつにまで耳を研ぎ澄ませられるようになっていて、1年前よりも鋭い音を目指せる気がします。なんといっても、フロントマンとしてのわたしの歌が1年前より百倍うまくなっていますし、見せ方の意識も全然違うので、ぜひ期待して観に来てほしいですね。ライブを観たら悩みがなくなったと思わせたい――オフの日はどんなふうに過ごしていますか。最近“ひとりではしご酒”にハマっています。ひとりでお店に行っても、コロナ禍だから全然しゃべらないですし、隣の人もしゃべりかけてこないからちょうどいいんですよ。「ひとりはしご酒女」とキーワードで検索してYouTubeを見て、「この子が行っているこの店おいしそう」とそのお店に行ったり。もともとお酒に強くないですが、ひとり酒は楽しいです。――もともとのご趣味はなんですか。宝塚が好きで舞台をよく観に行きました。家でも真似してセリフを言っていたんですが、最近好きな子が辞めてしまって……。宝塚のほかにも、『鬼滅の刃』などの2.5次元ミュージカルや、劇団四季の『バケモノの子』も観ました。ステージの端から端まで観て、「この役者さんはすごく歌がいいな」と思ったら、帰ってから調べるという楽しみ方もあります。もともとパーティといいますか、みんなで歌って踊ってという状況が好きなんです。わたしもいつかステージでは、コーラスや楽器隊を後ろにたくさん従えて、グルグル回転する舞台装置も使ってみたいですね。――美容面は普段どうされていますか。とくにライブ前にはよく走ります。ステージの体力作りという面と、血行がよくなることで代謝がよくなり肌もキレイになるから。さらに、最近は配信もあるので、アップになったときになるべくみなさんに、肌がキレイでカワイイと思ってもらいたいんですよね。普段の食事内容もなんとなく気をつけてはいますが、ananwebを読んでいる美容に詳しい方からすると、たいしてタメになるようなことはないかも(笑)。朝ごはんはもりもり食べて、夜ごはんは少なめです。コロナ禍から自炊を始めましたが、朝ごはんは定食ぐらい品数をたくさん作って、自炊を楽しんでいますね。夜にお酒を飲むときは、おつまみをちょっと食べるだけにして、なるべく食べないようにがんばっています。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。いつか矢沢永吉さんのように、ドンと構えて、何を言っても人の心に響くような説得力がある人間になりたいですね。そのためにも、時には傷つくことや、人を憎むようなことがあってもいいと思いますし、いろいろな経験がしたいなと。歌詞に説得力をもたらすような人生を送りたいですし、説得力のある歌を歌えるようになりたい。「眉村ちあきのライブを観たら悩みなんてどっかいっちゃった」と思わせるぐらい、海のような大きな人間になりたいです。取材後記トラックメイカーアイドルとして表舞台で活動しながら、自身のオフィスである「(株)会社じゃないもん」の代表取締役社長を務め、ほかのアイドルの方への楽曲提供も手がけるなど、マルチな才能を持つ眉村ちあきさん。ananwebの取材では、ニコニコとほがらかな笑顔と不思議な世界観で、惹きつけてくださいました。そんな眉村さんのEPとワンマンライブをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・北尾渉取材、文・かわむらあみり眉村ちあきPROFILE東京都出身。弾き語りトラックメイカーアイドル。アイドルであり、作詞、作曲、編曲、トラックメイクまでを自ら行う。アイドルグループとして活動後、2016年2月より、眉村ちあき名義でソロ活動をスタート。2019年1月、インディーズでのベストアルバム『ぎっしり歯ぐき』をリリース。2019年5月、メジャー1stアルバム『めじゃめじゃもんじゃ』でデビュー。2022年2月、4thアルバム『ima』をリリース。7月、EP『マルコッパ達』をリリース。10月30日、東京・LINE CUBE SHIBUYAにてバンド形態のワンマンライブ「眉村ちあきの音 楽隊 – Episode 2 -」を開催する。InformationNew Release『マルコッパ達』(収録曲)01.マルコッパ02.レイニーデイ03.浜で聴くチューン(眉村ちあき&TACOS BEATS)2022年7月7日発売写真・北尾渉 取材、文・かわむらあみり
2022年09月19日【音楽通信】第120回目に登場するのは、高らかに愛を歌う「魔法の絨毯」でも知られる、シンガーソングライターの川崎鷹也さん!高校3年生の文化祭がきっかけで音楽の道を志す【音楽通信】vol.1202018年から、シンガーソングライターとして本格的に音楽活動をスタートさせた、川崎鷹也さん。2020年には、TikTokから楽曲「魔法の絨毯」が大ヒットして人気に火がつき、テレビ出演なども増加しました。2021年には、作詞家の松本隆さんのトリビュートアルバム『風街に連れてって!』に参加し、松本さんからは「君は最高だね、君は一生大丈夫だよ」と川崎さんの歌声を絶賛。そんな川崎さんが、2022年9月14日に、カバーEP『白』をリリースされたということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。――幼少時に音楽にふれたきっかけからお聞かせください。地元の栃木で、父親がライブバーを経営していたので、幼い頃からいつも身近に音楽がありました。ただ、親父はプレイヤーではないので、音楽をするようにすすめてくることもなく、とくに幼少期から音楽が大好きで歌手になりたかったわけではなかったですね。――では、いつ頃から音楽の道を志すようになりましたか。高校3年生の文化祭で、同級生でいまはマネージャーとなった親友と一緒に、歌を歌ったんです。そのとき大きいステージで歌を披露して、「もっとたくさんの人たちに歌を届けたい」と感じたことがきっかけで、音楽の道を目指すことになりました。それから上京して、音楽の専門学校に入学し、ギターで曲作りを始めて。上京するまでの10代の思春期の頃は、玉置浩二さん、清水翔太さん、高橋優さん、秦基博さん、ゆずさん……と、J-POPの第一線を走っている男性アーティストの方々の曲や、女性アーティストだとSuperflyさん、AIさんの曲を聴いていましたね。――2020年に「魔法の絨毯」がTikTokを起点にバイラルヒットし注目を集めました。音楽活動のターニングポイントとなった曲でもあると思うのですが、この曲のリリース前と後、そして現在と心境の変化はありましたか。やっぱり「魔法の絨毯」を聴いていただくようになる前と後では、聴いてくださる方の数も環境も変わりました。ただ、作りたい音楽やステージに向かう気持ちという面では、昔から何も変わっていないです。いつも第一に書きたいのは、何気ない日々やなんでもない毎日をいかに愛せるか、というところですね。――川崎さんは楽曲提供もされていて、韓国の5人組男性アイドルグループ「TOMORROW X TOGETHER」の8月にリリースされた日本3rdシングル「GOOD BOY GONE BAD」の収録曲「ひとりの夜(Hitori no Yoru)」を書き下ろされたそうですね。たまたまお声をかけていただいて、楽曲提供をさせていただきました。「TOMORROW X TOGETHERさんに歌っていただくなら、どんな曲がいいかな?」と向き合って書き上げた曲。愛することの切なさや深みを歌っていただければ、と作ったバラードになっています。想い出をつなぐ5曲を厳選したカバーEP――2022年9月14日に、カバーEP『白』をリリースされました。音楽プロデューサーの武部聡志さんがアルバム全曲のアレンジを担当されていますが、今回のEPのコンセプトやタイトルに込めた想いから教えてください。『白』というタイトルは、自分だけのパレットに色をつけていこう、という意味合いをこめています。これまで出会った方々から、そしてステージに立って勉強になったことや得られるものがあるなかで、「自分の色はいろいろな人との出会いで成り立っているな」ということを自負していて。このカバーEPに収録している5曲は、僕の思い出をつなぐ5曲を選ばせていただいているのですが、きっと聴いてくださる方々にもそれぞれの曲に想い出があるはず。だから、聴いた方々がそれぞれに色をつけていただいたらいいな、ということから『白』というタイトルにしました。武部さんは、これまでも番組出演やライブのステージでご一緒させていただく機会がとても多くて。今回、アレンジャーを入れて、僕はシンガーに徹して楽曲を表現したいという思いがありました。武部さんと音楽を作るということは、背筋を伸ばして襟を正しながら、真摯にあらためて音楽に向き合えることでもあります。今回のカバーEPを武部さんにアレンジしていただいたらうれしいな、とダメ元でお願いさせていただくと、快く受け入れていただきました。武部さんと一緒に制作させていただけて、すごく楽しかったです。――1曲目「愛燦燦」は、美空ひばりさんの名曲です。川崎さんのおばあさまがお好きな曲だそうですね。自分が家族を持って、子どもも生まれて、でもコロナ禍になってなかなか実家に帰ることができない日々が続きました。そんなときに、おじいちゃんやおばあちゃんと、あと何回一緒にご飯を食べられるだろうかとふと思うことがあって。それは僕だけでなく、みなさんも感じることがあるかもしれませんが、このカバーEPを作るとなったときに、「おばあちゃんに向けて作りたい」という気持ちが大前提として芽生えていました。幼少期の記憶として、おばあちゃんが美空ひばりさんの「愛燦燦」が好きだったことを覚えていたので、おばあちゃんに向けて、歌いました。――すでにおばあさまは川崎さんの「愛燦燦」を聴かれましたか?聴いたようです、僕の家族は聴いたかどうかはわかりませんが(笑)。あんまり自分の音楽のことを家族に言わないので……照れくさいのもありますが、とくに言わなくても伝わるものがあると思うので、音楽については言葉にしなくても大丈夫だと思っていますね。――2曲目「悲しみの果て」はエレファントカシマシの名曲ですし、4曲目「366日」はHYの人気曲です。両曲とも、親友であり現在のマネージャーさんとの想い出の曲だそうですね。そうです。「悲しみの果て」は、栃木から上京するときに、何もわからず不安でいたのですが、でも変な自信だけがある、という状態でした。そんな時期によくこの曲を聴いていて。いまはマネージャーとなった親友も、お笑い芸人を目指して東京へ出てくるタイミングで、おたがいに共通点がいっぱいあったんですよ。この曲は、悲しみの果てに何があるかわからないけれど突き進んでいく、というメッセージが強い楽曲なので、僕らはそこに背中を押されて。だから、親友に向けてでもあったり、原曲を歌う宮本浩次さんに向けてでもあったり、これから夢を追う若者たちに向けてでもあったり。宮本さんの力強い思いを僕がさらにみんなにつなげられたらいいなと思って、選びました。「366日」は、高校3年生の文化祭で歌った、音楽を始めるきっかけになったとお話ししていた曲です。当時カラオケでよく歌っていました。この曲を文化祭で歌っていなかったら、いまの僕はないと思いますし、数年の時を経て、カバーさせていただいてよかったです。――3曲目「元気を出して」は竹内まりやさんの名曲です。事務所の社長が好きな曲なんですが、これまで二人三脚で社長と一緒にやってきました。ライブのお客さんがゼロのときもありましたし、2人でたくさん悔しい思いをして。たくさん苦しいこともあって。苦楽をともにしてきたので、社長に恩返しをしたい気持ちで歌っています。――5曲目「メロディー」は、川崎さんが尊敬する玉置浩二さんの名曲ですね。もっとも背中を追い続けているのが、玉置浩二さんです。仮に玉置さんに、カバーした曲を聴いていただけたときに「ああ、川崎鷹也にカバーしてもらってよかったな」と思ってもらえるかどうか、見合えるように歌いました。プロ同士、同じミュージシャンとして、歌にどう向き合っていくかが重要なところだと思っています。その覚悟という点では、当初、玉置さんの曲を歌うということに対してあまり前向きではありませんでした。でも、武部さんは僕の玉置さんへの想いをご存知なので「今回歌わないのか?」と言われて、「歌わないです」とお答えして(笑)。「でも、大切な人との想い出の歌を5曲選ぶなら、自分自身へ向けた大切な曲、玉置の曲を入れないと。僕が玉置に言っておいてあげる」と武部さんに強く背中を押していただき、収録することを決意しました。僕が初めて弾き語りをした曲がこの「メロディー」です。玉置さんへの憧れも含めて、本当に思い入れの強い曲です。――実際に玉置さんにお会いしたことは?ないです。もしもプライベートでお会いしたら緊張してしゃべれないと思います(笑)。ただ、もし今後、一緒のステージに立たせていただける機会が来るとしたら、そんな光栄なことはないですね。そのときは全力で玉置さんにぶつかっていきたいと思います。――今回はカバーEPですが、オリジナル曲を歌うときと意識の違いなどはあるのでしょうか。カバーの難しいところは、すでに正解があること。カバー曲では歌のバランスだったり、自分の色をどのぐらい入れるのかだったり、調整して歌っていくことを意識しました。――聴き手にはどんなふうに聴いてほしいでしょうか。今回は弾き語りではなく、歌一本に集中して、歌の力を届けられたらと思っています。カバーさせていただいた曲は、僕がずっと聴いてきた音楽。本当にいい音楽は10年経っても20年経っても、ずっと誰かの心に残り続ける楽曲なんですよね。そういった曲を僕のファンのみなさんは若い世代の方が多いので、恐縮ながらいい楽曲との架け橋になって、「いい曲はずっと残り続けるんだよ」ということが伝わればいいなと思っているので、みなさんにも聴いてほしいですね。――カバー曲を披露するライブのご予定はありますか。10月にビルボードライブを行う予定があります。武部さんとともにステージを作らせていただくので、普段のライブではカバー曲はやらないのですが今回はEPの曲を中心に、候補としてあがっていたけれど入れられなかった曲、オリジナル曲も含めて披露する、ボリューミーなステージになると思います。全国のみなさんに恩返しや感謝を伝えたい――お話は変わりますが、おやすみの日はどんなふうに過ごしていますか。家族と過ごす日もあれば、ひとりでボーッとするときもあれば、映画を観るときもあれば、日によってさまざまですね。――おうちではどんなパパでいらっしゃいますか。最近のエピソードを教えてください。子どもを保育園に送ったり、お風呂に入れたりするのは、基本的に僕がやっています。お風呂の中では、僕と子どもの2人の時間。お風呂上がりにボタンを押して、ママを呼び出すんですが、僕と子どものルーティーンとして、迎えにきたママを笑わせるという一幕があります(笑)。――率先して育児をしてくれると、奥さまもうれしいですよね?どうなんでしょうね(笑)。でも子育ては一緒にするものだと思っているので、自然とやっています。ただ、僕は料理が作れないですし、仕事で遅いときは奥さんが寝かしつけまでひとりでやっているので、できることをやるのはごく当たり前な気がしますね。――お子さんはパパの曲を聴くことはありますか。聴くこともありますし、どこかで流れていてもパパの歌だとわかってくれていますね。もうすぐ3歳になるので、テレビに出ている僕の顔もわかりますし、僕の仲のいいミュージシャンがテレビに出ていてもわかったりしますよ。――子守唄を歌ってみようとは?子どもが生まれたての頃は、ギターを弾いてあげたりもしましたが、いまはもう3歳になるのでそろそろ「ウルサイ」と言われそうだから(笑)、やらないです。――川崎さんは素敵なラブソングを歌われていますし、実際にあたたかいご家庭を築いていらっしゃいますが、運命の人を見つける秘訣はありますか?僕は女心をわかっているわけではないんですが、相手に対する愛や思いは口に出して行動していますね。口にしないと、気持ちは3割しか相手には伝わらないといわれてもいるので、「ごめんね」や「ありがとう」もしかり、「ネイル変えた?」や「髪切った?」もしかり(笑)。男性って、心の中では思ってはいるけれど、言わないだけなんですよね。出会って7年、結婚4年ですが、奥さんにもカワイイなと思ったら「カワイイね」と言いますし(笑)。それは昔から変わらず、毎日言いますし、そういうところを大事にしています。だから、気になる人には思っていることを伝えたり、言ってくれる人を見つけたりするといいのかもしれませんね。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。僕がいろいろな方に楽曲を聴いていただけるようになったのは、コロナ禍になってからなんですね。だからあらためて、僕の曲に出会ってくださった、全国のみなさんに、聴いていただいている恩返しや感謝を直接伝えていきたい。まだライブに来られない人もいますが、今年、来年と全国に行って、さまざまな思いを届けられたらいいなと。そして、いろいろなことにチャレンジし続ける人生を歩んでいけたらと思います。取材後記当時は彼女、現在奥さまへの愛を歌った「魔法の絨毯」など、女性の心をとらえるラブソングを数多く歌う、川崎鷹也さん。シンガーソングライターとしても才能を発揮されているなか、新作ではシンガーとして、思い入れのある楽曲を聴かせてくださいます。そんな川崎さんのカバーEPで、名曲がどのように変身しているかみなさんもチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみり川崎鷹也PROFILE1995年、栃木県生まれ。2018年、アルバム『I believe in you』でシンガーソングライターとして本的に音楽活動を開始。2020年8月、TikTokで「魔法の絨毯」が人気となり、同曲を使った動画が27,000本以上アップされ、Spotifyのバイラルチャートでは1位を獲得した。2021年7月、松本隆のトリビュートアルバム『風街に連れてって!』に参加し、大瀧詠一「君は天然色」をカバー。12月、初のメジャーアルバム『カレンダー』をリリース。2022年9月14日、カバーEP『白』をリリースする。InformationNew Release『白』(収録曲)01.「愛燦燦」(美空ひばり)02.「悲しみの果て」(エレファントカシマシ)03.「元気を出して」(竹内まりや)04.「366日」(HY)05.「メロディー」(玉置浩二)2022年9月14日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)WPCL-13399(CD)¥2,200(税込)(初回限定盤)WPZL-31994/5(CD+Blu-ray)¥2,750(税込)※7インチサイズ特殊パッケージ仕様。【Blu-ray収録内容】『白』LIVE STYLE MOVIES取材、文・かわむらあみり
2022年09月15日【音楽通信】第118回目に登場するのは、15歳でラップを始め、ZeebraさんやSKY-HIさんらからも一目置かれるラッパーでシンガーソングライターのNovel Core(ノベルコア)さん!指揮者を目指したのちラッパーとなり才能が開花【音楽通信】vol.11815歳でラップを始め、ストリートパフォーマンスやMCバトルで頭角を現し、2017年には「BAZOOKA!!! 第12回高校生RAP選手権」で歴代最年少で優勝したNovel Coreさん。その後、ヒップホップ界のカリスマであるZeebraさん主宰のレーベルと契約後、本格的にアーティスト活動をスタート。現在はSKY-HIさん主宰のマネジメント/レーベル「BMSG」の第一弾アーティストとなり、2021年にリリースしたメジャー1stアルバム『A GREAT FOOL』が1位を獲得するなど、ラッパー/シンガーソングライターとして活躍されています。そんなNovel Coreさんが2022年8月3日、2ndアルバム『No Pressure』をリリースされたということで、お話をうかがいました。――まずは小さい頃に音楽に触れたきっかけから教えてください。母親が学生時代にバンドのボーカルを担当していたこともあり、小さい頃から、家ではロックを中心にオールジャンルの音楽に触れる機会がありました。なかでも、(アメリカのロックバンド)ボン・ジョヴィが好きで、東京ドームの来日公演も観に行ったことがあります。中学生のときは、合唱コンクールで指揮者に立候補したことがきっかけで、クラシックにすごくハマった時期がありました。一時期は指揮者を目指して独学で勉強していたのですが、音楽大学に行くというのが、当時は経済的にも学力面でも厳しく、諦めることに。そんな挫折したときに、ラップに出会いました。高校1年生になる前のタイミングで、「音楽がやりたいけれど自分に合うものはあるかな?」といつものように音楽の動画を観ていたら、ヒップホップのインスト動画が出てきて。インストなのでボーカルは入っていなかったのですが、その動画ではいろいろな音楽のジャンルが入っていて、「これは面白いな」と感じました。――2017年に若手ラッパーの登竜門と言われる「BAZOOKA!!! 第12回高校生RAP選手権」では、歴代最年少で優勝していますね。クラシックからラップへと移行されてから、本格的に音楽の道を目指すようになったのでしょうか。はい。ラップに出会ったタイミングから、音楽で大きくなりたいという気持ちが芽生えました。最初の頃は、路上パフォーマンスもやっていて、少しずつ注目されていって。そこから音楽の制作をし始める前に、名前を売るためにMCバトルなどに出させていただいていましたね。――10代の頃から才能を発揮されて、ZeebraさんやSKY-HIさんからスカウトされレーベルに所属するなど、一目置かれるご自身の魅力はどこだと分析されますか。Zeebraさんも日高さんも(SKY-HIさんの本名、日高光啓さん)、僕の行動力を買っている、というお話をされたことがあります。明確に未来へのヴィジョンがあって、入念に準備して行動に移すというのが、ルーティンとしてあって。それが15歳の時点で固まっていたというところで、Zeebraさんにお声がけいただけたのかなと。6月に行ったワンマンライブでは、Zeebraさんや日高さんにゲストとして来ていただいて、一緒にパフォーマンスをさせていただきました。――現在、SKY-HIさん主宰のレーベルに所属されていますが、普段から交流はあるのでしょうか。暇さえあれば、音楽の話やそれ以外のところでも、いろいろな話をします。アーティストとしてのキャリアのことなど、悩んだことがあったら、まずは日高さんに聞きますし、逆に日高さんから相談を受けることも。僕たちにしかわからないことを話し合うことがありますね。――2020年にメジャーデビューされ、2021年に発表したメジャー1stアルバムが1位を獲得するなど、注目度が高まっていますが、何か心境の変化はありましたか。MCバトルに出たときも、路上パフォーマンスを行ったときも、恋愛リアリティショー(AbemaTV『月とオオカミちゃんには騙されない』)に出演させてもらったときも、そのときどきで大きく注目されることがありました。その度に、いまの自分に対して「もっとうこうしなきゃ」と常に考えます。どんなきっかけであれ、たくさんの方に僕のことを知ってもらえて興味を持ってもらえるのであれば、精一杯いいものを作って、それをサプライし続けていきたいですね。「幸せとは何か」という普遍的なテーマのアルバム――2022年8月3日に、2ndアルバム『No Pressure』をリリースされましたね。いつ頃から制作されていましたか。昨年末から取り掛かり、実質的には今年に入ってから、半年間ぐらいで制作しました。――アルバムのタイトル曲「No Pressure(Prod.UTA)」や、軽快なリード曲「独創ファンタジスタ(Prod.KNOTT)」は、どのように生まれた曲ですか。今回、アルバムの制作中に、初めての全国ツアーをやらせていただいたり、ワンマンライブにバンドの追加メンバーが入って体制が変わるなど、アルバムの制作に集中しながらというよりは、いろいろなことをこなしながら作って。スタジオには、当日もまだ歌詞をまったく書けていない状態で行って、ブースで2時間で歌詞を書き上げて、そのまま録るということがほとんどでしたね。――すべての作詞作曲を手がけていらっしゃいますが、いつもはもっとじっくり曲作りをしていくのですか。けっこう時間をかけて、歌詞を書くこともありました。でも最近は、時間があったとしても、スタジオに入ってからそのときに出てくる素直な感情を採用したくなって。考える時間があればあるだけ、本当に伝えたいことが遠回りになりそうな気もするので、その場で作るようになりました。できるだけストレートにメッセージを伝えたいから、瞬発的に出る言葉や直感的なものを大事にしています。そういったとき以外のメロディや歌詞の内容は、シャワーを浴びている最中だったり、移動中のタクシーの中だったり、ふと浮かんでくることが多いです。窓から見える景色にインスピレーションを得て降ってくるようなこともあるので、忘れないようにフレーズをメモしておいたり、メロディはボイスメモに録っておいたり。いざ制作に入ると、プロデューサーさんにそうやって生まれた曲を渡して、一緒にああだこうだ言いながら作っていくのがすごく楽しいですね。――わずかな音だけが聴こえる8曲目「Skit」が最後の曲の前に入っていますが、どのような意図でしょうか。この曲には、カセットテープの再生を停止する音のようなものを入れさせていただきました。実は最後の9曲目は最後ではなく、7曲目がアルバムの最後というイメージ。つまり、1曲目から7曲目の再生を終えたイメージで、8曲目にこのカセットの音を入れて、9曲目につながる時間の変化を表現しています。――そんな9曲目「Untitled(Prod.Yuya Kumagai)」は雰囲気が変わり、アコースティックギターに乗せて歌うバラードですね。この曲はもともとアルバムに収録する予定ではなく、急きょ増やした1曲です。制作が佳境に入り、締め切りが迫ってきたタイミングであったワンマンライブで、僕のバンドでギターを弾いてもらっているクマガイユウヤさんにプロデュースしていただきました。クマガイさんは、僕が路上パフォーマンスをしていた同じ時期に、同じ場所で、路上ライブをされていた方。話を聞けば聞くほど「もしかしたらどこかですれ違っていたかもしれない」という方と、こうして音楽のもとで巡り合って、一緒に音楽を作っているという感動やその空気感をこのアルバムに入れたくて、ワンマンが終わってからオファーさせてもらいました。この曲は、もし明日地球が終わるとしたら自分自身は今日、何をするかがテーマ。サビにある「今を口ずさんで」というフレーズは自然に出てきたんですが、そのとき「地球がもし明日終わるとしても、誰かに向けた歌じゃなかったとしても、自分の今を切り取って歌にするんだな」と気づきました。そこから「心の底から音楽がすごく好きだ」ということを再確認して、聴いていると涙が出てしまった曲です。――クールでメッセージ性の強い曲から、そっと語るように歌う曲まで、表情豊かな9曲がそろいましたね。あらためて今作をどのように聴いてほしいでしょうか。今の時代、サブスクリプションが主流になって、1曲単位で聴いていただく機会が多いと思うのですが、1回目の視聴はできれば頭から最後まで並び順で聴いてもらえたらうれしいですね。流れを大事にしながら制作したアルバムでもあるので、頭から聴いてもらえたら、アルバムにした意味がそこにあります。――ジャケット写真は「No Pressure」のリリックビデオに登場するクマのキャラクター「ロンリーベア」のイラストですね。これはポジティブとネガティブの両方の象徴としてのキャラクターです。このアルバムが持つ幸せとは何か? という普遍的なテーマに関して、ジャケットにNovel Coreが前に出すぎるとテーマが死んでしまう気がして、何か違うキャラクターが必要だと感じて作りました。ロンリーベアは笑ったり、慌てたりもなく、表情がないのが大事。だからこそ、悲しんでいるのか、喜んでいるのか、想像する余白もできると思っています。――アルバムリリース後は、ツアーのご予定はありますか。発表は8月中旬ですね。前にやらせていただいた全国ツアーは僕の相棒のDJ KOTAくんとまわらせてもらったんですが、今度の全国ツアーは、僕のワンマンライブで組ませていただいたバンドと一緒に全国をまわらせてもらいます。バンドだからこそのセットリストの組み方になるはず。音楽で走り切るライブにしたいので、MCも極力削って、スピード感あるものにしようと考えています。デビューから3年以内に日本武道館公演をやる――お話は変わりますが、普段の様子も教えてください。ご趣味はありますか。映画を観ることやファッションに関することがすごく好きです。休日は映画館に行ったり、外食したときはそのまま原宿へ洋服を買いに行ったり。1日で7、8店舗まわることもあるので、スタイリストさんと話が盛り上がります(笑)。――すごいですね。映画は配信で観る方も多いですが、ちゃんと映画館で観る派ですか。できれば映画館で迫力のある音で観たいなと。とくにトム・ハンクスとジム・キャリーが大好きなので、あのふたりが出ている映画は全部観ていますね。それと映画館のポップコーンが大好きで、市販のポップコーンではなく、「今焼きました!」という感じのポップコーンがすごく好き(笑)。だから、たまに映画館には、映画は観ないでポップコーンだけ買いにいくこともあります。――ファッションは、ハイブランドを着用されている印象がありますが、ご自身でもお好きですか。そうですね。洋服はハイブランドだったり、逆にストリート寄りのものだったり、セレクトショップに買いに行くことが多いかな。モードとストリートの中間ぐらいをいくのが好きですね。“ラグジュアリーストリート”のようなテーマが好きです。ファッションにおいて、差し色は常に意識しています。今日のように黒と白でシンプルに構成しているときは、シルバーのアクセサリーを身に着けたり、パールを入れたり、アクセントを意識して服を組んでいます。今日はわりとそろった形のパールをつけていますが、メンズはふぞろいな形のパールもつけやすくて、いつもは四連ぐらいのパールや、大玉のパールをつけることもありますね。――おうちではどのようにリラックスされていますか。僕は保護した猫を3匹飼っているので、猫とたわむれるのが一番、リラックスできる時間ですね。前も1匹だけ飼っていたときがあったのですが、仕事に行っている間は1匹だけにしてしまうので、寂しくないかなと心配だったのですが、3匹いると僕がいないときも3匹で遊んでいてくれるので、安心しています。小さい頃から動物が大好きで、犬も飼っていました。いまも猫を飼っていても、猫カフェに行ったりします(笑)。――本当に動物がお好きなんですね。猫カフェに行くときは、変装して行きますか?いえ、そのまんまで行きます(笑)。基本的に、仕事での衣装もスタイリングはセルフですし、今日の衣装も私服なんです。ステージに立っていたときの衣装で派手なものはそのまま私服なので、わりと街では「あれ? Novel Coreじゃない?」とバレたりもするんですが(笑)、逆にそのまんますぎてあやしがられて、声をかけられないですね。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。メジャーデビューから3年以内に「日本武道館公演をやる」ということを目標にしているので、まずはそこにたどりつけるように頑張りたいです。そしてリリースを止めずに、これからも、新しい作品を世に出していきたいと思います。取材後記ZeebraさんやSKY-HIさんといった錚々たる方たちからも一目置かれる、Novel Coreさん。ananwebの取材の日、東京では雨が降っていました。撮影時、服がぬれないか心配していると、「全然平気ですよ」と爽やかな笑顔で応えてくださったNovel Coreさん。しかも衣装ではなく私服で、さらにスタイリングもご自身でされているとはスゴイですよね。そんなNovel Coreさんのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・大内カオリ取材、文・かわむらあみりNovel CorePROFILE2001年1月18日、東京都生まれ。ラッパー、シンガーソングライター。15歳でラップを始め、ストリートパフォーマンスやMCバトルでその頭角を現す。2017年、「BAZOOKA!!! 第12回高校生RAP選手権」にて歴代最年少で優勝を勝ち取り、 Zeebra主宰のレーベル「GRAND MASTER」と契約後、本格的にアーティスト活動を開始。現在はSKY-HI主宰のマネジメント/レーベル「BMSG」に第一弾アーティストとして所属。2021年12月にリリースしたメジャー1stアルバム『A GREAT FOOL』が各チャートで日本1位を獲得するなか、トップメゾンのモデルに起用されるなど、 ファッション業界からも注目を集める新鋭アーティスト。2022年8月3日、2ndアルバム『No Pressure』をリリース。全国ツアーも予定。InformationNew Release『No Pressure』(収録曲)01.TROUBLE (Prod. Ryosuke “Dr.R“ Sakai)02.JUST NOISE (Prod. MATZ)03.BABEL (Prod. KM)04.No Stylist (Prod. Yosi)05.独創ファンタジスタ (Prod. KNOTT)06.No Pressure (Prod. UTA)07.HAPPY TEARS feat. Aile The Shota (Prod. Matt Cab)08.Skit09.Untitled (Prod. Yuya Kumagai)2022年8月3日発売*収録曲は全形態共通。*全形態スマプラ対応。(通常盤)AVCD-96998(CD)¥2,200(税込)特典:ジャケットサイズステッカーAジャケットサイズステッカーB(BMSG MUSIC SHOP限定)(初回生産限定盤)AVCD-96997/B(CD+Blu-ray)¥7,150(税込)特典:直筆サイン入りZine ver.1(全24P)【Blu-ray収録内容】(MUSIC VIDEO)・HAPPY TEARS feat. Aile The Shota ・独創ファンタジスタ(LYRICS VIDEO)・TROUBLE ・No Pressure(LIVE)”A GREAT FOOL” BIRTHDAY LIVE (2022.01.22)at CLUB CITTA’”(DOCUMENTARY MOVIE)Behind The Scenes of No Pressure(BMSG MUSIC SHOP限定盤)AVC1-96999/B(CD+Blu-ray)¥7,150(税込)*Blu-ray収録内容は初回生産限定盤と共通。*仕様:三方背ケース。*特典:直筆サイン入りZine ver.2(全24P)写真・大内カオリ 取材、文・かわむらあみり
2022年08月14日【音楽通信】第117回目に登場するのは、アメリカと日本を拠点に活動し、今後さらにワールドワイドに羽ばたいていくソロアーティスト、Ayumu Imazuさん!6歳からダンス、14歳から作詞作曲を始める【音楽通信】vol.11714歳でニューヨークへのアーティスト留学を経験後、 現在も活動の拠点をアメリカと日本に置いて活動しているAyumu Imazuさん。作詞作曲やダンスの振り付けまでを手がけ、圧倒的なダンスパフォーマンスや日本語と英語のバイリンガルを武器にした歌声で魅了し、今後、グローバルに活躍するアーティストとして熱視線を浴びています。2021年8月のメジャーデビューから1年となる2022年8月10日に、1stフルアルバム『Pixel』をリリースされたということで、お話をうかがいました。――まずは小さい頃に音楽に触れたきっかけと、影響を受けたアーティストから教えてください。母の勧めで6歳の頃からダンスを始めてから、洋楽に触れるようになりました。ダンス曲でよく聴いていたのは、ブラック・アイド・ピーズというアーティストグループです。14歳のときには、スーパーボウルのハーフタイムで行われるブルーノ・マーズのショーをテレビで観て、「すごいな、この人みたいになりたい!」と思って、作詞作曲や自分自身のクリエイティビティに取り組むようになりました。――楽器はギター、ピアノ、ベースが弾けるそうですね。14歳のときにアコースティックギターから始めました。それからピアノ、キーボードを練習して、ギターの延長でベースを始めました。楽器を演奏することは、僕にとって楽しいことです。さらに、作詞作曲をする楽しさも加わっていきました。ギターだけで作曲すると曲調が限られるので、ピアノでも作曲すると、楽曲の幅が広がったように思います。――14歳からニューヨークへ留学をされましたが、ホームシックになることはなかったですか。なりましたし、普通の学生生活が恋しくなりました。でも、僕のそのときの経験はかけがえのないものですし、当時もいまもニューヨーク留学を経験していてよかったと思います。いまは日本以外でも、アメリカにいても自分らしくいられるというのは感じていますし、人としてもアーティストとしても成長できる場所です。――もともと音楽でプロになることは幼少時からの夢だったのでしょうか。小さい頃から「ソロアーティストになりたい」というビジョンがずっと自分の中にありました。最初は試行錯誤しながら楽曲を作って、インディーズ活動でEPを2作品リリースしたり、ミュージックビデオの撮影や色々な経験と挑戦をしてきて、1年前にメジャーデビューしました。――実際にデビューしてから心境の変化はありますか。この1年の間、色々なことを感じましたし、経験しました。やっぱりメジャーデビューとなるとよりいっそう気合を入れなきゃいけない。とくに最初の1年は大事な時期だという自覚があって、そのぶん色々な方向性や狙いを定めて楽曲制作をしてきました。僕はダンスからスタートしたので、一番の強みはダンスだと、あらためて確信しました。1stアルバムはデビューから1年の集大成――2022年8月10日に1stアルバム『Pixel』をリリースされましたね。このアルバムはメジャーデビューから1年の集大成の作品になっています。デビューシングルの「Juice」が入っていたり、その後にリリースしたシングル曲が入っていたりもするので、Ayumu Imazuのこの1年間の成長が感じられるアルバムになっています。僕の強みであるダンスを100パーセント見せられる曲として、5月に出したばかりのシングル「Tangerine」も入っていますし、アルバムのリード曲「Over You」もダンス曲でよりクールな印象になりました。タイトルの『Pixel』は、楽曲ひとつ一つにこだわりを持って、丁寧に磨いてきた11曲の結集という意味があります。アーティスト活動をしていくなかで、軸がしっかり整っていないと、遠くから見たときにきれいに見えないという考えがありました。その考えを持ってやっていくことで、こうして11曲が集まってアルバムとなったときにも、きれいな作品になっていると感じます。――収録曲の「破片」は切ないラブバラードですが、どのように曲作りをしていきましたか。作詞作曲の原点でもある、アコースティックギターで曲作りをしていきました。同じように、今回のアルバムにも、シンガーソングライターとしての面がより表現されている曲「薔薇色の夜」もあります。この曲も、ダンス曲というよりは、歌声を聴いていただける楽曲になっています。――「薔薇色の夜」に出てくる歌詞で、例えば「平行線の先に映す影法師」や「線香花火 松葉が散り舞い落ち」など、ほぼ日本語で情緒のある言葉が綴られている部分とかっこいいサウンドとのマッチ感がすごく素敵だと思いました。ありがとうございます。この曲もアコースティックギターで作っていきました。もともと(2021年リリースのデジタルシングル)「浮遊夢」という曲があって、その曲がもう少しJ-POPライクな曲なのですが、その曲よりさらにパワーアップした曲を作りたいと思い、「薔薇色の夜」ができました。英語の歌詞は2行しかないんですが、歌詞を書く際、J-POPライクな曲はより歌詞にこだわって書いています。一番歌詞を伝えやすいのは、日本語詞で書くのが一番だと思っているので、この曲は日本語の良さが凝縮された曲になりました。――原点はアコースティックギターでの作詞作曲とのことですが、それ以外ではどのように曲作りしているのでしょうか。アコースティックギターだと、しんみりする曲を作ることが多いので、ダンスチューンを書くときは、音源からかためて、メロディラインをつけて、そこからリズムに合った歌詞を当てはめていくという順番が多いですね。パッと頭に思い浮かんだものは、ボイスメモに録音しています。そこからある程度形にしていくときもありますし、プロデューサーの方と相談しながら共同で制作していくことも。今回のアルバムだと、「Tangerine」と「Over You」をプロデューサーの今井了介さんと一緒に作らせていただきました。今井さんは僕がどういった形でアイデアを持っていっても、広げてくれる信頼できるプロデューサーなので、一緒に制作していて楽しいですし、テンションが上がります(笑)。――ダンスの振り付けもご自身でされていますね。自分の中で一番、ナチュラルにできるものがダンスだと感じているので、ダンスの振り付けはスラスラと作ります。作詞作曲よりもダンス歴が長いので、作詞作曲をするほうがもっと時間がかかりますね。――いま日本とアメリカの両方に拠点を置いて活動されていて、そういったグローバルな感覚はご自身の音楽にも影響されていますか。アメリカで聴いている音楽や、人と会話をしているなかで、曲が生まれることもあるので、最近の英語の言い回しなど歌詞には影響しているところがあると思います。日本語詞と英語詞の両方に、それぞれ意味を込めて曲作りをしています。――ではアルバムをどんなふうに聴いてほしいでしょうか。『Pixel』はダンス曲を最初のほうに持ってきているのですが、まず僕の強みであるダンスのよさが伝わりやすい曲を先に聴いてほしいという狙いがあります。アルバムを聴いて楽しい気持ちになってほしいので、6曲目まではダンスノリノリ系の曲をまとめているのと、構成にもこだわって、曲順もしっかりと考えて選びました。――アルバムリリース後は、アルバムツアーのご予定などはありますか。この1stアルバムを引っ提げてのワンマンツアー「AYUMU IMAZU LIVE 2022 “Pixel”」で11月23日にShibuya WWW Xでの東京公演、11月25日にUMEDA CLUB QUATTROでの大阪公演があります。地元の大阪でライブができるのは、自分の中でテンションが上がりますし、楽しみです。両親にもライブに来てもらいたいです。このアルバムをファンの方に直接届けられる最初の場ですし、ダンスを直接表現してお客さんに届けられる場にしたいと思っています。「Ayumu Imazu」というアーティスト像を100パーセント表現できる場になると思うので、頑張りたいと思います。グローバルに活躍できるアーティストになりたい――お話は変わりますが、趣味に卓球があったり、特技のひとつにはルービックキューブがあったりしますね。そうなんです(笑)。卓球は、小学校6年生のときにクラブ活動で1年間卓球部に入って毎週金曜日にやっていたので、どハマりしました。ルービックキューブは1分ぐらいですぐ揃えられます(笑)。ニューヨークのビデオグラファーの方がやっているのを見て、かっこいいなと思っていろいろな場所で練習していたら、できるようになりました。――普段、おうちではどんなふうに過ごしていますか。家では本を読んだり、携帯を見たり。本は文庫本をよく読むのですが、とくに好きな作家はいなくて、その都度、タイトルとブックカバーで選びます。――ご自身で洋服を選ぶときは、ファッションのこだわりがあれば教えてください。古着が好きです。あまり他の人とかぶらないものが好きなので、古着のようなオンリーワンのものが着たいです。着るのはストリート系のファッションが多いです。――コンディションをキープするために、取り組んでいることはありますか。朝ごはんをしっかり食べるようにしています。日本に帰ってきたら、納豆と梅干しで朝ごはんをがっつり食べます。僕はダンスもするので、パフォーマンス前にはしっかりご飯を食べないと良いパフォーマンスができないところもあると思うので、食事はしっかり摂るようにしています。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。昔から、グローバルに活躍できるアーティストになりたいという目標があるので、その目標を達成させられるよう、これからも頑張っていこうと思います。取材後記6歳から始めたダンスでの表現力や、日本だけでなくアメリカで蓄積している経験など、アーティストとしてクリエイティビティをいまもなお高め続けているAyumu Imazuさん。抜群のパフォーマンスで魅了する姿もありながら、ananwebの取材の際には22歳という等身大の姿も感じさせてくださいました。そんなAyumu Imazuさんの1stアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・安田光優取材、文・かわむらあみりAyumu ImazuPROFILE2000年5月12日、大阪府生まれ。14歳より約3年半、アメリカ・ニューヨークのアーティスト留学を経験後、活動の拠点をアメリカと日本に置いて活動するアーティスト。2019年3月よりダンスパフォーマンスを交えたカバー動画をYouTubeに公開し、ブルーノ・マーズの曲「Finesse」をカバーした動画が約100万再生を記録し話題となる。10月、初のオリジナル楽曲のミュージックビデオ「PARADISE」を公開。2020年2月に1st EP『Epiphany』、9月に2nd EP『Waves』をリリースし、iTunesチャートは最高位11位にランクイン。2021年8月、シングル「Juice」でメジャーデビュー。2022年3月、配信シングル「破片」は全国のラジオやCSのパワープレイ26冠を獲得。5月の配信シングル「Tangerine」はSpotifyの主力プレイリスト含む13プレイリストにピックアップされるなど、Z世代を代表するアーティストとして注目を集めている。2022年8月10日、1stフルアルバム『Pixel』をリリース。「AYUMU IMAZU LIVE 2022 “Pixel”」と題したワンマンツアーを11月23日にShibuya WWW Xでの東京公演、11月25日にUMEDA CLUB QUATTROでの大阪公演を開催する。InformationNew Release『Pixel』(収録曲)01.Tangerine02.Juice03.Over You04.Butterfly05.Problem06.ACCHI KOCCHI07.薔薇色の夜08.Unpredictable09.Stranger10. 破片11. Colors2022年8月10日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)WPCL-13395(CD)¥3,080(税込)(初回生産限定盤)WPZL-31988/9(CD+DVD)¥5,500 (税込)*撮り下ろしフォトブックレット(36P)【DVD収録内容】<Music Video>01.Juice 02.Stranger 03.ACCHI KOCCHI 04.破片 05.Tangerine<AYUMU IMAZU LIVE 2021 “Prologue”@SHIBUYA WWW X>01.Lover 02.Blinded Eyes 03.Lonely Boy 04.さまない 05.雨跡 06.破片 07.PARADISE 08.Light Up 09.浮遊夢 ENC.Juice写真・安田光優 取材、文・かわむらあみり
2022年08月10日【音楽通信】第116回目に登場するのは、唯一無二の歌声をたくさんの人々に届けて、今年デビュー20周年を迎えたシンガー、元(はじめ)ちとせさん!生活にシマ唄と奄美の音楽が根付いていた【音楽通信】vol.1162002年にリリースされたデビュー曲「ワダツミの木」が大ヒットし、その歌声を全国区に響かせ続けデビュー20周年を迎えた、鹿児島県奄美大島出身のシンガー、元ちとせさん。数々の作品を発表するなか、戦後70年となる2015年には、坂本龍一プロデュース曲「死んだ女の子」なども収録された平和への思いを込めたカバーアルバム『平和元年』を発表し、第57回日本レコード大賞『企画賞』を受賞。2018年には自身の原点である「奄美シマ唄」の新録アルバム『元唄〜元ちとせ奄美シマ唄集〜』や、2021年には奄美大島の世界遺産登録を記念した『トコトワ〜奄美セレクションアルバム〜』をリリースするなど、現在も拠点を置く奄美大島や平和への願いを込めた歌をわたしたちに届けてくれています。そんな元さんが、2022年7月6日に、オリジナルアルバム『虹の麓』をリリースされるということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。――あらためまして、小さい頃に音楽に触れたきっかけからお聞かせください。故郷・奄美大島のわたしの育った場所は、まわりに大島紬の織物工場や畑があって、そこで働くおばあちゃんたちが自然とシマ唄を口ずさんでいる環境だったんです。そのため常に生活の中に、シマ唄や奄美の音楽がありました。――元さんが歌われているカタカナを用いる「シマ唄」と、漢字の「島唄」の違いはなんでしょうか。奄美の場合は、シマ唄はカタカナで「シマ」と書く「シマ唄」、アイランドソングという意味ではなく、なわばり=自分たちのシマ(場所)という意味なんです。わたしはずっと「シマ唄」を歌ってきました。――お母さまから三味線を勧められ、小学生のときには自らシマ唄を習い始めたそうですね。お祭りごとがあるときでも、(遠くて)気軽に誰かを呼べるような場所ではなかったので、自分たちが技術を身につけて、歌ったり踊ったりと盛り上げなくてはいけなかったんです。そんなときにシマ唄をみんなで歌って、ちょっと三味線を弾くだけでも、おじいちゃんやおばあちゃんが本当に喜んでくれるので「だったらやりたいな」と思ったのが、さらにシマ唄や三味線に興味を持ち始めたきっかけでした。三味線は、たとえばギターのように楽譜があるものではないので、三味線だけやっていてもレパートリーが増えないと言いますか。歌を覚えれば、歌に合わせて耳で音を探って弾けるので、三味線をもっと弾くためにも、歌を覚えたいと思っていましたね。――高校3年生のときには「奄美民謡大賞」の「民謡大賞」を史上最年少で受賞されています。とにかく歌うことが好きだったんです。その年齢でシマ唄をやっている人も少なかったですし、夢中だったので、たぶん人の倍は練習していたかもしれません。でも、厳しい訓練ということではなく、好きだからひたすら1日中、三味線を弾いて歌っていた結果、その年の大賞をいただけたんだと思います。――2002年2月にシングル「ワダツミの木」でメジャーデビュー、シングルチャートで1位を記録した大ヒット曲ですが、当時のお気持ちは覚えていますか。インディーズのときから歌って、ライブもさせていただいたりしていたので、あまりデビューの重みをわかっていなかったかもしれません。とにかく歌を歌うこと自体が楽しかったですし、自分のオリジナルソングを作り上げていく作業もうれしくて、デビューしたことよりもひたすら歌えることが楽しかったですね。当時は、あまり奄美大島という場所がいまほど認知されていませんでしたし、わたしの苗字の「元」という名前も珍しかったですし、そういう点や変わった歌い方でみなさんが興味を持ってくれたところもあったと思います。――デビュー20周年を迎えられましたね。すごく忙しすぎて20年が過ぎたということでもなく、すごく苦労してつらかったこともなく、とてもいいペースで歌と向き合いながら、この20年を歩いてくることができました。聴いてくださっているみなさんやまわりの方々に支えられての20年です。節目となるデビュー20周年のオリジナルアルバム――2022年7月6日に、5thアルバム『虹の麓』をリリースされます。オリジナルアルバムとしては14年ぶりとなりますね。20周年を節目として、アルバムを作りたかったんです。オリジナル作品は14年ぶりとなりましたが、それはやっぱり上田現さん(デビュー曲「ワダツミの木」ほか数々のプロデュースを担当した音楽家。2008年逝去)を失ったということが大きかったです。ただ、その間に、カバーアルバム『平和元年』やシマ唄集などリリースはしていましたし、歌と離れることなく向き合わせてもらえました。その流れからの20周年に向けて、コロナ禍でこれまで当たり前にできていたことが当たり前にできなくなったこともすごく影響しています。祈りや願いの先に、ちゃんと希望が見えてくる作品を作りたいと思い、初めてご一緒するアーティストやクリエイターの方々にも書いていただいたりしながら曲が集まってきてくれました。――とても意義深いタイミングのアルバムとなったのですね。今回、先行配信シングルも3曲収録されていますが、4月配信の坂本慎太郎さんプロデュース曲「船を待つ」は、海辺でゆったりしているような感覚もあります。最初に曲を聴いてどのような印象を持ちましたか。この曲もそうですが、今回初めてわたしに楽曲提供してくださった方々の曲は、すべてこれまでのわたしの曲にはなかったリズムやシンプルさ、自分では表現したことのなかったような楽曲でした。しかも楽曲提供してくださったシンガーソングライターの方々は、ご自身でも歌われる方々。ご本人が歌っているデモ音源が届いたときに、その人たちの味があって「それをまたわたしがどういうふうに表現できるのかな?」と考えるのは、初めて取り組む作業でしたね。――そういう意味では、新鮮だったのでしょうか。そうですね。坂本さんの「船を待つ」は、シンプルな中に不安と希望という、見えづらい大きな変化のようなことを声にして表現したのですが、すごく難しかったです。――5月配信の長澤知之さん作詞作曲「虹の麓」は、どこかトロピカルなレゲエのリズムがベースとなった曲で、アルバムのタイトル曲でもあります。長澤くんは同じ事務所に所属していて、もともと彼の才能とパワーをずっと感じていて。かわいらしいリズムの中に、力強さや、一歩ずつ歩こうというメッセージを感じたので、そんな思いを表現しながら歌いました。小さい頃、「虹の麓に宝箱がある」と信じて探しに行った自分を思い出したりもして、でもそれって現実には辿り着けないんですが、「前にきっとある」という見えない希望を探していたんですよね。そういう意味でも、希望のあるタイトルだなと思ったので、アルバムにもこのタイトルをつけました。――6月配信の折坂悠太さん作詞作曲「暁の鐘」は、ミュージックビデオに折坂さんもご出演されていますが、語りかけるような歌ですね。この曲は、坂本さんの曲とはまた違いますが、どういう歌い方をすればいいか悩んでいたら、「静かに呟いたりひとりごとを言っているイメージで」というアドバイスを受けたんです。でも、わたしはあまりひとりごとを言わないし、実践するのがすごく難しくて。これまでは遠くにいる人に届くような声を使うことが多かったのですが、この曲ではそばにいる誰かや自分に向けて、何かひとつ言葉を届けているイメージかなと。これもかなり苦戦しました。――元さんが三味線を弾いている、さかいゆうさんプロデュース「KAMA KULA」は、サビの「ラーレンハイヤー ヤーレンサイヤー」というワードも印象的でした。この曲は、ゆうくんがボーカルレコーディングのディレクションもしてくれました。「南の風が、北の大地に迷い込んだイメージなんです」と言われ、もちろん実際に目に見える風景ではないのですが、そのゆうくんの説明が腑に落ちたので、それをイメージしながら歌いました。そして三味線を入れたことで強くてパンチのあるものにもなりましたね。「ラーレンハイヤー ヤーレンサイヤー」は、意味のある言葉ではないんですが、民謡特有のお囃子などにありそうなフレーズということで、ゆうくんとふたりで作りました。――アルバムのラストに入っている「ヨイスラ節」は、奄美地方に古くから伝わるシマ唄のひとつのようですね。このシマ唄が持つメッセージ、そしてアルバムに収録された理由も教えてください。今回のアルバムを作る上では、やっぱりコロナの時代がやってきた影響が大きかったんです。もちろん平和への願いと祈りを1曲ずつに込めているんですが、反戦といったような大きく力強いメッセージを掲げるというわけではなく、コロナで世の中が断絶されて、それでも立ち上がって歩かなきゃいけないという思いと、身近なことで言えば当たり前に会えていた人たちに会えなくなっている、ただ食事に行くようなことがいまはあまりよく思われなくなっていることなど、思うところがあるなかでアルバムを作っていて。「ヨイスラ節」の歌詞の中に「今日(きゅう)ぬほこらしゃや ヨイスラ」と歌っている部分があって、それは「今日は素晴らしい日です」という意味なんです。奄美では《今日(きゅう)ぬほこらしゃや 何時ぃ(いてぃ)ゆりむ勝り何時ぃ(いてぃ)む 今日(きゅう)ぬぐとぅに あらちたぼれ》という、いろんなシマ唄で歌われたり、おじいちゃんやおばあちゃんが孫たちに「幸せになれよ」という意味を込めて、おまじないのようによく使う言葉があるんです。そんな歌詞の意味が、今回のアルバムに込めた思いにもとっても合っているので、この曲を最後に入れました。――ではアルバムがリリースされたあとは、みなさんにどんなふうに聴いてほしいでしょうか。シマ唄もそうですが、最初から歌の意味をすごく理解してやってきたかといえばそうでもなく、ただ大好きな音楽だから歌っていたという部分もあるんです。小さいときから触れていて、心の中の引き出しに入っている歌が、お守りのような存在になっている感覚があって。わたしは“いつも歌のお守りに守られてきた”という思いがあるので、みなさんにとっても、そういうアルバムになってほしいですね。ひとつでも多くのライブをやっていきたい――お話は変わりますが、現在も奄美大島にお住まいということで、2021年7月に奄美大島は世界自然遺産に登録されましたが、何か変化を感じることはありましたか。実は世界自然遺産に登録の4年前にも一度、登録の話が出てきたことがあったのですが、島の人間はみんな「登録されたらどうなるんだろう?」「誰が決めているの?」と、突然のことでよくわかっていなくて。でも、そのときは登録が見送られたんです。その間に、あらためて島のことを島の人たち自身が見つめ直す時間ができて、登録された場合どんなことがあるのか、そのなかでも忘れてはいけないことの確認など話し合いができました。島の人間としてこの4年間はとても貴重な時間でしたし、心構えができた上で「じゃあ登録されたいね」となって、念願叶って登録が決まり、島のみんなでバンザイして喜べたのでよかったです。奄美大島は、人と人との距離が近くて。子どもたちやお年寄りなど年齢問わずみんなで声をかけあって、たとえば一人暮らしのお年寄りの方のおうちに常に訪ねていくなど、まわりの人をいつも気にかけています。常にあったかいものを感じられるのが、奄美大島の魅力ですね。――普段のご様子も教えてください。いまハマっているものはありますか。ゴルフです(笑)。ひたすらウォーキングするだけだとすぐ飽きてしまうんですが、ゴルフはよく歩くスポーツですし、あまり意識しないうちに運動になりますし、年齢を重ねてもやっていけるスポーツだなと。奄美に1ヶ所だけゴルフ場があるんですが、景色もすごくきれいですし、海も見渡せます。――自然に恵まれた場所でいいですね。では、コンディションなどで気をつけていらっしゃることはありますか。喉ですね。ここ1、2年ぐらいでボイストレーニングの先生に出会って。もともと喉はとっても強くて何もしていなかったのですが、年齢を重ねるごとにケアしなければという自覚も出てきて、教わったことをやっています。まだ勉強中ですが、それもすごく楽しいです。――おうちでは何をしていますか?料理をすることが好きですね。――奄美の料理ですか?奄美の料理も作ることはありますが、年中、郷土料理を食べているわけではありませんね(笑)。子どもたちが食べたいというものを作っていて……ハンバーグとか、普通のものを作ります。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。音楽を生で届けることが簡単ではなくなったことを経験して、受け取ってくれる人たちが目の前にいて歌を歌える、ということのありがたさを実感していますね。このアルバムを持って、またこれまでわたしを支えてくれてきた曲も大切にして、ひとつでも多くライブをやりたいです。今後は、7月17日にduo MUSIC EXCHANGEで「Office Augusta 30th MUSIC BATON Vol.8元ちとせ『えにしありて』」、9月25日に横浜赤レンガパーク特設ステージで「Augusta Camp 2022 〜Office Augusta 30th Anniversary〜」に出演します。ぜひ楽しみにしていてほしいですね。取材後記一度聴いたら忘れられない歌声で、魂のこもった数々の歌を世に送りだしてきている、元ちとせさん。ananwebの取材では、デビューしてから20周年というアニバーサリーイヤーを迎えるなかで新作のことから普段のご様子まで、さまざまなお話をしてくださいました。そんな元さんのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみり元ちとせPROFILE1979年1月5日、鹿児島県奄美大島生まれ。2002年、シングル「ワダツミの木」でメジャーデビュー。2012年2月にデビュー10周年を迎え、初のベストアルバム『語り継ぐこと』をリリース。戦後70年となる2015年7月に“忘れない、繰り返さない”というコンセプトのもと、「今こそもう1度、平和を真剣に考える年になってほしい」という平和の思いを込めたニューアルバム『平和元年』をリリースし、 同作にて第57回日本レコード大賞『企画賞』を受賞。2018年に自身の原点である「奄美シマ唄」の新録アルバム『元唄〜元ちとせ奄美シマ唄集〜』を、2019年には同作を国内外の鬼才がリミックスした楽曲を収録したアナログレコード『元唄幽玄〜元ちとせ奄美シマ唄REMIX〜』をリリース。2021年8 月、奄美大島の世界遺産登録を記念して『トコトワ〜奄美セレクションアルバム〜』をリリース。2022年2月、デビューから満20年を迎え、2月2日に奄美大島PRムービーのテーマソングでもある新曲「えにしありて」を配信リリース。4〜6月、アルバムからの先行配信シングル3ヶ月連続リリースを経て、7月6日にオリジナルアルバムとしては実に14年ぶりとなる5枚目のオリジナルアルバム『虹の麓』をリリース。7月17日は東京・duo MUSIC EXCHANGEにて「Office Augusta 30th MUSIC BATON Vol.8元ちとせ『えにしありて』」を開催、9月25日には横浜赤レンガパーク特設ステージにて「Augusta Camp 2022 〜Office Augusta 30th Anniversary〜」に出演する。InformationNew Release『虹の麓』(収録曲)01. 暁の鐘02. 虹の麓03. KAMA KULA(元ちとせ×さかいゆう)04. 漣(さざなみ)の声05. 五坪ほどの土地でも06. 夏雲雀07. 感謝08. あなたの夢で目覚めた朝に09. えにしありて10. 船を待つ11. ヨイスラ節(冥丁REMIX)2022年7月6日発売(通常盤)UMCA-10089(CD)¥3,300(税込)取材、文・かわむらあみり
2022年07月05日【音楽通信】第115回目に登場するのは、今年デビュー3年目を迎えた、スーパー戦隊ヒーローからミス・ワールド日本代表までが集結する、多彩な男女7人組ダンス&ボーカルグループ、GENICのみなさん!デビューからたくましく強く時を経た3年目前列左から金谷鞠杏、西本茉生、宇井優良梨、雨宮翔。後列左から増子敦貴、西澤呈、小池竜暉。【音楽通信】vol.1152019年夏に結成した、男女7人組のダンス&ボーカルグループ、GENIC。2020年1月の「Da-iCE BEST TOUR 2020 -SPECIAL EDITION-」のオープニングアクト出演などを経て、5月にアルバム『GENEX』でメジャーデビュー。以降、コンスタントに楽曲をリリースしています。2021年7月には、コロナ禍により開催できなかった1stツアー「GENIC LIVE TOUR 2021 -GENEX-」を1年半越しに開催。2022年2月には、配信シングル「We Gotta Move」をリリースし、「GENIC LIVE HOUSE TOUR 2022 -We Gotta Move-」と題したライブハウスツアーを行いました。アーティストとしてだけではなく、俳優やモデルなど幅広いジャンルで活動の幅を広げるメンバーもいるGENICが、2022年7月6日に2ndアルバム『Ever Yours』をリリースされるということで、全員にお話をうかがいました。――お名前と、小さい頃に音楽に触れたきっかけや、影響を受けたアーティストなどから教えてください。増子増子敦貴(ましこあつき)、22歳です。小さい頃は『おかあさんといっしょ』(NHK Eテレ)をよく観ていて、テレビと一緒にずっと歌っていましたね。2、3歳の頃は、おばあちゃんの家に遊びに行くことが多くて、おばあちゃんをお客さんに見立ててコンサートをやったりしていました。増子敦貴(ましこあつき)。2000年1月5日、福島県生まれ。舞台やドラマなど幅広い分野で活動中。――増子さんはスーパー戦隊シリーズ『機界戦隊ゼンカイジャー』(2021年 テレビ朝日系)や舞台「『仮面ライダー斬月』 -鎧武外伝-」(2019年)にもご出演されるなど、お子さんにも影響力がありますが、小さい頃はスーパー戦隊シリーズ作品は観ていましたか。そうですね、もともと戦隊モノも好きだった上に、目立ちたがり屋な子どもでした。人前に出たがるタイプで、だからといって学校行事で前に出るまでの積極性はなく(笑)。父の車の中で、昔の歌謡曲を聴くこともありましたね。5歳ぐらいのときに、槇原敬之さんのライブに連れて行ってもらって、ほぼ最前列だったんです。そのとき、槇原さんに指さしをもらって、すごくときめいて。その後も、清水翔太さんのライブに行って衝撃を受けるなど、そうやって幼い頃からライブに行ってステージのすごさを知る環境だったことが、アーティストを目指したきっかけとして大きかったと思います。西澤呈(にしざわじょう)。2003年2月28日、神奈川県生まれ。GENICの楽曲を数多く手掛けている。西澤西澤呈(にしざわじょう)、19歳です。僕は生まれた瞬間からマイクを握っていたというぐらい(笑)、父がミュージシャンで音楽をやっていたので、常に音楽がそばにありました。音楽の道を目指したのも、父の友達が「D’ERLANGER(デランジェ)」というロックバンドをやっていて、そのライブを日本武道館へ観に行ってから「こんなふうにスポットライトを浴びて歌いたい」と思ったからです。それからは洋楽を聴くようになって、マイケル・ジャクソンを好きになって。僕もステージに立って、お客さんに思いを歌で伝えて、みなさんの居心地の良い場所を作ることができればとずっと思っていますね。雨宮翔(あめみやかける)。2001年8月9日、神奈川県生まれ。モデルとしても活動。雨宮雨宮翔(あめみやかける)、20歳です。母が音楽好きで、浜崎あゆみさんや倖田來未さんのライブに僕が2、3歳ぐらいのときからよく連れて行ってもらっていていました。それからは、3、4歳ぐらいのときに山下智久さんに影響を受けて、見よう見まねでカラオケで歌って踊ったのがきっかけで、4歳でダンスも習い始めました。5歳のときには、AAAさんのツアーで踊る「chibikkoAAA」というキッズダンサーをやらせていただくようになって、アーティストという存在をちゃんと認識した6歳ぐらいからはアーティストという職業をやりたいなと感じていました。西本茉生(にしもとまいき)。1998年10月19日、岡山県生まれ。GENICのリーダー。西本西本茉生(にしもとまいき)、23歳です。小さい頃から音楽が好きで、テレビにかじりついて音楽番組をよく観ていた子どもでした。親が運転する車では、その当時テレビに出ていた方たちの歌をジャンルレスにかけていて、ずっと歌っていたようです。影響を受けたのは、高校時代にEXO(エクソ)さんのライブDVDを観たこと。すごくかっこいいなと思って、そこから歌とダンスをやりたいと思ったのが、アーティストを目指したきっかけですね。金谷鞠杏(かねやまりあ)。2001年12月31日、秋田県生まれ。テレビや雑誌、ラジオなどモデルやタレントとしても多数出演。金谷金谷鞠杏(かねやまりあ)、20歳です。母のおなかの中にいるときから、マライア・キャリーやマイケル・ジャクソンなどの音楽を聴かされていたそうで、小さい頃から洋楽を耳コピして、母の運転する車の中で大熱唱していたみたいです(笑)。3、4歳ぐらいのときに、母の友達が運営しているダンススクールに遊びに行ったのがきっかけで習うようになって、そこでは音楽を楽しむためのイベントに出演するための練習をやっていました。小学校6年生のときには「モデルになりたい」と思うようになって、オーディションのために上京したときに、いまの事務所でもあるavexの方にモデルとしてスカウトされて所属して。ただ、もともとダンスをやっていたということと、音楽事務所なので歌もやってみてはと提案されて、5〜6年間レッスンを積む練習生の期間が長かったですね。一度、期間限定グループのメンバーとしてデビューを経験したのですが、プロジェクトが解散になって悔しくて。でも、ダンス&ボーカルグループの夢が諦められなくて、GENICのオーディションを受けていまに至ります。母とは、EXILEさんなどが所属するLDHさんのアーティストのライブに一緒によく行きましたし、E-girlsさんのように歌って踊れるようになりたいなと影響を受けましたね。小池竜暉(こいけりゅうき)。2000年8月11日、群馬県生まれ。GENICの楽曲を数多く手掛けている。小池小池竜暉(こいけりゅうき)、21歳です。田舎育ち特有といいますか、祖父母の家にカラオケがありまして、小さい頃の写真を見るとどれもマイクを持っている写真が多くて。昔から歌うことを身近に感じていました。物心ついたときから親はEXILEさんが大好きで、家ではずっとEXILEさんが流れていて、実際にライブにも行っていました。アーティストを目指したきっかけは、目の前でEXILE ATSUSHIさんの歌声を聴いて、バラードで涙を流す人もいれば明るい曲では楽しくなって「こんなにも歌で人を感動させることができるのか」と感動して。自分も歌を通して、人の心を動かせるようになりたいと思いました。宇井優良梨(ういゆらり)。2004年12月26日、愛知県生まれ。モデルとしても活動。宇井宇井優良梨(ういゆらり)、17歳です。小さい頃から、母が浜崎あゆみさんのことを大好きでよく聴いていた影響で、わたしも好きになりました。アーティストを目指すようになったのも、浜崎さんのステージのパフォーマンスを見て「自分もこんなに人を惹き込めるようなパフォーマンスができたらな」と思ったことがきっかけです。――この7名で2019年にGENICを結成してから、今年で3年目になりますね。西本はい。僕らはデビューのタイミングがコロナ禍と重なってしまい、緊急事態宣言の真っただ中に、Zoomでデビューを発表することになりました。そこから、お客さんの声が聴こえないライブが当たり前という経験をしながら活動してきているので、たくましく強く2年間を過ごせたのかなと思っています。メンバーが書いた手紙のようなニューアルバム――2022年7月6日に、2ndアルバム『Ever Yours』をリリースしますね。あらためてタイトルに込めた意味と、アルバムについてお聞かせください。西澤コロナ禍にリリースしたシングル7曲と新曲5曲がアルバムに入っています。こういった状況下でも、みなさんとの思いをつないでいった手紙のような曲がたくさん入っていて『Ever Yours』という形になりました。コロナ禍に変わってほしい未来を想像して曲や歌詞を書いたり、逆にコロナ禍を一緒に乗り越えようと歌っている曲もあって、「変えたい思い」と「変わらないでいてほしい景色」が詰まったアルバムなので、ぜひ聴いて楽しんでいただけたらと思っています。――新曲のアルバムリード曲「ジリジリSUMMER」は爽快なサマーチューンですね。西澤夏っぽい曲を作りたいと思って、作らせていただきました。金谷今日メンバーが着ているのは「ジリジリSUMMER」の衣装なのですが、ミュージックビデオも作らせていただいて、撮影もしました。この曲は恋愛ソングにも聴こえますが、夏を思い切り楽しもう! という明るい曲でもあって。歌詞に「押しては引く波に急かされて」とあるのですが、恋愛のかけひきにも捉えられますし、すぐに終わってしまう夏という季節を歌っているメッセージにも感じられるので、そういうニュアンスも聴きどころですね。西澤新曲でいうと、(小池)竜暉くんが作ってくれた「夏の聲」という曲は、いままでのGENICにはなかったジャンルの楽曲なので、こちらも推し曲です。――ライブで披露されていて、ファンの方から音源化の声もあったという、男子曲「U&I」と女子曲「My BABY」も収録されていますね。小池「U&I」は(西澤)呈と一緒に作らせていただいたのですが、デモ自体は前からあったものを引っ張り出してきて、「男子の曲にしようか?」と話し合って。歌詞も男性目線の気持ちに軸を置いて、でもファンの方は女性が多いので女性にも理解していただけるような内容に仕上げました。僕らのことを等身大で書いたようなラブソングで、これまではストレートに男性の気持ちを書いた曲はなかったので、こっぱずかしさもありますが(笑)。でも呈がとてもかっこよくサウンドを仕上げてくれたので、そういった面も含めて、GENICにとっても新しい一面をお見せできる楽曲だと思います。――GENICの曲はこの「U&I」のように、メンバーでは時折、小池さんと西澤さんが曲作りも担当されていますね。おふたりで作るときは、どんなふうに制作しているのですか。西澤ふたりで部屋にこもって曲作りをすることもあります。小池やっぱり同じ空間で一緒に曲作りをする良さもありますし、とはいえコロナ禍で、リモートでのやり取りでも曲作りはできるので、どちらの場合でも対応できるようにしていますね。宇井女子曲の「My BABY」は、歌詞を事務所の先輩でもある(ダンス&ボーカルグループのFAKYのメンバー)Lil’ Fang(リル ファング)さんが書いてくださっていて、女の子らしさが詰まっていて。女の子のかわいさ、かっこよさ、セクシーさ、恋愛をするときのちょっとツンデレな感じも入っているんです。そもそも女子曲、男子曲と、男女それぞれの担当曲ができたことも初めてでしたし、なんていうんでしょうかこの、ねっちょりした歌も初めてで……。金谷ねっちょり(笑)!?西澤グルーヴィンなテイストの曲と言いたいようです(笑)。宇井そう(笑)。歌詞の内容もテンポ感も初めて関わる曲なので、歌う側としても、聴いていただく方々も、新鮮だと思います。パフォーマンスをさせていただくときは、女子ふたりなので構成が難しいところもありまして、息が合わないとできない部分も。そういったダンスの難易度やパフォーマンスの細かい部分も注目して見ていただきたいですし、ぜひ女子の空気にひたって、聴いていただけたらと思います。――アルバムの楽曲は聴き手にどんなふうに届いてほしいですか。雨宮最初に呈くんが言ってくれたように、手紙としてこのアルバムを届ける、歌詞ひとつ一つが思いの詰まった楽曲たちになっていますし、僕たちが書いた手紙のような楽曲でもあります。なかでも「ジリジリSUMMER」や「We Gotta Move」はみんなで楽しめる明るい曲ですし、音を流していただくと僕たちとつながっていられるような感覚になれるはず。僕らにとってもみなさんにとっても、大事なアルバムになっているので、思うままに聴いていただきたいですね。――リリース後は、7月から全国ツアー「GENIC LIVE TOUR 2022 -Ever Yours-」ですが、どのようなステージになりますか。増子3rdツアーになるので、やっぱり2ndツアーよりももっとみなさんに成長した姿を見せたいですし、セットリストの打ち合わせも始まっていますね。今回は新曲も交えて披露するので、新しいGENICをお届けできるように、試行錯誤しながら頑張ります。金谷ライブは、これまで地道に小さな会場からやってきたことがグループの糧になっています。いまは制約のあるライブではありますが、そんななかで、ファンのみなさんと一緒に楽しめるツアーになると思います。ファイナルは、9月11日の東京公演Zepp Divercity。ステージに立つ気持ちはライブ会場の大小に関わらないですが、会場が大きくなることは、わたしたちにとっても新しい挑戦でもあって。そこにGENImin(ジェニミン、GENICのファンの名称)のみなさんはもちろん、最近曲を聴いて知ったという新規の方々も来ていただけたらうれしいですね。1stツアーのときは、オープニング曲やライブの合間のつなぎの曲を呈くんが作ってくれたので、またメンバーの意見を出し合いながら、みんなで成功させたいです。夏の全国ツアーを成功させてステップアップする――お話は変わりますが、みなさんがいまハマっているものはありますか。西本僕は海外の方のリアクション動画を観ることにハマっていますね。金谷初耳―!西本外国の方が『ONE PIECE』や『鬼滅の刃』などの日本のアニメ作品を観ながら「Why――!?」と叫んでいたりする動画を観ていると面白いです(笑)。自分がアニメを観ているときはそんなにリアクションできないなあと、外国の方は感情表現豊かなだなあと思って観てしまいますね。雨宮僕は携帯で読めるWEB漫画を見ることですね。WEBで読める『少年ジャンプ+』とか、仕事の空き時間に見ることもあります。宇井わたしはどれを言おうか迷っているんですが……決めました(笑)。お風呂に入るときに、まず湯船の温度を高めにしておいて、さらに湯船に入る前には熱いシャワーを浴びるんですよ。あたたまった状態でお風呂から出て、服は着ないでそのまま部屋の窓を開けて……あ、カーテンは閉めますよ?小池びっくりした(笑)!増子こわいわ〜(笑)。宇井涼しい風にあたりながら、スキンケアをしたり、スチーマーをしたりすることにハマっていますね(笑)。西澤僕は料理ですね。なかでも好物のペペロンチーノ作りにハマっていて、最近乳化させること(油と水を合わせること)がうまくなってきて。唐辛子も熱の入れ具合で辛さが変わってくるので、「この唐辛子は辛いから少しにしておこう」とか、調整するのが楽しいです。小池僕は家で何かをやっている合間の休憩時間に、コーヒーを淹れたり、お茶を点てることにハマっていますね。でもこれはずっと前からやっています。コーヒーだったら、良いところから豆を仕入れて豆を挽いたり。西澤そういえば、お茶がおいしかったなあ。小池一度、呈が家に来たことがあるので、そのときにお抹茶を点てて出したんですよ。――お茶は苦くないですか?小池お抹茶は甘いですね。西本なんで「お」をつけるの(笑)!?増子「お抹茶」なんだね(笑)?小池お抹茶は「お」がつくものだよ、お抹茶なんだよ(笑)!増子僕はハマっていることが多くて、アニメを観るのも好きで、最近は『五等分の花嫁』というアニメをよく観ていますね。五つ子のヒロインが出てくるんですが、なかでも中野三玖というキャラクターが好きなので、三玖が出てくるシーンをよく巻き戻して見返したり(笑)。西本やばいよ(笑)。増子やばくない(笑)。お酒も好きなので、お酒を飲みながら、三玖が出るシーンを観ると最高ですね。あとは激辛の蒙古タンメンが好きなので、ときどき食べたりもします。金谷わたしはふたつあるんです。ひとつめは茶道で、もうひとつはグルテンフリーのお菓子を作ること。茶道は昔やっていて、20歳になったこのタイミングでもう一度茶道を極めたいと思って、以前は裏千家をやっていたのでいまは表千家に変えて違いを楽しんでいます。「テーブル茶道」というラフな茶道もあるので、そこで四季にまつわる茶道のお話を聞いて、マインドを高めることを重要視しているので、穏やかに生きる方法を探しています。グルテンフリーのお菓子作りは、小麦が肌に合わなくて、市販のお菓子だと小麦を使っていないものがかなり限られてしまうので、自分で作ろうと思って。おからパウダーを使って、キャロットケーキを作ることにハマっているので、メンバーにもいつか作って持ってきたいですね。増子作ってほしい。西本食べたいな。――美容にも良さそうですね。女子のおふたりは他にも美容面で気をつけていることや、おすすめのきれいになるコツがあれば教えてください。宇井わたしはむくみやすいので、よくリンパマッサージやツボ押しをしています。YouTubeで調べると、むくみに効くツボや自分でできるマッサージのやり方が出てくるので、その動画を観てやっていますね。でも素手でやると摩擦で肌が傷つくので、クリームをつけてから、マッサージやツボ押しをしてみるとむくみもとれやすくていいですよ。――試してみたくなりますね。金谷さんは「ミス・ワールド2020」日本代表にも選出されましたし、美意識は高いのでしょうか。金谷そんなもう、過去の栄光なので……(笑)。雨宮かっこいい。西本いやぁすごいことだよ。金谷(照れながら)言わないで(笑)。お金も手間もかからない美容法だと、16時間食べ物を口にしないオートファジーというやり方がオススメです。16時間、空腹な状態を続けると、自律神経がリセットされるんですよ。飢餓状態にはなるのですが、そのときに最初にプロテインのものを飲んだり、タンパク質のものを口にしたりすると体に良くて。夜8時以降から翌日の昼12時まで、オートファジーをすると、体内を休ませることができますよ。そうやって体の中から良い状態を作って素の自分を好きになれることが一番いいなと思っていて。作る美ではなく、内側から出る美を目指して、体の食事や腸内環境を整えることが、肌にも良くて痩せやすくなるのかなと感じています。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、リーダーの西本さんから、今後の抱負をお聞かせください。西本まずは夏の全国ツアーを成功させることが、次につながることにもなるので、GENICとしてしっかりとツアーを頑張りたいです。そこからまたステップアップしていって、いろいろと活躍できるグループになりたいですね。取材後記7人それぞれが個性豊かで、これからさらに活躍の場が広がっていきそうなGENICのみなさん。ananwebが取材させていただいた日は、朝から晩までタイトなスケジュールだったにも関わらず、みなさん笑顔で応えていただき、メンバーの仲の良さも伝わってくる和やかな雰囲気でした。そんなGENICのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・安田光優取材、文・かわむらあみりGENICPROFILEavexのDNAを継承する新ダンス&ボーカルグループ育成プロジェクト「a-genic PROJECT」から選ばれた男女7人組。2019年夏、期間限定サバイバルユニットとして「a-nation2019」オープニングアクトなどの活動を経て誕生。同年11月、ストリーミングリリースされたDa-iCE工藤大輝の作詞作曲による初音源「SUN COMES UP」はLINE MUSIC週間ランキング4位を獲得し。12月、ワンマンライブを開催し、本格的に始動した。2020年1月から「Da-iCE BEST TOUR 2020 -SPECIAL EDITION-」のオープニングアクト出演や、全国のショッピングモールを巡る「GENIC Live Circuit 2020」(新型コロナの影響で一部中止)を経て、5月27日にデビューアルバム『GENEX』をリリース。以降、コンスタントに配信シングルをリリース。2021年7月、1stツアー「GENIC LIVE TOUR 2021 -GENEX-」を開催。2022年1月、1stツアーのDVD&Blu-rayをリリース。2月、作詞を小池と西澤が共作した配信シングル「We Gotta Move」をリリースし、「GENIC LIVE HOUSE TOUR 2022 -We Gotta Move-」と題したライブハウスツアーを実施。同年7月6日、2ndアルバム『Ever Yours』をリリース。7月16日から「GENIC LIVE TOUR 2022 -Ever Yours-」と題した全国ツアーを開催する。InformationNew Release『Ever Yours』(収録曲)01. FUTURES02. Shaky Shaky03. ジリジリSUMMER04. Aventure05. Supersonic06. We Gotta Move07. 春うらら08. 夏の聲09. U&I10. My BABY11. まわりみち12. 来たる春2022年7月6日発売*収録曲は全形態共通。*全形態スマプラ対応。(通常盤3形態)AVCD-63324(CD)¥3,300(税込)※トレーディングカード(ソロカット/ランダム封入/全7種)。AVCD-63322/B(CD+DVD)AVCD-63323/B(CD + Blu-ray)¥6,050(税込)※トレーディングカード(ソロカット/ランダム封入/全7種)。(初回生産限定盤2形態)AVCD-63320/B(CD+DVD+グッズ)AVCD-63321/B(CD+Blu-ray+グッズ)¥7,150(税込)※三方背仕様、オリジナルグッズ、ポストカード(集合カット)、トレーディングカード(ソロカット/ランダム封入/全7種)。【映像付き4作 収録内容】※DVD/Blu-ray共通We Gotta Move、Shaky Shaky、まわり道、FUTURES、ジリジリSUMMERGENIC LIVE HOUSE TOUR 2022 -We Gotta Move- 横浜公演収録– Night –HISTORIES、Aventure、FUTURES、夏恋、My BABY、U&I、春うらら、We Gotta Move、Shaky Shaky、まわりみち、FLY– Day -BURNIN’ BURNIN’、READY GO、MOONLIGHT写真・安田光優 取材、文・かわむらあみり
2022年07月01日【音楽通信】第114回目に登場するのは、「別の人の彼女になったよ」がSNS総再生回数2億回を突破し、ドラマ挿入歌も話題のメジャーデビュー10周年を迎えるバンド、wacci(ワッチ)!励まし合いながら少しずつ前に進んできたバンド【音楽通信】vol.114橋口洋平さん、小野裕基さん、因幡始さん、村中慧慈さん、横山祐介さんによる5人組バンド、wacci。2009年12月、橋口さんを中心に結成後、2012年11月、ミニアルバム『ウィークリー・ウィークデイ』でメジャーデビューしました。2018年8月に配信リリースしたシングル「別の人の彼女になったよ」は現在、YouTube総再生回数8,000万回以上、SNS総再生回数が2億回を突破し、日本レコード協会でプラチナ認定されるほど話題に。そんなwacciが、2022年6月15日に両A面シングル「恋だろ/僕らの一歩」をリリースされたということで、ボーカル&ギターの橋口さんにお話をうかがいました。――まずは小さい頃に音楽に触れたきっかけと、影響を受けたアーティストなどから教えてください。幼少時から小学2年生頃までは、習い事としてピアノを習っていました。でも、それほどちゃんとやっていなくて、しっかりと音楽をやり始めたのは高校生からです。友達になった子がアコースティックギターを持って歌を歌っていて、その友達と一緒に路上に出るようになって。だから、歌い始めたのは、高校1年生の時でした。ゆずが流行っていて、路上ライブでは、みんなゆずを演奏していて、僕も歌っていましたね。大学に入ってからは、軽音楽部でいろいろな音楽をやっていて。ジャズ、ファンク、ソウルなどを、管楽器を入れた大所帯で演奏する部活で、1年に4回ぐらいライブがあって、その都度、編成を変えてライブをやっていました。そこからさらにさまざまな音楽を聴いて、ひとりでも演奏してという感じ。そのうち、この先にもしもプロにつながる道があるといいなと思っていました。――今年の11月にデビュー10周年を迎えますね。デビューしてからもなかなか思うように結果が出ないなか、お互いに励まし合いながら、スタッフのみなさんにも支えてもらって、ちょっとずつ前に進んできたバンドです。気がついたら10年経って、早くみなさんに恩返ししたいですね。――そんななかで2018年8月配信の「別の人の彼女になったよ」は、いまは最も反響が大きい楽曲だったと思いますが、バンドにとってもターニングポイントになった楽曲でもありましたか。そうですね、この10年の中ではかなり大きな出来事のひとつだと思います。曲が出て、一人歩きしていって、いろいろな方に聴いていただけたのはすごくうれしかったですし、さらに大きな会場でライブができるようになりたいなと思います。ドラマと映画の主題歌を収録した両A面シングル――2022年6月15日に、両A面シングル「恋だろ/僕らの一歩」をリリースされました。「恋だろ」は、土屋太鳳さん主演、松下洸平さん共演のドラマ『やんごとなき一族』(フジテレビ系 毎週木曜午後10:00)の挿入歌としてお茶の間で親しまれていますね。うれしいことです。オファーをいただいてから、台本も読ませていただいて、ドラマのために書き下ろしました。何曲か提出した中で、この曲が選ばれて。――候補曲の中で「恋だろ」が選ばれたということは、結果的にドラマに一番この曲がフィットしていたということだったのでしょうか。どの曲もストーリーにはフィットさせていたのですが、一番得意分野な曲、wacciらしい1曲だったと思います。実は一番依頼にそっていない曲だったのですが(笑)、当初「場面転換のときに流れる派手な1曲を」と依頼されて、派手な曲を何曲も書いて出した中にそっとしのばせていた曲。でも、僕ららしい、物事の真の部分と向き合っている曲です。ドラマは格差のある恋人同士の話で、お金持ちの彼の家に入って奮闘する彼女に対して、「分不相応」「身の程違い」とかいったような言葉が飛び交うお話だったので、釣り合わない恋というところに何か投げかけられる言葉がないかな、と思ったときにできた曲ですね。――実際にドラマのオンエアを観て、wacciの曲が流れてくるとどのような印象をお持ちになりましたか。ドラマでほっこりしたり、物事の大事な部分とちゃんと向き合わなきゃいけない時間のときに流れてくる感じがあるので、結果的に曲はすごく愛のある使い方をしていただいているなと。いつもドラマを観るのがすごく楽しみです。現場の出演者の方々やスタッフの方々も、はちゃめちゃな展開の中でも、ちょっとゆっくり観ることができる展開のときに「恋だろ」が流れる時間を「wacciタイム」と呼んでくださっていて。ドラマのTwitterでもつぶやいてくださっていたりするので、そういうかたちでもちゃんと届けてくださることがすごくありがたいです。そういった意味ではSNSなどでみなさんのもとへ少しずつ届いている様子がわかったり、僕らのYouTubeでも最近の曲の中では「恋だろ」の再生回数が一番増えているので、ドラマの影響を感じますね。すごく励みになりますし、うれしいです。――先日トーク番組に、橋口さん、松下洸平さん、内田瑛治監督の3人でご出演されていました。松下さんは同じ事務所で10年ほど親交があるそうですね。そうなんです。同じ事務所なのですが、所属したタイミングも一緒で、事務所で顔を合わせることも多くて。その度にお互いの近況だったり、仕事の感想なども言い合ったり、仕事仲間ですね。洸平くんはもともとミュージシャンですし、そこから役者もやっていて。9年前に洸平くんのライブに僕がゲスト参加させてもらったことがあったので、そういう意味では彼のミュージシャンとしての素晴らしさも知っているので、音楽仲間でもあり、役者としても尊敬する人です。――現在、全国ライブハウスツアーの真っ最中ですが、東京公演に松下さんがゲスト出演されましたね。以前ライブに参加させてもらったのですが、僕らはなかなか呼ぶ機会がなく、今回あらためてwacciとして洸平くんを呼ばせていただいて。ふたりでドラマ主題歌の「恋だろ」を歌う、スペシャル・コラボレーションを披露させていただきました。――もうひとつのシングル曲「僕らの一歩」は、7月2日から公開される『映画 バクテン!!』の主題歌ですが、どのようなことをイメージして曲作りされましたか。もともとテレビアニメシリーズのエンディングテーマを担当させていただいていた流れで、今回は映画の主題歌のお話をいただいて、台本を読ませていただいてから書きました。テレビアニメは宮城県の男子新体操部の話で、学生たちが切磋琢磨しながら、ひとつの目標に向かって頑張る姿が描かれています。映画版では時が経って、主人公の1年生や部活のみんながこれからどうやっていくか、青春のその先が大事になってくるなと。テレビシリーズとはまたちょっと違った苦悩や努力が描かれています。青春はいつか終わるけれど、それぞれの道はその先もずっと続いていくので、卒業してサヨナラをしても、青春時代の絆はずっと続いていくということを書きました。――カップリング曲の「あの子」は、「嫌われているあの子が今日もひとりでいる嫌われたくない僕らは今日も誰かといる」という歌詞から始まりますが、どのようなテーマでできた曲ですか。人間関係のひとコマが描けたらいいなと書いた曲です。僕自身、高校時代に人間関係で悩んだこともあって、そういうときにそれぞれの登場人物の主観ではなく、俯瞰して客観的に見た話が書きたかった。誰がいい、悪いではなく、人間関係で悩んだり苦しんだりしている人たちのことを俯瞰で見て事実だけを書いて。それぞれによって受け止め方や感じ方が違ってくる曲が書きたくて作りました。――橋口さんはwacciのほぼすべての曲の作詞作曲を手掛けていらっしゃいますが、Hey!Say!JUMPやももいろクローバーZの高城れにさんなど、他の方にも楽曲提供されていますね。ご自身が歌うときと、他の方の楽曲提供とでは、やはり違うモードで曲作りをしているのですか。作る段階のモードは変わらないのですが、自分が歌えるか、歌えないかは、曲作りに大いに関係ありますね。提供するのがジャニーズの方のようにイケメンだからこそ歌える歌や言葉もありますし、女性だからこそ伝えられる言葉もあると思っていて。wacciだと自分が歌うので、どうしても避ける言葉や使わない言葉もあります。楽曲提供だと、曲によってはそういう縛りがなく書けますよね。――いつもどんなふうに歌詞を書いているのですか。僕はけっこう机に向かってねばるタイプです。日常の中で女友達から聞いたひどい男の子との話や、逆に男友達から聞いたひどい女の子の話とか。そういうところにもヒントを探しているときがあります。――ライブハウスツアーが終わると、秋からはホールツアーもありますが、構成も変わりますか。前半がライブハウスツアーで、後半がホールツアーなんですが、ホールツアーではセットリストを変えようかなと。老若男女問わず、いろいろな世代の方に楽しんでいただける音楽をやってきたつもりなので、そういう意味ではホールは座席もありますし、ライブハウスよりも来やすいという方もたくさんいらっしゃると思うんです。だから、ホールが似合うバンドといいますか、お茶の間感のあるバンドとしてやっていきたいと思っているので、全世代の方に楽しんでいただけるようにと。wacciを知っている方も知らない方も楽しめる、みんなが一緒にひとつになれるようなそんなライブをホールツアーではやりたいと思っています。大事なときにwacciの曲を選んで聴いてもらいたい――お話は変わりますが、橋口さんがいまハマっているものはありますか。まさか自分がハマっているものとしてコレを言う日がくるなんて……という感じなんですが(笑)、韓国ドラマにハマっています。OLさんみたいで、自分でちょっと面白くなるんですが、韓国ドラマの面白さに最近気づきました。――最近ということは、自粛期間があって配信ドラマをたまたま観たのですか。いえ、きっかけはトーク番組でご一緒した内田監督です。今回番組でお話しさせていただくということで、内田監督が何話か撮っているNetflixの『全裸監督』を事前に観ていて。観ていると、他のオススメ作品がトップに出てきたりするので、時間があるときにちょっと韓国ドラマも観てみようかと思って観たらハマってしまいました(笑)。『梨泰院クラス』も『ヴィンチェンツォ』も『愛の不時着』も、どれも面白かったです。いまもちょっと時間が空いたときには観ています。――家でリラックスするときはどんなことをしていますか。この間、長野県の白馬で開催された山頂で音楽を楽しめて、絶景も味わえるというフェスに参加させてもらったんです。屋上にテントサウナと水風呂のようなものがあって、そこに外で寝そべられる椅子もあって、要は外気浴ができるというようなものでやってみたら、すごく気持ちよかったんですよ。その流れがあって、家に戻ってきたときに、狭いベランダがあるのでそこに置けるキャンプ用の椅子を買いまして。お風呂上がりに、これからの季節、そこでぼーっとするのいいなと思って、これからそれでリラックスしようとしています(笑)。――ちなみに、橋口さんは「ドラえもん」に造詣が深いそうですが、 いつからお好きなのですか。小さいときからです。僕はひとりっ子で、よくドラえもんの漫画を買ってもらって、部屋で読む時間が長かったから好きになったんですよね。アニメもドラえもんばかり観ていた少年でした。漫画の世界の登場人物たちに共感していたのかもしれませんね。そういえばトーク番組で「叶えたいことは口に出して言うことが大事だ」と洸平くんも言っていましたが、それこそ音楽を始めて、大好きな「ドラえもん」と音楽でつながれる日が来るといいなと。いつか「ドラえもん」の映画の主題歌をやれたらなと思います。――叶えたいこともお聞かせいただきましたが、では最後に、今後の抱負も教えてください。昨年、有観客で日本武道館公演を初めて開催したのですが、コロナ禍でキャパも半分でしたがソールドアウトできなかったので、次は満員の武道館でワンマンライブができるようにwacciのみんなで頑張っていきたいです。それが当面の目標なのかなと思っていますね。あとは聴いていただくみなさんに、楽曲に共感してもらえることが一番幸せだなことだと感じているので、僕らの楽曲を聴いてちょっとでも自分と重なるところがあって、人生の大事なときにwacciの曲を選んで聴いてもらえるようになったらいいなと思っています。誰かにとっての大事な曲を1曲でも多く作っていきたいですね。取材後記wacciのフロントマンとして、さまざまなアーティストに楽曲提供する音楽家として、活躍されている橋口洋平さん。楽曲のことから普段のご様子まで、いろいろなお話をお聞かせいただきました。wacciのみなさんで演奏される楽曲が、ドラマや映画の世界と重なって、より一層これからも広がっていくに違いありません。そんなwacciのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみりwacciPROFILE橋口洋平(Vo&G)、小野裕基(B)、因幡始(Key)、村中慧慈(G)、横山祐介(Dr)による5人組バンド。バンド名の由来は「わたしたち」を輪にして頭とお尻をくっつけてwacci(ワッチ)。2009年12月、橋口を中心に結成。2012年11月、ミニアルバム『ウィークリー・ウィークデイ』でメジャーデビュー。2018年8月に配信リリースしたシングル「別の人の彼女になったよ」が異色の楽曲と話題になり、ミュージックビデオはYouTube総再生回数8,000万回以上、SNS総再生回数が2億回を突破し、日本レコード協会でプラチナ認定された。2020年10月、東京・日本武道館にて無観客配信ライブ「wacci Streaming Live at 日本武道館」を実施。2021年11月、日本武道館にて初の有観客ワンマンライブ「wacci Live at 日本武道館 2021 ~YOUdience~」を開催した。2022年6月15日、ニューシングル「恋だろ/僕らの一歩」をリリース。InformationNew Release「恋だろ/僕らの一歩」(収録曲)01. 恋だろ02. 僕らの一歩03. あの子2022年6月15日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)ESCL-5675(CD)¥1,300(税込)(初回生産限定盤)ESCL-5673 〜 ESCL-5674(CD+Blu-ray)¥3,000 (税込)【Blu-ray収録内容】「wacci Streaming Live at 日本武道館」01.最上級02.足りない03.別の人の彼女になったよ04.感情05.フレンズ06.僕らの日々07.まばたき取材、文・かわむらあみり
2022年06月30日【音楽通信】第113回目に登場するのは、今回1stアルバムを発売し、朝ドラのヒロインも決まって、女優、声優、歌手活動までジャンルレスに大活躍中の、福原遥さん!小さい頃は歌って踊れるアーティストに憧れた【音楽通信】vol.113小学生の頃から子役として活動し、声優としてアニメ『キラキラプリキュアアラモード』(2017〜18年)に出演するなど、ジャンルレスに活躍している福原遥さん。近年ではドラマ『ゆるキャン』(テレビ東京系)シリーズや『アンラッキーガール』(読売テレビ・日本テレビ系)で主演を務めるなど注目度が高まるなか、2022年度後期連続テレビ小説『舞いあがれ!』のヒロイン役が決定し、これからもますますの飛躍が期待されています。音楽活動としては、2019年に個人名義でソロ歌手としてデビューした福原さんが、2022年6月8日に1stアルバム『ハルカカナタヘ』をリリースされたということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。――あらためて幼少時に音楽に触れたきっかけから教えてください。福原さんは幼児向け食育番組『クッキンアイドル アイ! マイ! まいん!』(NHK Eテレ 2009〜13年)の柊まいん役として、主題歌を歌う姿も披露されていましたね。そうですね、まいんのときぐらいからは歌の楽しさがわかってきましたが、実は小さい頃は歌うことはあまり得意ではなかったんです。でも音楽を聴く習慣はあって、車ではいつも音楽が流れていました。母が運転する車で習い事などへ移動していたのですが、母がよく安室奈美恵さんや倖田來未さんの曲をかけていて、わたしも聴きながら通っていました。――歌うことはあまり得意ではなかったということは、お仕事で歌うまで、きっかけがなければ歌っていなかったのでしょうか。すごい音痴ですし、自分の声もあまり好きではなかったから……(笑)。ひとりで歌うのは苦手でしたが、カラオケでみんなで賑やかに歌うのは楽しかったですね。――では自発的によく聴いた音楽やアーティストはいたのでしょうか。安室奈美恵さんやフェアリーズさんなど、見ているとダンスがやりたくなったので、歌って踊れるかっこいい方に憧れがありました。そうったこともきっかけで、『クッキンアイドル アイ! マイ! まいん!』のときには歌ったり踊ったりすることがすごく楽しくなって。そこから歌うことの楽しさを感じるようになってきたと思います。――歌手活動だけではなく女優や声優としてもご活躍されていますが、福原さんの中で音楽は、どのような存在でしょうか。いまはなくてはならない存在です。歳を重ねるごとに歌う楽しさを感じていますし、歌手活動以外のお芝居のお仕事でも、音楽にとても支えられていますね。日々の生活で「この場面にはこの音楽が合いそうだな」と合う音楽を探すことも好きで、1日が始まる朝に音楽をかけて気持ちをリフレッシュさせたり、大事なシーンに向かうときに気持ちを高めるために音楽を聴いたり。気持ちを入れ替えたりするのに、音楽は大切です。もっと上へいけるよう願いを込めた1stアルバム――2022年6月8日に1stアルバム『ハルカカナタヘ』をリリースされました。まずタイトルの意味からお聞かせください。ハルカカナタへというタイトルは自分でつけました。名前が「遥」で、両親が「遥か彼方へ羽ばたけるように」という意味を込めてつけてくれたので、このアルバムも歌手活動でまた新たな一歩を踏み出すような気持ちで、遥か彼方へもっと上へのぼっていけるようにという思いを込めています。――既発のシングル曲や新曲など全14曲が収録されていますが、今年4月に配信されたばかりの「道標 feat. Hiplin & Rin音(Prod. GeG)」は、ラッパーのHiplinさん、Rin音さんとのコラボ曲です。プロデュースしてくださったGeGさんのおしゃれで優しくて心地良いメロディがすごく素敵で、HiplinさんやRin音さんとも、ご一緒させていただいてうれしかったですね。いままでは恋愛系の歌をあまり歌ったことがなかったので、今回はラブストーリーやバラードを歌ってみたい気持ちもあって、相談させていただいてアルバムが完成しました。――「道標」では福原さんも作詞に参加していますね。歌詞は自分で書いたことがなかったので、やってみたいなとずっと思っていて。今回作詞の機会をいただけて、全部ではなく自分が歌うパートのみの歌詞ですが、いろいろな方と相談させていただきながら、伝えたいメッセージを込めて書かせていただきました。――初めての作詞作業は大変でしたか?難しかったです。何もかもわからない状態からのスタートだったので、アーティストのみなさんが普段どんなふうに書いていらっしゃるんだろうと思いながら試行錯誤して。最終的に、いま自分が一番伝えたい思いを伝えることをテーマにして、いろいろな言葉を調べました。作詞は奥が深いと、少しやらせていただいただけでも感じたので、楽しいですがもっとたくさんの言葉を知っていけたら、いつかまたできたらいいなと思います。――昨年末にリリースされたシングル「Lucky Days feat. OKAMOTO’S」も収録されていますが、福原さん主演ドラマ『アンラッキーガール』主題歌でバンドサウンドながらOKAMOTO’Sのオカモトショウさんと福原さんのデュエットが新鮮でした。確かに、いままで歌ってきた曲と全然違うテイストの曲でもあったので、この曲も他の曲も素晴らしい方々に作っていただいているので、なじめるように頑張りながら、毎回歌っています。――収録曲の「シャボンの人」は元ガールズバンド「ねごと」の蒼山幸子さん、「スキップサイダー」はシンガーソングライターのみゆはんさんのプロデュース曲で、いろいろな方に提供された多彩な曲があります。歌とお芝居では表現の仕方にも意識の違いはありますか。歌は、お芝居で表現するのとは、全然違いますね。お芝居はキャラクターとして演じていますが、歌は自分として歌っている感覚が、ちょっと恥ずかしいような不思議な感覚(笑)。でもそんな歌で表現する楽しさを最近感じるようにもなってきて、歌い方ひとつ、息遣いや声の出し方だけで、伝わり方がまったく変わってくるんです。今回、いろいろな方とご一緒させていただいて、そのことをすごく感じました。自分の心が動いて歌っていても、歌い方次第で全然伝わらないんだなとか、ささやくような感じで歌うと曲にのって伝わりやすいんだなということがわかって。まだできていないんですが、自分なりに考えながら、曲ごとにある物語に強弱をつけながら歌うのが、すごく楽しいです。――そういったテクニカルな面でも、今回のアルバムは楽しんでやり遂げたんですね。そうですね、小さい頃から歌も得意じゃなく自信もなかったので、いままでは正解を求めて「うまく歌わなくちゃ」と思っていました。でも、この間、わたしの音楽のほうのYouTubeチャンネルにHiplinさんに来ていただいたことがあって。一緒に歌うときに、緊張してますます自信がなくてと伝えたら、「歌に正解も何もないから楽しく気持ちを込めて歌えばいいんだよ」と言っていただいたんです。それで「ああ、その通りだな」と感じて、いまはどれだけ自分の気持ちを伝えて、いい気分でその1曲を歌えるかが大事だなって、楽しみたいなって思っています。――そういう意味で一番挑戦しがいのあった曲はどの曲でしたか。やっぱり「道標」ですね、音楽の楽しさをあらためて感じた曲でした。あと「シャボンの人」は、作っていただく前に蒼山さんにお会いさせていただいて、わたしの声質や、どういうことを歌いたいかを聴いてくださって、できた曲なんです。だからなのかとても歌いやすくて、ありのままの自分というか、歌った瞬間すんなり曲に入っていく感覚がすごくあって。わたしに合わせて作ってくれた驚きと、感謝といいますか。蒼山さんの思いをこの1曲に詰め込んでいただいて、うれしかったですね。いままでで一番、自分らしく歌えたかもしれません。――そういった曲作りの前から参加されて自然に歌われた曲がある一方で、男性シンガーRakeさんの曲『100万回の「I love you」』のカバーもあります。音楽チームの方からのオススメ曲で、もともと男性が歌われている曲をいろいろな方がカバーされていて、人によって曲の印象がとても変わる感じがあったんです。女性が歌うと、可愛らしくて甘酸っぱい印象があるので、わたしも歌ってみたいなと思って収録しました。――今後のライブのご予定はあるのでしょうか。いつかしてみたいですね。アルバムの1曲目に流れるインストも作っていただいたんですが「この曲がライブの最初に流せたらいいね」という話も音楽チームのみなさんと話していたので、いつかはライブができたらいいなと思っています。元気やパワーを届けられるように頑張りたい――お話は変わりますが、普段のご様子も教えてください。オフの日はどんなふうにお過ごしですか。いまは毎日朝ドラ『舞いあがれ!』の撮影があるので、ご飯も気をつけないといけないと思って、スーパーに行っています。これまでは作品に入ったら自炊をしていなかったんですが、最近は作り置きおかずを作ったりして、忙しくてもレンジで温めればいいだけにしています。料理をするのもリフレッシュになるんですよね。――お料理は得意なのですね?一応いろいろとやっています(笑)。でも、一般的なおかずを何品かぐらいで、おしゃれなものは作らないんですよ。最近だと、豚汁とかチキンのトマト煮とか、タイ料理のカオマンガイを作りましたね。ご飯を冷凍しておいて、後から簡単におにぎりにできるようにしたりもしています。――福原さんのYouTubeチャンネルでは、大阪アメリカ村でたこ焼きを食べていらっしゃいましたが、街を散策するお時間も少しはあるのでしょうか。撮影のために大阪に滞在していて、あまり外に出られなかったりもするのですが、少しの時間に、たこ焼きを食べに行かせてもらって。しっかりと大阪を感じられました。とはいえオフの日は、現地のカフェに入って店員さんと話すこともあります。台本を読んだりしたいので、ゆったりできるおしゃれなカフェを探したり、カフェ巡りをしたりしていますね。――撮影中の『舞いあがれ!』のご様子はいかがでしょうか。町工場で生まれ育ったヒロインが飛行機に憧れ、旅客飛行機のパイロットを志すというストーリーのようですね。毎日、青春を感じています。学生たちで人力飛行機を飛ばしたり、夢や目標に向かって頑張っていたりするシーンをいっぱい撮っているので、みんなで何かひとつのものを力を合わせて作ることが、撮影しながらもすごく楽しくて、学生気分ですね。――お忙しいながらも充実されているご様子が伝わります。撮影中は不規則な生活になりそうですが、美容や食事面で気をつけていることはありますか。ロケが多いと肌が焼けるので、日焼け止めをいっぱい塗っています。帰ってからは保湿のためにパックをしていたり、フルーツを食べたりしていますね。とくにパックをすることと湯船に浸かることは大事だと思っています。むくみが改善されますし、次の日の肌のトーンやスッキリ具合が全然違うように感じますね。湯船にはしっかりと浸かって、好きな入浴剤を入れて汗をいっぱいかいて毒素を全部出すことは、大事なお仕事の前日はしています。――メイクやコスメのこだわりはありますか。すごくコスメが好きなので、いっぱい集めています。薄づきのメイクが好きなので、ハイライトや肌に艶を出すようなアイテムを探して買っていますね。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、音楽活動や、お芝居などすべての活動においての、今後の抱負をお聞かせください。音楽活動は、これからさらに上を目指して、みなさんにお届けしていけたらいいですね。アルバムは心を込めて歌わせていただいたので、たくさんの方に聴いていただいて、歌に込めたメッセージや思いを受け取っていただきたいです。みなさんに寄り添えるような、そっと背中を押せるような歌を歌っていきたいので、聴いてくださる方にとってのそういう存在やアルバムになれたらいいですね。こういうお仕事をしていて、誰かの心を動かせたり、少しでも元気やパワーを届けられたらいいなと、日々思っています。今年は朝ドラでも、観ている方に少しでも笑顔になって「今日も頑張ろう」と思ってもらえるようなエネルギーを届けられるように頑張ります。取材後記小さい頃からキュートな姿をお茶の間に見せてくれている、福原遥さん。ananwebの取材では、朝ドラ撮影中のご多忙のなか、大阪からリモートインタビューをしてくださいました。福原さんといえば、わが家では子どもが大好きなプリキュアのひまりちゃん役でも親しませていただいていて、ほんわかとした愛らしい魅力にあふれた人柄にも癒されます。音楽活動での歌手としての歌声を聴くのはもちろん、朝ドラなどさまざまな今後のご活躍も楽しみ。そんな福原さんの1stアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみり福原遥PROFILE幼児向け食育番組『クッキンアイドル アイ! マイ! まいん!』(NHK Eテレ)のメインキャラクターである柊少まいん役を務め、一躍お茶の間の人気者となる。2017年、女優として映画『チアダン』に出演、「もしもツアーズ」3代目ガイトを務めるほか、声優としてアニメ『キラキラプリキュアアラモード』(有栖川ひまり/キュアカスタード役)に出演するなど、ジャンルレスに活躍。2019年は映画『4月の君スピカ』主演、2020年から2021年はドラマ『ゆるキャン』シリーズ(テレビ東京系)、2021年『アンラッキーガール』(読売テレビ・日本テレビ系)主演を務めるなど注目度が高まるなか、2545人ものオーディションから勝ち抜き2022年度後期連続テレビ小説『舞いあがれ!』のヒロイン岩倉舞役が決定。音楽活動としては、『クッキンアイドル アイ! マイ! まいん!』主題歌、2013年にはCVを務めた「なめこのうた」がYouTubeで話題に。2018年には声優の戸松遥と共演したドラマ『声ガール!』がきっかけとなり「福原遥×戸松遥」名義でCDをリリース。2019年8月7日、「福原 遥」名義でテレビアニメ『BORUTO-ボルト- -NARUTO NEXT GENERATIONS-』(テレビ東京系 毎週日曜 午後5時30分)のエンディングテーマとなったシングル「未完成な光たち」をリリースし、ソロ歌手デビューを果たす。2022年6月8日に1stアルバム『ハルカカナタヘ』をリリース。InformationNew Release『ハルカカナタヘ』(収録曲)01. Introduction02. 透明クリア03. 道標 feat. Hiplin & Rin音(Prod. GeG)04. シャボンのひと05. Lucky Days feat. OKAMOTO’S06. In the park07. スキップサイダー08. 100万回の「I love you」09. 未完成な光たち10. 風に吹かれて11. 君が好きだって言えたら12. モノクローム13. ハンドメイドセカイ14. 箱庭のサマー2022年6月8日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)AICL-4245(CD)¥3,300 (税込)(初回生産限定盤)CD+ビジュアルブック(B5変形版全64P)AICL-4243~4¥5,500 (税込)取材、文・かわむらあみり
2022年06月28日【音楽通信】第112回目に登場するのは、いきものがかりのボーカリストとしても素晴らしい歌声を届け、今回はソロシンガーとしてのニューシングルをリリースする、吉岡聖恵さん!ソロではさらに世界が広がり景色が違ってくる【音楽通信】vol.112「いきものがかり」のボーカリストとしても、「ありがとう」「YELL」「風が吹いている」など、たくさんの名曲をわたしたちのもとへ届けてくれている、吉岡聖恵さん。2018年2月からスタートしたソロ活動では、昨年、シンガーソングライターの秦基博さんとの共作楽曲「まっさら」をリリース。同年11月に開催した自身初のオンラインソロイベントに約1万人が参加するなど、ソロシンガーとしても、表情豊かな歌声で聴き手を魅了しています。そんな吉岡さんが、2022年6月15日にソロ第2弾となるニューシングル「凸凹(でこぼこ)」をリリースされるということで、音楽的なルーツや普段のご様子なども含めて、お話をうかがいました。――あらためて、そもそも吉岡さんが音楽に触れたきっかけや、影響を受けたアーティストから教えてください。小さい頃に、家族から童謡を歌うように教えこまれていたんですよ。ひいおばあちゃんも、おばあちゃんも、両親も歌が好き。家族でカラオケ大会を開くような家なので(笑)、子どものときから童謡がかなり染み込んでいたんですよね。小学校から中学校までは合唱団に参加していましたし、ミュージカルにも脇役で出演させてもらっていました。だからなのか、言葉で情景を見せてくれる歌が好きで、歌で景色を伝えたいという思いがひとつのベースとなっています。成長していくにつれて、90年代から2000年代の音楽を思春期や青春時代に聴くようになりました。ゆずさんに憧れて「路上ライブをやりたい」「バンドもやってみたい」という合唱からの脱却の時期に、J-POPが大好きになって聴いてきた時期を経て、いまがあります。――音楽活動は、2006年に「いきものがかり」としてメジャーデビューされ、2021年夏には2人体制での活動がスタートしましたが、デビュー16年を振り返っていかがでしょうか。長いようでいて短かったのかもしれないと感じていて。というのも、1999年に3人で結成してから、23年目に入ったんですよ。お休みの期間もありましたし、いまは2人ですし、激動でしたね。でも、いろいろな楽曲をみなさんにお届けするにあたって、たくさんの方に支えていただきながらの23年です。題材を与えてくださる方やまわりの方々によって曲もできましたし、そのおかげで前進できているので、あらためてすごく恵まれたグループだと思っています。――「いきものがかり」のボーカリストとして歌うときと、ソロシンガーとして歌うときと、ご自身の中で意識の違いはありますか。これまでは3人なり2人でやっていた作業において、自分で決める分量や、いろいろな人と関わる分量がとにかくソロのほうが多いんですよね。そういった意味では、ソロだとよく考えることも直感的な部分も、自分の意見がパッと反映されることもあって。よりひとりの人として、好きなものや、嗜好が出やすいかなと思っています。いきものがかりは3人で始めていますが、男子2人が作った歌をずっと歌ってきたので、それがすごく楽しい。ソロでは、オリジナルで初めてメンバー以外の曲を歌っているので、さらに世界が広がったなあと。景色が違ってくるのかなと感じています。緑黄色社会の長屋晴子が手がけた最新曲――2022年6月15日に、キラキラとした躍動感にあふれるソロ2ndシングル「凸凹」をリリースされます。今回、親交の深い緑黄色社会のボーカル&ギター、長屋晴子さんが作詞作曲を担当されていますね。緑黄色社会さんは、近い存在なんです。いきものがかりをずっと育ててくれているディレクターさんが緑黄色社会に関わっていたり、レーベルが一緒だったり。(長屋)晴子ちゃんにお会いしたときに、すごくいきものがかりを好きで感激してくれて。そんななかでコロナ禍に入ってから、わたしもリョクシャカ(緑黄色社会の略称)のアルバムを聴いて、元気をもらっていました。晴子ちゃんと交流があるなか、今度やらせていただく曲を誰かに作ってもらいたいと思ったときに「晴子ちゃんだったら、いい曲はもちろん、今回の題材においても、自分の良さも理解してくれているし、曲や歌も素晴らしいから頼めたらいいな」と。今回、TVアニメ『カッコウの許嫁』(テレビ朝日系 毎週土曜日深夜1:30)のオープニングテーマでもあるので、アニメの世界観も理解してくれると思い、このタイミングでお願いしました。――では遅かれ早かれ、長屋さんにお願いしていたのですね。そうですね、「作ってもらえたらうれしいな」って話していました。今回の題材の青春だったり、キラキラしていたり、みずみずしさがあるようなものとお話しして、快く作っていただきました。――長屋さんは吉岡さんのことをリスペクトしていると公言されていますが、交流されているときはどんなお話が多いのですか。一緒にご飯に行かせていただいたこともありますし、お互いに男女混合のグループというところが共通しているので、そのあたりの共通点のことを話したりします。歌のことは、ざっくばらんに言ってきてくださいますが、歌のことについて自分が伝えられることはないし、そんなことはおこがましいと思っていました。でも、ディレクターさんがポロッと「そろそろ自分の伝えていきたいことを伝えていっていいんじゃないか」と言われて。だったら、同じボーカリストとして、「自分はこうだったよ」と話せることもあるかなと思うようになり、いまはお伝えしています。わたしも、歌っている姿勢において晴子ちゃんはすごいと思っているので、お互いにリスペクトし合いながら付き合えているのかな。――レコーディングの様子を収めた映像も拝見しましたが、今回、レコーディングには編曲を担当された緑黄色社会のメンバーが参加し演奏もしていますね。今回やっていただけることになって、すごくうれしくて。一度、いきものがかりのデジタルイベント(いきものがかり結成20周年・BSフジ開局20周年記念 BSいきものがかり DIGITAL FES 2020 結成20周年だよ!! ~リモートでモットお祝いしまSHOW!!!~)に出てくださったことがあったので、お互いに親近感もありました。勝手にバンドの一員になったぐらいの勢いで、レコーディングのときに歌わせてもらって。みなさんの勢いも感じられたから、本番の歌入れも、イキイキと歌えましたね。――どちらのファンの方にとっても、うれしい組み合わせですよね。晴子ちゃんと吉岡のコラボを喜んでくださる方も多いみたいです。恐縮なんですが、両方とも好き、と言ってくださる声も届いています。――長屋さんはアニメの世界観も意識して曲作りされたんですよね。意識はしていると思いますが、たんにアニメに合わせていくというよりは、曲の主人公と、想う相手に対してのストーリーが出来上がっているので、すごくいいバランスで取り組んでくれました。レコーディングの前の仮歌の段階で、ちょっと歌ってみようとわたしがブースに入り、晴子ちゃんがコントロールルームにいて、「この歌詞の語尾は『ね』かな。聖恵ちゃんぽいから作ってみたんです」「聖恵ちゃんの鼻濁音がいいから入れてみました」など、わたしが歌っていいものになる、ということまでも意識して作ってくださいました。すごく全体が見えている方で、シンガーソングライター、ボーカリストというだけではなく、プロデューサーとしての目線を感じたので、すごく信頼しています。――吉岡さんのことが大好きで、歌い方も伝えたいことも考え抜いて、長屋さんが曲作りされたことが伝わりました。そうですね。聴いてきてくれているというのも、あると思います。だとしても、それをこんな素晴らしい曲の中に入れ込める才能が、すごい。たぶんわたしだけじゃなくて、いろいろな歌手の方を鋭い視点で見ているんだと思います、「あの歌手の方のこの感じでどうですか?」と言ってくださったりするから。すごく楽しかったですね。――『カッコウの許嫁』のヒロインの声を務める声優の鬼頭明里さんは「まさかの吉岡聖恵さんの歌唱で、ものすごくテンションが上がりました」とコメントされていますが、ソロでは初のTVアニメのオープニングテーマです。ありがたいですね。アニメのオープニング映像も観させていただいて、クレジットに「吉岡聖恵」と出ているのが、すごく新鮮でした。いきものがかりでも、アニメ主題歌をやらせていただいておりますが、個人名でクレジットが出るなんて、うまくハマっていたらいいなと思います。――ミュージックビデオでは、ジャケ写にも写っていますがカラフルで袖の長い衣装やネイル、ダンサーさんなど、キュートでポップな印象で、楽しく歌の世界を堪能できました。衣装はあそこまで袖が長くなるとは思っていなかったんです(笑)。前作と同じHARUさんという方に監督していただいたのですが、世界観がすごく好きで、ポップでキャッチーででもひっかかりがあってというところがツボで。いろいろな衣装を着たのですが、最終的にあのインパクトのある衣装になって、着ているだけで笑顔になるといいますか。陽気に愉快に、自分がユニークなものとして、飛び込んでいけました。ボーカルだから真ん中にいたけれど、あの世界のパーツになれたのがうれしかったですね。その世界の一員になれて遊べましたし、遊んでもらえたかなって。ダンスは、国内外でダンサー・振付師として活躍されている、山田うん先生という方のコンテンポラリーダンスカンパニーの方を中心に集まってくださって、すごく新鮮でした。かっこいいだけではなく、不思議な世界があって、自然と笑顔になって。「踊ってください」とはとくに言われなかったのですが、勝手にまねして踊っていたら「やりましょうよ!」と山田さんに言っていただいて、喜んで踊りました(笑)。ホールで踊っているシーンがあるんですが、大学時代のミュージカルコースで踊っていたときのことを思い出して、仲間と一緒にステージの上で自由になる、という楽しさがすごく出たかなと。リョクシャカさんチームがばっちりかっこいい曲にしてくれたところにのっていきつつ、ミュージックビデオでは弾けて遊んでいる感じもあるので、観ていただけるとまた曲の印象も違ってくると思います。これからも曲を作って、歌を届けていきたいーーお話は変わりますが、吉岡さんがいまハマっているものはありますか。散歩からの、プチピクニックです。晴れた日はもちろん、晴れていなくても、歩いていて「これだ!」というお店をまず見つけて。だいたいパン屋さんなんですが、さらにちょうどいい公園を見つけて、そこでラジオを聴きながら、ひとりで陽にあたりながらパンを食べるんです(笑)。その時間がけっこう好きで、プチピクニックをしていますね。あとは最近、スイカスムージーを飲みました。プチピクニックでは、果物のスムージーとパンの組み合わせが多いですね。コロナ禍がなかったら、そういうことはしなかったかもしれないです。以前なら、もっと遠くに行こうとか、カフェを探して行こうとなっているかもしれませんが、コロナ禍で行動に気をつけているなかで、ゆっくり歩いて密にならずのんびり太陽を浴びることは、自分の中では心が落ち着く瞬間ですね。――ボーカリストとしてステージに立ち、多くの方に歌を届けるお仕事をされていますが、普段から良いコンディションを保つために、美容や健康面で気をつけていることはありますか。わたしは、実はとてもおしゃべりなので、ずっとしゃべっていますね(笑)。心の健康といいますか、精神衛生上、あまり溜めこまないようにしていて。悲しかったこと、うれしかったこと、悔しかったことなども、スタッフさんにも聞いてもらっています。学生時代の友達とのグループLINEがありまして、そこでも「夕飯は何にした」とか、くださらない話をしていますね。話を聞いてくれる方がいるから、救われる。でも、まわりは迷惑かも(笑)。人によってタイプは違いますが、わたしの場合は、しゃべってスッキリするということがわかったので、やるようにしています。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。多くのことはそんなにできないなって、いい意味でも悪い意味でも、気づくときがあります。そのなかで、いきものがかりやソロ活動に限らず、今後も自分ができること、頑張れば喜んでもらえる可能性のあることを軸にやっていきたいと思っています。いきものがかりでも、いまデモテープを作る作業に入っているので、マイペースになりますがこれからも曲を作って、歌を届けていきたいですね。取材後記いきものがかりでも、ソロシンガーとしても、力強く心に響く歌声を聴かせてくれる、吉岡聖恵さん。ananwebの取材の際も、ひとつずつ誠実にはきはきとインタビューに応えてくださり、吉岡さん自体が明るい太陽のような存在感を放っていました。だからこそ多くの方を惹きつけるんですね。そんな吉岡さんのソロとしてのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみり吉岡聖恵PROFILE1984年2月29日生まれ。1999年11月3日、水野良樹と山下穂尊によるユニット「いきものがかり」が行っていた路上ライブに飛び入り参加したことがきっかけで、ボーカルとなる。2006年3月、シングル「SAKURA」でメジャーデビュー。以降、「ありがとう」「YELL」「ブルーバード」「風が吹いている」など多数のヒット曲を世に送り出す。2017年1月、「放牧宣言」を行い、一時グループ活動を休止。2018年11月、「集牧宣言」で活動を再開。2021年夏に山下がグループを離れ、2人体制での活動がスタート。グループ活動休止中の2018年2月より、吉岡のソロ活動を開始。10月にはカバーアルバム『うたいろ』をリリース。2021年11月には秦基博との共作楽曲「まっさら」をリリースし、約1万人が参加した自身初のオンラインソロイベントを開催した。2022年6月15日、ニューシングル「凸凹」をリリースする。InformationNew Release「凸凹」(収録曲)01.凸凹02.凸凹(tofubeats remix)03.凸凹(Aiobahn Remix) SACRA BEATS Singles04.凸凹(Instrumental)【DVD収録内容】01.凸凹(Music Video)02.凸凹(Music Video -Behind The Scenes)03.凸凹 (Recording -Behind The Scenes)04.TVアニメ「カッコウの許嫁」ノンクレジットオープニング映像05.TVアニメ「カッコウの許嫁」メインPV第1弾2022年6月15日発売(初回仕様限定盤)ESCL-5665/6(CD+DVD)¥2,200 (税込)*TVアニメ『カッコウの許嫁』描きおろし絵柄ダブルジャケットスリーブ仕様。取材、文・かわむらあみり
2022年06月14日【音楽通信】第111回目に登場するのは、個性豊かなメンバーが揃い、多彩な魅力で人気の高いアイドルグループ、アンジュルム!より団結力が強くなったアンジュルム写真左から、橋迫鈴、平山遊季、川村文乃。【音楽通信】vol.1112009年4月に結成され、2010年5月にメジャーデビューした、アンジュルム。同年「第52回日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞し、グループとしてはもちろん、メンバーそれぞれが舞台やモデルなど幅広いジャンルで活躍しています。そんなアンジュルムが、5月11日にトリプルA面となるニューシングル「愛・魔性/ハデにやっちゃいな!/愛すべきべきHuman Life」をリリースし、オリコンシングルウィークリーチャートで首位を獲得。現在全国ツアー中で、6月15日には日本武道館公演が決定しているアンジュルムから、メンバーを代表して川村文乃(かわむらあやの)さん、橋迫鈴(はしさこりん)さん、平山遊季(ひらやまゆき)さんにお話をうかがいました。――あらためて、おひとりずつ自己紹介からお願いします。川村サブリーダーの川村文乃です。座右の銘は「諦めるよりもこだわり抜く」です。橋迫橋迫鈴です。座右の銘は「好きこそ物の上手なれ」です。平山平山遊季です。座右の銘は「継続は力なり」です。川村文乃。1999年7月7日、高知県生まれ。A型。好きなスポーツはテニス、マラソン。――みなさんが小さい頃によく聴いていた音楽、アイドルになろうと思ったきっかけから教えてください。川村小さい頃から、歌って踊ることが好きで、ダンスを習っていました。テレビアニメ『きらりんレボリューション』(テレビ東京系 2006〜2009年放送)をよく観ていて、アイドルを目指す主人公のまねをしていましたね。当時、スマイレージさんのミュージックビデオを観て、クラスメイトと一緒にスマイレージごっこもしていて。それからモーニング娘。さんを好きになって、オーディションがあったので受けて、研修生からアンジュルムに入りました。橋迫小さい頃から踊ることが好きで、ダンスを習っていて、そこで音楽に触れるきっかけができました。それからテレビの音楽番組も観るようになって、モーニング娘。さんのダンスに惹かれて。やっぱりダンスが好きなのでもっと踊りたいと思ったときに、オーディションが開催されていました。そのとき10歳で、ちょうど10歳から応募できると知って応募して、研修生になって、アンジュルムに入りました。橋迫鈴。2005年10月6日、愛知県生まれ。O型。好きなスポーツはバスケットボール。平山私も小さい頃から歌って踊ることが好きで、母が邦楽や洋楽などジャンルを問わずいろいろな音楽が好きで聴いていたことにも影響されました。そんななかですごくパフォーマンスに惹かれたのが、松浦亜弥さんやモーニング娘。さんの音楽です。「こんなふうになりたいな」と思ったタイミングでオーディションが開催されていたので、応募して、研修生を経てアンジュルムに加入しました。――2017年6月にアンジュルムに加入されたサブリーダーの川村さんは、現在のグループの様子をどのように感じていますか。川村まとまりがすごいと感じていますね。グループで「三色団子」と呼ばれている、川名凜ちゃん、為永幸音ちゃん、松本わかなちゃんの3人は2020年11月に加入した同期になりますが、それ以外のメンバーはひとりずつ違うタイミングで加入しているので、何期に入ったということも関係なく、グループには温かい空気が流れています。ライブでも、アンジュルムにとってどういう人でありたいか一人ひとりの考えが伝わってくるパフォーマンスを見せてくれますし、それぞれの在り方があって、団結力も強いですね。――2019年7月に加入した橋迫さん、そして2021年12月に加入された平山さんは、アンジュルムに入ってみていかがですか。橋迫みんな先輩ではありますが、いつも対等にお話ししてくださるので、それがうれしかったですね。平山わたしは昨年末に入ったので、まだそんなに日が経っていませんが、同期がいなくても同期のように接していいと言ってくださる先輩も多いです。後輩だからと身構えなくていいと先輩方から言ってくださるので、過ごしやすいですね。平山遊季。2006年7月25日、神奈川県生まれ。A型。好きなスポーツはアイスホッケー(観る専門)。――では、本日ご登場の3人で、それぞれの印象を教えてください。橋迫川村さんは研修生のときに一緒だったので、あまり先輩という感じはしないのですが、年上ということもあり、以前からお姉さんという印象はあります。研修生のときから、みんなをまとめてくれたりと、本当にしっかりしていますね。平山わたしは姉がいないのですが、お姉ちゃんが欲しいとずっと思っていて、アンジュルムの先輩方がお姉ちゃんのように感じていて。川村さんとご飯を食べながらお話ししたときに、「こうしていいんだよ」など言ってくださって、気持ちを温かくしてくださる感じが本当のお姉ちゃんができたようで、すごくうれしいです。わたしは大人っぽく見られることが多いのですが、川村さんから「そういうのも武器にしていいんだよ」とアドバイスしてくださったときは、本当に心強かったですね。――川村さんから見ると、おふたりはいかがですか。川村鈴ちゃんは、流行に敏感です。鈴ちゃんから流行るものもあったりして、まさにいまのJKという感じがありますね。服やメイクの好みがはっきりしているので、「この人みたいになりたいから、こういう服やメイクに挑戦してみる」と実際にまねしてやってみる行動力がすごいですし、なんでも似合います。あとはちょっと……悪ガキ感があって(笑)。いまのアンジュルムの中では、少年感のある子ですね。ペイペイ(平山さんの呼称)は、年齢を聞いたらびっくりするぐらい大人っぽい。普段から、アンジュルムの中で一番大人なんじゃないかと思うぐらい、冷静です。なかなか落ち着こうと思ってもできないところですが、自分の軸がしっかりあるから、落ち着いていられるのはかっこいいなと思います。トリプルA面シングルは個性の違う3カラー――2022年5月11日に、カラーの違う3曲が収録されたトリプルA面シングル「愛・魔性/ハデにやっちゃいな!/愛すべきべき Human Life」をリリースされました。1曲目「愛・魔性」はラテン調の大人っぽい楽曲ですが、川村さん、1曲目の聴きどころから教えてください。川村「愛・魔性」のように愛について歌うのは、すごく久しぶりです。女の子のもどかしい気持ち、心情も伝わってくる曲ですね。曲調としてはパワフルで、ラテン的な曲なので、ダンスにおいては、燃え盛るような熱さが伝わってくる1曲になっています。ミュージックビデオなど、パフォーマンスでは2番のBメロの部分に注目してほしいですね。前に後輩たちが立って、後ろに先輩たちが立って、魔法をかけるようなダンスがあります。後輩の子たちが前で頑張って、先輩が後ろでパワーを送っているようで、まるで魔法使いみたいで楽しいなって(笑)。ライブでも注目してほしいですね。――2曲目「ハデにやっちゃいな!」はクールなナンバーですが、平山さん、この曲の注目ポイントはどこでしょうか。平山この曲は、かっこいい感じも入っているのですが、強さというかっこよさではなくて、内面からあふれでるナチュラルなかっこよさを大切にしている曲です。ダンスは特別にはやいテンポではないのですが、パチっと止める場所、動かす場所と、メリハリのあるフリになっていて。踊っていても楽しいですし、自由さのある、かっこいい曲になっています。――平山さんは、アンジュルムに加入してから、初のシングル曲ですよね。平山はい。研修生のときにレコーディングは経験させていただいていましたが、そのときとはまったく違う雰囲気で、ミュージックビデオを撮影するときもダンスのフリをつけていただくときも、いろいろな場面で緊張しました。でも、先輩方が温かく指導してくださったり、先生方もスタッフさんも笑顔でアドバイスしてくださったりしたので、だんだんとリラックスして挑めましたね。――3曲目「愛すべきべき Human Life」は、ホーンが賑やかな楽しいスカナンバーですが、橋迫さん、この曲についてお聞かせください。橋迫この曲は、アンジュルムをずっと応援してくださっているシンガーソングライターの堂島孝平さんが作詞作曲してくださった曲です。アンジュルムへの愛が詰まっている1曲になっていて、歌詞も、アンジュルムとかけた「And you?」=「アンジュ(ルム)」というフレーズもあって。歌詞の中でわたしがとくに好きなのは、「この交差点曲がったら 誰と巡り合うかな」というところ。アンジュルムの歴史を感じると言いますか、アンジュルムだからこその歌詞だなあとすごく好きなんです。川村堂島さんはずっと応援してくださっていて、ありがたいです。橋迫本当に。ライブでもすでに今回のシングルの曲を披露しているのですが、いまは声援を送ることができないお客さんと一緒に盛り上がれるように、この曲の合間ではお客さんに手拍子を入れていただいたりしています。川村3曲とも、曲調や伝えたいことが違ってくるので、みなさんのなかでお気に入りの1曲が見つかればいいなと思います。フレーズごとに印象も変わってくると思うので、たくさんの方に、歌詞の世界も伝わればいいですね。――現在もツアー中ですよね。川村コロナ禍なので、客席は一席ずつ空けた状態でライブを行っています。いままでは全席埋まっていたのが、一席空けになって、ちょっと寂しいなという思いも。でも、直接みなさんに間近で観てもらえる機会があるのはうれしいですし、声を出せないからこその楽しみ方ができるライブもあるんじゃないかなって。座って観ていただいていることで、いままで以上にじっくり観てくださっている方も多いと思うので、パフォーマンスも細かく、こだわっていろいろやるようになりました。――6月15日は、日本武道館公演が開催されますが、どのようなステージになりそうですか。橋迫 いままわっているのが「アンジュルム CONCERT TOUR 〜The ANGERME〜」と題した、いろいろなアンジュルムをお伝えしていくライブになっているのですが、武道館公演ではそれに加えて「PERFECTION」というタイトルがついて、さらにいまの最高な形をお見せできるコンサートになると思います。橋迫久しぶりのホールツアーということもあって、メンバーも気合が入っていますし、ライブが終わった後の達成感も違っていて。ステージに立ったときに、しみじみと楽しさを感じていますね。平山わたしは初めてホールツアーをまわらせていただくということもあって、すごくうれしい気持ちと、リハーサルのときから「頑張らなきゃ!」という気合も入って、いろいろな感情が入り混じっています(笑)。本番になると「ここをもっと頑張らなきゃ」と思うところがあったり、近くにいる先輩方に「ここをこうしたほうがいいかも」と教えていただいたり、新たな発見も。先輩方にもパフォーマンスで貢献していけたらいいなと思っている、ホールツアーですね。明るい賑やかなアンジュルムをお届けしたい――お話は変わりますが、みなさんが最近ハマっているものがあれば教えてください。川村シルバニアファミリーにハマっています(笑)。ファンの方が、わたしの着ている衣装を手作りしてシルバニアファミリーに着せている方がいて、カワイイなって。わたしもお裁縫が好きなので、いつか時間ができたらシルバニアファミリーサイズの衣装を作れたらと思いながら、まずいまはお人形集めを楽しんでいます。橋迫わたしはカードゲームですね。前からハマっていて、最近はメンバーと一緒にやっていて。「ナンジャモンジャ」とか、「UNO」とか、ちょっと変わった海外のカードゲームもやったりします。平山小説を読むことにハマっています。小さい頃はあまり読書は好きではなかったんですが、勉強も兼ねて読んだほうがいいと両親に言われて、読むようになりました。ミステリーが一番好きで、ダークなホラー系のストーリーも読みますが、ラブストーリーはあまり読まないかな(笑)。――普段、ダイエットや美容で気をつけていることはありますか。川村走ることが好きなので、ランニングをしています。アンジュルムの曲を聴きながら走ると、気分転換になってすごくスッキリするので、みなさんにもおすすめしたいですね。あとは水を飲むことです。1日に2リットルか、3リットルは飲みますし、わたしは代謝がいいので、お肌が潤っている感じがして。体の循環もとてもいい感じに巡っている気がします。橋迫いまはメンバー数人とダイエットを頑張っています。あとは毎日湯船に浸かるために、帰宅したら荷物を置かずにそのままお湯を沸かして、お風呂に入るようにしていますね。そうしないとついシャワーで済ましてしまいがちなのと、熱い湯船が苦手であまり湯船に浸からないので、意識して湯船に入って代謝をよくしています。平山わたしはもともとインドアなタイプなんですが、最近はお散歩がすごく好きで、お休みの日は散歩しながら風景やお花の写真を撮ったり、音楽を聴いたり。必ず家から1回は出るようにしていますね。あと、キクラゲは食物繊維が多くて体にいいので、1日に1回はわかめスープに入れたりして食べています。川村確かに、キクラゲはめっちゃオススメです(笑)。かみごたえもありますし、お腹のもちもいいですよ。平山キクラゲは、美容や健康にいいのももちろんなのですが、わたしは食感がいいものが好きで、他には砂肝も好きです(笑)。――キクラゲが食べたくなりますね(笑)。川村さんは高知県出身で、特技は「カツオをさばくこと」。日本人では9人目、女性では初となる「1級マグロ解体師」にも認定されたそうですね。川村高知ではお魚が身近にある環境に育ったので、小さい頃にマグロの解体ショーをたくさん見る機会があって、そのたびに「わたしもいつかやってみたいな」と思っていたんです。でも、漁師の娘でもないので、普通に生活していたらできないですが、調べるとマグロの解体を教えてくださる施設があると知って。それから勉強して資格を取りました。――すごいですね。高知県は山も川も海もあって、良いところですよね。わたしも同じ名前で、両親も高知県出身なので親近感があります(笑)。川村うれしいですね〜!わたしは高知県観光特使と高知市PR大使、ゆず活アンバサダーをさせていただいています。東京にある「まるごと高知」というアンテナショップには、コラボさせていただいたゆずのアイスが販売されていたりもします。高知は食べ物がおいしいですし、自然豊かな場所で魅力にあふれているので、みなさんもぜひ遊びに行ってほしいですね。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、みなさんそれぞれ個人の目標と、アンジュルムとしての今後の抱負を教えてください。平山日本武道館公演が控えているので、そこに向かってホールツアーを重ねていくなかで身につけていくものをちゃんと発揮できるように、努力をしていきたいです。まずは武道館公演という身近な目標があるので、達成してから、もっと大きな目標を目指していきたいですね。橋迫いまのアンジュルムでは、わたしと1歳年上の伊勢鈴蘭さんが、年上メンバーと年下メンバーのちょうど中間にいて。中間にいる年齢を実感することもあるからこそ、わたしなりにアンジュルムを支えられる存在になれたらいいなと思っています。川村個人では、ライブかイベントで、マグロの解体ショーがしたいですね。もうひとつは、これからも自分の好きなことを貫いて、自分にしかできないことができたらなと思います。アンジュルムとしては、みんなすごくいいかたちで輝いているので、このまま突っ走って大きな会場でもライブを行って、アンジュルムの輪を広げていきたいですね。そしてメンバーは得意なことや好きなことが個々でバラバラなので、それぞれの個性を生かして、明るい賑やかな動物園のようなアンジュルムをファンのみなさんにお届けできたらうれしいです。取材後記10人組女性アイドルグループのアンジュルムから、ananwebの取材では、川村文乃さん、橋迫鈴さん、平山遊季さんが登場してくださいました。すらりとした長身で衣装のパンツスタイルもカッコいい川村さん、ショートカットが爽やかな橋迫さん、あどけなさと大人っぽさが同居する平山さん。撮影時は衣装を着ていた3人ですが、私服では、3人それぞれの好みが表れていて、個性の豊かさを感じさせてくれました。そんなアンジュルムのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・山本嵩取材、文・かわむらあみりアンジュルムPROFILE2009年4月、ハロー!プロジェクトの研修生メンバーにより、前身となる「スマイレージ」結成。インディーズ活動を経て、2010年5月、「夢見る15歳」でメジャーデビュー。同年「第52回日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。2014年からフランス語の「ange(天使)」と「larme(涙)」を組み合わせた造語の「アンジュルム(ANGERME)」とグループ名を変更。アーティスト活動以外にも、舞台、バラエティ番組、雑誌モデルなど、幅広いジャンルに挑戦している。2021年12月、ハロプロ研修生から、平山遊季が加入。5月11日、ニューシングル「愛・魔性/ハデにやっちゃいな!/愛すべきべきHuman Life」をリリース。3月から「アンジュルム CONCERT TOUR 〜The ANGERME〜」を開催中で、6月15日には、日本武道館公演が決定している。InformationNew Release「愛・魔性/ハデにやっちゃいな!/愛すべきべきHuman Life」(収録曲)01.愛・魔性02.ハデにやっちゃいな!03.愛すべきべき Human Life04.愛・魔性(Instrumental)05.ハデにやっちゃいな!(Instrumental)06.愛すべきべき Human Life(Instrumental)2022年5月11日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤A)HKCN-50709(CD)¥1,300(税込)[特典]トレーディングカードソロ10種+キラ仕様集合1種よりランダムにて1枚封入(愛・魔性 Ver.)。(通常盤B)HKCN-50710(CD)¥1,300(税込)[特典]トレーディングカードソロ10種+キラ仕様集合1種よりランダムにて1枚封入(ハデにやっちゃいな! Ver.)。(通常盤C)HKCN-50711(CD)¥1,300(税込)[特典]トレーディングカードソロ10種+キラ仕様集合1種よりランダムにて1枚封入(愛すべきべき Human Life Ver.)。(初回生産限定盤A)HKCN-50700(CD+DVD)¥2,200 (税込)[特典]BD付(内容)1.愛・魔性(Music Video)、2.愛・魔性(Dance Shot Ver.)、3.愛・魔性(メイキング映像)(初回生産限定盤B)HKCN-50702(CD+DVD)¥2,200 (税込)[特典]BD付(内容)1.ハデにやっちゃいな!(Music Video)、2.ハデにやっちゃいな!(Dance Shot Ver.)、3.ハデにやっちゃいな!(メイキング映像)(初回生産限定盤C)HKCN-50704(CD+DVD)¥2,200 (税込)[特典]BD付(内容)1.愛すべきべき Human Life(Music Video)、2.愛すべきべき Human Life(Dance Shot Ver.)、3.愛すべきべき Human Life(メイキング映像)(初回生産限定盤SP1)HKCN-50706(CD+DVD)¥2,200(税込)※初回生産限定盤SP1のみ、「SHAKA SHAKA #2 LOVE カラフルライフ編【Additional Track】」、「SHAKA SHAKA #2 LOVE カラフルライフ編(Instrumental)」の2曲も収録の計8曲。[特典]BD付(内容)1.愛・魔性(Close-up Ver.)、2.ハデにやっちゃいな!(Close-up Ver.)、3.愛すべきべき Human Life(And you? Ver.)、4.SHAKA SHAKA #2 LOVE カラフルライフ編(Music Video)(初回生産限定盤SP2)HKCN-50708(CD)¥1,650 (税込)[特典]「愛・魔性」フリーアングルぐるっと動画ダウンロードカード10種より1種ランダム封入。写真・山本嵩 取材、文・かわむらあみり
2022年05月29日【音楽通信】第110回目に登場するのは、オリジナリティあふれる世界観で魅了する、新体制となった音楽ユニット・水曜日のカンパネラから、20歳の二代目ボーカリスト、詩羽(うたは)さん!母や軽音楽部の影響でさまざまな音楽を聴く二代目主演・歌唱担当の詩羽。2001年8月9日、東京都生まれ。【音楽通信】vol.1102013 年より始動した音楽ユニット、水曜日のカンパネラ。昔話や偉人などをテーマにしたウィットに富んだ楽曲が持つ世界観は、オリジナリティ抜群で聴き手を虜にしてしまうものばかり。2021年9月に初代主演・歌唱担当のコムアイさんが脱退し、高校卒業後フリーモデルとして活動していた大学生の詩羽さんが、二代目主演・歌唱担当として加入しました。そんな水曜日のカンパネラが、2022年5月25日に、新体制後初となるEP『ネオン』を配信リリースされるということで、詩羽さんにお話をうかがいました。――小さい頃に音楽に触れたきっかけから教えてください。母は音楽が好きで、以前CDショップで働いていたこともあって、ショップでたくさんのCDを借りてきたり、ポップスを聴いたりしていました。小さい頃は、家でYUKIさん、椎名林檎さん、東京事変などの女性ボーカルの曲や、くるり、キリンジといった男性ボーカルの曲が日常的に流れていました。昔から母は自分で歌を作って歌っていて(笑)、いまでもときどき自己流の“ママソング”を歌い続けていますが、母のおかげで自然と音楽が身近な環境に育ちましたね。――音楽好きなお母さまということで、詩羽さんは楽器に触れることはありましたか。高校生のときに3年間、軽音楽部でギターとボーカルを担当していました。当時、弾き語りの魅力に惹かれて、最初はアコースティックギターでひとりで弾き語りをしていて。次に、軽音楽部でバンドをやろうと思い、エレキギターも始めてみました。――もともと音楽で表現したい気持ちがあったのですか。それはなかったですね。その高校に入った理由のひとつは、わたしと年齢があまり変わらないぐらいの女性が弾き語りの路上ライブをしていて、ギターも上手で歌声もすごく素敵で、影響を受けたんです。だから、その先輩と同じ高校、軽音楽部に入りました。いまその先輩は「Day and Night」という2人組の音楽ユニットをしていて、テレビで開催されていたTikTok弾き語りシンガーのオーディションで優勝してドラマ主題歌を勝ち取っていたので、すごいなと思いますね。わたしは高校生の頃から、邦楽のロックをいろいろと聴くようになりました。高校を卒業してバンドをやめてからは、女性シンガーソングライターのカネコアヤノさんの曲をよく聴いています。――では、詩羽さんご自身で歌手になりたいと思ったことはなかったんですね。はい。水曜日のカンパネラとしての活動を始める前は、フリーランスモデルとして自己表現を模索していましたが、歌は自分の楽しい表現のひとつとして趣味でやろうと思っていたぐらいで、歌手になりたいとは思ったことがなかったんです。――そんななか昨年9月に、知人の方の紹介で面談を受けて、水曜日のカンパネラに加入されました。19歳のときにお話があって、正式に加入を発表するときには、20歳になっていましたね。水曜日のカンパネラのことは、中学生のときに「桃太郎」や「一休さん」などの曲が流行っていたのでもちろん知っていて。「加入しますか?」というお話があった日に、すぐ「やります!」とお返事をしました。でも、家に帰っていろいろと水曜日のカンパネラのことを調べ直したというぐらい、実は知識が薄かったんです(笑)。「やったー!」ぐらいの感覚でお返事をしたものの、もしかして自分が思っているよりも、大きな話だったのかなと。「チャンスは全部掴んでやろう!」というスタンスで、いろいろなことに挑戦している最中だったので、悩まずに直感的に即決しました。――初代ボーカリストのコムアイさんは、詩羽さんにとってどのような存在ですか。尊敬できる人ですね。初めて会ったときは世間話をしつつ、こちらから「いままでで一番楽しかった場所は?」「大変なことはありましたか?」といったことを質問していました。その度にコムアイさんは、「大丈夫、大丈夫!」と言って、フラットに接してくださって。コムアイさんに「代わるタイミングでインスタライブしたいんですよね」とお話ししたら、「一緒にやろうよ」と言ってくださって、なかなか他では見られない、いまの時代ならではのインスタライブ上での主演・歌唱の引き継ぎ配信をすることができました。――それまでリスナーとして聴いていた水曜日のカンパネラに、実際に加入してみて、まわりの方からの反響はありましたか。家族は、もともとわたしがやることを信じてくれているので、今回も「すごいね、やったじゃん!」と喜んでくれました。友達には、発表するまで言わなかったので、発表後に「どういうこと!?」とたくさん連絡が来ましたね(笑)。新体制になって初めてのEPが完成――2022年5月25日に、デジタルEP『ネオン』が配信リリースされます。まずこのタイトルに込めた意味からお聞かせください。わたしがアルバムタイトルを考えて、そのまま使ってもらいました。最近ネオンの看板に興味があっていろいろと調べているうちに、いまは使い勝手がよくて経費も抑えられるからと簡易的にできるネオンが増えていて、本格的なネオンを作る職人さんがどんどん減っているという現状を知りました。本来ネオンは繊細なもので、ガラスを熱で動かしてライティングするという技術は昔からあるものですし、なくなってしまうのは惜しいと思っていたところに、アルバムタイトルをどうするかという話があって、ふと「ネオンっていいな」と思ったんですよ。「ネオン」はラテン語なんですが、調べていくとどうやら「新しい」という意味も含まれているという解釈も。時代も新しい、わたし自身も新しく加入して、二代目になったという意味でもぴったりだなと「ネオン」とつけました。――4月27日に先行配信されたシングル「織姫」がアルバムのリード曲になっていますね。これは7月7日にしか会えない織姫と彦星が1年ぶりに再会したら、織姫が令和のギャルラッパーになっていたというストーリーの歌です。歌っているときは、最初にくる彦星目線の歌詞と、その後すぐにくる織姫目線のラップパートが、曲調としてもテンションとしてもとても落差があるので、彦星のところでは感情を込めてきれいに歌おうと心がけていて。でも、織姫の気持ちを表すラップの部分では、一気にいまどきの令和ギャルになるというマインドを大事にして、楽しんで歌っています。――2021年10月に、新体制後初の両A面シングルとして配信された「アリス」「バッキンガム」もEPに収録されていますが、詩羽さんにとって初レコーディングとなった曲ですね。初めてのレコーディングでしたが、あまり緊張しませんでした(笑)。でも、機材は全然わからないですし、どこでボリュームをあげるのか、どこでリズムをとるのか。そんな状況でしたが、楽しく歌入れできました。――今年2月の配信シングル「招き猫」「エジソン」も収録されていますし、新曲「卑弥呼」「モヤイ」など、タイトルだけでも興味深い曲が収録されていますね。「招き猫」は経営コンサルの招き猫という曲で、「エジソン」は、エジソンがバズってバンドマンになってしまったっていう曲なんです。新曲の中では、いまは「卑弥呼」の印象がわたしの中で強いですね。歴史上の人物の卑弥呼が、もしもお天気キャスターだったら……という、天気と卑弥呼が一緒になっている、面白いお天気の曲です(笑)。「卑弥呼」はリズムのテンポがはやくてポップな曲。高くなったり、低くなったり、歌っていても楽しい曲で、ライブでも2、3度披露しています。テンポ感とリズムがポイントの曲ですね。――聴き手には全曲聴いてほしいところですが、まずはこの曲からだけでも聴いてみてほしいというEPの推し曲というと?「織姫」です。「わたしの曲だな」と感じるぐらい、わかりやすさがある曲。わたしは水曜日のカンパネラの歌の部分とラップの部分、どちらも好きで「どちらもやりたい!」と欲張りな気持ちがあったんですが、「織姫」は歌もラップもきれいに入って曲が成り立っていて、自分の歌い方を調整できるので、歌っていてとても気持ちいい曲なんです。だから、一番推している曲でもありますね。――ミュージックビデオも凝っていますが、撮影はいかがでしたか。こちらも楽しんで撮影できていますね。いままでにリリースしたシングル4曲はミュージックビデオも作っていて、2曲リリースする際はひとつがいままで水曜日のカンパネラでお世話になっていた方にお願いするかたち、もうひとつは、わたしの知り合いを連れてきて新しい人に撮ってもらう、同世代のクリエイターと一緒に作っていくミュージックビデオというかたちでした。どちらにも良さがあって、どちらも楽しくて、いい経験ができました。いままでもお願いしていた方は、撮影の場数が圧倒的に違うので、衣装ややりたいことはわたしから事前にお伝えするんですが、当日はお任せしているタイムスケジュールで自然と進んでいくので「ベテランだな、すごい」と(笑)。逆に、同世代の方とミュージックビデオを作っているときは、途中で「どうしよう」と止まることもあったんですが、わたしも一緒にその場に参加して、制作側の気持ちも一緒に考えながら土台を作っていくという経験ができたので、どちらもやってみてよかったです。――もともと物作りにご興味があって、ミュージックビデオ制作にしても、作るほうにも携わっていきたいとお考えでしょうか。水曜日のカンパネラに入る前にも、学生だからこそいろいろなことをやっておこうと思って、写真を撮ったり、自分たちでチームを作ったりしていました。だから、制作側やディレクションする側の気持ちも汲んでいかないと作品は成り立たないと思っています。これからもどんどんアイデアは出していきたいですね。――6月と7月には対バンライブで全国ツアー予定、8月3日には詩羽さんになってからの初ワンマンライブが恵比寿LIQUIDROOMで行われる予定です。ステージで歌うときに、意識していることはありますか。ライブはどんなステージになるのか、まだ何も決まっていません。初ワンマンは、いまのところはとくに気負うことなく、楽しみにしていますね。ライブはいつも無意識にやっていることが多くて、ライブが終わって、メンバーのケンモチヒデフミさんとお話しすると「今日のあの部分よかったね」と褒めてもらうこともあるんですが、そのパフォーマンスも覚えていないことが多くて。ステージでは、その場で瞬時に感覚的にやっていることが多くて、逆に頭で考えてやろうとするとパンクしちゃうんですよ(笑)。だから、とくにあれこれ考えずに、ポンとステージに立ったほうが、心底ライブを楽しめちゃうタイプなんです。――レコーディングのときも、例えばうまく歌おうなどとくに考えないですか。うまく歌おうとするよりも、「まあ、なんとかなるだろう!」と思っているので(笑)。ただ、わたしは声が出るまで時間がかかるので、曲の頭から最後まで歌って、声の調子がさらによくなっていたらまた頭の部分を録り直す、ということもけっこうあるんです。だから、何かあってももう一度録り直せばいいと、そのときその場で出る声質や、気持ちを大事にして歌っていますね。「たくさんの方々に認知される存在になりたい」――以前から写真を撮るというお話もされていましたが、趣味はカメラですか。最近ハマっていることがあればお聞かせください。最近はあまり触っていませんが、以前はフィルムカメラで写真を撮ることが多かったですね。最近は、料理をすることが楽しくて、趣味としてやり始めました。あとは、粘土で立体を作ることにハマっています。オーブン粘土という陶芸用の粘土が市販されていて、おうちのオーブンで焼くと、それでコップやお皿を作ることができるんです。大量にその粘土を買っています。友達のアーティストが作った二次元のキャラクターがあって、その絵で描いている平面のものをわたしは粘土で三次元にすることが好きなんです。奥行きや頭のつくりを想像して、最近は手や爪を泥だらけにしながら、部屋で粘土の立体作りをしていますね。――詩羽さんはとてもチャーミングでオシャレですが、印象的な唇の下のピアスや刈り上げのヘアスタイルなどは、いつからしていますか。高校1年生のときからです。もともと小さい頃から内気なほうで、中学校から高校2年生ぐらいまでは学校生活がうまくいかなかったり、対人関係でトラブルが多かったり、校則に縛られていたりするのがすごく苦しかった時期がありました。いろいろなことでとても悩んでいた時期があったのですが、あるとき「自分のことを助けてあげられるのは自分自身だけだ」と、そう思えたときに「自分の好きなことをしていこう!」と勢いでピアスを開けたことが自己表現の始まりでしたね。そのとき、髪の毛も刈り上げて、前髪もオンザ眉毛にしました。――悩んで大変な時期があったのですね。そのときがあって、いまの自分があるなって思っています。当時は自己肯定感がとても低かったので、自信がなくて、自分のことは全然好きじゃなかったから、そのぶん尖っていました。いまと変わったところは、当時より圧倒的に尖りが取れてきたかな(笑)。まだ見た目は尖っているかもしれませんが、気持ちは、尖っていたものが取れました。――取れたのはなぜでしょうか。自分のことを好きになってくると、尖っている必要がなくなってきて。「あれもこれも全部素敵じゃん!」というマインドになりました。そのほうが自分も幸せだし、まわりにいる人たちも幸せになると思ってからは、そんなに尖っている必要はないなって思い始めたんです。優しい人になりたいですね。――詩羽さんはモデルもされていますが、ファッションについてのこだわりや、好きな着こなしはありますか。ファッションは自分に似合うものを探すことを大事にしていて、古着やネットでプチプラのものを買うことが多いですね。着方によって、値段は見ないとわからないですし、自分に絶対似合うものはあるから。わたしの場合は、落ち着いた色やテイストのものよりも、派手な色のほうが自分に合っていると思うので、今日はピンクを選びました。どれだけ目立っても、派手でも大丈夫だと思っているので、いつも「詩羽」という自己主張をやっています。――今日もご自身でメイクされているんですよね?基本的にメイクは自分でしています。自分の顔を一番理解していて、一番可愛くできるのも自分だと思っているので、毎日鏡を見てメイクしています。アイラインを大きく“くの字”にひいているんですが、日常的にくの字をやっている人はいないですし、わたしは仕事でもプライベートでもこのアイライン。童顔なので、メイクをしないと本当に子どもっぽく見えるんですが、アイラインをひくと少し大人っぽく見えて、コーディネイトの幅が広がります。ブランドだと、ヴィヴィアン・ウエストウッドは好きですね。漫画家の矢沢あいさんが好きで、『ご近所物語』も好きですが、一番は『NANA』。漫画にヴィヴィアンがよく出てくるので、その影響でヴィヴィアンが好きです。――スレンダーな詩羽さんですが、体型キープはどうされていますか。わたしはウエストだけは細いですが脚が太くなりやすい体型だから、ウエストも締めていれば細く見えるだけで、実はそんなに細くないんですよ(笑)。ただ、体重が増えないように気をつけていることは、いま朝食や夜ご飯にオートミールを食べる生活を3ヵ月ぐらい続けています。前日にヨーグルトに入れておいたオーバーナイトオーツを翌朝食べて、夜ご飯は白米のかわりにオートミールを食べて。あとは、毎朝家から駅まで歩くこと。歩くだけでも意外と運動になります。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。いま少しずつフェスやライブが再開し始めていて、音楽業界の中でも動き出せるようになってきたと感じています。これからはいろいろなイベントなどにも出演していって、「織姫」やデジタルEPの『ネオン』をもっと世の中にちゃんと広げていきたい。今後、水曜日のカンパネラの詩羽としても、たくさんの方々に認知される存在になりたいですね。取材後記「水曜日のカンパネラ」の二代目ボーカリストとして、ユニットのフロントに立つ、20歳の詩羽さん。ananwebの取材では、クールにさまざまなポーズで撮影し、明るくニコニコと笑顔でインタビューに応えてくださいました。ヴィヴィアン・ウエストウッド好きの筆者としては、三連パールチョーカーもファッションも髪型もピアスも似合う、パンキッシュな詩羽さんに釘付けに。そんな水曜日のカンパネラのEPをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・北尾渉取材、文・かわむらあみり水曜日のカンパネラPROFILE2013年から、主演と歌唱担当のコムアイ、作詞作曲担当のケンモチヒデフミ、それ以外を担当するDir.Fの3人により始動した音楽ユニット。ライブなどオフィシャルな活動で表に出るのは、主演と歌唱担当のみが行う。2021年9月6日、初代コムアイが脱退し、新しい主演と歌唱担当として詩羽が加入。同年10月、新体制後初めてとなる両A面シングル「アリス / バッキンガム」を配信リリース。2022年5月25日、EP『ネオン』を配信リリース。6月から7月は対バンライブで全国をまわり、新体制初のワンマンライブを8月3日恵比寿LIQUIDROOMにて開催予定。InformationNew Release『ネオン』(収録曲)01.織姫02.卑弥呼03.エジソン04.一寸法師05.バッキンガム06.アリス07.モヤイ08.招き猫2022年5月25日発売写真・北尾渉 取材、文・かわむらあみり
2022年05月19日【音楽通信】第109回目に登場するのは、10代、20代を中心に絶大な人気を誇る、福岡発のヒップホップシーンの新世代ラッパー、Rin音(りんね)さん!ラップバトルを観たのがきっかけでラップを始める【音楽通信】vol.10918歳からラッパーとしてのキャリアをスタートさせ、数々のMCバトルを総ナメにしてきたRin音さん。さまざまな言葉で織り成すリリックは、リアルでエモーショナル。10代、20代を中心に、絶大な人気を誇っています。ヒップホップシーンの新世代ラッパーとして注目を浴びるなか、2020年2月に配信した「snow jam」がTikTokから大ヒットし、『第62回輝く! 日本レコード大賞』の「新人賞」を受賞。リリースした楽曲のストリーミング総再生回数は3億3千万回を突破しました。そんなRin音さんが、2022年4月20日に2ndアルバム『cloud achoo(クラウドアチュー)』をリリースされたということで、お話をうかがいました。――小さい頃や学生時代は、どんな音楽を聴いていましたか。子どもの頃は、親がドライブ中にかけていたRHYMESTERさんやKICK THE CAN CREWさんといった日本のヒップホップを聴いていました。その後も、とくに音楽が大好きで聴くというよりも、AKB48さんやGReeeeNさんだったり、YouTubeを観て知ったMAN WITH A MISSIONさんだったり、世間で流行っている曲を聴くという感じでした。――ではそこからラッパーになろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。高校1年生ぐらいの頃に、MCバトルの動画を観て「ラップバトルって面白そうだな」と興味を持つようになったんです。いろいろなラップバトルを観て、他の人の闘いを聴いているうちに「僕もやれそうだな」と思い始めたのがきっかけで、高校3年生からは自分でもフリースタイルを始めました。――ラップバトルに惹かれた理由も教えてください。MCバトルは、何が起こるかわからないから、面白いんです。例えば、格闘技なら小さい人が大きい人を倒せるかはわからないですよね、体格差があるから階級もありますし。でも、MCバトルは肉体とは別の競い合いで、音楽コンクールともまた違って、ラップで闘っていくことをスタイリッシュにやっていて、かっこいいなと思いました。――いつから音楽の道を志すようになったのですか。少しはラップができるようになったと思った大学1年生のときに、地元の福岡で「U-20 MC BATTLE」というラップバトルが開催されると聞いて出ることにしたら、ベスト8になって「意外と闘えるかも」と思いました。それと同時に、主催者の方に次のラップバトルでのライブショーケースにも出ないかというお話をもらったのですが、ライブとなると自分の曲が必要なのに、そのときはまだ自分で音楽を作ったことがなかったんです。でもライブを断って、バトルにだけ出るとディスられるので「出る」と返事をした手前、曲作りをすることになって。「歌ってみた」などの動画を参考にして、全部携帯で、曲作りをしました。今考えたら、ようやったなと思います(笑)。出る以上負けたくなくて、あのとき必死にやったことが、おかげさまで自分の大好きなものに巡り合うきっかけにもなってよかったです。――2019年7月にデビュー後、2020年2月の「snow jam」が大ヒットしましたが、心境や環境の変化はありましたか。学生時代は、「音楽やってる」とか「ラップやってる」と言うと、馬鹿にされたんですよね。本格的にやるならまだしも、かじっているだけだなんて言われて。もしかしたらそれは、やりたいことが見つかっていない人のジェラシーもあるのかもしれませんが。でも、そんな状況も、僕の曲をYouTubeにあげていくにつれて、少しずつ変わってきました。少ない再生回数だったのが、何百回再生になって、何万回再生になってと、次第にまわりからの反応も変化していって、僕のことを知っているという人が増えて。「snow jam」を出して、いろいろなTV番組に出演するようになってから、みんな「すごいね」と言ってくれるようになりました。音楽をやっていてよかった、結果が残せてよかったと思います。親にも、それまでは「就職しろ」とずっと言われていました。音楽の世界で成功することが難しいことはわかるので、僕も本当は、普通にインターンに行こうとか、就職しようと思っていて。社会人になって、趣味で音楽をやろうと思っていました。でも、「snow jam」で結果が出てからは、親も「じゃあ、がんばれ」と。だから、ありきたりですが、夢を追いかけている人には「追いかけたほうがいいよ」と言いたいですね。オバケの噂話をテーマにしたアルバム――2022年4月20日に2ndアルバム『cloud achoo』をリリースされました。アルバムに込めた思いからお聞かせください。タイトルからお話しすると、英語で「cloud」は雲ですが、ハロウィンで白い布を被って仮装するオバケが雲のように見えるので“オバケの仮装”をイメージしていて、「achoo」はハクション的なくしゃみの擬音語。よく噂話をするとくしゃみをすると言いますが、つまりは、オバケの噂話をテーマにしたアルバムです。噂話は噂話として、それが嘘か本当かはわからないじゃないですか。噂話を楽しんでもいいけど人を判断しない、どこで情報がねじまがっているか分からないから、鵜呑みにすると人が傷つくこともある、そういう思いを綴っている皮肉まじりのアルバムになりました。――タイトル曲「cloud achoo」は、どこかゲーム音楽のようなスピード感もある楽曲ですね。いままで僕の曲といえば、「snow jam」のようなしっとりしたイメージを持っている方も多いと思うのですが、「cloud achoo」はとても勢いのある曲です。オバケの噂話が流れたとき、つまり不可解な話が流れたときにどうすればいいかといえば、やっぱり「どうでもいいから暴れ回ってやろうぜ!」という感じ。何かあっても気にしなくてもいいよ、というテイストを再現して、ゲームで敵をぶった斬る、自分の中の邪魔者を攻撃するという感じの曲になりました。――リード曲「Blue Diary」は胸に刺さるようなラブソングです。この曲は、4月9日から始まったテレビアニメ『アオアシ』(NHK Eテレ 毎週土曜 午後6時25分)のエンディングテーマ曲のお話をいただいてから作りました。サッカー漫画の『アオアシ』は、ずっとサッカーをやっている主人公が、高校生になってJリーグのユースに入って、チームでスポーツをするなかでぶつかりながらも成長していく姿を描いています。青春を感じる物語なので、僕も青春を感じるタイミングで歌詞を書いたらマッチするだろうと思っていました。ちょうどツアーをやっている時期に曲作りをすることになって、僕もクボタカイ、ICARUSといった音楽を始めたときから一緒にいる仲間と全国をまわっているうちに、ツアーが成功したのはこのチームのおかげだと実感したんです。でも、家に帰ると、ひとりで問題点のことを考える課題もあったり、ぶつかって仲間にうまく接することができないときもあったり。もしこれが学生時代だったらと思うと、『アオアシ』のチームで夢を追う世界ともリンクできて、想像もふくらんだので、ツアーが終わってすぐに曲を書きました。だから思い入れもあるし、いい曲になったと思っています。――お名前のあがったラッパーのICARUSさんや、シンガーソングライターのasmiさん、A夏目(あなつめ)さんとの曲も収録されていますね。仲間との曲は、僕ももちろんリスナーのみんなも聴きたいでしょうし、作りたいものを再現したいのは、仲間なんです。1stアルバムも同じようなメンバーで作っているので、僕らの成長をまた感じてもらえたら。ICARUSとの曲なら自分の引き出しであったり、asmiとの曲なら言葉づかいの成長や表現力だったり、A夏目という新しい仲間ができたことだったり。新しいアルバムで、自分の人生を残していくというイメージもありますね。――作詞をするときなど、いつもはどのように曲作りをしているのですか。最初にメロディやフロウを考えて、そこから言いたいことをフリースタイルでやっていくと、ふと出た言葉が面白かったりするんですよね。それでまた少しずつ変えていって、前の部分につなげていってという感じで、言葉をつなげていって完成させます。基本的に、あまり考えすぎないときのほうが、ちゃんと中身のあるリリックになって、うまくいきますね。リリックにはけっこうメッセージを込めています。どんなふうに伝わっているのかはわかりませんが、凝った作りをしているので気づいてくれたらなと。もともとギミックがあるようなものが好きなので、そこを読み解いてくれたらうれしいです。――ご自身でリリックを書くときに大事にしていることはありますか。あまり否定したり、自分が言われていやなことは書きません。実際に目の前でいやなことを言われたら言い返しますが(笑)、それ以外の優しい人や聴いてくれる人たちのことを傷つけたくないから。ウェルカムの姿勢は一生崩したくないので、みんなに届くようにという思いを込めています。――どんなふうにアルバムを聴いてほしいでしょうか。全部新曲なので、一度全曲を聴いてほしいですね。その後に、好きな曲が偏ってくるのは構わないから。きっと人によって好きな曲が全然違うと思うので、それぐらい収録曲は方向性をバラバラにしたつもりですし、いろいろなことをやったつもりです。曲を聴いたときはこっちの曲が好きだったけど、ライブで聴いたらこっちのほうがよかったとか、音楽を聴く楽しさが広がってくれたらいいですね。――歌うとき、パフォーマンスするときに心がけていることはありますか。楽しくありたいですね。僕は、曲を聴くよりも、作るときが楽しいんです。作るときに楽しんでいれば、リスナーの方にも楽しさが伝わるかなと。聴き心地を大事にしたいと思っていますね。だから、実はどちらかというと、ライブはあまり好きではない(笑)。いまは披露するときよりも、曲作りに楽しさを見出しているんだと思います。「やっていて楽しいな」と思える活動を目指す――お話は変わりますが、いまハマっていることや趣味はありますか。ゲームと料理ですね。僕のYouTubeでサブチャンネルを始めたんですが、この前トマト鍋を作りました。料理が好きだから、料理番組のようにしようと思っていたんですが、ちょっと高度なボケをしてしまって(笑)。なぜなら、料理を作るYouTubeなのに、記念すべき1回目に、ただ材料を切って煮込むだけの鍋をするという内容で……。家では最近、豚汁を作りました。これも簡単ですよ、具材を入れればできます(笑)。――楽しそうですね(笑)。ところで、Rin音さんは髪色も鮮やかでおしゃれな印象ですが、ファッションなどのこだわりはありますか。全然ないんですよ。こんな髪色だと、普通のお仕事はできないかもしれないから、これは僕の特権だと思って色を入れて。ピンク色を選んだのは、ふとX JAPANのhideさんがかっこいいなと、ピンクの髪色がいいなと思ったから。なので、今後、そのときどきで髪色も変わっていくと思います。――いまも福岡県にお住まいということですが、例えばライブなどで他の街に行くと、地元との違いを感じますか。感じますね。人柄も、街並みも、ライブの盛り上がり方も違うから。僕の場合は、とくに名古屋のライブは盛り上がってくれることが多いですね。もしかすると、名古屋の街並みと、福岡の親不幸通りという、ヒップホップのクラブがたくさんある通りなどの街並みが似ているので、そういうのも関係があるのかな。――福岡の親不孝通りはヒップホップが盛んという一方で、福岡といえばシーナ&ロケッツなどの“めんたいロック”も有名ですが、音楽と相性のいい街という印象もあります。確かに、音楽といえば、ジャンルに対しての偏見がない人が多いかもしれませんね。ライブでも、東京から有名人を連れてくるのはなかなか難しいので、自分たちでやるしかないから、ラッパーの場合もひとつのライブハウスに多ジャンルのラッパーが集まります。ゴリゴリ怖い系、僕みたいなタイプ、もっとケミカリーな人など。そこは面白いかもしれませんね、異色の存在と常に触れ合えるのは、福岡の良さですね。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。「やっていて楽しいな」と思える活動を目指したいので、常に新鮮なことをしたいですね。「誰もやっていないことができた」と言える1年にしたいので、これからもがんばります!取材後記地元の福岡から音楽を放ち、全国区へと人気が拡大していった、新世代ラッパーのRin音さん。Z世代に熱く支持されるヒップホップシーンのニュースターながら、日常を歌う曲たちのように、飾らない親しみあふれるキャラクターで、今後ますますブレイクしそうな予感です。そんなRin音さんのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみりRin音PROFILE1998年生、福岡県宗像市生まれ。18 歳からラッパーとしてのキャリアをスタートさせ、数々のMCバトルを総ナメする実力派。「2018 天神U20MC battle Round1」優勝、「KMB vol.7」準優勝、「チュリトリスワールド」優勝などMC バトルで頭角を現す。2019年7月、1st EP『film drip』を配信限定リリースし、ヒップホップシーンで新世代ラッパーとして注目を浴びる。2020年2月に配信した「snow jam」はSpotify 国内バイラルランキング1位、Apple Music総合ランキング の9位にまで上昇するなど大ヒットし、各ランキングに軒並みランクイン。同年『第62回輝く! 日本レコード大賞』にて「新人賞」を受賞。現在、楽曲のストリーミング総再生回数3億3千万回突破、YouTube のチャンネル登録者数は18万人を超え、総再生回数は3600 万回を達成。地元である福岡県宗像市の「むなかた応援大使」を務める。2022年4月20日、2ndアルバム『cloud achoo』をリリース。InformationNew Release『cloud achoo』(収録曲)01. Blue Diary02. heaven town03. bless feat.asmi04. cloud achoo05. 悪運星人06. sunny hunny07. glitch switch08. hell virgo feat.ICARUS09. beryllium10. bella11. Myth12. specter wedding feat.A夏目13. Ghost U Clock2022年4月20日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)POCS-30010(CD)¥2,500(税込)(初回限定盤)POCS-39004(CD+DVD)¥3,500(税込)取材、文・かわむらあみり
2022年04月21日【音楽通信】第108回目に登場するのは、ピチカート・ファイヴの3代目ボーカリストとして90年代に一斉を風靡、現在はソロシンガーとして活躍し、デビュー40周年を迎えた野宮真貴さん!子どもの頃から歌うことやお洋服が好き【音楽通信】vol.1081981年にソロデビュー後、音楽ユニット「ポータブル・ロック」の活動を経て、1990年に加入したピチカート・ファイヴの3代目ボーカリストとして、国内外で渋谷系ムーブメントを巻き起こした野宮真貴さん。2021年にデビュー40周年を迎えた野宮さんが、2022年4月20日に40周年のアニバーサリーとなるニューアルバム『New Beautiful』をリリースされるということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。――子どもの頃から歌が好きだったのですか。小学生の頃は、学校に行っても一言もしゃべらないで帰ってくるようなシャイな子でした。でも、歌を歌うことやお洋服は好きだったので、歌手になったら好きな歌が歌える、キレイなドレスも着ることができるなって。好きな歌を歌って自分を伝えていくわけだからしゃべらなくていいですし、将来は歌手になろうと決めて実際になりましたが、こうやって取材でお話ししたり、ステージでもMCをしたり、意外と話すことが多かったです(笑)。――確かにそうですね(笑)。小さい頃はどんな音楽を聴いていたのですか。テレビを通じて、グループサウンズなどの昭和歌謡を聴いていましたね。小さい頃は、当時のブラウン管の中にいる歌手になりたいという感じで、後になって「いい曲だなあ」と思うものは、洋楽の影響を受けている曲が多かったです。11歳の頃、父がステレオを買ってきたのですが、私のためにカーペンターズとセルジオ・メンデスとミシェル・ポルナレフという3枚のレコードも買ってきました。そのとき私は洋楽を聴いて「世界には素晴らしい音楽がたくさんあるんだな」ということを知って、だんだん洋楽を聴き始めて。ただテレビを観ているだけではなく、歌手になりたいと思い始めて、ロックを聴いてからはロックバンドをやりながらコンテストに出たりしていましたね。――お父さまも洋楽がお好きだったのでしょうか。その頃は好きだったみたいです。父は自分のためにクラシックのレコードを買いながら、娘には洋楽やポップスのレコードを買ってきてくれました。当時は、洋楽の番組が始まりだした頃だったので、レコード屋さんでおすすめされたものを買ってきたのかなと思っていたら、自分で聴いて好きなものを買ってきた、と言っていました。後になって考えれば、その洋楽がソフトロックだったり、フレンチポップスだったり、ボサノバだったり、たまたま渋谷系のルーツになった音楽なので面白いです。――デビュー40周年を迎えて、これまでを振り返っていかがでしょうか。1981年にデビューして、1990年にピチカート・ファイヴに入って2001年に解散して、それからソロになりますが、40年を振り返るとピチカートで過ごした10年間が一番濃かったですね。子どもの頃から歌が歌いたくて、歌手になって、ソロでデビューして。ピチカートに入る前の10年間は、自分の持ち歌だけでは食べていけないので、CMの歌を歌ったりもしながら活動していました。ピチカートに入ってからは、海外公演などまで連れて行ってもらったので、想像していた以上の世界を見せてもらいましたね。デビュー40周年のアニバーサリーアルバム――2022年4月20日にニューアルバム『New Beautiful』をリリースされますね。アニバーサリーのアルバムになります。2014年から「渋谷系を歌う」と題して、渋谷系の曲やルーツになった曲、幼い頃に聴いていたカーペンターズなどの曲を歌い継いでいくというテーマで活動していたので、これまではカバー曲を歌う機会が多かったんです。でも、40周年の記念に、私のキャリアに深く関わっていただいたアーティストの方に「いまの私に曲を書いてください」と、新曲を書いていただきました。それと同時に「World Tour Mix」として先行配信した3曲があって。ピチカートの名曲をいまSNS界で話題になっている方にリアレンジしてもらったのですが、世界の若い人たちに発見してもらえるんじゃないかなという思いからスタートした3曲になっていますね。40年前にデビューしたレーベルがビクターで、今回のアニバーサリーアルバムも同じビクターからまたリリースできるという、自分にとってはとても素敵なことが実現しています。――世界で活躍するネオシティポップアーティストとのコラボレーション作品が「World Tour Mix」の3 曲となっていますね。そのうちの1曲、ピチカート・ファイヴの「東京は夜の七時」を韓国人プロデューサーでDJのNight Tempoさんと組んでいます。Night Tempoさんは80年代の日本の歌謡曲やニューミュージックに詳しくて、そういうものをリミックスしてアメリカなどでDJをやって人気の方。昨年、彼がオリジナルアルバムを出す際、わたしに「歌詞と歌で参加してほしい」というオファーがあったんです。彼が歌詞を書いて、わたしが歌ってという形で、アルバムに参加しました。そして今回わたしのアルバムをリリースするタイミングで、「World Tour Mix」をやってほしいなとお願いしたら、彼はピチカートの「東京は夜の七時」のアレンジをやってみたいと。コロナ禍で実際に行き来できないので、リモートでこの曲を作っていきました。――Night Tempoさんの曲「Tokyo Rouge」のミュージックビデオに、野宮さんご出演されていますね?そう(笑)。なんか楽しいですよ。世代も国も違いますが、それも関係なく共演して、彼のおかげでわたしの歌が若い方の耳に届くということもあります。彼が言うには、わたしと「性格が似ている」と。彼は80年代のものが好きで集めていたり。わたしは60年代のものが好きで集めていたり。彼は80年代生まれ、わたしは60年代生まれ。ふたりで「生まれた頃のルーツに惹かれるんですかね?」という話もしました。リモートで話したり、曲を作っていたりするので、実はまだ1度も直接会ったことはないんです。彼が今夏にライブで来日するそうなので、日本に来たら昭和なカフェとか、連れていってあげようかなと思っています。――そして2曲目の「陽の当たる大通り」はタイのポップスター、プム・ヴィプリットさんと組んでいます。以前から、タイにはよく旅行で行っていますし、昔はタイのバンドとレコードを作ったこともあって好きな場所。プムさんは、タイで海の近くに暮らしていて、のんびりした生活をされているので、音にもそれが表れています。彼のアレンジは、ギターサウンドなんですがすごくチルな印象もあって、海辺の陽の当たる大通りを歩いているような感じがしてうれしいです。――3曲目「スウィート・ソウル・レヴュー」は、日本のシティポップ次世代バンドのevening cinemaのアレンジで、そしてYouTubeでシティポップを歌ってバズった女性シンガー、レイニッチさんとデュエットしていますね。レイニッチさんはインドネシアの方なので、実際にお会いはしていないんですが、ミュージックビデオでは共演しているような演出になっています。すごく人気のある方で、わたしのイメージでは、妖精のような人。この曲はピチカートの代表曲ですけれど、原曲もハッピーな曲ですが、evening cinemaの原田夏樹さんが中心になってお話をして。最近底抜けに明るい楽曲が少ないので、ピチカートのさらにもっとハッピーなアレンジでお願いしました。――新曲も5曲収録されています。4曲目「CANDY MOON」は、作詞作曲とプロデュースをGLIM SPANKYの松尾レミさんが担当した渋谷系サウンドです。最初に聴いたとき「すごくいい曲だな」と感じましたね。レミさんには以前から「いつか曲を書いてもらいたいな」と思っていて、ようやく叶いました。レミさんはわたしの娘や息子世代ではありますが、ピチカートや渋谷系をちゃんと聴いて育っていて、リスペクトしてくれている部分があって、そういう気持ちが音にも表れていると思います。わたしの歌のバリエーションをわかっているので、キュートな部分を引き出すような楽曲を作ってきてくれました。――5曲目「おないどし」は、作詞作曲とプロデュースを横山剣さんが担当し、クレイジーケンバンドが演奏している男女デュエットの新定番ソングですね。実際も剣さんと同じ1960年生まれの同い年、デビューも1981年で同期なので、ずっと仲良くさせてもらっていて、ライブでもアルバムでも最多共演回数という感じです(笑)。何年も前から、剣さんに「デュエットソングを書いてほしい」とお願いして、今回40周年のお祝いに書いてもらいました。カラオケのデュエットの定番ソングになったらいいですね。――7曲目「Portable Love」は、ポータブル・ロックの新曲となるテクノポップです。野宮さんが作詞をされていますね。40年前にソロデビューしたあとに組んだユニットがポータブル・ロックですが、90年にわたしがピチカートに入ったので活動休止になっていて、でも解散はしていなかったなと思い出して(笑)。今回、メンバーが新曲を書いてくれまして、とってもいい曲ができましたし、歌詞はわたしが担当しました。イメージとしては、映画『ブレード・ランナー』に出てくるレプリカントのヒロイン、レイチェルの恋みたいな気持ちで書きました。――4月には、「野宮真貴 40th Anniversary Live」と題したビルボードライブを大阪と東京で開催されます。アルバムに参加してくださったゲストをお迎えする3日間ですね。4月24日の大阪公演に松尾レミさん、東京公演の2日間は29日に横山剣さん、30日にデビュー時のプロデューサーでもあったムーンライダーズの鈴木慶一さんとお届けします。3日間とも雰囲気が違うので、どの日でも、3日間すべてでも、楽しいライブになると思います。29日の2ndステージは生配信もあるので、ぜひ全国の皆さんにもご覧いただきたいと思います。「みなさんを癒せる存在として歌い続けたい」――お話は変わりますが、野宮さんがいまハマっているものを教えてください。コンディショニングのジムに通っています。家にいると運動不足になりますし、コロナ禍でライブが中止や延期になったこともあったものの、いざライブができるようになってから慌てないよう、いつでもパッとステージに立てる準備のためにジムへ。歌もそうですが、衣装やビジュアルも楽しみにしてくださっている方が多く、わたしも衣装が素敵だと良い歌が歌えるので、衣装を完成させるためにはハイヒールが必要になってくるんです。若い時は筋トレしなくても、軽々とハイヒールを履いて闊歩していましたが、年齢とともに長時間ハイヒールを履くのは厳しくなってきて。ステージでハイヒールの靴を履き続けるために、コンディションのジムでは、ハイヒールを履いて筋トレをしています。――抜群のプロポーションを維持されていますが、普段からダイエットなどされますか。ダイエットしたこともありますが、年齢を重ねると、ダイエットは危険です(笑)。栄養のあるものを食べることが大事。太るときは、きっと栄養のないものでお腹を満たそうとするときではないでしょうか。運動するにしても、ジムまで行かなくても、少し外に出て歩くことを意識するだけでもいい。フランス人は痩せている方が多いですが、バターたっぷりのソースを使った料理を食べている印象がありますよね。でも、それは多分、時々しか食べないんですよね。普段は粗食だったりします。そういう意味において、日本食もいいですよね。わたしの場合は職業柄、人に見られる仕事だから、そういう緊張感もあります。みなさんも、一歩外に出たら少し背筋を伸ばすなど、誰かは見ているということを意識すると、お腹も締まってきます。――とてもスタイリッシュでおしゃれな野宮さんですが、ファッションのこだわりはありますか。基本的に、古いものが好きなんです。とくに60年代のもので、ファッションに限らず、音楽、映画、デザインも。洋服だと、ウエストをマークしたような服が好きです。いまはオーバーサイズや長いスカートなどの体型がわからない服が主流なので、現在のトレンドとは違いますよね。でも、わたしはキレイなラインの服が好きなので、そういう服を持っていると、着るために気合も入ります(笑)。体型を隠す服装ばかり着ていると、ウエストがどんどん育っていくので、たまにベルトをしたほうがいいと思いますね。だから、よく「ベルトはウエストの監視役」と言っています(笑)。自分のウエストがどこだったか思い出すためにも、ときどきベルトをしてほしいな。――年齢を重ねていっても、自分なりに美しくいられるコツはあるでしょうか。わたしは年齢のことは気にしませんね。「この年齢だから落ち着かなきゃ」とは、全然思う必要もないと思いますし、何でも楽しんじゃったほうが勝ち。年齢を重ねて変化していくことは、新しい体験です。そんな新しい体験ができるって、面白いことですよね。いまの悩みは首のシワなんですが、横に出るのかと思いきや、縦に出るんです(笑)。そういう発見も面白くて、良い美容液を顔ではなく首に塗ったり、シワが目立たないためにはシャツを着るといいと発見したり。シャツの襟が立っていると、横からは首が見えないんですよね。ちょっと前を開けると顔がスッキリ見えるとか、そのほうがシワが目立たないこともわかってきて。日々そうやっていろいろと考えることも楽しみながら、自分の変化に合わせてアップデートしてくと、年齢を重ねていくことも、面白いですよ。――いろいろなお話をありがとうございました!では最後に今後の抱負をお聞かせください。40周年という節目で、素敵なみなさんに協力してもらって、素敵なアルバムを作ることができました。もしもストレスフルな日々を送っていても、音楽を聴いたりライブに行ったりすると、細胞が活性化すると思うんです。わたしの場合は、音楽を聴くと疲れが取れるんですよね。わたしの仕事は、そんな歌をみなさんに届けること。歌う立場としても、みなさんを癒せるような存在でいられたらいいなと思うので、いつまで歌えるかわかりませんが、しぶとく歌える限り歌い続けていきたいです。まだ渋谷系のルーツとなる曲もいっぱいありますし、こうやってオリジナル曲も歌えるようになりましたから、今後も歌を届けていきたいですね。コロナ禍で行けなかったので、全国ツアーもしたいしですし、いろいろな場所に行って、みなさんにお会いしたいです。取材後記80年代のニューウェイヴシーンや90年代の渋谷系ムーブメントなど、これまでにも時代を牽引する存在だった野宮真貴さん。いまもさまざまな世代に支持されている野宮さんの歌はもちろん、容姿も美しくエレガントですよね。ananwebの取材では、音楽のお話以外にも、女性としてもためになるお話もたくさんうかがうことができました。そんな野宮さんのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみり野宮真貴PROFILE北海道生まれ。1981年、アルバム『ピンクの心』でデビュー。1982年に結成したポータブル・ロックの活動を経て、80年代のニューウェイヴシーンを代表する存在となる。1990年に加入したピチカート・ファイヴの3代目ボーカリストとして、90 年代に一世を風靡した「渋谷系」ムーブメントを国内外で巻き起こす。2001年からソロアーティストとして活動。2021年、デビュー40周年を迎え、音楽、ファッションやヘルス&ビューティーのプロデュース、エッセイストなど多方面で活躍中。2022年4月20日、ニューアルバム『New Beautiful』をリリース。「野宮真貴 40th Anniversary Live」と題して、4月24日ビルボードライブ大阪、4月29日と30日ビルボードライブ東京にて開催。InformationNew Release『New Beautiful』(収録曲)01.東京は夜の七時(feat. Night Tempo)02.陽の当たる大通り(feat. Phum Viphurit)03.スウィート・ソウル・レヴュー(duet with Rainych, feat. evening cinema)04.CANDY MOON05.おないどし06.大人の恋、もしくは恋のエチュード07.Portable Love08.美しい鏡09.夢で逢えたら(duet with 鈴木雅之)from『野宮真貴、還暦を歌う。』ライブ10.サンキュー from『野宮真貴×矢舟テツロー ~うた、ピアノ、ベース、ドラムス』ライブ2022年4月20日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)VICL-65698(CD)¥3,300(税込)(初回生産限定盤)VIZL-2055(CD+Blu-ray+ブックレット)¥8,030(税込)【付属Blu-ray収録内容】<『野宮真貴、還暦に歌う。』華麗なるダイジェスト>01.スウィート・ソウル・レヴュー 02. 東京は夜の七時 03. 中央フリーウェイ 04. 三月生まれ 05. T字路(ゲスト:横山剣) 06. 渋谷で5時(ゲスト:鈴木雅之) 07. Twiggy Twiggy 08. 陽の当たる大通り<MUSIC VIDEO>東京は夜の七時(feat. Night Tempo)、陽の当たる大通り(feat. Phum Viphurit)、スウィート・ソウル・レヴュー(duet with Rainych, feat. evening cinema)【付属「野宮真貴スタイルブック/ファッション・クロニクル」】(アナログ盤)2022年5月25日VIJL-60279(LP)¥4,950(税込)取材、文・かわむらあみり
2022年04月16日【音楽通信】第107回目に登場するのは、国内外で高いパフォーマンス力を披露しているアイドルグループであり、来年で結成10周年を迎えるJuice=Juice(ジュース ジュース)!大人っぽさと幼さが同居するグループへと変化写真左から、植村あかり、稲場愛香、井上玲音。【音楽通信】vol.1072013年2月に結成され、2013年9月にメジャーデビューした、Juice=Juice。同年11月には第55回『輝く!日本レコード大賞』新人賞を受賞、2017年には世界10か国をまわったワールドツアーを行うなど、国内外で高いパフォーマンス力を披露してきている、ハロー!プロジェクトのアイドルグループです。そんなJuice=Juiceが2022年4月20日、3rdアルバム『terzo(テルツォ)』をリリースされるということで、メンバーを代表して植村あかりさん、稲場愛香(いなばまなか)さん、井上玲音(いのうえれい)さんにお話をうかがいました。――あらためて、おひとりずつ自己紹介からお願いします。植村Juice=Juiceのリーダーの植村あかりです。わたしの座右の銘は「動かなければ始まらない!」です。稲場サブリーダーの稲場愛香です。座右の銘は「自分らしく」です。井上井上玲音です。座右の銘は「温故知新」です。――自己紹介ありがとうございました。まず小さい頃によく聴いていた音楽や、アイドルになろうと思ったきっかけから教えてください。植村小さい頃はあまり音楽に触れる機会がなかったのですが、アイドルの楽曲を最初に聴いたのは、モーニング娘。さんです。そんななかで親戚の方が、新聞に載っていたモーニング娘。さんのオーディション情報を見つけて受けたことがきっかけとなって、中学生のときにハロー!プロジェクトに入ることになりました。稲場4歳の頃からダンスと歌を習っていたので、いろいろな洋楽に合わせて踊っていましたし、歌のレッスンでは「涙そうそう」を歌ったことを覚えています。母もとても音楽が好きなので、車の中ではいつも安室奈美恵さんやB’zさんの曲がかかっていたので聴いていましたね。わたしもモーニング娘。さんのオーディションを受けたことがきっかけです。井上昔から親の影響でMr.Childrenさんや、姉がよく聴いていた西野カナさんなどの女性アーティストの方の歌を聴いていました。小さい頃にアニメ『きらりんレボリューション』(テレビ東京系 2006〜09年)の主人公の月島きらりちゃんがすごく好きでよく見ていて、母に「きらりちゃんみたいになりたい!」と伝えて。すると、母がハロプロではなく、姉妹プロジェクトのオーディションを見つけて、受けさせてくれていまに至ります。――2013年2月に結成、4月にインディーズデビュー、9月にメジャーデビューされました。今年は結成から9年、来年で10周年を迎えますが、結成当初からのメンバーである植村さんは、グループの変化をどのように感じていますか。植村Juice=Juiceは大人っぽいイメージを持っているファンの方が多かったのですが、メンバーの変遷もあって、いまはハロー!プロジェクトの中でもグッと平均年齢が低いグループになりました。これまでの大人っぽさ以外にも、幼い感じもあるグループになったことで、結成当初のことを思い出す感覚もありますし、最近は変化を感じてきていますね。――井上さんは、2015年から、こぶしファクトリーのメンバーとして活動していましたね。その後、2020年にJuice=Juiceに加入されましたが、活動を振り返るといかがでしょうか。井上加入してからはまだ2年しか経っていないんですよね。コロナ禍ということもあって、最初は思うように活動できない時期でもありましたし。少しずつコンサートもやり始めてからは、覚えることがたくさんあって、いっぱいになってしまったときもありました。でも2021年7月に新しいメンバーが3名入って、「しっかりしよう」という意識が強くなって、責任感やまわりを見る余裕が生まれてきたと思います。――稲場さんは、2014年からカントリー・ガールズのメンバーとして活動後、2018年にJuice=Juiceに加入されました。現在全国ツアー中ですが、5月30日に行われる日本武道館公演のツアー最終公演をもって、卒業を発表されましたね。稲場はい。卒業を決めて発表させていただいたのですが、まだ実感が湧かないというのが、正直なところです。自分で考えて決断したことではあるものの、時折「みんなと離れることが寂しいな」と感じたり、活動を振り返って「いろいろな経験をさせてもらったな」と日々これまでのことを噛み締めたりしている最中なんですよ。きっとアッという間にその日が来てしまうと思うので、悔いのないように、毎日楽しく過ごしていきたいです。ハロー!プロジェクトでは約9年間過ごさせていただいたので、支えてくださっているみなさんにしっかりとその恩返しもできるように、最後まで全力で頑張りたいと思います。3年ぶりのアルバムはベスト盤+新曲盤の2枚組リーダー 植村あかり。ニックネームは、あーりー。1998年12月30日、大阪府生まれ。O型。――2022年4月20日に、3rdアルバム『terzo』をリリースされますね。植村2019年からJuice=Juiceのアルバムをリリースしていなかったので、今回が3年ぶりとなりました。「ここから音源化されていなかったのか!」という楽曲や、ファンのみなさんが「大好き」と言ってくださっているライブの定番曲も収録されることになって、今回のリリースがとてもうれしいです。不思議なことに、アルバムを発売すると聞く1週間ぐらい前に、ふと「そういえばアルバム出してないな」と思って、いつからだろうと自分でも調べていたときの朗報だったんですよ。稲場えー!そんなことあるんだね。植村そうなの、ビックリでしょ(笑)。そのときに「3年も出してないんだ」と思ったということは、きっと会社の方も同じように思っていたはずなので、やっぱりそんな時期だなと(笑)。これだけブランクがあっても、ファンの方にも「アルバム待ってるよ」というお声もいただいていたので、念願叶ってのアルバムリリースとなりました。とても素敵な曲がたくさん詰まったアルバムになっています。サブリーダー 稲場愛香。ニックネームは、まなかん、いなばっちょ。1997年12月27日、北海道生まれ。B型。――CD2枚組になっていますが、「Disc1」は、2019年から2022年までにリリースした楽曲のベスト選曲です。もちろんどれも思い入れのある曲だと思いますが、アルバムを聴くときの新たな視点として、しいて1曲選ぶとしたら一番の推し曲はどれになりますか。稲場わぁ、推し曲ばかりなので難しいですが……。ちなみに、わたしがJuice=Juiceに加入してから初参加した楽曲は、実はシングルではなくて2ndアルバム『Juice=Juice#2 -¡Una más!-』(2018年発売)の曲だったので、アルバムに始まりアルバムで終わるんですよね。そう考えると、しいての1曲はファンのみなさんからわたしの「イメージがあるよ」とよく言っていただく、アルバムの1曲目に収録された「微炭酸」(2019年発売)です。初めてシングルで参加した曲で、ミュージックビデオでも切ない表情をしてみたりと、ドラマ風に撮影したことが印象的。ダンスが好きなので、この曲ではダンスパートも作っていただいてすごく思い入れが強い曲なので、推し曲に選びました。植村わたしはアルバムの11曲目「続いていく STORY(Symphonic Version feat.Karin)」(2020年発売)です。この楽曲には以前在籍していた宮本佳林ちゃん(2020年12月卒業)の声も入っていて、それからもずっとグループで受け継いで歌っている曲。落ちサビに『「ありがとう また明日」 何気ないこの瞬間』という歌詞があって、いつもグループを卒業するメンバーを送り出すときに一緒に歌うことが多く、わたしの中では一番印象に残っている曲ですね。井上推し曲は4曲目に収録された『「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?』(2019年発売)です。このシングルの発売時にはわたしはまだJuice=Juiceではなかったんですが、こぶしファクトリーにいながら「いい歌だな」と思って聴いていました。その後Juice=Juiceに加入したのですが、加入当時はコンサートができない状況だったので、本格稼働の前にJuice=Juiceの楽曲をパフォーマンスする映像企画をYouTubeでやっていたんです。まだJuice=Juiceの曲に全然慣れていなくて、どうやって歌ったらいいのか、メンバーとも一緒に歌っていないからわからなかったんです。そんな思い入れのある第1回目に歌ったのがこの曲だったので、推し曲に選びました。井上玲音。ニックネームは、れいれい。2001年7月17日、東京都生まれ。O型。――「Disc2」には新曲6曲が含まれています。こちらもあえて1曲選んでいただき、あわせて注目ポイントも教えていただけますか。稲場1曲目の「GIRLS BE AMBITIOUS 2022」ですね。もともと1stアルバム『First Squeeze!』(2015年発売)に収録されていた楽曲で、Juice=Juiceの自己紹介曲になっていて、そのときどきのメンバーのことを歌っていて。今回も、「このメンバーはこういう感じだよね」ということをアンケートにして出し合って、それをもとに歌詞ができています。だから本当に、わたしたちから見たそのままのメンバーの表現になっている歌詞がすごく面白いと思いますし、いまの9人のJuice=Juiceらしさが詰まっているんですよ。わたしは卒業が決まったということで、一度決定していた歌詞を変えました。今後も頑張っていきますよ、これまでの経験があれば大丈夫ですよ、というような歌詞にしていただいたので、いましか歌えない曲になっていますね。決意表明のような内容になっています。植村 わたしは、今回初音源化された8曲目の「プラトニック・プラネット(Ultimate Juice Ver.)」ですね。この曲はこれまでのライブでも披露してきましたし、ファンの方からも「まだ音源化されないの?」とずっと心待ちにしていただいていた曲で、わたしたちも「まだかな」と感じていました(笑)。この楽曲がアルバムに収録されることで、より注目度が上がる曲になるんじゃないかなと思います。井上3曲目の「STAGE〜アガってみな〜」です。ボイスパーカッションを担当させていただいている曲なんですが、どちらかというとヒューマンビートボックス寄りで、この曲はアップテンポなので速いビートを刻むのがけっこう難しくて。いつもはレコーディングと同じ日に先生に教えていただいて、できるようになってから録るんですが、今回はビートが難しかったので、教えていただく日とレコーディングを別日に分けました。それぐらい苦戦したので、注目して聴いてほしいですね。――新曲には、年上メンバーと年下メンバーで分かれて歌ったという4曲目「Mon Amor(植村さん、稲場さん、段原瑠々さん、井上さん)」と、7曲目「雨の中の口笛(工藤由愛さん、松永里愛さん、有澤一華さん、入江里咲さん、江端妃咲さん)」もありますね。井上昨年新メンバーが一気に加入したこともあって、10代の年下メンバーが増えたので、20代の年上メンバーと分かれて歌うという、新しいチャレンジになった曲です。稲場そう、先輩チームと後輩チームという組み合わせですね。楽曲自体も、大人っぽい楽曲と、かわいい楽曲という雰囲気になっています。いまのJuice=Juiceは、そのメンバーが合わさっての9人なんですが、分けてみると全然違うグループに見えるところもあると思うので、そういう楽しみ方もしていただけると思います。――みなさんが歌うときやパフォーマンスをするときに心がけていることはありますか。植村昨日、ボイストレーニングに行ってきたばかりなんですが、だいぶ知識も増えてきました。そんななかで、イヤモニ(特定の音だけを聴くことができる耳にはめる超小型スピーカー「イン・イヤー・モニター」の略称)をしていると、本当はきれいにユニゾンが聴こえるはずの曲が、すごく怖い声に聴こえるときがあるんですよ。イヤモニ自体を別のものに替えていくこともひとつの方法なんですが、歌い方をちょっとずつみんなで合わせていって、自分の声質も変えていくようなボイトレを最近していて。状況によって声質を変化させていくことを心がけていますね。稲場いろいろなことを考えながらパフォーマンスしていますが、とくにダンスに関しては、リハーサルなどで「ここは揃えようね」と話している箇所や「重点的に練習しよう」と決めているところは、ちゃんと本番でキメられるようにという意識を持っています。歌に関しては、ユニゾンを揃えるようにと、意識を持つだけでも全然変わるんですよね。先ほども話が出ましたが、わたしもイヤモニにずっと苦戦していて。イヤモニ無しなら歌えたのに、つけると歌えない場所があって、その場所ごとに臨機応変に歌えるようにしなくてはと勉強している最中です。もうすぐ卒業ですが、できる限りのことを最後までやろうと、常にそのときのベストを出せるように意識していますね。井上わたしはそのときどきの気持ちが歌にも表れやすいところがあるので、あまり考えすぎずないように、何も考えずに歌うことにしています。とはいえ、さすがにコンサートのリハーサルのときは「ここはこうしよう」と曲のことを考えて確認していきますが、それはリハーサルが終わるまでにすべて頭に叩き込んでおいて、本番では考えない。そうしないと、どこか慎重な歌になってしまうので、本番だけでも自信を持ってやることを大事にしています。――アルバムをどんなふうに聴いてほしいですか。稲場今回のアルバムは特殊で、いまの9人だけじゃなく、既発曲に入っている当時にいらっしゃった先輩方の歌声も入った曲が現在のバージョンにアレンジされて入っていて。わたしたちも完成形を聴いたときに、「こういう構成になっているんだ」と驚いたので、そんな楽しみ方もできると思います。さらに、どういうふうに曲がアレンジされているのかだったり、こんな時代もあったなと懐かしくなったり、さまざまな面から聴いていただけたらうれしいですね。――全国ツアーのファイナルとなる日本武道館公演で稲場さんは卒業されますが、どんなステージになりそうでしょうか。植村もう全然考えられないね(と稲場さんと見つめ合う)、(稲場)愛香は、どう思う?稲場まだツアー中なので、どんなふうに進んでいくかわからない段階ですが、「いまの9人でしっかりとひとつの形を作れたらいいよね」とメンバー同士で話しています。1回ずつの公演を大事にしながら、千秋楽を迎える公演で卒業なので……。植村想像するの?自分でもこうなるとかは。井上考えているんですか?稲場最後はどんな衣装を着るんだろうとか。植村うん、楽しみ!稲場少しずつ打ち合わせは始まってきているので、想像し始めてはいるんですが、セットリストにしてもまだ詳しくは決まっていないんです。だから、まだどんな卒業公演になるかはわからないですが、最後までみんなと楽しみたいですね。「メンバーみんな健康第一でツアーしたい」――お話は変わりますが、みなさんが最近ハマっているものはありますか。植村最近はブログにハマっていて、日課としてやっていますね。ブログに載せる写真についても、最新のものだけでなく過去のものも探すときがあって、「これいつ頃の写真だっけ?」と思ってスマホのアルバムを見直すことも。でも自分では、昔撮った写真はいつのものかすぐわからないのに、他のメンバーは「これあの時期のだね」と、髪型でわかるんですよ、すごい(笑)。そうやって写真整理しながら振り返ることにハマっています。稲場ずっとYouTubeを観ています。美容系のYouTuberさんのメイク動画を流しながら、自分でもメイクしてみたり。ご飯を食べるときは雑談動画を流したり。それも以前流行していた、やってみた系のものではなくて、日常のこんなことがあってこうだったという、ささやかなものだったり。あとはドラマや映画も好きで、何作品かは同時進行で観ることが多いです。最近観たものだと、韓国ドラマの『謗法~運命を変える方法~』が面白かったですね。オカルト系のドラマなんですが、たまたまネイルサロンで流れていた1話を観たらハマって、怖いシーンもあるもののどんなふうに話が進むのか気になって、自分でも続きを観たら一気に観終わってしまいました。井上前までは韓国ドラマも観ていたのですが、最近はアニメを観ることが多いですね。あとはフィルムカメラにもハマっていて。でも、現像しに行くときに、お店の人に顔を覚えられないように服の系統を変えて行っています。――アイドルということを知られないようにですか?井上いえ、ちょっと恥ずかしくて……。稲場けっこうメンバーの変顔とかも撮ってるもんね(笑)?井上そう。フィルムカメラは現像できているかお店の人が写真をチェックすると思うので、「この子って変顔するあの子だな」と思われないように、毎回雰囲気を変えています(笑)。もともとはディズニーランドに行ったときに、いつもと違うことがしたくて、コンビニに売っていた「写ルンです」を買って、自分や友達の写真を撮ったことがあって。現像したときに、「エモいな」と思ってから、フィルムカメラにハマりました。――紙の写真はエモいんですね(!)。続いて、ダイエットや美容法で、わたしたちにもできそうなオススメの方法があれば教えてください。植村わたしは日本酒風呂をオススメします。最初はいろいろな種類の入浴剤を集めていたんですが、あるとき「日本酒風呂は気持ちまでスッキリする」と耳にしてから試したら良くて、メンバーにもオススメしたんですよ。稲場わたしもやってみました(笑)。植村お酒ならなんでもいいわけではなく、焼酎でもちょっと違うみたいで、日本酒がいいらしくて。より血管の収縮を促すそうで、カラダの中からきれいになって、美肌になるみたいです。――湯船にどのくらいの量を入れるんですか?植村おちょこ一杯分ぐらいですね。稲場えーっ!わたしはけっこうドボドボと日本酒を湯船に入れていました(笑)。植村あっ(笑)!では人によると思うので、自分なりの量でも大丈夫みたいです。井上気分によって変えるんでしょうか。植村香りが強めでもいいときは、ちょっと多めに入れてもいかもしれない。日本酒風呂に入った後は、温泉に入ったあとのような感じになります。もちもちっと美肌になる気がしますね。稲場わたしがオススメしたいのは、簡単にお腹を凹ませるコツ。筋トレをおうちでやろうとすると面倒になることもあると思うんですが、お腹に意識を集中させるだけで、効果があるものです。例えばお仕事に行かれるときやデスクワークのときに、お腹をへっこめるように少し力を入れたり、歩くときにお腹を引き上げるイメージで歩くと、それだけで筋トレのようになって、腹筋が疲れて「効いてるな」と感じることができますよ。ながらでやれるので、オススメです。井上わたしは寝ることが一番だと思っています(笑)。植村確かに(笑)。井上熟睡するのが一番です。例えば、よく眠りにつけるようにと寝るときに音楽を聴く人もいますよね。人によって好きな音は違うと思いますが、わたしは音楽ではなく、好きな“足音”があるんです。稲場足音!?井上足音(笑)。わたしの姉も足音が好きで、歩いているときの音を録音しておいて、寝るときにその足音を流しながら、好きな香りのハンドクリームを塗って寝ると、リラックスできます。寝るのも気持ちいいですし、起きるときも爽快な気分で目覚めますね。稲場すごく珍しい。井上足音は全般的に好きなんですが、アニメを観ていても、靴のコツコツする音がいいんですよ。わたしはジブリの作品の音が大好きで、足のサイズが違うと靴も違いますし、歩き方が違うと鳴る足音も違うので、ずっと聴いていられます。わかりやすいジブリ作品だと、『借りぐらしのアリエッティ』(2010年)。小人と人間の足音が違いますし、釘の上を歩くときの足音も違って、面白いです。ぜひ聴いてみてください。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、Juice=Juiceとしての今後の抱負を教えてください。植村ハロプロのグループみんなが思っていることは、それぞれ単独ツアーがやりたいということです。コロナ禍で開催していたツアーが途中で中止になるようなことも経験しているので、みんながライブを行ったときにステージで輝く姿は、よりいっそうピカピカして見えるはずだから。ファンの方もマスクはあれど、マスクの奥で笑顔でいてくださる様子も伝わってきますし、「待ってたよー!」という感じで手を振ってくださるんです。稲場今回、単独ツアーの初日でも、ファンの方の拍手が鳴り止まなかったんですよ。植村本当に心待ちにしてくださっていたことが伝わってきて、うれしかったんです。だから、まずはメンバーみんな健康第一で、ツアーも無欠席でやっていけたらいいな。愛香の卒業公演も控えていますので、そこまではまず全力でみんなで頑張っていけたらと思っています。取材後記全国ツアー中という忙しいスケジュールの中で、ananwebの取材を受けてくださったJuice=Juiceの植村あかりさん、稲場愛香さん、井上玲音さん。撮影やインタビュー中は和気あいあいに、凛々しくもふんわりとした植村さん、もうすぐ迎える卒業を胸に飾らない思いを伝えてくれた稲場さん、クールそうでいてユニークな面も見せてくれた井上さんでした。そんなJuice=Juiceの3rdアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・北尾渉取材、文・かわむらあみりJuice=JuicePROFILE2013年2月3日「Hello!Project誕生15周年記念ライブ2013冬」の福岡公演にて、ハロプロ研修生内新ユニットの結成を発表し、2月25日にはグループ名をJuice=Juiceと発表した。ユニット名の由来は、「採れたて」「もぎたて」「新鮮」「天然」「100%」で「しぼりたて」というように、いつまでもフレッシュで個性の詰まったユニットになってほしいという願いが込められ、名付けられた。2013年3月、「Hello!Project 春の大感謝祭 ひな祭りフェスティバル 2013」のパシフィコ横浜にて1stインディーズシングル「私が言う前に抱きしめなきゃね」を初披露。9月、トリプルA面シングル「ロマンスの途中/私が言う前に抱きしめなきゃね(MEMORIAL EDIT)/五月雨美女がさ乱れる(MEMORIAL EDIT)」でメジャーデビュー。2022年4月20日、ニューアルバム『terzo』をリリース。3月から2年ぶりのコンサート・ツアー「Hello! Project 2022 Spring CITY CIRCUIT Juice=Juice CONCERT TOUR ~terzo~」を開催中。メンバーの稲場は、同ツアーの5月30日の日本武道館公演をもって卒業することが発表された。InformationNew Release『terzo』(収録曲)【Disc1】The Best Juice 2019-202201. 微炭酸02. ポツリと03. Good bye & Good luck !04.「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?05. 25歳永遠説06.「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?(New Vocal Ver.)07. ポップミュージック08. 好きって言ってよ09. Borderline10. Va-Va-Voom11. 続いていく STORY (Symphonic Version feat.Karin)12. DOWN TOWN13. がんばれないよ14. プラスティック・ラブ 15. Familia16. Future Smile【Disc2】「The Brand-New Juice 202201. GIRLS BE AMBITIOUS ! 2022 2. POPPIN’ LOVE03. STAGE〜アガッてみな〜04. Mon Amor / 植村あかり、稲場愛香、段原瑠々、井上玲音05. ノクチルカ06. G.O.A.T.07. 雨の中の口笛 / 工藤由愛、松永里愛、有澤一華、入江里咲、江端妃咲08. プラトニック・プラネット(Ultimate Juice Ver.)2022年4月20日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)HKCN-50718(2CD)¥3,300(税込)(初回生産限定盤A)HKCN-50712(2CD+BD)¥6,600(税込)特典:2CD+BD(MV&SPOT集+ジャケット撮影メイキンク)+8Pフォトブックレット+デジパック仕様・トールケースサイズ(初回生産限定盤B)HKCN-50715(2CD+BD)¥6,600(税込)特典:2CD+BD(MV別Ver.集)+8Pフォトブックレット+デジパック仕様・トールケースサイズ写真・北尾渉 取材、文・かわむらあみり
2022年04月14日若かりしころは大好きなアーティストのCDは発売日を心待ちにして買い、CDプレーヤーで何度も再生しては熱唱していました。しかし、時代は移り変わりMDも姿を消し、音楽をどう楽しめば良いのかがわからなくないように。そして、今ではたくさんの音楽のサブスクリプションがあり、何をどう選んで良いか迷うなか、根っからケチな私はなるべくお金をかけず音楽を提供してくれるところがあるか、模索の日々が始まりました。学生時代の懐かしい曲も今の曲も聴きたい音楽を手軽に楽しめるサービスを探し始めたものの、毎日必ず聴くわけでもないから有料は嫌だし、映像を見ながら音楽を聴くのも良いのだけどついつい見入ってしまい、家事が進まなくなるのも困ります。中学生のころから大好きなドリカムや福山雅治は絶対聴きたいし、最近のドラマで流れているすてきなアーティストの曲もフルで聴いてみたい。すでにアラフィフが近づいている私はすっかり最近のアーティストの顔や名前、曲名がわからず、子どもたちには「あのドラマの最後に流れてる曲、良いよねー」と言う始末。でも、ミーハー心は健在で良い曲は知りたいのです。テレビの歌番組は減り、毎週見る楽しみがなくなりました。そのため私の中では、音楽情報が手に入りづらくなりました。また、自分の中でサブスクを調べることの優先順位は低いので、音楽を楽しむためのツールをなかなか得られていませんでした。お正月、久しぶりに会う高校生の姪っ子がワイヤレスイヤホンで何か楽しそうに音楽を聞いていました。これはっ!と思い、早速何を使って音楽を楽しんでいるのか聞いてみたところ、「Spotify」と言う音楽サービスのサブスクリプションでした。姪っ子は有料会員で利用していましたが、無料でも十分楽しめると聞き、早速試してみることにしました。私のわがままをかなえてくれる音楽サービス「Spotify」は、音楽やポッドキャストを無料で楽しめるオーディオストリーミングサービスです。配信局数は5000万曲以上あり、日本のアーティストはもちろんのこと、世界中の好きな音楽が聴けます。検索機能があり、アーティスト、曲、ジャンルなどで自分の聴きたい音楽にたどり着くことができます。私は早速好きなアーティスト、ドリカムで検索。中学時代の懐かしい曲から最近の曲までランダムに編集されたものを聴きました。あっという間に音楽にどっぷり漬かってしまいました。「Spotify」の良いところは、「こちらもおすすめ」とアーティスト紹介がされているところです。例えばドリカムを聴いていると、槇原敬之や松任谷由美、Superflyなどのアーティストが紹介されていて、聴いてみたくなってしまいます。学生時代は、まさか音楽が無料でこんなにも自由に聴ける日は来るとは思っていませんでした。CDを買っては大切に保管していましたし、CDをレンタルして家で夜な夜な自分好みの曲をMDにダビングしていたことが懐かしく思い出されました。私のお気に入りの音楽の聴き方は…「Spotify」をすっかり気に入ってしまった私。掃除機をかけながらワイヤレスイヤホンを付け、大音量で曲を聴きながら熱唱するのがお気に入りです。結婚してからすっかりカラオケに行かなくなってしまい、熱唱する機会がなくなっていました。歌ってストレス発散にもなっているので、私は掃除機をかける時間が好きになりました。「Spotify」の機能の一つに、私が聴いている曲から、AIがしっかり分析してくれて毎週のようにDaily Mixでさまざまなアーティストの音楽を厳選してプレイリストを作ってくれるというものがあります。本当に驚くくらい見事に良い曲を選曲してくれています。知らないアーティストの曲もありますし、ドラマの最後に流れていて印象に残っていた曲まで、良い曲を選んでくれているのです。なので新しく選曲してくれたDaily Mixを聴くのが楽しみの一つになっています。気に入った曲には必ずイイねマークを押しておけば、また選曲に入ってくることが多くなるみたいです。でも無料会員の場合、コマーシャルが時々入ってきます。私はラジオ世代でもあるので、音楽の間にコマーシャルが入ってもあまり気にならないのは年齢のおかげだと思います。まとめサブスクリプションというサービスをあまり利用してこなかった私にとって、無料で音楽を楽しめる「Spotify」は本当に優秀。ついついおすすめしたい心がある私は、友人や夫などにも宣伝してみました。機能の使い心地は人それぞれのようですが、活用してくれているようです。また、もう一つのお気に入りポイントは、アプリを開いて音楽を聴いていても、LINEやネットサーフィンなどもできるところです。このさりげない親切なところがたまりません。最近では、韓国のBTSやDISH//、米津玄師、official髭男dismなどのアーティストの曲もたくさん聴いています。すてきなアーティストを発掘するのが楽しみになりました。※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。著者/Pたろー(44歳)間もなく40代後半へ。根っからのミーハー心で、これから迎える更年期もポジティブに過ごしたい。
2022年04月05日【音楽通信】第106回目に登場するのは、アイドルユニットとしての活動などと並行しながら、ソロアーティストとしても本格始動されたニュースター、ゆっきゅんさん!姉の影響で女性アーティストの音楽を聴いて育つ【音楽通信】vol.1072016年、オーディション「ミスiD 2017」で男性初のファイナリストとなり注目を集め、同年から男女2人組のアイドルユニット「電影と少年CQ」としても活動している、ゆっきゅんさん。そこにいるだけでパッとまわりを明るくするような華やかさと、チャーミングなキャラクターで、“ゆっきゅんワールド”に惹き込まれる人が後を絶ちません。2021年5月からは、セルフプロデュースの「DIVA Project」をスタートし、「DIVA ME」「片想いフラペチーノ」の2曲を配信リリースと、ソロアーティストとしても活動を始めています。そんなゆっきゅんさんが、2022年3月30日、1stアルバム『DIVA YOU』をリリースされたということで、お話をうかがいました。――小さい頃に音楽に触れたきっかけや影響を受けたアーティストから教えてください。4、5歳ぐらいのときから、7歳上の姉が大好きでよくかけていた浜崎あゆみさんなどの曲に触れる機会が多く、女性アーティストの曲を聴いて育ちました。子どもの頃は、親が運転する車に乗っていると、いつもカーステレオからは浜崎あゆみさんのアルバム『LOVEppears』(1999年)や、宇多田ヒカルさんのアルバム『First Love』(1999年)と『Distance』(2001年)、Every Little Thingのベスト盤の曲が流れていましたね。姉の影響もあって、浜崎さんのことが大好きになって。子どもの頃はCDをたくさん購入することはできませんでしたが、休みの日はケーブルテレビの音楽専門チャンネルで流れている、邦楽ヒットチャート100といった番組をずっと観ていて、2000年代の邦楽ヒットチャートは全部頭に入っていました。いま思えば、何気なく車で流れていた曲を聴いたりヒットチャート番組を観てきたりしたことは、けっこう大きな音楽のインフラだったんだなと思います。当時はいまよりも音楽番組がたくさんありましたし、テレビを観ると浜崎さんが歌っていたりと好きな人が出演していたので、幸せな時代でした。aikoさんとか、YUKIさんとか、安藤裕子さんとか、椎名林檎さんとか……「歌姫」「DIVA」と呼べるような歌手の音楽が大好きになって、そのまま大人になってからも、ずっと聴いていますね。――音楽に親しまれていたということで、お姉さんとライブに行くことはありましたか。なかったですね。好きな人はテレビで観ることができるので、コンサートに行くという発想もなかったです。岡山県に住んでいたからだと思いますね。高校のとき、友達と広島にPerfumeを観に行ったことはあったけど、基本的に音楽はひとりで聴いて楽しむものだと思っていました。岡山や倉敷市の市民会館には中高所属した吹奏楽部でよく出てましたけど。――楽器との触れ合いはそのときが初めてですか。5歳ぐらいからピアノを習っていました。でも、全然練習ができなかったので、ピアノは弾けないです。作詞をするようになってから、他の人が書いている詞を見ていると「すごいな」と思うことや、歌うようになってから他の方の歌唱法を見て勉強になることも。でも、作曲に関してはそれがわからないので、損している気がして(笑)。いまからでも少しは弾けるようになりたい気持ちがありますね。――2016年にポップユニット「電影と少年CQ」として、音楽活動をスタートされましたね。2016年に「ミスiD 2017」でファイナリストになった時期に、映画をテーマにしたユニットの募集があったんです。それが「電影と少年CQ」で、いまもルアンちゃんという女の子とふたりで活動をしています。いわゆるアイドルライブらしいものではなくて、曲と曲の間にお芝居があって、毎回違う物語を表現するライブをしています。――もともと表舞台に出たいと思った理由は何ですか。中学生の頃にハロー!プロジェクトが好きになって、その後、アイドルやアイドルの音楽が大好きになりました。2014年、大学の進学のために上京したんです。大学では比較芸術学科というところにいて、そこは美術も音楽も演劇も映像も幅広く学べる学科だったので、そういったものにも興味がありました。岡山にいても誰もライブに来ないので、いろいろな芸術やライブが観たいという気持ちで上京しましたが、いざライブに行くようになったら観る側ではなく「あれ?ライブに出たいな」とすぐ気づいて(笑)。東京への期待もありましたが、思ったよりも面白い人は珍しいから、自分でも活動できるんじゃないかなと。カバー曲でライブに出たり、写真集を作ってみたり、自分なりにできる活動を模索してから、、ユニットの活動へとつながっていきます。――2021年から始まった「DIVA Project」でのソロ始動はどんなお気持ちからですか。それまでの活動だけでは、本当にやるべきことはやれていないと自覚していました。ただ、大学院にも通っていて学業との両立が大変だったこともあり、まだ計画の段階で。2021年の春に大学を卒業したので、本格的にセルフプロデュースでのソロ活動を始めることができました。それまでは一番好きな音楽を届けることにまだ自信はなかったんですが、昨年はまわりに協力してくださる方もいて、「いまならやれる」と感じたので、やっとそのタイミングが来たと思っています。日常生活に地続きで寄り添う1stアルバム――2022年3月30日に1stアルバム『DIVA YOU』をリリースされますね。初めてのアルバムなので、今後も活動を続けるなかでの大きな第一歩になると思っています。収録曲の2曲目「DIVA ME」は、セルフプロデュース第一弾の楽曲として昨年5月に出したソロデビュー曲で、いままでとは違う反応や新しい期待を多くの方にいただくことができました。その手応えもあったので、次はアルバムを作ろうと思ったんです。これまでに自分自身ではいつ音楽を聴いていたか、いつ音楽に救われてきたかを考えると、音響のいい部屋で聴いてウットリするというよりも、電車の中や移動中や駅までの道のりでした。そんな日常生活のなかで聴いてほしい、というのが大前提にあったイメージで、アルバムのコンセプトで浮かんだのは“ワンルームディーバ”ということ。歌を歌っていなくても、踊っていなくても、豪邸に住んでいなくても、みなさんが自分をDIVAだと思うならDIVAですし、そもそもがDIVAだと言いたい。DIVAというのは、誇り高くあろうとする精神性のようなことです。わたしの衣装のようにキラキラしたものは距離を感じるかもしれませんが、この衣装を着て歌うのは日常的なことなんです。頑張りたい人を応援したいので、ワンルームに住んでいるDIVAたちを想像したり、自分のことを書いたり。日常生活と地続きで、みなさんに寄り添いたいから。「DIVA ME」という曲を聴くことによって、DIVAに変身するというのではなく、みなさんの心のなかにあるDIVAがもしいるならば、もともと存在していたそれを解放したいという気持ちがあって。ゴリゴリ、ギラギラした踊れる曲が多いですが、この曲たちで生活を彩ってほしいという願いを込めた作品になりました。――アッパーな曲がメインですが、5曲目「歌姫」は王道のミディアムバラードですね。このアルバムはともすれば、わたしがやりたいことをやろうとすると「DIVA ME」100連発とかをやってしまうので危ないと思って(笑)。だから「歌姫」は、緩急の緩にあたる役割として、ちょっとミディアムで憂いのある曲にしてほしいとオーダーしました。通っていた青山学院大学から渋谷駅までの道のりを歌った歌で、歌詞に「寂しくないけど帰りたくない」とあるんですが、そういう寂しがり屋じゃない人の孤独を歌にしています。あと東京について一度歌っておきたい気持ちがあって、自分なりの渋谷をイメージした歌を書きました。――アルバムのリード曲となる6曲目「DANCESELF」は、ダンサブルなナンバーです。ミュージックビデオでは、ダンサーさんと一緒に踊っていますね。ミュージックビデオを監督してくれた今原電気さんは、8年前のでんぱ組.incの武道館ライブでたまたま隣の席にいて「ゆっきゅんさんですか?」と声をかけてくれた方なんです。それからの知り合いで、いまでは乃木坂46などの映像作品を手がける映像監督になっていたので、お願いしてもどうかなと思っていたのですが、わたしの活動には興味を持っていただいていたのでご相談したら「ぜひ」とノリノリで取り組んでくださって。夢をたくさん叶えてくれましたね。でも、DIVAのことはあまりわからないということで、50曲ぐらい映像プレイリストを解説付きで送ったら、完全に理解してくれて、わたし以外が作ったとは思えない企画書をいただけたので進めて完成しました。「DANCESELF」は、「DIVA ME」の先にあるような曲にしたくて書きました。――ゆっきゅんさんは、全曲の作詞を担当していますが、いつもどのように作詞をしていますか。思いついたフレーズをときどきメモしていますが、それがいつ役に立つかはわかんないって感じで(笑)。歌い出しやAメロが上手く書けてからじゃないと全く進めないですね。「DIVA ME」と「DANCESELF」に関しては、ワンコーラスぶんの詞を先に書きました。でも、基本的にはメロディがきてから詞も浮かんでくる感じです。作詞をすることになって、歌詞というのは独立した作品ではなく、メロディと歌あってこそのものなんだと改めて感じましたね。こういうことを伝えたいなと思って書く歌詞もありますが、「何でこのフレーズが出てきたのかわかんない」という詞のほうが、気に入ることは多いですね。――数々の著名な方々もアルバムにコメントを寄せていますね。みなさんに直接コメントをお願いしました(笑)。藤井隆さんは憧れの存在で、『DIVA ME』をリリースしたことで私のことを知ってくださって、それだけでも嬉しかったのですが、今回「ゆっきゅんからの愛の挑戦状、受け取りました」などと言ってくださっていて……本当に感激しました。Base Ball Bearの小出祐介さんは、(昨年11月に先行リリースした)収録曲の3曲目「好きかも思念体」を聴いて昨年のベストアイドルソングとして褒めてくださったりして。みなさん本当に有り難いお言葉をくださいました。「大事なところは譲らず規模を広げていきたい」――お話は変わりますが、いまハマっているものを教えてください。今日もご自身できれいにメイクされていますが、コスメなどにもご興味があるのですか。アイドルのライブ活動のときなどは基本的にセルフメイクなので、メイクにも興味ありますね。雑誌『anan』の「Beauty News」というメイクのページ(3月23日発売号)もやらせてもらいました(笑)。最近ハマっているのは、ちょうど「大都会の愛し方」という本を読んでいます。韓国のパク・サンヨンという作家の連作小説なんですが、「コレ、わたしの好きなヤツ!」と思いながら読んだり、家では動画配信サービスで映画を観たり、これまで聴いていなかった音楽を聴き直したりしていますね。――衣装も私服もキラキラしていて素敵ですが、お好きなファッションはありますか。洋服は、襟のあるものばかり着てしまいますね。あまりTシャツとかは似合わなくて、これからはブラウスの季節なので、今年もたくさん襟付きのブラウスを買いたいです。キラキラしているものやピンク、フリルとレースとリボンがあれば何もいりません。2年前ぐらいから、もっとおしゃれになろうと思って、服の着方が変わりました。高価な洋服でも、デザイナーの思いが伝わる服、ずっと大切にしたいと思える服を選んでいます。――いろいろなお話をありがとうございました!では最後に、今後の抱負をお聞かせください。このアルバムがどんなふうに転がっていくのか、予想を超えてほしいですね。もともと子どもの頃や中高生だった頃に、「こういう人がいてくれたらよかった」と思い描いていたような存在になろうと活動しているところがあって。孤独な心を持つ人たちに響くような活動が実現するといいなと思っています。いまこうしてインディーズ活動をしていても、インターネットで調べれば誰でも知ることができますが、やっぱり大きな規模で活動しないと届けたい人にまでは届かないと思っていて。音楽をテレビで知ったり、映画をシネコンで観たり、そうやって知識を蓄えていったから、わたしもメジャーデビューしたいですね。そして昨年リリースされた、でんぱ組.incの曲で作詞を担当したんですが、これからはもっと多くの方に作詞提供したいですし、自分でも歌を歌いたい。このまま大事なところは譲らないまま、規模を広げていきたいです。今年の5月にはワンマンライブも開催するので、楽しみにしていてください。取材後記アイドルユニットとして、ソロアーティストとして、文筆家として、さまざまなフィールドでの表現者として活動されている、ゆっきゅんさん。ananwebの取材では、撮影時は素晴らしいポージングを披露され、インタビューではありのままの思いを語ってくださいました。まるで令和時代の新しいディーバ像を見せてくださったゆっきゅんさんのこれからのご活躍も楽しみです。そんなゆっきゅんさんの1stソロアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・北尾渉取材、文・かわむらあみりゆっきゅんPROFILE1995年5月26日、岡山県生まれ。2014年よりアイドル活動を開始。2016年からポップユニット「電影と少年CQ」としてのライブを中心に、個人では映画やJ-POPの歌姫にまつわる執筆、演技、トークなど活動の幅を広げる。2021年5月より、セルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。「DIVA ME」「片想いフラペチーノ」の2曲を配信リリースし、インディーズデビュー。また、夢眠ねむが運営する夢眠書店の出版レーベル「夢眠舎」にて、水野しずとともにカルチャー雑誌『imaginary』の編集長を務めている。2022年3月30日、1stアルバム『DIVA YOU』をリリース。5月にワンマンライブを開催予定。InformationNew Release『DIVA YOU』(収録曲)01. DIVA ME & YOU -Introduction-02.DIVA ME03.好きかも思念体04.BAG IN BAG05.歌姫06.DANCESELF07.NG08.DIVA ME -ウ山あまね reMEx09.DIVA ME – RYOKO2000 reMEx10.DIVA ME – 田島ハルコ R@VE DiVA remex2022年3月30日発売GKR-002(CD)¥2,420(税込)写真・北尾渉 取材、文・かわむらあみり
2022年04月03日【音楽通信】第105回目に登場するのは、来年結成20周年を迎える4人組ロックバンド、シドのみなさん!音楽的ルーツもさまざまな4人が集結写真左から、Shinji(G)、明希(B)、マオ (Vo)、ゆうや(Dr)。【音楽通信】vol.105マオさん(Vo)、Shinjiさん(G)、明希さん(B)、ゆうやさん(Dr)からなる4人組ロックバンド、シド。2003年にバンドを結成し、2008年にメジャーデビュー。東京ドーム公演では4万人を動員し、初のベストアルバムはオリコンウィークリー1位を獲得、そしてアジアツアーを行うなどコンスタントにリリースやライブ活動を続け、人気を博しています。そんなシドが、2022年3月23日にニューアルバム『海辺』をリリースされたということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。ーー小さい頃に音楽や楽器に触れた経緯と、バンドをやるようになったきっかけから教えてください。マオ最初に歌いたいと思ったのは、小学校6年生ぐらいの頃です。カラオケが流行りだして、友達と行くようになると「上手だね」と言われることが多くて、「じゃあ歌ってみるか」という感じで歌を始めました。それまではあまり人に褒められた経験がなかったので、うれしかったんです。子どもの頃は、(4人組バンドの)LINDBERGの歌をよく歌っていました。カラオケでは、当時流行していた歌をいろいろと歌っていましたね。僕はパンクロックが好きだったんですが、あんまりカラオケに入っていなかったので、幅広く音楽を聴いていました。バンドをやり始めたのは、高校生のときからで、初めて立ったステージは高校の文化祭です。Shinji中学2年生になるまでは、あまり音楽には興味がなくて、野球などのスポーツが好きだったんです。でも、中学の給食の時間に有線で日本のヒットチャートが流れていて、B’zの「ZERO」という曲を聴いてビビッときて。その場で友達を集めて、じゃんけんをして担当するパートを決めて、バンド人生が始まりました。ーーB’zにビビッときたからギターを担当されたのですか。Shinjiいえ、じゃんけんして最後まで負けてしまい、それでギターになりました(笑)。僕はバンドをやりたかったのですが、ただそばにいる友達をかき集めただけのメンバーだったので、みんなそこまでバンドに興味がなくて。ギターは弦が6本もあるから弾くのは難しそうだと言われて、最後まで不人気だったギターを担当して、今に至ります。明希最初に楽器に触れたのは、小学生ぐらいのときからやっていたピアノです。それまでは習い事も続かなかったのですが、ピアノのレッスンはずっと続いて、そこからどんどん音楽が好きになって。その後、バンドをやりたいと思って好きになったきっかけは、LUNA SEAを観て衝撃を受けて、それでベースを始めました。ゆうや僕はずっとサッカーしかしていなくて、地元でもバンドや音楽が流行っていなかったので、まわりに影響されることもなく、あまり音楽に触れる機会がなかったですね。当時はテレビっ子だったので、初めて買ったCDも、とんねるずさんがやっていたテレビ番組で歌っていた「がじゃいも」でした。音楽に触れるようになったのは、高校に入ってからです。学校に軽音同好会があったのですが、サッカーの練習が終わった後に、暇だったからそこを覗くようになって、少しずつバンドに触れるようになっていきました。10の愛の物語をコンセプトにしたアルバムマオ(Vo)。福岡県出身。10月23日生まれ。ーー2022年3月23日にニューアルバム『海辺』をリリースされました。今回のリリースにあたっての思いからお聞かせください。マオこの『海辺』は、10の愛の物語をコンセプトに作りました。コロナ禍の時代に、僕たちもファンのみんなも世の中としても、きっと愛が足りていないんじゃないのかなと。まるで愛を見つめ直すような、ひとりの時間が多くなったこの2年間だったと思うんです。そういうなかで、僕自身、愛とは何かをあらためて作詞家としても見つめ直す機会がありました。そのなかで生まれた言葉たちを中心に、今回はアルバムを作っていこう、というところから制作が始まりました。ーーマオさんはすべての作詞を担当されていますが、アルバムのタイトル曲となるドラマチックなナンバーの10曲目「海辺」は、どのような気持ちを込めた曲ですか。マオ10の愛の物語が、最後に集まってきて、流れ着く場所。そして最後の曲なので「海辺」というタイトルにしました。タイトルが決まったあとにアルバムタイトルを決める際、あらためて別のタイトルをつける案もあったんですが、僕はどうしても「海辺」というタイトルにしたくて。作っていくなかで、どんどん気持ちが入っていきましたし、今はこのタイトルをすごく気に入っています。ーー明希さんは、「海辺」を作曲されていますが、どのようなイメージで作られましたか。明希今回は、マオくんの考えたテーマというものがあって、そのなかで作曲に取り掛かりました。テーマに沿ったイメージで曲を作っていって、自分としては「最後にふさわしい曲になったらいいな」というイメージを先行して持っているなかで、作っていった曲になります。Shinji(G)。埼玉県出身。2月8日生まれ。ーー9曲目「揺れる夏服」は、マオさん作詞、Shinjiさん作曲のキャッチーでポップなナンバーですが、どのように生まれた楽曲ですか。マオこれは、陰と陽があれば、このアルバムのなかでは陽の曲。キラキラしている曲なんですが、シドの曲の中では、実はキラキラしている曲も多くて。そういう歴代やってきたキラキラした曲の流れを取り入れつつも、やはり新しい挑戦もしたくてたくさん取り込んだ曲と歌詞になっています。Shinji今回“令和歌謡”という新たなジャンルを提示しながらも、けっこうライブのことを意識して作ったところもあります。もともとマオくんからの「キラキラした楽曲が欲しい」というリクエストがあって、さらにライブの後半でこういうノリのいい曲が欲しいなと思いながら、作っていきました。ーー2曲目「大好きだから…」は、マオさん作詞、ゆうやさん作曲の切ないナンバーですが、どのようなテーマから生まれた楽曲でしょうか。マオ僕、読書が好きなのですが、ミステリー小説を読んだときに「そういう要素が入っている歌詞を書いてみたい」と書き上げました。一見、普通の悲しい歌詞に見えるんですが、よく見るとある謎が解けていくので、謎解きも楽しんでいただければと思います。明希(B)。神奈川県出身。2月3日生まれ。ゆうやこの曲は、アルバムの中で最後に作った曲ですね。いろいろなコンセプトが上がっているなかで、これはまだコンセプトがなかった状態で、途中で「こういう曲が欲しいね」となって作り始めて。これまでやったことのないイメージと、和風を合体させたようなテイストにして、新しいタイプの曲を作ってみたいと思い、作り上げていきました。ーーマオさんは、いつもどのように作詞をしているのですか。マオ例えば、本や映画から影響を受けるということは、まれなんです。どちらかというと、インスパイアを受けたとしたらそれを僕の日常に取り入れることで「じゃあ、書くぞ」となったときに、バーっと出てくるというイメージ。フィクションかノンフィクションかも関係なく、自分の頭の中にあるもの、僕でしかないものが、言葉となって仕上がっていくということですね。ーー歌詞には、女性目線のものと男性目線のものがありますが、何か切り替えがあるのでしょうか。マオあまりこのテーマだから女性目線でというような決まりはなく、自然と生まれてくるものなんですよね。それは曲に導かれるときもありますが、リアルタイムで書いてみたいテーマがパッと浮かんだら、そのときに決めているので、自分軸の中でどのような主人公をテーマにして歌詞を書くかは決まるという感じですね。だから、女性目線で書いている曲も、明日書いていたら、もしかすると男性目線になっていたかもということも楽しみながら、リアルに書いています。ーー歌詞を書かれているときに大事にしていることはありますか。マオ歌詞がわかりやすいことは大事ですが、わかりやすいのと、ひとつしか答えがない、というのは全然話が違うと思っていて。自分が詞を書いて、歌って、そこで終了ではないと思っています。お客さんが受け取って、詞を読んでくれて、その人なりの解釈が出てきて、そこで初めてゴールですから。いろいろなゴールが作れるような歌詞を目指して書いています。ゆうや(Dr)。千葉県出身。12月9日生まれ。ーー明希さん、Shinjiさん、ゆうやさんは、作曲を担当されていますが、曲作りで大事にしていることはありますか。明希大切にしていることは、みんな共通して、メロディの良さだと思います。個人的には、最近はメロディはもちろんですが、アレンジや自分たちらしさ、冒険というか遊び心も同じぐらい大切だと思っていて。もうすぐ結成20年になりますが、年を重ねるほど、保守的なイメージに見られるのがいやになってきているというか。これまでもいろいろなジャンルや音楽性を表現してきたつもりですが、これからもずっと自分たちらしく挑戦していきたいというのがありますね。Shinjiメロディが一番大事ですね。最近意識するのは、例えば「この曲、10年後、20年後も聴いてもらえているかな?」ということ。曲調によってもキャッチーさを求めるのか、それとも新しさを求めるのかと、視点が違うと変わってきますし、流行っている曲も素晴らしいですが果たしてどれだけの曲が何十年後も聴かれているかというとどうだろうと。日々、残っていく曲、長く聴いてもらえる曲を作りたいと思っていますね。ゆうや昔からずっとそうなんですけれども、僕自身は歌を歌っていないので、歌うとどうなるのかを一番意識して作っています。あとは、直感的に生まれた曲は、すぐに手をつけないようにしていますね。直感で曲ができたときは、すごくいいなと思っているんですが、何日後かに聴いてみると全然よくないな、ということもいっぱいあって。そのため、曲ができても、1回寝かせて、その何日後かに聴いてみるようにしています。「4人で健康に楽しく続けていくことがすべて」ーーお話は変わりますが、みなさんがいまハマっているものや趣味を教えてください。マオうちにはトイプードルがいるんですが、犬も行けるカフェやレストランも多くて、一緒に出かけることですね。今は海に連れて行って、一緒に遊んだり、人があまりいないような場所に出かけたりしています。めちゃくちゃかわいいです。Shinjiラーメンが好きで、以前はお店をまわっていましたが、今はコロナ禍なので全然行っていませんね。家にいても、基本的にあまりテレビは見ないのですが、観るとしたら好きな野球です。野球はまだシーズンが始まっていないんですが、地味ながらキャンプや練習試合の様子をBS番組などで観ていますね。好きな巨人の様子を中心に、巨人の放送がやっていないときは、他の球団のキャンプの様子を観ています。明希最近、動画配信サービスを観るようになって、たまたま観たことから韓国ドラマにどっぷりハマっています。面白かったのは『今、私たちの学校は…』という韓国ゾンビドラマと、いまさらながら主役のふたりが結婚したと知ってから『愛の不時着』を観ました。ゆうや外出自粛になった2020年の4月ぐらいから、この際、見直そうと思って、家の中の改築をするようになりました。防音の部屋を作ったり、ついていなかった壁に窓をつけたり、二重窓にしたり、オーダーメイドのガラス窓をつけたり。家を見直して「こうしてみようかな」とやり始めたら、わりとけっこうな改築になったのですが(笑)、ゆっくりと自分でやることにハマりました。ーーいろいろなお話をありがとうございました。最後に、代表してマオさんから、今後の抱負をお聞かせください。マオシドは、今年19周年、来年20周年を迎えます。ここまできたら、4人で健康に楽しく続けていくことがすべてだと思うので、そこだけをがんばっていけたら。そのなかでいいアルバムができたり、いいライブができたり、いろいろなご褒美が待っていると思うので、これからもシドを楽しく続けていきたいですね。取材後記胸に響く歌詞とメロディで、ヴィジュアル系というジャンルを超えて、さまざまな音楽ファンを獲得し続けているシドのみなさん。ananwebの取材では、マオさん、Shinjiさん、明希さん、ゆうやさんのメンバー全員にいろいろなお話をうかがうことができました。新しい挑戦を続けるシドのみなさんのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみりシドPROFILE2003年結成。マオ(Vo)、Shinji(G)、明希(B)、ゆうや(Dr)からなる4人組ロックバンド。2008年、TVアニメ『黒執事』オープニングテーマ「モノクロのキス」でメジャーデビュー。 2010年の東京ドーム公演では4万人を動員。2013年、初のベストアルバムをリリースし、オリコンウィークリー1位を獲得。 同年、横浜スタジアムで10周年記念ライブを開催。夏は初の野外ツアーで4都市5公演で5万人を動員し大成功を収める。2014年、香港・台湾を含む全国ツアーを開催。2018年、バンド結成15周年とメジャーデビュー10周年のアニバーサリーイヤーとして、計50本以上もの全国ライブハウス公演やアジアツアーを行ったのち、 2019年3月にグランドファイナルとして横浜アリーナ公演を大成功に終えた。2021年、5月に河口湖ステラシアターで開催したスペシャルライブ「SID LIVE 2021 -Star Forest-」の同タイトルのテーマソング「Star Forest」をリリース。2022年3月23日にニューアルバム『海辺』をリリース。InformationNew Release『海辺』(収録曲)01. 軽蔑02. 大好きだから…03. 13月04. 街路樹05. 液体06. 騙し愛07. 白い声08. 慈雨のくちづけ09. 揺れる夏服10. 海辺2022年3月23日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)KSCL-3353(CD)※各盤の品番ご確認ください。¥3,190(税込)(Poetic盤:初回生産限定盤))KSCL-3348~49(CD+BOOK)¥4,950(税込)【BOOK】・ハードカバー 上製本仕様・マオによる全曲解説などを含む、全100ページの『海辺』ブックレット。(Artistic盤:初回生産限定盤)KSCL-3350~52(CD+BD+PHOTO BOOK+BOX仕様)¥6,490(税込)【PHOTO BOOK】全40ページに及ぶメンバーの写真を収めたフォトブックレット。【Blu-ray 収録内容】01.“騙し愛” Music Video02.Making of Music Video “騙し愛”03.“海辺” Music Video04.Photo Session & Making of Music Video “海辺”取材、文・かわむらあみり
2022年03月25日【音楽通信】第104回目に登場するのは、やさしさあふれるバラードから力強いロックチューンまで、多彩な歌声を届けてくれる、シンガーソングライターのmiwaさん!幼い頃から歌手になりたいと思っていた【音楽通信】vol.1042010年の大学1年生のときにメジャーデビューしたmiwaさん。翌年にリリースした1stアルバム『guitarissimo』は、平成生まれのシンガーソングライターとして、初めてアルバムチャート1位を獲得。以降、透明感がありながらも力強い歌声で、数々のヒット曲を聴かせてくれています。そんなmiwaさんが、2022年2月23日に5年ぶり、6枚目となるニューアルバム『Sparkle』をリリースされるということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。――小さい頃やデビューする前によく聴いていた音楽から教えてください。親やまわりの友達が聴いているようなJ-POPや洋楽をよく聴いていましたね。親世代が聴くような年代のものから、友達が聴くような当時の流行の曲まで、幅広く音楽を聴いていました。――15歳の頃からギターでオリジナル曲を作り始めたそうですが、そもそも楽器を始めたきっかけがあったのですか。クラシックピアノを10歳までやっていたのですが、やめてしまって。その後、シェリル・クロウやアヴリル・ラヴィーンなどの女性アーティストが、自分でギターを弾きながら歌っている姿を見て「かっこいい!」と影響を受けて、15歳から自分でもギターをやりたいなと思って始めました。――19歳のとき、シングル「don’t cry anymore」でデビューされましたが、実際にアーティストになろうと意識されたのはいつ頃なのでしょうか。歌手になりたいというのは、幼い頃から思っていました。でも、歌手になりたいというのは漠然とした夢だったんです。成長して、自分で作詞作曲をするようになってからは、「シンガーソングライターになりたい」と、具体的に目指す夢になっていきました。新作は“自分らしく輝く”ということがテーマ――2022年2月23日に6枚目となるニューアルバム『Sparkle』をリリースされます。タイアップ曲や新曲が収録された今作ですが、どんな思いが込められていますか。まず1曲目に「Sparkle」というタイトル曲があるのですが、この曲は“自分らしく輝く”ということをテーマにしています。いまの世の中、なかなか自分を解放したり新しいことを始めたりという前向きでポジティブな気持ちになりづらい状況で、ふさぎこんでしまう瞬間も多くある感じがするのですが、そんなときにこそ音楽が少しでも励みになって背中を押せればいいなと。曲自体はかなり前に書いた曲なんですが、いま聴いてみると、こういった世の中で同じ時代を生きる人たちに響くメッセージになっているのではないかなと感じています。――アルバムのジャケットもきらめいていて、タイトルのお話でもお聞かせくださいましたが、こちらも“輝く”というコンセプトでしょうか。そうですね。外に向かって輝いていくようなきらめき、自分の内側からあふれる輝きのようなイメージを大事にしました。手に取る方がハッとするようなポジティブさや、未来に向かって進んでいける希望を持てるジャケットにしたくて。こだわりを持ってスタッフの方たちも含めてみんなで作っていきました。衣装も着たことのないようなものだったり、メイクもホログラムをたくさんつけてみたりしています。――では4曲目「UUU(ユーユーユー)」はどんなふうに生まれた楽曲でしょうか。曲に出てくる主人公は学生で、恋愛をテーマにした曲です。いま10代の方は、もっとSNSが身近で、スマホが生活に密接にリンクしていますよね。わたしが10代だったときはLINEがまだなく、携帯のメールが中心だったと思うのですが、いまはTwitterもInstagramもLINEもなんでもあって、ある意味スマホの中の世界がリアルのような気がしていて。そんなSNS上のやりとりに一喜一憂して、スマホを手放せなくなっているということが起きているんじゃないかなと思うんです。わたしが学生の頃はメールの返信がきていないと、折り畳み式の携帯電話の画面をパカパカ開く時代で、そんな気持ちを思い返していました。そういったスマホの中の恋愛、相手とのやりとりに夢中になっている瞬間をとらえている曲になっています。――では、いつも曲を作られるときは、主人公を設定して、物語を作り込んでいらっしゃるのですね。この曲のようにテーマを決めて書くときと、曲にひっぱられてテーマができあがっていくときと、両方ありますね。いろいろなアプローチで作っています。――10曲目「Storyteller」は強い信念を感じる歌詞のロックナンバーですね。こちらはどのように作っていかれたのですか。最初からタイトルとテーマを決めてから作った曲ですね。「Storyteller」というタイトルから連想する自分らしさや、自分の人生を主体的に生きるというような意味を込めています。誰かに「こういう生き方だよね?」と言われるのではなく、自分から「これが私の人生です」と自分で言える力強さを表したいと思って書きました。ある意味、シンガーソングライターという仕事も、自分の考えや信念を曲に込めていける職業だと思うんです。そういったなかで、自分の思いをかたちにするという視点から、この曲が生まれてきました。――12曲目「君の声が」は、miwaさんの歌声がダイレクトに届くバラードですが、どんなシチュエーションから生まれましたか。実はアルバムの中で、もっとも昔に作った曲です。当時、(イギリスのシンガーソングライター)エド・シーランに感化されて、彼のようにエレキギターでラブソングをロマンチックに歌うことをやってみたいと思って。そんなことを一緒に曲を作ってくれているプロデューサーのNAOKI-Tさんと話しながら作っていったので、あらためてこのアルバムを作るときに歌詞を完成させていきました。そのときに、当初思い描いていたすごくロマンチックな部分を大切にしようと思って、何度でも出会って、何度でも恋をする、出会いの奇跡と運命みたいなものを歌っている曲です。――ラストを締めくくる13曲目「Who I Am (Album Version)」は、一度2020年に配信された楽曲でもありますが、今回あらたに収録されたのはどのような思いからですか。今回、頭のサビの部分を英語にしたのですが、この英語のテイク部分は2019年の1月に、ロサンゼルスで作った曲なんです。2017年にリリースした「We are the light」という曲があるのですが、その曲はLA在住のプロデューサーher0ism(ヒロイズム)さんやTova Litvin(トヴァ・リトヴィン)というメンバーと日本で制作して。そのときのメンバーと今回、LAで再会して、また3人で作ったんです。なかでもTovaとは、以前も初めて会ったのにすぐ意気投合して、今回LAでの再会もお互い楽しみにしていて。私がショートヘアにしてからの再会でしたが、偶然Tovaさんも髪を何十センチも切っていて「お互い髪切ったね」という話から近況を話していくうちに、同性で同世代ということもあって共感する部分がありました。そのなかで「私たちらしさってなんだろう」と、自分の人生の進め方について、親友のように語り合ったままの気持ちで作った曲なので、私にとっても人生のターニングポイントとして大事な曲です。自分自身もすごく励まされましたし、力がわいてくる気がしていて、そのときにLAで録ったデモが、今回のアルバムバージョンに入っているものになります。実は東京でも英語バージョンも日本語バージョンもレコーディングし直しているのですが、聴き比べてみると、やっぱりLAで録ったデモのほうが作ったときの感情が詰まっている気がして、すごくよかったんです。そのときのパッションを大切にしたいと思って、そちらを今回入れてみました。――2月からは「miwa concert tour 2022 “Sparkle”」と題した全国ツアーも開催されます。どのようなステージになりますか。久しぶりにバンドでまわるツアーになるので、すごく楽しみにしています。東名阪で行うのですが、とくに名古屋公演は久しぶりで、数年ぶりに会う方もいるでしょうし、いまライブができること自体が貴重なことですから、無事に開催できることを祈るばかりです。来ていただける方々も、体調に気をつけていただきながら、こちらもできる限りの対策をして、安全にみんなで楽しめるライブにしたいと思っています。東名阪ツアーでみなさんに会えるのが楽しみ――Tovaさんとのエピソードでもお話しくださいましたが、以前はロングヘアのイメージもあったmiwaさんですが、いまショートカットで、今後はどんな髪型をお考えですか。一度ショートから伸ばして、ボブにしてみたのですが、なかなか長くなるまでの途中段階が難しくて、髪を伸ばすのはけっこう大変だなあって(笑)。もし今後髪を伸ばすとしたら、肩につくぐらいの長さにしようかなと。――では普段のスキンケアなどで意識されていることはありますか。スキンケアではそれほど意識していることはないのですが、けっこう敏感肌なんです。いまはマスクの時代じゃないですか。私はどうしても不織布マスクだと肌が荒れてしまうので、マスクの中に洗えるタイプの布を入れてから、不織布マスクをつけて二重にしてつけています。――では最後に、今後の抱負をお聞かせください。今年は5年ぶりに、『Sparkle』というオリジナルアルバムをリリースできるのが本当にうれしいんです。アルバムには未発表曲も入っていて、シングルとしてリリースした曲も含めて聴いていただけると、前向きになったりほっこりしたり奮い立ったり。バリエーションのある曲が入っているので、知っている曲も知らない曲も、ひとつの作品として全部聴いていただければうれしいです。東名阪ツアーで、みなさんに会えるのを楽しみにしています。取材後記華奢な印象ながら、歌や楽曲ではパワフルなパフォーマンスで活躍されているmiwaさん。ananwebの取材では、アルバムのタイトルではないですが、どこかキラキラとした輝きを感じさせるさわやかさでインタビューに応えてくださいました。そんなmiwaさんのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみりmiwaPROFILE1990年6月15日、神奈川県葉山生まれ。15歳の頃、シェリル・クロウやキャロル・キングなどの女性シンガーソングライターの影響を受け、オリジナル曲を作り始める。自宅で弾き語りしたデモテープを手にライブハウスへ飛び込みで出演をブッキング、ライブ活動をスタート。下北沢のライブハウスで演奏する姿が関係者の目にとまり、デビューに向けて本格的な楽曲制作に入る。2010年、大学1年の3月にシングル「don’t cry anymore」でメジャーデビュー。2011年4月、1stアルバム『guitarissimo』をリリースし、オリコンアルバムチャート1位を獲得。平成生まれのシンガーソングライターとして初となった。2012年、シングル「ヒカリヘ」が大ヒット、大学卒業と同時に初の日本武道館公演を開催。2013年から2016年まで、4年連続でNHK紅白歌合戦出場を果たす。2022年2月23日、6枚目となるニューアルバム『Sparkle』をリリース。同日より、東京・大阪・愛知、全国3箇所を巡るツアー「miwa concert tour 2022 “Sparkle”」を開催。InformationNew Release『Sparkle』(収録曲)01. Sparkle02. CLEAR03. リブート04. UUU05. DAITAN!06. ティーンエイジドリーム07. Holiday08. Aye09. アイヲトウ10. Storyteller11. 神無-KANNA-12. 君の声が13. Who I Am (Album Version)2022年2月23日発売*収録曲は全形態共通。(初回仕様限定盤)SRCL-12058(CD)¥3,300(税込)(初回生産限定盤A)RCL-12054-12055(CD+Blu-ray+豪華ブックレット)¥6,100(税込)<特典:Blu-ray収録内容>miwa Billboard Live Tour 2021 “miwa CLASSIC”:1.Delight、2.friend 〜君が笑えば〜、3.アイヲトウ、4.みんなでお楽しみメドレー(春になったら/ミラクル/シャイニー/君に出会えたから)、5.月食 〜winter moon〜、6.片想い、7.オトシモノ、8.Faith、9.ヒカリへ、10.神無-KANNA-(初回生産限定盤B)SRCL-12056-12057(CD+Blu-ray)¥5,500(税込)<特典:Blu-ray収録内容>“miwa clips vol.3”:1.Princess、2.結 -ゆい-、3.シャイニー、4.アップデート、5.タイトル、6.RUN FUN RUN、 7.リブート、8. Storyteller、9.ティーンエイジドリーム、10.DAITAN!、11.神無-KANNA-、12.アイヲトウ、13.Sparkle、14.Sparkle(Music Video Making)取材、文・かわむらあみり
2022年02月18日【音楽通信】第103回目に登場するのは、歌に芝居に大活躍するなか、今年デビュー20周年というアニバーサリーイヤーを迎える、森山直太朗さん!心象風景は子どもの頃に舞台袖から見た景色【音楽通信】vol.1032002年10月、ミニアルバム『乾いた唄は魚の餌にちょうどいい』でメジャーデビューし、2022年10月でデビュー20周年を迎える、森山直太朗さん。これまで胸に響く数々の名曲を世に送りだすアーティストとして、ドラマや映画では鮮烈な印象を残す役者として、わたしたちにたくさんの感動を届けてくれています。そんな直太朗さんが、2022年3月16日、オリジナルアルバム『素晴らしい世界』をリリース、その収録曲から「愛してるって言ってみな」が2月14日に先行配信されたばかりということで、あらためて音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。――あらためまして、そもそも森山さんが幼い頃、音楽に触れたきっかけはなんですか?ずっと心象風景として心に残っているのは、子どもの頃、母のコンサートに行った際、舞台袖を通るときに、ふと舞台を見ると、照明がたかれて真っ白くなったあの景色を子どもながらに覚えています。今では普通の風景になりましたが、あの時のそういう原風景に未だに心を焦がしているというか、音楽というよりも、舞台というものの魅力や、神秘的な場所という感覚が強かったのかもしれません。そのあと紆余曲折あって、音楽は親がやっていることだから、音楽なんか絶対やるもんじゃないと、どこかすごく斜めに見ていた時期もありましたね。――自然とご家族から、音楽的な影響を受ける機会は多くなりますよね。5歳上の姉からも、いろいろな音楽を聴かされました。僕が小学校4年生の頃、岡村靖幸さんやTHE BLUE HEARTS、大江千里さんとか。当時はバンドブームでしたし、ニューミュージックも盛り上がっていた時期で、好きとか嫌いといった分別がつく前の段階で、ライブにも連れていかれました(笑)。あとはたまに母がカレッジフォークのイベントに出ると、古き良きフォークシンガーたちが一堂に会していて、ギター1本持って、みんなで歌ったりハモったりしているのが、自分の原風景です。音楽に対して、斜め後ろから見ていた時期には、玉置浩二さんが家によく来ていました。その度に、ザ・ビートルズの曲とか、玉置さんが何か酔っ払って、ギター弾いて歌うんです。歌詞とかは、今思い返すとめちゃくちゃなんだけど(笑)、もうね、それでも素晴らしいんですよ。だから、そういうものを間近で見られたっていうのは、すごく貴重な体験でしたし、心のどこかで「こんなふうに声を出せたら、さぞ楽しいし、気持ちいいだろうなあ」という憧れはありましたね。だから、影響を受けたといえば、玉置さんじゃないかなと思います。ーー最初に演奏された楽器は、ギターですか。幼稚園と小学校の頃、ピアノのレッスンを受けていました。でも不真面目で、いつもピアノの先生にキャッチボールしてもらって遊んでいましたけど(笑)。能動的に楽器をやりだしたのは、中3ぐらいから始めたギターになりますね。――今年はデビュー20周年というアニバーサリーイヤーとなりますが、あらためて振り返っていかがですか。正直、実感がないというか……。でもこうやって新しいアルバムを作ったり、取材をしていただいたりするなかで、「いよいよもう20年か」と。取材を受けながら、ちょっとずつ帯を締め直している状態です。感覚としての意味でいえば、20周年は、通過点ですね。パーソナルな20周年のオリジナルアルバム――2022年3月16日にニューアルバム『素晴らしい世界』をリリースされます。いつ頃から制作されていたのですか。昨年の今頃には、今年の3月にリリースするということは決まっていました。制作でいうと、レコーディングスタジオでプリプロみたいなものをやりだしたのは9月下旬。でもそのきっかけになったのは、「素晴らしい世界」という曲ができたことが、すごく大きかったんじゃないかな。――アルバムのタイトル曲「素晴らしい世界」が、一番思いのこもった曲となるのでしょうか。そうですね。「素晴らしい世界」という曲ができたときに、「これでアルバムを作っていける」と感じた今作の軸となる曲です。それは狙ってもできないですし、限られた時間の中で探していくしかない。自分の思いや姿勢を表せるものが、アルバムの指針となります。昨年の夏に僕がコロナになって、寝込んでいたとき、大袈裟かもしれないけど、外に出れず、誰とも会えず、社会と断絶された孤独のようなものも体験して、すごく不安でした。でも、社会や人間関係から遠ざかって、音楽をするしないどころじゃない状況で、同時に今まで縛られていたしがらみのようなものから解かれていく感覚もありました。結局、孤独や大きな闇の向こうにあったのは、ただの“解放”だったんです。まるで無重力で宇宙に浮いているような感覚。それは普段の生活では毛頭得られないものですから、どこか思考がぶっとんでいるんです。すべてのことがどうでもよくて、何にも気にならなくなる。解放された後は、いつもならなんでもない景色が、本当に懐かしく、あたたかく自分の目に飛び込んできて感動したんですよね。それは感情的な感覚ではなくて、シンプルに「ただ生きているんだ」という実感。そうなったときに、(共作者の)御徒町凧から渡されていた「素晴らしい世界」という言葉の響きがピンときて、メロディがふと降りてきました。どうやら世界は「自分自身の外側にあるものではなくて、内側に存在しているものなんだな」と。――今回先行配信される「愛してるって言ってみな」は、森山さんによる作詞曲のポップチューンですね。タイトル曲の「素晴らしい世界」とは相反する曲調でありながらこの2曲は、共通する思いがあるのですか。この曲は、アルバムの軸となる「素晴らしい世界」という曲ができたときに、寝込んでいるベッドの中で「愛してるって言ってみな」をふと思い出したんです。10年前ぐらいから自分の中にモチーフにあった曲なんですが、当時はあまりにもポップな曲なので、自分らしくないかな、カッコ悪いかなと思ってリリースにまで至らなかった。だけど、もう自分の中で自意識みたいなものが良くも悪くも気薄になっているから、「素晴らしい世界」と「愛してるって言ってみな」という、この対照的な2曲がアルバムの指針になると、その時なぜか実感していて(笑)。いつもサポートしてくれるピアニストの櫻井大介くんにアレンジしてもらって、さらに確信が深まりました。今回、この2曲がどれだけ励みになったか計りしれません。「いつか体が良くなったら、この2曲をレコーディングするんだ」という思いが自分の唯一のモチベーションでした。――アコースティックな新曲の6曲目「boku」と10曲目「papa」も、では寝込んでいるときにひらめいて……?いえ、10月ぐらいかな。「boku」という曲を作り始めて、ちょっと時を遅れて「papa」という曲ができました。実は「papa」という曲は、20歳ぐらいからモチーフがあって、最初は「mama」というタイトルだったんです。母性に対する、言葉にならない普遍的な感覚を歌う曲なのかなぁと思いながら形にならない時期を経て、ある意味パーソナルでもある今回の20周年のアルバムができる中で、この曲を見つめ直すきっかけがありました。この曲をアルバムに入れようとなったときに、「待てよ、自分の中にある強烈なコンプレックスや愛情は、もしかしたら親父に向いているものなのかもしれない」という思いに気づいて、「mama」ではなく迷わず「papa」に変換してみたら、いろいろなことがつながったんです。例えば、お母さんと娘って独特じゃないですか、ある時はライバル、ある時は姉妹みたいに。父と息子にも、そんなような言葉にはできない“つながり”みたいなものがあって、自分で今まで掘り下げることを避けてきたけれど、ここを通らないとダメだなって、音楽だったら答えが見つけられるんじゃないかなと。昔だったら、その答えにたどり着いていなかったかもしれない。さまざまな経験を経て、自分の中に抱いていた大きなしがらみのようなものから抜けられたんです。雨に濡れて重たくなった荷物をおろした感覚。今まで人間関係や曲作りなどで、踏み込んだり向かったりすることをしているつもりで、できていなかった部分があるんだなと、今回のレコーディングでわかりました。今までとはちょっと違う世界観にはなりましたが、今だからこそというものにもなったんじゃないかなって。その象徴が「papa」や「boku」という曲。でも、もう45歳にもなって、20周年のアルバムで“パパ”と“僕”っていう曲があるなんて、やばくないですか(笑)?でも、そういう気持ちさえも、もう、どうでもいいやっていう感覚なんですよね。最後のアルバムだと思って(笑)、リリースします。――今年から来年にかけて、全国を100本もまわるツアーを開催されるそうですね。どんなステージになるのでしょうか。新作からの曲はもちろん演奏しますし、大きくは自分のルーツを辿っていくようなツアーになるんじゃないかなと思います。「100本」というのは、とてもわかりやすい数字ですし、母親もそうですがフォークシンガーの先輩たちは、ギター1本持って100本でも200本でもツアーをやっていた時代があったんですよね。こういう時期ですから、各会場で細心の注意と準備をして、「前編、中編、後編」の3段階に分けて、違う種類のステージをいろいろな楽しみ方で披露していく全国ツアーを100本まわろうと思っているんです。まずは、インディーズ時代によくお世話になった、東京の吉祥寺にある「曼荼羅」というライブハウスで6月5日から、スタートする予定です。どんなときも粛々と歌を届けていきたいーーお話は変わりますが、音楽活動以外のときは普段、なにをしていますか。日課やご趣味があれば教えてください。日課といえば、飼っている小鳥の世話になりますね。あとはビールより日本酒派なので、家でゆっくり日本酒を飲むこともあります。趣味は、家具屋巡りでしょうか。古着や古家具を見るのがすごく好きで、やっている音楽もそうですが、アンティークなものがとても好きなんですよ。誰かにとってのゴミみたいなものが、誰かにとっての宝物になる、という瞬間が良いなって。骨董市などに行くと、そういうものがたくさんあって、たとえば「こののっぺらぼうの木彫りの仏像、なんか訴えかけてくる……」というようなものが好きなんです(笑)。休みになると、そういうところに赴いて、ぶらぶらしていますね。――ステージ衣装などもおしゃれな印象がありますが、ファッションへのこだわりはありますか。とくに普段も意識しているところはないんですよ。衣装は、スタイリストさんについていただいていて、ステージでは、アーティストをどう見せるかではなく「曲がよく伝わるにはどんな背景が一番良いのか?」ということを考えることが大事なので、曲によって自分がどういう立ち位置でいられるかという観点で衣装を選んでもらっています。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。このような状況下でもありますから、どうなっていくかはわかりませんが、とにかくどんな状況でも最善の注意と感度を保ちながら歌っていけたらと思っています。今年は100本ツアーがありますから、始まってしまうとめまぐるしい毎日だと思うので、それまでにどれだけ準備ができるかなのだとも思っています。何より行った先々で、みなさんにお会いできることを楽しみにしています。取材後記2022年にメジャーデビュー20周年という、記念すべき年を迎えた、森山直太朗さん。ananwebの取材では、新作のお話から普段のご様子まで、時に凛々しく時に楽しくお話ししてくださいました。「20周年は通過点」と語る直太朗さんのこれからのご活躍も応援しています。そんな直太朗さんのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・北尾渉 取材、文・かわむらあみり森山直太朗PROFILE1976年4月23日、東京都生まれ。少年時代より一貫してサッカーに情熱を傾ける日々を送るが、大学時代より本格的にギターを持ち、楽曲作りを開始。その後、ストリートパフォーマンス及びライブハウスでのライブ活動を展開。2001年3月、インディーズレーベルより“直太朗”名義でアルバム『直太朗』を発表。2002年10月、ミニアルバム『乾いた唄は魚の餌にちょうどいい』でメジャーデビューを果たし、2003年「さくら(独唱)」のヒットで一躍注目を集めた。2005年に音楽と演劇を融合させた劇場公演『森の人』を成功させ、2006年は御徒町凧の作・演出による演劇舞台『なにげないもの』に役者として出演。劇場公演としてはその後も2012年『とある物語』、2017年『あの城』を上演。音楽だけにとどまらない表現力には定評がある。2018年10月~2019年6月まで、全51公演のロングツアー、“森山直太朗コンサートツアー2018~19「人間の森」”を全国各地で開催。2020年1月からNHK土曜ドラマ『心の傷を癒すということ』、4月からNHK連続テレビ小説『エール』に出演し、その演技力が評価された。2021年8月からテレビ東京ドラマプレミア23『うきわ -友達以上、不倫未満-』に俳優として出演。9月には、歴代名だたるアーティストがカバーしてきた名曲「遠くへ行きたい」、10月には同年1月に全国公開され、森山も出演した映画『心の傷を癒すということ』主題歌として書き下ろした「カク云ウボクモ」、11月にはテレビ東京系ドラマ24『スナック キズツキ』エンディングテーマ「それは白くて柔らかい」を配信リリース。2022年2月14日、シングル「愛してるって言ってみな」配信。3月16日にオリジナルアルバム『素晴らしい世界』をリリース予定。6月5日から「全国100本ツアー」を開催。10月には、デビュー20周年を迎える。InformationNew Release「愛してるって言ってみな」2022年2月14日配信New Release20周年オリジナルアルバム『素晴らしい世界』(収録曲)01. カク云ウボクモ02. 花(二〇二一)03. 愛してるって言ってみな04. 素晴らしい世界05. boku06. papa07. 落日(Album Ver.)08. すぐそこにNEW DAYS09. 最悪な春(Album Ver.)10. さくら(二〇一九)11. されど偽りの日々12. それは白くて柔らかい2022年3月16日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)UICZ-9213(CD)¥3,300(税込)*ダブル紙ジャケット仕様。*初回プレス出荷終了次第、同価格の通常仕様(UICZ-4598)に切り替わります。(初回限定盤)UICZ-9207(CD+詩歌集)¥5,500 (税込)【初回限定盤特典】・ボーナストラック3曲:さくら(二〇二〇合唱)、最悪な春(弾き語り)、ありがとうはこっちの言葉。・「森山直太朗 詩歌集」(全100曲、約200ページ)。*紙ジャケット&スリーブケース仕様。(ファンクラブ限定盤)D2CT-1737(CD+詩歌集+DVD)¥7,700(税込)*ボーナストラック、詩歌集は、初回限定盤と同内容。【ファンクラブ限定盤特典】・DVD(森山直太朗ファンクラブツアー2020「十度目の正直」ツアーファイナル配信公演 完全収録)・ファンクラブ限定盤オリジナル ビジュアルしおり。*ファンクラブ盤はファンクラブ会員限定販売。写真・北尾渉 取材、文・かわむらあみり
2022年02月14日【音楽通信】第102回目に登場するのは、国内外で活躍し、豪華なアーティストとのコラボレーションでも話題を呼んでいる、MONDO GROSSO(モンド・グロッソ)!歌番組とジュークボックスから音楽を知る【音楽通信】vol.102音楽家、DJ、プロデューサーなど、幅広く活躍する大沢伸一さんのソロプロジェクト「MONDO GROSSO」。1991年に京都でバンドとして結成、1993年にメジャーデビューし、ヨーロッパツアーを行うなど国内外で活動。1996年のバンド解散後は、大沢さんのソロプロジェクトとなり、2021年に結成30周年、2023年にデビュー30周年が控えています。常に革新的な音楽性を届けるMONDO GROSSOが、2022年2月9日にニューアルバム『BIG WORLD』をリリースされたということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。――あらためまして、そもそも大沢さんが小さい頃音楽に触れたきっかけや、影響を受けたアーティストからお聞かせください。僕の小さい頃というと、1970年代になるのですが、テレビの歌番組から聴こえてくるものが、音楽の一番のインプットでした。いまのようにインターネットがない時代ですから、テレビやスーパーマーケットでかかっている音楽に触れる機会が多かったんです。意外かもしれませんが、スーパーや百貨店と大きな違いはなく、大きなスーパーにはブティックみたいなものがあったりするんですね。そのフロアには、2台ぐらい、ジュークボックスがあったんです。当時、感度の高い人はそういったお店の音楽を共有する感じがあって、音楽をかけに行く人が多くて。お店に有線放送もなければ、BGMもなかった時代のことです。そういうところで自分の好きな音楽をかけていましたね。そこでおねえさんと仲良くなったり、「この曲何?」と聴いたり。そういう意味では、マセガキだったかもしれませんね(笑)。洋楽に出会ったのもそこでしたし、年の離れた兄と姉もいるので、家族からの影響も大きかったです。わりと小さいときから、音楽に興味を持っていました。――当初MONDO GROSS0はバンドで、いまは大沢さんのソロプロジェクトとなりますが、もともと楽器に興味を持たれたのはいつ頃からなのですか。楽器自体は、小学校高学年からブラスバンド部に入って、トランペットをやるようになりました。学校で習うことだけなので、たいしたことはできなかったんですが、楽器が好きで。僕はいまでも楽譜が読めませんし使わないのですが、トランペットのようなマウスピースがあるような楽器は、口のかたちと指との組み合わせで音階を作るので、たとえば隣の人と指で押さえるところが違っても同じ音が出せるんですね。なので、楽譜を見なくても曲を覚えて、自分の型で自由にできるところが気に入って「楽器っておもしろいな」と。それからは、中学生ぐらいのときに、家にあった父親のクラシックギターを弾いてみたりしていました。――2021年に結成30周年、2023年にデビュー30周年が控えていますが、振り返っていかがでしょうか。初期はバンドだったので、僕ひとりのものじゃなかったのですが、そのあと自分ひとりになって、とりもなおさずMONDO GROSSOというプロジェクトはひとりでは何もできないんですよね。誰かと出会って、コラボレーションすることで、何かケミストリーが生まれて音楽になることがほとんど。バンドのグループのなかにいてもいなくても、さまざまな人たちと交わって何かやってきたという歴史だと思います。音楽を通して現状をどう考えていくかがテーマ――2022年2月9日にニューアルバム『BIG WORLD』をリリースされましたが、どのような思いをこめた作品でしょうか。いま人類が一斉に同じ条件のもとに行動を制限されていますが、この状況に居合わせたひとりとして、世界が変わってしまったけれど、もとに戻るのではなく、変わり続けていくという事実に直面したときに「音楽の役割はなんだろう、僕にとっての音楽はなんだろう」と思ったんです。これまでもアルバムをリリースするごとに、音楽のスタイルが変わることは多かったのですが、今回は「音楽を通してこの状況をどう考えていくのか」ということが、僕の制作のテーマになりました。――2曲目「IN THIS WORLD feat. 坂本龍一」は、病気療養中の坂本さんがピアノで参加され、UAさんの歌詞を満島ひかりさんが歌うという面でも注目を集めていますが、こういったコラボレーションのアイデアやオファーはどのようにしていったのでしょうか。僕を含む制作チームとともに、コンセプトに参加するスタッフがいて、その仲間と人選しています。僕の役割は、音楽をきちんとかたちにすること。だから、音楽以外の部分では、外部の意見を大胆に取り入れています。実は「IN THIS WORLD feat. 坂本龍一」は、最初このキャスティングにしようと思っていたわけではありません。僕が最初にピアノでメロディをつけたスケッチを作って「この曲どうしたもんかね?」とスタッフに聞くと、「歌メロのつもりで大沢さんが作ったのかもしれないけれど、ピアノのメロディ自体は残して、歌をのせて坂本さんとやるのはどうですか?」という提案があって。「じゃあボーカルは(満島)ひかりちゃんに頼んでみようか」となり、「UAに歌詞を書いてもらったら」とみんなから意見が出てくるということです。僕が出すアイデアもありますが、キャスティングに関しては、みんなの声を入れて採用していくようになりました。いまと違って、以前は「この人とこの曲をやりたい」という気持ちが強い時期もありましたが、大きな変化ですね。――どうしてお気持ちが変化されたんでしょうか?自分で全部決めることに飽きたんですよね。自分の考えだけで構築していくのも面白いのですが、どこかでマンネリ化してしまうことを危惧してスタイルを変えたというのが一番かもしれないですね。自分だけだと、こんなコードを作ると、僕だったらこうするという定石が決まってくるから。僕は決まったことの形を変えて何度も出すタイプのクリエイターではなく、1ミリでも新しいものを作りたいので、新しいアイデアのもと、変化させていくものを自分以外に求めていくほうが得策だなと。ましてやMONDO GROSSOは外部を巻き込んでやっていくアメーバのようなプロジェクトなので、一番中核にある音楽の作り方ですら、外部の意見を取り入れたほうがもっと大きくなれる、細胞分裂に近いかたちだと考えています。――5曲目「OH NO!」は4人組バンドのCHAIと、9曲目「幻想のリフレクション」は(Original Loveの)田島貴男さんとの楽曲ですが、若手からベテランの方まで多彩なアーティストの方々が集結していますね。今回、大沢さんご自身がお声がけされたのはどの方なのですか。具体的に「この人でやろう」と決めたのはCHAI、どんぐりず、田島くんですね。たとえばCHAIは、非常におもしろい存在だと思っていて、一緒に何かやってみたいとお願いしました。田島くんは、今回の曲の前に、ずっとお蔵入りになっていたデモがあって。スタッフから「あの曲もったいないからやりましょう」とすすめられて、僕は「この曲だったら田島くんに頼むのがおもしろいかな」という話をしたんです。でも、そこからメロディを考えてもしっくりこなくて。田島くんが歌うことが決まった、レコーディングの2週間ぐらい前に曲を書き直して、当初の曲とは違うまったく新しい曲になりました。こうして3段階ぐらい内容が変わっているんですが、制作がギリギリのときでもやれるということも、MONDO GROSSOの醍醐味です。――8曲目「迷い人」は、EGO-WRAPPIN’の中納良恵さんがバラードで語りかけるように歌う楽曲ですが、中納さんとも初コラボですね。そうです、スタッフから出たアイデアで、「MONDO GROSSOと中納さんの声は合うはずだから」と。僕も昔からもちろんEGO-WRAPPIN’は知っていますし、前作でもオファーをさせていただいたのですが、タイミングが合わなくて。中納さんも慎重な方なので、何度もご依頼して、今回はタイミングが合って、受けていただきました。コラボレーションとしては、昔ながらの手法もありながらのすごく実験的な曲にもなっています。――以前も起用されていますが、7曲目の「STRANGER」は、乃木坂46の齋藤飛鳥さんがボーカリストとなりますね。今回は共同プロデュースでクレジットもされている友人から、「大沢さんの楽曲でもう1度、齋藤さんに歌ってもらい、なおかつシューゲイザー(浮遊感もある歪ませた轟音ギターサウンド)をやってみたい」という曲のスタイルの提案まであったんです。ここまでくると、MONDO GROSSOというものの許容性も問われているといいますか、どこまで外部のお題を取り入れてすら、MONDO GROSSOとしての根幹が揺るがない音楽ができるのか。音楽プロジェクトでもありますから、これからも大胆なアイデアの取り入れ方をしていくと思います。――2003年に「Love Addict」をプロデュースされるなど交流のある中島美嘉さんが歌う11曲目「OVERFLOWING」は、以前アレンジを担当されたシンガーソングライターの大森靖子さんが共作詞となりますね。この曲は、アルバムで最初にスケッチを始めた曲で、最初は自分で詞も書いていたんです。詞とメロディがなんとなくできあがったものの、コロナ禍の初期に書いたもので詞に感情が入ってしまいすぎて、誰に歌ってもらうかを決める頃には、けっこう自分とは歌詞が遠いものになっていったんです。だから、これを引き受けてもらえて、なおかつ(中島)美嘉ちゃんが歌うということを考えたときに、詞は「大森さんしかいないだろう」と僕がキャスティングしました。そんななかで、どうしても僕がここだけは使ってほしいという歌詞の一部だけを残して、大森さんの詞を採用して。後日、当初僕が書いたけれど採用しなかった歌詞のパートと、彼女が書いたものが重なっていたり、同じような文言が使われていたりしたことがわかりました。――具体的にいいますと歌詞のどの部分でしょうか?「昨日、今日、東京、妄想、そう」という部分。“東京”というキーワードは彼女も最初のラフの段階にあったそうで、あまりにも自分の色が出すぎてMONDO GROSSOに合わないかと書かなかったと。「大沢さんがここを残してほしいと言ってきたときにびっくりした」と言っていましたね。「溢れ出す」という言葉も歌詞にあるのですが、彼女も最初に同じ文言を入れて歌詞をあげてきたときは、共感覚といいますか、同じようなインスピレーションをこのメロディから感じていたのかなと思いました。――12曲目は、アルバムのタイトル曲でもある「BIG WORLD」となりますが、大沢さんのユニット「RHYME SO(ライムソー)」のRHYMEさんが歌っている曲ですね。RHYMEが「BIG WORLD」という曲を作ってきたのですが、MONDO GROSSOを英語で言い直すと「BIG WORLD」でもあり、おもしろいのでタイトルにしました。これはRHYMEの世界ですね。もっと活動の場を広げていきたい――お話は変わりますが、よろしかったら普段のご様子もお聞かせください。音楽活動以外のときはどのようにお過ごしですか。いまはスタジオに来てこの取材を受けていますが、結局は普段もスタジオに来て音楽を作っていますね。家の中にも何か所かに音楽をスケッチできる場所を設けておいて、時にスケッチすることもあります。あとは、家にテレビがないので、プロジェクターで映画やドラマを観ることもありますし、本も読みます。そしてこの2年ぐらい、独自で環境問題に取り組むようになって、古着のリメイクプロジェクトなどにも携わっているので、あまり家でじっとすることが少ないですね。表に出ていろいろな人と打ち合わせをしたり、オンラインで話をしたりしています。――大沢さんは、たくさんの才能あるアーティストと組まれていますが、たとえば自分にそれほど自信がないとしても、才能を磨きたいときにはどうしていけばよいと思われますか。日本の女の子は、自己肯定感が少ないと聞いたことがあります。たとえば音楽のクリエイションを考えるとしたら、日本に限ってですが、実際に音楽を始めようと行動する人と、音楽がめちゃくちゃ好きで詳しくていろいろなものを聴いて日々楽しむ人の違いを比べると、実は音楽をたくさん聴いている人のほうがおもしろいものを作れる素養が高いと感じています。音楽を始める人の中には、カラオケに行って好きな曲をたくさん歌って、まわりの人から「うまい! プロになれるよ、オーディションに行きなよ」と言われてオーディション行ってしまうような例があったりします。でも、本当に音楽が好きな人はそうではなく「いやいや、私なんてそんな」と行動しない。すごく音楽が好きで、いろいろなところで音楽を聴いている人の感性のほうが、音楽を生み出すうえでは非常に重要。だから今回のアルバムにしても、僕のまわりのそんな人たちの意見を採用するのは、そういうところなんですよね。もし自分で自分の才能に気づいていないとしても、すごくニッチに何かを追求しているようなことがあるとすれば、それはもしかしたらまわりの人や専門の人からみたら、その深さはすごいものなのかもしれません。だから僕は、好きなことがあるんだったら、誰かの評価を気にするのではなく、極めてみるのが一番だと思います。たとえば古着が好きだったら、古着の知識を極める。いまはインターネットでなんだって情報を集められますし、東京にある古着屋を全部制覇してみるとか。人から見たら、何をやってるの? ということでも、真剣に達成してみることは、意外と悪くないと思います。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。今後、MONDO GROSSOとしてのDJツアーも予定していますし、その後はRHYME SOや大沢伸一としての個人名義のアルバムも考えているんです。そして音楽以外のクリエイションや、いままでやってこなかったようなコラボレーションも企画しているので、もっと活動の場を広げていきたいと思います。取材後記多彩なアーティストとコラボレーションされ、常に魅力的な音楽を放ち続ける、MONDO GROSSOこと大沢伸一さん。カラーの違うボーカリストたちの個性がより輝き、聴き手のほうへと響くサウンドを届けてくれるのは、大沢さんだからこそですよね。そんなMONDO GROSSOのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみりMONDO GROSSOPROFILE大沢伸一がリーダー兼ベーシストのバンドとして93年にメジャーデビュー。世界的なアシッドジャズのムーブメントの中、ヨーロッパツアーも行う。1996年にバンドは解散し、大沢のソロプロジェクトとなる。以降も常に革新的な音楽性を求めながら、「LIFE feat. bird」を収録した『MG4』、「Everything Needs Love feat. BoA」を収録した『NEXT WAVE』などヒット・アルバムをリリースして2003年に休止。2017年に14年振りとなるアルバム『何度でも新しく生まれる』、2021年に結成30年の軌跡を辿る『MOMDO GROSSO OFFICIAL BEST』をリリース。2022年2月9日、ニューアルバム『BIG WORLD』をリリース。InformationNew Release『BIG WORLD』(収録曲)01. INTRO02. IN THIS WORLD feat. 坂本龍一 [Vocal:満島ひかり]03. FORGOTTEN [Vocal:ermhoi (Black Boboi / millennium parade)]04. B.S.M.F [Vocal:どんぐりず]05. OH NO! [Vocal:CHAI]06. 最後の心臓 [Vocal:suis (ヨルシカ)]07. STRANGER [Vocal:齋藤飛鳥 (乃木坂46)]08. 迷い人 [Vocal:中納良恵 (EGO-WRAPPIN’)]09. 幻想のリフレクション [Vocal:田島貴男 (Original Love)]10. CRYPT [Vocal:PORIN (Awesome City Club)]11. OVERFLOWING [Vocal:中島美嘉]12. BIG WORLD [Vocal:RHYME]2022年2月9日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)RZCB-87060(CD)¥3,300(税込)(初回生産限定盤)RZCB-87060/B(CD+Blu-ray Disc)¥4,950(税込)*スマプラ対応。【Blu-ray収録内容】01. IN THIS WORLD feat. 坂本龍一 [Vocal:満島ひかり] MUSIC VIDEO02. STRANGER[Vocal:齋藤飛鳥 (乃木坂46)] MUSIC VIDEO03. FORGOTTEN[Vocal:ermhoi (Black Boboi / millennium parade)]MUSIC VIDEO取材、文・かわむらあみり
2022年02月09日【音楽通信】第101回目に登場するのは、世界中から注目を集めている、国内外で活躍する“NEOかわいい”4人組バンド、CHAI(チャイ)!日本はもちろん世界のトップを目指す写真左から、ユナ (Dr&Cho)、カナ (Vo&G)、マナ (Vo&Key)、ユウキ (B&Cho)。【音楽通信】vol.101双子のマナさん(Vo&Key)とカナさん(Vo&G)、ユウキさん(B&Cho)、ユナさん(Dr&Cho)からなる、4人組ガールズバンドのCHAI。アメリカやイギリスのインディーレーベルから海外デビューも果たし、世界各国でライブを行っている彼女たちは、コンプレックスさえも愛して、ポジティブかつカラフルにこれからもますますボーダーレスに飛躍していくに違いありません。そんなCHAIが2022年1月12日に、ニューシングル「まるごと」をリリースされたということで、メンバーのみなさん全員にお話をうかがいました。――小さい頃に憧れていたアーティストから教えてください。マナ小さい頃は、DREAMS COME TRUEがすごく好きでした。実は、人生で初めて行ったライブは、ママと一緒に行ったドリカムです。本当に曲が大好きで、ドリカムを聴くと踊っていました。カナ小さい頃から歌手になることが夢で、当時はモーニング娘。が好きでした。ミニモニ。に入りたいときもあったかな(笑)。家で、マナと一緒にモー娘。を聴いて歌って踊ったりとか、ママの好きなドリカムを聴いて歌って踊ったり。テレビに出ている人たちの音楽を聴く環境でしたね。ユウキ私もみんなと同世代なので、モー娘。は好きでした。ただ、アイドルにハマったのは、このときが最初で最後という感じです。ユナ小さい頃はすごくJ-POPを聴いていましたし、超テレビっ子でした。テレビに出ていた人たちにハマって、当時放送されていた音楽番組に出ているモー娘。を観て「超おもしろい!」と思って(笑)。最終的にはORANGE RANGEにどハマりして、バンドという存在に惹かれて、ドラムという楽器を知って、実際にCHAIで担当することになっていまに至ります。――マナさん、カナさん、ユナさんが同じ高校の軽音部で、後から知り合ったユウキさんが加わって、CHAIを結成されましたね。海外のレーベルからのリリースやライブ活動などもされていますが、もともと日本だけではなく、海外も視野に入れていたのですか。マナもちろん海外を視野に入れていました。CHAIを始めたときから「日本はもちろん世界で売れたほうがトップだよね?」という単純な考えから、世界を目指すことにしたんです。――では大人になってからは海外のバンドの曲も聴くようになって、参考にすることもあったのですか。マナはい、CHAIを始めてからは、ほぼ洋楽を聴いていました。それこそ、聴いているアーティストがグラミー賞を獲っていることが多かったから「夢はグラミー賞!」と、わたしたちもずっと言っています。「これがトップの音楽なんだな」と思いながら、洋楽を聴いているうちに、CHAIでも目指すようになりました。ニューシングルは初めてのドラマ主題歌書き下ろし――2022年1月12日にニューシングル「まるごと」をリリースされました。キュートなポップソングですが、曲にこめた思いを教えてください。マナそれぞれの人が持っているいろいろな愛のかたちを認め合うことができたら、本当に最高だよね、という思いを込めた曲になっています。――今作は現在放送中の岸井ゆきのさん、高橋一生さんのW主演となる、よるドラ『恋せぬふたり』(NHK総合 毎週月曜 午後10:45)の主題歌ですね。音楽ファンだけではなく、お茶の間にもCHAIの曲が広く浸透します。マナリアルタイムでドラマの第一話を見ていましたが、ドラマの主題歌を書き下ろしたのは初めての経験だったので、オンエアを見て感動しました。カナやっぱり地上波のドラマの主題歌を担当すると、誰よりも親や親戚が喜んでくれるから、感謝したい身近な人たちに届くこともすごくうれしいです。お茶の間に響くのも、CHAIを知ってもらえるいい機会ですし、「紅白歌合戦」にもいつか出演できたらいいな(笑)。ユウキ私はこの曲で歌詞を担当したのですが、ドラマ放送前に5話ぐらいまでの台本を読ませてもらって歌詞を書いていたから、実際にドラマを見ると映像と音楽があわさったときに、まず感動しました。良い映像を引き立てる言葉で歌詞が書けたと思えましたし、ドラマにも合っていたのでうれしかったです。ユナ私は本当にテレビっ子でいままで数々のドラマを見てきたなかで、まさか自分たちの曲が、ドラマを見ていてワッと出てくるなんて、この衝撃と感動といったらもう……(笑)! テレビの前でひとりで鳥肌が立って、あたふたしていたぐらいの喜びです。――2月2日には、EP『WINK TOGETHER』をリリースされましたね。EPのリミックス陣として参加しているカリフォルニア在住のアーティストのスクーバート・ドゥーバートが、「まるごと」のサウンドプロデュースも担当していて、CHAIとの好相性を感じます。マナスクーバートは、もともとSpotifyのNew Music Fridayというプレイリストに入っていたところを見つけました。彼の曲がすごく良くて、ストーリーにあげたら本人から連絡がきたので、連絡を取り合うようになって。スクーバートの曲はCHAIの曲にも合いそうで、アレンジも上手だなと思っていたので、今回「まるごと」のアレンジをお願いしました。スクーバートには、ロマンチックだったり、ノスタルジックだったりする雰囲気にしたいとイメージを共有して、そこから一緒に曲を仕上げていったので、いいマッチングになったと思います。――EPのほうはどんな仕上がりになっていますか?マナすっごく面白いと思います。もうねえ、ジャンルがよくわからない感じになっていて(笑)。カナそうだねえ(笑)。世界のトップアーティストたちも参加しています。マナいろいろな国のアーティストたちが参加してくれていて、CHAIの3 rdアルバム『WINK』の中から曲を選んでリミックスをしてくれた人もいれば、バンドアレンジをしてくれた人や歌で参加してくれた人も。とにかくさまざまな言葉や音楽が聴ける作品です。――曲作りをする際やレコーディングのときなど、いつも歌うとき、演奏するときに心がけていることがあればえてください。マナいろいろな自分を出せたらいいな、その自分がたくさんの人に届けばいいなと思って、いつも歌っています。カナレコーディングとライブでは、歌うにしても、全然感覚が違う面もありますね。レコーディングのときは、マナも言っていましたが、声だけで自分をいろいろと表現できたらいいな、それをみなさんにも楽しんでもらいたいな、スッと誰かの感情の中に入れるような歌が歌いたいなって。ライブでは、表情や動きといった見ていて伝わるものが多いですよね。だから、レコーディングのときよりも、声のニュアンスにおいても、ダイナミックになるようにしています。ユウキわたしは歌詞を作ることが一番メインの担当になるので、ドラマ主題歌ならその世界に沿ったことを意識していたり、CHAIだけのオリジナルの曲はわたしの中から出したいものをテーマとして持ってきたりしていますね。どんな場合でも、CHAIの言いたいことは一貫して「セルフラブを一番伝えたい」ので、そこにはつながるように作っています。ユナたとえばスクーバートがアレンジしてくれている曲なら、まず自分の中に曲をインプットして、プレイでユーモアや遊び心を表現してから、アウトプットするようにしています。レコーディングもライブも、日本でも海外に行ったときも、音楽は共通。グルーヴが強かったら、どこの国の人も踊ってくれるんだろうなという感覚があるので、どれだけ気持ちいいビートがたたけるか、そして曲に即したアウトプットで表現できるかということを最近は意識してトライしていますね。――2月からは、日系女性シンガー・ソングライターMitskiさんとの「Mitski 2022 tour」、そして「WINK TOGETHER NORTH AMERICA TOUR」と題した北米ツアーがあります。どのようなステージになりそうですか。マナ 2年ぶりの海外ツアーですね。ステージは、とにかくエンターテインメントの場なので、刺激と感動をみなさんにお届けして、驚かせまくります(笑)。それは日本も海外も共通する、CHAIのライブのテーマです。――日本と海外のライブでのパフォーマンスの違いはありますか。マナ多少はありますね。文化が違えば、音楽の楽しみ方も違いますし、海外の方のほうがけっこう踊るんです。日本のように、アーティストをずっと見ていないから。海外の方だと、遊びに来た、飲みに来た、という感覚でライブに来てくれるので、見方が違うんですね。だから、踊ってほしい曲が多いですし、ライブアレンジもちょっと変えたりします。CHAIの音楽がもっと世界に届くよう活動していく――新曲「まるごと」には「違いさえもまるごと愛せたらなあ」という歌詞もありますが、みなさんが現在“まるごと愛している!”と思える“推し”を教えてください。マナ私は実家にいる、犬のロイちゃんですね。ミニチュアシュナウザーなのですが、犬の考えていることを知りたい。だから一緒にいると家からなかなか出られないんです(笑)。実家に帰ると、ロイと過ごす時間が一番多くて、ロイが何をしたいんだろうって、まるごと愛しちゃってます(笑)。カナ私も一緒です(笑)。動物全般がすごく好きで、何を考えているのかわからないところもすごく面白くて、動物は人間が思い浮かばないことを考えているから見ていておもしろいんですよね。ロイとも、ずっと一緒にいたい。ユウキ私は、推しがないんですよ。何かをずっと追いかけるようなハマり方が1回もなくて、絵を描くことは好きですが、毎日描きたいわけではなく、描きたいときがそのときという感じ(笑)。でも、人の推しの話を聞くことは好きなんです。ポッドキャストで、ジェーン・スーさんらの番組『OVER THE SUN』があって、すごく推しのことを語っていて、私に推しがまったくないから聞いていると、おもしろいです。ユナ私は推しがありすぎて、何から言おうかな(笑)。食べ物も観葉植物もドラマも推しがありますが、なかでも俳優だと吉沢亮さんを推しています。美形はもちろん、原作がある作品の実写化では勝つものがいなくて、なんでも自分のものにしていくところが魅力的です。馬も、推しています(笑)。コロナ禍になる前に、ユウキと乗馬クラブに行ったんですが、そのときの感動がいまだに忘れられなくて、密かにいまも馬を推しています。ユウキ乗馬はすごく楽しかったね。間近で馬の顔を見たら、恐竜並みに大きくて、筋肉もすごく美しくて、毛並みもきれいでした。でも、ユナがそこまで推しているとは(笑)。――おふたりで乗馬に行かれたということですが、外出自粛する前だと、プライベートで4人でどこかへ行ったりした思い出はありますか。マナ東京へ引っ越してきたばかりのときに、4人で東京ディズニーランドに行きましたね。カナ行ったねえー。ユウキそんなこともあったねえ。ユナ夜からのパスポートで。ユウキプーさんの乗り物にみんなで並んだりして。マナこんなに近くにディズニーランドがあるなら行っておこうと、みんなテンション爆上がりで、楽しかったです。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。マナ2022年は寅年なので、弱肉強食を恐れず、ぜーんぶ、寅のように噛みつきまくって、最後は全部笑える年にしたいですね。いままで通り挑戦し続けて、感謝しつつ、刺激ももらう年になる気がします。CHAIの音楽がもっと世界に届くといいなという願いを込めて、これからも活動していきます。取材後記日本のみならず、海外でも活躍されるバイタリティを持ちながら、ポジティブにキュートに音楽を放ち続ける、CHAIのみなさん。ananwebの取材では、マナさん、カナさん、ユウキさん、ユナさんのメンバー全員にいろいろなお話をうかがいました。マナさんいわく寅のように、今後も勇敢に挑戦し続ける、CHAIの音楽を聴かせてくれるはず。そんなCHAIの新作をみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみりCHAIPROFILE双子のマナ(Vo&Key)とカナ(Vo&G)、ユウキ(B&Cho)、ユナ(Dr&Cho)からなる、“NEOかわいい”4人組バンド。2017年、1stアルバム『PINK』が各チャートを席捲、音楽業界のみならずさまざまな著名人からも絶賛される。2018年、アメリカ、イギリスの人気インディーレーベルから海外デビューも果たし、自身のワールドツアーや世界各国のフェスへの出演も精力的に行っている。2019年、2ndアルバム『PUNK』が世界中の音楽サイトで軒並み高評価を獲得。2020年、コロナ禍で活動が制限されるなか6作シングルをリリースし、10月にはUSインディーレーベルSUB POPと契約。2021年5月、3rdアルバム『WINK』をリリース。2022年1月12日にニューシングル「まるごと」、2月2日にリミックスEP『WINK TOGETHER』をリリース。InformationNew Release「まるごと」2022年1月12日配信New Release『WINK TOGETHER』(収録曲)01. Nobody Knows We Are Fun (STUTS Remix)02. PING PONG! feat. YMCK (Busy P Remix)03. END (Confidence Man Remix)04. Miracle (Scoobert Doobert Remix)05. ACTION (with ZAZEN BOYS)06. Donuts Mind If I Do (with Beenzino)2022年2月2日発売取材、文・かわむらあみり
2022年02月04日記念すべき【音楽通信】第100回目に登場するのは、日本のみならず海外でも高い評価を受け世代を超えてリスペクトされ続ける、アーティスト活動40周年を迎えた日本を代表するギタリスト、布袋寅泰さん!14歳のときにロックミュージックと出会った【音楽通信】vol.100日本のロックシーンへ多大なる影響を与えた伝説的ロックバンド「BOØWY」のギタリストとして躍進し、1988年のバンド解散後、アルバム『GUITARHYTHM』でソロデビューを果たした、布袋寅泰さん。以降、国内外でソロアーティストとしてはもちろんのこと、吉川晃司さんと結成したロックユニット「COMPLEX」としての活動や、他アーティストへの楽曲提供やプロデュース、映画やCMへの出演などさまざまなシーンで脚光を浴び続け、数多くのミュージシャンからもリスペクトされ続けている存在です。昨年アーティスト活動40周年を迎えた布袋さんが、2022年2月1日に20枚目のニューアルバム『Still Dreamin’』をリリースされたということで、音楽を始めたきっかけや普段のご様子なども含めて、さまざまなお話をうかがいました。――あらためまして、布袋さんの幼い頃の音楽環境やギターを始めたきっかけから、お聞かせいただけますか?僕は幼稚園からずっとピアノのレッスンを受けていましたが、ピアノは練習曲の連続で譜面通りにしっかり弾くという、基本の練習が長くて少し飽きていた部分もあってやめて。そのあとエレクトーンを習ったら、楽しかったですね。そんな14歳のときに、ロックミュージックと出会ったんです。ロックは自由で、どんな音を出してもいい世界。どんどんロックに惹かれていって、ギターにも興味を持つようになりました。でも、その時代はYouTubeもビデオもない時代だったので、ギターを練習するとしたら、レコードを聴きながら合わせて自己流で練習するしかなかったんですね。それから地元である群馬の高崎で、高校の仲間とバンドを組んだりしながら、17歳でプロを夢見て上京しました。はじめはバンドもなかなかうまくいかず、やりたいことすら見つからないような状況のときに、BOØWYのメンバーと出会い、そこから19歳でライブハウスデビューしたんです。6年間 BOØWYをやっていましたが、売れたのは最後の2、3年。最初はまったく売れず、貧困生活を送っていたときは、毎日マヨネーズごはんを食べていました(笑)。そこから、気がつけば昨年40周年を迎えて、いろいろな経験をしてきましたね。昨年はコロナ禍でライブ活動も制限されたなか、ポーズボタンを押して立ち止まるだけではなく、僕も布袋チームも「制約があるなかでも、やれることを力を合わせてやろう!」という気持ちで行動していました。――私が初めて布袋さんのライブに行かせていただいたのは、約30年前ぐらいの「COMPLEX」の大阪城ホール公演でした。「布袋さんだ!」とそのステージに圧倒されまして……。よく「実在するんだ」とか言われますが(笑)。たとえ当時を知らない方でも、最近ではCOMPLEXの1989年の曲「BE MY BABY」が、2019年に川口春奈さんが出演されていたシャンプーのCMで聴いたこともある方や、映画『キル・ビル』(2003年)のテーマ曲「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY(新・仁義なき戦いのテーマ)」は、いろいろなバラエティでもかかっていますよね。今井美樹さんの「PRIDE」という曲は僕の作詞作曲なので、20代の方でも、カラオケに行ったら歌うこともある曲なんじゃないかなと。僕も若い頃、雑誌『anan』を見ていましたし、ananwebをご覧になる若い読者の方は、世代でいえば僕のライブを見たことがない、アルバムを聴いたことがない方もいるでしょう。もし僕の姿を知らなくても、きっとみなさん、どこかで曲は聴いたことがあると思います。そういう方々にも、ぜひいまの自分を伝えたいですね。ライブをやっていても、昔は男性のファンの方が多かったのですが、だんだん女性も増えてきました。親御さんに小さい頃にライブへ連れてこられた子たちが大きくなって来てくれていて、10代や20代の方も多いんですよ。男性は「布袋―!」とこぶしをあげて野太い布袋コールを変わらず送ってくれるのもうれしいんですが、女性の方は一人ひとりが感じるままに踊ったり、楽しんでくれていたりするのもすごく伝わるので、もっと若い方や女性の方にもライブに来ていただきたいですね。――昨年の「第72回 紅白歌合戦」や「東京2020パラリンピック」開会式にもご出演されて、ロックファンの方は布袋さんの姿を見てうれしかったと思いますし、年齢問わず幅広い層の方々も布袋さんのご活躍を目にする機会となりました。「布袋」という名前を聞くことはあっても、実際にギターを弾く姿を見て、やっと「布袋寅泰」だと一致した方も多かったでしょうね。僕のギタースタイルは尖っていて、鋭角的な曲が多いから、「布袋」というと尖ったイメージの方も多いかもしれません。パラリンピックのときの曲は、このために書き下ろした「TSUBASA」「HIKARI」の2曲ということもあって、普段の僕のライブでは見せない、多くの部分を伝えられるいい機会でした。やさしかったり、力強かったり、すごく高揚する部分と静寂の部分、音楽的なギタリストとしての表情を見せることができましたね。そして紅白も、ソロで出演するのは初めてでしたが、今回はコロナ禍でとにかくみんな疲れていて、年が開けて「またがんばるぞ!」という気持ちになってほしい一心での出演でしたので、伝わるものも大きかったと思います。生まれ故郷の群馬の高崎で制作したアルバム――2022年2月1日に20枚目のニューアルバム『Still Dreamin’』をリリースされましたね。いつから制作されていたのですか。昨年の8月からですね。十数年前からイギリスに住んでいるので、ここ数年はイギリスでの音楽制作が多かったのですが、昨年のパラリンピック前から僕ひとりでロンドンから帰国して一人暮らしをしているので、家族とは7か月会っていないんです。コロナ禍で帰れない、予想のつかない状況になっているから、腰を据えて、いまでこそ伝えたいことも必ずあるはずだということで、今作は日本で制作しました。生まれ故郷の群馬の高崎に戻って、曲を書き始めたんですね。パラリンピックの少し前からです。――アルバムの表題曲でもある、1曲目「Still Dreamin’」は、歌詞もサウンドも鼓舞してくれるような力強い楽曲ですね。今回のアルバムは、コロナや環境など問題が山積みの世界のなかで、1日のスタートを軽快に前向きにスタートしようというメッセージを込めた曲が多いんです。いままでの作品には1度もなかった「ハッピー」がテーマ。能天気な意味合いではなく、とにかくうつむいていては何も始まらない、こんなときこそ音楽を聴いて気持ちをポジティブに、元気になってほしいという思いがあります。「Still Dreamin’」の「Still」は「いまもなお」という意味もありますが、思えば10代の頃にプロになりたくて、いつかギターで世界中を旅したくて、その夢を見たときから、僕の音楽家人生は始まりました。そしていまもなお、人から見ると長いキャリアでいろいろなものをつかんだように見えるかもしれませんが、いまだに「もっと知らない世界に向かって冒険していきたい」という思いがあふれていて。ワールドツアーを成功する夢はかなっていませんからね、いまだに夢を追い続けているんです。10代、20代の頃の気持ちを忘れずに、こうやって60代を迎えることができました。だから、同世代や長年のファンのみなさんはもちろん、さまざまな世代の方にも、ストレートにスッと受け入れていただける曲が多いアルバムになっていると思います。――2曲目「Do you wanna dance?」は、実は40年前に作っていた曲だそうですね。BOØWY時代に作っていた曲ですが、そのときのバンドのやりたい方向性と少しずれていて、そのまま引き出しに閉まったままだったんです。昨年になって、ふとこの曲のことを思い出して「待てよ、いまこそ響く曲なんじゃないかな」と再構築しました。でも瞬間冷凍したように、曲を作ったときの自分の生々しい感触は残っていますし、それが色褪せるどころか、むしろデジタル音楽が主流となりつつある現在、この曲が非常に新鮮に響いたので、アルバムに収録しました。――以前作られた曲も膨大な数をお持ちですよね?そう、だから作った曲はいちいち取っておかないで、ボツになるにはボツになる理由があるので(笑)、そういう曲は捨てますけどね。新しい曲もどんどん生まれてきますし。――この曲に限っては、違ったんですね。そうですね。40周年で原点回帰という思いと、群馬で曲を作っていたということもあって、バンド時代に曲を作っていたときのことも、いろいろと蘇ってきたんですよ。これまで作った曲はメッセージ性のあるものが多くて、とにかく夢をあきらめず、自分らしく毎日を自己更新していこう、というメッセージがおもだったんです。でも今回は、コロナ禍のなかでの家族への思いや自分のなかにあるやさしい気持ちも入っていて、いつもより表情豊かなアルバムですし、4曲目の「Starlight」や5曲目の「コキア」といった女性に向かって歌った曲も多いので、布袋は男のものと思わず(笑)、ぜひ女性も聴いてください。布袋というと、ロックギターの印象から荒々しいイメージかもしれませんが、実はどことなく女性的な部分もあるんですよね。今井美樹さんの「PRIDE」なんて、どこか自分のなかで「ギタリスト布袋」ではなく「ピアニスト布袋」という部分があって、できた曲ですし。ようやくいい意味で、表現力のバランスがよくなってきたところもあるので、これからは柔らかい音楽や、柔らかい気持ちも伝えていきたいですね。――昨年発売されたEP『Pegasus』から、アコースティックナンバーの12曲目「10年前の今日のこと」などの2曲がAlbum versionとして収録されています。「10年前の今日のこと」は、いい曲ですよね。この曲は、ロックダウンのなか、ロンドンの家でひとりでマイクを立てて、録音もすべて自分でやって作りました。“十年ひと昔”という言葉もありますが、東日本大震災から10年ということもありましたし、自分たちがイギリスへ移住してから10年ということもありましたし。母が旅立ったり、愛犬もいなくなったり、そんな寂しいできごとの一方で、娘は今年20歳になります。この10年の間にいろいろなことがありました。でもこの先の10年を考えたときに、きっとこれからAIやメタバースの時代になり、世界は変化していくと思いますが、振り返ったときに「いまの自分がどういうふうに映るだろうか」ということも思ったり。この曲は、前のことを振り返りながら、先のことを歌った曲でもあるんですよね。この曲は、みなさんが自分のことと重ねてじっくり聴いてくれる曲なので、ライブでもこぶしをあげて楽しむものとは違うんです。僕のライブはいろいろな表情がありますから、とくにコロナ禍のライブはみなさん声援は出せない、歌えないという状況。昨年のツアーでは、途中でアコースティックコーナーを設けて、この曲や懐かしい曲をアコースティックギターで披露したら、それが逆にすごく新鮮だったようです。笑っている人がいたり、泣いている人がいたり、こちらもすごく胸が熱くなりました。――ツアーといえば、5月に群馬の高崎芸術劇場から始まる全国ツアー「HOTEI the LIVE 2022 “Still Dreamin’ Tour”」はどんなステージになりますか。今回のアルバム『Still Dreamin’』からの曲や、ライブ映えする曲をやります。加えて、昨年の40周年ツアーは制約があって各会場に半分のお客さんしかご覧になれなかったから、そんなみなさんも含めて久しぶりに以前の曲も聴きたいでしょうし、懐かしい曲も披露します。ベストツアープラス『Still Dreamin’』という感じですね。最初から最後まで、おもしろいツアーになると思います。――さらに2月4日から2週間限定で、映画『Still Dreamin’ ―布袋寅泰 情熱と栄光のギタリズム―』が全国公開となりますが、ドキュメンタリー映画なのですね。僕の40年を辿るような内容になっています。少しファンタジーな部分もあって、自分と自分が向かい合って対話するという、普通のドキュメンタリーとは違う、おもしろい作りなんですよね。いま見るとかわいいもんですが(笑)、ヤンチャで暴れん坊で、でもまっすぐ夢を目指している鋭い目があった若い頃の自分も見れて、昔ながらのファンの方には懐かしい映像もあります。ananwebの読者の方や若い世代の方、僕の名前は知っているけれど僕のことをそれほど知らない方にも、ご覧になっていただきたい。こういう時代だからこそ、音楽が非常に力を持っているということ、また、夢は若者たちだけのものではなく、大人になってもずっと追い続けるものなんだぞ、というメッセージが伝わる映画です。それこそ、ご家族で、親御さんと一緒に見てもけっこう楽しめる映画だと思います。みなさんが元気になる音楽を続けていきたい――アルバムリリースの2月1日は、60歳のお誕生日でしたね。イギリスの家族のもとに帰れないので(笑)、まさか60歳の誕生日をひとりで迎えるとは思いませんでしたね。でも、この日は映画のプレミア上映会があったので、ファンのみなさんとも会えて、ひとりじゃなかったです(笑)。せっかくいい作品を作ったので、ひとりでも多くの人に観てほしいですし、聴いてほしいですし、ここが踏ん張りどきなのでもうちょっとの我慢ですから、がんばります。――音楽活動以外のときの布袋さんのご様子がまったく想像できないのですが、どのように過ごしていらっしゃいますか?そうですよねえ、想像できませんよね。僕は、みなさんがびっくりするぐらい、おだやかな毎日を過ごしていますよ。いまは予期せぬ一人暮らしということもあって、料理も洗濯も掃除も自分でやりますし、花を買うのも好きですし。人目につかないように散歩することもあります。寂しいですが、いまは人に会えないですからね。映画やテレビばかり観ているかといえばそうでもなく、音楽ばかり聴いているかといえばそうでもなく。――お部屋でだらんとされているイメージがまったくないです。いえいえ、そんなときもありますよ(笑)、いつもきっちりしていないです。僕を知っている人たちは、ステージのときだけ、シャキーンとするイメージでしょうね。どちらかというと普段は、ほんわかしたイメージだと思います。いつもみなさんのお目に留まるときは、テレビなど一番オンなときですからね。でも、音楽を聴いてもらえば、僕のイメージの向こう側といいますか、人となりみたいなものも伝わればいいなと思います。――布袋さんは常に日本のロックシーンを牽引し続け、誰もがその背中を追う存在ですが、そのバイタリティはどこからくるものでしょうか。また、夢をかなえるモチベーションを持ち続けるには、どうすればよいと思われますか。夢を目標と置きかえてみても、あまり大きな夢を持ちすぎてもかなわないような気もしますし、かといって、小さな目標は夢と呼ぶにはふさわしくないような印象もありますよね。夢というのは心躍る言葉だけれども、なかなか自分から言葉にできない部分もあると思うんです。止まぬ雨はないわけで、明日は必ず来るわけで、そのときにどんな気持ちで明日を迎えるかが大事ですよね。我慢しなければならないことも多い現代のなかで、立ち止まってじっくり考えることも大事だけれど、ずっと足踏みをし続けるわけにもいかない。やっぱり、一歩前に踏み出す勇気だと思うんです。立ち止まりすぎてもろくなことを考えないですから、扉を開けたり窓を開けたり、同じ通学路や通勤路でも、昨日とちょっと違う気持ちで何かを探そうとすれば、いきいきとする自分もいるはずなんですよね。モチベーションというと、僕は「この先には何があるんだろう?」という好奇心が強くて、ひとつのゴールを超えても「さて、次は何があるか?」と、気持ちを切り替えます。命に関わることではない限り、人生って、どうにかつながっていきますよね。だから、大なり小なり迷った時は、自分のなかの声を聞く。そのほうが、おもしろいことにつながっていくと思うんです。とくに若いうちは、絶対そのほうがいいと思いますし、大人になったときのことを考えなくても、気がつけば大人になっているから。――いろいろなお話をしていただき、ありがとうございました。では最後になりますが、今後の抱負をお聞かせいただけますか。まずは新しく決まった全国ツアーをしっかりやりたいです。そしてコロナ禍によって、予定にあったヨーロッパツアーやアメリカツアーといったワールドツアーの夢が一度閉ざされている部分もあるので、一段落つき次第イギリスに戻って、夢に向かって活動を継続していきたいです。音楽が好きでやっているので、1日でも長くいきいきとみなさんが元気になるような音楽を続けていきたいですし、心身ともにムキムキにはなりたくないですが(笑)、ヘロヘロにはならないように、コントロールしていきたいなと思います。取材後記偉大なるギタリストである、布袋寅泰さん。ananwebの撮影時、布袋さんが部屋に入られる前に、ご準備いただいた幾何学模様のギターを先に拝見しただけでもBOØWY〜COMPLEX〜ソロとそのロックを聴いて育った筆者は息をのみました。「象徴的なあのギターを見るだけで僕だとわかりますし、いろいろな音が聴こえる、歴史を刻んだギター。宝物ですし、僕の身体の一部です」と布袋さん。ステージではカッコよく、お話しされる際はジェントルマンな布袋さんのニューアルバムと映画をみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・北尾渉取材、文・かわむらあみりヘアメイク・原田忠(資生堂)スタイリスト・井嶋 一雄(Balance)スーツ ¥621,500、シャツ ¥69,300、ベルト ¥99,000、チーフ¥29,700/すべて ブルネロ クチネリ(ブルネロ クチネリ ジャパン株式会社)(問い合わせ先)ブルネロ クチネリ ジャパン株式会社 03-5276-8300布袋寅泰PROFILE1962年2月1日、群馬県高崎市生まれ。日本のロックシーンへ大きな影響を与えた伝説的ロックバンドBOØWYのギタリストとして、1982年にアルバム『MORAL』でデビュー。1988年のバンド解散後、同年にアルバム『GUITARHYTHM』でソロデビューを果たす。また、吉川晃司と結成したユニットCOMPLEXとして1989年にシングル「BE MY BABY」でもデビューし1990年に解散。以降、ソロアーティストとして、そして同時に他アーティストへの楽曲提供、プロデューサー、作詞作曲家としても才能を高く評価されており、映画やCMへの出演などさまざまなシーンで活躍している。クエンティン・タランティーノ監督からのオファーにより提供した「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY(新・仁義なき戦いのテーマ)」 が映画『KILL BILL』(2003年)のテーマ曲となり、世界的にも大きな評価を受け、いまもなお世界で愛されている。2012年よりイギリスへ移住し、4度のロンドン公演を成功させる。2014年にザ・ローリングストーンズと東京ドームで共演を果たし、2015年に海外レーベルSpinefarm Recordsと契約。インターナショナルアルバム『Strangers』がUK、ヨーロッパでCDリリースされ、全世界へ向け配信リリースもされた。2021年にアーティスト活動歴40周年を迎え、日本武道館公演を無観客配信にて開催。また、同公演を完全パッケージした映像作品『40th ANNIVERSARY Live “Message from Budokan”』やEP『Pegasus』をリリース。8月24日には、東京2020パラリンピック開 会式にて「TSUBASA」「HIKARI」の2曲を制作/出演。圧倒的なパフォーマンスが世界中から高評価を受けた。2022年、2月1日に20枚目のニューアルバム『Still Dreamin’』をリリース。2月4日から映画『Still Dreamin’ ―布袋寅泰 情熱と栄光のギタリズム―』が全国ロードショー。5月から8月までは全国ツアー「HOTEI the LIVE 2022 “Still Dreamin’ Tour”」を開催する。InformationNew Release『Still Dreamin’』(収録曲)01. Still Dreamin’02. Do you wanna dance?03. Let’s Go04. Starlight05. コキア06. オペラ07. Pegasus (Album version)08. 理由09. Rock & Soul Music10. Pure11. 世界は夢を見ている12. 10年前の今日のこと (Album version)2022年2月1日発売(通常盤)TYCT-60190(CD)¥3,300 (税込)(初回生産限定盤)60th Celebration EditionTYCT-69229(3CD+フォトブックレット+グッズ)¥6,600 (税込)<付属>・29曲合計約150分 2枚組ライブCD・60Pフォトブックレット・メモリアルピックセット・三面デジパック+三方背スリーブケース仕様。写真・北尾渉 取材、文・かわむらあみり ヘアメイク・原田忠(資生堂) スタイリスト・井嶋 一雄(Balance)
2022年02月03日【音楽通信】第99回目に登場するのは、プライベートレーベルを設立するなど、結成15周年を迎えて、さらなる飛躍を遂げようとしている4人組ガールズバンド、SCANDAL(スキャンダル)!ボーカル&ダンススクールでバンドを結成写真左から、TOMOMI(B&Vo)、HARUNA(Vo&G)、RINA(Dr& Vo)、MAMI(G&Vo)。【音楽通信】vol.992006年に大阪で結成された、HARUNA(Vo&G)さん、RINA(Dr&Vo)さん、MAMI(G&Vo)さん、TOMOMI(B&Vo)さんからなる4人組ガールズバンド、SCANDAL。2009年にシングル「少女S」でレコード大賞新人賞を受賞、国内外問わずさまざまな場所でコンサートを行い、メンバー全員がボーカルを務めるなど、その力強いパフォーマンスで人気を博しています。そんなSCANDALが、2022年1月26日にアルバム『MIRROR』をリリースされるということで、音楽的なルーツなどを含めて、メンバーからHARUNAさんとRINAさんにお話をうかがいました。――小さい頃に憧れていたアーティストから教えてください。HARUNA小さい頃から聴いていて、音楽をやろうと思ったきっかけになったアーティストは、安室奈美恵さんです。もともと小室哲哉さんのサウンドがすごく好きで、小さい頃からgloveやhitomiさんなどの小室さんが作った曲をカラオケで歌いながら、「歌って楽しいなあ」と思いました。RINA 小さい頃は、母親の影響で浜崎あゆみさんの曲をたくさん聴いていましたね。他にもEvery Little Thingといった、女性ボーカルの曲がすごく好きでした。それからだいぶん経ってから、歌とダンスのスクールに通うようになって、SCANDALのメンバーとも出会って。スクールの先生が歌やダンスだけでなく、楽器演奏もすすめてくれたので、そこで初めてバンドの音楽や楽器に触れるようになって、気づくとバンドマンになって15年経っていました(笑)。――2006年に大阪でバンドを結成され、2008年にシングル「DOLL」でメジャーデビューされましたね。この15年を振り返っていかがですか。HARUNA長くやってきたなあと(笑)。15年経ってやっとバンドをやっていること、バンドマンでいることが心地よくなってきました。もともとボーカル&ダンススクールでのバンド結成という特殊なきっかけから始まっているので、それ以前の自分と、バンドを始めてからの自分との差を感じてしまうことも多くて。でも、やっとこの2、3年でそういう自分との差がなくなってきた気がします。――それは何か気持ちが切り替わる出来事があったのですか。HARUNA私が30代になったことが大きいと思います。20代の10年間は、オンオフ問わず、いつも完全にギアを入れた状態でバンドをやっていたといいますか。また違う人格を自ら作り出していたような感覚があって、なかなかそういう自分で10年ぐらい続けていると、心がしんどくなってしまうこともありました。でも、これから長くバンドを続けていこうと思ったときに、ありのままの自分でいるのが、一番大事なんだなと30代になってようやく気づき始めました。過去の自分を否定しているわけではなく、生きていることすべてに意味があると思っているので、これまでのいろいろな経験を経て、やっといますごくいい自分にたどり着いた気がしています。RINA 私はこの15年、シンプルに同じメンバーで、ずっと音楽ができていてうれしい気持ちでいっぱいですね。やり続ける度にバンドが大事になっていますし、楽しくなっています。いま自由に自分たちの個性を認めながら、楽しくナチュラルに音楽ができていると思うので、いまが一番楽しいですね。自分たちや時代と向き合って作ったアルバムHARUNA(Vo&G)。1988年8月10日生まれ、A型。――2022年1月26日に10枚目のアルバム『MIRROR』をリリースされます。まずは今作が仕上がっての手応えから、お聞かせください。HARUNAできてよかったーっ! という感じです(笑)。コロナ禍に入ってから、アルバムの制作がなかなか進まなかった時期もあったので、自分たちの心境の変化とともに完成していったアルバムだといえますね。――1曲目「MIRROR」はアルバムのタイトル曲でもありますが、もっとも今作を表す楽曲となりますか。RINA そうですね、収録曲のなかで最後に書いた曲でもあります。光や、自分たちが感じる女性の柔らかさやしなやかさ、繊細さみたいなキーワードを象徴するワンワードをずっと探していて、なかなかタイトルが決まらないなか最後に「MIRROR」という言葉に辿り着きました。これまで音楽の活動がストップした時期もありましたし、世界全体でいろいろな変化のあった時期に、どういうふうに音楽を続けたらいいかもすごく考えて、自分たちそして時代と向き合って作ったアルバムという意味でも、「MIRROR」というタイトルがすごくしっくりきて。リード曲にもなっていますし、このアルバムを象徴する曲でもあると思います。――4曲目「彼女はWave」はRINAさん作詞作曲の楽曲となり、それ以前の曲とはガラリと雰囲気が変わりますが、どんなイメージで作られましたか。RINA 波のように自由に生きている女の子をテーマにして作った曲なのですが、初めてひとりでDTMで作った曲で、家で打ち込みをしながら制作していった作業も新鮮で楽しくて。デモには私の作った仮歌を入れていたんですが、みんなに聴いてもらったときに「これ、RINAが歌っちゃえば?」となって、久しぶりにボーカルもやらせていただいた曲になりました。――7曲目「夕暮れ、溶ける」はHARUNAさん作詞作曲の疾走感のある楽曲ですが、どのようなシチュエーションから生まれた楽曲ですか。HARUNAこれはまず「夕暮れ」「溶ける」というワードが、夕方に犬の散歩をしていたらふと思い浮かんできました。表現としては違和感があると思いながら、でもワードが妙にグッときたといいますか。うまく言葉では説明できないけれどなんかいいな、という感覚は世の中にたくさんあるなあって、そんな感覚や潔さをうまく表現できればと思ってできた曲です。――ではいつも曲を作られるときは、インスピレーションで作られるのですか。HARUNA曲にもよるのですが、今回は1曲作ろうと思って机に向かったというよりは、何気ない日常のなかでふっと言葉が降りてきた感覚を大事に作ってみました。RINA 私の場合は、作詞作曲するときは、作ろうと思って机に向かうタイプです。バンドのなかで歌詞だけ書くことが多いので、好きな歌詞を書き溜めてみたり、ギターのMAMIがメロディを書いてくれることが多いのですが、そこに歌詞をのせていくパターンも多いですね。HARUNA今回のアルバムに関しては、初めてライブを意識しないで作ったかもしれません。RINA(Dr&Vo)。1991年8月21日生まれ、B型。――これまではライブに向けて曲を書くことが多かったのですか。RINA ほとんどライブに向けて曲を書いていて、ライブでお客さんに会って、それがインスピレーションになっていることが多かったんです。でも、コロナ禍でライブの機会がなくなって、今回は曲を書き始めるのが大変でした。だからこそ、自分と向き合う時間がたっぷりあって、自分たち自身を肯定する曲が多くなったんです。人に何かを発信するよりは、自分を発散する感覚、そんな曲が多いなと。あとはテンポを落としたものを作ろうと思って制作しました。HARUNAサウンドにいい丸みがある感じに仕上げたいなって。たっぷり時間をかけて作れたので、いままでとは全然違う意識でも作れた作品だと思います。――そうやって制作されてきた今作は、どんなふうに聴き手に聴いてほしいですか。RINA 仕上がってみて自分たちも気づいたのですが、あまりこの曲はこういう意味です、とかこういうことを言いたいです、とか答えがないような楽曲が多くて。だから、聴き手に委ねたいですね。その人の状況やライフスタイルによって伝わることが違うと思うので、好きに受け取ってくれたらうれしいです。一回振り切ってこういうアルバムを作ってみたかったので、やれてよかったですし、大事な一枚になりました。HARUNAバンドマンでいると、たまに年齢や性別を自分で忘れてしまう瞬間があるんですが、今回はちゃんと30代の女性として、一人の人間として向き合った中でできた作品がたくさんあります。なので、わたしたちをより身近に感じながら、聴いてもらいたいなと思います。――3月12日からは「SCANDAL WORLD TOUR 2022“MIRROR”」と題した全国ツアーを6月まで開催。7月からはノースアメリカツアー、9月からはヨーロッパツアーと、海外でもツアーをまわりますね。RINA 久々にワールドツアーができることがうれしくて、海外のお客さんもたくさんいるので、アルバムをどういうふうに聴いてくれているのかなと、ワクワクしながらまわることになりそうです。ホールも似合いそうなアルバムなので、すごく楽しみですが、ステージの内容はまったく考えていないので詳しく言えません(笑)。ワールドツアーとついたタイトルが自分たちらしいなと思うので、これがやっと戻ってきたな、と思いました。――日本と海外ではパフォーマンスに違いなどはありますか。HARUNAそんなにないですね、現地の言葉を教えてもらって、挨拶するぐらいです。RINA 日本語で歌うしね。HARUNAそう。国によって、お客さんの反応はさまざまだったりしますが、コロナ禍になって海外のライブがどういうふうに変化しているかはわからないので、それは行ってみてのお楽しみだなと思っています。ナチュラルな4人でずっと音楽をやり続ける撮影:ヤオタケシ――おうち時間が長引く現在、ハマっていることはありますか。HARUNA自粛期間にハマったのは、K-POP。BTSからハマって、NCT、ENHYPENとか、いろいろなアーティストの曲を聴いています。十数年前もよく聴いていたんですが、近年のK-POPブームにのってこうしてまた聴き始めたり、韓国チャンネルを予約してドラマを観たりすることも。最近はCSチャンネルでしか観られないドラマなのですが『マウス』(2021年)というサスペンスドラマが面白くてハマっていますね。RINA 叶姉妹のポッドキャストがすごく面白くてよく聴いています。おふたりのトークがすごく親しみやすい感じもありますし、違う世界の人の話を聴く楽しい感覚もありますし、人間力のあるおふたりのお話を聞くと満たされますね。あとはkemioくんのポッドキャストも聴くことがあります。多彩なゲストの方が来ていて、違う職業の方のお話を聴くのもすごく好きなので、力をもらいました。――おふたりのお気に入りのコスメやファッションもお聞かせください。RINA ヴィーガンコスメブランド「mirari(ミラリ)」のパックがお気に入りです。成分がやさしいもので、いろいろな肌質に合う種類もあって、パッケージもすごくかわいいんですよ。ファッションは、ヴィンテージショップでお買い物するのが好きで、古着もエコだからそれもいいなと。新しい洋服にないサイズもあるので、面白いですし、よくヴィンテージショップに行きます。HARUNAずっと使い続けているのは、韓国コスメ「Dr.jart(ドクタージャルト)」のシカペアクリーム。何本もリピートして使っていて、季節を問わずにお肌がなめらかになります。ファッションのこだわりはあまりないのですが「MM6(エムエムシックス)」や「TOGA(トーガ)」あたりのクールでちょっと形が変わった洋服をよく選びますね。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。RINA 2022年は、遊び心を大事にしたいです。いままでバンドだけの人生という感じでここまで来たのですが、昨年後半は違う職業の友人と会ったり遊んだりして癒され、リフレッシュできて、刺激をもらって過ごしました。そういう時間を今後も増やしていけたらいいなと思っています。バンドとしては、いまが最高の状態だと思うので、この状態が続いたらいいなと。ナチュラルな4人でずっと音楽をやり続けたいですね。HARUNA私も仕事とプライベートのメリハリを大事にしたいです。RINAと一緒で、この10年ぐらいはずっと仕事モードだったので、旅行したり、家で犬と過ごす時間を大事にしたいです。プライベートの時間で生まれる心の余裕みたいなものを、ちゃんと音楽に反映していきたいな。ライブをすることも楽しくて大好きなので、これからも少しずつやっていきたいですし、そういう幸せな日々をいっぱい増やしていきたいですね。取材後記女子中高生のときにバンドを結成し、15年間、駆け抜けてきたSCANDALのみなさん。ananwebの取材では、HARUNAさん、RINAさんに登場していただき、新作や普段のご様子までうかがうことができました。30代に突入し、自然体になったみなさんが放つこれからの音楽も期待大です。そんなSCANDALのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみりSCANDALPROFILEHARUNA(Vo&G)、RINA(Dr&Vo)、MAMI(G&Vo)、TOMOMI(B&Vo)からなる4人組ガールズバンド。2006年8月、大阪のダンス&ボーカルスクール所属の女子中高生4人で結成。2008年、メジャーデビュー。翌年にはシングル「少女S」でレコード大賞新人賞を受賞。国内外問わずに多くのフォロワーを持ち、世界中でコンサートを実施。2019年、プライベートレーベル「her」を設立。2022年1月26日、10枚目のアルバム『MIRROR』をリリース。3月から全国ツアー「SCANDAL WORLD TOUR 2022 “MIRROR”」を開催。InformationNew Release『MIRROR』(収録曲)01.MIRROR02.eternal03.愛にならなかったのさ04.彼女はWave05.愛の正体06.アイボリー07.夕暮れ、溶ける08.蒼の鳴る夜の隙間で09.プリズム10.one more timebonus track1. Living in the city2. SPICE2022年1月26日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)VICL-65653(CD)¥3,300(税込)(初回限定盤A)VIZL-2001(CD+DVD)¥4,400(税込)<初回限定盤A付属内容>DVD「SCANDAL DOCUMENTARY “her” Diary 2021 SPECIAL EDITION」*ドキュメンタリームービー。(初回限定盤B)VIZL-2002(CD+雑誌)¥4,400(税込)<初回限定盤B付属内容>雑誌「”her” Magazine Vol.3」(完全生産限定盤)VIZL-2003(CD+DVD+GOODS)¥11,000(税込)<完全生産限定盤付属内容>DVD:MUSIC VIDEO CLIPS (「Living in the city」「SPICE」「月」「eternal」「アイボリー」「one more time」を含む計7曲を収録)、GOODS:MIRRORロングスリーブTシャツ(L size)。取材、文・かわむらあみり
2022年01月23日【音楽通信】第98回目に登場するのは、声優としてアニメやゲームなどで数多くの作品に携わりながらも、音楽活動やドラマ出演でも注目を集める、増田俊樹さん!高校生の頃に聴いたロックサウンドが音楽的ルーツ【音楽通信】vol. 992011年から声優活動を本格的にスタートし、『アイドリッシュセブン Third BEAT!』和泉一織役、『僕のヒーローアカデミア』切島鋭児郎役、『ヴィジュアルプリズン』ディミトリ・ロマネ役ほか、洋画の吹き替えやナレーション、舞台など、数多くの作品で活躍中の増田俊樹さん。アーティストとしては、2019年から音楽活動をスタートされた増田さんが、2022年1月26日に1stシングル「Midnight Dancer」をリリースされるということで、お話をうかがいました。――声優では2011年に『遊戯王 ZEXAL』(2011〜14年)で初レギュラーを獲得され、2013年にアニメ『サムライフラメンコ』(2013〜14年)で初主演を務め、その後数多くの作品でご活躍中です。そもそも増田さんが声優を目指されたきっかけ、影響を受けた作品から教えてください。高校生の頃に観たアニメに影響を受けて、「僕もこんなカッコいいことをやってみたい」という思いを持ちました。以前から芸能界に憧れもあったのですが、多感な時期で顔を出すことに抵抗があり、「顔を出さない声優なら自分にも目指せるかも」と興味を持ったことが声優になったきっかけです。TVアニメ『天元突破グレンラガン』(2007年放送)や『コードギアス反逆のルルーシュ』(2006年〜07年放送)などの作品に大きく影響を受けました。ゲームなども好きだったので、こういった「ひたすらカッコいいアニメに出たい!」という気持ちが強かったです。――その後、ご自身名義での音楽活動を2019年3月に発売の1st EP「This One」で開始され、2021年9月リリースの2ndアルバム『origin』も好調です。声優だけでなく、音楽活動をすることになった経緯と、そもそもの音楽的なルーツもお聞かせください。レコード会社のトイズファクトリーとご縁があり、マネジメント所属することになった後、音楽活動に興味はあるかと聞いていただいたことが、音楽活動をすることになった直接の理由です。音楽的なルーツといえば、もっとも自分に影響があると思うのは、高校生の頃に聴いていたロックバンドのサウンドですね。もともとBUMP OF CHICKENさんの楽曲が好きだったので、偶然にも同じレーベルであるトイズファクトリーで音楽に挑戦できるというのは、幸運だと思っています。初めてTVアニメのオープニングテーマを担当――2022年1月26日に、1stシングル「Midnight Dancer」をリリースされます。1月12日から放送中のTVアニメ『殺し愛』(毎週水曜24:00 TOKYO MXほか)のオープニングテーマでもありますね。初めてTVアニメのオープニングテーマを担当するということで、とてもプレッシャーを感じた制作でした。ただ、大変だったぶん、タイアップさせていただいた『殺し愛』のイメージを壊さない世界観を作れたのではないかと思っています。ミュージックビデオやジャケットなどのヴィジュアル面においても、原作を読んでいる方々にも気づいてもらえたらうれしい要素を含んでいるので注目してみてください。――冒頭からホーンがカッコいいアーバンジャズとなっている表題曲ですが、ご自身ではどのようなイメージで今作を歌っていますか。グルーヴ感を大事に、かつダーティな世界観を感じていただけるように、少しスレた歌い方をしているかもしれません。『殺し愛』という作品名から感じるセンシティブなイメージから「どんなストーリーが展開されるんだろう」と、曲と合わせて想像していただけたらうれしいです。――2曲目のバラード「ひび」は、どんな思いを込めて歌っていますか。今回、カップリング曲を作るということも初めてで、タイアップ曲と同じCDに収録されるもうひとつの曲と考えると、どんなバランスで作るのがいいのだろうかと悩みました。最終的には、発売日が冬だということと、1曲目「Midnight Dancer」が持つシリアスさとの対比を狙って、2曲目「ひび」はゴリゴリのウインターソングに仕上げています。みなさんが冬を感じるときに、この曲を聴いてくれたらうれしいですね。――増田さんの音楽活動において、声優として役になって歌を歌うのではなく、ご自身として歌う場合に、心がけていることはありますか。僕と制作チームが一緒に作る音楽を、聴いてくれる方々にしっかり届けたい、という気持ちがより強いです。音楽は、人生に少し変化を与えてくれるスパイスになればいいな、とも思っていますね。どんなときも気分が前を向く作品を作っていきたい――音楽活動の一方、1月クールの連続ドラマ『パティシエさんとお嬢さん』(毎週金曜23:00 テレビ神奈川ほか)に、功至役として出演されますね。どのような役どころとなりますか、また、ドラマの見どころもお聞かせください。パティスリーを舞台にしたラブストーリーなのですが、僕はアルバイト店員として、パティシエさんの奥野丈士(崎山つばさ)や、店長の帯刀稜(村井良大)に茶々を入れる、楽しい役どころです。出演シーンもおもにこの3人でのカットだったので、少しふざけた場面が多いかもしれません(笑)。お互い気になっているのに打ち明けることができず、一向に進展しない丈士と“お嬢さん”こと波留芙美子(岡本夏美)の恋の行方をやきもきしながら見られるドラマになっています。――お話は変わりますが、増田さんはおうち時間をどのように過ごしていますか。ここ2年ほど、自分がふと仕事以外でやっていることを思い返すと、ジムに行くか、家でゲームをするかでしたね(笑)。外食も減り自炊することも増えましたが、どれも自分にとってはこだわりの強いものなので、充実した日々を過ごしています。――楽曲ではさまざまなシチュエーションの歌を歌ったり、アニメ作品ではいろいろなキャラクターになったり、恋物語に触れることもありますが、増田さんが思うすてきな女性像をお聞かせください。男女問わずですが、新しいことも吸収し、努力できる人がすてきな人ではないでしょうか。――では最後に、増田さんの声優としての、そして音楽活動をするうえでの今後の抱負を教えてください。これからも引き続き、見てくださる方に夢を与え、一瞬でもまた頑張ろうと思っていただけるような作品づくりに参加したいです。音楽も同じように、楽しいときも辛いときも気分が前を向くような作品を作っていきたいですね。取材後記声優としてはもちろん、現在放送中のドラマでも俳優としてその姿を見せ、音楽活動でも新たな顔を見せてくれている、増田俊樹さん。今後も、ジャンルレスに活躍の場を広げて、活躍されるのが楽しみですね。そんな増田さんのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてください。取材、文・かわむらあみり増田俊樹PROFILE1990年3月8日、広島県生まれ。出演作に、アニメは『コタローは1人暮らし』(狩野役)、『アイドリッシュセブン Third BEAT!』和泉一織役、『僕のヒーローアカデミア』切島鋭児郎役、『ヴィジュアルプリズン」ディミトリ・ロマネ役、その他洋画の吹き替えやゲームなど、数多くの作品に出演。増田俊樹名義での音楽活動は、2019年3月に1st EP「This One」をリリースし、スタート。2022年1月26日、1stシングル「Midnight Dancer」をリリース。InformationNew Release「Midnight Dancer」(収録曲)01.Midnight Dancer02.ひび03.Midnight Dancer (Instrumental)04.ひび(Instrumental)2022年1月26日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)TFCC-89723(CD)¥1,430(税込)(初回生産限定盤)TFCC-89721〜2(CD+BD)¥2,420(税込)<初回生産限定盤付属 BD 収録予定内容>「Midnight Dancer」Music Video、BEHIND THE SCENE「ひび」/Recording Documentary(期間生産限定盤)TFCC-89724(CD)¥1,430(税込)取材、文・かわむらあみり
2022年01月21日私は若いころから、特別好きなアイドルやアーティストがいませんでした。「この曲良いな」と思って購入するのは、常にヒット中の歌手のベストアルバムです。そんな私が、生まれて初めて予約をして購入したのが日本人7人組のボーイズグループ「BE:FIRST」のデビューシングル『Gifted.』でした。更年期で沈みがちだった私の気持ちを元気にしてくれたのです。偶然見つけた動画でデトックス更年期症状がつらく、気分がふさいで沈みがちな私が、ボーイズグループ発掘オーディション「THE FIRST」の動画をYouTubeで見つけたのは、まったくの偶然でした。「THE FIRST」はラッパーのSKY-HI(スカイハイ)が私財1億円をかけて開催したもので、見つけた動画はオーディションの最終選考のステージが終わり、いよいよ誰が選ばれる?という1番の盛り上がりの段階でした。昨年のコロナ禍でNiziUの「Niziプロジェクト」の動画にはまっていた私は、「これはNiziプロの男性バージョンみたい。最初から見てみるか」と何の気なしに見てみることにしました。すると、山中湖での合宿中のオーディションで落選したメンバーが泣き、ジャッジしたSKY-HIも泣き、残ったメンバーも泣きといった感じで、オーディションの各段階で落選者が出るたびに皆が泣くのです。ついついつられて私もぼろぼろ泣き、鼻をかみ、時には嗚咽しながら動画を見ました。そして見終わったあとは、なんだか気持ちがとてもスッキリ。「泣くことはデトックス作用があるんだなぁ。これは良いや」と思ったことを覚えています。ときめきというよりは、母の気持ちで応援「BE:FIRST」の最年少メンバーは15歳の中学生。最年長でも22歳です。息子と同い年の18歳の高校生のメンバーがいるからでしょうか。彼らを見てときめきを感じるというよりは母の気持ちで、世界で羽ばたいてほしいなぁと応援しているという感じです。合宿の動画を見ていると、SKY-HIの審査課題は難易度が高いものでした。例えばクリエィティブ審査は、グループごとに歌詞と振り付けをチームで一から考えるというものでした。年内にデビューするということは決まっていたので要求水準が非常に高かったのですが、音楽に真摯に必死に向き合い、作品を作り上げた彼らの姿にとても感動しました。11月3日がデビューの彼らが、初のテレビ出演でデビュー曲を歌うという情報をSNSで見つけ、その日は正座して、息子がデビューするかのようにドキドキしながらテレビ画面を見ていました。全力で歌い切り、踊り切り、晴れ晴れとした表情の彼らを見て、私はつい感極まってしまい「よかったねぇ。本当によかった」と、思わず画面越しに声をかけてしまいました。次の章で、「BE:FIRST」によって私の生活がどう変わったのかをお伝えします。「BE:FIRST」の存在が毎日の生活の活力にデビュー後は、雑誌の撮影やラジオ番組、ライブなど、毎日のように「BE:FIRST」の新しい動画がアップされています。彼らの世間からの注目ぶりが良くわかり、動画の画面によかったねぇとつぶやいてしまうくらい、とてもうれしく思っています。いつか「BE:FIRST」の生のライブに行ってみたいという夢ができたので、今真剣にダイエットや健康維持に取り組んでいます。購入を躊躇していた「リングフィット アドベンチャー」を買い、ダイエット目的で毎日筋トレにも励んでいます。また、毎朝プロテインを飲み始めました。在宅ワーカーであまり運動していない私が、室内とはいえ、ようやく毎日運動を始め、健康維持のための努力を始めたので家族も喜んでいます。また、仕事に行き詰ったときや閉塞感を感じたり気分が沈んだりしたときに『Gifted.』を聞くと、不思議と気持ちが前向きになり、頑張ろうと思えます。心が沈んだり荒んだりしたときに、グループでわちゃわちゃと男子校のノリで仲良く楽しそうにしている動画を見ると、心が洗われ、私も頑張ろうとやはり前向きな気持ちになれます。今の私にとって「BE:FIRST」は毎日の生活の活力です。まとめジャニーズのボーイズグループですら、「嵐」以降、メンバーの顔と名前が一致しなかった私。そんな私が、「BE:FIRST」のデビューを支えたいとシングルCDを予約してまで購入するなんて。また、彼らの歌や動画で、私も頑張ろうという気持ちが生まれることに自分でも驚いています。これからも「BE:FIRST」のメンバーの成長を温かく見守りながら、彼らにいつか会いに行けるようにダイエットを成功させて、健康でいたいと思っています。※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。★関連記事:推し活に目覚めたら、アラフィフの生活がキラキラ輝き始めた!【体験談】★関連記事:「理由もなくイライラ、落ち込み、不眠…」更年期に突入した私の乗り越え方【体験談】★ウーマンカレンダー更年期のお悩み記事をもっと読む著者/しばこ(47歳)主婦ライター。更年期で不眠気味。毎日が不調。
2022年01月03日【音楽通信】第97回目に登場するのは、“ファンクを歌うアイドル”として音楽ファンからも注目を集めているアイドルグループ、フィロソフィーのダンス!想像していなかったアイドル道を突き進む4人写真左から、佐藤まりあ、十束おとは、日向ハル、奥津マリリ。【音楽通信】vol. 972015年に結成し、2020年9月にメジャーデビューした、奥津マリリさん、佐藤まりあさん、日向ハルさん、十束おとはさんからなるアイドルグループ、フィロソフィーのダンス。ファンクやソウル、ディスコなどをベースにした楽曲とクオリティの高い歌とダンスが、アイドルファンだけではなく、音楽通からも熱視線を浴びている異色の存在です。そんなフィロソフィーのダンスが、2021年12月1日にニューシングル「サンフラワー」をリリースされたということで、メンバーから奥津さん、十束さんのおふたりに、お話をうかがいました。ーーananweb初登場となりますので、自己紹介からお願いします。奥津奥津マリリです。グループではグラビア担当ということで、お衣装でも一番布面積が少ない担当をやらせていただいています。好きな食べ物は、ラーメンやモツといった、お酒に合うものですね。十束十束おとはです。映画やアニメ、漫画が好きなので、グループではサブカル担当で、プロゲーミングチーム“魚群”にも所属中。とにかく白米が好きで、毎日白米を食べて、幸せを堪能しています(笑)。でもそのぶん、運動もしているんですよ。好きな飲み物は、カフェラテとコーヒーです。ーー小さい頃に憧れていたアイドルと、アイドルになったきっかけを教えてください。奥津小さい頃は、松田聖子さんやサザンオールスターズさんが好きでした。いまアイドルになってからは、モーニング娘。さんが大好きです。もともとバンドやシンガーソングライターで活動をしていて、フィロソフィーのダンスには、スカウトを経て入りました。だから、アイドルになりたいという強い思いを持ってなったというよりは、どちらかというとロックな女になりたいという夢があって。バンドだとチャットモンチーさんや海外のバンドの曲が好きでしたね。十束子どもの頃は、三次元よりは二次元の『セーラームーン』や『おジャ魔女どれみ』、『プリキュア』のような強くて自分を持っている可愛い子に憧れていました。実在する人物としては、私がこのアイドルになりたいな、と憧れを持ったのは元モーニング娘。の後藤真希さんだったんです。奥津えっそうなの?ゴマキ!?十束そう(笑)。いまは、でんぱ組inc.さんや私立恵比寿中学さんが好きです。そもそもは芸能界に入る気持ちはなく、大学を卒業してから一度OLになって働いていたなか、好きなゲームを応援できる応援団募集というオーディションを知りまして(笑)。やっぱり好きなものに関わりたくてOLを辞めて、そちらの道に進んだことをきっかけに「以前から好きだったアイドルになろう!」と決めていまに至ります。ーー2015年7月に結成され、2020年9月にメジャーデビューされました。アイドルとしては、コンテンポラリーなファンクやR&B、歌詞には哲学的なメッセージを込めるというコンセプトは珍しいですね。十束私と佐藤まりあはオーディションでグループに入ったんですが、奥津マリリと日向ハルはスカウトされて入ったので、最初お互いに感じていたことは違ったのではないかと思います。私はとにかく可愛いアイドルになりたかったので、ファンクを歌うアイドルというのは、予想していませんでした(笑)。でも活動をやっていくうちに、自分たちにしか出せないものだったり、他の人が登っていない山があったり、独自性を突き進めていけるという部分と、何年経っても私たちにしかできない良い音楽をお届けできるところは良いなと。ただ、いつかは可愛いフリフリの衣装を着て、可愛い音楽をやってみたいという気持ちもあります(笑)。奥津私はバンドをやっていたこともあって、このグループをやるにあたってはかなりの覚悟が必要で、ロック魂を売っても良いのかという思いもありました。でも悩んだ末に入ると決めてからは「なんだってやってやる!」という思いで、フリフリの可愛らしいキュンキュンするアイドルグループを予測していたら、そういうことはやらないので、あれ?と(笑)。想像していたアイドル像とは違ったので驚きもありましたが、グループの生みの親で音楽プロデューサーの加茂啓太郎さんから「良い曲を良い形で伝えていく」という壮大なコンセプトを聞いて納得できましたし、こだわりの曲をいただけてうれしいなと思いながら活動しています。たくさんの場面でフィットする味付けの違う4曲奥津マリリ。7月11日、神奈川県生まれ。O型。スイートでメロウなボーカルが特徴。ーー2021年12月1日に4thシングル「サンフラワー」をリリースされました。同曲は福原遥さんやディーン・フジオカさんが声優を務める、12月3日公開のフラガールを目指す新人ダンサーたちの奮闘を描くオリジナルアニメ映画『フラ・フラダンス』の主題歌にもなっていますね。十束主題歌を歌わせていただくと決まったときに、まずは登場人物たちの心情や映画のあたたかい雰囲気をまとった曲を作りたいと思いました。実際に映画の試写会でエンディングを見たときに、曲も歌詞も素敵で、私たちの個性の違う歌声が映画の主人公や仲間たちともぴったりハマっていてメンバー全員号泣してしまったので、映画を観た方の感想もはやく聴きたいです。奥津多幸感があふれていて、私たちにも映画にもぴったりの曲になっているので、これからさらに大切な曲になっていくんだろうなと感じています。ーー同曲のミュージックビデオでは、実際にフラガールのみなさんとステージに立つ様子もありました。奥津事前に別々でフラダンスの練習をしていましたが、当日に会場入りして、みんなで練習をしました。そこで最終調整をして、全体のフォーメーションの確認や、全員で大きなひまわりを咲かせる振り付けなどを細かく決めて、いざステージに立ったんです。フラガールさんたちが大切にしているステージに上がらせていただき、お客さんも私たちのファンの方を呼んだわけではなく、たまたまその日会場に来ていた方に観ていただくかたちとなったので、とても緊張しました。ーージャジーで大人っぽい2曲目「ジョニーウォーカー」は、アメリカ出身の凄腕ミュージシャンで構成されたバンドのGROOVE ASYLUMがアレンジと演奏を担当しています。奥津 GROOVE ASYLUMさんと一緒に演奏してみたら、グルーヴ感が段違いで、いままで体感したことがないような本場のグルーヴを感じました。わたしたちがいままでやってきた音楽はそういうところから来ているので「こういうことだったんだ」と実感できて、本当に良かったです。歌のほうもグルーヴが大事な曲なので、声色や表情のほかにもリズムの乗り方を研究するのに苦労したのですが、ハマってくると気持ち良かったです。この曲のようなテイストの音楽をずっとやってきたからこそわかるグルーヴ感を出せたらいいな、と思いながらレコーディングしましたし、ライブでもはやく披露したいですね。十束1曲目の「サンフラワー」はすごく明るい曲で、キーもすごく高い曲だったのですが、一転2曲目の「ジョニーウォーカー」は大人の曲で、とてもキーが低いところから始まっているので、みんな苦戦してがんばった曲です。わたしたちは年齢を公表していませんが大人という部類に分類されるので、わたしたちにしか出せない色気を出そうと、努力しました。十束おとは。8月9日、神奈川県生まれ。A型。独特のアニメ声が特徴。ーーキュートな3曲目「二人のエクリチュール」は、奥津さんが作詞家のSHOWさんと共作詞されたクリスマスソングですが、どのようにこの曲が生まれましたか。奥津まずSHOWさんが詞の大枠を作ってくださって、それにわたしの色を加えるかたちで参加させていただきました。私が短編小説ぐらいの「ここで待ち合わせして」「彼がこんなことを言ってきた」といった具合に、細かく書いた原案をお送りしてまとめていただいて。わたしらしさを出したくて、ライブで映えるような工夫もしています。曲の最後にあるセリフを入れていて、これも提案させていただいたこだわりポイントのひとつなので、みなさんにも聴いてキュンキュンしていただければ(微笑)。わたしプロデュースだからこその仕上がりになったと思います。ーーこうして奥津さんが仕上げた楽曲を十束さんはどんなお気持ちで歌入れされましたか。十束そうですね、まず本当に最初の原案の短編小説のクセが強くて(笑)、コメディかな?というぐらいのポエムだったんです。受け取ったSHOWさんがきれいに整理整頓して4分に凝縮してくださった感じを受けたので、わたしたちは(奥津)マリリがやりたかったことを汲んで、歌にしなければという使命感で歌いました。ーー4曲目「気分上々」は、2006年にヒットしたパーティチューンをフィロソフィーのダンス流にアレンジしていますが、どのようなイメージで歌われましたか。奥津この曲はもともとノリノリな曲じゃないですか。でも上げて歌うというよりは、声も抑え気味で、グルーヴに身を委ねるといいますか。チルなホームパーティで気持ちよく乗っているイメージをしながら、ニュアンスに気をつけて歌いましたね。十束そもそも「気分上々」を選んだきっかけが、もっとたくさんの方にわたしたちのことを知ってほしいという思いがあり、少し懐かしいカバー曲をみんなで数十曲出し合って決まった曲なんです。オリジナルのmihimaru GTさんは元気いっぱいで、私たちもリアルタイムに聴いていたのでそのイメージがとても強かったのですが、カバーするなら新しい魅力をこの曲に吹き込みたいと思って、あえていったん原曲は忘れて(笑)、自分たちにしかできない歌い方にしました。かなりチルでゆっくりな曲調なので、そのなかにグルーヴを出す歌い方が難しかったです。ーーでは、聴き手には今作がどんなふうに届いてほしいでしょうか。奥津1枚を通して聴くと、夏の曲が表題曲かと思えば、クリスマスの曲もあって、かと思えばすごくチルなカバー曲や、アメリカのグルーヴたっぷりの曲もあり、春夏秋冬を気にしない作品に仕上がりました(笑)。だからこそ、味付けが違う4曲なので、「いまはこれ」「今度はこの曲」というふうに、そのシーンに合った聴き方ができるのではないかなと。みなさんの気分に合わせてトラックをかえていただいて、たくさんのシーンでフィットできたらいいなと思います。老若男女に愛される存在と全国ツアーが目標ーーお話は変わりますが、おうち時間が長引く現在、いまハマっていることはありますか。奥津いまだからというわけではないですが、ずっとお酒が好きなので、お酒に合うごはんを作るようにしています。最近は鍋や牡蠣、白子がおいしい季節なので、旬のものを食べていますね。ーーお酒は何を一番飲むのですか?奥津ビールが一番多いですね。でも「ジョニーウォーカー」という曲を歌ったことで、最近は(同名のスコッチ・ウイスキーのブランドの)ジョニーウォーカーをよく飲んでいます。炭酸で割ってハイボールにすると、さっぱりとして飲みやすいんですよ。十束私は以前から、おうち時間はゲームをたくさんしています。新しい趣味だと、キャンドルにハマっていて。火をつけるタイプのキャンドルは怖いのですが、最近は火をつけなくても、コンセントをつないで電球の熱さでキャンドルが燃えて良い香りがするものがあるので、それをゲットしてからはかなりハマっていますね。ーーおふたりがお好きなコスメもお聞かせください。十束コスメは好きで集めていまして、日本のコスメブランドだととくにSUQQU(スック)のアイシャドウが好きです。最近だと、韓国や中国のコスメも流行っていますよね。韓国コスメだと、最近日本に上陸したhince(ヒンス)も良くて、お値段も手頃なのでおすすめです。奥津わたしはリップが大好きで、いろいろな色味や質感のリップを集めています。最近はブラウン系が流行っているので、ブラウン系リップに手を出してムフムフしている最中です(笑)。秋冬だと、気分が変わってくるので、秋冬コスメの情報をドキドキしながら見ていますね。ーー普段から美容面で気をつけていることはありますか。十束気をつけていることは、日々幸せに生きたいので、とにかくよく食べ、よく眠ることを前提に過ごしています。わたしはかなり太りやすくヤセにくい体質で、筋肉もつきにくいことがわかっているので、ジムに通って運動したり、常にプロテインを飲んだりして、頑張って維持していますね。奥津フィロソフィーのダンスは全員、食べることがすごく好きなので、絶対それをあきらめたくないから(笑)。なので好きなものを食べつつ、幸せに生きていく方法をみんなで探しています。わたしは筋トレが好きなのもあって、おうちで筋トレしていますね。あとはサウナも好きなので、入って、水風呂でしめてと。代謝が良くなりますし、サウナを出たあとはお肌もツルツルになります。初心者の方だと水風呂はちょっと抵抗があるかもしれないのですが、サウナのあと水風呂でしめなくても、少し水シャワーを浴びるだけでも、お肌には良いですよ。とくに女性の方におすすめなのは「塩サウナ」。普通のサウナでも「塩サウナ」をやっている場所もあるので、サウナが苦手じゃなければ、美肌になるのでおすすめです。ーーいろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。奥津今年は東名阪ツアーの名古屋公演が中止になってしまって、悔しい気持ちがあります。グループの目標として、全国ツアーに行けるようになりたいということと、状況にもよりますがこれからは有観客ライブがたくさんできるようになれればうれしいです。十束こうしてananwebさんに出させていただいたら、わたしたちを知ってくださる女性の方が増えるのではないかと思うんです。そうして見ていただいたときに、ちゃんと好きでいてもらえるような魅力をちゃんと身につけていきたいですし、もっと老若男女に愛されるグループになりたいです。取材後記アイドルシーンで異彩を放つ、フィロソフィーのダンス。ananwebの取材では、奥津マリリさん、十束おとはさんに登場していただき、新作や普段のご様子までうかがうことができました。メンバーのみなさんそれぞれが放つ個性を武器に、これからも音楽ファンを魅了してくれるに違いありません。そんなフィロソフィーのダンスのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみりフィロソフィーのダンスPROFILE2015年、スカウトとオーディションにより結成。奥津マリリ、佐藤まりあ、日向ハル、十束おとはの4人からなるアイドルグループ。略称は“フィロのス”。2020年9月、シングル「ドント・ストップ・ザ・ダンス」でメジャーデビューし、オリコンウィークリーチャート2位を獲得。3rdシングル「ダブル・スタンダード」はTVアニメ「魔法科高校の優等生」のエンディングテーマに起用。2021年12月1日、4枚目のシングル「サンフラワー」をリリース。表題曲「サンフラワー」はオリジナルアニメ映画「フラ・フラダンス」主題歌に起用されている。InformationNew Release「サンフラワー」(収録曲)01. サンフラワー02.ジョニーウォーカー03.二人のエクリチュール04.気分上々2020年12月1日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)SRCL-11972(CD)¥1250(税込)(期間生産限定盤)SRCL-11973〜11974
2021年12月03日【音楽通信】第96回目に登場するのは、今年7月に新体制の12人となり、さらに急成長を遂げているハロー!プロジェクトのアイドルグループ、つばきファクトリー!ハロプロ研修生から「つばきファクトリー」へ写真左から、浅倉樹々、山岸理子、豫風瑠乃。【音楽通信】vol. 962015年4月に結成され、2017年にメジャーデビューした、つばきファクトリー。同年には第59回『輝く!日本レコード大賞』最優秀新人賞受賞を受賞するなど、急成長を遂げている、ハロー!プロジェクトのアイドルグループです。2021年7月には4人のメンバーが加入して新体制となり、10月には、つばきファクトリー コンサート2021「CAMELLIA〜日本武道館スッペシャル〜」と題した、日本武道館での単独公演を開催して大成功を収めました。そんなつばきファクトリーが、11月17日に新体制の12人で初となるトリプルA面シングル「涙のヒロイン降板劇/ガラクタDIAMOND/約束・連絡・記念日」をリリースされたということで、メンバーを代表してリーダーの山岸理子(やまぎしりこ)さん、浅倉樹々(あさくらきき)さん、豫風瑠乃(よふうるの)さんにお話をうかがいました。――ananweb初登場ですので、おひとりずつ自己紹介からお願いします。山岸つばきファクトリーのリーダー、山岸理子、23歳です。趣味は映画鑑賞とカフェ巡り、YouTubeでモッパン(食事動画)やルームツアーの動画を観ることと、ダンスをすること。最近は、ガチャガチャにハマっています。浅倉浅倉樹々、21歳です。趣味はロックを聴くこと、愛犬と遊ぶこと、おいしいごはんを食べることです。豫風今年7月に加入した、豫風瑠乃、13歳です。趣味はお菓子作り、音楽鑑賞、そしてマンガを読むこと。音楽は一日中聴いていることが多いです。――あらためて、みなさんが小さい頃に憧れていたアーティストや、アイドルになろうと思ったきっかけを教えてください。山岸小さい頃、ダンスを一緒に習っていたお友達が芸能のオーディションを受けていて、「私もやってみようかな」と思い、ハロプロ研修生のオーディションを受けました。ハロプロ研修生になれたら、ハロプロメンバーのバックダンサーになれるとオーディション雑誌に書いてあったので、当時バックダンサーになりたかった私は、「これだ!」と思ったんです。浅倉アニメ『しゅごキャラ!』シリーズ(テレビ東京系 2007〜2010年)の主題歌を歌われていたBuono!さんに憧れて、アイドルという存在を知りました。その後、元モーニング娘。の鞘師里保さんのダンスに圧倒されて、「一緒のステージで踊りたい!」と思うようになり、オーディションを受けました。豫風小さい頃から歌って踊ることが大好きで、テレビで歌って踊る人を見るとすぐまねをしていたんです。父はモーニング娘。さんが好きで、よく家でDVDを観ていたことがきっかけで、アイドルになりたいと思いました。小学校5年生のときに、「モーニング娘。’19 LOVEオーディション」があることを知り、オーディションを受けました。――2015年4月に結成、2017年2月にメジャーデビューされ、2021年7月に新メンバー4人が加入し、現在は12人体制となっていますね。結成してからメジャーデビューするまで、そして新体制での現在までを振り返ると、何か心境の変化はありましたか。山岸結成当初は、周りから心配されるような自信なさげなグループに見られていましたが、今年10月にはつばきファクトリー初の単独での日本武道館公演ができるまでに成長しました。一人ひとりが自覚と責任を持ってリハーサルに挑み、本番では新体制のつばきファクトリーとして、みなさんに自信を持ってパフォーマンスを披露することができたのではないかなと思います。成長したつばきファクトリーを感じられる新作山岸理子。1998年11月24日、千葉県生まれ。B型。座右の銘は「みんなちがって、みんないい」。――2021年11月17日に、12人体制で初のトリプルA面シングル「涙のヒロイン降板劇/ガラクタDIAMOND/約束・連絡・記念日」をリリースされました。まず今作ができての手応えからお聞かせください。山岸新メンバー4人の歌声が加わり、また新しいつばきファクトリーが誕生しました。今回の楽曲は、いままでのわたしたちを象徴するような切ないしっとりとした曲調ではなく、スタイリッシュで大人っぽい楽曲になっています。今作で、少し強くなった大人なつばきファクトリーを感じていただけるはずです。――豫風さんにとっては、今作が初参加となりますが、レコーディングは順調でしたか。また、新メンバーが参加したことで、歌やパフォーマンスなど、これまでとは違う変化を感じましたか。山岸新メンバーの歌声が素晴らしくて、音源ができあがって、歌声を聴いたときはびっくりしました!つばきファクトリーの楽曲に厚みも増しましたしパフォーマンスは迫力がアップして、新メンバーはフレッシュさもありつつ、今作の大人っぽさも活かせた表現力もあるので、今後に期待大です。浅倉個人的には感情移入がしやすい楽曲ばかりだったので、曲の世界観に溶け込むのはそこまで難しくありませんでした。ただ、音が低かったり、ピッチの上がり下がりが激しかったりで音程を取ること、喉を痛めない発声で歌うことに苦戦しました。新メンバー4人の歌声を完成した音源で初めて聴いたとき、想像以上のものができあがっていて、かなりびっくりしました。4人それぞれ素敵な声を持っていて、12人体制スタートのシングルから、インパクトのある大きな華を添えてくれましたね。浅倉樹々。2000年9月3日、千葉県生まれ。AB型。座右の銘は「清く正しく美しく」。豫風レコーディング自体はハロプロ研修生のときに経験があり、初めてではなかったのでまだリラックスしてできたのではないかと思いますが、レコーディングとステージで歌うのとはまた違うので、その点は大変でした。でも、とても楽しかったです。――「涙のヒロイン降板劇」は、失恋した女の子が立ち上がる姿を小気味良いテンポで聴かせる大人っぽいナンバーですが、この曲に込めた思いを教えてください。山岸この楽曲は彼にフラれたあとのお話になっているのですが、フラれて悲しくてへこむというよりも、切り替えて前に進もうとしている女の子の歌。なので、恋愛に限らず、仕事や学校などのどんな出来事に置き換えても、その姿に共感できるような歌詞だなと。聴くだけで体がつい動いてしまう、口ずさんでしまうようなグルーヴ感があって、オシャレでノリノリになれるので、テンションを上げたいときに聴きたい1曲です。浅倉自分に自信がなくなってしまい、でも一歩前に進みたいと思っている方の背中を押せるような楽曲にもなっていると思います。豫風この曲は失恋してもジメジメしていなくて、強く生きていくという、前向きなイメージ。そしてオシャレな曲調なので、聴いてくださる方に、未来は明るいんだよという思いを込めて、歌わせていただいています。ーー「ガラクタDIAMOND」は、裏切った恋人を断ち切る潔い女性の歌ですが、この曲でとくに聴いてほしい、注目ポイントはどこでしょうか。山岸新メンバーのフィーチャー楽曲で、一人ひとりの歌声をちゃんと聴けるようになっています。彼の浮気現場を目撃してしまい、ショックを受けながらも、強く芯のある女性を表現していて。サビの最後は「ダイキライよ!」というフレーズなのですが、アイドルが怖い顔をして“ダイキライよ”とはなかなか言わないので(笑)、そこが注目ポイントだと思いますし、とても新鮮だなと思いました。豫風瑠乃。2007年12月20日、大阪府生まれ。O型。座右の銘は「七転び八起き」。浅倉新しく入った河西結心(かさいゆうみ)ちゃんの歌い出しは、情緒あふれる歌い方になっているので、注目してほしいですね。あとはこれまで、たとえば“大好き”というあまい台詞やフレーズを歌うことはあっても、“ダイキライ”という否定的な言葉はなかなかなかったので、また新しいつばきファクトリーが見られるはず。豫風そうなんです、歌詞の中で3回「ダイキライよ!」というフレーズが出てくるのですが、3名のメンバーがそれぞれ素敵な味を出しながら想いを込めて歌っているのが聴きどころです。あと落ちサビ(最後のサビの前に置くボーカルを際立たせるサビ)では、裏切った恋人に対しての儚い、切ない想いを表現しながら歌っているので、その点も注目してほしいですね。ーー「約束・連絡・記念日」は、恋人への本音を吐露するダンサブルなナンバーです。この曲の聴きどころ、ダンスパフォーマンスの見どころはどこになりますか。山岸サビがとても特徴的で、一度聴いたら耳から離れなくなるような中毒性のある楽曲になっています。曲の最後には、一人一文字ずつ歌うところがあるので、誰がどの文字を言っているのか当ててみるのも、ひとつの楽しみかな(笑)。間奏のダンスでは、全員でワックダンスをしていて、12人で踊るととても迫力があるのが見どころです。浅倉サビの変速リズムやタイトルにもあるように、約束、連絡、ふいうち、記念日、と歌詞で単語が多く使われているのも斬新で、お気に入りです。ダンスは12人でカノンになって踊っていますが、これは何度も練習して合わせた部分でもあるので、ぜひ見ていただきたいですね。豫風切なさを表現した今作のダンスの見どころは、各メンバーの切ない表情。12人が数人にわかれてシンクロしているダンスは、ひとりずつではなく、全体を観ていただきたいです。ホールコンサートのリベンジとミニライブを開催したい――12人と大所帯となりましたが、普段はどのように交流を深めていますか。浅倉まだ全員で遊んだことはありませんが、お仕事の合間やお休みの日に予定が合えば、メンバー同士でご飯に行くことがありますね。(山岸)理子ちゃんとは、同じ千葉仲間でもあるので、ディズニーランドに一緒に行くことが多いです。――みなさんは美容やダイエットなどで気をつけていることはありますか。山岸私はとてもむくみやすい体質なので、普段から筋膜リリースローラーや小顔ローラーでコロコロしたり、足のマッサージ器でマッサージしたり、足つぼシートに乗ってむくみをできるだけとったり。そして、お風呂に入ることも好きなので、いつも汗をかくまで湯船に浸かっています。スキンケアに関しては、最新のスキンケア情報を常に見て、今月の売上ランキングや口コミなどをチェックしていますね。浅倉朝起きたら、お白湯をコップ1杯飲んでいます。あと乾燥肌なので、保湿をすることと、適度な運動をすること、湯船に15分は浸かること、これらは毎日しています。豫風寝る前に、よく顔にパックをして保湿しています。また、偏った食生活をすると顔にできものができてしまうので、炭水化物以外のいろいろな食べ物を意識しながら、食べていますね。なかでも、豆腐がおいしくていまは毎日食べています。――では、オフの日の過ごし方を教えてください。最近ハマっているものはありますか。山岸愛犬のマッサージをすることですね。マッサージをすると、うっとりしてとても気持ちよさそうな顔をするのがたまらなく可愛くて、愛犬が寝るまでずーっとマッサージしてあげちゃいます(笑)。私が手を止めると、「もっと」というように足で押してくるので、その仕草も可愛くて、永遠にしちゃうんです。浅倉私は韓国ドラマにハマっていて、自粛期間から20作品くらいは観ました。暇さえあれば、ドラマ観賞会です(笑)。筋トレも、ドラマ同様に自粛期間から続いている趣味なので、負荷を強めたりしながら、下半身をメインに鍛えていますね。あと食べることも好きなので、時間があるとレシピを見ながら、料理やお菓子作りに挑戦したり、カフェ巡りをしたりしています。豫風オフの日は買い物に行くとき以外、家でお菓子作りをしていることが多いです。最近は料理にもチャレンジしていますが、もっと献立の幅を広げられるよう、頑張りたいですね。また、音楽を聴きながらマンガを読んだり、おもしろい動画を観たりして過ごしています。――いろいろなお話をありがとうございました。最後に、リーダーの山岸さんから、今後の抱負を教えてください。山岸今後は、まず昨年中止になってしまったホールコンサートを全国各地でやりたいですね。そして、つばきファクトリーは、結成当初からリリースイベントのミニライブをたくさんやってきています。各地のファンの方にたくさんお会いできるうえ、近くでパフォーマンスをすることで、みなさんの熱量や楽しそうな表情も間近に見ることができて、私は大好き。いまはまだこのご時世で難しいかもしれませんが、リリースイベントのミニライブも、再開できたらいいですね。取材後記新メンバーが4人加わった12人体制となり、新たにスタートした、つばきファクトリー。ananwebの取材では山岸理子さん、浅倉樹々さん、豫風瑠乃さんが登場してくださり、みなさんのグループにかける強い想いが伝わってきました。これからのご活躍も楽しみですね。そんなつばきファクトリーのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみりつばきファクトリーPROFILE2015年4月、ハロー!プロジェクト研修生内ユニットとして結成。2017年2月、シングル「初恋サンライズ/Just Try!/うるわしのカメリア」でメジャーデビュー。同年、第50回日本有線大賞 新人賞、第59回『輝く!日本レコード大賞』最優秀新人賞受賞。2021年7月、河西結心、八木栞、福田真琳、豫風瑠乃の4名が加入し、新体制となる。11月17日、トリプルA面シングル「涙のヒロイン降板劇/ガラクタDIAMOND/約束・連絡・記念日」をリリース。InformationNew Release「涙のヒロイン降板劇/ガラクタDIAMOND/約束・連絡・記念日」(収録曲)01.涙のヒロイン降板劇02.ガラクタDIAMOND03.約束・連絡・記念日04.涙のヒロイン降板劇(Instrumental)05.ガラクタDIAMOND(Instrumental)06.約束・連絡・記念日(Instrumental)*収録曲は全形態共通。2021年11月17日発売(通常盤A)EPCE-7643(CD)¥1,300(税込)*特典:トレーディングカードソロ12種+キラ仕様集合1種よりランダムにて1枚封入(涙のヒロイン降板劇 Ver.)。(通常盤B)EPCE-7644(CD)¥1,300 (税込)*特典:トレーディングカードソロ12種+キラ仕様集合1種よりランダムにて1枚封入(ガラクタDIAMOND Ver.)。(通常盤C)EPCE-7645(CD)¥1,300 (税込)*特典:トレーディングカードソロ12種+キラ仕様集合1種よりランダムにて1枚封入(約束・連絡・記念日 Ver.)。(初回生産限定盤A)EPCE-7635(CD+BD)¥2,200(税込)*特典:BD付。収録内容:01.涙のヒロイン降板劇(Music Video)、02.涙のヒロイン降板劇(Dance Shot Ver.)、03.涙のヒロイン降板劇 メイキング映像。(初回生産限定盤B)EPCE-7637(CD+BD)¥2,200(税込)*特典:BD付。収録内容:01.ガラクタDIAMOND(Music Video)、02.ガラクタDIAMOND(Dance Shot Ver.)、03.ガラクタDIAMOND メイキング映像。(初回生産限定盤C)EPCE-7639(CD+BD)¥2,200(税込)*特典:BD付。収録内容:01.約束・連絡・記念日(Music Video)、02.約束・連絡・記念日(Dance Shot Ver.)、03.約束・連絡・記念日 メイキング映像。(初回生産限定盤SP)EPCE-7641(CD+BD)¥2,200(税込)*特典:BD付。収録内容:01.「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?、02.黄色い線の内側で並んでお待ちください、03.好きって言ってよ、04.初恋サイダー、05.オーディションオムニバス映像。取材、文・かわむらあみり
2021年12月01日