「幸せホルモン」とも呼ばれているオキシトシン。オキシトシンには幸せな気分を高めるセロトニンの分泌を高める効果があります。毎日いつでもどこでもハッピーな気分で過ごすために必要な「幸せホルモン」を増やす方法をご紹介します!幸せな気分を高めてくれるセロトニンという成分や、やる気を出してくれるドーパミンなどのホルモンの分泌を促してくれるオキシトシンという成分は「幸せホルモン」とも呼ばれ、脳の視床下部から分泌されるホルモンとなっており、主には出産の時に陣痛を促したり、授乳中の母乳の分泌を促したりするという働きがあることで知られています。出典:byBirthオキシトシンは、体にとても良い効果を発揮してくれる成分となっており、近年では医学の世界でも大きな注目を集めています。「幸せホルモン」であるオキシトシンの効果って?「幸せホルモン」とも呼ばれているオキシトシンは、幸せな気分を高めたりやる気を出したりするだけでなく、強いストレスを感じた時に出るホルモンの分泌を抑えてくれるのでストレスを和らげてくれる効果もあります。さらにはオキシトシンはストレスの緩和だけでなく、直接血管に作用して血圧を下げる働きをするということが最近の研究で分かっており、体内にオキシトシンを増やすことで高血圧の防止にもなってくれます。セロトニンを増やすと良い?精神の安定や睡眠に深く関わっている神経伝達物質であるセロトニンです。セロトニンを増やすことによってネガティブな気分が解消されたり、精神が安定しリラックスした気持ちにしてくれます。オキシトシンはセロトニンの分泌を促す効果があるので、まずはセロトニンを体内に増やしていくことがハッピーな気持ちになるための第一歩となります。出典:byBirth「幸せホルモン」であるオキシトシンを増やすには?散歩をする天気の良い日に散歩に出て日光を浴びることで精神を安定、リラックスさせてくれる体内のセロトニンの分泌量が高くなります。出典:byBirthさらには道端に咲いている花や育っている植物といった自然の景観を見ると体内のドーパミンも増えるので、ハッピーな気持ちと同時にやる気も感じることができます。朝方に散歩をすることで、1日の始まりを良い気分でスタートさせることができますね!チョコレートをひとつ食べる気分が上がらないときやストレスが溜まってイライラしてしまっているときには、ついついチョコレートといった甘いものに手が伸びてしまいます。つかれているときなどに甘くておいしいチョコレートを一粒食べるだけでも気持ちが落ち着きます。出典:byBirthチョコレートを食べると単に甘くておいしいから気分が落ち着いているのではなく、実際にチョコレートにはセロトニンを高めて気分を盛り上げてくれるという効果があります。気分が上がらないときやストレスでイライラしているときには1粒のチョコレートを食べることをオススメします。良質なたんぱく質を摂るたんぱく質は胃と腸で消化されながら小さいアミノ酸の状態に分解されます。小さいアミノ酸に分解された後、体内で幸せな気分をつくってくれる「幸せホルモン」と変わっていくとされています。タンパク質は主に豆腐や鶏の胸肉、牛肉に多く含まれているので、毎日の食事に積極的に取り入れていきたいですね。出典:byBirthまた、たんぱく質だけでなくオメガ3脂肪酸という成分も気にしながら摂取することで、セロトニンやドーパミンの数値が低下してしまうのを防いでくれる役割を果たします。オメガ3脂肪酸を多く含む食材としては、サバやイワシ、クルミ、えごまオイルなどといったものがあります。スキンシップをする大好きな恋人と手をつないだりハグをしたり、キスをしたりすることによってもセロトニンの分泌を促すことができ、それと同時に「幸せホルモン」であるオキシトシンの分泌も促すことができます。深いスキンシップをしなくても、ただ寄り添ったりちょっと触れ合っているだけでもセロトニンやオキシトシンの分泌は促され、幸福感を味わうことができます。出典:byBirthしっかりと寝るホルモンが分泌されるのは眠っているときが一番安定的で、ぐっすりと眠っている間に1日に使った大部分のホルモンが合成されるといわれています。1日に7時間程度寝ると良いとされていますが、しっかりと睡眠をとることができなかったという場合には、時間を見つけて10分~30分程度の昼寝をすることでホルモンの合成を助けることができます。出典:byBirthヨーグルトを食べる幸せな気分にしてくれるセロトニンがもっとも集中しているのは脳ではなく、腸だとされています。ヨーグルトなどといった発酵食品を食べて腸の状態を健康に保つことが、幸せを感じるための重要なポイントとなっています。幸せは腸からでも感じることができるものだともいわれているので、普段からの腸の管理はしっかりとしておきたいですね。出典:byBirth「幸せホルモン」で心も体もハッピーに!いかがでしたか?「幸せホルモン」であるオキシトシンはすぐに試せる簡単な方法で数を増やすことができます。出典:byBirth毎日の仕事や勉強で気分が上がらないという方も体内のオキシトシンを増やして、毎日心も体もハッピーな気分で過ごしてみてはいかがですか?きっと毎日を楽しく過ごせること間違いなしです!
2018年06月25日赤ちゃんが生まれると、育児に家事に奔走するママたち。悪気がないのはわかるけれども、そこに追い打ちをかけるのが、夫の行動ですね。「子どもを早く寝かせたいのに、仕事から帰ってくるなりテレビをつけてしまう」「家事をしたいのに、子どもの面倒を見てくれずスマホばかり見ている」などママたちのイライラは募る一方…。つい文句を言ってしまって夫婦げんかになることはありませんか?子どもが生まれる前はけんかをしない仲良し夫婦だったのに、なぜ産後はけんかが増えるのでしょうか? 脳研究者で自身も子育て中の池谷裕二先生にお話をうかがいました。池谷裕二先生 プロフィール研究者、薬学博士。東京大学・薬学部教授。専門は神経科学および薬理学で、脳の成長や老化について研究している。『海馬』(新潮文庫)、『進化しすぎた脳』(講談社ブルーバックス)など著書多数。近著に『パパは脳研究者』(クレヨンハウス)がある。プライベートでは二児の父。■育児で脳がスタミナ切れ!? ママの脳内で起きていたのは…―― 仲の良かった夫婦が、産後、急にけんかが増えたという話を聞きます。なぜそのようなことが起きるのでしょうか?池谷裕二先生(以下、池谷先生):まず、考えられることとして、脳の「自我消耗」があります。自我消耗とは何かひとつのことにパワーを費やすと、別のことにパワーを使えなくなることを指します。言い換えれば、「精神力のスタミナ」を使い果たしてしまうこと。ママたちは初めての育児だと特に精神面での負担が大きく、育児で精神力が尽きてしまった結果、夫婦関係にまで気が回らなくなってしまっているのではないでしょうか。―― たしかに、一日の生活の中で子ども優先に考えるようになるので、夫のことはつい後回しにということはあるかもしれません。池谷先生:自我消耗は産後に限った話ではなく、あらゆる人に起こります。たとえば、気力の充実している午前よりも、疲れの出てくる午後のほうが、人はウソをつきやすくなる傾向にあります。海外旅行でお金をドーンと使ってしまうのもそう。初めての場所で極度の緊張状態からそうなってしまうのです。「対ストレス」という意味では、一般的に人生経験が少なく若い人ほど自我消耗しやすいといわれています。多くのママがそれに当てはまり自我消耗しやすいため、けんかが多くなると言えるでしょう。■産後のイライラ、実は「子どもを守るため」―― よく聞かれるのが、産後のママはホルモンバランスが変わってイライラするということ。やはりホルモンの影響はあるのでしょうか?池谷先生:そうですね。イライラとはちょっと違うかもしれませんが、「オキシトシン」の影響が大きいと思います。「オキシトシン」とは、子育て中に出るホルモンで、別名「愛情ホルモン」とも言われるので聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。生物学的に見て、産後すぐから1年間くらいまでがピークです。オキシトシンの影響で子どもに対して無償の愛情を注ぐ一方で、わが子を守るがゆえに他者に対して攻撃性が増すという側面もあります。人間がまったく同じとはいえませんが、赤ちゃん連れの猫や猿が攻撃的になっている姿を思い浮かべていただければわかりやすいかと思います(笑)。―― 同じ家族なのに攻撃されてしまうパパが気の毒になってきました(笑)。池谷先生:いえいえ、オキシトシンは何も女性だけに出るものではないんですよ。子育てへの参加率が高い男性からもオキシトシンが出ていることがわかっています。パパもぜひ育児に積極的に参加してみてはいかがでしょう。 ■「自分ばかり家事育児をやっている」は単なる思い込み!?―― ママたちの間でよく話題になりがちなのが、「夫が家事をしてくれない」「家にいる自分ばかりがやっている」ということですが、それについて先生はどう思われますか?池谷先生:物理的にパパのほうが仕事で外にいる時間が長く、家事をやる時間が短くなる傾向はあるでしょう。ただ、ママのほうに「セルフ・サービング・バイアス(自己奉仕バイアス)」がかかっている場合もあるといえます。セルフ・サービング・バイアスとは、何か問題が起きて原因を考える際に、自分を高く評価し、外部に原因を追究してしまうこと。自分の手柄ばかりに注目して、他人を怠慢と思い込んでしまうのです。そうすると、「もう、いつも私ばかり食器を洗っている!」なんていうことになってしまいます。―― そうなんですか!? 世の中のママたちから反論を受けそうです。池谷先生:ここはパパの立場として弁解させてください。パパたちも言わないだけで家のことや子どもの面倒をみていることだってあるんですよ。よく思い起こしてみたら、「実はお風呂上がりにお風呂掃除をしてくれていた」「たまっていた段ボールを捨ててくれていた」なんてことがあるかもしれません。冷静に判断してみるといいですね。■夫婦円満…それって必要? 産後は“防御と割り切り”で乗り切る―― なるほど。最後に、夫婦円満になるための秘訣を教えてください。池谷先生:円満になる必要はないですよ。産後すぐの時期はオキシトシンの影響もあって、なかなかうまくいかないもの。ここは、産後をどう乗り切るか考えてみるといいでしょう。―― ええ!? どうすればいいのでしょうか?池谷先生:パパはママから攻撃されない工夫をしましょう。産後、イライラしているママにあれこれ言うだけムダです。パパは具体的に指示されたほうが動きやすいので、ママが何をしてほしいのか率先して聞いてみるのもいいですね。一方のママは、「イライラしている自分」にイライラしないことが大切です。「なんだか私イライラしているな。でもホルモンのせいだから仕方ないか」などと割り切れるといいですね。ママ自身もパパになるべく具体的にやってほしいことを言うといいでしょう。ちなみに、夫をたてようとして、ママたちの輪の中で「うちの夫は家事も育児もよくやってくれて~」みたいな話をするのはやめたほうがいいでしょう。ママ同士で「夫自慢大会」をすると、かえって自分の夫に足りない部分に目がいってしまう傾向があります。実際に「妻が不満に思うかどうかは、友人の夫の手伝いぶりで決まる」というデータがあるのです。夫の良いところはわかっていても、「あそこの家は〇〇やってくれるのに、うちは…」みたいに“あら”が見えてくるようになり、かえって夫婦仲が悪化してしまっては大変です。「自慢も愚痴もなるべくなら言わない」のが一番ですね。
2018年05月20日オキシトシンとは?出典 : オキシトシンとは、人間の脳から出るホルモンの一つです。ホルモンとは、体の働きを調整する役割を果たすもので、血液中にある物質です。オキシトシンは、出産時においては子宮を収縮する作用があり、陣痛をうながす役目を持っています。子育てにおいては、授乳時にオキシトシンの分泌が増加し、乳腺を刺激して母乳を出すように働きます。また、赤ちゃんも抱っこされて乳首を吸う際にオキシトシンが分泌されます。母子の関わり合いの中で、ともにオキシトシンの分泌が促進されていくのです。また、オキシトシンは出産や子育てだけではなく、男女の愛情にも関わっていることが分かってきています。男女の営みの際には、子宮頸部を刺激することでオキシトシンの分泌がおきます。それにより、親密感が促進されるといわれています。また、信頼関係の構築や共同作業にも効果的であるようです。スキンシップからもオキシトシンの分泌が促進されることから、一部では「幸せホルモン」ともいわれています。妊娠出産に関わっていない女性、また男性にもこのホルモンが分泌されることが、近年の研究で明らかになってきました。オキシトシンによって対人交流や親密感が上がることは、人間に本来備わっている機能であるともいえるでしょう。参考:棟居俊夫「自閉症のオキシトシンによる臨床試験の難しさ:その背景にあること」 コミュニケーション障害学, Vol.31, No.3. p.176, 2014.参考:橋川成美「幸せホルモン? オキシトシンが母から子に与える影響」ファルマシア, Vol.50, No.9. p.913, 2014.参考:東田陽博ほか「自閉症スペクトラム障害とオキシトシン (特集 自閉症の分子基盤)」分子精神医学, Vol.14, No.2. p.77, 2014.近年、オキシトシンの研究が進むにつれ、対人交流や親密感の形成が難しい自閉スペクトラム障害のある人に対してオキシトシンを投与することで、他人の感情を読み取る、目を見る、顔を認識するなどといった、対人関係改善のきっかけとなる効果があるのではないかと考えられるようになってきました。(なお、自閉症スペクトラム障害の原因はいまだ特定されていませんが、何らかの生まれつきの脳機能障害であると考えられています。しつけや愛情不足といった親の育て方が直接の原因ではないとわかっています。)オキシトシンの研究でどんなことが分かってきたの?出典 : この章では、オキシトシンは対人関係の改善のきっかけとなるのではないかとの仮説から、2005年にスイスで行われた研究をご紹介します。スイスの研究グループは、健康な20代男性58名に臨床実験を行い、オキシトシンの点鼻薬を投与した結果、「他人への信頼」の増加がみられたという研究結果を発表しました。この研究では、健康な男子大学生を対象として、「信頼ゲーム」というゲームの中で、お金をもつ投資家29名とお金を運用する立場の信託者29名に分けました。さらに、点鼻薬の形をした本物のオキシトシンと偽のオキシトシンに分けて投与しました。その結果、本物のオキシトシンを投与した人は、45%の割合において、相手への愛着感が増し、信頼・信用し、全額に近いお金を信託者に預けました。一方で、偽のオキシトシンを投与した人は、21%のみ信託者にお金を預けました。この結果を受け、オキシトシンは将来への不安や恐怖を増加させない効果があるのではないかと考えられたのです。ここで点鼻薬を用いたのは、オキシトシンを鼻から吸引すると、他者の感情の理解などの機能を担っているとされる、内側前頭前野と呼ばれる脳の部位が活性化されるからです。オキシトシンの点滴投与によって、朗読の際の情感の理解困難などの症状が改善したという報告もあります。このような研究結果から、「オキシトシンは対人関係の改善のきっかけになるのではないか」と考えられ、効果が期待される人に対して、臨床での治験に向けての研究が進められました。出典:Kosfeld M, Heinrichs M, Zak PJ et al :Oxytocin increases trust in humans, Nature 435, pp.673-676, 2005.参考:山本英典「オキシトシン点鼻薬の自閉スペクトラム症に対する臨床応用」内分泌・糖尿病・代謝内科, Vol.43, No.1. pp.73-78, 2016.参考:東田陽博ほか「自閉症スペクトラム障害とオキシトシン (特集 自閉症の分子基盤)」分子精神医学, Vol.14, No.2. p.77. 2014.参考:共同発表:自閉症の新たな治療につながる可能性~世界初オキシトシン点鼻剤による対人コミュニケーション障害の改善を実証~参考:東田陽博・棟居俊夫「オキシトシンと発達障害」脳21, Vol.13, No.2. pp.100-101. 2010.参考:山本英典「オキシトシン点鼻薬の自閉スペクトラム症に対する臨床応用」内分泌・糖尿病・代謝内科, Vol.43, No.1. pp.73-78. 2016.オキシトシンと自閉症スペクトラムに関する研究動向出典 : オキシトシンが対人関係改善のきっかけになりうるという報告を受け、多くの研究者が自閉症スペクトラムに関する議論を交わすようになりました。自閉症スペクトラムは社会性やコミュニケーションの障害が特徴であるため、オキシトシンが自閉症スペクトラムに効果的なのでは?と考え始めたのです。そして、これらの議論が盛んになるにつれ、自閉症スペクトラムに対するオキシトシンの効果についての研究も数多くなされるようになりました。例えば、目もとから感情を推し量る能力の改善や、協調性のある行動が促進されたという報告です。また東京大学医学部の研究チームが、18歳から55歳の男性自閉症スペクトラム者18名のうち、9名にオキシトシンを6週間投与したところ、一部の投与しなかった対象者に比べ少しばかり自閉症スペクトラムの特性ゆえの社会性、行動発達、常同行動が改善しているとの研究結果が出ました。一方で、オーストラリアのシドニー大学の研究チームが、12歳から18歳の自閉症スペクトラム男児50名のうち、26名にオキシトシンを8週間投与しました。こちらの研究では、オキシトシンの投与を受けていない24名の対象者と比べても、自閉症スペクトラムにおける社会性、行動発達、常同行動のいずれにおいても改善されたという結果は出ませんでした。このように、現段階では研究チームによって、また実験方法、対象人数、評価などによってばらつきがあり、効果についての明確な立証には未だたどり着けていません。またオキシトシンが鼻からどのような経路で脳内に入るのか、判明していません。さらには、適切な投与量や投与期間も分かっていません。オキシトシンの効果は個人の性質によっても異なることや、時には逆の作用をすることもあります。また、オキシトシン投与時の経過観察における、研究者(定型発達者)と自閉症スペクトラムのある当事者の関係性にも着目する必要があるでしょう。オキシトシンを投与された当事者にどのような効果が出るのかを判断するのは、その研究者自身です。つまり、「当事者である自閉症スペクトラムのある人が、観察者である定型発達者に視線をよく向けるようになった」ということを研究成果としてよいのかという疑問も残っています。同時に、これらの研究は、実生活とはかけ離れた環境で行われた実験であり、実際の治療においての結果ではないことを理解しておかなければなりません。出典:Guastella et al. “The effects of a course of intranasal oxytocin on social behaviors in youth diangnosed with autism spectrum disorders: a randomized controlled trial” J Child Psychol Psychiatry. Vol.56, No.4. pp.444-452. 2015.出典:Watanabe et al. “Clinical and neural effects of six-week administration of oxytocin on core symptoms of autism” Brain, Vol.138, No.11. pp.3400-3412. 2015.参考:山本英典「オキシトシン点鼻薬の自閉スペクトラム症に対する臨床応用」内分泌・糖尿病・代謝内科, Vol.43, No.1. pp.73-78, 2016.参考:棟居 俊夫「自閉症とオキシトシン (特集 自閉症研究の最前線)」精神科, Vol.27, No.4, pp.282-286, 2015.参考:東田陽博ほか「自閉症スペクトラム障害とオキシトシン (特集 自閉症の分子基盤)」分子精神医学, Vol.14, No.2. p.77. 2014.参考:棟居俊夫「自閉症のオキシトシンによる臨床試験の難しさ:その背景にあること」 コミュニケーション障害学, Vol.31, No.3. p.176, 2014.最新研究にみる自閉症スペクトラムの新薬としての期待出典 : いままで世界中の研究チームによって、自閉症スペクトラム児・者へのオキシトシン点鼻薬の投与を通した研究が行われてきましたが、いずれも社会性やコミュニケーションの障害という自閉症スペクトラムの代表的な症状に有効であるということをデータで実証することはできていませんでした。しかし、2015年に東京大学医学部付属病院の研究チームが行った、男性自閉症スペクトラム者18名へのオキシトシン投与では、一部の協力者において社会性やコミュニケーションの障害への顕著な改善が見られました。さらにはその改善が脳機能の改善にも関連しているということを世界で初めて報告し、オキシトシン点鼻薬の臨床試験を進める根拠になりうると言及しました。このように、一部の人には効果があることが分かり、新薬の実用化に向けた臨床試験が進められています。過剰な期待は禁物ですが、この研究成果が実現すれば、自閉症の症状に対する治療法の一つになる可能性があるのではないでしょうか。出典:オキシトシン経鼻剤連日投与による自閉スペクトラム症中核症状の改善を世界で初めて実証|東京大学医学部附属病院オキシトシンの副作用出典 : オキシトシン点鼻薬の場合、薬成分の血中濃度が半減する時間が10分未満で、すぐに体内から排泄されます。そのため、ほかの薬剤との併用による副作用がほとんどないと言われています。出典:Study Protocol. ECSSIT – Elective Caesarean Section Syntocinon® Infusion Trial. A multi-centre randomised controlled trial of oxytocin (Syntocinon®) 5 IU bolus and placebo infusion versus oxytocin 5 IU bolus and 40 IU infusion for the control of blood loss at elective caesarean section | BMC Pregnancy and Childbirth |参考:中村秀文「薬物動態と薬力学」日臨麻会誌, Vol.29, No.7. pp.789-796. 2009.しかしながら、まれに、錯乱、けいれん、呼吸困難、めまいなどの副作用があります。また妊娠中であったり、高血圧、心臓疾患、腎臓病、甲状腺異常、精神不安症、鬱病、喘息、またはこれらに疑いがあったりする場合は使用ができません。注射液・点滴においても多くの副作用があります。例えば、過強陣痛(子宮の収縮が非常に強く、長く続く)、血圧低下、蕁麻疹(じんましん)といったものです。2016年には、アナフィラキシーショック(血圧が低下して意識がもうろうとし、脱力するようなショック状態)が副作用として追加されています。参考:Syntocinon Side Effects in Detail|Drugs.com参考:オキシトシンの「使用上の注意」の改訂について | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構自閉症スペクトラムのある人にオキシトシンを投与した場合の副作用は、まだ詳しく分かっていません。ですが、オキシトシンの投与によって接近行動を起こす効果がある場合、人によっては接近行動が起こることで、かえって新たな問題につながる可能性もありうると指摘をする臨床医もいます。オキシトシンの入手について出典 : 現在、ヨーロッパでは授乳促進の目的で成人にオキシトシン点鼻薬の販売が認可されていますが、日本国内では認可されておらず、もちろん自閉症の治療薬として購入することはできません。個人輸入で入手した医薬品で健康被害が起こった場合、自己責任となります。輸入代行業者なども存在してはいますが、自己判断で購入したり使用したりすることは控え、まずは主治医とよく相談しましょう。参考:オキシトシン経鼻剤連日投与による自閉スペクトラム症中核症状の改善を世界で初めて実証~新しい治療法の確立をめざして~参考:医薬品等の個人輸入について|厚生労働省まとめ出典 : ここまでオキシトシンの効果や研究動向について紹介してきました。現時点ではオキシトシン点鼻薬はヨーロッパで授乳促進の薬として販売されているに留められているため、日本国内において自閉症スペクトラムの薬としては認可されていません。現在は研究段階ですので、臨床実験がすすみ、さらに実際に治療に導入されるようになるにはもう少し時間がかかるとみられます。仮にオキシトシンが認可されたとしても、全ての人に効果があるとは限らないことも理解しなければなりません。また、たとえ適用となった場合でも、薬のみに頼るのではなく、その後の環境調整も大切となります。特性に合った働きかけ、相互交流をすることで、長期的に好ましい影響が出るのではないでしょうか。
2017年06月09日テレビや雑誌などで、「癒やしホルモン」「幸せホルモン」という言葉を目にする機会が増えました。これは「オキシトシン」というもので、育児中のママは分泌しやすいそうです。多幸感に包んでくれるステキなものではあるのですが、一方で攻撃的になりやすいともいわれています。増やすことのメリットや注意点を紹介しましょう。■産後クライシスの原因にもなる!?オキシトシンとは、おもに出産や授乳によって分泌されるホルモンです。「幸せホルモン」の名のとおり、分泌後は子どもや夫への愛情が増して、より幸せな気持ちにしてくれるといわれています。出産直後のマタニティハイの状態ではたっぷり分泌されると思いますが、問題点もあります。なぜなら、オキシトシンには、攻撃性を強める作用もあるといわれているからです。無事に子どもが生まれてきてくれて、こうして授乳できるのが幸せ! そう思っていても、横でのん気にゲームをしている夫を見たら、ついイラッとしてしまいませんか?私ばかり育児をしていて大変! それなのに、どうしてこの人は何も手伝ってくれないの?そんなストレスがたまったときにもオキシトシンは分泌され、その原因となる夫を攻めてしまうのだそうです。夫としてはいきなりキレやすくなった妻に戸惑ってしまい、こうした溝が深くなると夫婦関係に影響を及ぼす可能性もあるかもしれません。■日ごろからスキンシップを大事にしようオキシトシンに支配されないようにするためには、「幸せ」と感じるポイントを増やすのがいいようです。オキシトシンは、スキンシップによって増やすことができるのだとか。産後はバタバタしてそれどころではないかもしれませんが、できるだけ夫婦のスキンシップの時間を持つようにすると、攻撃性を弱められるかもしれません。手をつないだりキスしたりしたときはもちろん、マッサージもいいそうです。お互いの体にふれあいながら、その日のできごとを話しあう、子どもの成長を報告することで夫に育児への興味を持ってもらう。こうした時間をつくれば、産後クライシスを避けられるのではないでしょうか。夫が単身赴任中だったり、ひとりになりたかったりするときには、動物とふれあうことでも多幸感を得られます。また、感動的な映画やドラマを見るのもおすすめ。自ら「幸せだ」と思える状態をつくることも、オキシトシンの分泌につながるようです。子どもにもできるだけふれるようにしてあげるといいでしょう。さわられることで子どもにもオキシトシンが分泌され、安らかな気持ちになるそうです。「さわる」という行為にはヒーリング効果があり、痛みなどの軽減にも役立つのだとか。日本人はベタベタするのが苦手だといわれていますが、スキンシップを楽しむだけでお互いに気持ちよくすごせるなんて、お得ですよね。恥ずかしがらずに、毎日の生活に取りいれていきましょう。
2016年09月14日東京大学は9月4日、オキシトシン経鼻剤の連続投与によって、対人場面に現れる自閉スペクトラム症中核症状が改善することを発見したと発表した。同成果は同大学医学部附属病院 精神神経科の山末英典 准教授らによるもので、9月4日に英科学誌「Brain」電子版に掲載される。オキシトシンは、脳から分泌されるホルモンで、女性での乳汁分泌促進や子宮平滑筋収縮作用が知られている。また、脳の中でも作用していることが指摘されており、動物では、親子の絆を形成する上でオキシトシンの働きが重要であるとされるほか、人でも、健常な成人男性への経鼻スプレーを用いたオキシトシンの投与によって、他者と有益な信頼関係を形成して協力しやすくなること、相手の表情から感情を読み取りやすくなること、などが報告されている。山末准教授らはこれまでの研究で、オキシトシンを1回経鼻投与することで、自閉スペクトラム症で低下していた内側前頭前野と呼ばれる脳の部位の活動が活性化され、それと共に他者の友好性への理解が改善されることを報告していた。一方、その後海外で行われた臨床試験において、連日投与では有意な効果を見出せないとされていた。今回の研究では、自閉スペクトラム症と診断された20名の成人男性を対象に、オキシトシン経鼻剤を毎日2回ずつ連続して6週間使用し、使用前と使用後に対人場面での自閉スペクトラム症中核症状や脳機能などを評価した。臨床試験は、20名の参加者をオキシトシン経鼻剤の使用期間に続いてプラセボ経鼻剤の使用期間を受ける10名と、その逆の順番(オキシトシン経鼻剤使用前にプラセボ経鼻剤を使用)で受ける10名に無作為に分けて行われた。その結果、オキシトシン投与前後ではプラセボ投与前後に比べて、対人場面での相互作用の障害という中核症状の改善が有意に認められた。また、内側前頭前野と呼ばれる脳の領域の機能が改善し、この脳機能の改善が強い参加者ほど中核症状の改善効果も強く認められた。1回の投与で効果を認めた他者の友好性を理解する方法の改善と脳活動の改善については、連続投与でも概ね同じ程度の効果があった。現在、同研究グループは、オキシトシン経鼻剤の効果をより大人数で確認するため、名古屋大学、金沢大学、福井大学と共同で114名を対象とした臨床試験を行っており、2015度中に試験を終了する予定だ。
2015年09月04日つきあい始めのカップルは、親子やシングルよりも「オキシトシン」の濃度が高いという研究結果が発表されました。オキシトシンの濃度が高ければ、相当の幸せを感じていることになるのだそうです。『LiveScience』が発表した、オキシトシンについての事実を見ていきましょう。■オキシトシンは親子の絆をつくる愛情ホルモンオキシトシンとは、脳から分泌されるホルモンの一種。新生児と母親の絆にも関係しているといわれ、子どもが生まれたばかりの両親にも高いオキシトシン濃度が検出されます。しかし、それでもつきあい始めのカップルほど高くはないそう。いまのところ、いちばん高いオキシトシン濃度が検出されるのはカップルだといわれています。この研究では、「新しい恋人と関係を築くプロセスは、新生児が母親と関係を築くプロセスに似ているのではないか」と考えられており、そんなところからもオキシトシンがカップルにも重要な役割を果たしていることがわかります。■カップルのオキシトシンはシングルの2倍イスラエルのバル=イラン大学では、つきあい始めてから3ヶ月以内の20代のカップル60組を対象に調査を実施しています。カップルははじめ別々に、自分の考えや心配なこと、2人のこれからの関係についての希望についてインタビューを受けました。インタビュー後、カップルの血液と別な43人のシングルの人の血液を採取したところ、カップルの血中オキシトシン濃度は、平均してシングルの人のほぼ倍という結果が。さらに、その後6ヶ月関係が続いたカップルは、オキシトシン濃度に変化がなく、高い数値のままでした。また、オキシトシン濃度が高いカップルはインタビュー中もボディタッチやアイコンタクトが多く観察されました。こうした動作はオキシトシン濃度をさらに高める効果があるとされています。研究者は、つきあい始めの時期のオキシトシン濃度はその後の関係を左右するといっています。ちなみに、カップルもシングルの人も、オキシトシン濃度は性別や喫煙歴、身長、体重などには関係がなかったようです。しかし、この調査ではつきあう前のそれぞれのオキシトシン濃度を検査していないため、新しい恋がオキシトシン濃度を高めたのか、もともとオキシトシン濃度が高い人がカップルになりやすいのかは定かではないとされています。また、血中オキシトシン濃度が脳内のオキシトシン濃度と同じかどうかもまだわかっていないということです。■オキシトシンはボディタッチで増やせる!かつての研究では、鼻から吸引するオキシトシンがカップルの関係づくりに有効であるといわれていましたが、今回の研究ではこれについて「危機的な状況にあるカップルの関係を改善する要因になりうる」とだけ述べられています。もし好きな相手にオキシトシンをかがせることができたら、長続きするカップルになれるかも……?でもボディタッチやアイコンタクトでも、オキシトシン濃度は高まります。関係を長続きさせたい人はがんばってみましょう!(文/和州太郎)【参考】※How Long Will Your Love Last? Check Your Oxytocin―LiveScience
2015年07月30日産後、授乳をしている時期に、赤ちゃんの泣き声を聞いただけで胸が張ってきて、母乳が分泌されてしまった経験はありませんか? 赤ちゃんの泣き声に脳が反応し、母乳が出るのは「オキシトシン」のしわざなのです。オキシトシンとは、下垂体後葉から分泌されるホルモン。子宮筋の収縮促進作用があるので陣痛誘発剤として使われることが多いですが、乳汁分泌作用も持っています。私自身も2人の子どもを母乳で育てていた授乳期を振り返ると、たしかに赤ちゃんの泣き声に反応して母乳が勝手に出てきたという経験を何度も味わったことがあります。そんなオキシトシンですが、最近もっと幅広い効果があると、にわかに知名度が上がってきていていることをご存じでしょうか? ■オキシトシンが「幸せホルモン」と呼ばれる由来オキシトシンは別名「幸せホルモン」や「絆ホルモン」と呼ばれています。それは、オキシトシンが乳児期の母子間だけでなく、親子や異性の間でも有益なことがわかってきたからです。誰かと手をつないだり、抱きしめたり、頭をなでたりすることでもオキシトシンが分泌され、お互いの幸福感を満たすことができるといわれています。■子どもを30秒間ぎゅっと抱きしめてあげよう子どもがまだ小さい乳幼児の時期は、イライラしたり、感情的な怒り方をしたりしてしまって、後から反省するママ(パパ)も多いのではないでしょうか。そんな時は、30秒間何も言わずにお子さんを抱きしめてあげてください。オキシトシンが分泌され、母子(父子)がお互いに満たされた気持ちにしてくれます。思い返せば私も初めての育児の際、何をやっても泣きやまない子どもと一緒に涙し、どうしたら泣き止んでくれるの?と抱きしめてあやしていたところ、どういうわけか今まで泣いていた赤ちゃんが自然にすーっと泣きやんだことがありました。あれはきっと、オキシトシンの効果だったのかもしれません。■聞いてびっくり! オキシトシンを分泌させる○○とは触れ合いにより分泌されるといわれていたオキシトシンですが、実は触れ合わなくとも予想以上の効果が測定できたという実験結果が、先日観ていたテレビの番組で紹介されていました。触れ合わなくてもオキシトシンを分泌させたものの正体――それは何かというと、なんと「手紙」なのです! メールやSNSが主流となった昨今、手紙を出す機会はぐっと減っています。メールやSNSのメッセージでも気持ちは伝わりますが、手紙には手書きならでは効果があるようです。私自身、小学1年生の自分の子どもから、愛情あふれた手紙をもらうと、たしかにいつもいつも温かな気持ちになれます。幸福感を満たされれば、ストレスが軽減され、肌荒れや暴飲暴食なども減って、キレイになっていけるはず。あなたも大切な人に、たまにはメールではなくお手紙を書いて、幸せホルモンを分泌させてみませんか? 参考文献:『「脳の疲れ」がとれる生活術』有田秀穂・著(PHP研究所)-->
2015年02月17日自治医科大学は1月15日、マウスを用いた実験によって、末梢投与したオキシトシンが「求心性迷走神経」を活性化して脳へ情報を伝達し、摂食を抑制する新しい経路を発見したと発表した。同成果は、同大学統合生理学部門の岩﨑有作 助教、矢田俊彦 教授らによるもので、2月1日付の米学術誌「American Journal of Physiology - Regulatory, Integrative and Comparative Physiology」に掲載される予定。下垂体後葉ホルモンとして知られるオキシトシンは末梢(腹腔内)投与すると、摂食を抑制し肥満を改善することが報告されているほか、最近では肥満および自閉スペクトラム症患者に対する経鼻投与の臨床試験が行われている。しかし、血中のオキシトシンは脳内に移行しにくいとの報告があり、どのような経路で脳に情報を送っているかは不明だった。実験では、オキシトシンはマウスから単離した求心性迷走神経細胞を活性化した。さらに、オキシトシンをマウスの腹腔内へ投与すると、求心性迷走神経の投射先である延髄孤束核を活性化し、摂食を抑制したという。これらの作用は求心性迷走神経を遮断すると消失した。同研究グループはこの成果について「オキシトシン末梢投与による求心性迷走神経の活性化が摂食を抑制し、肥満・過食に対する有効な治療経路となることを示している」とコメントしている。
2015年01月15日