毎年、12月頃に猛威をふるう「ノロウイルス」。下痢や嘔吐(おうと)を引き起こし、8人に1人が感染しているという推計もある恐怖のウイルスだ。予防方法はいくつかあるが、先ごろノロウイルス対策商品としてにわかに脚光を浴びた商品がある。その正体とは―。○ウイルス界のフェラーリノロウイルスは主に腸管で増殖し、腸管の粘膜上皮のポンプ機能を破壊することで腹痛、嘔吐(おうと)、水溶性の下痢などの症状を引き起こす。インフルエンザウイルスの3分の1ほどの大きさで、口から10~100個ほど入っただけで感染が成立するとされており、その感染スピードの速さから「ウイルス界のフェラーリ」とも呼ばれている。感染症に詳しい、東京医科大学の松本哲哉微生物学講座主任教授は「ノロウイルスの感染経路としては、食中毒よりもむしろ人から人へとうつるケースが多いことがわかっています。ただし周囲に感染者がおらず、どこで感染したかわからない場合もあります。また、インフルエンザと違って、ノロウイルスの場合はワクチンも治療薬もありません。以前、ノロウイルスに感染した人でも繰り返し感染を起こすので、毎年ノロウイルスへの備えをしておかないといけません」と話す。○救世主の名はラクトフェリン30秒以上の手洗い、食品や調理器具などの加熱といった対策手段がある中、注目されているのが「ラクトフェリン」という成分だ。ラクトフェリンはたんぱく質の一種で、母乳、特に初乳に多く含まれており、赤ちゃんを感染症から守る役目を果たしている。「ラクトフェリンはヒトの免疫力を高める作用と病原体を弱める作用の2つの側面を持っています。その相乗効果がノロウイルスの感染を防ぐと考えられています」。○棚から消えた「森永ラクトフェリンヨーグルト」そのラクトフェリンを配合した商品の中で今最もホットなのは、森永乳業が販売している「森永ラクトフェリンヨーグルト」だろう。今月9日にNHKの番組でノロウイルス対策としてラクトフェリンが紹介された途端、スーパーなどの小売店に消費者が殺到。一部店舗では売り切れ状態になったり、買い占めを防ぐための購入数制限が設けられたりするなどの現象が起こった。森永乳業によると、「今年ならではのノロウイルス対策法」として紹介されたことにより、放送直後(12月9~15日)の森永ラクトフェリンヨーグルトの売り上げは、前年同期間比で770%となっているという。森永乳業は、ラクトフェリンの有効性を科学的にも分析しており、今年9月に461人(平均年齢59.3歳)を対象にした調査結果を発表した。試験では100mgのラクトフェリン含有食品の摂取頻度ごとに6つのグループに分けて、ノロウイルス感染性胃腸炎と思われる症状(腹痛、吐きけ・嘔吐(おうと)、下痢)での医療機関の受診者割合や医師の診断結果などについて調査した。その結果、ノロウイルス感染性胃腸炎と思われる症状で医師の診断を受けた人の割合は、摂取頻度が「ほぼ毎日」の人は「週1回程度」の人に比べて7.1%も減少しており、有意な差が見られた。また、医師からノロウイルスの疑い、または検査でノロウイルス確定と診断された人の割合に関しても有意な差が見られた。摂取頻度が「週1回程度」の人に比べて、「週4~5回」の人で6.1%、「ほぼ毎日」の人で6.5%の減少が確認された。○チーズ200gかラクトフェリン強化商品か松本主任教授は、ラクトフェリンはノロウイルスだけでなく風邪やインフルエンザにも有効かもしれないと話す。「実際、冬の流行期に行われた調査で、ラクトフェリンを摂取していたグループは、ラクトフェリンを摂取していなかったグループと比べて、発熱や鼻水など感染症の症状の発症率が有意に低かったという結果が認められています」。ラクトフェリンは冬場に摂取しておいて損はない成分なのだ。ラクトフェリンは、生乳やナチュラルチーズなどからでも摂取可能だが、有効量の目安となる100mgを摂取しようとなると「チーズでは100gとか200gの単位で食べる必要があり、毎日食べるのは現実的ではないと思います」。基本的には、ラクトフェリンが重点的に配合されている製品を食べた方が継続もしやすいという。チーズ200gかラクトフェリン強化食品か―。どんな方法にせよ、きちんと毎日ラクトフェリンを摂取することが、寒い冬を健康に過ごすためのコツとなりそうだ。
2013年12月24日内閣広報室は13日、首相官邸ホームページに「インフルエンザ&ノロウイルス特集ページ」を新設した。同特集ページは、冬に流行のピークを迎えるノロウイルスとインフルエンザへの注意喚起を目的として、家庭や職場でできる予防対策や政府の取り組みなどをまとめたもの。「インフルエンザにかからないためには」「政府が取り組むインフルエンザ対策」「ノロウイルスによる感染を防ぐには」などを閲覧できる。「インフルエンザにかからないためには」では、感染経路を断つこと、予防接種を受けること、免疫力を高めることなどを推奨。「正しい手の洗い方」など、インフルエンザから身を守るために気をつけるポイントを紹介する。ノロウイルスについても、家庭でできる予防対策の3つのポイント、「手洗い」「人からの感染を防ぐ」「食品からの感染を防ぐ」について、具体的な方法を示すなど、感染の拡大防止を呼びかけている。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年12月17日