「お金はいくら使ったかではなく、何に使ったかが大切」と語る、ファイナンシャルプランナーの横山光昭(よこやまみつあき)さん。これまで1万人以上の家計を「再生」してきた家計再生コンサルタントの達人です。そんな家計の達人である「横山家」の家計ワザ、興味ありませんか? そこで今回は、横山家(いうまでもなく、貯まっている人です!)が実践している「ひと工夫」についてお話を伺います。横山さんは、いいます。「お金は裏切りません。きちんと取り組めば、取り組んだ分だけ効果が出て、不安とも一線を引けます」。 ■ATMでおろす瞬間から貯める人のワザが始まる横山家。じつはいまどき珍しい大家族なんです。横山さんと奥さま、そして6人の子どもたち。そんな横山家では、食費と日用品あわせて月10万円までと決めています。それを5で割った2万円を、毎週月曜日に奥さまがおろしてくるそうです。●ポイント1 週イチで決まった金額をATMからおろす「2万円で1週間の生活費をまかなう」と決めると、たとえば水曜日くらいに財布をみると、「半分以上残っているから大丈夫」、もしくは「ペースが早いな」などがすぐにわかります。そうすると、細かい計算をしなくても自然に支出の調整ができるようになります。「月単位だと感覚がつかみにくいし、月初めなどは気が大きくなって多めに使いがち。そうすると、月末にたりなくなって、我慢もできずに予算オーバーということを何度も経験してきました。そこで『週イチで決まった金額をATMからおろす』にたどりつきました」(横山さん)じつはこのときにもうひとつのポイントがあるんです。●ポイント2 月の予算を5で割った金額を1週間分とする「1ヶ月は、30日間か31日なので、4週間と数日。5週目は、7日間ありません。だから月初めから、週2万円を意識して暮らしていけば、月末の最終週は楽になります」(横山さん)■口座もひとつの「財布」と考えるワザこれまでは常に持ち歩く「財布」でのお金の貯まる方法をご紹介してきました。でも横山さんは、「口座もひとつの財布」といいます。横山さんは、基本の口座を「使う」「貯める」「増やす」の3つに分けています。●「使う口座」:日常で使う生活費を入れておく財布●「貯める口座」:貯蓄の財布●「増やす口座」:資産運用などを行う財布ただ単に「口座を3つ作ればいい」というわけではありません。大事なのは、口座にお金をいれていく順番。たとえば、「貯める口座」にまでたどりついていないのに、「増やす」口座に大金を投じてしまうというのは、厳禁です。お金が貯まらない人というのは、この順番を間違えてしまうことが多いそうです。●「使う口座1カ月生活するための「消費」のお金。住宅ローンの支払いや保険・光熱費などの引き落としはこの口座からにします。この口座には、手取り収入の1.5カ月分をいれます●貯める口座「使う口座」から、少しずつこちらに移してお金を貯めるための口座。ここには手取り収入の6カ月分が貯まるまでをいれていきます●増やす口座「貯める」口座に6カ月分が貯まったら、それ以上はこちらに貯めます。この「増やす」口座は、証券会社の口座に開設するのがおすすめです出典: 『NHK「あさイチ」お金が貯まる財布のひみつ:不安がなくなる貯金の極意』 ■急な支出にショックを受けないためには「『使う』口座に、1.5ヶ月分いれておくのは、次の財布、『貯める』口座から逆流して引きだして欲しくないからです。そのために、わざと余裕を持たせています」(横山さん)家計の支出は、「一年間をとおして一定」なんてことはなく、変動します。それが生活をしていくということ。たとえば年末年始の12月、1月は、出費がかさむのは普通ですし、突発的に歯科治療費がかかるなんていうこともあるでしょう。こうした変動を汲んでの余裕資金としての1.5ヶ月分なのです。「思わぬ支出にショックを受ける人もいますが、そのことを毎月気にする必要はなく、原因がわかっているのなら、それでいいのです」(横山さん)■「使う」「貯める」「増やす」口座の違いとは「『使う』口座が『普通に出る支出・変動するものへの対応』に対して、『貯める』口座は、急に職を失ったとか、入院したとか、収入が途絶えたときへの備えです」(横山さん)横山さんは、「いざというとき、立て直すのに半年あればなんとかなる」と見込んでいます。でもこの金額は人によってさまざまで、「ちょっと心配だから、1年分をいれておきたい」など、あくまで目安としてとらえてください。「増やす」口座については、お金の目減りを防ぐための資産運用の投資口座です。横山さんはいいます。「これからの時代は、現金や預貯金で置いておくことで価値が下がる危険性もあることを覚えておいてください」次回は、「NHK『あさイチ』で紹介された、リストラも怖くないお金の達人の知恵」です。■今回取材にご協力いただいた横山光昭さんの著書 『NHK「あさイチ」お金が貯まる財布のひみつ:不安がなくなる貯金の極意』 (横山 光昭(著), 伊豫部 紀子(著)/新潮社 ¥1,296(税込)
2017年09月28日これまで「投資」をしてこなかった人たちでも、はじめたとたん、「投資アンテナ」が立つひともいるでしょう。これは勇気をもって投資の第一歩を踏み出したからこそのアンテナ。でも、たくさんの投資に関する情報の中から、取捨選択をどう行っていけばいいのでしょうか。全6本に渡ってお送りした本連載も、いよいよ最終回。今回は、投資に対して、「アンテナを立ち始めたとき」に、入ってきがちな情報について、横山さんに検証していただきます。■金融機関の「おすすめ商品」は、本当にオトクなの!?「投資を始めよう」と思い立ち、証券会社や銀行から投資に関する資料を取り寄せたり、証券口座を開いたりすると、必ず「おすすめ商品」が紹介されます。ネット証券会社が、サイトのトップページなどで大きく宣伝している商品も、ほとんどはその会社の「おすすめ」といえるでしょう。おすすめ商品は、たいてい高利回りをうたっており、もしかしたら、「バランス型の投資信託やインデックスファンドへの投資より、そちらの方がよいのではないか」と思ってしまう人がいるかもしれません。「一見どれほどおトクに思えても、金融機関のおすすめ商品には、『手数料が高い』『リスクが高い』といった問題が隠れている可能性があります。とくにはじめて投資をする方は、『おすすめ』という言葉や目立つ広告に惑わされないようにしましょう」(横山さん)。 ■個別株やFXで「勝てる」確立は低い投資に慣れてくると、「別の金融商品も試してみたい」と考える人も出てくるでしょう。貯金や堅実な投資を続けながら、生活に必要なお金をしっかり確保し、きちんと研究したうえで行うなら、もちろんそれもありだと思います。 ただ、横山さん自身は、経験やさまざまな方から聞いたお話を考え合わせると、次のように考えているそうです。「よほど投資に精通した人でない限り、個別株への投資で成功する確率は、それほど高くありません。とりわけ短期間で利益を出すのは難しいでしょう。『9割が負けて1割が勝つ』といわれる株式の世界で、プロの投資家たちと争い、利益を上げるのは、よほど勉強と経験を重ねなければ難しいのかもしれません」。(横山さん)唯一、横山さんが個別株でおすすめしている買い方は、ある程度勉強したうえで、「好きな会社や応援したい会社の株を無理のない範囲で買うという方法。「FX」という言葉も、投資とセットと語られているような気がして、何となく気になるところです。FXとは、外国為替証拠金取引のこと。米ドルやユーロなど外国の通過の動きを予想して売買し、為替差益(かわせさえき)を得るというものです。「私はFXは、投資というより完全にギャンブルだと思っています」(横山さん)ギャンブルの多くがそうであるように、FXで勝てる人は、ほんの一握りだそう。途中まではどんなに順調に利益を得ていても一度の失敗ですべてを失ってしまう可能性もあります。「生半可な知識しか持たずに個別株やFX大金を投じるのは、絶対に避けましょう」(横山さん)■外貨預金にも注意が必要為替差益が出る可能性がある金融商品としては、FXのほかに「外貨預金」があります。外貨預金は、米ドルや豪ドル、ユーロなど、さまざまな国の通貨で預金をするというもので、銀行で扱っています。「預金」という名前がついているだけに、安心感や親近感を持つ人もいるでしょう。けれども横山さんは、こう言います。「外貨預金は円建て(普通の)預金よりも、はるかにリスクの高い金融商品です」外貨預金のデメリットは、大きくわけて二つあります。●外貨預金のデメリット・為替差損が出る可能性がある為替差益が出る可能性があるということは、為替差損が出る可能性があるということ。為替相場は、プロでも正確に読むことはできません・手数料が高い外貨預金では円を外貨に換えて預金し、満期になったら再び円に戻すのですが、いずれの作業にも、それぞれ為替手数料がかかります。たとえば米ドルで1万ドルを預けると、銀行窓口で1万円~2万円、ネットバンクでも2千円~5千円の為替手数料(※)がかかります。※銀行窓口0.5円~1円、ネットバンクで0.1~0.25%(金融機関によって異なる)で試算出典: 「はじめての人のための 3000円投資生活」 (横山光昭著/アスコム刊)より抜粋外貨預金を、為替相場によって「勝手に上下する預金である」という前提を理解しておく必要はあるでしょう。「くれぐれも、『預金』という言葉に惑わされないようにしましょう」(横山さん)これにて、はじめての人のための3000円投資生活連載も終わり。この記事を書いている私自身、数年前まで、「投資!? そんなの怖くて絶対にイヤ!」と思っていました。けれども、取材を通じて、「公的年金は、老後の生活の基幹部分くらいしか出ない」と痛感し、「老後のお小遣い稼ぎ」のつもりで、投資を始めました。マイナス金利の現在、銀行の金利はすずめの涙ですよね。漠然と「お金の不安」を抱えるよりも、まずは一歩を踏み出してみることも「アリ」かもしれませんよ。■今回取材にご協力いただいた横山光昭さんの著書 『はじめての人のための3000円投資生活』 (横山光昭著/アスコム刊 ¥1,100(税別)
2017年09月03日「貯金だけでは、お金の悩みが解決できない」というのは、ファイナンシャルプランナーの横山光昭(よこやまみつあき)さん。苦しい家計を再生させることを得意とするファイナンシャルプランナーで、これまで1万人以上の家計を「再生」させる中で、「無理のない範囲で投資を学んで貯蓄スピードを上げてきた人たち」をたくさん見てきました。■投資は「手間をかけない」方が成功する横山さんはいいます。「プロの投資家でない限り、投資を成功させるうえで、『あまり手間をかけすぎない』ということは、とても重要だと思っています」 とくに3000円投資生活の場合は、「バランス型の投資信託」を選び、積立の設定をしたら、あとは基本的にほったらかしに。バランス型の投資信託は、プロのファンドマネージャーが、経済状況や社会の動きを見て運用してくれています。気が向いたときだけ、証券会社から定期的に送られてくる取引報告書に目を通せばOKです。では、複数のインデックスファンドを購入した場合は、どうでしょうか? 投資の本やWEBサイトを見ると、よく「複数のインデックスファンドを買った場合は、リバランスが必要である」と書かれています。リバランスというのは、「資産全体のバランスの見直し」のことです。 「私はリバランスも、とくに必要ないのではないかと考えています」(横山さん)毎月積み立てていく場合、価格が安いときも高いときも設定した金額の分だけ買っているため、いずれバランスは平均化されていきます。そのため、へたにいじらなくても、勝手にリバランスされていくというイメージです。横山さん自身、そのようにしていて、十分にバランスがとれているそうです。■横山さんが経験した「苦い経験」そんな横山さんも、じつは過去にいろいろと苦い経験をしています。かつて日本の個別株に投資したときのこと。株価は刻々とかわります。横山さんは、自分が買った株の値動きが気になって仕方なく、株式市場が開いている昼間、仕事の合間を見ては、株価の値動きをチェックするようになりました。それはどんどんエスカレート。ついには株価チェックの合間に仕事をするようになってしまったそうです。まさに本末転倒。当然、仕事は手につきません。ところが。それだけ熱心に取り組んでいたのにもかかわらず、あるとき、横山さんが選んだ銘柄が、市場全体の下落に引きずられ、一気に値下がり。「あんなに時間と労力を割いたのに」「一生懸命分析し、市場がどうなろうとダメージを受けないよう、手を打っていたつもりなのに」と、大きなショックを受けたとか。 ■投資は時間をかけても100%うまくいくとは限らない投資は、手間をかけたからといって、100%うまくいくとは限りません。ひんぱんに売買を繰り返せば、その分手数料もかかります。「一時的な値上がりや値下がりに一喜一憂するのは、時間とエネルギーのムダです」(横山さん)。投資を経験したことがある人のなかには疲れ果て、投資に嫌気がさしてしまったことがあるかもしれませんね。「投資は本来、長期的な視野に立ち、『お金に勝手に増えてもらう』くらいの気持ちで取り組むべきものだと、私は思います」(横山さん) 商品を購入し、「20年間は続ける」「50万円になるまでは続ける」など、おおまかな目標を立てたら、あとはほったらかしにしましょう。それくらいの方が、「ママとしての心の健康」には良さそうです。実際に、投資を始めて気持ちが揺れたときには、この記事のことを思い出して欲しいと思います。この記事を書いている私自身、「投資をする中で、気持ちがとても揺れた」という体験をしたことがあります。デビュー戦で買った投資信託の配当金の額は、同じ額を1年間ネット銀行に預けた時の利率の約3倍でした。そう気がついたあと、株式相場がガクンと落ちて「チャンスだ」と感じた自分自身に驚きました。なぜなら投資は、それまで「私にとってはすごくがんらなければできないこと」という存在だったのに、欲がムクっと起きてがぜんヤル気になっていたから。そう「投資生活を始める」ということは、そんな、「気持ちの揺れ」を体験するということでもあります。次回は、「投資に欲が出てきたら注意! それ本当に“お得”ですか?」です。■今回取材にご協力いただいた横山光昭さんの著書 『はじめての人のための3000円投資生活』 (横山光昭著/アスコム刊 ¥1,100(税別)
2017年09月01日日々の暮らしのなかで、「お金がなかなか貯まらない」と悩んでいる人は多いことでしょう。その場合には、投資よりもなによりも家計を見直すことが必要になってきます。ファイナンシャルプランナーの横山光昭(よこやまみつあき)さんは、「本格的な投資を始めるのは、月収の7.5ヶ月分の貯金」ができてから」と話します。それではつねに「お金の不安」につきまとわれている方は、どうやってお金が貯まる強い家計を作ればいいのでしょうか。■貯まる! 強い家計を作る前回の記事で「投資の欠点」を知ったところで、ここであらためて3000円投資生活の「基礎部分」である「貯まる家計」についてご紹介したいと思います。人には、それぞれにあった次のような「お金のステージ」があります。●第1ステージ:お金を管理する家計簿を使ってお金の流れを把握する、ムダな支出をおさえる、少しずつ貯金を始めるなど、実生活に関わるお金をマネジメントしていく段階。●第2ステージ:お金を学ぶお金を今後どう活用するか基本的な知識を学ぶ段階。●第3ステージ:お金を活かす投資を実践するのは、第3ステージです。3000円投資生活を成功させるためにも、この段階をきちんとこなすことが大事です。とりわけ、第1ステージである「お金を管理する」をおろそかにしていては、けっしてうまくいきません。「お金をきちんと管理し、ムダな支出をおさえ、強い家計を作ることができてはじめて、無理なく貯金と投資を行うことができるのです」(横山さん)同じくらいの収入であっても、堅実に貯めていく人と、いつもお金を使いきってしまい、カツカツな気分で暮らしている人がいるのはなぜなのだろうか? 自分の軸を作り上げるためにも、「お金の使い方を3つに分ける」ということをぜひとも知っておいて欲しいと思います。■お金の使い方の3分法(1)消費生活するのに必要なものの購入や、使用料としての支払い全般。生産性はさほど伴わない。【例】食料や住居費、水道光熱費、教育費、被服費、交通費など(2)浪費生活に必要でないもの、今をひたすら楽しむためなどの、無意味な使い方のこと。いわゆる無駄づかいで、もちろん生産性もない使い方。【例】嗜好品(タバコやお酒、珈琲)、程度を超えた買い物など(3)投資将来の自分にとって有効なお金の使い方。資産運用のことだけを指すのではなく、何かを学ぶ、本を読むなどもこれに当たる。【例】習い事、本代など学ぶための費用、投資信託、貯蓄など出典: 「年収200万円からの貯金生活宣言」 (横山光昭著/ディスカヴァー・トゥエンティワン)より抜粋まずはこの表を参考にして、家計の支出をあなたなりに「消費」「浪費」「投資」に3つにわけてみましょう。これだけでも十分、お金が貯められる体質作りへとつながります。■月収の7.5ヶ月分は、まず「貯金」今回の連載では、「月々3000円」という無理のない金額で、金融商品への投資をスタートすることをおすすめしていますが、本来は、支出を管理して、「強い家計」になってきたなと感じてから、「投資」を視野にいれます。では、投資というのは、家計全体の中で、どれくらの割合、するものなのでしょうか?「収入を100とした時、『貯金15%』、『金融商品への投資や自分や家族への投資10%』となるのが理想です」(横山さん) さらにつっこんで、「「貯金」と「投資」の線引きはどこにあるのでしょうか?」。ここで気になるのが、貯金の目標額です。いくらに設定したら良いのでしょうか? 横山さんはいいます。「貯金は、『目の前のピンチを切り抜けるためのお金』です。私はいつも家計相談に来られたみなさんに、『最低でも、使うための貯金(月収1.5ヶ月分)と、おろさない貯金(月収6ヶ月分)を持っていてください』」と、お伝えしています」。<「使うための貯金」「おろさない貯金」>●使うための貯金生活費がたりなくなったときや、ちょっとした予定外の出費などに対応できるようにするためのお金●おろさない貯金病気やケガ、突然の退職などにより万が一収入が途絶えても、当面生活できるようにするための「生活防衛資金」出典: 『はじめての人のための3000円投資生活』 (横山光昭著/アスコム刊)より抜粋「本当は、おろさない貯金は6ヶ月以上あるのが理想ですが、まずは月収7.5ヶ月分の貯金をつくって欲しい」とのことです。反対にいえば、「3000円投資生活」を始めるにおいて、「投資」を本格的に視野にいれるのは、「月収の7.5ヶ月分の貯金」ができてからということになります。■家族マネー会議のすすめこの記事を書いている私自身、投資を始めてみて思うのは、「キリがないな」ということ。ある意味、不労所得を得ることもあるので、投資スイッチが入ってしまうと、「もっと、もっと…」というような欲がわき起こってくるのです。横山さんは言います。「投資をする目的やゴールをはっきりさせておきましょう」。目的やゴールがはっきりしている方がモチベーションも上がるし、「今月は少し余裕があるから、無駄使いせずに貯金や投資にまわそう」といった気持ちにもなるため、成果に大きな違いが出ます。もし、「お金がないと不安」といった漠然とした不安から貯金や投資を始めてしまうと、いくらお金が貯まり、お金が増えても、不安は拭いきれません。そうなると、常にネガティブな気持ちでお金に向き合うことになり、貯金や投資が楽しく感じられなくなります。そんな「事態」を避けるために、横山さんがおすすめしているのが、「家族マネー会議」。子どもたちの要望をとりいれながら家族の価値観の共通化を図り、家族全員で楽しみながら、少しずつ節約を開始して、余ったお金を、貯金と投資に回していくのです。この記事を書いている私自身、横山さんのご提案に従って「家族マネー会議」を開くことにしました。毎週日曜日、3人の息子たちは「今週の経費精算」をします。経費として精算できるのは、「食費」「文房具」「書籍代」。経費の一覧表を家族みんなで見ながら、中学生の次男に「ジュースを毎日買っているけれど、これは経費では出せないね?」とか、高校生の長男に「おなかすく時期だから、この学食で買ったハッシュドポテトは経費で出すよ」などという会話をします。「家族マネー会議」を開くと、家族の価値観の共通化ができて楽しいです。次回は、「ムダになる投資vs.成功する投資の違いは?」です。■今回取材にご協力いただいた横山光昭さんの著書 『はじめての人のための3000円投資生活』 (横山光昭著/アスコム刊 ¥1,100(税別)
2017年08月31日「将来が不安」「いつもお金の悩みがある」、誰でもが持っているお金の不安。だからこそ貯金に励み、節約の毎日をがんばって送っている人も多いことでしょう。それでも「貯金だけでは、お金の悩みが解決できない」というのは、ファイナンシャルプランナーの横山光昭(よこやまみつあき)さん。リバウンドの少ない家計再生の実現を得意とするファイナンシャルプランナーで、これまで1万人以上の家計を「再生」してきました。そんな横山さんが「もうお金の不安はなくなります」と話すのは、毎月3000円からの「貯金感覚」の投資法です。■バランス型の投資信託の問題点とは横山さんがおすすめするのは、「毎月3000円、バランス型の投資信託を積立から始める」という、シンプルで明快な投資方法。ただ、バランス型の投資信託には、次のような側面があるのも事実です。●(インデックスファンドと比べ)手数料がやや高い●国内と外国、株式と債券などの資産バランスを自分で変えることができないもし、「手数料をできるだけ安く抑えたい」「バランス型の投資信託を買うだけではなく、もう1歩踏み込んだ投資をしたい」と考えているのであれば、横山さんは、こうおすすめしてくれました。「ぜひ、インデックスファンドを買ってみてください」。※「バランス型の投資信託」とは、日本の株式や債券、外国(先進国から新興国まで)の株式や債券などが、その名のとおり、バランスよくパッケージされた商品。これを1つ買うだけで、複数の銘柄に投資したことになります。■インデックスファンドって、何ですか?インデックスファンドも、これまで紹介してきた「投資信託」の商品の中のひとつ。インデックス(※)に連動するよう、投資先が機械的に決められるため、手間がかからない分、手数料が低めなのが特徴です。「最強の投資家」といわれるウォーレン・バフェット氏などは、「『非常に低コストなインデックスファンドに投資すれば、同時に投資を始めた90%の人よりも良い結果を得るだろう』とまで言っています」(横山さん) ※インデックスとは、市場の動向を示す指標や指数のこと横山さんがおすすめするインデックスファンドは、次の2本となります。●横山さんのおすすめのインデックスファンド出典: 『はじめての人のための3000円投資生活』 (横山光昭著/アスコム刊)より抜粋■横山さんが「積立」投資をおすすめする理由横山さんは、バランス型の投資信託やインデックスックスファンドをスポット(一括)ではなく、「積立」で買うようおすすめしています。「『積立』のメリットは、なんといっても、少額から始められる点にあります」(横山さん)。バランス型の投資信託やインデックスファンドをスポットで買う場合、価格はたいてい1万円前後。ですが、一部の証券会社では、100円単位から買うことができます。「積立は、一定額を毎月積立システムなので、『自動的にコツコツ、タイミングを意識することなく購入することができる』というメリットもあります」(横山さん)投資信託の価格は日々変動するため、スポット(一括)で買う場合は、ある程度タイミングを見極める必要があります。「少しでも安く買いたい」と思うあまり、なかなか最初の一歩を踏み出せない人もいるでしょう。その点、積立なら、毎月決まった額で買える分だけを購入することになるため、値動きを気にせず、思い立ったときに投資を始められるのです。■投資の「欠点」を知っておこうさて。ここまで「バランス型の投資信託」と「インデックスファンド」をおすすめしてきましたが、これらに盲点はないのでしょうか?「インデックスファンドは、市場と同じような動きをすることを目指して設定してあるので、良くも悪くも価格は市場の影響を確実に受けます」(横山さん)リーマンショック、最近では、中国ショックといった言葉を耳にしたことがあるでしょう。市場は不規則に暴落します。ですから、暴落が起これば、インデックスファンドは大きく値下がりします。債券が含まれるバランス型の投資信託であっても、基本的には同じです。もし、「そろそろ定年だから、運用資産を現金化しよう」と思う前後に暴落が起こったら…? もちろん、資産は大幅に目減りしてしまうことでしょう。その点が、インデックスファンドの最大のリスクです。ただし、過去の市場の動きを見てみると、たとえ暴落しても、やがて市場は回復し、暴落時の影響を吸収したうえで、右肩上がりの成長をしていることもわかります。「ざっくりとではありますが、暴落後、回復してくるまでの期間は、短くて3年、長くて10年ほど見ておく必要があります」(横山さん)逆に言えば、「運用するお金」というのは、「市場が回復するまで、手をつけずにおいておくことができるお金(いわば余裕資金)」であって、生活費やなけなしのお金で投資をしてはいけないということなのです。次回は、投資するお金は、こう用意する!この記事を書いている私自身、はじめて投資は、「インデックスファンド」でした。「実際に銘柄を購入してみる」とか「値動きを体感する」…。こればかりは、「習うより、慣れろ」だと実感しています。インデックスファンドは、洋服で例えるならば、「紺のカーディガン」。「無難だから、ひとつくらいもっておいても良い」というアイテムです。私の投資デビュー戦。じつは、なにも買えずに終えてしまったのです。理由は、パスワードエラーというなんとも情けない話。さらに株価をチェックしだしてしまうと、なかなか動くことができないでいました。しかしある日、気持ちが切り替わりました。「もういいじゃん。損とか得とか、いま、チマチマ考えていたって、意味ないよ。とにかく今日は買うぞ!」と。「投資をする」は、気持ち的ハードルが高いかもしれません。でも「怖くはありませんよ」と私からも付け加えさせていただきます。■今回取材にご協力いただいた横山光昭さんの著書 『はじめての人のための3000円投資生活』 (横山光昭著/アスコム刊 ¥1,100(税別)
2017年08月30日「貯金だけでは、お金の悩みが解決できない」と語る、ファイナンシャルプランナーの横山光昭(よこやまみつあき)さん。借金のある家庭、ローンで苦しんでいる家計を抜本的に解決し、再生させることを得意とするファイナンシャルプランナーです。「なんとかお金を貯めたい!」と考える人たちの家計を「再生」させる中で、「無理のない範囲で投資を学び、貯蓄スピードを上げてきた人たち」をたくさん見てきました。■はじめての投資はシンプルに横山さんの投資法は、とてもシンプル。それでも、投資が「はじめての人」にとっては、わからないことだらけ。言葉ひとつとっても聞きなれない、耳慣れない言葉に、つい挫折しそうになります。そんな「読者のみなさんが必ず迷うであろう部分」を、具体的に教えてもらいましょう。●横山さんのおすすめ投資方法1)証券口座を開く2)月々3000円でスタートする3)バランス型の投資信託を買う出典: 『はじめての人のための3000円投資生活』 (横山光昭著/アスコム刊)より抜粋■ポイント1 証券会社はネット証券がおすすめこの記事を書いている私自身、投資を始めるにあたり、「ネット証券」を検索してみて、たくさんの証券会社がヒットしたことに、まず驚きました。さらに街中には、いわゆる「一般的な証券会社」もあります。「どこに証券口座を開けばいいのか?」、そんなあたり前の疑問が、投資の第一歩を踏み出そうとすると、必ず立ちはだかるのです。「証券口座を開設するなら、ネット証券がおすすめです」(横山さん)どうしてネット証券がおすすめなのでしょうか。それは、ネット証券であれば、自宅で手軽に口座開設の申し込みができるから。さらに、手数料が安く、商品が豊富なのも魅力。一部の証券会社では100円から買え、少ない元手で投資を始めることができます。まさに3000円投資生活向きなのです。横山さんにとくにおすすめするのは、次の4社。「この4社であれば、どこで口座を開いてもかまいません。いずれも信頼度が高く、安心です」(横山さん)●横山さんおすすめの証券会社●SBI証券商品数が豊富。売買手数料が全体的に安く、ネット証券の中では口座数が最も多い。●楽天証券楽天銀行の口座と連携させれば、さまざまなメリットがあり、楽天市場などで使えるポイントももらえる●マネックス証券30万円以下の取引なら、SBI証券や楽天証券よりも売買手数料が安いが、30万円を超えると高くなる●カブドットコム証券一般口座であれば、即日口座開設が可能。経営母体が三菱UFJファイナンシャルグループなので、安心感がある出典: 『はじめての人のための3000円投資生活』 (横山光昭著/アスコム刊)より抜粋■ポイント2 利益が出ない最初に選ぶ口座はコレ!実際にネット証券で口座開設の画面を進めていくと、次なる「関門」は、こちら。●特定口座にするか、一般口座にするか●特定口座を開設する場合、源泉徴収をありにするか、なしにするか聞きなれない言葉が並び、「難しそう」と、心がなえてしまう人もいるかもしれません。これに対しての横山さんの答えもじつに明快です。「基本的には、源泉徴収なしの特定口座を選んでいただければ良いと私は思います」(横山さん)少し補足説明をしてもらいましょう。【特定口座・一般口座】投資によって年間20万円を超える利益を出すと、確定申告をし、税金を納めることになります。その際、年間の売買の履歴や損益を計算し、まとめた「年間取引報告書」という書類が必要です。証券会社がその書類を作成してくれるシステムがあるのが「特定口座」、書類を作成してくれないのが「一般口座」です。【源泉徴収あり・源泉徴収なし】源泉徴収あり:必要な手続きを証券会社が代行してくれるので、確定申告の必要なし源泉徴収なし:必要な手続き(確定申告)を自分で行う 証券会社が確定申告をしてくれるのだから、「源泉徴収あり」の方がおトクな感じがします。しかし、こちらを選ぶと、利益が20万円以下で確定申告が必要ない場合でも、利益が発生した時点で、約20%の税金が自動的に徴収されてしまいます。3000円投資の場合、最初のうちの利益は微々たるもので、とても20万円に達しないでしょう。ですから、「源泉徴収なし、特定口座」スタートで大丈夫なのです。ただし、次の方は「源泉徴収ありの特定口座」を考えても良いでしょう。●20万円以上の利益を想定している方で、確定申告をするのが面倒な方●「配偶者控除」や「扶養控除」の適用を受けている主婦や学生で、その年の投資による利益が38万円を超えそうな方■ポイント3 3000円投資で選ぶべき投資商品はコレ!証券口座の設定が終わったら、いよいよ「投資」です。ここで多くの人は、「何を買ったらいいかわからない」という疑問を持つことでしょう。投資信託だけで6000本あると言われているいま、おびただしい数の銘柄を見て、めまいすら感じるはずです。この関門で「やっぱり、面倒くさいからやめよう」と思ってしまう人も、じつは多いのです。「3000円投資生活なら、まず、選ぶべきものは決まっています。それは、ズバリ『バランス型の投資信託』です」(横山さん)「バランス型の投資信託」とは、日本の株式や債券、外国(先進国から新興国まで)の株式や債券などが、その名のとおり、バランスよくパッケージされた商品。これを1つ買うだけで、複数の銘柄に投資したことになります。そのなかでも、横山さんがおすすめしているのは、次の2本の投資信託です。●横山さんのおすすめの投資信託出典: 『はじめての人のための3000円投資生活』 (横山光昭著/アスコム刊)より抜粋■ポイント4 3000円投資生活のスタート実際に商品を購入する際には、次のように入力していきます。1、「積立」で買うことを選択2、「目論見書」(もくろみしょ)(※)を閲覧3、「積立金額」「決済方法」「分配金コース」などを設定する画面で、次のように入力します。 ●積立金額 : 3,000円/月 ●決済方法 :月々の購入金額の引落日(何日でも大丈夫) ●分配金コース : 再投資型これで「月々3000円ずつ積み立て、バランス型の投資信託を買う」という仕組みができあがりました。つまりは、3000円投資生活がスタートした訳です。※目論見書とは、その商品の特色やリスク、運用実績、手数料などが説明されている書類のこと「あとは基本的に、ほったらかしておいて大丈夫です」(横山さん) 次回は、「「欠点」を知らないから怖くなる! 投資のリスクは回避できる」です。■今回取材にご協力いただいた横山光昭さんの著書 『はじめての人のための3000円投資生活』 (横山光昭著/アスコム刊 ¥1,100(税別)
2017年08月29日「私自身、これほど結果が出るとは思っていませんでした」と語るのは、ファイナンシャルプランナーの横山光昭(よこやまみつあき)さん。今回は、「横山式投資術」について、貯蓄と一緒に投資を始める方法を横山さんにうかがいます。横山光昭(よこやまみつあき)さん苦しい家計を再生させることを得意とするファイナンシャルプランナーで、これまで1万人以上の家計を「再生」させてきました。『年収200万円からの貯金生活宣言』シリーズの書籍で一躍有名に。■投資を始めるのは「強い家計」になってからどんなに充分な収入があっても、月末になるとお金がない人や貯金ができない人は、まずは家計自体を見直す必要があるでしょう。横山さんは、「家計自体を見直すためには、自分の「お金のステージ」を知ることが必要」と話します。<お金のステージとは>第1ステージ お金を管理する第2ステージ お金を学ぶ第3ステージ お金を活かす横山さんは、「お金をきちんと管理し、ムダな支出をおさえ、強い家計を作ることができてはじめて、無理なく貯金と投資を行うことができるのです」と話します。強い家計の作り方、お金のステージについては、今後の連載の中で詳しくお話させていただきます。家計での支出を管理して、まずは貯金をします。貯金によって「強い家計」になってきたなと感じてたら、貯金をしながら「投資」を視野にいれていくというのが、正しい順番です。連載1回目の今回は、「ムリのない範囲で投資を学ぶこと」。投資と聞くと、難しそうで、何となく損をしてしまうようなイメージもあります。本当に大丈夫なのでしょうか?■貯金だけでは、お金の悩みが解決できない「夫婦でしっかり節約しているのに、貯蓄が増えない」「収入は安定しているのに、お金が残らない」…。多かれ少なかれ、お金の悩みはだれにでもあるものです。でも、急に収入が増えることはないし、いつも「節約しなきゃ!」と思いながら生活するのも、しんどいですよね。横山さんが目指すのは、「お金とうまくつきあい、自分をコントロールできるようになってもらう」こと。じつは、横山さん自身、過去に借金に苦しんだことがあるそうです。それをきっかけに、ヨコヤマ式90日貯金プログラムを編み出しました。しかし貯金ができるようになったからといって、「お金に関する悩み」や「将来に対する不安」が完全に消えたとはいえないようなのです。「お金は順調に貯まっているけれど勤務先の業績が悪く、収入が減っている」「貯金だけで、豊かな老後を送ることができるだろうか」そんな声を聞くことも多く、「こうした悩みや不安は、貯金だけではなかなか解消できないのです」と、横山さんは言います。では、どうしたらいいのでしょうか? その答えとなるのが「3000円投資生活」なのです。■3000円投資は怖くない ところで、みなさんは、「投資」という言葉を聞いたとき、どのようなことを連想しますか? 「もうかるのは、ごく一部の人だけで、ほとんどの人は損をする」「しょっちゅう株価をチェックしたり、売買したり、いろいろと手間がかかる」おそらくこんなネガティブなイメージを持っている人も多いのではないでしょうか?もしかすると、みなさんが「投資」と聞いてイメージするものは、「投機」に近いのかもしれません。「『投資』というのは本来、もっと気長に取り組むべきものであり、気軽にできるものなのです」と、横山さん。そんな横山さんがおすすめする投資方法は、きわめてシンプルで、次の3つをするだけです。●横山さんのおすすめ投資方法1)証券口座を開く2)月々3000円でスタートする3)バランス型の投資信託を買う出典: 「はじめての人のための 3000円投資生活」 (横山光昭著/アスコム刊)より抜粋横山さんのおすすめ投資信託商品については、次回ご紹介します!■「月々3000円だけではお金が増えない」は大きな間違いここまで読んでも、おそらく「月々3000円の投資だけでは、たいしてお金は増えないのではないか」と思っている方も多いのではないでしょうか?横山さんのところに実際に相談にいらっしゃったA子さんの例を見てみましょう。A子さんが買ったのは、「バランス型の投資信託」。それを毎月、積立で購入していきます。次の表で注目すべきは、投資の「運用益」と、貯金の「利息」の違いです。貯金の「利息」が毎月1万円貯めていっても10年後に60円にしかならないのに対して、3000円を投資し続けた「運用益」は5万9224円になりました。A子さんの例を見ると、「投資をすることで、貯蓄スピードがあがる可能性がある」とも言えるのではないでしょうか。●月々1万円の貯金と3000円の投資を続けた場合貯金の金利は0.001%、投資の利回りは3%、1年複利・税引き前出典: 「はじめての人のための 3000円投資生活」 (横山光昭著/アスコム刊)より抜粋次回は、「貯蓄スピードをアップする! 挫折しない3つのポイント」です。■今回取材にご協力いただいた横山光昭さんの著書 『はじめての人のための3000円投資生活』 (横山光昭著/アスコム刊 ¥1,100(税別)
2017年08月28日知っておきたいという気持ちはあっても、意外に知る機会が限られているのが政治についてのいろいろなこと。けれど人にも聞きづらく、結果的には疑問を疑問のまま放置しているという方も決して少なくないはずです。そこでおすすめしたいのが、『“知ってるつもり”から抜け出す! 「政治のしくみ」がイチからわかる本』(坂東太郎著、日本実業出版社)。日本ニュース時事能力検定協会委員でもあるニュース会社者の著者が、政治に関する基礎知識をわかりやすく解説した書籍です。ところでニュースを聞いていると、「予算」についての話題が登場することがよくあります。しかしそうでありながら、その基礎的な部分は置き去りにされがち。そこできょうは、その基本的な部分について取り上げてみましょう。■毎年1月の通常国会で予算案を提出!国会は、法律だけでなく、国のお金の使い方を決める場でもあります。そして通常、単に「予算」という場合は、年度(当年4月1日から翌年3月31日まで)に入ってくるお金と、その使い道を示した「一般会計予算」をさします(「当初予算」といわれることも)。なにをするにもお金が必要で、それは国のサービスも同じ。そこで毎年1月、必ず開かなければならないことになっている「通常国会」で、新春から3月末までのうちに国が見込んだ収入(歳入)と使い道(歳出)の見積もりを、憲法の規定によって内閣が「作成して、国会に提出」(86条)します。すなわち、これが「予算案」。まず前年8月ごろまでに「省」や「内閣府」など、国の機関が翌年の見積もりをつくります。これが「概算要求」。ところがこれは、各省庁が欲しいぶんだけ要求しがちなので、「盛った」数値もあるのだとか。そこで財務大臣が年末近くに審査をし、「予算原案」にするのです。ところが、ここで概算から削られたり、なくなったりする要望も出てくることになります。そこでもう一回、原案との突き合わせ・微調整を行うことに。そしてそこまでを根回ししたあとに、首相をリーダーとする内閣の決定(閣議決定)に至り、それが翌年早々、国会に提出されるというわけです。■国会の演説や質問は「いいっぱなし」予算案の場合は、1月からはじまる通常国会の冒頭にある首相の施政方針演説で年間の方針が語られたあと、国の財布を預かる財務省トップの財務大臣が、「財政演説」というかたちで示します。そしてそののち、与野党各会派の代表による質問が行われるのです。とはいっても、ここまでの演説や質問は「いいっぱなし」。具体的な問答が行われるのは、次に開かれる予算委員会となるのだそうです。なお法律案は原則として衆議院・参議院どちらに出してもかまわないといいますが、予算案は衆議院が先(先議権)と決まっているそうです。最近の当初予算の歳入面では、本来それでまかなうべき「税収」だけでは歳出には足りず、国債(国の借金)頼り。そして歳出のトップは年金や医療などの「社会保障」で、次いで「国債費」(借金返済)が続きます。なお予算には、当初予算以外に「補正予算」「暫定予算」があります。補正予算は、年度の途中に、自然災害の被害や不景気などで追加のお金が必要だと内閣が判断した場合に計上されるもの。暫定予算は、年度内に次の年度の当初予算が決まらなかった場合、公務員の給与など当面の間必要な支出だけを計上するもの。■予算委員会は結果的になんでもあり!予算委員会(予算委)は衆議院で50人。会派の大きさに合わせて割り当てられ、委員長が委員のなかから選ぶそうです。通常国会の前半最大の課題は予算で、質疑のスタートが衆議院予算委員会なので必然的に注目が集まることになります。予算案はあらゆる国家機関の見積もりであり、内閣の責任で出されるので、答弁に立つべき国務大臣も原則的には全員出席。すると予算委以外の委員会に大臣が出席できないため、結果的に予算委優先、予算委のみ開催となるそうです。なお、予算は提出者も執行者も内閣なので、首相や国務大臣がどういう姿勢で1年間を過ごすかまでが話題になります。スキャンダルの話題なども出ますし、結果的に「なんでもあり」になってしまうというのです。■予算を人質に揺さぶられることもある衆議院の委員会で採決して可決し、本会議も通ると、予算案は参議院に送られます。その結果が秘訣や修正となったとしても、「衆議院の優越」規定があるため、最終的に衆議院の議決で決まることになります。つまり予算そのものについてあれこれいっても、多くの場合は上手にかわされて終わり。そこで攻める側の野党は、「こんな内閣のつくった予算案を信用できるのか」とスキャンダルを追求したり、「態度がなっていない」などと理事に文句をつけて引き伸ばしをはかるなどして「成果」を得ようとしたりするわけです。内閣にとって、予算の3月末までの成立は至上命題で、それができないと非力な内閣とみなされるため、野党から痛いところを握られたりしている場合は、問題大臣のクビと引き換えに審議促進を非公式に伝えるといった手段に出ることも。「予算を人質に揺さぶる」という行為です。このように予算委員会は華々しい割に、(1)どのみち衆議院で多数を取っている与党が選んだ首相による内閣提出だから、原案どおりに可決する(2)「可決する」とわかっている野党は、仕方なくスキャンダル攻撃などでがんばっているふりをするという2点があらかじめほぼ決まっているので、「出来レース」との声も浴びせられるといいます。*基礎的なことがコンパクトにまとめられているため、知りたいことを確実に理解できるはず。困ったときのため、手元に置いておくといいかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※坂東太郎(2016)『“知ってるつもり”から抜け出す! 「政治のしくみ」がイチからわかる本』日本実業出版社
2016年09月15日普通、移住しようということになったら、まずはしっかり下調べをするもの。ところが『幸福度No.1☆「沖縄移住」でワクワク楽園生活!: ツテなし・カネなし・資格なし ゼロからはじめた私の方法』(峯田勝明著、合同フォレスト)の著者は、かなり事情が異なるようです。そのタイトルから想像できるように、まったく「ゼロ」の状態で沖縄へ移住してしまったというのですから。そもそも著者は、立ち会い出産を経験し、育児の時間を確保するために会社勤めを辞めて自営業をはじめたという、その点においてもちょっとユニークな経歴の持ち主。しかし、住んでいたのが茨城県だったこともあり、東日本大震災で大打撃を受けて廃業せざるを得ない状況に。その結果、放射能汚染から家族を守るため、2012年に沖縄へ移住したというのです。つまり本書では、そんな実体験に基づき、沖縄へ移住するために必要なことを明かしているというわけです。きょうはそのなかから、なにかと気になる「お金」についての記述をご紹介したいと思います。■1:移住費用を事前に計算しておくべし当たり前ですが、沖縄への引越しが普通のそれと異なるのは、「必ず海を渡らなくてはいけない」ということ。つまり、引越し料金はとても高くつくというわけです。そこで必要になってくるのは、少しでも節約すること。そこで著者は、いらない荷物はなるべく処分することを勧めています。思い入れのあるものや特別高価なものは別としても、それ以外は現地で買ったほうが安いというのです。ほとんどのものは沖縄にも売っているそうなので、きっぱりと処分できるものは処分したほうがよさそうです。■2:自家用車で引越し料金を節約すべしまた、引越し料金は運ぶ量や距離、業者によっても違い、さらに3~4月のハイシーズンは高くなるものです。そこで予算を節約するために、自分の車に荷物を詰め込み、船で送るという方法を利用するのもいい方法。著者は5ナンバーの普通乗用車と軽自動車を送ったそうですが、どちらもワンボックスタイプの乗用車だったので、荷物を満載したのだといいます。宅配便では送れない荷物を優先的に車に詰め込み、自分たちはあとから飛行機で沖縄入りして、那覇新港へ引き取りに行ったというのです。ちなみにワンボックス車でも、貨物車の4ナンバーや1ナンバー登録では料金が高くなるといいます。気になる乗用車輸送運賃(全長4メートル以上5メートル未満)は、東京有明埠頭から那覇新港が5万9,500円~で、大阪から那覇新港が5万5,000円~。東京→沖縄、大阪→沖縄がいずれもドア to ドアで7万7,112円~だそうです。いずれにせよ、そうやって工夫をすることは、決して無視できない節約術だといえるかもしれません。■3:口座はゆうちょ銀行に集約すべし!ところでお金に関しては、意外な落とし穴があるようです。というのも沖縄には、本土の都市銀行が「みずほ銀行」しかないというのです。しかも、宝くじを発行する関係で、かろうじて1店舗あるだけ。なお、これまでは地元地銀の「沖縄銀行」「琉球銀行」「沖縄海邦銀行」と「みずほ銀行」による寡占状態が続いていたそうですが、沖縄経済の活況に目をつけた「鹿児島銀行」が、2015年9月28日、那覇市に沖縄視点を開設したのだとか。まず力を入れているのは個人ローンで、特に際立っているのは住宅ローン。貸出金利を本土並みに低く設定し、地元の3行より優位に立つ戦略をとっているのだといいます。沖縄で安心なのは、「ゆうちょ銀行」だそうです。理由はいたってシンプルで、日本全国どこにでもあり、手数料をかけることなく出し入れができるから。なにかあったときは、本土でも沖縄でも窓口に行くことができるわけです。そのため、移住の際はいったんすべてを「ゆうちょ銀行」に集約し、沖縄で生活をはじめてから他の口座を開設するのがいいと著者は提案しています。また、イオンの店舗も多いため、「イオン銀行」を利用するという選択肢も。ただし各店舗にあるのはATMで、窓口があるのはイオンモールだけ。沖縄では「イオンモール沖縄ライカム店」のみだそうですが、年中無休で営業しているのがいいところだといいます。*こうした話は、実際に移住経験のある人でないとわからないもの。しかも著者の場合は「ゼロ」からスタートしたわけですから、なおさらリアリティがあります。沖縄への移住を漠然と考えている方は、まず手はじめに本書を手に取ってみてはいかがでしょうか?(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※峯田勝明(2016)『幸福度No.1☆「沖縄移住」でワクワク楽園生活!: ツテなし・カネなし・資格なし ゼロからはじめた私の方法』合同フォレスト
2016年09月07日『老活弁護士(R)が教えます! わかりやすい遺言書の書き方』(大竹夏夫著、週刊住宅新聞社)の著者は、自称「老活弁護士」。「老活」とは、「老後に備える準備活動」のこと。数年前に流行語となった「終活」とも似ていますが、終活は死んだ後のことが中心。対して老活は、自分が死ぬ前のことに焦点を当てているわけです。死んだ後よりも老後のほうが大変だからこそ老活は欠かせず、なかでもとても重要なのが「遺言書の作成」だというのです。そんな考え方は、著者が弁護士として多くの相続トラブルや訴訟に関わってきたからこそ到達したもの。つまり遺言書がないと、相続争いが起きやすくなってしまうのです。遺言書で「誰がなにを相続するのか」が示されていなかった場合、亡くなった方の財産(遺産)は、法律であらかじめ定められている相続人に対し、法律で定められている割合で引き継がれるそうです。この、法律で定められている相続人が「法定相続人」で、法律で定められている割合は「法定相続分」。■1:妻・夫と子どもがいる場合亡くなった人の妻または夫(配偶者)と子どもがいる場合、妻・夫と子どもがいる場合は、妻・夫と子どもの全員が相続人。この場合の相続分は、妻・夫が2分の1、子どもが2分の1。ちなみに子どもが2人いる場合は、子どもの相続分2分の1を2人で均等に分けるのだとか。つまり、子どもは4分の1ずつになるということ。同じように子どもが3人いる場合は6分の1ずつ(2分の1を3等分)、4人いる場合は8分の1ずつ(2分の1を4等分)になるわけです。逆にいえば、子どもが何人いても妻・夫の相続分は2分の1なのだそうです。■2:子どもが親より先に亡くなっている場合相続人になれるのは生きている人だけで、亡くなった親よりも先に亡くなっている子どもは相続人にはなれません。ただし、その子どもの子ども(亡くなった親から見ると孫)がいたら、相続人になるのはその孫。これは「代襲相続」と呼ばれています。その孫の相続分の割合は、亡くなっている子ども(孫から見れば親)の相続分をそのまま引き継ぐのだそうです。孫が2人以上いる場合は、その相続分を均等に分けるわけです。同じく、その孫が先に亡くなっている場合で、その孫に子ども(亡くなった方のひ孫)がいたら、そのひ孫が相続人になり、孫の相続分をそのまま引き継ぐことに。■3:妻・夫と親がいる場合亡くなった方に、妻または夫がいるけれど子どもがいない場合、亡くなった方の親が生きていれば、相続人になるのはその親。この場合の相続分は、妻・夫が3分の2、親が3分の1。子どもがいるときよりも、妻・夫の割合が増えるわけです。父と母の2人とも生きていれば、子どものときと同じように、親の3分の1を2人で分けることになります。■4:妻・夫と兄弟姉妹の場合亡くなった方に、妻または夫がいるけれど、子どもがいなくて両親も他界している場合、相続人になるのは妻や夫。しかしこの場合は、亡くなった方の兄弟姉妹も相続人になるのだそうです。この場合の相続分は、妻・夫が4分の3、兄弟姉妹が4分の1。兄弟姉妹が2人以上いるときは、この4分の1を均等に分けるわけです。例えば兄と妹がいる場合は2人ですから、8分の1ずつになるということ。ほとんどの財産が夫名義になっていたご夫婦の夫が亡くなったとき、そのことを知らなかった妻が路頭に迷ってしまうというケースも少なくないのだとか。■5:甥・姪の場合亡くなった方が高齢のケースでは、兄弟姉妹が先に亡くなっていることも少なくないといいます。兄弟姉妹が先に亡くなっている場合、相続人になるのはその子ども。亡くなった方から見れば、甥・姪だということで、これも「代襲相続」。先に亡くなった兄弟姉妹に子どもがいなければ、その兄弟姉妹はいなかったものと考え、残りの兄弟姉妹で4分の1を分けるそうです。■6:子どもだけの場合妻・夫に先立たれていて、子どもがいる場合、相続人になるのはその子どものみ。子どもが1人のときは、その子どもがすべてを相続。子どもが2人以上いる場合は、均等に分けることに。子どもが2人の場合は2分の1ずつ、子どもが3人いる場合は3分の1ずつ、4人いる場合は4分の1ずつになります。■7:親だけの場合亡くなった人に妻・夫がいない場合(もともと結婚していない、結婚したことはあるが離婚していた、妻・夫が先に亡くなっている場合)で、子どもも孫もいないとき、相続人になるのはその人の両親だけ。両親とも健在であれば、父と母が2分の1ずつ相続。どちらかが先に亡くなっている場合、相続人は1人だけになり、すべてを相続するそうです。■8:兄弟姉妹だけの場合亡くなった人に妻・夫も、子どもも孫もいなくて、両親も先に亡くなっている場合、相続人は兄弟姉妹だけ。兄弟姉妹が1人なら、その人がすべてを相続。2人以上いるときは、均等に分けるわけです。■9:相続人がいない場合亡くなった人に妻・夫も、子どもも孫もひ孫も、両親も兄弟姉妹も甥・姪もいない場合、相続人はいないことになります。この場合、亡くなった人の遺産は国庫(政府)に取られてしまうそうです。遺産のすべてが財務省に引き継がれるわけですが、政府はそもそも、相続人のいない相続財産の存在を知りません。そこで、このような場合は相続人にならない親族(叔父・叔母・いとこ)などが家庭裁判所に申請し、相続財産管理人を選んでもらうのだそうです。その管理人が名義変更等の手続きや、未払いの料金等の支払いをし、残ったら国に納めるわけです。*法律が絡む書籍には、難解にならざるを得ない部分があります。が、本書はかなりできる限り読みやすくしてあるので、抵抗なく読み進めることができるはず。将来のために、ぜひ目を通しておくべきだと思います。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※大竹夏夫(2016)『老活弁護士(R)が教えます! わかりやすい遺言書の書き方』週刊住宅新聞社
2016年09月07日人生における大きな買い物のひとつが「住宅購入」です。結婚し、家庭を持ち、子どもが生まれたら誰でも「自分たちだけの城」は欲しくなるもの。ただ、その購入額が他の買い物と違い、3,000万円、4,000万円などと高額なのが特徴です。1,000円、10,000円といった普段の買い物とはケタが違い、買い物そのものが非日常的な行為であるため、冷静さを失いやすく、一歩間違えると取り返しのつかない失敗をしてしまいます。さらに、住宅の種類によって失敗の種類も異なります。では、どういった失敗があるのでしょうか?今回は、戸建住宅を購入する場合の失敗の心理メカニズムについて2つほど解説していきます。■1:掘り出しもの物件で失敗する「アンカリング」のワナ不動産屋の営業マンがよく口にするセリフに、「この中古物件は掘り出しものですよ!」というものがあります。ただし、掘り出しものにもいろいろな意味があることを忘れてはいけません。高級住宅街のなかにある高嶺の花のような人気物件もあれば、そのエリアの相場にくらべて圧倒的に安い物件もあります。この「掘り出しもの」という一言に強い印象を持ってしまうと、その後に他の物件を見る際、その掘り出しものをベースにイメージが左右されることになります。こういった場合、買い手の心理にはアンカリングが働いています。アンカリングとは、特定の数値や情報が印象に残り、それが基準点(アンカー)となって、その後の判断が揺れ動く心理現象のこと。インパクトのあった価格や雰囲気よりも安かったり高級感があったりすれば「よりよい」という感想になるし、反対に高かったり安っぽかったりすれば「より悪い」というイメージとして残るのです。一般的に、その物件が掘り出しものであるかどうかは、買い手が実際に住んでみないことには判定できません。「掘り出しものであるかどうか」は、買い手とその家族の皮膚感覚や五感が決めることだからです。しかし、不動産は「お試し」ができません。そのため、営業マンのセリフひとつで買い手の印象が変わるのです。価格や雰囲気などにより一度大きなインパクトを受けると、その後、いくら見学をしてもすべてアンカリングが働くことになります。もしかしたら、本当は相性のいい戸建かもしれないのに、アンカリングのために「ここはダメ」と切り捨ててしまうことも生じます。また、アンカリングにハマりすぎて、実際に住みはじめたら思ったほどよくなかった、トラブルが続発した……というケースも少なくありません。アンカリングのワナにハマりそうになった場合、いったんその価格や雰囲気のイメージを脇に置き、そもそも自分自身が戸建購入で譲れないポイントはなにか、実際に住みはじめたらどう生活が変わるのかをあらためて考えなおしたほうがいいでしょう。■2:オプションで失敗する「現在志向バイアス」と「プロスペクト理論」のワナ「せっかく家を買うのだから、玄関のドアはいいものにしよう」「せっかく家を買うのだから、この造作家具(建物一体型のオーダー家具)をつけよう」といった具合に、「この機会だから」という言葉を接頭辞に、あれこれオプションをつける人がいます。買うまでは冷静に、かつシビアに価格にこだわったにも関わらず、買うとなったら一転、財布のヒモが緩むのです。なぜこうなるのでしょうか?これには「現在志向バイアス」と「プロスペクト理論」が大きく影響しています。「現在志向バイアス」とは、行動経済学でいわれている心理現象で、「現在を将来よりもずっと重視する」心の動きのこと。そのため、戸建てを購入する現時点を、家がやがて朽ち果てていく未来よりもはるかに重視してしまうのです。結果、「せっかくだから、住まいを最高のものにしたい」とアレコレオプションをつけてしまうことになります。また、「プロスペクト理論」の柱のひとつに、「必ず損をするわけではなく、損をしない可能性もあるのならば、その可能性にイチかバチかを賭けて行動しよう」とする心理現象があります。この時点で「住宅購入=博打」となっているのですが、本人としてはその意識はなく、むしろ「将来損をするとは限らない。ならば、どうせだからうまくいくと信じよう。大丈夫、きっとなんとかなる」と思いこんでしまいます。それでなくても、元の住宅価格も数千万単位であり、オプションの価格も数十万から数百万単位。つまり、金銭感覚が狂いやすい状況になっています。結果、過度に楽観的になり、あれこれオプションをつけた挙句、想定以上のローン返済に苦しむことになるのです。日常生活でこれまで以上に倹約を迫られるだけでなく、最悪、ローンで家計が破たんすることにもなりかねません。住宅購入は博打ではありません。買うのは一瞬でも、住むのは10年、20年単位であり、へたすれば一生に関わってきます。同時に、ローン返済も、一般的には35年かかります。そのため、住宅購入を決めた場合には、一層地に足をつける感覚をもち、今後の生活やローン返済のことを建設的に考える必要があるのです。その他、マンション購入と同じく「限定合理性のワナ(わかりやすいものしか理解しない)」にハマって購入する土地の周辺状況や契約内容を精査せずに失敗するケースなどがあります。*繰り返しになりますが、住宅は一般的に「買うのは一瞬、住むのは一生」です。失敗に気づいたからといって安易に住み替えることはできません。高額で、かつ人生に大きく影響を及ぼす買い物だからこそ、日常生活の買い物以上に冷静に、かつ慎重に「住んだ後のリアル」や「返済計画」を含めて検討すべきでしょう。(文/税理士・心理セラピスト鈴木まゆ子)
2016年08月15日人生での大きな買い物のひとつが、「住宅購入」ですよね。結婚し、家庭を持ち、子どもが生まれたら誰でも「自分たちだけの城」が欲しくなるもの。ただ、その購入額が他の買い物と違い、3,000万円、4,000万円と高額なのが特徴。1,000円、10,000円といった普段の買い物とはケタが違うため、冷静さを失いやすく、失敗して後悔しやすいのも「住宅購入」の特徴です。さらに、住宅の種類によって失敗の種類も異なります。では、どのような失敗があるのでしょうか?今回は、マンション購入で失敗してしまうメカニズムについて解説します。これから購入を考えている人はぜひ反面教師にしてください。■1:人は「いまだけ、ここだけ、あなただけ」に弱いからまず、よくあるのが「これほどいい物件はありません。いまだけ、お客様にご案内します」という不動産業者の常套句につられて買ってしまうというもの。「えっ?住宅って高額な買い物なんだから、そうそう簡単に営業のワナにハマるわけがないでしょう!」と思いがちですが、実は高額だからこそハマってしまうのです。なぜなら高額な買い物ほど、日常生活では手に入りにくいため、その買い物に対してオトク感や価値を必要以上に求めるからです。さらに、これに「ご縁」「相性」などが絡むと、人は理性を失い、感情で判断しようとします。こういった「手に入りにくくなるほど、その機会がより貴重なものに思えてくる」心理を「希少性の原理」といいます。そして、この希少性のワナは、実はチラシから営業マンのトークに至るまで、あらゆるところに仕掛けられているのです。いくつかの例をご紹介しましょう。(1)「完売御礼!」の言葉がやたらと踊っている「バンバン売れていますよ」という雰囲気を出して、住宅市場が好況であることをチラシの読み手にイメージさせる。結果、「いい物件はすぐになくなってしまうのだ」と、読み手に焦りを感じさせる。(2)大規模マンションなどの場合、販売時期を1回ではなく「第1期、第2期、第3期」などと複数回に分けて小分け販売をするもともと150戸あるマンションを50戸ずつ売るので売り切るのは難しくない。完売するごとにチラシに「完売御礼!」と謳うので、読み手は「このマンションは人気物件なのだな」という印象をもつ。「この物件は人気物件で他にも購入ご希望のお客様がいらっしゃいます。もし、今回の見学で契約していただけたら、他のお客様にはお断りをいたしますが」という具合に「いましかない」「競争者が他にもいる」ことを強調し、見学者を焦らせる。こういった希少性のワナにハマった結果、焦りで購入し、あとで「住環境が思ったより悪かった」「瑕疵物件だった」などといった事実が発覚して後悔するケースが後を絶ちません。不動産屋のチラシや営業トークが気になったときほど、「あ、希少性のワナにハマりかけている」と自分の状態を客観視し、その物件そのものや住環境などを冷静に細かくチェックするようにしましょう。■2:人は「わかりやすいもの」に弱いから住宅購入を考える際、「新築でなければイヤだ」「中古物件でもリフォーム済みでなければ買いたくない」という人がいます。実際には、マンションの新築価格は、広告費の他、業者の利益もかなり含まれているため、物件そのものの価値よりもはるかに高い金額が付されています。そのため、買った瞬間から価値が下落します。売却を考えた場合には必ず損する物件です。リフォーム済みの中古物件も同じです。リフォーム済みの価格にはリフォーム業者の手数料だけでなく、リフォームを仲介した業者の手数料も上乗せされています。そのため、実際には、中古物件をそのまま買い、自らリフォームを業者に直接依頼した方がはるかに安く済むのです。しかし、人間はそういった諸々のことを冷静に考えるよりも、もともと持っていたイメージを優先します。「手垢がついていない新築は瑕疵がないはず」「どうせ買うならきれいなお家がいい」。いいかえれば「わかりやすさ」です。こういった、「理解し判断できる能力には限界があるため、限られた合理性の範囲内で経済的な判断をしようとする」心理を限定合理性の心理といいます。この限定合理性のワナは、見た目のキレイな物件にだけあるのではありません。激安物件といった、価格にインパクトがある物件にも存在します。激安物件は通常、なんらかの欠陥や売れにくい理由があるからこそ激安なのですが、インパクトがあまりにも強いために思考が働かなくなるのです。繰り返しになりますが、高額な買い物であるため、住宅購入時は冷静さを失いやすく、感情のコントロールが効きにくくなります。なおかつ、不動産取引は、細かい法規定もあるため、一般人にはあまりなじみがありません。そのため、限定合理性のワナにハマりやすくなり、いざ住んでみて失敗に気づくのです。さらに、普段の日常生活で食費やレジャー費などを節約している家庭ほどフラストレーションも溜まりやすいので、こういった高額物件で節約した得以上の損を被りやすくなります。他にも「最初に見た物件を見て『これだ!』と思いこんで買ってしまう」「欲しい物件のイメージがあまりにもよすぎたために、無理に背伸びして資金計画を組んでしまう」という失敗があります。いずれも、住宅購入という買い物が高額で、なおかつ日常生活からかけは離れた行為であるために、冷静さを失ってしまうがゆえに起きています。しかし、高額な買い物という非日常的な行為は一瞬ですが、「住む」「暮らす」という行為は長く続くものです。しかも、失敗したからといって簡単に住み替えることはできません。本来気にするべきは、物件の印象や価格ではなく、「実際に住みはじめたらどういう生活になるのか」「返済計画に無理はないか」「周囲の環境はどうなのか」といった生活のリアルについて、メリット・デメリット両方を視野に入れて考えることなのです。*住宅購入は、私たちが思っている以上に感情のコントロールが必要な行為です。そのため、仕掛けられたワナにハマることなく、まずは自分の状況を第一に考え、資金的にも日常生活を送る上でも無理がないかどうかを冷静に判断しましょう。(文/税理士・心理セラピスト鈴木まゆ子)
2016年08月09日2016年の1月29日、日銀が「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を発表し、日本全土に衝撃が走りました。低金利の時代はこれまでもずっと続いていたわけですが、それどころか金利がマイナスになってしまったということです。「といわれても、理解しづらい……」という方もいらっしゃるでしょうが、それも仕方のないことです。いったい、これはなにを意味するのでしょうか?しかも、さらに実態をわかりにくくしているのは、実は世界の4分の1の国がすでにマイナス金利を導入しているという事実。そうなると、なにがどうなっているのかがますますわかりにくくなります。そこでぜひ読んでおきたいのが、『金利が上がらない時代の「金利」の教科書』(小口幸伸著、フォレスト出版)。過去40年間にわたり、投資マーケットの長期トレンドを見つめてきた元シティバンクの為替ディーラーが、マイナス金利時代の「金利」をやさしく解説した書籍です。ところで、そもそも金利の機能とはどのようなものなのでしょうか? きょうは本書から、そんな基本の部分を引き出してみたいと思います。■そもそも金利とは何なのか?金利は株価や為替レートと同様に、基本的には市場での需要と供給によって動くもの。資金需要が高まれば金利は上昇し、資金供給が高まれば金利は低下するわけです。ちなみに資金需要が高まるとは、資金を借りる(調達する)額が多くなることで、資金供給が高まるとは、資金を貸す(運用する)額が多くなること。一般的に、景気がよくなれば資金需要が高まり、金利の上昇圧力になるといいます。逆に景気が悪化すれば、資金需要は後退し、金利低下圧力になるわけです。ただ、金利が需給によって決まるといっても、為替レートや株価などとくらべると変動の程度は限られているもの。なぜなら、中央銀行の影響が強く及ぶからです。特に短期の金利にはそれがいえるそうです。それだけ金利の変動は経済の基本的な部分に大きく作用するため、中央銀行の役割と影響も大きくなっているということ。そして金利には、大別して次のような2つの機能があるといいます。■金利の2つの大きな機能とは(1) 景気調整機能景気がよくなれば資金需要が高まり、金利は上昇することになります。金利が上昇していけば資金コストは高まるので、資金需要は押さえられて好況にブレーキがかかります。つまり金利にはこうして、景気の行き過ぎを調整する働きがあるということ。ですから逆に不況では資金需要が低下し、金利は下落します。そうなると資金の借り入れをしやすくなり、資金需要の減少にも歯止めがかかり、不況にブレーキがかかるのです。もちろん、これだけで語り尽くせるほど単純な問題ではないでしょう。しかし、これがあくまでも金利の「基本」だと著者は説明しています。(2)資金分配機能資金は一般的に、低い金利よりも高い金利のほうに向かうもの。そのため、高い金利のほうに資金が集まるわけです。こうした2つの機能が働くためには、金利が資金の需給関係によって自由に動くことが前提になるといいます。自由に動く市場がないと、こうした金利の機能は働かないわけです。経済の規模が拡大して構造が複雑化するにつれ、行政による指導や帰省では経済を効率的に運営するのが困難になってくるもの。そこで、金利にその機能を発揮してもらう。そのために規制緩和や自由化が進行するというのです。実際に欧米に続き、日本でも1980年代に預金金利などの自由化が進みました。近年まで行政指導が資金配分などに強い影響力を持っていた中国でも、規制緩和や金利自由化の進行とともに金利の機能が働きはじめるようになったといいます。経済に与える金利の変動の影響が、以前よりも強くなったということです。■マイナス金利政策は正しいかところが、もっとも金利の自由化が進んだ欧米や日本など先進諸国の多くでは、金利低下が進行。ゼロ金利になっても資金需要は増えず、景気の低迷が続きました。金利の機能が働かない事態になってしまったわけです。米国はようやく利上げ可能な状態になりましたが、その他の国は政策金利の一部をさらに下げ、マイナス金利にすることに。こうしたなか、中央銀行は金利の機能を信じ、なんとか働かせようとしているというのです。つまり金利を下げて資金需要を高め、景気を浮揚させることと、市場の資金を日銀の当座預金から、より金利の高い金融商品(市場)へ向かわせるということ。短期から長期へと資金を向かわせ、イールドカーブ(利回り曲線)の水準を下げることです。この点においてはマイナス金利政策は、金利の機能の基本に沿った政策だということです。*基礎的な部分から個人投資家の心構えまで、金利についてさまざまな角度から解説した内容。読んでみれば、いろいろな疑問を解消できるかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※小口幸伸(2016)『金利が上がらない時代の「金利」の教科書』フォレスト出版
2016年08月08日すでに多くのメディアが取り上げているのでご存知かと思いますが、2016年4月から、電力自由化がスタートしました。簡単にいえば、これまでとは違い、一般家庭でも電力会社を自由に選ぶことができるようになったわけです。ただ、「そこでなにが変わるのか?」については、詳しいことがわからないという方も少なくないはず。そこで目を通しておきたいのが、『電気の選び方-わが家の電力自由化ガイドブック-』(電気新聞著/編集、日本電気協会新聞部)。一般家庭を対象に、失敗しない電気の選び方を紹介した書籍です。電気を選べるようになったのだとしたら、いちばん気になるのはやはり料金。そこで本書から、電気料金について覚えておきたいことを抜き出してみましょう。■電気料金が規制料金から自由料金へ!2016年3月まで、一般家庭の電気料金は、国のチェックを受けた料金だったのだそうです。これは一般的に「規制料金」と呼ばれているもの。一方、電力小売全面自由化が決まった2016年4月以降、新しい電力会社や、地域の電力会社から提供される電気料金は、国の規制を受けない「自由料金」。自由料金の特徴は、料金を上げるのも下げるのも電力会社次第で、国のチェックが入らないということ。そのため、多くの会社が参入し、さまざまな電気料金メニューをアピールしているわけです。■とくに切り替えない場合は従来のままでは、2016年4月以降も電力会社や電気料金メニューを変更しなかったとしたら、どうなるのでしょうか?その場合は、自由化前まで地域の電力会社と契約していたメニュー(従量電灯Bなど)が、自動的に継続されることになるのだといいます。なお自動的に継続される自由化前の電気料金メニューのうち、従量電灯などの標準的な規制料金メニューは、競争が進むまでしばらくの間は維持されることになっているのだそうです(正確には、地域の電力会社の「特定小売供給約款」に記されたメニュー)。これらのメニューでは新たに電気を使いはじめるときに選ぶこともできますし、電力会社を切り替えたあとで、再度戻ることも可能。ただし特定小売供給約款には、自由化前にあったオール電化住宅用の料金メニューや、季節別時間帯別料金メニューなどはないそうです。自由化前に契約していた人はそのまま継続利用できるものの、新たに契約を結ぶ場合は、自由化後にできた電気料金メニューのなかから自分の使い方に合ったものをチョイスすることになるわけです。■把握しておきたい電気料金の基本とはところで新しい電力会社の多種多様な料金メニューも、実は従来の電気料金をベースに設計されているのだといいます。そこで、まずは電気料金の基本的なしくみを把握しておくことが大切。月々の電気料金は、地域によって使用する電気の容量(アンペア=A)で決まる「基本料金制」か、一定の使用量まで定額の「最低料金制」に分かれます。一般に電気料金は、この「基本料金(最低料金)」と、電気の使用量(kWh)によって計算される「電力量料金」との組み合わせで計算されるのだそうです。電力量料金は、使用する電力量に応じて料金単価が3段階に分かれ、使用量が多くなるにつれて単価が高くなっていきます。つまり、経済的に余裕のない人でも電気を利用できるようにしているわけです。なお電力量料金では、使用量に応じて「燃料費調整額」が加算または差し引かれるのだといいます。さらに、使用量に応じた「再生可能エネルギー発電促進料金」も加算されることに。■新しい電力会社の多種多様なサービスまた電力自由化後に登場した電気料金メニューではまったく同じしくみのもののほか、電力量料金単価が2段階になっているものや、基本料金がないものなど、異なるしくみのメニューも登場しています。他業種の参入や企業間の提携により、多種多様なサービスも生まれているとか。安さで勝負する電気料金メニューはもちろんのこと、セット割引、ポイント付与などのメニューが豊富に揃い、新しい体系の電気料金も登場。それだけでなく、ガス、通信、石油元売りなど異業種の参入により、各社の強みを生かした「セット割引も。さらには「Tポイント」「Ponta」「dポイント」など各種のポイントカードと提携し、電気料金の支払いによってポイントを貯められるサービスも登場しています。当然のことながら、ポイントの還元は電気料金の割引とも考えられるので、意識しておいて損はないかもしれません。いずれにしても、ライフスタイルを振り返ったうえで、自分に適した電力会社およびメニューを選ぶことが重要だということです。*他にも電気の選び方や使い方について覚えておきたいことがコンパクトにまとめられているため、きっと役立つはず。電力自由化のメリットを得るためにも、ぜひ読んでみてください。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※電気新聞(2016)『電気の選び方-わが家の電力自由化ガイドブック-』日本電気協会新聞部
2016年08月06日投資教育先進国といわれるアメリカでは、子どものころからお金について学ぶ機会が多いのをご存じでしょうか。 幼稚園から高校までの義務教育でお金にまつわることを学習するのはあたりまえ。お金にシビアなアメリカならではの、子どものマネー教育について紹介します。■ローン大国アメリカアメリカ人はお金にシビアだといわれます。それはクレジットカード、ローン大国であることが影響しています。健康保険や医療費もほかの国と比べてかなり高額。個人がしっかりファイナンシャルプランを身につけていないと簡単に破産してしまう社会です。厳しい社会のなかで財産を得て資本主義社会のなかで勝ち残っていくために、投資に関する知識を深める人も多いのです。そんななか、幼稚園から子どもの年齢に応じてお金に関する教育が行われています。親からお金を増やすための株式投資などの知識を得るケースもめずらしくありません。■日本でマネー教育をしない理由一方、日本では、子どもがお金の話をするのはあまりよくないという風潮があります。株式投資はリスクのあることだと敬遠する人も多く、なかなか学ぶ機会がないのが現状です。考えられる理由としては、貯金文化が定着していることがあげられます。堅実にコツコツためる、まじめな日本人の気質ともいえるでしょう。■おこづかい制のメリットみなさんは子どもにお金を管理させていますか? 将来の金銭感覚を養っておくためにも、早めにお金に関する知識を身につけることが大事です。さまざまな考え方があるものの、たとえば、定期的におこづかいをあげることで、子どもは自分のお金を管理し、計画的に使うことを学べます。おこづかい制にするか悩んでいる方は検討してみてください。また、お手伝いの報酬としてお金をあげるのも方法のひとつです。自分の労働によってお金を得ることができ、何もしなければお金を得られないという仕組みを学べます。お金を計画的に使う感覚は、将来役に立ちます。子どもが大きくなったら、家庭の予算立てに参加させてみるといいかもしれません。
2016年07月16日ただいま、空前のハンドメイドブーム!ハンドメイド作品の展示・販売イベント『ヨコハマハンドメイドマルシェ』には、約26,000人が集まりました。初めて開催された2013年とくらべ、ハンドメイド作家の参加数も2倍以上。ハンドメイド作家として、自分の好きなこと・得意なことが活かせるって素敵ですよね。ハンドメイドマーケットの最大手『minne』を運営するGMOペパボ株式会社のプレスリリースによると、10万円以上の売上げのある作家が約1,200人いるとのこと。でも、登録作家数は約25万人。つまり、10万円以上稼げている作家は0.48%なんです。ハンドメイド作家として生活するのは厳しい世界?それとも、チャンスでしょうか。ハンドメイドに関わる方々に、お話を伺いました。■現役ハンドメイド作家が明かす様々な苦労まずは、ハンドメイド歴10年になるkouさん。最近『minne』などのハンドメイドマーケットを利用して、レジンアクセサリーの販売をはじめました。「1ヶ月あたり30から50件ぐらいの注文があります。はじめるのにかかった機材や材料費分(約20,000円)は、カバーできたかなと思います。コメントをいただいたときや、お気に入りにされたときはうれしいです」「また、作品を見ていただく機会を増やしたいと、下北沢のレンタルショーケース『素今歩(すこんぶ)』にも出品しはじめました。ひとりでつくっているので、発送も宣伝も全部やらなくてはいけません。大変ですが、ハンドメイド作家として、もっと成長したいです」初めての方向けには、簡単なハンドメイド作品をつくるキットも販売されていますし、ワークショップも行われています。「オリジナルの作品をつくれるようになる」がハンドメイド作家としての第一歩です。続いては、『minneのアトリエ 世田谷』の作家活動アドバイザー 和田真歩さんにお話を伺いました。人気作家として活躍するには、どうしたらよいのでしょうか?■人気ハンドメイド作家が心がけていること「最近テレビや雑誌でハンドメイドが取り上げられる機会が増えましたが、流行っているからという気持ちで始めても、売れません」ご自身も物づくりの経験がある和田さん。つくり手の視点で作家へアドバイスをしています。ひとつも売れないと悩み、相談されることもあるそうです。「人気作家さんは試行錯誤し、試作を繰り返して制作しています。作品が完成したら、SNSを使って、作品情報を発信することも大切ですね」とのこと。とはいえ、販売するだけがハンドメイドの魅力ではありません。なかには、ハンドメイドで人生が変わった人も……。「minneハンドメイド大賞2016で篠原ともえ賞を受賞したMOLA yasuyoさんは70代。ずっと刺繍を趣味にされていたのですが、ハンドメイド大賞に応募したことをきっかけで、多くの方と知り合えるきっかけになったそうです」(和田さん)。同じ趣味を持った人と出会えるのも楽しいですよね。■成功したいなら流行に振り回されちゃダメ海外では、「自分がつくった作品を売りたい!」という意志の強い作家さんが多いのですが、日本では控えめな方が多いそう。和田さんは「もっと作品を広めたい」、「ハンドメイド作家としてがんばりたい」という方の背中を押したいそうです。流行のデザインは人気が高いのですが、移り変わりも早く、同じ作品をずっとはつくれません。対して、自分の作品をじっくりと作る方法もあります。「作品を自分のブランドとして考えることが大切です。自分の好きな物を追求して、手に取っていただけること、さらにファンになっていただけることを想像してみてください。ハンドメイドのよさは、個性や想い入れが作品に反映した、唯一無二のものであることだと思います」(和田さん)。一過性のブームではなく、長くハンドメイドという文化を支えていきたいという気持ちを感じました。*ハンドメイド作家として生活するには、やはり努力が必要です。ワークショップの講師や本の出版と活躍の場は広がっており、自分がどうありたいのか具体的に考えることも求められます。しかし、いちばん大切なのはハンドメイドを好きだという気持ち。ずっと続けられる好きなことがあるって、幸せなことですよね。(文/マチコマキ) 【取材協力】※kou・・・ハンドメイド作家。ギャラリー「hellheaven’S GALLERY」。 【参考】※国内最大のハンドメイドマーケット「minne(ミンネ)」 登録作家数20万人突破! ~“ハンドメイド作家”という新たな働き方を支援~-GMOペパボ株式会社※minneハンドメイド大賞2016※ヨコハマハンドメイドマルシェ
2016年07月14日パートで家計を支える主婦の方からよく聞くのが、「働くのであれば、主人の扶養範囲内がいいんですよね?」という質問です。多くの奥様は「扶養の範囲内で働きたい」と希望されますし、みなさんもそう思っていらっしゃるかもしれません。でも問題は、この「扶養の範囲内」が一体いくらのことなのかという点です。■103万円以上でも税金は2万円程度そもそも、扶養の範囲という定義があいまいです。よく出る金額は103万円なのですが、どうしてこれが扶養の範囲内なのかご存知でしょうか?実は103万円は、所得税がかからない収入の上限なのです。言い方を変えれば、これ以上働くと税金を払わなくてはいけないということです。仮に103万円を超えて120万円まで働いたとします。その場合、支払うべき税金は、所得税と住民税を合わせて3万2,000円程度です。つまり、税金を差し引いても月額14万円程度は手取りが増える計算になります。こうご説明すると、次のように思う方もいらっしゃるかもしれません。「でも103万円を超えると、旦那の税金が増えるんじゃないですか?」そのとおりです。でも、この金額もそれほどのものでありません。ご主人の収入によっても違いますが、1~2万円程度です。この点から見ても、たしかに払う税金は増えますが、手取り額は増えるのです。「なら、扶養の範囲って関係ないの?」という話になりそうですが、そうでもありません。重要なのは130万円の壁なのです。■年収130万円の壁に注意すべき理由130万円に壁があるという話はあまり聞いたことないかもしれませんが、この壁がとても大きいのです。なぜなら収入が130万円を超えると、奥様自身で国民年金・国民健康保険を払わなければならないからです。130万円未満であれば「ご主人の扶養家族」という扱いですから、保険料を払うことなく、健康保険に加入し、国民年金も払っているとみなされます。しかし130万円以上になると、考え方が変わってくるのです。年金と健康保険の額は、約30万円。つまり手取り額は129万円のときにくらべ大幅に減ってしまうのです。だから、130万円の壁に気をつけなければいけないのです。もし130万円を超えるのであれば、160~180万円くらいの収入にならないとうまみがありません。しかも今年の10月から、一部の人は130万円の壁が106万円に引き下がります。【2016年10月施行の社会保険適用対象】(1)勤務時間が週20時間以上(2)1ヶ月の賃金が8.8万円(年収106万円)以上(3)勤務期間が1年以上見込み(4)勤務先が従業員501人以上の企業(5)学生は対象外ご自身のお勤め先はどうなのか、一度ご確認ください。■130万円の壁のもうひとつの注意点また、他にも気をつけなければならないことがあります。それは、ご主人の会社の家族手当の基準。もしご主人が会社から奥様分の家族手当の支給を受けている場合は、その家族手当の基準がどこなのかを調べておくべきです。会社によっては、奥さんの年収が103万円を越すと家族手当が打ち切られる場合もあります。手当の金額次第では、103万円に留めておいたほうが、トータルで手取りが多くなる可能性もあるからです。噂話に惑わされることなく、一度ご自分で計算してみましょう。(文/ファイナンシャルプランナー・岡崎充輝)
2016年07月14日実現したい素敵なアイデアがあるにもかかわらず、資金が足りないと躊躇しているなら、“クラウドファンディング”も選択肢のひとつに入れてみませんか?日本で唯一、「寄付型」「購入型」両方のクラウドファンディング・サイトを運営する、佐藤大吾氏が監修する『ぼくらがクラウドファンディングを使う理由(わけ) 12プロジェクトの舞台裏』(学芸出版社)から、クラウドファンディングでの資金調達成功の秘訣に迫ってみましょう。■クラウドファンディング市場が急成長中!クラウドファンディングとは、“群衆・大勢の人々”という意味のクラウドと“基金”を意味するファンドを合わせた造語。インターネット上などで画像や動画を使ったプレゼンテーションを展開し、友人・知人を巻き込んで共感を広めていくことで不特定多数の人々から少額ずつ積み重ね、数十~数百万円規模の資金を集めるものです。日本における先駆けとなるサイト『JustGivingJapan(現・JapanGiving)』がオープンしたのは2010年のこと。その後3年で同サイトは調達総額10億円以上を記録。その間にも新たなクラウドファンディング・サイトが次々と誕生するなど、着実に浸透してきています。ちなみに「寄付型」は非営利の団体が運営するプロジェクトを対象とし、支援が税制上の寄付になるもの。一方、「購入型」はそうした厳格なルールはなく、税制上の優遇もない代わりに“お返し”として商品などのリターンを手にすることができるという特徴があります。■開始後1週間で目標の30%集まれば成功とはいえ、「ネットを使って資金を募集して、そんなに簡単にお金が集まるものなの?」と半信半疑の方も多いでしょう。本書の監修を務め、JapanGivingの代表理事でもある佐藤氏によれば、プロジェクト成功の秘訣は「スタートダッシュ」。最初の勢いが大切だということです。具体的には、開始後1週間で目標額の30%を集めることなのだそうです。JapanGivingのデータでは、この条件をクリアしたプロジェクトで最終的に目標金額に到達できなかったものはひとつもないというのですから驚きです。佐藤氏は、スタートダッシュが成功に結びつく理由を、「申請者が本気だということが支援を検討中の人たちにも伝わるから」だといいます。■プロジェクトを成功させる4つのポイント自分が「応援したい」と思ったプロジェクトに、できる範囲で資金を提供する。これがクラウドファンディングの大枠です。では、人はなぜ「誰かを応援するために」お金を出すのでしょうか。じつは、ここを知っておくことがクラウドファンディングで資金調達を成功させる上での大きなカギ。そこには、押さえておきたい4つの“心情”がありました。(1)純粋な利他性相手が喜んだり、相手を助けたりすることが自分自身の満足感になるという心情。寄付による資金調達を考えるときは、まずこの心情がクローズアップされます。(2)暖かな光他人を支援できる立場にある自分を誇らしく思う心情です。寄付するという行為そのものに満足感を覚えるタイプ。これも、支援者自身の内面にもともとある動機です。しかし、プロジェクトの中盤以降、支援者をもっと増やしたいときにポイントになるのは、これ以外の2つの心情です。(3)互恵性相手がお返しをくれたり、自分がお返しをしたりすることで満足感を得る心情。これについて、本書でおもしろい実験が紹介されています。コスタリカの国立公園で、お土産を渡したグループと渡さないグループに「公園のサービス向上のために寄付を」とお願いしたところ、お土産を渡したグループのほうが寄付した人が8%多かったそう。「購入型」クラウドファンディングでは、製品やオリジナルグッズなどをリターンとして提供することが通例。お返しを上手に活用することが、支援者を増やすためのポイントです。ただし、コスタリカの実験では、お土産を渡さないグループのほうが一人あたりの寄付金額は多かったそう。プロジェクトの肝は、活動の魅力と主催者の熱意。リターンで“釣る”発想は危険です。(4)同調性ほかの人たちと同じようにふるまうことで安心し、満足感を得る心情です。他人が寄付しているのを見て、その団体なら信頼できる、と同調するパターンが多いのもこのタイプ。「〇%のお金がすでに集まっています」「目標達成率〇%」といったカウントダウンは、この心情にうまく訴求するため有効です。*クラウドファンディングは、楽にお金を集めるシステムではありません。より多くの人々にプロジェクトを知ってもらい、共感してもらうことが必要です。多くのプロジェクトでは、実際にイベントも行って周知・PR活動を行っています。それでも、自分のアイデアを多くの人に賛同してもらう喜びはクラウドファンディングならでは。本書では、実際にプロジェクトを成功させた12組の体験談からそのメリットとデメリットを知ることができます。もし「資金がない」という理由で二の足を踏んでいるのであれば、本書を手に取ってクラウドファンディングの可能性を探ってみてはいかがでしょうか。(文/よりみちこ) 【参考】※佐藤大吾監修、山本純子・佐々木周作編著(2016)『ぼくらがクラウドファンディングを使う理由(わけ) 12プロジェクトの舞台裏』学芸出版社
2016年07月13日どんな業界にも、表向きには明らかにされていない裏事情があるもの。知らず知らずのうちに、お店が仕掛けた戦略に引っかかっていることもあるでしょう。そこで注目したいのが、『お客に言えないまさかのウラ事情』(丸秘情報取材班編、青春出版社)。さまざまな業界の商売のカラクリやタブーを取り上げた書籍です。「なぜあの店で衝動買いしたくなるのか」「なぜカット野菜はいつまでもパリッとしているのか」などという身近な話題から、「景気と赤い車の法則」や「モンスーンが服と金が値上がりする」など、知っていると雑談にも使えそうなネタまで盛りだくさん。今回はそのなかから、金融業界や経済にまつわるウラ事情をご紹介します。■1:銀行員は同期が出世したら全員出向しなくてはいけない銀行には、古くから特殊な人事の慣習があるそうです。それは、「同期から役員が誕生したら、その世代の行員は全員出向しなければならない」というもの。銀行では出世競争が激しく、昇進レースを勝ち抜けることができるのは同期のなかでせいぜい2~3%。40代半ばで支店長や部長に昇進する人が出はじめ、50代くらいで役員に昇進する人が現れます。ですから、新たに抜擢されたの役員の同期は他人事ではいられません。出向先は関連会社や取引先がメインで、待遇は出向前のポストによって異なります。そのため、銀行で働く人は出世レースはもちろん、途中で脱落したとしても出向先での高待遇を得るための努力が必要なのです。こういった慣習があるため、銀行においては支店長や部長が役員より年上になることはありえないということになります。■2:銀行のクレーム対応者はなにがあっても席を立たない!どの業界でも、避けて通れないのが顧客からのクレーム。最近では、理不尽なクレームをつけるモンスタークレーマーに悩まされるケースも少なくないでしょう。特に金融業界や銀行ではトラブルが起きやすいため、クレーム対応のための独自のルールが決められています。その大原則は、話し合いの途中で決して席を立ってはいけないということ。理不尽なクレームには、毅然とした態度で臨むのが大切。しかし話し合いの途中で何度も席を立ってしまうと、相手に次の一手を考える隙を与え、話し合いがこじれてしまいます。ですから、とにかく相手が引き下がるまでは、なにがあっても席を立ってはいけないのです。そのため、話し合いが決まっている日は、水を飲むのを控えたり、前日のお酒をやめたりする用意周到な担当者もいるそうです。これは他の業界でも使えそうなテクニックですね。■3:証券マンは相手が損しても決して自ら謝ってはいけない証券マンにとって、「すみませんでした」と謝ることは命取りになりかねないといいます。事実、どんなに株価が下がっても、クライアントに激しく責め立てられても、彼らは決して謝りません。非を認めてしまえば相手は責任を証券会社に押しつけ、裁判に持ち込むこともあるからです。たとえ自分が勧めた商品で相手が損をした場合でも、証券マンはその責任を負わないのが業界の譲れぬ方針なのです。だから証券マンが営業をする際は、「絶対~ですよ」というような断定的な表現はしないのだとか。「期待できると思いますよ」や「リスクは少ないですよ」という、曖昧な表現で通しているわけです。ただ、いくら責任がないからといっても、自分の勧めた商品で顧客の財産が目減りするということは精神的にきついもの。それだけが原因ではないでしょうが、証券マンの離職率はいまも昔も高いままです。■4:わずか20%の大口顧客が企業の主な売上を支えている世間がどんなに不景気でも、高級車を乗り回し、ブランド品で身を固める人たちは必ずいるもの。そういう人を見ると、どうして自分のところにはお金が回ってこないのかと嘆きたくなるかもしれません。しかし、これはれっきとした経済の法則。イタリアの経済学者であるヴィルフレド・パレート教授が100年も前に提唱したように「世の中の富の80%は20%の人に集中する」のです(パレートの法則)。経済学者の間では「80対20の法則」とも呼ばれ、20%の顧客が売上の80%をつくるとも解釈されています。どこの会社でも大口の取引先は20%程度。いくら取引先の数がたくさんあっても、その20%の中の1社と取引がなくなるだけで、あっという間に業績が悪化することもあるのです。ですから、営業マンが必死で開拓した取引先も大口取引でない限り、あまり会社に貢献しているとはいえないのです。*自分が働いている業界では当たり前のことが、周りから見れば驚きの対象だということもあるでしょう。いずれにせよ、ウラ事情を知っていると、買い物や大きな契約の際など、有利になることもあるかもしれません。(文/平野鞠) 【参考】※丸秘情報取材班(2016)『お客に言えないまさかのウラ事情』青春出版社
2016年07月13日『潜在意識を使いこなす人 ムダにする人』(井上裕之著、フォレスト出版)の著者は歯学博士ですが、他にも経営学博士、コーチ、セラピスト、経営コンサルタント等、さまざまな肩書きを持っています。歯科医師と並行し、ジョセフ・マーフィー博士の「潜在意識」と経営学の権威ピーター・ドラッカー博士の「ミッション」を総合させた「ライフコンパス」を提唱。また、セミナー講師としても活躍しており、著者のセミナー会場は常に満員。1,000名規模の講演も成功させてきているそうです。つまり本書ではそんな実績を軸として、潜在意識を使いこなす人とムダにする人の違いを明らかにしているわけです(これは、「成功する人」と「そうでない人」にも置き換えられそうです)。きょうはそのなかから、お金についての両者の考え方の差を見てみたいと思います。■お金は使う人の品性次第で変わる日本人の根底には多かれ少なかれ、「お金のことを口にするのは卑しい」「お金をたくさんもらうことは不誠実である」というような考え方があるもの。しかし、著者はそうした考え方に疑問を呈しています。お金がいちばん大事だとはいわないけれども、お金がないと心は豊かになりにくく、人生の選択肢を狭めてしまうこともあるから。そう考えると「お金がありすぎる苦労」より、「お金がない苦労」のほうがはるかに問題だというのです。「貧しくても心が豊かならば」というけれど、やはりお金はあるに越したことはないということ。ユダヤ人の格言のなかに、次のような一節があるそうです。「貧乏は恥ではない。でも、名誉だと思うな」いうまでもなく、「貧乏を清いと思い、名誉だと思うことは危険だ」という意味。世の中の万物はエネルギーであり、お金自体もまた、本質はエネルギー。いいとか悪いとかの問題ではないわけです。あくまでも使う人の品性次第で、よいエネルギーにも悪いエネルギーにもなるということ。だから、「貧乏」=「清い」、「お金持ち」=「悪」ではないという考え方。ユダヤ人はこうした格言を通じて「お金の本質をよく理解しているからこそ、ためらうことなくお金に執着し、お金儲けをするのだろうと著者は分析しています。■お金に対する偏見を取り除こうそこで、もしも「お金に不自由したくない」「お金持ちになりたい」と思うのであれば、まずはお金に対する偏見を取り除くことからはじめなければいけないともいいます。では、潜在意識を使いこなす人とムダにする人とでは、お金に関する考え方にどれほどの違いがあるのでしょうか?著者によれば、潜在意識を使いこなす人は、「お金の本質」をよく理解しているのだそうです。一方、潜在意識をムダにする人は、そのあたりがよくわかっていないのだとか。心のどこかに「お金は卑しい」というマイナスのイメージを持ち、否定的な思いを抱いているというのです。だからこそ、いつまでたっても「お金が寄ってこない」=「貧乏」だというわけです。だとすれば、果たして著者自身はどう考えているのでしょうか? このことについて、著者は興味深いことを書いています。「いま、なにが欲しいですか?」と聞かれたとしたら、「いろいろあるけど、お金もそのなかのひとつ」だと即答するというのです。そしてそれは、著者自身が「お金の本質」と「資本主義社会におけるお金の価値」を正しく理解しているからだとも断言します。なぜなら誤解を恐れずにいえば、資本主義社会においては、お金を持っていれば勝てることが多いのも事実だから。■お金持ちになるには目標設定をでも、もし「お金持ちになりたい」と思ってはいても、実際にお金持ちになれる人はほんのわずか。では、なぜお金持ちになれないのでしょうか?著者によればそれは、多くの人が「お金持ちになりたい」と願ってはいるけれど、なにをもってお金持ちなのか、その定義が曖昧だから。そこで、「なぜ、お金持ちになりたいのか」「具体的にいくらくらいを持つお金持ちになりたいのか」「そのお金をどのようにして稼ぐのか」「そのためにどういう自分であるべきなのか」などを見つめなおし、具体的な目標に落とし込んでいかなければならないといいます。「お金がないからビジネスをはじめられない」という人がいますが、そういう人は「いま、持ち得ているお金でなにをすべきか」を必死に考えるべき。もしも「自分にはビジネスのセンスがない」と思うのならば、いままさに稼いでいる人から学んだり、本を読んだりして、必死に勉強をすることが重要。ところが、お金持ちになれない人は、こういう作業を「労力」と捉えてしまい、「必要な作業である」という認識がないのだと著者は指摘します。でも、そのような作業を面倒くさがってやらないから、お金持ちになれないのだそうです。*潜在意識を操れるようになれば、常に正しい「選択」と「行動」ができるようになるのだと著者はいいます。お金に対するこうした考え方も、そのひとつなのでしょう。潜在意識をさまざまな角度から操れる人になるために、目を通してみてはいかがでしょうか?(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※井上裕之(2016)『潜在意識を使いこなす人 ムダにする人』フォレスト出版
2016年07月07日子どもを授かると、親としていちばん最初に考えるのが「教育費の準備」ですよね。できる範囲で希望の教育を受けさせてあげたい。親ならば誰もが思います。そこで最初に検討されるのは「学資保険」ではないでしょうか?学資保険は、いろいろある生命保険のなかでは、比較的好印象な保険ではないかと思います。しかし、この学資保険、本当に教育費の準備になるのでしょうか?なぜ日本人が学資保険に対して好印象なのかといえば、学資保険が積立代わりだと思っているからでしょう。■学資保険でいくら戻ってくるのか計算すべしその昔、郵便局で学資保険に入ると、満期の時に倍ぐらいになって戻ってきた時代がありました。インフレ率等を考えてきても相当な戻り率です(そのぶん住宅ローン金利も高かったので、差し引きしてどれくらい恩恵を受けている人がいるかは微妙ですが)。そのイメージがついてはなれないのか、「学資保険は得だ」と思ってしまうようです。しかし実は、ご相談に見える方の実の70%以上は、得にならない学資保険に入っているといったら、みなさん驚かれるのではないでしょうか。もしすでに学資保険に加入しているのであれば、一度計算してみてください。「いくら払って」「いくらの満期で戻ってくるのか」を。210万円払って、200万円の満期なんてケースは結構あります。なかには、払った以上に戻ってこないことをわかった上で加入している人もいるかもしれません。そんな人は決まって、「保険がついているから仕方がない」なんていい方をします。たしかに、学資保険・こども保険という名称の保険のなかに、育英年金などの保険機能がついているものもあります。学資保険払込中に契約者(ほとんどのケースで父親)が死亡した場合に遺族に教育費の援助ということで育英年金が支払われるという内容です。内容の話を聞くと、とってもいいような気がします。しかし、よーく考えてください。なぜなら、教育費等必要な保障額は、ご主人の生命保険できっちり計算してリスクヘッジさせてあるはずです。■200万円もらえる学資保険じゃないとダメつまり、わざわざ学資保険でプラスしてその部分にお金を払う必要はないはずなのです。その他に、子どもの医療保険がついていることを理由にあげられる方が多いのですが、それもいかがなものでしょうか?乳幼児医療制度が整っている今、ある一定の年齢まで、医療費は無料です。自治体によって違いますが、長いところですと中学校卒業するまで、医療費無料なんていう自治体もあるほどです。そのなかで、どれだけの保険料をそこに払うのが適当なのか、考える必要がありそうです。学資保険は、純粋の貯蓄であるべきではないかと思います。180万円ぐらいの払い込みで200万円の満期がもらえる。最低でもこれくらいでないと、月々積立預金をしたほうがマシなことになってしまうのではないでしょうか?現段階で、払ったより戻ってくる金額が少ない学資保険に入っている方は、がっかりしてしまったかもしれません。でも、あきらめずに、計算することをお勧めします。現在加入中の学資保険を解約すると、いくら損をするのか。そのことについて計算するのです。ほとんどのケースで保険の途中解約は損が出ます。しかし、いまやめた損のほうが、満期まで払い続けたときの損にくらべて少ない場合は、思い切って解約をすることをお勧めします。その上で、貯蓄性の高い学資保険に入りなおして損が少しでも埋まるのであれば、入りなおしを検討してみてもいいのかもしれません。(文/ファイナンシャルプランナー・岡崎充輝)
2016年07月05日クリスチャン・ベイル、スティーブ・カレル、ライアン・ゴズリングらが出演し、“リーマンショック”の裏側を軽妙なテンポで描いた『マネー・ショート華麗なる大逆転』。そのブルーレイ&DVDが7月6日(水)にリリースされることに合わせ、本作でプロデューサーも務めたブラッド・ピットの特別映像がシネマカフェに到着した。本作は、『マネーボール』の原作者マイケル・ルイスによる金融系ビジネスマンのバイブル「世紀の空売り 世界経済に破綻に賭けた男たち」に基づく物語。『俺たちニュースキャスター』などコメディ作品を多く手がけてきたアダム・マッケイ監督が、世界経済を襲ったリーマンショックの裏側でいち早く経済破綻の危機を予見し、ウォール街を出し抜いた実在の人物たちを豪華キャストで描き出し、評論家の圧倒的な支持を獲得。第77回ゴールデン・グローブ賞で3部門ノミネート、第88回アカデミー賞では5部門ノミネートされ、見事、脚色賞を受賞した。今回いち早く到着したのは、世界の崩壊を信じる変わり者を演じたブラッドの即興シーンや、ブラッドの出演に関するマッケイ監督のインタビューなど、ブルーレイ収録の特典映像の一部。ブラッドは、住宅バブルを好機と捉え、ウォール街で一旗揚げようと野心に燃える若き2人の投資家から相談を持ちかけられる元銀行家で、いまは一線を退いた実在の人物ベン・リカートを演じている。映像では、監督は当初ブラッドの出演は考えておらず、製作陣が真顔で“報告がある”とやってきたときは、ブラッドの出演決定ではなく「製作中止かと思った」というヒヤヒヤの裏話を明かしている。また、ブラッドが演じた伝説の銀行家・ベンは、気候変動や経済崩壊が自然破壊を促すと信じている変わり者として知られているが、彼の演技には説得力があった様子でスタッフたちも太鼓判。しかも、ブラッドがベンについてリサーチを進め、キャラクターを掘り下げた結果生まれた、遺伝子組み換えを批判する“タネ”のシーンは即興というから、要チェックだ。エンターテインメントとして楽しみながら、世界経済の動向についても知ることができる本作。ブルーレイ&DVDには、ほかにも実在の人物が登場したカットになったシーンや、クリスチャン・ベイルなどキャストのインタビューも収録される。『マネー・ショート 華麗なる大逆転』ブルーレイ+DVDは7月6日(水)より発売(同日レンタル開始)。(text:cinemacafe.net)
2016年07月04日「太陽光発電って儲かるんですか?」これから家を購入・建築しようと検討している人から、きまって聞かれる質問です。そうでなくとも、一戸建てに住んでいる人であれば一度は「せっかく屋根があるんだから、太陽光発電で稼げないかなあ」と考えたことがあるはず。でも、本当に太陽光発電は儲かるのでしょうか?■太陽光発電に注目が集まりはじめた理由そもそも太陽発電が注目されはじめたのは、東日本大震災のときの福島原発事故以降。輪番停電や脱原発などが理由にあげられるのでしょうが、いちばんの理由は、2012年7月に施行された、「再生可能エネルギー特別措置法」です。この法律は、(1)電力会社に対して、再生可能エネルギー発電事業者から政府が定めた調達価格およびその期間による電気の供給契約の申し込みがあった場合には、応じるよう義務化。(2)制度運用に伴い電気事業者が電力の買い取りに要した費用は、原則「賦課金」(サーチャージ)として国民が広く負担する。という、おもにこの2つが柱になっている法律。簡単にいえば、(1)太陽光発電で発電した電力に関しては、一定の金額で電力会社は買い取らないといけない。(2)そのかわり、買取にかかった費用は、毎月の電気料に上乗せして国民全体に支払ってもらう。という制度です。つまり太陽光発電をしている人は、少し高値で電力を買い取ってもらい、していない人は、その買い取り費用だけを負担させられるという制度なのです。こう説明されただけだと、やはり太陽光発電をした方がいいと感じますよね。しかし、シミュレーションをしてみるとそれほど有利ではないことがわかるのです。■太陽光発電をシミュレーションした結果太陽光発電を買い取ってもらう方法は、大きく分けて、10kw未満(住宅用)の「余剰買取」と10kw以上(産業用)の「全量買取」があります。今回は、10kw未満(住宅用)で一度どれぐらいメリットがあるのかを計算をしてみましょう。10kw未満(住宅用)の場合買い取ってもらえる価格は、1kwh当たり31円か33円。今回は東京電力管内の31円で計算します。一般的な住宅に搭載できる太陽光パネルは、4kw前後の大きさものが主流です。問題は、4kwの太陽光パネルで年間どれだけ発電できるのかです。発電量は地域によっても違いますし、太陽光パネルのメーカーによっても多少の違いがありますが、全国的に平均1kwあたりの年間発電量は1,200kwh程度です。つまり4kwであれば、年間発電量は4,800kwh。ということは、4,800kwh×31円=148,800円が年間に太陽光発電で発電できた金額になるわけです。しかし、これはあくまでも発電金額であり、儲けではありません。10kw未満の場合は余剰電力の買取りですから、自家消費した電力は買い取ってもらえないのです。発電量のどのくらいが余剰電力として買われていくかは、生活スタイルによって異なりますが、多くても3分の2程度だと思われます。つまり、4,800kwh×2/3=3,600kwh、3,600kwh×31円=111,600円が実際に買われる金額です。しかし残りの1,200kwh分も使った電力から差し引かれますから、節電できたことに変わりありません。電気料が28円/1kwhだとすれば、1,200kwh×28円=33,600円節約できたことになります。すると、売った分の電力と節約した分を合計すると、年間に得した分は111,600円+33,600円=145,200円になりますね。■太陽光発電をはじめるためにかかる費用次に、太陽光発電をするためにどれだけの費用が必要なのかについて。昔にくらべて随分安くなったといえ、1kwあたり30万円から40万円。メーカー次第ですが、おおよそ120万円前後初期投資がかかると思われます。そうすると、1,200,000円÷145,200円=約7年4ヶ月。つまり7年と4ヶ月以降やっとお得となるわけです。ただし、これはあくまでも現金で初期費用を支払った場合。ソーラーローンを使うと(金利1.5%、10年返済)金利が10万円ほどかかるので、投資の回収期間は8年程度になります。もちろん8年以降は儲けが出るという考え方もありますが、買取りの保証期間は10年。10年後の買取り金額はどうなるかわかりません。10年後以降も、支払っている電気代の単価程度を買い取ってもらえるのであれば、パワコンの取替費用や発電効率の劣化を考慮してもある程度得にはなりそうです。でも、「だから太陽光発電が爆発的に儲かるのか?」と言われれば疑問が残ります。(文/ファイナンシャルプランナー・岡崎充輝)
2016年06月21日スリリングにスピーディに展開するクライム・サスペンスかと思いきや、拝金主義を風刺し、勝者と弱者の格差を増幅させる社会問題にまで鋭く切り込んだ『マネーモンスター』。ジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツという2大スターの競演も話題だが、娯楽性と知性派ストーリー、エモーショナルな人間ドラマが見事に融合した良質なハリウッド映画としても注目を集めている。監督は、名女優としても知られるジョディ・フォスター。8年ぶりの来日を果たし、作品に込めたフィルムメーカーとしての想いをシネマカフェに語ってくれた。取材部屋に入ると、ブルーのパンツスーツに身を包んだフォスター監督が、「ジョディよ、よろしく」とにこやかな笑顔とともに手を差し出して迎えてくれる。子役としてデビューを果たしてから50年以上、ショービジネスの第一戦で活躍し続けているトップスターだが、とても気さくだ。立ったままのスタッフに、「あそこにも椅子があるから座ったら」と気配りも見せる。いざインタビューという段になると、するりとパンプスを脱ぎ、カウチに胡坐をかいて、リラックスした表情を見せてくれた。まず、最初に脚本を見せたのが主役を演じたジョージ・クルーニーだったという話からスタート。「役にぴったりだと思ったの。観客はジョージが演じるリー・ゲイツに最初に出会った時、きっと彼を好きになれない。エゴが強いし、惰性で生きているし、酒グセも悪いし、人への思いやりがない。自分を見失っている状態の人だから。番組をジャックされると、臆病な反応を見せるしね。でも、観客は段々と彼の状況を理解していくの。いくら有名なTVパーソナリティでも、人生で失敗しているから自己評価が低いんだなと。ところが、それが事件をきっかけに変化していくの。ある意味、彼は映画の最後でふたたび人間である自分を取り戻すことができる。だからこそ、最初は嫌われるかもしれないけれど、変化し、観客を引きつけ続ける、そんな役者が必要だったの」。ジョージがTVパーソナリティとして番組の頭で滑稽なダンスを披露するのだが、それは彼のアイディアだったそう。「今回はジョージがダンスしたいと言ってくれたのが嬉しかった。何しろ、100%コミットしてくれて、自ら笑いものになるぐらいのショーマンシップを見せてくれたことが、映画のためにもなったの。ただ、常にアドリブを取り入れるかどうかは、映画の種類によるわね。プロットがはっきりしていて、セリフが多いと脚本がしっかり詳細まで書き込まれているから、アドリブ自体取り入れにくいし。でも、監督として私自身は、役者のアイディアを頼りにしているところがあるから、こういう提案は大好きよ」。共演には、ジョージとの相性が良いジュリア・ロバーツだ。「彼女は“AMAZING JULIA ROBERTS”なの!彼女以外にこの役は考えられないぐらい素晴らしいの。ジュリアのキャスティングが決まってから、より役を掘り下げることができ、よりヒロイックなキャラクターにすることができたわ。もともと、2人が演じたキャラクターは強い絆で結ばれている必要があったの。劇中では、実際に一緒に登場するのは冒頭と終りだけ。撮影でも2人が同じ現場で演技をしたのは2日ほどなの。とてもバーチャルな共演だったから、強いケミストリーがなければいけなかったの。だから、2人から生まれるマジックが必要だったのよ」。大スターである2人が共演しているというだけでなく、幅広い観客が楽しめる良質な社会派娯楽作であるこの作品は、最近ではハリウッドであまり見られなくなったジャンルの映画とも言える。「そうね。こういうタイプの映画は、もうあまりハリウッドで作られなくなったわね。それは、スタジオが商業的な戦略としてシリーズもの、スーパーヒーローものを多く作っているから。今後はもっと観られなくなるかもしれないわ。でも、インテリジェントでチャレンジングでユニーク、オリジナルな映画を観たい観客が多くいると信じているの。作品を作るとき、観客がそれを観るのが大きいスクリーンか、アイフォーンか、ケーブルかなんて気にしない。私は映画を観てもらえればいいと思っているの。『マネー・モンスター』は一般向けのペースの速いスリラーでもあるけれど、キャラクターの心理描写も丁寧にしたし、意味深い作品だと思うわ。観客に観たいと思ってもらえれば嬉しいけれど」。本作のモチーフであるお金というものは、人の本性、価値観を如実に見せるものだとつくづく感じられる。社会的成功者として、映画監督として、お金の価値というものをどう感じている?「今回登場する男性キャラクターは、みな自分の人間としての価値を見いだせずに葛藤しているの。いまの文化では、自分の価値をはかるときに、ものさしとしてお金や知名度を意味深いものとして使っているところがあるわよね。ジョージ演じたリーに関しては、少なくとも冒頭ではそう。確かにお金にはそういう側面はあると思う。アメリカや日本のような先進国で生きていると、自分がどんな人間であるか見えにくくなる。そのときに、最初に自分が勝者なのか敗者なのかをお金や地位、名誉で測りたくなる気持ちは分かるわ。でも私にしてみれば、いままでいろいろな人とふれあってきた経験というものが最も人の価値として重んじられるべきだと思うの。それは、金銭的な財産や仕事、ましてや賞などで測れるものではないわ」。ショービズ界といえば、知名度やギャランティで重要度が測られがちな世界。そこで人生におけるほぼすべての時間を生きてきた監督が、いったい健全な価値観をどのように育んできたのだろう。「どうかしら。とにかく、やりたかったことは昔から変わらないの。映画を作るということよ。映画を作るアーティストとして生きることで、地に足を付けていられる。私の場合、小さいときから公の目にさらされる立場だったから、なるべくリアルでありたいと思ったし、リアルであることに目が向くのかもしれないわね。子どもとして、自分の実人生を奪われそうになることが多かっただけに、自分が大切にするもの、矜持の持ち方を自然に身に付けたのかもしれない。これは仕事、これは私の人生というふうに、わけて考えることでそういう感覚を保っているのかもしれないわ」。先日、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェイムにも名前を刻んだ監督。名実ともに、ハリウッドスターとして映画史に名を刻んだわけだ。今後は、女優業との割合はどのようになっていくのか。「いまは、監督業に専念したいの。27歳で初長編を撮って、それから4本の映画を作ったけれど、決して数としては多くない。もちろん、その間も休んでいたわけではないし、役者としてのキャリアも積んだし、2人の子育てもしているから、とても満足している。でも、監督をするなら100%コミットしなければいけないの。企画と出会って、“さあ、今だ”というタイミングが来たときに、チャンスを逃がしたくない。ただ、これまで50年以上も演技をしてきた自分にとって、演技をすることはほかと比較することはできないぐらい素晴らしいことだから、止めることはないわ」。監督業にますますの意欲を見せるジョディ・フォスター監督。小さい頃から慣れ親しんできた日本文化が大好きだと話し、いつかこの独特な文化を作品に反映させられたらと考えているとか。その“いつか”も心待ちにしつつ、今後のジョディ・フォスターの活躍に注目したい。(text:June Makiguchi/photo:Kyoko Akayama)
2016年06月08日ジョディ・フォスターが監督を務めるリアルタイム・サスペンスに、ジョージ・クルーニー、ジュリア・ロバーツという豪華キャストが集結した『マネーモンスター』。本作で、全米高視聴率の人気番組を突然占拠する謎の男カイルを演じた、ジャック・オコンネルの特別映像が到着。生放送番組をジャックしながら、実はちょっぴり“ダメ男”というキャラクターを好演した彼の魅力に迫った。本作は、司会者リー・ゲイツ(ジョージ・クルーニー)の軽快なトークと財テク情報で高視聴率を稼ぐ、TV番組「マネーモンスター」の生放送中に起きた衝撃の事件を描く緊迫のリアルタイム・サスペンス。製作も兼任して主演したジョージと、敏腕番組ディレクター、パティ役のジュリアが、『オーシャンズ12』(05)以来、実に11年ぶりの共演を果たしていることでも話題だ。そんな中、番組をジャックする謎の男カイルを演じたのは、アンジェリーナ・ジョリー監督作『不屈の男アンブロークン』にも抜擢された25歳の英国俳優ジャック・オコンネル。今回解禁となる映像では、ゲイツが番組で指南したとおりに、母親の遺産をまるごと投資してしまい、文字どおり全財産を失ってしまうカイル役を好演した彼にフィーチャーしている。まさにダメ男なキャラのカイル。その一方で、自分が行動することで「ほかにも大損した人が大勢いるはず。真実を明らかにする」という、強い信念をもっている部分が映し出されていく。ただのダメ男ではなく、なんだか憎めない魅力を発揮しているのは、ジャック・オコンネルの演技力の成せるところ。そんな彼の演技を、フォスター監督は「才能あふれる俳優」と絶賛、共演者のジョージも「確かに危険だが、救いの手を差し伸べたくなる男だ」と語るキャラクターを見事体現した彼には、製作陣も太鼓判を押している。ジョニー・デップやヒュー・グラントも、かつて魅力的なダメ男を演じたことで高い評価を得てきた。この世代きっての演技派ジャック・オコンネルが演じる、ダメ男・カイルにもぜひ注目してみて。『マネーモンスター』は6月10日(金)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年06月08日社会現象ともなった『おそ松さん』は、赤塚不二夫原作の『おそ松くん』をもとにしたオリジナルアニメ。「成人した6つ子全員がニート」という設定なので、ファンがグッズや関連商品にお金を使うことを「養う」と表現することをみなさんはご存知でしょうか。アニメ放送終了後も人気は加速するばかりですが、実際に6つ子を養うとしたらいくらかかるのでしょうか?住居費、水道光熱費と項目はさまざまですが、わかりやすい食費について考えてみました。算出・アドバイスをいただいたのは、ファイナンシャル・プランナーのヨースケ城山さんです。■6つ子の食費は月52万円以上まず8人家族の食費は、いくらぐらいで考えるのでしょうか。「通常食費の目安に関しては1人2万円/月として想定します。父母と6つ子の8人で通常ならば16万円あれば充分です」(ヨースケさん)食費が16万円という数字だけでもオドロキですが、大家族ですから仕方がありません。問題なのは、6つ子の食生活。朝食こそ6人そろって自宅で食べるシーンがありますが、その他は居酒屋を中心とした外食の割合が高くなっています。おやつもよく食べていますし、嗜好品のコストが気になりますね。これらを踏まえて松野家の食費を算出すると、なんと合計で6つ子1人あたり2,300円/日となることがわかりました!朝食費(自宅):200円昼食費(自宅):300円夕食費(外食):1,000円お菓子(嗜好品):300円飲料代:500円両親は外食をしている様子がないため、夕食費を自宅500円で計算します。よって松野家での1日の食費は、2,300円×6人+1,800円×2人=17,400円。月30日計算すると、522,000円!とんでもない金額ですよね。食べ盛りのころはどうしていたのでしょうか……。食費だけでこの金額ですから、生活費も考えると「早く働け」といいたくなりますね。■単身世帯なら月平均5万円未満次に、家計における平均的な食費を見ていきましょう。家計調査報告(家計収支編)平成27年(2015年)平均速報によると、以下の調査データが出ています。<2人以上の世帯>年額:937,712円月平均:78,142円※2人以上の世帯については3人、4人、5人と増えていくごとにこれ以上の金額がかかります<単身世帯>年額:542,443円月平均:45,203円「平均とくらべて、我が家の食費はどうだろう?」と見なおしをしてみましょう。特にチェックすべきは、外食の割合です。■食費は外食を減らして抑えよう家計調査報告(家計収支編)平成27年(2015年)平均速報によると、単身世帯の外食費は平成25年(2013年)~27年(2015年)年で年平均142,200円、月あたり11,850円となるそう。2人以上の世帯の場合は、平均167,203円になります。しかし、大都市圏ほどこの金額が高い傾向があるのだとか。東京都区では年243,890円と平均を多く上回っており、家族で月2万円の外食費がかかっている計算になります。単身世帯での外食費は年平均142,200円、月あたり11,850円となるようです。ヨースケさんいわく、家計のやりくりを考えるなら「外食回数を見なおすべき」だそう。お弁当をつくっていったり、食べ歩きが趣味の人なら、ディナーよりもコスパのよいランチにしたりする工夫もできますね。また、アルコールメインの外食が多い場合、“家飲み”に変更するという手も。うっかり飲み過ぎ、終電を逃してしまってのタクシー代が浮く……などの効果があるかもしれません。*松野家の食費が月52万円以上かかってしまうのは、外食回数が多いから。自宅で食事していれば、6つ子でも月16万円で済むはず。3倍以上もかかっているなんて、大問題ですよね。しかし、アニメのなかでは行きつけの“チビ太のおでん屋”には未払い、ほとんどがツケている状態。ということは、松野家の食費はチビ太が支えているといっても過言ではなさそうです。6つ子の父母は、チビ太に感謝したほうがいいのかもしれませんね。(文/マチコマキ) 【取材協力】※ヨースケ城山・・・節約アドバイザー、ファイナンシャルプランナー、AFP、住宅ローンアドバイザー、年金アドバイザー。著書は『給料そのままで「月5万円」節約作戦!』(ごま書房新社)。本の内容は、『らくらく貯蓄術。住宅ローン地獄に落ちない為の家計防衛のススメ。』にもまとめられている。ブログ『節約アドバイザーヨースケ城山ブログ』では、節約だけではなく転職活動、著書、社労士、FPのことを配信中。
2016年06月07日いま注目されている、フリーランスという働き方。インターネットの発達で、働き方に大きな変化が起きています。ランサーズ株式会社が2015年に行った調査によると、国内労働人口における日本の広義のフリーランスの割合は19%。日本国内で1,228万人がフリーランスとして働いていることがわかりました。また、同調査で行ったアンケートから、これからもフリーランスが増えると予想されています。ただ、魅力的な働き方である一方、フリーランスには「報酬が不安定」というイメージがありませんか?そこで今回は、なりたいが見つかる職業紹介サイト『CareerGarden』を参考に、フリーランスのメジャーな職種の報酬を調べてみました。これからフリーランスになることを考えている方は参考にしてみてください。■1:イラストレーターデザイン会社等に勤めているイラストレーターの年収が300~500万円といわれる一方で、フリーのイラストレーターの多くがアルバイトをしながら生活しているといわれています。一方で、人気が出てくると一枚の絵に何万もの価値が出るようになります。辛い下積み時代を耐え抜いて、実力と個性を磨くことで花開く、夢のある仕事です。■2:フリーライタークラウドソーシングサイトの登場などで、フリーライターの年収は人によって大きな差が見られるようになりました。駆け出しのころは月数万円~10万円の人がもっとも多いといわれています。名前が売れてくれば報酬も上がりますが、そういった人はひと握りです。最近はウェブでの仕事が増え、多くの人がライターとして活動しています。なかでもクラウドソーシングサイトでは、主婦や学生が副業としてライターをやっており、1記事数百~数千円で記事を書いていることもあります。プロのライターの報酬もこのあおりを受けて下がってきており、厳しい業界となっています。■3:個人タクシー全国ハイヤータクシー連合会によると、個人タクシーの平均年収は342万とのことです。個人タクシーの売り上げは地域により差が出てくるので、住んでいる地域によって年収に差が出ます。都内では、年収は500万円以上の方が多く、高い人では年収が800万円を超えます。都内のほうが有利な仕事ですが、観光地で個人タクシーが観光案内をして利益を得るところもあります。■4:フリーカメラマンフリーカメラマンの収入にはばらつきがあり、副業をしながら食べている人も多いため、はっきりとした平均年収はわかりません。仕事が来ない人は月収0円、有名カメラマンは数千万以上稼いでいるといわれています。雑誌の撮影は、1ページ1万円~、スタジオ撮影は1カット5,000円~が相場です。企業勤めのカメラマンの年収がサラリーマンとほとんど同じ。フリーカメラマンは狭く厳しい道なのです。■5:通訳意外なことに、フリーで通訳をしている方の多くの方が時給制で働いています。その場合、時給2,000~4,000円、年収だと300~600万円くらいが相場になります。通訳に常駐してほしいという企業は少ないため、会社に勤務している方は少なく、多くの方が派遣会社や通訳エージェントに勤務している方が多い職業です。■6:キャリアカウンセラーキャリアカウンセラーも契約社員やパートタイマーとして働いている人が多い職業です。三菱UFJリサーチ&コンサルティングが平成23年3月に発表した「キャリア・コンサルティングに関する実態調査結果」によれば、直近1年間の収入が「300万~400万円未満」と答えた人がもっとも多く18.5%、次いで「200万~300未満」が15.8%。「1,000万円以上」と回答した人は8.0%となっていますが、この層はおそらく企業の人事などに勤める人であると想定されており、フリーの方の多くが200~400万円の間で働いていることになります。海外では個人と契約してキャリアカウンセリングを行うことは当たり前ですが、日本では学校やハローワーク、NPO団体などでしか仕事がないため、大きな収入は見込めません。■7:フリースタイリスト実力世界の厳しい業界ですが、3年ほど経験のあるスタイリストであれば、平均的な年収として200万円~500万円くらいに落ち着きます。実力がついて来れば有名人や大企業からのいらいがくるようになり、大金を稼ぐことができます。スタイリストは、仕事量が増え、一人でこなすのが厳しくなってきたところでアシスタントを雇う人が多いです。スタイリストアシスタントの平均年収は、0円~150万円程度が一般的です。アシスタントに給与を払うかどうかは個人の判断に委ねられていますが、報酬が安すぎるとアシスタントにも逃げられてしまいます。■8:グラフィックデザイナー会社員・フリーランス合わせてのグラフィックデザイナーの年収の平均値は300~430万円。大手に勤める方は1,000万円以上稼ぎますが、中小代理店の場合は初戦度300万円を切ることもあります。経験を積んで独立しても厳しい業界で、初年度の年収は企業勤め時代のものを下回ることが多く、営業に追われることになります。もちろん、実力がある方が独立することが多い業界なので、厳しい期間を乗り切れば年収700~800万くらいになり、最終的に制作プロダクションやデザイン事務所を立ち上げる人もいます。■9:プログラマープログラマーの平均年収は350~500万円といわれおり、他業種と比べても一般的な平均年収と変わりません。フリープログラマーとして働いている人は多いですが、派遣社員として厳しい生活を送っている人がいる一方で、独立して1,000万円以上稼いでいる人もいます。独立しない限り、残業が多く体力的に厳しい仕事だともいわれています。残業代だけで年収が100万円以上違う場合があるほどです。■10:フリーアナウンサーフリーアナウンサーは人気がある方がなることが一般的なため、定収入ということはほとんどあり得ません。テレビ局で働くアナウンサーの初任給が23万円~25万円程度、年収は350万円程度が相場で、そこから高くても年収2,000万円程度に上がります。フリーアナウンサーはそれよりも高い報酬をもらっており、高い人では1億円以上を稼ぐ人もいます。しかし、テレビ局は休日休暇や福利厚生がしっかりしているところが多く、フリーになることはそれを捨てるということなので、リスクがないわけではありません。*フリーランスは実力世界で、ほとんどの業種が営業努力を怠れば月収0になってしまいます。その代わり、仕事で得られる達成感なども多く、リスクがある分やりがいのある仕事なのではないでしょうか?だからこそ、新しい働き方としてフリーランスが注目されているのかもしれません。(文/堀江くらは) 【参考】※CareerGarden※フリーランス実態調査-ランサーズ株式会社
2016年06月05日『年収1000万円以上のNYキャリアが教える 仕事も恋愛もキレイもすべてを手に入れる女性のワークルールズ50』(バーバラ・スタニー著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、2003年に『ミリオネーゼになりませんか?』というタイトルで出版された翻訳書の新装版。原題は『SECRETS OF SIX-FIGURE WOMEN』ですが、“SIX-FIGURE”とは「6桁」のこと。日本円でいえば年収1,000万円以上というわけで、「ミリオネーゼ」とは、そこから着想した造語なのだそうです。ミリオネーゼの定義は、「仕事も恋(家庭)もおしゃれに楽しみ、1,000万円稼ぐ女性」というもの。また、「すべてをあきらめなくていい。わたしたちは、すべてを手に入れることができる」というメッセージも込められているのだといいます。ちなみに年収1,000万円である必要はないものの、収入に対するこだわりこそが女性たちにもっとも欠けていることだと著者。そこで、その数字を女性たちの経済的自立、精神的自立の象徴としたのだそうです。ところで、本書が初めて出版されたときには「一部のキャリアウーマンにとっての課題」だった事柄が、13年を経たいま、「ほとんどすべてのワーキングウーマンたちの課題となってきている」といいます。そこで改めて、「自分に自信を持つこと」「八方美人になろうとせず堂々と意見を述べること」「チャンスがきたら『とりあえずやる』と考えること」「自分の能力と業績に応じた正当な権利を主張すること」などの心得を訴えかけるために本書が復刊されたというわけです。きょうはそのなかから、お金に関するルールをいくつか引き出してみます。■お金に関する3つの法則を守る経済的自立は、頭で考えるよりもはるかに簡単だと著者はいいます。お金を賢く増やすのに、時間はそんなにいらない。お金がたくさんなければ財産をつくれないわけでもない。それどころか、現在の収入額がいくらであろうと、数千万を貯めることは可能だというのです。若いうちからはじめるに越したことはないけれど、歳をとっても遅過ぎることはない。もっとも危険なのは、年齢にかかわらず「なにもしない」こと。そして財産を築くためには、お金に関する3つの法則を守る必要があるのだとか。[法則1]支出を収入より少なくする[法則2]なによりもまず貯蓄する[法則3]お金を運用して増やす大切なのは、「なにを持っているか」ではなく、「持っているものでなにをするか」。それこそが、経済的安定を手にできるかどうかの決め手だということ。(1)支出を収入より少なくするミリオネーゼたちはたいてい、自由気ままにお金を使わないように自制しているのだそうです。ケチっているわけではなく、“贅沢”と“倹約”とを上手に使い分けているということ。いってみれば富の大きさは「どれだけ稼いだか」ではなく、「どれだけ使わないか」で決まるというわけです。(2)なによりもまず貯蓄する“お金を貯めるのが上手な人”は、収入の一部を定期的に貯蓄にまわすもの。ただし忘れるべきでないのは、貯蓄はいざというときに備えるもので、バーゲンセールのためにしているのではないということ。銀行に預けたお金は、借金や大きな損失に対する緩衝材になるだけではなく、予期せぬ出来事が起こったとき、あるいは夢を実現させるときのための賢明な備えになるということです。(3)お金を運用して増やす難しそうに感じはするものの、実はお金の運用はそんなに面倒なことではないもの。一般的な原則は次のとおりだといいます。1.臨時の出費や近い将来に買いたいものを買うためのお金など、今後5~7年以内に必要なお金は、現金か、MMF(マネー・マネジメントファンド)、CD(譲渡可能定期預金)などにしておく。2.今後8~10年以内に必要なお金は、株式や債券、現金に分散しておく。3.11年以上使う予定のないお金は、大半を株式に投資しておく。■いい投資家になれる4つの秘訣そして、お金の運用にもっとも有効なのは投資。そこで、誰でも腕のいい投資家になれる4つの秘訣も紹介されています。(1)自動化する一定の金額を、銀行口座や給料から自動引き落としで証券会社の口座に入れる契約をするということ。自分で銘柄を考えながら投資すると、意図に反する結果になることがあるためです。(2)プロに任せる専門家は投資のやり方を詳細に検討し、ポートフォリオのバランスを考え、定年後の生活に必要な資金計画を立てるようにサポートしてくれるというのです。(3)勉強する投資銘柄をむやみに怖がったり、無知なまま、あるいは習慣的に投資したりするのではなく、知識の裏づけを持って参加することが大事だという考え方。(4)人の話を聞く金融についてなんらかの知識がある人に会ったら、その知恵を借りるために質問をする習慣をつけるということ。*当たり前に思えることばかりですが、つまりは「当たり前のことをきちんとやる」ことが、なにより大切なのかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※バーバラ・スタニー(2016)『年収1000万円以上のNYキャリアが教える 仕事も恋愛もキレイもすべてを手に入れる女性のワークルールズ50』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年06月02日「買い替えるなら、今度はハイブリッド車かな」自動車を選ぶにあたって、そう考えている方も多いはず。自動車関連の税金を見ても、いかにも国から「エコカー車にしなさい」といわれているような気分になります。ところで「エコカー車」の代表格である「ハイブリッド車」は、本当にお買い得なのでしょうか?ハイブリッド車の家計的な魅力は、なんといっても「燃費」のよさと「税金」の安さ。しかしメリットばかりではなく、もちろんデメリットもあります。燃費がよく税金が安いぶん、「自動車本体の値段が高い」という点です。というわけで、最初に支払う金額以上のメリットがあるのかについて検証してみましょう。■シエンタは21万km以上走行すればお得今回は、TOYOTAの『シエンタ』で比較してみましょう。2015年に新型が発売され、ハイブリッド車とハイブリッドではないタイプの2グレードがある人気のファミリーカーです。金額差はおよそ35万円。燃費の差は7km/Lです。ただご存知のとおり、燃費はあくまでもカタログ値で、実際とは異なります。そこで実際の燃費を、『e燃費』というサイトで調べてみました。実際に自動車を購入して乗っているオーナーさんたちが、自分の車の燃費を投稿しているサイトです。もちろん乗り方によって燃費は大きく変わりますが、平均を見ればおおよその参考にすることはできます。さて、調べてみると、2タイプの燃費差は「3.67km/L」だということがわかりました。ハイブリッドグレードは「17.51km/L」、そうでないグレードは「13.84km/L」という結果だったのです。レギュラーガソリンの価格が1l@108円だとすると、ハイブリッドグレードは1km@6.16円。そうでないグレードは1km@7.82円です。1kmあたり1.66円ハイブリッドグレードの方がトクになります。購入時の差額35万円を1.66円で割ると、210,843km。つまり燃費だけ計算すると、21万km以上走行してはじめておトクになるのです。でも、1台の車を21万km以上も乗るでしょうか?ほとんどの方は、乗っても10万km前後であるはず。でも計算上、それではハイブリッド車がトクだということにはならないのです。■税金で比較しても大してメリットはない?しかし「燃費」だけではなく、「税金」面での優遇もあります。そこで、税金面でどれくらいおトクになるのかも計算してみましょう。ハイブリッドグレードは、自動車取得税・自動車重量税は免税、自動車税が75%減税です。一方のノーマルグレードは、自動車取得税が60%、自動車重量税が50%の減税となっています。そこから計算すると、<自動車取得税>1,980,327円×1.2%=23,764円<自動車重量税>新車登録時3年 11,200円+初回継続車検 15,000円=26,200円合計49,964円だけ税金を多く支払う計算になります。自動車税は同じ75%減税ですから税金的にはイーブンです。つまり税金面では約5万円支払いが少なくなりますから、35万円-5万円=30万円。30万円÷1.66円=180,722kmですから、約18万km以上乗るのであればハイブリッド車がおトクということになります。いずれにせよ、ハイブリッドグレードだからといって、なかなかトクすることはできないようです。もちろん、これはあくまでもこの車種のケースです。とはいえ、一度はこうして計算してみることは必要かもしれません。(文/ファイナンシャルプランナー・岡崎充輝)
2016年06月01日2015年から相続税が増税されました。基礎控除額の切り下げにより、相続税を納めなくてはならない人が増え、最高税率が50%から55%に引き上げられたのです。土地や建物などの資産を保有する富裕層はもとより、これまで「相続税なんて他人事」ですませていた一般市民も、今後は税金対策で頭を悩ませることになります。■相続税の可能性は誰にでもありうること相続税は2014年までは「5,000万円+1,000万円×相続人の数」を下回っていれば、相続税はかからないようになっていました。たとえば、相続人が被相続人(亡くなった人)の奥さんと子ども一人だけなら、「5,000万円+1,000万円×2人=7,000万円」以下なら相続税はかからなかったわけです。7,000万円というと、あとちょっとで「億万長者」のラインを超えるので、かなりの資産額になります。つまり、これまでは対象者が少なかったのです。しかし、2015年からこれが一転し、「3,000万円+600万円×相続人の数」を下回っていないと相続税は納めなればならないことになったのです。先ほどの例で考えてみると、「3,000万円+600万円×2人=4,200万円」。土地と住宅で合わせて3,000万円、そして投資信託や株、預貯金で1,200万円を故人が持っているケースは、団塊世代が相続の対象となる今後は少なくないでしょう。相続税をとられすぎないようにするには、なるべく相続する財産のトータルの金額が「3,000万円+600万円×相続人」となるようにしておくことがポイント。そのためには贈与税の制度を利用し、税金がかからないようにして生前に贈与をしておくべきでしょう。おもな手法は次のとおり。■相続税をとられすぎないようにする方法(1)毎年110万円以内の贈与を子や孫にしておく~暦年贈与課税制度の活用暦年贈与課税制度では、1年間あたりの贈与の金額が110万円以内なら税金がかからないことになっています。そのため、預貯金や有価証券、宝石類などについては、この枠内で毎年少しずつ贈与をしていくとよいでしょう。ただし、注意点が2つあります。一つ目は、きちんと毎年「贈与契約書」を作成し、贈与の事実をきちんとつくっておくこと。贈与は基本的に、贈与する側とされる側の両方が「あげます」「もらいます」とお互いに確認し合っていることが条件となります。そして日本では口約束はほとんど認められず、文書の証拠が圧倒的に効果的。そのため、お金や贈与財産そのものも、子や孫に渡すだけでなく、毎年きちんと正式な贈与契約書を作成しておくことが必要になるのです。なお、「贈与の申告書は契約書の代わりになる」という風説を耳にすることがありますが、あくまでも申告書は税務上のものでしかなく、民法上の契約書の代わりにはならないので注意しましょう。また、「名義預金はバレない」という都市伝説を聞くこともありますが、これはウソ。相続時、不自然なお金の流れがあればすぐに目をつけられます。さらに、2018年からはじまるマイナンバーと銀行口座等の紐づけが本格化すれば、名義預金は一網打尽。バレた場合には、贈与税だけでなく、さらに無申告加算税など重いペナルティが課されることになります。生前贈与の効果を法的に発するためにも、形式的にも実質的にも、きちんと贈与の証拠を残しておきましょう。二つ目は、相続開始時、つまり、贈与者が死亡した場合には、そのときからさかのぼって3年以内に贈与された財産は、税務上、相続財産としてカウントされるということ。民法上は贈与であっても、相続税の計算上の対象となってしまうということです。そのため、贈与は親世代が高齢になってからではなく、なるべく若いうちにはじめておくことが賢明です。(2)トータル2,500万円までは贈与税ゼロ!~相続時精算課税制度の活用相続時精算課税制度は、親や祖父母がその子や孫に対し、生前中に贈与しても総額2,500万円までは非課税となる生前贈与の制度。2,500万円という金額は、暦年贈与課税制度を20回繰り返してもまだ余るくらい大きな額。土地や建物などについては、この制度を利用して贈与するのも対策のひとつとなります。ただし、この制度の活用にも注意点があります。ひとつは、いったんこの制度を選択したら、同じ贈与者・受贈者の間ではもう暦年課税制度は使えなくなってしまうこと。もうひとつは、贈与額が2,500万円を超えたら、一律20%の税率がかかってしまうことです。この二つの制度を上手に活用して、相続税がかからないようにしてみましょう。(3)教育資金や結婚・子育て資金の信託贈与をしておこう~贈与信託の活用相続対策として注目したいのは、教育資金や結婚・子育て資金の非課税贈与制度の利用です。「祖父母や両親から子や孫へ贈与する」という点では通常の贈与と同じなのですが、この制度については直接相手に贈与するのではなく、信託銀行などの金融機関の口座を通すのが特徴。具体的には次のようになっています。<教育資金の一括贈与制度(非課税)>・1,500万円まで非課税で贈与することが可能・1,500万円のうち、500万円までの枠については、学校以外の塾やおけいこごと、資格受験のための通学費用などでも利用可能・受贈者が30歳未満であることが条件<結婚・子育て資金の一括贈与制度(非課税)>・1,000万円までは非課税で贈与することが可能・1,000万円のうち、300万円が結婚資金として利用可能な上限額・受贈者側が20歳以上50歳未満であることが条件現役世代で一番お金がかかり、かつ収入のない時期に親や祖父母から贈与を受けられれば、相続税の節約だけでなく、よい形で子どもの自立や将来を応援することになります。これはぜひとも活用すべき。ただし、いくつか注意点もあります。・受贈者側が条件となる年齢の上限に達してしまった場合や、死亡した場合に口座に未利用の残高があったときは、その残高については通常の贈与税の対象となること・贈与者が死亡した場合に、その時点で口座残高があるときは、その残高は相続税の対象となること・この制度の期限は現時点で平成31年3月31日までとなっていることそのため、それぞれの家庭の事情を鑑みて、ムダなく利用できるかどうかをあわせて考えてながら計画をたてるとよいでしょう。*相続は、財産額が少なければ少ないほど争いになりやすいもの。財産が少ないがゆえに「ウチは関係ない」と思いこんでいるため、生前に対策を立てていないからです。同時に、「相続=死について語るなんて不謹慎」という体裁のブロックが強いため、いい出したくても家族の空気を乱したくなくていい出せないという事情もあります。一方、財産のある富裕層は、相続争いの可能性を理解しているため、あえて空気を乱すリスクを冒してでも、きちんと家族内で話合い、こういった制度を上手に活用しながら生前に対策をたてているのです。残された家族が末永く協力し合い、かつ、しこりを残さないためには、あえて「人間はいずれ必ず死ぬ」という事実と向き合い、冷静にきちんと話し合い、生前に対策をたてておいたほうがよいでしょう。(文/税理士・鈴木まゆ子)
2016年05月31日