読み終えた時、きっとあなたの中で何かが変わっている。そう断言したくなるのは、蛭田亜紗子さんの新作長編『エンディングドレス』。「3~4年前から自分で洋服を作るようになったので、洋裁の話を書きたいなと思っていました」夫を病で亡くし、後を追うつもりの麻緒(あさお)は偶然見つけた「終末の洋裁教室」に通いはじめる。最終的に死に装束の製作を目的とした教室だ。「夫と二人だけで完結していた世界が壊れてしまったことにより、もう一度周囲と関わり直していく、という面もあるのかなと思いました」そこにいたのは寡黙な先生と、3人の年配のご婦人の生徒たち。「実際に手芸店で布を選んでいる年配の方たちをよく見かけていて、素敵だなと思って。登場する3人はそれぞれ違う印象になるよう、おっとりした人、ちゃきちゃきした人、ミステリアスな人と書き分けました」麻緒たちは〈はたちのときにいちばん気に入っていた服〉〈十五歳のころに憧れていた服〉といった課題に臨む。きっと読者も、自分ならどんな服を作るか考えるはず。「服によって過去が想起される課題を考えました。他の生徒のおばあさんたちも、90代、80代とそれぞれ年齢が違うので、作る服もまったく異なってくるだろうと思いました」課題をこなし完成品を披露しあうたび、それぞれの人生が浮かび上がる。麻緒も夫との過去を振り返ることになるが、そこには後悔や罪悪感も含め、複雑な心情が含まれる。「後悔なども抱えて人は生きていくものだから、清廉潔白な主人公にはしたくなかった。きれいなおとぎ話にはせず、あえて厳しい面も書きたいと思いました」教室での人生模様だけでなく、家族や旧友との関わりも描かれ、さらにはファストファッションのあり方など現代的な問題も垣間見える。丁寧に針を運んで縫ったかのような繊細な細部の設定、巧みな仕上げ方。エンディングドレスの製作についても、思わぬ展開が待っている。「洋裁は手順通りやればいつかは出来上がるし、作れば作るほど上手くなる。それは服作り以外にも影響する部分があると思いました」何かを作ること、着ること、人と関わること。かけがえのないものがいくつも見えてくる一冊だ。ひるた・あさこ1979年、北海道生まれ。2008年「女による女のためのR‐18文学賞」大賞を受賞、’10年『自縄自縛の私』でデビュー。著作に『凜』など。写真の洋服はご自身で製作したもの。病気で夫を亡くし後を追うことにした麻緒は、死に装束を作る洋裁教室に通いはじめる。だが、課題をこなすうちに心に変化が……。ポプラ社1500円※『anan』2018年7月4日号より。写真・水野昭子(蛭田さん)大嶋千尋(本)インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2018年07月02日悲劇の予感に満ちた母子の関係を描く押見修造さんの『血の轍』の待ちに待った第3集が刊行。一見、普通。でも何かがおかしい。鬼才の描く母というファムファタル。母・静子と一人息子・静一の“毒母もの”といわれてもいるが、簡単にそうとくくれない不穏さに満ちている。「静一の母をモンスターとして描くだけで終わらせず、母性の不可思議さに迫っていきたいと思っています。一方で、家族の和は取りもつが肝心なところは見落としている父親や、しょっちゅう家に来るいとこなど父方の親戚たちの様子も異様ですよね。『あれではお母さんがおかしくなるのも不思議はない』という、静子への同情の声も聞こえてきます」普通そうに見えて普通ではない長部家の様子を、もっとも端的に表しているのは食事の風景だ。「ごはんには、親子関係が表れると思います。静子が用意する朝ごはんが肉まんとあんまんの2択という設定にたどりつくまで、熟考しました。あからさまにおかしいわけではないですが、違和感がある。母親が息子をくすぐって起こすというのも、母子の関係性や母親のキャラクターによるでしょうが、静子と静一の場合はどう映るか。母は息子に対して彼氏を求め、息子は無自覚にそれを受け入れています。ふたりの間で、言語化されないまま関係性ができあがっているところが不気味だし、その空気感が出せていたらいいなと」静子の過剰な母性に、じわじわと搦めとられていく静一。そうとは知らず、クラスメイトの吹石さんは静一に好意を寄せる。「静一にとっては、違う世界への扉ですが、正義のヒロインというだけの存在にせず、彼女が抱えているものの正体も探っていきたいです」押見さんの圧倒的な画力に惹かれるファンも多い。母や静一のうつろな表情をどう読み取るかで、物語の印象が変わってくるのも面白さだ。「画では光もテーマです。顔にかかる影や逆光のときの表情、夏空などから、光を感じてもらえれば。斜線の塗り残しだけで輪郭線を出すなど、小さな実験を繰り返しています」トーンを使わずにすべて手描きにしているという本作は、押見作品の魅力を堪能できること間違いなし。押見修造『血の轍』3「思春期には親に気を遣うあまり、ちゃんとした反抗ができなかった」と語る押見さん。私小説的な要素も入っているとか。待望の第4集は、9月末ごろ発売予定。小学館552円。©押見修造/小学館ビッグコミックスペリオールおしみ・しゅうぞうマンガ家。1981年、群馬県生まれ。2002年にデビュー。映像化された作品が多く、『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』は7/14 公開。「血の轍」も現在好評連載中。※『anan』2018年6月20日号より。写真・大嶋千尋インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年06月19日俳優の三浦翔平(30)が6月3日、都内で写真集『&』の発売イベントに登壇。女優の桐谷美玲(28)との熱愛と結婚報道について「交際は事実です」と堂々と宣言。三浦の行動にネットでは「男らしくてかっこいい」と好評の声が寄せられている。 結婚報道後、三浦が公の場に姿を現したのはこの日がはじめて。集まった報道陣に対し「写真集イベントに来ていただいてありがとうございます」と感謝。つづけて「ちょっと世間を騒がせておりますが」と切り出し、「(桐谷との)交際については事実でございます」と自ら交際を認めた。 結婚については「まだ何も決まっていない」と否定。「いま一番ほしいものは?」と質問されると「そっとしておいてほしいですね(笑)」とコメントし、冗談ぽく「今日は写真集のイベントですからね!」とけん制。報道陣の笑いを誘った。 ネットでは「はっきり宣言するのマジでかっこいい」「イケメンは質問の返しもうまいな~」「付き合ってるの本当なんだ!」「いいカップルだね」といった反応があがっている。
2018年06月04日大阪土産・ひとくち餃子の「点天」から「餃子バル 点天」が誕生。2018年6月22日(金)JR新大阪駅在来線改札内エキマルシェ新大阪にオープンする。創業から一貫しておいしさにこだわり抜いてきた「点天」。看板メニューのひとくち餃子は、厳選した素材を使いこだわり抜いて作られている。そんな「点天」の新業態となるのは、ひとくち餃子はもちろん、出来立てのアレンジ餃子、クラフトビール、大阪発のワイナリー「カタシモワイナリー」醸造のワインなどを提供する餃子バル。イートインはもちろん、テイクアウトもOKで幅広い人が利用できる店舗づくりを目指す。店の名物となるのは「ぷりぷり手羽先ぎょうざ」は、丁寧に骨を抜き、香ばしく焼いた手羽先の中に、四季の食材を詰め込んだ。ビールやワインと相性がよいので、仕事帰りにサクっと1杯飲むアルコールのおつまみにオススメだ。特製エスニックフレークにつけて味わう、新感覚の餃子「エキゾチックスパイシー餃子」は、タレをつけて食べる従来の食べ方から距離をとった創作メニュー。エスニックフレークはピリ辛なので、暑くなるこれからの季節にぴったりな味わいとなっている。【詳細】餃子バル 点天オープン日:2018年6月22日(金)住所:大阪府大阪市淀川区西中島5-16-1 エキマルシェ新大阪※エキマルシェ新大阪はJR新大阪駅の改札内にあるため、乗車券もしくは入場券が必要営業時間:9:00~22:00(L.O. 21:30)<メニュー例>・名物ぷりぷり手羽先ぎょうざ(1本) 216円・エキゾチックスパイシー餃子(8個入り) 594円※価格は税込み。
2018年06月02日実在の日本の文豪や彼らの作品を、キャラクター化したマンガやゲームが巷で人気。そんな文豪たちの人となりや、作品の魅力を、友情というフィルターを介して浮かび上がらせた『文豪たちの友情』の著者が、石井千湖さんだ。取り上げた文豪たちの個人全集を、索引や月報にまで目を通し、自伝、随筆、書簡、日記、評伝などあまたの関連書籍も参考に。そこから掘り起こした文豪たちの友情のまぶしいこと。わくわくするような文学エッセイであり、日本の近代文学へのよきガイドにもなっている。「文豪たちの生涯について、あるいは、文学史的には有名な、谷崎潤一郎と佐藤春夫の細君譲渡事件、太宰治が芥川賞に執着した話など、入門書に載っているくらいの情報は知っていましたが、もとになった文献に当たると、実はもっと複雑で…。一行情報ではわからないことがあるなと、あらためて思いましたね」芥川龍之介と菊池寛、太宰治と坂口安吾など、13組の文豪たちの出会いから別れまでがまとめられている。「彼らの関係を履歴書的に整理しつつ、バカバカしくも人間味がある小さなエピソードが好きなので、それは入れるように意識しました」たとえば、文豪の中でも抜きんでて交友関係の広かった佐藤春夫が、芥川龍之介に脱ぎたての猿又(パンツ)を借りた話や、借金魔の石川啄木が、世話を焼いてくれた金田一京助の毛生え薬の秘密を小説に書いてしまい、ケンカした話。微笑ましい、文豪たちの知られざる一面だ。「書いていると、ダメ人間と思っていた作家も、みな好きになりましたね(笑)。とにかく一生懸命生きていたんだなとわかりました」それにしても、文豪たちの友情はなぜこんなに面白いのか。「距離感がおかしいんですよ。ライバルでもあるから互いに意識もするけれど、スポーツのライバル関係とも違う。一般的な友人関係よりずっとぶっちゃけ合っている。仲良くなるきっかけが、だいたい、“互いの作品を認め合った”ことなんですね。自分が好きで書いたものに共感して、『いいね!』と言ってくれた人はやっぱり特別なんだな、と。互いの文学の趣味も似ていることが多く、彼らにとって友と語り合うことはとても幸せだったでしょうね」いしい・ちこ1973年、佐賀県生まれ。早稲田大学卒業後、書店員を経て、書評家、ライターとして活躍。共著に『世界の8大文学賞』『きっとあなたは、あの本が好き。』(共に立東舎)がある。文豪たちの仲睦まじい姿をイラストにしたのは鈴木次郎さんとミキワカコさん。各章に付いているミニ人物相関図も関係性を理解する一助に。立東舎1500円※『anan』2018年6月6日号より。写真・土佐麻理子(石井さん)大嶋千尋(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年05月30日読み手をたちまち虜にする、奇抜で可笑しくて冴えたアイデア。その土台に新人離れした筆力と巧みな比喩を積み重ねて、壮大な“うそばなし”の城を作り上げる。石川宗生さんの『半分世界』は、度肝を抜かれること間違いなしの傑作短編集だ。収録されているのは4編。「吉田同名」は、吉田大輔という人物が突如、大量発生してしまい、そこから派生する奇妙な情景が描かれる。「この作品の着想について、解説のところでは、〈『開門神事福男選び』という正月に大勢の男性が神社を走って一番を競う行事をテレビで目にしたとき〉とさらっと嘘をつきました。本当はなんでも大量発生すると話題になるなと思ったことでした。プランクトンでもエチゼンクラゲでもいいんですけれど、いちばん面白そうなのは人間だなという話です」表題作では、家の道路側が消失し、ドールハウスのように中が見える家があり、そこに住む藤原家4人の暮らしと、それをウォッチングする人々の様子が描かれている。「手の内を明かすようで少し恥ずかしいんですが、イタロ・カルヴィーノの『まっぷたつの子爵』という小説が好きで、頭の中でいろんなものを縦にまっぷたつにするというブームがあったころに思いつきました」「白黒ダービー小史」では、サッカーを彷彿させる「白黒ダービー」という競技に取り憑かれた町を舞台に、ロミオとジュリエットのような恋物語が繰り広げられる。「バス停夜想曲、あるいはロッタリー999」は、999の路線がある巨大なバス停で、いつ来るかわからない自分のバスが来るのを延々待ち続ける人々のサバイバルが描かれる。諧謔ずくめのものすごい大ボラの中に、大真面目に、哲学や歴史考察、文明批評などを滑り込ませてくる。「書いていて行き詰まると憑依芸ではないですが、この作家さんの気持ちになったつもりで…と頭を切り替えてみるとうまくいったりします。ひとりの作家だけではなく、何人もが入り交じっています」筒井康隆や円城塔の作風と比較されることもあるが、著者によれば、エンリーケ・ビラ=マタス、カート・ヴォネガット、リチャード・ブローティガン等々、石川さんの小説の土壌は主に海外文学にあるようだ。本当に本当に、次回作が待ち遠しい。いしかわ・むねお1984年、千葉県生まれ。米大学卒業後、イベント営業、世界一周旅行、スペイン語学留学などを経て、作家、フリーの翻訳家に。収録作「吉田同名」で創元SF短編賞を受賞。帰宅途中の吉田大輔氏は、1万9329人に増殖してしまい…。巻末に著者インタビューを含む作品解題付き解説あり。作品世界がより身近に。東京創元社1900円※『anan』2018年5月23日号より。写真・土佐麻理子(石川さん)大嶋千尋(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年05月22日「“兄”の祐太朗(33)と貴大(32)とで、たまに集まって話すんですよ。『いやぁ、すげぇな』って。 叔父(三浦友和・66)が叔母(百恵さん・59)と結婚したのが、28歳でしょう。“息子3人”そろって全員、もうその年を超えているんですね。でも、誰ひとり結婚していない。だから『僕らはその年で結婚なんてありえなかったよな』って」 目を輝かせてそう語る絲木建汰(30)は、三浦友和の実姉・篠塚ひろ子さん(67)の一人息子だ。母のひろ子さんが経営する山梨県・清里のペンション「La VERADURA」で生まれ育った彼は、祐太朗や貴大の従兄弟にあたるが、兄弟同然の間柄。三浦家の3男坊的存在で、「息子3人」「兄」という言葉が自然と出てくる。役者の道を歩む彼は現在、音楽劇『ブルースな日々~夢に向かって~』(築地ブディストホール)を控え、稽古の真っ最中。多忙ななか、インタビューに答えてくれた。 「幼いころは、祐太朗が貴大をいじめて(笑)。『貴ちゃんが泣いてるよ!』と僕が叔母に言いつけ、祐太朗が叱られる。そんな日々でした。僕も小学校のころはかなりの悪ガキで。授業中に教室から抜け出すようなザ・問題児でした。 実は、僕だけ叔父から殴られたことがあるんです。自分の息子たちは1度も殴ったことがないのに(苦笑)。あれは小学校のころ。祐太朗や貴大、彼らの幼なじみの男の子たちと清里の天文台に行ったんです。ただみんなは家族で来ているのに、僕だけ父親が来ていない。そんな寂しさがあったんでしょう。僕がスネて、聞き分けのないことばかり言っていたんです。そしたら突然、バシ~ン!とビンタされたんです」 建汰の父は日本屈指のラリー・ドライバー、篠塚建次郎さん(69)。パリ・ダカールラリーをはじめ、1年のうち8カ月は海外を転戦。ほとんど家にはいなかった。 「父はとても優しかったけど、キャッチボールをしてもらった記憶が僕にはないんです。叔父はそんな僕を見て、『自分が父親代わりになって叱らなきゃいけない』と思ってくれたんでしょう。 父がパリ・ダカのレースで大事故を起こしたとき、僕はまだ15歳でした。『もうパパは助からないかも』と言われて、僕なりに考えたんです。これから母と2人きりになったら、どうやって母を守っていこうかって。 そのとき真っ先に頭に浮かんだのが、叔父のいる芸能界だったんです。それが、僕が役者の道を選ぶきっかけになりました」 そんな叔父とは、幼いころと変わらない“父子”のような関係がいまでも続いている。 「叔父の家へ遊びに行って、男2人でお酒を飲みます。父はお酒が弱いんですが、叔父は強くて。遅くまで一緒に飲めるので、気兼ねせずにいろんなことを話せます。叔父の家には良いお酒がたくさんあります。先日も『じゃあ、今日はこれ、開けてみようか。60年くらい前のものじゃないかな?』と言って叔父が開けてくれたのが、レミー・マルタン!2人で『すごいもんだねぇ』って頷きながら飲んでいました」 健汰は今日も、偉大な叔父の背中を追っている――。
2018年05月16日男性に「最大二十四ヶ月間女性になる義務を課す」世界を描く、田中兆子さん著書『徴産制』について、田中さんにお話を伺いました。男性も女性も、異性の立場を想像しうる、試金石のような物語。<日本国籍を有する満十八歳から満三十歳の男子すべてに、最大二十四ヶ月間女性になる義務を課す>田中兆子さんの『徴産制』の舞台は、男性に兵役ならぬ産役が課せられた社会。悩み多き条件の中で生き方を模索し、右往左往する男女を描いた連作短編集だ。出産を義務化するディストピアを背景としながらも、失われないユーモアや希望が浮かび上がってくるのがすばらしい。「完成までに3年かかりました。設定を未来にしたために、どんな社会になっているのかを構築するのは本当に難しかったです。けれど、男が産役後に男に戻ることも女のままでいることも可能という大変化に比べ、社会や人間の芯においては変わらない部分も多いのではないかなと感じました」各章の主人公は、徴産制を経済的な理由で志願する農家のひとり息子、義務を果たしたらさっさと男に戻りたいエリート官僚、夫が女になろうとすることを嫌悪する妻を持つ主夫など、考え方も境遇も違う5人。「そうした社会や制度への向き合い方も反応も千差万別だろうと思ったので、誰かひとりの人生を追うより、いろいろなケースで書くスタイルを選びました」多様化していく性や、恋愛、結婚、家族、介護など、彼らが抱える苦悩や葛藤は、現代日本や日本人の問題を映す鏡だ。その中には、「第三章タケルの場合」のように、見つめるのさえ苦しいテーマもある。下敷きになっているのは、レイプや慰安婦制度など性的虐待の問題。「普段すごくフェミニスト的な視点を持っているような男性でも、こうした性暴力に対しては他人事で、驚かされます。なので、女性に課せられている社会規範や慣習、モラルなどを、男性に体験してもらって見つめる、逆視点の世界で描きました」男が産む性を担うという、先行の作品とも違う設定。現実を反転させたことで、生殖や性意識をめぐっての社会の矛盾や不自由さ、残酷さなどが誇張され、深い思索へと誘う。「第五章のイズミのように、セックスも含めて他者を必要としない人も出てくるでしょうね。結婚する必要がない社会だからこそ、残るのは“愛”だけで、そうした人との交わりをどう求めていくかは生き方そのものになっていく。イマドキの婚活も裏テーマにあります。大きな社会制度の変化の中で、誰もが自分なりの幸福を見出せるように書きました」たなか・ちょうこ2011年、短編「べしみ」で「女による女のためのR-18文学賞」大賞受賞。’15年、同作を含む作品集『甘いお菓子は食べません』が話題となる。近著に『劇団42歳♂』(双葉社)が。戦時中の「赤紙」を連想させるカバーデザイン。血の赤であり、日の丸の赤でもある“赤”が目を引く。境遇の違う5人の産役男は何を思う?新潮社1500円※『anan』2018年5月2・9日号より。写真・大嶋千尋インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年05月01日精神世界の著作の翻訳や執筆で知られる、山川紘矢さん・亜希子さんご夫妻。そんな山川ご夫妻に、運命の相手との関係を深める学びになる本を厳選してもらいました!今回はその一部をご紹介。愛に満ちた人生を得るための知恵を持つ『受け入れの法則』山川紘矢・山川亜希子・あーす・じぷしー naho&maho世に言う「引き寄せの法則」を一歩進めた「受け入れの法則」。起こることはすべて、宇宙が差し出したプレゼント。自分にはその贈り物にふさわしい価値があると認めよう。双子のユニットとの共著で、コラムと座談会を合わせた形式が読みやすい。リンダパブリッシャーズ1300円霊的思想家たちが確信、ハートのパワーとは『ザ・パワー・オブ・ザ・ハート人生の本当の目的を探して』バプティスト・デ・パペ山川紘矢・山川亜希子 訳著者は、世界中を旅する中でハートが持つ可能性に目覚めていく。『アルケミスト』の著者パウロ・コエーリョをはじめ、世界的な思想家や作家たちが教える“ハートのパワー”の秘密が一冊に。たくさんのメッセージの中に求めている答えがあるはず。KADOKAWA1900円著者と似た経験をした、傷ついた心をいたわる『宇宙で唯一の自分を大切にする方法』山川亜希子子どものころから、周囲の評価ばかりを気にして、自分を押し殺していたという著者。そんな傷に気づいて、自分という存在のかけがえのなさに目覚めていくさまを率直に綴った自伝的エッセイ。自分自身を好きになるためのヒントがいっぱい。角川文庫640円潜在意識の中の不幸な記憶を浄化する方法『みんなが幸せになるホ・オポノポノ』イハレアカラ・ヒューレンインタビュー/櫻庭雅文ハワイに伝わる癒しの秘法「ホ・オポノポノ」の知恵においては、過去の記憶が思い通りに生きるのを妨げていると考える。それを4つの言葉やいくつかのツールで浄化すれば、本当の幸せを取り戻せる。わかりやすく語りかけるように教えてくれる。徳間書店1500円出会うという運命の、意味やしくみを知る『出会った人が運命の人』山川紘矢・山川亜希子運命の人を探すのに、あれこれ条件をつけたり、難しく考えたりする必要はない。なぜなら、運命は、その人のそのときの学びに必要な誰かを用意してくれるから。ありのままの自分でいれば、運命の流れに沿って、然るべきときにパートナーも現れる。マイナビ文庫640円やまかわ・こうやあきこ精神世界の著作を多く翻訳、自らも精力的に執筆。最新刊は『神さまに愛される最高の生き方!』(興陽館)。※『anan』2018年4月4日号より。写真・小笠原真紀取材、文・三浦天紗子
2018年04月03日精神世界の案内人・山川紘矢さん・亜希子さんご夫妻によると、運命の人との絆を深めるためには、まず自分を好きになることや、自分に起こることをそのまま受け入れることが大事なのだといいます。でも、そうはいっても何から始めたらいいの?例外的な状況にはどう対処すればいい?という疑問も。山川さんご夫妻の助言に解決のヒントがあります。Q.自分のことを好きになるには、どうしたらいいですか?A.ミラーワークを試してみましょう。ミラーワークは、自分を愛するための簡単なヒーリング法。鏡に自分を映して、目を見つめながら「愛しています」と言うだけ。子ども時代の自分を思い出して褒めたり、自分に「ありがとう」と言ってみるのも効果的です。Q.人と自分を比較してしまいます…。対処法を教えてください。A.比較する自分を許すことから始めて。比較してしまう自分を責めないこと。みなそれぞれに性格も、クセもあると認めて。「また比べちゃった。まあいいや」と思うくらいでいいのです。人と比べてしまう自分に気づいただけで、変わる糸口はつかめています。Q.別れた人は、運命の人ではないということですか?A.どんな人も、意味があって出会っています。ひどい相手なら逃げて正解。けれど「つき合って損をした」のではなく、それも学びです。別れることがあっても、そのときのあなたを成長させるために現れたのです。何年も経って、出会った意味がわかることもあります。Q.直感やひらめきは、どこまで信じていいのでしょう?A.100%信じてください。人生に間違いはありません。心の声には耳を傾け、心の赴くままに選んだことは、突拍子もないように見えても、のちのち必ずうまくいきます。相手のことをよく知らないのに「この人とはウマが合いそう」と感じたら、それは正しいのです。Q.両親、きょうだいなど、離れようのない人といい関係を築くには?A.血縁であっても、自分の行くべき道はそれぞれです。一緒に生活している家族にも、それぞれにふさわしい道があります。同じ方向を向いているとは限らないのです。合わなければ「産んでくれてありがとう。けれど、私は私の道を行きます」と、自分の人生を生きてください。やまかわ・こうやあきこ精神世界の著作を多く翻訳、自らも精力的に執筆。最新刊は『神さまに愛される最高の生き方!』(興陽館)。※『anan』2018年4月4日号より。イラスト・利光春華取材、文・三浦天紗子
2018年04月03日2016年夏、日本初演が行われた小池徹平×三浦春馬W主演ブロードウェイミュージカル「キンキーブーツ」が、 小池さんと三浦さんほか、主要キャスト続投で来年再演されることが決定。あわせて、 新たに撮り下ろしたビジュアルと、キャスト陣からコメントが到着した。■「キンキーブーツ」とは?2013年、トニー賞で最多となる13部門にノミネートされ、作品賞、主演男優賞、オリジナル楽曲賞、振付賞、編曲賞、衣装デザイン賞の6部門を受賞したブロードウェイミュージカル「Kinky Boots」。 経営不振に陥った老舗の靴工場の跡取り息子チャーリーがドラァグクイーンのローラに出会い、差別や偏見を捨て、ドラァグクイーン専門のブーツ工場として再生する過程を描いた2005年に公開された同名イギリス映画をミュージカル化。シンディ・ローパーの書き下ろしの楽曲の数々が大きな話題を集め、いまもなおブロードウェイで人気を集める大ヒット作品だ。そんな本作が、日本では小池さんと三浦さんW主演に迎え、音楽、演出、振付はブロードウェイ版そのままに、2016年に初演。全日即日完売、連日大盛り上がりで、スタンディングオべーションの嵐に。また、本作で小池さんは第42回菊田一夫演劇賞の演劇賞を受賞し、三浦さんは第24回読売演劇大賞の杉村春子賞を受賞した。■小池徹平、「勝手に体が動いてしまいます(笑)」経営不振に陥る靴工場の跡取り息子、チャーリーを演じる小池さんは、とにかく必死だったという初演をこうふり返る。「チャーリーもローラも別のパワーではありますが、とてもエネルギッシュな役なので。大変な役でしたが、楽しく、そしてやりがいもありました。初演時は、お客様の盛り上がりが素晴らしくて、ラストでは一緒に立って踊ったりしてくださって」。また、「初演が終わってしまう頃から、もし再演があるなら絶対やりたいと思っていました」という小池さん。今回の決定に関して、「再演をやると聞いたときは嬉しかったです。ヴィジュアル撮影で、久しぶりに春馬くんのローラに会って、ついに帰ってきたなと。いまでも、『キンキーブーツ』のナンバー聞くと、ひとりでに歌ってしまうし、勝手に体が動いてしまいます(笑)」と再演を楽しみにしている様子。■三浦春馬、「老若男女絶対に好きになってくれる」一方、ドラァグクイーンのローラを演じる三浦さんは「ローラは、台風の目にならなきゃいけないと稽古中教えていただき、チャーリーは、この作品の完全なる屋台骨だから、いつでもみんなの中心になり、皆を支え続けなければならない。そういうキャラクターなので、ストーリー上だけでなく、楽屋裏でもそういう関係性は、お互い自然とやろうやろうとしていました。当時、(小池さんに)たくさん助けられました」と初演時をふり返る。そして、「『キンキーブーツ』の音楽は、まだ観たことがない方も聞いたことがない方も、絶対刺さるナンバーだし、ストーリーも老若男女絶対に好きになってくれると思います」と魅力を明かし、「劇場に来て、観て頂くのが一番伝わると思いますので、ぜひ観て頂きたいですね」とメッセージを寄せている。あわせて公開されたビジュアルでは、スーツ姿の初演時の公演ヴィジュアルとは異なり、実際に舞台のクライマックスでの衣裳を着用。カメラマンはファッション誌のカバーや広告などを手掛け、多くの女優やアーティストに支持されている写真家・下村一喜が。クリエイティブ・コンサルタントとしてディーン・フジオカなどのスタイリングを手掛けるカワダイソンといったファッション界でも超一流のスタッフが参加。この撮影でローラに再び扮した三浦さんは、「一言につきます。めちゃくちゃ嬉しい!!」と喜びを語っている。■共演陣も初演から続投!さらに共演者には、初演に続き靴工場で働く従業員のローレン役をソニン、チャーリーのフィアンセのニコラ役を玉置成実、靴工場の現場主任ドン役を勝矢、工場長ジョージ役をひのあらたが演じる。ソニンさんは、「再演を必ずやるだろうと、やらねばならんと初演時から強く感じていたので歓天喜地でございます」と心境を明かし、玉置さんも「まさかまたあの世界にニコラとして生きられるなんて…これもまた夢のようです。さらにパワーアップした日本版KinkyBootsをお届けできるよう頑張ります!」と意気込み。また、「この作品はめまぐるしく変わる素晴らしいセットの転換、衣装やメイクの対比や美しさ、シンディ・ローパーの心を掴まれる楽曲、芝居の心地よいテンポと感情の流れ、まだまだありますが色々な意味で総合芸術として素晴らしいと思います」と作品の魅力について明かす勝矢さんは、「再演が決まったときは、『最高だぜ~』って思いました」と喜び。再演の朗報は電車内にてメールだったと言うひのさんは、思わず無言のガッツポーズをしたそうで、「待望の再演!!より深くジョージさんを理解し、Price and Sonを、キンキーブーツを盛り立てていきたいです」と語っている。ブロードウェイミュージカル「キンキーブーツ」は2019年4&5月、東急シアターオーブ(東京公演)、5月、オリックス劇場(大阪公演)にて上演。(cinemacafe.net)
2018年04月03日自分にとって大切な人ともっと強くつながりたい…。そんなとき相手とのつき合い方で心がけることとは?精神世界の案内人・山川夫妻が30年の心の旅で見つけた、“愛と絆”を深める極意を教えてもらいました。精神世界の数々の名著を邦訳。同時に、幸せになるための多くのメッセージを発信してきた山川紘矢さん、亜希子さんご夫妻。そんなおふたりが確信しているのが、「出会った人はみな運命の相手である」ということだ。運命の相手なら、なんの障害もいさかいもなく関係が続きそうなのに、なぜうまくいかないのかと不思議に思うかもしれない。「どんな人も、互いの成長のために用意された宇宙からのプレゼント。出会ったのは、学びを得るためです。成長のために必要だから、シビアな問題が起きることもあるのです。『なぜこんなひどい人を好きになってしまったんだろう』と切り捨てるのではなく、『彼は私に何かを気づかせるためにこんな行動を取ってくれたのだ』と考えてみましょう」(亜希子さん)そんな大切な存在と豊かな関係を築くためには、何を心がけたらいいのだろう。「逆説的ですが、ふたりの関係をよくするには、何よりも自分自身が幸せになることなのです。過去の傷を手放して、自分が幸せになると、自分の外側もうまく回り始めます。人生に問題など何も起きなくなります」(紘矢さん)自分を好きになることが他者との関係もよくする早道だとは、精神世界では当たり前に言われていること。でも、人に気を遣った方が端的に関係がよくなりそうなのに、なぜ“まずは自分を愛すること”が大切なのか。「私も長いこと“自分を愛する”ことができなくて、苦しんでいました。他人の評価で生きていたころは、がんばらなければ認めてもらえないと思っていましたし、自分を認めてあげることもできなかった。そんな中で作られてしまった抑圧された感情や傷が、自分が幸せになることに制限をかけるのです。あなた自身を縛ってきた、そうしたネガティブな感情に気づくだけで負のエネルギーは自然と消えていきます。それがはっきりわからないときは『私は私を好きになる』と決めるだけでもいいのです」(亜希子さん)自分を大切にすれば、自分の波動は高くなり、同じ高い波動を持つ無二のパートナーが引き寄せられ、すばらしい関係を育める。「自分に対して寛大に、優しくなれれば、人に対しても同じことができます。身体を動かす、きちんと休養するなど、身体が欲していることにも応えてあげる。すると心身がリラックスでき、あとは自分の思うままに生きるだけ。自分が置かれた状況への感謝を忘れず、人生を肯定的に見ましょう。幸せのカギはすべてあなたの中にあるのです」(紘矢さん)山川夫妻が教える絆を深めるコツの一部をご紹介します。自分を好きになる。自分を丸ごと受け入れる。人は誰もが、唯一のかけがえのない存在。「自分なんて大したことない」と自己評価の低い自分に気づいたら、そんな自分を許して、自分を愛そう。あなたはあなたのままで100点満点。ありのままの自分を受け入れれば、愛の波動が高くなり、周囲をもいい波動で癒すことができる。プラスのスパイラルができあがる。他者をジャッジしない。「彼はどうせこういう人」「期待したってムダ」…そんなふうに相手を決めつけていたら、そのクセはやめよう。自分と意見が対立しても「こんなふうに考える人もいるんだ」と受け入れ、拒絶しないこと。イライラしていたら、絆を深めることはできない。他者に優しくする近道は、自分にも優しく寛大になること。なるべくたくさんハグする。ふたりの距離を縮めるには、ボディランゲージの「ハグ」がいちばん。物理的にも互いのハート(心臓)を近づけることになり、エネルギーが混じり合って互いがわかり合えるようになる。マッサージし合うのもおすすめ。恥ずかしければ、手を握り合う、肩に触れるなど、軽いスキンシップから始めてもOK。やまかわ・こうやあきこ精神世界の著作を多く翻訳、自らも精力的に執筆。最新刊は『神さまに愛される最高の生き方!』(興陽館)。※『anan』2018年4月4日号より。写真・小笠原真紀取材、文・三浦天紗子
2018年04月03日作家・鴻池留衣さんに、著書『ナイス・エイジ』についてお話を伺いました。表題作では「真実は二の次」の世相を活写。注目新人の処女作品集。SNS時代のあるあるを、リアリティたっぷりに描いた『ナイス・エイジ』。その著者が鴻池留衣さん。「自称予言者たちや自称霊能力者たちが未来予想を書き込み、それがネット上の誹謗中傷を呼んで、ネット民にとっての粘着的なコンテンツになっていく…。この作品で描いたことは、ネットの中ではよくある風景。もともとは、安部公房の『人間そっくり』という小説の現代版をやってみたかったという気持ちもあります。ラジオ番組の脚本家のもとに火星人を名乗る男がやって来て、その男の言っていることは真実なのか虚言なのかと、人々が右往左往させられてしまう話なんですが、それって昔もいまも変わらない、普遍的な題材だと思うんです」インターネットの掲示板に<2112>というコテハン(固定ハンドルネーム)の“タイムトラベラー”が現れた。2112がそのスレッドの「オフ会」に参加すると言い出すと、2112は本当に未来人なのか、本当にオフ会にやって来るのかと、スレの住民たちは大盛り上がり。アキエことAV嬢の絵里は、オフ会で親しくなった自称2112の青年と、好奇心から同棲生活を始めてしまう。絵里が彼の生活ぶりを掲示板に書き込むうちに、事態はみるみる膨れ上がり――。「現実のネットの炎上も、ほぼこんなパターンですよね。ネット民にとっては、真偽をただす以上に、それを肴にみんなで盛り上がりたいというお祭り感が大切。真実はわかってもわからなくても、どっちでも面白いということなんでしょう」併録の「二人組み」の主人公は、学校や教師の欺瞞や、それにおもねるクラスメイトたちの偽善を冷ややかに見ている中学3年生の本間だ。「母に言わせると、本間は中学時代の僕まんまらしいです(笑)」無口すぎてクラスで浮いている坂本ちゃんに性的関心から近づくが、その思いは少しずつ変容していく。衝撃的なラストシーンは、「最初から決めていました」最近の小説より、近代小説を多く読んできたという鴻池さん。「いちばん好きなのは谷崎潤一郎で、リーダビリティのお手本にしているのは夏目漱石です」次にどんな球を投げてくれるのかが楽しみな、気鋭の書き手の登場だ。こうのいけ・るい作家。2016年に小説「二人組み」で新潮新人賞を受賞、現在は、出版社でのアルバイトと作家業との二足のわらじ。月刊文芸誌『新潮』で新作を発表する予定。<時間旅行者をもてなすスレ>の住人たちは、未来人を名乗る<2112>の正体を突き止めようとし…。男女中学生の心理に迫る「二人組み」併録。新潮社1600円※『anan』2018年4月4日号より。写真・土佐麻理子(鴻池さん)大嶋千尋(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年04月01日見たことがある懐かしい風景のようでいて、決して交わることのない並行世界のようでもあって。初作品集『足摺り水族館』(1月と7月)、続く『蟹に誘われて』『枕魚』『動物たち』(全て白泉社)と装丁含め話題の多い作品群を、目利きのマンガファンたちが見逃すはずがない。ペンネームの不思議さも、生年や性別などプロフィール不詳のままの活動も、ミステリアスな存在感に拍車をかける。そんなpanpanyaさんの最新刊『二匹目の金魚』がこのたび刊行に。表題作は、panpanya作品ではおなじみのおかっぱの女の子が主人公。生き物係の少女が水槽を洗っていると、金魚に脱走(?)され、捜しに出かけて川をさらったり、交番に遺失物届を出したり。奮闘の顛末を描くそれだけのマンガなのに、広がる世界が面白すぎて、食い入るように読んでしまう。この不思議な着想は、どこから得るのだろうか。「着想とも呼べないようなちょっとした言葉が取っ掛かりになります。まず“壁”とか“屋台”とか、単語単位の発見があり、そこから発想がずるずる芋づる式に展開していけばしめたもので、それらが一定量集まると物語になっていきます。こんなストーリーにしようとか、はじめからはっきりとした意図を持って描き始めることは少ないです」特徴的なのは、細密画のような、圧倒的に手数の多い風景やモノの描き方。味のある線の魅力が、不思議な浮遊感を醸し出す。「コマ枠の線に至るまで、線はフリーハンドで描きます。実際、直線に見えるものって世の中にあまりないと思っていて、たとえば建物も時間の経過によって歪んできたりするし、目の端に映るものは直線であるかどうか意識すらしなかったりする。細密といっても写真ほどの情報量はないわけで、むしろ『わざわざ描かれるもの』であること、何を『わざわざ描く』対象として選ぶのか、ということを意識しています」パンパンヤマンガ家。同人活動を経て、2013年に商業デビュー。現在、『楽園』春のWeb増刊で「春のpanpanyaまつり」開催中。「かくれんぼの心得」のような遊びの効いたネタから「小物入れの世界」のようなあるある話まで全19編+解題。唯一名前があるのは犬のレオナルド。白泉社980円(C)panpanya/白泉社※『anan』2018年3月28日号より。写真・大嶋千尋インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年03月21日老舗の風格を感じさせる趣のある佇まい東京・赤坂にある「室町砂場 赤坂店」は、さすが老舗店というような、和の風格が漂う数寄屋造りの一軒家。そこが都心であることを一瞬忘れてしまうような、ノスタルジックな雰囲気に包まれています。藍色の暖簾をくぐり店内へと入れば、そこは粋な蕎麦屋の風情がたっぷり。壁にかけられた木札のお品書きに、お店の歴史を感じることができます。明治2年創業の「天もり」「天ざる」発祥の老舗店明治2年創業の「室町砂場 赤坂店」は天もりと天ざるの発祥のお店として有名です。両方とも温かいつゆに入ったかきあげが特徴ですが、天もりと天ざるの違いは蕎麦にあります。やや黒みがかった二番粉を使用した蕎麦が「もり」、更科粉を使った白っぽい一番粉使用の蕎麦が「ざる」です。やや硬めの茹で加減は喉越しが良く濃いめつゆによく合います。コクと旨味が染みたかきあげがポイント! 元祖「天もり」「室町砂場 赤坂店」の「天もり」は、別のお皿に天ぷらが盛られているのではなく、海老と貝柱のかきあげが初めから蕎麦つゆに入っています。かきあげの油が溶け込んだ温かいつゆは、やや硬めに茹でられた麺と相性抜群。サクサクのかきあげと濃いめのつゆでいただく蕎麦は、老舗店ならではの深い味わいが特徴です。そばつゆの出汁を使用したふんわり甘い「玉子焼き」蕎麦つゆを使った「玉子焼き」もおすすめです。ふんわりと仕上がった玉子焼きは、やや甘めでしっかりした味付け。ひと口食べると、口いっぱいに優しい甘さと風味が広がります。お酒のお供にもぴったりで、常連からも愛され続ける定番メニューのひとつです。老舗の伝統が詰まった自家製料理の数々ほかにも、老舗ならではの昔からの味が堪能できるメニューが揃います。身がぷっくりとした「あさりの時雨煮」、北海道産大納言あずきを使用した自家製あんこが決め手の「白玉ぜんざい」など、こだわりの食材を使用した絶品ばかり。創業以来受け継がれてきた伝統の味を守り、この先も変わらない店づくりをしていきたいという老舗の心意気が感じられます。東京メトロ千代田線の赤坂駅6番出口を出てすぐの場所に「室町砂場 赤坂店」があります。昔から変わらぬ老舗の味を堪能しに、ぜひ一度足を運んでみては。スポット情報スポット名:室町 砂場 赤坂店住所:東京都港区赤坂6-3-5電話番号:03-3583-7670
2018年03月15日野村宗弘さんのマンガ『かけおちはスクーターに乗って』、年下男性と美人妻とのワケアリな恋愛を描いた作品。鉄工所で働く人々の日常を、叙情豊かに描いた『とろける鉄工所』など、職業系マンガの描き手として高い評価を得る野村宗弘さん。その一方で、配偶者に浮気されているお隣さん同士の男女が、互いに惹かれ合っていく『うきわ』など、大人のままならない純愛マンガにも、きらめく才を見せる。そんな野村さんの『かけおちはスクーターに乗って』は、後者に属するおすすめマンガだ。「『うきわ』は理性で激情を抑えた結末でした。今度は反対に、恋愛で理性が働かなくなるとどうなるかをテーマにしたいと思ったんです」『かけおち~』の舞台は、海のキレイな田舎町。交番勤務の警察官ケンジは、都会からやって来た10歳年上の人妻エリナと出会う。どこか頼りなさげなエリナにケンジは惹かれていくが、ほどなく「夫から逃げてきた」という危うい事情がわかってくる。しかも、夫の栄吉が、エリナのアパート周辺をうろつき始め、不穏さは否応なく増していく。「トラウマを抱えているらしいエリナさんに同情はするけれど、単純に栄吉が悪者というのも違うような…。恋愛において、自分を尊重することは大切でも、自分しか尊重しなかったら関係はおかしくなる。もちろん、恋に落ちてクレイジーになるのを否定しているわけではないんです。ただ、相手にずっと愛してもらえることを期待しすぎると追いつめてしまう。時間が経てば恋は少し冷めるものだし、それでも思いやりを忘れなければ、ずっと仲良くいられていいんじゃないかと思っております」警察官の職分を忘れ、エリナひとりを守ろうとするケンジ。ついには、禁断の誘いまで口にする。だが、栄吉との関係がこじれているエリナの心情は複雑だ。最初の結婚に失敗していることや、ケンジとの年齢差などが気になって、素直にケンジを頼りにできない。「ケンジがもっと頼りがいのあるタイプだったら、話は簡単かもしれないけれど、僕、イケメンが描けないんですよね。見た目はともかく、イケメンの心がわからない。どんな心理で壁ドンなんてできるんだ、と考えてしまうけぇ(笑)」ちなみに、これほど悩みながら描いたマンガは初めて、と野村さん。「特に、エンディングについては最後の最後まで迷ったんです。賛否両論あるかもしれないけれど、 自分ではこれしか落としどころがないと思って描きました」どんな決着を見るのかを、ぜひ見届けてほしい。『かけおちはスクーターに乗って』23歳の警察官ケンジは、品川ナンバーのスクーターでやってきた美女を見かけ…タイトルには「救う人(ター)」→「スクーター」の意味を重ねた。2巻完結。小学館552円(C)野村宗弘/小学館のむら・むねひろ1975年生まれ、広島県出身。マンガ家。2007年、講談社「第5回イブニング新人賞」で奨励賞を受賞し、本格デビュー。『鉄工所にも花が咲く』も好評発売中。※『anan』2018年3月14日号より。インタビュー、文・三浦天紗子
2018年03月13日独演会には老若男女が訪れ、チケットは入手困難。そんな大人気の実力派落語家・春風亭一之輔さんが、初のエッセイ集、『いちのすけのまくら』を上梓。落語が一級品なら、文章を書かせても一級品でした。子どもが僕に、「このまま伸びていってもらいたい」と言うんです。――2男、1女のお父さんでもいらっしゃいますよね。お子さんたちもエッセイを読みますか。一之輔 :いま、小学6年、3年、1年です。上の子なんか「へえ」とか言いながら読んでますね。たまに「ここウソじゃん」とかツッコむんですよ。いいだろ、そのまま書いたら面白くないんだ、脚色はあっていいんだって言い張ってます。――お子さんたちに、高座を見せたりもするんですか。一之輔:たまに連れていきます。感想を聞くと、「いいんじゃないですかねぇ、まっすぐ伸びていってもらいたいです」って言う(笑)。――お子さんが、飄々としていて頼もしいですよね。一之輔さんがうっかり準備し忘れていた年賀状の文面を、しらっと息子さんに書かせた「年賀状」の回は、読んで噴き出してしまいました。一之輔:息子が〈ことしもいちのすけをよろしくおねがいします〉って書き添えた話ね。あれは楽でした。でも、早く大きくなってもらいたい。「可愛さ」と「手が掛かる」を天秤にかけると、まだまだ大変ですからね。――一之輔さんの「初天神」を見たことがあるんです。何も買わないよと出かけたお祭りで、息子の金坊がお父っつぁんに、あの手この手でおねだりする話ですね。あの噺の中で、一之輔さんがやる金坊の表情がすごくイキイキしていたというか。お子さんたちの表情を参考にしたりするんですか。一之輔:こういう顔をするのか、と観察はしますね。子どもっていつもテンション高いかといえば、そうでもない。意外と冷めていたり。子どもの表情は間口が広いです。実際、表情とかを鏡を見て練習したりは僕はしないですからね。セリフの調子に、自然と表情もついていけばいいかなと思ってます。――落語は声の芸でもあります。一之輔:声の良さ、抑揚、ハリ、艶、リズム感とか、稽古でプラスアルファも出せるけれど、やっぱりアスリートみたいに、持って生まれたものは大きいです。――単純計算で休みなしに1日2.5回高座に上がっている計算なんですが、ご自身でも、最近ノッてるなあ、なんかスランプだなあとかあるんですか。一之輔:調子がいい悪いはありますよ、多少は。サイコーって日はないけど、お客さんに乗せられるときもあるし、30分なら30分、やりながら調整していく感じです。――そういうところもスポーツみたいですね。一之輔:僕は最初はテンション低いんです。だらーっと入っていくんです。いつも通りの感じで高座にも上がって、そのまましゃべり始めますね。落語って、おしゃべりですから。芝居の発表会みたいに、稽古してきたものをどーんと観客にぶつけるというより、「どうだい?」ってふつうの会話みたいに話しかける。で、自然に古典のネタに入っていくというのがいちばんいいのかなと。しゅんぷうてい・いちのすけ1978年1月28日生まれ、千葉県野田市出身。2001年、日本大学藝術学部卒業後、春風亭一朝に入門。NHK新人演芸大賞、文化庁芸術祭新人賞、国立演芸場花形演芸大賞など数々の受賞歴あり。年間900席を超える高座に出ている。『週刊朝日』で連載中のコラムが書籍化。執筆ツールは、現在、ガラケーから自慢のガラホに移行。連載から選りすぐった100本のコラムを、テーマ別にカテゴライズ。最終章には、落語好きで知られる俳優・東出昌大さんとの対談も収録されている。読むマクラともいえる味わい深さを体験して。『いちのすけのまくら』朝日新聞出版1500円※『anan』2018年3月14日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年03月11日男性2人と女性1人の危うい三角関係を描いた小説『愛が挟み撃ち』を前田司郎さんが上梓。前田さんに作品への思いなどを聞きました。「40歳になり、同年代の友人と子どもの話をするようになりました。『もしかしたら自分には精子がないかもしれない』と考えることもあります。それをすぐに小説にしようと思ったわけではないのですが」あるとき、前田司郎さんは書店で、実際に“挟み撃ちに遭う”体験をした。そのふたつが心に引っかかり、愛と生殖、本能と理性、身体と感覚など、挟み撃ちのジレンマをあれこれ考えるうちに、男性2人と女性1人の物語が浮かび上がってきたそう。『愛が挟み撃ち』で描かれるのは、子どものできない悩みを抱えた夫婦と、ふたりにとって曰く付きの旧友との“危うい三角関係”だ。「念頭にあったのは、ルー・ザロメ、ニーチェ、パウル・レーの女男男の三角関係でした。それはニーチェが夢想したようには上手くいかなかった。どうして失敗したんだろう?恋愛には一対一の関係がベストなんだろうか?と考えました」妊活開始早々、夫・俊介の無精子症が発覚。子どもはあきらめられないが、知らない他人の精子でできた子どもを愛せる自信はないという俊介。ならば共通の知人である水口に精子提供を頼んでみようと、妻の京子に切り出す。学生時代に演劇や脚本の話題を共有していた俊介、水口、京子は、それぞれが一方通行な思いを寄せていたのだ。「俊介の水口への気持ちには、草稿を書き上げてみて気付きました。僕自身『ああ、そういうことか』と腑に落ちた。3人それぞれの思惑がおぼろげながら見えてくると、俊介が提案し、水口や京子がそれを受け入れたことも自然に思えて。それほど荒唐無稽な計画でもないのかなと」15年ぶりに叶った再会が、心の奥底でくすぶっていた三者三様の思いに、再び火をつけてしまい…。「三点で安定しなかったとき、そこにもう一点置くことで三角錐(すい)となり、安定するんじゃないか?その頂点を赤ちゃん、つまり愛に担わせようとする」賛否両論のエンディングは、読者を驚かせたくて選んだわけではなく、必然だったと前田さんは言う。「愛は見えないし、その存在も証明できない。でも奇跡のような偶然がそれを信じさせる契機になることもあるのかなと。僕は神話のようなものを書きたかったんです」『愛が挟み撃ち』40歳を迎える俊介と36歳の京子は結婚6年め。子どもを欲しがる俊介の、旧友の水口から精子をもらうという提案を、京子も受け入れるが…。文藝春秋1400円まえだ・しろう劇団「五反田団」主宰、劇作家、演出家、作家。2008年、『生きてるものはいないのか』で岸田國士戯曲賞を受賞。最新刊は『異常探偵宇宙船』(中公公論新社)。※『anan』2018年3月14日号より。写真・大嶋千尋インタビュー、文・三浦天紗子
2018年03月10日さまざまな経験と卓越した感性を持つ方々が、そっと語る、官能の本質とは?今回は、作家・島本理生さんに投げかけてみました。台風のように訪れる、官能をつかむ悦び。つかみどころのない異性との、不安定な関係に官能的なものを感じて、惹かれていたころがあります。友達に紹介しても「いい人だね」「お似合いだよね」と応援してもらえない危険なタイプ。作家としての好奇心もあったのかもしれないです。彼が次に何を言うか、何をするかがわからなくて、ハラハラすればするほど、気持ちを持っていかれていましたね。ところが、自分も年齢や経験を重ねてくると、何を考えてるかわからない人って、案外何も考えていないのかもとわかってきた(笑)。若いころは刺激だけでドキドキできても、軸がない人の魅力はだんだん頭打ちになるように思います。いつまで経っても心がぶつかり合わないとしたら、不安定な関係は、ただ不安を煽るだけで、何かが深まる気がしません。がっぷり組み合う関係性の中でこそ、深くなっていく官能もあると思うようになってからは、もっと、骨のある男性に惹かれるようになりました。若さが削られていくにつれ、見た目や体つきが色っぽいというよりも、その人自身が生きてきた積み重ねがモノをいうからでしょうね。たとえば、学生時代、同じ教室にいたときには、みな似たようなただの男の子だったのに、社会人になって再会すると、いい色気が出てくる男性がいます。仕事や家庭など社会的な責任を持つ年齢になれば、成熟していかざるを得ないわけだけど、それが垣間見える瞬間は官能のアンテナを刺激されます。物語の中の有名な美男子といえば光源氏ですが、助川幸逸郎さんの『光源氏になってはいけない』という解説本の中に、象徴的なエピソードがあります。若き日の光源氏は、それはもう輝くような美しさだったんですよね。ある宴会に出たときも、あえて普段着に近い、気張りすぎない服装で現れ、逆にその生まれの良さや美しさでまわりを圧倒します。一方、源氏と仲がいいけれどライバルのような関係でもあった頭中将は源氏に比べればパッとしなかった。ところが十年以上経って二人が祝いの席に出てみると、年齢相応の貫禄を身につけた頭中将のほうが魅力的に書かれているというのです。というのも、光源氏は相変わらず若いころの自分を引きずっていて、悪い意味で青年にしか見えないんですね。いまこの瞬間に対して、しっかりと向き合って生きようとしていると、たぶん自分の年齢に合わせた魅力にシフトしていける。そういう人には成熟した色気も自然と備わってくるのかな、と感じます。官能というのは、台風みたいなものかもしれません。突然訪れるときもあれば、待てどもまったく来ないこともある。いざやって来たときは、家の中でじっとしていれば避けることができるけれど、それに身を任せるかは自分次第。楽しく戯れられる台風なのか、出ていったら取り返しがつかないほど大変なことになる台風なのかは、ドアを開ける前に多少なりとも見分けたいですよね。一つ気を付けたいのは、せっかく煮詰まった官能の瞬間を散らかしてしまうことでしょうか。「自分には色気がない」と悩む女性の中には、照れくささや緊張から、ばーっと一方的にしゃべったり、茶化したりしてしまう人が多いように感じます。色気を扱うのが得意な人に共通するのは、沈黙の使い方が上手いということ。黙るべきときに黙る。次のステップへ促すべきときに促す。いま何を言うかより、いま何を言わないかの取捨選択が上手い人は、官能とは何かをも知っているように思います。しまもと・りお作家。2005年刊行の『ナラタージュ』で恋愛小説の旗手に。‘15年、『Red』で島清恋愛文学賞を受賞。最新刊は『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』(幻冬舎)。※『anan』2018年3月14日号より。文・三浦天紗子(C)TwilightShow(by anan編集部)
2018年03月07日エドワード・ケアリーのアイアマンガー三部作、『堆塵館(たいじんかん)』『穢(けが)れの町』『肺都(はいと)』について、翻訳家・古屋美登里さんにお話を伺いました。ゴミだらけの館や町で巻き起こる、大スペクタクルを読み逃すなかれ。19世紀後半、ロンドンの外れにそびえ立つ「堆塵館」。ゴミから財を築き、その屋敷の主になったアイアマンガー一族をめぐる三部作の物語がついに完結。3巻合わせて1300ページを超える厚さにひるむかもしれないが、最初の『堆塵館』が刊行されるや否や、名だたる書評家や本好きたちから「早く続きを!」の悲鳴が上がったほど、面白さはお墨付き。物語が締めくくられたいまこそ、格好の読みどきだ。この大作の翻訳を手がけたのが、古屋美登里さん。エドワード・ケアリー自身も翻訳家として絶対の信頼を寄せている古屋さんに、三部作を楽しむためのポイントをうかがった。「ケアリーは絵を描いたり粘土細工をしたり、小説を書く以外にも絶えず創作的な活動をしている多才な人。あるとき描いた鉛筆画――憂鬱な表情をした不健康そうな少年が、まさか3冊にも及ぶ長大なストーリーのきっかけになるなんて、本人も驚いたそうですよ」この少年こそが『堆塵館』の冒頭で紹介されるクロッド・アイアマンガー。肌身離さず身につけている一族の印=<誕生の品>が浴槽の栓というのも愛らしい、クロッドの顔をまず見てほしい。こうした登場人物の肖像画などたくさんの挿絵が、本作の大きな魅力にもなっている。「物語と絵の融合にこだわっているケアリー。肖像画のほか、館の断面図や町の俯瞰図などが、想像を補完してくれます。決して可愛らしいタッチではないのに少しずつ絵の魅力に引き込まれ、しまいには、愛おしく思えてくるから不思議(笑)」クロッドはまた、<物の声>を聞くことができる稀有な能力の持ち主だ。孤児院から屋敷に引き取られてきた少女ルーシー・ペナントと出会い、物語は走り出す。大人と子ども、善と悪、国家と一族など、数多の対立の物語を内包していて、主役級のみならず脇役までが揃ってチャーミング。なかでもクロッドの成長小説としての面白さは格別だと古屋さん。「最初は気弱で孤独な少年だったクロッドが、物や他者の気持ちを理解し、町に出てアイアマンガーの外の世界に触れて見聞が広がることで、自分の役割を知っていく。私が特に胸が熱くなったのは、『肺都』で、クロッドが物たちを味方にして巨大な敵に立ち向かっていくシーン。人と同じように物にも愛着を持つケアリーらしさがよく出ていました」堆塵館の地上階にいるアイアマンガーたちと、地下階にいる使用人たちとの関わりから始まり、次に、館のふもとの町フィルチングの様子が描かれ、その勢いのまま、ロンドンで起こる大騒動になだれ込んでいく。「館という閉鎖空間から徐々に物語が開かれていく、とても計算された構造になっているので、怒濤の展開に身をまかせていけばいい。極上の読書体験を得られるはずです」エドワード・ケアリーから日本の読者のみなさまへ私はこれまで日本の文化から、つまり古い幽霊の話や北斎の絵、宮崎駿の傑作などから大きな影響を受けてきました。アイアマンガー三部作は、少年少女が年長者たちの残虐性と闘う話です。成長と愛と家族の物語であり、英国生まれで、現在アメリカに暮らしている私にとっては故郷を偲ぶ物語なのです。この三部作が、日本で居場所を見つけたことをなによりありがたく思っています。<堆塵館>をはじめ、原書のムードをより的確に伝える造語を多用した訳者の力量にも脱帽。東京創元社『堆塵館』3000円、『穢れの町』2800円、『肺都』3800円。ふるや・みどり翻訳家。目利きの書評家でもあり、書評集『雑な読書』『楽な読書』も好評発売中。※『anan』2018年3月7日号より。写真・水野昭子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年03月02日遺影専門の写真館がある町で起きた、悲喜こもごもの心震えるミステリー、道尾秀介さんが書いた小説『風神の手』。舞台は、西取川(にしとりがわ)をはさむ2つの町、上上町(かみあげちょう)と下上町(しもあげちょう)。その地にある遺影専門の写真館「鏡影館(きょうえいかん)」に飾られている写真が呼び水となり、数十年にわたる“縁”の物語が語られていく。道尾秀介さんは、朝日新聞で連載していた「口笛鳥」を『風神の手』の第二章に据え、その前後に加筆して、連作長編として完成させた。第一章の「心中花」は、若き漁師と女子高生という立場の違う男女の切ない恋物語が、続く第二章は、まめとでっかちという小学5年生の2人が決意を秘めて立ち向かう事件が描かれる。第三章の「無常風」で、死期間近の老婦人の告白によって、仰天の過去が掘り起こされ、エピローグの「待宵月」へなだれ込む。「真相へと迫っていく中で、犯罪が悪意で行われるとは限らないし、善行が善意で行われるとは限らないという、人間の複雑さ、面白さを書けたらいいなと思っていました」悪意のない嘘。言えなかった真実。過去の出来事の意味が裏返り、欠けていたピースが鮮やかにはまる快感。さらに、物語の鍵として、自然の神秘を感じるモチーフがちりばめられているのも、道尾ワールド。標題紙をめくると現れる、コナン・ドイルの小説から引用したエピグラフ(序文)が意味深だ。「5~6年前に読んだ小説のこの部分に強く惹きつけられたのは、めぐり合わせの不思議さを、僕もよく思うからです。いろんな偶然が影響し合って、日々、思いがけないことが起きる。たった一粒の砂がめぐりめぐって人を殺してしまうというような因果律の世界を、前々から書きたいと思っていました。人間は文明や街を作り、自然を支配してるかのようですが、どこかで風が吹くだけでいろんなことがこんなにも変わってしまう。僕自身も予想していなかったくらい、エピソードやモチーフ、人物同士が有機的につながったので、書いていて本当に楽しかった」本書に関しても奇縁があったそう。「砂がひとつの鍵になっている小説なので、カバーに使う装画を、僕が好きでライブパフォーマンスに通っていた、サンドアーティストの伊藤花りんさんにお願いしたんですね。うれしいことに、彼女は学生時代から僕の本を読んでくれていたそうなんです。世界は、人生は、不思議なもんだなぁといつも思っています」みちお・しゅうすけ作家。2004年に『背の眼』でデビュー。’10年に『光媒の花』で山本周五郎賞、’11年に『月と蟹』で直木賞など受賞歴多数。道尾さんは、作中に出てくるウミホタルを取材がてら実際に捕獲に行ったそう。「思っていたよりずっと蒼くて明るい。神秘的でした」朝日新聞出版1700円※『anan』2018年2月14日号より。写真・水野昭子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年02月12日昨年末に紅白の初出場も果たし、抜群の歌唱力と卓越したダンス技術で国内でも傑出した存在となっている、三浦大知さん。三浦さんのステージを長年ともに作り続けるほか、いち“ダンサー”の域を超えて世界を舞台に活躍する4人組ダンスパフォーマンスチーム、s**t kingz(シットキングス)。ダンスを選んだ2組のスペシャルトークをお届けします。――三浦さんがシットキングス(シッキン)と共演したいと思ったきっかけは何でしたか?三浦:すごいダンスユニットがいるという噂を聞き、クラブのショーを見に行ったんですよ。ダンスのうまさはもちろんだけど、4人はすごく仲がいいし、家族のような空気感がいいなぁって。それでNOPPOさんに『Inside Your Head』(2008年リリースのシングル)のMVに出演していただいて、続いてのイベントは全員一緒に出たんだよね。shoji:オファーをいただいたときは、ワオ!僕らが昔から憧れていた大知君と共演!そこに行っていいんですかー、って、相当興奮しました。Kazuki:知り合う前はめちゃライバル視していたんですよ。オレらはアンダーグラウンドで頑張るから、メジャーでどうぞ、って。でもいざ会ってみたら、ヨロシク~、と一瞬で気持ちが変わった(笑)。三浦:そうだったんだ(笑)。NOPPO:大知は接し方でもなんでも、すごくダンサーを尊重してくれるんですよ。“アーティスト”という感じがしない。友達同士の感じなんです。シッキン一同:そうそう。Oguri:アーティストから振付をもらう経験も、大知がはじめて。普通はダンサーが先に振付して、後でアーティストさんに憶えてもらうんですが、大知のリハーサルは、本人がいないと始まらない。現場でコミュニケーションがたくさん取れるのが楽しくて。kazuki:しかも上手な振付を持ってくるんだよね。Oguri:自分で振付するときも、“あ、やべえ、大知の影響を受けちゃってる”って思うこともよくある。三浦:それは僕の作戦にまんまと引っかかってる!実は先にみんなのエッセンスをいただいているんだよ。あれ、似てる?と感じるのは、もともと4人の振りだったりするよ。Oguri:マジで!?巧妙すぎる(笑)。とはいえ、大知のフィルターを通して作られているので、新鮮に感じるな。三浦:出会って10年近く経つけど、会うたびに4人それぞれが刺激を持ってきてくれるチームだよね。どこの世界でも、メンバーが固まると多少マンネリ化することがあるけど、シッキンにはそれがない。そういう関係があるから楽しいし、一緒に踊れる喜びを感じるんです。――三浦さんの作る振付は、やはり歌を第一に考えたものなのでしょうか?三浦:歌のためのダンス、が大前提ですが、その感覚が彼らと似ていると感じています。普通は、いい意味でも悪い意味でも、ダンサーによって聴いている音が全く違うと感じるのですが、4人とは感じているものがとても近い気がします。shoji:普通、昔作った振付の曲を踊ると、“この感じ、ちょっと恥ずかし~!”って感じることがある。でも、大知が振り付けた曲って、振りが古いと感じたことがないんですよね。毎回、その時どきの新しいエッセンスが入っているのに、古くならない。それってすごいことだと思う。Oguri:ベーシックなことを大事にしているからかな。基本がなくて中途半端な振付だと、踊っていても楽しくない。大知の振りは、いつ踊っても古さを感じないんだよね。三浦:おおー。ここはぜひ詳しく書いておいてくださいね。シッキン一同:(笑)みうら・だいち‘87年8月24 日、沖縄県生まれ。‘05年ソロデビュー。天性の歌唱力に加え、抜群のリズム感を見せるダンスで国内外の人々を魅了する、日本を代表するエンターテイナー。昨年末の『第68回NHK紅白歌合戦』に初出場を果たした。シットキングス‘07年結成。米コンテスト「BODY ROCK」で2年連続優勝を果たして以来、世界中から注目を浴びるユニット。海外イベントへの出演から単独舞台公演、夏フェスまでボーダーレスに活躍中。振付家としても引っ張りだこ。通称シッキン。三浦/ベスト¥60,000シャツ¥42,000(共にオールモストブラック/アイデア バイ ソスウTEL:03・3478・3480)ジャケット¥49,000(エトセンス/エトセンス オブ ホワイト ソースTEL:03・6809・0470)パンツ¥22,000(イロコイ/イロコイ ヘッドショップTEL:03・3791・5033)シューズ 参考商品(ディーゼル ブラック ゴールド/ディーゼル ジャパンTEL:0120・55・1978)shoji/ジャケット¥287,000※スーツセット価格ポロシャツ¥42,000(共にディースクエアード/ディースクエアード 東京TEL:03・3573・5731)kazuki/ジャケット¥269,000シャツ¥208,000スカーフ¥19,000(以上ディースクエアード/ディースクエアード 東京)NOPPO/シャツ¥71,000スカーフ¥22,000(共にディースクエアード/ディースクエアード 東京)Oguri/ジャケット 参考商品パンツ 参考商品チュールレイヤードシャツ¥68,000スカーフ¥22,000(以上ディースクエアード/ディースクエアード 東京)その他はすべてスタイリスト私物※『anan』2018年1月31日号より。写真・関 信行スタイリスト・村田友哉(SMB international./三浦さん)Babymix(s**t kingz)ヘア&メイク・外山龍助(KIDMAN/三浦さん)新宮利彦(VRAI/s**t kingz)取材、文・北條尚子
2018年01月30日自分に突きつけたくなる人生哲学。吉野源三郎さんによる歴史的名著『君たちはどう生きるか』が、羽賀翔一さんによっていまマンガで蘇る。「原作を読む前は、タイトルのイメージから勝手に『説教くさい本なのかな』と思っていました。ところが、読み始めてみるとすぐに、コペル君や浦川君など悩める登場人物に感情移入できた。これは教養だけの本ではない、純粋に物語として面白いと夢中になりました」現在、発行部数95万部と快進撃を続けているマンガ版の『君たちはどう生きるか』。それを手がけたのが羽賀翔一さんだ。本書のベースになっているのは、児童文学者で編集者としても辣腕を振るった故・吉野源三郎さんによる同名の名著。慕っている叔父さんから〈コペル君〉というあだ名を付けられた中学2年生の少年が、その叔父さんとの対話を通して、友情やいじめ、貧困、勇気などさまざまな人生テーマに向き合い、成長していくストーリー。「僕のデビュー作『ケシゴムライフ』というマンガも、日常のワンシーンの向こうに、小さな思いがつながり、記憶に刻まれるドラマが生まれる、そんなときの感情を描いているんですね。ちょっとおこがましいですが、吉野さんと僕の感性はもしかすると近いのではないかと感じオファーされたマンガ化にぜひ、挑戦したいと思いました」こだわったのは、原作の持ち味は壊さず、同時に、マンガとしての魅力も加味することだ。「たとえば、コペル君が浦川君の家の貧しい境遇を知って、それによって浦川君の人間の大きさに気づく場面があります。コペル君が叔父さんにその話をすると、叔父さんも〈じっとしていられなくなってきた〉と言い、連れだって歩くのです。ひとまわり成長したコペル君に刺激されて、叔父さんもまた変化したことを表現したのですが、それは原作にないのだと説明すると、結構驚かれるんですね。実際、このあたりのネームを担当さんに見せたときに、『コペル君と叔父さんの関係性がよくわかります。羽賀さんなりのキャラクターがつかめましたね』と言われて。叔父さんはコペル君のメンター(助言者)であり、バディでもあるという描き方にすると決めました」また、本書のキモでもあるコペル君宛ての手紙〈おじさんのNOTE〉は、その構成を踏襲。叔父さんの手紙はあえてマンガ化せず、文章のまま、載せた。「文章のパートでは、“ノートを持っているコペル君の指”を絵にしているんですが、指の描き方は幾通りも変えました。『この部分を読むときは、コペル君も力が入ったんじゃないかな』と思ったら、ぎゅっと力が入った感じの指にしてみたり」そうしたディテールにもぜひ注目。読み返すたびに気づきがある、いまいちばん読みたいマンガなのだ。友達を裏切ってしまったという深い後悔に苛まれるコペル君に、叔父さんが差し出してくれたノート。自分で考え、踏み出すことの大切さを学ぶ。マガジンハウス1300円(C)羽賀翔一/マガジンハウスはが・しょういちマンガ家。2010年、MANGA OPEN奨励賞受賞。’11年に「ケシゴムライフ」を集中連載の形で発表、’14 年に単行本化。他の著作に『昼間のパパは光ってる』。※『anan』2018年1月17日号より。写真・土佐麻理子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年01月10日元夫は、著名な映画プロデューサーで、映画監督。一緒に暮らし始め、籍を入れ、最後の3年間は別居していた。鈴木マキコさんの『おめでたい女』は、25年にも及ぶ結婚生活の愛憎を、赤裸々に描いた私小説だ。「夫は、謝らなかったし一度も説明せず逃げていった。信頼を何度も踏みにじられ、本当にどん底でした」執筆のきっかけのひとつは、ある女性カメラマンが放ったひと言。〈あなたのご主人、あなたのお金で好き勝手出来て、本当に良かったわね〉「そのとき感じた苦しみは、怒りや悲しみから来たというより『それ、本当ですか、本当によかったですか』という疑問です。あの1秒後からずーっと心の中から消えません。結婚生活という言葉があるなら、離婚生活という言葉も成立するだろう。離婚というたった2文字では表せない関係が始まるのだ。一生一度の大ネタ、仕留めなければ私はもの書きではない。そう思いました。とはいえ発表のあてがあったわけではなかったんです」つてをたどって、文芸誌に表題作の掲載が決まった。鈴木さんは、2年半ほどの日々を本作だけに懸けた。4話の連作形式。表題作に続く、「ガスコンロとわたし」「亀とわたし」「チュールとわたし」というタイトルからは、どんなエピソードが織り込まれているか見当もつかないだろうが、ここでは触れない。だが、〈わたしが心配して何か尋ねると、「君は知らなくていいから」(略)でも毎回、後から起こる不都合な結果だけを突然押しつけられるのでした〉という部分から察してほしい。一方で、鈴木さんが決して恨みつらみから書いたわけではないのもわかる。夫失格、父親失格ではあっても、作品には敬意を払い、子どもたちからは慕われていたこと、ときには徹底的に妻の味方をしてくれたことにも触れているからだ。「どういう結末になるかわからないまま書き始めましたが、元夫がこんなに早く死ぬとは思いませんでした。ただ、彼が死んだことで、他人の残酷さや無責任さ…それをよく考えましたね。あの霊安室には、いい気になっている他人が大勢いました」だが、告別式の翌朝、鈴木さんは、元夫のためにある決意をするのだ。死んでなお深い「夫婦」という業を、あなたはどう読むだろう。すずき・まきこ作家。2016年より、夏石鈴子改め「鈴木マキコ」名義で創作開始。著書に『逆襲、にっぽんの明るい奥さま』(小学館文庫)、エッセイ集『虹色ドロップ』(ポプラ社)などが。『おめでたい女』執筆に際しては、来る日も来る日も、カバーにある寺門孝之さんの絵を、書きものもするダイニングテーブルに置いてじっと見ていたという。小学館1500円※『anan』2017年12月6日号より。写真・土佐麻理子(鈴木さん)水野昭子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2017年12月05日朝ドラ「ひよっこ」でも活躍した、俳優の岡山天音さん。そんな岡山さんが今度演じるのは、大学浪人中かつ引きこもりという役どころ。祖父の死をきっかけにやむを得ず集まった家族のめんどくさくも愛らしいゴタゴタを、CMの企画・演出を手がける気鋭の映像作家・森ガキ侑大が描く映画『おじいちゃん、死んじゃったって。』。大学浪人中かつ引きこもりの洋平を演じるのは、岡山天音さん。岩松了さんや光石研さんらの演技の大先輩に囲まれた現場でも、常にマイペースな姿勢は崩れないタイプのよう。「最初はめっちゃ緊張してましたけどね。熊本での撮影だったので、ロケが多くて。出番がないときもずっと一緒にいて、BBQしたりお酒飲んだりもしながら、気の抜けた瞬間にも居合わせられた。というので、一度ちょっとした賭けに出て、控室で大の字になって寝てみたりも。失礼かな、と思いつつ……」洋平のように反抗期はありつつも、母子家庭で一人っ子という環境から、独特な反抗をしていたそう。「母親が言うには、中学生の頃、たまに反抗すると冷静になって、『今言ってること本心じゃないから真に受けないでね』とか母親に言いながら、数時間後に『なんなんだよ、早くハイチュウ買ってこいよ』みたいな態度を取っていたらしいです。僕はあまり覚えてないんですけどね(笑)」現場での一番の思い出は、妹・千春を演じる年下の小野花梨さんに「ゆとりの代表格」と言われたこと。「ハッとさせられました。僕、現場で客観性がなくなってしまうときがあって、カメラが回る前に独り言を言ったりするので。女の子はやっぱりすごいなと。花梨ちゃんには、以降ずっといじられていました」最後に、本作を最初に観てほしいと思う人について聞いてみた。「(山崎)賢人ですかね。お互い大人になって、家族との付き合い方も変わってきたと思うので。それと、家族がここまで主軸になっている作品は初めてなので、母親にも観てほしいですね。新しい視点を見つけるきっかけになったらと思います」おかやま・あまね1994年、東京都生まれ。‘09年にNHK 教育『中学生日記シリーズ・転校生』で俳優デビュー。映画はもちろん、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』やCMなどでも活躍。映画『おじいちゃん、死んじゃったって。』彼とのセックスの最中に祖父の訃報を受けた春野吉子。やがて久しぶりに集まった家族たちのやっかいな事情が明るみに出る。出演/岸井ゆきの、岩松了、岡山天音、水野美紀、光石研らテアトル新宿ほかにて上映中。(C)2017『おじいちゃん、死んじゃったって。』製作委員会※『anan』2017年11月15日号より。写真・市原慶子スタイリスト・岡村春輝ヘア&メイク・石邑麻由インタビュー、文・小川知子
2017年11月11日『Final Phase』の著者である医療サスペンスの新星・朱戸アオさんに、最新作『リウーを待ちながら』についてお話を伺いました。アウトブレイク目前の町で、絶望を乗り越えて女医は闘う。舞台は、S県横走市という架空の地方都市。突然吐血して危篤状態に陥ったり、そのままなすすべもなく死亡したりする患者が、相次いで現れる。陸上自衛隊駐屯地のお膝元にある横走中央病院の医師・玉木涼穂は、自分たち医療関係者や自衛隊員、地域住民らがアウトブレイク寸前の状況に直面していることに気づく。医療サスペンスを得意とする朱戸アオさんの最新作『リウーを待ちながら』は、感染症パニック、命の現場、自衛隊のドラマなどが絡み合い、かつてない読みごたえをお約束。「医療には死期を先延ばしにする側面もありますが、そうして助けても、最後には必ず敗北する。人は必ず死ぬ運命にあるので。そうした矛盾を含め、医師の仕事は興味深いです」感染症や治療をめぐる、難解な説明も多いはずなのに、わかりやすくて臨場感もたっぷり。さぞや朱戸さん自身が科学や医療に詳しいのだろうと思いきや、「いえ、サイエンスやメディカルなどに詳しかったわけではありません。医療マンガを描くという抜き差しならない事情に迫られて、本や資料を読み漁り、元同級生の医師や彼女たちの同僚医師などを頼って必死に取材したんです。人生でいちばん勉強しています(笑)」玉木が感じ取っているただならぬ雰囲気が、杞憂ではないことは、すぐにわかる。玉木の前に現れたふたりの男│〈俺達は地獄を見た〉という自衛隊新富士病院に勤務する駒野二佐と、感染症の怖さをよく知る疫研の研究員・原神│の活躍が、そのまま事態の重さを物語っているからだ。実は、朱戸さんは自衛隊と関わりの深い御殿場市在住。横走市の風景や町の様子といった物語のリアリティは、そんな環境もひと役買っているらしい。「朝方に駐屯地からのラッパの音が聞こえたり、町中に操縦訓練の自衛隊のトラックが走っていたり…。普通ならあまり触れることのないものを見聞きすることも多いので、いい刺激になります」待望の第2巻は、10月23日発売予定。物語のプロットはほぼ決まっているそうだが、果たして玉木たちは危機的状況を回避できるのか。「『特効薬が開発された』というような“奇跡は起こらない”を基本のスタンスにしています。シビアな事態は動かない。その中でキャラクターたちがどう動くのか、どんな思いを抱くのか、そのあたりをしっかり描き、なおかつ希望が残るようなドラマにしていこうと思っています」若き日に読んだカミュの『ペスト』に衝撃を受けたという著者が挑む、新感覚のアウトブレイク・ストーリー。隔週発売のコミック誌『イブニング』で連載中。講談社630円あかと・あおマンガ家。2010年、アフタヌーン四季賞冬のコンテストで準入選。’11年に『Final Phase』を発表、医療サスペンスの新星として注目される。著作に『ネメシスの杖』ほか。※『anan』2017年10月18日号より。写真・水野昭子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2017年10月14日サンワサプライが、天板にクランプ方式で取付け可能で、360°回転させて天板下へ収納することができる小物収納スペース付きマウステーブル「200-MPD023BK」を発表。直販サイト『サンワダイレクト』で発売されました。天板にクランプ方式で取付け可能この製品は、天板に取り付け、360°回転させることで天板下へ収納することができ、便利な小物収納スペースを兼ね備えたマウステーブルです。机が狭くマウスの置き場に困った時などスペースを有効活用できちゃいますね。小物入れが便利!便利な小物収納スペースが付いているので、文房具などの小物を収納することができるのがポイント。収納スペースがないデスクやパソコンラックでの使用に便利ですね。360°回転するので、お好みの向きで調整することができ、不使用時には天板下に収納することができますよ。工具いらずで簡単設置工具不要なクランプ方式で手軽に取り付け、取り外しすることができます。天板と当たる部分には滑りにくいゴムパッド付きで、しっかりと固定でき、天板も傷つきませんよ。マウスパッド部分には、ケーブル通し付きです。マウスのケーブルもすっきり配線することができます。ハードタイプのマウスパッド仕様の為、滑らかなマウス操作が可能になっています。本製品は、約W350×D280×H35㎜(本体のみ)で、重量は約820gです。
2017年10月10日三浦春馬が主演を務める、不器用な大人たちの学園ドラマ「オトナ高校」。このほど、高橋克実が55歳の童貞部長役で、三浦さんの“同級生”役を演じることが決定。三浦さんや高橋さんを徹底指導する毒舌スパルタ教師を竜星涼、エロ小悪魔教師を松井愛莉が務めることになった。深刻な少子化問題に歯止めをかけるべく、政府が打ち立てた「第ニ義務教育法案」に基づく“オトナ高校”を舞台に、性体験のない30歳以上の男女=「やらみそ(ヤラないまま三十路)」たちが繰り広げるオリジナルドラマ。三浦さんが東大卒エリートの童貞=“チェリート”を演じる。■三浦春馬と“童貞同級生”に高橋克実!竜星涼&松井愛莉の役どころとは?本作で高橋克実が演じるのは、トップバンクの部長で、主人公・荒川英人(三浦さん)の上司・権田勘助。「最近は女に飽きた」などとスカしたことまでのたまうも…実は童貞!国から強制入学させられたオトナ高校で、あろうことか部下の英人と“クラスメート”になり、ともに卒業条件である“童貞卒業”を目指していく。3年前に共演した際は、親子を演じた三浦さんと高橋さん。同じ教室で恋愛を学び、青春をやり直す中、よき親友&よきライバルになっていく英人と権田には期待大。また、竜星涼と松井愛莉は、オトナ高校の教師として、自分よりも年上の生徒たちを相手に度肝を抜く授業を展開していく。竜星さんが演じるのは、英人らの担任・山田翔馬(ぺがさす)。生徒たちに向かって「君たちは腐ったチェリーです!」と言い放ち、圧倒的恋愛理論で平伏させる“毒舌スパルタ教師”になりきり、堂々たる存在感を見せつける。一方、松井さんは副担任・姫谷さくら役で、性経験において百戦錬磨の“エロ小悪魔教師”という、かつてない役どころに初挑戦!その清楚な見た目とは裏腹に、オトナな単語も連発しながら新境地を開拓する。■生徒役にも教師役にも個性豊かな豪華出演者が勢ぞろい!ほかにも、キャラクターの濃い共演者が続々決定。英人のクラスメートで、ひきこもりオタク処女・斑益美役には、NHK連続テレビ小説「花子とアン」の女流作家・宇田川満代役や西川美和監督『永い言い訳』などで知られる実力派女優・山田真歩。実家に引きこもり続けた結果、長らくその姿を見た者はおらず、実在するかどうかが町内でも“卑弥呼レベルの謎”だったことから、あだ名は“卑弥呼”。また、同じくクラスメートで、チャラすぎる弁当店の店長、川本・カルロス・有役にはブラジル出身の夕輝壽太。超モテるゆえ、1,000人以上の女を抱く…直前までは行ったのだが「なんだかピン」とこない…と、未だ童貞の身。弁当店の名物であるパスタが“すごくアルデンテ”であることから、あだ名は“ヤルデンテ”。一方、教師陣も個性豊かで、英人らの副担任で、超美女と結婚して5人の愛人がいる勝ち組・持田守を演じるのは「DOCTORS最強の名医」や「信長のシェフ」「HERO」などで幅広い役を演じる正名僕蔵。そして、英人にオトナ高校の召喚状を突きつける、神出鬼没で謎多きオトナ高校校長・嘉数喜一郎を演技派俳優・杉本哲太が演じる。■期待膨らむ!出演者陣のコメント紹介三浦さんは、「以前共演したときも、親身になって僕の相談に乗ってくださった」という高橋さんと、今回は「“同級生の絆”を深めていくのが楽しみ」とノリノリ。竜星さんについても、「彼なら役どころをしっかり演じてくれるんじゃないかという期待」があるとコメント。さらに、「実は、第1話で松井さんに罵られる場面があるのですが、本読みの段階で窒息しそうになりました(笑)。ズバズバと弱点を指摘されるところなんて、かなりアップアップ!早くも現場でのモノづくりの方向性が見えた気がして、さらに気持ちが上がりました」と、大いにテンションが上がった様子だ。「55歳童貞、初めての役柄です」と語る高橋さんは、「台本に出てくるセリフも刺激的なものが多く、『大丈夫か?』と心配になってしまうものも多々あるのですが、本当に面白くて、本読みでも大笑いしました!権田は銀行勤務のエリートなので、おそらく“デキる”男なのですが、“デキてない”んです(笑)。彼がこの歳になるまで童貞だった理由は先々明らかになっていくと思うので、楽しみにしながら演じたいですね」と期待を込める。そして竜星さんは「こういうテイストの作品を待ち望んでいました!」とうれしそう。「生徒を演じられるのが大先輩ばかりなので、やりづらいなぁ…と思ったりもしますけど(笑)、それ以上に撮影が楽しみで仕方ありません。情熱、そして愛ある毒舌を持って、生徒たちを指導していきたい」と熱く語り、「教師役という点でも新しいチャレンジになりそうです。きっと“新しい竜星涼”を見ていただけるはず!」とアピールする。さらに、“エロ小悪魔教師”役という初めての役どころに挑む松井さんは、「今回は結構きわどい言葉も連発するのですが、台本を読みながらセリフを練習していると、刺激的な単語やフレーズもだんだん普通に思えてきちゃって…。ふと我に返って『私、大丈夫かな?』と思ってしまうこともあります(笑)」と激白。キャラも濃い共演たちにも、「負けないように精神を強くして、現場に臨もうと思っています(笑)」と語っている。土曜ナイトドラマ「オトナ高校」は10月14日(土)より毎週土曜23時05分~テレビ朝日系にて放送。(text:cinemacafe.net)
2017年09月17日実力派シンガー・三浦大知に「DREAMS COME TRUE」の吉田美和と中村正人が楽曲提供。新曲「普通の今夜のことをー let tonight be forever remembered ー」として、9月27日(水)より配信限定でリリースされることになった。■三浦大知×「DREAMS COME TRUE」は相性バッチリ!7月7日に発売された、「DREAMS COME TRUE」(以下、ドリカム)を愛してやまないアーティストが思い入れのあるドリカム・ナンバーをカバーするアルバム「ドリウタ」に、「決戦は金曜日」で参加した三浦さん。彼が「ドリカム」の楽曲をカバーするのは実は2度目。1度目は「未来予想図II」だったが、今回は踊れるアレンジにしたいことから、自ら「決戦は金曜日」をセレクト。ダンスミュージックのトレンドを取り入れながら、原曲が持つファンキーさやグルーヴを混ぜ合わせたアレンジを施し、見事なカバーを完成させた。この三浦さんカバーによる「決戦は金曜日」を聴いた「ドリカム」の2人は大絶賛したという。「ドリウタ」発売日の翌日7月8日には、大阪・舞洲で開催された「ドリカム」をリスペクトするアーティストたちが参加した「ドリウタフェス2017」に出演した三浦さん。「決戦は金曜日」をカバーアレンジで披露すると、メインアクトの「ドリカム」のライブ中に再びステージに呼びこまれ、原曲の「決戦は金曜日」を「ドリカム」と三浦さんでコラボ!吉田さんと三浦さんが共にダンスをしながらパフォーマンスするというサプライズなひと幕もあった。■楽曲一部が視聴可能にこうした一連の流れを受け、「ドリカム」から“三浦大知をイメージした楽曲”が作られた。作詩は吉田さん、作曲は吉田さんと中村さんの共作による。なお、三浦さん自身のInstagramでは同楽曲の一部が試聴できる動画を公開中。ぜひチェックしてみて。■それぞれのアーティストからコメント到着!■DREAMS COME TRUEコメント「大知くんがこういうメロディーを歌ったらきっとカッコいいだろうね!」という吉田の一節のメロディーが種となり、音楽の神様と何度もやり取りをして完成した楽曲です。「どんなときもカッコよくてスマイル全開の大知くんのプライベートが、実はこの詩の世界みたいだったらヤバい!」と変な妄想をする中村さん。「普通の今夜のことを― let tonight be forever remembered ―」をライヴでパフォーマンスをする大知くんを見る日が待ち遠しい。ちなみに、レコーディング制作中の仮タイトルは「DAICHI」だったので、NEW YORKでも現地のスタッフが「DAICHI! DAICHI!」と連呼していました。■三浦大知コメント夢が叶いました。「ドリカム」さんが三浦大知をイメージして曲を作る。こんな事が現実になるなんて本当に言葉にならないほど幸せです。「ドリカム」さんが紡いでくださった1つ1つの言葉、音、想いを噛み締めながら大切にレコーディングさせていただきました。「ドリカム」さんに、「ドリカム」さんが生み出してくださった音楽に、少しでも恩返しができるようにこれから大事に大事に歌わせていただきたいと思います。最高の楽曲、最高の経験、最高の喜びをいま胸に刻み中です。三浦大知 配信限定シングル「普通の今夜のことをー let tonight be forever remembered ー」は9月27日(水)より配信開始。(text:cinemacafe.net)
2017年09月06日新作『少女は夜を綴らない』は、逸木裕さんが少しダークな青春ミステリーに挑戦。「自分を振り返っても、中学生くらいのころがいちばんつらかった」と、女子中学生の主人公・理子について話してくださいました。タイトルに込められた意味に一筋の光明が差す、青春ミステリー。人工知能の開発者・工藤賢は、劇場型自殺を遂げた美貌のゲームクリエイター・水科晴の知能を蘇らせるプロジェクトに参加。徐々にこの世にいない晴の人格に惹かれ始め…。近未来を舞台にした恋愛要素たっぷりのミステリー『虹を待つ彼女』でデビューした逸木裕さん。新作『少女は夜を綴らない』では、誰かを傷つけてしまうかもしれないという自らの加害衝動に怯える女子中学生・理子を主人公にした、少しダークな青春ミステリーに挑んだ。「理子は、<夜の日記>と題したノートに、身近な人の殺害計画をしたためて、自分の後ろめたさや過去のトラウマを慰撫しているような少女です。自分を振り返っても、中学生くらいのころがいちばんつらかった。そんな年頃には、ほの暗い感情を持つのも案外めずらしくない気もするんですね。とはいえ、僕らのころとイマドキの中学生の感性はぜんぜん違うでしょうから、僕なりに登場人物たちを知りたいと思い、想像力でキャラクターに迫っていきました」理子はボー研こと、ボードゲーム研究会に所属している。そのボードゲームをめぐるエピソードが有機的に効いていることが、物語が進むにつれ、わかってくる。「学校にも家庭にも居場所がない理子に、彼女らしくいられる楽しい場所としてどこかないかな、と考えたときに、僕自身も好きな将棋やゲームを小道具としてつなぎました」孤独な理子に近づいてきたのは、小学6年のとき転落死した加奈子の弟・悠人。彼との関わりが、理子の運命を揺さぶっていくのだが…。「理子は自分の衝動が恥ずかしく、自分の中に“嫌いな自分”がいる。そうした理解されがたい部分も含めて、認めてくれる誰かにめぐり会いたいという思いは普遍的だと思います。悠人はそれを初めて肯定してくれた相手。“殺人衝動”という部分を除けば、ふたりの関係性に感情移入してもらえるのではないかなと」加奈子の死の真相、理子たちが住む地域のホームレス連続殺人。理子と悠人による殺人計画。複数の謎を仕掛け、畳みかけるように読ませる。「書きたいのは、常に、謎が解けたときに人間のドラマが立ち上がってくるようなものです」本作でも、ラスト数行に、人間への愛しさがこみ上げてくる。『少女は夜を綴らない』兄ばかりをひいきするシングルマザー家庭で育った中学3年生の理子。小学校時代のクラスメイト・加奈子が目の前で死んでしまい…。KADOKAWA1400円いつき・ゆう作家。1980年、東京都生まれ。2016年『虹を待つ彼女』で第36回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、デビュー。フリーランスのウェブエンジニアとしての顔も持つ。趣味はホルン。※『anan』2017年9月6日号より。写真・土佐麻理子(逸木さん)水野昭子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2017年09月05日