札幌に現れた国際派鮨店オープン間もないお店の暖簾をくぐると、威勢のいい声がこちらを迎えてくれます。綺麗に磨かれたカウンター席につき、乾いた喉を潤そうとメニューを見ると、そこにはラーデベルガー・ピルスナーの名が。ドイツ最初の首相ビスマルクが愛飲したというザクセン州の古典的なビールを最初に出すなんて珍しいと思い尋ねると、親方は若いころミュンヘンで暮らしていたという。「修行したのは日本ですが、鮨屋やりたいと思ったのは暮らしてたのはドイツだったんで、そんな思いもあってドイツビールを用意してみました。もちろんお酒は、日本酒中心に、各種用意しています。」テンポよくいくつかつまみが出てきます。つまみは写真禁止です。いつも同じものを出すわけじゃないし、お客様にマンネリ感を与えるのも嫌だし、とのことでしたので、少し書くにとどめます。ムギイカやマコガレイの昆布締め、メヌキなど10品ほどをいただきました。食材は北海道の季節のものを中心に、日本中から取り寄せているそうです。印象的だったのは、虎杖浜の毛ガニをほぐした上にイバラ蟹の内子をかけたもの。それと、根室のもずく、襟裳のツブ貝、積丹のバフンウニをトマトのジュレで合わせたもの。いずれも内子やもずくのおいしさが際立っていました。合わせてもらったお酒は「吉田蔵 u 百万石乃白」、「紀土純米大吟醸」、「写楽純米吟醸」など爽やかな印象です。なぜ北海道で鮨屋を、と訊くと、縁はなかったが奥様が湧別出身だったということ。ただ北海道に魚を仕入れるルートはなく、食べ歩きながらコネづくりをしたとのことです。「今は豊洲を通さないで日本中からネタ引っ張ってますが、いずれは北海道ものだけでやりたいですね」と親方。鰊の握りの旨さに驚くさて握りです。萩の白イカからスタート。焼津の金目鯛、カスゴと続きます。カスゴは酢おぼろ締めです。萩の白イカ焼津の金目鯛カスゴそして、網走のおおすけ。天然のキングサーモンです。背側と腹側の2種類を同時にいただきます。背側の旨みと腹側の脂味が同時にしゃりと絡んで、上質な鮭の一体感が味わえます。おおすけもなかなか出会えません。ケイジより珍しいかもしれません。こういうのが味わえるのが北海道の魅力です。しゃりはハツシモという岐阜のコメ。粒が大きくて甘い。酢は赤と白を使い分け、煮切は、まぐろ、ヒカリモノ、白身、イカなどネタによって変えているようです。「大間のまぐろです。今までイカ食べてたから味が出なかったですが、ようやくイワシとかサバを食べ始めて酸味と風味が出てきたと思います。」砂ズリも出てきました。筋が厚くて柔らかく脂がよく乗っています。肉厚の鰊です。北海道らしい握りが出てきました。「鰊って、握って旨い魚なんですよ。でも骨の手当てが大変だからあまり皆やりたがらない。東京は夏はシンコに行っちゃってますけど、札幌の夏はこれだと思うんですよね。」と親方は嬉しそうです。確かにこれだけ厚く丁寧に握ってもらうと、鰊の旨さが際立ちます。そして積丹のムラサキウニとバフンウニの軍艦。ムラサキウニのクリーミーな感じとバフンウニの甘さが程よく合わさって美味。牡蛎のつまみをはさんで、ミディアムレアな茹で感のいいエビ、スイカの奈良漬、でアナゴです。「対馬のアナゴを使います。皮目が旨いので何度も炊いて旨みを中に凝縮させてます」と、ふっくらした濃いめの味のアナゴで締め。世界を見て来た親方ゆえ、接客もスマートだし、これはまた札幌の鮨をひとつ前に進める店になるのではないかと思いました。最後の会計も明朗で、頼んだお酒や追加分までちゃんと記載されています。このへんにも国際派の片鱗は見て取れます。鮨 草平【エリア】円山公園/西28丁目【ジャンル】鮨・寿司【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】20,000円 ~ 29,999円
2022年10月17日13年ぶりに復活した篠原涼子主演「ハケンの品格」の第4話が7月8日放送。杉野遥亮演じる超ヘタレ新入社員・井出の成長を描いた今回のエピソード。春子とともに冷凍庫に閉じ込められた井出がみせた優しさに視聴者からは様々な声が寄せられている。本作は篠原さん演じる語学堪能、あらゆる資格を保持、超高額時給で派遣される“スーパーハケン”の大前春子を主人公にした伝説的お仕事ドラマの13年ぶりとなる新シーズン。春子役の篠原さんのほか、以前は「S&F社」のマーケティング課主任だったが、今は営業事業部営業企画課・課長となっている里中賢介に小泉孝太郎。かつては春子に恋心を抱いていたが、現在はS&F旭川支社で支社長補佐を務める東海林武に大泉洋。13年前は新入社員だったが今や主任に昇進した浅野務に勝地涼。パソコンスキルが高い派遣から遣会社・ハケンライフの正社員となった近耕作に上地雄輔。そして今シーズンから参加する新入社員、井手裕太郎に杉野さん。三田貴士に中村海人(Travis Japan/ジャニーズJr.)。派遣としてS&Fで働く福岡亜紀に吉谷彩子。新人ハケンの千葉小夏に山本舞香。S&F営業事業部の部長、宇野一平に塚地武雅。S&F新社長の宮部蓮三に伊東四朗といったキャスト。※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。超“ヘタレ”新入社員の井出が自宅のゴミを会社でこっそり捨て、春子から注意を受けるが、井出はS&F社の最重要取引先「テイスト・オブ・ライフ」創業者で社長の美香(キムラ緑子)の三男で、コネ入社だったため、宇野は春子に「新入社員の教育は社員の役目」だと釘を刺し、井出と三田を“飲みにケーション”に連れていく。そのあおりを受け亜紀と小夏が、井出が明日の営業で配る予定のサンプル品を準備することに。それを持って初の営業に向かう井出と三田だが、実はサンプル品には表記に問題があるものがあり、間違えてそれを取引先に配ってしまう。宇野からの飲み会強要や会社のなかで働くことに疑問を感じ、会社を辞めたいと考えていた井出は、責任を感じて回収品の整理に向かうのだが、それを追った春子とともに倉庫に閉じ込められてしまう。しかも運悪く美香が息子の働く様子を見学に来社していた…というのが今回のストーリー。落雷による停電で冷蔵倉庫に閉じ込められてしまった春子と井出。極寒で震える春子に井出は自らが羽織っていた上着をかける…超ヘタレな井出が見せた優しさに「今の井出くんキュンです何だけど」「井出くんかっこいいじゃん」「井出くん完全に恋だな…ジャケット掛けてくれるのめちゃ優じゃない…?」などの声が上がる。また「今回のストーリーでちょっと井出君の好感度上がっちゃう」「井出君の人間としての優しい部分が現れる話の流れだから普通に好感度は上がるやん」など、今回のエピソードで井出の評価が上がることを期待する反応もSNSに投稿されている。(笠緒)
2020年07月09日9階から飛び降りを強制した小学校の4年生の女の子、裁判で両親の監督責任はどう問われた?出典 : こんにちは。『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』著者の立石美津子です。2013年、江東区のマンションで起きた事件です。当時4年生だった女の子が、校門前で縄跳びを振り回していた当時2年生の女の子を注意。さらに説教しようと9階建ての自宅マンションの屋上に連れて行き「飛び降りないと殺すぞ。ここから落ちて死んでしまえ」と言いました。それに従った2年生の女の子は飛び降り、木や水槽にぶつかりながら約26メートル下に転落、足や胸の骨を折るなどの全治11週間の重傷を負いました。被害者の両親は4年生の女の子の両親に3千万円の損害賠償を求め、裁判長は両親に監督義務があったと認め、約1,025万円の支払いを命じました。加害者の4年生の女の子は重度の難聴があり、両親は専門のクリニックに通って育て方の指導を受けていました。小野瀬厚裁判長は、このことについては「子育てに相当の努力を払った」と認めています。しかし、女児が事件後にアスペルガー症候群との診断を受けたことを挙げ、「他者が思い通りに動かないと怒りを持つ女児の傾向に気づいておらず、対応は不十分だった」として賠償責任を負うと判断しました。参照: 東京新聞 TOKYO Web, 飛び降り強要加害小4の親に1000万円命令参照: 朝日新聞デジタル, 小2に飛び降り強要、小4両親に1千万円賠償命令「育てにくい子の孤独な子育て」と事件によって追い込まれる親たち出典 : こういう情報が流れると、正しい理解をしていない世間の人から、まるでアスペルガー症候群などの自閉症スペクトラムに代表される発達障害児を持つ親は「将来、そんな事件を起こす可能性がある子」という誤った偏見の目で見られてしまうことがあります。この事件では、当時の報道記事などで明確に発達障害の診断名が書かれていましたが、今は「社会性の問題がありコミュニケーションが苦手と分かった」といった報道のされかたに変わってきています。かつて、新聞やテレビのニュース報道で加害者の精神鑑定の結果を明確に出したことにより様々な誤解を生んだため、現在では報道機関が自主規制を行っているようです。けれども、一度こうした衝撃的な事件が精神障害や発達障害の診断名と共に報道されてしまうと、診断名に対するネガティブなイメージが付着しやすく、誤解や偏見を払拭することは容易ではありません。そのため、発達障害のある子どもの保護者は、ただでさえ育てにくい子の子育てで孤独に悩んでいるのに、さらに追い打ちをかけられ苦しむことになります。参照: シノドス, アスペルガー症候群の特性と犯罪――『アスペルガー症候群の難題』著者による解説 井出草平 / 社会学ルールを忠実に守る子どもたちと、それだけでは通用しない社会の難しさ出典 : アスペルガー症候群を含む自閉症スペクトラムの子どもたちは、他人の気持ちへの想像力や社会性に困難があると言われることが多いですが、一方で、決められたルールを真面目に忠実に守るという、場合によっては長所にもなり得る特性も持っています。ですが、ルールを忠実に守ることにこだわるあまり、自分だけでなく他者にもルールを守ることを強く求めてしまったり、その場に応じた臨機応変な対応が出来ないために、対人トラブルにつながることも少なくないのです。例えば、見知らぬ人であっても横断歩道を赤で渡っている人に「信号無視をしてはならない!」と注意してしまったり、携帯電話を電車内でしている人を許すことができず、声を荒げて怒ってしまうことがあります。これはルール上正しいことです。だから本人にとっては正論なのです。でも、見知らぬ相手から叱られた人はたいてい嫌な思いをします。また、学校生活の中でも正論ばかり振りかざしていると“付き合いの悪いヤツ”と言われ友達作ることもできずトラブルメーカーになることもあります。白と黒だけでない曖昧なグレーな判断が世の中には存在すること、ルールは場合によっては柔軟に変更されたり、例外措置が取られることもあること。これが自閉症スペクトラムの子どもたちにとっては理解が難しいことなのです。はじめは融通がきかない子どもでも、育て方で未来は変わる出典 : ですが、たとえルールへのこだわりが強く融通が効かない子どもでも、適切な支援や教育によって、社会性を獲得していくことは可能です。幼い頃に子どもの発達障害に気付いていれば、本人の特性を理解し、その上で「知らない人がルール違反をしていても声をあげて注意するものではない」と教えていくこともできます。友人であってもルール違反の罰則を厳しくする方が誤っていることも教えることもできます。専門機関でソーシャルスキルトレーニングを受けることもできます。親も、ペアレントトレーニングなどを通して、子どもの特性に応じた関わり方を学んでいけば、「どうしてお前だけ皆とうまく付き合っていけないんだ!」と叱責するのではなく、「どうやったらいいのか」をアドバイスする姿勢で子育てができるようになります。逆に、そうした機会が無ければ、子どもは年中、親や先生から叱られ、友達もできずに「自分は価値がない人間」と自暴自棄になり自己否定し、心の病を発症したり自傷したり、他害に走ることもあります。この事件では両親は難聴の専門クリニックに相談はしていたようですが、発達障害だとは気が付いていなかったようです。「もう少し早く、子どもの特性に気が付く機会があったならば…」と、なんともやりきれない気持ちになります。発達障害そのものが事件を起こすのではないということを、知ってほしい出典 : 二次障害という言葉があります。先天的に脳にあった一次的な発達障害に対して、鬱、家庭内暴力、自殺、他害(反社会的行動・犯罪)など、様々な要因によって二次的に発生した障害や問題を意味する言葉で、これらは後天的に起こります。本人にとって不適切な環境にさらされたことに対するストレス反応としての側面が大きいと思います。発達障害そのものが事件を引き起こすのではなく、本人や周囲がその特性を理解せずに適切な関わり方や環境づくりをできなかったために、二次障害が発生し、冒頭に挙げたような悲しい事件が起こる場合があります。これは、健常児だって生まれたときは天使のような可愛い赤ちゃんでも、育ち方によっては将来犯罪を犯すこともあるのと同じです。そこを理解してもらいたいと思いますが、なかなか一面的にしかクローズアップされないので誤解を招いてしまいます。この事件では親に賠償責任を求める判決が下されました。親の責任はどこまで問えるのか、なんとも考えさせられる事件でした。Upload By 立石美津子立石美津子, 『立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』, すばる舎, 2016年
2016年12月12日