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毎日の歯みがきに、ナチュラルな選択肢はいかが?《ORALPEACE(オーラルピース)》は、お子さんや年配の方、授乳中の方にもやさしい歯みがき&口腔ケアジェル。なんと水なしで使える上に、間違って飲み込んでしまっても安心な成分で作られているのだとか。今回は実際に使ってみて、気になる使い心地やたくさんの魅力をご紹介していきます♪世界中で愛される《オーラルピース》って?《オーラルピース》は、天然由来の原料で作られた自然派歯みがき&口腔ケアジェル。これまでグリーンのパッケージの「オリジナル」が発売されていましたが、2018年の6月より、ジューシーな「オレンジ(写真左)」とクールで清涼感のある「ミント(写真右)」が新しく登場♪2017年の発売以来、テレビや新聞など数々のメディアに紹介され、なんと海外でも人気だというこちらの歯みがきジェル。いったいなぜそれほどまでに愛されているのでしょうか?みんなにやさしくて、災害時にも使える《オーラルピース》の一番の魅力は、なんといっても自然派であること。アルコールや合成界面活性剤、合成香料フリーで、飲み込んでしまっても安心なように作られたジェルタイプなのだとか。また水なしで口腔ケアできるので、山登りやキャンプなどの場面や災害時にも活躍してくれます。実際に、熊本地震の際に支援物質として送られたこともあったそう。万が一に備えて、防災バッグの中に入れておくと心強いですね!グッドデザイン賞お墨付きのデザインさらに、洗練されたデザインも魅力の一つ。アートディレクターである峯崎ノリテルさんのこちらのパッケージデザインは、なんとグッドデザイン賞2017を受賞しています。シンプルで親しみのわくデザインは、歯みがきの時間をいつも以上に楽しくしてくれそうです♪実際に《オーラルピース》で歯みがきしてみました♪歯みがき&オーラル“ジェル”だから、一般的な歯みがき粉と違って透明なのが特徴。液だれしにくく糸引きも少ないので、歯ブラシに乗せやすいのもうれしいポイントです♪実際に歯をみがいてみました!使いやすいフリップトップキャップを開けると、透明なジェルが出てきます。「ミント」の方は、クールでさわやかなフレーバー。とはいえ清涼感が強すぎないので、ミントがあまり得意でない方やお子さんでも使えそうです。一方の「オレンジ」は、まるで本物のオレンジのようにリアルなフレーバー。人工的な味がしないのがうれしいですね。またみがいていて驚いたのが、一般的な歯みがき粉より泡立たないこと。これなら歯みがきの補助をするときも、しっかりみがけているか確認しやすそうです。まとめ今回は自然派な歯みがき&口腔ケアジェル《オーラルピース》をご紹介しました。実は《オーラルピース》を作っている〔オーラルピースプロジェクト〕は、メンバーのご家族が闘病中に口腔内のトラブルに悩まれたことや、障がいのあるお子さんを授かった経験から「家族に使いたい口腔ケア商品を開発し、その事業を通じて障がい者の仕事を創出すること」を目的に生まれたのだとか。さまざまな思いが詰まった商品なんですね。そのため、《オーラルピース》の購入は障がいのある方の仕事創出や収入の向上につながるのだそうです。毎日使う歯みがき粉を変えるだけで、ちょっとでも社会に貢献できたらうれしいですよね!使う人にも、他の誰かにも、環境にもやさしい《オーラルピース》。いつもはあまり歯みがき粉にこだわらないという方も、ぜひ一度使ってみてはいかがでしょうか?商品情報●名称:《オーラルピースクリーン&モイスチュアオレンジ/ミント》●内容量:80g(約2ヶ月分)●価格:1,296円(税込)●発売日:2018年6月4日(月)公式オンラインショップはこちら
2018年06月27日愛猫との生活を描いたマンガブログ『うちの猫がまた変なことしてる。』が大人気の、猫好きのマンガ家・卵山玉子さん。新作は、専門家の取材を元に、犬や猫の終活について描いたマンガ 『ネコちゃんのイヌネコ終活塾』 です。 人間の言葉を話せる“ネコちゃん”が柴犬の“イヌイくん”と一緒に、ペットのシニアライフや病気と病院、保険、介護、そして亡くなってしまったあとまで、それぞれの知識を持つ専門猫たちに教えてもらうというこの本。かわいいイラストに癒されつつ、とても勉強になり、ペットを飼う人なら知っておきたいことがまとまっています。この本の中から今回ご紹介するのは、犬猫のシニアライフについて。老化に伴う病気や介護の問題は、考えておいたほうがいいと思いつつ、まだ先のことと、先延ばしにしていませんか? ■ペットのシニアライフについて、知っておくべきこと人間の数倍の速さで年をとるペット。寿命は昔よりは長くなったとはいえ、平均15歳。11歳でシニア期に突入します。長生きすることは、すなわち老後の生活が長くなるということ。犬や猫は、遊ぶ時間より寝る時間が増え、甘えが強くなったり、と生活が変わっていきます。年齢に合わせてフードを変えたり、場合によっては療養食に変えなくてはいけないことも。また段差にスロープをつけるなど、ペットが居心地がよくなるよう、そして怪我をしないよう、住環境の対策も必要になっていきます。老化は避けられないこと。できないことが増えたと落ち込んだり、ネガティブに考えず、若い頃とはひと味違うかわいさを楽しむのが、シニア期のペットと暮らす上で大切だそう。本書に出てくる、シニア期の犬と猫を飼う女性・マミコさんの「年寄りには年寄りにの可愛さがある!」という言葉に、勇気付けられます。■病院の選び方と健康管理ワクチン接種や定期検診などで、動物病院に通っているという人でも、いざ病気になるとその病院でいいのか、不安になるもの。まずおすすめなのが、自宅から通いやすい場所にあること。移動に時間がかかると、ペットにも負担がかかります。また病気の治療については、今の治療が最善か、別のドクターにセカンドオピニオンを求めると、不安や迷いが少なくなります。そして、犬種、猫種によってかかりやすい病気を先に知っておくこと、安静時の数値を控えたり、毎日のうんちやおしっこをチェックして、異変に気がつくことが大切です。ペットが弱ってしまったとき、「ペットの心を癒せるのは飼い主だけ」と、胸に刻んでおきたいですね。■保険の選び方動物の医療費は自己負担。高額になることも多いといいます。「医療費が払えず、治療を断念」という事態にならないよう、元気なうちに医療費を確保しておくと安心。そのために、ペット保険に加入をするのもひとつです。基本的に1年ごとの掛け捨てが多いペット保険。本書で支払いの流れもわかりやすく紹介しています。毎月の保険料は年齢ごとに変わるため、無理なく払い続けられるか、補償の割合がどうか、免責はどうなっているか確認して検討し、自分のライフスタイルに合った保険を探すことがポイントです。1回でも病気にかかると加入が難しくなったり、補償に条件がつく場合があるので、「いずれは」と考えている人は、健康なうちに探し始めるのがおすすめです。■いつかやってくる闘病と介護あまり考えたくない、ペットの闘病や介護ですが、多くのペットがいずれ必要となることなので、心の準備をしておきましょう。今まで通りの生活がしづらくなってきたら、介護が必要。自力でやれることがあれば、時間がかかってもできる限りやらせてあげること。思うように動けなくなったペット自身も戸惑っているので、そんなときこそ愛情を伝えてあげるのが飼い主の役目です。ペットとのお別れはいつ訪れるかわからないもの。「これが最後だったら?」と意識しながら接すると、自然と態度や言葉が柔らかくなり、いざというときに後悔も少なくなるかもしれません。次回は、ペットが亡くなってしまったあとのことについて、知っておきたいことをご紹介します。 マンガでわかる! ネコちゃんのイヌネコ終活塾 卵山玉子 著/WAVE出版 1,200円(税別)ペットの病院、お金、介護、葬儀、ペットロス…。ネコ好きマンガ家の卵山玉子さんが専門家にきいてわかりやすくマンガでまとめた一冊。まだ若くても知っておきたい情報が満載。「今」がもっと愛おしくなる、愛犬・愛猫の老い支度本です。<卵山 玉子(たまごやま・たまこ) プロフィール>ネコ好きのマンガ家。アメブロ公式トップブロガー。愛猫との生活を描いた猫マンガ『うちの猫がまた変なことしてる。』(KADOKAWA)で人気を博す。主な著書に『ネコちゃんのスパルタおそうじ塾』(WAVE出版)、『シュウさま-保護猫カフェからやってきた3本足のモフ天使』(WAVE出版)、『イラストでわかる! ネコ学大図鑑』(宝島社)等。・ ブログ「うちの猫がまた変なことしてる」
2018年06月15日「仕事も親の介護も両方こなさなければならないという家族にとって、『混合介護』は非常に有意義なサービスです。介護保険を使ったサービスと保険外のものを両方うまく組み合わせることで、在宅介護の負担はかなり軽減できるからです」 こう語るのは、All About介護ガイドの介護アドバイザー・横井孝治さん。混合介護サービスとは「介護保険の範囲内(保険内)で受けられる、自己負担1〜2割のサービス」と「介護保険の範囲外(保険外)、全額自己負担のサービス」の、2つを併用して行う介護サービスのこと。 厚生労働省は、「混合介護」の拡大に向け、現在“新ルール”を作成中で、今夏をメドに明確な方針をまとめて全国の自治体に通知する予定だ。 これにより、訪問介護で身体介護(排せつ、食事、清拭・入浴の介助など)のサービスを受けた後に、保険外サービスで家事援助(同居する家族の分の調理、洗濯、掃除、買い物など)が、そのまま続けて受けられるようになる。介護生活になるまで、利用者が一家の家事を担っていた家庭にとっては、非常にありがたいサービスと言える。 そして新ルールの“目玉”は、通所介護における保険外サービスだ。主な内容は次のとおり。 □緊急時における医療機関への受診や巡回健診□理美容サービス□予防接種□物販□買い物の代行サービス□個別の同行支援(付き添い) 「これまでのデイサービスででは、事業所に滞在中は、個人的な用事で利用者が外出することはできませんでした。しかし新ルールでは、保険外サービスを利用し、スタッフが同行し“○○に行きたい”といった要望に応えられるようになる予定。こういった個別のサービスの提供で、さらに利便性をよくしようという考え方です」(厚生労働省老健局) 介護保険は、調理、洗濯といった家事などのサービスは利用者本人だけが対象だ。訪問介護でスタッフが掃除できるのは利用者本人の部屋のみ。「ついでに家族の部屋も掃除してもらいたい」と思っても、保険内ではできないことになっている。 ところが、新しい保険外サービスでは、追加料金で“家事代行”の願いに応えてくれるという。 「ほかの家事をついでにやることは、介護スタッフにそれほど大きな負荷をかけるものではありません。たとえ有料であっても、介護負担がさらに軽減できると、歓迎する家庭も多いと思います。事業者側も介護報酬とは別に収益が入るので、混合介護サービスの利用者が増えれば、スタッフの給与アップにもつながる」(横井さん) 事業者間でサービス内容の競争が始まれば、質の高いサービスを安い料金で受けられる可能性もある。混合介護サービスは、利用者とその家族、そして介護事業者、介護スタッフなど、どちらにもメリットがある制度といえる。 いっぽうでマイナス要素も指摘されている。保険外サービスは全額自己負担なので、どうしても経済的負担は増える。つまり、お金がある人は大いに利用できるが、余裕がない人はただただ我慢……。いわゆる“サービス格差”が広がるという懸念があるのだ。 また、要介護者本人が保険外サービスを過度に利用することで、自立支援の妨げになるかもしれないともーー。 「介護保険をたくさん使ってもらったほうが、事業所は儲かる」と話すのは、都内で介護事業所を経営する男性だ。 「1割負担の利用者さんが1万円分の介護サービスを受ける場合、利用者さんの負担は1,000円。残りの9割は国から入る。仮に、保険外サービスの料金が1,000円だとしたら、事業所にはそのお金しか入らない。ヘルパーさんの時間給は同じなので、その1,000円が時給より少なければ、事業所はまったく儲からないわけです」 介護保険の収入を維持しながら保険外の収入を増やす必要がある。そこで、料金設定をどうするか。ヘルパーに支払う保険外サービスの報酬をどうするか。そしてサービス内容をどのように拡充し、ほかの事業所と差別化するか。混合介護サービスを提供していく側にとって、今後の課題となりそうだ。 だが、別の介護事業所で働くケアマネジャーは、大きな期待を寄せている。 「ヘルパーさんを募集してもなかなか集まらない。定着しないのが実情です。でも、身体介護の資格を持ったヘルパーさんだけでなく、掃除やゴミ出し、ペットの散歩、買い物などを担当するスタッフが、どんどん保険外サービスをやるようになれば、そういった仕事が新たなパート先として注目されるかもしれません」 横井さんに、この混合介護サービスを上手に使うコツを聞いてみた。 「最初に、どこまでが保険内で、どこからが保険外のサービスになるのかを把握しましょう。そして実際に利用する場合は、できるだけ同じ介護事業者にやってもらうほうが効率的です。ただし、事前に周辺地域の事業所をリサーチし、パンフレットなどで、そこがどのような保険外サービスを提供しているかを確認してみてください。サービスによっては、シルバー人材センターにお願いしたほうが、安くなるかもしれませんから」 もし今後、家族のために“介護離職”をしなければならないという状況になった場合も、ぜひこの混合介護サービスの利用を、検討してみてほしい。
2018年06月06日訪問介護で自宅に来てくれたヘルパーさんに“保険内ではできないこと”まで注文してしまう人がいるが、その願いは、やがてかなえられるようになるかもーー。 「仕事も親の介護も両方こなさなければならないという家族にとって、『混合介護』は非常に有意義なサービスです。介護保険を使ったサービスと保険外のものを両方うまく組み合わせることで、在宅介護の負担はかなり軽減できるからです」 こう語るのは、All About介護ガイドの介護アドバイザー・横井孝治さん。混合介護サービスとは「介護保険の範囲内(保険内)で受けられる、自己負担1〜2割のサービス」と「介護保険の範囲外(保険外)、全額自己負担のサービス」の、2つを併用して行う介護サービスのこと。 「『介護保険サービス』で受けられる身体介護と生活援助」と「全額自己負担『保険外サービス』」の主な内容(訪問介護)は次のとおり。 【「介護保険サービス」で受けられる身体介護と生活援助】〈身体介護〉□排せつ、食事、清拭・入浴の介助□就寝・起床、更衣の介助□身体整容、洗面□体位変換□通院、外出介助□自立支援のための見守り援助□専門的配慮をもって行う調理(流動食・糖尿食などの調理)〈生活援助〉□掃除、洗濯、ベッドメーク□衣類の整理・被服の補修□一般的な調理・配下膳□買い物・薬の受け取り ※訪問介護(保険内サービス)の特徴は、“要介護者本人だけを対象としたサービスである”ということ。そのため、同居家族の分の食事を作ったり、介護者以外の部屋の掃除をしたりすることは保険内ではできない 【全額自己負担「保険外サービス」】□同居する家族の分の調理、洗濯、買い物□利用者本人が使用する居室以外の掃除□庭の草むしりや花木の水やり□ペットの散歩や世話□家具の移動、電気器具の付け替え、修理□窓拭きや大掃除□配食サービスなど 厚生労働省は、「混合介護」の拡大に向け、現在“新ルール”を作成中で、今夏をメドに明確な方針をまとめて全国の自治体に通知する予定だ。 これにより、訪問介護で身体介護(排せつ、食事、清拭・入浴の介助など)のサービスを受けた後に、保険外サービスで家事援助(同居する家族の分の調理、洗濯、掃除、買い物など)が、そのまま続けて受けられるようになる。介護生活になるまで、利用者が一家の家事を担っていた家庭にとっては、非常にありがたいサービスと言える。 そして新ルールの“目玉”は、通所介護における保険外サービスだ。 「これまでのデイサービスででは、事業所に滞在中は、個人的な用事で利用者が外出することはできませんでした。しかし新ルールでは、保険外サービスを利用し、スタッフが同行し“○○に行きたい”といった要望に応えられるようになる予定。こういった個別のサービスの提供で、さらに利便性をよくしようという考え方です」(厚生労働省老健局) 通所介護で、すでに先行している例として“お泊まりデイサービス”がある。 「デイサービスまでは介護保険の範疇ですが、お泊まりになると、その分は自己負担になります。それでも施設には介護スタッフがいるので、家族も安心して休みを取れるわけです」(横井さん) これまでも、混合介護サービスは行われていたが、自治体によっては、運用について明確なルールがなく、「曖昧でわかりにくい」と現場を混乱させることが多かった。介護事業者もその煩雑さから、あまり積極的ではなかったという。 「保険外サービスにはさまざまな制限があるからです。たとえば、訪問介護で同じスタッフが同時に両サービスを提供できない。それぞれ時間を分けてスタッフは別にしなければならない。あるいは、保険内から保険外のサービスに移るときに、スタッフはエプロンや名札を付け替える必要があるなど、自治体によってルールもバラバラ。非効率的でもありました」(前出・老健局) 介護保険は、調理、洗濯といった家事などのサービスは利用者本人だけが対象だ。訪問介護でスタッフが掃除できるのは利用者本人の部屋のみ。「ついでに家族の部屋も掃除してもらいたい」と思っても、保険内ではできないことになっている。 ところが、新しい保険外サービスでは、追加料金で「同居する家族の分の調理、洗濯、買い物」から「ペットの散歩や世話」などの “家事代行”の願いに応えてくれるという。
2018年06月06日ひょっとして食事しながら記事を読んでいる方、大変失礼いたします。今回は介護施設におけるトイレ掃除のお話です。■ 介護施設に学ぶ「トイレ掃除」一般家庭のトイレに比べて、「介護施設の共用トイレ」は恐ろしく汚れます。トイレ介助の際、ズボンを下ろすか下ろさないかのうちに排尿してしまうおばあちゃん(注:介護施設(介護の現場)においては、「おじいちゃん」「おばあちゃん」「お年寄り」と一般的な呼び方を使わず、「ご利用者」「ご入居者様」などと言います)。何度お願いしても立ちションし、マト(便器)を大きく外れて床を汚してしまうおじいちゃん。そして最悪なのが、大きい方が間に合わずに、ズボンの裾から漏れてしまうケース。かようにトイレの床は日々汚染されております。余談になりますが、介護施設で共用トイレを見ると、そこで行われている介護の質のレベルがどれほどのものか、なんとなく想像できてしまいます。介護の現場では、利用者のちょっとした体調の変化を見逃さない「気づき」の能力が必要とされますから、経験の浅い職員や日頃から何事にも無頓着な職員が多いと、トイレや廊下などあちこちの汚れが気にならない。それに、人手不足で掃除まで手が回らない=職員の数が少ないので、十分なケアが行われていない可能性が高い、というワケです(※個人の感想です)。さて、毎日ひどく汚れてしまうトイレですから、当然毎日の掃除はかかせません。そして、時々(汚れが気になったら)は「ここまでやるの?」という部分まで掃除します。そんな「介護施設でのトイレ掃除」で注意しているポイントを3つ紹介しましょう。■ ポイント1.便座と便器の狭間あまりにも汚すぎるので、写真にモザイクをかけました便座は、機種にもよりますが、便座横にあるポッチを押しながら手前に引くと、簡単に外すことができます。この便座と便器の隙間には、ホコリや尿が溜まっているので、スプレーでアルコールを吹いて、使い捨てのハンドペーパーなどで汚れをキレイに拭き取ります。ご家庭の水洗トイレの便座も、思いの外汚れているかもしれませんよ。施設のトイレはLIXIL(リクシル)製。便座の横に長方形のポッチがあり、そこを押しながら手前に引くと便座が外れました■ ポイント2.ウォシュレット収納部部分ウォシュレットのノズル格納場所付近も、けっこう汚れています。特に装置の下側には黒カビが付いていることが多し不使用時はフタが閉まって見えない「ウォシュレットのノズル」。機種によっては「ノズルを掃除する」ボタンを押すと、ノズルヘッドがにょろっとケースから出てきて、自動的に水が溢れて洗浄する様を見ることができるでしょう。その際、黒カビや茶色いアレが結構こびり付いているのがわかるハズ。ここにはトイレ用洗剤を吹きかけて、ブラシを優しく当てる作業が必要です。こびり付いているブツは、自動洗浄くらいでは落ちません。自動洗浄機能がなかったりノズルが出てこないタイプは、収納されているケースのフタを手動で開けて洗剤を吹きかけ、先が細くなっているブラシ(100均ショップで買えます)で気が済むまでこすります。■ ポイント3.便器と床の狭間本日のメインイベント!のような部分が便器と床の狭間です。一見キレイに見えますよね?フォトショップ(画像処理ソフト)で汚れ部分を消していますはねた尿や便失禁による汚物が便器とトイレ床の狭小隙間に入り込み、恐ろしいことになっているのです。初見だと、絶対に「おえっ!」とえずくことでしょう。この部分をキレイにするには、多少の労力が必要。まずは、水洗の元栓を閉めてタンクの水を抜きます。次に前方と後方の便器止ネジ(前1か所、後ろ2か所が相場)を外します。3か所のネジを外したら便器を軽く持ち上げながら、トイレ床と便器の底部に洗剤を吹きかけ、面積が広いブラシでこすります。汚れをハンドペーパーで拭き取り、アルコールを吹きかけて消毒します。雑巾は使ったら洗わないといけないので、お掃除用の不織布や使い捨てのペーパーで拭いたほうが、使ったら捨てるだけなので、超ラクですよ。便座を床に戻して前方のネジをはめる時、ずれるとハメづらいので前もってテープなどで便器の位置決めをしておくといいかもしれません。数ミリずれただけでも、ネジがはまらない場合があります。掃除が終わったら、元栓を開けてタンクに水を貯めるのをお忘れなく!以上、介護施設のトイレ掃除の現場からでした。男子諸君が立ちションする傾向のあるご家庭では、便器と床の間が汚れている可能性がありますね。一度、ネジを外して便器をずらしてみてください。ただし、自己責任で、よろしくお願いいたします!
2018年05月09日介護保険料はそれなりの負担額で、特に年金生活者にとって重い負担となります。私も初めて介護保険料を徴収された際は「かなりの金額」と思いましたが、安心して老後を送るために必要なものであれば仕方がありません。そのためできるだけ公平に負担し、適正な使われ方をしているかを注視し、いざ利用する側になった場合は節度ある利用を考えたいものです。今回は保険料の仕組みについて理解していきましょう。○介護保険制度と介護保険料の関係下図は以前にもご紹介した介護保険の仕組みの図ですが、介護給付に必要な資金の構成を赤い点線部分に追記して示しています。その部分を見ると、介護サービスに必要なお金の原資の構成がわかります。税金と保険料が50%ずつなのは、老齢基礎年金と同様です。問題は、この税金や保険料を「誰」が「どのくらい」負担しているかです。制度を存続させるには、収入に応じて適切な負担割合であり、生活が苦しくても何とか負担していける額であることが必要です。○第1号被保険者の保険料の仕組みとは「第1号被保険者」とは上記の図でいうところの65歳以上の方々で、保険給付に必要な費用の21%を保険料として負担しています。保険給付に必要な費用の半分は税金で、残りの半分は保険料です。そのため、保険料のおよそ40%を第1号被保険者が負担している計算になります。この配分がベストであるか、どこか問題点があるかを最終的に判断するのは国民の役割です。当事者、またはそれに近い年齢の方ですと実感しやすいのではないでしょうか。○第2号被保険者の保険料の仕組みとは40歳以上65歳未満の「第2号被保険者」の保険料の仕組みと流れを下にまとめました。ポイントとなる部分に赤い点線で囲んであります。保険料は医療保険に上乗せして徴収されますが、加入している医療保険の種類(国保、協会けんぽ<※1>、組合健保<※2>)、共済健保<※3>)により、金額が異なります。また、地域やそれぞれの組合によっても違います。※1協会けんぽ(全国健康保険協会管掌)……2008年に政府管掌健康保険制度より移管し、健康保険適用事業所である中小企業の従業員とその扶養家族が加入する医療保険で、保険料率は都道府県単位で異なります。※2組合健保(組合管掌健康保険)……社員数700名以上の企業は国の認可を受けて、自社独自の健康保険制度を設立でき、組合健保と称されます。※3共済組合……公務員らが加入する制度です。組合健保については、国による一定の基準はあるものの、各組合によって異なる部分も多いと考えた方がよさそうです。そのため、会社の組合に詳細を確認した方が確実です。特に通常とはやや違った下記のようなケースに該当する場合は、ご注意ください。(1)海外在住の場合(2)本人が海外在住で、扶養家族が介護保険の第2号被保険者に該当する場合(3)本人が40歳未満または65歳以上で、扶養家族が介護保険の第2号被保険者に該当する場合(特定被保険者)(4)育児休業に該当する場合○自身で確認しましょう私自身、若い頃は医療保険の制度など、全く関心がありませんでした。今の若い世代も同じかもしれません。しかし、これからの時代はレールの上に乗っていれば安心という時代ではありません。少なくとも保険料を徴収されている以上、自分たちの今後の生活に大きく影響する制度については、直接生のデータに触れてほしいと思います。末端の雑多な情報に振り回されずに、ぜひ直接会社の組合制度を調べてみたり、国の介護保険制度の詳細を直接確認したりしてください。今ではインターネットで国の制度や条文など、いくらでもチェックできます。本稿がそのきっかけになればと思います。※写真と本文は関係ありません○■ 筆者プロフィール: 佐藤章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2018年04月19日トイレを洋式に変更するのも介護保険に係る住宅改修の対象になる介護保険で住宅が改修できる――。こう聞いても、介護経験のない方は、ピンと来ないかもしれません。ただ、介護が必要な家族がいると、日常生活において切実な問題に必ず直面します。被介護者が自分で行えることの範囲を広げたり、少しでも介護をしやすくしたりするため、住まい改造に着手するケースは実は多いのです。すでに要介護認定を受けていれば、ケアマネージャーからも情報が得られますので、介護保険を利用して住宅改修を実施している人は少なくありません。今回は住宅改修の観点から、介護保険制度をみてみましょう。○介護保険における住宅改修とは介護保険は「自宅に手すりを取り付ける」など、要介護者らがより住みやすいよう住宅を改修するにあたり、一定の費用を支給してくれます。必要な書類(住宅改修が必要な理由書など)を添えて申請書を提出し、工事完成後に費用発生の事実がわかる書類(領収書など)を提出すると、実際の住宅改修費の大部分が償還払いで支給されるという仕組みです。実際に利用するとなった場合、どのような改修が制度の対象となるのか、その詳細を知りたいですよね。以下に具体例をまとめましたので参考にしてください。(1)手すりの取り付け(2)段差の解消(※)(3)滑りの防止および移動の円滑化などのための床または通路面の材料の変更(※)(4)引き戸などへの扉の取り替え(5)洋式便器などへの便器の取り替え(6)その他、それらの住宅改修に付帯して必要となる住宅改修※屋内における段差解消、床材の変更および手すりの取り付けなどの工事、玄ポーチの工事、玄関から道路までの(建物と一体ではない)屋外での工事も住宅改修などが対象高齢になるとどのような配慮が必要となるかを知っておけば、住まいをリフォームしたり、リノベーションしたりするときに参考になります。今は手すりが必要でなくても、壁の下地に手すり用の補強を入れておくだけで、後々より簡単に手すりが取り付けられます。また、高齢者への配慮は幼い子どもへの配慮にも通じるものがあります。核家族世帯の方も、こういった住宅改修における知識を知っておいて損はありませんよ。なお、やむを得ない事情がある場合には、上述の(1)から(6)に係る工事が完成した後に住宅改修に関する申請をすることができます。○支給額と申請手順をチェック住宅改修に係る支給限度基準額は20万円で、一般的には範囲内でかかった費用の1割が自己負担となります。すなわち、最大で18万円が支給される計算になります。この20万円という金額は「要支援」「要介護」の区分に関わらず定額です。また、「一人につき生涯20万円まで」が原則ですが、要介護状態区分が重くなったとき(3段階上昇時)や転居をした場合は、再度20万円までの支給限度基準額が可能となります。申請をする手順も確認しておきましょう。STEP1: 住宅改修についてケアマネージャーなどに相談STEP2: 申請書類または書類の一部提出・確認STEP3: 施工STEP4: 住宅改修費の支給申請・決定申請をするにあたり必要なのは「支給申請書」「住宅改修が必要な理由書」「工事費見積書」「住宅改修後の完成予定の状態がわかるもの(写真または簡単な図を用いたもの)」となります。実は、私の実家も介護保険を利用してリフォームしました。築40年程度の古い家だったため、トイレは和式で家の中に手すりもありませんでした。高齢で足腰が弱った父のため、私が設計してケアマネージャーと相談しつつ改修しました。住宅改修におけるケアマネージャーのサポートは助かりますし、頼りになる存在です。ただ、補助があるとはいえ、税金を活用するわけですので、適正な価格になるようにいくつかの会社から見積もりを取ることをお勧めします。※写真と本文は関係ありません○■ 筆者プロフィール: 佐藤章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2018年04月18日*画像はイメージです:介護離婚(かいごりこん)とは、簡単に言うと夫の親(義親)の介護に嫌気がさし離婚してしまうことです。離婚を決意するほど疲れる原因として、義理の親との関係が悪く義親の介護をしたいと思えない・夫や夫の兄弟姉妹が介護にまったく協力してくれない・貢献しても労わってもらえないなどが問題になっているようです。このあたりの問題について、高島総合法律事務所の理崎智英先生に伺いました。 ■介護離婚に発展する3つの理由介護離婚は精神的なストレスが根本的な原因です。ここでは、ストレスになる3つの理由を紹介します。◆義親と仲が良くないから精神的にも肉体的にも辛い介護は愛情がないとできません。優しくされたことがなく、恩や情を感じない相手への介護はとても苦痛でしょう。また、離婚に発展しなくても、うつなどの精神病になってしまったり、虐待までしてしまったりする可能性があります。◆兄弟姉妹が介護に協力してくれないから『長男の嫁=義親の介護をしなくてはいけない』という暗黙の了解があることも少なくないでしょう。そうなってしまうと、まだ介護が必要でなくてもプレッシャーですし、「他の兄弟(姉妹)がすればいいのに!」と理不尽に感じてしまいますよね。◆介護をしているのに感謝してもらえないから一生懸命に介護しているのに義親や夫・夫の兄弟姉妹からまったく感謝されないと、介護を続けようという気持ちにはなりませんよね。介護は感謝されるためにすることではありませんが、自分の時間を削ったり、やりたいことを我慢したりしているので感謝や気遣いをしてほしいものですよね。 ■そもそも義親の介護責任は誰にある?夫が長男であったり義親と同居したりしている場合、義親でも妻が介護しなくてはいけないように感じますよね。しかし、妻に介護する義務はありません。その理由として、民法第877条1項の扶養義務者を定めた記述が挙げられます。直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。(引用:民法第877条1項)理崎先生)ここには『直系血族は』と記載されているため、直系血族ではない妻には、原則として、義親の扶養義務はありません。介護を拒否しても法的には問題にならないのです。もっとも、『特別の事情』がある場合には、例外的に『親族』である妻にも義親を扶養する義務が発生する場合があります(民法877条2項)。ただし、『特別の事情』は、扶養義務を負担させることが相当とされる程度の経済的対価を得ているとか、高度の道義的恩恵を得ている等の場合に限定して認められるものですので(大阪家裁昭和50年12月12日審判)、基本的には、妻が義親の扶養義務を負うことはないと理解してよいでしょう。 *取材対応弁護士: 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚・男女問題を多数取り扱っている。)*取材・文:編集部【画像】イメージです最近話題の介護離婚って…?何が問題?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。最近話題の介護離婚って…?何が問題?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。
2018年03月31日「介護におけるケアマネジャー(以下・ケアマネ)の存在はとても重要です。実際、よいケアマネか悪いケアマネかで、要介護者とその家族の精神的、金銭的負担は大きく変わってくるんです」 そう語るのは、All Aboutガイドの介護アドバイザー・横井孝治さん。ケアマネ(介護支援専門員)の主な仕事は、介護保険制度において介護を必要とされる人のためにケアプラン(介護サービス計画書)の作成や介護サービスの調整・管理、訪問介護、通所介護、施設介護サービス……などなど、いまの介護は、ほぼ100%といっていいほどケアマネを通して行われている。 つまり、彼らは要介護者とその家族の介護生活をマネジメントする、大切なパートナー。これから親の介護を始める人にとって、よいケアマネを選ぶことが、介護において必要不可欠なのだ。 そこで、ケアマネで失敗しないための3つのポイントを横井さんにアドバイスしてもらった。 【1】ケアマネの所属事業所リストを入手する 「ケアマネの多くは、居宅介護支援事業所や介護サービス提携事業者、特別養護老人ホーム、介護療養型医療施設などに所属している人がほとんどです。市区町村の介護保険課や地域包括支援センターに行けば、ケアマネが所属している事業所のリストをもらうことができますから、まずはそこから始めましょう」(横井さん・以下同) 【2】ケアマネの評判を聞いてまわる 「いちばんよいのは、知り合いから“口コミ”で紹介してもらうパターンです。たとえば、友人や知人にホームヘルパーをしている人がいれば、介護のプロから見てよいケアマネを教えてもらうことができます。また、実際に介護保険サービスを利用している人に話を聞いてみるのもいい。同じ地域でサービスを利用している人から得られる“生の声”は非常に参考になります」 そういう知り合いがいない場合、「かかりつけの病院」にたずねてみよう。 「大きな病院の場合、ソーシャルワーカー、小さなクリニックなどの場合は、主治医や看護師に評判のいいケアマネはいないかを相談してみること。多くの場合、医療との連携を得意とするケアマネや介護事業者を教えてもらうことができるはずです」 【3】電話でケアマネの事業所と話してみる ある程度ケアマネ候補を絞ったら、所属先の事業所に電話をかけてみよう。そのとき、“介護サービスのことは何もわからないので、一から教えてほしい”と伝えるのが重要だという。 「自分にとっていちばんわかりやすく、丁寧に対応してくれたケアマネであれば、実際に依頼することになってからも、介護の相談をする際の対応に期待が持てますから」 電話を通して候補3〜5人絞り込んだら、次は実際に面談を行う。 「面談の際、重要なのは『所属する事業所以外の介護サービスも説明してくれるか』です。面談前に、そこの事業所ではどんなサービスをやっているのか、あらかじめ下調べしておくといいですね。たとえば、ショートステイのサービスをやっていない場合、わざと“ショートステイも使ってみたいのですが?”と聞いてみるんです」 横井さんによると、事業所にないサービスを希望した場合、ケアマネの対応はだいたい2つに分かれるそうだ。 1つは、「よいショートステイを知っているので今度資料を持ってきます」と、希望を受け入れてくれるパターン。もう1つは、「うちの訪問介護だけで十分ですよ」と、理由を説明せずに利用者を納得させようとするパターン。 「後者は当然ダメですが、前者が必ずしもいいとは限りません。本当にショートステイが必要な場合、その説明をきちんとしてくれるケアマネが、本当に信頼できる人なんです」 たとえば、「お宅のお母さんは、会ってお話ししてみたところ、人見知りのような気がします。家族でない人たちと一緒に泊まって何日も暮らしたら、大変なストレスになります。まず住み慣れた家にヘルパーさんが来て帰っていくという訪問介護サービスに慣れてもらう。紹介はいつでもできるので、それから考えませんか」というように、経験に基づいたアドバイスをくれる人だと、信頼度もぐんと上がるという。
2018年03月23日深刻な高齢化、かさむ介護費。国の方針もあり、在宅介護が重要視されている。「自宅で介護」を望む人が多いのも事実だが、いくらかかるのだろうかーー。 「国は現在、『地域包括ケアシステム』を推進しており、今後『施設介護』から『在宅介護』の流れが強まるでしょう」 そう日本の超高齢社会の未来を予測するのは、『介護施設&老人ホームのさがし方・選び方』(サンライズパブリッシング)の著者で、介護施設コンサルタントの齋藤直路さん。65歳以上の人口は現在、3,000万人を超えており、2042年には約3,800万人でピークを迎える。介護の需要が今後ますます増加することは火を見るよりも明らかだ。 しかし施設での介護は、高額な資金が必要になる。また、在宅介護は家族の負担も大きく、介護疲れによる虐待や、介護離職に端を発する貧困など、問題も山積。一方で、頼れる家族のいない独居老人も多いのが実情だ。 そこで現在、国は「地域包括ケアシステム」(前出)を推進している。住まいを中心に、日常生活圏内で病院、介護施設、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどが、さまざまな支援や介護、医療、サービスを一体的に提供するものだ。地域のなかで安心して介護や医療などが受けられるシステム作りだという。 「介護を受ける側にとっても、在宅介護のメリットは大きい。たとえば、トランスファーショックといって、自宅とは遠く離れた施設に住むことで、環境の違いに戸惑い、近所との交流が途絶える寂しさを感じる。結果、活動量が低下して、認知機能の衰えが出てしまうこともあるのです」(齋藤さん) 実際、内閣府の調査でも、「介護を受けたい場所」は、「自宅」と答えた人が全体の34.9%という結果が出ている(平成24年「高齢者の健康に関する意識調査」)。今後、ますます重要性が高まる在宅介護。 それでは実際に終生、在宅介護をすることで、どのくらいのお金がかかるのか。代表的なケースを、介護施設コンサルタント業務をする「スターパートナーズ」の垰和宏さんに、シミュレーションしてもらった。 ケースでは、介護保険自己負担1割で算出。単純に介護度の利用限度額ではなく、現実的に使用される介護費用を想定している。介護用のベッドの費用や、バリアフリーの改築費用などは含まれていない。 また、将来の平均寿命が現在の87歳(女性)よりも5年ほど延びることを想定し、92歳(93歳の誕生日の前日)で亡くなったと仮定している。 ■段階的に介護度が上がっていったケース 一人暮らしのCさんは、買い物や風呂掃除など不便を感じ始めて、84歳のときに地域包括支援センターに相談。要介護認定調査等を経て、要介護1と認定された。それからは週2回ずつの通所介護、訪問介護の生活になった。 ところが86歳で脳梗塞に。偶然、近くに住む娘夫婦が遊びに来ていたため、早期に発見され大事には至らなかったが、一部まひが残り、要介護2に上がった生活を2年続けた。 そして要介護3の2年、要介護4の3年間は、家族の支援もあって在宅介護を継続したが、平日はほぼ毎日、訪問介護か通所介護、家族の介護負担軽減のため短期入所を組み合わせた。最終的に92歳で、老衰のため自宅で生涯を終えた。 Cさんの場合、介護費用は当初、要介護1ということもあり、訪問介護と通所介護を合わせても月額約1万730円ほどだった。しかし、要介護3に引き上げられると短期入所費用も加わり、介護費用は月額約2万6,930円に、要介護4では月額約3万800円までに跳ね上がった。 「介護度が上がるたびに、介護費用も高額化します」(垰さん) 【Cさんの自己負担額】 <84〜85歳・要介護1>訪問介護:約3,840円/月通所介護:約6,890円/月 <86〜87歳・要介護2>訪問介護:約5,320円/月通所介護:約8,820円/月 <88〜89歳・要介護3>訪問介護:約8,820円/月通所介護:約1万1,110円/月短期入所:約7,000円/月 <90〜92歳・要介護4>訪問介護:約1万1,930円/月通所介護:約1万2,370円/月短期入所:約6,500円/月 84歳から92歳までの9年間で合計:234万8,880円〈内訳:(3,840円+6,890円)×24カ月+(5,320円+8,690円)×24カ月+(8,820円+1万1,110円+7,000円)×24カ月+(1万1,930円+1万2,370円+6,500円)×36カ月〉 前出の齋藤さんは、在宅介護の注意点を次のように語る。 「数千万円かかる施設介護に比べて、一見、安価なイメージを持ってしまいますが、在宅介護は、施設のようなナースコールや、24時間の見守りはありませんから、家族の負担は大きいです。当然ながら、家賃や食事が別途かかることも、忘れてはいけません」(齋藤さん)
2018年03月14日「国は現在、『地域包括ケアシステム』を推進しており、今後『施設介護』から『在宅介護』の流れが強まるでしょう」 そう日本の超高齢社会の未来を予測するのは、『介護施設&老人ホームのさがし方・選び方』(サンライズパブリッシング)の著者で、介護施設コンサルタントの齋藤直路さん。65歳以上の人口は現在、3,000万人を超えており、2042年には約3,800万人でピークを迎える。介護の需要が今後ますます増加することは火を見るよりも明らかだ。 しかし施設での介護は、高額な資金が必要になる。 「民間の有料老人ホームは、入居一時金だけで数百万円単位のまとまったお金が必要なケースも多く、生涯の支払い総額が2,000万~3,000万円にもなります」(齋藤さん・以下同) しかし、在宅介護は家族の負担も大きく、介護疲れによる虐待や、介護離職に端を発する貧困など、問題も山積。一方で、頼れる家族のいない独居老人も多いのが実情だ。 そこで現在、国は「地域包括ケアシステム」(前出)を推進している。住まいを中心に、日常生活圏内で病院、介護施設、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどが、さまざまな支援や介護、医療、サービスを一体的に提供するものだ。地域のなかで安心して介護や医療などが受けられるシステム作りだという。 「介護を受ける側にとっても、在宅介護のメリットは大きい。たとえば、トランスファーショックといって、自宅とは遠く離れた施設に住むことで、環境の違いに戸惑い、近所との交流が途絶える寂しさを感じる。結果、活動量が低下して、認知機能の衰えが出てしまうこともあるのです」 実際、内閣府の調査でも、「介護を受けたい場所」は、「自宅」と答えた人が全体の34.9%という結果が出ている(平成24年「高齢者の健康に関する意識調査」)。今後、ますます重要性が高まる在宅介護。在宅ではどのような介護が受けられるのか。齋藤さんが解説してくれた。 【1】訪問介護 自力での家事が困難になったり、入浴の介助が必要になったときに、ヘルパーに自宅に来てもらい、サービスを受けること。 「一人暮らしの要介護高齢者にとって、洗濯や掃除、買い物など生活援助も頼める、ありがたいサービスです。食事や入浴、排せつなどの介助で体が触れ合うこともあるので、ヘルパーの人柄も重視しなくてはなりません」 通常、日中がサービス時間となるが、早朝や深夜も対応してくれる事業者もあるという。 【2】通所介護 「デイサービスともいわれ、通所介護施設で、1日をリハビリやレクリエーション、入浴などをして過ごします。もともとは家族の介護負担を減らすために始まったサービスです」 一般的な通所介護は、朝の9~10時に自宅へ送迎車が迎えに来るところから始まる。 「サービスを利用していることを近所に知られたくないという人もいるため、車体に施設名が書いていない、普通の乗用車を利用するなど、工夫している事業所もあります」 施設に到着後は、体操をしたり、入浴の介助を受ける。 「単に入浴するだけでなく、家族では判断しづらい床ずれや栄養状態までチェックしてくれます」 昼食は自費で700~800円ほど。最近は、食事内容も充実してきているという。午後は昼寝をしたり、レクリエーション、リハビリの時間となる。 「リハビリでは歩行訓練や転倒防止訓練、認知機能の予防改善(学習療法、音楽療法)などが受けられます。それぞれの施設の特徴を知って、自分に合った場所を選びましょう」 帰宅は16時くらいになる。 【3】短期入所 2日~1週間ほどの短期間、施設に入って介護を受けること。ショートステイともいわれる介護サービス。 「在宅介護生活は、介護する家族にとっても大きなストレスや疲労を伴います。家族が介護から解放され、ゆっくり過ごして英気を養う(レスパイトケア)ためにも利用されます」 施設によって料金は異なる。 「介護保険で定められた利用料に、施設独自の居住費、食費や生活費が合算されます」 【4】小規模多機能型居宅介護 以上(1)~(3)のサービスを1つの事業所で受けられる、介護業界において、もっとも新しい形態のサービス。 「利用料金は定額制(例・要介護2で約1万5,000円)とわかりやすい。ケアマネジャーの判断で、利用内容と頻度が決められます。訪問から通所、短期入所まで一事業所で依頼できるので、内部のスタッフの連携も取れているところが利点でしょう」
2018年03月14日深刻な高齢化、かさむ介護費。国の方針もあり、在宅介護が重要視されている。「自宅で介護」を望む人が多いのも事実だが、いくらかかるのだろうか――。 「国は現在、『地域包括ケアシステム』を推進しており、今後『施設介護』から『在宅介護』の流れが強まるでしょう」 そう日本の超高齢社会の未来を予測するのは、『介護施設&老人ホームのさがし方・選び方』(サンライズパブリッシング)の著者で、介護施設コンサルタントの齋藤直路さん。65歳以上の人口は現在、3,000万人を超えており、2042年には約3,800万人でピークを迎える。介護の需要が今後ますます増加することは火を見るよりも明らかだ。 しかし施設での介護は、高額な資金が必要になる。また、在宅介護は家族の負担も大きく、介護疲れによる虐待や、介護離職に端を発する貧困など、問題も山積。一方で、頼れる家族のいない独居老人も多いのが実情だ。 そこで現在、国は「地域包括ケアシステム」(前出)を推進している。住まいを中心に、日常生活圏内で病院、介護施設、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどが、さまざまな支援や介護、医療、サービスを一体的に提供するものだ。地域のなかで安心して介護や医療などが受けられるシステム作りだという。 「介護を受ける側にとっても、在宅介護のメリットは大きい。たとえば、トランスファーショックといって、自宅とは遠く離れた施設に住むことで、環境の違いに戸惑い、近所との交流が途絶える寂しさを感じる。結果、活動量が低下して、認知機能の衰えが出てしまうこともあるのです」(齋藤さん) 実際、内閣府の調査でも、「介護を受けたい場所」は、「自宅」と答えた人が全体の34.9%という結果が出ている(平成24年「高齢者の健康に関する意識調査」)。今後、ますます重要性が高まる在宅介護。 それでは実際に終生、在宅介護をすることで、どのくらいのお金がかかるのか。代表的なケースを、介護施設コンサルタント業務をする「スターパートナーズ」の垰和宏さんに、シミュレーションしてもらった。 それぞれのケースでは、介護保険自己負担1割で算出。単純に介護度の利用限度額ではなく、現実的に使用される介護費用を想定している。介護用のベッドの費用や、バリアフリーの改築費用などは含まれていない。 また、将来の平均寿命が現在の87歳(女性)よりも5年ほど延びることを想定し、92歳(93歳の誕生日の前日)で亡くなったと仮定している。 ■自立度が高いまま自宅での生活を継続したケース 5年前に夫に先立たれ、一人暮らしをしていたAさんだが、85歳を迎えたころから、加齢の影響により日常生活で不便を感じることが増えた。 知人の勧めで介護認定の調査を受けたところ、要支援2に。週に2回ずつ、掃除や買い物などの家事サポートのため、要支援者のための訪問介護である「介護予防訪問介護」(月の負担額は約2,400円と、リハビリ目的で「介護予防通所介護」(同3,400円)を利用。 その1年後、86歳のときに要介護1に上がってしまったが、ケアプランは大きく変えず(訪問介護で月約3,840円、通所介護で月6,890円)継続。身体の衰えはあったものの、自宅での生活を続け、93歳を迎える前日、自宅で亡くなった。 「このケースのように、要介護になっても比較的自立した生活をし続ける方も少なくありません」(垰さん・以下同) 【Aさんの自己負担額】 <85歳・要支援2>介護予防訪問介護(II):約2,400円/月介護予防通所介護:約3,400円/月 <86~92歳・要介護1>訪問介護:約3,840円/月通所介護:約6,890円/月 85歳から92歳までの8年間で合計:97万920円〈内訳:(2,400円+3,400円)×12カ月+(3,840円+6,890円)×84カ月〉 ■脳卒中で医療が必要なケース 子どもたちが独立し、夫と2人で暮らしていたBさん。お互い元気が取りえだったが、夫は85歳を過ぎたころから身体機能の低下を実感。86歳で要支援2と判定されてからは、週に2回、通所介護でリハビリを受けた。 1年後、87歳で脳卒中を患い、状況は一変した。一命はとりとめたものの、退院後もまひは残ってしまい、要介護3に引き上げられた。高齢のBさんにとって、1人で要介護3の夫を介護することは困難で、1週間のうち通所介護を2~3回と、短期入所を組み合わせて利用し、週に1日は、脳卒中後の夫の療養生活管理のため、自宅の訪問看護にあてた。 「訪問介護と訪問看護は、別ものです。訪問看護は主に看護師などが自宅に来て、医師の指示のもと、医療や看護面でのサポートをします」 徐々に夫の活動量は低下し、1年後には要介護4、その3年後に要介護5に上がり、92歳で死亡した。 「脳卒中などのライフイベントがあると、当ケースのように、月のほとんどを通所介護と短期入所にあてることになります」 【Bさんの自己負担額】 <86歳・要支援2>介護予防通所介護:約3,400円/月 <87歳・要介護3>訪問看護:約4,210円/月通所介護:約1万1,110円/月短期入所:約1万1,610円/月 <88~90歳・要介護4>訪問看護:約4,940円/月通所介護:約1万2,370円/月短期入所:約1万3,490円/月 <91~92歳・要介護5>訪問看護:約6,500円/月通所介護:約1万3,530円/月短期入所:約1万3,780円/月 85歳から92歳までの7年間で合計:228万4,200円〈内訳:(4,210円+1万1,110円+1万1,610円)×12カ月+(4,940円+1万2,370円+1万3,490円)×36カ月+(6,500円+1万3,530円+1万3,780円)×24カ月〉 「当ケースでは228万4,200円と算出されましたが、さらに訪問医療が必要となれば、医療費や薬代も加算されます」
2018年03月14日「ダブルケア」という言葉を知っていますか? 晩婚化や晩産化などを背景に、子育てと親の介護同時に担わなければならないことをいいます。政府が行った調査によると、ダブルケアを行う人は約25万人いると推計されていて、男女ともにその8割を30~40代の働き盛りと言われる世代が占めています。ダブルケアにより業務量や労働時間を変更しなければならなかった人は女性で約4割、男性で約2割いて、社会の問題として考える必要性も訴えられ始めています。筆者はおととし母をみとりましたが、約10年に及ぶ母の闘病において、2人の子どもの世話と母の病気による介護とのダブルケアを経験しました。今回は、ダブルケアとは一体どんな状況なのか、そして乗り切るためにできることは何か考えてみたいと思います。■ダブルケアで女性にかかる重圧とは母の病気がわかったのは筆者が学生のとき。転移が進んだ大腸ガンで、手術や入院を繰り返しながら、病状は落ち着いたり悪くなったりしました。発覚したときは絶望的に悪かった母の病状は、かかりつけ医に「奇跡的」と言われるほどまで回復して、日常が過ごせるように。その間に筆者は結婚して母となりました。しかし、2人目が産まれる1年ほど前から母の病状は深刻になり始め、身体的、精神的なケアを必要とするようになったのです。当時、実家から離れて暮らしていた筆者ですが、父がフルタイムで働いていたこともあり、1年の3分の1ほどを実家で過ごすことにしました。母から頻繁に連絡が来たため、見放せないと感じたこともあります。政府の調査では、ダブルケアをしている人のうち約66%は女性だとわかっています。親の介護や子育てにおいて、頼られがちなのはやはり娘であり、母親なのかもしれません。身をもって女性の役割を実感することとなりました。■介護中、子どもの預け先をどうする?2人目が1歳になったとき、実家に帰ることに。母は緩和ケアしか手立てがなくなっていましたが、幸いにもかかりつけの病院に入院させてもらえることになりました。しかし、毎日洗濯物を取りにいったり、日中の世話をしたりと、3歳と1歳の子どもを世話しながら1人で母の世話はできませんでした。そこで長男、次男の預け先確保に動きました。里帰り先で年少だった長男を受け入れてくれる幼稚園を探しました。実家近くには私立の幼稚園しかなかったため、事情を話して特別に受け入れてもらえることに。さらに次男の一時保育先を確保するために、10件以上の保育園に電話をかけました。ほとんど空きがなく、ようやく見つかったのは自宅から自転車で20分ほどかかる保育園。そこの保育園も、空きがないと一度断られかけたときに、「ご事情は?」と尋ねてもらい、心遣いでねじ込んでもらったような状況でした。市町村によっては、祖父母の家から通う場合は一時保育を利用できるなどの措置もあるようなので、預け先を探すときは一度役所に相談してみるといいでしょう。■経済と家事の負担を軽くするには介護を行うにあたって、最重要課題は介護保険サービスの「要介護認定」を受けられるかどうかだと思います。また子育てしながらの介護となるために、3つめの問題「家事」についても検討する必要が出てきました。●介護保険サービスによって経済的負担が軽減母が自宅に戻ってくることも想定し、入院中に「要介護認定」を受けてもらいました。介護保険制度では、介護を必要とする状態になった場合や、家事や身支度などの日常生活における支援を必要とするなどの場合、介護サービスを受けることができます。その際、介護や支援が必要かどうか、そのなかでどの程度なのか判定を行うのが要介護認定です。市町村に設置されている介護認定審査会において、自宅や施設、病院などに職員が訪れて判定されます。程度や地域にもよって異なりますが、支給限度額のなかであれば、さまざまな介護サービスを自己負担1~2割で使用できます。介護サービスを受けることができれば、経済的に大きな手助けになります。●民間サービスを利用して家事の負担を軽減子育てと母の世話を行う生活において、家事は大きな負担になりました。祖母が同居していましたが、80代後半になるため、家事や育児を頼める状況ではありません。そこで、週に3度、「買い物と食事作りを3時間でしてもらう」という家事代行サービスを依頼することに。とても大きな助けになりましたが、介護サービスとは逆に経済的な負担はかなり重くのしかかります。わが家は父が仕事をしていなければ、このサービスを利用することは難しかっだろうたと思います。また、長期的となった場合には、このサービスを利用すること自体、選択肢には上がらなかったでしょう。■介護で仕事をどうするか?筆者には4歳差の姉がいて、公務員をしています。母が深刻な病状になったとき、姉は2歳の子どもを育てながら時短勤務をしていましたが、しばらくの間介護を理由に休職することになりました。「仕事」、「子育て」、「母の世話」。この期間は、何よりも精神的な負担が大きかったようでした。もしかしたら姉は、仕事も子育ても母のことも中途半端になっているようでつらかったのかもしれません。職場によって、休みが取れるか否かわかりませんが、状況に合わせて休むことも選択肢のひとつです。ダブルケアによって業務量や労働時間を変更している人も多くいますが、何よりも自身が納得して選択できることが大切だと痛感しました。■親も介護する人も限界になったとき母の体調が悪くなり始めたとき、このままでは母も子どもたちもどちらも重荷になってしまうと、自分の限界を感じました。もともと連絡を取り合っていた母の友人や母のいとこ、義妹など、助けてくれそうな人全員にお願いして、病室や自宅にできるだけ来てもらうことに。家族が行けない日には代わりに病室に行ってもらったり、筆者が病室に行く間に子どもたちの世話をしてもらったりと、大きなチームで母の介護にあたることができました。実際に労働力として支えてもらったと同時に、何より精神的に大きな支えになりました。家族だけで抱え込みがちなダブルケアだからこそ、親戚や友人にも手助けしてもらい、話を聞いてもらうことでずいぶん前向きな気持ちになれたと思います。「子育て」と「介護」の板挟みになりつらい思いもありましたが、母は子どもたちの存在で笑顔が増え、子どもたちも母の闘病する姿からさまざまなことを学ぶことができたと思います。「ダブルケア」というと、世話をしなければならないという重みばかりがクローズアップされてしまいがちですが、家庭だけの問題とせず、もっと幅広く親戚、知人、病院、介護スタッフ、勤務先など巻き込んでいくことが必要だろうと思います。さらには今後はもっと社会の問題として、経済的、精神的、物理的な支援、すべてが充実していけば、心に余裕をもって介護や育児をできるのではないでしょうか。筆者の体験は、母の病気によるものではありましたが、これから高齢者が増えていくなかで、「ダブルケア」はひとごととは言えません。ひとりひとりが自分の親や夫の親について、自分たち家族の生き方について、しっかりと考えていかなければならない問題だといえるでしょう。<参考サイト>・内閣府男女共同参画局: 育児と介護のダブルケアの実態に関する調査報告書
2018年02月25日いま介護をする側の家族たちから、注目を集めているのが“福祉車両”だ。介護の負担を大幅に軽減できる機能が備わった福祉車両の需要は、年々伸び続けている。なかでも、主婦をはじめとした女性に人気なのが、軽自動車の福祉車両。じつは各自動車メーカーから人気車種の福祉車両が続々発売されている。 「福祉車両は体の不自由な人のレベルによって選ぶのが基本です。介助などがあれば、車いすから助手席に移ることができて、ひざを曲げることができる場合は助手席スライドタイプがおすすめです」 こう語るのは、モータージャーナリストの佐藤篤司さん。助手席スライドタイプ福祉車両は、助手席が電動でスライドするので、車いすから容易に乗車できる。 「助手席のシートも斜めに低く下がるので、車いすから移動する際の負担も減ります。女性の方でもシートまでの介助が楽にできるはず」 そう話すのは、ダイハツ東京販売・総合営業企画部の阿部周平さん。助手席スライドタイプ福祉車両の中でも、ダイハツ『タントウェルカムシート」は、助手席側に、後部座席との間の柱がなく使い勝手は抜群だ。リモコンのボタンを押すと助手席のシートがスライドし、外側に自動的に出てくる。助手席はやや前に傾斜して出てくるので、車いすから助手席シートに移るのも簡単だ。車いすから立ち上がり、一歩横にずれるだけで、簡単に移ることができた。リモコンのボタンを再び押せば助手席のシートが元の位置に戻る。フロントドアを開くだけでも乗降は可能だが、後部のドアを開くと間口が広く使えて、乗降がよりスムーズになる。 前出の佐藤さんは、福祉車両の利点をこう語る。 「福祉車両はノーマルモデルよりも価格は高くなりますが、車両とオプション部品の消費税が免除となるので、ノーマルモデルとそれほど変わらない値段で購入できます。もともと軽自動車は燃費がよく、自動車税も安いので維持費が少なくてすむ。そのうえ、福祉車両であれば、自治体によって条件や金額が異なりますが、自動車税の減免、ガソリン代、高速代などの優遇サービスも受けられます。さらに、ボディがコンパクトで運転しやすいんです」(佐藤さん)
2018年02月04日生活者の意識・実態に関する調査をおこなうトレンド総研は、このたび「介護の事前学習」をテーマにレポート。さらに、「1億総介護時代」を前にした「介護の事前学習」の重要性について、「介護ラボしゅう」代表の中浜崇之さんにお話を伺った。介護の知識があれば負担が軽減される介護職従事者以外で、介護関連の資格を持つ20~60代男女500名を対象に、「介護の事前学習」について調査を実施。「資格取得のための学習で得た知識は、在宅介護をする上で役に立つと思いますか?」と聞いたところ、86%と約9割が「そう思う」と回答し、大多数の人が、資格で得た知識は実際の介護現場でも役に立つと考えていることがわかった。さらに、「介護に関する知識があることで、在宅介護はラクになると思いますか?」という質問でも、71%が「そう思う」と回答。また、「具体的に何割程度ラクになると思うか」を聞くと、平均は「5割」に。介護の知識の有無で、負担は5割も軽減されるということになる。在宅介護を見据えた資格取得・学習にあたって重要なことまた、「在宅介護を見据えた資格取得・学習にあたって重要なこと」を聞くと、「座学だけでなく、実習もあるスクール・講座を選ぶ」(57%)が最も多い結果に。「介護現場の知識が豊富な講師が多いスクール・講座を選ぶ」(41%)、「初心者でもついていける学習フォロー体制があるスクール・講座を選ぶ」(39%)などの回答も上位にあがった。「介護ラボしゅう」代表の中浜崇之さんによると、資格取得を通じて介護の勉強をしておくことは、必要な知識を体系的に得ることで、肉体的・精神的な負担を軽減させられるのはもちろんのこと、今後の社会で必要とされるキャリアの選択肢を拡げるということにもつながるのだそう。介護系の資格としては、入門的な位置づけである「介護職員初任者研修」、介護職に就いた後さらなるキャリアアップを目指す方向けの「介護福祉士実務者研修」などがあるという。身近に介護が迫る家族がいるという方は特に、いざというときに慌てることのないよう、事前に知識を得て備えておくことをおすすめしたい。【参考】※トレンド総研
2018年01月24日「昨年末、利用者さんが『要介護3』から『要介護1』に格下げされました。うちの施設では、この半年で3人目。“認定更新”の審査が、厳しくなっているんです!」 関東エリアの介護施設で働く女性ケアマネジャーはこう訴える。要介護状態の重篤度を表す「要介護度」の認定は、原則1年ごとに行われる。この認定更新で、格下げされるケースが続出しているという。 「ある80代の女性は、2年前に“脊柱管狭窄症”で手術を受け、入院中に『要介護3』の認定を受けました。退院後、毎日自宅に訪問介護のヘルパーが入り、週に2回デイサービスでリハビリを受けていた。会話はそこそこで、歩行はつえをついてゆっくり歩ける程度。ところが、1年後の認定更新で一気に『要支援2』まで格下げされ、生活が一変したんです」(前出・ケアマネジャー) 「要支援2」になったこの女性は、介護保険支給額が大幅に減ったために、訪問介護が週3に減り、リハビリのサービスは受けられなくなった。 「それからすぐ、女性は歩行中に転倒し頭を強打。MRI検査したところ、脳が萎縮していることがわかり、再度自治体に要介護認定を申請して『要介護2』と認定されました。すでに認知症も進んでいたんです。いったいあの格下げは何だったのかと……」(前出・女性ケアマネジャー) 介護保険からの給付総額は、年々増え続けるいっぽうである。団塊の世代が75歳以上となる’25年には、20兆円を超えるとも……。そのため、国は介護区分を格下げすることで、給付額の負担を抑えようとしている--。そういう声が、いま介護の現場で広がっている。 そんなさなか、さらに要介護度の格下げに拍車をかける「改正介護保険法」が、4月1日から施行される。国は介護保険利用者の“自立支援”“重度防止化”というフレーズを掲げて、利用者の要介護度を格下げした自治体に対し、インセンティブの付与、つまり報奨金を出す制度をスタートさせる。じつはかなり危険な制度だと警鐘を鳴らすのは、生活情報サイト「All About」ガイドの介護アドバイザー・横井孝治さんだ。 「このインセンティブ制度は、利用者の要介護度を格下げし、負担額を減らすことを目的にしていることは明白です。4月以降、格下げは全国でより拍車がかかるでしょう。実際、高齢の利用者の心身の状態をよくして、元気にするということは楽なことではありません。それよりも“この人は元気な人です”と、格下げ認定したほうが楽。それで国から報奨金がもらえるわけですからね」(横井さん) 介護認定が格下げされれば、巨額の介護費用を負担したり、介護のための離職を強いられて、家族全員が困窮することも。実態を無視した格下げは、“介護地獄”を生み出すのだ。また8月からは一定以上の収入のある利用者の自己負担率が3割に引き上げられる。親の介護をしている家族にとって、次の認定更新で格下げを防ぐための手段はないのだろうか。 認定更新は、主治医の意見書と、自治体の認定調査員による利用者の面談によって一次判定が行われる。調査員が作成する調査票には特記事項という項目があり、認定調査員がそのときに感じた印象を書き込むようになっている。つまりどう判断するか、認定調査員の主観で決められるのだ。その後、介護認定審査会の二次判定で「要介護度」が決定する。 「必ず調査員との面談に家族が立ち会うこと。そして、ふだんからできるだけ夜間の行動や、問題行動を起こしたときのことを写真に残し、メモを作って調査員に渡す。“面談のときは元気でもふだんはこういうこともある”と、しっかり伝えることが重要です。さらに特記事項に必ず記載してもらえるように言うこと。うるさい家族だと思われるほうがいいんです。これからは利用者本人、その家族も理論武装しておかないと負けてしまいます。自治体は基本前提として“格下げ認定をしに来ている”という姿勢で面談に臨むことですね」(横井さん) 仮に格下げとなった場合、自治体に対して“区分変更申請”をすれば再調査を受けられる。さらに、情報公開請求をすれば、格下げ時の認定調査票を入手できるので、調査員がどのようにチェックしたか確認して、戦術を練ったうえで、再調査に臨もう。 もはや介護認定は受け取る時代ではなく、勝ち取る時代になったようだ!
2018年01月19日「具体的な統計データはありませんが、格下げされた家族からの相談や悩みを聞くことが非常に増えました。実際、私の母親も『要介護3』から『要介護2』になりました」 そう語るのは、生活情報サイト「All About」ガイドの介護アドバイザー・横井孝治さん。要介護状態の重篤度を表す「要介護度」の認定は、原則1年ごとに行われる。この認定更新で、格下げされるケースが続出しているという。国や自治体は、要介護度を軽くすればするほど、負担する支給額を減らすことができるのだ。 「アルツハイマーと脳血管型認知症の2つの症状がある『要介護3』の80代の女性は見守りが必要でしたが、つえをついて歩ける状態でした。ところが、次の認定更新のときには車いすでの生活に。認知症の症状も悪くなっていたのですが、『要介護2』に格下げ認定されたんです。利用者の家族は納得がいきませんでしたが、認定が覆ることはなかった。このケースは意識的に下げたとしか思えなかった典型的な例です」(横井さん) 認定更新は、主治医の意見書と、自治体の認定調査員による利用者の面談によって一次判定が行われる。その後、介護認定審査会の二次判定で「要介護度」が決定するのだ。北陸エリアの介護関係者は、こう話す。 「『要介護2』のひとり暮らしの85歳の女性がいました。ふだんは、妄想や幻覚の症状があって、会話が飛んでしまうこともしばしば。しかし、調査員との面談のときは、たまたま状態がよく、そこそこ受け答えができた。その結果、『要支援2』に格下げされました。たった一度の面談で、決まってしまったのです」 調査員が作成する調査票には特記事項という項目がある。 「認定調査員がそのときに感じた印象を書きます。つまりどう判断するか、認定調査員の主観で決められるんです」(関東エリアの介護施設で働く女性ケアマネジャー) 要介護度に応じた支給限度基準額内で、利用者は1割~2割負担で介護サービスを受けられる。要介護度が格下げされると、その額も減らされてしまうのだ。 たとえば、前出の「要介護3」から「要支援2」に引き下げられた80代女性のケース。支給限度基準額は「要介護3」であれば月額26万9,310円(負担割合が1割の場合、自己負担額は2万6,931円)だが、「要支援2」に格下げされると月額10万4,730円(同1万473円)と半額以下になる。 もし、この女性が格下げ前と同じサービスを受けようとした場合、差額の約16万円を全額負担しなければならない。金銭的な余裕がない場合、これまで受けていた介護サービス(生活援助、身体介助など)が利用できなくなったり、回数を減らさざるをえない。利用者はもとより、家族にも負担がのしかかるのである。 東海エリアの介護事業所の責任者は次のように語る。 「格下げにより、施設を退所させられた男性は、自宅での介護を余儀なくされました。その結果、同居する娘さんが離職してお父さんの介護をすることに……。結局、格下げのシワ寄せは家族に降りかかるのです」
2018年01月19日将来、自分が介護されるときにそなえて、局部などの永久脱毛をしておきたい――そう考え、アンダーヘアなどを整える「介護脱毛」を始める中高年女性が急増しているという。 医療脱毛専門院「リゼクリニック」が40~50代女性を対象にした調査によると「第三者の介護を意識して、今のうちにワキや局部の永久脱毛をしたい」と答えた人は23%にも上った。従来、医療脱毛を受けるのは20~30代の女性が多かった。だが、リゼクリニック新宿院院長の大地まさ代先生によると、45歳以上の利用者数は’10年から’16年で約4.5倍にも伸びたという。 「45歳以上になると、自身が親の介護を経験して、『局部の手入れがすごく大変だった』『おむつ交換の際に手間がかかった』とアンダーヘアの煩わしさを実感する方が多いんです。局部は拭き方が雑だとムレたり、雑菌が繁殖して臭いがきつくなったりもします。自分が介護を受けるときには清潔にしておきたいし、介護者に迷惑をかけたくない、お嫁さんや若い介護士に汚いと思われたくないと考える方も少なくありません」 中高年になってから医療脱毛をする場合、注意点もある。 「レーザー脱毛は毛の黒いメラニン色素に反応して、毛を作り出す細胞を熱破壊することで、毛が生えてこないようにするため、白い毛には反応しません。レーザーが反応しなかった残りの毛は、針(医療用絶縁針脱毛)の強い電力で毛根組織を破壊することになります」 なかにはアンダーヘアに白い毛が出始めたので急いで来た、という人もいるという。ただ、白い毛さえなければ、レーザー脱毛に年齢制限はない。ちなみにリゼクリニックの施術最高齢は74歳だ。介護脱毛について、介護ジャーナリスト・介護福祉士でオールアバウトガイドの小山朝子さんにも聞いた。 「介護が必要になる75歳以上の後期高齢者になると、陰毛を含めた体の毛は自然に薄くなる人も多いようです。毛のトラブルというよりは、長時間おむつを着用することによるムレやかぶれ、寝たきりによる床ずれなど、皮膚トラブルのほうが多いですね。ただ、清拭(体を拭く)や排せつ介助を受けるのを恥ずかしいと思うのは、自然なこと。そうした人間の尊厳を守るためにも、介護をするスタッフも下の世話をする際にはタオルを1枚かぶせて、なるべく手早く、丁寧に作業するなどの気遣いをしています」
2017年08月12日「両親の介護について取材依頼をいただくと、お答えできる場かどうか、かなり慎重に考えます。メディアで取り上げる介護って、どうしても必要以上に過酷や悲惨といったイメージづけをされがちなので。今回は『女性自身』さんの熱意に根負けしました(笑)」 そう話すのは、アナウンサーの渡辺真理さん(50)。’90年、TBSに入社『モーニングEye』『筑紫哲也NEWS23』と、同局の看板番組のキャスターを歴任した後、フリーに転身。さまざまな人気番組で活躍してきた。一方、私生活では’98年、父親(’14年に他界)、続いて母親を自宅で介護する生活を、現在まで続けている。 「もちろん、大変じゃないなんて言うつもりはないんです。実際に介護されるご家族の方が消耗し、困窮される場合もあるわけですから。ただ、放送する側にいる身としては、過酷さだけをクローズアップするのはある意味キャッチーかもしれないけれど、抵抗があるのも事実で。できれば、まず介護される側の気持ちをくみたいですよね。がんばって生きてきた人生の終盤、どなたも好んで介護生活に入られるわけでないから、興味本位でその生活を晒すことになったり、介護=過酷のひと言で片づけるのは個人的に嫌です。一方で、親世代って昭和の律義さと高度経済成長を築いたガッツを併せ持つ人たち。いつもどこかで社会の役に立ちたいと願っていて、子どもくらいの年齢のヘルパーさんに『ありがとう。ごめんなさいね、大丈夫?』と毎日聞いたりします。だから、私たち世代としてはそんな介護される側の願いをくみつつ、実情を伝えてこれからに生かしていかないと。実際に、介護の現場で働く方たちには相当なシワ寄せがいっているのも事実です。介護保険スタートから17年たちますが、制度として成熟していない現状をスピード感をもって改善していく必要性は感じています」 渡辺さんは現在、実家を増改築した横浜市内の二世帯住宅で暮らしている。2階が彼女と、’08年に結婚したフジテレビ勤務の夫の住まい。そして、もとの実家である1階で、母親が療養生活を送っている。 「一日のスケジュールですか?特筆していただくようなことは何もなくて、申し訳ないのですけど(笑)。今はデイリーの番組に参加していないので日によってまちまちですが、平日は朝6時過ぎに起きて母の様子を見て、主人を送っていって、犬や猫たちの世話をして。そのあと、自分の仕事に向かいます。要介護5の母には泊まり込みのヘルパーさんがついていてくれるので補い合いながら家事をします。職業柄、仕事中に親に何かあったとしても立ち会えない覚悟はしていますし、親自身「何かあっても仕事をやり遂げなさい」と怒るタイプではありますが(笑)。できるだけこまめに近くにいたいな、と。アナウンサーになってからレギュラーの番組をずっと受け持てていることは本当に恵まれていて幸運だと思いながら、今は泊りがけなど家族との時間を妨げる仕事は控えています。来た球は全部、打つ!って仕事の姿勢も好きで家計上も楽ですが、精神的に落ち着いて臨めないと仕事に対しても失礼になりますし。遅く結婚した主人が、今はとにかく私の親と一緒にいよう!と同居を決断してくれたことには何よりも感謝していて、助かっています」 母親は現在、要介護5。歩行もままならない状態だが、「母を見てると、人の体ってすごいと改めて実感します」と渡辺さんは語る。 「繊細だけど強くもあって、絶妙のバランスのうえに成り立っているんだ、と。免疫力が低下すると風邪など炎症が起きやすくなって、点滴で水分を補給するとむくみが出てしまうなど、心配は尽きません。でも、体が利かなくなって、もどかしくてつらいのは母自身。父のこと(介護)でも誰よりがんばってきた母だから、今の生活を少しでも楽しく感じてもらえるよう、一回でも多く笑ってもらえるよう、家族としては力の見せどころです(笑)」
2017年06月30日超高齢化社会といわれる現代の日本。なかでも深刻化しているのが、「介護」の問題です。認知症を患っている人や、身体的な問題から寝たきりとなった人を介護するのは、労力と精神力を必要とするため、「介護する側」が疲弊してしまい、自暴自棄になるケースが増えています。自分の直接的な家族なら我慢することもできますが、姑など義理の親への介護については、血のつながりがないだけに、納得のいかないものを抱えている人がいることも多いようです。「死後、遺産だけでも自分が手にしたい」と考えるのも、下世話かもしれませんが、当然のことでしょう。しかし、義理の娘には「相続権がない」という話もあるようで、遺産を受けとることができるのか否か気になります。さらに遺書が残っている場合についても、どうなるのか不明瞭です。真偽を確かめるべく、三宅坂総合法律事務所の伊東亜矢子弁護士にお聞きしました。Q.介護をしていた義父母が亡くなった……相続する権利は発生する?*画像はイメージです:発生しません。故人が遺書を残している場合は取得することができますが、全額を受け取ることはできない可能性があります。「相続人は“子”ですので、義理の娘には相続権は発生しません。遺書を残している場合それに従って財産を取得することはできますが、兄弟姉妹以外の相続人には遺留分(※)があります。 ※(遺留分の帰属及びその割合)第千二十八条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。一 直系尊属のみが相続人である場合被相続人の財産の三分の一二 前号に掲げる場合以外の場合被相続人の財産の二分の一 したがって“義理の娘に全財産を遺贈する”という遺言があっても、他の相続人から遺留分相当額については自分が受け取る権利があるという請求を受ける可能性があります」(伊東弁護士)一生懸命介護している義理の娘には、されている側も「何かを残したい」と思うはずですが、法律上遺産を相続することはできません。どうしても義理の娘に遺産を残したい場合は、予め遺書に「義理の娘に財産を遺贈する」と記し、残すようにしておくと良いでしょう。この場合に、後の紛争をできるだけ避けるため、法定相続人に対する遺留分相当額についてはあらかじめ当該法定相続人に相続させる旨の遺言を残しておくことも考えられます。具体的には専門家へご相談頂くのがよいと思われます。 *取材協力弁護士:伊東亜矢子(三宅坂総合法律事務所所属。 医療機関からの相談や、 人事労務問題を中心とした企業からの相談、離婚・ 男女間のトラブルに関する相談、 子どもの人権にかかわる相談を中心に扱う。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*kikuo / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月17日「介護保険関連の改正法が5月26日に成立しました。今回の改正の柱は、所得の高い高齢者の介護サービス利用料を、現行の『2割負担』から『3割負担』に引き上げることです。来年8月から実施されます」 そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。介護保険制度は’00年、1割の自己負担で介護サービスを利用できる公的保険として始まった。介護サービスの利用者は、当初149万人だったが、’15年には511万人と約3.4倍に増加。また、介護にかかる総費用も、’00年の3兆6,000億円から’15年には10兆4,000億円と、2.9倍に増加している(’16年・厚生労働省)。 「そんななか、’15年8月から『2割負担』が導入されました。年金収入だけで280万円以上ある比較的所得の高い方などが対象で、介護保険加入者の約20%にあたります。それから2年で、今度は『3割負担』の導入が決まりました。対象は、年金収入だけの単身世帯では344万円以上など“現役並みの収入”の方で、約12万人が該当します」 実際の負担額について、「要介護5」で、現役並みの収入があるAさんを例に、荻原さんが解説してくれた。 「Aさんが、介護保険を要介護5の限度額いっぱいまで利用したとします。支払いは、1割負担のときは約3万6,000円でした。これが、2割負担になって約7万2,000円。さらに、3割負担になると約10万8,000円に増えます。いくら所得が高くても、3割負担は厳しいと思います。しかし実は、『高額介護サービス費制度』(以下・高額介護制度)という、負担を抑える仕組みがあります」 これは、介護サービスの利用料に一定の限度額を設け、それを超えた分は返金される制度だ。収入によって5つの区分があり、それぞれの限度額が決まっている。 「先ほどのAさんの場合、月の限度額は4万4,400円です。とすると、現在の2割負担でも限度額を超えていますから、返金を受け取れます。3割負担になっても、高額介護制度の限度額は同じなので、毎月の自己負担額は変わりません。また、高額介護制度は、同じ世帯であれば合算できます。高齢の夫婦世帯などにはありがたい制度ですから、覚えておきましょう。このように、3割負担が導入されても、あわてる必要がない方が多いと思います。ただし、高額介護制度の利用には申請が必要です」 家計にとって影響が大きい高額介護制度だが、その限度額は、今年8月から一部、引き上げられる。 「引き上げの対象は、“現役並み所得”の次の区分である“一般的な所得”の方です。住民税が課税されていて(年金のみの収入で280万円以上など)、現役並みに達しない方(単身世帯で年収383万円未満など)が対象です。月の限度額は3万7,200円から、4万4,400円に上がります(一部、緩和措置あり)。毎月の負担が7,200円増えると、対策が必要な方もいるでしょう。ただ、介護サービスを減らすと、生活が維持できなくなることもありますので、慎重に考えてください。医療費も多い方は、医療費と介護費を合算して『高額介護合算療養費制度』が利用できるかもしれません。お住いの自治体にご相談を」
2017年06月09日少子高齢化が進むなか、介護のために生活スタイルを変えざるをえない人たちが増えている。介護を理由に会社を辞めた「介護離職者」は、年間10万人ほどもおり、その8割が女性というのが現状だ(総務省「就業構造基本調査」’12年)。 「共働き世帯が増えていますが、夫か妻、どちらかの親が要介護状態になると、妻のほうが介護の担い手になるために、会社を辞めてしまうケースが多いのでしょう。しかし、介護費用がかかるうえに、収入は減るわけですから、貯金を取り崩さざるをえなくなります。もともと少なかった収入がさらに減り、持ち家があるため生活保護も申請できずと、八方塞がりになるケースもよくあるそうです。特化した調査はまだ行われていないので、数字は明確になっていませんが、“介護破産者”そして“介護破産予備軍”は確実に増えていると思います」 そう話すのは、淑徳大学総合福祉学部教授の結城康博さん。結城さんは、危機に直面した人々の実情を『介護破産』(KADOKAWA)として出版したばかり。実はその共著者であるジャーナリストの村田くみさんも“介護破産寸前”まで追い込まれた経験があるという。40代の村田さんは、いわゆる“おひとりさま”で、’08年からは実母の介護をしている。 「介護が始まったとき、母はまだ要介護2でしたので、利用できるサービスも限られており、実費で利用しなくてはいけないサービスもかなりありました。私は大手新聞社で週刊誌記者をしていましたが、介護のために離職したため、フリーランスになり、収入は不安定に……。それでも母のために、有料の介護サービスを使い続けていたら、一時期は貯金残高が30万円ほどになってしまったのです。まさに介護破産一歩手前で、貯金通帳を手にぼうぜんとしたこともあります」(村田さん) その後、村田さんの経済状況は好転したそうだが、なかには介護のためにホームレスになってしまったケースもあるのだ。 現在は任意団体「反貧困ネットワーク埼玉」などで、生活困窮者たちからの相談を受けている高野博昭さん(61)がそうだった。高野さんは、大手百貨店の正社員として働き、年収1,200万円を得ていたという。だが、咽頭がんを患う父の面倒を見るために退職したあたりから人生が急変する。父の逝去後は、母の介護も始まり、再就職した会社も業績が不安定で、賃金も未払いが続いたという。母も亡くなり、最低限の葬式を出したところで、預貯金が底をついた。家賃を2カ月滞納したために、家主に追い出され、公園で寝泊まりするように……。 「その後、支援団体に保護されました。3年ほど生活保護を受けていましたが、団体職員として採用されたことで自立できました。いまは電話相談員として、生活困窮者の悩みを伺っていますが、親の介護で疲れ切っている人からの相談は年々増えています。電話をかけてくる人たちのほとんどが崖っぷちの状態です」(高野さん) 親のために離職したものの、その後、再就職がうまくいかず、困窮状態に……。介護離職が介護破産の入口になっているという構造も見えるが、離職前に相談している人は多くはないという。 5月17日に『東京新聞』が、介護離職にまつわる調査結果を報じている。調査は、みずほ情報総研が実施したもので、介護を理由に正社員から離職した人たちに「離職直前に介護と仕事の両立について誰かに相談しましたか」と、質問したところ、半数近い47.8%が「誰にも相談しなかった」と回答したというのだ。みずほ情報総研・チーフコンサルタントの羽田圭子さんはこう語る。 「現在は介護休暇・介護休業やさまざまな介護サービスがあり、両立できる可能性が広がっています。介護に直面したら、まずは勤務先や市町村に相談してください。また貴重な人材である社員の離職を食い止めるには、企業でも日ごろから自社の両立支援制度や介護保険について社員に情報提供することが重要です」(羽田さん) 実際に離職を思いとどまり、介護破産を免れた人たちには身近な人に相談していたケースも多いという。 「10年後には50歳以上の10人に1人以上が、親の介護に直面することになります。会社の制度を知らなかったり、行政のサービスについて知らなかったりと、情報不足は介護破産の大きな原因の1つです。実際に介護が始まる前から、情報収集を行っておくべきでしょう」(前出・結城さん)
2017年06月01日内閣府が行った「高齢者の健康に関する意識調査」(平成24年・対象は全国60歳以上の男女)で、《介護を受けたい場所》は男性の約4割、女性の約3割が“自宅”を希望している。国も’25年に向けて、病院のベッド数を15万床削減し、数十万人を自宅などで介護してもらう方向に舵を切っている。 デイサービス、デイケア、小規模多機能型居宅介護……。聞いたことはあっても詳しく理解していない人が多いというのが介護サービス。だが、知識不足は自らの首を絞める結果になるという。 「受けられるはずの介護サービスを逃している人があまりに多い。動けなくなってからリハビリを開始しても、後悔が残るはずです」 こう語るのは、くらしとお金の学校代表理事・長沼和子さん。在宅介護では、“そのとき”最適な選択をすることが重要だという。そこで、『後悔しない 高齢者施設・住宅の選び方』著者の岡本典子さん、『介護施設&老人ホームのさがし方・選び方』の著者で介護施設コンサルタントの齋藤直路さんに、在宅での介護サービスを選ぶポイントを教えてもらった。 【1】まず自宅の改修から検討を 「玄関前にスロープや手すりを設置するなど、自宅を改修する場合、上限額20万円までなら介護保険が使えますので、自己負担額は1割(一定収入以上は2割)ですみます。まずは体の状態、家の動線を理解しているケアマネジャーに相談してください。そのうえで市町村役場に申請し、登録業者を選んで改修工事を依頼します」(岡本さん) 【2】多様な居宅サービスを駆使 日常生活が可能なものの、やや困難が生じてきたら、通所介護(デイサービス)だ。 「自宅まで送迎車が来て、一日を入浴や体操、リハビリ、昼食やレクリエーションを楽しむというもの。だいたい朝9時くらいから16時くらいまで過ごします。高齢者のための“学校”のようなイメージ」(齋藤さん) ここで見てほしいのは、スタッフのケアだという。 「ご飯を食べさせてくれる、着替えを手伝ってくれる施設ばかりが“親切”だと思わないように。よい施設は、運動機能が落ちないように過剰なサポートはしません」 リハビリが必要なら、リハビリのサービスを強化している通所・訪問リハビリテーション(デイケア)施設の利用が効果的だ。 「理学療法士や作業療法士、管理栄養士がおり、歩行機能の改善や、筋肉向上、栄養指導をするために通います」 【3】早朝・夜間対応の訪問介護も 独力で家事ができない、入浴に介助が必要な要支援以上の独居者であれば、ヘルパーに自宅に来てもらう訪問介護が利用できる。 「元気な同居家族がいる場合はサービス提供が認められないこともありますが、入浴の介助などは慣れていないと難しいのでケアマネジャーに相談を」(齋藤さん) サービスの提供時間は8〜18時くらいまでが一般的だが、早朝や夜間対応をしてくれる事業所もある。 【4】要介護3でも在宅が可能に 要介護3以上で認知症の診断があれば、デイサービス、訪問看護、そしてショートステイ(短期間の入所)を同時に提供してくれる、小規模多機能型居宅介護が選択肢に。 「要介護2以下でも利用できますが、現実的には、利用者の多くが要介護3以上の認知症の方です」(齋藤さん) 要介護3以上で高い頻度で介護が必要な人のために、増加していくとみられているのが定期巡回・随時対応型だ。 「自宅にいながら、専用の機器で連絡するとオペレーターにつながり、必要に応じてヘルパーが派遣され、毎晩決まった時間での巡回もある。自宅で施設と同様のサービスが受けられます」 【5】訪問診療・看護で自宅看取り 「いま訪問診療や往診、訪問看護が受けられる地域が増えてきています。自宅での看取りシステムが進んでいるといえます」(岡本さん) 注意したいのは主治医の存在を家族に知らせておくこと。 「治療しても病状改善が望めない場合、約9割の人が、延命治療はせずに自然に任せた死を迎えたいと希望するといいます。しかし、要介護者の容体が悪化したとき、家族が主治医の存在を知らなければ、主治医を飛び越して救急車を呼んでしまい、意思に反した延命治療を受けてしまう可能性があります」 必ず家族間の情報共有を図っておくべきだろう。
2017年04月17日いま親の介護・看護を理由に年間約10万人もの離職者がいることをご存じだろうか。厚生労働省「雇用動向調査」(’15年)によると、離職者が多い年齢層は、男女ともに45〜54歳。まさに“働き盛りの世代”が、毎年介護を理由に仕事を辞めているという現状がある。 「安倍政権は“介護離職ゼロ”の政策を掲げていますが、それを日本中で実現できるのは随分先の話でしょう。家族が要介護になったときにどこに住んでいれば安心なのか。そして親の世話をしながら、安心して働けるのはどこなのか−−。それは現役世代が、最も知りたい情報なのではないでしょうか。そこで今回、国の統計データをもとにしながら、首都圏、都市部の11都府県、約400エリアの市区を対象に、就業率、介護施設数といった指標をたてて集計し、順位をつけてみました」 こう語るのは、今回「介護に優しい街」ランキングを監修した、データ分析のスペシャリスト、住環境アナリストの堀越謙一さん。集計結果から見えてきたのは、財政力や地理的条件も大きな判断要素になるということ。さらに手間をかけた独自の介護サービスを展開している街もあることがわかった。本誌記者は、ランキング上位のエリアを実際に歩いて見て回り、自治体の高齢支援担当者に話を聞いた。 「特別養護老人ホームは、東京23区で整備率がトップです。現在、8施設で729床。’20年3月には、さらに100床作ります。それが完成すれば9施設、829床となります。これ以外にも、介護施設の計画の中には、小規模多機能型居宅介護施設を6施設、認知症高齢グループホーム2施設の整備を進めています」 こう語るのは、東京都港区保健福祉支援部高齢者支援課長の茂木英雄さん。今回のランキング全国2位で、財政力指数が最も高かったのが港区。同区では工夫を凝らしたさまざまな介護支援サービスを展開しているという。 「都心は地価が高いため、民間の事業者さんが土地を買い、介護施設を建てて運営することはなかなか難しい。そこで区有地を定期借地権で貸して、そこに建物を建ててもらって“民設民営”でやっていただくというスキーム。3年後に完成する特養も区有地を貸し出しています」 また、一人暮らしの高齢者や75歳以上の高齢者のみの世帯を対象とした“見守り事業”も自慢のサービスだ。さらに港区では、認知症患者とその家族などが気軽に相談できるようにと、月に1度“認知症カフェ”、「みんなとオレンジカフェ」を開催。毎回10〜15人の参加者があるという。 そして極めつきは、’14年に開設された最新施設「ラクっちゃ」。これは、11種19台の本格的なマシンを完備した大型ジムや壁に大型ミラーを備えたトレーニングルームなど、東京23区で初の介護予防総合センターである。 「65歳以上の港区民であれば、無料で利用できます。マシンを使って1人で体を鍛えるということでもよいのですが、インストラクターの指導のもと、元気な人も要支援の人も集まって、一緒に体操をする時間もあります」 六本木、赤坂、青山といったにぎやかな若者の街のイメージが強い港区だが、“介護予防”まで含めた、いたれりつくせり介護サービスにはまさに脱帽。ほかの自治体が参考にすべきところも多いのではないだろうか。
2017年04月05日ニュースなどでご存知の方も多いと思いますが、2017年1月から改正育児介護休業法(育介法)が施行されることになります。育児休業・介護休業を取得できる従業員の範囲が拡大したことも大きいですが、特にインパクトが強いのは介護休業の取得方法でしょう。改正前と改正後では介護休業の取得方法はどのように変わったのでしょうか?Q.法改正によって何が変わった?*画像はイメージです:介護休暇を「3回」に分けて取得できるようになりました。改正前の育介法では介護休業は1回きり(最大93日間)しか取得することしかできませんでした。ただ、介護を行うにあたっては急な対応を要するもの(直接的な介護だけでなく介護施設の申し込み手続きなど)が複数回発生するため、1回きりしか取得できない介護休業は使い勝手の悪い制度でした。しかし、改正後は取得日数の上限こそ最大93日間と変わらないものの、1回きりではなく通算して93日間を3回に分けて取得できるようになりました。分散して介護休業を取得できるようになったことにより、93日という限られた日数をより効果的に活用してもらうことが期待されています。とはいえ、仕事と介護を両立するためには取得日数が分散できるようになっただけではまだまだ不十分であると言えるでしょう。介護離職を減らすためにも今後の更なる制度改革に期待したいところです。 *取材・文:ライター松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。【画像】イメージです*EKAKI / PIXTA(ピクスタ)
2017年01月07日質問:脳血管疾患を発症後、自宅での介護が不安です。脳血管疾患を発症してしまった場合、リハビリ専門の病院などに数カ月間入院してリハビリをすると聞きました。リハビリ専門の病院を退院した後に自宅での介護生活になると思いますが、トイレやお風呂に手すりをつけても家族だけでの介護はやはり限界かなと感じています。通所や訪問リハビリなどをうまく使って生活をした方がいいのでしょうか?新潟県:リンゴジャムさん(38)回答:脳血管疾患発症後のリハビリについてお答えします。――介護サービスについて脳血管疾患にかかった場合、急性期の治療が終わった後が大事になってきます。脳血管疾患にかかった後のリハビリは、継続することが重要です。通所、訪問リハビリを行っているところも多いので、そういったサービスを利用しましょう。また、要介護、要支援などの認定を受ければ、介護サービスを利用することも可能です(※)。仕事をしつつ身体の不自由な家族の介護となると、精神的、肉体的にも負担が大きいので、こういったサービスも適宜利用しましょう。要介護、要支援の認定を受けるには、市町村の窓口に行き、申請します。申請後、自治体の職員が自宅を訪問し、聞き取り調査などを行い、かかりつけの医師にも意見書を提出してもらうなどの段階を経て、要介護度、要支援度が決定されます。時間はかかりますが、サービスを受けるにあたって経済的支援を得られますので、利用するとよいと思います。自宅をバリアフリー仕様にした場合にも、助成金が出る場合もあり、大変助かります。※サービスを利用できる方は、65歳以上の方および40歳から64歳までの介護保険に加入している方で、初老期の認知症、脳血管疾患など老化が原因とされる病気(16種類の病気)により介護が必要になった方となります。<リハビリの重要性>ところで、脳出血、脳梗塞、くも膜下出血などの脳血管疾患を発症し、後遺症が残ってしまった場合、できるだけ早い時期からリハビリを開始するのが原則です。入院している病院でも、「もう今から始めるの?」と思うぐらい、早くからリハビリを始めるので驚く方もいるでしょう。というのも、後遺症が残ってしまった場合、6カ月を過ぎると途端にリハビリの効果が見られなくなり、発症してから6カ月の間にどこまで機能を回復できるのかが勝負になってくるのです。せっかく回復期に取り戻した感覚や機能も、その後特にリハビリをすることなく放置してしまうと、再び状態が低下していきます。身体はしっかり使わないと、機能が退化してしまうのです。それを防ぐためにも、急性期を過ぎてからも、かかりつけの医師を定期的に受診し、在宅リハビリを適切に続けていくことが大変重要になってきます。「以前は問題なかったのに、どうしてできないんだ」と途中でくじけそうになるときもあるでしょう。しかし、「休まずリハビリを続ければ、必然的に今よりよくなっていく」という前向きな気持ちを忘れずに、リハビリを地道に続けていきましょう。Doctors Me(ドクターズミー)が保証している医師が回答しています
2016年12月18日いまや介護は誰でも避けては通れない問題。平成27年の厚生労働省の調査では、85歳以上の60.3%は介護が必要な状態であることがわかっています。家族の介護には多額の費用が発生しますが、それだけでなく、介護する側が仕事を辞めたり、休職したりせねばならず、収入が減ってしまうこともあります。このような状態で徐々に家計が圧迫され、「介護破産」に陥るケースも近年増えているといいます。収入が減っても住宅ローンなどは払い続けなくてはならないため、事前にきちんと資金計画をしていないと、後で取り返しのつかないことになってしまうかもしれません。そこで目を通しておきたいのが、『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本』(太田差惠子著、翔泳社)。介護が必要になった場合の施設の選び方から、かかるお金、契約についてまでが具体的に説明されています。今回は本書のなかから、施設入居を計画する際に知っておくべきポイントをご紹介します。■1:親が「100歳になるまで」を想定して計画する高齢者施設に入居するにあたって必要な費用は、大きく分けて「入居一時金(前払金)」「月々必要な料金(居住費・食費・サービス費など)」「その他の費用(医療費・生活用品・小遣いなど)」「予備費」となります。入居一時金は無料~1億円、月額費用は5~40万円と施設によってかなり幅があるため、「いくらかかるか」というより「いくらかけられるのか」という視点で検討していく必要があります。資金計画を立てる際は、親が100歳まで生きると想定して計算します。入居一時金などのまとまったお金は貯蓄から、月々の支払いは年金などの収入から支払うのが基本です。たとえば、1,000万円貯蓄があるAさん(80歳)の場合、一時金200万円、緊急の出費に備えた予備費を200万円とすると残りは600万円になります。100歳まであと20年間生きるとすると、年間で使えるお金は30万円で、月額にすると25,000円。毎月10万円の年金があるとすると、12万5,000円までは支払えるということになります。まずは早い段階で、親の貯蓄と毎月の収入を把握しましょう。資産状況がわからないまま施設探しをすると、あとあとやりくりができなくなってしまう恐れがあります。■2:月額利用料の他にかかる費用にも注意する特別養護老人ホームや老人保険施設など、介護保険で入れる「介護保険施設」では、おむつ代や食事用エプロン代など細かなものまで介護費に含まれています。しかし、介護付き有料老人ホームなどの民間施設の場合、おむつ代は原則有料。持ち込みをした場合でも廃棄料金が必要になる施設もあります。通院への付き添いや買い物代行なども費用がかかります。また、民間施設入居中に病院に入院する場合、食費以外は継続して支払わなくてはいけません。このような状況になると「施設費用」と「入院費用」が二重にかかり、厳しい状況になります。そのため、あらかじめ予備費をとっておかなくてはいけません。■3:利用料金に合ったサービスかどうか確認する民間施設の利用料金を大きく左右するのは、「立地」「設備」「人件費」の3つ。一般不動産と同様、立地条件のよいところは施設料金も高くなる傾向があります。建物についても新築は割高で、中古物件をリノベーションした施設は割安になっています。共用施設の広さや豪華さも注意したいところです。また、人員体制も確認しましょう。国の指定基準は要介護者3名に対して職員1名となっていますが、民間施設では2.5:1や2:1となっているところもあります。また、介護職員よりも看護職員の方が人件費が高くなるため、看護師が24時間体制で常駐する施設では利用料金が高くなります。比較検討する際は、なにが必要でなにが必要ではないのかをしっかり見極めることが大切です。■4:自分自身も年金生活になる可能性を想定する親の貯蓄や年金で費用が十分にまかなえない場合、子からの支援が必要になることもあります。しかし、現在は働いていて収入が十分にある人でも、将来は年金生活になるということを意識しておかなくてはいけません。自分自身が介護される身になった、もしくは先に自分が亡くなってしまった場合は次の世代に大きな負担をかけることになってしまいます。親の支援をする場合は、子の生活設計も考え、できる範囲で行うことが大切です。■5:「共倒れ」になる前に生活保護も視野に入れる介護疲れで、共倒れ寸前のような状態になると「お金はあとでなんとかなるはず」と考えて、とにかく施設入居の契約をしてしまう人がいます。しかしこれは危険。途中で経済状況が厳しくなり、施設を退去しなくてはならない事態に追い込まれることもあります。それを回避するには、まず担当のケアマネージャーに相談し、在宅のままショートステイを連続30日間利用する、3ヶ月間老人保健施設に入居してもらうなど一時的に親と離れ、冷静に考える期間をもうけましょう。親の経済状況がかなりひっ迫している場合は、親に生活保護を申請することも一案です。施設の月額利用料を生活保護の「生活扶助」「住宅扶助」で賄える可能性があります。実際生活保護を受けながら、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅で生活している例も珍しくありません。*介護にかかる費用は施設によって大きく異なるので、資料などを取り寄せてしっかりと比較検討することが大切。親が元気なうちはまだまだ大丈夫と思いがちですが、元気なうちだからこそ、しっかりと話し合っておきたいですね。(文/平野鞠) 【参考】※太田差惠子(2016)『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本』翔泳社※介護や支援が必要な人の割合はどれくらい?-公益財団法人 生命保険文化センター
2016年08月02日いま、多くの人が親の老後に不安を感じている時代。実際、オウチーノ総研が20~49歳までの男女741人に「親の介護について考えているか、不安はあるか」アンケート調査したところ、不安を感じている人は81.0%もいるとの結果が出ています。なかでも親の認知症介護は、誰にとっても他人事では片づけられない問題ですよね。だからこそ参考にしたいのが、きょうご紹介する『医者は知らない! 認知症介護で倒れないための55の心得』(工藤広伸著、廣済堂出版)です。著者は、介護ブログ「40歳からの遠距離介護」で生計を立てながら、家族の介護をしているという人物。40歳のとき、祖母(要介護3)が子宮頚がんで余命半年と宣告されたことを契機に介護離職。現在も、認知症が発覚した母(要介護1)とのダブル介護を行っているのだそうです。つまり本書では、そんな経験から得た認知症介護のノウハウを明かしているわけです。本書によると、介護には「魔の3大ロック」といわれるものがあるのだとか。身体を拘束する「フィジカルロック」、薬で抑えつける「ドラッグロック」、言葉で圧力をかける「スピーチロック」がそれ。その一方、著者を含めた介護者も、実はいろいろなものに「ロック」されているのだといいます。■介護の魔の3大ロック(1)マネーロックまずは「マネーロック」。住宅、教育ローンなど固定された支出が多くなり、金銭的に身動きが取れない状態を指した、著者の造語。というのも認知症介護をしていると、想定外の手術、施設への入所、リフォーム費用など、突然の出費が多いものなのだそうです。(2)タイムロック次にタイムロック。本来の意味は「時計錠」ですが、これも著者の造語。勤務時間がキッチリ決まっていて、通勤時間も2時間かかるなど、日常が「自由度のないタイムスケジュールになってしまっている状態」を指すものです。「認知症の人が徘徊して警察に呼ばれてしまった」「下の世話に1時間以上かかってしまった」「デイサービスに行きたくないといいだした」など、介護をしていると予想外のトラブルが発生することになります。そんなとき、仕事に行けなくなってしまったりしたら、そのフラストレーションを認知症患者本人にぶつけてしまうことになったりもするとか。つまり、それはタイムロックが原因だということ。ちなみに著者の場合は、祝業をフリーランスにしたため、タイムロックはほとんどないのだといいます。お母さんの妄想に30分以上つきあうこともあるそうですが、イライラしていないので気持ちに余裕があるのだそうです。それは、とても大切なことであるはず。つまり介護をするにあたっては、なんらかのかたちでタイムロックから自分を解き放つことが必要なのでしょう。(3)常識ロックそして最後は常識ロック。これは介護者が、「まわりのみんながそうしている」という意識から、自らをロックしてしまうことを指すのだといいます。少しわかりにくいかもしれませんが、「みんなすべて自分の手で介護している。他人に頼るなんてもってのほか」という“常識”にとらわれすぎている介護者が、本当に多いというのです。もしかしたら、日本では家事も育児もすべて自分でやる人が多いという現実が、介護にも影響しているのかもしれない。著者はそう分析しています。また、崩れつつあるとはいえ、「介護は女性がするのが当たり前」という幻想もいまだ根強いのだとか。しかし、介護をアウトソーシングしてなにがいけないのでしょうか?そんな疑問を投げかけている著者も、週2回のデイサービス、ゴミ捨てなどの訪問介護、週1回の訪問リハビリ、隔週での訪問看護など、アウトソーシングをしているといいます。■自分の手で解除しようまた、「介護でタイムロックされている人は大変な思いをしているから偉い」と尊敬され、自分の時間をつくり出そうとしている人は尊敬されないというのも不思議な話だと著者。たしかに私たちは苦労を尊敬の対象にしがちですが、そういうものではないはずです。だからこそ、そういった「常識ロック」を自分の手で解除すべきだと著者は主張します。そうすれば、介護の幅が広がり、孤独からも解放されるというのです。アウトソーシングしていると親戚から文句をいわれることもあるでしょうが、大切なのは「介護者が主体的であること」だからです。見るべき方向は「世間やみんな」ではなく、認知症の人ご本人、そして介護者自身。認知症の人ご本人には「介助」が、介護者には「ロックの解除」が必要だといいます。*当然のことながら、介護には、つらく苦しいものというイメージがあります。たしかに、それは事実なのでしょう。しかし本書の魅力は、著者がそういった被害者意識とは別の場所にいることです。「わたし自身、認知症介護は4年目に突入しました。もちろん、悩みはあります。しかし、思ったほど悩みは深くなく、『しれっと』介護ができています。『しれっと』とは、何ごともないかのような状態のことです」(「はじめに」より)この記述からもわかるとおり、決して悲観的ではないのです。だからこそ本書を読んでみれば、絶望的なものとして語られがちな認知症介護を、もう少し広い視野で眺めることができるようになるはずです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※工藤広伸(2016)『医者は知らない! 認知症介護で倒れないための55の心得』廣済堂出版
2016年07月17日厚生労働省の調査によれば、超高齢化社会に突入した日本では全国民の4人に1人が65歳以上の高齢者です。そのため、介護や看護を理由とした離職・転職者も増えており、平成23年10月~平成24年9月の1年間で10万人を超えています(総務省「就業構造基本調査結果」)。さらには、介護などのために離職し無業者になった人のうち、40歳代で約8割、50歳代で約5割、60歳代で約3割もの人が、もう一度就業を希望しています(総務省「同」)が、現実はなかなか厳しいようです。■介護離職者の再就職後の年収は「4割以上ダウン」再就職者の平均年収は、男性が556.6万円から341.9万円と約4割減ります。女性にいたっては、350.2万円から175.2万円とおよそ半減。たとえ再就職できたとしても収入は大幅に減少するのが実情です。加えて、仕事のある日の介護時間が男性で1.6時間、女性で1.8時間増大するというデータもあります。こうした現状を踏まえて、仕事を続けながら介護を行うために必要な情報を詳細に紹介しているのが、『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと』(翔泳社)です。著者は、20年以上にわたり介護現場などを取材し、離れて暮らす親のケアを支援するNPO法人を設立した太田差惠子さん。そんな実績があるからこそわかる「親の入院~介護」で必要となる情報を時系列に整理してあり、介護にまつわる不安を解消してくれます。とくに、仕事と介護の両立を目指す人にとっては心強い1冊といえます。■介護離職者は経済的・精神的・肉体的にも負担増!親の介護が必要になると、仕事を辞めなければサポートする時間が確保できないと考えがちですが、辞めてしまえば経済的に立ち行かなくなることも。仮に、パートで年間100万円の収入があったとすれば、それが0になり、10年間で1000万円の損失になります。自身の老後も遠い話ではないので、収入源は確保しておきたいものですね。また、介護一色の生活になれば、じつはストレスが増し、「経済的」だけでなく「精神的」「肉体的」にも負担が増加するという調査結果があります。介護を機に仕事を辞めて精神面で「非常に負担が増した」31.6%、「負担が増した」33.3%と回答した人を合わせると、約65%の人が精神面で負担が増したと感じています。肉体面でも「非常に負担が増した」22.3%、「負担が増した」34.3%となり、半数以上の約56%の人が負担増を感じています。経済的に「非常に負担が増した」35.9%、「負担が増した」39.0%となり、じつに約75%、4人に3人が経済的な負担を強いられているのです。離職者の年収は前述したとおりですが、転職先でも正社員として働いている人は、男性は3人に1人、女性は5人に1人という少なさです。年収が大幅ダウンする大きな要因といえそうです。介護は終わりの見えないことなので、目先のことだけに一喜一憂せず、長期的な視野に立ち、家族で協力しながら最善の方法を探っていきましょう。■介護休業制度を利用して「介護の体制」を作るべしところで、働きながら家族を介護するために、一定の期間休業することができる「介護休業制度」があるのをご存知ですか?勤続1年以上であれば、パートや派遣社員を含めておおよその労働者が対象に。期間は対象家族1名につき、要介護状態になるごとに1回、通算93日まで取ることができます。介護休業開始日の2週間前までに事業主に申し出ればOK。とはいえ、介護休業の取得率は低く、2012年で3.2%。その一方で、同年、約9万5000人が介護を理由に離職したという調査結果もあります。そこで、短期間の休業を分割して複数回取れるように2017年からルールを改正した制度の導入が検討されているようです。また、対象家族が1人であれば年に5日まで、2人以上であれば年に10日まで、1日単位で休暇を取得できる「介護休暇」や、短時間勤務などが可能になる「短時間勤務制度等」も整備されています。■介護休業中は雇用保険から「賃金の40%」が支給介護を行う労働者が仕事を休める制度があることはわかったけれど、休業中の賃金が気になるところ。じつは、法律での定めがないため、多くの会社で無給となっています。ただし、雇用保険から「介護休業給付金」として、賃金の40%が支給されます。原則、対象家族1人の介護につき1回の支給ですが、93日以内で終了し、その後、病状が悪化するなどした場合は、2回目の介護休業を取得することができ、通算93日に達するまでは受給できる仕組みです。気をつけたいのが、支給の対象年齢。支給されるのは65歳未満で、65歳以上の人が介護休業した場合には、支給対象にならないようです。親の介護といえば、入浴や排せつ、食事などの介助を思い浮かべがちですが、こうした「情報収集」はとても大切です。介護は、必要なことを関係機関に申請しなければ、事態はなにも進まないことが基本だからです。突然やってくるのが、親の介護。いざというときに困らないためにも、時間的にゆとりのあるうちから積極的に情報を収集し、知識を蓄えていきたいものですね。(文/山本裕美) 【参考】※太田差惠子(2015)『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと』翔泳社※2014年「仕事と介護の両立と介護離職」に関する調査-株式会社明治安田生活福祉研究所※平成24年度仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書-厚生労働省
2016年05月15日最近、「親の介護のため仕事を辞めざるをえなくなり、生活が苦しい」とか、「両親の介護費用のために貯蓄が減ってしまった」という話を聞くことがあります。自分たちの介護にかかるお金の準備をするより先に、両親の介護にかかるお金が心配だという方も少なくないでしょう。しかし実際問題として、介護の費用はどのくらいかかるのでしょうか?今回はみなさんの気になる疑問を解明していきたいと思います。■公的介護保険から保障を受けられる!公益財団法人 生命保険文化センターが、「年代別人口に占める要支援・要介護認定者の割合」というデータを発表しています。これによると、日本人が老後の介護状態になる確率は、80~84歳では29.9%、85歳以上で60.3%。確率は75歳をすぎたあたりから急速に上がりはじめます。平均寿命が女性86.41歳、男性79.94歳(2012年)という世界一の長寿国に生まれ育った私たち。人生の最終コーナーのあたりで、どうしても介護状態になる確率が高くなるようです。介護にかかる費用については、国の公的介護保険が導入されたため、介護保険の対象サービスを受けた場合の自己負担は1割で済むようになりました(2015年8月より一定収入以上の方は2割)。つまり居宅サービスを例にとると、もっとも多く介護サービスを受けることができる要介護5の人でも、自己負担の上限金額は36,065円というわけです。さらに、健康保険の高額療養費制度と同様介護保険にも「高額介護サービス費」という制度があり、一般世帯の場合であれば、37,200円を上限としてそれ以上自己負担が増えないようになっています。ただ、介護の状態や環境によっては、支給限度を超えたサービスが必要になる場合もあり、それは全額実費となってしまいます。すると、次に気になるのは実費がいくらになるのか、ですよね?これについては、同じく公益財団法人 生命保険文化センターの「介護保険からの給付と自己負担額(1ヶ月分)」にある介護費用例からイメージできるようになっています。あくまで例ですが、月額サービスの利用合計金額が277,070円(訪問看護40,700円、訪問介護85,360円、デイケア100,360円、ショートステイ25,650円、福祉用具貸与25,000円)で、要介護度別の支給限度額(本事例は要介護3)が269,310円。つまり、277,070円から269,310円をひくと7,760円になるので、7,760円の自己負担があるということになります。■本当に毎月25万円以上もかかるのかこう見てみると、「それほど介護費用がかかるのか?」という疑問が生まれますよね。介護の話になると「施設に入れば毎月25万円以上はかかる」というような話をよく聞きます。しかし、これは「有料老人ホーム」に入所した場合なのです。同じ施設でも「特別養護老人ホーム」であればこんなに費用はかかりません。ただし東京をはじめ各地とも、「特別養護老人ホーム」は定員がいっぱい。順番待ちも相当な人数です。つまり、ここに介護の問題があるわけです。「介護が必要な両親がいる。でも費用の安い施設は定員がいっぱいで入れない。かといって高額な有料老人ホームに入れることはできない。結果、自宅で介護をせざるをえない」こんな図式なのです。自宅で介護となれば、働き方にも制限が出る場合があります。そのため収入が減り、生活苦という悪循環に陥るのです。近年は、10万円台で入所できる有料老人ホームも増えてきました。10万円台であれば、両親の年金を考慮すると多少の負担で預けられるかもしれません。親の年金受給額を早めに把握し、有料老人ホームの情報にもアンテナを張っておくことお勧めします。(文/ファイナンシャルプランナー・岡崎充輝) 【参考】※介護や支援が必要な人の割合はどれくらい?-公益財団法人 生命保険文化センター※介護保険制度の改正について-神奈川県ホームページ※実際にかかる介護費用はどれくらい?-公益財団法人 生命保険文化センター
2016年04月27日