団扇で夕涼みする姿は、夏の風物詩ですね。団扇は、奈良時代に中国から伝わり平安中期の書『和名類聚抄』には唐で作られた宇知波(うちわ)との記述があります。道具として古い歴史を持つ団扇ですが、庶民に普及したのは、紙や竹材を使って大量生産できるようになった江戸中期以降のことです。広重、豊国、国芳とコラボ江戸市民が待ちわびた江戸うちわ地域特産の和紙を使ったもの、ひとりの職人が型から絵まで描くものなど、日本各地の特色を打ち出した団扇は夏を彩ってきました。さまざまな団扇がありますが、江戸の団扇といえば日本橋生まれの「江戸うちわ」です。江戸きっての繁華街、日本橋には和紙や竹材を商う店がたくさんありました。そんな店が自然に作り始めたといわれる江戸うちわ。世界に先駆けて百万人都市になった江戸、そんな江戸市民に向けてですから大量生産は必須です。仕様を簡略化するため持ち手や骨を1本の竹を割いて作りました。また人口密集で熱気がこもりやすい江戸の町ゆえに涼をとりやすいように形状も大きめだったそうです。そんな江戸うちわを道具から嗜好品へと変えたのは、今も日本橋で団扇や扇子を商う「伊場仙」(いばせん)。天正18(1590)年を創業年とする伊場仙は、徳川家に竹や和紙を収めていました。その材を使って団扇や扇子を手掛けるようになります。江戸後期には、初代の歌川豊国や歌川国芳、歌川広重などの絵師の版元になり、錦絵を刷り込んだ「浮世絵団扇」を考案。絵師の描く歌舞伎役者や花魁、日本の名所が刷り込まれた団扇は大当たり、江戸市民のみならず江戸土産として京や大坂の人に喜ばれたそうです。昭和30年代ごろまで店で団扇を作っていた伊場仙ですが、今ではその技術を踏襲する千葉・館山の職人さんにお任せしているそうです。大人女子が注目する、竺仙とのコラボ団扇江戸薫る浮世絵団扇、気軽に使える手拭生地の団扇など、さまざまな団扇を商う伊場仙。大人女子におすすめしたい団扇をご紹介します。大人女子の人気ナンバーワンは、竺仙(ちくせん)の浴衣地で作られる団扇たち。竺仙ブルーと称される青の生地から仕立てられる団扇は、見た目に涼感が感じられます。花や蝶などの身近なものを染め抜いた柄も竺仙ならでは。新作柄の浴衣は新調できなくても、団扇ならば気軽に楽しめそうです。手拭生地で作られた団扇も人気。洒脱で遊び心のある、斧琴菊(よきこときく)や弁慶格子などの柄は江戸っぽさを醸します。サイズが小さめでお手頃な価格なので、夏のプチギフトにいい。かくいう私自身、仕事仲間や友人へ贈る夏の定番ギフトになっています。手拭生地の柄長タイプ(踊り団扇仕様)は、デスクのペン立てやラックに差しやすいのでオフィス用に購入する人も多いそう。金魚や竹林など見た目に愛らしく涼しげな柄は、仕事のストレスをちょっぴりやわらげてくれるかもしれません。浮世絵シリーズ復刻版。歌舞伎座などで販売していて、海外からの観光客がお土産に購入していくそうです。軽くてかさばらず、道具にも飾り物にもできる、そう考えるとお土産にぴったりですね。江戸土産として喜ばれた江戸うちわが、時を経て日本土産に! 私も浮世絵シリーズを一枚持っています。お値段が張るのでもったいなくて道具使いできませんが、初夏から夏にかけて部屋に飾って楽しんでいます日本の暦に根ざした古からの道具毎年五月には、新作の団扇や扇子で賑やかに彩られる伊場仙。「本来、団扇はいつごろまで使うものですか?」と伊場仙でお尋ねしたところ「七月いっぱいかな」というお答えでした。少し早いように感じますが、旧暦の秋は七月から始まります。日本の暦に根ざした道具だということを実感しました。暦は皐月、まだまだ団扇に頼れますね。あおげば涼し江戸の風です。伊場仙のうちわは、拙書『江戸な日用品』(平凡社刊)にてご紹介しています。取材協力/伊場仙(いばせん)東京都中央区日本橋小舟町4-103-3664-9261営業時間 10:00~18:00(土・日曜のみ11:00~17:00)休日 土日曜・祝日(5月~8月末まで土日曜営業)
2015年05月26日春前はスプリングコートが、花見時期は白いシャツが、というようにその季節になると気になるものってありますよね。毎年、初夏の時期に気になるもの、それが“ゆかた”です。ゆかたは、もともと貴族が湯あみ時に着ていた湯帷子(ゆかたびら)が語源ともされ、庶民に普及したのは江戸中期以降と言われています。歌舞伎役者の衣装で話題に江戸ッ子も飛びついた 「竺仙」のゆかた江戸の浴衣文化にひと役かったのは、木綿生地に柄を染め抜いて舞台衣装や普段着とした歌舞伎役者でした。当時のスーパーアイドルだった役者の衣裳を真似て人々はすぐさま同じ柄の着物を作ったと言われています。そんな歌舞伎役者たちに個性的な浴衣をプロデュースしていたのが、天保13(1842)年創業の『竺仙』(ちくせん)。俳句や絵画に通じていた初代は、自ら考案した型染めの衣装を歌舞伎役者や江戸の俳人たちに提案。彼らが好んで着たことで、江戸市民がこぞって買い求めたと言われています。昔と変わらず今も、竺仙の“ゆかた”は、多くの女性の憧れのまと。毎年千種類もの新作を発表しています。そこで竺仙5代目・小川文男さんに、似合う一枚を選ぶコツを聞いてみると「顔うつりがいい色柄を選ぶこと、それにつきます」とごくシンプルなお答え。重ね着で変化をつけられる洋服とは違い、色柄のみで勝負するゆかたは、顔の雰囲気とあうかが大事と言います。さらに色柄の顔うつりは、着物のプロに指南いただくのが一番。着物のプロがいるお店で、いろんな色柄をあててみて、似合う一枚を選びたいですね。伝統と革新の絶妙なさじ加減お出掛けしたくなる “大人ゆかた” 7選ここ数年、竺仙では萌黄色(もえぎいろ)や鴇色(ときいろ)などの優しい色柄のゆかたが人気。新鮮なのに奇抜ではなく、トラディショナルでありながら古くはない、竺仙ならではのさじ加減。そんな絶妙なセンスのゆかたは、大人女性を虜にしてやまないのです。花火や夜祭りだけではなく、街にも出掛けたくなる、大人ゆかたをご案内いただきました。夏空に映える、爽やかな瑠璃色のゆかた。お馴染みの朝顔柄は、秋草が彩ることで落ち着きある雰囲気に。朝顔の花弁を絞りのように染めている繊細さも魅力です。紺白で染め抜かれた大胆な牡丹柄。柄と同じく華やかな髪飾りや履物でポップに着こなしたり、伝統的な紺白の色遣いを活かして品よくまとめるのもいい。そんなダブルな楽しみがある一枚です。手織り紬のような独特の風合いの綿生地に引き染めによる緑の染料で唐草柄を染めだした一枚。オリジナリティを大事にしたい大人の女性にはぴったりです。江戸時代初期から越後で織られてきた麻織物「小千谷ちぢみ」。麻素材が持つ涼感と縮布独特のシャリ感、そしてふんわりと優しい色柄は、盛夏のお出掛けにいい。江戸市民が愛した縞柄は、小粋な夏を演出してくれます。『江戸好み』シリーズは、男女問わず人気柄。よく知られている「斧琴菊(よきこときく)」は、代々音羽屋・尾上梅幸の使っている江戸文様。福をからめ捕る、すくい取る吉祥柄「網目」や、吉原の手引茶屋の暖簾柄「吉原繋ぎ」は人気が高いそうです。花火や夜祭り、夏の夕涼みに似合うゆかたです。『江戸好み』以外のシリーズは、襟をつけてカジュアルなお出掛け仕様にしてもすてきですね。※仕立て代は1万3千円~3万円程度、ゆかた生地と手縫いか半ミシン縫いによって異なります。お出掛けは足袋、胸元すっきり和装下着“美しいゆかた姿” でいるためのあれこれ美しいゆかた姿のポイントを、いくつか教えていただきました。胸元がすっきりまとまるので和装ブラジャーをつけること、そして帯を締める前の下ごしらえをキチンとすることは、着物ビギナーに必ず伝えているそうです。胸の大小にかかわらず、和装仕様の胸元へ補正してくれるので和装ブラジャーは必須です。そして足元は、裸足でも足袋でも歩きやすい草履げたがおすすめとか。さらにお昼のお出掛けや食事に出掛ける時は、足袋をはくと品よく見えてベターです。今年の夏こそ、着ているだけで格上げしてくれる、江戸なゆかたはいかがでしょうか。取材協力/竺仙(ちくせん)東京都中央区日本橋小舟町2-3TEL:03-5202-0991営業時間: 9:00~17:00休日: 土日曜・祝日(4月~7月まで土曜営業)
2015年05月11日ユニクロはこのほど、バングラデシュの伝統衣装をモチーフにしたウィメンズ・コレクションの販売を開始した。同コレクションは、バングラデシュの女性用伝統衣装「サロワカミューズ」を現代的なスタイルにアレンジしたもの。「シンプル・エスニック」をテーマに、ニューヨークの商品開発チームがデザインを手がけた。展開するのは、サロワカミューズの伝統的なスタイルを取り入れた「ワンピース」(3型 / 各2,990円)、「イージーパンツ」(1,500円)、「スカーフ」(1,000円)の3アイテムに、「チュニック」(4型 / 2,990円)を加えた4アイテム全9型。スカーフは1サイズ、それ以外の商品はS・M・Lの3サイズを用意。同社のチーフ・クリエイティブ・オフィサーでグローバルデザイン担当のリアン・ニールズ氏は、「このコレクションでは、サロワカミューズの特徴である繊細な刺しゅうや織り柄、鮮やかな色使いを生かしつつ、ユニクロならではのシンプルで美しいシルエットと着心地の良さを追求しました」とコメント。また、高品質な綿ドビー、ガーゼなどの天然素材を採用することで自然な風合いと軽く肌触りの良い着心地を実現させたという。さらに薄く透け感のある素材のため、単品での着こなしのほか、重ね着など幅広いコーディネイトが楽しめるとしている。取り扱い店舗は、日本を含む世界14カ国と地域のグローバル旗艦店など23店舗と一部オンラインストア。4月20日より日本・中国・香港・インドネシア・韓国・台湾では販売中。4月27日よりオーストラリア・フランス・ドイツ・アメリカ、5月下旬よりマレーシア・フィリピン・シンガポール・タイにて発売する。なお、同コレクションによる収益の一部は、働く人の未来をひらくプロジェクト「Factory Worker Empowerment Project」として、バングラデシュの縫製産業で働く女性の教育支援に使用するという。※価格は税別
2015年04月22日パートナーとふたりきりでゆっくり旅をするのはひさしぶり…。そんな大切な時間をさらに特別にするお宿が、「水辺の私邸」がテーマの「星のや 京都」です。大堰川を上った嵐峡(らんきょう)の奥にこつ然と姿を見せるこちらは、嵐山の中心地「渡月橋」から小舟でわずか15分と、観光にも便利な立地ながら、船でしかアプローチできないという秘境のお宿。大堰川に屋形船を浮かべて、春は桜、秋は紅葉、夏は鵜飼いと、この地で遊んだ平安貴族のように、外界から隔絶された非日常空間で、四季折々に表情を変える自然に包まれます。非日常空間へ小舟に乗ってアプローチ“渡月小橋(とげつこばし)の南詰(みなみづめ)”。なんとも京らしい響きの橋のたもとに「星のや 京都」の船着き場があります。ここから屋形船を模した送迎の小舟に乗って大堰川をゆるゆる上ること15分。野生の川鵜と追いかけっこをしながら進むと、まるで水墨画のような絶景の中にひっそりと佇むお宿が現れます。水の音を聞きながら、読書を楽しむひとときこの地にもともとあった池を生かしてデザインされた「水の庭」に面したライブラリーラウンジ。大堰川を開削した京都の豪商・門倉了以の“水辺の私邸”で、書斎兼住居として使われていたというエピソードにちなんで「ライブラリー」と呼ばれています。書棚には美術書や写真集、“旅”や“京都”にまつわる書籍も多く並んでいます。座り心地のいいゆったりとしたローチェアに座り、さらさらと流れる水の音に耳を傾けながら、コーヒーやお茶を手に、ふたりで読書をする時間なんてのも…。和の伝統美と現代のくつろぎが融合した、ふたりだけの空間「星のや 京都」の客室はわずか25室。100年前に建てられた旅館をリノベーションしたもので、年を重ねてきた日本建築ならではの味わい深さがあります。デザインは、間取りもしつらえもさまざまな6タイプで、全室が“大堰川ビュー”という贅沢さ。こちらの客室は、和室と寝室が川沿いに並んだ特別室「月橋」。角部屋の和室は2面に雪見窓があり、時間の移ろいを感じられます。角竹をあしらった丸天井や欄干など、昔の意匠の美しさに魅了されます。畳が心地よい和室に置かれていたのは、世界初の「畳ソファ」。「伝統的な日本家屋は、正座したときの目線の高さで過ごすことで本来の持ち味を発揮する」というコンセプトで「ヒノキ工芸」が制作しました。闇に包まれはじめた客室を温かく照らすのは、芸術的な枠組みの「三浦照明」の灯り。真鍮製の枠組みは、すべて職人の手作業で生まれます。寝室の壁の仕上げには京唐紙「京からかみ丸二」が使われていて、やわらかな灯りに照らされ、伝統的な文様が浮かび上がります。 庭園文化の伝統を踏まえた、新しいランドスケープ伝統文化としての庭園づくりが、いまもなお受け継がれている日本。悠久の時を経て積み重ねられた伝統の上に“生きた空間としての庭”という新しいランドスケープデザインが誕生しました。敷地内には「奥の庭」と「水の庭」というふたつの庭園があります。伝統的な「方丈庭園」を思わせる「奥の庭」は、燻し瓦と白石により川の流れのような文様を表現。「水の庭」は日本庭園とは異なるスケールを採り入れて、日本的でありながら異国情緒を感じさせます。いつもと違う表情にときめく、京都ならではのアクティビティ「着だおれ」といわれるほど着物文化と縁が深い京都。「星のや 京都」では着物の着付けをしていただけます(要予約・¥7,700〜※税別)。季節や行き先、好みに合った着物を貸し出していただくこともできます(要予約)。室町時代に形成された香道は、茶道や華道と並ぶ芸道のひとつ。ここでは“香りを聞く”という雅びな遊び「聞香」を体験できます(40分・¥2,800※税別)。武家の流れを汲んだ「志野流」のお作法で、本格的なお道具を使って香炉を作り、香りを聞きます。伝統を大切に進化する新しい会席料理ゲストが自由に食事を楽しめるように、宿泊と食事をセットにしないのが「星のや 京都」のスタイル。お宿の外の食事処をご案内いただくこともできますが、実はこちらのレストランは、2013年版のミシュランで1ツ星を獲得するなど、評価が高い実力店なのです。お料理は、旬の素材や京料理の伝統的な技法を用いながら、世界のトレンドを反映したクリエイティブな会席料理。モダンなデザインのダイニングで、ゆっくりとしたひとときを過ごすことができます。深い静寂が訪れた嵐山の夜を、ふたりでもっと楽しみたい。そんなふたりにオススメなのが古い蔵をリノベーションした「Salon and Bar 蔵」。昼間はサロンとして、夜はバーとして利用できます。空気が澄み渡る冬の夜は「星空BAR」と名付けて特別な演出がされています(3月20日まで)。天井のライトがミラーテーブルに反射した空間は、まるで冬の星空に迷い込んだよう。国産を中心にラインナップしたウィスキーと、京都のショコラティエが手作りしたフレーバー・ショコラのマリアージュを堪能することができます。光のアートが演出するドラマティックな冬景色京都の新たな冬の風物詩として始まった、和の灯りと花の演出によるライトアップ「京都・花灯路」と「京都嵐山・花灯路」。嵐山全体が光に包まれるこの時期に、嵐峡の奥座敷「星のや 京都」でも、光のアート「星のや花灯路」を開催しています(3月20日まで)。「時忘れの冬景色」をテーマに、光、水、音、風が織りなす光の世界は、幻想的でロマンティックな空間です。京の中心部に滞在する“いつもの京都旅”とは違い、嵐峡の絶景のなか幻想的に姿を現す秘境のお宿「星のや 京都」まで足を延ばす旅。和の伝統美と現代の機能美が美しく共存したドラマティックな空間のなか、日常から解き放たれて心を踊らせたり、かけがえのない瞬間にときめいたり。大人のふたりだから味わえる“ほんものの贅沢”がここにあります。文/江藤詩文モデル/牛窪万里子
2015年02月23日©ASEAN-Japan Centre海外へ旅行に来たら、その国の伝統料理を試してみるのも旅行の醍醐味の一つですよね。ブルネイの伝統料理は『アンブヤ』という料理です。サゴヤシの木の皮をはぎ、中の樹液を乾燥させて販売しています。その昔、ブルネイには主食になるようなものがなかったので、アンブヤを主食として召し上がっていたそうです。さらにこのヤシの木には、サゴウァームと言って、ヤシの木に住む芋虫がいるのですが、これをみんな食べたりもします!!(バターと炒めると、味はスィートコーンのような味になります・・)≪アンブヤの作り方をご紹介≫作り方は簡単!なようでコツがいるみたいです。 まずはお鍋にアンブヤの粉を入れ、水を少しずつ入れていきます。ある程度水で戻したら、今度は一気にお湯をそそぎ、ダマにならないようにひたすらまぜます。ここがポイント!で、お湯を入れるタイミングによって出来上がりが変わるそうです。お店の人も真剣です。だんだん透明なかたまりが見え始めてきたらほぼ完成です。あとはお好みでソースを付けて食べるだけです。ソースの種類はお店や家庭によってさまざま!フルーツを使ったものや、エビを使ったソースがあります。ブルネイ人はドリアンが好きなのでドリアンのソースが人気?です。専用のスティックを使い、巻き込むようにして食べます。味はそんなにしないのですが、ゼリーのようで、もちもちした触感が特徴で、私はこれにローカルなエビソースや小豆をつけて食べたりします。 ローカルソースをたっぷりつけて伝統料理もぜひ試してみてくださいね!その他のブルネイの情報はこちら>>
2015年01月15日2012年、伝統工芸を受け継ぐ後継者達が集い、プロジェクト「ゴーオン(GO ON)」が始まった。それは六つの伝統工芸の未来を背負う後継者らによるプロジェクトチーム。先代からの技と思いを受け継ぐ彼らを訪ねた。メンバーは、元禄時代から織物業を営む西陣織「細尾」の細尾真孝、明治8年創業の手作り茶筒の老舗「開化堂」6代目八木隆裕、明治31年創業の竹工芸「公長齋小菅(こうちょうさいこすが)」小菅達之、起源は平安時代にまで遡るという京金網「金網つじ」の辻徹、木工芸「中川木工芸比良工房」中川周士、400年の歴史を持つ「朝日焼」16代目の松林佑典。個性の異なる若い伝統工芸の後継者6人が集い、志を掲げクリエーティブユニットGO ONは生まれた。ユニット名GO ONには、長く引き継がれてきた伝統と先代達への「御恩」の意も込められている。■GO ON設立のきっかけ数年前、それぞれの屋号で出展していたミラノサローネなどの海外展示会で、度々顔を合わせる内に「伝統工芸が子供の憧れの職業になったら」という共通の思いで、意気投合した細尾、八木、辻。2012年、GO ONで上海のラグジュアリーホテルに進出するプロジェクトが経済産業省の推進するクールジャパン戦略推進事業に採択される。それもユニット結成のきっかけの一つとなり、日本の伝統工芸の技を国内外の企業やクリエーターに提供し、これまでにない物を作り続けていくことを目的にGO ONは誕生した。細尾氏は「10回のうち9回失敗しても、挑戦を続けていく気概で進んでいきたい。世の中が早いスピードで変わっていく時代において、まだ誰も踏み込んだことのないところにみんなで挑戦したい。そのためには稼げるマーケットであること。そしてかっこ良いスタイルでいること。結果、伝統産業をクリエーティブ産業にしていきたい」と意気込む。その言葉を体現するバー空間が14年12月シンガポールに誕生した。シンガポールにオープンしたバー「ディ・ピスポーク(D.Bispoke)」では、金網つじの照明、など、メンバーそれぞれの卓越した技が集結されたインテリアに加え、彼らのビスポークアイテムを販売するショップも併設されている。細尾氏の言葉にあるように、続けていくためのビジネススキームがここで実現されている。GO ONのメンバーは、新たなプロジェクトに挑戦するか否かを“その試みが新しいか”“これまでの枠に留まっていないか”を自らに問うて決めるという。シンガポールにオープンしたバーは、彼らにとって新しいステージを作るようなプロジェクトだったのだ。2/5に続く。
2015年01月02日「ジャム ホーム メイド(JAM HOME MADE)」から、日本の伝統工芸と同社のアクセサリーをセットで提供する「JAM HOME MADE×日本の伝統手仕事」が発売された。同ブランドが日本の手仕事とコラボレーションするのは、今回で2回目。この企画から提供されるのは、三つのペアアクセサリー。江戸切子とのコラボでは、“幸せを囲む”ことを意味する八角籠目紋が、ジャム瓶とペアリング(1万9,000円)へと刻まれている。これによって、リングを身に着けたカップルに、“幸せを掴み、逃がさないように”との願いを込めた。また、頑強さで知られる波佐見焼とのコラボでは、スタッキング出来るマグカップに、ペアネックレスをセット(1万5,000円)した。これらは2人の仲が“割れにくく”、生活を共にする2人を祝福することを企図。袖師焼からは勾玉を模った箸置きが用意され、同じ形を模ったペアネックレス(1万3,000円)と共に、二つ合わせて“円(縁)になる”アイテムとなっている。「ブライダルの日本代表」を目指すという同ブランドは、歴史ある日本の手仕事とコラボレーションすることで、より広い客層へのリーチを狙うという。
2014年12月29日粋で洒脱、でも使い勝手にすぐれた江戸の日用品。京や大坂で生れた道具は、江戸という町で暮らす人々の好みや仕様にあわせた道具へと作り変えられてきました。江戸の道具と暮らしとのかかわりをまとめた拙書『江戸な日用品』から、今の暮らしに取り入れたい東京の逸品 “江戸な日用品” をご案内いたしましょう。新年からは、握りやすくつまみやすい「江戸木箸」を師走を迎えるこの時期は、手帳やカレンダーを新調したりするだけではなく、古びてきた日用品も買い変えたい、なんて思いますよね。特にお箸は、年末になると今まで使っているお箸がなんとなく古びて見えてきて新しいお箸が欲しくなります。私の箸選びの基準といえば、素材やデザインぐらいだったのですが、5年ほど前に大黒屋の江戸木箸に出合ってから、日常的に使うお箸は江戸木箸と決めています。握りやすさとつまみやすさというお箸の機能が、食べ物の味を大きく左右するとわかったからです。なぜ握りやすく、つまみやすいのか、追ってお話していきますね。まずは大黒屋のご紹介ですが、墨田区は曳舟に工房を構える箸の専門店。「生の根源である食を口に運ぶ道具だからこそ、ひとりひとりの手に馴染む箸を」と店主・竹田勝彦さんが考案した江戸木箸が店内にずらりと並んでいます。黒壇(こくだん)や鉄(てつ)木(ぼく)など堅い木を削りだして、素材の風合いを活かした江戸木箸は、三角から九角まである角箸、また丸形、小判、変形と、さまざまな形状のものがあります。ラクにつかめて手も疲れにくい「角箸」いろんな形状がありますが、おすすめしたいのが「角箸」(¥6,480/税込~)シリーズ。私自身が使っているお箸は、「角箸」シリーズの八角箸です。大黒屋では丸型の柔らかさに角をつけて握りやすくした八角箸からはじまり、指三本で使う道具だから奇数形状が手に馴染むと五角箸へと発展させます。さらに五角の握りやすさに八角の柔らかさを加えたいと、完成させたのが七角箸でした。七角箸は、誰の手にもなじむと評判を呼び、著名人にもファンが多いとか。しかしながら七角箸は、三六〇度では割りきれないために作るのは容易ではなく、箸先のぎりぎりまで七角に削りだすのは至難の業(わざ)。「熟練の職人ですら、何度も息を止めて仕上げをするんですよ」と竹田さん。この箸先の仕上げによって、つまみやすさがまったく変わるそうです。また角箸は、どれも先にいくほど細くなっていきますが、先が細いと握る部分を大きく開かなくても箸先があうので食べ物がラクにつかめて手も疲れにくいとのことでした。服や靴を試着するように、お箸も“握って”選ぶ竹田さんは「箸は道具、食べ物や状況にあわせて替えて欲しい」と話します。卵かけご飯やお茶漬けなどかきこんで食べるための「卵かけご飯箸」(¥972/税込)は、先端が平らに削られていて握ると小さな匙のようになります。また最近のヒット箸は、握力の弱い老人や子どもでも使いやすい「楽ちん吸いつき箸」(¥2,160/税込)です。七角にした握り部分は、特殊な塗装をして滑りにくく加工しているとか。今秋発売ながらも口コミで広がり全国各地から注文がきているそうです。手をケガした際はもちろん、長時間パソコンに向かって手が疲れてしまいお箸が持ちにくくなる方にはピッタリかも知れません。「箸は自分専用の道具なのに、家族が購入したものやデザイン優先で購入したものを使っていることが多い。服や靴を試着して買うように、江戸木箸は触って握って手にしっくりとくるものを選んで欲しい」と竹田さんは言います。新しい年に向けて、自分だけのこだわりの箸を見つけるために東京の下町に出掛けてみるのもいいかもしれません。取材協力/江戸木箸 大黒屋 東京都墨田区東向島2-3-6TEL:03-3611-0163営業時間/月曜~土曜 10:00~17:00休日/日、祭、第2・3土曜日(年末年始、夏季休暇あり)公式サイト
2014年12月11日ライカカメラジャパンはこのほど、「ライカ京都店」にて京都の伝統工芸とコラボレーションしたオリジナル商品を発売した。今回発売される商品は、京都の伝統工芸とのコラボレーションによる、カメラバッグとレザーアイテム6種となる。「カメラバッグ HOSOO Collage」は、300年以上の歴史をもつ西陣織の老舗「細尾」とコラボレーションしたカメラバッグ。両サイドとストラップの肩当てに伝統的なコラージュの技法を用いた西陣織のデザインがあしらわれている。生地にはダブルトーンやマルチトーン、淡い色合いや深い色合いなどのカラーリングを取り入れているとのこと。デザインは、デンマークのデザインスタジオ「OeO」のデザイナーであり、ライカユーザーでもあるトーマス・リッケ氏によるもの。カラーはブラック・ブラウンの2色展開で、価格は4万6,000円(税別)。コンパクトカメラやレンズ、小物類を入れるのに適した「レザーポーチ CHISO」は、450年以上の歴史を持つ京友禅の老舗「千總」の京友禅柄プリントのシルク生地を内側に使用したもの。京友禅の柄ごとにレザーの色も異なり、やわらかい本革は使い込むほどに手になじむという。サイズはS・Lの2種で、デザインは各3種類。価格はSサイズで1万2,000円、Lサイズで1万4,000円(ともに税別)となる。
2014年12月08日室町時代から茶道、華道、能などと同様、500年続く香道の志野流20代目家元の若宗匠(わかそうしょう)、つまり息子さんである蜂谷宗苾(はちや・そうひつ)氏が、建築家・黒川雅之氏が主宰するカルチャー講座「モノラボ」でお話しされるというので参加させていただきました。普段はちょっと敷居が高い「香道」の世界に潜入です。「モノが文化を作る。香りにもモノと同じ力がある」と語る黒川氏のバックアップの元、香道を現代に、世界にと広めておられる蜂谷若宗匠は、30代のイマドキ男子。お稽古中の着物姿でなく、素足にウイングチップのお洒落な洋装だと、日に焼けてワイルドな雰囲気のシティボーイさながらで、この方が若宗匠?と失礼ながらガン見してしまいます。香りを聞くと書いて「聞香」という繊細さこそ“和“の世界冗談はさておき、気さくな若宗匠のお話が楽しく香道の魅力にグイグイ惹き込まれます。まず驚くのは、香道で使う香木は、樹木が何らかの原因で傷ついて樹脂が溜まり、数100年経って香木に変化するという自然界の偶然から生まれた天然物なので、大変貴重で無くなる一方だということ。香道が、茶道や華道に比べて流派が2つしかないのも納得です。香木は、ラオス、ベトナム、マレー半島などアジアでのみ産出され、中には金の10倍の価値のある香木もあるようです。594年、香木は中国から仏教とともに輸入されましたが、香道は室町時代、東山文化のリーダー、足利義正の側近だった志野守信が初代として体系化して以降、一子相伝、父から子に受け継がれながら、日本で発展してきた日本独自の文化です。香りをかぐことを、香を聞くと書いて「聞香」と呼ぶ繊細さ、道にまで体系化してしまう真摯な姿勢に、日本的なセンスを感じるのは私だけではないでしょう。「心の耳を澄ませて、自然界からのメッセージを聞く」聞香の基本は香りを当てる遊びで、志野流では200種類以上あるそうです。ゲームを楽しむには教養も必要で、記録を残すための書道、和歌を詠む、などといった素養が求められます。遊びでありながらも香道はまさに総合芸術なのです。香り当てゲームなんて簡単でしょう?と思われるかもしれません。いえいえ、びっくりしますよ。あまりにもそこはかとない幽けき香りなので、最初はどれがどれやら検討がつかないんです。ただ、人間の手が一切入っていない完全に天然の香りなので、ふうっと気持ちが和んでいく心地よさは格別!まさに、この世ならぬ別世界へ連れて行かれます。蜂谷若宗匠は、「木と会話をしてください」とおっしゃいます。「自然の声を聞くこと。心の耳を澄ませて、自然界からのメッセージを聞くこと」が、まさに聞香だそう。「365日、春夏秋冬、暑い寒い、雨の日、雪の日、様々な環境で香を聞く。その中で、日々修行して香りの違いがようやく少しずつわかってきます」と。この、たゆたうような時間の推移。すぐ答えを出そうとする現代人の私たちには持てなくなっている身体感覚です。視覚と聴覚だけで生きている私たちが、取り戻したい嗅覚若宗匠が自ら、この日の参加者に回してくださった香炉から漂う得も言われぬ薫香に、日常の疲れやストレスがあっさり消え、心が清められて驚きました。まるで魔法!?五感の中でも嗅覚は他の感覚と違って唯一、脳幹の感情を司る部分へ直接届くとか。だから、匂いって生理的な気分とダイレクトに結びついているんですね。好きな人の匂いとか…。今、私たちは視覚と聴覚だけで生きていると思います。本来、人間は香りと非常に近い存在でした。匂いで敵が近づくのを察知して逃げられたわけです。目で見て気づいたのでは遅いから…。私たちは、その感覚を長いこと忘れてしまってはいないでしょうか?21世紀こそ、生きていることを実感できて、心が豊かになれる嗅覚を取り戻そうではありませんか。そんなところにも魅了されて、今、香道を習い始めたいと真剣に考えています。 ・モノラボ ・香道志野流
2014年08月25日ドコモの人気キャラクター「ドコモダケ」と日本伝統工芸の「熊野筆」がコラボレーションした、かわいらしい化粧筆が登場。カラフルな色合いで日本の伝統工芸がキュートに変身している。上から見ると…カラフルに染め上げられた「ドコモダケ×熊野筆」ジージドコモダケ、バーバドコモダケ、チチドコモダケの3キャラクターをイメージした化粧筆は、肌触りがよくコシのある粉含みのよい山羊毛(粗光峰)を使用。日本を代表する化粧筆の産地・広島県熊野町の日本伝統工芸「熊野筆」だけに、職人が一本一本手作りで作っている。チークブラシのほかにもハイライト用などにも使用できる。同商品は、オリコンストアで先行予約を受付中。6月いっぱいの受付を予定しているが、予約が定数に達し次第終了となる。【商品詳細】『ドコモダケ×熊野筆』(ジージドコモダケ、バーバドコモダケ、チチドコモダケ)サイズ:全長約55mm、毛丈約30mm素材:穂首/天然山羊毛100%、軸/木(桜)※染色については身体に影響のない「ECO染料」を使用価格:各¥3996(税込)
2014年06月02日その国の風土や歴史、習慣などから生まれる伝統芸。芸術作品から職人技、あるいは教養や娯楽までその幅は多岐に亘ります。日本には多くの伝統芸がありますが、海外ではどうようなものがあるのでしょうか。日本に住む20人の外国人に聞いてみました。■イラン各地のフォークダンス(イラン/20代後半/女性)イランはシルクロードの影響で、実にたくさんの民族で構成されています。そのため、ダンスも土地や民族によって様々です。■棒踊り(木の棒で踊るダンス)です(エジプト/40代前半/男性)同じ踊りでも、こちらは武術のような舞踊「タフティーブ」。古代エジプトの時代から続いており、遺跡にもその様子が残されています。現在もお祭りや結婚式などで披露されることがあるそうです。■クラシック音楽全般(ドイツ/30代後半/男性)クラシック音楽はドイツのお家芸と言っていいでしょう。優れた音楽家を数多く輩出してきました。よく「音楽の父・バッハ」と言われますが、彼が活躍したのは18世紀。それ以前にもすばらしい作曲家、音楽がたくさんあります。■フォルクローレ(ペルー/40代後半/男性)フォルクローレって何?とピンとこなかった人も、駅前等で「コンドルは飛んでゆく」を演奏している方々を見たことありませんか?■州によっていろいろ違ったりすることもある。共通した伝統といえば、劇場とオペラだと思います(イタリア/30代前半/男性)■「歌仔戲」と「布袋戲」などの伝統的な演劇(台湾/40代前半/男性)日本における歌舞伎や能のような存在でしょうか。台湾の「歌仔戲」は台湾オペラと言われることもあり、とても人気があるそうです。■操り人形(ミャンマー/30代前半/女性)■「ワヤン」という影絵芝居があります(インドネシア/40代前半/女性)ミャンマーの芸術的な操り人形劇は一見の価値あり!操り師の巧みな技で、人形たちが生き生きと動き回ります。インドネシアのワヤンも人形を使いますが、こちらは白い幕に人形の影を投影しながら演じられ、幻想的な雰囲気です。ユネスコの世界無形遺産にも登録されました。■木製の食器・小物の作製と粘土の食器・玩具の作製が有名です(ロシア/20代後半/女性)極寒のロシアで育ったシラカバの樹皮は、とても柔らかく滑らか。この特性を生かした「ベレスタ」と呼ばれる食器や雑貨、アクセサリーが誕生しました。良質の樹皮を求めて長い旅に出る職人もいるのだとか!■色んな夏の祭りが有名です。例えば牛の前で走る、トマトを投げるとか(スペイン/ 30代前半/男性)伝統芸とは少し違うかもしれませんが、スペインから祭りの紹介。3大祭りのひとつ「サン・フェルミン祭り」は、日本では「牛追い祭り」として有名ですね。トマトを投げ合う「トマティーナ」は1940年代から始まった収穫祭。どちらもなかなか激しいお祭り。情熱的な国民性が影響しているのかも!?元々は生活の知恵や身近な娯楽であったものも、人々の暮らしの中に息づいたものが、時を経て伝統となっていくのですね。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2013年08月11日大正時代から人々に親しまれて、会津のガンコおやじがプライドを持ってその味を守り続けている。会津のソウルフード「伝統会津ソースカツ丼」だ。現在、「伝統会津ソースカツ丼の会」加盟店は23軒。その1軒1軒、味に個性があり、比べて食べるのもこれまた一興(いっこう)だ。一般的にカツ丼といえば、玉ねぎとカツをしょうゆで煮込み、その上に卵をからめたもの。しかし会津のカツ丼は、その名の通りソースで味付けしたカツ丼だ。誕生の経緯は定かでないそうだが、定義としては、「ほかほかのごはんの上にサクサクのキャベツを敷き、揚げたてのカツを店独自のソースで絡めた丼」となるよう。そんな会津オリジナルのカツ丼に一家言ある飲食店数店が一致団結して、2004年に「伝統会津ソースカツ丼の会」を誕生させた。ソースカツ丼誕生の経緯は、カフェ全盛期だった大正時代、洋食のコックが手軽なまかないとして考案したという説がある。余った肉片を当時人気だったカツレット(今のカツレツ)にして、ウナギのかば焼きからヒントを得た甘めのソースで絡める。それを食べやすいように、さっと丼に盛ったのが始まりではないかというのだ。いまなお古い街並みを随所に残す会津若松に、なんとも似つかわしい説ではないか。ところで、このレトロな街並みと相性ぴったりな、「ハイカラさん」という周遊バスをご存じだろうか?市内観光の足として利用されているこのバスは、「伝統会津ソースカツ丼の会」加盟店23店舗のうち、15店舗の店にほど近い各バス停に停車する。1日に数軒でも回れるというツワモノは、バスに乗って食べ歩きしてみてもいいかもしれない。しかし、ソースカツ丼はいずれもボリュームたっぷりで、中には、丼からはみ出るような大きなカツを揚げている店もある。胃腸と相談しながらにすべし!同会の会長を務めている「なかじま」は、創業63年を数える老舗だ。スパイシーでまろやかなキャベツソースカツ丼と、先代社長が考案したという、コクとうまみたっぷりのソースで煮込んだソースカツ丼。“さすが老舗の逸品!”とうならされる味だ。ちなみに、使用している肉は福島県鮫川村(さめがわむら)の銘柄豚「健育美味(けんいくびみ)豚」。この豚はサツマイモを飼料として与えるなどして育てられており、深い味わいがあるだけでなく、ビタミンやオレイン酸などといった栄養分も豊富。肉のもつ強い甘みが、ソースの酸味に見事にマッチしていている点も魅力である。また、同じく創業60年以上の歴史をもつ「白孔雀食堂」のソースカツ丼は、丼からはみ出る大きなカツとやや甘みのあるソースが特徴。どんぶりからのはみ出しっぷりには最初驚くこと必至だが、いざ箸を付けると、薄くたたかれていて、見た目からは想像できない食べやすさであることが分かるだろう。お客に楽しく食事してほしいと願う店主の優しさがそこはかとなく感じられる。いずれの店も会津っぽ(会津魂)の優しさとこだわりで、長い間、店独自の味や盛り付け法を貫いてきたことは間違いない。ガンコな会津の料理人の心は、昔も今も変わらずに、この地に脈々と息づいているのだ。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年08月31日お正月に欠かせない注連飾り(しめかざり)。注連縄は神域と現世を隔てる結界の意味があり、それを輪形に綯(な)い、稲穂や橙などの縁起物を付けたのが注連飾りだ。玄関口に飾ることで厄や禍を祓い、歳神様をお迎えする清浄な場所を表す。「玉注連飾り」お正月の注連飾りづくりには、新しい藁を使う。春に田んぼに稲を植え、夏のまだ青いうちに稲を刈り取り、乾燥させてきれいな藁にする。日本人が生きていくうえでもっとも大切なお米の稲を少しだけいただいて、来る新年に向けて無病息災、家内安全、五穀豊穣の祈りを込めて注連飾りをつくるというわけだ。「玉注連飾り」そんな日本の稲作の食することと生きることのつながりや、手仕事の造形の面白さに魅せられたクリエイターの鈴木安一郎さんと安藤健浩さんが、「ことほきプロジェクト」を立ち上げた。彼らが注連飾りづくりを始めたのは1999年冬。鈴木さんの父の下で手解きを受け、現在も手本や資料などを参考に注連飾りづくりの研究を重ねている。彼らにとって注連飾りづくりは、日本人としてのアイデンティティーを再確認し、モノづくりの原点を見つめ直す大切なものであるという。「鳥お飾り」新年早々、彼らが生み出した注連飾りが青山桃林堂画廊にてお披露目される。それは必要以上に華美でなく、稲本来の姿を生かした、清い気持ちで春を迎えるのにふさわしい注連飾りだ。中には鳥や海老、眼鏡といったユニークな形も見られる。「注連飾りの造形や素材にはそれぞれの理があり、その決まり事の中で私たちは工夫を凝らしました。したがってまったくのオリジナル作品はなく、いろいろな地方や時代に制作されたものを参考につくっています」と鈴木さんは話す。「眼鏡注連飾り」初詣や仕事始めなどの帰り、この美しい注連飾りを観にぜひ立ち寄ってみてはいかが? 会場で気に入った注連飾りが見つかれば、もう次の年に向けて注連飾りを予約注文できる(2月末締め切り)。そして「ことほきプロジェクト」では予約量に応じて、春に苗を植える。1年を通してつくられた大切な藁で注連飾りをつくり、今年の12月には注文者の元に届ける仕組みだ。「ことほき」日時:2012年1月4日(水)〜8日(日) 10:00〜19:00(最終日は18:00まで)場所:青山桃林堂画廊東京都港区北青山3-6-12 みずほ銀行ビル1階Tel. 03-3400-8703 取材/杉江あこ
2012年01月04日