株式会社ケアネット(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:藤井 勝博、 )は、医学専門動画『CareNeTV』の医学生向け無料公開を2023年度も実施いたします。医学専門動画『CareNeTV』医学生への無料公開CareNeTVの「医学生向け無料公開(視聴パス)」は、新型コロナウイルス感染症拡大に対する社会貢献活動として開始したもので、全国の大学医学部・医科大学の約75%で、臨床実習におけるオンライン教材として広く活用されてきました。実際にご利用いただいた教員の皆さまからは、「現場で指導が不足しがちな臨床推論や、身体診察などの動画が指導の補助に役立った」、「学生が実習中に感じた疑問を解決する手段の1つとして活用できた」等のご意見・ご感想が寄せられ好評頂いております。2023年度も将来活躍する医師を目指す医学生の方々に向け、医学専門動画CareNeTVを通し、臨床現場で役立つ知見をオンラインで効率的に獲得し実践的な知識の向上が図れるようサポートしてまいります。■医学生へのCareNeTV無料公開について対象者 : 全国の大学医学部・医科大学に所属する4・5・6年次の医学生対象番組: CareNeTVプレミアム(月額5,500円/税込)で見放題の対象となっている番組無料期間: 2024年3月末まで提供方法: お申し込みいただいた大学医学部・医科大学を通じてのご提供申込窓口: ご利用を希望される大学のご担当者さまは、下記URLの申し込みフォームより大学・学部名、ご担当者さまの連絡先等の情報をご入力のうえ、お申し込みください。 ■CareNeTVについてCareNeTV( )とは、臨床のスキルアップや専門医試験対策など、2,400番組以上の豊富なラインナップから選んで学べる臨床医学チャンネルです。著名な医師の監修のもと、正確な医学知識を動画ならではの高い表現力で、わかりやすく楽しくまとめて配信しています。■ケアネットについて名称 :株式会社ケアネット代表者 :代表取締役社長 藤井 勝博所在地 :東京都千代田区富士見1-8-19 住友不動産千代田富士見ビル設立 :1996年7月資本金 :24億500万円主な事業内容:製薬企業向けの医薬営業支援サービス、医師・医療者向けの医療コンテンツサービス などCareNet.com : CareNeTV : CareNet Career : Doctors’ Picks: 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年04月05日さまざまな職業をクローズアップした、いわゆる『お仕事系』の漫画やドラマは人気があるジャンルの1つ。かっこいいシーンの数々に憧れを抱くこともあるでしょう。しかし、フィクションであるからには、現実より見映えがいいよう工夫された表現も多々あるものです。『オペ室でのあのポーズ』医学生の、かわ(kawa_medi)さんは病院で実習をしています。初めて手術を見学する日、漫画やドラマによく登場するかっこいいポーズを、現実でも見られるだろうと期待していました。ワクワクしていたのですが…。思っていたポーズと、なんか違う!医師が手術前、清潔にした手を高い位置に掲げるのは、不潔なものに誤って触れてしまうことを防ぐため。『手のひらを自分に向ける』という部分は必ずしも重要ではありません。そのため病院や医師によって、手術前のポーズがフィクションとは異なることがあるのです。かわさんが実習している病院では「両手を組み合わせたほうが、余計なものを触らない」と判断した人たちがいたのではないでしょうか。かっこよさよりも、患者の安全を考えてのポーズだと思うと、信頼感が高まりますね![文・構成/grape編集部]
2023年03月15日AI・ロボットの開発、提供を手掛けるタケロボ株式会社(所在地:東京都品川区)は、京都大学医学研究科医学教育・国際化推進センター(所在地:京都府京都市)のノウハウをもとに「医療面接AIチャットボット」を開発し、京都大学医学部の学生向けに提供を開始しましたので、お知らせいたします。1. 医療面接AIチャットボット開発の背景医学部の学生は、臨床医に向けたトレーニングとして、模擬患者役(※1)の方と実際に医療面接練習を行います。昨今のコロナの影響により、医療面接練習をすることが難しい場合がでてきています。その一方、AI・デジタル技術の進化により、人のように対話するAI技術も製品化されつつあります。医療面接練習に関し、「コロナの影響」と「AI・デジタル技術の進化」の両面を踏まえまして、医療面接練習ができるAIシステムを開発することで、医学部学生は(模擬患者役に頼ることなく)、好きなときに、AIと医療面接練習を行うことが可能になります。タケロボのコミュニケーション型AIシステムは、オリジナル対話データを簡単に登録でき、高性能な受答えを利用者に提供することが可能です。当該AIシステムに京都大学医学研究科が培った医療面接ノウハウ、データを登録、学習することで、医療面接AIチャットボットを開発しました。また、医療面接AIチャットボットが開発、利用されても、人の模擬患者との練習も行います。本医療面接AIチャットボットは、医学部の学生向けだけでなく、模擬患者役を希望される方の練習用に活用することも可能となっています。(※1)模擬患者役を希望する方が、各種病状のシナリオを覚え、模擬患者役を演じます。2. 医療面接AIチャットボットの概要・機能・特徴医療面接AIチャットボットは、クラウド上に構築されており、スマホやパソコンなどネットワークでクラウドに接続できるデバイスがあれば、いつでも、どこでも好きなときに利用することができます。また、便利な機能や特徴を備えており、医学部の学生や模擬患者を希望される方々の役に立つ、医療面接練習のためのクラウドサービスを提供します。(1)AIクラウドサービス・全体構成簡単にオリジナルAIシナリオが登録でき、高性能なAIチャットボットが提供できるタケロボのAIクラウドを利用しています。当該AIクラウドに京都大学医学研究科が有する患者シナリオを登録、学習することで、今回の医療面接AIチャットボットを構築しています。<図1>(2)患者シナリオ医学部学生、模擬患者希望者は、つぎの症状のシナリオで練習することができます。動悸(58歳)、不眠(63歳)、頭痛(40歳)、発熱(45歳)、発熱(68歳)、めまい(41歳)、腰痛(63歳)、胸痛(52歳)、胸部痛(52歳)、腹痛・便秘(75歳)(3)各種ユーザインタフェースパソコン、スマホ、タブレット、等のネットに接続できる好きなデバイスで使用でき、入出力も音声対話、キーボード、画面表示があり、利用シーンに合わせて選択することができます。(4)利用者における評価結果確認医学部学生用、模擬患者希望者用とも、評価ロジック(※2)を組み込んでおり、終了時に評価結果が提示され、利用者自身で習得度の確認が可能です。(※2)医学部学生用は、問診事項毎に必須、重要度、共感、等を設定し、評価を実施。模擬患者希望者用は、問診事項毎に正誤確認(誤った場合は模範解答を表示)を実施。(5)管理者用確認機能利用状況をリアルタイムで閲覧、Excelダウンロード機能を管理者向けに提供しており、管理者は、医学部学生、模擬患者希望者の利用状況を確認することができます。<図1>医療面接AI全体図・京都大学医学研究科 医学教育・国際化推進センター ・タケロボ株式会社 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年12月13日アーユルヴェーダビューティーカレッジ(所在地:東京都目黒区、学長:新倉 亜希)は、インド医学大学「Sri Devaraj Urs Academy of Higher Education and Research (SDUAHER) Karnataka州」との事業提携調印式を2022年11月8日(火)に執り行いました。国内アーユルヴェーダスクールと、インド医学大学の事業提携は日本で初(※当社調べ)となります。調印式WHOも認めるインド5000年の歴史を持つ予防医学アーユルヴェーダは、長い年月を実験や観察などの経験的な手法によって得られた有効性と安全性が高い知識を理論化・体系化した伝統医学、予防医学、健康長寿学です。これからの時代に、未病・不調の状態でケアする予防医学と、病気発症後のキュアする西洋医学による統合医療が必要で、エビデンスとともに、より精度をあげるための提携となります。またコロナ禍で海外留学が制限されている中、オンラインでインド医学大学の教授による生の講義を受講、資格取得が可能になり、受講生の選択肢が広がります。当校との連携において、誰でもインド医学の世界観を学び、グローバルマインドや世界に通じる健康の学びを得ることができます。これによって、少子高齢化時代、未曾有の健康不良時代に予防医学の普及と、それをサポートするセラピストの育成、医療従事者の育成に貢献して参ります。インドでは伝統医学が西洋医学と共存し統合医療モデル化しています。今回のインドの有名医学大学との連携により、エビデンスを基に可視化できる予防医学の素晴らしさを広めなくてはなりません。当校を通じて、統合医療の知識がオンラインをメインにしたカリキュラムによって、医師でなくとも身近に学ぶことができるのは新たな転換期となります。総合医学大学(西洋医学・統合医療)を行う大学との連携は未だになく、スクールとしても、企業としても、この連携における成果のポテンシャルはかなり高いと自負しております。これからの日本は、医療保険制度の崩壊危機もあり、日本は長寿国家だからこそ、日常に和のアーユルヴェーダをもっと根付かせ、台所薬局を始めとする食養生の知恵、自身の体質にあった健康法などを早い段階から、沢山の人に学んでもらい、健康長寿を担っていきたいです。また、コロナ禍によってテレワークが普及し、生き方・働き方の転換期を感じた方に、自身も健康になりつつ人も世の中も健康にできる学びと技術を手にして、囚われることのない、自分らしい起業をできるような支援をしていきたいです。連携後初のコースは2023年1月開講の、食の入り口からのフードサイエンスを、西洋医学大学とアーユルヴェーダの両方の側面からアプローチする6ヶ月コースになり、大学側からの修了証も発行されます。将来的には日本に居ながらインド医学大学のDiplomaやDegreeが取れるようなオンライン授業も構築していく予定です。【学長:新倉 亜希について】アーユルヴェーダスクールやサロンを15年以上経営、本社自由が丘を皮切りに、現在、横浜支店、沖縄支店を経営。沖縄にアーユルヴェーダ農園を設立し、土壌からこだわるアーユルヴェーダハーブの栽培、商品開発を行う。また大手旅行会社や自治体とコラボ事業としてアーユルヴェーダウェルネスツーリズムを実施しており、健康経営の一環などで法人企業を誘致し、ツアーを開催している。2005年 アーユルヴェーダビューティーカレッジ設立2016年 アーユルウェルネス協会を設立。スクール生の卒業後の起業サポートや、認定サロン制度を行う。2018年 アーユルウェルネス株式会社を設立。2020年 琉球大学非常勤講師となり大学生向けの講座を開催。2022年11月 インド医学大学「Sri Devaraj Urs Academy of HigherEducation& Research INDIA」と事業提携し、新しいカリキュラムなどの制度を作成。【著書】「夢をかなえるアーユルヴェーダ」(BABジャパン)2018年4月28日発売「アーユルヴェーダが変えた!トレーニングの常識」(BABジャパン)2022年7月29日発売【会社概要】アーユルウェルネス株式会社代表取締役:新倉 亜希所在地 :東京都目黒区八雲5-9-2設立 :2018年11月29日 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年12月13日暑くなり、ダイエットを意識する季節がやってきた!そこで、おいしく食べられて自然に痩せられる方法を紹介。食品医学研究所所長で医学博士の平柳要先生が考案した「生姜入り豆乳寒天」だ。生姜入り豆乳寒天とは、生姜、寒天、豆乳という食材を組み合わせたもの。それぞれの食材にダイエット効果があるので3倍おいしいダイエット食だ。平柳先生はこう説明する。「この3つには多くの健康効果があることがわかっています。生の生姜に多い辛味成分のジンゲロールには、糖質や脂質の吸収を抑える働きが。また、加熱すると増える辛味成分のショウガオールには、血流促進、冷え性の改善のほか、体脂肪を燃やす働きがあります」ほかにも生姜には腸管での脂質の消化吸収を抑える働きや、善玉ホルモンを増やす作用、免疫力を高める作用もあるという。「寒天は、ローカロリーで満腹感を得やすく、腸の働きを高めて排便を促したり、高血圧、高血糖、高LDLコレステロールの予防にも働いてくれます。成分の8割は食物繊維ですから、ダイエットにはもってこいの食材。腸内に汚れをためないから大腸がんの予防にもなります」(平柳先生・以下同)■寒天と豆乳の組み合わせは食欲を高めるホルモンを抑えるそこに加える第三の食材、豆乳。豆乳には女性ホルモンのエストロゲンと似た働きを持つ大豆イソフラボンが含まれており、骨粗しょう症の予防も期待できる。ビタミンEも豊富で抗酸化作用が高く、女性にうれしい食品だが、それだけではない。「豆乳に含まれるサポニンは脂質の吸収を抑え、肥満防止や動脈硬化予防の働きがあり、レシチンには、記憶力アップや認知症予防の働きがあります。さらに、豆乳に含まれるオリゴ糖には腸内環境を整える働きも」生姜、寒天、豆乳のすべてに共通する働きに、腸内環境を調整し、免疫力を上げる働きがあるうえ、脂肪燃焼作用もある。これら3つの食材が合わさることで、実は単なる「1+1+1」ではない、もっと大きな相乗効果が期待できるのだそう。「生姜には更年期障害の改善といった働きもあります。豆乳に含まれる大豆イソフラボンも更年期障害の改善に有効ですが、同じ効果のある栄養素を異なる食材から取り入れることで、一品を食べすぎたり、栄養の偏りを防いだりすることができるのです」さらに、寒天と豆乳の組み合わせには、食欲を高めるホルモン、グレリンの分泌を抑える作用があるのだそう。そこに生姜を加えると、ふだんは少量しかとらない生姜を一定量食べることができ、ダイエットだけではない3食材のメリットを、しっかり享受できるのがうれしい。まさにオールラウンドをカバーした夢の組み合わせ。これを混ぜて作るのが生姜入り豆乳寒天なのだ。作り方はとても簡単。無調整の豆乳に粉寒天と皮ごとすりおろした生姜を投入してレンチンして、冷やして固めるだけ。豆乳は糖分や香料などが入っていない無調整のものを選んで。生姜は皮の部分に辛味成分が多く含まれているので、むかずに表面の汚れを取ってそのまま使おう。■生姜入り豆乳寒天の作り方【作り方】〈1〉生姜をよく洗い、皮つきのまますりおろす。豆乳、おろし生姜、粉寒天を耐熱容器に入れる。〈2〉電子レンジで加熱(600Wで1~2分)して、80度以上になったら取り出して混ぜ合わせる。※寒天を固まらせるために、一度しっかり溶かしておくこと。〈3〉混ぜ合わせたものを器に移し、粗熱がとれたら冷蔵庫に入れて冷やし固める。食べるときは、適当な大きさに切るだけ。きな粉に黒みつやはちみつをかけると甘いデザートになるし、トマトなどと一緒にカプレーゼ風にして食べると、ちょっとした一品になる。■「生姜入り豆乳寒天」アレンジレシピ【黒みつきな粉がけ】黒みつときな粉をかけるとさっぱりした和菓子風のデザートに。ほかにも、シナモンやはちみつ、メープルシロップなどをかけて食べてもいい。【カプレーゼ風】生姜入り豆乳寒天を食べやすい厚さに切り、トマトと大葉やバジルとともに並べるとカプレーゼ風になる。塩、黒こしょう、オリーブオイルをかける。バルサミコ酢をかけてもおいしい。ほかにも、薄く切ってわさび醬油をつけて食べたり、一口大に切ってサラダに混ぜてもおいしく食べられる。豆乳独特の苦味が生姜によって消され、これからの季節にはピッタリの、スッキリとした味になっている。寒天が入っているから、どれだけ食べてもいいし、食べすぎを防ぐことができるのもうれしい。生姜入り豆乳寒天のダイエット効果を最大限に生かす食べ方は、食事の前、あるいは食事の最初に食べることなのだそう。「最初に食べることで、すぐに満腹感を得られるため、食べすぎになりません。生姜入り豆乳寒天を食べた後に有酸素運動をする習慣をつけると、さらにダイエット効果が期待できますよ」この夏、ぜひ常備食に!【PROFILE】平柳要医学博士。東京大学大学院医学研究科修了後、日本大学医学部准教授など。著書に『長生きショウガ新健康法大全』(文響社)などがある
2022年06月13日株式会社ケアネット(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:藤井 勝博、URL: )は、臨床医学チャンネル「CareNeTV」( )の「医学生向け無料公開(視聴パス)」を2022年度も実施することとしました。無料公開期間は、2022年4月から2023年3月末までとなります。CareNeTVの「医学生向け無料公開(視聴パス)」は、新型コロナウイルス感染症拡大に対する社会貢献活動として行なってきたものです。2020年4月に開始以来、全国に82ある大学医学部・医科大学のうち61大学に提供しております。講義の実施に大きな影響が出ていた臨床実習におけるオンライン教材として活用していただきました。2022年4月以降につきましても、大学への入構制限や授業のオンライン化などの影響が続いていることを踏まえ、医学教育関係者、医学生を支援するため、無料公開を継続することといたしました。医学生への無料公開を希望する大学関係者の方は、以下をご参照いただきますようお願いいたします。■医学生へのCareNeTV無料公開について対象者 : 全国の大学医学部・医科大学に所属する 4、5、6年次の医学生対象番組: CareNeTV プレミアム(月額 5,500円/税込)で見放題の対象となっている約2,000番組無料期間: 2023年3月末まで提供方法: お申し込みをいただいた大学医学部・医科大学を通じての提供申込窓口: ご利用を希望される大学ご担当者様は、下記URLの申込フォームより大学・学部名、窓口ご担当者様の連絡先等をご記入の上、お申し込みください。 ■CareNeTVについて医師をはじめとする医療者の臨床スキルアップのための教育動画サイトです。500名以上の講師陣によるプログラムを2,000番組以上提供しています。 ■ケアネットについて名称 :株式会社ケアネット代表者 :代表取締役社長 藤井 勝博所在地 :東京都千代田区富士見1-8-19 住友不動産千代田富士見ビル設立 :1996年7月資本金 :24億500万円主な事業内容:製薬企業向けの医薬営業支援サービス、医師・医療者向けの医療コンテンツサービス などCareNet.com : CareNeTV : CareNet Career: Doctors' Picks: 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年03月24日緊急搬送された患者のデータなどから医学統計の専門家が分析。その結果わかった「血液型によってかかりやすい危険な病気」を知り、日常生活から予防の意識を高めようーー。日本では、血液型占いが盛んなため、身近な「ABO式血液型」だが、世界の医学者が血液型と病気の関係性について注目したのはつい最近のこと。「血液型というのは、医学的にはRh(+)(−)のほか、100種類以上の分類があります。そのなかでABO式は歴史が古く1900年にウィーンで発見されました」こう話すのは、世界中の血液型と病気に関わる文献を収集、研究している永田宏先生(長浜バイオ大学教授・以下、コメントはすべて永田先生)。じつは、それまで、人の血液はすべて同じだと考えられてきた。それが医学の進歩で輸血が試みられるようになり、混ぜると固まってしまう血液と、固まらずに輸血に使える血液があることがわかってきたという。「血液が固まるのは赤血球が凝集するせいです。人には、すべての血液と凝集しないO型。AとOとが凝集しないA型。BとOとは凝集しないB型。AとB両方と凝集してしまうAB型の4パターンがあることがわかったのです」永田先生が血液型と病気リスクの関連性について研究を始めたのは、あるメディアから「医療保険に加入する際に、血液型の告知は必要か?」という質問を受けたことがきっかけだという。「調べてみると、現在、保険の告知に血液型は必要ありませんでしたが、2000年代になってから、世界各国で大規模調査が行われ、血液型と特定の病気のリスクの関係性が次第に明らかになってきたのです。近年、病気のカルテの電子化が進み、データ分析しやすくなったことも、多くのデータ収集が行われるようになった一因でしょう」すべて統計的なデータの裏付けはあるが、理由までは解明されていないものも多いとか。永田先生の解説で、血液型別なりやすい病気を解説してもらった。■A型がなりやすい病気「胃がん、心筋梗塞」「’10年、スウェーデンの研究チームが100万人を対象に35年間のデータを集め、A型はO型に比べ、1.2倍、胃がんになるリスクが高いと報告しました」そのデータの表を見ると、じつはAB型のほうが1.26倍で、A型よりリスクが高いことになっているが、スウェーデンではAB型が極端に少ないため、リスク評価基準を満たしていないという見地から、A型のリスクが重要視されているという。「’11年に、日本の研究チームも703人の胃がん患者を調べたところ、やはりA型がもっとも罹患しやすいと結果が出ています」もうひとつ、気がかりなのが、心筋梗塞など、血栓(血液の固まり)が、心臓や脳の血管に詰まりやすいリスクだ。「O型に比べ、ほかの血液型は血が固まりやすい分、血栓ができやすい傾向があります。とくにA型の場合は、’12年に台湾で行われた研究で、ほかの血液型に比べ、心筋梗塞になりやすいとのデータが示されています」■B型がなりやすい病気「すい臓がん、糖尿病」「’09年、米国の国立がん研究所の調査では、すい臓がんにもっともなりやすいのはB型でした」その理由はまだ明らかになっていないが、人の遺伝子配列で、血液型を決める遺伝子と、がんのリスクを左右するDNAが隣り合っていることが、なんらかの影響を与えているのではないかとする研究が進められているとか。また糖尿病に関しては、’14年にフランスで8万人の女性を対象にしたデータで、O型に比べ、B型で1.21倍かかりやすいというリスクが示されている。■O型がなりやすい病気「胃・十二指腸潰瘍、重大事故による死亡率」ほかの血液型に比べ、血が固まりにくい傾向があるO型。このため、重大事故の際の死に至るリスクが高い。「ほかには、胃・十二指腸潰瘍などのリスクをO型を1とすると、A型0.81、B型0.74、AB型0.64と、圧倒的にO型がなりやすい(’10年。スウェーデン調査)」’04年に、O型の血液を好むピロリ菌が発見されており、ピロリ菌は胃潰瘍の原因のひとつとされるため、その関係性が注目されているという。■AB型がなりやすい病気「脳卒中、認知障害、エコノミー症候群」「世界的に少ない血液型なので、統計的なデータが不足していることはいなめませんが、4つの血液型の中で、もっとも血液が固まりやすいことが指摘されています。このため、エコノミー症候群(肺塞栓症)については、もっともリスクが低いO型に比べ、リスクが2倍。また’14年の米国で3万人を対象とした脳梗塞の患者の調査では、O型の1.83倍、リスクが高かったという報告がされていますから要注意です」同じ米国の認知障害の調査では、O型を1とした場合、A型もB型もO型と変わらなかったが、AB型だけが1.82倍リスクも高くなったとの報告もされている。こうした血液型別の傾向について、永田先生は、こう語る。「現段階では、治療現場で応用できるほどの差異ではありませんが、自分の血液型がなりやすい病気の傾向を知ることで、意識的に検診を受けるなど、早期発見、早期治療につなげてほしいですね」あなたも血液型の病気のリスクをよく理解して、自分の健康維持に役立ててほしい。「女性自身」2021年1月5日・12日合併号 掲載
2021年01月11日憂鬱な時期を、体質別養生で快適に。中医学や養生法に詳しい櫻井大典さんによる「Daily(デイリー)養生」。今回のテーマは「爪の割れ」です。欠け爪は、夜更かしや食の偏りが原因。ときどき「爪がよく割れるので、ジェルネイルが欠かせません」という方がいます。この場合、漢方家としてまず疑うのは、血の不足、「血虚(けっきょ)」です。中医学では爪は肌の一部であり、肌と同じように血で養われているもの。血には全身に潤いと栄養を運ぶ働きがあり、不足すると全身の乾燥や顔色の悪さ、月経量の減少や便秘といったトラブルが起こります。さらに不眠や強い不安感も、血虚が原因。血には精神を安定させる作用もあるからです。よく貧血と間違われるのですが、血虚は物理的に血が足りないだけでなく、「血がきちんと働いていない」状態も含む概念です。一見、血とは関係ないように思えるこうした不調も、中医学の世界では、実は血の不足が関わっていると捉えるのです。爪のもろさに加えてこうした症状があれば、血を補う養生を早めに始めましょう。毎日の心がけで、血を少しずつ増やして。血を十分に巡らせるために必要なのはまず、補血(ほけつ)の食材。きくらげやしめじ、肉類のほか、たらやぶりなど冬が旬の魚もおすすめです。血はすぐには作られないので、普段からこうした食材を摂るように心がけつつ、とくに血が失われやすい生理中はしっかりと。魚介やきのこたっぷりの鍋ものなら、体も温まって一石二鳥です。さらに、血が作られるのは夜中、23時から3時頃の間。この時間にきちんと体を休めることが、血を増やすことにつながります。また、目は血を消耗する器官なので、夜はできるだけ目を休めることも大切です。理想は22時就寝ですが、それが難しくても、目の刺激となるスマホやTVは控えめに。極度の乾燥やストレス。こんなサインも要注意。爪からはほかにもさまざまなことが読み取れます。縦じわはとりわけ乾燥がひどいときに生じます。補血食材に加え、豆腐やれんこんなど潤いを補う白い食べ物を増やしましょう。でこぼこしているときは肝のトラブルの可能性大。ストレスを溜めていませんか?爪は10日で約1mm伸びるので、とくに凹凸がある部分が根元から何mmかを見ることによって、ストレスが強かった時期が分かります。気付かぬうちに抱えていることも多いのがストレスです。爪からのサインを、日々の生活を見直すきっかけにしてくださいね。さくらい・だいすけ漢方専門家、国際中医専門員。完全予約制の漢方相談処「成城漢方たまり」で相談を行う。『体をおいしくととのえる! 食べる漢方』(小社刊)ほか、監修書、著書多数。※『anan』2020年12月23日号より。イラスト・momokoharada文・新田草子(by anan編集部)
2020年12月17日憂鬱な時期を、体質別養生で快適に。中医学や養生法に詳しい櫻井大典さんによる「Daily(デイリー)養生」。今回のテーマは「二日酔い」です。12月も2週目。例年ほどではないとはいえ、お酒を口にする機会が増えてくる時期ではないでしょうか?以前もお伝えしましたが、中医学ではお酒は、体に不要なものとされています。けれど、必ずしも毒とは言い切れない。なぜなら、どんなお酒にも効果効能が少しずつ備わっているからです。例えばビールには、水分代謝を整えながら過剰な食欲を抑える働きがあります。日本酒には、気血(きけつ)を巡らせ、冷えからくる痛みを和らげる作用が。ウイスキーや焼酎は冷えの改善に使われることがありますし、ワインは不安や不眠に良いと考えられています。そしていずれのお酒にも共通するのが「解鬱(げうつ)」という働き。ストレスや気持ちの落ち込みを取り除き、リラックスした気分に導きます。そういう意味でお酒は薬であるといえますが、精神作用が高いだけに気をつけたいのが飲みすぎです。あくまで適量にとどめることが前提です。「適量」とは、それぞれのお酒に適した器で1杯、が目安。グラスに1杯程度と心得ましょう。また、お酒は総じて冷たくして飲むことが多い上、一緒に食べるものが塩気の強いものや脂っこいものに偏りがち。胃にダメージを与えないように、湯豆腐など温かくてさっぱりした料理と一緒に、そして適量を守って楽しむことをぜひ忘れないでください。翌日は解酒毒(げしゅどく)食材で養生をしっかりと。それでもうっかり飲みすぎて二日酔いになってしまった…というときは、翌日の養生をしっかりと。前の日に食べすぎたから、と、間違っても朝から生野菜のサラダを口にしてはいけません。水分と冷たいもので弱った脾(ひ)を、ますます弱らせてしまいます。味噌汁やスープなど、消化に良くて温かいものをゆっくり摂ります。その上で、体を癒す「解酒毒食材」を。おなじみのしじみのほか、コーヒー、フルーツがおすすめです。とくにグレープフルーツや梨、柿、りんごは、お酒によって生じた熱を抑え、潤いを補給してくれる食べ物。常温か、梨や柿、りんごは、温かくして食べても良いでしょう。飲み会も、家で親しい人と少人数で、という形が多くなっていると聞きます。お酒の量をコントロールしながら、体に良いおいしい食べ物と一緒にゆっくりと楽しむ。今年は、そんな忘年会はいかがでしょうか?さくらい・だいすけ漢方専門家、国際中医専門員。完全予約制の漢方相談処「成城漢方たまり」で相談を行う。『体をおいしくととのえる! 食べる漢方』(小社刊)ほか、監修書、著書多数。※『anan』2020年12月16日号より。イラスト・momokoharada文・新田草子(by anan編集部)
2020年12月11日憂鬱な時期を、体質別養生で快適に。中医学や養生法に詳しい櫻井大典さんによる「Daily(デイリー)養生」。今回のテーマは「耳鳴り」です。疲れたときや寝不足時にキーン、ジージー、などと外には存在しない音が聞こえてくる、耳鳴り。一過性の場合がほとんどですが、頻繁に起きると気になりますよね。耳鼻科などで検査をしても異常が見つからないことが多く、医学的にも謎の多い不調です。この耳鳴り、中医学では体内に余分な熱が溜まっていることによって起きると考えます。熱はさまざまな影響を及ぼしますが、耳に不調が出るケースの多くは、「腎(じん)」が関係しています。以前も解説しましたが、腎や「肝(かん)」「心(しん)」などの体の5つの基本システム「五行」にはそれぞれ呼応する器官があって、腎と対応しているのが耳だからです。腎は、水分と熱、両方のバランスを保つところ。腎が、潤い=陰が足りない「腎陰虚(じんいんきょ)」になると熱が余って暴走し、耳にも影響するのです。熱は、本来澄み渡っているべき頭を曇らせ、音の聞こえを阻害します。すると耳は外からの音をキャッチしようと、感度を上げる。その過剰な反応の表れが、耳鳴りというわけです。ストレスも熱を生む一因。小さな気晴らしを大切に。熱をこもらせず、腎を健やかに保つことが耳鳴り予防の秘訣ですが、そのためには、過剰な熱を生む原因を避けることが先決です。まずは暴飲暴食、とくに脂っこいものの食べすぎに注意を。「脾(ひ)」や肝に熱が溜まり、それが腎の乾燥も招きます。こってりとしたものを食べたくなる季候ですが、過剰にならないよう気をつけましょう。そしてもうひとつ、おなじみのストレスにも要注意。イライラや不安感は体の中に熱を生み出すだけでなく、気のスムーズな循環を妨げます。気が滞ると、熱はさらにひとところに溜まりやすくなります。とりわけ細身で舌が赤く、お腹にガスが溜まりやすい人は、気滞になりやすいタイプ。耳鳴りの原因にストレスが関わっていると考えられる場合は、まずはそのケアから始めることが肝要です。僕の最近のおすすめは、お気に入りの曲を5曲ほど用意して、いつでも聴けるようにしておくこと。好きな曲は脳をダイレクトにリラックスさせ、耳鳴りをカバーする利点もあります。曲が思いつかなければ、写真集や香りなど何でもいい。小さな「気晴らし」で、嫌なことを考えない時間を増やしましょう。イライラして耳鳴りが…というとき、ぜひ試してみてください。さくらい・だいすけ漢方専門家、国際中医専門員。完全予約制の漢方相談処「成城漢方たまり」で相談を行う。『体をおいしくととのえる! 食べる漢方』(小社刊)ほか、監修書、著書多数。※『anan』2020年11月18日号より。イラスト・momokoharada文・新田草子(by anan編集部)
2020年11月13日憂鬱な時期を、体質別養生で快適に。中医学や養生法に詳しい櫻井大典さんによる「Daily(デイリー)養生」。今回のテーマは「腰痛」です。人類の二足歩行が始まったときから運命づけられていたとさえいわれる腰痛。とくにデスクワークが多い人には、肩こりに次いで多い悩みですね。腰痛にはさまざまな原因がありますが、多いのが、生命力を司る「腎(じん)」が弱っている状態。腎は「腰の器」といわれるほど腰と密接に関係していて、歩くことで刺激を受けて活性化するところ。長い間座ったままでいるとエネルギーが蓄えられず、その不調が痛みとなって表れます。こうした、エネルギーや栄養が足りずに起きる痛みを、中医学では「不栄則痛(ふえいそくつう)」といいます。鈍痛が慢性的に続くのが特徴で、マッサージをしても良くならないことが多い。高齢者に多いのはこのタイプです。一方で時々強く痛む場合は、「不通則痛」であると捉えます。「通(つう)」は血の流れを意味し、血流の滞りで生じる痛みをこう表現します。マッサージによって多少改善することもありますが、滞りを解決しない限り繰り返す場合がほとんど。女性は男性に比べて「血(けつ)」に関するトラブルが多く、腰痛も血流障害による不通則痛型が多いようです。温かな血を巡らせて、腰を冷やさないことが大事。血流が悪くなる原因はいろいろですが、まず挙げられるのが血自体の少なさです。ちょろちょろとしか流れなければ、当然滞りが生まれますね。また、血が汚れて粘り気があることも、詰まりの原因になります。さらに大事なのが、温度。漢方では血には油のような特性があるとし、温めるとよく流れ、冷やすと固まって循環が悪くなると考えます。先ほど腎の機能低下も腰痛の一因とお伝えしましたが、腎には体を温めるストーブのような役割もあり、同じく冷えに弱い場所。ぎっくり腰のように急性のトラブルを除き、冷やすことは腰には大敵です。以上のことから、腰痛の養生としてまず心がけたいのは保温と補血です。とりわけ下半身を冷やさない心がけを。腰まわりを温かくして、デスクワーク中も時々歩き回るようにして血を巡らせることは、腎を元気に保つのにも有効です。その上で、血を補う食べ物を日々の食卓に。レバーやにんじんのほか、今ならほうれん草もおすすめです。血液をどろどろにする、脂っこいものや甘いものは控えましょう。もう11月。とくに冬に痛むという方は、どうぞ早めの養生を。さくらい・だいすけ漢方専門家、国際中医専門員。完全予約制の漢方相談処「成城漢方たまり」で相談を行う。『体をおいしくととのえる! 食べる漢方』(小社刊)ほか、監修書、著書多数。※『anan』2020年11月4日号より。イラスト・momokoharada文・新田草子(by anan編集部)
2020年10月28日憂鬱な時期を、体質別養生で快適に。中医学や養生法に詳しい櫻井大典さんによる「Daily(デイリー)養生」。今回のテーマは「疲れ目」です。長時間パソコン作業をしたあと、ひと休みしようと手に取るのがスマホ。そんなふうに、一日じゅう目を酷使している現代の私たちにとって、目のかすみや疲れ、乾きなどのトラブルは、つきものといえます。目の疲れからくる頭痛や肩こり、不眠などに悩む人も少なくありません。中医学では、目をたくさん使うことは体を構成する「気血水(きけつすい)」のうちの「血」の消耗を招くと考えます。血は体に栄養を巡らせて潤し、また精神を安定させる働きもある大切な要素。足りなくなると皮膚や髪などの乾燥だけでなく、イライラなどメンタル面にも影響を及ぼします。さらに、目は五臓のうちの「肝(かん)」とつながっている器官。肝は、血を一時的に溜めて浄化すると同時に、血によって養われている場所でもあります。したがって、目の酷使によって血を消耗すると肝も弱り、それに関連したトラブルが起きやすくなる。お腹にガスが溜まる、生理前に胸が張る、などは代表的な肝の不調のサイン。目の疲れとともにこうしたトラブルがあるようなら、肝からのSOSと考えましょう。菊花茶とクコの実をデスクに常備して。血の消耗を防ぎ、肝を養うためにも、目の疲れを感じたら放っておいてはいけません。少しでも目を休めるのが先決です。無意識にスマホを手にするクセのある人は、食事の間や夜のリラックス時には電源をオフにする、といったことから行動を。シンプルなことですが、画面を見る時間を減らすことが、何よりの目の養生になります。そして、パソコン作業中の疲れ目におすすめなのが菊花茶とクコの実。どちらも目に栄養を巡らせて養う力があり、「飲む目薬」といわれる漢方薬、「杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)」にも使われています。菊花茶は、最近は通販などでも手に入るよう。飲みにくく感じたらウーロン茶などと混ぜてもいいでしょう。クコの実も、コンビニで売っているドライフルーツミックスに入っていたりと、身近になりつつある食材。デスクワーク中のおやつにいかがでしょう?また、ホットタオルで目を温めたり、目頭にある「晴明(せいめい)」やこめかみの「太陽」というツボを刺激したりするのも、血を巡らせて目を休めるのに有効。日頃、気づかないうちに負担をかけているのが目です。こまめな養生を心がけてくださいね。さくらい・だいすけ漢方専門家、国際中医専門員。完全予約制の漢方相談処「成城漢方たまり」で相談を行う。『体をおいしくととのえる! 食べる漢方』(小社刊)ほか、監修書、著書多数。※『anan』2020年8月5日号より。イラスト・原田桃子文・新田草子(by anan編集部)
2020年08月04日憂鬱な時期を、体質別養生で快適に。中医学や養生法に詳しい櫻井大典さんによる「Daily(デイリー)養生」。今回のテーマは「低気圧」です。低気圧が近づくとだるい、眠い、頭が痛いといった不調を訴える人が時々います。こうしたトラブルは「気象病」とも呼ばれ、最近注目されているようですが、中医学的にも気圧の変化は外界からの刺激のひとつ。体調を左右する要因と考えられます。気圧が高いときは体にも圧がかかるため、体はタイトに保たれます。反対に、低気圧が来ると圧が弱くなって、体はゆるむ傾向に。このとき、健康であれば体表にあるエネルギー=気が圧着タイツのように体を守ってくれるので不調は起こりませんが、気が足りないと体が外へと膨らみ、むくみや疲れなどのトラブルを生じます。この体表にある気、「衛気(えき)」が少ない人は、その他の外界の変化にも敏感です。風邪をひきやすい、アレルギー気味である、汗をかくといつまでもダラダラと止まらない。普段からそうした傾向があるようなら、衛気が低下している可能性大です。また、水分を過剰に摂っている人も低気圧の影響を受けやすいようです。体に余分な湿気=湿邪(しつじゃ)が溜まると、体は当然むくみやすくなり、それが重さやだるさなどの不調に。水分の摂りすぎは胃腸にも負担をかけるため、エネルギーを作り出す力が弱くなり、さらなる気虚(ききょ)につながります。餅やおこわ、えのきで、体のバリア力を高める。気圧の変化によって調子が悪くなるという人は、衛気が不足していないか、体の水はけが悪くなっていないか、その2点をチェックしてみてください。その上で、衛気が足りないと感じたらまずはエネルギーを取り込む生活にシフトチェンジ。疲労を払拭するために、少しでも長く眠りましょう。とくに夏は明るくなるのが早いので、睡眠時間を確保するためには早めにベッドへ。そして、餅やおこわ、えのきなどで気を補います。とくに餅は、胃腸に問題がなければ、気を補強する効果が高いのでおすすめです。水分コントロールは、水を飲みすぎないことも大切ですが、水分を発散できているかどうかにも注目を。一日中エアコンが効いた室内にいた日は、お風呂で発汗するようにします。むくみによる冷え解消にももちろん有効です。夏は台風の季節です。最近は大型台風も頻発していますし、油断大敵。気候によるトラブルを抱えている人は、どうぞ体調も早めの備えを。さくらい・だいすけ漢方専門家、国際中医専門員。完全予約制の漢方相談処「成城漢方たまり」で相談を行う。『体をおいしくととのえる! 食べる漢方』(小社刊)ほか、監修書、著書多数。※『anan』2020年7月22日号より。イラスト・原田桃子文・新田草子(by anan編集部)
2020年07月15日中医学や養生法に詳しい櫻井大典さんによる「Daily(デイリー)養生」。今回のテーマは「スポーツ」です。筋肉を整えるなら、胃腸=脾(ひ)の養生を。薄着の季節になりました。体を引き締めるべく、運動を始めたいと思っている人も多いのではないでしょうか?今回は、筋肉を整えるための養生について考えてみましょう。以前、中医学では体の働きを「肝」や「心」などの「五臓」に分けて考えるとお伝えしました。それぞれ西洋医学の概念とは少し異なる働きがあって、体の各器官も五臓のいずれかに属すると考えられています。中医学では筋肉を「肌肉(きにく)」という言葉で表しますが、この肌肉が属しているのは「脾」。何度か出てきましたが、脾は消化・吸収を司る場所です。つまり、筋肉の健康には、胃や腸が重要な役割を果たすというわけです。胃腸と筋肉がつながっているとするところがユニークですが、思えば当然のことかもしれません。例えば筋肉を作るにはタンパク質が必要ですが、いくらいい食材を摂っても消化・吸収ができなければ、ただの不要物。かえって体の負担になってしまいます。筋肉をつけて体を引き締め、肌も整えたいというなら、胃腸がしっかり働ける食べ方が大切なのです。いつもお伝えしているように、脂っこいものや味の濃いもの、辛いもの、甘いものの食べすぎに気をつけて、火を通した野菜を多めに摂る。その基本を、ぜひ思い出してください。消耗を避けることも、大切な養生のひとつ。気や血の巡りが良くなり、汗をかくことで邪気を追い出す効果もあったりと、中医学でも、適度に運動することは日常的に取り入れたい健康法です。しかも、秋や冬が体の内側にエネルギーを溜め込むべき季節であるのに対し、春と夏は発散のシーズン。今は運動に向いている時期といえます。一方で何ごともニュートラル、中庸であることが望ましいとするのが漢方です。激しい運動はかえって気や潤いを消耗し、健康を損ねると考えます。とくに暑さ、「暑邪(しょじゃ)」に狙われやすい夏場に運動する際は、事前の備えを忘れずに。芋や豆、牛肉など気を補う食材を摂るように心がけ、すいかやきゅうり、豆腐など陰=潤いを生む補陰(ほいん)食材を運動前に摂りましょう。テレワークの浸透などで運動不足気味の人が増えつつある昨今です。胃腸を整え、暑さに気をつけながら、無理のない範囲で。この3つを念頭に、気持ちよく体を動かしたいですね。さくらい・だいすけ漢方専門家、国際中医専門員。完全予約制の漢方相談処「成城漢方たまり」で相談を行う。『体をおいしくととのえる! 食べる漢方』(小社刊)ほか、監修書、著書多数。※『anan』2020年7月15日号より。イラスト・原田桃子文・新田草子(by anan編集部)
2020年07月09日憂鬱な時期を、体質別養生で快適に。中医学や養生法に詳しい櫻井大典さんによる「Daily(デイリー)養生」。今回のテーマは「辛いもの」です。暑いときほど、なぜかカレーやタイ料理など辛いものが無性に食べたくなる。そんな声をよく聞きます。これはある意味、理に適った行動なのですが、ちょっとした注意点もあります。今回は、夏の気候と辛い食べ物のお話を。中医学では、味わいは「酸(さん)・苦(く)・甘(かん)・辛(しん)・鹹(かん)」の、五味(ごみ)と呼ばれる5つのカテゴリーに分けられ、それぞれに働きが異なると考えられています。例えば甘には緊張をゆるめたり痛みを和らげる作用があり、酸とともに摂ると潤いを生んでくれるものでもあります。また、苦みは熱を冷ます効果を持っています。辛の働きはおもに、「発散させる」こと。温度も湿度も高いときは体に水分が停滞しやすく、だるさや下痢などの原因になりますが、その余分な水分を発汗で追い出してくれるのが唐辛子などの香辛料です。ピリ辛料理は、夏の体が自然と求めるものといえます。ただし、だからといって辛いものをむやみに摂るのは考えもの。中国には激辛で有名な四川料理がありますが、四川省は亜熱帯地域に属する盆地で、高温多湿な土地です。夏の過酷な気候を乗り切るために、昔から唐辛子をたっぷり使った料理が欠かせなかったのです。日本、とりわけ都市部で同じように食べるのは、少々ゆきすぎ。辛は過剰になると体に熱をこもらせ、ほてりを生じたり、潤いを消耗して乾燥体質を招いてしまいます。五味は本来、バランスを考えながら摂ることが大切です。顔の上気がなかなかおさまらない、肌がかさつく…。辛いもの好きでそんな不調がある人は、頻繁に食べすぎていないか見直しを。香辛料+補陰(ほいん)食材が。麻婆豆腐は理想の一品。辛い料理を上手に楽しむには量の加減ともうひとつ、熱を冷ましつつ陰(いん)=潤いを補給する食材を組み合わせることがコツです。代表的なのがトマトや、きゅうりなどの瓜類。豆腐などの白いものにも、補陰効果があります。そう考えると四川料理の代表格である麻婆豆腐は、実は理想的な料理。唐辛子に豆腐を合わせているうえ、豚肉も陰を補う食材です。麻婆茄子に使われる茄子も、同じく体を冷まして潤いをもたらすので、おすすめです。水分を発散させる利点を生かしつつ、ブレーキをかけてくれる食材も上手に取り入れる。そんな食べ方が、夏の辛い料理のポイントです。さくらい・だいすけ漢方専門家、国際中医専門員。完全予約制の漢方相談処「成城漢方たまり」で相談を行う。『体をおいしくととのえる! 食べる漢方』(小社刊)ほか、監修書、著書多数。※『anan』2020年7月8日号より。イラスト・原田桃子文・新田草子(by anan編集部)
2020年07月04日憂鬱な時期を、体質別養生で快適に。中医学や養生法に詳しい櫻井大典さんによる「Daily(デイリー)養生」。今回のテーマは「シミ・シワ」です。日差しが強くなり、紫外線が気になる季節です。シミやシワを作らないためにはUV対策ももちろん大切ですが、同時に重視したいのが、体の中のケア。中医学では、シワは、肌の中身=水分が足りずにしぼむことで起こると考えます。水分、つまり潤いは「陰」のカテゴリーに分類されますが、この陰が不足する「陰虚(いんきょ)」が続くと肌の乾燥のほか、喉の渇きやほてり、便秘などさまざまなトラブルが。爪の縦皺も、体が陰虚に傾いているサインです。陰が足りないときは、体内の水分を守ることが一番。発汗は肌にいいと考える人もいますが、中医学で汗をかくのを勧めるのはカゼの初期で寒気や悪寒があり、汗をかいていない状態のときと、体内に不要な水分が溜まっているときだけ。乾燥するときは、岩盤浴やホットヨガは控えるのがベター。また、陰は夜、眠っている間に蓄えられるものなので、睡眠時間を確保することも重要。なるべく早く眠ることが、肌に潤いをもたらします。さらに、白い食材には陰を補う力があることも知っておきましょう。いかや豆乳、白キクラゲなどがおすすめです。気の流れをスムーズにして同時に血も押し流す。一方、シミを引き起こすのは「血」のトラブル。血の巡りが滞った状態、お血(※)が原因です。お血は痛みのもととなるだけでなく黒ずみも引き起こすのですが、これが肌に現れることでシミに。肌がくすむ、歯ぐきや唇の色が悪くなる、などもお血の典型的な症状です。冷えて固まる「寒凝(かんぎょう)お血」に陥っている、あるいは食べすぎによって病理副産物が溜まり、ドロドロとした状態になっている。お血の原因はいくつかあるのですが、いずれにも効果的なのが、ストレッチによって物理的に押し流すケアです。手足を気持ちよく伸ばすことで体を流れるエネルギー「気」の巡りが良くなり、それにつられる形で血も循環を始めます。夜に行えば入眠がスムーズになり、陰を補うのにも役立って一石二鳥です。ぜひ眠る前の習慣に。血の巡りを良くする食材として挙げておきたいのは、うなぎや鮭、さばなどの魚類のほか、酒粕や黒砂糖など。夜のリラックスタイムの飲み物は、肌のことを考えるなら甘酒がよいかもしれませんね。さくらい・だいすけ漢方専門家、国際中医専門員。完全予約制の漢方相談処「成城漢方たまり」で相談を行う。『体をおいしくととのえる! 食べる漢方』(小社刊)ほか、監修書、著書多数。(※)「お」はやまいだれに於※『anan』2020年4月15日号より。イラスト・原田桃子文・新田草子(by anan編集部)
2020年04月08日憂鬱な時期を、体質別養生で快適に。中医学や養生法に詳しい櫻井大典さんによる「Daily(デイリー)養生」。今回のテーマは「肩こり」です。日々デスクワークをこなす人にとって、肩こりは切っても切れない悩み。首の痛みや頭痛などに発展してしまう前に、しっかり養生しましょう。中医学では肩こりは、血(けつ)の巡りが悪くなった状態、「お血(※)」によって起こると考えられています。血は体に潤いや栄養を運ぶ物質ですが、食事の偏りや疲労、寝不足、血自体の不足によって流れが滞ると一部に溜まり、それが筋肉を圧迫して凝りの原因に。血と血液は本来は少し違う概念ですが、この場合はほぼ同じと捉えると分かりやすいでしょう。そもそも人間の肩の筋肉は、腕の重量に対してかなり小さめ。かつて四足歩行だった時の名残と考えられていますが、その少ない筋肉で重い腕を支えているために血流が滞りやすく、もともと凝りやすい場所なのです。お血を流して肩こりを解消するには、肩から上に腕を上げて、腕の重さから肩を解放する時間を増やすことが第一。この動きは意識しないとなかなかできないものなので、デスクワーク中も気づいたら伸びをするなど、まめに動かすように心がけてくださいね。僕もセミナーを始める時は、参加者のみなさんにまず伸びをしてもらっています。肩甲骨の間を温めて、血の巡りをスムーズに。その上で、お血対策には体を温めるのも有効です。背中のやや上部・肩甲骨の間は肩の筋肉の働きに関係するだけでなく、体を元気にするエネルギー「気」の取り入れ口がある大事なところ。首筋からここまでを冷やさないように心がけ、家なら熱めのシャワーを当てるという方法も。もちろん、余裕があれば湯船に浸かって全身を温めるのが一番です。また、血を巡らせるための「活血食材」もしっかり摂りましょう。あずきや黒豆、黒砂糖などの黒っぽいものやプルーン、クランベリーなど赤みのあるものには血を押し流す力があります。うなぎや鮭、さば、酒粕や甘酒にも同じ効果があり、おすすめです。肩こりに限らないことですが、多くの不調はちょっとした不摂生の積み重なりが原因。つまりそれは、好転させるカギは常に身近にあるということでもあります。肩が凝る前に、腕を高く上げてリラックス。調子が悪かったら少しだけ早く寝て、血をゆったりと巡らせる。小さな心がけで、長年の肩こりを解消しましょう。さくらい・だいすけ漢方専門家、国際中医専門員。中医学の心得や養生法をゆるくつぶやくツイッターが人気。『体をおいしくととのえる! 食べる漢方』(小社刊)ほか、監修書・著書多数。※「お血」の「お」は病垂れに於※『anan』2020年4月1日号より。イラスト・原田桃子文・新田草子(by anan編集部)
2020年03月25日東洋医学の知恵でカラダと心をセルフケア!NHK総合で放送されたテレビ番組「東洋医学 ホントのチカラ」の書籍『東洋医学でカラダと心をセルフケア!』が2月6日に発売された。A4判で価格は1,000円(税別)。主婦と生活社から生活シリーズとして発売中である。ほうれい線や顔のたるみにもツボ押し長い歴史の中で培われてきた東洋医学ではあるが、伝統医学であるため、これまでわからなかった点が多かった。しかし、近年、東洋医学の効果やメカニズムなどが科学的に解明されつつあり、東洋のみならず、欧米などでも研究が進み、日本でも西洋医学とともに東洋医学を取り入れている医療機関もある。テレビ番組「東洋医学 ホントのチカラ」では、その理論と効果についてデータを交えて専門家が出演して解説。多くの反響が寄せられたが、新刊『東洋医学でカラダと心をセルフケア!』では、それら専門家協力のもと、東洋医学の中でも特にセルフケアを中心に紹介している。タイプ別の冷え症や頻尿などに効果が期待できるツボ押し術や、アーユルヴェーダの「舌掃除」。また、ほうれい線のシワ、たるみ、目のまわりのむくみ、更年期トラブル、便秘、腰痛、肩こり、緊張型頭痛、うつ、ストレス対策のツボ押しが紹介され、免疫力アップのお灸、脳活性化の簡単ヨガなども紹介している。(画像はAmazon.co.jpより)【参考】※東洋医学でカラダと心をセルフケア! - 主婦と生活社
2020年02月16日やってはいけないダイエット・おすすめのダイエット10月25日、科学的根拠(エビデンス)に基づき数あるダイエット法を判定し、評価している新刊『医学的に正しいダイエット』が発売された。著者は愛知県名古屋市西区にある大樹会宮田医院の理事長・院長で、ダイエット外来を行っている宮田充樹医学博士である。新刊は1,300円(税別)の価格にて、現代書林から発売中である。同書で採り上げられているのは、糖質制限ダイエット、低GIダイエット、マジンドール、大豆プロテイン、脂肪吸引などとなっている。30kgのダイエットに成功した医師食生活に気をつけようとはしていても、なかなかやせない。運動をしているはずなのになかなか体重が減らない。そんな人たちのために宮田医院ではダイエット外来を開設している。この新刊の副題には「-30kgの減量に成功した医師が教える」とあり、著者自身も30kgのダイエットに成功。新刊では論文のエビンデスレベルで、38のダイエット法を5段階評価し、「grade A」から「grade D」までに分類している。「grade A」は高いレベルのエビデンスがあり、強くすすめられるもの。「grade B1」はエビデンスレベルとしては低いもののやってみてもよいもの。「grade C」は有効なエビデンスがなくすすめられないもの。有効性が認められず健康を害する避けるべき方法は「grade D」となっている。(画像はAmazon.co.jpより)【参考】※医学的に正しいダイエット - 現代書林 【ありがとうございます!現代書林のホームページです】
2019年10月31日《座ってテレビを見る時間の長い人はそうでない人に比べて、大腸がんのリスクが70%高い――》そんな衝撃の研究結果が今年、英国の医学誌『Journal of the National Cancer Institute(JNCI)』で発表された。この研究は、25~42歳の女性8万9,000人を対象に約14年間追跡が行われた調査で、座ってテレビを見る時間が1週間あたり7~14時間の人は、7時間以下の人と比べ、大腸がんを発症するリスクが12%、14時間以上の人は7時間以下の人と比べて69%も上昇していたというもの。「問題は、テレビを見るために座った状態が続くことになり、近年、座っている時間の長さとさまざまな病気の発症に関連性があるという研究報告は世界的に増加傾向にあります」そう解説してくれたのは、早稲田大学スポーツ科学学術院の岡浩一朗教授だ。「これまでに《テレビの前で1時間座るだけで余命が22分縮む》という報告や、《1日11時間以上座っている人は、4時間未満の人よりも死亡リスクが40%高まる》、というデータもあります」(岡教授・以下同)1日当たり、ゆうに2時間はテレビを見ているという人も多いけれど……。座っている時間と大腸がんのリスクの関連性について、岡教授に聞いた。「下半身には太ももやふくらはぎなど、全身の筋肉の約70%が集まっています。筋肉には、血中の糖代謝、脂肪の分解などをする役割がありますが、それは筋肉が活動的なときに活発に働くもの。座ったままの状態ではこうした機能がほとんど働きません。また、椅子に座ると、腰と膝がL字に曲がります。この姿勢では太ももの裏側が圧迫され、その先のふくらはぎのポンプ機能が十分に働きません。下に下がった血流を上に戻す力が弱くなり、全身の血流が悪くなってしまいます。動かないことで大腸の働きも鈍化するため、これらの状態が長期化するほど、大腸がんをはじめとするさまざまながんにつながっていると考えられます」長時間の座位姿勢と大腸がんなどの病気との関連性を示す報告は数多くされているが、そのメカニズムまではまだ十分に解明されていないという。「座りすぎは、大腸がんのほか、腰痛や首・肩の凝り、肥満、高血圧、糖尿病、メタボリック症候群、脳梗塞など、さまざまな病気を招く危険性があります。先行研究の結果からも、1日の座位時間が8~9時間あたりから、病気になるリスクがグッと上がるという印象があります。日ごろから、座りすぎには十分に気をつけるべきです」リビングのソファに座って、テレビをつけながらこの記事を読んでいたという人は、さっそく立ち上がって体を動かそう!
2019年05月29日「いつも顔の同じ場所に吹き出物ができるという人は、皮脂の問題より、内臓の異変が疑われます。中医学では“顔は内臓の不調を映す鏡”ともいわれています」そう話すのは、東京薬科大学薬学部中国医学研究室の猪越英明准教授。治ったと思ったらまたできる吹き出物。あの厄介な肌トラブルが、体の不調を語るというのだ。「青春のシンボルともいわれる思春期ニキビは、成長してホルモンバランスが整えば自然に治まりますが、大人になってからできるニキビ、いわゆる吹き出物は、皮脂の分泌以外に原因があります。吹き出物が繰り返しできるという人は、食事や生活習慣など根本的なところを改善していく必要があります」(猪越先生・以下同)中医学では、内臓を「肝」「心」「脾」「肺」「腎」と、5つのグループ「五臓」に分けている。このいずれかに不調をきたすと、顔の吹き出物としてSOSが発信される。吹き出物ができやすいパーツから、どの内臓の調子が悪いのかがわかるのだ。また、自覚症状のない“隠れ病い”の場合もあるので、思い当たる人は注意したいところ。次のいずれかに当てはまる場合、生活習慣をどう見直していけばよいのか、それぞれのポイントを猪越先生に教えてもらった。【鼻~口の周辺…「脾」】疑われる疾患=消化不良、下痢、便秘、胃もたれなど「脾」は、消化器系すべての機能をつかさどる。鼻と口のまわりの吹き出物は胃腸が弱っているサインだという。「食べすぎ、飲みすぎのほか、刺激の強い食材や冷たいものは控えましょう。甘いものは心身の疲れを癒して、胃腸の働きを助けますが、砂糖由来の甘さではなく、白菜やキャベツなど“かむと甘さが出てくる野菜”を食べるようにするといいですよ」<対策>白菜やキャベツ、山芋など「甘味」のあるものを食べる。いも類でも、さつまいもとじゃがいもは消化がよくないので控えよう。また、食事の際はよくかんで、早食いは厳禁!【ほおの周辺…「肺」】疑われる疾患=かぜ、せきぜんそくなど「肺」は呼吸器系の機能のほか、皮膚や鼻などの働きも含む。「体温調節機能や、感染症を防ぐ免疫機能も含まれます。ちょうど今の季節、かぜが治りかけたころにせきが止まらなくなる人や、寒暖差でかぜをぶり返す人も増えてきます。ねぎ類やしょうが、シナモンなど辛い食材で体を温め、免疫力をアップさせましょう」<対策>ねぎ類やしょうが、シナモンなど「辛味」のある食材で体を温める。ただし、唐辛子には胃の粘膜を刺激するカプサイシンという成分が含まれるので取りすぎには注意を。同時に、ふだんから散歩やランニングをして呼吸器系を鍛える。【顎の周辺…「腎」】疑われる疾患=更年期障害、膀胱炎など「腎」は、体内の水分を調節する働きのほか、生殖器やホルモン、中枢神経など生命エネルギーの貯蔵庫と考えられている。「腎」の機能が低下すると、生理不順や更年期障害を招きやすくなる。「女性は特に、女性ホルモンのバランスが乱れると、顎に吹き出物が出やすくなります。塩気を含む天然のものを取りましょう。黒ごま、黒豆、昆布やのりなど海藻類がおすすめです」<対策>黒ごま、黒豆、昆布やのりなど海藻類をはじめ「塩気」のある食材を食べ、軽いストレッチを日課にして更年期の症状を和らげる。内臓に負担をかける習慣を見直せば、吹き出物も改善されるという。これからは体に負担がかかりがちな季節の変わり目。気になる吹き出物にはご注意を!
2019年03月06日専門家・プロ:野﨑誠さて、前回予告したとおり、今回は軟膏の選び方のお話をしていきましょう。でも、「何を選ぶか」の話ではありません。「どんなものを」選ぶかのお話です。といわれてもピンと来ませんよね。最初に、実際に外来であったお話をいくつかしていきます。実例1赤ちゃんが受診しました。体が真っ赤です。話を聞いて、前の先生が使っていたものと同じ塗り薬を処方しました。しかし○○のみ替えて出しています。次の診察では、赤みは全くなくなっていました。実例2高齢の女性が受診しました。見ると頭皮が真っ赤になっています。そこで前の先生が使っていたものと同じ塗り薬を処方しました。しかし○○のみ替えて出しています。次の診察では、赤みがなくなっていました。実例3小学生が受診しました。見ると全身に乾燥が出ています。特にスネの部分は真っ白に粉を吹いたような状態です。そこで前の先生が使っていたものと同じ塗り薬を処方しました。しかし○○のみ替えて出しています。次に診察したところ、手足のカサカサはほとんどなくなっていました。さて、この○○に入るものは何でしょうか?ちなみに全く同じ成分、全く同じ製品名ですよ。答えは、「基剤」です。基剤とは、薬の形状のことこの基剤、実はいろいろあります。一般的によく処方される保湿剤を例にとって見てみましょう。まずは軟膏基剤。次にクリーム基剤、そしてローション基材、最近ではフォーム剤(つまり泡です)なんていうものも出ています。左から軟膏に近いクリーム、クリーム、ローション、フォーム剤。全く同じ成分の薬剤なのに、基剤がちがうとこれだけちがう!基剤について一番細かく考えて処方しているのは多分皮膚科医でしょう。内科で処方される飲み薬が、体のどこで溶けるのがよいかを考えて剤形(カプセル・錠剤・粉など)が決められているように、皮膚科医は塗り心地や効果など、いろいろなことを考えて「基剤」を検討します。つまり、どの薬剤を使用するかということに加えて、どの基剤を使用するかということも考慮して処方を行なう必要があるのです。では、皮膚科医はどのようなことを考えて基剤を選んでいるのでしょうか?基剤がちがうと薬の吸収力がちがう一般的に軟膏、クリーム、ローションの順番で選択する、と考えると良いかと思います。軟膏基剤最もバランスが取れているのは軟膏基剤といえます。「軟膏」とはベタベタした油っぽい基剤ですね。同じ薬剤であれば軟膏基剤の方が副作用は少ないです。ゆるやかな効果が長く続く傾向があります。塗り心地の悪さが難点です。クリーム基剤油に近いクリームや水っぽいクリームなどがあります。塗り心地はいずれも軟膏よりも良好です。痛み止めなどで使われるゲル化剤は、おおむねクリーム剤に近い傾向があります。ローションサラリとしているためベタつきが少なく塗り心地は良好です。乾燥しやすいので、軟膏よりも効果が長持ちしません。短時間のうちに薬剤が吸収されますから、副作用の出方も効果の強さもローションの方が軟膏よりも強くなるといえます。泡で出るフォーム材もローションに近いと考えて良いでしょう。「どこに?」「だれに?」「いつ塗るの?」いろいろ考えて選んでマスどんな基剤を処方するかについては、「どこに」塗るのか?「だれに」塗るのか?「いつ」塗るのか?ということについても考慮する必要があります。どこにまず「どこに」塗るのかです。汗をかく場所に軟膏は適していません。どうしても汗で軟膏がグチョグチョしてしまいますからね。足の裏に塗る水虫の薬にクリームやローションが多いのはそのような理由からです。また頭皮に軟膏を塗るとどうしてもベタベタしたり、てかってしまいますので、塗りやすいローションを使用することが多くなります。だれに次は「だれに」塗るのかです。これは2つの意味があります。まず年齢です。小さな赤ちゃんは汗っかきです。したがってベタベタする基剤を使用するとどうしてもあせもができてしまいます。赤ちゃんには一般的にサラッとしたローションなどを使用することが多くなります。逆に乾燥傾向があり、弱い肌となっている高齢者には刺激の少ない軟膏基剤を選びます。もう1つは塗ってくれるかどうかです。極端な話ですが、自分では薬を塗ろうとしなかった子どもたちに泡ででるタイプの薬剤を渡したところ、面白がって塗るようになり、軟膏を使ったとき以上に症状が良くなったなどということがありました。いつ最後に「いつ」塗るのかです。塗り薬は、塗る回数に比例して効果の出る薬であるため、きちんと指示通りの回数を塗ってくれるかどうかが大切になります。忙しい人にはあえて塗りやすいローションを選択することもありますし、サラリーマンの方なら朝にはローションをさっと塗り、夜はゆっくりと軟膏を塗るという方法を取ってもらうこともあります。季節要因も大事な点となります。日本では夏は非常に蒸し暑いために汗も多く出ますし、汗疹も発生します。したがってローションのようなさらりとした薬剤にした方がよいですが、冬はとても乾燥するため、ローションは不向きであり、クリームや軟膏を選ぶ必要があります。このように皮膚科医は外来で、非常に多くのことを考えながら基剤を選択し、塗るべき薬を処方しているのだということを知ってもらえたらうれしいです。最後に最初のお話の答え合わせをしていきましょう。実例1は、赤ちゃんに保湿剤として軟膏を出していた例です。赤くなっていたのは軟膏のせいで汗疹ができていただけでしたので、軟膏からローションに切り替えたところきれいになりました。実例2は、患部が頭部でしたのでセオリー通りローションが出されていました。しかしどうも効きが悪く乾燥していましたので、軟膏基剤に切り替えたところ十分な効果が得られ、赤みがなくなりました。患者さんの状況に応じて、必要であればあえてセオリーを外すこともあるというお話でした。実例3は、フォーム剤が処方されていました。ちょうど冬場で乾燥の時期に入っていましたので、クリームに替えたところ乾燥は改善しました。なお、それでも乾燥が良くならない場合はさらに軟膏に近い薬剤に切り替えることも検討していました。野﨑誠(のざきまこと)わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市・皮膚科、小児皮膚科)院長。国立成育医療センター(小児皮膚科)、東京都立東大和療育センター(皮膚科)勤務。2001年山形大学医学部卒業山形大学医学部皮膚科入局山形県公立置賜病院(山形県長井市)、国立成育医療センター(東京都世田谷区)、はせがわ小児科医院(東京都武蔵野市)などの皮膚科・小児皮膚科を経て、2013年、わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市)開院。院長を務めるかたわら、専門家向け、一般向け、教育機関(保育園、幼稚園、小学校、中学校など)向けの各種講演会、勉強会を精力的にこなす。雑誌他執筆多数。広い年齢層の皮膚病、あざの治療やスキンケアに携わる。わかばひふ科クリニックWebサイト
2018年12月04日専門家・プロ:野﨑誠秋も深くなってきた今日この頃、こんな時期によく目にする子どもの疾患があります。それはシラミ。有名ではありますが、実際に目にすることが少ない疾患の1つでもあり、いろいろと誤解されることの多い疾患でもあります。今回はそんなシラミのお話をしていきましょう。みなさんはシラミと言われたときに、どんな想像をするでしょうか?わたしは医者になるまでは、まず歴史の教科書を思い浮かべました。太平洋戦争のあと、大人が子どもに白い粉を吹きかけている、あの写真といえばわかるでしょうか。そこで行なわれているのはシラミの治療です。DDTと呼ばれる薬剤を子どもたちの頭に噴霧してシラミの感染を防ごうと努力していたんですね。でも、この写真のイメージが強すぎるのか、シラミは栄養状態が悪く、貧困な子たちに発生する疾患というイメージが根強いように思います。実はこのシラミ、現在、いつでも、どこでも、誰にでも発生しうる疾患となっているのです。外来で診察をしている印象では学童の0.1%以上、1%未満、全校で数名といったレベルで発生しているようです。欧米ではもっと高く5-10%と言われます。つまりクラスに必ず1名はかかったことがあるという計算になります。さらにその感染については、栄養状態や社会環境は全く関係しないということがわかってきました。大事なことなのでもう一度いいますが、「シラミは誰にでも発生しうる病気」なのです。まず敵を知ることが治療の第一歩シラミはいくつかの種類に分けられます。主に頭皮に定着してヒトの血を吸って生活しているのがアタマジラミです。大きさは、米粒よりも小さいくらい。形は手だけが肥大したノミのような形であり、主に髪の毛の中で生活しています。肥大した手をターザンのように上手に使い、髪から髪へ渡り歩いているので、目にすることはほぼありません。しかし、一度髪の毛から引き剥がされてしまうと、ゆっくりと地面を歩くことしかできない虫です。髪の毛の中という環境に特化した虫なんですね。そして卵は髪の毛の根本部分に産み付けられ、約2週間で孵化することになります。孵化したシラミはそのまま頭部にとどまり吸血を続けるか、ほかのヒトの髪の毛がくっついたその瞬間に新天地に飛び移り、生活を続けていくのです。つまり感染は頭髪の直接接触で起こります。そのため、家族内感染が多く、非常に高い確率で兄弟姉妹に感染しています。また、それなりの確率で母親にも感染しますが、父親への感染はほとんどありません。がんばれ、パパさん・・・。なぜかゆみがでるのかではシラミにかかるとなぜ、かゆみが起きるのでしょうか?先ほども述べたようにシラミはヒトの血を吸って生活していきます。そのときに血液がかたまらないように唾液成分を注入して血を吸うのですが、その唾液成分に対するアレルギー反応としてかゆみが出てきます。蚊に刺されるのと同じようなものですね。なお、蚊とは唾液腺の成分が異なりますので、たくさん蚊に刺されたことがあってもシラミに対するアレルギーが早く出現するわけではありませんよ。このアレルギー反応は、出現するまでに、一般的に数週間かかります。つまり感染して数週間が経過してはじめてシラミに対する症状が出てくるんですね。この潜伏期間の長さがシラミの感染予防を厄介にしている点であり、だからこそシラミは今まで絶滅せずに生き延びてこられたともいえます。多くのシラミはかゆみが出ないうちにほかのヒトに移ってしまいますから。このことは、この季節にシラミの患者が多くなる理由でもあります。活発に運動する夏の時期に感染した、あるいは運動会などの秋のイベント時に感染したシラミは、数週間後、ちょうどこの時期にかゆみを発生してヒトに気づかれるというわけです。人間はシラミに負けている?最初に写真のお話をしました。今から70年も昔の話です。だったら、今はさらに治療が進化しているかと言われるのですが、実は退化していたりして……。過去にシラミに対して使用されていた薬剤はDDTと呼ばれていました。その効果は非常に強く、シラミだけでなくほかの病原微生物に対しても非常に強い効果が見られました。そういえば、プロレス技にも同名のものがありますが、これは“非常に強力な技だから、その殺虫剤にちなんで”命名されたという話もありました。しかし、時代が過ぎると、DDTの生態系に対する悪影響が問題視されます。結果としてDDTは使用中止となり、現在はその前に使用されていたフェノトリンというピレスロイド系の殺虫剤が頻用されています。さらに人間にとって、分の悪い話が続いていきます。近年フェノトリンに耐性をもつシラミの増加が見られるようになりました。耐性を持っているシラミが半分弱という国もあるようです。日本でも沖縄に多いとか。人間、シラミに負けてるじゃんと思っても口にしてはいけませんよ。わたしもそのように思っていますが。あと1つ注意すべき点があります。それは薬剤は卵に対して効果がないということです。シラミの卵はシラミつぶしに見つけるしかない薬剤は卵に対して効果がありません。したがって、シラミに対する治療は薬剤を使用して成虫をたたくと同時に卵に対しても薬剤以外のアプローチで対応していく必要があります。それは卵を物理的に除去することです。先に述べたようにシラミの卵は髪の毛の根本に植え付けられます。そこで、一度何らかの方法で髪の毛の中のシラミの卵をゼロにしてしまえば、〈卵が新しく出ている=シラミの成虫が残っている〉ということがわかるのです。まず髪の毛を一房一房かきわけて、シラミの卵がいないか、逐一チェックしていきます。シラミつぶしという言葉がありますが、まさにその語源となった作業を行ない、シラミの卵を見つけていきます。そしてその卵の付着した髪の毛を根本から切り取って、トイレにでも捨ててしまいましょう。くしを使えばという話もありますが、シラミの卵はしっかりと髪の毛にくっついているために、少ししごいたくらいでは取り除くことができません。卵をこそげ落とすよりも、髪の毛を切ってしまったほうが早く治療が行なえるでしょう。え、髪の毛を全部切ってしまえばいいじゃない?まさにそのとおりです。男の子ならば丸坊主にしてしまえば、その瞬間にシラミは頭から全くいなくなります。実は一番早く確実な治療法は丸刈りだったりしますし、一番の予防法でもあるのです。だから、昔の男の子はみんな丸刈りだったんですね。アタマジラミの成虫と卵(右)。卵はのりのようなもので髪の毛にしっかりとくっついている〈コラム〉ヘアーキャスト?実はわたし、小学校のときに学校検診でシラミと診断されてしまったことがありました。そこで「皮膚科に行け」と言われまして、仕方がないので家に帰って父に見てもらいました。なにせ、その時代その町にはウチしか皮膚科がありませんでしたからね!父に髪の毛を見てもらい診断の時間です。「ヘアーキャストだね、これ」と。シラミではなかったことにホッとしつつ、ヘアーキャストについて話を聞くことにしました。ヘアーキャストとは特殊な形をしたフケの一種です。一般にフケの形は不定形で、固形の小さな塊となっています。しかしヘアーキャストは髪の毛に巻き付いた形のフケなんですね。ちくわ、バウムクーヘン、マカロニなどを想像してもらうと良いかもしれません。シラミの卵とヘアーキャストの違いはまずその形です。卵は髪の毛のある部分に楕円形に付着します。木の枝についたサナギのイメージでしょうか。対してヘアーキャストは円筒状。またシラミの卵はのりでしっかりと髪の毛に付着しているので指で取ることは大変です。一方、ヘアーキャストは髪の毛を包むようにあるだけですので、簡単に動かすことができます。よく見ると異なりますが、遠目ではけっこう区別が難しいようですね。そういえば検診の先生はかなり高齢だったような……。髪の毛についている白い筒状のものがヘアーキャスト。シラミの卵と形が似ている今回はシラミの話をしてみました。けっこう怖い印象がありますが、くわしい話を知ってしまうとそんなに怖いものではないということが理解いただけたかと思います。シラミの虫もよく見てみるとド○キーコ○グのようなユーモラスな形もしていますしね。次回は病気の話を離れて薬の話をしましょうかねえ。野﨑誠(のざきまこと)わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市・皮膚科、小児皮膚科)院長。国立成育医療センター(小児皮膚科)、東京都立東大和療育センター(皮膚科)勤務。2001年山形大学医学部卒業山形大学医学部皮膚科入局山形県公立置賜病院(山形県長井市)、国立成育医療センター(東京都世田谷区)、はせがわ小児科医院(東京都武蔵野市)などの皮膚科・小児皮膚科を経て、2013年、わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市)開院。院長を務めるかたわら、専門家向け、一般向け、教育機関(保育園、幼稚園、小学校、中学校など)向けの各種講演会、勉強会を精力的にこなす。雑誌他執筆多数。広い年齢層の皮膚病、あざの治療やスキンケアに携わる。わかばひふ科クリニックWebサイト
2018年11月15日専門家・プロ:野﨑誠今回は秋によく見られる水いぼの話をしていきましょう。この時期にいまさら?と思われるかもしれませんが、水いぼの新規患者さんが多いのは実は秋だったりするのです。原因は多分プールですね。プールで水いぼに感染した友だちに接触して感染する、プールサイドの床やプールの水の中にいるであろう水いぼから感染するというように、夏に裸になったときに皮膚から直接感染した水いぼが、潜伏期を経て秋に出現するという仕組みです。ちなみにプールのビート板はもちろん感染源となりますが、ほかのプールの品物にたいしては極端に神経質になる必要はありません。空気感染することもありませんので、その点はご心配なく。感染した水いぼが体に広がる原因はひっかくことです。水いぼの部分を気にしてひっかくことで指先に水いぼが移り、そこからさらに別の皮膚に感染するという形で広がっていきます。また肘や膝、男の子のおちんちんなど擦れやすい部分の水いぼは反対側の皮膚に感染を広げることが多く見られます。水いぼの正体はなにか水いぼの正体はウイルスです。「水いぼウイルス」、正式名称は「伝染性軟属腫ウイルス」といいます。このウイルスは、実はより細かく4種類に分けることができます。つまり水いぼウイルス1型から4型まで分けることができるんですね。このことは感染を考えるうえでは非常に重要なお話になってきます。次の項目で詳しく説明していきましょう。水いぼはどうして子どものみにうつるのか毎日外来で診療をしていると、水いぼに感染するのはほとんどが子どもだということに気が付きます。大人で受診する方はほとんどいませんし、いたとしてもその大部分はお母さんです。最近は少しお父さんも見かけますが、高齢者で水いぼの方はまず見ることがありません。その理由は免疫ができているから。大人はすでに子どものときに水いぼのウイルスに感染しています。そしてそのときに免疫が成立します。免疫は一度感染したウイルスに二度と感染しないという体の防御反応ですから、子どものときに水いぼに感染していると、その後、自分の子が水いぼを持って帰ってきても免疫機能がうまく働いて感染を起こさないで済むわけです。大人で水いぼになってしまった場合は、体の中の免疫がうまく動いてくれない状態なのか、過去にかかった水いぼとは別のタイプの水いぼウイルスに感染してしまったか、どちらかの可能性が考えられます。お父さん・お母さんの場合は後者の可能性がほとんどなのですが、もしも高齢者が水いぼに感染した場合は、白血病やガンなど免疫力を落とす病気が体の中に隠れていないかしっかりと検査をしなければいけません。〈コラム〉イクメンだからうつるんだ。水いぼのウイルスは接触で移ります。子どもがもらってくることでお母さんに感染することもあります。その理由は簡単ですね。子どもと直接接触しているからです。外来ではお母さんが子どもから水いぼをうつされる確率は年ごとに見ていても大きな変化はないように見えます。面白いのはお父さんです。昔といっても少し前の話ですが、お父さんが水いぼに感染したという話は全く聞きませんでした。しかし、ここ数年、お父さんの水いぼを時々見かけるようになりました。もちろんお母さんほどではありませんが確実に増えているようです。その理由はお父さんも子どものお世話をしっかりとするようになったからかもしれませんね。今後お母さんとお父さんの水いぼの発生確率がどうなるのか、少し気にして診察している今日この頃です。水いぼはどんな形をしているのか水いぼの診断は簡単です。特徴のある発疹が広がっていることを確認すれば良いからです。発疹の形は1つだけ。中心部が少し白っぽく見える、小さな盛り上がりです。大きさはいろいろですが大きなものは中心部が少しくぼんでいるように見えることもあります。そしてゆっくりと、しかし着実に大きくなっていることも大きな判断材料となります。自覚症状は基本的にありません。最初は痛くも痒くもありません。周囲に湿疹ができることも最初はなく、見た目の変化のみで現れます。そして水いぼの最後は少しずつ枯れて小さくなってなくなっていきます。それまでおおむねね2~3カ月かかります。消えるまでのバリエーションが大きいのも水いぼの特徴です。大きくなった水いぼに細菌が感染すれば赤く腫れ、痛みが出ることもありますし、水いぼに対する免疫ができれば赤く、痒くなることがあります(もっともこの現象は自分の体が水いぼに対して免疫が現れてきた証明でもありますので、治りかけの最後の時期に見られることも多いのですが)。厄介なのは極端な場合です。水いぼは数多く現れるのが一般的ですが、これが1個だけの場合は非常に診断が難しくなります。数センチまで巨大化した水いぼが1個だけ見られるなどということもあります。巨大化した水いぼが皮膚のできものと間違えられて手術されてしまったというお話もある程です。治療はどうすればよいのか。取るべきか取らざるべきか、それが問題だじつは水いぼで結構問題になるのが治療です。診断は比較的簡単ですからね。その問題は取るべきか否か。先程から説明しているように水いぼは時間が経過すれば自然と消えていきます。そして免疫がついてしまえば今後感染を起こす可能性はありません。そのために自然に治るのを待つべきだという考え方も一理あります。しかし待つことによるデメリットもあります。それは今後の経過が読めないこと。どこまでこの水いぼがふえるのか?いつ最後の水いぼが消えるのか?それは診察のときには全く分かりません(赤く痒くなった水いぼは消えかけなので、そういう水いぼであれば判断がつきますが)。その予後の読めなさが問題になってくるのが社会生活との兼ね合いです。特に幼稚園・小学校のプール問題。幼稚園・小学校のプールはかなりの確率で水いぼの子は拒絶されます。水いぼがあるだけでプールの時間に1人で別のことをしているか、見学しているかという状態に追い込まれてしまうのです。皮膚科医小児科医はあまりプールの制限が感染予防につながっているとは考えていませんが、園側・学校側がダメというのであればしたがうしかありません。それが水いぼを巡る問題の中でも一番やっかいなものだと考えています。もう1つ、水いぼのとり方にも問題があります。現状では最も簡単で有効な治療方法はピンセットでつまんで取ることです。こちらは痛みもありますし、出血することもあります(もちろん血液を介した感染症の問題もあります)。当然子どもたちは嫌がりますし、評判の良い治療法ではありません。だから医療者側も無条件に取りましょうとは言えず、最終的は保護者および本人の判断に委ねざるを得ないのです。取るべきか取らざるべきか。この問題にはいつまでたっても答えは出そうにありません。〈コラム〉えっ、取ってくれないんですか?先程のお話の逆のケースとして、プールに行きたい子が水いぼを取ってほしいといって受診することがあります。よくよく話を聞いてみると、近所の先生では水いぼを取ってくれないとのこと。実は水いぼを取るか否かについては医師側の考え方も反映されます。一般的に小児科は取らない先生が多く、皮膚科は取る先生が多いようです。小児科の先生が取りたがらないのはある意味当然かと思います。子どもたちに痛い思いをさせてしまい、今後別の病気の治療のときに差し障る可能性がありますからね。では皮膚科医は水いぼを取る先生が多いのかと思いきや、取らない先生も増えているようです。結果として、水いぼを取ってくれる先生のところに水いぼ治療を希望する患者さんが殺到することになっています。当院では水いぼを取ること自体は別に構わないのですが、最近新たな問題が発生しました。それは医師の目と腰問題です。近頃どうも老眼が出てきたようで、小さな水いぼを取るのが徐々に大変になってきました。また中腰で水いぼを取っていますので、腰の痛みもだんだん出てきたみたいです。これもまた職業病でしょうか・・・。水いぼはいつ治るのか?この問題も結構難しいですね。先ほどお話したように、免疫が成立すれば完治するのですが、免疫の成立は目で確認できません。したがって水いぼの完治を知ることは非常に難しいのです。一般的には水いぼが数カ月間見られなかったら治癒と判断します。潜伏期を考えると数週間で判断するのは早すぎます。2~3カ月後に水いぼが再発する子を何人も目にしていますから。ある日、別の型を持つ水いぼウイルスが感染を起こすこともありますしね。なので、水いぼについては完治をめざすというよりもほかの人へ感染するリスクを最小限に抑えるというのが現実的な対策になると思います。つまり見た目に水いぼがなければ大丈夫だという考え方ですね。社会問題として完治が必要になる状況は合宿などの集団生活とプールです。いずれの場合も他者に感染するリスクがなければ問題は生じませんので、水いぼの症状がなくなることを実際のゴールと考えてよろしいかと思います。そしてしばらく経過を見て、新しい水いぼができたらすぐにそれを取ってしまい、症状がない状態をキープしていくということでよいのではないかと思いますよ。さて水いぼのお話はいかがでしたか?見た目は大したことがないのですが、実は奥が深い病気です。治療の大変さもおわかりいただけたのではないでしょうか。社会を反映する病気の1つともいえるかもしれませんね。野﨑誠(のざきまこと)わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市・皮膚科、小児皮膚科)院長。国立成育医療センター(小児皮膚科)、東京都立東大和療育センター(皮膚科)勤務。2001年山形大学医学部卒業山形大学医学部皮膚科入局山形県公立置賜病院(山形県長井市)、国立成育医療センター(東京都世田谷区)、はせがわ小児科医院(東京都武蔵野市)などの皮膚科・小児皮膚科を経て、2013年、わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市)開院。院長を務めるかたわら、専門家向け、一般向け、教育機関(保育園、幼稚園、小学校、中学校など)向けの各種講演会、勉強会を精力的にこなす。雑誌他執筆多数。広い年齢層の皮膚病、あざの治療やスキンケアに携わる。わかばひふ科クリニックWebサイト
2018年11月07日専門家・プロ:野﨑誠第2回冬の始まりが湿疹を招く今回は秋の湿疹のお話2回目です。さて、ここ数カ月の日本の気象を表すとどうなるでしょうか?皮膚科の立場で言えば、「慌ただしかった」とのひと言です。梅雨は非常に短く、その後一気に熱波が到来しました。お盆前後には台風が日本を何度も襲い、そのあとは8月なのにもう秋の天気がやってきましたね。その後また少し暑さが戻ってきたようですが、そんなかけ足の季節に足下をすくわれ、秋から冬にかけての湿疹の発生も例年よりもはるかに早い印象を受けます。夏のさなかに、一瞬だけ秋がやってきた先程、8月なのに秋の天気と書きました。ほんの数日のできごとですが、8月の暑い時期に秋が来ていたのです。気がついていました?気象庁のデータをのぞいてみると・・・ありました。8月中旬のお盆を過ぎてからの数日間、湿度は最低29%、気温もだいぶ下がった日が何日かあります。その日だけは、「秋」だったんですね。なぜ皮膚科医がそんなお話をするかというと、その直後に一気に乾燥肌の患者さんがやってきたからなんです。前回お話をしたように夏の湿疹は汗で悪化します。つまり、温度が関係してくるのですが、乾燥肌の患者さんがやってきたのは気温があまり上がらず、汗も比較的かくことのない「秋の季節」の直後です。となると、こうした患者さんの湿疹が増える背景には、汗や温度ではなく湿度が関係しているのではないかという話になるのです。湿度と湿疹の切っても切れない関係もともと秋は湿疹、特に乾燥性湿疹やアトピー性皮膚炎が悪化してくる季節として認識されてきました。その悪化状況をくわしく見ていくと、だいたいの傾向がわかってきます。それは日中の湿度が50%を切ってくると、乾燥からくる湿疹が一気に出現し、悪化してくるということです。当然といえば当然のことですが、空気の乾燥具合に皮膚の乾燥状況は影響を受けます。したがって湿度の低下は湿疹の拡大・悪化を招くということは容易に想像がつくのではないでしょうか。ちょうどその境目が湿度50%くらいということのようです。完全に実証はされていませんが、少なくとも東京ではそのような傾向が見られます。対策は水分補給?ではどのようにすれば良いのでしょうか?加湿器・・・を準備するにはまだ暑いですね。シャワーで皮膚に水分を補給してもすぐに乾燥してしまいますからあまり意味はありません。対策として最も現実的なものは保湿剤の使用だといえます。その保湿剤ですが、環境の変化に合わせて少しずつ変えていく必要があります。夏のあせもには保湿力よりも塗りやすさを重視した乳液や化粧水といったサラサラした製品をおすすめしていましたが、乾燥する季節となるとそうもいきません。クリームのような少しベッタリとした、保湿力が高めの保湿剤に切り替えることで皮膚の表面を保水し、皮膚からの水分の蒸発を抑える必要があるのです。とくに、少しカサついている、少し粉を吹いているというレベルの乾燥肌には保湿剤で十分に効果が期待できます。塗り心地はよいとはいえませんが、そこは少しがまんしてもらいましょう。子どもの皮膚の乾燥が気になる方は、まず保湿剤の種類を切り替えてみても良いかもしれませんね。小春日和に要注意前回と今回のお話をまとめてみましょう。秋に湿疹が悪くなる原因は、汗からの刺激により湿疹ができてしまうこと、乾燥により皮膚が乾いてしまい湿疹ができることという2つが挙げられます。そしてその2つの要因はそれぞれ、温度、湿度が関係します。もう1つ秋の湿疹が悪くなる要因があります。それは秋の天候は1日単位で変わりやすく、しかもその変化の幅が大きいということ。昨日大汗をかいたかと思えば今日は皮膚の乾燥があるというような極端な変化が秋には見られるため、皮膚の環境も日々変化にさらされてしまうのです。したがって、秋のスキンケアで最も重要なことは情報収集だったりするんですね。今日の気温はどうなのか、湿度はどう変化するのか、その後の天候の移り変わりはどうか、今後の行動予定は何か。そういった情報を総合して、シャワーなどのスキンケアをどうするか、どのようなタイプの保湿剤を使用するのか、何を着て出かけるのかといった選定をしなければいけません。そしてそれを間違えると、一気に湿疹が広がってしまう。こんな綱渡りをしながら皮膚をケアしていかなければいけないのです。だから、秋のお肌のケアって、難しいのです・・・。次回は皮膚と社会生活の深~い関係をお話しします。関連記事秋 -季節の変わり目‐ になぜ湿疹が悪化するのか第1回夏の戻りが湿疹を呼ぶ野﨑誠(のざきまこと)わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市・皮膚科、小児皮膚科)院長。国立成育医療センター(小児皮膚科)、東京都立東大和療育センター(皮膚科)勤務。2001年山形大学医学部卒業山形大学医学部皮膚科入局山形県公立置賜病院(山形県長井市)、国立成育医療センター(東京都世田谷区)、はせがわ小児科医院(東京都武蔵野市)などの皮膚科・小児皮膚科を経て、2013年、わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市)開院。院長を務めるかたわら、専門家向け、一般向け、教育機関(保育園、幼稚園、小学校、中学校など)向けの各種講演会、勉強会を精力的にこなす。雑誌他執筆多数。広い年齢層の皮膚病、あざの治療やスキンケアに携わる。わかばひふ科クリニックWebサイト
2018年10月04日専門家・プロ:野﨑誠第1回夏の戻りが湿疹を呼ぶ楽しかった夏休みも終わり、秋がやってきました。しかし、今年の夏は少し変でしたね。梅雨はあっという間に終わり、その直後から熱波が襲来。8月には毎週のように台風がやってくるという慌ただしい夏休みでした。そして待ちに待った秋があっという間にやってきた印象がありますね。道端の朝顔が今頃になって咲いているのを見るとなんともはや。過ごしやすく活動的になる秋ですが、一般に湿疹が悪化する傾向があるとされています。実際に外来でも湿疹が悪くなって受診される患者さんが結構いるのも事実です。一体なぜでしょうか。今回はそのお話を数回に分けてしていきたいと思います。1回目は夏の戻りについての話です。夏が戻ってきた?要注意だ!三寒四温というように、日々の温度の変化が大きいのも秋の季節の特徴です。まず気をつけたいのが、しばらく涼しかったのがある日突然暑くなる、いわゆる夏の戻りです。もう少し先の季節だと小春日和のときも同じことがいえるでしょう。そのあとに湿疹が悪化する子が非常に多くなります。どちらかというと男の子が多いような気がします。なぜでしょう。原因は・・・汗?その原因は汗です。涼しくなって徐々に厚着をしていく途中にやってきた暑い日。そのときに前の日と同じような格好で外に出たら、当然汗をかきますよね。その汗が原因となり湿疹を作ることが十分に予想されるのです。そうです、夏のあせもや汗かぶれの再来です。そのまわりを引っ掻いているうちに、だんだん湿疹の範囲が広がってしまう。そして湿疹の季節の冬に突入というパターンが秋に多く見られる特徴です。そう考えると、男の子に多く発生するのもうなずけます。だって彼ら、どんなに暑くっても洋服をぬがないんですもの。横着というかなんというか・・・そういう女の子もときには見かけますが。だからシャワーは必要なんだ対策はどのようにすればよいのでしょうか。最も良い対策方法はしっかりとシャワーを浴びることです。学校帰り、外出帰りにはしっかりと浴びたいところですし、できれば朝にもしっかりと浴びたいです。学校が始まってなんとなく朝のシャワーの習慣がなくなった。その後、湿疹が悪くなったということはありませんか?夏の湿疹の、しっかり洗う、しっかり流すという原則はこの時期も有効です。できれば最高気温が20度を下回るくらいまではしっかりと流してあげたいところですね。湿疹の治療もお早めにそんなわけで冬になる前から湿疹を作ってしまう子が増えてくるのがこの季節です。予防はスキンケア・シャワーで汗や汚れを上手に落とせばなんとかなりますが、痒みが出てしまうともうそれだけでは抑えることはできません。早めに薬を使って湿疹を抑えていきたいところですね。子どもがひっかく動作をするようだったら皮膚科・小児科の受診を考えたいです。今回は秋の最初のお話ということで夏の残り香について話を進めていきました。次は冬の先触れをテーマにお話をすることにしましょう。野﨑誠(のざきまこと)わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市・皮膚科、小児皮膚科)院長。国立成育医療センター(小児皮膚科)、東京都立東大和療育センター(皮膚科)勤務。2001年山形大学医学部卒業山形大学医学部皮膚科入局山形県公立置賜病院(山形県長井市)、国立成育医療センター(東京都世田谷区)、はせがわ小児科医院(東京都武蔵野市)などの皮膚科・小児皮膚科を経て、2013年、わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市)開院。院長を務めるかたわら、専門家向け、一般向け、教育機関(保育園、幼稚園、小学校、中学校など)向けの各種講演会、勉強会を精力的にこなす。雑誌他執筆多数。広い年齢層の皮膚病、あざの治療やスキンケアに携わる。わかばひふ科クリニックWebサイト
2018年09月27日専門家・プロ:野﨑誠あせもってなんだ?今回の「あせも」の話もハワイから始めていきましょう。ハワイに行くといろいろなものが日本と異なるので、非常に興味深くついつい眺めてしまいます。どうしても皮膚の状態に目が行ってしまうのはまあ、職業病なのでしょう。そこで気がついたこと。ハワイではあせもができません。おや不思議です。なぜなんでしょう。汗疹と“あせも”汗疹。「あせも」と呼びます。この病気は当然ながら世界共通のもの。英語でも簡単な名前がついています。Heat rashです。Heatは熱。Rashは赤みで湿疹全般のこと。つまり、熱による発疹。言い得て妙です。この汗疹、専門的な本を読むと2つに分けられています。紅色汗疹と、水晶様汗疹です。紅色汗疹は読んで字の如く、赤いポツポツとした発疹が体の特に汗をかく部分にできること。水晶様汗疹はクリスタルのように透明でキラキラした発疹が、同様に体の汗をかいた部分にできることをいいます。全然違う見た目をしている2つの発疹ですが、原因は同一です。汗の排出口がふさがってしまうために汗の成分が皮膚の中に入る。そのためにアレルギーの反応が起こると考えられています。ただし汗の溜まる部分が浅いと赤い発疹となり、深い部分で汗が水たまりのように溜まると水疱のような発疹になるとされています。言われてみるとそういうものかと思われるかもしれませんが、“あせも”といってみなさんがイメージするものはそのような発疹ではないはずです。多分、暑い日に首や肘などの関節の内側にできる赤いぶつぶつとした発疹で、ときに痒くなるもの。そしていつの間にかなくなってしまうものではないでしょうか。そのような発疹については専門書には書かれていなかったりするんです。つまり、汗疹と“あせも”が同一ではなさそうなんですね。なんと。汗疹は、誰にどんなときにできるのか?しかし、専門書に書かれている汗疹も当然できることがあります。それはどんな場合か?このような汗疹は一般に乳児期によく見かけるものです。場所は関節の内側に限りません。汗をかくところ、そして蒸れる・こすれるところであればどこにでも発生する可能性があるのです。最も多いのはおなか、次いで腰からお尻にかけて、最後に背中です。手足にはあまり発生しませんね。特に乳児に多く発生し、幼児期以降ではよっぽど汗をかいたとき、もしくは高熱を出したあとくらいにしか見かけることはありません。それから、この汗疹はあまり痒くはないようです。ひどい汗疹が広い範囲に出ていても本人はけろりとしています。これが専門書に書かれた汗疹のでき方です。“あせも”は誰にどんなときにできるのか?対して“あせも”はもう少し上の年齢の子にできるようです。多くは幼児期から小学生の時期にかけて。なぜかそれ以上の子にできることはなく、成人にもあまりできることはありません。しかし成人でも“あせも”ができる人もいて、そのような人はどうもアトピー性皮膚炎を思わせる肌質の人が多いようです。よく発生するのは3カ所。首の前面、肘の内側、膝の裏側です。腰などにできることもありますが、皮膚の広い面に発生することがなく、多くは関節の内側のみに線状・帯状に出現するのが特徴です。そして、痒い。特に赤いぶつぶつの時期には痒みが強く、かきむしってそこからとびひになったり、湿疹をつくったりしている子もいます。ぶつぶつは時間とともに乾燥してかさぶたのようになり、最終的には剥がれ落ちてしまいます。これがいわゆる“あせも”の自然経過です。汗疹と“あせも”はなぜ起きる?では、汗疹や“あせも”の原因は何でしょうか。実は「不明」です。なぜ発生するのかよくわかっていないのが正直なところ。研究もあまり進んでいないようですし、専門家と言われる人もいなさそうです。まあ、生命に危険を及ぼすこともありませんし、自然に消える病気だからと言われればその通りなのですが。それでもいくつかの文献や資料、研究成果を確認していくと、ある程度、的外れではないように思われる原因が見えてきます。まず汗疹の原因です。あるメーカーの研究によると、汗疹のきっかけとなるものは表皮ブドウ球菌と呼ばれる皮膚表面に住みついている細菌です。その細菌がグリコカリックスと呼ばれるムチン質の物質、つまりゼリーのようなものを作り、そのゼリーに対するアレルギー反応によって赤みが出現するということのようです。これに対して“あせも”の原因は、どうもマラセチアという、これまた皮膚表面に住みついている真菌(カビ)に対するアレルギーの反応のようです。特にアトピーっけのある子が関節部分に汗によって悪化する湿疹があり、その湿疹の部分を詳しく調査するとマラセチアのアレルギーが見つかることもその証拠として考えられるようです。これらのことから汗疹も“あせも”も汗の影響、熱の影響により、本来はバランスを保って存在しているはずの一部の細菌や真菌が異常に増殖し、結果としてアレルギーの反応が出てくるために発生すると考えられるようです。あくまでも仮説ですが。汗疹と“あせも”予防の第一は汗をかかないことでは、予防のお話をしていきましょう。第一の予防は汗をかかないことです。つまり気温環境のコントロールですから、とにかくエアコンをしっかりと使用すること。その一言に尽きます。外来を受診される患者さんの数を見ていると、日本の湿度では最高気温25度を超えると“あせも”の発生が一気に増える印象があります。汗疹は、抱っこや洋服の影響によっても発生するため、そこまで厳密に気温が関係しているわけではありません。けれども温度が上がるにつれて発生率も上がる印象がありますので、温度の管理をしておくに越したことはありません。室温を25度以下に保つだけでもずいぶん発生を減らすことができるでしょう。次に汗を流すことです。いくらエアコンをしっかりとつけていても汗は必ず出ています。不感蒸散といい、汗の出がゼロになることはないのです。子どもはもともと多くの汗をかきますので、その汗をとにかく流せば汗疹の発生を予防することができるのです。まず朝起きて学校や幼稚園・保育園に行く前にシャワーで流すこと。これだけでもかなり汗疹を予防できます。また小さな子であればお昼寝のあと、大きな子であれば幼稚園・学校から帰ったあとにもシャワーをしたほうが良いですし、外出・お散歩から帰ったあともシャワーをするとそれだけで汗疹の予防になります。シャワーの話をするときに問題になるのが石鹸の使用の有無についてです。こちらも外来での印象ですが、一般の汗疹と“あせも”については石鹸までは必要ないでしょう。石鹸の使いすぎは乾燥肌やアトピーを悪化させる可能性もあるので、通常は使用せずにいても十分発生を抑えることができるようです。ただし、べたべたした“あせも”についてはどうも石鹸を使用しないとなかなか発生を抑えることはできないようです。その理由として考えられるのは“あせも”によって作られるゼリー物質は石鹸を使用することで溶かすことができるようなのです。だから、首、肘、膝の関節の内側など、べたべたした“あせも”ができそうな場所については石鹸を積極的に使用したほうが良さそうです。汗疹と“あせも”の治療法最後は残念ながら汗疹や“あせも”ができてしまったときの治療法のお話です。前にも述べたとおり、原因は皮膚表面でのアレルギー反応になりますので、ステロイドの塗り薬を使用して反応を抑えていくことが1つの治療となります。ちなみにステロイドの強さはそこまで強いものは必要ありません。むしろベタッとした軟膏性のものよりもサラッとしたクリームや乳液剤の方が症状を抑えられますので、種類よりも塗りやすさに注目した薬をもらう必要があります。また、ほかの皮膚炎に使用される薬剤でも有効なものがあります。それは皮膚を乾燥させる作用がある、細菌や真菌を抑える作用がある、ゼリー物質を抑える作用があるなど、いくつかの理由が考えられます。ニキビや水虫の薬がよく効いたという話もありますので、病院によっていろいろな薬が処方されるかもしれませんね。意外に(と言っては失礼かもしれませんが)民間療法にも効果が見られるものがあります。海水をかける、お酢をかける、熱めのお湯をかけ続けるなど、個性的な民間療法のお話を外来で聞いたことがあります。発生原因とその対策という考えからすると、細菌や真菌を減らす、ゼリー物質を溶かすなどの作用が予想され、ある意味納得するものもあります。まあ、いずれの治療法も病変部分に刺激を起こすことがあるので積極的にはおすすめしませんが・・・。汗疹や“あせも”の治療でけっこう難しいのは止めどきです。とくにステロイドはアレルギーの反応を抑える反面、副作用として細菌や真菌を増やしてしまいます。使いすぎると今度は細菌や真菌が増えてしまい、その症状が出てしまうことになり、治療に余計に時間がかかってしまいます。特に“あせも”で問題になるのですが、ポイントはかさぶたになったら治療を中断することです。かさぶたになっても薬を塗り続けていると今度は真菌そのものによるトラブルが発生しますので、「赤いとき、かゆいときには塗ること。かさぶたになったらやめること」と症状に応じて塗り方を調整すると上手に治療することができますよ。さあ、最後の最後にハワイのお話の答え合わせです。向こうの子どもに“あせも”が少ない理由。その1は湿度です。湿度が低いと明らかに“あせも”の発生が減ります。それは8月下旬に日本の湿度が一時的に下がったときにも同様の現象が起こりました。もう1つの理由は、海水浴やプールで汗を流せているからでしょう。つまり汗の発生を温度管理で抑え、かいた汗を上手に流してあげれば汗疹、“あせも”の発症を抑えることができるというわけです。野﨑誠(のざきまこと)わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市・皮膚科、小児皮膚科)院長。国立成育医療センター(小児皮膚科)、東京都立東大和療育センター(皮膚科)勤務。2001年山形大学医学部卒業山形大学医学部皮膚科入局山形県公立置賜病院(山形県長井市)、国立成育医療センター(東京都世田谷区)、はせがわ小児科医院(東京都武蔵野市)などの皮膚科・小児皮膚科を経て、2013年、わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市)開院。院長を務めるかたわら、専門家向け、一般向け、教育機関(保育園、幼稚園、小学校、中学校など)向けの各種講演会、勉強会を精力的にこなす。雑誌他執筆多数。広い年齢層の皮膚病、あざの治療やスキンケアに携わる。わかばひふ科クリニックWebサイト
2018年09月21日専門家・プロ:野﨑誠さあ、今回は日焼けの話をしていきましょう。まずは少し個人的なお話をしましょうか。実は、先日旅行でハワイに行ってきました。行ってみて驚いたことは、現地の人はあまり日焼け対策をしていないことです。日焼け対策をしっかりとしているのはみな旅行者、特にアジア系の旅行者ばかり。現地に住んでいると思しき人は一切何もせずに家の外を歩いているんですね。これにはびっくりました。特に白人の方は日光に弱い皮膚をしているのに・・・。案の定、現地に住んでいる高齢の白人の方のお肌は明らかに紫外線が原因と思われる皮膚のダメージがいっぱい刻み込まれていました。腕の先端部にいくに従って明らかにダメージが強くなっているわけですから、そのような人を見るたびに、皮膚科医としてアドバイスしたい気になってしまいました。休暇のはずなんですけどね。これもまあ職業病でしょう。紫外線の影響の最たるものは発ガン性!では紫外線の影響についてお話をしていきましょう。まず問題です。紫外線は体の細胞のどこに影響を及ぼすのでしょうか?正解は体の遺伝子。DNAと呼ばれるタンパク質です。紫外線の影響は化学的にはDNAの損傷と皮膚組織の障害の2点にあります。1点目。紫外線はDNAの構成成分を壊し、おかしな形にしてしまいます。ほとんどの異常はもとに戻すことができるのですが、極めてまれに、おかしなDNAがそのままになってしまい、ときにはおかしなタンパク質を異常なほど大量に作ってしまうことがあります。これを何と呼んでいるか?はい、ガンです。紫外線の影響の最たるものは発ガン性なのです。もちろん良性の腫瘍も作りやすくなることが知られていますが、皮膚がんの発生は紫外線により明らかに増加することが知られています。ただしガンになるのは紫外線を浴びてから数十年後の話なので、昨日、日に当たりすぎたからといって明日ガンができるわけではありません。2点目、数十年経過しながら徐々に進んでいるのはコラーゲンをはじめとする皮膚の劣化です。一般的にはシワが深くなる。シミができてくる。なんとなく皮膚が汚らしくなっていくという変化が見られます。残念ながらこの変化を回復させることは非常に難しいです。今回お話しするのは、紫外線の影響による直接的、短期的な皮膚の劣化、そうです。日焼けです。日焼けの種類は大きく分けて2種類ある日焼けは大きくSunburnとSuntanの2つに分けることができます。Sunburnは読んで字のごとくSun[日光]によるBurn[やけど]です。日に当たった直後から翌日くらいまでに発生し、紫外線の当たった部分が赤くなって腫れてひりひりするという、ちょうどやけどのような症状が生じます。原因は紫外線によってできた皮膚の炎症で、そのためにやけどと同じようなヒリヒリとした症状を示すのです。まさに熱いお湯がかかったときのやけどのようになりますので、長時間冷やすなど、対策もそれに順じて行なったほうが良いでしょう。Sunburnに対してSuntanはいわゆる通常の日焼けです。一般的に日焼けと言った場合はこのSuntanを指すことが多いでしょう。こちらはSunburnよりも少し遅れて出現します。皮膚の色が赤くならずに黒くなっていく変化ですね。こちらは特に痛みはありません。これらSunburnとSuntanは個人差があることが知られています。どちらかのみ強く出る人、両方ともそれなりに出る人がいます。この反応の出方は遺伝する傾向がありますから、両親の日焼けの経過を知ることで子どもたちの日焼けの傾向を知ることができます。また、この日焼けによる反応は人種差がとてもあります。紫外線に最も弱いのは白色人種、最も強いのは黒色人種で黄色人種はその中間くらいです。なのでハワイで白人の方が日焼け止めをしないで街を歩くなんて「見ちゃいらんない」わけです。皮膚科医としてはですね。紫外線対策の基本は「時間」と「天気」と「場所」さて、紫外線の話を今までしてきました。それを踏まえて紫外線の対策についてお話をしていきましょう。対策の基本は、まず時間と天気と場所です。次に洋服・帽子と日焼け止めとなります。これ、大事ですよ。まず紫外線に当たる時間、つまり紫外線そのものの量に目を向ける必要があります。日が出ていない時間は屋外に出ても紫外線をあびることはありません。太陽高度が上がるにつれて紫外線を吸収するオゾン層を通過する距離が短くなりますので、紫外線の量は増加することになります。次に天候です。晴れた日は当然紫外線の量が多く、それに比較すれば曇りの日や雨の日は少なくなります。それでも紫外線はゼロではありませんので、ある程度の対処はした方が良いでしょう。場所も大事ですね。そもそも緯度によってその日の太陽の上がり方が決まりますので、そこにも注意をはらいましょう。つまり東京よりも緯度の低い沖縄のほうが太陽の光がたくさん降り注ぐことになるので、紫外線対策はより重要になるのです。また場所といってもそんなに大きな話でもなく、日陰を歩けばそれだけで紫外線の量は減らすことができるのです。紫外線対策に有効な「洋服」と「帽子」次に対策として考えるべきは洋服、帽子などによる紫外線の防護策です。帽子や洋服は物理的に紫外線をストップさせますので、上手に使いましょう。最近は日焼けを抑える効果が明示されている洋服もありますので、心配な方は使ってみても良いでしょう。UPFという数字が洋服のタグに付いていることがありますので確認してみてください(数字の読み方は日焼け止めのところでお話します)。サングラスも紫外線予防には使用されますが、こちらもただ濃ければよいというものでもありません。可視光線※も遮ってしまうと瞳孔(どうこう)が開いてしまい、かえって紫外線が目の中にたくさん入ってしまうことにもなりかねません。目とサングラスの隙き間から入る紫外線にも要注意です。可視光線を防ぎすぎず、広い範囲を覆うこともできるサングラスを選んだほうが良いです。※可視光線……太陽光線の種類の1つ。太陽光線は紫外線・可視光線・赤外線などに分けられる。「日焼け止め」選びのキーワードは「SPA・PA」と「紫外線吸収剤」次に日焼け止めの話をしましょう。お店に行くとたくさんの日焼け止めがありますね。その選び方からお話をしていきましょう。キーワードはSPF・PAと紫外線吸収剤です。SPFとは何を意味しているのでしょうか。これはSunProtectionFactorの略で、使用することで日焼けして赤くなるまでの時間を「何倍に」伸ばすことができるかという数字です。SPF・PAのあとにくる数字は、紫外線をさえぎる単純な強さではなく、時間の長さを表しているんですね。では日焼けで赤くなるまでの時間はというと、真夏の正午の快晴のときでおおむね20-~30分です。ですので、この時間(個人差があるので紫外線に弱い人は短めに見積もってみてください)にSPFの数字をかけるとよいのです。ちなみにSPFは紫外線Bに対しての日焼け止め効果。PAは紫外線Aに対する効果です。洋服においては「SPF・PA」ではなく「UPF」で示されます。数値の見方は「SPF・PA」と同じです。さて、このSPFもしくはPAの高い製品はどのようにして作られるのでしょうか。日焼け止めの成分は大きく分けて紫外線散乱剤と紫外線吸収剤に分けることができます。紫外線散乱剤は微小の金属粒子などで、紫外線を皮膚に届く前に跳ね返す成分。吸収剤は紫外線そのものからエネルギーを吸い取ってしまう成分です。つまりSPFやPAが高くなるにつれて多くの散乱剤や吸収剤が使用されることになりますが、「多く使用する」という部分が逆に欠点にもなってしまいます。紫外線散乱剤は可視光線も乱反射させますから多く使うことで白浮きするという欠点があります。また吸収剤はときにアレルギー性のかぶれを起こしてしまうことがあります。従ってSPFやPAはむやみに高ければ良いというものでもありません。アレルギーやかぶれが心配な方は、あえて数値が低めの製品や紫外線吸収剤の入っていない製品を選んだほうがトラブルになる確率は低いでしょう。「日焼け止め」は2時間に一度、塗り足すことさて、少し話を戻していきます。自分が今使っているSPFの製品はどのくらいの時間、紫外線を予防できることになっているか計算してみてください。びっくりするくらい長い時間が出ませんでしたか?日焼け止めを塗ってからもっと短い時間しか経っていないのに、日に焼けて赤くなったことはありませんでした?その理由は塗り方と汗にあります。みなさん、普通は日焼け止めを手に取って薄く塗りますよね。その塗り方はダメです。SPFの計測のときの塗りかたは決まっていて、一般的に考えられている塗り方よりも非常に厚塗りです。カノジョにその塗り方をしたら白浮きすると怒られるくらい。つまり、本来塗るべき量よりも薄く塗っていることで、SPFの数字どおりの結果にならないのです。もう1つは汗の影響です。いくら落ちにくい日焼け止めだったとしても、汗をかけばどんどんその成分は流されていきます。特に子どもは大汗を書きますから、さらに流れていく。一説には2時間でその日焼け止め成分の大半が流されるとか。そのためにSPFの本来の数字以下の性能になってしまうのです。ではどうすれば良いでしょうか。厚く塗ることができないのであれば頻繁に塗り足してください。2時間以内が1つの目安です。汗を拭くことができれば良いですが、それが難しい場合でもしっかりと塗り足すようにしてくださいね。最後に実際に使用するべき基準についてお話をしていきましょう。普段、街なかで数時間使用するくらいでしたらSPFは20~30程度もあれば十分です。そして適宜塗り足してください。なお、肌のトラブルが心配な方は紫外線吸収剤を含まないものの方が良いでしょう。そして、外出する時間帯を選ぶこと。正午前後は太陽も高いために紫外線量も多く、影も少ないので、外出は控えたほうが良いでしょう。逆に1日海に出かけたり、シンガポールなどの紫外線が強い地域に旅行したりする場合はSPF50以上のものを使用します。こちらもこまめに塗り足すことを忘れないようにしてください。またサングラスや帽子・衣類などでも紫外線予防をしっかりと行なうことをおすすめします。「日焼け止め」の扱い、ここに気をつけて!最後の最後のお話を2つさせてください。まず0歳の赤ちゃんですが、実は日焼け止めのトラブルが最も起こりやすい年代です。というのもビタミンが不足する問題が発生しています。食事で栄養を十分に取れない0歳児の場合、紫外線を浴びることで、あるビタミンを生成する必要があります。これは本当に少しだけ、それこそ日陰に数十分程度いてもある程度の量が作られるので、あえて紫外線に当たりに行く必要はありませんが、日焼け止めを使いすぎるとビタミン不足から成長に影響が出てしまうので、要注意です。なお、先程も述べましたがビタミンは日陰を少し歩くだけでも作られますので、日光浴の必要はありません(母子手帳に「外気浴」と書かれているのはそのためです)。もう1つは最後の処分方法です。残った日焼け止めはもったいないと思わずにその年のうちに捨てて下さい。日焼け止め成分の特に紫外線吸収剤は時間とともに劣化する可能性があります。劣化することでかぶれるリスクが上がりますし、日焼け止めでかぶれる人の一部は実は古い日焼け止めを使用したからだったりもするので、翌年まで保管しておいてもあまり良いことはありません。捨てちゃいましょう。秋になっても天気の良いときには紫外線はたくさん地面に降り注ぎます。そして意外に秋も日焼けトラブルの多い季節です。そう、運動会です。なので、もうしばらくは日焼け止めをしっかりと使ってあげたほうが良さそうです。そのときにはこの記事に書かれていることを参考にしてみてくださいね。野﨑誠(のざきまこと)わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市・皮膚科、小児皮膚科)院長。国立成育医療センター(小児皮膚科)、東京都立東大和療育センター(皮膚科)勤務。2001年山形大学医学部卒業山形大学医学部皮膚科入局山形県公立置賜病院(山形県長井市)、国立成育医療センター(東京都世田谷区)、はせがわ小児科医院(東京都武蔵野市)などの皮膚科・小児皮膚科を経て、2013年、わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市)開院。院長を務めるかたわら、専門家向け、一般向け、教育機関(保育園、幼稚園、小学校、中学校など)向けの各種講演会、勉強会を精力的にこなす。雑誌他執筆多数。広い年齢層の皮膚病、あざの治療やスキンケアに携わる。わかばひふ科クリニックWebサイト
2018年09月06日■サプリメントのホントのところこんにちは。内科医で二児の母の岡本彩です。健康に気を使う人がよく飲むサプリメントのうち、科学的・医学的に「効果がある」と証明されたものは、ほとんどないのが実情です。髪の毛を生やしたい人が、髪の毛そのものを食べていたらどう思いますか?「そんなことしても意味ない」とわかりますよね。スイカを食べたら体にスイカができた……そんなこともあり得ません。ところが、コラーゲンやヒアルロン酸など、体を構成する成分を食べると、それがそのまま体に定着すると思ってしまう人もいるようです。でも、小学校で習ったことを思い出してください。食べ物はそのままでは吸収できません。肉ならアミノ酸に分解されて、野菜ならビタミンや食物繊維が吸収されます。「コラーゲン/ヒアルロン酸を飲んだらお肌がプルプルになりました!」という人は、もしかするとプラセボ効果でそう感じているのかも?「酵素」も同じで、酵素入りのドリンクやサプリを飲んだところで、酵素はやはり分解されてから吸収されます。その後、元通りの酵素になるのかはわかりません(可能性はありますが)。飲んだらそのまま体内で酵素として定着して機能するわけではないんです。また、「ある野菜を食べる人が食べない人より健康だった」からといって、「その野菜に含まれる栄養素をサプリメントで摂る」と同じ効果があるかはわかりません。栄養は食事からとるのが基本。食事ならサプリメントと違い多種の栄養素を同時に摂ることができ、吸収の効率もよいのです。■「じゃあ逆の場合は?」と仮説を立てよう「◯◯すると☓☓になる!」と聞いたら、「じゃあ、☓☓の人は全員◯◯したの?」と考えると良いです。たとえば、「ケーキを食べると乳腺炎になる」という人がいますが(実際は食べ物と乳腺炎に直接の関係はありません)、「乳腺炎になった人はみんなケーキなどを食べていたの?」と考えてみましょう。そんなことはなさそうだ、と冷静になれるかと思います。「授乳中は辛いものを食べてはいけない」という説も、「インドや韓国の女性はどうなの?カレーやキムチを食べるのでは?」と考えれば、取るに足らないことがわかります。■本当に効果があるなら、みんな使いたいはずたとえば、「風を当てると遺伝子が変わって髪にツヤが出る」というドライヤーを見たことがありますが、ドライヤーで遺伝子を変化させられるなら、もっと遺伝子治療薬が世の中に広まっていてもおかしくないですよね。薬がなかなか開発できないのにドライヤーで遺伝子が変わるのか?と考えると、根拠は怪しいと気づけます。がんが治ると謳った食べ物やミネラルウォーターなども売られていますが、本当に効果があるなら、誰も手術や副作用がある抗がん剤なんて使わずに食べ物やミネラルウォーターで治しますよね。でも、そうなってないのはなぜ?自分や家族の健康に不安があると忘れがちですが、少し冷静になって考えることが大切です。■誰が何のために、その情報を発信しているのか医学・健康情報のサイトがアフィリエイト目的でないかもチェックしましょう。例えば「◯◯が身体にいい!」というサイトが、その◯◯を成分とするサプリの販売サイトだったという場合です。販売が目的なら、いいことしか書きませんよね。ネットの医学・健康情報には不正確なものが多いですが、鵜呑みにする前にせめて「誰が書いた記事なのか」くらいは確認しましょう。署名がない、匿名の記事は、信用度を一段階下げて読んでも構わないと思います。医師ではなく医療ジャーナリストや医療ライターが書いた文章は確かにわかりやすいですが、科学的根拠のないものも多いです。ただ、残念なことに看護師や助産師でありながら「布ナプキンで経血コントロールができる」などと発信している人もいます。おそらく医師にも誤った情報を発信している人がいるのでしょう。根拠となるデータや論文が引用されているか、といったところまでチェックすれば、「怪しい情報」の大半を選別できます。最近は「メディカルノート」や「メドレー」といった、専門家がきちんと監修した医学情報のサイトがあります。情報の取捨選択の参考にしていただけたら幸いです。
2018年04月01日「東洋医学的アロマセラピー」講座がスタート2017年2月23日(金)から、東洋医学的な技法とアロマセラピーを融合させた「東洋医学的アロマセラピー」講座がスタート。毎回実習を行い、肩こりや腰痛、頭痛などの悩み別のツボ押し&アロマ選びを学ぶことができる。同講座は、2月23日(金)、3月23日(金)、4月27日(金)、5月25日(金)、6月22日(金)、7月27日(金)の全6回、ソフィアフィトセラピーカレッジにて実施される。講座時間は、全日10:30から12:30まで。受講料は、材料費、書籍、レジュメ代込みで44,100円(税込み)。全6回の受講を終了した人には、名前入りの修了証が渡される。講師は、自由が丘にある和奏漢方堂の院長 橋本和也が務める。申し込み及び問い合わせは、ソフィアフィトセラピーカレッジ(電話番号:03-3722-0004)まで。講座の内容「東洋医学的アロマセラピー」講座は、「気とは何か」、「ツボとは何か」といった基本的なことからスタート。ツボと精油の相性などについて学びを深める。肩こりの緩和、自律神経の調整、ストレス緩和、呼吸器・消化器疾患への対応など、日常に役立つ実習が多いのが特長だ。(画像はソフィアフィトセラピーカレッジより)【参考】※ソフィアフィトセラピーカレッジ
2017年11月16日