タレントのモト冬樹が27日に自身のアメブロを更新。妻でミセスモデルの武東由美から“助けて”と電話があった理由を明かした。この日、モトは「妻の危機一髪」というタイトルでブログを更新。「昨日は俺がライルとウォーキングしている間に妻と一緒にマックに行っていたポンムです」と自身らや愛犬達の様子を説明し「ウォーキングから帰り一休みしていると妻からの助けて!という電話」と武東から電話があったことを明かした。続けて「郵便局でコンポ用のダンボールを買ったんだけど風が強くて吹き飛ばされそうになったみたい」(原文ママ)と電話の理由を述べ「俺が駆けつけて無事に帰って来た」と報告。最後に「飛ばされそうになっている妻を想像するとなんだか笑える」とお茶目につづり、ブログを締めくくった。
2024年02月28日ミセスモデルの武東由美が24日に自身のアメブロを更新。夫でタレントのモト冬樹との結婚を無理だと思っていたことを告白した。この日、武東は「50才前に結婚した時」と切り出し「少し合わせて寝ていた?(寝たふり)していたこともありました」と告白。「夜も遅くまで起きていた」といい「私の一番やる気がでる朝がない!これが結婚なら無理だと思いました」とモトとの結婚を無理だと思った出来事についてつづった。続けて「それから自分の生活パターンを50年してきた時間に戻しました」と明かし「モトちゃんにも自分の時間のパターンがあるので私に合わせなくてもOKだし」とコメント。「これからの年代 あまりにも違ってきたら夫婦別室のほうがいいかもと思います」と自身の考えをつづった。一方で「それを話したらご主人の機嫌が悪くなり我慢している方や熟年離婚 別居したりなさる方もいらっしゃるらしいです」とコメント。「なかなか難しい問題だよねとよく話題にでます」とつづり、ブログを締めくくった。この投稿に読者からは「自分のペースが、いいですね」「いろんな生活スタイルがありますよね」「ストレスフリーの生活 大事だと思います」などのコメントが寄せられている。
2024年02月26日タレントのモト冬樹が12日に自身のアメブロを更新。妻でミセスモデルの武東由美が作った凄い夕食を公開した。この日、モトは「妻が夕食を作り待っていてくれました」と述べ「今日の夕食はなんと妻が作ったガパオライス」と武東が作った夕食の写真を公開。「すごいね こんな物できるんだ」と感心した様子でつづった。続けて「焼いたアジ 成城石井の特選豆腐 油揚げと里芋のお味噌汁」とその他のメニューも写真とともに紹介し「妻とコンサートの話をしながらの楽しい夕食でした」とコメント。最後に「今日も美味しくいただけたことに感謝」とつづり、ブログを締めくくった。この投稿に読者からは「とても美味しそう」「目玉焼き、完璧」「作ってみたい」などのコメントが寄せられている。
2024年02月13日タレントのモト冬樹が11日に自身のアメブロを更新。妻でミセスモデルの武東由美も大好きな料理を堪能したことを明かした。この日、モトは「今日の夕食は」と切り出し「妻も俺も大好きな鴨鍋」と武東も大好きだという料理を堪能したことを報告。「鴨鍋専用の汁でツミレと肉を先に入れしばらく煮てから野菜を投入」と調理中の様子を写真で公開した。続けて「成城石井のお豆腐 こくがあって美味しい」とスーパーマーケット『成城石井』の品を絶賛。最後に「〆は卵を入れておじやにしました」と写真とともに報告し「美味しかったな 感謝」と満足した様子でつづり、ブログを締めくくった。この投稿に読者からは「とても栄養バランスが取れたお食事」「美味しそう」「いいですね」などのコメントが寄せられている。
2024年02月12日タレントのモト冬樹が4日に自身のアメブロを更新。アフリカから帰国した妻でミセスモデルの武東由美の肌の状態に驚いた日のエピソードをつづった。この日、モトは「素顔のママで」というタイトルでブログを更新。「妻がアフリカ旅行から帰ってきた時あまりに肌がツヤツヤしていたので驚いたんだけど」とアフリカから帰国した際の武東の肌の状態に驚いたことを明かし「10日間スキンケアだけで一回もお化粧しなかったそうだ」と説明した。続けて「なるほど自然治癒力がアップしたってことか」と述べ「素顔がこんなにきれいだったらずっとお化粧しなくてもいいのにね」と武東の姿を写真で公開し、ブログを締めくくった。この投稿に読者からは「お肌ツヤツヤでとっても綺麗」「素肌美人」「本当に素敵です」などのコメントが寄せられている。
2024年02月06日タレントのモト冬樹が3日に自身のアメブロを更新。妻でミセスモデルの武東由美と恵方巻きを堪能した日のエピソードをつづった。この日、モトは「節分の夕食」というタイトルでブログを更新し、愛犬を抱いた武東との2ショットを公開。「今日の夕食はやはりなんといってもメインは恵方巻き」と述べ「妻と半分づつにしました」(原文ママ)と堪能した恵方巻きの写真とともに報告した。続けて「イワシの煮付け イカと海老芋の煮転がし 沖縄のモズク」とその他に用意した料理の写真も公開し「俺がじゃがいもと大根で作った田舎風お味噌汁」も堪能したことを説明。「高島屋で買ってきただけあって恵方巻きもイワシの煮付けも美味しかったな」と述べ「今日も美味しくいただけたことに感謝」とつづり、ブログを締めくくった。
2024年02月05日タレントのモト冬樹が29日に自身のアメブロを更新。アフリカから帰国した妻でミセスモデルの武東由美を心配する様子をつづった。この日、モトは「休む暇もない妻」というタイトルでブログを更新。「昨日は朝から家の中を掃除してずっと家でロケをしていた」と武東の様子を報告し「昨日アフリカから帰ってきたばかりなのにちょっと心配」とつづった。続けて「まぁ元気な妻なんで大丈夫とは思うけど、、明日もあるんだよなぁ」とコメントし「夜お化粧をおとしてホッとしている妻です」とすっぴんの武東の姿を公開し、ブログを締めくくった。
2024年01月30日ミセスモデルの武東由美が21日に自身のアメブロを更新。アフリカのホテルで禁止されていたことを明かした。この日、武東は「ジンバブエのホテルに到着しました」とアフリカのホテルに到着したことを報告。「広大な敷地にあるリゾートホテルです」と宿泊するホテルについて説明し、ホテル内の様子を写真で公開した。続けて「アフリカのホテルで禁止されたこと」というタイトルでブログを更新。「アフリカでは1人部屋です」と述べ「虫がこないようにスプレーをして窓は絶対にあけないこと!」とホテルで禁止されていたことを明かした。また「猿がすぐにお部屋に入ってくるらしいです」と説明し「猿の親子がすでにこちらを見ている」とコメント。さらに「見たことない鳥も歩いている」といい「お外へ1人ではでれません」とつづり、ブログを締めくくった。この投稿に読者からは「流石アフリカですね」「遭遇したらパニックになりそう」「気をつけてね」などのコメントが寄せられている。
2024年01月23日タレントのモト冬樹が12日に自身のアメブロを更新。症状が改善せず妻でミセスモデルの武東由美と同じ病院を受診したことを明かした。5日のブログで、モトは「湿疹がひどいので妻は別の皮膚科に行ってきたみたいだ」と報告し、武東の症状について「原因がはっきりしていない」と説明。「俺も若干よくなっているとはいえ完治には程遠い感じ」と自身の症状について明かしつつ「もし妻の症状が改善してきたら俺もその皮膚科に行こうかな」とつづっていた。この日は「妻の症状が一週間でかなり改善した」といい「俺も一緒に妻が診てもらっている皮膚科に行ってきました」と病院を受診したことを報告。「要は何が原因というより妻も俺も年齢的に免疫が下がってきちゃってるからみたい」と説明し「確かになぁ」と納得した様子でつづった。続けて「俺も一週間で痒みが取れるといいんだけど」と願うようにコメント。最後に、武東との2ショットを公開し、ブログを締めくくった。
2024年01月13日東京・帝国劇場にて上演中の『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』原作映画のバズ・ラーマン監督と、訳詩を担当した松任谷由美の対談が、このほど実現した。同作はバズ・ラーマン監督による同名映画のミュージカル化作。2019年7月にブロードウェイで上演され、世界中でヒットしている。1899年のパリで激しい恋に落ちたアメリカ人作曲家クリスチャン(井上芳雄/甲斐翔真)と、ナイトクラブ ムーラン・ルージュの花形スター サティーン(望海風斗/平原綾香)の恋の物語を描く。世界7都市で開催されてきた同作の日本版ならではの試みとして、松任谷由実ら、ミュージックシーンで活躍するアーティスト達による日本語の訳詞提供が行われている。いしわたり淳治、UA、岡嶋かな多、オカモトショウ(OKAMOTO‘S)、栗原暁(Jazzin’park)、KREVA、サーヤ(ラランド)、ジェーン・スー、Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)、Daoko、TAX(MONKEY MAJIK)、浪岡真太郎(Penthouse)、ヒャダイン、松尾潔、宮本亞門、Mayu Wakisakaといった計17名のそうそうたる顔ぶれが揃い、マッシュ・アップ・ミュージカルらしく、様々な個性や才能を集結させた。今回、原作映画『ムーラン・ルージュ』生みの親であるバズ・ラーマン監督は、日本プロダクション版ミュージカルの開幕を見届けるために来日し、松任谷との対話を実現。松任谷との対面は、ラーマン監督も今回の来日において楽しみにしていたという。ラーマン監督が「観客への伝わり方や日本語の選び方をわかっていらっしゃる。他国のプロダクションでは、アーティストによる訳詞はやったことがなく、画期的で素晴らしい挑戦になりました」と称えると、松任谷は「『Your Song』を訳詞することになって、私、燃えたんです。14、5歳の頃に衝撃を受けた歌だったので。実際に訳してみると、ものすごく繊細な歌詞なんですね。意訳しか出来ないけれどその心情を日本語にしたいと強く思いました」と熱い思いを明かす。松任谷はまた「70年代のシンガーソングライターにありがちな字余りの曲で、日本語に置き換えるのは難しかった。英語は1音節に1ワードだけど、日本語は1音節にカナ1文字しか乗せられない。けれど、受けとり手は、一つの言葉ですごく沢山の情報を得る感性を持っているので伝わると思いました」と振り返り、ラーマン監督は「どうするのかと案じていたけど、歌詞がメロディーに綺麗に乗っていて感動しました」と太鼓判。さらにラーマン監督は「映画で『Your Song』を選ぶにあたっては、ものすごく考えたんです。クリスチャンの才能が込められた曲で、サティーンとクリスチャンはこの1曲で恋に落ちなければいけない。シンプルで、オペラのように壮大に終わる曲が理想でした。もう一つ、映画を作った21年前は権利の問題からポップミュージックをミュージカルに使うなんてありえなかったんです。そこで僕は知り合いではないのにエルトン・ジョンに電話して、会いに行きました。映画に使いたいと話したところ、彼は直感で承諾してくれた。その上、他のアーティストに電話して説得までしてくれて。人気のポップミュージックをたくさん使えたのは、エルトンのおかげなんですよ」と映画の秘話も。松任谷は「そうだったんですね。私も影響力がそこそこあるので、今回私が参加したことで多くのアーティストが熱意を持って参加してくれたかと思います」と語った。華やかさと切なさが同居するラーマン監督の映画と松任谷の楽曲は世界観に重なる部分があり、松任谷も対談後に2人の描く世界の共通点を「うたかたの泡」と表現したという。共にハワイアンなテイストの装いで初対面を果たし、ラーマン監督は、松任谷のエンタテイメント・ショーを事前に映像でチェックしながら「AMAZING!」を連発、ショーの秘密についても尋ね、2時間の対談で、意気投合した。きょう12日18時30分からのフジテレビの音楽特番『FNS歌謡祭 夏』では、同作のキャストである平原綾香と井上芳雄が出演し、帝国劇場から日本語訳詞による「Your Song」をテレビ初披露する。
2023年07月12日ドラマ『大好き!五つ子』(TBS系)シリーズなどで知られる、俳優の森尾由美さんが2023年1月28日に自身のInstagramを更新。2022年6月に生まれた、初孫・香澄さんとのツーショットを公開し反響を呼んでいます。56歳で『おばあちゃん』に若々しい姿とのギャップに驚く声も初孫が誕生し、56歳で『おばあちゃん』になった森尾さん。Instagramでは、撮影現場を家族が訪れたことを報告し、香澄さんを抱っこした写真を投稿しました。※画像は複数あります。左右にスライドしてご確認ください。 この投稿をInstagramで見る 森尾由美(@yumimorio_official)がシェアした投稿 森尾さんの若々しい姿と、孫がいるおばあちゃんというギャップが反響を呼んだ、今回の投稿。ファンからは「『お母さん』のほうがしっくりくる」「56歳には見えない」と多くのコメントが寄せられました。・まだ『ママ』でも通りそうです。・本当におばあちゃん?まったく見えない!・この若々しさで『おばあちゃん』だと…?違和感しかない!すでに孫を溺愛している様子が伝わってくる、森尾さん。孫の香澄さんは、まだ言葉も満足に話せないほど幼いですが、成長したら森尾さんのことを『おばあちゃん』や『ばあば』と呼ぶようになるのでしょうか。[文・構成/grape編集部]
2023年01月29日’80年代を代表するアイドルの森尾由美さん(56)とつちやかおりさん(58)。現在は、お2人とも孫に恵まれ充実した日々を送っているそう。“おばあちゃん”として森尾さんより1年先輩のつちやさんですが、実はアイドル歌手としても1年早いデビュー。本誌では掲載しきれなかった、当時の思い出をWEB限定で公開!本編はこちら「堀ちえみ、小泉今日子、中森明菜など人気アイドルも数多く誕生したため、その年デビューのアイドルは“花の82年組”とよばれてきた。一方、翌1983年にアイドルデビューした森尾さん含む松本明子、桑田靖子などは“82年組”の活躍と対比され“不作の83年組”と呼ばれることも……。森尾:私は82年組みたいな、フリフリ衣装を着てみたかったけど、差別化を図るために着せてもらえなかったんです。ハイヒールとかも履かせてもらえなくて、バッシュでしたから。思い描いていたアイドル像と、私の売り出し方がかけ離れていたから、当時はやさぐれた感じでやってました(笑)。つちや:私もアイドル曲を歌わせてもらえなかった。制作チームがオフコースさんとか甲斐バンドさん、チューリップさんと一緒で、アルバム中心に売っていくというアーティスト系の売り方で。歌手としては、異端児的なイメージにして、ギャップを作りたかったんでしょうね。でも、私だってみんなみたいにフリフリ着たいーって思ってた。森尾:大人の戦略が渦巻いてて、何も教えられないまま、色々なことが進んでいきました。当時はレコード会社とか、レコード屋さんとかで、手売りもよくやっていました。つちや:地方なんかに行くと、くまなくレコード店を周ったりね。まあ、みなさんが想像する演歌歌手の方達のような営業スタイル。キョンキョンであろうが明菜ちゃんであろうが、みんなそれをやっていたと思う。今は多分、あまりないんだろうな。森尾:移動が大変で、ぎりぎりに夜行列車に飛び乗ったりしていました。つちや:地方で歌うときは、オープンリールのテープにカラオケ用の音を録音して、それを持ち歩いていたんですが、その音源をマネージャーが忘れてしまったことも。母に電話して、東京から名古屋まで届けてもらったこともありました。いまなら、スマホかなにかで、データで送れるんでしょうけど。森尾:とにかく忙しかったけれど、若くて体力があったからなんとかなった。とはいえ、マスコミの目もあるので、遊ぶときは気をつけないといけません。そんなアイドル時代、よく布川(敏和)さんとお付き合いできましたよね。つちや:22、23のときには同棲していて、その頃、ふっくん宛に、由美ちゃんからの留守番電話が入ったことがあったの。森尾:たしかに布川さんとは、いろんな友達と一緒に遊んでたんですよ。つちや:で、それを私がたまたま聞いてしまって……。それを知らないふっくんは、私に黙って遊びに行こうとするわけ。それで「じゃあ、私も行くって」って言い出すと、もうすごい剣幕で「お前は来なくていいよ、男だけの遊びなんだから」って、こんなスピードで走れるのっていうくらいの速さでマンションから出ていって(笑)。羽を伸ばしたかったんだろうな。森尾:今思えば、かおりさんとお付き合いされてて一緒に住んでるのに、よく遊びにきていたなって思うんですけどね(笑)。つちや:あの頃の仲間はみんな恩人。私は結婚してから20年ばかり、家事と育児に追われて仕事をお休みしちゃったりしてたんですけど、(松本)伊代ちゃんだったり(早見)優ちゃんだったりが、ずっと芸能活動を続けて、80年代アイドルのポジションを守ってくれていた。だから、子育てが終わって復帰したときも、私の居場所があったんです。
2023年01月25日菅田将暉主演の人気ドラマを映画化する『ミステリと言う勿れ』で描かれるエピソードが、ファン待望の通称“広島編”であることが解禁され、原作者・田村由美が描き下ろしたイラストが公開された。放送終了後のSNSでは続編を期待する多くの声があげられ、さらに2022年日本民間放送連盟賞・番組部門 テレビドラマにて「優秀賞」を受賞したドラマ「ミステリと言う勿れ」。昨年、映画化発表がされた際には「続編を待ち望んでいました!めちゃくちゃ楽しみ!」「大好きな整くんにスクリーンで会えるなんて最高です!」など映画化を喜ぶ多くの声でSNSは盛り上がった。原作コミックス2巻から4巻で描かれている通称“広島編”では、広島を訪れた主人公の久能整(菅田将暉)が狩集家の一族の遺産相続の謎に巻き込まれるというストーリー。ドラマシリーズでも描かれなかったエピソードを、映画ならではのスケールの大きさと繊細かつ見ごたえのある濃厚な物語で紡ぐ。原作ファンの間でも特に高い人気を誇るエピソードであり、映画化が解禁された際にもSNSでストーリーに関する予想合戦が繰り広げられ、広島編の映画化を望む多くの声が挙げられていた。また、今回の広島編の解禁につき、広島の路面電車の前に佇む整のバックショット、さらには田村由美描き下ろしイラストも公開。後ろ姿の整と広島の街を走る路面電車・広電の哀愁が漂う雰囲気は漫画の中からそのまま出てきたかのように錯覚するほどの完成度で、見る人の心を温かく解きほぐすようなビジュアルに。描き下ろしのイラストでは整と広島編で描かれる狩集家をはじめとした個性豊かなキャラクターたちが大集合した豪華なイラストとなっており、今後解禁される俳優陣にも期待が高まる。『ミステリと言う勿れ』は秋、全国東宝系にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ミステリと言う勿れ 2023年秋、全国東宝系にて公開予定©田村由美/小学館©フジテレビジョン
2023年01月24日’80年代を代表するアイドルの森尾由美さんとつちやかおりさんは、現在、孫に夢中。メロメロすぎて、ときに甘やかしてしまうことも……。でもそんな孫の存在が、50代を明るく楽しく生きる糧になっているのだとか。つちやかおりさん(以下・つちや):お孫さん、まだ6カ月でしょ。(紙袋を渡しながら)これ、よかったらどうぞ。森尾由美さん(以下・森尾):わあ、ベビー服ですか。すっごくうれしい!かおりさん、ありがとうございます。ちょうど1年前、松本明子ちゃんプレゼンツの昭和アイドルのイベントがあって、布川(敏和)さんとご一緒したんです。そのときに「お孫さんおめでとうございます」ってお話をしたんですが「うん、まあね」とクールな対応。男性ってこんな感じなのかなって思ったんです。つちや:えー、全然クールじゃないと思う(笑)。昨年、コロナで延期になっていた子供たちの結婚式に出席したときは『孫はオレが抱くんだ』と言い張っていたくらい。それでギャーと泣かれて(笑)。離婚したとはいえ、子供の親で、孫のおじいちゃんだからね。何かあれば家に集まるし、撮った写真をSNSでアップしまくっているし。森尾:なんだ、ふっくんもしっかりお孫さんに夢中なんですね。――中森明菜、堀ちえみ、小泉今日子、早見優らが同期の“花の’82年”に歌手デビューしたつちやかおりさんと、その翌年にデビューした森尾由美さんは、高校の先輩後輩で’80年代のアイドル全盛期を支え合ってきた存在。今も若々しく、そしていきいきと女優やタレントとして輝く一方、プライベートでは“おばあちゃん”になっているのだ。森尾:夕結(ゆい)ちゃんは、いくつになったんですか?つちや:一昨年の5月に生まれたんで、今、1歳7カ月。由美ちゃんのところの香澄ちゃんより、ちょうど1歳くらいお姉さん。インスタで写真を見たけど、香澄ちゃんを見る由美ちゃんは、ヨダレが出るほどの笑顔になっているね。森尾:もう舐めんばかりに見入つちや:う。私、孫の名前を呼ぶときの声のトーンが、犬を呼ぶときと同じように、一段、高くなるんです。だから孫を呼ぶと、犬が間違えて来ちゃったりするんです(笑)。主人には「あんまりデレデレになるな」と注意されるくらい。つちや:なんで?全然、いいじゃない。森尾:ですよねえ。でも、娘たちには娘たちの育て方もあるから、あまりグイグイいかず、彼女の考えを尊重しつつサポートするって心がけています。つちや:孫は子供以上にかわいいって言われているくらいだから、しょうがないよね。■娘だけでなく父になる娘婿もサポート森尾:娘が生まれたときも、もちろんかわいかったけど、出産したばかりで必死さとか責任感のほうが先に出てしまいますもんね。孫の場合、やっぱりそういうところの違いなのかな。つちや:私の場合、最初はあえてクールに「なんか困ったら手伝ってあげるわ」くらいに言っていたんだけど……。会うたびに成長を感じて、反応もどんどんかわいくなっていく。だからやっぱりデレデレになって、いろんなものを買っちゃう。森尾:やっぱりそうなりますか。つちや:クリスマスとは別に、クリスマス前のプレゼントとか。そしたら娘から「何回クリスマスがあるの」って怒られたりして(笑)。森尾:ベビー服は、娘の趣味もあるから一存では決められないんです。でも、彼女たちなりにつましく生活しているようなので「これ欲しいけど、高いな」って迷っているものがあれば、即、もうほんとに即、買ってしまいます。娘の妊娠生活や出産の際には、“母親の先輩”として支えた2人だが、コロナ禍ということもあり、感染対策にはかなり気を使ったという。つちや:娘ちゃんは順調に妊娠期間を過ごせたの?森尾:切迫早産で、お医者さんから入院かもって言われてたんです。つちや:でも、コロナ禍じゃお見舞いにいけないよね。森尾:その不安がすごくあったみたいで、先生と相談し、絶対安静にするという約束で自宅で妊娠生活を送ったんです。いざ出産となったときは、私たち夫婦で病院へ連れていくことになっていたから、私も、夫もコロナに感染しないよう、十分、気をつけていました。つちや:私の娘はつわりがひどくて、それが治ったと思ったら恥骨を痛めて、トイレに行くのも一苦労。だから、コロナ禍でも、私が手伝わないわけにはいかず、マスクを三重くらいにして、ご飯を作りに行ったり。森尾:私もご飯の準備をしていました。娘から「今日はおうどんが食べられたから」って聞いて、翌日におうどんを買っていくと、「見たくもない」って(笑)。私は娘の気持ちを理解できるけど、旦那ちゃん(娘婿)が大変そう。「妊婦は気持ちの浮き沈みもあるし、本人はつらいから寄り添ってあげてね」って、フォローしていました。つちや:今の若い男性の子育てに対する意識って、昔とだいぶ変わってきてると思う。娘の体調が悪そうなときは、すぐに「有休取るから」って言ってくれるの。森尾:主人が昭和かたぎなタイプなので、すぐに有休取る旦那ちゃんを見て心配な部分もあるようなんですが、女性から見ればこんなに優しくて、家事も育児も積極的な旦那さんはうらやましい!つちや:だよね。だから旦那ちゃんにはおいしいご飯を作ってあげたいし、一緒にお酒飲もうよって言ってみたりしているの。森尾:わかります、わかります。娘夫婦がケンカすると、旦那ちゃんの肩ばっか持っちゃう。娘は怒るんですけど(笑)。つちや:娘にとっては、自分の母親なら気を使わず頼りやすいし。近くに引っ越してきてよかったなと思います。■「おばあちゃん」と呼ばれることに抵抗は?森尾:イベントごとも増えました。いまは誕生日ばかりじゃなくて、生まれて半年を祝うハーフバースデーとかもあるんですね。だから家族で集まる機会が増えました。つちや:YouTubeで家族の様子を公開すると再生回数が何十万回とかになって。森尾:やっぱり、家族だんらんが見たいんですよ。ふっくんもよく参加しているみたいですしね。つちや:そう、家族の集まりのたびに、「オレも」ってやってくる(笑)。恐る恐る、孫を抱いたりして。森尾:お孫さんにはなんと呼ばれたいですか。やっぱりおばあちゃん?つちや:私は“かかちゃん”なの。かおりの“か”をとって、かかちゃんって。今は、「かか、かかー」って呼んでくれる(笑)。森尾:かわいい!私は“おばあちゃん”でよかったんですけど、娘が「さすがに申し訳ない」と気を使ってくれて……。その結果、孫の前では“グランマ”と呼んでくれています。つちや:私もおばあちゃんでも、ばあばでも、全然、平気。ただ、ちょっとオリジナリティをつけたかっただけ。ちなみに元夫は「ふっくんって呼ばせる」って、ずっと言い張ってて。森尾:うちの夫も、なぜか「お兄さん」って呼ばせようとしてたんですよ。つちや:男性陣の発想はおもしろい。でも「ふっくん」は子供たちにやめてって言われて、けっきょくは“じいじ”で落ち着きそう。森尾:なんと呼ばれようと、孫がいるだけで楽しいですからね。つちや:孫や子供たちと一緒にご飯を食べてワイワイできたりして、今がいちばん楽しい。年をとるのも悪くはないな、と。ただ、体はいろんなところにガタが来て、あちこちが痛い(笑)。森尾:私も孫と一緒にいるためには、やっぱり体力は必要だなって思いました。娘に「公園に一緒に行ってきて」と頼まれたとき、パーッと行けるフットワークだけは維持しておきたいですね。孫は夫婦で頑張って育てていくと思うので、私たち夫婦は、そのフォローをしていきたい。つちや:50代をどう過ごすかで、その後の人生が変わるって聞くけど、孫のおかげで、明るく楽しい日々を送っています。今が充実してるって思えることが、すごくうれしいです。森尾:孫の力は偉大ですね!【PROFILE】森尾由美’66年、東京都生まれ。’82年のドラマ『ねらわれた学園』に出演。『オールナイトフジ』の司会などバラエティ番組でも活躍し、’94年から改題を経て続く『はやく起きた朝は…』は放送開始29年目。現在放送中のドラマ『三千円の使い方』(東海テレビ・フジテレビ系/毎週土曜23時40分~)では主人公の母・智子を演じるつちやかおり’64年、東京都生まれ。’79年、『3年B組金八先生』の第1シリーズで女優デビュー。’91年の結婚を機に20年ほど芸能界から離れるも、1男2女の子育てが落ち着いたことから、’12年に復帰。現在は舞台を中心に女優として活躍。YouTube「つちやかおりチャンネル」では料理・ライブ・ファミリーの様子を配信中
2023年01月21日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。「自分ならどうするだろう?」という視点を例えばレストランで、ウェイトレスがお客に理不尽な言葉を投げつけられているのを目撃したらどうするでしょうか?誰かがセクハラやパワハラめいたことを言われていたら?いじめに遭っている子どもを目撃したら、止めに入ることはできるでしょうか?アメリカABCネットワーク制作の『What would you do?』は、そんな場面に遭遇したときの「あなたならどうする?」をモニタリングする番組で、YouTubeに字幕付きでも紹介されています。役者たちがレストラン、公園、バー、路上などでトラブルを演じます。少年たちがホームレスをバカにする。レストランでお客がウェイトレスにしつこくセクハラまがいのことを言う。『夫」が『妻』を罵倒する。番組では、そんな場面を見た人たちがどうするのか、というところに焦点を当てます。例えば、アイスクリームスタンドで注文しようとしている男性がいます。彼は字が読めないので、当然メニューを読めない。それを店員は「ありえない!教育を受けていないなんて信じられない」と罵倒します。すると後ろに並んでいた女性がメニューを読んであげて、店員に向かって「ひどいこと言うんじゃない。誰もが平等にサービスを受けるべきだ」と怒りの声を上げます。特に人種差別、障害者差別について、まわりにいる人は猛然と抗議をするのです。また、スーパーマーケットで女性教師が子どもたちのための文房具、そして自分の食べるものなどを買おうとする。ところがお金が足りない。クレジットカードも使えない。後ろに並んでいた人は、足りない分を払うことを申し出たり、中には全額払うと言う人がいます。子どもたちの教育は大切だ。その手伝いができたらうれしい、と。テレビ番組なので、番組にふさわしい場面だけを切り取っている可能性は否めません。最初に観たときにはすべて『芝居』『演出』かもしれないと思ったのですが、立ち向かう人たちの様子からそうとも思えないのです。驚くのは、他人が困っていることに堂々と介入して意見を述べることです。「あなたには正当なサービスを受ける権利がある」「あなたは自分を脅かすものから自分を守らないと」「誰もが大切にされるべき」。人の善意、そして正義感あふれる言葉を聞くと、世の中はそう悪くはないのかもしれないと思います。私たちがそんな場面に遭遇したとき、不当に扱われる人を見たときに、そこに介入していけるでしょうか。トラブルに巻き込まれたくない、と見て見ぬふりをして通り過ぎる気持ちもわかります。それも自分を守ることの一つです。でも、自分がハラスメントに遭っているとき、誰かが支えてくれたら救われた気持ちになるでしょう。人通りの多い道で転んで骨を折ったとき、駆け寄ってくれ、救急車を呼んでくれたのは一人のおじさまでした。善意は行動なのですね。「もしもそれが自分だったら」と立場を変えて考えてみると、そんなとき「どうしたらいいのか」見えてくるかもしれません。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年12月11日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。心地よい、を選ぶ映画『かもめ食堂』が好きで、もう10回以上は観ています。群ようこ原作のこの映画は、フィンランドのヘルシンキの小さな『かもめ食堂』をめぐる人々の物語。登場人物たちの感情を抑えたやりとりは何とも味があり、リラックスして観られるのが魅力です。小林聡美、もたいまさこらの抑制された演技に不思議に惹きつけられます。癖になると言っていいかもしれません。取り立てて物語のアップダウンはないのに、また観たくなる、奇妙で平和なムードのある映画です。はらはらしたり、シリアスな物語に疲れてしまうようになりました。体のどこかに力が入ってしまうのか、観終わるとぐったり。新しいものを追いかけるのではなく、心地いいことを選んでいく。そんな年代なのかもしれません。『かもめ食堂』を観ていて心地いいのは、登場人物が多くを語らないということがあるかもしれません。説明も感情を吐露し合うこともない。言葉の間合いや、抑えた表情で伝わってきます。そして、『日本人のソウルフード』としておむすびが出てきます。またサーモンの網焼き、唐揚げ、シナモンロールも登場します。一つ一つの食材を丁寧に扱い、丁寧に調理していく描写に静かな感慨を覚えます。この映画の心地よさは、私たちの日常を心地よくするヒントになります。登場人物たちが丁寧な言葉で会話していること。それは小津安二郎の映画で交わされる父と娘の丁寧な言葉づかいのようです。丁寧であることの心地よさ。丁寧に接することは、相手を大切に思っているというメッセージでもあるのです。丁寧にすると、自分自身も心地いいはずです。この循環が、世界をまろやかにしていくでしょう。世界が穏やかであるには、ひとりひとりの言葉や態度から始まるのですね。『かもめ食堂』の中に、こんな会話があります。「フィンランド人はとても穏やかです。どうしてでしょう?」そこでお客のひとりである青年がこう言います。「フィンランドには、すぐ近くに森があります」ここにも気づきがあります。森は、無意識の象徴でもあります。静かな、自然豊かな場所で自分を見つめる。自然に癒され、身体も心も緩める。自然と共にあるという感覚は、日本人と近いのかもしれません。自分が心地よいと思うことを大切に。『かもめ食堂』は、リラックスしたいときの処方箋なのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年11月27日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。神様と約束した時間を生きる神様と約束した時間が、あと120日だとしたら……。元気で過ごす120日なのか、それとも弱っていく120日なのか。どう生きるかはそれ次第ですが、それまで体験したことのない体の衰えと共にある時間と考えるのが妥当でしょう。大好きな友人が若くして亡くなったとき(これが、彼女が神様と約束した時間だったんだ)と思って、その死を受けとめようとしました。受け入れ難いことであっても、それは起こってしまった現実です。そのとき私の胃腸は動かなくなり、食べたものを消化できなくなりました。その症状は、現実を消化できないことと重なります。悲しい現実と自分の心の折り合いをつけることがこんなにも難しいことか。身体も教えてくれました。直木賞作家の山本文緒さんは、2021年に膵臓がんで亡くなられました。58歳、それが、山本さんが神様と約束した時間でした。膵臓がんと診断され、余命4ヶ月を宣告されました。抗がん剤治療がうまくいって9ヶ月。山本さんが余命を宣告されてから綴った日記『無人島のふたり』(新潮社)には、命を終える日へ向かう悲しさ、葛藤、焦燥、諦め、希望……そして、アップダウンを繰り返しながら弱っていく体調が記されています。肩に力の入った文章ではなく、後世に何かメッセージを残さなければという気負いもなく、ただ余命を告げられた日常と、胸の中に吹き荒ぶ思いが綴られています。書くことを手放さない作家の矜持も感じます。1994年に亡くなった安井かずみさんも、最後の日々を綴った『ありがとう!愛』(大和書房)という詩集を残しました。出版されることを前提に書かれたのかどうか、それはわかりません。最期まで夫の加藤和彦さんを愛し、キリスト教の洗礼を受け、ただただ愛と感謝を綴った詩集です。「金色のダンスシューズが散らばって私は人形のよう」この言葉が絶筆となりました。最後の言葉に、安井さんの無念さが閉じ込められているようで、胸が痛みます。言葉を綴るということは、ただただ自分を見つめ続けることだと思っています。アーティストのための作詞をするために物語を作りますが、すべて『自分』を通して生まれるものです。それは自分の経験を通して……ということではなく、自分がどのように世界を見つめているか、ということの表れでもあります。ですから、言葉を生業とするものは、書くことを手放せない。自分がこの状況の中で何を感じ、どんな感情を抱くのか、それを見ずにはいられない。それを記録せずにはいられないのです。なぜなら、書くことが自分に向けての存在証明だからなのです。神様と約束した時間がどのくらいあるのかわかりません。私たちは常に『余命』を生きているのかもしれません。時間を、そして自分を大切に大切に抱きしめながら、生きていきましょう。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年11月20日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。この波立つ時代を生きるためにこの地球に住む79億人(2022年)の人間が同じ方向を目指して歩んでいたら……。世界のあちらこちらで波立っているような今、79億人の人間が共通して持っているものがあるとしたら、それは命と愛ではないでしょうか。そんな理想主義者のような、夢を見るようなことを思ってしまうのは、この混沌とした時代に少し草臥れているからなのかもしれません。30年ほど前、1曲のクリスマスソングに出会いました。友人が是非観てほしいとプレゼントしてくれたデヴィット・フォスターの長編ミュージックビデオの中で、ナタリー・コールが歌った『クリスマス・リスト』です。デヴィット・フォスターのピアノでナタリー・コールが語りかけるように歌っている場面を、今でもよく覚えています。大人になったけれど叶えたい願いがあるの。必要としている人のために。戦争が起きないように。奪い合わないように。みんなに友達がいて、正義が勝つこと。いつも愛があること。これが私のクリスマスの願い。『クリスマス・リスト』がリリースされた1990年、イラクがクウェートに侵攻し湾岸戦争が起こりました。砲撃が開始された時のニュース映像を今でもよく覚えています。科学は進歩しても、人間の精神は進化しないのだと落胆しました。そんな時期にこの歌を聴き、今、私たちに必要なのはこういうことなのだと強く思ったのです。『クリスマス・リスト』は、エイミー・グラント、バーブラ・ストライサンドなど多くのアーティストによってカバーされました。16年後、この歌を平原綾香さんに歌ってほしいとプロデューサーにプレゼンをし、日本語詞による『CHRISTMAS LIST』を発表することができたのです。自分に何ができるのだろうか。大きなことでなく、自分の小さな両手でできること。79億人の人間が問い続けていけば、波立つ世界に穏やかな風が吹き渡るのではないか。今ならまだ間に合うのではないか。悲しいニュースに触れるたびに、こんなことを考えます。考えなくては、と思います。誰もが持っているものを、大切にすればいいだけのこと。シンプルに、原点に立てばいい。大切なものを、大切にするだけ。命を大切にすることは、愛することを学ぶことなのかもしれません。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年11月13日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。「そうか、君はもういないのか」と思うとき「そうか、君はもういないのか」作家の城山三郎氏が妻の容子さんが亡くなった後に書いた随筆を読みました。容子さんとの出会い、結婚生活を書いたいくつかの未完の原稿を次女の井上紀子さんの手によりまとめた随筆です。最愛の人が、本当に最愛であったことを知るのは、失ったときなのかもしれません。城山氏は容子さんと出会ったとき、「間違って、妖精が天から妖精が落ちてきた感じ」と思い、その思いは結婚生活を通して変わることがなかったそうです。容子さんに先立たれ、城山氏はその現実を心の中にのみ置いていたと、次女の井上紀子さんは語ります。お葬式で喪服を着ず、お墓参りもせず。そして自宅に帰ることなく、ずっと仕事場で寝起きしていたそうです。「そうか、君はもういないのか」このつぶやくような一行を、私は母が亡くなって、愛犬のラニが亡くなってからふと思い出します。死が生命活動の終わりだとわかっていても、私は不思議でなりません。もういない、もう会えないという現実の凄みに、胸を掻きむしられるような喪失感を覚えます。私の腕の中で力なく身を委ねていたラニが、ある瞬間、くっと首をもたげ、驚いたような顔をして私を見たあの瞬間に、ラニの心臓は止まってしまいました。どこに行ったの?と何度も叫びました。いままで名前を呼べば私を見たラニは、どこに行ってしまったのか。空のハウスを見るたびに、いつも寝ていたソファの片隅に目をやるたびに、「もういないんだ」と、わかっているはずの現実を確かめる。すると、胸の奥にあるぽっかりとした空洞に気づくのです。この空洞を埋めるのは、悲しさよりも出会えたことへの感謝なのでしょう。たくさんの贈りものをもらったことに気づいていくことなのだと思います。母が亡くなってしばらくしてから、日常の中に母の愛が宿っていることに気づきました。母がしてくれたことを娘にしている。母が苦しいときも希望を見出しながら前を向いていたように、私もそうしている。ラニは私に無償で愛することを教えてくれた。この世界から旅立ったとしても、大切なことを残してくれている。それでも「そうか、君はもういないのか」と思うことがあります。振り子のように思いを行ったり来たりさせながら、時が経てばいつかその現実に馴染んでいく。でも、それもせつないのです。いないことに慣れていくのが怖い気もするのです。喪失感は執着なのでしょうか。まだその答えは、私の中でまだ見つかりそうもありません。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年11月06日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。小さな命の大きなドラマベランダのイタリアンパセリの鉢に、蝶々の幼虫を2匹見つけました。グリーンの体に黒の横縞。その縞にオレンジ色のドット。足?に黒のドット。葉を食べている様子はなく、動かずにじっとしている。昆虫にまったく詳しくないのですが、これはただものではない感じがして、そのままそっとしておきました。調べてみると、どうもキアゲハのようです。キアゲハはセリ科の葉を好むとのこと。イタリアンパセリについていたところを見ると、やはり間違いはなさそうです。冬に向かうこの時期に幼虫だとすると、蛹(さなぎ)になって越冬するのでしょうか。寒さよけはいらないか。何か蛹になりやすい木の枝を鉢に刺した方がいいのか。無事に羽化してほしく、いろいろ調べています。20年近く前の夏のこと。無農薬野菜に緑色の立派な青虫がついてきたことがありました。飼育箱に野菜の葉を入れ、木の枝も立てるようにして入れ、飼ったことがあります。蛹になってからどのくらいの日数が経ったか忘れましたが、夜遅く、ガサゴソと音がして飼育箱を覗いてみると、蛹の裂け目から明るい浅葱色の羽が現れたのです。アオスジアゲハでした。蛹から出て、新しい自分を確かめるようにしばらく羽を開いたり閉じたり。しばらくその様子を家族で眺め、飼育箱を開いて放しました。アオスジアゲハは私たちのまわりをひらひらと回り、そしてゆらゆらと飛んでいきました。浅葱色の紋様が月明かりの中でひらめいて。変容する命の不思議を味わった満月の夜でした。蝶は蛹の中で体を溶かし、体を作り変えます。正確に言うと不必要な部分が溶け、それは体を作り変える栄養分となります。あの小さな蛹の中で、大変なことが起こっているわけです。違う姿に変容する。これは私たちにも起こることです。私たちは何度となく苦しい気持ちを味わい、困難な時期を迎えます。どうにもならない気持ちをどうしていいかわからずに、悶々としてしまう。そんな真っ暗なトンネルを抜けるためには、心を成長させなければなりません。意識を変える、古いやり方を手放す。新しい自分になる。それは思うよりも難儀なことです。腹に落ちる、目から鱗が落ちる、という言葉の通り、頭でわかっているだけでは変われない。蝶のように、じっと自分という蛹の中で、より成長した自分に作り変えていく、変容していく。一つずつ、いまできることから始めてみる。自然は、偉大な先生です。自然が教えてくれることに耳を傾ける。目を見張る。心で学んでいく。キアゲハの幼虫が無事に羽化するために何かできることはないか調べてみましたが、自然のままに、彼らのあるがままに。小さな命の大きなドラマを見守ろうと思います。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年10月30日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。素直な気持ちを言葉にのせてマスクを手放せなくなって3年。野外ではマスクを外すよう厚生省からお知らせがありましたが、まだほとんどの人がマスクをして歩いています。コロナ禍が始まった頃は異様な光景でしたが、いまではすっかり日常です。やはり顔の下半分を隠してしまうと、表情がわかりません。見様によっては怒っているようにも、無感情のようにも見えます。すると街全体がどこか殺伐とした雰囲気に包まれます。目は口ほどにものを言う……と言葉の通り、目には感情が現れるものです。表情も『言葉』であり自分の『表現』なのですね。マスクをしていても口角をあげていると、目の表情が柔らかくなります。少しでも和らげることができたら……と思い、マスクをつけながら写真を撮るときに優しい気持ちで、口角をしっかり上げたのですが、表情のない写真になってしまいました。表情力とでも言うのでしょうか、私の力不足なのかもしれませんが。まだまだ息苦しさが残るこの世界の中で思うのは、いつにも増して気持ちを伝えることの大切さです。この3年の間で、リモートでの仕事、コミュニケーションの便利さを知りました。家にいながら仕事も、打ち合わせもできる。セミナーにも参加できる。確かに便利なのですが、リモートで講座をするときには、いまひとつもどかしさを感じます。人が集まる『場』はエネルギーです。『気』という表現がわかりやすいでしょうか。いい雰囲気になったり、気まずいムードになったりするものです。リアルで面と向かっていると、表情や雰囲気から相手の気持ちなどを受け取りやすい。しかし画面を通してとなると、受け取りづらいことがあります。ですから、リモートの場合はいつもよりも声かけをし、お互いに意思の疎通を図ることが大切になります。言葉にして気持ちを伝える。それは決して大袈裟なことではなく、感謝の気持ち、うれしさ、楽しさ、つらさ、淋しさ……日常の中で私たちの心の中に湧き上がる気持ちに素直に向き合うことでもあるのです。作詞を手掛けたあるアーティストのCDを聴きながら、この曲を書いたとき愛しかなかったなあ、と思いだしだしたことがありました。そのアーティストが輝ける歌を書く。自分の仕事への熱さではなく、アーティストへ思いをこめて書いたこと。先日、ご本人にその気持ちを伝えると「私も歌うときに胸がいっぱいになる」と言われました。伝えてよかった。私たちの間の水路に、豊かな流れができたような気がしました。お店で、レストランで、仕事場で感謝を伝える。友達、家族の中で素直に交流する。息苦しい時期を脱したとき、この交流はさらにあたたかいものになるのではないか。そう時代が進化しますように。私たち一人ひとりが、進化の担い手なのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年10月23日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。遠い記憶を手のひらで転がして人は、忘れてもいいことは忘れてしまうのでしょうか。もしも脳の中にフィルターがあり、本当に必要な記憶だけを抽出するというのなら、そういうものかと思えるのですが、どうもいろいろと忘れてしまっているような気がしてなりません。手にとるように覚えていたことも、いつの間にか指の間から滑り落ちてしまった感じです。旅に出るときには、必ず日記をつけます。旅の記録、そして思ったことを徒然なるままに、自動書記をするように。先日、30年くらい前にパリに行ったときの日記が出てきました。たいてい一人で旅をしていたので、日記は話し相手でもあるのです。旅日記を読み返しながら、パリの石畳の道を歩いているような気がしてきます。いまはもう味わうことのない気持ちが綴られているのを読むと、遠い日の自分が愛しくなります。そんな日記の中に、ぽっかりと記憶から抜け落ちた出来事について書いてありました。それはパリに住んでいる友人とのことだったのですが、私はそれを初めてページを開く小説のように読みました。その出来事について、すっかり忘れていた自分にも驚いて、何度も何度も読み返しました。でも、遠い日の記憶の尻尾をつかまえられない。そして思い出したのが、その話を聞いたイタリアン・レストランと、オーダーしたイベリコ豚の生ハム。そして「夜は会えないから赤ワインを飲もう」という友人の言葉でした。何かの形でしるしを残す。備忘録。思うよりも早く、時は過ぎていきます。昨年から5年日記をつけ始めました。1日数行の小さな日記帳は、何年か前にニューヨークのソーホーの文具店で求めたもの。同じ日付のページにある1年前の日記を読み、その日のことを綴りながら、いまここにいる自分と向き合う。時を重ねていく自分を感じながら、1日を終える。人生の折り返し地点はとうに過ぎてしまったのですから、1日という時間の手触りを味わいながら過ごすのも悪くありません。時の流れは優しいものです。忘れることは、自分を楽にしてくれることもあるかもしれません。忘れてもいいこと。忘れたくないこと。それを選ぶわけにはいかないかもしれません。手のひらの上で遠い日の記憶を転がしながら、なんとか生きてきたことを愛しく思う。そんな優しい時間を過ごすのもいいものです。忘れてもいいことは忘れていく。昨夜何を食べたかなんて些細なことですが、いまはまだそれを忘れては、なりません。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年10月16日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。『ふとした瞬間』に『自分』を感じる花の香りは、黄昏から夜に立ってくるのでしょうか。夜に閉ざされることで、嗅覚が敏感になるのか。少し街が静かになり、夜が降りてくる頃、ふわりと金木犀の香りが。金木犀の香りに、人々は本格的な秋の訪れを感じます。小さな花のひとつ一つから、あの微かに甘く、どこかエキゾティックな香りが立ち上る。香りは目に見えませんが、小さな花がそうっと開くと同時に香りが霧のように放たれるような。風に溶け込み、空気に溶け込み、消えていく。どこへ行ってしまうのでしょうか。もしかしたら、香りは、感じた人それぞれの心の中に入っていくのかもしれません。目にするもの、香り、手触り、音、味覚。五感を通して感じたものが記憶に結びついたり、胸のあたりが熱くなったりすることがあります。それは、心の奥の弦を弾くような、そんな感覚です。「ふと思い出す」「ふと涙が出る」「ふと悲しくなる」といった、予期しない、脈絡もなく起こる「ふと〜」という様。自分でもなぜそうなるのかわからないこの「ふと〜」という心の動きは、とても大切なものです。その心の動きこそ、その人の感受性であり、感性となり、人生という物語を語るのではないかと。私たちは、実に忙しい現実の日々を送っています。世界の情勢も予断を許さない。時間に追われるように過ごしている生活の中のエアポケットのようなこの「ふと〜」という瞬間は、私たちを大切な場所につなぎとめてくれるような感があるのです。論理性もない、何の根拠があるわけでもない、「ふと」何かを思い出し、「ふと」感情が動くという『現象』は、それぞれの人生の物語の『どこか』『何か』に紐づいているものです。それが悲しみであろうと、懐かしさであろうと、理由など分からなくても、自分の物語を思い出させる小さなトリガーとなる。そこで心の中で思いをめぐらせるのは、感性を育む素敵な時間です。『自分』を感じる瞬間なのです。少し大袈裟な言い方になりますが、人生は現実目標を達成するためにあるわけではない、と私は考えます。現実の生活を通して、目に見えない心を成長させていく。生きるということは、いくつもの体験を重ねながら、自分という物語を紡いでいく。長い人生の中の「ふと〜」と思った瞬間からつながる場所に、物語がある。金木犀の香りにふと思い出した遠い秋の日にも。そんな物語を味わうこと、ささやかでも豊かな時間になるのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年10月09日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。『自分の歌』を創るという物語今日は主宰している『ソングライティング・クラス』の受講生作品のレコーディングでした。クラスでは作詞法、感性を磨くワークなどを取り入れながら、歌詞の添削を重ねて作品に仕上げていきます。わずか20行、30行の歌詞ですが、そこには1篇の短編小説ほどの物語が凝縮されています。すべてを言葉にすることができない代わりに、比喩や情景描写、心情だけではなく、行間や余韻にも言葉がこめられています。もちろん、音楽も物語を語ります。そして、聴き手の心に響き、聴いた人の数だけの物語が生まれる。自分のワールドに浸れるのが、音楽の楽しみです。希望があれば、歌詞に曲をつけ、本格的なレコーディングをするプログラムもあります。私のクラスの強みは、『ヒット曲を出した作曲家』に曲をつけてもらい、プロのアーティストに歌ってもらうこと。もちろん自分が歌う場合もあります。「歌を書く」というのは、多くの人にとって憧れです。そんな憧れをかたちにし、人生を彩る体験をしてもらいたいと思い、このレコーディング・プログラムを始めました。今日は2曲のレコーディング。記憶が曖昧になっていく母親を思う歌、林住期とも言える人生の後半に出会った、愛する人への歌の2曲です。ここに作者の人生の物語があります。もちろん、作品にするにあたっての作りこみがあるとはいえ、作品にこめた思い……言い方を変えると、書かずにはいられなかった作者の思いがあるのです。私も作詞家として『熱』をこめて書きますが、クラスで書いた歌詞に曲をつけてもらい『歌』として残したいという『熱』には、また違う熱さがあります。これまでに10作品ほどレコーディングしました。高校生の息子さんを交通事故で亡くされたKさんは、その悲しみを2曲の歌にこめました。このことがきっかけで、小さなライブを開催し、歌を通して同じような悲しみの中にいる人たちと思いを分かち合いました。若い頃から音楽が好きで、いつか自分の歌を歌いたいと思っていたMさんは、定年退職後にライブ活動を始めました。みんな『自分の歌』を書くことで、それぞれの人生に新しい物語を創っていったのです。これも歌の力なのでしょう。これまでに1000曲ほどの歌詞を書いてきましたが、考えてみると私は『自分の歌』は書いていないのです。アーティストに提供した歌詞にちょっとずつこめてはいましたが、自分のための歌はありません。いつか、自分のためにこのテーマを!という熱が湧き上がってきたとき、書いてみようか。人生を新しい物語で彩るために。誰に曲をお願いし、誰に歌ってもらうか。想像をめぐらせるだけでわくわくしてきました。吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY 作品集※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年10月02日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。手を差し伸べる『反射力』を先日、マーケットの駐車場に車を停めたときのこと。駐車場は遊歩道の生垣に接しており、左からおじいさんが、右方向からは30代くらいのカップルが歩いてくるのが見えました。全身が見えるわけではなく、生垣の上に胸から上が見える……という感じでしょうか。すると、突然おじいさんが視界から消えました。転んだのでしょうか。右側から歩いてきた二人は立ち止まることなく、おじいさんの横を歩いて行ってしまいました。私はその一部始終を見ていたのですが、一瞬意味がわかりませんでした。おじいさんが目の前で転んだ。駆け寄ることも、手助けすることもなく通り過ぎていった。それは、とても奇妙な光景でした。そう言えば、3年前に転んで手首を折ってしまったとき、まわりに何人も人はいたのですが、駆け寄ってくれたのはおじさん一人でした。抱き起こしてくれ、救急車を呼んでくれました。とても心強かったことを覚えています。とても自分で救急車を呼べるような状態ではなかったですから。まわりには、ただ無表情に私たちを眺めている人もいました。それもまた奇妙な光景でした。私はとりあえずティッシュペーパーを持って、おじいさんのところへ行きました。おじいさんはよろよろと自力で立ち上がり、手についた土をはらっていました。大丈夫ですか?お怪我はないですか?と声をかけると、おじいさんは困った顔をして言いました。「大丈夫です。いつもつまずいて転んでしまうのです」91歳の父の姿が重なりました。つい先日、父は転んで肋骨を折ったばかりでした。足が上がっているようで、上がっていない。老齢になると、イメージと現実の体の動きにずれが出てきます。まだ老齢とまではいかない私も、時々ちぐはぐな体の動きをしていることがあります。転んだとき、父は誰かに助けてもらっただろうか。戸惑っていなかっただろうか。土をはらうおじいさんを見守りながら、これは他人事ではないと思いました。困っている人がいることをわかっていながら素通りしたとき、いつも小さな罪悪感を覚えます。道に迷っている人、重い荷物を持って階段を登っているお年寄り……。さっと手を差し伸べるのは、そんなに難しいことではないでしょう。自分も誰かの助けを必要とすることがある。他人事は、いつか自分事になるかもしれない。誰かの助けを必要とすることがあるかもしれない。そんな想像に及ばずとも、考えるまでもなく、さっと声をかけ、手を差し伸べる反射力が、世の中を穏やかにするのではないか。おじいさんが歩き出す姿に、日頃の反省と共に思いました。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年09月25日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。曖昧な言葉に寛容さが宿っている日本語には、曖昧、または玉虫色的なニュアンスを持つ言葉がたくさんあります。「ほどほどに」「よしなに」「そこそこに」「適当に」「適度に」「無理なく」など。どの言葉にもはっきりとした基準はありません。その人の価値観や判断に任せた言葉です。ですから、同じ「ほどほど」も、人によって違うでしょう。言い方を変えると、その人の価値判断に委ねる。その価値判断の守備範囲は広くても、なんとなくわかりあえるようなものではないでしょうか。言葉の使い方でも日本語は曖昧であると批判されることがあります。イエスなのかノーなのかわかりづらい表現もあり、国際社会では通用しないと言われることもあります。言葉はその民族が培ってきた文化です。そこには精神性も反映されるでしょう。白か黒。善か悪。物事を二極で判断せず、その間の緩衝地帯もあるのではないかといにしえの人は考えたのではないでしょうか。これをある意味優柔不断と見るのか、おおらかさ、優しさと見るか。自然に畏敬の念を持ち、自然によって生かされていると考えていたいにしえの人たちは、「白か黒」ではないものが見えていたのだと推察します。地震、噴火、台風……多くの自然災害に見舞われ、復興を繰り返してきたことで、日本人の忍耐力、受け入れる力は培われたと考えられています。そこには、白か黒で判断できるようなことも、善か悪で判断できることはなかった。自然に生かされている。その自然が猛威を振るう。そこで生きてきた人間は、謙虚に平伏すしかなかったのではないでしょうか。また、日本人は『割れ』や『欠け』の中にも美を見出していました。金継ぎという修復は、『修理』ではありません。『割れ』や『欠け』に漆と金を施すことで、また美を作り出していく。言ってみれば、『失敗』を許し、『失敗』を美へと進化させることです。これもいにしえの人たちの精神性から生まれた文化だと思います。さて、現代の日本はどうでしょうか。白か黒かで分断していく。敵か味方か。自分の正しさを主張するばかりで、相手を真っ向から否定する。世の中をよく眺めてみると、緩衝地帯がなくなりました。寛容さが失われつつあるのです。どちらの考えに賛同するのか、そこで線引きをしたがる。これが、『分断』です。「ほどほど」が許されなくなり、「なんとなく」に対してエビデンスを求める。口汚い言葉が公の場で飛び交う。そして論破する達成感が、さらに相手を倒すことに拍車をかける。日本はこれからどうなっていくのか。言葉は文化であり、精神性の表れです。日本は、今、岐路に立たされていると感じています。「ほどほど」というゆとりを持った気持ちは、人と人を結び、自分を許し、諌めることにつながっているのではないでしょうか。白と黒の間にあるグラデーションに、大切な「何か」があるように思います。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年09月18日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。時にはゆっくり歩いてみようゆっくり歩くと、いつも見えていないものが目に入ってきます。散歩をするときも、考えごとをしているとただ歩くだけ、まわりをあまり見ていないものです。季節が変わっていくのを感じるのは気温だけではない、街路樹やご近所の庭に咲く木や花の様子、空の色、雲の形……すべて自然からのメッセージです。8月の終わり、青森県の奥入瀬渓流を歩きました。憧れの奥入瀬渓流、8月初めの大雨の影響で渓流の水は少し濁っていましたが、川の流れの音や森の豊かな木々は混沌とした日常を忘れさせてくれました。ゆっくり歩くと見えてくる……いろいろな苔の形、ふわりとした手触り。風で葉が揺れると、小さな水滴が転がり落ちる。ブナのしっとりとした木の肌。空を指差すように朽ちた木の幹。足元を確かめるように、一歩進むたびに見えてくる光景を確かめるように渓流沿いを歩きます。すぐ近くの木で蝉が鳴いていました。どの木で鳴いているのだろうと見上げて、見回します。でもそう簡単に見つかるはずもありません。そして鳴き声を頼りにふっと目線の先にある細い木を見てみると、翅(はね)がぼろぼろになった蝉が止まっていました。エゾゼミという焦茶の体に山吹色の紋様が入った蝉です。私が近づいても飛び去る気配はなく、ギーンギーンと力強く鳴いています。翅を震わせながらギーンと鳴きます。夏の終わり、傷ついた体を精一杯震わせて力強く鳴いています。ひとしきり鳴くと、次はお尻を持ち上げるようにしてギイィーン、ギイィーンと鳴き始めました。そして、ゆっくり木の枝を登ったり、下りたり、心地のいい居場所を探すように動いています。今にも力尽きてしまいそうな体のどこに、あんなに大きな声を出す力が残っていたのでしょうか。暑い暑いと言っていた夏が終わります。ひと色ではない渓流の流れのように、人生もさまざまな流れに巻き込まれ、流れに乗りながら時を重ねていく。思っているよりも、その流れは速いものだとひと段落した暑さに思います。時にはゆっくりと歩みを緩めて、これまで見えていなかったことに目を向けてもいいかもしれません。夏の終わり、命の証を知らしめるように鳴いていたエゾゼミに教えられました。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年09月11日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。生きること、生きていくこと〜夏の終わりの山寺にて京都の山寺でのこと。山門を入り、苔むした境内を歩いていると、ころっとした一匹の蜂に出会いました。その蜂は木に登ろうとするのですが、登っては滑り落ち、登っては滑り落ち。地面に落ちて転がっても、また登りはじめる。それでもまた滑って落ちてしまう。今度は、木の根を越えながら歩きだす。どこへ向かおうとしているのか、くねくねと地を這う木の根をよろよろと越えながら、やがて見えなくなりました。けなげです。触覚や翅が傷ついて飛べなくなったのか、命の終わりが近づいているのか。飛べなくなったら、歩くしかありません。そうして蜂は生きていく道を見つけて進んでいく。蜂に思考能力があるのかわかりませんが、生き抜くために本能が歩くことを選択したのです。そこには欲も得もなく、ただ命の営みがあるのでした。8月も終わりに近づいた山寺の木立の中で、時折、思い出したように蝉が鳴き始めました。夏の盛りであれば、境内には蝉の大合唱が響いていたことでしょう。土の中で長い時間を過ごし、短い夏を謳歌するように鳴き、そして命を終える。蝉の幼虫は約7年間土の中で過ごし、成虫になって土から出ると2週間から1か月で命を終えます。その2週間は、子孫を残す使命を果たすために使われます。それを儚い一生という見方もありますが、土の中の幼虫はゆっくりと幾度かの脱皮を繰り返しながら変容しているのです。自由に飛び回り、大きな声で鳴き、そしてからからになって死んでいくのもドラマチックですが、土の中で変容を繰り返す命には壮大なドラマがあります。私たちの人生もひと色ではありません。年老いて体が衰えることは、決して嘆くようなことではありません。何十年もの時間、喜びがあり悲しみがあり、さまざまな努力や苦労があったはずです。時代に翻弄され、思うように生きられなかった時もあったかもしれない。よくここまで生き抜いてきた。母が人生を終える姿を見、父が老いていく姿を見ていると、命を全うしていくことの尊さに胸が震えます。木に登ることを諦め、歩いていった蜂も、短い夏を飛び回った蝉も、変容しながら命の営みのままに。人は、どのように変容するのでしょうか。自分をより進化させ、作り替えていく。それは心の仕事です。悲しみがあっても苦労があっても、変容のプロセスなのだと解釈すると、また人生の向き合い方が違ってくるかもしれません。夏の終わり、生きものたちの姿に、ふと自分を重ねてみました。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年09月05日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。心の旅をしながら思うこと〜孤独〜「人はみんな孤独だから」30代の初めの頃だったか、ひどく落ち込んでいる私を、友人がこう言って慰めてくれました。そうなのかもしれない。でも、その言葉は私の中に落ちていきませんでした。「みんな孤独」とは何を言うのか、わからなかったのです。『孤独』という言葉を口にするとき、耳にするとき、胸の奥がざわっとしたものでした。それは、孤独であること、孤独になってしまうことへの微かな怖れがあるからでしょう。30代はまだまだ若く未熟だったのです。歌詞を書くとき、例えば「愛する」とはどういうことなのか、「悲しむ」とはどういうことなのかといった物語の核となる感情について深掘りしていきます。孤独についても考えました。孤独とはどういうことなのか。腹に落ちる気づきを得るまで、自分に問い続ける。若さに足りないのは『経験』です。経験とは大きな出来事だけではなく、日々の中でふと感じるささやかなことも含みます。思わず立ち止まって空を見上げてしまう美しい夕焼けを見たとか、小説を読んで泣けてしまったとか、それも経験です。大人になるとは、そんな経験を積み上げながら、「生きる」ということを体験する。悩み、答えを出せずに心は彷徨う。喪失感。乗り越えていけないもどかしさ。怪我の痛み。病気の辛さ。焦り。そのどれも、自分にしかわからないことであって、自分でしか解決できないことなのです。2年前、右手首を骨折したとき、ものすごく痛かったこと。それを誰にもわかってもらえない。痛いことは伝わっても、どのくらいの痛さなのかはわからない。悲しみも自分だけのもの。同じようにわかってもらえない。他人の悲しみも同じように分かち合うことはできない。孤独とは、こういうことなのだと、今は思っています。誰もが、自分ひとりで引き受けていく。どんなに友達がたくさんいても、大家族でも、誰もが孤独を抱えている。同じ痛みを味わうことができないからこそ、互いに優しくなれる。慮ることができるのではないかと思います。海で泳ぐことが好きな親友が、遠泳の隊列から逸れてしまったときのことを話してくれました。「まわりを見回したら誰もいない。海にひとりきり。泳がなくては生きていけない。このとき、これが孤独なのだと思った。自由なんだな、と思った。そしたら、なんだか楽しくなってきたの」孤独と自由。それぞれの心の旅があり、その時々の境地があります。でも大切なことは、孤独であっても、一人きりではないということ。孤独だからこそ、つながっていることが大切なのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年08月28日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。8月15日の玉子丼8月15日。朝、靖国神社を参拝しようと思い立ちました。「思い立つ」なんて不敬な表現ですが、なぜか今日行かなくては、と直感的に思ったのです。靖国神社をお参りしたのはずいぶん前のこと。心を寄せてはいても、足を運んではいませんでした。日本が日本でなくなる……そんな危惧があるからなのかもしれません。台風が過ぎ、さらに暑さが戻ってきました。立っているだけでも汗が噴き出てきます。終戦の日だけにまわりの道路は物々しい雰囲気で、多くの警察官が警備にあたっていました。すぐ隣の武道館では、全国戦没者追悼式が行われていることもあり、この日が『日常』ではないことを示していました。神社の塀沿いに歩いていると、私の前をアオスジアゲハがひらりと横切っていきました。蝶は亡くなった人の化身とも言われています。来たことを喜んでくれているのかなあと思いつつ、参拝の長い列に並びました。終戦後77年目を迎えた日本はどこへ向かうのか。亡くなったあまりにも多くの命に報いるような日本になっているのか。それを思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになります。戦争を美化するつもりも神格化するつもりもまったくありませんが、私たちは「大切にする」「大切に思う」という気持ちを忘れてしまったような気がしてなりません。大切なものを大切にする、大切に思うという『覚悟』です。神社内にある靖國八千代食堂で玉子丼をいただきました。鹿児島県知覧の富屋食堂で『特攻の母』と呼ばれた島濱トメさんの玉子丼です。特攻隊員たちの最後のごはん。隊員たちは最後のごはんにもかかわらず、「母や妹、弟たちに食べさせたい」と話したそうです。知覧特攻平和会館には、隊員たちが残した手紙が展示されています。家族への、美しい字で綴られた手紙には、泣き言も恨み言などなく、ただただ国のために飛び立つこと、家族が健やかであることを祈る思いが綴られています。二十歳前後の若者たち、その心の奥を知ることはできませんが清々しくさえ思える手紙は、涙無くして読めません。そんな若者たちのためにトメさんが作り続けた玉子丼。熱々で、ほの甘く、やさしい味で、散蓮華でひと口食べるたびに涙がこぼれ、最後のご飯一粒までいただきました。胸の中を去来した思いを、今もまだ言葉にできずにいます。ただ、「覚悟する」ということを忘れてしまったような自分を情けなく思うばかりでした。食堂を出て、化粧室へ行っている間に隣のお土産屋さんで『Jupiter』がかかったそうです。アオスジアゲハに迎えてもらい、『Jupiter』で送ってもらった参拝。大切なことを大切にしようと、改めて思ったのでした。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年08月21日