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企画展「どこ見る?どう見る?西洋絵画!ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館 feat.国立西洋美術館」が、京都市京セラ美術館にて、2025年6月25日(水)から10月13日(月・祝)まで開催される。東京・上野の国立西洋美術館でも開催される巡回展だ。貴重な西洋絵画コレクションが集結企画展「西洋絵画、どこから見るか?—ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館」は、サンディエゴ美術館と国立西洋美術館が所蔵する、貴重な西洋絵画コレクションにスポットを当てた展覧会だ。サンディエゴ美術館と国立西洋美術館アメリカ・カリフォルニア州に位置するサンディエゴ美術館は、アメリカ西海岸で最初期に収集された膨大な西洋絵画コレクションを所蔵。一方、国立西洋美術館は東アジアでも類を見ないほど、西洋絵画の歴史を体系的に網羅したコレクションを誇る。西洋美術600年を振り返る本展では、そんな両美術館の所蔵作品を一堂に展示。ルネサンスからバロック、ロココ、さらに近代まで、西洋美術600年の流れを、日本初公開となる作品を含めた、約60点の作品とともに紹介する。17世紀に花開いた“静物画”見どころは、17世紀初頭のスペインのバロック絵画。スペインでは、「ボデゴン」と呼ばれる独自の静物画が花開いた時代だ。そんな静物画からは、6点しか現存しないフアン・サンチェス・コターンの作品のうち、最高傑作とされる《マルメロ、キャベツ、メロンとキュウリのある静物》が登場。このほか、17世紀スペイン美術を代表する、フランシスコ・デ・スルバランの《神の仔羊》なども展示する。18世紀を牽引したイタリア&フランス絵画また、18世紀の美術を牽引した、イタリア絵画とフランス絵画にもフォーカス。イタリアの風景画家、ベルナルド・ベロットが描いた風景画《ヴェネツィア、サン・マルコ湾から望むモーロ岸壁》や、スペインを代表する画家、フランシスコ・デ・ゴヤが描いた肖像画《ラ・ロカ公爵ビセンテ・マリア・デ・ベラ・デ・アラゴン》など、風景画・肖像画・風俗画といったジャンルにおける、地域ごとの特徴を紹介していく。19世紀作品の人物表現さらに、19世紀の作品では、新しい時代に求められる近代性と古典的な絵画伝統のはざまで葛藤した画家たちの、多様な人物表現に注目。たとえば、ウィリアム=アドルフ・ブーグローによる作品《羊飼いの少女》。この油彩画では、広大な農村に佇む少女を、古典的な様式ながら、純真で無垢な内面的な部分も描いている。【詳細】企画展「どこ見る?どう見る?西洋絵画!ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館 feat.国立西洋美術館」開催日程:2025年6月25日(水)〜10月13日(月・祝)時間:10:00〜18:00(入場は閉館の30分前まで)休館日:月曜日※7月21日(月・祝)、8月11日(月・祝)、9月15日(月・祝)、10月13日(月・祝)は開館。会場:京都市京セラ美術館 本館北回廊1階住所:京都市左京区岡崎円勝寺町124入場料金:一般 2,200(2,000)円、大学・高校生 1,400(1,200)円、中・小学生 900(700)円※( )内は前売料金。※未就学児無料。※障害者手帳等の所持者は本人及び介助人1名まで無料(確認できるものを持参)。※チケット情報の詳細は展覧会公式サイトを確認。※画像の無断を禁ずる。【問い合わせ先】京都市京セラ美術館TEL:075-771-4334
2025年04月25日2025年7月、新国立劇場が小劇場で上演する『消えていくなら朝』の作・演出を手がける蓬莱竜太より、コメントが到着した。社会での最小単位である家族が織り成す様々な風景から、今日の社会の姿を照らし出し、未来を見つめる新国立劇場のシリーズ「光景─ここから先へと─」の第3弾として上演される本作。2018年に蓬莱が新国立劇場に書き下ろし、宮田慶子前芸術監督の演出により初演、高い評価を得て第6回ハヤカワ「悲劇喜劇」賞を受賞した。今回は、すべての出演者をオーディションで決定するフルオーディション企画第7弾として、蓬莱自らの演出で上演する。物語は、家族と距離を置いていた劇作家の定男が恋人を連れて帰省し、18年ぶりに全員が顔を揃えた家族の前で、次回の新作で、家族のことを書いてみようと思うと切り出すところから始まる。表面的な会話から、だんだんと長年抱えてきた不満や本音が飛び出していく、ヒリヒリとした会話の応酬。「家族」だからこそ、遠慮がなく、胸を抉るような言葉が飛び出していく。オーディションは、2024年1月12日より公募を開始し、2,090名の応募の中から、2月初旬の書類選考を経て、3月中旬まで1次選考、2次選考を行い、6名のキャストが決定。蓬莱自身を投影して描いたという、主人公の劇作家の定男(僕)には関口アナン、そして定男の兄・省吾は松本哲也、定男の妹・可奈は田実陽子、母・君江は大沼百合子、一家の家長 父・庄次郎には大谷亮介、そして定男の恋人・レイには、坂東希が名を連ねる。■作・演出 蓬莱竜太からのメッセージこの作品は2018年に新国立劇場に書き下ろした作品です。当時の芸術監督であった宮田慶子さんから執筆のオファーをいただき、僕自身は演出をしないという大前提があったからこそ書けた作品でもありました。僕の中では結構思い切った作品でした。自分のコアのような部分に触れたり、時には叩いてみたり、踏んづけたりするような感じがありました。今回この作品で演出をしませんか、フルオーディションでやりませんか、という依頼をいただいた際には、そう来たかと、色々な意味で震える思いをしました。間違いなく僕にとって挑戦になります。6名の出演者と共に模索しながら、共に悩みながら、新たな作品を生み出せたらと思っています。<公演情報>シリーズ「光景─ここから先へと─」Vol.3『消えていくなら朝』作・演出:蓬莱竜太キャスト:大谷亮介、大沼百合子、関口アナン、田実陽子、坂東希、松本哲也【公演日程】2025年7月10日(木)~27日(日)会場:新国立劇場 小劇場※開場は開演の30分前。【チケット】A席:7,700円B席:3,300円Z席(当日):1,650円■一般発売:2025年5月6日(火・休) 10:00~【新国立シアタートーク】日時:7月16日(水) 終演後出演:蓬莱竜太、全キャスト司会:中井美穂入場方法:本公演チケット(いずれの日程でも可)を提示ください。公式サイト:
2025年04月24日ローマのハイジュエラー、ブルガリ。その色彩を操る唯一無二の手腕に光を当てる「ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧」展は、在日イタリア大使館の後援のもとに開催され、日本におけるブルガリの展覧会としては10年ぶり、過去最大のスケールとなります。《コンバーチブル・ソートワール=ブレスレット》ゴールド、アメシスト、ターコイズ、シトリン、ルビー、エメラルド、ダイヤモンド(1969年頃、ブルガリ・ヘリテージ・コレクション)Courtesy of BVLGARI「美しい(カロス)」「形態(エイドス)」を意味するギリシャ語にちなんだ展覧会タイトル「カレイドス」は、美と創造性が調和した、ダイナミックで変化し続ける色彩世界の旅を象徴しています。ブルガリ・ヘリテージ・コレクションと貴重な個人コレクションから選び抜かれた色彩のマスターピースというべき約350点のジュエリーは、メゾンの始まりから現在までを跡付けつつ、イタリアと日本の深いつながりを浮き彫りにし、アートとデザインに対する両国共通の情熱や豊かな文化遺産を称えます。また、3名の現代の女性アーティスト、森万里子、ララ・ファヴァレット、中山晃子が、それぞれ色彩についての考察に基づく作品を展示します。《ペンダントイヤリング》ゴールド、プラチナ、エメラルド、アメシスト、ターコイズ、ダイヤモンド(1968年、リン・レブソン旧蔵、ブルガリ・ヘリテージ・コレクション)Courtesy of BVLGARIハイジュエリー、ブルガリ・ヘリテージ・コレクションのクリエーション、現代アート、ブルガリ・ヒストリカル・アーカイブからの貴重な資料、そして没入型のインスタレーションが取り混ぜられた「ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧」は、さまざまな創造性と心を揺さぶる体験からなる万華鏡のような展覧会です。映像、インタラクティブな空間、芸術的な対話がブルガリの色彩の世界に命を吹き込む多面的な旅を通して、宝石と貴金属を自在に操るメゾンの卓越した技量を堪能できます。色彩の革命ブルガリは、真に色彩豊かなジュエリーの傑作を創出したことによって、色彩を独自の芸術形式へと変容させた唯一のハイジュエラーといえます。メゾンの歴史は、色鮮やかな宝石の大胆な使用と深く結びついており、それは今日でもブルガリのハイジュエリーの最も重要なインスピレーションの源となっています。創業者ソティリオ・ブルガリが手がけた初期の銀細工は色彩への強い関心を示唆していましたが、真の革命は20世紀に起こりました。1900年代初頭には、伝統的なハイジュエリーは色味を限定した因習的な配色で、プラチナを用いた単色のデザインが好まれており、第二次世界大戦後に、イタリアが色彩の変革の中心地となりました。《ブレスレット》ゴールド、プラチナ、シトリン、ダイヤモンド(1940年頃、ブルガリ・ヘリテージ・コレクション)Courtesy of BVLGARI1950年代、ブルガリは、イエローゴールドにセットされたサファイア、ルビー、エメラルドとダイヤモンドとの大胆なコンビネーションを開拓しました。また、かつては半貴石とみなされていたアメシスト、シトリン、ターコイズなども取り入れ、それらの鮮やかな色調と美の可能性を評価し、ブルガリのシグネチャーであるカボションカットを通じてそれらの色彩の強さを表現したのです。色彩に対するこの大胆不敵なアプローチはブルガリ・スタイルの特徴となり、メゾンの「色石の魔術師」としての名声を確固たるものにしました。《バングル》ゴールド、プラチナ、ルビー、サファイア、ダイヤモンド(1954年、ブルガリ・ヘリテージ・コレクション)Courtesy of BVLGARI本展覧会では、ブルガリの色彩の革命を3章に分けてたどります。第1章では、1940年頃に制作された重要なシトリンのブレスレット、サファイア、ルビー、ダイヤモンドを大胆にあしらったバングル、エメラルド、アメシスト、ターコイズ、ダイヤモンドを組み合わせたネックレスとイヤリングのセットなどを見どころとしながら、色彩の効果に対する科学的なアプローチを紹介します。《「ビブ」ネックレス》ゴールド、プラチナ、エメラルド、アメシスト、ターコイズ、ダイヤモンド(1968年、リン・レブソン旧蔵、ブルガリ・ヘリテージ・コレクション)Courtesy of BVLGARI第2章では、色彩の文化的・象徴的側面に焦点を当て、エナメル加工を施した3点の「セルペンティ」のネックレス、希少なジェイドのジュエリー、そしてダイヤモンドと7つの貴重なエメラルドをあしらったネックレスの傑作「セブン・ワンダーズ」などを展示します。《「セルペンティ」ネックレス》ゴールド、ホワイトエナメル、ルビー(1970年頃、ブルガリ・ヘリテージ・コレクション)Courtesy of BVLGARI最後の第3章では、とくにシルバーやゴールドのような金属における色を知覚する際に光が果たす役割を明らかにします。この章では、希少なファンシーカラーダイヤモンドのジュエリーやパールをあしらった作品も紹介します。そして最後に、まるで色彩の花火のような傑作である、ゴールドにアメシスト、ターコイズ、シトリン、ルビー、エメラルド、ダイヤモンドをあしらった1969年制作のソートワールを見ることができます。《「セルペンティ」イブニングバッグ》ゴールド、シルクコード、ダイヤモンド(1978年頃、ブルガリ・ヘリテージ・コレクション)Courtesy of BVLGARI色彩のアート色彩は長きにわたり、芸術における最も強力なインスピレーションのひとつであり、画家、彫刻家、ジュエラーや職人たちは感情を伝えたり世界を表現したりするために、色彩を用いてきました。本展覧会では、ジュエリーに影響を与えるだけでなく、さまざまな分野のアーティストとも関わってきたブルガリの大胆で色彩豊かなデザインを通して、ハイジュエリーとファインアートに共有される色彩への情熱に光を当てます。本展には3名の現代の女性アーティスト、森万里子、ララ・ファヴァレット、中山晃子が招待され、独自の作品が制作されます。森万里子とララ・ファヴァレットは色彩をテーマとして瞑想的に変化する作品を創り出し、新鮮な視点を与えてくれる一方で、最後に展示される中山晃子の作品は色鮮やかな万華鏡のようなタッチで、色彩の旅を締めくくります。《コンバーチブル・ソートワール=ブレスレット》ゴールド、アメシスト、ターコイズ、シトリン、ルビー、エメラルド、ダイヤモンド(1969年頃、ブルガリ・ヘリテージ・コレクション)Courtesy of BVLGARI芸術の道、イタリアと日本の出会い本展覧会の会場デザインは、ブルガリと、日本の建築家ユニット「SANAA」の建築家である妹島和世、イタリアのデザインユニット「フォルマファンタズマ」が協働して手がけます。古代ローマの皇帝カラカラが造営した浴場のモザイク画のパターンに着想を得たデザインコンセプトは、曲線的なフォルム、洗練された半透明の素材、色彩の効果を通してブルガリの文化的ヘリテージを反映し、訪れる人々を色彩の世界を巡る感覚の旅へと導きます。また、フォルマファンタズマは、ブルガリ・ヘリテージ・コレクションの数々のマスターピースのために、特別な独立型の展示ケースをデザインします。ローマをルーツとするメゾンのアイデンティティとエレガントな日本の美意識をシームレスに融合させた、ブルガリのクリエイティビティの真髄に迫る芸術の道がここに開かれます。本展覧会では、ブルガリ・ヘリテージ・コレクションから出品される2点の特別な作品の展示により幕を開けます。ひとつは、イエローゴールドにラピスラズリ、オニキス、ダイヤモンドをあしらった、古代ローマ神殿のファサードの形をした《「テンプル」ペーパーウェイト》、もうひとつは、イエローゴールドにマザーオブパール、多色のエナメル、ダイヤモンドをあしらった円形の《「富士山」ブローチ》です。調和を奏でるこれら2点の作品は、両国に共通する職人技の探求、ディテールへのこだわり、そして美に対する永遠の愛を象徴しています。《「テンプル」ペーパーウェイト》ゴールド、ラピスラズリ、オニキス、ダイヤモンド(1977年頃、ブルガリ・ヘリテージ・コレクション)Courtesy of BVLGARI《「富士山」ブローチ》ゴールド、マザーオブパール、ポリクロームエナメル、ダイヤモンド(1972年頃、ブルガリ・ヘリテージ・コレクション)Courtesy of BVLGARI開催概要展覧会名:「ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧」会期:2025年9月17日(水) ~ 2025年12月15日(月)休館日:毎週火曜日 *ただし9月23日(火・祝)は開館、9月24日(水)は休館開館時間:10:00~18:00 毎週金・土曜日は20:00まで *入場は閉館の30分前まで会場:国立新美術館 企画展示室2E 〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2主催:国立新美術館、ブルガリ後援:在日イタリア大使館観覧料:一般2,300円 大学生1,000円 高校生500円(すべて税込) *中学生以下は入場無料 *障害者手帳をご持参の方(付添の方1名を含む)は入場無料 *チケット情報は後日ホームページ等でお知らせします。アクセス:・東京メトロ千代田線乃木坂駅 青山霊園方面改札6出口(美術館直結) ・東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩約5分 ・都営地下鉄大江戸線六本木駅7出口から徒歩約4分#ブルガリ #Bvlgari#Kaleidos #BvlgariHeritageお問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)展覧会ホームページ: 美術館ホームページ:
2025年04月21日新国立劇場バレエ団による、デヴィッド・ビントレー振付のバレエ『アラジン』が、欧州の舞台芸術配信プラットフォーム「OperaVision」において、史上最多の再生回数を記録した。本映像は、2024年9月20日から2025年3月20日までの期間、OperaVisionにて世界同時配信され、合計71万1,884回の再生数を達成。カール・デイヴィスによる華やかで色彩豊かな音楽にのせて描かれる『アラジン』は、ダイナミックな物語展開、美しい舞台美術、そしてバレエ団のダンサーたちの卓越した表現力で、世界中の観客を魅了した。アラジン役には福岡雄大、プリンセス役には小野絢子、そしてランプの精ジーン役には渡邊峻郁が出演した。なお、現在、OperaVisionでは新国立劇場オペラ『ウィリアム・テル』を配信中だ。■新国立劇場バレエ団 芸術監督・吉田都 コメント私たちのバレエを世界中の皆さまに届けられたことをとても光栄に思います。また、多くの方に感動を届けたダンサーたちを誇りに思います。<配信情報>新国立劇場オペラ公演『ウィリアム・テル』2025年9月21日(日) までOperaVisionにて配信中新国立劇場オペラ公演『ウィリアム・テル』
2025年04月18日小川絵梨子が新国立劇場演劇芸術監督に就任した際に打ち出した支柱のひとつ「こつこつプロジェクト」は、1年を通じて試演を重ね、演出家と芸術監督、制作スタッフが協議を重ねて作品を育てていく取り組み。その第二期(1st:2021年7月、2nd:9~10月、3rd:2022年1~2月)、第三期(4th:2024年3月、5th:10月)に参加し、演出家・柳沼昭徳が約4年にわたり取り組んできた『夜の道づれ』が、2025年4月15日に小劇場で初の試みとなる「こつこつプロジェクトStudio公演(公開の試演会)」として初日を迎えた。三好十郎が1950年に発表した『夜の道づれ』は、敗戦後の夜更けの甲州街道をとぼとぼと歩くふたりの男の濃密な会話劇で、「いわばドキュメンタリイを志したもの」という三好の言葉通り、彼の作品の中でもストーリー性は控えめで、演劇的実験性の高い作品。4年間の積み重ねを経て、『夜の道づれ』のカンパニーは、膨大な台詞量の中で埋もれがちなドラマ性を引き出し、人が人と対話し、心を通わせる瞬間を丁寧に描き出す。(撮影:田中亜紀)本プロジェクトについて柳沼は、「何かを積み上げていくというよりも、『夜の道づれ』の作品の登場人物たちのように、出会った人々と道づれとなって、どこまでも続いてゆく道のりを対話しながら歩き続ける。私にとってのこつこつプロジェクトとはそうした体験でした」とコメント。また出演者の石橋徹郎、金子岳憲、林田航平、峰一作、滝沢花野によるコメントも到着した。公演は2025年4月20日(日) まで。■演出:柳沼昭徳 コメント全文何かを積み上げていくというよりも、『夜の道づれ』の作品の登場人物たちのように、出会った人々と道づれとなって、どこまでも続いてゆく道のりを対話しながら歩き続ける。私にとってのこつこつプロジェクトとはそうした体験でした。作品がいま、稽古場から劇場へと移り、ようやくお客様と作品を共有できる段階となりました。これから、ご覧いただいた皆さまも一緒に道づれとなって、こつこつできることにワクワクしています。■御橋次郎役:石橋徹郎 コメント全文自分のいのちの嬉しさに気づくことができたら。それはどんなときに気づくことができるのか。特別な状況になった時だけでなく、できれば今をあらためて見なおしてみて、当たり前に思っていたことや、大したことだとは思っていなかったことが、ほんとは少し有難いことだったんだと感じることができたなら、生きることには甲斐がある。と思える。そんな舞台になっていれば嬉しいです。■熊丸信吉役:金子岳憲 コメント全文言葉の多い『夜の道づれ』を立体化するのに皆で本当によく話し合いました。僕は去年から皆はもっと前から。当初はどうすればいいんだ?と途方に暮れていました。分からないんです。分からないから今日はここまでしか出来ないと正直に稽古場に通うのは最初は勇気がいりました。そこに皆の知恵や雑談混ぜ込んで少し前進したりまた分からなくなったり他の人の分からないも共有しながら今日まで来ました。派手に誤魔化したりせず、シンプルに人間が演じる舞台になったような気がします。公演中もこつこつ発見し話し合っていきたいです。■洋服の男役ほか:林田航平 コメント全文この4年間を通じて『夜の道づれ』の稽古場は、自分にとって演劇とはなんだろうということと、改めて向き合える場所になりました。あーでもないこーでもないと、メンバーと話し合い稽古を重ねてきた今回の作品作りは、なにか皆で楽しめるお祭りを、一丸となって作っているような感覚です。ご観劇くださる皆様と、夜の甲州街道を共に歩いていけるよう、最後までこつこつし続けたいと思います。■復員服の男役ほか:峰一作 コメント全文ひとりでは到底太刀打ち出来ないことも、ひとりの問題とせず、皆と共有して作品づくりに取り組んできました。こつこつプロジェクトだからこそ出来たことだと思います。『夜の道づれ』のカンパニーの一員として舞台に立つということは、数多くの助け合いを、積み重ねた結果だと思っています。手を取り合ってようやく初日まで辿り着けたことを奇跡の様に感じています。そしてお客様とも僕らの体験を共有できたら、それ以上の喜びはありません。■戦争未亡人役ほか:滝沢花野 コメント全文2021年からこつこつ積み重ねてきた『夜の道づれ』に、ついにお客様の視線や息づかいが加わったこと、なんだか胸がいっぱいになりました。ある意味愚直なまでに真正面から「生きていくこと」に向き合ったこの戯曲は、戦争直後に書かれたものでありながら、今を生きる私たちにもそっと寄り添ってくれるような気がしています。短い上演期間ではありますが、ぜひこの作品のいっときの道づれとして、いろいろなことを感じていただけたらうれしく思います。<公演情報>こつこつプロジェクトStudio公演『夜の道づれ』作:三好十郎演出:柳沼昭徳出演:石橋徹郎金子岳憲林田航平峰一作滝沢花野2025年4月15日(火)~20日(日)会場:東京・新国立劇場 小劇場チケット情報:()公式サイト:
2025年04月16日展覧会「デザイン ミュージアム ジャパン(DESIGN MUSEUM JAPAN)展 2025~集めてつなごう 日本のデザイン~」が、2025年5月15日(木)から5月25日(日)まで、東京・六本木の国立新美術館にて開催される。日常に潜む優れた“デザイン”を調査&展示日々の生活に溶け込み、豊かさや活力をもたらすデザイン。グラフィックやプロダクトだけでなく、地域の伝統技術、町並み、道具の仕組み、生活習慣にも優れたデザインが隠れている。展覧会「デザイン ミュージアム ジャパン(DESIGN MUSEUM JAPAN)展 2025~集めてつなごう 日本のデザイン~」では、そんな日常に潜むデザインにフォーカス。国立新美術館で3回目の開催となる2025年は、総勢8人のクリエーターが日本各地をリサーチし、各地で発見したデザインとその内容を展示する。魔法瓶を作ったガラス職人たちの情熱たとえば、長時間の保温と保冷が可能で、水筒やポット、コップなどで広く知られる「魔法瓶」の展示。起源は、江戸時代にさかのぼり、長崎の商人がオランダ人からガラスの製法を学んだことに始まる。その後、大阪に移った商人が大阪天満宮の前でガラスの製造を始めたことで、大阪・天満はガラスの一大産地として有名になった。このコーナーでは、インテリアデザイナーの五十嵐久枝が、国内外で「魔法瓶」の圧倒的シェアを誇るメーカーをリサーチ。様々な種類の「魔法瓶」と、その歴史や製作過程を紹介していく。明朝体と京都の関係現代美術作家の宮永愛子がリサーチした展示コーナーでは、「フォント」とその誕生の土地について紹介している。内容は、日常でよく見かけるヒラギノシリーズの中で最初に開発された「明朝体」に焦点を当てたもの。「明朝体」の誕生地であり、その基になった文字とも縁のある京都府で、歴史やデジタルではない手書きの制作過程に迫る。宮前義之が調査する「街路市」また、高知県で江戸時代から300年以上続く「コミュニケーション」のデザインにも注目。展示されるのは、エイポック エイブル イッセイ ミヤケ(A-POC ABLE ISSEY MIYAKE)のデザイナー・宮前義之が高知市の路上で行われる、日本最大規模の「街路市」を調査した内容だ。物を通じて人と人が繋がる様子から、長く大切にされてきた理由を解き明かす。大漁旗&スナックのデザインもこのほか、映像工芸作家・菱川勢一による漁師たちを鼓舞する「大漁旗」のデザイン調査、グラフィックデザイナー・佐藤卓による「スナック」に潜むその店ならではのコミュニケーションが生まれるデザイン調査に加え、プロダクトデザイナー・深澤直人やグラフィックデザイナー・菊池敦己、建築家・塚本由晴によるリサーチ結果も紹介する。【詳細】展覧会「デザイン ミュージアム ジャパン(DESIGN MUSEUM JAPAN)展 2025~集めてつなごう 日本のデザイン~」開催日程:2025年5月15日(木)~5月25日(日)時間:10:00〜18:00(入場は閉館の30分前まで)※金曜日は20:00まで。※5月15日(木)は15:00開場。会場:国立新美術館 3階 展示室3B住所:東京都港区六本木7-22-2観覧料:無料【問い合わせ先】ハローダイヤルTEL:050-5541-8600
2025年04月11日京都を拠点に活動する、烏丸ストロークロック主宰の劇作家、演出家である柳沼昭徳が、新国立劇場の“こつこつプロジェクト”に取り組んでいる。小川絵梨子演劇芸術監督のもとで始動、1年をかけて稽古、試演を重ねて作品を育てていくユニークなプロジェクトだ。2021年にスタートした第二期こつこつプロジェクトに参加した柳沼だが、2024年春からの第三期でも引き続き俳優たちとともにひとつの戯曲に対峙してきた。その作品とは、三好十郎が1950年に発表した『夜の道づれ』。敗戦後の東京、真夜中の甲州街道で出会った御橋次郎と熊丸信吉という二人の男が、とぼとぼと西に向かって歩き続け、語り続けるという極めてシンプルな作品だ。このほど、同プロジェクトでは初の試みとなる観客を前にしての試演会「Studio公演」での上演が実現。公演を控えた柳沼に、話を聞いた。こつこつプロジェクト Studio公演『夜の道づれ』チラシ──“こつこつプロジェクト”で取り組む作品として、なぜ『夜の道づれ』を選ばれたのか、決め手はどんなところにありましたか。柳沼これまで既存の戯曲を演出する機会はあまりなかったのですが、今回は、いろんな方が取り組んでこられた三好作品に私なりに取り組めたらいいなと思いました。三好さんは戦中戦後に活躍され、そのお考えは時代によって変容していきますが、敗戦を迎えて国の体制が変わったあと、一人の作家が時代をどう捉えていたのかということに興味がありました。スタートしたのはちょうどコロナ禍の真っ只中でしたし、大きな転換期に直面した作家がどのような考えに至ったのかという点にも興味があり、『夜の道づれ』は相応しいなと感じました。──あまり上演される機会のない作品かと思いますが、どんなところに魅力を感じられたのですか。柳沼どこかに取り組まれた方がいたかもしれませんが、大きなところでは上演された記録はないんですよね。この作品はストーリーの展開を楽しむようなものと違い、三好さんのお考えがストレートに表現されています。この後、『炎の人』はじめ大きなタイトルの作品が続きますが、それらに至るまでのデッサンといいますか、三好さんが、「いまのこの時代は一体どういう時代なのか」、「俺は何を考えているのか」という思索するさまが明らかな作品だと思います。──2021年に始まった1stの段階では、どれくらい具体的に演出プランを考えて稽古場に入られたのですか。柳沼まず、「歩く」という行動、身体の動きがある作品ですので、それをどのように伝えるのか、ということがひとつの大きなテーマでした。それは、稽古場に行き、俳優さんの身体を通してでないと検証できないものですから、最初はノーアイデアに近かったですね。通常は1カ月、2カ月という稽古期間で作品を仕上げ、演出家がいろいろなアイデアをもってイニシアチブをとり、俳優の力を借りて仕上げていくもの。ですが今回は“こつこつ”なので、アイデア出しも含め戯曲を読み込むことを現場でできないだろうかと考えました。座組の人たちと一つひとつ合意形成を図り、慎重にコミュニケーションを交わしながら作品を作っていくことが豊饒な時間を共有する方法だと思い、作り方から見直すことができないかとも考えました。当時はコロナ禍でコミュニケーションを阻害する要素がいっぱいあったけれど、時間はあるので、まずは自身の身の上話でも何でもいいからとにかく話し、お互いのことを理解したうえで、それを認めながらひたすら埋めていくということをやらせてもらいました。新国立劇場の演劇『夜の道づれ』-「こつこつプロジェクト」メイキング映像戦後間もない頃の甲州街道に、思いを馳せる──稽古場ではまず、どこから着手されたのですか。柳沼歩きながらセリフを言うことが俳優さんにとってどれくらいの負荷になるのか、ということを試しました。それから1年の間、インターバルを挟みつつ稽古を重ね、戯曲への理解を深めていきます。簡単に言えば、大まかに捉えていた台詞へのイメージが段落での理解になり、それが行になり、ある単語にまで細分化されていくというような深まり方です。表現方法としては、俳優さんが歩きながら話す、それをお客さまが見るとどうなのか、というところを突き詰めますが、歩きながら台詞を発するだけではどうしても、客席までその身体感覚までは伝わりません。1stからの積み重ねは、それをどう異化し、非日常的な体験に結びつけていくのかを考える、その変遷でもありました。──実際に甲州街道を歩かれたそうですが、どんな狙いがあったのでしょうか。柳沼(新国立劇場の)目の前が甲州街道なのだから、稽古場であれこれ話しているだけでなく「歩いたらいいんじゃないの?」と(笑)。当時の甲州街道の地図を見ながら戯曲と比較中まずは地図を、ということで、当時の地図を参加する俳優さん自らが国会図書館で調達してくれました。それを皆で広げて確認すると、甲州街道はずっと狭く、この劇場も都庁も何もなく、京王線は地下でなく地上を走っていましたし、高速道路もない。当時に思いを馳せながら歩いてみようと思いました。スタートは新宿駅の南口。終わりは明記されていませんが、おそらく現在の芦花公園駅あたりまでだろうと踏んで、推測しながら歩いたところ、大体2時間くらいに収まるんです。やっぱり三好さんも実際に歩いて、この辺でこういう人と出会ったらどうかと考えていたのでは、と実感しました。──泥棒にも出くわします。柳沼それは「復員服の男」という人物で、出会うのはきっと山手通りと交わる交差点ではないだろうか、すると警官と出会ったのは現在の東京ガスのビルのあたりではないか、と仮定できる。そうしていくと、戯曲は“文字”だけれど、“観念”ではないんだということに改めて気付かされるんです。三好さんは何を見て、何を感じたんだろう。それを紐解いていくと、それは“文学”でなく“演劇”になっていく。お客さまの前に、この作品を生きた言葉として出すことが、今回のひとつの大きな目的ですね。(撮影:田中亜紀)──「三好節」と呼ばれる三好十郎の語り口、その魅力をどんなところに感じられますか。柳沼長い台詞を延々と喋るのが「三好節」というのなら、それは私の認識とはちょっと違います。三好節のその根本には、ものすごい人間愛がある。孤独な人間同士が、互いの存在を尊重し合いながら、ときに手を差し伸べながら生きていくことが理想の社会ではないかと三好さんはおっしゃっている。いままさに、その感覚が必要なのではないか。ちょっと生き辛い世の中も、少し見方を変えれば若干生きやすくなる、そんなに力む必要もないんじゃないかと。でも、ただの理想主義者でもない。やっぱり人間はひとりで、どこまでいっても寂しい存在。その上でどうするのか、ということですね。誰かと簡単に繋がろうとしない、繋がって寂しくなかったように思わない、みたいな(笑)。人生の出会いの一期一会の味わい──御橋という人物は劇作家で、三好自身が投影されていると感じますが、柳沼さんもこの御橋にご自身を重ね合わせたり、作り手として共感したりするところはありますか。柳沼重ね合わせるというより、私が寄っちゃっているところがある。長い期間ずっと触れてきたので。悪く言うと“洗脳”(笑)。いつもこの辺、背後に三好さんがいますよね。三好さんは一体何を考えていたんだろうか、どういうつもりでこんなことを言っているのかと掘り下げていったところに見つかったのは、彼が幼少期からその年齢に至るまで積み重ねてきた経験によるものだということもわかり、やっぱり自分なんかに比べると三好さんは……!みたいな話になってくる(笑)。──道づれの熊丸についてはどうでしょうか。柳沼熊丸ももしかしたら作家自身かもしれませんが、面白いのは、御橋にとって熊丸は最後までわからない人なんです。「新聞屋式に言えば、アプレゲールですかね」という台詞があって、つまり「戦後派」、いまで言えば「Z世代」だとか、世代間の感覚が違う。でも違うからといって拒否するというわけでなく、「それはどういうこと?」と追及し、「僕たちは何にも分かり合えていないけれど、何か共通するような部分があった、かもしれない」というくらいのところで別れていく。本当に、行きずりの、道づれの、人生の出会いの一期一会の味わいも感じられる作品だなと思うんです。──ひたすら歩く2時間を、客席の私たちはどんなふうに体験することになるのでしょう。映像などは使われますか。柳沼俳優の力だけで何とかすることが究極だと思うので、そこにチャレンジしたい。できると思っていますし、俳優という依り代を通じて、お客さまも一緒に歩いているという感覚になればいいな、と。歩く、イコール生きる、という捉え方もできます。人間は、ずっと昔から寄る辺なく、不安になりながら孤独に歩んできているんだな、と。『夜の道づれ』出演者。左から)峰一作、滝沢花野、石橋徹郎、金子岳憲、林田航平(撮影:田中亜紀)──ご自身の演劇活動の中で、“こつこつプロジェクト”での取り組みはどのような体験になったと思われますか。柳沼まだ総括する段階ではないけれど、今後演劇作品を作る際に大きな影響を与えるであろうと、いや、もう与えられていると思います。この取り組みが終わっても、きっと三好さんがこのへん(背後)にいる(笑)。ものすごく普遍性のある、奥深い、そしてシンプルな話ですので、これを機にいろんなところで上演されるようになればいいなと思います。どうかこの登場人物たちと一緒に歩いていただければと思いますし、歩いている感覚になっていただける作品なので、いつもとはちょっと違う鑑賞体験になるのではないでしょうか。ぜひ、ご来場いただけたらと思っています。取材・文:加藤智子<公演情報>こつこつプロジェクト Studio公演『夜の道づれ』作:三好十郎演出:柳沼昭徳出演:石橋徹郎金子岳憲林田航平峰一作滝沢花野日程:2025年4月15日(火)~4月20日(日)会場:新国立劇場 小劇場チケット情報:()公式サイト:★新国立劇場YouTubeチャンネルにて、新国立劇場の演劇『夜の道づれ』稽古場&石橋徹郎・金子岳憲インタビュー映像も公開中!
2025年04月11日本日2025年4月10日(木) に初日を迎える、新国立劇場バレエ団『ジゼル』のゲネプロ舞台写真、吉田都芸術監督のコメントが到着した。2022年に吉田都芸術監督が初めて演出を手掛け話題を呼んだ『ジゼル』。イギリスの振付家アラスター・マリオットとともに、19世紀ロマンティック・バレエ不朽の名作を新しく生まれ変わらせ、ロマンティック・バレエの本質である幽玄さを持ちつつも演劇的な作品として再構築した。リトアニアの「十字架の丘」に着想を得て、キリスト教と土着の文化の狭間にある世界観を表現したディック・バードの美術も大きな見どころとなっている。公演は、4月20日(日) まで新国立劇場で上演後、7月にイギリスのロイヤルオペラハウスにて海外公演を予定している。■吉田都芸術監督 コメント私が演出しました『ジゼル』を再び皆様にご覧いただけることを、大変嬉しく思います。再演にあたり、指揮者にポール・マーフィーさん、そしてコーチングに初演でもステージングのアシスタントをしていただいた、ジョナサン・ハウエルズさんに来日していただき、バレエ・スタッフとともに綿密にリハーサルを重ねてまいりました。『ジゼル』は生と死、そして愛と赦しの物語です。このドラマをより深めるために、マイムなど演技のリハーサルにも時間をかけてきました。ダンサーは声を発しませんが、例え踊りの部分であっても、まるで台詞を喋っているかのように感じていただけるのではないかと思います。この作品の世界観やストーリーが皆様の心に届くことを祈っております。<公演情報>2024/2025 シーズン新国立劇場バレエ団『ジゼル』振付:ジャン・コラリ / ジュール・ペロー / マリウス・プティパ演出:吉田都ステージング・改訂振付:アラスター・マリオット音楽:アドルフ・アダン美術・衣裳:ディック・バード照明:リック・フィッシャー芸術監督:吉田都指揮:ポール・マーフィー / 冨田実里管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団出演:新国立劇場バレエ団【公演日程】■2025年4月10日(木) 19:004月11日(金) 14:004月12日(土) 13:30 / 18:004月13日(日) 13:304月18日(金) 19:004月19日(土) 13:30 / 18:004月20日(日) 14:00【海外公演】2025年7月24日(木)~27日(日)英国ロイヤルオペラハウス 全5回公演公式サイト:
2025年04月10日諸橋近代美術館では展覧会「ととのう展 ~ヘルスケアにつながる美術館~」関連企画として2025年4月12日(土)・13日(日)の二日間にわたり、「モロビでサウナフェス」を開催します。美術館で開催するサウナイベントとしては国内初の試みです。サウナとアートを楽しむ新感覚のサウナフェス!磐梯朝日国立公園にある諸橋近代美術館屋外エリアに各日8~10基のサウナが集結します。大自然の中で「ととのう」を体験した後は、研ぎ澄まされた感覚で美術館で展覧会「ととのう展」鑑賞へ。サウナとアートを楽しむ二日間!必見!「モロビでサウナフェス」5つのポイント【1】大自然に触れる!国立公園内でアウトドアサウナ!すぐ近くには磐梯山の噴火で生まれた七色に輝く幻想的な五色沼湖沼群があり、庭園からは磐梯山の噴火口が望めます。大自然の真ん中にある美術館でアウトドアサウナを思い切り楽しもう!【2】研ぎ澄まされた感覚で美術館へ!ダリ、印象派、『マンガ サ道』など展示フェス中はサウナポンチョでの美術館鑑賞OK!4月12日開幕「ととのう展 ~ヘルスケアにつながる美術館~」ではサルバドール・ダリや印象派の作品の他、特別展示としてタナカカツキ氏による『マンガ サ道』の原画展示や、美術館オリジナル描き下ろしマンガも紹介します。【3】県内外から10基集結!福島県産檜バレルサウナも登場福島県内のサウナ関連企業を中心に県外からも出展していただき、各日8~10基が美術館屋外エリアに並びます。尚、日によって出展者様が変わります。(1) 37トラック/神奈川(サウナトラック※チラールーム有り)(2) Roots猪苗代/猪苗代町(パノラマサウナ)(3) 有限会社サン工業/埼玉(モバイルキャビンサウナ)(4) ZELKOVA/西郷村(福島県産檜バレルサウナ)(5) 常磐サウナクラブ/いわき(テントサウナ)(6) テントサウナ(7) Sauna & Spa Green/須賀川(テントサウナ)(8) 有限会社サン工業/埼玉(薪風呂)(9) 箱蒸風呂【ナッツ】/宮城(ハイエースサウナカー)(10) Revitalize SAUNA/大阪(家庭用サウナ「おうちdeサウナ」)※4月12日のみ【4】スパイシーな「サ飯」ご用意!福島県内キッチンカー出展。珍しいジャマイカ料理に、20種類以上のスパイスが用いられたカレーなど、サウナと相性が良さそうなキッチンカーをご用意しました。(1) Irie Wood NiNE MILE/須賀川(ジャマイカ料理)(2) Sabha Sarge/福島(スパイスカレー)【5】ゲスト登場!4月12日 福島美少女図鑑 牧田優花さん、4月13日 マグ万平さんトークや美術館&サウナグッズが当たる大抽選会も実施します!▽『モロビでサウナフェス』開催概要▽■ 開催日: 2025年4月12日(土)・13日(日)■ 時間: 10:00~17:00(最終入場16:00)■ 会場: 諸橋近代美術館 屋外エリア〒969-2701福島県耶麻郡北塩原村大字桧原字剣ヶ峯1093番23※更衣室としてメルキュール裏磐梯リゾート&スパ(美術館隣接)を利用いただきます。■ 参加費: (1)税込2,500円(サウナ+美術館観覧料込み)(2)温泉付き/税込3,800円(上記(1)にメルキュール大浴場利用がプラス)※大浴場は15~19時まで■ 定員: 事前申し込み制度・各日50名(若干名当日参加枠あり)■ 対象: 高校生以上※持参物や申し込み方法は、出典元のプレスリリースをご確認ください。(出典元の情報/画像より一部抜粋)(最新情報や詳細は公式サイトをご確認ください)※出典:プレスリリース
2025年04月07日諸橋近代美術館では展覧会「ととのう展 ~ヘルスケアにつながる美術館~」関連企画として2025年4月12日(土)・13日(日)の二日間にわたり、「モロビでサウナフェス」を開催します。美術館で開催するサウナイベントとしては国内初の試みです。国内初の美術館×サウナ!4月12日・13日「モロビでサウナフェス」開催磐梯朝日国立公園にある諸橋近代美術館屋外エリアに各日8~10基のサウナが集結します。大自然の中で「ととのう」を体験した後は、研ぎ澄まされた感覚で美術館で展覧会「ととのう展」鑑賞へ。サウナとアートを楽しむ二日間!県内外から各日8~10基のテント集結!▽必見!「モロビでサウナフェス」5つのポイント▽【1】大自然に触れる!国立公園内でアウトドアサウナ!すぐ近くには磐梯山の噴火で生まれた七色に輝く幻想的な五色沼湖沼群があり、庭園からは磐梯山の噴火口が望めます。大自然の真ん中にある美術館でアウトドアサウナを思い切り楽しもう!国立公園内の美術館でアウトドアサウナを楽しもう!【2】研ぎ澄まされた感覚で美術館へ!ダリ、印象派、『マンガ サ道』など展示フェス中はサウナポンチョでの美術館鑑賞OK!4月12日開幕「ととのう展 ~ヘルスケアにつながる美術館~」ではサルバドール・ダリや印象派の作品の他、特別展示としてタナカカツキ氏による『マンガ サ道』の原画展示や、美術館オリジナル描き下ろしマンガも紹介します。【3】県内外から10基集結!福島県産檜バレルサウナも登場福島県内のサウナ関連企業を中心に県外からも出展していただき、各日8~10基が美術館屋外エリアに並びます。尚、日によって出展者様が変わります。(1) 37トラック/神奈川(サウナトラック※チラールーム有り)(2) Roots猪苗代/猪苗代町(パノラマサウナ)(3) 有限会社サン工業/埼玉(モバイルキャビンサウナ)(4) ZELKOVA/西郷村(福島県産檜バレルサウナ)(5) 常磐サウナクラブ/いわき(テントサウナ)(6) テントサウナ(7) Sauna & Spa Green/須賀川(テントサウナ)(8) 有限会社サン工業/埼玉(薪風呂)(9) 箱蒸風呂【ナッツ】/宮城(ハイエースサウナカー)(10) Revitalize SAUNA/大阪(家庭用サウナ「おうちdeサウナ」)※4月12日のみZELKOVA/福島県西郷村(福島県産檜バレルサウナ)【4】スパイシーな「サ飯」ご用意!福島県内キッチンカー出展。珍しいジャマイカ料理に、20種類以上のスパイスが用いられたカレーなど、サウナと相性が良さそうなキッチンカーをご用意しました。(1) Irie Wood NiNE MILE/須賀川(ジャマイカ料理)(2) Sabha Sarge/福島(スパイスカレー)【5】ゲスト登場!4月12日 福島美少女図鑑 牧田優花さん、4月13日 マグ万平さんトークや美術館&サウナグッズが当たる大抽選会も実施します!4月12日(土)は福島美少女図鑑 牧田優花さん、4月13日(日)はマグ万平さんが登場!?▽『モロビでサウナフェス』開催概要▽■ 開催日 : 2025年4月12日(土)・13日(日)■ 時間 : 10:00~17:00(最終入場16:00)■ 会場 : 諸橋近代美術館 屋外エリア〒969-2701 福島県耶麻郡北塩原村大字桧原字剣ヶ峯1093番23※更衣室としてメルキュール裏磐梯リゾート&スパ(美術館隣接)を利用いただきます。■ 参加費 : (1)税込2,500円(サウナ+美術館観覧料込み)(2)温泉付き/税込3,800円(上記(1)にメルキュール大浴場利用がプラス)※大浴場は15~19時まで■ 定員 : 事前申し込み制度・各日50名(若干名当日参加枠あり)■ 対象 : 高校生以上■ 後援 : &sauna■ 専用HP : ■ 申込方法: 下記「アソビュー!」よりお申し込みください。 【持参物】水着(ラッシュガード可)、Tシャツ・ポンチョ等の羽織るもの、タオル、サンダル・推奨持物:サウナハット、サウナマット、小さめのバッグ(サコッシュ等)、タオルポンチョ、濡れたものを入れる袋・メルキュール裏磐梯リゾート&スパにてフェイスタオル200円/バスタオル400円にてレンタル可能です(税込)。・イベント当日、美術館入室には水気をよく拭いた上でタオルポンチョ又は衣服の着用が必要です。※都合により内容が変更になる場合がございます。予めご了承ください。【本件に関するお問い合わせ先】公益財団法人諸橋近代美術館広報担当までTEL : 0241-37-1088Mail: info@dali.jp 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2025年04月02日新国立劇場バレエ団でプリンシパルとして活躍した本島美和が、令和7年4月1日付で新国立劇場バレエ研修所のアクティング・ディレクター(所長代行)に就任する。本島は2001年に新国立劇場バレエ研修所に第1期生として入所し、2003年、新国立劇場バレエ団にソリストとして入団。2005年の新制作『カルメン』で初めて主役に抜擢され、『ドン・キホーテ』『ジゼル』『くるみ割り人形』、ビントレー『アラジン』、プティ『こうもり』などで数多くの主役を務め、古典から新作まで幅広いレパートリーを持つ。また、『眠れる森の美女』のカラボス、『不思議の国のアリス』のハートの女王など、キャラクターの強い役柄も定評がある。2022年6月に新国立劇場バレエ団を退団し、同年9月1日より新国立劇場バレエ研修所主任講師補を務めていた。また現バレエ研修所長の小倉佐知子は、バレエ研修所スーパーバイザー(顧問)に就任する。新国立劇場バレエ研修所 公式サイト:
2025年03月31日新国立劇場 ダンス 2024/2025シーズン Co.山田うん『オバケッタ』が、2025年3月29日・30日に東京・新国立劇場 小劇場で上演された。『オバケッタ』は、日本を代表するコンテンポラリーダンスカンパニーCo.山田うんが2021年7月に初演した「大人もこどもも楽しめるダンス作品」。“死んだらみんなどこ行くの?”をテーマに、個性の際立つダンサーたちが妖怪や怪物に扮し、ダンサーたちの力強いダンスとヲノサトルのポップでキャッチーな音楽、そして絵本作家ザ・キャビンカンパニーによるカラフルな美術によって、人間の生死を優しく温かく見つめながら描いていく。本作について、演出・振付・作詞を手がけた山田うんは、「『オバケッタ』再びの上演を、心から嬉しく思います。“死んだらどこへ行くの?オバケってなに?”という問いを、こどもたちに投げかけてみたい、と思い生まれたこの作品。初演時はコロナ禍でしたが、時代が移ろうとも、私たちはいつも“生きること”と“いつか死ぬこと”の間を旅しているのだなと感じます。オバケに扮するダンサーたち、ザ・キャビンカンパニーさんの美術、ヲノサトルさんの音楽などが、夢と現実を楽しく繋いでくれます。とにかく、たくさんのこどもたちに観てほしいと思っています」とメッセージを寄せた。なお2025年4月5日(土) には大分・iichiko 総合文化センター、4月12日(土) には長野・まつもと市民芸術館で上演される。撮影:阿部章仁<公演情報>新国立劇場 ダンス 2024/2025シーズンCo.山田うん『オバケッタ』演出・振付・作詞:山田うん音楽:ヲノサトル美術:ザ・キャビンカンパニー出演:Co.山田うん【東京公演】※公演終了2025年3月29日(土)・30日(日)会場:新国立劇場 小劇場【大分公演】2025年4月5日(土)会場:iichiko 総合文化センター【長野公演】2025年4月12日(土)会場:まつもと市民芸術館チケット情報:()公式サイト:
2025年03月31日6月12日(木) より新国立劇場 小劇場で上演される新国立劇場2024/2025シーズン『ザ・ヒューマンズ─人間たち』より、翻訳の広田敦郎と演出・桑原裕子のコメントが到着した。家族が織り成す様々な風景から、今日の社会の姿を照らし出し、未来を見つめるシリーズ「光景─ここから先へと─」の第2弾は、劇作家・脚本家として活躍するスティーヴン・キャラムのヒット作『ザ・ヒューマンズ─人間たち』。マンハッタンの老朽化したアパートを舞台に、感謝祭を祝うために集まったある家族の会話から、貧困、老い、病気、愛の喪失への不安、宗教をめぐる対立などが浮かびあがる一夜の物語だ。演出は、2022年に上演した『ロビー・ヒーロー』の記憶も新しい、劇団KAKUTA主宰の桑原裕子が務める。キャスティングには、観客が自分自身を重ねることができる当事者性を重要視したという桑原。ブレイク家の長女で、ガールフレンドと別れたばかりの弁護士エイミーには山崎静代、作曲家を目指す次女のブリジットには、オーディションを経て出演が決定した青山美郷、その恋人・リチャードには細川岳、認知症により車椅子生活をおくる祖母モモには稲川実代子、母ディアドラには増子倭文江、そして悪夢にうなされ不眠が続く父エリックを平田満という多彩なキャストが揃った。■翻訳 広田敦郎からのメッセージとても定義しがたい作品です。一見サイエンス・フィクションかと思わせるタイトルでもあるようですが、どんなお芝居かは想像しにくいでしょう。一家が集まる感謝祭のディナー、夜更けとともに浮かび上がる不都合な真実、と、いかにも〈アメリカの家族劇〉らしくまとめることもできますが、それではあまりにも新しくないし……何も特別なところのない、ごく普通の家族の営みにほっこりしながら、そこはかとない不安にさいなまれ、「いま何を見せられたの?」と若干もやっとしながら劇場を後にする感じの、怪談じみたお芝居、でしょうか。『ハミルトン』がトニー賞ベスト・ミュージカルとピュリッツァー賞に選ばれた2016年、トニー賞ベスト・プレイに選ばれ、ピュリッツァー賞ファイナリストまで残ったお芝居です。バラク・オバマ政権が終わりに近づくころ、そしてまもなくドナルド・トランプが大統領に選ばれることを大勢が予想していなかった(あるいは予想していたでしょうか?)ころ、初演されたお芝居です。19世紀から20世紀の変わり目、チェーホフの新作劇を観た人々と同じような気持ちを味わえるお芝居、かもしれません。ニューヨーク、マンハッタンの片隅で感謝祭のディナーに集まった家族の抱える不安は、ポストコロナ時代の日本で生活するわたしたちにとっても他人事ではありません。劇場でひとよの不安を分かち合い、他者との緩やかな繋がりを感じることが、この酷い時代、酷い世界を生き抜くための支えになればと思っています。■演出 桑原裕子からのメッセージ人が、不安を抱くのはどんなときだろう、と考えていました。幼い頃は、そこにないはずの物がある、見えない者が見える、聞こえてはいけない音が……という、いわばゴーストのような未知なる存在に恐れ、何もない暗闇の奥に目をこらしていたものです。けれどいつからか、不安はその逆にある、と感じるようになりました。あるはずのものがない。見えていたことを見失う。信じていたものが失われてゆく。それは、信頼であるとか関係だとか絆だとか記憶だとか愛だとか、自分自身であるとか。あるいは文化だとか、社会だとか。私たちの暮らしている世界は、永遠に進化していくものだと思い込んでいたけれど、そうではなかったのだなと、ここ10年ほどの間で急速に感じるようにもなりました。以来ずっと、足下に不安が漂っています。失われていく予感こそが、不安の正体なのかもしれません。『ザ・ヒューマンズ―人間たち』は、ひとつの家族の、ほんの僅かな時間を切り取った作品です。あなたも私もよく知るような……けれど、我々が平気な顔をして日々を営みながらひた隠しにしてきた恐ろしい何か、が、不気味な軋みをあげて満ちてゆく恐怖劇でもあります。家族という小さな社会で蠢く人間たちを、私も足をすくませながら見届けます。■ 『ザ・ヒューマンズ ─人間たち』特集掲載中<公演情報>シリーズ「光景─ここから先へ─」Vol.2『ザ・ヒューマンズ ─人間たち』作:スティーヴン・キャラム翻訳:広田敦郎演出:桑原裕子【キャスト】山崎静代、青山美郷、細川岳、稲川実代子、増子倭文江、平田満【東京公演】2025年6月12日(木)~29日(日)会場:新国立劇場 小劇場※開場は開演の30分前です。【チケット】A席:7,700円B席:3,300円Z席(当日):1,650円一般発売:2025年4月12日(土) 10:00~■新国立シアタートーク6月17日(火) 終演後出演:桑原裕子、全キャスト司会:中井美穂入場方法:本公演チケット(いずれの日程でも可)をご提示ください【全国公演】■愛知公演2025年7月5日(土) 13:00 開演、6日(日) 13:00 開演会場:穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール■大阪公演2025年7月19日(土) 14:00 開演会場:茨木市文化・子育て複合施設 おにクル ゴウダホール(大ホール)公式サイト:
2025年03月28日東京・上野の国立西洋美術館で、6月8日(日) まで『西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館』展が開催されている。アメリカのサンディエゴ美術館と国立西洋美術館の所蔵品をあわせ、ルネサンスから19世紀末までの西洋絵画の歴史を「どこから見るか」のヒントとともにたどることができる展覧会だ。カリフォルニア州最南端の都市、サンディエゴにあるサンディエゴ美術館は、その昔、サンディエゴの街がスペインからの入植者によって築かれたこともあり、初期ルネサンス絵画やスペイン17世紀絵画などのコレクションが充実していることで知られている。同展は、そのサンディエゴ美術館と国立西洋美術館の共同企画。両館が所蔵する作品88点を組み合わせ、36の小テーマにわけて展示し、美術の歴史や魅力を深堀りしていくというもの。なお、サンディエゴ美術館からの出品作49点はすべて日本初公開となる。第2章フランシスコ・デ・スルバランの作品の展示風景展覧会は4章構成。第一章「ルネサンス」では、初期ルネサンスの代表的画家ジョットから、北方ルネサンスの画家たちまでを紹介する。冒頭に展示されるのは日本ではなかなか展示されることがないジョットやフラ・アンジェリコなど、初期ルネサンスの画家たちだ。同展では作品が成立した背景や歴史などもあわせてわかりやすくキャプションで表示、理解を深める工夫がほどこされている。ジョットやフラ・アンジェリコらの作品の形が四角形ではなく、三角形や半円などであるのは、設置された教会の建付けに合わせたものであるから、という理由も細やかに解説されている。作品を鑑賞し、解説を読み、あらためて各作品を鑑賞してみよう。左:フラ・アンジェリコ《聖母子と聖人たち》1411-13年頃 サンディエゴ美術館蔵中央:ルカ・シニョレッリ《聖母戴冠》1508年 サンディエゴ美術館蔵右:ジョット《父なる神と天使》1328〜35年頃 サンディエゴ美術館蔵ヒエロニムス・ボス《キリストの捕縛》など、北方ルネサンス絵画も展示されている。キリストの周りを取り囲むものたちの表情やポーズは強いインパクトを与えている。左:ヨース・ファン・クレーフェ《三連祭壇画:キリスト磔刑》1525 年 国立西洋美術館右: ヒエロニムス・ボス《キリストの捕縛》1515年 サンディエゴ美術館蔵ヒエロニムス・ボス《キリストの捕縛》1515年 サンディエゴ美術館蔵第2章「バロック」は、17世紀に隆盛を極めたバロック絵画を紹介。サンディエゴ美術館の充実したコレクションが光る。そのなかでも見どころは、17世紀初頭のスペインで流行した「ボデゴン」と呼ばれる静物画だ。世界各地にボデゴンを所蔵する美術館はあるが、ボデゴンを初めに描いたとされるフアン・サンチェス・コターンの静物画は、現在のところ6点しか現存していない。その6点のうち最良とされているのが、今回来日した《マルメロ、キャベツ、メロンとキュウリのある静物》だ。吊り下げられたマルメロやキャベツには影がなく、右側のきゅうりには長い影が伸びている。非常にミステリアスな印象を与える画家の演出だ。フアン・サンチェス・コターン《マルメロ、キャベツ、メロンとキュウリのある静物》 1602年 サンディエゴ美術館蔵スルバランが描く頭の上にうっすらと光輪が光る愛らしい仔羊や、ドラマティックな構図のエル・グレコの作品など、スペイン絵画の巨匠たちの作品も多く展示されている。フランシスコ・デ・スルバラン《神の仔羊》1635〜40年頃 サンディエゴ美術館蔵左からエル・グレコ《悔悛する聖ペテロ》1590〜95年頃 サンディエゴ美術館蔵、エル・グレコ《十字架のキリスト》1610〜14年頃 国立西洋美術館蔵、ペドロ・デ・オレンテ《聖母被昇天》1620〜25年頃 国立西洋美術館蔵第3章「18世紀」では、風景画や肖像画、風俗画などさまざまな発展を見せた18世紀の美術を取り上げる。なかでもマリー=ガブリエル・カペ《自画像》とマリー=ギュミーヌ・ブノワの《婦人の肖像》の華やかな共演は見どころのひとつだ。18世紀のフランスは女性芸術家たちも活躍、カペもブノワも1791年の官展(サロン)に女性で初めて出品した画家として知られている。左:マリー=ガブリエル・カペ《自画像》1783年頃 国立西洋美術館蔵右:マリー=ギユミーヌ・ブノワ《婦人の肖像》1799年頃 サンディエゴ美術館蔵18世紀のイギリスやアルプス以北の国々では「グランド・ツアー」と呼ばれる大旅行が流行した。文化的教養を身につけるために数ヶ月かけてイタリアへ旅行した市民たちは、土産として当地の風景画を持ち帰るようになり、様々な画家たちがヴェネツィアやローマの風景を描くようになっていたという。左:ベルナルド・ベロット《ヴェネツィア、サン・マルコ湾から望むモーロ岸壁》1740年頃サンディエゴ美術館蔵右:フランチェスコ・グアルディ《南側から望むカナル・グランデとリアルト橋》1775年頃サンディエゴ美術館蔵左:ユベール・ロベール《モンテ・カヴァッロの巨像と聖堂の見える空想のローマ景観》1786年国立西洋美術館蔵 右:ユベール・ロベール《マルクス・アウレリウス騎馬像、トラヤヌス記念柱、神殿の見える空想のローマ景観》1786年国立西洋美術館蔵そして第4章「19世紀」では、写実主義やロマン主義、印象派などさまざまな美術運動が起こり、絵画の世界に大変革が起こった19世紀の美術に着目する。サンディエゴ美術館、国立西洋美術館双方が所蔵する画家、スペイン人画家ホアキン・ソローリャは、スペインの写実絵画の伝統を受け継ぎながら、かつては決して描かれることのなかった日常のなにげない生活や風俗をモチーフに描いている。左:ホアキン・ソローリャ《ラ・グランハのマリア》1907年 サンディエゴ美術館蔵 中:ホアキン・ソローリャ《バレンシアの海辺》1908年 サンディエゴ美術館蔵 右:ホアキン・ソローリャ《水飲み壺》1904年 国立西洋美術館蔵かつては女神やニンフなどの姿を借り、理想的な姿ばかりが描かれていた裸婦像も、ドガやロートレックをはじめ19世紀上半の画家たちは現実に即し、自らの視点で描くようになっていった。左:アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《うずくまる赤毛の裸婦》1897年 サンディエゴ美術館蔵 右:エドガー・ドガ《背中を拭く女》1888〜92年 国立西洋美術館蔵また、今回はさらにサンディエゴ美術館から5点の作品を借用し、常設展示室にて特別展示されている。5点の作品だけでなく、隣り合う常設作品の新しい魅力も見えてくるだろう。本展を見終わったら、ぜひ常設展示室にも足を運ぼう。ソフォニスバ・アングィッソーラ《スペイン王子の肖像》1573年サンディエゴ美術館蔵西洋絵画をどう見るか、どう楽しむかを同展で知れば、これからほかの展覧会に足を運んだときにも、より楽しめるようになるはずだ。さまざまな発見のある展覧会、ぜひ見ておきたい。取材・文:浦島茂世★『西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派までサンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館』展示風景の動画はこちらこの投稿をInstagramで見る ()ぴあアート(@art___pia)がシェアした投稿()<開催概要>『西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派までサンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館』2025年3月11日(火)~6月8日(日)、国立西洋美術館にて開催公式サイト:チケット情報:()
2025年03月25日新国立劇場2024/2025シーズン 演劇 海外招聘公演『母』が、5月28日(水) より東京・新国立劇場 小劇場にて上演される。プラハに次ぐチェコ第2の都市、ブルノにあるブルノ国立劇場は、新国立劇場と同じ、オペラ、バレエ、演劇の3部門を擁したチェコ共和国最大の劇場のひとつだ。ヤナーチェク劇場、マヘン劇場、レドゥタ劇場というブルノ市内に点在する3つの劇場を運営し、毎シーズン約20の新作を上演し、幅広いレパートリーで毎年70以上の異なる演目を上演する。この度、劇場付きのスタッフ・キャストが所属する「ブルノ国立劇場ドラマ・カンパニー」を招聘し、2022年4月以来、レパートリー作品として定期的に上演されているカレル・チャペックの名作『母』を、新国立劇場で上演する。『母』舞台写真提供:ブルノ国立劇場チェコの国民的作家であり、劇作家、ジャーナリスト、評論家、小説家、童話作家としても活躍したカレル・チャペックによって書かれたこの戯曲は、1938年に初演された約90年前の作品。ブルノ国立劇場 演劇芸術監督ミラン・ショテクによる、現代劇の上演と共にチェコ演劇の古典作品に現代的なアプローチを続けるという方針のもと、本作は2022年4月レドゥタ劇場にてシュチェパーン・パーツルの演出で上演された。その後もレパートリー作品として定期的に上演され、また国内にとどまらず、イスラエル国立劇場ハビマでも上演、高い評価を得た。1936年~1939年に起こったスペイン内戦を受けて執筆された、戦争により夫と息子たちを次々と失くしていく母親の物語は、約90年の時を経ても色あせず、パーツルの見事な演出と、ブルノ国立劇場ドラマ・カンパニーのリアリティが溢れる演技で、皮肉にも、まるで現在の世界情勢を今すくいとったかのような作品となっている。チケットは、現在発売中だ。『母』舞台写真提供:ブルノ国立劇場【あらすじ】夫をアフリカでの戦いで失ったドロレスには5人の息子がいた。長男は医師として、次男はパイロットとして、それぞれの使命を果たして死んだ。双子の三男と四男は内戦に巻き込まれ、戦いの中でふたりとも殺される。亡くなった者たちは霊となってドロレスに話しかける。戦火が激しくなり、戦争への参加が呼びかけられる中、唯一生き残っている末息子のトニは軍への入隊を志願し、死んだ父と兄弟たちはトニの決断を応援する。トニまで失う事はできないと必死に抵抗するドロレスだが……。『母』トレイラー<公演情報>シリーズ「光景―ここから先へと―」Vol.1 海外招聘公演 『母』〈チェコ語上演/日本語及び英語字幕付〉作:カレル・チャペック演出:シュチェパーン・パーツルドラマトゥルグ:ミラン・ショテク【出演】ブルノ国立劇場ドラマ・カンパニーテレザ・グロスマノヴァー、トマーシュ・シュライ、ロマン・ブルマイエル、マルチン・ヴェセリー、ヴォイチェフ・ブラフタ、ヴィクトル・クズニーク、パヴェル・チェニェク・ヴァツリーク2025年5月28日(水)~6月1日(日)※開場は開演の30分前会場:東京・新国立劇場 小劇場【料金(税込)】A席:7,700円B席:3,300円Z席(当日):1,650円公式サイト:
2025年03月17日風光明媚な茅ヶ崎市に建つ茅ヶ崎市美術館で『美術館建築―アートと建築が包み合うとき』が、4月1日(火)〜6月8日(日)に開催される。美術館では、展示作品のみならず、建築や空間に興味を持つ人も多いだろう。この展覧会では、場の特性を活かした“サイトスペシフィックな芸術”として5つの美術館建築を紹介する。まずは、鳥が翼を広げたような屋根が特徴的な、同展の舞台となる「茅ヶ崎市美術館」。設計は地域に根差した建築家、山口洋一郎が担当した。内藤廣の設計による「島根県芸術文化センター」は、石見地方特産の石川瓦で建物全体を覆い、釉薬の違いによって玉虫色の建物がつくりあげられている。広島の造船技術を活用した可動展示室を中心に、コレクションに着想を得た「エミール・ガレの庭」、10棟のヴィラ、レストランが海辺に佇む、坂 茂の設計による「下瀬美術館」も話題だ。ほか、瀬戸内地方にある三分一博志「犬島精錬所美術館」、西沢立衛「豊島美術館」を紹介。島根県芸術文化センター建築:内藤廣写真:内藤廣建築設計事務所下瀬美術館建築:坂 茂写真:平井 広行さらに、国内の建築資料のアーカイブを行う文化庁国立近現代建築資料館が所蔵する3つの美術館を紹介。坂倉準三「神奈川県立近代美術館」、ル・コルビュジエ「国立西洋美術館」、高橋 靗一(ていいち靗一の「靗」は青偏に光)※+第一工房「群馬県立館林美術館」のオリジナル図面も公開する。神奈川県立近代美術館(現・鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム)建築:坂倉準三図面所蔵:文化庁国立近現代建築資料館模型や設計図、初期アイデアスケッチ、建築素材、実験過程がわかる資料を見ながら建築家の思考をたどると、その場所にその形でその美術館がある意味がわかってくるだろう。模型や写真などから実物を想像し、魅了された美術館があればぜひ訪ねてほしい。<開催概要>『美術館建築―アートと建築が包み合うとき』会期:2025年4月1日(火)~6月8日(日)会場:茅ヶ崎市美術館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)休館日:月曜(5月5日は開館)、5月7日(水)料金:一般800円大学600円、市内在住65歳以上400円公式サイト:
2025年03月13日3月11日(火) より国立西洋美術館で開幕した『西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館』のミュージアムショップで見つけたおすすめグッズをご紹介。ルネサンスから19世紀末まで、同展で展示されているアメリカ・サンディエゴ美術館と国立西洋美術館の名画をモチーフに、定番からユニークな癒し系グッズまで多彩なアイテムが揃っています。●《神の仔羊》グッズ各種ひつじぬいぐるみポーチ1980円フランシスコ・デ・スルバランの《神の仔羊》をモチーフにした、キュートなひつじグッズが各種登場。ポーチに巾着、ぬいぐるみと、どれも作品の質感やフォルムを再現しており、その脱力系なたたずまいに癒されること間違いなし!ひつじ巾着2100円ひつじぬいぐるみ2400円●羽ポーチ羽ポーチ(ホワイト/カラー)1760円《アレクサンドリアの聖カタリナの神秘の結婚》に描かれた天使の羽をモチーフにしたポーチ。ホワイトとバイカラーの2色あり。●マルシェトートバッグマルシェトートバッグ1200円ちょっとしたお買い物にぴったりのマルシェトートバッグ。ボデゴン(スペインの静物画)の傑作フアン・サンチェス・コターン《マルメロ、キャベツ、メロンとキュウリのある静物》などをモチーフにした4種を展開。●刺繍ブローチ刺繍ブローチ1100円それぞれに作品のモチーフがあしらわれたおしゃれな刺繍ブローチは5種類の展開。お手頃価格なのもうれしい。●ソックスソックス2640円ホアキン・ソローリャの《ラ・グランハのマリア》などの作品をモチーフにしたソックス。春のコーディネートのアクセントにおすすめ。●カファレル缶チョコレートカファレル缶チョコレート1512円ダニエル・セーヘルス、コルネリス・スフートの《花環の中の聖母子》をあしらった美しい缶が魅力的なカファレルのチョコレートは、自分用はもちろんプレゼントにもおすすめ。缶はモスグリーンオリーブとピンクの二色あり。●マスキングテープマスキングテープ770円ダニエル・セーヘルスによる花環を描いた2作品をモチーフにしたマスキングテープ。背景色のあるタイプとクリアタイプの2種類あり。●キャンディーポーチキャンディーポーチ880円ちょっとした小物の収納に重宝しそうなサイズ感のポーチは2種類展開。小さいながらも存在感を発揮しそう。※商品の価格は全て税込み★『西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派までサンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館』展示風景の動画はコチラこの投稿をInstagramで見る ()ぴあアート(@art___pia)がシェアした投稿()<開催概要>『西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派までサンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館』2025年3月11日(火)~6月8日(日)、国立西洋美術館にて開催チケット情報:()公式サイト:
2025年03月12日2026年5月より東京・新国立劇場 小劇場ほかで上演される演劇『エンドゲーム』に出演する全キャストの募集が開始された。本公演は、新国立劇場の小川絵梨子芸術監督が、その就任とともに打ち出した支柱のひとつである、すべての出演者をオーディションで決定するフルオーディション企画の第8弾。今回は小川自らが演出を担当する。このたび上演される『エンドゲーム』は、1957年の初演から半世紀以上を経ても世界中で上演され続けている、サミュエル・ベケットの傑作。本作について小川は、今まさに終わろうとしているかのように見える荒廃した世界の中で、「終わらないためにどう生きるか」を探求する物語だと語っている。2025年3月12日(水) より出演キャストの応募を開始、4月から5月にかけてオーディションが開催される。募集開始にあたり、小川より応募者に向けたコメントが到着した。■小川絵梨子(新国立劇場 演劇芸術監督・演出)コメント2018年に始まりましたフルオーディションでの公演は、今回で8回目を迎えます。初回の『かもめ』をはじめ、『反応工程』『斬られの仙太』『イロアセル』『エンジェルス・イン・アメリカ』『東京ローズ』そして『消えていくなら朝』と、多彩な作品を上演してまいりました。そしてこのたび、サミュエル・ベケット作『エンドゲーム』を上演いたします。このフルオーディション企画は、演劇の可能性を広げ、探究することを目的として始まりました。初めての試みであったため、どれほどの方にご関心をお寄せいただけるのか分からない中でのスタートでしたが、こうして本企画を重ねることができましたのはご参加くださった皆さまのおかげであり、本劇場にとりましてもこの出会いの積み重ねはかけがえのない財産です。これまでオーディションにご参加くださった皆さま、そして今回のフルオーディションにご興味をお持ちくださった皆さまに、心より深く感謝申し上げます。もし本作『エンドゲーム』にご関心をお寄せいただけましたら、ぜひご応募をご検討いただけますと幸いです。皆さまとお会いできる日を心より楽しみにしております。何卒よろしくお願い申し上げます。・作品について『エンドゲーム』の世界は、どうやら『ゴドーを待ちながら』の時代よりもさらに荒廃が進んでおり、部屋の外に生き物の気配はまるで無く、また人間関係は一層の悪化を見せ、今まさに世界は終末を迎えようとしているように見えます。この世界の終わりの中で、登場人物たちは変わりなく繰り返される日常を生きています。この物語は、一見すると世界の終わりを描いた陰鬱な世界観ながらも、実は“終わらないためにどう生きるか”を問い直す物語でもあると考えています。ベケット作品の登場人物たちのように、時間と存在への無力感と対峙しながらも、それでもなお生きることの意味を模索し続ける姿は、普遍的な人間そのものの姿です。ベケット自身、この『エンドゲーム』を「自分の作品の中で最も嫌いじゃない作品」と評したとされています。また、私が特に心に残っているベケットの言葉に「Try again. Fail again. Fail better.」というものがあります。冷徹な現実への視点の中に人間的な温かさを宿すベケットの考え方にはどこか救いも感じます。失敗を繰り返し、終わりに近づく中にあっても「どうやって終わらせないか」「われわれはどう生きるのか」という問いを絶えず問い続ける姿勢こそが、人間の希望であることを描きたいと考えております。・登場人物について全部で4名です。ハムと、ハムと親子関係にある(と思われる)クロヴ、そしてハムの両親であるナッグとネルです。ハムは壮年期の終わりから中年期にかけての人物として、老いと人生の終わりが訪れつつある年齢として設定する予定です。しかし、すべての登場人物におきまして、演じられる方の実年齢が設定と一致している必要はございません。ご興味を持っていただけた役に自由にご応募いただけましたら幸いです。【ものがたり】家具のない室内。舞台奥に小さな窓がふたつ。カーテンは閉じている。壁際にはバケツがふたつ、並んで置いてある。古ぼけたシーツを被って車椅子にかけている盲目のハム。もうひとり、クロヴが不自由な足取りで室内をウロついている。どうやら主従関係のようだ。ふたりはとりとめのない会話を続け、ハムは常にクロヴに文句を言い、怒鳴り散らし、イライラしている。クロヴはたまに外を覗いたりもするのだが、見えるのは殺伐とした風景。お互い、そんな日常に絶望しうんざりしていた。やがて退屈しのぎにハムが、バケツの中の人間に話しかける。中にいたのは彼の父親らしい。そしてもうひとりは……。<公演情報>演劇『エンドゲーム』作:サミュエル・ベケット翻訳:岡室美奈子演出:小川絵梨子芸術監督:小川絵梨子公演日程:2026年5月公演予定 ※6月上旬まで全国公演の可能性あり会場:東京・新国立劇場 小劇場 ほかオーディションの詳細はこちら:
2025年03月12日2025年2月26日、新国立劇場にて2025/2026シーズン演劇ラインアップ説明会が行われ、同劇場の小川絵梨子演劇芸術監督が上演作品を紹介、上演への思いを述べた。2018年9月に芸術監督に就任した小川にとって、これが二期8年間の任期の最終シーズンとなる。新国立劇場でたびたび再演を重ねてきた名作から海外招聘公演、小川が長く温めていたテーマを掲げたシリーズなど、引き続き充実のラインアップが実現。小川は一つひとつの作品について、丁寧に、たっぷりの思いを込めて語った。■2025年10月(小劇場)日韓国交正常化60周年記念公演[日韓合同公演]『焼肉ドラゴン』『焼肉ドラゴン』2011年上演舞台写真(撮影:谷古宇正彦)作・演出:鄭義信出演:千葉哲也、村川絵梨、智順、櫻井章喜、朴 勝哲、 崔 在哲、石原由宇、北野秀気、松永玲子イ・ヨンソク、コ・スヒ、パク・スヨン、キム・ムンシク ほか2025年上演『焼肉ドラゴン』出演者2008年、新国立劇場と韓国の芸術の殿堂(ソウル・アーツ・センター)とのコラボレーション企画として実現した、鄭義信による書き下ろし作品。2011年、2016年の再演に続く四度目の上演となる。「日韓の俳優さんたちによる今回の2025年の上演は、これまでと同じくこの作品の魅力と、いまの時代ならではの新しい視点をもたらしてくれると思います。登場人物の1人は公募オーディションし、キャストはすでに決まっています。また、韓国の若手劇作家によるリーディング公演も行う予定です」と語る小川。彼女が「新国立劇場の財産」ともいう本作の、パワーアップ・ヴァージョンの公演となる。■2025年11月(小劇場)[海外招聘公演]『鼻血-The Nosebleed-』“The Nosebleed” ワシントンD.C.公演©DJ Corey Photography作・演出:アヤ・オガワ字幕翻訳:広田敦郎出演:ドレイ・キャンベル、アシル・リー、クリス・マンリー、アヤ・オガワ、塚田さおり、カイリー・Y・ターナー日本をルーツに持ち、米国・ブルックリンを拠点に活動する劇作家、演出家、パフォーマーのアヤ・オガワによる作品。2023年にオビー賞を受賞した。「ご自身の半生と歴史をもとに、異文化の中で、異文化とともに生きる喜びや難しさ、また家族の愛、そこでの葛藤が描かれています」と小川。彼女自身、とても胸を打たれた作品だというが、「後悔や傷み、それを乗り越えて彼女が得たものが描かれ、ある種私小説的ですが、非常に普遍的な物語。ぜひシェアしたいなと思いました」。■2025年12月(中劇場)『スリー・キングダムス Three Kingdoms』(日本初演)作:サイモン・スティーヴンス翻訳:小田島創志演出:上村聡史「現在、日本の演劇の世界でも大変な人気を誇るイギリスの劇作家サイモン・スティーヴンスによる日本初演の作品。演出は現在、新国立劇場演劇芸術参与である上村聡史さんです。サスペンスミステリーの体を取りながら、資本主義の裏にひそむ影、現在の闇を探求していく物語。サイモン・スティーヴンスらしいリアリズムの枠を超えた、詩情性あふれる作品となっています」(小川)。英国初演時の劇評は賛否が分かれたというが、過去に二度、スティーヴンス作品を手がけた上村がどのように描き出すのか、注目される。ノゾエ征爾の新作、小川絵梨子が初めて演出を手がけるフルオーディション企画も以下3作品は、ひとつのテーマのもとで上演されるシリーズものとしての上演となるという。■2026年4月(小劇場)『ガールズ&ボーイズ』(日本初演)作:デニス・ケリー翻訳:小田島創志演出:稲葉賀恵「2020年に上演を予定していましたが、コロナ禍で中止、今回新たなチームに結集いただきます。2018年に英国ロイヤルコート劇場でキャリー・マリガン主演により初演された、比較的新しい作品で、女性の一人芝居です。ある女性の視点から、人生における愛と仕事、人生の喜びと、そこに突如現れた喪失が語られていく物語で、現代社会の歪みを、女性の視点から描きます。今回の日本初演ではその女性の役を、年代の異なるふたりの女性のWキャストで上演します。いまの女性のより広い視野を描くことができれば」。演出は、小川の芸術監督就任後の第1作となった『誤解』、ロイヤルコート劇場の劇作ワークショップから生まれた、須貝英の『私の一ヶ月』を演出した稲葉賀恵が担う。■2026年5月(小劇場)フルオーディションVol.8『エンドゲーム』作:サミュエル・ベケット翻訳:岡室美奈子演出:小川絵梨子小川の芸術監督就任当初から実施してきた、フルオーディション企画の第8弾。「ベケットの中でも、『ゴドーを持ちながら』と比較されることが多い作品ですが、『ゴドー』よりも、より荒廃して見える世界、人間同士の繋がりもより希薄に見え、鬱々とした空気が漂う、一見すると世界の終わりを描いているようにも見えます。しかし私は、実は私は“終わり”を描いているのではなく、“終わらないため”に私たちはどう生きるかを考えるための作品だと捉えています。私たちがより良い世界、より良い未来を考えることこそが希望のひとつなのである、ということを描ければと願っております」と語る小川。自身でフルオーディション企画の演出を手がけるのは初めてとのこと。「オーディションに参加することは実はとても大変なこと。興味をもって参加してくださる俳優さんの皆さんに期待するとともに、感謝申し上げたいと思います」。■2026年6月(小劇場)ノゾエ征爾 新作作:ノゾエ征爾演出:金澤菜乃英「現在の我々の一人ひとりが日常で抱える痛みや苦しさ、そして人に言えない不安や弱み、それに寄り添ったような作品になっていくと思います。強くあること、間違えないこと、それを求められる現代社会で実は一人ひとりが一人ぼっちで抱えてきたある種の生き辛さを、ノゾエさんらしい温かな視点で描き出していきます」。演出を手がける青年座の金澤菜乃英は、新国立劇場初登場。「できる限り若手の、また女性の演出家につくっていただきたいと考えてまいりました。今回、金澤さんを演出にお迎えできることを、大変嬉しく思っております」。以上2作品のシリーズのテーマは、「生きる意味を見出し続けること」というが、シリーズのタイトルは未定。「ノゾエさんの新作のタイトルが決まってからつけようと思っています」と小川はいう。それは、彼女が最後にやりたいとずっと温めていたというテーマであり、「分断化が進み、どんどん悪いほうへ、終わりのほうに向かっているのではないかという中で、個人が痛みを抱えながら、それでも未来に向かってどう考え続ければいいのかということをテーマにしています。痛みとか弱さを否定的に書くのではなく、それとともにどうあるか、よりよい未来に対して考え続けるということこそが、ひとつの我々の希望なのではないということを描きたい」と明かした。■2026年7月(小劇場)『11の物語-短編・中編(仮)』演出:鵜山仁、大澤遊、小山ゆうな、須貝英、鈴木アツト、西沢栄治、宮田慶子、山田由梨、小川絵梨子ほか「古今東西の中編、短編の戯曲を集めて、作品集として上演します。“11”というのは仮の数字で、上演作品の数に合わせて変わってゆく予定です」と小川。「日本でも世界でも、実はたくさん、たくさん短編、中編のいい作品がありますが、上演の機会はわりと少ない。それを、演劇が初めての方にも気軽に楽しんでいただける作品、またお子さん向けの作品と、楽しくいろんな作品に出会っていただきたいと、中編短編のフェスティバルを行うことにしました」。蓬莱竜太、岩井秀人の作品も登場予定とのこと。また特別編として、新国立劇場で16年以上にわたりシェイクスピアの歴史劇シリーズを手がけた鵜山仁と俳優のチームが、新しいシェイクスピア作品のリーディング公演を行うという。このほか、トークセッションやワークショップなどを展開してきた「ギャラリープロジェクト」、プレビュー公演、聴覚障がいを持つ人を対象としたサポート公演、現場でのハラスメント講習、また公演映像のデジタル配信なども引き続き実施。もちろん、小川の強い希望で取り組みが始まったプロジェクト──上演を前提とせずに、時間をかけて稽古に取り組み、試演会を重ねる「こつこつプロジェクト」も、引き続き試演会を予定しているという。「ここでしかできないこと」を考えた8年間8年の間にいくつもの新たな取り組みに挑戦した小川。「参加してくださったすべての作り手の皆さま、そして何より本劇場に興味を持ってくださった皆さま、作品を観てくださった皆さまに、心より、本当に御礼を申し上げたいと思います。8年間本当にありがとうございました」と述べ、感極まって声を詰まらせる場面も。質疑応答でも記者からの質問一つひとつに、きめ細やかに答える。8年間の手応えを問われると、「できたこと、できなかったこと、反省したこと、嬉しかったこともたくさんあります。私の力不足、申し訳ないと思うこともたくさん。芸術監督になって1年目からコロナ禍が始まり、その影響は2、3年続きました。世界は戦争、震災も続いた。時代が変遷、激変していく中で、演劇に何ができるかな、その時代に沿った作品として何ができるかなと考え、その中で、精一杯やったと思っています」と振り返った。その後会場を移して行われた小川を囲んでの記者懇談会では、より近い距離で、記者たちの様々な質問にこたえた。会場には、小川芸術監督時代の公演の全チラシが掲示されていたが、どの作品もすべて、小川にとって大切なものに違いない。が、「思い入れのある作品は?」と問われると、「そうですね、『誤解』(2018年10月)は、最初の最初でしたから──」と、愛おしそうにチラシに目を向ける。「実は、私が芸術監督になってからチラシのあり方を変えさせていただき、デザインを重視したいと、表から俳優さんの名前を外すことに。お客さまが、パッとビジュアルを見たときに、何かワクワクする、手に取りたくなるものにしたくて、文字情報を制限したんです。新しい試みで四苦八苦しました。それから『願いがかなうぐつぐつカクテル』(2020年7月)は、コロナ禍の中で最初に上演できた作品。こどもも大人も楽しめるシリーズのひとつでしたが、すごく嬉しかったのは作品の中にマスクを組み込んでくださって、小山ゆうなさんの演出に、すごく敬意を抱きました。このシリーズでは、『モグラが三千あつまって』(2023年7月)も、セットの上にお子さんがいっぱい乗ってくださって、すごく嬉しかったな……」と、回想は止まらない。その後の話題は、国立の劇場の芸術監督としての役割について、演劇の未来についてなど多岐にわたった。「『ここでしかできないこととは何か』ということをすごく考えました。こつこつプロジェクトは、理解していただくのにものすごく時間がかかりましたが、いろんな人たちが関わる芸術は、一人の作り手のためのものでなく、全員での芸術。このように時間をかけていくことで、作品の強度を上げ、たくさんのお客さまに楽しんでいただける可能性に満ちた作品ができるのではないかと考え、始めました。このプロジェクトをやりたいがために、この職を引き受けさせていただいたというのが正直な気持ちです。他のものを否定するのではなく、オプションが増えることで、新国として、豊かになるためのお手伝いとして何ができるのかとずっと考えていました」任期終了を見据えての話題が中心となったが、今シーズンの公演も、まだ4作品もの注目作が控えている。小川の芸術監督としての挑戦は、まだまだ終わらない。取材・文:加藤智子
2025年03月06日3月4日(火)より東京国立近代美術館で開幕した『ヒルマ・アフ・クリント展』。同展の特設ショップで見つけたミュージアムグッズをご紹介します!色鮮やかで神秘的な10点組の大作〈10の最大物〉など、アフ・クリントの作品をモチーフにしたアイテムが揃っています。●PCタブレットケース5280円PCタブレットケース5280円《10の最大物、グループIV、No.3、青年期》のビビッドなオレンジが目を引くタブレットケース。仕事や勉強にパワーをもらえること間違いなし!●刺繍サテントート5280円刺繍サテントート5280円《10の最大物、グループIV、No.5、成人期》をあしらったサテンの光沢が美しいトートバッグ。曲線にほどこされている刺繡がポイントになっている。●ソックス2200円ソックス2200円こちらも〈10の最大物〉から3つの作品をモチーフにしたソックス。春らしい色合いでお出かけするのが楽しくなりそう。●Tシャツ5940円Tシャツ5940円Tシャツ5940円《10の最大物、グループIV、No.7、成人期》をはじめ、代表作があしらわれたTシャツ。サイズはMとLで展開。●トートバッグ2750円トートバッグ2750円サブバックに使いやすそうなトートバッグも用意。カラフルな色合いの作品が地色に映える。●クリアファイル660円クリアファイル660円定番のA4サイズのクリアファイル。モチーフには色のきれいな作品が選ばれていて、気持ちも明るくなりそう。●アクリルマグネット990円アクリルマグネット990円デスクまわりなどにペタっと貼り付ければ、それだけで気持ちがうきうきするはず。5種類あり。●ぷっくりアクリルキーホルダー1650円ぷっくりアクリルキーホルダー1650円ぷくっと厚みのあるキーホルダー。いつでもどこへでもヒルマ・アフ・クリントの作品世界を持ち歩けます。※商品の価格は全て税込み★『ヒルマ・アフ・クリント展』のミュージアムグッズを4名様にプレゼント!【プレゼント内容】下記のグッズをそれぞれ1名様にプレゼントします。※いずれの商品も上の写真の図柄となります。①ソックス②アクリルキーホルダー③クリアファイル④アクリルマグネット【応募方法】①ぴあアート編集部のInstagram(art___pia)のフォロワーの方限定。②下記の該当投稿のコメント欄にご希望の商品の番号をお送り下さい。この投稿をInstagramで見る ()ぴあアート(@art___pia)がシェアした投稿()【応募締め切り】2025年4月14日(月) 23:59まで【注意事項】※ご応募は1アカウントにつき1商品のみとなります。※当選者の方には4月21日(月) 以降、Instagramアカウント(art___pia)よりDM(ダイレクトメッセージ)にてご連絡いたします。なりすましアカウントには十分ご注意下さい。※当選した場合のみ、DMをお送りさせて頂きます。※当選者の方には、発送先等の情報を頂くために、編集部の問合せメールをご連絡いたします。ご自身のメールアドレスや住所などの個人情報をDMに記載しないようにご注意ください。※当選後、お送り先メールアドレスについてご連絡頂ける方のみご応募ください。個人情報につきましては、プレゼントの発送以外には使用いたしません。※既にフォローをいただいている方もご応募の対象となります。※応募するInstagramアカウントを公開状態にしてください。※商品のお送り先は日本国内に限らせて頂きます。郵便物・宅配物の受け取りが可能であることをご確認のうえ、ご応募下さい。※このキャンペーンにInstagram(META社)の関連はございません。<開催概要>『ヒルマ・アフ・クリント展』2025年3月4日(火)~6月15日(日)、東京国立近代美術館にて開催公式サイト:
2025年03月06日新国立劇場バレエ団プリンシパルの渡邊峻郁、Co.山田うんで活躍する吉﨑裕哉という、異色の組み合わせによる対談が実現した。ともに、2025年3月に新国立劇場で上演される舞台に出演するダンサーだ。渡邊は、20世紀のバレエの3つの名作を上演する「バレエ・コフレ」で、鬼才ウィリアム・フォーサイスによる傑作『精確さによる目眩くスリル』に挑戦、吉﨑は『オバケッタ』再演での登場だ。実はふたりとも同い年、お互い密かにリスペクトし合っていることも発覚したこの対談。ふたりは、劇場のはからいでお互いの稽古場を見学、大いに刺激を受けた様子だ。──先日、お互いにリハーサルを見学し合われたとのことですが、実は、おふたりは元々お知り合いだったそうですね。渡邊ふたりとも4年前の新国立劇場のダンス公演『舞姫と牧神たちの午後 2021』に出演していて、僕はそこで吉﨑さんの踊り(『極地の空』)を観ているんです。すごくしなやかで、全然力みがなく、カッコよかったです。吉﨑渡邊さんの踊りは本当に美しいですね。リハーサルでも自分を美しく見せる哲学みたいなのが見えてきて、それが背中から伝わってきました。興味があります。渡邊え……僕は吉﨑さんに対して全く同じことを思っていたんですよ。自分の踊りの見せ方、この角度、この入り方が一番カッコよく見えるというのを、よく研究されていると感じました。僕は『オバケッタ』の初演を拝見しているのですが、そのときからすごくクールだなと思って注目していました。吉﨑僕も、新国立劇場のバレエ公演のキャストが発表されたら、絶対にチェックします。あ、渡邊さんがいる!って。渡邊ええっ!?吉﨑バレエをやらずにダンスの世界に入ったので、憧れがすごく強いんです。美しいライン、基礎がある人を羨ましく思います。渡邊さんの舞台は『夏の夜の夢』(2023年)を拝見しました。渡邊わあ、ありがとうございます。先日見ていただいた『精確さによる目眩くスリル』のリハーサルは、始まってまだ1週間くらいの時点でしたから、全然まだまだの状態でしたが。吉﨑『精確さによる目眩くスリル』は、フォーサイス作品の中でもバレエダンサーに向けてつくられた、バレエの徹底した基礎がないとできない作品ですよね。その中でオフバランスだったり抜いたりといった要素が入ってきて、すごくチャレンジされていた。本番の舞台でどんなふうに現れてくるのか、興味深いです。──ダンサーの皆さんにとって、フォーサイスとはどのような振付家なのでしょうか。吉﨑裕哉吉﨑僕は新潟のNoismというカンパニーでクラシックバレエをベースとしたコンテンポラリーダンスを踊っていたので、フォーサイス、キリアン、ベジャールを、現代のダンスを築いてきた偉大な先人たちと捉えています。そのフォーサイスの作品を日本で観ることができるなら、絶対観なきゃ駄目でしょ!と(笑)。しかも新国の、確かな技術があるダンサーたちが踊るのですから。渡邊ヨーロッパのカンパニーにいたとき、この作品を上演する機会があり、僕は別の振付家の作品を踊っていたのですが、こんな大変な作品があるんだと興味を抱きました。まさか日本に帰ってきて踊ることになると思っていなかったので、出演が決まってすごく嬉しく思いました。従来のバレエだけでは表現できない挑戦があり、だからといってすべてが自由ではなく、厳密な決まりごとの中で自由に踊る、という感覚ですね。吉﨑思ったよりずっと細かく指導されていましたね。首のつけ方とかアームスの出し方も、「こう」じゃなくて、「こう!」と。渡邊しっかり見てくださって(笑)。吉﨑僕も振付をするのですが、振付は言語、つまり文章みたいなもので、そこに句読点が入るか入らないか、「私は」なのか「私が」なのか、そういう違い、一言一句にこだわった作品だと思い、僕は嬉しくなりました。渡邊今日は女性と一緒に踊る場面を稽古してきたのですが、女性と並走して踊りつつ、視線は合っているけどお互いに全然違う動きを別のカウントでやる、という感覚です。とにかくカウントがすごく厳密で、1カ所でもズレると全てが崩れるし、ここだけは絶対にふたりがぴたりと合う、というところもある。渡邊峻郁吉﨑超絶技巧、ですね。それをあのレベルで踊っているのを見せつけられたので、同じダンサーとしてすごいなと思います。フォーサイスの振付は、従来のバレエとは違う筋肉を使ったり、疲れる場所が違っていたりするのですか。渡邊それはありますね。意外とオフバランスが多用されていて、外どちらかの足に乗ってないと次に行けない、ということが多い。しかも比較的深い位置が多く、プリエをすごく大事にされています。『オバケッタ』前半はワクワク、後半は────渡邊さんは『オバケッタ』の初演(2021年)をご覧になられたそうですね。渡邊すごく引き込まれました。前半と後半とかなり雰囲気が違っていたのが印象的でした。前半はキャラクターが次々と現れて、キャラクターソングみたいのがあって──。吉﨑僕が踊るのは電気男という、家のインテリアのライトを擬人化したキャラクターで、黄色い手袋つけてピカピカしています(笑)。歌は、あれは、自分で歌っているんですよ。録音ではありますが。『オバケッタ』稽古より『オバケッタ』稽古より渡邊吉﨑さんの記事を読ませていただいたのですが、ミュージカルの学校に行かれていたそうですね。吉﨑いまもミュージカルに出ていますが、自分の声の録音で踊るのは不思議な感じです。歌い方によって踊りは変わりますから、録音もちょっとした大仕事。今回も再録音をして、本番に向けて、自分が一番テンション上がりやすい歌い方を心がけました。全体の構成としては、1部が賑やかなのと比べて、2部は打って変わって死後の世界、お化けたちの世界で、群舞が多い。ゆめたという主人公が亡くなったおばあちゃんに会うという話で、割と抽象的な感じになります。渡邊スタジオでの皆さんの集中力、すごかったですね。もちろんとても和やかな雰囲気なのですが、音が流れた瞬間の切り替えは、本当にすごくて、僕たちのリハーサルも、改めて気を引き締めなければと思いました。吉﨑基本的に皆、ふざけているので、切り替えがはっきり見えただけかもしれません (笑)。──『オバケッタ』初演の際はどのように作品づくりを進められたのでしょうか。吉﨑うんさんはわりと、僕らに委ねてくれるんです。たとえば、壁男というキャラクターと電気男の、3人で踊るシーンがありますが、そこはブルース調の音楽を出して、「これでこういう感じのニュアンスでつくってみて」と。結構ざっくりなので(笑)、めちゃめちゃ迷走、苦労した記憶があります。ほかにもメデューサとかカッパとかいろんなキャラクターが出てくるので、それぞれで振付を考える。うんさんも細かいところはわからないままつくっていて、僕らから出てきたアイデアをさらに膨らませ、相互作用みたいな感じでつくっていき、結局何がどちらのアイデアでどうなっていったかわからないながら、「できた!」となる(笑)。間違いなくうんさんにヴィジョンはあるけれど、皆でつくったものでもあるんですね。新国立劇場でコンテンポラリーを上演できるなんて、とても光栄なこと。だから中途半端なことはできないし、意気込みはかなり強いです。『オバケッタ』稽古より渡邊踊ってみたいですよね、『オバケッタ』。……いや、無理!こんな素晴らしい方たちの中に入ったら恥ずかしすぎます(笑)。実は、初演を観たあと、山田うんさんの映像をいろいろ探して見ていたんですよね。地域密着の活動もされている方と知りましたが、ダンサーのエネルギーが作品の中ですごく放出されているように思います。吉﨑Co.山田うんに入ろうと思ったきっかけは、作品を観て、山田うんって何を考えているんだろう、何を思ってこんなに面白いことをやっているんだろうと興味を持ったからなんです。加入して5、6年経ちますが、やっぱりいまだにわからない(笑)。理にかなっていない動きもあるけれど、でもだんだん、かなってくる。そこにはうんさんなりの哲学があって、人前で踊ったときに、面白くつながる。ダンサーの熱量を引き出すのも、肉体を躍動させるのもうまい。すごいなって思います。『オバケッタ』稽古より渡邊『オバケッタ』は小さな子も大人も楽しめる要素がたっぷり盛り込まれていますし、ダンスをよくご覧になる方にとっても見応えのある素晴らしい舞台です。装置も絵本の中の、夢の世界。絵本作家の方が美術を手がけられていて、カラフルできれいですよね。こういう夢って、皆、きっと見たことがあると思います。おばあちゃんに会う夢は僕も経験したことがある。前半はワクワク、後半は、心の奥にちょっと響くものがあって、死について感覚的に受け取ることで、「楽しかった」だけではない、何かちょっと考えさせるものが残る。公演を観たあと、散歩しながら家に帰る間は放心状態。個人的な経験も思い出されたりして、いろいろ考えちゃいました。劇場に足を運んで、ワクワク楽しむもよし、胸をキュッとさせてもよしで、多分、それぞれの楽しみ方がある──今日はこれを言うことができてとても嬉しい!実は今日、吉﨑さんに会えるのを本当に楽しみにしていたんです。観たらきっと世界が広がるフォーサイス作品──「バレエ・コフレ」の見どころについてもぜひ聞かせてください。渡邊そうでした(笑)。「コフレ」はフランス語で宝石箱という意味で、3つの異なる魅力をもつ作品を楽しめる公演です。僕らが取り組むフォーサイス作品では、『精確さによる目眩くスリル』のタイトルどおり、ダンサーの精密なテクニックと、そこからちょっと抜け出るような挑戦的な部分を感じていただけたら。『火の鳥』は20世紀初頭からいまに残る名作です。また『エチュード』は、バーレッスンから始まりますが、バレエ団の実力が問われる作品。ダンサーそれぞれの美しさ、コール・ド・バレエの美しさをたっぷり味わえて、新国立劇場バレエ団にぴったりな作品だと思います。吉﨑熱く語ってくださったので、『オバケッタ』について僕から話すことはもうないのですが(笑)、誰しも生と死というものからは逃れられないですし、そこをテーマにしながら、子どもも、昔子どもだった人にも観ていただける。何か必ず、引っかかるところがあると思います。気軽に劇場に来ていただけたら嬉しいです。渡邊これは絶対観たいですね。吉﨑フォーサイス作品は、バレエを習っている中高生、若い世代の方が観たら、きっと世界が広がりますね。バレエに対する固定観念が覆るというか、コンテンポラリーダンスがバレエから派生していったという、その流れを感じることもできる。そうしたことを気にしないダンサーも多いけれど、僕は、いろんな先人たちが紡いできた流れを大事にしたいなって思っているんです。渡邊なるほど!!だから吉﨑さんの動きは綺麗なんですね。『極地の空』を拝見したとき、こう、このポジション(と、立ち上がってポーズ)の、ここをこうしたときのここ!ここ!!ここの手の先がすごく綺麗で、それで、きっとクラシックを踊られてきた方なんだなと思っていました。吉﨑いや、ダンスを始めたのは19歳と遅く、ちゃんとバレエを習うようになったのもNoismに入ってからの22歳。基礎がないとずっと言われ続け、悔しい思いをしました。遅く始めたけれど、でも、近づくことはきっとできる。5番ポジションがきれいに入らなくても、美しい筋肉の使い方とか、指先の表現を大事にしたい。クラシックバレエへの憧れが、僕をそうさせているんだと思います。渡邊吉﨑さんのこだわりの一端を知ることができました──って、純粋な一ファンの発言になっちゃいました(笑)。渡邊が出演する新国立劇場バレエ団「バレエ・コフレ」は、2025年3月14日(金) ~3月16日(日)新国立劇場 オペラパレスにて上演、また吉﨑が出演する『オバケッタ』は、2025年3月29日(土) ~3月30日(日)に新国立劇場 小劇場で公演ののち、4月5日(土)には大分、4月12日(土)に松本での上演も予定されている。チケットは発売中。取材・文:加藤智子撮影:阿部章仁<公演情報>新国立劇場バレエ団「バレエ・コフレ」『火の鳥』振付:ミハイル・フォーキン音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー美術:ディック・バード衣裳:ナターリヤ・ゴンチャローワ照明:沢田祐二『精確さによる目眩くスリル』振付:ウィリアム・フォーサイス音楽:フランツ・シューベルト美術・照明:ウィリアム・フォーサイス衣裳:ステファン・ギャロウェイ『エチュード』振付:ハラルド・ランダー音楽:カール・チェルニー/クヌドーゲ・リーサゲル編曲ステージング:ジョニー・エリアセンアーティスティック・アドヴァイザー:リズ・ランダー照明:ハラルド・ランダー芸術監督:吉田都出演:新国立劇場バレエ団指揮:マーティン・イェーツ管弦楽:東京交響楽団日程:2025年3月14日(金) 〜16日(日)会場:東京・新国立劇場 オペラパレスチケット情報:()公式サイト:『オバケッタ』演出・振付・作詞:山田うん音楽:ヲノサトル美術:ザ・キャビンカンパニー照明:櫛田晃代衣裳:池田木綿子音響:黒野尚日程:2025年3月29日(土)~3月30日(日)会場:東京・新国立劇場 小劇場チケット情報:()公式サイト:
2025年03月04日2月下旬、新国立劇場オペラ公演の2025/26シーズン・ラインアップ発表会見が行なわれ、オペラ芸術監督の指揮者・大野和士が演目について語った。新国立劇場オペラの2025/26シーズンは今年10月から来年7月まで。全10演目(46公演)が上演される。大野はまず新制作の演目を紹介した。来季の新制作は11月のアルバン・ベルク《ヴォツェック》と来年6~7月のリヒャルト・シュトラウス 《エレクトラ》。指揮はどちらも芸術監督の大野自身。ベルク《ヴォツェック》 全3幕(ドイツ語上演/日本語&英語字幕付き)11月15日(土)、18日(火)、20日(木)、22日(土)、24日(月・休)全5回公演[指揮]大野和士[演出]リチャード・ジョーンズ[美術・衣裳]アントニー・マクドナルド[照明]ルーシー・カーター[出演]ヴォツェック:トーマス・ヨハネス・マイヤー(バリトン)鼓手長:ジョン・ダザック(テノール)アンドレス:伊藤達人(テノール)大尉:アーノルド・ベズイエン(テノール)医者:妻屋秀和(バス)第一の徒弟職人:大塚博章(バス)第二の徒弟職人:萩原潤(バリトン)白痴:青地英幸(テノール)マリー:ジェニファー・デイヴィス(ソプラノ)マルグレート:郷家暁子(メゾ・ソプラノ)[合唱]新国立劇場合唱団[児童合唱]TOKYO FM 少年合唱団[管弦楽]東京都交響楽団新国立劇場の《ヴォツェック》は、2009年に制作されたアンドレアス・クリーゲンブルク演出の舞台に代わる、ふたつ目のプロダクション。1925年に初演された、無調手法で書かれたオペラのうちで最も重要と言われる作品だ。しかし大野は、「無調という言葉に怯えないで」と力説した。「まず、全3幕がそれぞれ30分程度。ということは1時間30分ほどで終わってしまいますから、楽に考えていただくと、《ヴォツェック》の垣根は越えやすくなると思います。そして無調の中にも、ワルツやアリア、フーガ、ポルカなどが出てきて、耳に喜びをもたらす部分になっています。(聴きやすい)メロディがそこかしこに聴こえてまいりますので、それをもって《ヴォツェック》に向き合っていただくといいんじゃないかと思います」(大野和士・オペラ芸術監督)じっさい、無調ではあっても無機的ではない。無調や十二音技法の中に叙情的で調的な響きが絶妙に組み込まれているのはベルクの音楽の特色だ。しかも《ヴォツェック》は、音楽的構成と劇的構成が緊密に結びついたオペラの成功例として音楽史に刻まれている名作。ぜひ大野監督の言葉を信じて、食わず嫌いせずに耳を傾けてみてほしい。題名役ヴォツェックにはトーマス・ヨハネス・マイヤー(バリトン)。2月の《フィレンツェの悲劇》(ツェムリンスキー)でも圧巻の存在感を見せつけた、新国立劇場ではもはやおなじみの名バリトンだ。大野によると、2021年の《ニュルンベルクのマイスタージンガー》のカーテンコールの舞台上で、指揮者・大野とハンス・ザックス役を歌ったマイヤーが、「次は何をやりたい?」(大野)「ヴォツェック!」(マイヤー)と会話していたそうで、今回の上演はそこで決まったのだとか。拍手を受けながら、そんなことも話しているとは、面白い!ヴォツェック役:トーマス・ヨハネス・マイヤー Photo by Simon Paulyリヒャルト・シュトラウス《エレクトラ》 全1幕(ドイツ語上演/日本語&英語字幕付き)2026年6月29日(月)、7月2日(木)、5日(日)、8日(水)、12日(日)全5回公演[指揮]大野和士[演出]ヨハネス・エラート[出演]クリテムネストラ:藤村実穂子(メゾ・ソプラノ)エレクトラ:アイレ・アッソーニ(ソプラノ)クリソテミス:ヘドヴィグ・ハウゲルド(ソプラノ)エギスト:工藤和真(テノール)オレスト:エギルス・シリンス(バス・バリトン)監視の女:森谷真理(ソプラノ)ほか[合唱]新国立劇場合唱団[管弦楽]東京フィルハーモニー交響楽団《エレクトラ》も新国立劇場で新制作されるのは2度目(先代は2004年11月に上演されたハンス・ペーター・レーマン演出のプロダクション)。「演出のヨハネス・エラートさんとは、フランクフルトのオペラで現代オペラを一緒にやって、現代作品の、ひと筋縄ではいかないような複雑な箇所をうまく舞台化してくれた。流れの雅やかな、素敵な舞台を作っていたのを覚えています」(大野)1915年初演。こちらも20世紀の作品だ。オペラ中に繰り返し出現する3音のモティーフを何度も“熱唱”して作品の魅力を伝える大野。《エレクトラ》は“緋色”のオペラだという。「《ヴォツェック》との対比ですが、たいへん暗い筋書きの《ヴォツェック》が黒だとしたら、エレクトラは緋色。激しく燃えたぎるような色です。最初から最後まで手に汗を握るオペラです」(大野)ギリシャ悲劇を題材にした物語。夫であるアガメムノン王を殺した妻クリテムネストラに、日本が誇るメゾ・ソプラノの藤村実穂子、その娘の題名役エレクトラにエストニアのドラマティック・ソプラノのアイレ・アッソーニ。休憩なし約1時間45分の1幕もの。この2演目以外のレパートリー公演の演目は下記の一覧のとおり。新国立劇場初登場の海外勢に注目。開幕の《ラ・ボエーム》のミミ役のソプラノ、マリーナ・コスタ=ジャクソン、勅使川原三郎演出の《オルフェオとエウリディーチェ》のジュリア・セメンツァート(エウリディーチェ/ソプラノ)、サラ・ミンガルド(オルフェオ/アルト)、《愛の妙薬》でアディーナを歌う新星ソプラノ、フランチェスカ・ピア・ヴィターレ、《ウェルテル》の題名役に起用される世界的スター・テノール、チャールズ・カストロノーヴォらが、世界レベルの旬の歌声を聴かせる。日本勢ではとくに女声陣に期待したい。今シーズン、《夢遊病の女》のリーザと《カルメン》のミカエラを歌った伊藤晴が、《ラ・ボエーム》では艶やかなムゼッタを歌う。《リゴレット》のジルダは現在の日本を代表するソプラノの中村恵理。《ウェルテル》では、昨年センセーショナルな日本デビューを飾った砂田愛梨が、今年2月の《ジャンニ・スキッキ》に続いてソフィー役で新国立劇場の舞台に登場し、ひと足先に世界で活躍する脇園彩(メゾ・ソプラノ)とともに、女声ベルカントの逸材の揃い踏みとなるのもうれしい。取材・文:宮本明【新国立劇場2025/2026シーズン・オペラ・ラインアップ】10月1日(水)初日(全5回公演)プッチーニ《ラ・ボエーム》[指揮]パオロ・オルミ[演出]粟國淳[出演]ミミ:マリーナ・コスタ=ジャクソン(ソプラノ)、ロドルフォ:ルチアーノ・ガンチ(テノール)、マルチェッロ:マッシモ・カヴァレッティ(バリトン)、ムゼッタ:伊藤晴(ソプラノ)ほか11月15日(土)初日(全5回公演)ベルク《ヴォツェック》 ☆新制作上記参照12月4日(木)初日(全3回公演)グルック《オルフェオとエウリディーチェ》[指揮]園田隆一郎[演出]勅使川原三郎[出演]エウリディーチェ:ジュリア・セメンツァート(ソプラノ)、オルフェオ:サラ・ミンガルド(アルト)ほか2026年1月22日(木)初日(全5回公演)ヨハン・シュトラウスII世《こうもり》[指揮]ダニエル・コーエン[演出]ハインツ・ツェドニク[出演]アイゼンシュタイン:トーマス・ブロンデル(テノール)、ロザリンデ:サビーナ・ツヴィラク(ソプラノ)、ファルケ:ラファエル・フィンガーロス(バリトン)、オルロフスキー:藤木大地(カウンターテナー)ほか2026年2月18日(水)初日(全5回公演)ヴェルディ《リゴレット》[指揮]ダニエレ・カッレガーリ[演出]エミリオ・サージ[出演]リゴレット:ウラディーミル・ストヤノフ(バリトン)、ジルダ:中村恵理(ソプラノ)、マントヴァ公爵:ローレンス・ブラウンリー(テノール)、スパラフチーレ:斉木健詞(バス)、マッダレーナ:清水華澄(メゾ・ソプラノ)ほか2026年3月5日(木)初日(全5回公演)モーツァルト《ドン・ジョヴァンニ》[指揮]飯森範親[演出]グリシャ・アサガロフ[出演]ドン・ジョヴァンニ:ヴィート・プリアンテ(バリトン)、レポレッロ:ダニエル・ジュリアニーニ(バス)、ドンナ・アンナ:イリーナ・ルング(ソプラノ)、ドン・オッターヴィオ:デイヴ・モナコ(テノール)ほか2026年4月2日(木)初日(全5回公演)ヴェルディ《椿姫》[指揮]レオ・フセイン[演出]ヴァンサン・ブサール[出演]ヴィオレッタ:カロリーナ・ロペス・モレノ(ソプラノ)、アルフレード:アントニオ・コリアーノ(テノール)、ジェルモン:ロベルト・フロンターリ(バリトン)ほか2026年5月16日(土)初日(全4回公演)ドニゼッティ《愛の妙薬》[指揮]マルコ・ギダリーニ[演出]チェーザレ・リエヴィ[出演]アディーナ:フランチェスカ・ピア・ヴィターレ(ソプラノ)、ネモリーノ:マッテオ・デソーレ(テノール)、ドゥルカマーラ:マルコ・フィリッポ・ロマーノ(バリトン)ほか2026年5月24日(日)初日(全4回公演)マスネ《ウェルテル》[指揮]アンドリー・ユルケヴィチ[演出]ニコラ・ジョエル[出演]ウェルテル:チャールズ・カストロノーヴォ(テノール)、シャルロット:脇園彩(メゾ・ソプラノ)、アルベール:須藤慎吾(バリトン)、ソフィー:砂田愛梨(ソプラノ)ほか2026年6月29日(月)初日(全5回公演)リヒャルト・シュトラウス《エレクトラ》 ☆新制作上記参照
2025年03月04日新国立劇場でアレックス・オリエ演出『カルメン』が開幕し、演出を務めたアレックス・オリエ、新国立劇場オペラ芸術監督を務める大野和士のコメントが発表された。本公演は2021年7月にプレミエ(初演)を迎えたもの。当時はコロナ禍で、出演者間の距離の確保などの厳しい感染防止対策を講じて上演された。今回は新たに演出を練り直した完全上演。公演は3月8日(土)まで開催される。撮影:堀田力丸提供:新国立劇場【『カルメン』演出アレックス・オリエ コメント】1875年の初演からちょうど150年、『カルメン』はなぜ今日まで人々の心を捉えるのか。私は、カルメンの「自由を求める」人物像が一番の魅力ではないかと考えました。カルメンは強く、明るく、人生を楽しむ女性、勇気をもって問題に立ち向かう知的な女性、そして自由の象徴です。そんな女性でも、間違った相手を選び、恋してしまうこともあります。ドン・ホセのような、独占欲が強く嫉妬深く、拒絶を受け入れられないマチスタ(男性優位主義の思想の持主)。『カルメン』の物語はマチスモなのです。私は『カルメン』の裏にあるメッセージを考えました。この物語は、今どこで起こってもおかしくありません。世界では一日に170人の女性がドメスティック・バイオレンスで亡くなっているというニュースもあるのです。舞台は東京。カルメンはバンドのボーカリストで、警備にあたるホセと出会う。そんな物語にしました。私が目指しているのは、できるだけ沢山の若者にオペラを観てもらうことです。ワーグナーが言ったように、オペラというのは総合芸術で、音楽もあり合唱もあり助演として演じる俳優もいる、ライブの演奏があってドラマがある。「うわあ面白かった」と感じさせる圧倒的な力があります。私はさらに、面白かったと思って帰るだけでなく、色々な物語、色々なメッセージを感じ取ったなと思わせるくらいにやりたい。若い人たちに、物事には多様な見方、多様な考え方があるということを感じて欲しいと思っています。撮影:堀田力丸提供:新国立劇場【新国立劇場オペラ芸術監督大野和士コメント】アレックス・オリエは非常に挑戦的、大胆な解釈をします。オペラという、過去に生まれ現在まで命をつなぐ芸術に、まさにふさわしいアプローチだと思います。『カルメン』の演出のためオリエ氏を新国立劇場に招いた2021年は、コロナによって人と人との空間がおびやかされる時代でした。オペラの上演では、向かい合えない、正面を向いてしか歌えない、距離を取らなければならないという時代で、ドラマの礎たる人間と人間が交わる空間を作れない状況でした。カルメンとホセはキスもできない。「ラ・フーラ・デルス・バウスのアレックス・オリエここにあり」という大群衆のシーンを作ることは不可能でした。オリエ氏にとっては腕の振るいどころも、極端に言えば居場所もないような環境での創作だったのです。しかしオリエ氏はやはり大胆で挑発的で、今までにないドラマを作りました。彼は才気煥発で情熱的、爆発的な人物で、いつも我々からエネルギーを引き出してくれます。彼がここで『カルメン』という作品から解きほぐしたのは、「束縛からの自由」ということです。『カルメン』は人間を自由へ解放することを描いたドラマだという解釈を見せたのです。古典的な名作『カルメン』がオリエ氏からもう一度新しい命をもらって、別の面を見せます。違った角度から情熱といぶきがあふれ躍動するのです。この『カルメン』の演出では、美術家のアルフォンス・フローレスが、舞台全体を覆う、あたかも鉄骨の巨大な牢獄のような、一度入ったら誰も出られない迷宮のような大建築を構築しました。まず舞台の大建造物から感じる、逃れられない、囚われた感じ。それに対し、人間という存在の証明としてビゼーが書いた「自由」のいぶき。オリエ氏がこの『カルメン』で見せたのは、それだと思います。完全上演となった『カルメン』をぜひ皆さんの目で見届けてください。・2021年公演よりジョルジュ・ビゼーカルメン■チケット情報()(終了分は割愛)3月4日(火)14:003月6日(木)14:003月8日(土)14:00新国立劇場オペラパレス
2025年03月03日上野・国立西洋美術館では、2025年3月11日(火)より、『西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館』を開催する。アメリカ、カリフォルニア州のサンディエゴ美術館と国立西洋美術館のコレクションを「作品をどのように見ると楽しめるか」という観点から紹介する美術展だ。ルネサンスから19世紀末まで、600年にわたる美術の歴史を網羅する作品数は、全88点。同展では、それらを、ペア、あるいは小さなグループにわけ、様々な角度から比較しながら、各々の絵画が持つストーリーを深掘りする。たとえば西洋美術館のマリー=ガブリエル・カペとサンディエゴ美術館のマリー=ギユミーヌ・ブノワという女性画家が描いた自画像を並べて、ロココと新古典、それぞれの時代の女性の装いを比較。また、同じイタリア・ルネサンスの画家でも、15世紀後半、ヴェネツィアで学んだクリヴェッリと、16世紀前半、フィレンツェで活躍したアンドレア・デル・サルトによる聖母子像を比べ、その表現の違いや 、そこから受ける印象などを検証。マリー=ギユミーヌ・ブノワ 《婦人の肖像》 1799年頃、 油彩/カンヴァス、 サンディエゴ美術館 Ⓒ The San Diego Museum of Artその昔、サンディエゴの街は、スペインからの入植者によって築かれたこともあり、この地を代表するサンディエゴ美術館はスペイン絵画の宝庫である。同展でもエル・グレコ、ムリーリョ、スルバラン、ソローリャとスペインのオールドマスターの作品を堪能できるが、中でも「ボデゴン」には注目したい。これは、強烈な明暗のコントラストと共に対象を克明に描く、17世紀初頭にスペインで花開いた特有の静物画のことを言う。その様式の始祖とされながらも、現存する静物画は世界に6点しか無いというフアン・サンチェス・コターンの傑作《マルメロ、キャベツ、メロンとキュウリのある静物》や、スルバランの「神聖なるボデゴン」《神の仔羊》など、対象の本質に迫るスペイン絵画の真髄を見ることができるに違いない。フランシスコ・デ・スルバラン 《神の仔羊》 1635–40年頃、 油彩/カンヴァス、 サンディエゴ美術館 ⒸThe San Diego Museum of Art<開催概要>『西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派までサンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館』会期:2025年3月11日(火)~6月8日(日)会場:国立西洋美術館時間:9:30~17:30、金土は20:00まで(入館は閉館30分前まで)休館日:月曜(3月24日、5月5日は開館)、5月7日(水)料金:一般2,300円、大学1,400円、高校1,000円チケット情報:()公式サイト:
2025年03月03日良質な鶏肉をカジュアルに楽しめる鶏焼肉の店希少部位を少しずつ食べられる『囲箱』と、飲める『地鶏の親子丼』は必食『囲箱』も堪能できる、春の新コースを実食良質な鶏肉をカジュアルに楽しめる鶏焼肉の店お店のシグネチャーである『囲箱』の看板が目印南麻布にある【鳥匠いし井ひな】に続き、大阪の名店【鳥匠いし井】の石井吉智氏と見冨右衛門氏が再びタッグを組んだ鶏専門の焼肉店【鶏焼き肉 囲】がオープンしました。高級化が進む焼鳥業界において、串打ちの工程を省き、客自身が鶏肉を焼く“鶏焼肉”という新しいスタイルで注目を集めています。どこか懐かしさの漂う古民家風の店内。桜並木に面しており、お店はビルの2階に位置しているため、桜のシーズンにはお花見を楽しむこともできます(※予約必須)座席はすべて掘りこたつ風のテーブル席。全11卓46席前菜・鶏肉6種&野菜の盛り合わせが楽しめる『囲箱』3,300円~(予約必須)などのアラカルトメニューをはじめ、会食や宴会向きの「飲み放題2時間付 季節の囲コース」(10品 / 1万円)、土日のみ・17時までの早割「飲み放題2時間付 季節の囲コース」(10品 / 8,000円)とコースも多彩。さらに、30人超えの大人数の貸し切り宴会にも対応可能と、さまざまなシチュエーションで利用できます。希少部位を少しずつ食べられる『囲箱』と、飲める『地鶏の親子丼』は必食シグネチャーメニュー『囲箱』『囲箱』3,300円~(予約必須)。単品としてだけでなく、コースの一品としても提供されます【鶏焼き肉 囲】でぜひ食べていただきたいのが、お店のシグネチャーメニュー『囲箱』です。美しい見た目とインパクトのあるプレゼンテーションはもちろんのこと、お店のオリジナル地鶏「きさ輝地鶏」のさまざまな部位を少しずつ楽しめると人気のメニューです。〆のメニュー『地鶏の親子丼』『地鶏の親子丼』1,380円※アラカルトのみさらに、〆の一品としてオススメしたいのが、この『地鶏の親子丼』です。火入れを抑え、卵がゆるめに仕上げられており、絶妙にとろけた卵と柔らかくてジューシーな鶏肉は、お腹がいっぱいでもついつい食べてしまう“飲める親子丼”と言われています。コースには含まれていませんが、追加注文が可能なので、ぜひ食べてほしい一品です。『囲箱』も堪能できる、春の新コースを実食では、この日いただいた「きさ輝地鶏」が楽しめる春の限定コースをご紹介します。「季節の囲コース」メニュー・『せりのおひたし』・『空豆と蕪餡の茶わん蒸し』・『梅しそむね肉』・『囲箱』・『鶏つくね』・『鶏モモの揚げ出し』・『地鶏の蒸し団子 生姜と青ねぎ餡』・『鶏油そば』・『鶏白湯スープ』・『デザート』※ドリンクは2時間飲み放題+・アラカルトから追加『地鶏の親子丼』『ガリサワー』この日にいただいたのは、お店でも人気の『ガリサワー』です。ガリの味がしっかりと感じられ、ガリ好きにはたまらない一杯でした。私も思わずおかわりをしてしまいました。『せりのおひたし』春の新メニューということで、一皿目は『せりのおひたし』から。春を感じる爽やかな香りと、ほんのりとした苦みが特徴です。『空豆と蕪餡の茶碗蒸し』こちらも春の食材、空豆を使った『空豆と蕪餡の茶碗蒸し』。鶏白湯をベースにつくられており、鶏の旨みをしっかりと感じられます。『梅しそむね肉』キメが細かく歯ざわりが良いと評判の「京紅地鶏」の胸肉を使用。この胸肉を薄くスライスし、牛タンのように焼いて楽しむ一品です。梅肉のソースと大葉が添えられており、とてもさっぱりとした味わいが特徴です。『囲箱』※写真は4人前「きさ輝地鶏」のももと胸肉と野菜が入った『囲箱』(※鶏肉は仕入れ状況により京紅地鶏を使用)。上段左から「もも」、「すなずり」、「燻製させた胸肉」、下段左から「手羽中」、「ふりそで」、「手羽元」が含まれています。野菜は季節によって異なります。「燻製させた胸肉」と「すなずり」は約2分、それ以外の食材は約4分焼きますにんにくがガッツリと入った醤油ベース「自家製醤油ダレ」この「きさ輝地鶏」は、鹿児島・霧島の肥沃な大地でのびのびと育ち、力強い旨みを持つオリジナルの地鶏。さっそくいただいてみると、皮目がパリパリで、鶏の上質な脂がジュワッと染み出してきます。肉は適度な弾力がありながら、噛み応えは柔らかな印象です。全体的に淡白な味わいですが、爽やかな旨みが感じられ、脂もくどくなく、ヘルシーなおいしさです。「すなずり」はごま油で味付けされているため、ほんのりとしたごま油の風味が漂います。コリコリとした食感も魅力です。「すずなり」以外は「自家製醤油ダレ」につけていただきます。この「自家製醤油ダレ」はガツンと効いたニンニクが特徴で、どうしても淡白になりがちな鶏肉に良いアクセントを加えてくれます。中毒性のある味わいです。『とりつくね』荒めにカットされている分、焼く際に崩れやすいのでご注意を。ご自身で焼く際は、網目部分ではなく、網の端でじっくり片面4分ほどかけて焼きます。軟骨をはじめ、様々な部位をミンチしてつくられている『とりつくね』。食感が出るようにあえて粗めにカットされているため、その食感のアクセントが心地よい。『鶏モモの揚げ出し』揚げ出し豆腐の鶏肉版である『鶏モモの揚げ出し』。外側がサクッと揚げられており、中はしっとり柔らか。一口食べると、ジューシーな旨みが口いっぱいに広がります。濃いめのおだしがアクセントとなり、お酒との相性も抜群です。『蒸し団子』生姜の香りが漂う『蒸し団子』は、お肉をたくさん食べた後にぴったり。生姜のさっぱりとした味わいが、口の中をリフレッシュしてくれます。『鶏油そば』心地よい満腹感で迎えた〆のメニューは『鶏油そば』。鶏肉のコースは淡白な味が続くため、少しジャンキーな味わいを求めて誕生したそうです。細麺に鶏油が満遍なく絡み、しっかりとした味わいを感じられますが、濃すぎず、ずっと食べ続けられます。角切りの玉ねぎのシャキシャキとした食感や適度な辛みもアクセント。途中でブラックペッパーを加えるとスパイシーな味わいに、さらにお酢を加えるとまろやかな味わいに変化し、何通りもの味わいを楽しめる一品です。『鶏白湯スープ』ここにきて、再び鶏のうまさを体感させられる『鶏白湯スープ』。『地鶏の親子丼』アラカルトメニューから、人気の『地鶏の親子丼』を追加でオーダーしました。“飲める親子丼”と謳われるだけあって、とろとろの食感が特徴です。そのとろとろの卵とプリプリとした鶏肉が絶妙に組み合わさり、満足度の高い一品です。デザートこの日は『いちごのシャーベット』※季節によって変わります桜の咲く季節には、六本木の星条旗通りに面した大きな窓の先に聳え立つ桜の木が満開になり、店内からお花見をしながら食事を楽しめます高級店が仕入れるブランド鶏の希少部位を、自分で焼くことでリーズナブルに味わえる【鶏焼き肉 囲】。春には和菓子も含めた「花見コース」も検討中とのことです。“鶏焼肉”という焼鳥とは異なるスタイルで、ぜひ鶏肉を堪能してみてください。鶏焼き肉 囲【エリア】六本木【ジャンル】和食【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】8,000円 ~ 9,999円
2025年02月28日東京国立近代美術館は、「美術館の春まつり」を、2025年3月13日(木)から4月6日(日)まで開催する。春をテーマにした美術作品が集結「美術館の春まつり」は、桜の開花時期に合わせて開催される東京近代美術館の春イベント。期間中は、19世紀末から今日までの日本近代美術の流れをたどることができる所蔵作品展「MOMAT コレクション」で桜を描いた作品を鑑賞できるほか、花見をしながらひと休みできるお休み処などを用意している。「MOMAT コレクション」会場内には、13,000点を超える所蔵作品の中から厳選した約200点を、12の展示室ごとにテーマを設けて様々な切り口で紹介する。年に1度春の時期にだけ公開する、水面に散る長瀞の桜を描いた川合玉堂による重要文化財《行く春》をはじめ、雨に濡れる吉野の桜が視直的な菊池芳文による《小雨ふる吉野》、鮮やかなピンクの花が鮮やかな船田玉樹の《花の夕》などが一堂に会する。企画展も開催なお同時期には、スウェーデン出身の画家ヒルマ・アフ・クリントの、すべて初来日となる作品約140点が並ぶ企画展「ヒルマ・アフ・クリント展」や、フェミニズムが大衆的な運動となる1970年代から現代までの映像表現を紹介する小企画「フェミニズムと映像表現」も開催する。花見しながら飲食も可能このほか、桜が見える前庭にはお休み処を設置。レストラン「ラー・エ・ミクニ」のキッチンカーでは、特製お花見弁当やドリンクといったテイクアウト可能なメニューを揃えている。美術鑑賞の合間に、花見をしながらゆったりと飲食を楽しむことができる。【詳細】「美術館の春まつり」期間:2025年3月13日(木)~4月6日(日)会場:東京国立近代美術館住所:東京都千代田区北の丸公園3-1開館時間:10:00~17:00(金・土曜は20:00まで)※入館はいずれも閉館30分前まで■所蔵作品展「MOMAT コレクション」会期:2025年2月11日(火・祝)~6月15日(日)会場:4-2階 所蔵品ギャラリー観覧料:一般 500円、大学生 250円※金・土曜日の17:00以降は一般 300円、大学生 150円※高校生以下および18歳未満、65歳以上、障害者手帳の所持者と付添者は無料※期間中展示替えあり。春まつりの特集展示は2月11日(火・祝)~4月13日(日)予定。■同時開催・企画展「ヒルマ・アフ・クリント展」会期:2025年3月4日(火)~6月15日(日)会場:1階 企画展ギャラリー観覧料:一般 2,300円、大学生 1,200円、高校生 700円※中学生以下および15歳未満、障害者手帳の所持者と付添者は無料※企画展入館当日に限り、所蔵作品展「MOMAT コレクション」、コレクションによる小企画「フェミニズムと映像表現」も鑑賞可・コレクションによる小企画「フェミニズムと映像表現」会期:2025年2月11日(火・祝)~6月15日(日)会場:会場:2階 ギャラリー 4※企画展「ヒルマ・アフ・クリント展」、所蔵作品展「MOMAT コレクション」の観覧料で鑑賞可【問い合わせ先】TEL:050-5541-8600 (ハローダイヤル)
2025年02月22日新国立劇場で5月に上演されるプッチーニ《蝶々夫人》は、同劇場で最も多く上演されている人気演目。題名役を、"理想の蝶々さん"と評判の小林厚子(ソプラノ)が演じる。現代を代表する蝶々さんが、新国立劇場のシーズン公演にいよいよ登場する。「2008年の《アイーダ》でアイーダ役のカヴァーをさせていただいたのが、この劇場でいただいた最初のお仕事でした。私は、新国立劇場に育てていただいたという気持ちがあるんです。その劇場の本公演で歌わせていただけることは、本当に感慨深く、とても光栄なのですが、それは私個人の気持ち。舞台には持ち込まずに、蝶々さんとして作品を届けたいなと思っています」舞台に立っているのは蝶々さんという役であって、小林厚子自身ではないという。そうあるべきなのだろう。それは実際の演じ方、歌い方でも同じこと。「もちろん稽古が始まればマエストロや演出家からのご指示やリクエストはありますが、私自身の準備段階ではプロダクションによって歌い方を変えようとは考えていません。現場で蝶々さんとして感じるままにと思っていますが、同じ演出でも、共演者が違えば、感じ方も毎回違ってきます」新国立劇場《蝶々夫人》の現役プロダクションは栗山民也の演出。2005年の初演から繰り返し上演されている定評ある舞台だ。「あの舞台で演じる時はいつも、あたたかさに包まれているのを感じるんです」同劇場の「高校生のための鑑賞教室」でもこのプロダクションで演じて、その世界観を熟知する彼女。舞台装置(美術:島次郎)はとてもシンプルだ。障子と一本の柱だけで表現された蝶々さんの家の背後に、星条旗に向かって伸びる階段。蝶々さんが生きている小さな世界をアメリカが見下ろしているようなイメージ。どちらかといえばクールな印象を受けるが、実際に舞台に立つ人の感覚は「あたたかさ」なのだ。「以前、共演者ともすごくあたたかい感じがするよねと話したことがあるのですが、あの舞台は“胎内”をイメージしていると伺い、なるほどと思いました。装置からも光からも、何かに抱かれている中でドラマが進行している感じを受けます」演出の栗山民也はこのプロダクション初演時のインタビューで、女の運命、女の物語という意味から、舞台を「胎内」と考えたことを述べている。生命を包み込むもの。それゆえに舞台は丸みを帯びており、その円形を切り裂いた果てに星条旗が見えるという構造だ(会報誌『The Atre』2005年2月号)。そしてその胎内の中では、ふたりの「愛」も守られている。栗山はこう述べる。「……たしかにピンカートンは欲望の対象として蝶々さんをおもちゃだと思ったかもしれない。でもあの一瞬でも、彼女に美を発見し、愛し、至福の瞬間が絶対あったはずだと思う。それがまた一瞬にしてどす黒いものに堕ちてゆく。人間のドラマというものはそういうものではないかと思うのです」(公演プログラム「Production Note」より)蝶々さんはもちろん、ピンカートンも、刹那的にかもしれないが、日本の少女をたしかに愛したはずだ、と。直に言葉で説明することがなくても、そんな意図を敏感に嗅ぎ取った演者たちが、「あたたかい」と感じるのだろう。舞台って面白い。新国立劇場「蝶々夫人」高校生のためのオペラ鑑賞教室公演より撮影:寺司正彦しばしば話題にされるように、オペラの中の蝶々さんは15~18歳。まだ少女と言える年齢だが、演じるソプラノ歌手に要求されるのはドラマティックなリリコ・スピントだ。そのギャップを、どうバランスをとって演じるかが難しいと言われる。「蝶々さんは18歳で自ら死を選んでしまうわけですが、“生ききった”人であると思うんです。歳は若くとも、蝶々さんは自分の人生をしっかりと全うした女性。大変なパッセージやドラマティックな表現、それは生ききった人の音楽、言葉なのだと思います。だから15歳の時は子供っぽい声を出そうとか、18歳になったら大人っぽくなどとは考えていません。そう思わなくても、音楽がそのように作られています。自然に音楽と向き合っていけば、プッチーニがちゃんとそういう道筋に連れて行ってくれるのです。近年は特にそう感じるようになりました。ただ、本当に大変な役です。出ずっぱり、歌いっぱなし、体力も精神力も相当必要です。オーケストラも厚く、心底大変な役ではありますが、ほとんどは言葉をしゃべっているんです。ドラマを細やかに届けられるようにと思っています」2007年に藤原歌劇団の《蝶々夫人》で主役デビュー。しかしスター街道まっしぐらというのではなく、そこから10年間もほぼ毎年新国立劇場でカヴァー・キャストを務めるなどして経験を積み、一歩一歩着実に歩みを進めてきた。「振り返ってみると、あの10年は私にとってとても大切だったと思います。私はたぶん、声帯が小さいほうではないのですけれども、そうすると出来上がるのにやっぱり時間がかかるんですね。レッジェーロで声帯の短い人は出来上がるのが早いと言われていますが、私の大学時代は、オペラのような大きなものを歌うことはなく、先生がくださるヘンデルやヴィヴァルディなどの古典やイタリア歌曲を勉強する毎日でした。ですからようやく少しずつオペラを歌えるようになっても、頂くどの役も『初めまして』でしたが、この劇場でたくさんの役を勉強させていただきました。のんびり屋なので、ゆっくりゆっくり。これからも勉強が終わることはありませんが、先生方、劇場、そして周りの皆さまが導いてくださっていると感謝しています」先述のように、《蝶々夫人》は新国立劇場で最も多く上演されている演目。現在創立28年目のシーズンを迎えている同劇場で、昨季までに53公演の上演実績があり、ここに今季4公演が加わることになる(ちなみに第2位は《カルメン》で、51公演+今季5公演)。さらに、毎夏に行われている「高校生のためのオペラ鑑賞教室」は実にその約4割(59公演)が《蝶々夫人》なので、合計すると断トツ。累計約20万人が鑑賞している、まさに劇場を代表するオペラが《蝶々夫人》なのだ。小林以外の主要キャストは、ピンカートン:ホセ・シメリーリャ・ロメロ(テノール)、シャープレス:ブルーノ・タッディア、スズキ:山下牧子(メゾ・ソプラノ)ほか。指揮はイタリアのオペラ指揮者エンリケ・マッツォーラ。管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団。5月14日(水)、17日(土)、21日(水)、24日(土)の全4公演。東京・初台の新国立劇場オペラパレスで。取材・文:宮本明ジャコモ・プッチーニ蝶々夫人■チケット情報()5月14日(水)18:305月17日(土)14:005月21日(水)14:005月24日(土)14:00新国立劇場オペラパレス
2025年02月19日東京・新国立劇場の小川絵梨子芸術監督就任時よりスタートした「こつこつプロジェクト」に参加した3作品の演出家が集い、小川芸術監督とともに、「こつこつプロジェクト」での創作を振り返るトークイベント『トークセッション 演劇噺Vol.19~演出家が語る“こつこつ つくる”!~』が、2025年4月17日(木) に東京・新国立劇場 小劇場で開催される。「こつこつプロジェクト」は、上演を前提とせず、1年間という期間の中で、参加者が話し合いや試演を重ねて作品理解を深めながら、より豊かな作品づくりを行っていく企画。トークイベントに登壇するのは、2021年に上演された『あーぶくたった、にいたった』の演出を担当した西沢栄治、2024年に上演された『テーバイ』の構成・上演台本・演出の船岩祐太、そして2025年4月に開幕するこつこつプロジェクトStudio公演『夜の道づれ』の演出を務める柳沼昭徳の3名だ。日本では日本では1カ月から1カ月半程度の稽古を経た後上演するというスパンでの創作が多い中、1年という長い期間をかけて、トライアンドエラーを繰り返して作品を育てていく創作手法を経験し、どのような手ごたえがあったのか、三者三様の創作過程を語り合う。参加料金は無料で、2025年2月21日(金) 正午より予約受付がスタートする。<イベント情報><ギャラリープロジェクト>トークセッション 演劇噺Vol.19~演出家が語る"こつこつ つくる"!~出演:西沢栄治(『あーぶくたった、にいたった』演出)船岩祐太(『テーバイ』構成・上演台本・演出)柳沼昭徳(『夜の道づれ』演出)小川絵梨子(新国立劇場演劇芸術監督)進行役:大堀久美子(編集者・ライター)2025年4月17日(木) 18:30開演 ※75分程度を予定会場:東京・新国立劇場 小劇場料金:無料・自由席(要予約)・先着順受付期間:2025年2月21日(金) 12:00~4月16日(水) 23:59詳細・お申し込みはこちら:
2025年02月19日2025年2月13日、新国立劇場が2025/2026シーズン舞踊ラインアップ説明会を実施、舞踊芸術監督の吉田都が登壇し、来シーズンの上演作品を紹介するとともに、今後の展望、意欲を述べた。2020年9月の新国立劇場舞踊芸術監督就任以来、新たなレパートリーの構築、環境の整備、ダンサーたちのレベルアップなどに意欲的に取り組んできた吉田。2025/2026シーズンも、古典全幕の『くるみ割り人形』新制作を含むバレエ6演目、日本初演を含むダンス3演目を上演、意欲的なプログラムが並んだ。この日発表されたラインアップの詳細は以下の通り。新国立劇場バレエ団『シンデレラ』2025年10月17日(金) 〜26日(日)オペラパレス 12回公演振付:フレデリック・アシュトン音楽:セルゲイ・プロコフィエフ『シンデレラ』より(撮影:瀬戸秀美)新国立劇場の代表的レパートリーのひとつとして上演を重ねている作品。「前回(2022年4月〜5月)のリハーサルはZoomで行いましたが、それでもいいところまでもっていけた。新しいメンバーにもアシュトン作品を経験してもらいたい」と吉田。華やかなオープニングとなるだろう。伊藤郁女『ロボット、私の永遠の愛』(日本初演)日本初演、2025年12月5日(金) 〜7日(日)小劇場 4回公演演出・振付・テキスト:伊藤郁女振付協力:ガブリエル・ウォン造形美術協力:エアハルト・スティーフェルオロール・ティブー音楽:ジョセフ・カンボン出演:伊藤郁女伊藤郁女『ロボット、私の永遠の愛』より(C)Laurent Paillier2023年1月よりストラスブール・グランテスト国立演劇センター「TJP」のディレクターを務める伊藤郁女が、新国立劇場に初登場。2018年にマルセイユのKLAP Maison pour la danseにて初演された本作は、彼女の自伝的な3部作の最後の作品として発表されたソロで、舞台上で彼女はロボットになり、人間としての振る舞いを一から学びなおすことで、人間とは何かを問い、今を生きるために模索する。新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』(新制作)新制作、2025年12月19日(金) 〜2026年1月4日(日)オペラパレス 18回公演振付:ウィル・タケット(レフ・イワーノフ原振付による)音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー美術・衣裳:コリン・リッチモンド『くるみ割り人形』コリン・リッチモンドによる美術模型クリスマスシーズンから年始にかけての上演が定着した新国立劇場の『くるみ割り人形』。2024/2025シーズンの『くるみ割り人形』の観客動員数は2万7,000人を超えたというが、来シーズンは、2年前に『マクベス』を創作した振付家ウィル・タケット、美術・衣裳のコリン・リッチモンドらによる新プロダクションが誕生する。すでに装置、衣裳デザインなどが進んでいるが、「ウィルさんには、家族皆で楽しめる、明るくカラフルなものにしてくださいとお願いしています」と吉田。「いいものを作り、長年親しまれる作品にしていきたい」と意気込んだ。恒例の「ぴあスペシャルデー」(ぴあ貸切公演)は2025年12月28日(日) に実施。新国立劇場バレエ団「バレエ・コフレ 2026」2026年2月6日(金) 〜8日(日) オペラパレス 4回公演フランス語で「宝石箱」を意味するコフレをタイトルに据え、20世紀の珠玉の3作品を集めて上演。『A Million Kisses to my Skin』は英国の振付家、デヴィッド・ドウソンによる2000年の作品。新国立劇場では2023年1月に上演、「デヴィッドさんに直接ご指導いただきましたが、振付家に直接教わることが、どれだけダンサーたちの成長につながるか実感した」(吉田)。ハンス・ファン・マーネンの代表作のひとつ『ファイヴ・タンゴ』は、世界各地で上演されている人気作。当初は2021年に上演予定だったが、コロナ禍でキャンセル、4年ぶりとなる待望の再チャレンジとなる。『テーマとヴァリエーション』は、アメリカ・バレエの父、バランシンが1947年にニューヨークで発表した作品。チャイコフスキーの管弦楽組曲第3番の第4楽章「主題と変奏曲」にのせて、古典バレエの美しさにあふれた踊りが次々と繰り広げられるさまは壮観だ。『A Million Kisses to my Skin』振付:デヴィッド・ドウソン音楽:ヨハン・セバスティアン・バッハ『A Million Kisses to my Skin』より(撮影:鹿摩隆司)『ファイヴ・タンゴ』(新制作)振付:ハンス・ファン・マーネン音楽:アストル・ピアソラ『テーマとヴァリエーション』振付:ジョージ・バランシン音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー『テーマとヴァリエーション』Theme and Variations, Choreography by George Balanchine, (C) The George Balanchine Trust.(撮影:鹿摩隆司)新国立劇場バレエ団『マノン』2026年3月19日(金) 〜22日(日) オペラパレス 6回公演振付:ケネス・マクミラン音楽:ジュール・マスネ『マノン』より(撮影:瀬戸秀美)英国バレエの巨匠、マクミランによる物語バレエの傑作。新国立劇場では2003年、2012年に上演し、コロナ禍の2020年2月に三度目の上演に取り組むも、一部の公演が中止に。「衣裳や装置はなかなか貸し出してもらえないものですが、今回はロイヤル・オペラハウス(英国ロイヤル・バレエ&オペラ)のプロダクションをお借りできることになり、とても嬉しく思います」(吉田)。新国立劇場出身の気鋭アーティストによる作品も登場『フレンズ・オブ・フォーサイス』(日本初演)日本初演、2026年3月25日(水) 〜29日(日) 小劇場 5回公演企画:ウィリアム・フォーサイスラフ・“ラバーレッグズ”・ヤシット振付:ウィリアム・フォーサイス、ラフ・“ラバーレッグズ”・ヤシット、レックス・イシモト、ライリー・ワッツ、ブリゲル・ジョカ、JA コレクティブ(エイダン・カーベリー、ジョーダン・ジョンソン)出演:ラフ・“ラバーレッグズ”・ヤシット、レックス・イシモト、ライリー・ワッツ、ブリゲル・ジョカ、エイダン・カーベリー、ジョーダン・ジョンソン『フレンズ・オブ・フォーサイス』より(C)Bernadette Fink鬼才、ウィリアム・フォーサイスと集った気鋭のアーティストたちが、ステージ上での身体的コミュニケーションを通じてダンスの多様性と可能性を提示する実験的なショーケース。2023年にドイツで初演さえた。ダンサーたちのバックグランドは、フォークダンス、ヒップホップ、バレエと多彩。刺激的なステージが期待される。新国立劇場バレエ団『ライモンダ』2026年4月25日(土) 〜5月3日(日・祝) オペラパレス 10回公演振付:マリウス・プティパ演出・改訂振付:牧阿佐美音楽:アレクサンドル・グラズノフ『ライモンダ』より(撮影:長谷川清徳)2004年、当時の芸術監督、牧阿佐美による演出・改訂振付で初演された、新国立劇場伝統のレパートリー。中世ヨーロッパ、十字軍の時代を舞台に繰り広げられる恋物語は、終幕のグラン・パ・ド・ドゥが有名だが、全幕上演の機会の少ない古典だけに、プティパ最後の傑作の世界をたっぷりと味わえるまたとない機会に。こどものためのバレエ劇場 2026エデュケーショナル・プログラム『白鳥の湖』2026年5月6日(水・休) オペラパレス 2回公演プロダクション原案:マリオン・テイト6月の『白鳥の湖』全幕に先立って上演。進行役によるマイムの解説、音楽や楽器の説明、ストーリー展開のナレーションなどを挟みながら、第3幕を中心に『白鳥の湖』の魅力を凝縮して届ける。新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』2026年6月5日(金) 〜14日(日) オペラパレス 10回公演振付:マリウス・プティパ、レフ・イワーノフ、ピーター・ライト演出:ピーター・ライト、ガリーナ・サムソワ音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー1981年に初演、古典バレエの美しさと、演劇的な要素を巧みに取り入れたドラマティックな展開で、多くの観客の心を掴んできた作品。2021/2022シーズンの開幕作品として上演、新国立劇場の新たな看板作品に。新国立劇場ならではのコール・ド・バレエの、圧巻の美しさを体感したい。『白鳥の湖』より(撮影:鹿摩隆司)新国立劇場バレエ団 ダブル・ビル2026年7月3日(金) 〜5日(日) 中劇場 4回公演新国立劇場オリジナル作品によるダブル・ビル。元新国立劇場バレエ団ダンサー、宝満直也による新作は、「いつか作品をお願いしたいと思っていた」と吉田も期待。ニューヨークを拠点に国際的に活躍する振付家ジェシカ・ラングによる『暗やみから解き放たれて』は、2014年に新国立劇場バレエ団のために振付けられた作品だ。『ストリング・サーガ(仮題)』(新国立劇場バレエ団委嘱作品、世界初演)振付:宝満直也音楽:久石譲『暗やみから解き放たれて』振付:ジェシカ・ラング音楽:オーラヴル・アルナルズ、ニルス・フラーム、ジョッシュ・クレイマー、ジョン・メトカーフ『暗やみから解き放たれて』より(撮影:鹿摩隆司)こどものためのバレエ劇場 2026『人魚姫〜ある少女の物語〜』2026年7月23日(木) 〜27日(月) オペラパレス 8回公演振付:貝川鐵夫音楽:C.ドビュッシー/J.マスネほか新国立劇場バレエ団出身の貝川鐵夫の振付により2024年7月に世界初演された全2幕のオリジナルバレエ。アンデルセンの童話「人魚姫」をモチーフとした、子どもも大人も一緒に楽しめる感動の舞台だ。「ダンサーたちの成長の機会となるキャスティングを」コロナ禍を乗り越え、2025/2026シーズンの公演数は従来のレベルにまで戻ったという。新国立劇場バレエ団による公演は76回と、開場以来もっとも多くなる。2024年に企業の協力を得て実施した、「新国立劇場こども観劇プログラム・バレエ『アラジン』」、『くるみ割り人形』上演時の「バレエみらいシート」、夏休み期間中の「京王アカデミープログラム新国立劇場でバレエを知ろう!」という社会貢献活動を振り返り、今後も未来ある子どもたちにむけての企画を、新国立劇場の使命として続けていきたいと明かした。また、3月まで実施中の 『アラジン』舞台映像の無料配信() については、「すでに63万回再生され、海外からの反響も大きい。カメラの台数が少なかったり、ついていけていない部分もあったりしますが、これからも続けていきたい」と前向きだ。ダンサーたちを導く指導者として実感すること、今後の課題についても熱く語った。「ダンサーたちはまだ眠っている状態。それを呼び覚ましたいと思っています。お客さまに楽しんでいただきつつ、ダンサーたちの成長の機会となるキャスティングを、ベストのタイミングで、ということを心がけたい。バレエ公演の入場率は90%を超え、とても良い方向に向かっていますが、まだまだ理想には遠い。現在、(2025年3月上演「バレエ・コフレ」で上演する)『エチュード』『精密さによる目眩くスリル』のリハーサルをしていますが、いずれも基礎ができたうえでその先に行くのですが、皆、基礎の部分で注意を受けている。でも、わくわくもしている。ここでまた基礎をやり直せるし、どれだけ基礎ができていないかと実感できる。次に繋がることですので、とても楽しみにしています」(吉田)(撮影:阿部章仁)その後の質疑応答では、新制作の『くるみ割り人形』について多くの質問が寄せられた。なぜこのタイミングでの新制作かと問われた吉田は、「これまでのウエイン・マクレガーの『くるみ割り人形』は振付がとても難しく、ダンサーたちはそれによって強くなり、スタミナがつき、パートナリングの勉強になった。でも、公演数が増えてきたいま、ダンサーたちの身体の負担のことも考える。私のなかではいまのタイミングでした」と思いを明かした。コロナ禍が明け、新国立劇場の客席では海外からの観客の姿も目立つようになったが、劇場サイドからは、劇場の公式webサイトの英語ページからのチケット購入状況も急激に伸びているとも。首都東京の、世界に開かれた劇場として、どのような取り組みをし、発信していくのか、引き続き注目していきたい。取材・文:加藤智子
2025年02月17日開幕まで約1カ月となった新国立劇場のバレエ公演「バレエ・コフレ」は、ふたつの新制作を含む意欲的なトリプル・ビルとして注目されている。「コフレ」とはフランス語で宝石箱という意味。色とりどりの宝石が放つ光が詰まった、魅力的なプログラムだ。今回上演される3作品はいずれも20世紀のヨーロッパで誕生した傑作だが、その趣、煌めきはそれぞれ相異なり、バレエの魅力、醍醐味はこれほどに多彩かと実感させてくれるだろう。『火の鳥』は、20世紀初頭にヨーロッパで一世を風靡したバレエ・リュス初期の代表作のひとつ。セルゲイ・ディアギレフが率いたバレエ・リュスは、1909年にパリで旗揚げ公演を行い、センセーションを巻き起こす。ロシアのスターダンサーたちが登場、またピカソやマティス、コクトー、シャネルなど気鋭のアーティストたちを次々と巻き込んで現代的で斬新な作品を次々と上演すると、パリの観客は熱狂。その活動は約20年という短い期間ながら、後のバレエ界、芸術に大きな影響を与えた。その2年目のパリ公演で初演された『火の鳥』は、『瀕死の白鳥』で知られる振付家ミハイル・フォーキンと、若き作曲家イーゴリ・ストラヴィンスキーによる作品。『火の鳥』は、『ペトルーシュカ』、『春の祭典』とともにストラヴィンスキーの三大バレエに数えられる傑作で、彼の出世作だ。『火の鳥』より(撮影:鹿摩隆司)色彩豊かで神秘的、勇壮で躍動感にあふれる彼独特の音楽とともに繰り広げられるのは、ロシアの民話に基づく物語。魔王カスチェイの庭に迷い込んだイワン王子が火の鳥と出会い、その魔力に助けられ、カスチェイの魔法で囚われの身となっていた王女と結ばれるという、不思議な力がたっぷり詰まったおとぎ話だ。パリの初演で伝説的バレリーナ、カルサヴィナが踊った火の鳥は、どれほど気高く美しかったか、パリの人々をどれだけ圧倒したか、思いを巡らせる。新国立劇場では12年ぶりの上演だが、火の鳥を踊る小野絢子とイワン王子の奥村康祐というプリンシパル組、ファースト・ソリスト池田理沙子とファースト・アーティスト渡邊拓朗のフレッシュなコンビの二組が回替わりで競演、ファンの期待を集めている。『精確さによる目眩くスリル』より(Photo by Mitsunori Shitara)新制作の『精確さによる目眩くスリル』は、20世紀も終わりが近づく1996年に初演された作品。鬼才ウィリアム・フォーサイスが、自身が率いていたフランクフルト・バレエで振付けた。その後パリ・オペラ座バレエ、英国ロイヤル・バレエをはじめ世界の名だたるカンパニーで上演されてきた人気作が、ついに新国立劇場に登場。当初は2022年2月の上演の予定だったが、コロナ禍で延期、ファン待望の新国立劇場バレエ団のダンサーによるフォーサイス作品が、ようやく実現する。『精確さによる目眩くスリル』より(Photo by Mitsunori Shitara)クラシック・バレエへのオマージュがこめられているというこの作品。伝統的なバレエの枠組みを軽々と飛び越え、拡張させていくウィリアム・フォーサイスの振付は、優雅で柔らかな伝統的なバレエの動きからは想像もつかないほどのスピード感、力強さ、鋭さに満ち、すこぶる刺激的だ。黄緑の真っ平なチュチュをまとった女性ダンサーの姿が目を引くこの作品も、核にあるのはバレエのステップだが、より鋭く、よりパワフルに、よりスピーディーに躍動するダンサーたちの姿が強い印象を残す。しばしばオフ・バランスが取り入れられたり、目を見張るような回転が登場したりで、瞬きするのも惜しくなるだろう。シューベルトのシンフォニーの美しい調べとの絶妙な調和も見逃せない。バレエの革命児と称されるフォーサイス、2024年第39回京都賞受賞のニュースも記憶に新しい。新国立劇場のダンサーたちが彼のスリリングな振付に果敢に挑み、自身の可能性をどこまでも追い求める姿を、しかと目に焼き付けたい。『エチュード』より© Yonathan KELLERMAN / OnPCourtesy of The Paris Opera Ballet『エチュード』は、デンマークの振付家ハラルド・ランダーの作品。20 世紀半ば、1948年にデンマーク王立バレエで初演された。まず目に飛び込んでくるのは、チュチュをまとったダンサーたちがバーにつかまり、バレエの基礎的な動きを繰り返す場面。照明の下で音楽に合わせ、一糸乱れずにステップを追っていく姿はそれだけでもう美しい。バレエのレッスンへのオマージュとして創作されたこの作品には、バレエの様々なステップ、表現が詰まっていて、ダンサーたちの日々の弛まぬ努力に思いを馳せる。『エチュード』よりGuillaume Diop, Valentine Colasante and Paul Marque in Etudes, by Harald Lander© Yonathan KELLERMAN / OnPCourtesy of The Paris Opera Balletごくシンプルな衣裳をまとったダンサーたちが次々と繰り出すのは、パ・ド・ドゥの細やかな身のこなしからダイナミックな連続ジャンプまでさまざま。息つく暇もないだろう。音楽は、ピアノを習った人であれば必ず通る道といってもいい、チェルニー。ひたすら地道に取り組むエチュード(練習曲)は挫折した身にとってはあまりいい思い出ではないけれど、リーサゲルによる編曲が施された楽曲は限りなく軽やかで流麗に響いて心地よい。とかく女性が主役になりがちなバレエだが、男性陣も大いに活躍、クライマックスに近づくにつれて、ダイナミックな跳躍をのびやかに決めていく姿も記憶にとどめたい。メインとなる三人のダンサーは、プリンシパルの木村優里、井澤駿、福岡雄大の組、プリンシパルの柴山紗帆と李明賢、山田悠貴ら今後がますます楽しみなダンサーたちの二組が競演。粒揃いの新国立劇場バレエ団のダンサーたちだからこその、精緻で濃密な『エチュード』に期待を。公演は3月14日(金)から16日(日)まで、東京、初台の新国立劇場 オペラパレスにて。文:加藤智子<公演情報>新国立劇場バレエ団「バレエ・コフレ」『火の鳥』振付:ミハイル・フォーキン音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー美術:ディック・バード衣裳:ナターリヤ・ゴンチャローワ照明:沢田祐二『精確さによる目眩くスリル』振付:ウィリアム・フォーサイス音楽:フランツ・シューベルト美術・照明:ウィリアム・フォーサイス衣裳:ステファン・ギャロウェイ『エチュード』振付:ハラルド・ランダー音楽:カール・チェルニー/クヌドーゲ・リーサゲル編曲ステージング:ジョニー・エリアセンアーティスティック・アドヴァイザー:リズ・ランダー照明:ハラルド・ランダー芸術監督:吉田都出演:新国立劇場バレエ団指揮:マーティン・イェーツ管弦楽:東京交響楽団日程:2025年3月14日(金) 〜16日(日)会場:東京・新国立劇場 オペラパレスチケット情報:()公式サイト:
2025年02月11日