ダンス&ボーカルグループ「BE:FIRST」のメンバー7人全員が『ボテロ展 ふくよかな魔法』のオープニングイベントに登場!東京・渋谷にあるBunkamura ザ・ミュージアム内で、トークとフォトセッションが行われました。メンバーのコメントと、彼らが好きな作品をご紹介!BE:FIRSTのみなさん、登場!BE:FIRST(左から)LEOさん、SHUNTOさん、JUNONさん、MANATOさん、SOTAさん、RYOKIさん、RYUHEIさん【女子的アートナビ】vol. 243『ボテロ展 ふくよかな魔法』のオフィシャルサポーターをつとめるBE:FIRSTのメンバーが、展示室に登場!LEOさん、SHUNTOさん、JUNONさん、MANATOさん、SOTAさん、RYOKIさん、RYUHEIさんが、作品《コロンビアの聖母》の前に並び、フォトセッションが行われました。この展覧会では、南米コロンビア出身の美術家、フェルナンド・ボテロ(1932~)さんの作品を展示。初期から近年までの油彩や水彩、素描作品など全70点を楽しめます。ボテロさんは、現代を代表する美術家のひとり。1950年代後半から欧米で高く評価され、世界各地で展覧会が開かれています。彼の作品の特徴は、あらゆるかたちがふくらんでいる、という点。人だけでなく、植物や果物、楽器や日用品でさえもふくらんでいます。2022年は、ボテロさんが生誕90年を迎えた節目の年。本人が監修したこの展覧会は、彼の作品をまとめて見られる貴重なチャンスです。ボテロ愛あふれるトーク!ボテロ展の開幕に合わせて開かれた取材会では、BE:FIRSTのみなさんがオフィシャルサポーターとしての意気込みや、展覧会の楽しみ方を語ってくれました。まずは、メンバー全員のコメントを一挙にご紹介!LEOさんこんなステキな絵のオフィシャルサポーターを、デビューして間もない僕たちができるのはすごくうれしく思います。たくさんの人の愛を受けて、この場所に立てることを感謝していますし、誇りに思っています。SHUNTOさんこの機会をいただき、ありがたいと思っています。老若男女問わず、いろいろな目線やその人なりの解釈で絵をご覧になれると思います。すごい魅力がつまった絵画ばかりです!JUNONさん今日、はじめてボテロ展を見て、オフィシャルサポーターになれたことを誇りに思いますし、改めて自信をもって僕たちもみなさんにおすすめしたいと思いました。MANATOさん僕は、もともと美術館に来たことがほかのメンバーよりも少ないと思うのですけど、今回、いろいろな絵に興味をもちました。絵は、音楽とけっこう近い。表現するのが、絵と音楽という違いだけだったので、僕たちが刺激をもらえることが多かったし、勉強になりました。SOTAさん今日までオフィシャルサポーターとして意気込んで、がんばってきました。音声ガイドや映像撮影、僕たちだからこそ感じるボテロ展の魅力を精一杯伝えてきました。それがみなさんに届いて、少しでもここに来たいとか、興味をもつ人が増えたらうれしいなと思いました。RYOKIさん個人的に美術館や展覧会はすごく好きなのですが、ここ数年は忙しくてあまり行く機会がありませんでした。今回、久々に来させていただき、この独特の空間、すごく好きだなと感じました。絵と見つめ合い、ボテロさんはどういう思いでこの絵を描いたのかとか、説明文を読んで妄想し、自分の時間をつくれる場所だなと思いました。忙しければ忙しいほどリフレッシュできるし、自分を見つめ直せる時間になる。ぜひ、お越しいただきたいです。RYUHEIさんボテロさんが長年描いてきた歴史、すべてがこの展覧会につまっています。音声ガイドでは、絵の魅力を正確に説明するためにすごく丁寧にゆっくり話すよう意識しました。今回、美術館に来て、絵の魅力を感じたので、みなさんにもぜひ来てほしいです。「みんなで決めた絵がある」――続いて、展覧会で印象に残った作品について、LEOさんとRYUHEIさんがコメントしました。LEOさんみんなで、「これがいい」と決めた絵があるんです。RYUHEIさん《楽器》というタイトルの作品で、楽器がたくさん机の上に置いてある静物画です。それが、メンバーのなかで「いいんじゃないかな」となって、決めました。楽器は音楽とも関係があり、僕たち全員が音楽をするグループとして関係性がすごく深いと思い、この作品を選ばせていただきました。「自分たちができる芸術は音楽」――さらに、『ボテロ展』で影響を受けた点について、JUNONさんとRYOKIさん、SOTAさんのコメントをご紹介。JUNONさん芸術を見ると、自分たちができる最大限の芸術は音楽なので、改めて音楽でやっていきたいと思いました。RYOKIさんボテロさんの作品は、もともとの絵があり、それをオマージュしてボテロさん風にアレンジしている作品がけっこうあります。元の絵も、ものすごく芸術性の高い絵です。僕たちも、本物の良いエンターテインメントを見て、それで刺激を受け、良いところを吸収して、自分たちなりにBE:FIRST色にして、みなさんに届ける。これも、やはりアートのひとつで、昔から続いているものだと感じました。そこからニュージェネレーションとか、新しいエンターテインメントが派生していく。僕たちも、その影響のひとつになれればいいと思っています。SOTAさん僕は昔、授業でボテロさんの絵に触れたことがありました。ボテロさんの絵は、人だけでなく、楽器や果物を描いても唯一無二の作品に仕上がります。僕たちも、アーティストとして、自分たちにしか出せない声やダンスを追求していますし、そうすることのすばらしさを改めて感じました。収録時のほっこりエピソード――最後に、音声ガイド収録時のエピソードについて、LEOさんとRYOKIさんのトークをご紹介。LEOさん俳優業もやっているRYOKIのナレーションが、すごく上手で勉強になった。噛まないし、声を聴いているだけでちゃんと心に入ってくるんです。メンバー同士で刺激をもらいながら、新たな発見もしながら楽しくできました。RYOKIさん(LEOさんのコメントに対して)素直に、すごくうれしいですね。ブースに入るときにプレッシャーがありました。噛んだらみんなに昼ご飯おごる、と自分で言ったので(笑)。でも、ほかのみんなも声のトーンがよくて。みんなすごく上手。みんな良かった。LEOさんでも、みんなは噛みました(笑)。RYOKIはすごくて、和やかなムードをRYOKIがつくってくれました。音声ガイドを聴いてみた!BE:FIRSTのみなさんのコメント、いかがでしたか?本当にみなさんの仲が良くて、和気あいあいと話をしていました。今回の取材会でも話題になっていた音声ガイド、どんな内容か気になりますよね。実際に、展覧会の会場で聴いてみました!BE:FIRSTのみなさんはプロローグから登場し、スペシャルトラックでは、好きな作品や絵の感想を楽しそうに語っていました。このガイドでしか聴けない貴重なネタもあります。ぜひ音声ガイドを片手に、展覧会を楽しんでみてください!Information会期:~7月3日(日)※5月17日(火)休館会場:Bunkamura ザ・ミュージアム開室時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)※毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)※金・土の夜間開館については、状況により変更の可能性があります。※会期中すべての土日祝は【オンラインによる入場日時予約】が必要となります。観覧料:一般¥1,800、大学・高校生¥1,100、中学生・小学生¥800※最新情報は公式サイトでご確認ください
2022年05月17日東京都美術館で『スコットランド国立美術館THE GREATS美の巨匠たち』が開催中です。本展では、世界最高峰の美術館のひとつ、スコットランド国立美術館から上質な西洋絵画が集結。展示の様子や学芸員さんの解説、おすすめ作品をご紹介します!巨匠たちの作品に会える!【女子的アートナビ】vol. 244『スコットランド国立美術館THE GREATS美の巨匠たち』では、スコットランドが誇る美術品のなかから、ラファエロやレンブラント、ルノワールなど、巨匠たちの作品や、ターナーやミレイなどイングランド出身の画家たちの作品なども含め、約90点が集結。西洋美術の流れを名画とともに楽しめます。スコットランド国立美術館が開館したのは、1859年。ヨーロッパの他国のように、王室コレクションからスタートした美術館ではなく、購入や地元の名士たちによる寄贈や寄託などによってコレクションを増やしていき、世界有数の美術館となりました。本展では、コレクションのエピソードを楽しめる作品も見ることができます。あだ名が有名!では、おすすめ作品を数点ピックアップしていきます。まずは、第1章「ルネサンス」から、巨匠エル・グレコの《祝福するキリスト(「世界の救い主)」》にフォーカス。イタリアやスペインで活躍したエル・グレコは、ギリシャ出身の画家。本名は、ドメニコス・テオトコプーロスですが、あだ名のエル・グレコ(ギリシャ人)として知られています。故郷のクレタ島で美術の修業をし、その後ヴェネツィアに移住、さらにローマでも働き、最後はスペインに永住しました。本作は、表現力豊かな筆遣いと、赤と青のコントラストが目を引く美しい作品です。学芸員さんのおすすめは…?続いて、第2章「バロック」では、スペインの画家、ディエゴ・ベラスケスの描いた《卵を料理する老婆》をご紹介。ベラスケスは、国王フェリペ4世付きの画家に任命され、「画家の中の画家」と呼ばれた巨匠。国王に信頼され、王室の肖像画を数多く描いたほか、王宮配室長も任されるほど出世した人です。本展担当の東京都美術館学芸員・髙城靖之さんによると、この作品は、ベラスケスがまだ若いころに、自分の力量を知らしめるために描いた野心作。本作の注目ポイントについて、次のように語っています。髙城さん作品の手前には静物を描いている部分があり、金属などの質感をたくみに描き分けています。なかでも一番の注目ポイントは、調理中の卵。素揚げにしているところですが、白身が固まっている最中のものと、すでに固まっている状態のものとがきちんと描き分けられています。卵が固まっていく様子を絵画で見事に表現しているので、ぜひご覧になってみてください。7度も夫を殺された…!?もう一点、バロック絵画で筆者のおすすめ作品をご紹介。オランダ絵画の黄金期に活躍した巨匠、レンブラント・ファン・レインの《ベッドの中の女性》です。一見すると、ふつうに美しい絵画ですが、解説を読んで作品の背景を知ると、あまりに残酷なストーリーに驚愕します。本作品の女性は、聖書の登場人物であるサラと考えられています。彼女は、過去7度も結婚初夜に夫を悪魔に殺されており、この絵は、8人目の夫が悪魔を追い払うところをサラが見守っている場面。この絵を見て、聖書の物語を読み解ける教養や見識が鑑賞者に求められているそうです。絵の背景にあるストーリーを知ると、作品の見え方ががらりと変わります。絵は表面的な美しさだけを見ても十分満足できますが、解説を読むとさらに別の楽しみ方もできます。スコットランド人の故郷愛が伝わる…!最後は、スコットランド国立美術館のステキなエピソードがある絵画をご紹介。本作品は、アメリカの風景画家フレデリック・エドウィン・チャーチの作品です。なぜ、アメリカ絵画が最後に展示されているのでしょう?髙城さんによると、この絵は、スコットランドの貧しい家庭に生まれた人がアメリカに移住し、実業家として成功したあと故郷に寄贈した作品。スコットランド国立美術館は、市民らの寄付などによりコレクションを増やしていった美術館なので、その象徴として最後にこの作品を展示したそうです。巨匠たちの競演を楽しんで!巨匠たちの名画、いかがでしたか?本展は7月3日まで開催。幅広い西洋美術の名品を、まとめて見られる貴重なチャンスです。ぜひ美術館で楽しんでみてくださいね!Information会期:~7月3日(日)※休室日は月曜日会場:東京都美術館企画展示室開室時間:9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)※金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)※夜間開室については、展覧会公式サイトでご確認ください。観覧料:※本展は日時指定予約制一般¥1,900、大学生・専門学校生¥1,300、65歳以上¥1,400高校生以下無料(日時指定予約必要)※最新情報は展覧会公式サイトでご確認ください問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
2022年05月14日東京国立博物館で特別展『琉球』が開催中です。この展覧会では、金銀や水晶などで飾られた色鮮やかな国宝の冠をはじめ、キラキラ美しいガラス玉の瓶や、神々しい「神猫図」など、貴重なアートや資料が一堂に集結。琉球の歴史と文化を体感できる展示の様子や、おもな見どころをご紹介します!琉球の歴史と文化を体感!【女子的アートナビ】vol. 242沖縄復帰50年記念特別展『琉球』では、琉球王国として独自の歴史と文化をもつ沖縄ゆかりの文化財を過去最大規模で展示。琉球国王尚家400年の貴重な宝物をはじめ、工芸作品や考古遺物、歴史資料など、さまざまな品を見ることができます。さらに、琉球の美と技を今に伝える模造復元作品も展示されています。明治以降、多くの困難を乗り越えてきた琉球・沖縄。その歴史や文化をさまざまな作品で知ることができる展覧会です。研究員さんのおすすめ作品!では、いくつか見どころをピックアップしていきます。まずは、東京国立博物館の研究員さんによるおすすめ作品をご紹介。東洋工芸がご専門の三笠景子さんのおすすめ作品は、重要文化財にもなっている《首里城京の内跡出土陶磁器》です。「京の内」とは、首里城内でもっとも大きな祭祀儀礼の場所。そこから出土した陶磁器は、中国の有名な景徳鎮窯でつくられたもので、ほかの日本の地域では見られないものばかり。かなり貴重な優品とのことです。東洋絵画がご専門の植松瑞希さんのおすすめは、《虎図》。まんまるまなこにふさふさ眉、やわらかそうな足など、愛嬌のある姿が琉球の虎の特徴だそうです。注目ポイントは、寅の額に描かれた「つむじ」。写真ではわからないと思いますので、ぜひ現地で見つけてみてください。ちなみに、筆者が個人的におすすめしたいのは、《虎図》の近くにある《神猫図》。ふさふさした黒い尾をもつ白猫の絵です。神々しいネコさまのお姿に魅入られます!キラキラ&ゴージャス!次にピックアップするのは、キラキラしたまばゆい作品2点。まずは、国宝の《玉冠》(展示は5月15日まで)。国王の正装として用いられたもので、金、銀、珊瑚、水晶、碧玉など計7種類の玉が合計288個もついています。まさにキラキラ&ゴージャス。本作品が飾られている展示室には、ほかにも琉球国王の尚家に伝来した多くの宝物がずらりと並び、すべて国宝に指定されています。これらは、戦前に東京へ移されていたため戦禍を免れたそうです。もうひとつ、美しくまばゆい作品《御玉貫》をご紹介。錫の瓶に、ガラス小玉を麻糸でつづった覆いをかぶせた琉球独特の酒器で、首里城内で行われる祭儀や贈答品として用いられたものです。色彩が本当に鮮やかで、うっとりします。未来への希望を感じるアート最後は、歴史と希望を感じる作品にフォーカス。展示室のなかでもひときわ目立つ彫刻《大龍柱(旧首里城正殿前)》は、戦前、首里城正殿前に設置されていた柱です。本来は、下の部分にとぐろを巻いた姿があったそうですが、沖縄戦で胴体のなかほどから下は失われました。この柱が製作されたのは、1711年と推測されています。「未来へ」と題した最終章では、1992年の首里城再建や、琉球文化の復興と継承のための人々の地道な研究や取り組みを紹介。仁王像や工芸品、衣裳などの模造復元を見ることができます。コラボ企画も!今回ご紹介した作品のほかにも、貴重な衣裳や歴史資料、先史文化を知ることができる土器など多彩な展示品があります。また、沖縄ゆかりの国宝の刀剣と『刀剣乱舞-ONLINE-』とのコラボ企画があったり、サンリオキャラクターズとのコラボグッズがあったりと、さまざまな角度から楽しめます。ぜひ一度、足を運んでみてくださいね。Information会期:~6月26日(日)※休館日は月曜日会場:東京国立博物館平成館開室時間:9時30分~17時00分(入館は閉館の30分前まで)観覧料:一般¥2,100、大学生¥1,300、高校生¥900※最新情報は公式サイトでご確認ください
2022年05月13日東京・六本木のサントリー美術館で『大英博物館北斎』がはじまりました。本展では、大英博物館が所蔵するクオリティの高い北斎作品が集結。さらに、北斎を愛したイギリスのコレクターたち6名にもフォーカス。アートの目利きである彼らが絶賛&狂喜した、日本人が気づいていない“北斎のスゴさ”もご紹介!イギリスでも大人気…スゴい北斎!【女子的アートナビ】vol. 240『大英博物館北斎―国内の肉筆画の名品とともに―』では、大英博物館が所蔵する北斎作品を中心に、国内にある肉筆画も展示。イギリス人コレクターたちの“北斎愛”にも触れながら、彼の画業、特に数多くの代表作が生み出された後半生の作品群を一覧できます。葛飾北斎(1760-1849)は、江戸時代後期に活躍した浮世絵師。彼の作品は、日本だけでなく世界でも有名で、例えばモネやドガなどフランス印象派の画家たちや、ゴッホにも影響を与えています。フランスで人気があったというイメージが強い北斎ですが、実はイギリスでも大人気。すでに1870年代から北斎コレクターや研究者がいて、特に大英博物館には多くの作品が所蔵されています。本展のプレス説明会では、アルフレッド・ハフト氏(大英博物館アジア部日本セクション学芸員)のビデオメッセージが流れ、100年以上前に大英博物館の学芸員だったローレンス・ビニョン(1869-1943)の言葉が紹介されました。とても印象的でしたので、以下に抜粋します。「1908年、ローレンス・ビニョンは、北斎の風景画を見たときの体験を『美と驚きがひとつになった衝撃』と表現し、『世界は我々の想像を上回る驚きに満ち、我々を狂喜させる力の源であることを北斎は明らかにした。それは、これから我々自身で発見していくことができるものでもあるのだ』と語っています」これほどの衝撃をイギリス人に与えていた北斎、すごいです!「芸術家として北斎こそ正真正銘の日本人」では、展覧会のおもな見どころをご紹介していきます。第1章「画壇の登場から還暦」では、貴重な初期作から還暦近くの年齢で描いた作品が登場。ここでの見どころは、北斎が直接筆をとった「肉筆画」の名品《為朝図》。曲亭馬琴の読本『椿説弓張月(ちんせつ ゆみはりづき)』の主人公・源為朝を描いたもので、絵のなかには作者馬琴の祝詞も書かれています。本作品を購入したのは、イギリスの医師、ウィリアム・アンダーソン(1842-1900)。彼は解剖学と外科の教授として明治期に来日し、東京の海軍軍医学校の校長を務めました。さまざまな美術品も入手し、そのうち約2100点が大英博物館の所蔵品になっています。また、アンダーソンは、日本美術についての本も執筆。著書の中で、「芸術家として北斎こそが正真正銘の日本人」と絶賛しています。代表作が次々と…!第2章「富士と大波」では、《富嶽百景》や《冨嶽三十六景》シリーズの作品群などを紹介。大波が印象的な北斎の代表作《冨嶽三十六景神奈川沖浪裏》や、「赤富士」として親しまれている《冨嶽三十六景凱風快晴》もここで見ることができます。また、第4章「想像の世界」では、偉大な歌人や詩に読まれた景色、さらに目に見えない妖怪を描いた作品などが登場。不気味な見た目でも、どこかユーモラスさが感じられる人気作品《百物語こはだ小平二》も展示されています。「これが一人の画家の作品だとは信じがたい」最後の第6章「神の領域―肉筆画の名品―」では、晩年に描かれた肉筆画が登場。特に、88歳のときの作品《流水に鴨図》は必見です。2羽の鴨と水面に落ちた紅葉が描かれた作品で、鴨の描写が本当に細かいのです!近くで見ると、その精緻な美しさに圧倒されます。あの時代の88歳、大家の北斎先生でも老眼になっていると思いますし、集中力や持続力も若いころに比べれば低下しているはず。でも、線のブレもムラもなく、まさに“神の領域”に達した作品です。本作品を所蔵していたのは、イギリスの小説家アーサー・モリソン(1863-1945)。彼は2000以上の浮世絵版画を入手したほか、日本絵画も約600点購入。また、日本美術の研究書も出版し、その中で北斎について「複数の優れた絵師による作品でなく、すべて北斎一人によるものだということが、実に信じがたい」と語っています。究極の“推し活”展覧会本展では、北斎の名品を堪能できるだけでなく、日本美術好き・北斎大好きイギリス人コレクターたちによる究極の“推し活”も楽しめます。彼らが書いた北斎の推しポイントを読むと、今まで気づかなかった作品の魅力も発見でき、改めて北斎の偉大さを実感しました。100年以上前に北斎担当のファンたちが熱心に集めたコレクションを、現代の日本人が見るなんて、考えてみたらステキなこと。推し活をしていたコレクターたちも、きっと喜んでいると思います。究極の“推し活”展覧会、ぜひ足を運んでみてください!Information会期:~6月12日(日)※会期中展示替を行います。※会期は変更の場合があります。休館日:火曜日(5月3日、6月7日は開館)会場:サントリー美術館開室時間:10時~18時※金・土および4月28日(木)、5月2日(月)~4日(水・祝)は20時まで開館※いずれも入館は閉館の30分前まで観覧料:一般¥1,700、大学・高校生¥1,200、中学生以下無料※最新情報は公式サイトでご確認ください
2022年04月30日東京駅丸の内駅舎内にある東京ステーションギャラリーで、『牧歌礼讃 / 楽園憧憬アンドレ・ボーシャン + 藤田龍児』がはじまりました。本展では、ヨーロッパと日本で活躍した2名の画家の作品を展示。どちらの絵画も、癒される雰囲気のものばかりですが、彼らは破産や半身不随など過酷な人生を送っていました。両画家と作品について、館長の解説もあわせてご紹介します。どんな展覧会?【女子的アートナビ】vol. 241本展では、アンドレ・ボーシャン(1873-1958)と藤田龍児(1928-2002)の代表作を含む計114点を展示。ボーシャンは20世紀前半のフランス、藤田は20世紀後半の日本で活躍した画家。生きた時代も国も異なる二人ですが、彼らの作品には楽園のような明るい光と自然への愛情があふれています。この展覧会を企画したのは、東京ステーションギャラリー館長の冨田章さん。冨田さんは、「二人の作品は、いつか紹介したいと思っていた」といい、両者の作品を一緒に展示した理由について、次のように語りました。冨田さん二人には意外な共通点が3つあります。まずは、モチーフ。どちらも自然を描き、自然に対する愛着が感じられます。2つ目は、両者とも50歳頃を境に新しい画家人生をはじめた点。3つ目は、それぞれがノスタルジックで心が休まる絵なのに、どちらも厳しい暮らしをしていたという点。過酷な状況で、安らぎに満ちた絵を描くのはどういうことなのか、いろいろ考えさせられます。半身不随を乗り越えて…ーーでは、二人の画家の経歴と作品を見ていきます。まずは、藤田龍児から。京都で生まれた藤田は、大阪市立美術研究所で絵画を学んだあと、1959年に美術文化展で初入選を果たし、毎年同協会で順調に出品を続けます。しかし、1976年から77年にかけて脳血栓を発症。半身不随となり、利き腕の右手が使えなくなります。藤田は、画家の道を断念し、作品も大量に処分してしまいます。その後、リハビリを経て50歳を過ぎてから左手で描き始め、1981年には個展を開き画家として復活。2002年に亡くなるまで、作品を制作し続けました。大変美しく、ジュエリーのよう…ーーでは、藤田の作品について、冨田さんの解説をご紹介します。冨田さん藤田の作品は、初期のころはシュルレアリスム風で抽象性が高い作品になっています。これが、前半生の重要ポイント。病気のあと、画風ががらりと変わり、メルヘン的でノスタルジックな作品を描くようになります。特に注目していただきたいのが、細密描写と色彩。花や雑草の穂のところに紫やオレンジなど、ちょっとした輝く色を差しているのです。それが、見ているとふっと浮き出てきて、大変に美しく、ジュエリーのような輝きを持っています。この色彩の美しさが見どころのひとつです。また、彼の作品には、エノコログサ(猫じゃらし)をはじめ、白い犬や蛇行した道、トンネルなど頻繁に出てくるモチーフがあります。特に、エノコログサは生命力の強さを感じられるモチーフ。藤田自身は、モチーフについて多くを語っていませんが、彼の人生や考え方を重ね合わせ、誤解でもいいので自分でいろいろ解釈してみるのもアートのひとつの楽しみ方だと思います。藤田は右手で20年、左手で20年描きました。50歳を境に、新しい画家の人生を歩み出したのです。破産や妻の病気を乗り越えて…ーー続いては、アンドレ・ボーシャンの経歴について。フランス中部で生まれたボーシャンは、苗木職人として自分の農園をもち、結婚して順調に暮らしていました。その後、第一次世界大戦が勃発。徴兵され、数年間部隊で活動します。除隊後、地元に戻ると農園は破産し、心労が重なった妻が精神を病んでいました。ボーシャンは妻を連れて彼女の故郷に行き、森の中に家を建てて自給自足しながら絵を描き始めます。1921年、48歳でサロン・ドートンヌに初入選。次第に評価が高まり、何度か個展を開き1949年にはパリで大回顧展を開催します。1958年に85歳で亡くなるまで、精力的に制作を続けました。斬新な描写が魅力ーーでは、ボーシャン作品について、冨田さんの解説をご紹介します。冨田さんボーシャンは、美術教育をいっさい受けていない人で、アンリ・ルソー以来の最も優れた「素朴派」の画家ともいわれています。絵を描くようになったきっかけは、軍隊生活。彼はそこで測地術(測量したデータをもとに正確な地図を描く)を学び、その技術で上官から高い評価を得ました。ボーシャンの作品は、稚拙にも見えますが、それが味わいになっています。プロの画家ではやらないような斬新な画面構成や描写が魅力です。また、もともと苗木職人なので、花や自然をモチーフにした作品が多く描かれています。絵の特徴は、あらゆるモチーフが同じような鮮明さで描かれている点。風景画を見ても、手前の木も、奥の山や川も、すべて同じ強さで描かれています。正確に地図を描く測地術の影響かもしれないが、ひとつひとつの対象に対して同じ注意力で描いています。ボーシャンと藤田は異質な二人ですが、彼らの作品は、のどかで牧歌的で響き合っている感じがします。どちらも見ていて心が和むし癒される。また、細部におもしろいところがあり、じっくり見るといろいろな発見があります。この展覧会で、ぜひ絵を見る歓びを感じてみてください。今しか見られない!館長の解説、いかがでしたか?この二人の作品を、これだけの規模で一緒に見られるなんて、奇跡のような展覧会です。本展は巡回しませんので、今、東京で見ないと次回いつ機会があるかわかりません。くれぐれもお見逃しなく!Information会期:~7月10日(日)※会期中一部展示替えがあります(前期4/16~5/29、後期5/31~7/10)休館日:月曜日*ただし5月2日、7月4日は開館会場:東京ステーションギャラリー開室時間:10時~18時※金曜日は20時まで開館※いずれも入館は閉館の30分前まで観覧料:一般¥1,300、大学・高校生¥1,100、中学生以下無料※最新情報は公式サイトでご確認ください
2022年04月24日人気の若手歌舞伎俳優、中村壱太郎さんと尾上右近さんが、『没後50年 鏑木清方展』のイベントに登場!歌舞伎をテーマにした展示室で、トークとフォトセッションが行われました。さらにその後、インタビューも実施。アートやエンタメの魅力、東銀座界隈の思い出など語っていただきました!中村壱太郎さん、尾上右近さん、登場!左:尾上右近さん右:中村壱太郎さん《道成寺 鷺娘》の前で撮影【女子的アートナビ】vol. 239東京国立近代美術館『没後50年 鏑木清方展』の展示室に登場したお二人。さすが歌舞伎俳優さん、立ち姿がとても美しいです!中村壱太郎さんは、歌舞伎俳優だけでなく日本舞踊の吾妻流七代目家元、さらに現代劇でも活躍。尾上右近さんも、歌舞伎俳優と家業である日本古典音楽の清元、映画やバラエティ番組にも出演し、多方面で活躍されています。まずは、鏑木清方の華やかな作品《道成寺(どうじょうじ) 鷺娘(さぎむすめ)》の前でフォトセッション。《道成寺 鷺娘》とは、歌舞伎の演目『京鹿子娘道成寺』と『鷺娘』をテーマに描いた作品。お二人とも、歌舞伎では女方を中心に演じられているので、作品にも興味津々なご様子。撮影の合間にも、絵に描かれている着物や仕草などについて、楽しそうに話されていました。続いてのトークセッションは、《京鹿子娘道成寺》の作品が並ぶ展示室で実施。お二人が鏑木作品の魅力について、語りました。壱太郎さん清方先生の作品は、一言で言うと、眼福。幸せになれます。美しいものを見ると人間は幸せになれる、と改めて感じました。特に、僕らは着物や日本の文化に触れて仕事をしているからかもしれませんが、日本人のどこかに眠っているものと紐づけられるのかなと思います。右近さん品格が高いと思います。画家がどんな人だったのか、絵を見ながら僕はよく人物像を想像してみるのですが、清方作品には品格があふれ、知性があります。江戸っ子の粋や風流、時代からくるモダンさなどに楽しみを感じます。心静かにカブいているのがいいですね。お二人にインタビュー!続いて、本展覧会の目玉作品である清方の美人画三部作《築地明石町》、《新富町》、《浜町河岸》が並ぶ展示室でインタビューを実施。まずは、三部作について、お聞きしてみました。――こちらの美人画で、どの作品、どの女性がステキだと思いますか?右近さんやはり、築地明石町のお姉さんでしょう。この凛とした姿。この瞳で見つめられたいです。男目線でも、女方の役者として見てもステキです。男性の画家が描く女性は、理想の女性の姿で、男が演じる女方も理想の女。そのリンク性も作品から感じられますし、とにかく断然美しいです。男としては、こういう女性に振り返られたいですね(笑)。壱太郎さん浜町のおぼこさんもいいと思う。僕らも踊りを習うと、この絵のように「振り」をおさらいするのです。「今日習ったことは、こんな振りだったのかな」とこの絵を見てすぐにわかります。着物の袖を持ち、扇子を口に当てるというのは、日常にはないしぐさ。これを切り取っている清方先生のセンスはすばらしいですよね。右近さん確かに、浜町の作品もいいですね。どの作品も凛としてさわやか。そして、首がキレイ。九州系だね。――九州系とは?右近さん九州の女性は色白で、首が細くて、毛の流れがきれいというのが僕の勝手な思い(笑)。尾上右近の統計。九州の女性は色白で、輪郭がいいのです。壱太郎さんハハハ。でも、これ大丈夫?九州以外の人を敵に回していない?右近さん大丈夫、大丈夫!「想像させる絵がステキ」――全体を通して、お好きな作品はどれですか?右近さん僕は《墨田河舟遊》(※筆者注:屋形船で姫や若侍が楽しむ様子を描いた屛風)。人間が生き生きと描かれ、楽しそうでワクワクします。当時の時代の最先端が感じられ、若いエネルギーで楽しんでいる。僕らも結局、同じことを繰り返していますよね。カラオケ行ったり、クラブ行ったりするのと同じです。上品に遊んだほうが楽しいよ、ということもこの絵から感じます。壱太郎さん僕は、《佃島の秋》(※男性が女性に花を手渡している場面を描いた絵画)。勝手な解釈だけど、下に描かれている美しいアヒルと女性がリンクしていると思うのです。ぶっきらぼうな男の人が、白くてきれいなアヒルに花をあげてみた、という感じで、この絵をもとに芝居を書けるくらいの情報量があります。想像させる絵がステキです。見る楽しさを感じさせてくれます。「エンタメは、非日常を感じるのがいい」――お二人は、とても楽しそうにこの展覧会をご覧になっていますが、一般的に、特にanan世代の多くは、「日本画の展覧会ってハードルが高そう」と感じているような気がします。右近さんハードルが高い、とすでに存在を認識しているのなら、そのハードルを越えてみたらいいんじゃないのかな。触れてみたらいいと思います。知らないよりは知っているほうが絶対いいです。見に行ったら、「知っている」というステイタス以上に「おもしろい」という純粋な感情が生まれる。ハードルが高いと認識しているものは、もっと触れてみたほうが楽しいですよ。壱太郎さん歌舞伎も、同世代や若い方に「勉強しに行きます」とよく言われます。でも、別に勉強するものではないんですよね。右近さんそうそう。勉強するのは僕らの仕事ですから。壱太郎さんまさにそう。清方先生の《佃島の秋》みたいに、想像する楽しさをみんながもてる。絵を見ていると、それ以上のものを感じるのが絵画のおもしろさで、歌舞伎も一緒。「この人どうしてこんなにきれいなのかな」と素朴な疑問をもつとか、それだけでいいのです。そのきっかけさえ見つければ、それ以上のものをもって帰れると思います。右近さんエンタメは、非日常を感じられるのがいいです。美術館という空間自体いい。おならもできない静寂な空間(笑)。壱太郎さんもうちょっとananらしい良いたとえはないの(笑)。でも、展覧会なら、好きな絵をひとつ見つけに行こうと思って友達と出かけて、感想を伝え合うのもいいよね。朝イチで山盛り海鮮丼!――鏑木清方は築地界隈で暮らしたことがあるので、それらの地域が作品にも描かれています。歌舞伎座からも近いエリアですが、お二人にもなにか築地の思い出はありますか?右近さん以前、二人で歌舞伎座に出ていたとき、朝の築地に行きました。一幕目は昼の11時に開演するので、だいたい10時に楽屋入りします。その前にということで、朝7時に集合して行きました。壱太郎さんあれはよかったね。海鮮丼食べて。右近さんそう。高いのを食べました。よかったですよ、山盛りで(笑)。あの界隈のあの空気感も独特。浅草とか上野の江戸っ子も僕らは知っていますが、築地あたりの江戸っ子の空気は、また違うんですよね。河岸の人間の時間軸を感じて、いいなぁと思いました。『芝浜革財布』という芝居があり、河岸に通う男の話なのですが、築地にいると「こういう空気なんだな」とわかります。夕方には寝るという雰囲気。僕も、いつも午前中はちょっと眠いのですが、築地に行った日は、朝7時から食事をしているものだから、元気モリモリで(笑)。みんなと時の流れ方が違って、すごく充実感がありました。うまいもの食って来ているから(笑)。壱太郎さんこっちはもう始まってんだぜ!っていう感じだったね(笑)。「過去の自分は常に良くない…」――鏑木清方は、自分の作品を自己評価し、その記録が残っています。本展では、その記録をもとに、会心の出来には三ツ星など、作品に星がつけられていますが、そのような画家の姿勢をどう思いますか?右近さん目に見える絵画作品の場合は、いやでも冷静に評価が見えてきますよね。僕らは毎日同じことをやっていても、毎日コンディションも違うしお客さまも違うし、お互いのコンディションも違うし、状況が毎日違うので、自己評価の仕方が難しいです。常に揺れ動いているものなので、実態がわからない。後から振り返るとわかるときもありますが、この時が良かったというのは120パーセントないです。壱太郎さん清方先生の絵は、このまま一生残っていきますが、僕らの演技はその瞬間でしか残らない。だからこそステキさがあると思うので、その意味で評価の仕方は絵とは違うと思います。ただ、自己評価というより、仲間がいるから目指せるものはあるので、高め合いは常に意識しています。右近さん例えば過去の映像を見ると「ひどいな」と自分で思うのです。なんでこんなに拙いことやっているんだ、と。過去の自分は常に良くない、というのが植え付けられているので、冷静に判断ができない。成長がどこにあるのか、自分ではまったくわからないのです。へたに過去の映像など見てしまうと、進歩していない自分が目の前に立ちはだかって舞台に立つのが嫌になる。今日はいい舞台ができるぞという自己催眠がかけられなくなるのです。壱太郎さんこれは役者の宿命。今はビデオがあるから、僕らも頼るし必要だとは思います。でも、あまりにも見すぎると、自分は果たして何なのか。わけがわからなくなる。そこの難しさは僕らにはあります。右近さん客観性を持つのが難しいです。自分で三ツ星つけては取り消しての繰り返しです(笑)。アートとは「極上の…」――絵画作品だけでなく、歌舞伎などの舞台芸術もすべてアートといえると思うのですが、お二人にとってアートとは?右近さんアートとは、「人間の証明」。芸は人なり、という言葉から置き換えてみました。壱太郎さん人生においてのいろどり。人間のいろいろないろどりを総称すると、アートになるのではないかなと。時代時代において、いろいろな人や作品と関わり見ることによって人間力が増していく。これは生きた証です。右近さん僕、先ほどプレーヤー目線で言ってしまいました。すみません、はき違えました(笑)。アートとは、「極上のひまつぶし」です。壱太郎さん「人間の証明」からの落差がすごいね(笑)。右近さん生きるうえでは、いらないのかもしれないけれど、暇ができたら、その暇をやはり上質につぶしたい。それが、生きることへのこだわり。例えば、おにぎりとピカソの絵なら、食うに困るときはおにぎりしか選ばない。でも、食うに困らなくなったらピカソの絵に気づく。おにぎりもいいけど、この絵を見て心を潤うのもいいと気づく。だから、「極上のひまつぶし」です。「先に死なないで!」――お二人の関係、とてもいい感じですね。プライベートでも仲が良いのですか?右近さんいちゃこらしています(笑)。anan読者の女性たちも、僕らを見習って、いちゃこらしてください!壱太郎さん僕らは盟友、親友、ボイスメッセージ友達。同じ時代に生きて、同じものに取り組み、同じ感覚があります。もしかすると、今は追い求めるもの、求められているものが違っているかもしれないけど、いつかのゴールは絶対一緒のものを見ていると思います。一緒の思いをもてることに「ありがとう」と言いたい人です。右近さん僕にとって(壱太郎さんは)うれしいときも悲しいときもすべて報告したい人です。そんな人、清方先生にはいなかったのかな。(ここで、担当学芸員の鶴見香織さんが登場)鶴見さんそれは奥さまだと思います。奥さまは、清方が亡くなる数年前に他界され、その後、清方もがっくりとされていたそうですよ。右近さんがっくりきますよね。(壱太郎さんに向かって)先に死なないで!たとえ死ぬとしても、同じ年の同じ月の同じ日じゃ!壱太郎さん同じ刻限でね(笑)。右近さん芝居のようだね(笑)。――本当にステキなご関係ですね。楽しいお話、ありがとうございました!インタビューを終えて…立ち居振る舞いがとにかく美しいお二人。スーツを着ているとふつうにカッコイイのですが、少しでも動くと足の運びや指先の動きなど、一つひとつの所作が本当に優雅で、見とれてしまいました。くだけた話や楽しい話をしていても、品格が漂っているお二人。固い絆が感じられる友情にも感動しました。『没後50年 鏑木清方展』は5月8日まで開催。ぜひハードルを越えて、美しいアートに触れてみてください!Information『没後50年 鏑木清方展』会期:~5月8日(日)休館日:月曜(※5月2日は開館)会場:東京国立近代美術館1F企画展ギャラリー開室時間:9:30-17:00(金・土曜は9:30-20:00)(入館は閉館30分前まで)観覧料:一般¥1,800、大学生¥1,200、高校生¥700、中学生以下無料撮影:山本 嵩
2022年04月03日東京・町田にあるスヌーピーミュージアムで、企画展『しあわせは、みんなの笑顔』が開かれています。スヌーピーと仲間たちの楽しそうな笑顔、ニヤニヤ笑い、やさしい微笑みなど「笑顔」がテーマの本展は、この春のお出かけにもぴったり。ワクワク感いっぱいの館内や、映えるフォトスポット、楽しい作品を一挙ご紹介!笑顔のスヌーピーがお出迎え【女子的アートナビ】vol. 238スヌーピーミュージアムの最寄り駅は、東急田園都市線の「南町田グランベリーパーク駅」。そこから歩いて4分ほどで、大きなスヌーピーが描かれたかわいい建物に到着!外観も、今回の企画展に合わせて「笑顔」だらけ。建物だけ見てもワクワクします!館内では常設展と企画展を開催中。まずは、常設展から見てみましょう!常設展では、スヌーピーが登場するコミック『ピーナッツ』の作者、チャールズ・シュルツ氏の創作の歴史を知ることができる「チャールズ・シュルツ・ギャラリー」や、「ピーナッツ・ギャング・ギャラリー」などがあり、スヌーピーたちの基本情報を知ることができます。最初は四足歩行で、ふつうにペットの犬っぽかったスヌーピー。初期の複製原画や貴重なフィギュアなど、お宝がいっぱいあります。映えるフォトスポット!常設展エリアには、映えるフォトスポットもいっぱいあります!まず、3階にある「スヌーピー・テラス」。南町田グランベリーパークを一望でき、天気が良ければ富士山も見える気持ちのいいテラスです。ここにあるのが、かわいいスヌーピーがいっぱいのフォトスポット。雑誌やテレビなど、いろいろなメディアの撮影にも使われているそうです。モデル気分で撮影すると楽しいかも!2階の人気撮影スポットは、「スヌーピー・ルーム」。全長約8メートルの巨大スヌーピーをはじめ、お腹でスケートをしたり、ハロウィンの変装をしていたりするユニークなポーズのスヌーピーがずらりと並んでいます。さまざまな「笑顔」が集結!続いて企画展エリアへ。入り口でスヌーピーとウッドストックが、めちゃくちゃ楽しそうに笑っています!企画展『しあわせは、みんなの笑顔』では、スヌーピーたちの豊かな笑いを描いたコミック『ピーナッツ』の貴重な原画や複製原画約60点を展示。6つのグループにわけて、さまざまな笑顔が紹介されています。まずは、『笑わせておくれよ、チャーリー・ブラウン』のコーナーから。いつも何をしてもうまくいかない残念なチャーリー・ブラウン。ジョークを言った覚えがないのに笑われてしまうなんて、ちょっとかわいそうですが、逆に彼はみんなを笑顔にする才能があるのかも。開き直って笑ってしまえ、という豪快なスタンスをとるキャラたちも憎めません。『笑って笑って吹き飛ばせ!』のコーナーには、ペパーミント パティやマーシーたちのポジティブ思考が満載。ストーリーを読むと、自然に頬が緩んで元気になれます。ちなみに、作品が飾ってあるケースにもご注目。スヌーピーの犬小屋スタイルになっています!ブラックなスヌーピーも…!『ニヤニヤがとまらない』では、歯をむき出してニヤッと笑うスヌーピーが登場。ウラがありそうなアヤシイ笑顔にも出会えます。スヌーピーは、ちょっとしたイタズラが大好き。本気の意地悪ではないのですが、おふざけしているときは、歯を出して笑っています。ときどき、短いセリフでブラックなジョークをボソッとつぶやくことも。グッズのキャラクターとして、癒し系のかわいいスヌーピーに見慣れている人は、ちょっとビックリするかもしれませんが、本来のコミックとしてのおもしろさを味わえます。スヌーピーは小説家!?続いてのコーナー、『ハッピー!ハッピー!ハッピー!』では、「いい仕事して、笑おう」というストーリーの原画などを紹介。小説家のスヌーピーが、いいものを書いたときの喜びの笑顔を見せています。『ピーナッツ』ファンにはおなじみかもしれませんが、スヌーピーは屋根の上でタイプライターを打ちながら小説を書いたりしています。文豪トルストイの名著『戦争と平和』の続きも打っているとか。犬であることを誇りに思いながら、犬小屋の屋根の上でさまざまな夢を見ているのです。続く『ついニコニコしちゃうしあわせ』のコーナーには、友情や小さな幸せなど、ほっこりするストーリーがいっぱい。スヌーピーをハグしたり、膝の上に乗せたりしている仲間たちと過ごす穏やかな日常の姿を描いた絵は、見ているだけで優しい気持ちになれます。スマイルの連鎖…最後は、『スマイルの連鎖』。毎日コミックを描き、いつもおもしろいことを考えていたシュルツ氏は、アメリカだけでなく世界中に笑いをひろめていきました。このコーナーには、キャラクターたちのハッピーな笑顔があふれています。いろいろな出来事がある今、特にこのコーナーは刺さります。『ピーナッツ』の世界に触れて、楽しく笑ってスマイルが連鎖していけば、みんなハッピーになれるはず。スヌーピーのストーリーは、大切なことを教えてくれます。企画展のあとに続く展示室には、スヌーピーの「ベリー・ハッピー・ホーム」が登場!ここも「映えスポット」です!ショップもかわいい!展示を見終わったら、ぜひ立ち寄りたいのが「ブラウンズストア」。チャーリー・ブラウンをイメージしたおしゃれな店内には、ステーショナリーや雑貨など、ここでしか買えないオリジナルグッズがいっぱい!2022年の今年は、チャールズ・シュルツ生誕100周年を記念した限定商品もあり、どれもこれも集めたくなります。特に心を惹かれたのが、箸置き。四足歩行タイプと、ニコニコ笑顔で背中を丸めたタイプの2種類あったので、ひとつずつゲット。どちらも本当に愛らしく、食事をするたび笑顔になれます。春のお出かけにぴったりなスヌーピーミュージアム。南町田グランベリーパークには、アウトレットモールやレストラン、映画館、鶴間公園などのアクティビティがあり、一日中楽しむことができます。ぜひぜひ足を運んでみてくださいね!© Peanuts Worldwide LLCInformation<スヌーピーミュージアム企画展『しあわせは、みんなの笑顔』概要>会期:~7月10日(日)会場:スヌーピーミュージアム時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)観覧料:前売り一般・大学生¥1,800、中学・高校生¥800、4歳~小学生¥400当日券一般・大学生¥2,000、中学・高校生¥1,000、4歳~小学生¥600
2022年03月31日春のお出かけにぴったりの展覧会が、都内各所で次々とはじまっています。今回は、特に日本が誇る美しい芸術品を見られる場所にフォーカス。サントリー美術館、山種美術館、アーティゾン美術館と東京国立近代美術館の企画展をまとめてご紹介!サントリー美術館『よみがえる正倉院宝物―再現模造にみる天平の技―』【女子的アートナビ】vol. 237御大典記念特別展『よみがえる正倉院宝物―再現模造にみる天平の技―』では、奈良にある正倉院宝物の精巧な再現模造のなかからセレクトされた逸品をまとめて展示。近現代の一流工芸家により再現された天平時代の技と美をたっぷり楽しめます。正倉院宝物とは、東大寺の重要な資財を納める「正倉」に伝わった約9,000件の品々のこと。聖武天皇ゆかりの品をはじめ、奈良時代の貴重な宝物が多く、調度品や楽器、武具、仏具、染織品など多彩な品があります。でも、なぜ本物の宝物ではなく再現模造を展示するのでしょうか?宮内庁正倉院事務所保存課長・飯田剛彦さんによると、正倉院宝物は壊れやすく、全国各地の展覧会で積極的に作品を公開するのは難しいとのこと。代わりに再現模造で理解を深めてほしい、とのお話でした。明治期の模造製作は、宝物を修理するための試作品としてつくられたことが多く、今では万が一の際のスペアとしての役目や、今回のような展覧会に出品する役割も担っているそうです。例えば、正倉院の国宝「螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)」の模造をつくる際、まず製作前にレントゲンやCTスキャンなども駆使して徹底的な調査を実施。痕跡を探り、さらに当時と同じ材料も各地から探し集め、そのうえで当代の名工たちが当時の技法を再現しながらつくりあげたそうです。「螺鈿紫檀五絃琵琶」は、正倉院宝物を代表する名品のひとつ。楽器としても大変珍しく、世界で現存するのは正倉院の現宝物のみ。それと同じものをほぼ完ぺきに再現した模造も、やはり素晴らしい芸術品といえると思います。前出の飯田さんは、この企画展の楽しみ方について、次のように教えてくれました。飯田さん再現模造には変色や欠けている部分もなく、ストレートな美しさがあります。また、現代の一流工芸作家が失われた技術をどのように再現したのか、という部分も注目点です。模造のパーツなども展示されているので、製作過程も含めて楽しんでみてください。本展は3月27日まで開催。その後、長野に巡回します。山種美術館『上村松園・松篁 ―美人画と花鳥画の世界―』渋谷区広尾にある山種美術館では、美人画の巨匠として知られる上村松園と、その長男・松篁(しょうこう)に焦点を当てた展覧会『上村松園・松篁 ―美人画と花鳥画の世界―』が開催中。気品あふれる日本画を心ゆくまで堪能できます。上村松園(1875~1949)は、京都で活躍した女性画家。葉茶屋の娘として生まれ、京都府画学校(現:京都市立芸術大学)で鈴木松年に、その後は竹内栖鳳などのもとで日本画を学びます。1902年に長男・信太郎(のちの松篁)を出産。家業の茶商を廃業して画家に専念し、シングルマザーとして息子を育てます。1948年には、女性初の文化勲章を受章。格調高い美人画で人気を博し、日本画家として成功を収めました。上村松篁(1902~2001)は、花鳥画で有名な画家。特に鳥の絵に定評があり、アトリエで多くの鳥を飼って観察しながら描いていたことで知られています。1984年には文化勲章を受章。息子の上村淳之も、日本画家として活躍しています。会場では、山種コレクションの上村松園作品全18点・松篁作品全9点を一挙に公開。さらに、淳之も含めた三世代の作品を見ることができます。なかでも時期的に必見なのが、松園の《春芳》(しゅんぽう)。梅の木の前でたたずむ女性の姿が描かれた大変美しい作品です。芳しい梅の香りが漂ってきそうで、作品の前に立つだけで一気に春の空気に包まれます。本展は4月17日まで開催。アーティゾン美術館『はじまりから、いま。1952ー2022』公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館では、現在『はじまりから、いま。1952ー2022 アーティゾン美術館の軌跡―古代美術、印象派、そして現代へ』が開かれています。本展では、石橋財団コレクションの歴史を約170点の作品とさまざまな資料で紹介。古代美術や日本東洋古美術から現代美術まで、幅広いジャンルの名作を楽しめます。展覧会は3部構成。第1章「アーティゾン美術館の誕生」では、近年収蔵された作品や、これまで開催された展覧会のポスターなども展示。ブリヂストン美術館時代の懐かしい企画展などを思い出しながら、美術館が歩んできた歴史に触れられます。第2章「新地平への旅」では、中国出身の画家ザオ・ウーキーによる墨で描かれた大作が登場。また、新所蔵作品《平治物語絵巻 常磐巻(ときわのまき)》も初公開中です。これは鎌倉時代に制作された作品で、清盛勢が内裏に討ち入りする場面などがドラマチックに描かれています。さらに、みんな大好きな“日本の宝”も第2章に登場!国宝《鳥獣戯画》(京都・高山寺蔵)甲巻の一部だった作品《鳥獣戯画断簡》も、石橋財団コレクションの所蔵作品です。最後の第3章「ブリヂストン美術館のあゆみ」では、開館初期のコレクションを紹介。モネやマネなどの絵画やギリシア彫刻などを楽しめます。本展は4月10日まで開催。東京国立近代美術館『没後50年 鏑木清方展』最後にご紹介するのは、美人画の大家として活躍した鏑木清方(1878~1972)の日本画約110点を集めた展覧会『没後50年 鏑木清方展』。こちらは3月18日からはじまります。鏑木清方は東京・神田生まれ。浮世絵系の画家に師事したあと挿絵画家としてデビューし、新聞や小説雑誌などの挿絵を手がけます。その後、人物画を中心とした日本画にも取り組み、庶民の暮らしや文学などをテーマに絵画を制作。関東大震災後、清方は再開発で失われていく明治の景色をテーマに作品を描き、代表作のひとつ《築地明石町》が誕生します。明石町は、明治時代に外国人居留地だった場所。本作の背景には洋館の垣根が描かれ、黒い羽織姿の女性の髪形は、明治期に流行した「イギリス巻」になっています。鏑木清方は、先にご紹介した上村松園と並び称されることも多く、特に美人画の雰囲気が似ているので違いがわかりづらいと思う人もいるかと思います。でも、山種美術館の企画展と本展を見れば、その違いがきっとわかるはず。ぜひ、どちらにも足を運んで、じっくりと本物の作品をご覧になってみてください。本展会場の東京国立近代美術館は千鳥ヶ淵にも近く、周辺にお花見スポットがたくさんあります。アートとお花見と一緒に楽しむのもおすすめです!Information御大典記念特別展『よみがえる正倉院宝物―再現模造にみる天平の技―』会期:~3月27日(日)※火曜休館※3月22日は開館会場:サントリー美術館開室時間:10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)※3月20日(日)、3月21日(月・祝)は20時まで開館※いずれも入館は閉館の30分前まで※開館時間は変更の場合があります観覧料:一般¥1,500、大学生・高校生¥1,000『上村松園・松篁 ―美人画と花鳥画の世界―』会期:~4月17日(日)※月曜休館※3/21(月)は開館、3/22(火)は休館会場:山種美術館開室時間:10:00-17:00(入館は16:30まで)観覧料:一般¥1,300、春の学割 大学生・高校生¥500、中学生以下無料 (付添者の同伴が必要)『はじまりから、いま。1952ー2022 アーティゾン美術館の軌跡―古代美術、印象派、そして現代へ』会期:~ 4月10日(日)※月曜休館※3/21(月)は開館、3/22(火)は休館会場:アーティゾン美術館開室時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)※金曜日は20:00まで観覧料:ウェブ予約チケット¥1,200、当日チケット¥1,500、学生無料(※要ウェブ予約)『没後50年 鏑木清方展』会期:3月18日(金)~5月8日(日)休館日:月曜(※3月21日、28日、5月2日は開館)、3月22日(火)会場:東京国立近代美術館1F企画展ギャラリー開室時間:9:30-17:00(金・土曜は9:30-20:00)(入館は閉館30分前まで)観覧料:一般¥1,800、大学生¥1,200、高校生¥700、中学生以下無料
2022年03月13日黒塗りの画面に亡霊のような顔が浮かびあがる絵など、心に深く突き刺さる作品を数多く残した画家、香月泰男(1911-1974)。彼の生誕110年を記念した展覧会『香月泰男展』が、練馬区立美術館で開催中です。画家から兵隊になり、戦後はシベリアに送られ、帰国後再び画家に戻った香月は、自身のつらい体験を20年以上も描き続けました。展覧会の様子と彼の人生をあわせてご紹介します。画家として認められたが…【女子的アートナビ】vol. 236香月泰男は、代々医業を営む家の長男として山口県に生まれます。幼いころから絵を描くのが好きで、20歳のとき東京美術学校(現・東京藝術大学)西洋画科に入学。学生時代は、ピカソやゴッホの作品などから影響を受けます。卒業後は、美術教師として北海道に赴任。その後、故郷の山口県にある女学校に転任し、教師をしながら公募展に絵を出品していきます。27歳で結婚し、1939年には第一子が誕生。また、文部省美術展覧会で特選を受賞するなど、画家としても認められはじめましたが、そのころ第二次世界大戦が勃発していました。中国からシベリアへ…1942年に召集令状を受け、翌年、32歳のとき満州国(現・中国東北部)に配属されます。絵具箱を持っていった香月は、軍務の間にも絵を描き、また家族あてにスケッチ入りの郵便を数百通も出していました。終戦後の1945年11月、香月はシベリアの収容所に送られます。極寒のなか、森林伐採や運搬作業など過酷な重労働に従事。食糧事情もかなり悪く、多くの収容者たちが亡くなります。2年間の抑留後、1947年に帰国。香月は山口の学校に復職し、油彩画も描きはじめます。戦争体験のほか、草花や食材など、さまざまなテーマで描きながら、技法の研究にも取り組みました。しだいに作品に使われる色彩が限られるようになり、モノトーン系の画風になっていきます。悪夢のような体験をアートに…1959年から、香月は兵役とシベリアの経験を本格的に描きはじめます。現地で見た景色や強制労働の様子を描いたもののほか、私刑にされた日本人の姿、収容所で亡くなった仲間の顔など、苛烈な作品も制作。悪夢のような体験をした香月にとって、この重いテーマをアートにするまでには長い時間が必要でしたが、1960年代以降、シベリアの作品が一気に増えていきます。例えば、黒い塊に足が生えたような作品《運ぶ人》(1960年)は、60キログラムもある麻袋を運んでいる抑留者の姿を描いたものです。近くで見ると、黒い部分に亡霊のような顔が浮かんでいます。「シベリアの画家」に香月が描いた戦争・抑留体験の絵は注目されはじめ、1967年には画集『シベリヤ』を刊行。それらの作品は「シベリア・シリーズ」と呼ばれるようになり、香月は「シベリアの画家」として評価を確立していきます。晩年になると、黒や茶色のモノトーン系の作品に少しずつ色が戻りはじめます。特に、鮮やかな青を使った作品は印象的。《青の太陽》(1969年)は、戦争中、匍匐(ほふく)前進の演習をしていたときに見た地面のアリの巣から着想した作品で、地中から空を見上げる構図になっています。新たな画風が表れはじめた1974年、心筋梗塞により急逝。62歳でした。心が震え続ける…この展覧会では、香月の作品が制作順に展示されています。情感豊かな戦前の作品から、どのように画風やテーマが変わっていったのか、その流れを画家の人生と重ね合わせながら見ることができます。テーマも画面も重々しいものが多いのですが、目をそむけたくなるような残酷さは感じられません。恐怖や苦痛、鎮魂、祈りなど画家のさまざまな思いがアートに昇華され、作品の前に立つと、静かな感動が押し寄せてきます。美術館を出てからもその余韻は残り、ずっと心が震え続けました。会場には、香月が残した言葉もところどころに記されています。ぜひ足を運んで、作品を通して画家の思いを感じてみてください。Information会期:~3月27日(日)※途中展示替えあり前期:~3月6日、後期:3月8日~3月27日※休館日は月曜日。ただし3月21日(月・祝)は開館、3月22日(火)は休館会場:練馬区立美術館開室時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)観覧料:一般¥1,000、大学生・高校生、65歳~74歳¥¥800、中学生以下、75歳以上は無料その他割引制度あり
2022年02月27日話題のドラマや舞台などで活躍中の俳優、杉野遥亮さんが、『ミロ展―日本を夢みて』の展覧会ナビゲーターに就任!今回、音声ガイドの収録を終えた杉野さんに、アート体験やご自身の活動などについて語っていただきました。杉野遥亮さんが展覧会ナビゲーター!【女子的アートナビ】vol. 235東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開かれる『ミロ展―日本を夢みて』では、スペインが生んだ巨匠、ジュアン・ミロ(1893-1983)の初期作品や代表作を展示。さらに、日本好きのミロが所有していた民芸品や、日本と深いつながりを示す資料なども含め、約130点の作品と資料が紹介されます。ミロが生まれたのは、スペイン・カタルーニャ地方にある都市バルセロナ。1888年に当地で開かれた万国博覧会の影響で、ミロの幼少期にもジャポニスム・ブームが続いており、生家近くには日本美術の輸入販売店もありました。日本にあこがれて育ったミロは、美術学校で学んだあと、画家として創作活動を開始。浮世絵をコラージュした作品を制作するなど日本への興味は尽きず、また、第二次世界大戦後は日本でもミロの展覧会が開かれるようになり、彼は二度も来日しています。本展では、相思相愛となったミロと日本の関係を、作品や資料を通して楽しむことができます。杉野遥亮さんにインタビュー!――まず、『ミロ展―日本を夢みて』のナビゲーターに就任されたご感想をお聞かせください。杉野さん光栄です。とってもうれしいし、このような経験ができたことは自分にとって、とてもよかったなと思っています。その“就任”という言葉、なんだかいいですね。――音声ガイドの収録もされたのですよね。いかがでしたか?杉野さん音声ガイドの収録は、はじめての経験でした。良いものをつくりたいという意識で臨みましたが、結果的に、それがどうなっているのか、自分でも気になります。この仕事でインプットできるものがとても多くありましたし、良い経験となりました。――展覧会がはじまったら、ご自身で音声ガイドを聞いてみたいですか?杉野さんそうですね、聞きながら作品を見てみたいです。でも、内容は知っているので、自分の仕事を確認する感じになっちゃいますね。どうして日本を愛してくれたのか…――特に見てみたい作品はありますか?杉野さん全部見てみたいです。(展覧会チラシを見ながら)この絵(《ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子》)とか、あと新聞など切り貼りしたコラージュ作品も気になります。でも、資料だけではわからないので、ちゃんと展覧会で実物を見てみたいなと思いました。――この展覧会には、誰と行きたいですか?杉野さんひとりがいいです。展覧会で、自分が何かを感じたり思ったりするときに、誰かに対して意識がいくと集中できないので……。じっくり、ひとりで見てみたいです。――ミロは日本好きとのことですが、ミロの作品を通して、日本を感じられそうでしょうか?杉野さん日本を感じる、というところまでいくのかどうかはわからないけど、ミロがなんで日本をリスペクトしてくれたのか、どうしてこんなにも日本を愛してくれていたのか、という点は、自分で調べたり感じたりしてみたいです。それが、改めて日本の文化に目を向けて見る、ということになるかもしれません。相思相愛のお相手とは…――ミロは書道風の絵も描いています。杉野さんも、書がとてもお上手ですよね。杉野さん書道は、今はやっていないです。昔も、特に習っていたわけではありません。――以前ラジオ(『杉野遥亮の今夜もオフトーク』『杉野遥亮の「今度は長ズボン」』)で、小学生のころ何度か書道で金賞をとったと話されていたのを聞きました。ほかにも、英語のコンテストにも選ばれたとか。杉野さんあれっ、僕、ラジオで話しましたか!その話は、僕の「あるある」なのです。不思議なのですが、いつも“やっつけ仕事”みたいに「はい!」と提出したものが、たまたま評価されてしまうんです。英語も、スピーチコンテストに出るということを口実にして、みんなで部活をサボろうとしたのですけど、なぜか僕だけ受かってしまって。結果的に、夏休みは部活のあと、英語の練習もしなければならないという超ハードスケジュールになりました。サボろうとしたので、バチがあたったんです(笑)。――いやいや、書道でも英語でも、賞をもらえるというのは本当にすごいことだと思います。ところで、この展覧会には「ミロと日本は相思相愛」というキャッチフレーズがあるのですが、杉野さんの相思相愛体験について、教えていただけますか?杉野さんえーっ、相思相愛ですか……。人、ですよね?誰かなぁ。あ、でも以前、テレビの仕事でバルセロナに短期滞在していたときに、僕は相思相愛だと思っていましたよ、蝶野正洋さんと(笑)。――なるほど、蝶野さん!お二人で共同生活をするという番組ですよね。確かに、楽しそうでした。バルセロナでは、アート体験もしましたか?杉野さんバルセロナは、芸術のなかに住まわせていただいた感じだったので、それが当たり前になっていました。今となれば、とても貴重な経験だったし、ちゃんと目に焼き付けるべき場所だったと思います。本当に贅沢な環境でしたよ。だって、歩いていたら世界遺産があるのですから。サグラダ・ファミリアをはじめ、いろいろなガウディの建築物が見られますし、町中にアートがあふれていました。『恋です!』出演で味わったこと――2021年は、さまざまなドラマや舞台でご活躍でしたが、印象に残った出来事を教えていただけますか?杉野さん2021年は、全体通して、すごく駆け足でした。いろいろなことを経験させてもらい、どの仕事にも愛着があります。初めて舞台に立つ経験もしましたし、そのあとは『恋です!』に出て、いろいろな人に自分のことを知ってもらえました。初めて小さい子どもに声をかけられたり、おじいちゃんに「見てるよ」といってもらえたり。温かい気持ちになりました。――2022年になったばかりですので(取材時は1月初旬)、今年の抱負も聞かせていただけますか?杉野さん自分のペースで、自分の軸をぶらさずにやっていけたらいいなと思います。忙しかったり、疲れたりしているときは、どうしても自分自身に戻れない時間、自分がわからなくなる瞬間があるので、そういったときに、どうやって自分を保てるのか、というのが目標かなと思っています。――社会貢献にご興味がある、というお話も以前されていましたが、今年やってみたいことはありますか?杉野さん興味はあるのですけど、実際にそれができるのは、まだ自分的にはもう少し先かなと。まだ、自分のなかでも人間的に確立されていない部分があったりとか、ちゃんと整っていないことがあったりするなかで、人のために何か、というのはまだ自分には早い気がしています。時機がきたら、ですね。――杉野さんの言葉には、誠実さがあふれていますね。ラジオを聞いていてもステキな言葉が多いです。実は、心に響いた杉野さんの言葉をリストアップしているのです。杉野さん(リストを見て)へぇ、これ、すごい!でも、こういうのは、自分から出た言葉でも、自分だけでつくった言葉ではないですからね。誰か、例えば番組にメッセージをくれるリスナーさんと心を通わせてわかったこととか、例えば父親からもらった言葉とか、そういうものなので。――今のお話も、とてもステキです。最後に、展覧会を見る読者のみなさんにメッセージをいただけますか?杉野さん『ミロ展』は、展覧会に足を運ぶことが好きな方も、そうでない方も楽しめるようになっていますし、魅力がつまっています。何か気持ちをもらえたり、感じるものがあったり、人それぞれかもしれないけれど、受けとめられるものが何かあると思います。こんな時期だからこそ、芸術に触れることをしていただきたいなと思います。――ありがとうございました!インタビューを終えて…小顔で背が高く、信じられないほどスタイルの良い杉野さん。話し方に誠実なお人柄が表れ、どんな質問にも丁寧に答えてくれました。インタビュー中はクールで落ち着いた雰囲気でしたが、雑談になると表情が少年のような雰囲気に変化。そのギャップがまたステキでした。『ミロ展』では、声も「イケボ」な杉野さんが収録した音声ガイドを聞きながら、ぜひ作品を楽しんでみてください!※展覧会の最新情報など詳細は、公式サイトをご覧ください。Information会期:2月11日(金・祝)~4月17日(日)※2/15(火)、3/22(火)は休館会場:Bunkamura ザ・ミュージアム開室時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)観覧料:一般¥1,800(¥1,600)、大学生・高校生¥1,000(¥800)、中学生・小学生¥700(¥500)※カッコ内は前売り券の価格です。※会期中すべての土日祝および4月11日(月)~4月17日(日)は事前に【オンラインによる入場日時予約】が必要です。※状況により、会期、開館時間、日時指定予約対象日等が変更となる可能性があります。ご来場の際は最新情報を公式サイトにてご確認ください。
2022年02月02日東京ステーションギャラリーで『ハリー・ポッターと魔法の歴史』展が開かれています。本展では、ファンタジー文学の世界的ベストセラー「ハリー・ポッター」シリーズの背景にある「魔法」をテーマに、大英図書館が所蔵する貴重な資料や原作者J.K.ローリングの直筆原稿、スケッチなどを展示。物語の世界にどっぷり浸れるステキな展示空間をご紹介します!東京駅から魔法学校へ!【女子的アートナビ】vol. 235『ハリー・ポッターと魔法の歴史』展の会場は、東京駅丸の内駅舎内にある東京ステーションギャラリー。この美術館には、物語に出てくる「9と3/4番線」のような、東京駅創建当時(1914年)の赤レンガが残る趣のある展示室もあり、「ハリー・ポッター」の世界を楽しむには絶好のロケーションです。展示は10章で構成。ハリーが通ったホグワーツ魔法魔術学校の科目「魔法薬学」「錬金術」「呪文学」「天文学」などに沿って、大英図書館が所蔵する貴重な資料やJ.K.ローリングの原稿、スケッチなど約140点が紹介されています。「ハリー・ポッター」とは、主人公である魔法使いの少年ハリーが、ホグワーツ魔法魔術学校で学んだ魔法や魔術を駆使して仲間たちと協力し、邪悪な魔法使いと戦う物語。スリリングな冒険や、仲間との友情がドラマチックに描かれ、さまざまな魔法アイテムも登場します。担当学芸員の柚花文さんは、「魔法はファンタジーのなかにしか存在しないもののように思えるのですが、実は人類が何世紀にもわたって研究して書物に記録してきた例がたくさんある」と解説。「この展覧会では、大英図書館などの資料を通して、現実に記された魔法の歴史と、物語の創造世界とをつないでいる。このつながりを楽しんでほしい」と語りました。本展は、大英図書館が2017年に企画・開催した"Harry Potter : A History of Magic"の国際巡回展。2017年から2019年にかけてロンドンとニューヨークで人気を博した展示を、いよいよ東京で楽しめます。「賢者の石」のレシピ登場!では、いくつか見どころをピックアップしていきます。展示は、3階の展示室にある第1章「旅」からスタート。J.K.ローリングの本がどのようにして誕生したのか、主人公のハリーの旅立ちとともに紹介されています。作家がタイプした「あらすじ」やスケッチ、原作の挿絵を担当したイラストレーター、ジム・ケイの《『ハリー・ポッターと賢者の石』の9と3/4番線の習作》などが展示されています。第3章「錬金術」では、必見作『リプリー・スクロール』が登場。これは16世紀にイングランドで記された写本です。科学が発展する以前、ヨーロッパでは、卑金属を黄金に変えたり、不老不死の薬を生み出したりすることができる「賢者の石」のつくりかたを真剣に研究していました。4メートルを超える『リプリー・スクロール』には、その製造工程が美しい色彩で描かれています。ほかにも錬金術関係の資料や絵画、書物を展示。物語のなかでも重要な役割を果たす「賢者の石」のリアルな歴史がわかります。“美”魔女も…!第6章「天文学」では、レオナルド・ダ・ヴィンチの手稿「天体にまつわるメモとスケッチ」や、太陽系の模型「大太陽系儀」、「天球儀」などを展示。特に、側面に装飾が施された「大太陽系儀」は大変美しく、見ごたえがあります。「大太陽系儀」は昔から教材に使われ、ホグワーツ魔法魔術学校でも天文学や星座占いで使用されています。資料類だけでなく、絵画も楽しめます。第8章「闇の魔術に対する防衛術」では、イギリスの画家、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの作品《魔法円》が展示されています。中世ヨーロッパの魔女は、醜悪なイメージで描かれることが多かったのですが、ウォーターハウスの魔女は青く美しいドレスを身につけ、神秘的な美人風に描かれています。彼女は、身を守るために杖で周囲に円を描き、魔法円の外には不気味な動物や頭蓋骨が見えています。「ハリー・ポッター」のなかでも、ハーマイオニーが円を描きながら保護呪文をとなえる場面が出てくるので、この作品でも物語世界とリアルな魔法史とのリンクが感じられます。創作の秘密も…!原作ファンにとってうれしいのは、J.K.ローリングの創作資料やスケッチの展示作品です。特に、最後の章で展示されている「『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』の構想」は必見作のひとつ。時系列で登場人物の居場所などが書いてある資料で、名作が生まれるまでの試行錯誤が伝わってきます。リアルな魔法の歴史を紹介する本展を見終わると、きっともう一度、原作で「ハリー・ポッター」を読んでみたくなるはず。今まで以上に、物語世界をより深く理解でき、楽しめると思います。『ハリー・ポッターと魔法の歴史』展は3月27日まで開催。※最新情報などの詳細は公式サイトをご覧ください。Information会期:~3月27日(日)会場:東京ステーションギャラリー開館時間:10:00 - 18:00※金・土曜日は20:00まで開館※入館は閉館30分前まで観覧料:一般¥2,500、高校・大学生¥1,500、小・中学生¥500※日時指定予約制※最新情報などの詳細は公式サイトをご覧ください。
2022年01月15日IDÉE とのコラボなど現在も注目を集める99歳の染色家・アーティスト、柚木沙弥郎(ゆのきさみろう)さん(1922~)。彼の展覧会『柚木沙弥郎life・LIFE』が、立川のPLAY! MUSEUMで開かれています。染色作品や絵本原画が並ぶ展示空間は、ワクワク感であふれています!どんな展覧会?【女子的アートナビ】vol. 234『柚木沙弥郎life・LIFE』では、創作活動70年超のアーティスト、柚木沙弥郎さんの作品約150点を展示。温かみのある布作品や、ほっこりする絵本原画、ユーモラスな人形など、彩り豊かな世界が広がっています。柚木さんは、作品制作だけでなく商業意匠も手がけています。最近ではインテリアショップ、IDÉEとのコラボが注目されましたが、ほかにも数多くのデザインを担当。日本各地でロゴやパッケージなどを制作しています。調べてみたところ、筆者の自宅近くにある民藝品店の看板や、よくお取り寄せする和菓子店の包装紙も柚木さん作と判明。きっと、みなさんの身近なところにも柚木さんデザインがあるはずです。本展では、誰もが親しみを感じられる柚木さんの作品群が一堂に集結。優しくて温かい「柚木ワールド」にたっぷりと浸れます。学徒動員、染色家転身、パリで成功…柚木さんは1922年、大正時代に東京・田端で誕生。父親は洋画家で、幼いころから絵を描くのが大好きだった少年は、東京帝国大学(現・東京大学)文学部美学美術史科に入学します。1943年、学徒動員で兵隊となり、終戦後は岡山の大原美術館に就職。そこで柳宗悦の民藝運動に出会い、美術館をやめて工芸・染色の道に進みます。1950年、女子美術大学の専任講師に就任。学生を指導するかたわら、染色家としてさまざまな作品を制作し個展も開きます。1987年には、同大学の学長に就任。1991年に退職した後は絵本原画も手がけ、染色、デザイン、造形など幅広いジャンルで活躍しています。また、柚木さんは国内だけでなく海外でも精力的に個展を開き、2014年にはフランス・パリのギメ東洋美術館で大規模な展覧会を開催し、大きな成功を収めます。99歳になる現在も、毎日絵を描くなど創作活動を続けています。ワクワクする作品がいっぱい!では、本展の見どころからいくつかピックアップしてご紹介。まずは、絵本の原画やスケッチなどを展示した「絵のみち」。柚木さんは72歳のとき、はじめての絵本を刊行。その後、ジャズピアニストの山下洋輔さんや、詩人の谷川俊太郎さんと一緒に本を出したり、宮沢賢治の絵本原画を担当したり、絵だけでなくお話も自ら手がけたりと数多くの本を出版しています。会場には、約80点の原画を展示。シカやネコなどの動物たちが楽しそうに飛び跳ねていたり、生き生きとした人物が描かれていたりして、見ているだけでワクワクします。学生時代に戦争を経験された柚木さんには「戦火に散った友人たちの分も、自分は何かしなくてはいけない」という想いが常にあるそうです。どの作品からも、柚木さんの“丁寧に生きる”というメッセージが伝わってくるようです。作家本人が感動…!「布の森」もうひとつの見どころは、約50点の染色作品が天井からつるされた「布の森」。柚木さんの作品は、初期のころは人物や動物などの模様が多く、近年では抽象画風のデザインに変化。会場には、幅広い年代の作品が集まっています。この空間に入ると、色とりどりの布に囲まれ、まさに森の中にいるような感じ。ダイナミックな展示に圧倒されます。床に敷かれている白い砂利も、作品をより美しく幻想的に引き立たせていて、展示室を歩いていると美術館にいることを忘れてしまいそうです。「布の森」の展示空間については、美術館が実施したインタビューで、作家本人が「涙が出るほど感動する」と述べています(※)。まさに圧巻の展示で、どの世代の人が見ても感激すること間違いなしです!キュートなオリジナルグッズも!最後に、ミュージアムショップにもお立ち寄りください。PLAY! MUSEUMのオリジナルグッズや、IDÉEのグッズも購入できます。特にタイルのデザインは、とってもキュート。全種類揃えたくなります。『柚木沙弥郎life・LIFE』は1月30日まで開催。Information会期:~1月30日(日)会場:PLAY! MUSEUM開館時間:平日:10:00-17:00(入場は16:30まで)休日:10:00-18:00(入場は17:30まで)観覧料:一般¥1,500、大学生¥1,000、高校生¥800、中・小学生¥500※最新情報などの詳細は公式サイトをご覧ください。
2022年01月10日デザイナー、アートディレクター、絵本作家として活躍した堀内誠一さん(1932-87)。2022年に生誕90年を迎えることを記念し、彼の画業を振り返る展覧会が開かれます。『堀内誠一絵の世界』展、開催!【女子的アートナビ】vol. 2322022年1月4日から京都の大丸ミュージアムではじまる本展では、昭和時代に多方面で活躍した“レジェンド”デザイナー、堀内誠一さんの「絵の世界」にフォーカス。今なお愛される名作絵本『ぐるんぱのようちえん』をはじめとした多彩な絵本原画を中心に、雑誌の表紙やデザインの仕事、絵手紙など約150点の作品や資料が紹介されます。堀内さんは、『anan』にとっても“レジェンド”。1970年の雑誌『anan』創刊時に、タイトルロゴや表紙、ページネーションを手がけられました。『BRUTUS』や『POPEYE』など多くのロゴも堀内さん作。それらのロゴは今でも愛され、使われ続けています。20世紀の雑誌や絵本などのカルチャー界で多くの偉業を残した堀内さんとは、どんな方だったのでしょう?その画業をざっくりとご紹介します。14歳で伊勢丹宣伝課に入社!1932年、東京に生まれた堀内さんは、図案家だった父親の影響を受け、幼少期から絵を描きはじめます。少年期に第二次世界大戦が勃発。疎開先の石川県で終戦を迎え、東京に戻ります。1947年、14歳という若さで伊勢丹宣伝課に入社。ディスプレイデザインやPR誌の編集作業に取り組みながら、美術研究所に通って絵画も制作。1949年には現代美術会展に出品し、奨励賞を受賞します。堀内さんは、著書『父の時代・私の時代わがエディトリアルデザイン史』(日本エディタースクール出版部)で「私がエディトリアルデザインに興味を持ったのは6、7歳の頃でした」と述べています。幼少期に自分でつくった詩に絵をつけたり、図案を描いたり、さらには雑誌風に編集もされていたとのこと。それらの記録の一部も、本展で展示されます。絵本画家デビュー!その後堀内さんは、クリエイティブ集団アドセンター株式会社でデザイナーとして活躍。雑誌のエディトリアルデザインや化粧品の広告、パッケージデザインなどを手がけます。1958年には、はじめての絵本『くろうまブランキー』を出版し、絵本画家としてデビュー。さらに『ぐるんぱのようちえん』や『たろうのおでかけ』など人気絵本を次々と生み出していきます。驚くのは、これらの本が今でも書店で購入することができ、正真正銘のロングセラーになっていること。1965年に出された『ぐるんぱのようちえん』は、2021年に大江戸線の「子育て応援車両デザイン」にも採用されています。パリに移住!1960年から61年にかけて、堀内さんはヨーロッパを視察。はじめての海外旅行で、フランス・パリを拠点にイタリア、スペイン、ドイツなどの美術館や教会を巡り、コンサートや芝居にも出かけます。帰国後は再びデザイナー、アートディレクターとして雑誌や広告の仕事を手がけ、当時のカルチャー界をけん引。トップランナーとして最先端のトレンドを生みだし、『anan』の創刊プロジェクトにも携わります。1974年、堀内さんは家族とともにパリ郊外へ移住。約7年滞在し、絵本の仕事に専念します。人気絵本『こすずめのぼうけん』が生まれたのもパリ時代。古今東西、さまざまな文化を吸収していた堀内さんの作風は多彩で、物語にあわせた絵柄で数々の絵本を制作していきます。堀内さんの絵本への情熱は格別だったようです。著書『ぼくの絵本美術館』(マガジンハウス)では、「幼児にとって絵本とは何と素晴らしい人間の発明品か」と述べ、同書で絵本の歴史と絵本愛を余すところなく語っています。また、ヨーロッパだけでなく世界中を旅した堀内さんは、風景画や絵手紙、シチリアやパリの地図なども描き残しました。それらの作品も、今回の展覧会で見ることができます。1981年にフランスから帰国。その後も創作活動を続けていた堀内さんは、1987年、下咽頭癌により急逝。享年54歳でした。ぜひ生の作品を!本記事でご紹介したのは、堀内さんの仕事のほんの一部です。展覧会では、子どものころに描いたスケッチや青年期の油絵、絵本原画、デザインの仕事など、生の作品を通して“レジェンド”の偉業に触れることができます。令和の時代まで色あせずに愛され続けている堀内さんの作品たちを、ぜひ会場でご覧になってみてください。展覧会は、大丸ミュージアム京都のあと、クレマチスの丘 ビュフェ美術館、県立神奈川近代文学館、ひろしま美術館などに巡回予定です。参考文献・参考サイト:堀内誠一『父の時代・私の時代わがエディトリアルデザイン史』(日本エディタースクール出版部)堀内誠一『ぼくの絵本美術館』(マガジンハウス)コロナ・ブックス編集部編『堀内誠一旅と絵本とデザインと』(平凡社)Information会期:2022年1月4日(火)~24日(月)※会期中無休会場:大丸ミュージアム〈京都〉[大丸京都店6階]開館時間:午前10時~午後7時30分まで(午後8時閉場)※最終日は午後4時30分まで(午後5時閉場)観覧料:一般・大学生¥1,000、中高生¥800、小学生以下無料※最新情報などの詳細は公式サイトをご覧ください。
2021年12月27日過去に3度も個展を開催しているタレントのベッキーさんが『BANKSY GENIUS OR VANDAL?(バンクシー展天才か反逆者か)』のプレス限定イベントに出席。その後インタビューに応じ、バンクシーやアートについて、語ってくれました。ベッキーさん登場!【女子的アートナビ】vol. 231世界で300万人以上動員している話題の展覧会『BANKSY GENIUS OR VANDAL?(バンクシー展天才か反逆者か)』が、原宿駅前の東京・WITH HARAJUKUにてはじまりました。開幕に先駆けて開かれたプレス限定イベントに、ベッキーさんが登場。キュレーターの山峰潤也さんと一緒にトークセッションが実施されました。まず、展覧会の感想について問われると、ベッキーさんは「会場に一歩足を踏み入れた瞬間バンクシーの世界観に入れて、すごいです!」と興奮気味に回答。また、バンクシーについては「愛がある人。世界のこと、先のことをいろいろ知っている人だと思う」といい、もし会えたら「悩みを相談してみたいです(笑)いいアドバイスをもらえそう」と語りました。山峰さんは、「たくさん作品があり、めまいがするくらいの展覧会。バンクシーはアートの世界で時代の寵児。政治などいろいろなメッセージも含まれているので、若い人たちが感化されるような機会になればいい」とアピールしました。ベッキーさんインタビュー!イベント終了後、ベッキーさんにインタビューを実施。まずは、バンクシーの魅力について、語っていただきました。――バンクシー作品の魅力は、どんなところにあると思いますか?ベッキーさん伝えたいことを100パーセント伝えてくれていない感じがいいです。30パーセントくらいポーンと投げかけられて、あとは人それぞれどうキャッチするか。アートは基本そうだと思いますが、なかでもバンクシーは考えさせられます。こういう意味なのかな、とか。謎解きみたいで、その時間が楽しいですね。――本展のバンクシー作品のなかで、特に《ボム・ラブ》が好きだと仰っていました。少女が爆弾を抱えているというシュールな作品ですが、どんな部分に惹かれましたか。ベッキーさん遠くから見たら全体の色がピンクで、女の子がステキな表情で何か抱きしめているから、「ハッピーな絵かな?」と最初は思ったのです。でも、抱いているのは爆弾なんですよね。それって、すごく胸を締め付けられる。相反するものを組み合わせるのがバンクシーらしさなのかもしれませんけど、いろいろ考えさせられます。しかも、この絵の隣に、軍のヘリコプターをイメージした作品が並んでいたので、ふたつセットで胸にぐっときました。「キュン」とした作品は…――ベッキーさんはお父さまがイギリスの方で、イギリスにもよく行かれていたそうですが、バンクシー作品にもそのお国柄が感じられますか?ベッキーさんすごくイギリスらしいです。イギリスに行ったらよく行く大型スーパーの絵が描いてあったり、国旗も出てきたり、あとはケイト・モスをモチーフにしていたり。レンガの町の雰囲気が作品に出てきたりすると「キュン」とします。今は世界一のアーティストといっても過言ではないバンクシーの作品に、イギリス感が満載なのがうれしいです。――バンクシーの活動スタイルはどう思われますか?神出鬼没で謎が多いですよね。ベッキーさん正直、どこまで言っていいのかわかりませんけど……。建物にアートを描いてしまって、ひょっとしたら困っている人もいるかもしれないですよね。だから100パーセント支持をしてはいけないのかもしれないですけど、でも、「次は何をしてくれるのだろう」と楽しませてくれる感じが最高ですよね。バンクシーは、新作を単に発表するだけでなく、この国に行ったとか、いろいろな舞台裏を考えさせてくれることも含めてアート。彼は、生きざまそのものがアートですよね。代表作は、結局彼自身だと思います。周りの人を幸せにしたい――ベッキーさんはご自身でも絵を描かれ、個展も開かれています。ベッキーさんの作品は、とても明るくて、ハッピー感があふれていますね。ベッキーさん自分のルールとして、ハッピーな気持ちでしか筆を持たないと決めています。見た人の目、心を汚したくないという気持ちがあるので。とはいえ、つらいときもある。つらいときは、「つらいな。でもハッピーになりたいな」という気持ちで描くと、ぎりぎりハッピーゾーンに入るから、なんとか前向きになれます。あと、私自身、色が好きなのです。カラフルな色は、心が躍ります。だから遊園地や子ども服、子どもの遊び場なんかもカラフルなんですよね。昔からイラストとか描いていましたし、子ども服とかデザインの仕事もしていました。やはり、私はカラフルなものが好きですね。――絵だけでなく、ベッキーさんご自身も明るくて元気なイメージがあります。ベッキーさんの元気の原動力は、なんでしょうか?ベッキーさん私は、そんなに自分では元気だと思っていないのです(笑)。お仕事もあるし、子育ても家事もあって、いつもヘトヘトになっています。でも、いつも意識しているのは、「周りの人を幸せにしたい」という気持ちです。それが、原動力になっているのかもしれません。アートは、いい世界――アートというのは、高尚なイメージがあったりして、どんな風に見ればよいのかと考えてしまう場合もあります。ベッキーさんアートは、どう考えてもいいと思います。見る人が解釈したものが、それが答えだと思います。それだから、いいんですよね。「1+1=2」だけが答えではない。「私はこう思う」という感じで、人の数だけ正解があり、それぞれの見方でいいんだと思います。例えば「ベッキーの絵は子どもの絵みたいでしょうがない」といわれても、全然傷つかないです。私が楽しんで描いているのだから、それが私にとっての正解。だから、アートはいい世界です。――これまでに感動したアート体験はありますか?ベッキーさんやまもとしんじさんというイラストレーターの方が、イラストをプレゼントしてくれて、それが私の理想とするカラフルさとかわいさがあるステキな絵なのです。いろんな動物とかお菓子とかあって、よく見ると私や旦那さん、昔飼っていたペットが描いてあって。その絵をもらったとき、絵はこっそりと思いを忍ばせて、手紙のように使えたりするすばらしいものなんだと思いました。その絵は、もう宝物です。とにかく楽しいですよ!――最後に、anan読者にメッセージをお願いします。ベッキーさんananを読んでいるおしゃれさんは、アート大好きという方もいるかもしれませんし、いろいろだとは思いますけど、バンクシーのアートは心がワクワクしたり、考えさせられたり、みんなが触れられるアートだと思います。だから、本当に気軽な気持ちで遊びに来て後悔はないと思います。場所も原宿ですし、とにかく楽しいですよ! 「アートって好きかもしれない」と思えるようになると思います。――ステキなお話、ありがとうございました。インタビューを終えて…インタビュー前、バンクシーの「ケイト・モス」作品やバスキア作品の前で写真撮影が行われました。明るくキラキラした笑顔がステキで、まさにテレビで見せる元気なイメージそのものでしたが、お話をうかがうと繊細な部分も多く感じられました。つらいときも常に前向きになれるよう心がけ、仕事や育児、家事、絵画制作に一生懸命取り組んでいるベッキーさん。彼女の生きざまも、ひとつのアートなのかもしれません。年末年始も開催!『BANKSY GENIUS OR VANDAL?(バンクシー展天才か反逆者か)』には、貴重なオリジナル作品、版画、立体作品、映像や本など100点以上が集結。アンディ・ウォーホルやバスキアの作品12点も特別展示されています。バンクシー作品のルーツを探る他作家との比較展示は、日本初登場。特に、ウォーホルの「マリリン」作品から影響を受けた「ケイト・モス」は、必見です。本展は、年末年始も開催しています。原宿駅から数分の便利なロケーションで見られる楽しい展覧会、ぜひ足を運んでみてください!Information会期:~2022年3月8日(火)※2月24日(木)休館会場:WITH HARAJUKU開館時間:10:00~20:00 ※入館は閉館の30分前まで観覧料:※日時指定制平日一般¥1,800、大・専・高¥1,600、中学生以下¥1,200土日祝一般¥2,000、大・専・高¥1,800、中学生以下¥1,400※最新情報などの詳細は公式サイトをご覧ください。撮影 : 安田光優
2021年12月20日現在、新宿のSOMPO美術館で『川瀬巴水 旅と郷愁の風景』展が開かれています。日本の風景画などを数多く手がけた版画家の川瀬巴水(1883-1957)。アメリカにもファンが多く、あのスティーブ・ジョブズも作品を購入したことで知られています。今回は、巴水の人生と作品をご紹介します。周囲からは反対され…【女子的アートナビ】vol. 2301883年、東京市芝区(現在の港区)の糸屋兼糸組物職人の長男として生まれた川瀬巴水(本名・文治郎)は、幼いころから絵が得意で、画家になることを夢見ていました。ですが、跡取りであったため周囲から反対され、家業をつぎます。絵の道を諦めきれなかった巴水は、家業を妹夫婦に譲り、25歳のとき日本画家・鏑木清方に入門を希望します。しかし、年齢を理由に断られてしまいます。27歳で、再び清方に入門を懇願。そこで認められ、約2年後に清方から画号「巴水」を与えられます。1918年、35歳で木版画家としてデビュー。風景画を得意とした巴水は、旅に取材してさまざまな景色を写生し、最初の連作『旅みやげ第一集』を発表します。巴水の制作を支えたのは、版元の渡邊庄三郎です。もともと浮世絵商だった渡邊は、大正期に、芸術性の高い木版画「新版画」の制作を開始。才能のある絵師と彫師、摺師と組んで制作を進めていました。巴水も渡邊のもとで、さまざまな作品を生み出していきます。巴水が描いたのは、日本の名所だけではありません。江戸情緒が残る街並みや、ガス燈や電柱など近代化しつつある日常風景など、彼の心に響く場面が題材に選ばれています。例えば、現在の浅草・駒形橋あたりを題材にした《こま形河岸》は、竹屋の情景を巴水独自の視点で切り取り、味わいのある構図で描かれています。竹の間から見える夏空もポイント。場面の空気感までも伝わってくるようです。震災ですべて焼失…風景画の絵師として注目され、創作活動に打ち込んでいた1923年9月、関東大震災が発生。巴水の自宅は全焼し、家財だけでなく、写生帖188冊と画業の成果もすべて失います。しかし巴水は版元の渡邊に励まされ、同年10月から長期の写生旅行に出発。諏訪から木曽、富山、城崎、出雲、瀬戸内、近畿などをめぐる102日間の旅で制作した写生帖をもとに、新しい作品を生み出していきます。巴水版画のなかで最も売れた作品《芝増上寺》も、震災後の写生をもとに誕生。ほかにも、復興途上の東京や、昔ながらの美しい東京を描いた作品も生み出し、国内外で高い評価を受けます。特に巴水らの「新版画」はアメリカで人気があり、オハイオ州では大規模な展覧会が2度も開かれました。スランプや戦争も…人気を博していた巴水ですが、その後もスランプに陥ったり、戦争による空襲の激化で疎開したりと数々の困難が彼を襲います。戦争によりアメリカとの関係も絶たれていましたが、終戦後は進駐軍が“お土産”に版画を買い求め、再びブームが到来。巴水の作品もたくさん売れました。1957年、胃がんにより74歳で逝去。絶筆となった《平泉金色堂》は、死後に版画が完成しました。12月26日まで開催中巴水の作品を見ていると、大正から昭和初期の雰囲気がよくわかり、日本の美しさを再発見できます。また、雪や雨の細かい描写や、夕景や夜景などの深い青の発色も大変美しく、彫師や摺師の技術力の高さにも感動します。なお、会場には「ジョブズと巴水」のコーナーも設けられています。新版画のコレクターだったジョブズは、巴水の風景画を気に入り、1980年代に何度か来日して作品を数十点購入。ジョブズが買った作品と同じ版画も展示されています。アップル社の洗練された製品スタイルに、日本の美が影響を与えたのかも……と想像しながら見ても楽しいです。本展は、初期から晩年までの巴水版画をまとめて見ることができる貴重な機会です。ぜひ心に響く日本の景色をご覧になってみてください。会期は12月26日まで。Information会期:~12月26日(日)※休館日: 月曜日会場:SOMPO美術館開館時間:10:00~18:00(最終入場時間 17:30)観覧料:※日時指定制オンラインチケット一般¥1,300、大学生¥1,000、高校生以下無料当日窓口チケット一般¥1,500、大学生¥1,100、高校生以下無料※入場無料の方もオンラインチケット(無料)を取得のうえ、ご来館ください。オンライン取得が難しい方用に、当日券も一定数ご用意しています。※最新情報などの詳細は公式サイトをご覧ください。※画像写真の無断転載を禁じます。
2021年12月12日三菱一号館美術館で『イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 ― モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン』展が開かれています。イスラエル博物館が誇る珠玉の印象派作品がまとまった形で展示されるのは日本初。「光」をテーマにした“眼福すぎる”美しい絵画たちをご紹介します!どんな展覧会?【女子的アートナビ】vol. 229本展では、エルサレムにあるイスラエル博物館から、印象派を中心にバルビゾン派、ポスト印象派やナビ派などの作品69点が来日。そのうちの59点が初来日です。1965年に開館したイスラエル博物館は、古代から現代までの50万点を超える作品を所蔵。なかでも印象派とポスト印象派のコレクションは、画家たちのピーク時の傑作を数多く取り揃えています。コローやドービニーからはじまり、モネ、ルノワール、セザンヌやファン・ゴッホ、ゴーガン、ボナールなど、会場に展示されているのは巨匠の作品ばかり。日本とイスラエルの外交関係樹立70周年を記念して開催されている展覧会ということで、展示内容はかなりゴージャスです。本展のタイトルは『印象派・光の系譜』。印象派の光と色彩が、ポスト印象派以降どのように受け継がれ変わっていったのか、展示を通して画家たちの光の系譜をたどれるようになっています。美しい…!モネの光それでは、展示作品のなかから3点ピックアップしてご紹介します。まずは、クロード・モネの《睡蓮の池》。展覧会のメインビジュアルにもなっている大変美しい作品です。描かれているのは、画家が愛していた庭の池。フランス・ジヴェルニーにあるモネ宅の裏庭には、睡蓮を栽培できるように改修した池がありました。モネは池の水面に映る空や木々、光の美しさに魅了され、後半生に「睡蓮」の連作を制作。本作品も、そのうちのひとつです。モネの睡蓮をさらに深く理解できるよう、本展では特別展示として日本国内にある睡蓮作品3点も見ることができます。ぜひ、イスラエルの作品と見比べて、楽しんでみてください。明るい!ファン・ゴッホの光次にご紹介するのは、フィンセント・ファン・ゴッホの作品《麦畑とポピー》。ファン・ゴッホは、初期のオランダ・ハーグ時代には暗い色調の絵が多かったのですが、パリで印象派の作品に出会ってから色彩が鮮やかに変化していきます。アルルに移り住んだファン・ゴッホが最初に激しい発作を起こし、自分の左耳を切り落としたのが1888年の12月。本作品は、恐らくそれより前の時期に描かれています。赤いポピーの色彩がパワフルで美しく、この絵を見ていると不思議と明るい気分になれます。画家も楽しい気分で描いていたのかな、と思わせるような元気の出る作品です。都会的!ユリィの光最後は、個人的に大好きな作品、レッサー・ユリィの《夜のポツダム広場》をご紹介します。描かれているのは、戦前のドイツ・ベルリンの中心地だったポツダム広場。傘をさした人たちの姿や近代的な建物が暗い色彩で表され、濡れたアスファルトには夜の光が反射しています。100年前の作品とは思えないほど、クールでステキな作品です。ユリィはユダヤ系ドイツ人画家。ベルリン分離派展などに出品し、1922年、60歳のときに開かれた大規模展覧会で名声を確立します。本作品は、ベルリン・ユダヤ人団体美術品コレクションに入り、1933年設立のユダヤ博物館に収蔵されますが、同館は1938年に強制閉館となり作品は没収されます。その後イスラエルに返還され、今はイスラエル博物館のコレクションとなっています。戦時中のドイツで本作品が生き残り、こうして日本で見られるというのも奇跡。この絵を見るために何度も美術館に足を運びたくなる、強く惹きつけられる作品です。どの作品も、写真ではほとんど魅力を伝えることができません。ぜひぜひ美術館で、本物をご覧になってみてください。『イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 ― モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン』展は1月16日まで。その後、大阪のあべのハルカス美術館に巡回します。Information会期:~ 2022年1月16日(日)※休館日: 月曜日*と年末年始の12月31日、2022年1月1日*ただし、12月27日と1月3日・1月10日は開館会場:三菱一号館美術館開館時間:10:00~18:00(最終入場時間 17:30)(祝日を除く金曜と会期最終週平日、第2水曜日は21:00まで)観覧料:一般¥1,900、大高生¥1,000、中学生以下無料※最新情報などの詳細は公式サイトをご覧ください。
2021年12月10日70代で絵を描きはじめ、80代で一躍スター画家となった女性の作品と生き方を紹介する展覧会、生誕160年記念『グランマ・モーゼス展―素敵な100年人生』が世田谷美術館ではじまりました。本展の公式サポーターに、タレントの結城アンナさんが就任。ご自身でも絵を描かれる結城さんに、展覧会の楽しみ方や女性の生き方について、お話をうかがいました。どんな展覧会?【女子的アートナビ】vol. 228本展では、グランマ・モーゼス(モーゼスおばあさん)と呼ばれ愛されているアメリカの国民的画家、アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス(1860-1961)の絵画や愛用品、資料などを展示。最初期の作品から100歳で描いた絶筆、さらに日本初来日作品も含めた約130点が紹介されています。グランマ・モーゼスは、ニューヨーク州の農家に生まれ、27歳で結婚。ヴァージニア州に移住し、農場を営みます。夫の死後、72歳のとき孫に贈るため刺繍絵をはじめますが、リウマチで続けられなくなり、絵筆をとります。やがて絵が評判となり、80歳で初個展を開催。アメリカだけでなく海外でも作品が展示され、大統領からも表彰されます。名声を得た後も農家の主婦として自然体で暮らし続け、101歳で亡くなりました。自然に囲まれた農村での暮らしを愛し、その風景や身近な出来事を描いたグランマ・モーゼスの作品は、素朴で温かく、優しさに満ちています。彼女のステキな生き方や作品の魅力について、公式サポーターの結城アンナさんに語っていただきました。結城アンナさん!モデル・タレントとして活躍されている結城さんは、スウェーデン生まれ。10代から日本で元祖ハーフモデルとして活動をはじめ、雑誌『anan』の草創期にも登場されています。俳優の岩城滉一さんと結婚し、出産されたあと30代で専業主婦となり、60代から芸能活動を再開。北欧スタイルを取り入れた暮らしをインスタなどで発信し、そのシンプルで自然体な生き方は世代を超えて支持されています。ネガティブなことが何ひとつない!――まず、展覧会をご覧になって、全体的な感想を教えていただけますか。結城さんつらいことがいっさい絵に出てこないのが、すごくステキです。農村での暮らしはいろいろ大変なことがあったと思いますけど、いっさい絵に出ていない。すごくポジティブ。見ていて私もハッピーになりました。ネガティブなことが何ひとつないのです。――特に印象に残った作品はありますか?結城さん全部印象に残りましたよ(笑)。でも、すごく好きなのは《美しき世界》という作品。あまり人物は描かれていない風景の絵で、早い朝なのか夕方なのか、空がピンク色になっているのです。それを見ていると、「神様ありがとう。こんな美しい自然をありがとう」という画家の祈りのような気持ちをすごく感じたのです。私もお散歩しているとき、特に朝の早い時間や太陽が沈むときの景色を見て、「神様ありがとう」と思うときがあります。その美しさを絵に表してくれたグランマ・モーゼスは、すばらしいなと思いました。――自然への感謝が絵に表れているのですね。結城さんすべての絵に感謝が出ていると思います。自然に感謝、身近にいる、がんばっている村の人たちに感謝。彼女はすべてに感謝しているということが作品から伝わります。幸せのヒントがもらえるかも…――グランマ・モーゼスは、テーブルなどにも絵を描いています。結城さんも、ご自宅の壁などに絵を描かれていますが、絵描きさんはいろいろなところに描きたくなるのでしょうか。結城さん私は画家ではないけれど、グランマ・モーゼスの気持ちはわかるわ。壁とかに絵を描くと、気持ちいいのよ。そういうことを、してみたくなるの。テーブルの絵などを見て、彼女に一歩だけ近づけたかな、と思いましたよ(笑)。――ananwebの読者は20~30代の若い方が多いのですが、その世代はこの展覧会をどんなふうに楽しめますか。結城さん絵というのは人それぞれ見方が違うので、楽しみ方をお伝えするのは難しいのですけど……。例えば、自分がたまにどこを向いているのか、自分はどういう人生を歩みたいのか、自分を見失ってしまうときがありますよね。そういうときに、このグランマ・モーゼスの作品を見ると、ちょっと安心するのではないかしら。彼女はシンプルに暮らし、一生懸命働いて、遊ぶときは家族で遊ぶ。自然も動物も大事にしている。きっと嫌なこともあったはずですが、「どうにかなるさ」と思って生きていたのだと思います。そんな生き方が表れた絵を見ると、幸せのヒントがもらえるかもしれない。グランマ・モーゼスは、映画館など何もないような自然のなかで、みんなでメープルシロップをつくったりして生活し、それを楽しんでいました。でも、何かつくらなければ食べていけないし、暮らしていけない。生と死が身近な自然のなかで生きているから、危険もある。クマが出るかもしれないし、嵐がきて作物がダメになるかもしれない。だから、みなで協力して暮らしているのです。みなで助け合って生きている様子が作品にあふれています。やりたいことは、やる!――グランマ・モーゼスが、80代でスター画家になったというのもすごいです。結城さん彼女は、子どものころからずっと働いていました。結婚前も、結婚してからも。働かないと、生きていけないのよ。別に絵を描いて稼ぐことに限らず、彼女はきっとなんでも自分ができることにトライしたのだと思います。すごくフレキシブル。自分でジャムを煮て売ったり、絵を描いて売ったり。もし絵がなければ、違うものをつくったのではないかと思います。――グランマ・モーゼスは、リウマチで刺繍ができなくなっても落ち込まず、頭を切り替えて絵を描きはじめています。前向きに生きる姿勢にも驚かされます。結城さん彼女は、落ち込むタイプではないですよ(笑)。以前、老人ホームの社長さんから聞いたお話なんですが、女性はすごく順応力があるらしいです。老人ホームに来て、あまりうれしくはないけれど、ここでがんばる!と女性は前を向く。男性は、しゅんとなってしまうようです。女性は、小さいときから「これは女の子だからダメ」といわれたりしているので、「じゃあしょうがないから、こちらにする」と切り替えることができる。状況の変化に慣れていると思います。グランマ・モーゼスも、困ったり悩んだりせず、先に進む人なのでしょうね。あと、想像力と勇気もある。人に絵を見せるのは勇気がいります。彼女は絵を描いて、それをドラッグストアに置いてみて、値段もつけています。誰かに買ってもらえるかもしれない、という想像ができたのです。――今を生きる女性も、見習える部分がありそうですね。結城さんそうね。あまりクヨクヨしないことよ。やりたいことは、やる!人が何をいっても、やったほうが勝ち。ダメだといわれても、やりたかったらやればいいのよ。もっと怖いのは、自分で自分にダメ出しすること。そんなことはやったらダメ。怒られるからとか、怖いから、失敗するからとか、そんなふうに考えるのは、もったいないわね。若いころは…怖いもの知らず(笑)――結城さんは10代からモデルとして活躍されていましたが、そのころはどんな女性でしたか?結城さんめちゃくちゃ女の子していました(笑)。好きなようにやっていたわ。今考えると、あちこちに迷惑をかけていたと思うのですけれど……。あまり人のいうことを聞かず、好きなようにしていました。だから、怖いもの知らず(笑)。でもね、これをやるんだと思ったら、もうやるしかないの。人が何をいっても関係ない!――すごくパワフルでいいですね。では今、若いころの自分にアドバイスするとしたら、どんなことでしょうか?結城さんもうちょっと勉強しておけばよかったわね。言葉のレッスンもしましたし、良い先生もいましたし、良い学校に行かせてもらいましたけど、自分ではあまり勉強しませんでしたね。やはり勉強は大事。若いころはタダで勉強できるし、脳が柔らかいから、いろいろなことが入っていくでしょ。今やろうと思っても、無理ですからね。――今後、挑戦してみたいことはありますか?結城さん新しいことは50歳のときにいろいろやりましたので、今は、今あることをもっと深く、ちゃんと時間をかけてやりたいと思います。暮らしでも絵でも、すべて磨きたいかなと思っています。――今後のご活躍も楽しみにしています。最後に、読者の方にメッセージをいただけますか。結城さんこの展覧会は、見終わるとすごくホッとします。だから今の時代に合っています。ハッピーで前向きな気持ちにもなりますし、来てよかった、見てよかった、と本当に思いました。グランマ・モーゼスの人生の話も、少し知ってから見るのもいいと思います。画家のフィルターを通して絵になるので、そのフィルターの裏には何があるのか、その部分も大事だと思います。――元気が出るお話を聞かせていただき、ありがとうございました。インタビューを終えて…仕事、恋愛、育児、介護などさまざまな経験をされてきた結城さん。困難なこともあったと思いますが、グランマ・モーゼスの絵と同じように、結城さんの言葉も常にハッピーでポジティブ。聞いているだけでパワーがわいてきました。インスタや書籍などで見られる結城さんのイラストも、ほっこり幸せな気分になるものばかり。まさにグランマ・モーゼスのようなステキな方でした。2月27日まで開催!生誕160年記念『グランマ・モーゼス展―素敵な100年人生』は2022年2月27日まで開かれています。ポジティブなパワーがあふれる展覧会、幸せのヒントを見つけに足を運んでみてはいかがでしょうか。Information会期:~2022年2月27日(日)※休館日: 月曜日(祝・休日の場合は開館、翌平日休館)、12/29(水)~1/3(月)※1月10日(月・祝)は開館、翌1月11日(火)は休館会場:世田谷美術館1階展示室開館時間:10:00~18:00(最終入場時間 17:30)観覧料:※日時指定制一般¥1,600、大高生¥800、小中生¥500、65歳以上¥1,300※最新情報などの詳細は公式サイトをご覧ください。
2021年12月03日生きているように見える金魚のアート作品を手がける現代美術家の深堀隆介さん。メディアでも数多く紹介され、その美しい作品を見たことがある人も多いと思います。そんな深堀作品約300点が、東京の美術館に集結。12月2日から上野の森美術館で、『深堀隆介展「金魚鉢、地球鉢。」』がはじまります。今回、展覧会を直前に控えた深堀さんに取材を実施。アトリエにお邪魔し、さまざまなお話を伺ってきました!金魚がいっぱい!アトリエで飼われている金魚たち【女子的アートナビ】vol. 226今回の取材で訪れたのは、横浜にある深堀さんのアトリエ「金魚養画場」。まさに名前のとおり、金魚を養って描く場所で、生きている金魚がいっぱいいます!深堀さんがご自身でエサをやったり水を替えたりしながら、大切に育てているそうです。アトリエでは、いくつか作品も見せていただきました。こちらの画像、「生きた金魚」にしか見えませんが、“絵画”なのです!詳しい技法は後ほど紹介しますが、はじめてご覧になった方はリアルさに驚かれると思います。私も、かなりの至近距離で見せていただいたのですが、本物の金魚が泳いでいるようにしか見えず、鳥肌が立ちました。特に尾鰭の繊細さには目を見張るばかり。衝撃レベルの美しさです。このような超絶技巧アートを手がけている深堀さんのご出身は、愛知県。1973年に生まれ、幼少期には日本一の金魚産地で知られる弥富市の金魚を見て育ったそうです。愛知県立芸術大学を卒業後、会社勤めを経てアーティストに転身。2000年から金魚をモチーフにしたアートを制作され、作品は国内だけでなく海外でも高く評価されています。今回、深堀さんに作品制作の詳細や展覧会への思いについて、語っていただきました。絵が動き出した…!深堀隆介さん。後ろに見えるのは、深堀さんが描いた平面の金魚作品。――深堀さんの作品は、本当に驚くほどリアルです。樹脂の上に少しずつ絵を描く独自の技法“2.5Dペインティング”(積層絵画)を使われているとのことですが、なぜ従来の絵画ではなく難しい技法にチャレンジされたのですか?深堀さん僕は平面でも描きますが、自分だけの技法が欲しいと思っていました。芸術の世界は群雄割拠しているので、自分の十八番のような芸がないと生き残れません。実は以前、樹脂工房で働いていたことがあるので、役に立つかもと思い、余っていた樹脂を器に半分入れて固め、その上にアクリル絵具で絵を描いてみたのです。でも絵具が樹脂に溶けて、失敗すると思っていました。一晩待ってみたところ、絵がきれいに残り、しかも水面ができていたのです。絵が自分の手を離れて水面の向こうに行ったようで、絵が動き出したような不思議な感じがしました。アトリエの様子。手前には制作中の作品があります。――水面ができたのがポイントなのですね?深堀さん平面であれば、金魚と自分が同じ世界にいるように感じます。でも水面ができたとたん、彼らは向こう側の違う世界に行くのです。金魚と僕の間に水面ができるのが重要なのです。子どものころから魚釣りが好きだったのですが、なぜ魚が陸にくると死ぬのか不思議でした。水面を越えてくるから死ぬのです。逆に、人間は水の中では暮らせません。水面は生と死の境界線。水面の向こうの世界にずっと興味と畏怖の念がありました。この技法があれば、水面ができる。この中で、自分の描いた金魚を泳がすことができるのです。死んだときだけ金魚を描く…!?――アトリエでたくさんの金魚を育てていらっしゃいますが、この仔たちが作品のモデルになっているのですか?深堀さん僕の作品は、よく写実といわれていますが、そうではありません。僕の品種、心の中にいる金魚、脳内にいる架空の金魚を描いているのです。「こんな金魚が生まれました」という感じ。最近、金魚を育てるブリーダーさんのなかに、僕の描いた金魚を品種改良でつくってみたいという人が出てきているんですよ。逆転現象です(笑)。絵が先で、そこから新しい金魚が生まれるかもしれません。――では、育てている金魚たちは見ているだけなのですか?深堀さん死んだときだけ描きます。彼らを埋める前に姿を見させていただいて、その特徴を描く。デスノートと名付け、今回の展覧会でも展示しますが、どんな仔だったかという記録を残しています。動いている金魚は、暮らしのなかで見て観察しているだけ。泳いでいる金魚を捕まえて描くのはかわいそうですよね。写真でもだめです。克明に描けるのは止まったときだから、死んだときしかないのです。僕が描くのはフォトリアリズムではなく、あくまでも空想の理想の金魚。だから背びれがなかったりするので、「こんな金魚いない」といわれたこともあります。全部、自分が今まで飼ってきた金魚の集合体なのです。そんなふうに空想できるのが、写真やコンピューターに唯一人間が対抗できる能力だと思います。――すごくリアルなのに、現実にはいない金魚。おもしろいです。深堀さん江戸の絵師たちも、想像しながら襖に虎や龍を描いていますよね。脳でビジョンが見えているから、あたかもそこに龍がいるように描けるのです。彼らの絵は泥臭くて、そんなにリアルではないかもしれないけど、龍が生き生きと魂をもっているように見える。それがおもしろいし、僕も魂が宿っているように描きたいのです。昔、展覧会をやったとき、僕の作品のことを詳しく知らないお客さんから、「餌をあげなくていいんですか。口をパクパクしていたわよ」といわれたことがあります(笑)。「あれは絵ですよ」といったら「動いていたじゃない」と。うれしかったですね。その人には動いて見えたのです。CGのようなものを使わなくても、人間には心の中で金魚を動かせる能力が備わっています。ほんの少しなら動いているように見える、僕のはそんな作品なのです。なぜ金魚を描き続ける?――深堀さんは、放置していた水槽で生き残っていた1匹の金魚の美しさに魅了され、金魚を描き始めたとのことで、この体験をご自身で「金魚救い」と呼ばれています。ずっと金魚だけを描き続けているのですか?深堀さん20年前に金魚を描き始めたときは、アーティストをやめようと悩んでいたころでした。祭りの金魚すくいでとってきて以来何年も一緒に過ごし、大きくなった金魚の背中を見ながら、この仔は自分みたいだなと思ったのです。僕の金魚は、この水槽で一生を過ごし、誰とも会えない。当時、自分は部屋にこもって、もんもんと悩んでいたのですが、僕はこの仔と一緒で、まだ誰とも会っていないのではないか、と思ったのです。この仔から「自分の代わりにお前が行け。外はもっと広いぞ。海があるんだぞ」といわれたような感じがして、描き出したのです。20年経って、ようやく描き続けている理由がわかりました。金魚のいる水面に自分の顔が映り、金魚の中に自分が見えたのです。だから、タイやヒラメではなく、金魚に執着して描き続けられたのです。今の自分を描けばいいのですから。自分自身を描くのは照れくさいので、金魚を使って自分を出しているのです。地球と金魚鉢は一緒!?――展覧会についてお尋ねします。『深堀隆介展「金魚鉢、地球鉢。」』というタイトル、地球鉢というのがユニークですが、どのような思いがこめられているのですか。深堀さんコロナだからこそ、この名前になりました。コロナのせいで人間は室内に押し込められ、外に出られなくなりました。小さな、目に見えないウイルスに翻弄されて、苦しめられている。金魚を飼っていて、一番大事なのは水替えです。1週間に最低1回は取り替えないと水槽の水がよどみ、金魚は病気になり、死んでしまいます。地球も水槽と一緒。地球の空気が汚れると、我々人間も免疫が弱まり病気になりやすくなるし、コロナのようなウイルスにも弱くなる。この地球を地球鉢と考えて、汚れた金魚鉢と同じ状況としたら、いろいろなことがわかってくると感じています。人間がこのまま地球を汚し続けたら、自分の子どもたちの世代はもっとひどくなる。僕はずっと金魚を描いてきたので、コロナと金魚もつながるところがあったのです。――私も金魚が好きなので展覧会が楽しみです。日本人は、なぜこんなに金魚が好きなのでしょうね。深堀さんなぜ金魚に惹かれるのかは、深く掘るといろいろあると思います。中国では、どんどん品種改良をして金魚を変えていくのですが、日本はひとつの品種を大切に守っています。日本の金魚は、細かいところまで神経が行き届き、鱗の並び方とか泳ぎ方にまで審査基準があり、すごいのです。でも、原点は金魚すくいかもしれませんね。あれは、ほかの国にはないらしいですよ。みんな、いい思い出になっているのだと思います。僕自身、最初に描いたのは金魚すくいの金魚でしたし、あの仔が僕の究極の金魚。僕を救ってくれましたから。今回のインスタレーションも、金魚すくいの屋台にしてあります。――展示も楽しそうです。いろいろお話いただき、ありがとうございました。深堀さんananの読者さんに、今日の話が少しでも響いたらうれしいです。インタビューを終えて…言葉の端々に金魚愛があふれていた深堀さん。常に水面下にいる金魚たちを慈しみ、その水槽を取り囲む人間社会、地球の未来にも問題意識をもちながら、作品制作をされているようです。深堀さんの熱い想いがこめられた作品は、日本だけでなく世界でも愛され、美しい金魚アートたちが地球のあちこちで泳いでいます。金魚に救われたという深堀さんが、アートの力で人の心を動かし、いつか地球の危機を救ってくれるかもしれません。会場では金魚飴やおみくじも登場!『深堀隆介展「金魚鉢、地球鉢。」』では、樹脂を使った積層絵画(2.5Dペインティング)作品のほか、平面の絵画やインスタレーション、映像作品も展示。さらに、ミュージアムショップでは深堀さん描き下ろしの「金魚飴」やオリジナル金魚おみくじも登場します。縁日みたいに楽しそうな展覧会、ぜひぜひ足を運んでみてくださいね!(アトリエ写真撮影・提供:フジテレビ)Information会期: 12月2日(木)~ 2022年1月31日(月)※休館日=12月31日(金)、1月1日(土)会場:上野の森美術館開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)観覧料:前売券【一般】¥1,400【高校・大学生】¥1,100【小・中学生】¥600深堀隆介描き下ろし 金魚飴付き前売券【一般】¥2,200【高校・大学生】¥1,900【小・中学生】¥1,400当日券【一般】¥1,600【高校・大学生】¥1,300【小・中学生】¥800
2021年11月28日東京国立近代美術館で、柳宗悦没後60年記念展『民藝の100年』が開かれています。日本各地に残されている優れた手仕事、名もなき職人さんたちがつくった生活道具に“美”を見いだした「民藝運動の父」柳宗悦。本展では、柳らが集めた陶磁器や木工など暮らしの道具や同時代資料を展示。驚くほどモダンでかわいい「モノ」も登場します!どんな展覧会?【女子的アートナビ】vol. 227本展では、柳らが蒐集した陶磁器や染織、木工、蓑などの生活道具や民画とともに、出版物、写真など総点数450点超の作品と資料を展示。「民藝運動の父」と呼ばれた宗教哲学者の柳宗悦(1889-1961)の没後60年という記念の年に、彼の活動を振り返りながら、時代とともに変化しつづけた民藝の試みを俯瞰的な視点からとらえなおします。日本の美しい「モノ」を守る!1925年、柳宗悦と陶芸家の濱田庄司(1894-1978)、河井寬次郎(1890-1966)は、民衆がふだん使っている生活道具に“美”を見いだし、「民藝(民衆的工芸)」と名付けます。柳らが民藝に注目したのは、工業化が進み、大量生産されるモノが出回りはじめた時代。職人によって生み出された昔ながらの美しい「モノ」が失われていくことに憂慮し、日本の伝統的な手仕事を維持し、文化を守るための「民藝運動」を進めていきます。具体的に、彼らはどんな活動をしたのでしょう?まず、民藝品を集めることから開始。日本各地を旅し、旧家や朝市などを訪れてさまざまな民藝を探し、蒐集していきます。さらに、欧米にも行き、イギリスでウィンザーチェアなどを買い付け、海外の生活スタイルや椅子文化を日本で紹介。東洋と西洋を比較し、世界の工芸やデザインの流れも見ながら、日本各地の民藝を発見していきます。雑誌がおしゃれすぎ!柳らは、集めた民藝を雑誌や展覧会で広めていきます。1931年には、民藝運動の機関誌として雑誌『工藝』を創刊。写真や記事で、民藝の美などを紹介しています。表紙には織物や漆絵が使われ、用紙は各地の手すき和紙を使用。紙や布がテーマとなっている号では、実物が貼り込まれています。会場に展示されている雑誌は、表紙デザインがすごくおしゃれ。装幀や小間絵は、染色家の芹沢銈介や陶芸家の河井寬次郎など民藝の同人が担当し、素材も作り手もかなり贅沢です。1936年には、日本民藝館が完成。集められた作品を展示紹介し、さらに日本各地の作り手と協力して新しい民藝品を売る店も開きます。日本の大事な手作り文化を保存、紹介するだけでなく、新しい民藝品を流通させるという点も民藝運動の大切な活動のひとつでした。鉄瓶も藁沓もかわいい!それでは、展示品のなかから、驚くほどモダンでかわいい民藝を2点ご紹介。ひとつは、展覧会のメインビジュアルにも使われている《羽広鉄瓶》。山形のものですが、このような鉄瓶は寒い地域でお湯を沸かすときに使われていました。持ち手もフォルムもとってもキュート。羽のように広がる部分は、熱が伝わりやすくするための形であり、使いやすさが重視されたデザインです。もうひとつは、《藁沓》。雪の上を歩くためのものです。豪雪地帯の農村で、農作物のできない冬に副業として制作し、販売していました。米粒をとった稲わらを使い、手で編んでいます。素朴でかわいく、とても暖かそうです。手元に残った稲わらを使い、日用品として循環させていく生活はエコライフそのもの。当時のような暮らし方を見習えば、持続可能な社会が実現できそうです。本展のさまざまな民藝や、その歴史に触れることで、今のライフスタイルについても新たな気づきを得られそうです。展覧会は2022年2月13日まで開催。Information展覧会名:柳宗悦没後60年記念展『民藝の100年』会期: ~2022年2月13日(日)※会期中一部展示替えあり休館日:月曜日[ただし、2022年1月10日(月・祝)は開館]、年末年始[12月28日(火)~ 2022年1月1日(土・祝)]、1月11日(火)会場:東京国立近代美術館開館時間:10:00~17:00(金・土曜日は20:00まで) *入館は閉館の30分前まで観覧料:一般¥1,800、大学生¥1,200、高校生¥700、中学生以下無料問い合わせ先:050-5541-8600(ハローダイヤル)※最新情報などの詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。
2021年11月28日数年前から続く縄文ブーム。火焔土器やハート形のかわいい土偶など、縄文時代につくられた造形物の美しさに魅了されている人も多いと思います。現在、両国の江戸東京博物館で開催中の特別展『縄文2021―東京に生きた縄文人―』では、東京エリアの縄文人にフォーカス。遺跡から見つかった道具類や復元模型などの展示を通し、縄文人たちのリアルな暮らしに迫っています。圧巻の“東京産”土偶100点もご紹介!縄文人の道具がすごい!【女子的アートナビ】vol. 225この展覧会では、1万年以上続いた縄文時代に、東京の縄文人たちがどんな暮らしをしていたのか、最新の調査結果をもとに、多くの出土品や模型などを用いて紹介しています。まず第1章「東京の縄文遺跡発掘史」では、3800か所以上もある都内の縄文遺跡より、大森貝塚をはじめ著名な7つの遺跡から発掘された土器などが展示されています。続く第2章のタイトルは「縄文時代の東京を考える」。お墓や精緻な土器、さまざまな道具類を通して、東京の縄文時代を紹介しています。ここでの見どころは、縄文時代のキッチン道具である「植物加工具」。石皿と磨石を使って、縄文人たちはクルミやクリなどの木の実をすりつぶし、蒸したり焼いたりしてパン状にして食べていたそうです。石皿は、使いすぎて真ん中がへこんだり、割れてしまったりしています。クルミパンを食べる東京の縄文人……彼らがどんな生活をしていたのか、道具類を見ながら考えてみるのも楽しいです。縄文人ネットワークがすごい!縄文人たちの交流がわかる展示「ヒスイロードとコハク」も見どころのひとつ。美しく希少価値のあるヒスイには、縄文人も魅了され、ステイタスシンボルとしても使われていたそうです。日本国内で唯一ヒスイがとれるのが、新潟県の糸魚川。そのヒスイが、各地の遺跡から発掘されているため、日本全国に出回っていたことがわかります。都内でも70点以上が出土。糸魚川産のヒスイが、長野や山梨を通る「ヒスイロード」で関東に入ってきたようです。代わりに関東からは、千葉産のコハクや海産物が山梨や長野に運ばれていたとのこと。モノが流通し、当時の縄文人ネットワークが広範囲に広がっていたことがわかります。土偶100点がすごい!第3章「縄文人の暮らし」では、縄文時代のムラの様子を再現。縄文人が舟をこいでいたり、土器をつくっていたり、あるいは埋葬している人たちもいて、当時の暮らしぶりがよくわかります。集落のモデルとなったのは、縄文時代中期の多摩ニュータウンNo.107遺跡です。ムラは平坦な場所につくられ、日当たりも水はけもよさそう。近くには川があって、移動にも便利。縄文人たちにとっても、やはり暮らしやすい土地が人気で、そんな場所に人が集まりムラになったようです。この章では、東京産の土偶100点も展示されています。ずらりと並ぶ姿は圧巻!祭祀や安産祈願など、土偶には祈りや願いが込められていたと考えられています。太古の東京で暮らしていた縄文人たちが、どんな気持ちでこの土偶をつくっていたのか。ぜひ、いろいろ想像しながらご覧になってみてください。特別展『縄文2021―東京に生きた縄文人―』は12月5日まで開催。Information会期: ~12月5日(日)※休館日は毎週月曜日会場:東京都江戸東京博物館1階特別展示室開館時間:午前9時30分~午後5時30分(土曜日は ~午後7時30分)※入館は閉館の30分前まで観覧料:特別展専用券一般¥1,300、大学生(専修・各種専門学校含む)¥ 1,040、小学生、中学生・高校生・65歳以上¥650※日時指定予約を推奨しています。最新情報などの詳細は公式サイトをご覧ください。
2021年11月10日英国のシャーロット王妃が愛したアートが集まる展覧会が、東京・目黒にある東京都庭園美術館で開かれています。美しい植物の絵やウェッジウッドの陶磁器、さらに激動の時代を生きた王妃の人生もご紹介!どんな展覧会?【女子的アートナビ】vol. 224『キューガーデン英国王室が愛した花々シャーロット王妃とボタニカルアート』では、キューガーデン所蔵の貴重なボタニカルアートコレクション約100点のほか、王妃が愛したウェッジウッド社の陶磁器なども展示。美しい植物画を見ながら、17~18世紀当時の歴史や時代背景なども知ることができる展覧会です。キューガーデンとは、ユネスコ世界遺産に登録されている英国王立植物園のこと。ロンドン南西部に位置し、3万種以上の植物と、約1万4000本の樹木が植えられている世界を代表する植物園です。キュー王立植物園が誕生したのは1759年。そもそもヨーロッパの植物園は、医療のための薬草園としてスタートし、それが植物園に変わっていきました。17~18世紀には、イギリスやフランスなどの権力をもつ君主が植物学や博物学を重視。世界各地の珍しい植物を記録するため植物画家が起用され、ボタニカルアートも発展していきました。この展覧会では、18~19世紀に制作されたボタニカルアートの原画や手彩色銅版画をたっぷり楽しめます。花を愛したシャーロット王妃ところで、本展のタイトルに出てくるシャーロット王妃(1744-1818)とは、どんな人なのでしょう?王妃の夫は、イギリス国王ジョージ3世(1738-1820)。1760年、父王が亡くなり即位したジョージ3世は、信頼する部下にお妃探しを命じ、見つけ出されたのがドイツのメクレンブルク=シュトレリッツ公女、シャーロットでした。二人は結婚当日に初めて会ったといわれていますが、相性はとてもよかったようです。ともに音楽好きで、一緒に音楽を奏でたり、演奏会に出かけたりしていました。また、シャーロットは植物を心から愛し、娘たちと一緒にボタニカルアートを習ったり、庭園で国王とともに外国の植物を育てたりして、楽しんでいました。さらに、王妃は1759年に創業したウェッジウッド社の陶磁器に注目。国王も関心をもち、ウェッジウッドは王室御用達となりました。展覧会の会場では、王妃お気に入りのクイーンズウェアも見ることができます。スキャンダルに悩まされ…ジョージ3世は浮気もせず家庭を大事にし、夫妻は15人の子どもにも恵まれ、シャーロットは幸せな結婚生活を送っていました。ですが、幸福そうに見える家庭にも悩みはあります。シャーロットの場合、まず成長した子どもたちにスキャンダルが頻発。さまざまな事件や問題が発生します。世継ぎとなる長男も愛人問題などでトラブルを抱え、国王と息子の関係も悪くなっていきます。さらに夫が精神疾患を発症。たびたび発作を起こし、正気を失うこともあったようです。シャーロットは1818年に74歳で死去。その後、1820年にジョージ3世が81歳で亡くなりました。アメリカ独立戦争やフランス革命など激動の時代に君臨した夫を支え、キューガーデンや植物画の発展の立役者となったシャーロット王妃。庭園に咲く花々が、彼女を支えていたのかもしれません。おすすめのボタニカルアートは?最後に、ボタニカルアートを長年学んでいる筆者が特におすすめしたい作品をご紹介します!まずは、シャーロット王妃や王妃に植物画を教えたキューガーデン最初の王室付き画家、フランツ・アンドレアス・バウアーの作品群。ゴクラクチョウカ科の植物の姿が非常に美しく鮮やかに描かれています。豪華な植物図鑑『フローラの神殿』の手彩色銅版画も必見作のひとつ。華やかに描かれた植物と、少し不気味な背景の絶妙なバランスが魅力的です。女性の植物画家が描いた作品群も、ぜひご覧ください。18世紀、裕福なイギリスの家庭では、女性たちが教養として植物学や水彩画を学んでいました。そのなかで植物画家となっていった女性たちの作品を、会場で見ることができます。シャーロット王妃の娘、マチルダの作品も展示されています。ちなみに、一部のボタニカルアート作品には写真がついています。これは、美術館と同じ敷地内にある庭園や、隣接する国立科学博物館附属自然教育園で実際に見られる植物の写真です。展示を見たあと、庭園や自然教育園を散歩して同じ植物を探してみるのも楽しいですよ。展覧会は11月28日まで開催。※本記事の写真は主催者の許可を得て撮影しています。Information会期: ~11月28日(日)※休館日は毎週月曜日会場:東京都庭園美術館(本館+新館)開館時間:10:00–18:00(入館は閉館の30分前まで)観覧料:一般¥1,400、大学生(専修・各種専門学校含む)¥ 1,120、中学生・高校生¥ 700、65歳以上¥ 700*小学生以下および都内在住在学の中学生は無料※日時指定予約制です。詳細は公式サイトをご覧ください。※高校生以下無料(日時指定予約が必要)問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)※最新情報は、展覧会公式サイトをご確認ください。
2021年10月16日東京都美術館で『ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント』が開かれています。本展では、オランダのクレラー=ミュラー美術館のコレクションから選りすぐりの作品が来日。さらにファン・ゴッホ美術館からの特別出品作もあり、あわせて52点のゴッホ作品が展示されています。16年ぶりの来日となる糸杉の傑作や、日本美術から影響を受けた美しい作品《草地》もご紹介!ゴッホをメジャーにした女性、ヘレーネ【女子的アートナビ】vol. 223本展のタイトル『ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント』にあるフィンセントとは、画家フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)のこと。では、ヘレーネとはいったい誰でしょう?ヘレーネ・クレラー=ミュラー(1869-1939)は、ゴッホ作品における世界最大の個人収集家で、クレラー=ミュラー美術館の初代館長をつとめた女性です。まだ世の中であまり知られていなかったゴッホの作品を1908年から集めはじめ、90点以上の油彩画と約180点の素描・版画を収集しました。東京都美術館学芸員の大橋菜都子さんによると、ゴッホの作品に高い精神性を感じたヘレーネは、自ら楽しむためではなく、同時代の人々や後世の人にも芸術を伝えていくというビジョンをもって作品を購入。収集するだけでなく、公開・継承することでゴッホの評価形成に大きな役割を果たしたそうです。日本の芸術家に憧れて…では、いくつか展示作品をピックアップしてご紹介していきます。まずは、日本が大好きだったゴッホが、日本美術などからインスピレーションを受けた作品《草地》。春の花が咲く草地を描いた明るく美しい油彩画です。ゴッホは、「ただ一本の草の芽を研究する」日本の芸術家たちに憧れていました。シンプルなものに本質を見いだす日本美術に触れたことで、自身も素朴な草地の魅力を見つけ、作品に昇華させました。研究熱心だったゴッホは、印象派やパリの前衛芸術なども調べていたそうです。結婚25周年のプレゼント《悲しむ老人(「永遠の門にて」)》は、ゴッホが昔描いた自身の版画をもとにした油彩画です。両拳で顔を覆い悲しみに暮れる人の姿は、胸に迫るものがあります。この作品は、ヘレーネの夫アントンが妻に内緒で購入。結婚25周年のとき、サプライズでプレゼントしました。ヘレーネの喜びの手紙には「驚いて気を失いそうになった」と書いてあったそうです。糸杉の傑作!最後にご紹介するのは、糸杉の傑作《夜のプロヴァンスの田舎道》。ゴッホは糸杉をモチーフにした絵をいくつか描いていますが、本作品はそのなかでも傑作のひとつです。死を象徴するともいわれる糸杉ですが、まっすぐ天に伸びる木の姿から強いエネルギーも感じられます。現実の風景だけでなく、記憶と想像力を駆使して描かれたもので、南仏滞在のおそらく最後に描かれた集大成です。この作品を描いた約2か月後、ゴッホはピストル自殺をはかり亡くなりました。生前はほとんど作品が売れなかったゴッホですが、死後に弟のテオや、その妻ヨー、さらにヘレーネのような収集家たちが大事に管理し、公開してくれたおかげで遠く離れた日本でも彼の作品を楽しむことができます。ゴッホが現代まで愛される基盤をつくった立役者のひとり、ヘレーネにも思いをはせながら、ゴッホ作品を楽しんでみてはいかがでしょう。Information会期: ~12月12日(日)※休室日月曜日、ただし、9月27日(月)、11月8日(月)、11月22日(月)、11月29日(月)は開室会場:東京都美術館企画展示室開室時間: 9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)観覧料:一般¥2,000 / 大学生・専門学校生 ¥1,300 / 65歳以上 ¥1,200※日時指定予約制です。詳細は公式サイトをご覧ください。※高校生以下無料(日時指定予約が必要)問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)※最新情報は、展覧会公式サイトをご確認ください。
2021年09月29日東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで『ポーラ美術館コレクション展甘美なるフランス』が開かれています。本展では、日本屈指の人気を誇る箱根のポーラ美術館から、選りすぐりのフランス絵画74点が集結。内覧会で取材した会場の様子をレポートします!ポーラ美術館とは?【女子的アートナビ】vol. 222箱根の国立公園内に位置するポーラ美術館は、自然に囲まれた美しい環境のなかで本格アートを楽しめる人気の美術館。フランス印象派をはじめとした西洋絵画を中心に、現代絵画や化粧道具など約10,000点もの作品を所蔵しています。今回の展覧会では、ポーラ美術館のコレクションより印象派からエコール・ド・パリの時代(19世紀後半から20世紀初頭)にフランスで活躍した人気画家たちの作品が集結。モネ、ルノワール、ピカソ、シャガールなど巨匠の名画を一気に見ることができる貴重な機会です。「甘美なるフランス」の意味は?展覧会のタイトルにある「甘美なるフランス」には、どんな意味が込められているのでしょう?Bunkamura ザ・ミュージアム上席学芸員の宮澤政男さんによると、「甘美なるフランス」という言葉は11世紀後半、フランス最古の叙事詩に出てくる表現で、その後ルイ14世の時代にも使われたもので、要はフランス人が自国を「良い国・ステキな国」と自慢する言葉であるとのこと。19世紀になると、整備されて美しくなったパリには多くの画家が集まり、芸術作品も次々と誕生。芸術文化だけでなく、女性の化粧道具なども発展し、ファッションの中心地にもなっていきます。「甘美なるフランス」という言葉で、さまざまな作品がひとつの考え方につながることから、本展のタイトルとなったそうです。アートに合わせた化粧道具も必見!この展覧会の見どころは、人気画家の描いた豪華な名画の数々。例えば、メインビジュアルにもなっているルノワールの《レースの帽子の少女》は、頬を赤く染めた少女の甘美な表情が魅力的で、白い帽子とドレスの描写もとても美しいです。さらに注目したいのは、絵画の横に飾られている化粧道具。ポーラ美術館では、古今東西の化粧道具を収集しているので、会場にも絵の雰囲気に合った美しい作品が展示されています。化粧品を扱うポーラならではの化粧道具コレクションも、ぜひじっくりご覧ください。甘美な雰囲気を味わって!本展では、「甘美なるフランス」の雰囲気を味わえるよう、会場デザインも工夫されています。大邸宅に絵が飾られているイメージでゴージャスな壁紙が使用され、そのほかの壁面も優しいパステルカラーで構成。この空間にいるだけで、フランスの優雅な雰囲気を体感できます。なお、展覧会の会期中、Bunkamura館内のレストラン「ドゥ マゴ パリ」や、近くの「ラデュレ 渋谷松濤店」などでコラボレーション企画も実施されています。ぜひ、食やアートでフランスの空気を味わってみてください。Information会期: ~11月23日(火・祝)※9/28(火)、10/26(火)は休館会場:Bunkamura ザ・ミュージアム開館時間: 10:00-18:00(入館は17:30まで)毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)※金・土の夜間開館につきましては、状況により変更になる可能性もあります。観覧料:一般¥1,700、大学生・高校生¥ 1,000、中学・小学生¥ 700※最新情報は、美術館のウェブサイトをご確認ください。
2021年09月27日男子からも女子からも支持される「愛され女子」。できることなら愛され女子になりたい!と誰もが思っているのではないでしょうか。愛され女子になるためには、まず愛され女子の特徴を知ることからスタート!男子目線で見た愛され女子の魅力をチェックしていきましょう。■ 長所探しが得意な「ほめ上手」「会社で人気の先輩は、とにかく周りに目が届く人。長所を見つけてほめるのが上手く、仕事への士気を高めてくれます。そのおかげか、先輩の受け持つチームはいつも高い成果を上げているみたいです。俺は同じチームではないのですが、『話し方がわかりやすくていいと思う!』なんてほめられ、違うチームなのにうれしくなりました。チームの全員が先輩を慕っていて、本気でアタックを試みている同僚も数人いるとか」(25歳男性/メーカー)ほめ上手な女子はどこでも大人気です。愛される秘訣は、他人の長所を見つけるのが上手く、なおかつ自然にほめられること。一緒にいると頑張る気持ちを奮い立たせてもらえるので、周りの人に好かれやすいのです。周りの人をポジティブに評価するクセをつけて、しっかりその気持ちを伝えるようにするといいかもしれませんよ。■ とにかく素直で愛嬌たっぷり「サークルの愛され女子は、とにかく感情表現が豊か!ハッピーな気持ちをそのまま表現してくれて、一緒にいるとこちらまで楽しい気持ちになります。喜んでもらえるからとついお土産やプレゼントをあげちゃう、なんて声も聞きます。感謝を自然に伝えられるところも愛されポイントです」(22歳男性/学生)小さな幸せをきちんと表現できる愛され女子。その様子を見ていると周りまで元気をもらえます。喜んでいる顔が浮かぶと、何かと手を差し伸べたくなる男子も多いよう。まずは感謝の気持ちをきちんと表現することから始めてみてはいかがでしょうか。■ サービス精神旺盛なおちゃめ女子「近くにいる愛され女子は、茶目っ気があり親しみやすい子。楽しいことを共有するのが好きで、楽しい企画を考えたり、プッと笑えるようなことをしたりと、サービス精神旺盛!場の空気を読むことに長けていて、笑わせることはあっても不快にさせることはほとんどありません。仕事でブルーな気分のときにはなんとなく会いたくなってしまいます」(26歳男性/公務員)楽しいことが大好きなおちゃめ女子のポイントは、親しみやすさ。隙のある親しみやすい女子ほどモテるものです。とはいえ、ユーモアセンスはすぐに身につけられるものではありません。まずは毎日を笑顔で楽しく過ごすことから始めてみるのがいいかもしれませんね。■ 目指すは明るく前向きな愛され女子愛され女子になるためには、周りの人を大切に思う気持ちが大切です。その気持ちが自然にあふれると、言動にも反映され、周りの人から愛される女子になるはず。まずは、毎日を笑顔でポジティブに過ごすことを心がけてみることが第一関門です。自然と周りに人の集まるような、素敵な愛され女子を目指してみてくださいね。(愛カツ編集部)presented by愛カツ ()
2021年09月01日東京・上野の東京国立博物館で特別展『聖徳太子と法隆寺』が開かれています。日本の紙幣にもっとも多く使われ、生前から現在にいたるまで1400年以上も尊敬され続けてきた偉人、聖徳太子。奈良・法隆寺からおでましになった太子の珍しいお像や貴重な国宝をご紹介します。どんな展覧会?【女子的アートナビ】vol. 217聖徳太子1400年遠忌記念 特別展『聖徳太子と法隆寺』では、法隆寺に伝わる太子の肖像や遺品とされる宝物、奈良からめったに出ることのない国宝の仏像など、貴重な文化財を展示。厳かな空間で聖徳太子1400年の歴史を感じることができます。聖徳太子とは、どんなお方だったのでしょう?謎の部分も多いようですが、一般的な説によると太子は574年に用明天皇の子として生まれ、仏教を深く学び、推古天皇の時代に政治を補佐。冠位十二階や憲法十七条を制定して日本の仕組みを整え、遣隋使の派遣、法隆寺の創建などにより仏教を広めるなど、文化的な基盤も築いた偉人といわれています。生前から人々に敬われていた太子は、622年に薨去されたあと崇拝の対象となっていきます。平安時代に入ると、太子は観音菩薩の生まれ変わりとされ、そのお姿が絵画や彫刻で表されます。その後も「太子信仰」はさまざまな形で現代まで受け継がれています。奈良にいても見られない…必見の秘宝会場では、聖徳太子のお姿を表した作品がたくさん展示されています。例えば《聖徳太子立像(二歳像)》は、太子がかぞえで二歳のとき、お釈迦さまのご命日に東方を向いて合掌され「南無仏」と唱えた…という伝説にちなんでつくられたお像です。太子のお像のなかでも代表作といわれるのが、聖徳太子の500年遠忌につくられた国宝《聖徳太子および侍者像》。ふだん奈良にいてもなかなか拝観することのできない秘仏で、法隆寺以外で公開されるのは27年ぶりという貴重な作品です。聖徳太子は威厳に満ちたお姿で表されていますが、左右に配されている侍者たちの顔はちょっとユーモラスでほのぼのとした雰囲気。この機会に、近くでじっくりと拝みたい作品です。神秘的なお姿が美しい…!もう一点、見逃せないのが飛鳥時代を代表する仏像で、国宝にも指定されている《薬師如来坐像》。こちらは単体で展示されているので、正面だけでなく後ろ姿も含めて全面を見ることができます。目を見開き、口元には微笑みを浮かべ、お顔立ちはとても神秘的。裳懸座 ( もかけざ ) という台座にかかる着衣の文様が鮮やかで、飛鳥時代の様式美を感じられるお像です。日本を見つめ直す奈良に行ってお寺巡りをしていても、特別公開日などでない限り、秘宝とされる仏像にはなかなかお目にかかることができません。今回の展覧会のように、寺外公開として博物館などにおでましになったときが拝観する絶好のチャンスです。1400年以上も人々に敬われ、心のよりどころとなっていた聖徳太子。その美の世界に触れることで、日本の文化やこの国のあり方について、改めて見つめ直すきっかけとなるかもしれません。特別展『聖徳太子と法隆寺』は9月5日まで開催。取材・文:田代わこInformation会期: ~9月5日(日)会期中展示替えあり前期:2021年7月13日(火)~8月9日(月・休)後期:2021年8月11日(水)~9月5日(日)※休館日:月曜日ただし、8月9日(月・休)は開館し、8月10日(火)は本展のみ休館会場:東京国立博物館平成館(上野公園)開館時間: 9:30~17:00※いずれも入館は閉館の30分前まで観覧料:日時指定予約による事前予約制【前売日時指定券】一般 ¥2,100、大学生¥ 1,300、高校生¥ 900【当日券】一般¥ 2,200、大学生¥1,400、高校生¥ 1,000※中学生以下無料※最新情報は、美術館のウェブサイトをご確認ください。
2021年08月08日東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで『マン・レイと女性たち』が開かれています。写真や絵画、オブジェなど、さまざまなジャンルで優れた作品を残した芸術家マン・レイ。彼の“ミューズ”となった女性たちの作品とともに、作家の生涯をご紹介します!どんな展覧会?【女子的アートナビ】vol. 219『マン・レイと女性たち』では、20世紀を代表する芸術家マン・レイ(1890-1976)の写真を中心に、絵画やオブジェ、ジュエリーなど約250点を展示。マン・レイのモデル兼恋人にもなった美しい女性たちに焦点をあて、その当時のアートやファッションのスタイルにも触れながら、さまざまな作品が紹介されています。人気モデルと熱愛!アメリカ・フィラデルフィア生まれのマン・レイは、ニューヨークの美術学校で学んだ後、芸術活動を開始。油彩画を展覧会に出品したり個展を開いたりしますが、作品はなかなか評価されません。1915年にフランス出身の芸術家、マルセル・デュシャンと知り合い、共同プロジェクトにも参画。その後マン・レイは渡仏し、パリでシュルレアリスム(超現実主義)の前衛作家たちと親交を深め、自らもシュルレアリストとして創作活動にはげみます。また、記録写真などを撮るようになり、写真焼付作業中にカメラを使わず画像を焼き付ける技法を発見。「レイヨグラフ」と名付け、さまざまな写真を制作します。1921年末、パリのカフェで人気モデルのキキ(本名:アリス・プラン)と出会い、即恋に落ちて同棲を開始。キキは藤田嗣治やキスリングなど当時の芸術家たちのモデルとして活躍していた美しい女性で、マン・レイは彼女の肖像写真や裸体写真を撮り続けます。代表作《アングルのヴァイオリン》のモデルもキキ。女性の魅力を最大限に引き出すマン・レイの写真は評判となり、キキの名声も高まります。ただ、奔放で移り気だった彼女とは喧嘩することも多く、1929年、二人は同棲を解消しました。再びモデルと交際…!キキと別れて数か月後、マン・レイはリー・ミラーと出会います。リーは『ヴォーグ』誌のモデルをしたこともある知的で美しいアメリカ人女性。写真家を目指していた彼女は、マン・レイの助手兼モデルとなり恋人にもなります。リーは「ソラリゼーション」という露光過度の状態を効果として使う写真技法を発見。マン・レイも、この技法で多くの作品を生み出します。魅力的なリーは男性にモテモテで、ジャン・コクトーの映画にも出演。またもやマン・レイは嫉妬にかられます。さらにリーは別の資産家男性に惹かれはじめ、結局二人は1931年に別れました。スキャンダルを巻き起こした衝撃ヌードこのころ、マン・レイは女性芸術家たちの裸体写真も多く撮影しています。そのひとつが、スイス人画家メレット・オッペンハイムを撮った作品《エロティックにヴェールをまとう(メレット・オッペンハイム)》。版画インクでモデルの手と腕を黒く汚して撮影された写真は官能的で、当時スキャンダルを巻き起こします。展覧会の監修者、巖谷國士さんは同作品について図録で次のように述べています。「スキャンダルを呼んだほど鮮烈な連作ですが、ポルノグラフィー的な要素はなく、冷たく硬い機械に対比された裸体像に、マン・レイ特有のクールで客観的なエロティシズムがあらわれています」会場には、ほかにもメレットの裸体写真がいくつか展示されています。どれも嫌悪感をもよおすいやらしさはなく、クールで幻想的な美しさを感じる作品ばかり。マン・レイに撮ってもらいたいと思う女性も多かったのではないかと思います。実際、マン・レイは画家としての仕事よりも肖像写真の依頼のほうが多く、ファッション写真も手がけるようになります。展示室では、モード界の著名人、ココ・シャネルの肖像写真やシャネルのドレスなども見ることができます。ダンサーと交際、妻となる女性との出会い1934年、マン・レイはパリのダンスホールで若く美しいダンサーのアディ・フィドランと知り合います。明るく快活で野心のないアディとの交際は順調だったようですが、戦争が二人を引き裂きます。1940年6月、パリにとどまる選択をしたアディを残し、マン・レイは船でニューヨークに脱出。しかしアディと離れてわずか数か月後、50歳のマン・レイは、ハリウッドで29歳のジュリエット・ブラウナーと出会い、恋に落ちます。その後二人は結婚。ジュリエットとは最期まで添い遂げることになります。晩年は再びパリに渡り、写真家や文筆家、画家として活動。最後まで絵のほうは売れませんでしたが、写真家としてヴェネチア・ビエンナーレで金獅子賞を受賞。さらにフランス政府から芸術功労賞を受けるなど、高く評価されました。最後はパリで死去。享年86歳でした。女性が見たくなるアートマン・レイは恋人だけでなく、女性芸術家やファッション・モード界の女性、映画女優など多くの女性の姿を作品に残しました。モノクロで撮られたヌードや肖像写真はどれもクールビューティで、女性が見たくなるものばかり。オブジェやジュエリーもあり、展示室にいると当時のパリにいる気分になれます。20世紀アートの世界を存分に味わえる『マン・レイと女性たち』は9月6日まで開催。取材・文:田代わこInformation会期: ~9月6日(月)※全日程日時予約制会場:Bunkamura ザ・ミュージアム開館時間: 10:00-18:00(入館は17:30まで)毎週金・土曜日は20:00まで(入館は19:30まで)観覧料:一般¥1,700、大学生・高校生¥ 800、中学・小学生¥ 500※最新情報は、美術館のウェブサイトをご確認ください。
2021年08月06日六本木の東京ミッドタウン・ホールで特別展『北斎づくし』がはじまりました。この展覧会でアンバサダーを務める町田啓太さんが取材会に登場!展示の感想や見どころ、北斎にちなんだ楽しいエピソードなども語りました。町田啓太さんがアンバサダー!【女子的アートナビ】vol. 220生誕260年記念企画 特別展『北斎づくし』では、葛飾北斎(1760-1849)の代表作である『北斎漫画』、「冨嶽三十六景」、『富嶽百景』の全ページ・全点・全図が集結。北斎漫画コレクター・浦上満さんが所蔵する世界最高水準の北斎コレクションが一挙に公開されるなど、いまだかつてない大規模なスケールで開かれる展覧会です。また、展示方法も豪華です。フランス・パリを拠点に活躍する建築家、田根剛さんが展示空間を設計し、会場グラフィックはアートディレクターの祖父江慎さんが担当。展示解説は、日本美術に詳しいライターの橋本麻里さんが手がけ、北斎の魅力を存分に楽しめる空間になっています。このゴージャスな展覧会でアンバサダーと音声ガイドを務めているのが、町田啓太さんです!話題のドラマや映画に登場され、いつも眼福なお姿を見せてくださる町田さんが、北斎ブルーの鮮やかな衣装で合同取材会と記者発表会に登場。感染対策のため取材記者のやり取りはリモート経由でしたが、当日撮影された見目麗しい写真とともに、町田さんのお話をご紹介します!北斎さんにワクワク!――アンバサダー就任のお話を聞いたとき、どう思われましたか?町田さん誰もが知っている葛飾北斎さんの特別展でアンバサダーになれて、しかも音声ガイドにも携われるとのことで、うれしかったです。もともと展覧会が好きですし、しかも北斎さんなので、すごくワクワクして、どんな世界観を僕自身が体験できるのが楽しみだと思い、即「ありがとうございました!」という感じで引き受けさせていただきました。入った瞬間から圧倒!――展示をご覧になったご感想は?町田さんもう、受け止めきれないぐらい本当に圧巻でした。僕自身、勉強不足だったこともありますが、北斎さんといえば「冨嶽三十六景」、『富嶽百景』の富士山や波というイメージだったのですが、この展示を見ると、作品に描かれている人物たちも魅力的なのです。例えば富士山を見ている人々なども描かれているのですが、その人たちと同じような気分になりながら見られる展示です。また、会場のつくりが本当にすばらしいです。まさに、北斎づくし。入った瞬間から圧倒されます。北斎のダイナミックさ、大胆さ、繊細さも垣間見えて、どんな方なのかと想像が膨らみました。さらにすごいなと思ったのが、展示物の数。北斎が生涯つくった作品の数がとんでもないのです。本当に好きで、探求し続けないと描き続けられないと思います。――心ひかれた作品は?町田さん決めるのが大変だなぁ。すごく印象に残っているのが、『富嶽百景』で波が鳥に変わっていく作品があるんです。これはすごいな、と。富士山と波があって、よく見たら波の先に鳥がいるのです。水しぶきかと思いました。鳥も、一羽一羽表情があり、僕のなかで印象に残っています。――北斎にあまりなじみのない人でも楽しめますか?町田さん僕も詳しくなかったですし、教科書で見たことがあるなとか、おぼろげなイメージしかなかったのですが、逆にそういう方のほうが、いっぱい発見があると思います。だからちょっとでも気になったら、ぜひ一度足を運んでみられたらどうかな、と思います。進化をとめない北斎はすごい!――町田さんがもつ北斎のイメージは?町田さん当初、感覚的に描く作品が多いのかと思っていたのですが、見れば見るほど繊細で、構図も富士山にしっかり目がいくよう緻密に計算されているのです。また、動物の描き方などが載っている絵手本も展示されていて、それが本当に簡潔でわかりやすく描いてあり、その技術がすばらしいと思いました。北斎は、70歳を越えてもまだまだと言いながら向上心をもって活動していました。進化をとめなかったのはすごいことだと思います。自分に置き換えてみると、同じようなことが生涯できるのか……。やはり北斎はすばらしいし、だからこそ長い間みなさんの心に残る作品になっているのだと思います。音声ガイドは途中で切った…?――音声ガイドのお仕事は、はじめて担当されたのですね。町田さん実は、美術展の音声ガイドを聴くのが好きで、展覧会に行くとよく聴かせてもらっていました。いつか挑戦させてもらいたいと思っていたら、こんな素敵な北斎の展覧会で初挑戦できるなんて、このお話を聞いたときは心が躍りました。――ご自身でガイドを聴かれてみて、いかがでしたか?町田さん途中で切りましたね(笑)。自分のガイドを聴いていたのですが、今回、展示作品を見たとき、特別にスタッフの方にガイドをしていただいたので、それがとんでもなくうますぎて、僕のガイドではなくそちらのお話をもっと聴きたいなと思い、夢中になって聴いていました。――音声ガイドで聴いてほしいポイントは町田さん音声ガイドは通常ですと、あまり感情を入れたりしないと思うのですが、要所要所少しだけ北斎の絵にある遊び心と同じような感覚で、僕も気持ちを感じながらセリフ調にしたところもあるので、そういったところも楽しんでいただけたらと思います。でも、邪魔だなと思ったらすぐ切ってください(笑)。関口さんとの仰天エピソード――北斎は引っ越し魔で93回転居しています。町田さんの引っ越しエピソードはありますか?町田さん大学に入ったとき東京に出てきて、はじめて独り暮らしをしたのですが、僕の家がたまり場になっていて、誰かしら家に毎日いました。当時、だいたい家にいたのは関口メンディー。あるとき、彼が家にいて、僕が先に家を出て、「あとでゆっくり出てきてね」と鍵を渡して、日中鍵を返してもらい、それで夕方家に帰ってみたら、家の中がとんでもない湿気とひんやり感があったのです。「なんだこれ」と思ったら、お風呂場のお湯が出しっぱなしになっていました。もうお湯が水に変わっていて、ガスも止まっていて。真冬でしたが、その日は真水で僕は風呂に入ることになりました。その時のことを関口はいまだに「本当にごめん、本当にごめん」と言っています(笑)。酔いしれてください!――最後に、メッセージをお願いします。町田さん数々の作品を残されている北斎さんの作品がたくさん集まり、見れば見るほど引き込まれ、圧倒され、見る方によっていろいろな視点で楽しめるすばらしい展覧会です。ぜひご覧になって、酔いしれていただければと思います。お楽しみください!町田さんが大絶賛する特別展『北斎づくし』は9月17日まで開催。取材・文:田代わこInformation会期: ~9月17日(金)※休館日:8月10日(火)、8月24日(火)、9月7日(火)会場:東京ミッドタウン・ホール開館時間: 11:00~19:00(最終入場18:30)観覧料:一般¥1,800、大学生・専門学校生¥ 1,200、高校・中学・小学生¥ 900※事前予約制※最新情報は、美術館のウェブサイトをご確認ください。
2021年08月06日東京・上野の国立科学博物館で特別展『植物地球を支える仲間たち』が開かれています。草木や花、果実など植物は身近な存在ですが、その詳しい生態や起源などについては知らない人も多いはず。巨大な花や危険な果実、クサすぎる花など、大人もびっくりする植物たちをご紹介!どんな展覧会?【女子的アートナビ】vol. 218特別展『植物地球を支える仲間たち』では、地球上にある多種多様な植物を、標本や模型、映像、インスタレーションなどで展示。最新の科学研究によって明らかにされた驚きの生態も紹介され、植物の魅力を存分に楽しめる展覧会です。植物たちにも五感がある!第1章「植物という生き方」では、植物のアクティブな生き方を紹介。植物は30億年以上前、光合成という能力を手に入れたことで自ら動く必要がなくなり、晴れの日も雨の日も同じ場所で生活するスタイルに変化。移動はしませんが、その場にいながら成長して花粉を飛ばしたり、虫や動物に食べられないようトゲなどで身を守ったりと、アクティブな毎日を送っています。また、植物には人間と同じように視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚があり、常に変化する周囲の環境を感じ取っています。例えば、光を感じる視覚は光合成をする植物にとって一番大切なもの。でも、人間のように眼という特定の器官を使うのではなく、全身の細胞で光の方向を感知しています。同展監修者の三村徹郎さんは、最新の研究について、図録のなかで次のように解説しています。「最近では、昆虫などに襲撃されていることをその天敵である他の昆虫や、あるいは他の植物に知らせることもできるらしいということがわかってきた」植物が自分の仲間や虫たちとコミュニケーションをとるとき、音声ではなく身体から発する化学物質を使って働きかけているようです。どんな対話をしているのか、想像をかきたてられます。巨大なクサい花が登場!第2章「地球にはどんな植物が存在しているか?」では、巨大、極小、長生きなどさまざまな特徴をもった植物を展示。ここで一番目を引くのが、ショクダイオオコンニャクの実物大模型です。インドネシア・スマトラ島に自生し、コンニャクの仲間であるこの植物は、世界最大級の「花」が咲くことで知られています。(この「花」は、正確には小さな花が集まった「花序」です)ショクダイオオコンニャクは「世界でもっとも醜い花」とも呼ばれています。その理由は、開花時に強烈な異臭を放つから。腐った肉のような、ゴミのようなニオイともいわれるこの香り、展示室を出たところの通路で嗅ぐことができます!本物ではなく化学成分を調合して再現されたものですが、夏場の腐った生ゴミのようなニオイがしました。植物の起源は…?第4章「植物はどのように進化してきたか?」では、植物の歴史を紹介。46億年といわれる地球の歴史のなかで、植物が陸上に進出したのは約5億年前。海中で生活していた緑藻(りょくそう)類のなかから淡水で生活するものが進化し、そのなかから陸上植物が進化したと考えられているそうです。会場では、前期デボン紀(約4億1000万年前)時代の植物の化石標本や復元模型などを展示。筆者は植物オタクなので、珍しい古代植物の姿に興奮しました!怖い植物になった理由は…最後にご紹介するのは、第5章「本当は怖い植物たち」。花や草木は癒しを与えてくれるイメージがありますが、凶暴な性質のものや、人間が死に至る毒をもった危険な植物もあります。例えば、食虫植物。虫などを殺して食べるなんて残酷だと思いますが、植物たちにも事情があります。食虫植物は栄養分が不足している土地に自生しているため、生き残りをかけて自分たちに必要な栄養源として虫などを捕獲しています。また、トリカブトのような植物の猛毒は、動物や虫に葉が食べられないようにするために必要な成分ですし、果実や種子にあるトゲは、動物にくっついて別の場所に種子を散布してもらうために必要なもの。毒もトゲも植物が次世代以降も生き残るために備わった大切な力なんですね。植物が愛おしくなる…!同じ地球に暮らす仲間として、植物は人間にとってとても大切で身近な存在です。そんな植物の美しいだけではない多様な側面を知ることで、この先出会う植物たちがさらに愛おしく思えるようになるかもしれません。特別展『植物地球を支える仲間たち』は9月20日まで。取材・文:田代わこInformation会期: ~9月20日(月・祝) ※会期等は変更になる場合があります※休館日:9月6日(月)会場:国立科学博物館(上野公園)開館時間: 9:00~17:00※入館は閉館の30分前まで観覧料:一般・大学生¥1,900、小・中・高校生¥ 600※事前予約制※最新情報は、博物館のウェブサイトをご確認ください。
2021年08月06日東京・六本木のサントリー美術館で、『ざわつく日本美術』が開かれています。タイトルだけ見てもおもしろそうなこの展覧会、展示内容もかなり濃厚で、期待を裏切りません。同展を企画された学芸員さんたちのお話も聞いてきましたので、展示風景とあわせてご紹介します!どんな展覧会?【女子的アートナビ】vol. 216『ざわつく日本美術』は、サントリー美術館が所蔵する絵画や工芸品などの名品や珍品をとおして「見ること」を楽しみながら、日本美術の奥深さを存分に味わえる展覧会です。会場では、展示方法や空間演出、章タイトル、さらに作品解説に記されたキャプションに至るまで、さまざまな工夫が凝らされています。ちょっと堅苦しそうな日本美術のイメージがガラリと変わる展覧会、その見どころをご紹介していきます。学芸員さんも驚いた…!生々しい絵まずプロローグで登場するのが、展覧会のメインビジュアルにも使われている《尾上菊五郎》です。明治初期につくられた石版画の役者絵ですが、なんとも言えない存在感があります。展示方法もインパクト大。夢に出てきそうな異質な雰囲気です。同展企画者のひとり、学芸員の久保佐知恵さんは、はじめてこの作品を見たとき「うわっ、なんだこれは…!」と思い、心がざわざわしたそうです。「役者絵は浮世絵のイメージがあると思いますが、これは江戸時代の浮世絵版画とは全然違います。写真のようだけど写真とも違う、そんなあいまいな作品です。私が感じた心のざわめきは、作品が作られた当時(明治初期)の人も感じていたようで、江戸時代以来の浮世絵に見慣れた人にとって、この生々しさには抵抗感があったようです。シリーズものだったのですが、不評に終わってしまったと伝わっています」(久保さん)うらうらする…!続いて、第1章「うらうらする」をご紹介。この章では、ふだんなかなか見られない作品の裏側がしっかり見えるような展示方法になっています。例えば、《色絵五艘船文独楽形鉢》には器の内外にオランダ人とオランダ船が描かれています。江戸時代後期の人にとって、オランダ船は海を越えて宝物をもってきてくれる「宝船」と考えられていたそうで、その吉祥性が描かれているため、裏側には「寿」の文字も見えます。ちなみに、この章の展示方法は久保さんが「ウユニ塩湖のようにしてほしい」と造作担当者に依頼されたとのこと。展示室では、さまざまな美しい器が浮いているように見えます!はこはこする…!第5章「はこはこする」の展示方法もユニークです。「はこ」とは、作品を保管している箱のこと。展示室では、なんと美術品の箱が展示されています!もちろん、箱だけでなく中身も展示されていますが、あえて箱とは離した場所に置かれて、床に矢印で中身のある場所が示されています。「作品の持ち主は、作品を大事にしたいという思いから豪華な美しい箱をあつらえています。箱には、作品に関わる重要な来歴も含まれています。ぜひ箱を含めて作品を見ていただきたいです」(久保さん)5章のタイトルは、久保さんと一緒に同展を企画された教育普及担当の関香澄さんが考案されたそうです。「このコーナーはタイトルで悩みましたが、そのまま『はこはこ』にしようと造語を使いました。箱イン箱で、見た目もおもしろいと思いますのでご注目ください」(関さん)ざわざわする…!第6章では、美しいだけではない、ちょっとお下品だったり卑猥だったりするような、心がざわつく日本美術が登場。冒頭でご紹介した《尾上菊五郎》もざわざわ系アートですが、ほかにもあります。例えば《放屁合戦絵巻》では、裸の男性たちが自分のおならの強さ(?)を競い合っているシーンが描かれています。とても美しいとはいえない、ちょっと汚らしいとも思える絵巻です。「《放屁合戦絵巻》は、もともと平安時代に描かれたものを室町時代に写したものです。おならを競い合う絵を大切に描き継いで楽しむという、当時の人たちの心の余裕も感じられる作品です」(久保さん)もうひとつ、《袋法師絵巻》も超ざわざわ系アートです。いわゆる「春画」で、ある屋敷の女主人の寝床に好色のお坊さんが潜んでいるところが描かれています。赤い大きな袋に隠れたお坊さんの顔はインパクトがあり、一度見たら忘れられません。ちなみに、このお坊さんはその後、袋に入れられたまま、ほかの女性の慰み者になるそうです……。心のざわめきに耳を傾けて!おならや春画の絵巻で心がかなりざわついたあと、最後のプロローグではレースで区切られた静寂な空間が待ち受けています。ここには、仏教彫刻がポツンとひとつだけ、飾られています。「この作品は、平安時代の女神像でしかも頭部だけです。表情があまりありませんが、よく見ていると、鑑賞者の心の変化に合わせて少女のように見えたり赤ちゃんに見えたり、目まぐるしく変化します。見る人の心の状態が変わることで、作品との出会いが一度きりでは終わらない、その時々の自分だけの大切なものだと改めてわかるような彫刻です。この作品を見たときの“心のざわめき”に耳を傾けて、展示室を後にしていただきたいです」(久保さん)熱量に感動…!サントリー美術館のコレクション企画展に行くたびに日本美術が好きになっていく……そういう声をよく聴きます。その理由は、「見せ方」がとても親切だから。美術の知識がなくても楽しめる、見ているだけでワクワクするような展示になっているからだと思います。例えば、単に茶碗が並んでいるだけではスルーしてしまうかもしれませんが、「裏もおもしろいですよ~」と鏡で見せてくれると、がぜん興味がわいてきます。美術の見方やポイントを押しつけるのではなく、さりげなく教えてくれる、そんな絶妙な匙加減のおかげで楽しく見ることができ、日本美術の魅力にハマっていくのかもしれません。今回の展示では、学芸員さんたちの熱量の高さにも感動しました。『ざわつく日本美術』は8月29日まで開催。取材・文:田代わこInformation会期: ~8月29日(日)※会期中展示替えあり ※休館日:火曜日※8月24日は18時まで開館会場:サントリー美術館開館時間: 10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)※7月21日(水)、22日(木・祝)、8月8日(日・祝)は20時まで開館※いずれも入館は閉館の30分前まで観覧料:一般¥1,500、高校・大学生¥1,000、中学生以下無料※最新情報は、美術館のウェブサイトをご確認ください。
2021年07月28日東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで、ポップカルチャーの巨匠、KAWS(カウズ)の大型展覧会『KAWS TOKYO FIRST』が開かれています。ペインティングや巨大彫刻、さらに最新のAR作品など約150点が集結。2年ぶりに来日したKAWSさんのコメントもご紹介!どんな展覧会?【女子的アートナビ】vol. 215『KAWS TOKYO FIRST』では、世界が注目するアーティストKAWSの初期から最新作までの絵画や彫刻、プロダクトなどを展示。さらに作家が所有するプライベートコレクションも紹介され、創作の源泉も知ることができる展覧会です。KAWS(本名:ブライアン・ドネリー)さんは1974年アメリカ生まれ。ニューヨークの美術学校で学び、アニメーターとして3年間勤務。1990年代前半にグラフィティライターとして注目されはじめ、バス停や電話ボックスの広告にキャラクターを描いた作品などが人気となり、アメリカだけでなくヨーロッパや日本でも知られるようになります。彼の代表作は、目の部分が×印になっているキャラクターたち。みんなが知っている「ねずみ」や「犬」などのキャラクターを書き換えた遊び心いっぱいのパロディ作品を次々と生み出し、世界中の人たちを魅了しています。また、ユニクロやア ベイシング エイプ、ディオールなどブランドともコラボ。絵画や彫刻から、ストリートアート、グラフィックデザイン、プロダクトデザインまで、幅広いジャンルで活躍されています。報道内覧会では、来日中のKAWSさんが登壇。展覧会への想いや日本とのつながりについて語りました。日本で得られたものは…?KAWSさんの初来日は1990年代の半ばごろ。それ以後40~50回は来日しているというかなりの親日家です。90年代後半は日本のストリートカルチャーが発展していった時期。KAWSさんは裏原系のファッションリーダーNIGO®さんなど多くの方々と交流を重ね、作品やプロジェクトを生み出していきます。日本のストリートカルチャーが自身に与えた影響について、次のように語りました。KAWSさん日本に来ることで、さまざまなインスピレーションを得ることができました。日本は、私がそれまで知っていた世界とはランドスケープが違っていました。当時は新しいものが始まっていく時代。日本の友人たちとワクワクを共有でき、いつもとても楽しくて、実験的なこともいろいろできました。日本のストリートカルチャーが活動の場を広げ、ファッションブランドに影響を与えていくのを見ることができ、その時代に関われたことを幸せだと思っています。展覧会名に込められた想い今回の展覧会名「KAWS TOKYO FIRST」は、20年前に渋谷で開かれた初個展と同じタイトルです。なぜ同じものにしたのか、その想いを語りました。KAWSさんこのタイトルに落ち着いたのは、私のなかでひとつのサイクルが終わったと感じたからです。2001年に東京で初個展をしてから多くの変化がありました。その個展がベンチマーク的な意味をもっており、今回同じタイトルにすることで、原点に戻れるのではないかと考えたのです。プライベート空間を披露した理由会場では作家のアトリエの一部が再現され、プライベートコレクションも展示されています。その理由を次のように述べています。KAWSさん私は常々ほかのアーティストのことをもっと知りたいと考えていました。私が毎日どういったものと暮らしているのか、何に興味があるのか、見ていただきたいのです。自分の個人的なスペースをみなさんと共有する場をもちたいと考えたのです。私の所有するコレクションを見て、ほかのアーティストの作品を気に入ったら、ぜひ調べてみてください。特に見てほしいところは?最後に、展覧会で見てほしいところを語りました。KAWSさんこの展覧会では、私の全体のストーリーを来場者の方と共有できるのが意義深いところです。私がこれまでどんな点に興味をもっていたのか、作品はどこから始まり、どこまで来ているのか、その変遷もご覧いただきたいです。20年間の興味の変遷と洞察を、ぜひ受け取っていただければと思います。また、コロナの状況であっても展覧会に来てくださる方に感謝の気持ちを伝えたいと思います。日本に来るのは毎回おもしろい体験で、日本にいられることも光栄で、これからも来続けたいです。そして友人である横尾忠則さんの美術展も都内でやっているので、ぜひそちらにもお出かけください!グッズも注目!展覧会の特設ショップでは、限定商品やブランドとのコラボ商品など注目商品が並んでいます。特に目を引くのが、「名菓ひよ子」とのコラボ。ひよ子ちゃんの目が×印になっていてかわいいです!一部の商品はKAWS TOKYO FIRSTオンラインストアでも販売される予定なので、ぜひ公式サイトをのぞいてみてください。『KAWS TOKYO FIRST』は10月11日まで開催。取材・文:田代わこInformation会期: ~10月11日(月) ※休館日:8月5日(木)会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)開館時間: 10:00~20:00※9月9日(木)は~17:00※入館は閉館の30分前まで観覧料:平日一般¥2,500、高校・大学生¥2,000、小・中学生¥900、土日一般¥2,800、高校・大学生¥2,300、小・中学生¥1,200※全日日時指定制※未就学児無料※詳細は公式サイトをご確認ください※最新情報は、美術館のウェブサイトをご確認ください
2021年07月25日