発達障害のある子どもの遊び場探しは超難関!出典 : 発達障害がある子どもを自由に遊ばせる場所…、実は結構探すのが難しかったりしませんか?わが家の息子(自閉症スペクトラム障害・ADHD診断済)の場合は、社会性という意味でも、感覚という意味でも、遊び場の選択が難しかったです。社会性という意味では、順番が待てない、お友達の物を衝動的に取ってしまう、「返しなさい」と言うと癇癪を起こして泣き叫ぶ等の問題がありました。感覚という意味では、大きな音楽やまぶしい光で疲れてしまうため、デパートなどに入っているプレイスペースは苦手でした。結果どうなったのか…?私たち家族は、長いこと家に引きこもっていたのです。息子のパニックや癇癪が怖くて、どこへも出かけたくなかったのです。それだったら、家のなかでDVDを見ていたほうがずっとマシ。家にいれば、他人の冷たい目にビクビクしながら、頭を下げて逃げるように帰宅する必要もない…。息子の幼少期、私たち家族は一日中DVDを流しっぱなしにして、家の中で過ごしていたのでした。理想の遊び場を実現しちゃった!?NYのある夫婦出典 : そんな発達障害のある子どもの遊び場探しに頭を悩ます親の気持ちは、世界共通のようです。2017年の11月、ニューヨークのレイサムに、発達障害のある子ども向けのプレイルームがオープンしたことがアメリカで話題になっていました!Ring Around The Spectrum - Facebook Pageこのプレイルーム、Ring Around The Spectrum(リング・アラウンド・ザ・スペクトラム)は、発達障害のある子どもの感覚統合や感覚過敏に考慮したつくりになっています。(リンク先にプレイルームの写真と動画があります。)リング・アラウンド・ザ・スペクトラムでは、普通のプレイルームのように大きな音で音楽がかかっていたりしません。発達障害のある子どもの聴覚過敏に配慮しています。強い明るさの照明もついていません。全てのおもちゃや道具類は、作業療法士が選んでいます。感覚過敏に考慮したつくりになってるだけでなく、感覚統合を促せる遊具やクラスが設置されています。ざっと見回しただけでも、ゆらゆら揺れるスイング、バランスボール、ロッククライミング、ビーズクッションなど、発達障害児の感覚刺激に良さそうな遊び道具が沢山置かれています。さらに、少し明るさを落としてあるクールダウン用のスペースには、キラキラ光る泡のチューブや柔らかな光を放つチューブがあります。このプレイルームを開設したのは、支援が必要な二人の子どもを育てる、アッベ・ロバーツ(Abbe Roberts)とケン・ロバーツ(Ken Roberts)夫婦です。ロバーツ夫妻はある日、こんなことを思ったのだそうです。「地域にこの子たちが遊べる場所が欲しい。この子たちが非難されることなく心から楽しめる場所が欲しい。この子たちが支援の必要のない子どもたちと一緒に遊べる場所が欲しい…」そして、ロバーツ夫妻はこのリング・アラウンド・ザ・スペクトラムという場所を開設したのでした。「この子たちが非難されることなく心から楽しめる場所が欲しい」という夫妻の言葉にグッときたのは私だけではないでしょう。私も息子が幼少の頃は、いつも同じことを考えていました。「白い目で見られずに遊ばせる場所が欲しい」「発達障害のある子どもが、楽しみながらさまざまな経験を積んだり、力をつけることができる場所が欲しい」と。その想いは世界共通。そして、そんな想いを形にしたのが、このプレイルームなのです。New gym for children with Autism opens in Latham (訳:「自閉症児向けのジムがレイサムに新規オープン」)どの子どもたちも一緒に楽しく!こんな遊び場が日本にもあったら…出典 : リング・アラウンド・ザ・スペクトラムは、発達障害のある子どもに限らず、多くの子どもたちを歓迎しているそうです。遊具などは、発達障害のある子どものニーズに対応していますが、定型発達の子どもも遊ぶことができます。また、発達障害のある子どもの体幹トレーニングや衝動性コントロールなどに効果がありそうな、ヨガやマインドフルネスなどのクラスもプレイルーム内で開講しています。普通のクラスに連れて行くことが難しくても、このプレイルームでのクラスであれば、気軽に連れて行くことができそうですね。料金は一回の利用が12ドル(およそ1,300円程度)で、時間制限はありません。こんなプレイルームが日本にオープンしたら素敵だなあと思うとともに、遊び場探しに苦慮して自宅に引きこもっていた昔の辛い記憶も蘇ります。「この子たちが非難されることなく心から楽しめる場所が欲しい」。同じような想いを持って、こうしてプレイルームをつくった保護者がいる…。国境を超えて同じ想いを共有していることに、私は少しジーンときました。日本でもいつか、同じ想いを抱くご家族のために、こんな素敵なプレイルームがつくられる日がくるかもしれませんね。
2018年04月28日入学や進学など、年度切り替えのこの時期は、障害があるなしに関係なく、親がナーバスになる時期。でも、発達障害のある子を持つ親にとっては、さらに頭を悩ませる時期なのではないでしょうか?通常学級、通級、支援級、支援学校…わが子が安心して楽しく通える環境はどこなのか? 親は、就学問題に長い時間と労力を費やし、時には夫婦で揉め心をすり減らしながら、やっとの思いでわが子にベストと思える居場所を決めます。でも、そんな親の努力をすべてひっくり返すような、無理解な担任の先生に当たってしまったり…。そんな思い悩むことが多いこの時期、再びNHK総合テレビで発達障害をテーマにした特番 「超実践!発達障害 困りごととのつきあい方」 が放送がされます。番組では、寄せられた約4000通の体験談から「感覚過敏」「忘れ物・片付けが苦手」「読み書き計算が苦手」「コミュニケーション」という代表的な4つのテーマを取り上げ、発達障害の当事者はもちろん、家族やその周囲がすぐに実践できる「対処法」「周囲への助けの求め方」などをできるだけ具体的に伝えていく。さらに、「困りごと」「周囲の無理解」からどうやって人生を好転させたのか、その転機をとなった方法や出会いを描くほか、栗原類さんをはじめ一般の発達障害当事者8人をスタジオに招き、一人ひとり微妙に異なる困りごとに対する対処法をトーク。「どうすれば困りごとに対処できるか」「どうすれば人生楽しくなるか」「発達障害の人とそうでない人が共存するにはどうすればいい?」などを生放送で話し合う。■「発達障害」に対する社会の認知は高まってきたけれど…ここ数年で、発達障害に対する社会の認知は高まって、園や学校ではずいぶんと理解が進んだように思います。でも、当事者や家族の目線から見ると、依然としてサポート体制が不十分で必要な配慮が受けられなかったり、相談したはずの困り事が放置されたままだったり、個々人の対応はまちまちだったり……まだまだ難しいと感じることが多いのが現実です。今回の特番担当プロデューサーからも、「これまで発達障害については何度も放送してきましたが、無関心層へのリーチはまだまだだと感じています。しかし、そうした層に届かない限り当事者の困り事は解決しないため、繰り返しを恐れず伝えたいとも思っています」とメッセージをいただきました。これ、まさに、その通りだと思うのです(冒頭でお話した、すべてをひっくり返すような無理解な先生がいることもしかり)。でも、みなさん、日々自分の生活でいっぱいいっぱい…。当事者や家族でない限り、「大変そうだけどよくわからない」とか「障害を言い訳にしてない?」などとスルーされてしまうのも仕方ないことなのかもしれません。■自分が生きやすくなるためには「相手のことを知る」が一番の近道そんな私も、息子が自閉症スペクトラムと診断されるまでは、「大変そうだけど、結局よくわからない」の人でした。障害について理解する前は、「親子でがんばればなんとかなる!」などと、ワケのわからぬ根性論で発達障害を改善しようとしていた時期もありました。そして、息子に無理強いをさせては、それが自分に跳ね返って、ますます自分自身がイライラしてしまう、そんな悪循環に陥っていました。結局、無理解は相手だけでなく、まわりまわって自分自身をも辛い状況に追い込んでしまうのです。私は、息子を通して、「基本的に人(子ども)を変えることはできない」という当たり前のことを改めて思い知りました。相手(子ども)に自分の価値観を強いることは、トラブルと双方のストレスのもと。喜びや苦しみは現実と期待とのギャップで生まれ、相手(子ども)にできないことを求める行為は、結果、自分に対するストレスを生むことになります。■「発達障害の人のため」ではなく、「自分自身のため」にちょっと変な言い方かもしれませんが、今回の放送、「発達障害の人がより生きやすくなるために」というような道徳的な視点よりは、むしろ、「自分自身がより生きやすくなるために」という自分視点で見た方が、より幅広い方々に響くのかもしれません。発達障害は、今や40人学級で2~3人の割合でいると言われているほど。子どものクラスメイト、親戚、会社、ママ友仲間にも、障害とまではいかなくても、グレーな方を含めれば「もしかして…?」と思われる方も少なくないでしょう。もはや避けては通れない問題です。「なんであの人は、いつもあんな嫌な言い方をするんだろう?」とか「どうしていくら説明しても、あの人には話が通じないんだろう?」など、あなたが苦手に思っている人との、上手な付き合い方のヒントが得られるかもしれません。また、番組で語られる、コミュニケーションが苦手な方や生きにくさを感じている方が、自身の人生を好転させるために編み出したノウハウには、私たちの生き方にも参考になるところがあるのではないでしょうか?今回、私は、息子のためではなく、自分のためという視点で、番組を見たいと思っています。文:まちとこ出版社N【NHK 発達障害プロジェクト】超実践! 発達障害 困りごととのつきあい方放送日時:2018年4月30日(月・祝)午前8:15~9:59 NHK総合テレビMC:中山秀征さん、近江友里恵アナウンサーゲスト:栗原類さん(「あさイチ」で自分が発達障害であることを告白)ほか、発達障害のご本人(一般の方)8人と専門家
2018年04月28日「発達が気になる子のママ、仕事をしてる?」66%が”働いている”、約20%が”働きたい”という結果にUpload By 発達ナビ編集部「発達が気になる子のママ、仕事をしてる?」というテーマで2018年4月19日(木)~27日(金)に、みんなのアンケートを行い、900名以上のユーザーから回答がありました。現在働いている人は66%、働いていないが働きたいと思っている人が19%、働いていない人が15%という結果でした。みんなのアンケート「働いていない」「働いていないが、働きたい」人の理由は?出典 : %と一番割合が低かった「働いていない」場合。この理由としては、子どものサポートのために時間が取れないというものが多くあげられました。”娘が中学校に入る前まで働いていました。(中略)仕事を辞めてからは娘優先で生活できる様になって、気持ちが落ち着きました。娘に障害がなかったら仕事は続けていたと思います。””今後のことを考えると働きたいなぁ…と思いますが、息子のSTとOTで月2回、これから通院も予定してるので、息子関係でどのくらい時間が取られるのかまだ見えません。”「働いていないが、働きたいと思っている」人は約2割いました。子どもの支援や療育に通うために仕事を断念したけれど、理解してくれる職場があれば働きたい、探している、という声も多く寄せられました。”働いてたし、働く気でいましたが子どもの状態が良くなくて保育園追い出されそうで、様子見のため何も動けないです。子どもに手が掛かるのはしかたないけど、自分のやりたい事を諦めることもしたくありません。自分の人生は自分のものですしね。”その他、次のようなコメントもありました。■子どものリハビリに専念するため働くことをあきらめた。子どもの障害を理解してくれる職場があれば働きたい■子どもに発達凸凹があり、復職出来ないまま時間がたってしまったが、働ける場所があるなら働きたい■子どもが不登校。放課後等デイサービスの利用も拒否するため働けないでいる「働いている」人は66%。フルタイムやパート、家庭の事情などで仕事の形態は異なる出典 : フルタイム勤務の場合は、家族や園、支援機関などの協力が欠かせないようです。働くことで、気持ちの切り替えができているというママも多いようです。■実家の母に泊まってもらい、夜勤有の病院勤務をしているが、母も自分も体力的にきつい■保育園で加配をつけてもらったり療育を利用。夫と分担してこなしている。いろんな人の手を借りて育てたほうが煮詰まらないフルタイムは難しいが、パートで働いているという人も多くいました。■子どもに発達障害があることが分かり、常勤は無理なのでパート勤務に変更。金銭的には苦しいけれど、家庭の安定をとった■半日パート勤務。もっと働きたいが、自分に余裕がないと家庭が崩壊しそうなので自分のためにも働きたい、家計のために働かなくてはいけない、でも子どものサポートが十分とは言えなくなってしまうことで悩んでいるという声も寄せられました。”長女のさみだれ登校が続く中、縛られてしまうのは逆に良くないかとパートに出ました。(中略)長女については対応できていたのですが、LD傾向にある次女と三女の宿題が滞るようになってきて生活リズムも崩れるようになり、8ヶ月勤めたもののこの春に辞めました。(中略)家計の事を思うと本当はフルで働きたい。でも今はついてあげてサポートしてやらないと…。すごくジレンマがあります。”次のようなコメントも寄せられています。■仕事をしていることで精神の安定を得られている。でも子どものために勤務に支障が出てしまうと周りの声や視線が気になる■シングルマザーなので働かなくてはいけない。でも引きこもりの娘を1人きりにしなくてはいけなかったり、息子が自分のいないところで暴れてしまい困っているどんな働き方なら、発達凸凹の子どもを育てながら、無理せず働ける?出典 : 子どもを育てる中で、働き方を変えて、自分にも子どもにも無理ないよう調節しているという声も寄せられました。その中でも多くあげられたのが在宅ワークをはじめとする「テレワーク」です。時間や場所に縛られずに働くことで、自分らしく働く、子どもの療育などとの調整もしやすい、という利点があるようです。”自宅でグラフィックデザインの仕事をしています。ネットで受注、納品まで完結するので何かあってもすぐに対応出来るのが魅力的です。今少しずつプログラミングの勉強していて、徐々に移行していけたらなと考えています。””子どもが保育園のうちは、外でシフト勤務。職場の同僚や上司から理解が得られたので、とても働きやすかった。(中略)子どもが就学後は、在宅ワーク。収入は減ったけれど、同僚や上司に謝る必要もなく、子どもと過ごす時間が格段に増え、睡眠時間も確保できるし、育児・療育を中心にすえて生活できるのがいい。””パートですが、テレワークをしています。数年前までは働きに出ていましたが、会社の都合で勤めていた支社がなくなりテレワークを認められました。通勤や出かける準備に時間をとられないし、何より子どもを見守れるので、今の私にとってはベストな働き方です。”テレワークとは?「EmpoweredWomanJAPAN」でも提案された、フレキシブルな働き方Upload By 発達ナビ編集部アンケートへの回答にもあった「テレワーク」という働き方。これは、どのような働きかたなのでしょうか?2018年4月17日(火)、霞が関の霞山会館で「EmpoweredWomanJAPAN」が開催され、「いつでもどこでも誰でも、働き、学べる世の中へ」をコンセプトに、女性の多様な働き方についてディスカッションが行われました。その中で、テレワークについて大きく取り上げられました。テレワークとは、ICTの発達により可能になった働き方で、次の3つの特徴があります。1. いつでも(いつでも時間にとらわれずに柔軟に働ける)2. どこでも(会社に出社しなくても働ける)3. だれとでも(家族の近くで働ける、仲間とコワーキングスペースなどでも働ける)日本では現在、終身雇用が当たり前ではなくなりつつあり、転職する人も多くいます。また、少子高齢化、特に地方の高齢化が進んでいます。このような社会情勢の中、従来通りの働き方だけでない多様な選択肢があることで、さまざまな人が、ライフステージや状況に合わせて自分らしく働くことができる必要性が問われるようになってきました。このイベントでも、テレワークによる働き方や生き方の幅が広がる可能性について話し合われたり、実際にテレワークを行っている人による体験談が語られました。テレワーク化が進めば、子育て中、高齢者、障害のある人、病気療養中の人、近隣に働ける場所がない人など、さまざまな人が働くことができると言います。また、人材不足に悩む地方の企業が、遠く離れた場所に住む人材と出会い、働いてもらうことも可能になります。参考:EmpoweredWomanJAPAN(日本マイクロソフト)テレワークの意義・効果 | 総務省テレワークで働く女性の声も。テレワークプログラムについてのディスカッション日本では、約350万人の女性が、場所や時間などのさまざまな理由で働きたいけど、働けない状態でいるといわれています。一方、人材獲得に課題を感じている企業が全国で増え続けているそうです。日本マイクロソフトでは、このような状況をテレワークによって解決できないかと、テレワークプログラムを実施しています。このプログラムに参加し、地方企業に就職して在宅でテレワークを行っている入谷真紀さんによる発表もありました。入谷さんは千葉県流山市在住で、通勤時間も考えると都内での勤務は難しい、でも自宅の近くでは自分のスキルを生かして働ける場所はない状況でした。何より一番大切にしたいのは、子どもの夢をサポートすること。そのためには、自分が働くことをあきらめなくてはいけないと思っていたそうです。入谷さんは、プログラムに参加してテレワークのスキルを学び、オンラインでの面接を経て徳島県の企業に就職。テレワークでの業務なので、引っ越しも通勤も不要です。「テレワークなら自分も働きたい気持ちをあきらめなくてもいいのかもしれないと思い、プログラムに応募し、現在の仕事に就きました。テレワークで働くことで可能性が広がり、自分の仕事や生き方について考えられるチャンスがもらえた。もっとテレワークで働ける企業が増えるといいなと思う」(入谷さん)入谷さんの住む千葉県流山市は「子育てしながら働ける街に」と目標を掲げ、このプログラムに参画しています。井崎義治市長は「流山市はベッドタウン。人口増加率は全国1位です。でも、雇用はとても少ないのが現実です。起業やテレワークなどの主体的な動きを積極的に応援したい」と言います。入谷さんを雇用した株式会社ダンクソフトの代表・星野晃一郎さんからは「企業の経営戦略としても、テレワークは重要です。優秀な人材がいないと企業経営は難しい。人材のネットワークを全国規模で持っていることは重要」と、経営側からもテレワーク活用の必要性について発言がありました。Upload By 発達ナビ編集部参考:ウーマンテレワーク体験プログラム(日本マイクロソフト)『LIFE SHIFT』著者、リンダ・グラットン氏が語る、人生100年時代の働き方、学び方、生き方Upload By 発達ナビ編集部イベントでは『LIFE SHIFT』の著者、リンダ・グラットン氏の講演もありました。寿命が延び、今までのように学校を卒業したら働き、60歳で定年を迎えてリタイア…という生き方が成り立たなくなっていると言うリンダ氏。それぞれのライフステージや家族の状況に合わせて、学び、働き、育児をしたり再度学んでスキルを身につけ、また働くというフレキシブルさ(マルチステージ化)や、次のステージで活躍できる意思やスキル(変身資産)が重要になるー。「AI技術が進歩する中で、長時間ロボットのように働くというやり方は合わなくなっています。知識集約型の経済では、長時間労働は生産性が落ちます」製造業の発展の中では、長時間労働が必要とされる時代もあった。でも、これからの人間に求められているのは、考える力だろうと、リンダ氏は語ります。「人口が減少する日本で、人口の半分を占める女性が働けないのは理にかなっていません。また、男性もフレキシブルに働け、家族と一緒に過ごす時間を持てることが必要です」人間はロボットではない。今までの働き方を見直すことで、人間らしい暮らしを取り戻そう、もっと家族で過ごそうという力強い講演でした。柔軟な働き方なら、子どもに寄り添いながら自分らしく働けるUpload By 発達ナビ編集部最後に登壇した、野田聖子大臣(総務大臣・女性活躍担当大臣・内閣府特命担当大臣)は「私自身、子どもを出産したときは、テレワークで働いていた。障害のある人も含め、ライフステージに合わせて柔軟に働ける世の中にしたい。経団連などに対しても、女性の採用やテレワークの活用の推進をお願いしている」と意欲を示しました。また、7月24日はテレワークデイに設定されており、2017年度は6万人、900団体が参加したそうです。野田聖子大臣は「2018年度は、テレワークウィークとして、複数日に渡ってテレワークに取り組めるようにしたい。来年度はテレワークマンスとしたい」とも語りました。発達の凸凹がある子どもの子育ては、学校への訪問や療育・医療機関へ通う、子どもが学校に行けない時に寄り添う必要が出てくるなど、物理的に時間が必要となることも多いものです。その育児を、母親が一手に引き受けると、自分らしく働くということは難しくなりがちです。母親が時間や場所に縛られずに働ける環境はもちろん、父親もフレキシブルに働ければ、ともに子育てに関わることができます。また、人生100年時代と言われる中で、いったん子育てで仕事を離れた人や、高齢者などが再度働ける環境も必要でしょう。「電車や車で自宅から離れた職場に通勤し、決められた時間帯に働く」以外の働き方への取り組みは、少しずつですが始まっています。発達が気になる子どもを育てる保護者や、自身に障害がある人はもちろん、どんな人も自分らしく働ける世の中へと、選択肢はこれからもっと増えていくのではないでしょうか。
2018年04月27日発達障害のある子どもや家族の困りごとを解消するためにUpload By 発達ナビ編集部「LITALICO発達ナビ」では、サイトがオープンしてからの2年間で、発達障害に関するコラムの発信や、施設情報の提供などを通して、発達障害のあるお子さんや、保護者の方々の生活を取り巻く困難の解消に取り組んできました。一方で、LITALICO発達ナビの力だけでは解消出来ない困難が多いことも事実です。そこで、発達障害にまつわるより多くの困りごとを解消していくため、さまざまな分野の企業とのコラボ企画・協業を進めていこうとしています。その一環として、2018年4月19日(木)に「LITALICO発達ナビ ミートアップvol.1」を実施。ゲストスピーカーによる講演や、さまざまな企業や団体で活躍されている方とLITALICOのスタッフでのディスカッションなどを行いました。LITALICO発達ナビ ミートアップの様子をレポートUpload By 発達ナビ編集部今回のミートアップには、起業や団体などで活躍されている方27名が参加してくださいました。発達障害について、どのような特性や困りごとがあるかなどについて、学びたいという参加者も多かったため、まずゲストによる講演や、ゲストと編集長による対談で、当事者や保護者の思い、発達障害のある子どもや家族をめぐる状況などについて理解を深めていきました。白砂さんは、企業のWEBサイトのコンサルタントをされています。また、発達障害のあるお子さんを育てています。今回の講演では、プロの視点と保護者の視点から、保護者としてどのような不安や悩みを抱いたのか、どのように「LITALICO発達ナビ」に出会ったのか、そしてLITALICOワンダーに通うようになるまで、実体験をもとにお話いただきました。お子さんが発達障害だと気づかないまま、悩みながら子育てをする中で、友人に「発達障害なんじゃない?ADHDがあるのでは?」と指摘されたことがきっかけでネット検索を行い、LITALICO発達ナビの記事にたどり着いたのが、最初の出会いだったそうです。それまでは、発達障害やADHDという言葉も知らなかったそうです。世の中にはまだまだ発達障害についての情報が少なく、知識と出会うことができないで悩みを抱えている保護者も多いので「障害名ではなく、特性による行動についての記事が増えることで、より情報に接触できる人が増えるのではないか」という意見もいただきました。参考:5分で理解!オウンドメディアとは? ~事例とともに分かりやすく説明します~参考:株式会社Faber Company「発達障害のある子どもを育てるご家庭には、さまざま生活課題があります。その解決を、企業タイアップで目指そうと、いくつかの取り組みがスタートしました」と、鈴木編集長から今までに行った企画について紹介がありました。■非日常の状況でパニックを起こしやすいお子さんが、安心して空の旅を楽しめるサービス紹介の例発達が気になる子どもが安心して飛行機に乗るには?JALの子ども向けサービス活用法を徹底紹介!■服薬をしているお子さんが多く、服薬管理が大変だという声から、どのようなサービスがあるとよいかについてモニターによる意見を募集した例発達障害の薬物療法の疑問・悩みに応える情報提供を!電子お薬手帳harmo(ハルモ)×発達ナビ共同企画■多様性を踏まえたマネジメントができるよう、社員向けに研修を行った例ミュゼプラチナム×発達ナビ 発達障害への理解を深める勉強会を開催!上記以外のタイアップ企画についても紹介がありました。Upload By 発達ナビ編集部ゲストの白砂さんと鈴木編集長による対談では、どのような支援やサービスが必要かについて、会場からの質問なども受けながら話が進みました。鈴木編集長(以下、鈴木)LITALICO発達ナビと出会って、白砂さんの中で変化はありましたか?白砂さん原因が分かってすっきりしましたね。原因が分かれば、どう対応すればいいのかなども考えることができますよね。2歳前後の一番大変な頃に、どのように対応したらいいのかという情報に出会えていたらもっと楽だったろうなと思います。電車に乗るのも外食するのも無理でしたから…。鈴木現在お子さんは小学校に通っていらっしゃいますが、お出かけや外食など、社会の中で困りごとはありますか?白砂さん5歳くらいからはだいぶ落ち着いてきたので、外出できるようになってきました。ゲームが好きなので、ゲームさえあればなんとかなります。鈴木夢中になれるものが見つかったことが、困りごとの解消に役立ったということですね。白砂さんはい。夢中になれて、かつ脳によい刺激があるゲームがあるといいなと思います。息子は「LITALICOワンダー」(ロボット教室)に通っていますが、ワンダーに通うことで、得意を伸ばせる環境を整えられていると思います。鈴木では逆に、どのようなサービスが足りていないと感じていますか?白砂さんサービスというか…学校教育ですかね。息子は通常学級に通っていますが、先生1人に生徒35人で、せかせかしている息子は授業中ヒマだと言うんです。通常学級でも、子どもそれぞれの進度に合った教育ができるようになるといいなと。ーここで、会場からの質問を受けました。会場発達障害についてよく知らないという一般の人も多いと思います。どのような取り組みをすれば、発達障害についての認知が進むと思いますか。認知が進めば、小学校でも発達障害のある子どもへの接し方への理解が深まると考えられるので…。白砂さんすでにLITALICO発達ナビがさまざまな情報を発信してくれているとは思いますが…(笑)例えば、学校で配布される「コミュニケーション教室開催のお知らせ」には、発達障害という言葉がまったく載っていません。「苦手を克服しよう」という言葉が使われています。これはとても気になっていて、発達障害と言うのは隠すべきことなのかと疑問を感じています。学校でも、テレビなどのマスコミでも、きちんと取り上げたり、こうした言葉はタブーではないと、ポジティブな考えにならないと認知が広がらないのではないかと思います。鈴木発達障害がある子の特性がずっと一緒かというと、違うんですよね。それぞれのペースで発達するし、周囲の環境によっても変わってきます。かかわり方、学びやすさでも子どもは変わります。学校はもちろん、レストランや空港など、世の中のさまざまなところで、それぞれの子どもの立場に立つということが広まって欲しいと考えています。外食で癇癪を起こすにしても、子どもなりの理由がある。癇癪を起こすという行動の表面だけを見るのではなく、その背景について社会全体が理解を深める必要があるんですね。こうした、社会全体での理解の促進は、一人だけの力では難しいかもしれませんが、一人ひとりが、そしてさまざまな企業が認識し、行動することで変わっていくと、LITALICO発達ナビは考えています。そこで次に、各テーブルごとにディスカッションを行いました。あったらいいサービスや商品って?グループディスカッションで意見交換Upload By 発達ナビ編集部LITALICO発達ナビと企業とのタイアップで、発達障害のある子どものいる家庭の生活課題を解決する取り組み例を紹介した後、あったらいいサービスや商品についてディスカッションをしました。それぞれが働く企業のリソースを使ってできそうなことを出し合うグループも。最後に、各テーブルで話し合った内容について全体に共有をしました。その一部を紹介します。■発達障害への対応について親和性がある企業が単独で行動するだけでなく、親和性がある企業同士がつながって、「発達障害のあるお客さまに対して、積極的な姿勢を取る」と、社会に対してアナウンスしていくことが大切■障害のある・なしもスペクトラムで、明確な境界はない。もっとボーダレスな世の中になればいい■体幹を鍛えられる自転車を販売している。自転車の乗り方講座がペアレントトレーニングに通じる。親子で、スモールステップで取り組むことで、保護者は適切なサポートの仕方を学べ、子どもは自己肯定感を育めそう■AIやチャットボットなどのテクノロジーを活用し、子どもが得意なことを伸ばすサポートができそう■子どもの取扱説明書的なアプリがあると特性を気軽にシェアできそう■保護者自身の安全基地を作りたい。人と人をつなぐプラットフォームがあるといいさまざまな業界の参加者による提案は、どれもワクワクするものばかり。LITALICO発達ナビと企業とのタイアップで実現できることは、すぐにスタートしていきたいと感じました。LITALICO発達ナビ ミートアップは、毎月開催予定!Upload By 発達ナビ編集部こうしたアイディアを実際に社会の中に生み出し、もっと生きやすい世界にするために、LITALICO発達ナビは企業や団体の皆さんとつながり、タイアップして新しいサービスや商品を作り出していきたいと考えています。また、ミートアップなどを通じてタイアップが実現した企画についても、LITALICO発達ナビ上で発信をしていきます。LITALICO発達 ナビミートアップは、これから毎月開催の予定です。それぞれの企業や団体が持っているサービスや商品の力で、社会をもっと生きやすいものにしたい!熱意のある人たちとディスカッションをしたい!という方は、ぜひご参加ください!来月のミートアップは、5月22日(火)に開催します!5月のゲストは、ウェブマガジンgreenz.jpのビジネスアドバイサーを務める小野裕之さんです。小野さんには、「ソーシャルな課題に対して企業とメディアにできること」などについて、実際にご自身がプロデュースされた事例紹介を交えながら語っていただきます。■小野裕之(ビジネスプロデューサー)Upload By 発達ナビ編集部岡山県生まれ。中央大学総合政策学部を卒業後、ベンチャー企業に就職。その後、ソーシャルデザインをテーマにしたウェブマガジン「greenz.jp」を運営するNPO法人グリーンズの経営を6年務め、2018年、同法人のソーシャルデザインやまちづくりに関わる事業開発・再生のプロデュース機能を事業会社として分社化、代表に就任。メディア経営で培ったネットワークを活かし、社会的な事業づくりやスタートアップの育成を行う。greenz.jpビジネスアドバイザー。ジュエリーブランドSIRI SIRI共同代表。おむすびスタンドANDON共同代表。【日時】5月22日(火) 19:00-21:00【場所】株式会社LITALICO東京本社〒153-0051東京都目黒区上目黒2-1-1中目黒GTタワー16F【交通案内】東京メトロ日比谷線・東急東横線「中目黒駅」東口より徒歩1分【対象】企業にお勤めの方で、発達障害のあるお子さまや保護者さまの抱える困りごとの解決に関心をお持ちの方、発達ナビとのコラボレーション企画を希望される方【参加費】2,000円※発達ナビに会員登録されている方は1,500円【プログラム】①発達ナビのこれまでの取り組みと今後の展望紹介②ゲスト講演: NPO法人グリーンズ小野裕之さま③ゲストと編集長による対談: 発達障害の困難さに対して企業にできることは?④発達ナビとのコラボ企画を考えるワークショップ⑤参加者同士の交流・懇親会(ドリンク・軽食あり)参加を希望される方は、以下のフォームよりお申込みください。多くの方のご参加をお待ちしております!
2018年04月27日特別番組「超実践!発達障害 困りごととのつきあい方」の内容は?Upload By 発達ナビニュース2018年4月30日(月)8:15からNHK総合テレビで特別番組「超実践!発達障害困りごととのつきあい方」が生放送されます。NHKが昨年5月から「あさイチ」など10番組で展開している「発達障害プロジェクト」の一環です。特設ホームページでは、「感覚が過敏」「片付けが極端に苦手」「感情のコントロールができない」といった発達障害による困りごとの解決策を募集してきました。すると、当事者や家族などから4000通を超える体験談が寄せられたそうです!今回は、その中から多くの人が悩んでいた「感覚過敏」「片付けが苦手」「読み書き計算が苦手」「コミュニケーション」の4つのテーマを中心にピックアップ。当事者をはじめ、家族や周りの人がすぐに取り入れられる具体的な「対処法」「周囲への助けの求め方」などが紹介されます!また、「困りごと」「周囲の無理解」をどう好転させたのか、実際に経験した転機となった方法や出会いも取り上げます。発達障害プロジェクト「対処法どうしてる?」出演者がスタジオで生トーク!!視聴者の意見も募集Upload By 発達ナビニュースステジオには、モデル・俳優の栗原類さんのほか、一般の発達障害当事者の方8人と専門医などをゲストに招いて、一人ひとり異なる「困りごと」への対処法をトークします。さらに、生放送中にも視聴者からのメールやFAXを募集。リアルタイムで「どうすれば困りごとを解決できるか」「どうすれば人生は楽しくなるか」などを話し合います。事前にホームページでも体験談や意見を募集しています。あなたも「こんな工夫をしてみたらうまくできた」「周りの人にこうしてもらえたらもっと助かる」といった声を送って番組に参加してみましょう。Upload By 発達ナビニュース番組にたくさんの意見が集まることで、より内容の濃いトークが聞けそうですね。これまで、困りごとを誰にも相談できずにいた人も、番組から改善の糸口が見つかるかもしれません。当事者の方だけでなく、身近に困りごとがありそうな人に心当たりがある人も、参考にしてみませんか?【番組名】NHK総合テレビ特別番組「超実践!発達障害困りごととのつきあい方」【放送日時】2018年4月30日(月)8:15〜9:59【出演者】MC:中山秀征、近江友里恵、ゲスト:栗原類ほか、一般の発達障害の当事者8人、専門家「困りごとのトリセツ(取扱説明書)」も一読を!Upload By 発達ナビニュースこのプロジェクトでは「困りごとのトリセツ」と題して、発達障害のある人が感じやすい「困りごと」を整理・解説し、当事者や周囲の人の体験談、要望を集めています。毎週金曜日に情報が更新され、多くの意見が掲載されています。30日の特別番組の予習・復習として目を通してみてはどうでしょう。また、投稿に参加することで、同じ悩みを持つ人の困りごとを軽くすることもできるかもしれません。
2018年04月25日発達障害への薬物療法は向き合い方がポイント!出典 : 発達障害の特性によって、家庭生活、学業、友人関係に支障をきたしてしまう…そんな子どもに対しては、さまざまな支援や医療的なケアを利用することができます。その中で、親として最も判断に迷うものに、薬物療法が挙げられるのではないでしょうか。薬物療法を始めても、「薬物療法が本当に良い決断なのか、子どものためになるのか」「副作用などでかえって子どもを苦しめてしまわないか」など、迷いや不安があるのは当然だと思います。薬物療法に対しては、さまざまな考え方や意見があります。中には判断に迷う情報もあるでしょう。そんな中大切なのは、不安な気持ちのまま薬物療法を進めるのではなく、疑問を解消して自分なりに「薬との向き合い方」を考えていくことです。そこで今回、「薬との向き合い方」を考えるうえで感じることの多い不安や疑問を、発達障害や子どもの薬物療法に詳しい、名古屋大学医学部親と子どもの心療科准教授の岡田俊先生にお聞きしました。その答えを一問一答形式でご紹介していきます。【Q.1】薬を飲むメリット・デメリットって?出典 : 前提として、発達障害を根治したり、その特性を消失させるような薬物療法はありません。薬物療法では、発達障害の特性の一部・発達障害のある子どもに伴うことの多い症状を軽減させることができます。例えば、注意欠如・多動性障害(ADHD)の子どもに見られる、不注意や多動性-衝動性が薬によって緩和されたり、自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもに多く見られる、かんしゃくやこだわりをやわらげたりすることに効果があります。これらの薬物療法の効果によって、その子の生きづらさが軽減されるだけでなく、親や教師がより適切なかかわりをしやすくなることもあるでしょう。薬に関する副作用や、それに伴う安全性への懸念は、多くの方が感じていると思います。ですが副作用は、どの薬にもあるものです。例えば、ADHD治療薬によって、いらだちが強まったり、こだわりが増強したりするほか、食欲の低下などの副作用が見られる子も少なくありません。また、ASDに対する抗精神病薬の使用で、眠気が増す、そわそわとした感じが出現する、月経不順、体重増加といった副作用が現れる子どももいます。あらかじめ子どもが飲む薬の副作用にはどんな症状が考えられ、万が一起きた時はどう対処すればよいのかを把握しておくことが大切です。以上のことを踏まえ、薬物療法においては、常にメリットとデメリットを天秤にかけて検討することが大切です。何を目標として薬物療法を受けるのかを、明確にしておく必要があります。発達障害の治療に関して、薬物療法が唯一の治療法ではありませんし、薬物療法によって改善しうる症状は、その子の抱える問題のほんのわずかな部分に過ぎません。・他の治療に比べて薬物療法を実施するメリットがあるのか・その他の治療と組み合わせることで相乗効果が得られるのか・薬物療法をいつまで続けるのかこの3点を中心に考えながら、薬物療法を進めることが重要です。【Q.2】薬物療法って、途中でやめられるの?出典 : 精神科の病気に用いられる薬には、一度服用すると、再発を予防するために薬物療法を続ける必要があることがあります。そのイメージが強いためか、発達障害の薬物療法でも「一度始めたらやめることができないのでは?」と考えている親御さんが少なくありません。確かに、子どもの様子を見て、薬の力が継続的に必要であれば薬物療法を続ければよいでしょう。しかし、薬物療法の標的となっていた症状がすでに改善しており、薬物療法を中止しても、概ねその状態が維持できるのであれば、薬物療法を続ける理由はありません。そのためにも、どんな症状を標的として薬物療法を開始したのかを明確にしておくことが、不要な薬物療法を漫然と継続しないためにも大切なのです。服薬を継続することのメリットやデメリットは、子どもであっても感じ取っているものです。親御さんの意見だけでなく、その子の服用感を大切にしながら、継続を検討していくとよいでしょう。【Q.3】薬物療法に対する意見が周囲と合わない時、どうすればいい?出典 : 薬物療法を巡って、子ども本人、親御さんにも迷いがある場合も少なくないのですから、ご家族の意見が一致しないことがあるのも当然のことです。自分の中でようやく決心に至ったのに、家族の意見で、また気持ちが揺れ動いてしまい、煩わしいと感じることもあるかもしれません。賛否を議論していても、何も決まりません。それよりも、現在の状況について、どのように考えているのか、服薬に際して何を期待し、何を心配しているのかを明確にすると、意外に対立点はないはずです。また、家族は薬物療法を開始したいという気持ちで一致しても、当の子ども自身が納得しないことがあります。あなたや周囲の大人がいかに困っているかを話して薬物療法の同意を取り付けようとする前に、子どもが薬に抵抗する理由を聞いてみると、「薬を飲むと自分が変わってしまうように感じる」「薬をのむと自分が病気であることを認め、どこか負けたように感じる」「とにかく特別なことはいやだ」など、その子ならではの理由があるものです。その背景には、発達障害をどのように受け止めているか、発達障害とともに育ちゆくことにどのような経験や思いを重ねているかなど、さまざまな認識が影響しています。薬を飲む・飲まない、ということから離れて、そういう思いの一つひとつを時間をかけて扱うことが大切でしょう。【Q.4】セカンドオピニオンを受けることも有効?出典 : セカンドオピニオンは、かつては「主治医の診断や治療方針に納得がいかないときに受ける」というような印象があり、患者の側も遠慮しがちに希望を申し出ていたところがありました。しかし、今日では、セカンドオピニオンは、安心して医療を受けてもらうため、医療側から見ても歓迎すべきプロセスとなっており、大学病院などでは重要な役割となっています。発達障害の診断は、その特性の程度により、どこから診断閾値を超えていると考えているか、医師によって若干異なることも考えられます。また、発達障害の場合、薬物療法を行うか否かは、診断の有無よりも、現在の状況を改善するためにどのような工夫が可能かという見立てによることが多いです。そのため、これまでの子どもの経過を最も知る主治医が適切な提案をできるとは思いますが、セカンドオピニオンで別の医師の意見を求めることも有益なことがあります。いずれにしても、発達障害の診療にあたる医療機関は限られています。そのため、通院中の医療機関に安心してかかるための工夫の一つとして、セカンドオピニオンも位置づけるとよいでしょう。【Q.5】子どもに対して、服薬をどう伝えればよい?出典 : まず、前提として、服薬の説明にしても、障害の告知にしても、親御さんのみで進めるのは避けましょう。障害の告知は、本来、その子の得意なところや苦手なところなど、子ども自身がさまざまな特性について自己理解を進めるうえで行われます。また、障害告知に関しては、単に障害名が伝えられるだけでは不十分です。その障害特性を踏まえて、直面している問題について可能な工夫を考えたり、新たな問題が生じても、そのことについて医師や学校の先生、家族と一緒に取り組んでいってもらえる安心感のある状況の中で行われたりする必要があります。薬物療法の提案も、その工夫の一つの方法として提案されることが大切です。服薬を説得するために告知をする、というのは、大きなマイナスの結果をもたらす可能性があります。もし、子どもへの伝え方が、1. その子どもが抱えている問題が現状では解決できない2. 解決できない理由はその子のもつ発達障害にある3. そのために薬物療法が必要であるこのような順序になると、「薬物療法を受け入れる=周囲とさまざまな問題を抱える発達障害特性がある」ということを、子どもに受け入れるように迫るということになり得ます。発達障害だから問題と直面せざるを得ないわけでも、発達障害だから服薬をしないといけないわけでもないのです。ですので、服薬のために障害を告知するというタイミングはよくありません。このノウハウは、医師がさまざまな経験のもと蓄積していますので、医師に任せて、親はどのようにそのプロセスに参加すべきか相談していくのがよいでしょう。出典 : その子どもの年齢や能力などを踏まえ、その子に応じた説明を行い、同意を得る必要があります。未成年の場合には、薬物療法の実施にあたり、保護者の同意(インフォームド・コンセント)が必要になりますが、親だけが納得していても子どもは服薬してくれませんし、同時に子どもの思いや決断も尊重する必要があります。そのために、その子の理解力に応じた説明を行い、同意(アセント)を得る必要があります。しかし、アセントを取得するにあたって、どのような説明を行うかは、医師の裁量に委ねられており、そこはその子の理解力を踏まえた医師としての力の見せ所ともいえる一方、そのような説明のもとに行われたアセントが本当に同意といえるかは悩ましいところでもあります。そのような説明と同意の現実をまず踏まえておくことが大切でしょう。その子の困りごとを整理し、その解決に薬物療法がどのように役立ちうるかと、薬物によって生じうる副作用を伝え、薬物療法を希望するかどうかについて子どもと話し合うことになります。その子の困りごとは、その子の視点からみた困りごとでなければなりません。「友達と仲良くなりたいと思っているのに、ちょっとしたことでキレてしまい、けんかになってしまう」「お母さんのことは好きなのに、早くしなさい、といわれるとかっとしてしまい、思わず物を投げてしまう」…これらのことに対して、本人ができる工夫、周囲ができる工夫など、いろいろあると思います。それらを行ってもうまくいかない時に、薬にも助けてもらうかどうかが話題になるわけです。薬には助けてもらうだけで、結局大切なのは本人の努力や工夫です。もし、薬物療法がとても有効であっても、薬ではなく、その子どもの頑張りを褒めてあげることが大切です。【Q.6】子どもの成長につれて、薬を拒否するようになったらどうする?出典 : 薬は対症療法にすぎませんから、その標的とした問題が解決すれば、中止を試みることになります。このような試みは、必ずしも医療主導とは限りません。ご本人やご家族の判断で、週末はやめてみた、長期休みなので飲まなかった、飲み忘れた日があったが問題なかった、など、いろいろなパターンがあります。一度、中止をしてみて、服薬を続けることのメリット、デメリットを再確認するのはよい方法です。服薬開始時点で、「何歳になったら卒業、薬に頼るのをやめよう」などという提案をされたという親御さんの話も聞きますが、このような表現は、薬を使用することが何かよくないことのような響きを持ってしまいます。本当に必要な薬であれば続けたらよいですし、現実には、そのような限界を設定しなくても、その年齢の前にやめてみようという試みが、ご本人やご家族からあることの方が多いものです。子どもが急に薬を飲むのを嫌だと言い出した、というケースもあります。その時には、なぜと問い詰めるより、その思いになったきっかけを確認することが大切でしょう。自意識が高まって「人と違うことはいやだ」と思うようになったのかもしれませんし、「何に対して自分は薬を飲んでいるんだろう」と思い、障害の受容をめぐって揺れ動いていることもあります。その場合、薬の服用については、本人の思いを尊重していったんやめてみることが多いです。ですがそのことよりも、そのような子どもの心の揺れ動きについて、診察のなかで扱うことが大切です。最後に、大切なことは、医師が服薬を薦め、子どもがそれに従う、という関係ではなく、薬物療法を含め、さまざまな話題を医師・親・子どもで一緒に考えていけるような関係性です。そのような関係性のもとでは、服薬をやめたいと思う、といったこともオープンに話し合えます。医師の処方通りに服用していないことがあるのは、医療全体にいえることです。しかし、抗うつ薬のように自己中断が離脱症状をもたらす薬もあります。「医者に通うこと=薬をもらうこと」ではない治療関係であれば、薬をめぐるオープンな話し合いができ、服薬の中止についても医師との相談のうえで、計画的にすすめていくことができるでしょう。まとめ出典 : 親としては、自分の子どもが一定期間にわたって薬を服用することに対し、どうしても不安やためらいを感じずにはいられないと思います。薬物療法の開始を決定した後でも、子ども本人にどう伝えるか、周囲とどのように意見をすりあわせていくかなど、さまざまな悩みが生まれることでしょう。あくまでも薬は対症療法の1つであり、メリットだけでなくデメリットもあります。薬を飲むことがどのような意味をもつのかを基準に考えることが重要です。また、薬を使うことは他の支援方法を諦めるということではなく、常に並行して考えていく必要があります。その子が発達障害とともに育つ、そして発達障害のある子を育むという歩みの中で、医療とどう付き合い、利用していくのか、こういった視点の中で、自分なりの薬に対する向き合い方を考えていきましょう。
2018年04月09日発達が気になるお子さんや、障害のあるお子さんがサポートを受けることができる場所である、「放課後等デイサービス」や「児童発達支援事業所」。発達ナビでは「施設情報」のコーナーから、お住まいの地域の教室を簡単に探すことができます。また、各教室の特徴や、利用者の声も合わせて知ることができるので、お子さんにぴったりの教室を探すことができます。今回は、大阪府で情報をアップデートしてくださった教室をピックアップ!気になる施設を見つけたら、「ページを見る」をクリックして、詳しい情報をチェックしてみてくださいね。発達ナビ「施設情報」大阪府 放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報放課後等デイサービス サニーは、五感に働きかけるプログラムを通して、自己効力感を高め将来の可能性を拡げる支援を実施。管理栄養士によるクッキング教室やワークショップ等を毎月実施し、2月からはロボットプログラミング教室も開講しています。Upload By 発達ナビ施設情報運動療育のはじめのいっぽは、40種類以上のプログラムの中から一人ひとりにあった選択のできる運動サポートを行っています。小集団で思いっきり身体を動かし遊ぶことで、子どもたちが本来もっている力を引き出すように努めていきます。Upload By 発達ナビ施設情報めだか千代崎は、知育学習や体験学習などを通して、日常生活における基本的な動作の指導、集団生活への適応訓練を行っています。また中高生へは、就労準備の支援・訓練もあわせて実施しています。Upload By 発達ナビ施設情報歯科のサポートも行なっているアイオライトは、子どもたちの自然な行動を通して、発達を促していく支援を実施。また、目で捉えたものを脳で処理し体を動かすことで身体機能を高めるトレーニングも行っています。Upload By 発達ナビ施設情報ばうむくうへんでは、たのしいこと・やるべきこと・みんなでいっしょにやるべきことなど、日常生活でのメリハリや社会性を養いながら充実した生活を送れるよう支援・指導しています。特に、ソーシャルスキルトレーニングや個々に合わせた学習支援に力を入れている教室です。Upload By 発達ナビ施設情報風・福祉会は、ソーシャルトレーニングに力を入れており、お買い物や図書館での学習支援を通して日常生活に必要なマナーを身につける支援などを行っています。教室内には駄菓子屋が設置されており、楽しくお釣りの計算の練習をすることができます。大阪府の「放課後等デイサービス」を探す!大阪府 児童発達支援事業所Upload By 発達ナビ施設情報ウキウキあーるさやま教室は、個別学習支援のほか、買い物支援や調理実習などを通じて子ども達が将来自立して生活できることを目指しています。一人ひとりに役割を持ってもらい、社会性を身につけられるよう支援を行なっています。大阪府の「児童発達支援事業所」を探す!おわりに出典 : いかがでしたか。気になる施設がありましたら、「~のページを見る」のボタンを押してみてくださいね!教室の先生たちが書いているブログや、利用者の方が投稿した口コミなどを見ることもできます。「空き状況を知りたい!」「教室見学をしたい!」と思ったら、WEB上からもお問い合わせを行うことができますので、ぜひ試してみてください。今後も掲載数がどんどん増えていきますのでお楽しみに!
2018年02月06日思春期を迎える発達障害の娘。心身の変化、どう伝える?出典 : 発達障害のある女の子は、特性ゆえの困りごとや、女の子ならではの困りごとに悩んでしまうことがあります。特に思春期を迎えると、心身の変化や、異性・同性の付き合い方の違いに戸惑いを感じてしまうことが多くあります。そのため、母親や祖母などの身近な女性が、子どもの特性に合わせて、心身の変化への対処法や必要性を教えたり、交友関係での困り感をサポートすることが重要です。一方で、きちんと教えなければいけないと分かりつつも、デリケートかつプライベートな思春期の諸問題を、どう伝えるべきか迷ってしまうこともあるのではないでしょうか。また、年ごろの子どもには聞き入れてもらえない場合もあるかもしれません。加えて、発達障害のある子どものなかには、特性として、抽象的な話し方が理解しにくい子や、視覚優位の子もいます。そのような場合、口頭で教えてもうまく伝わらない場合があります。そこで今回、女の子の発達障害や第二次性徴、性教育が取り上げられていて、思春期を迎える女の子のサポートに役立つ本をご紹介します。特性がある子どもにとっては、本の文章や図、イラストの方が、口頭で説明されるよりも理解しやすいかもしれません。これらの本を通して親が思春期の子どもについての理解・知識を深める、本を親子で一緒に読んでみる、本を子どもに手渡してみるなど、活用してみてはいかがでしょうか。保護者が発達障害のある女の子を理解するのに役立つ本出典 : はじめに、発達障害の女の子がいる保護者が、女の子の発達障害の特徴や、思春期を迎えた際のサポートを学べる本を2冊ご紹介します。そもそも発達障害とは何なのかという基礎情報に加えて、女の子ならではの特性について分かりやすく解説しています。女の子に多く見られる特徴や、女の子ならではの困りごと(友達関係、身だしなみなど)についても詳しい原因や対処法を紹介しています。乳幼児期から思春期まで網羅されているので、子どもがどの年齢でも役立つ情報が得られる一冊です。この本では、自閉症スペクトラム障害の女の子が、思春期を迎えて困ってしまいがちな、生理との向き合い方や生理用品の使い方、胸の発達に合わせた下着の選び方、性に対する考え方に関して、実例をまじえながら説明しています。特性に合わせた実践サポート術が豊富に紹介されているので、生理や下着、性に関することを教えるときに非常に役立ちます。また、自閉症スペクトラム障害のある女の子は、先のことが想像しづらい、予期しないことが起きるとパニックになりやすいといった場合があります。そのため、思春期を迎える年ごろの女の子がいる親御さんはもちろん、将来に備えて低年齢のお子さんの親御さんが読むこともおすすめです。これから子どもに起こり得る変化をあらかじめ把握し、いつどのように教えていくかを考えるきっかけにもなる本です。発達障害の女の子が思春期を迎えたときに読んでほしい本出典 : 続いて、思春期を迎えた発達障害の女の子向けに、自分や周りの心身の変化などに関して知ることに役立つ本を4冊ご紹介します。この本を手に取ると、自分にはどんな特性があり、それがどんな困りごとをもたらしているのかを把握できます。また、親には聞きにくいけど知りたい体の変化や、心の変化に伴う異性・同性との付き合い方、性に関することを自分で情報収集することが可能です。親子で一緒に読むのも良いですし、子どもにそっと渡してみるのも良いでしょう。この本は、自身も29歳でアスペルガー症候群と診断を受けた当事者であり、現在は自閉症の研究に従事する女性、デビ・ブラウン氏によって書かれた本です。主に著者よりも若い思春期の女の子たちに向けて、恋愛や性のこと、またそれに伴う危険から身を守る方法について、丁寧に述べられています。性や恋愛に関することは、通常すみずみまで教えられることは少なく、同世代の友達との会話やドラマ・漫画などからの情報収集、実体験から自然に把握・習得することがほとんどではないでしょうか。ですが、自閉症スペクトラム障害、アスペルガー障害の女の子たちは、この「自然に把握・習得」していくことが苦手な傾向があります。そのため、性や恋愛で悲しい思いや危険な目に遭うことが多いといいます。なかなか説明しにくい性・恋愛のことや、そこからくる危険や辛さから身を守り、癒す方法をこの一冊を通して伝えてみてはいかがでしょうか。こちらは女の子の体の変化について詳しく学べる、ワークブック式の本です。自分の体がどのようになっているのか、どう変わっていくのか。そして、徐々に女の子から女性になっていく中で、どんなことに気をつけるべきなのか、具体的に学ぶことができます。また、この本には「着せ替えふろく」もついており、女の子の体の仕組みと思春期を迎えるにつれて現れる変化を、手を動かしながら理解することができます。アスペ・エルデの会/著『おとなになる女の子たちへ』アスペ・エルデの会このハンドブックは、知的障害の方の支援を行う「全国手をつなぐ育成連合会」が出版した、主に性行為に関して取り上げたものです。子どもが読んでも理解しやすい表現で、親の口からはなかなか説明しにくい性に関することが書かれています。男女の体の仕組みから、性行為が遊びではないこと、重要なことであるという内容が分かりやすくまとめられています。支援者向けの解説も記載されているので、子どもに性のことをどう説明すればよいか分からないという親御さんも手に取ってみると、参考になるかもしれません。全国手をつなぐ育成連合会/著『自立生活ハンドブック16性・SAY・生(せい・せい・せい)』さまざまな発達の遅れで、性に関する理解が難しい子ども向けに、男女の体の仕組みや性行動、性的人権などについて、分かりやすい文章とイラストで解説されています。子ども1人でもある程度読むことが可能な本ですが、内容が盛りだくさんなので、「まずはこの部分を読んでみて」など、親が特に読んでほしい部分を事前に話して渡したり、付箋を貼ったりするなどして気軽に読めるように工夫してあげるのもよいでしょう。この本は、発達障害の女の子に特化しているわけではありませんが、女の子に訪れる心と体の変化について、漫画形式で説明されています。生理の始まりのような体の変化や異性への興味など、親から直接教えにくいことが、読みやすく優しい語り口と、かわいらしいイラストによって、子ども1人で読んでも理解しやすくまとまっています。また、同じ著者から『15歳までの女の子に伝えたい自分の体と心の守り方』も出版されています。子どもの年齢にあわせて選んであげるとよいでしょう。大人になったらどうなる?女性の発達障害が分かる本出典 : 発達障害の女の子がいる親御さんの中には、「この子が大人の女性になったとき、どうなるのだろう」「就職や結婚、子育てなどできるのだろうか」など、子どもの将来に関して漠然とした不安を抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。わが子が女の子から女性になるとき、どんなサポートが必要なのか…発達障害の女性を対象に書かれた本を手に取ってみるのも、子どもの将来をイメージするうえで、重要なヒントになるかもしれません。発達障害の女の子は、男の子より問題行動が現れにくく目立たない、という特徴があるため、子どもの頃に発達障害だと気づいてもらいにくいことが多くあります。そして成長し、成人になると就職や結婚、子育てといったより複雑で高度なスキルや社会性を求められるようになり、ますます生きづらさや困りごとを感じてしまう女性が少なくありません。このタイミングで医師やカウンセラーに相談し、自身が発達障害だと分かることも多いようです。この本では、冒頭に「家事ができない」「子育てが苦手」「男性との距離感が分からない」「仕事がうまくいかない」といった、具体的な生活の場面における困りごとが紹介されています。この部分から、「大人になるとこんなシーンで困ることがあるのか」と納得したうえで、読み進めることができます。このような困りごとの対処法はもちろん、女性ならではの発達障害の特徴や幼児期から老年期までの特徴も網羅されています。ADHDの特性がある、働く女性を主人公にした一冊。漫画形式なので、スムーズにストーリーを追うことができ、読み終えるころにはADHDの特性とそのサポート方法が理解できるようになる本です。仕事の「困った!」、片付けの「困った!」、感情・体調の「困った!」の章には、共感できる方も少なくないと思います。ADHDのある女の子を育てる親御さんにとっては、子どもが就職し、一人暮らしをする場面でどんな困りごとが起こるのか、イメージするにも役立ちます。この本は、40代になって発達障害の診断を受けた星野あゆみさんが、社会生活を送るうえで感じた困惑と、折り合いの方法を自ら語る内容になっています。転職を繰り返しながら、仕事や生活のさまざまな困りごと・生きづらさと向き合ってきたエピソードは、女の子の親御さんにとっても参考になること間違いなしです。エピソードは漫画形式で紹介されているので読みやすく、また漫画のイラストは「発達ナビ」でもおなじみの、かなしろにゃんこ。さんが担当されています。気軽に手に取れる一冊ではないでしょうか。まとめ出典 : 「発達障害って何?女の子と男の子でどう違うの?」「思春期の女の子への性教育、子どもの特性に合わせて行うには?」「娘は将来どんな女性になるのだろう?」など、発達障害の女の子を育てる親御さんは、さまざまな不安を抱えていることと思います。また、女の子自身も、成長するにつれて「どうして周りの友達みたいに普通のことができないんだろう」「どうして友達がなかなかできないんだろう」「体の変化に戸惑い、誰かに相談したいけど恥ずかしい」というような悩みを抱えることもあります。そんな親子それぞれの不安を解消する方法の一つとして、この記事で紹介したような本を一緒に読んでみたり、子どもに手渡してみたりすることをおすすめします。ぜひ、気になった本を手に取り、親自身の女の子の発達障害の理解や、自分の成長に戸惑う女の子のサポートに役立ててみてください。
2018年02月01日『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』著者の立石美津子です。みなさんは、「就学猶予(就学義務の猶予)」という制度についてご存知でしょうか?これは、病気などの理由で、就学年齢になったけれど小学校入学が難しい場合に、治療・療養をし、教育を行けられる状態になるまで入学を遅らせることができる制度です。ですが、持病はないけれど子どもの発達が遅い場合に、この制度を利用し、1年間しっかり訓練して周りの子ども達と同じようにできるようになってから小学校に入学させようと考える保護者さんもいるようです。つまり、1つ下の学年の子ども達と一緒に小学校に入学するのです。私自身にも、自閉症の息子がいますが、自閉症のある子どもの家庭がこの制度を活用することに、疑問を感じています。1年間しっかり訓練してようやく追いついたとしても、入学後に同級生と同じようにできるでしょうか?また、子どもはつらい思いをしないでしょうか?「就学義務の猶予」とは?出典 : そもそも、「就学猶予」って何?特に持病がない自閉症児の場合でも使えるの?と疑問を持つ人もいらっしゃると思うので、まずこの制度について説明したいと思います。日本では明治時代の中期ごろから義務教育の基盤が出来上がり始めました。でも、当時は障害のある児童が学校で義務教育を受けるための環境はほとんど整備されていませんでした。そのため、障害のある子どもの保護者は「就学義務の猶予又は免除」を受けることとなり、結果として、障害のある子どもたちは教育をほとんど受けられませんでした。つまり就学義務の猶予や免除は、その制度の確立当初、重い障害がある子どもが義務教育を受けられない場合に利用されてきたのです。1970年代に養護学校(現・特別支援学校)が義務化され、特殊学級(現・特別支援学級)も増設されました。これ以降、就学猶予や免除を利用する必要のある家庭の数は大幅に減っています。つまり、障害があっても、学校に通える子どもが増えたのです。ちなみに、就学義務が猶予や免除される事由については、次の通りです。日本国民に対して、この就学義務が猶予又は免除される場合とは、学校教育法第18条により、病弱、発育不完全その他やむを得ない事由のため就学困難と認められる場合とされています。ここでいう「病弱、発育不完全」については、特別支援学校における教育に耐えることができない程度としており、より具体的には、治療又は生命・健康の維持のため療養に専念することを必要とし、教育を受けることが困難又は不可能な者を対象としているところです。参考URL:文部科学省|養護学校の義務制実施への道発達が「ゆっくり」と「凸凹」の違いは?出典 : ある幼稚園の園長先生が、発達障害児を育てている保護者に、何気なく次のような言葉をかけていました。「発達がゆっくりなのだから、焦らないで、のんびりと長い目で見て育てましょう」園長先生が意図して言ったわけではなくても、親御さんの中にはこの言葉で誤解してしまう人もいます。「ゆっくり」という表現には、兎と亀の昔話のように、歩みの遅い亀でも地道に努力して頑張れば…・必ずゴールに到達する・いつかは追いつくというニュアンスを私は感じます。「マラソンでゆっくり走っていても、途中棄権することなく完走すれば、いつかは皆と同じゴールに達する」と解釈して、「頑張らせれば、いつかはほかの子と同じことができるようになるだろう」と考える方もいらっしゃるでしょう。もちろん、ゆっくり発達し、障害のないお子さんに追いつくお子さんもいるかもしれません。でも、発達障害のある子どもは、能力のバランスや凸凹が大きいことが多く、単に「ゆっくり育つ」というのとは少し意味が違うのではないかと、私は考えています。1年遅れで、子どもを小学校に入学させた知人の選択出典 : 年以上前の話ですが、私の知り合いの自閉症児の保護者がこの制度を利用して、子どもに幼稚園の年長クラスを2年間経験させてから、小学校へ入学させました。自閉症以外「病弱である」などの遅れはありませんでした。知人は「年長さんを2年も経験すれば、ほかの子と同じことがきっとできるようになるに違いないわ」と言っていました。当時は自治体によってこの制度が自閉症児にも一部適用されていたようです。特別支援学校のことを養護学校、特別支援学級のことを特殊学級とまだ呼んでいた時代で、発達障害とかアスペルガー症候群の言葉もまだ理解されていなかった時代でした。その知人の選択を否定するつもりはありませんし、実際に1年遅らせることでできることが増える部分もあったかもしれません。でも、同じく自閉症のある子どもを育てる親である私は、心の中で「1年遅らせたからといって、同級生と同じようにできるようになるのだろうか…?」とも思っていました。特別支援教育についてありのままに受け入れ、子どもに合う教育を選ぶことの大切さ出典 : 特別支援教育が浸透している現在では、自閉症があることだけを理由に、就学猶予が認められることはそれほど多くはないようです。でも、幼稚園や保育園や療育関係者から「お子さんは発達がゆっくりなのですね」と言われると、「うちの子は少し発達がゆっくりなのだ。だから1年遅らせてその間に頑張らせれば、何とか追いつくだろう」と考え、この就学猶予を検討する人もいるかもしれません。発達がゆっくりであることと、凸凹があることとは、違うのではないかと思います。まず、「子どもに合った教育は何か」「その選択は、子どもに無理をさせすぎはしないか」ということを考えてほしいと思います。そのうえで、通常学級か特別支援学級か特別支援学校かを吟味するのがよいのではないでしょうか。保護者が子どもを「ありのままに受け入れる」ことは、子どもの育ちにとって、とても大切なことです。「できるだけ健常児に近づけよう」とすることは、保護者の願いであって、子どもに必要な環境や学びとは重ならないかもしれない。ありのままを受け入れたうえで、子どもにとって最適な道を選択をしていってほしい、私はそう願っています。
2018年01月30日いつでも、どこにいても、子どもの発達について学び支え合える場所をつくりたいー2周年を迎えた発達ナビのこれまでとこれからUpload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)「私の住んでいる地域には、支援を受けられる施設も少ないし、発達障害の親の会もないんです。LITALICOはいつになったらうちの地域にも教室を出してくれるんですか」このような声をいただいたのが、「LITALICO発達ナビ」をはじめたきっかけのひとつでした。発達ナビを運営するLITALICOは、子どもの発達をサポートする教室「LITALICOジュニア」を関東・関西にて運営していますが、まだまだ全国各地に教室を出すには至っていない状況です。それでも、全国各地には困っている子どもたちや保護者の方々がたくさんいる。教室は出せなくても、なんとかサポートすることはできないだろうか。インターネットなら、場所や時間を問わず情報を届けることができるし、ユーザーさん同士で交流や情報交換をすることもできる。全国どこにいても、子どもの発達について学び支え合えるコミュニティをつくりたい。そんな思いから、「みんなでつくる発達障害ポータルサイト」として、LITALICO発達ナビは始まりました。2016年1月26日にリリースし、本日がちょうど、2周年の節目となります。いまでは、月間約240万人の方に訪問していただけるようになり、また会員登録ユーザーさんの数も10万人を超えました。この記事では、発達障害を取り巻くこの2年での社会の変化や発達ナビの歩みを振り返ると共に、サービスの今後の展望と、ユーザーの皆さんにサービスを届ける上での運営スタッフの思いをお伝えできればと思います。高まる社会の「発達障害」への関心。より深く、よりきめ細やかな情報を届けるには?出典 : 年は、NHKが番組横断での通年企画として実施した「発達障害プロジェクト」をはじめ、これまで以上に、さまざまなメディアが「発達障害」に注目した情報発信を行った年であったように思います。比例して、世の中の人々が発達障害に関連したキーワードでインターネット検索をする頻度も大きくなり、発達ナビに訪れる人の数もますます増えていきました。プレスルーム: 5月21日(日)放送 NHKスペシャル「発達障害~解明される未知の世界~」の制作にLITALICOが協力しました。発達ナビに限らず、多くのメディアが発達障害を取り上げるようになったことで、少しずつ、発達障害に対する認知は広がってきているように思います。一方で、発達障害と一口にいっても、一人ひとりの特性は千差万別です。特性の凸凹の大きさ、診断の有無、どのような環境にいて、どのような支援を必要としているか…「発達障害だから」と十把一絡げにするのではなく、一人ひとりの「ちがい」を踏まえたかかわりあいが何よりも大切です。実際に子育てをしている保護者の方々、ご自分の発達特性に悩まれる方々に対して、一般論に留まらない、具体的で参考になる情報をどのように届けられるか。他のメディアではカバーされない、発達ナビだからこそできる情報発信はどのようなものだろうか。そんなことを議論しながら、2年目の発達ナビでは、さまざまな新しい取り組みを行いました。たとえば「コラム」コーナーでは、基礎情報や体験談だけでなく、より深く専門的な解説や、実際の保護者・当事者の多様な声を取り入れながらの特集を企画していきました。自分の子どもに合った発達支援施設を探し、問い合わせができる。「施設情報」のリニューアルUpload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)また、「コラム」を中心とした情報発信だけでなく、全国各地で、困っているご家庭が必要な支援につながりやすくなるための機能の開発にも取り組んできました。昨年の大きな変化としては、「施設情報」コーナーをリニューアルし、全国の発達支援施設の検索・比較や問い合わせができるようになりました。発達が気になる子ども向けの通所施設「児童発達支援事業所」や「放課後等デイサービス」は、行政の認可を受けて運営される施設のため、お住まいの自治体の役所に行けば、近隣にある施設表などを受け取ることはできます。しかし実際は、一つひとつの施設には違った特色があり、さまざまな方針やプログラムで支援が提供されています。また、近隣の施設に空きがあるかどうか、見学が可能かどうかも、保護者の方が問い合わせをするタイミングによってまちまちです。そういった施設ごとの詳しい特徴や現在の運営状況までは、自治体への問い合わせでは確認することが難しいのが現状です。発達ナビでは、施設を運営する事業所の方々にもヒアリングを重ねてきましたが、具体的な運営情報を保護者へと届ける方法に困難を感じているという声も少なくありませんでした。そこで、「子どもの発達を応援したい」という発達支援施設と、「自分の子どもにあった施設を見つけたい」という保護者をつなぐサービスとして、「施設情報」の機能拡充を行いました。発達ナビと掲載契約をしてくださった施設のページでは、より詳しい運営情報、写真やブログ、問い合わせボタンなどが表示され、保護者の方々がより具体的な情報収集をし、自分の子どもを通わせる施設の比較検討・問い合わせができるようになっています。(掲載契約をしていない施設についても、自治体に登録されている全国の基礎情報を掲載しています)発達ナビ「施設情報」はこちらからUpload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)発達ナビに詳細情報を掲載いただいている施設数は、2018年1月26日現在、450施設以上となりました。今後も引き続き、多くの施設の方に発達ナビ上で情報発信をしていただけるよう、全国の施設の方々と交流を重ねていきたいと思います。※発達ナビへの掲載を希望される施設運営者の方は、以下のページからご連絡ください。発達ナビへの情報掲載ご希望の施設さま向けお問い合わせページ保護者同士の交流と、発達支援施設選びの方法をお伝えする「発達ナビ保護者会」も全国各地で実施しています。以下のコラムと、メールマガジンでお知らせしていますので、ご興味のある方はぜひご参加ください。便利なアプリ・グッズや、生活の困りごとを解消するサービスを、企業とのコラボで企画中旅行やお出かけ、食事や栄養、学習や運動、身辺自立に服薬管理…発達障害のあるお子さんが大きくなっていく上で、さまざまな生活場面で困難に直面することが予想されます。学校や発達支援施設でのサポートも重要ですが、発達障害のある人たちが過ごしやすい社会を作るためには、民間企業の力も取り入れながら、便利なアプリ・グッズを企画・発信したり、住まいやお店、交通機関などの環境を過ごしやすく変えていったりと、生活環境全体を変えていくことが必要だと考えています。そこで、発達ナビでは昨年から、発達障害のあるお子さんやご家族をサポートするコラボ企画を企業の皆さんと一緒に企画・実施しています。新たな商品・サービスの共同開発や、発達障害のお子さんに役に立つ商品・サービスの紹介記事、ユーザーの皆さんの声を企業に届ける交流・モニター企画などなど、これから様々な企画を実施していく予定です。※発達ナビとのコラボを希望される企業さまは、以下からお問い合わせください発達ナビとの共同企画をご検討の企業・団体さま向けお問い合わせページ一人ひとりの「ちがい」を、これからも大切にできる場所であるように出典 : 「ここでは安心して悩みを吐き出せる」「嬉しいことも、辛いことも、自然体で共有できる」タイムラインやコミュニティなどの投稿コーナーを利用される発達ナビユーザーさんから、そんな声をいただくことがあります。私たち発達ナビは、これからもユーザーのみなさんが「安心」して、自然体で過ごせる場所であり続けたいと思っています。発達障害や、発達特性の凸凹による困りごとは、何か一つの解決策で一朝一夕になくなるものではないことがほとんどです。生きている中で、うまくいくこともあれば、落ち込むこともある。一人ひとりが、自分の特性と向き合い、社会の中で他者とかかわりあいながら、自分自身の物語を紡いでいくものなのだと思います。そして、私たちはその長く続く人生の「過程」にこそ、寄り添えるサービスでありたいと思うのです。発達ナビ編集部とともに、コラムを執筆してくださるライターさんの中には、1年, 2年と長期にわたって連載を続けてくださっている方もいます。新しいお子さんが生まれたり学年が上がって環境が大きく変わったりお子さん自身が発達障害に関心を持って自分のことを知ろうとしたり受験や進学、就職と、自立に向けた人生の節目を迎えたり…ライターさんの連載中には、ライターさんとそのご家族に、たくさんの変化がありました。また、発達ナビの中にも、30名強の運営スタッフがいて、一人ひとり違った背景を持ってこの場に集まっています。自分の子どもを発達支援施設に通わせている保護者もいれば、私のように最近子どもが生まれたばかりの新米保護者もいます。発達ナビで働く中で、自分自身の発達特性に気づき、自分とより深く向き合うようになったスタッフもいれば、今から発達障害について知りながら、社会に貢献できる仕事を考えていきたいという大学生インターンもいます。福祉や教育の現場を経験したスタッフもいれば、まったく違う業界から飛び込んできたスタッフもいます。立場や背景は違えど、発達障害を取り巻く社会環境をより良くしていきたいという思いは変わりません。ですが、発達ナビのこれからのサービスのありようは、私たち運営スタッフが「答え」を決めるものではないと思っています。ユーザーの皆さんも、連載ライターの皆さんも、私たち運営スタッフも、一人ひとりが変わり続ける人生を歩んでいくなかで、関わり合い、対話を重ねながら、一緒につくりあげていければ嬉しいです。2周年に際しては、ユーザーの皆さんからもたくさんのお祝いと、そして今後のサービス進化への期待の声をいただきました。一つひとつ拝見し、今後のサービス企画・改善の参考とさせていただきます。これからもご意見をお寄せください。【発達ナビ2周年!】発達ナビでのお気に入りのサービスを教えてください!【発達ナビ2周年!】「発達ナビにあったらいいな」と思うサービスを教えてください!最後に、とある専門家の先生にいただいた言葉をご紹介して結びとさせていただきます。「人は一生、発達していく。発達に終わりはない」人生は長期戦のマラソン。これからもみなさんの日常に、長く、長く寄り添い続けられるサービスであればと思います。
2018年01月26日2周年を迎えたLITALICO発達ナビ、ユーザーの皆さんの声を募集しました!Upload By 発達ナビ編集部LITALICO発達ナビは2016年1月26日、発達障害ポータルサイトとしてオープン!本日2018年1月26日で2周年を迎えました。会員数も2018年1月26日現在、10万人を超え、多くのユーザーの皆様にご利用いただいています。ココで現在、発達ナビにはどんなサービスがあるか、見てみましょう!【タイムライン】…ユーザーさんが自分の気持ちや日々の出来事をつぶやき、ほかのユーザーさんと交流できます【みんなのアンケート】…テーマや質問に回答。みんなの回答も見られるコーナーです【Q&A】…ユーザーさんが自分の聞きたいことや悩みを質問。投稿に対して他のユーザーの回答が集まります【コラム】…当事者ママの体験談や専門家のコラム、発達障害についての概説コラムやニュース記事が読めます【コミュニティ】…「共通の趣味や話題がある人とつながりたい」ユーザー同士が交流できるコーナーです【親子のヒント】…子どもの困りごとに関して、臨床心理士や作業療法士の専門家がヒントを紹介!イラストもたっぷりで対処法がわかります。【施設情報】…発達が気になるお子さまが利用できる全国の施設が検索できるコーナーです。ほかのユーザーさんがどんなふうに発達ナビを使っているのか、どこが気に入っているのか、気になっている人もいるのではないでしょうか?今回は2周年を機に、ユーザーの皆さんのお気に入りのサービスや活用法を「みんなのアンケート」で聞きました!アンケートの回答から、いくつかご紹介します!Upload By 発達ナビ編集部【発達ナビ2周年!】発達ナビでのお気に入りのサービスを教えてください!「私は一人じゃない!」発達ナビで会えるみんなとのつながりが心地いい出典 : 会員さん同士の交流を楽しめるタイムラインやコミュニティの機能。「ここに来れば仲間がいる」そう感じて、育児で孤軍奮闘しているとき、仕事で疲れたとき、たあいのない会話をして笑ったり、日常の小さな報告をしているとの声をたくさんいただきました。コミュニティ、Q&A、タイムラインをみて、みんな真剣に生きている姿勢、パワーをひしひしと感じ、自分1人ではないと、力をもらってます。タイムライン。真夜中のテンションで書くとおかしな事になりそうなので実況はしませんが子供が夜中に起きた時に更新されていくのを見て孤独ではないのだな、と勇気づけられています。みんなのアンケートやタイムラインが好きです。皆さんからの投稿を読み、私だけではない…と思え気持ちが楽になります。何度も読み返してます❤️発達ナビに登録して8ヶ月ほど。はじめは「親子のヒント」の続きが見たくての登録だったけど、利用し始めると、「タイムライン」が興味深い。あとは「Q&A」。勉強になる。やっぱり好きなのはタイムラインとQ&Aです。出会いの場であり、気付きがあり、それから息子の成長記録。気持ちを分かってくれる仲間がここにいる。ここでの繋がりが、すごく力になっています。「ココでだけは本音が言える」自分の気持ちを吐き出せる場所に出典 : 普段は弱音を吐かずに頑張っているけれど、発達ナビでは「疲れた」「悩んでいる」そんなふうにちょっとネガティブなことや愚痴、本音を言っても大丈夫、そんなふうに感じているユーザーさんも。交流するユーザーさん同士が、いろんな人の立場や気持ちを尊重して寄り添える。そんなタイムラインやQ&Aの風通しの良い雰囲気が、みなさんの本音を引き出しているのかもしれません。なかなか定形の方たちには理解して頂けない悩みや気持ちを理解して下さる方がここにはいるという事。これが1番大きいです。勉強させて頂ける事が大変多く有り難い存在です。タイムライン辛い気持ち、本音を遠慮なく吐き出せるところ。初めてこのサイトを利用して、本音をぶちまけたら多くの方が嫌な顔せずに共感して下さってホッとしました。使い方を誤らないようこれからもちょくちょく色んなことを書いていきたいですタイムラインや他のコミュニティーに参加させて貰い、他愛ない会話や時には愚痴、悩み事を相談させても頂きました。慣れないせいか、自分自身のコミュ力にも落ち込み、私の特性上にも初めの時にはリタリコでも気を遣い過ぎていた時期、勝手ながら私のコミュニティーを作らせて貰い、主に呟き場やリアルな本音を吐き出す場所として利用させて貰いました。「知りたい情報がココにある」知識を得るのに活用中!出典 : コラムや親子のヒントでは、専門家によるコラムや、子どもの困りごとに即した対処法をわかりやすく紹介しています。また、当事者や保護者のリアルな体験談コラムは、「うちの子もおんなじ!」という共感や「そういう接し方もあるんだ!」という発見があると人気です。かなしろにゃんこ。さんのマンガは、息子本人の障がい受容の助けに大変お世話になりました。m_ _mかなしろにゃんこ。さんのマンガを見たがるので、「これを見たいなら、お母さんの話を真剣に聞きなさい」と言って、自閉症スペクトラムとは何か、ADHDとは何か、あなたにも同じようなところがあるけれど、苦手なことをほったらかしにしないで、ちゃんと向き合わないといけない。と話しました。ムダなプライドを、私が色々言って下手に刺激するよりも、かなしろにゃんこ。さんの息子さんのリアルなお友達との対応やエピソードの方が、本人のSSTの復習や同学年の子との接し方のヒントになっているようです。楽々かあさんさんは、私はぺアトレを受けたのですが、小学校高学年になってからでしたので、効果はあるにはありましたが息子本人にも難しかったですし、自分の思考改革にもすごく時間がかかりましたし、今もガチガチなので、具体的で効果的な声掛けの復習や気づきに大変お世話になっています。「コラム」が好きです。息子の症状に見合うような内容のコラムであれば尚のこと。そうでなくとも、知らぬ情報が出てきていることも多いので、ここへきてまず最初に開くのは「コラム」と決まってます(^^)息子が未就園の頃は「親子のヒント」に本当~に助けられてました。いまは「コラム」が一番のお気に入りです。以前は「ADHDブログマンガ」とかで検索していろいろ読んでましたが自分で検索するとどうしても当たり・ハズレがあるのでコラムで良質なブログがまとめて読めるのはとてもイイ!です。子どもが成長してることに気づいた!出典 : 「親子のヒント」を利用しているうちに、息子さんの成長に気づいたという嬉しい回答もありました!久しぶりに「親子のヒント」のページを覗いてみたけど、はじめてここにきたときに読みたかった「発語・会話」のページ、今見てみると、読みたいテーマが変わっていることに気付きました。そっか、息子が出来ることが増えたから、読みたいものも違うんだ!そうやって間接的に感じた息子の成長です。「どうしたらいい?」気軽に聞ける!回答で新たな考え方に気づく!出典 : 【Q&A】私もアンサーを書かせて頂く事があるのですが、他の回答者の方の答えがとっても、役立っており、私の拙い回答以上に得るものが大きいです。また、質問されていた時は元気がなかったユーザーさんが、他の方の質問には回答者として、しっかり親身に答えているのをみて、元気になったんだなぁーと勝手に嬉しくなったりしています★「みんなのアンケート」さりげないテーマに沢山の方から色んなアンサーが出る…って言う所を楽しく感じています。当事者・家族・関係者…それぞれ事情は違えど「発達障害」て繋がり、一人一人違う答えや反応があることに面白さを感じています。支援機関や病院などでは受けられないアドバイスや新たな発見があります。先生や支援の方に言いにくい事や相談しても分かってもらえない事に気づいてくれました。自分が神経発達症でよかったとは思わないけど自分がADD.ASD ではなかったら発達のことも含めて色んな方とお話しが出来なかったと思います。「発達ナビにあったらいいな」と思うサービスのアンケートもUpload By 発達ナビ編集部発達ナビにあったらいいな、というアイデアも募集しています!よりよいサイトを目指して。3年目の発達ナビにもご期待ください!2周年おめでとうございます(⌒▽⌒)やっぱり、コラムが一番見ますけど、Q&Aや、コメントが付くと「お知らせ」で知らせてくれるなど、利用者目線な作りがお気に入りです。少しずつでも確実に、使いやすく探しやすく紹介しやすいサイトへと改良を重ねて下さっているスタッフさんには頭が下がります。これからも宜しくお願いします(∩_∩)アンケートでは使ってくださっている皆さんの活用法や感想などの嬉しいご意見や、「こうしてほしい!」というご意見もたくさんいただきました。まだまだアンケートでは皆さんのご意見を募集中です!ユーザーの皆さんのお役にたてるサイトを目指して、発達ナビではたくさんのコラムやニュース、サービスをお届けしたいと考えています。3年目を迎える2018年も、どうぞよろしくお願いします!
2018年01月26日発達が気になるお子さんや、障害のあるお子さんがサポートを受けることができる場所である、「放課後等デイサービス」や「児童発達支援事業所」。発達ナビでは「施設情報」のコーナーから、お住まいの地域の教室を簡単に探すことができます。また、各教室の特徴や、利用者の声も合わせて知ることができるので、お子さんにぴったりの教室を探すことができます。今回は、北海道で情報をアップデートしてくださった教室をピックアップ!気になる施設を見つけたら、「ページを見る」をクリックして、詳しい情報をチェックしてみてくださいね。発達ナビ「施設情報」北海道 放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報放課後等デイサービス ひばりんは、学習支援のほか、職場体験や地域交流活動など、ソーシャルスキルを高める指導に力を入れています。教員経験者が多数指導にあたっており、現場での経験を生かし、先を見通した的確な指導を行っています。Upload By 発達ナビ施設情報将来に向け、生活スキルや社会性スキルの向上を目指すぴすと学舎では、曜日毎にテーマの異なる自立プログラムを実施。働く・働き続ける、暮らす・暮らし続けるための専門的なアプローチを通して、自己実現を可能にするサポートを行っていきます。Upload By 発達ナビ施設情報放課後等デイサービス アミティエ平岡では、子どもの個性に合わせた個別学習支援や運動支援を行っています。公共施設見学などの社会見学も行いながら、将来の自立をサポート。子ども達が伸び伸び過ごせる環境の元、より良い福祉を目指しています。北海道の「放課後等デイサービス」を探す!北海道 児童発達支援事業所Upload By 発達ナビ施設情報児童発達支援 きゃんぱすは、人との関わりを大切にしながら子ども達が将来自立した生活が送れるよう、集中力や認知能力、集団生活力を育む支援を行っています。一人ひとりの個性に合わせた支援計画のもと、子ども達が本来の力を発揮できるよう取り組んでいます。児童発達支援・放課後デイサービスこっこ川沿は、楽しみながら自然と相手を思いやれる気持ちや、社会性を育む支援を行なっています。スノーモービル等のアクティビティーのほか、草花療法や箱庭療法など、気持ちを穏やかにする取り組みも行なっています。Upload By 発達ナビ施設情報北海道の「児童発達支援事業所」を探す!おわりに出典 : いかがでしたか。気になる施設がありましたら、「~のページを見る」のボタンを押してみてくださいね!教室の先生たちが書いているブログや、利用者の方が投稿した口コミなどを見ることもできます。「空き状況を知りたい!」「教室見学をしたい!」と思ったら、WEB上からもお問い合わせを行うことができますので、ぜひ試してみてください。今後も掲載数がどんどん増えていきますのでお楽しみに!
2018年01月26日自閉症である息子さんを通わせたいと思える放課後デイサービス(以下、放課後デイ)がなかったことから、自ら「アイム」を立ち上げた佐藤典雅さん。そこから、息子さんや生徒の成長に伴い、フリースクールや就労支援、グループホームまで立ち上げてしまった。それらの施設を立ち上げた理由も、やはり放課後デイ設立の時と同じように、既存の施設に大きな不満があったからだと言う。そんな佐藤さんに、現在の福祉業界の問題点や自ら立ち上げた施設への思いを語ってもらった。発達障害のある子を育てる親たちにとって、最大のテーマは、将来の自立や働き方。『療育なんかいらない!』の著者でもある佐藤さんのお話の中には、きっと、発達障害の子どもの幸せな将来のために、親としてやるべきことのヒントがたくさんつまっているはずだ。佐藤典雅(さとう・のりまさ)さん川崎市で発達障害の子どもをサポートする放課後デイサービス「アインシュタイン放課後」「エジソン放課後」を運営している、(株)アイムの代表。自身の自閉症の息子さんの療育のために、息子さんが4歳の時に渡米して、ロサンゼルスで9年間過ごす。前職は、ヤフー・ジャパンのマーケティング、東京ガールズコレクションとキットソンのプロデューサーという異色の経歴の持ち主。福祉という範囲を超えた目線で、自身の息子さんの成長を見守りながら、発達障害児が社会で幸せに生きるための道を広げる挑戦をしている。著書: 『療育なんかいらない!』 (佐藤典雅・著/小学館 ¥1,296 税込)※放課後デイサービス(= 放課後デイ):6~18歳までの障害のある子どもが放課後や学校休業日に利用できる、就学時向けの福祉サービスのこと。■子どもの将来について保護者が不安に思わないインフラの構築がテーマ――前回の取材から1年ほど経ちました。その間、がっちゃん(佐藤さんの息子さん)の高校進学にあわせてフリースクールを設立したそうですね?佐藤典雅さん(以下、佐藤さん):アイムの放課後デイには、たくさんの中学生の生徒がいるので、中学卒業後の進路は重要なテーマでした。というのは、高校って義務教育じゃないから支援学級がないんですよ。だから、支援学校に行くしか選択肢がないのですよ。でも、既存の支援学校だと高校卒業証書はもらえないから、中卒扱いになっちゃうんですよ。どうせ就労支援に行くなら、あんまり関係ないかもしれないけど、親の心情的な観点からいくとちょっと残念だよね。ウチが設立したノーベル高等学院は発達障害や自閉症の生徒に合った通信サポート校で、明蓬館高校の教育連携施設として、高校の卒業証書も取得できるんですよ。――がっちゃんの進路に、既存の支援学校を選択しなかったのはなぜですか?佐藤さん:中学校までは義務教育だから、だいたいどこも手厚くやってくれるんですよ。でも、高校になった瞬間、何が始まるかというと「職業訓練」という言葉が出てきます。見学に行ったらわかると思うんだけど、ほとんどのところが就労の準備期間として、封筒やチラシを折ったり、縫物の練習をしたり、昭和の内職みたいな作業をさせているんですよ。でも、普通の子が高校で青春を楽しんでいる時に、どうして障害者の子たちは就労準備しなくちゃならないのか? 親として、自分の子がそういう状況にいるのはしのびないよね。――それで、もっと楽しい高校をご自分で作ってしまったわけですね。ノーベルでは、日々どんなことをしているのですか?佐藤さん:最低限、取得しなければいけない単位があるので、午前中は主に課題をしていますが、午後はもう自由! 好奇心旺盛なスタッフが、毎日いろいろなおもしろいところへ遠足に連れて行ってくれています。最近では、足立区にあるアスレティック施設や渋谷ヒカリエで開催されていた「チームラボ」のイベントなどに遊びに行ってましたよ。――それは通常の支援学校とはずいぶん違いますね! 生徒はどれくらいいるのでしょうか?佐藤さん:今、生徒は2人です。もともとフリースクールは赤字前提でやっている事業なんですよ。でも、なぜ赤字でもやるかというと、今、ウチには放課後デイに通っている中学生の子たちがたくさんいて、その子たちのセイフティネットとして必要だから。アイムのテーマは、子どもの将来について、保護者が不安に思わないインフラを作ること。だから、赤字でもやらないといけない理由があるんです!■市場から「置いてきぼり」にされる福祉の世界――支援学校と同様に、就労支援にも疑問を感じて、アイムで取り組まれているそうですね? 既存の就労支援のどんなところに問題を感じているのですか?佐藤さん:いろいろありますが…例えば、就労支援に行くと、まず、みんなあいさつの訓練をさせられます。見学に行ったことありますか? 行くと、みんなが無条件に一斉に立って「いらっしゃいませ!」って言うから。トイレ行く時だって、みんな「佐藤さん、トイレに行っていいですか?」って聞いてくるの。トイレ行くのにどうして許可が必要なわけ? みんなロボットみたいになっちゃうんですよ。――確かに、そういう雰囲気がある気もしますね…。佐藤さん:でも、そもそも仕事において、あいさつってそんなに重要なの? それで売り上げが上がるんですか? 僕は、あいさつなんかより儲かる就労支援をつくることの方がずっと重要だと思ってます。だから、福祉業界の人に「あいさつはいりません!」って言ったら、「佐藤さん、それでは社会性が身につきません」って言われました。じゃあ、普通の世間一般の会社の社員が同じようなあいさつをしているのでしょうか? あいさつをしなくてもいい業種はたくさんありますよね。それでも全ての社員は型にはまったあいさつをしないと社会性がないといえるのでしょうか? 仕事においてどこに価値を求めるのかという話なんですよ。――確かに…。佐藤さん:どんな大手企業でも、行動パターンを変えられなければ、いつかはつぶれてしまうと思います。市場が変わっているのに、会社の倫理観、価値観、戦略、全部変えられないままでは、市場から置いてきぼりにされる。学校や福祉の世界でも、これと同じようなことが起こるはずなんです。しかし、助成金によって雇用も給料も守られているわけで、福祉は保険点数でも守られているからつぶれることがないわけです。こんなの民間企業だったら、とっくに淘汰されていてもおかしくないです(苦笑)。制度の枠組みで仕方ないのですが、そもそも行政からみて就労支援は「就職」でなく「介護」の延長線上にあります。なぜかというと、就労支援に配置される資格者は介護士なんですよ。これまでビジネス経験のない介護資格者がいきなり売り上げを求められるわけです。だから、発達障害の子たちのために利益分配を考えるのは、かなりハードルが高い話なんです。――そういう現状を、きちんと親が知って考えるべきなんですね…。佐藤さん:お母さんはみんな、「将来この子が困らないように」って療育で訓練することばかりに夢中になっているけど、だれも「出口」のことを考えていないし調べてもいない。僕は、「出口」のことしか考えてなくて、それは就労です。その子が自分の力で就職できるのか否かという明確なラインがあって、そこしか見ていない。今、支援学校を卒業した後の進路は、2つしかないんです。ひとつは、特例子会社に就職する。もうひとつは、就労支援に行く。一般企業に普通に就職できない子の出口は、就労支援しかないんです。将来、わが子の就職が難しいと考えた時、親として考えるのは、どういう就労支援だったらわが子が充実した毎日が送れるかということ。そこしかないんです。既存の就労支援には、がっちゃんを通わせたいと思えるような施設がなかったので自分たちでやる必要性を感じたわけです。――特例子会社の方はどうなのでしょうか?佐藤さん:特例子会社っていうのは、企業枠で障害者を2.3%雇用しなければならないという決まりがあって最低賃金が発生します。で、特例子会社は大手企業が多いから、ほとんどが都心にあって、オフィスで事務作業をすることができます。でも、僕から見ると、特例子会社も就労支援も両方同じようなもんですよ。封筒やチラシ折ったり、昭和の内職みたいな仕事をしている。もちろん、その子がその仕事を楽しんでいればいいけれど。――でも、キレイなオフィスで働けて最低賃金が発生するなら、保護者にとったら就労支援より特定子会社に入るほうが理想的ですね?佐藤さん:でも、特例子会社は民間企業だから、ある程度の基準を満たさないと入れないし、枠も限られています。加えて、都心のオフィスに通うために、通勤ラッシュにも耐えられる子が採用の前提となります。そうすると、当然、ある程度コミュニケーションがとれる軽度の子が採用されるんですよ。――そうすると先ほどのお話のように、重度な子は特例子会社には入れず、就労支援に行く進路しかない、というわけですね?佐藤さん:ウチのがっちゃんは、まさにそこなんです。特例子会社に行く子たちは、比較的障害が軽いので、社会で働いて賃金を稼いで満足を得ることができます。でも、がっちゃんは給料をもらってもよくわからないから、「このつまんない作業はなんなんだ!?」で終わっちゃう。――働くことにおいて、がっちゃんの幸せはどこにあるとお考えですか?佐藤さん:がっちゃんはあまりにも謎が多すぎてまだわからない(笑)。でも、親として、特例子会社に行くことががっちゃんの喜びにならないことはわかっています。だから、どういう就労支援だったら楽しめるのか、ということをずっと考えています。がっちゃんはかなり自閉症ど真ん中なので、ウチの子のニーズを満たせれば、ほぼすべての自閉症児のニーズを満たせると思ってる。がっちゃんの問題を解決することが、幅広い子どもたちの問題を解決することにつながる。それがどういう就労支援なのかということを、いくつか実験しているところです。 ■就労支援もきちんと利益を追求、「儲からない仕組み」を根本から改革――その手始めとして、就労支援ルピアをアイムの傘下に入れたのですね?佐藤さん:そうなんですよ、ルピアさんの協力で。おかげで、就労支援の仕組みがだいたいわかってきたので、来年のどこかで、ウチ独自のアートの就労支援を作ろうと計画しています。その後は、飲食の就労支援も考えています。カフェがいいのかビュッフェスタイルがいいのか…?どうやったら最小限の労力で最大限の利益を上げられるか、そこを必死に考えています。よく、福祉の世界は利益追求反対という風潮があるけど、資本主義の中で生きている以上避けられません。ビジネスとして利益をあげて、利用者の環境のために再投資をしていくために利益は大切なんですよ。――確かに、既存の就労支援って、あまり利益を出そうという雰囲気がないですよね…。佐藤さん:そこが就労支援の大きな問題なんです。就労支援は保険点数でまかなってるから、つぶれることがない。だから、彼らは利益なんか出なくてもいいんですよ。危機感が非常に薄い!ルピアも最初は課題が大きかったですよ。当初はお店もボロボロでいかにも「福祉!」っていう感じで…。 だから、アイムでプロデュースしてオシャレに改装したんですよ。すると後日、店の責任者は「全然効果ない」って言うから、よくよく話を聞いてみたら、なんと就労支援だからという理由で週末にお店を閉めていたんですよ! もう、ビックリしちゃって(爆笑)。お店、つまり小売りでしょう? 小売り店舗で土日閉まってるって、その時点で売り上げが出るはずもなく(笑)。福祉にいると、商品やサービスを提供するって時点で、就労支援も民間企業との競争になるっていう認識が薄くなるんです。もちろんその後、週末にお店を営業したら、案の上、売り上げは3倍になったわけで、みんなハッピー(笑)。一般的な就労支援を見ると、仕事内容が、ビラを折るとかボールペンの組み立てだったりするわけです。こんなところに入るために、支援学校で3年間も訓練させられたの!? って思いませんか?■既存の施設や他人に親は振り回されるだけ…子どもの将来はゆだねない!――確かに。親子で一生懸命職業訓練して、でも、その先がそんな職場ばかりだったら浮かばれないですよね…。佐藤さん:普通の就労支援でも、その子が働くことを楽しんでいればいいんです。でも、私から見たら、昭和の内職みたいな仕事をして時給100円の世界ですよ。実際にそれが合わずに引きこもりで終わってしまう障害者が多いと聞きます。特例子会社にしても、お母さんがわが子の就職先にそこを目指して、二人三脚で支援学校で3年間一生懸命訓練しても入れなくて。「ずっとがんばってきたのに特例子会社に入れなかった」って泣いたり落ち込んだりしている姿をいっぱい見ます。でも、全然落ち込む必要ないですよ!ってお母さんたちに言っています。だって、そんなところに入れなくたって、アイムがその子たちに合う就労支援を作ればいいだけのことでしょう?――そうしたら、お母さんも子どもの将来について余計な心配しなくてすみますね。佐藤さん:今ある既存の施設や他人に将来をゆだねると、親は振り回されるだけ。どうでもいいことで落ち込んだり泣いたりしてしまう。よく保護者が「将来、この子が困らないように、しつけてる」とか「療育で訓練してる」って言うけど、こんなところに入れてもらうために、子どもの個性をねじまげてまで訓練する必要なんてないですよ。大事なのは、その子自身をどうこうすることではなく、その子が生き生きと生活できる環境を与えること。だから、子どもがそのままでも安心して働ける楽しい就労支援を、アイムは目指します。そのために、ウチは「就労継続支援B型」をやるんです! ウチは「移行支援」には手を出さず、どんつきである「継続支援B型」をやります。(※)だって、たとえばうつ病とかなら、訓練してまた社会復帰できる可能性もあるかもしれないけど、自閉症は治らないから、訓練を受ければ復帰できるというわけじゃないじゃないですよね? それに「移行支援」では2年間しか訓練を受けられないから、最終的には「B型」に突っ込んで、「はい! おしまい!」なんですよ。その先のことは彼らにはあまり関係ないから。でも、これだとうちの息子の場合は困るわけですよ。※就労支援には、「就労移行支援」と「就労継続支援」の2タイプがあります。「就労移行支援」とは、一般企業への就職をサポートする訓練支援(2年間限定)なのに対して、「継続支援」は一般企業への就職が困難な障害者に就労の場を提供する支援です。さらに、「継続支援」には「A型」と「B型」の2タイプがあり、「B型」は「A型」の仕事が困難な障害者が対象となります。■健常者が「うらやましい!」と思うような就労支援を提供したい――アイムで就労支援を立ち上げるにあたって、さまざまな施設を見学に行かれたと思うのですが、参考になりそうなところはありましたか?佐藤さん:学ぶべき就労支援はたくさんありますよ。例えば、名古屋にある「世界の植物と昆虫のお店『APERO HYLE』」。虫好きの自閉症の子たちが昆虫や植物を育てて、それを売るの。ヘラクレスオオカブトとか高価な虫は1匹3万円ほどの値がつくんですよ。1日の売り上げが10万円あるから「B型」なのに、最低賃金も払えてるの! すごいなぁ〜って。――さまざまな施設を見学されて、アイムの方向性は決まりましたか?佐藤さん:ウチは川崎に3種類違う就労支援をもちたいと思ってます。だいたい3タイプくらいあれば、すべての生徒を対応ができるかな、と。アートの就労支援は決まったので、今年中に設立します。あとの2つは、案は出ているけれど、その時の状況や人材など、いろいろな要素が絡んでくるから、今のところリサーチにとどめています。でも、2年以内には作る予定です。――相変わらずすごいスピード感ですね。佐藤さん:福祉や教育は業界の特質として変わりにくいっていう前提で考えた方がいいですよ。だから、自分で作った方がずっと早いわけ。今の福祉制度をうまく使って、アイムでは新しい視点で就労支援を提供したいと思っています。もちろん、働く本人たちが楽しいっていうのが大前提なんだけど、一番重要なのは、健常者が「ここに通いたい」「こんな素敵な場所で楽しそうな仕事ができていいな」って思えるような施設を作ることだと思うんですよね。障害者がなんでかわいそうに見えるのか、それは、みすぼらしい場所にいるからだと思うんですよ。だから、うちのテーマは、健常者がうらやましいと思える職場を障害者に提供することなんです。――保護者も、福祉に頼るだけでなく、自ら行動を起こすべきなんですね。とはいえ、普通のお母さん(私)は佐藤さんのように、ガシガシ動ける自信もないのですが(苦笑)。佐藤さん:じゃあ、川崎に引っ越してきて、ウチに通えばいいじゃないですか(笑)。最近では、療育をしないというアイムの方針が浸透して、それに賛同する保護者がウチに通いたいと遠方から引っ越してきてるんですよ。だから、ウチの生徒になったら、ちゃんとアイムとして最後まで面倒を見たいなと思っています。今年の秋から、グループホームも始めました。放課後デイ→フリースクール→就労支援→グループホームと一つのレールを敷くことで、保護者の不安を取り除き、発達障害の子育てを明るいものにしたいと思っています。「すべての子どもがあこがれるような居場所を。健常者がうらやむような職場を」と、驚くような勢いで、発達障害の子どもたちの充実した人生のためのインフラ作りを進める、佐藤さん。その原動力は、「親として子どもに納得できる環境を与えたい」という想いだった。誰もが佐藤さんのように動けるわけではないが、障害を持つ子の親であれば、誰しも同じ想いを持っているのではないだろうか? わが子の幸せな働き方ってなんだろう? そのために、私は親として何ができるだろう? 改めて考えさせられた取材だった。取材・文/まちとこ出版社N
2018年01月25日2017年11月25日から12月5日に、LITALICO発達ナビでは「女の子の発達障害に関するアンケート」を行いました。発達障害のある子どもの保護者677名、発達障害の当事者445名の声が寄せられました。ご協力いただいたユーザーの皆様、どうもありがとうございました。この記事では、「約450名の当事者が回答!女の子の発達障害、勉強や仕事、恋愛、交友関係など悩みや解決策は?」とし、調査結果の一部を抜粋し、お伝えします。保護者の声については、「約700名の保護者が回答!女の子の発達障害、学校や友達との関係、身だしなみの悩みや解決策は?」でご紹介しています。<調査対象について>「LITALICO発達ナビ」会員へのメールから、アンケートフォームにて回答いただいた発達障害の当事者445名の回答を集計しました。(調査期間:2017年11月25日~12月5日)※設問によっては445名全員が回答していないもの、複数回答可のものがあります。※調査結果の構成割合は四捨五入をしているため、合計が100%にならない場合があります。女の子の発達障害とは?発達ナビに寄せられた、当事者約450人の声出典 : 「約450名の当事者が回答!女の子の発達障害、勉強や仕事、恋愛、交友関係など悩みや解決策は?」では、発達障害のある女性の当事者445名が回答。現状や不安に思っていること、悩み、解決策までが寄せられました。30代~40代を中心に、主に成人の発達障害当事者が回答Upload By 発達ナビ編集部70%弱が就職後に発達障害に気づくUpload By 発達ナビ編集部70%弱が就職後、続いて大学・専門学校のころに発達障害に気づいたと回答しています。保護者が回答した「約700名の保護者が回答!女の子の発達障害、学校や友達との関係、身だしなみの悩みや解決策は?」では、約60%が就学前に気づいたのと対照的です。成人当事者が幼少期のころは発達障害が認知されていなかった、比較的障害の程度が軽度などの理由で学校生活では問題が起きにくかったなど、さまざまな原因が考えられます。発達障害があることに気づいたきっかけとしては、■人間関係・仕事(28件)■子どもの診断(24件)■WEBや書籍などの情報(18件)■二次障害の発症(8件)があげられています。人間関係・仕事でのきっかけについては、「人間関係がうまくいかない」など、日常生活や職場での人間関係でつまづいたという声や、「仕事で複数の指示の聞き漏らしや、仕事を完遂できないことが頻発し、自分はおかしいと思ったため」など、仕事でのミスがきっかけだったという声が目立ちました。また、子どもの診断がきっかけの人は、「自身の子どもに発達障害の疑いを持ち調べているうちに自身の発達障害を疑いだした」というように、子どもの特性と自身の特性が似ていたり、子どもの診断をきっかけに発達障害について調べるうちに自分の特性に気づいた、という人が多いようです。WEBや書籍などの情報については、「小学校に上がってから、自分の異質感を感じてはいました。(中略)大人の発達障害の概念はまだ、一般的でなく情報は得られませんでした。不調をきたし適応障害からの抑うつ状態との診断で約5年、加療しました。その後勤め先が変わり、全然対応できないことで、色々検索したら、大人の発達障害が広がる少し前でしたが、情報があり、受診しました」というように、情報が手に入りやすくなったことで診断につながったという声もありました。また、早めに気づけなかったことから、二次障害を発症してしまった例も複数あるようです。約73%が二次障害を発症Upload By 発達ナビ編集部約73%が二次障害を発症しています。二次障害の発症率は「約700名の保護者が回答!女の子の発達障害、学校や友達との関係、身だしなみの悩みや解決策は?」では約40%でした。二次障害の内容としては■うつ(96件)■不登校(28件)■不安障害(18件)が多くあげられました。「離人感、フラッシュバック、躁鬱、過覚醒、過活動、不安、孤独感、過食、過眠、性的逸脱、など。あげていったらキリがないのでこの辺りで」などのように、摂食障害、パニック障害、不安障害など複数の二次障害があるケースもみられました。約84%が友人関係で困難やトラブルを経験Upload By 発達ナビ編集部約84%が友人関係での困難やトラブルを経験していますが、その内容としては下記2つが多くあげられました。■グループに入れない・いじめ(56件)■会話がうまくできない(54件)暗黙のルールなどが分からず、グループになるとどう振る舞っていいか分からなかったという回答が多く寄せられました。「女性社会の暗黙のルールが分からず、何をすると浮いてしまうのかが分からなかった」「個人間では話せるがグループや団体になったりすると楽しく過ごせない」「集団の時の疎外感。親しめる人への距離の近さから「友人の彼氏」にも近すぎてしまい誤解された」のように、距離感がうまく取れないことから、トラブルにつながった例もありました。また、いじめのターゲットとなったという回答も多くありました。グループに入れず仲間外れにされた人や、集団対自分でひどい行為を受けたという場合も。「みんな離れていきました。ある方たちには酷い!と言われたことがあります」「小学生~中学生にかけては、仲間外れなんかは当たり前でしたし、教師込みでの葬式ごっこにもあっています。 呼び出されて給食室に行くと、給食を運ぶエレベーターに友達に閉じ込められて、授業に出られなかった時がありましたが、何故か私が怒られていましたねぇ」会話についても困難やトラブルの原因となっているようです。学校や職場でのなにげない会話がうまくできないことから、人間関係につまづいてしまうようです。「雑談の話題作りのしかたや、興味のない話題への相づちの打ち方が分からず、孤立したこと」「雑談が苦手、孤立しがち」「余計なことを言ってしまい空気が冷え込み、距離をもたれる」のように、雑談が苦手、がんばって話そうとすると余計な発言をしてしまう」などの回答がありました。「怒らせるつもりは無いのに怒らせる。騒音や刺激物に気をとられ話を聞き逃す。話を聞いてないと言われる」「友達の話にすぐ理解、反応できず、自分1人だけ浮いてしまう。相手の表面どおりの言葉を真に受けてしまうので、その特質を利用されて仲間外れにされてしまう」のように、聴覚過敏や、額面通りに受け取ってしまうというような、特性ゆえにコミュニケーションが難しいという回答も目立ちました。約73%が親子関係で困難やトラブルを経験Upload By 発達ナビ編集部保護者との関係でも、多くの当事者が困難やトラブルを経験しています。その内容としては、次のようになっています。■喧嘩(24件)■無理解(21件)■暴力・虐待(13件)■過干渉(5件)ストレスなどから、すぐ喧嘩になってしまうという声が多くあがりました。「学校で感じているストレスの発散場所が無く、親に対して暴言、暴力でストレスを発散していました」「母親とは対立。結婚してからは兄弟のお嫁さんに対立。私以外の人間がルーズでだらしがないので、イライラしてしまう」理解してもらえず苦しんだという声も多く寄せられました。「親に子供の立場に立って考えてもらえないことが多かった」「自分のことを理解してもらえない」保護者の思う理想像との違いから、批判されて苦しんだという人もいます。「母が特性や辛さを理解せず、母の考える『普通』(実は理想の娘像)との違いで始終ダメ出しばかりだった」「友達がいないことを母親に責められた。冷たい人間と言われた」発達障害への認知がなかったために、不登校も許されなかったという例もありました。「親に発達障害の知識がなかったため、病院に行くまで学校に行くことを強要されていた。行かなかったら殴られていた」暴言・暴力などの虐待を受けていたという人も複数いました。「父親が厳し過ぎて、いつのまにか人の顔色を伺い、心も体も疲れはてた」「虐待を受けていた(身体、精神)。 意見を言う事や、何かを要求する事は禁止されていた。 できない事はずっと否定され、理解してもらえなかった」「母親には、かなり叩かれていました。本当に死ぬんじゃないかな?って思うぐらいに…。(中略) 一番辛かったのが、『夜眠れないのよぉー!』と言いながら、徹夜で朝まで説教で、寝させてくれませんでした。本当にツラかった」以上のように、本来、落ち着ける場所・逃げ場であるはずの家庭でも強いストレスを感じざるをえなかった様子がうかがえます。90%以上が学校や職場でトラブルや困難を経験Upload By 発達ナビ編集部多くの当事者が、学校や職場でのトラブルや困難に直面しており、特に仕事でのトラブルや職場での人間関係に悩んでいる様子がうかがえました。■仕事でのトラブル(35件)■人間関係(35件)■学習の遅れ(15件)仕事でのトラブルについては、スムーズにこなせなかったり、ミスをしてしまうという例が多くあげられました。「上司の指示が理解できない、仕事のミスが多い、人の気持ちが分からない、時間や締め切りを守れない、仕事中に眠くなってしまう」「やらなければならないことを優先度合いで順番をつけ実行するのが苦手なため、いつも手一杯で結果も中途半端」「電話対応の仕事をした時に、電話しながらメモができなくて、電話を切ったあとに、内容を忘れる相手の名前や会社の名前を忘れる」「マニュアルがないと戸惑う。マニュアルから逸脱するのに抵抗がある」「仕事では、不注意のため介護現場で利用者さんに怪我をさせてしまった」また職場での人間関係についても、世間話ができなかったり、飲み会への参加が苦痛で断るうちに、同僚との関係がぎくしゃくしてしまうようです。「休憩時間の世間話が上手くいかない」「飲み会が苦痛」「飲み会への不参加が続く。何度も誘われるが仕事するだけでいっぱいいっぱいでヘトヘトなので何度も断り嫌われる」ただ、中には「以前は多くあったが、現在の職場にはカミングアウトして、できないところのサポートと配慮をしてもらいやすくなった」という風に、発達障害について周囲に伝えることで、必要な配慮をしてもらえるようになったという回答もありました。第二次性徴時の体の変化についての困難やトラブルの内容に、特徴があるUpload By 発達ナビ編集部第二次性徴時の体の変化については、約半数は困難やトラブルを経験しなかったという回答でしたが、約25%からは、次のような困難やトラブルについての声があがりました。■体の変化が受け入れられない(13件)■PMSなど生理に関連する体調不良(12件)■自分の性別への違和感(9件)まず、急激な体の変化についていかず、対応ができなかったという意見が目立ちました。「自分に何が起こったのか理解できなかった。受け入れがたかった」「急激な身体の変化による不安や不眠」「ブラジャーをつけることが物凄く気持ち悪く、つけずにいたら母に酷く叱られた。月経にもなかなか対応できず下着を汚してばかりいた」生理に関する困難も多くあげられました。ホルモンバランスの変化によるイライラのほか、一定しない生理周期にパニックになる、ゆううつになるなどの例も。「10才くらいで初潮がありPMSが現在もきついです。思春期はいつもイライラしてて家の中で荒れていました」「生理が来なくなったり、早まったりと予測ができず初めはパニックになることが多かった」「生理前のゆううつ感、自殺願望、生理が来るたびになんで妊娠しないのにと思った」それまで意識していなかった性差に直面し、自分の性を受け入れられない、理解が難しかったという人もいました。「自分の性別を受け入れられない」「女の体になるのが気持ち悪かった。今も、胸を潰して腰を狭くできるならそうしたい」「性別の概念がよく分からないので、勝手に分けられる体になることに抵抗があった」困難やトラブルがあった25%については、体の急激な変化に加え、大人の女性として見られていくことに対して、うまく対応ができず混乱してしまったことがうかがえました。約62%が学習面での困難を経験しているUpload By 発達ナビ編集部学習面での困難としては、下記のような内容が多く寄せられました。■得意不得意の差が大きい(33件)■集中できない(17件)■読み書き困難(12件)■宿題忘れ(8件)得意不得意の差が大きいという人の中でも、算数・数学ができないという回答が20件ありました。「数学が全然分からなかった」「今思えば数学が極端にできない。答えが1つである性質には魅力を感じるのだが、できない」「算数の繰り上がりの足し算から分からなくなった。(中略)コンパスなどをうまく使えず、図形の問題に時間がかかった」また、国語や英語について苦手感があるという声も数件ありました。「漢字は読めるのに、書くことができない。英語のスペルが全く覚えられない」「漢字が覚えられない。忘れるのが早い」「文法が苦手なため国語や英語も苦手で覚えられなかった」逆に、「小数点や分数の計算は未だにできない。(中略)文を書く事は好きだったため、国語表現の成績だけはよかった」など、得意な科目についてはよくできたという声もありました。集中力のなさからの困難としては、下記のような例があげられました。「集中力が続かない、文章は読めても理解できない」「集中して聞き続けられない、書字が遅く、また聞いていることを要約しながら書けないため板書が困難」「過度集中の特性を持ちつつも、通常時に机に向かって一つのことに集中していられない」また、過集中の特性を生かせるときと生かせないときがあるという人もいました。「過集中の時はテストの成績も良いが、そうじゃないと全く勉強できない」「始める前に色々と考えてしまうと、思考で頭がいっぱいになってしまい、何もできなくなる。ただし、一度始めれば一般的以上の集中力や成果を発揮」読み書き困難については、次のような回答がありました。「文章題の意味が取れない」「成人してからも逆さ字をかいてしまう。読めるけどかけない」「指示代名詞の理解が難しい。『ちゃ、ちゅ』など小さな文字の読み書きができない」また、板書がなくなったことで理解が難しくなったという場合もあるようです。「先生の言葉だけでは理解できないので、高校大学で黒板などをほとんど使わなくなってくるとついていけなくなった」教科によって得意不得意の凸凹が大きかったり、不器用さや集中できないことなどから勉強に支障が出てしまう場合が多くあるようです。約半数が、ファッションや身だしなみでのトラブルや困難を経験Upload By 発達ナビ編集部ファッションや身だしなみに関しては、約半数が困難やトラブルを経験しています。以下のように、そもそもファッションに興味を持てない、適切な服装を自分で考えることが苦手、不器用さなどから身だしなみを整えるのが苦手、感覚過敏があり着られるものが限定されるといった面があるようです。■TPOに合う服装が分からない(26件)■無頓着・だらしない(23件)■不衛生(15件)■感覚過敏(10件)TPOに合う服装が分からないという回答が一番多く寄せられました。具体的には、細かな指示がないと何を着ていいのか分からない、季節に合わせた服装ができないなどの声がありました。「ドレスコードが分からない」「制服以外で、日中の外出に何を着たらいいか分からなかった。無地で2色くらいが無難と気付くまでは、ちぐはぐな上下を組み合わせていたと思う」「Tシャツ、ジーパン不可の指示で、ポロシャツとチノパンで行ったら、怒られた」「どんな服装が適切か(温度との関係など)がよく分からない」無頓着・だらしないという回答については、下記のような具体例があげられました。興味が持てなかったため無頓着になってしまったり、不器用さなどからルーズな着こなしになってしまうことが多いようです。「2児の母ですが、未だに化粧もせず(そもそも興味が持てない、面倒)、ファッションも気にすることができない。歯磨きも幼少の頃から苦手でうまくできないまま。ムダ毛を剃っても剃り残しが頻発」「今はかなり気をつけていますが、背中が出てる、パンツ見えてるはよくいわれてました」感覚過敏についての声も寄せられました。しめつけや素材感に苦手なポイントがある、髪に触れるのがイヤでまとめられないという声が目立ちました。「合わない服だとストレスで具合が悪くなる。肌に化粧品を塗るのが苦痛」「服のタグがチクチクしてたまらなかった。締め付けがキツく感じ、下着を選ぶのが困難」「髪の毛は自分で始末が付けられず、ボサボサのまま学校に行っていました。また首に何かが触れるのが嫌で、ハイネックやタートルネックは着られませんでした。(中略)ストッキングは大嫌いで、履かなければならない日は物凄く不機嫌になります」約40%が異性関係でのトラブルを経験Upload By 発達ナビ編集部約40%が異性関係でのトラブルを経験しており、具体的には次のような内容があげられました。■適切な関係が築けない(36件)■性被害(29件)■距離感(21件)■依存(12件)適切な関係が築けないという人が最も多くいました。誘われたら断れない、好きという意味が分からないので恋愛がゲームのようになってしまうという場合も。「複数人と関係をもってしまう、誘われたら断らない」「結婚が長続きしない。離婚3回」「言いなりになりがち」「恋人がころころ変わる、付き合い始める前のかけひきみたいな状態が好きで、後先考えずにそういう雰囲気にもっていってしまう」「誰かと付き合っていても別の人間を好きになってしまうことがあり、そもそも恋愛的な意味での好きとは何なのかが分からなくなっている」また、「出会い系に手を出して、ストーカー被害にあった」「交際していない中年男性によるつきまといなどのストーカー被害」というように、性被害にあいやすいという人も多くいました。中には「8ヶ月間軟禁された」という人までおり、深刻さがうかがえました。不適切な距離感によるトラブルとしては「しつこく連絡して嫌われた」「勝手に気に入ってつきまとう」というように、しつこくしてしまい嫌われてしまうという例や、「好きじゃない人にも好意的に接してしまい、言い寄られる」「両思いだと勘違いされる」など距離感が分からないことなどが原因で、行為があると誤解されてしまうという例がありました。「男性との距離感で友人から恋仲との区切りが分からず「仲良いよね」と言われると、ベタベタされても、納得していた」という風に、自分では判断できない場合もあるようです。また、依存については、「性依存。浮気」「性的逸脱、共依存」「セックスフレンドにはまった」のように、性的に依存しまったり、「元夫に精神的DVを受けていた。共依存関係だった」「依存してしまいお金を貢いだり、妊娠して逃げられたりした」のように共依存となりDVを受けたり貢いだりしてしまうことも。このように、異性関係でのトラブルは、性暴力やDVなど精神的にも身体的にも大きな影響出てしまう可能性があります。異性関係のトラブルの原因とは?出典 : では、どうして異性関係でトラブルとなってしまうのでしょうか。その原因について、どのように認識しているかについても聞きました。■人の気持ちや距離感が分からないから(26件)■自己肯定感の低さ(21件)■性的知識の未熟さ(13件)どんな人とも同じような距離感で接してしまう、自己肯定感が低いために依存してしまう、性的なハードルが低すぎてトラブルに巻き込まれるというような声が目立ちました。約65%が恋愛や結婚をしたいが向いていないと考えている出典 : By 発達ナビ編集部約65%が、恋愛や結婚をしたいと考えているものの、向いていないと考えています。異性関係でのトラブルの経験などから、希望はあっても自分は恋愛や結婚に向いていないと考えてしまう人の割合が多くなっているようです。困難やトラブルの対応策・解決策は?出典 : 学校や仕事、交友関係など、さまざまな場面で生きにくさを感じている発達障害のある女性。でも、自分なりの対応策や解決策を見出している人も多くいます。■逃げたり放置して身を守る(22件)■冷静に整理・分析する(22件)■相談する(22件)■あやまる(10件)逃げたり放置して、身を守る例としては下記のようなものがあげられました。「環境を変えられるなら変える」「信頼回復に努める。職場や交遊関係なら離れる、逃げる」「直後であれば、落ち着ける場所に逃げる。または、保護してくださる方がいたら、頼って話を聞いてもらう。落ち着いてきたら、現状を自分なりに整理し、迷惑をかけた方々に最適と思う対応をする。決して必要以上にへりくだらない」どうしても合わない場合などは、無理せず職場や交友関係から離れて、心が壊れないように身を守るという方法です。冷静に整理・分析するという意見もありました。まず、起こっているトラブルを紙に書き出すなどして、客観的にみつめ、書籍を読むなどして対応策を考えて、対応するという方法です。「紙に書き出し整理する」「書き出す、フローチャートを作る」「参考になりそうな本を読む」「疑問、要因を確認する。自分が悪かったと思われるところは、相手に謝るようにしている」「尊敬する人をイメージして、その人が今この時なんと答えてくれるか、どんなリアクションをとるか考える」また、信頼できる家族やカウンセラーなどに相談することで、客観的にみることができたり、対応策が見つけられるという人もいました。「とりあえずあやまる」「早めに謝る」というように、トラブルがおきたらすぐにあやまることで問題を大きくさせないという意見も目立ちました。当事者が実際にとっている多くの対応策・解決策から、場合によってはまずは謝ってその場をおさめたり、がんばりすぎず、時には諦めたり離れたりすることも、自衛のためには大切だということが分かりました。相談相手はいる?誰に相談しているの?Upload By 発達ナビ編集部相談相手がいると回答したのは約65%。相談先としては、下記のような結果となりました。■家族(52件)■友人(25件)■カウンセラー(22件)■医療機関(13件)■修了支援施設の職員(5件)対応策・解決策のひとつとして、相談することで客観的に見ることができたり、身の安全を守ることができたりするという声が寄せられていました。信頼できる相談先を持っていることはとても重要です。特性を生かして、活動・仕事をしている人も出典 : 「ご自身の発達障害特性を生かした活動をされている場合、どのような特性をどのような活動で生かしているか教えてください」という問いに対し、下記のような回答が寄せられました。■当事者支援活動・子育て支援・指導員など(21件)■音楽・美術など芸術関係(16件)■プログラミング・パソコン入力など(8件)■子育て(7件)子どもを指導したり、カウンセリングをする中で、当事者としての経験を生かして、寄り添うことができるという声が最も多くあげられました。「学童保育指導員。自分の過去の失敗から、似た失敗の仕方をする子どもに、前向きな言い換えで指導できた」「教諭として自分の取説を作れるように自己理解を深めるような指導をしてきた。今は、多機能型通所事業所で指導員として勤務している。ご利用者のお子さまの気持ちも分かる。親御さんの気持ちも分かる。いろいろあるけど、自分は自分を認めたい」「同じような悩みの人に、自分の経験が役立てばと、カウンセラーを目指しているところです」視覚や聴覚の優位さなどの特性を生かし、芸術系の職につき、活躍している人もいました。「昔から絵を描く事にたけているので、美大を出て今も主婦として絵画の制作活動をしている」「絶対音感とリズム感を生かして、音楽活動をしている。色彩感覚や細かな絵を描くことが得意で、絵を描くことを仕事にしている」「フリーランスですが舞台に立つことや音楽、グラフィックデザインなどでもお金を得ています「企業内グラフィックデザイナーで就労していた」同様に、特性を生かしてプログラミングやデータ入力などの職についている人もいました。「プログラミングができるので、システムエンジニアとして就職」「独身時代は、システム開発の仕事で重用されていた。 通常の言語とは異なり、プログラミング言語は私の考えを表すのに適していると感じていた」「パソコン入力、経理など」また、発達障害がある子どもを育てるうえで、自分自身の経験が役立っているという回答もありました。今回の調査結果から今回の調査結果から、女性ならではの不安や困難を感じているものの、具体的な解決策が見つけられず悩みながらも、自分自身なりの対応策・解決策を見つけて、折り合いをつけながら生活をしている人がいることも分かりました。LITALICO発達ナビでは1月~2月にかけて「女の子の発達障害」特集を組み、コラム記事を掲載していきます。自分自身だけで抱え込まず、専門機関などに相談するなど第三者を上手に活用したり、書籍やコラム記事で紹介する内容などを取り入れて、ご自身なりの生きやすい方法を見つけていっていただきたいと願っています。
2018年01月24日発達障害児とその家族を支えるため、発達障害の正しい理解のための講演活動や、発達障害児を持つ家族のための相談支援活動などを行っている団体、一般社団法人「発達障害ファミリーサポートMarble(マーブル)」。その代表理事を務める国沢真弓さんは自身も、高校生になる自閉症児の母であるため、「当事者家族」の視点からのお話にはとても説得力があり、温かみのある方です。本業がアナウンサーであるため、周囲への「伝え方」のアドバイスは、なるほど! と深く納得できるものばかり。500名以上の発達障害児の家族の相談にのってきた国沢さんに、今回うかがったのは、発達障害の子どもを取り巻く、周囲との上手なコミュニケーション方法について。同じく発達障害の息子を持つ筆者が、「カミングアウトはするべきか?」「するとしたら上手な伝え方は?」、また「身近に発達障害児がいる場合、周囲はどう働きかければいいのか?」などを聞きました。■カミングアウトにあえて障害名を言う必要はない――発達障害の程度が重い場合は、あえて説明しなくても周囲は自然とわかるかもしれませんが、グレーな場合はわかりにくいですよね。特に説明する必要を感じない場合は、黙っていてもいいような気もしてしまいますが、身近なところにはカミングアウトした方が良いのでしょうか?「私が相談を受けた中では、カミングアウトした方が良いケースが多かったです。ただし、その際に、障害名をあえて言わない方が、結果的に良かったようですよ」――障害名をあえて言わないのはなぜでしょうか?「保育園や幼稚園だと、保護者が顔を合わせる機会が多いので、保護者の人となりが大体わかるのですが、小学生になると保護者の顔が見えにくくなってきます。残念ながら、中には噂好きのお母さんがいて、障害名だけ切り取って周囲に言われてしまったという例もあります。もちろん、障害名を伝えてうまくいくケースもあるので一概には言えませんが、カミングアウトする際は、どういう保護者がいるかわからないという想定で考えた方が良いと思います」――具体的には、どう伝えれば良いのでしょう?「上手くいった、ひとつの例をご紹介しましょう。『ホップ・ステップ・ジャンプの伝え方』…と私は名付けているのですが(笑)。まず“ホップ”。ユル~リと、子どもの具体的な行動を伝えます。例えば、『授業などの予定が急に変わると、混乱して泣いてしまうこともあるかと思います』とか『息子の〇〇は気持ちが高ぶると時々、乱暴な行動に出てしまうことがあります』など。ただ、この時、できればマイナス面だけではなくプラス面も話してほしいです。例えば、『小さな子には優しかったりするんですよ』など、良い面もくっつけると、聞いた時の印象が和らぎます。次に、“ステップ”として、子どもの行動に対して親として努力している姿勢を伝えます。例えば、『本人が行動を改められるように、1カ月に1回ほど専門家に相談に行っています』などというふうに『何もしていない訳ではないんだよ』と知らせます。最後に“ジャンプ”として、『〇〇のことで、何かありましたらお知らせください』と、いつでも受け入れる姿勢でいるということも伝えておく。そうすると、『ちょっと子どもはやっかいだけど、この保護者は何かあった時に聞く耳を持っているんだ』と、周囲も安心してくれるでしょう。本当は、しんどいんですけどね(汗)そして余裕があれば、最後に『今日は、話す前は緊張しましたが、親子ともども、楽しい学校生活を送りたいと思っているので、1年間よろしくお願いします』などと前向きな言葉で締められたら、グッド! ちょっとハードルが高いかな(笑)。でも、こんな順番でお話しすると、周囲に受け入れてもらいやすいようで、1クラスに2~3人は、応援してくれる保護者が出てくるケースをたくさん見てきましたよ」――なるほど。受け入れる姿勢を示すことはとても大事ですよね。では、もし、実際に子どものことで保護者からクレームがきた場合は、どう対処するのがベストでしょうか?「『周囲から子どものことでクレームがきた』という相談も、とても多いです。例えば、通常学級では『〇〇君がいると授業が進まない。支援学級にうつった方がいいんじゃないんですか?』なんて言われてしまうことも、残念ながらあります。そういう時は、もし、わが子が授業を中断しているのが事実だとしたら、まず謝ることが大切。そのうえで、『この子の居場所ができるように、クラスメートに迷惑がかからないように、学校と話し合いをしているので、もう少し見守っていただけますか?』とか『今、事態が改善されるよう、専門家にも相談をしています』などと、こちらが努力している姿勢を示しましょう。と言っても、こういう局面で、このように伝えるのは、すごくエネルギーを使いますよね。私も、相談する方のつらさがわかるだけに、なんとか力になれたらと思うんですよ」 ■発達障害の子どもに対して、周囲はどう対応すべき?――次は、逆の立場から考えた時のことをお聞きします。例えば、身近に発達障害の子どもがいた場合、周囲はどう接したら良いのでしょうか?「周囲が『歩み寄りたい』という気持ちを持ってくれたら、とてもありがたいです。発達障害の子どもの性質と接し方のコツを、周囲のみんながわかってくれたら、その子だけでなく、きっとみんなも楽になると思うんです。事実、障害児がいることで、その子を落ち着かせるために一致団結したり工夫したり、クラスがすごくまとまるケースもあるんです。…と言うことを、私たちのような“障害児の親サイド”から言ってしまうと、ちょっと押しつけがましいかもしれませんが(笑)。でも、実際、そういう例はあるんですよ」――「あの子はいろいろ問題行動を起こして迷惑」というふうにとらえるのではなく、「どうすればみんなが快適に過ごせるか?」というふうに視点を変えるのですね?「そうです。『授業を中断されて迷惑』とばっさり切り捨てるような一面的な考え方ではなく、『同じ教室に困っている子がいて、どうすれば解決できるか』を多面的にみんなで考える。その子が落ち着けば、自分たちへの飛び火も消えて、お互いに過ごしやすくなるはずですから。ただ一方的に、その子ばかりを特別扱いするというのではなく、みんなにも良いことがあるということを知ってもらえたら良いですね」――具体的には、周囲はどう接したらいいのでしょうか?「発達障害児に接する基本は4つです。1つは、話しかける時は『おだやかに・短く・肯定的な表現で・具体的に・わかりやすく褒める』。例えば、『廊下は走っちゃダメだよ!』ではなくて、『静かに歩きましょう』。『ちゃんとやってよ!』ではなくて、『〇〇を□時までに△△にしまいましょう』というふうに。2つ目は、あらかじめ予定を伝えることです。例えば、今日1日のスケジュールなどを表にして、『どこで、何が、いつ、誰が』を明記してわかりやすく伝えます。3つ目は、その子が集中できる環境を整えることです。好きなモノを手に握らせるなど、ほかにもその子が落ち着いていられるように工夫します。4つ目は、感覚過敏に配慮することです。発達障害児は知覚・触覚・嗅覚・味覚・平衡感覚が鋭かったり、逆に鈍かったりすることが多いので、近くで大声を出さないようにしたり、急に体に触れたりしないように、その子どもに合わせて配慮します。これら4つのことを組み合わせてやっていくと、落ち着いてコミュニケーションを取れることが多いと思います。すごくたくさんあって、大変という印象を持たれる方も多いかもしれませんね! けれど、こういうことを実践して、実際、発達障害の子どもが落ち着いて、クラスにいることができたら、それは周囲の皆さんの“努力賞”だと思いますよ」――なるほど。でも、このコミュニケーション方法って発達障害児だけではなく、すべての子どもに同じように役立ちますよね?「もちろん、発達障害児だけではなく、すべての子どもに有効な方法だと思います。私もこの対応法が身に着いてから、ずいぶん変わりました。例えば、忙しい時に子どもがミルクをこぼしたりすると、以前は『もう…! 何してんの!』みたいに怒ってしまっていたけど(苦笑)、息子への対応法が身についてからは『これでキレイにふきます』とサッと布巾を渡せるようになりました。私がイライラすると息子がそれに影響されて大変になってしまうので、自分の身を守るためでもあるんですけどね(笑)」――対応法が、すっかり体に身に着いたのですね!「10年以上、発達障害児の子育てをしていると、ずいぶん変わりますよ(笑)。難しいことかもしれないけれど、周囲の皆さんにも、どんどん対応法を知ってもらえたらうれしいです。上手に対応できた子は、きっとクラスの中でも『えっ、すごいじゃん!』と羨望(せんぼう)も集まって、その子も鼻高々になるかもしれません。そうやって、お互いコミュニケーション方法を学ぶことで、お互いの理解が深まるような、そんな環境になれば素敵ですよね」集団の調和を乱す子を、単に『みんなの邪魔』と言って排除するのは簡単です。でも、排除するだけでは、そこからは何も学べませんし、成長もありません。自分も、いつ“障害を持つ側”になるかはわからない…。障害を持った時に、悲嘆したり絶望したりすることがないように、誰もが尊重される、暮らしやすい社会が実現できると良いなと、心から思います。ただし、発達障害の子どもが何に困っているかを考え、相手の立場を理解し、一緒に楽しく過ごす方法を考えるのは、手間も忍耐力もとても必要です。けれど、それを根気よく進めていくことで、子どもたち(もちろん子どもだけではなく私たち大人も)は、かけがえのないものを学んでいくのではないでしょうか?国沢真弓さん プロフィールフリーアナウンサー、自閉症スペクトラム支援士、一般社団法人 「発達障がいファミリーサポートMarble」 代表理事<役職>ペアレント・メンター、三鷹市相談支援事業「ママサロン」相談員 、三鷹市知的障害者相談員、三鷹市発達障害児親の会「モンブランの会」会長、社会福祉法人「清陽会」評議員、児童発達支援施設「すこっぷ調布」アドバイザー、三鷹市教育支援推進委員会委員。<経歴>都立新宿高校、聖心女子大学文学部歴史社会学科を卒業。富士通株式会社を3年勤務後、アナウンサーに転向。NHKテレビ「きょうの料理」「婦人百科」の進行を約10年務めたほか、多数のテレビ・ラジオ番組に出演。海外特派員、番組企画構成も担当。ナレーション・司会は各500回以上務め、厚生労働省主催「世界自閉症啓発デイシンポジウム」の総合司会を毎春担当。「3歳までの子育ての裏ワザ」「こんな時どうする?子どもの友達・親同士」(PHP出版)など共著多数。<現在の活動>一般社団法人「発達障がいファミリーサポートMarble」代表理事として、「発達障害」や「伝える力UP」といったテーマでの講演を、全国で行っている。また、「ペアレントメンター」として保護者や支援者の相談に応じるほか、障害児の家族が気軽に参加できるイベントやお喋り会の開催等を行い、家族の元気を応援している。(詳しくはホームページをご覧ください)。取材・文/まちとこ出版社N
2018年01月20日2017年11月25日から12月5日に、LITALICO発達ナビでは「女の子の発達障害に関するアンケート」を行いました。発達障害のある子どもの保護者677名、発達障害の当事者445名の声が寄せられました。ご協力いただいたユーザーの皆様、どうもありがとうございました。この記事では、「約700名の保護者が回答!女の子の発達障害、学校や友達との関係、身だしなみの悩みや解決策は?」とし、調査結果の一部を抜粋し、お伝えします。発達障害の当事者の声については、「約450名の当事者が回答!女の子の発達障害、勉強や仕事、恋愛、交友関係など悩みや解決策は?」でご紹介しています。<調査対象について>「LITALICO発達ナビ」会員へのメールから、アンケートフォームにて回答いただいた発達障害の子どもをもつ保護者:677名の回答を集計しました。(調査期間:2017年11月25日~12月5日)※設問によっては677名全員が回答していないもの、複数回答可のものがあります。※調査結果の構成割合は四捨五入をしているため、合計が100%にならない場合があります。女の子の発達障害とは?発達ナビに寄せられた、保護者約700人の声出典 : 「約700名の保護者が回答!女の子の発達障害、学校や友達との関係、身だしなみの悩みや解決策は?」では、学齢期を中心とした発達障害の女の子の保護者677名が回答。現状や不安に思っていること、悩み、解決策までが寄せられました。小学生を中心に、幼児から中高生までの女の子の保護者が回答Upload By 発達ナビ編集部発達障害があることに気づいた年齢やきっかけは?Upload By 発達ナビ編集部お子さんの発達障害があることに気づいた時期は、就学前が約60%、小学校低学年が約20%となっています。気づいたきっかけは、1歳半健診など健診時(21件)や、幼稚園・保育園の先生(10件)からなど、専門家や先生からの指摘という回答がありました。他に目立ったのは、「言葉の発達の遅れ」(47件)によるものです。「発語が遅い」「単語のみで会話にならない」など、言葉の発達について保護者が疑問・不安を持ち、医療機関を受診したり専門家へ相談したという回答が寄せられました。就学後のきっかけとしては、学校でのトラブルのほか、不登校(23件)などがあげられました。また、癇癪や多動、こだわりの強さ、友人関係のトラブル、てんかん発作などがきっかけという声もありました。約40%が二次障害を発症しているUpload By 発達ナビ編集部発達障害特性を原因とした二次障害を発症している割合は約40%でした。二次障害で多くあげられたのが「不登校」(111件)です。続いて「うつ」(35件)、「不安障害」(17件)、「自傷」(13件)という回答でした。不登校とうつ、不登校と自傷など、複数の二次障害があるお子さんも多いようです。他に「反抗挑戦性障害」「ゲーム依存」「睡眠障害」「緘黙」などを発症した例もありました。また、特性である聴覚過敏などがひどくなった、ストレスでじんましんになった、クラスで孤立したという声も寄せられました。歳でアスペルガーと診断。二次障害で苦しむ娘を想い考えること90%以上の子どもが、不安や困難を感じているUpload By 発達ナビ編集部保護者から見て、日常生活に不安や困難を感じていると感じられたお子さんは、回答したご家庭90%以上に上りました。では、どのような場面で困難を感じているのでしょうか?Upload By 発達ナビ編集部保護者からみて、園・学校生活(76%)で不安や困難があると感じられることが一番多く、友人関係(72%)、学習面(53%)と続きます。具体的にどのような不安・困難を感じているのでしょうか?次に、具体的な回答内容を紹介していきます。女の子の発達障害、保護者から見た不安や困難の具体的な内容とは?出典 : 園・学校生活では、下記のような困難やトラブルがあるようです。■一斉指示に従えない■切り替えがうまくできない■トラブルがあっても大人に伝えられない■忘れ物が多いエピソードとしては、次のような例があげられています。「一斉指示が入りにくい」「高学年になると、先生も説明が簡単になり、理解出来ず泣いて固まる」「耳からの情報を捉えにくいため、先生からの指示を聞き逃して注意を受ける」など、一斉指示や口頭指示などが理解できない・気づかず、集団生活にうまくなじめない例。「給食、遊び、散歩など決まったスケジュールに沿った切り替えができない」という例。「何があったのか 誰が何を言ったのかを 明確に教えれないので発覚が遅れる」など、トラブルがあっても大人へうまく伝えることができない例。「ハンカチ、ティッシュの予備は登園するリュックの中にある事を知っているのに、(必要になった時に)どうしていいかわからず、スモックで拭いたり友達や先生に借りたりしている」など、忘れっぽいことや、場面に応じた対応が不得手なために困惑してしまう例。上記のような困難やトラブルから叱られることが増え、自己肯定感が下がってしまうお子さんもいるようです。中には、不登校や場面緘黙など二次障害を発症する場合もありました。「学校で声が出せない。後ろから誰か来ると動けなくなるためスイミングでも急に沈む。運動会で動けなくなる」「私立中学に通学していたが、コミュニケーションの取り方がうまくいかなかったり、誤解をされたりしたことで孤立ぎみになったため学校をやめて、本人が興味を示していた海外に留学させている。しかし現在、言葉の壁にぶち当たっている真っ只中で、閉鎖気味になってきた」不登校などの二次障害を発症する前に、対人関係や集団生活のフォローが必要になると考えられます。出典 : 友人関係では、女の子特有の交友関係でのトラブルについての回答が目立ちました。微妙なニュアンスが分からないためにガールズトークについていけず、ストレスを感じてパニックを起こしたり登校渋りにつながってしまうという声も。「ガールズトークについてけない、何となく浮いてるなど気になる部分がある。学校で頑張るせいか、家庭では未だにパニック起こしたり不注意が多い」「思春期では友人関係に苦しんでいました。女の子特有の集団発想など、気持ちがわからないためにしばしばトラブルに」いじめを受けてしまう場合もあるようです。「今まで話かけてくれていた子から、まったく話かけてもらえなかったり、声をかけるとみんな黙ってしまい、自分でどうしたらいいのか分からない為に辛い」「集団登校で、死んだらええのに、と言われたり、持ち物を捨てられる」反対に、中学校までは孤立していたものの、自分に合う学校を見つけられたことで転機となったお子さんもいました。「女の子が作りがちな派閥が嫌いで、中学までは孤立していた。通信制高校に入り、生徒会的な仕事をきちんとしていたら、派閥に入らなくても認められるようになってきた」出典 : 苦手教科がある、理解に時間がかかるという悩みを持つお子さんがいるようです。「算数が苦手」「文を読むのが苦手、+−=などの意味が全くわからなかった」「みんなと同じ宿題がこなせない」書字障害や注意欠如などが原因で、学習で必要な準備ができない場合もありました。「連絡帳が書けない」「忘れ物、連絡事項が記憶できない」感覚過敏が原因で、授業に集中できないお子さんもいました。「聴覚過敏があるため、授業中に隣のクラスの声も聞こえていたらしい」一方、「行けそうな時間割のところだけ行く。 教室には入れない。授業を受けていないので勉強が分からない」というように、不登校になったことで学習面で遅れてしまうケースもありました。出典 : 感覚過敏やこだわりによって、身だしなみに関わるトラブルが起こることもあるようです。「感覚過敏から特定の服ばかり着たがる」「服の色にこだわりがあり体操服が着られない」また、身だしなみをきちんとしていなくてはいけないという意識が低いお子さんも多いようです。「髪の毛がいつもボサボサ」「変な格好も平気で外に出る。上下がちぐはぐだったり、季節感がおかしかったり、年齢的に幼かったりする」「寒暖に合わせて服が選べない・ボタンの掛け違いや前後逆でも気づかず出かけてしまう」また、中にはこだわりすぎてしまうようになった例も。「中1までは、無頓着で、髪の毛ボサボサ・服もダサい。 中2からは、気にしすぎて、美容品や服にお金が掛かる」。衛生面で問題が出てしまう場合もあるようです。「洗髪しなくても気にならない」「時間に間に合わないので、毎日風呂やシャワーを浴びれない日がある。心身が落ちているときは何日も風呂に入らず不衛生」身体面で大きな影響が出ている場合があるようです。「本人が、体が疲労してても気がつかず、逆にテンションオーバーしてしまい、睡眠障害が出たり、こだわりが強いため、成長がどうしてもそこで止まってしまう」「起立性調整障害のため朝起き上がれず、眩暈・吐き気をもよおして登校・外出できない。PMS・生理痛がひどく月の半分は体調が悪い」出典 : 親子関係では、家庭内での暴言・暴力、嘘などについて悩んでいる保護者も多くいました。「母親への異常な反発」「かんしゃくから家庭内暴力になること」「自分の感情を抑える事ができない。パニックを起こす」「嘘をつく、兄弟をいじめる、お金を盗む」家庭内のトラブルから「普段の生活そのものを家族と共有することが大変」と感じてしまう保護者も多いようです。社会的な活動ができない状態について、どのように対応してよいか分からず困惑している様子もうかがえました。「人との距離感が近い。感覚過敏や体調不良、気が乗るときと全く動けないときの差が大きい」「友達が一人もいない、自己肯定、自尊心が低く、不安が強い。社会に出られない。働く勇気がない。何事も人のせいにする。いつもイライラしてる」その他、睡眠に関する困難について、多くの声が寄せられました。「ストレスから夢遊病、夜驚症」「不眠症、イライラ」「就寝前に家中の戸締りを確認しないと眠れない。死んだらどうしよう、といういう気持ちに襲われ不安で眠れない」睡眠のトラブルについても、本人はもちろん、一緒に暮らす家族への影響が大きく、悩む保護者が多いようです。女の子だからこそ心配なこと、悩むことはある?Upload By 発達ナビ編集部約80%の保護者が、お子さんの発達障害について、女の子ならではの悩みや心配を抱えています。寄せられた悩みの多くは、下記の4つに関連するものでした。■女の子特有の人間関係(41件)■第二次性徴による体の変化(14件)■異性関係・性のこと(47件)■将来のこと(14件)子どもの「生理」について悩む保護者が多いUpload By 発達ナビ編集部さらに、「思春期の心身の変化や生理などについて、不安や困っていることがある場合、どのようなことに困ったり、不安に思っていますか?」という質問を行ったところ、「異性関係・性被害」(15件)、ホルモンバランスの変化などの影響による「精神不安定」(10件)などがあげられましたが、一番多い回答は「生理」(44件)についてでした。特に、生理時に適切な処理ができない・できるのか不安という回答が多く寄せられました。「生理になったときの対応ができるかどうか(予期せぬ対応ができない為)」「自分で汚れ物の処理をちゃんとしてない。そこら辺にナプキン投げて恥じらいがない」「生理の始末が面倒で、たびたび衣服を汚すがまったく気にしていない」また、感覚過敏などの特性により、生理時に困難がある場合も。「感覚過敏があるので、下着がどれでも着られない。 生理用ショーツが履けない。ナプキンもつけていられない」「少しの傷で血を見ると大騒ぎなのに、生理の出血をどうとらえるか心配」また、生理前や生理中の気分の変調が大きいお子さんも多いようです。「生理中、生理前の気分の変調が激しく、仕事にいけない事がよくある」「生理の前は気分が沈むことが多く、悲観的になる」生理についての対応策については、後述する体験談も参考にしていただきたいと思います。女の子の発達障害不安や困難が少ない家庭は、どのような工夫をしているの?出典 : では、特に不安や困難を感じないで生活できている人は、どのような対策をとっているのでしょうか。下記の4つが、対策のポイントのようです。■事前に説明しておく(53件)■ツールを活用する(15件)■見守る・認める(23件)■第三者に頼る(4件)皆さんが行っている具体的な対策について、次に紹介していきます。出典 : 見通しが持てるように、事前に説明しているとスムーズだという意見が寄せられました。「何かをする前や出かける前は、説明したり事前に行く場所を見学する」「具体的になぜ気を付ける必要があるのか逐一説明している」「事前に『こんな時にはこう言おう』『相手の返事を聞いてから行動しよう』など伝えている」生理についても具体的な対策方法があげられました。「サラサーティなどで練習させている」「生理は、低学年の頃から母のトイレでのナプキンの付け方など見せて説明していた」「大きなナプキンにしたり、パンツ型のものを買っている」ナプキンの使い方を見せたり実際に使わせるなどして早いうちからロールプレイングする、処理が難しい場合はパンツ型のものを使うなどの例は、ぜひ取り入れてみたいものです。また、体の変化や異性関係などについては、下記のような声が寄せられました。隠すことなく、具体的に、分かりやすく伝える姿勢が大事なようです。「性教育の、かたくない本を複数わたしてある。興味がある分野なので、真剣に読んでいる」「知らない人と話さない。携帯電話を常に持っていることをアピールしながら歩く」「機会があるたび、性行為などについて教えている」具体的に話すほか、女の子の発達についての書籍も活用できそうです。参考:デビ・ブラウン著 『アスピーガールの心と体を守る性のルール 』(東洋館出版社)参考:やまがたてるえ著『15歳までの女の子に伝えたい自分の体と心の守り方』(かんき出版)出典 : また、混乱なく生活できるよう、ツールを活用している保護者もいます。視覚的に分かりやすいツールを取り入れている例としては、下記があげられました。「スケジュールはじめ、家庭内でホワイトボードなどを利用し視覚化。模擬時計、キッチンタイマーを利用」「時間割り、時系列がわかりやすいように色分け」自分の気持ちを伝える場合にもツール活用できます。「困った時に『困っています』とカードを見せられるようにしている」忘れ物が多い場合などは、必要なものを一カ所にまとめておくという工夫をしている家庭もありました。「お手伝いや、色んな出来たことに対してポイント制にしてモチベーションをあげてます。また、忘れ物が多かったり面倒くさがりな所があるので学校に必要なものは全て玄関に置いてあるボックスにて完結できるようにしている」子どもにあったツールを活用することで、スムーズに生活ができるようになりそうです。子どもが「初めて」に挑戦するときに最適!絵カードの使い方とは出典 : また、子どもの立場に立つことや、自主性を尊重することで、家庭生活がスムーズになったという声も寄せられました。「子どもの目線になり、親の独り善がりにならないように寄り添い傾聴した」「唯一の楽しみがスマホでアニメを見ること。その時間を作り出すためにお風呂の時間が短くなった。髪や身体を洗う順番や工夫があるみたいです」また、子どもを追い詰めないような接し方を心がけることで、二次障害を防ぐことも大切です。「緊張が高まりやすいことに対しては無理せずできなくてもいいんだよと話すようにしている。 苦手なことはなるべく先に慣れるように家でやってみたりしている(なわとびの練習やお当番さんの練習など)」「出来ない事を、出来るだけ怒らないようつとめている」出典 : 第三者の力を上手に借りている保護者の声も寄せられました。「困った時は、通級の先生や臨床心理士の先生のアドバイスなどを受け、子どもに適切に伝えていくようにしている」「生理の処理方法などは、母親の私が言っても全然耳に入らないので、学校の先生(女性)やデイサービスの指導員(女性)のかたにお任せしてたいぶ改善した」家庭の中だけで駆け込むのではなく、保護者が積極的に第三者にアドバイスをもらう姿勢が大切です。また、思春期は保護者の言うことは聞かないことも多いため、先生などの力を借りて対応したほうがうまくいく場合もあるようです。スクールカウンセラーに関するコラムを総まとめ!役割や相談の様子などをご紹介します85%は相談相手がいるUpload By 発達ナビ編集部約85%の保護者には、相談相手がいるという回答でした。具体的な相談先としては、次のような結果となりました。療育機関の先生(26件)カウンセラー(26件)医療機関・医師(22件)友人(18件)園・学校の先生(8件)夫(7件)通っている療育機関や、学校や行政などのカウンセラー、医療機関というように、専門家へ相談している人が多いようです。ただ、多くの保護者はさまざまな悩みを抱えている現状が見えてきました。不安や困難がある場合は、積極的に専門機関などを活用し、解決策を見つける必要がありそうです。今回の調査結果から今回の調査結果から、女の子ならではの不安や困難を感じているものの、具体的な解決策が見つけられず悩んでいる保護者や、発達障害を原因とした二次障害に苦しむお子さんがいることが分かりました。そこで、LITALICO発達ナビでは1月~2月にかけて「女の子の発達障害」特集を組み、コラム記事を掲載していきます。家族だけで抱え込まず、専門機関などに相談するなど第三者を上手に活用したり、書籍やコラム記事で紹介する内容を取り入れて、少しずつでも生きやすくなる工夫を試していっていただきたいと思います。
2018年01月19日発達障害の子育てママの座談会で、よく話題にのぼるものの一つに、夫の無理解や無協力があります。「無」とまではいかなくても、子どもの障害をなかなか認めようとしなかったり、療育や児童精神科などに行くことに乗り気ではなかったり、というお父さんがどこにも一定数はいるようです。そんな時、知ったのが一般社団法人「発達障害ファミリーサポートMarble(マーブル)」。発達障害児とその家族を支えるため、発達障害の正しい理解のための講演活動や、発達障害児を持つ家族のための相談支援活動などを行っている団体です。代表理事の国沢真弓さんは自身も、高校生になる自閉症児の母であるため、「当事者家族」の視点からのお話にはとても説得力があり、温かみのある方です。また、本業がアナウンサーであるため、周囲への「伝え方」のアドバイスは、なるほど! と深く納得できるものです。そんな国沢さんに、発達障害の子育てに協力的ではないお父さんや、育児に口出ししてくる祖父母への対策法をうかがいました。■発達障害はグレー診断な子ほど夫の理解が得られにくい――発達障害の子育てにおいて、ママの間でよく「夫が子どもの障害を認めてくれない」とか「夫が育児に協力的じゃない」という愚痴を聞くのですが、国沢さんの周囲でもこういった相談は多いですか?「今まで、保護者の相談を約500名ほど受けてきましたが、そのうち半数以上が、知的に遅れのない発達障害児(通常の学級に在籍して通級や校内特別支援教室などを利用しているようなお子さん)のお母さんからの相談です。その中で、夫の無理解や無協力という相談はとても多いですよ」――発達障害はグレー診断なほど、夫の理解が得られにくいというわけですね。「子どもとの会話が成り立たなかったり、説明しても理解できなかったりすれば、お父さんも『うちの子、何かある?』と思わざるを得ませんよね。でも、例えば、週末に家族の中だけで接していて、会話もほぼ成り立っている程度だと、たとえ外で問題行動があったとしてもお父さんにはなかなか、わかりません。『これくらい、男の子だったら当たり前じゃん?』とか『俺も昔そうだったよ』『個性だよ』という一言ですまされたり、ひどい時には『お前は、なんでそんなに障害児にしたがるんだよ!』なんてお母さんが怒られてしまうこともあるそうです」――障害と個性の線引きは、専門家でも判断が難しいと言われていますものね。では、知的に遅れがない発達障害のケースでは、ほとんどのお父さんは、わが子は問題ないと思っているのでしょうか?「いえ。私は、お父さんも本当は薄々わかっていると思いますよ。『なんでこんなに育てにくいんだろう?』とか『なんでこんなに癇癪がひどいんだろう?』という違和感は持っていると思います」――そうすると、わかっているのに認めたくないということ?「私がいろいろ相談を受けてきて思うに、男の人はとてもナイーブなんです。その点、女の人はとてもたくましいですね。もちろんお母さんだって、わが子の障害が判明した時はショックを受けて泣いたり悲観したりはします。でも、いろいろなところに相談して発散したり、専門家に助けを求めたりして、お母さんはさまざまなことを学びます。そうやって子どものことを苦しみながらも少しずつ受容し、子どもへの接し方もどんどん上手になり、プクプク…と浮上していくことが多いのです。一方、お父さんは、お勤めの関係などで、子どもと一緒に過ごす時間が物理的にとれないケースが多いため、専門家やドクターと接する時間もなかなかとれないまま、子どもに障害があるということを認める機会を逃してしまいがちなんです」■子どもが大きくなった時こそ父親の出番――お母さんはどんどん学んでいく一方で、お父さんは置いてきぼりになりがちなのですね。「夫婦で子どもに対する意識もスキルもどんどん離れていき、お父さんは家族の中で孤立してしまう…といった悩みを、お父さん自身から聞くことも多いんですよ。さらに、追い打ちをかけるように、一緒に過ごす時間が多いきょうだい児も、お母さんと一緒にどんどん学んでいくから、気がついたらお父さんだけがポツ~ン…って。でも、お父さんには、『お父さんにも教えて』と素直に言えないプライドがあるんですよね(苦笑)」――そうなると、お母さんは「じゃあ、もういいわよ! 私が全部やるから!」となるか、「この人にはもう期待しない」とコミュニケーションをあきらめちゃいそうですね…。「ただでさえ、お母さんは子どものことでいっぱいいっぱいなのに、夫にまで配慮していられない! という気持ち、よくわかります。でも、子どもが大きくなった時のためにも、ここはなんとかお父さんを積極的に子育てに巻き込む機会を早期にどんどん作った方がいいと思います」――子どもが大きくなった時のため、というのは?「発達障害というのは、男の子の割合が非常に多いのです。男の子の場合でも、小学校低学年くらいまでなら、お母さんの力でも主導権をにぎることができます。そのため、この時期ならば、お母さんのペースで日々の暮らしを仕切っていくことも、なんとかできるのです(まぁ、子どものタイプにもよりますが…)。でも、高学年くらいになると、お母さんが主導で物事をやっていくには限界があります。だって、男の子のトイレやお風呂に、高学年になっても一緒について行くわけにはいかないでしょう? その他、進路の問題や、思春期特有の難しい問題も出てきます。そうした時に、お父さんの出番となるのです。でも、急にその年齢になって『お父さん! お願いします!』と言っても無理なので、早い段階からどんどん子育てに巻き込んだ方が後々のために良いと思うのです」――なるほど。確かに健常児だって、男の子の思春期対応法は、お母さんには難しいですものね。では、夫を積極的に育児に参加させるには、具体的にはどうしたらいいのでしょうか?「大事な局面には必ず連れて行って、夫を頼る姿勢をみせてみてはどうでしょうか? 例えば、小児科や療育の面談など、ここぞ! という時は絶対に同席してもらうようにして、『あなたがいないと場がしまらない』とか『あなたがいないとちょっと心細い』とか頼ることで、男の人のやる気を引き出したり」――お母さんがお父さんのやる気をうまく引き出すということですね。「大事な局面に夫婦2人で参加した方がいいのには、別の理由もあります。例えば、一人でドクターへ面談に行った場合、聞くこと、答えること、話を受け止めること、書き留めること、即座に判断すること、これ、全部お母さん一人がやらなければならなくなります。専門家の時間は限られているので、いろいろ言われてワーッと終わっちゃうと、家に帰ってきた時に『あれが言えなかった』『これが聞けなかった』と不完全燃焼で終わり、悶々としちゃうことも多いのですよね。その点、2人いれば、お父さんが質問している間に大事なポイントを書き留めたり整理したりできるし、状況を客観的に見ることもできます。もちろん、直接先生と会って話すことで当事者意識が育つので、お父さんのためにもなると思います。そういう状況を作るのが、難しいご家庭もあると思いますが。可能なら…ということです」 ■疲れたり迷ったりしたら…心強いペアレント・メンターの存在――非協力的なお父さんを育児に巻き込むには、お父さんをわが子が集団にいるシーン(例えば、園や学校の普段の様子やイベントなど)に積極的に連れていくのが良いと聞いたことがありますが、どう思われますか?「お父さんは、集団の中にいるわが子の姿を見る機会が少ない方も多いので、理解をうながすには良い方法だと思いますよ。ただ一つ落とし穴があって、男の人って実はナイーブなので、集団の中で、わが子とほかの子どもとの違いを目の当たりにして、ガーンとショックを受けて落ち込んじゃうケースもあるんですよ。で、その後、お母さんがいくら誘っても、園や学校に行くのを避けるようになってしまった、そんな相談を受けたことも、たくさんあります」――すでにさまざまなことを乗り越えてきたお母さんとしては、「傷ついてる場合じゃないでしょう~!」と思ってしまいそうですが…。「お気持ち、よくわかりますよ(笑)。でも、男の人はそういう生き物と割り切って、『パパもショックだったよね。私も初めて見た時はショックだったんだよ』と寄り添いつつ、『うちの子みたいな子が落ち着けるように、こんな療育があるみたいだよ。一緒に見学行ってみない?』という感じに、だんだん専門領域の世界に引き込んでみてはどうでしょう?お母さん、大変ですね!(笑) たとえば、理論で入る男の人には、専門書をさりげなく渡してみるのもいいかもしれません。そういう方法で、実際に夫が協力的になったというご夫婦もいましたよ。――なるほど。専門書から理解を促すのは良い方法かもしれませんね。「お母さんは本当に大変だと思います。でも、これは大きくなった時に返ってくる「保険」だと思ってあきらめないで、早い段階から協力的な夫になってもらえるよう働きかけてほしいです。ここでガツンと切っちゃうと、夫婦関係が険悪になってしまったり、離婚という選択にもなりかねません。そういった例も、たくさん見てきました。逆に言うと、お父さん役も担っているシングルのお母さんは、大変な負担のなか、とても頑張っているんです。本当に、身体が心配です」――発達障害の子育てにおける、お母さんの負担はとても大きなものなのですね…。「そうですね。でも、しんどい時は、どんどん専門家に頼りましょう。もちろんママ友や先輩ママに頼るのも良いけれど、私は専門的な訓練を受けたペアレント・メンターをおすすめします」――ペアレント・メンターって何ですか? 「ペアレント・メンターとは、自分自身も発達障害の子育てを経験し、さらに相談支援に関する一定のトレーニングを受けた親のことです。私も資格を持っているんですよ。2010年から、厚生労働省もメンターの養成に力を入れています。発達障害の子育てに関する悩みや相談を抱えた親に対して、気持ちに寄り添い、その親にとって必要な情報(病院、療育、学校、福祉サービス、地域の情報など)を提供したりしています」――実際に発達障害の子育てをしている方だと、専門家とはまた違った安心感がありますね。「発達障害児の子育てでは、すべての情報が親に集中します。しかも、情報は多岐に渡ります。療育機関の専門家、医療機関のドクター、心理士、作業療法士、園や学校の先生、療育ママ友、家族、親せき、近所の人…いろいろな人から『ここが良いわよ』『これをしたら良くないわよ』という情報が、すごい勢いで入ってきます。そこから、親はわが子に必要なことを取捨選択するわけですが、そのプロセスは想像以上に大変です。ペアレント・メンターは親に寄り添い、一緒に情報を整理し、今後の道を一緒に考える役割を担うので、とても心強い存在になると思いますよ。同じ仲間として、先ほどお伝えしたような、お父さんへの上手な接し方などもアドバイスしてくれます。ストレスがたまったり、子育てに疲れてしまったら、こういった専門家に頼るのも手だと思います」■祖父母世代には、「専門家の意見では…」で対応――周囲には、義理両親(もしくは自分の両親)の子育てへの口出しに悩んでいるお母さんもいましたが、祖父母関係の相談は多いですか?「10年前くらいはとても多い相談でしたが、最近は少し減ってきたように思います。逆に、孫のことを理解しようと講習会に積極的に参加したり、自分も何とか役に立ちたいという祖父母の方も増えてきました。とはいえ、まだまだ『そんな子育てだから、子どもがワガママになるのよ』とか『もっと、こうしてみたら伸びるんじゃないの』とか、ひどい例では『うちの家系には、こんなことをする子はいない』といったことを言われてしまうことも残念ながらあります。そんな時は、大変つらいと思いますが、すべてキッチリ理解してもらおうと思わず、上手に受け流して、別のところでストレス解消をしましょうね。自分たちより長く生きて、自分のスタイルを確立している人たちの認識を変えることは、とても大変です。ただ、言われっぱなしも悔しいので『専門家に相談してすすめていますので見守ってください』などと、自分たちも自己流ではなく、ちゃんと考えて子育てしている、ということはアピールしておくといいかもしれません。で、ほかのところで毒を吐く(笑)。同じ思いをしている仲間は、意外にたくさんいますよ」――ちょっと極端な話ですが、お姑さんのちょっとした子どもへの体罰に悩んでいるお母さんもいました。良くないことをすると、手をつねって教えるという。「お嫁さんが『嫌だから止めてください』という言い方をすると角がたつから、専門家の名を借りてみてはいかがでしょう。たとえば、『専門家から、そういうことを続けるとほかの子に暴力をふるうようになるって聞いたんです』などと伝えてみるとか。もちろん、ただの『嘘』になってはいけないので、専門家にも、その件を相談してみる。『義理の母が、しつけと称して子どもの手をつねるんですけど、こういうことを続けていると、この子がほかの子をつねる可能性もありますよね?』と聞いて『可能性あるね』と言われたら、それを『お墨付きのアドバイス」』にする。専門家の意見と言えば説得力が増すので、さすがのお姑さんも自制するのではないでしょうか?『伝え方の工夫』、これは、発達障害児の子育てで、とても必要な力だと思います」――確かに、「専門家の意見では…」という言葉は効果ありそうですね。「私は、これを学校の先生対策にも利用していますよ。例えば、生徒を大きな声で叱る先生がいて、それが怖くて、指示されても全然動けなくなった子がいるとします。そんな時、『児童精神科の先生に相談してみたら、大きな声がすごく苦手みたいなので、席を後ろにしていただけませんか? もしくはイヤーマフをつけさせてもいいですか? このままだと学校に行けなくなって不登校になる可能性もあると言われたんです』というふうに。親が『大きな声で叱るのはやめてください』とだけ言うと、ただのクレームみたいに思われてしまうけど、専門家の指示であれば対応せざるを得ないでしょう。周囲を上手に説得したい時は、専門家の意見を上手に借りるのも一つの手だと思いますよ。『伝え方』を工夫をすれば、双方の関係は悪化せず、子どもの状況が改善される…そんなケースを、私はたくさん見てきました。こうして見てくると、お母さんには、たくさんの力が要求され、本当に大変ですが(涙)、一緒に励まし合って、乗り越えていきましょうね!国沢真弓さん プロフィールフリーアナウンサー、自閉症スペクトラム支援士、一般社団法人 「発達障がいファミリーサポートMarble」 代表理事<役職>ペアレント・メンター、三鷹市相談支援事業「ママサロン」相談員 、三鷹市知的障害者相談員、三鷹市発達障害児親の会「モンブランの会」会長、社会福祉法人「清陽会」評議員、児童発達支援施設「すこっぷ調布」アドバイザー、三鷹市教育支援推進委員会委員。<経歴>都立新宿高校、聖心女子大学文学部歴史社会学科を卒業。富士通株式会社を3年勤務後、アナウンサーに転向。NHKテレビ「きょうの料理」「婦人百科」の進行を約10年務めたほか、多数のテレビ・ラジオ番組に出演。海外特派員、番組企画構成も担当。ナレーション・司会は各500回以上務め、厚生労働省主催「世界自閉症啓発デイシンポジウム」の総合司会を毎春担当。「3歳までの子育ての裏ワザ」「こんな時どうする?子どもの友達・親同士」(PHP出版)など共著多数。<現在の活動>一般社団法人「発達障がいファミリーサポートMarble」代表理事として、「発達障害」や「伝える力UP」といったテーマでの講演を、全国で行っている。また、「ペアレントメンター」として保護者や支援者の相談に応じるほか、障害児の家族が気軽に参加できるイベントやお喋り会の開催等を行い、家族の元気を応援している。(詳しくはホームページをご覧ください)。取材・文/まちとこ出版社N
2018年01月14日筆者の息子が発達障害の疑いをかけられた時、ネットにかじりついて情報収集する中で、たどり着いたのがABAという療法でした。ABAとは、アメリカの心理学者スキナーが創始した学問体系のことで、日本語では「応用行動分析学」と呼ばれます。人の行動の原因を内部(心)ではなく、人を取り巻く環境に求める考え方で、自閉症など発達障害の子どもに非常に有効なアプローチ法とされています。最近では、このABAを取り入れた療育療法が非常に多くなっています。でも、専門書を読んである程度の考え方は理解したものの、「具体的にどう子どもに接したらいいのか?」はわからずに困っていました。そんな中、とても役立ったのが、shizuさんの著書「発達障害の子どもを伸ばす 魔法の言葉かけ」(講談社)でした。発達に遅れがある子どもへの具体的なアプローチ方法が書かれており、日々の生活の中で、子どもとの関わり方にたくさんのヒントを得ることができました。しかも、その考え方は、発達障害だけでなく上の子(定型発達)の子育てにも同じように役立ったのです。著者のshizuさんの息子さんも、3歳の時に自閉症スペクトラムと診断されており、ちりばめられたご自身の体験エピソードには、とても重なるところがありました。「私だけじゃない」「やればできるかもしれない」ととても励まされたのです。そんなshizuさんに、「ABAを利用して発達障害の子どもを伸ばすにはどうしたらいいのか?」をテーマにお話をうかがいました。■3年間できなかった滑り台、ABAでたった30分で滑れるようになっちゃった!?――ABAは素人が専門書を読んで理解するにはなかなか難しい学問ですが、わかりやすく言うと、shizuさんはABAをどういうものだとお考えですか?「私は、ABAは親子の関係を笑顔に導く1つの学習方法だと思っています。子どもが生きやすく生きるために、「できないこと」を「できた」に導きやすくする有効な働きかけだと思います」――具体的には、どんな手法なのでしょうか?「ABAの醍醐味のひとつに、スモールステップというものがあります。これは、ひとつの課題をできるだけ細かいステップに分け、1回の目標達成レベルを低くして、そのステップを一つ一つ達成しながら成功体験を重ねていくというもの。それが子どもの自信となって大きな課題達成につながるというわけです。この手法で取り組んでいくと、まるで魔法みたいに、全然できなかったことがコロッとできるようになっちゃったりするんですよ」――著書の題名も「魔法の言葉かけ」ですものね。実際に、魔法のような出来事はありましたか?「私が関わった子で、滑り台がまったくできない子がいました。3歳の時に滑り台でひどい尻もちをついてしまって、以来3年間、滑り台を断固拒否していたんです。でも、身体的な原因ではないし、私はその子の様子を見ていてできる可能性は十分あると思い、スモールステップで取り組んでみました。そしたら、たった30分足らずで滑れるようになったんですよ!」――3年間できなかったことが30分で!? 具体的にはどうやったのですか?「目標値を滑り台の下の方から、70センチくらいに設定し、ちょっとずつ登って滑ることを繰り返しました。その都度「すごい! ここまでこられたね!」とほめて、だんだんと目標値を高くしました。下の方から登れば、手を離すだけでスーッと滑りますよね? だから少しずつ滑り台の感覚を楽しめると思ったのです。私も後ろからついて子どもの恐怖心を和らげました」――なるほど。逆から少しずつ滑らせて、恐怖心を取り除くというワケですね。「滑り台の上まで登れたお子さんを見て、ご両親は本当にうれしそうで、何度もほめていらっしゃいました。そしたら、その子はすごくうれしくなって、1つできたことから自信がどんどん広がったんです。大きく揺れることを拒否していたブランコも大きく揺らして乗れるようになり、ジャングルジムも2段目までが精いっぱいだったのに、一番上まで登れるようになったんです。これ、全部その日のうちにできるようになったんですよ。その後、市内の滑り台めぐりをして、児童デイサービスでの散歩の時間にも『滑り台のある公園はありますか』とリクエストしたそうです。それまで、その子はあまり自分のやりたいことを積極的に言うタイプじゃなかったそうで、ご両親は積極性が出てきたこともとても喜んでいました」――自分ができたことはもちろん、お父さんとお母さんにほめられたことが、ものすごくうれしかったんでしょうね。「子どもにとって、親のほめ言葉は何よりのご褒美です。どんなささいなことでも、できたことに対していっぱいほめてあげてほしいです」――スモールステップを成功させるコツはあるのですか?「まず、親が『できる』と信じること。子どもは親が思っていることを敏感に察知するので、信じて『できるオーラ』を送ることが大事です。だからと言って、親のエゴで『この歳で滑り台ができないなんて恥ずかしい』とか『みんなができるんだから』というのは違いますよね。それは、親が子どもを思い通りにコントロールしたいと思っているだけ。そうではなくて、滑り台って本来、子どもにとってとても楽しいモノ。その楽しさを味わえたらいいよね、というイメージをふくらませてほしいです」――親のエゴを押し付けるのは違う、ということですね。「言葉かけも大事です。親目線で『やってごらんなさい』と言うのではなく、子どもと同じ目線になって『ちょっとやってみようよ! 〇〇ちゃんならきっとできると思うな』という感じで。NHKの歌のお兄さんやお姉さんみたいに、思わず子どもの気分が乗っちゃうようなノリやテンションで盛り上げるのもコツですね」――子どもがチャレンジに不安を感じたら?「子どもが不安を感じていたら、まずは、不安に寄り添ってあげることが大切。いったんはスルーして、気分が戻ってきたら『ちょっとだけやってみる?』とうながしてみてはどうでしょうか? 時間を空けるとスルッとできちゃうこともあるので、1回であきらめずに何回かはトライしてほしいですね」――でも、もしそれでもダメだとしたら…?「たとえ滑り台の一番上まで登れなかったとしても、『ここまでできたんだね! すごいね!』と、必ず成功体験で終わりにしてあげることが大事です。『あとちょっとだったのに!』という捨てセリフは厳禁。どんなにわずかでも、自分で踏み出せてそこまでできたということを、まずは認めてあげてください。また、ちょっと難しそうだったら、子どもの苦手な動作を背後から補助するような形で、親が少しだけ手助けしてあげることも有効です」――他にうまくいかない課題に取り組むときに心がけた方がいいことはありますか?「子どもの興味あることに寄り添って、課題の設定を工夫することも大切だと思います。例えば、こんなお子さんがいました。その子は平仮名を覚えるのが苦手で、カードで『あ』『い』『う』…と教えても、上の空で全然頭に入らない。そこで、その子が大好きな戦隊モノを利用することにしました。戦隊キャラの写真と名前(平仮名)をゲーム感覚で一致させて、その子の興味を引き出す仕掛けを作り、平仮名を読む行為自体が楽しくなる方法で取り組んだのです。そうしたら、その子はどんどん平仮名を覚えて、後にお母さんから『文章も読めるようになりました!』と報告がありました」――「教える」というより、その子の「興味を引き出す」仕掛けを作る。そして、それが楽しいと思えれば、後は、自らどんどん吸収してくれるというわけですね。親もそんな子どもの成長がうれしい。子どもも笑顔&親も笑顔、親子の関係を笑顔にする、まさにウィン・ウィンの方法ですね。 ■ABAを行ううえで、親が気を付けるべきこと――スモールステップがとても有効なやり方だということはよくわかりました。では、課題を少しずつクリアしていけば、何でもできるようになるのでしょうか?「いいえ。一点注意しなければいけないのは、何でもかんでもスモールステップで繰り返しやれば身に付くわけではないということです。滑り台の例のように、ちょっとした勇気やきっかけ作りでクリアできそうな課題はスモールステップが有効です。でも、平仮名の読み書き、算数など、さまざまな工夫をしてもどうしてもうまくいかない場合、もしかしたら学習障害が絡んでいる場合もあるかもしれません。その場合は、『これは生まれ持った特性なのでは?』と考えを切り替えることも大切です。そのことも頭にとめておいてほしいです(文字の読み書きにはビジョントレーニングが有効な場合もあります)」――ほかに、ABAを行ううえで気をつけておくべきことはありますか?「よく、家で机に座って子どもにガッツリABAの課題をやらせる、という話も聞くのですが、体を動かすことや外に出て五感を生かすことも大切にしてほしいと思います。五感を働かせることは、視機能、脳機能を伸ばすのにも大切だと思いますよ。あと、ABAはちょっと間違えると、『指示して動かす』ということに終始しがちな危険性があるので、子どもに選択させることを常に意識してほしいと思います。例えば、どんなに障害が重いお子さんであっても、食べ物の好き嫌いはあるはずです。『はい、お菓子よ』とあげるだけではなくて、『どっちが食べたい?』と選ばせる。選ぶというのは楽しみでもあるので、どんなにささいなことでも自分の意思で選ぶという体験を重ねてほしいと思います」■客観的視点が大事! ABAは親子の笑顔を引き出すアプローチ――最近では、ABAの認知度が高くなって、家で実践している方も多くなってきたようです。でも逆に、それがうまくいかないと、自分と子どもの努力不足だと追い詰められてしまう方もいるようですが…。「確かに、向き不向きがあるかもしれません。そんな時は、そもそもABAは子どもの笑顔を引き出すアプローチということを思い出してください。そこを外れて『なんでできないの?』『どうしてあなたはいつもこうなの?』というふうになってしまったら本末転倒ですよね…」――私もそんな時期がありました(苦笑)。つい「あなたのためなのよ!」と力が入ってしまって…(苦笑)。「私もそうだったのでよくわかりますよ。でも、お母さんが『これができないと困る』と思って一生懸命やっていても、子どもは全然困っていなかったりするんですよね(笑)。困っているのは、子どもじゃなくて、実はお母さんの方。お母さんが、他人からどう見られるかを気にしてやっていることの方が多い気がします。そんな時は、ちょっと立ち止まって『今の私って人の目を気にしてる?』と自分のことを客観的にみることが大事です」――確かに(苦笑)。当時は、「普通に近づけたい」という私のエゴが、常に頭のどこかにあったように思います。「私も息子が自閉症と診断された当初は、とにかく『普通に近づけたい』と夢中になっていた時期がありました。でも、その結果、課題をなかなかクリアしない息子を追いつめ、見事に失敗しましたけどね(苦笑)。普通にこだわったり、周囲からどう思われるかにとらわれると、子どもの悪いところ・できないところばかりが目についてしまい、悪循環に陥っちゃうんですよ」――そういう時って、もはや自分のことが見えなくなっているはず(汗)。自分のヤバさに気づくサインはありますか?「常に子どもが教えてくれるはずです。子どもに笑顔があるかどうかです。子どもに笑顔がなかったら、きっとその時、お母さんにも笑顔がないと思いますよ。お互いに笑顔がないのなら、家庭でのABA(療育)はいったんお休みしましょう」――いろいろお話をうかがっていると、もちろんABAは子どもの力を伸ばす可能性に満ちているけれど、それ以前に、お母さんの心の健康の方が大事という気がしてきました。「そう。子どもうんぬんよりも、まずはお母さんが自分自身を大切にすることが何より大事。だって、同じことが起こっても、自分に余裕がある時は『あらま~』って笑えるけど、余裕がない時だと『何やってんのよ!』って怒っちゃったりするでしょう? 物事をどう受け取るかはすべて自分次第なんですよ。借りられる手は全部借りて、まずは、お母さん自身の心を満たすことを考えましょう。子どもが見たいのは親の笑顔ですから。あと、何もかも完璧を求めすぎず、『まぁ、いいか』というゆるい心を持つことも大事です」――確かに、発達障害の子育てで「ゆるさ」は大切ですね。発達障害児のお母さん(私?)って、常に、子どもの将来の心配をするのが癖のようになっちゃっているのですが、ここらへんはどうしたら?「みなさんが不安に感じているのは、まだ、実際には起きてない予期不安ですよね? だとしたら、起きてない不安を延々と考えて苦しむのはムダじゃないですか?まずは、不安を感じているという自分の気持ちを『~って思っちゃうんだね。わかるよ』と認めて受けとめ、『また出てきたあ! 私って本当に悲劇のヒロイン好きだわ~』って笑い飛ばしちゃうのもひとつの方法です。思考癖に気づくことが大切です」――先のことは誰にもわからないはずですものね。「もう、『なんか知らないけど、この子はきっと大丈夫!』と決めてしまいましょう(笑)。先のわからないことはプラスに考えた方が楽しいし、それに、人はみな、決めてから行動を起こすでしょう? だったら、『大きくなった子どもの笑顔を思い浮かべ、今、サポートできることは?』と応援団として行動を起こすのです。それでも不安に押しつぶされそうになった時は、どうか、この言葉を思い出してみてください。それは、『今の子どもの姿がすべてではない』ということ。これは、私がお守り代わりに心にとめている言葉です。親が信じて、コツコツ働きかけていれば、きっとうれしい成長があります。今の姿だけを見て将来を悲観せず、子どもの可能性を信じて、楽しく働きかけていきましょう!」「今の子どもの姿がすべてではない」――著書を読んで以来、私がずっと心にとめている言葉です。shizuさんのこの言葉は、いろいろな局面で私の心を楽にしてくれました。子どもの可能性を信じてコツコツ働き続けることの大切さ、そしてそれ以上に、子どもと自分が笑顔でいることの大切さを、改めて感じた取材でした。参考図書: 発達障害の子どもを伸ばす 魔法の言葉かけ 著者 shizu/監修 平岩 幹男11万部13刷のロングセラー。手を洗うときの言葉かけ、食事をしながらの言葉かけ、いっしょに料理をするときの言葉かけ、散歩のときの言葉かけ、遊びながらの言葉かけ―ABA(応用行動分析)を利用した「言葉かけ」をすれば、楽しみながら家庭で子どもの力を伸ばせることを紹介した一冊。shizu プロフィール自閉症療育アドバイザー。講演会などで、日常生活の中で子どもの力を伸ばす楽しい関わりや言葉かけを紹介。家族に笑顔を増やすため、親が心掛けたい子どもへの気持ちの持ち方も伝えている。無料メール講座『発達障害の子と楽しく生活する7つのコツ』配信中。講演会の詳細はブログ参照。ブログ: 「発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉」 取材・文 まちとこ出版社N
2018年01月07日発達が気になるお子さんや、障害のあるお子さんがサポートを受けることができる場所「放課後等デイサービス」や「児童発達支援事業所」。発達ナビでは「施設情報」のコーナーから、お住まいの地域の教室を簡単に探すことができます!また、各教室の特徴や、利用者の声も合わせて知ることができるので、お子さんにぴったりの教室を探すことができます。今回は、大阪府で情報をアップデートしてくださった教室をピックアップ!気になる施設を見つけたら、「ページを見る」をクリックして、詳しい情報をチェックしてみてくださいね。発達ナビ「施設情報」大阪府 放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報放課後等デイサービスまりもでは、子どもの発達段階に応じてSST(ソーシャルスキルトレーニング)や運動療育のほか、多様な療育支援を行っています。お風呂嫌いも克服できるようにと入浴支援も行っており、自己肯定感を育みながら日常スキルを身につける支援を実施しています。Upload By 発達ナビ施設情報オンライン英会話レッスンが受けられる放課後等デイサービス・みらいジュニアは、グローバル社会対応型の自立支援を行っています。保育士同席のもと発達障害児対応の研修を受けた講師がオンライン英会話レッスンを行い、学習を通して自己肯定感を育むことを目指しています。Upload By 発達ナビ施設情報ウィズ石切は、SST(ソーシャルスキルトレーニング)・学習支援・運動療育を3本柱に支援を行っています。特に力を入れているSSTでは、お子さんの自立した生活を目指して、自然体験や料理、お買い物や外出など自立するのに必要な知識やスキルが身につくような支援プログラムを実施しています。Upload By 発達ナビ施設情報放課後等デイサービスそらは、学習支援に力を入れており、基礎学力の向上支援のほか、プログラミング学習などを行っています。ひとりひとりのレベルや特性に応じた支援を行なっています。授業形式での学習の他、マンツーマン体制での個別指導も実施。また月1回程度、遠足などの土日のイベントも実施しています。Upload By 発達ナビ施設情報児童発達支援・放課後等デイサービス ぎゃらりーは、子どもの笑顔が絶えない自立支援を目指しています。学習支援や創作活動などを通して、日常生活力を身につけながら子どもの可能性を広げる支援を実施。親御さんの心配や不安を共有し、少しでも軽減できるようにサポートしていきます。Upload By 発達ナビ施設情報児童発達支援事業・放課後等デイサービス はなかわは、英語などの学習支援やクッキングなどのクラブ活動を通して、子どもの主体性や自己肯定感を育む支援を行っています。ピアノコンサートなどのイベントも多数開催され、子どもたちが「明日も来たいな」と感じられる教室を目指しています。大阪府の「放課後等デイサービス」を探す!大阪府 児童発達支援事業所Upload By 発達ナビ施設情報保育園と学童保育を併設した愛児園では、子どもたちは家族という想いの元、「ただいま」「おかえり」で一日が始まります。お休みのときは外出やイベントなど行い、さまざまな体験ができるように。我が子を育てる感覚で、自己肯定感を育むための個別療育や社会性を育むための支援に力を入れています。Upload By 発達ナビ施設情報つむぎでは、自信を見いだすことを目指し、楽しい遊びの時間を通じて、日々の活動を実施しています。親御さんからお子さまの日常をお聞きした上で子供たち一人ひとりに応じた療育を実施し、毎日笑顔で通える教室を目指しています。大阪府の「児童発達支援事業所」を探す!おわりに出典 : いかがでしたか。気になる施設がありましたら、「~のページを見る」のボタンを押してみてくださいね!教室の先生たちが書いているブログや、利用者の方が投稿した口コミなどを見ることもできます。「空き状況を知りたい!」「教室見学をしたい!」と思ったら、WEB上からもお問い合わせを行うことができますので、ぜひ試してみてください。今後も掲載数がどんどん増えていきますのでお楽しみに!
2017年12月26日療育とは出典 : 療育とは障害のある子どもの発達を促し、自立して生活できるように援助することをいいます。療育という言葉はもともと、東京大学名誉教授の高木憲次氏(1888-1963)が提唱した概念です。肢体不自由児の社会的な自立を目標に、医療と教育を並行してすすめることを指しました。高木氏の後には高松鶴吉氏(1930-)が療育の対象をすべての障害のある子どもに広げて、育児支援の重要性を強調しました。後に療育の概念をさらに発展させて「発達支援」という概念が生まれました。厚生労働省では「児童発達支援」という言葉として以下のように定義しています。児童発達支援は、障害のある子どもに対し、身体的・精神的機能の適正な発達を促し、日常生活及び社会生活を円滑に営めるようにするために行 う、それぞれの障害の特性に応じた福祉的、心理的、教育的及び医療的な援助である。(児童発達支援ガイドライン|厚生労働省より引用)療育という言葉や概念は時代の変遷とともに意味合いを変えており、現在定まった明確な定義は示されていません。また必ずしも医療行為を含むものではない場合もあります。定義や実践内容の移り変わりはあるものの、概ねの理解としては、療育とは障害のある子どもの発達を促し、自立して生活できるように援助する取り組みを指すと考えるとわかりやすいでしょう。参考:発達支援の指針(CDS-Japan 2016 年改訂版)|全国児童発達支援協議会参考:『脳と発達 第43巻 第6号』「療育とは…」再考「療育とは…」再考(一般社団法人 日本小児神経学会)参考:『佛教大学大学院紀要社会福祉学研究科篇第37号(2009年3月)』子どもの権利条約における「療育の権利」の位置づけ(佛教大学)療育の対象となる児童は?出典 : 療育は基本的に18歳以下の児童を対象としています。身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)の3障害のいずれかに該当する障害のある児童が療育の対象となります。参考:児童福祉法第19条発達障害のある子どもの場合、療育を受けるために療育手帳や精神障害者福祉手帳は必須の条件ではありません。障害者手帳を取得していない、もしくは取得のための認定基準を満たしていない場合でも、療育を受けることができる場合があります。児童発達支援を利用して療育的な支援を受けたい場合、行政から発行される「受給者証」の申請が必要になります。受給者証の交付を受けると、国と自治体から施設利用料の9割の給付を受け、自己負担1割で児童発達支援を受けることができます。また、児童が属する世帯の市町村民税額により、負担上限月額が定められています。利用月の1割負担額と負担上限月額を比較し、安い方の金額が利用者負担となるため、場合によっては1割以下の金額になります。負担上限月額は、通所受給者証に記載されています。参考:障害児支援の強化について|厚生労働省療育ってどこで受けられるの?出典 : 療育という言葉の定義は明確ではなく、家庭でのトレーニングや私費で受けられる療育的支援を指して「療育」ということもあります。ここでは、公的に受けられる療育的支援についてご紹介します。障害児への支援として療育が受けられる施設について、以前は障害ごとに細かな分類がありましたが、現在は複数の障害がある場合にも対応できるように一元化されています。療育を受けられる施設を児童福祉法にしたがって分類すると、通って療育を受ける「通所支援」型と、自宅で生活するのが難しい子どものための「入所支援」型の2つに分けられます。そこからさらに、福祉サービスとして行われる「福祉」型と医師による治療を併せて行う「医療」型に分かれます。Upload By 発達障害のキホン参考:児童福祉法の一部改正の概要について|厚生労働省施設によって対象としているお子さんの年齢が違ったり、提供しているサービスが違います。保育園のように通い、療育を受けられるような施設もあります。詳しくはこちらの記事に説明がありますのでご覧ください。こちらからお近くの施設も検索できます。施設検索|LITALICO発達ナビ療育ってどんなことをするの?出典 : 障害のあるお子さんが社会的に自立できるように、身辺自立や苦手なことを伸ばすことを意識した働きかけをしたり、コミュニケーションなどの社会的スキルを得られるように助けます。お子さんごとに必要な支援が違うので、一概に内容を説明することはできませんが、発達障害のあるお子さんによく用いられるアプローチをいくつか紹介します。人間の行動は周囲の状況との相互作用によって生まれると考え、状況を変えることで困った行動を減らし、より望ましい行動を身につけてもらうことを目的とした、理論と実践の体系を、応用行動分析学(ABA)といいます。TEACCHとは、アメリカ・ノースカロライナ州発祥の、自閉症スペクトラム障害(ASD)の当事者とその家族を対象とした生涯支援プログラムです。自閉症スペクトラム障害がある人の特徴を「世界の捉え方が一般の人とは異なる」ととらえて、彼らの特性が社会に適応できるように助けるという考え方がTEACCHの特徴です。具体的なアプローチとしては、生活・学習環境を分かりやすく整理したり、今後の見通しがつきやすいようにスケジュールなどはカードを使って視覚化したりといった方法があります。また、コミュニケーションについては、耳から聞くよりも目で見るほうが理解しやすい場合が多いので、絵カードなどを使って伝えるようにします。感覚統合とは、複数の感覚を整理したりまとめたりする脳の機能のことです。感覚統合ができるようになると、状況に応じた感覚の調整や注意の向け方ができるようになります。つまり、自分の身体を把握する、道具を使いこなす、人とコミュニケーションをとるというような周囲の状況の把握とそれをふまえた行動ができるようになるのです。発達障害がある子どもには、感覚統合が難しい子どももいます。感覚統合療法では、そうした子どもたちへのアプローチとして、主に作業療法士(OT)が中心となり、遊びや運動を通して感覚統合を伸ばしていくプログラムを行われます。PECSは、言葉によるコミュニケーションが難しい場合などに行われるアプローチです。絵カードを使って、自発的なコミュニケーションをとれることを目標にしたプログラムです。療育にはどんな効果があるの?出典 : 療育の効果は、その子どもに生じている困難・障害や、療育の目的・プログラム内容に応じて異なります。たとえば、食事、排せつ、身支度などが一人でできるようになったり、認知、言語、運動などの発達が促されて、受け答えや挨拶、表情や感情の理解をして他者とコミュニケーションが取れるようなったりと、さまざまな効果が期待されます。実際の療育現場では、子ども一人ひとりの特性や発達段階に合わせて、個別に目標とプログラムが設定されます。ですが、療育を始めてすぐに目に見えて効果が出ることは極めてまれです。特に、発達障害のある子どもの発達は、ゆっくりと進んでいくことが多いです。目立っている苦手な部分がすぐには改善されない場合もあります。それでも、働きかけを続けることで子どもは着実に成長していきます。苦手な部分はそのままでも、得意なことでそれをカバーできるようになっていくこともあります。また、療育を通して子どもとのかかわり方を学ぶことで保護者の対応が変わっていき、より豊かなコミュニケーションが可能となる場合もあります。療育の体験談もありますので、こちらも参考にしてみてください。みなさんの療育体験談を教えてください|LITALICO発達ナビ早期療育はどうして大切なの?出典 : 発達障害のある子が周囲や本人に特性の理解のないまま成長していくと、叱られたり非難を受ける機会が増え、傷つき自信をなくしていくことが多くなりがちです。そこから、自尊心が育たない、抑うつ、激しい反抗などの問題が生じることもあります。障害そのものによってではなく、ストレスなどから起こる問題を、二次障害と呼びます。このような二次障害を防ぐためには、早期から周囲が特性を理解し、対応することが必要となってきます。また、3歳までの幼いうちに療育に取り組み始めることができると、体も小さいので身体的な支援がしやすく、療育の中で子どもがパニックなどを起こした際も抱き上げたりなだめたりなどの対応がしやすいというメリットがあります。参考:『発達障害の子どもとつき合う本―どう関わればいいかわからずに困っているおかあさんや先生方へ』(浅羽珠子/主婦の友社)子どもが小さいうちから特性を把握し、心を安定させながら育てる環境を作ることによって、その子が持っている能力をさらに伸ばしていける可能性が広がります。発達障害への早期支援については発達障害者支援法の中にも述べられています。市町村は、発達障害児が早期の発達支援を受けることができるよう、発達障害児の保護者に対し、その相談に応じ、センター等を紹介し、又は助言を行い、その他適切な措置を講じるものとする。(発達障害支援法 第六条より引用)発達相談から、療育を受けるまでの流れ出典 : 保護者から見て言葉や発達の遅れが気になったり、健診で「発達の遅れがみられる」と指摘された場合は、行政などの相談機関に行ってみましょう。子育て・発達支援室や療育センター、児童相談所などで相談をすることができます。ここで、その地域の検査機関を紹介してもらえます。年齢に応じてさまざまな検査方法があり、複数を組み合わせることでより的確な結果がでます。地域によっては順番待ちが長く、すぐに検査がしてもらえない場合もあります。急ぎたい場合は、病院の外来などで自費診療という形で検査してもらうこともできます。行政が運営しているものから研究機関が運営しているもの、NPOや民間のものなど、多様な施設があります。対象にしている年齢や受けられるサービスなどもさまざまなので、子どもの検査結果に合わせて選びましょう。役所の福祉窓口で療育施設の紹介をうけることもできます。施設によっては見学や体験もできます。利用する施設によって交付される受給者証の種類が違います。通所型施設の場合は「通所受給者証」を市区町村の窓口から申請します。入所型施設の場合は「入所受給者証」を児童相談所などから申請します。必要な書類は行政によって異なる場合があるので、事前に確認をしておきましょう。支給の有無やサービス内容の決定のための調査や審査が済むと、受給者証の交付を受けることができます。受給者証の交付を受けたら、受給者証の内容に合わせて障害児支援利用計画を作成します。受給者証、障害時支援利用計画など必要な書類がそろったら、施設との契約、利用のスタートができます。まとめ出典 : 「療育」というと、少し敷居が高く感じるかもしれませんが、実際は療育手帳などがなくても受けられる場合もあり、発達が遅れていたり生活に困りを感じている子どもをサポートするためのものです。子どもの成長を手助けし、自分でできることを増やせるよう、療育を活用していきましょう。参考書籍:『発達障害のある子と家族のためのサポートBOOK 小学生編』(岡田俊/ナツメ社)
2017年12月15日発達が気になるお子さんや、障害のあるお子さんがサポートを受けることができる場所である、「放課後等デイサービス」や「児童発達支援事業所」。発達ナビでは「施設情報」のコーナーから、お住まいの地域の教室を簡単に探すことができます。また、各教室の特徴や、利用者の声も合わせて知ることができるので、お子さんにぴったりの教室を探すことができます。今回は、神奈川・埼玉・千葉・茨城で情報をアップデートしてくださった教室をピックアップ!気になる施設を見つけたら、「ページを見る」をクリックして、詳しい情報をチェックしてみてくださいね。発達ナビ「施設情報」神奈川県 放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報200坪の自然豊かな敷地を持つどろんこランドでは、個性を伸ばし将来に役立つスキルをより多く身につけることを目指しています。対人コミュニケーションスキルの向上を中心に、農業体験や釣り、BBQなど、年間を通してさまざまなイベントが行われているほか、生活能力向上や自立、就職のために必要な療育を行っています。Upload By 発達ナビ施設情報学習支援に力を入れるスマイリーキッズでは、社会生活に必要な技能や知識・マナーの習得に加え、学校の宿題のサポートなどを実施。PCスキルの習得にも力を入れているほか、漢字検定、数学検定、英語検定、プログラム検定(初級~)などの取得を目標に、集中力、計画性、創造性を育む支援を実施しています。Upload By 発達ナビ施設情報プレップサポートセンター和田町では子どもに合わせた療育計画を作成し、生活力や集団生活への適応力を向上させる支援を行っています。また、プリント学習を導入し「ひとりで、できた!」を積み重ね、自己肯定感を養う学習支援を用意。スタッフは各事業所内で行う研修だけではなく、外部講師を招いての研修会にも参加しスキル向上を目指しています。神奈川県の「放課後等デイサービス」を探す!神奈川県 児童発達支援事業所Upload By 発達ナビ施設情報コペルプラスセンター北教室では、発達段階に応じた課題に子どもたちが楽しく取り組みながら自己肯定感を伸ばし、通うのが楽しみになる教室を目指しています。スタッフはコペルで認定された指導員が在籍。毎回異なった教材を使用し、お子さんの発達段階に応じた課題に、楽しく取り組んでいきます。神奈川県の「児童発達支援事業所」をもっと見る埼玉県 放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報ハッピーテラスみずほ台教室では、「身体スキル」「学習スキル」「生活スキル」「社会性スキル」のトレーニングを通じて、楽しく毎日を過ごせるようにサポートをしています。独自の研修を修了した講師が、子どもたちの発達課題に合わせてトレーニング内容や教材を調整し、段階を踏みながら成長へと導きます。埼玉県の「放課後等デイサービス」を探す!千葉県 児童発達支援事業所Upload By 発達ナビ施設情報にじいろデイズ市川新田では、発達に課題のあるお子さんへのレッスンと、暮らしの中での困りごとの解決に向けたご家族へのコンサルティングを実施。ご自宅や在籍園など日常生活の中で取り入れやすい具体的な工夫を、相談を重ねながら一緒に見つけていきます。千葉県の「児童発達支援」を探す!茨城県 児童発達支援事業所Upload By 発達ナビ施設情報ソレイユ守谷は、子どもの特性にあわせて、運動、療育、学習をバランスよく取り入れ、お子さんの特性に合わせたプログラムを提供しています。「できた!」の積み重ねによって自己肯定感を養う支援を実施。教育や福祉に携わってきた専門スタッフのほか、児童発達専門アドバイザーの協力のもと、利用者に喜ばれるサービス提供を目指しています。茨城県の「児童発達支援」を探す!おわりに出典 : いかがでしたか。気になる施設がありましたら、「~のページを見る」のボタンを押してみてくださいね!教室の先生たちが書いているブログや、利用者の方が投稿した口コミなどを見ることもできます。「空き状況を知りたい!」「教室見学をしたい!」と思ったら、WEB上からもお問い合わせを行うことができますので、ぜひ試してみてください。今後も掲載数がどんどん増えていきますのでお楽しみに!
2017年12月05日発達障害当事者による、発達障害当事者のための居場所「Necco」Upload By 発達ナビ編集部東京の高田馬場にある「Necco」は、大人の発達障害当事者による、大人の発達障害当事者のための居場所です。高田馬場にある雑居ビルの1室にあり、18時までは一般のカフェとして発達障害の当事者によって営業され、18時以降はフリースペースとして発達障害の当事者のために場が解放されます。スペースでは茶話会やゲーム大会といったイベントも頻繁に開催されており、発達障害の当事者が気軽に集まれる居場所づくりがなされています。大人(成人)の発達障害当事者のためのピアサポート Necco(ネッコ)取材に訪れた日もたくさんのお客さんで賑わっており、別フロアではフラワーアレンジメント講座が開かれていました。Upload By 発達ナビ編集部本棚には発達障害関連の本が多数並んでいます。Upload By 発達ナビ編集部Neccoは自由に集まれる居場所としては2010年、カフェとしては2011年に活動をスタートしており、大人の発達障害当事者のための常設の居場所としては、日本で最初に出来た場です。今回の記事では、このNeccoを立ち上げた方であり、ご自身も発達障害の当事者である金子磨矢子さんに、活動を始めたきっかけや、長年続けていく中での苦労、活動を続けるモチベーションや今後の展望についてお話をお聞きしました。金子さんは平成28年度厚生労働省より「発達障害者の当事者同士の活動支援のあり方に関する調査」を受託し、その報告会である「発達障害当事者会フォーラム2017」を開催された主催者のおひとりでもあります。この報告会は、1月にも「発達障害当事者会フォーラム2018」として大阪で開催する予定とのことです。金子さんのインタビューから見えてきたのは、当事者活動を続けることの大切さと、当事者活動としてどう外の社会と関わっていくかという問題意識でした。ずっと自分はちょっと変な子だと思っていたUpload By 発達ナビ編集部―金子さんがご自身の発達障害について知ったのは、どういったきっかけだったのでしょうか。金子さん: 子供のころからずっと、自分はちょっと変な子だとは思っていました。しかし本格的に自分のADHDを知るきっかけとなったのは、子育てに悩み、本屋で調べ物をしていたときですね。子どもが2才の時にプレイグループに参加させたんですけど、どうにもよその子と何かが違ったんです。なかなかうまく他の子どもと交わることが出来ず、自分のやり方で自分なりの遊びをつくるのを好む傾向があって。プレイグループには、参加している子供の他にその子たちの弟や妹にあたる赤ちゃんも何人かが場にいたのですが、赤ちゃんの泣き声を極端に嫌がるそぶりも見せました。うちの子はよその子となにか違うのかしら?という答えが知りたかったんですが、当時はインターネットも普及していなかったので、しょっちゅう本屋に入り浸っては答えを探し求めていました。その時に出会ったのが『のび太・ジャイアン症候群』という本です。落ち着きがない・忘れ物が多い・後先を考えずに行動する・いじめられる…この本を読んで、子どものことはひとまずそっちのけで「これは私だ!」って叫びそうになりましたね。その場で立ちつくし、購入して帰り、何度も何度も読みました。それまでも自分自身に対する違和感はずっと持っていたんですが、こんな変わった人は自分だけじゃない、特性というものなんだと知り、この本にとても励まされたんです。よその子とは何かが違うと感じていた子どもに関しては、その後、2004年ごろですかね…テレビ番組がきっかけで、アスペルガー症候群だということに気付きました。自分が発達障害だと気づいてから起こした私の行動Upload By 発達ナビ編集部―ご自身の発達障害特性に気付いた金子さんですが、当事者としてNeccoの活動をはじめるきっかけは何だったのでしょうか。金子さん: 最初は活動というまでのものではなかったんです。SNSが普及した頃に、そのSNSの発達障害コミュニティのメンバーでリアルでも会ってみようということになり、定期的にオフ会をするようになったのがはじまりです。そうやって集まるようになっていた中で結束が強くなったのは、リタリンの処方が制限されるようになったのがきっかけです。(編集部注:現在リタリンはナルコレプシーにのみ適応)メンバーの中にはリタリンなしではADHDの症状がしんどい人もいて、これはなんとか訴えないと!ということで、厚労省の会議に傍聴に行ったり、ネット上で活動を行ったりしました。結局私たちの訴えは聞き届けてはもらえなかったのですが、この活動がきっかけで2つの願いが強まりました。ひとつは、いつでも私たち発達障害の当事者が集まれる場所がほしいということ。当時は私の家のリビングに集まってミーティングをしていましたので。そしてもうひとつは、自分たちが集まる居場所を得るだけではなく、社会に対して働きかけを行い、当事者発信で発達障害を広く知ってもらうことです。リタリンの処方うんぬん以前に、当時の発達障害の認知度の低さを思い知らされましたね。私自身、自分の発達障害を知ることが出来てよかったと思っているんです。だから今度は私が、まだ自身の発達障害に気付かずひとりで悩んでいる人の気付くきっかけになったり、居場所になれたらいいなと思って、啓発や居場所づくりの活動を続けています。また、最近でこそ「発達障害」という名前だけは知られてきましたが、「それでは発達障害とはいったい何なのか」という本質的なことは、まだほとんどの人に理解されていないのではないでしょうか。発達障害の啓発活動の動機として、生きづらさを抱えながらも自分が発達障害だと気付かずに生きている方本人に、自分自身のことを気付いてもらいたいというのもありますが、本人だけじゃなくてもっと多くの人にも発達障害についてちゃんと知ってもらいたいと思っています。というのも、発達障害に対する無理解によって苦しんでいる当事者の人がたくさんいることを知っているからです。この人たちはこういう人たちなんだよっていうことを、目に見えないのでむつかしいとは思うのですが、発達障害じゃない人たちにも分かってもらいたい。学校の先生、役所の方、会社の上司…出来ないことは出来ないんだと分かってもらえないと、当事者の方はつらいばっかりです。わざとやらない、怠けたくて障害のせいにしている、そういう風にとられてしまいがちなんですが、本当にそんなことないんですよ。むしろ精一杯努力している真面目な方が多いと思います。必要としてくれている人がいる限り、続けていきたいと思ってるUpload By 発達ナビ編集部―Neccoを続けてきた中で、印象に残っていること、大変だったことはありますか。金子さん: もう、大変なことだらけです(笑)まずNeccoをはじめるにあたり、場所探しから大変でしたね。「借りた場所を発達障害の人の居場所にしますので物件を貸してください」と言って、理解してくれた上で快く貸して頂ける場所を探すのに1年ぐらいかかりました。現在Neccoの運営母体は一般社団法人としており、非営利で運営しています。カフェの店員はボランティアで、費用の持ち出しも発生しています。とはいえNeccoを必要としてくれている人がいる限り、なんとかして運営を続けていきたいと思っています。「Neccoという居場所があるから今、学校や会社に頑張って行けている」、そういう方がたくさんNeccoにいらしているんです。なかには毎週末、長野から夜行バスでNeccoに来ている方もいます。月から金までなんとかお仕事を頑張り、金曜の夜の夜行バスで東京に来て、日曜の夜の夜行バスで長野に帰っていくんですね。また以前は40才前後のいわゆる団塊ジュニアといわれる世代の方が多かったのですが、最近は高校生や大学生といった若い方も増えてきました。当事者としてどう社会と関わりを持つかUpload By 発達ナビ編集部―今後、Neccoの将来の展望はありますか。金子さん: Neccoに関していえば、"来たかったらいつでもここに来ていいんだよ"という居場所がある状態をこれからも維持していくだけだと思っています。発達障害の人は、かつての私がそうであったように、いろんな場所で苦労している方が多いと思います。そういった人たちの誰もが気軽に来れるような居場所を準備しておきたい。欲を言えばここだけじゃなくて、もっと日本中のいろいろなところにたくさんNeccoのような居場所ができたらいいなとは思いますね。また最近力を入れていたのは、大人の発達障害当事者会に関する調査報告書の作成ですね。これは厚生労働省から依頼を受けた調査事業で、私は事業責任者をしていました。長年Neccoに関わってきて、自分たちで自分たちの居場所をつくることももちろん大切だと思っていますが、当事者たちだけでやっていくのはなにかと限界があります。というのも、当事者の生きづらさは、自分の努力や行動で解消出来る部分もありますが、当事者の周りにいる発達障害ではない人や社会の理解、配慮や助けがとても重要です。また先ほどお話したように、私は私自身が発達障害だと分かったことですごく人生が楽になった経験から、まだ自分の特性に気付かず生きづらさを感じている人に発達障害というものを知ってもらいたい。ですから発達障害の啓蒙のため、まず私が出来ることとして、当事者や当事者会の情報を取りまとめ、私たちの生きる困難さや活動を社会に向けて発信し、知ってもらう必要があると考え行動しています。長年発達障害の当事者活動に関わってきましたが、課題はまだまだ山積みです。当事者同士の活動に関して言えば、とにかくいろんな特性を持った方が集まるので、運営のむつかしさがあります。こだわりの強い特性の人同士の意見が対立して分裂してしまったり、正直当事者同士での連携のむつかしさは感じています。なんとか意見をまとめてルールをつくってみると、今度は逆にそのルールを文字通りにとらえてしまって、ルールからちょっとずれる人がいるとこだわりから許せない人がいたり。たとえばNeccoでいうと、かつてはフリースペースのクローズ時間は22時だったのですが、スタッフが大変だということで21時に変更したんですね。たまに場が盛り上がってクローズが21時を過ぎてしまうことがあったのですが、そのことに対して「ずるい」と腹を立てる方がいたこともありました。同じ発達障害の当事者同士とはいえ、特性は本当に人によってさまざまなので、いろんな国の外国人同士が集まっていっしょに何かやろうとしているような困難さを感じています。当事者活動をどうしたらいいか、ずっとそればかり考えています。しんどいと思うことも多々あります。だけど続けている、それは、私は子供の頃からずっと自分のことをダメな人間で、人の役に立つことが出来る人間ではないと思っていたんですね。そんな私が今、活動を通して、目の前の人の支えになったり、社会に働きかけを行ったり出来ている。そのことが生きがいであり、生きるよろこびだからかもしれません。見えない障害とどう向き合うか「私は私が発達障害だと気付けて心から良かったと思っています」これは取材中に金子さんが繰り返しおっしゃっていた言葉です。この記事を掲載している発達ナビのユーザーさんからは、病院へ行き診断を受けることへの心理的抵抗感や、障害受容のむつかしさなど、日々さまざまなお悩みが寄せられています。自分や自分の子どもの生きづらさ・育てにくさをどうとらえるかについて、それぞれに多様な悩みを抱えられているのだと思います。「見えない障害」であり、また「ここからこっち側は障害です」と線を引くように切り分けることは難しいからこそ、その悩みは尽きないのかもしれません。いろんな考え方があって当然で、答えはないのかもしれません。金子さんの場合、彼女は子どもの頃からずっと「自分はちょっと変な子だ」「自分は努力不足でダメだ」と思い悩んでいたそうですが、一冊の本との出会いをきっかけとして発達障害を知ったことで、自分は努力不足でもなく、親の育て方のせいでもなかったということが分かり人生が前向きに進んだと語っています。今、人知れずしんどい思いをしている人、一人でつらい思いを抱えている方が、もしこの記事を読んでくださっていたら、こういった考えや経験をもとに活動をしている人がいることや、その人がつくった居場所があることを、選択肢のひとつとして心の片隅にとどめておいていただけるとうれしいです。大人(成人)の発達障害当事者のためのピアサポート Necco(ネッコ)
2017年12月01日発達が気になる子どもの偏食、困っていませんか?出典 : 発達が気になる子どもの中には、食べられるものが極端に少ない「偏食」がある子が少なくありません。発達障害の特性の中には、感覚の過敏や鈍麻、こだわりの強さというものがあり、そういった特性によって偏食になりやすい傾向があるといわれているのです。発達ナビの記事の中にも、子どもの偏食に関するものがたくさんあります。また、子どもの偏食についてのアンケートには、さまざまな体験談や克服法などが寄せられました。子どもの偏食、どう工夫してる?どう考える?みんなのアイデアや体験談を教えて!|LITALICO発達ナビどんなことに悩んでいる?偏食の子をもつ保護者の気持ちとは…出典 : 発達ナビのコラムとアンケートに寄せられた保護者のさまざまなお悩み。その中でも、特に多くあげられたものを紹介します。同じようなことに向き合い、悩んでいるユーザーがきっといるはずです。3歳の息子は炭水化物を好み多い時なら一食に1.5合食べます…笑他はたまに卵焼き、しらす、ソーセージ、練り物、唐揚げ、フライドポテトくらいで野菜なんて一切手をつけません(꒦ິ⌑꒦ີ)発達ナビライターのkaoruさんの息子さんは、かなり食べられるものが少なく苦労されたそうです。”食べられるものは、米、蕎麦、根菜、かぼちゃ、青魚、卵、納豆や豆腐などの大豆の加工品……以上です。どんなに工夫して調理してもそれ以外のものは食べません。さらに、環境が変わると普段食べているものも食べられなくなるし、調理法が変わっても食べられません。学校給食では牛乳しか飲まない。実家を含め、よそのお宅でご飯が食べられない。外食は蕎麦屋しか行けない。しかも生蕎麦で茹でたてでないと食べません。空腹に耐えられなくなると、食事を採る努力はせずに角砂糖をなめてカロリーを補給する。”無理をすると吐いてしまうというアンケートの声もありました。味覚過敏や嗅覚過敏もあり、小さい頃から炭水化物は好きですが、野菜と魚は食べてくれません。診断前は、子供の偏食を直すのは母親の役目!と思い、必死に躾たり、工夫したりしましたが、少しでも無理に食べさせると、家でも外でも本格的に食べた物をすべて嘔吐してしまうので‥いつしか諦めました。出典 : 全く受けつけない食べ物も多いですが、食べれる物にも細かなマイルールがあります。ミニトマトは食べるのにトマトはダメ。サニーレタスは食べるのにレタスはダメ。揚げたポテトは食べるのに茹でたポテトはダメ。発達ナビライターのニャンタさんのコラムでも、こんな困りごとが…”息子は1才頃には食べる物が決まってました。からあげ、うどん、フライドポテト、ブロッコリー。フライドポテトは画像のようにケチャップなんてつけられたら食べません。キレます。…ブロッコリーも同様。”小1息子も炭水化物ばかり食べ、タンパク質は嫌がります。でも、タンパク質、ビタミンミネラルが特に必要なんですってね。お腹を空いた時にお菓子やおにぎり、パンを食べると余計に食事を食べないので、食事(特にタンパク質)をすぐ出せるように、早めに支度をするように努力しています。我が家の小2次男も偏食です。小さいころはフライドポテトとフランスパン、飲むヨーグルトしか食べず義母に躾が出来てないと責められてとてもつらかったですかわいくデコレーションしたり、すりつぶすなどいろいろしましたが全くダメでした。中二の男の子を持つ母親です。息子は小さい頃から主食は麺でした。野菜、魚などのおかず類も、お米も食べられません。保育園の先生に理解してもらえず、責められた気がしたことも。発達障害がある子どもに、偏食が多い原因とは?出典 : 発達障害がある人の中には、感覚(五感と呼ばれる視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)のはたらきに過度に偏りがみられる人がいます。このような感覚の偏りは、特定の感覚・刺激を過剰に受け取ってしまう「感覚過敏」と、逆に、感覚・刺激に対する反応がにぶくなる「感覚鈍麻」に分けられます。感覚過敏の症状の中には、味覚に偏りがあり、特定の味に過剰に刺激を感じてしまう「味覚過敏」や、特定のにおいを過剰に受け取ってしまう「嗅覚過敏」というものがあります。この感覚過敏と発達障害には密接な関係があり、特に自閉症スペクトラム障害(ASD)の人に多い特性であるといわれています。感覚過敏がある人は、味やにおいの刺激が過剰に感じられるため、特定の食べ物に拒否反応を示してしまう場合があります。食べたくてもどうしても食べられず、偏食につながるのです。発達障害の特性のひとつである、強いこだわりも、偏食の要因になっています。こだわりの例としては、毎食同じ食べ物ばかり食べ続けたり、同じ食品の中でもある特定のメーカーのものしか食べなかったりするというものがあげられます。また、初めてある食品を食べたときに味覚や食感が合わないといった違和感を感じると、強い嫌悪感を抱いてしまい、その後一切、その食品を口にしなくなることがあります。このようなこだわりが、偏食を固定化し、特定の食べ物だけしか食べないという行動をとらせてしまうのです。こうした発達障害の人特有の感じ方は生まれつきのもので、本人の努力だけでどうにかなる問題ではありません。それにもかかわらず、周囲の人からはなかなか理解されず、わがままや、親のしつけの問題にされ、本人やその家族が追い詰められてしまうことがあります。参考:偏食・味やにおいに敏感|NHK発達障害プロジェクト一人ひとりの偏食の原因や傾向を知り、適切な対処を出典 : 偏食の原因は、人それぞれです。子どもの偏食の原因には、根底に感覚過敏や強いこだわりがあることが考えられます。ですが、同じように感覚過敏があるように見えてもどの味や食感が苦手で、どのような味つけや調理法なら大丈夫なのかなどは、一人ひとりちがいます。そのため、子ども一人ひとりに合わせた偏食の原因や傾向を知ることが、適切な対処をするための第一歩となります。子どもの偏食の原因や傾向を探り、どうしたら食べられるようになるのか考えることが大切です。ここでは、その体験談を、原因別に紹介していきます。うちの子はご飯とお肉が苦手です。お米やお肉が口の中でポロポロするのが嫌みたいです。ケーキやクッキーなど口でとろける甘いものも苦手です。好きなのはパリパリとした味海苔やおせんべいや煮干し。。味というより食感の問題らしいので、お肉も薄くして衣をつけてパリパリにしてみたり、ご飯も海苔巻きにしたり焼きおにぎりにしたりしています。発達ナビライターのSONOさんのお子さんは、2人そろって偏食の兄妹でしたが、苦手な感覚は違っていたようです。肉と牛乳嫌いの息子さんには、「見た目」や「食感」の苦手感がありました。一方、娘さんはそれに加えて、どうも柔らかいものと「におい」に敏感な様子でした。魚は売り場も歩けず、調理後も近くには置けないほどだったそうです。そこで、息子さんには、例えば肉団子をネギトロ用マグロで作る、鶏の唐揚げをカジキマグロで代用する等、食べられる物をアレンジした料理を試してみたところ、食べられるものが広がったのです。さらに、「食べられるものを食べましょう」という方針で、夕食の形式を変えたところ、ふたりに良い変化が・・・!詳しくは関連記事をご覧ください。出典 : 発達ナビライターSAKURAさんのお子さんは、3歳ごろから偏食が激しくなり、せっかく作ったものも「いやー!」と突っぱねられることもしばしばでした。ですが、よくよく食事を観察してみると、いろいろな食材が混ざったおかずは食べませんでしたが、野菜や肉、果物…単体では嫌がらずに食べているというこだわりが見えてきたのです。そこで、ある方法をとったところ、娘さんは生野菜をペロリと完食!その方法とは・・・?発達障害が気になるモンズースーさんの息子さんは、1歳ごろからだんだんと偏食に。食べられるものが炭水化物と乳製品のみとなってしまったため、食卓はいつも真っ白でした。その上、言葉が喋れるようになってからは、「赤や黄色はすっぱいから嫌。赤は辛いから嫌。緑は苦いから嫌。」と食べずに言う時もよくあったため、モンズースーさんは”色が重要なのでは”と考えたそうです。そこで、「色が重要なら食べない色でおいしい物を食べれば食べられる色が増えるかもしれない!」と考え、”実験”をしてみたのです。その結果とは・・・?モンズースーさんの次男は、乳児期ミルクをまったく飲まない子でした。「長男はこんなに嫌がらなかったのに…なんでだろう?」と疑問に思い、調べてみたら乳製品のアレルギーがあることがわかったのです。食べたくないものには「好き嫌い」だけではなく、口の中の症状や、微妙な体調の変化を引き起こす、アレルギー等の他の原因が関係する場合もあります。自分の気持ちを上手に伝えられない子どもは特に、目に見えない体調の変化には親でも気づきにくいため、偏食の行動の中にはアレルギーの可能性も隠れていると思って、注意する必要がありますね。子どもの偏食に思い悩みすぎないで!それより、失ってはいけないものがあるはず…出典 : モンズースーさんのコラムでも紹介されているように、親に食への好き嫌いがない場合などでは、子どもの気持ちが分からず、「わがまま」と考えてしまいがちです。しかし、まずは、発達障害の特性による「偏食」について知ることで、食べられず困っている子どもの気持ちに寄り添うことができます。”発達障害のある子の行動には、一見すると「わがまま」「困った子」などと捉えられてしまう場合があります。でもその「周囲と違う行動」には理由がある場合が多いのです。例えば、「好き嫌いなく食べるのが良いこと」と考えられている現代ですが、発達障害の方はその特性ゆえに食べられるものが極端に少ない場合もあります。それは定型発達の人より感覚が過敏で「臭覚」「味覚」「触覚」などの刺激が強く感じられるため…というのも原因の一つのようです。””私は好き嫌いのない子どもだったので長男の気持ちが分からず、はじめは周囲と同じく「わがまま」と考えていましたが、発達障害の特性による「偏食」を知って長男が食べられず困っていたことに気づきました。もしその行動の裏側にある理由に気付けないままだったら、「光とともに…」で描かれている先生のように理解できず悪循環になってしまうのかもしれません。本人から「これが苦手」と話してくれると分かりやすいですが、それを他の人に伝えるのが苦手な子が多いのです。”かつては、「健康に影響が出るのではないか?」「このままだと一生食べられないのではないか?」というふたつの不安から、子どもの偏食が大きな悩みだったという発達ナビライターのkaoruさん。”だから私は一生懸命工夫して、なんとか食べさせようと躍起になりますが、結果が全く伴わなかったためイライラを増幅させて、息子にとっても食事をさらに辛いものにしてしまったのだと思います。息子には食べられないと分かっていても、食べられない食材を使い、食べられないものを作り、食べてくれないとイライラする。「食べなさい」「イヤだ」の押し問答の挙句、私はひとつも手をつけない息子の食事を取り上げて、シンクにバーンと捨てて、自己嫌悪するなんてこともありました。”「子どもの健康に影響が出ていないのなら、偏食は気にしなくていい。無理強いしないで食べられるものを作ってあげなさい。無理強いしなければそのうち食べられるようになる。」というスタンスの本に出会ってからは、息子さんの偏食を治そうと躍起になって無理強いするようなことはやめ、食べられる食材で食べられるメニューをつくるようになったそうです。そのおかげか、今では息子さんの偏食は、食事に苦労しない程度には徐々に改善していきました。そして、「発達障害児は味覚の発達もゆっくりなのかもしれない」ということに気づいたそうです。出典 : 食べられるものが少ないと、きちんと栄養が取れているのか、健康には影響がないのかと心配になってしまうのが親心。今の日本では、バランス良い食生活を送らなければならないという考え方が、保護者の方の心の重荷になりすぎているのかもしれません。モンズースーさんの気持ちを楽にした、モンゴル人留学生とのエピソードとも、参考にしてみてください。ぽんぽんさんのお子さんは、野菜が嫌いです。ぽんぽんさんは、健康への影響を考え、また近い将来食べることになる学校給食で苦労しないようにと、とにかく「野菜を野菜だと分からせて食べさせること」に非常にこだわっていました。好き嫌いは親の責任!と思っていたこともあり、とにかく一口だけでもいいから食べさせようと、色々なやり方を試して必死に頑張っていたのですが、全くダメ。イライラして怒ってしまうこともありました。しかし、お子さんの様子を見るなかで、野菜を嫌がるのは、自分とは違った感覚特性を持っているからではないかと考えます。”あまりにも食べてくれず、私が作る野菜が入った食事を頑なに拒否。食べさせようとすると酷い癇癪を起こし大泣きする様子や、気付かないように口に入れても吐き出す様子に、「もしかして、特性による感覚の違いで、食べれないものがあるのかな」と思うようになりました。その頃はちょうど、食事以外のことでも発達が気になっていた時期でもありました。発達障害について調べ物をする日々の中、子どもの食事の好き嫌いに特性が関係している可能性も知りました。私たちが美味しいと思っているものも、長男にとっては「口の中に砂を入れられている」ような感覚なのかもしれない…。無理矢理食べさせようとするのは長男にとってものすごいストレスになっているはず…食べなかったら諦めて少し様子を見よう。食べる気になるまで待ってみよう。”こうしてぽんぽんさんは、食事の好き嫌いに発達障害の特性が関係している可能性があることを知り、少しずつ柔軟に考えられるように気持ちが変化していったのです。無自覚だったそれまでの自分の思いに気づくことができ、育児を楽しめたらと思うように変わりました。このような気持ちの変化については、関連記事に詳しく書かれています。出典 : 林さんのお子さんは、食へのこだわりや恐怖心だけでなく、味覚過敏もあったため、「混ぜ込んで食べさせる」ということも通用しませんでした。苦手な食材の、ほんの少しのかけらが舌に当たった瞬間に、嘔気を催してしまうのです。お子さんが幼稚園の頃のお弁当は、食べられる食品の種類は両手で数えられる程度に限られるため、当然、毎日同じ食品のオンパレードのお弁当を作るしかありませんでした。林さんは、毎朝毎朝、同じような食材を詰めるだけのお弁当作りが苦痛で、「食育」という言葉を聞くたびに責められているような気持ちになっていました。お子さんが小学校に入ると、お子さんは、給食のことでがっくりとして帰ってきました。何が出るのか分からない、どんな味か分からないものが毎日提供される給食に、一口でも手をつけようと頑張ってみはするものの、どうしても固まってしまうのです。あるとき、1日だけお弁当の日がありました。息子さんの好きなものだけてんこ盛りのスペシャル弁当を、久しぶりに作って持たせると、お子さんは目をキラキラ輝かせて帰ってきたのです。”「お母さんのお弁当には、僕の嫌いなものは絶対入ってないんだ。幼稚園の頃はいつも、安心しきってお弁当箱を開くのが当たり前だと思ってたんだ。給食みたいに、出てくるときに怖い気持ちにならなかったんだ。お母さんのお弁当は、安心できたんだ。」この言葉を聞いて、かつて幼稚園の先生が「息子くんの好きなものだけを入れてください。それは信頼関係なんです」とおっしゃってくださった意味が分かり、私は幼稚園時代が懐かしくて、涙が出てきてしまいました。初めてのものが怖い息子にとって、いつも安心して弁当箱の蓋を開くことのできた3年間は、宝物のような時間だったのです。そして、その安心感を親が与えずに、誰が与えられるでしょうか。「食育」とは、栄養をバランスよく与えることではなく、「食べる」ということを楽しいことだと感じられるようになる教育だと私は思っています。そう考えれば、偏食の多い発達障害児が、安心感を持って食事をできるようにすることも、立派な「食育」ではないかと私は思います。”偏食克服の第一歩!食べられるようになるために試してみたい、”3つの工夫”とは?出典 : 無理やり食べさせるのは、食事に対する恐怖感や苦手意識を増幅させてしまい、逆効果となる可能性があります。そうはいっても、保護者の方としては食べられるものを増やして、バランスよく栄養をとり、食事の楽しさを教えてあげたいと思うこともあると思います。そこで、調理・配膳の工夫や、子どもが自主的に食べてくれるような動機づけなど、まず試してみたい3つの工夫を紹介します。調理時に、食感・味つけ・大きさなどを子どもに合わせてカスタマイズ。苦手な食材を無理に食べさせようとせず、似たような他の食材で代用する、おろしたりこまかく刻んだりして好きな食品や料理に混ぜる、調味料を変える、においを変える、目新しい形に切る、などの調理の工夫をしてみましょう。・なめらかな食感にする・細かく刻むニャンタさんがした工夫をご紹介します。”「栄養を取らせられないストレス」、ありますよね。そんなストレスがたまると作った物をご紹介します。○「みじん切りにした野菜をクタクタになるまで煮込んだスープを、さらにミキサーにかけて牛乳とまぜたスープ」スープはとにかく裏ごし必須でした。食感にもうるさく敏感な息子は、裏ごししてなめらかにすると飲みました。○「手作りふりかけ」ふりかけは、かつおぶし、ごま、小エビ、天かす、青のり、塩、などの細かい乾物たちを入れて炒る。ミネラルを取れたっぽくして自分の心を満足させていました。市販のものよりも塩分も控えられた気がしました。”・その子に合わせた大きさや味つけにするモンズースーさんは、失敗の経験から、長男が食べられるも工夫を見つけていきました。”「ハンバーグは焼くより煮込んだ方が食べるよ、大きさも子どもが一口で食べられるサイズにしたら食べてた」「カレーは幼児用から普通用に切り替える時期、迷うママが多いけど、うちはどの子も幼児用カレーを食べなかったから、最初から普通のカレーの甘口使ってる。これなら食べてくれたよ」偏食のある長男にはよく噛んで食べて欲しかったので、やわらかすぎる物や細かく刻んだものばかりでなく、色々な食べ物を出していました。でも、それでは食べられなかったようです。また、塩分や、大人向けの調味料も子どもにはどこまで使っていいのか悩みます。早い時期には悪影響なのでは…と思い、良かれと思って薄味にしていたのですが、それでは長男はもう満足できなかったようでした。”同じお皿に盛っておくことで、少しだけでも食べてみようかな?という気持ちになる子どももいれば、ホテルのビュッフェのようにたくさんのおかずの中から選ぶことで食べる気持ちになる子どももいます。出典 : ・ワンプレートに1人分を取り分けておく野菜をあまり食べない息子。我が家は、息子にはワンプレートで出しています。ワンプレートのメインは大好きなおかず、その横に少しでも野菜のおかずを置くと、食べてくれる時があります。別のお皿にするとあまり食べません。年々食べられる物が増えてきて嬉しいです・バイキング形式で、食べられるものだけ選んで食べてもらう”人数が増えたこと、偏食の違いが大きいことから、夕食はバイキング形式にすることにしました。肉料理があり、魚料理があり、野菜があり…。義母もおかずを一品作ってくれることもあり、和洋中華、そしてわたしの好きな沖縄料理やエスニック料理と、豪華ではないけれども華やかな食卓となりました。「食べられるものを食べましょう」すべての料理に箸をつけることを強要せず目の前に気になる料理があれば試せる状態が、子どもたちには良かったようです。バイキング形式の食事を通して、息子は食べられる肉料理の種類が増えてきました。娘も、蒲焼きにすればサンマを食べられるようになり、茹でた野菜なら白あえや胡麻和えも好きになりました。”SONOさんのアイデアは好きなものを食べるだけ取るバイキング方式にすること。これなら子どももあれこれ選ぶことができて、イベントとしても楽しめそうですね!偏食があると、どうしても食事の時間が長くなりがち。Green Daysさんのお子さんも、偏食が激しく、初めて見る料理には箸をつけないため、トースト1枚の朝食に40分、わずかな夕食を食べきるのに1時間半ほどかかってしまい、家族のイライラは募る一方だったそうです。そんなお子さんが食事を早く済ませられるようになり、食卓を楽しい雰囲気へと変えたのが「パワーカード」でした。まとめ出典 : 子どもの偏食に悩んでいる保護者のみなさんは、子どもの成長のためには、必要な栄養もあり、親としてはバランスよくたくさん食べてほしいと思うのは自然なことですよね。また、偏食は、従来は周囲から「好き嫌い」の問題で、わがままだと思われてきました。そのため、お子さんの偏食を必死に治そうとされてきた方も多いかもしれません。しかし、偏食は発達障害の特性によるものであることも多く、無理やり直そうとすると、食事すること自体が嫌いになってしまう場合もあります。子どもの特性にあった工夫をすること、無理強いせず気長に見守ることで、食への安心感や子どもと保護者の信頼関係を育むことにつながります。まずは家族みなさんで食事を楽しむことが大切です。その上で、今までご紹介したさまざまな方法などを参考にしながら子どもの気持ちに寄りそう工夫を、ぜひ試してみてください。
2017年11月24日発達が気になるお子さんや、障害のあるお子さんがサポートを受けることができる場所である、「放課後等デイサービス」や「児童発達支援事業所」。発達ナビでは「施設情報」のコーナーから、お住まいの地域の教室を簡単に探すことができます。電話だけでなく、WEB上から24時間いつでもお問い合わせすることが可能です。また、各教室の特徴や、利用者の声も合わせて知ることができるので、お子さんにぴったりの教室を探すことができます。今回は、大阪府で情報をアップデートしてくださった教室をピックアップ!気になる施設を見つけたら、「ページを見る」をクリックして、詳しい情報をチェックしてみてくださいね。お住まいの地域で「放課後等デイサービス」「児童発達支援」を探す!大阪府 放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報学習支援に力をいれている放課後等デイサービスキャンパスラビットでは、少人数制の個別支援で、子どもたちの特性に合わせた自立学習サポートを実施。テストや受験勉強対策のほか、パソコンや化学実験、英会話やクッキングなど、幅広い活動を行っており、将来の仕事を考えるきっかけを積極的に作っていきます。Upload By 発達ナビ施設情報放課後等デイサービスラビットでは、宿題や個別課題を通して集中力を鍛えたり、「よさこい」や「だんじり」への参加を通して地域交流を図ったりしています。またクッキングやお買い物体験などの機会を通じて、自立につながるような支援を実施。年2回開催される保護者会では、指導員とだけでなく、他の親御さんとの交流や情報交換が活発に行われています。Upload By 発達ナビ施設情報こどもデイサービススマイルでは、子どものニーズに幅広くお応えできるよう多様な療育を取り入れ、一人ひとりにあった方法で支援を実施しています。工作や絵画、スポーツやダンス、料理や外出などのさまざまな機会を通じて、発達障害のある子が苦手とするコミュニケーション能力の向上を目指しています。Upload By 発達ナビ施設情報全指導員が医療系国家資格者であるワークぷらすジュニアでは、子どもが育つうえで重要な知能・心・身体の3点を大切にしています。療育内容を強制することなく、子ども一人ひとりの個性や特性、発達レベルに合った支援を実施。楽しみながら学べる環境を提供し、心身ともに社会生活になじめるよう支援を行っています。Upload By 発達ナビ施設情報スポーツに特化した放課後等デイサービス みらいでは、20m×40mの全天候型人工芝のグラウンドでさまざまなスポーツの個別・小集団指導を実施。人工芝で安心・安全の空間で運動療育としてさまざまな運動を取り入れ、脳と心と身体に刺激を与えられるように。筋力アップやストレス発散、感情のコントロールを目指して日々活動を行っています。大阪府の「放課後等デイサービス」を探す!大阪府 児童発達支援事業所Upload By 発達ナビ施設情報児童発達支援事業所でもある放課後等デイサービスラビットでは、修学前に必要な自立に向けて、年齢・発達・性格に応じたプログラムで支援を実施。フラッシュカードや点結びなどの集中力トレーニングを取り入れ、ワーキングメモリ―の発達を促します。また、小学生と一緒になって、クッキングやカレンダー作りなどを体験する機会を作っています。※施設名称は「放課後等デイサービス」となっていますが、以下のリンク先は、児童発達支援事業所として登録されている施設のページとなります。Upload By 発達ナビ施設情報岸和田ぴょんぴょん教室では、音楽療法士、幼稚園教諭や保育士、ピアノ講師が、音楽の持つ力を使って、「できない」を「できる」へ一緒に変えていくことを目指しています。別室からは子どもの様子を見ることも可能です。子どもの発達段階に合わせた楽しい音楽プログラムを行っています。大阪府の「児童発達支援事業所」を探す!おわりにいかがでしたか。気になる施設がありましたら、「~のページを見る」のボタンを押してみてくださいね!教室の先生たちが書いているブログや、利用者の方が投稿した口コミなどを見ることもできます。「空き状況を知りたい!」「教室見学をしたい!」場合には、WEB上からもお問い合わせを行うことができますので、ぜひ試してみてください。今後も掲載数がどんどん増えていきますのでお楽しみに!
2017年11月24日先日、友人とロンドンでピクニックをしていたとき、ふと発達障害の話になりました。筆者の娘はアスペルガー(広汎性発達障害)で、友人がいくら話しかけても無反応なこともあるため、「ごめんね、実は…」と伝えたのがきっかけです。イギリス人の友人はお絵かきに没頭して振り向きもしない娘をじっと見直して、「すばらしいことじゃない!お絵かきが大好きなのね!」と言いました。「写真撮るよ~」と声をかけてもまったく顔をあげない娘。なにかに没頭しているときはいつもこうだが、「アスペルガーで」と説明すれば誰もがなるほどとわかってくれる。伝えておくことは重要かもしれない日本では周りと“違う”ことが懸念材料日本では、娘がアスペルガーであると伝えると、「そうなの?でも普通に見えるよ」と、よく言われます。「気にすることないよ、普通だよ」と。そう、「普通だよ。おかしくないよ」と慰めてくれる。でもその慰めは、「“普通”であることが正しい」ということが大前提にたっています。筆者にとっては娘こそが“スタンダードな子ども”であり、まさに“普通”。でもそれは一般的な“普通”と同じではないことを知っています。学校で、クラスメートに知らせてはどうだろうか、と先生がたに相談したときも、”自分たちと違う特性を持つ子”への反応を心配する声があがり、それもそうだと思いいまだにクラスの子には特に知らせていません。イギリス公立校での対応ではイギリスではこうした発達障害児への対応はどのようなものなのでしょうか。ロンドンで発達障害児のための特別講師をしていたマリア・ストリブリングさんに話を聞きました。マリアさんによると、イギリスの学校でも日本の“通級”にあたるクラスがあり、個別にそれぞれの状態に合った教育を受けることができます。場合によってはずっと個別クラスの子もいれば、普通級にとどまる子もいるそう。周りの子どもには「この子にはこういう特性があり、それは生まれつきである」ということをしっかりと教えたうえで、アスペルガーや学習障害について伝えています。そうすることで、残念ながらいじめが発生することはあるそうですが、以前に比べ「受け容れることができる子が増えた」ともマリアさんは感じていました。というのも、イギリスでは近年、どのような出生であろうとも差別をしない、という考えが広く行き渡っており、性別はもちろん人種や宗教などによる“違い”を含めて互いの理解が進んでいるそう。発達障害も例外ではなく、“違い”を人それぞれの特徴のひとつだととらえ、受け容れる傾向にあるというのです。レディ・ガガに勇気づけられる「レディ・ガガの『Born this way』という曲があるでしょ?まさにあれよね」とマリアさんは言います。その曲の歌詞には、「神はミスをしない。私は正しい道を歩んでいるのよ。私はこんなふうに生まれたの(筆者意訳)」とあります。私たちはこのように生まれた。それは直したり正したりするものではなく、ありのままでいることは“正しい”こと、という意味にとらえることができます。レディ・ガガの歌を聴いていると、後半はおそらくLGBTなどについても歌ったものではありますが、持って生まれた特性というポイントでは発達障害も同じことがいえます。そして、イギリスでもその考え方が主流となりつつあり、どんな人も自分の特性を恥じることはないと考えられているのだそうです。均質性と多様性という土壌の違い自治体による発達障害ケアは日本でもイギリスでもだいたい同じでした。アスペルガーの場合は「多くの人はこのようにすると嫌がる」といった他人の感情について学ぶもので、日本の教育内容と変わりません。ただ、イギリスと日本ではそうした人々を受け容れる側の考え方が大きく違うようです。さまざまな人種や宗教をもつ人々が混在しているイギリスでは、もともと「均質性」よりも「個性」を重要視する多様性の土壌があります。異質なものに対する耐性があるからかもしれませんが、少なくとも自分が“異質”であることに対しこちらが縮こまって遠慮しなくてもいいという環境は理想的です。前出のように、カムアウトすることによるいじめや差別の問題はまだまだ解消されてはいないようですが、それを当然のことと容認するのではなく、自分らしくあったとしても「差別をしてはいけない」という考えが多数派であることにはとても勇気づけられます。均質性が非常に重要な日本においてはこのように変わることは容易ではないかもしれませんが、世界は変わり始めている、と、レディ・ガガを聞きながら、夢見るのでした。「ケサランパサランを見つけたよ」とたんぽぽの綿毛を飛ばそうとする娘。見た目にはわかりづらい発達障害児は誤解されることも多いけれど、親から見るとやっぱりウチの子は”スタンダード”<文・写真:フリーランス記者岩佐 史絵>
2017年11月23日発達ナビ編集長・鈴木悠平のオススメ本発達ナビでは秋の読書週間に合わせて様々な方におすすめの本を紹介いただきました。しめくくりに、発達ナビ編集長の鈴木悠平が、発達ナビのユーザーの皆さんにご紹介したい本をピックアップしました。『イラスト図解 発達障害の子どもの心と行動がわかる本』北海道の「こころとそだちのクリニックむすびめ」院長である、児童精神科医の田中康雄先生の著書。表紙にある”「困らせる子ども」は、「困っている子ども」です。”のメッセージの通り、発達障害のある子どもたちの側に寄り添い、さまざまな特性を持つ子どもたちが、身の回りの出来事をどのように感じて、どうして困ってしまうのかを、イラスト付きでやさしく解説しています。学術的な難しい専門用語はほとんど使われておらず、発達障害についての前提知識がなくても簡単に読み進めることができます。発達障害について知りたい、子どもの行動の理由を知りたいといったときの「はじめの一冊」としてピッタリな本です!『ぼく、アスペルガーかもしれない。』著者の中田大地さんは、2001年北海道生まれ、本書執筆時はなんと8歳!小さいころから音や光に対しての過敏性が強く、集団行動にも難しさがあったことから、小学校進学時は特別支援学級で学ぶことを選択。自分の目や耳はどんな風に感じているのか、自分はどんなことが得意で、どんなことが辛いのか…日常の一つひとつの体験を、中田さんが自分自身の言葉で語っています。”しっかり働ける大人になるために僕はもっと、自分のことを知らなくてはいけない。”ーー主治医の先生やお母さんたちとの対話を通しながら、自分自身のことを知り、学校の中でみんなと一緒に学び過ごしていくためには何が必要か学んでいく中田さん。子ども自身の目線から発達凸凹の大きいお子さんの感じる世界が描かれた貴重な本です。続編の『僕たちは発達しているよ』(2010年, 花風社)、『僕は、社会(みんな)の中で生きる。―お家で、学校で、アスペルガーの僕が毎日お勉強していること』(2011年, 花風社)もぜひあわせてどうぞ。『わが子の発達障害告知を受けた、父親への「引継書」。』首都圏在住、資源・エネルギー関連の会社に勤める著者の白山宮市さん。次女が自閉症スペクトラムの診断を受けてからのご自身の経験をもとにした、父親による、父親のための父親業務「引継書」です。企業で長く働いてきたビジネスパーソンならではの喩えとして、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合に、損害を最小限に食い止め、いちはやく事業の継続・復旧を図るために策定されるBCP(事業継続計画)になぞらえた、FCP(家庭生活継続計画)の策定を白山さんは提唱します。わが子の発達障害診断・告知を受けた瞬間の心の動揺や落ち込み、そこからの立ち直り、夫婦間の対話や家庭内での役割分担の決定、職場への説明や立場・働き方のギアチェンジ、療育等の社会資源の利用や学級・学校選択などなど…発達障害のある子どもを育てる上でどうしても避けられない保護者への負担・困難を受け止めつつも、家族とともにいかに歩んでいくかを、冷静な筆致で叙述しています。体験談をベースにしつつも、発達障害のある子どものいる家庭がたどる道筋や利用できる社会資源などが俯瞰してまとめられており、どちらかというと構造的で体系的な理解を好む人が多いと言われる父親(男性保護者)読者にとって非常に参考になる書籍だと思います。鈴木悠平プロフィールUpload By 発達ナビ編集部1987年生まれ。東日本大震災後の宮城県石巻市におけるコミュニティ事業の立ち上げ、コロンビア大学大学院での地域保健政策の研究を経験した後、株式会社LITALICO入社。発達支援教室「LITALICOジュニア」での指導員、「LITALICO研究所」の立ち上げ・運営業務等を経験したのち、発達障害に関するポータルサイト「LITALICO発達ナビ」( ) の編集長に就任。NPO法人「soar」( )理事も務める。
2017年11月10日ライター・鈴木希望さんのおすすめ本フリーライターの鈴木希望さん。ご自身と息子さんがともにASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けており、発達ナビでも体験を綴ったコラムを連載中です。そんな鈴木希望さんに発達ナビユーザーにおすすめの本を4冊教えていただきました。子育てや家事に疲れた時、親子で本を読む時間をつくってみてはいかがでしょうか?『妖怪ウォッチ』「言わずと知れた人気漫画。主人公のケータ君が様々な妖怪と出会い、友達になるというストーリーなんですが、人々を困らせる妖怪と話してみると、実は「誰かを困らせたいわけではなく、妖怪自身が自分の性質や能力の取り扱いに困っている」というパターンが多いんですね。『あ、これ、発達障害当事者の状況に似ているな』と。妖怪たちの吐露を聞いたケータ君が、『でもそれってこんなふうにいいところもあるよ』とリフレーミングしたり、『それをこういうふうに活かしたらどう?』とアドバイスするんですね。なので、『ああ、これは多様性受容の話なのだな』と私は理解しています。基本はギャグ漫画ですけれど、そのように観点を変えて読んでみると面白いかもしれません。」(鈴木希望さん)「発達障害について理解が深まる本を教えてください」と聞いたところ、鈴木さんが教えてくれたのは意外にも妖怪をテーマにした漫画『妖怪ウォッチ』。『コロコロコミック』で連載中の、大人気ニンテンドー3DSゲームを原作とした漫画です。小学5年生のケータが森の中で「妖怪執事」のウィスパーと出会い、妖怪ウォッチを手に入れたことから物語は始まります。妖怪ウォッチをつけると、見えないはずの妖怪が見えるようになります。悩んだり、イタズラで人を困らせたり、そんな妖怪たちとケータは友達になり、問題を一緒に解決していき…。かわいいキャラクターとわかりやすいストーリーで、子どもに大人気のコミック。2017年11月28日に最新刊14巻が発売予定です。『このあとどうしちゃおう』「おじいちゃんの楽しげなエンディングノートを見つけた男の子が、それを読みながら、どんな気持ちで記したのかと想像を巡らす、楽しくて、ちょっぴり切ないお話です。死に関して語ることって、何となく重いというか、タブーのような雰囲気がありますが、生きることと地続きで、誰しも経験するものですよね。だから、生きることの大切さを語ることと同様に、死についてももっと気軽に語る機会があってもいいよね、とこれを読んで私は感じました。この絵本をきっかけに、8歳の息子とはもちろん、老親とも『このあとどうしちゃおう』『いきているあいだはどうしちゃおう』と話し合う機会が増えました。」(鈴木希望さん)『りんごかもしれない』『ぼくのニセモノをつくるには』に続く、ヨシタケシンスケさんの大人気絵本シリーズ「発想えほん」の第3弾。今回のテーマは「死」。重いテーマですが明るい絵柄でからっと読めるので、子どもから大人まで、家族みんなで考えるきっかけにもなる本です。『子育ては、泣き・笑い・八起き 妊娠・出産・はじめての育児編』「新潟を拠点に活動されている子育てエッセイストさんのご著書。出産1年未満でシングルマザーになり、不安だらけの時期にこの本の元になった『どーいんソレ…!』に出会い、とても救われました。自分に高いハードルを設定しがちで、キャパシティー以上のことをしがちな私は、新米お母さん時代のちゃいさんの姿に自分を感じて、タイトル通りに泣き笑い。ついつい『自分ってダメな親だなぁ…』と思ってしまいがちなお母さん、お父さんには是非、『あなたはとっても頑張っているんだよ!』というちゃいさんのメッセージを感じていただきたいです。」(鈴木希望さん)地元・新潟のフリーペーパーで子育て漫画エッセイを連載しているちゃい文々さん。小学生の女の子、中学生の男の子を育てるシングルマザーとしての奮闘の日々を明るく綴ります。はじめての妊娠から出産、子育てまで、かわいい子どものために頑張ろうとするけれど、なかなかうまくいかずイライラ…。そんな体験をするパパ・ママは少なくないのではないでしょうか?そんなとき、この本は重すぎる子育ての負担を“キャパ・リュック”としておろす方法を提案してくれます。百点満点の育児じゃなくても大丈夫、そんな気持ちになれる一冊です。『逃避めし』「仕事に行き詰まったときや、締め切りが迫っているときの現実逃避として、作った料理を綴った、吉田戦車さんの食エッセイです。計量もせず、ありものでデタラメな料理をするのが私の趣味。そのワクワク感が詰まったこの本が大好きで、繰り返し読んでいます。料理にまつわる思い出や日常の記録も味わい深く、プロが作らないような名もない一品や毎日の暮らしが愛おしくなってきます。」(鈴木希望さん)『伝染るんです。』などで知られる漫画家吉田戦車さん初の料理エッセイ。締め切りを目前になぜか作ってしまう料理「逃避めし」を描き下ろしのイラストたっぷりに語っています。鈴木希望さんプロフィールUpload By 発達ナビ編集部1975年新潟県生まれのシングルマザー/フリーライター。側頭葉てんかんとは生来の付き合い。2009年生まれの息子が発達障害の可能性があると指摘を受け、調べたところ、後日親子揃って自閉症スペクトラム(旧アスペルガー症候群)と診断されました。発達ナビでコラムを連載中。
2017年11月09日精神科医・山科先生におすすめの本を聞きました!精神科医で中央大学教授の山科満先生。クリニックでの診察・カウンセリングも精力的に行い、臨床現場と心理学教育をつなぐ臨床研究に取り組んでいらっしゃいます。発達ナビのコラムの監修者としてもご活躍いただいています。そんな山科先生に、精神医学についての理解を深められる2冊を伺いました。いずれも豊富なエピソードと筆者の深い洞察力で、一般の読者でも興味を持って読める、おすすめの本です!『「こころ」の本質とは何か統合失調症・自閉症・不登校のふしぎ』「この挑戦的なタイトルに惹かれて発刊間もない頃に偶然手に取り、以来私にとってバイブルとなった本です。発達障害に向き合うにあたっての「考え方」を教えてもらいました。発達障害に関する臨床経験も知識も、今よりもずっと乏しかった頃は(今でも多いとは言えませんが)、私はほとんどこの本を頼りに臨床を行っていました。学部の1年生の授業でもテキストとして使っています。」(山科満先生)学習院大学教授の滝川一廣さんは『子どものための精神医学』(医学書院)や『家庭のなかの子ども 学校のなかの子ども』(岩波書店)などの著作でも知られる児童精神科医です。2004年に刊行された本書では、統合失調症、自閉症、不登校の3つを取り上げ、「こころ」の本質とは何かを考えます。「こころの病は決して異常ではなく、人間のこころの本質のある現れである」という考えに立つ滝川一廣さん。自身が臨床の現場で感じたことやエピソードなどを交えながらわかりやすい筆致で語られ、精神医学の入門書としても読みやすい本です。『火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者』「著名な脳神経外科医(にして著述家)による患者のインタビューを元に構成された本ですが、タイトルになっている「火星の人類学者」とは、『我自閉症に生まれて』で有名なテンプル・グランディンの話です。彼女は自分を「火星からやってきた人類学者」に喩え、周囲の出来事を徹底的に観察分析し、頭の中にデータベースを構築することで適応力を向上させていったのだと説明しています。大学生まで生き延びたアスペルガーとおぼしき人にこの本を読んでもらうと、「自分のことだ」と言われることがしばしばあります。(山科満先生)『レナードの朝』でも知られる脳神経科医サックス博士が出会った7人の患者についてのエッセイで、全米で大ベストセラーとなった本です。自閉症のある動物学者テンプル・グランディンをはじめ、トゥレット症候群の外科医、色彩感覚を失った画家など、障害が才能となって開花した人が登場します。サックス博士は7人と診察という形で交流を重ね、そのエピソードと彼らそれぞれへの理解を深い洞察力を持って描いています。障害とその人の個性や才能との境目はどこにあるのか、そもそも境目はあるのだろうか…様々なことを考えさせてくれるエッセイです。山科満先生プロフィールUpload By 発達ナビ編集部山科満(やましなみつる)中央大学文学部教授。精神科医,臨床心理士。専門は青年期精神医学、精神分析的精神療法。大学教員となって,発達障害傾向ゆえに不適応に陥っている若者の多さに驚き,発達障害と本腰を入れて向き合うようになった。山科満さんのページ|LITALICO発達ナビ
2017年11月07日アナログゲーム療育アドバイザー・松本太一さんに発達ナビユーザーへのおすすめ本を聞きました!松本太一さんは、アナログゲーム療育アドバイザー。ボードゲームやカードゲームなどを使って発達障害のある人のコミュニケーション能力を楽しく高めるという「アナログゲーム療育」の開発者です。全国で研修や講演を行う傍ら、発達ナビでもコラムを発表しています。今回は、松本さんに子育てをしている発達ナビユーザーに読んでほしい本を教えてもらいました!『子どもへのまなざし』「子育てのバイブルとして多くの親御さんに読まれています。「子どもの発達」と親の役割について、これほど平易に書かれた本は他にありません。」(松本太一さん)著者は児童精神科の医師として40年以上活躍された故・佐々木正美さん。自閉症のある方への支援プログラム「TEACCH(ティーチ)」を日本に紹介、普及に尽力されたことでも知られています。乳幼児期は子どもの人間としての基礎となると考える佐々木さんが、あたたかな視点で語る育児書です。佐々木さんには多くの著書がありますが、語りかけるようなわかりやすい言葉で書かれたこの本は特にパパママに長く愛されています。「これでいいのかな?」「がんばっているのにうまくいかない」と子育てに悩んだときに開いてみてはいかがでしょうか?『赤ずきんとオオカミのトラウマ・ケア: 自分を愛する力を取り戻す〔心理教育〕の本』「トラウマやフラッシュバックに悩まれている思春期以降のお子さんとその親御さんに読んでほしい。思い出したくない記憶とどう向き合うか、わかりやすく具体的に解説されています。」(松本太一さん)みんなが知っている『赤ずきんちゃん』に登場するオオカミと赤ずきんちゃんの物語仕立てでトラウマについてわかりやすく説明しています。トラウマに苦しむ人や家族が理解しやすいように工夫されていますが、その内容は、トラウマの仕組みからフラッシュバックへの具体的な対処法、家族や支援者の具体的な支援法まで、具体的かつ網羅的に紹介されています。『勇気づけて躾ける―子どもを自立させる子育ての原理と方法』「別名「対人関係の心理学」とも言われるアドラー心理学に基づいた子育てを、豊富な事例とともに解説。子どもの自主性を尊重した親の関わり方や、兄妹の間に働く心理の解説は、子育てに新しい視点を与えてくれるはず。」(松本太一さん)子育てに悩むパパ・ママにおすすめの本として挙げてくれたのがこの本。アドラー心理学はオーストリアの精神科医アルフレッド・アドラーが築いた心理学です。アドラー心理学では「人間は、分割できない個人という全体として、目的に向かって行動する」と考えます。「子どもが言うことを聞いてくれない」「自主性を身につけてほしい」と悩むパパ・ママも多いのではないでしょうか?この本ではアドラー心理学をもとに、子どもへの理解や自由をどう教えるかなどを紹介しています。『教育心理学講義』「「心理学のモーツァルト」と呼ばれた天才ヴィゴツキーの30歳の著作。「教師が100で生徒が0」という前提の一方的な知識教授に偏った教育は時代遅れであり、教師は子どもが自ら学ぶ環境を整える調整者であるべきだという彼の主張は、この本の出版から90年後を経て今なお先進的。」(松本太一さん)松本さんが愛読する座右の書として教えてくれたのが旧ソ連の天才心理学者ヴィゴツキーの名著。ヴィゴツキーは唯物弁証法の立場から現代心理学を方法論から問い直し、批判しました。この『教育心理学講義』は師範学校で行われた教育心理学の講座をまとめたもので、1926年に刊行されました。37歳という若さで亡くなったヴィゴツキーですが、今もなお世界中の心理学者に影響を与えています。松本太一さんプロフィールUpload By 発達ナビ編集部松本太一(まつもとたいち)フリーランスの療育アドバイザー。カードゲームやボードゲームを用いて、発達障害のある子のコミュニケーション力を伸ばす「アナログゲーム療育」を開発。各地の療育機関や支援団体で、実践・研修を行っている。東京学芸大学大学院障害児教育専攻卒業。教育学修士。NPO法人グッド・トイ委員会認定おもちゃインストラクター
2017年11月06日スクールカウンセラーの池田先生に聞いた、発達ナビユーザーへのおすすめ本!発達ナビでコラムを連載している池田行伸先生。スクールカウンセラーとしての豊富なご経験の中から、印象的だった保護者や子どもへの支援を紹介しています。コラムの具体的な事例やさまざまな立場への支援を参考にしている発達ナビユーザーもお多いのではないでしょうか?今回は池田先生に、保護者や支援者など、子どもとかかわる大人に読んでほしい本と、愛読している本を教えていただきました!『子どもに障害をどう説明するか―すべての先生・お母さん・お父さんのために』「障害を理解していない人に話す話し方がよくわかる。子どもを傷つけない言い方で子どもに説明する方法のヒントが得られる本。」(池田行伸先生)「障害について子どもにどう説明したらよいのか」「障害って何?と子どもに聞かれたらどう答えたらよいのか」そんな悩みを抱える保護者や学校の先生も少なくないのではないでしょうか?本書では、障害をどのように説明するか、特別支援学級の教師である相川さんと東北大学教授の仁平義明さんがわかりやすく具体的に答えます。『夜と霧』「ユダヤ人強制収容所の体験が書かれている。希望の持つ意味を教えてくれ、困難に向き合うときの知恵と勇気を与えてくれる。」(池田行伸先生)池田行伸先生が愛読書として挙げてくださったのは、フランクルの『夜と霧』。ユダヤ人精神分析学者が自身のナチス強制収容所での体験を綴った世界的名著です。原著の初版は1947年。日本では1956年に霜山徳爾が訳し、2002年に新版として池田佳代子訳が発行されています。池田行伸先生プロフィールUpload By 発達ナビ編集部池田行伸(いけだゆきのぶ)國學院大學人間開発学部子ども支援学科教授特別支援教育士スーパーバイザー上智大学文学部卒業上智大学大学院修了博士(心理学)専門は神経心理学。現在は國學院大學人間開発学部子ども支援学科教授、佐賀大学名誉教授。特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)の資格を持ち、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校のスクールカウンセラーを歴任している。人が生まれて発達していく過程の概略、性格・人格・人格の偏りの概略が学べる本です。
2017年11月04日