■前回のあらすじ子どもが食事を食べてくれないと不満を爆発させる母と夫。そして、ついに母の滞在が終り、私は手術に向け準備することに…■手術前の診察へ手術前の診察は手術に関わるすべての科で診察の必要がありました。先生方同士で手術前に会議をしてどんな手術をするか、という話し合いをされているようです。重要なことは主治医の先生から患者に伝えると言うのが決まりのようで…。■耳鼻科の診察、手術方法は…腫瘍が小さくなっていたため、手術は内視鏡で行うことに!手術のため再度入院になります。 ※この記事に記載された症状や治療法は、あくまでも筆者の体験談であり、症状を説明したり治療を保証したりするものではありません。気になる症状がある場合は医師にご相談ください。
2021年02月14日こんにちは。東京衛生病院小児科の保田典子です。私生活では7歳、5歳、4歳の子育て中です。インフルエンザの流行期の今、「インフルエンザ脳症」について知っておいていただきたいことをお話したいと思います。 忘れられない「インフルエンザ脳症」の思い出私は元々小児科医なのもあって、ワクチンはきちんと打つ派でしたが、以前体験したエピソードから、さらにワクチンの大切さを思い知った出来事があります。 それは、2歳の女の子で、インフルエンザ脳症になってしまった症例でした。インフルエンザ脳症になる前は飛んで跳ねて駆けまわっていたであろうその子は、病室で鼻からチューブを入れて栄養をとっていました。担当ではなかったため、その後、その子がどうなったか詳しいことはわからないのですが、その姿が衝撃的で、インフルエンザ脳症の恐ろしさを痛感したのでした。 インフルエンザ脳症についてインフルエンザ脳症は、日本では毎年60〜100人くらいが発症しています。多くは小児ですが、大人でも発症しています。インフルエンザの流行にともなって、インフルエンザ脳症の発症も増えます。 インフルエンザ脳症の症状インフルエンザ脳症の症状は、発熱、意識障害がメインで、その他にけいれん、異常行動、嘔吐などがあります。0〜4歳ではけいれんが多く、5〜19歳では頭痛や嘔吐、成人では髄膜炎様症状になることが多いようです。死亡率が高いインフルエンザ合併症で、死亡率30%、後遺症率25%と言われています。 よく10歳以上で問題となりやすい異常行動ですが、どの年齢にも起こりえます。10歳以上だと行動力があるので、家から飛び降りたりできてしまう分、結果として痛ましい結果になることがあるため、注意を呼びかけられています。そして、異常行動とインフルエンザ脳症は区別しきれないのが実情で、異常行動が出たからといって必ずしもインフルエンザ脳症であるというわけではありません。 インフルエンザ脳症の異常行動、意識障害は一過性(1時間以内)ではなく、長く続くとされています。短時間の意識障害などは心配いらないことが多いのですが、再発して脳症となることもあるので、解熱するまでは気を抜かないで観察してあげることが重要です。 インフルエンザによる意識障害や異常行動は? この他にも、明らかにいつものお子さんと違うおかしい症状が出るので、見ればすぐにわかると思います。 異常行動を見たらインフルエンザ自体は脳に影響を及ぼすことが多いので、インフルエンザ脳症ではなくても異常行動がでるお子さんはたくさんいます。30分くらいでおさまってしまう異常行動は様子を見ていても大丈夫ですが、不安であれば病院に相談してみましょう。#8000や救急外来をしている病院に電話相談をしてみることもできます。 看病のコツとしては、一般的な風邪の看病と同じで大丈夫ですが、①異常行動が続かないか②けいれんをしていないか③脱水症状を起こしていないかに気をつけましょう。 解熱剤や熱性けいれんの予防をしているお子さんは、予防薬などを使って大丈夫です(逆に、けいれん予防をしている子はしっかり予防薬を使いましょう)。 異常行動の対策、どうすればいい?厚生労働省から、インフルエンザにかかったときの具体的な対策法が発表されています。 ◆原則 ※これまでにも注意喚起を行っている内容抗インフルエンザウイルス薬の種類や服用の有無によらず、インフルエンザと診断され治療が開始された後、少なくとも2日間は、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することを原則とする旨の説明に加え、次の注意喚起の例が考えられます。 ◆小児・未成年者が住居外に飛び出ないための追加の対策(例)(1) 高層階の住居においては、例えば、・ 玄関及び全ての窓の施錠を確実に行うこと(内鍵、補助錠がある場合はその活用を含む。)、・ ベランダに面していない部屋で療養を行わせること、・窓に格子のある部屋がある場合はその部屋で療養を行わせること、等、小児・未成年者が容易に住居外に飛び出ない保護対策を講じることを医療関係者から患者及び保護者に説明すること (2) 一戸建てに住んでいる場合は、例えば、(1)の内容のほか、出来る限り1階で療養を行わせること インフルエンザ脳症とインフルエンザワクチンインフルエンザワクチンは、接種しても発症してしまうことがあることから、あえて接種しないという方もいます。集団接種があった時期(1960〜70年代)よりも現在、ワクチンの接種率は下がっています。そのため、インフルエンザ脳症で死亡する小児や、インフルエンザにより死亡する高齢者が増えたというデータがあります。 多くのインフルエンザ脳症に関する論文を見てみると、インフルエンザ脳症になった症例で、インフルエンザワクチンを接種していた例はほとんどありませんでした。これが「インフルエンザワクチンを接種しよう!」と、いつも思っている理由です。 インフルエンザのワクチンは生後6カ月から接種でき、インフルエンザ脳症など重症の合併症の予防としてとても効果的です。インフルエンザ脳症になる確率は高くはありませんが、もしかしたら、自分の子がインフルエンザ脳症になってなってしまうかもしれない。確率は関係ないと思うからです。 死亡率30%、後遺症率25%と言われるインフルエンザ脳症。みなさんもどうか、お子さんにインフルエンザ脳症にならせないためにも、まずはインフルエンザワクチンをしっかりと接種し、お子さんを守ってあげてくださいね。 監修者・著者:医師 東京衛生アドベンチスト病院 小児科医師 保田典子 先生2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。2021年春、高円寺こどもクリニック(仮称)開設予定。
2021年02月04日こんにちは、小児科医の保田典子です。私生活では8歳、6歳、4歳の子どもを子育て中の3児の母です。寒さが厳しい毎日が続いていますね。今日はそんな寒い時期の洋服についてです。今、家にいることが多くなっていると思いいますが、家の中ではどんな洋服を着せていますか? 今日は家の中での適切な洋服の選び方です。 冬でも子どもに厚手の服を着せないワケ外は寒いですが、家の中ではほぼ暖房器具を使って過ごすことが多いと思います(沖縄など暖かい地域は別ですが)。家の中は20℃前後が多いのではないでしょうか。 そんな中、動いて遊ぶことが多いお子さんにモコモコした厚手のトレーナーなどを着せてしまうと、暑いです。赤ちゃんでも家の中ではあまりモコモコしたものを着せないようにしたほうがいいです。冬は意外に「あせも」の相談が多いです。抱っこしていたり、厚手の服で動きまわったりすることで、暑くて汗をかく+環境の乾燥で、湿疹がさらに悪化してしまうこともよくあります。 裏起毛の服は暖かいですが、起毛部分が刺激になる子もいます。子どもが寒がるのでなければ、家の中では薄手のトレーナーやロンTが良いですよ。靴下はすべる危険性もあるので、暖房器具をつけている家であれば履かなくていいでしょう。 保育園などでも、基本は同じです。長袖でも着ぶくれするくらい洋服を着せていると、お子さんにとっては暑いと思います。換気をすごくしていて部屋がかなり寒い園であったり、アウターを着ないで外遊びするような園の場合だけ、厚手の上着を使って調整すると良いでしょう。 寝るときはどうする?寝るとき、子どもが暑いと夜泣きの原因になったりします。夜は昼よりも環境調整が大切です!室温は18℃前後(エアコンなら20℃設定くらいにしても18℃くらいになると思います)で、できればお子さんが小さいうちは温度計(できれば湿度計も)で室温を把握しておくといいでしょう。 子どもが小さいうちはスリーパーを使う小さいお子さんは布団をはいでしまうので、基本はスリーパーを着せて寝ます。足がはだけないロング丈のスリーパーがおすすめです。 足はあたたかくする「頭寒足熱」という言葉があるくらいなので、足が冷えないようにするのが良いでしょう。布団をすぐはいでしまう子は、厚手のズボンを着せたり、靴下を履かせてると良いですよ。 手の冷えは気にしすぎなくて大丈夫手が冷えちゃって心配、というお声をよく聞きますが、子どもは体積に対して表面積が広いため、手足は外気温の影響を受けやすい場所です。体温が低くなりすぎてなければ、手の冷えは気にしなくて大丈夫です。 これだけの装備をしたら、布団をはいでしまっても大丈夫! 夜中に親が起きて布団をかけ直す、という手間がいらない環境をつくって、親もぐっすり寝ましょう! 「子どもは暑がり+よく動く!」を念頭にわが家では、外に遊びに行くとき、子どもに厚手の服を着せないようにしています。今は特に外に行くときは広い屋外が多く、走り回って汗だく、ということがよくあるからです。「薄手長袖」+「ベスト型防寒具(薄手ダウンベストなど)」+「暖かいアウター」を着せて、アウターは走り回るときなどは脱げるように、じっとしている遊びのときは着せるようにして、こまめに調整できるようにするといいでしょう。 監修者・著者:医師 東京衛生アドベンチスト病院 小児科医師 保田典子 先生2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。2021年春、高円寺こどもクリニック(仮称)開設予定。
2021年01月28日こんにちは、小児科医の保田典子です。私生活では3人の子どもを子育て中の母です。今回は「野菜ジュース」について。離乳食が果汁からだった時代もありますが、今はなるべく子どもに果汁(ジュース)をあげないほうが良い、という時代になってきています。実は、野菜不足が心配でついつい飲ませてしまう(!?)野菜ジュースも同じです。なるべく飲ませないほうが良いと言われるようになってきています。なぜでしょうか? ジュースがダメな理由世界保健機構(WHO)などでは「幼児までの子どもには100%ジュースも糖分のとり過ぎになるとして飲ませないほうが良い」としています。糖分のとり過ぎは虫歯のリスクが高まったり、肥満のリスクが高くなるためです。一方、フルーツそのものに関しては、食べないほうが良いということはありません。フルーツそのものであれば、食物繊維など糖分以外の物も含まれるため、栄養素の吸収も変わってくるからです(もちろん摂取目安量はありますが、そこまで厳しくしなくても良いと私は考えています)。 そのため、現在、小児科では「そもそもジュースは子どもに与えるものではない」という指導をしています。 糖分の摂取目安WHOでは、「1日の遊離糖類摂取量を総エネルギー量の10%未満に抑えましょう、5%未満だとさらに良い」と言われています。 厚生労働省健康局から出ている「標準的な健診・保健指導プログラム【平成30年度版】 」によると、「遊離糖類とは、グルコースやフルクトース等の単糖類、スクロースや砂糖等の二糖類等食品や飲料の加工調理で加えられるもの、並びに蜂蜜、シロップ、果汁、濃縮果汁等に自然に存在する糖類のこと」を指します。※はちみつは乳児ボツリヌス症予防のため、満1歳までは絶対に与えないようにしてください 例えば、1〜2歳の推定エネルギー必要量は1,000kcal程度(厚生労働省資料より)なので、5%未満とすると遊離糖類摂取量は12.5g程度が望ましいということです。スポーツドリンク500mLだと約30g、100%ジュースでも200mLで20g、野菜ジュース720mLで約50gの炭水化物(糖質+食物繊維)が含まれています。ジュースに食物繊維はほとんど含まれていないことを考えると、このうちの“ほとんどが糖質”ということになります。 糖質はジュースにだけ含まれているわけではないので、ジュースだけで糖質の必要量をとってしまうと、明らかに糖質のとり過ぎになってしまうのです。 野菜不足を野菜ジュースで補わないで野菜をあまり食べないことが多い子どもたち。ついつい野菜不足が心配で野菜ジュースを飲ませてしまうこともあると思います。もちろん、野菜はたくさん食べてほしいものですが、野菜の栄養素よりも余計なものをとってしまっては本末転倒です。 子どもが好きな味つけにしてみたり、食感に変えてみたりなど、子どもが食べやすいようひと工夫することで、食べてくれるようになることもあります。野菜不足はしっかり野菜で補い、水分は水や麦茶を飲ませるようにしたほうがいいと思います。 とはいえ、子どもが野菜を食べてくれないというご家庭も多いと思います。わが家では子どもたちが嫌いな野菜もありますが、好きな野菜を重点的に出すようにしています。 さまざまな野菜を食べてほしいので、いろいろ出すようにしますが、食べてくれないこともよくあります。それでもめげずに出し続けることと、ビタミンは他の食べ物からもとれるので、焦らず無理して食べさせないようにしています。好きな野菜も出してあげて「おいしいね」と食事を楽しむことが大切かなと考えています。 ジュースなどの甘くおいしい飲み物の味を一度覚えると、頻繁にジュースを欲しがるようになってしまいます。小さいうちから毎日ジュースを与えてしまい、水や麦茶を一切とらなくなってしまったというケースもあります。 子どもに野菜ジュースなどのジュースを与えないという選択は、子どもに水分をとらせることに苦労したり、虫歯治療に通うことになったりと、将来的に後悔しないために今できる「ラクになる育児」の1つです。 監修者・著者:医師 高円寺こどもクリニック院長 保田典子 先生2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。2021年、高円寺こどもクリニック開院。3児の母。
2021年01月26日こんにちは、小児科医の保田典子です。私生活では8歳、6歳、4歳の子どもを子育て中の3児の母です。今回は子どもの睡眠についてです。日本は睡眠不足大国とも言われるほど睡眠が少なく、それは子どもも同じです。どうやって睡眠時間を確保するか、睡眠不足じゃないかを判断するかをお話しできたらと思います。 子どもはどのくらい寝たらいい? 子どもの睡眠時間の目安は、乳児期(生後6カ月から1歳)で13-14時間、1歳から3歳で11-12時間、幼児期で10-11時間です。睡眠時間が短くなり体内時計が狂ったりすると、 脳や身体の発達に影響を与えると言われています。具体的には、肥満のリスク因子であることがわかっています。さらに、集中力・記憶力の低下、抑うつなど意欲の低下、イライラといった攻撃性の高まり、落ち着きのなさなどメンタルにも影響します。 身体的には頭痛・肩こり、食欲低下、便秘なども引き起こします。文部科学省の調査では、学生の休日の起床時刻は、平日よりも2時間以上遅いことと、成績不良が関連することが指摘されています。 子どもの情緒や生活習慣に苦労している場合、睡眠時間を見直すというのもいいかもしれないですよね。 どんなときに睡眠時間の見直しをする?とはいえ、睡眠時間の目安はあくまで目安なので、できれば守った方が安心ですが、絶対に守らなければならないものではありません。なかなか睡眠時間を確保できないとき、睡眠時間を見直す目安にして欲しいことがあります。 ①月曜日は元気だけど、金曜日(週末)に向けて疲れてしまう様子がある。週後半になると熱が出るなど風邪症状が現れる ②週末(園が休みの日)に寝坊する こんな時はもう少し睡眠時間を確保した方がいいなと思ってください。 わが家の睡眠時間のためにしている工夫私の育児で大事にしていることの一つに「睡眠時間の確保」があります。私はフルタイムで働いていて、夜勤などもあるので帰宅時間が遅くなることもあるのですが、睡眠のために工夫していることがあります。 夕食を作っておく帰宅が遅くなる日の夜や、子どもがまだもっと小さかったときの夕食は、帰宅したらすぐ出せるようにしていました。前日の夜中や朝に作っておいて、冷蔵庫から出せばあげられる、温めたらあげられる、という感じです。 メニューはシンプルになりますが、帰宅後おなかが減った子どもに余計なお菓子などをあげなくても済みますし、調理時間を時短した分だけ、睡眠時間を長くすることができます。帰宅が20時以降になるようなおうちでは、夕食を軽食にして、朝食などに重点を置いてもいいかもしれません。 家事は溜めてOKというマイルールまた、子どもを早く寝かせるために「皿洗い、洗濯物などの家事を寝る前にやらなくてもいい」と自分の中で決めました。できたらやるけど、やれなかったら皿洗いや洗濯物はそのまま放置! 寝かしつけのあとにしたり、家族にやってもらったりしました。 夕食と入浴を帰宅後にマッハで済ませて、入浴後少しまったりしたら「はい、寝るよ~!」というスピード感。しつけは全然厳しくないのに、寝ることにだけは厳しいママです(今でも)。 育児で何を大切にするかを決めよう何度もこの連載で書いていることですが、育児や生活の上で、自分が大事にしたいことを優先順位をつけてみて、ぜひそこを大切にして欲しいなと思います。 私は子どもの睡眠時間を大切にしたいので、調理時間や家事のタイミングを工夫して、子どもがしっかり睡眠できるようにしています。 ほかにも「調理時間を時短して、家族とおいしいごはんをゆっくりお話ししながら食べたい」、「家事を家電にまかせて、家族とのコミュニケーションを重視したい」など、ご家庭によって大切にしたいポイントはさまざまだと思います。 「自分の大切にしたいことをきちんと大切にする生活」が、心も体も落ち着くのではないかと思っています。 著者:医師 医療法人アドベンチスト会東京衛生病院 小児科医師 保田典子 先生医療法人アドベンチスト会東京衛生病院小児科医師。株式会社メドイース代表取締役。2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。
2020年11月26日一緒に耳鼻科に行ったお子さんが突然起こしたハプニングを紹介しています。突然、先生の足を踏みつけた意外な理由は、お子さんがママを思って起こした行動でした。ママはお子さんの成長を感じたそうです。 幼稚園の娘は、知らない人が近づいてきたり、自分の体を触ったりすることにまだまだ抵抗を感じているよう。病院などで耳や目、鼻や口の中などを診察してもらうのも同じこと。ある日娘の様子がおかしく、耳鼻科で専門医に診てもらうことになりました。 子どもと初めて耳鼻科へ行く幼稚園から帰ってきた3歳の娘。なんと耳の中に粘土が入っていることに気づき、早速耳鼻科で診てもらうことになりました。初めての耳鼻科での診察のため、娘は多少の抵抗を見せたものの何とか無事に診察終了。 耳鼻科の先生もとても気さくな方で、雑談をはさみながら耳の中に粘土が残っていないことも確認できました。子どもも診察してくださった先生のことを嫌いにならずに済んだようで、また何かあれば診てもらいたいと思いました。 私も子どもと同じ耳鼻科へ行く診察してもらってから1カ月も経たないうちに、今度は私のリンパ腺が腫れ、同じ耳鼻科へ子どもと行くことに。触診、採血後に、再度診察の流れでおこなわれました。 採血後の診察で先生と話し、帰ろうとしたそのときに事件は起こりました。何と娘が先生の足を突然踏みつけたのです。娘は悪びれる様子もなく、私は突然娘が起こした行動に驚いてしまいました。 耳鼻科の先生にられる足を踏みつけられた先生は「いて」と言い、「謝りなさい」と叱ってくれました。しかし、娘は「やだ」と言って逃走。娘の代わりに先生に謝罪しました。 帰宅中、どうして先生の足を踏んだのか聞いたところ、私のことを心配して起こした行動だったよう。私が採血や触診された様子を見て、自分が診察して嫌な思いを経験したことを思い出した結果の行動だったようです。先生の足を踏んだ出来事話しているうちに娘も自分がとった行動を反省することができました。 耳鼻科の先生の足を踏んだことは良いことではありませんが、自分の感じた不快感を私の立場に当てはめて守ってくれようとしたことは、母親として驚きました。娘の心も日々成長しているということが実感できた出来事でしたが、今後は踏まれた相手の気持ちなども考えられるように成長していってほしいなと思いました。 監修/助産師REIKO著者:坂本ひろ子1児の母。自身の体験をもとに、妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆している。
2020年11月21日■前回のあらすじ引っ越しの準備が慌ただしい中、家族全員が風邪をひきます。そんな中、なぜか私だけがなかなか治らず…■自己判断で、市販薬を飲み始める引っ越しの準備や手続きで慌ただしかったので、なかなか病院へ行く気になれませんでした。■ついに引越し…、子どもたちの姿に勇気づけられるどんなに大変な状況下でも楽しんでいる子どもたちを見て力が湧いてきました!みんなで頑張って、4月の中旬にやっと片付けが落ち着き…■ようやく耳鼻科を受診!やっと耳鼻科へ行けたと思ったら大ごとに…!大病院での検査の説明が怖すぎて震えました…。次回に続きます。※この記事に記載された症状や治療法は、あくまでも筆者の体験談であり、症状を説明したり治療を保証したりするものではありません。気になる症状がある場合は医師にご相談ください。 【同じテーマの連載はこちら】 女性のがんとお金の話 この連載の全話を見る >> 湯本もゆのオドオド育児 この連載の全話を見る >> 長男の川崎病と職場の板挟みで大変だった話 この連載の全話を見る >>
2020年10月23日こんにちは、小児科医の保田典子です。私生活では8歳、6歳、4歳の子どもを子育て中の3児の母です。今、世の中には知育に関する本やグッズが溢れていますね。生まれてすぐに通える幼児教室もたくさんあります。 早期の幼児教育については、小児科医師の中でも意見が別れる話ではあると思いますが、私としての意見は天才性を育てるような先取り教育に関してはあまり肯定的な考えは持っていません。子どもの発達の観点から、知育について解説します。 高IQ児のゆくさき幼児教室の宣伝には「3歳までにやらないと手遅れになる」、「平均IQ150以上」などの文言などが飛び交い、早期教育の必要性をうたっています。幼児教育が生まれてから少し歴史ができてきたのもあり、そのような高IQの子がその後どうなったかというデータも出てきています。 シカゴ大学ヘックマン教授らの「ペリー幼稚園プログラム」の研究によると、幼稚園時代にIQが高かった子どもも、8-10歳になるとその効果はなくなってしまうというそうです。 IQは同年代に比べて現在どのくらい認知能力があるか、という相対評価なので、早期教育をすると短期間、認知能力は上がるものの効果は長続きしない、ということでした。また、IQの効果は短期的だけれど、非認知能力を伸ばし、将来の学力や所得が良くなる傾向があるとも結論づけています。 人間は発達する生き物なので、先取り教育をしても放っておいても、段階的に子どもたちは発達していってくれます。焦らなくても、その子の成長を見守り、時に適切なサポートしてあげれば、子どもは能力を獲得していってくれるのです。 早期療育の効果は高い他方で、言葉が遅いなど発達障害を疑われるようなお子さんに対して、早期療育をすると効果が高い、ということもわかってきています。そのため、1歳半健診で早期に発達障害の疑いのある子を見つけてあげて、早期療育につなげてあげようという取り組みが小児科の中では重要にもなってきています。 上のきょうだいがいる子の方が発達が早い傾向があるように、子ども同士の相互作用によって発達をうながすことができます。 子どもの発達にすごく大切な知育以外のこと 近年、愛着障害などの研究から、夫婦げんかが多い・DVがある・体罰を受けている子どもは、そうでない子どもに比べて脳の一部が萎縮したり、不安定で情動的な行動をとる(例えば精神的に不安定になったり、暴力的になる)ことが多くなることがわかっています。 子どもの行動や情動が不安定になることにより、成績や精神的な安定に影響が出ることも考えられます。 ひとり親はよくない、まったくケンカしない方が良い、という話ではなく、子どもが安心して過ごせる家庭を作ることが子どもの安定に繋がり、子どもの教育を効果的にすることができます。夫婦げんかであれば、きちんと夫婦で「ごめんね」と言い合ったり、ギスギスした雰囲気を引きずらないなど、ケンカをしてしまったあとにどう振る舞うか、が大事です。 子どもの発達をうながす大事なポイント1-3歳の子どもの発達をうながすために、大事にしたいポイントがあります。 ①まずはライフスキルを身につけること排泄(おしっこやうんち)、食事、睡眠などをきちんとするということです。1歳でおむつを外さなくてはいけない、というわけではもちろんなくて、トイレを自分で表現できるようにする方法を少しずつ声かけしていく、ということからでも大丈夫です。規則正しく食事をして、睡眠がしっかりとれていると、子どもの情緒が安定して、成長にも繋がります。 ②言葉のトレーニングをする言葉が使いこなせるようになると、自分の気持ちや表現したいことが他人に伝えられるようになります。言葉が知能の第一歩になるのです。実際にしゃべる言葉が出なくても、自分の表現したいことができるようになってくる、というだけでも子どもの情緒の安定と成長につながります。言葉の発達が心配であれば、かかりつけの小児科医などにご相談ください。 まずは、親が安定していることが一番です興味のないフラッシュカードを機械的に見せたり、やりたくないことを無理やりやることは子どものためにもならないと思います。子どもも親も楽しく教育ができて、安定した家庭環境で知育をすることができれば、すごく効果的な教育になると思います。 例えば、具体的な知育をする暇がなかなかなくても、日々の声かけを工夫したり、有効なほめ方をするだけでも知育とも言えます。親が安定していることが一番です。子どもの成長を喜んで楽しい教育ができるといいなと思います。 参考:『赤ちゃんと脳科学』小西行郎(集英社新書)『佐々木正美の子育て百科』佐々木正美(大和書房)『「学力」の経済学』中室牧子(ディスカバー・トゥエンティワン)『子どもの「10歳の壁」とは何か?』渡辺弥生(光文社新書) 著者:医師 医療法人アドベンチスト会東京衛生病院 小児科医師 保田典子 先生医療法人アドベンチスト会東京衛生病院小児科医師。株式会社メドイース代表取締役。2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。
2020年08月28日子どもの病気については、自治体でもらった資料を読んでわかったつもりになっていました。けれど、それはあくまでもつもりであって、実際に子どもが熱を出し小児科にかかるようになると、迷うことが多くあったのです。わからないことがあると不安になり、冷静さを失います。私の迷いから、子どもにつらい思いをさせてしまったときの体験談です。 薬はまだ残っている子どもが1歳を過ぎたころから、熱を出すようになりました。1歳3カ月ごろ発熱で小児科にかかると、特に検査をすることもなく医師から「風邪でしょう」と言われ、5日分の薬を処方されました。 それまでは2日もすれば熱も下がったのですが、そのときは3日経っても熱が下がらず、子どももつらそう……。薬はまだ残っているし、水分も飲んでいる、だけど良くなってるようには見えない。心配と不安から冷静さを失ない、ただ、オロオロとしてその日を過ごしました。 血液検査を受ける初めの受診から4日目となる翌日の午前中、子どもの様子が変わらないので、小児科を再受診しました。そこで血液検査をすると、炎症の程度と白血球の数から細菌感染の可能性が大きいと告げられたのです。 そして違う薬が処方され、子どももその夜はぐっすり眠り、翌日には熱が下がって元気になっていました。熱が下がりひと安心したものの、「もっと早く再受診していればつらさを長引かせずにすんだのに」と、申し訳ない思いでいっぱいになりました。 自分なりのルールを決めました再受診の検査や薬の処方が変わった経験をきっかけに、医者から指示がなくても自分から聞くことをリスト化しました。 1.このあとたどるであろう経過の様子2.再受診が必要だと判断する目安3.保育園に行ってもよいと判断する目安 以上の3つです。病院がどんなに混んでいて医師が忙しそうであっても、子どもに必要以上に苦しい思いをさせないために、これだけは聞くようにしています。その甲斐あって、今では私も不安になる頻度が減り、再受診の遅さを悔やむことはなくなりました。 今は毎日元気に走り回っていますが、あのときのことを思い出すと頼りにならないお母さんでごめんね、と心の中で子どもに謝っています。一方で、自分なりの受診ルールを決める大切さも感じた出来事でした。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 先輩ママの体験談、いかがでしたか?「共感した」「私の場合はこうだった」など、ぜひベビーカレンダーサイトのコメント欄にご感想をお寄せください。また、ベビーカレンダーでは皆さんから募集した体験談を記事でご紹介させていただくことも。ベビーカレンダーに会員登録すると届くメルマガから、皆さんのオリジナル体験談をご応募ください。 著者:小原水月1児の母。管理栄養士免許取得。「健康が人生をわくわくさせる」をモットーに食と健康の分野でライターとして活動中。高齢出産後、生まれ育った都心を離れ夫の実家がある地方都市へ移住。義母と同居。
2020年08月03日こんにちは、小児科医の保田典子です。私生活では8歳、6歳、4歳の子育て中です。今回は、お風呂の話です。赤ちゃんの沐浴から幼児の入浴まで、お風呂は育児のなかで大変なもののひとつかもしれません。 「沐浴は毎日させましょう」と指導はありますが、果たして本当にそうなんでしょうか? 海外の育児事情なども織り交ぜてお話ししたいと思います。 生まれてから1カ月間、沐浴しないこともある!以前、中国出身の方が「赤ちゃんは生まれてから1カ月は入浴(沐浴)しないで拭くだけにする」という習慣を教えてくれました。中国は広いので、中国全土その習慣ではないかもしれませんが、1カ月健診で顔を見せてくれたその赤ちゃんは、湿疹ひとつないとてもきれいな皮膚でした。匂いも臭さなどはまったくなく、「これはこれでアリなんだ」と印象に残った経験があります。病院のNICUや新生児室でも、以前は出生後すぐ沐浴し、その後毎日沐浴というのがスタンダードでした。しかし今は、出生後すぐの沐浴は体温低下のリスクもあることから、血液などを拭きとるだけで、その後退院までに1~2回沐浴する「ドライケア」を導入する施設が多くなっています。 肌トラブルの原因、大きく分けるとこの4つお風呂やシャワーは1日についた汚れや汗を洗い流す作用があります。肌トラブルの原因は、大きく分けて4つあります。①汚れ(汗、うんち、食べ物など)②石けんのすすぎ不足(汚れによる肌荒れと同じ)③皮脂の取りすぎ(洗いすぎ)④保湿剤不足(皮膚のバリア機能の低下)つまり、お風呂に入っても入らなくても、上記の原因が取り除ければいいわけです。 私もよく「沐浴スキップ」してました私は産後の肥立ちが悪かったのもあり、体がつらい時は沐浴をスキップしていましたし、子どもが大きくなっても体調がつらいときや疲れているときは、冬場のお風呂やシャワーはお休みしたりしています。ただ、陰部はなんとなく洗わないと自分も気持ち悪い感じがするので、おしりまわりだけはささっと洗ったりで済ませたりしました。 海外では、毎日シャワーはするけど、シャンプーは毎日しないという習慣のところもあります(シャワーすら毎日入らない国も多いですが、子どもでは少なさそうです)。皮膚トラブルをかんがみて、日々の清潔方法を選択すればいいのではないでしょうか。 子どもが汗びっしょり!そんなときは?ちなみに、夏場は子どもは特に汗をよくかくので、必要であればシャワーは1日2~3回入って汗を流してあげると、あせも予防になるかもしれません。ただ、皮脂の取りすぎも湿疹の原因になるので、石けん(ボディソープも含めて)は1日1回までが良いでしょう。 お風呂には「別のメリット」もあります湯船に入るのは、体をきれいにするというメリットの他にもいいことがあります。温かいお湯に浸かると、血管が開いて体が温まります。水圧によって循環が良くなったり、自律神経を整えてくれる作用もあります。夜、お風呂で温まった体が入浴後冷えてくると、自然な眠りを誘ってくれるため、入眠にも良い効果があるんですよ。 お風呂の効果を理解して、ストレスのない生活リズムを!ママの体調が悪かったり疲れていたりするときって、ありますよね。そんなとき、子どもをお風呂に入れるのが大変だったら、無理して毎日入れる必要はないですよ。これはどの年齢の人にも言えることなので、皮膚トラブルの原因を考えてみて、特に問題なければ、お風呂はスキップしても全然問題ありません。お風呂はメリットもいっぱいあるので、「あぁ…お風呂に入れなきゃ……」と思わず、入浴できるときにお風呂タイムを楽しめるといいのかなと思います。 著者:医師 医療法人アドベンチスト会東京衛生病院 小児科医師 保田典子 先生医療法人アドベンチスト会東京衛生病院小児科医師。株式会社メドイース代表取締役。2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。
2020年06月29日こんにちは、小児科医の保田典子です。私生活では8歳、6歳、4歳の子育て中です。今回は子どもの自慰(マスターベーション)の話です。なかなかママ友などにも相談しにくいお話。でも自分だけで対処するのも難しいかもしれません。知識を持って対処すれば大丈夫ですよ。 実はけっこうある、子どもの自慰外来でもときどきご相談を受けますが、子どもの自慰は珍しいものではありません。「気がついていたらベビーカーのベルトにおまたを押しつけていた」「家で寝っ転がりながら自慰をしているようだ」など、シチュエーションはさまざま。年齢層も生後数カ月から小学生までと、いろいろなパターンがあります。正確な頻度ははっきりとはわかりませんが、女の子が多いと言われています。 自分の体で触っちゃいけないところなんてない親御さんが初めて小児自慰を発見するとびっくりして、「はしたない」とか「恥ずかしい」という気持ちになるかと思います。でも、小児自慰は性的な意味合いはなく、「触っていて気持ちいいことに気がついた」とか「なんとなく」すると言われています。子どもが触っている場所は、自分の体です。自分の体で触ってはいけない場所はありません。びっくりしたり、恥ずかしい気持ちになると思いますが、まずは「やってはダメなこと」という認識を捨てましょう。 触っていいんだけど、その上での接し方のコツ子どもが自分の体を自分で触ることは、まったく問題はありません。そうは言っても、人前でしたりするのは、周りの人をびっくりさせたり、不快な気持ちにさせる場合があるので、やめた方がいいでしょう。 0歳から1歳ごろ0歳から1歳のお子さんに「人前ではやらないように」と言ってもまだわからないので、自慰から気が逸れるように、何か違うことをやるように働きかけてみると良いですよ。自慰する子どもを見たときのお母さん・お父さんがすごく嫌な顔をしていたら、子どもも嫌な気持ちになるので(悪いことはしていないのに!)、いったん気持ちを落ち着けてから対処してみましょう。 2歳以上2歳以上で、ある程度親の言うことが理解できるようになったら、「触ると気持ちいいのかな? それは自然な気持ちで、触ることは悪いことじゃないんだけど、家の外でやると周りの人が嫌な気持ちになるかもしれない。やるのは家の中でしようね」と説明しましょう。 それでも外でしてしまう場合は、0歳や1歳のお子さんと同様、手を使う遊びなどを働きかけてみましょう。幼稚園や学校でやっている場合もあるので、先生に確認をして、同じような対処をしてもらうようにしましょう。 びっくりしちゃうけど、性教育のチャンス!自慰自体は悪いことではないですが、他の人に触られたりするのは性被害です。人に陰部や胸を触られたり、逆に見せられたりするのは良くないことである、また自分が「嫌」だと思うことはちゃんと拒絶することを覚えてもらう必要があります。 3歳くらいから、このような性被害の話はちょっとずつわかるようになってきます。今は性教育の絵本などもありますので、絵本などを使いながら理解してもらいましょう。 知識がないと、自分が性被害にあっていることもわからない場合があります。幼稚園くらいからおうちでも性教育をして、性被害にあわない、将来性被害をしない子に育てたいものですね。 困っているときには小児自慰について簡単に説明すると以上なのですが、そうは言っても子どもによって状況はそれぞれですし、なかなか上記の対処でうまくいかない場合もあると思います。 困っているときには、信頼できるかかりつけの小児科医にまず相談してみましょう。ストレスが原因で自慰をすることもあるので、必要であれば心理カウンセラーに相談してもいいでしょう。細かな判断は小児科の先生と相談しながら進めていけるといいですね。 著者:医師 医療法人アドベンチスト会東京衛生病院 小児科医師 保田典子 先生医療法人アドベンチスト会東京衛生病院小児科医師。株式会社メドイース代表取締役。2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。
2020年06月28日東京衛生病院小児科の保田典子です。診療では、風邪などの一般診療に加え、循環器の病気や漢方治療、発達の相談などをしています。ママやパパたちが安心してお子さんのケアができるような診療を心がけています。 私生活では7歳・5歳・3歳の子育て中で、毎日ドタバタな生活をしています。これからベビーカレンダーでコラムを書かせていただくことになりました。よろしくお願いします! まずはじめにお話ししたいこと。それは、「小児科医は安心できる子育てに必要な”サービス”の1つ」だということです。 初めてのお子さんであれば、育児は誰でも初めてです。初めての経験は、誰でもすぐうまくいくとは限りません。さまざまなツールやサービスをうまく使って、育児を乗り切ってもらえたらと思います。 私は、安心できる育児に大事なサービスの1つ、「小児科医」をうまく利用していただきたいなと思っています。 小児科は病気のときだけじゃない病院というと「病気を治すところ」ですが、小児科の役割はそれだけではありません。乳幼児健診などもおこなっていて、「赤ちゃんの健やかな成長を見守り、支える」役目もになっています。 そのため、多くの小児科医は「子育てで悩むパパママの助けをしたい」と思っています。 夜泣き、離乳食、疳の虫、イヤイヤ期…… 「小児科で相談すること?」と思えることが、意外に小児科で解決することもあるので、予防接種や風邪の診療のついででも、子育ての悩みをちらっと相談してみるのもいいと思います! どんな小児科医がおすすめ?初めてのママパパにおすすめなのは、「とにかく話を聞いていて、信頼できると思える先生」がいいと思います。 でも、それってすごく曖昧……クリニックの外観を見ても良くわからないし。 とりあえず、ぱっと探せる指標としては ●小児科専門医であること●行きやすい場所であること●(新しい・古いではなく)ぱっと見て清潔感があること●ある程度ホームページがしっかりしていること がわかりやすい指標でしょうか。 そんなクリニックを探して一度受診してみて、子育ての疑問なども質問してみて、「いいな」と思ったらそこに通ったほうがいいと思います。 とはいえ、小児科専門医であるというのは1つの指標にすぎません。 実は私の場合、今の場所に引っ越してきて、近所の人におすすめされてかかりつけにしている先生は小児科専門医ではありません。 上記の指標のほかにも、しばらく通って「信頼できる先生だと思えたこと」「小児の患者さんが多く経験豊富であること」がわかったので、そのまま通っています。何より、月曜日~土曜日毎日やっているので、他にかかる必要がないのも気に入ってます。 小児科受診。ここは気をつけて!時々来られる患者さんで、「3つ病院にかかったけど良くならなかったので、うちに来ました」という方がいます。 でも、個人的には何度も病院を変えるのはおすすめしません。特に小児はどこにいっても出すお薬はそんなに変わりません。そして、経過をみてこそ、わかることがたくさんあります。 「後医は名医」という言葉があり、あとで診た医師のほうが経過が長い分、事前に治療をされて効果判定ができる分、正確な診断ができます。 そもそも、初診での正診率(正確に診断できる)は15%とも言われています。 なので、この前なかなか治らなかった風邪が、このお医者さんに行ったら治ったから名医!という訳ではないのです。 合うお医者さんは人それぞれ口コミで「良い」と言われている先生でも、「自分には合わないな……」と思うこともあると思います。ママやパパの性格も人それぞれですし、小児科医の先生もそれぞれだからです。 私みたいに、「ママパパたちをとにかく支えたい」と思っている医師もいれば、「とにかく病気をきっちり治すことだけを大事にしたい」と思っている医師もいます。 ぜひ、1つだけでも「自分が行くと安心できる小児科医」をつくってみてください。これからの子育てライフ、心がグッと軽くなると思います。 著者:医師 医療法人アドベンチスト会東京衛生病院 小児科医師 保田典子 先生医療法人アドベンチスト会東京衛生病院小児科医師。株式会社メドイース代表取締役。2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。
2020年06月20日こんにちは、小児科医の保田典子です。私生活では7歳、5歳、4歳の子育て中です。今は保育園が休園中、登園自粛要請のところが多いですが、4月からお子さんが保育園に入園したご家庭は多いのではないでしょうか。保育園に預けるとき、ママたちは「こんなに小さくて保育園に預けていいのだろうか」「子どもがかわいそうじゃないか」「子どもの発達に悪いのではないか」と悩んでいます。果たして本当に子どもはかわいそうなのでしょうか? 考えてみたいと思います。 ママたちを悩ませる「3歳児神話」、実は根拠がない「保育園よりも幼稚園のほうがいい」という考えが、世の中にあると感じます。共働き世帯が増えてきて、この風潮は少なくなってきているようにも感じますが、依然その考えの原因になっているのが「3歳児神話」です。3歳児神話は、“子どもは3歳ごろまでの間に「母親の手元」で育てられないと、成長に悪影響が及ぼされる”という考え方です。1950年にボウルビィという医師によって提唱されたとされています。 この考え方は、平成10年の厚生白書で“3歳児神話には、少なくとも合理的な根拠は認められない”とされています。なので、保育園に預けることは、子どもの発達、成長に影響を与えることはないと考えて大丈夫です。先ほど出てきたボウルビィも“母親的関わり”が大事と書いていて、アメリカの研究でも保育士さんに愛情を持って育てられれば、成長に影響はないという結果が出ています。 保育園に行くメリット・デメリットは? 保育園に行くと、多くの子が風邪を引きやすくなります。フィンランドの研究でも、保育園に通っている子のほうが、通っていない子よりも風邪をひく回数が多いと結果が出ています。ただ、保育園に通っている子は、小学校になってからの風邪の頻度が、通っていない子よりも低くなることがわかっています。発達に関しては、保育園に通うことによって、言語発達が改善するという指標があります(これは、3歳半の子にたいしてのデータですので、大人のときに言語発達が差がでるかは示していません)。 きょうだいがいる子のほう方がおしゃべりが早いと言われているので、子ども同士の関わりが子どもの発達をうながすのだと思われます。保育園は、小学校入学以降の風邪に関してや、発達に関してメリットがあることがわかります。とはいえ、ママのそばにいたい盛りの子どもが預けられることが多いので、預けるときに子どもが泣いてしまうことも多くあります。そんな子どもの姿を見るのがつらい、ということはよく聞く話です。 保育園に行く・行かないに関わらず、大事なこと 「保育園に子どもを通わせると、母親の幸福度が上がる」ことも先ほどの研究からわかっています。母親の幸福度が高いと何がいいかというと、虐待の防止に役立ちます。虐待までいかなくても、母親が幸福で穏やかだと、子どもの精神も安定します。保育園に行くか行かないかに関わらず、ママの精神的安定は家族の幸せにとても重要ですので、子どものためにもママの幸せをママ自身がきちんと考えていただきたいと思います。 生後8週から働いている、わが家の工夫▲2018年11月ごろの様子提供:保田典子医師 私は3人子どもがいますが、3人ともほぼ育休なしで仕事に復帰しています。産前も短くしたりしていたので、産休を含めても合計1年もありません。早くに子どもを預けて、さみしいという気持ちもありました。特に、末っ子は最後かなと思うと育休を取っておこうかなと悩んだこともありました。保育園に預けるときは、子どもにとって保育園が安心な場所になるように、心がけるようにしていました。たとえば、子どもの性格を先生とシェアしたり、子どもの様子を見て、早めにお迎えに行くようにした時期もありました。そして、自分自身が子どもにとって安心な存在であるように、なるべくイライラしない工夫をしています。 疲れたら、とことんラクをする! 無理しない!私も、3人目妊娠中からすごくイライラしやすくて、妊娠してから1年半から2年くらいが一番つらかったです。そこで行きついた答えは「自分を大事にすること」でした。 眠かったら朝起きずに朝ごはんも作らなかったり、掃除をやめたり。「疲れるなぁ」と思うことをやめると、心に余裕が出てきて、今度は逆に掃除もやろうという気分になってきます。「疲れたときはとことんラクをする、無理をしない!」これがイライラしないコツです。最近は子どもも少し大きくなってきたので、自分の仕事のことを子どもと話すようにしています。そんな子育て法でいいのかはわかりませんが、子育てに「不正解はない」と思っています。保育園でも、幼稚園でも、大丈夫。保育園に通う子どもたちは、決してかわいそうなんかじゃありません。ママたちが子どもの成長を喜びをもって見守ってくれれば、子どもはきちんと育つのではないかと思います。 イラスト/マメ美監修者・著者:医師 高円寺こどもクリニック院長 保田典子 先生2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。2021年、高円寺こどもクリニック開院。
2020年04月30日こんにちは、小児科医の保田典子です。私生活では7歳、5歳、4歳の子育て中です。今回は、外来でもよく質問がある耳掃除についてです。「どのくらいの頻度したらいいですか?」「どのくらい深くまで入れていいですか?」など、健診や病気の診察のときなどに結構聞かれる質問です。私は「耳掃除は、しなくていいんですよ」とお答えしています。その理由をお話ししたいと思います。 「耳掃除」しなくていい理由は?健診のみならず、中耳炎の後の診察などでも耳掃除の質問はあります。中耳炎になると耳だれも出てくるので、耳掃除しなくちゃ、となりますよね。でも、耳掃除で中耳炎の予防ができる訳ではありません(鼻水を吸引したほうが中耳炎の予防はできます)。 日本耳鼻咽喉科学会でも、 耳垢は「細菌やカビが外耳道に繁殖するのを防いだり、敏感な外耳道皮膚を保護する役割があります。また苦味があり、虫などの進入も防いでくれます。つまり耳垢が私たちの耳を保護しているのです。」 と耳掃除をしないことを推奨しています。 耳のケア、どうすればいい?「耳掃除」といっても、綿棒や耳かきを耳の穴に入れて「掃除」することはしません。ガーゼなどを指に巻いて、耳を拭きとるというイメージでケアしておけばOK。大人の指なら子どもの耳の穴の奥まで突っ込めないので安全です。お風呂や沐浴で耳の中に水が入っても大丈夫。放っておけば水も自然に排出されます。 ちなみに、私自身は耳掃除をすることがありますが、子どもが大人しくテレビなどを見ているときに(←すごく大事です。急にぶつかってきたら鼓膜を破る危険性も……!)、深くなりすぎないように綿棒でささっとおこなう程度です。本当は不織布かガーゼが良いですよ。 わが家の子どもたちは、基本的に耳掃除はしていません。親がおこなっているのを見ると、「やって〜」と言われるので、スキンシップ程度にすることがある感じです。お子さんが自分で耳かきや綿棒使うと、鼓膜を破ってしまうおそれもあるので、絶対にやめさせましょう! 耳鼻科に行くのは、どんなとき?基本、耳掃除が目的で耳鼻科を受診する必要はないのですが、下記のようなときは、耳鼻科の受診を考えましょう。●耳だれが出るとき●耳の聞こえが悪くなったと感じたとき●耳を痛がるとき●耳の違和感を子どもが訴えるとき●どうしても耳垢が気になるとき 耳鼻科を受診する時に「耳垢が気になって」と伝えると、その場で取ってもらえることもありますし、「今度受診するべきなのか」「受診するタイミング」「受診しなくて大丈夫なのか」など教えてもらえるので、それを参考にするのがいいと思います。 適切なお手入れ法を知ることが大事です人間の体は、耳に限らず「適切なお手入れ方法」があります。 1. きれいにしたほうがよいものうんちをきれいに拭く、歯磨きをする、など 2. そこまで完璧にきれいにしなくていいものせっけんを使い洗いすぎると皮脂を落としすぎてしまう耳垢も適度な量は耳を守ってくれる大事なものなので落としすぎなくて良い、などきれいにすることのメリット、デメリットを理解していると、不要なケアを減らすことができるだけでなく、お子さんの健康を保つことができます。 耳垢よりも「聞こえが悪くなっていないか」「鼻水が詰まって口呼吸になっていないか」などを毎日チェックしてあげて、心配なら耳鼻科の受診を考えてみてくださいね。 監修者・著者:医師 高円寺こどもクリニック院長 保田典子 先生2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。2021年、高円寺こどもクリニック開院。
2020年04月29日赤ちゃんや子どもの耳掃除、どうしていますか? わが家では、これまでベビー綿棒で耳掃除をしていましたが、1歳を過ぎたころに初めて耳鼻科のお世話になってみてビックリ! 驚くほど大量の耳垢が出てきて、先生には「綿棒は使わないでください」と言われてしまいました。そんなわが家で役立っている、耳掃除の三種の神器を紹介します。 これまでは耳垢を押し込んでしまっていた 耳鼻科の先生によると、綿棒を使うと耳垢を奥に押し込んでしまうことが多いのだそうです。綿棒は、ほんの入り口付近をふき取るのに使うだけで、耳垢を綿棒で取ろうとしてはいけないとのこと。 それまで綿棒で子どもの耳掃除をしていた私は、押し込んでいるという意識はまったくなく、きれいに掃除できていると思っていました。そのため、耳鼻科で塊となった耳垢がごっそり出てきたときは衝撃でした。 今はライト付き耳かきとピンセットが活躍! 耳鼻科から帰ってきてから愛用しているのが、「ライト付き耳かき」と「耳用のピンセット」です。細かな耳垢は耳かきで掃除して、大きい耳垢は押し込まないようにピンセットで取るという具合で使い分けています。耳の中をよく見るために耳鏡も使っています。 ライト付き耳かきはダイソーで、ピンセットと耳鏡は医療用のものをネットで購入。普通のピンセットよりも細いので、小さな耳の中でも耳垢を掴みやすいです。耳垢がするっと取れると、子どもも痛がらず、掃除をするほうも気持ちがいいです! よく見える! 便利なヘッドライト そして、何より欠かせないのが「ヘッドライト」です。耳掃除のためにヘッドライトと言うと何とも大げさな感じですが、これが本当によく見えて便利なんです。わが家では災害時用に購入していたヘッドライトを使い回しています。 ヘッドライトを使うと、今まで見えなかった奥のほうまで耳の中がよく見えます。ただ、よく見えるからといって無理な耳掃除は禁物。奥のほうに耳垢が見えたら無理に取ろうとせず、自然に出てくるのを待つか、耳鼻科を受診するようにしています。 今回ご紹介した方法は、わが子が1歳を過ぎてから試したもの。月齢の小さい子は過度な耳掃除は必要ないと耳鼻科で聞きました。耳の中を傷付けないように気を付けたいですね。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 先輩ママの体験談、いかがでしたか?「共感した」「私の場合はこうだった」など、ぜひベビーカレンダーサイトのコメント欄にご感想をお寄せください。また、ベビーカレンダーでは皆さんから募集した体験談を記事でご紹介させていただくことも。ベビーカレンダーに会員登録すると届くメルマガから、皆さんのオリジナル体験談をご応募ください。 著者:松田佳菜二児の母。出産前は地方テレビ局で報道記者として勤務。自身の体験をもとに妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆中。
2020年04月08日こんにちは、東京衛生病院小児科の保田典子です。私生活では7歳、5歳、4歳の子育て中です。急に気温が暖かくなってきましたね。まだ3月なので、気温のアップダウンが続くかと思いますが、春を感じる気候になってきました。そんな季節の悩みの1つが「子どもの洋服」だと思います。私は常々外出していると「子どもに厚着をさせているなぁ……」と感じることが多いです。そのワケを今日はお話しできたらと思います。 子どもの服は“大人マイナス1枚”が目安ショッピングセンターなどで、全身ダウンにひざ掛けでベビーカーに乗っている子を見かけます。親御さんを見ると、長袖Tシャツくらいでニットですらなかったりします。 まだ話すことのできない赤ちゃんだと、「暑い、寒い」が訴えられません。寒くて風邪をひいてしまうのも心配かと思いますが、どんな年齢の子どもでもほとんど暑がりなので、“大人より1枚少なめ”の洋服で大丈夫です。※新生児は大人と同じか1枚多くが基本です。 また、暑いままでいると、汗をかいて、外に出たときにかえって冷えてしまい、それが風邪のもとになったりもします。赤ちゃんの洋服の調整は大変かと思いますが、環境によってこまめに変えてもらうほうが良いかと思います。 【3~4月】子どもの服装、何を着せるのが正解? ①外で遊ぶとき3月~4月の季節の外遊びには、「ニット+ウインドブレーカー」「トレーナーor 長袖Tシャツ+ジャンパー」くらいがおすすめです。0〜1歳の場合、ベビーカーに乗るときはブランケットなど掛けものがあるといいと思います。2〜3歳であれば、帽子やレッグウォーマーなどの防寒アイテムを準備して、寒そうなときは追加しましょう。3歳以上であれば、基本的には本人の感覚を尊重しましょう。元気に動きまわって遊んでいて暑いというのであれば、もっと薄着にしてしまって大丈夫です。 わが家では、真冬でも遊びまくって暑くなるとタンクトップ1枚になろうとするので、一応必死に止めて半袖Tシャツくらいまでにしてもらっています(笑)。じっとする遊びに移行したときにはすかさず上着を投入しています。この、「本人の感覚を尊重する」ことで1つ気をつけるべきことは、「本当に暑いのか、こだわりで薄着にしたがっているのか」を見極めることです。こだわりで薄着にしたがっている場合は風邪をひいてしまうおそれがあるので、子どもが寒そうにしていたり、体幹が冷たく感じるときは上着を着せましょう。 ②屋内にお出かけのとき商業施設などの屋内施設に行くときは、脱ぎ着のラクなジャンパーやダウンジャケットを着せましょう。0〜2歳はベビーカーに乗っていてじっとしているので、意外に冷えたり寒いと感じることも多いです。ベビーカーのときは暖かめに装備して、屋内に入ったら脱がせるといった調整がいいでしょう。抱っこひものときは、密着していて体幹部(胸、背中、おなかなど)は温かいので、ダウンまでは必要ないと思います(抱っこだとかさばりますし)。足は冷えることもあるので、足が冷たいなと思ったらケープやレッグウォーマーなどで工夫してみてください。暖かいと感じる日は、ニットやトレーナーを着せて、上着は着せないで出てみてもいいかもしれません。朝晩は冷え込むことが多いので、防寒着は暖かい日でも準備したほうがいいでしょう。 ③室内では室内の状況にもよりますが、0〜1歳の赤ちゃんがいる家庭では、ある程度暖房器具で室内を温度調整したほうが良いと思うので、その前提での話です。動きざかりの赤ちゃんは、動くのは大好きだけどまだぎこちなかったり転びやすかったりするので、室内がある程度暖かければ靴下ははかせなくて大丈夫。 服装もニットなどよりは、長袖Tシャツくらいが動きやすいのではないでしょうか。室内でも大人よりは暑がりだと考えて、少し薄手の洋服にしてあげるといいと思います。2~3歳以上の子も赤ちゃんと同様ですが、暑さ寒さの感じ方は人それぞれなので、お子さんと相談しながら服を決めましょう。 お子さんとコミュニケーションをとりながら服の調整を 一般的に子どもは暑がりなのですが、冷え性のママと暑がりのママとがいるように、寒がりの子と暑がりの子がいます。赤ちゃんであれば、汗をかいているか、体幹部分が冷えていないかで判断します。お子さんがお話しできるようになったら、「今暑い? 寒い?」とコミュニケーションをとりながら服装も決めてもらうのがいいと思います。 子どもは体表面積が大きく、手足が外気温に左右されやすいので、手足の冷たさではなく、体幹部の体温を参考にするようにしましょう。このような調整をしていくことで、「パパ・ママが子どもの一番の理解者」となる一歩になると思います。 監修者・著者:医師 東京衛生アドベンチスト病院 小児科医師 保田典子 先生2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。2021年春、高円寺こどもクリニック(仮称)開設予定。
2020年03月19日こんにちは。東京衛生病院小児科の保田典子です。私生活では7歳、5歳、4歳の子育て中です。インフルエンザの流行期の今、「インフルエンザ脳症」について知っておいていただきたいことをお話したいと思います。 忘れられない「インフルエンザ脳症」の思い出私は元々小児科医なのもあって、ワクチンはきちんと打つ派でしたが、以前体験したエピソードから、さらにワクチンの大切さを思い知った出来事があります。それは、2歳の女の子で、インフルエンザ脳症になってしまった症例でした。インフルエンザ脳症になる前は飛んで跳ねて駆けまわっていたであろうその子は、病室で鼻からチューブを入れて栄養をとっていました。担当ではなかったため、その後、その子がどうなったか詳しいことはわからないのですが、その姿が衝撃的で、インフルエンザ脳症の恐ろしさを痛感したのでした。 インフルエンザ脳症についてインフルエンザ脳症は、日本では毎年60〜100人くらいが発症しています。多くは小児ですが、大人でも発症しています。インフルエンザの流行にともなって、インフルエンザ脳症の発症も増えます。 インフルエンザ脳症の症状インフルエンザ脳症の症状は、発熱、意識障害がメインで、その他にけいれん、異常行動、嘔吐などがあります。0〜4歳ではけいれんが多く、5〜19歳では頭痛や嘔吐、成人では髄膜炎様症状になることが多いようです。死亡率が高いインフルエンザ合併症で、死亡率30%、後遺症率25%と言われています。よく10歳以上で問題となりやすい異常行動ですが、どの年齢にも起こりえます。10歳以上だと行動力があるので、家から飛び降りたりできてしまう分、結果として痛ましい結果になることがあるため、注意を呼びかけられています。そして、異常行動とインフルエンザ脳症は区別しきれないのが実情で、異常行動が出たからといって必ずしもインフルエンザ脳症であるというわけではありません。インフルエンザ脳症の異常行動、意識障害は一過性(1時間以内)ではなく、長く続くとされています。短時間の意識障害などは心配いらないことが多いのですが、再発して脳症となることもあるので、解熱するまでは気を抜かないで観察してあげることが重要です。 インフルエンザによる意識障害や異常行動は? この他にも、明らかにいつものお子さんと違うおかしい症状が出るので、見ればすぐにわかると思います。 異常行動を見たらインフルエンザ自体は脳に影響を及ぼすことが多いので、インフルエンザ脳症ではなくても異常行動がでるお子さんはたくさんいます。30分くらいでおさまってしまう異常行動は様子を見ていても大丈夫ですが、不安であれば病院に相談してみましょう。#8000や救急外来をしている病院に電話相談をしてみることもできます。看病のコツとしては、一般的な風邪の看病と同じで大丈夫ですが、①異常行動が続かないか②けいれんをしていないか③脱水症状を起こしていないかに気をつけましょう。 解熱剤や熱性けいれんの予防をしているお子さんは、予防薬などを使って大丈夫です(逆に、けいれん予防をしている子はしっかり予防薬を使いましょう)。 異常行動の対策、どうすればいい?厚生労働省から、インフルエンザにかかったときの具体的な対策法が発表されています。 ◆原則 ※これまでにも注意喚起を行っている内容抗インフルエンザウイルス薬の種類や服用の有無によらず、インフルエンザと診断され治療が開始された後、少なくとも2日間は、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することを原則とする旨の説明に加え、次の注意喚起の例が考えられます。 ◆小児・未成年者が住居外に飛び出ないための追加の対策(例)(1) 高層階の住居においては、例えば、・ 玄関及び全ての窓の施錠を確実に行うこと(内鍵、補助錠がある場合はその活用を含む。)、・ ベランダに面していない部屋で療養を行わせること、・窓に格子のある部屋がある場合はその部屋で療養を行わせること、等、小児・未成年者が容易に住居外に飛び出ない保護対策を講じることを医療関係者から患者及び保護者に説明すること(2) 一戸建てに住んでいる場合は、例えば、(1)の内容のほか、出来る限り1階で療養を行わせること インフルエンザ脳症とインフルエンザワクチンインフルエンザワクチンは、接種しても発症してしまうことがあることから、あえて接種しないという方もいます。集団接種があった時期(1960〜70年代)よりも現在、ワクチンの接種率は下がっています。そのため、インフルエンザ脳症で死亡する小児や、インフルエンザにより死亡する高齢者が増えたというデータがあります。多くのインフルエンザ脳症に関する論文を見てみると、インフルエンザ脳症になった症例で、インフルエンザワクチンを接種していた例はほとんどありませんでした。これが「インフルエンザワクチンを接種しよう!」と、いつも思っている理由です。インフルエンザのワクチンは生後6カ月から接種でき、インフルエンザ脳症など重症の合併症の予防としてとても効果的です。インフルエンザ脳症になる確率は高くはありませんが、もしかしたら、自分の子がインフルエンザ脳症になってなってしまうかもしれない。確率は関係ないと思うからです。 死亡率30%、後遺症率25%と言われるインフルエンザ脳症。みなさんもどうか、お子さんにインフルエンザ脳症にならせないためにも、まずはインフルエンザワクチンをしっかりと接種し、お子さんを守ってあげてくださいね。 監修者・著者:医師 東京衛生アドベンチスト病院 小児科医師 保田典子 先生2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。2021年春、高円寺こどもクリニック(仮称)開設予定。
2020年02月24日こんにちは、東京衛生病院小児科の保田典子です。私生活では7歳、5歳、4歳の子育て中です。現在メディアでは、新型肺炎コロナウイルスに関するニュースが毎日報道されています。今回は、みなさんに知っておいていただきたいことをお話したいと思います。 「コロナウイルス」って、そもそもどんなもの?コロナウイルスはRNAウイルスの一種です。RNAウイルスの中には、インフルエンザウイルスや麻疹ウイルスなどがあります(RNAウイルスでもタイプは違います)。風邪の中の10-15%はコロナウイルスが原因と言われており、6歳までにほとんどの人が1回は感染します。ここ20年で2回、新型のコロナウイルスの流行が確認されていますが、小児の感染者は軽症で終わることが多いです。 罹患するとどんな症状がでるの?一般的な風邪を引き起こすコロナウイルスの症状としては、鼻水、咳、下痢などです。2002年、2012年に流行したコロナウイルス(今回流行しているものとは違います)は高熱が出たり、肺炎や腎炎を起こすことがありました。今回発生した新型コロナウイルス(2019-nCoV)は発熱、呼吸器症状が出ると言われており、咳や鼻水が出ると考えられます。 感染経路感染経路は接触、飛沫感染です。咳や鼻水から感染します。 現状1月29日12:00現在、国内での発生状況は7名で、いずれも30代~60代です。日本国外で新型コロナウイルス関連の肺炎と診断されている症例及び死亡例の数は、中国で感染者5,974名、死亡者132名。タイ、韓国、台湾などのアジア圏のほか、フランスやオーストラリアなどでも感染者が確認されています。報告されている患者の年齢層は主に成人ですが、1 月 21 日時点で 10 歳の症例が1例、広東省で確認されています。 妊婦さんの罹患状況など国内発生は今のところなし。WHOのホームページも見ましたが、妊婦さんがハイリスクである、といった記載はありませんでした。 子どもにマスクは有用?いつから使える?新型コロナウイルス対策だけでなく、インフルエンザなどの感染症予防の観点から、この時季の不要不急な外出はできる限り避けましょう。外出が必要な場合は、マスクを着用したほうが良いです。子どものマスク使用はある程度有用ですので、つけられたらつけたほうがいいと思います。 子どもはいつからマスクを使える?生後9~10カ月ごろまでは窒息などのおそれがあるため、使用しないほうがいいでしょう。生後9~10カ月ごろ以降、マスクを嫌がらないようであれば、マスクをつけて外出できますが、大人が見ていられるときにしましょう。 どんなマスクが良いの?また、子ども用のマスクは不織布マスクやガーゼマスクなどさまざまなタイプがありますが、マスクだけで100%予防はできないので、どのタイプでもOKです。ただし、清潔なものを使いましょう。子どもはそもそもマスクを嫌がりがちなので、マスクの種類よりも、子どもが喜んでつけてくれるようなマスクを買ってあげて、しっかりと口と鼻を覆って使用できることを重視したほうがいいと思います。 有効な予防方法は?ウイルスには、手指のアルコール消毒が有効です。新型コロナウイルス対策にアルコール除菌をするというよりは、日常的に手洗いやうがいをしっかりする、公共の機関の物を触ったらアルコール消毒をする、という程度で大丈夫です。除菌シートよりは、すり込み式のアルコールジェルなどが良いです。物の消毒には、次亜塩素酸(じあえんそさん)が有効です。 手洗いやうがいがまだできない乳幼児は、すりこみ式のアルコール消毒を使って手指を消毒し、睡眠・水分を十分にとり、人ごみを避けるといった予防対策をしておくと安心です。 今私たちができることって? 新型コロナウイルスだから、というよりは、インフルエンザなど風邪の流行期でもあるので、手洗い、うがい、食事をしっかりとる、睡眠をしっかりとる、などといった風邪の対策をすることが大事です。手洗いは30秒以上しっかり洗うこと、うがいは風邪をひいていなければ水でいいので20秒以上しっかりすることが大事です。 ◆国民の皆様へのメッセージ◆ 国民の皆様におかれては、過剰に心配することなく、季節性インフルエンザと同様に咳エチケットや手洗いなどの感染症対策に努めていただくようお願いいたします。(引用:厚生労働省) 厚生労働省の上記コメントにもあるように、新型コロナウイルスは普通の病院ですぐ検査してわかる病気でもないですし、コロナウイルス自体は1年中風邪の原因として日本でも普通に認められる感染症です。手洗いやうがいなどの感染対策をする以上の特別な対応は必要ないので、普段からの健康管理が大切です。 ◇ ○ 厚生労働省の電話相談窓口電話番号 03-3595-2285○ 受付時間9時00分~21時00分(土日・祝日も実施) 【#新型コロナウイルス 関連肺炎について】新型コロナウイルス関連肺炎に関する情報を掲載しています。■詳しくはこちらをご覧ください。— 厚生労働省 (@MHLWitter) January 22, 2020 著者:医師 医療法人アドベンチスト会東京衛生病院 小児科医師 保田典子 先生医療法人アドベンチスト会東京衛生病院小児科医師。株式会社メドイース代表取締役。2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。Twitter:@kanoppeInstagram:@atama4970_yasuda
2020年01月31日病院ごとの役割と得意分野を知ろう!私はこれまで大学病院や地域の総合病院などに勤め、現在はクリニックに勤務しています(こども病院には勤務経験がありません)。それぞれの病院には役割や得意分野があるため、症状や病状にあわせた受診ができると良いでしょう。このコラムでは、小児科医から見た病院のかかり方や使い方について解説します。ぜひ病院を選ぶ際のヒントにしてくださいね。「病院」の種類と特徴まずはそれぞれの病院の特徴を紹介します。大学病院各都道府県に少なくとも1つあり、専門性の高い医療を提供しています。教育や研究の中心機関となっており、県外や海外からも専門的な医療を求めて受診する患者さんがいます。【さらに詳しく】大学病院の診察とは?大学病院の小児科は、症状・病状ごとに科で細分化されているわけではありません。ただし、循環器系ならA先生、腎臓系ならB先生といったように、担当者がおおよそわかれています。症状・病状にあわせて各専門領域の医師が担当となります。外科系の疾患が見られる場合は、受診先は小児科ではありません。例えば整形外科を受診して、その中の小児整形を担当している先生を受診します。もし大学病院に小児整形を得意とする医師がいなければ、こども病院への紹介となるでしょう。こども病院大学病院同様、専門性の高い医療を提供する病院です。大学病院との大きな違いは、2つあります。1つ目は対象の患者さんが子どもだけであること。2つ目は専門の科が「小児循環器科」「小児腎臓科」「小児整形外科」「小児泌尿器科」といった具合に細分化されていることです。こども病院は主に各地方の主要都市などに位置し、病院数は少ないです。ただし遠方でも症状・病状的に必要であると判断されるときは、こども病院へ紹介となります。クリニック地域に根ざした医療機関で、多くの患者さんが最初に訪れる場所です。予防接種、健診を始め一般的な風邪の診察から育児相談まで幅広く対応します。一方、高度な医療機器や入院施設はないため(例外もあります)、必要に応じて地域の総合病院や大学病院、こども病院に紹介をします。地域の総合病院大学病院とクリニックの中間的な存在と言えます。入院施設があり、専門的な検査や治療も受けることができます。ただし科の体制によって、クリニックに近いところもありますし、大学病院やこども病院並みの高度な医療が提供されることもあります。病気の分野によっては、地域の総合病院の方が大学病院よりも盛んに診療している場合もあります。例えばある県においては腎臓病であれば大学病院へ、アレルギー疾患は地域の総合病院へといった枠組みになっているところもありますよ。緊急性が低いときは、まずクリニックを受診しよう!例外もありますが、一般的に大学病院やこども病院、地域の総合病院は初診時に紹介状を持っての受診が必要です。まずは、クリニックを受診して相談し、病状に応じて適切な医療機関へと紹介してもらいましょう。専門的な検査や治療はクリニックでは対応が難しく、逆に一般的な風邪で大学病院やこども病院を受診することは、慢性疾患などでもともと定期通院をしている患者さん以外では難しいでしょう。疾患の重さや患者さんの状態によって、適切な医療機関にかかることが双方にとってメリットがあります。また地域の医療事情にもよりますが、可能であれば受診できるクリニックは2箇所持っておく方が良いと、個人的には考えています。あるクリニックが突然休診になることもあるでしょうし、別の医師が異なる視点から診察することで見逃しも予防しやすくなりますよ。子育てには心配がつきものですから、2ヶ所のクリニックを受診できるようにすることで、少しでも保護者の方の不安が和らげばと思います。小児科を受診するのはどんなとき?一般的に小児科では各分野の内容を広く浅く(医師によっては広く深く)備えていると言えます。15歳未満の内科的な症状に対してはひとまず小児科を受診して間違いではありません。ただし、これらは地域の医療事情やアクセスによっても変化します。例えば泌尿器科が近くにない場合、患者さんはひとまず小児科を受診することになるでしょう。その場合は、小児科医はある程度専門的な範囲に足を踏み入れていることになります。逆に医療が充実した地域では、軽度の症状であっても専門科をすぐ受診できるかもしれませんね。【症状・病状別】受診するべき「病院」は?「餅は餅屋」ですから、スムーズにアクセスできるのであれば専門科に相談するのが理想です。小児科は「小児内科」ですので、外科的な内容は診療できません。例えばハサミで手を切った、骨が折れているかもしれないなどといったときは、直接外科や整形外科等を受診した方が良いでしょう。外科的な症状でなければ、ひとまず小児科を受診して間違いではありません。必要があれば症状に応じて専門の科に紹介することが可能です。ここでは、症状や病状に応じてどのクリニックに行くべきかについて説明します。いち小児科医としての私の考えになりますが、参考にしていただければと思います。咳、鼻の風邪耳鼻咽喉科でも診療しているところが多いですが、専門は小児科になります。咳がなかなか良くならない時は肺炎や喘息ということもあり、その診療は小児科の方が経験豊富といえます。中耳炎小児科でも一部診療をしていますが、専門は耳鼻咽喉科です。重症例に行われる鼓膜切開などの専門的な処置は通常小児科で行うことはできません。湿疹小児科、皮膚科いずれでも診療していますが、なかなか良くならない湿疹や頻度の少ない皮膚疾患は皮膚科への相談が必要と考えます。ただし小児が湿疹を繰り返す場合は食物アレルギーを伴うことも多いため、小児科では皮膚症状とともにアレルギーの診療を行う場合もあります。眼の充血小児科では状態を見て点眼薬の処方など一部可能ですが、専用の医療器具はないため、眼科が適していると言えます。頭を打った頭を打って意識がない、けいれんするといった場合は脳出血の可能性を考えて脳神経外科や救急病院への受診が望まれます。頭を打っても元気で他の症状が乏しい場合は、小児科でも診療可能なことが多いでしょう。小児科で診療した後、必要があれば脳神経外科等に紹介となります。患者さんも医者も「ひとりで抱え込まない」を意識しよう!私は上司から「いい医者を紹介できるのも医者の実力のひとつ」と教わりました。いいお医者さんほど自分で抱え込まず適切なタイミングで専門科に紹介することが得意だと思います。かかりつけの先生と相談したり、この記事を参考にしたりして、皆様が適切な医療に出会えることを願っています。ぱぱしょー先生によるお役立ち動画はこちら!YouTubeのままのてチャンネルでは、専門家の先生による育児に関するお役立ち情報を配信しています。ぱぱしょー先生の動画も好評配信中!チャンネル登録をよろしくお願いたします。パパ小児科医(ぱぱしょー)先生の過去のコラム著者:加納友環(ぱぱしょー)二児(2歳、4歳)の父で小児科専門医。TwitterやInstagramを中心に子育て当事者の立場から、また医療者の立場から子育てに役立つ情報を発信しています。
2020年01月31日こんにちは。助産院ばぶばぶ院長のHISAKOです。今日は、赤ちゃんが風邪などの体調不良のときに迷う「小児科と耳鼻科とどっち?」という疑問について、お話ししたいと思います。 小児科は総合的に診てくれる場所小児科は、子どもの全身状態を総合的に診てくれます。血液検査や点滴もしてもらえます。基本的に風邪はウイルス感染ですが、子どもは風邪を引くと抵抗力が落ちるので、鼻や耳の奥に二次的な細菌感染が起き、中耳炎や副鼻腔炎を併発することがあります。 小児科では、鼻の奥、耳の奥の二次的炎症までは詳しく診ることができません。鼻や耳の奥の膿を外に出してしまえば良くなるのだけど、小児科では「鼻を吸う」「鼓膜切開」などという処置はしてもらえません。 耳鼻科はのどから上の専門科耳鼻科は、のどから上の不具合の診断と治療の専門科です。小児科ではお手上げだった二次的感染は、耳鼻科の得意分野! 鼻を吸ったり、吸入器で鼻の奥にまんべんなく薬を吹き付けたりする処置も可能。中耳炎では、鼓膜切開で中に溜まっている膿を簡単に出してくれます。また、抗生剤も処方してくれます。 ただ、耳鼻科はのどから上の専門ゆえに、気管支や肺など、呼吸器系の病変の診断は不得意です。小児科のように、病気を総合的に判断するのは苦手なんですね。 風邪に抗生物質は効かない?「風邪は“抗生剤”を飲んだらすぐに治る」と思っている人も多く、 風邪をひいたら小児科じゃなく、抗生剤が欲しいから耳鼻科に行く、という話もよく聞きます。 でも実は、いわゆる風邪はウイルス感染症なので抗生剤は効きません。抗生剤は細菌感染にだけ効果があります。耳鼻科で安易に抗生剤を処方され、飲み続けていると、鼻の奥には抗生剤の効かない細菌がどんどん増殖してしまいます。結果、病気をしやすい子になってしまう可能性もあるんですね。 それぞれのメリットを理解しよう小児科は子どもの一生を考えて総合的な判断をするので、タチの悪い細菌感染症でないことを確認したうえで、重篤で細菌感染が起きる可能性が高いもの以外の緊急性の低い風邪に対しては抗生剤に頼りません。なるべく子どもが本来持っている自然治癒力を大切に考えます。 耳鼻科は、細菌感染で起きる中耳炎や副鼻腔炎を治すのが仕事だから、すぐに抗生剤を出してくれるわけだけど、よほどひどい中耳炎や蓄膿でない限り、単なる風邪にともなう中耳炎ぐらいなら、抗生剤を使わず、膿を吸って取り除いてもらうだけで十分だと私は思います。 ウイルス相手の小児科と細菌相手の耳鼻科。それぞれの立場で治療の方法が違います。うまく使い分けて受診することができたらいいですね。 監修者・著者:助産師 助産院ばぶばぶ院長 HISAKO総合病院小児科・産婦人科・NICU病棟勤務を経て、地域での助産師活動・出張専門助産院を開業。2006年には来院ケアも可能な「助産院ばぶばぶ」をオープン。2016年11人目出産し、ママたちに元気と勇気をおすそ分けすべく母乳育児支援や講演活動、書籍出版など多岐にわたって活動中。
2020年01月13日妊娠中がこんなに大変だなんて知らなかった! と驚いたのは私だけではないと思います。こんなに体調が悪くて本当に大丈夫なの? 赤ちゃんは……? そんな不安な妊婦生活中に私が発症した「目まい症」の体験についてお話しします。 私とつわりのファーストコンタクト「うっ」と言ってトイレへ駆け込む主人公。次に登場するときにはうれしそうに微笑みながらおなかの上に手を置く。「できちゃったみたい……」なぁんてシーンを、みなさんも一度はご覧になったことがあるのではないでしょうか。 私がつわりというものを初めて知ったのはドラマの中でした。妊娠すると吐き気を催すらしい、そう漠然と思っていたのです。その体調不良は一時的なもので、まさか数カ月も続くことがあるなんて想像さえしませんでした。 初めての妊娠。私の体どうしちゃったの?気分がすぐれない、これってもしかして……? と妊娠検査薬を使用してみたら、結果は陽性。うれしい気持ちもありつつ、不安のほうが大きかったように思います。そんな私をもっとも苦しめたのが、妊娠17週ごろからの目まい。寝ている間まで目が回ってしまい眠れない……。 ついには洗濯機におなかをぶつけてしまい、これは危ない! と産院に電話したところ、耳鼻科の受診をすすめられました。目まいが耳鼻科で診察してもらえると知らなかった私は、半信半疑で受診してみたところ「目まい症」と診断されました。このとき、妊娠21週でした。 「目まい症」の診察と治療法診察ではベッドで横になり、目の動きを診ていました。キョトキョトと目が動いてしまうのが特徴ということで、その様子を私も見せてもらうと、素人から見ても黒目が細かく動いているのがわかりました。これでは目が回るはずです。妊娠中ということもあり治療方法が気になるところですが、私の場合、薬はなし。教えていただいた簡単なストレッチをするだけで、症状がとても軽くなったのには驚きました。 ストレッチは、布団の上で座った状態から体を横に倒し、起き上がり、また反対側に体を倒すという「おきあがりこぼし」のような動きをするだけ。妊娠中でも可能な簡単なものでした。 目まいは妊娠中のマイナートラブルの1つだそうです。私もつわりの吐き気で目まいがするんだと思い込んでしまい、受診するのが遅くなってしまいました。どうしても目が回る……という症状がある場合は、耳鼻科に相談すると解決するかもしれません。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 著者:田丸あかね現在、小学校1年生と幼稚園年中の兄弟を子育て中。性格の違う子どもたちの成長を楽しみつつ、自身の体験をもとに、妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆している。
2020年01月06日こんにちは、東京衛生病院小児科の保田典子です。私生活では7歳、5歳、3歳の子育て中です。1カ月健診のときによく出る質問のひとつが、赤ちゃんの目やにについてです。 赤ちゃんの目やには自然に治るものから、眼科で診てもらった方が良いものまでさまざま。新生児のときは、あまり気楽に外出もできないので、悩みますよね。今回は、目やにが出る原因、普段のケア、受診の目安についてお話ししたいと思います。 どうして「目やに」が出るの?目は、乾かないように涙で守られている臓器です。涙は目の上の方にある涙腺で作られて、目を潤したら、目頭にある涙点という小さい穴に吸い込まれ、鼻涙管(びるいかん)という管を通って鼻に流れていきます。この循環がうまくいっていると目やにはほとんど出ないのですが、どこかが停滞したり、何かしらの原因があると目やにが出ます。赤ちゃんは、いろいろなところのつくりがまだ小さいので、鼻涙管も細いです。ちょっとしたことで鼻涙管が塞がりやすく、目やにが出やすいのです。また、結膜炎など炎症が起きると、目やにがたくさん作られるため、鼻涙管を通って処理しきれずに、目やにが出ることになります。 普段のケア目やにがない、もしくは少ないようであれば、特にケアは必要ありません。お風呂のときなどに涙点がある場所を少しチェックしてみましょう。涙点の周りにちょっと目やにがついているだけで、栓のようになってしまい、目やにの原因になることがあります。お風呂の洗顔時に、目やにが残らないように目頭をガーゼなどでやさしく拭いてあげるようにしましょう。鼻涙管は鼻に抜ける管なので、鼻側で流れづらくなっても、目やにの原因になります。鼻涙管の鼻側で詰まる原因の第一は「鼻水」です。鼻水が多くて詰まりがちのときは、目やにを出さないためにも鼻水を吸ってあげてくださいね。(参照⇒親ができる鼻水ケアのやり方) 目やにが増えたら?目やにが増えたなと思ったら、まず、目が赤くないか、目の周りも赤かったり、腫れているところがないかチェックしましょう。目が赤い、目が腫れているなどあれば、眼科に受診を考慮した方が良いでしょう。 目が赤い等なければ、まずは、「鼻涙管マッサージ」を試してみましょう。【鼻涙管マッサージのやり方】目頭から鼻に抜ける場所をやさしくマッサージします。赤ちゃんの肌はすぐ赤くなってしまうので押さえるくらいでOK。グリグリしないように) 受診のタイミングは?1. 目やにが少し出るくらいなら慌てなくていいことが多いです2. 目が赤い、腫れている場合は眼科を受診しましょう3. 目が開かないくらいの目やにが出る場合も受診しましょう 家でできるケアと受診の目安を知っておいて、大事な赤ちゃんの目を守りましょう。 著者:医師 医療法人アドベンチスト会東京衛生病院 小児科医師 保田典子 先生医療法人アドベンチスト会東京衛生病院小児科医師。株式会社メドイース代表取締役。2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。Twitter:@kanoppeInstagram:@atama4970_yasuda
2019年12月26日こんにちは、東京衛生病院小児科の保田典子です。私生活では7歳、5歳、3歳の子育て中です。生後半年をこえてくると、赤ちゃんはママの免疫がなくなり風邪をひきやすくなります。うちの3人の子どもたちも、たくさん風邪をひいてきました。でも、ほとんど“風邪薬”を飲んだことはありません。その理由を今回はお伝えします。 “風邪の薬”はない病院に行くともらう風邪薬。風邪薬は”風邪を治すもの”ではありません。風邪による鼻水を出しやすくしたり、咳を少し緩和したりする薬です。風邪の症状を無理やり押さえつけているだけなので、結局は子どもの免疫で風邪のウイルスをやっつけて、症状を良くしていくしかありません。 風邪薬に劇的な効果はない【風邪薬に主に含まれているもの】咳止め:チペピジン、デキストロメトルファン痰切り:カルボシステイン、アンブロキソール鼻水止め:抗ヒスタミン薬(たくさんの種類があります) 2004年にアメリカのピッツバーグで行われた研究によると、咳止めのデキストロメトルファンとプラセボ(偽薬)では、子どもの夜の咳への効果は変わらなかったという結果が出ています。痰切りのカルボシステインは、発症後4〜7日くらいの痰に、いくらか効果があるとされています。(※1)抗ヒスタミン薬に関しても、先ほどのピッツバーグの研究では、プラセボと比較して咳止め効果はありませんでした。2010年のイランの研究でも、抗ヒスタミン薬はプラセボよりは少し効果があるが、ハチミツよりも効果が劣るという結果が出ている研究もあります(※2)。どちらにせよ、劇的な効果はないようです。 副作用にも注意が必要ですまた、副作用にも注意しなくてはいけません。今でも外来で普通に大量に処方され、市販のお薬にも入っているチペピジンやカルボシステインでも、副作用の報告があります。抗ヒスタミン薬は、昔から熱性痙攣を誘発する可能性があると言われており(※3)、抗ヒスタミン薬が熱性痙攣の持続時間を長くすることが研究で言われています(※4)。 なので、薬を使うときは「眠れない、咳が止まらないなどで生活に支障が出るときに、つらい症状を緩和してくれるもの」と考えましょう。 市販の薬をオススメしないワケ市販のかぜ薬は昔から成分が変わっていないものが多く、抗ヒスタミン薬が入っているものが多いです。抗ヒスタミン薬のなかには小児では禁忌(使ってはいけない)と言われている薬もあり、安易に使っていいものではないので、きちんと病院で診察してもらい、処方された薬を使うようにしましょう。 抗ヒスタミン薬はアレルギーの時によく使う薬です。アレルギー性の鼻炎などにはよく効きますが、風邪の鼻水には効きにくいため、少し鼻水がでているくらいなら、薬を使うのではなく、鼻水吸引器などでまめに吸い取ってあげるといいと思います。一概に「抗ヒスタミン薬は悪」とするのではなく、必要な時に適切なお薬を使いましょう。 風邪をうまく乗りきるために2003年のLancetに出た研究によると(※5)、6歳未満の子どもは平均して年6-8回風邪になり、1回の風邪が完治するのに2週間かかると言われています。1年でかなりの期間、風邪症状があると言えます。子どもが風邪をひいて苦しそうにしていると、ママたちは早く治してあげたいと思うでしょうが、本来、風邪は子ども自身の免疫で治るものです。副作用のない薬はほとんどありませんし、内服しなくていいものは、内服せず済んだら嬉しいですよね。風邪薬を必要のないものと決めつけるのではなくうまく利用して、お子さんが風邪をひきやすいこれからの時期を乗り切ってもらえたらと思います。 (※1)コクランシステマチックレビューに基づく(※2-※5)国立生物工学情報センター 著者:医師 医療法人アドベンチスト会東京衛生病院 小児科医師 保田典子 先生医療法人アドベンチスト会東京衛生病院小児科医師。株式会社メドイース代表取締役。2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。Twitter:@kanoppeInstagram:@atama4970_yasuda
2019年10月29日子どもの才能と個性を伸ばす育て方とは?パパ小児科医の加納友環(ぱぱしょー)先生に、「子どものしつけ」についてお話を伺いしました。叱り方の工夫は…?危険な行動については叱りましょう。落ち着いたときに改めて理由を説明しましょう。育児で大切にしていることは…?否定をしないで、まず子どもにいろいろなことをさせてみることが大切です。子どもの才能と個性を伸ばすには…?子どもの自己肯定感を養うこと、そして決めつけないことが大切です。ほかにも、ぱぱしょー先生の育児エピソードをお伺いしました。ぜひ動画をチェックしてみてくださいね。動画目次0:41叱り方の工夫について1:50おすすめの褒め方について3:06ぱぱしょー先生が育児で大切にしてること5:06ぱぱが娘の育児をするときに気をつけてることってある?5:49子どもの才能と個性を伸ばす育て方字幕付きのため、音声なしでもお楽しみいただけます♪加納友環(ぱぱしょー)二児(2歳、4歳)の父で小児科専門医。TwitterやInstagramを中心に子育て当事者の立場から、また医療者の立場から子育てに役立つ情報を発信しています。子育てに役立つ情報が盛りだくさん!ままのてのYouTubeチャンネルでは、ママ・プレママの素朴な疑問やリアルな悩みを解決します。ぱぱしょー先生の育児と家事について先生が育児のときに注意していること、また先生おすすめの育児グッズについて紹介してくださっています。後悔しない子育てのコツは?先生が子育てで実際にやっておけばよかったこと、また先生からパパへのメッセージなどを紹介しています。子どもを上手に寝かしつける方法は?子どもの睡眠の大切さや、なかなか寝ない子どもを上手に寝かしつける方法について、ぱぱしょー先生が実演しながら解説してくださっています!子どもの予防接種で保護者が注意すべきことは?子どもの予防接種のスケジュールの立て方や、予防接種をするときの過ごし方などを、具体的に説明しています。秋に気をつけたい食中毒!秋のお弁当で食中毒にならないために注意したいポイント、また食中毒の予防法について解説しています。動画は絶賛更新中!ぜひチャンネル登録してみてくださいね。
2019年10月09日受診メモとは?皆さんは診察室で医師と話をしているとき、緊張して言いたいことを伝えられなかったり、診察室から出たあとに「あ!あれ言い忘れた!」と思い出したりすることはありませんか。これは私自身にもあることで、医師を目の前にすると緊張してうまくしゃべれなくなることは同業の医師でもありえることなのです。医師でない場合はなおさらでしょう。そこで役立つのが「受診メモ」です。たとえばこんなものです。(事例は仮想のものです。赤文字は記載するときのポイントです。)時間を追って情報を整理することで、どういう状態なのか、何に困ってるのかが伝わりやすくなります。受診メモの詳しい書き方については、後ほど解説します。受診メモがあると診察・診断がスムーズに自分で症状を説明できない子どもにとっては、保護者からの情報が診察のカギを握っています。情報が整理されているとスムーズな診断につながりますよ。診察がスムーズになると、たくさんの患者さんが来る病院では待ち時間の軽減にもつながり、各方面に良い影響をおよぼします。先ほどの受診メモのサンプルはかなりまとまったものになっていますが、実際にはここまでまとまっていなくても大丈夫です。おおまかなことがわかれば、医師は質問をしながら情報をおぎなっていきます。また、受診メモを書くことで客観的に病状を把握することもできます。過去の記事で、子どもがしばしば入院することを書きました。メモを使うと、入院が必要となるほどの状態なのかも把握しやすくなります。受診メモの書き方子どもが体調を崩したら、まずは発熱や咳、下痢などのメモの素材となる情報を書き留めていってください。何度か書くうちにだんだんと整理できるようになっていきますので、まずは書き始めてみましょう。メモのコツは以下の通りです。症状以外にも普段と違う変化がある場合は、忘れずに記載しましょう。受診メモのコツ・時間を追って、時系列に書くことを基本とする・母乳・ミルクを飲んでいる場合は、いつもに比べて飲めているかが重要・水分がとれているか、尿が出ているかが脱水の判断に重要・発熱の経過は変化があったときに記載すれば良い。(1日数回程度で十分です。)細かく記載しなくてOK。・下痢や嘔吐があれば1日のおよその回数を記載する・他の病院を受診した場合は、検査の結果やそこでの診断、お薬の情報を記載する。・保育園や幼稚園で流行している病気があれば、記載する。・質問したいことや注意点(お薬のアレルギーなど)を記載しておく受診メモはメモ帳でも良いですし、スマホの受診メモ専用アプリを利用しても構いません。小児科で配られることがある受診ノートなどでも良いでしょう。体調不良があれば、病院を受診する・しないにかかわらず、簡単にメモを残す習慣をつけていくと良いですね。受診メモをつける際は、LINEを使う方法もあります。グループLINEを作って、熱や症状を記録していくのです。自動的に日付や時間が記録されますし、スマホで撮影した発疹や便の状態を記録するのにも便利です。受診メモは夫婦間の共有にも役立つ受診メモは、夫婦間や祖父母との共有にも役立ちます。一般的に子どもの状態を一番把握しているのはママというケースが多いですが、いつでもママが小児科に連れていけるわけではありません。小児科医からみると、ママ以外の人が付き添いの場合、情報量が少なくて困ることがあります。これらの受診メモをパパや祖父母と共有して皆が子どもの病状を把握すると、より良いホームケア、病院での診断治療につながると思います。また、救急受診した場合など複数の医師にみてもらうこともあると思います。他の医師がどのような診療をして今に至ったのか、それを共有することも診断治療にとても重要です。書いたメモは診察室で直接医師にわたすよりは、可能であれば受付の段階で先に渡しておくほうが良いでしょう。複数の人が見ることで情報の共有漏れも予防できますし、緊急に処置が必要な状態や、隔離が必要な状態などを把握してもらいやすくなります。受診メモを活用して診察に備えよう子どもを病院に連れて行くまではあんなに聞きたいことがあったのに、医師に伝えたいことを伝えることができず、モヤモヤとしたまま診察を終えることがあるかと思います。せっかく受診しているのですから、ぜひ受診メモを活用して、スッキリと疑問を解消して帰ってくださいね。パパ小児科医(ぱぱしょー)先生の過去のコラム著者:加納友環(ぱぱしょー)二児(2歳、4歳)の父で小児科専門医。TwitterやInstagramを中心に子育て当事者の立場から、また医療者の立場から子育てに役立つ情報を発信しています。ぱぱしょー先生の出演する動画はこちらYouTubeのままのてチャンネルでは、専門家の先生による育児に関するお役立ち情報を配信しています。ぱぱしょー先生の動画も好評配信中!チャンネル登録をよろしくお願いいたします。
2019年09月04日東京衛生病院小児科の保田典子です。私生活では7歳5歳3歳の子育て中です。夏も本番、本格的な暑さが続いていますね。今でも十分多くいますが、8月後半になるともっと増えてくる「蚊」。子どもは蚊に刺されやすいので、憂うつな季節ですよね。今回は赤ちゃんと虫よけについて解説したいと思います。 虫よけの種類を知りましょう虫よけには大きく分けて3種類あります。 1. ディートディートは昔から使われている虫よけです。蚊が嫌がる成分で、塗ったところに蚊がとまれないので刺すことができません。塗っていないところには蚊がとまれちゃうので、まんべんなく塗るとより高い虫よけ効果が得られます。神経毒性があるため、使うことを躊躇される方も多いですが、昔からさまざまな毒性の研究がされていて、決められた使用法を守れば安全に使えると私は考えています。ディートは生後6カ月未満の赤ちゃんには使用できず、生後6カ月以上でも使用量に気をつけなければいけません。 2. イカリジンイカリジンはここ数年前から日本で使われるようになった虫よけです。新しいイメージですが、ドイツでは20年ほど前から使われています。ディートは虫よけとしてかなり万能な効果がありますが、イカリジンは効果がある虫の種類がディートより少ないですが、イガリジンは使用制限がなく、ディートと同様の効果が得られると研究結果が出ています。 3. ハーブハーブ系の薬は虫が嫌がる匂いのハーブをいくつか組みわせて作ってあります。商品によってハーブの組み合わせが違うので、好きな香りのものを選んで使うというのも良いでしょう。「虫が嫌いな匂い」というものなので、使ったら確実、というほどではないと思っていてください。 赤ちゃんに虫よけを使うときはディートは生後6カ月未満の赤ちゃんには使えませんが、ハーブだからといって赤ちゃんに安全というわけではありません。私はアロマテラピーアドバイザーの資格を取ったことがあるのですが、生後6カ月未満の赤ちゃんはアロマも大人と違う濃度で使用します。イカリジンは生後6カ月未満でも使用可能です。 たとえば、ベビーカーで外出するときは蚊よけカバーをつけたりするなど物理的に防御したり、服の上に虫よけを使うなど工夫しましょう。 また、赤ちゃんに限らず、虫よけはスプレータイプよりもミストタイプがおすすめです。スプレーは口から吸入してしまいやすいので、喘息のある子などは特に避けたほうが良いでしょう。 蚊に刺されると怖いのは"感染症"蚊に刺されることで心配なのは、デング熱や日本脳炎などの感染症になること。デング熱は今のところほとんどが輸入感染症(海外から病原体が持ち込まれる感染症)で、日本脳炎はブタから蚊を介して感染する病気です。どちらも日本で今流行している訳ではないので、過度な心配は無用です。 シーンに合わせた使用方法で、安心の蚊対策を!わが家では、保育園の行き帰りなどはハーブの虫よけを手軽にシュシュッと使っています。週末のお出かけでは自然に触れ合うことが多いこともあり、ディート10-12%の濃度のものを使っています。 虫刺されの薬は、虫刺されを治すものではなく、かゆみを抑えたりするものなので、かゆみが強くなければ基本的には使わなくていいと思っています。子どもたちが薬を塗りたがるときは、かゆみが強そうであれば虫刺されの薬を、そうでないところ(もうそこはずっと前に刺されたやつでしょ、みたいなところ)には保湿剤を塗ってあげています(笑)。虫刺されの薬は市販のもので十分ですよ。 著者:医師 医療法人アドベンチスト会東京衛生病院 小児科医師 保田典子 先生医療法人アドベンチスト会東京衛生病院小児科医師。株式会社メドイース代表取締役。2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。
2019年08月26日【徹底解説】上手な寝かしつけ方はあるの?入眠の儀式って?SNSで大人気のぱぱしょー先生(加納友環先生)に、「子どもの睡眠」についてお話を伺いしました。睡眠時間が足りないとどうなる…?心と身体の成長に影響が出ることがあります。子どもにスムーズに寝てもらうには…?入眠儀式があると寝に入りやすいかもしれませんね。寝る前の環境づくりで大人ができることは…?刺激を与えない、ブルーライトをみせないようにする。ほかにも、3歳と5歳のパパである先生が実際に行っている寝かしつけ方などについてもインタビューしています。詳しくは動画をチェックしてみてくださいね。動画目次0:49 子どもの睡眠はどうして必要なの?1:55 子どもの年齢で寝るべき時間は変わる?3:07 ぱぱしょー先生が実際に行う「寝かしつける工夫」4:19 子どもの睡眠のためにママができること5:18 睡眠環境についてのアドバイス字幕付きのため、音声なしでもお楽しみいただけます♪次回のぱぱしょー先生の動画は「トイレトレーニング編」を公開予定です。(毎週月曜日更新)お楽しみに…!子育てに役立つ動画が盛りだくさん!子育てに役立つ情報が盛りだくさん!ままのてのYouTubeチャンネルでは、ママ・プレママの素朴な疑問やリアルな悩みを解決します。運動が知能の育成に効果あり?!子どもの叱り方のコツは?家計簿をつけている人は何%?!話題のキャッシュレス決済ってどうなの?FPおすすめのクレカは?貯金ができる人ってどんな人?頭の良い子どもの育て方動画は絶賛更新中!ぜひチャンネル登録してみてくださいね。著者:加納友環(ぱぱしょー)二児(3歳、5歳)の父で小児科専門医。TwitterやInstagramを中心に子育て当事者の立場から、また医療者の立場から子育てに役立つ情報を発信しています。ぱぱしょー先生のコラム子どもの睡眠に関する記事
2019年08月26日東京衛生病院小児科の保田典子です。診療では、風邪などの一般診療に加え、循環器の病気や漢方治療、発達の相談などをしています。ママやパパたちが安心してお子さんのケアができるような診療を心がけています。 私生活では7歳5歳3歳の子育て中で、毎日ドタバタな生活をしています。これからベビーカレンダーでコラムを書かせていただくことになりました。よろしくお願いします! まず初めにお話ししたいこと。それは、「小児科医は安心できる子育てに必要な”サービス”のひとつ」だということです。 初めてのお子さんであれば、育児は誰でも初めてです。初めての経験は、誰でもすぐうまくいくとは限りません。さまざまなツールやサービスをうまく使って、育児を乗り切ってもらえたらと思います。 わたしは、安心できる育児に大事なサービスのひとつ、「小児科医」をうまく利用していただきたいなと思っています。 小児科は病気の時だけじゃない病院というと「病気を治すところ」ですが、小児科の役割はそれだけではありません。乳幼児健診なども行っていて、「赤ちゃんの健やかな成長を見守り、支える」役目もになっています。 そのため、多くの小児科医は「子育てで悩むパパママの助けをしたい」と思っています。 夜泣き、離乳食、疳の虫、イヤイヤ期… 「小児科で相談すること?」と思えることが、意外に小児科で解決することもあるので、予防接種のついでや風邪の診療のついででも、子育ての悩みをちらっと相談してみるのもいいと思います! どんな小児科医がオススメ?初めてのママパパにオススメなのは、「とにかく話を聞いていて、信頼できると思える先生」がいいと思います。 でも、それってすごく曖昧…クリニックの外観を見ても良く分からないし。 とりあえず、ぱっと探せる指標としては ●小児科専門医であること●行きやすい場所であること●(新しい古いではなく)ぱっと見て清潔感があること●ある程度ホームページがしっかりしていること が分かりやすい指標でしょうか。 そんなクリニックを探して一度受診してみて、子育ての疑問なども質問してみて「いいな」と思ったらそこに通った方がいいと思います。 とはいえ、小児科専門医であるというのは1つの指標にすぎません。 実はわたしの場合、今の場所に引っ越してきて、近所の人におすすめされてかかりつけにしている先生は小児科専門医ではありません。 上記の指標のほかにも、しばらく通って「信頼できる先生だと思えたこと」「小児の患者さんが多く経験豊富であること」がわかったので、そのまま通っています。何より、月曜日~土曜日毎日やっているので、他にかかる必要がないのも気に入ってます。 小児科受診。ここは気をつけて!時々来られる患者さんで「3つ病院にかかったけど、良くならなかったので、うちに来ました」という方がいます。 でも、個人的には何度も病院を変えるのはオススメしません。特に小児はどこにいっても出すお薬はそんなに変わりません。そして、経過をみてこそ、分かることがたくさんあります。 「後医は名医」という言葉があり、後で診た医師の方が経過が長い分、事前に治療をされて効果判定ができる分、正確な診断ができます。 そもそも、初診での正診率(正確に診断できる)は15%とも言われています。 なので、この前なかなか治らなかった風邪が、このお医者さんに行ったら治ったから名医!という訳ではないのです。 合うお医者さんは人それぞれ口コミで「良い」と言われている先生でも、「自分には合わないな…」と思うこともあると思います。ママやパパの性格も人それぞれですし、小児科医の先生もそれぞれだからです。 私みたいに、「ママパパたちをとにかく支えたい」と思っている医師もいれば、「とにかく病気をきっちり治すことだけを大事にしたい」と思っている医師もいます。 ぜひ、1つだけでも「自分が行くと安心できる小児科医」をつくってみてください。これからの子育てライフ、心がグッと軽くなると思います。 著者:医師 医療法人アドベンチスト会東京衛生病院 小児科医師 保田典子医療法人アドベンチスト会東京衛生病院小児科医師。株式会社メドイース代表取締役。2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。 経歴2003年筑波大学医学専門学群卒業大阪市立総合医療センター小児循環器内科研究医国立国際医療センター小児科臨床研修指導医東京女子医科大学大学院2014年より東京衛生病院勤務2019年株式会社メドイース創業 専門領域小児科専門医子どもの心相談医所属学会日本小児科学会日本小児循環器学会日本小児科医会日本周産期新生児学会ブログ忙しくても健康と発達を伸ばす子育て
2019年06月20日コマーシャルとちょっとした宣言このたび、金子書房から新刊が出ます。タイトルは『ADHDとともに生きる人たちへ〜医療からみた「生きづらさ」と支援〜』です。これは、2017、18年の2回にわたり開催した研修会の講演内容を文字化し、大幅に加筆修正したものです。精神科医になった1983年に、僕は診療録に書いた内容を先輩医師のまえで報告する時がありました。報告後、「キミは、書いたものよりも、口頭のほうが、伝わりやすいね」と言われました。果たして本書がそうなっているか、内容について関心があれば、読んでいただければ幸いです。ADHDに関しては、実は、もう一つ、2001年に刊行した、星和書店の『ADHDの明日に向かって』を、ここ1、2年の間に大幅に修正するか、新たに書き下ろさないといけないと思っています。あのままでは置いておけないと思っているのです。僕は、発達障害のなかでも、縁あって特にADHDに関心を抱き続け、ここまで来ました。でも、正直、ADHDに関しては、今でも2001年のあの本を超えたものが書けていないように思っています。これは、悔しいというか、恥ずかしいというか、このままではいけないと思っています。ただ、今の課題は、日々の臨床のなかで、その作業時間がつくれるかどうかです。でもこうして宣言しておくと、これからとぼけることが出来なくなります。これは覚悟です。さて、話は変わって。発達ナビからは、「日々の臨床で感じていること、考えていることを書いてみて」と依頼されました。でも、日々の臨床で感じ続けていることは、いつも己の力不足であり、学習不足と自責の念です。そこで、過去と現在と未来について考えてみました。過去のこと――院外での出会いも。発達障害のある子どもたちと社会との架け橋役に出典 : 僕は1983年に精神科医になり、故郷を離れて北海道に来ました。初期研修を終えて、医師になって10年を目前にしたとき、僕は児童精神科医を目指し、児童部門のある精神病院に就職し、数年後に児童部門を背負いました。当時は不登校から(軽度)発達障害と児童虐待問題へと大きく展開した時期でもありました。僕は北大や札幌医大、旭川医大の卒業生でもなく、本州からの流れ者医者です。どこにいっても常に一人で、どことも本当は決して馴染まない存在という異邦人的な感覚を持ち続けていました。もちろん、これは僕の単なるコンプレックスなのですが、こうした僕にある心許なさが、僕が出会いたいと切望していた子どもたちと、どこか重なる部分があったのかもしれません。ほかの誰の味方でもなく、キミの味方になりたい、という僕の思いは、僕自身を支える僕の気持ちでもあったのでしょう。児童部門を背負ってからは、児童相談所の嘱託医となり、子どもだけでなく家族全体を生活の視点で診ることを学び、福祉、教育分野の仲間たちが出来たことで、虐待防止活動や、家族と子どもたちと専門家が一蓮托生の思いで集う会を結成しました。「専門家の話だけでなく、同じ思いの親と出会いたい、親と話をしたい。教育、福祉の方々とも対等に話を、正直な思いを聞きたい」という切実な思いから結成した「十勝ADHD&LD懇話会」は、昨年結成30年目にその活動にピリオドを打ちました。僕自身は、こうした院外活動を通して、診察室のなかで、なかなか広がらない話から、たくさんの窓が開き、多くの方々と出会うことになりました。僕は、白衣を脱いで地域、現場に足を運ぶことで、異邦人的な感覚が薄まり、子どもたちや家族が躊躇している社会への接点への橋渡し役をすることが出来るようになりました。昨年「十勝ADHD&LD懇話会」の幕を閉じるとき、僕は懇話会の合い言葉でもあった“Children First”という言葉が、今も僕たちの心を支えていたことに気づきました。この哲学は、今、目の前の方々を大切に、という思いへと繋がっていきます。僕たちが向き合い、大切にしてきたのは、「発達障害」ではなく、一人一人の子どもが、親が、そして僕たちが、どうしたら日常をより豊かに生きられるか、という生き甲斐探しのようなものだったのかもしれません。現在のこと――クリニックで患者さんと向き合う毎日出典 : 僕の最初の10年は一般精神科医の時代で、次の10年は児童精神科医と研究機関と大学で教育と医療の境界線上に立ちました。2013年が30年目の節目でしたが、僕はすこしばかり早く大学の職を辞し、2012年からクリニックで日々、受診される方々と向き合い続けています。クリニックでは朝の9時前から夜の8時前後まで休みない診察が続きます。先日、思い立って患者状況を分析しました。それによると、この3月で登録患者数が1300名を超えました。男性は56%とわずかに多く、年齢的には、初診時18歳以下が65%を占め、2.2対1で男性優位ですが、19歳以上では35%、男女比は1対2で女性優位となります。初診時診断は、発達障害圏が70%で、いわゆる精神病圏は5%とかなり少ないのです。発達障害圏での主診断は、自閉スペクトラム症が68%と圧倒的に多く、2位のADHDが13%です。僕は発達障害圏にいわゆる第四の発達障害と称される発達性トラウマ障害を加えていて、それが3位で9%程度です。最近話題になっている「大人の発達障害」ですが、僕のクリニックでは、19歳以上で発達障害圏の方が19.4%を占めていました。また、きょうだい、親子、家族の受診者が全体の10%強を占め、さらに離婚問題を抱えていたり、DVや虐待事例も外来で対応しています。こうした特異な医療を7年も続けてこられたのは、ひとえにすべてのスタッフがクリニックの「治療的空間」を形成してくれているおかげです。クリニックは、僕以上にスタッフ各自が持つ、ホスピタリティに大きく依存していると言って良いかと思います。それでも僕の外来医療を後方で支えているのが、週1、2回外勤している精神科病院となります。そこには、道内の児童相談所の一時保護委託をはじめ、児童相談所からの紹介で診る子どもたちも含まれます。僕が外勤している精神科病院には児童病棟はありません。入院中に子どもの教育の保障ができません。それでも苦渋の選択のなか、1ヶ月以内の短期入院を30%程度で維持しつつ、全体の50%以上を3ヶ月以内の入院でしのぎ、支援しています。未来のこと――複合的な要因を紐解き、発達障害・被虐待児をいかに支援していくか出典 : 僕はいつも、やりたい仕事よりも、求められている仕事に追い立てられています。子どもの精神科医としてスタートした頃は、はじめは学校に行きにくい、行きたくない、行きたいのに行けない子どもたちと出会っていました。それはそれでとても有意義な時間を過ごせたと思います。しかし、すぐに診察室は発達障害が疑われる子どもたちと、その子との関わりに困り果て疲れ切っている親との出会いの場となりました。僕は子どもたちの成長を信じ、親や家族、関係者を労い励まし、勇気づける役割を担うことを目指しました。臨床を離れ大学での研究時代には、虐待が避けられない事態となり、自然、社会的養護の子どもたちと出会いはじめ、これまで以上に児童相談所等と連携する仕事が増え、再び臨床に戻りました。発達障害の多様さを知らなかった時代、僕はその視点で子どもたちを診ることができませんでした。マルトリートメント(※)のなかで育った方々の、人への不信感とそれでも人を求め続ける姿を知ってから、発達の躓きはマルトリートメントの結果となる場合もあり、発達障害が沢山の誘因の一つとしてマルトリートメントを生じさせる場合もあることを学びました。そして最近では、マルトリートメントしてしまう親自身が、子ども時代にマルトリートメントを受けてきた、あるいは生活のなかで深い心の傷を負っていたということにも気がつくようになりました。これからの外来・入院診療では、発達障害とマルトリートメントが重なりあっている病態への対応が急がれます。個人的には、その複雑な病態の評価と支援を構築する力をつけていきたいと思います。※虐待をはじめとする、不適切な養育のこと。今後も終わりのない学びを続けていく自己研鑽が、僕には必要です。同時に、これまで関わってきたなかで学んだことに普遍的なこともあります。それは、出会う方々は皆、これまで生きてきたことをきちんと周囲に理解してほしいという思いがあるということです。評価してもらいたいわけではない。ただ、振り返ると、いつも一生懸命に生きていた自分がいたことを、自身以外の誰かに知っておいてほしいという思いがあることです。だから僕は、教えていただいた話を評価するのではなく、ただただ、聴けたことに、話をしてくれたことに感謝します。もちろん話の中身は壮絶です。それでも教えてくれたことに心から感謝しています。先日もある方が語られたあとに「私は、大変でしたねっていってほしくて話をしたのではなくて、ただ、知ってほしかったのだろうと思います」と言われました。僕が信じる精神科臨床とは、その方の生い立ちと生活環境、家族との関係性のなかでの成長変化と、個々にあるその人らしさという個性あるいは特性を、評価し続け、その方の心身を整え、生活の質を高めるよう、共に相談をしていく有り様です。そしてそれは常に「個別の物語」から成り立ちます。わが子の育ちを通して、自分自身の子ども時代に思いを馳せ、親としての自身の思いから自身の親の思いを推察するとき、それまで抱えてきた自身の親への思いが変化する、あるいは、ずっと蓋をしてきた過去がよみがえる、そんなとき、僕は、親に対して、あなたが主人公としてクリニックを受診をしてみたらどうでしょうかと伝えます。そこに新たな個別の物語が始まります。そうして家族個々のカルテが増えていく…。「きょうだい」ではなくキミ、「父」ではなくあなた、個々の物語には個々の過去と未来があります。そうして診察室は、スピンオフの物語で埋もれていきます。そこで僕は気づきます。この社会で、だれもひとりぼっちではなかったと。マーガレット・ラスティンが『発達障害・被虐待児のこころの世界精神分析による包括的理解』(岩崎学術出版)で「子どもの精神病状態の本質を理解することは計り知れない困難があり、その複合的な原因は理解され始めたばかりである」と述べたように、僕の目指す児童と家族の精神科医療も、ようやくスタートラインに立ったばかりです。僕は、もう少しワクワクしながら、未来に目を向けていきたいと思います。精神科医になって35年が過ぎ、僕はもう少し、歩みを止めず進んでいきたいと思っています。だから、一緒に未来を見続ける仲間がほしいと、切実に思います。誰か、誰でもいい、このクリニックでワクワクした仕事を僕と一緒にやりませんか。
2019年05月30日赤ちゃんの耳や鼻は大人にくらべると、とても小さいですよね。子育て中の私も、最初はどうやってケアしたらいいのかわかりませんでした。そんななか、息子が1歳のときに中耳炎を発症。そのときの体験談と耳と鼻のケアについてご紹介します。 1歳のときに中耳炎を発症当時、1歳の息子は風邪が1週間以上長引いていました。突然しきりに耳をさわり、激しく泣き始めました。普段の様子と違うと感じたため、耳鼻科を受診したところ、「急性中耳炎」と診断されました。 処方されたお薬を飲み、およそ1週間程度でよくなったことを覚えています。中耳炎を発症したことを機に、医師から赤ちゃんの耳と鼻のケアや注意したい症状について教わりました。 耳のケアは週に1回程度に医師に聞いた耳のケアは、週に1回、赤ちゃん用綿棒で耳の入り口付近を軽く拭く程度にするというものです。ケアしすぎるとかえって耳垢を奥に押し込んでしまうので要注意とのこと。 不機嫌な状態が続く、耳を痛がるなど、いつもと違った様子が見られる場合は、受診してほしいそうです。また、家庭では気付かない耳トラブルが潜んでいることもあります。耳鼻科を受診したことがない場合は、一度診てもらうと安心かもしれませんね。 鼻くそは無理にとらない気になる症状がなければ、とくに鼻のケアは必要ないとのことで、わが家でもほとんどしていません。入り口付近にある鼻くそは拭き取りますが、無理に取らないようにしています。 また、風邪をひいてサラッとした鼻水が出るときは、ティッシュでやさしく拭く程度です。鼻水が詰まって苦しそうであれば、吸引器を使って対処していました。ただ粘り気のあるドロッとした鼻水が出る、呼吸が苦しそうなどの症状がある場合は、早めの受診を心がけていました。 耳の付け根に垢がたまっていることも医師に指摘され、お湯で濡らしたタオルできれいに拭き取りました。教えてもらうことで、わかることがたくさんあります。少しでも気になることがあれば、専門医に相談すると安心できますね。著者:田中由惟一男一女の母。二人目の出産を機に食品会社を退職。現在は子育てのかたわら、記事執筆をおこなう。趣味はスポーツとピアノ、美味しいものを食べること。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
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