読者1000人のキレイの秘密は?学研パブリッシングが発行する「フィッテ」にて、読者1000人がジャンルごとに選んだ『「流行ダイエット大賞」ランキング』が掲載されている。このランキングは、読者がダイエットや健康のために「使ってよかった商品」と「今後使ってみたい商品」調査。フードやグッズなど、細かくジャンル分けしてランキングにした。アイスにスムージー、ダイエット中もおいしく食べたい!使ってよかった『ごはん・穀類部門』で1位に輝いたのは、食物繊維が豊富なはくばくの【もち麦シリーズ】。ごはんを見直すことで、食生活をチェンジした人も多かったようだ。ダイエットの天敵、だけどどうしても食べたくなってしまう『アイス・プリン・ゼリー部門』は、江崎グリコの【カロリーコントロールアイス】がトップに。1カップ80kcalという低カロリーの秘密は、豆腐を使っていること。スイーツの誘惑には、こんなアイスで立ち向かおう。また「使ってみたい編」では、美容ドリンク部門で【食べる前のうるる酢】、即席食品部門で【「冷え知らず」さんの生姜シリーズ】などが1位に。美に対する女性の探究心は、まだまだ終わらないようだ。殿堂入りは、みんな知ってる3商品このランキングでは、3年連続で3位以内にランクインした商品を「殿堂入り」として認定している。今年は、カロリー90%オフでまろやかな甘みが人気の【パルスイート】(カロリーコントロール部門)、ビタミンCをはじめとしたビタミン群がおいしく摂れる【オロナミンCドリンク】(栄養ドリンク部門)、食事の前に飲むサプリ【カロリミット】(ダイエット系サプリ・医薬品部門)の3商品が殿堂入りした。(画像はプレスリリースより)【参考】・株式会社 学研パブリッシングプレスリリース(PR TIMES)・フィッテキレイになれるもの決定版
2015年05月18日今がチャンスの半額セール学研グループの株式会社ブックビヨンドは、美と健康関連本などの電子書籍を半額で販売するキャンペーンを行っている。学研SALEと銘打たれたこのキャンペーンは、ダイエット、美肌、腰痛対策、アンチエイジングなど、いつまでも健康に美しく過ごすための16タイトルが選ばれている。人気の部分やせ最新作『骨盤&下半身やせ1週間プログラム』は、人気の部分やせシリーズムックの第3弾。お腹まわりに注目した前作に続き、今作はお尻や太ももなどの下半身のお肉を撃退するエクササイズが掲載されている。また、1日1ポーズのプログラムを1週間続けることで、骨盤のゆがみを解消するメニューも。通常価格は450円だが、セール中は225円となる。気になっていたあのタイトルも写真とイラストで、経絡リンパ&ツボのセルフマッサージ方法をわかりやすく解説している『カラダ美人になる経絡リンパマッサージ&ツボ』(通常価格952円、セール価格476円)や、今更人には聞けないスキンケアの基本を改めてレクチャーしてくれる『すぐわかる!今日からできる!美肌スキンケア』(通常価格571円、セール価格285円)など、半額でなくとも気になるタイトルが揃っている。このセールは、5月21日(木)までの期間限定。学研BookBeyondなどの主要電子書籍ストアで開催している。(画像はプレスリリースより)【参考】・株式会社ブックビヨンドプレスリリース(PR TIMES)
2015年05月11日京都大学は5月8日、食事性肥満の鍵となる分泌性因子を同定したと発表した。同成果は伊藤信行 薬学研究科教授(現名誉教授)、木村郁夫 同研究科客員准教授(現東京農工大学テニュアトラック准教授)、太田紘也 同研究科特定研究員(現神戸薬科大学研究員)らの研究グループと、中尾一和 医学研究科メディカルイノベーションセンター特任教授、伏木亨 農学研究科教授、小西守周 神戸薬科大学教授らの共同研究によるもので、英科学誌「Scientific Reports」電子版に掲載された。分泌性因子は細胞間や組織間の情報伝達に重要な物質で、生物の恒常性維持に不可欠とされる。白色脂肪組織由来の分泌性因子レプチンは肥満の発症に関わることが知られるなど、肥満の発症に関わる分泌性因子は、抗肥満薬開発の標的として注目されている。今回の研究では、新たに発見した分泌性因子の1つであるneudesinに着目し、その役割を調べるためにneudesin遺伝子を欠損させたマウス(ノックアウトマウス)を作成し、解析を行った。その結果、ノックアウトマウスは高脂肪食を与えても極めて太りにくく、肥満に伴って発生するインスリンが効きにくくなる状態や脂肪肝の発症にも耐性を示した。これは、交換神経が活性化したことで、エネルギーを貯める白色脂肪組織で脂肪分解が亢進し、エネルギーを消費する褐色脂肪組織でも熱産生や脂肪酸酸化が高まり、エネルギー消費が向上したためだとわかった。研究グループは「今回の成果を通じて、同因子を抗肥満薬創出の標的として利用する上での基盤となる知見が得られることが期待される」とした。
2015年05月11日理化学研究所(理研)は5月8日、生体分子の運動を1分子レベルから細胞レベルまでの幅広い空間スケールで解析可能なシミュレーションソフトウェア「GENESIS」を開発し、オープンソースソフトウェアとして無償で公開すると発表した。同成果は理研計算科学研究機構粒子系生物物理研究チームの杉田有治チームリーダー、ジェウン・ジョン研究員、杉田理論分子科学研究室の森貴治研究員らの共同研究チームによるもので、5月7日付(現地時間)の「WIREs Computational Molecular Science」のオープンアクセス版に掲載された。生命科学分野では分子動力学法と呼ばれるシミュレーション技法がタンパク質の立体構造予測、酵素反応のメカニズムの解明、薬の理論設計などに広く応用されている。しかし、多数のCPUを用いて従来の計算アルゴリズムを大規模な分子集団系に対して適用しようとすると、CPU間の通信時間が増大するため限界がある。実際、タンパク質1分子などの計算は可能だったが、細胞質のように多数のタンパク質や核酸などが混在する生体分子システムを、水やイオンなどの触媒も含めて高速に計算することは困難だった。特に、スパーコンピューター「京」など非常に多くのCPUを備えたコンピューターの性能を最大限活用するためには、新しい計算アルゴリズムを導入した分子動力学シミュレーションソフトウェアの開発が必要とされていた。共同研究チームが開発した「GENESIS」は、「京」のアーキテクチャを考慮に入れた独自の計算アルゴリズムを導入することで並列計算を効率化し、細胞環境を想定した1億個の原子で構成される系に対しても高速な分子動力学シミュレーションを実現した。「京」を用いた計算では、バクテリアの細胞質分子混雑環境を模倣した約1170万個の原子を含む分子集団系に対して1日あたり17.5ナノ秒、約1億370万個の原子を含む分子集団系に対しては1日あたり6.5ナノ秒という性能を達成したという。同ソフトウェアは従来のようにタンパク質1分子や細胞膜、糖鎖、核酸などの生体分シミュレーションも可能で、今後、創薬研究などに幅広く適用されることが期待される。
2015年05月11日気象庁は大涌谷温泉施設(神奈川県箱根町)で5月3日に確認された蒸気が、引き続き勢いよく噴出していることを確認した。5月4日16:00、箱根山の噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)を継続しつつも、火山活動がやや高まった状態で経過していると発表した。5月4日、気象庁は神奈川県温泉地学研究所と合同で現地調査を実施。その結果、4月26日以降増加している火山性地震は、引き続き多い状態で経過しているという。気象庁と神奈川県温泉地学研究所が設置している傾斜計に、この地震活動に関連するとみられるわずかな変動が引き続き観測されており、 5月1日以降の火山性地震発生回数は、1日は2回、2日は37回、3日は38回、4日15時までは8回だった。なお、火山性微動は観測されていない。現在、箱根山の大涌谷浅部における熱水活動が不安定な状態となっており、大涌谷付近では規模の小さな噴出現象が突発的に発生する可能性があるという。そのため気象庁は、箱根山は活火山であることに留意し、地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないことを指示している。次の火山の状況に関する解説情報は、5月5日16:00時頃に発表の予定となっている。
2015年05月04日熊本大学は4月30日、乳がん細胞がホルモン療法に対し耐性化する仕組みを明らかにしたと発表した。同成果は熊本大学発生医学研究所細胞医学分野の斉藤典子 准教授、中尾光善 教授らと、同大学院生命科学研究部乳腺・内分泌外科学分野の冨田さおり 医師、岩瀬弘敬 教授、九州大学医学研究院の大川恭行 准教授らの共同研究によるもの。4月29日付(現地時間)の英科学誌「Nature」に掲載された。乳がん治療では、エストロゲンという女性ホルモンとその受容体の働きを阻害する薬剤が使用される。しかし、この治療を長期にわたり受けていると、がん細胞が薬剤に耐性をもって再発する可能性がある。再発したがんは周りの組織に広がっていったり、リンパ節に転移するなど難治性となってしまう。研究グループはエストロゲン受容体を作る遺伝子で、活性化すると乳がん細胞の中でエストロゲン受容体が過剰に働くようになることで知られるESR1に注目し、ホルモン療法が効きにくい状態におけるESR1遺伝子の変化を調査した。その結果、難治性の乳がん細胞ではエストロゲン受容体およびESR1メッセンジャーRNA の量が数倍に増加していた。また、核内のESR1遺伝子の近くに非コードRNAの大きな塊ができていることも判明。エストロゲン受容体をもつ乳がん細胞では、ESR1遺伝子の近くに多量の非コードRNAが蓄積していると考えられた。この非コードRNAを調べたところ、難治性細胞においてESR1遺伝子の働きを高く維持していることがわかった。これらの研究結果から、エストロゲン受容体をもつ乳がん細胞は、ホルモン療法によってエストロゲンを長期に枯渇すると、ゲノム中のESR1遺伝子とその周囲の部分から非コードRNAが誘導されて、エストロゲン受容体を多量につくるように変わることで、ホルモン療法に対して耐性化すると結論づけられた。なお、研究グループはポリフェノールの一種であるレスべラトロールが、その非コードRNAとESR1遺伝子の高発現を阻害し、乳がん細胞の増殖を抑制することを突き止めており、今後新しい乳がん治療の開発につながることが期待される。
2015年04月30日学研ホールディングスのグループ会社、学研パブリッシングは4月25日、「RoomClip(ルームクリップ)のDIY(ディーアイワイ)インテリア」を発行する。○国内最大インテリアアプリ「RoomClip」のノウハウを集約同書は、Tunnelが運営する部屋写真の共有サービス「RoomClip(ルームクリップ)」に投稿されたDIYの部屋写真とノウハウをまとめたインテリアムック。「RoomClip」は、約70万枚のインテリア写真が投稿されている、国内で最大のインテリアアプリ。雑貨リメイクやDIY、収納方法など生活の知恵や工夫、さらに雑貨や家具、道具を買えるお店情報などがコメント欄でやりとりされている。今回発売するムックでは、アプリ内に蓄積された膨大なストックから厳選したリアルな写真に加え、インテリアやDIYを楽しむために必要なプロの知識を交えながら展開。数万フォロワーが支持するカリスマユーザーの自宅インテリアをレポートした記事や、ユーザーの愛用するDIY工具の紹介記事、仕上がりに差が出るプロのワザ、賃貸でも楽しめる"原状回復も可能なDIY"ヒントなど、インテリア愛好者に役立つ情報が満載となっているという。AB判/96ページ/オールカラーで、価格は980円(税別)。
2015年04月23日島津製作所は4月20日、大阪大学(阪大)と共同で代謝物の網羅的解析手法「メタボロミクス」の分析技術の確立・発展とアプリケーション開発を目的とした共同研究講座「大阪大学・島津分析イノベーション共同研究講座」を阪大大学院工学研究科に設置したと発表した。メタボロミクスは、生体内の代謝産物を網羅的に検出・解析し、その挙動を精密に捉えることによって細胞の生命活動を包括的に調べる最先端技術の1つで、同講座のメンター教員を務める阪大 大学院工学研究科 生命先端工学専攻の福崎英一郎 教授はその解析手法の開発および応用の第1人者。同氏は講座開設にあたって、「目的やニーズがはっきりしている研究は、それに対応した機材を購入し活用すれば済む。本講座は潜在化したニーズを掘り起こすために必要なもので、ハードウェアだけでなく、ソフトウェアも含めたトータルソリューションを実現することを目的に実施される」と、その意義を説明。また、「巧遅拙速という言葉があるが、とにかく何かを70%の完成度であってもやってみる、というスピードが重要」とし、企業と大学が一緒に行うことで、そうした速度を実現できるとした。さらに、「メタボロミクスは新鋭技術であり、その有用性を試すために色々なことを行っている。医者や製薬企業、食品、バイオなど、手段の有用性の検証を行うために、目的を選んでいない。本講座も、ほかの大学でも企業でも、真にこの技術を欲している第3者が入ってくることを大いに歓迎する」とし、幅広い共同連携による潜在的なニーズの掘り起こしを速やかに実現していくことを強調したほか、「大阪から世界へ」を標榜し、海外からも研究者、企業、教育関係者など幅広く参加を募り、世界的な「メタボロミクスの梁山泊」を目指したいとした。一方、同講座の招へい教授となる島津製作所 分析計測事業部ライフサイエンス事業統括部の飯田順子氏は、「ミッションは、"技術の1つであるメタボロミクスの発展"と"質量分析計を用いた解析プラットフォームの研究開発"」とし、阪大の複数の研究者が参加するほか、島津製作所からもプロジェクトごとに研究員が参加していくことを説明。両者の技術を融合させることで、メタボロミクスの課題解決に取り組んでいくとした。阪大では、同講座用に前処理用の実験室と実際に分析を行う実験室などを設置。分析機器としては、島津製作所のガスクロマトグラフ質量分析計が3台、液体クロマトグラフ質量分析計が3台、超臨界流体クロマトグラフ質量分析計が1台すでに設置されているほか、2015年6月にはイメージング質量顕微鏡も設置される予定だという。なお、同講座は第1期という扱いで、2014年12月1日より2017年3月31日(2016年度末)までの期間、開設される予定だが、福崎氏は「成功裏に3年迎えて更新されることを両者ともに革新している」とコメントしており、長期的な研究につながるとの期待を示した。また、同講座では定期的に前処理器具と質量分析計を用いたメタボロミクスの講習会などを実施するなど、多くの人や企業に興味を持ってもらい、技術の活用に向けたオープンな取り組みも推進していくとしている。
2015年04月22日○海の砂漠化、サンゴ礁の白化を救う「スーパー褐虫藻」とは?生物の能力は人間の想像を遥かに超えているのかもしれない。他の生き物と共生したり、時に利用したりしながら、生きるしたたかさを持ち、極限環境でも死なない術をもつ。しかし地球環境の悪化の影響も確実に受けている。そうした生き物の「多様性」や「生態」に今、注目が集まっている。「ゲノム解析技術が進歩し、細胞もヒトも同じという普遍性を知ったうえで、やはり多様な生き物を見なければ生命現象はわからない」とJT生命誌研究館館長の中村桂子博士はいう。3月22日に行われた第18回 自然科学研究機構シンポジウム「生き物たちの驚きの能力に迫る」では第一線の生き物研究者や昆虫・植物写真家らが、最新の研究や活動について講演を行った。その内容を紹介していく。○2030年までに世界の60%のサンゴ礁が失われる!?サンゴ礁は美しい海の代名詞だ。しかし今、世界のサンゴは危機的な状態にある。「サンゴの白化」だ。浅瀬に生息するサンゴ(造礁サンゴ)は世界で800~1000種類あり多様な形や色をしているが、死にかけたサンゴは白化する。基礎生物学研究所の高橋俊一 准教授によれば「現在、世界の30~40%のサンゴ礁が白化し、沖縄のサンゴ礁も白化のダメージを受けている」という。原因は地球温暖化による海水温の上昇と見られ、温暖化が今のペースで進めば、2030年までに世界の約60%のサンゴ礁が失われるというレポートもある。サンゴ礁の白化は「海の砂漠化」とも言われ、サンゴ礁に生きる海の生態系に大きな影響を与えてしまう。何とかサンゴの白化を抑える方法はないものだろうか? その解決策につながる研究を行っているのが、高橋俊一准教授だ。○サンゴ白化の原因は、共生する「藻類」にあった!詳しい説明に入る前に、意外に知らないサンゴの基礎知識を。【1】:サンゴは植物ではないその形状から植物と思われがちだが、実は動物だ。基本単位はポリプで、私たちが見ているサンゴはポリプが集まった集合体だ。ポリプには触手があり、餌をとって口に運ぶ。ポリプの下に骨格を作る。【2】:サンゴの色は、共生している褐虫藻(かっちゅうそう)の色で決まるサンゴは褐虫藻と呼ばれる単細胞の藻類と共生している。共生したほうが互いに生きやすいからだ。「サンゴが生育している環境にはサンゴの餌になる生き物があまりいません。サンゴは動物だから餌がないと生きていけない。体内に褐虫藻を持っていれば、褐虫藻が光合成をして栄養を提供してくれる。一方、サンゴは褐虫藻に無機塩類を提供します。これは植物を栽培するときの肥料のような役割をする。つまりお互いに助け合っているというわけです」と高橋准教授は説明する。そして高橋准教授によると「サンゴには元々色はない。サンゴの色は共生している褐虫藻の色なのです」とのこと!では、サンゴの白化はなぜ起きるのだろう。白化は2つのメカニズムで起こると考えられている。1つは「共生していた褐虫藻がいなくなる」こと。そしてもう1つは「褐虫藻の色素がなくなる」こと。後者について、高橋准教授は研究を行っている。研究の結果わかってきたのは、サンゴの白化が起こる前に、高温によって褐虫藻の「光合成装置(PSII)」が壊れることだった。さらに調べていくと、壊れることが問題でなく「壊れた装置の修復」が進まないことが問題だったという。「たとえば車のエンジンが壊れたときに、壊れたパーツを取り外して新しいパーツと取り替えますよね。この新しいパーツを作るステップが、水温が高温になると止まることを見つけたのです」(高橋准教授)。サンゴの白化は、高温で褐虫藻の光合成装置(PSII)が壊れ、修復が進まないために、光合成色素をもつアンテナタンパク質が失われることが原因だった。サンゴ白化のスピードは早く、高温にすると24時間でほとんどのアンテナたんぱく質が失われ、どんどんサンゴの色が抜けていくそうだ。○サンゴの白化を救う救世主とは?しかし、このサンゴの白化を食い止める「救世主」がいた! 褐虫藻の中には高温でも色素がなくならない、「高温に強い」褐虫藻もいるという。サンゴが、高温に強い褐虫藻を取り込むことができれば、たとえ温暖化が起こってもサンゴの白化から免れることができるのではないか。だが、ことはそう簡単ではなかった。「褐虫藻には多くのサンゴ種と共生できるものもあれば、限られたサンゴ種にしか共生できないものもある。サンゴも同じです。我々人間だってストライクゾーンの広い人と狭い人がいますよね」(高橋准教授)つまり、「高温に強い」だけでなく、どんなサンゴとも共生できる「好みの広い」褐虫藻が、サンゴを白化から救うために必要なのだ。両方の特徴を持つ褐虫藻を探すため、高橋准教授が研究に活用しているのがモデル共生体のセイタカイソギンチャク。サンゴと同様に褐虫藻を体内に共生させている生物で、サンゴよりも格段に飼育しやすく研究室での実験に適した生物だ(サンゴと同じ刺胞動物門に属している)。研究の結果、「好みの広い」褐虫藻の特徴が見つかったという。今後はこの特徴をもとに、高温に強く、好みの広い「スーパー褐虫藻」を見つけ、まずイソギンチャクに共生させて実験。イソギンチャクで白化が起こらないことが確認できたら、次はサンゴの実験に進む予定だ。「サンゴに『スーパー褐虫藻』を共生させて、高温にしても白化が起こらないことが確認できたら、サンゴ礁の保全に利用できないかと考えています」と高橋准教授。スーパー褐虫藻が見つかれば、サンゴの白化が予防できるし、たとえ白化が起こった後でも、すみやかにサンゴに取り込ませて、白化したサンゴを救出できる。美しいサンゴ礁を次世代に残すカギを握るという重要な使命を担うのは、わずか数ミクロンの褐虫藻なのである。○高校生記者が、イソギンチャクに共生する褐虫藻を観察高橋准教授の講演を聞き、「共生ってどういうこと?」「褐虫藻ってどんな生き物?」と興味がわいた高校生記者が、実際にソギンチャクに共生する褐虫藻の観察を行った。参加したのは生き物に関心がある4人の高校生。中には大阪から駆け付けた参加者もいた。観察したのは「褐虫藻と共生させた状態のイソギンチャク」「共生させていない状態のイソギンチャク」、「褐虫藻」の3種類。高橋准教授からは「褐虫藻はイソギンチャクのある特定の場所にいます。それを見つけてください」というお題が。最初は慣れない手つきで、高倍率の2種類の顕微鏡を恐る恐る触っていた高校生たちも大学院生の指導ですぐに操作をマスター。褐虫藻がイソギンチャクに取り込まれて、形が丸く変化する様子を発見するなど、高橋准教授も驚くような観察力を見せる。観察に慣れたところで、褐虫藻が共生する場所を探すため、イソギンチャクの触手をカットしてみた。そして触手の断面を顕微鏡で観察すると…褐虫藻が生息する場所が見えてきた! 埼玉県から参加した村上侑里夏さん(高1)は「高校の授業では顕微鏡のピントあわせが苦手で友達にやってもらっているほどで、生物部にも入れなかった。今日は実際に自分で見られて嬉しい!」と興奮気味に語っていた。
2015年04月20日分子科学研究所(IMS)は4月14日、β-カロテンが優れた金属捕捉機能をもつことを発見し、2個のβ-カロテン分子が最大で10個の金属原子を挟み込み、サヤエンドウのような形状をもつ分子を形成することを実証したと発表した。同成果は、IMSの村橋哲郎 教授(現 東京工業大学大学院理工学研究科 教授)およびIMSの柳井毅 准教授らの研究グループによるもの。詳細は「Nature Communications」に掲載された。天然に広く分布している有機色素の一種であるカロテン類は、特異なπ-共役構造を持っており、その構造に基づいてさまざまな機能を発現することが知られているが、金属捕捉機能については、よくわかっていないというのが現状である。今回、研究グループはカロテン分子が連続した炭素-炭素二重結合を用いて多数の金属原子を捕捉する可能性に着眼し、実験と理論の両面での実証を行ったという。その結果、2つのβ-カロテン分子が、10個の金属原子を連結させながら挟み込み、安定なサヤエンドウ状の化合物を形成することが可能であることを発見したという。また、この反応は可視光の照射下で促進されることも確認したという。さらに、この化合物は複数の金属原子を出し入れする性質を持つことも発見。実際にパラジウム原子と白金原子がβ-カロテンに挟み込まれた化合物も合成できることを確認したほか、β-カロテン分子の間に挟まれた金属原子の数が変わると色が大きく変化する性質を持つことも確認し、理論的な計算からこの要因を解明したとする。なお研究グループでは、今回の成果について、カロテン類の機能性金属クラスター触媒や材料の開発などといった新たな化学利用につながる可能性が示されたとコメントしている。
2015年04月16日米Appleは14日(米国時間)、医療や健康に関する研究用に設計されたソフトウェアフレームワーク「ResearchKit」を医学研究者などに提供開始した。「ResearchKit」は、iPhoneユーザーが医師などの開発や研究を手助けすることができるソフトウェアフレームワーク。「ResearchKit」を利用して開発されたアプリに参加することで、ユーザーのアクティビティレベル、運動機能障害などの記録がデータとして蓄積される。すでに、ぜんそく、乳がん、心臓血管疾患、糖尿病、パーキンソン病を研究するアプリが米国のApp Storeにて公開されており、公開後の数週間で60,000人以上のiPhoneユーザーが参加しているという。医学研究者は、「ResearchKit」を利用することで、健康とウェルネスについて研究できるようになり、開発者はオープンソースコードに基づいた新しいモジュールを作成できる。カスタマイズ可能な最初のモジュールとして、視覚的な電子同意書のテンプレート「参加者の同意」、研究への参加者が質問に回答する「調査」、運動活動、健康活動、認知、声を計測する「アクティブなタスク」が用意されている。「ResearchKit」を利用した研究アプリは、今後多くの国で提供される予定。対応端末は、iPhone 5/5s/6/6 Plus、iPod touchとなっている。
2015年04月15日九州大学はこのほど、ウイルス感染による糖尿病発症に関わる遺伝子を発見したと発表した。同成果は九州大学大学院医学研究院保健学部門の永淵正法 教授と、生体防御医学研究所、宮崎大学医学部、佐賀大学医学部、大分大学医学部、愛知県衛生研究所、シカゴ大学医学部らの共同研究グループによるもの。4月7日付け(現地時間)の国際学術誌「Nature Communications」に掲載された。ウイスル感染によって糖尿病を発症する可能性はこれまでも指摘されており、糖尿病を誘発する脳心筋炎ウイルスD株(EMC-Dウイルス)が一部の系統のマウスのみに高率に糖尿病を誘発すること、さらにその感受性遺伝子は単一であることが知られていたが、その責任遺伝子はわかっていなかった。一方、近年の研究でEMC-Dウイルスの感染によって糖尿病になるかどうかは、自然免疫が重要であることが明らかとなっていた。今回の研究では、ウイルス感受性の高い系統のマウスでは、ウイルス感染の防御に働くインターフェロンの効果を発揮するために必要なTyk2遺伝子に異変が起きていることがわかった。また、これらTyk2遺伝子異変マウスの通常の細胞では、高濃度インターフェロン刺激によりウイルス抵抗性が回復したが、インスリンを作る膵臓のランゲルハンス島β細胞では回復力が少なかった。このことから、ウイルス感染を受けてもTyk2遺伝子が正常に働かず防御機能が低下し、インスリンを作るランゲルハンス島β細胞が破壊されてしまい糖尿病が発症していたことがわかった。今回の成果は、マウスに比べてよりウイルス感染に感受性が高いヒトにおいてもウイルス感染が糖尿病の危険因子の1つとなり得ることを示すもので、今後、ウイルス糖尿病の病態の解明、糖尿病を起こしやすいウイルスの発見、わらにはそのワクチンの開発につながることが期待される。
2015年04月10日理化学研究所(理研)と東京大学は4月9日、メタボリックシンドロームに関連する分子として注目されているアディポネクチン受容体の立体構造を解明したと発表した。同成果は理研横山構造生物学研究室の横山茂之 上席研究員と、東京大学大学院医学系研究科の門脇孝 教授、山内敏正 准教授らの共同研究グループによるもので、4月8日(現地時間)付の英科学誌「Nature」オンライン版に掲載される。アディポネクチン受容体は、細胞膜に存在する膜タンパク質で、脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンというホルモンによって活性化し、細胞において糖と脂質の代謝を促進し、抗糖尿病、抗メタボリックシンドローム作用を発揮する。タンパク質の立体構造を知ることは、創薬において有用とされる。特に、膜タンパク質は細胞外からの情報を細胞内へと伝達する役目を担っているため、薬の標的分子として注目されている。しかし、アディポネクチンは試料調整が難しく、その立体構造情報を得ることができていなかった。同研究では、高純度の膜タンパク質を大量に製造する手法や、結晶化手法などを使い、アディポネクチン受容体の結晶化に成功。この結晶を大型放射光施設「SPring-8」を用いてX線解析することでその立体構造を調べたところ、同受容体は現在までに知られている膜タンパク質とは異なり、膜貫通部位に亜鉛イオンを結合するなど新規の構造をしていることが判明した。今回の研究成果はアディポネクチン受容体の情報伝達メカニズムの解明につながるだけでなく、メタボリックシンドローム・糖尿病の予防薬や治療薬の開発に有益な情報となることが期待される。
2015年04月09日東京大学(東大)などは、リチウムなどの希少元素を使用しない次世代電池の候補であるナトリウムイオン電池のマイナス極を開発したと発表した。今回の成果は、東京大学 大学院工学系研究科化学システム工学専攻の山田淳夫 教授、同大 大学院工学系研究科化学システム工学専攻の大久保將史 准教授、同大 大学院工学系研究科化学システム工学専攻の王憲芬 特任研究員、同大 大学院工学系研究科化学システム工学専攻の梶山智司 特任研究員、同大 工学部 化学システム工学科の飯沼広基 学部生、長崎大学 大学院工学研究科の森口勇 教授、同大 大学院工学研究科の小路慎二 大学院生らによるもの。同研究の詳細は「Nature Communications」に掲載された。リチウムイオン電池は、希少元素であるリチウムやコバルトを使用しており、さらなる低コスト化などを図るためにはリチウムをナトリウムに置換したナトリウムイオン電池の実現が求められている。しかし、その実現のためには、ナトリウムイオンを吸蔵・放出する化合物の対(プラス極/マイナス極)が必要であった。プラス極は、これまでの研究からナトリウムイオンを可逆的に吸蔵・放出できる化合物が多数報告されるようになっているが、マイナス極については、急速充電、長時間の電流供給、充放電の繰り返しに対する安定性などの条件を満たす化合物が見つかっていなかった。今回、研究グループは、新たにチタンと炭素で構成されるシート状の化合物を合成し、それをマイナス極に応用したところ、多量のナトリウムイオンを吸蔵・放出する特性を示し、ナトリウムイオン電池の長時間の電流供給を可能とするマイナス極であることが確認されたほか、急速充電にも対応できることが示されたという。実際にすでに研究グループが発見していた安価な鉄と硫黄で構成されるプラス極と組み合わせることで、ナトリウムイオン電池のプロトタイプを試作。長時間の電流供給が可能であり、充電・放電を繰り返すことによる劣化もないことが確認されたとする。なお、研究グループでは、今回の成果について、試作したナトリウムイオン電池はナトリウム、鉄、硫黄、酸素、チタン、炭素などの汎用元素のみで構成され、まったく希少元素を使用する必要がないものであり、この結果を受けて、低コストな電池の実用化が加速していくことが期待されるとコメントしている。
2015年04月06日大阪府・中之島(京阪電車・なにわ橋駅)のアートスペース「アートエリアB1」では、アートや知の可能性を探求する企画展「ニュー"コロニー/アイランド"~"島"のアート&サイエンスとその気配~」を開催している。会期は6月28日まで(月曜休館、ただし5月4日は開館、5月7日は休館)。入場無料。同展は、近年アートプロジェクトへの参加等で活動の幅を広げている建築ユニット・dot architectsや文化庁メディア芸術祭にて新人賞を受賞したアーティスト・yang02、さらにプログラマーや生物物理学の研究者をプロジェクトメンバーに迎え、"コロニー/アイランドの創造性"および"粘菌の知と工学的ネットワーク"をテーマに展開する、子どもから大人までを対象としたアート&サイエンスの企画展。会場には150分の1スケールの「仮設の中之島」と映像上の「仮想の中之島」が出現し、3カ月の会期をかけて双方の空間を「粘菌」が結んでいくようすが可視化されるなど、理科の実験のような感覚で幅広い層が楽しめる内容となっている。また、4月10日(19:00~21:00)には、オープンミーティングとして、大阪大学理学研究科教授・上田昌宏氏、北海道大学電子科学研究所教授・中垣俊之氏、dot architects、yang02といったプロジェクトメンバーによるトークセッションが開催される。定員は50名程度(当日先着順、申し込み不要)。参加無料。このほか、4月11日と12日(ともに14:00~17:00)には、dot architectsとyang02が講師を務めるワークショップ「ニュースケッチング~スマホと3Dプリンタで採集する中之島~」が開催される。対象は中学生以上(小学生以下は保護者同伴)で、参加時はスマートフォン(カメラ付き携帯端末)を持参する。定員は10名程度で、参加希望者はこちらの予約フォームから申し込む(先着順)。参加無料。
2015年04月03日ExaScalerは3月31日、同社とPEZY Computingが共同で開発した液浸冷却小型スーパーコンピュータ(スパコン)「ExaScaler1」の性能を改善させ、2014年11月に発表されたスパコン消費電力ランキング「The Green 500 List」の世界第1位に相当する性能を達成したと発表した。同スパコンを用いた高エネルギー加速器研究機構(KEK)の「Suiren(睡蓮)」は、2014年11月のGreen500では1Wあたり4,946MFlops(演算性能187.11TFlops時)を記録して世界第2位に認定されていた。今回は、牧野淳一郎 KEK 客員教授(理化学研究所計算科学研究機構粒子系シミュレータ研究 チームリーダー、エクサスケールコンピューティング開発プロジェクト副リーダー)の協力により、大半の処理をホストCPUのXeonではなく、PEZY-SCプロセッサで行えるように実装を進めたうえで、理化学研究所計算科学研究機構コデザイン推進チーム・粒子系シミュレータ研究チームの似鳥啓吾氏にも参画してもらい、ソフトウェア実装の最適化やネットワーク通信での効率を向上させるなど、システム全体の各種の最適化を行った結果、前述のGreen500の際の性能と比較して25.5%の消費電力性能の改善を実現し、1Wあたり6,217MFlops(演算性能としては前回を13.8%上回る202.64TFlops)の値を達成。この結果は、先述のGreen500時点の世界第1位に相当する値だという。なお、今回の計測実験をもって現行の「ExaScaler-1」による消費電力性能の改善に関する研究は一旦終了となるとのことで、2015年4月以降は新しい液浸冷却手法などを取り入れた新システム「ExaScaler-1.5」の開発を進めていく計画としており、これにより消費電力性能は、今回の計測値よりもさらい15~25%程度改善されることが期待されるという。
2015年04月02日東京大学(東大) 大学院工学系研究科附属量子相エレクトロニクス研究センター・物理工学専攻の川﨑雅司教授らの研究グループは、マックスプランク固体研究所のJurgen Smet(ヨルグン・シメット)博士のグループと共同で、極めて高品質な酸化亜鉛ヘテロ界面を作製し、GaAs以外のヘテロ界面で特殊な量子相の観測に成功した。同成果は東京大学大学院新領域創成科学研究科のJoseph Falson(ジョセフ・フォルソン)大学院生、理化学研究所創発物性科学研究センターのDenis Maryenko(デニス・マリエンコ)特別研究員、東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻の小塚裕介特任講師、東北大学金属材料研究所の塚﨑敦教授との共同研究により得られたもの。異なる物質を組み合わせたヘテロ界面は、トランジスタや発光ダイオードなどの機能性デバイスとして応用されてきた。特に、GaAsのヘテロ界面では最も品質の良い電子が形成され、約30年前に低温で特殊な量子相が発見された。この量子相は、トポロジカル量子コンピュータと呼ばれる、計算エラーを低く保ちつつ飛躍的な計算速度の向上が期待できる、新たなコンピュータへ応用が可能であると考えられているが、その特性は長らく不明だった。今回の研究では、酸化亜鉛を用いた高品質ヘテロ界面を作製し、添加元素を用いず、結晶内部の電場を利用することで、極めて高品質な電子系を形成。理論的に未解決の量子相が酸化亜鉛のヘテロ界面で観測された。この量子相はエラーが起こりにくい強いトポロジカル量子計算に用いられる可能性があり、GaAsには無い特性を用い、より多角的な研究を可能にする。今回の発見で、酸化亜鉛にはGaAsにはない制御性があることが明らかとなり、酸化亜鉛がこの量子相の理解を進展させるのに非常に重要な材料であることを示した。なお、同研究成果は、英国科学雑誌「Nature Physics」の電子版(2015年3月23日版)に掲載された。
2015年03月26日NTTと国立情報学研究所(NII)、大阪大学、情報通信研究機構(NICT)は、ダイヤモンド中に閉じ込められた電子スピンに超伝導磁束量子ビットを結合させることにより、ダイヤモンド中の電子スピンの寿命が約10倍に伸びることを示したと発表した。今回の研究成果は、2015年3月23日に「Physical Review Letters」で公開された。なお同研究の一部は、最先端研究開発支援プログラム(FIRST)、JSPS科研費No. 25220601、NICTの委託研究「量子もつれ中継技術の研究開発」により得られたもの。ダイヤモンド中の電子スピンは、数十nm程度の局所領域に閉じ込めることが可能であり、磁場や電場や温度を高い精度で検出できることから、ナノスケールの物質構造などを高精度でイメージングできるとされる量子センサへの応用が期待されている。しかし、ノイズが存在する環境下では寿命が短くなることから十分な計測時間の確保ができず、センサとしての感度が劣化するという問題点があり、ダイヤモンド中の電子スピンの寿命の向上は大きな課題となっている。NTT物性科学基礎研究所、NII、大阪大学、NICTの研究チームでは、2011年に複数のダイヤモンド中の電子スピンと設計自由度が広く拡張性が高い超伝導磁束量子ビットという2つの異なる系をハイブリッド化した量子メモリの実現に成功。この成果を活かし、ハイブリッド系を用いたダイヤモンド中の電子スピンの長寿命化に向けて研究に取り組んできた。今回、NTT物性科学基礎研究所、NIIの根本香絵教授、大阪大学大学院基礎工学研究科の水落憲和准教授、NICTの仙場浩一上席研究員らによる研究チームでは、100マイクロ秒程度の寿命を持つダイヤモンド中の電子スピンと短寿命(10マイクロ秒程度)な超伝導磁束量子ビットを結合させるハイブリッド化により、電子スピンの寿命が約10倍となる950マイクロ秒にまで長くなるという現象を理論的に見出した。これは、ダイヤモンド中の電子スピンを用いた量子センサの感度が一桁近く向上することを意味しており、高い効率で物質のイメージングが可能になると期待される。また、ダイヤモンド中の電子スピンはマイクロ波の印加といった外部からの要因を用いることで長寿命化を行っていたが、同成果は、ダイヤモンド中の電子スピンを超伝導磁束量子ビットに置くだけで寿命を約10倍に長くできるという、超高感度量子センサ実現に向けたまったく新しいアプローチとなる。同研究成果によって電子スピンの寿命が改善することで十分な計測時間の確保が可能になるため、計測感度の向上が期待される。さらに将来的に、超伝導磁束量子ビットと複数のダイヤモンド中電子スピンの間に量子絡み合いを生成することができれば、従来の精度を凌駕する量子絡み合いセンサを実現できる可能性がある。この量子絡み合いセンサが実現すれば、人や動物の脳の活動情報を高い精度で読み取って病変を特定したり、数十ナノメートル程度の極小物質の3次元構造を明らかにするなど医療分野・材料工学分野に貢献すると考えられる。
2015年03月25日東京工業大学量子ナノエレクトロニクス研究センターの雨宮智宏助教と荒井滋久教授、理化学研究所の田中拓男准主任研究員、岡山大学自然科学研究科の石川篤助教らの共同研究グループは、InP系光通信プラットフォームに"透磁率"の概念を導入することに成功したと発表した。具体的には、InP系マッハツェンダー光変調器をベースとして、デバイス内部に特殊なメタマテリアルを実装。電圧印加に伴う透磁率の変化を利用して、透過光の強度を変調することに成功し、デバイスの小型化が可能であることを示した。キーとなる主な成果はトライゲート(Tri-gate)メタマテリアルとメタマテリアル集積型マッハツェンダー変調器の2つ。ナノスケールの金属構造で構成されたメタマテリアルに3次元トランジスタの技術を組み合わせることで、光周波数帯において電圧印加による透磁率の制御を可能とした。トライゲートメタマテリアルは、InP系化合物半導体上に浅い溝を掘り、その内部にナノスケールの金属構造を作りこむことで、電圧制御が可能な特殊なメタマテリアルの開発に成功。同構造では、上部から電圧を印加することで、半導体内のキャリア密度を変化させることができ、それに伴って金属微細構造の応答(=メタマテリアルの特性)に変化が生じる(キャリア発現の原理は3次元トランジスタと同一)。これにより、電圧印加の有無によって、透磁率の値を制御できることになる。また、メタマテリアル集積型マッハツェンダー変調器は、トライゲートメタマテリアルの技術を光通信デバイスへ実装することで、「透磁率制御によるメタマテリアル装荷型変調器」を実現。同素子は、マッハツェンダー干渉器の各アームにトライゲートメタマテリアルが一列に埋め込まれた構造となっており、素子上部から電圧をかけ、アーム部の透磁率を変化させることで強度変調を行う。透磁率を制御することで、本来、屈折率の可変幅が狭いInP系デバイス内において大きな屈折率変化を持たせることが可能となり、200μmのデバイス長において約7.0dBの変調特性を得ることに成功した。誘電率と透磁率を両方使うことにより、さらなる高性能化を図ることができ、将来は、実用化されている既存デバイスと同じ性能を維持しながらサイズを1/100程度まで小型化できることが予想される。今回の研究はレーザー・変調器をはじめとするInP系光通信プラットフォームで透磁率の概念を導入したことに特徴がある。光変調器に限らず、InP系光デバイスに広く利用できるため、さまざまなデバイスの小型化・高性能化・特殊動作化に寄与するものと期待される。なお、同研究成果は3月23日に、英国科学誌Nature姉妹誌のオンラインジャーナル「Scientific Reports」に掲載された。
2015年03月25日イオンは20日、学研とコラボレーションした「学研がんばるタブレット」を発表した。発売日は27日。全国の「イオン」430店舗で販売する。「学研がんばるタブレット」は、小学1年から中学3年までの文科省学習指導要領に対応した学習コンテンツ「学研ビクトリー」が利用できる8型タブレット。「学研ビクトリー」のコンテンツは、学校の授業進度に合わせて毎月配信され、学習を進めると「iポイント」を貯めることもできる。ポイントは、グッズや「WAONポイント」と交換可能。端末は、保護者によるインターネットやタブレット利用時間の制限設定(ペアレンタルコントロール)も行える。端末名は「HUAWEI MediaPad T1 8.0【教育モデル】」。価格は税別36,000円で、24回払い(1,500円/月、税別)も選択可能。コンテンツは小学1年~2年が月額900円、小学3年~6年が1,500円、中学1年~3年が2,000円(いずれも税別)。通信サービス「IIJmioウェルカムパック for イオン」も同時購入でき、通信容量4GB/月のSMS対応ミニマムスタートプランの場合で価格は月額1,040円(税別)となる。
2015年03月21日1日5分で手軽に小顔が手に入るという「整顔マッサージ」。前編に引き続き、少なく見積もっても年齢マイナス20歳に見える整顔師・田沼邦彦先生が開発した、気持ちいい顔筋マッサージのやり方をちょっとだけご紹介します。今回は女性の共通の敵「ほうれい線」を撃退するマッサージです!◆オバ顔を撃退!夜デートに備える・頬全体を優しくもみほぐすほっぺの中にある筋肉を刺激するつもりで、つまむように優しくもみほぐします。ほっぺもやっぱりコっています!・ほうれい線をつまみ上げてもみほぐすほうれい線を指で縦にはさんで、小鼻の横から口元まで、細かくつまんでいきます。・あご先をもみほぐすあご先も、眉や頬同様にコリの多い場所。あご先の筋肉をめがけて、細かくつまみ上げるように刺激します。・ あご先~耳に向かってなで上げる仕上げに「上がれ~上がれ~」と念じながら、フェイスラインを2本の指で挟んで優しくなで上げます。1日働いて疲れた夕方には、まぶたも頬も下がりがち…。鏡やガラスに映った自分の顔を見て「誰このオバさん!」と思ったことがある人も多いのでは?この頬を中心としたマッサージでは、ほうれい線をケアするだけじゃなく、口角やフェイスラインが心持ち上がったような気も。さらに血色が良くなってお肌もツヤツヤ、夕方からのメイクが映えるというオマケつき。仕事の合間やトイレに行ったとき、またメイク直しのついでなど、ちょこっとした時間にできるのがありがたいですね!≪もっと効果的に!整顔マッサージ≫この簡単なマッサージを続けていれば、スッキリ若々しい顔をキープできるなんて夢のよう!でも、自分で行うとなると、本当にこれでいいのかな?って不安になることもありそうです。そこで、田沼先生に直接疑問をぶつけてみました。Q.力加減がわからないんですけど…田沼先生:「肌ではなく、その奥にある筋肉をもみほぐすつもりで、痛気持ちいいくらいの刺激を目指してください。もちろん、それより優しくても大丈夫です。ただ、長時間もみ続けるとアザになったりしますから、1回5分程度に留めてくださいね。あとは、好きなとき・気になったときにすればいいですよ」これまでの美顔マッサージのイメージにとらわれていましたが、痛気持ちよく筋肉をもみほぐすイメージなら、うまくやれそうです。早く効果を出したくてグイグイやっちゃいそうですが、短時間でさらっと、を一日に何回かで十分効果があるそうですよ。Q.続けられる自信がないんです…田沼先生:「効果を見ると続けたい気持ちになるはずなんですけどね(笑)。ただ、人間って肩から上に手を上げるのはしんどいので、朝起きたときと夜寝る前、布団の中でやるのはどうでしょうか? 楽ですよ」布団の中でマッサージ!それは気持ち良さそう。それに、よしやるぞ!と構えなくてもできるから、ちゃんと習慣づけられそうです。≪整顔7日間チャレンジ!≫でも、プロの先生に施術してもらったから効果が出たんでしょう?自分でやっても効果が出るものなの?と最後の最後まで半信半疑な筆者。田沼先生の著書『ぐるぐる押してみるみる10歳若返る!整顔マッサージ』(学研パブリッシング)を見ながら、「自分で整顔・7日間チャレンジ」を実行してみました!最初は本を見ながら、覚えてからは布団の中で顔をモミモミ…。写真だとわかりづらいかもしれませんが、自分では「明らかに変わった!」「顔がシュッとした」と実感!田沼先生の施術を体験した日の感動が再びよみがえりました!今まで数々の美顔器やマッサージを試しては挫折してきた筆者ですが、これは心底オススメです!毎日のちょっとした時間をご自身のケアに使って、今よりもっときれいになって、キラキラおめめと素敵な恋をゲットしてくださいね。(文=石村佐和子)ちなみに、74歳という年齢が信じられないイケメン整顔師・田沼先生はコチラ!田沼邦彦(たぬまくにひこ)整顔師、美容師、整体師。1940年7月14日生まれ。日劇ダンシングチームでプロダンサーとして活躍した後、美容師に転身し、35歳のときに美容室を開店。およそ10年間で10店舗を有するまでに拡大させる。1987年、47歳のときに脳梗塞を発症。左半身と顔面のマヒという後遺症が残る。リハビリ生活の間、自らの体の治療のために整体師の資格を取得。整体の技術をベースに自らに施術を行ううちに、左半身と顔面のマヒが奇跡的に回復。それどころか年齢よりもはるかに若く見られるようになったため、この手技を「田沼式リハビリ整顔マッサージ」と名づけ、顔の老化を悩む人へ広く施術を行うようになり、現在に至る。『ぐるぐる押してみるみる10歳若返る!整顔マッサージ』(学研パブリッシング)
2015年03月17日1日たった5分で、高価な美容液も要らず、しかも即効で手軽にパッチリおめめや小顔が手に入るとしたら?「やってみたい!」と思う反面「話がうますぎる」とも思っちゃうかも!?でも、それが叶ってしまうのが「整顔マッサージ」。整体の技術をベースとしたソフトで気持ちいい顔筋マッサージを、誰でも簡単にでき、すぐに効果が出るようにアレンジされています。≪整顔マッサージってすごい!≫このマッサージ、皮膚をねじったりこすったりしないので肌への負担が少なく、1日に何度やっても大丈夫(もちろん、限度はありますが)。また、マッサージのためにわざわざスッピンになる必要がなく、既にしてあるメイクもほとんど崩れません。つまり、いつでも・どこでも、気がついた時にささっと気になる部分をケアすることができちゃうんです!その開発者であり『ぐるぐる押してみるみる10歳若返る!整顔マッサージ』(学研パブリッシング)の著者である、整顔師の田沼邦彦先生にインタビュー!と同時に施術も体験し、女性が抱えるお悩みの解決法を伺いました。颯爽と現れた田沼先生は、スラリとした風貌にツヤツヤのお肌!とても御年74歳には見えません。これも、毎日ご自身で整顔マッサージを続けているから、なのだとか。毎日続ければここまでキレイになれるのか…と、希望も膨らみます。早速、田沼先生による整顔マッサージの体験を受けてみます。これは気持ちいい!思わず無言に…≪顔のコリが諸悪の根源!≫「顔って想像以上にコってるんですよ」(田沼先生)確かに、よく考えたら顔筋ってかなりのハードワーク。でも、スキンケアは入念にするけれど、顔の筋肉まで気にしたこと、あまりないような…。顔のコリ=緊張した顔筋は血流が滞り、老廃物がたまっています。これを放置するから、まぶたも頬のお肉も下がり、どんよりとしたオバさん顔に近づいていってしまうんですって!「整顔マッサージ」でこのコリをほぐして巡りを良くすることで、柔らかく活力のある表情、血色良くハリのある肌が同時に手に入るのです。施術前後を比較するために、まずは顔の半分だけ施術していただきましたが、左右の差は歴然!こんなに早く結果が出るなんて…と、その場にいた一同がどよめきます。この自分でささっとできて即効の「整顔マッサージ」を一部ご紹介します。合コンやデートの前に、いかがでしょうか?◆合コン前に!目力で周りに差をつける・眉をもみほぐす眉を2本の指で上下に挟み、もみほぐしていきます。ちょっと痛いけど気持ちいい!眉がこんなにコッているなんて知らなかった…。・眉間~鼻筋を指圧眉間の縦じわを防ぎ、顔の中心部のコリをほぐして血行を促進。鼻筋のまわりをマッサージすると、鼻の通りが良くなるような気も!・目の周りの骨に沿って指圧目頭のあたりは、かなり強いコリを感じます。イタ気持ちいいくらいの刺激で、優しく押し上げていきます。目の周りの骨に沿って一周したら終了です。施術後はまぶたが上がり、パッチリおめめに!視界が開けたかのように感じるほど。目元が引き締まったうえに、瞳が澄んでキラキラ輝いて見える!目の周りの血行が良くなって活性化するからでしょうか。夕方過ぎてもパッチリ・キラキラの瞳なら、合コンも自信を持って参加できますね!周りにも差を付けられそう。田沼先生のサロンには、この目力を求めて就活中の学生が面接前に訪れたり、タレントさんが宣材写真の撮影前に訪れたりするそうです。いわく、「メイクでは出せない輝きが出る」のだそうで…。確かに、いくらアイラインを引いてもこれほどの効果は出せません!鏡に映る、数年前のように若く見える自分の姿は、何分眺めていても飽きない気がしました。後編では「夕方のオバ顔を撃退する方法」や「マッサージをもっと効果的に行うためのメソッド」をお届け。取材後に筆者が自宅で7日間、整顔マッサージを行った際のBefore/Afterの写真もお見せしちゃいます!(文=石村佐和子)田沼邦彦(たぬまくにひこ)整顔師、美容師、整体師。1940年7月14日生まれ。日劇ダンシングチームでプロダンサーとして活躍した後、美容師に転身し、35歳のときに美容室を開店。およそ10年間で10店舗を有するまでに拡大させる。1987年、47歳のときに脳梗塞を発症。左半身と顔面のマヒという後遺症が残る。リハビリ生活の間、自らの体の治療のために整体師の資格を取得。整体の技術をベースに自らに施術を行ううちに、左半身と顔面のマヒが奇跡的に回復。それどころか年齢よりもはるかに若く見られるようになったため、この手技を「田沼式リハビリ整顔マッサージ」と名づけ、顔の老化を悩む人へ広く施術を行うようになり、現在に至る。『ぐるぐる押してみるみる10歳若返る!整顔マッサージ』(学研パブリッシング)
2015年03月17日東北大学と大阪大学の研究グループは、従来の物質とは全く異なる新しい状態をもつトポロジカル絶縁体と普通の金属を接合させることによって、普通の金属にトポロジカルな性質を付与する「トポロジカル近接効果」という新しい現象を発見し、質量のない高速のディラック電子をトポロジカル絶縁体の外に取り出すことに成功したと発表した。同研究グループは、東北大学大学院理学研究科の佐藤宇史准教授、同原子分子材料科学高等研究機構の高橋隆教授、大阪大学産業科学研究所の小口多美夫教授、および同研究所の安藤陽一教授らが参加。同成果は、次世代省エネルギー電子機器を支えるスピントロ二クス材料技術とその産業化に大きく貢献することが期待される。今回の開発で、東北大学と大阪大学の共同研究グループは、2010年に同グループが発見したTlBiSe2(Tl:タリウム、Bi:ビスマス、Se:セレン)というトポロジカル絶縁体の上に、2原子層のBi超薄膜を接合し、スピン分解光電子分光という手法を用いて、ディラック錐とBi超薄膜のエネルギー状態を高精度で調べた。その結果、Bi超薄膜によってディラック錐のエネルギー状態が劇的な影響を受け、もともとトポロジカル絶縁体の表面に局在していたディラック電子がBi側に移動する「トポロジカル近接効果」が起こっていることを初めて突き止めました。今回の発見は、「トポロジカル絶縁体のディラック電子は表面に束縛されて結晶外に取り出せない」というこれまでの常識を覆すとともに、「トポロジカル表面状態を実空間で操作する」という、全く新しい概念を提案するもの。今後、トポロジカル近接効果を積極的に活用する事で、例えば、ありふれた金属にトポロジカルな性質を意図的に付加して、スピントロニクス素子の性能を格段に向上するといった応用が期待される。また、今回の成果を基にさまざまなトポロジカル物質の開発が進めば、トポロジカル絶縁体を利用した次世代省エネデバイスの実現に向けての研究が大きく進展すると期待される。なお、同成果は、英国科学雑誌「Nature Communications(ネイチャーコミュニケーションズ)」オンライン版で公開されている。
2015年03月16日(前編はコチラ)前回は、ミジンコは女性上位、カメやワニは温度で性が決まるという、生き物の「性」にまつわるお話しを紹介しました。今回は、環境変化を敏感に感じる生き物たちや、その「サバイバル術」のお話です。○6. 「敵の匂い」がしたら「とげ」や「ヘルメット」を作って変身!現代は激動社会。人間も食うか食われるか、生き残りをかけた戦いの毎日です。では生き物たちは「弱肉強食」の原野をどう生き抜いているのでしょうか? わずか数mm足らずの小さな生き物「ミジンコ」も天敵に対して、驚くような防御術を持っているそうです。「ミジンコの場合、天敵の匂いがすると形を変えたミジンコが産まれてきます。その形は防御形態と呼ばれ、ミジンコの種類や天敵によって異なりますが、頭をまるで『へルメット』のようにとんがった形にしたり、後頭部に『とげ』を作ったりして、敵に食べられにくい形を作ります」と井口研究室のミジンコ博士こと宮川一志さんが教えてくれます。実際に、宮川さんにとげをつくるミジンコの動画を見せて頂きました。天敵であるフサカの幼虫はミジンコをいったん飲み込んだかに見えましたが、とげがひっかかって、はき出してしまいます。とげの本数が多いほど飲み込まれにくくなることが実験からわかったそうです。天敵のにおいとはどんな匂いなのか気になるところですが、宮川さんによると、「特定の構造をもつ化学物質だとわかったものの、どんな匂いかは正確にはまだわかりません」とのこと。どうやってとげが作られるのか、そのメカニズムを解明しようとしています。○7. ミジンコが教えてくれる水、化学物質の安全性ミジンコは、私たちの安全を守ってくれる、大切な存在でもあります。水の安全性や化学物質の安全性試験にミジンコは世界的に活躍しているのです。具体的な方法はこうです。産まれたばかりのミジンコを化学物質を入れた50ccのビーカーに1匹入れて3週間育てます。何匹子どもを産んだか数を数え、その数によって化学物質の安全性評価に用いるのです。極めてアナログな方法ですが、実は「OECD(経済協力開発機構)」が定めた世界ルールです。日本もOECDのルールに従ってミジンコを使った実験が行われています。「水の安全性を守るためには一番簡便な方法です。ミジンコがいくつ卵を産むか。たとえば、ミジンコが3日間で泳がなくなり死んでしまえば毒性が非常に強いと言えます。ただし、物質の量にもよりますね。この化学物質はこの量以上なら悪影響を与えるが、この量以下なら使えますなど、実験方法とデータをつけておけば、例えばある製品を輸出するときにOECD加盟国では新たな試験をしなくても共有できるのです」(井口教授)ミジンコが元気に泳ぎ、卵を産む水や田んぼは世界標準で安全、ということなのです。○8.NASA宇宙センター隣のワニは健康か? ワニを釣って調査!環境と生物の関係を長く研究されてきた井口教授。なんと、NASAから依頼を受けてロケット発射基地である、ケネディ宇宙センターに隣接する野生保護地域のワニの調査をしたことがあるといいます「フロリダ大学の客員教授をやっていたとき、環境ホルモンの影響を調べるためにフロリダのワニ(アリゲーター)を捕って研究していました。その研究仲間から『NASAの研究もやってくれない?』と話がきたんです。10年ぐらい前ですね。」筆者は打ち上げ取材でたびたびNASAケネディ宇宙センターを訪れ、確かに野生保護区が隣接し、ガイドツアーで大きなワニが横たわっているのを見てますが、あのワニ?「実はロケット発射後に、野生保護区の水のpHを調べると酸性度が非常に強いことがわかり、PCBやダイオキシン、鉛の影響もあるのではないかと言われていました。発射場で働く人たちは自分の身体への影響も心配だったんでしょうね。まず野生生物への影響を調べて欲しいと話が来ました。私も含めて研究者はみんな『面白い! やりましょう』と毎月、発射場のあるケープカナベラルに行って、ワニから血液を採っていました」とても簡単に仰る井口先生だが、ワニは大きいもので4メートルもあるという。しかも保護区だから殺せない。いったいワニからどうやって血液を採るのですか?「色々なやり方がありますが、昼間に行くときは釣ります(笑)。釣り竿で。」ワニを釣る!?「リールを使って針のところに三椏になったフックをつけます。そしてワニが浮かんでいるところの向こう側に投げて、ひっぱるとワニの皮膚に食い込みます。それを船に寄せます。気を付けないといけないのはワニの口です。噛む力は何百Kgもあります。でも開ける力は弱いんです。そこで結束バンドの大きなものを用意してワニの口からかけて締める。口をあけられなくなれば、安全です。目を覆えば暴れないのでテープをはって、3人ぐらいで引っ張り上げます。200~300kgぐらいかな。数をこなせば慣れますよ(笑)」なんと、井口教授は「ワニ釣り」のプロでもあったのです。生物学者はタフでないと。しかし意外にも、アリゲーターはもの凄く恐がりで自分から襲ってはこないそうです。危ないのはクロコダイルだとか。それで、ワニにはロケット燃料の影響はあったのでしょうか?「血液からは重金属や鉛が非常に高く検出されました。PCBも高いです。しかしそれがどう影響するかはまだよくわかりません。卵を研究室に持ち帰り、何匹孵化するか、これから研究に取り組んでいきます。他の場所との比較も必要ですし何年も継続していかないと」環境の影響は、簡単には結論が出せません。ワニとの格闘はまだまだ続きそうです。○9. ネムリユリスカ…生と死の境を行き来する動物の驚きの能力、特にサバイバル術という点で、井口教授が例にあげたのが「ネムリユスリカ」です。ネムリユリスカはアフリカに生息する昆虫で、その幼虫はカラカラに乾燥すると無代謝状態になり、100度近い高温にも、マイナス270度の極低温にも、ヒトが絶えられる量の1000倍近い放射線にも耐えられる。17年以上たっても水を与えれば生き返るという「不死身」の生物です。若田光一飛行士が国際宇宙ステーションで行った宇宙実験でも、乾燥状態のネムリユスリカの幼虫100匹のほとんどが、水を与えると宇宙で活動を始め、2週間後には一部がさなぎや成虫になったとのこと。「サバイバルというよりも、『どうやったら死ぬの?』という話になりますよね。乾燥しても水が入ればまた生き返る。生きている状態と死んでいる状態はどこで分けるのか、すごく不思議ですね」ネムリユスリカのような無代謝状態は、人間でも可能なのでしょうか? 火星以遠の木星や土星飛行には、数十年もの飛行期間がかかるため、太陽系大航海には人間の冬眠技術が必要になると川口淳一郎JAXA教授も言われていました。「脳の手術をするとき、代謝を落とすために氷で冷やした状態にすることがありますね。しかし脳を丸ごと長期間にわたって休眠させられるかどうかは、わかりません。たとえば凍結保存にしても、私達はミジンコの凍結保存にチャレンジしているのですが、まだ実現していません。ミジンコでうまくいかないのですから、ヒトではなかなか難しいでしょうね」(井口教授)○10. 性ホルモンが正しく働くこと=種のサバイバルところで、生き物の研究はなぜ、大事なのでしょうか?野生生物は「環境の番人」と言われます。環境が悪化すると、野生生物に影響が出ます。そしてその影響は同じ環境に生きる人間にとって、決して無関係ではないのです。井口教授は「環境中にはさまざまな人工的な化学物質が放出されていますが、報告をたどると1950年頃にDDTという農薬が使われ、毒性が強いだけでなく女性ホルモン作用もありました(レイチェル・カーソンの著書「沈黙の春」がきっかけで先進国では使用禁止になったことで知られる)。その後もさまざまな化学物質が使われ女性ホルモン作用するものはありますが、男性ホルモン作用するものはありません。逆に男性ホルモンにくっついて邪魔する農薬はいっぱいある。男は弱いのです」自然界がメス化しているとも言われるように、性ホルモンが正しく働かなければ、オスとメスのバランスが崩れ、いずれ種の絶滅につながるという事態も起こりえます。環境と生物について調査や研究を継続し、どのような影響があるかを見極め、どう対処するかを冷静に考えていくことが重要です。まずは、身の回りの生き物に関心をもち、その生態に学ぶことが、その第一歩かもしれません。○おわりに - 「不思議な生き物=研究者」集団、基礎生物学研究所取材に訪れた愛知県岡崎市の基礎生物学研究所は基礎生物学の特化した国内唯一の研究所です。井口教授が生息(!)するラボには、井口教授自らオークションなどで収集したワニやカメの剥製が、机の下から次々出てきます。ふと棚を見ればワニの卵(本物)がさりげなくおかれ、生き物好きにとっては「天国」のような場所かもしれません。ちなみに、この研究所で生き物三昧の研究生活を送るにはどうしたらいいのでしょうか?基礎生物学研究所の広報担当者によれば、大学卒業後に総合研究大学院大学(総研大)の生命科学研究科・基礎生物学専攻に入学するのが王道とのこと。ちなみにこの3月にミジンコの研究で博士号を取得予定の豊田賢治さんは愛媛県の工業高等専門学校出身。生物工学コースで柿の研究をしているときにオオミジンコを見て、「でけぇ!」とその虜になったそうです。高専から専攻科に進み大卒資格を取得した後、総研大に進学し、晴れて博士号取得となりました。ラボではミジンコ博士の宮川さんや豊田さんが現場を仕切り、井口教授が実験しようとすると「あれ、どこにある?」と聞くので「大名実験と嫌がられます」(井口教授)。ミジンコ大名はニコニコしながら博士達の活躍を見守っている。そんな楽しいミジンコ・ラボでした。井口教授も登壇する生き物の驚きの能力に関するシンポジウム「第18回 自然科学研究機構シンポジウム -生き物たちの驚きの能力に迫る-」が3月22日(日)に東京・一ツ橋の学術総合センターにて開催されます。今回の話を読んで、生き物に興味を持った方は、ぜひ参加してみてください。きっと、これまで知らなかった、生き物たちの神秘の世界を見ることができるはずです。○「第18回 自然科学研究機構シンポジウム」テーマ:「生き物たちの驚きの能力に迫る」日 時:2015年3月22日 10:00~17:00会 場:学術総合センター(一橋講堂)東京都千代田区一ツ橋2-1-2 学術総合センター2階参加費:無料申込方法:専用の申込みフォームにアクセスし、必要事項を記入○井口泰泉 教授のプロフィール自然科学研究機構 基礎生物学研究所 教授・理学博士専門は内分泌学、環境生物学2011年 日本動物学会賞受賞2013年 環境保全功労者表彰著書に「内分泌と生命現象(培風館)」などがある
2015年03月16日九州大学(九州大)は3月12日、線虫は尿によって高精度にがんの有無を識別することができると発表した。実用化されれば、尿1滴でさまざまな早期がんを数百円で高精度に検出できるようになる。同成果は九州大学大学院理学研究院/味覚・嗅覚センサ研究開発センターの広津崇亮 助教、伊万里有田共立病院の園田英人 外科部長、九州大学大学院医学研究院消化器・総合外科の前原喜彦 教授らの研究グループによるもの。3月11日付けの米科学誌「PLOS ONE」に掲載された。がん患者には特有の匂いがあることが知られており、がん探知犬を用いたがん診断が試みられているが、犬の集中力に左右されるため、1日5検体程度しか調べることができず、実用化は困難な状況にある。一方、線虫は犬と同等の嗅覚を持ち、匂いに対する反応も調べ易い。飼育も容易で、さまざまな実験技術が開発されていることから、がんの匂いおよびその受容体の同定を行うことができると期待される。今回の研究では、線虫ががん細胞に特有の分泌物の匂いに反応することが判明。その後、血液よりも診断が容易である尿に対する反応を調べたところ、がん患者の尿には誘引行動を、健常者の尿には忌避行動を示すことがわかった。また、テストをした数十種類のがんすべてに反応を示しただけでなく、早期がんに対する反応も確認された。さらに、線虫を利用したがん診断テストを実施したところ、感度(がん患者をがんと診断できる確立)は95.8%、特異度(健常者を健常者と診断できる確立)は95.0%だった。現在、国内のがん検診受診率は約30%にとどまっており、その理由として「面倒」「費用が高い」「痛みを伴う」「時間がかかる」「がん種ごとに異なる検査を受ける必要がある」などが挙げられている。同研究グループは「この技術が社会実装されれば、がん検診受診率の飛躍的向上とそれによる早期がん発見率の上昇、がんの死亡者数の激減、医療費の大幅な削減が見込まれる」とコメントしている。今後は、がんの有無だけでなく種類まで特定できるような技術の開発を進めるとのことで、すでに特定のがんだけに反応しない線虫を作製することに成功しているという。
2015年03月12日○「性の不思議」ミジンコからヒトへヒトは自分が「高度な生物」と思っているかもしれませんが、本当でしょうか? 体長わずか数mmのミジンコは通常メスだけの女性社会。ところが環境が悪化するとオスを生み、さらに生き抜くために「強い卵」を作ります。人間の「性の常識」が覆されると同時に、驚くべきサバイバル術を持っているのです。生き物から学ぶことは、たくさんあるのです!そこで自然科学研究機構・基礎生物学研究所(愛知県岡崎市)に環境生物学の第一人者である井口泰泉(たいせん)教授をたずね、生き物の「性」や「サバイバル」について伺いました。2回に分けて紹介します。前半は「男は本当に必要?」。気になる「性」のお話しです!○1. 「男って必要?」 - 女性上位のミジンコ社会人間界には男と女が存在します。男と女がいなければ、子どもは生まれない…これ、生物界の常識と思っていませんか? ところがメスがメスだけを生む生き物がいるのです。「ミジンコは通常、メスしかいません。アマゾネス(女性上位)なんです」と井口教授は笑います。ミジンコはエビや蟹の仲間の甲殻類で、川や湖沼、田圃にいる体長1~5ミリの小さな生き物です。交尾をしない(単為生殖)で3日に一回、30匹ほどの卵を産む。親は生まれた卵を背中に背負って育て、卵が孵化すると水中に放出します。生まれるのはメスばかりで孵化後約1週間で親になり、また卵を産む。環境がいいと、ミジンコは爆発的に増えていくそう。どの過程にもオスは関わっていないのです。「アブラムシも同じようにメスだけで増えていきます。一方、オスがオスを生む生き物はいません。生物界は女性上位。人間界だって女性のほうが大事ですよね?(笑)」(井口教授)○2. 環境が悪くなると、オスの出番生き延びるための「耐久卵」づくりでは、ミジンコ界にオスはまったく必要ないのでしょうか?「環境が悪くなったときがオスの出番です」。ミジンコにとって環境が悪くなる時とはどんな時? 例えば餌である藻類が不足したり、日の長さが短くなったり、水温が下がったりすると、オスが生まれるようになるというのです。そして、オスの役目はこの次の段階にあります。「オスのミジンコはメスと交尾して『耐久卵』を生みます。この耐久卵は乾燥に強く、たとえば20年間、水を与えずに机においておいても、再び水を与えればメスが二匹産まれます。ミジンコが自然に生み出した『生き残るための戦略』なのです」井口教授によると、ミジンコがこの戦略を使うのは、たとえば田んぼの稲刈り時だそう。「田植え時期には水があるし、餌である藻もあります。でも秋の稲刈りの頃には田んぼの水はなくなっています。ミジンコにとって『環境の悪化』です。そこでミジンコはオスを生み、耐久卵を作り、水が無く温度が低い冬を生き延びるわけです。そして春になり、再び田んぼに水がはられると、耐久卵からメスが生まれてくるのです」。そして生まれたメスはまたメスを次々に産む、という通常サイクルに戻るそうです。環境悪化時にオスが登場し、耐久卵を作る。いざという時に助けてくれるオスは、やはりミジンコにとって、頼りがいのある貴重な存在のようです。○3. 「オスになるスイッチ」って?ところでミジンコはどのような仕組みでオスを産むのでしょうか?井口教授らは約10年前、ペット用のダニ・ノミの駆除剤をオオミジンコの容器にほんの少し入れたときに、オオミジンコがオスばかり産むことを偶然、発見しました。駆除剤を調べると、『幼若ホルモン』というホルモンの構造を少し変えた物質が使われていました。幼若ホルモンは昆虫の脱皮を遅らせるホルモンで、ノミやダニが成虫になるのを抑制することで駆除剤として機能していたのです。井口教授らはこの幼若ホルモンが、ミジンコがオスを産むときに関わっていることを、突き止めました。では幼若ホルモンがミジンコのオスにどう関係するのでしょう。「幼若ホルモンは『オスになる遺伝子』のスイッチを入れるんです」(井口教授)。「ミジンコの卵が発生する時、幼若ホルモンが作用すると、『オスになる遺伝子』のスイッチが入ります。すると産まれるミジンコはオスばかりになるのです」。このミジンコの『オスになる遺伝子』の実体を、井口教授の研究チームは世界で初めて明らかにしました。ミジンコは人間と違い、メスもオスも同じ遺伝子を持っています。スイッチが入らなければメスしか産まれません。しかし、日のあたる長さが短くなったりして環境が悪化すると、ミジンコの体内で幼若ホルモンが作られ、卵に働いて「オスになるスイッチ」を押す。するとオスが産まれることが、井口教授らの実験により確認されています。○4. そもそも性の決まり方は?温度で性が決まるワニやカメミジンコの場合、環境が性を決めるとはユニークです。さらに井口教授によると「温度で性が決まる動物もいます」とのこと! 「たとえばワニは卵の孵卵温度がだいたい33.5度ぐらいだとオスになり、30度ぐらいだとメスになります。温度が高いとオスになるのです。でもカメは反対で、温度が低いときにオスになります」温度でオスかメスかが決まったり、ミジンコのように環境によって、オスになる遺伝子のスイッチが入ったりするなら、人間でも同様のことが起こりえるのでしょうか?「起こりません(笑)」と井口教授はきっぱり。「ヒトの場合はオスの遺伝子とメスの遺伝子が違いますよね。ヒトはXとYの性染色体をもっていて、XXならメスになり、XYならオスになる。つまりY染色体がオスを作ります。メスにはY染色体はないからオスになれない。それがヒトのようなほ乳類の性の決定のしかたです」一方、ミジンコやワニは性染色体を持たない。ミジンコの遺伝子はメスもオスも同じで、「オスのスイッチ」が入るかどうかで、性が決まるというわけです。「ただし、性染色体で性が決まるか、環境で性が決まるかの違いはあるものの、性が決まった後に精巣を作る働きをする遺伝子は、ヒトもワニもそれほど変わらないのです」違っているようで似ているところもあるのが、生物研究の面白さ、奥深さでもあります。○5. ヒトもミジンコも「生まれる前」が肝心!ミジンコがオスになるのは、卵が発生中に幼若ホルモンが働いたときだと書きました。井口先生によると、「たった一時間働いただけでオスになる」そうです。つまり「産まれる前の卵の段階が大事」ということです。ワニも卵が育っている段階で女性ホルモンを外から卵の殻に塗ると、中に染みこみ「本来ならオスになる温度でメスになってしまう」そうです。井口教授は「産まれる前の卵や胎児の状態が一番、環境の影響を受けやすい。人間の場合も同様で、妊婦さんは気をつけてほしい」と言います。妊婦さんが気を付けるべきものに、化学物質があります。環境中に放出されている化学物質の中にはホルモンと同じように作用するものがあり、井口教授らはこれを「環境ホルモン」と名付けました。環境ホルモンは1990年代後半から世界的な大問題となりました。たとえば、プラスチックを柔らかくする可塑剤も環境ホルモンといわれています。可塑剤は化粧品などにも含まれていますが、たくさん吸った妊婦さんから生まれた男の子を調べると 肛門からペニスの先端までの距離(生殖突起間距離)が少し短いという調査結果があるそうです。「オスがメス化しているのでは」という報告は他にも出ています。大人は肝臓の働きで化学物質は体外に出されますが、一番影響を受けるのは胎児と、肝臓がまだ発達していない乳児です。「最近は環境ホルモンの話題が少なくなりましたが、問題が解決したわけではありません。子供達について継続して調べ、成長後に生殖器の長さが戻るのか、生殖影響があるのかを調べる必要があるのです」現在、環境省では約10万組の親子を対象にした疫学調査「エコチル調査」を行っています。赤ちゃんがお腹にいる時から12歳まで定期的に健康状態を確認し、化学物質の子どもへの影響を見ていくというものです。日本だけでなく、米国や欧州、韓国も参加する世界的取り組みです。後半となる次回は、ミジンコの意外なサバイバル術や、井口教授がNASAから依頼され、ケネディ宇宙センターに隣接する野生保護区のワニを捕獲(釣り竿で!)、調査した話などを紹介します。また、井口教授も登壇する生き物の驚きの能力に関するシンポジウム「第18回 自然科学研究機構シンポジウム -生き物たちの驚きの能力に迫る-」が3月22日(日)に東京・一ツ橋の学術総合センターにて開催されます。今回の話を読んで、生き物に興味を持った方は、ぜひ参加してみてください。きっと、これまで知らなかった、生き物たちの神秘の世界を見ることができるはずです。(後編は3月16日の掲載予定です)○「第18回 自然科学研究機構シンポジウム」テーマ:「生き物たちの驚きの能力に迫る」日 時:2015年3月22日 10:00~17:00会 場:学術総合センター(一橋講堂)東京都千代田区一ツ橋2-1-2 学術総合センター2階参加費:無料申込方法:専用の申込みフォームにアクセスし、必要事項を記入○井口泰泉 教授のプロフィール自然科学研究機構 基礎生物学研究所 教授・理学博士専門は内分泌学、環境生物学2011年 日本動物学会賞受賞2013年 環境保全功労者表彰著書に「内分泌と生命現象(培風館)」などがある
2015年03月12日理化学研究所(理研)は3月11日、iPS細胞とES細胞の違いを決める分子を特定したと発表した。同成果は理研ライフサイエンス技術基盤研究センタートランスクリプトーム研究チームのピエロ・カルニンチ チームリーダー、同 アレクサンダー・フォート 客員研究員と、理研統合生命医科学研究センター免疫器官形成研究グループの古関明彦 グループディレクターらの研究グループによるもの。2月12日付け(現地時間)の米科学誌「Cell Cycle」に掲載された。体細胞に由来するiPS細胞と受精卵に由来するES細胞は、幹細胞としての多くの共通した性質をもつ。これまで、両者では遺伝子発現が異なると報告がある一方、特定のiPS細胞はES細胞とほぼ区別がつかないという報告もある。同研究グループは、2014年に、iPS細胞とES細胞の核内にはこれまで知られていなかった数千種類のRNAが発現していることを独自技術によって明らかにしていた。また、その多くがレトロトランスポゾンという遺伝子因子に由来するノンコーディングRNA(ncRNA)であることを突き止めた。ncRNAは、メッセンジャーRNAと異なり、タンパク質の設計図として用いられないRNAのため、これまでの解析では詳しく調べられていなかった。今回の研究では、マウス由来のES細胞とiPS細胞を用い、ncRNAを含めた全転写産物の網羅的な発現比較を行った。その結果、ES細胞の核内で発現するncRNAの多くが、iPS細胞では十分に発現していないことが判明。これらのncRNAの中には、多能性に関わる遺伝子の発現を促進する遺伝子制御部位や、レトロトランスポゾン由来のRNA配列が含まれており、既存のiPS細胞作製方では、ES細胞で機能している多くの遺伝子制御部位の活性が十分に起きていないことが示唆された。今回の結果は、今後、臨床に用いるiPS細胞を適切に評価する方法の開発や作製技術の改良に役立つと期待される。
2015年03月11日米Appleは9日(現地時間)に行われた新製品発表会において、医学研究用に設計されたソフトウェアフレームワーク「ResearchKit」を発表した。4月よりオープンソースとして提供される予定だ。ソフトウェアフレームワークとは、アプリ開発の枠組みとなる汎用的な機能をまとめたもので、これを利用することで開発者は独自に必要な機能に集中して効率よく開発を進めることができる。ResearchKitでは、医療・研究機関がiPhoneアプリを使って患者のデータを頻繁かつ正確に収集するための枠組みが提供される。ユーザーの許可を得てサードパーティ製デバイスやアプリで測定された体重・血圧・血糖値といったデータを収集できるほか、iPhoneの加速度センサー・マイク・GPSなどにアクセスし、歩行や運動機能、言語能力の測定なども可能。収集された情報はiPhoneから研究者に送られるため、患者が遠隔地からも研究に参加することが可能になり、より大規模な研究で多くのデータ収集と分析が実現する。これにより、医師が患者の状態をより深く把握し、一人ひとりに合った治療が行うことにも役立つとしている。また、プライバシー保護のためにAppleでは収集されたデータの内容は把握せず、医療機関に直接送信される。発表会ではぜんそく患者やパーキンソン病の研究など、医療機関・研究機関が開発した5つのResearchKitアプリが紹介された。これらはすでにApp Storeで提供されており、日本でもダウンロードが可能だ。Asthma Healthぜんそく患者向けの教育とモニタリングをサポートThe Share the Journey乳がん患者の経過観察と症状緩和に効果的な方法を調べるMyHeart Counts患者の活動・ライフスタイルと心臓血管の健康状態との因果関係を調査GlucoSuccess食事、運動、投薬といった各種要因と血糖値との関連性を把握Parkinson mPowerパーキンソン病患者がiPhoneのセンサーを使用して活動を測り、症状を記録
2015年03月10日理化学研究所(理研)は3月5日、植物の高濃度セシウムに対する耐性を高める化合物を発見したと発表した。同成果は、理研環境資源科学研究センター機能調節研究ユニットのアダムス英里 特別研究員、申怜 ユニットリーダーらの共同研究グループによるもので、3月5日付け(現地時間)の英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所の事故では、大量の放射性物質が拡散し、とくに放射性セシウム「セシウム137」によって水田や畑など農地を含む広範囲の土壌が汚染され、農作物への影響が大きな問題となった。セシウム137は半減期が30年と長く、土に含まれる粘土や有機物と強い。現在でも汚染が激しかった地域では農産物を生産できず、除染対策や農作物の安全確保に向けて、植物がセシウムを取り込む仕組みの解明が望まれている。これまでの研究で、高濃度のセシウムが植物の成長を阻害することや、科学的性質が似ているカリウムの取り込み経路がセシウムの取り込みにも関わることが知られているが、実際の取り込み経路や応答の仕組みの詳細についてはよくわかっていない。同研究グループは、約1万種のケミカルライブラリーをスクリーニングし、セシウムに対する耐性を高める化合物として5種を選出し、それぞれの化合物で処理した植物に含まれる濃度を分析した。その結果、「CsTolen A」に植物体内のセシウム蓄積量を著しく低下させる効果があることが判明した。また、「CsTolen A」はセシウムに選択的に結合することにより、植物がセシウムを取り込みにくくしていることも明らかになった。今回、「CsTolen A」に植物のセシウム取り込み抑制効果があることが確認されたことで、植物におけるセシウム取り込みのメカニズムの解明につながることが期待される。
2015年03月06日自然科学研究機構(NINS)は3月22日に、東京・千代田区一ツ橋にある学術総合センター(一橋講堂)にて、「第18回 自然科学研究機構シンポジウム」を開催する。今回のシンポジウムのテーマは「生き物たちの驚きの能力に迫る」となっており、生物が備えている驚くべき能力について、研究機関のみならず、その能力をビジネスに活用している企業の研究員などが、それぞれの視点から講演を行う。また、ジャポニカ学習帳の表紙を30年にわたって撮り続けてきた昆虫写真家の山口進氏も、独自の視点で講演を行う予定となっており、生き物の驚きの能力とそれに迫る研究者の姿と、さまざまな立ち位置から生き物に関わる人たちの姿の2つの側面からの話を聞くことができる。同シンポジウムで講演される各タイトルと講演者/所属研究機関は以下のとおり。「環境によって性が決まる! ミジンコの不思議」:井口泰泉 基礎生物学研究所 教授「サンゴと褐虫藻の切ってもきれない関係」:高橋俊一 基礎生物学研究所 准教授「干からびても蘇る! ネムリユスリカの極限乾燥耐性」:黄川田隆洋 農業生物資源研究所 主任研究員「不死の生殖細胞の不思議に迫る」:小林悟 基礎生物学研究所 教授「不思議な蝶の翅をまねた物作り~発展するバイオミメティクスの世界」:広瀬治子 帝人 構造解析センター 形態解析グループリーダー「花と昆虫の共進化を求めて」:山口進 写真家・自然ジャーナリスト「小さな生きものたちの紡ぐ大きな物語 - 普遍と多様をつなぐ」:中村桂子 JT生命誌研究館 館長また、各講演のあとには、モデレータに立花隆氏を迎え、講演者たちを交えたパネルディスカッションも開催される予定。開演時間は朝10時から夕方17時を予定。参加料は無料で、申し込みは、自然科学研究機構のWebサイトにある専用の申込みフォームにて、必要事項を記入する形で行われる。また、興味はあるが、当日の参加が難しい人のために、Ustreamならびにニコニコ生放送によるライブ配信も行われる予定。こちらも自然科学研究機構のWebサイトより見ることができるという。○高校生だけの特典 - 生きているイソギンチャクをその場で観察!?さらに、今回のシンポジウムでは、前回同様の特別企画「高校生記者の募集」も自然科学研究機構のシンポジウムの紹介を行っているWebサイト上にて行われている(3月9日応募締切予定)。前回は講演後に、講演者に個別質問を行えるというものであったが、今回は昼休みを利用して、当日の講演者の1人で、サンゴの白化現象の研究などに取り組んでいる高橋俊一准教授との交流、ならびに高橋准教授の解説付きで、「セイタカイソギンチャク」と「イソギンチャク内に共生する褐虫藻」の顕微鏡観察を体験するというものとなっている。ちなみに観察結果は画像や動画として持ち帰ることも可能だという(4GB程度のUSBメモリを持参する必要有)。なお、同シンポジウムの企画を担当した基礎生物学研究所の山本正幸所長にコメントを求めたところ、「遺伝子解析技術などの革新により、いままで十分に解析出来ずにいた生き物のさまざまな能力について、近年、注目すべき成果が出てきています。不思議な生き物たちの謎解きに挑む研究者の姿を是非見て頂けたら」と、今回のシンポジウムに向けた熱い想いがこもったメッセージをいただいた。生物の驚くべき能力を活用する製品なども登場してくるようになった昨今、そうした生物の持つ特殊能力はどのようにして調べられているのか、興味を持った人は参加してみると良いだろう。
2015年03月05日