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地域の子育て支援サークルで役員をしているママ。コロナ禍を機にオンラインで子育て支援サークルを開催することにしたそうです。新しい形での子育て支援活動をするまでの経緯や開催後の感想などを紹介しています。 私は仕事関連や自分の学びのために、Web会議ツールの「Zoom」を使うことがあったのですが、ある日「オンラインによる子育て支援」を発見! 試しに参加してみたらその素晴らしさに心がウキウキしました。このような体験をもっと多くの人にしてもらいたいと思い、私がおこなった新しい生活様式での子育て支援活動をご紹介します。 たまたま見つけた「オンライン児童館」新型コロナウイルスの感染拡大以前からZoomを使うことがあった私。外出自粛期間も友だちとSNSやZoomでつながりを持ち、乗り越えてきました。そんなある日、友だちのインスタグラムから「オンライン児童館」の存在を知りました。 そのころ、外出自粛は解除されたとはいえ、周りの児童館や子育て支援センター等は閉鎖されたり、限定的に解放されたりしている状態。試しに参加してみると、無料で手遊びや読み聞かせ、工作などをやってもらえ、親子共々楽しい時間を過ごすことができました。 広がるオンラインでの子育て支援調べてみると、他にもオンラインでの子育て支援が見つかりました。オンライン子育て広場、オンライン子育て支援センターなど個人でおこなっているものもあれば、自治体主導の子育てサロンもあり、親子ヨガや親子ダンスなどのレッスンもオンラインで受けられるようでした。 田舎に住んでいる私としては家にいながら全国の人とつながれたり、子育て支援を受けられたりして、新たな世界が開けたように感じたのです。 自分だけでなく、みんなにも広めたいこうしてZoomを使うことでコロナ禍もわりと楽しく過ごせていたのですが、ふと、Zoomが使えない人たちのなかには、ただただ孤独な育児に追い込まれている人もいるのではないかと思うようになりました。 ちょうどそのころ、地域の親子サークルの役員の間で「今年の活動は無理」と話していたのですが、「オンラインでの活動を広める良い機会だ!」と思い立ち、急ピッチで準備を進めました。 地域の子育てサークルをオンライン化役場の窓口や乳幼児健診で親子サークルのチラシを配ってもらったり、お試し会をしたりして、何とかオンラインでの活動を始めました。地域の民生委員さんも入ってくださり、初めてZoomを使った方も「意外と簡単だし、マスクもなくみんなの顔が見られてうれしい!」と笑顔になるのを見ると、おこなってよかったと思っています。 また、この活動をきっかけに、今度は自ら気になる講座やイベントを見つけて参加し、育児をより楽しめるようになった人がいてくれたらうれしいです。 専業主婦の中にはZoomになじみがなく不安な方もいたようですが、使ってみると意外に簡単でビデオやマイクをオフにして参加もできることから、かえって参加しやすいという感想ももらいました。今後ほかの地域や自治体でも取り組みが進めばうれしいなと思っています。 イラスト/sawawa監修/助産師REIKO著者:小林まり3男1女の母。元小学校教員。夫は土日出勤、出張も多いNPO職員。育児の大変さを実感しながらもコツをつかみ始めてきたところ。自身の経験を中心に執筆している。
2021年09月13日障がい者の就労移行支援サービスを行う「DEPARTURE」を展開する株式会社在宅支援総合ケアーサービス(代表:依田 和孝、本社:千葉県千葉市稲毛区)では、新型コロナウイルス感染症を理由に一時的に通所者が減少しましたが、Zoomによる遠隔サポートを推し進めた結果、自宅に居ながら支援を受けることが可能になったと好評で、遠隔サポート利用者が2019年度比80%増となりました。ZOOMとリアルの2本柱が好評【Zoomとリアルの2本柱での就労支援が好評】新型コロナウイルス感染症発生当初は、当事業所も休止状態となり、電話による安否確認など限られた支援しか行えない状況となっていました。事業所再開後もコロナに対する恐怖心や、三密を避ける動きから、通所を控える利用者が急増してしまい、多くの利用者が引きこもり状態に陥ってしまいました。そんな中でZoomによる遠隔サポートを推し進めた結果、自宅に居ながら安心して支援を受けることが可能になったと好評で、現在では来所は制限しているものの、午前中は来所対応、午後はZoomでの利用という形で通常通りの支援ができるようになり、当事業所は5名の就職者を送り出すことができました(全国平均では1事業所3名程度)。【コロナ影響を鑑み、厚労省から就労移行支援1年延期の通達も】「就労移行支援」とは、期限が2年で、その期間内に就労できなかった場合は条件を満たせばさらに1年延期できるシステムです。コロナの影響により十分な就労の実施や就職活動の継続が困難であった場合はさらに最大1年の延期という指示が、厚生労働省から通達されています。テレワークなど、今後多様な働き方が急速に進むことが予測され、支援の内容としてZoomという多くの事業所で使われる遠隔のシステムを就労移行支援の中で使用していくことは、利用者にとっても有効なシステムとなると考えられます。【就労移行支援 DEPARTURE詳細】障がいのある方を対象に、企業への就職に必要な就労トレーニングを行う福祉サービスです。最大2年間を学校のように通う通所型で、初歩的なPC操作から、書類作成や面接対策などを経て、就職の準備をしていきます。また支援員と相談しながらコミュニケーション能力向上を目指し、体調面でも各個人を配慮しながら学んでいくことができます。他の就労移行にはないPC指導のスペシャリストがおり、PCの資格検定試験を開催したり、資格研修を行ったり、事務作業に必要なテクニックや資格を取得することが出来ることが最大の特徴です。卒業生には、医療・介護・福祉・保育サービスを行うグループ会社への就職も紹介しています。【今後の展開】新型コロナウイルス感染症による影響は、今後も増加し続けていくことが予測されます。当社では感染対策も実施しつつ、変化する社会に対応した支援を実施していきます。本件に関するより詳しい内容をご希望でしたら、当社ではマスコミの方の取材お申し込みを随時受け付けておりますので、是非お問い合わせください。【会社概要】名称 : 株式会社在宅支援総合ケアーサービス所在地: 〒263-0043 千葉県千葉市稲毛区小仲台6-5-11URL : 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2021年08月31日長男のタケルは通常学級に通うも...Upload By 寺島ヒロうちのでこぼこ兄妹は6歳違い。お兄ちゃんのタケルが小学生になった2007年は、まだ学校での発達障害支援は始まったばかり、当時の保護者はもちろん、小学校の先生の中にも「発達障害って何?単にサボってるだけじゃないの?」という感覚の方も正直いらっしゃったのではないかと思います。また、当時の地域での判定基準がIQに偏っていたこともあり、タケルは就学時健康診断でも特に問題とされることなく、ベテランの先生方にも「ちょっと変わっているかもしれないけど、こういう子っているものよ。」「これからたくましくなるんだよな。」と優しく言っていただき、多少のずれを感じながらも通常学級に通うことになりました。しかし、問題続出…!!Upload By 寺島ヒロUpload By 寺島ヒロしかし、「ほらあ!」というわけにもいきません。結局、2年後に地元の発達相談をきっかけに、療育センターで「アスペルガー症候群(当時)に近い症例」と診断され、通級に通うことになりました。しかし、その2年間の間に市内の小学校の間で発達障害への理解が深まっていたことも大きく、幸運にも当時県内で唯一の心理士が在籍する小学校に転校でき、スムーズに通級での指導に切り替えることができました。本人が環境の変化についていけるかは心配でしたが、最初から障害がありますといって登場したことで、それまでより快適になり、意外とすんなり新しい2つの教室に馴染めたようです。授業に飽きたり、教室がうるさくて逃げだしたくなったりしたときにも、休むところができたので、「帰りたい」ということもなくなりました。一方、妹のいっちゃんは…妹のいっちゃんは2007年生まれ。小学校に入る前から、県内の療育センターで療育を受けていました。Upload By 寺島ヒロ療育センターでのリハビリテーションのおかげか、いっちゃんも就学時健康診断では「通常学級相当」とされ、地元の小学校の通常学級に通うことになりました。しかし実は、その前に療育センターからは、「学校生活がやりやすいかどうかは学校の対応次第だが、それはそれとして通常学級に行くとここでの支援は難しくなる。他の県内のデイサービスでも支援に当たらないとされる可能性がある。」と言われていたので、むしろ特別支援学級の方がいいんじゃないかと思っていました。Upload By 寺島ヒロですが、仕方ありません。センターの先生からは、眠りが一定しないことで十分な登校ができない可能性があることや、動きがぎこちないことがあるが、ふざけているわけでも病気でもないことなどを書面で書いていただき、小学校で特別支援学級の子どもたちと同じように支援ファイルをつくっていただきました。そして、今…特別支援学級の先生の一言から気づいたこと現在は中学生となったいっちゃんですが、睡眠リズムがずれ込むのが止められず、中学から通級になりました。学校に行くのはたまにですが、それなりに親しい人もでき、楽しくやっているようです。今、気になるのは卒業してからのこと…。本人はテレビやアニメの主人公たちのようになんとなく高校に行くものと思っているようですが…。Upload By 寺島ヒロ出席日数が少ないので、高校からは「通う意思なし」とみなされ入学できない可能性が高いのです…。そこで、帰り際に支援担当の先生を呼びとめて、このようにお願いしました。「娘はああ言っていましたが、あの子がほかの同じ年頃の子と同じくらい進学や将来について理解しているかは微妙です。私は芸術系の学校などに進学して手に職系の仕事につき、自立できれば有難いと考えています。本人が高校を目指すのは良いと思いますが、何が何でも15歳でと考えなくてもいいと思っていて、本人がどの程度高校のことについて理解しているのか、行きたいという意思が固いかが分かるような言動があったら、教えていただけませんか?」すると、「お母さんは自分の希望と、いっちゃんの考えを分けてお話してくれるので助かります。分かりました、気をつけて覚えておきます。」と、言われました。自分の希望と本人の希望は別なんだから当たり前じゃないか?と思ったのですが、お兄ちゃんのタケルが通級に通い始めたときのこともあわせて後々考えると、これは自分の希望を「ウチからの要望」としてカタマリのまま支援者に投げる保護者の方が意外と多くいらっしゃるからなのかなと、ふと思いました。Upload By 寺島ヒロまた逆に、すごく勉強もされてプランを練り「私はこう育てたいので、学校でもこうしてください。」と言われる方もいらっしゃるようです。家庭が主体性をもって決めるのは良いことだと思いますが、あまりに度が過ぎると学校を自分の下請けにするようで、これもまたよろしくないなあと思います。「なんでも言ってください」という支援者の言葉に甘えて、子どものための要望という形で自分の不安をぶつけてはいないか?何か頼み事をするとき、自分の勝手なプランのお手伝いをさせようとしていないか?時にはちょっと立ち止まって考えてみるといいかもしれません。Upload By 寺島ヒロ目の前にいる学校の先生や支援スタッフが、支援に対する十分な知識や能力がないことも、まあ実際あります。ですが、元々彼らは子どもを一緒に育ててくれる「外の目」「外の手」。親のやりたいことを代わりにやってくれるわけではなく、むしろ親ができないことをやってくれるプロのはずです。なので、まずはプロが用意した支援を有難く受け取り、任せるべきところは任せ、そしてその分の余力で、自分がやるべきところを頑張るというやり方をしてみると案外上手くいくんじゃないかなと思います。とか言いつつ、今日も学校から「いっちゃん、今日は学校に体操服を忘れていきました。明日も体育ありますよね。洗って学習室に干してありますので朝持っていくようにお願いします。」と電話がかかってきた私です。それ先生(プロ)の仕事じゃないですよね!!すみませえぇんん!!
2020年11月28日地域の子育て支援サークルで役員をしているママ。コロナ禍を機にオンラインで子育て支援サークルを開催することにしたそうです。新しい形での子育て支援活動をするまでの経緯や開催後の感想などを紹介しています。 私は仕事関連や自分の学びのために、Web会議ツールの「Zoom」を使うことがあったのですが、ある日「オンラインによる子育て支援」を発見! 試しに参加してみたらその素晴らしさに心がウキウキしました。このような体験をもっと多くの人にしてもらいたいと思い、私がおこなった新しい生活様式での子育て支援活動をご紹介します。 たまたま見つけた「オンライン児童館」新型コロナウイルスの感染拡大以前からZoomを使うことがあった私。外出自粛期間も友だちとSNSやZoomでつながりを持ち、乗り越えてきました。そんなある日、友だちのインスタグラムから「オンライン児童館」の存在を知りました。 そのころ、外出自粛は解除されたとはいえ、周りの児童館や子育て支援センター等は閉鎖されたり、限定的に解放されたりしている状態。試しに参加してみると、無料で手遊びや読み聞かせ、工作などをやってもらえ、親子共々楽しい時間を過ごすことができました。 広がるオンラインでの子育て支援調べてみると、他にもオンラインでの子育て支援が見つかりました。オンライン子育て広場、オンライン子育て支援センターなど個人でおこなっているものもあれば、自治体主導の子育てサロンもあり、親子ヨガや親子ダンスなどのレッスンもオンラインで受けられるようでした。 田舎に住んでいる私としては家にいながら全国の人とつながれたり、子育て支援を受けられたりして、新たな世界が開けたように感じたのです。 自分だけでなく、みんなにも広めたいこうしてZoomを使うことでコロナ禍もわりと楽しく過ごせていたのですが、ふと、Zoomが使えない人たちのなかには、ただただ孤独な育児に追い込まれている人もいるのではないかと思うようになりました。 ちょうどそのころ、地域の親子サークルの役員の間で「今年の活動は無理」と話していたのですが、「オンラインでの活動を広める良い機会だ!」と思い立ち、急ピッチで準備を進めました。 地域の子育てサークルをオンライン化役場の窓口や乳幼児健診で親子サークルのチラシを配ってもらったり、お試し会をしたりして、何とかオンラインでの活動を始めました。地域の民生委員さんも入ってくださり、初めてZoomを使った方も「意外と簡単だし、マスクもなくみんなの顔が見られてうれしい!」と笑顔になるのを見ると、おこなってよかったと思っています。 また、この活動をきっかけに、今度は自ら気になる講座やイベントを見つけて参加し、育児をより楽しめるようになった人がいてくれたらうれしいです。 専業主婦の中にはZoomになじみがなく不安な方もいたようですが、使ってみると意外に簡単でビデオやマイクをオフにして参加もできることから、かえって参加しやすいという感想ももらいました。今後ほかの地域や自治体でも取り組みが進めばうれしいなと思っています。 イラスト/sawawa監修/助産師REIKO著者:小林まり3男1女の母。元小学校教員。夫は土日出勤、出張も多いNPO職員。育児の大変さを実感しながらもコツをつかみ始めてきたところ。自身の経験を中心に執筆している。
2020年10月01日0〜2、3歳ごろまでの親子が遊べる子育て支援センター。新型コロナウイルスの感染拡大により、利用人数や時間などの制限付きのところも多いですが、徐々に利用できるようになっているところも増えてきたようです。私が1人目を出産したときに住んでいた地域では、児童館の中に乳幼児向けの一室が設けられていました。乳幼児健診のときにそのような場所があることを知りましたが、行ったほうがいいのかどうか迷ったときのことをお伝えします。 子育て支援センターに行くタイミング子育て支援センターに初めて実際に足を運んだのは、赤ちゃんが1歳になるかならないかのころ。かなり活発にハイハイや伝い歩きで動き回るようになり、1日中、自宅の中で過ごすことに限界を感じていたからでした。 子育て支援センターは自宅よりもずっと広いうえに、安全対策もしっかりされているため、のびのびと赤ちゃんを遊ばせることができました。また、スタッフの方やほかのママさんと他愛もないおしゃべりをすることで、思った以上にリフレッシュできた点もよかったです。 自宅ではできなかった経験ができる!子育て支援センターには、乳幼児向けの絵本やおもちゃがたくさん。自宅にあるもののほかにも「わが子はこういうものにも興味があるんだ!」と、新たな発見もありました。 また、私は手遊びなどでわが子と一緒に遊ぶのがあまり得意ではないため、自宅ではほとんどしていませんでした。そのため、スタッフの方が手遊びや歌を歌ってくれる時間があったことも、とてもありがたいと感じた点でした。 でも、無理をして行く必要はない!上の子が赤ちゃんのころは頻繁に通った子育て支援センターですが、下の子のときは上の子の幼稚園送迎などで忙しくなったこともあり、それほど足を運ぶことはありませんでした。 でも、そのことによって上の子と下の子の発育や発達上の差は、特に感じていません。メリットもたくさんある子育て支援センターですが、近くに支援センターがない、一度行ってみたけれど雰囲気が合わなかったなどの場合は、無理をしてまで行く必要はないと私は思います。 子育て支援センターで出会うママさんたちとの「行けるときに行き、会えたら話す」という距離感。この距離感も、幼稚園でのママさん関係とまた違い、そのゆるやかさがなかなか心地よかったです。 イラスト/ののぱ監修/助産師REIKO著者:奥田美紀二児の母。IT企業にてSE・プログラマーとしてシステム開発やWEBサイト運用等をおこなう。夫の転勤や子育てのために退職し、現在は妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆している。
2020年09月26日子育て支援センターをご存じでしょうか。市区町村や社会福祉法人、NPO法人等が運営する施設で、地域の子育て家庭に対する育児支援をおこなうことを目的としています。利用した方もいらっしゃると思いますが、利用をしていない方向けに子育て支援センターについてお伝えします。 子育て支援センターとはこんなところ子育て支援センターは地域の子育て支援の拠点として、全国に7578か所(2019年度)ある施設です。従事者や施設の差はありますが、子育て親子の交流の場の提供と交流の促進、子育てなどに関する相談・援助の実施、地域の子育て関連情報の提供、子育ておよび子育て支援に関する講習などの実施をおこなっています。 分類としては、以下の3つに分かれます。 ひろば型常設のひろばを開設し、子育て家庭の親とその子どもが気軽に集い、うち解けた雰囲気の中で語り合い、相互に交流を図る場となっています。公共施設内のスペースや商店街の空き店舗、学校の余裕教室、民家の一室などで実施しています。 センター型地域の子育て支援情報の収集・提供に努め、子育て全般に関する専門的な支援をおこなう拠点として機能するとともに、既存のネットワークや子育て支援活動をおこなう団体等と連携しながら、地域に出向いた地域支援活動を実施しています。保育所などの児童福祉施設や公共施設等が実施場所となっています。保育士や看護師など、育児・保育に関する知識・経験を有する人を2名以上配置しています。 児童館型民営の児童館、児童センターにおいて、利用児童の来館前の時間などを利用して、親子の交流・集いの場を設けるとともに、子育て中の親などの当事者等をスタッフに交えて、身近で利用しやすい地域交流活動を実施しています。 電話やメールなどで相談ができるところも利用するには、予約が必要なイベント以外では基本的には予約不要ですが、最近では新型コロナウイルスの影響で通常と異なる運営がされているケースもありますので、まずはホームページやお電話などで確認しましょう。相談ごとであれば、子育て支援センターにもよりますが、電話やメールで子育てについての相談を受け付けているところも増えています。ご相談の内容としては、子育て全般、子どもの発達・発育、一時預かりの紹介、子どもと遊ぶ場所など多岐にわたっています。 また、子育て支援センターではありませんが、ベビーカレンダーでも専門家への相談ができます。ユーザー登録をしたうえでログインすると、無料で助産師・管理栄養士などに相談ができるフォームが開きますので、ぜひご利用ください。 子育てについて不安になることもあると思いますが、子育て支援センターの利用や専門家の相談で解消される内容も少なくありません。子育てでお困りのことがある場合には、子育て支援センターの利用や本サイトも含めた専門家への相談をすることも検討してみましょう。 監修者・著者:ファイナンシャルプランナー 大野高志1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®(日本FP協会認定)。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。予備校チューター、地方公務員、金融機関勤務を経て2011年に独立。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等 多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。
2020年09月23日きょうだい児への支援を考えるお子さんの発達の心配や育児の悩みをサポートする「発達障害児家族支援講座」。第4回目は、「きょうだい児の気持ちって?~当事者の経験から~」をテーマに、・きょうだい児支援の現状・きょうだい児当事者の話・参加者の皆さま同士のグループトークを実施。LITALICOジュニアのジュニアサポート室・井田と、LITALICOジュニアで指導員をしている4名がきょうだい児当事者として登壇しました。障害のある子がきょうだいにいる子どものことを、「きょうだい児」と言います。初めに、きょうだい児支援の現状について確認しました。厚生労働省の「放課後等デイサービスガイドライン」に、父母の会の活動を支援したり、保護者会等を開催したりすることにより、 保護者同士が交流して理解を深め、保護者同士のつながりを密にして、安心して子育てを行っていけるような支援を行うことも望まれる。家族支援は保 護者に限った支援ではなく、きょうだいや祖父母等への支援も含まれる。特にきょうだいは、心的負担等から精神的な問題を抱える場合も少なくないため、例えば、きょうだい向けのイベントを開催する等の対応を行うことが望 ましい。と書かれているように、家族支援を行うことが望ましく、また家族支援には保護者だけでなく、障害がある子のきょうだいも含まれると書かれています。しかし、キャンプ等の居場所づくりや成人後の語り合いの場等が少しずつ始まっているものの、きょうだい児への支援は制度化されていないのが現状です。気を付けたいのが、きょうだい児の支援は、お子さんやご家庭の状況に合わせて考えてみることが大切だということ。「こうするのが正解」というものはありません。きょうだい児の気持ちきょうだい児がどんなことを感じているのか、気になるけれど直接聞くことができない、ほかに知る機会がないというお声をよく聞きます。今回の講座では、きょうだい児についてそれぞれのご家庭で考えるときの参考としていただくために、LITALICOジュニアで指導員をしている4名が、発達障害や身体障害のあるきょうだいがいる、きょうだい児当事者として話をしました。その一部をご紹介します。「今の仕事に出会えたこと。少しでも人の役に立てている実感や、やりがいを持ちながら仕事ができています。きょうだいがいることが仕事の活力になっています」「福祉の道に進もうと思ったきっかけをくれたことです。また、(障害のあるきょうだいがいることで)大人との関わりが多くあり、きょうだいのおかげで出会えた人たちがたくさんいます」「この業界を知り、働くことができていることです」「世の中にはいろいろな人がいることに早くから気付くことができました。先回りして行動する力が付いた気がします」「1対1で出かけたり、遊ぶ時間を設けてくれたりしたことが嬉しかったです。きょうだいともいろいろな場所へ連れて行ってもらい、さまざまな体験ができました」「自分の将来のことを全力で応援してくれました。常に(障害のある)きょうだいと同じように自分のことも大切に思い、対応してくれていたことが嬉しかったです」「行先は限られ、外出先も近場が多くはありましたが、きょうだいも一緒にいろいろな場所に連れていってもらえて楽しかったです。きょうだいの体調不良で急に予定が中止になることもありましたが、違う形で時間を作ってくれました」「家族の1番は常にきょうだいだと感じて、自分だけを見てほしいと思ったことがあります。母がきょうだいの入院に付き添っていていないことが多くあり、寂しい思いをしました」「『きょうだいは~だから仕方ない』『あなたが我慢しなさい』という気持ちを、なんとなく感じることがありました」「使えるサービスや資源をできるだけ活用して、頑張りすぎないで欲しいです。きょうだい児だから...と考えすぎないでいただきたいです」「保護者さまとお子さんの心身の健康を1番にして欲しいです。『頼れる人・場所・情報』をたくさん作っておいていただくといいと思います」「母を見ていて思うことは、保護者同士の繋がりが心の支えになっているということです。きょうだいが特別支援学校を卒業して10年以上経ちますが、まだ繋がりがあると聞いています。学校の仲間や通所先の仲間が多いと、保護者さまも心強いと思います」「中学生のときに詳しい話を聞きました。後から母に聞いてみたら、私がきょうだいについて質問するのを待っていたそうです。私自身は小学校2年生ぐらいから、他の家族との違いを感じ始めていました」「中学2年生ごろです。詳しいことは大人になってから聞きました。保護者さまからご質問いただくことがあるので、母に聞いてみたら、『いつ・どうやって』伝えるのが良いのか悩んだそうです。特に見えにくい障害だと、伝えるタイミングに悩まれるかと思いますが、私自身は保護者さまが伝えたいタイミングで良いのかなと思います」「きょうだいの身体の障害について小さいころから気づいていたので、母や父になんとなく聞いていたと思います」「両親は都度、私の質問に答えてくれていました。詳しく聞いたのは、高校生~大学生のころです」きょうだい児支援の講座を終えてUpload By 発達ナビ編集部きょうだい児にスポットをあてた場はまだまだ少なく、アンケートでも「当事者の方のお話を聴ける機会はなかなかないので、とてもよい時間でした」というお声をいただきました。今回お話してくださった方のお話は、それぞれ違う境遇や思いがありながらも、共通する部分があったのではないかと思います。「きょうだい」としてではなく、ひとりのお子さんとして接することや、1対1の時間をつくることの大切さ、ネガティブな出来事はゼロにはできないが、家族の楽しい時間を増やすこと…具体的なエピソードは違いますが、どの方にも参考にしていただけると思います。アンケートでも、「小さいころはよいこと嫌なことがあると思いますが、それを引け目に感じることがない工夫をしてあげたいと思いました」というお声をいただきました。また、当日は保護者さま同士のシェアもとても盛り上がりました。お話の中にもあったように、保護者さまの相談できる場所を増やすこと、心身の健康を保つことが、ご家族、ひいてはきょうだい児のためにつながっていくと思います。
2020年03月14日前回のあらすじ娘が18歳の時に学校主体で開催された、保護者向けの障害年金説明会をきっかけに、申請のための準備を少しずつ進めようと考えた私。役所の窓口の方にもまだ早いと驚かれましたが、少し早めに過去の記録を引っ張り出し、保護者が作成できる書類の記入に取り掛かることにしました。早めに準備ができる書類『病歴・就労状況等申立書』は障害年金を申請する際に必要な書類の一つです。医療機関に記載を依頼する診断書などには有効期限がありますが、これは請求者(本人や保護者)が作成する書類なので早めに準備しておくことができます。私は隙間時間に少しずつ作成していきました。Upload By 荒木まち子どこで区切るか『病歴・就労状況等申立書』の最初の欄は発病から初診までの間(先天性疾患は出生時から初診まで)の状況を、それ以降は期間を3〜5年に区切って書くので、私は娘の経過を、1.出生時~初診まで(娘の場合は0~2歳)2.未就園の期間3.幼稚園の期間4.小学校(低学年)5.小学校(高学年)6.中学校7.高校8.就職後に分けて書くことにしました。娘の場合、一枚では欄が足りなかったので『病歴・就労状況等申立書(続紙)』を使用しました。Upload By 荒木まち子状況記入欄に何を書くか状況記入欄には、(受診していた期間は)通院期間、受診回数、入院期間、治療経過、医師から指示された事項、転医・受診中止の理由、日常生活状況、就労状況などを書くのですが、私はそれらの他に・初診まで…親が感じていた困り事(視線が合わない。抱くとのけぞって嫌がる。手をつなぐのを嫌がる。発語が遅い。)など・就学まで…療育センタ―受診の経緯、療育内容、幼稚園での様子・学生時代…障害由来の学校での困り感、学校でのいじめの様子、感情コントロールの困難さ、支援機関との連携について・就職後…新たな環境に対する不安の強さ、精神的に不安定な様子、職場で行われている配慮などを記入しました。Upload By 荒木まち子当初「なんてサイズが大きいんだろう!」と思っていた『病歴・就労状況等申立書』用紙は、娘の20年間の困りごとで、みるみる埋まっていきました。それは「よくまあこれだけのことがあったものだ」と我ながら感心するほどで、最終的には枠内に書ききれず、割愛するエピソードがでるほどでした。手書きかPC作成か申請書類作成は手書きでも大丈夫ですが、『病歴・就労状況等申立書』と『病歴・就労状況等申立書(続紙)』は日本年金機構のHPからダウンロードすることができるので、私はエクセルで作成をしました。ここで注意しなければならないのは『病歴・就労状況等申立書』と『病歴・就労状況等申立書(続紙)』では裏面が違うということです。Upload By 荒木まち子Upload By 荒木まち子『病歴・就労状況等申立書』と『病歴・就労状況等申立書(続紙)』は、A3サイズで両面印刷をした後に、裏面の請求者署名欄に本人署名(または捺印)をする必要があります。(見本の赤丸で囲った部分)「自発的」の意味合い『病歴・就労状況等申立書』裏面には『日常生活状況』を4段階(※)の中から選ぶ項目があります。(見本の黄色枠で囲った部分)※「1」→自発的にできた「2」→自発的にできたが援助が必要だった「3」→自発的にできないが援助があればできた「4」→できなかったこの“自発的”には“すべてを自分一人で”という意味合いがあるということを知り、<着替え>の項目では一人で着替えられたとしても“自分で季節にあった服を選ぶこと”ができていなければ「1」にはならない、<食事>の項目でも食卓に出されたものを自分で食べることはできても“一人で暮らした時に栄養のバランスを考えた食事を取ること”ができなければ「1」にはならないなどの点も気をつけなければならないと思いました。なので本人が「自分でできている!」と思っていても、申立書の記入時には注意が必要です。参考になった勉強会学校での障害年金申請説明会から1年ほど経ったころ、娘が余暇支援やショートステイで利用している地域活動ホームで、保護者向けの勉強会がありました。講師は「親なきあと」相談室を主宰する、行政書士、社会保険労務士、ご自身も障害児の親でもある渡部伸さんでした。障害のある人の「親なきあと」についてのお話は、・暮らし方やお金に関すること・医療費、信託制度、成年後見人制度について・相談先や実際の事例など多岐にわたる内容でした。なかでも障害年金についてのお話は、ちょうど『病歴・就労状況等申立書』を作成していた私にとって、とても参考になる内容でした。親なきあと相談室|渡部行政書士事務所親目線は一味違う!日本年金機構(年金事務所)の方の説明会も勉強になりましたが、やはり親目線ももちあわせた先生からのお話は格別で、・『病歴・就労状況等申立書』には具体的なエピソードを書くと良い(書ききれない場合は別紙添付も可)・障害年金申請が通らなかった場合には審査請求、再審査請求などができる・働いている場合は職場からの意見書も有効など、前回の説明会では知りえなかったことを学ぶことができました。(勉強会を企画してくれた地域活動ホームに感謝、感謝です!)続く...
2020年01月07日~未就学期から将来の就労・自立まで~上尾市主催「発達障害児家族支援講座」「発達障害児家族支援講座」(埼玉県上尾市主催)は、発達障害があるお子さんの保護者を対象に、お子さんへの支援や関わり、社会的資源について、未就学期から将来の就労・自立までさまざまなライフステージにおける支援を学ぶ講座です。2019年10月14日(祝)に行われた鳥取大学大学院教授 井上雅彦先生の基調講演をかわきりに、お子さんそれぞれの発達を育むLITALICOジュニア、就労移行支援を行うLITALICOワークス、障害のあるお子さんとご家族のライフプランのサポートをするLITALICOライフプランニングのスタッフが全4回のリレー講座を行います。発達障害のある子どもへの支援~学習支援を中心に~お子さんの発達の心配や育児の悩みをサポートする「発達障害児家族支援講座」。講座第2回目は「発達障害のある子どもへの支援~学習支援を中心に~」をテーマに、・発達が気になるお子さんへの学習支援・ ”個”と”環境”へのアプローチ・学習支援の具体例について、LITALICOジュニアのスーパーバイザー・阿部先生が登壇、紹介しました。発達が気になるお子さんが通うLITALICOジュニアでの「授業についていけない」「特別支援学級在籍だが、学校ではなかなか勉強が進まない」という学習ニーズのあるお子さんへのサポート例について紹介。各単元の予習や復習より優先するのは・学習しづらい要因は何か どうすれば学びやすいか・困ったときに何ができるか等を一緒に考えること。学習でのつまずきの背景には、一人ひとり違う困難があります。それに気づき、解決策を考えていくのです。例えば、順を追って文章を読むのが苦手なお子さんには「国語のテストでは、定規を当てて印をつけながら読むと飛ばさずに読めるね」、計算が苦手でパニックになってしまうお子さんには「算数の公式をノートの上に書いてから計算を始めてみよう」というように、お子さん一人ひとりに合わせて考え、サポートすることが大切です。続いて、“個”と“環境”へのアプローチについて説明。Upload By 発達ナビ編集部お子さんの困りごとは、周囲との相互作用によって生まれます。個とは、子ども自身にある特性。環境とは、ご家庭・教育機関・地域・配慮などの個をとりまく全てを指します。双方がうまくかみ合わないと困りごとが生まれてしまいます。お子さんが「視界がせまい」「聞き取りづらい」「不安になりやすい」場合、「正面に座る」「静かな環境を整える」「相づちを打つ・笑顔を向ける」ことで、困りごとを減らしていくことができます。このように、お子さんにフィットするように、環境面を整えていくことが大切です。「氷山モデル」についてもご紹介しました。Upload By 発達ナビ編集部今は水面下に隠れているけれど、これから表出する可能性がある困難さがあるかもしれないという考え方です。例えば、板書を写すのが遅いお子さんの場合、(板書が)見えていない・書くことが苦手・モチベーションが上がらない・文字情報の認知の困難さ・記憶の困難さ、といった可能性が考えられます。また、お子さんを褒めることで「自己肯定感を上げる」重要性についてもお伝えしました。自己肯定感が下がってしまうと、環境を整えても本人が挑戦する気持ちが生まれにくくなります。褒めるポイントがうまく見つけられないときは、「褒めるハードルを下げる」「(結果ではなく)努力していることを褒める」「困った行動をしていないことを褒める」などのコツがあります。LITALICOジュニアでは、好きや得意を活かせたり、楽しく学べたりするためにさまざまなタイプの教材を用意しています。その理由は、お子さんがいろいろな教材を試してみて、覚えやすい方法を「自分で選ぶ・決める」体験をしてほしいと考えているからです。お子さん自ら「こうやってみよう!」と思いつく状態をつくることで、自信やモチベーションのアップにつなげていきます。学習支援の講座を終えてUpload By 発達ナビ編集部今日は40名以上の方にご参加いただきました。皆さんが熱心に聞いてくださり、また講義後のアンケートでも「環境を整えることが大事だと再確認できた」「学校との面談の参考にしたい」等のお声をいただくことができ嬉しかったです。お子さまの抱える困りはさまざまなので、一人ひとりの思いや願いを大切に日々の支援に携わるようにしています。特に今回のテーマでもあった学習支援においては、ご本人にあった学び方や考え方を見つけられると「これならできる!」という自信や「もっとやってみたい!」という意欲につながります。学習面での自己肯定感が低いお子さまも少なくないですが、自分の得意な学び方を見つけて今後に活かしていってほしいなと思います。私には短期記憶障害をもつ弟がおり、講義の中で彼の学生時代や仕事上の困難さについてもお話しさせていただきました。彼自身も学校のテストや実習で大変苦労していましたが、自分に合う学び方や苦手なこととの向き合い方を見つけながら一つひとつ乗り越えています。自分なりの方法が見つかるまでは少ししんどいですが、一人でも多くのお子さまが「これならできる!」「こうすれば分かる!」という自信を見つけてほしいと思っています。
2019年12月22日0〜2、3歳ごろまでの親子が遊べる子育て支援センター。私が1人目を出産したときに住んでいた地域では、児童館の中に乳幼児向けの一室が設けられていました。乳幼児健診のときに、そのような場所があることを知りましたが、行ったほうがいいのかどうか迷ったときのことをお伝えします。 子育て支援センターに行くタイミング子育て支援センターに初めて実際に足を運んだのは、赤ちゃんが1歳になるかならないかのころ。かなり活発にハイハイや伝い歩きで動き回るようになり、1日中、自宅の中で過ごすことに限界を感じていたからでした。 子育て支援センターは、自宅よりもずっと広いうえに、安全対策もしっかりされているため、のびのびと赤ちゃんを遊ばせることができました。また、スタッフの方やほかのママさんと他愛もないおしゃべりをすることで、思った以上にリフレッシュできた点もよかったです。 自宅ではできなかった経験ができる!子育て支援センターには、乳幼児向けの絵本やおもちゃがたくさん。自宅にあるもののほかにも「わが子はこういうものにも興味があるんだ!」と、新たな発見もありました。 また、私は手遊びなどでわが子と一緒に遊ぶのがあまり得意ではないため、自宅ではほとんどしていませんでした。そのため、スタッフの方が手遊びや歌を歌ってくれる時間があったことも、とてもありがたいと感じた点でした。 でも、無理をして行く必要はない!上の子が赤ちゃんのころは頻繁に通った子育て支援センターですが、下の子のときは上の子の幼稚園送迎などで忙しくなったこともあり、それほど足を運ぶことはありませんでした。 でも、そのことによって上の子と下の子の発育や発達上の差は、特に感じていません。メリットもたくさんある子育て支援センターですが、近くに支援センターがない、一度行ってみたけれど雰囲気が合わなかったなどの場合は、無理をしてまで行く必要はないと私は思います。 子育て支援センターで出会うママさんたちとの「行けるときに行き、会えたら話す」という距離感。この距離感も、幼稚園でのママさん関係とまた違い、そのゆるやかさがなかなか心地よかったです。著者:奥田美紀二児の母。IT企業にてSE・プログラマーとしてシステム開発やWEBサイト運用等をおこなう。夫の転勤や子育てのために退職し、現在は妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆している。
2019年09月06日多様な経験を、支援に生かそう。福祉の仕事の基礎知識を得られ、複数の事業所と出会えるイベントを開催Upload By LITALICOキャリアLITALICOはこれまで、発達が気になる子どもの支援や、障害のある方の就職支援を通して、4万人以上の方に関わってきました。その中で感じたのは、支援する「人」の想いで、関わる人の可能性がひろがるということ。そして、支援する「人」が幸せでいることが、関わる人の幸せにつながるということ。だから私たちは、この業界で支援する「人」を増やし、想いがあって、多様な経験のある人に、この業界に関わり続けてほしいと思っています。もっと自分らしく働ける場所、困難のあるひとへのサポートが自分自身の幸せにつながる場所を見つけませんか?2019年2月に新たにオープンした、発達ナビの姉妹サイト「LITALICOキャリア」は、障害福祉・児童福祉分野に特化した求人サービス。ここでは、支援の仕事に新しく挑戦したい方、またこれから福祉業界に就職したい学生の方向けなど、「LITALICOキャリア」が開催するさまざまなイベント情報をご紹介します。【5・6月開催】LITALICOキャリア イベントラインナップUpload By LITALICOキャリア障害のある方の「働く」を支援する仕事って?LITALICOキャリアしごとフェスタ<イベント内容>・就労支援事業を展開する法人のブースを多数出展・就労支援の仕事についてゼロからわかる「まるわかりセミナー」/就職活動のコツがわかるセミナーなど、複数のセミナーを実施・業界専門のキャリアアドバイザーによる相談コーナーUpload By LITALICOキャリア発達が気になる子どもを支援する仕事って?LITALICOキャリアしごとフェスタ<イベント内容>・発達支援事業を展開する法人のブースを多数出展・発達支援の仕事についてゼロからわかる「まるわかりセミナー」/就職活動のコツがわかるセミナーなど、複数のセミナーを実施・業界専門のキャリアアドバイザーによる相談コーナーUpload By LITALICOキャリア【2020卒対象】フクシに興味のある学生大集合!LITALICOキャリアしごとフェスタ<イベント内容>・就労支援・発達支援事業を展開する法人のブースを多数出展・これで安心!福祉の就活まるわかり塾・新卒3年目以内の職員が語る!福祉のしごとのリアル・業界専門のキャリアアドバイザーによる相談コーナーUpload By LITALICOキャリア<イベント内容>・個別支援計画の考え方を知る/自分が実現していきたい支援や貢献について考えるワークショップ・児発管・サビ管として働く参加者同士でざっくばらんにお話しできる座談会・業界専門のキャリアアドバイザーに相談できるおしごと個別相談会「自分らしく働く」を考えるきっかけに発達が気になる子どもの「できた!」という笑顔を増やす。働くことに困難がある人の「働く喜び」を一緒に分かち合う。「LITALICO」キャリアで開催するイベントのテーマである発達支援・就労支援はそんな魅力ある仕事だと考えています。各イベントが「自分らしく働くとは?」を、一緒に考えられる機会になればと思います。みなさまのご来場をお待ちしております!▼LITALICOキャリアのサイトはこちら▼
2019年05月11日神奈川県児童発達支援事業所Upload By 発達ナビ施設情報ヨリドコロ横浜は、「ギフト=天性の才能や能力、神様からの贈り物」に満ち溢れている子どもたちが、もっともっと可能性を発揮できる世の中にしたい、という思いを胸に、2019年4月にオープンした事業所です。「アートデザイン療育」という、色彩をベースとしたカリキュラムを通して、子どもたちの表現力や創造力を養い、子どもたちの可能性を信じ、引き出し、将来の選択肢を広げるサポートをしているそう。お子さまの現状をしっかりと把握したうえで、「現段階での子どもたちの成長にとって何が一番よいのか」をご家族と一緒に追求し、楽しく個性を伸ばせる環境づくりを心がけています。ベテランの児童発達支援管理責任者をはじめ、小学校教諭、絵を極めてきたアーティスト、スポーツが大得意なお兄さんなど、さまざまな資格や特技をもつ専門スタッフが在籍しています。神奈川県の児童発達支援事業所をもっと見る通所支援施設とは?このコラムで紹介した「ヨリドコロ横浜」は児童発達支援を行う施設です。児童発達支援とは、障害児通所支援のひとつ。この4月から、新たにこのような通所支援施設を利用したいと考えている方も多いのではないでしょうか?そこで、通所支援施設とはどういうものかについて紹介します。これは、障害がある子どもを支えるための児童福祉法に基づく制度です。自宅から施設に通ってサービスを受けるタイプの事業の総称で、未就学児を対象とした児童発達支援、就学児が授業後や休みの日に通う放課後等デイサービスのほか、医療型児童発達支援や保育所等訪問支援などもあります。それぞれのサービスについて、詳しく紹介しているコラムもぜひ参考にしてみてください。施設の情報を探すには「施設情報」ページが便利!Upload By 発達ナビ施設情報LITALICO発達ナビの「施設情報」ページでは、放課後等デイサービス・児童発達支援施設を中心とした、お子さんの発達を支援する施設の情報を掲載中!お近くの施設を希望の条件に合わせて検索することができます。所在地や施設区分での検索のほか、受け入れ障害種別や受け入れ年齢、送迎や土日祝日の営業の有無など詳しい条件での絞り込みも可能になるなど、よりニーズに合った施設が探しやすいページへと少しずつパワーアップしています。また、新しく利用する施設を探すだけでなく、すでに利用中の施設があれば「利用者の声」を投稿することで他のお子さんの施設探しの参考になることも。ぜひお住まいの地域の施設を検索してみてください!
2019年04月09日障害のある方の就職をサポートする「就労移行支援事業所」を知っていますか?Upload By 発達ナビニュース就労移行支援事業所とは、障害のある方の就職をサポートする通所型の福祉サービスです。18歳以上65歳未満の身体障害、知的障害、精神障害の他に発達障害や難病の方も対象とし、手帳の有無にかかわらず、医師の診断や自治体の判断など就職に困難が認められる方が利用できます。サービス内容は事業所によって異なりますが、仕事に関する知識やスキルアップと就職活動のサポート、就職後も長く働き続けられるよう職場への定着支援も行っています。また、一定の条件を満たす場合、4年生大学のほか、短期大学、大学院、高等専門学校を含む在学者も就労移支援事業所の利用が認められる場合があります。例えば、このような悩みはありませんか?・「自分に合う仕事が分からない」・「働くことに不安がある」・「障害を開示して、働くかどうか悩んでいる」・「働ける場所があるかどうか、不安」などこのような時は「就労移行支援事業所」という選択肢があります。LITALICOワークスでは、このような悩みを解決するためには何が必要なのかを一緒に考え、そのひとりの「働きたい」をサポートしています。LITALICOワークスは北海道から沖縄まで全国74拠点に就労移行支援事業所があり、これまで累計6,000名以上の方の就職をサポートしてきました。企業への求人開拓も積極的に行ない、職種や職域も広がってきています。また、就職後の定着支援にも力を入れ、就職後も86.1%の方が働き続けています。見学・相談は随時受付中 |LITALICOワークスUpload By 発達ナビニュースUpload By 発達ナビニュース「就労移行支援事業所」について詳しく知りたい方、まずプログラム体験会へ参加してみませんか?Upload By 発達ナビニュースこのたび、より「就労移行支援事業所」について詳しく知りたい方のために、特別にプログラム体験会を開催します。就労移行支援は18歳~64歳までが主な対象となりますが、このプログラム体験会では、18歳になる前から地域の福祉サービスや支援を知っていただく機会として、年齢設定を「17歳~」にしています。高校や特別支援学校高等部卒業後の進路を検討している親子にもおすすめです。体験会は本人だけでなく、家族や支援者の方も一緒に参加できます。ぜひこの機会に「就労移行支援事業所」の内容を体験してみてください!Upload By 発達ナビニュース■東京都LITALICOワークス蒲田(蒲田駅5分 / 京急蒲田駅10分)企業に障害を伝える就職活動の進め方3/24(日)12:00~15:00合理的な配慮を得て働くための職場マッチングや企業連携について説明します。LITALICOワークス秋葉原(秋葉原駅5分 / 岩本町駅2分)就職活動プログラム「働くとは?」3/30(土)13:00~15:00これから働き始めるために「働くとはどういうことか」「何のために働くのか」を考えるプログラムです。■神奈川県LITALICOワークス川崎(川崎駅6分 / 京急川崎駅6分)すごろくコミュニケーション3/21(木)9:00~12:00すごろくゲームを通して楽しくコミュニケーション力を養うプログラムです。LITALICOワークス横浜西口(横浜駅5分)質問なんて怖くない!3/30(土)9:00~12:00質問することに苦手意識や不安のある方へ、座学・ロールプレイからポイントを紹介します。■埼玉県LITALICOワークス大宮(大宮駅6分)障害者雇用の動向と対策3/9(土)15:00~17:00障害者雇用の現状や対策、企業が求める人材ポイントを紹介します。LITALICOワークス大宮(大宮駅6分)当事者講演会「ピアトーク」3/23(土)12:30~14:30聴覚障害のあるスタッフが、障害や仕事について講演します。トークタイムも設けています。■北海道LITALICOワークス新さっぽろ(新さっぽろ駅1分 / 新札幌駅3分)休憩上手になろう3/16(土)10:10~11:30疲れのサインを意識し体調管理をしながら働くために、上手に休憩をとる方法を考えます。LITALICOワークス新さっぽろ(新さっぽろ駅1分 / 新札幌駅3分)質問なんて怖くない!3/23(土)10:10~11:30質問することに苦手意識や不安のある方へ、座学・ロールプレイからポイントを紹介します。LITALICOワークス札幌大通(大通駅3分)すごろくコミュニケーション3/16(土)10:25~11:30すごろくゲームを通して楽しくコミュニケーション力を養うプログラムです。LITALICOワークス札幌大通(大通駅3分)自己理解プログラム「認知特性編」3/30(土)10:25~11:30視覚優位・聴覚優位について学び、周りに求める配慮や自身ができる工夫を考えます。■大阪府LITALICOワークス大阪梅田(梅田駅5分 / 大阪駅8分)オープン就労とクローズ就労3/9(土)13:00~15:00障害を企業に開示して働く場合と、非開示にする場合のメリットデメリットを事例を通して考えます。LITALICOワークス大阪心斎橋(心斎橋駅6分 / 長堀橋駅3分)あがり症のメカニズムと対処法3/16(土)10:00~12:00「緊張してうまく話せない」といった緊張場面を脳のメカニズムから説明し、対処方法を紹介します。■京都府LITALICOワークス京都駅前(京都駅10分)話しかけるタイミングをはかる3/9(土)9:00~12:00周囲とより良い関係づくりができるように「話しかけるタイミングを計る方法」を学びます。LITALICOワークス四条河原町(河原町駅3分 / 祇園四条駅7分)ソーシャルスキルトレーニング3/30(土)9:00~12:00場面に応じたコミュニケーションや表現について、参加者で意見を出し合いロールプレイを行います。■広島県LITALICOワークス広島紙屋町(本通電停7分 / 紙屋町電停4分 / 立町電停1分 / 八丁堀電停4分)就職活動の進め方3/9(土)14:00~16:00就職活動の全体像がイメージできるよう自己分析や企業研究、書類作成の方法を説明します。LITALICOワークス広島(広島駅5分)就職活動の進め方3/16(土)14:00~16:00就職活動の全体像がイメージできるよう自己分析や企業研究、書類作成の方法を説明します。■福岡県LITALICOワークス博多(祇園駅2分)困りごとに対する対策を学ぼう3/9(土)9:00~12:00職場で起こるかもしれない「さまざまな困惑場面」をいくつか想像しておくことで事前対策を学びます。【対象】17歳~64歳の発達の気になるご本人様、就職を目指す障害や難病のある方を対象※ご家族や支援機関の方の同伴も可能です【参加費】無料【申込方法】下記のリンクからフォームに入力をしてお申し込み下さい。各プログラムは定員10組となります。申込が随時締め切られる可能性がありますので、予めご了承ください。【お問い合わせ】0120-951-712(受付時間 平日10:00〜17:00)※LITALICOワークスの説明会・セミナーのお申し込みフォームに遷移します。ワークス全国一覧|障害者就労移行支援事業所見学・相談も随時受付中|LITALICOワークス就労移行支援とは?
2019年03月04日子どもからお年寄りまで、地域の人が集う「ごちゃまぜの場所」。その真ん中にいるのは…?Upload By 発達ナビ施設インタビュー石川県白山市に、お年寄りも子どもも、障害のある人もない人も、町のみんなが集うごちゃまぜの場所があります。そして、その場所の真ん中にいるのは、障害のある人たちやお年寄りです。「社会の中で弱者と言われる障害者や高齢者。でも、彼らを弱者にしているのは周囲の環境の方なのでは?」という考えから、彼らを真ん中に、だれもが行きかうごちゃまぜの拠点としてつくられたのが、佛子園が運営する「B’s」です。もともとここには、旧学校の校舎を改造してつくられた、障害がある子どもの入所施設がありました。地域との交流もほとんどなかったその場所を、地域の人たちが訪れる賑やかな町の拠点に変えたのです。B’sは、放課後等デイサービスをはじめ、就労継続支援や生活介護の事業所、介護サービスの事業所、ショートステイ、グループホーム、保育園、クリニックなど複数の施設から成り立っています。高齢者通向けデイサービスも同じ敷地内にある、共生型の福祉施設です。誰でも利用できる温泉や飲食店なども併設しています。洒落た雰囲気の敷地に足を踏み入れると、大きな木の遊具が目に飛び込んできます。天気のいい日には、放課後等デイサービス・B’sこどもLaboに通う子やB’s保育園の園児、そして近所の子ども達が、木の遊具のある庭で混ざって遊ぶ姿が見られるといいます。Upload By 発達ナビ施設インタビュー庭を囲むようにして、放課後等デイサービス、料理教室やカフェ、フラワーショップ、リハビリ機能も併せ持つ整形外科、保育園が並びます。建物に入ると、天然温泉、手打ちそばやここで醸造するビールを楽しめるレストラン、カラオケ、全身マッサージを受けられるリラクゼーションまで。2Fには、最新の機器がそろうスポーツ施設や住民自治室、就労継続支援・生活介護の事業所、ショートステイができる場所もあります。庭の遊具のひとつに、大きな滑り台があります。「滑り台は下から登っちゃいけないって叱られがちでしょ。ここは規則でがんじがらめにして叱ったりしたくない。だから、叱らなくてもいいように、滑っても登ってもいいような幅の広い滑り台をつくった」という、B’sを運営する佛子園代表の速水さん。「地域の子ども達にも来てもらいたいから、お母さんたち向けに”日陰”も意識してつくったんですよ。子ども達を遊ばせながら、お母さんたちが日陰でおしゃべりができるでしょう」。そういう時間・空間が必要だと言う、速水さん。子ども達のそばにいる保護者のニーズもくみとり、しっかりと設計に反映する。地域の人たちが来たいと思える仕掛けを随所にちりばめています。中核となるこの施設の周りには、障害のある人が暮らすグループホーム・B’s Homesも点在しています。Upload By 発達ナビ施設インタビュー「高齢者向けデイサービスの施設は、通常、安全管理のために死角がないようにつくるでしょう。でも、それじゃあお年寄りは端っこに座ります。人は、死角がないと落ち着かないもんです」。B’sでは、その死角に椅子を配置し、人と人との会話が生まれるようにしています。ごちゃまぜの、遊び場のような、たまり場のような、生活の場がつくりたいからーー。温泉は、町民は無料。毎月2,300人ほどが入りにきます。地域の高齢者は、温泉に入るときに自分の名前の書いてある札をうらがえします。わざわざ家まで見守りにかずとも、温泉に入りに来てもらうことで、地域の高齢者の安否確認ができる仕組みです。もちろん、放課後等デイサービスに通う子ども達も自由に温泉に入れます。B’sの中は、さまざまな人たちが行きかい、だれが事業所スタッフなのか、誰が放課後等デイサービスに通う子なのか、ふらりと訪れた地域の人なのかわからない、「ごちゃまぜ」の場所です。’s | 佛子園「ぼくはね、ここで働いているんだ」就労支援で働く若者が、誇らしげに話しかけてきたUpload By 発達ナビ施設インタビュー「ぼくはね、作業所で働いてるんだ。こどもLabo(放課後等デイサービス)の卒業生だよ」住民自治室を見学していると、一人の若者が話しかけてきました。学生時代から通いなれた放課後等デイサービスのある施設で、今は仕事をしている。仕事が終わったら、ふらりとデイサービスに顔を出して、高校生の利用者たちとおしゃべりを。「ここはぼくの居場所なんだ」という誇りが、充実した表情から感じられます。B’sを支えるのは、障害のある人たちが働いたり訓練をしたりする、就労継続支援の事業所や生活介護の事業所です。就労継続支援の作業スペースでの業務のみでなく、蕎麦屋の厨房やハンバーガーカフェの店員、保育補助、フラワーショップ、スポーツ施設のインストラクターや受付、パソコンでの事務作業や絵本・パンフ作成など、担う業務はさまざま。他にも、地域清掃やホテルのベッドメイク、近隣の高齢者宅への配食など施設の外に出ての作業もあります。配食では、障害のあるスタッフも高齢者のもとに食事を届けます。自分のペースを崩さず時間に追われない、障害のあるスタッフとの会話を心待ちにしている高齢者も多いそう。おかずを分け合って食べたり、おしゃべりすることを楽しみにしているといいます。皆いきいきと活躍しています。一日の終わりには、ビールを飲みながら仲間と語らう姿も。ここで働くスタッフは、自宅から通うほか、近隣にある12カ所のグループホームから通う人も多くいます。皆、施設に入所するのではなく、地域で暮らしています。B’sでは、「人は、人の役に立っていると思うとき、幸せになれる」と考えています。だから、その人が望めば、やりたい役割を果たせるようにしています。自分が根づいている場所、必要とされている場所がしっかりとある。だから、ここで働く障害のある若者たちは、こんなにも誇らしげなのでしょう。施設の中を自由に行き来する、放課後等デイの子ども達。この地域に、あたり前に暮らし続けられるようにUpload By 発達ナビ施設インタビュー午後3時を過ぎると、放課後等デイサービス・B’s こどもLaboの部屋には、次々に子どもたちが。毎日約30人の子どもたちがやってきます。月間のべ1,000人ほどが利用しているそうです。小学生は、元気に走りまわっています。そこに、就労支援での作業を終えたOBの面々が加わり、おしゃべりに花が咲く。青春しているなぁ!人生楽しんでるなぁ!と、見ているこちら側まで、晴れやかな気持ちでいっぱいになります。Upload By 発達ナビ施設インタビュー子ども達はこどもLaboの部屋で遊んでもいいし、庭や施設内で自由に遊んでもいい。温泉に入ったり、リラクゼーションでマッサージを受けるのもOK。B’sでは、マッサージショップからテナント出店料を取らない分、福祉利用者が来店した場合には、無料でサービスを受けられるようにしているのです。最新の機器がそろうスポーツ施設の利用も、子どもであってももちろん可能です。スヌーズレンルームもあり、光を楽しみながらゆったりと寝転んでいたい子どもは、ここで過ごすこともできます。Upload By 発達ナビ施設インタビュー同じ施設の中に、就労継続や生活介護の事業所があることで、将来の見通しもつきやすいといいます。作業場での仕事、厨房の仕事、スポーツ施設のインストラクター、フラワーショップ、配食、保育園のスタッフ、清掃…放課後等デイサービスに通う子どもたちは、自然とさまざまな役割を知り、自分のやりたいことを見つけてくことができます。そしてまた、地域の子どもや大人と日々交わり、声を掛け合うことで「ここは自分の暮らす場所」であることを、しっかりと自分の中に根づかせることができるのです。障害のある「ある一人の人生」に寄り添おうと思ったら、支援を区切ることなんてできないUpload By 発達ナビ施設インタビューB’sを運営する社会福祉法人佛子園では、石川県内各地に、障害者施設・高齢者施設の機能を合わせもった施設を運営しています。そもそも、どうして社会的弱者と言われる人たちの施設をまるごと担おうと考えるようになったのでしょう?そして、縦割りともいわれる法制度のもと、どうしたらそんなことができたのでしょう?そう問うと、代表の速水さんは、少しきょとんとした表情を見せました。「障害のある”ある一人の人生”に寄り添おうと思ったら、子ども用、成人用、高齢者用、と支援を区切ることなんてできないでしょう?」例えば、以前は、障害のある人の福祉をある年齢になったら高齢者用の福祉に切り替えなくてはいけなかった。障害者向け施設は高齢者向け施設として運営することはできなかったので、住み慣れた施設を離れて高齢者向け施設に移らなければいけない。でもそれは負担が大きい。だから、障害者も高齢者も支えられる施設をつくったーー。こうして佛子園は、法律で障害者も高齢者も支援が可能となる「共生型の施設」が認められるより前から、さまざまな年齢の社会的弱者と言われる人たちのための施設を運営してきました。「福祉の制度は、使いやすいようにある程度ゆるみをもっている。それを現場が保守的に解釈して、あれもこれもできないって思いこんでることが多い。例えば、以前は障害者福祉と高齢者福祉の職員室は仕切られていなきゃいけなかった。でも何で仕切るべきかは書いていない。だからうちは”ふすま”で仕切っていた」今は、共生型が法律でも認められるようになり、施設のどの職員も、どの施設の利用者でも見守れるようになりました。スタッフは皆インカムをつけ、全員で見守りをしていると言います。平成30年度障害福祉サービス等報酬改定 における主な改定内容 | 厚生労働省Upload By 発達ナビ施設インタビュー自分が住む町の中に、だれもが安心でき、仲間と語り合うことができる場所があること。社会的に弱者と言われる人たちを弱者のままにしておかず、それぞれが役割を持ち、必要とされていると感じられること。言葉にするととてもシンプルだけれど、人が自分らしく幸せに生きていくために何より必要で大切なことなのではないか。「B’s」の中をいきいきと行きかう人たちの姿を目の当たりにして、そう思わずにはいられませんでした。撮影/吉田直哉(GARAN ASSOCIATES)、編集部
2018年07月25日子どもから大人まで。自閉症のある人が、幸せな人生を生きるためのサポートをUpload By 発達ナビ施設インタビュー仙台市の放課後等デイサービス「発達トレーニングジムしゃ〜れ」(以下、しゃ〜れ)は、就労移行支援事業所「Schaleおおまち」、さらにカフェと厨房を併設する施設です。カフェのイートインは現在お休み中ですが、クッキーやお菓子を販売しています。自閉症に特化した支援を行っており、利用者の9割がASD(自閉症スペクトラム)のある人です。現在、放課後等デイサービスに子ども36人が登録、成人は、就労移行支援に8人、自立訓練に11人が登録しています。「しゃ〜れ」を運営する「一般社団法人ぶれいん・ゆに〜くす」の歩みは、代表の伊藤あづささんと自閉症のある息子さん、親子2人の歩みでもありました。自閉症のある人のライフステージごとに必要な支援とは何か、本人と家族が地域で幸せに生きるためには何が必要か。考え抜いてサポートを続けてきた、ぶれいん・ゆに〜くすと「しゃ〜れ」の取り組みをご紹介します。「働く大人」になるために、生きる力をつける実践的な発達支援Upload By 発達ナビ施設インタビューしゃ〜れは、「発達支援トレーニングジム」と冠して、自閉症のあるお子さんが「働く大人」になるための発達支援を目指しています。アメリカ・ノースカロライナ州ではじまった、ASD(自閉症スペクトラム障害)の当事者とその家族を対象とした支援である「TEACCH」の理念を基盤に、プログラムを設計。「一人でできること」を積み上げていくために、一人ひとりの特性を自閉症eサービス開発の評価キットやTTAP(ティータップ)を使用してきめ細やかなアセスメントを行っています。その結果をもとに、その子の強みを活かした個別のプログラムを組んでいるそうです。児童指導員の引地さんに支援内容を案内してもらいました。Upload By 発達ナビ施設インタビュー引地さん「平日は、子どもたちは一人ひとりに合わせた課題に取り組みます。アセスメントを元に設定した生活スキルの課題や、パソコンを使ってのITスキルのトレーニングもやっています」ーー個別トレーニングは大人の利用者さんと子どもが一緒の空間を共有しているんですね。引地さん「子どもたちのスペースは、成人の方々のスペースとタイムシェアしているんです。午前中は自立訓練の成人利用者さん、午後の早いうちは小学生、夕方から中高生、といった感じで上手に棲み分けています。個別のトレーニングスペースはそれぞれ仕切りがあります。余計な情報が入らないためです。それぞれがトレイに順番にセットされた自分の課題に黙々と取り組みます。今来ている小学1年生のYくんは、指先を使ったトレーニングに取り組み中。教材の多くはその子に合わせて手作りしています」ーーYくん、集中していますね。手の込んだ教材がたくさんあって驚きました!伊藤さん「それはどこにも負けません(笑)。提携しているKaienさんのコンテンツも使っていますが、うちで使うために”リメイク”しています」Upload By 発達ナビ施設インタビューUpload By 発達ナビ施設インタビュー引地さん「しゃ〜れでは、ライフスキルトレーニング・プログラムとして調理スキルのトレーニングにも力を入れています。1人1台ずつクッカー(電気調理鍋)を使って調理します」ーーたくさんレシピがありますね。どれも本格的でおいしそう!引地さん「小学生は混ぜるだけのホットケーキで、”できた!”を感じてもらうところからスタートします。スタッフより上手につくる高校生もいますよ。生姜焼きや酢豚などのおかず、クリスマスにはハッシュドビーフ…前につくったものと重ならないようにと考えているうちに、レシピが増えてしまって…80〜90くらいになってしまいました(笑)」視覚からの指示を理解しやすい自閉症のある子どもに合わせ、手順書も工夫しているとのこと。手順のカードは、材料や指示は分かりやすく写真つきでまとめられています。手順ステップがずいぶんと細かいのが目を引きました。引地さん「調理しながら細かく工程を写真に撮り、言葉の説明ではなく目で見て分かり「1人で」完成できることを心がけています。”切ったものどこに入れるの?”と子どもによく聞かれるので、”材料をボウルに入れる”も工程に入っています。道具や調味料のパッケージも、実際に使う物を撮影します。食材もマス目のついたまな板を使って、何センチに切るのか分かるようにします。当日はなるべく子ども本人が1人で調理に挑戦できるようにしています。料理ができたら、お迎えに来たおうちの人にも一緒に食べてもらいます。自分でつくったら苦手な食べ物だったけど意外と食べられちゃった、という偏食のお子さんもいるんですよ」出典 : ーー併設しているカフェの厨房設備を活かした、素敵なプログラムですね!引地さん「本人にとっても親御さんやきょうだいに”美味しいね””つくったの、すごいね”って褒められることが、何にも変えられない贈り物になっています。しゃ~れで使っているのと同じクッカーを買ったり手順書を持ち帰ったりして家庭でも実践している親子もいます。美味しく楽しいトレーニングを通じて、調理スキルをはじめ段取りや買い物、栄養に関する知識など、生きていく力が習得できるといいな、と思っています」Upload By 発達ナビ施設インタビューUpload By 発達ナビ施設インタビュー将来働くことを見据えたプログラムも積極的に取り入れています。ITスキルのトレーニングやパートナーシップを結ぶKaienのツールを使い、カフェの店員役、厨房スタッフ役、お客さん役に分かれてカフェのお仕事体験もしています。指先の巧緻性を高めることと、将来の仕事につながることを見据え、袋詰め作業も取り入れています。この日も高校生がビーズとカードを袋に入れるトレーニングに取り組んでいました。引地さん「実は、近くの漢方薬局からお茶の袋詰めも請け負っているんです」ーーどういった経緯でお茶の袋詰めを?伊藤さん「知り合いの漢方薬局で2000円ぐらいする高級なお茶を売っているのを見たんです。”自分たちでパッケージしている”と聞いて、じゃあ、うちでこの袋詰めやらせてくれませんか!と言って(笑)。まず、うちの支援員でやってみて、1時間で完成できる数から単価を出しました。"この金額で発注してもらえるか、検討してください!"と…」ーー受注の金額を提示して交渉したんですね。伊藤さん「同じ仕事を同じ時間、同じ精度でやるんです。障害者だからといって値段を下げられ、報酬に差があるのはおかしな話でしょ。利用者や利用する子どもの価値を値下げしたくないと思って、強気に交渉しました。もし同じ工賃だったらうちはもっと丁寧にできますよって(笑)」ーー放課後等デイのお子さんも袋詰めをやっているのですか?伊藤さん「最初は就労移行支援の方でやっていたんですよ。でも放課後等デイの中高生が試しにやってみたら、彼らの方が圧倒的に上手だったの(笑)。私は、お金を得るための手段として働いて、誰かの役に立って喜ばれて、お給料をもらって…それで自己実現できる事が仕事と思うんです。お金のつかない仕事はない。中高生のうちにそれを経験しておくのは大事だと思うんです。取り組む際には、これはお客さんに届く商品なんだよ、と伝えます。そうすると、みんな丁寧に取り組みますし、衛生管理もきっちりやっています。実際に取引先の会社も喜んでくれていますね。袋詰めをしたら”タスク・アローワンス”と言う名前で、お手伝い分の対価が得られます。それで日曜日にファミレスで家族にご馳走したりするんですって。本人も嬉しく、励みにもなっているようですね」ーー細かい作業に見えますが、どんな風に取り組むんですか?引地さん「最初は砂や豆を使って感覚をつかみます。袋詰めには、スプーンや秤の扱いも必要になります。マスクをするなどの衛生面の管理も含めて、トレーニングしています。入れる順番、使う順番に実物を並べた見本と手順もつくって、段階を踏んで課題に取り組みます。そうやって、最終的には本人が製品をつくれるようにしています」トレーニングで終わらず、最終的には商品をつくって仕事にしてしまうとは、驚きました。地域社会との関わりを大切に、子ども達の「生きる力」を信じる「しゃ〜れ」らしい取り組みです。Upload By 発達ナビ施設インタビューその人の人生に、サポートのはしごをかけ続ける就労移行支援事業Upload By 発達ナビ施設インタビュー就労移行支援での取り組みについて、担当する李さんに伺いました。李さん「就労移行支援は制度上、最大2年使えますが、「Schaleおおまち」では就職活動まで1年半〜2年たっぷり使います。企業の仕事と利用者をつなぐジョブマッチングではなく、人と人をつなぐマンマッチングだと思ってやっています」ーーマンマッチングとは、具体的にはどういうことでしょうか?李さん「仕事が合っているということだけでなく、一緒に働く人との関係性もとても重要です。実習も2〜3日やってフィードバック、次に1週間やってフィードバック、お互いにやってみたいとなったら2ヶ月くらいやって見るなど、丁寧に時間をかけて積み上げていきます。自閉症の人は言葉のコミュニケーションだけでは難しいこともあるし、困っていても、うまく言えない人もいますよね。だから、就職後も困った時に「Schaleおおまち」を思い出して欲しいんです。その思いから、フォローアップを大切にしています」「しゃ〜れ」では、制度上の職場定着支援を終えてからも、つながりを持ち続けるケースもあります。そうすることで、14人が就職し、12人が今も就労を継続している定着率85%を実現しているとのこと。継続3年目、5年目の人も出てきているそうです。「しゃ〜れ」を卒業した利用者も気にかけ続けたいUpload By 発達ナビ施設インタビュー伊藤さん「卒業した子がどうなっているか気にかけることが必要だと思っています。放課後等デイは18歳まででしょ。特別支援学校に通っている子はB型事業所に行くことが多いから、実は「Schaleおおまち」の就労移行支援に来ることは少ないんです。そうすると支援が途切れてしまう。高校卒業後、専門学校や大学に通う場合なんかも、放課後等デイと大人の支援制度の隙間で利用できなくなってしまう場合もありますね」ーーせっかく「しゃ〜れ」と出会っても、卒業せざるをえないこともあるんですね。伊藤さん「はい、でも中学からうちに通って高校卒業後、専門学校に行きながら、2年間自費で通った利用者さんもいるんですよ。実はそのあと就労移行支援に通って今、パティシエとしてこのカフェで働いているんです!もう3年目になるかな」ーーそれは嬉しいですね!調理スキルのトレーニングがダイレクトに生きたケースですね!一度ここに来た人にかけた支援のはしごは外さない出典 : ーー卒業した利用者さんはどんな風にフォローしているんですか?伊藤さん「折々電話やメールをしたり、お母様たちとお目にかかったり、年に1回みんなで集まったり。『虹の環(にじのわ)パーティー』と呼んでいます。卒業した人や子どもが集まる会です。卒業してもそこで再会できるの。卒業した利用者と保護者の方が遊びに来て、後輩の子がつくった料理を食べるんです」ーーブログで様子を拝見しましたが、美味しそうなお弁当でした。70人分とありましたが、お子さんたちがつくったんですね!パーティーはどんな様子ですか?「卒業生には、近況を教えてもらいます。それはいい報告じゃなくてもいい。意思表示が苦手な人もいるし、ずっと同じ環境にいる子もいます。定型発達の人には分からないこともたくさんあるでしょう。発達障害のある人はエネルギーを貯めるのに精一杯チャージが必要なんです。そんな人たちが疲れた時に帰ってくる、母港の充電ステーションになりたいと思っています」ーー充電して、また外に出ていけるんですね。伊藤さん「子どもだけではなく、就労移行支援についても同じです。制度上の期間が終わったら、支援や関係が切れるんじゃないかという不安が利用者さんにありますね。でも「Schaleおおまち」では企業に確認して、誤解や行き違い、何らかのトラブルの芽があったら担当の李さんが仲立ちしています。いつも誰かが自分を気にしてくれている、と実感できることが大切だから」ーー「しゃ〜れ」「Schaleおおまち」を利用していなくても支援は続く…伊藤さん「うちに通っている間というのは、その人の人生の、切り取った何年かの支援です。でも、一度「しゃ〜れ」や「Schaleおおまち」に来たら、かけた支援のはしごは外さない。利用しなくなったとしてもそのはしごは残っていて、いざとなったら使えるということが重要だと思っています」自閉症のある子と親のために!TEACCHとの出会いが変えた支援Upload By 発達ナビ施設インタビューーーその子が生きるための力を、生涯を通じてサポートし続けるという一貫した支援方針を実感しました。そもそも「Schale」を始めたきっかけは?伊藤さん「私には今年23歳になる息子がいるんですけど、その子が4歳の時に自閉症があることが分かったんです。でも今から17、8年前って、仙台の街では自閉症のわが子に合った療育を受けられる場所がなかったんです」ぶれいん・ゆに〜くす代表の伊藤あづささんは、仙台にある福祉の大学の教員でした。当時、仙台市には母子通園型の施設は、知的・身体・精神の3障害が一緒でした。伊藤さん「例えば7月のある日、施設に行ってみたら突然、七夕さまが飾ってある。そうすると変化が苦手な自閉症の子はびっくりするわけです。息子は騒がしいところや集団がとっても苦手な子だったんです」ーー自閉症の子に特化した支援を始めたのは、それがきっかけだったんですね。伊藤さん「もう一つ、自閉症って、育てる中で障害特性があると分かるでしょ。親御さんがわが子のことを知ったり気づいたりするのにも、他の障害に比べて圧倒的に時間がかかるんです。そして、母親支援の仕組みも整っているとは言えない。お母さんは不安で、ものすごく心がざわざわして、検査して障害が分かって…いまさら障害児と言われる戸惑いもあると思うんです」伊藤さんは当初、息子さんに勉強ができるようになってほしい、学校に行って学習面で困らないようになってほしいと考え、育つ支援、療育の場が欲しかったそうです。しかし、その直後、自閉症について学ぶ中でTEACCH(ティーチ)と出会いました。伊藤さん「なんて私は愚かなお母さんだったんだろう、と痛感したんです。いわゆる学力ではなくて、自閉症のその子として、長い生涯にわたって生き抜くための力…自閉症のその人として社会の中で生きていくための知恵や、体の使い方を教えてあげられる場所が欲しいと気持ちが変わってきた」そこでたどり着いたのが、就学前から育ちの支援ができる児童デイ(児童発達支援・放課後等デイサービスの前身)という制度でした。伊藤さん「じゃあ自分たちでやろうか、と言って「しゃ〜れ」の前にやっていた事業所を始めました。で、自閉症児の療育をやるのであれば、集団じゃなくて個に応じた育ちの支援ができることをやりたいなと思ったんです。TEACCHの理念を取り入れ、「しゃ〜れ」でも一貫してそのスタイルを続けています」TEACCHはアメリカ・ノースカロライナ州で行われているASD(自閉症スペクトラム障害)の当事者とその家族を対象とした生涯支援プログラムです。伊藤さんは2010年にTEACCHの本拠地、ノースカロライナにある強度行動障害の人たちのグループホームを訪ねました。そこでは10年前まで強度行動障害のあった人が、食べたいものを食べ、自分の好みにしつらえた部屋で選択権を持って暮らしていました。そして鼻歌を歌いながら仕事をしている、その姿に伊藤さんは感動しました。伊藤さん「ここではどんなに重い障害の人でも自分の役割が果たせる。すごい!と感動しました。でもその現場を見て、アメリカでできるなら、日本でもできる、日本でできるなら仙台でもできるでしょ!って思っちゃったんです(笑)」子どもの育ちに伴走して育ってきた支援のかたちUpload By 発達ナビ施設インタビューーー放課後等デイサービスの他にも就労移行支援、カフェ…複数の形態の事業を始めたのはどうしてですか?伊藤さん「息子の育ちのステージに沿って事業が広がってきているんです。でもうちの子だけではなくて、どんな子でも、運もチャンスもあるし、力もある。そこを引き出すのが私たちの仕事だと思っています。親御さんはそうした、子どもの持っている力を信じきること。そのための応援として今、放課後等デイと成人期の支援をやっているんです」ーー息子さんは今、どうされているんですか?伊藤さん「息子は、18歳で独り立ちしました。去年の11月からは大阪の特例子会社で働いています」以前、伊藤さんは放課後等デイと就労移行支援事業所をつくったように、将来はグループホームをつくって、息子さんが住み慣れている環境で穏やかに暮らせるようにしようと考えていたそうです。伊藤さん「でも息子が18歳以降どうなるんだろう、って考えた時に、いや、ここにいたらこの子は24時間お母さんと一緒だよね。それは相当まずい!と思えた(笑)」仲間にも後押しされて、息子を手放す決意ができたという伊藤さん。伊藤さん「うちの息子は本当に重たい自閉症の子です。でもその子が今、お給料をもらって働いている。それで"どんな子でも働けるようになる"と確信しました。改めてTEACCHで育ったことの素晴らしさも感じましたね」――伊藤さん親子が特別ではない…?伊藤さん「こういう仕事もしているし、いろんな意味でいろんな人とのつながりも深かったりするので、伊藤さんだからできたんじゃないのと言われるんですが…。私はダメなお母さんだったんです。自宅の構造化も不十分で、おばあちゃんにあれこれ息子の世話を焼いてもらっていました。息子が小さい時にはくどくど叱って"お母さんと仲良しになりたい"って言われ、親子で泣いたこともあります。でもその一言で変われたと思っています。TEACCHの理念に出会い、たくさんの仲間、共感を持って手伝ってくれるスタッフもいてくれて、私を育ててくれた」――だから、どんな親子でもできると信じているんですね。伊藤さん「TEACCHには"自閉症の人は成人期に幸せでなくてはならない。またその家族も幸せでなければならない"という象徴的な言葉があります。息子が働く会社で"あせらない・あきらめない・あなどらない"、という言葉にも出会いました。自閉症のその子として、どんな子でも一人ひとりの子どもが自分自身を"いいね!"と肯定して生きていける、幸せな成人になってほしい。その子の生きる力を信じて、あきらめず、どんな手伝いができるか考え続けたいですね」伊藤さん親子のライフステージはこれからも進みます。そして、ここに集まる子どもにも大人にも、ハシゴをかけ続ける。自閉症のある子どもが幸せな働く大人になる、そんな未来を目指して、これからも「ぶれいん・ゆに〜くす」の支援は形を変え、広がっていくのかもしれません。撮影:小林啓樹(OPEN TOWN)ぶれいん・ゆにーくす
2018年06月12日【ニュース】手に入れられない人たちに届けよう!啓発用「ヘルプマーク」を先着5,000人に無料で郵送配布Upload By 発達ナビニュースヘルプマークを必要としていても、手に入れられない人たちのために「全国ヘルプマーク普及ネットワーク」が全国キャンペーンとして文字入りの啓発用ヘルプマークの無料配布を5月18日からスタートさせました!ヘルプマークは、外見からは分からない難病や障害のある人が周囲への支援や配慮を求めるためのものです。東京都が2012年から導入し、キャンペーンが始まった2018年5月18日現在で21都道府県でも取り入れられているそうです。認知が広まり需要も高まる一方で、当事者本人がさまざまな症状などから配布場所に取りに行きたくても行けない状況も知られるようになってきました。こうした理由でヘルプマークを受け取ることができない人たちに、本来無料で手に入るはずのヘルプマークをインターネット上で転売する騒動も起き、問題となりました。この流れを受けて、同ネットワークが今回の全国キャンペーンに乗り出したのです!このキャンペーンでは、啓発用のヘルプマークを無償で郵送配布します。住んでいる自治体で導入していない人、または導入しているが、身体、精神状態により配布場所に取りに行けない人、ヘルプマークを現在持っていない該当当事者が対象です。公式ホームページから申し込みできるので、ぜひチェックしてみてください。また、公式ホームページでは、症状や必要な援助などを書き込んでおける「折り紙ヘルプカード」もダウンロード版として常時無料で提供しています。全国の自治体のマスコットキャラクターなどとコラボした独自のデザインもあるので、お気に入りの1枚を探すのも楽しそうですね。【開始日】2018年5月18日【個数】5,000セット(無くなり次第終了)【申し込み対象者】ヘルプマーク使用対象の本人、またはその家族(1人1セット、1回限定)【配布内容】「援助が必要な方のマークです」文字入りヘルプマーク、名刺サイズのヘルプカード、くまモントーチデザイン「折り紙ヘルプカード」、ヘルプカード収納用透明ケース、リーフレット全国ヘルプマーク普及 ネットワーク 公式ホームページ【ニュース】ラミちゃん LINE公式スタンプが発売開始!収益はダウン症のある子どもたちへUpload By 発達ナビニュース横浜DeNAベイスターズのアレックス・ラミレス監督のLINE 公式スタンプ「ラミちゃん ボイススタンプ」が発売されました!ダウン症の子どもたちへの寄付を目的にラミレス監督自ら発案したそうです。お子さんがダウン症であることから、同じ境遇の子どもたちをサポートしたいという思いが込められています。LINE 公式スタンプの売上利益は、ダウン症など知的障害のある若者たちの新しい成長の機会を提供するスペシャルビューティージャパンの活動に寄付されます。スタンプは全24種類。ユニークで表情豊かなラミレス監督がデザインされています。「ラミちゃん」と呼ばれ選手時代から愛されている人柄が表れていますね。そして、野球に関連した言葉はもちろん、日常会話にもどんどん使いたいワードばかりです!今回の、LINEスタンプ発売にあたり、ラミレス監督はこのようにコメントを寄せています。「子どもが産まれると分かった時、妻と私の心に最初に湧いたのは、『神様ありがとう、偉大な祝福をありがとうございます!』という気持ちでした。そして産まれてくる息子がダウン症だと分かった時、神様によってもっと祝福されたのだと思いました。なぜなら、神様は選ばれし人にしかスペシャルニーズのある子どもの親になる機会を与えてくださらないと思ったからです。そして今、私たちは息子から無垢の愛を毎日毎日もらっていることに感謝しています。ダウン症の子どもだけでなく、スペシャルニーズのあるすべての子どもたちに美と愛をお届けできるように。たった一つのハグ、たった一つのキス、たった一つの笑顔があなたの一日を変えていきます! 皆さんに神様の祝福がありますように!」スタンプとともに、この素敵な思いとダウン症の子どもたちへの応援が広がっていくといいですね。【名称】ラミちゃん ボイススタンプ【価格】240円/全24種類【寄付先】スペシャルビューティージャパン横浜DeNAベイスターズ 公式ページ:ダウン症の子どもたちを支援するA.ラミレス監督オリジナルLINE公式スタンプが登場【イベント】「Challenged Open!2018障がい者働きがいフェア 東北」が2018年6月19日(火)に開催!(宮城県)出典 : 一般社団法人 日本障がい者就労支援センターが主催する「Challenged Open!2018 障がい者働きがいフェア 東北」が2018年6月19日に開催されます!健常者と障害者という垣根を取り払い、誰もがやりがいをもって働ける多様性のある社会を目指すのがこのイベントの目的です。障がい者就労支援団体と企業のマッチングイベントとしては日本初だそうです!!障害者が当たり前に企業で働ける社会の実現のためには、障害者就労支援事業所と企業をマッチングして、共に支え合えうことが大切ですね。当日は、障害者就労支援事業所による商品の展示即売や福祉団体、民間企業による展示プレゼンテーションなどが行われます。また、障害者就労支援施設と企業のマッチング、求人企業と就活学生のマッチングも企画。講演会では障害者受け入れの最新情報や実践企業のお話を聞けるそうです。さらに障害者によるパフォーマンスやミニコンサートもあり、盛りだくさんの内容となっています。【日時】2018年6月19日(火) 10:00~17:00【会場】夢メッセみやぎ西館展示場【参加】参加自由 入場無料【内容】福祉団体や一般企業、NPOの展示プレゼンテーション障がい者就労支援施設と企業のマッチング求人企業と就活学生のマッチング講演多数(企業の障がい者受け入れの取り組み等)ワークショップ(希望の星マッサージ/障がい者によるデータ入力/ミニコンサート/ダンスパフォーマンス等)【問い合わせ】一般社団法人 日本障がい者就労支援センター (事務局 :長南)TEL:022-236-0632一般社団法人日本障がい者就労支援センター【ニュース】記念講演は為末大氏(元陸上選手)!日本自閉症協会全国大会・全国情緒障害教育研究協議会の参加者募集中!(広島県)出典 : 年9月15、16日の両日に広島県で開かれる第25回日本自閉症協会全国大会(広島大会)第51回全国情緒障害教育研究協議会広島大会の参加募集が開始されました!『つながろうや わかりあおうや 平和のまち 広島じゃけぇ』のスローガンを掲げて、記念講演や各種シンポジウムが計画されています。記念講演では、開催地の広島市出身で元陸上選手の為末大氏を講師に招きます。「誰もが分け隔てなく自分を表現することを楽しんでいる風景を作る」とうコンセプトの新豊洲Brilliaランニングスタジアムの館長も務めており、選手時代や現在の活動など興味深い話が聞けそうです。シンポジウムは、「楽しさ」に軸を置いて「療育」「学校」「地域」のそれぞれのテーマで、専門家らが登壇してディスカッション。現状行われている実践についてや今後の課題、自閉症スペクトラムの子にとっての学校、当事者が地域で生活することが当たり前の社会になるための生活や支援のあり方などを考えます。日本自閉症協会と全国情緒障害教育研究会は同時期に発足し、今年は共に50周年という節目の1年でもあります。日本自閉症協会は前身が「親の会」で親や支援者で構成、全情研は教員と支援者の研究会です。会員や会の性質はそれぞれですが、創設期から深い関わりがあったそうで「自閉症スペクトラム」の支援における教育、福祉等の推進をはかることを目的としています。その2つの会が共催して、現状の課題や実現したい将来を共有することはとても重要な機会と言えそうです。こちらは、誰でも参加可能なので、興味のある方は気軽に応募してみてください!【日時】2018年9月15日(土)12:50〜17:45(18:00〜懇親会)16日(日)9:20〜16:00【会場】JMSアステールプラザ(広島市中区加古町4-17)懇親会:広島市文化交流会館3階【参加】2日間5,500円、15日のみ3,000円、16日のみ3,500円(自閉症協会会員は各500円引き)、学生一律2,500円、懇親会5,500円【内容】〈記念講演〉「わかりあうこと~違うことへのリスペクト~」為末大氏(DEPORTARE PARTNERS代表、新豊洲Brilliaランニングスタジアム館長)〈シンポジウム〉「楽しめる"療育"をめざして。~自閉症特性を伸ばす子育て~」「楽しさのある"学校"へ。~毎日笑顔で過ごせる学校~」「楽しく生きる"地域"で。~ひとりひとりが大切~」【申し込み・問い合わせ】一般社団法人自閉症協会(担当:小松)TEL:03-3545-3380 FAX:03-3545-3381Eメール:2018hiroshima@autism.or.jp※クリックすると、株式会社東武トップツアーズのページに遷移します第25回日本自閉症協会全国大会(広島大会) 第51回全国情緒障害教育研究協議会広島大会【ニュース】自閉症の弟の母親代わりとなった少女のドキュメンタリー。映画「祝福~オラとニコデムの家~」が6月23日(土)からロードショーUpload By 発達ナビニュースポーランドのワルシャワで自閉症の弟、アルコールに依存する父親と暮らす14歳の少女・オラに密着したドキュメンタリー映画『祝福~オラとニコデムの家~』が6月23日(土)から順次全国で公開されます。家を出て行ったまま戻らない母親の代わりに、家事や13歳の弟の世話をするオラ。ばらばらになった家族の間に立ち、周囲の大人に苦しさを見せない姿は14歳という年齢を忘れさせるほど、たくましさを感じます。そんな中、弟の初聖体式が近づき、オラはそれが成功すれば、また家族が一つになれると信じてニコデムと練習を重ねていきます。久しぶりに家族がそろった初聖体式の日、初めて見せたオラの眩しい笑顔に、彼女の日常はこの日のためにあったと感じさせられます。「自分自身がこの映画の少女だった」と語るアンナ・ザメツカ監督だからこそ、自身の経験と重ね合わせて、オラに寄り添い、撮ることができた繊細な作品。子どもたちの切なる願いや声にならない心の叫びが心を打ちます。2017年ヨーロッパ映画賞最優秀ドキュメンタリー賞、2017年山形国際ドキュメンタリー映画祭大賞、2017年ポーランド映画賞最優秀ドキュメンタリー賞など数々の賞を受賞。©HBO Europe s.r.o., Wajda Studio Sp. z o.o, Otter Films Wazelkie prawa zastrzeżone. 2016【公開】6月23日(土)より、ユーロスペースほか全国順次公開【作品データ】脚本&監督:アンナ・ザメツカ撮影監督:マウゴジャータ・シワク編集:アグニェシュカ・グリンスカ、アンナ・ザメツカ、ヴォイチェフ・ヤナス原題:Komunia|英語題:Communion2016年|ポーランド|DCP|カラー|5.1ch|75分|配給:ムヴィオラ【問い合わせ】ムヴィオラTEL:03-5366-1545映画『祝福〜オラとニコデムの家〜』公式サイトまとめ6月も、さまざまなイベントやニュースをご紹介しました。ヘルプマークを受け取りに行けない人たちへの無料郵送やLINEスタンプでの支援など、今困っている人たちの助けになりたいという優しい気持ちが感じられる取り組みがありますね。映画や講演会などは改めて自分の立場を俯瞰して見つめ直すきっかけになるかもしれません。今後も、発達障害に関するニュースやイベントを紹介していきます!7月に全国各地で開催されるイベント・講演会などを募集します。情報をお待ちしてます!
2018年06月01日障害のある方の「働く」を応援する、LITALICO仕事ナビがオープン!Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)働くことに障害のある方と、就労支援事業所(就労移行支援事業所・就労継続支援A型事業所・就労継続支援B型事業所)を繋ぐ情報サイト、「LITALICO仕事ナビ」が、2018年3月26日にサービスを開始しました。LITALICO仕事ナビでは、全国の就労支援事業所の情報を分かりやすく掲載するほか、障害のある方が受けられる支援の利用方法や就職に向けた実践的なノウハウを紹介する専門家監修記事や、就職者インタビュー・企業インタビューといったコンテンツを幅広く発信していきます。障害のある方一人ひとりが、自分のニーズに合った事業所を選ぶことができる情報プラットフォームをつくることで、誰もが自分らしく働くことのできる社会の実現を目指します。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)障害がある方の「働く」を取り巻く社会の課題は?LITALICO仕事ナビ、サービス開始の背景そもそも、障害のある方の「働く」を取り巻く状況はどのような状況なのでしょうか。また、就労移行支援をはじめとした、障害のある方の「働く」を支援する事業所の運営状況は、現在どのような課題があるのでしょうか。この記事では、「LITALICO仕事ナビ」のサービス開始の背景となる社会課題や、運営スタッフの思いをご紹介します。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)運営スタッフ プロフィール:鈴木悠平(写真左)2014年に新卒として株式会社LITALICOに入社。LITALICOジュニアの指導員として、発達が気になるお子さんや保護者の方々の学習・生活支援を経験したのち、LITALICO研究所の立ち上げ・事務局長を担当。現在は国内最大級の発達障害ポータルサイト「LITALICO発達ナビ」編集長としてコンテンツ制作を統括するほか、LITALICO仕事ナビ創刊編集長としてコンテンツの企画・制作を推進。昆野祐太(写真中央)2012年に新卒として株式会社LITALICOに入社。「LIALICOワークス」支援員として、障害のある方一人ひとりの就労・定着の支援を経験したのち、延べ4センターでのセンター長・新規開設を担当する。現在は、LITALICO仕事ナビの地域連携担当として、全国各地の就労支援事業所を訪問。勝俣友紀子(写真右)2016年に新卒として株式会社LITALICOに入社。子育てメディアConobie(コノビー)の企画営業職を経て、2017年よりLITALICOワークスの新規センター開設チームへ。主にご利用検討者さまの初回相談面談(年間300名ほど)と地域連携(関係機関訪問、セミナー講師)等を担当。障害のある方の就職者数は年々増えており、昨年は47万人以上が民間企業に雇用され、13年連続で過去最高を更新しています※1。また、今年は4月に障害者雇用促進法が改正され、企業の障害者法定雇用率が現行の2.0%から2.2%に引き上げられるなど、障害のある方の雇用に対する企業の関心も、年を追うごとに高まっていると言えるでしょう。株式会社LITALICOは、就職を目指す障害のある方のための就労移行支援事業所「LITALICOワークス」を全国で運営しており、これまでに5,000名以上が企業への就職を果たしています。こうした障害のある方の「働きたい」を支援するのが、障害者総合支援法に定められた就労系障害福祉サービス(就労移行支援事業・就労継続支援A型事業・就労継続支援B型事業)です。これらの事業所は2016年10月時点で全国に17,000近くあり、3年前と比べて約 1.4 倍に増加しています※1。ところが、障害のある方の就労・雇用への関心の高まりや、障害のある方を支援する事業所数の増大にもかかわらず、実際に就職を目指す障害のある当事者にとっては、必要な情報が十分に届いていない、自分にあった支援にたどり着くことが難しい、という課題が残っています。※1 厚生労働省「平成28年 障害者雇用状況の集計結果」よりUpload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)LITALICO仕事ナビが昨年12月に就労支援事業所を探したことのある方(877 名)を対象に実施した調査では、就労支援事業所を探すにあたり困ったこととして、8割以上(81.4%)の方が、「自分にふさわしい事業所の探し方がわからなかった」の項目に「(非常によく/まあ)あてはまる」と回答しました。※2また、就労支援事業所をどのように探したかという問いに対して、「パソコン(PC)で検索した」の項目に 「(非常によく/まあ)あてはまる」と回答した方が最も多く、6割以上(64.5%)に上っています。※2しかし、就労支援事業所としては、インターネットでの情報発信には費用や手間がかかることや、現利用者への支援で手一杯になってしまうなど、新しい利用者を集めるための活動が難しい状況にある場合も少なくないようです。厚生労働省の調査によると、就労移行支援事業所の7割弱は定員に達していないというデータもあります。※3就労支援事業所は、それぞれが特色のあるサービスを提供しているものの、利用を希望する方にとって、どの事業所が自分に合った事業所かを探す手段に乏しいのが現状と言えるでしょう。※2 LITALICOプレスルーム掲載、LITALICO仕事ナビ実施の調査より※3 厚生労働省 「平成 28 年 社会福祉施設等調査の概況」よりプレスルーム: 働くことに障害のある方と就労支援事業所をマッチングする情報サイト「LITALICO仕事ナビ」を2018年3月開始Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)昆野「私はこれまで、LITALICOワークスの複数のセンターで就労支援に携わるなかで、さまざまな特色ある魅力的な事業所さんと繋がってきました。障害のある方の就労に向けたニーズや、必要とする情報や支援の性質は一人ひとり異なります。LITALICOワークスに限らず、お住まいの地域にあるさまざまな就労支援事業所を比較検討し、ご自分に合った支援に繋がってほしいという思いがありました。ですが、障害のある方も、そもそもどうやって就労支援事業所を探して良いのかわからなかったり、事業所の運営者さんたちも、日々の支援と、地域への情報発信をなかなか両立することが難しいという課題もあるようです。今回、LITALICO仕事ナビのオープンに先立ち、さまざまな事業所さんと意見交換をさせていただいていますが、インターネットでわかりやすく、多くの当事者に情報を届けていくことの重要性は、多くの方が実感しておられました。LITALICO仕事ナビを通して、多くの事業所さんに、事業所の特色や、支援に対する想い、プログラムの内容などを発信していただきたいと思っています。」Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)勝俣「LITALICOワークスの新規拠点開設担当として、各地で障害のある方向けの就職相談会を行うなかで、忘れられない一言があります。精神障害のある当事者の方に、就労移行支援サービスについてご説明した際、「あと1年早く、こんな支援制度があることを知りたかった。そうすれば私の人生はもっと変わっていただろうに…」と言われたんです。その方は、精神障害によって以前の仕事を辞め、病院での治療を受けたのちにご自身で就職活動を始められたそうです。しかし、ご自分の障害について企業にどう説明すれば良いか、ご自分の症状や体調に合わせて働けるにはどのような仕事・企業を選べばよいかといった、障害のある方の就職活動におけるノウハウを持たれないなか、なかなか内定を得ることができませんでした。一年間、就職活動を続けるなかで、貯金もだんだんと減っていき、また一緒に暮らすご家族の健康状態にも変化があり…と、再就職に向けた"溜め"がなくなっていくなかで、就職に対して希望が持てない状態に陥ってしまっていたのです。障害のある方が就労に至る方法はさまざまですが、ご自分の環境や願いにあった選択をするためにも、適切な「情報」を得ることや、就職活動に伴走する「支援者」に繋がることは、とても重要だと感じています。あの日お会いした方のように、情報や支援に繋がることが出来ず困っている方は全国にもっとたくさんいるのではないか…こうした状況をなんとかしたいという思いから、LITALICO仕事ナビの立ち上げに携わっています。」LITALICO仕事ナビのサービス概要「LITALICO仕事ナビ」は、働くことに障害のある方と、障害のある方の「働きたい」を支援する就労支援事業所双方の課題を解決するプラットフォームです。障害があり、仕事を探しているユーザーの方々は、LITALICO仕事ナビ上で多くの事業所情報を閲覧・比較することができ、現利用者の障害種別や施設運営のこだわりポイント、就職者実績などを調べることで、ご自分の状況に最適な就労支援事業所を選んでいただきやすくなります。また、障害のある人の「働きたい」を支援する、就労支援事業所の方々は、LITALICO仕事ナビ上で自身の事業所紹介ページを設けることができます。ページ運営や問い合わせ管理をLITALICO仕事ナビ上で一括して対応することが可能となり、事業所を探す新規利用者の方々への情報発信に必要な時間や費用を減らし、現在の利用者の方々への支援に一層注力できる環境を提供します。LITALICO仕事ナビのサービスを通して、障害のある方、就労支援事業所双方のお悩みを解決し、一人ひとりが自分らしく働ける社会の実現を目指します。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)撮影: Junichi Takahashi
2018年03月26日自閉症である息子さんを通わせたいと思える放課後デイサービス(以下、放課後デイ)がなかったことから、自ら「アイム」を立ち上げた佐藤典雅さん。そこから、息子さんや生徒の成長に伴い、フリースクールや就労支援、グループホームまで立ち上げてしまった。それらの施設を立ち上げた理由も、やはり放課後デイ設立の時と同じように、既存の施設に大きな不満があったからだと言う。そんな佐藤さんに、現在の福祉業界の問題点や自ら立ち上げた施設への思いを語ってもらった。発達障害のある子を育てる親たちにとって、最大のテーマは、将来の自立や働き方。『療育なんかいらない!』の著者でもある佐藤さんのお話の中には、きっと、発達障害の子どもの幸せな将来のために、親としてやるべきことのヒントがたくさんつまっているはずだ。佐藤典雅(さとう・のりまさ)さん川崎市で発達障害の子どもをサポートする放課後デイサービス「アインシュタイン放課後」「エジソン放課後」を運営している、(株)アイムの代表。自身の自閉症の息子さんの療育のために、息子さんが4歳の時に渡米して、ロサンゼルスで9年間過ごす。前職は、ヤフー・ジャパンのマーケティング、東京ガールズコレクションとキットソンのプロデューサーという異色の経歴の持ち主。福祉という範囲を超えた目線で、自身の息子さんの成長を見守りながら、発達障害児が社会で幸せに生きるための道を広げる挑戦をしている。著書: 『療育なんかいらない!』 (佐藤典雅・著/小学館 ¥1,296 税込)※放課後デイサービス(= 放課後デイ):6~18歳までの障害のある子どもが放課後や学校休業日に利用できる、就学時向けの福祉サービスのこと。■子どもの将来について保護者が不安に思わないインフラの構築がテーマ――前回の取材から1年ほど経ちました。その間、がっちゃん(佐藤さんの息子さん)の高校進学にあわせてフリースクールを設立したそうですね?佐藤典雅さん(以下、佐藤さん):アイムの放課後デイには、たくさんの中学生の生徒がいるので、中学卒業後の進路は重要なテーマでした。というのは、高校って義務教育じゃないから支援学級がないんですよ。だから、支援学校に行くしか選択肢がないのですよ。でも、既存の支援学校だと高校卒業証書はもらえないから、中卒扱いになっちゃうんですよ。どうせ就労支援に行くなら、あんまり関係ないかもしれないけど、親の心情的な観点からいくとちょっと残念だよね。ウチが設立したノーベル高等学院は発達障害や自閉症の生徒に合った通信サポート校で、明蓬館高校の教育連携施設として、高校の卒業証書も取得できるんですよ。――がっちゃんの進路に、既存の支援学校を選択しなかったのはなぜですか?佐藤さん:中学校までは義務教育だから、だいたいどこも手厚くやってくれるんですよ。でも、高校になった瞬間、何が始まるかというと「職業訓練」という言葉が出てきます。見学に行ったらわかると思うんだけど、ほとんどのところが就労の準備期間として、封筒やチラシを折ったり、縫物の練習をしたり、昭和の内職みたいな作業をさせているんですよ。でも、普通の子が高校で青春を楽しんでいる時に、どうして障害者の子たちは就労準備しなくちゃならないのか? 親として、自分の子がそういう状況にいるのはしのびないよね。――それで、もっと楽しい高校をご自分で作ってしまったわけですね。ノーベルでは、日々どんなことをしているのですか?佐藤さん:最低限、取得しなければいけない単位があるので、午前中は主に課題をしていますが、午後はもう自由! 好奇心旺盛なスタッフが、毎日いろいろなおもしろいところへ遠足に連れて行ってくれています。最近では、足立区にあるアスレティック施設や渋谷ヒカリエで開催されていた「チームラボ」のイベントなどに遊びに行ってましたよ。――それは通常の支援学校とはずいぶん違いますね! 生徒はどれくらいいるのでしょうか?佐藤さん:今、生徒は2人です。もともとフリースクールは赤字前提でやっている事業なんですよ。でも、なぜ赤字でもやるかというと、今、ウチには放課後デイに通っている中学生の子たちがたくさんいて、その子たちのセイフティネットとして必要だから。アイムのテーマは、子どもの将来について、保護者が不安に思わないインフラを作ること。だから、赤字でもやらないといけない理由があるんです!■市場から「置いてきぼり」にされる福祉の世界――支援学校と同様に、就労支援にも疑問を感じて、アイムで取り組まれているそうですね? 既存の就労支援のどんなところに問題を感じているのですか?佐藤さん:いろいろありますが…例えば、就労支援に行くと、まず、みんなあいさつの訓練をさせられます。見学に行ったことありますか? 行くと、みんなが無条件に一斉に立って「いらっしゃいませ!」って言うから。トイレ行く時だって、みんな「佐藤さん、トイレに行っていいですか?」って聞いてくるの。トイレ行くのにどうして許可が必要なわけ? みんなロボットみたいになっちゃうんですよ。――確かに、そういう雰囲気がある気もしますね…。佐藤さん:でも、そもそも仕事において、あいさつってそんなに重要なの? それで売り上げが上がるんですか? 僕は、あいさつなんかより儲かる就労支援をつくることの方がずっと重要だと思ってます。だから、福祉業界の人に「あいさつはいりません!」って言ったら、「佐藤さん、それでは社会性が身につきません」って言われました。じゃあ、普通の世間一般の会社の社員が同じようなあいさつをしているのでしょうか? あいさつをしなくてもいい業種はたくさんありますよね。それでも全ての社員は型にはまったあいさつをしないと社会性がないといえるのでしょうか? 仕事においてどこに価値を求めるのかという話なんですよ。――確かに…。佐藤さん:どんな大手企業でも、行動パターンを変えられなければ、いつかはつぶれてしまうと思います。市場が変わっているのに、会社の倫理観、価値観、戦略、全部変えられないままでは、市場から置いてきぼりにされる。学校や福祉の世界でも、これと同じようなことが起こるはずなんです。しかし、助成金によって雇用も給料も守られているわけで、福祉は保険点数でも守られているからつぶれることがないわけです。こんなの民間企業だったら、とっくに淘汰されていてもおかしくないです(苦笑)。制度の枠組みで仕方ないのですが、そもそも行政からみて就労支援は「就職」でなく「介護」の延長線上にあります。なぜかというと、就労支援に配置される資格者は介護士なんですよ。これまでビジネス経験のない介護資格者がいきなり売り上げを求められるわけです。だから、発達障害の子たちのために利益分配を考えるのは、かなりハードルが高い話なんです。――そういう現状を、きちんと親が知って考えるべきなんですね…。佐藤さん:お母さんはみんな、「将来この子が困らないように」って療育で訓練することばかりに夢中になっているけど、だれも「出口」のことを考えていないし調べてもいない。僕は、「出口」のことしか考えてなくて、それは就労です。その子が自分の力で就職できるのか否かという明確なラインがあって、そこしか見ていない。今、支援学校を卒業した後の進路は、2つしかないんです。ひとつは、特例子会社に就職する。もうひとつは、就労支援に行く。一般企業に普通に就職できない子の出口は、就労支援しかないんです。将来、わが子の就職が難しいと考えた時、親として考えるのは、どういう就労支援だったらわが子が充実した毎日が送れるかということ。そこしかないんです。既存の就労支援には、がっちゃんを通わせたいと思えるような施設がなかったので自分たちでやる必要性を感じたわけです。――特例子会社の方はどうなのでしょうか?佐藤さん:特例子会社っていうのは、企業枠で障害者を2.3%雇用しなければならないという決まりがあって最低賃金が発生します。で、特例子会社は大手企業が多いから、ほとんどが都心にあって、オフィスで事務作業をすることができます。でも、僕から見ると、特例子会社も就労支援も両方同じようなもんですよ。封筒やチラシ折ったり、昭和の内職みたいな仕事をしている。もちろん、その子がその仕事を楽しんでいればいいけれど。――でも、キレイなオフィスで働けて最低賃金が発生するなら、保護者にとったら就労支援より特定子会社に入るほうが理想的ですね?佐藤さん:でも、特例子会社は民間企業だから、ある程度の基準を満たさないと入れないし、枠も限られています。加えて、都心のオフィスに通うために、通勤ラッシュにも耐えられる子が採用の前提となります。そうすると、当然、ある程度コミュニケーションがとれる軽度の子が採用されるんですよ。――そうすると先ほどのお話のように、重度な子は特例子会社には入れず、就労支援に行く進路しかない、というわけですね?佐藤さん:ウチのがっちゃんは、まさにそこなんです。特例子会社に行く子たちは、比較的障害が軽いので、社会で働いて賃金を稼いで満足を得ることができます。でも、がっちゃんは給料をもらってもよくわからないから、「このつまんない作業はなんなんだ!?」で終わっちゃう。――働くことにおいて、がっちゃんの幸せはどこにあるとお考えですか?佐藤さん:がっちゃんはあまりにも謎が多すぎてまだわからない(笑)。でも、親として、特例子会社に行くことががっちゃんの喜びにならないことはわかっています。だから、どういう就労支援だったら楽しめるのか、ということをずっと考えています。がっちゃんはかなり自閉症ど真ん中なので、ウチの子のニーズを満たせれば、ほぼすべての自閉症児のニーズを満たせると思ってる。がっちゃんの問題を解決することが、幅広い子どもたちの問題を解決することにつながる。それがどういう就労支援なのかということを、いくつか実験しているところです。 ■就労支援もきちんと利益を追求、「儲からない仕組み」を根本から改革――その手始めとして、就労支援ルピアをアイムの傘下に入れたのですね?佐藤さん:そうなんですよ、ルピアさんの協力で。おかげで、就労支援の仕組みがだいたいわかってきたので、来年のどこかで、ウチ独自のアートの就労支援を作ろうと計画しています。その後は、飲食の就労支援も考えています。カフェがいいのかビュッフェスタイルがいいのか…?どうやったら最小限の労力で最大限の利益を上げられるか、そこを必死に考えています。よく、福祉の世界は利益追求反対という風潮があるけど、資本主義の中で生きている以上避けられません。ビジネスとして利益をあげて、利用者の環境のために再投資をしていくために利益は大切なんですよ。――確かに、既存の就労支援って、あまり利益を出そうという雰囲気がないですよね…。佐藤さん:そこが就労支援の大きな問題なんです。就労支援は保険点数でまかなってるから、つぶれることがない。だから、彼らは利益なんか出なくてもいいんですよ。危機感が非常に薄い!ルピアも最初は課題が大きかったですよ。当初はお店もボロボロでいかにも「福祉!」っていう感じで…。 だから、アイムでプロデュースしてオシャレに改装したんですよ。すると後日、店の責任者は「全然効果ない」って言うから、よくよく話を聞いてみたら、なんと就労支援だからという理由で週末にお店を閉めていたんですよ! もう、ビックリしちゃって(爆笑)。お店、つまり小売りでしょう? 小売り店舗で土日閉まってるって、その時点で売り上げが出るはずもなく(笑)。福祉にいると、商品やサービスを提供するって時点で、就労支援も民間企業との競争になるっていう認識が薄くなるんです。もちろんその後、週末にお店を営業したら、案の上、売り上げは3倍になったわけで、みんなハッピー(笑)。一般的な就労支援を見ると、仕事内容が、ビラを折るとかボールペンの組み立てだったりするわけです。こんなところに入るために、支援学校で3年間も訓練させられたの!? って思いませんか?■既存の施設や他人に親は振り回されるだけ…子どもの将来はゆだねない!――確かに。親子で一生懸命職業訓練して、でも、その先がそんな職場ばかりだったら浮かばれないですよね…。佐藤さん:普通の就労支援でも、その子が働くことを楽しんでいればいいんです。でも、私から見たら、昭和の内職みたいな仕事をして時給100円の世界ですよ。実際にそれが合わずに引きこもりで終わってしまう障害者が多いと聞きます。特例子会社にしても、お母さんがわが子の就職先にそこを目指して、二人三脚で支援学校で3年間一生懸命訓練しても入れなくて。「ずっとがんばってきたのに特例子会社に入れなかった」って泣いたり落ち込んだりしている姿をいっぱい見ます。でも、全然落ち込む必要ないですよ!ってお母さんたちに言っています。だって、そんなところに入れなくたって、アイムがその子たちに合う就労支援を作ればいいだけのことでしょう?――そうしたら、お母さんも子どもの将来について余計な心配しなくてすみますね。佐藤さん:今ある既存の施設や他人に将来をゆだねると、親は振り回されるだけ。どうでもいいことで落ち込んだり泣いたりしてしまう。よく保護者が「将来、この子が困らないように、しつけてる」とか「療育で訓練してる」って言うけど、こんなところに入れてもらうために、子どもの個性をねじまげてまで訓練する必要なんてないですよ。大事なのは、その子自身をどうこうすることではなく、その子が生き生きと生活できる環境を与えること。だから、子どもがそのままでも安心して働ける楽しい就労支援を、アイムは目指します。そのために、ウチは「就労継続支援B型」をやるんです! ウチは「移行支援」には手を出さず、どんつきである「継続支援B型」をやります。(※)だって、たとえばうつ病とかなら、訓練してまた社会復帰できる可能性もあるかもしれないけど、自閉症は治らないから、訓練を受ければ復帰できるというわけじゃないじゃないですよね? それに「移行支援」では2年間しか訓練を受けられないから、最終的には「B型」に突っ込んで、「はい! おしまい!」なんですよ。その先のことは彼らにはあまり関係ないから。でも、これだとうちの息子の場合は困るわけですよ。※就労支援には、「就労移行支援」と「就労継続支援」の2タイプがあります。「就労移行支援」とは、一般企業への就職をサポートする訓練支援(2年間限定)なのに対して、「継続支援」は一般企業への就職が困難な障害者に就労の場を提供する支援です。さらに、「継続支援」には「A型」と「B型」の2タイプがあり、「B型」は「A型」の仕事が困難な障害者が対象となります。■健常者が「うらやましい!」と思うような就労支援を提供したい――アイムで就労支援を立ち上げるにあたって、さまざまな施設を見学に行かれたと思うのですが、参考になりそうなところはありましたか?佐藤さん:学ぶべき就労支援はたくさんありますよ。例えば、名古屋にある「世界の植物と昆虫のお店『APERO HYLE』」。虫好きの自閉症の子たちが昆虫や植物を育てて、それを売るの。ヘラクレスオオカブトとか高価な虫は1匹3万円ほどの値がつくんですよ。1日の売り上げが10万円あるから「B型」なのに、最低賃金も払えてるの! すごいなぁ〜って。――さまざまな施設を見学されて、アイムの方向性は決まりましたか?佐藤さん:ウチは川崎に3種類違う就労支援をもちたいと思ってます。だいたい3タイプくらいあれば、すべての生徒を対応ができるかな、と。アートの就労支援は決まったので、今年中に設立します。あとの2つは、案は出ているけれど、その時の状況や人材など、いろいろな要素が絡んでくるから、今のところリサーチにとどめています。でも、2年以内には作る予定です。――相変わらずすごいスピード感ですね。佐藤さん:福祉や教育は業界の特質として変わりにくいっていう前提で考えた方がいいですよ。だから、自分で作った方がずっと早いわけ。今の福祉制度をうまく使って、アイムでは新しい視点で就労支援を提供したいと思っています。もちろん、働く本人たちが楽しいっていうのが大前提なんだけど、一番重要なのは、健常者が「ここに通いたい」「こんな素敵な場所で楽しそうな仕事ができていいな」って思えるような施設を作ることだと思うんですよね。障害者がなんでかわいそうに見えるのか、それは、みすぼらしい場所にいるからだと思うんですよ。だから、うちのテーマは、健常者がうらやましいと思える職場を障害者に提供することなんです。――保護者も、福祉に頼るだけでなく、自ら行動を起こすべきなんですね。とはいえ、普通のお母さん(私)は佐藤さんのように、ガシガシ動ける自信もないのですが(苦笑)。佐藤さん:じゃあ、川崎に引っ越してきて、ウチに通えばいいじゃないですか(笑)。最近では、療育をしないというアイムの方針が浸透して、それに賛同する保護者がウチに通いたいと遠方から引っ越してきてるんですよ。だから、ウチの生徒になったら、ちゃんとアイムとして最後まで面倒を見たいなと思っています。今年の秋から、グループホームも始めました。放課後デイ→フリースクール→就労支援→グループホームと一つのレールを敷くことで、保護者の不安を取り除き、発達障害の子育てを明るいものにしたいと思っています。「すべての子どもがあこがれるような居場所を。健常者がうらやむような職場を」と、驚くような勢いで、発達障害の子どもたちの充実した人生のためのインフラ作りを進める、佐藤さん。その原動力は、「親として子どもに納得できる環境を与えたい」という想いだった。誰もが佐藤さんのように動けるわけではないが、障害を持つ子の親であれば、誰しも同じ想いを持っているのではないだろうか? わが子の幸せな働き方ってなんだろう? そのために、私は親として何ができるだろう? 改めて考えさせられた取材だった。取材・文/まちとこ出版社N
2018年01月25日難航する仕事選び。障害者雇用枠で、最も多い求人は事務職。けれども…出典 : 私は、26歳のときにアスペルガー症候群、ADHDの診断を受け、同時に退職も余儀なくされました。就職をするまでの学生生活では、表面上のコミュニケーションや、日常生活、勉強という面では、これといった支障はなく、自分が発達障害であることにも気づいていませんでした。しかし、社会人になってから対人関係の困り事などが表出し、行く先々で、「常識がない」「もう少し場をわきまえろ」と言われてきました。そして発達障害の診断を受けた後、そのことを職場にカミングアウトしたのですが、残念ながら退職せざるを得ない状況に追い込まれてしまったのです。それからは就労移行支援事業所に通うことになり、支援員の方の手を借りながら障害者雇用枠での就職活動を進め、内定を獲得することができました。就労移行支援事業所は障害がある人の就労をサポートする機関で、職業訓練や職場探し、職場への定着支援など、さまざまな支援を受けることができます。しかし、その道のりは一本道というわけではなく、壁に直面したり、どうすればいいかわからないことも少なくありませんでした。特に悩んだのは、自分の特性と仕事の性質の兼ね合いです。障害者雇用枠のおよそ半分以上は事務職と言われれており、一般事務や経理、総務、人事などの職種で就職する場合が多いそうです。しかし、私は何か目新しさがないと注意や集中力を持続することができません。例えばExcelなどで売上伝票などを作成する際に、売上金などのデータ入力が必須になってきますが、ミスしないよう慎重に作業しているとスピードが他の人に比べて明らかに遅くなってしまうのです。するとそれが焦りに繋がり悪循環に陥ります。結果として、雑な仕上がりとなってしまったり、思いもしないようなミスをしてしまうのです。「働く」という字は、人と一緒に動くと書く。でも自分はコミュニケーションが苦手…出典 : また、空気が読めない、他人の気持ちに配慮した言動が難しいなどの特徴から、仕事上での困難に直面することも少なくありませんでした。営業の仕事にかかわっていたときは、相手の意図を汲み取りつつも、相手に探りを入れる高度なコミュニケーション能力が求められましたが、どうやってもうまくこなすことができませんでした。また、営業職は電話応対が頻繁に発生するため、他の人が話している電話の声が気になってしまったり、聞こえてくる会話内容を意図せずメールに書いてしまう事もありました。1つの作業に没頭すると他のことを忘れてしまうことも少なくなかったため、報告・連絡・相談がおろそかになるのは日常茶飯事。こうした自分の特性を考えたうえで就職をしようとすると、どうしても選択肢は数少ないものになってしまい、愕然とせざるえませんでした。自分には一体、何が出来るんだ!?出典 : 次第に頭のなかには、「自分には一体何ができるのか?」という思いが込み上げてきました。考えても出てくるのは「できることなんて無い」という答えばかり。私はどうすればわからず、毎日落ち込んでばかりいました。このとき、前を向く光をくれたのが、前職を退職してから相談を続けてきたカウンセラーさんです。障害の診断を受けて薬が処方されてからというもの、見知らぬ地でひとりぼっちのような気持ちでしたが、どうしたら生きやすくなるかの相談を続けてゆくうちに、自分がたどるべき道を何となくイメージできるようになってきたのです。検査結果ではわからなかった自分の数少ない強みカウンセリングでは、WAIS-III(ウェクスラー式知能検査)の結果を紐解いて、苦手なことと、苦手ではないことを分類していくことを行いました。私のWAIS-IIIの結果は、言語理解の部分が苦手ではない。しかし、決してずば抜けている訳でもないと言えるくらいで、他の項目はすべて平均より低いと言わざるを得ない状況でした。カウンセリングに行く度に話す内容をA4、1枚の紙にまとめて、ときには参考になりそうな資料なども合わせて準備していました。相談したいことがいくつかあった場合でも、話しているうちに相談しようと思っていたことを忘れてしまい、相談室を出た後で、話し忘れたと後悔することが多かったからです。そんな中あるとき、私の作った資料を見たカウンセラーさんが、ひょっとしたら自分の考えをまとめることが得意なのかもしれないと指摘してくれたのです。言われてみれば、心当たりがありました。以前仕事をしていたときは毎日が失敗の連続だったので、なぜ怒られたのか?何がいけなかったのかを自分で分析するために、日記に書くようになりました。1日の終わりに静かな自宅の部屋で、時間をゆっくりとかけながら何が問題だったのかを洗い出し、それはそしてときには視覚的に情報をまとめます。それは私にとってはまったく苦にならない作業であったことに気づいたのです。Upload By ツーちゃんこのことから自分で企画を考え、図やイラストで分かりやすく説明するような仕事内容にチャレンジしたいと思うようになりました。不注意傾向があってもソフトのスペルチェック機能を使えば、ミスが未然に防げたり、取りこぼしが減らせたりすることはできます。なので、Webデザイナーや、ライター、企画職など、クリエイティブ寄りの職種を志望し、就職活動を進めることにしたのです。Upload By ツーちゃん出来ることと(障害特性上)難しいこと=配慮して欲しいことを整理する出典 : 私の場合、障害者雇用枠での就職を目指すということは比較的早い段階で決まっていました。というのも仕事量や、割り振りなどに関して、会社側の配慮がどうしても必要だと強く感じていたからです。そのため、検査の結果なども加味して考え、障害を隠して働くという選択肢は消えていました。次に私は、自分の特性を面接官に分かりやすく説明する、「ナビゲーションブック」の作成に取り掛かります。そこで難しかったことは、障害の程度をいい塩梅で面接官に伝えるということです。文字などでまとめることは苦にならない私ですが、ありのまますぎて、より強烈な印象を与えてしまうような文章を書いてしまいがちでした。あまり欠点のみを書き過ぎてしまうと、人事担当も評価ポイントを見出しにくくなってしまいます。なので、自分自身の障害特性をしっかりと自覚し、そうした過去の失敗を繰り返さないように気をつけていると明記し、加えて過去の自分からの成長をアピールしました。また作成した当初は、できることと、配慮して欲しいことの2つのみを書いていましたが、それだと配慮してもらって当たり前というような印象を受けると支援員の方から指摘して頂いて、障害特性はあるものの、自分自身の努力でカバーできることもあると書くようにしました。Upload By ツーちゃんナビゲーションブックは就職活動を進める上で、どう役に立ったのか?出典 : 障害者雇用枠での面接では、仕事に対する熱意や志望動機以上に、障害のことや、それに対して必要な配慮について質問されました。そういったときにナビゲーションブックが役立ちます。2部、印刷して持参しておいたナビゲーションブックを、面接官と一緒に見ながら、事細かに説明しました。ナビゲーションブックを見た感想を、面接まで進んだ企業の採用担当者に聞いたことがあります。「障害者雇用によく使われる履歴書には3行程度障害について記載する欄があるが、3行程度の説明では、障害の多様さを理解するのは難しい。こういったナビゲーションブック等で障害に関して、詳しく説明して頂けるのは、とても助かる。また人事としても、障害に関してどこまで聞いて良いのか非常に気を遣う。求職者の方からオープンにして頂けると採用担当者からしてもやりやすい」と言われました。また別の面接官は「伝言ゲームだと、聞いた内容があやふやになりやすいが、こうした資料があれば、次の面接官への引き継ぎがしやすい」といった声もありました。総じて、障害を隠すよりも、かえって包み隠さず話した方が好印象と受け止められるケースが多かったです。またナビゲーションブックを用意しておく事で、その内容に沿った質問が多くなり、予想外の質問を減らす事が出来るというメリットもありました。臨機応変力があまり高くない私にとっては嬉しい誤算でもありました。必ずしもナビゲーションブックの作成をしなければいけない訳ではありませんが、ナビゲーションブックを用意する事で、障害についての理解が深まり、企業の採用担当の方にとっても不安が少なくなるのかもしれないなと感じました。参考: LITALICOワークス合理的配慮ガイドブック障害者雇用枠での就職活動を振り返って出典 : こうして就職活動を進めているうちに、半年が過ぎ、やっと内定を手に入れることができました。内定した会社は、スマートフォン向けのゲームアプリを開発する会社です。パソコンなどの扱いに精通していたことや、ADHDで新しいもの好き、好奇心旺盛な部分が、結果的に良い方向に働いたと感じています。配慮の面では、「困っていることはないか?」と人事の担当者が相談する時間を設けてくれたり、上司には指示が曖昧で分かりにくいといった、言いづらいことを代わりに伝えてもらうといった配慮を受けています。ただ、人事部と現場レベルで障害への理解、業務指示などを含めた接し方に対して、温度差が多少あるようには感じられます。また、環境の変化や、刺激の多い環境に対して疲れやすい特性を持っているので、最初の1か月間は、時短勤務を許可してもらっており、とても大事にしてもらっていると感じています。内定を得るまでには、合同就職説明会などで大量エントリーした企業も含めると、30社から40社ほどは受けたと思います。そのうち、面接に進んだのは6社で、最終面接に進めたのは4社。内定はたった1社のみという結果です。正直なところ、綱渡りのような状態で、これに落ちたらまた振り出しのような状況だったので、内定が出て胸をなでおろしたような気持ちです。就職活動が長引いてしまった理由としては、書類選考で落ちることも多く、モチベーションを保つのが難しかったこと、企業が特に精神障害・発達障害のある人の採用に対して慎重な姿勢を貫いていることから、選考期間が長期化してしまうことが挙げられると思います。障害者雇用については、まだどこも手探りのような状態で、書類選考に1ヶ月かかることも少なくありませんでした。新しい仕事は、すべてが未経験で「初めてづくし」な部分は大きいのですが、1年ぶりに仕事が出来ること、就労移行支援を退所した後も、支援員の方が定着支援として、企業と私との連絡係としてサポートしてくださることなどが、前職の時には無かった安心感を生んでいます。今から新しい門出にワクワクしています。私の経験は1つの例でしかありません。他にもさまざまな歩き方があると思います。それでも、私の歩んだ道が、少しでも役に立てば、これほど嬉しいことはありません。
2018年01月03日避難行動要支援者って?災害時に避難しにくいのはどんな人?出典 : 地震や津波、水害などの災害が起きたとき、自力で避難が難しかったり、避難に際して特別な配慮が必要な場合があります。阪神淡路大震災や東日本大震災の時などにも、高齢者や障害のある方の中には自ら避難するのに何らかの困難を抱えた方も多くいました。たとえば以下のような人は一人では避難しにくいと考えられます。・視覚・聴覚障害があり、災害発生時に周りの状況の把握がむずかしい。災害情報が得にくい・高齢者・身体に障害がある人で、自力での避難が困難な人・知的障害や精神障害などがあり、地震や災害が起きた時に、どう行動したらよいかわからない障害のある人・重度心身障害者、人工呼吸器や温度調整が必要な人そのため、このような人を避難行動要支援者とし、名簿を作成してスムーズな支援ができるように平成25年6月、災害対策基本法が改正されました。またこれらの周知のため、今年(平成29年)パンフレットや事例集も作成されました。リーフレット「災害時に備えて今できること」|厚生労働省避難行動要支援者の避難行動支援に 関する事例集|内閣府災害対策基本法改正によりできた「避難行動要支援者名簿」の制度出典 : この法律で、市町村に避難行動要支援者名簿の作成が義務付けられました。簡単に言うと、上記のような一人では避難が困難な人が、災害時にサポートを受けられるように事前に登録しておくという制度です。自治体が特に支援が必要な人を把握するとともに、災害時にスムーズに支援ができるよう、消防機関や警察、民生委員などの避難支援に関係する人に情報が共有できるようにすることが定められました。名簿には個人情報が含まれるため、災害対策基本法で個人情報漏えい防止のための規定もあります。実際に名簿をつくり、運用するのは市町村です。具体的な支援や制度については、自治体によって異なる場合があるので、お住まいの市町村に問い合わせることをおすすめします。発達ナビのユーザーの皆さんの中には、療育手帳や精神障害者福祉手帳の取得時などに名簿への登録や、情報提供の同意などを求められる場合があるかもしれません。また、災害があったときに一人で避難することが難しそうだと感じている人もいるかもしれません。避難行動要支援者がどのような支援を受けられるのかを知り、必要に応じて名簿に登録することで、災害への備えの一つとしてはいかがでしょうか?災害対策基本法避難行動要支援者名簿の作成等に係る取組状況の調査結果どんな支援をしてくれる?出典 : ・避難のための情報伝達情報を得ることが難しい人のために、その人が情報を得やすい方法で災害情報を得られるようにサポートします。・避難支援災害時、避難行動を支援します。また、要支援者の特性に合わせた個別の避難計画の作成や防災訓練をする場合もあります。平常時も支援者による声かけや見守りにつなげておくことも含まれます。・安否確認名簿が災害時の安否確認に活用できます。・避難場所以降の避難行動要支援者への対応避難した後も、避難場所での支援者への引き継ぎがスムーズに行えることがあります。名簿への登録は?出典 : 災害対策基本法では、以下を避難行動要支援者と定め、市町村に把握と名簿の作成を義務付けています。当該市町村に居住する要配慮者のうち、 災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に自ら避難する ことが困難な者であつて、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため 特に支援を要するもの具体的な対象者の範囲はお住まいの市町村によって異なります。以下に千葉市の場合をご紹介します。名簿に掲載される方65歳以上のひとり暮らしの方で、介護保険の要介護認定区分1・2の方、または要支援認定区分1・2に該当する方要介護認定区分3~5に該当する方次に該当する障害がある方視覚障害(1級又は2級)、聴覚障害(2級)、上肢機能障害(1級又は2級)、下肢機能障害(1級又は2級)、体幹機能障害(1級、2級又は3級)、乳幼児期以前の非進行性の脳病変による運動機能障害のうち上肢機能障害(1級又は2級)、乳幼児期以前の非進行性の脳病変による運動機能障害のうち移動機能障害(1級、2級又は3級)、呼吸器機能(1級)、小腸機能(1級)、精神障害(1級)、知的障害(AまたはⒶ)難病患者で身体障害者手帳1・2級の方及び小児慢性特定疾病等で療養負担過重患者の方制度の運用も自治体によって異なります。自分が名簿に登録されているか確認したいときや、定められた対象ではないが一人での避難が困難な場合などで、名簿への登録を希望するときはお住まいの自治体に問い合わせてください。制度の運用方法は市町村によって異なりますが、以下に大まかな流れをご紹介します。1. 市町村が支援が必要な人の情報を集め、避難行動要支援者名簿を作成します。避難行動要支援者名簿には、掲載者の氏名、生年月日、性別、住所、電話番号その他の連絡先、避難支援等を必要とする事由、その 他避難支援等の実施に必要な事項が掲載されます。参考:災害対策基本法49 条10 第 2 項2. 名簿情報を平時から支援者に提供していいか、確認がされ、問題なければ同意します。3. 同意した人の名簿情報が消防、警察、民生委員などの支援者に提供されます。4. 支援者が日常の声かけなどの見守りや避難訓練などの支援を行います。5. 災害時には市町村や支援者により避難行動に関する支援や安否確認などが行われます。個人情報が支援者に提供されることに不安を感じる人もいるかもしれません。災害対策基本法によって、避難行動要支援者名簿を提供した支援者には守秘義務が発生します。また各自治体で名簿情報の漏えいの防止のため必要な措置を講ずることも定められています。参考:避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針|内閣府名簿に登録がなくても避難行動に配慮が必要な人もいます出典 : 避難行動要支援者として名簿に登録していない人でも、災害時の避難に困難を抱える要配慮者の人がいます。たとえば発達障害のある人は、自閉症などの特性から、いつもと違うことに強い不安を感じたり、パニックになってしまうことがあります。学習障害がある場合、電光掲示板や掲示物などから情報を得るのが難しいかもしれません。障害が軽度で、名簿に登録していない人でも避難時に思わぬ困難が生じる可能性があることを覚えておきましょう。また外国の人は、日本語での緊急避難速報や避難誘導の声かけが理解できないかもしれません。このほかにも外見からは障害があることがわからない人もいます。もちろん妊娠している人や乳幼児、高齢者なども避難の際に配慮が必要です。全ての人が一人ひとり日ごろから、防災意識を持ち準備することが、地域に住むさまざまな人を災害から身を守ることにつながります。また災害時には、まず自分の身を守ることが第一ですが、周りに困っている人がいないかどうかにも目を配るように心がけたいですね。参考:要援護者の特性ごとの避難行動等の特徴|大阪市住吉区まとめ出典 : 避難行動要支援者というと、高齢者や身体に障害がある人をイメージすることが多いかもしれません。ですが、その他にも避難に際して支援が必要な人もいます。知的障害や精神障害のある方の中には非常時の状況判断が一人では難しい場合もあるでしょう。言語障害のある人は見た目からはわかりませんが、緊急事態を言葉で人に伝えることが難しい場合も考えられます。災害はいつ発生するかわかりません。まわりに様々な困難のある人がいること、そして災害が起きたときのことを想定して事前に対策をすることが、もしもの時の大きな備えとなります。避難行動要支援者名簿への登録はその一つです。行政や避難支援者に受けられる支援にはさまざまなものがあり、避難時のサポートだけでなく、もし避難生活がはじまっても引き継がれます。情報の共有をすることで、日ごろから地域の支援者ともつながりが持てます。また、名簿への登録がない人でも、避難時に支援を必要としている人がいるかもしれないことを心に留めておきましょう。
2017年09月01日発達支援施設とは?発達が気になるお子さんや、障害のあるお子さんを、ご家庭の中だけでサポートすることは容易なことではありません。そういった子どもたちのためにあるのが「児童発達支援」や「放課後等デイサービス」などの発達支援施設です!児童福祉法では、障害児通所支援と呼ばれ、全国各地にある施設に直接通うことで、必要なサポートを受けることができます。原則的に、小学生未満の未就学の子どもが通うことができるのが児童発達支援、小学生~高校生の就学児童が通うことができるのが放課後デイサービスです。児童発達支援では、小学校就学前の子どもを主に対象とし、支援を受けることができる施設です。日常生活の自立支援や機能訓練を行ったり、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場を提供したりといった、多様な支援を目的としています。サービス・利用方法・費用・手続きの流れについては、以下の記事に詳しくまとめられています。放課後等デイサービスとは、障害のある就学児童(小学生・中学生・高校生)が学校の授業終了後や長期休暇中に通うことのできる施設です。放課後等デイサービスでは、生活力向上のためのさまざまなプログラムが行われています。トランポリン、楽器の演奏、パソコン教室、社会科見学、造形など習い事に近い活動を行っている施設もあれば、専門的な療育を受けることができる施設もあります。サービス・利用方法・費用・手続きの流れについては、以下の記事に詳しくまとめられています。どんな支援が受けられるの?児童発達支援や放課後等デイサービスにはさまざまなタイプがありますが、一部の施設では療育的なアプローチによる支援を受けられることもあります。ソーシャルスキルトレーニングをはじめ、さまざまな独自の療育プログラムが組まれている場合もあり、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など専門資格を保有しているスタッフがいる施設もあります。また、障害のある子どもにとって、児童発達支援や放課後等デイサービスは、家庭・学校(園)につぐ3つ目の居場所となります。子どもにあった施設を選ぶことができれば、親子ともども充実した時間を過ごすことができるはずです。発達支援施設を選ぶときのポイントは?お住まいの地域にどんな施設があるかは、保健センター、子育て支援センター、児童発達支援事業所、発達障害者支援センターや、市町村の窓口で確認することができることもあります。これらの窓口で、子どもの特性にあった施設について相談してみることも有効です。公共の相談窓口以外に、インターネット上で施設を探すこともできます。LITALICO発達ナビの「施設情報」では、全国の児童発達支援施設や放課後等デイサービスを、合わせて約15,000施設掲載しています。それぞれの施設の受け入れ状況や、サポートの内容も詳しくまとめられています。また、各施設のスタッフが自分たちで更新している写真付きのブログや、実際の利用者さんからの口コミ情報も合わせて見ることができます。さらに、発達ナビ上から24時間いつでも、空き状況の確認や教室見学などの問い合わせをすることが可能です。利用にかかる費用は?児童発達支援と放課後等デイサービスは障害児給付費の対象となるサービスです。通所受給者証を取得することで国と自治体から利用料の9割が給付され、1割の自己負担でサービスを受けることができます。生活保護受給世帯・市町村民税非課税世帯: 0円市町村民税課税世帯(年間所得がおおむね890万円以下の世帯): 4,600円上記以外(年間所得がおおむね890万円以上の世帯): 37,200円このほかにおやつ代などの食費や教材費などの実費が必要になる場合もあります。また、自治体により独自の助成制度があります。児童発達支援の利用にかかる費用について、詳しくはこちらのコラムの「児童発達支援施設の利用方法」の章にまとめられています。生活保護受給世帯・市町村民税非課税世帯: 0円市町村民税課税世帯(前年度の年間所得がおおむね890万円以下の世帯): 4,600円上記以外(前年度の年間所得がおおむね890万円以上の世帯): 37,200円原則一割負担ですが、前年度の年間所得によっては負担額が0円であったり、1割以上である場合もあります。施設によってはおやつ代や制作物の材料代などがかかるところがあります。これらに加え、自治体により独自の助成制度がある場合もあるので、行政の窓口に問い合わせてみましょう。放課後等デイサービスの利用にかかる費用について、詳しくはこちらのコラムの「放課後等デイサービスの利用方法」の章にまとめられています。施設の利用方法は?発達支援施設に通うためには「通所受給者証」が必要になります。通所受給者証はお住まいの市区町村の福祉担当窓口・障害児相談支援事業所などに申請を行うとで取得することができます。この通所受給者証があることで、自己負担1割でサービスを受けることができるのです。障害者手帳がなくても、通所受給者証があれば、「児童発達支援」や「放課後等デイサービス」を利用できます。詳しい取得法や、申請の方法はこちらを参考にしてください。その他にも受けられるサービスはあるの?また、児童発達支援や放課後等デイサービス以外にも、受けられる支援があります。受けられる支援の詳細や申請方法はこちらにまとめられています。療育手帳・障害者手帳とは?障害者手帳とは、障害のある人が取得することができる手帳です。障害者手帳を取得することで、障害の種類や程度に応じてさまざまな福祉サービスを受けることができます。身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳などの種類があります。まとめサービス・支援は多岐にわたるため、すべてを把握できず戸惑うこともあるかと思います。そんなときは、早めに相談することで、一歩ずつ疑問を解決してゆきましょう。保健センター、子育て支援センター、児童発達支援事業所、発達障害者支援センターや、市町村の窓口に相談することで、次のステップが見えてくるかもしれません。また、児童発達支援事業所や放課後等デイサービスなどのスタッフも相談に乗ってくれるはずです。一人で抱え込まず、相談できる相手を見つけ、適切な支援につなげていくことが大切です。
2017年08月29日障害者総合支援法の自立支援給付とは?出典 : 障害者総合支援法が定めるサービスには、大きく「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の2つの種類があります。自立支援給付は、利用するサービス費用の一部を行政が障害のある方へ個別に給付するものです。具体的には、障害に関する医療や福祉サービス、福祉用具(補装具)などの費用が給付されます。自立支援給付の基本的な運用ルールは、国(厚生労働省)が定めます。これに対し、地域生活支援事業は、国が一律に運用ルールを定めるのではなく、障害のある方がお住まいの各地域で運用ルールを定めて実施した方が実情に応じた対応を期待できる事業や、一般的な相談対応のように個別の給付には当たらない事業をまとめたものです。例えば1人では外出が困難な方への付き添いを提供する「移動支援」や、手話通訳者や要約筆談ができる人を派遣・設置する「コミュニケーション支援」といった事業が挙げられます。詳しい法律の概要やサービスの内容などは次のリンクを参考にしてください。この記事では、自立支援給付の利用申請方法・利用負担額を詳しく解説していきます。障害者総合支援法の給付サービスの申請方法出典 : 自立支援給付の利用手続きはサービスごとに申請方法が異なります。それぞれの申請方法を詳しくご紹介します。障害福祉サービスには「介護給付」と「訓練等給付」の2種類があり、それぞれ申請の流れが多少異なります。介護給付を希望する場合は障害のある方の生活環境を踏まえ、どのような支援をどの程度必要とするかといった度合いを測る「障害支援区分(以下、支援区分)認定」を受けることが必要になります。訓練等給付を希望する場合には原則として支援区分の認定は不要ですが、共同生活援助(グループホーム)を利用する場合には、支援区分認定が必要となります。支援区分は、7段階の区分に分かれ、もっとも支援の必要性が高い区分が「6」、以下「5・4・3・2・1」と続き、もっとも支援の必要性が低い場合は「非該当」となります。支援区分は7段階の区分に分かれ、もっとも支援の必要性が高い区分が「6」、以下「5・4・3・2・1」と続き、もっとも支援の必要性が低い場合は「非該当」となります。この支援の必要性の区分によって、支給されるサービスの時間に違いが出てきます。一部のサービスは支援区分が低いと利用できないこともあります。以下が申請からサービス利用までの流れです。1. 市区町村の障害福祉担当窓口へ申請申請の際には、状況に応じて障害者基礎年金1級の受給の有無や介護保険申請の状況などを聞かれる場合があります。2. 障害者支援区分認定調査市区町村の認定調査員による面接が行われ、全国共通の質問票から心身の状況に関する80項目と状況の調査が行われます。詳しくは次のリンクをご覧ください。参考:障害者総合支援法における「障害支援区分」の概要|厚生労働省3.一次判定認定調査の結果に基づき、コンピューター判定が行われます。4.二次判定一次判定の結果と状況調査、医師意見書などを踏まえ、市区町村が主催する、支援区分や特別な支給決定(必要とするサービス量が基準よりも多い支給決定など)を審議する「審査会」で二次判定が行われます。医師意見書とは、医師が申請した方の心身の状態、特別な医療などに意見を付すものです(市区町村が依頼します)。5.障害区分認定二次判定の結果に基づき、非該当、区分1~6の全7段階で支援区分認定が行われます。各サービスの区分ごとのサービス量は上記のリンクを参考にしてみてください。6.サービス利用意向の聴取・サービス等利用計画案の提出支援区分の認定と並行して、市区町村から福祉サービスの利用等に関する計画(サービス等利用計画、または障害児支援利用計画と呼びます)の案を提出するように求められます。サービス等利用計画案、障害児支援利用計画案は市区両村から指定された特定相談支援事業者、障害児相談支援事業所が作成しますが、申請者自身による作成も可能です(申請した方自身が作成する計画をセルフプランと呼びます)。7.支給決定支援区分や本人の状況、家族・家庭の状況、現在の困りごとや将来に向けた希望、福祉サービスの利用意向、サービス等利用計画案などを踏まえてサービスが支給決定され、受給者証が申請者に通知されます。8.サービス担当者会議申請した方が利用する全サービスの担当者(サービス管理責任者)が出席し、利用する方に適したサービス提供のあり方や、事業所ごとに作成する「個別支援計画」の方向性などについて話し合われます。9.支給決定時のサービス等利用計画の作成市区町村の支給決定やサービス担当者会議での案協議をもとに、最終的なサービス等利用計画を作成します。(セルフプランの場合には、8・9が省略されることがあります)10.サービスの利用開始申請した方はサービスを提供する事業所と利用契約を結び、サービスの利用を開始します。サービスの量や内容については、サービス利用開始後であっても必要に応じて見直すことができます。Upload By 発達障害のキホン自立支援医療には、育成医療・更生医療・精神通院医療があります。育成医療は身体障害のある子ども向け、更生医療は身体障害のある方向け、精神通院医療は精神疾患があって定期的に通院している方向けに、医療の給付を行うものです。利用手続きに関しては市区町村ごとに異なるため、最寄りの市区町村または都道府県窓口に問い合わせてください。申請の際には下記のような事項や持ち物が必要になります。育成医療: 申請書、所得が確認できる書類、医師の意見書など更生医療: 身体障害者手帳精神通院医療: 指定医療機関の中から通院先を決めておくこと車いすや義足、補聴器や白杖などの補装具を製作・修理する際に要する費用の給付を「補装具費」と呼びます。補装具費の給付を受けるためには、障害のある子どもの保護者または障害のある本人が、お住まいの市区町村に申請します。市区町村は医師の意見書による身体障害者更生相談所の判定・意見を依頼し、補装具の製作や修理が必要かどうか決定し、給付が認められると補装具費支給決定通知書、補装具費支給券が発行されます。その後、補装具業者と製作・修理の契約を結び、完成品を受け取るとともに利用者負担(原則1割負担)を支払うことになります。障害者総合支援法の自立支援給付、利用者負担額はいくら?出典 : 障害者総合支援法の障害福祉サービスを利用した際の利用者負担は、原則として「1割」です。ただし、世帯ごとの前年度所得に応じて負担額の月額上限が定められているため、その金額以上の自己負担は生じないことになっています。利用月額が0円に免除される場合もあります。特に、生活保護を受けている世帯や住民税が非課税の世帯については、利用者負担はありません。世帯の範囲には、障害がある大人の場合は利用する本人と配偶者が含まれ、本人と配偶者の前年度所得を参考に負担額を決定します。親の所得は本人の前年度所得には換算されないことになっています。障害がある子どもの場合は、保護者の属する住民基本台帳での世帯が範囲となります。月額上限負担額の目安として、下記を参考にしてみてください。■障害者の利用者負担・生活保護受給世帯・・・0円・市区町村民税非課税世帯・・・0円・前年度所得約300万円以上~約600万円以下の方・・・9,300円・前年度所得約600万円以上・・・37,200円以上が障害のある方に提供している障害福祉サービスの利用者負担額になります。ただし、サービス事業所やグループホームなどで発生する食費、光熱費、交通費などの生活費などは別途に自己負担となります。出典:障害者の利用者負担|厚生労働省出典:障害福祉サービスの利用について|厚生労働省自立支援医療の場合には、下記の条件に当てはまる方であれば、0円~20000円までの月額負担上限となります。下記の条件に当てはまらない場合は原則1割負担となっています。また、入院時の食事療養費又は生活療養費(いずれも標準負担額相当)については原則自己負担になります。・生活保護世帯・・・0円・市町村民税非課税世帯で本人収入が80万円未満・・・2500円・市町村民税非課税世帯で本人収入が80万円以上・・・5000円・市町村民税を33000円以上納めている・・・育成医療の経過措置5000円・市町村民税を33000円未満から23.5万円以下納めている・・・育成医療の経過措置10000円・市町村民税を23.5万円未満以上納めている高額治療継続者・・・20000円自立支援医療における利用者負担の基本的な枠組み補装具費の利用者負担額は原則1割です。ただし世帯の所得に応じて負担上限額が設定されています。・生活保護世帯・市町村民税非課税世帯・・・0円・それ以外の世帯・・・37,200円また、補装具費については障害者本人または世帯が一定所得以上(市町村民税所得割の最多納税者の納税額が46万以上)の場合、給付対象外となります。また、例えば補装具を購入すると世帯の所得状況によっては生活保護の対象になってしまう場合があります。それでは本末転倒ですので、その場合は利用者が負担する費用は生活保護の対象とならない範囲まで減免することになっています。出典:補装具の利用者負担|厚生労働省障害者総合支援法が定める、医療費や食費の免除・減免制度出典 : 障害者総合支援法では条件を満たした方に向けて、生活費や医療費など別途利用料金を超えてかかった費用を免除する制度があります。■障害のある人向けの費用免除と上限・療養介護を利用する場合は、医療費と食費の軽減措置があります・入所サービス、通所サービスを利用する場合、食費・光熱費実費負担に対して減免・軽減する制度があります・グループホームの利用者向けに家賃助成する制度があります■世帯での合算額が基準額を超える場合の高額障害福祉サービス給付費同一世帯に障害福祉サービスを利用する方が複数いる場合や障害児が障害者総合支援法と児童福祉法のサービスを利用している場合などに利用者負担の合計額が一定の額を超えるとき、高額障害福祉サービス給付費が支給され利用者負担額が軽減されます。費用免除や上限、高額障害福祉サービス費についての詳しい内容は次の資料を参考にしてみてください。障害福祉サービスの利用について|厚生労働省まとめ出典 : 障害者総合支援法の給付支援における申請方法は、サービスごとに異なります。また障害福祉サービスの中でも介護給付、訓練等給付によって異なるため、複雑に捉えがちです。とはいえ、ほとんどのサービスは市区町村の障害福祉担当窓口で所定の書類への記入や提出を行えば、その後はある程度まで役所がリードしてくれますから、大まかな仕組みを把握していれば問題ないでしょう。また利用者負担額についても、給付を受ける人や世帯の収入に応じて市区町村が設定しますので、細かいルールまで把握する必要はありません。実際の運用ルールは複雑な総合支援ですが、手続きなどで迷ったらお住まいの市区町村の障害福祉担当課や市区町村から委託されている基幹相談支援センターや委託相談支援事業所へ相談してみましょう。
2017年08月04日障害者総合支援法とは?出典 : 障害者総合支援法とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」の通称で、障害がある方もない方も住み慣れた地域で生活するために、日常生活や社会生活の総合的な支援を目的とした法律です。障害がある子どもから大人を対象に、必要と認められた費用の給付や貸与などの支援を受けることができます。制度の実施主体は市区町村、都道府県などの行政機関となります。参考:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律障害者総合支援法が定めるサービスには、大きく「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の2つの種類があります。自立支援給付は、利用するサービス費用の一部を行政が障害のある方へ個別に給付するものです。具体的には障害に関する医療や福祉サービス、福祉用具(補装具)などの費用が給付されます。自立支援給付の基本的な運用ルールは、国(厚生労働省)が定めます。これに対し、地域生活支援事業は、国が一律に運用ルールを定めるのではなく、障害のある方がお住まいの各地域で運用ルールを定めて実施した方が実情に応じた対応を期待できる事業や、一般的な相談対応のように個別の給付には当たらない事業のことをまとめたものです。例えば1人では外出が困難な方への付き添いを提供する「移動支援」や、手話通訳者や要約筆談ができる人を派遣・設置する「コミュニケーション支援」といった事業が挙げられます。また、障害のある方の日中活動を支援する「地域活動支援センター」や、生活自立度が高い人へ住まいの場を提供する「福祉ホーム」などの運営も、地域生活支援事業の枠組みに含まれています。障害のある方の生活スタイルは地域によってさまざまですので、地域生活支援事業のサービス内容も都道府県・市区町村によって異なります。地域生活支援事業には、相談支援も含まれます。お住まいの地域で提供されているサービスにどんなものがあるのか?給付支援を受けたいけれど条件は満たしているのか?などといった福祉サービスの利用に関することから、一般的な生活上の相談まで、さまざまな相談に応えます。障害福祉サービスの 利用について|全国社会福祉協議会障害者総合支援法に基づくサービスの利用対象は以下のように定められています。障害者手帳がなくても、医師の診断書により障害や定められた疾患のあることが確認されれば、利用対象となるケースもあります。・身体障害者・・・身体に障害がある18歳以上の人で、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けている人・知的障害者・・・障害者福祉法にいう知的障害者のうち18歳以上の人・精神障害者・・・統合失調症、精神作用物質による急性中毒、またはその依存症、知的障害、精神病室などの精神疾患を持つ人(知的障害は除く)・発達障害者・・・発達障害があるため、日常生活や社会生活に制限がある18歳以上の人・難病患者・・・難病等があり、症状の変化などにより身体障害者手帳を取得できないが、一定の障害がある18歳以上の人・障害児・・・身体障害、知的障害、発達障害を含んだ精神障害がある児童、または難病等があり、一定の障害がある児童参考文献:遠山真世,二本柳覚,鈴木裕介/著『これならわかるすっきり図解障害者総合支援法』2014年 日経印刷/刊障害者総合支援法の自立支援給付で受けられる3つの給付サービス出典 : 自立支援給付には大きく障害福祉サービス(介護給付・訓練等給付)、自立支援医療、補装具という3つの給付があります。障害福祉サービスはさらに「介護給付」と「訓練等給付」の2類型へ分類されます。介護給付とは、障害があることで必要となる介護・介助サービス費用の一部を給付するものです。訓練等給付とは、就労に向けた訓練や福祉的な就労、安定した就労を支援するサービス、あるいはグループホームなど費用の一部を給付するものです。■介護給付・居宅介護(ホームヘルパー):食事や入浴、トイレなどの介助を提供します。・重度訪問介護:重度の肢体不自由や重度の障害のために常時の介護や見守り、外出支援などを必要とする方に、長時間の総合的な支援を提供します。・同行援護:視覚障害により自力での移動が難しい方に対して外出時の支援を提供します。・行動援護:行動障害があることで外出時などの支援が必要な方に対して、危険を避ける、先の見通しを立てる、コミュニケーションを仲立ちするなどの支援を提供します。・重度障害者等包括支援:最重度の障害(原則として障害支援区分が最重度の「6」であること)があり、常時の介護を必要としている方に対して、居宅介護や短期入所、生活介護など複数の介護サービスを組み合わせて提供します。・短期入所(ショートステイ): 障害のある方を介護している家族などの病気や所要、一時的な休養などのため、短期間、施設に入所するサービスを提供します。・療養介護:医療的ケアと介護を常に必要とする方に対して、医療機関などで医療サービスや介護、介助などをトータルに提供します。・生活介護: 日常的な介護や見守り、生活支援などを必要としている方(原則として障害支援区分「3」以上であること)に対して、日中の介護、介助や見守り支援を行うほか、創作的活動や生産活動、地域との交流活動などを提供します。・施設入所支援:重度の障害のある方(原則として障害区分「4」以上であること)に対して、施設内での夜間の介護、介助や見守り支援などを提供します。■訓練等給付・自立訓練: 障害のある方が地域で自立した生活を送ることができるよう、身体機能と生活能力の向上を目指した訓練を提供します。自立訓練には機能訓練と生活訓練の2種類があります。・就労移行支援: 一般企業での就労や、自ら企業することを希望する方に対して、就労や企業に必要な知識・能力の向上を図る訓練を提供しています。・就労継続支援: 一般企業などで働くことが難しい方に対して、福祉的な支援を受けながら働く場所を提供し、就労に向けた知識・能力の向上を目指す支援を提供します。就労継続支援には、雇用契約を結び最低賃金の支払いを原則とする「A型」と、雇用契約は結ばずに軽作業などを中心とする「B型」の2種類があります。・共同生活援助(グループホーム):標準的には5名程度(最大でも10名)の共同生活を行う住居において、相談や日常生活上の援助、食事や入浴、トイレなどの介護サービスを提供します。グループホームから一般住宅の生活に移行を目指す人を対象とした「サテライト型」もあります。自立支援医療とは、心身の障害の状態に対応した医療に対して、医療費の自己負担額を軽減する医療費の公費負担制度です。障害者自立支援法の成立以前はそれぞれ身体障害者福祉法に基づく「更生医療」、児童福祉法に基づく「育成医療」、精神保健福祉法に基づく「精神通院医療費公費負担制度(32条)」と、各個別の法律で規定されていました。これらを一元化した新しい制度として自立支援医療制度が創設されました。よって根拠となる法律はそれぞれの法律におきながらも、障害者総合支援法のもとで給付が行われるようになりました。給付には市区町村等で自立支援医療費支給の認定(支給認定)を受ける必要があります。・育成医療:身体障害のある子どもを対象に、障害を改善、軽減することで生活の能力を得ることが期待される治療に対して医療費の自己負担を軽減するものです。・更生医療:身体障害者を対象に、障害を改善、軽減することで生活の改善が期待される治療に対して医療費の自己負担を軽減するものです。・精神通院医療:精神疾患(てんかんを含む)の人を対象に、精神科の通院医療にかかる医療費の自己負担を軽減するものです。日常生活を円滑に送るために、身体の欠損や障害を負った身体機能を補完・代替する車いすや装具、義肢や補聴器、白杖などの用具に対して、補装具費(原則として、購入・修理費用の1割)を支給するものです。障害者総合支援法の地域生活支援事業は地域の実情に応じた支援を提供出典 : 地域生活支援事業は都道府県や市区町村が地域の実情に応じてさまざまなサービスや事業を実施するものです。住民に身近な市区町村で実施する地域生活支援事業には、外出時の付き添いを行う「移動支援」や、福祉用具を給付、貸与する「日常生活用具」、手話通訳や要約筆記を派遣する「意思疎通支援」、判断力が十分ではない人が成年後見人制度を利用しやすくするための「成年後見人支援事業」などがあります。地域生活支援事業には市区町村が主体の事業と都道府県が主体の事業があり、都道府県は人材育成や都道府県内の広域な事業を担うことになっています。Upload By 発達障害のキホン■市区町村事業・障害に対する理解促進・啓発・障害のある方や家族が自発的に行う活動の支援・相談支援事業・補助を受けなければ成年後見制度の利用が困難である方への費用助成・手話通訳者、要約筆談者などの派遣・設置・日常生活具の給付または貸付・手話奉仕員養成研修・移動支援事業・地域活動支援センターの設置・運営・福祉ホームの設置・運営・その他の日常生活又は社会生活支援など■都道府県事業発達障害や重症心身障害、高次脳機能障害など、支援に際して高い専門性や広域性が必要とされる障害について、相談に応じ、必要な情報提供を行っています。また手話通訳士や要約筆記者などの意思疎通ができる人材の育成を行っています。障害者総合支援法の相談支援事業は、困った時の強い味方出典 : 障害者総合支援法の下では、さまざまなサービスを組み合わせて支援プランをつくることができます。しかし、実際に利用するとなると、どのようなサービスがあって、自分はどれを受けられるのか、分からない点や不安な点が出てくると思います。その場合は、市区町村の障害福祉担当窓口や市区町村から委託された基幹相談支援センター、市区町村から指定を受けた特定相談支援事業所で相談支援を受けることができます。■基本相談支援障害がある方の福祉に関するさまざまな問題について、障害のある方や家族からの相談に応じ、必要な情報の提供、障害福祉サービスの利用のアドバイスなどを行うほか、成年後見人制度の利用など権利擁護のために必要な援助も行います。窓口は市区町村や市区町村から委託された基幹相談支援センター、市区町村から指定を受けた特定相談支援事業所になります。■計画相談支援・サービス利用支援障害福祉サービスなど申請を行う際に、障害のある方や家族から生活上の困りごとや将来の希望などをうかがい、サービス等利用計画の作成を行います。また福祉サービスを利用する際には、サービス事業者などと連絡調整を行います。窓口は市区町村の障害福祉課または市区町村から指定された指定特定相談支援事業者になります。・継続サービス利用支援支給決定されたサービスの利用状況の検証や生活上の状況確認(モニタリング)を行うとともに、サービス事業者などとの連絡調整を行い、必要に応じてサービス等利用計画の見直しをします。窓口は市区町村の障害福祉課または市区町村から指定された特定相談支援事業者になります。■地域相談支援・地域移行支援障害者支援施設等に入所している障害がある方や精神科病院に入院している精神障害のある方(原則として1年以上入院している方で、市区町村が必要と認める方)を対象に、地域生活へ移行するための支援計画の作成、生活環境が変わることへの不安の解消、外出への同行支援、住居確保、関係機関との調整などを行います。相談窓口は都道府県から指定された一般相談支援事業者になります。・地域定着支援居宅において単身で生活している障害のある方など、地域における安定した暮らしの実現に支援を必要とする方を対象に、常時の連絡体制の確保と、緊急時の対応などの支援を行います。相談窓口は都道府県から指定された一般相談支援事業者になります。■障害児相談支援障害児相談支援は児童福祉法を根拠に障害者総合支援法で実施しているサービスです。・障害児支援利用援助障害のある子どもが利用する障害児通所支援の申請を行う際に、障害児支援利用計画の作成を行います。また福祉サービスを利用する際には、サービス事業者などと連絡調整を行います。窓口は市区町村の障害福祉課または市区町村から指定された障害児相談支援事業者になります。・継続障害児支援利用援助支援決定されたサービスの利用状況の検証や生活上の状況確認(モニタリング)を行い、サービス事業者などとの連絡調整などを行い、必要に応じて障害児支援利用計画の見直しをします。窓口は市区町村の障害福祉課または市区町村から指定された障害児相談支援事業者になります。以上のように障害者総合支援法では、さまざまな相談に応えることができるよう体制を整えています。しかし、指定一般相談支援事業者、指定特定相談支援事業者、指定障害児相談支援事業者と言われても、どこに行って相談すれば良いのか、少々分かりにくいかもしれません。お住まいの市区町村のホームページなどで情報を得たり、または市区町村の障害福祉担当窓口や発達障害者支援センターなどへ問い合わせたりするとよいでしょう。障害がある子ども向けサービスは、児童福祉法で提供されます出典 : 障害のある子ども向けの各種福祉サービスは、児童福祉法に基いて提供されています。これは、平成24年の児童福祉法改正にあわせ、障害があっても「子ども」である以上は児童福祉の枠組みで支援すべきである、という理念を取り入れ、障害児だけが対象の福祉サービスを児童福祉法へ一元化したことによるものです。そのため、障害のある子どもについては、児童期に限定した福祉サービスは児童福祉法、児童も成人も対象となる福祉サービスは総合支援法が適用法令となります。もちろん、利用申請をして支援決定を受ければ、同時に両方のサービスを受けることができます。児童福祉法は子どもの支援に関する法律です。この法律における障害児福祉サービスの対象は障害のある18歳未満の子どもと定義されており、サービスは障害児通所支援と障害児入所支援の2つに分けることができます。支給決定の主体は、障害児通所支援が市区町村、障害児入所支援が都道府県となります。また、児童福祉法における「障害児」の規定には特に障害者手帳の所持が条件となっていないため、サービスの利用に当たり、手帳の有無は問われません。ただし、医師の診断書により障害があることを確認するケースはあります。■障害児通所支援障害児通所支援とは施設や事業所に通所して、日常生活や集団生活を送るために必要な能力を身につける支援を提供するサービスです。児童発達支援、医療型児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援の4種類があります。Upload By 発達障害のキホン詳しくは以下の記事、「障害児通所支援(児童発達支援・放課後等デイサービス)利用手順・施設選びのポイント・申し込み方法まとめ」を参考にしてみてください。■障害児入所支援障害児入所支援とは、療育などの必要性が認められた障害のある子どもを施設に入所させ、自立した生活を送ることができるよう支援するサービスです。障害のある子どもが入所できる施設は全国的にも限られているため、障害児入所支援については都道府県や大規模な政令指定都市などが所管する児童相談所が支給決定しています。障害児入所施設は医療機関を併設しているかどうかによって福祉型障害児入所施設と医療型障害児入所施設の2種類に分類されます。Upload By 発達障害のキホン障害児通所・入所支援を利用するには、通所受給者証または入所受給者証の交付を受ける必要があります。通所受給者証はお住まいの市区町村の福祉担当窓口・障害児相談支援事業所などに申請を行い、サービスの利用が認められ、支給決定を受けると取得できます。入所受給者証は各都道府県や政令指定都市などの児童相談所に申請し、サービスの利用が認められ、支給決定を受けると取得できます。それぞれ、受給者証が交付されたら、指定障害児通所事業所・入所施設などとサービスの利用契約を結ぶことができます。自治体ごとに申請方法が異なりますので、お住まいの地域に確認しましょう。詳しくは以下の記事、「【障害児通所・入所給付費】受給者証の取得方法、体験談まとめ」を参考にしてみてください。まとめ出典 : 障害者総合支援法では一人ひとりの障害特性や生活環境などを考慮しながら、本人に合ったサービスを提供しています。また平成30年に施行される法改正によって、よりきめ細やかなサービスの提供を図るため、障害福祉サービスを取り巻くさまざまな関係者との連携やサービスの質の向上、サービス内容の情報開示などの努力がなされます。以前と比べれば自分に合ったさまざまな支援を受けられるようになり、サービスが充実していけば家族の負担も少しずつ減ってくるでしょう。障害福祉サービスを取り巻く環境は着実に良い方向へと変化しているのではないでしょうか。また、障害のある子どもに関しては、障害者総合支援法だけでなく児童福祉法に基づくサービスなども並行して利用できます。さまざまな支援サービスを組み合わせるなど工夫し、上手に使うことで障害がある方とその家族の地域生活が充実していくことを期待したいところです。
2017年08月04日障害者総合支援法とは出典 : 障害者総合支援法とは、障害のある方もない方も住み慣れた地域で生活するために、日常生活や社会生活の総合的な支援を目的とした法律です。正式名称は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」ですが、略して「障害者総合支援法」と呼ばれています。この法律に基づき、障害のある子どもから大人を対象に、必要と認められた福祉サービスや福祉用具の給付や支援を受けることができます。実施主体は主に市区町村、都道府県などの地方公共団体です。障害者総合支援法の概要|厚生労働省障害者総合支援法ができたわけ出典 : 障害者総合支援法が施行されるまでには、障害のある人が利用する福祉サービスの利用方法や負担額の決定方法を改正・改善してきた歴史があります。2003年3月まで、障害のある人が利用する福祉サービスの利用内容や利用できる量はすべて行政(都道府県や市区町村)が決定していました。これを措置制度といいます。しかし障害のある人の暮らしぶりを何から何まで行政が決定する仕組みには批判も多くありました。2000年には、高齢者が利用する福祉サービスについては原則として措置制度をやめて「介護保険制度」へ移行したことも受けて、支援費制度が導入されました。これは市区町村から福祉サービスの支給決定を受けた障害のある人が、サービスを提供する事業所を選択し、事業所との契約によって福祉サービスを利用する仕組み(利用契約制度)を取り入れており、大変に画期的なものでした。しかし、支援費制度の導入によりサービスの利用者が増加したこともあり、財源の確保が困難になったほか、地域ごとのサービス提供格差や障害種別(身体障害、知的障害、精神障害)間の格差が生じる問題が発生しました。(支援費制度は精神障害が対象外でした。)これらの問題を解決するために、、2005(平成17)年11月に「障害者自立支援法」が公布されました。しかし法律の理念がないことや、サービスの必要性を図る基準(障害程度区分)が障害特性を十分に反映していないなど、施行当初から問題が指摘されていました。特にそれまでは障害年金が収入の中心であれば自己負担なしだったところ、自立支援法では、サービス利用者に原則として1割の自己負担を設定しました。そのため、収入よりも自己負担額の方が多くなる人も出てしまい、サービスの利用を減らしたり控えたりするケースも発生しました。そこで2010年には自立支援法を改正し、1割の自己負担額を改め、以前のように利用者の収入に見合った自己負担(障害年金が収入の中心であれば自己負担なし)の設定となりました。さらにその後2013年には、「共生社会の実現」や「可能な限り身近な地域で必要な支援を受けられる」といった法の基本理念を定め、福祉サービスを利用できる障害者の範囲を見直して、難病がある方も対象にするなどの改正が行われ、現在の「障害者総合支援法」が成立したのです。なお、障害者総合支援法については、法の施行後3年が経過した時点で内容を見直すことになっており、2016年にさらなる法改正がなされています。改正された障害者総合支援法は平成30年(2018年)4月から施行されることになっています。 NET独立行政法人 福祉医療機構「障害者福祉制度解説」障害者自立支援法から障害者総合支援法改正への改善点4つのポイント出典 : 障害者自立支援法から障害者総合支援法への法改正が行われたことで、いくつかの改善点がありました。今回はその中でも主なポイントを4つご紹介しながら、障害者総合支援法の概要をご紹介します。法改正前の自立支援法では基本理念は設けられていませんでした。法改正によって、障害のある人を権利の主体と位置づける基本理念を定めました。基本理念の設定により、住み慣れた場所で可能な限り必要な支援が受けられることや、社会参加の機会の確保、どこで誰と暮らすかを選べるなど、障害のある人が保障されるべき権利がより明確に打ち出されたほか、障害の有無によって分け隔てられることのない「共生社会」を目指す方向性が示されました。障害者総合支援法の福祉サービスは、こうした理念に基づいて実施されることとなります。第一条の二 障害者及び障害児が日常生活又は社会生活を営むための支援は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、全ての障害者及び障害児が可能な限りその身近な場所において必要な日常生活又は社会生活を営むための支援を受けられることにより社会参加の機会が確保されること及びどこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと並びに障害者及び障害児にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資することを旨として、総合的かつ計画的に行わなければならない。支援費制度から自立支援法、そして障害者総合支援法という法制度の変遷は、支援対象となる人が見直されてきた歴史でもあります。かつて支援費制度下では、精神障害のある人は支援の対象ではありませんでした。それが自立支援法の成立によって支援の対象となりましたが、今度は発達障害のある人の位置付けが不明確であることが課題となり、2010年の自立支援法改正で発達障害も支援の対象であることが明確化されました。総合支援法ではこれまで支援が行き届かなった難病等の疾患のある人についても、支援対象者として新たに加わることとなり、サービスを受けられる方の範囲が広がりました。平成29年4月時点で、対象となる疾病は358疾病が対象になっています。詳しくは次の厚生労働省のサイトを参考にしてみてください。障害者総合支援法対象疾病(難病等)の見直しについて|厚生労働省自立支援法では、福祉サービスの利用に際し、障害の程度を測る指標を導入して、サービスの給付決定をしていました。これを「障害程度区分」と呼びます。ただ、主に日常生活行為が「できる」か「できない」かに着目して障害の程度を測っており、例えば食事が自分でできる/できないかだったり、排泄が自分でできる/できないかだったりで、できる項目が多ければ障害の程度は軽く、できない項目が多ければ障害の程度は重いという考え方が基本となっていました。しかし、一口に障害といっても、その実情は一人ひとりさまざまです。日常生活の中でも、自分でできるけれど時間がかかったり、自発的に行えなかったり、症状の調子が悪い時にはできなくなるなど、条件付きで「できる」という方もいます。どの程度生活に支障があるかは人によって異なりますし、「できる」「できない」で障害の程度を判断することは難しいのです。そこで障害者総合支援法では障害程度区分を改めて「障害支援区分」とし、障害のある人それぞれの生活環境を踏まえ、どのような支援をどの程度必要とするかといった度合いを測ることになりました。コンピュータによる一次判定とかかりつけ医の意見書、市区町村の審査会による二次判定によって、障害支援区分を認定することになっています。支援区分は7段階の区分に分かれ、もっとも支援の必要性が高い区分が「6」、以下「5・4・3・2・1」と続き、もっとも支援の必要性が低い場合は「非該当」となります。この支援の必要性の区分によって、支給されるサービスの時間に違いが出てきます。一部のサービスは支援区分が低いと利用できないことがあります。重度訪問介護とは、日常生活上で常に介護を必要とする方に対して、ヘルパーを長時間(最大で24時間)派遣し、訪問介護や身体的な介護や家事の援助、外出の付き添いや生活を送る上での相談や助言などを行う支援です。従来は身体障害者のなかでも重度の肢体不自由者のみが対象でしたが、その他の障害がある方でも提供されるようになりました。具体的には、重度の肢体不自由・知的障害・精神障害により重度の行動障害がある人(行動援護サービスに該当する程度の人)で、障害支援区分が「4」以上の人です。これにより、行動障害がある人も重度訪問介護を活用して一人暮らしするという選択肢が増えたといえます。障害者総合支援法の2本柱は、自立支援給付と地域生活支援事業障害者総合支援法のサービスは、大きく自立支援給付と地域生活支援事業の2種類があります。どちらも市区町村または都道府県が実施主体となっていますが、位置付けには違いがあります。自立支援給付は、国がサービスの類型や運用ルールを定めるもので、障害のある人が福祉サービスを利用した際に、行政が費用の一部を負担するものです。法律上は全体費用の「9割」を給付しますが、住民税が非課税の世帯であれば全額(10割)を給付します。一方、地域生活支援事業は、都道府県、市区町村が主体となって実施するもので、大まかな枠組みは国から示されていますが、サービスの類型や運用ルールは都道府県、市町村が定めています。障害のある方がお住まいの地域で自立した生活を送るために必要な支援のうち、地域の特性に応じて実施するサービスが位置付けられています。自立支援給付に位置付けられているサービスは、障害福祉サービス(介護給付・訓練等給付)、自立支援医療、相談支援事業、補装具の大きく4つです。たとえば障害福祉サービスでいえば、ヘルパーサービスや施設への通所・入所を利用するサービス、就労支援などが挙げられます。詳しくは以下の図をご覧ください。Upload By 発達障害のキホン地域生活支援事業として提供されるサービスには、障害のある人の外出に付き添う移動支援や、福祉用具である日常生活用具の給付または貸与、手話通訳や要約筆記を派遣する意思疎通支援、成年後見制度支援などが含まれます。地域生活支援事業の中には、市区町村が主体の事業と、都道府県が主体の事業があります。都道府県は手話通訳士などの人材育成や都道府県内の広域な事業を担い、市区町村は障害のある人に身近な自治体として、移動支援や日常生活用具の給付、貸与といった利用者にサービスを提供する役割を担っています。詳しい分類は以下の図をご覧ください。Upload By 発達障害のキホン障害者総合支援法は障害者手帳がなくても使える?利用対象は?出典 : 障害者総合支援法のサービスを使うためには、原則として障害者手帳が必要ですが、一部を除いて医師の診断書があれば手帳がなくても使うことができます。障害者総合支援法のサービス利用対象者は次のように定められています。・身体障害者・・・身体に障害がある18歳以上の人で、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けている人・知的障害者・・・障害者福祉法にいう知的障害者のうち18歳以上の人・精神障害者・・・統合失調症、精神作用物質による急性中毒、またはその依存症、知的障害、精神病質などの精神疾患を持つ人(知的障害は除く)・発達障害者・・・発達障害があるため、日常生活や社会生活に制限がある18歳以上の人・難病患者・・・難病等があり、症状の変化などにより身体障害者手帳を取得できないが、一定の障害がある18歳以上の人・障害児・・・身体障害、知的障害、発達障害を含んだ精神障害がある児童、または難病等があり、一定の障害がある児童参考文献:遠山真世,二本柳覚,鈴木裕介/著『これならわかるすっきり図解障害者総合支援法』2014年 日経印刷/刊ここからも分かるとおり、サービスを受給するために障害者手帳が必要なのは身体障害がある方のみになります。身体障害以外の障害がある方は、本人や家族の希望と医師の診断書があればサービスの利用申請を行うことができます。ただし、医師の診断書については、障害や病名が対象となるかどうかを確認するため、国際的に使われている病名分類コードの記載が必須となります。詳しい情報やサービスの受給を希望する方はお住まいの市区町村の障害福祉課担当窓口へお問い合わせください。平成30年施行の法改正において創設されるサービスなどを紹介します!出典 : ここまでご説明してきた障害者総合支援法ですが、「生活」と「就労」に対する支援をより一層充実させることを目標とした新サービスの創設や、既存のサービスをより充実させるための法改正が行われました。正式名称を「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律」といい、障害者総合支援法と児童福祉法の一部が平成28年(2016年)に改正され、平成30年(2018年)に施行されます。児童福祉法のなかには18歳未満の障害児を対象とする支援が定められています。障害児が障害者総合支援法に基づいている障害福祉サービスを利用する場合もありますが、児童発達支援や放課後等デイサービス、保育所等訪問支援などは児童福祉法に根拠を置いています。今回の法改正では障害児への支援の拡充が盛り込まれました。そのため、今回は総合支援法とあわせて児童福祉法の一部改正についても説明していきます。■自立生活援助の創設現在、障害者支援施設やグループホーム入所・入居している方の中には、賃貸住宅などで一人暮らしを希望する方もいます。しかし知的障害や精神障害によって、生活能力に不安定さがあることなどで一人暮らしを選択できない方がいます。自立生活援助では本人の意思を尊重した地域生活を支援するため、一定期間にわたり定期的な巡回訪問を行い、食事や掃除、公共料金の滞納はないか、地域住民との関係は良好かなどの確認を行います。また定期的な訪問だけではなく、電話やメールなどで随時相談が行うことができるようになります。■就労定着支援の創設就労移行支援などを利用し一般企業へ就労した方で、就労に伴う環境の変化によって生活面に課題が生じてしまう方がいます。たとえば遅刻や欠勤の増加、身だしなみの乱れや業務中の居眠りなどの課題が環境の変化によって新たに生じるなどです。就労定着支援は就労定着支援事業所の方が職場・家族・関係機関への連絡調整を行ったり、職場や自宅に訪問し、生活リズムや体調などの指導や助言などを行ったりすることで、環境の変化に適応できるようサポートします。■重度訪問介護の訪問先の拡大重度訪問介護を利用している人が入院した際、普段利用していたヘルパーに支援をお願いすることが制度上できませんでした。またその人の特性やニーズに合った支援が入院先へ引き継げない場合もあり、利用者が困ってしまうことがありました。この改正によって、重度訪問介護を利用している方が入院中の医療機関においても、利用者の状態を熟知しているヘルパーを引き続き利用したり、そのニーズを的確に医療従事者に伝達したりなどの支援が利用できるようになります。■高齢障害者の介護保険サービスの円滑な利用障害福祉サービスと同様のサービスが介護保険法にある場合は、介護保険サービスの利用が優先されるようになっています。さらに高齢障害者が介護保険サービスを利用する場合、障害福祉制度と介護保険制度の利用者負担上限が異なるため、利用者負担(1割)が新たに発生する場合があります。またこれまで利用していた障害福祉サービス事業所とは別の介護保険事業所を利用しなければならないことがあるなどの課題が指摘されています。この改正によって、たとえば65歳になるまでの長期間にわたり障害福祉サービスを受けていた障害のある方、障害福祉サービスに相当する介護保険サービスを利用する場合、一定程度以上の障害支援区分の方や低所得者に対して、介護保険サービスの利用者負担が軽減されるような仕組みが設けられます。障害福祉サービス事業所が介護保険事業所としても機能しやすくするなどの見直しを行い、介護保険サービスがより円滑に利用できるようになります。■重症心身障害児などに対して訪問型の児童発達支援が創設障害児支援に関しては、複数の児童が集まる通所による支援が子どもの成長に望ましいと考えられていたため、これまで通所支援の充実を図ってきました。しかし現状では、重度の障害のため外出が著しく困難な障害児が発達支援を受けられません。そこで重症心身障害児などの居宅を訪問して発達支援を行うサービスが新たに創設されることになりました。■保育所等訪問支援の支援対象に乳児院と児童養護施設が追加保育所等訪問支援では、これまで保育所・幼稚園、放課後児童クラブ、小学校などに相談支援員が訪問していました。しかし乳児院や児童養護施設の入所者に占める障害児の割合は3割程度となっており、職員による支援に加えて、専門的な支援が求められているため、保育所等訪問支援の対象者を乳児院や児童養護施設の子どもたちにも拡大することになりました。■医療的ケア児に対する支援NICU(新生児特定集中治療室)などに長期入院後、引き続き人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが必要な障害児(以下:医療的ケア児)が増加しています。医療的ケア児が地域において必要な支援を円滑に受けることができるよう、地方公共団体は児童発達支援センター、障害福祉サービス事業所、特別支援学校などの福祉機関と、訪問看護ステーション、小児科診療所、地域小児科センターなどの医療機関と連携を図るために連絡調整を行う仕組みをつくることになりました。また医療的ケア児に対する支援については、すでに平成28年6月に施行されています。■障害児サービス提供体制の計画的な構築これまで市町村および都道府県に対して、障害福祉計画および都道府県障害福祉計画の作成を義務付けていました。法改正によって、障害児を対象にした障害児福祉計画および都道府県障害児福祉計画の作成を義務付けることになりました。また障害児相談支援の提供体制を整備し、障害児通所支援などの円滑な実施を確保するための仕組みも導入しました。障害児福祉計画は障害児通所支援や障害児相談支援の必要なサービス量の見込みを示すなどして、提供体制を確保していく努力を行うための計画であり、整備の指針になります。■補装具の貸与制度の追加補装具費は身体障害者の身体機能を補完・代替する補装具の「購入」に対して補助金が支給されていました。したがって、これまでは補装具本体の「貸与」はありませんでした。この改正によって障害児など成長に伴って短期間で補装具の交換が必要となる場合は「購入」を基本とする原則は維持したうえで、「貸与」が適切と考えられる場合には補装具本体の貸与が行われることになります。詳細は今度、関係者の意見を踏まえた上で検討されます。■障害福祉サービスの情報公表制度の創設障害福祉サービスなどを提供する事業所数が大幅に増加するなかで、利用者が個々のニーズに応じて良質なサービスを選択できるようにするとともに、事業者によるサービスの質の向上が重要な課題となっています。施設・事業者に対して障害福祉サービスの内容などを都道府県知事へ報告し、都道府県知事が報告された内容を公表する仕組みがつくられます。この情報をもとに利用したいサービスを提供している事業所を選択することができるようになります。■自治体による調査事務・審査事務の効率化障害者自立支援法の施行から10年が経ちました。障害福祉サービスなどの事業所数や利用者数は大きく増加しており、自治体による調査事務や審査事務の業務量が大幅に増加しています。この改正に伴い事務の一部を委託可能にするために必要な規定を整備することになりました。 たとえば、利用を検討している方に向けて利用審査に必要な質問や、関連文書の作成などを、許される範囲内で行政から委託された民間法人が担うことができるようになります。参考:「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び 児童福祉法の一部を改正する法律」について(経過) |厚生労働省まとめ出典 : 障害者総合支援法は障害の有無に関わらず、共に住み慣れた地域で暮らすことができる社会(共生社会)を実現するためにつくられた法律です。障害がある子どもから大人まで利用できる、自立支援給付や地域生活支援などのサービスがあります。また具体的にどんなサービスがあるのか、サービスを受けられる対象者に当てはまるかなどの相談に応える相談支援もあります。ただ、サービスも各地域によって特色がありますので、総合支援法の利用を検討中の方はお住まいの市区町村の担当窓口にお問い合わせください。障害者総合支援法は自立支援法を改正して生まれた法律です。しかし自立支援法時代からの課題が全て改善されたわけではありません。障害のある人の支援に関する法律は、今後も議論や改正を重ねながら、その時代や地域、利用者のニーズに適したサービスを提供していくことでしょう。
2017年07月31日精神障害とは出典 : 日本語の「精神障害」という言葉には統一された定義がなく、診断基準や法律などの文脈によりそれぞれ意味が異なりますが、大きく分けて医療的意味(disorder)と福祉的意味(disability)の2つに分類できます。disorderもdisabilityも日本語では「障害」と訳されていますが、医療的意味の精神「障害(disorder)」と診断されたからといって、必ずしも福祉的な意味の精神「障害(disability)」があるとは限りません。例えば、軽い症状があり医療の介入が必要でも、服薬などにより障害がない人と同じように働くことができている場合、医療的意味の精神障害(disorder)であっても福祉的なサービスを必要とする精神障害(disability)があるわけではないといえます。また、福祉の対象としての障害disabilityは、環境を変えることにより軽減することもできます。以下それぞれの意味を説明します。医療的な側面からみた「精神障害(disorder)」の意味は、 狭義には、ある特定の生体機能の乱れや個人的苦痛があるが、その病態がはっきりと特定されていないものをいいます。ここで言う精神障害とは精神の不調一般を指すものと考えると分かりやすいかもしれません。参考文献:大野裕/著『精神医療・診断の手引き―DSM-IIIはなぜ作られ、DSM-5はなぜ批判されたか』2014年 金剛出版/刊福祉的な側面から見た精神障害は、精神の不調により継続的に 日常生活または社会生活に相当な制限を受ける方のことを指します。精神の不調そのものへのアプローチは医学的なものになりますが、精神の不調と密接に関係する日常生活や社会生活での困難は行政などによる福祉的なアプローチが必要になります。福祉的な意味で「障害」を捉えると、その障害(disability)から生じる困りごとは、周囲の環境が整っていないために起っている、ともいえるのです。参考文献: 野中猛/著 『心の病 回復への道 (岩波新書) 』 2012年 岩波書店/刊参考文献: 精神保健福祉研究会/監 『精神保健福祉法詳解3訂』 2007年 中央法規出版/刊行政における精神障害者と支援出典 : 行政における精神障害者の意味は、大きく分けて2つに分けられます。1.医療の介入を必要とする、いわゆる精神疾患がある者(医療的意味)2.精神疾患の影響で日常生活面で問題を抱える状態である者(福祉的意味)これらの精神障害者に医療面と福祉面それぞれからの支援を行うため、下記のような法律や制度が定められています。参考文献: 精神保健福祉研究会/監 『精神保健福祉法詳解3訂』 2007年 中央法規出版/刊◇精神保健福祉法(正式名称: 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」)精神保健福祉法は、精神障害がある人の医療と保護や、社会復帰、自立の促進のための援助などにより、精神障害者のための福祉の整備や精神保健の向上を目的とした法律です。精神障害者保健福祉手帳制度や、措置入院、医療保護入院などの入院形態の規定、精神保健福祉センターの設置などが定められています。リンク:精神保健福祉法について|厚生労働省HP◇障害者基本法障害者基本法は、障害がある人の法律や制度についての基本的な考え方を示した法律です。障害があろうとなかろうと、全ての人が互いに尊重し合い共生する社会の実現のために、障害のある人の自立と社会参加を支援する法律や制度に関する基本的な計画(障害者基本計画)を立てることや差別の禁止、療育や職業、雇用、住宅における支援制度を整えることなどが定められています。また、障害者基本法第4条の「差別の禁止」をより具体的に規定した法律に、障害者差別解消法というものがあります。この法律では、障害があるという理由で障害者への商品やサービスの提供を拒否することを「不当な差別的扱い」とし、障害者から配慮を求める意思表明があった場合は過度な負担になりすぎない程度な個別の調整ー「合理的配慮」を行うことが義務付けられています。詳しくは以下の記事をご参照ください。◇障害者総合支援法(正式名称: 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」)障害者総合支援法は、障害がある人が基本的人権を享受する個人としての尊厳にふさわしい日常生活・社会生活を送ることを目的とし、障害福祉サービスの充実や地域生活支援事業、その他の必要な支援を行うことが規定されている法律です。全国の障害福祉サービス事業所の一覧です。是非ご活用ください。リンク:障害福祉サービス事業所情報|WAM NET HP参考:「障害者総合支援法」制定までの経緯と概要について|WAM NET HP精神障害にはどんな種類があるの?出典 : 精神障害にどんな障害が含まれるのかは診断基準や使用される文脈や制度によっても異なります。ここでは、国で採用している国際的な疾病分類『ICD-10』のなかで、いわゆる心の不調について記されている第五章「精神及び行動の障害」の分類を紹介します。障害者手帳や自立支援医療(精神通院医療)の申請の際に必要な診断書にICDの診断コードの記載が必要となるなど、現在の日本の行政における精神障害の概念として用いられることが多い分類です。ICDでは、身体疾患から精神障害にわたって網羅的な分類を設定し、「ICDコード」と呼ばれるコードを付与しています。以下の表は2003年改訂版ICD-10における「ICDコード」と中間分類項目の名称の対応リストです。F00-F09症状性を含む器質性精神障害F10-F19精神作用物質使用による精神及び行動の障害F20-F29統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害F30-F39気分[感情]障害F40-F48神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害F50-F59生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群F60-F69成人の人格及び行動の障害F70-F79知的障害〈精神遅滞〉F80-F89心理的発達の障害F90-F98小児期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(引用:第Ⅴ章 精神及び行動の障害(F00-F99) |厚生労働省HP)以上の中間分類の概略などや、下位分類については以下のリンクで確認できます。参考:ICD-10(2013年版)準拠内容例示表|厚生労働省HP参考ページ:第5章 精神及び行動の障害 (F00-F99)|医療情報システム開発センターHP精神障害と知的障害・発達障害との関係は?出典 : 知的障害とは、発達期までに生じた知的機能障害により、認知能力の発達が全般的に遅れた水準にとどまっている状態を意味します。発達障害とは、先天的な脳機能の障害で、想定される時期に年齢相応の発達が見られない、または年齢相応のスキルが獲得できないことで日常生活に様々な困難が生じ、それらが持続する状態を意味します。ICDやDSMなどの国際的な診断基準においては、知的障害も発達障害も、精神障害(mental disorder)の枠組みに入っています。精神障害は精神の不調一般を指す広い概念であるのに対し、知的障害と発達障害は範囲が限定されているのです。一方、行政や福祉などの場面においては、法律や支援サービスごとに対象となる範囲が異なります。例えば、上述の精神保健福祉法での「精神障害」には知的障害が入っていますが、この法律の手帳制度である精神障害者保健福祉手帳の対象者には知的障害は入りません。行政、福祉面ではそれぞれの法律やサービスごとに、自分が対象であるかどうか見極める必要があります。精神障害者保健福祉手帳出典 : 精神障害者保健福祉手帳とは、所持している人が一定程度の精神障害がある状態であることを認定するものです。精神障害のある方が自立し、社会参加を積極的に行えるよう、様々な制度やサービスの利用をしやすくすることを目的にしています。取得することで様々なサービスや割引・給付が受けられるようになるほか、教育を受けたり就労するにあたり配慮や支援を受けやすくもなる、とても便利な制度です。詳しくは以下の記事をご参照ください。精神障害の等級出典 : 精神障害の程度を定める等級には、精神障害者手帳の等級と障害年金の等級があります。精神障害者保健福祉手帳は1級、2級、3級の3つの区分があります。・1級....精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの・2級....精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの・3級....精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの出典:精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準|厚生労働省HP精神の障害による障害の程度は、国民年金の場合は1級と2級、厚生年金の場合は1級から3級に加え障害手当金という等級もあります。・1級…日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの・2級…日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの・3級…労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの・障害手当金…労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの詳しくは以下のリンクをご参照ください。参考:第8節/精神の障害|日本年金機構HP同じ「等級」という言葉から混同しがちですが、精神障害者手帳の等級と障害年金の等級は別物です。障害年金の等級も、重いものから1級、2級、3級とありますが、制度が異なるので認定基準も異なります。とはいえ、概ね手帳の等級と障害年金の等級は重なるようです。参考:治療や生活に役立つ情報|みんなのメンタルヘルスHP詳しくは以下の記事を御覧ください。以上の等級の他にも、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの種類や量を市町村が決定するための障害支援区分という基準もあります。精神障害のある人が受けられる福祉サービス出典 : ここでは、総合支援法に基づく障害福祉サービスの一部をご紹介いたします。◇行動援護その方が何らかの行動をする際に生じうる危険を回避するために必要な援護を行うサービスです。外出時における移動中の介護や排泄、食事などの介護、その他日常生活での行動の援助が行われます。精神障害による行動上の著しい困難があり、常時介護を必要とする場合に利用できます。詳しくは以下のサイトをご参照ください。参考:行動援護|独立行政法人福祉医療機構HP◇生活介護生活介護では、介護を常に必要としている方に対し、入浴や排泄、食事などの日常生活の援助や、創作的活動や生産活動の機会の提供、各種相談などを、主に日中において行います。参考:生活介護|独立行政法人福祉医療機構HP◇精神障害者居宅介護等事業(ホームヘルプサービス)家庭など、居住している場所にホームヘルパーを呼び、食事や入浴、その他日常生活の援助を受けることが出来ます。利用対象者は、原則として、精神障害者保健福祉手帳の保持者あるいは、障害者年金を受けている方で、かつ、日常生活に支障がある人です。◇施設入所支援施設入所支援では、主として夜間において、食事や排泄などの日常生活の援助や相談が行われます。日中の訓練などサービスも同じ施設で行われます。障害福祉サービスの内容|厚生労働省HP◇共同生活援助(グループホーム)共同生活援助とは主に夜間において少人数での共同生活を援助するサービスです。個別の支援計画を立てた上で、相談や入浴、排泄などの日常生活の援助を行います。共同生活援助|独立行政法人福祉医療機構HP◇短期入所(ショートステイ)在宅の精神障害者を対象に、介護者の事情で一時的に介護困難の場合利用することができます。夜間を含め施設で、入浴や食事などの日常生活の援助が行われます。利用が可能な期間は基本的に7日以内で、事情がある場合は必要最小限の範囲で延長可能です。グループホームなどの夜間のサービスは、自立訓練や就労移行支援、地域活動支援センターなどの昼間のサービスと組み合わせて利用するのが一般的です。◇相談支援相談支援にはサービス利用支援、継続サービス利用支援、地域移行支援、地域定着支援の4種類あります。障害福祉サービスを利用するには、「サービス等利用計画」を立てる必要があります。この計画を作成するのを支援するのがサービス利用支援で、利用したサービスが効果的かどうかの見直しを行う継続サービス利用支援です。地域移行支援では施設や病院から地域への移行の支援を行い、地域定着支援では地域生活の継続のための支援が行われます。その他の福祉サービスは以下のサイトをご参照ください。参考:サービス一覧/サービス紹介|WAM NET HP障害年金出典 : 障害年金とは、病気やケガにより生活や仕事が制限されている方が受け取れる年金のことで、国から委託を受けている日本年金機構により運営されている制度です。障害年金を受ける条件は、その障害の原因となった病気やけがについて初めて医師の診療を受けた日(初診日)に、国民年金あるいは厚生年金に加入していることです。初診日に国民年金に加入していた方は障害基礎年金、厚生年金に加入していた方は障害厚生年金が受け取ることが出来ます。詳しくは以下の記事をご参照ください。生活保護の障害者加算出典 : 生活保護制度とは、資産や能力など全てを活用しても生活が困難な方を対象としたもので、健康で文化的な最低限度の生活ができるような保護を行い、自立を奨励する制度のことです。障害の程度にもよりますが、精神障害者の方が生活保護を受給した場合、受給費に加算される可能性があります(障害者加算)。加算額は、現在住んでいる場所と障害の程度で決められます。Upload By 発達障害のキホン◇現在住んでいる場所現在住んでいる場所は、在宅の場合と入院や社会福祉施設・介護施設に入所している場合に分けられ、在宅の場合はご自身がお住まいの場所がどの級地に当たるのか調べる必要があります。以下のリンクにて全国の級地区分が調べられます。リンク:級地区分(H.29.4.1)|厚生労働省HP◇障害の程度障害の程度は原則、国民年金法(昭和34年政令第184号)別表に定められる等級により決まるとされていますが、この等級は精神障害者手帳における等級と重なるとされています。参考:精神障害者保健福祉手帳による障害者加算の障害の程度の判定について|厚生労働省法令等データベースサービスHP参考:国民年金・厚生年金保険障害認定基準平成28年6月1日改正|日本年金機構HP参考:第8節/精神の障害|日本年金機構HP参考:国民年金・厚生年金保健精神の障害に係る等級判定がガイドライン|日本年金機構HP精神障害者の雇用・就労支援出典 : 日本において、全ての事業主は一定の割合(法定雇用率)以上の障害者を雇う義務があります。この「障害者」は今まで身体障害者と知的障害者に限られていましたが、平成28年改正障害者雇用促進法により、2018年4月からは精神障害者(発達障害を含む)も加わることになりました。障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律の概要 |厚生労働省HP現在の法定雇用率は以下の通りです。民間企業:2%国、地方公共団体等:2.3%都道府県等の教育委員会:2.2%障害者の法定雇用率が引き上げになります|厚生労働省HP◇就労移行支援事業者就労移行支援は障害がある方の就労をサポートする障害福祉サービスです。就労を希望している障害・難病がある方に対して、働くために必要な知識・能力を身につけるトレーニングや、その人に合った職場探しのサポート、就労後の職場定着までのアフターケアを行います。企業などでの就労または開業を希望する方で、就労が可能であると見込まれる65歳未満の方が対象です。利用期間は原則2年となっています。◇公共職業安定所(ハローワーク)公共職業安定所とは、職業紹介や就労支援のサービスを行う無料で利用できる行政機関です。障害者を対象とした求人情報の提供が受けられます。仕事の探し方など、就職に関する様々な相談に乗ってもらえるだけでなく、職業訓練の仲介なども行っているので、お気軽に御相談ください。全国ハローワークの所在案内|厚生労働省HP◇障害者就業・生活支援センター就業や、それに伴う日常生活上の支援を必要とする障害者を対象に、相談や職場・家庭訪問などを行い支援する機関です。就労支援の面では就職に向けた準備支援や、求職活動支援、職場定着支援から関係機関との連絡調整などをし、生活支援の面では生活習慣の形成、健康管理、金銭管理などの日常生活の自己管理に関する助言、関係機関との連絡調整などをします。参考:障害者就業・生活支援センター事業について|厚生労働省HP◇地域障害者職業センター各都道府県に設置されています。障害者の就労を支援するために、ハローワークや病院、福祉施設などの関係機関との連携を行いながら、地域に密着した職業リハビリテーションを行う施設です。具体的には、職業能力などの評価や支援計画の作成、就職活動の相談、短期間の作業体験や事業所見学などが行われます。参考:地域障害者職業センターの精神障害者総合雇用支援のご案内|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構HP◇障害者職業能力開発校障害者職業能力開発校は、一般の職業能力開発施設において職業訓練を受けることが困難な重度障害者などにを対象し、その障害に対応した訓練を実施しています。参考:障害者を対象とした職業訓練|厚生労働省HP◇ジョブコーチ支援実施機関職場適応援助者(ジョブコーチ)が、利用者の職場に訪問し、職場への適応・定着を支援します。障害者本人への支援だけでなく、障害者を雇用する事業主や障害者の家族に対する助言などの支援も行います。地域障害者職業センターや、障害者の就労支援をする社会福祉法人や、障害者を雇用する企業に在籍していることがあります。参考:職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業について|厚生労働省HP◇就労継続支援A型事業者就労移行支援を利用したが企業への一般就労に結びつかなった等の理由があり、ある程度の支援があれば就労することができる方を対象としたサービスです。施設と利用者で雇用契約を結び、働くことができます。利用期間に制限はありません。◇就労継続支援B型事業者就労移行支援や就労継続支援A型の利用経験がありますが、年齢や体力の面で雇用が困難な方を対象としたサービスです。施設との雇用契約は結びませんが、生産性にこだわらず自分のペースで働くことができます。利用期間に制限はありません。ケースごとの以上の施設を利用する際の流れなどについては以下のサイトをご参照ください。参考:障害者が就職・定着するまでの標準的な支援|厚生労働省HP精神科訪問看護/精神科デイ・ケア(通院以外の治療)出典 : ここでは、通院・入院以外の治療である精神科訪問看護と精神科デイ・ケアを紹介いたします。いずれも在宅での生活を支えるサービスで、自立支援医療(精神科通院医療)制度を利用すると医療費が原則1割負担になります。◇精神科訪問看護自宅などの居住している場所で保健師、看護師、作業療法士、精神保健福祉士などにより行われる療養上の世話または必要な診療の補助を行うことを指します。具体的には病状の観察と情報収集や日常生活の維持、対人、家族関係の調整や精神症状の悪化の予防、社会資源活用の補助等が行われます。詳細は以下のリンクでご確認ください。訪問看護について|厚生労働省HP◇精神科デイ・ケア精神科デイ・ケアは、社会で生活するために必要な能力の回復を目的として、グループでの治療をおこなうものです。利用時間や利用開始時間に応じてデイ・ケア、ショート・ケア、ナイト・ケア、デイ・ナイトケアなどの種類があります。統合失調症やうつ病などの疾患別プログラムや、高齢者や思春期、青年期などの年代別プログラム、家事能力や復職支援などの目的別プログラムなど、様々な内容があります。施設により内容が異なります。保健所で行っている場合は費用がかかりませんが、その他の場合はかかります。とはいえ、自立支援医療(精神通院医療)を利用すれば、自己負担額は減ります。参考:精神科デイ・ケア等について|厚生労働省HP精神障害について悩んだときは出典 : ◇精神保健福祉センター…各都道府県及び政令指定都市に設置されている精神保健や精神障害者の福祉に関する機関です。こころの悩み全般に専門家がこたえてくれますので、気兼ねなく連絡してみましょう。以下のリンクで全国の精神保健福祉センターを検索できます。全国の精神保健福祉センター一覧|厚生労働省HP◇いのちの電話 …一般社団法人いのちの電話連盟では、無料でインターネット相談や電話相談を実施しております。詳しくは以下のリンクをご参照ください。リンク:いのちの電話の相談方法|一般社団法人いのちの電話連盟HP◇地域生活支援センター …身体障害者、知的障害者、精神障害者及びその他の障害者の自立と社会参加や家族の精神的サポートを行うための支援施設で、医療とは異なる視点で解決策を考えてくれます。◇勤労者の相談窓口 …勤務先の保健師や産業医や、産業保健推進センターの相談事業が利用できます。産業保健推進センターでは精神科医や心理士が専門的な相談に乗ってくれます。◇保健室、保健管理センター、教育センター …教育の場でのいじめなどの問題に個別対応してもらえます。◇家族会 …家族会とは、精神疾患に苦しむ身内がいる家族が集まり、悩みを共有したり情報交換をする会です。大きく分けて、病院を基盤とするものや、地域を基盤とするもの、ほかにもたくさんの種類の家族会が存在します。孤立感をなくすという意味でも、参加には価値があります。◇患者会 …同じ病気や障害に苦しむ人たちが集まり、情報交換や交流などの活動を行います。悩みの共有や症状への対処法などを伝えあえる場は、精神的な支えにもなります。参考:Q. 精神科の医療機関以外に、こころの問題の相談に乗ってくれる場所はあるのですか?|日本精神神経学会HP◇こころもメンテしよう厚生労働省で行われた「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」報告(平成21年9月)を受けて開設された10代、20代向けのメンタルサポートサイトです。こころもメンテしよう|厚生労働省HP◇みんなのメンタルヘルス総合サイト厚生労働省で行われた「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」報告(平成21年9月)や「自殺・うつ病対策プロジェクトチーム」のとりまとめ(平成22年5月)を受け開設された一般市民向けのサイトです。病気や症状の説明や、医療機関、相談窓口、各種支援サービスなどの紹介がされています。みんなのメンタルヘルス|厚生労働省HP◇こころの耳厚生労働省の委託事業として一般社団法人日本産業カウンセラー協会が開設した働く方向けのメンタルヘルスサイトです。ストレスチェックやこころの病克服体験記、ストレス対処法まで詳しく、分かりやすく紹介されています。ページ下部にある「コンテンツ一覧」から探すとわかりやすいです。こころの耳◇日本精神神経学会公式HP一般の方向けのページでは、一部の精神疾患についての解説や、市民公開講座などの募集がされています。一般の方へ|日本精神神経学会HP◇悩み別相談窓口などの支援情報検索サイト以下のリンクでは、悩み別に相談窓口などの支援情報を検索出来ますのでご活用ください。支援情報検索サイト|厚生労働省HP悩みや状況を選ぶ|いのちと暮らしの相談ナビHPまとめ出典 : 精神障害にかかってしまうと、自ら支援を求めたり、探したりすることはとても難しく思ってしまうこともあるのではないでしょうか?しかし、福祉サービスなどの支援制度を知り、活用すれば、より生きやすくなるかもしれません。ご自身で探すことが難しい場合は、精神保健福祉センターなどの相談窓口に連絡してみることをおすすめします。自分だけでは分からなかった解決策が見えてくるかもしれません。
2017年06月30日支援級って、実際どうなの?出典 : 「支援級って、実際どうなの?」「どんな雰囲気で、何をやってるところなの?」…と、特別支援学級という「未知の世界」が気になっているお母さんも多いかと思います。うちの長男は、発達障害に気づかずに通常学級で入学し、4年生まで過ごしました。そして、5年生になった時、自分の意思で支援級に転籍。さらに今年の4月からは、また通常級に戻る予定でいます。今まで繰り返しお伝えして来た通り、本当に支援級を巡る状況は千差万別です。これは「あくまで一例」ではありますが、長男と私が経験した「うちの」支援級ルポを、楽々かあさんこと、大場美鈴がお伝えします。うちの支援級の1日の流れ出典 : まず、朝の風景から。うちの支援級の登下校は、お母さんが付き添って歩いたり、車で送り迎えをしていたりする場合が多いです。我が家では、行けるときは登校班で歩いてゆき、不安定な時期や、行事などで心身の負担が大きな時期は、車で送って行きます。うちの学校の支援級は2クラス。身体・知的障害のあるお子さんのクラス(以下、A組)と、長男が在籍していた、主に発達障害の傾向のあるお子さんが中心となる、情緒クラス(以下、B組)に分かれています。通常級の出席番号とは違い、支援級のそれぞれの子には「専用カラー」が決められています。下駄箱やロッカーには、名前と共に、その子カラーのテープが貼られて目印になっているのです。そこに靴を入れて、クラスに向かいます。うちの支援級は、一階の保健室近くに配置されていて、普通級とはやや離れています。逆に、職員室、1年生のクラスとは同じフロアです。登校すると、子ども達はその日の予定を確認します。スケジュールボードに、それぞれの子の時間割がマグネットで並べられています。時間割はそれぞれの子で違うものになっています。教科によって支援級で過ごしたり、交流級に行ったり、運動場や音楽室に行ったりと、けっこう移動が多いです。交流級というのは、通常級のクラスでの授業・活動に参加することです。「協力学級」「親学級」などとも呼ばれています。B組在籍の子どもは、全部で6人程ですが、B組の教室に常時いるのは2〜3人。なかには1日中交流級で過ごす子もいます。A組、B組の子達が揃うのは給食の時間。机を全部くっつけて、2クラス合同で先生方も一緒に食べています。その様子は、カオスと言っても過言ではないくらい賑やかです。両クラスの最上級生である、A組の6年生の男の子は人気者。下の学年のお子さん達が慕って、おんぶをせがんだり、給食を配ってあげていたりと、微笑ましい様子も見られます。下校時刻は、それぞれの学年に準じたものになっています。上級生になるほど、6時間目の授業も増え、クラブ活動などもあります。低学年の子達が下校する6時間目には長男と先生のマンツーマンになることも多く、学習が捗るようです。チームで子ども達を見守る、先生達出典 : 支援級の担任は、A組はしっかりした女性の先生、B組はベテランの男性の先生です。そして、それぞれのクラスに副担任の先生がつきます。介助員さんも、両クラス合わせて常時2~3名が学校にいる感じで、主に身体介助の必要なお子さんのお世話や、交流級に行っている子の付き添いなどをして下さっています。子ども1人当たりの大人の数が多く、チームで手厚く見守って頂けます。とはいえ、クラスに不安定になっているお子さんがいる時には、複数の先生がその子にかかりきりになる状況などもありました。そして、支援級の担任の先生は、前回の記事でもお伝えしましたが、必ずしも、支援に詳しいとは限りません。長男のクラスの担任の先生は定年間近の大ベテランの先生でしたが、4月の時点では支援について、ほとんど何もご存知ではありませんでした。ですが、「お母さん達のほうがお詳しいでしょうから…」と、親の話を一人ひとり、謙虚に丁寧に聴いて下さり、私は本当に頭の下がる思いでした。その姿を見て、私は「あ、大丈夫だな」と思いました。先生は多少のことには動じないタイプで、個性の強い子ども達に忍耐強くつき合って下さり、長男も信頼している様子で、私は安心して見ていることができました。知識・経験以前に、先生自身が安定していること、子どもと基本的な信頼関係が築けることが、私はまず必要なように思います。そして、その子に合わせたり、親の話に耳を傾けてくれる姿勢があれば、例え支援に対する知識・経験が十分ではなくとも、次第に「プロ」になって下さるように思えます。気になる学習内容は…?出典 : うちの支援級の学習内容は、その子の進度に合わせたプリント学習です。プリントは本当にオーソドックスな問題を、教科書の順に添ってひたすら取り組むような形です。私は支援の本にあるような手作り教具やICT機器などをジャンジャン使って、体感的な授業がそれぞれの子に行われる様子を夢見ていたので、正直、やや肩すかしでした。それでも、通常級の一斉授業のスピードについていけず、ノートも取らずにぼーっと過ごしていた時に比べれば、私にはずっと有意義な時間のように感じられました。算数は、長男がつまづいている九九や、筆算の手順など、何学年も前のところから戻ってスタートし、少人数の環境の中、自分のペースでじっくり取り組んでいました。国語は、学習内容はほぼ理解できるものの、漢字がどうしても出て来ないので、学習補助用のiPadを持ち込んで辞書アプリで調べながら進めました。ただ慣れて来ると、プリント中心の学習はつまらなくなったのか、苦手科目以外のプリントに落書きが増えてきました。その時は先生に相談して、もう少し学習内容を調整して頂けるようお願いをしました。課題のレベルは「大体できるけど、定着してないこと」から「やや難しいけれど、なんとかできそうなこと」くらいが、その子にちょうど良い学習レベルだと思います。長男は「やさし過ぎる」「難し過ぎる」ものは、どちらも集中できないようです。長男の場合は、パソコンなど興味の強い科目から交流級で参加し始め、体育や図工などの実技教科、2学期には理科・社会も…というように、長男の様子をみながらこまめに連携し、徐々に交流級を増やして頂きました。そして算数もマイペースにコツコツとプリントに取り組み続けた結果、学年相応まで進めることができ、3学期には、全科目交流級での授業になりました。通常級でできてしまった大きな段差を、支援級で長男自身のステップで徐々に上がっていったことにより、学習への自信がついたのです。異年齢・多種多様!支援級の子ども同士の様子は…?Upload By 楽々かあさん休み時間、B組(発達障害の傾向のあるお子さんが中心となるクラス)の男の子達は、手作りカードゲームなどをして楽しく遊んでいました。時折、通常級の次男も、支援級に顔を出して、一緒に遊んでいたようです。次男曰く「エアコン、効いてるんだよね~」とのこと。体温調節が身体の機能的に苦手なお子さんもいるため、うちの両支援級はエアコンが完備されています。転籍前、精神面の凸凹差の大きな長男は、通常級の同年齢のお子さん達と、やや話が合わないようでもありました。でも、異年齢で多種多様なお子さんの集まる支援級では、年下のお子さんと気が合ったり、年配の先生方とたくさん雑談できるので気が楽だったようです。とはいえ、B組の子同士の関係は、仲のいいときはすごく良いけど、ちょっとしたきっかけで大げんかするという、ジェットコースター式。気持ちを言葉で伝えたり、妥協することが苦手な子が多いため、実際の所、衝突事故も多かったです。でも、その中で長男は、「ゆずってあげる」「合わせてあげる」ことの大切さに少しずつ気づけたようにも思います。また、B組では長男は一番年長。クラスのお子さん達をまとめたり、お手本になる役割も与えられました。それよって学校での「居場所」ができたようです。支援級で過ごしたことは、長男の心の成長にも大きなプラスになったように思います。支援級に移ったことを、通常級の子たちはどう受け止める…?出典 : 交流級に行くことで、支援級と普通級を行き来していた長男は、通常級の先生の目から見てもさほど違和感なく溶け込んでいたようです。また、支援級にいても、運動会などの行事では今までクラスメイトだった通常級の子達と一緒でした。運動会の組み体操も林間学校での野外活動も、支援級の先生方に見守られながら、不安に思うことをひとつひとつクリアしながら参加しました。少しだけハードルを下げたり、大人が見守ってあげたりすることで、皆と一緒にできることはたくさんあると思います。長男が支援級に移った時は、それまでと態度が変わった子もいました。長男に対して以前より距離を置く子もいれば、かえって優しくなった子もいるし、何も変わらない子もいました。でもさまざまな機会を通して、一緒に過ごすことで、普通級の子達も支援級の子たちに慣れていきます。多感な年頃の子達の間には、お互いに取り扱いが難しい面も少なくありません。さらに、空気を読めなかったり、集団の中で目立つ行動を取ってしまう長男にとって、コミュニケーションのハードルが高いであろうと思う部分は今でもあります。それでも長男は、6年生に進級したら、居心地良さそうにしていた支援級を卒業して、皆と同じクラスに戻ると言います。私は、支援級に転籍したときのように、長男に通常級の良い点、そうでない点の両方を伝えましたが、今回も長男の決意は変わりませんでした。そこには、好奇心の強い彼にとって今の成長に必要な刺激があるのかもしれません。また、合理的に物事を判断する長男にとって、考えられるデメリットを上回る何かを、今は感じているのかもしれません。子どもの成長と学び方は、一律一様ではないのだから…。ここまで3回に渡り、私達親子の実際の体験から、支援級と通常級の間にある選択肢、支援級を検討する際の判断のポイント、そして、うちの支援級の実際の様子をお伝えして来ました。支援級は本当に千差万別で、私には「うちの」支援級が標準的かどうかも分かりません。でも、具体的な情報が開かれてゆくことで、もっと支援級が身近で気軽に感じられる場所になってほしい、と私は願っています。また、支援級と通常級、それぞれにメリット・デメリットがあり、私にはどちらがいいとも言えません。でも、通常級にいる子達にとっても、長男が5年生を過ごした支援級を「別世界」と感じてるわけではないと感じています。そして、一つだけ確かなことは、日々成長する子どもたちによって、その個性の発達のスピードやその子に合った学び方は、一律一様ではない、ということです。これは長男の今までの育ち方と、興味関心のあり方を見守って来た私が、実感として思うことです。柔軟に、臨機応変に、その子に合った学び方が、どんなお子さんにも安定して提供される日が、なるべく早く来ることを、同時代を生きる子を持つ一母親として、私は願ってやみません。Upload By 楽々かあさん大場美鈴(著), 汐見稔幸(監修), 『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法』ポプラ社, 2017年
2017年04月10日特別支援学校高等部に入学した、自閉症の息子。その時間割を見てみると…出典 : こんにちは。『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』の著者の立石美津子です。2000年に生まれた、知的遅れを伴う自閉症の息子は2016年4月7日に特別支援学校高等部に入学しました。息子が高等部入学したばかりのころ、私は時間割を見て驚きました。「あれ?数学、国語はこんなにちょびっとなの?」そこにあったのは、作業、作業の連続の時間割でした。Upload By 立石美津子特別支援学校高等部は正式には高校ではありません。就労するための職業訓練校的色彩が強いです。障害も重い子、軽い子がいます。それぞれの能力に合った就労先を見据えて、園芸班、紙工作班、清掃班、接客班、事務班などに分かれて訓練しています。仕事=つらい?息子が学校で習った内容は…出典 : ある日、息子が学校から持ち帰ったファイルを開いてみると、「仕事頑張ります」と書いてありました。社会に出るということも仕事の意味もわかっておらず、ただ担任に言われたことをそのまま写してているような気がしました。何だか切なくなりました。Upload By 立石美津子更にそのファイルには、仕事に関する穴埋め式の問題が入っていました。○のなかに回答を書くものです。問題:高等部を卒業したら?○○→○○をもらう→生活する息子が書いた答えには、「働く」「給料」の文字が入っていました。問題:お給料をもらうためには、仕事をしなくてはならない!仕事は遊びではないので○○仕事や嫌な仕事もある○○には「辛い」という文字が入っていました。Upload By 立石美津子息子の精神年齢は5歳くらいです。この穴埋め問題の意味をどれくらい理解しているのでしょうか。先生が模範解答として示したものを、そのまま書き写したんだと思います。確かに書いてあることは正しいことなのですが…。障害のある息子にとって、仕事はただつらいだけ?社会に出れば学校時代のような見守られる環境ではなく、厳しい面もあります。嫌でもしんどくてもやらなくてはならないことも多々起こります。でも…。「‟仕事は辛い“と最初にインプットしないでほしい。仕事が始まる前から‟苦しいもの”という先入観を持たせないほしい」と思いました。仕事をするのは給料のため、生活のためだけではありません。息子には卒業後、障害があってもやり甲斐や張りのある毎日、「こんな僕でも誰かの役に立っている」という充実感を持ちながら働いてほしい。そう感じました。「仕事は楽しい、だから頑張って技術を身に付けて仕事ができるように頑張ろう」そんな穴埋め問題だったら良かったのに…と母として思いました。働くことはゴールではない。むしろ、その先の人生のほうがもっと長い出典 : 特別支援学校高等部では、生徒達がきちんと就労できるよう、訓練することに必死です。でも、就労はゴールではありません。それから先も人生は続きます。むしろその先の方が学校生活よりもずっと長いのです。企業は法定雇用率に基づいて、障害者を雇うようになりました。2013年からは、従業員数が50人以上の会社は、雇用する労働者に占める身体障害者・知的障害者の割合が2%以上になるよう義務付けられています。このパーセンテージは、将来もっと上がると言われています。厚生労働省『平成25年4月1日から 障害者の法定雇用率が引き上げになります』企業は義務として障害者を雇いますが、企業の側に障害に対する理解が十分あるとは限りません。例えば“アスペルガー症候群”の人にはどのような特性があり、物事をどう捉える傾向があるのか、正しく把握している人が企業にどれだけいるでしょうか。このような状況だと、孤立し虐められ退職してしまう障害者も多くなるでしょう。一方で親御さんの中には、「どうか子どもが今日もクビになりませんように」と神棚に祈っている人もいます。そこには、わが子が将来一人で生きていくためには、職場になんとか雇用されていてほしいという切実な願いがあるのだと思います。そんな親の気持ちを知った子どもが、合わない職場でも嫌と言えず、働き続け、もがき苦しむという場合もあるかもしれません。就労できたからといって、その先の人生が保障されているわけではないのです。だからこそ、特別支援学校も「訓練して、就労させて、はいさようなら」とならないでほしいんです。卒業後のフォローはあると学校側からは聞いていますが、ずっと見ていてくれるわけではありません。障害のある子に対して、長期にわたり見守る制度が充実することを願っています。Upload By 立石美津子毎朝、慣れないネクタイの制服で悪戦苦闘している息子です。これも就労訓練の一貫なのかもしれません。そして、「ああ、どんどん年齢を重ねないで就労なんて考えないでずっと可愛い子どもでいてほしいなあ。」「毎日楽しい学校生活のようなことを一生経験できる場があったらいいなあ」なんて思ってしまうのでありました。Upload By 立石美津子『立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』2016年、すばる舎
2017年03月19日障害福祉サービスとは出典 : 障害福祉サービスは、障害者総合支援法に基づき支給されるサービスです。身体障害、知的障害、発達障害、精神疾患、難病などにより日常生活に制限が生じ、介護や就労支援を必要とする方々を主な支援対象としています。また、市区町村審査会による審査の結果必要性が認められれば、障害者手帳を持たない人でも利用することができます。(ただし身体障害者の場合は障害者手帳が必要)障害者総合支援法における障害福祉サービスの利用料金は、世帯ごとの前年度所得に応じて負担額の上限が定められており、所得の少ない利用者にも優しい仕組みになっています。障害福祉サービスの厳密な定義は、厚生労働省の説明に沿えば、障害者総合支援法に基づくサービスのうち、個々の障害のある人々の障害程度や勘案すべき事項(社会活動や介護者、居住等の状況)をふまえ、個別に支給決定が行われるサービスの総称と表すことができます。その他、障害者総合支援法に基づくサービスとしては、障害福祉サービスには含まれませんが、「自立支援医療」というサービスも存在します。これは、精神疾患で通院による精神医療を続ける必要のある人を対象に、通院のための医療費の自己負担を軽減するというものです。自立支援医療の詳細については以下のページを参照してみてください。自立支援医療の概要障害福祉サービスの具体的な内容は?出典 : By 発達障害のキホン上の表からわかるように、障害福祉サービスは介護給付と訓練等給付の2種類に分かれています。介護給付では、文字通り日常生活に困難を抱える方や介護を必要としている方に対して介護サービスを、訓練等給付では自立した生活もしくは就労を目指す方に対して職業訓練などの支援を行います。以下では、両者それぞれについて具体的なサービス内容を紹介していきます。・居住介護(ホームヘルプ): 入浴や食事などのお手伝いをします。・重度訪問介護: 重度の肢体不自由者である、または重度の知的障害もしくは精神障害があるために介護を必要とする方に、総合的な支援を行います。・同行援護: 視覚障害により移動するのが難しい方のために、ガイドヘルパーが移動をサポートするサービスです。ガイドヘルパーは視覚障害の移動や介助に特化した研修を受けており、移動を行う際の情報保障の役割を果たします。・行動援護: 行動上著しい困難のある場合に、本人の危険を回避するための援助や移動の介護を行うサービスです。単なる移動の補助にとどまらず、利用者の方の要望に合わせて、新しい施設や活動を行うまでの移動の手伝いも行います。・重度障害者等包括支援: 介護を大変必要としている方に対して、居宅介護など複数の介護サービスを行います。・短期入所(ショートステイ): 普段介護している方に変わって短期間、介護をします。・療養介護: 医療行為と介護を常に必要とする方に対して、医療機関で訓練や介護などを通して生活支援を行います。・生活介護: 介護を常に必要としている方に対して、介護を行うことに加え創作的活動又は生産活動の機会を与えます。・障害者支援施設での夜間ケア等(施設入所支援): 施設に入所している方に対して、介護を行います。・自立訓練: 自立した生活を送ることができるよう、身体機能と生活能力の向上を目指して訓練を行います。機能訓練と生活訓練の2種類があります。・就労移行支援: 一般企業などで働くことを希望する方に対して、就労に必要な知識・能力の向上を目指して訓練を行います。・就労継続支援: 一般企業などで働くことが難しい方に対して、働く場所を提供し知識・能力の向上の向上を目指して訓練を行います。雇用契約を結ぶA型と、雇用契約を結ばないB型の2種類があります。・共同生活援助(グループホーム): 共同生活を行う住居で、相談や日常生活上の援助を行います。また介護などの必要性が認められた場合には介護サービスを提供します。さらにグループホームを退居し、一般住宅等への移行を目指す人のためにサテライト型住居があります。障害福祉サービスはどんな人が利用できるの?出典 : これまで述べてきたとおり、障害福祉サービスは身体障害、知的・発達障害、精神疾患、難病などにより日常生活に制限が生じ、介護や就労の支援を必要とする人のためのサービスです。身体障害者は、「身体障害者手帳の交付を受けている人」が条件に定められていますが、ほかは障害福祉サービスを申請をするうえで障害者手帳の有無は問われません。障害者手帳がなかったとしても、審査の結果支援の必要性が認められ「受給者証」の交付を受けることができればサービスを利用できます。障害者総合支援法に基づく支援の対象は、具体的には以下のように定められています。・身体障害者・・・身体に障害がある18歳以上の人で、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けている人・知的障害者・・・知的障害者福祉法にいう知的障害者のうち18歳以上の人・精神障害者・・・統合失調症、精神作用物質による急性中毒、またはその依存症、知的障害、精神病室などの精神疾患を持つ人(知的障害は除く)・発達障害者・・・発達障害があるため、日常生活や社会生活に制限がある18歳以上の人・難病患者・・・難病等があり、症状の変化などにより身体障害者手帳を取得できないが、一定の障害がある18歳以上の人・障害児・・・身体障害、知的障害、発達障害を含んだ精神障害がある児童、または難病等があり、一定の障害がある児童参考文献:遠山真世,二本柳覚,鈴木裕介/著『これならわかるすっきり図解障害者総合支援法』2014年 日経印刷/刊ここには障害児も含まれていますが、障害福祉サービスを利用する障害児の数は利用者全体の2.4%(平成26年3月現在)に過ぎません。障害児は障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスではなく、児童福祉法に基づく支援を受けることが圧倒的に多いようです。出典:「障害福祉サービス、障害児給付費等の利用状況について」厚生労働省 p.1児童福祉法に基づく支援に関心のある方は以下の記事をご覧になってみてください。利用できる障害福祉サービスを左右する「障害支援区分」とは?出典 : 「障害支援区分」とは、障害福祉サービスの必要性を明確にする目的で、障害の多様な特性やその他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示す区分のことを指します。市区町村は、介護給付の申請があった際にはこの区分に関する審査をし、その審査結果に基づいて認定を行います。障害支援区分は「区分1」から「区分6」まで全6区分(数が大きい方が必要とされる支援の度合いが高い)が定められており、区分により受給できるサービス内容やサービスの量に差があります。具体的な調査項目は、1)移動や動作等に関連する項目(12項目)2)身の回りの世話や日常生活等に関連する項目(16項目)3)意思疎通等に関連する項目(6項目)4)行動障害に関連する項目(34項目)5)特別な医療に関連する項目(12項目)の計80項目となっています。より詳細に、全80項目を確認したいという方は、下記のリンクをご参照ください。障害者総合支援法における「障害支援区分」の概要厚生労働省参考:「障害福祉サービスの利用について」全国社会福祉協議会障害福祉サービスの申請から受給までに必要な手続き出典 : 障害福祉サービスは介護給付と訓練等給付のそれぞれで申請の流れが異なります。介護給付を希望する場合は「障害支援区分認定」を受けることが必要になるからです。また訓練等給付を希望する場合でも、共同生活援助(グループホーム)を利用するにあたり、障害支援区分認定が必要になることがあります。申請してからサービスの利用開始まで、一般的には1ヶ月前後の日数を要するようです。ただし、市区町村によって異なる可能性もあるので、急を要する場合などはお住まいの市区村長に問い合わせてみるとよいでしょう。「よく問い合わせていただく質問」川口市以下が申請からサービス利用までの流れです。Upload By 発達障害のキホン1. 市区町村の障害福祉担当窓口へ申請申請の際には、状況に応じて障害者基礎年金1級の受給の有無や介護保険申請の状況などを聞かれる場合があります。2. 障害者支援区分認定調査市区町村の認定調査員による面接が行われ、全国共通の質問票から心身の状況に関する80項目と状況の調査が行われます。3.一次判定認定調査及び医師意見書の一部の結果に基づき、コンピューター判定が行われます。医師意見書とはかかりつけ医に申請者の心身の状態、特別な医療などの意見を求めるものです。(市区町村が依頼します。)4.二次判定一次判定の結果と状況調査、医師意見書などを踏まえ、市区町村審査会で二次判定が行われます。5.障害区分認定二次判定の結果に基づき、非該当、区分1~6の認定が行われます。各サービスの区分ごとのサービス量は上記のリンクを参考にしてみてください。6.サービス利用意向の聴取・サービス等利用計画案の提出市区町村から計画案の提出が求められている場合は提出をします。サービス利用計画案は指定特定相談支援事業者が作成しますが、申請者自身による作成も可能です。7.支給決定障害区分や本人・家族の状況、利用意向、サービス等利用計画案などを踏まえてサービスの支給量などが決まり、支給決定が申請者に通知されます。8.サービス担当者会議申請者が利用する全てのサービスの各担当者が出席し、利用者に合ったサービスを提案、サービス等利用計画の作成案が出し合われます。9.支給決定時のサービス等利用計画の作成サービス担当者会議での案をもとに、指定特定相談支援事業者がサービス等利用計画を作成します。利用計画は申請者自身による作成も可能です。10.サービスの利用開始申請者はサービス提供事業所と契約を結び、サービスの利用を開始します。サービスの量や内容については、利用開始後も一定期間ごとに確認が行われ、必要に応じて見直されます。障害福祉サービスの介護給付を利用する人の中には、身体障害や難病により入浴や移動で介護を必要とする方、発達障害により料理や掃除といった家事に困難を感じており助言や手助けを必要とする方などがいます。以下の記事では、40歳台でアスペルガー症候群と診断された女性が障害福祉サービスの利用手続きをした経験談を、各段階での感情とともに紹介しているので、興味のある方はご覧になってみてください。障害福祉サービスの利用費は?出典 : 障害福祉サービスを利用した人は、原則としてサービスの提供に要した費用の1割を負担することになります。また、施設入所や日中活動サービスに伴う光熱水費等の実費や食費については、在宅で生活する人との公平を図るため、自己負担となります。ただし、定率負担、実費負担ともに所得の少ない人の負担が大きくならないよう、さまざまな軽減措置が設けられています。詳しくは市区町村のホームページなどから確認してみるとよいでしょう。生活保護受給世帯・・・0円市区町村民税非課税世帯・・・0円前年度所得約300万円以上~約600万円以下の方・・・9,300円前年度所得約600万円以上の方・・・37,200円障害者総合支援法における障害福祉サービスの利用料金は、世帯ごとの前年度所得に応じて負担額の上限が定められています。そのため、ひと月に利用したサービス量にかかわらず、それ以上の負担は生じないことになっています。「障害者の利用者負担」厚生労働省障害福祉サービスと介護保険の関係は?Upload By 発達障害のキホン「介護保険サービスと障害福祉サービスの違い」松山市障害福祉サービスと介護保険の違いは、上の図の通りです。介護の必要度を測る指標、サービスの支給限度の決定方法、サービス利用計画の作成者、利用者負担額の決まりなどにそれぞれ違いがあり、制度として別個のサービスであると理解してください。支援の内容や機能を比較して、障害福祉サービスと同様の介護保険のサービスがある場合は、原則、介護保険のサービスを優先して受けることになっています。ただし、一部併給が可能なサービスも存在します。ただし、介護保険のサービスに相当するものがない障害福祉サービス固有の支援については、障害者総合支援法に基づく支援をうけることができます。また、その他の支援についても、状況次第では介護保険ではなく障害者福祉サービスの適用範囲内として認められるケースが存在するため、詳しくはお住まいの市区町村に相談するとよいでしょう。まとめ出典 : 障害福祉サービスについて規定している障害者総合支援法は、以下のような基本理念を掲げています。・全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現・社会参加の機会の確保・どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないことさまざまなニーズに対応した支援内容、月額利用料の上限設定、障害者手帳の保有は必須条件ではない、といった障害福祉サービスの特徴は、これらの理念が反映されたものであるといえるでしょう。障害や難病の方々一人ひとりが自分にあったサービスを受けることで、本人や家族がよりよい生活を送れるようになるのではないかと思います。障害者総合支援法について
2017年02月28日総務省による、発達障害者の支援に関する実態調査。その結果は?出典 : 年1月20日、総務省は、文部科学省と厚生労働省に対し、発達障害者支援に関する行政評価と監視の結果に基づく勧告を行いました。この調査は、保育所・学校現場を含む、都道府県・市町村における発達障害者支援の実態を初めて調査したものとなります。前回の記事では、早期発見に関する実態の調査報告と総務省の勧告内容についてお伝えしました。今回の記事では、発達障害がある子どもへの支援状況と情報の引継ぎに関する調査・勧告内容についてご紹介します。発達障害児に対する支援「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」とは出典 : 発達障害を含む障害のある児童生徒の指導について、学校等では、児童生徒それぞれに「個別の教育支援計画」(以下「支援計画」)と「個別の指導計画」(以下「指導計画」)を「必要に応じ」作成し、指導と支援を行っていくこととされています。(4) 関係機関との連携を図った「個別の教育支援計画」の策定と活用特別支援学校においては、長期的な視点に立ち、乳幼児期から学校卒業後まで一貫した教育的支援を行うため、医療、福祉、労働等の様々な側面からの取組を含めた「個別の教育支援計画」を活用した効果的な支援を進めること。また、小・中学校等においても、必要に応じて、「個別の教育支援計画」を策定するなど、関係機関と連携を図った効果的な支援を進めること。(5) 「個別の指導計画」の作成特別支援学校においては、幼児児童生徒の障害の重度・重複化、多様化等に対応した教育を一層進めるため、「個別の指導計画」を活用した一層の指導の充実を進めること。また、小・中学校等においても、必要に応じて、「個別の指導計画」を作成するなど、一人一人に応じた教育を進めること。特別支援教育の推進について(通知)なお、2016年の改正発達障害者支援法においても、発達障害児が年齢及び能力に応じ、かつその特性を踏まえた十分な教育を受けられるようにするために必要な措置として、これらの支援計画及び指導計画の作成を推進することが具体的に明示されています。法律第六十四号(平二八・六・三) ◎発達障害者支援法の一部を改正する法律支援計画や指導計画、実際にどれくらい作成されているの?その効果は?出典 : しかし支援計画に関していうと、必ずしも発達障害のある児童全員に作成されていないのが現状のようです。この度の総務省の調査で調査対象となった111の保育園および幼小中高校において、発達障害児(発達障害が疑われる児童生徒を含む)は計2,431人でした。そのうち支援計画作成が「必要」と判断された児童生徒は829人であり、さらにそのうち支援計画を作成済みの児童生徒は690人でした。支援計画作成が「必要」と判断されたものの、未作成の生徒が139人いることが明らかになりました。未作成の理由としては、教員の業務が多忙で作成する時間の確保が困難であるため、保護者の同意が得られないため、などとされています。また、支援計画作成が「必要」と判断する範囲に関して、111の調査対象のうち19の保育園および幼小中高校では、医師の診断がある児童生徒のみなど、計画の作成対象をかなり限定した範囲にとどめている例がみられました。そしてこうした計画作成対象が限定されていたことの結果として、支援計画や指導計画が作成されていなかった生徒の中には、不登校等の二次障害が生じている例がみられたとのことです。問題行動の度合いが高くない生徒には支援計画及び指導計画を作成することとしていないため、発達障害の診断を受けているにもかかわらず、両計画とも作成されず、結果として、学習障害等で授業についていけずに、平成22年度から26年度までの間に、不登校4人、休学1人、退学1人が発生した。一方、調査した保育所及び学校において、支援計画又は指導計画を作成したことにより、特別支援学校など関係機関による助言や保護者との連携等が図られ状態が改善するなど効果的な支援が行われている例が30事例みられました。総務省は文部科学省と厚生労働省に対し、保育所及び学校において、一律の基準によって支援計画及び指導計画の作成対象を限定するのではなく、個々の児童生徒の特性や状態を踏まえ、支援が必要な児童生徒に対して着実に作成されるよう、作成対象とすべき児童生徒についての考え方を示すことを勧告しました。継続的な支援のために欠かせない、進学先等への情報の引き継ぎ。しかし現状は…出典 : 支援計画や指導計画の作成だけでなく、支援の前提となる子どもに関する情報の引き継ぎ共有も重要です。こうした情報共有の実態についても調査がなされました。具体的には、・乳幼児健診の結果として発達障害の疑いがあるとする情報を保育所へ渡す取り組み・保育所や幼稚園で作成された支援計画等に適宜資料の追加等を行った上で、障害のある児童生徒等に関する情報を一元化し、支援計画や相談支援ファイル等として小・中学校等に引き継ぐ取り組みなど、関係機関同士の情報の引き継ぎ・共有が十分ではないという勧告がなされています。しかし、情報共有が十分に進まない背景には、個人情報保護の観点からの障壁もあるようです。そのことが明らかになったのは、調査対象となった31市町村が実施した乳幼児健診結果の引き継ぎ状況の調査からです。平成26年度に実施した乳幼児健診の結果の、進学先(保育所、幼稚園等)への引き継ぎ状況をみると、30市町村で「引継ぎを行うこと」という方針を立てているものの、個人情報保護の観点から、保護者の同意が得られた場合であって、保育所等から情報提供の依頼があった児童のみ引き継ぐとしている自治体が14市町村にのぼりました。つまり、半数近くの市町村では、保育所等からの働きかけがなければ引継ぎが行われない状況であるということです。調査した市町村の中には、乳幼児健診の結果の進学先への引継ぎ時における保護者の同意取得については、次のような取組を行っている例がみられたとのことです。乳幼児健診の問診票の中に、健診結果等について、保育所等の関係機関と連絡を取り合う場合がある旨をあらかじめ記載し、これに同意するか同意しないかを選択させることとしている。児童が幼稚園に入園する前に、心配事のある保護者に「保護者との連携シート」の記載を依頼しており、同シートにより、幼稚園が保健師等の関係機関等から情報を入手する旨の同意を得ている。また、乳幼児健診の結果が引き継がれなかったことにより、対応が困難になった例もみられたとのことです。市外からの転入により入所した児童について、転出元の市町村での乳幼児健診結果(発達障害の疑いあり)を把握できなかったため、支援計画の作成、個別の配慮、小学校への引継ぎ等を行わなかったところ、小学校で集団行動になじめない状況となり、急遽支援が必要となった歳児健診及び3歳児健診で紹介された親子教室において、軽度な知的障害を伴う発達障害の疑いを指摘されたが、それらの結果が、入園先の幼稚園に伝わらず、児童の知的障害の把握が遅れた。その結果、児童は、特別支援学級へ入級したが、知的学級ではなく、自閉・情緒学級へ入級することとなり、児童に対する教育的配慮や課題設定を行うのに数箇月要した同様に、進学の際や転校の際における引き継ぎの不備も指摘されており、総務省は厚生労働省に対して、市町村に乳幼児健診の結果等の進学先への引継ぎの重要性を周知し、積極的な引継ぎを促進することを勧告しました。他にも総務省は、厚生労働省と文部科学省に対して、保育所・幼稚園から大学・就労先までの各段階において、発達障害児に対する必要な支援内容等が文書により適切に引き継がれるような呼びかけを行なっています。都道府県、市町村、都道府県教育委員会及び市町村教育委員会に対しては、・具体例を挙げて支援内容の引き継ぎを周知すること・支援計画及び指導計画については、引継ぎまでの適切な保存・管理を求めるとともに、具体的な引継方法を提示し、確実に引き継がれるよう徹底を図ることを勧告しました。「切れ目のない支援」を実現するための課題は出典 : 情報の引き継ぎは、切れ目のない支援を推進する上で不可欠だと言われています。そして文部科学省でも障害のある子どもに対して小学校から高校まで一貫した支援ができるよう、進学先の学校へも引き継げる「個別カルテ(仮称)」の作成を学校に義務付ける方針を固め、推進しています。また逆に保育所から専門機関に相談するようすすめられる場合もあるようです。現在、4歳の男の子を持っていますが、引越しして、2ヶ月前ほどから、転園した先の、保育園の先生から、落ち着きがなく、みんなと一緒のことができない、話す単語が少ない、との指摘を受けて、療育センターに問い合わせをするように、言われました。保育園で発達障害を疑われました。3歳1ヶ月の男児です。保育センターの心理相談の結果、問題はなさそうでした。しかしモヤモヤと心配が晴れず、何か息子のためにできることはないかなと焦っています。親や支援者が発達障害をどう理解するか、そして個人情報保護や当事者、家族の不安に配慮する仕組みの構築が、実際に切れ目のない支援を実現するためには必要なのではないでしょうか。
2017年01月30日ことばの教室ってどんなところ?出典 : 小学校や中学校には、子どものさまざまな障害や困難に合わせた支援を行う、通級指導教室や特別支援学級が設置されています。「ことばの教室」とは、そのなかでも言語に障害のある子ども向けに設置された、通級指導教室と特別支援学級の通称です。また、ことばの教室は、「言語障害通級指導教室」、「言語障害特別支援学級」と呼称されたり、地域によっては「ことばときこえの教室」と呼ばれ、言語障害の支援と聴覚障害の支援が両方受けられる場所もあります。それは、言語を獲得し、言葉を発するのに聴覚(きこえ)が重要な役割をはたすためです。どちらか片方に障害があると、もう片方にも問題が生じる場合も多く、言葉を発することと聴覚に対する困りごとを同時に支援していく必要があります。通級指導教室や特別支援学級として設置されていることばの教室では、言語障害のある子どもへの支援を行っています。例えば言葉のおくれ、吃音(きつおん)などの話し言葉におけるリズムや声を出すための器官に障害がある構音障害に対して支援が行われます。また、障害の改善以外にも言葉に関する教科(例えば、国語、英語、音楽、算数、数学)の指導も行っています。通級指導教室とは、おおむね通常の学級の授業についていけるが、通常の学級の中で一部、特別な支援を必要とする子どもを対象に設置されている少人数教室です。通級指導教室に通う子どもは通常の学級に籍を置き、学習したり、給食を食べたりと通常学級でほとんどの時間を過ごします。そして、週に数時間、障害に合わせた個別の支援を受けるために通級指導教室へ通います。Upload By 発達障害のキホン一方、特別支援学級とは心身に障害があったり、発達に遅れがあったり、より手厚い指導・支援をより多くの時間必要とする子どもを対象に設置されている少人数学級です。特別支援学級へ通学する場合は、籍は特別支援学級に置きます。そして、体育や生活、道徳、課外活動をはじめ、一部の授業を通常学級の子どもと一緒に受けることが通例です。Upload By 発達障害のキホンどんな子どもがことばの教室に通うの?出典 : 言語障害のある子どもがことばの教室へ通います。言語障害と一口にいってもさまざまな種類があります。ここでは医学的言語障害ではなく、ことばの教室が対象としている言語障害について説明していきます。言語障害とは、話すため・言葉の発声のために必要な一連の動きに障害があることを言います。例えば、人は話す時にまず、頭の中で話す内容を考え、文章にします。次に音を出すための筋肉に脳から信号が出され肺による空気量の調節や声帯筋が運動し音がでます。次に音を声として発する鼻や口、舌の動きが調節され声となります。声は耳の聴覚によって感じられ、そして脳で言葉を言葉として理解します。言葉を話し、人とコミュニケーションをとるためには上記のような発声に関わる機能だけでなく、思考や社会性の発達、心理的問題や自己観の形成も深く関わってきます。そのため、言語障害は話すことに必要な器官の障害というだけでなく、話すことまた聞くことに問題がある障害を指します。ことばの教室は、言語障害のある子どもを対象にしていますが、通級指導教室と特別支援学級で、その対象が少し違います。ではどのように違うのでしょう。参考書籍:ピーター・B.デニシュ (著), エリオット・N.ピンソン (著)『話しことばの科学―その物理学と生物学』東京大学出版会/刊通級指導教室のことばの教室も、特別支援学級のことばの教室も以下のような子どもが対象となります。1. 唇の断裂(口蓋裂)や、音を発声させる器官(構音器官)のまひなどによる機能的障害のある子ども例) 声が鼻にかかったり、鼻に抜けてしまう。”さかな”の発音が”たかな”になってしまうようにサ行やカ行がうまく発音できないなど。2.b吃音などの話し言葉におけるリズム障害のある子ども例) ”きんぎょ”を”き、ききんぎょ”と言葉を繰り返してしまったり、”き...んぎょ”など言葉が詰まってしまうなど。3. 話す、聞くなど言語機能の基礎的事項に発達の遅れがあり、言葉の順序や表現に偏りのある子ども4. その他に上記のような障害に当てはまる子ども5. 言語障害の原因が上記でなく、他に原因がある子ども■「通級指導教室」のことばの教室に通う場合通級指導教室へ通う子どもは、多くの時間を通常の学級で過ごします。つまり、通常級に籍をおきながら、支援が必要な課題(ある特定の困りごとや、その困りごとから来る学習上の問題)だけを改善するために通級指導教室へ通い、そのほかの授業や活動は通常の学級で行います。そのため、通常の学級での集団行動や教員からの指示の聞き取りがある程度できる子どもに向いているでしょう。■「特別支援教室」のことばの教室に通う場合特別支援学級へ通う子どもは、逆に大半の時間を少人数の特別支援学級で過ごします。通級指導教室に通う子どもは一部の困りごとに対して支援を受けますが、特別支援学級に通う子どもは、困りごとへの支援に加え、国語や算数、社会などさまざまな教科の授業をうけます。特別支援学級に通うのは、通級指導教室に通う子どもに比べて、個別の支援の必要性が比較的大きい子どもです。また、通常の学級が1クラス35~40人に対し、特別支援学級は8人と少人数の編成です。ですので、落ち着いた環境で心理的な安定を保ちながら指導を受けたい子どもに向いているでしょう。ことばの教室で受けられる支援は?出典 : ことばの教室ではさまざまな支援や教育を受けることができます。通級指導教室と特別支援学級で共通した支援もあれば、異なる支援もあります。それらの点について詳しく説明していきます。通級指導教室や特別支援学級では、個別指導計画と個別の教育支援計画を作成してもらうことができます。個別指導計画とは、子ども一人ひとりの困りごとや障害に合わせ、各教科の学習や、集団行動・生活の指導目標や指導内容・方法を示した計画です。この指導計画に基づき、さまざまな教員・関係者が共有し連絡を取り合いながら指導・支援が行われます。具体的には、担任の教員を中心に保護者や、特別支援教育コーディネーター、専門家といったさまざまな人が、子どもの障害の状態や課題、優先事項などを話し合い作成します。一方、個別の教育支援計画は、個別指導計画より長期的な視点に立ち、学校のみならず、家庭や余暇活動も含めて、具体的な支援の計画を示した計画書です。医療、教育、または福祉、就職などさまざまな機関に引き継がれ、一貫した支援が受けられるようになります。通級指導教室では、子ども一人ひとりの言語に関する困りごとを改善するための支援が受けられます。一方、特別支援教室では、言語に関する困りごとの改善とともに、言語障害を考慮しながら各教科の授業を手厚く行います。具体的にどんな支援かご説明していきます。■通級指導教室では?通級指導教室では、学習の遅れや補充をするのではなく、子ども一人ひとりの困りごとに合わせた教育や指導が行われています。言語障害があるために学習が進まない場合には、学習指導も行われます。例えば次のような指導が行われます。・発音に誤りのある子ども正しい発音を身につける練習、音を聞き分ける練習、唇や舌の動きをよくする練習、コミュニケーションの力を育てる指導などが行われます。・吃音のある子ども吃音について正しく理解する学習、吃音の友達と出会ったり、気持ちを話し合ったりする学習(グループ指導)、発達・認知面の力を育てる指導、コミュニケーションの力を育てる指導などが行われます。・言語発達遅滞のある子ども子どもの実態に合った教材を使って言語理解・表出する力を育てる指導、発達の評価、コミュニケーションの力を育てる指導などが行われます。国立特別支援教育総合研究所■特別支援学級では?特別支援学級では、通常学級で過ごす交流学級という時間もありますが、特別支援学級に通う子どもは多くの時間を特別支援学級で学びます。子ども一人ひとりの困りごとに合わせた指導・支援はもちろんのこと、各教科の学習についても指導や支援が行われます。たとえば、国語や算数ではどのような支援が受けられるのでしょうか。・国語読むことに対する支援として、言葉の意味や概念の理解を深めるために絵や写真を使いながら話したり、動作を実際にやってみて説明したりします。また、辞書を活用し、意味を調べ自分でまとめた辞書を作ったりすることもあります。聞くことに対する支援では、話す内容についてそのポイントや重要な部分をあらかじめ説明し、子どもが聞き取るべき部分がわかるようにします。書くことや話すことに対しての支援は、教員との会話のなかで実際に子どもが体験したことを口頭で文章化したり、作った文章をさらに書き起こしてみたりするなどの練習が行われます。・算数文章題などを解くとき、文章の内容や意図を理解することが難しい場合があります。そのような場合は、単語の意味を確かめたり、図や絵を通して理解を促していきます。また、類似の問題に繰り返し取り組んだり、逆に類似の問題を作ってみることで理解をより深めていきます。ことばの教室のクラス編成はどうなっているの?出典 : ■通級指導教室通級指導教室ではほとんどの場合一対一で指導が行われます。ですが集団の中での困りごとやコミュニケーションでの困りごとがある場合は集団で行われることがあります。■特別支援学級特別支援学級ではクラス定員は8人までと決まっています。ですので少人数学級で授業を受けられます。ことばの教室にはいろいろな人が関わっています出典 : ことばの教室では、通級指導教室や特別支援学級の教員だけでなく、保護者、医療スタッフなどさまざまな人が子どもの教育、指導、支援に関わっています。通級指導教室でも特別支援学級でも、必要に応じて、口腔外科医、言語聴覚士、歯科衛生士などの専門家から正しい発音の基礎となる口腔の状態について助言を受けることができます。一方で、保護者や教員は、通級指導教室と特別支援学級では子どもとの関わり方が少し違います。保護者通級指導教室の場合、多くは保護者が付き添いをし、時には一緒に授業に参加することもあります。一方、特別支援学級の場合は、保護者が希望しない限り一緒に授業を受けたりすることはありません。しかし、通級指導学級も特別支援学級もお住まいの学区以外の学校へ行く場合は保護者の送り迎えが必要となります。教員通級指導教室の場合、担任の教員と指導の教員が異なるため、連絡ノート交換、指導報告等を通して、子どもへの共通理解を図ってゆきます。一方、特別支援学級では担任の教員が指導を行う場合が多いので一貫した支援が受けられます。ことばの教室にはどうやって入るの?出典 : 未就学児で来年度からことばの教室を検討している場合未就学児で来年度からことばの教室を検討している場合、就学相談に行く必要があります。就学相談とは、通級指導教室や特別支援学級を含めた特別支援教育を受けるためにお住まいの教育委員会と話し合いの場をもうけ、子どもにとって最適の学びの場を考える機会です。一般的に就学相談は早い地域で幼稚園・保育園の年長の春から、遅くとも秋ごろには始まります。就学相談については、お住まいの教育委員会の窓口まで問い合わせてみましょう。就学していて言語障害が気になり、ことばの教室を検討している場合まずは担任の教員に相談してみましょう。そこから教育相談をすすめられたり、特別支援教育コーディネーターを紹介してもらったりします。そして、一般的にはことばの教室の指導員の方などと面談をし通学の必要性が検討されます。まとめ出典 : ことばの教室では言語障害のある子どものサポートをしています。言語障害といってもさまざまな困りごとや課題を抱える子どもがいます。通級指導教室と特別支援学級の特徴をとらえながら、子ども一人ひとりにあった学びの場を考えてみましょう。
2016年12月15日