自身の波乱万丈な人生を基に私小説を書き続ける西村賢太の名を広めた、第144回芥川賞受賞作「苦役列車」が早くも映画化されることが決定!メガホンを取るのは『天然コケッコー』『マイ・バック・ページ』などで高い支持を集める山下敦弘監督。主演に森山未來、共演に高良健吾を迎え、「中卒」「風俗」「日雇い労働」という言葉が並ぶ話題の原作の映像化に挑む。主人公は、中卒の北町貫多、19歳。日当5,500円の日雇い労働でその日暮らしをしている。港湾労働で知り合った専門学生・日下部正二に友情めいた感情が芽生えるも、将来の選択肢が豊富な彼に嫉妬を抱くようになり、さらに好意を寄せる桜井康子にも拒絶されてしまう。誰にも相手にされず、酒と風俗に溺れる貫多。その頃、唯一人生で興味を持ち始めた作家の作品を片手に、筆を執り始めたのだった――。自身の素行の悪さと劣等ぶりに加え、父親の犯罪からくる引け目、中卒から日雇い労働の日々、酒と風俗に溺れる主人公を通して、満たされない毎日の息苦しさ、孤独、それを越える生命力を描き出す本作。主人公・貫多を演じるのは、大ヒットを記録した『モテキ』での演技が記憶に新しい森山未來。今回の出演について「台本を読んだときに、『モテキ』に続いてまたダメな男の役をやるんだと(笑)。山下さんとはぜひ一緒にやりたいけど、ストレートに“やります!”とは言えませんでしたね。考えながら飲み屋で飲んでいたら偶然、山下組常連の山本浩司さんと新井浩文くんが入ってきたんです。その瞬間、これは啓示かもと思い、2011年はこの“ダメ男”で締めくくることにしました」と本音を明かす。さらに、演じる貫多について「絶対友達にはなりたくないタイプかもしれませんが、生命力があって、たくましく感じます」と共感を寄せる。一方、かねてより山下監督作品への出演を切望していた、共演の高良さんは「好きな監督だからって考えすぎず、自分のしたいことをしよう。監督に嫌われてもいいくらいのつもりで(笑)。森山さんのことは大好きなので、緊張してます。今回ガッツリ共演するのは初めてなので、足引っ張らないように、しょっぱい感じにならないように頑張ります」と意気込みを語る。話題作のメガホンを託された山下監督は、「原作も映画も貫多のキャラクターが全てだと思います。貫多も実際、身近にいたら面倒な奴だと思います。でも、どこか人間味あふれる憎めない奴にしたいと思っています」とコメント。これに対して、原作者の西村さんは「この小説には、大向こう受けする要素が一切ない。多彩な登場人物もなければ、起伏に富んだストーリーもない。一人の落伍者の内面描写が眼目だから、いわば活字でしか成立し得ない世界。しかし、これを異能の山下敦弘氏が手がけられると聞き、その映像化への危惧は霧散した。全てを委ね、客観的に完成を待ちたい」と監督の手腕に期待を寄せる。映画『苦役列車』は11月25日よりクランクインしており、和やかな雰囲気で撮影が進んでいるという。日本映画界を引っ張る山下組から生み出される“人間臭い”ドラマに期待したい。■関連作品:苦役列車モテキ 2011年9月23日より全国東宝系にて公開© 2011映画「モテキ」製作委員会■関連記事:長澤まさみが生で「ドロンします」を披露し会場はメロメロ森山未來インタビューわずかに成長?“中二病”主人公にけじめの決別宣言!長澤まさみ「大人にならないと演じられない役」に嬉し恥ずかし『モテキ』でPerfumeが映画初出演!森山未來が4人目のPerfumeメンバーに?新宿コマ劇場の跡地に地上130メートルのシネコン&ホテル建設
2011年12月03日映画『セイジ−陸の魚−』が開催中の第24回東京国際映画祭で特別招待作品として上映され、メガホンを握った伊勢谷友介と主演の西島秀俊が記者会見と舞台挨拶に出席した。辻内智貴の小説を映画化した本作。学生生活最後の夏休みに自転車での一人旅に出た青年が、旅先でひょんなことから手伝うことになった寂れたドライブインの物静かな店主との交流を通して人生を模索する姿を描く。2002年の『カクト』以来8年ぶりの最新監督作について伊勢谷さんは「映画化するのも売るのも難しいテーマの作品。本質的に人が生きるということを考えさせられる要素を含んでいると思います」と語る。「自分のために撮るのではなくなった」と8年前との映画を作る上での姿勢の違いを語り「自分の成長を考えると意味をなした8年だったと思います」とふり返った。西島さんは森山未來、津川雅彦、裕木奈江、新井浩文、渋川清彦といった共演陣の名を挙げ「俳優の世界で、徹底的に役作りをし、先輩だろうと遠慮なく演技をする役者が揃っていた。その中の一人に選ばれて光栄でした」と語り、オファーを受けた理由を「セイジという役はとてつもなくハードルが高かったこと」と説明した。伊勢谷さんは現場での西島さんについて「難しいシーンもサラッとやって、サラッと帰っていく。何てドライな人だろうと思いました。ほとんど演出はしてないですよ」と語る。一方の西島さんは伊勢谷“監督”を「普通の監督のように外から客観的に見て演出するのではなく、俳優と一緒に役を作っていく。それぞれの役柄に愛情を注いでくれる監督でした」と評した。また、西島さんは役作りのために徹底的に体を絞り込み、体脂肪率はほとんどゼロになっていたという。伊勢谷さんは「本当に脂肪ないです。『あしたのジョー』に出て、そういうのは僕のお株だと思ってたんですが、まさか自分の監督作品でそんなことになるとは…(笑)」と冗談交じりに西島さんのストイックな姿勢を称えた。東京国際映画祭は10月30日(日)まで六本木ヒルズほか都内各所で開催中。『セイジ−陸の魚−』は2012年2月18日(土)よりテアトル新宿ほか全国にて公開。特集「東京国際映画祭のススメ2011」■関連作品:セイジ−陸の魚− 2012年2月18日よりテアトル新宿ほか全国にて公開© 2011 Kino Films/Kinoshita Management Co.,Ltd第24回東京国際映画祭 [映画祭] 2011年10月22日から10月30日まで六本木ヒルズをメイン会場に都内各所にて開催© 2011 Tokyo International Film Festival All Rights Reserved.■関連記事:【TIFFレポート】仲里依紗、“妊婦パワー”で「日本を元気に!」宣言名匠が被災地に捧げる3分11秒の短編が東京初上映!ワークショップも開催決定【TIFFレポート】岡田将生&原田泰造通訳付き映画祭公式上映にハイテンション!【TIFFレポート】加瀬亮、デニス・ホッパーの息子と朝4時までの付き合いを明かす【TIFFレポート】山田孝之、司会者に「本当の恋愛って何ですか?」と逆質問
2011年10月27日伊勢谷友介が、辻内智孝氏のベストセラー小説「セイジ」を5年の月日をかけて映画化した『セイジ-陸の魚-』の公開日が来年2月18日(土)に決定した。その他の情報本作は、太宰治賞を受賞した辻内氏の人気小説を、俳優の伊勢谷友介が『カクト』に続く監督第2作目として映画化。美しい自然を舞台に、若さゆえの自分探しの旅とその記憶を描写。大学最後の夏休みに自転車でひとり旅をしていた“僕”(森山未來)と、国道沿いのドライブインで純粋に生きる男セイジ(西島秀俊)とのひと夏の日々を描いた作品だ。セイジ役の西島と、物語の視点となる“僕”を演じる森山がダブル主演を務めるほか、新井浩文、渋川清彦、滝藤賢一ら、一癖ある顔ぶれが揃う。久しぶりの邦画復帰となる裕木奈江がヒロインを務めるのも注目したいところ。強烈な印象を残す盲目の老人役は、映画界屈指の名優・津川雅彦が演じる。今月22日(土)~30日(日)まで開催される東京国際映画祭では、特別招待作品として27日(木)に上映されるが、前売鑑賞券が1分で完売したということもあり、公開前からかなりの期待が寄せられていると言えるだろう。『セイジ-陸の魚-』2012年2月18日(土)、テアトル新宿他ロードショー(c)2011 Kino Films/Kinoshita Management Co.,Ltd
2011年10月14日小栗旬&岡田将生を主演に迎えての映画化が発表されている『宇宙兄弟』に麻生久美子と堤真一が出演することが明らかになった。原作は現在も「モーニング」(講談社刊)に連載中で、小学館漫画賞と講談社漫画賞のW受賞という「20世紀少年」以来の快挙(※同年W受賞は史上初)を成し遂げ、累計400万部を突破した人気漫画。幼い頃に宇宙飛行士になると誓い、約束通りに宇宙飛行士となった弟と、会社をクビになり無職となった兄。だが、弟からの一通のメールをきっかけに、兄も再び宇宙を目指し始める!そんな兄弟と仲間たちの奮闘が人間味たっぷりに描かれる。麻生さんが演じるのは、小栗さん扮する六太(ムッタ)と共に宇宙飛行士を目指す才女・伊東せりか。幼い頃のムッタと日々人(ひびと/岡田さん)を知るJAXA職員で宇宙飛行士選抜試験官のひとりでもある星加正に堤さんが扮する。今後、公開される作品だけでも『日輪の遺産』に『ロック 〜わんこの島〜』、『モテキ』、『ガール』に『幸運の壺 Good Fotune』といま、日本で最も多忙な女優のひとりである麻生さん。「私は原作の大ファンなので、正直、嬉しさと戸惑いがありました。でも、ほんの少しでもせりかさんの人生を歩きたいと参加させて頂くことになりました。不安もありますが、才能ある監督のもとでお仕事できること、とても嬉しく思っています」と出演への喜びを語り、堤さんも「このような希望あふれた作品に関われることを非常に嬉しく思っています。私が演じる星加は、かつて宇宙飛行士を志したが叶わず、宇宙を目指す者を支える立場として、再び夢をもつ人物です。宇宙に興味のある方もない方も、わくわくする気持ちや、“夢”を感じていただける映画になると思います」と意気込みと期待を明かす。ほかにムッタのライバルであり親友でもある真壁ケンジを、ミュージカル界のスター、井上芳雄が演じ、溝口大和、古谷やすし、福田直人といった、同じく彼らと共に宇宙飛行士を目指す仲間に新井浩文、濱田岳、塩見三省が扮する。JAXAからの全面協力を得て撮影も中盤に差し掛かっており、7月中にはクランクアップの予定。小栗さん、岡田さんはもちろん、麻生さんの宇宙服姿は…?新たな仲間を得て、ますます期待と注目を集めそうだ。『宇宙兄弟』は2012年春、全国東宝系にて公開。■関連作品:宇宙兄弟 2012年春、全国東宝系にて公開■関連記事:“ブラック・ジャック”岡田将生、脚フェチ告白の仲里依紗に振り回されっぱなし?岡田将生が若き日のブラック・ジャックに!手塚治虫の名作ドラマ化共演に仲里依紗『宇宙兄弟』が小栗&岡田で映画化『テルマエ・ロマエ』ほか人気漫画も続々実写映画化
2011年06月23日映画『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』が6月12日(土)、初日を迎え、東京・新宿ピカデリーで主演の松田翔太、共演の高良健吾、大森立嗣監督らが舞台挨拶を行った。施設で育った幼なじみのケンタ(松田さん)とジュン(高良さん)と2人がナンパした少女・カヨちゃん(安藤サクラ)の3人の刹那的な旅を描く青春ロードムービー。初日を祝い、先ごろ同作の試写会を主催したという青山学院大学総合政策学部の学生たちが、感想など思い思いのメッセージを綴ったフラッグを携えて来場し、キャスト陣にプレゼントした。先日の試写会に松田さん、高良さんは飛び入り参加し、映画鑑賞後の学生らと意見交換をしており、松田さんは「ナメていたって言ったらヘンだけど、学生のみなさんが俺たちと同じ感覚で、映画のことや映画界をどうしよう?ということを考えていることに、衝撃を受けました」と刺激を受けた様子。「学校っていいな、こういう題材で話し合えるってうらやましいなって思ったし、僕たち作る側と観る側が同じ気持ちになったことが嬉しかった」と満足げ。高良さんも「年下なのに、全員、自分より大人に見えた。楽しかったけど、パワーがすごくて、僕らも真剣に言葉を選んで話さないといけないから…すごい疲れた…ドッと疲れました」とふり返った。一方、共演の新井浩文は「個人的な話なんですけど」と前置きし「舞台挨拶は好きなので今日はテンションが上がっていたんですけど、さっきポスターにサインを書いていたらインクがだだ漏れして服について、テンションが下がりました」と不運なエピソードを吐露。会場の笑いを誘っていた。『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』は新宿ピカデリー、ユーロスペースほか全国にて公開中。(photo/text:Yoko Saito)■関連作品:ケンタとジュンとカヨちゃんの国 2010年6月12日より新宿ピカデリー、ユーロスペースほか全国にて公開© 2009「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」製作委員会■関連記事:松田翔太×高良健吾インタビュー 若き2人がをぶち破った“壁”きっかけは学生からの1通の手紙…松田翔太と高良健吾が学生による試写会に登場高良健吾の凡ミスに松田翔太苦笑い「健吾が忘れちゃった」“ここだけ”の松田翔太が満載!主演映画フォトブック発売19歳の約束とは?松田翔太×高良健吾『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』試写会に10組20名様ご招待
2010年06月12日今回のファッション小噺は、映画における衣裳をクローズアップしてみました。衣裳というのは、物語の舞台となる場所、時代、そして人物そのものを映す鏡でもある重要アイテムのひとつ。そこで、そんな衣裳の“重要性”について、話題の日本映画『蘇りの血』を例に、考えてみることに。『蘇りの血』は、豊田利晃監督が『空中庭園』以来、4年ぶりに手がけたことで注目を集めている作品です。歌舞伎や浄瑠璃の演目にもなっている説話“小栗判官”をモチーフにした時代もの。ドラマー・中村達也、草刈麻有、渋川清彦、板尾創路、新井浩文ら個性派の競演も見ものです。そんな話題作の中で、もうひとりの登場人物であるかのように、映画を、そして俳優たちを支える衣裳。担当は、スタイリストとしてファッション誌、広告、映画、舞台とジャンルを問わず活躍している伊賀大介さん。時代ものの衣裳としては、『さくらん』、『真夜中の弥次さん喜多さん』で、すでに腕をふるっています。今回は、監督からどのような希望があり、どうやって制作していったのでしょう。「あまり具体的に“こうして、こうして”とかはありませんでした。話自体もいつの時代か分かんなくていい、というようなことでしたね。鎌倉時代とか、江戸時代のとかそういうのじゃないからと。だから、好きにデザインしてくれと。基本としては着物であることだけ。あとは自由に考えてみてくれという感じだったので、そうしました(笑)。伝統という部分もあまり意識しなかったですね。一応フォルムとして着物であることが大事だという前提があって、それを破らなければ別にいいやみたいな感じですかね。いきなりジーパンとか出てこない限り、まぁいいだろうという(笑)」。ロケ地は、下北半島の大自然の中。衣裳制作の途中には、ロケハンに同行し、イメージを膨らませていったのだとか。「そのときに自然がすごかったんです。だから、それに対抗するようなものじゃないと、と思った。劇中にもありますが、大木ばっかりなんで、こういう有機的なものを上手く取り入れて入っていくのがいいなぁというのがありました」。時代ものはこれまでも手がけてきたものの、本作で特に気を配った部分は一体感だったのだとか。「今回は登場人物たち全員が一個というような感じというか…。みんなでいっしょくたみたいな。『真夜中の野次さん喜多さん』はもう完全に漫画として作ったし、『さくらん』はとにかく突き抜けたビジュアルをという想いから作ってた感じ。今回は生きてる感じというか、そういうものが視点の中にハマるといいなというのがあった」。今回楽しかったのは、やはり現場でのやりとりだったのだそう。「部屋の中でシコシコ縫ったりしてても別にあんま面白くない。まぁ“俺だけが知っている”というのはあるんですけど、やっぱり役者さんが全部支度して、メイクもして服も着けて、美術もあってカメラが回ってみたいなものが全部揃った瞬間はやっぱ面白いですね」。映画の中でのスタイリスト、衣裳の役割はあくまでも、役者と監督が“こういうものを撮りたい”という想いを実現させるための“サポート装置”だと思っているという伊賀さん。映画では、俳優さんが衣裳を着て演技をしたり、激しい動きをしたりするけれど、そういう意味では、ファッション誌の撮影などとは大いに違いを感じているとか。「雑誌の仕事から、舞台、映画をやるようになったんですが、全部違う“次元”のものなんですよね。ファッション誌は“二次元”じゃないですか。前から見て、見える部分がきれいだったら後ろは安全ピンだらけでもいいっていう世界。でも舞台だと、ステージの上の役者に、“ここがちょっとほつれちゃってるから見せないように芝居してくれ”と言うことはないじゃないですか。何かあったとしても、その時のお客さんしか見ないという前提ですよね。つまり、絶対に同じものが無い。そういう意味では俺の中では、一番リアルなんで、舞台は“三次元”なんですよね。映画になると“四次元”というか。これは50年後の人が観るかもしんないじゃない。作っているときは、それがどんな動きをするかもまだ分からないし、また編集でも変えられたりするんですけど、やっぱり映画というのは時間を超えないと面白くないというか。もちろん時代考証もある程度は必要なんでしょうけれど、結局、今の生地で着物を作ったとしても江戸時代のものと比べられないし、絶対にどこかでミシンで縫ったものとかも入るし。そういうことよりは形が見えるスピード感みたいなものを重視したいなっていうのはあります。だけど、全部楽しいんです。二次元も三次元も四次元も」。今回は、主人公たちが水に浸かるシーンも登場する。「まぁ、そういうものは苦労ではありますけど(笑)、まぁ楽しい苦労ですかね。最初に衣裳を決める時点で、これは洗うとどうなのか?みたいなそういう検証はしますね」。物語の中でのお題や、監督からのリクエスト、そういった制限がある中で、クリエイティビティを発揮していくコツはあるのでしょうか。「それがあるから他が面白いというか。僕が監督で映画撮るわけじゃないんで。逆にルールがあることによって美術がフォローしてくれたりとか、いろんな部署が絡み合うところが映画の面白いところだと思うんですよね。“俳優部”っていう言い方があるじゃないですか。役者は役者で作品の為にあって、僕たちは衣裳やって、音楽は音楽で、編集は――と。あと、この映画の色のトーンを決める人、カラーリストにも仕事があって、みんなそれぞれスペシャリティを持って臨むわけじゃないですか。そこがやっぱ面白い。だから任された一点を研ぎ澄ますということがコツですかね。まぁ武器ですよね、それが。だけどそれが予想外にものすごく良く見えたりすることもあるから、また面白い。だから、“決め過ぎない”っていうのがコツですかね。“僕の作った衣裳は、絶対に常にこう見えてほしいからこうであってほしいんだ!”となると、ほかのみんなは困っちゃうじゃないですか?だけど役者の演技によっては、俺が想像してたものより全然良く見えたとか、照明さんがやってくれたことで良く見えたとか、そういうことって往々にしてあると思うんですよね。それがやっぱり、楽しいですね。仕事ってそういう制限があるもの。雑誌は雑誌で時間ないし。今日来て、いま服選んで、30分後に撮影して、もうそれで終わりという世界。そのスピード感みたいなものも、それはそれで面白い。何回も衣裳合わせして、段々似合ったものを作り上げていく過程をたどる映画の衣裳というのも面白いですし。どっちも面白いです」。ちなみに、普段、道行く人を見て「こんな服着せてみたい」とか「この人はこういう服似が合うな」とか、そういう職業病的な部分はあるのでしょうか。「こんな服を着せてみたいというのはあまりないですけど、道行く人を見るのはすごく面白いですよ。服を着ない人なんていないじゃないですか。だから、“面白いものが転がってるなー”って思いますよね。“僕が決めた事が絶対にいい!”とか思っているわけじゃないですし、ファッション雑誌をやる上でも。“こういうのカッコいいと思うよ”って思ってやっているだけですけど、例えばそのコーディネートを3万人ぐらいがやってて、銀座にその格好の人しかいなかったら怖いじゃないですか(笑)。だから、おばさんとかでもすごいグッと来るときがありますよ。アシスタントには、“芝居とか映画とかやりたいんなら、とにかく山手線に乗れ!山手線に限らず電車に乗った方がいい”と言います。山手線ってよく考えてみると、すごい不思議なシステムじゃないですか。基本130円とか払うだけで、箱が環状型に動いて、どこで降りてもいいという。あれで一周するだけでものすごく、いろいろな人の流れがある。そうゆうの見てると面白いですよ。“これが主婦なんだ”とか、“これが女子高校生なんだ”とか。服だけじゃなくていろんなことが見えちゃうところも面白い。ふと気づくと、“すごいな、全員ケータイいじってるじゃん!”とか。あとは、目の前のサラリーマンとか女子高生とか、俺みたいな格好の奴とか、全員が携帯を出しているとき、みんなのケータイの色が一緒とか、すごい不思議なことって結構いっぱいある。だから道ゆくことは楽しいですよ」。そういうことを、面白いと感じられるのはやはり職業病なのでしょうか。「職業と言うより、僕、結構なんでも面白がっちゃうんですよ。それは別に、自然とかでもいいんですけど、“いまの風、すげえな”とか。ロマンティック過ぎることじゃないですけど。例えば、夕日がやばいねとか、今日の東京タワーはカッコいいねとか、そういうのも全部一緒。テレビで見たオバマが格好いいねとか。あらゆることに興味がある。作りものでも本物でもね。小学生の群れとかも面白いです(笑)。さっき、車で甲州街道を走ってたら、すごかったんですよ、落ち葉が。ものすごい量の落ち葉がブワっと来てて。“これすごいな”って。こういうの、なかなか撮ろうと思っても撮れないじゃないですか、ちゃんとセッティングしようとしても。ものすごい人数の美術さんがいて、落ち葉があって、カメラがあって、風を吹かせないといけないっていう。だから、それは面白いなぁって思いますね、偶然な感じがね」。自らの言葉で、映画のこと、衣裳のこと、そして、スタイリストとしての自由な精神や発想法について、楽しく語ってくれた伊賀大介さん。彼が腕を振るった衣装が見られる『蘇りの血』で、その伸び伸びとした才能をぜひチェックしてみて!(text:June Makiguchi)■関連作品:蘇りの血 2009年12月19日よりユーロスペースほか全国にて公開© 「蘇りの血」製作委員会■関連記事:草刈正雄の愛娘、危うくマムシに襲われる羽目に!?『蘇りの血』公開記念イベント豊田利晃監督“ナチュラルハイ”で撮った復帰作がフィルメックスで喝采!
2009年12月18日「のだめカンタービレ」や『キラー・ヴァージンロード』など、TVドラマに映画にと引っ張りダコの演技派女優、上野樹里。そんな彼女が、「鞄」をキーワードに5人のクリエイターとタッグを組み、個性豊かなヒロインに5変化!全5話のオムニバスドラマ「上野樹里と5つの鞄」がWOWOWにて9月3日(木)より放送される。8月25日(火)、本作の記者会見が行われ、上野さんと第1話で共演した江口のりこが出席した。今回、監督を務めたのは高崎卓馬、マイケル・アリアス(『ヘブンズ・ドア』)、山下敦弘(『天然コケッコー』)、タカハタ秀太、萩生田宏治(『神童』)の先鋭クリエイターたち。共演には、新井浩文やリリー・フランキー、ピエール瀧など個性の強い面々が揃っている。上野さんは撮影をふり返り、「1か月の間に、それぞれ違う作り手の違うストーリー、役柄を撮ったので、(撮影の)ペースが速くて大変でした。でも企画段階から監督と話す機会があったので、一つ一つへの思い入れが強いです。それぞれの監督の次回作にも携わりたい」と充実した表情を見せた。各回に登場する鞄に対する深い思い入れも。この日披露された第一話「ギターケースの女。」(タカハタ監督)では、タイトル通り、怪しげなストリートミュージシャンを演じたが、「出てくる人全員が変わっていて、誰が正しくて誰が悪者なのか分からないので、秘密を出すか隠すかのさじ加減を考えながら演じた」とのこと。一方、謎を秘めたクールな女性を演じる江口さんは、「監督から『姿勢を天海祐希さんみたいに正しくしてください』と言われて、だったら天海さんにやってもらえばと思いましたけど、本当に楽しく撮影させてもらいました」と漏らし、笑いを誘った。本作で、上野さんは泉谷しげるの楽曲のギター弾き語りに挑戦。「初めてだったので難しかったですが、タカハタ監督から直接指導してもらいました。劇中のギターは自分で買ったのですが、それっきり弾いてないです」と明かすと、江口さんは「すごく上手だったのでもったいない」とコメント。地元が同じで上京した頃からの友人という2人のトークからは、気の知れた間柄がうかがえた。また、本作のエンディングテーマ曲でも作詩・唄を手がけるという新境地を開いた上野さん。「役者とはまた違うことをやらせてもらえてすごく嬉しかったし、作るのも楽しかったです。鞄の中のガシャガシャ揺れてる感じを出したくて、ギロや木の実、いろんな打楽器など、使えるもの全部使って賑やかに作りました」と楽しそうにふり返った。さらに最後には、「鞄」に因んで、ダイヤモンド208カラットをあしらった、お値段2億円の鞄(GINZA TANAKA)もお目見えに。恐る恐る鞄を手にした上野さんは思わず、「チワワ1匹分(の重さ)ですかね」と一言、「鞄というより宝石、家にはとても要らないです…」とその輝きにすっかり参った様子だった。上野さんが「いろんな人に見てもらえる作品なので、毎週楽しみにしてほしい」と自信を持って贈る「上野樹里と5つの鞄」は、WOWOWにて9月3日(木)より毎週木曜放送。WOWOW「上野樹里と5つの鞄」WOWOWにて9月3日(木)より毎週木曜23:30〜放送(全5話)公式サイト:
2009年08月25日80年前に発表されたプロレタリア文学の代表作を原作に、過酷な状況下での労働に従事する男たちの姿を描いた『蟹工船』が7月4日(土)、ついに初日を迎えた。都内の劇場では初回上映後に舞台挨拶が行われ、主演の松田龍平と西島秀俊を始め、新井浩文、柄本時生、そしてSABU監督が登壇した。松田さんらが登場すると、満員の客席からは大歓声がわき起こったが、SABU監督が「今日は、俺のために集まってくれてどうもありがとう」といきなり先制パンチ。気を取り直して(?)、労働者のリーダー的存在、新庄役の松田さんに撮影時の思い出を尋ねると「(脚本の)演説のシーンを最初に読んだときは、熱すぎるセリフだと思いましたが、現場で実際に演じてみると違和感なく、楽しく演じることができました」と語った。極悪非道で暴力的な鬼監督を演じた西島さんは「TKOさんや高良(健吾)くんが、テスト時から『本気で殴ってください』と言ってくれたので、思いっきりいきました。最後の方には、『さあ、今日は誰を殴ろうかな?』なんて思いながら気楽に演じましたよ(笑)」とサディスティックぶりを見せつけた。新井さんは労働者の塩田を演じたが「『青い春』以来、約7年ぶりの龍平との共演で、緊張と嬉しさでいっぱいでした。龍平が倒れるシーンでは、稽古のときですら本当に泣けてきました」と強いつながりを感じさせるコメント。この日の舞台上でも、撮影時の話が出るたびにキャスト陣の笑い合う姿が見られ、仲の良さをうかがわせた。最後に一足早く、七夕の願いごとを松田さんに尋ねてみたが「えーと、いまのところないですね…と言ったら感じ悪いですよね」と困った顔を見せ、会場からは笑いが。そして「この映画がヒットすることを心から願っています」と、はにかんだ表情で語った。『蟹工船』はシネマライズ、テアトル新宿ほか全国にて公開中。■関連作品:蟹工船 2009年7月4日よりシネマライズ、テアトル新宿ほか全国にて公開© 2009「蟹工船」製作委員会■関連記事:『蟹工船』高良健吾、21歳の“求道者”分かり易からず、余計なことはせず――TKO、松田龍平から「苦労顔すぎる」とのお墨付きで後輩芸人に“反撃”!【どちらを観る?】男たちの不屈の魂、激突!『劔岳点の記』VS『蟹工船』SABU、大学生たちに『蟹工船』パワーを指南「借金踏み倒してでも生きろ!」TKO、松田龍平にあやかり俳優の座狙い?『蟹工船』全国キャンペーン中
2009年07月06日