TOKYO FMで8月5日にスタートする木村拓哉の新レギュラー番組『木村拓哉 FLOW supported by GYAO!』(毎週日曜11:30~11:55)の初回ゲストとして、お笑いタレントの明石家さんまが出演することがこのほど、明らかになった。同番組は、木村と親交のあるさまざまな人たちをゲストに迎えて、人生をしなやかに生きていく様や、ゲストが持つ内に秘めた魅力や強さに迫る番組。記念すべき初回のゲストは木村と公私共に親交の深い明石家さんま。長きにわたりラジオ番組のパーソナリティを務めている共通点もあることから「二人にとってラジオとは?」、また同じ芸能界で仕事をしていることから「仕事について」、さらに「人生」について語り合う。さんまならではの、脱線トークも…!?放送終了後には無料動画GYAO!にてスピンオフ番組『木村さ~~ん!』(初回放送8月5日12:00~毎週更新)が独占配信される。なお、1995年1月から放送されてきた同局の『木村拓哉のWhat’s UP SMAP!』(毎週金曜23:00~23:30)は、27日の放送で23年の歴史に幕。木村はエンディングで新番組に言及し、「どういう感じになるか、どんな企画になっていくのか、どんなゲストが来てくれるのか、正直不安もあるんですがワクワクの方が大きいですね」と語った。
2018年07月28日元SMAPで俳優の木村拓哉が、13日に放送されたラジオ番組『木村拓哉のWhat’s UP SMAP』(TOKYO FM/毎週金曜23:00~23:30)で、サッカーワールドカップ・ロシア大会における日本代表の試合をすべてテレビで生観戦したことを明かした。リスナーから届いた「ワールドカップが開催中ですが見てますか?」というメールに対して、「日本のイレブンの皆さんが奮闘した試合は、すべて観戦させていただきました、ライブで」と報告した木村。ベスト16で敗退したことには残念な様子を見せつつも、「やっぱりスポーツってものすごいパワーを与えてくれるなっていうのが、今回の日本代表の試合を見て思いましたね」と語った。また木村は、「本田選手もおっしゃっていましたけど…」と、MF本田圭佑がベルギー戦敗退後に残したコメントにも言及。「『ほんとにこのチームが好きだった』っていう。それって、ピッチに立ってなかった選手も含め、スタッフも含めの話なんじゃないかなっていうことがすごく頭の中に出てきて…」と分析した。そして「まぁ、次のワールドカップ、4年後……結果はどういうものになるか分からないけれど」と前置きしたうえで、「また熱く応援したいという気になりましたよね」と日本代表への想いを口にした。
2018年07月16日元SMAPで俳優の木村拓哉が、6日に放送されたラジオ番組『木村拓哉のWhat’s UP SMAP』(東京FM/毎週金曜23:00~23:30)で、今まで演じた中で一番難しかった役柄が、1996年に放送されたフジテレビ系の月9ドラマ『ロングバケーション』の主人公・瀬名秀俊であることを明かした。番組ではリスナーから届いた「一番演じることが難しかった役ベスト3」を問う内容のメールを紹介。木村は、まず3位に、『プライド』(04年・フジテレビ系)で演じたアイスホッケー選手・里中ハルをチョイス。代役を担当する予定だったアイスホッケー経験者の俳優が急きょ来られなくなり、スケートリンクでの撮影を全部自分でこなしたというエピソードを披露した。2位には、「テクニカルな手元のシーンが難しかった」という理由から外科医役に挑戦した『A LIFE~愛しき人~』(17年・TBS系)を選択。そして、1位には『ロングバケーション』で演じたピアニスト・瀬名を挙げた。「難しかったです。ピアノということでやったんすけど、やっぱ無理ありますよ」とピアノ未経験者でありながらピアニストの役を演じた苦労を吐露した。ある時、撮影にあたってピアノの先生からレッスンを受けた際などは「『スタートそこですか!?』っていうくらいクラシックの曲を弾くんですよ。『いや、俺『猫踏んじゃった』のみなんですけど…っていう(笑)」と面食らったことを告白。最後に「音楽家は厳しいっす。演奏っていうところはウソつけないっすよ」と改めてその難しさを語った。
2018年07月09日元SMAPで俳優の木村拓哉が、22日に放送されたラジオ番組『木村拓哉のWhat’s UP SMAP』(TOKYO FM/毎週金曜 23:00~23:30)で、俳優の故・松田優作さんの魅力について持論を述べた。以前番組内で、松田さんの歌が好きだと発言していた木村。そのことに関連したリスナーからの「一番好きな松田優作の曲は何ですか?」という質問を受けて、「僕世代も、僕よりちょっと下の世代の男子もそうだと思うんですけど、嫌いな人いないんじゃないですかね?」と語った。続けて「俳優さんとしてもそうなんですけど、僕らに感じさせてくれる説得力がある」とし、「お芝居を通じても、歌にしても、ようは表現者としてのブレない感じが、すごく僕は魅力を感じるんです」と憧れの気持ちを口にした。さらに楽曲については「アルバムも非常にたくさんありまして、松田優作さんだから成立している世界観もあったりするんですけど…」と悩んだ末、「Bay City Blues」を選び、番組の中で流していた。
2018年06月26日元SMAPで俳優の木村拓哉が、15日に放送されたラジオ番組『木村拓哉のWhat’s UP SMAP!』(TOKYO FM/毎週金曜 23:00~23:30)で、人生を変えた映画の存在を明かした。トム・クルーズリスナーから届いた「人生を変えた映画はなんですか?」という質問に対し、「これは間接的になってしまうかも知れませんけど…」と前置きした上で、1986年に公開されたトム・クルーズ主演の映画『トップガン』をチョイスした。同作を観た木村はすっかり興奮し、劇中でトム・クルーズが着用していたフライトジャケットを購入。浮かれていた木村が親戚から名前を呼ばれ、振り返った際の写真が履歴書に貼られ、ジャニーズ事務所に送られたという。木村は「そういう浮かれた状態を作り上げたのは『トップガン』だと思うので、人生を変えた一本なのかもしれませんけど(笑)」と懐かしく振り返った。さらに映画の話題は続き、LiLiCoから「今年1番優しい映画です」と『ワンダー 君は太陽』を勧められたことを明かす。「拝見したんですけど、優しかったですね、素晴らしい映画でした。ぜひ皆さんにも観ていただけたらなと思う作品でしたね」と語っていた。
2018年06月18日元SMAPで俳優の木村拓哉が、18日に放送されたラジオ番組『木村拓哉のWhat’s UP SMAP』(TOKYO FM/毎週金曜 23:00~23:30)にて、お笑い芸人の明石家さんまが放ったある一言でゴルフと麻雀を始めたことを明かした。明石家さんま先日、ゴルフウェアブランド「MARK&LONA」のブランドアンバサダーに就任した木村。そのことを踏まえ、リスナーから「夫から『ゴルフを一緒にやろう』と誘われているので、ゴルフの魅力を私に教えてください」というメールが届いた。この質問に木村は「正直、以前は僕の感覚の中では、『麻雀とゴルフだけは絶対にやらない!』って思ってました」と告白。しかし、さんまから「麻雀とゴルフやったら、おまえに絶対負けへんわ!」と挑発され、その時に「いま、何ておっしゃいました?」と発奮し、どちらも始めたという。実際、麻雀に関しては「やるか!」とさんまから声を掛けられ、一緒に卓を囲んだこともあるという木村。ゴルフについては、始めたばかりの頃に「こんなにできないスポーツって久々だな」と感じ、やる気に火が付いたと語った。さらに木村は、イメージ通りのプレーが頻繁に出来るようになるとゴルフが面白くなってくると話し、「旦那さんが、『やろうよ!』って言ってくれているのは、いいチャンスだと思いますよ」とリスナーを後押ししていた。
2018年05月21日元SMAPで俳優の木村拓哉が、11日に放送されたラジオ番組『木村拓哉のWhat’s UP SMAP』(TOKYO FM/毎週金曜23:00~23:30)で、お笑い芸人の明石家さんまについて語った。明石家さんま番組では、リスナーの「さんまさんみたいに好きなこと話してる明るい人を尊敬しています」というメッセージを紹介。これに対して木村は「あの方はすごく自由に好きなことを喋ってるんだろうなって、受け取られるかもしれませんけど」と前置きした上で、「本番を前にしたさんまさんの『いくで!』っていう集中力はそばにいてすごく感じますね」と明かした。木村とさんまは、2003年から続くフジテレビ系のバラエティ番組『さんタク』などで、何回も共演している間柄だ。長年、さんまを間近で見てきた木村は「『明日、あの番組の収録で、ゲストは誰だから、こんなん話したらええんかな』とか、ルーティンがあると思う」と分析。「僕がさんまさんを尊敬するのは集中力ですよね」と話していた。
2018年05月15日「私もイメルダと同じく、家族の中でリーダーです(笑)。わりとはっきりした性格なので、頼られてしまうんでしょうね」 そう語るのは、女優の松雪泰子(45)。先日、米国アカデミー賞で長編アニメーション賞と主題歌賞の2部門を受賞した映画『リメンバー・ミー』(3月16日公開)。主人公の少年ミゲルのひいひいおばあちゃん・イメルダの日本版声優を担当した松雪はディズニー/ピクサー作品初参加。劇中では歌声も披露している。 「音楽が本当に素晴らしい作品です。ただ独特な節回しなので、歌うのはとても難しくて。何度もレクチャーしてもらって練習したんです」(松雪・以下同) イメルダは、ある悲しいできごとをきっかけに、家族に代々“音楽禁止”のルールを課してきた。松雪家にはルールは? 「わが家にはあまりルールがないんですけど、子育ての中では『嘘をつかないこと』っていうのを言い聞かせてきたかな。でも絶対ついてるなって思うときもありますけど。あえて追求せずに『へえー』って感じで聞き流すと、『バレてる?』ってはっとするみたい(笑)」 一人息子は春から高校3年生。そろそろ受験勉強も本格化してくるころだ。 「最近は私も彼も忙しいから、なかなかゆっくり話す時間がとれなくて。なるべく一緒に食事をとるように心がけてはいるんですけどね。あとは車で一緒に出かけて、運転しながら話をしたりとか。毎日お弁当を作っているので、翌日のスケジュールだけは必ず報告し合うようにしています。『母ちゃん明日早いけど、お弁当と朝ごはん作って置いておくから、ちゃんと食べて出かけてね』って。あ、私自分のこと“母ちゃん”って呼んでるんですよ」 現在は4月スタートのNHK連続テレビ小説『半分、青い。』の撮影真っ最中。その多忙さのなか、毎日てきぱきと家事や子育てをこなす松雪自身の姿は、仕事をしながら一人娘を育てたイメルダさながら! 「お弁当を作ってあげられるのもこの1年が最後なので。『母ちゃんの弁当おいしかったな』って思い出に残ってくれたらうれしいなって」 女優業と“母ちゃん”業。両立しながらも、変わらぬ美しさを保っている秘訣は? 「40代に入って体の調子が変わってきていると感じるので、どうすると健やかに過ごせるかは日々研究しています。クリニックにも行ってますし、定期的に運動したり、しっかり睡眠をとったり。お酒はすっかりやめましたね。二日酔いの地獄のような苦しみがもう耐えられなくて(笑)。昔はそれが楽しかったんですけど、子どもができてからは規則正しい生活になりました。早起きしてやらなきゃいけないことが、たくさんありますから」 そんな子育ても、あと少しで一段落。 「来年からは家事を分担しようって息子と約束してるんです。これから社会に出ていくわけだから、君も練習したほうがいいよって。私が楽をしたいからでもあるんですけどね(笑)」
2018年03月18日俳優の藤木直人と女優の松雪泰子が、ディズニー/ピクサー最新作『リメンバー・ミー』(3月16日公開)の日本語吹き替え声優を務めることが11日、明らかになった。ともにディズニー/ピクサー声優初挑戦。藤木は、主人公ミゲルが“死者の国”で出会うガイコツのヘクター役、松雪は、家族に音楽を禁じたミゲルのひいひいおばあちゃん・イメルダ役を演じる。日本時間8日に発表された第75回ゴールデン・グローブ賞で作品賞(アニメーション部門)を受賞した同作は、陽気でカラフルな“死者の国”を舞台にした大冒険を描く物語。主人公は、 音楽を禁じられた少年ミゲルと、彼が死者の国で出会うスケルトンのヘクター。そして、タイトルにもなっている曲"リメンバー・ミー"が本作のストーリーの重要なカギを握る。藤木が演じるヘクターは、ミゲルが迷い込んだカラフルな“死者の国”で出会い、共に冒険する重要なキャラクター。日の出までに元の世界へ帰らないと永遠に家族に忘れられてしまう、という最大のピンチに立たされたミゲルに手を差し伸べる。また、松雪が演じるイメルダは、音楽を選び家族を捨てたミュージシャンの夫との過去から、家族に音楽を禁じたミゲルの先祖(ひいひいおばあちゃん)。彼女は“死者の国”に迷い込んだミゲルが音楽が大好きなことを知り、今後一切音楽をやらなければ生きている世界に戻すと言うが…。藤木は「ピクサー作品をやってみたいという想いがあったので、うれしい反面、決まったからにはやらなきゃという責任感とプレッシャーがありました」と心境を告白。さらに家族がテーマの本作ということもあり、アフレコ時には「劇中では祭壇に家族の写真を飾ったりしていたので、アフレコの時には子供たちの写真を台本に貼ってやってました」と家族思いのエピソードを明かした。松雪は本作について「なんといっても曲が素晴らしくて、聴いているだけで胸を打たれました。自然と涙がこぼれてくる力強さがあり、言葉もスッと魂に刺さってくるようでした。カラフルな色彩が全編通して続くのも観ていてワクワクしました」と絶賛。「家族とはいつもつながっている感覚があります。家系図を見てみたり、ひいひいおばあちゃんがどんな人だったのかという話を改めて聞いたときは、代々守ってきてくれたことによって今自分がここに存在できているんだなと思い、感謝の気持ちがすごくあります」と家族への思いも語った。なお、主人公ミゲル役は、テレビ番組「『sing! sing! sing!』世紀の歌声!生バトル日本一の歌王決定戦」のジュニア部門でグランプリを獲得し、歌とダンスの才能を開花させている13歳の石橋陽彩(いしばしひいろ)が担当。ミゲルが憧れる伝説の歌手デラクルスには、劇団☆新感線出身の俳優橋本さとしが決定した。(C)2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
2018年01月12日藤木直人と松雪泰子が、陽気でカラフルな“死者の国”を舞台にした大冒険を描く、ディズニー/ピクサーの最新作『リメンバー・ミー』の日本版声優として参加することが明らかになった。■藤木直人、主人公の相棒“ガイコツ”役!藤木さんが声をあてるのは、主人公のミゲルが迷い込んだカラフルな“死者の国”で出会い、共に冒険するガイコツのヘクター。日の出までに元の世界へ帰らないと、永遠に家族に忘れられてしまうという最大のピンチに立たされたミゲルに、手を差し伸べる重要なキャラクターだ。またお調子者で陽気なヘクターだが、実は彼にも家族に会いたいという切なる思いがあり、ミゲルに“ある願い”を託したいと考えている。アフレコ時には「子どもたちの写真を台本に」今回ディズニー/ピクサー声優初挑戦となる藤木さんは、「ピクサー作品をやってみたいという想いがあったので、とても嬉しい反面、決まったからにはやらなきゃという責任感とプレッシャーがありました」と心境を告白。本作について「色々な年代の人が楽しめて、心に染み入る話なんじゃないかな。子どもが見ても楽しんでもらえると思いますし、それぞれの世代で感じる部分があって、いろんな見方ができる作品だと思いました」と話し、自身の子どもと一緒に観たいという藤木さん。“家族”がテーマの本作ということで、アフレコ時には「子どもたちの写真を台本に貼ってやってました」と明かした。■松雪泰子が演じるのは、主人公のひいひいおばあちゃん一方、松雪さんが演じるのは、音楽を選び家族を捨てたミュージシャンの夫との過去から家族に音楽を禁じた、ミゲルのひいひいおばあちゃんイメルダ。彼女は“死者の国”に迷い込んだミゲルが音楽が大好きなことを知り、今後一切音楽をやらなければ生きている世界に戻すと言うが…。楽曲に要注目! 「聴いているだけで胸を打たれました」藤木さん同様、ディズニー/ピクサー声優初挑戦となった松雪さんは、本作について「なんといっても曲が素晴らしくて、聴いているだけで胸を打たれました。自然と涙がこぼれてくる力強さがあり、言葉もスッと魂に刺さってくるようでした。例えるなら子どものころにおもちゃ箱を開けてキラキラした宝石がたくさん詰まっているものを見て嬉しかった感覚と同じような、カラフルな色彩が全編を通して続くのも観ていてワクワクしました」と絶賛。「家族とはいつもつながっている感覚があります」と語る松雪さんは、「一番の味方でいてくれる存在です。親の世代、そのまた親の世代がどんな思いで子どもたちを育ててきたのかということを、自分が子育てをするとより強く感じたりすることがあります。家系図を見てみたり、ひいひいおばあちゃんがどんな人だったのかという話を改めて聞いたときは、代々守ってきてくれたことによって、いま自分がここに存在できているんだなと思い、感謝の気持ちがすごくあります」と思いを明かしている。■藤木さん&松雪さんは歌唱シーンも!ディズニー担当者は、「藤木さんは映画やドラマ、音楽活動など幅広く活躍しており、ヘクターの陽気さと孤独を併せ持つ難しい演技、家族を想う優しさの表現と、歌唱もお任せできると思いました」、「イメルダは家族を愛していて、芯の強さを持った女性。情熱的な歌唱シーンもあります。松雪さんは映画、ドラマ、またミュージカルを含む舞台経験も豊富なことから、イメルダの強さ、厳しさの中にある家族への愛情を表現していただくことができる、また歌もお任せできると思いオファーしました」と2人の起用理由を語っており、歌唱シーンもあると明かしている。さらに、ミゲルが憧れる伝説の歌手デラクルスには、「劇団☆新感線」出身の俳優・橋本さとしに決定。ミゲルが好きな名曲「リメンバー・ミー」を生前に遺した伝説の国民的ミュージシャンを演じる。『リメンバー・ミー』同時上映『アナと雪の女王/家族の思い出』は3月16日(金)より全国にて公開。(cinemacafe.net)
2018年01月12日●映像と舞台の決定的な違いIHIステージアラウンド東京で、『髑髏城の七人 Season鳥』を観劇した時のこと。客席が360度ぐるぐると回転する中で、ある一人に釘付けになった。女優・松雪泰子(44)。映画『フラガール』(06)をはじめ記憶に残る作品はいくつもあるが、板の上で歌い、舞い踊る姿に心を奪われた。果てしない余韻へと引き込む力とは、一体何なのか。11月4日から上演される舞台『この熱き私の激情』。コールガールから小説家へと転身し、地位と名誉を手に入れながら36歳という若さで死を選んだネリー・アルカンの内面を、松雪をはじめ、6人の女優と1人のダンサーで表現するという意欲作だ。感情ごとに部屋が設けられ、松雪は死と向き合う「影の部屋の女」を演じる。インタビュー連載「役者の岐路」の第2回。演じることの楽しさを13年前の初舞台で知った松雪は、一人の女性の死を「心の闇」と対話しながら演じようとしている。○生のセッションで相手の呼吸を感じる――先日、『髑髏城の七人 Season鳥』を観て来ました。舞台機構を体感する目的だったのですが、気づいたら松雪さん演じる極楽太夫の姿を追っていました。うれしいです。ありがとうございます。『髑髏城の七人』は、すごく思い入れのある作品です。同じ演目を違うキャストでやっていくプロジェクトですから、「色」を変えていかなくてはいけない。私は2つ目の演目だったのですが、全員が「違うものを見せよう」という意気込みでした。何度も共演しているカンパニーだったので稽古場からすごくアットホームで、お互いダメ出ししながら、助け合いながら精度を上げていきました。私は、みなさんが自由にできるように常にストーリーをキープし、話を戻す役目でした。――そして、目玉は客席を360度囲むステージ。場面転換ごとに客席が回転して、味わったことのない臨場感でした。確かに機構が特殊なので、裏は大変でした(笑)。ただ、チームとしてすごくまとまっていて、前のシーンから届くエネルギーを感じることができて、そのテンションを落とさないように心掛けました。「昨日はここまでいったので、今日はもっと!」みたいに重ねていく日々でした。――それでも観客の反応は日によって違うものですか?やっぱり、その日に生まれるものが違ったりもしますので。もちろん常に100%のスタンスで臨みますが、全員で作っているものですから、流れや呼吸によって違いもあって。舞台では、日々違うものが生まれています。――計算できないところも魅力だと。その日によって生み出されるエネルギー、テンション、質。すべてが違います。「こういうのを試してみよう」みたいに新しいアイデアも加わると、さらに変化して面白くなる。昨日までとは違うものが目の前に現れると、「さて、これをどうやってキャッチしようか」と。半間や一間の違いのレベルでみんな稽古を重ねているので、その瞬間、瞬間が勝負です。一拍ずらしてきたということはこっちの方がいいかなとか、そういう「生」のセッションの中で相手の呼吸を感じながら演じるのは演劇ならではです。予測がつかない場面に遭遇すると、すごく盛り上がります。――よく聞かれると思うのですが、映画やドラマとの決定的な違いはそこですか?綿密に積み上げて稽古していって、しっかりと全員で共有して、クオリティをコントロールするのが演劇は可能です。映像の場合だと、そのシーンによっての「瞬発力の表現」が重要になりますし、監督の世界観の中で俳優は表現します。そこからのプラスアルファは俳優の感性によるものだと思いますが、映像は監督のもの。演劇の場合、幕が開いて本番がはじまったら、俳優たちの手にゆだねる領域になるというか。もちろん演出家と作り上げていくものですが、いざ演じる瞬間は、舞台上にいる私たちのエネルギーがわりと中心になっているような気がします。○死を選択する気持ちに身を捧げる――観客の立場でも、舞台は感動を共有する独特の雰囲気があると感じます。さて、今回出演される舞台『この熱き私の激情』は、ネリー・アルカンの内面を7人で演じ分ける内容です。これもまた異質な作品ですね。すごくアーティスティックです。ネリーさんがお書きになった原作をもとに、そこから抜粋した言葉をコラージュして戯曲化しています。彼女がどのように存在して、その中で女性として受けた苦しみだったり、痛みだったり、怒りだったり、描かれるのはそういった彼女の闇の部分です。著書は複数冊あって、唯一日本語に訳されている『ピュタン(原題:Putain)』のみ読みました。彼女の内面で起きている苦悩が非常に繊細な言葉で書かれていて、胸の奥に深く突き刺さります。高級コールガール時代の赤裸々な話も書いてあって、エキセントリックかつ衝撃的な内容です。なんと言うか……彼女の内面を一言で表すと「混乱」しています。読み進めていくと、その思考の中に引きずり込まれるような感覚。苦しくなって、途中で読めなくなるほどでした。そのぐらいエネルギーが溢れていて。だからこそ苦悩が立体的にダイレクトに伝わってくるんですが、それをコラージュしたものが今回の舞台になります。●板に立つモチベーションとは?――コールガールから小説家に転身。世間的に認められる存在になりますが、デビュー間もなく36歳という若さで死を選びました。体を売る仕事をしていたことから、男性から下に見られる場面に度々直面します。作家としてすごく才能があったけれども、そういう側面よりも娼婦だったことの方で世間から注目され、傷ついたネリーさんは死に向かっていってしまいます。――出演者にはそれぞれの部屋があって、松雪さんは死の魅力を向き合う「影の部屋」。人生の終着点を担う、重要なパートです。そうですね。死を選択する最後の瞬間。苦悩の中でなぜその道を選んでいくのかを表現しています。――ネリーさんの死生観を理解できますか?苦悩していることについては、とても理解できます。というのも、幼少期に受けたトラウマとか、親から言われたこととか、自分にとってはもう忘れてしまっているような領域ですが、それによって物事の見方が制限されるのはとてもつらいことなんじゃないかなと。自分という人間が限定され、そこにとらわれる苦しみです。でも……だいたいの人はそういうものを消化しながら生きていますよね? 彼女もそれを理解しているんですが、うまく処理できなくなります。憎悪を抱きながら愛されたいとも思っていて、そういう矛盾と飽和してしまった思考のループに飲み込まれてしまって抜け出せなくなります。それって苦しいことなんですよね。出口が見つからないならば、自分で終わらせよう。そう読み取りました。――「影の部屋」を担うのは、精神的にもかなり大変そうですね。とても苦しいです。分析していく作業で、彼女の生きている苦悩、自分の中の闇が反応してくるのもあって。自分の中にあるものも浮き上がってくる。必然的に、生きるということとか、自分の中にある闇の部分の苦悩にも向き合わざるをえない感覚になったりして。――聞いているだけで苦しくなります(笑)。そうですよね(笑)。本当に苦悩の中に引きずり込まれそうなことが何度もあって、その上でセリフも突き刺さってくる。それほどセリフが強烈なので。でも、身をもって体験することで、痛みが解放されるような感覚にもなっていて。彼女はそれを超えられずに死を選択してしまったけども、死を選ぶ瞬間を客観視している彼女の人格も表現しています。ただ、舞台上で演じて自分がどうなるのか。それはまだ未知の領域です。○舞台と出会って知る濃密な時間――ミレーヌ・マッケイ主演の映画『ネリー・アルカン 愛と孤独の淵で』のキャッチコピー「生み出した分身たちに、本当の私が蝕まれていく」が印象的でした。どのような仕事でも、世間や周りから求められていることと自分が求めていることの間に溝を感じる時があると思います。私もあります。自分と周りが好きなものは必ずしも一致しません。自分の感性を中心に考える作品も好きですし、誰もが楽しめるエンターテイメントの作品も大好き。バランスが大事なのかな。――芝居に軸足があるからこそ、許容できるということですか?最終的にはみなさんに観てもらって楽しんでもらうことが一番大事なことだったりするから、私はそれを表現としてシェアしていく役割なので。もちろん、そこで何か面白いクリエーションができると思えるものを常にやっていたいという願望もありますが、難しいところですね。20代の頃はずっと映像の世界にいたので、演劇の機会をいただいてからは本当に変わったのかもしれません(2004年『夜叉ヶ池』で舞台デビュー)。演じることがもっと楽しくなりました。こういうことを言うと、映像で純粋に芝居をしてないのかと思われるかもしれませんが、決してそうではなくて。もっと密度が濃いといいますか、時間を掛けてクリエーションできるのが演劇です。――仕事としてのモチベーションは舞台で演じること、それによっての観客の反応を感じること。そのどちらですか?もちろん演じることです。お客さんの反応も大事な事ですが、それだけに固執するというわけでもありません。演じるわれわれがしっかりと咀嚼して体現することが劇場内でバイブレーションとしてお客さんの感情なり、何か深いところに響くような表現をしていたい。それによって楽しんでもらえたり、感動してもらえたり。一緒の空間で人生を共有して、それがみなさんの豊かな時間になったらいいなと思っています。衣装協力:ドレス/Hanae Mori manuscrit(ハナエ モリ マニュスクリ)/\450,000ピアス/NAGI NAKAJIMA(ナギ ナカジマ)/\45,000バングル/NAGI NAKAJIMA(ナギ ナカジマ)/\100,000リング/NAGI NAKAJIMA(ナギ ナカジマ)/\500,000シューズ/cuerpo(クエルポ)■プロフィール松雪泰子1972年11月28日生まれ。佐賀県出身。O型。TBS系ドラマ『熱血新入社員宣言』(91)、映画『パテオ』(92)で映像デビュー。2006年に映画『フラガール』で第30回日本アカデミー賞・優秀主演女優賞を受賞、2008年に『デトロイト・メタル・シティ』と『容疑者Xの献身』で同・優秀助演女優賞を受賞し、女優としての地位を確立。以降も数多くのドラマ、映画、舞台に出演。12月1日に『鋼の錬金術師』の公開を控えている。
2017年11月01日福岡市にある高取保育園。玄米、みそ汁、納豆を中心とした、和食の給食を取り入れていることで知られ、全国から教育者が視察に訪れる園です。また、ドラマや映画化された『はなちゃんのみそ汁』のはなちゃんが通った保育園としても有名です。そんな高取保育園の一年間を描いたドキュメンタリー映画『いただきます~みそをつくる子どもたち』が、2017年10月7日(土)より、渋谷アップリンクをはじめ全国の劇場で公開されます。かわいくて、心がほっこり温まる、そして子育てのヒントがたくさん詰まった作品です。■玄米、みそ汁、納豆…「和食」給食を出す保育園 高取保育園の子どもたちは、朝から元気いっぱい。裸足で園庭を駆け回ったり、竹馬を乗りこなしたり、まるで毎日が運動会のよう。その元気のパワーのもとになっているのが、伝統的な和食の給食です。日本の伝統的な「食養生 医食同源」に基づいた同園の給食は、玄米が主食。それに、みそ汁、納豆、旬の野菜を中心にした和食の献立です。高取保育園の開園は1968年。西福江園長は、まだアレルギーや食育という言葉がない当時から、アレルギー疾患の子どもたちを受け入れ、その解決策や食のあり方を模索してきました。試行錯誤を続けるなかで、先人たちの技や知恵が息づく「和食」へと帰り着いたそうです。■5歳児たちが毎月100キロの味噌を仕込む 映画のタイトルのとおり、高取保育園では全園児200人分のみそ汁のみそ100kgを、毎月5歳児クラスが仕込んでいます。作るときは、心をこめて、もったいないから「こぼさない」ように、つばが入ってしまうから「しゃべらない」で作ります。さらに、梅ぼし、沢庵、高菜漬けづくりにも、子どもたちが参加します。みそは日本人の食べ物の要。映画では、発酵学の第一人者である小泉武夫先生が、みその抗酸化作用などを詳しく解説してくれます。和食には、興奮ホルモンをおさえる働きがあるという学説もあるそうで、たしかに映画に出てくる子どもたちは、とても穏やかです。■「子どもは和食が苦手」は大人の思い込み映画を観ていて、一番印象的なのが、子どもたちが本当においしそうに給食を食べていること。なんとなく「子どもは和食が苦手」というイメージがありますが、おいしかったら、ちゃんと食べるんですね。しかも高取保育園の子どもたちは、朝から体をたくさん動かしているので、お昼にはおなかがペコペコ。給食の食べ残しは、毎日ほぼゼロです。「いただきます!」と元気にあいさつをしたあとは、みんな静かになって食べることに夢中。なかにはお皿までペロペロなめる子も。その食べっぷりの良さは気持ちがよく、見ていて幸せな気持ちになります。映画では、30年前から和食給食を取り入れている神奈川県の麦っこ畑保育園も紹介されています。こちらの園でも子どもたちは食欲旺盛。なかには3杯もごはんを食べる子もいて、「大人以上に食べます。おかわりをストップさせるのに苦労するくらい(笑)」と同園の大島貴美子園長。「どちらの保育園の子どもたちも、自分の意思で食べているから、イキイキしてる。普通はお皿をなめると、お行儀が悪いなんていわれますが…。子どもの遊び心が食につながっているんだなあと思います」というのは、映画『みんなの学校』で注目を集めた大空小学校の元校長であり、映画にも登場する教育者の木村泰子さん。ちなみに木村さん、この映画をきっかけに、毎回の食事にみそ汁を欠かさないようになったのだとか。■食べたものが子どもの命になるよく動き、よく食べて、よく眠る高取保育園の子どもたち。そのキラキラ輝く姿を見ると、食の力を感じずにはいられません。子育てのノウハウはいろいろあるけれど、私たちが親として、まず子どもにしてあげるべきことは、毎日の食を整えて、子どもたちの体と心の健康を保ってあげることなのだと、あらためて気づかされます。さすがに毎日完璧な手作りの和食を用意するのは難しいかもしれません。でも「ごはんと具だくさんのみそ汁だけの食事でも、みそ汁をおかずだと割り切ってしまって、みそ汁には、旬のものをどんどんいれていけばいい」とオオタヴィン監督がいう献立だったら、真似できるのではないでしょうか。映画の最後には、「食べたものが、わたしになる」というメッセージがを出てきます。「本当にそのとおりだと思っています。自然の恵みに感謝して喜んでいただくというのが基本だと思ってやってきました」と麦っこ畑保育園の大島園長。子どもたちの「いただきます」には、野菜の命や魚の命に感謝する気持ちが詰まっているのですね。坂本美雨 with CANTUSさんが歌うやわらかなエンディング・テーマ「星めぐりの歌」を聞くころには、心がほんわか温かくなっているはず。子育ての本質を考えたり、家庭の和食力を見直したり、いろいろなきっかけをくれる映画です。映画『いただきます~みそをつくる子どもたち』 2017年10月7日(土)より、渋谷アップリンクほか全国順次公開公式サイト: ●映画『いただきます~みそをつくる子どもたち』イベント情報公開を記念して、10 月7 日(土)から9 日(月・祝)まで、初回の10:30の回は、なんと振る舞いみそ汁付きで上映!さらに、上映終了後には日替わりゲストとオオタヴィン監督とのトークイベントも。日本の食養生の歴史や、みそをより深く知ってもらうための食文化についてなど、興味深いトークが連日繰り広げられます。また劇場では、ロングライフデザインをテーマに、日本各地の個性を物販・飲食などを通して紹介するD&DEPARTMENTが手がける「d47 食堂」セレクトのみそや玄米、みそや発酵にまつわる書籍なども販売され、多角的に和食の世界を楽しめます。<公開記念イベント 上映後 オオタ監督アフタートーク>●10月7日(土) 10:30の回の上映終了後 小倉ヒラク(発酵デザイナー)●10月8日(日) 10:30の回の上映終了後 川口恭(川口糀店9代目)●10月9日(祝) 10:30の回の上映終了後 服部みれい(文筆家)※上記イベントは要予約。予約は10/4(水)朝10時にオンライン/窓口ともにチケット発売スタート。詳細について: ※このほか、毎週水曜日、午前中の回はお子さんと映画を楽しめる「親子上映会」を実施。足下が見えるくらいの薄明かりのなかで、通常より小さめの音量で上映するので、小さいお子さん連れも安心です。
2017年10月03日女優の松雪泰子、小島聖、初音映莉子らが2日、都内で行われた「Discover Nelly Arcan-ネリーを探して-」プロジェクト発表会見に出席した。「Discover Nelly Arcan-ネリーを探して-」は、カナダ建国150周年にあたる記念すべき今年に、パルコがカナダ・ケベック州生まれの女性作家ネリー・アルカンをフォーカスしたプロジェクト。9月には彼女のデビュー作となった『ピュタン』が発売、映画『ネリー・アルカン 愛と孤独の淵で』を10月21日から公開され、舞台『この熱き私の激情』が11月4~19日に東京・天王洲 銀河劇場で公演される。この日行われた発表会見には、『この熱き私の激情』に出演する松雪泰子らが登場。松雪は「ここに並んでいる皆さんと素晴らしいプロジェクトに参加できてうれしく思っています」と同舞台の参加に笑顔。同舞台は現在稽古中で、実際に稽古で感じた手応えについて「非常に集中力が必要な作品だと思います」と難しさを感じながらも「ここにいらっしゃる皆さんといい作品になるようにしっかりと稽古をして、素晴らしいものをお届けしたいと思います」と意欲を見せた。ネリー・アルカンという女性は、2001年に出版社へ原稿を送り、2週間で出版が決まって作家デビュー。一躍有名作家の仲間入りを果たし、その美貌にも注目を集めたが、2009年9月、36歳で自ら命を絶つなど壮絶な人生を送った。そんな彼女の世界観について松雪は「彼女の持つ言葉はすごく深くて、突き刺さってくるモノが多いんです。死を選びましたが、本当はそうじゃない理想の世界で生きたかったという思いが痛いほど伝わってきて、崇高な光の中に存在する混沌みたいなイメージが湧きます」とコメント。また、ネリー・アルカンの小説『キスだけはやめて』を読んだ一般客の「ネリーには強いコンプレックスがあると感じた。皆さんのコンプレックスは?」という質問に松雪は「ものすごくたくさん寝ないとダメなんです。短く寝ても元気で動けると良いなとたくさん充電しないとダメなんです」と笑い、小島は「考えだしたらキリがないんですが、ストレートヘアーに憧れますね」と回答していた。
2017年10月03日「みんなの学校」の木村先生をお招きしてパネルディスカッションを実施Upload By 発達ナビ編集部大阪府大阪市住吉区に公立小学校「大空小学校」という学校があります。この学校は2006年にできた新しい学校で「みんながつくるみんなの学校」を合言葉にしており、特別支援学級は設けず、発達障害や知的障害のある子どもたちもみんなと同じ教室で学んでいます。障害がない子どもたちも、様々な個性を持った子どもたちと一緒に過ごす中で多くのことを学ぶことができます。そんな大空小学校ですが、不登校の子どもはゼロ。まさに地域の「みんなの学校」なのです。今回発達ナビでは、この大空小学校の初代校長であった木村泰子先生(現在はご退職)とのパネルディスカッションイベントを開催しました。Upload By 発達ナビ編集部パネルディスカッションのテーマは「みんなの社会をいかに生きてはたらくか」。「障害のない社会をつくる」をビジョンとして掲げ、障害者への就労支援サービス、子どもの可能性を拡げるソーシャルスキル&学習教室、そしてこの発達ナビの運営などを行っている株式会社LITATLICOより、発達ナビ編集長の鈴木悠平と学校での教員経験もある社員・木村彰宏の2名が、障害のある方の社会への参加・参画に向け共生社会の実現を目指し、障害者雇用にも重点を置く特例子会社 薬樹ウィル株式会社(薬樹株式会社)代表取締役の吉澤靖博さんがパネラーとして参加し、木村泰子先生とともに4名でディスカッションを行いました。木村先生、冒頭から「そもそもあんたらの言う障害って何なん?」という問題提起を行い、波乱の幕開けです。会社が主語になってるうちは、その会社の本当の目的は達成されないUpload By 発達ナビ編集部木村先生:まず先にひとこと言いたいんですけど、皆さん自己紹介でね、いろいろむつかしいこと言ってましたけど、なんでそんなん考えてから行動するんかなと思うんですよ。私には子供たちから教えてもらった「事実」しか自分の中にありません。もちろんいろんな研究から学びたい気持ちはあるから勉強はするんですけど、生徒と向き合って目の前で起こる出来事って、9割は勉強したこととちゃうんですよね。木村彰宏:なるほど…では今日のパネルディスカッションでは「みんなの社会をいかに生きてはたらくか」について話をしていきたいと思っているんですが、まず子供たちの行きつく先として、「仕事」や「会社」について、先生はどのような考えを持っていますか。木村先生:そうですね、ふつうでええんちゃいますか、ふつうの会社で。逆にね、「とてもええ会社やね」と言われてしまうような会社やと、世間と遠くなってしまうんですよ。みんなの学校もそうです。「ええ学校やね」と言われることでふつうの学校ではなくなってしまうんです。Upload By 発達ナビ編集部たとえば、大空小学校では教育委員会に加配の先生は要求しなかったんです。というのも、支援のプロの先生がいると子供を分断してしまうんですね。どういうことかというと、「私は支援担当やから」って加配の先生が対象の子どもにぴったりひっついてまうと、その子は他の子どもから分断されてまうんです。そうなると大空の他の子どもたちは、私に「あの先生おかしいから教えたり」「じゃま」「校長先生出番やで」って言うてきますわ。じゃあこの加配の先生が、どうして対象の子どもにぴたっとひっついてしまうか。それは先生自身が「主語」になってもうてるからですね。つい自分が働いたという成果をつくりたがってしまうんです。だけどね、先生が頑張ってようとサボってようと、子どもが貧困であろうと障害があろうと、目の前の子どもたちが安心して地域の学校で学んでいる。この事実をつくるということが、私らの目的です。つまり、主語は先生じゃなくて子供なんですよ。主語を子供に変えたら、私らがやるべきことは何かおのずから見えてきたんです。この共通認識が出来てから、仕事はスリムになりましたし、チームはブレなくなりましたね。だから言いかえると、「会社」が主語になってるうちは、その会社の本当の目的は達成されないんじゃないんじゃないでしょうかね。障害って何?ほんまに分かって言うとる?Upload By 発達ナビ編集部鈴木:「特別支援の担当なんです」ってことで、障害のある子どもを道具にして自分の居場所や仕事をつくってしまわないようにってことですね。木村先生:あとね、そのあんたらの言う「障害」って何やと思って言ってます?今日ここに来てる皆さんはどう思てます?来場者:障害は個性…木村先生:じゃあ個性ってなに?会場:沈黙木村先生:あのね、私大空小学校を退職してから2年なんですけど、この2年間、知らんことや知りたくなかったことばかり知るんですよ。もうね、やさしく綺麗事を言ってる時間ないんですよね。学校に行けない子どもやその家族がものすごくたくさんいて苦しんでいることを知ってしまったから。障害って何?って聞かれたときに、答えることが出来る自分がいないなら障害を語るべきじゃないんじゃないでしょうか。だいたいね、インクルーシブとかいいながら特別支援教育をすすめていくことで、余計分断が起こってるでしょ。大空小学校では障害という言葉は使ったことないです、意識して使わないようにしてたんじゃなくて、使う必要がなかったんです。「ユウトにほんまに障害があるんですか?」Upload By 発達ナビ編集部木村先生:大空小学校にね、ユウト(仮名)っていう子がいるんです。彼は発達障害の診断があって、手帳も持っていて、入院していて大空小学校に来るまでは院内学級で過ごしていたんですね。そんなユウトが担任の先生に、学校の運動会に誘われたんです。彼はお母さんとわくわくしながら運動会に行きました。するとね、学校の子どもに「お前なにしに学校来てん。学校来たかったら頭ブチ割って脳みそ交換してからこいや」って言われたそうなんですよ。その日はユウトとお母さんは帰りました。そんなユウトが大空小学校に来てね、他のお友達、もちろんお友達が出来て、みんなで日々ドッジボールをして遊んだりして過ごす日ようになったんですよ。でもある日、ドッジボールでアウトかセーフか、他の子どもと揉めたんです。大空小学校の子どもたちは、困ったら職員室に行って相談したらなんとかなると思ってます。だからその日もユウトたちは職員室に来たんですね。そしてユウトは言うたんです、「校長先生、こいつらに俺は障害者や言うてくれ」って。「健常の人間は障害のある俺に譲るべきや」って。Upload By 発達ナビ編集部私は言いました、「分からん」って。そしたらユウトが言うんです、「校長のくせに障害もわからんのんか。勉強しろや。校長クビや」って。だから私は言い返してやりました、「じゃあユウトは障害って何か分かっとんか、あんたが説明しいや」と。そしたらね、ユウトは「俺の主治医は病院の副院長や。そいつが障害者やって言って俺は手帳を貰ったんや。だから俺は障害者や、障害のある俺は守られるんや」って言うんです。「私はそんなん信じへん」って言うたりました。そしたらね、ユウトは「医者が言ったんや、俺は校長より医者を信じる」って言うんですよ。もうね、私、「じゃあ私が副院長に会いに行って障害って何か聞いてくるわ。」って半分以上ハッタリで言うたんです、もうええ分かったってユウトも引くかなって。そしたらユウトは「ほんまに行けよ」って言うんです。もうね、私副院長のところ行ってきましたよ。もちろん本来は校長が病院に行っても、個人情報ですから色々話を聞くことは出来ません。でもユウトの場合は、支援の方針を考える「ケース会議」を開く対象になっているので、会議を開いてもらい、関係者の一人として会議に参加させてもらってきました。で、黙って会議で話を聞いてたんですよ。でも納得できない話ばっかりだったので、思わず最後に口から出てしまったんですね。「先生、ユウトにほんとに障害があるんですか」って。本当の意味で「違い」を理解するということUpload By 発達ナビ編集部木村先生:「ユウトにほんまに障害があるんですか?」って聞いたとき、主治医の方は一瞬は怒ってました。でもね、失礼なこと言ってるのは分かるけど、これ聞かなユウトとの関係が繋げへんから。私は続けて言いました、「私はユウトを見ていて彼を障害があると思えません。彼にもし障害があるというレッテルが貼られるのであれば、彼以外の子供たちほとんどみんなにレッテルが貼られなあかんと思います」ってね。そしたら主治医の先生は「個人的な見解を述べれば、彼に障害があるとは思いません。でも彼は生まれてから成長するにつれて、毎年毎年、彼が生きている周りの環境から常にバッシングを受けて、確実に二次障害が生じている子供です」っておっしゃられたんです。社会が、学校という本来みんなに開かれている場が変わらない限り、二次障害を受けている子供が発達障害という診断を受け、インクルーシブといいながら特別支援教育が取り入れられることで、子どもたちがどんどん分断されていく。その流れのものすごい加速が起こっている。「障害」という言葉で、ひとりの人が生きている毎日の営みをひとくくりにしてスルーしている間は、本当の意味の「違い」を理解するのはむつかしいんちゃうやろかって思います。困ってるときは助けがほしいUpload By 発達ナビ編集部木村(彰):大空小学校のような、職員間や地域の方との間など、仕事で困ったときに頼れる人がいるネットワークがある職場ってどうやって実現出来たんですか?僕も悩んでいるのですが…木村先生:その質問は正直私には答えられないんで、一緒に働いていた教員が今日客席にいるので彼女に答えてもらいます。塚根先生(大空小学校・元教員):そうですね…正直大空小学校に赴任して子どもたちと出会う前は、これまでの経験という引き出しで子どもたちに対応出来ると思っていたんです。でもね、現実はどうしようもなかった。自分には出来ないと思った。そしたら、自分には出来ないと思っている先生は私だけじゃなかったんです。どん底に落ちはしましたが、周りと共有することで、「どうせ上手く出来へんのやったら笑って帰ろかー」みたいな、開き直りがうまれました。それにね、教員みんな、大空小学校では困ってたんで。新任の先生とも上下関係じゃなくていっしょのスタートになったのがよかったですね。「家でむしゃくしゃしているよりは、学校行ったほうがいい」って感じで同僚同士繋がっていったし、困ってるときは助けがほしいじゃないですか。そうやって地域の人とも繋がっていきました。木村先生:一回ね、「この中で本当に辞められる人間はおるか」って話をしたんですよ。ひとりだけいました、その人はローンがなかったんですね(笑)辞められへんのに辞めたい辞めたい言って、先生が苦しい顔しとったら、そんな学校子供は楽しいと思えます?辞められるんなら辞めてもええけど、辞められへんのやったら自分を変えるしかない。どっちかやなって。Upload By 発達ナビ編集部主語はだれ?目的はなに?Upload By 発達ナビ編集部司会:来場者の方からの質問です。企業はカスタマーが主語になっているでしょうか。社員が主語になってはいませんか。吉澤さん:いい質問ですね。ただ顧客と企業はサービスと対価を循環させる関係ですので、お客さま至上主義を第一としている会社もそれはそれであやしいと僕は思っています。何が第一かじゃなくて、全部大事。木村(彰):今のお話を聞いて、学校現場で子供を主語にすることで先生の不満もどこかに出てくることもあるのかなとは思いました。木村先生:子供を主語にして、すべての子どもが自分の働く学校で前を向いて安心して学んでいるという事実を見て、その職場が嫌になる先生いますか?いませんよね。子供が主語になっているという事実が、すべての教職員の幸せにつながるんです。そもそも今のような質問が出るっていうのが衝撃で、「みんなの社会をいかに生きてはたらくか」が今日のテーマだったかと思うんですけど、私ちょっと企業の皆さんに質問してもいいですか?皆さん障害者の就労支援や障害者雇用に力を入れてる企業で働いているとのことでしたが、じゃあ障害者雇用の目的って何ですか?と私は問いたいです。Upload By 発達ナビ編集部鈴木:僕は障害者雇用制度は制度的な経過措置に過ぎないと思っています。わざわざ障害者と健常者、枠を分けなくてもいっしょに働ける環境がつくれたらいいと思います。木村先生:じゃあ、障害者と健常者が一緒に働く職場をつくるその目的は何ですか?鈴木:ひとつは障害者健常者関係なく、働きたい人が働けるということ、そのことが当たり前に権利として保障されていることが大前提だと考えています。そしてもうひとつは、あえて健常者とでこぼこが大きい人たちとで分けて考えたときに、その両方が一緒に働く社会のほうが単純により面白いサービスや価値がつくれると思っています。木村先生:通常の雇用と障害者の雇用、そもそもは働くことでひとりの人が幸せになれるんだよってところに共通点があるじゃないですか。ひとりの人が幸せになる手段として障害者雇用がある。この目的と手段さえ混同されなければ問題はないんですよ。だけど制度があるから障害者を雇用せなあかんという、雇用すること自体が企業にとって目的になると、むつかしさが生まれる。学校現場も全く同じなんですよ。今ってインクルーシブ教育をせなあかんということで、インクルーシブ教育が目的で、子どもたちが手段になってますよね。そうじゃなくて、ひとりの子どもが安心出来る学校現場をどうつくるか、ひとりの人が安心して暮らせる出来る社会をどうつくるかが大切なことだと思っています。どこにも正解はないし、そんなたいそうなこと私にはわからないんですが、私の考えとしては、答えを人に求めないで自分自身が変わることが大事だと思っています。学校現場も社会と見れば、例えば、学校があかんだの、家庭があかんだの、地域があかんだの、他をあかんって言うのは簡単なんですよ。でも、それぞれ立場の違いはあるかと思いますが、学校、家庭、地域、どの立場にいても子どもにとってはひとりの大人であるということは共通してるんですね。人に求めないで、自分はどうしたらいい?って考えて、自分で出来ることをやって、ひとりで無理なら他の人頼って。まずは自分で動くこと、これは誰にでも出来ることだと思います。そこからじゃないですかね。あなたも子どもからみたらひとりの大人「私には時間がない、学校に行けない子どもやその家族がものすごくたくさんいて苦しんでいることを知ってしまったから。」そうおっしゃる木村泰子元校長の、ヒリヒリとした切迫感をどう受け止めるか。「まずは自分が動くこと」を最前線で動いている木村元校長に提示され、それぞれ立場は違えど子どもにとっては大人は大人であるという事実を再確認させられたのでした。あなたは何をしますか?何からはじめますか?9月のイベントのお知らせ: 発達ナビ保護者会(東京・神奈川・埼玉・千葉)発達ナビ会員のうち、保護者の方々を対象とした情報交換会・茶話会が開催決定!保護者さん同士で集まり情報収集の場をつくることで、お子さんとの生活をより良くするきっかけを得てもらうことを目的としています。「“発達が気になる子どもの子育て”の悩みを話せる人がいない。」「辛いとき、他の人はどうしているのだろう?」「通所支援施設はどうやって選べばいいの?」など、悩みや困っていることを話してみませんか?ぜひお気軽にご応募ください!「発達ナビ保護者会〜地域資源活用セミナー〜」日時・会場:以下、応募フォームをご参照ください。9月は、東京・神奈川・埼玉・千葉にて開催予定です。募集人数:30名程度参加費用:500円(お茶菓子付き)募集締切:各回、開催日の前日まで*プログラム予定*・講義: 地域資源や支援施設の選び方、活用方法について・講義: 保護者を取り巻く環境・困りごとについて・グループワークを通した情報交換・フリートーク・活用できる支援機関の紹介など※ 参加費お支払い方法は後ほどご案内いたします。※ 応募者多数の場合は抽選とさせていただきます。※ 参加可否につきましては、お申込み後1週間以内にご連絡します。
2017年09月04日みなさんの中で、子どもに間違ったことをしたときに、自分から子どもに謝ることができる人はいるでしょうか?「誰でも絶対間違うことがある」と話すのは、子どもたちとのたったひとつの約束「自分がされていやなことは、人にしない、言わない」を実践し、教師はもちろん保護者とも一緒に「学ぶ」ことを実践した小学校の校長を務めた木村泰子先生です。木村先生が校長を務めた大空小学校の姿がドキュメンタリー映画『みんなの学校』となって公開され、2年がたちました。そしていまなお自主上映会が開催され続けています。この映画の中で木村先生は、「やり直し第1号はわたし」と話しています。木村先生は、自分が間違ったと感じたとき、どうしたのでしょうか?そして、問題が起こる学校現場で、親はどうしていけばいいのか。親が学校の先生に意見をすると嫌な顔になったときに、一発で効く印籠を木村先生は授けてくれました。はたして守りに入った先生に効く印籠とは…。※本連載は、木村先生との「学びの会」を抜粋したものです。記事内に登場する参加者は、「学びの会」に出席した方々となります。■「一生懸命やっている」価値観は大人失格木村:私は思ったことしか言わないので、「バカやろ」「バカたれ」と、子どもたちによく怒りました。でも、「4つの力(※)」を大切にしながら関わっていれば、子どもは絶対に離れないんです。自分の想いが相手に通じないと、「これだけ一生懸命やっているのに、何で通じないの?」と言う大人もいます。そういう人は、大人をやめた方がいい。そんな気持ちと態度でいたら、「子どもの前に立つ大人」としては失格です。なぜなら、「これだけ一生懸命やって、なんで通じへんの?」というのは、100%大人サイドの物の見方だからです。子どもの立場になってみることが、何よりも重要なんです。「自分が子どもやったら、どうかな?」。これは、「人を大切にする力」です。「子どもやったら、どうかな?」と思ってみると、「大人が勝手にやってことに対して、何で言うこと聞かなあかんの?」という気持ちになるのではないでしょうか? 「本当に大人は、勝手やな」という気持ちに子どもがなるような行為を大人がしているのです。参加者:でも、なかなか、そんな気持ちで子どもと関わることができません。※4つのちから:「人を大切にする力」、「自分の考えを持つ力」、「自分を表現する力」、「チャレンジする力」のこと。この4つの力があれば、子どもたちは、これからの多様な国際社会で「なりたい自分になっていけるよ」と、木村先生は話します。■大人サイドで物事を考える教員はアウト木村:もちろん、そういう現実はあります。ここで、みなさんに質問させてください。子どもに対して間違えた行動をとってしまったとき、「ごめんなぁ。どうしたらよかったと思う?」と、すぐ言えますか? そんな自分を確立できていると思う人。では、そういう自分を、まだ確立できていない人は? どうもありがとうございます。確立できていない人が大半ですね。問題は、そこなんです。教員はお給料をいただいているから、大人サイドで物事を考えていたら、本来はアウトです。けれども、アウトであることを伝えれば伝えるほど、学校現場では、守りに入る教員が多いのが現実です。守りに入ってしまった教員をどう変えるか。自分の4つの力を使って、その教員に対して「教師も学校も子どもから学んでほしい」と表現するんです。それは理屈じゃありません。■保護者が意見をして機嫌が悪くなる教師への対応は?参加者:私は、小学校の支援学級(通級)の教員をしています。学校現場にいる者として発言させていただくと、教員の専門性を、教科指導(国語・算数・理科・社会といった「勉強」を教えること)だと思っている教員は多いのです。そんな教員に対して、通級指導の教員である私たちですら食い込むのが難しいのに、保護者が食い込むのは、もっと難しいと思うのです。木村:保護者が意見をすると機嫌が悪くなる先生は、たくさんいます。残念なことですが、それが現実です。その現実に対しては、水戸黄門の印籠を出すんです。「これが目に入らぬか!」と(笑)。そのセリフを、今日はお伝えしましょう。私は、文部科学省の上層部の方から、「教員の仕事は、教科を教えることではない。教員の仕事は、その子が学びたいと思う学びを、その子が安心して学べる、そのための学ぶ力をつけることです」と教えてもらってきました。いまは、このセリフ(言葉)を知らない教員が多すぎます。ですから、これからの社会に役立つような資質を持った子が、いまの学校現場では、排除されてしまうことも、現実的には多いんです。いまの学校は、4つの力を使わない方が、居場所を作ることができるからです。たとえば、自分の考えを持ちさえしなければ、先生に文句を言うことはないでしょう。自分を表現しなければ、先生に怒られることもありません。自分の意見を言う、文句を言う、「イヤという」、こういった自分を表現するということは、教員側から見ると「自分の好きなようにわがまま言っている」と見えることも多いわけです。人を大切にするといっても、子ども本人が大切にされていないのに、どうやって人を大切にできますか? そんな環境で、どうしてチャレンジをしようなんて気持ちになれますか? でも、悲しいことに、いま、学校現場は、そんな場所になっているのです。■学校が「すべての子どもに規則を守らせる」場となる恐ろしさ参加者:でも、子どもに好き勝手なことをさせていたら、現実的には、困ることも多いのではないかと思うのですが…。木村:その発想が、最初から大人が子どもを信用していない発想だと思うんです。「子どもは、悪いことをする」と思っている大人がいるから、そんなふうに期待されてしまった子ども(悪いことをするだろうと思われた子ども)は、悪いことをするんです。学校が「子どもに規則を守らせる」場になってしまうのは、ありえないと思いませんか?参加者:だから、うちの子は悪いことするのか…(笑)。大空小では校則はなくて、「自分がされてイヤなことは、人にしない」という、たったひとつの約束があるだけ、と聞きました。それを破ったときは、みずから校長室にやり直しをしに行くと。木村:校長とやり直しをするのではないんです。やり直しをする場所が、校長室なだけです。これも、子どもたちが決めたことです。みなさん、「校長にざんげに行く」と思っていらっしゃるようですが、私にざんげに来られても、どうしたらいいかわかりません(笑)。なぜなら、大空小でいちばん最初にやり直しをしたのは、私だからです。そんな人間にざんげされても、困ります。■「この子さえいなければ」木村先生が、大空小で「やり直し第1号」になるシーンを、ご著書の中からご紹介します。大阪市立大空小学校は、新設の小学校として2006年4月に開校しました。その、開校初日、始業式のシーンです。「絶対、良い学校にしよう」始業式の朝。私はもちろん、教職員の誰もが意欲をかき立てられました。引き継ぐ伝統も何もないゼロからのスタートです。(中略) 「わーっ、ぎゃーっ」ひとりの男の子が講堂に入ってくるなり、大声を出しながら走り始めました。転校してきたばかりの6年生でした。始業式に転校を知らされたばかりで、私たちも会ったのはこの日が初めてでした。(中略)「良い学校をつくろうと思っているのに、なんでこんなすさまじい子が入ってくるんや」「この子さえいなければ、良い学校をつくれるのに」(中略)そう思ったのです。開校当初は、とてもいやな校長として、私は子どもたちの前に立っていました。校長という立場以前に、大人として失格です。出典: 『大人がいつも子どもに寄り添い、子どもに学ぶ!「みんなの学校」流 自ら学ぶ子の育て方』 (木村泰子/小学館)この彼は、その後も、教職員を振り回し続けますが、ある日、彼を追いかけて足をすべらせ尻もちをついた女性教師のそばに寄りそうようにしゃがみ込みました。そのときに彼が取った行動を木村先生は、黙って見守ったあと、全校朝会で、こう切り出します。「彼な、逃げられたのに、戻ってきて、痛いね、痛いねって先生をさすってあげたんやで。私はそんな彼のことをちっともわかってへんかってん」出典: 『大人がいつも子どもに寄り添い、子どもに学ぶ!「みんなの学校」流 自ら学ぶ子の育て方』 (木村泰子/小学館)【『みんなの学校』流「生き抜く力」まとめ】●「一生懸命やっているのに、何で通じないの?」と言う大人は、「子どもの前に立つ大人」として失格●子どもに対して間違えた行動をとってしまったとき、謝ることができない教師はアウト●自分の考えを持たなければ、先生に何か意見を言うこともない。自分を表現しなければ、先生に怒られない。本人が大切にされていないのに、人を大切にできない。そんな環境でチャレンジしようという気にはならない木村先生の言葉には迫力があって、毎回、痛快なドラマを見たときのような気持ちになります。けれども、一方で、あまりに斬新な発想(言われてみれば『本当にそうだ』と思うのですが…)に、まだ気持ちがついていかない部分もあります。 ドキュメンタリー映画『みんなの学校』を作った真鍋俊永監督は、映画のパンフレットでの中で、こんなふうに言っています。この映画の「みんな」が指しているものは、「児童と教職員と地域の人」を飛び越えた「すべての人」の事であり、私たち一人一人にとっての学校である「社会」を、「みんなで一緒に作り上げていきませんか」という、そんな思いを込めた作品を作り上げたので、映画を見られる方たちも自由に何かを感じ取ってほしい出典: 映画『みんなの学校』 (パンフレットより) この記事がひとつのキッカケとなり、社会にみんなで学び合えるような雰囲気が広がっていくことを心から願っています。■今回取材にご協力いただいた木村 泰子先生の著書『 不登校ゼロ、モンスターペアレンツゼロの小学校が育てる 21世紀を生きる力 』木村 泰子,出口 汪/ 水王舎 ¥1,400(税別)
2017年07月28日いまの学校教育が抱えた問題によって、学校に通えなくなってしまう子どもがいるという現実。そんな現実に、ごく普通の公立小学校が「不登校0」を実現して、世間に衝撃を与えました。その模様はドキュメンタリー映画『みんなの学校』で描かれ、現在でも自主上映会が全国で開催されています。その学校の初代校長を務めた木村泰子先生。マニュアルを見ながら、子どもに関わろうとする大人を、子どもは信用しないといいきります。そんな中、子育て中のママの「あるある」ネタにも、木村先生は「ママがマニュアルで考えている」と、厳しい言葉がかけられました。※本連載は、木村先生との「学びの会」を抜粋したものです。記事内に登場する参加者は、「学びの会」に出席した方々となります。■どうしてもマニュアルを探してしまう大人木村:「子どもに関わるとき、『過保護や過干渉』なのか? それとも『教育』なのか?」がわからなくなってしまったとき。それは、「自分が大人として目の前にいる子どもに、どう関われば良いのか?」を迷っているときです。そういうとき、大人は、何かしらのマニュアルを見ながら判断しようとします。大人がマニュアルを探しながら、「どっちかな?」といった態度で関わると、子どもは信用してくれません。マニュアルを見ないで、「目の前の子どもだけを見て関わろう」とする大人の態度は、子どもにもちゃんと伝わります。もちろん、結果として「やっぱり、あなたに対して過保護、過干渉だった」と反省することもあるでしょう。でも、その反省は、すべて未来につながります。「あなたに対して過保護、過干渉だった。ごめんなさい」と、きちんと謝ることができる大人が、子どもは大好きです■子どもの気持ちまでマニュアルで見ている木村:ここで大切なのは、子どもと関わるときに、「マニュアルを見ないで、目の前の子どもだけ見て関わろう」と自分で決めることです。参加者:子どもは「イヤだ!」としか表現できないとしても、そこにある気持ち、モヤモヤしている気持ち、そういうものを、大人が感じてあげるということですか?木村:それは、大人の嗜みですね。子どもに関わるときに、大切なのは「教えること」ではないんです。その子の心の中をわかろうと努力する。それが、大人の嗜みです。参加者:たとえば、お友だちと一緒のとき、うちの子がわがままを言ったとします。「わが子の心の中をわかろうとする」という行為は、そのとき、その場で、お友だちがいる前でした方が良いのでしょうか? それとも家に帰ってきてから、ゆっくりした方が良いのでしょうか?木村:そう考えてしまうこと自体、マニュアルを見ようとしているのかもしれませんね。キツい言い方かもしれませんが、「みんなの中でやった方が良いのだろうか? それとも家に帰ってきてからの方が良いのだろうか?」と考えるのは、その子だけを見ていない行為です。その場、その場、その子、その子によって、状況はすべて違います。■大人は、成功を狙って子どもに関わろうとする木村:「友だちの前で注意したことを後悔した」と思うことも、絶対あるでしょう。そんなことは、誰にでも絶対にある。でも、失敗したら、やり直せばいいんです(※)。子どもに、「ごめんね、みんなの前で言わない方が良かったね」と言えば、子どもは「いーよ、別に」と言ってくれるかもしれない。けれども、「あなたが間違ったことをするのを、注意してあげたんだから!」という気持ちでいたら、子どもは、心を開くことはないでしょう。「絶対、もう俺の気持ちなんて言わない」と思います。子どもが間違ったことをしたときに、大人は、「もう二度と失敗が起こらないためにどうしたらよいか?」を、自分(大人側の論理)で考えて「これが上手くいく方法よ」というものを提示しようとします。でも、本当のところを言えば、親は、「(提示した方法が)成功する可能性なんて、100%ない」と思っておいた方が良いくらいの話なのです。※やり直し:木村先生の教育観の大きな柱のひとつ。「人が生きていれば、必ず間違いは起こる。そのときに素直に謝って、やり直せばいい」と、木村先生。■「大人サイドの価値観」で物事を考えないようにするには参加者:「100%ない」というのは、1%すらないってことですか?木村:そうですね(笑)。「うまくいったら、めっけもん」くらいの気持ちで、子どもと関わるということです。そう思って、関わらないと、うまくいかなかったときの落ち込みも激しくなってしまう。大人に勝手に関わられて、勝手に落ち込まれていたら、子どもは、やっていられませんよね。親も教員も、よっぽど気をつけていないと、常に「大人サイドの価値観」で考えてしまうものなのです。私も相当なダメ教員でしたが、子どもたちにズタズタに鍛えてもらったことで、随分と変えてもらいました。子どもとの関わりを、大人サイドで考えない。これを実行できるようになるには、ある一定の訓練と、失敗経験が必要だと思います。【『みんなの学校』流「生き抜く力」まとめ】●大人が目の前の子どもをマニュアルで判断しようとすると、子どもにも伝わる●大人も絶対間違う。でも間違ったときに謝る大人を子どもは大好きだ●叱って二度とトラブルが起きないという「成功」を狙って子どもに関わっても、100%成功しない●大人サイドの価値観で物事を考えないためには訓練が必要次回は、「自分を表現すると嫌われる学校の現実。守りに入る教員をどう変える?」です。■今回取材にご協力いただいた木村 泰子先生の著書『 不登校ゼロ、モンスターペアレンツゼロの小学校が育てる 21世紀を生きる力 』木村 泰子,出口 汪/ 水王舎 ¥1,400(税別)
2017年07月27日大ヒットしたドキュメンタリー映画『みんなの学校』。「人を大切にする力」、「自分の考えを持つ力」、「自分を表現する力」、「チャレンジする力」の4つの力を育てることに尽力をしたのが、初代校長を務めた木村泰子先生です。木村先生は、この「4つの力があれば、子どもたちは未来を生きていける」と言います。しかし、いまの学校現場では、見過ごせない問題が起きているとも…。不登校になってしまった娘を抱えるママからの話をもとに、どうして学校に通うことに苦しむ子どもが出てしまうのかを考えます。※本連載は、木村先生との「学びの会」を抜粋したものです。記事内に登場する参加者は、「学びの会」に出席した方々となります。■子どもが育つ学校現場で見過ごせないことが起こっている木村:大空小が地域の新しい学校として開校したのは、2006年4月1日です。いまから約10年前に、「10年後って、どんな世の中になっているのかな? いまより、もっと日本には入り混じった人たちがたくさんいる。そんな世の中で生きていくために、子どもたちが身につけなければいけない力って、何だろうね?」と、考えました。あれから10年たったいま、映画『みんなの学校』に注目してもらえるのは、10年先取りでやってきてことが、いまになって、ニーズを感じていただいているのかな? と、思っています。いまの学校現場では、「子どもが育つ環境」という視点でみると、「見過ごしてはいけない」ということがたくさん起こっているのが現実です。でも、そんな地元の学校に行かざるを得ない子がたくさんいる。そして、学校にどうしても行けなくなってしまう。そんな苦しんでいる子、保護者は、たくさんいます。■「不登校」が増えている理由は?木村:ここ2、3年で、学校現場は「いかに子どもに規則を守らせるか」という方向に、急速に傾いています。その結果、どんなことが起こっているか?たとえば、ある都道府県では、ここ2,3年で「学校に行けなくなった子」の数が2倍強に増えたという報告がありました。それは、その地域に限った話ではなくて、全国的にその傾向が強まっています。参加者:4年生の娘が不登校です。どうして学校に行けなくなったかというと、担任の先生が「○○しなさい」「○○、しなくてはいけない」という先生なんです。過保護な母親のように、手とり足とり教えてくれることが、うちの子にとっては窮屈だったみたいで。娘のクラスでは、娘が不登校になっただけではなく暴力的になってしまう子など、いろいろな「症状」が出始めています。木村:一教員が、急激に意識を変えるというのは、現実的には難しいかもしれませんね。もし、それで変われる資質がある先生なら、もともと、そうはなりませんからね。ある意味、その担任の先生の姿は、典型的ないまの学校の姿です。参加者: 正直言って、「過保護や過干渉」と、「教育をきちんとする」の線引きがわかりません。どうやって見極めたらよいのでしょうか?■「過保護や過干渉」なのか? それとも「教育」なのか?木村:子どものある行為に対して、「これについて干渉することは『過保護や過干渉』となるのか? それとも『教育』なのか? 大人として、目の前にいる子どもに、どう関われば良いのか?」。大空小でもやまほど悩みました。たとえば、子どもが「イヤ!」と言って、いうことを聞かない。「このイヤは、この子のわがままなのか? イヤということを認めたらいいのか? イヤというのを、やめさせないといけないのか?」。大人は、そこで選択したくなるものです。でも、それを決めるのは子どもです。大人は「言うことをきかせるべきか」とか、「甘えさせるべきか」と考えてしまう。けれども、その視点でモノを考えている大人は、子どもに関わる場合に、自分の法則で考えようとしているんです。言ってみれば、子どもを、「どうにかしなければいけない」というリーダー性を大人が持たないといけないと思っている。■何で、この子は「イヤ!」と言っているのか参加者: 「どうにかしなければいけないというリーダー性」とは、どういうことですか?木村:たとえば、「これを、やりましょう!」と言って、「イヤ!」と言う子は、いくらでもいます。「イヤ!」という子に対して、大人がまず考えるのは、「どうやって、『イヤ!(NO)』を『YES』に変えようか?」ということではないでしょうか?ここで、先にお話した4つの力のうち、ひとつの大事な力が抜けています。この子が、「イヤ!」と言ったら、大人は4つの力の中の、「人を大切にする力」を使ってほしいのです。大人が「この子の、『イヤ!』をやめさせよう」と思うのは、上から目線の関わり(どうにかしなければいけないと考えるリーダー性)なんですよね。「やめさせることが、この子にとって幸せにつながる」と、思っているんでしょうけれど、それは、子どもにとっては、おおきなお節介です。「これについて干渉することは『過保護や過干渉』となるのか? それとも『教育』なのか?」。この問が自分の中に生まれたら、まず、「この話に、唯一無二の正解などない。ケースバイケースで、答えはそれぞれにまったく異なる」ということを思い出して欲しいのです。子どもの「イヤ」に対して、「過干渉なのか過保護なのか、それとも教育なのか」と考える前に、まずは目の前の子どもを「感じてみる」ということが大切なのだと思います。「学校に行きたくない」という子がいたとしたら、「なんで、『学校に行きたくない』って言っているか?」を、まずは考えてみるんです。「なんで、この子はイヤと思うのだろうか?」ということを、大人がきちんと考えてみるということです。【『みんなの学校』流「生き抜く力」まとめ】●いまの学校現場では、不登校の増加など、見過ごせない問題がたくさん起きている●子どもが「イヤ」と言ったときに、「いうことをきかせる」のは大人が上から目線になっている●子どもの「イヤ!」の理由は、子どもなりの「自分の意見」。大人はその気持ちを大切にする力を持つ必要がある次回は、「マニュアル子育ては見抜かれる! 大人の論理「あなたのため」は通じない」です。■今回取材にご協力いただいた木村 泰子先生の著書『 不登校ゼロ、モンスターペアレンツゼロの小学校が育てる 21世紀を生きる力 』木村 泰子,出口 汪/ 水王舎 ¥1,400(税別)
2017年07月26日大阪市にある、ごく普通の公立小学校である大空小学校は、不登校児が0人。それは、それぞれの子に、それぞれの居場所があるから。ドキュメンタリー映画『みんなの学校』は、大空小学校の日常を丹念に描いて大ヒットし、商業映画館での上映は終わったものの、2016年度の自主上映会は全国で800回以上におよび今年も昨年以上の勢いで広がっています。映画で輪の中心にいるのは、初代校長を務めた木村泰子先生。自分が受けてきた教育をベースにした「学校観」に引きずられ、子どもを「良い子」「悪い子」の枠にはめがちなママたちと、これからの子育てに必要な「生き抜く力」についての勉強会が開催されました。※本連載は、木村先生との「学びの会」を抜粋したものです。記事内に登場する参加者は、「学びの会」に出席した方々となります。木村 泰子先生プロフィール大阪市出身。大阪市立大空小学校初代校長として、「みんながつくるみんなの学校」を合い言葉に、すべての子どもを多方面から見つめながら、全教職員のチーム力で「すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる」ことに情熱を注ぐ。その取り組みを描いたドキュメンタリー映画 『みんなの学校』 が話題に。2015年に退職後、現在は、全国各地で講演活動を行っている。木村先生については、 「『みんなの学校』流 親子関係のつくり方」 「ママのプロになる!」 もぜひご覧ください。■多様な国際社会で、「なりたい自分」になるには?木村先生(以下、木村):最初に、「大空式」の自己紹介からお話しましょう。大空小学校(以下、大空小)では、「自己紹介をする」という人との関わりの中で、4つの力を高めることを意識しています。<大空小で大切にしてきた4つの力>・「人を大切にする力」・「自分の考えを持つ力」・「自分を表現する力」・「チャレンジする力」この4つの力があれば、子どもたちは、これからの多様な国際社会で「なりたい自分になっていけるよ」と、大空小の子どもの周りにいる大人は考えました。■人と違うから「自分の考え」になる木村:1つ目の「人を大切にする力」が、簡単なようで難しいのは、なんとなくおわかりかと思います。2つ目の「自分の考えを持つ力」。みなさんは、自分の考えを持っていますか? 「夫が、言うから」「ママ友が、言うから」「会社の上司が、言うから」と、流されてしまう自分が、いらっしゃるのではないでしょうか?隣や上を見ないで、「まず自分で考えてみよう」という習慣を、大空小の子どもたちはいつも心がけています。この「自分の考え」というのは、人と違ってあたり前。だからこそ、「自分の考え」なんです。ひとりの子が自分の考えを持ったら、その自分の考えは、「間違いなんてないよ」というまわりの空気が必要です。■自分を表現できなければ置いていかれる木村:3つ目は、「自分を表現する力」。いくら人を大切にして、自分の考えを持っていても、これからの時代は、自分を表現しなかったら、置いていかれてしまうことでしょう。「これはイヤだよ」「こうしたいよ」「こう考えているよ」ということを、自然に言えること、これも大切にしたい力です。もちろん、表現の仕方は、いろいろあります。たとえば、緘黙(かんもく)症(※)で、自分から言葉を発したことがない子。そういう子は自分なりの表現方法、文に書いたり、顔で表現をしたりができますから、まわりはその子を見ていれば、表現を受け取ることができます。※緘黙(かんもく)症:発声器官の器質的障害がなく、言語の習得に問題がないのに、特定の場面でずっと声が出ない状態のこと。たとえば家では普通に話ができるのに、学校や幼稚園に行くと一日中声が出ない状態が何ヶ月、何年間も続く症状4つ目は、「チャレンジをする力」。「こういうことを、やってみたい」「こういうことを、やろう」とチャレンジする気持ちは、「未来を作っていく」と思うんです。■「教員の仕事」は、「人間でないとできないこと」をやること木村: この4つの力を、小学校にきて「おはよう」を言ってから、「さようなら」を言うまで、どれだけ子どもたちが獲得できたのか? それを考えることが、私たち、子どものまわりにいる大人のやるべきことだと思って、仕事をしてきました。めちゃくちゃシンプルです。「分数の計算の仕方を教える」。これはあと数年したら、教員がやらなくても機械がやってくれるでしょう。「では教員の仕事は何?」と言ったら、「『人間』でないとできないことをやろうね」と、大空小の教職員で話し合いをして決めました。【『みんなの学校』流「生き抜く力」まとめ】●「人を大切にする力」、「自分の考えを持つ力」、「自分を表現する力」、「チャレンジする力」があれば、未来を生きていくことができる●「自分の考え」は、人と違ってあたり前●教員の仕事は、人間でなければできないことをやること次回は、「不登校で苦しむ子。「過保護」と「教育」の線引はどこにあるのか?」です。■今回取材にご協力いただいた木村 泰子先生の著書『 不登校ゼロ、モンスターペアレンツゼロの小学校が育てる 21世紀を生きる力 』木村 泰子,出口 汪/ 水王舎 ¥1,400(税別)
2017年07月25日<目次> ■発達障害という名前を変えたら、世の中が変わる ■ママに「子どもを見る力」がないのなら ■「良い子」「悪い子」の枠はママが楽している? ■21世紀を生きる力を考える 【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】 ママになると、とたんに子どもについては「プロ」であることを求められてしまいます。だったら「ママのプロになってしまえばいいのではないか?」そんな風に考えて、この連載企画がスタートしました。「みんながつくる みんなの学校」を合言葉に社会から排除されがちな枠からハミ出てしまう子にも居場所を作り続けたプロ教師歴45年の木村 泰子先生に話をうかがいます。お話を聞くのは、自身が親から「みんなができることがどうしてできないの?」と言われ続け、そしていま「枠からハミ出てしまう子(発達障害)」を育てるライターの楢戸ひかるです。■発達障害という名前を変えたら、世の中が変わる?楢戸:発達障害の日本の第一人者である、「NPO法人えじそんくらぶ」代表の高山恵子先生が、いわゆる「グレーゾーン」のことを、「パステルゾーン」と呼んでいらっしゃいます。※「パステルゾーン」を命名したのは、沖縄の名護療育園の泉川ドクターによるもの。※子どもの個性的な部分は、明るくカラフルだから、グレーゾーンではなく、パステルゾーンと呼びませんか? と提案されています。木村:発達障害って名前を変えたら、世の中、きっと変わると思いますよ。その言葉、見つけましょう。みんなで学びを深めていきませんか? ■ママに「子どもを見る力」がないのなら楢戸:「子どもを見る」というのは、センシティブな作業です。ママは、日々、忙しすぎて、「自分の子どもを枠にはめてしまっているかどうか」なんてことを、いちいち考えている暇がないかもしれませんね。木村:ママ自身に「見る力」がないなら、まずは、「余計なことを言わないでおきましょう」っていうことですね。楢戸:もしかしたら、私たち母親が子どもに言っている大半のことが無駄なんでしょうか。先生の言葉を借りれば、「余計なこと」という気もしてきました…。■「良い子」「悪い子」の枠はママが楽している?木村:ここは、すごく大切なところ。学校でも、何度も、何度も、本当に何度も話してきたの。「子どもを枠にいれて評価したらあかんで」と。たとえば、「良い子のAちゃん」「悪い子のBちゃん」みたいに括ってないですか?って。それは、枠にいれていることになるの。「悪い子のBちゃん」も良いことをするときある。「悪い子のBちゃん」だと思って見てしまうと、「いま、褒めてよ」というときを見逃してしまう。それは、子ども自身の人物評価、つまりは「くくり」で見てしまっているから。楢戸:ママとしては、寄りどころがほしいんです。「この子は良い子」「この子は悪い子」みたいに決めつけてしまった方が楽なんですよ。でも、ママが楽しちゃいけないってことですね木村:自分が楽をすることを選んだママの未来は、苦悩に満ちていると思いますよ。一瞬の楽は、未来の苦悩を呼ぶんですよ。一瞬の苦しみは、未来の幸せにつながる。自分が納得して選べばいいことだから。ママたちは、どちらを選びますか? ■21世紀を生きる力を考える6本に渡ってお送りした「ママのプロになる~映画『みんなの学校』の木村先生がママたちに伝えたい20のこと~」も、そろそろ終わり。木村先生からたくさんのダメ出しをされて、正直落ち込みもしました。でも、これは必要な落ち込みだと思います。「私が受けてきた教育では、これからの時代を生き抜く力はつかないのではないか?」と、漠然と感じていました。でもそれは、「次世代に必要な教育」を見つけられないから、自分が受けてきた教育の価値基準にあわせて、子どもを育ててきたように思います。今後も木村先生と話をしながら、「次世代に必要な教育」の姿を、記事という「カタチ」にしながら、「ママのプロ」になるために自分はどうすればいいのかを考えていきたいと思います。■【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】18. ママ自身に「見る力」がないなら、まずは、ママが子どもに余計なことを言わないこと19. 「良い子」「悪い子」で括ってしまうと、「いま、褒めてよ」っていうときを見逃してしまう。子どもを枠にいれて評価してはダメ20. 子どもを枠に入れて、楽をしたママの未来は、苦悩に満ちている。でも一瞬の苦しみを乗り越えたママの未来は幸せにつながります。≫「木村先生がママたちに伝えたい20のこと」については こちら ■今回取材にご協力いただいた木村 泰子先生の著書『 不登校ゼロ、モンスターペアレンツゼロの小学校が育てる 21世紀を生きる力 』木村 泰子,出口 汪/ 水王舎 ¥1,400(税別)木村 泰子先生プロフィール大阪市出身。大阪市立大空小学校初代校長として、「みんながつくるみんなの学校」を合い言葉に、すべての子どもを多方面から見つめながら、全教職員のチーム力で「すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる」ことに情熱を注ぐ。その取り組みを描いたドキュメンタリー映画『みんなの学校』が話題に。2015年に退職後、現在は、全国各地で講演活動を行っている。
2017年05月29日<目次> ■「枠からハミでる子」は、普通のママには異質なのか!? ■「まともな子ども」を評価する社会 ■「発達障害のない子になって欲しい」という気持ちはないか? ■活躍している人は個性的な人が多い 【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】 毎日子育てに悩み、自分の子どもが「普通」になれないことに心を砕いているママがたくさんいます。「素人なのにプロ」を求められてしまうママ業。そこで「どうしたら、ママのプロになれるのか?」を木村 泰子先生にうかがいます。<木村 泰子先生とは>全国で多くの反響をよんだ不登校ゼロをめざした小学校のドキュメンタリー映画『みんなの学校』で初代校長を務める。普通の子と発達障害の子どもを「普通に育てる」ことに悩み続けた3人の子持ちであるライター楢戸ひかるが、木村先生と子育てについて話をします。木村先生が教えてくれる「ママたちに伝えたい20のこと」とは?■「枠からハミでる子」は、普通のママには異質なのか!?「枠からハミ出てしまう子(発達障害)」と「普通の子」を一緒の教室で学ぶことは、はたして本当に良いことなのでしょうか。大人が出す「あの子がいると迷惑」という空気を吸ってしまっている子は、めちゃくちゃ不幸だと木村先生は話します。木村:「枠からハミでた子」と「普通の子」が一緒に育つ良さについて理解するために、『みんなの学校』という映画が存在していると思うの。静かな環境で勉強してつく力と、いつも誰かが動きまわる環境の中、勉強してつく力。どちらの方が、より高い力がつくかを、ママさんたちに問いかけてみたらどう答えると思いますか?楢戸:おそらくいつも誰かが動き回っているうるさい環境で勉強したほうがより高い力がつくと答えると思います。木村:誰が考えても、そういうふうにわかるわけですよね。それだけではダメなの? 楢戸:そういったことを、多くのママたちにどうやって伝えていけばよいのだろうか? と考えています。わが家の場合で言うと、長男は品行方正な普通の子で、次男が発達障害なんです。■「まともな子ども」を評価する社会木村:そうやって、比較されてしまう子どもが不幸なんよ! あなたの次男は、二次障害(被害)、三次障害(被害)を受けているんじゃないかと心配になります。楢戸:でも、普通の子(定型発達の子)と、枠からハミ出た子(発達障害の子)は、「生き物として違うんじゃないか」と思いたくなるときがあるんです。これは実際に育ててみての実感です。木村:本人たちにしか、「自分がまとも」なんてわからないの。いまの世の中は、長男が評価される社会であるっていうだけの話。楢戸:長男は、「俺は、次男みたいなものをもっていないから、次男とずっと暮らしたい」と言っています。長男は、次男のことを、すごく評価しています。■「発達障害のない子になって欲しい」という気持ちはないか?木村:それは、長男がじゅうぶん育っている証拠じゃない。だから、ちゃんと次男を尊敬できる。そうしたら次男は、家庭の中では、絶対に安心して育つ。楢戸:正直に言えば、「長男も次男も安心して家庭で暮らしていられる」というのは、私のコンディション次第、という条件がついちゃうんです。木村:その心の根底にあるのは、発達障害があると診断されている次男に、母として「この子は、発達障害のない子になって欲しい」という気持ちがあるからじゃないの? ■活躍している人は個性的な人が多い楢戸:じつは、意外と、それはないんです。私がマスコミ業界で仕事をしていて、普通の職場でないというのもおおきく影響しているとは思うのですが。私が取材で出会う相手は、みな個性的な人が多いです。だから「あなたの話を聞かせてほしい」と思えるような人は、もしかしたらある意味、発達障害傾向があるんじゃないかと思っています。木村:私も、発達障害あると思いますよ。多動だし。めっちゃ、学習障害だし。みなさん、どう思っているかわからないけれどね。楢戸:ピンで活躍されている人は、普通とはどこかが異なっていると、取材を重ねた実感として言えます。だから、私自身は「発達障害」に対して、あまり悪いイメージはないんです。木村:発達障害という名前を、「素晴らしい能力を持った方々」にするっていうのは、どうでしょうね?次回は、「「この子は良い子」「この子は悪い子」と枠に入れたママの未来は?」 です【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】15. 子ども本人たちにしか、「自分がまともかどうか」なんてわからない。いまの世の中が普通の子が評価されるというだけ。16. 静かな環境で勉強してつく力と、いつも誰かが動きまわって勉強してつく力。どちらの方が、より高い力がつくう?17. 発達障害という名前を、「素晴らしい能力を持った方々」にしませんか?≫「木村先生がママたちに伝えたい20のこと」については こちら ■今回取材にご協力いただいた木村 泰子先生の著書『 不登校ゼロ、モンスターペアレンツゼロの小学校が育てる 21世紀を生きる力 』木村 泰子,出口 汪/ 水王舎 ¥1,400(税別)木村 泰子先生プロフィール大阪市出身。大阪市立大空小学校初代校長として、「みんながつくるみんなの学校」を合い言葉に、すべての子どもを多方面から見つめながら、全教職員のチーム力で「すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる」ことに情熱を注ぐ。その取り組みを描いたドキュメンタリー映画『みんなの学校』が話題に。2015年に退職後、現在は、全国各地で講演活動を行っている。
2017年05月26日<目次> ■みんなができることが、何でアンタはできないの! ■子ども時代に受け止めてもらえなかったママの子どもは? ■型にはまった教育を受けてきた苦しみ ■発達障害の子は、ママには異質!? 【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】 子どもを生んではじめて、ママとなる。でもママになった瞬間、自分自身もそして周りからも「プロ」であることを求められているような呪縛にとらわれることありませんか?どうしたら本当の「ママのプロ」になれるのか? 木村 泰子先生からプロの極意である「ママたちに伝えたい20のこと」を教えていただきます。<木村 泰子先生とは>ドキュメンタリー映画『みんなの学校』に出演して、不登校ゼロの公立小学校として話題を集めた大空小学校の初代校長。話を聞くのは、「先生の言うとおりにできない自分がダメ」と小学校時代に思いこんで育ちながら、「枠からハミ出てしまう」わが子に対して、「世の中で生きていくためには、フォーマットの中にいれないと」という気持ちにもなってくるライター楢戸ひかる。■みんなができることが、何でアナタはできないの!木村:親の視点で物事を考えているから、自分の価値観にはめよう、はめようとしてしまう。自分が子どもにかけた言葉を、いま振り返ってみてください。楢戸:「ちゃんとして」「何で、そうなの?」「いい加減にして」などです木村:こんな風に言わなかった? 「○○ちゃんをよく見てみなさい。アナタみたいなこと、していないでしょ」「みんなができることが、何でアナタはできないの」楢戸:「みんなができること、何でアナタはできないの」。それ、私も言われていました。木村:みんなができることを、させようとする。ハミ出ている子を、普通にちょっとでも近づけようとする。これって、本人からしたらハタ迷惑な話ではなかった?楢戸:私自身、「みんなができることができない」と言われ続けてきました。私は、「みんなができること」、いわゆる「普通」を目指したのですが、結局、「普通」にはなれなかった。「『普通路線』は無理だ」と思ったので、自分が生き残る道として、得意な書くことを生かしたライターの仕事をすることにしました。■子ども時代に受け止めてもらえなかったママの子どもは?木村:もし30年前に「あなたは、あなたで、いいよ」と、先生や親に言ってもらっていたとしたらどうですか? 「みんなができることができない」で、楢戸さんは誰かに迷惑をかけたと思う? 楢戸:「迷惑をかけている」ということになってしまうんです。先生からは「みんなと同じことができない、あなたが悪い」と言われる。親からも、「学校の先生に怒られたから、あなたは悪い」と言われてしまうんです。木村:それは「親が自分の子どもを丸ごと受け入れて信じろよ!」っていう話でしょ。楢戸:「自分が受け入れてもらってきていないから、子どもを受け入れてやれない」ということに、最近、気がつきました。「息子が普通であって欲しい」と思う根にある問題は、私自身の問題だというところに行きつきます。木村:楢戸さんの話は、「母が変われなかったから、子どもが二次障害(被害)を受けてしまいますよ」ということだと思うの。同じように、このことを集団の場に置き換えて考えてみて。「教員が変わったら、子どもが苦しまない」。もっと言えば、「まわりの子が変わったら、その子は苦しまない」。まったく一緒の仕組みなんですよ。 ■型にはまった教育を受けてきた苦しみ楢戸:「型にはまった教育を受けてきた苦しみ」というものに、みんながそろそろ気がつき始めていると思います。私たちの世代が、心の傷を癒やすことができたのなら、うちの息子のような子も受け入れられていくのではないか? と思うようになってきました。二次障害(被害)を防ぐためには、まずは母である私自身を癒やさないといけないということですね。木村:もし、「自分の子どもとママが世界中で二人だけだったら、苦しまなかった」でしょ?社会の価値観は、化石時代のままなの。だから、ママがこの社会で生きる中、「何が欠けているか?」という理屈に気がついてほしい。そうしたら、「いまのこの瞬間から、人に求めずに、自分が変わろう」ということを考えられるようになると思います。楢戸:「息子と自分が世界中で二人だけだったら、苦しまなかった…」本当にそうかもしれません。■発達障害の子は、ママには異質!?木村:いまだに過去を引きずっている。いまの日本は大間違い。小学校によっては、子どもは分けられて、発達障害の子は別室に連れていかれてしまう。このことは、教室に残される子にとっても、ハタ迷惑な話なの。楢戸:でも、「枠からハミ出てしまっている子」は、大多数のママたちにとって、迷惑な話ではないんでしょうか? 木村:冷静に考えてみて。大人が出している「あの子がいると、迷惑よ」という空気を吸っている子どもは、めちゃくちゃ不幸でしょ。そんなことは、ママさんたちもわかっているんじゃないのかしら。楢戸:でも、木村先生。ママさんたちはわかっていないんじゃないかと思います。大多数のママたちにとって、「枠からハミ出てしまう子(発達障害の子)」と、「普通の子であるわが子」が一緒に育つ良さについて、よく理解していないということを前提に、話をしていただけませんか?次回は、「普通の子が評価される時代。個性的な子どもは「まとも」じゃないの?」 です。■【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】12. 親が自分の子どもを丸ごと受け入れて信じてあげて!13. ママがこの社会で「何が欠けているか?」という理屈に気がついたら、いまのこの瞬間から、人に求めずに、自分が変わろう14. 大人が出している「あの子がいると、迷惑よ」という空気を吸っている子どもは、めちゃくちゃ不幸なの≫「木村先生がママたちに伝えたい20のこと」については こちら ■今回取材にご協力いただいた木村 泰子先生の著書『 不登校ゼロ、モンスターペアレンツゼロの小学校が育てる 21世紀を生きる力 』木村 泰子,出口 汪/ 水王舎 ¥1,400(税別)木村 泰子先生プロフィール大阪市出身。大阪市立大空小学校初代校長として、「みんながつくるみんなの学校」を合い言葉に、すべての子どもを多方面から見つめながら、全教職員のチーム力で「すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる」ことに情熱を注ぐ。その取り組みを描いたドキュメンタリー映画『みんなの学校』が話題に。2015年に退職後、現在は、全国各地で講演活動を行っている。
2017年05月25日<目次> ■ベテラン教員でも「保護者」になると迷う ■子どもの味方だけが学校にいる時代ではない ■「良い大学を出ることが幸せじゃない」時代のママの役目は? ■「一般的な子どもになって欲しい」と願う親がすべきこと ■「子どもを、枠にはめること」が教育なのか? 【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】 子どもが生まれて、はじめて「ママ業」を始めるママたち。でも自分自身でも、そしてまわりからも「素人なのにプロ」を求められているように感じていませんか?ママたちの心の中にある「どうしたら、ママのプロになれる?」という気持ちに、少しでもこたえたいと思い、プロ教師歴40年の木村 泰子先生から「ママたちに伝えたい20のこと」をききます。<木村 泰子先生とは>木村先生は、すべての子に居場所のある「大空小学校」の初代校長先生を務め、その様子が映画『みんなの学校』として公開されました。そして今回お話をさせていただくのは、「育てにくい子」とされる息子を持ち、「まわりに迷惑をかけているのではないか」と考えながら子育てを行ってきたライターの楢戸ひかるです。■ベテラン教員でも「保護者」になると迷う前回、木村先生の元同僚であるベテラン教員から、発達障害のある孫の就学前教育相談で、どこまで話すべきか相談を受けたというお話がありました。●木村先生の同僚の教員(Aさん)から受けた相談内容Aさんは、発達障害の子とたくさん接してきたベテラン教員。そんなAさんの孫は、幼稚園で先生の言うことをまったく聞かない子で、Aさんも幼稚園での参観日やお迎えで孫の様子は理解しています。この孫が小学校就学前相談を受けることになります。そこでAさんの娘さんから「就学相談で、息子の現状をきちんと伝えるべきか? 伝えないべきか?」と相談を受けたそうです。どんなに「ベテラン教員」であっても、「保護者(祖母)」となると、どうすればいいのか判断することができなかった。そこで、Aさんは木村先生に相談することに…。木村先生は、どのような回答をAさんに送ったのでしょうか。■子どもの味方だけが学校にいる時代ではない木村:環境が整えば、子どもは育つ。でも、「整っていない環境に子どもを送りこまなければならないとき、保護者は、どうフォローすればいいのか?」というのは大きな課題ですよね。楢戸:「親は手も足も出ない」と、私だったら思ってしまいます。木村先生は、ベテラン教員であるAさんにどのような言葉を返したのでしょうか? 木村:周囲は、「その子は、発達障害なんでしょ」と、決めたがる。Aさんの娘であるママも、「発達障害の診断を受けた方が良いのかな?」と迷う。校長室に行って、「うちの子は、もしかしたら発達障害なんです」と言うほうが良いのか、言わないほうが良いのか、迷う。すごく、迷うと思います。楢戸:わかります。木村:私は、即答でした。「何も言わんとき。一切相談せんとき」って。「相談する相手が信用できる相手か、わかってる? わからんやろ?」って。子どもの味方だけが、学校にいる時代ではありません。「学校の先生は、すべての子どもたちを守ってくれるっていう時代じゃないやろ」って返しました。■「良い大学を出ることが幸せじゃない」時代のママの役目は?楢戸:とても現実に即したお話ですね。木村:「学校は立派」「先生の言うことは聞け」「たたいてでも、先生の言うことを聞かせる」それは化石時代の話。いままでは、ひとつの価値観を信じたら、みんなが幸せになれると信じられた、イケイケ・ドンドンの時代だったでしょ?その当時の学校や学校を取り巻く社会と、いまは、全然違う。そういう世の中から、いま、向かっている世の中は、「良い大学を出ることが幸せじゃないよ」ということに、みんな気がつきはじめた時代だと思うの。 「幸せは、自分がなりたい自分になることだよ。幸せは、人が決めない。自分が決めるものやで」。だからそのフォローは、まわりがしなさいよってこと。それが、これからの教育だと思うの。昔と今では、教育の目指す方向が全然違う。違うのに、過去の価値観だけを引きずっている。楢戸:つまりは、ママの役目は、子どもが決めた幸せをフォローすることですか? もっと言えば、何が幸せかを自分で決められるような子どもを育てることなんでしょうか。何というか、子育てについてコペルニクス的な発想の転換が求められている気がします。■「一般的な子どもになって欲しい」と願う親がすべきこと楢戸:では、「普通からハミ出てしまう子」の母親として、まず、私は何をすべきなのでしょうか?木村:まず、自分の子どもを「発達障害」という言葉で括らないということ。親が自分の子どもを信じないとね。楢戸:「普通からハミ出てしまう子」を育てることは、毎日が戦いなんです。そんな日々の中で子育てをしていると、疲れてきちゃって。「子どもを信じる」ということが、正直、厳しいです。木村:それって、「わが子が、一般的な子どもに近づいて欲しい」って思うからじゃないの?楢戸:そういうことなのかもしれないですね。木村:でもいまは、反省しているんですよね? 楢戸:反省していますね。(はじめて取材で)木村先生にお会いした2016年の7月以降、さほど、子どもを怒らなくなりました。■「子どもを、枠にはめること」が教育なのか?木村:すばらしい! いま、「親の立場」で、「苦しかった」と楢戸さんは言うけれど、子どもの立場になって、そのときのことを振り返ってみたことがある?子どもは、どんな暴れている子でも、芋虫みたいにゴロゴロしている子でも、反抗したくてやっているのとは、違うの! これは、私が子どもから学んだことだから、確信を持って言える。親の価値観は、「何で、私の言うことを聞かないの!」ってことだと思うけど、そうやって、ゴロゴロしている中で、その子は、その子なりの学びの時間をもっている。だからその場所を、安心して「学びの場」にしてあげたら、その子自身、傷つかないでしょ。「みんなはできているのに、どうして、アナタはできないの?」と、「こういう子であって欲しい」という枠に、無理やり子どもをはめないで、子どもを信じることが、とても大切です。楢戸:「子どもを、枠にはめること」。それが教育だと、先生と出会うまで思っていました。次回は、「「みんなができることが、アナタはできないの!」と言ってしまうママへ」 です。■【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】8. 学校の先生は、すべての子どもたちを守ってくれる時代じゃない9. 幸せは、自分がなりたい自分になることだよ。幸せは、人が決めない。自分が決めるもの10. 昔と今では、教育の目指す方向が全然違う。過去の価値観にママは引きずられないで11. 「どうしてアナタはできないの?」という枠に子どもをはめないで。子どもを信じてあげて≫「木村先生がママたちに伝えたい20のこと」については こちら ■今回取材にご協力いただいた木村 泰子先生の著書『 不登校ゼロ、モンスターペアレンツゼロの小学校が育てる 21世紀を生きる力 』木村 泰子,出口 汪/ 水王舎 ¥1,400(税別)木村 泰子先生プロフィール大阪市出身。大阪市立大空小学校初代校長として、「みんながつくるみんなの学校」を合い言葉に、すべての子どもを多方面から見つめながら、全教職員のチーム力で「すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる」ことに情熱を注ぐ。その取り組みを描いたドキュメンタリー映画『みんなの学校』が話題に。2015年に退職後、現在は、全国各地で講演活動を行っている。
2017年05月24日<目次> ■「うちの子が迷惑をかけている」と思ってしまう ■「迷惑をかけている」というのはママの思い込み ■失敗体験が続いているから傷つかないようにしている ■ベテラン教員でも「いち保護者」になると迷う 【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】 ママ業は、「素人なのにプロ」を求められる仕事。どうしたら、ママのプロになれるのか? 「ママのプロ」になるために必要な極意「ママに伝えたい20のこと」を教えてくれるのは、プロ教師歴45年の木村 泰子先生。<木村 泰子先生とは>木村先生は、映画『みんなの学校』の舞台となった大空小学校の初代校長。大空小学校は、特別な支援が必要な子が全校児童220人中30人を超えていたが(映画撮影時)、特別支援教室はつくらず、みんなが同じ教室で学び、「不登校児0人」を実現。お話をきくのは、自身が小学校時代に「ダメな子」だと思いながら学校に通った経験があり、いま現在「まわりに理解されにくい子」を育てるライターの楢戸ひかる。「うちの子が周りに迷惑をかけている」と思っているママに送るメッセージです。■「うちの子が迷惑をかけている」と思ってしまうママ前回、木村先生からは、ママである私の価値観が変わっていたら、息子が通常の学級で学んでいたかもしれないというお話までお伝えしました。楢戸:実際には、小学校6年生現在(取材時)、息子は通常学級で学べています。だから、私自身の「ダメ」という気持ちはだいぶ緩和されてきています。でも「うちの子がまわりに迷惑をかけているんじゃないか」といった悩みは、普遍的だと思うので、木村先生のお話を聞かせてください。木村:「自分がやってしまった失敗を、他人に少しでもさせない。自分の失敗を学びに変えて一緒に考えていきましょう」というのが、今回の連載の趣旨だと思っています。楢戸さんの息子さんのような、「まわりには理解されにくい子」がいるとします。そういった子が同じ教室の中にいるのと、いないのだったら、どちらがまわりにいる子は、成長すると思いますか?楢戸:「『理解されにくい子』いる方が成長する」と言える世の中だったとしたら、うちの息子のような子が生きやすくなると思います。でも、実際には普通のママさんたちは、「いると邪魔だ」と思っていると、私自身が思ってしまうんです。本当は、そんなことまわりのママさんたちは思っていないのかもしれないのですが…。■「迷惑をかけている」というのはママの思い込み木村:それよ! それは、楢戸さんの偏見じゃないの?「ほかのママさんたちがそう思っている」っていうのは、事実ではないわけです。そんなふうに思わないと、自分が生きていけないっていう、ママ自身が立ち向かってきた壁。その壁に対して持っている偏見なだけなんですよ。それは結局、ママ自身、楢戸さん自身が持っている偏見なんですよ。楢戸:私自身がこれまで持ってきた自分の傷を見ているだけということですか?木村:自分のことを「まわりに迷惑をかけている存在だ」と思っていると、相手側の方が悪いように感じてきませんか?楢戸:相手のママさんたちを悪いとまでは思わないけれど、「気をつけなければいけない集団」だと思って緊張します。もしかすると、ちょっと恐れているのかもしれないですね。木村:楢戸さんがそんなふうに感じているから、まわりからも「気を使わなければいけない存在」となるわけ。そこがね、そうではないの。「みんなに悪く思われている」と思ってしまっているママに、「まず自分が変わりなさいよ」というメッセージを出してあげないといけないと思います。■失敗体験が続いているから傷つかないようにしている楢戸:枠からはみ出てしまっている子のママからすると、「自分の子どもは、上手に育っていない」という劣等感があると思います。木村:ママが失敗体験を続けてきてしまった。だから自分が傷つかない方法を選んでいるっていうことですよね?楢戸:ママ自身が、「向こう」をシャットアウトしちゃっているっていうことです。木村:そこに至る過程を、少し考えてみて欲しいのです。小学校6年間も大事だけれど、「幼児期にママと子どもの関わりがどうであったのか?」がとても大切で、ママ自身が問わないといけないと思うの。幼児期は、はじめて集団の中に入る時期。そんなときに、ママ自身が子どもに対して、「どんな立場でいてあげるか」を考えることが大切なことです。この「ママの立場はどうあるべきか」を考えるために、ひとつの事例を紹介しますね。じつは、今日、ここに来る前に、親しくしている教員の同僚から「相談したいことがある」とメールがきたんです。■ベテラン教員でも「保護者」になると迷う●木村先生の同僚の教員(Aさん)から受けた相談内容Aさんは、発達障害の子とたくさん接してきたベテラン教員。そんなAさんの孫は、幼稚園で先生の言うことをまったく聞かない子で、Aさんも幼稚園での参観日やお迎えで孫の様子は理解しています。この孫が小学校就学前相談を受けることになります。そこでAさんの娘さんから「就学相談で、息子の現状をきちんと伝えるべきか? 伝えないべきか?」と相談を受けたそうです。どんなに「ベテラン教員」であっても、「保護者(祖母)」となると、どうすればいいのか判断することができなかった。そこで、Aさんは木村先生に相談することに…。楢戸:何だか安心しました。「ベテラン教員」でも、「ひとりの祖母」となるとブレるんですね。だったら、何の知識も経験もない私がブレてしまうのは、仕方がないと思えます。それで、木村先生は、Aさんにどんな回答をされたんですか?木村:聞きたい? 楢戸:もちろん!!!!木村先生が、ベテラン教員にどんなふうに答えたかについては、次回お送りします。次回は、「学校が子どもを守ってくれない時代。「ママの仕事」はなんですか?」 です。■【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】4. 自分がやってしまった失敗を、他人(子ども)に少しでもさせない5. ママ自身が立ち向かってきた壁に対して持っているのは、結局自分の偏見6. 「みんなに悪く思われている」と思ってしまっているママは、「まず自分が変わりなさい」7. はじめて集団の中に入る時期に、ママが子どもに対して、「どんな立場でいてあげるか」を考えることが大切≫「木村先生がママたちに伝えたい20のこと」については こちら ■今回取材にご協力いただいた木村 泰子先生の著書『 不登校ゼロ、モンスターペアレンツゼロの小学校が育てる 21世紀を生きる力 』木村 泰子,出口 汪/ 水王舎 ¥1,400(税別)
2017年05月23日<目次> ■ママのプロになるために! 極意を教えてくれるのはこんな人 ■「先生の言うことを聞きなさい」とママである私は言うけれど ■わが子が先生の言うことを聞けない子だったら ■「子どもを枠の中に押し込める大人」は、子どもの敵だった? ■自分の中の「排除される要因」を隠せない子が生きにくい世の中 【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】 ■ママのプロになるために! 極意を教えてくれるのはこんな人子どもを産んだら、ママになる。あたり前のことなのだが、「ママ業」は、デビューしたての素人も、「プロであること」を求められる仕事なんだと思います。知識も、経験値もないのに、自分が無意識にイメージしている「ママ」は、じつは「プロレベル」のスーパーママなのではないか? と、気がついたのは、わりと最近のこと。周囲からも、「ちゃんとしたママであること」を求められているような気がして、「そんなの、できるわけないじゃん!」と、叫びたいけど、叫べない。そんな、ひとりのママである私が、プロ教師歴45年の木村 泰子先生と、子育ての話で対談をさせていただきました。木村 泰子先生プロフィール大阪市出身。大阪市立大空小学校初代校長として、「みんながつくるみんなの学校」を合い言葉に、すべての子どもを多方面から見つめながら、全教職員のチーム力で「すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる」ことに情熱を注ぐ。その取り組みを描いたドキュメンタリー映画『みんなの学校』が話題に。2015年に退職後、現在は、全国各地で講演活動を行っている。木村先生については、「 『みんなの学校』流 親子関係のつくり方 」もぜひご覧ください。今回、この対談を担当させていただくのは、ライターの楢戸ひかる。3人の子持ちの母であり、うちひとりの息子には、発達障害があります。プロ教師の木村先生と、素人ママの私が対談することで、木村先生が教育実践の中で得てきた「プロの極意(知恵)」を、普通のママたちが日常の子育てで使える「ママたちに伝えたい20のこと」としてお届けします。目指せ! ママのプロ!■「先生の言うことを聞きなさい」とママである私は言うけれど楢戸:木村先生は、「学校の授業で正解のあることなんて、6時間の授業があるうち1時間も教えていない」と、おっしゃいました。「学校で教えてもらうことには正解があり、正解を教えてもらうのが学校だ」と思っていたので、とても驚いたのですが…。木村:もし学校が正解だけを教えているとしたら、先生は給料を1千万円くらいもらわないと割にあいません。そんな人間離れしたこと、できるわけないと思いません?それって、じつはママたちが「学校をどう見ているか」という話だと思うんです。ママたちの「学校観」は、ママたちが受けてきた学校教育がベースになっていると思います。「学校で先生の言うことを聞いている子が『良い子』」と、思っている。だから、「先生の言うことを聞きなさい」と、子どもに言い聞かせて、小学校にいれているわけでしょ?■わが子が先生の言うことを聞けない子だったら楢戸:わが子は、「先生の言うこと」をきちんと聞くことができない、つまりは「普通」からハミ出てしまう子です。だから学校生活では、「うちの子が悪い。申し訳ありません」という気持ちでいっぱいになります。木村:では、楢戸さんは小学校時代、本当にすばらしい学びを得たなぁと思っている?楢戸:じつは、1ミクロンも思っていなくて。「小学校」と聞くだけでイヤな気持ちになります。木村:それなのに、何で、自分の子が小学校に行ったら、「うちの子、迷惑かけてすみません」って言うの? そういうものだと思ってしまう根拠はどこにあるの? ■子どもを「枠の中」に押し込める大人は、子どもの敵だった?楢戸:諦めているわけです。「学校なんて、しょせん、そういうところなのだから」と。木村:小学校のときにそう思いながら、乗り越えられたの?楢戸:ただ、ただ、「自分はダメな人間だ」と思いながら、小学校に6年間通いました。木村:「学校なんて、そんなもん」と思ってしまうのは、卒業したあとの価値観でしょ? 小学校生活を送っている6年間は、「何で、こうなんだろう」「学校って、おもしろくない」の繰り返しだったわけでしょ?楢戸:いえ、実際にはもっとダメで。私は「先生の言うとおりにできない自分がダメ」と思いこんでいました。木村:自分が経験したことを、もう1回、自分の子どもにさせたいの?楢戸:そこが大きなジレンマで。「させたくない」。それが本音です。けれども、親としては「世の中で生きていくためには、フォーマットの中にいれないと」という気持ちにもなってくるんです。木村:こういう考え方をする大人が、一番、子どもの敵なの。「普通にやってきた自分」が、異質なものを排除する。その差別する感情を自分自身が持っていないか、省みなければ。■自分の中の「排除される要因」を隠せない子が生きにくい世の中楢戸:「自分は、排除されないようにしよう」。これが、いまの世の中にはびこる空気だと思っています。どんな人の中にも「排除されるようなもの」は、必ずある。でも、自分の中の「排除されるようなもの」を隠さなければいけない。そんな圧力があるのかな、と。木村:それを隠せる子は、いいの。隠せない子が、「育てにくい子」とか発達障害と呼ばれる子になるわけでしょ? 隠せない子が生きにくい世の中でしょ? でも「隠せる子」は、「隠すことで」生きている。そんな世の中、みんなにとって間違っていますよね。楢戸:そうだとは思います。でも、一方で「今日、うちの息子が、学校で迷惑をかけている」という現実もあります。そういう現実と理想の間で、ひとりの母親として戦っていると感じているんです。 木村:卵が先か、鶏が先かの話。息子さんが幼稚園の段階で、楢戸さんの価値観が変わっていたら、息子さんはいま、通常の学級で学んでいたかもしれないですよ。次回は、「自分の子どもがうまく育っていないと劣等感を感じているママへ」 です。【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】1. 学校の授業で正解のあることなんて、1時間も教えていない2. 「普通にやってきた自分(ママ)」が、異質な子どもを排除しようとしている3. 自分の中にある「排除される要因」を隠せない子が、生きにくい世の中になっている。でもそんなの間違っている≫「木村先生がママたちに伝えたい20のこと」については こちら ■今回取材にご協力いただいた木村 泰子先生の著書『 不登校ゼロ、モンスターペアレンツゼロの小学校が育てる 21世紀を生きる力 』木村 泰子,出口 汪/ 水王舎 ¥1,400(税別)
2017年05月22日俳優・木村拓哉が、2006年公開の『武士の一分』以来となる時代劇主演に挑んだ。初タッグとなる三池崇史監督が「キャスティングは運命」と語る通り、木村は吸い寄せられるように『無限の住人』(4月29日公開)に身を投じ、百人斬りの異名を持つ不老不死侍・万次を憑依させた。剣客集団・逸刀流に両親を殺され、敵討ちを渇欲する少女・浅野凛の用心棒を請け負いながら、「正義とは何か」「命とは何か」を投げかける。1993年から2012年まで漫画家・沙村広明氏が命を削るように描き続けた万次を、木村はどのように体現したのか。「無限」を「時間や時空ということではなく、想い」と捉えていた木村。今回のインタビューでは全6回・約7000字にわたり、本作に対する木村の「無限の想い」に迫る。第2回は「万次との向き合い方」と「役作り」。○原作画集を胸に――万次は右目に傷を負った独眼の侍です。そのことにもこだわりがあったと聞きました。あの沙村さんの世界観を三池監督のもとで具現化していく上で、「万次をやらせていただく」ということがすべてでした。役を作っていくというよりは、独眼は「条件」。「右目を特殊メイクしよう」ではなくて、1つの条件として当たり前にやったことでした。――撮影の合間も含め、不都合なところもあったのでは?不都合どころじゃなかったです(笑)。撮影がはじまって3~4日は、階段の昇り降りすらやっと。現場にはプレハブの支度小屋があったんですが、そこで衣装を着させていただいて、京都の太秦のスタッフが帯をグッと締めてパンパンとお尻をたたいて送り出してくださる。そこから階段で下りていく時に、クランクインして3日ぐらいは危険を感じました(笑)。アクションの撮影をする頃にその感覚は自分の中に染み込んできていたので問題ありませんでした。――今回の撮影で追い込まれたことは?肉体的にハードだったり、そういう大変なところは本編の中に必要ないものです。作品にいらないものは、現場にもいらない。自分が寒いとか、痛いとか、作品には関係ない。本編に必要なものしか、現場にはないんです。○不器用な男・万次に抱く「哀れみ」――万次をどんな男と捉えていますか?不器用ですよね。なんか、包み込むことができないやつというか。長い間、生きてはいるけども、人を包む優しさというものを持てていない。きっと不器用だから、「必要ない」と思っているんでしょうが、不器用な分、正面から当たって向き合っていく。愛おしさを超え、哀れみを感じます。台本は設計図。だからといって台本とは別に原作を現場に持ち込むとか、(市原)隼人みたいにハイエナの捕食動画を見るとかもなかったんですけど(笑)、温度というか、どこか基準として感じていたかったので、沙村先生の画集は近くに置いておきました。――そんな万次をどのように表現しようと思ったのでしょうか?万次は、決して剣に長けた人間ではありません。実はめっちゃ弱いんですよ。八百比丘尼から無理やり血仙蟲を入れられて無限の命を手にし、あとは彼が判断していく。とんでもない時間を生きながら、剣を手にする身としてはずっと決められずに、答えを探し続けてきたんじゃないかと、台本を読んだ後に思いました。そんな彼の前に、杉咲(花)さんが演じてくださった町・凜が現れたことによって、最終的に理由というか答えが出せたんじゃないかと。そういう自分なりのアプローチの中で、撮影させていただいていました。杉咲さんの凜を感じると、自ずと答えが出てきました。■プロフィール木村拓哉1972年11月13日生まれ。東京都出身。O型。これまで数々の出演ドラマをヒットさせ、映画では『君を忘れない』(95)、『HERO』(07・15)、『SPACE BATTLESHIP ヤマト』(10)などに出演。スタジオジブリ作『ハウルの動く城』(04)ではハウルの声優を好演した。山田洋次監督がメガホンを取った時代劇主演映画『武士の一分』(06)は、興行収入40億円を超えるヒットを記録した。
2017年04月30日俳優・木村拓哉が、2006年公開の『武士の一分』以来となる時代劇主演に挑んだ。初タッグとなる三池崇史監督が「キャスティングは運命」と語る通り、木村は吸い寄せられるように『無限の住人』(4月29日公開)に身を投じ、百人斬りの異名を持つ不死身の侍・万次を憑依させた。剣客集団・逸刀流に両親を殺され、敵討ちを渇欲する少女・浅野凜の用心棒を請け負いながら、「正義とは何か」「命とは何か」を投げかける。1993年から2012年まで漫画家・沙村広明氏が命を削るように描き続けた万次を、木村はどのように体現したのか。「無限」を「時間や時空ということではなく、想い」と捉えていた木村。今回のインタビューでは全6回・約7000字にわたり、本作に対する木村の「無限の想い」に迫る。第1回は「三池崇史監督との出会い」と「三池組」について。○「とんでもない返事をしちゃった」――本作の制作が発表された時、「今回参加するにあたって三池崇史さんという存在が大きかったですし、映画監督が映画を撮りたいという前提で自分を欲してくれたということが一番大きかったです」とコメントを出されていました。あらためてお気持ちをお聞かせください。そこに尽きます。目の前に三池崇史さんがいて、「やろうよ」と言われたこと、それがすべてです。出演を決めた「経緯」とかはなく、時間の流れは全然ありません。その「瞬間」というか。一映画監督が「やろうよ」と言ってくださったことに尽きます。監督の初対面、正直僕も相当構えていたと思います。後日、監督から「趣味、威嚇でしょ?」と言われるほどで、その時はすぐに「そんなことないです」と否定しました(笑)。お会いした場所が特殊な環境で。収録場所まで来てくださったんです。そんな状況で「三池崇史」が現れた。監督はどこか「Let’s」な感じではなくて、「Excuse」な感じ。後日、「それは威嚇されたからだよ」と説明されて笑い話になったからよかったんですが、正直、すごく間合いを取り合っていたような気がします。威嚇ではなく、構えていた。若干色が入ったメガネを掛けられているんですが、その奥には監督としての責任を果たしてきた方の眼差しがありました。「信じたい」という思いになり、「よろしくお願いします」という言葉を掛けさせていただきました。その後に、便利な通販のアプリで原作を大人買いして読んでみると……とんでもない返事をしちゃったなと(笑)。○ヘアメイクの反応にハラハラ――三池監督は、万次と木村さんは相通ずるものがあるとおっしゃっていましたが、それについてはどのように思いますか?三池監督はそうおっしゃるんですけど、そうやって荷物を背負わされる感じはあります(笑)。監督の中でのイメージなんでしょうね。でも……そこまで孤独じゃないですよ? 万次ほどは(笑)。――三池組は何度も衣装合わせをすることでも知られていますが、実際に体験していかがでしたか?最初は「なぜ?」と思いました。でも、回を重ねていくごとに安心していく。監督、衣装部が「よしよしよし」と大事に作り上げていく場ではなく、僕らのためにやってくれているんだと気づきます。「ようこそ三池組に」みたいな雰囲気はありません。自分が手にする鉄の武器を、すごくぶっきらぼうに渡される。でも、そこでの感覚は1つも無駄になっていません。最初の頃、メイクを統括するスタッフの方が沙村先生のイラストとメイクした自分を見比べて、首をかしげたときは、さすがに「いやいやいや!」と焦りました(笑)。■プロフィール木村拓哉1972年11月13日生まれ。東京都出身。O型。これまで数々の出演ドラマをヒットさせ、映画では『君を忘れない』(95)、『HERO』(07・15)、『SPACE BATTLESHIP ヤマト』(10)などに出演。スタジオジブリ作『ハウルの動く城』(04)ではハウルの声優を好演した。山田洋次監督がメガホンを取った時代劇主演映画『武士の一分』(06)は、興行収入40億円を超えるヒットを記録した。
2017年04月28日松雪泰子が一人二役で、橋本愛、成海璃子の“母親”役を演じる『古都』。松雪さんといえば、かっこいい、儚い、色っぽい、上品。見る人によってまるで異なるイメージを持つが、そんな相反する言葉がどれもしっくり当てはまる魅力を持つ女優。本作では、自身初の一人二役に挑んだ松雪さんの、また新たな一面が堪能できるという。川端康成の不朽の名作を現代版にアレンジし、原作では描かれなかった大人になった主人公たちの物語として映像化。監督を務めるのは、高校卒業後に渡米し、ハリウッドで8年映画作りを学び、アレハンドロ・G・イニャリトゥの『バベル』などの現場に参加した経験を持つYuki Saito。ドラマ「昼のセント酒」や数々の短編映画、CMなどで高い評価を得てきたが、本作が商業長編映画デビューとなる。松雪さんが一人二役で演じるのは、夫・竜介(伊原剛志)と共に京都室町に先祖代々続く「佐田呉服店」を継ぎ、室町で穏やかな暮らしを守り続ける千重子と、京都のはずれの北山杉の里で夫と林業を営む苗子という双子の姉妹。繊細で思慮深い千重子と、おおらかでチャーミングな苗子を完璧に演じ分けた松雪さんは、今回、脚本作りから積極的に参加。役作りに関しても明確なヴィジョンを持っていた。幼いころから日本舞踊を習っており、着物に対する造詣も深かったという。Saito監督は、松雪さんから母親の気持ちも含め、教えられることばかりで「千重子、苗子の本人と打ち合わせをしているみたいでした」とコメントを寄せる。さらに、一人二役に関しても、千重子が使う“室町言葉”と、苗子が使う“北山弁”というニュアンスの違う「京言葉」を徹底して学び、千重子から苗子に変わった際には、現場に入った瞬間から放つオーラまでもが明らかに違っていたという。松雪さんは、本作の撮影に参加する前に着付け、茶道、京言葉、京料理の稽古を約1カ月にわたり重ねて、この役に挑んだ。特に呉服屋で伝統を守り続ける千重子を演じるにあたり、着付けやさまざまな所作を学んだという。松雪さんは「着用した着物もすばらしく、帯や着物一つ一つに込められた意味を、着付けの先生にお尋ねして、学んだことも多かったですね。美しい所作を求められる映画でしたので、現場で集中し、意識して臨んでいました」と語る。作品ごとにまったく違う表情を見せる松雪さんだが、本作はまた1つ、一流の演技者であることを裏づける作品となったようだ。『古都』は全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:古都 2016年12月3日より全国にて公開(C) 川端康成記念會/古都プロジェクト
2016年12月04日女優の松雪泰子が3日、都内で行われた映画「古都」の初日舞台挨拶に、橋本愛、成海璃子、葉山奨之、伊原剛志、新山詩織、Yuki saito監督とともに登壇した。同作は、1962年に新潮社より刊行された川端康成『古都』の現代版として、原作では描かれなかった大人になった主人公の物語として映像化したもの。松雪は生き別れた双子の姉妹、伝統の継承に生涯を捧げる呉服屋の姉・佐田千重子と、北山杉の里で働く妹・中田苗子の2役を演じ、千重子の娘・舞を橋本が、苗子の娘・結衣を成海が演じる。11月26日からの京都先行公開を経て、いよいよ全国公開となることについて松雪は「川端康成先生の文学に表現されている京都の美しさ、自然の豊かさ、そして情緒とそこに生きる人の純粋性がこの作品にもしっかりと流れていますし、改めて日本文化の素晴らしさを体感していただける作品だと思いますので、それが京都で生み出され、皆さんの元に届けられるということに嬉しく思っています」と感慨深げに語った。また、日本文化を親から子へ継承していく姿が描かれている同作で、自身の役を演じながら感じたことを聞かれた松雪は「受け継ぐ側の子どもたちって、そのことで自由がなくなってしまう可能性もあると思うんですけど、日本人の精神性、文化の豊かさ、なくしてはいけない伝統産業を守ることでいうと、それを次の世代に伝えていくことは非常に重要なことだと思いますし、それをどのような形で若い世代の方に伝えるかというのがテーマだと思います」と吐露し、「自分もこの作品に関わって、今でもまだどうつなぐべきかというのは答えは模索中ですが、(この映画を)見ていただくと、もしかしたら家族で向き合って話してみようかなとか、何か思っていただけるんじゃないかなと思います」とアピールした。橋本が演じた役にちなみ、自分の進路に悩んだり、親子の関係に葛藤した経験があるか聞かれた松雪は「ありましたが、好奇心旺盛で自分が進みたい道に進むという意志の強さが自分にはあったので、(両親は)そういう意味では手を放して見守ってくれました」とコメント。さらに、成海が演じた役にちなみ、自分の道を貫いて進んでいく女の子の気持ちをどう思うかきかれると「未知の世界に怖がらずに挑戦していくというのはすごく大事なことだなと思いますし、割と自分は無謀なタイプで、若いときは出来るか出来ないか分からないのに走って行っちゃうタイプだったので共感できますね」と話し、「私は見守る立場の母親を演じたのですが、かつての自分を見ているような感じにもなりました(笑)」と打ち明けた。
2016年12月03日トラブル発生、親としてわが子にどう向き合うか 「間違ったらやり直せばいい」と、親が言えるか? 「怒られずに済んだ」という成功体験をつくらない 大人は正解を言ってはいけない 自主的に学ぶ子は、こうやってできる の続きです。「親が自分の子どもを見ようとしていないだけ」と、木村先生。そう言われると、「もやっ」とするのは、なぜだろう? それは心当たりがあるからだ…。■その子が思っていることを、その子がわかるように通訳する―― 親は、ついつい、子どもを自分の思う通りに動かしたくなります。「これは、こういうことでしょ」と整理したくなります。それが「教育」だとすら思っています。木村先生(以下、木村):整理というよりも、その子が思っていることを、その子がわかるように通訳することね。整理っていうのは、大人がやってしまうことが多い。でも、大人がやってしまったら、子どもは大人の整理に乗らないといけなくなります。―― 子どもが一番できていないことは、「自分との会話」ということですか?木村:大人が整理して、そこに子どもをのせようとしてしまう。その子だけを見たらいいんですよ。でも親は、周りを見たり、学校を見たりするじゃないですか。―― あと、親自身の価値観というのもありますよね。「この枠内でないとダメ」という思い込みというか…木村:そんな迷惑なことはありません。親の価値観を押し付けられるほどに、子どもは親を信頼しなくなる。信頼しなくなるだけじゃなくて、親のために仮面をかぶって生きようとする。それは 子どもの権利条約 違反。条約違反ですよ?親は自分の価値観を子どもに当てはめたい。でも、親の価値観は、自分がこれまで生きてきた中で培った価値観でしょ?子どもに必要なのは、この先、10年、20年、30年、40年、50年、60年後を生きるための価値観。親の価値観なんて過去の化石や。そんなもん、どれだけ子どもに与えても、子どもは時代を逆戻りするだけです。■親が子に望むべき価値観とは?―― 親が自分の価値観を子どもに押し付けないようにするには、どうしたらいいんですか?木村:勉強してほしい、いい大学に行ってほしい。安定した職業に就いてほしい。親が子どもにこうしたことを願うこと自体は、何も悪くない。でもこれは、親が子どもに望んでいい価値観の2番目です。そんな価値観を持ってはいけないことはない。なんぼでも持っていたらいいんです。でもそれは、あくまでも2番目。―― では、1番目は?木村:その子が「僕は(私は)、これで幸せだ」と思ってくれることでしょう。いい大学に行って、いい会社に行ったとしてもね、何かにぶつかって閉じこもったとしたら?「そこまでは親の価値観を見事に果たしてくれたけど、この先、どうすんねん!」みたいな子が、山ほどいる。―― もしもそうなってしまったら、どうしたらいいんですかね?木村:何かにぶつかったとしても、その子が自ら、「自分がやっていることは、自分にとってためになることなんだ。幸せなことなんだ」と思えば、なんとかなると思います。どんないい大学に行っても、「自分の意志に反している」「やらされている」と思ったら幸せではないはず。大事なのは、子どもが自ら選択するということです。―― 考えとしてはわかるのですが、「そこまでユルくはなれない」という抵抗感があるのですが…木村:親も、ただ子どもを放っておくだけではだめです。子どもが自分でした選択を後悔しないように、いろんなアドバイスをシャワーのように入れてあげる。「大学卒業するのとしないのとでは、変わってくることもあると思うで」「大学で得た経験が、社会に出て役立つこともあるで」と、親は情報のシャワーを浴びせたらいいんです。そして、最後に一言「ま、大学、行きたくなったら、いつでも行けばいいやん」という可能性を言ってあげれば、子どもは迷わず自分の道を選べるでしょう?周りに動かされたわけではなく、すべては自分が決めたこと。それを自分の力でやる。失敗しても落ち込まなくていい。やり直せばいい。この生き方を身につけさせる。それが、学歴がどうのとか会社がどうのとか言う前に、一番大事な力なんです。今回は、ここまで! この記事は木村先生の取材の、ほんの一部分だ。また機会があれば、ぜひこの続きも書いてみたい。■次の世代に必要な教育ところで、この記事を書いている私は今、3人の男児を育てている母親で、長男は高校1年生、次男と三男は小学校6年生の双子だ。彼らを育てながら漠然と「学歴なんて、もはや、ほとんど意味がないのではないか?」とか「これからは生きる力が必要だ。その力って、どうすればつけてあげられるんだろう」そんなことは考えてはいるが、いかんせん「次の世代に必要な教育」の具体的な姿が見えなかった。見えなかったからこそ、「今の教育」にしがみついてしまっていたのかもしれない。けれども今回、木村先生の話を伺って、その姿がようやく見えてきた気がする。木村先生の実践されてきた教育こそ、これからの日本にとって必要な教育だと感じている。たとえるなら、「あっちに、行けばいいんだ!」という未来の灯のようなものだ。今後、この灯りの姿を私自身がもっともっと知りたいし、ほかの親御さんたちともシェアしていきたいと思っている。■今回取材にご協力いただいた木村泰子先生の著書 『大人がいつも子どもに寄り添い、子どもに学ぶ!「みんなの学校」流 自ら学ぶ子の育て方』 (木村泰子・著/小学館 本体1,500円+税)
2016年11月12日トラブル発生、親としてわが子にどう向き合うか 「間違ったらやり直せばいい」と、親が言えるか? 「怒られずに済んだ」という成功体験をつくらない 大人は正解を言ってはいけない の続きです。「相手に謝ることを目的とする生活指導で問題解決をしようとするから、『いじめた子』『いじめられた子』、その両者が安心できる学びの場が奪われていくわけよ」と、木村先生。でも、わが子がお友達をいじめてしまった場合、とても、とても、そんな気持ちにはなれない。それはつまり、親がわが子に向き会えていないということなのだろうか。■スーツケースに入れるのではなく風呂敷に包む―― 親が「わが子に向き会えてないな」と思ったら、どうしたらよいでしょう?木村先生(以下、木村):「どうして正直に言えないの! そんな育て方をしてないよ!」ではなくて、「この子が正直に何かを言うには、自分はどんな親になるべきなんやろう?」と考えるのがいいです。子どもが怯えずに何でも言える、何を聞いても怒らない、子どもをゆったりと包む、風呂敷のような親になるべきです。でもスーツケースやねん。今の親たちは。―― スーツケース?木村:スーツケースっていうのは、スーツケースの中にしか自分の大人としての正解がない状態です。その中に子どもが入られへんかったら、自分が安心できない。でも、風呂敷だったら、端っこに子どもがコロっとくれば包んであげられるでしょ? その子が風呂敷の中に入ろうとするのは可能でしょ?―― 親は風呂敷になれと。木村:スーツケースと風呂敷って理屈じゃなく、イメージで伝わるはず。それだけのことです。「どうする?」と言って、「どうしたらいいかな? わからん」って子どもが言ったときに初めて、「じゃあさ、自分はどうしたい?」と聞く。たとえば、「自分はどうしたい?」と聞いたら、「怒られたくない」という子がいた場合、ベテランの教員でも「怒られたくない」という子に対して「だって、自分で悪いことしてしまったんだから、怒られたって仕方ないやん」と諭すでしょう。■自主的に学ぶ子は、こうやってできる―― たしかに言ってしまいますね。木村:でも、子どもは「怒られたくない」って言うてる訳でしょ? それは怒られることを拒否しているんやわ。そしたら文字どおり、怒られない子になったらいいのよ。―― え? どういう意味ですか?木村:「本当に悪いことしました」って本気で反省している子どもに、怒る大人はアホや。「怒られたくない」って子どもが言うたら、「オッケー、そしたら怒られないようにする作戦、考えようぜ」と。そんなん、簡単なんです。子どもと私が乗った電車が一緒なんだから。「怒られたくない駅」に到着する電車に一緒に乗るだけです。―― えーっと、思考がついていきません…。木村:難しいことじゃない、簡単なことよ?「怒られたくないなら、どうする?」って言うたら、「俺、あの子に謝るわ」って、ほとんどの子が言います。だって謝らなかったら怒られるって、ほとんどの子は知っている。謝ったら怒られない。だから「怒られない作戦」を立てるとなると、子どもは自ら「自分が怒られない」という目的に向かう訳でしょ? 子どもが嘘をついている原因は、怒られたくないから。怒られないように嘘をつく。でも、怒られたくないなら、そのための手段は嘘をつく以外にいっぱいあります。それを考えて、子どもは自分で動きます。これが、自主的に学ぶ子ということです。―― 道筋を説明してもらえれば、わかりますね。…と思いつつ、何かモヤモヤしますが。木村:納得の話でしょ? 親が自分の子どもを見ようとしていないだけだと思いますよ。■今回取材にご協力いただいた木村泰子先生の著書 『大人がいつも子どもに寄り添い、子どもに学ぶ!「みんなの学校」流 自ら学ぶ子の育て方』 (木村泰子・著/小学館 本体1,500円+税)
2016年11月11日