松本清張原作のTVドラマシリーズ『松本清張の絢爛たる流離』初のデジタル配信が、本日11月3日(金・祝) よりスタートした。2022年に没後30年を迎えた、日本の誇る推理サスペンス小説界の巨星・松本清張。今昔問わず、一般的に原作小説が映画化・TVドラマ化されることは非常に多いが、こと松本清張の特徴は、映画・TVドラマの両方で(しかも同原作が複数回)映像化されている作品が多いということ。たとえば『点と線』『砂の器』『ゼロの焦点』などの名作が映画化かつTVドラマ化され、劇場ヒット作となり、TV高視聴率を記録している。このことは、松本清張作品の“原作力”の強さを如実に示しており、また、分かり易く親しみやすい作風の証左であると言える。ちなみに、映画化こそされてはいないが、『黒革の手帖』は1982年、1984年、1996年、2004年、2005年、2017年と連続・単発含めて5回TVドラマ化されており、米倉涼子主演の2004年版で知る人が多いかもしれないが、昨年の清張没後30年を機に山本陽子主演&田村正和共演の1984年版が初デジタル配信となり、今秋期間限定でYouTube無料公開されるなど、人気を博している。そして今回配信が開始された『松本清張の絢爛たる流離』は、1987年3月30日から4月2日までテレビ朝日系列にて4夜連続で放映された、単話完結の全4話構成。それぞれ主演は真野響子、小川眞由美、眞野あずさ、和由布子(現五木ひろし夫人)が務め、ダイヤモンドの指環を手にした瞬間から運命を変えられ翻弄されながらも、もがきあがく女たちの姿を通して、女の欲望と情念の深さ、したたかさ、たくましさが描かれている。<作品情報>『松本清張の絢爛たる流離』配信中()第1話「美しい人妻の復讐」『松本清張の絢爛たる流離』第1話「美しい人妻の復讐」恋人との仲を裂かれたことで、男という男はすべて憎んできた妙子。3カラットのダイヤの指輪をもらうことを条件に婿養子をとった妙子は、夫・忠夫を離れに住まわせ、ふたりの男と夜な夜な恋のゲームを楽しんでいた。そんな中、忠夫が死亡し、殺人容疑で妙子が起訴処分へと追い込まれてしまう……。出演:真野響子、江原真二郎、中島久之、綿引勝彦、河原崎建三原作『土俗玩具』脚本:吉田剛監督:真船禎第2話「銀座の女の完全犯罪」『松本清張の絢爛たる流離』第2話「銀座の女の完全犯罪」銀座の一流バーでママを務める佐保子は、パトロンの隆平からある日ダイヤの指輪を贈られる。一方、バーテンの二郎とも関係をもつ佐保子は、「俺を捨てたらふたりを殺す」と脅されるが、そんな中、隆平が二郎の存在を知るとすぐに、二郎が何者かによって殺されてしまい……。出演:小川眞由美、本田博太郎、加藤和夫、小松方正、池部良、日高澄子原作『陰影』脚本:柴英三郎監督:真船禎第3話「離婚した花嫁の殺意」『松本清張の絢爛たる流離』第3話「離婚した花嫁の殺意」OLの澄子は、政治家・粟島重介の仲介で群馬県の豪農・平垣新一と見合いをする。平垣家は、婚約の証として3カラットのダイヤの指輪を粟島に託すと、澄子は妻子ある恋人と別れ平垣の元へと嫁いだ。しかし、その直後、新一のアルコール依存症が発覚すると澄子は一切を捨て逃げ帰るが、実はそれが政治資金を出させるための粟島の企みだったと知り……。出演:眞野あずさ、伊東四朗、五代高之、錦野旦、稲垣昭三原作『夕日の城』脚本:須川栄三監督:真船禎第4話「年上令嬢の危険な誘惑」『松本清張の絢爛たる流離』第4話「年上令嬢の危険な誘惑」登代子(和由布子)は青年実業家の崎川(並木史朗)と婚約中で、幸せな日々を送っていた。ある日、別荘近くの建設現場で働くまじめな少年、次郎(西川弘志)と知り合いになった。別荘に連れて来ては、弟のようにかわいがっていたが、その次郎が登代子に婚約者がいることを知った……。出演:和由布子、西川弘志、並樹史朗、西川のりお原作『消滅』脚本:岩間芳樹監督:真船禎(C)松竹
2023年11月03日女優の松本まりかが、ミューズを務めるワコールの新WEBコンテンツ「松本まりかのOFFりかた」「OFFるオトナの読み聞かせ」に登場する。○■松本まりか、ワコールWEBコンテンツ「水曜のOFFる夜」に登場ワコールでは、平日の折り返し地点である水曜日の夜を、1週間を乗り切るために特にリラックスして過ごしたいタイミングと位置づけ、快適かつ気分が上がるナイトウェアを着て自分らしく過ごす“上質なナイトタイム”を提案。ここちよいナイトタイムを過ごすヒントとなるような新WEBコンテンツ「水曜のOFFる夜」を、23日より水曜日に3週連続で公開する。「松本まりかのOFFりかた」では、松本がリラックスタイムの過ごし方を紹介する。ドラマや映画に出演し、多忙を極める松本にとって、ナイトタイムは体と心をしっかり休めて自分をいたわるための大切な時間。そんな松本がリラックスモードになる、素の自分に戻る方法を「OFFりかた」と表現し、ワコールのナイトウェアを着用してプライベートで行っているボディケアや映画鑑賞など独自の「OFFりかた」を語る。第一夜(23日)は「ストレッチで疲れをリセット からだが喜ぶOFFタイム」、第二夜(30日)は「ハーブティー片手に 自分と向き合う静かな夜」、第三夜(9月6日)は「知的好奇心を満たす映画鑑賞で 精神的にもリフレッシュ」を届ける。最近ピラティスにハマっていて、日頃からストレッチをこころがけていると話す松本。「お気に入りのナイトウェアに着替えて筋膜リリースをすると心身ともにほぐれていくのを感じます」と自宅での取り入れ方を語る。おやすみ前はハーブティーを楽しみ、日記を書くことが習慣になっているとか。「去年、3年日記が完成したので、今年から5年日記に挑戦中。その日の出来事や感じたことを書きとめます。私にとって日記は、よりよい自分になるためのセラピーのようなものかもしれません」とルーティンを明かした。また、ひとり静かに映画作品と向き合うことも「OFFりかた」の1つだといい、「私にとって映画は知見を広げるだけでなく、自分の感性をリセットしてくれるもの」と映画鑑賞の意義を語っている。「OFFるオトナの読み聞かせ」は、心落ち着く川のせせらぎなど自然の音とともに、松本が癒しボイスで夜にまつわる詩を読み聞かせする音声コンテンツ。第一夜(23日)は『星めぐりの歌』(宮沢賢治)、第二夜(30日)は『月が出る』(小川未明)、第三夜(9月6日)は『湖上』(中原中也)が公開される。
2023年08月23日松本マラソン完走を目指そう「松本マラソン2023」は、長野県松本市にて2023年11月12日(日)に開催します。難コースともいわれる松本マラソンですが、「魅せたい三ガク都がここにある」を大会テーマに、松本の持つ魅力がぎっしり詰まったコースを走り抜けます。晩秋の難コースにチェレンジしてみませんか。開催概要について会場は松本市総合体育館。種目はマラソン(42.195km)、ファンラン(10km)、ファミリーラン(1.8km)の3部門があります。参加費はマラソンが12,000円、ファンランが4,000円(中高生3,000円)、ファミリーランは、大人1名・子供1名の組が3,300円、大人1名・子供2名の組が4,400円です。制限時間はフルマラソンが6時間、ファンランが1時間30分、ファミリーランが20分です。ファンランは計測・表彰はありません。晩秋の松本平を満喫できるコース松本マラソンのコースは「松本城と城下町を感じるエリア」「アップダウンの激しい赤木山エリア」「広大な眺めの信州スカイパークエリア」の3つのエリアに分かれています。前半は、松本のシンボル国宝松本城の天守を眺めながら走り、中盤からはアップダウンを感じる高低差のあるコースになります。後半は、信州スカイパーク内の秋ならではの景色を楽しみながら走ることができます。(画像は公式サイトより)【参考】※「松本マラソン2023」の公式サイト
2023年05月02日松本市浅間温泉エリアの観光活性化を目的として、宿泊施設の運営や観光関連施設の誘致などに取り組む株式会社WAKUWAKU浅間温泉(本社:松本市浅間温泉、代表取締役社長:岡 嘉紀)は、運営する「onsen hotel OMOTO」の屋上を改修し、北アルプスや松本の夜景を見渡す絶景の展望サウナを4月1日(土)にオープンいたします。北アルプスを眺める展望デッキ■北アルプスを見渡す、絶景の展望サウナ当館の中で最も景色の良い場所に、セルフロウリュが可能なフィンランド式サウナと温度管理された水風呂、展望デッキを設置しました。屋上に大きなランドスケープをつくることを目指し、西側に現れる北アルプスの山並みが主役となるような空間となっており、夕暮れの景色や朝日を浴びた山々の風景と共に、他にはないサウナを楽しむことができます。夜のサウナのライトアップ■夜は、松本の夜景を一望日が暮れると、サウナのランドスケープを映し出すようにライトアップされ、松本の夜景が広がり、昼間とは違った雰囲気に包まれます。サウナをご利用されないお客さまも、夜風を浴びる入浴中の休憩や景色を楽しむ展望テラスとしてご利用いただけます。サウナ建屋の中からの北アルプス■景色を楽しむ工夫やヒノキの質感7階の大浴場からつながる屋上のサウナは、外壁の角度などを工夫し、大きな窓を設けることで、サウナの中から北アルプスの山並みを一望することができます。お客さまが触れるサウナの内部、水風呂の縁や外気浴のためのベンチには、質感として暖かみのある天然木のヒノキを使用しています。サウナのドアの押し手には、元々屋上にあった大きな看板の「お」の一部が再現されているなど、当館の記憶や歴史と共にお楽しみいただけます。■「onsen hotel OMOTO」の歩み当館は、創業100年の「ホテルおもと」を引き継いでリニューアルし、2020年7月に開業しました。2020年2月の事業承継から改修工事を開始する時期に新型コロナの感染拡大が始まり、開業後からこれまでは、コロナ禍の影響を大きく受けた営業となりました。その中でも、多くのお客さまにお越しいただけるようになり、3年目となる今年度には、年間約13,000人のお客さまにご宿泊いただき、黒字化も達成する見込みです。当館は、「泊食分離」のサービスのため、年間約13,000人の宿泊客のほとんどが地元で食事をとるなどしており、繁忙期には、近隣の飲食店が不足するほどの地域経済への波及効果をもたらしています。【onsen hotel OMOTO 概要】所在地 : 長野県松本市浅間温泉3丁目13-10アクセス: 松本駅から路線バスで20分程度駐車場 : 有URL : 【株式会社WAKUWAKU浅間温泉 概要】会社名: 株式会社WAKUWAKU浅間温泉代表者: 岡 嘉紀所在地: 長野県松本市浅間温泉三丁目13番10号URL : 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年03月20日プロの料理レシピサイト「E・レシピ」がご紹介する今日の夕食にオススメの献立は、 「簡単おいしい!基本の炊き込みご飯 by 山下 和美さん」 「巾着卵」 「大根の合わせみそ汁」 の全3品。 具だくさんの炊き込みご飯に、食べ応えのある煮物と赤だしを合わせました。 【主食】簡単おいしい!基本の炊き込みご飯 by 山下 和美さん 鶏肉とゴボウの入った簡単炊き込みご飯です。冷めてもおいしいので、おにぎりもおすすめです。 調理時間:1時間10分 カロリー:349Kcal レシピ制作:フードコーディネーター 山下 和美 材料(2人分) <具> 鶏もも肉 75g ゴボウ 1/4本 ニンジン 1/8本 シメジ 1/4パック お米 1合 <調味料> 酒 大さじ1 みりん 大さじ1 薄口しょうゆ 小さじ2 だし汁 150~170ml 貝われ菜 適量 【下準備】 お米は炊く30分以上前に水洗いし、ザルに上げておく。鶏もも肉は細かく刻む。 ゴボウはタワシでこすりながら水洗いし、ささがきにして水に放ち、水気をきる。ニンジンは皮をむき、細切りにする。シメジは石づきを切り落とし、小房に分ける。 【作り方】 1. 炊飯器に洗い米を入れ、<調味料>の材料を加え、お米1合分の目盛りまでだし汁を足す。<具>の材料をのせてスイッチを入れる。 2. 炊き上がったら、器によそって貝われ菜をのせる。 【副菜】巾着卵 半熟の黄身があふれ、油揚げからはジュワッとお出汁が染み出ます。 調理時間:15分 カロリー:324Kcal レシピ制作:フードコーディネーター 山下 和美 材料(2人分) 油揚げ (いなり用)4枚 卵 4個 小松菜 1/2束 <合わせだし> だし汁 300ml 酒 大さじ2 みりん 大さじ2 砂糖 大さじ1 薄口しょうゆ 大さじ2 【下準備】 油揚げはめん棒で軽く押さえ、1辺を切り落として袋状に開く。小松菜は根元を切り落とし、長さ4cmに切る。 【作り方】 1. 油揚げに卵を入れ、つま楊枝で留める(4個作る)。小鍋に<合わせだし>の材料を入れて中火にかける。 2. 煮たったらそっと油揚げを入れ3分程煮る。裏返してさらに5分程煮る。残った煮汁で小松菜にサッと火を通し、器に盛り合わせる。 【副菜】大根の合わせみそ汁 いつものみそ汁に赤みそをプラス。コクが出ます。 調理時間:10分 カロリー:48Kcal レシピ制作:フードコーディネーター 山下 和美 材料(2人分) 大根 2cm 白ネギ 1/4本 だし汁 400ml みそ 大さじ1 赤みそ 大さじ1 七味唐辛子 適量 【下準備】 大根は皮をむき、棒状に切る。白ネギは斜めに切る。 【作り方】 1. 鍋にだし汁と大根を入れて中火にかけ、大根が透明になったら、白ネギを加える。 2. 煮たったら弱火にしてみそと赤みそを溶き入れ、器に注ぎ、七味唐辛子を振る。
2023年02月27日プロの料理レシピサイト「E・レシピ」がご紹介する今日の夕食にオススメの献立は、 「ピリ辛タレでお箸が止まらない!鶏もも肉のネギまみれ by 山下 和美さん」 「ゴマ油香る!カニカマの中華風卵焼き by 山下 和美さん」 「セロリの漬物」 の全3品。 ゴマ油のきいた中華の献立。ビールが飲みたくなりそうです。 【主食】ピリ辛タレでお箸が止まらない!鶏もも肉のネギまみれ by 山下 和美さん ジューシーな鶏もも肉をフライパンで焼いて薬味のきいたたっぷりのネギでいただきます。ピリ辛のタレが食欲をそそります! 調理時間:15分 カロリー:698Kcal レシピ制作:フードコーディネーター 山下 和美 材料(2人分) 鶏もも肉 2枚 塩コショウ 少々 片栗粉 適量 青ネギ 1束 塩 少々 <タレ> 砂糖 小さじ2 しょうゆ 大さじ1.5 酢 大さじ1.5 ゴマ油 大さじ1.5 ラー油 少々 ショウガ (すりおろし)1片分 サラダ油 適量 糸唐辛子 適量 【下準備】 鶏もも肉は余分な脂を取り除き、食べやすい大きさに切って塩コショウし、全体に片栗粉をまぶす。青ネギは小口切りにする。 【作り方】 1. 抗菌袋に青ネギと塩を入れ、袋の上から軽くもんでしんなりさせる。<タレ>の材料を加えて混ぜ合わせる。 2. フライパンにサラダ油を中火で熱し、皮を下にして鶏もも肉を並べ入れ、両面をこんがりと焼く。器に盛って(1)をかけ、糸唐辛子をのせる。 【副菜】ゴマ油香る!カニカマの中華風卵焼き by 山下 和美さん カニ風味かまぼこが入った卵焼きの中華風アレンジ。ゴマ油で焼くと風味もアップ!お弁当にもぴったりです。 調理時間:10分 カロリー:145Kcal レシピ制作:フードコーディネーター 山下 和美 材料(2人分) 溶き卵 3個分 カニ風味カマボコ 2本 ネギ (刻み)大さじ1 <調味料> だし汁 大さじ2 砂糖 小さじ1/2 塩 少々 ゴマ油 適量 【下準備】 カニ風味カマボコはほぐす。ボウルにゴマ油以外の材料を全て入れて混ぜ合わせる。 【作り方】 1. 卵焼き器を中火で熱し、ゴマ油を薄くひき、卵液の1/3量を流し入れて全体に広げる。周りがかたまってきたら奥側から手前に巻き、巻き終わったら奥側へ寄せる。 2. 再びゴマ油をひき、同量の卵液を流し入れ、同様に焼く。残りの卵液も同様に焼く。巻きすで形を整え、食べやすい大きさに切って器に盛る。 【副菜】セロリの漬物 急いでいる時は、セロリを薄く切れば味がしみやすくなります。 調理時間:5分+冷やす時間 カロリー:65Kcal レシピ制作:フードコーディネーター 山下 和美 材料(2人分) セロリ 1本 塩 少々 ゴマ油 大さじ1 ニンニク (すりおろし)1/4片分 赤唐辛子 (刻み)1本分 【下準備】 セロリは筋を引き、幅1cmの斜め薄切りにする。 【作り方】 1. 抗菌袋に<調味料>の材料とセロリを混ぜ合わせて袋の外からもみ、しんなりするまで冷蔵庫で冷やし、器に盛る。
2023年02月26日2月に長野・まつもと市民芸術館小ホールと東京・東京芸術劇場シアターウエストで上演される舞台『博士の愛した数式』より、脚本・演出の加藤拓也と「博士」役・串田和美のオフィシャルインタビューが到着した。湖に手を入れたら毒がついていた。そんな美しさがある舞台『博士の愛した数式』が上演される。原作は、第1回本屋大賞を受賞した小川洋子のミリオンセラー小説。脚本・演出は、気鋭の演出家として高い評価を受ける劇団た組の加藤拓也が務め、事故によって80分しか記憶が持続しない「博士」を串田和美が演じる。51歳差の2人の演劇人が名作にどう挑むのか。稽古に入る前の胸の内を語ってもらった。――加藤さんと串田さんは劇団た組の『今日もわからないうちに』(2019年)で初めてご一緒されました。そのときに印象的だったことはなんですか。串田僕にはないものをいっぱい持っていて、それが興味深く感じられましたね。たとえば、加藤くんの作品は、ごく普通に日常にあるものを淡々と描いているようで、そこからだんだんありえない世界が生まれてくる。僕はどちらかと言うと、途方のないものを描いているようで、よく見たらこれって誰もが知っているものだったというタイプなので。自分とまったく違うところがとても面白かったです。加藤串田さんが自分の台詞を全部書かれていて。そうやって覚えるんだっていうのが印象的でした。串田それは作家の書いた言葉を自分のものにしたいからなんですね。自分で書いた台詞は、自分の思考を通って出てきたものだからすっと出てくるんですよ。でも他人が書いた言葉はそうじゃない。自分ではこう言わないというような台詞がたくさんあるわけ。そういうものを、さも自分が思いついた言葉のように思い込もうとするために書くんです。――それで言うと、加藤拓也という作家の言葉はいかがでしたか。串田自分からは距離のあるものでした。でもそれが面白いんですよね。自分から遠い言葉がすっと出る人になろうとする努力が役者の楽しみだから。そういう意味でもとても楽しい公演でした。――そんな加藤さんにとって、小川洋子さんという作家の文体や言葉はどう映りましたか。加藤惚れ惚れしますよね。文章のリズムとか、言葉のチョイスとか、僕にはないものがたくさんあって、そこに非常に魅力を感じながら上演台本にさせていただきました。まるで湖の中にそっと手を入れてみて、水面が揺れないようにゆっくりと手を抜くと、手のあたりに毒がついちゃっていたような、そういう美しさを小川洋子さんの文章には感じます。――湖、というのは今回の演出を語る上でキーになるフレーズでしょうか。加藤なるかもしれないですね。僕は小川洋子さんの小説の美しさを人に説明するとき、常に湖と毒というワードを使っています。そういうイメージが僕の中にはありますね。――では、上演台本にするにあたって、そこに自分のカラーを注入したいという気持ちは。加藤まったくなかったです。結局演劇として構成していくときに、僕が演出をするので僕の主観が入るし、俳優の主観、美術や音響、照明みんなの主観が入ってくるから、やっぱり別の形になるんですね。だから、無理に自分の色を出そうとか、そういうことは一切考えていないです。いかに庭の石のようにそこにいられるか――音楽は、これまで加藤さんが何度も組んできた谷川正憲さんが務めます。谷川さんのギターの生演奏は、加藤さんの演出の特徴の一つです。加藤谷川さんは空気に敏感な人です。今まではずっと俳優から受け取ったものを谷川さんが音にして出すというつくり方をしてきました。でも今回はその逆をやろうと。お芝居をつくる段階から谷川さんに入ってもらって。たとえば、読み合わせからちょっと音を鳴らしてもらったり。そういう遊びを交えてつくりたいなと考えています。――それはなぜそうしたいと思ったんですか。加藤どうなるかわからないからです。俳優の感情がまだ何もできてないときに音が入ると、それに引っ張られることもあると思うんですけど、それが全部ダメなわけではないかなと。今回はもっと自由にアクティングを立ち上げたいなという気持ちがありますね。串田じゃあ稽古だから流す音楽もあるということ?加藤そうですね。本番は流さないということもあります。もちろんぐちゃぐちゃになるかもしれない。でも、俳優だけではなく、みんながこの原作に持っているイメージを1回見てみたいんですよね。『博士の愛した数式』ビジュアル――最後に、お2人はこの作品の中で描かれる「博士」と「私」と「ルート」の関係性についてどんなことをお感じになりますか。加藤すごく不思議な関係ですよね。家族という関係でもなければ、職業的な関係でもないし、非常に美しい関係だなと思います。野生の動物だと、子どもを自立するまで育てる動物もいれば、産んだらぽいってしちゃう動物もいるじゃないですか。じゃあ、どこからが家族なんだろうと考えると、結構不思議で曖昧です。人間のルールだなっていう感じがしますね、家族って。3人は、そこにとらわれてないところが美しいなと思います。串田このお話は、「私」が感じ取らなければ何も起こらなかった。彼女の感性がとても素晴らしいんですよね。特別な人でもなんでもない彼女が、「博士」という人を受け止めたから関係が動いていく。そして、「ルート」はそんな彼女を母親に持ったからこういう子どもになったんだなと頷ける瑞々しい感性の持ち主。逆に言うと、「博士」は何も動かないんです。ただ庭の石のようにじっとしているだけ。そんな「博士」を見て「私」が動くお話です。だから、僕としてはいかに庭の石のようにそこにいられるかが今回のテーマですね。文=横川良明<公演情報>『博士の愛した数式』原作:小川洋子『博士の愛した数式』(新潮文庫刊)脚本・演出:加藤拓也音楽・演奏:谷川正憲(UNCHAIN)出演:串田和美/安藤聖/井上小百合/近藤隼/草光純太/増子倭文江 【松本】日程:2023年2月11日(土)~16日(木)場所:まつもと市民芸術館小ホール【東京】日程:2023年2月19日(日)~26日(日)場所:東京芸術劇場シアターウエスト問合せ:まつもと市民芸術館チケットセンター(10:00~18:00)TEL 0263-33-2200FAX 0263-33-3830公式サイト:
2023年01月28日俳優の神木隆之介、女優の松本穂香が出演する、KDDI「au」の新CM「恋に恋する松本さん」編が9日より放送される。auのCMとしてお馴染みの「意識高すぎ! 高杉くん」シリーズ。今回は、少女漫画のようなシチュエーションに憧れる松本さん(松本穂香)とそれに振り回される高杉くん(神木隆之介)のストーリー。少女漫画の主人公のように食パンをくわえ「ちこくちこくー!」と慌てて登校する松本さん。勢いよく曲がり角に差し掛かると同じく登校中の高杉くんとぶつかってしまうというまさに少女漫画風の展開を迎える。高杉くんは「ごめんなさい……」と松本さんを心配するが、松本さんは「どこ見てんのよこのメガネ!」とわざとらしく言い放つ。高杉くんは「メガネ?」ときょとんとしながら普段とはどこか違う雰囲気の松本さんに違和感を抱く。場面は学校に変わり、高杉くんが扉を開けて教室に入ると、「さっきのメガネ! なんで同じ教室にー?!」と松本さんの声が教室に響き渡ったかと思えば、女子たちと「的な出会い」「あるあるー!」と大盛り上がり。どうやら恋愛作品の話題で盛り上がっている様子で、高杉くんは「何の話……?」とポカン。最後は、窓際で動画を観る松本さんに「何観てるの?」と声をかけてみると、「『初恋』だよ、高杉くん」と振り向きざまに少し照れた表情で答える松本さん。そんな松本さんに高杉くんは胸の高まりが抑えられなくなり、「どぅどぅん」と言ってしまうのだった。
2022年12月09日10月1日(土)から10日(月・祝)までの10日間にわたって長野県松本市で開催される演劇的フェスティバル「FESTA松本2022」が開幕した。本イベントは、まつもと市民芸術館の総監督を務める串田和美が、かねてから構想していた演劇やダンスなどを集めた演劇祭を、自ら総合ディレクターとなって2021年に立ち上げ、パフォーマンスを日常的なものとして楽しんでほしいという想いのもと、まつもと市民芸術館を主会場に、市街地を一つの劇場に見立てて行われる。「FESTA松本2022」URL パンフレットPDF 開幕に先駆けて9月29日(木)に信毎メディアガーデン前にて行われた前夜祭では、伊佐津カルテットのジャズ演奏に始まり、TCアルプによる司会のもと、『スカパン』出演の大森博史、小日向文世や、『別役実 三部作』演出の千葉哲也など、各公演の出演者や演出家らが自らそれぞれの演目を紹介。『バッタの夕食会』出演者と伊佐津カルテットによる劇中楽曲演奏では、公演の出演者たち、そして足を止めた多くの街の人たちが音楽と共に一つに。「FESTA松本2022」開幕に向けた祝いの前夜祭を大いに楽しんだ。撮影:山田毅串田は「FESTA松本2022」開催にあたって、「街と一緒に何かを作ることがすごく大事だと思っている。街の人たちがふと通りかかって観てくれたらそれで十分だし、いろんな人たちがいろんな楽しみ方を見つけてくれたらいいんじゃないかなと思います。」とコメント。「FESTA松本2022」では、今回初参加で第十回市川森一脚本賞を最年少で受賞した注目の若手演出家・加藤拓也の劇団た組『ドードーが落下する』、2023年NHK大河ドラマ出演でも話題の千葉哲也演出『別役実 三部作』、大森博史が主宰する演劇ユニット・Grass919が贈る六つの物語『ミッツアロのカラス』など珠玉の演劇作品はもちろんのこと、島地保武、酒井はなのユニットAltneu(アルトノイ)による芥川龍之介の名作を題材にしたコンテンポラリーダンス『杜子春 -Toshishun-』、日本を代表する振付家たちがコロナ禍に創作した選りすぐりのダンス作品『パフォーミングアーツ・セレクション2022』などのダンス作品も上演。さらに昨年に引き続き、松本の名所・縄手通りが10月9日(日)限りの一日、丸ごと劇場になる「秋の縄手通りカーニバル」にてプロのアーティスト以外にも、市民パフォーマーのパフォーマンスが投げ銭スタイルで楽しめる。そして今回はフリンジ企画も加わり、様々なジャンルのアーティストたちが参加、市内のゲストハウスやカフェなどで行われ、FESTA松本をさらに盛り上げる。10日間で約20プログラムが予定されている「FESTA松本2022」は、10月10日(月・祝)まで。詳細はFESTA松本ホームページにて確認を。「FESTA松本2022」URL ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー串田のライフワークともいえる作品であり、今回の目玉公演でもある『スカパン』は、フランスの傑作喜劇「スカパンの悪巧み」を串田が独自の解釈と脚色で再演を重ねてきた伝説の名作。1994年オンシアター自由劇場での初演以来となる、当時メンバーの大森博史、小日向文世の3人が揃う。串田の息子・串田十二夜、小日向文世の長男・小日向星一も出演と、2組の親子共演も見どころだ。9月30日(金)にはプレビュー公演としてまつもと市民芸術館にて『スカパン』を上演。前日に行われた囲み会見では、串田、大森、小日向がコメント。「この組み合わせっていうのはとにかく嬉しい。自分が一生懸命作ってきた自由劇場の同じ志を持った仲間とこうやってできることってそうはないなと。幸せなことだなと思う。」(串田)、「串田さんがこうして作っている『スカパン』のなんともいえないゾクゾクした世界にうまくリンクしてやってけたら。」(大森)、「自由劇場時代、一緒にやってきたこの仲間とゆっくり、もう一度じっくり楽しんで舞台に立ちたい。」(小日向)と、元オンシアター自由劇場主宰とメンバーという深く長い関係性の3人ならではのざっくばらんな空気の中で質問に答えていた。撮影:山田毅今回は、注目の『スカパン』を観劇した演劇ジャーナリストの川添史子氏からレポートが届いた。串田和美(まつもと市民芸術館の総監督)が総合ディレクターを務める「FESTA松本2022」開幕直前の9月30日、『スカパン』のプレビュー公演が開催された。劇場が薄暗くなると、遠くからカモメの声、そしてざわめき。光が入るともやの中から人形のように無表情の人たちの群れが現れ、すれ違い――。小さな空間が次第に舞台であるナポリの港町に変容し、観客はゆっくりとこの世界へ誘われる。空の色、光の加減、雲の形が徐々に変化するような“ひと色ではない”感覚は、この串田版『スカパン』を覆う気分ともシンクロする。モリエールが描いた原作の見どころは、口がうまくて世渡り上手のスカパンが、若者の恋の手助けをし、威張った金持ち二人を手玉に取ってとっちめる“悪だくみ”っぷり。だが串田版は、ただ底抜けに陽気な喜劇ではない。いたずらしたり大騒ぎしたり、人々と一緒にいる時は明るく振る舞うスカパンだが、犬小屋のような家に戻って一人で過ごす場面などに、彼の孤独と貧しさがふと垣間見える。合間、合間にインサートされる底辺で暮らす男の「生活感」が、物語に陰影を与えるのだ。スカパンがアルレッキーノ(イタリアで16世紀ごろに生まれた喜劇「コメディア・デラルテ」の召使役・道化役)の仮面をつけ、一人無言で踊る場面も印象的。随所で流れる流浪の民の音楽は、根無草で生きてきたスカパンの、ハードだったであろう人生を思わせる。左右にサッと引かれ、どんどん場面を変化させ運んでいくブレヒト幕は、舞台にスピードとリズムを与えていた(幕の隙間から役者がちょっと顔を出すのもチャーミング)。元オンシアター自由劇場のメンバーとして、数々の舞台を串田と共にして来た大森博史(アルガント役)と小日向文世(ジェロント役)が出演というのもジンとくる趣向。軽快に動いて、転げ回って、喋りまくるスカパン串田(驚異的な80歳!)と、終始むっすりとした表情を浮かべるこの守銭奴たちとの味のあるやりとりはユーモラスで、客席を沸かせる。恋に夢中、青春を謳歌する若者たち、オクターヴ(小日向星一)&イアサント(湯川ひな)、レアンドル(串田十二夜)&ゼルビネット(皆本麻帆)の2組のカップルも、周囲が見えない猪突猛進ぶりで笑いを誘う。人生が暮れるのは早い……このバラ色の頬の子どもたちも、すぐに大人になるだろう!今回は、串田親子、小日向親子と、2組の親子共演が実現したユニークな舞台でもある。また、若い頃から串田の元で活動している、武居卓、細川貴司、下地尚子といったTCアルプメンバーがくっきりと個性の輪郭を見せ、頼もしい戦力として活躍するのも、嬉しく眺めた。自然と「人生の時間」について思考が至る座組み/キャスティングである。頼まれるとイヤと言えないスカパンを都合よく利用する若者、使用人に無慈悲な資産家たち。人間の残酷でエゴイスティックな部分を戯画的に拡大してみれば、ここでも“光と影の行ったり来たり”が随所でピリリと効いてきて、なんとも言えない現実味、どんな時代にもある世界のリアルを映し出す。めでたしめでたし、絵に描いたようなハッピーエンドにも、少し苦味が混じる。舞台を見る方たちのために詳細は秘密にしておくが、これまた“ひと色ではない”幕切れである。撮影:山田毅撮影:山田毅ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー公演日程の前半はまつもと市民芸術館の小ホールで、後半は劇場を飛び出し松本城大手門枡形跡広場を会場に野外劇へと変貌する。同じ演目でもガラリと雰囲気が変わり、日が暮れていく松本の街中で、時間によって変わる街の空気や音など野外劇ならではの楽しみ方ができる。是非、秋の松本と共に楽しんでもらいたい。【公演情報】公演名:『スカパン』原作:モリエール「スカパンの悪巧み」潤色・演出・美術:串田和美出演:串田和美大森博史武居卓小日向星一串田十二夜皆本麻帆湯川ひな細川貴司下地尚子/小日向文世公演日程: 松本公演まつもと市民芸術館 小ホール9月30日(金)19:00 ※プレビュー公演10月1日(土)15:0010月2日(日)13:00松本城大手門枡形跡広場(屋外公演)10月6日(木)、8日(土)、9日(日)、10日(月・祝)全日16:30※『スカパン』は松本公演を皮切りに、水戸、北九州、神奈川でも上演。【概要】開催名:FESTA松本2022(フェスタまつもと2022)日程:10月1日(土)~10月10日(月・祝)会場:まつもと市民芸術館、信毎メディアガーデン、上土劇場、松本城大手門枡形跡広場、スイート縄手本店ほか主催:一般財団法人松本市芸術文化振興財団企画制作:まつもと市民芸術館TCアルプ総合ディレクター:串田和美(まつもと市民芸術館 総監督)公式ホームページ お問い合わせ:まつもと市民芸術館TEL.0263-33-3800撮影:山田毅撮影:山田毅撮影:山田毅FESTAフライヤー.pdf : 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年10月01日9月30日(金) より開幕する舞台『スカパン』演出・主演の串田和美と、元オンシアター自由劇場のメンバーでもある小日向文世の対談動画が公式ホームページにて公開された。動画には、和やかな雰囲気のなか二人がリラックスした表情で熱く語る演劇論、そして自由劇場時代の話などを収録。また、串田和美のライフワークとも言える本作についての串田のロングインタビューも到着した。松本を皮切りに水戸、北九州、横浜で上演される舞台『スカパン』。松本城大手門枡形跡広場での野外公演(10月6日〜10日)では、東欧の民族音楽に室内楽の視点を取り入れた全く新しいアンサンブル「ISOLATION ORCHESTRA」の出演が決定。ギデオン・ジュークス(Tuba)、竹内理恵(Sax&Cl)、松本みさこ(Acc)、ふーちん(Per)4人が、開演前と舞台の終盤で生演奏。繊細さと野生味を合わせ持った音楽で舞台を盛り上げる。なお、この特別演出は、野外公演のみのとなっている。『スカパン』串田×小日向インタビュー<串田和美ロングインタビュー>ライフワークに再び挑戦。二世代が揃うユニークな座組み――『スカパン』の原作である、モリエール『スカパンの悪だくみ』の舞台は港町ナポリ。若者たちの恋の手助けをするため、頭の回転が早い召使いスカパンがひと肌脱ぎ、金持ちを手玉に取ったり、威張った主人をとっちめたり……という喜劇です。まずはこの戯曲と串田さんの出会いから伺えますか。串田僕がまだ俳優座の養成所にいた19歳か20歳の頃、戦後初となるコメディ・フランセーズの来日公演(1962年)で観たのが最初です。スカパンを演じたロベール・ウィルシュという俳優が、確か足元はスニーカーで、ぴょんぴょんとはね回りながら曲芸のように芝居をやっていて、とても新鮮だったんですね。その当時モリエールやシェイクスピアといった古典は、言葉を重視した、台詞の言い回しによって客席から拍手が起こるような演技が主流で、この身体的なスカパンは衝撃的でした。余談ですが、養成所の同期、(その後一緒にオンシアター自由劇場を結成する)佐藤信も同じ公演を観ているんです。彼も感動して、終演後に「誰かと話したい」という思いにかられたのに、友達みんながスッと帰っちゃったらしい。がっかりしながらふと横を見たら同じように「誰かと話したい、この気分」という顔をした僕がいて(笑)、夜通し喋った……なんて懐かしい思い出もあります。――串田さんがタイトルロールを演じる『スカパン』の初演は、1994 年シアターコクーンでした。串田もとは喜劇だけど、スカパンという一人の人間が“生きのびる知恵”として口八丁、手八丁で喋りながら動いているというか、人物の根っこや息遣いがうまく出せないかなと考えたのが初演。古い翻訳調の言葉ではなく、内藤俊人さんという大森博史さんの知り合いに新しく訳してもらって、そのテキストをもとに半分オリジナルの脚本を作りました。再演以降は僕が演出してますが、初演は(オンシアター自由劇場のメンバーだった)真名古敬二さんに演出してもらって、劇団みんなで試行錯誤しながらつくったんです。――以前お話を伺った時も「親知らずが奥でうずいているみたいな戯曲」と表現していましたが、串田さんの『スカパン』は、ただ底抜けに楽しい喜劇ではありません。いたずらしたり大騒ぎしたり、スカパンは人々と一緒にいる時は明るく振る舞っていますが、家に戻って一人で食事をする場面などに彼の孤独が垣間見えたり……原作にはない、底辺で暮らす男の「生活感」を感じさせる場面が印象的に挿入されます。串田僕にとってこの作品は、喜劇でなきゃいられないというか、必死で喜劇であろうとする感じがあるというか、奇妙な憂鬱感が感じられる戯曲なんです。スカパンの源流はおそらく、イタリアで16世紀ごろに生まれた喜劇「コメディア・デラルテ」の召使いで、道化役のザンニ、アルレッキーノですよね。ザンニの黒いお面は炭鉱の町出身であることを表していると本で読んだこともありますし、労働者でベルガモ訛りの田舎っぺ……こういったキャラクター造形にはどこか差別的なニュアンスも感じ取れます。そんなことも考えながら、こき使われながらも、たくましく生き抜く術を身につけたスカパンの背景を想像していきました。――原作ではハッピーエンドですが、串田版の終盤でスカパンは、騙されていたことを知った父親二人に雇われた男に襲われてケガを負います。串田原作ではスカパンは死にそうな「フリ」をして主人に赦しを乞いますが、僕の『スカパン』は裏切った仲間に殴られて、最後は孤独の中に死んでいきます。これは『シラノ・ド・ベルジュラック』(エドモン・ロスタン作)の幕切れの場面をイメージしているんです。――そうなんですね!串田瀕死の重傷を負っていることを(長年恋心を抱いていた)ロクサーヌに隠しながら、落ち葉が散る中で死んでいくシラノ……あれも痛切な最期ですよね。『シラノ・ド・ベルジュラック』の台詞に、モリエールの名前が出てくるじゃないですか。――上演ではカットされることも多いですが、確かに戯曲には「モリエールがシラノの作品をパクってる」(※)と茶化したようなユーモラスな会話があります。なるほど串田版『スカパン』のラストシーンには、作家であるモリエールに関連する趣向が引用されているのですね。串田さんはこの作品を何度も上演していますが、繰り返しやりたいと感じる魅力を教えてください。※17世紀に実在したシラノ・ド・ベルジュラックとモリエールは同時代の文化人。『スカパンの悪だくみ』に、シラノが書いた戯曲『愚弄された衒学者』から拝借した台詞があることは広く知られている串田スカパンという人物像、生き方、性分が好きなんでしょうね。いつも一生懸命で、人を面白がらせたり、困った若い人がいると「しょうがないな」と助けてあげる。しかも正義感からではなく、そうせざるを得ない性格というか。ずっと動き回る役なので、僕もいつまで演じられるかわからないけど(笑)、スカパンがすごく年をとったバージョンもありえるかな?なんて考えてみたり。ライフワークと言える作品です。――今回は、元オンシアター自由劇場のメンバーである、大森博史さん(アルガント役)と小日向文世さん(ジェロント役)が参加します。息子たちに翻弄される父親たちですね。また串田さんのご子息・串田十二夜さんがジェロントの息子レアンドル役、小日向文世さんのご長男の小日向星一さんがアルガントの息子オクターヴ役として出演。なんと今作では、2組の親子共演が実現します。串田なんだか歌舞伎みたいになってきちゃいました(笑)。大森さん、小日向さんとは、お互い「演劇勘、鈍ってないだろうな?」とピリッとした緊張感もあるでしょうし、同時になんとも言葉に言い表せない、どこかが通じているような感覚もある。稽古が楽しみです。子どもたちの世代もいつの間にか知り合いになっていて、知らない間に一緒に芝居をしていたり、僕のワークショップに参加したり。不思議ですよね。FESTA 松本 2022での『スカパン』上演――これまでの『スカパン』についても振り返ります。初演の翌年、1995年にシアターコクーンで再演し、同年フランス・アヴィニョンでも上演。2015年にルーマニア・シビウ国際演劇祭にも招待され、ブカレストでも上演と海外でも上演されています。串田アヴィニョンでは、古い教会に自分たちで座席を組んで上演しました。初日の公演が終わって楽屋に戻ったら、客席の方からガタガタっと崩れるような音がしたんです。「客席が壊れた、どうしよう!」と思って舞台に戻ったら、観客が立ち上がって足踏みをしていたという(笑)。あちらの観客は、感動を足踏みで表現するなんて知らなかったので驚きました。ルーマニアでは、近年日本でも演出を手掛ける演出家のシルヴィウ・プルカレーテが「これがスカパンだ!」なんて言ってくれました。国が変わっても通じることがあるんだと、嬉しい思い出も詰まった作品です。――2004年「まつもと市民芸術館」のこけら落とし公演、2013年には芸術館10周年記念の1本にも選ばれ、串田さんの演劇人生と並走する作品に成長しました。2015年、シビウ国際演劇祭の凱旋公演では、信濃毎日新聞社の松本新本社ビル建設予定の更地で“Flying Theatre 空中劇場”と称した仮設舞台、ピカデリーホール(現上土劇場)、松本市美術館の芝生の中庭の3カ所で上演。野外公演はまた格別な楽しさ、生活に身近な感覚があります。今年の松本公演も、まつもと市民芸術館(小ホール)に加え、松本城大手門枡形跡広場で上演されます。串田僕は、「触っちゃいけません」と言わんばかりの近寄り難い作品をつくるのではなく、常に演劇で「事件」を起こしたいと考えているんです。と言っても殺人事件とか物騒なものではなく(笑)、何年か経った後に観客の中で「あの時観た、あの感じ」を思い出してもらえるという意味での事件。「野外公演は、観客側も参加しているみたいな感覚が味わえる」と言ってくださる方もいますし、上演する場所にはこだわりたいですね。もちろん劇場でも事件は起こせますが、道端で投げ銭でやるような芝居にだって事件が起こせると思っています。そうそう、松本に来る直前の2003年の1月から2月にかけて水戸芸術館で毎週末『スカパン』を上演したこともあります。その時は水戸の役者にも参加してもらいました。今年また水戸で出来るのも、なんだか不思議な縁を感じます。――以前『スカパン』の取材で串田さんと、フランスの演出家アリアーヌ・ムヌーシュキン(太陽劇団)が監督した映画『モリエール』のお話をしたことがありますが、あの映画でも、モリエールが野外でお芝居を上演する場面が出てきますね。串田そうそう、野外劇の舞台が風に飛ばされていったりね(笑)。あの時代、モリエールが旅をしながら芝居をしていると、物見遊山の人たちが集まってきたり、訳もわからず眺めている人がいたり。野外はそういった雑多な感じがいいんですよね。1966年に東京・西麻布の硝子店の地下に劇場をつくって僕の演劇人生がスタートしたわけですが、シアターコクーンでやるようになっても「自由劇場のあの感じ」を700人の客席でどう表現できるか、そのことはいつも頭にありました。近頃は、演劇が商品のように扱われている演劇が増えている気がして、それを全否定はしないけれど、「僕が長い人生をかけてやってきたことは、そうじゃないんだよなぁ」とは感じます。こうしたことは、松本で芝居づくりを始めてからより深く考えるようになりました。――今回の『スカパン』は、串田さんが総合ディレクターを務める《FESTA 松本 2022》での上演になります。同フェスは昨年コロナ禍の中でスタートしました。串田《FESTA 松本 2021》を体験してくれた木工家の三谷龍二さんが文章に「共に生きる演劇という印象を持った」と書いてくださったんですが、「フェスタ=お祭り」がなぜ生まれたかを歴史に照らし合わせて考えてみると、災害が起きた時に天に祈ったり、困難な状況の中にあっても未来のことを考えて、元気を出すためですよね。昨年コロナ禍の大変な中で動き出した時も、豪華でなくていいから、とにかくみんなが楽しめるようなものを……との思いでスタートしました。必ずしも演劇に特化せず、道端で絵を描いている人がいてもいいし、路上とか、広場とか、今年もできるだけお金がかからない方法で、市民のみんなが参加してくれる形を見つけたいと思います。――先ほど話題にも出た「商品化された演劇」ではないですけど、観客数や話題性、数字だけを求めた“経済化”ではなく、偶然、その日、その時を一緒に過ごした人たちが熱をもらえるような演劇。串田熱量は数字で測れないからどうしようもないけど(笑)、僕はそういうものが演劇だと思っています。ノーベル賞の授賞式を欠席したボブ・ディランが、「私はパフォーマーとして5万人の前でも、50人の前でも演奏したことがありますが、50人の前で演奏することの方が難しい。5万人の人格はひとつともいえるけど、50人はそうはいきません」と言っていて、なるほどボブ・ディランはいいこと言うな(笑)、と思いました。数字にできないことってね、あるんですよ。文=川添史子<公演情報>『スカパン』『スカパン』メインビジュアル【スタッフ】原作:モリエール『スカパンの悪巧み』訳:内藤俊人潤色・美術・演出:串田和美【出演】串田和美 / 大森博史 / 武居卓 / 小日向星一 / 串田十二夜 / 皆本麻帆 / 湯川ひな / 細川貴司 / 下地尚子 / 小日向文世【松本公演】■まつもと市民芸術館 小ホール9月30日(金) 19:00 ※プレビュー公演10月1日(土) 15:0010月2日(日) 13:00■松本城大手門枡形跡広場(屋外公演)10月6日(木)・8日(土)・9日(日)・10日(月・祝) 全日16:30問い合わせ:まつもと市民芸術館チケットセンター 0263-33-2200(10:00~18:00)【水戸公演】2022年10月15日(土)~16日(日)会場:水戸芸術館ACM劇場問い合わせ:水戸芸術館 ACM 劇場 029-227-8123(10:00~18:00 月曜休館)【北九州公演】2022年10月23日(日)会場:北九州芸術劇場 中劇場問い合わせ:北九州芸術劇場(093-562-2655(10:00~18:00))【神奈川公演】2022年10月26日(水)~30日(日)会場:KAAT 神奈川芸術劇場<大スタジオ>問い合わせ:チケットかながわ 0570-015-415(10:00~18:00)
2022年09月26日9月30日から松本、水戸、北九州、横浜で上演する舞台「スカパン」。開幕に先駆けて、演出・主演の串田和美のロングインタビューが到着!公式ホームページにて小日向文世との対談映像も公開されました。また、松本城大手門枡形跡広場での野外公演(10月6日〜10日)では、東欧の民族音楽に室内楽の視点を取り入れた全く新しいアンサンブルISOLATION ORCHESTRAの出演が決定!ギデオン・ジュークス(Tuba)、竹内理恵(Sax&Cl)、松本みさこ(Acc)、ふーちん(Per)4人が、開演前と舞台の終盤で生演奏。繊細さと野生味を合わせ持った音楽で舞台を盛り上げます。野外公演のみの特別演出に、是非ご期待下さい!<串田和美×小日向文世 ツーショットインタビュー><串田和美ロングインタビュー>ライフワークに再び挑戦。二世代が揃うユニークな座組み――『スカパン』の原作である、モリエール『スカパンの悪だくみ』の舞台は港町ナポリ。若者たちの恋の手助けをするため、頭の回転が早い召使いスカパンがひと肌脱ぎ、金持ちを手玉に取ったり、威張った主人をとっちめたり……という喜劇です。まずはこの戯曲と串田さんの出会いから伺えますか。串田:僕がまだ俳優座の養成所にいた19歳か20歳の頃、戦後初となるコメディ・フランセーズの来日公演(1962年)で観たのが最初です。スカパンを演じたロベール・ウィルシュという俳優が、確か足元はスニーカーで、ぴょんぴょんとはね回りながら曲芸のように芝居をやっていて、とても新鮮だったんですね。その当時モリエールやシェイクスピアといった古典は、言葉を重視した、台詞の言い回しによって客席から拍手が起こるような演技が主流で、この身体的なスカパンは衝撃的でした。余談ですが、養成所の同期、(その後一緒にオンシアター自由劇場を結成する)佐藤信も同じ公演を観ているんです。彼も感動して、終演後に「誰かと話したい」という思いにかられたのに、友達みんながスッと帰っちゃったらしい。がっかりしながらふと横を見たら同じように「誰かと話したい、この気分」という顔をした僕がいて(笑)、夜通し喋った……なんて懐かしい思い出もあります。――串田さんがタイトルロールを演じる『スカパン』の初演は、1994年シアターコクーンでした。串田:もとは喜劇だけど、スカパンという一人の人間が“生きのびる知恵”として口八丁、手八丁で喋りながら動いているというか、人物の根っこや息遣いがうまく出せないかなと考えたのが初演。古い翻訳調の言葉ではなく、内藤俊人さんという大森博史さんの知り合いに新しく訳してもらって、そのテキストをもとに半分オリジナルの脚本を作りました。再演以降は僕が演出してますが、初演は(オンシアター自由劇場のメンバーだった)真名古敬二さんに演出してもらって、劇団みんなで試行錯誤しながらつくったんです。――以前お話を伺った時も「親知らずが奥でうずいているみたいな戯曲」と表現していましたが、串田さんの『スカパン』は、ただ底抜けに楽しい喜劇ではありません。いたずらしたり大騒ぎしたり、スカパンは人々と一緒にいる時は明るく振る舞っていますが、家に戻って一人で食事をする場面などに彼の孤独が垣間見えたり……原作にはない、底辺で暮らす男の「生活感」を感じさせる場面が印象的に挿入されます。串田:僕にとってこの作品は、喜劇でなきゃいられないというか、必死で喜劇であろうとする感じがあるというか、奇妙な憂鬱感が感じられる戯曲なんです。スカパンの源流はおそらく、イタリアで16世紀ごろに生まれた喜劇「コメディア・デラルテ」の召使いで、道化役のザンニ、アルレッキーノですよね。ザンニの黒いお面は炭鉱の町出身であることを表していると本で読んだこともありますし、労働者でベルガモ訛りの田舎っぺ……こういったキャラクター造形にはどこか差別的なニュアンスも感じ取れます。そんなことも考えながら、こき使われながらも、たくましく生き抜く術を身につけたスカパンの背景を想像していきました。――原作ではハッピーエンドですが、串田版の終盤でスカパンは、騙されていたことを知った父親二人に雇われた男に襲われてケガを負います。串田:原作ではスカパンは死にそうな「フリ」をして主人に赦しを乞いますが、僕の『スカパン』は裏切った仲間に殴られて、最後は孤独の中に死んでいきます。これは『シラノ・ド・ベルジュラック』(エドモン・ロスタン作)の幕切れの場面をイメージしているんです。――そうなんですね!串田:瀕死の重傷を負っていることを(長年恋心を抱いていた)ロクサーヌに隠しながら、落ち葉が散る中で死んでいくシラノ……あれも痛切な最期ですよね。『シラノ・ド・ベルジュラック』の台詞に、モリエールの名前が出てくるじゃないですか。――上演ではカットされることも多いですが、確かに戯曲には「モリエールがシラノの作品をパクってる」(*)と茶化したようなユーモラスな会話があります。なるほど串田版『スカパン』のラストシーンには、作家であるモリエールに関連する趣向が引用されているのですね。串田さんはこの作品を何度も上演していますが、繰り返しやりたいと感じる魅力を教えてください。串田:スカパンという人物像、生き方、性分が好きなんでしょうね。いつも一生懸命で、人を面白がらせたり、困った若い人がいると「しょうがないな」と助けてあげる。しかも正義感からではなく、そうせざるを得ない性格というか。ずっと動き回る役なので、僕もいつまで演じられるかわからないけど(笑)、スカパンがすごく年をとったバージョンもありえるかな?なんて考えてみたり。ライフワークと言える作品です。*17世紀に実在したシラノ・ド・ベルジュラックとモリエールは同時代の文化人。『スカパンの悪だくみ』に、シラノが書いた戯曲『愚弄された衒学者』から拝借した台詞があることは広く知られている――今回は、元オンシアター自由劇場のメンバーである、大森博史さん(アルガント役)と小日向文世さん(ジェロント役)が参加します。息子たちに翻弄される父親たちですね。また串田さんのご子息・串田十二夜さんがジェロントの息子レアンドル役、小日向文世さんのご長男の小日向星一さんがアルガントの息子オクターヴ役として出演。なんと今作では、2組の親子共演が実現します。串田:なんだか歌舞伎みたいになってきちゃいました(笑)。大森さん、小日向さんとは、お互い「演劇勘、鈍ってないだろうな?」とピリッとした緊張感もあるでしょうし、同時になんとも言葉に言い表せない、どこかが通じているような感覚もある。稽古が楽しみです。子どもたちの世代もいつの間にか知り合いになっていて、知らない間に一緒に芝居をしていたり、僕のワークショップに参加したり。不思議ですよね。FESTA松本2022での『スカパン』上演――これまでの『スカパン』についても振り返ります。初演の翌年、1995年にシアターコクーンで再演し、同年フランス・アヴィニョンでも上演。2015年にルーマニア・シビウ国際演劇祭にも招待され、ブカレストでも上演と海外でも上演されています。串田:アヴィニョンでは、古い教会に自分たちで座席を組んで上演しました。初日の公演が終わって楽屋に戻ったら、客席の方からガタガタっと崩れるような音がしたんです。「客席が壊れた、どうしよう!」と思って舞台に戻ったら、観客が立ち上がって足踏みをしていたという(笑)。あちらの観客は、感動を足踏みで表現するなんて知らなかったので驚きました。ルーマニアでは、近年日本でも演出を手掛ける演出家のシルヴィウ・プルカレーテが「これがスカパンだ!」なんて言ってくれました。国が変わっても通じることがあるんだと、嬉しい思い出も詰まった作品です。――2004年「まつもと市民芸術館」のこけら落とし公演、2013年には芸術館10周年記念の1本にも選ばれ、串田さんの演劇人生と並走する作品に成長しました。2015年、シビウ国際演劇祭の凱旋公演では、信濃毎日新聞社の松本新本社ビル建設予定の更地で“Flying Theatre空中劇場”と称した仮設舞台、ピカデリーホール(現上土劇場)、松本市美術館の芝生の中庭の3カ所で上演。野外公演はまた格別な楽しさ、生活に身近な感覚があります。今年の松本公演も、まつもと市民芸術館(小ホール)に加え、松本城大手門枡形跡広場で上演されます。串田:僕は、「触っちゃいけません」と言わんばかりの近寄り難い作品をつくるのではなく、常に演劇で「事件」を起こしたいと考えているんです。と言っても殺人事件とか物騒なものではなく(笑)、何年か経った後に観客の中で「あの時観た、あの感じ」を思い出してもらえるという意味での事件。「野外公演は、観客側も参加しているみたいな感覚が味わえる」と言ってくださる方もいますし、上演する場所にはこだわりたいですね。もちろん劇場でも事件は起こせますが、道端で投げ銭でやるような芝居にだって事件が起こせると思っています。そうそう、松本に来る直前の2003年の1月から2月にかけて水戸芸術館で毎週末『スカパン』を上演したこともあります。その時は水戸の役者にも参加してもらいました。今年また水戸で出来るのも、なんだか不思議な縁を感じます。――以前『スカパン』の取材で串田さんと、フランスの演出家アリアーヌ・ムヌーシュキン(太陽劇団)が監督した映画『モリエール』のお話をしたことがありますが、あの映画でも、モリエールが野外でお芝居を上演する場面が出てきますね。串田:そうそう、野外劇の舞台が風に飛ばされていったりね(笑)。あの時代、モリエールが旅をしながら芝居をしていると、物見遊山の人たちが集まってきたり、訳もわからず眺めている人がいたり。野外はそういった雑多な感じがいいんですよね。1966年に東京・西麻布の硝子店の地下に劇場をつくって僕の演劇人生がスタートしたわけですが、シアターコクーンでやるようになっても「自由劇場のあの感じ」を700人の客席でどう表現できるか、そのことはいつも頭にありました。近頃は、演劇が商品のように扱われている演劇が増えている気がして、それを全否定はしないけれど、「僕が長い人生をかけてやってきたことは、そうじゃないんだよなぁ」とは感じます。こうしたことは、松本で芝居づくりを始めてからより深く考えるようになりました。――今回の『スカパン』は、串田さんが総合ディレクターを務める《FESTA松本2022》での上演になります。同フェスは昨年コロナ禍の中でスタートしました。串田:《FESTA松本2021》を体験してくれた木工家の三谷龍二さんが文章に「共に生きる演劇という印象を持った」と書いてくださったんですが、「フェスタ=お祭り」がなぜ生まれたかを歴史に照らし合わせて考えてみると、災害が起きた時に天に祈ったり、困難な状況の中にあっても未来のことを考えて、元気を出すためですよね。昨年コロナ禍の大変な中で動き出した時も、豪華でなくていいから、とにかくみんなが楽しめるようなものを……との思いでスタートしました。必ずしも演劇に特化せず、道端で絵を描いている人がいてもいいし、路上とか、広場とか、今年もできるだけお金がかからない方法で、市民のみんなが参加してくれる形を見つけたいと思います。――先ほど話題にも出た「商品化された演劇」ではないですけど、観客数や話題性、数字だけを求めた“経済化”ではなく、偶然、その日、その時を一緒に過ごした人たちが熱をもらえるような演劇。串田:熱量は数字で測れないからどうしようもないけど(笑)、僕はそういうものが演劇だと思っています。ノーベル賞の授賞式を欠席したボブ・ディランが、「私はパフォーマーとして5万人の前でも、50人の前でも演奏したことがありますが、50人の前で演奏することの方が難しい。5万人の人格はひとつともいえるけど、50人はそうはいきません」と言っていて、なるほどボブ・ディランはいいこと言うな(笑)、と思いました。数字にできないことってね、あるんですよ。text:川添史子<公演概要>【公演名】『スカパン』【スタッフ】原作:モリエール『スカパンの悪巧み』訳:内藤俊人潤色・美術・演出:串田和美【出 演】串田和美大森博史武居卓小日向星一串田十二夜皆本麻帆湯川ひな細川貴司下地尚子/小日向文世【チケット】好評発売中。詳細は各会場のホームページにて。【公演日程】松本公演まつもと市民芸術館小ホール9月30日(金)19:00※プレビュー公演10月1日(土)15:0010月2日(日)13:00松本城大手門枡形跡広場(屋外公演)10月6日(木)、8日(土)、9日(日)、10日(月・祝)全日16:30問い合わせ:まつもと市民芸術館チケットセンター0263-33-2200(10:00~18:00)スカパン : 水戸公演10月15日(土)~16日水戸芸術館ACM劇場問い合わせ:水戸芸術館ACM劇場029-227-8123(10:00~18:00月曜休館) 北九州公演10月23日(日)北九州芸術劇場 中劇場問い合わせ:北九州芸術劇場093-562-2655(10:00~18:00) 神奈川公演10月26日(水)~30日(日)KAAT 神奈川芸術劇場問い合わせ:チケットかながわ0570-015-415(10:00~18:00) 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年09月22日来年の大河ドラマ「どうする家康」で徳川家康を演じる松本潤が、家康の素顔を求めて旅をする歴史ドキュメントの第2弾「どうする松本潤?徳川家康の大冒険2」が9月10日(土)に放送される。今回のテーマは、「なぜ家康は天下人になれたのか?」。幾度となく襲いかかる人生の危機の中で、家康が熱心に行っていたのは戦や政争ばかりではない。実は、家康が人知れず、日々熱心に取り組んできた「趣味」の中に、家康が危機を乗り越え、天下人にのぼりつめることができた秘密が隠されている。乗馬、たか狩り、聞香など家康が打ち込んだ趣味の数々を松本さんが体を張って実際に体感。さらに、「最も家康に似ている」といわれる普段は非公開の家康・等身大の木像や、徳川宗家・次期当主の徳川家広さんも登場。愛知県、岐阜県、山梨県、京都府をめぐり、教科書には載っていない知られざる徳川家康の人物像に迫る。解説は本郷和人(東京大学史料編纂所教授)、語りはキムラ緑子が務める。【どうするポイント 1】「乗馬」天下人への道は「負けても死なない」こと三方ヶ原の戦いで武田信玄に惨敗し、絶体絶命の危機に陥った若き日の家康。「生きていてこそ次がある!」。どんな状況であっても最後は逃げて命をつなぐために、家康がのめり込んだのが「乗馬」だった。日本伝統の古馬にまたがり、「家康の逃げの乗馬術」に迫る。【どうするポイント2】「たか狩り」天下人への道は「誰よりも長生きする」ことライバルたちが次々と病死する中、家康の秘策は「ライバルたちよりも長生きすること」。健康オタクへの道を邁進する家康がことのほか重視したのは「たか狩り」だった!75歳という驚きの長寿を全うし、天下人レースを逃げ切った家康健康長寿の秘訣に迫る。【どうするポイント 3】「聞香」天下への道は「己に勝つ」こと誰が敵で誰が味方なのか?陰謀渦巻く心理戦を勝ち抜いた家康の強さは、どんな状況下でも冷静さを失わないメンタルの強さでもあった。それを支えていた家康の趣味こそが「香」。家康がのめり込んだ「聞香」とはどんな世界なのか?家康考案のオリジナル香の再現にも挑戦する。■木道壮司チーフ・プロデューサーよりコメント天下人となった徳川家康は、神君・家康公として神格化され、「いかにエラい人か」を伝える記録ばかりが残されています。本当の人間・家康とはどのような人物だったのでしょうか?今回、そんな家康の素顔を探るため、家康がのめり込んでいた「趣味」を、松本さんが家康の気持ちになりきって体当たりで挑戦!そこからどんな家康像を発見することができたのでしょうか?歴史の裏側を松本さんと一緒に探っていけば、2023年の大河ドラマ「どうする家康」がより楽しくなること間違いありません。「どうする松本潤?徳川家康の大冒険2」は9月10日(土)19時30分~NHK BSプレミアム、BS4Kにて放送。(text:cinemacafe.net)
2022年09月06日串田和美が主宰する劇団「オンシアター自由劇場」で1994年に初演され、その後、串田のライフワークとして上演を重ねている『スカパン』。串田の80歳の節目に上演される今回、自由劇場時代からの盟友である小日向文世の出演が決定した。さらに共演者には、同じく盟友の大森博史や、ふたりの息子・串田十二夜と小日向星一といった顔ぶれも。そこで串田と小日向に、昔話にも花を咲かせつつ、今回の上演に寄せる想いを語り合ってもらった。自分じゃないなにかに、催促されるような感覚――上演回数も多い串田さんの代表作『スカパン』ですが、このタイミングでの上演を決めた理由は?串田まつもと市民芸術館の杮落とし公演や10周年記念プログラムなど、これまで節目、節目で上演してきました。そういう意味では今年度末にまつもとの総監督を退任することがひとつと、あとは80歳になったことがひとつ。そこに初演時に一緒やった、コヒ(=小日向)と大森(博史)とも久しぶりに出来たらいいな、というアイデアがフッと浮かんだんです。――串田さんの中で、『スカパン』の再演を重ねる理由はどんなところにあるのでしょうか?串田若いころは次々と新しいもの、今までにやったことのないものを探すのが楽しかったんです。でもだんだんとやり残したことが体の中に溜まっていって、自分じゃないなにかに、「あれもう一回やってよ」と催促されるような感覚が出てきて。ほら、舞台って生き物だから、いつも同じようには出来ないですよね。この時代、この肉体、外側の条件も内側の条件も折り合いをつけながらやっていくもの。でもだからこそ面白い現象が起きるんじゃないかと思います。――小日向さんにとっては約30年ぶりの『スカパン』になりますが、当時特に印象に残っていることは?小日向まだ少年だった中村七之助(当時11歳)くんが出ていたんですが、彼いつも平気な顔で、本番前も全然緊張していなかったんですね。でもある日突然ビクビクしているから、「どうしたの?」と聞いたら、「今日お父さん(=故中村勘三郎)が観に来る」って(笑)。串田(笑)。小日向七之助くんにとっては客前に立つより、お父さんのほうがよっぽど怖いんだなと。それが一番印象に残っている出来事ですね。――いかに勘三郎さんが厳しい父親だったかがわかるエピソードですね。串田うちは全然怖がられていないと思いますけど(笑)、そちらはどうですか?小日向うちもどうかな~(笑)。演出も美術も出来る串田の一番は、実は役者――今回はそれぞれのご子息、串田十二夜さんと小日向星一さんが出演されることも大きな話題です。小日向星一も結構舞台のお話をいただいているようですが、串田さんの作品に参加するのは初めて。彼にとっては今までにない稽古になるでしょうから、きっといろいろ戸惑うと思うんです。でも本当にいい機会だと思いますし、絶対に経験しておくべきことだと思います。『スカパン』出演者:上段左から)串田和美、大森博史、小日向文世中段左から)小日向星一、串田十二夜、皆本麻帆、湯川ひな下段左から)武居卓、細川貴司、下地尚子串田十二夜は初舞台からまだ1年経っていないですからね。ただ這っているころからずっとお芝居を見て育ってきたわけで(笑)、これは役者としてなかなか面白いパターンではないかなと思います。小日向十二夜くんの芝居を観るの、すごく楽しみです!――串田さんは80歳にしてタイトルロールのスカパンを演じられるわけですが、小日向さんから見た役者・串田和美の魅力とは?小日向串田さんは演出も美術も全部自分で出来る人ですが、一番は実は役者だと思うんです。いつも嬉々としてやっていますし、コロナになった時もひとり公園で芝居(※2020年6月、長野県内にある公園の四阿で串田が上演したひとり芝居『月夜のファウスト』)をやり始めたでしょ?やっぱりこれだよなと。僕にそんな勇気はないですけど、串田さんはいつでもどこでもやっちゃう。串田バカだね~(笑)。小日向いやいや。本当にすごい人だと思いますよ。――そんな串田さんにとって、改めてスカパンという役を演じる面白さとは?串田毎回新しい発見があるんですよね。再演って面白いもので、役や脚本が自分よりも成長しているのか、それとも自分が成長出来ているのか、その競争みたいなところがあって。だから自分の成長がそのお芝居に見合っているのか、ちょっとドキドキする。それはコヒに関しても同じで、嬉しい、懐かしいって気持ちと共に、ちょっと緊張する感覚もあるんです。小日向僕もそうですよ。串田さんには絶対に“冴えてない”と思われたくないですし、やっぱり串田さんを喜ばせたいなと思います。役と共に年を重ね、目指すは90歳のスカパン!?――小日向さんとは劇団(※オンシアター自由劇場)時代から長いおつき合いになりますが、役者としての魅力とは?串田コヒは面白いですよ。最近昔の動画を見るようになったのですが、コヒが出て来ると面白くなる。大森も面白いし、もちろん笹やん(=笹野高史)も面白い。これに僕と吉田日出子さんも入れた5人がいれば、十分だなって思いますね。小日向当時よく言いましたよ!研究生はもう入れなくてもいいんじゃないですか?って。でも新しい人を入れないと淀むからダメだって。串田えっ、そうだった?(笑)――そういう意味で今回は、串田さん、小日向さん、大森さんと精鋭がそろいますね。小日向いや、みんな年取ったからわかんないですよ(笑)。串田でも自分が年を取るのと同じように、スカパンはちゃんと役も年を取ってくれるからいいなと思うんですよね。小日向僕は今回ジェロントを演じますが、自由劇場に在籍していた時のような、面白い人物像を作っていきたいです。面白いっていうのは愛すべきとか、興味深い人物という意味で。あとは若い人を羨ましがらせたいですね。あれがあるから早く自分も年を取りたい、そんなふうに思わせるなにかを見つけられたらいいなと。70近い俳優がやる素敵さを見せたいですね。串田そうだよ。クリント・イーストウッドなんて90越えてあのカッコ良さだよ。小日向だよね!串田さん、まだ10年あるじゃない(笑)。串田90歳とかで、杖をつきながらスカパンやるのもいいかもしれないね(笑)。――10年後の『スカパン』も期待しつつ……、この作品を通し、今のお客さまにはどんなことが伝えられたらと思いますか?串田わからないことや人と違うことを怖がらないで欲しいですね。逆にそれを自慢するくらい、それぞれの違いを面白いものとして興味を持ってもらえたらいいなと。教わることは、なにも偉い人からだけじゃない。わからないことや違うことから学ぶこと、感動することはたくさんあるんだと、この作品が発見させてくれるのではないかと思います。取材・文=野上瑠美子撮影=源賀津己<公演情報>『スカパン』【松本公演】2022年9月30日(金)~10月10日(月) ※9月30日プレビュー公演会場:まつもと市民芸術館 小ホール、松本城大手門枡形跡広場【神奈川公演】2022年10月26日(水)~2022年10月30日(日)会場:KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオほか、水戸公演(10月15日・16日)、北九州公演(10月23日)あり
2022年09月05日嵐の松本潤が出演する、日本航空の新WEB動画「櫻井翔・松本潤の行こうぜ! ニッポン! 九州」編 Part1~3が21日、公開された。同WEB動画は、松本と櫻井翔が日本全国に旅に出かけ、各地の魅力を紹介するシリーズの最新作。松本が福岡と佐賀を訪れ、九州の文化・伝統に触れている。佐賀・呼子にある漁協直営の「呼子台場みなとプラザ」を訪れた松本は、名物のイカを自らさばいて食べることに。「イカは暴れるって聞くよ」と墨対策にカッパを着ながら恐る恐るすくい上げ、包丁を入れていくと、見守っていた婦人会から「上手!」と声が上がる。続いて、福岡・八女の「光安青霞園茶舗」で玉露とういろうを堪能し、茶葉の香りや茶器にも興味津々。店主・光安さんのお茶入れを真剣に見つめ、2煎目にはお茶入れにチャレンジし、華麗な所作を披露した。また、最後に訪れた「門田提灯店」では、櫻井へのお土産として提灯の絵付けに挑戦。「櫻井くんといえば迷彩のイメージだけど、時間がかかりそうだな……やっぱり彼の名前を入れるのがいいかな……!」と提灯に“櫻井”の文字を入れることに。“櫻”の字を間違えてしまうハプニングもあり、「(出来上がりが)どうなってもいいや……(笑)」と言いながらも、スタッフが話しかけると「ちょっと静かにしてください」と返し、真剣な様子で書き進めた。旅を終えた松本は、「その土地の文化・食に触れたり、そこに行かないと見られない景色、感じられない空気感を感じることができたので、心が豊かになる気がします。旅に来られてよかったです」と満足気に振り返っていた。
2022年08月22日嵐の松本潤が出演する、リクルート・SUUMOの新CM「松本潤さんのスーモノリスで地図検索」編が、17日より放送される。新CMでは、無機質な白い空間に松本が登場。スマホを模した巨大な石板を前に松本が「住まい探し……」「地図……」と語りかける。するとそこに地図が浮かび上がり、手でなぞりながら物件検索をし、「使いやすい……」とつぶやく。■松本潤インタビュー――今回のCM撮影の感想は?楽しかったです! 実は撮影の方は以前から親交がある方でしたし、監督も僕と同い年で、以前から監督が作る映像が好きで、一緒に仕事してみたいと思っていたんです。今回のCMは結構特殊な設定・空間なので、どうやって演じるか目指す映像の世界観を監督と話し合いながら撮影しました。――今回のCMのみどころは?独特な世界観の中でちょっとクセのある感じを楽しんでいただけたら嬉しいです。「SUUMO」が、「物件数 No.1」であり「いろいろな情報が手軽に手に入る」というサービスのすごさと、近未来的な映像のかっこよさの両方を楽しんでいただけたらと思います。――「なぞって検索」機能で検索して、どんなエリアに住みたいですか?リアルに自分が選ぶとすると、普段行くジムや、よく行く友達がやっている飲食店などは、わりと1カ所に集まっているので、そのエリアを囲むかな。やっぱり近い方が楽なので。これまでいろいろな所に住んできましたが、僕の場合、結局行く所はほとんど変わらないんです。そこから離れたエリアに住んだこともあるのですが、やっぱり近い方が便利だなって(笑)。僕はいろいろ見るのも好きなので、緑の多いエリアや、魚がおいしそうな海沿いなどを検索してみるのも楽しそうですよね。――物件選びで迷うことはありますか?あまり迷わないかな。自分がその家に住んだらどこに何を置いて、玄関や風呂へはどこを通って……などを想像しながら選びます。あとは、日当たりや景観、駅からの時間、近くに自分に必要な場所がいくつあるのかなども考えます。でも最終的には、自分のフィーリングで「あ、ここにしよう」って納得がいくということがいちばん大事なのかなと思います。――最近の自宅でのマイブームは?最近は、帰ってきてリラックスするために、お香やキャンドルをたくことがマイブームで、割と習慣づけていますね。現場にいる時間が長いので、家に帰ってきて、仕事と自分の時間を切り替えるスイッチにしているんです。あとは、最近、撮影で朝が早いことが多いので、毎朝6時くらいには起きるようにしています。朝のうちに運動したり、サウナに入ったりして現場に行っています。――現在の自宅を「今後こうしたい」などのお考えはありますか?僕は現状に満足していますね(笑)。あえて言うと、最近仕事が立て込んでいるので仕事の資料が増えてきたんです。本などを買ったことで本棚が整理しきれなくて。前回のインタビューの際に「物を減らしてシンプルにした」と言ったんですけど、もうちょっと収納を作っておけばよかったな(笑)。
2022年08月16日公開初日を迎えた映画『ぜんぶ、ボクのせい』の初日舞台あいさつが11日、東京・新宿武蔵野館で行われ、白鳥晴都、川島鈴遥、松本まりか、オダギリジョー、松本優作監督が出席した。秋葉原無差別殺傷事件をモチーフにした『Noise ノイズ』(2019年)が国内外の映画祭で話題を呼んだ松本優作監督の最新作となる本作。オーディションで抜てきされた14歳の新人・白鳥晴都が主人公の優太役を、白鳥扮する優太に優しく接する詩織役を川島鈴遥が演じ、力強い語り口と鮮烈な映像で優太と孤独を抱えた人々の交流を描く。優太の母親役を演じた松本は「私は優太くんと監督としか一緒じゃなかったので今日オダギリさんや川島さんとの空気が本当に和やかですごく笑いあっていて、そんな現場だったんだなと思いました。きっと楽しい撮影だったんですね?」と白鳥に問うと、白鳥は「本当にみんな家族じゃないですけど、そんな感じで楽しい撮影でした」と答えた。白鳥は若葉竜也がいる中で母親役の松本に拒絶されるシーンを振り返り、「そのシーンは結構何度も撮らせていただき、その時の松本さんと若葉さんの熱量が凄くて、僕が持っている力以上のお芝居ができたと思います」と隣にいた松本に感謝した。そのシーンはYou Tubeで213万回再生されている予告編でも公開され、映画の公開前から大きな話題に。ネグレクトをする母親役という難しいキャラクターを演じた松本も同シーンに触れて、「(優太に)『帰って!』というところで優太を押し返すんですが、暴力のような暴力じゃないような。その時に優太の身体がすごく柔らかくて小さくて折れそうで、その押し返した手が拒否しているのにすごく悪いことをしているという、感じたことのないような感覚を撮影の時に覚えました」と振り返った。続けて「ネグレクトの母親を報道する時は非難の対象となりますが、母親の感情に寄り添うことをあまりしない社会なのかなと。どうしてこういう母親が生まれてしまったのかということを考えるのも大事だとあのシーンをやって実感しました。社会への問題提起でもある気がします」とネグレクトをする親たちの環境なども報道して欲しいと訴えた。また、MCから仲野太賀とのシーンでアドリブが多かったと紹介されたオダギリジョーは「太賀さんとのシーンでアドリブだったというのを今日初めて知らされました。あまり覚えていなくて」ととぼけ、「現場に猫がいたんですけど、すごく大きなふくよかな猫で僕もそれを押し出そうとしたんですけど、その柔らかな感触が。その時に僕も少し理解できた気がします。そういうアドリブだったかなと思います」の松本を真似たコメントで笑いを誘っていた。
2022年08月11日『天才 柳沢教授の生活』ほか人気作品の原画など約150点を紹介する『漫画家・山下和美展 ライフ・イズ・ビューティフル』が7月30日(土)より世田谷文学館にて開催される。自身の父親をモデルに、Y大学経済学部の柳沢教授と周囲の人々との悲喜こもごもを描いた『天才 柳沢教授の生活』や、時間と空間を自由に超える少年の目を通して「人間とは何か」を問いかける『不思議な少年』など、人間の本質に迫る作品で知られる山下和美。2021年には、世界と断絶した山村を舞台に描いた『ランド』で第25回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞している。一方で山下はデビュー直後の作品から、人間が暮らし集う場所としての「家」にも並々ならぬこだわりを持って描いてきた。その思いが募り、日本の伝統的な建築様式で書院造りに茶の湯のための茶室(数寄屋)を取り入れた、数寄屋造りの自宅を建設することに。その完成に至る顛末を『数寄です!』『続・数寄です!』にコミックエッセイとして綴っている。また、2019年には、世田谷区豪徳寺にある明治時代の洋館(旧尾崎邸)を保存するため建築家らとともに行動し、そのドキュメントを『世田谷イチ古い洋館の家主になる』で紹介。さらに最新作『ツイステッド・シスターズ』でも同洋館をモデルにした館を舞台とするなど、「家」に重心を置いた山下作品は進化を続けている。同展では、山下のライフワークである『天才 柳沢教授の生活』『不思議な少年』、『ランド』、そして世田谷の自宅と洋館にまつわる『数寄です!』『続・数寄です!』『世田谷イチ古い洋館の家主になる』『ツイステッド・シスターズ』の原画を展示するほか、柳沢教授のモデルとなった父・古瀬大六撮影の写真、先に漫画家デビューしていた姉たちの作品、さらに学生時代に描いた漫画やイラスト、創作資料や手塚治虫文化賞受賞記念トロフィーまで、約150 点の作品と資料を公開する。『天才 柳沢教授の生活』原画(C)山下和美『続・数寄です!』原画(C)山下和美【開催概要】シーズン展示『漫画家・山下和美展 ライフ・イズ・ビューティフル』会期:2022年7月30日(土)~9月4日(日)会場:世田谷文学館1階文学サロン時間:10:00~18:00(ミュージアムショップは17:30まで)休館日:月曜(祝日の場合開館翌日休)料金:無料展覧会公式サイト:
2022年07月12日フランスの劇作家・モリエールの喜劇『スカパンの悪巧み』を串田和美が独自の解釈と脚色で作り上げた伝説の名作『スカパン』が、10月1日(土)からまつもと市民芸術館 小ホールにて上演開始となる。1994年、串田自身が主宰する「オンシアター自由劇場」として当時、芸術監督を務めていたシアターコクーンにて初演された『スカパン』。翌95年には本国フランス・アヴィニョン演劇祭で上演、芸術監督(当時※現・総監督)を務めるまつもと市民芸術館では2004年の柿落とし記念公演、13年には同館10周年記念プログラムの大きな柱としても再演。さらに15年には、シビウ国際演劇祭に正式招聘され、凱旋公演では松本市内3カ所、屋外でも上演するなど、串田にとってライフワークとも言える人気作品だ。今回の公演でも、串田自身がスカパンを演じる。またオクターヴの父親アルガント役に国内外さまざまな演出家の作品で独特な存在感が光る大森博史、そしてレアンドルの父親ジェロント役をオールラウンドプレーヤーにして、実力派俳優として幅広い世代から支持される小日向文世が演じる。かつて串田が主宰していた「オンシアター自由劇場」でしのぎを削りあい、初演時にも出演した3人の再びの共演となる。さらに串田の息子で昨年、本格的な舞台デビューをはたした串田十二夜がレアンドル役、そして小日向文世の長男で俳優として舞台、大河ドラマ等にも出演、活躍の場を広げる小日向星一がオクターヴ役として出演する点も注目だ。なお、小日向親子の舞台での共演は本作が初めて。ほかにも武居卓、皆本麻帆、湯川ひな、細川貴司、下地尚子と個性豊かなメンバーが集結している。<串田和美・コメント>まだ僕が俳優学校に通っていた19歳か20歳の頃、フランスのコメディ・フランセーズによる来日公演『スカパンの悪だくみ』を観た思い出は、今でも記憶に残っています。それから数十年後、自分なりのスカパン像をつくり上げて演じたのが1994年のシアターコクーン。モリエールの芝居には、喜劇と言い切れない不思議な憂鬱感が漂っていて、そこを面白がることで現代性を発見できたような手応えがありました。その後、フランスのアヴィニョンやルーマニアのシビウ、水戸芸術館など国内外で上演を重ね、芸術監督を務めるまつもと市民芸術館のオープニングでもこの作品を選びました。このライフワークとも言える作品に、今回、オンシアター自由劇場で一緒に芝居をつくっていた大森博史さんと小日向文世さんが参加してくれます。お互い「演劇勘、鈍ってないだろうな?」とピリッとした緊張感もあるでしょうし、同時になんとも言葉に言い表せない、どこかが通じているような感覚もある。しかも小日向さんの息子である星一くん、僕の息子十二夜も出演し、二世代が揃うユニークな座組みになりました。この一座で、FESTA松本を皮切りに、水戸芸術館、北九州芸術劇場、KAAT神奈川芸術劇場をまわります。スカパンはいつも一生懸命で、人を面白がらせたり、「しょうがないな」と言いつつ若者たちのために一肌脱ぐ人間。正義感とも違う「そうせざるを得ない性分」なんでしょう。この生き様は何度演じても飽きないですし、また演じられることに、大きな喜びを感じています。■舞台情報『スカパン』原作:モリエール『スカパンの悪巧み』潤色・演出・美術:串田和美出演:串田和美、大森博史、武居卓、小日向星一、串田十二夜、皆本麻帆、湯川ひな、細川貴司、下地尚子 / 小日向文世<松本公演>10月1日(土)~10日(月・祝)会場:まつもと市民芸術館 小ホール、他<茨城公演>10月15日(土)・16日(日)会場:水戸芸術館<北九州公演>10月23日(日)会場:北九州芸術劇場 中劇場<神奈川公演>10月26日(水)~30日(日)会場:KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ公式サイト:
2022年06月09日串田和美が総監督を勤める「まつもと市民芸術館」が3月、『KING LEAR ―キング・リア―』を上演。末娘の真の愛情を見抜けず、その姉たちの甘言に惑わされたことに端を発する老王の悲劇を描いたシェイクスピア劇を、串田が45年ぶりに主演するのが話題だ。60年代から演劇界の先端を走ってきた彼が今、『リア王』、日本の演劇界、そして松本での活動について思うこととは。近年、最も注目される演出家の一人で、屈指の“シェイクスピアおたく”としても知られる木村龍之介との対談をお届けする。また未発表だった配役も発表となった。――お二人はどんなきっかけで出会われたのですか?木村龍之介(以下・木村)「2017年に僕らのカンパニー(カクシンハン)で『タイタス・アンドロニカス』を上演した時、串田さんが観に来て下さったんです。串田さんの優しさだと思うのですが、終演後“面白かったです”と言ってくださって、嬉しかったです」串田和美(以下・串田)「いろんな人と仕事をしたいなと常にアンテナを張っているのだけど、『タイタス~』は僕の家の近くで上演されていて、行きやすかった(笑)。その翌年、オンラインのシェイクスピア講座でご一緒して、その時、“何か(シェイクスピア劇を)やりましょう”という話をしたんですよね」木村「僕は大学時代、駒場東大前から渋谷まで、電車代を節約するためによく歩いていて、その途中に「シアターコクーン”という劇場があるぞ!」と知っていろいろ見るようになったのですが、串田さんが演出したコクーン歌舞伎『夏祭浪花鑑』を立見で観てびっくりしたんです。最後にパトカーが現れたりして、なんて粋で自由なんだろう、と。まるで“魔法使い”のような演出家だし、俳優としてもいい意味でのへそ曲がりというか(笑)、魅力に溢れたかっこいい方で、まさかご一緒できるようになるとは思っていませんでした」――お二人にとって、シェイクスピア劇とはどんな存在でしょうか?木村「高校三年生の時に9・11(アメリカ同時多発テロ)が起こり、いったい世の中どうなっているんだろう、と僕は衝撃を受けました。大学に入れば何か答えが見つかるかと思いましたが、勉強すればするほど謎が深まるばかり。それがある日、大学図書館で何気なく『マクベス』に出会いまして。冒頭の魔女の台詞を読んで、僕が抱いていた謎が解けるのではないかと思えて、シェイクスピア戯曲を読むようになり、自分でも演出するようになりました。これまで14、15作演出していますが、シェイクスピア劇は面白いとしか思ったことはないです」串田「僕も出会いは『マクベス』。かつて自由劇場という劇団をやっていて、一回目の解散というか、主要メンバーがだーっといなくなってから初めてやった作品です。当時は“本当に芝居やるの?”というような俳優ばかりだったから(笑)、そのままじゃできないと思って、エチュードみたいなものを入れて『阿呆劇 マクベス』というタイトルでやりました。その後、演劇集団・円にいた家高勝さんの演出でシェイクスピア劇をいろいろやって、まだ30ちょっとだった時に(注・34歳)、『リア王』もやりましたね。シェイクスピア劇は難しいという人もいて、確かに人名はややこしい。『マクベス』なんてマクベスにマルカムにマクダフ、なんでみんな“マ”なんだ!って思うでしょ(笑)。でも、話の中身はわかりやすいし、今に通じることがたくさんあります。ギリシャ悲劇もそうだけど、この行き詰った世の中にあって、シェイクスピア劇に触れると“おっ”と思えるような気付きがある。昔の人の作品から世界や人間を読み取り直すことができ、面白いんです。この古典をどれだけ今のもの、僕らみんなのものに出来るか考えながら、これからもシェイクスピア作品に関わっていきたいと思っています」――今回、『リア王』を選ばれたのは…。串田「僕から提案したんだっけ?(笑)」木村「僕が選ぶとしても、やっぱり『リア王』ですね。年齢的に串田さんにぴったりということもありますし、稽古をしながら“今やるべき作品”だな、とますます感じます。世代間で価値観が対立したり、閉塞感があったり、王様の発言に対して取り巻きや家族が物申すようなところにも“今”を感じますね。“良い時代は過ぎ去った。”といった台詞も今っぽいし、(当時流行した)ペストとコロナの流行という相似性、あらすじ、全て含めて、総合的に立ち上る雰囲気として、“今の物語”ととらえてもおかしくないと感じます。僕はいつも、もしシェイクスピアの脳が現代まで保管されていたら、今の風景を見てどう書くだろうと思いながら演出に取り組んでいます。『リア王』はイギリスが“ブリテン”と呼ばれていた時代の話だけど、シェイクスピア自身はこの時代についてあまり詳しくなかったらしく、ある種のファンタジーとして書かれています。僕は今回、この物語を“崩壊しつつある世界の王の物語”として描いていきたいと思っています」串田「一般的に、“主人公”って正しいものを提示していそうだな、と思うでしょう? でもこのリア王は間違ったこともいっぱいしているし、悪役に思われている娘たちの言い分のほうが、現代人には当然に聞こえるかもしれません。昨日も稽古で、最初からリア王がいい人で娘たちが悪者と見えないようにやろう、という話をしていました。そんな迷惑をかけたり過ちをおかした人が、やけくそになって嵐の中に飛び出したりするうち、いろんなものが見えてきます。世の中はいい人だらけならいいけれど、決してそうはならない。それはなぜなのか。私たちが生きて行く上でのヒントのようなものが見えてくる作品だな、と稽古しながら思っています」今回の『リア王』でまた新しい発見がある(串田)――稽古の手応えはいかがでしょうか?串田「何日か本読みをやってそこからは立ち稽古、という感じではなく、立ち稽古の途中で本読みもやり、今やっているところから少し離れた場面もやり、といろんなことがミックスされた稽古で、僕が演出する時と似た作り方です。ひょっとして開幕間際まで“ここ変えようか”と言われるかな、と思っていますよ。『リア王』は30代でも一度やったけれど、今回の稽古で新たな発見は多々ありますね。微妙だけど、(言葉の意味合いの)深さはこっちの方にあったんだな、とか。黙って本を読むだけではわからないことに、集団で(台詞を)発しているうち気づける…というのが、お芝居の面白さ。キャスティングが違えば気づかなかったこともあるだろうし、そのあたりも楽しみながら作っています」木村「串田さんが台詞を発することによっていただくインスピレーションも多々ありますし、松本で創作しているということ自体、僕にとっては刺激になっています。皆でたくさんの扉をノックしながら、どういう形になっていくかな、していこうかな、と試行錯誤していて、ものすごくいい稽古をさせていただいていると感じています。あと、まつもと市民芸術館は僕が東京で芝居をやっている時の環境より段違いに素晴らしく、小道具部屋一つとってもずらりと揃っていて、楽しくて仕方がないです。だからこそ、きちんとした形にまとめあげないとと思っていますが、今のところ、とてもいい創作の旅をしています」一筋縄ではいかない串田和美のリア王(木村)――串田さんの“リア王”像、いかがですか?木村「一筋縄ではいかない人物ですね。シェイクスピアはきっと、人間とは一筋縄ではいかない存在だ、ということを描こうとしていたと思うのですが、串田さんのリア王はまさにそれが、串田さんの肉体、感性を通して滲み出ています。芝居ってそういう“人間”を観るものであって、押し込めるのは違う作業だと思うので、残りの稽古でさらに串田さんの中からふわふわと出てくるものがあるといいなと思っています」串田「劇中、“80歳を超えて…”という台詞があるのだけど、シェイクスピアの時代(16世紀)に80過ぎまで生きる人って、なかなかいなかったですよね。ある意味幻想的というか、80過ぎの人物を主人公とする感覚って、ちょっとSF的だと思うんです。今で言えば、200歳とは言わないまでも、120歳でまだ駄々をこねている親父。僕も今年の夏に80になるけど、自由に生きたいとは思いつつ、(周囲に)迷惑はかけたくない。『リア王』はこの、リアリティに欠けた部分に何かがあって、そこが面白さなんだな、と感じています」――先日、木村さんは今回の上演に関連したレクチャーで、シェイクスピアの原動力の一つには、当時、“熊いじめ”という残酷な見世物が非常に人気を集めており、それがエンタメの主流になってしまうことへの反抗心があったかも、と指摘されていましたが、お二人は今の日本で演劇を上演することの意義をどうとらえていらっしゃいますか?木村「“熊いじめ”だけに熱狂するというのは、あるべき人間の姿ではないと思っていますが、僕ら人間はつい、そういったもので社会を満たしてしまう危うさがあると思います。いっぽう、演劇は全く別のもので空間を満たします。“熊いじめ”的なものより、演劇のほうがもっといいんじゃないかと感じてほしいし、世の中から“熊いじめ”的なものがなくなっていくように、演劇を広めていきたい。そんな思いを持って活動しています」串田「1966年に演劇活動を始めた頃、僕はいつか、東京にたくさん劇場が出来たらいいなと思っていたけれど、だんだんそうなってきた今、理想像とどこか似て非なるものがあります。どういうことかというと、演劇に限らず文化って、多数決で評価するものではないはずですよね。絵や音楽も、その時評価されなくても後で再発見されることもあるし、メジャーはそれぞれにある筈です。僕らが若かった頃も、皆でお小遣いを貯めて芝居をやって、そういうものの中から強い影響力を持つ作品が生まれました。失敗しても、こんな割の合わないことに情熱を燃やしていたんだという自負を持って皆でバイトをしたりしていたけど、今はそういうことに向ける視線が薄れてしまって、多数決主義、商業が中心。個人の努力ではどうにもならない部分があるような気がします。それがいい悪いではなく、もう少し違う価値観があった筈じゃないかな、と思うんですね。調べてみると、シェイクスピアの時代も僕らの体験した“あの頃”に似ていて、彼の一座は劇場が燃えたり追い出されたり、テムズ川をわたって別なところに劇場を立てたり。シェイクスピアもそんなことをやっていた時代があって、どこか親しみを感じます。最後には世間に認められるようになっていくけど、最初の頃の志は忘れないでやっているんですよね。それで地方でもの作りをするのはどうだろうと考えていた時に、ここ(松本)の話をいただいたんです。もちろん東京でも演劇はできるけど、地方都市で何かが見つかるかな、と思って芸術監督をお受けしました。まだまだ(理想には)辿り着いていない気がするけれど、こちらに来て、市民の税金で成り立っている公共劇場なので、芝居をご覧になる方はもちろん、観にいらっしゃらない方からも“ここにこの劇場があっていいね”と思ってもらえるようにならないといけない、ということを発見しました。演劇って刹那的で、映像で記録したとしても、あの“生(なま)”の時間は(終演と同時に)消えてしまう。だからこそ、これから生まれる人たちにも、とっくに亡くなった人たちにも届くようなものを作りたい、と切実に思っています。これを実現するには、あと3回くらい生きないと辿り着かないかもしれないけれど(笑)、そのことに気が付いて、こういうところで喋ったり、次の人にバトンタッチできればいいのかもしれません。公共劇場の役割ってそういうところにあるのかな、と思っています。松本で作った芝居を全国や海外で上演したい(串田)串田「来年度の3月でここの総監督は終わりで、あと1年で何をしようかと考えていますが、松本産のリンゴを自慢するように、もっと松本で作った芝居を全国や海外で上演できたら、と思っています。東京では作れない、地方ならではの舞台。それが本当にひと味違うということが広まっていったら、全国的にも意味があるんじゃないかな。過疎化している町が(演劇によって)元気になるかもしれないし、温泉やお城がなくても大丈夫だよということになるかもしれません。人間の生き方も、経済ばかりを追う風潮も変わるのではないでしょうか。僕らの若い時は“発展”という言葉は素晴らしく聴こえたけれど、今はあまり魅力的ではない、と多くの人が気づいている。そういう中で、ここ松本には芝居という自慢がある。ここに来てからそういうことをたくさん考えるようになりましたね。すぐに出来ることではないけれど、長い旅の一歩、二歩目くらい歩ければと思っています」松本の空、松本の劇場で感じたことで新しい『リア王』が生まれてきている(木村)木村「僕はこれまで生きてきて、“これがいい”と周囲で言われているものがいいと感じられず、演劇をやってきました。シェイクスピア劇をやるというのは、僕にとっては(人間としての)“脱皮”のプロセスで、今回、松本に来て創作しているのもそういうイメージがあります。僕自身、この劇場で何度か観劇していますが、東京での観劇体験とは確実に違いますね。より、演劇の面白さに身を包ませることが出来るような気がします。ここだから見える俳優の姿だったり、世界観というものも間違いなくあります。僕も今回、松本の空、松本の皆さんから感じたもので、これまでにない『リア王』が生まれてきていると感じています。皆さんに御覧いただいて、人間って面白いねと感じていただけるといいなと思っています」串田「今回は松本だけでの上演になるので、もしかしたら首都圏から観に来て下さる方もいらっしゃるかもしれません。もしかしたらチケット代より高い交通費と時間をかけていらっしゃる人もいるかもしれない。いい空気と芝居を体験できた、行って良かったと感じられるものを作らないと、という緊張感は僕らにもあります。きっと何かを感じ取っていただけるんじゃないかな。ぜひ楽しんでいただきたいです」(取材・文=松島まり乃)<公演概要>【公演名】KING LEAR -キング・リア-【日時】2022年3月12日(土)~16日(水) 全5回【会場】まつもと市民芸術館 小ホール【作】W.シェイクスピア【翻訳】松岡和子【演出】木村龍之介【出演】リア王串田和美コーンウォール公爵岩崎ⅯARK雄大フランス王 オズワルド大山大輔コーディリア加賀 凪エドマンド串田十二夜ケント伯爵近藤 隼リーガン下地尚子グロスター伯爵武居 卓道化深沢 豊オールバニー公爵細川貴司エドガー堀田康平ゴネリル毛利悟巳【チケット料金(整理番号付き自由席・税込)】一般:4,000円、U18:2,000円(枚数限定)※未就学児入場不可【お問い合わせ】まつもと市民芸術館チケットセンター(10:00~18:00)TEL:0263-33-2200KING LEAR -キング・リア- | まつもと市民芸術館 : 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年02月28日1994年5月に演出家・串田和美と十八世中村勘三郎がタッグを組み幕を開けた“コクーン歌舞伎”。古典歌舞伎を現代に通じる新たな解釈を取り入れた斬新な演出で、話題作を生み出してきた同シリーズの第十八弾『天日坊』が2月1日、渋谷・Bunkamuraシアターコクーンにて開幕した。演出・美術の串田和美と脚本の宮藤官九郎によって練り上げられ、河竹黙阿弥の隠れた名作を現代に蘇らせた本作は観る者の胸に刺さり大きな反響を呼び、2012年の初演時、千穐楽には当日券を求める人々が列をなすほど大変好評を博した。<ストーリー>ふとしたきっかけから将軍頼朝の落胤になりすまし鎌倉を目指す法策(後の天日坊)。旅の途中で盗賊・地雷太郎とその妻・お六と出会い、思いもよらぬ自分の運命を知る・・・「俺は誰だあっ!」狙うは天下! 若者たちは壮大な野望と純粋な希いを胸に疾駆する。彼らの人生を賭けた大勝負がはじまる―開幕に際し、法策(後の天日坊)を勤める中村勘九郎、人丸お六を勤める中村七之助、地雷太郎を勤める中村獅童のコメントと舞台写真が到着。【中村勘九郎】法策という人物を一言で表すなら“無”結局最後まで自分が誰なのかわからない。そうした精神的な複雑さに加えて、ずっと出ずっぱりな上に衣裳も重い。もう毎回、ぐったりでした。今まで生きたなかで一番疲れた役です。その法策としてまた生きる。もう一度“無”になってその場その場で感じることを大切に、その一方でビジュアル部分もしっかりと見せていきたいと思います。【中村獅童】前回ご覧くださった方の中には、コクーン史上最高傑作とおっしゃってくださる方もいらして、再演を望む声も多く本当にうれしかったです。その期待に応えられるよう、今回はさらに進化したものをお見せしたいと思います。江戸時代のアウトローのかっこよさを感じていただけたらと思います。【中村七之助】初演はちょうどスカイツリーがオープンした年でエレベータ―を降りたところに浮世絵が飾ってあったんです。マーメイドドレスのようなシルエットで髑髏柄の着物を着た女性の絵を見ると「人丸お六」と書いてあったんです。衣裳や小道具はそれを参考に作らせていただきました。前回は時間的に間に合わなかった部分もありましたので、今回はこだわっていきたいと思っています。以上、第十八弾「天日坊」本公演プログラムより抜粋公演は2月26日(土)まで、東京渋谷のBunkamuraシアターコクーンにて。
2022年02月02日まつもと市民芸術館総監督を務める串田和美がシェイクスピア四大悲劇の「リア王」を演じる舞台『KING LEAR -キング・リア-』の宣伝ビジュアルが公開されました。44年前、自由劇場時代に「リア王」を演じ、その後も多くのシェイクスピア作品を手がけてきた串田自らが舞台に立ち、全身全霊で挑むーその舞台を演出するのはシェイクスピア作品を上演し続けてきたカクシンハンの木村龍之介。裏切られ狂気に囚われていく孤独な老王リア。誰もが知る本作で、互いにシェイクスピアを追求し続ける木村龍之介×串田和美がどのような化学反応を起こすのか…ご期待ください!串田和美 コメント「リア王」は、当時、何を考えていたのか思い出せないくらい昔、今から44年前の自由劇場時代に演じたのですが、その時とはまた違う解釈が沸いてきて、長く生きていくのは良いことだなぁと感じています。この作品は若いころに感じた魅力とは全然違う、かといって歳を重ねたから悟れるものじゃない。分からないものは分からない、怒りはさらに沸いてくるし、それが虚しいことも感じながら、それでも怒りしかない。そんな風に感じていて、そう感じさせるシェイクスピアは、すごい作家だと改めて思います。演出の木村さんは、僕が育った時代のおっかない演出家とは違い(笑)紳士的でとても丁寧。でもきっとそういう人ほど、芯が強くて心の奥の方には絶対に譲らないものを持っていると思っています。老王リアが娘たちに裏切られていく話です。騙したり、騙されたり、そしてそこに「怒り」を覚え、その先に悲しみがある・・・そういう物語は、現代でも実感できると思います。今までにはない新しい舞台が生まれると思います。是非、ご期待ください。串田和美プロフィール1942年生まれ。俳優、演出家、舞台美術家。まつもと市民芸術館総監督。TCアルプ座長。1966年、劇団自由劇場を結成(後のオンシアター自由劇場)。『上海バンスキング』など数々の作品で人気を集める。85年~96年まで東京のBunkamuraシアターコクーン初代芸術監督を務める。2003年4月、まつもと市民芸術館館長兼芸術監督に就任(08年から芸術監督、21年より総監督)。まつもと市民芸術館での主な作品は『信州・まつもと大歌舞伎』『空中キャバレー』『K.テンペスト』など。劇場を自由自在に使いこなす演出や地域を巻き込んだ企画など、“松本ならでは”の事業を次々と実現。16年には「Flying Theatre 空中劇場」、17年「トランクシアター」シリーズを始動し、劇場以外での上演にも精力的に取り組んでいる。07年に第14回読売演劇大賞最優秀演出賞受賞。08年に紫綬褒章、13年に旭日小綬章を受章。15年には代表作のひとつである『スカパン』がルーマニアのシビウ国際演劇祭に正式招聘され、同年にシビウ・ウォーク・オブ・フェイム賞を受賞。木村龍之介プロフィール1983年生まれ。演出家・作家。カクシンハン主宰。東京大学で英米文学を専攻し、シェイクスピアを研究。シェイクスピアシアター、蜷川カンパニー、文学座附属演劇研究所などで俳優・演出を学び、劇団カクシンハンを立ち上げ、『ハムレット』『夏の夜の夢』『リア王』『タイタス・アンドロニカス』『薔薇戦争 〜ヘンリー六世 + リチャード三世〜』『マクベス』など、シェイクスピア作品を連続上演し、全作品の演出を務める。外部作品では、『新作能 鷹姫』や『ローマ帝国の三島由紀夫』を演出。公演概要【公演名】KING LEAR -キング・リア-【日時】2022年3月12日(土)~16日(水)全5回公演【会場】まつもと市民芸術館 小ホール【作】W.シェイクスピア【翻訳】松岡和子【演出】木村龍之介【出演】串田和美/岩崎MARK雄大、大山大輔/加賀 凪、串田十二夜、近藤 隼、下地尚子、武居 卓、深沢 豊、細川貴司、堀田康平、毛利悟巳【チケット料金(整理番号付き自由席・税込)】一般:4,000円、U18:2,000円(枚数限定)※未就学児入場不可【チケット一般発売日】2022年1月29日(土)10:00~【お問い合わせ】まつもと市民芸術館チケットセンター(10:00~18:00)TEL:0263-33-2200KING LEAR -キング・リア- | まつもと市民芸術館 : 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年01月21日初秋の松本平を満喫できる松本マラソン2021は、2021年10月3日(日)に長野県松本市でマラソンの部(42.195km)、ファミリーランの部(2km)が開催されます。開催概要についてマラソンの部は、参加費:12,000円、参加定員:8,000人、ファミリーの部は、参加費:ファミリー3,300円(子が2人の場合は4,400円)、参加定員:250組です。申し込みは、2021年4月29日10時~6月27日、 先着順なので定員になり次第、受付終了となります。国宝松本城の景観をより楽しめるコースに変更今回のコースは、松本をより一層松本の持つ魅力を堪能できる新たなコースとして大幅に変更されています。松本市総合体育館前をスタートとし、国宝松本城を1周し、中心市街へと向かいます。中盤からは、アップダウンのあるハードで走りごたえのあるコースを走行し、信州スカイパーク陸上競技場をフィニッシュします。制限時間は6時間、日本陸連公認コースです。(画像は公式サイトより)【参考】※松本マラソン2021の公式サイト
2021年04月29日玉木宏と高橋一生が、親の復讐を果たそうとする兄弟を演じる「竜の道 二つの顔の復讐者」の4話が8月18日放送。今回は松本まりか演じるまゆみと松本穂香演じる美佐、2人の“対決”と、美佐を巡る竜一と竜二の想いに多くの視聴者が想いを馳せている。養父母を自殺に追いやった運送会社社長に復讐を誓う双子の兄弟の姿を描いた、作家・白川道による未完の同名原作をオリジナル展開で結末までドラマ化する本作。整形し顔も名前も変え、さらに海外逃亡を経てコンサル会社社長として帰国、復讐を誓う運送会社・キリシマ急便に食い込もうとする竜一を玉木宏が、竜一の双子の弟で運送会社を監督する国土交通省のエリート官僚となり、キリシマ急便の社長の娘に近づいていく竜二を高橋一生がそれぞれ演じる。また2人とは血のつながりのない妹で、小学校教師の道に進んだ吉江美佐を松本穂香が、竜一と竜二が復讐を誓う運送会社・キリシマ急便の社長・霧島源平には遠藤憲一、源平の跡取り息子の晃に細田善彦、娘で竜二と接近していくまゆみに松本まりか、竜一がブラジルから日本に連れてきた遠山凛子に奈緒、竜一に心酔し復讐のことを知りながらついていく砂川に今野浩喜。竜一と源平両方とつながるヤクザの会長・曽根村始に西郷輝彦といったキャスト。※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。美佐はまゆみからホームパーティーに招待される。そこで竜二がまゆみとの結婚を望んでいることを知った美佐は、自分が血のつながりのない妹だと明かす。するとまゆみの表情がこわばり、それから美佐の周囲にホストが現れ嫌がらせを始めるように。美佐がホストたちの店に行くとそこにはまゆみの姿が。まゆみから竜二が金目当てで自分に近づいたと言われた美佐は、自らの過去を調べ始め両親の死の真実を知る…というのが今回のストーリー。美佐を拉致し「誰からも愛されて、まっすぐ育ってきましたみたいな顔して、私の前をうろつかないでくれる」と言い放つまゆみに、「それは誰からも愛されないからまっすぐ育たなかったと言ってるの?」と切り返す美佐。「美佐はおしとやかで弱そうにみえて本当は芯の強い人」「まゆみお嬢様、悪女なの分かるんだけど、実は愛されるのを求めてるんじゃないか?と思わせる感じ」「美佐VSまゆみが激熱」と対照的な2人の姿に視聴者から様々な反応が。その後、美佐は竜一が差し向けた曽根村の手下によって助けられるが、竜一の正体を知らない美佐は彼のことが気になっていく。そんな美佐の様子を複雑な様子で見守る竜二…。「美佐ちゃん、竜一のこと気になっちゃってる??よね!」「美佐を巡って双子と三角関係になったらやだなぁ……辛すぎる」「竜一、竜二、美佐それぞれの思いが切なく、辛い」など、美佐を巡る竜一と竜二の関係性にも多くの視聴者が想いを巡らせている。(笠緒)
2020年08月18日お笑いコンビ・ダウンタウンの松本人志が29日、自身のツイッターを更新。「松本人志に望むことありますか~?(ほろ酔い)」とリクエストを募集した。松本の呼びかけにさまざまなリクエストが寄せられ、松本は「ダウンタウンの新作漫才」、「YouTubeデビュー」という意見に、顔文字で反応した。ファンからの要望では、「インスタで浜ちゃんとリモート漫才やって欲しいです!!!」「浜田さんとリモートトークして欲しいですっ。有料でも見ます!!」「浜ちゃんとキス」「浜ちゃんとラジオ」「中居社長との公開リモート飲み会が見たいです」「中居くんと何かして欲しいです」「はしご酒に中居くん」など、相方・浜田雅功や中居正広とのコラボを期待する声が多数。また、「とんねるずと共演してください!」「インスタライブ」「筋トレ動画あげてください!!!」「家でコントを是非」というリクエストや、「コロナかからないでほしい」「浜田と長生き」「長生きしてください」「ダウンタウン2人で長生きすること」と愛のあるメッセージも多く寄せられている。
2020年04月29日シェイクスピアの「テンペスト」を“K.(串田版)”として串田和美が再構築する「K.テンペスト2019」が5月16日より開幕。演出・潤色・美術を手掛ける串田に話を聞いた。【チケット情報はこちら】2014年、2017年に続く三度目の上演となる本作は、串田が「この芝居は最初から決まっていることはなくて、ワイワイ話すなかでつくってきました。今回もそうやって話したい」と語るように、キャストと共に約6週間のワークショップ・創作期間を経てつくりあげる作品。話す内容は毎公演違うそうで、「今回は“許すってなんだろう”という話をしようかなと思っています。この作品でプロスペローは実の兄弟であるアントーニオに裏切られた復讐をしようとしているけれども、最後には許さなきゃいけない。じゃあ“許す”とか“謝る”ってなんだろうという話がしたい」と構想を語る。ベーシックなものとは違う、「出演者がお客さんと喋ったり、シェイクスピアの本を読んだりしているうちにだんだんお芝居になっていって、ときどきまたフッと喋っている状態に戻ったりするようなスタイル」(串田)で上演される本作は、広場で自由に演劇を観るようなカタチの場がつくられ、座る席も自由。これまでの手ごたえとしては、観客の「“こんなん“で”いいんだ” “これ“で”演劇なんだ”という反応」が印象的だったと串田は振り返る。「演劇が苦手な人って“理解できなかったらどうしよう”とか“あれ?みんな笑ってるけど…”とか、そういうのがあるでしょう。だけどそれは自由だし、なによりそこに“居合わせた”という感覚“で”いいんだってことを感じ取った人がたくさんいた。前回、僕の隣にいる人がそわそわしているから“どうしたの?”って聞いたら“なんだか嬉しい気持ちになって。なんでしょう、この気持ち!”って子供みたいになってて。嬉しかったな」と明かす。「演劇って、このごろは“商品をつくっているんだから”という意識が強い人も多いけど、すべて“作品”だし、僕は“作品”というより“事件”…小さなね、だといいなと思いながらつくっています」初めて観る人にとってはもちろん、新キャストが参加することで前作、前々作を観た人にとっても新しい体験となる。そんな本作は、5月19日(日)まで長野・まつもと市民芸術館 特設会場、5月22日(水)から26日(日)まで東京・東京芸術劇場 シアターイーストにて上演後、ルーマニアとセルビアを巡演。写真・文:中川實穗(なかがわみほ)
2019年05月17日串田和美が演出を手掛け、安蘭けいが出演するベルトルト・ブレヒトの喜劇『マン イスト マン』が1月26日に開幕した。【チケット情報はこちら】物語は、英軍隊の機関銃隊のおバカな4人組が寺院で賽銭泥棒をはたらき、ひとりが逃げ遅れてしまうことから始まる。鬼軍曹にひとり足りないことがバレないよう何とかしたい3人は、酒屋のおかみにキュウリを運ばされるお人よしの男に助けを頼み――。人間とは何か。笑いとユーモアの中でアイデンティティをめぐるストーリーだ。S席はテーブルがあって料理付き、A席も座席で飲食ができる“キャバレーシアター”。客席には振るとパチパチ拍手音が鳴る“パタパタ”が配られ、開演までコック姿のキャストたちが“ブーイング笛”を販売。上演中に拍手もブーイングもできるカジュアルな雰囲気だ。安蘭と串田が登場して挨拶すると、物語はスタート。作品は“S席の料理を作ったコックたちによるお芝居”として始まり、登場人物の名前も料理にちなんだ名前に変更されている。客席からは舞台袖も丸見え。コック達が次のシーンの準備をしているのも、舞台上の芝居を見てブーイング笛を鳴らしている(!)のも見え、「難解」と言われるブレヒト作品への構えが自然と取り払われていく。出演者は、おかみベグビック役の安蘭、鬼軍曹役の串田、そしてコックとして物語の登場人物を演じる武居卓や小椋毅、海老澤健次らオーディションで選ばれた12人のメンバー。前半ではコックたちの場面と『マン イスト マン』の物語を行き来しながら彼らが案内役として客席を引っ張るが、S席の観客が食事を終えた頃には物語は一直線に進み始める。劇中には歌やダンスがちりばめられ、『リトル・ナイト・ミュージック』(2018年4~5月)ぶりとなる安蘭の歌や、串田のクラリネット演奏も見どころ。音楽・ピアノ演奏を担当する元ボ・ガンボスのDr.kyOnによる歌にも注目だ。ここでしか体験できないものがたくさん詰まった本作。ブレヒト作品に初挑戦したい人にもオススメしたい。KAAT 神奈川芸術劇場とまつもと市民芸術館による初の共同プロデュース作品『マンイストマン』は、2月3日(日)まで神奈川・KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオで上演中。その後、2月8日(金)から13日(水)まで長野・信毎メディアガーデン1Fホールにて上演。取材・文:中川實穗
2019年01月28日1月16日、ダウンタウンの松本人志(55)が、自身のTwitterを更新。HKT48の指原莉乃(26)がTwitterで「松本さんが干されますように」とつづったツイートをリツイートし、「指原様~」と反応した。1月13日に放送された「ワイドナショー」(フジテレビ系)で、松本は指原に対し「お得意の体を使って、何とかすれば」という趣旨の発言をし、その後ネットを中心に物議を醸していた。指原は、15日に自身のTwitterで、「ワイドナショー、緊張しすぎて本当に記憶がほとんどなく…改めて録画をチェック…」と改めて番組を視聴したことを報告。その後、「松本さんが干されますように」と失言した松本に対してツイートした。これに対し松本はすぐさま反応。「指原様~」とコメントとともに指原のツイートをリツイートした。松本のツイートに対し、7万2,000のいいねと1万近いリツイート、また、1,500を超えるコメントがされた。コメント欄には、「このやり取りは凄すぎる!」「二人の絡み大好きです!」「あの発言は信頼関係があるからこその発言」と指原と松本のやりとりに対し好意的なコメントも見られたが、「笑いに変える内容ではないですよね」「全く反省してない…信じられない」「全然おもろないで。ほんま、つまらん芸人になってしもたなあ」と厳しい発言もみられた。
2019年01月16日ガラス作家・辻和美の展示「between visible and invisible」が、7月29日まで、青山・スパイラル内のcallと、ミナ ペルホネン 代官山店で同時開催中。辻和美が探り表現する、“見えると見えないの間”。ミナ ペルホネン(minä perhonen)が提案する心地よい暮らしのためのショップcallには、乳白色の「opaque」シリーズをはじめとする優美なかたちの作品が、そしてミナ ペルホネン 代官山店には、透明感のある「color」シリーズのグラスが並ぶ。以下、作家・辻和美のコメント。「今回考えた展覧会タイトルは、『見えると見えないの間』とでも訳せばよいだろうか?ひとつの素材を長年扱っていると、否が応でも、その素材が持ついろいろな特性を知り、付き合っていくことになる。そう、私のパートナーであるガラスの大きな特徴は、二面の相反する性質を合わせ持っていることかもしれない。熱いと冷たい。柔らかいと硬い。無色と有色。そして、透けると透けない。などいつも、その振り幅に翻弄させられるのだが、、特に私はその中の『有色による透けると透けない』に興味がある。そして、その『透ける』から『透けない』までのたくさんある幅、『見えそうで見えない、または、目を凝らすと見える』などは、無限にあり、毎回、制作の度に新しい出会いがある。それは人間の持つ感情の様に、言語化できない曖昧さが魅力でもある。結局見えることや、話したこと、書いたことではない、よく見えないこと、うまく話せなかったこと、書いた文章の行間に大事なことが潜んでいたりする。今回はミナ ペルホネンの2018-19年秋冬新作に合わせた色をベースに、無限の『見えると見えないの間』を目を凝らして見に来ていただけると幸いです」【展覧会情報】kazumi tsuji + factory zoomer exhibition “between visible and invisible”「opaque」乳白色のガラスシリーズ会期:7月21日〜29日会場:call住所:東京都港区南青山5-6-23 SPIRAL 5F時間:11:00〜20:00「color」透明感のあるガラスシリーズ会期:7月21日〜29日会場:minä perhonen 代官山店住所:東京都渋谷区猿楽町18-12 HILLSIDE TERRACE G棟1階時間:11:00〜20:00
2018年07月24日毎年、長野県松本市を舞台に開催される、指揮者 小澤征爾が総監督を務める国際音楽祭のセイジ・オザワ 松本フェスティバル(OMF)。桐朋学園の創設者のひとりであり、偉大な教育者であった故・齋藤秀雄氏の没後10年にあたる1984年、小澤征爾と秋山和慶の呼びかけで世界各地に散る同門の志が一堂に集い、メモリアルコンサートを行ったことから、世界に名を響かせることとなる、サイトウ・キネン・オーケストラ(SKO)が生まれた。1992年にはSKOが母体となり、サイトウ・キネン・フェスティバル松本が誕生。2015年にセイジ・オザワ 松本フェスティバルと音楽祭の名称を新たにし、今年で27年目の開催を迎える。世界各地で活躍する演奏家たちが、唯一無二の音色を奏でるSKOによるオーケストラ コンサートは、3プログラムを開催する予定だ。【チケット情報はコチラ】Aプログラム(8月26日(日))は、2011年のフェスティバルでチャイコフスキー《交響曲第4番》を指揮したディエゴ・マテウスが、満を持して《第5番》を指揮。ハイドン《協奏交響曲》は、SKOが誇る名手たちが奏でる独奏にも注目して欲しい。Bプログラム(8月31日(金))は、総監督 小澤の弟弟子である秋山和慶が、得意とする王道のフレンチ・プログラムを指揮。Cプログラム(9月2日(日))は、フェスティバルとも縁の深いジャズ・トリオのマーカス・ロバーツ・トリオを迎えアメリカンでジャジーなプログラム “OMF Gig”をお届けする。小澤の恩師であるバーンスタインや、アメリカが誇る名作曲家ガーシュウィンの心躍る楽曲に身を委ねてみては。また、小澤がオーケストラ公演と合わせて情熱を注ぐオペラ公演では、プッチーニの喜劇『ジャンニ・スキッキ』を上演。遺産相続と恋人たちの行方を愉快に描いたオペラは、家族そろって楽しめること間違いない。OMFでしか聴けない、上質な室内楽プログラムも3つを開催。特に注目は、約半世紀にわたり、ジュリアード弦楽四重奏団で第1ヴァイオリンを務めたロバート・マン氏を偲び開催する「ふれあいコンサートI ~ロバート・マン メモリアルコンサート~」(8月19日(日))。氏が創立時より情熱を注いだ小澤征爾スイス国際アカデミーを迎え、弦楽四重奏と弦楽合奏を行う。マン氏がジュリアード弦楽四重奏団期より最も愛し、弦楽合奏としても多く指揮をした曲でもあり、近年、小澤も好んで取り上げている想い入れの深い、ベートーヴェン《弦楽四重奏曲第16番 Op. 135 第3楽章》の演奏も予定している。室内楽の偉大な指導者であったマン氏の教えを受け、音楽の真髄に触れた若い音楽家たちの演奏は必聴だ。他にも、1000円で聴ける「OMF室内楽勉強会~金管アンサンブル~発表会」(8月18日(土))や、教育プログラムを開催。期間中は松本市内のあちこちでオープンイベントも開催している。OMFは8月18日(土)から9月7日(金)まで開催。この夏はぜひ信州・松本で、忘れられない音楽体験を楽しんでみてはいかがだろうか。
2018年07月05日6月の博多座は、九代目松本幸四郎改め二代目松本白鸚、七代目市川染五郎改め十代目松本幸四郎の親子襲名披露興行。坂田藤十郎、中村梅玉、片岡仁左衛門ら華やかな面々が色を添え、歌舞伎の歴史に残る貴重な名舞台となりそうだ。開幕を前に、松本白鸚、松本幸四郎が公演に対する思いを語った。【チケット情報はこちら】「1月、2月の東京・歌舞伎座で私と息子と孫の三人で襲名をさせて頂きました。37年前に私が松本幸四郎を襲名させて頂いた時も三代襲名でしたが、今回も本当に奇跡のようなこと。歌舞伎を愛してくださる皆様が起こしてくださった“奇跡”。博多座では私と息子の襲名興行となりますが、その思いをしっかり受け止めて伺いたいです」と、笑顔で抱負を語ってくれた松本白鸚。続いて松本幸四郎は「十代目松本幸四郎を襲名させて頂きました。幸四郎という名前を父から譲られ、許されるということは本当に嬉しいこと。父の背中を追い続けるのは変わりませんが『松本幸四郎は僕だ』という思いで、さらに精進したいと思います。母が博多出身なので、博多は私にとって第2の故郷。その場所で襲名興行ができるのは本当に嬉しいです」と挨拶した。親が子に、子が孫に、それぞれ慣れ親しんだ名前を譲る。襲名とはやはり特別なものだ。父・白鸚は「今回の昼の部でも上演する『伊達の十役』の政岡を、染五郎が演じていた時に見事だと感心しました。そして『染五郎』という器から芸があふれ出ているなと。そこで器を『幸四郎』に変えれば、新たな芸を詰め込めるのではないかと思ったんです」、息子・幸四郎は「前回の襲名とは違い、今回は息子が同時に『市川染五郎』を襲名します。昨日まで自分が名乗っていた名前を別の人物が名乗るというのは、私にとって初めての経験で、自分が『幸四郎』になったという事をより強く実感させてもらってます。息子も子役から大人の役への変化の時期ですし、本当に新たなスタートですね」と、それぞれの思いを語ってくれた。昼の部で幸四郎は、2015年二月花形歌舞伎で好評を博した『伊達の十役』を勤める。市川猿翁(三代目猿之助)が復活させた、立ち回りあり、宙乗りありの大スペクタル劇。40回以上の早替りを幸四郎が魅せる十役の演じ分けや、今回は特別に三浦屋女房を三浦屋亭主に変え、白鸚が演じるというのも見どころだ。夜の部では「毎日踊っていたいと思えるぐらい好き」という舞踊の大曲『春興鏡獅子』を踊る。白鸚は夜の部の『魚屋宗五郎』を演じる。「襲名であることも、高麗屋の芸を披露することも大事だけれど、やはり一番はお客様に喜んでいただける演目であること。世話物の(独特の) “間”が非常に難しく、かつ面白い。他の演目ももちろんですが、『魚屋宗五郎』が一番面白かったと思わせますよ(笑)」。6月2日(土)から26日(火)まで福岡・博多座で上演。チケットは発売中。5月30日(水)には恒例の船乗り込みも行なわれる。
2018年05月22日