2人目まで大きなトラブルもなく、「3人目だし、余裕♪」と思っていた長男妊娠時。妊娠28週で先天異常の疑いを告げられて、大きな病院に転院することになりました。転院先で判明した病名は「横隔膜ヘルニア」。あまり知られていないこの病気について、実際の経験をもとにご紹介します。 ※横隔膜ヘルニア:本来胸とおなかの臓器を隔てている横隔膜に生まれつき穴が開いており、その穴からおなかの中の臓器が胸の中に出てきて心臓や肺を圧迫してしまう病気 長すぎるエコー。胃が心臓の真下に?初めての男の子にわくわくしていた第3子妊娠中、妊娠28週の健診で違和感を覚えました。普段数分のエコーが、10分以上続いたのです。先生の顔も心なしか曇っています。「胃が心臓の真下にあります。横隔膜ヘルニアという病気かもしれません」正直、そう言われてもピンときませんでした。 ただ、淡々と進む大病院への転院の手続きと、看護師さんからの「まだ確定したわけではないから落ち込まないでね」という言葉に、これはただ事じゃないのではと思い始めました。 転院先で治療説明。人工肺は避けたい!転院先の大病院で診断が確定し、治療方針の説明がありました。横隔膜ヘルニアというのは本来胸とおなかの臓器を隔てている横隔膜に生まれつき穴が開いており、その穴からおなかの中の臓器が胸の中に出てきて心臓や肺を圧迫してしまう病気であること。 帝王切開で胎児を眠らせた状態で出産し、生まれた直後から人工呼吸器で治療していくこと。人工呼吸器で状態が落ち着いてから横隔膜の穴をふさぐ手術をすること。人工呼吸器で間に合わなければ、人工肺を使う可能性があること。 さまざまな説明をされ、特に人工肺には脳出血などのリスクがあると聞き、怖くて仕方がありませんでした。 出生後、容体急変! 生死を彷徨うわが子先天異常がある以外は穏やかに進んだ妊娠期間も終わり、ついに出産の日。麻酔から目を覚ました私に、夫が人工呼吸器をつけて穏やかに眠る赤ちゃんの写真を見せてくれてひと安心しました。 しかし、翌日容体が急変。恐れていた人工肺の取り付けと横隔膜ヘルニアの手術をいっぺんにおこなうことになり、不安で涙が止まりませんでした。 手術は成功したけれど…募る不安 手術は無事成功しましたが、その2日後に人工肺を取り外すことになりました。息子のサイズに合わせると小さめの人工肺しか取り付けることしかできなかったのですが、想定より肺のダメージが大きく、その人工肺の許容量を超えてしまったのだそうです。横隔膜ヘルニアの影響で息子の肺は片方しかなく、あるほうの肺もほとんど機能していませんでした。 一か八かの人工肺離脱手術が始まり、何とか成功。入院中の私は、帝王切開の痛み、3時間おきの搾乳、息子への不安でほとんど睡眠をとれない日が続きました。結局息子はその後4カ月入院、鼻に取り付ける人工呼吸器をつけた状態で退院しました。退院時は在宅医療の不安が大きく、あまり喜べなかったのが正直なところです。 息子はその後、酸素吸入器を経て1歳直前で服薬等も終わり、普段の生活で医療ケアは必要ない状態になりました。ただ、肺は未だにひとつしかなく、呼吸器系の風邪を引いたときにはこじらせて入院となることもあります。だけど、生まれたときのことを考えれば、生きているだけで奇跡だと思わずにはいられません。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 監修/助産師REIKO著者:岩崎はるか2女1男の母。両実家とも遠方のためワンオペ育児中。先天異常の影響で肺が片方しかない医療ケア児を含む3人の子を育てた育児体験談のほか、大学院まで学んだ食についても執筆。
2021年06月28日「横隔膜ヘルニア」という先天性疾患を抱えて生まれたお子さんを持つママの体験談をお届けする連載企画です。横隔膜ヘルニアとは、本来胸とおなかの臓器を隔てている横隔膜に生まれつき穴が開いており、その穴からおなかの中の臓器が胸の中に出てきて心臓や肺を圧迫してしまう病気(※)。おなかの子が横隔膜ヘルニアであると診断された妊娠中から出産までのできごとやママが感じた不安、生まれたお子さんの様子やその後の治療についてご紹介していきます。(※)心臓や肺を圧迫するために心臓や肺の発育が悪くなります。これにより心臓の機能の低下や肺低形成・肺高血圧症をきたすため、出生後に手術を受けたあとも酸素療法や心不全に対する治療が長期に必要になることがあります。 3歳になり、MRI検査でも大きな異常が見られなかった息子は、2021年4月から無事幼稚園に通えることになりました。当連載最終回である今回は、横隔膜ヘルニアで生まれた息子の育児が一区切りした今、息子を育てるうえで大変だったことや、よかったことを振り返っていこうと思います。 とにかく不安でいっぱいだった入院中重度の横隔膜ヘルニアを持って生まれた息子は生後すぐ危険な状態となり、その後4カ月に渡りこども病院に入院していました。特に最初の1週間は毎日が死と隣り合わせで綱渡りのような日々。その後は命の危機こそなかったものの、電話が鳴るたびに「病院からでは?」とヒヤヒヤしていました。 ただ、幸いこども病院では親の付き添い入院は必要なく、「面会もできるときでOK」というスタンスだったため、上の子たちや自分自身の気持ちのケアをおこなう時間的余裕があり、非常にありがたかったです。想像以上に大変な医療的ケア児の世話入院中、息子が退院後も人工呼吸器が必要な状態であると聞かされてからというもの、私は同様の医療的ケア児についてたくさん調べました。そのうえで、医師や看護師さんなどにわからないことはすべて聞いて、万全に準備をしていたつもりです。 しかし、いざ息子が退院すると想定外の出来事の連続で疲弊し、在宅勤務の夫ともずいぶん衝突しました。自分だけで解決できるよう知識を詰め込むのではなく、最低限の知識を夫婦で共有し息子のケアについて意見をすり合わせておくことが必要だったなと、今となっては思います。医療的ケアがなくなっても終わりじゃない息子の医療的ケアは生後11カ月でなくなり、見た目は健常児と変わらない状態になりましたが、油断は禁物でした。息子は1歳以降に2回、風邪をこじらせてこども病院に入院しています。 そのうちの1回は、再び人工呼吸器を装着するための気管内挿管を伴う非常に重篤なものでしたが、原因は特別な病気ではなく、「ごく普通の風邪」です。上の子たちが数日の咳だけで熱も出ずに終わったような風邪でさえ重篤な状態になる息子は、医療的ケア児ではなくなっても注意深くケアしなければならない病気を抱えた子に変わりありません。 息子のこれからを考えて決めた仕事昨今、新型コロナウイルス感染症対策が徹底されていることもあり、ここ1年ほどは病気をしていない息子。しかし、幼稚園、小学校……と集団生活が始まれば、風邪をひくでしょうし、こじらせてしまうこともあるかもしれません。そんなとき、なるべくスムーズにストレスなく付き添ってあげられるように、私は在宅フリーランスとして働く道を選びました。 最初のきっかけこそ息子でしたが、上の子たちが体調を崩したときにも柔軟に対応でき、幼い子3人を育てる自分には合っていたなと思います。息子が生まれたからこそ見つけることができた、天職です。 医療的ケア児の息子と過ごした日々はきれいごとでは済まない大変さがありましたが、結果的には私の視野が広がり、働き方や家族のあり方など、さまざまなことを考え直す良いきっかけになりました。一時は「痛みしか知らないまま死んでしまうのかもしれない」と思った息子が今いろいろなことでニコニコ笑うたびに、心の底から幸せな気持ちになっています。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 著者:岩崎はるか2女1男の母。両実家とも遠方のためワンオペ育児中。先天異常の影響で肺が片方しかない医療的ケア児を含む3人の子を育てた育児体験談のほか、大学院で農学を学んだ経験から食についても執筆。 監修者:医師 神奈川県立こども医療センター総合診療科部長 松井 潔 先生愛媛大学医学部卒業。神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神奈川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て現在、同総合診療科部長。小児科専門医、小児神経専門医、新生児専門医。
2021年02月05日「横隔膜ヘルニア」という先天性疾患を抱えて生まれたお子さんを持つママの体験談をお届けする連載企画です。横隔膜ヘルニアとは、本来胸とおなかの臓器を隔てている横隔膜に生まれつき穴が開いており、その穴からおなかの中の臓器が胸の中に出てきて心臓や肺を圧迫してしまう病気。 おなかの子が横隔膜ヘルニアであると診断された妊娠中から出産までのできごとやママが感じた不安、生まれたお子さんの様子やその後の治療についてご紹介していきます。 生まれてからずっとこども病院に入院していた息子でしたが、生後4カ月で病状が安定し、ようやく退院が決まりました。とはいえ、退院後も呼吸の補助は必要な状態。そこで、息子の退院に先駆けて、人工呼吸器や酸素濃縮器などが家にやってきたのですが……。 退院後の息子に必要な医療的ケア病状が安定したとはいえ、肺が片方しかない状態で退院後も呼吸の補助が必要だった息子。鼻に取りつけるための人工呼吸器は基本的にずっとつけておかなければなりませんでした。 ただ、さすがに入浴時は人工呼吸器をつけたまま介助をおこなうことが難しいので、その時間に限って酸素吸入器に切り替えることに。このため、わが家には人工呼吸器と酸素吸入をおこなうための酸素濃縮装置の2つが置かれることになりました。 装置以外の大きかったもの退院が近づいた段階で息子の人工呼吸器は在宅治療用の物に切り替えられており、見た感じそれほど大きなものではなかったのであまりスペースの心配はしていませんでした。しかし、いざ家に来てみると人工呼吸器ではなく付属の棚の大きさにびっくり。 人工呼吸器は空気を送る際には加湿が必要となるため、病院では点滴台に精製水をつるして加湿部まで滴下していくのですが、自宅ではその棚に点滴台や加湿部を取り付けられるポールなどがあり、人工呼吸器本体をはるかに上回る大きさになっていたのです。 命を守る予備物資結局、人工呼吸器と付属の棚、それに酸素濃縮器で、ベビーベッドの枕元に約半畳ほどのスペースが必要でした。それだけでなく、人工呼吸器の予備の回路(まるまる3回分)、加湿用の精製水(段ボール1箱分)、酸素濃縮器の不調に備えた酸素ボンベなどさまざまな物資が家に運び込まれ、わが家は2階の空きスペースまでいっぱいに。 医療的ケアのための機材は命に関わる物。ありとあらゆる状態に備えるためには、たくさんの物が必要なのだと改めて感じました。 機材の配置で心がけたことまず、各機材の担当者から言われたのは「普段の動線を考えて配置したほうがいい」ということ。息子の場合、基本的にはベビーベッドにいますが、お風呂には毎日入りますし、外出時は玄関まで連れていくことになるため、お風呂と玄関には一直線で行けるようにベビーベッドと機材を配置しました。 また、機材はすべて非常用コンセント(蓄電池に繋がっていて、停電時も使用できるもの)に繋ぐ、予備の物資は上の子たちに壊されないよう目の届かないところに置くなどいざというときの安全も心がけました。 医療的ケアが必要な状態での退院ということで不安ばかりが膨らんでいたのですが、実際に機材が家に増えてくるにしたがって、息子との生活を具体的に想像できるようになりました。息子が帰ってくる前に、機材についての具体的な説明を聞き、生活に合わせて部屋を準備できたことは本当にありがたかったです。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 監修/助産師REIKO著者:岩崎はるか2女1男の母。両実家とも遠方のためワンオペ育児中。先天異常の影響で肺が片方しかない医療的ケア児を含む3人の子を育てた育児体験談のほか、大学院で農学を学んだ経験から食についても執筆。
2020年10月08日「横隔膜ヘルニア」という先天性疾患を抱えて生まれたお子さんを持つママの体験談をお届けする連載企画です。横隔膜ヘルニアとは、本来胸とおなかの臓器を隔てている横隔膜に生まれつき穴が開いており、その穴からおなかの中の臓器が胸の中に出てきて心臓や肺を圧迫してしまう病気。おなかの子が横隔膜ヘルニアであると診断された妊娠中から出産までのできごとやママが感じた不安、生まれたお子さんの様子やその後の治療についてご紹介していきます。 生後4カ月間に渡り入院していた息子。いよいよ退院が近づき、人工呼吸器をつけた状態で移動する練習をおこなうことになりました。基本の移動はベビーカー、退院時は車での移動が必要となります。思った以上に重く、大きい人工呼吸器。人工呼吸器から息子に至るホースも複雑で、特にベビーカーに載せるのは大変でした。 おさがりのベビーカーで大丈夫?退院を半月後に控え、移動の練習のため、看護師さんからベビーカーを持ってくるように言われました。人工呼吸器を使いながら移動している医療的ケア児は見たことがあったものの、子ども用車椅子を使っているイメージだった私は、ベビーカーでいいのか看護師さんに聞いてみました。 「赤ちゃんに子ども用車椅子は大きすぎるかも。でも確かにベビーカーには人工呼吸器が載せられないものもあるので、大丈夫なタイプを調べて買う方も多いですよ」。看護師さんの返事に、おさがりのベビーカーを使うつもりだった私は一気に不安になり……。 どんなベビーカーならいいの?当時の息子に必要なのは人工呼吸器だけで、酸素ボンベなどは必要なかったため、人工呼吸器と血中酸素モニターさえ載れば問題ありませんでした。使用していた血中酸素濃度モニターは厚めのスマホくらいのサイズだったので、人工呼吸器の本体サイズである幅30cm、奥行き20cm、高さ30cmくらいの積載スペースがあれば十分です。 幸いわが家で使っていたのは3輪タイプの大きめなベビーカーで、積載スペースも問題ないように思えました。 人工呼吸器は載ったけど…まさかの盲点移動の練習の日、人工呼吸器は問題なくベビーカーの積載スペースに載せることができました。息子と人工呼吸器をつなぐホースも包帯でベビーカーの持ち手に縛ったりすればどうにかなりました。 「いよいよ出発!」と思ったのですが、なぜかベビーカーが動きません。よく見てみると人工呼吸器の本体を載せている積載スペースの下に後輪ストッパーがあり、5kgを超える人工呼吸器の重みでストッパーがかかってしまっていたのです。 人工呼吸器と共に移動する大変さを痛感幸い、本体の位置を少しずらすとストッパーがかからずに済み、何とか移動することができました。しかし、段差などがあればまた人工呼吸器がずれて、ストッパーがかかってしまうこともしばしば。 それ以外にもホースの途中に結露がたまって、人工呼吸器のアラームが鳴ってしまうなどさまざまなトラブルがあり、ただ「息子をベビーカーで駐車場まで連れて行き、車に乗せ替える」だけの練習に数時間かかりました。 移動の練習中は看護師さんがたくさん手伝ってくれたので、終わったときには「これを自分たちだけでできるのか」と不安な気持ちでいっぱいでした。退院を前に、医療的ケア児の移動のハードルは健常児の比ではないと痛感したできごとです。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 監修/助産師REIKO著者:岩崎はるか2女1男の母。両実家とも遠方のためワンオペ育児中。先天異常の影響で肺が片方しかない医療ケア児を含む3人の子を育てた育児体験談のほか、大学院まで学んだ食についても執筆。
2020年09月30日2人目まで大きなトラブルもなく、「3人目だし、余裕♪」と思っていた長男妊娠時。妊娠28週で先天異常の疑いを告げられて、大きな病院に転院することになりました。転院先で判明した病名は「横隔膜ヘルニア」。あまり知られていないこの病気について、実際の経験をもとにご紹介します。 ※横隔膜ヘルニア:本来胸とおなかの臓器を隔てている横隔膜に生まれつき穴が開いており、その穴からおなかの中の臓器が胸の中に出てきて心臓や肺を圧迫してしまう病気 長すぎるエコー。胃が心臓の真下に?初めての男の子にわくわくしていた第3子妊娠中、妊娠28週の健診で違和感を覚えました。普段数分のエコーが、10分以上続いたのです。先生の顔も心なしか曇っています。「胃が心臓の真下にあります。横隔膜ヘルニアという病気かもしれません」正直、そう言われてもピンときませんでした。 ただ、淡々と進む大病院への転院の手続きと、看護師さんからの「まだ確定したわけではないから落ち込まないでね」という言葉に、これはただ事じゃないのではと思い始めました。 転院先で治療説明。人工肺は避けたい!転院先の大病院で診断が確定し、治療方針の説明がありました。横隔膜ヘルニアというのは本来胸とおなかの臓器を隔てている横隔膜に生まれつき穴が開いており、その穴からおなかの中の臓器が胸の中に出てきて心臓や肺を圧迫してしまう病気であること。 帝王切開で胎児を眠らせた状態で出産し、生まれた直後から人工呼吸器で治療していくこと。人工呼吸器で状態が落ち着いてから横隔膜の穴をふさぐ手術をすること。人工呼吸器で間に合わなければ、人工肺を使う可能性があること。 さまざまな説明をされ、特に人工肺には脳出血などのリスクがあると聞き、怖くて仕方がありませんでした。 出生後、容体急変! 生死を彷徨うわが子先天異常がある以外は穏やかに進んだ妊娠期間も終わり、ついに出産の日。麻酔から目を覚ました私に、夫が人工呼吸器をつけて穏やかに眠る赤ちゃんの写真を見せてくれてひと安心しました。 しかし、翌日容体が急変。恐れていた人工肺の取り付けと横隔膜ヘルニアの手術をいっぺんにおこなうことになり、不安で涙が止まりませんでした。 手術は成功したけれど…募る不安 手術は無事成功しましたが、その2日後に人工肺を取り外すことになりました。息子のサイズに合わせると小さめの人工肺しか取り付けることしかできなかったのですが、想定より肺のダメージが大きく、その人工肺の許容量を超えてしまったのだそうです。横隔膜ヘルニアの影響で息子の肺は片方しかなく、あるほうの肺もほとんど機能していませんでした。 一か八かの人工肺離脱手術が始まり、何とか成功。入院中の私は、帝王切開の痛み、3時間おきの搾乳、息子への不安でほとんど睡眠をとれない日が続きました。 結局息子はその後4カ月入院、鼻に取り付ける人工呼吸器をつけた状態で退院しました。退院時は在宅医療の不安が大きく、あまり喜べなかったのが正直なところです。 息子はその後、酸素吸入器を経て1歳直前で服薬等も終わり、普段の生活で医療ケアは必要ない状態になりました。ただ、肺は未だにひとつしかなく、呼吸器系の風邪を引いたときにはこじらせて入院となることもあります。だけど、生まれたときのことを考えれば、生きているだけで奇跡だと思わずにはいられません。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 監修/助産師REIKO著者:岩崎はるか2女1男の母。両実家とも遠方のためワンオペ育児中。先天異常の影響で肺が片方しかない医療ケア児を含む3人の子を育てた育児体験談のほか、大学院まで学んだ食についても執筆。
2020年06月18日出産したばかりのママにとって育児は、はじめて遭遇することばかり。赤ちゃんの成長とともに、経験したことがないことが毎日のように発生します。気にかけた方が良いのか、それとも気にする必要がないことなのかを見極めることもできず、「どうしよう…」と途方にくれることに。赤ちゃんのしゃっくりも、「大丈夫かな?」と心配ごとのひとつかもしれません。「ヒクッ、ヒクッ」っと小さな体を震わせて、毎日しゃっくりをくりかえす姿に驚きます。しゃっくりはどうして起こるのでしょうか? また、止めてあげたほうが良いのでしょうか? そもそも、止める方法はあるのでしょうか? ここでは新生児赤ちゃんのしゃっくりの対処法を紹介します。【監修】赤坂ファミリークリニック院長 伊藤明子 先生小児科医師、公衆衛生専門医、同時通訳者。東京外国語大学イタリア語学科卒業。帝京大学医学部卒業、東京大学医学部附属病院小児科入局。東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻修了。同大学院医学系研究科公衆衛生学/健康医療政策学教室客員研究員。2017年より赤坂ファミリークリニック院長、NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。著書・共著に『小児科医がすすめる最高の子育て食』など。テレビ番組「林修の今でしょ!講座」などに出演中。二児の母。■新生児はしゃっくりすることが多いの? ▼そもそも「しゃっくり」とはしゃっくりとは、横隔膜のけいれんにより無意識に起こる反応で、医学的にはきつ逆反射といわれています。せきやくしゃみなどと同じで、呼吸器系で無意識で生じる反射運動です。「ヒクッ、ヒクッ」という独特の音は、横隔膜が急に収縮したことで、空気をふいに吸い込んだ時に出る音。実はこのしゃっくり、新生児赤ちゃんがママのおなかの中で羊水にいた時から、すでに始まっているのです。ママの中には、妊娠中に大きく突き出たおなかが「ヒクッ、ヒクッ」と動くのを感じていた人もいることでしょう。これは、羊水の中に浮かぶ異物が赤ちゃんの鼻や口に詰まらないように、横隔膜がけいれんを起こし、しゃっくりをして異物を吐き出しているようです。鼻や口にゴミが詰まってしまったら、いざ生まれた時に呼吸ができなくなってしまいます。それを防ぐための反応という人もいます。つまり、赤ちゃんが自分の命を守るための運動ともいえそうです。▼赤ちゃんはしゃっくりが多い!?生まれたばかりの赤ちゃんの体は未熟で、筋肉が十分に発達していません。そのため、呼吸は横隔膜を使った腹式呼吸をしています。しかも、1分間に40~50回の呼吸、120回の脈拍と、大人の2倍も行っています。ですから、体の働きが忙しい分、しゃっくりも大人より多く発生しているのです。■新生児や赤ちゃんのしゃっくりの原因赤ちゃんのしゃっくりの原因として、主に2つが挙げられます。▼原因1:母乳やミルクを飲んだあとにしゃっくりが多い!赤ちゃんがしゃっくりをしている姿がいちばん多く見られるのは、授乳後かもしれません。新生児はミルクを飲むこともまだ上手ではないので、「ゴクッ! ゴクッ!」とミルクや飲み込む時に、空気も一緒に飲み込んでしまうことが多く、これがしゃっくりの原因となるのです。また、おなかがいっぱいになったことで、胃が横隔膜を刺激し、しゃっくりが出る場合もあります。▼原因2:おむつがぬれて体が冷えるとしゃっくりが出る体の冷えもしゃっくりの原因のひとつです。おしっこでぬれたおむつに気がつかずにいることで、赤ちゃんの体が冷えてしまい、横隔膜が刺激を受けてしゃっくりが出ることがあります。生後3カ月くらいまでの赤ちゃんは、体温調整が苦手で、まだひとりでうまくできません。まわりの温度の変化を体に受けやすいので、室内の温度をこまめに確認し、衣類の調節を心がけましょう。■新生児赤ちゃんのしゃっくり対処法▼対処法1:げっぷをさせるミルクと一緒に飲み込んだ空気を体から出すことで、しゃっくりが止まることがあります。授乳後には、毎回げっぷをさせてあげると良いでしょう。げっぷを出してあげることは、ミルクのはき戻しを防ぐことにもなります。とはいえ、しゃっくりが止まらないからといって、げっぷが出るまで背中をトントンし続けたり、強くたたいたりすることはありません。▼対処法2:母乳、白湯などを飲ませる母乳や白湯を飲ませ、赤ちゃんの体を温めることでしゃっくりが止まる場合もあります。適温の飲み物を体に入れ、内側から横隔膜を刺激します。飲ませるのは、お水を一度沸騰させ、冷ました白湯です。飲ませすぎにも注意しましょう。▼対処法3:背中をトントンと刺激するもうひとつの方法は、赤ちゃんの背中を刺激する方法です。赤ちゃんを縦抱きしたら、顔をママの肩に乗せます。そして、背中を軽くトントンと指の腹でたたきます。体の血行が良くなることで、しゃっくりが止まる場合もあります。赤ちゃんも気持ちがよくなり、そのままスヤスヤ眠りにつく…こともあります。▼対処法4:おむつを替えるおむつがぬれていることが原因の場合もあります。おしっこやうんちをしていないか確認し、おむつを替えてあげましょう。体の冷えが解消されて、気持ち良くなることでしゃっくりが止まることがあります。ただし、冬など部屋の温度が低い時期は、おむつを交換することで、おしりが冷えてしまうことがあるので、寒さを感じないように注意しましょう。▼対処法5:お風呂に入る沐浴(もくよく)させる方法もあります。赤ちゃんはリラックスするとうんちやおしっこをすることがありますので、お風呂に入れる前に、あらかじめ着替えやおむつを用意しておくと、ママもあわてずにすむでしょう。気持ち良さそうにうっとりとお湯につかる赤ちゃんの表情を見ているとあまりのかわいらしさに、ママもいやされることでしょう。▼何もしなくてもOK!しゃっくりの原因の多くは、問題がないことが多いので心配しすぎないようにしましょう。ママが神経質になってしまい、その動揺が赤ちゃんに伝わって泣き止まないということもあります。「大丈夫、しゃっくりはいつか自然と止まるもの」と、あわてずにゆったりと構えてみてください。■これはNG! 新生児や赤ちゃんのしゃっくりでやってはいけない対処法▼NG対処法1:驚かせたりくしゃみをさせる大人の場合、刺激でしゃっくりが止まることが多いため、背後から「わ!」と声をかけて驚かしたり、息を止めたりする方法をためす人もいます。しかし、これらの行為は赤ちゃんにはNGです。同じように鼻を刺激してくしゃみをさせたりすることもおすすめできません。赤ちゃんにとって強い刺激は危険ですから、やめておきましょう。▼NG対処法2:コップに入れた水をたくさん飲ませるしゃっくりが止まらないからといって、水を大量に飲ませることもNGです。赤ちゃんは身体機能が未熟なため、体への負担となり、はき戻してしまうことが考えられます。少しだけ飲ませるのは効果がありますが、与えすぎはNGです。▼NG対処法3:うつぶせに寝かせる新生児は、まだひとりで寝がえりができないため、しゃっくりを止めるためのうつぶせ寝は危険です。寝返りができるようになってからもおすすめはできません。呼吸ができずに窒息し、乳幼児突然死症候群の発症などの危険性が考えられるからです。参考サイト:厚生労働省 「乳幼児突然死症候群(SIDS)について」 ■しゃっくりをすると毎回苦しそうに泣いている! 要注意なしゃっくりとは?しゃっくりが止まらず、機嫌が悪い。いつまでも泣いているなど、いつもと様子が違う場合は、病気が原因の可能性もあります。アレルギーが原因で起こっているしゃっくりは、鼻水や涙、じんましんなどの症状が伴います。また、まれに薬の副作用でしゃっくりが止まらなくこともあります。少しでもいつもとちがうな…とママが思う時はすぐに病院で受診し、医師に相談することをおすすめします。▼授乳後なら、「ママが食べたもの」への反応の可能性あり赤ちゃんのしゃっくり、実はママが原因! ということもあります。ママが食べているものや飲んでいるものが、母乳を通じて赤ちゃんの体に入り、アレルギー反応を起こしている場合もあるのです。赤ちゃんに卵アレルギーがある場合、ママが卵を食べると赤ちゃんに湿疹(しっしん)やしゃっくりなどの症状が出ることもあります。▼「しゃっくり+大量のよだれ」は、胃酸が逆流の可能性も?しゃっくりをしながら大量のよだれが出ている場合は、赤ちゃんの胃酸が食道から逆流してきている可能性も考えられます。胃酸の逆流は、飲んだミルク・母乳と一緒に胃酸が食道に逆流することで、その期間が万が一長くなると食道が炎症を起こすことがあります。しゃっくりに大量のよだれが伴うことが頻繁にみられるようなら、専門の医師に相談してみてください。▼薬を飲んだあとも要注意薬を服用している場合、その副作用が原因でしゃっくりが出ることもあります。授乳後、薬を飲ませたあとにしゃっくりが続くことが多いなど心当たりがある場合は、処方薬や服用量、飲ませ方が適切かどうかを確認することが必要です。すぐに医師に相談しましょう。■まとめ赤ちゃんの体は未熟です。ですから、ちょっとした刺激でしゃっくりが出ることがあります。しゃっくりの原因の多くは心配する必要がないものばかりなので、赤ちゃんが大好きなだっこをして、背中をさすってみたり、体を温めてみたりたりしてしみください。自然としゃっくりは落ち着くでしょう。赤ちゃんの体の成長とともに、しゃっくりの頻度は減っていきます。「しゃっくりは自然現象だから」とママはゆったりとした気持ちで、赤ちゃんを見守りましょう。ただし、先ほど紹介したように、中には心配なしゃっくりもあります。いつもと様子が違う場合はすぐに医師に相談を。参考資料:・ 厚生労働省 ・『広辞苑』(岩波書店)・『はじめての妊娠・出産 最新版』(ベネッセコーポレーション)
2019年10月30日