「値段が高い歯磨き剤は、使った感触がいい」、「口の中がすっきりしたらなんでもいい」……。歯磨き剤については、人それぞれ好みが分かれるところですが、実のところ、口の中の健康にとっては、どのような歯磨き剤がよいのでしょうか。歯学博士で口腔(こうくう)衛生・口腔外科が専門の江上歯科院長・江上一郎先生にお話を伺いました。■口の中を合成洗剤で洗濯していることに……――ずばり、オススメの歯磨き剤を教えてください。江上先生はい、合成せっけん(界面活性剤)が含まれていない歯磨き剤です。ほとんど泡立ちませんが、歯磨きをするのに、口の中を泡立てる必要はまったくありません。むしろ、泡立てると口の中に悪影響を及ぼします。――泡立てるべきではない、ということでしょうか。江上先生そうです。合成せっけんが含まれていると、口の中で歯磨き剤がむやみに泡立ちます。それでは、唾液(だえき)を減らしてしまうことになります。唾液(だえき)は、口の中を細菌から守って清潔に保ち、口の粘膜を保護したり、炎症をしずめたりする役割がありますが、それを合成せっけんで洗い流すことになるのです。口が洗濯機で、口の中を合成洗剤で洗濯しているのだとイメージしてください。――どのような状態になるのでしょうか。江上先生唾液(だえき)がどっと減って、歯ぐきや、粘膜が炎症を起こします。歯磨き剤の使い過ぎにより、粘膜を荒らし、口の中がすりむけたようにがさがさになって、虫歯や口臭、歯周病などにも悪影響を及ぼすことがあります。ですから、合成せっけんが含まれる歯磨き剤を歯ブラシべたっとつけて1日に何度も磨いたりすると、口の中を清潔にするつもりが、逆に不潔なことになりかねません。――香料はどう影響するのでしょうか。江上先生香料そのものは悪くはありませんが、発泡剤と合わせて、すぐに口の中が磨けたような錯覚に陥ることがあります。すると、磨き残しに気付きにくいというデメリットにつながります。特に20代~30代の若い人は、一時的な口臭対策ばかりに気をとられて、発泡剤や香料がたっぷり含まれた歯磨き剤を好む傾向にあるようですが、実は口の中の健康にはよくありません。――研磨剤が入っていると、どう影響するのでしょうか。江上先生タバコのヤニなどの汚れ、食べ物の色素の沈着などが落ちやすいことは確かです。が、汚れや色素と一緒に、歯の表面まで削り落とすことになります。特に、歯の根元のほうは表面のエナメル質が薄いため、はがれ落ちやすいのです。つまり、合成界面活性剤、香料、研磨剤が多く含まれていると、刺激が強すぎて、歯をていねいにブラッシングすることができないことが多いのです。――フッ素入りは、虫歯予防に本当に有効なのでしょうか。江上先生歯磨き剤によりますが、フッ素は、虫歯予防に効果がある成分だと科学的に認められています。市場で量販されている歯磨き剤にはたいてい入っていますが、これは有効な成分です。――市場で1,000円以上する歯磨き剤について、どう思われますか。江上先生一般的に、合成せっけんが入っていない歯磨き剤だと、1,000円を超えることが多いでしょう。しかし、歯磨き剤は大量につけるのではなく、小豆粒大(約5ミリ)をつければ十分です。よって、1本を一人で使用すると3~4カ月はもちますから、有益な歯磨き剤だと考えています。――ほかにオススメのアイテムがあれば教えてください。江上先生歯間や歯と歯ぐきの境目が磨きやすい、毛先がV字型にカットされたコンパクトヘッドタイプの歯ブラシはオススメできます。オフィスや外出先では、歯磨き剤をつけないでさっと磨くだけで歯磨きと歯ぐきのマッサージ効果がありますよ。また、歯磨きをした後に使う、粘膜を保護する漢方薬の入ったマウスコンディショナーもオススメします。少量を指先にとって、歯ぐき、舌の表面、ほおの粘膜を軽くマッサージして使います。歯磨き剤として、うがい薬としても利用できます。歯垢や歯石の沈着を防ぎ、虫歯・歯周病・口臭・ドライマウスの予防など、口腔(こうくう)内のいろいろんなトラブルの予防に向いています。洗口液も歯磨き剤同様に、合成せっけんやアルコールの少ないものを使用して唾液(だえき)を促すようにするほうが口腔(こうくう)内衛生を保つための理にかなっています。――これまで、口の中がぶくぶく泡立つ歯磨き剤を使って、歯を磨いた気になっていました。すぐに薬局に走って、これらに変えたいと思います。ありがとうございました。監修:江上一郎氏。歯学博士。専門は口腔(こうくう)衛生。歯科・口腔外科の江上歯科院長。江上歯科大阪市北区中津3丁目6-6阪急中津駅前1分、御堂筋線中津駅前4分TEL:06-6371-8902藤井空/ユンブル)【関連リンク】【コラム】歯科医に聞く。あなたの歯磨き正しい?間違っている?【コラム】歯科医の教え節水もできる「歯磨き」とは?【コラム】舌のこけを磨くのはNO!歯科医に聞く正しい口臭対策とは?
2012年01月14日いつもは惰性でしている歯磨きですが、あらためて、「その歯の磨き方は正しいですか?」と聞かれると、不安になってしまう人も多いのでは。歯学博士で口腔(こうくう)衛生が専門である江上歯科(大阪市北区)院長の江上一郎先生に、正しい歯磨きの方法や習慣についてうかがいました。■歯ブラシは鉛筆のように優しく持つ――食後3分以内に磨けば虫歯になりにくいというのは本当ですか?江上先生「いいえ、磨かなくても虫歯になりません。『食後3分以内に3分間の歯磨き』がよく推奨されていますが、そもそも虫歯は、バクテリアが増えることが原因です。そのバクテリアの食物であるプラーク(歯垢・しこう)をとることが虫歯予防になるのです。しかし、食後すぐは、口のなかにプラークはありません。また、日中はだ液が出ていて、常に口のなかが掃除をされている状態なので、極端な話をすれば、起床時と寝る前にしっかり歯を磨けば、昼間は食後に軽く口をゆすいで食べかすや大きな汚れをとる程度で大丈夫なんです」――それでは、磨き方を教えてください。歯を磨くときは、歯ブラシはしっかり持って、ゴシゴシこするのがよいのですか?江上先生「歯はエナメル質に覆われているので、力が強くてもかまいません。でも、歯ぐきはブラッシングによって傷ついてしまうので、ゴシゴシこするのは控えてください。まず、ほとんどの方は、歯ブラシの持ち方が正しくないんです。みなさん、しっかりと握って歯を磨かれていますが、それでは力がかかりすぎてしまいます。正しくは、歯ブラシの柄の真ん中の部分を、鉛筆を持つようにして持って磨きます。そうすると、歯にかかる圧力はしっかりと握ったときの300グラム程度に比べ、理想的な100~200グラムになります」――歯にかかる負荷は軽いほうがよいのですね。では、ブラッシングの方法を教えてください。江上先生「歯磨きのブラッシング方法は10種類ほどありますが、現在、主に推奨されているのは(1)バス法、(2)スクラッピング法、(3)つまようじ法の3つです。(1)バス法は、歯と歯ぐきの境目に45度になるように歯ブラシをあて、毛先を使って細かく横に磨く方法です。スクラッピング法は、歯ブラシをあてる角度が直角になります。(2)スクラッピング法は、歯ブラシを歯の面に直角にあて、小刻みに左右に動かして磨く方法です。(3)つまようじ法は、歯周病の予防に効果的なブラッシング方法です。これはバス法と歯ブラシをあてる角度が反対になるので、慣れないうちは磨きにくいかもしれません。つまようじ法は、歯ぐき側から歯の先へ向かい、歯の表面をすべらせて磨くので、歯ブラシの毛の一部が、つまようじのように歯と歯の間に入っていきます。このため、歯垢(しこう)を効果的に落とすことができます」――磨き残しをしないために、何か気を付けることはありますか?江上先生「効き腕側の奥歯の裏側は、特に磨きづらいものです。また、無意識で歯を磨いていると、毎回、きちんと磨けている歯と、いつも磨いていない歯が出てきてしまいがちです。口の中をあっちこっち歯ブラシを移動させて磨くのではなく、例えば左上の歯からスタートし、一本一本、頭の中でどの歯を磨いているかを意識しながらていねいにブラッシングするとよいでしょう。一本ずつ横に移動して右上の歯までたどり着いたら、今度は裏側を一本ずつ磨き、次に下の歯を奥から順に磨くというように、一筆書きの要領で磨くと磨き残しが少なくなります」■歯磨き粉の量は米粒大でOK――歯磨き粉は、たっぷりつけたほうが効果的ですか?江上先生「歯ブラシの上に3センチくらい絞り出している人が多いと思いますが、それですと、洗濯機に洗剤を一箱入れているようなもので、多すぎるのです。うちのクリニックでは、米粒一粒、多くても5ミリと指導しています。市販の歯磨き粉の多くは、泡立ちをよくする界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)、研磨剤(リン酸水素カルシウム)などが入っており、確かに歯はきれいになります。しかし、歯ぐきや口の中の粘膜が、界面活性剤によって油分が取られてカサカサになったり、研磨剤で傷ついたりします。コーヒーや紅茶などによって、歯が着色しているときには有効ですが、毎日使うのはおすすめできません。気になる人は、歯磨き粉を買うときは、表示をよく見てラウリル流酸やリン酸など化学成分が入っていないものを選んでください。私のクリニックでは漢方の歯磨き粉を紹介しています」――歯を磨きすぎると歯が削れてしまうことはあるのでしょうか?江上先生「歯は象牙(ぞうげ)質の上にエナメル質がかぶさっています。エナメル質は歯磨き程度で削れることはないのですが、年齢とともに歯ぐきがやせてきて、今まで歯ぐきに覆われていた歯の下側、根に近い象牙質の部分が出てきます。象牙質は歯磨きのような摩擦(まさつ)で削れてしまうこともあります。歯磨きは自己流でやっている人が多いと思いますが、ぜひ一度歯医者さんで、歯磨き指導を受けるといいですよ」江上歯科では歯科衛生士の方が実際に患者さんの歯を磨きながら指導をするのだとか。「また、どんなに歯磨きをしていても、歯垢はたまってしまうものです。3~6カ月に1回は歯医者で、歯垢のチェックを受けたり、歯石を取るようにしてください。健康な歯を保つメンテナンスのために、美容院に行くのと同じような感覚で、行きつけの歯医者を見つけられるといいですね」と江上先生。仕事帰りに行きつけのバーで1杯、ならぬ歯科医で歯垢落とし。今後の習慣にしていきたいものです。監修:江上一郎氏。歯学博士。専門は口腔(こうくう)衛生。江上歯科(大阪市北区中津)院長。下関崇子/ユンブル)【関連リンク】【コラム】「芸能界に転職」ってできるもの?現役女優さんに聞いてみた【コラム】草野仁の筋肉の驚くべきヒミツとは!?~都市伝説芸能界編~【コラム】「ごくせん」「ROOKIES」上映記念!「学ランの似合う芸能人」ベスト10
2011年09月23日