この春、家族について語る映画が、邦画の中で目立っています。もともと家族愛というのは、映画で描かれることの多い定番テーマのひとつですが、1年前の大震災を考えると、もしかすると家族の絆、愛の大切さを身に染みた人が多かったことを表しているのかもしれません。今回ご紹介する『ももへの手紙』は、愛する人との別れ、それにより生まれた後悔や痛み、そしてそれゆえに亡き家族への想いをさらに強めて生きていく少女の姿を描いた人間ドラマ。父の死をきっかけに、主人公と母親が移り住んだ美しい瀬戸内の汐島を舞台に、家族の繋がり、人々の想いを映し出したアニメーションの秀作です。大切な人との別れは、誰もがどうしても経験しなければならない試練のひとつ。心の準備期間を持てる場合もあれば、容赦なく突然訪れることもあります。主人公のももの場合、ちょっとした行き違いから腹を立て「もう、帰ってこなくてもいい!」と言ってしまった父親が、事故により本当に帰らぬ人になってしまいます。お別れとしては、あまりにも辛い現実ですが、わだかまりを抱えたままの少女はいったいどのようにその現実を受け止めていくのでしょうか。もはや、父が言いたかったことを知る手がかりは、「ももへ」とだけ記された書きかけの手紙だけ。いったい父親は何を書こうとしていたのか、それを期せずして教えてくれることになるのが、突然現れた妖怪たちで…という切なくもちょっと不思議なお話です。この作品を観ていると、人は多くの温かい想いに囲まれて生きているのだと気づかされます。悲しみをこらえて明るくふるまう母親、ももを気遣ってくれるけれど多くを語らない少年や、親切な島の人々、何のために現れたのかわからない妖怪、そして天国に行ってしまった父親――。それぞれ優しい想いを持っていますが、自分たちの気持ちを伝えるのが上手な人々ではなく、ももにはなかなか伝わりません。ももがそれに気づけるのはいつなのかとやきもきもするのですが、当人にしてみればなかなかそうもいかない…ということぐらい、私たちは百も承知。“近すぎて見えないもの”“当たり前すぎて感謝できないこと”が多いというのは経験で痛いほど知っていますからね。そんなことを考えながら本作を観ていたら、人の気持ちというものは、父が遺した白紙の手紙のようなものなのかもしれないなと思うようになりました。気持ちはあるのに、なかなか表現することができないのが人間です。でも、相手はどんな気持ちでいるのだろうと、感じ取る努力をすることで、見えやすくなる気持ちもあるのは確かです。人は、特に恥ずかしがり屋な日本人はそうやって、「愛している」「大切に思っている」と言葉で表現することを最小限に抑えつつも、大切な人たちと想いを交わしてきました。“言わなくても分かる”という非常に高度なコミュニケーションスキルを持っているのです。すべてをさらけ出さない日本の美学の一部なのでしょう。言葉で表現されないからといって、そこに気持ちがないとは言えません。言葉にしないから重みをもつ想いもあります。ただ、この高度なコミュニケーション術を成り立たせるためには、相手を慮り、相手の気持ちを汲み取ろうと努力をし、相手の存在に感謝することが互いに必要となってきます。日本では、昔からそれが当たり前に行われてきましたが、ここ最近、私たちはあまりにもダイレクトな表現ばかりに慣れ過ぎていて、私たちが持つ“慮る文化”をおろそかにしているのではないかというメッセージも、本作からは読み取れます。そう考えると、発達し過ぎた情報伝達ツールに翻弄されている私たちは、まさに主人公のももと重なるような気さえするのです。コミュニケーションとは、放っておいてもひとりでに上手くいくことではありません。それは、近い存在である家族ならなおのこと。そんなことに改めて気づかせてくれる本作を観た後は、いつもより、大切な人をもっと思いやりたくなっている、健気な自分を発見できるかもしれませんよ。最後に、ちょっと面白い話題をひとつ。本作の監督、沖浦氏の才能に太鼓判を押す巨匠・押井守監督が、ネット、SNSに右往左往する現代人の姿を通して、真のコミュニケーションを問う「コミュニケーションは、要らない」という本を幻冬舎新書から出しています。この映画とこの新書。なんだか繋がりが面白いと思いませんか。ご興味があれば、映画と一緒にこちらもぜひ。(text:June Makiguchi)特集「LOVE,HOME,CINEMA」■関連作品:ももへの手紙 2012年4月21日より丸の内ルーブルほか全国にて公開© 2012『ももへの手紙』製作委員会■関連記事:親子だから分かり合える感動とは?『ももへの手紙』親子試写会アンケート発表西田敏行、田中みな実アナからの妖怪扱いに苦笑い船越英一郎、出演作でない『ももへの手紙』をアピール!「出ていないのはおかしい!」何がほかの妖怪と違う?愛嬌たっぷりの『ももへの手紙』妖怪たちの誕生ルーツ笑顔こぼれる『ももへの手紙』サウンドトラック沖浦監督書き下ろしジャケット公開
2012年04月13日瀬戸内の小さな町を舞台に、ここへ母とふたり引っ越してきた小学6年生のヒロイン・ももの元に訪れる、不思議な存在との出会いを描いた、珠玉のアニメーション『ももへの手紙』が4月21日(土)より公開となる。最愛の父を亡くしたことをきっかけに、慣れない土地での生活を始めるももと母親・いく子のもどかしくも温かい親子の絆を通して、“大切な人”の存在を改めて感じさせる本作。シネマカフェでは公開に先駆けて、親子を集めての試写会を開催。読者の感想から見えてくる、親子だからこそ感じられる、分かり合えるものとは――?「ももへ」とだけ記された手紙を残し、天国へと旅立ってしまった父親への拭いきれない気持ちを胸に、汐島という小さな島に母とやって来たももの元にやってくる、不思議な存在。聞けば、彼らは“見守り組”と名乗る妖怪3人組であった。彼らがももの元へやって来た理由に、本作のメッセージが隠されている。本作を観終えた親子に作品への点数をつけてもらったところ、100点超えが続出、平均点数は93点という高評価の結果に。大人、子供関係なく、総じて印象に残ったのは「親子のドラマ」「人の温かさ」という声であった。「四国の美しい自然、風景、島の人々の温かさ、優しさが良く描かれていました。子供向きと言うより、大人の人に観てもらいたい」(50代・女性)、「人の繋がりが大事だなと改めて思わせてくれて温かくなりました」(50代・女性)という声もあれば、「ももにもお母さんにも素直に感情移入ができました」(40代・女性)と、親と子両方の視点で共感できたという意見も。東京から離れた島という舞台でありながら、そこで暮らすももと母・いく子の関係は決して大げさに描かれていないリアルさが高い共感へと繋がっているのだろう。実際に「母・いく子に共感できたか?」との質問には、ほぼ全員の親が「はい」と回答。「娘に涙を見せずに頑張ろうと無理するところ」(50代・女性)、「無理してでも子供を育ててしまうところ」(30代・女性)という親ならではのいく子の強さに頷く人もいれば、「母娘だから喋らなくても分かるかなとお互いが思ってしまうこともありますが、やはり言葉にしないと分からないこともあるところに、とても共感できました」(40代・女性)といった家族ならではの難しさ、さらに「前半で子供の話を聞いてないところ」(30代・女性)という、完璧ではいられない親のリアルな意見も…。ちなみに、本作に登場する“見守り組”の妖怪3人の人気投票を実施したところ、一番人気を得たのが、大きな体で強面だが心根は優しい、イワ。その見た目と性格のギャップはもとより、「ももに全てワケを話してしまうところ」など、最も人間らしいところが支持を集めた様子。この声を演じているのが、名優・西田敏行。どこか抜けているところも愛嬌があるが、味わい深い声で発せられる彼の言葉は心に響くものばかりである。「親子、家族での鑑賞をオススメしたい」との声も多かった本作。普段、当たり前のように接している家族の存在はもちろん、自分を見守ってくれている近くの存在に気づかせてくれる一本である。ぜひ、あなたも大切な誰かとこの温もりを分け合ってみては?『ももへの手紙』は4月21日(土)より全国にて公開。特集:『ももへの手紙』の世界へようこそ■関連作品:ももへの手紙 2012年4月21日より丸の内ルーブルほか全国にて公開© 2012『ももへの手紙』製作委員会■関連記事:西田敏行、田中みな実アナからの妖怪扱いに苦笑い船越英一郎、出演作でない『ももへの手紙』をアピール!「出ていないのはおかしい!」何がほかの妖怪と違う?愛嬌たっぷりの『ももへの手紙』妖怪たちの誕生ルーツ笑顔こぼれる『ももへの手紙』サウンドトラック沖浦監督書き下ろしジャケット公開不思議な妖怪と過ごすひと夏『ももへの手紙』試写会に100組200名様をご招待
2012年04月12日アニメーション映画『ももへの手紙』の完成披露試写会が4月10日(火)、都内で開催され、声優を務めた美山加恋、優香、西田敏行、沖浦啓之監督が上映前の舞台挨拶に登壇。本作が韓国、台湾、香港、そしてアメリカで公開されることが発表された。父を亡くした少女・ももが、母と引っ越した先の瀬戸内海の島で“見守り組”と名乗る不思議な妖怪たちに遭遇。彼らに振り回されながらも、父が遺した大切な思いに気づいていく姿を描く。自身が演じた少女・ももについて美山さんは「結構、自分と似ていたのでやりやすかったです。人見知りなところやお母さんとギクシャクしたときに素直になれないところ、余計なひと言を最後に言ってしまうところは同じです」とニッコリ。映画にちなんで、もしも大切な人に手紙を書くなら?という問いに「やっぱりお母さんですね。私は5歳から仕事をさせていただいてるんですが、いつもお母さんは現場について来てくれて、つらいときも一緒にいてくれました」と感謝の思いを語った。優香さんは、これまでに受け取った忘れられない手紙として父親からもらった手紙の思い出を披露。「17歳でこの世界に入り、家族と離れて寮に入ったんですが、そのときに初めて1度だけ父親から手紙をもらったんです。茶封筒に入ってて(笑)、心のこもった手紙でした」と懐かしそうに明かした。西田さんは、妖怪3人組のリーダー格・イワの声を務めたが「最近、人間の役をやってません…」とボヤく。司会を務めたTBSの田中みな実アナウンサーから役と自身の共通点を尋ねられたが、しばし思案し「…無理だよぉ」と困惑した表情を浮かべた。「よく見ると顔は似ているかな」と共通点をひねり出したが、これに田中アナが「そうなんですよね!」と即座に反応。西田さんは「間髪なかったね」と“妖怪”扱いに苦笑いを浮かべていた。この日は、主題歌を歌う原由子からビデオメッセージが寄せられ、杉並児童合唱団の21名の小学生たちが主題歌「ウルワシマホロバ~美しき場所~」の合唱を披露。「みなさんの笑顔に心洗われました」(優香さん)、「感動しました」(美山さん)とキャスト陣は口々にその美しい歌声を絶賛した。また、本作が韓国で夏に、さらに台湾、香港、そしてアメリカでも公開されることに沖浦監督は「韓国での公開は今日、(イベントの)台本を読んで初めて知りました。喜んでます。嬉しいです」と少し緊張気味の口調で喜びを明かした。アメリカでの公開時期や規模は未定だが、本作は「第15回ニューヨーク国際児童映画祭」で長編大賞にも輝いており、海外の観客にどのように受け止められるのか楽しみなところだ。『ももへの手紙』は4月21日(土)より丸の内ルーブルほか全国にて公開。特集:『ももへの手紙』の世界へようこそ■関連作品:ももへの手紙 2012年4月21日より丸の内ルーブルほか全国にて公開© 2012『ももへの手紙』製作委員会■関連記事:船越英一郎、出演作でない『ももへの手紙』をアピール!「出ていないのはおかしい!」何がほかの妖怪と違う?愛嬌たっぷりの『ももへの手紙』妖怪たちの誕生ルーツ笑顔こぼれる『ももへの手紙』サウンドトラック沖浦監督書き下ろしジャケット公開不思議な妖怪と過ごすひと夏『ももへの手紙』試写会に100組200名様をご招待一番大切にしたい、家族の愛の物語『ももへの手紙』親子限定試写会に25組50名様ご招待
2012年04月10日2月に離婚届提出。2012年3月7日、タレントの田中律子が2月始めに離婚したことを自身のブログで「報告」というタイトルで発表した。田中律子は1997年に結婚して現在中学生の長女が一人いる。離婚の原因はブログには書かれておらず、15年の結婚生活の終止符は色々悩んで考えた末の結論だとなっている。まだ中学生の長女とも昨年から相談したり、話し合ったとある。心配をかけましたが、新しくスタートします。「子どもには本当に申し訳ない形となった」といい、周りのお世話になった人たちにも心配をおかけしてすいませんと謝罪している。新しいスタートを踏み出す田中は、娘も多感な年頃ですので、どうぞ静かに見守っていただけるとうれしいです。と締めくくって報告を終わらせている。元の記事を読む
2012年03月09日人気連載中の同名コミックを実写映画化した『アフロ田中』の完成披露試写会が15日に都内で行なわれ、主演の松田翔太、佐々木希、堤下敦、田中圭、遠藤要、原幹恵、そして監督の松居大悟が登壇した。舞台挨拶の様子本作は、強烈な天然パーマの主人公・田中広の妄想しまくりの日常を描いたラブ・コメディ。ビッグコミックスピリッツで連載中の「上京アフロ田中」を原作に、高校時代から、24歳になって上京した田中の日々を描く。松田は「アフロ田中=松田翔太の、これ以上ないくらいの恥ずかしいところをさらけ出したので、温かい心で観てください」とあいさつ。インパクトのあるアフロヘアについては「シックリきてたし、身体の一部になっていた」とコメント。主人公の隣に引っ越してくる美少女・加藤亜矢役を演じた佐々木は“アフロ田中”を「可愛らしい」と言い、「撮影中に松田さんが変な動きをするので、笑いをこらえるのが大変だった」と振り返った。本作で長編映画デビューを飾る松居監督は松田と同い年の26歳。「撮影前に、監督にご飯に誘われ“童貞”だと打ち明けられ、“この映画は成功する”と確信した」と松田は話し、衝撃発言に会場は騒然(?)となったが、松田は飄々と「童貞役なので、間合いやニュアンスを相談しながら、監督を信頼して作り上げた」と語った。それを受け松居監督は、「お恥ずかしい話しですが、内容も内容なので、カッコつけるのも変かな」と認め、「原作がおもしろいので、僕らは田中広の考え方に向き合って作ることが一番正しいことだと思った」と熱く語った。最後に松田と佐々木は揃って「大笑いできて、男性はもちろん、女性も絶対に大満足していただけると思う」とPRした。『アフロ田中』2012年2月18日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
2011年12月15日先日、公開が発表されると共に出演者のソニア・キンスキーの劇中でのヌード挑戦が報じられ、衝撃をもって受け止められた『神の子どもたちはみな踊る』。そのポスタービジュアルが解禁となった。1995年の阪神淡路大震災をモチーフに、自身、兵庫県で育った作家の村上春樹がしたためた連作短編集の表題作を映画化した本作。舞台をアメリカ・ロサンゼルスに移して、“神の子”として育てられた若者が、ある日、目の前に現れた実の父親と思しき男を追いかけ、思いもよらぬ体験をするという物語が展開する。今回、解禁となったポスターには「世界は、変わる。ほんの一瞬で。」とのキャッチコピーが。原作小説と映画の物語が同じなのか異なるのかは不明だが、原作では父親と思しき男を追って、主人公は夜の野球のグラウンドへとたどり着く。このポスターのビジュアルでは、まさに照明に照らされたグラウンドが写っており、その端には座り込んで、頭を垂れる青年の姿が見える。果たして彼の胸中をよぎる思いは――?開催中のヴェネチア国際映画祭では、本作と同じく村上さんの小説を映画化した『ノルウェイの森』が上映され大きな話題を呼んだが、「ノルウェイの森」が80年代の村上さんの著作を代表する長編小説とすれば、「神の子どもたちはみな踊る」は90年代の最後に発表され(※単行本の刊行は2000年)、この時期の村上さんの短編作品の中で最も反響を呼んだ作品のひとつ。舞台を移し、設定を変えてどのような映画に仕上がっているのか?『神の子どもたちはみな踊る』は10月30日(土)よりシネマート六本木ほか全国にて順次公開。■関連作品:神の子どもたちはみな踊る 2010年10月30日よりシネマート六本木ほか全国にて順次公開© 2008 Kimmel Distribution, LLC.ノルウェイの森 2010年12月11日より全国東宝系にて公開© 2010「ノルウェイの森」村上春樹/アスミック・エース、フジテレビジョン■関連記事:菊地凛子インタビュー天衣無縫の旅人――「やっぱり直感なんですよね」『ノルウェイの森』にスタンディング・オベーション松山ケンイチ「確信」得た!『ノルウェイの森』に質問続出! 凛子、松山ケンイチと「楽屋にこもって話し合った」村上春樹原作の“逆輸入”短編映画でナスターシャ・キンスキーの娘がヌード披露ヴェネチア出品決定で松山ケンイチ、役所広司らの喜びのコメント到着!
2010年09月10日