「療育センター」について知りたいことや今話題の「療育センター」についての記事をチェック! (4/5)
見知らぬ土地での、初めての子育て私は結婚してすぐに夫の転勤で引越し、実家から離れた土地で娘を育てていました。そこは社宅が多く、私のように実家が遠かったり、パパの帰りが遅かったりして、ワンオペ育児をしている家庭が多い地域でした。娘が1歳の頃、私は公園で知り合ったママ友と仲良くなり、お互いの家を行き来して過ごしていました。この頃の娘は同世代の子どもと一緒にごっこ遊びなどはせず、いつもマイペースに遊んでいました。それでも皆と同じ空間にいることを嫌がる様子はなく、気が向けば遊びに参加したりして、本人はそれなりに楽しんでいるようでした。2歳頃になると、私はママ友に誘われて、地元の子育てサークルが主催する読み聞かせの会や、自治体主催の親子体操、工作教室などに行くようになりました。お友達が楽しそうに参加する中、娘は何度通っても部屋の端っこに隠れたり、外に出ようとしたりして、活動に加わろうとしませんでした。音楽教室の無料体験レッスンに参加させてみると…?出典 : そんなある日のこと。友達に誘われて、音楽教室の無料体験レッスンに行ってみました。講師の先生は、並べられたタンバリンや鈴などの楽器を“順番に”鳴らしていくよう口頭で指示しましたが、娘にはそれが理解できませんでした。そして先生に「お嬢さんには、こちらの教室は無理のようですね」と入会を断られたのです。どうしても入会したいという気持ちはなく、友達に誘われて「無料お試しキャンペーン中だし、楽しめたら良いなぁ」くらいの軽いノリで参加したとはいえ、この言葉に私は大きなショックを受けました。親子の“居場所”を探し求めた日々その後も私は、親子で楽しめる場所はないかと児童館や保育園の園庭開放、短期保育体験、プレ幼稚園など、娘と一緒にいろいろなところに行って相談しました。ですがなかなか、居場所は見つかりませんでした。ある時、自治体の相談窓口で「子どもの発達の相談に乗ってくれるところが最近できたんですよ。よかったらそちらに電話してみてはいかがですか?」と、ある施設で行われている親子教室を紹介されました。そこは今でいういわゆる「療育センター」だったのですが、名称に「療育」の文字もなく(そもそも当時私は「療育」という言葉も知りませんでした)、私は「娘と一緒に体を動かしたり遊んだりできる場所があるなんて、ラッキー!」という気持ちで電話をしました。その親子教室に見学に行った時、娘は一瞬入室を一躊躇しましたが、実際に体験してみると、そこはやはり娘にぴったりの場所でした。嬉しいことがいっぱい。できることがいっぱい。仲間がいっぱい。私は娘が興味を持つ絵本や紙芝居、遊びや体操など、たくさんのことを知りました。毎回楽しく過ごせる上に、そこでおむつ外れもスプーンの使い方も無理なく身につけられたことを、本当に嬉しく思いました。娘と一緒に帰省した時の出来事私と娘が実家に帰省していたある時、親戚から食事に誘われました。キッズコーナーのないレストランでの食事は、娘にはまだ無理ではないかと躊躇したのですが、「せっかく久しぶりに地元に帰ってきたんだから、いらっしゃいよ。個室だし、同じくらいの年の子も来るから大丈夫。身内の集まりなんだから、もし子どもがぐずっても誰も気にしないわよ。」と言われ、私は娘を連れて行くことにしました。ところが、いざ行ってみるとそこはホテルで、個室といってもホールをパーテーションで仕切っただけの、円卓を並べた会場でした。娘が食べられるメニューも少なく、遊ぶものもほとんどありません。同じくらいの子どもといっても、年上の子どもが1人だけ。娘は徐々にむずがり始めましたが、他の利用客もいるので、ロビーに出て遊ぶこともできません。ある程度覚悟していた私は、自分の食事もそこそこに、会場の隅で娘の遊び相手に専念しました。そして食事会が終わるまでの2時間を、親子教室で身につけたスキルをフル稼働して何とか乗り切ったのでした。親戚からの電話で言われた、きつい一言実家から自宅に戻ったある日、食事会を企画した親戚から電話がありました。そしてこんなことを言われたのです。Upload By 荒木まち子私は言葉に詰まりまりながらも「娘については関係各所に相談などもしているし、やれることはやっています。」とだけ言って電話を切りました。実はこの頃、娘は医師から“自閉傾向”と言われていました。遠くに住む親戚、しかも数年に1度しか会わないその人は、普段の私たちの様子を知りません。医師でも支援者でない相手の言葉を気にする必要はなかったかもしれません。でも、私の心は深くえぐられました。それが子育ての先輩としての“親切心”で発した言葉だったとしても、私にはとてもきつい言葉でした。一人で抱えきれないショックと悲しみでいっぱいになった私は、親子教室の先生に電話をしました。「帰省した時、親戚に『あなたの子は施設に入れた方がいい』と言われました。娘はすぐにどこかの施設に入れなければならないほどなのでしょうか?」話をしている途中で何度も言葉に詰まってしまったので、私が泣いていることは気づいていたでしょう。でも、先生はじっと話を聞いてくれました。そして穏やかにこう言ったのです。「ここも“施設”なんですけどね。」私たちにとって、親子教室はどんな存在だったのか今思えば、親子教室で行っていた遊びや体操は、療育そのものでした。例えば、教室の時間中は、子どもが勝手に開けて出て行かないように、ドアには「×」マークの紙が貼られていました。口頭で「部屋の中で過ごします」「一人で外に行きません」と言うだけでなく、視覚的にも分かりやすい工夫がされていたのです。また、親子教室は、子ども達がおのおの好きなおもちゃ遊びを堪能した後に始まるのですが、そのためにおもちゃを片づける時も、次の「楽しいこと」に向けて見通しを持たせたうえで、親子で一緒に片づけをしていましたし、片づけが済んだらサッとおもちゃの棚を布で目隠しして、子ども達が次の活動に集中できるような工夫がされていました。始まりの会では、ピアノに合わせて名前を呼びます。子どもが返事をできると、自然と先生や参加している親子から拍手が沸き起こりました。昔ながらの童謡に合わせた親子体操では、普段は抱っこや手つなぎを嫌う子どもたちと自然に触れ合うことができました。紙芝居は、『じゃあじゃあびりびり』や『もこもこもこ』など、物語重視というよりも視覚優位の子どもの興味を引くものを中心に選ばれていました。先生は私が娘の行動への対応に困った時、さり気なくフォローをしてくれました。でも決して、「こうした方がいい」とか「こうしなければならない」などと言うことはありませんでした。だから私はプレッシャーを感じることなく、自分のできる範囲で先生のすることをまねたりしていました。親子教室で行われていることや工夫には、障害のある子どもとの接し方に悩む親へのヒントがたくさんありました。また、それだけでなく、教室ですごす時間は、純粋に親子で楽しく過ごせ、悩みを相談でき、元気をもらい、笑顔になれる、かけがえのないものでした。私が「療育」という言葉を知らなかったためか、はたまた大らかな土地柄のせいもあったのか、そこにはいつも穏やかな空気が流れていて、ほんわかしていました。通っている他の保護者も皆気負うことなく、お互いの子どもの成長を喜び合う優しい雰囲気がありました。子育てサークルや音楽教室、親戚との食事会…そこでは気をつかったり、落ち着かなかったりして、穏やかな気持ちで娘と接することができませんでした。ですが、親子教室では、自然と笑顔になれました。私にとって、療育センターの親子教室で過ごすひとときは、“外”の世界で傷ついた心を癒すオアシスだったのです。ひとしきり泣いたら、前へ進める親戚の言葉に傷つき「遠くの親戚よりも近くの他人」を実感した私。この経験をもとに、「障害の話はとてもデリケート。私は相手から求められない限り、自分の意見は言わないようにしよう」と心に決めました。とても辛かったけれど、そうやって気持ちを切り替えて前に進めたのは、やはり近くに「プロフェッショナルな理解者」の存在があったからだと思います。娘が小さい頃、私は本当によく泣いていました。年を重ね、心も体も(?)図太くなった今。振り返ると、あの頃は怒り、落ち込み、喜びなどのさまざまな感情すべてをひっくるめて、大きく見守られていたように思います。療育センターの親子教室で、私も娘と一緒に育ててもらったのだと感じています。
2019年03月25日息子が受けた療育と私の思い出典 : 私の息子は自閉症スペクトラム障害と診断を受けてすぐ、3歳になると同時に早期療育を受けました。専門家から「早期療育を受けてください」と言われたのです。私はすぐに言語療法や音楽療法にアプローチし、息子にできる限りの療育を授けました。特に助けられたのはABA(応用行動分析学)でした。人と目を合わせる、人の模倣をする、人の話に耳を傾けて適切に返答をする…等々、「好ましい行動」を増やし、「好ましくない行動」を減らしていく方向で療育を進めました。それまでただただ手こずった息子の育児が、療育を受けて大きく変わりました。息子の表現力やソーシャルスキルが格段に上がったことで、パニックになることもなくなり、行動の幅もグーンと広がりました。それまで苦手だった他者との協力ができるようになったことで、出かけられる場所もやれることもどんどん増えていきました。療育を受ける前の息子は、他者との協力など全く受けつけない子どもだったため、親子で何かを一緒に楽しむということがほとんどできなかったのです。あの療育があったから、今の息子と私の生活があると思っています。療育は私たちと同じような親と子を救ってくれているに違いない。そう思っていた私にとって療育について別の考え方があるなんて思ってもみないことでした。ある小説から調べ始めた「ニューロダイバーシティ」出典 : 療育に対する別の考え方との遭遇…。それは、自閉症スペクトラム障害の子どもが主人公の海外小説を読んでいたときのことです。その小説の主人公の男の子は、幼少期から多くの療育を受け、普段の生活でも努力して「好ましい行動」をし続けていました。療育で教わった通りの行動をすると、家族は喜びます。すると、主人公の男の子が母親にこう言うのです。「自閉症(発達障害)は治すべき病気なの?」そして、自閉症は「ニューロダイバーシティ」の一つなのだと母親に訴えるのです。私はこの場面を見て、「ん?」と手が止まりました。小説の中で使われている「ニューロダイバーシティ」という言葉が気になったからです。そういえば…私は思い出しました。ここ1~2年でしょうか。発達障害関連の研究会やNPO団体等の講演会やニュースレターなどでも「ニューロダイバーシティ」という言葉をたまに見かけるようになりました。あれ?「発達障害」ではなく「ニューロダイバーシティ」?調べてみたところ「神経多様性」や「神経学的多様性」といった日本語訳があてられていました。どうやら、発達障害は脳の神経学的な構造が異なっているだけであり、病気でもなければ「治すべき」ものでもない、というような考え方がもとになって使われるようになった用語のようです。「ニューロダイバーシティ」の背景を知って、自問自答出典 : ニューロダイバーシティという言葉が生まれた背景を探っていくほど、複雑な気持ちになっていきます。そもそもの始まりは、定型発達の人たちの振る舞いやコミュニケーション手段を「正しいもの」として、発達障害の子どもたちをそこに近づけるように矯正する療育に対して発達障害当事者たちが声をあげたことがきっかけだったようです。特に「子どもの行動を変えようとする」という点で、「ABA(応用行動分析学)」は厳しい批判の対象となったようです。けれども私は覚えています。アイコンタクトを嫌がる息子がABAを受けた後に初めて目を見て話してくれて、涙が出るほど嬉しかったこと。自分の好きな話を一方的に喋るばかりでコミュニケーションがほとんど成り立たなかった息子が、きちんと私の話を聞いて応答してくれるようになったときのこと。私はABAを施してくれた先生方には足を向けて寝られないと思うほど感謝していました。私はあのとき、息子を「普通」に近づけたかっただけだったのか…?彼の神経学的な多様性を握りつぶしてしまうことをし続けてきたのか…?私は療育の成果について「息子の成長」として喜んできたことに自問自答しました。社会の変化として考える私なりの受け止め方出典 : ニューロダイバーシティの議論について知ったとき、私は何度も考えました。ではあのまま療育を受けさせずに「ありのままの息子」でいさせれば、それが発達障害という脳の多様性を尊重することになったのでしょうか。確かに息子に施した早期療育は私にとって 「定型発達」に近づけるという目的が見え隠れしていたかもしれません。けれども、療育を受けさせたことによって、辛いことばかりだった息子の育児がなんとも愛おしく充実したものに変わりました。ですから、私は個人的には療育について批判する気にはなりません。課題はあれども、私と息子のクオリティ・オブ・ライフは確かに向上したのです。「ニューロダイバーシティ」という言葉を取り上げるとき、私は療育の可否について議論するのではなく、今この言葉が日本の各所で使われ始めているということの意味について考えたいと思っています。発達障害が「障害」や「疾患」ではなく、多様性の中の一つであり、その人の生き方の一つであるという捉え方が、少しずつ浸透し始めているきざしなのかもしれません。「定型発達」に対立する言葉としての「発達障害」ではなく、究極的には誰もが「異なる」存在である――そんな考え方の潮流が社会の中で生じ始めているのかもしれません。「うちの息子は発達障害」ではなく「うちの息子はニューロダイバーシティ」と言い換えてみると、息子は異質な存在なのではなく、多様性の中の一つであるような心地よい響きがあります。神経的な多様性を表す「ニューロダイバーシティ」という言葉。それは「みんな違ってみんないい」という考え方が根底にあります。そう考えると、その子がその子らしく、尊重されて生きていくスキルをつけられる療育とニューロダイバーシティは、何ら相反するものではないように思います。私はこの二つの言葉がうまく融合し共存していくような希望ある未来を信じたいと思います。"What is Neurodiversity?"(ニューロダイバーシティとは何か)"What Is The Neurodiversity Movement and Autism Rights?"(ニューロダイバーシティ運動と自閉症者の権利とは何か?)
2018年12月13日私と娘のコミュニケーション法は?今回は、私と娘のコミュニケーションの方法についてお話したいと思います。娘の苦手をサポートする私のやり方は、「教える」というよりは『一緒にやる』という感じです。Upload By SAKURA何か娘の苦手な課題が出てきたら、どうすればわかるか考え、一緒に取り組みます。私が「先生」になるのではなく、娘と同じ位置に立つことで、そのやり方が難しくないか、理解しやすいかを娘と同じ目線で見ることができるからです。どうしたら娘が理解できるか、伝えやすいかを考え、娘のそばでそれを確かめながら、方法を模索しています。どんなことも、ありのまま伝える私は、娘に自分の気持ちを正直に話すようにしています。私が自分を抑えて接するのではなく、ありのまま接し、とにかく何でも話します。自分に余裕がないときでも、そのまま娘に伝えます。Upload By SAKURA「察して」「考えて」と言いっぱなしにすることは、私と娘の間では、ほとんどありません。それは、私が、「親だから」「大人だから」と言って自分が一歩引いたり、自分の思いを隠して娘に接することができなかったからでもあります。Upload By SAKURA私自身が、思ったことをそのまま娘に言うスタイルの方がやりやすく、娘に自分の思いを話すことで、私も冷静になれていたのです。このやり方はだんだんと、私と娘のコミュニケーションの方法として定着していきました。それが一般的に良いか悪いかは、わかりませんが、私にとって背伸びをせず、無理もしなくていい、負担にならない方法でした。親がなんでも話すことって、娘にとっては負担かも?しかし娘にとっては…?どうなんだろう?親である私が、我が子に感情をぶつけていいのか?私の負担にはならないけど、娘は負担になっているのではないか?内心そんな風に思っていたとき、こんなことがありました。娘に、宿題の「かけ算の音読」をしてもらっていたときのことです…。Upload By SAKURA私と娘の関係には、何でも【話すこと】が当たり前。自分の気持ちを話すこと、相手の気持ちを予測することが苦手な娘。いつものように、私がまず娘の気持ちを代弁し、何でこんなことをするのか、言うのか…お互いの気持ちや真意を丁寧に説明しました。目には見えない気持ちを、口に出して言うことが大事だと思っていたのです。すると…Upload By SAKURA今まで、いろんな場面で娘に話してきましたが、娘からこんな返事が返ってきたのは初めてでした。娘が私にかけてくれたこの言葉で、私は、「ちゃんと私の気持ちをわかってくれていた…話してきて良かった…」と、娘との間に信頼関係がちゃんと築けている実感を感じました。そしてまた娘が一つ大きくなったと感じました。同じ目線で一緒に取り組み、なんでも話すことで築けた信頼関係私の療育で行きついたのは…・娘の苦手も個性と認める→周りと比べることもなく、落ち込まない・同じ目線で一緒にやる→娘にとって、きついかどうかがわかりやすい・気持ちはたくさん話す→相手の気持ちを見えるようにし、予想ができるようになる+信頼関係を築くということです。同じ目線で接する…たくさん話す…と言えば聞こえはいいですが、私が大人になりきれていない面もあります(笑)だから私は、娘とよく喧嘩をします。嫌な気持ちがしたらすぐ言うからです。最近では、おしゃべりが上手になった娘から、言い返される回数も増え、もういい!とお互いそっぽを向くこともしばしば。でも築いてきた信頼関係のおかげか、最後は「大好き」とハグして終われています。Upload By SAKURA娘が教えてくれた大切なもの…といろいろと偉そうに言ってきましたが、結局は、娘が答えてくれたことと、出してくれた結果から学んだことです。私が娘からもらったものはたくさん。物事の考え方やとらえ方…一つできるたびに胸が温かくなること。…そして、人に対する優しい気持ち。私はこれからも娘からいろんなものをもらいながら、一緒に歩いていきたいと思います。
2018年12月12日映画、講演、体験ブースなど療育を知って楽しめる企画がいっぱい!Upload By 発達ナビ編集部2018年11月17日(土)に大阪で開催される療育をテーマにしたイベントの紹介です!「リョーフェス」は、療育を正しく知ることができる場、子育てについて新たな発見や新しいつながりが生まれる場をつくりたいという願いのもと、箕面市を拠点に活動しているNPO法人ダウン症ファミリー総合支援めばえ21が主催しています。子どもたちの療育にかかわる人、いろいろな療育を知りたい人、わが子の療育を考えている人、子育てについて一緒に考える仲間とつながりたい人など、どなたでも、来場を歓迎しています。当日は、子どもも大人も楽しめる企画がいっぱい!その中から、いくつかをピックアップしてご紹介します。「自分のされていやなことは人にしない」というたったひとつの校則と、「すべての子どもの学習権を保障する」という教育理念を掲げる大阪市の大空小学校に密着したドキュメンタリー映画。障害のある子もない子もすべての子どもが同じ教室で学びます。同級生や教職員、地域とのかかわり合う中で、子どもたちはどう成長していくのか。すべての子どもたちに居場所をつくるということを考えさせられる映画です。(映画鑑賞は有料で事前に予約が必要です)患者さんの病気や障害よりも、まずその人を知る、そして社会に知ってもらおうと多彩な活動を続けている、大阪医科大学小児科の玉井浩教授の講演会です。ダウン症やウィルソン病を研究する医師として、そしてダウン症のお子さんをもつ父として、障害のある子どもの子育てについて講演されます。学習障害(LD)やADHDの子どもたちの課題改善などのために用いられている「ビジョントレーニング」。もともとプロスポーツ選手のパフォーマンス向上のための視覚機能訓練を福祉と教育の世界に展開し、注目された北出勝也先生がビジョントレーニングのメニューなどを紹介してくれます。日本ミュージック・ケア協会認定指導者の浦川暁美先生によるミュージック・ケアの体験教室です。ミュージック・ケアには、個人を尊重しながら、関係性を広め深めるための要素がたくさん含まれています。また、子どもの発達には欠かせない動作が多く取り入れられていて、楽しみながら発達が促進されます。一度、ミュージック・ケアを通じた療育を体感してみてください。リョーフェスでMCも努める田村美波さんによる紙芝居。ダウン症の当事者でもある田村さんの懐かしくてあたたかい紙芝居の世界をぜひ感じてみてください。ほかにも、LITALICO発達ナビを含んだ、療育に関わる15団体がさまざまなブースを開設。障害者や高齢者のためのネイルブースやお絵かきワークショップ、物品販売などもあるので、お楽しみください。イベントを主催する「めばえ21」の想いUpload By 発達ナビ編集部めばえ21代表の永田和子さんは、ダウン症のお子さんのお母さんです。お子さんがダウン症だったことをきっかけに、障害についての正しい知識、悩みを共有できる仲間、障害の特性を理解し子どもの可能性を最大限引き出せる環境の重要性を感じ、ダウン症の子を持つ親たちで2014年にボランティア団体として立ち上げられました。では、なぜ療育のイベントを開催するに至ったのか。それは、「療育」に対するマイナスイメージやよくわからないものという印象を変えていきたいということがきっかけでした。正しく療育を知ることは、障害の有無にかかわらず、子どもをより豊かに育むための手助けになります。また、実際に療育を行う医師の方と話すことで、当事者よりもむしろ、親自身の悩みの解決にもつながることも少なくないそうです。ぜひ会場に足を運んで、たくさんの人と交流してください。子どもたちをより豊かに育めるようなヒント・つながりが見つかるかもしれません。開催概要【日時】 2018/11/17(土) 10:00〜15:00【会場】箕面市立箕面文化・交流センター8階大会議室/地下1階多目的室/2階和室阪急箕面駅から徒歩1分〒170-8445大阪府箕面市箕面6-3-1会場マップ【対象】関心がある方はどなたでも【参加費】 入場無料映画をご覧になる方は大人700円/小中高300円(未就学児無料)が必要です。【タイムテーブル】『みんなの学校』上映会10:00 8階大会議室(定員180人*車いす、ベビーカー入場可能)13:00 2階和室(定員40人)*希望の上映時間とともに必要事項をご記入の上、メールでお申し込みください。詳細はイベントホームページをご覧ください。メインステージ11:00 障がいをもつ子どもの子育てについて玉井浩大阪医科大学小児科教授12:25 シングアハッピーソング!中尾亜矢子さんシンガーソングライター・ヒルシュスプルング病の次男の母13:00 ビジョントレーニング北出勝也視機能トレーニングセンターJoy Vision代表14:15 ダウン症のある美波さんによるほっこり紙芝居田村美波14:40 ミュージック・ケア体験浦川暁美NPO法人日本ミュージック・ケア協会認定指導者ブース出展11:00~15:00療育に関わる15団体がさまざまなブースを出展*「めばえ21」ブースでは、小児科医・オプトメトリスト(視覚機能)・作業療法士・理学療法士など専門の先生方による相談を受けていただけます。【お問い合わせ】NPO法人 ダウン症ファミリー総合支援めばえ21Email: mebae21event@gmail.com
2018年11月09日わが家の息子、「ロボットが相手だと安心する」?出典 : わが家の8歳の息子が療育に行くとき、いつもとても楽しみにしていたことがあります。それは、病院の受付のところに「Pepper」くんというロボットがいてくれたことです。息子は療育に慣れるまで、「今日は何をやるのだろう」「先生に叱られないかな」と予測できないことへの恐怖で、落ち着きがなくなっていました。けれども、「Pepper」くんと話をすると、心なしか少し気持ちが落ち着いているように見えました。その後、息子の希望で犬のロボットを買いました。息子はこの犬のロボットのことも好きで、その後本物の犬を飼ったあとも、「僕はロボット犬のほうが好き」と言っていたほどでした。それは、本物の犬はどういう反応をするのか、どういう動きをするのか読めないから、怖かったのだそうです。(今はもう慣れました)また、一時期、私のスマートフォンの「Siri」に話しかけることにハマっていました。「Siri」が相手だと、何時間でも話ができるようで、なかなかスマートフォンを返してくれないこともありました。そのときに私は思ったのです。人間と違い、感情や態度がいつも一定のAIが相手だと、人間と話すときのような緊張感がなく、いくらでも話ができるのだな、と。心理的な負荷なくコミュニケーションが取れるのであれば、AIロボットが療育をしてくれたり、AIロボットが友達だったりしてもいいのかもしれない…とも。漠然とそんなことを考えていた私に、なんと「発達障害児の療育を行うAIロボットが開発された!」というニュースが飛び込んできたのです。開発者に聞く!QTrobot開発の背景は?発達障害児の療育は人間がするもの、だって人間との関わり方を学んでいかなければならないのだから…そんな固定概念が私たちの中にあるかもしれません。その考えを覆す「QTrobot」というロボットがルクセンブルクの企業で開発され、注目を集めているのです。オランダのアムステルダムで開催された「欧州CES 2019」(International Electronics Commercial Show/国際家電見本市)では、”Tech for Better World”部門でイノベーション・アワードを受賞しました。 récompensée par le CES pour son robot (LuxAI社のロボット CESで入賞(フランス語))Upload By 林真紀私は居ても立ってもいられなくなり、開発した企業の共同設立者のアイダ・ナザリー(Aida Nazarikhorram)さんに連絡を取ってみました。アイダさんによると、療育用ロボットの開発は2016年にルクセンブルク国立研究基金の助成対象となり、そこからLuxAIという会社を設立したとのことです。増加している発達障害児の療育ニーズに対して、療育を担当できる専門家が不足しており、これを解決するためにAIロボットの開発が進められました。ロボットが発達障害児の支援に高いポテンシャルを持つということは、これまでも多くの研究でいわれてきたそうです。QTrobotはこんなことができる !では、具体的にQTrobotはどのような形で療育を行うのでしょうか。こちらの紹介動画を見ると、QTrobotを使った療育で以下のことを教えることができるといいます。・表情・コミュニケーション・好ましい行動・日常的生活スキル人間が話すときには、たくさんの表情とボディランゲージを同時に発信します。それが発達障害の子どもにとって、習得が非常に難しいものであるとアイダさんは言います。しかし、QTrobotは人間のボディランゲージを上半身だけのシンプルな動きで表現するため、発達障害児が簡単に模倣できるそうです。またQTrobotの表情は36種類もあり、多様な表現が可能です。その他にも、相手の言葉と顔と表情を認識する機能がついているので、発達障害児との相互コミュニケーションが可能です。実際に使用する際には、療育の担当者や学校の先生などが操作をすることになります。そこで、ITやプログラミングの知識がない人でも、戸惑うことなく簡単にロボットの動作を組み込むことができるようになっています。担当者が自由に、その日の療育プログラムをつくることができるのです。アイダさんは、QTrobotについて「発達障害児が安全でコントロールされた環境の中で、ソーシャルスキルを学ぶことができる」と話していました。つまり、ロボットが相手だと、発達障害児にとっての「想定外」のコミュニケーションが起きづらいのだと思います。ロボットは、決して相手を否定したり、叱ったりもしません。様々なことができるけれども、決してパターン以上のことはしません。それが、発達障害児にとっては「安全でコントロールされた環境」なのかもしれません。社のホームページ(英語)実際に使っている子どもたちの反応は?Upload By 林真紀QTrobotは現在、英語、フランス語、ドイツ語、ルクセンブルク語に対応していて、既にアメリカやヨーロッパの発達障害児の療育に用いられているそうです。そこで療育を受けている子どもたちの反応は驚くべきものでした。例えば、数分もセラピーを受けることができなかった子どもが、40分も集中して受けることができたとか、セラピーをどうしても受けたがらなかった子どもが、自分から熱心にセラピーに参加するようになったそうです。また、親御さんからもとてもポジティブなフィードバックが沢山きているようです。例えば、子どもが落ち着いてきた、社交的になった、人に対して共感的になった…など。実際にルクセンブルク大学の研究で実証実験が行われたそうですが、ロボットのほうが発達障害児の注意を引きつけることができ、さらに破壊的な行動や自閉症児特有の自己刺激行動が軽減するという研究結果が出たとのこと。 Field Test Report: Case Study - EIPA, Luxembourg (QTrobot実地試験ー欧州行政研究所)言葉や地域を越えて、発達障害のある子への支援をUpload By 林真紀さて、QTrobotが日本の療育現場にやってきてくれる可能性はあるのでしょうか?アイダさんにお聞きしたところ、日本からも問い合わせが相次いでいるそうです。現段階では専門家向けの販売がメインですが、実際に問い合わせをしている方の多くは一般の親御さんなのだとか。今後は、さらにグローバル展開ができるよう生産能力を上げ、輸出入を請け負ってくれる商社を探している最中とのことでした。日本でQTrobotが療育を担当してくれる日も、遠くはないのかもしれません!「住んでいる場所や言葉は関係なく、発達障害の子どもたちを支援していきたいのです」このアイダさんの言葉がとても印象的でした。療育のみならず、発達障害児の大切な友達として、AIロボットが気持ちを癒してくれるような未来がくるかもしれませんね。販売に関する問い合わせフォーム | LuxAI (英語)
2018年10月26日『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』著者の立石美津子です。障害基礎年金は自動的に受給はできない!申請のために必要なものとは…Upload By 立石美津子障害のある人は障害基礎年金を20歳から受け取ることができるのは、知っていますか?息子は現在17歳。年金受給できる年齢まであと2年ちょっとです。私は「療育手帳を持っていれば、障害基礎年金は自動的に受け取れるもの」と勘違いしていました。学校の個人面談で担任から、「立石さん、主治医はいますか?いないのであれば、20歳になったら障害基礎年金を受給できるように、申請に必要な診断書を書いてくれる医師を、今から探しておいてください」と言われました。私は、障害基礎年金の受給の申請のためには療育手帳だけ持っていてもダメで、主治医の診断書が必要なのだとこのとき初めて知りました。参考:日本年金機構小児科・児童精神科には年齢制限がある出典 : 私の家の近所に小児専門の国立病院があります。もちろん、発達障害児のための専門外来もあります。でも高校生以上の初診は受けつけていないそうです。発達障害のある子どものかかりつけは、小児科や児童精神科が多いと思います。ですが小児科や児童精神科は、原則として中学生までしか受診ができません。以前は成人期になっても小児科・児童精神科にかかる場合もあったようですが、発達障害の診療ニーズが高まる中、継続しての支援が難しくなってきたという背景もあるようです。また、幼児期は療育に通ったり病院を受診していたりしたけれど、小・中学校時代にはトラブルなく過ごせ、思春期以降も問題行動などの二次障害もなく落ち着いている場合、投薬もなく、主治医を持たないケースもあるでしょう。友人にも「子どもが小さい頃は病院に行っていたけれど、今は定期通院していない」という人が多くいます。そうすると、「障害はあるのに問題行動が落ち着いて病院を離れていた結果、主治医がおらず、年金申請に必要な書類を書いてもらえない」という状態になり、慌てることになってしまうのです。つまり、20歳を迎える前に年金受給申請することになりますが、それまでに成人を診られる病院で主治医を見つけておく必要があります。障害のある子を育てているママ友のなかには、子どもが幼い頃から「年金申請のこと」まで見越して、最初から大人の精神科が併設されているクリニックに通わせている人もいます。でも私は、担任に言われるまで、まったくその知識がありませんでした…。主治医探しの旅へ出典 : 現在、息子は強迫性障害のために大学病院に通院しています。ただ、この病院は「病気の診断を確定して治療方針を立てるところ」です。定期的に通う場合は、住まいの近くのクリニックに転院する必要があるようです。そういう意味ではずっと診てもらえる主治医がいない状態です。わが家の場合、大学病院から他の病院への紹介などはないため、自力で見つける必要があります。都内の精神科のクリニックに電話をしてみました。しかし、まず電話がつながりません。30分電話をかけ続け、やっとつながったとしても「来月の初診枠は満員となりました!」と言われてしまいました。さらに「年金申請の診断書記入目的の新患は受けつけていません」と言われてしまったのです。こうして、病院探しの放浪の旅の途中にあるわが家ですが、医師の立場に立てば、18歳になっていきなり来られても「幼い頃からずっと診てきている訳ではないので、受診してすぐ診断書を書くことは難しい」と考えるのも頷けます。参考:発達障害診療における小児科から精神科へのトランジション | 精神科治療学 第32巻12号(星和書店)精神科医へのスムーズな引継ぎがあれば…出典 : 障害基礎年金の申請支援までして引き継いでもらうことができたら…小児科で診られる年齢と、年金申請までの期間があることなどによって、このような問題が出てきてしまいます。せめて、小児科・児童精神科医が、患者の状態を要約して書面にして成人期の病院へ引き継いでくれたら、精神科医も対応しやすくなると思います。「障害のある人が月に6.5万円(※)を稼ぐことはとても大変です。障害基礎年金があることで、無理なく働くことができるのです」と、知人の社会保険労務士は言います。私もそう思います。ライフラインともいえる障害基礎年金の申請がままならない、制度のはざまでもがく、わが家のような家族はたくさんいると思います。障害基礎年金の申請にも関わる社会の仕組みが、改善されてほしいと強く願っています。そしてまた、わが家のように路頭に迷わないよう、発達障害のある子どもを育てている保護者のみなさんには、中学生になるぐらいから、成人期を見据えた主治医探しをはじめておいてほしいとも思います。(※)「障害基礎年金」年額より算出。障害基礎年金は1級で年額974,125円、2級で779,300円(2018年度)
2018年05月26日療育入園初日。椅子から脱走し走り回る長男3歳当時、自閉症の長男は一日中走りまわっているような子どもでした。多動の特性も強いゆえ、仕方のないことだと思うのですが、母親の私も追いかけるのに一苦労。公園に連れていくと立ち止まったり座ったりすることもなくひたすら駆け回ります。Upload By シュウママ既に療育の通所支援に通うことが決まっていたので、まあ訓練で多動はおさまってくれるだろう…と思っていたのですがそれは甘かった!療育施設の入園日、何度座らせようとしても椅子からおりて脱走する長男を見ながら目の前が真っ暗になりました。Upload By シュウママ他にも座れずに泣いている子もいます。けれど長男ほど活発に動き回る子はいなかったのです。「1か月で座れるようになりますよ!」先生の言葉に半信半疑だったけど…現実をつきつけられたような気がして「この子が椅子に座れる日が来るんでしょうか」思わず尋ねると先生は笑顔で答えてくださいました。Upload By シュウママ「みんなそうです。大丈夫ですよ」優しい先生の言葉にうなずきながらもそう簡単にいくのだろうか――不安が募りました。少しずつ少しずつ。変化があらわれてきた長男それから長男は毎日療育施設に通いました。私は週に2回ある親子通園日に長男の様子を見ることができるのですが、「あの多動がおさまるはずがない…」とやはり半信半疑でした。けれど先生方の日々の取り組みはまさに目から鱗だったのです。その療育施設では手を洗って牛乳を飲み、椅子に座ってみんなで手遊び歌を行うのが日課になっています。はじめ長男は牛乳を泣いて嫌がり、吐き出したりコップを倒したりしていました。けれど先生は牛乳が嫌ならお茶にしようかという妥協は一切なく、他の子と同じ牛乳を飲ませていました。「一口だけでも飲むんだよ」と先生はスプーン1さじから始め、1さじ飲めたら次の日は2さじという風に量を増やしていきました。Upload By シュウママその間、飲み終わった子ども達は自分の椅子を並べて先生と手遊び歌をしています。そうすると不思議なもので自分も遅れを取りたくない、みんなと一緒に手遊びしたい!という意識が芽生えてきたのでしょうか――長男は徐々に牛乳を飲める量が増えていき、最後には一人で全部飲み干し、自分で椅子を持って手遊びに参加できるようになったのです。Upload By シュウママ大切なのは妥協しないことそして長男は、教室以外の大きなホールでお誕生日会をする時でもきちんと座って待つことができるようになったのです。「あの子がちゃんと椅子に座って待てるようになるなんて…」と私は先生に言いました。すると先生は「園では基本みんなと同じものを食べ、同じ行動をするよう促します。そうするとね…」先生はくすりと笑って言いました。Upload By シュウママそして「ご家庭でも、お母さんが子ども用に別におかずを作ったりするのは控えたほうがいいんです。家族みんな同じものを食べるほうが楽しいし、苦手なものも食べられるようになるんですよ」とアドバイスしてくださいました。そういえば療育の給食の時間、子ども達は「シュウちゃんにんじん食べられたね~」とおしゃべりしながら食事していました。お友達が食べられたなら自分も食べれるかもしれない、と感じながらお互いを育てあうのかなと感じました。療育施設ではたくさんのことを教えてもらったのですが、子どもの自主性は重んじても妥協はしないという姿勢や向き合い方も、教えて頂いた大切なことでした。
2018年03月28日アナログゲーム療育って何?出典 : クリスマスにお正月と、年末年始は家族や親戚で集まることも多い時期。みんなでゲームをして遊ぶ機会も多いのではないでしょうか。そんな季節にぴったりな、「アナログゲーム療育」をご紹介します。アナログゲーム療育は、療育アドバイザーであり、発達ナビでも記事を執筆する松本太一さんが提案している療育方法です。ゲームと聞くとテレビやゲーム機で遊ぶデジタルゲームを連想する方も多いかもしれませんが、アナログゲーム療育で用いるのはトランプなどのカードゲームや、すごろくなどのボードゲームです。アナログゲームがデジタルゲームと違う点は、自分たちでルールを守らなければいけないということです。デジタルゲームではゲームのプログラムによって、ルールに沿ったプレイしかできないようなつくりになっています。対して、アナログゲームではプレイヤー同士でルールを守りあう必要があります。この「ルールの守りあい」をすることが、子ども同士のコミュニケーション能力を伸ばすことに繋がるのです。アナログゲーム療育のメリットって?出典 : 学校の授業などは、指示をする先生と指示に従う子どもという上下関係、タテのつながりのなかで行われます。これによって大人との関わり方は学べても、友達同士などの対等な関わり方を学ぶ機会はなかなかありません。アナログゲーム療育では、ゲーム中のルールの守りあいを通して、友達同士のヨコのつながりや対等な関わり方を学ぶことができます。現代社会では、いろんな価値観を持った人々と互いに理解しあったり交渉する力が求められます。ですが、発達障害がある子どもの中には、相手の気持ちや集団の中のルールを察することが苦手な子どももいます。そんな場合も、アナログゲームなら、明文化されたゲームのルールを守りながら遊ぶことができ、集団の中でのコミュニケーションの機会を持てるので、対等な会話や交渉する経験を楽しく積むことができます。できる!を増やす、家族で遊べるアナログゲーム出典 : ここからは子どもの伸ばしたいスキルごとにいくつかおすすめのゲームをご紹介します。友達と遊ぶ前の段階として大人がリードして、ゲームを楽しむためのスキルを獲得していきましょう。ゲームをして遊ぶには、「勝ちと負けを理解する」「ルールを守る」ことが必要です。まずは勝ち負けが分かりやすくルールもシンプルなゲームを、大人と一緒にやってみましょう。◇スティッキーリングでスティックを束ねたタワーから、サイコロで出た色のスティックを引き抜き、タワーを倒してしまった人が負けです。勝ち負けが視覚的に分かりやすく、ルールも簡単です。まずは大人と一対一で遊んでみましょう。スティックをうまく引き抜けたときは大げさによろこび、タワーを倒してしまったときは大げさに残念がるアクションを大人が見せることで、子どもは勝ち負けを理解していきます。子どもがルールを理解できたらほかの大人や友達も誘って一緒にやってみることで、集団への参加もスムーズになります。なかなか友達の輪に入れなかったり、友達とゲームをすることに抵抗を感じる子どもにおすすめのゲームです。初めは遊んでいる様子を見てみることや、大人と二人で遊ぶことから初めてみましょう。ある程度ゲームに慣れてから友達や他の大人を誘うことで、集団で遊ぶことにチャレンジします。◇キャプテン・リノ配られたカードを積み上げて、崩した人が負けというゲームです。積み上げたカードの見た目のインパクトといつ崩れるかという緊張感は、見ているだけでもドキドキしてしまうほど。他の子どもたちがゲームを楽しみ、一喜一憂する様子や、ゲーム中の歓声を聞くことで、ゲームへ興味を感じやすくなります。ゲームに参加したがらない子は、まず見学してみることからはじめましょう。ほかの子が遊んでいる様子からゲームのルールを理解したり見通しを持つことができれば、子どもの安心感や興味に繋がります。参考:集団参加への勇気を取り戻すキャプテン・リノ|アナログゲーム療育のススメ◇禁断の砂漠プレイヤー全員で協力しながら、古代の砂漠都市を発掘して飛行機の部品を集め、脱出するゲームです。プレイヤー同士が競い合うのではなく、協力してクリアを目指すゲームなので、友達に負けてしまうことで癇癪を起こしやすい子にもおすすめです。また年齢の違う子どもたちで混ざってプレイすることで、年下の子をフォローしたり、年上の子に交じって活躍できたという成功体験を得る場にできます。大人が司会役をして、おとなしい子やほかの子のプレイに口を出したくなってしまう子どもをサポートし、参加する子どもたちが、平等に発言したり考える時間を持てるようにするのがポイントです。参考:協力して一つのゴールを目指す「禁断の砂漠」|アナログゲーム療育のススメ自分のターンを待ったり、ゲームの順位を理解したり、順番の概念はゲームに欠かせません。ゲームを通して数の概念を理解し、順番が分かるようになるという効果も期待できます。◇雲の上のユニコーン1から3までのサイコロを振って進む、すごろくのようなゲームです。特定のマスにとまったときにもらえる宝石の数で勝ち負けが決まります。「いくつ宝石がもらえるかな?」といった声掛けをして、サイコロの目に書いてある数の宝石を取らせることで、数の概念を身につけていくことができるのです。自分から発言したり話をすることが苦手な子に、ゲームを通して発語を促すこともできます。ゲームの中のコミュニケーションを通して、相手のことを考えたり自分を表現するコミュニケーションを学ぶことができるゲームを紹介します。◇かたろーぐカタログや一覧から好きなもののランキングをつくって当ててもらうゲームです。身近にあるチラシや本などなんでも題材にできるので、興味に偏りがある子どもでも楽しく遊ぶことができます。初めは子どもの好きなものを誰かに当ててもらって、楽しくなってきたらほかの子の好きなものをあててみることで、自分を理解してもらったり他人を理解しようとしたりする機会につながります。ゲームの後にどうしてそれが好きなのか、という会話をするのも楽しいですよ。かたろーぐ|すごろくや◇わたしはだあれ?まず、一人がほかの子に見えないようにカードを一枚引きます。残りのプレイヤーは、何のカードが引かれたのか、「はい」か「いいえ」で答えられる質問をすることで当てるゲームです。初めは質問をするのが難しいかもしれませんが、大人の質問をまねしてしているうちに、だんだん質問できるようになっていきます。答えを間違えてしまったときも「どんな質問をすれば分かったかな?」などの声掛けをして思考を促すことで、質問力が身についていきます。年齢別・子ども同士で遊びたいゲーム出典 : 暗黙の了解や明文化されないルールが多くある、子ども同士の集団遊びには入りにくい子は、ルールがはっきりしているアナログゲームを集団遊びの入り口にしてみましょう。ここでは子どもの年齢別に、おすすめのゲームを紹介します。勝敗や順位の概念を覚えることを目標に遊んでみましょう。勝ち負けが分かりやすく、ある程度運で決まるようなゲームがおすすめです。◇虹色のヘビヘビのあたま、胴体、しっぽの描かれたカードを一枚ずつめくって場に出し、色が合うようにつなげてヘビを完成させるゲームです。ヘビを完成させると自分のカードにできて、めくるカードがなくなるまでにいちばん多くカードを持っている人が勝ちです。色が鮮やかできれいなので、目で見る情報につよい視覚優位の子どもにおすすめです。◇坊主めくり百人一首の読み札を一枚ずつめくり、自分の札にしていきます。坊主を引いたら手札をすべて場におき、姫を引いたら場にあるカードをすべてもらえて、さらにもう一枚札を引けます。百人一首に親しむこともできる、お正月にぴったりのゲームです。「どちらがより有利か」などといった判断が求められるゲームに挑戦してみましょう。自分で考えて勝つことで、ゲームをより楽しめるようになっていきます。◇パカパカお馬道具を集めながら進むすごろくのようなゲームで、数字が書かれたものと道具の絵がかかれたものの2つのサイコロを振ります。出た目に応じた道具をもらうか駒を進めるかを選びながら、一番先に道具をすべてそろえてゴールした人が勝ちです。2つのサイコロの出目を見比べてより効率的な方を選ぶ、客観的思考を身に付けるきっかけになります。参考:客観的思考の芽生えを促す「パカパカお馬」|アナログゲーム療育のススメ◇カヤナック氷上の魚釣りをモチーフにした盤上で、サイコロに合わせて進んだり、穴をあけたり魚を釣ったりして、釣った魚に応じて与えられる得点を競うゲームです。氷の代わりにボードの下に敷いた紙に実際に穴をあける感覚や、磁石で魚代わりの小さな鉄球を釣る動作の楽しさが魅力です。相手の立場や意図を考えることは、実際の社会生活でも求められる重要なスキルです。相手の考えを読み取ったり、自分の役割を演じたりなど、より高度なコミュニケーションを求められるゲームに挑戦してみましょう。◇ディクシット抽象的な絵が描かれた手札から話し手となるプレイヤーが1枚をえらび、カードの絵を元にお話を語ります。そのお話に合うカードをほかのプレイヤーが手札から1枚ずつだして、シャッフルした中から話し手のカードを探し出すゲームです。「この人ならこんな表現をするはず」と推理することで、相手に対する理解が自然と深まっていきます。参考:互いの距離を縮める「dixit(ディクシット)」|アナログゲーム療育のススメ◇ワンナイト人狼村人の中に紛れ込んだ人狼を探し出す「人狼ゲーム」を短く手軽に遊べるようにしたものが「ワンナイト人狼」です。与えられた役割によって嘘をついたり見破ったりしなければならないので、より高度なコミュニケーション能力を伸ばす機会にできます。まとめ出典 : 家族や親戚で集まりやすく、屋内遊びが多くなる冬休みは、アナログゲーム療育のチャンスです。自分から集団に入っていくのが難しい子どもとは一対一で遊ぶことから初めて、そこに友達を巻き込んでいきます。勝ち負けが分からない子どもに対しては、大人が失敗や成功のリアクションを大きくして見せることで、少しずつ勝敗を学んでいけるようにします。子どもに合わせた小さな工夫で、ボードゲームやカードゲームのゲームを楽しみながら、療育をすることができます。この機会にぜひお気に入りのアナログゲームを見つけて、家族や友達と楽しく療育に取り組みましょう!
2017年12月22日療育とは出典 : 療育とは障害のある子どもの発達を促し、自立して生活できるように援助することをいいます。療育という言葉はもともと、東京大学名誉教授の高木憲次氏(1888-1963)が提唱した概念です。肢体不自由児の社会的な自立を目標に、医療と教育を並行してすすめることを指しました。高木氏の後には高松鶴吉氏(1930-)が療育の対象をすべての障害のある子どもに広げて、育児支援の重要性を強調しました。後に療育の概念をさらに発展させて「発達支援」という概念が生まれました。厚生労働省では「児童発達支援」という言葉として以下のように定義しています。児童発達支援は、障害のある子どもに対し、身体的・精神的機能の適正な発達を促し、日常生活及び社会生活を円滑に営めるようにするために行 う、それぞれの障害の特性に応じた福祉的、心理的、教育的及び医療的な援助である。(児童発達支援ガイドライン|厚生労働省より引用)療育という言葉や概念は時代の変遷とともに意味合いを変えており、現在定まった明確な定義は示されていません。また必ずしも医療行為を含むものではない場合もあります。定義や実践内容の移り変わりはあるものの、概ねの理解としては、療育とは障害のある子どもの発達を促し、自立して生活できるように援助する取り組みを指すと考えるとわかりやすいでしょう。参考:発達支援の指針(CDS-Japan 2016 年改訂版)|全国児童発達支援協議会参考:『脳と発達 第43巻 第6号』「療育とは…」再考「療育とは…」再考(一般社団法人 日本小児神経学会)参考:『佛教大学大学院紀要社会福祉学研究科篇第37号(2009年3月)』子どもの権利条約における「療育の権利」の位置づけ(佛教大学)療育の対象となる児童は?出典 : 療育は基本的に18歳以下の児童を対象としています。身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)の3障害のいずれかに該当する障害のある児童が療育の対象となります。参考:児童福祉法第19条発達障害のある子どもの場合、療育を受けるために療育手帳や精神障害者福祉手帳は必須の条件ではありません。障害者手帳を取得していない、もしくは取得のための認定基準を満たしていない場合でも、療育を受けることができる場合があります。児童発達支援を利用して療育的な支援を受けたい場合、行政から発行される「受給者証」の申請が必要になります。受給者証の交付を受けると、国と自治体から施設利用料の9割の給付を受け、自己負担1割で児童発達支援を受けることができます。また、児童が属する世帯の市町村民税額により、負担上限月額が定められています。利用月の1割負担額と負担上限月額を比較し、安い方の金額が利用者負担となるため、場合によっては1割以下の金額になります。負担上限月額は、通所受給者証に記載されています。参考:障害児支援の強化について|厚生労働省療育ってどこで受けられるの?出典 : 療育という言葉の定義は明確ではなく、家庭でのトレーニングや私費で受けられる療育的支援を指して「療育」ということもあります。ここでは、公的に受けられる療育的支援についてご紹介します。障害児への支援として療育が受けられる施設について、以前は障害ごとに細かな分類がありましたが、現在は複数の障害がある場合にも対応できるように一元化されています。療育を受けられる施設を児童福祉法にしたがって分類すると、通って療育を受ける「通所支援」型と、自宅で生活するのが難しい子どものための「入所支援」型の2つに分けられます。そこからさらに、福祉サービスとして行われる「福祉」型と医師による治療を併せて行う「医療」型に分かれます。Upload By 発達障害のキホン参考:児童福祉法の一部改正の概要について|厚生労働省施設によって対象としているお子さんの年齢が違ったり、提供しているサービスが違います。保育園のように通い、療育を受けられるような施設もあります。詳しくはこちらの記事に説明がありますのでご覧ください。こちらからお近くの施設も検索できます。施設検索|LITALICO発達ナビ療育ってどんなことをするの?出典 : 障害のあるお子さんが社会的に自立できるように、身辺自立や苦手なことを伸ばすことを意識した働きかけをしたり、コミュニケーションなどの社会的スキルを得られるように助けます。お子さんごとに必要な支援が違うので、一概に内容を説明することはできませんが、発達障害のあるお子さんによく用いられるアプローチをいくつか紹介します。人間の行動は周囲の状況との相互作用によって生まれると考え、状況を変えることで困った行動を減らし、より望ましい行動を身につけてもらうことを目的とした、理論と実践の体系を、応用行動分析学(ABA)といいます。TEACCHとは、アメリカ・ノースカロライナ州発祥の、自閉症スペクトラム障害(ASD)の当事者とその家族を対象とした生涯支援プログラムです。自閉症スペクトラム障害がある人の特徴を「世界の捉え方が一般の人とは異なる」ととらえて、彼らの特性が社会に適応できるように助けるという考え方がTEACCHの特徴です。具体的なアプローチとしては、生活・学習環境を分かりやすく整理したり、今後の見通しがつきやすいようにスケジュールなどはカードを使って視覚化したりといった方法があります。また、コミュニケーションについては、耳から聞くよりも目で見るほうが理解しやすい場合が多いので、絵カードなどを使って伝えるようにします。感覚統合とは、複数の感覚を整理したりまとめたりする脳の機能のことです。感覚統合ができるようになると、状況に応じた感覚の調整や注意の向け方ができるようになります。つまり、自分の身体を把握する、道具を使いこなす、人とコミュニケーションをとるというような周囲の状況の把握とそれをふまえた行動ができるようになるのです。発達障害がある子どもには、感覚統合が難しい子どももいます。感覚統合療法では、そうした子どもたちへのアプローチとして、主に作業療法士(OT)が中心となり、遊びや運動を通して感覚統合を伸ばしていくプログラムを行われます。PECSは、言葉によるコミュニケーションが難しい場合などに行われるアプローチです。絵カードを使って、自発的なコミュニケーションをとれることを目標にしたプログラムです。療育にはどんな効果があるの?出典 : 療育の効果は、その子どもに生じている困難・障害や、療育の目的・プログラム内容に応じて異なります。たとえば、食事、排せつ、身支度などが一人でできるようになったり、認知、言語、運動などの発達が促されて、受け答えや挨拶、表情や感情の理解をして他者とコミュニケーションが取れるようなったりと、さまざまな効果が期待されます。実際の療育現場では、子ども一人ひとりの特性や発達段階に合わせて、個別に目標とプログラムが設定されます。ですが、療育を始めてすぐに目に見えて効果が出ることは極めてまれです。特に、発達障害のある子どもの発達は、ゆっくりと進んでいくことが多いです。目立っている苦手な部分がすぐには改善されない場合もあります。それでも、働きかけを続けることで子どもは着実に成長していきます。苦手な部分はそのままでも、得意なことでそれをカバーできるようになっていくこともあります。また、療育を通して子どもとのかかわり方を学ぶことで保護者の対応が変わっていき、より豊かなコミュニケーションが可能となる場合もあります。療育の体験談もありますので、こちらも参考にしてみてください。みなさんの療育体験談を教えてください|LITALICO発達ナビ早期療育はどうして大切なの?出典 : 発達障害のある子が周囲や本人に特性の理解のないまま成長していくと、叱られたり非難を受ける機会が増え、傷つき自信をなくしていくことが多くなりがちです。そこから、自尊心が育たない、抑うつ、激しい反抗などの問題が生じることもあります。障害そのものによってではなく、ストレスなどから起こる問題を、二次障害と呼びます。このような二次障害を防ぐためには、早期から周囲が特性を理解し、対応することが必要となってきます。また、3歳までの幼いうちに療育に取り組み始めることができると、体も小さいので身体的な支援がしやすく、療育の中で子どもがパニックなどを起こした際も抱き上げたりなだめたりなどの対応がしやすいというメリットがあります。参考:『発達障害の子どもとつき合う本―どう関わればいいかわからずに困っているおかあさんや先生方へ』(浅羽珠子/主婦の友社)子どもが小さいうちから特性を把握し、心を安定させながら育てる環境を作ることによって、その子が持っている能力をさらに伸ばしていける可能性が広がります。発達障害への早期支援については発達障害者支援法の中にも述べられています。市町村は、発達障害児が早期の発達支援を受けることができるよう、発達障害児の保護者に対し、その相談に応じ、センター等を紹介し、又は助言を行い、その他適切な措置を講じるものとする。(発達障害支援法 第六条より引用)発達相談から、療育を受けるまでの流れ出典 : 保護者から見て言葉や発達の遅れが気になったり、健診で「発達の遅れがみられる」と指摘された場合は、行政などの相談機関に行ってみましょう。子育て・発達支援室や療育センター、児童相談所などで相談をすることができます。ここで、その地域の検査機関を紹介してもらえます。年齢に応じてさまざまな検査方法があり、複数を組み合わせることでより的確な結果がでます。地域によっては順番待ちが長く、すぐに検査がしてもらえない場合もあります。急ぎたい場合は、病院の外来などで自費診療という形で検査してもらうこともできます。行政が運営しているものから研究機関が運営しているもの、NPOや民間のものなど、多様な施設があります。対象にしている年齢や受けられるサービスなどもさまざまなので、子どもの検査結果に合わせて選びましょう。役所の福祉窓口で療育施設の紹介をうけることもできます。施設によっては見学や体験もできます。利用する施設によって交付される受給者証の種類が違います。通所型施設の場合は「通所受給者証」を市区町村の窓口から申請します。入所型施設の場合は「入所受給者証」を児童相談所などから申請します。必要な書類は行政によって異なる場合があるので、事前に確認をしておきましょう。支給の有無やサービス内容の決定のための調査や審査が済むと、受給者証の交付を受けることができます。受給者証の交付を受けたら、受給者証の内容に合わせて障害児支援利用計画を作成します。受給者証、障害時支援利用計画など必要な書類がそろったら、施設との契約、利用のスタートができます。まとめ出典 : 「療育」というと、少し敷居が高く感じるかもしれませんが、実際は療育手帳などがなくても受けられる場合もあり、発達が遅れていたり生活に困りを感じている子どもをサポートするためのものです。子どもの成長を手助けし、自分でできることを増やせるよう、療育を活用していきましょう。参考書籍:『発達障害のある子と家族のためのサポートBOOK 小学生編』(岡田俊/ナツメ社)
2017年12月15日発達障害の子どもの療育にも用いられる音楽療法。その最新の動向をお届けします!みなさんは、「音楽療法」という言葉を聞いたことがありますか?音楽療法とは、音楽のさまざまな力を利用して、対象者が抱えている困りごとの改善を促したり、よりよい生活を送ったりすることができるようにアプローチする療法です。この音楽療法を、発達障害のある子どもの療育に取り入れる試みが世界的に広がっていることをご存知でしょうか。まだ日本では音楽療法の保険適用や法整備が実現されておらず、音楽療法士の資格も国家資格となっていないため、療育としての普及には多くの壁が存在しています。しかし、今回茨城県つくば市で5日間に渡って行われた「世界音楽療法大会」への取材を通して、すでに日本でも医療や教育の現場で発達障害児の療育に音楽療法を取り入れようとする試みがなされていることが分かりました。今回の記事では、世界音楽療法大会への取材を通して学んだ、音楽療法の実践・研究の様子をお伝えします。Upload By 林真紀世界中から音楽療法士が集まる「世界音楽療法大会」とは?Upload By 林真紀「世界音楽療法大会」とは、世界中から音楽療法士が集まり、世界レベルでの音楽療法の発展をサポートするために行われているイベントです。第15回世界音楽療法大会 公式サイト世界音楽療法連盟によって3年に1度、世界各地で開催されてきました。現在では、世界約50カ国から約2,500人が参加する、非常に大きな大会となっています。Upload By 林真紀音楽療法が用いられる場面は、世界的には非常に広く、プログラムをざっと見るだけでも「認知症患者」「末期がん患者」「未熟児」「ホームレス」「DV被害者」等々、多様な人々を対象とした音楽療法の研究がなされています。そしてその中でも、「発達障害児と音楽療法」というテーマは、国内での注目度の高さが感じられ、同様の発表は常に満席で立ち見が出る賑わいでした。その様子から、音楽療法はまさにこれから日本の療育分野で、飛躍的に活用されてゆくのではないかと感じることができました。今回、この大会の中で、実際に発達障害のある子どもの療育に音楽療法を取り入れる活動をされている方々にお話しを聞くことができました。この先進的な取り組みについて、詳しくご紹介していこうと思います。1. 放課後等デイサービスや特別支援学校での音楽療法の取り組みUpload By 林真紀まず最初に取材したのは、兵庫県の特別支援学校や放課後等デイサービスなどで音楽療法のセッションを担当されている音楽療法士の、松﨑聡子さんです。兵庫県では、阪神淡路大震災後、県民の心のケアに音楽が有効であるということから、震災から4年後の1999年に県独自の音楽療法士養成講座をスタートさせました。そして兵庫県知事から認定を受けた第一期生が中心となり、2002年に「兵庫県音楽療法士会」が発足。現在では、約250名の会員が音楽療法の普及・発展を目指して活動を行っています。2011年に発生した東日本大震災でも、復興支援活動として、被災地支援活動、県内避難者支援活動を行ったそうです。兵庫県音楽療法士会多方面で活躍する音楽療法士ですが、残念ながら国家資格ではないため、医療現場や教育現場に入っていくことは、現状ではなかなか難しいといいます。そのような背景から、松﨑さんをはじめ多くの音楽療法士は放課後等デイサービスでのセッションを行うことが多いそうです。松﨑さんは定期的に放課後等デイサービスや特別支援学校でセッションの時間を持ち、楽器や音楽を使って、発達障害のある子どもの社会性を伸ばす療育に取り組んでいます。「音楽は、発達障害児の療育に用いる上で数々の優れた面がある」、と松﨑さんは言います。「音楽」は「言葉」と異なり、「感じるもの」という側面が大きく、子どもの心にダイレクトに訴えかけることができます。また、「始めと終わりがはっきりしているため見通しが立てやすい」「繰り返しがある」等、自閉傾向の強い子どもが好む構造になっているのも特徴です。その他にも、楽器を使うことにより、子どもは五感を刺激され、感覚統合訓練の役割も果たしてくれるとのことです。また、何よりも大切なのは、音楽を通して、セラピストと子どもがコミュニケーションを取ることです。これこそが、音楽療法のなかで一番大切な部分であると言っても過言ではありません。音楽療法士のピアノに合わせて楽器を鳴らす、音楽療法士と順番に楽器を鳴らす、出来たら音楽療法士とハイタッチをする…子どもたちは、このように音楽を通してコミュニケーションを学び、社会性を獲得していくのです。その他にも、松﨑さんが子どもたちに音楽療法を実施する際、とても大切にしていることがあります。それは、その子が音楽療法のセッションの中で学んだことを、日常の生活でも実践できるようにサポートしていくことです。音楽療法のセッションのなかで、子どもは社会性やコミュニケーションなどのさまざまな部分で成長を見せてくれます。しかし、それがセッションの中だけで終わってしまっては意味がない、と松﨑さんは考えます。そのためにも、保護者の協力は必須であるとのこと。松﨑さん含め、音楽療法士は、長いスパンでその子の成長を見ており、その子の長い人生の中の大切な一時期を自分たちが担っているという気持ちでセッションに取り組んでいるそうです。2. 医療現場での音楽療法の取り組み音楽療法は、作業療法や言語療法のように保険が適用されるものではありません。よって、日本の医療現場では音楽療法を取り入れることについてあまり積極的ではないようです。しかし、そうしたなかでもいち早く、発達障害のある子どもに対する音楽療法の療育効果に注目し、治療計画の一環として取り入れたクリニックがあります。筑波こどものこころクリニックの院長、医学博士の鈴木直光先生です。鈴木先生のクリニックでは、2015年より、通常の診察と並行して、別室で音楽療法士によるグループセッションを行っています。Upload By 林真紀筑波こどものこころクリニック鈴木先生は、そこで録画された様子を、診察でも役立てています。 「音楽療法のセッションの中での子どもの様子を観察していると、発達障がいのある子どもに特有の、さまざまな症状を見出すことが出来ます」と言います。例えば、ADHDの子どもは、音楽が止まることを合図にその場で静止することができなかったり、ASDの子どもは音楽に合わせて左右交互に 腕を振ることが難しかったりします。また、ADHDの子どもは音楽に合わせて片足立ちをする際に、体幹が弱いため膝が前にこず、床を蹴るような動作をしてしまうことも特徴だそうです。しかし、そのような兆候は、音楽療法のセッションをこなすごとに改善していくと言います。それだけではなく、言語的な発達、衝動性の抑制、社会性の伸びなど、広い範囲の発達を促すことができると言います。鈴木先生は、診察と並行して音楽療法を行うことで、診察室では見られない子どもたちの発達の状態をより深く理解することができると話してくださいました。例えば、選択緘黙症の子どもなどは、診察室などでは何も話すことができないケースが多く、診察室だけでその子を判断してしまうと、どうしても「出来ない部分」が目立ってしまうと言います。だからこそ、音楽療法のセッションルームで何かが出来るようになっていく姿を見ることは非常に意味があることであり、音楽療法をクリニックで取り入れることにより、「出来ない部分」ではなく「出来る部分」を引き出していくことが出来ると語ってくださいました。このように、「診察室では見えない成長を見る」ために、音楽療法を取り入れている先生もいます。3. 発達障害児/者の音楽療法の研究音楽療法は、さまざまな特性の子どもに合わせたオーダーメイドの要素の大きい療育です。よって、発達障害のある子どもの、それぞれの特性に合わせた選曲も非常に重要になってきます。Upload By 林真紀二俣泉先生(東邦音楽大学准教授)と二俣裕美子先生は、発達障害のある子ども向けの音楽療法で、実際にどのようなプログラムを組んでいけば良いか、どのような曲を使い、どのように楽器を活用していけば良いかを研究されています。また同時に、発達障害のある子どもに合わせた音楽療法のための作曲もされています。二俣先生は、発達障害のある子ども向けの音楽療法で使う曲は、次の4つのタイプがあると言います。1. 自由に演奏する曲2. 演奏に際して緩やかなルールがある曲3. 音が空白の部分で演奏する曲4. 演奏のタイミングが厳密に定められている曲例えば、1の「自由に演奏する曲」は、セラピストの指示が入りにくい子どもに使われます。自由に演奏することで、とにかく楽器に触れること、他の子どもと一緒の活動に慣れること、音楽のなかで活動する楽しさを味わうことなどを目指しています。Upload By 林真紀タイプ2では、曲の中で音を鳴らすタイミングを待つところがあります。これにより、機会を待つということや、自分の役割を果たすという体験をすることができるようになっています。タイプ3の「音が空白の部分で演奏する曲」は、「幸せなら手を叩こう」などのように、空白の部分で楽器を鳴らす、あるいは手を叩くような曲です。このような曲を使うと、当初は集中力が持たず、混乱していた子どもたちが、集中して取り組むようになったと言います。また、特定の空白で音を鳴らすまで「待つ」ことや、「周囲に合わせる」というようなソーシャルスキルの獲得にもつながります。そして、最後のタイプ4は、セラピストの合図に応じて音を鳴らすことで、自分が果たす役割をより明確に実感できるような曲です。実際の現場では、子どもがセラピストの指示を受け入れられるか、複雑な指示を理解することができるかどうかなど、子どもの特性に応じて、1~4の曲を組み合わせていくそうです。また、能力差の大きい子どもが一緒の場に集まるグループセッションでは、個々の子どもの能力に合わせて、障害が重い子どもには 1 のスタイルで演奏してもらい、指示が通る子どもには3や4のやり方で演奏してもらうなど、役割分担をすることで、全員が集中できる活動にしていくと言います。Upload By 林真紀Upload By 林真紀会場では、実際に上の4つのパターンの曲を使い、ピアノに合わせて自由に演奏するパターンから、先生の指示する場所で楽器を鳴らすパターン、交互に演奏する役割分担があるパターンなど、実際の発達障害のある子ども向けのセッションを体験させてもらうことができました。Upload By 林真紀Upload By 林真紀4. 教育現場での音楽療法の取り組み出典 : また、ある公立小学校で音楽療法を取り入れ、効果が目に見える形で現れたケースもあります。公立小学校の教育課程で音楽療法のセッションを取り入れることは難しいため、あくまで 「音楽療法の視点と技術」授業を行った例です。 この取り組みを行ったのは、音楽療法士の資格を持った小学校の音楽の先生です。この先生は、公立小学校の通常学級と特別支援学級の両方で、音楽療法の視点と技術を取り入れた授業を実施しました。通常学級の授業では、暴力・暴言・立ち歩き等の問題行動が見られる児童が1人おり、この児童がいる学級において和太鼓などを使った音楽療法のセッションを20分間取り入れたそうです。その結果、この児童の問題行動が減ったと報告がなされていました。また、特別支援学級では、「自立支援活動」の時間に、歌唱、手遊び、簡単な合奏、リコーダー奏などを音楽療法の視点と技術を使って行ったところ、普段姿勢が悪く、授業中も机に寝そべるような態勢をしていた児童の姿勢が改善し、授業に対するモチベーションの向上が見られたと報告がなされていました。5日間の大会に参加して出典 : 日間の大会で、音楽療法を発達障害児の療育に活用している沢山の方々にお話しを聞くことができました。音楽療法は療育としてはまだまだ発展途上と言われていますが、まさにこれから注目されていく分野ではないかと思いました。大会の中で見ることのできた音楽療法のスライドや動画などをここで共有できないことが残念なほどです。初めは床に寝そべって自分の世界に入っていたり、セッションの部屋に入ることすらも拒んでいたり…そんな子どもたちが、回を追うごとに、音楽に合わせて音楽療法士やグループのお友達と協力できるようになる姿に、私は都度心を打たれました。かくいう私の7歳の息子も、自閉症スペクトラム・ADHDと診断を受けた3歳の時から、継続的に音楽療法のセッションを受けています。音楽療法について知らなかった時分は、「う~ん、なんだか怪しい…」と思っていたことは事実です。けれども、息子は音楽療法を受けて、確かに変わっていったと実感しています。息子が以前大嫌いだった「順番を待つ」「模倣をする」ということも、セッションを重ねることで難なくできるようになったのです。データやエビデンスベースで見ると、まだまだ研究は発展途上なところもありますが、現場ベースで見たときに、「確かに効果がある」と感じている人は多いようです。今後、音楽療法を用いた療育が日本で広がりを見せ、一人でも多くの子どもが、自分に適した支援を受けられるようになることを、願ってやみません。
2017年08月31日今の時代に求められるコミュニケーション力とは?アナログゲーム療育アドバイザーの松本太一です。私は、150種類以上のカードゲームやボードゲームを使ってコミュニケーション力を身につける「アナログゲーム療育」を開発し、発達障害のあるお子さんや大人の方を対象に実践しています。Upload By 松本太一アナログゲーム療育のコンセプトを一言でまとめれば、下のとおりになります。これまでの教育や療育は、大人が子どもに何かを教えたり命令する上下関係が基本となっていました。つまり「教える側と教わる側」、「命令する側とそれに従う側」という関係です。しかし、IT化やグローバル化が急速に進む現代社会では、多様な立場や価値観を持った人たちと対等な立場で関わる必要があります。そこで求められるコミュニケーション力とは、お互いの尊敬に基づいて、交渉したり合意形成できる力だと考えています。お子さんがこうした力を身につけるためにはどんな経験が必要なのでしょうか?ピアジェやヴィゴツキーといった著名な心理学者たちは、ルールを伴う集団遊びを通じた子ども同士の関わり合いの大切さを強調しています。しかし、発達障害のあるお子さんの場合、障害の特性として、相手の気持ちを察したり集団のルールを理解するのが難しいことがあります。そうしたお子さんが安心して楽しみながらコミュニケーションの練習ができるように開発されたのがアナログゲーム療育です。子ども同士のヨコの関係づくりが難しい出典 : 発達障害のある子たちのことで、今、1つ心配していることがあります。それは、親御さんや先生といった大人との関係は良いのに、同年代の子どもたちとの付き合いを避ける子が多いことです。過去に集団遊びで失敗した経験がもとで、他の子と遊ぶことに不安感を感じているのです。しかし、大人と関わる経験だけでなく、子ども同士の関わりを経験しないと、相手の気持ちや場の状況を「読む」力は中々身につきません。大人との関わりでは、子どもが少々無理なことを言っても大人のほうで合わせてくれます。しかし、子ども同士の関わりでは、相手の意にそぐわないことをすれば関係を絶たれてしまうかもしれませんし、集団のルールを守れなければ、仲間はずれにされてしまうかもしれません。裏を返せば子どもたちは、子ども同士の関わりを通じて、「相手はどうすれば喜んでくれるだろう?」、「この場では自分はどう振る舞うことが求められているのだろう?」といったふうに、相手の立場に立って考えたり、場の状況にあわせて動く練習をするのです。こうした経験が充分でないまま成人すると、社会に出て仕事などを通じて否応なしに人間関係を結んだとき、「相手の気持ちがわからない」「空気がよめない」といったコミュニケーション上の困難が表れやすくなると、私は考えています。アナログゲームを通じて「対等な立場で関わる」経験を積む出典 : お子さんたちに対等な立場で関わりあう経験を積んでもらうのに、アナログゲームは最適なツールです。ゲームでは、全てのプレイヤーが対等の関係にあります。また、プレイヤーたちは勝敗や順位を競い合うライバル同士であるのと同時に、ルールやマナーを守り合ってゲームを成立させるパートナー同士でもあります。ルールを守り合って楽しく遊ぶ経験が、子ども同士で対等に関わる経験となり、ひいては今の社会で求められるコミュニケーション力を身につける練習となるのです。ただし、集団遊びに慣れていなかったり、不安を感じているお子さんには、適度な大人の手助けが必要です。私のウェブサイトでは療育で用いるゲームと大人の関わり方を解説しています。また発達ナビでもいくつかゲームを紹介していますので、参考にしてみてください。アナログゲーム療育のススメ(ゲーム紹介)実際にゲームを使ってどんな風に療育を進めていくのか、文章だけではイメージしにくい方もいらっしゃると思います。そこで、2017年7月に(株)ジャパンライムさんから発売したアナログゲーム療育のDVDから、幼児のお子さん向けの「マイファースト・ゲームフィッシング」、小学生向けの「ベストフレンドS」の映像をご紹介します。なお、DVDには上の2つを含め20近いゲームを紹介しており、その全てについてゲームのプレイ映像と指導ポイントの解説が含まれています。下記の販売サイトでお求めいただけます。(株)ジャパンライム販売ページ実際にゲームを体験してみよう!Upload By 松本太一また、実際にゲームを体験してみたい!という方のために、東京の高円寺にあるアナログゲームショップ「すごろくや」にて毎月一回、講座を開催しています。幼児編・学童編・大人編と年代別に分かれており、各回とも講義とゲーム体験交えてアナログゲーム療育を学ぶことができます。こちらもご興味があればぜひ参加してみてください。まずは一緒に遊んでみよう!アナログゲーム療育で使用するのは、どれも通常のおもちゃ屋さんなどで売られているものです。必要なものは全て箱に入っており、プレイの手順は説明書に書かれていますから、誰でも手軽に始めることができます。アナログゲーム療育にご興味を持たれた方は、これまでご紹介してきたゲームの中から、普段関わっているお子さんに合いそうなものを、まずは1つ購入して一緒にプレイしてみることをオススメします。お子さんと一緒にゲームをプレイする過程で、今まで見えなかったその子の思考や行動の特徴と、成長ぶりが見えてくることでしょう。それはお子さんのコミュニケーション力の向上にきっと役立つはずです。
2017年08月18日RDI(対人関係発達指導法)とは出典 : 「RDI(対人関係発達指導法)」とは、英語のRelationship Development Interventionの略で、自閉症児の社会的活動をサポートするための療育方法です。RDIの目的は、家族へのコンサルティングを通して、子どもが非言語コミュニケーションを活用した対人関係を構築することのサポートをすることです。非言語コミュニケーションとは態度や表情など、言葉以外を使ったコミュニケーションのことを言います。RDIは1996年、アメリカの臨床心理学博士スティーブン・E・ガットステインが自閉症スペクトラム障害の療育方法として提唱しました。それまでの自閉症スペクトラムの療育方法では治療対象になっていなかった、社会性に焦点を当てた療育方法です。さらに、RDIの特徴として以下の2点が挙げられます。・困難を抱える子どもだけではなく、その家族を療育の対象としていること・療育にインターネット上のラーニングシステムや、ビデオ通話を使ったりすることRDIのラーニングシステムは、アメリカ・ヒューストンにある「RDI Connections center」というRDIの公式機関が定めているものであり、自閉症ではない子どもとその家族の行動をモデルにしています。支援を受ける家族はRDI認定のコンサルタントのガイドに従って、段階的に実践を進めていきます。「RDI認定コンサルタント」とは、アメリカにあるConnections Centerで公式認定をされたコンサルタントのことを言います。公式認定を受けるためには、Connections Centerで研修を受けた後、スーパーバイズを受けながらの臨床試験を1~1.5年ほど行いながら実力をつける必要があります。研修から臨床までがすべて英語で行われること、アメリカでしか受けられないこともあり、日本にはRDI認定コンサルタントは2017年現在で7人しかいません。 Connections CenterRDIの対象となるのはどんな人たち?出典 : はもともと自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害のある人々の対人関係上の困難を解決するために開発されたプログラムですが、最近はADHDや学習障害など、様々な要因から対人関係に困難を抱えている人々にも実践されています。「自閉症ではない子どもの行動を模倣しながら成功体験を積んでいく」という方法は、脳の発達分野や発達度の影響を受けにくいため、年齢や診断名に関係なく効果的な療育方法だと言われています。RDIの具体的な療育方法出典 : という療育方法の基本的な考え方は、「子どもがコミュニケーションをとることが楽しいと思えるような関係性の築き方を、親に考えてもらう」という内容です。親子間の非言語コミュニケーションの量と質を上げるために、自閉症ではない親子をモデルにした行動モデルの模倣をします。この行動モデルは6段階に分けられており、レベルごとに目標となる行動が決められています。例えばレベル2では、ボールを投げ合うといった、簡単な順番のあるゲームをします。ゲームをしている間、家族はガイドされた通りの表情や態度で子どもに接します。子どもは家族の態度に影響されて、物事の順番を予想することや、パートナーと協調するために自分の行動を調整することを学ぶのです。こうして家族のガイドに沿った関わりに触れながら、自らも非言語コミュニケーションを使う経験を重ねることで、子どもたちはより高いレベルの行動目標をこなせるようになっていくのです。具体的な療育の流れは以下の通りです。1. 親がRDI認定コンサルタントとのデモンストレーションやインターネット上の学習システムを通して「子どもにどう接すればいいか」を勉強する。2. 親子は別の部屋に移動して、コンサルタントから指示された簡単な遊びを始める。その間、後に自分たちの行動を客観的に評価できるようにビデオ撮影を行う。コンサルタントは遠隔でその様子を観察している。3. 録画したビデオを見ながら行動評価をして、課題特定を行う。4. コンサルタントと一緒に親子の間での非言語コミュニケーションが十分であったかを評価し、課題となる行動領域を決める。RDIがもたらす効果とは...?出典 : で期待されている効果として、「子どもたちが人と経験を共有することに喜びを感じられるようになる」ことが挙げられます。具体的な行動に起こる変化としては以下の3点が挙げられます。・非言語コミュニケーションを使った柔軟な対応ができるようになる・自分と他者の個性を認め、尊重できるようになる・人間関係を継続させるために、自分から行動を起こせるようになる例えば、「人に話しかけたいときに、どのような表情で、どのようにアイコンタクトをとるのか」「みんなで遊ぶ時はどのように順番を守るのか」など、子どもたちが社会で生きていくために必要なスキルを学んでいきます。このように、対人関係に関する成功体験をつんでいくことによって、子どもたちの中に「人と関わることって楽しい!」という気持ちが芽生えてきます。その気持ちを育てることで、コミュニケーションを単に「必要なモノ・情報を手に入れるための手段」ではなく、「自分の人生をより豊かにするための手段」として捉えられるようになっていくのです。RDIが注目されている理由の一つに、その効果の高さが挙げられます。RDI公式サイトから見ることのできる資料によると、RDI指導を1年半受けた自閉症スペクトラムの子どもたちは、「ADOS(自閉症診断観察尺度)」という尺度を用いた測定で、15人中13人が自閉症の症状が軽減したと診断され、その中でも11人は自閉症の域から外れたという研究結果もあるそうです。® Introductory Workshop Going to the Heart of Autism with Relationship Development InterventionABA、TEACCHなど...他の療育方法とのちがいは?出典 : 発達障害療育には様々な方法が存在しています。現在主流となっている支援法としては、応用行動分析(ABA)とTEACCHなどが挙げられます。この章では、その2つの支援法とRDIとの違いについて説明します。◆応用行動分析(ABA)応用行動分析学、通称「ABA」(Applied Behavior Analysis)とは、発達障害児を対象とした療育の理論と実践の体系です。人間の行動を個人と環境の相互作用の枠組みの中で分析し、実社会の諸問題の解決に応用していくという考え方がベースになっています。◆TEACCHTEACCHとは、ASD(自閉症スペクトラム障害)の当事者とその家族を対象とした生涯支援プログラムのことで、ASDの人々の自立とQOL向上を目指す包括的な「支援の枠組み」を指します。「構造化された環境で認知発達を促す訓練をする」という考え方がベースになっています。ABA、RDIは実践の体系を表すのに対して、TEACCHは支援の枠組みを指す言葉なので、役割の面では一概に比較することはできません。ABAとRDIの違いは、支援対象と教える内容にあります。まず、ABAは子どもに対して、社会生活の行動における正解を与える方法のこと。一方RDIは、家族に対してコミュニケーションの取り方をガイドする方法のことです。ABAは本人と環境にある問題を分析・指導し、RDIは「どういったかかわり方をすれば、本人がコミュニケーションに対する意欲を引き出せるか」を親に対して指導します。どれか一つの正解をだすのでなく、症状や段階に応じて組み合わせることでより個別最適化された療育が可能になるといわれています。自閉症児のためのTEACCHハンドブックRDIを受けられる場所、必要な費用や期間は?出典 : 日本にいるコンサルタントは、Connections Centerのホームページから探すことができます。RDIに関する本も出ていますが、毎年アップデートされているシステムであるため、個人で学ぶよりも専門家と協力して行うことが推奨されています。RDIにかかる費用はコンサルタントによって変わりますが、大体1時間のコンサルティングで1万円ほどが相場です。RDIは他の療育方法と比べ効果が見えづらい療育方法で、2週間に1回程度のコンサルティングを行いながら、約1~2年で効果が見えてきます。療育にかかる費用や期間は、担当するコンサルタントによって変わることが現状です。療育を受けようと思っている家族は、複数のコンサルタントを比較検討してみてもよいでしょう。 Connections Centerより、日本におけるコンサルタント一覧ページまとめ出典 : とは、対人関係において困難を持つ子どもの、生活の質を向上させることを目的とした家族向けの療育プログラムです。RDI認定コンサルタントと協力して、子どもが価値を感じられるようなコミュニケーションの取り方を学んでいきます。RDIは自発的にコミュニケーション上の最適解を見つけていく過程を大事にしているため効果が出るには1~2年ほどの時間がかかりますが、診断名や年齢に関係なく療育を受けることができます。まだ日本ではあまり浸透していない療育方法ですが、子どもが社会活動に一歩踏み出すための身近な環境作りのために、家族同士の関わり方を見直す良いきっかけとなるのではないでしょうか。取材協力:白木孝二RDI®Program Certified Consultant認定臨床心理士
2017年05月25日言葉が遅い息子…まずは自治体の「ことばの教室」に通わせようかしら?3歳になっても言葉の発達が遅い長男。もしかしたら長男にはなにかあるのかもしれないと思い始めていた頃の話です。ただ悩むよりも、この子のために何が出来るのかを考えたほうがいいのかもしれない。そんな時に知ったのが、市などで行われている「ことばの教室」の存在でした。Upload By ぽんぽん専門家の方とお話しながら言葉を促してあげれば、きっと周りに追いつく。大丈夫。やってみよう!もうすぐ3歳児健診の日。そこで具体的に相談してみよう、そう思っていました。3歳児健診で、心理士の先生のアドバイスは意外なものでした思っていた通り健診で引っかかり、心理士との面談に移りました。健診で引っかかること自体は想定内で、特になんとも思いませんでした。「心理士からことばの教室を紹介してもらおう」と思っていたのです。ところが、心理士に言われたのは意外な一言。Upload By ぽんぽん「療育へ」ということばにショックを受ける問題は言葉ではなくコミュニケーション…健診で引っかかることも、言葉の遅れを指摘されることも覚悟していたはずなのに。ショックでした。Upload By ぽんぽんUpload By ぽんぽん長男の場合、私と離れてコミュニケーションを取ることの大切さを学んだ方がいいとの事でした。この時点で私は「ことばの教室を飛ばして、いきなり療育を勧められた」という印象だったので、すぐにはその事実を受け止められずにいました。実験室のような冷たいイメージだった"療育"。療育…と言われてもどんなことをするのか分からず「なにかの訓練を専門家と一緒に黙々とやるのかな…」というイメージがあるだけでした。Upload By ぽんぽん療育…長男に本当に必要なんだろうか…。行かないといけないんだろうか…。そんなことを思いながら、療育先を探し見学の申し込みをしました。しかし実際は…Upload By ぽんぽん不安を感じながらも覗いてみた療育の教室。私のイメージは、いい意味で裏切られました。子ども2人につき先生が1人つくというだけで、やっていること(朝の会から体操、遊びの時間、工作、音楽、運動など)は、普通の幼稚園や保育園とほとんど変わりありません。“実験室”だなんてもってのほか。明るく賑やかな雰囲気の療育、これなら長男も楽しめそう!Upload By ぽんぽんこうして私は長男を療育へ行かせることにしました。療育に通って8カ月。長男は毎回楽しそうに出発し、帰るのを惜しんで帰ってきています。言葉も増え、落ち着き、偏食も少しずつ改善されてきたのは、療育に通ったおかげだと思います。
2017年05月20日同じ「ADHD」の2人。でもその特徴は全然違っていて…Upload By モビゾウADHDの息子は集団療育に通っています。そこでの息子の相方は、同じADHDの診断がついた男の子です。ところが、2人の特性は全然違っていて、「本当にこの子たち同じ診断名で良いの?」と思うほどなのです。ADHDとはAttention Deficit Hyperactivity Disorder の略です。日本語では「注意欠如・多動性障害」となります。ところが、うちの息子はどちらかというと「多動性障害」の部分だけが強く出ています。たとえば、終始ワサワサと動き回り、おしゃべりも止まらず、相手の指示をジッと待つことが苦手です。それに対し、一緒にセッションを受けている相方の男の子は、どちらかというと「注意欠如」のほうが強く出ているように見えます。どうやら先生の呼びかけに対して注意を向けることが難しいようで、セッション中も終始先生から「○○くん、こっちを見てね」と声をかけてもらっています。はたから見たら、2人は対極的です。大騒ぎで落ち着きのないうちの息子と、静かなんだけどもなかなか先生の問いかけに反応をしない相方の子。最初は息子の落ち着きのなさがどうしても悪目立ちしていました。それを見た私は、相方の子は大人しく、手がかからない子なんだろうなと思ったりもしました。しかし、相方の男の子の親御さんに話を聞くと、違う悩みがあることがわかりました。注意欠如の特性が強い子は、ボーっとしていて車にひかれかけてしまったり、幼稚園の課題中も別のことをぼんやりと考えていて注意されてしまったりするそうなのです。同じADHDの子供を持つ親でも、こんなに悩みの種類が違うのかと実感した瞬間でした。正反対の2人を上手にまとめる、先生の「技」とはUpload By モビゾウ「ADHD」といっても、持っている特性によってこれだけ違うのです。こんな全く違った子どもたちをまとめる療育の先生たちの苦労は、察して余りあるものがあります!衝動性がなかなか抑えられないことに加えて、「1番こだわり」がある息子。そして、注意欠陥でどうしてもぼんやりしてしまう相方の男の子。この2人で一緒にセッションをやると、どうしても息子が優先されてしまうことになります。先生が「次はこれをやりましょう。」と言うと、息子は先生の指示を遮って「やるやるやるやる!!ぼくぼくぼく!」と飛んでいこうとします。かたや、相方の男の子はぼんやりとして外を眺めていて、先生の指示が入っていません。普通にやっていたら、なんでも息子がやることになってしまいます。しかし先生方は、息子の衝動性を抑えつつ、相方くんの注意も惹きつける離れ業でセッションを進めてくれます。療育の先生は、「やるやるやるやる!!!」と大騒ぎする息子に、オブザーバー(観察者)の役を与えます。「今回はあなたは相方くんの作業を見て、どんなところが素敵だったか、最後に先生に教える係だよ」と。発達障害の子どもというのは、「待ちなさい」「やめなさい」と言っても納得しないことがあります。そういう時はこのように、何かしらの役割を与えてみるとうまくいくこともあります。先生はこれを実践して、息子と相方くんを上手にハンドリングしてくれているようです。まさにプロにしか為せないセッションだと思います。このようにADHDや発達障害と一口で言っても、一人ひとりの特性は全く違います。私は息子と相方くんを絶妙のテクニックでコントロールする療育現場の先生を見ながら、教育現場での先生方の大変さに思いを馳せずにはいられませんでした。大切なのは、「発達障害」でひとくくりにしないこと。出典 : 息子と相方くんの、特性の全く違う「ADHDっ子」のちぐはぐな掛け合いを見ていて思ったことがあります。それは、「発達障害児」というくくりで子どもを見てはいけないということです。どの子も、何らかの困難を抱えている子どもではあります。けれども、「発達障害児はこういうもの」とくくってしまうことは決して出来ないのだと感じます。「ADHDという障害があるからこの支援をする」といった杓子定規にとらわれた考え方では、サポートとして不十分。この子はこの子。診断名にかかわらず、その子にとって必要な支援をすることが大切だということを忘れてはいけないと思いました。また、様々なタイプの発達障害児を支援していかなければならない現場の先生方の大変さにも思いを馳せるようになりました。両親の側からもできることとして、その子の特性をまとめたレポートを作ってお渡しするなどすれば、先生方もよりスムーズにサポートを行うことができるのではないかと思っています。
2017年04月06日療育センターを舞台にした演劇、「わたしの、領分」わたしの、領分療育センターを舞台に、発達障害がある子どもにかかわる「心理士」の視点で描く、演劇『わたしの、領分』。2年前の初演で好評を博し、このたび再演が決定しました(3/28~4/2 東京・下北沢/小劇場楽園)。LITALICO発達ナビでは、公演に先立って、演出の松澤くれはさんにインタビューを行いました。Upload By 平澤晴花(発達ナビ編集部)松澤 くれは(まつざわ くれは)脚本家・演出家。1986年、富山県生まれ。早稲田大学第一文学部演劇映像専修卒業。演劇ユニット<火遊び>代表。芥川賞作家・中村文則氏『掏摸[スリ]』の舞台化にはじまり、『殺人鬼フジコの衝動』『天帝のはしたなき果実』『くるぐる使い』など、人気小説の舞台版を手がける。オリジナル作品では「あなたとわたしが[We]に近づく物語」をテーマに、言葉で分かり合おうとしながらも分かり合えないことを受け入れる、人間の生き方を一貫して描く。現実のような生々しい会話劇で、観客の日常につながるラストシーンを目指している。大学院を卒業し、都内の療育センターに配属されたばかりの心理士・萩野は、発達障害児を中心に面談を行っている。「いつか治りますよね?」「うちの子を障害者にする気か!」 親たちは口々に言いながら、救いを求める眼差しを彼女へ向ける。認識の齟齬から生じる軋轢に悩みつつも、萩野は実直に、進むべき道を探してゆく。ある日。定期面談を終えたはずの青年が、センターにやってくる。勤務先での生活を嬉々として語る彼に、まとわりつく悪意の存在。青年が起こした傷害事件は社会を巻き込んだ「自閉症をめぐる問題」 へと発展し、偏見と差別が膨らみ続けるなか、萩野は一人「こころ」と対峙する。世界のあいまいさを許容して生きるための。はるかから、わたしの物語。療育センターの心理士が紡ぐストーリー誕生のきっかけ出典 : 編集部(以下、編):はじめまして。今回療育センターを舞台にしたお芝居『わたしの、領分』再演ということで、ぜひお話を伺えたらと思います。まずはじめに、このお芝居を作るそもそものきっかけは何だったのでしょう。松澤くれはさん(以下、松):もともと、僕の知り合いに療育センター勤めの心理士がいたんです。その人から現場サイドの悩みや葛藤を知る機会がありました。そのときはじめて「支援する側にも葛藤や悩みがある」ということを知りました。療育施設という場所には常々舞台として関心があったのですが、そこでの話というと、既存のものはどうしても親御さんや子ども当人からの視点で描かれがちで。療育施設には心理士さんもいます。知人の話を聞いて「心理士の視点から書きあげることで新しい作品がつくれるんじゃないか」と思ったのです。もともと僕は作品を創るときに「視点を変える」ということにこだわってきました。別な角度、いわゆるニッチな視点ですね。うちが手掛けた他の作品でも、例えばオリンピックを描く時、ドーピング商品を選手に売るバイヤー視点でつくるなど取り組んできました。視点を変えて紡ぎだすことによって、新しい問題提起が何かみえてくるのではないかとは常に考えて素材を選んでいます。今回の作品の着想もその範疇(はんちゅう)で生まれました。「当事者意識」の境界線は?発達障害の子どもとその周縁をどう描いてゆくのか出典 : 編:既存のイメージから視点を変えて芝居を紡ぎ出すということですが、今回、療育センターの職員と発達障害の子どもという題材の中で、どのようなテーマを持たれていたのでしょうか。松:「当事者意識」というものに対する興味関心です。「当事者」という言葉はよく使われますが、一体、どこからどこまでが当事者なんだろう、と。たとえば発達障害のある本人がいて、その親御さんまでが当事者なのか、それとも支援にかかわるすべての人もふくめるのか…。実際、劇中でも「あなたに足りないのは当事者意識だ」というシーンがあるんですが、じゃあ、あなたはどうなんですか?と、問い返すこともできる。何があれば「当事者だ」と言えるのか…心の持ち方なのか、血が繋がってることなのか、本当は誰も定義できないからこそ、難しいのだと思います。本人がどれだけ相手を思って行動しても、「いや、あなたは部外者だ」と言われてしまえばそれまで、何もできないというもどかしさがある。その、定めきれない「当事者意識」の境界線を作品で描くには、なるべく広く関係性を作るべきだと思ったんです。子どもと子どもの親がいて、民間のセラピスト、センターの人、ドクター、心理士の夫、などなど。自分は当事者なのか?と悩みながらも相手にかかわっていく、あるいは、この人は当事者ではないと相手に思いながらも頼っている、この状態やそんな関係性そのものを描きたいと思ったのです。編:なるほど…では、劇中の登場人物たちがその人なりの「当事者性」を追求していくような形で物語が進んでいくのでしょうか?松:いえ、自分が当事者と思っているか思ってないかは、バラバラに設定しています。それぞれのシーンで、観る人が「『当事者』というものを考えることに直面する」ように演出しています。たとえば、「息子を障害者にするつもりか!」「あなたに足りないのは当事者意識だ」といった台詞を聞いたときに、ハッとする人もいるかもしれないし、疑問を持つ人もいるかもしれない。観る人それぞれが考える余地を残して、シーンを描いています。編:「これが当事者だ」と答えを出すというより、当事者性そのものを”考える”ために劇がすすむようにしているということですね。松:そうですね。基本的に答えを出したり作り手のメッセージを出していくタイプの劇は作っていないんです。登場人物の悩みそのものを持ち込み、悩みと悩みがぶつかり葛藤がおきる、人間関係のうまくいかなさ、その場面をそのまま提示していこうと。その中で、互いに争わず、妥協ではない前向きな折り合いをつけるにはどうするか、今この瞬間の現実の悩みをどうするかを、描いていきたいと思っています。そもそも80分の劇で人間の悩みなんて簡単に解決できないとも思っていますしね。稽古中、セリフにつまづいて黙ってしまう役者を褒めます。その訳は…Upload By 平澤晴花(発達ナビ編集部)編:役者さんとは普段どのようなコミュニケーションをとりながら稽古をしているのですか?松:「嘘はつかないでほしい」と、まず最初に言っています。セリフがあるからって言わないでほしい、言えないのに言わないでほしいと言っています。セリフを覚えてないわけでなく、うまく出なかった。そんな時には立ち止まって、なぜ出なかったのかを考えてほしいと伝えています。なんでその演技ができないのかということを考えてほしいんです。とりあえずで無理やり話を進めないで、セリフを言うきっかけを探してほしいって言っています。ピンとこないセリフがあったら、じゃあ今どんな気持ちになっているのかを共有して前段階から演技を考えていきます。なるべくお互いにごまかさない、その代わり稽古なんだから失敗していきましょうと。そう伝えると、ホントにセリフ言わない人も出てくるんですよ。そこからは、この人物がセリフを言う動機はどこにあるのか、どれくらいのイメージを持ってやっているのか、お互いのイメージをすり合わせるようにして進めていきます。編:松澤さんが今のような演出スタイルをとることになったきっかけはなんですか?松:そうですね。人はそれぞれ違う、という意識がそうさせたかもしれません。自分と他者という違いに少しずつ気付いてきた時期があって。昔は男主人公でやっていましたが、一挙手一投足が気になりすぎてしまって、役者にも細かく指摘し過ぎてしまうんですね。だんだん、「このままじゃ駄目だ」と思うようになって、女主人公の芝居にチャレンジしたんです。そしたら、女性のしぐさに対してなかなか想像が及ばず、わからないことだらけだったんです。そこで気づいたんです。そもそも演出家も役者も、芝居に挑むバックボーンが違うし、みんなバラバラの意思や体を持っているのだということに。でもそれは、一緒に芝居を作っていく上では、実は大した問題ではないんですよね。大事なのは同じ目標を持って、ひとつのことに向かうこと。そこに至るまでに各々が違う役割を全うすればいいだけ。そこから今のような演出スタイルや、役者とのコミュニケーション方法が築かれていきました。編:人はみんなバラバラで、違った意思を持っている。当たり前のことなのに、人はつい自分の信念や、一般的な社会通念にとらわれてしまう…発達障害のある人の中には、そんな周囲からのプレッシャーに苦しんでいる人も少なくないと思います。演出家、役者、監修者、一人ひとりの「ちがい」を前提として芝居をつくりあげていくスタイルは、きっとこのテーマにぴったりの手法なのだと感じました。自分のフィルターは、視点が異なる他者との密なかかわりで、外していけるUpload By 平澤晴花(発達ナビ編集部)編:今回の作品の話に戻りますが、創作していくうえで、松澤さんの築いたスタイルはどう生かされましたか?役者さんにとっては、発達障害のことや心理士の仕事は未知の世界でしょうし、イメージしにくいところからのスタートだと思うのですが。松:初演の稽古の際、きっかけになったできごとがあります。くまさんがいて、うさぎさんがいて、箱にビー玉を入れるという、子どもへの発達検査のシーンでのことです。最初は、検査で子どもが間違えてしまったことで生じた、発達障害の可能性に対して、両親が失望するという台本にしていたのです。しかし、父親役の役者の意見からは「間違えてしまった子どものことは、僕には正常に見えた。子どもだから複雑な指示に従えないのは当たり前だと思います」といったのです。そこで活路が見えました。こうなるから、こうとこだわらず、なるべく自分のフィルターをはずして、バラバラにして組み立てていくようにしたんです。実際に演じる役者さん、監修をしてくれた心理士、自分と視点が異なる他者の視点を取り入れていくことで、リアリティが生まれていきました。そんななかで、たとえば観客席の最後列から聞くと声が聞き取れない役なども出てきました。登場人物のテンションもそれぞれ違うので、役ごとにバラツキをもたせたのです。普通のお芝居だと、なるべくはっきり、後ろまで声が通るようにしますよね。でも今回、それをやらなかった。あと、余談ですがうちは円陣も組みません。そしたら同じテンションになっちゃうから。それではリアリティを消してしまいます。そこまですると演出がバラバラに見えることもあるかもしれません。しかし、現実では同じテンションはありえないんです。揃えてしまうことではリアリティは生み出せないことになります。なるべく誰かのペースに巻き込まれないでと、役者には言ってます。ストーリーばかりを勝手に進めないようにと。正しいと思ってなくても言ってほしい。自信のなさでもいいので、なるべく決めつけずに進めてほしい。だから達成感がない芝居だと役者から言われることもあるんですけどね(笑)。伝わりにくい「生きにくさ」の正体。観客に「いたたまれない…」と思わせる、ぎりぎりの表現を生み出すには出典 : 編:テーマにかかげてある「生きにくさ」を身体表現と会話劇で繰り広げるのは大変だと思いますが、どういう点で苦労しましたか?松:一般的には芝居って筋書きが決まっているものなので、稽古すればできるようになるじゃないですか。出来不出来はともかく、とりあえずストーリーは追えると思うんですよ。でも、それだけでは安定してしまう。だからぎりぎりを攻めてほしいと、役者さんに伝え続けました。セリフをとちってほしいというわけではないんですが、ぎりぎりまで忘れているんだけどぽろっとセリフが出てくる、それぐらいの状態でいてほしいと。そこでリアリティがでてくるので。矛盾と戦い続けることで出来るようになっていくことですよね。稽古していることを稽古していないことのようにやること。100回練習したことをはじめてやるかのようにやる。「生きにくさ」とは、「うまくいかなさ」ですからね。たとえば、ここで突然御二方(発達ナビ編集部員)に怒られたとするじゃないですか。インタビュー受けなきゃよかったな、早く帰りたいなぁ、言ったこと間違ってたのかなという気持ちになって、ここにいにくくなると思うんです。「いたたまれなさ」です。そのあり様をそのまま舞台上に、その気持ちで立ってもらいたいと思っています。やっぱりお芝居って、自分の出番で自信を持って体を大きく動かしてセリフをバシッということができるほうが気持ちいいんですよ。自分も役者だったんでわかるんです。そっちのほうがある種の安心感があるというか。でも目指すのはそっちじゃない。ここ全然うまくいってない、相手との掛け合いがうまくいってない、っていうときほど「今日よかったですね」って僕は言いますし、逆に役者が「今日は調子いいぞ」と思っているときほど駄目で、「今日は予定調和でした」と言いますね。演劇によっていろいろなジャンルがあるので、秒単位で筋書きが決まってるようなものでこういうことをやるのは駄目ですが、「わたしの、領分」のようにありのままを見せるような芝居では、その人自身がちゃんと傷ついてその場にいたくないという気持ちになることが大切だと思ってます。心のどこかで本当に「ここにいたくない」と思うことが大事なんです。そういうところが身体表現の大事なところなんじゃないかと思います。いるとき、いなくちゃいけないときの境目を分けてふるまうことも大事です。いなくていいときはすぐ舞台上から去ることも大切ですね。編:戸惑うお客さんもいるんでしょうね。松:芝居に親しんできた人は斬新にみえるらしいですね。現代口語演劇の延長線でやってきているので、それに親しんでいる人は受け入れられると思います。アンケートで、「私がいつも観ている帝国劇場より声がでてない」とか(笑)、「結論がない、結論を出せ」といわれることもあります。もともとある価値観を変えることはなかなかむずかしいし、それこそ多様性を認めろというのも押しつけでありエゴでもあります。でもこういう人がいるんだということを知るというのはいいと思っています。登場人物にどこか自分と共通した変なところが見えてくるといいと思います。たとえば、作中に登場する心理士も変な人が多くて、ちょっとずれてるところを持っていることが多いように描きました。登場人物の荻野もシャーペンのカチカチする音がきらいで、年の離れたドクターにおもわず切れてしまうことがあったり。それをお客さんもみて「ここわかる」「ここわからない」と自分の中にもある変わったところと重ねながら観てもらえたらと考えています。相模原殺傷事件の匿名報道への憤り。少しずつ歩き続けようと、すぐ再演を決めたUpload By 平澤晴花(発達ナビ編集部)編:少し話を社会的な事象の時系列から掘り下げて、作品の真相に迫っていきたいと思います。2015年に初演があって、その後、相模原障害者施設殺傷事件がありました。そして今2017年に再演することになったわけですが、松澤さんの中であの事件は偶然の重なりといえますか?どう事件を咀嚼して再演するにいたったのでしょうか?松:誤解を恐れずに言うと…ついに起きたかと思ったんですね、相模原は。ヘイトスピーチや優生思想が最近増えており、それに賛同する人が増え一定の共感を得てしまい社会に浸透しつつあったところでこの事件が起きました。その中での匿名報道、やっぱりそうなったかと思いました。遺族に配慮した、と言って19名全員の被害者名を警察が伏せたというのがそのような社会になってしまっていることの表れで。伏せざるを得ないのが社会の在り方なんだなと思いました。19名全員の遺族が出さないでくれといったわけではないのに、とっさにそのような判断がくだってしまうという。そこには顔がないと思うんですよ。命を奪われて、そのあとに冥福を祈るというときに「個」をはく奪されてしまう。被害者たちは、19という数字になってしまう。まだそういう社会なんだ、平気でそういう判断を下して「悲惨な事件でしたね」という感想で終わってしまう。その近くにいた人だけが解決しないまま問題意識を持っている状態になってしまう。それで、すぐ再演を決めたんですが、再演を決めた後もすぐに批判されたんですよ。「あなたが芝居して何が変わるんですか?」「お金儲けしたいだけでしょ」と言われて。そこに当事者意識の違いを感じました。被害者じゃなければ語れないのであれば、何も変わらないと思うんですよ。結局見て見ぬ振りを続けていく、ひどい事件が起きたね、終わり、にするわけにはいかない。何よりああいう犯人を出さないようにするためにも、あまり議論が尽くされない中での匿名報道などにも待ったをかけるように働きかけていかないといけないんじゃないかと思ったんですよね。そこで再演に関してですが、まず相模原事件が起きたあとに設定を変えたんです。現実に起きた事件をないがしろにできないので、名前は出してないのですがその事件の後だとわかるようにしています。なので時系列は2016年にしました。あとは、ラストシーンを変えました。初演を見た人はびっくりするくらいの全く別物になると思います。まったく見え方が変わるはずです。タイトルも変えたんです。「わたしの、領分。」だったのを「。」をとったり。この違いからこの作品の意味がわかってもらえたらと思います。初演は、立ち止まることが大事、というイメージでしたが、再演は、少しずつでいいから歩き続けよう、というイメージにしています。これは初演から2年たって変わった心境と思ってもらえるといいかもしれません。編:これまでお話を聞いていて、松澤さんが手掛けるお芝居は、非日常の娯楽というよりは、むしろ日常の延長の中にある芝居というような印象を受けます…松:芝居のラストシーンがお客さんの日常につながっていってほしいんですね。家に帰った時にじわじわ効いてきてほしい。演劇は新しい視点をお客さんにあたえることができると思ってます。芝居をみて、「心理士っていう仕事があるんだ」くらいの感想でもいい。あるいは、街中で発達障害かもしれないなという人を見かけたら、見て見ぬふりではなく「あ、昨日のお芝居で…」と思い出してもらえるなら嬉しい、ほんの一歩でもいいので、今まで自分の中になかったものを受け入れるキャパシティが広がれば、と願います。日常忙しい親御さんにも、肩の力を抜いて楽しんでもらいたい出典 : 編:発達ナビは発達が気になるお子さんの保護者の方向けメディアです。何か直接伝えたいことはありますか?松:ここで今、取り立てて伝えたいことはないんですよね。というのも、この芝居は終わる物語ではないので、メッセージも答えもないありのままのものなので。親御さんたちは、ご自分やお子さんに引きつけて見られる部分もあるとは思いますが、一方でまた別のお話、別の人生であると、少し離れて肩の力をぬいてみてもらえたらと思います。こういう生き方もあるんだ、こういう人もいるんだ、というふうに感じ取ってもらえたらいいなと思ってます。編:普段育児に忙しくしている方々も、少し肩の荷をおろせる時間になるといいですね。松:そこまで言い切れるかどうかはわからないんですが、きっと日常で悩みやご負担も多いと思うので、普段なかなか自分のことにかまえずにいるなかで、演劇を純粋に物語として見てもらい楽しんでもらえたらと思います。心理士と親御さんの面談シーンを第三者として見るってのもあまりないと思うので。編:本当に楽しみな舞台ですね。本日はお話ありがとうございました!インターネットを通じて様々なプロジェクトへの活動サポート・寄付ができるクラウドファンディングのプラットフォーム「CAMPFIRE」にて、「わたしの、領分」の公演規模拡大、地方公演の実施に向けた資金を募るプロジェクトを実施中です!わたしの、領分クラウドファウンディングUpload By 平澤晴花(発達ナビ編集部)わたしの、領分松澤くれはプロデュース『わたしの、領分』2017年3月28日(火)~4月2日(日)@小劇場 楽園作・演出松澤くれは出演者善知鳥いお岡村いずみ江幡朋子尾﨑菜奈倉冨尚人今駒ちひろ野下真歩早山可奈子坂内陽向宮川智司柴田淳(ブラックエレベータ)室田渓人(劇団チャリT企画)濱田龍司(ペテカン)スタッフ舞台監督:吉倉優喜舞台美術:小林裕介音響:葉暮呉一郎照明:タカハシカオリ小道具:定塚由里香宣伝美術:イラスト…谷川千佳/デザイン…milieu design制作:森永たえこ協力:特定非営利活動法人アートシアター株式会社アイビー・ウィーウォーターブルー株式会社大沢事務所株式会社スチール・ウッド・ガーデン株式会社パワー・ライズ(有)No.9UTYリベルタ(五十音順)製作:「わたしの、領分」製作委員会公演日程2017年3月28日(火)~4月2日(日)タイムテーブル3/28(火)19:303/29(水)19:303/30(木) 15:0019:303/31(金)19:304/1 (土) 14:0018:004/2 (日) 13:0017:00※上演時間は約80分を予定しています。※受付開始・当日券販売は開演の40分前、開場は30分前からです。※開演10分前までにお越しいただけない場合、キャンセル扱いとなる場合がございます。チケット前売り4,000円 / 当日券4,300円(全席自由席・日時指定)お問い合わせpro.watashi@gmail.com050-5319-3493(森永)
2017年03月16日我が家で役に立ったお手軽療育グッズをご紹介!出典 : 私たち夫婦が娘に家庭内療育を始めたのは、2歳半で娘に自閉症の診断がおりた後、3歳になる直前ぐらいからです。このころは、少しずつですが言葉が出てきだしたころでした。その当時の私たちは、療育に使う教材といってもどのようなものがあり、それがどこで手に入るのか全然見当もつきませんでした。そこで療育の先生から手に入りやすいグッズや簡単に自作出来る教材を幾つか教えていただき、手探りで実践してみました。実際で我が家で使用した療育グッズを紹介します。ご褒美を与えるトークンを100円ショップの磁石で簡単手作りUpload By あいちゃんパパ私の記事にたびたび登場する100円ショップ。安い上にアイデアになる商品がたくさんあります。療育を始めた当時、娘の物の名前や属性が良く分かっておらず、まずは身の回りの物の名前を教える必要がありました。最初は課題ができるたびにご褒美を与えていました。しかし、慣れてくると徐々にご褒美を減らしていく必要があります。とはいえ子どもの療育に対するモチベーションは維持していかなくてはなりません。発達障害児の療育には、子どもが好ましい行動をするたびにご褒美としてトークンを与え、あらかじめ決めておいた数だけトークンを集めることができたらご褒美を与えるトークンエコノミー法がよく使われるのですが、我が家では画像のトークンを自作しました。鉄製の平べったい筆箱と磁石を5個買ってきて、課題が1つできるたびに磁石をくっつけさせ、5個付けるとご褒美を貰えるというものです。これを作ることで、磁石をくっつける楽しさやそれがたまっていく過程が分かり易いこともあり娘のモチベーションも落ちずにすみました。また他にも100円ショップのアイテムを療育グッズとして活用していました。例えばプラスチック製の緑・黄・赤色スプーンとフォークをそれぞれ3組買って来て、同色や同形でマッチングさせたりしました。絵を模倣させるための画用紙や、マッチングに使う色違いの製品、おもちゃの積み木など、100円ショップはアイデア次第で療育グッズの宝庫です。物の名前を覚えるのに大活躍!「くもんの生活図鑑カード」シリーズ出典 : 今でこそ、インターネットでなんでもそろう時代ですが、私たちの頃はまだそこまで普及していませんでした。なので、書店などで「くもん」から出ている「やさいくだものカード」「たべものカード」「のりものカード」(くもんの生活図鑑カード)などを購入し、療育に使いました。くだものやさいカード〈1集〉 (くもんの生活図鑑カード)このくもんのカードには、カード1枚に1つの絵がまるで写真のように本物そっくりに描かれています。我が家では物の名前付け、カテゴリー分けの練習などに使いました。・名前付け・・・りんごのカードを1枚机に置いて「りんごはどれ?」→指差しさせる、「これは何?」→「りんご」と答えさせる・物の区別・・・りんご、みかんのカードを置いて「りんごはどれ?」→どちらかを選ばせる・カテゴリー分け・・・車、船、飛行機、電車のカードを置いて、「空を飛ぶものは?」と言って飛行機を選ばせる。同様に「水の上に浮かぶもの」「線路の上を走るもの」「陸を走るもの」も。また、やさいくだものカードでは全てのカードを置いて「やさいとくだものに分けて」と言う。絵がリアルなせいか、このカードでの練習で娘は徐々に物の名前とその機能を理解していきました。教材はカードでなくても本でもよいのでは?と思われるかもしれません。しかし、本だと同じページに絵が複数載っていることがあり、子どもが集中できないかもしれません。カードだと、目的の絵だけを教えることができるので分かり易いと思います。新聞の折り込みチラシを使った療育グッズ出典 : 市販の物以外にも、お金をかけなくても身近にあるもので教材を作ることが出来るものがあります。それは新聞の折り込み広告のチラシを利用したものです。広告にはモデルさん(男の人、女の人、子供、お年寄り)などの写真が載っています。これらを切り抜いて、カテゴリー分けに使いました。目的はくもんの生活図鑑カードと重なりますが、こちらは無料で作ることができます。切り抜いた人物をいっしょに混ぜておき、「男の人はどれ?」「男の人と女の人に分けて」などと言って、たくさんある中から同じ仲間に分けさせたりします。同様に、果物や野菜、肉、その他の商品などの写真を利用してカテゴリー分けの練習を行いました。カテゴリー分けの練習に生活図鑑カードとチラシの両方を使うことは、自閉症児が苦手だととされる、本質的ではない違いを無視して「同じもの」として扱う「汎化」の練習にもなりました。親が子どもといっしょに、気軽に出来る療育を!出典 : お金をかけてもかけなくても、工夫次第で療育の教材は身近にあると思います。チラシに載ってる商品が分かるようになると、今度はそのチラシを持って実際にお店に一緒に行ってみるのもいいかもしれませんね。
2017年02月25日知的障害者向けの療育手帳、発達障害の私は取得できないの?出典 : 現在、発達障害者のためだけの独自の手帳制度はありません。発達障害者のための法律は、2005年にやっと「発達障害者支援法」が施行されました。ですが手帳制度は定められていません。そのため、知的障害者に発行される療育手帳か、精神障害者保健福祉手帳がその代わりになっているというのが実情です。少し、療育手帳と精神障害者保健福祉手帳の制度について調べてみました。療育手帳は、1960年に施行された「知的障害者福祉法」には記述がなかったのです。1973年9月に当時の厚生省が出した通知「療育手帳制度について」に基づいて、各都道府県知事(政令指定都市の長)が知的障害と判定した人に発行するようになりました。それ以前にも独自に療育手帳を発行していた自治体もあったそうですが、1973年までは国の法律に基づいた制度ではなかったのですね。精神障害者保健福祉手帳は、1995年(平成7年)に改正された精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)に基づいて、各都道府県知事(政令指定都市の長)が発行しています。私は、「発達障害で、実際にかなり生活や仕事で困難を感じているのになぜ療育手帳を取ることができないのか?」という疑問を抱いていました。療育手帳では受けられても、精神障害者保健福祉手帳では受けられないサービスもありますし(特に交通関係のサービスは療育手帳の方が手厚いです)。そして「それなら実際に取得のチャレンジをしてみよう」と決心したのです。大人になってから療育手帳を取るには、どんな手続きが必要?出典 : 大人になってから療育手帳を取るためには、まず市役所等の障害福祉課に申し込む必要があります。申し込んでからしばらくして日時を指定されて、市役所の職員から成育歴や現在の生活の状況などの聞き取りが 約1時間ありました。そして、「取れてB2(一番軽度)ですね。また都道府県の指定機関で検査を受けてもらうので、日時が決まったら連絡します」と言われました。役所での聞き取りから約1カ月後、都道府県の指定機関から連絡がありました。そのときに「子どもの頃のことを聞かせてほしいのでご両親に同行してもらってください」と言われました。父はもう亡くなっているので母にお願いしました。けっこうな歳なので申し訳なかったですが。しかも「そんな昔のこと覚えてない」って言われますし。けっこう不安な気持ちになりました。ちなみに親が高齢で足を運べない場合は、電話での聞き取りになるそうです。親がいない場合はどうなるんでしょうね…?検査を受けた結果は、手帳の取得は…出典 : 検査の流れは、午前中に2時間かけて私はWAIS-Ⅲを受け、その間に母は別の部屋でチェックシートに回答し、それを心理士さんが見ながら追加で質問をいろいろと受けるというものでした。WAIS-Ⅲは途中で休憩をはさみながらも2時間少々で終わりました。心理士さんはとても手慣れていて、検査のベテランという印象でしたね。お昼過ぎに母と合流し、20分間待って母と私を担当した心理士さんたちによる結果の見通しと所見の説明がありました。結果から言うと、「療育手帳の支給はできません」でした。理由はわたしのIQが100を超えていたこと、成育歴に特に問題もなく、大学に進学したことがトドメになったようです。療育手帳の審査ではふたつのことを見るそうです。1.検査でIQを計る2.成育歴で、18歳までに知的障害の状態であったかどうかどちらでもダメだったわけですね。心理士さんにズバリと聞いてみました。「私みたいな知的に問題のない発達障害の人が検査に来ることってよくあるんですか?」すると「はい、けっこう多いケースです。やはり手帳を取っていただくことはできませんが」と答えてくれました。この日も何組もの親子が検査を受けに来ていました。検査を受けに来る人はとても多く、忙しい状態が続いているそうです。WAIS-Ⅲの所見も簡単ではありましたが、説明してくれました。もう少し詳しい所見がきけるのかと思っていましたが、分析する時間もほとんどなかったでしょうし仕方がないのかなと感じました。最後に、精神障害者保健福祉手帳で受けられるサービスについての案内がありました。発達障害に関する啓発パンフレットも、親子に1セットずつくれました。WAIS-Ⅲの結果レポートは、頼めば切手代だけで自宅まで郵送してもらえました。私は医師に提出するためにお願いしました。判定基準は都道府県によって異なります出典 : 療育手帳の判定基準は都道府県によってかなり異なります。甥が発達障がいのため、療育手帳の交付申請をしたが、知能指数が基準の75より1高い76であるという理由で却下された。社会生活に適応できないのに、手帳が交付されないことに納得できない。知能指数が高い発達障がい者も療育手帳の交付を受けられるようにしてほしい。私が住む県では、知能指数が高い自閉症などの発達障がい者には、交付基準に該当しないとして交付されないが、他の県や政令市では交付されている例があると聞いた。療育手帳の交付に当たっては、全国の発達障がい者が平等に手帳の交付が受けられるよう、交付基準を統一してほしい。どこに住んでいるのかによって、判定基準が大きく異なるというのは制度として大きな問題があると思いました。必要な人が手帳を取れる世の中に出典 : 今回の経験で感じたのは、「発達障害の生きづらさはIQで測れるものではないのに、どうして『実生活でどれだけ困難を感じているか』ということを考慮してくれないのだろう」というむなしさでした。そして、療育手帳の基準の地域差が公的文書で問題になっているのに、事務的に振り分けられることの理不尽さを感じました。大人の発達障害は今までほとんど理解されることはありませんでした。少しずつ社会も変わろうとはしていますが、現実としては「努力してもできない」「なまけているのではない」ということも理解されず、SOSを出したくてもうまく福祉につながれない人が多いと思うのです。発達障害が社会的に認知されるためにも、そして発達障害のために生きづらい人が顔をあげてイキイキと生きていくためにも、手帳を必要とする人には公正にスムーズに手帳が手に入る世の中になってほしいと思います。そして、発達障害者のための手帳ができることを心より願っています。
2017年02月24日最近、モデルで俳優の栗原類さんが自ら発達障害の告白を行うなど、テレビや新聞、インターネットで、発達障害のことがよく取り上げられるようになった。そんな中、自分の子の発達に気になることがあり、「もしかして発達障害なのでは?」と不安に思ったり、すでに診断を受けたりして、この記事をクリックした人もいるのかもしれない。わが子が発達障害と診断された場合、親が、まずはじめることは療育だ。だが、ほとんどの親は、そもそも療育という言葉すら、その時になって初めて聞くことが多いのではないだろうか?そこで今回は、『療育なんかいらない!』の著者であり、独自の理論で放課後デイサービスを展開する「アイム」の佐藤典雅さんにインタビュー。発達障害をもっと理解するために必要なことを、経験談を交えて語ってくれた。佐藤典雅(さとう・のりまさ)さん川崎市で発達障害の子どもをサポートする放課後デイサービス「アインシュタイン放課後」「エジソン放課後」を運営している、(株)アイムの代表。自身の自閉症の息子さんの療育のために、息子さんが4歳の時に渡米して、ロサンゼルスで9年間過ごす。前職は、ヤフー・ジャパンのマーケティング、東京ガールズコレクションとキットソンのプロデューサーという異色の経歴の持ち主。福祉という範囲を超えた目線で、自身の息子さんの成長を見守りながら、発達障害児が社会で幸せに生きるための道を広げる挑戦をしている。著書: 『療育なんかいらない!』 (佐藤典雅・著/小学館 ¥1,296 税込)※放課後デイサービス(= 放課後デイ):6~18歳までの障害のある子どもが放課後や学校休業日に利用できる、就学時向けの福祉サービスのこと。■わが子が「発達障害」だと診断されたとき筆者の息子が自閉症スペクトラムと診断された時も、そうであった。療育の意味もよくわからないまま、「とにかく早期療育が大事」「ABA(応用行動分析学)が効果的」などと初めての情報に右往左往し、診断を受けたばかりの混乱の中、さまざまな焦りと戦いながら模索していた。そして、療育に通いはじめてからは「2歳から始めたんだから大丈夫」などという周囲の言葉に、療育に過剰な期待を持ってしまったり、療育での子どもの出来に一喜一憂してストレスを抱えてしまった苦い経験がある。だからこそ、『療育なんかいらない!』というタイトル本はとても目を引いた。しかも、著者の佐藤さんは、本場アメリカで息子さんの療育を9年間も受けてきた人だ。取材を申し込まずにはいられなかった。■「発達障害」を、ありのままを受け入れる場所を作ろう―― 佐藤さんは、自身の息子さんの自閉症の療育のために、家族でロサンゼルスに引っ越して、9年間も本格的な療育を受けています。それなのに、なぜ「療育なんかいらない」という考えに至ったのでしょうか?佐藤典雅さん(以下、佐藤さん): 息子のがっちゃんが3歳児検診で「自閉症傾向」と診断された時、僕は自閉症も療育もほとんど予備知識がありませんでした。そこで、調べていくうちに、ロサンゼルスがもっとも療育対策が進んでいるらしいということが分かったので、家族で引っ越すことに決めました。―― ロサンゼルスの療育はいかがでしたか?佐藤さん: 最初の頃は、しっかりした療育を受ければ、がっちゃんの問題行動が改善するのでは? と期待していたんだけど、がっちゃんの問題行動は一向になおらず(笑)。その様子を見て、療育とは問題行動を改善するものではないと気づいたのです。―― そこで、目標設定を変えることにしたんですね。佐藤さん: 療育によって問題行動が変わることを期待するのではなく、「わが子にとって適切な環境とは何か?」を考えるようになりました。そして、もし療育が発達障害を治すものでないならば、自身の放課後デイで療育を提供すべきではない、との結論に至りました。―― 放課後デイで療育を行うのは、もはや常識となっています。療育なしの放課後デイとは、かなり思い切った決断ですね。佐藤さん: 放課後デイを設立中、面談に訪れる高学年以上の子どもをもつ親から、「療育ではなく、この子の居場所を探しています」という言葉をよく聞くようになったのも後押しになりました。―― わが子の行動を改善する場所よりも、わが子が安心していられる居場所を求める親が多かった、ということでしょうか。佐藤さん: 子どもが小さいうちは、その子の実力や可能性が見えにくいから、親は療育に期待しがちです。さらに、今は「早期療育」の大切さが力説されているので、特に親は熱心に療育する傾向がある。―― お子さんの年齢が上がると、変わってきますか?佐藤さん: 子どもの年齢が上がるにつれて、だんだんとその子が持つ本来の力がみえてきます。そして、ある時、それは療育の問題ではない、ということに気づくのだと思います。―― 療育では解決しない部分がある、ということに気がつくと。佐藤さん: そうです。すると、次の段階として、その子のありのままを受け入れてもらえる環境が必要となる。そこで、「アイム」の放課後デイでは、発達障害のままを受け入れてくれる居場所を作ろうと思いました。そして、子どもたちが自分自身でいられる環境を、自分の感情を表現したり、引き出したりできるプログラムを用意しようと考えました。―― それでは、アメリカでの療育生活はどのような意味があったと思いますか? 佐藤さん: 一番意味があったのは、人との関りです。がっちゃんも療育で大好きなセラピストたちと時間を過ごすことを、とても楽しんでいました。そこで私は、「アイム」の放課後デイでは療育プログラムではなく、人との関わりを提供すべきだと思いました。だから、うちの採用基準は厳しいですよ(笑)。第一条件は、子どもたちから好かれるということ。どんなに人手不足でも、子どもたちと合わない人は採用しません!■療育はほどほどに。―― 私自身は息子の療育を経験して、やはり良かったと感じています。確かに、「とにかく療育でなんとかしなければ」とストレスを感じていた頃もありましたが、今では楽しい遊び場のひとつとして、そして日々の生活で困っていることなどを専門の先生に相談してアドバイスを受けられる場として、とても心強いと感じています。佐藤さん: もちろん、僕も療育のことを全否定しているわけではありません。ただ、今の療育は子どものためというより、親が納得するためにあるように感じてならないのです。療育に熱心なお母さんが一番よく言うのは、「後になって、あれをやればよかった」っていう後悔をしたくない、ということ。また、「早ければ早いほど良い」とか「どんなに遅くても4歳までに始めないと手遅れだ」などとせかされて、本来親を救うべき療育そのものが、逆に親を追い込み、療育に効果を求めるあまり、親も子どもも多大なストレスにさらされているように思えてならないのです。―― 確かに、「療育で子どもが良くなる」と過度な期待を寄せてしまうと、子どもが変わらない場合、まるで子どもと親の努力不足のように感じてしまいそうです。また、他人から「療育のおかげで成長した」などという話を聞くと、つい、わが子も療育さえ受ければ同じように伸びると思ってしまいがちですね。だけど、他の子が伸びたからといって、自分の子どもも同じようになるとは限らない。その子が持つ力も個性も障害の程度も、それぞれに違うから。佐藤さん: 僕は、人のキャパシティっていうのは子ども一人一人によって違い、療育を受ける受けないにかかわらず、それぞれの能力が伸びる器のサイズに左右されると思っています。つまり、どれだけ療育を施したところで、その効果はその子が持っている上限値を超えることはない、とういこと。―― どういうことでしょうか?佐藤さん: どんなにかけっこをがんばっても、全員がオリンピックに出られるほど早くはなれないでしょう? それと同じことです。親が、子どもが持っているキャパシティ以上の効果を療育に求めてしまうと、子どもにも親にも多大なストレスがかかってしまう。そして、本来大切なところ、「いかに人生を楽しく生きるか」ということに目がいかなくなってしまう危険がある。だから、僕は、療育はほどほどがいいと思っているんです。―― もし、佐藤さんがもう一度子育てするとしたら、もう療育はしないのでしょうか?佐藤さん: やってみて、はじめて「ああ、無理だった」ってことがわかったので、多分、何もしないのは難しいと思います。ただ、療育をするなら、2つ条件があります。―― 佐藤さんの経験から編み出した条件ですね。今悩んでいるお母さんたちにぜひお聞かせください。佐藤さん: まずひとつは、その子のストレスにならないこと。もうひとつは、家庭の金銭負担にならないこと。子どもが楽しく療育に通って、親も負担にならないならいいと思います。でも、子どもが泣いて嫌がったり、親が必死になってやるようなものじゃない。■「普通」って何だろう?―― 療育で、親は子どもの自閉行動や問題行動が良くなり、「普通」になることを期待しますよね。だけど、そもそも「普通」って何でしょうね?「私は、この子にどうなってほしいのだろうか?」そう考えると、答えに詰まってしまう時があります。 佐藤さん: 僕は、もし療育で自閉症を治したいという人がいるなら、「自閉症の何を治すんだ?」って聞きたい。―― 自閉症は治す、という種のものではないということですね。佐藤さん: それって、本人の認識、認知を変えちゃうってことですよ?「そもそも人を形成している人格って何ですか?」というレベルの話なんですよ。「何をもってあなたなんですか?」って、すごく難しい問いじゃない?放課後デイで発達障害の問題に取り組んでから、「人って何なんだろう?」ってよく考えるようになりました。発達障害ってものすごく難しいテーマだよね。佐藤さんのお話を聞いて、発達障害の子育てを描いたコミックエッセイ『母親やめてもいいですか』(山口かこ・文/文春文庫)に書かれていた、ジム・シンクレアという自閉症当事者によって書かれた詩のような一節を思い出した。自閉症は人を閉じ込める殻ではありません中に普通の子どもが隠れているわけではないのです自閉症は私が私であること、そのもの私という人格から切り離すことはできません出典: コミックエッセイ『母親やめてもいいですか』(山口かこ・文/文春文庫) 「子どもの力をできるだけ伸ばしてあげたい」―― そう思うのは、親として当然だ。ただ、「普通に近づけたい」とがんじがらめにならず、子どもをありのままに受け入れ、その子にとって居心地のいい場所を作ってあげることの大切さも、改めて思い知った。次回は、「発達障害の子育てで、療育よりも大切なことは?」を伺います。取材・文・撮影/まちとこ出版社
2017年02月10日療育センターとは?出典 : 療育センターとは、一般的に障害のある子どもに対して、それぞれに合った治療・教育を行う場所のことを言います。しかし療育センターの定義は法律や制度で定められていないため、明確な定義がなく、指し示す施設もさまざまです。そもそも療育とは、「治療」と「保育・教育」を合わせた言葉です。障害のあるお子さんが社会的に自立できるように、専門的な教育支援プログラムを通してトレーニングをしていきます。しかし療育と一口に言ってもさまざまなのは、一人ひとりに合うように「治療の方法」や「保育・教育の方法」に多くのスタイルがあるからです。そのため「××療育センター」「××総合療育センター」と名前がついている施設であっても、どのような支援を行っているのかやどんな機能を持った施設かは、施設によって異なります。また、いくつかの機能の施設を併設した複合施設であることもあります。お子さんに合った支援をしてくれる場所を見つけることが大切なのです。この記事では、療育センターの中でも多く見られる障害児通所支援・障害児入所支援にあてはまる施設について、ご紹介します。「療育センター」といっても機能と果たす役割はざまざまです出典 : 「療育センター」とひとことでいっても、実際は児童福祉法で定められる施設のどれかに当てはまる場合がほとんどです。児童福祉法は、障害のある子どもが住んでいる地域で療育や支援を受けやすくするために設けられました。2012年に改正された児童福祉法において、障害のある子どもに対する支援は、主に障害児通所支援と障害児入所支援があります。また「療育センター」の中には、いくつかの機能が同じ施設に集まっている場合もあります。以下に、児童福祉法における各施設の役割について詳しくまとめました。<障害児通所支援>・児童発達支援(児童発達支援センター・児童発達支援事業所)日常生活の自立支援や機能訓練、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場を提供するといった支援を行います。・医療型児童発達支援(医療型児童発達支援センター)児童発達支援の役割に加えて、医療を提供します。・放課後デイサービス6~18歳の就学児童(※場合によって20歳まで)が通います。授業の終了後や学校が休みの日に、生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進などを目的とした多様なプログラムを設けています。・保育所等訪問支援専門知識を持つ児童指導員や保育士、理学療法士などが、障害のある児童が通う保育園・幼稚園を訪問します。障害のある子どもや保育園・幼稚園のスタッフに対し、集団生活に適応するための支援や支援方法の指導を行います。<障害児入所支援>・福祉型障害児入所施設児童福祉法改正前の知的障害児施設支援、盲ろうあ児施設支援、肢体不自由児施設支援、重症心身障害児施設支援にあたります。主に対象とする障害以外の場合でも、その障害に応じた適切な支援を提供します。・医療型障害児入所施設福祉型障害児入所施設の機能に加え、医療を提供します。療育センターは、「医療型児童発達支援」や「医療型障害児入所施設」にあてはまる施設が一般的であり、加えて「児童発達支援」の通園クラスが設けられている場合も多いです。また「児童発達支援」のみなど「医療型」の機能を持たない施設や、放課後等デイサービスといった機能を併せ持つ施設もあります。この支援の施設だから良い、というわけではなく、お子さんに合った施設を見つけることが大切です。利用を検討している施設がどどの支援にあてはまるのか、どんな療育を行っているのかなど、あらかじめ知っておく必要があるでしょう。お住まいの地域の「療育センター」が実際はどの機能を持っているかは、各施設のホームページなどで確認してみてください。参考:障害児及び障害児支援の現状|厚生労働省療育センターを利用できる対象って?出典 : 療育センターを利用できる対象者は、実際は施設が児童福祉法で定められている各支援のどれに該当するかによって異なります。つまりどの支援を受けるかによって違いがあります。また児童福祉法にあてはまるサービスは、療育手帳や身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳を持っていない場合でも、受給者証を持っていれば利用できます。受給者証とは、児童福祉法に基づく支援・サービスを利用するために必要となる証明書です。受給者証をもらう流れやかかる費用などについては、記事の後半でご紹介します。医療型児童発達支援、医療型障害児入所施設を利用できる対象者は、以下の通りです。・医療型児童発達支援上肢、下肢又は体幹の機能の障害(肢体不自由)があり、理学療法等の機能訓練または医学的管理下での支援が必要と認められた、知的障害児(自閉症児)、肢体不自由児、重症心身障害児が対象です。・医療型障害児入所施設施設等に入所して、保護、日常生活の指導、自活に必要な知識技能の付与及び治療を行うことが必要と認められた子どもが対象です。また、療育センターにおいて、児童発達支援や放課後等デイサービスなどのサービスを利用する際の対象も、児童福祉法に基づきます。・児童発達支援身体に障害のある児童、知的障害のある児童又は精神に障害のある児童(発達障害児を含む)が対象です。具体的には乳幼児健診などで療育の必要があると認められた場合や、保育園や幼稚園に通っているが併せて障害の特性に合った専門的な療育・訓練が必要と認められた場合などがあります。・放課後等デイサービス身体に障害のある児童、知的障害のある児童又は精神に障害のある就学児童(発達障害児を含む)が対象です。ただし引き続きサービスを受けなければその福祉を損なう恐れがある場合は、満20歳に達するまで利用可能です。療育センターで受けられるサービスって?出典 : ◇診療診療部門では、小児科、児童精神科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、小児科などの外来診療を受けることができます。さらに医師による診察後、個別あるいは集団での療育が行われます。個別療育では、言語療法、作業療法、理学療法、心理指導などが行われます。医師の判断に基づき、子どもの発達評価がされ、一人ひとりにあった支援につなげます。一方で、集団の場合は親子遊びなども行われます。さらに個別療育指導の一環として、子どもの発達状態や療育方針などに関する相談活動や、保護者向けの療育講座などがあります。◇通園通園の場合は主にグループでの療育活動が行われます。子どもだけ通園する場合と親子通園があり、親子通園は親が参観する場合や親子で活動する場合などさまざまです。・子どもだけのグループ活動「ごっこ遊び」や「粘土遊び」といったテーマ遊び、「リズム運動」などのプログラムがあります。集団ならではのお互いの刺激や喜びを体験しながら、一人ひとりの発達を促すことが狙いです。・親子グループの活動「親子遊び」「親子体操」などがプログラムにあります。集団での活動を通して発達を促す他に、保護者が子どもの発達を促す関わり方を学ぶことができます。ダウン症など、障害が早くに分かっている場合には、早期からの日常的な発達促進の働きかけが有効であることから、親子グループの中で、発達を促す遊びや訓練を行います。さらに家庭生活の中でも、それを活用し継続して行い、発達を促していきます。・保護者のグループ活動親子通園において、子どもが療育の場やスタッフに慣れてきた段階で、並行して保護者のグループ活動も行われます。また子どものみの通園の場合でも、定期的に保護者のグループ活動を催すことがあります。集団活動での取り組みや個々の子ども発達確認、療育方針の確認などを療育スタッフから保護者に伝えるのみならず、保護者間のコミュニケーションを促し、共感しながら学び合うという役割があります。出典 : ◇診療小児科、神経科、リハビリテーション科、外科、歯科など各専門の医師が、入所している子どもの診療や外来診療を行っています。また入所する際には、リハビリテーションセンターや小児科の受診、ソーシャルワーカーとの面談などを必須としているところもあるようです。◇入所一人ひとりの身体機能の改善を目的に、理学療法や作業療法、言語療法など、お子さんの状態に応じたリハビリテーションを受けることができます。さらに、血液・心電図・脳波などの検査が受けられる、人工呼吸器などの医療機器が備わっている施設もあります。施設での生活はリハビリの時間のほか、発達のレベルに合わせたクラスでの活動、散歩の時間なども設けられています。日ごろの活動以外に、季節ごとに行事がある施設もあるようです。規則正しい集団生活と子ども同士の関わりによって、社会性を身につけることができます。さらに医療型障害児入所施設には、親子入所、社会的入所などの入所タイプが設けられている場合があります。それぞれ入所期間や目的が異なります。・親子入所短期間、保護者と子どもが一緒に入所します。対象児童は、障害児入所施設への入所対象である児童のうち、低年齢(おおむね2歳~6歳)であり、かつ、親とともに短期間入所させることにより療育効果が得られると認められる児童です。リハビリなど必要な療育を行い、あわせて、家庭に復帰した後においてもスムーズな療育ができるように、保護者に対して指導をしてくれます。・社会的入所家庭の事情により長期的な在宅生活が困難な場合や、家族の病気や出産などによって一定期間在宅が困難な場合に入所することを言います。◇地域療育支援重度の障害があるお子さんを持つご家庭に対し、必要な医療や訓練、指導といった療育相談をはじめとして経済問題や家族問題など、相談支援を行っています。また施設によっては、訪問による健康診断を行っている場合もあります。出典 : 療育センターの相談窓口では、生活、家庭、教育など総合的な援助を提供してくれるソーシャルワーカーに相談できます。就園・就学や福祉サービスについて、子育ての悩み、家庭環境のことなど幅広く相談できます。さらに療育センターの利用を検討している際でも、相談窓口を利用できます。療育センターの利用についてや療育方針などについて、聞いてみるとよいでしょう。日常における子どもの関わり方、障害の捉え方や対応の仕方、保育・教育の場の選択など、あらゆる相談に対応する場となっているのです。また療育センターにおいて、児童発達支援や放課後等デイサービスを利用する場合は、以下の関連記事を参考にしてみてください。療育センターを利用する流れ出典 : 乳幼児検診などに心身の障害あるいはその可能性が見つかった場合、保健センターにおいて、発達の見極めのための療育相談や経過観察が行われます。その後、障害や発達の遅れなどが明らかになったときに、専門病院の受診や療育センターの利用へと繋がっていきます。また、通常の保育所・幼稚園に通っている際に、障害や発達の遅れがだんだんと明らかになってくる場合もあります。このケースは、保育所や幼稚園の巡回心理・発達相談や、保健センター・保健所の療育相談などの利用後、専門医療機関や療育センターを利用するという流れになります。療育センターを利用する際の手続きは、児童福祉法における障害児通所支援と障害児入所支援で異なります。例えば、児童発達支援・医療型児童発達支援・放課後等デイサービスを利用する場合は障害児通所支援、医療型障害児入所施設を利用する場合は障害児通所支援の手続きになります。◇利用相談療育センターを利用する際は、はじめに利用相談をしましょう。療育センターでどのようなサービスを受けるかによって、相談窓口が異なります。・障害児通所支援障害児通所支援の相談窓口はお住まいの市区町村の福祉相談窓口・障害児相談支援事業所等となります。・障害児入所支援障害児入所支援の相談窓口はお住まいの地域の児童相談所となります。しかし障害児入所施設の利用に迷う場合は、まずはお住まいの市区町村の福祉相談窓口・障害児相談支援事業所などに相談するのがよいでしょう。◇施設見学・相談実際に利用したい療育センターに足を運び、施設利用について相談してみましょう。施設によっては障害児施設利用計画案を作成してくれる場合があります。◇申請書等の提出療育センターを利用するためには、受給者証が必要です。受給者証には、児童発達支援や放課後等デイサービスといった通所支援を受けるために必要な通所受給者証と、施設に入所して支援を受ける入所支援を受けるための入所受給者証の2種類があります。受給者証取得のため、障害児通所・入所給付費支給の申請を行いましょう。必要な書類は、市区町村によって異なるため、事前に確認することが必要です。・障害児通所支援市区町村の福祉担当窓口にて、障害児通所給付費支給の申請を行います。・障害児入所支援お住まいの地域の児童相談所にて 障害児入所給付費支給の申請を行います。◇調査・審査支給の有無やサービス内容の決定のために聞き取り調査(ヒアリング)を受けましょう。障害の種類や程度をもとに、要件を満たしているかどうか、また子どもに必要だと考えられる適切なサービスの量や内容について検討されます。・障害児通所支援…市区町村の支給担当窓口によって検討されます。・障害児入所支援…児童相談所の担当者によって検討されます。◇受給者証の交付支給が決定したら、「通所受給者証」・「入所受給者証」が交付されます。・障害児通所支援「通所受給者証」が発行されます。・障害児入所支援福祉型と医療型は交付される受給者証が異なります。福祉型:「入所受給者証」医療型:「障害児施設医療受給者証」「入所受給者証」受給者証の取得方法や障害児施設給付制度などについて、さらに詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてみてください。出典 : 各施設によって、療育プラン検討の流れは少しずつ異なります。ここでは療育を受けるまでの流れの例をご紹介します。1.ソーシャルワーカーとの面談日常生活で困っていることがあれば、具体的に伝えるようにしましょう。2.医師による診察診断名を知りたいときは、ここで聞きましょう。総合病院の診療を紹介してもらうケースもあります。3.発達検査・知能検査実際の行動やコミュニケーションも観察して、発達の特性を見ます。お子さんの特性に基づいた関わり方の相談をすることもできます。4.療育方針の検討ソーシャルワーカーが幼稚園や保育園を巡回訪問し、日ごろのお子さんの様子を見てくれます。これまでの流れをもとに、療育プランが検討されます。療育センターの施設利用にかかる費用と減免措置出典 : 受給者証を取得することで国と自治体から利用料の9割が給付され、1割の自己負担でサービスが受けられます。障害児施設給付制度は、児童福祉法に基づき、障害児通所給付費あるいは障害児入所給付費として国と自治体から利用料の9割が給付されることにより、自己負担1割でサービスを受けることができる制度です。負担額は世帯の収入によって変わり、サービスが受けられる日数もこの受給者証に上限が記載されています。月ごとの利用者負担額には上限があり、その上限額を超えて自己負担をすることはありません。その上限額は前年度の所得によって4つの区分があります。・生活保護受給世帯・市町村民税非課税世帯: 0円・市町村民税課税世帯(前年度の年間所得がおおむね890万円以下の世帯): 通所施設、ホームヘルプ利用の場合4,600円、入所施設利用の場合9,300円・上記以外(前年度の年間所得がおおむね890万円以上の世帯): 37,200円出典:障害児の利用者負担|厚生労働省・多子軽減措置児童通所事業利用児童の未就学の兄・姉が、幼稚園等に通っている、もしくは児童通所支援を利用している場合、保護者が支払う利用者負担額が軽減されます。・その他の減免措置医療型入所施設を利用する場合は医療型や食費の減免があり、通所施設を利用する場合は食費の負担が軽減されます。さらに、自治体によっては独自の助成金がある場合もありますので、問い合わせてみるとよいでしょう。参考:多子軽減制度の対象範囲の拡大について|中野区まとめ出典 : 「療育センター」という名前がついている施設でも、役割はさまざまです。療育センターの利用を検討している際は、「児童福祉法のどの支援にあてはまる施設なのか」「その支援を受けるための対象・手続き・費用」などを把握することが大切です。また療育センターの相談窓口は、施設を検討している際も利用することができます。お子さんの発達に気になる点がある、あるいは子育てに悩みがあるときなど、気軽に相談してみてください。療育センターや関連する制度について正しく理解することで、さまざまな役割を持つ施設の中から、お子さんに合った療育をしてくれる場所を見つけられるでしょう。参考:米山 岳廣、鳥海 順子、宮川 三平/著「病児と障害児の保育―基礎と実際」2008年文化書房博文社/刊
2017年01月31日息子に療育を受けさせたい!しかし、立ちはだかったのは年齢の壁だった出典 : 皆さんは、お子さんがいくつのときに療育を始めましたか?早期療育という言葉も最近は耳にしますが、早期とは一体いつからを指すのでしょうか?わが子にいち早く療育を受けさせたかった私は、療育の施設探しに奮闘しました。今回はそのエピソードをご紹介いたします。息子は2歳で自閉症スペクトラムと診断を受けましたが、以前から気がかりなことがたくさんありました。衝動性があり声をかけるのですが、見向きもせずあっという間にどこかへ走っていきます。常に動き回る息子からは目が離せません。睡眠も不安定で、常に2, 3時間寝ては起きるを繰り返していました。息子と接するたびに何かが違う…と感じていました。そして、やっと取れた療育センターでの受診日。センターでは医師から、「自閉症スペクトラム障害」「ADHD(仮)」と診断を受けたのです。診断後に療育センターから伝えられたのは、・1対1の個別療育は行っていない・集団療育は行っているが、最低でも年少さんから・低年齢すぎると発達に個人差があり、似た特性を持つお子さんだけでグループを作ることが難しいこうした理由から「2歳では療育に参加できない」ということでした。施設を探しては電話をかけ、断られる日々出典 : 診断を受けたのに何もしないで待つなんて…私たち夫婦にはできませんでした。「療育センターがダメなら民間で探してみよう!」と、意識を変えました。とにかく少しでも早く療育を受けさせてあげたい。この一心で、我が家の療育機関探しがスタートしたのです。そんなとき、別の地域に住む友人から自治体によっては2歳からでも受け入れしている施設があると聞き、インターネットで探したり電話をかけたりしました。しかし、自治体が運営している施設の情報は、その自治区の住民でないと教えてもらえなかったのです。民間施設も探しましたが…私たちの居住区から近い場所にはありませんでした。また、区役所から事業所一覧表を貰う機会もありましたが、頂いた時点で掲載してある情報は2年前と古く、しかも電話番号と施設名しか載っていないため、1件ごとに電話をかける必要がありとても大変でした。電話をかけるたび、「え?2歳?2歳じゃちょっと…」というところや「居住区の方が優先です。」と早々に断られてしまうこともあったのです。受け入れてくれる施設をやっと見つけたけれど…出典 : やっと受け入れてくれそうな施設を見付けて見学に行っても、子どもへの接し方が厳しく「無理やり何かをさせる」「怒鳴って言い聞かせる」といった現場を目にしてしまうこともありました。ある事業所へ体験指導に参加したときのことです。息子は高い場所に上るのが好きで、その日もテーブルの上によじ登ろうとしました。その瞬間、先生が息子の目の前でテーブルを叩いたのです。その後、息子は委縮していました。また、衝動的にあちこち歩き回ろうとすると、手を強くつないで目的地まで引きずるようにして連れて行きました。「無理矢理で強引なやり方に見えるかもしれませんが、このタイプのお子さんにとって重要なのは、大人に従わせること。主導権は常に大人にあるのだとうえつけることが必要になります。」と、職員の方は説明していました。この方針を聞き、素人の親目線から感じた率直な気持ちは、「安心して息子を預けることができない事業所はやめよう」というものでした。やっと見つかった、息子に合った療育先出典 : その後も諦めず、インターネットで検索する日々が続きました。そんなとき、ある施設を見つけて電話したところ、「会ってお子さんの様子を見てみたい」とのこと。2歳になったばかりだと伝えると「2歳でも療育は開始することができるんですよ。衝動性があっても、お子さん側に寄り添った対応をしてあげることができます。」と言われ、安心したのを覚えています。やっと息子を安心して預けられる施設を見つけた!そう実感しました。安心して利用できる療育先を見つけるまでとても大変でしたが、諦めずに探し続け、本当に良かったと思っています。療育は子どものためだけじゃなかった!子育ての不安をそのままにする前に出典 : 療育を受けるようになってからというもの、・意思の疎通が以前よりできるように・興味に広がりがでてきた・目の前の人の話を、以前より聞けるようになったこのような変化が見られ、自宅で息子の対処に困ることが減ってきました。息子がこうして大きな成長を遂げたのは、療育での経験が大きいと思います。施設では、息子の行動や心理面を第三者の立場で分析してくれ、対策を一緒に考えてくれます。出典 : 一方で、パートナーや親族から早期に療育を受けることを、反対されてしまうケースもあるようです。それは、子どもがまだ2歳前後で小さい場合、行動や言葉の発達にもまだ個性が表れにくく、「もう少し様子を見よう…」と判断する方も多いからなのだと思います。また、「この子は他の子とちょっと違う…」そうした小さな違和感は、常に側にいる母親なら気付くかもしれませんが、普段あまり関わりの無い家族では、なかなか気付けずに「気のせいだよ」と一蹴されることも少なくありません。この場合、子どもと母親だけが取り残され、子どもは適切な支援が受けられず、母親も味方がおらず孤独に苦しむのではないでしょうか?でも、子どもや私たち親の笑顔が増えれば、家族みんなの暮らしが安定できるのではないかと思います。価値観の違う周囲の理解を得ることは簡単ではありませんが、子どものためにも親御さんの笑顔のためにも、不安な場合は相談だけでもしてみてはいかがでしょうか?
2017年01月22日夫婦ではじめたネット上の小さなお店余白の美しい洗練されたウェブサイトと、そこで取り扱う家庭に溶け込むおしゃれなデザインの商品の数々。いい意味で、これまでの「療育」のイメージとは一線を画すような療育グッズを取り扱う通販サイト「tobiraco(トビラコ)」が2016年12月にオープンしました。元子育て雑誌の編集者だった平野佳代子さんが夫婦で立ち上げたサービスです。Upload By 発達ナビニュース道具で発達を応援tobiraco(トビラコ)人の話を最後まで聴けない、自分だけしゃべり続ける、自分の気持ちをうまく表現できないといった課題のあるお子さんが、遊びながらコミュニケーションを学べる「きいて・はなしてはなして・きいてトーキングゲーム」という商品や、手先が不器用で服が上手くたためないお子さんのための「たたみ方れんしゅうボード」など、生活の中で使える療育グッズを取り扱っています。Upload By 発達ナビニュースきいて・はなしてはなして・きいてトーキングゲームUpload By 発達ナビニュースたたみ方れんしゅうボードこれらのアイテムは、発達に課題のある子どものために学校や塾、そして療育の先生が考案したものを、デザインを洗練して開発したもの。店主の平野さんが前職の子育て雑誌の編集時代に出会った教材たちを、もっと広く世に伝えていきたいという想いから生まれました。これらの道具にはそれぞれにストーリーがあり、開発に至った過程や具体的な使用方法がサイト上で丁寧に説明されています。Upload By 発達ナビニュース今回発達ナビ編集部は、2016年12月に産声をあげたばかりのトビラコを運営している平野さんにお話をお伺いしてきました。トビラコ平野さんにインタビュー―12月末にトビラコをオープンしたとのことですが、どういった反響がありましたか。とあるブロガーさんがトビラコを見つけ紹介してくれたおかげで、結構な数の注文につながりました。大変有難いです。また知り合いや知り合いの知り合いの方々から、暖かいサイトだね、とか、居心地のよい部屋にいる感じがするサイトだね、などといったお言葉を頂いています。―現在はどういった商品が特に売れていますか。一番売れているのは「きいて・はなしてはなして・きいてトーキングゲーム」ですね。その次に売れているのが『「すわりかた」と「もちかた」お手本マット』です。実際にサイトオープンをしてみて想定していた以上に注文があったのは「見る目をかえる自分をはげますかえるカード(専用ウォールポケット付)」でした。かえるカードは専用ウォールポケットにこだわって特注で作ったため、値段設定が高めなのですがよく売れています。 筑波大学附属大塚特別支援学校の安部先生と一緒に開発した自己肯定感をテーマにした商品なのですが、非常にニーズがあることが分かりました。きいて・はなしてはなして・きいてトーキングゲーム「すわりかた」と「もちかた」お手本マット見る目をかえる自分をはげますかえるカード(専用ウォールポケット付)―商品開発はどのようにして行われているのですか。旦那と2人で商品開発を行っています。さまざまな先生より原案は頂いており、ずっと付き合いがありトビラコのサイトデザインもお願いしたデザイナーさんに商品のデザインをお願いしています。これまで私は教育雑誌の編集の仕事をしていたため、このような商品開発は初めてでした。パッケージ化から配送の段取り、実用新案の登録など、商品を考えてからお客様の元に届けるまでは意外と大変で、また編集の仕事とは全然違う脳の筋肉を使うため、やってから分かることも多かったです。教育雑誌の編集をしていた頃からこのような商品化の構想はありました。実際に学校や現場で使用し、お子さんにとって効果があったという数々の素晴らしい教材と出会ってきましたが、どのアイテムもデザイン面はそこまで考慮されていませんでした。そこでトビラコでは、デザインやパッケージにこだわり、買う時や使う時にわくわくし、かわいい、おしゃれと感じられるような商品づくりを目指しています。Upload By 発達ナビニュース―トビラコの商品販売の場をウェブサイトとしたことには何か理由がありますか。ウェブでトビラコを始めようと思った理由のひとつに、読み物ページを充実させたいと思ったことがあります。以前編集に携わった雑誌で発達障害に関する増刊号を出した時に、たいへん大きな反響があったんですね。ああいった情報を提供出来るように、そして誰でも自由にアクセス出来るように、トビラコの店舗はウェブショップにしました。現在は商品開発と販売に注力していますが、落ち着いたら記事ももっと充実させていきたいと思っています。また商品の紹介に関しても、情報を充実させるようにしています。原案の先生たちも道具を作るに至るいろんな思いがあったり、実際に子供が使う現場を見て言いたいことがあったりするんですね。つくった人の思いを伝えていきたいと思っています。―では今後どういった情報発信をしていきたいとお考えですか。お母さんたちのかゆいところに手が届くような、そんな情報発信をしていきたいですね。不安を煽るのではなく、見通しが立ち安心出来るような情報を発信していきたいです。専門家の先生がよくおっしゃるのは、「大変な時期はあるから悩めばいい、最終的にはなんとかなるから」ということなんですね。行政や先輩ママ、専門家の先生などのお話をもとに、具体的な情報を発信していくつもりです。―トビラコというサービス名にはどういった意味が込められているのですか。「扉を開ける子供」というイメージを込めています。音の響きがいいこともありますし、自分で扉を開けて新しい世界に行ける子になれるように、という願いを込めていますね。―今後はどういった展開をしていく予定ですか。商品に関しては、まだ点数が少ないので開発を進めていきたいです。今年もいくつか新商品の発売を企画しています。そして、今後は商品販売だけでなく、読み物ページの充実や、少人数で集まってあたたかい気持ちになれるような、そんなイベントの開催もしていきたいですね。またトビラコの活動だけでなく、書籍の編集・構成も行っています。1月18日発売の書籍『使ってみたら「できる」が増えた発達障害の子のためのすごい道具』では、筑波大学附属大塚特別支援学校の安部先生に本を書いて頂きました。「できない」は道具を使うことで解決する、というコンセプトの元、支援グッズをカタログ形式で紹介しています。トビラコの商品や、またトビラコ以外の商品も多数掲載しています。支援グッズに携わっていると、道具が役立ったことから逆に困り感の存在に気づかされることもあります。例えば龍角散の商品で「らくらく服薬ゼリー」という商品があるのですが、味覚過敏があってお薬を飲むのが苦手なお子さんはこの服薬ゼリーでお薬が飲みやすくなるんですね。そのお話を龍角散の方にしたところ、初めて聞いたとのことでした。道具を知ってもらうことで、いろんな人に困り感に気付いてもらう、社会に対してアピールするチャンスになると思っています。発達障害の子は見た目で分からない分、理解されづらい部分も大きく苦しんでいるかと思います。支援グッズを作り、多くの人に知ってもらうことで、その子たちの困り感を解消していきたい、そして理解を広げることに繋がっていけばいいなと考えています。少しでも困り感が軽減されれば…店主平野さんの想いいかがでしたでしょうか。ひとつひとつのアイテムにストーリーがあり、慈しむように愛されてうまれたトビラコの商品の数々。生活の中で使え家庭に溶け込むおしゃれなデザインの療育グッズの中から、お子さんの困り感を軽減しお気に入りになるものがあれば何よりです。その他サイトには先輩ママのコラムなども掲載されていますので、一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。道具で発達を応援tobiraco(トビラコ)発達障害の子のための「すごい道具」: 使ってみたら、「できる」が増えたUpload By 発達ナビニュース
2017年01月18日産後ケアセンターは、産後の身体をゆっくり休めながら、ママとちゃんがリラックスして過ごせるように工夫されています。今回は、産後ケアセンターについての情報をご紹介します。産後ケアセンターって?産後ケアセンターは、出産後の育児支援を大きな目的として、ママと赤ちゃんが一緒に過ごせるように配慮されている宿泊型ケア施設です。基本的に全て個室となっており、リラックスした時間を過ごすことができるようになっており、パパや他のご家族も一緒に宿泊できるようになっています。産後ケアセンターでは、看護師や助産師が中心となってケアリストや心理士も在籍していて、24時間体制で産後のケアにあたってくれます。センターではさまざまなプログラムがあり、産後ママの回復を目的としたケアを行っています。例えば、骨盤ケアやヨガといった身体の歪みを調整するプログラムや、アロママッサージなどでリラックスしながら調子を整えることを目指す産後ケアがあります。産後ケアとはそもそも何なのか産後ケアと言われてもいまいちピンと来ない方もいらっしゃると思います。ここでは、ケア内容や目的、活動を紹介します。産後ケアシステムと継続ケア日本産後協会では、産後ケアシステムと呼ばれる独自のシステムがあります。これは、ケアの対象であるママを「母親」ではなく「ひとりの女性」として扱うことからスタートしています。産前と産後で、女性の心や身体には大きな負荷がかかると言われています。出産は女性にとって大きな人生の節目です。そんな不安定な時期だからこそ、寄り添って専門的な知識や経験を持って支えることでサポートするのが産後ケアシステムです。産後ケアリストとは産後ケアリストは、産後ケアセンターにおいてアドバイザーやサポーターといった立場からケアを行っている専門のケアリストです。産前産後のケアだけでなく、その後の子育てや育児に関する長期的なアドバイスも行います。実際に出産や育児をしたことがある方が資格を取得する場合が多く、経験を活かしてケアを行ってくれるため、産後ケアセンターにおいて欠かせない存在になっています。主に産後のママの身体の不調や育児に関する悩みなどの解決を行っていて、寝付きが悪い赤ちゃんや、育児生活に疲れて悩んでいる方のサポートも行っています。産後ケアセンターを利用するときに注意したいこと産後ケアセンターの利用を考えている方には、注意しておきたいポイントがいくつかあります。まず産後ケアセンターは保険適用外になるということ。サポート内容や各センターによって金額が異なることが多いので、事前に近くのセンターをチェックしておきましょう。人気が高く、予約が必要なセンターも多いので、妊娠中から下調べをしておくと良いでしょう。また、産後ケアセンターは宿泊以外でも利用できる施設も多く、デイサービスのような形で、子育てに不安がある場合や気になることがあれば通って利用することもできます。産後ケアも病院で行っていることがありますが、こうしたケアがない場合に利用するとよいでしょう。産後ケアセンターで賢くケア&育児!今回は産後ケアセンターについてご紹介しました。出産の後の産褥期と呼ばれる時期に利用しているママが殆どで、初めてのお産で不安な場合や、育児に自信がなく、誰かに相談して頑張りたいと考えているママに人気です。核家族化や高齢出産が増えている日本では、こうしたサービスを行っている施設の需要が増え続けており、全国的に施設数が増加傾向にあります。ママ一人で無理をし過ぎずに、こうしたサービスを利用するのも手です。
2016年11月28日この子に一体何が起きているの?出典 : 子どもの発達が気になったとき、そして「もしかして何か障害があるのではないか」と疑い始めたとき、みなさんはどんな心境だったでしょうか?我が子に障害があると考えたくないという保護者の方もいると思いますが、私は「必要なら早く子どもをサポートしてもらえる場所に繋がりたい…」という気持ちでいっぱいでした。私の住んでいる地域では、3歳にならないと発達障害の診断は出ないということでしたが、1歳半健診を受けた際に紹介された「療育センター」で相談に乗ってもらうことにしました。療育センターと聞いても、知識のなかった当時の私には、何をする所か全くわかっていませんでした。とにかく子どもの今の状態が知りたい一心だった私。うちの子は発達に問題があるの?他の子と何か違うの?そんな気持ちが渦巻きながら、療育センターの予約日までの数ヶ月を過ごしていました。待ち遠しかった療育センターでの相談。最初に面談したのはソーシャルワーカーさんだった出典 : 初めて療育センターを訪れた日、息子は2歳になっていました。最初に話を聞いてくれたのは、ソーシャルワーカーと呼ばれる人でした。「 医師と私たちを結ぶ、『何でも屋』と思って頂きたい。」そう言われたのを覚えています。あらかじめ書いてきて下さいと貰っていた問診票や生活記録表を渡しながら、私たち親子(夫、私、息子)とワーカーさんとの4人で和やかな4者面談を行いました。生活記録表には、生まれてからの成育歴を記しました。また、問診票には睡眠が乱れていることや、偏食、衝動性でどれほど苦労しているかなど、母親目線での育てにくさを記入しました。面談では問診票の確認のほか、夫から見た息子の様子も聞かれました。そのあいだ息子は、用意されていたオモチャや私が用意していたお気に入りグッズでその場を過ごしました。面談が終わると、ワーカーさんから「それでは医師の診察になりますね」と言われました。いよいよ始まった息子の診察。医師の分析、視点の違いに驚き!出典 : その後、医師の待つ別室へと息子と入室しました。部屋に入ると医師が1人、他にもう1人女性の保健師さんがいました。医師は初めに主人と私に笑顔で挨拶をした後に、「お子さんの様子を少し拝見しますね。簡単なテストのようなものもします。」と言い、1歳半健診でやるような型はめや絵本、クレヨンでお絵かきなどをしました。検査に使う道具や絵本、絵の描いてあるカードなどは、医師が指示を出すタイミングまで、白い布に覆われた棚の中に隠してありました。整理された環境…それはまさに、子どもが落ち着いて目の前のことに集中できるよう工夫された部屋でした。こうして、検査段階から既に療育への第一歩が始まっていたのです。その後、一通り息子の課題や検査が終わり、先生が言いました。「実はドアを開けた瞬間から息子さんがどこに注目するのかを見ていました。息子さんの場合は、真っ先に物に注目していましたね。通常というと語弊があるかもしれませんが、このくらいのお子さんであれば、入る時点で周囲を警戒する子がまぁ、一般的には多いんですよ。息子さんはそうですね…人ですね。人への関心が少ないお子さんではありますね」私は、先生のこの言葉に衝撃を受けました。なぜなら、これまでの子育ての中で私が気になっていたことは、落ち着きがないとか、偏食・不眠という「目に見えて気になるところ」だけだったからです。発達の遅れというのは行動だけではなく、目に見えないこと(感受性)にも注目するのですね。やっと子育ての相談ができる…身構える私。そして下された診断名は出典 : いよいよ、医師と私たち夫婦との面談です。特に私は身構えていました。「やっとこの子に起きていることがわかる…!」この日が来るまで、何度眠れない夜を過ごし、何度涙を流したか…。医師から告げられたのは、以下でした。●注意関心の向け方に偏りがある・人より物に関心がある●発達に凸凹がある・目で見て理解する力はある(視覚優位)・意図、意味、気持ちや状況、ルールや人との距離など、見えないものをイメージする力が弱い●コミュニケーションの困難さ・相手の意図を理解してコミュニケーションする力が弱い「この、3つの観点から総称して『自閉症スペクトラム障害』と言えます。そこに交わるカタチで、様々な障害が関わってきていたりもするのですが、お子さんの場合はADHDの傾向が既にあります。ただし、未就学児に対する診断は下せないことになっていますから、ADHD(仮)と思ってください。」医師は時おり穏やかに、でも強くきっぱりと言いました。「この子にはきっと何かある…」わかってはいた。でも現実を突き付けられたショックは大きくて出典 : うちの子は自閉症スペクトラム障害なんだ…。障害と名のつく診断を貰ってしまった…。その直後、しばらく呆然としたのを覚えています。そして、気付いた時に私は泣いていました。声もなく、ポロポロ涙が止まりませんでした。主人も冷静を装いながら、私の背中を一生懸命さすってくれていました。医師は更に続けました。「診断名というのは、あくまで名前です。総称のようなもの。これから先、診断名としては一生取れることはないかもしれないけれど、息子さんはまだ小さい。これからの関わり方次第で、とても伸びるお子さんだと思いますよ。賢いのね、彼。とても賢いわ。将来が楽しみ。だから、一緒に向き合っていくお力になれればと思います。」そう締めくくりました。支えになった夫の存在。そして始まったのは新しい未来だった出典 : 「診断名としては一生取れることはないかもしれないけれど」医師のこの言葉は、悪意からではなく「大丈夫。我々もサポートします。未来をみよう!」という気持ちからだったのだと思いますが、この時の私は、この言葉だけがずっと頭から離れませんでした。主人は、滅多に動じない人ですが、流石に悲しそうな表情でした。私が感情のまま泣いてしまったことで、それをどうにかしてあげなきゃ。家族を支えなきゃ。という気持ちでいっぱいだったようです。こうして私たち家族の、療育と向き合う日々が始まるのでした。その様子は次の記事で書きたいと思いますので、宜しければお付き合いください。
2016年11月14日やりたい放題の娘に不安を募らせる日々…この子に何ができるのだろう?出典 : 子どもが自由に遊び回る様子を見て「子どもらしい」と思う方もいるのかもしれません。しかし娘のその行動は、とても安心しながら見守れるものではありませんでした。当時2歳だった娘は、絵本は自分勝手にめくる、おもちゃは触ったとたんにすぐ飽きる、辺りを走り回るなど…やりたい放題。こちらの言うこともほとんど理解できない娘を前に、どのように接していいかのかが分からず、 途方に暮れていました。その頃でした。娘が自閉症と診断され、「療育は、子どもの成長を助ける」とわかった私は早速、娘に合う療育方法には何があるのだろう?と模索を始めました。見学に行った親の会。そこで見た、衝撃的な光景出典 : 当時、「積み木の会」という親の会に所属していた私。そこで過ごす子どもたちを見て、最初は戸惑いを隠せませんでした。なぜなら、どの子も落ち着いて遊んでいるからです。この子たち全員に、本当に障害の診断が出ているのか?と疑うほどの衝撃でした。娘のように、あちこち動き回って好き勝手する子は、そこにはいませんでした。そのことをスタッフに伝えると「療育は幼い頃から始めるほど効果を実感できます」「娘さんは必ず変わります」と言われました。また、療育の様子もイメージとは違いました。定型発達の子かと見間違うほどの子どもたち、さぞかし厳しい躾け方なのだろう、と私は思っていました。しかしそこでは、声を荒げる大人も、癇癪で泣き出す子もいません。そこではただ、大人も子どもも、みんなとても楽しそうに遊んでいるだけに見えました。自宅で療育をする、と決心!指示の理解が弱い娘に最初に試した「模倣」出典 : 積み木の会で見た光景は、当時信じられず、猜疑心も強かった私。しかし、娘のことをなんとかしたい一心だった私は、積み木の会でアドバイスをもらいながら、療育を始めてみようと決心しました。最初に取り組んだことは模倣でした。これは「見て真似る」仕草のことです。それまで、「コップとって」などの簡単な指示なら理解できた娘。それでも、言葉の理解はまだまだ弱かったので、見て指示を理解する模倣なら、娘にもできるのでは?と思いました。当時私には腰痛があり、病院で腰痛体操を教わっていたので、たまたま側で見ていた娘に「こうしてごらん」と体操をやって見せました。すると、私と一緒に同じ動きをする娘。「しめた、模倣ができるじゃないか!」と私は嬉しくなりました。本格的に始めた模倣の練習。その方法とコツ出典 : 娘に模倣ができるとわかり、さっそく先生から教えてもらったことを家で実践することにしました。方法はこうです。①「真似して」と言って(親が)何らかの動作をやって見せる②子どもが真似をする③すかさず、「真似できたね!、すごい上手!」などと言って褒める(お子さんに合った方法は、専門の先生のアドバイスに従ってください)私は、褒める必要性も知らなかったのですが、先生によると、褒めて親が嬉しくなると、子どもも嬉しくなり、さらにその行動が増えるのだそうです。同じ方法で、「手を挙げる」「膝をたたく」「積み木を積む」など、いろいろやってみました。模倣と言っても、手を叩くだけの簡単なものから、2工程以上(手を叩いた後に頭を触る、など)の記憶力を必要とするものまで、様々あります。最初からできないものもありましたが、毎日少しずつ根気よく続けていると、2、3ケ月でできるようになってきました。子どもが集中して取り組める工夫で、難しい取り組みにもチャレンジ出典 : しかし、単純な動作を繰り返す模倣は、味気なくて面白くないですね。療育の1つに遊びを取り入れる方法があります。遊びを取り入れる理由としては、単純に子どもが興味を持てるから。また、その子が1番楽しく取り組める遊びなら、合間に難しい模倣を取り入れても苦手意識を持ちにくい、という利点もあります。そこで、我が家でも遊びを取り入れることにしました。娘の好きな粘土遊びで「これできる?」といろいろな形を作らせてみたり、画用紙を半分に折り片方を親が簡単な絵を描いて、もう片方に同じ絵を描かせたり、ぽぽちゃん人形の洗濯セットで模擬洗濯したり…。こうして難しかった2工程の模倣も、遊びが加わったことで、時間はかかりましたができるようになりました。模倣から広がる、様々なスキルの獲得。さらなる自立を目指して出典 : 現在娘は小6、おじいちゃんから習字を教わっています。その他にも、1人で水泳やスキー、スケートができるようになりました。でも、初めからそうだったわけではありません。そもそも、ここまでいろいろなことができるようになるなんて、当時は想像もできませんでした。模倣は、教えるコツさえつかめば、いろいろな場面で応用が利くようになります。例えばスポーツ。家族で初めてスキーに行った時、模倣の要領で簡単に教えることができました。その他のスポーツも同様です。また、掃除、洗濯物をたたむ、食事の準備など、自立に役立つスキルを身につけてほしいときも、「見て真似る」スキルが身についていれば、スムーズに教えることができます。模倣ができるようになることで、子どもの成長も家族の生活の質も、向上していくのではないでしょうか。
2016年09月28日知的障害とは?出典 : 知的障害とは、発達期までに生じた知的機能障害により、認知能力の発達が全般的に遅れた水準にとどまっている状態を指します。単に物事を理解し考えるといった知的機能(IQ)の低下だけではなく、社会生活に関わる適応機能にも障害があることで、自立して生活していくことに困難が生じる状態です。知的障害は発達期の間に発症すると定義され、発達期以降に後天的な事故や認知症などの病気で知能が低下した場合は含みません。この発達期とはおおむね18歳までを指しますが、知的障害は障害の状態を指すため、障害が現れる道筋は人によってさまざまで、具体的な発現時期も人により異なります。知的障害は、知的機能および適応行動(概念的、社会的および実用的な適応スキルで表わされる)の双方の明らかな制約によって特徴づけられる能力障害である。この能力障害は、18歳までに生じる。(AAMR,2002)。(栗田広・渡辺勧持/訳『知的障害定義、分類および支援体系』2004年,日本知的障害福祉連盟/刊p17より引用)知的障害の原因は?出典 : 知的障害の原因は一つではありません。脳障害を引き起こす疾患や要因すべてが、知的障害の原因となりうると考えられています。また、知的障害を発症する道筋も一つではありません。原因不明の知的障害の人も多いとされていましたが、最近になって少しずつ原因解明の研究が進んでいます。2014年にも脳内タンパク質の遺伝子変異が知的障害の原因の一つとなるという研究が発表されました。知的障害の原因は十分には解明されていない状況ですが、主な要因は病理的要因・生理的要因・環境要因の3つの面から分類できると考えられています。病理的要因とは、病気や外傷など脳障害をきたす疾患のことで、これらの合併症として知的障害が一緒に起きることがあります。この中にはてんかんや脳性まひなどのほか、ダウン症などの染色体異常による疾病も含まれます。一方、特に疾病などがなくたまたま知能水準が知的障害の範囲内にあるといった場合、生理的要因と呼ばれます。環境要因は、直接の原因となるわけではありませんが、脳が発達する時期に不適切な環境であることで知的障害の症状が悪化したり、脳の発達が遅れる原因になったりすると言われています。中日新聞 「脳内タンパク質の遺伝子変異、知的障害の原因に」 2014年知的障害を引き起こす病理的要因としては、主に以下のような病気・けがが挙げられます。・感染症によるもの(胎児期の風疹や梅毒、生後の脳炎や高熱の後遺症など)・中毒症によるもの(胎児期の水銀中毒や生後の一酸化炭素中毒など)・外傷によるもの(事故や出産時の酸素不足など)・染色体異常によるもの(ダウン症候群など)・成長や栄養障害によるもの(代謝異常や栄養不良など)・その他(早産、未熟児、仮死など)病理的要因を考え、もしその要因が治療可能であれば、知的障害の程度を最小限に抑えることができるかもしれません。また、その要因が及ぼす影響を予防したり、支援の方向性を検討したりできます。出典 : 知的障害の原因はどのように発現するのでしょうか?出生前・周産期・出生後の3つの時期ごとにご説明します。この中には、まだ詳しい原因やメカニズムがわからないものもあれば、医学の進歩で一部原因が解明されたり、発症を防げるようになったものもあります。■胎児期胎児期に発現する遺伝子変異や染色体異常といった先天的な原因が知的障害を引き起こす場合があります。また、まれに知的障害の素因となる遺伝子が親から子へ伝わることもあります。フェニールケトン尿症などの先天性代謝異常やダウン症、脆弱X症候群(FXS)などが胎児期に発現する知的障害の素因としてよく知られています。ダウン症などの染色体異常が原因の場合、出生前検査などでその可能性がわかる場合もあります。また胎児期はお母さんのおなかの中で身体や脳などの器官がつくられる大切な時期です。この頃にお母さんを通じて感染症や薬物、アルコールなどの外的要因が胎児に影響したり、お母さんの代謝異常などで栄養不足になったりして脳の発育が妨げられ、知的障害を引き起こす原因となる可能性もあります。■周産期出産前後の事故などによって脳に障害が現れることがあります。母体の循環障害、へその緒がねじれるなどで赤ちゃんの脳に酸素がいかなかったり、出産時に頭蓋内出血が起こったりして脳に障害が残る場合があります。また低体重や早産などにより、脳が未発達のうちに生まれることも原因の一つとなる可能性があります。これらの出産前後のトラブルは周産期医療の進歩や充実によって少なくなってきています。■出生後脳が未発達なうちはけがや病気の影響を受けやく、乳幼児期の感染症や頭部の外傷などが原因になることがあります。日本脳炎や結核性髄膜炎、ポリオ、麻疹、百日咳などに感染し重篤化して脳炎になると知的障害を引き起こす場合がありますが、予防接種により感染の危険を減らすことができます。また乳幼児期に栄養不足だったり、不適切な養育環境に置かれることで脳の発達が遅れることもあります。フェニールケトン尿症は出生後すぐの新生児マススクリーニング検査の対象疾患となっており、そこで自動的に検査されます。疾患が見つかったらすぐに食事療法によって血液中のフェニルアラニンを一定の範囲にコントロールすることで、発症を予防することができます。参考:宮本信也・武田一則/編著『障害理解のための医学・生理学』(明石書店/2010年刊)浜渦辰二「ケア䛾臨床哲学 ー障がいとそ䛾ケアー (8)知的障害」 2013年知的障害って治療できるの?出典 : フェニールケトン尿症など一部の病理的要因は、食事療法や薬物投与といった治療法で発症を防げる場合があります。その他の知的障害については、今現在医学的治療法は確立されていません。障害を完治させることはできませんが、対応法を工夫したりすることによって、困難さを軽減し、子どものよい部分を伸ばしていくことは可能です。また、学齢期においては特別支援教育をはじめとする支援をうけることで、その子に合った学びの環境を整えることができます。成人後は就職支援なども受けることができます。知的障害のある方でも、このようにサポートの活用により職場を見つけ働いている方は大勢います。知的障害の治療・療育の判断基準は?いつから始めるべきなの?出典 : 知的障害の症状として、言葉を覚えるのが遅い・会話ができないなどの言語能力の遅れ、首すわりが遅い・洋服の着脱が異常に遅いなどの運動能力の遅れ、友達ができない・1人で遊ぶことが多いなどの社会性の発達の遅れなどが特徴的な要素として挙げられます。また、出産直後に身体的異常などが見受けられ、知的障害を発症するリスクが高いと診断されるケースもあり得ます。身体的異常であれば出生時に分かることも多いですが、ほとんどの場合は保育園や幼稚園、小学校に通い始めてから知的障害と気づくケースです。多くの方は言語能力の遅れに違和感を覚え、児童相談所や医療機関などへの相談・受診知的障害と診断されています。上記のような症状が見られる場合はまずは児童相談所などで相談してみることをおすすめします。知的障害はダウン症や自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害など様々な障害の合併症状として現れる場合も少なくありません。原因によって障害がわかるタイミングもかなり差があります。そのため、治療や療育を始める年齢や症状も、それぞれのケースで異なります。したがって、何歳からという基準はありませんが、症状や困りごとが見られた場合は専門機関に相談し、できるだけ早期に治療や療育を開始するのが望ましいと言えます。上でも述べましたが、知的障害を根本的に治す治療法はありません。そのため、治療を終える判断基準はありません。療育などについてはできる限り早い年齢で始めることで言語能力や運動能力、社会性が向上し、子どもがよりよい生活を送れる可能性が増えます。知的障害の治療法・療育法は?出典 : 療育とは、言語能力や身体能力の発達に遅れが見られる子どもに対し、自立して生活できるよう、専門的な教育支援プログラムに則って教育やトレーニングを行うものです。では知的障害に対してはどのような療育方法が効果的なのでしょうか?療育方法は施設や障害の程度によって異なりますが、遊びを通して他の子たちと交流し、言語や運動、社会性の発達を促すプログラムが一般的です。食事やトイレ、洋服の着脱などのトレーニングや、一人ひとりに合わせた教育も行なわれます。また、診療所を併設している施設も多く、症状によって診療を行なったり、検査を行なうことができます。知的障害に関する相談も行なっており、保護者が家庭内でどうすればいいのか学ぶペアレント・トレーニングやアドバイスを受けられる場合もあります。軽度の知的障害のある子どもの場合「他の子に比べてなぜ自分はできないのだろう」と自信を失い、精神的に不安定になる場合もあると思います。また保護者も子育てに不安を抱える方が多いです。療育やペアレント・トレーニングを受けることによって、対処法を身につけたり、同じ悩みを抱える親と交流できたりして、療育の時間が落ち着く・楽しいといった感想を持つ方もいらっしゃいます。そのため、早期療育は子どもにとっても親にとっても心の面で大切と言えるでしょう。知的障害の原因であるダウン症候群などに対して、現在様々な研究が進められている段階です。2013年、2014年にダウン症による知的能力を改善する初の治療薬を使った臨床試験が日本で開始されました。効能が認められるまでに時間がかかりますが、認められれば知的能力が改善できる可能性があると期待されています。しかしながら、知的障害の原因は様々で、解明されていないことが多い状態です。今現在、知的障害を根本的に治す薬はありません。【中外製薬】ダウン症候群治療薬、国内で治験開始|薬事日報中外製薬HPエーザイ、ダウン症治療で国内初の治験|日本経済新聞(2013/6/29)知的障害のある人が、周囲から適切なサポートを受けられなかった場合、知的障害の主症状とは異なる症状や状態を引き起こしてしまうことがあります。このような合併症状や状態を、一般的には「二次障害」と言います。例えば、知的障害のある子どもの場合、話の内容や指示を理解したり、自分で判断して行動することが苦手です。そのため、周りに馴染めず、友達ができなかったり、いじめにあってしまう場合もあります。そこから引きこもりや不登校、うつ病や不安障害になってしまう場合があります。また、理解できないことを隠そうと反抗的な態度を取り、非行に走ってしまうケースもあります。このような症状や状態が現れた場合には、それらに対する治療を行うことが必要となります。また、このような症状を引き起こさないためにも、知的障害の早期発見と、早期からの支援が重要です。うつ病に対しては抗うつ薬などの治療方法がありますが、まずは周りの人が知的障害であることを気づき、障害への理解と適切なサポートが大切です。接し方で大きく変わる!知的障害の子どもへの接し方のポイント出典 : 知的障害のある子どもは話や言葉を理解するのに時間がかかったり、記憶するのが苦手ですぐに忘れてしまう子どももいます。絵や文字を紙に書いて伝えることで理解しやすくなることがあります。また、ルールを書いた紙を目に付くところに貼ることで常に意識できるような状態を作ると効果的な場合があります。まねをするのが得意な子どもも多いので、その場合、実際にやって見せるとよいでしょう。これを、「モデリング」と言います。自分で判断して動くことも苦手な場合があるため、できるだけ曖昧な表現は避けて具体的な指示をすることも大切です。どういう手順にすると良いのか、どんなことが悪いかなど、わかりやすい言葉で簡潔にはっきりと伝えるようにしましょう。その際の伝え方は上記のように、手順を絵や文字にしたり、図表で説明します。悪いことは悪いと伝えるだけでなく、よいことはよいと褒めることも大切です。知的障害のある子どもはできないことが多いために叱られることも多くなってしまいます。ちょっとしたことでもよい面を見つけて褒めるようにし、子どもの長所を伸ばすよう心がけてみてください。できることをお願いして「ありがとう」とお礼を言うのもおすすめです。自分は何でできないんだろうと自信をなくす子どもも多くいます。自信をなくすと、うつ病や不登校などのいわゆる二次障害にも繋がってしまいます。好きなものはなにか、何が得意分野なのかを見つけたり、できることを増やすことで、子どもに自信をつけさせることも大切です。不安や心配でストレスを抱え、心に余裕がなくなる保護者の方もいらっしゃるかと思います。心に余裕がないと、子どもに接する時にもイライラしてしまって八つ当たりしてしまうこともあります。家族に協力してもらったり、周りに相談することで少しでもストレスを解消することも大切です。まずは「知的障害」をよく理解することから始めましょう出典 : 知的障害の原因は不明なことも多く、根本的な治療方法もありません。しかしながら、知的障害であることに気づき、子どもへの接し方を変えることで、うつ病やひきこもりなどの二次障害を予防することは可能です。うちの子は他の子に比べて言葉の発達が遅いな、周りと上手く遊ぶことができていないなと感じたら、まずは保健センターや子育て支援センターなどの専門機関に相談してみてください。早期発見・早期療育は子どもにとっても保護者にとっても心のケアに繋がります。同じ悩みを抱える親同士で相談したり、子どもが友達を作れる環境を整えることも大切です。子どもがよりよい生活ができるよう、知的障害と向き合っていきましょう。参考書籍:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院/刊参考書籍:栗田広・渡辺勧持/訳『知的障害定義、分類および支援体系』2004年,日本知的障害福祉連盟/刊参考書籍:有馬正高/監修『知的障害のことがよくわかる本』講談社/刊
2016年09月04日写真提供:高島屋広報・IR室日本を代表する老舗百貨店「高島屋」がメインで入居する大型ショッピングセンター「サイゴンセンター」が2016年7月30日(土)にホーチミンにオープンした。 ホーチミン初の百貨店×ショッピングセンターサイゴンセンターは、高島屋グループが手掛けた百貨店を核テナントとした、本格的ワンストップショッピングセンターで、約210ブランド擁する「ホーチミン髙島屋」と145店舗の専門店が入居している。一階の専門店ゾーンでは、「Carolina Herrera」や「Stuart Weitzman」「Dsquared2」などベトナム初進出、「MOSCHINO」や「KENZO」などホーチミン初進出となるハイファッションブランドの店舗を展開。百貨店ゾーンでは、ベトナムで人気の日本の化粧品をはじめとした、カウンセリング販売を行う化粧品売場や、ファッションブランドが入居し、日本の百貨店と同様の上質で洗練された空間が広がる。最上階、5階は「世界の食文化と新しいベトナムの食文化を発信するフロア」をテーマに、和食、中華、イタリアン、タイ料理をはじめ、世界の味が楽しめるレストランフロア。寿司やラーメン、お好み焼きなどを味わうことのできるフードコートも設けられている。地下二階では、日本の百貨店が誇る人気ゾーン「デパ地下」を展開。百貨店ゾーンでは、源吉兆庵、ROYCE’、ユーハイムといった日本のデパ地下でも人気の高いブランドが並ぶほか、ラーメンや甘味などのイートインコーナーも開設。専門店ゾーンには、ベトナムの高級スーパー「Annam Gourmet」もお目見えした。 最注目のロケーション!サイゴンセンターは、ホーチミン中心街のレロイ通りに面し、将来的に地下鉄4路線が乗り入れ市内最大のターミナルになるベンタイン総合駅(※現在工事中)に近い最注目のエリア。 尚、高島屋グループは、ASEAN 諸国を中心に海外での事業展開を進めていて、ホーチミンの出店は、シンガポール、中国(上海)に次ぐ3ヵ国目。2017年度にはタイの首都バンコクにも出店を予定している。
2016年08月05日©ASEAN-Japan Centreバンコクの巨大ショッピングセンターとしてガイドブックには必ず載っているマーブンクロンセンター、略してMBK!とても大きいので全部見て回るには一日がかりです。でも、多くの旅行者はスケジュールの都合上そこまで時間を割けないことがほとんどでは無いでしょうか?そこで今回は、短い時間でも効率的に回れるMBKの歩き方についてお伝えしたいと思います。 まずはフェアトレードの雑貨店「ロフティーバンブー」へ著者撮影まずは数あるMBK内のテナントのうち、私のイチオシのお店を紹介しましょう。2階にあるアジアン雑貨のお店「ロフティーバンブー」です。こちらの特徴は、商品を生産者の労働に見合った適正価格で販売するフェアトレードのお店であること。デザインも品質も、そこらの屋台のものとは一味も二味も違います。著者撮影それに何よりフェアトレード商品を購入することで、タイの生産者の方々に貢献できるのが素晴らしいですよね。ぜひMBKにお越しの際にはロフティーバンブーに寄ってみてください。MBK店の他にカオサン店、プロンポン店の3店舗があります。著者撮影ロフティーバンブーMBK店営業時間: 10:30 ~ 20:00TEL: +66 (0)2-611-7121HP: www.loftybamboo.com お土産探しは6階の雑貨と衣料品フロアで著者撮影巨大ショッピングセンターMBKは7階建てで、一つのフロアが非常に広いのが特徴です。フロアの構成を簡単に解説すると、次のとおりになります。1階ファッション、軽食、スーパーマーケット2階ファッション3階ファッション4階携帯電話5階家具、カメラ6階ファッション、土産物、フードコート7階映画館、ボーリング、レストラン広いMBKを効率的に回るためには、ある程度狙いを絞った方がいいでしょう。私のオススメは6階からスタートすること。リーズナブルな衣類に加えて、お土産としても重宝しそうな雑貨がわんさかあります。例えば、タイらしい柄のTシャツやパンツ。著者撮影ただし、写真右にある通称「タイパンツ」と呼ばれるパンツは、バンコクで着用すると「私は観光客です」と宣言しているようなものなので防犯上おすすめしません。 タイの伝統的なセラドン焼きなどの食器類著者撮影 トゥクトゥクをかたどった置物著者撮影 タイ式ボクシング、ムエタイのパンツやグローブ著者撮影などなど、色んなものがところ狭しと並んでおります。値札が付いていない場合はお店の人と値段交渉になります。勇気を出して値下げ交渉にもチャレンジしてみましょう。 4階のモバイルフロアでスマホケース探し著者撮影MBKの中で最も特徴的なフロアが4階のモバイル関連コーナーです。ぜひこのフロアも覗いてみてください。ここには、携帯本体の販売、修理、関連用品の販売まで携帯電話にまつわる全てが集まっています。ずらりとモバイル関連店が並ぶ様子は壮観です。もちろんスマホケースもたくさんありますので、この機会にお好みのケースを購入してみるのもいいかも。 タイの甘いお菓子とコーヒーで休憩著者撮影ここまで来ると大分お疲れになっている頃かと思います。そんな時は甘いモノを食べて糖分補給といきましょう!4階のエスカレーター付近にはこんなお菓子が売っていました。カノムブアンというお菓子(1個10バーツ:約29円)です。パリパリの皮の上に卵で作った甘いペーストが乗っています。甘い中にもちょっとした塩気があって美味しいですよ。著者撮影4階にはカフェもあるので、こちらでコーヒーを一杯、というのもよろしいかと。 ご飯を食べるなら巨大フードコートもあります著者撮影MBKでご飯を食べるなら6階のフードコートに行ってみましょう。タイ料理を始め、色んな料理が安価に食べられます。100バーツ(約290円)もあれば十分に楽しめますよ。 著者撮影タイのおやつ屋台はいつ見てもカラフルでワクワクしちゃいます。マンゴーともち米がセットになったデザート、カオニャオマムアンもこちらで食べられます。 以上、バンコクの巨大ショッピングセンターMBKの歩き方についてでした。デパートとも市場ともつかず、雑多でタイらしさ満点のMBKをぜひ体感してみてください。 ※日本円表示は1バーツ≒2.9円(2016年7月現在)で計算
2016年07月14日9月22日(木・祝)まで、東京都美術館にて「ポンピドゥー・センター傑作展―ピカソ、マティス、デュシャンからクリストまで―」が開催中だ。ポンピドゥー・センターは、フランスを代表する近現代美術の殿堂。世界屈指のコレクションより、今回ピカソの代表作「ミューズ」が初来日するほか、マティス、デュシャンなど、誰もが知る巨匠の傑作など、絵画、彫刻、写真、映像、デザインなど、多彩なジャンルから合わせて約70点が一堂に会する。展示内容は、20世紀に登場した様々な“イズム”など従来の枠組みにとらわれず、1906~1977年に時間軸を設定し、フランス20世紀美術を1年1作家1作品でたどる。展示デザインは、パリを拠点に活躍している気鋭の建築家・田根剛氏が手がけた独創的な空間。20世紀フランスの傑出した作品を巡りながら、アートな時間を過ごしてみては?(text:cinemacafe.net)
2016年06月17日IDCフロンティア(IDCF)とヤフーは3月25日、大規模データセンターである福岡県北九州市の「北九州データセンター」と、福島県白河市の「白河データセンター」にそれぞれ新棟を建設することを発表した。建設規模は「北九州データセンター」が1棟約610ラック規模、「白河データセンター」が1棟70ラック・全6棟で構成される計420ラック規模となり、工期は「北九州データセンター」が2016年2月から12月中旬の約11カ月、「白河データセンター」は同年4月末から10月末の約6カ月を予定している。「北九州データセンター」の新棟となる6号棟は、ヤフーとIDCFのクラウドサービスおよび外販での利用を予定しているという。同センターは西日本地域におけるクラウドサービスの提供拠点であり、外販のハウジングサービスなどにおいては東京・大阪に集中するシステムの地理的分散や電力供給会社の分散により事業の継続や災害対策に機能を発揮している。将来は最大11棟までの増設が可能であり、拡張余力をシステム選定の条件とした企業の大規模需要にも応えるとしている。空調方式は、1~5号棟では直接外気空調が取り入れられていたが、6号棟に関しては、水冷空調システムが導入される予定となっている。「白河データセンター」の新棟となる4号棟は、2016年3月に第1期分が竣工した3号棟に引き続きヤフー向けに増設され、増加を続けるデータの格納や、ヤフーが保有するマルチビッグデータを活用するための処理基盤強化が目的だとしている。
2016年03月25日国立がん研究センター(国がん)は1月8日、全国がん登録および院内がん登録を推進する「がん登録センター」を開設したと発表した。全国がん登録とは、日本でがんと診断されたすべての人のデータを、国で1つにまとめて集計・分析・管理する仕組みで、1月1日よりスタートしている。全国どこで診断を受けても、がんと診断された時点のがん情報が病院などから都道府県に届出され、国のデータベースで一元管理されるようになる。全ての病院などに届出義務が課せられ、都道府県をまたがった受診や転居による重複や漏れも伏せぐことができるため、今まで集計できていなかった正確な全国のがん罹患数を把握し、収集したデータを用いることで国や都道府県で効果的ながん対策の立案につながると考えられている。一方、院内がん登録ではがん診療連携拠点をはじめとする約1000病院で約90項目にわたる詳細な情報を収集し、より正確で詳細な施設別のデータが比較できるようになっている。全国がん登録で国・地域の状況がもれなく把握された結果が、がん対策に活かされ、院内がん登録で得られる病院ごとの状況が比較されて病院のがん診療が向上していくことが期待される。国がんが新設した「がん登録センター」では、全国がん登録において都道府県に提供されるがん情報を一元的に集約し、都道府県と国のがん対策の基盤として用いられるようにデータベースを整備、データの提供・分析を行う。また、院内がん登録についても、データの収集・分析と提供、院内がん登録実施医療機関の支援について機能強化を図る。いずれのがん登録も情報の収集には人材の育成と収集のルールや手順の標準化が不可欠であり、標準化作業においても国がんならびに同センターがリーダーシップを発揮し標準化事業を推進していくとしている。
2016年01月08日