新生児の頃から抱っこしないと寝られず、泣きっぱなしだった娘わが家の娘、しぇーちゃん(現在9歳)は2歳4ヶ月でASD(自閉スペクトラム症)と診断されました。娘は産院を退院したその日から、寝具に置いて1時間も寝ることができない子でした。生まれた瞬間から背中センサーが搭載されていたようで、ほぼ寝かせておくことができなかったのです。立って抱っこをして揺らしながら寝かしつけ、寝入るまで40分は泣き続けます。ようやく寝入ったと思い寝具に置くと、すぐに起きてしまうので、そうすると最初からまたやり直しです。怖くなって、私は娘を寝具に置けなくなっていました。幸い実家に帰省していたので、実母が抱っこを代わってくれることもありました。1人でお世話をしていたら、産後1週間足らずで産後うつになっていたかもしれないと思います。母乳もミルクも拒否!離乳食も食べてくれず、保健師さんに相談したけれどUpload By マミヤまた、娘は生まれてすぐから食欲がありませんでした。新生児の頃は哺乳力が弱く、母乳は拒否。ミルクにすれば飲んでくれるのかと思い、すぐに母乳からミルクに切り替えましたが、たった20cc飲むのに20分かかっていました。1歳児健診で離乳食を食べないことを保健師さんに相談したところ、卒乳を勧められました。アドバイス通りにやってみると、卒乳はすんなり終わりました。きっとミルクが好きではなかったのだと思います。しかし、卒乳しても離乳食を食べるようにはならず、悩む日々は続きました。普通食になっても偏食がひどく、食べられるものが限られていました。偏食や食の細さについては、9歳になった今も続く悩みです。歩き始めてから変化が!しかし、別の困り事が出てきて……Upload By マミヤ相変わらず寝るのが苦手で泣いてばかりいた娘ですが、1歳になる頃、自分で歩行できるようになってからは、寝る前に泣かないことが増えてきました。歩き疲れてコテンと寝てくれるようになったのです。私は「ならば公園デビューだ」と意気揚々とお出かけしました。しかし、娘は公園の手前のマンホールや砂利の場所で動かなくなってしまいました。なんとか公園へ連れて行けても次の課題が出てきました。娘は家に帰るとなると全力で泣いて嫌がるのです。今思えば切り替えの悪さからきていたのですが、毎回鮮魚のように暴れて泣く娘を脇に抱えて帰りました。「公園から帰りたくない」と言って嫌がり泣くのは5歳頃まで続きました。5歳になると大暴れすることはなくなり静かに泣くようになりましたが、同級生が素直に帰宅する中で娘の切り替えの悪さはピカイチでした……。しかも、その公園には週5回は行っているのにもかかわらずです。「生まれた時からイヤイヤ期」だった娘。9歳になった今振り返るとUpload By マミヤこうして娘のイヤイヤ期を考えてみると、「生まれた時からイヤイヤ期」がしっくりきます。きっと、とても苦手な感覚や、どうしようもなく我慢できないことがたくさんあって、それを赤ちゃんの頃から一生懸命伝えてくれていたのかもしれません。なので、成長するにつれて、徐々にイヤイヤが落ち着いていったのかなと思います。また、年中の終わり頃に切り替えの悪さで泣くことがなくなってから、育児がとても楽になりました。言葉が出てくる、信頼関係が成り立つ、コミュニケーションがきちんと成立する、交渉ができる……というスキルを得る度に、娘は泣いて怒ることはなくなりました。そう考えると、娘には育児書に書いてあるような普通のイヤイヤ期はきておらず、娘なりのペースで、情緒面の成長がすすんできたのだなと思います。執筆/マミヤ(監修:新美先生より)イヤイヤ期というと、一般的には2歳頃、自我が発達して自分がああしたい、こうしたいという意思が芽生えるも感情コントロールがまだ十分でない時期に出てきます。イヤイヤ期も個人差が大きいので、お子さんによっては時期や現れ方がまちまちで、目立たない方もいます。しぇーちゃんの場合は、イヤイヤ期というよりも、記事の最後にマミヤさんがとても分かりやすくまとめて下さったように、もともとの感覚の偏りやこだわりの強さ・許容幅の狭さから、「イヤ」と感じることが多かったのが、お子さんに適した環境整備や、見通し支援、お子さん自身の発達に伴い理解できること、伝えられる手段が増えて、適切にコミュニケーションが取れるようになり、泣いて怒らなくてもよくなったという過程ですね。これはマミヤさんや周囲の方々が、しぇーちゃんに合った関わりを十分していただいた経過だと思いました。生まれ持って泣かれることが頻繁で難易度の高い子育てといえるタイプだったかもしれませんが、適切な関わりをすることで、しぇーちゃんも健やかに成長し、「楽になった」と感じられるようになったのはすごいなぁと思いました。素敵なエピソードを聞かせていただきありがとうございました。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年02月16日手づかみ食べをしなかった離乳食期息子の離乳食開始は生後5ヶ月の頃でした。以前のコラムでも書きましたが、息子は産まれてからおもちゃなどを舐めたり口に入れたりすることが全くなかったので、ちゃんと食べてくれるか少し不安でした。しかし始めてみると、好き嫌いやアレルギーなどもなく、離乳食自体はとても順調に進みました。ドロドロ状の食事から少し形ある食事に進んだ頃、手づかみ食べしやすいように一口サイズにしてお皿に並べるようにしていました。しかし、息子は手がベタベタするのがとても苦手なようで、ほとんど手づかみをしてくれませんでした。おにぎりなどのご飯粒が手にくっつくととたんに不機嫌になり、手をブンブン振り回して米粒を部屋中に飛ばしてくれました(白目)。唯一手づかみで食べていたのは手が汚れない赤ちゃんせんべいだけでした(笑)。Upload By 海乃けだま手が汚れるのが嫌ならスプーンとフォークを使ってみよう!手がベタつくのが嫌で全く手づかみ食べが進まないので、「ならばスプーンとフォークを使ってもらおう!」と試してみましたが……握る力が弱い息子は自分で食べ物に刺したり、ごはんをすくったりすることはできませんでした。それどころか……スプーンなどに興味を示したり、ママの手を引き寄せて食べようとしたりすることすらなかったのです……。息子にスプーンを握らせて、その上から手を添えてお皿からすくって口へ運ぶなど、いろいろ試しましたが、全く上達せず……。試行錯誤をずーーーーーーっと続けた結果、私がフォークに食べ物を刺した状態で息子に渡して、なんとか自分で口に運べるようになったのは、息子が1歳半になった頃でした。娘の誕生、食事の時間が苦痛に……ようやく息子がスプーンやフォークを口に運べるようになって歓喜していた頃、娘が誕生しました。それまで息子につきっきりで1対1の食事ができていましたが、そうはいかなくなりました。第2子ということで育児の要領もつかめていたし、良く母乳を飲みよく寝てくれる娘だったので、かなり育児としては楽だったのですが、それでも息子の食事に常につきっきりでいることはできません。『娘を抱っこしながら息子の食事介助~寝不足の毎日を添えて~』の時間はだんだんとストレスになり、"早くこの時間を終わらせたい"という気持ちが勝り、スプーンを口に運ぶ動作がとてもゆっくりな息子を待っていられず、サッササッサと食べさせてしまっていました。娘の離乳食開始、2人揃って手づかみ食べ…。まさに毎食地獄絵図。そうしているうちに、今度は娘の離乳食を始める時期になりました。食に対して貪欲な娘は、9ヶ月になる頃にはママの手をグイグイと引っ張って食べていました(笑)。息子も2歳2ヶ月になり、手づかみなら自分で食べられるようになってきたので、2人揃って手づかみ食べをするように……テーブルの下、椅子、服、カーテン、壁……あらゆる場所が食べ物まみれになり、それはもう地獄絵図でした(白目)。Upload By 海乃けだまスプーンとフォークの練習を始めて……。その後娘が10ヶ月を過ぎた頃からスプーンを使いたがり、これが刺激になればと、息子もスプーンとフォークの練習を本格的に始めることにしました。……が、私一人では圧倒的に大人の手が足りない!!!両手両目を駆使して子どもたちの食事介助をしていましたが、心底千手観音様になりたい気分でした。Upload By 海乃けだま息子はスプーンとフォークを使い出したものの、思うようにいかないとすぐ手づかみ食べをしていました。そして食事が終わると案の定、テーブルの下は食べかすだらけでした。お箸デビューと、お友達の何気ないひとこと……3歳半で療育の単独通園に通い出した頃から、息子が嫌がらない程度に補助箸にもチャレンジしていましたが、しっかりと補助箸を使えるようになってきたのは4歳を過ぎた頃でした。6歳になった現在は、幼稚園では補助のついていない幼児箸で頑張って給食を食べています(箸でつまむのはまだ難しく、刺したり、かき込んだりしています)。家では断固として使ってくれず、基本はスプーンとフォーク、油断すると手づかみ、たまーーに補助箸の割合で食べています。さらに左手をお皿に添えることを常に忘れているので、「お皿持って!」と毎回声かけしています。先日、夫の趣味友達のご家族とお出かけした際に、みんなで食事をしたのですが……小学1年生のお子さんから「ひとでくんって本当に6歳?手で食べてるよ?」とごもっともなひとことを言われてしまいました(発達年齢は4歳前後と言われてるので、あながち間違いではない……)。4月から地元の小学校に入学する予定なのですが、勉強に限らず日常生活も不安だらけです(白目)。執筆/海乃けだま(監修:新美先生より)離乳食時期から就学前までの、食事にまつわるご苦労のエピソードを詳しく教えていただきありがとうございます。食事に関しては、お子さんによって、感覚の偏りや手先の器用さなどさまざまな特性が影響して、いろんな「育児書通りじゃない」が起き得ます。食育は子育ての基本と思っている保護者も多く、ここがうまく進まないと不安になりやすいかもしれません。こんなふうに、独特の反応をする子どももいるのだと、似た仲間を見つけるとほっとすることもあるので、こういった具体的なエピソードを聞かせてもらえるとうれしいですね。味覚の過敏さや、舌触りの敏感さ、慣れないものへの抵抗、嗅覚、触覚の問題などなどから、食べられないものが多いお子さんもいます。また食欲に鈍感だったり、食が細かったりでそもそも食べることが大変なお子さんもいます。そして、手先の不器用さ、触覚の過敏さ、多動、興味の偏り、こだわりなどから食事動作の自立に時間がかかるお子さんもいます。いろんなトラップがあってうまく行かないことはあるかもしれません。それでもそんな様子から、ご本人の特性を理解して、長い目で見てつき合っていくことが大事です。慌てなくても、食は一生続くので、無理をかけすぎず、お子さん自身が食べることを嫌にならないように見守っていただければと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年02月15日ASD(自閉スペクトラム症)とは?ASD(自閉スペクトラム症)は、・対人関係や社会的コミュニケーションの困難さ・特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さなどの特性がある発達障害の一つです。知的障害(知的発達症)を伴うこともあります。ASD(自閉スペクトラム症)は多くの遺伝的な要因が複雑に関与して起こる生まれつきの脳機能障害だと考えられています。しかし、はっきりとした原因はまだ分かっていません。5歳児時点でASD有病率は約3.22%ともいわれています。参考:斉藤まなぶ、廣田智也、坂本由唯、足立匡基、高橋芳雄、大里絢子、Young Shin Kim, Bennett Leventhal, Amy Shui,、加藤澄、中村和彦著「5歳児の全母集団サンプルにおける自閉症スペクトラム障害の有病率と累積発生率、および併発する神経発達障害のパターン」『分子的自閉症 11』 (2020)4歳頃は言葉の発達や社会面・精神面での発達が著しく伸びる時期であるため、その遅れに気づきやすい時期ともいえます。3歳児健診などで「様子見」と言われたり、園生活などで集団行動ができずに先生から指摘され詳しい検査を勧められ、受診して気づくこともあります。4歳頃の子どもに多くみられるASD(自閉スペクトラム症)の特性としては、・集団生活が苦手、友達と遊ぶことが苦手・強いこだわり・感覚の過敏さ・癇癪を起こしやすいなどがあげられます。詳しくは次章以降で紹介します。参考:自閉症Q&A|厚生労働省4歳児の発達の目安って?4歳頃になると、言葉や心の発達はもちろん、全身のバランスを取る能力も発達し、体の動きが巧みになっていきます。・自然など身近な環境に積極的に関わり、さまざまな物の特性を知り、それらとの関わり方や遊び方を体得していく・想像力が豊かになり、目的を持って行動し、つくったり、描いたり、試したりするようになる・自分の行動やその結果を予測して不安になるなどの葛藤も経験する・仲間とのつながりが強くなる中で、けんかも増えるが、一方で決まりごとの大切さに気づき、守ろうとするようになるこうした成長の中で、感情が豊かになり、身近な人の気持ちを察し、少しずつ自分の気持ちを抑えられたり、我慢ができるようになったりしていく時期です。参考:児童発達支援ガイドライン|厚生労働省もしかしてASD(自閉スペクトラム症)?幼稚園、保育園で気づいた違和感、こだわり。4歳児の検査、診断4歳児は、幼稚園でいうと年中の年にあたります。幼稚園や保育園などの集団生活の中で、発達の遅れや問題行動が気になってくる時期でもあります。ASD(自閉スペクトラム症)の特性や行動としては、第1章でも触れた発達の遅れ、集団生活(友達と遊ぶことなど)が苦手、こだわり、常同行動、感覚の過敏さ、癇癪などがあります。成長には個人差があるため一概にはいえませんが、園などの集団生活の中で起こりやすいトラブルや困りごととしては、・集団行動や友達と一緒に遊ぶことなどが苦手、指示が通りづらい・大きい音が苦手・粘土、砂場、裸足などが苦手・絵を描くことが苦手、運動が苦手など、不器用さが出てくる・偏食が強く、給食が食べられない・(言葉の遅れがある場合)友達や先生との意思疎通が難しくなるなどがあげられます。園へ行きしぶる・朝送って行ったときに(保護者と離れるとき)泣く、あるいは行事やみんなの前での発表を嫌がる(参加しにくい)など、癇癪を伴う激しい拒否反応が出るケースもあります。3歳児健診で「様子見」と言われた、あるいは4歳になって園の先生に発達の遅れなどを指摘され、検査を受けるかどうか考える保護者の方も多いでしょう。検査は、医師や(発達)心理士が行います。4歳頃に受ける検査は以下のようなものがあります。・問診保護者から、成育歴や「いつぐらいから」「どのような困りごとや症状があるか」などを対話形式で聞き取ります。明確に伝えるためにも、普段の様子をメモしておくといいかもしれません。・行動観察数十分程度、子どもとの対話や遊ぶ中で、どのような言動を取るのかを観察します。・発達(心理)、知能検査「田中ビネー知能検査V」や「新版K式発達検査」、「AQテスト」などが行われます。そのほかにも、ASD(自閉スペクトラム症)の診断で行われる検査は多くあります。専門外来のある小児科、脳神経小児科、児童精神科などで行われることが多いですが、診療できる医療機関は限られています。かかりつけ医や保健センターなどに相談してみるといいでしょう。参考:自閉症|文部科学省参考:ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について|e-ヘルスネット4歳児に表れることの多いASD(自閉スぺクトラム症)の特性をチェックUpload By 発達障害のキホン※発達や成長に加え症状や特性には、この時期大きな個人差があります。当てはまる反応や行動の数が多いからといって、すぐにASD(自閉スペクトラム症)と診断されるわけではありません。先生などに指摘されたら?受診の目安、療育への手続きについてASD(自閉スペクトラム症)の悩みについての相談先はたくさんあります。しかし、4歳頃になってくると、家庭生活、園生活、友達関係など悩みや困りごとが複雑化し、「どこに相談したらいいか分からない」「何をどう相談したらいいか分からない」というケースも多くあるようです。しかし、何か一つだけでも相談してみれば、そこから少しずつ糸口が見つかっていくかもしれません。・園の先生何人ものお子さんを見てきている先生であれば、「ここに相談してみては」などのアドバイスを受けられることもあります。また、先生とお子さんの状況を共有することで、日常生活の中での改善策を見つけやすくなることもあります。・子育て支援センター小さいお子さんを持つ保護者が交流を深める場ですが、育児不安などについての相談指導もおこなっており、電話相談も可能です。必要に応じて適切な機関の紹介を行います。・保健師・保健センター就学前のお子さんや高校生、成人に対する発達障害の相談も受けつけています。必要に応じて医療機関への紹介なども行います。・療育センター障害のある子どもの症状や特性に合った治療や支援を行う施設です。どのような支援を行っているのか、どのような機能を持った施設かは、施設によって異なります。上記のほかに、発達障害者支援センターなどもあります。4歳はまだまだ発達の個人差が大きい時期なので、お子さん一人ひとりにあった子育てのアドバイスをもらうようにしましょう。4歳でASD(自閉スペクトラム症)と診断された、あるいは様子見と言われているけれど、少しでも困りごとを減らしてあげたいと療育を考え始めている保護者も多いと思います。療育とは、「障害のある子どもに対してそれぞれの特性に応じた身体的・精神的機能の発達を促し、日常生活や社会生活を円滑に営めるように行うもの」です。4歳の場合は、「児童発達支援」で行う日常生活の自立のための療育や学習支援、運動プログラムなどが主になります。学習・訓練といったものではなく、その子の特性に合ったプログラムを、楽しみながら、子どもが興味のあるものを取り入れながらおこないます。自治体管轄などの公的機関、あるいは民間でも公費で提供しているところで「障害児通所支援」を利用して療育を受けるためには、まず「通所受給者証」(通称:受給者証)の取得が必要です。受給者証があれば、利用料金の助成を受けることができます(子どもが満3歳になって初めての4月1日から3年間の間は無償です。それ以前や学齢期以降は1割負担になります。家庭によって上限額が異なります)。療育の内容は施設によって異なります。短期間で身につくものではなく、じっくりスモールステップで、あるいは何度も同じようなシチュエーションを繰り返すことで、少しずつ社会性が身についたり、困りごとが少なくなっていきます。中長期にわたって通うことになるので、子どもの特性に合った療育が受けられるか、通うのに遠すぎないか、空きがあるかなどの情報リサーチも大切になってきます。参考:ともに歩む親たちのための家族支援ガイドブック|厚生労働省参考:小林 勝年, 儀間 裕貴, 北原 佶著「エビデンスに基づく療育・支援とは何か」『子どものこころと脳の発達』2020 年 11 巻 1 号 p. 3-10発達で少しでも気になることがあったら、一人で抱え込まず、まずは周りに相談をしましょう。少しずつでも子どもの日常生活の困りごとを減らしてあげることで、将来の見通しも立ちやすくなります。4歳児は他者との関わりが増え、身辺自立に向けての基礎がしっかりつくられていく時期です。早期介入・早期支援が大きなカギとなってきます。また、どの環境においてもできるだけ同じ支援をすることも重要です。園の先生をはじめ子どもと関わる人に子どもの状況や特性を伝え、共有することも大切です。(新美先生コメント)集団生活に入ると、家庭での様子とは異なるお子さんの姿が見えることもあり、保護者の方が気になってしまうことが増えるかもしれません。集団生活の中でストレスを受けやすいお子さんの場合、園での生活の仕方を調整していったほうが健やかに育めると思います。園での集団活動で困難さがある場合や、園では周囲に合わせているけれど過度にストレスが溜まって、行きしぶりや家での癇癪・こだわりが強まる場合なども、必要に応じて専門機関につながることで、お子さんの強みと困難さ、適した関わり方が見えてくることもあります。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年02月11日ASD(自閉スペクトラム症)とは?ASD(自閉スペクトラム症)とは・対人関係や社会的コミュニケーションの困難・特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さなどの特性が幼少期に現れる発達障害の一つです。知的障害を伴うこともあり、日常生活の中で困難を感じることも多くあります。ASD(自閉スペクトラム症)は、生まれつき脳内の情報処理の仕方に障害があるために発症すると考えられていますが、その原因はまだよく分かっていません。遺伝的要因をはじめとした、さまざまな要素が複雑に関与していると考えられていますが、発症するまでのメカニズムはいまだに不明とされています。3歳になると、保育園・幼稚園などで他者と過ごす時間も増えてくるため、人との関わりや集団生活の中で困難や問題などに気づくことも多くなってきます。3歳頃にみられるASD(自閉スペクトラム症)の特性としては・言葉の遅れ(コミュニケーションが苦手)・独特な興味や行動パターン・光や音、触れられることなどへの感覚過敏・急な予定変更などに対応できない(癇癪を起こすなど)・集団生活が苦手(じっとしていられない、先生の指示が通らないなど)などが挙げられます。詳しくは第3章で紹介しますが、3歳児健診において指摘・診断されるケースも増えます。参考:自閉症Q&A|厚生労働省3歳児の発達の目安って?定型発達児における、3歳児の発達の目安としては、・基本的な運動機能が伸び、それに伴い食事、排泄、衣類の着脱などもほぼ自立できるようになる・話し言葉の基礎ができて、盛んに質問するなど知的興味や関心が高まる・自我がよりはっきりしてくるとともに、友達との関わりが多くなる(実際には、同じ遊びをそれぞれが楽しんでいる平行遊びであることが多い)・大人の行動や日常生活において経験したことを「ごっこ遊び」に取り入れ、象徴機能(見立て)や観察力を発揮して、遊びの内容に発展性がみられるようになる・予想や意図、期待を持って行動できるようになるなどが挙げられ、情緒面・社会面でぐっと成長する時期ともいえます。参考:保育所保育指針解説書 |厚生労働省ASD(自閉スペクトラム症)と診断されるのは3歳児から?言葉が遅い、集団生活が苦手……違和感や気になるサイン園生活がスタートしている子どもも多いため、集団生活の中で・社会性(集団行動ができない、指示が聞けない、友達と遊べない)・感覚過敏(大きい音が苦手、砂場、裸足などが苦手)・常同行動(同じ行動を繰り返す)などのトラブルが起きやすい傾向にあります。また、家庭内の困り事として・こだわりが強く、気持ちの切り替えが苦手・感覚過敏、鈍麻、こだわりなどでトイレトレーニングが進まない・園への行き渋り・言葉の遅さあるいは言葉は出ているが、会話がスムーズにできない。聞かれたことに答えにくいなどといった場面がみられることが多いと言われています。3歳児健診では、「PARS-TR」「SDQ」などでASD(自閉スペクトラム症)のスクリーニングチェックを行う場合があります。「PARS-TR」はASD(自閉スペクトラム症)の傾向を知るための検査で、こだわり行動や遊びや言語の発達など、12項目について保護者から聞き取ります。0点・1点・2点の3段階で評定し、合計得点からASD傾向の強さを導き出し、今後の有効なフォローに繋げていくものです。「SDQ」は、行為面・多動性・情緒面・仲間関係・向社会性の5項目の質問から、子どもの適応と精神的健康の状態を包括的に把握するためのものです。そこからさらに詳しい検査が必要な場合は、問診や行動観察、「新版K式発達検査」「遠城寺式乳幼児分析的発達診断検査」などの発達検査、知能検査、場合によっては脳波検査などを行い、診断されます。参考:効果的な巡回相談支援のための基本と実践|厚生労働省3歳児に表れることの多いASD(自閉スペクトラム症)の特性による症状Upload By 発達障害のキホン※発達や成長に加え症状や特徴には、この時期大きな個人差があります。当てはまる反応や行動の数が多いからといって、すぐにASD(自閉スペクトラム症)と診断されるわけではありません。受診の目安や、療育への手続き、保護者ができることなど集団行動も増えるため、気になる言動が目立つ時期ともいえます。保護者や先生から見て、生活するうえでの困難さや気になる行動があった場合は、早めに相談・受診しましょう。市区町村の保健師・保健センターなどに相談してみましょう。また児童精神科、自治体や民間の子育て支援窓口、療育機関などでも相談は可能です。園に通い始める子どもも多いので、先生に園生活の様子やどこで相談できるかを聞いてみてもいいでしょう。3歳児健診時や集団生活が始まり、先生からの指摘や紹介で療育に通うことを考え始める保護者も多いのではないでしょうか。子どもの発達には個人差があるため、何歳で必ずこの特性が出る、というものではありませんが、早い段階で気づけばその子どもに合った療育を早期にスタートすることができます。療育とは、「障害のある子どもに対してそれぞれの特性に応じた身体的・精神的機能の発達を促し、日常生活や社会生活を円滑に営めるように行うもの」です。療育(発達支援)には、自治体などの管轄の公的機関で行うもののほかに、民間の施設などで行うものがあります。大学病院など一部の医療機関ではOT(作業療法)やST(言語療法)などを行っている場合もあります。自治体のほか、民間の施設の中にも公費で受けられる発達支援を提供しているところがあります。この支援は「通所受給者証」(※)を所持していると利用でき、利用料金の助成を受けることができます(基本的に1割負担となりますが、満3歳になって初めての4月1日から3年間は無償となります。また、家庭によって上限額が異なります)。療育では子どもにだけでなく、保護者にも日頃どのような対応や声掛けをすれば良いのかも教えてくれます。療育は子ども自身の生活QOLやスキルを上げるだけでなく、日常生活における親子で抱える困難やストレスを軽減することにも繋がります。※福祉サービス等を利用するために発行される証明書のこと。自治体に申請して、審査のうえ発行される。日数(支給量)や、月額の利用料の上限額(上限負担額)が記載されている。参考:小林 勝年, 儀間 裕貴, 北原 佶著「エビデンスに基づく療育・支援とは何か」『子どものこころと脳の発達』2020 年 11 巻 1 号 p. 3-10参考:共に歩む親たちのための家族支援ガイドブック|厚生労働省ASD(自閉スペクトラム症)にとって、早期発見、早期療育はとても重要です。社会面・情緒面で大きく伸びる3歳前後で早期介入・支援をスタートすると、社会的なスキルやコミュニケーション能力が向上する場合もあります。成長や発達に個人差はありますが、保護者だけでなく子どもに関わる人からの情報をもとに、相談や受診につなげることが大切です。(監修:新美先生より)園での集団生活が始まる3歳児では、保護者も周りと比べて焦ってしまうことが増えるかもしれません。ですが、3歳ごろのお子さんにとって大事なことは、不安に圧倒されたりストレスを感じすぎずに、自分なりの好奇心を満たして楽しく日々を過ごせるかだと思います。興味がほかの子と少し違っていたり、ほかの子はストレスに感じないことがストレスになるのだとしたら、お子さんのタイプをよく見極めてお子さんに適した育て方をするために、療育という場を上手に使っていけるといいかもしれません。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年02月10日障害受容をし、息子に無理させないよう丁寧に育てたつもりだけれど、二次障害として強迫性障害(強迫症)に現在、息子は23歳。知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)です。息子は療育手帳を持っていますが、中学の時に二次障害として強迫性障害(強迫症)を発症したので、精神障害者保健福祉手帳も持っています。息子は2歳3ヶ月のとき自閉症(※)が分かり、診断を受けました。医師からは「こんなに小さいうちから自閉症の診断を受けられたんだから、将来二次障害を起こさないように特性にそった子育てをしましょう」と何度も何度も言われました。私は療育の鬼になるのをやめ障害受容をし、息子に無理をさせることなく丁寧に丁寧に育てたつもりでしたが、その10年後に強迫性障害(強迫症)になったのでした。※以前は「自閉症」という診断名が用いられていましたが、アメリカ精神医学会発刊の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において自閉的特徴を持つ疾患が統合され、2022年(日本語版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症」という診断名になりました。私も強迫性障害(強迫症)だった実は私も、就職した直後に強迫性障害(強迫症)を発症しました。そして、通院治療では治らないほどこじらせ、精神科に9ヶ月入院した経験があります。退院後も自宅に帰ると再発するといわれたため、1年間社会復帰施設に入所していました。入院中はベッドに手足を縛られ拘束され、オムツをし、たくさんの服薬をするという毎日で、今振り返っても地獄の日々だったと感じます。今までの人生の中で一番つらい時期でした。その後、未婚の母として息子を産み、シングルマザーとして育てているなかで息子の障害が分かり、さまざまな茨の道もありましたが、こんな経験があったので、いつも「あの入院時代に比べると、こんなことは大したことない」と思え、乗り越えられたのだと思います。そういう意味では、私のつらく悲しい入院生活は意味があったことだと思うようにしています。息子の異変にすぐ気づくことができたのは、私の経験があったから自分が強迫性障害(強迫症)になった経験があったので、息子の異変にはすぐに気づきました。ある日、いつものようにスイミングスクールに行く際、息子が道中プールの道具を何度も何度も確認するのです。ASD(自閉スペクトラム症)の子どもは同じことを繰り返したり、確認行為を繰り返したりすることがありますが、強迫性障害(強迫症)の場合も同じような確認行為をすることがあります。でも、本人が望んで確認行為をするASD(自閉スペクトラム症)の行動と強迫性障害(強迫症)のそれとは似て非なるものです。忘れ物の確認、ガスの確認、物が同じ向きになっていないと気になって仕方がないなどの不完全恐怖、「4」などを極端に避ける縁起恐怖などの強迫性障害(強迫症)、本人も「こんな行為はばからしい」と自覚していても、それをしないと苦しくなってしまいます。息子の強迫性障害(強迫症)は発見が早かったため通院治療で済んでいますが、もし「これもASD(自閉スペクトラム症)の特性だ」と放置していたら、こじらせて入院していたかもしれません。ASD(自閉スペクトラム症)の特性による行動なのか、強迫性障害(強迫症)なのか……判断がなかなか難しいと思いますが、私の経験が生きた出来事でした。執筆/立石美津子(監修:森先生より)お子さんに愛情をかけて、お子さんをよく見ているからこそ気付けたのですね。ご自身のつらい経験も活かされましたね……。お子さんは、保護者の方や療育の専門家と接する場だけでなく、あらゆる環境に晒されてストレスを受けながら育つもの。「気をつけたから二次障害を起こさない」というものではありませんよね。お子さんの異変にすぐに気付いて、お子さんに合ったやり方を模索したからこそ、重症にならずに踏みとどまれたのでしょう。療育には正解はなく、愛情を持って一人ひとりに合わせた支援をしていくことが大切ですね。前の記事はこちらUpload By 立石美津子Upload By 立石美津子Upload By 立石美津子Upload By 立石美津子(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年02月10日ASD(自閉スペクトラム症)とは?ASD(自閉スペクトラム症)は、「対人関係や社会的コミュニケーションの困難」と「特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」などの特性が幼少期から見られ、日常生活に困難を生じる発達障害の一つです。知的障害(知的発達症)を伴うこともありますが、2歳児は「イヤイヤ期」といわれる時期でもあり、ASD(自閉スペクトラム症)の診断がつかず様子見という場合も多くあります。参考:自閉スペクトラム症 (ASD) の特性理解 (著)傳田 健三ASD(自閉スペクトラム症)の遺伝に関する研究結果として、発症・発現に何らかの遺伝的な要因が関係している可能性が高いと考えられています。しかし、はっきりとした要因はわかっていません。遺伝要因と環境要因の相互影響が複雑で、かつ偶然性に左右される部分も多いといえます。1歳に続き、この時期の成長・発達には大きな個人差があります。2歳で「ASD(自閉スペクトラム症)かも?」と診断される可能性のある行動や反応として、主に・言葉の発達に遅れがある(2語文を話さない、オウム返しが多いなど)・激しい感覚過敏やこだわりがある・他人に関心が薄いなどが挙げられます。詳しくは次章以降で紹介しますが、2歳ではASD(自閉スペクトラム症)と診断されることは少なく、「様子見」といわれることが多い傾向にあります。参考:7_自閉症|文部科学省2歳児の発達の目安って?ここでは定型発達児における、2歳児の発達の目安を紹介します。1歳児に比べてできることも格段に増え、言語獲得は2語文を話す程度といわれています。・歩く、走る、跳ぶなどの基本的な運動機能や、指先の機能が発達する・食事、衣類の着脱など身の回りのことを(完璧ではないが)自分でしようとする・排泄自立にむけての身体的機能が整ってくる・発声が明瞭になり、語彙も著しく増加し、自分の意思や欲求を言葉で表出できるようになる・盛んに模倣し、大人や同年齢の子どもと一緒に簡単なごっこ遊びを楽しむようになる・行動範囲が広がり探索活動が盛んになる中、自我の育ちの表れとして、強く自己主張する「自我の表われ、強い自己主張」は、いわゆるイヤイヤ期であるといえるので、定型発達児でも強い癇癪を起こしやすい時期であるといえます。参考:保育所保育指針解説書 |厚生労働省参考:イヤイヤ2歳|国立障害者リハビリテーションセンターASD(自閉スペクトラム症)の特性は2歳児でも表れる?言葉、感覚過敏、こだわりなど…違和感や気になるサイン2歳児は「イヤイヤ」が強く出る時期であるため、「激しい癇癪やこだわりがあるのはASD(自閉スペクトラム症)だから?」と思ってしまうこともあるかもしれませんが、その他に見られる日常の様子を見ていくことが大切です。では2歳児の気になる発達の遅れや特性とは、どのようなものがあるのでしょうか。2歳台の子どもの気になる行動として、・人見知りが強い、または少なすぎる・他人の行動を真似・模倣しない・見てほしいものや興味があるものについて共感を求めてつたえようとしない・「まんま、たべる」「ワンワン、いた」などの2語文を話さない・極端にまぶしがる、大きな音に過剰に反応するなどの感覚過敏(反対に鈍感すぎる)・突然癇癪を起こす、またそのあとの切り替えが難しい・変化をひどく嫌う、特定のものへの強いこだわり(場所見知りや強い偏食など)などが挙げられます。1歳6ヶ月児健診では「M-CHAT」という質問紙を使用した「スクリーニング検査」が推奨されていますが、2歳児にも引き続き参照されることがあります。1歳台と同様に社会性、言葉の発達(喋るのが遅い)などが表れやすい傾向があると共に、感覚過敏や癇癪やこだわりなども多く出てくる時期です。「M-CHAT」などの検査で当てはまる項目が多くても、2歳児は自我が芽生える時期であり、成長にも大きな個人差があるため、ASD(自閉スペクトラム症)であるか判断ができず、様子見となることもあります(基本的にM-CHATは保健師などがチェックするものであり、保護者自身がチェックするものではありません)。2歳児に表れることの多いASD(自閉スペクトラム症)の特性による症状Upload By 発達障害のキホン※発達や成長に加え症状や特徴には、この時期大きな個人差があります。当てはまる反応や行動の数が多いからといって、すぐにASD(自閉スペクトラム症)と診断されるわけではありません。相談や受診の目安、保護者ができることとは?成長に個人差はありますが、・過敏さが強く、まとまった睡眠がとれない・ほかの子どもの遊びにあまり興味を持たない・親にも積極的に働きかけない・こだわりが強く、生活するのが難しい・目が合わない、呼んでも反応が悪いなど、日常生活の中で、困りごとが多い場合や保護者の方が心配な場合は相談しましょう。子どもの発達が気になる場合、どこへ相談すればいいのでしょうか。・市町村の保健師・保健センター母子の健康をサポートするためのさまざまな相談やサービスを受けることができます。・行政福祉窓口市・区役所等の福祉課で相談方法を知ることができ、困りごとに適した相談機関を紹介してもらえる場合があります。・発達障害者支援センター各県に1ヶ所以上あり、発達障害についての相談の対応を行っています。その他、保健所、療育センターなどもあります。また、全国に親の会などもあるので、利用してみてもいいかもしれません。診断された、あるいは発達の遅れなどが気になるから、早く療育を受けたいという保護者も多いと思います。療育とは、「障害のある子どもに対してそれぞれの特性に応じた身体的・精神的機能の発達を促し、日常生活や社会生活を円滑に営めるように行うもの」です。療育(発達支援)には、自治体などの管轄の公的機関で行うもののほかに、民間の施設などで行うものがあります。大学病院など一部の医療機関ではPTなどを行っている場合もあります。自治体のほか、民間の施設の中にも公費で受けられる発達支援を提供しているところがあり、この支援は「通所受給者証」(※)を所持していると利用でき、利用料金の助成を受けることができます(基本的には1割負担ですが、満3歳になって初めての4月1日から3年間は無償となります。また、家庭によって上限額が異なります)。ASD(自閉スペクトラム症)は早期発見、早期療育がのちの社会生活に大きく影響するといわれています。できるだけ早い時期から療育を行うことで、日常生活や園・学校生活における困難の軽減や生活能力の向上を促すことができると考えられています。※福祉サービス等を利用するために発行される証明書のこと。自治体に申請して、審査の上発行される。日数(支給量)や、月額の利用料の上限額(上限負担額)が記載されている。参考:小林 勝年, 儀間 裕貴, 北原 佶著「エビデンスに基づく療育・支援とは何か」『子どものこころと脳の発達』2020 年 11 巻 1 号 p. 3-102歳児は1歳児に比べ、言語やできることも増える分、自我の芽生えも強く出る時期といえます。それが「イヤイヤ期」によるものなのか、ASD(自閉スペクトラム症)の特性からくるものなのかはなかなか見極めにくいかもしれません。1歳児同様、発達には大きな個人差があるため、この時期だから必ずこの特徴が出るという確定的なものはありませんが、気になるポイントがあったら、早めに相談・受診しましょう。(監修:新美先生より)2歳ごろには、お子さんの行動範囲も増えてきて、好きなもの興味あるものと、興味ないものがはっきり見えてくる時期ですね。興味ないこと、苦手なことを無理強いするのは効率が悪いので、本人が興味あることを足掛かりに、興味の幅を増やしたり人とかかわることの楽しさも見つけていけるといいですね。保護者の方にとって関わり方が難しいなと感じる場合、専門機関に相談するのも、お子さんにあった子育てを知るためのきっかけになるかもしれません。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年02月07日中1自閉スペクトラム症娘、テストで100点を取っているのに…!?広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)のある娘は、中学1年生。娘が小学生の時、「テストが返されたら、設置されているお手紙ボックスに入れる」というルールにしていたのですが……Upload By SAKURA100点だとしても自分から報告してくれることはほとんどなく、私たちが気がついて「100点じゃん!」と言うと「そう、100点」と言うだけでした。中学に入学してからは、テストはまとめて行われるようになり、頻繁にテストを確認する機会が減ったのですが……Upload By SAKURA小テストや単元テストで100点を取っても、まったく言わない娘。連絡帳で満点を取ったことを初めて知り、「満点だったの?」と聞くと「うん」と言うだけ。娘の小さな頃を思い返してみると……Upload By SAKURA娘が今、反抗期だからというのもあるかもしれませんが、思い返してみると娘は、小さな頃からそうでした。2歳の頃、初めて発達支援センターでカウンセリングを受けた時……Upload By SAKURA近くで遊んでいる娘が、一度も私のところに戻ってこないことを指摘されました。たしかに娘は、何か楽しいことがあった時も私に笑いかけることも、姿を確認することもありませんでした。絵を描くのが好きでしたが、描いても見せに来ることはなく、テレビも絵本も、常に一人。思い返せば、娘の楽しさはいつも自己完結していて、人に伝えて一緒に楽しもうという、共有する気持ちはないようでした。言葉が増えてもそれは変わらず大きくなり、言葉が増えてもそれは変わらず、学校であったことは聞かないと教えてくれないし、それ自体にあまり関心がない場合は、忘れていて、先生から詳細を聞き、やっと思い出すということもあります。Upload By SAKURA子どもによく見られる「ママ、聞いて~見て~」ということがほとんどなかったため、私は二人目(長男)の時に初めて体験したほどでした。Upload By SAKURAうれしかったこと、楽しかったことなんで話さないの?娘に聞いてみると……あの時は、娘がまだ自分の気持ちを話せなかったので、カウンセリングで知りましたが、今なら娘の気持ちを確認できる。私は娘になぜ共有しないのか、うれしかったこと、楽しかったことを話さないのか、聞いてみることにしました。Upload By SAKURA娘は「共有したい」という気持ちが薄いので、話したいという人の気持ちが分からないようでした。私たちにとっては、喜びを人と共有したいということは当たり前でしたが、娘にとってそれは当たり前じゃない。私たちに娘の気持ちが分からないように、娘にも私たち側の気持ちは理解できないことだったようです。そのことを無理やり変える気持ちはありませんが、中には伝えて欲しい状況もあります。Upload By SAKURA人に気持ちを伝えないと、相手は分からないし、状況によっては話さないと困ることもあります。ありのままの娘を受け入れるべきなのは分かっていますが、娘の行動でトラブルが起きるのは避けたい……。Upload By SAKURA私たちにできることは、娘が相手の気持ちを想像できるように、周りの状況や気持ちを話していくことぐらい。今回のことに限らずですが……反抗期な娘にいろいろ諭していくのは難しくなってきました。絶対こうしなきゃダメということばかりではなく、状況に合わせたり、相手を見たり……臨機応変な対応を教えつつも、娘の個性を壊しているのではないかと、毎回悩みながらやっていることが多いです。これで合っているかの葛藤も毎回つきまとう。悩んで葛藤しながら、これからも続けていきたいと思います。執筆/SAKURA(監修:室伏先生より)SAKURAさん、気持ちの共有について、あーさんとの対話をご共有くださり、ありがとうございました。あーさんの言動に関して理解できないことについては、あーさんにお気持ちを聞いて、なるほどそうなのかと理解される、これはあーさんの個性を理解しようとされているSAKURAさん努力の賜物だと思います。その上で、あーさんに分かりやすい言葉で、SAKURAさんがどのように感じているか、どんな風に困っているのかを伝えられているのですね。これは発達障害のあるお子さんに限らず、どんな人間関係においてもとても大切なコミュニケーションですよね。あーさんの個性を壊しているなんてとんでもないです。素晴らしいなと思いました。自分の考えていることを言葉にして表出するのはとても大事なことなのですが、家族のような安心できる関係性になればなるほど、それを意識して行うことを忘れがちになってしまいます。私もSAKURAさんを見習いたいと思います。きっとSAKURAさんとの対話が、あーさんの将来に活きてくると思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年02月07日顔見知りがいない中で始まった小学校生活小学校低学年頃の長男ハルは、幼少期に悩まされた多動もすっかり落ち着いてきていました。元々マイペースで争いが苦手な性格だったこともあって、クラスメイトなど周囲とのトラブルは、ほぼなかったように思います。しかし、ハルの様子を見ていて「初めてのこと」には周囲と比べて順応しづらいところがあると感じていました。母として今でも申し訳なかったと思う点は、ハルが通っていた幼稚園が小学校の学区外だったため、「入学時点で知っているお友達がほとんどいなかった」ことです。ハルの周囲には学区内にある園に通っていたお子さんが多く、小学校へ上がっても知り合い同士で友達関係ができあがるのが早かったように思います。しかし先生からは、「子ども同士なのだからすぐに仲良くなれますよ!」と言われていました。Upload By 安田ふくこ「周りの子たちの話題やノリに、ついていけますように。仲間外れにされたり、つらい思いを抱えませんように……」ハルを見守っていて、私の中でその思いが消えることはありませんでした。「勉強よりも何よりも、ハルには友だちと楽しく過ごしてほしい!」私はそんなことばかり考えていました。小学校中学年になり、「ギャングエイジ」の子どもたちとトラブル発生。先生に相談したけれど⋯⋯小3~小4頃になってくると、いわゆる「ギャングエイジ」に差し掛かります。もちろんそうではないお子さんもいましたが、ハルの周囲にはヤンチャで頭の回転が速いタイプのクラスメイトたちが急に増え、ハルはだんだんとそういう子どもたちに翻弄されるようになっていきました。Upload By 安田ふくこ一時期、下校時にハルが同じ班の気の強い女子数名にランドセルを持たされたり、強く言い返せない性格を見抜かれ、ヤンチャな男子から「おい雑魚(ザコ)!」などと呼ばれたりしたことがありました。特に、ランドセルの件は連日のように続いていて、様子を見ていてもつらそうでした。当時の担任の先生に相談しましたが「ランドセルを持てと言われて”嫌だ“と意思表示もせず、持ってしまうハル君も悪いですよね?」などと一蹴されてしまいました。頭がガーンと真っ白になった私は「嫌だと言えないハルも悪いんだろうか?」と何も言えずに引き下がってしまったのですが……。Upload By 安田ふくこあとで「嫌なことをされても拒否できるならこんなに悩まない」、「“嫌だ”と言えば、もっと嫌なことをされるかもしれなかった」とハルから聞きました。そういった防衛本能で、「自分がひととき我慢すれば良いのだから」とただ黙ってランドセルを持っていた。だけど、どうしてもつらい気持ちになる……と。大人の私ですら、その頃はまだ人からショッキングなことを言われても毅然として反論できないところがあったので、ハルのその気持ちが痛いほど分かりました。ましてや子ども。心にそんな思いを抱い込んでしまう可能性があることくらい、大人が少し想像したら分かりそうなものなのに。その時の担任の先生には理解してもらえず、私は二度と、その先生に腹を割って相談することはありませんでした。嫌なことを嫌と言えない……コミュニケーションの不器用さに悩む後日、このトラブルの渦中にいた子どもたちの保護者の一人に相談したところ、すぐに分かってもらえて謝罪され、子どもたちの行為は収まりました。ですが、このことがきっかけで、私は「ハルには、他人から何か理不尽なことを言われたりされたりしても、その場で瞬時に言い返せなかったり、拒否の態度を取れなかったりするところがある」と知ることができました。理不尽に従うことなどないのに、瞬時には機転がきかず、何も分からないまま振り回されてしまう……。そんなハルのコミュニケーションの不器用さを、今後どうしたら良いのだろう?と、私自身も悩むようになっていくのでした。夫は相変わらず「ハルのことを病気や障害扱いするな!ただハルが、周囲より気弱ってだけだろう。病気や障害とかじゃない。お前は考え過ぎだよ!」とよく言っていましたが……。私は「病気扱いとかそういうわけじゃなくて!もしも発達の遅れや特性なら、適切にサポートしてあげたいっていう話よ」と、何とかあまり夫を刺激せずに理解してもらおうと、こちらも試行錯誤の日々でした。弟と一緒に受けたWISC検査で、発達障害があることを知ってハルが小4になった頃、ハルの弟・次男ツトム(当時年長)が、小学校入学前にWISC検査を受けることになりました。次男ツトムは長男ハルとは異なり、こだわりがとても強く、不眠や癇癪もありました。そのため、発達障害の知識がそれほどなかった私でも、就学前に一度発達外来で診察してもらおうと考えていました。どうみても圧倒的に視野が狭く、興味のあることにのみ過集中で多弁な次男ツトムに関しては、さすがの夫でも「検査や診察なんてするな!」とは言わなかったのでした。ちょうどその頃、私はハルの担任の先生から「ハルの会話のキャッチボールのしづらさ」を指摘されていました。「非常に穏やかで真面目なお子さんですが、こちらが言ったことやくみ取ってほしいことに対し、あまりそぐわない返事を、空気が読めずに言うのです」と。このような経緯もあり、私は「この機会に、ハルも検査を受けてみたほうが良いのでは?」と考え、次男ツトムと一緒にハルにもWISC検査を受けてもらうことにしました。そうしたキッカケがなければ、当時小4のハルが検査や診察を受けることはなかったかもしれません。WISC検査を受けた結果、ハルには各発達指標の数値に大きな「差」が見られました。さらに、医師からASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)と診断されたのです。Upload By 安田ふくここれには私も、そして夫も、少なからずショックを受けました。ですが一方で、ハルを育てている中でずっと感じていた周囲との微妙なズレの理由が、ようやく理解できたような気持ちもありました。そのため、私はすぐに「前を向こう。この子に合った接し方や伝え方とは何だろう?」と、考え始めたのでした。執筆/安田ふくこ(監修:藤井先生より)ハルさんの学校での様子を受けて、発達外来を受診されたことで、ハルさんの特性の理解ができるきっかけになったのですね。WISC検査で数値に大きな「差」があっても、発達障害に直結するものではありません。しかし、特性の理解のために補助的に検査を行うことはよくあります。知識的な言葉は持ち合わせていても、理由や説明が苦手など、検査中の行動を観察することも可能です。検査の結果は補助的ではありますが、お子さんへの接し方を振り返り、集団生活での支援を学校と共有する上で、必要になることがあります。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年02月07日毎日教室から脱走?自閉スペクトラム症の息子、幼稚園での様子スバルは一対一なら話が通じ、人が好きで、さらに興味がある事には集中して座っていられるので、2歳でプレ幼稚園に入るまでは「言葉が遅い以外に困り事はない」と思っていました。プレ幼稚園では、先生がクラス全体に呼びかけた「お片づけの時間だよ」などの指示が通らなかったり、私が膝の上でホールドしていないと絵本の時間に歩き回ってしまったりと、集団生活の中でのスバルの様子を始めて知ることとなりました。クラスメイトたちが入園から3ヶ月ほどで母子分離通園になっていく中、スバルと私は居残りで母子同伴通園を続けていました。そして3歳で自閉スペクトラム症と診断されたと同時にプレ幼稚園は退園に。その後信頼できる幼稚園と出合い、無事に年少から入園することができました。しかし、入園直後のスバルの連絡帳には毎日「今日も廊下の窓から駐車場の車を見ていました」と書かれていました。休憩時間の話ではありません。クラス活動の時間中に脱走しているのです。私は不安と心配と先生への申し訳なさから、いても立ってもいられず、用事で幼稚園の近くを通るたびフェンスの外から中の様子をうかがっていました。フェンスにかじりついて幼稚園の中の様子をうかがう様子はまさに不審。そのうえ、そこから得られる情報はほとんどありませんでした。見守る母そんなある日、幼稚園でイベント工作スタッフの募集がありました。イベント工作スタッフとは保護者主催のイベントで使う飾りつけの製作やプレゼントの梱包など、人手がいる作業のお手伝いです。年に何度か幼稚園に集まって作業をするそうで、その月はさっそく数回出番があるそうです。なんというチャンス。堂々と幼稚園の中に入ってスバルの様子をうかがえる機会が向こうからやって来るなんて!幼稚園に貢献しながらスバルの様子も見られるなんて一石二鳥です。私は熱い志望動機も書き添えて応募し、イベント工作スタッフの参加が決定しました。作業初日、少し早めに幼稚園に到着しスバルに見つからぬように細心の注意を払い幼稚園へ潜入。集合場所であるお遊戯室へ向かう途中にスバルの教室があり、ぬき足さし足しのび足で教室をのぞきました。てっきり廊下から駐車場を眺めているか教室内を歩き回っているのかと思いましたが、意外なことにスバルは座って工作をしていました。そして、近くには補助の先生がいて、スバルを含む数人をサポートしてくれていました。Upload By 星あかりスバルは、一対一で工作のつくり方を説明した時には理解できるのに、先生がクラス全体に向かって説明すると理解できないことがあります。補助の先生が近くで説明してくれることで、今自分がすべき事が理解でき「駐車場でも眺めるか」みたいな気が起こらないのかもしれないと思いました。私はほっと胸をなでおろしお遊戯室へ向かいました。お遊戯室で作業をしながら、座って工作をするスバルの姿を思い出して感動していると熱い視線を感じました。振り返ると、そこには満面の笑みでガラスの扉に張りついて私を見つめるスバルの姿が……。どうしようかとオロオロしていると、先生がやって来てスバルを連れて去って行きました。スバルは先生に手を引かれながら、廊下の奥へと姿を消すまで私のほうを見ながらニコニコしていました。どういう感情? 私は冷や汗が出たんですけど……。見つかる母それからイベント工作スタッフとして幼稚園に行くたびに、同じことが繰り返されました。その頃にはスバルも幼稚園生活に慣れて来たのか、連絡帳に「今日も廊下の窓から駐車場の車を見ていました」と書かれることは減っていきました。しかし、私がお遊戯室で作業をしていると絶対にスバルがやって来るので、駐車場の車を見ていないだけで日頃から出歩いているのだと思いました。教室から抜け出し、先生に連れ戻されるのが日常の光景なのかと落ち込みました。ある日の放課後、先生から呼び止められました。先生から「お遊戯室で作業がある日、スバルくんはお母さんの自転車を見つけると教室から出て、お母さんを探しに行ってしまうのです」と聞かされました。それ以外では教室から脱走することもなく、椅子に座って活動に参加しているらしいのです。Upload By 星あかり私はスバルに何も言わずこっそり幼稚園に来ていましたが、スバルは駐輪場の自転車を見て私の来園をチェックしていたのでした。幼稚園に貢献しているつもりが、私の存在自体が邪魔になっていたなんて……。「それで……あの~」と先生が言葉を濁すのでイベント工作スタッフのクビを覚悟したのですが「自転車はあちらの茂みに隠してください」とお願いされました。しのぶ母その後は、自転車はしっかり茂みに隠し、茂みから園舎までは木や車の影に身を隠しながらジグザクと近づき、窓の近くを通るときは姿勢を低くし決して窓に映らない事を徹底しました。正直そんなことしているのは私だけでしたが、親の姿を見つけて教室から脱走するのはスバルだけなので仕方がありません。そんな活動を続け、年少の終わり頃には面識のない保護者から「星さんってどの人だっけ?」「あの忍っぽい人」「ああ!」という認知のされ方をするようになりましたが仕方ありません。おかげで少しずつ成長していくスバルの姿を1年かけて見守ることができました。スバルはゆっくりじっくり学び、座るべき時に座りクラスメイトと同じ事に取り組めるようになりました。一斉指示は届いていないときもありましたが、それでも本当に大きな成長です。年少も終わりに近づき、1年の集大成年少も終わりに近づき、イベント工作スタッフの最終日がやってきました。私は初めて、ほかの保護者と同じように忍ばず園舎に入りました。そして教室の窓の前を通るとき、ほかの保護者と同じようにわが子に手を振りました。ほかのお子さんはうれしそうに小さく手を振り、すぐに活動に戻りました。私は1年間忍びながら、スバルの姿を見て来たのです。「たぶん今のスバルなら私を見つけても教室から飛び出して来たりしない」そんな確信がありました。ーさあスバル! 成長した姿を見せておくれ!私の姿を見つけたスバルは勢いよく立ち上がり「おかあさ~ん」と大声で叫びながら満面の笑みで大きく両手を振りました。ー立っちゃうのか! こっちに来ちゃうのか!?私はまだ忍んでいるべきだったと後悔しました。しかしスバルはすぐに着席し、私の姿が見えなくなるまでニコニコと見送っていました。ー座ったーーーー!!少し焦ったものの、1年の成長の集大成を確認することができ、本当に安心しました。執筆/星あかり(監修:藤井先生より)あかりさんが忍びながらスバルさんの園での様子をみてきた結果、成長を感じることができたのですね。園の先生とあかりさんがうまく連携して、どうしたらスバルさんが落ち着いて園生活を送ることができるか、工夫を重ねた成果でもありますね。これから成長することもたくさんあると思います。それと同時に、新たな悩みも生じることもあるかと思います。先生と連携して、成長を遂げたスバルさんの今回のエピソードを思い出して、「きっと成長できる」「大丈夫」と思うことができますね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年02月06日就学相談で特別支援教室へ通うことになった未診断の次男ふー次男ふーは現在5歳。就学相談の結果、次の4月に入学する小学校では、通常学級に在籍しながら特別支援教室(※)に通うことが決まりました。それまで私は、ふーが特別支援教室に通う必要があるとは思っていませんでした。ASD(自閉スペクトラム症)の小4の長男・ミミと比べて、困っていることが少なかったからです。ですが、ふーが通う保育園と児童発達支援で「必要性の理由」となる現場をいくつか目撃するようになり、ふーには特別支援教室が必要なんだと納得した私。兄のミミのときは診断書を書いてもらい、それを学校へ提出しましたが、ふーは現時点で一年前と同じく診断はされていません。そこで、保育園と児童発達支援、民間の療育で「就学支援シート」を作ってもらい、それを学校へ提出する予定です。それもあり、小学校入学が迫ってくる中、私はふーがどんなことに困っているのかよく観察しています。※特別支援教室とは、東京都などで導入されている発達障害のある子どもたちをはじめとした個別の教育的ニーズに対応し、より適切で効果的な指導を行うための一つの指導の形態です。通常学級に在籍しながら、一部の時間、別の教室で指導を受けることができます。東京都では特別支援教室と呼ばれていますが、地域によって名称が異なります。「教えて」が言えず、せっかく編んだマフラーを全部ほどいてしまったふーふーが通う保育園では、年長さんになると毛糸のマフラーを作るのが恒例。ふーも楽しく編んでいたのですが、先生から「ふーくん、途中で全部ほどいてしまったんですよ」と教えてもらいました。本人に聞くと、下のほうに編み忘れた目があって、それが穴になっているのに気がつきやり直したかったのだそう。翌日いちから編みなおすというので、「頑張ってね」と応援しました。ですが翌日、ふーが一からマフラーを編んでいたところ、途中でやり方が分からなくなってしまったそうです。そこで先生に「教えて」と言えればいいのですが、困っていることを伝えられなかったふー……。Upload By taekoその日は自治体の療育へ行く日だったので、早くお迎えに行ったのですが、教室から出てきたふーはぐずぐず……。このままでは療育まで引きずるだろうと思ったので、その前にアイスを買って食べました。これでふーの気分も持ち直しました!Upload By taekoそしてふーが大好きな踏み切りを通りながら療育へ向かい、十分余裕を持って到着!したのですが……。療育では指しゃぶりに足もじもじ、そして鉛筆を強く握って……療育についたふーは、いつも遊ぶおもちゃを「あれ......」と指さし、先生に使いたいことをアピールしました。そこで先生は優しく「何て言うんだっけ?」と促してくれたのですが、ふーは困った顔をして親指を口に入れお気に入りのタオルのようにしゃぶり、足をもじもじ。そしてシクシクしだして……最後は抱っこ。「使っていい?」と聞けなかったようです。Upload By taekoその後、先生が丁寧に声かけしてくれ、次の活動であるパズルを2種類見せてくれました。これに少し興味を持った様子のふー。「ママに手伝ってもらう?」と先生の提案に応じ、私もパズルを半分手伝うことになりました。ここで少しずつ復活し、2種類のパズルを結局1人で完成させたふーはにっこり。自信に繋がったようです。いつも通りのふーになり、お気に入りのブランコ遊びを再開しました。思いっきり楽しみ、笑顔でニコニコ!満足したところで、机でのプリントをやることに。1枚目はすぐクリア。2枚目は数字の順番どおりに鉛筆で点を繋いでいくと絵になるプリントです。ここでふーはゴキゲンな気持ちが行き過ぎたのか、ついアレンジしてこのプリントに踏み切りの絵を書きだしました。ここで先生は「ちょっと待ってね、あとで好きな絵を書き足して良いから、先に数字を繋げようか」と声かけ。Upload By taekoこれがショックだったようです。気分が乗っていただけに、止められてがっくりしてしまったふーは、口に親指を入れて指しゃぶり、そして鉛筆を持つ手に強く力が入り、プリントを机から落としました。Upload By taeko先生は丁寧な声かけをしてくれたけれど、今日はここまで……。ふーのお気に入りのタオルを渡して心を落ち着かせ、帰宅しました。ふーの困りごとは「言葉で伝えられないこと」が発端かも?そして不安感をおさえるため、指しゃぶりなどの行動につながっているようです学校ではマフラーの編み方を「もう一度教えて」と言えなかったこと、療育では、「使っていい?」が聞けなかったこと、そして先生や私から「“あれ”って何って言うんだっけ?」という声かけに追い詰められたのかな……と思いました。プリントでは、「楽しいことを思いついたから、描いて私や先生に見てもらいたかったのに止められた!せっかく見てもらおうと思ったのに……」と考えていたならショックを受けてしまったのでしょう。学校に提出する「就学支援シート」にこれらのことを書いてもらい、また、自治体が用意してくれる給食を無理に勧めないことをお願いする「偏食の子どもへの配慮のプリント」をこの「就学支援シート」とプリントを合わせて小学校へ提出する予定です。Upload By taekoこの就学支援シートがふーの楽しい学校生活の助けになることを願って……。そして、就学して1ヶ月経った頃、様子を報告するため改めて児童精神科を受診する予定です。執筆/taeko(監修:室伏先生より)taekoさんが、ふーくんの置かれた状況、表情や仕草から、ふーくんのお気持ちを理解しようととても丁寧に関わっていらっしゃるご様子が伝わってきました。いつも一緒にいらっしゃるtaekoさんなら、こう伝えたらふーくんがどう感じるか、理解ができたり、想像がつく場面もあるかと思いますが、第三者に理解してもらうことは難しいこともありますよね。すぐには伝わらなかったとしても、こんな時にはこう感じる子なんだなという具体的な事前情報があるだけで、先生もさまざまな視点でお子さんの言動を想像できるようになったり、関わり方を工夫することができるようになると思います。就学支援シートの助けも借りながら、ふーくんが先生をはじめとする周りの方々と信頼関係を築き、楽しく小学校生活を送れることをお祈りしています。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年02月06日小学校入学と同時に始まった行き渋り現在小学6年生のわが家の長女『姉子』は、赤ちゃんの頃から繊細なところはあったものの、幼稚園の時は楽しく園生活を送っていました。しかし、小学校へ入学するとすぐに、登校前に泣き出したり、腹痛や頭痛を訴えたりして、行き渋りをするように。また、ある日突然チックの症状が出るようになりました。そして、1年生の時の個人懇談で担任の先生から発達検査を受けることをすすめられ、すぐに発達支援センターへ相談に行き、2年生になってすぐWISCを受けました。結果はかなり凸凹があり、これまで相当しんどい思いをしてきたことが分かりました。行き渋りやチックは姉子が出していたSOSだったのです。私は姉子に申し訳ない気持ちでいっぱいで、今まで気づかなかった自分をすごく責めました。でも、発達検査を受けたことで姉子の特性や困り事を知ることができたので、「上手にサポートできれば学校生活も楽しめるかもしれない」と、私は前向きにとらえるようにしました。しかし、転勤族のわが家は突然引っ越しが始まります。発達検査を受けた年と同じ2年生の夏、姉子は都心部の小学校に転校することになりました。突然の転校でさらに行き渋るように環境の変化でストレスを受けやすい姉子はますます学校を行き渋るようになりました。さらにコロナ禍で、何とか登校できても、誰とも会話できず、転校したばかりなのに友達をつくることもできません。Upload By スパ山この頃の姉子は本当につらそうで、外出すらできなくなり……。私も「こんな状態になってまで学校に行かなくてもいいのではないか」と思うようになっていました。と同時に、ここで「休んでいいよ」と言ってしまったら、「この先も何かあったらすぐあきらめるようになるのではないか」という底知れぬ不安や、「ほかの子は学校に行っているのに……うちも頑張って行けるようにならなくては」、という気持ちのはざまで揺れて本当に悩みました。Upload By スパ山母子分離不安と自閉スペクトラム症だと診断を受ける行き渋りについて、担任の先生とスクールカウンセラーさん、そして私たち母子で何度か相談していく中で、ある日姉子がポツリと「学校に行っている間、お母さんと離れるのがさみしい」とこぼしました。発達の凸凹があるから登校に不安があるのだと思っていた(もちろんそれもあるのでしょうが)私は驚きました。もう小学生だし、まさか母親と離れるとさみしいなんてことあるはずがないと思い込んでいました。そして、通院していた児童精神科で「母子分離不安」の診断を受けたのです(自閉スペクトラム症もこの時に診断されました)。Upload By スパ山スモールステップを繰り返し、約1年かけて母子登校できるようになんでだろう?どうしたらいいんだろう?と、深い霧の中にいた状態だった私たちにとって、少しだけ進む道が見えてきた瞬間でした。姉子は医師の指導のもと投薬治療を始めました。そして、私と一緒に家で授業の時間割を合わせて用意をする、一緒に学校までまで行って校門にタッチして帰る、登校して先生にプリントをわたす、といったスモールステップを地道に続け、約1年かけてやっと別室に母子登校できるようになりました。(「母子登校」とは、保護者が付き添い、子どもと一緒に登校することです。学校に行くことに不安を感じたり、不登校になってしまった場合に、通常登校へ戻るための支援策として姉子が通っていた学校では取り入れてありました)。Upload By スパ山2年間の母子登校で娘に笑顔が私は、毎朝姉子と一緒に登校し、教室の隣の部屋で課題のプリントなどをしながら一緒に過ごし、給食を食べているのを見守り(コロナ禍だったので、関係者以外の飲食は禁止でした)一緒に下校していました。最初は数十年ぶりに小学生になったような気持ちでいた私でしたが、学校なので家にいるように横になったりスマートフォンを見たり、のんびり休憩できる時間もなく……。ずっと姉子のそばにいなければならないので、常に緊張状態で、しんどくなった時もありました。それに、お昼ごはんは帰宅するまで食べられなかったので、朝ごはんを食べ忘れるともう大変!お腹の音が鳴りっぱなしで……食いしん坊の私にとって、これはかなりつらい経験でした(だからといって痩せたりはしませんでした。不思議だなあ?(笑))。Upload By スパ山そんな中で、クラスメイトや先生方にもとても温かく接していただきました。そして、姉子にもだんだん笑顔が見えるようになってきた時には「母子登校をやってきてよかったな」と、涙が出そうでした。こんな日々が結局約2年続きましたが、またその話は別の機会に書きたいと思います。執筆/スパ山(監修:新美先生より)分離不安症(母子分離不安症)は、愛着の対象(=安全基地、主には母親)から離れることを年齢に不相応に極端に怖がるような状態です。もともと繊細で不安を抱きやすい性質のお子さんに起きやすく、大きな環境の変化や、その環境(園・学校など)が合わずお子さんが不安を抱きやすい状況が続くと分離不安の症状が出やすくなります。学校に行くと分離不安となり、保護者から離れられない場合、対処法としては大きく分けて3つあります。(1)お母さんなどが一緒に登校する(母子登校、付き添い登校と言われることもあります)。(2)学校が大きい不安の対象になっているなら、学校の環境を本人が不安に感じないように工夫する(3)学校以外に本人が大きな不安を抱かなくても行ける場所を探す(例えばフリースクール、ホームスクーリングなど)といったことが考えられます。正直、母子登校は記事にもあったように保護者の方の負担もとても大きいと感じています。それでもスパ山さん親子は、かなり長い期間をかけて、また別室登校と言った形式で(2)の学校自体がお子さんに負担のないやり方の工夫などもしながら、だんだんと姉子さんに学校でも笑顔が見られるようになってきたという、母子登校をやってよかったと思えるところまで行きついたということですね。簡単には語れない2年間だったのではないかと思いますが、本当にお疲れ様でした。スパ山さんも姉子さんも本当によく頑張られましたね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年02月05日「もしかして、息子は発語がゆっくりかも?」と思ったきっかけわが家の4歳になる息子たーちゃんは、3歳半の時に知的障害(知的発達症)のないASD(自閉スペクトラム症)と診断されました。たーちゃんが1歳半の頃、数日違いの誕生日のお子さんと児童館で出会ってびっくりしました。そのお子さんが、保護者の方とおしゃべりしていたのです。保護者の方や私の言っていることも大体分かっているようで、お返事もしてくれました。一方のたーちゃんは、意味のある発語は「ワンワン」のみ。話しかけても無視ばかりで、人の言葉を理解している様子もあまりありませんでした。Upload By みかみかんそんな、同月齢のお子さんが「ママ、パパ」と呼んでくれる姿が羨ましくなって、「なんでたーちゃんはしゃべってくれないのだろう」と思ってしまいました。今思えば、その時に出会ったお子さんが、たまたま言葉の発達が早いタイプだっただけなのですが、当時の私はたーちゃんとの差を感じて少なからずショックを受けました。自宅に帰って早速インターネットで調べてみました。1歳半で言える単語がひとつのみ、指差しなし、理解している様子もないのは、やはり発達が遅いようで、調べれば調べるほど不安でいっぱいになりました。それでも検索する指を止められず、「発達障害」「知的障害」「自閉スペクトラム症」という言葉がずっと私の頭の中でぐるぐるしていました。Upload By みかみかんその後たーちゃんは、1歳9ヶ月までママ、パパと言うことはありませんでした。発語が少ない息子がとった行動に、ドキリ……。2歳前、自分の意思を言葉で伝えられないたーちゃんに質問しても、オウム返しばかりでした。「おやつ食べる?」と聞いても、「たべる?」と聞き返してきます。そして、何かやりたいことや欲しいものがあると、手を引っ張って私や夫をそこへ連れていくのです。エコラリア、クレーン現象、というインターネットで何度も調べた言葉が頭をよぎりました。「やっぱり障害があるのかな」と不安になって、たーちゃんのそんな行動を穏やかな心で見守ることはできませんでした。ある日、いつものように「おせんべいとクッキー、どっちがいい?」と、たーちゃんが答えやすいような質問をしました。たーちゃんに食べたい気持ちがあることも、たーちゃんがその質問にまだ答えられないことも分かっていました。そして、たーちゃんの返事は「どっちがいい?」でした。Upload By みかみかん普段ならなんでもないそのやり取りでしたが、発達に悩み精神的に参っていた当時の私は、その場でポロポロと涙を流してしまいました。「もうすぐ2歳なのに、こんなに簡単な質問にも答えられない。どうしてなの?たーちゃんはこれからもずっとおしゃべりできないの?」と悲観的になっていました。その後、「おせんべい?クッキー?どっち?」と声を震わせながらたーちゃんに聞いても、たーちゃんは笑って「どっち?」と言うだけでした。2歳のクリスマス。息子の成長を感じたひとこと発語や発達についてはずっと悶々と悩んでいましたが、たーちゃんの言葉は少しずつ増えていきました。それでも、自分から何かを要求したり気持ちを表す言葉はほとんどなく、木を見て「き」と言う、葉っぱをみて「はっぱ」と言うくらいでした。さらに、公園で会う、たーちゃんより下の月齢のお子さんのほうがたくさんおしゃべりしている姿を見たりして、複雑な気持ちを抱くことも少なくありませんでした。どうしても、ほかのお子さんとたーちゃんとを比べてしまっていました。そんな中、たーちゃんが2歳になり迎えたクリスマス。たーちゃんが、うれしいサプライズプレゼントをくれたのです。クリスマスの朝、サンタさんからプレゼントをもらったたーちゃんは、一刻も早くそのおもちゃで遊びたかったようでした。おもちゃの箱を見て、私と夫に「あけて」とはっきり言ったのです。それまでのたーちゃんなら、無言で私や夫の手を掴んで箱に触れさせていたのに。Upload By みかみかんその言葉を聞いて、少しずつでも確実にたーちゃんは成長しているんだと実感してうれしかったです。「たーちゃんは、本当は伝えたいことがいっぱいあるんだ」と気づくことができました。その後のたーちゃんの成長については、また別の機会に書かせていただきます。執筆/みかみかん(監修:森先生より)「言葉の発達」というと、どうしても発語……「しゃべるかどうか」に目がいきがちです。でも、しゃべるかどうかには本当に個人差があります。大人だっておしゃべりな人もいれば静かにしているのが好きな人もいますよね。言葉そのものは理解しているけれど、あまりおしゃべりに興味が向かない、というケースもあります。そういった場合、ある日突然、これまで言葉を溜め込んできたかのように一気に発語が伸びていくこともめずらしくありません。どうしても心配や焦りは出てくるかもしれませんが、みかみかんさんのように、声かけをいっぱいして成長を見守ることが大切ですね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年02月04日自閉スペクトラム症(ASD)とは?ASD(自閉スペクトラム症)は、社会的コミュニケーションや対人関係の構築が難しい、また常同的・反復的行動が多くみられる、乳幼児期に出現する精神発達の障害です。普段と違うことを嫌がる、大きな音や光などへの感覚の過敏さがあるなど、「強いこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」という特性もあり、知的障害(知的発達症)を伴うこともあります。症状の程度はそれぞれの人によって差があるため、スペクトラム(spectrum:範囲や連続体など幅を持った分布の意味)として診断されるようになりました。参考:傳田 健三著「自閉スペクトラム症 (ASD) の特性理解」『心身医学』57 巻 (2017) 1 号 P.19-26ASD(自閉スペクトラム症)は生まれつきの脳障害で、脳内の情報処理の仕方に障害があるといわれていますが、その原因はまだ分かっていません。この時期の成長や発達には大きな個人差がありますが、1歳でASD(自閉スペクトラム症)であると診断される指標として、・共同注意場面において「指さし」や「(他者の)指さし方向に顔を向ける」行動が出にくい・「他者の顔を見てほほえむ」などの社会的行動が出にくい・定型発達の1歳児にみられる「関心の共有」に興味を持ちにくいなどがあげられます。次章以降で詳しく紹介します。参考:横山佳奈、吉田翔子、永田雅子著「自閉スペクトラム症児への早期介入における現状と展望」『名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要 心理発達科学(Web) 』66巻 (2020) P.7-16参考:自閉症Q&A|厚生労働省1歳児の発達の目安って?定型発達児における、1歳頃の発達の目安としては、・歩き始め、手を使い、言葉を話すようになる・身近な人や身の回りの物に自発的に働きかけていく・歩く、押す、つまむ、めくるなど、さまざまな運動機能の発達や新しい行動の獲得により、環境に働きかける意欲を一層高める・物をやり取りしたり、取り合ったりする・おもちゃ等を実物に見立てるなどの象徴機能が発達し、人や物との関わりが強まる・大人の言葉を理解するようになり、自分の意思を親しい大人に伝えたいという欲求が高まる・指さし、身振り、片言などを盛んに使うようになり、二語文を話し始めるなどがあげられます。参考:保育所保育指針解説書 |厚生労働省ASD(自閉スペクトラム症)の特性は1歳児でも表れる?--違和感や発達の遅れ、気になるサイン1歳児は言葉の表出がまだまだ乏しいため、日常の中で気になる行動を見逃さないことが大切です。1歳頃に表れる、気になる発達の遅れやサインとは、どのようなものがあるのでしょうか。1歳児の気になる発達の遅れ、1歳児に表れやすいASD(自閉スペクトラム症)の特性として、・目が合いにくい、呼ばれても反応しない・社会性、言葉の発達(喋るのが遅い)などが表れやすい傾向・睡眠の問題(寝つきが悪い、途中で目が覚める、夜泣き)・人見知りがなさすぎる、あるいは人見知りが強すぎる、場所見知りが強いなどがあげられます。子どもにASD(自閉スペクトラム症)があるかどうかの診断において、厚生労働省は1歳6ヶ月児健診でM-CHATという質問紙を使用した「スクリーニング検査」を推奨しています。対人(対象物)関係や行動面(こだわりや常同行動など)、日常生活における反応や行動を、保護者から聞き取ります。・ほかの子どもに興味がありますか?・何かに興味を持った時、指をさして伝えようとしますか?・あなたのすることをまねしますか?(バイバイや拍手など)・名前を呼ぶと、反応しますか?など、実に20項目にわたり、将来において社会性の重要な基盤となる「非言語の対人コミュニケーション行動」を確認します。成長は個人差が大きいこともあり、M-CHATでASD(自閉スペクトラム症)の可能性が高いとされた1歳児のすべてがASD(自閉スペクトラム症)と診断されるわけではありません。また、基本的にM-CHATは保健師などがチェックするものであり、保護者自身がチェックするものではありません。参考:「改訂乳幼児期自閉症チェックリスト修正版」M-CHAT-R_F_Japanese.pdf(mchatscreen.com)1歳児に表れることの多いASD(自閉スペクトラム症)の特性による症状Upload By 発達障害のキホン※成長の個人差は大きいので、すべてに当てはまる、あるいは当てはまる項目が多いからといって「ASD(自閉スペクトラム症)である」というわけではありません。どこに相談や受診をすればいい?保護者ができることとは?1歳児は成長の個人差がとても大きく、発達の振れ幅が多い時期ですが、育てづらさがあったり、「この子に合ったよりよい関わり方を知りたい」と思ったら、まずは自治体の保健師さん・保健センターに相談しましょう。それ以外にも保健所や療育センターなどでも相談できます。参考:「1歳を迎えるお子さんをもつ保護者の方へ」|国立障害者リハビリテーションセンター子どもの発達について不安に思った場合は日常の様子をメモするなど、記録に残しておくことも大切です。保護者が見たこと、感じたことは何より重要な資料であり、それが早期発見、早期療育にもつながります。ただし、1歳児は成長・発達の個人差が一番大きい時期ともいえます。過度に心配したり気にしすぎたりせず、様子を見ながらおおらかな気持ちで接することも大切です。(監修:新美先生より)1歳頃のお子さんを育てるうえで、「1歳の子どもはこうであるべき」「1歳の子どものしつけはこうするべき」ということにとらわれ過ぎる必要はありません。うちの子はこういうことに興味があるんだな、こういうことをしていると楽しそうだな、こういう場面で困っているな、こういうシチュエーションは不安になるんだな・不快なんだなというお子さんの興味や苦手を探して、好きなこと興味ある活動を増やして、不快を減らして安心を増やすという方向性で関わっていけば間違いはないかなと思います。その中で、睡眠がとれない、癇癪が強すぎるなど、親子が生活しづらい困りごとがある場合は、相談機関に早めに相談するのもよいと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年02月02日中学校からの着信ASD(自閉スペクトラム症)の太郎は、現在中学2年生。特別支援学級に在籍しているが、基本的に授業は交流学級で行われている(※)。一学期の終わり、私の仕事がちょうど終わった頃に携帯に着信が入った。(※)授業の受け方や支援方法などは地域によって異なりますUpload By まゆん「〇〇中学校」太郎が通っている中学校からの着信だった。学校からの着信は珍しくはない。しかし何度かかってきても胸がざわつくもの。「今回は何があったのだろう」と、毎回不安になりながら電話に出ている。「もしもし。いつもお世話になっております。太郎の母です」私は冷静な声で電話に出るよう努めた。「こんにちは」聞き慣れた声は、太郎の担任の先生だった。太郎の担任の先生は、いつもであれば落ち着いてゆっくりと話す方である。しかしこの時は少し様子が違った。「えーっとですね」言葉に詰まっている様子から、何かあったのだと想像ができた。先生は続けて話を始めた。「今日の音楽はリコーダーのテストだったんですが……。それがみんなの前で吹くというテストで、太郎くんはそこで固まってしまって……」話は続き、リコーダーのテストは前もって生徒たちに伝えていたらしいが、太郎は「知らなかった」と言い「急な出来事」になってしまったようだということだった。Upload By まゆんみんなの注目を浴びた太郎は固まって動かなくなり、特別支援学級の先生に誘導されて少人数のクラスへ移動したとのことだった。音楽の授業は午前中に行われたが、特別支援学級に移動したあとも緘黙状態は続いたという。そしてようやく放課後になると表情は和らぎ、そのまま迎えに来た放課後等デイサービスのスタッフと学校を出たということだった。次に、今後のテストの受け方についての方針の相談があった。リコーダーのテストは受けなければ評価をできないため、必ず受けてほしいということだった。どうしたら受けることができるかと先生と話をした。本来はみんなと同じ条件でクラスメイトの前でテストを受ける形であるが、注目を浴びることで緘黙状態になるのであれば個人的にテストを受けることも可能ということだった。そして、最終的には本人の意見を聞いて、どういう形でテストを受けるか決めることになった。先生もここまで緘黙状態が続くとは思っていなかったようで、2人で教室にいて話をしようとしても太郎の口からは言葉がほとんど出てこなかったとのことだった。先生の声から、衝撃が伝わってくるようだった。すぐに私が電話したのは電話を切ったあと、すぐに放課後等デイサービスに連絡した。太郎がどんな様子だったかを知りたいというのが1番で、学校での出来事も情報共有したかった。タイミングよく太郎の担当の先生が対応してくださった。放課後等デイサービスでは、太郎自らリコーダーのテストについて話を少ししたらしいが、その後は何もなかったかのようにいつも通り過ごしていたということだった。Upload By まゆんそして次は、家にいるばあば(私の母)に電話をした。太郎に何かあって事情を話している時、ばあばはいつも冷静に「ほう。ほう。ふむふむ」と聞いてくれる。そしてばあばはこう言った。「さっきデイサービスから帰ってくるなり、リコーダーのテストができんかったって言ってたけど、自分から言えてるけん大丈夫やろー」私はこの言葉にまた安心した。その後、太郎と私は家でリコーダーの練習を一緒に行い、無事にテストを受けることができた。結局テストは、先生が太郎と話し合ってくださり、特別支援学級まで音楽の先生が来てくれて一対一で実施したという。テスト終了後の太郎は、特にその出来事を口にする訳でもなく、いつものように穏やかに過ごしていた。Upload By まゆん多方面からの支え問題が発生した時、こうして多方面からの支えがあることで私と太郎は生活ができているのだと思います。また、日頃から周りには感謝しているのですが、こういう問題発生時により強く周りの方の力というものを感じることができています。今回も学校の先生方、放課後等デイサービスのスタッフの方、私の母、そして太郎に力をもらい乗り越えることができました。太郎の特性については情報共有シートに記載して学校の先生に渡してあるのですが、どのような時にどのような場面緘黙になるのか、実際目の当たりにしないとよく分からないものだと思います。今回の件は、太郎を知ってもらうという意味では良い機会になったのではと考えています。今後も同じような場面が学校に限らず出てくると思いますが、その時その時で対処の仕方も変化していくと予想しています。引き続き、周りの人と連携をとりつつ今後も過ごしていきたいです。執筆/まゆん(監修:初川先生より)太郎くんのリコーダーテストをめぐる出来事から、情報共有について、また太郎くん・まゆんさんを支えるネットワークに関するエピソードをありがとうございます。特性についてあらかじめ情報共有していてもすべてをフォローできるわけではなく、学校はさまざまなイベントがあり、また子どもたちも日々変化・成長があるものです。こうして、何かあった際に、担任の先生と保護者の方との間ですぐに共有し、対応を検討できるのはいいですね。また、太郎くんの緘黙度合いがなかなか長時間にわたったことから、関係する方々ともその後の様子を聞き取りされたのもいいことだと感じました。保護者がお子さんの様子を常に見ているわけにもいかず、また、場や人によってお子さんも出し方を変えるかもしれない。リコーダーのテストにうまく対応できなかったという、いつもとは違う展開があったことを関係者が知っておくだけでも大事ですし、中心にいる太郎くんの様子を確認できたのは安心につながります。お子さんは自分の身に起きたこと、自分の気持ちをすべて説明できるわけでもないので、それぞれで様子をよく見てもらう意味でも、そして今後似たような出来事への予習としても情報共有は大事であると感じるお話でした。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年01月31日小中5年間不登校だった娘わが家の娘、いっちゃん(ASD(自閉スペクトラム症)・現在16歳)は、小学校5年生から中学時代まで不登校でした。発達障害と睡眠障害(非24時間睡眠覚醒症候群)があり、朝決まった時間に登校することが難しかったのです。全く行かないというわけではなく、午前中に目を覚ましたときは登校します。とはいえ、泊まりの学校行事には不参加でしたし、年間の出席日数でいえば、欠席していた日のほうがはるかに多かったと思います。欠席した日の勉強はどうしていたかというと……学校には月に7日程度は行っているわけなので、登校した際に、休んでいた間の授業プリントや小テストなどをもらってきて(大体教室の机の中に入ってる)、自宅で教科書を見ながら授業プリントで自習するということはやっていました。Upload By 寺島ヒロ小テストは、親か6歳年上のお兄ちゃんが付き添って、そのプリント自習の後にやらせていました。そのテストの正答率は8割ほどでしたが、担任の先生によると、ほかの児童生徒さんともさほど差はないということだったので、そのまま提出していました。ちなみに、定期テストの結果は真ん中くらい。都市や国の名前や、技術や家庭科のテストで「けがき線」や「まつり縫い」のような用語を問われると正答率が悪いという特徴は見えてきていました。親目線では「あんまり勉強してないな……」という思いはありつつ、しかし、家では絵を描いたり音楽をつくったりとほかの興味のあることで忙しくしていたので、本人も家族も「特別遅れてないならまあいいか」という感じでした。高校は通信制の学校に進学しました。通信制の高校に進学して通信制の高校に進学すると、当然ですが出席日数などは問われません。もともと自習が苦にならないタイプの娘、繰り返して見ることのできるビデオ授業がメインになったのは大変ありがたかったようです。担当の先生のテレビ通話でのフォローアップも受け、着々と単位を取得することができました。【いっちゃんが通信の高校に進学した顛末はこちら】↓しかし、希望の大学を目指そうとすると少々、いえかなり厳しい状態です。小中学校を通して学校の制度や教育システムがどうにも理解できなかったいっちゃんでしたが、高校でキャリアガイダンスや進学指導を受け……発達的にも良いタイミングだったのでしょう、やっと理解し「わたしは大学に行きたい!」と言いだしました。思いも新たに、しかし高校1年生の終わりに受けた初めての模試の結果は撃沈! それでもあきらめるにはまだ早いですし、受験がなくても勉強はしておくに越したことはありません。「数Bが全然分からん!」「忘れていることが多すぎるみたい」という娘にも、はっきりとした課題感が生まれてきたよう。今が学び直しのチャンスかも!?というわけで、娘と話し合って、高校2年生の夏休みは小学校4年生の内容から勉強のやり直しをすることに決めました。紙の本のドリルで学び直し!やり直しの方法は、市販のドリルを本屋で買って、一緒にやることにしました。Webには、高校が用意してくれたものも含めて、インターネットでできる便利な問題集などもありますが、紙の本のほうが親がついて見てやりやすいですし、手で紙に文字を書き入れる「面倒くささ」も、娘には良い経験になるだろうと思いました。さあ、これで夏休みの間にみっちりやるぞ!と思った矢先……なんと、わが家にコロナが襲来。ばたばたと家族が倒れる事態になってしまいました。危うし、学び直し!しかし、「決めたことはやる!」ASDのこだわりか、家族の中でいち早く復活した娘、家族が寝ている中、一人もくもくとドリルを進め、夏休みの終了日までに、ついに中学3年生までの分を終わらせてしまいました!Upload By 寺島ヒロただ「勉強しなきゃ」「いい点とらなきゃ」と思うだけでは難しいけど、4年生の分のドリルを終わらせる、その次は5年生の分のドリルを終わらせる……みたいに具体的にクリアする目標が見えていたので、手が付けやすかったのかもしれません。大学受験にはまだまだ遠いけど……今(高校2年生の冬)も、高校1年生の分のドリルで復習しながら、学校の勉強を進めています。「ドリルまた買ってきて」とか「英検の参考書が欲しい」と言ってくるようになり、小中の頃に比べると、はっきりと自主的に学んでいる感じがしています。執筆/寺島ヒロ(監修:新美先生より)不登校中と通信制高校進学後の学習について、詳しく聞かせていただきありがとうございます。学校にあまり通えていなくて睡眠障害で生活リズムが不安定だった時でさえも、学校のプリントを自習で着々とやりこなし、テストで正答率8割、真ん中ぐらいの成績をとれていたということは、いっちゃんは自習学習に向いている、学習が基本的に苦じゃないタイプの方なのでしょう。思春期の不登校期間に、コツコツ学習をこなしている人は多くない印象なので、とてもすごいです。そして通信制高校の学習スタイルは、そんないっちゃんにはとても合っていたのでしょう。さらに、高校でのキャリアガイダンスや進路指導がヒットして、明確な目標ができてしまえば、強いですね。苦手なところもしっかり分からないところまで戻って学び直しをして、分かる、できるようになる手ごたえをつかめてきたのでしょう。こうなってくると、学習が楽しくなってきて、目標までまっしぐらですね。楽しみです。正直、ここまでコツコツ自主的に学習できるお子さんばかりではありません。これはお子さんのタイプにもよるので、どんなに周りが仕向けようとしても動かないこともあるでしょう。学習に限らなくても、明確な目標やモチベーションがあって、本人のやり方にフィットすると、見違えるように何かに打ち込めることもありますが、その出合いがいつ来るのかは誰にも分からず、気長に見守るしかないこともありますね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年01月30日大きな不安を抱え始まった幼稚園生活。順調に見えたけれど……わが家の長男あーにはASD(自閉スペクトラム症)があります。まだそうとは知らなかった頃に迎えた幼稚園の入園式で、一人だけ走り回り、夫の眼鏡も私のコサージュ(借り物!)も破壊する暴れっぷり……。大きな不安を抱えた状態で迎えた幼稚園生活ですが、いざ始まってみると一見そこまで大きな問題があるわけではありませんでした。登園不安が強いわけでもなく、泣いたり暴れたりが頻発するわけでもない。トイレにも行ける。身辺自立や集団参加には難があるけれど、年少さんでは珍しいことでもない。それでも私は、3歳半健診で発達について相談しようと決めていました。私が発達相談をしようと決めた2つの理由3歳半健診であーの発達について相談すると固く決意していたのはなぜか……母親の勘、というとあまりにもふわっとし過ぎているので、当時をよくよく思い返して言語化を試みようとするのならば、やはり「わが子とコミュニケーションが取れないことによるストレス」の一文に尽きると言えるでしょう。3歳なりのコミュニケーション。いや、年相応でなくてもいい、それが叶わないフラストレーション……。おしゃべりはするんだけど、会話のキャッチボールができないんですよね。例えば、「パパはどこに行ったの?」と聞いたら「パパはお菓子が好きなんだよ」と返ってくる。「パパ」という単語は分かる。それについての話をする。おしゃべりはできている……だけど、それってコミュニケーションではないんだよなああああ(ここで頭を抱える)。会話の……ストラックアウトなんだよなああああ!(うまいこと言えた?)Upload By よいこ一事が万事これなんです、ちなみに12歳の今もその傾向が非常に強いです。そして謎遊び。幼稚園で、小高い山の上に立って葉っぱや砂をひたすら落とす。人とは遊ばないし、いったい何が彼をそんなに魅了しているのか分からない……。それがダメってわけじゃないけれど、おままごとやごっこ遊び、お友達との交流などにだんだんと興味を持ち始める年齢において、意味のない(ように見える)ことを2時間とか平気でできる。Upload By よいここの2点から導き出される結論……。わたしにとって、あーは「よく分からない」存在でした。わが子なのに「よく分からない」存在?募る不安自分で産んだ、自分の子どもなのに、何を考えているのか、よく分からない。いや、生まれた時からべったりで育てているので何が好きか、何が嫌か、は分かります。何が欲しいかも。でもそうじゃなくて、こちらの言うことを理解してくれない、してくれようともしないあーは、私にとってまるで「未知の生き物」のようでした。そして理解できないことで、なんだか不安になるのです。Upload By よいこしかし相手は自分の子ども。「可愛さ」と「分からない」が拮抗する毎日。よく分からない、を分かりたい。愛しているから、可愛いからこそ理解したい。そしてこの不安から脱して安心したかったんだと思います。発達相談を決めた一方で……「気のせいだよ」という言葉も期待していた自分というわけで、発達の相談をすることになんの迷いもありませんでした。でも一方で心の奥底で、「気のせいだよ」「そんなことないよ」「普通に生きていけるよ」って言われることを望んでいた気もします……。Upload By よいこ母の気持ちは常にアンビバレンス。だってそうじゃないー!?できれば普通がいいじゃん、みんなと一緒がいいじゃん!そんな物分かりよくいられるわけなくない??と、思い返せば雑念だらけの診断前。いいじゃんいいじゃん人間だもの!そんなこんなで、運命の(?)3歳半健診の日を迎えたのでした。執筆/よいこ(監修:初川先生より)3歳の時に発達相談を受けると決断された理由のシェアをありがとうございます。自分の子どもなのに分からない。可愛いと分からないが拮抗する。よいこさんが言葉にしてくださった当時の心境に共感なさる読者の方も多いのではないでしょうか。よいこさんが理由として挙げられた、会話のキャッチボールならぬ「会話のストラックアウト」(お伝えされたいニュアンスがよく伝わる表現ですね)。そして、「謎遊び」。このくらいの年の子どもはこのくらい育っているはず、こうして遊ぶはずという知識や経験との違和感。体感としておぼえる違和感。そうした違和感はとても大切だと相談業務にあたりながら日々思います。そうした違和感をきっかけに相談やお子さんへの理解、支援などへつながることができます。場合によっては、「心配しなくて大丈夫ですよ」の場合もあるかもしれませんし、支援者の方としばらく一緒にお子さんの成長を見守る伴走体制に入ることもあると思います。どんなお子さんであっても、子育ての中で悩ましく思うときはあると思いますが、そこに何らかの診断が後からつく場合にはその悩みや違和感、葛藤の度合いがかなりのものだと思います。保護者が日々悩みながら、アンビバレントな心境になりながらも、子どもは育ち、子育ては続いていきます。お子さんはもとより、保護者を支える意味でも相談や支援につながってくださることを支援者としては願うところです。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年01月26日1歳半で言葉が出ていなかったわが家の長男けんとは3歳の時に自閉スペクトラム症と診断を受けました。けんとが周りの子たちに比べて発達がのんびりだと、私がハッキリ気が付いたのは1歳半健診の日でした。けんとが初めての子どもだった私はどれくらいの月齢の子が、どういう行動をするのか……という知識がありませんでした。母子手帳などに書いてある「生後〇ヶ月で〇〇をする」というのは「あくまで平均的な目安で、人それぞれ発達のスピードは違うだろうから、気にしなくてもいいのかな」と、のんびり考えていたのです。けんとは1歳半で言葉が全く出ていませんでしたが、私はそれほど気にしていませんでした。Upload By ゆきみ1歳半健診の通知が届き、指定された日程に保健センターへ。会場には、けんとと同じ1歳半とは思えないような子どもたちで溢れていました。けんとは言葉が全く出ていなかったことに加え、歩き方も、ほかの子に比べると不安定でヨチヨチ。落ち着きがなく、常に興味のあるものを見つけては歩きまわっていました。ほかの子が保護者とやりとりをしながら、椅子に座って順番を待っている姿に私は愕然。順番を待っている間だけで、けんとは「何かがみんなと違う」と私は感じました。そして、名前が呼ばれ、いざ1歳半健診がスタート……とはならなかったのです。やりとりが上手な周りの子たちに驚愕案内された大きな部屋では、数組の親子が椅子に座っていました。けんとは、自分の席につくまでの間に気になるものを発見したのか、そこへ行きたくて全然座ろうとしません。そして大声で泣き出してしまいました。落ち着かせている間、私はほかの子の様子をチラチラと見てみました。周り子が保護者と一緒に、大人しく椅子に座っているだけで「すごい!」と驚きました。さらに、保護者とコミュニケーションを取りながら、保健師さんとも指さしや言葉をつかったやりとりが上手にできている姿を見てさらに驚愕。Upload By ゆきみ当時のけんとは言葉も出ていないうえに、指差しも全くしていませんでした。大号泣するけんとをあやしながら見渡した、周りの子の1歳半健診の模様は、とにかく衝撃的で驚きの連続でした。ほぼ何もしないまま1歳半健診が終了けんとの様子が少し落ち着いたので1歳半健診がスタートしました。保健師さんがけんとに挨拶をしたり、話しかけたりしても反応は薄く、保健師さんの顔を見ることもしませんでした。保健師さんからの問いかけに、ほぼ何もしないまま1歳半健診が終了。周りの子たちとの違いに不安になりすぎて、私は放心してしまいました。その様子を見たからなのか、保健師さんが「希望者は臨床心理士さんによる発達相談が受けられますが、どうなさいますか?」と声をかけてくださいました。待ち時間はかなりあるようでしたが、発達相談を受けて帰ることに。Upload By ゆきみ発達相談から繋がっていった支援別室で臨床心理士さんによる発達相談を受けました。私と臨床心理士さんが、けんとが産まれてから今までの発達について話をしている間も、けんとは落ち着きがない様子。けんとは落ち着きがない様子。臨床心理士さんは、けんとの行動を観察したあと、けんとに話しかけ、いくつか質問を出しました。しかし、けんとは心理士さんの話を聞こうともしませんでした。当時、私は次男を妊娠中。あと数ヶ月で里帰り出産を予定していたので、次男の出産を終えたあと、またけんとの様子をみていただくということでその日は終わりました。Upload By ゆきみ次男を出産し1ヶ月月が過ぎた頃、けんとは2歳になりました。しかし、相変わらず言葉は出ておらず、指差しもしません。改めて発達相談をして、けんとの様子を見てもらいました。その発達相談にて、市で行っている親子教室を紹介してもらいました。そして年少の歳から、地域の幼稚園に通うのではなく、少人数で手厚く療育を受けられる市立の発達支援施設に通うことを親子教室の先生、臨床心理士さんなどに薦められ、通うことを決断。親子教室や発達支援施設では発達に関する勉強会があったので参加し、けんとの特性について理解を少しずつ深めていくことができました。今、思い返してみても、周りの子たちとの違いに驚愕しすぎた1歳半健診。あの日、発達に関する悩みがスタートした、私にとっては思い出深い1日となりました。執筆/ゆきみ(監修:室伏先生より)1歳半健診でのけんとくんのご様子、ゆきみさんのお気持ちを具体的に共有していただき、ありがとうございました。想定外の状況に、ゆきみさんのご不安や戸惑いもとても大きかったのではないかと思います。自閉スペクトラム症のお子さんの中には、普段と違う状況が苦手で、目新しいものに注意を惹かれやすかったり、不安感からそわそわしたりパニックになってしまうという子も多いものです。健診などの普段と違う環境では、なおのこと力を発揮するのが難しいかもしれません。早い段階で療育に繋がることができたこと、勉強会への参加などを通して家族の方がご理解を深めることができたこと、本当によかったですね。またけんとくんに関する記事を楽しみにしております。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年01月24日いじめを避けて私立中高に入学した私ASD(自閉スペクトラム症)がある私は、公立小学校でひどいいじめを受けていました。兄が心配して両親に「義子は中学以降は私立に行かせてやってくれ、公立に進むともっとひどいいじめに遭うと思う」と頭を下げてくれたことから、中学受験をして中高一貫の私立の進学校に通うことになりました。進学校では好成績によってスクールカースト上位におっとりしたお嬢様の集まる女子校だったその学校では、スクールカーストはスポーツの得意さや言動のそつなさではなく、成績の良さで決まるところがありました。私はピタッといじめられなくなりました。「あの常に学年で3位以内の宇樹は私の友達なんだよ!」とほかの子に自慢する子や、いつも成績のいい◯組の宇樹ってどの子? と見にくる、他クラスの子もいるぐらいでした。コミュニケーションの面ではやはり浮いていたので、うっすら敬遠されて、同じグループの子たちが気づいたら休みの日にこっそり私抜きで遊びに行っていたとかはありましたが、それ以上のことはありませんでした。親や先生の期待×完璧主義・白黒志向で無理が加速仕方ないことなのですが、世間や周囲の大人の誰にも発達障害の知識がなかった30年前当時、両親には「学校の成績がいい = 有名大学に行って有名企業に入るか士業などに就いてエリートになる」といったイメージしかなかったようです。口でははっきり言わないものの、両親が私に「エリートになるに違いない」という期待を寄せているのはひしひしと伝わってきていました。また、父は幼稚園ぐらいの私に「世の中は戦場で、お前たちはそこで戦い抜いて生きていくんだ」と言って聞かせたり、小学校時代に学校に行きたくないと言ったら「いま学校に行かなくなったらお前の学歴は途絶えてしまう。そうするとお前は将来路頭に迷う。だから頑張って学校に行きつづけろ」と諭したりしました。ASD傾向のある幼い子どもだった私が、父の言ったこのようなことを鵜呑みにして恐怖し、「全力で努力しつづけて勝つ(良い大学に行くなどしてエリートになる)のでなければ生きていけない」と思い込んだのは自然なことです。私は本来の特性にもある完璧主義・白黒思考を加速させ、強迫的なまでに勉強に打ち込むようになりました。食べる寝る以外ほとんど勉強に捧げた青春と弊害中高時代は慢性的に過労状態でした。耳鳴りや口内炎、風邪がいつまでも治らないなどは日常茶飯事。いつも歩きながら眠り込んでしまいそうなほど眠くて、「思う存分眠れるなら思い残すことはない」と思うくらいでした。いま思えば学校まで片道で2時間近くかかる通学で毎日午前5時起きというだけでも体力的に無理がかかっていただろうに、高3になれば、午後4時ぐらいに学校が終わると予備校の始業に間に合わせるために文字通りダッシュして電車に飛び乗り、帰宅は午後11時近く。その後、午前0時過ぎまで復習をして、寝るのは午前1時半……。睡眠時間は慢性的に4時間前後でした。そして定期テストのときには徹夜に近いことをし、カフェイン飲料で心身に鞭を打っていました。自室を片づける気力体力が枯渇していて、部屋はいつも足の踏み場もないような状態。休日は夕方まで寝っぱなし、ニキビは顔じゅうに広がり、頭がクラクラしてくるほどの冷えのぼせに苦しめられ、毎度の生理痛はあまりの強さに時にはトイレで昏倒するほどになりました。部活を楽しむ余裕などもちろんなく、アルバイトや遊びで人間関係を楽しんだり学んだりする余裕もありませんでした(余裕もなかったし、「学生の本分は勉強だ」として父から禁止されていました)。幅広い経験を積んでたくさん勉強以外のことを学ぶべき時期に、あまりにも勉強、それも詰め込みの受験勉強ばかりに費やしてしまったこと、また、大事なこの時期にあまりに自分の身体を痛めつけてしまったことを、今深く悔いています。大学に入っての挫折、バーンアウトからのひきこもり傾向勉強も大学選びも自分の意志から出たものではなく、親の勧めや期待に盲目的に従うような形で300%ぐらいの無理を何年も続けていた私。親の言っていたとおりの有名私大に受かった時点で、すべてのモチベーションが吹き飛んでしまいました。バーンアウトです。入ったのは、有名作家を多数輩出している文学部でしたが、授業が始まってすぐに、「私はどうやら文学に興味がないらしい」と気づいてしまいました。ショックが大きすぎて、しばらくの間、頭が真っ白に……。高校までのように、「学校側が決めた時間割があって、何時から何時まできっちり授業に出なければいけない」といったような縛りがなくて自由なこと、どんな学生生活にするかを自分で選んで自発的に進めていかなければいけないことも、私の混乱に拍車をかけました。私はロクに大学の授業に出なくなりました。当時勃興期だったインターネットでチャットに没頭するなどして、だんだんに生活は昼夜逆転。昼間に出かけられなくなっていきました。この頃、悪いことに母の調子も悪くなります。私が出かけようとすると何かと妨害してきたり、私が日常の世話をしてやらねばならなくなったりしたことで、私はここから今の夫に出会って実家を出るまで10年間ほど、暗黒の準ひきこもり生活が始まることになってしまいました。ASDの私が今思うこと ーーまずは自立訓練、そして手に職が必要だった最近、ある自立訓練施設が「働き続けられる人間になるためには、スキルを身につける前に、心身の健康管理をして上手に日常生活を継続できるようにする『自立訓練』が必要」ということを発信しているのを見て、本当になるほどと思いました。誰もこのこと(世の中には生活の仕方について訓練が必要なタイプの人がいて、私がそのタイプだということ)を知らなかったのだから仕方ないのですが、私は子どもの頃から最近に至るまで、「私も当然、スキルを身につければ働けるようになるはずだ」と思って必死に勉強したり資格勉強したりしてきたのです。でも言われてみれば確かに、私に必要なのは、無理しすぎず適度に努力しつづけて結果的にものごとをやりとげることだったり、その前提としての無理しすぎないマインドセットだったり、そういうことだったのですね。また、やはり仕方がないことではありますが、「学校の成績がよい = 有名四年制大学に入るのがベスト」という、私の親世代の価値観も、結果的に私を苦しめてしまったなと思います。今となっては、私のようなタイプは、何か専門学校に通って「手に職」となるようなスキルや資格(特に、資格がなければその仕事に就けない「業務独占資格」)を身につけて早めに社会に出たほうがよかったのではとも思います。20代から30代は、定型発達の若者にとっても社会生活を送る上で大事な人生経験を積む時期。発達障害のある若者は人生経験から何か学んで自分のものにするのに時間がかかるので、この時期に何かしらの社会活動が継続できるようコンディションを保っておく(=ティーンのうちに本人にそぐわない無理をさせない)のが何より大事だと思います。私は自分に合う進路選択ができなかったため、この時期をひきこもってしまって学習機会を損失したり、立ち直るための治療に精一杯で過ごしてしまって充分なキャリアも積めなかったりしたので、次の世代の子どもたちにはもっと違った生き方をしてほしいと願っています。文/宇樹義子(監修・鈴木先生より)父親にもこだわりがあり、同じようなASD特性のある方だったのではないでしょうか。また、自分のやってきたことや、やってこれなかったことを、過剰に娘に押し付けて巻き込んだケースとお見受けしました。バイトや部活をして社会性を高めることも重要ですが、中には人間関係などでやめていく人も見られます。大学に入って自由が逆に混乱を招いたように、ASDの受け身型タイプの方は、人からやることを示されてその通りに行っていく方が楽なことも一方ではあるものなのです。中学高校の進学校で学んだことは決して無駄ではなく、将来に必ず役立つものと思います。プラス思考でやっていきましょう。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2024年01月19日「見た目」が変わっていると見失う?わが家の長男、タケル(ASD/自閉スペクトラム症・現在23歳)はASDの特性からか、物を見つけることがとても苦手です。タケルが机の上に置いていったものを、私がどこかに移動させたりすると、どんなに近くてももう見つけきれません。横向きに置いてあった財布を、自分でうっかり縦向きにしていただけで見失ったこともあります。Upload By 寺島ヒロタケルの記憶の中の「カタチ」が少しでも変わっていると、「違うモノ」と思い込んでしまうようです。だから、目の前にあるものでも、見つからないなんてことがしょっちゅうあります。帰省のついでに読まない本を持って帰ろうと……さて、昨年のお正月のことです。久しぶりに大分県の自宅に帰れることになったので(私たち家族は息子の通学のために大阪府に家を借りて普段はそちらで暮らしています)、大阪の家のリビングの本棚にあった、もう読まない私の本を持ち帰ることにしました。2段の棚に入っていた本は、中くらいの段ボール箱ちょうど1個分になりました。大分の自宅まではおよそ500キロ。車で8時間半の道のりです。私と夫で交代しながら、丸一日かけて帰省しました。大分の家では、長らく放っておいた部屋の掃除、そして近所の方へのご挨拶、地元でしか買えない調味料などを買いに行くなどして忙しく働きました。その間、子どもたちはそれぞれの部屋を掃除し、大阪に持って行きたいものを物色したりなどしていました。イリュージョン? ないはずの本が本棚に!?翌日また一日かけて大阪に帰宅しました。タケルといっちゃんは、2人とも重そうな紙袋を持っています。大分の家で見つけたもう一度やりたいゲームや本などを持って帰ったとのこと。大阪の家は借りている家ですから、あまり荷物を増やしたくないんだがなあ……とは思いましたが、気持ちは分かります。「仕方ないなあ、自分で置き場所を決めて片付けるのよ」と言い渡して、その日は寝てしまいました。翌朝、目を覚ますと……なんと! リビングの本棚に、私が大分の家に持って帰ったはずの本が詰まっているではありませんか!そう、タケルが大分の家で見つけて「めっちゃいい本があった!」と思い、大阪の家に持って帰ってしまったのです!タケル「ちょうど良い感じに棚が空いてた」って! 違うヨ!その本、以前からここにあったんだヨゥ……。Upload By 寺島ヒロ意識するかどうかの差?ほかにも持って帰ったり、持って行ったりしたいものがあったのに……。この本たちが往復1000キロも無駄に旅したのかと思うと、膝が抜けるくらいガックリしました。一度ちらっと見ただけの漢字やテレビCMを完璧に記憶していたりすることもあるのに、ずっと目の前にあった本の背表紙は覚えてないタケル。これもASD特有の感覚や、認知特性によるものなんでしょうか。発達障害、まだまだ謎なことが多いです。執筆/寺島ヒロ(監修:鈴木先生より)もしかしたら、ASDだけではなく不注意優勢に存在するADHDの要素もあるのかもしれませんね。物をなくしたり、見つけにくかったりする人はいつも同じ場所にしまう習慣をつけるか、透明のケースに入れておくような工夫が必要です。色で分けたりファイル化したりすることで見つけやすくなるかもしれません。これを逆に考えると、例えばテレビを過度に見すぎているお子さんの場合、テレビを大きな布で覆っておくのもよいかもしれません。布で覆うことで視界に入らなくなるため、テレビの存在に気付かず見ようとしなくなる可能性もあるからです。このように、ASDの特性を踏まえた発想ができるとよいかもしれませんね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年01月18日2歳目前、保健所へ発達相談の電話をした娘が2歳になる目前、発達に何かあると確信した私は、保健所へ発達相談の電話をかけました。数日後、家に保健師さんが来て、娘の様子を詳しく確認してくれました(もともと1歳半健診で要観察になっていたのでそこまでの流れはスムーズでした)。保健師さんに娘の今までのことや発達で不安なことを伝えたところ、市でやっている「親子教室」をすすめられました。ですが話をよく聞いてみると、親子教室へ半年通ったあと、さらに支援が必要なお子さんに対しては、発達支援センターでの約3ヶ月間の療育プログラムをすすめるということでした。わが家は転勤族で5ヶ月後に引っ越しすることが決まっていました。そのため、私は親子教室を飛ばして、発達支援センターへすぐに通えないか聞いてみました。娘の様子を見ていた保健師さんは、少し考えたあとに「お母さんにならお伝えしても大丈夫そうなので……」と前置きしてから「しぇーちゃんは、発達支援センターに通うことをおすすめします」と言って、発達支援センターのパンフレットをくれました。これ以上モヤモヤする期間を過ごしたくなかったので、保健師さんが柔軟に対応してくれたことには感謝しかありません。いよいよ発達支援センターへUpload By マミヤ私は翌日、保健師さんに教えていただいたとおり、さっそく発達支援センターに電話をかけました。発達支援センターでは、未就園児を対象にした親子通所の発達支援プログラムを提供しているとのことでした。週に1回2時間、全12回で構成されていて、最後の12回目は発達検査を受けた上で、医師が診察をするとのことでした。緊張と期待を込めて参加した初回は、娘の多動が大爆発し、とにかく室内を追いかけ回した日でした。親子で一緒に運動をするのですが、娘はたくさんの刺激に興奮して声を上げ、私のことは全く視界に入りません。ほかのお子さんが遊ぶおもちゃすべてに興味を示し、おやつの時間も少ししか座らず(偏食で食べない)、終わった時には親子で汗だくでした。ほかのお子さんもそれぞれ発達に不安な部分があるからこそ、ここに通っているのだと理解してはいましたが、正直なところ、娘はその中でもとんでもなく突出していると思いました。唯一の救いは、ここでは娘の大変さを誰もが分かってくれているということでした。先生方もフォローをしてくれるし、ほかのお母さん方も見守ってくれている気がしました。私は誰よりも激しく動き回る娘を追いかけながらも「ここで療育を受けたら、娘に何かいい変化があるかもしれない」という希望を捨てず通い続けました。発達支援センターでの娘の成長Upload By マミヤそれからも、発達支援センターではいろんな経験をさせてもらいました。初めは興奮して走り回っているだけだった娘ですが、だんだんと先生の指示が聞こえるようになり、ダンスなどにも参加するようになりました。そして、そんな娘の変化を先生方やほかの保護者の方が一緒に喜んでくれ、今まで孤独だった育児が変わりました。その日その日をなんとか過ごすのではなく、今日は家で娘と絵カードをやってみようとか、療育でやった体遊びをしてみようとか、娘との時間を意識した生活に変わったと思います。そして、発達支援センターの最後の療育の日、絵本の活動の時間に椅子に座ったことがない娘がしっかりと座って聞いていました。発達検査を受けた娘。医師から結果の説明を受けるUpload By マミヤそしてプログラムの最終日、娘は発達検査を受けました。検査が終わると医師から結果の説明と合わせて診察がありました。先生は療育中の娘の多動や目の合いづらさなどが気になるとのことでしたが、まだ2歳なので、現時点で診断するかどうかはあくまで保護者の希望を優先しますと言われました。引っ越し先で療育に通うためには受給者証が必要だったため(引っ越し先の自治体では、受給者証発行には医師の診断書が必要でした)、そのことを伝えると、その場でASD(自閉スペクトラム症)と診断されました。結果的に、2歳目前で自ら発達相談の電話をかけたことで、その後の早期療育や発達検査、診断へとつなげることができました。今回はわが家の娘が2歳4ヶ月という比較的早い段階で診断を受けた経緯を書きましたが、お子さんの発達に悩んでいらっしゃる方の参考になれば幸いです。執筆/マミヤ(監修:新美先生より)2歳前に発達に何かあると感じ、積極的に動いて早期療育・診断に結びついたエピソードを聞かせていただきありがとうございます。発達障害の概念自体、ここ10数年で急速に広まってきたため、保護者の方の認識は非常に幅広くまちまちです。地域のシステムとしては、あまりそういうことを感じていない保護者の方が戸惑わないように、ゆっくり、段階的に、マイルドに療育などにつなげていくような仕組みになっているところが多いかもしれません。なのでマミヤさんのように、すでに自ら発達に関する情報を求められて、お子さんに必要なことはなんでも早めに受けたい知りたいという場合は、記事にあったように積極的にこちら側の思いを伝えていくのは良かったと思いました。発達支援センターのように、お子さんのさまざまな特性に対応してもらえる場があると、余計な気をつかわず親も子も安心して、さまざまな経験を積むことができますよね。また発達検査や診断を受けることで、よりお子さんに適した情報や支援にたどり着くメリットも大きいと思います。そのあたりが詳しく伝わるエピソードを聞かせていただき、ありがとうございました。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年01月16日まずは利用可能な放課後等デイサービスの情報を集める!住んでいる地域によって放課後等デイサービスの数も種類もさまざまだと思いますが、私の住む地域には、近所に特別支援学校があるので、放課後等デイサービスの数は比較的多いほうだと思います。でも多いからこそ、どの施設を選べば良いのか分からず悩むことになりました。そもそも、どこにどのような施設があるのか?まずは情報を集める必要がありました。児童発達支援センターや、市役所の子ども課などで近辺の放課後等デイサービスのパンフレットや資料を集め、何十軒とある施設の中から行きたい場所を選ぼうとしたのですが、全ての施設を見学する時間も余裕もありませんし、どの施設がわが子に合うのか?どのような雰囲気なのか?は紙面上の情報だけでは全く分かりませんでした。Upload By みん数ある放課後等デイサービスの中からわが子に合う施設を選ぶポイントは?そこで、私はインターネットやSNSなどで気になる施設の情報を調べてみることにしました。写真やブログなどを見ることで、少しですがどんな施設なのかを知ることができました。また、すでに放課後等デイサービスへ子どもを通わせているママ友たちに話を聞いて情報を共有し、Pを通所させたいと思う施設をある程度ピックアップしていきました。それから、施設に直接電話をかけ見学の予約を入れようとしたのですが、施設によっては見学できたとしてもすぐには空きがなく、利用できるのは半年~1年は待たないといけないところや、希望する日数や曜日は定員がいっぱいで利用ができないところもありました。そうやって地道に電話をかけ続け吟味した結果、私はPが利用できそうな施設を4ヶ所見学することにしました。見学の時は学校と家からの距離、送迎の有無、安全面を重点的に確認しました。Pは施設で起こったことなどを私に話すことができないので、防犯カメラはついているか?ワンフロアでたくさんの人の目がある場所で過ごせるか?またP本人や利用者の誰かがパニックになった時にクールダウンができるような場所があるか?脱走できてしまいそうな窓やドアはないか?などを確認しました。見学の時は、同時に利用者の様子も見ることができたので、全体的な年齢層や障害の程度、どのようなことをして過ごしているのかも分かり、イメージしやすかったです。そしてPの障害の程度や特性などを施設側へ説明し、Pがどのような子か、ある程度理解していただいたうえで、契約する放課後等デイサービスを決めました。Upload By みん受給者証のひと月の上限日数をどのように利用するのかを考えるわが家の場合は受給者証のひと月の利用上限が23日なので、週に4〜5日放課後等デイサービスを利用することができます。23日全てを同じ施設で過ごすのではなく、預かり型の施設と療育特化型の施設の2ヶ所と契約をすることにしました。なぜなら1ヶ所だけだと、もしもその施設がPに合わなかった時や何かのトラブルがあって辞めないといけなくなった時、また施設自体が突然移転や閉鎖になった時に困るかもしれないので、2ヶ所に分けて通わせたほうが良いと思ったのと、違う施設を利用することで、療育もレスパイトもどちらも取り入れることができると思ったからです。Upload By みん現在Pは、この曜日はどちらの放課後等デイサービスへ行くのかも理解していて、両方の施設で楽しく過ごすことができています。私もスタッフの皆さんと連絡帳や面談、送迎時にPの支援に関することを話し、それらの情報を特別支援学校とも共有していただいているので、安心して預けることができています。預かり型、療育特化型、どちらにもたくさんのメリットがあるので、その話はまた次回詳しく書けたらと思います。執筆/みん(監修:初川先生より)Pくんが利用する放課後等デイサービスの選び方、実際利用してみての感想などのシェアをありがとうございます。就学後の生活を組み立てるにあたって、放課後等デイサービスについて情報を知りたい、何から検討を始めたらよいか悩ましいと考えている方にとってはとても参考になるお話でした。地域によって放課後等デイサービスの数や種類はだいぶ異なります。またどのような障害をお持ちのお子さんが利用する事業所かということもさまざまなので、まずはお住まいのエリアで情報収集をと思います。Pくんが利用しているところは、スタッフの方との連絡がスムーズで学校とも情報共有していただいているとのこと、そしてPくんが楽しく過ごせていること、何よりです。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年01月15日そもそもチックって……?それまでの私のチック症に対する認識子育てをしている方なら、一度は耳にしたことがあるんじゃないかと思うチック症。私は恥ずかしながら息子が発達障害と診断されるまで、「あー、聞いたことある。ストレスとかが原因やっけ?」くらいの認識でした。2~3歳頃から息子が目をぎゅっと目をギュッとまばたきするようになった時も、私はただただ「独特な癖だな~」くらいにしか思っておらず、それが“チック症”とは全く結びついていませんでした(この時が一番私の心が平和だったかもしれない……)。Upload By 海乃けだま息子が2歳半の時ASDと診断されたことをきっかけに検索魔になっていた私ですが、発達障害について調べれば調べるほど怖くもなっていました。"発達障害に合併しやすい疾患"とか"発達障害の二次障害"とか……インターネットって良くも悪くもいろんな情報が溢れてるじゃないですか……。もう見れば見るほど、読めば読むほど、「こうしちゃいけない、ああしちゃいけない」ばっかりに目がいって、そのうち「こうしたら二次障害になっちゃうかも!」と、"理想の母像"と"完璧な育児"を自分に課していたように思います(ま、思うだけで全くできてなかったんですけどね……笑)。もしかして……チック症?風邪をきっかけに出てきた症状で気づいた息子のチック。息子が療育に単独で通園するようになった夏(4歳9ヶ月頃)のある日、鼻水と咳がよく出るタイプの風邪をひきました。普段の息子は風邪をひいてもあまり鼻水や咳が出ないタイプだったので、その時の風邪は「珍しく鼻水も咳も長引いてるなぁ」と思っていました。痰が絡んだような"ゴホゴホ"の咳が、徐々に"コンコン"になり、治ってきたかなぁと思っていた矢先、"コンコン"の咳の後に"エ゛ーーーッヘン"という妙な咳払いがつくようになりました。治りかけで喉が痒いのかな~なんて最初は思っていたのですが、そのうち"コンコン"の咳もなくなりいよいよ全快しても"エ゛ーーーーッヘン"は治りません。『…………え?これ、もしかして……チックなんじゃ?』そう考え出したら最後、もうその"エ゛ーーーッヘン"が気になって気になって仕方がありません。息子がその咳払いをするたびに「またやってる……あ、また……え?10分おきくらいにやってないか??」と頭の中は咳払いでいっぱいになっていきました。Upload By 海乃けだま小児精神科の定期受診で相談してみると……一日中咳払いをする息子にいよいよ「やめてくれぇー‼︎」と爆発しそうになっていた頃、ちょうど小児精神科の定期受診がやってきました。診察室でも相変わらず"エ゛ーーーッヘン"を連発する息子。しかし先生は何も言いません。発達の状況、最近の困り事などを一通り聞かれた後、最後に「ほかに何か気になることある?」と聞かれ、思い切って先生に「この咳払いって、やっぱりチックですか?」と聞いてみました。先生からは「あーー、そやね。チックやねー。でも指摘せずに、気にしないのが一番よ。そのうち消えてくからね」と大事な感じはなくサラッと返答されました。『やっぱりチックやったんか……』と落ち込む一方で、先生のこのあっけらかんとした返答に少し気持ちが楽にもなったのを覚えています。息子のチック症のそれからと今……息子のチックに初めて気づいたのは4歳の頃の風邪がきっかけですが、思い返せば、2~3歳頃に「独特な癖だな~」としか思っていなかった目をギュッとまばたきする行動も、おそらくチック症状だったのだろうと思います。そのまばたきもいつのまにかしなくなっていました。"エ゛ーーーーッヘン"という咳払いのチックの行方はといいますと、夏の終わり頃にはいつのまにかしなくなり……新たに首をすくめるというチックが現れました(笑)。それまた首をすくめるチックも、冬ごろにはいつのまにかなくなり……代わりにしゃっくりのようなチックが現れ……というように、わが家の息子のチックはさまざまな症状へと変貌しながらも繰り返し出現しています。現在はというと、先月インフルエンザにかかり、またもや"エ゛ーーーーッヘン"の咳払いのチックが出ています(いや、戻ってくんのかーい!笑)。病院の先生に言われた、『気にしない』『注意しない』の姿勢で今も見守り続けています。Upload By 海乃けだま執筆/海乃けだま(監修:室伏先生より)息子さんのチック症に関して、ご共有ありがとうございました。チックは比較的よく見られる症状で、お子さんでは10人に1~2人ほどと言われています。けだまさんが共有してくださったように、チックは、少ない時期があったかと思えば、また増えてということを繰り返すことも多いですので、一喜一憂せずに長い目で見守っていただくのがよいと思います。特に学年の切り替わりやイベントの多い時期などに増えて、ひと段落すると落ち着くというお子さんも多いようです。症状は緊張している時に出やすいお子さんもいらっしゃれば、自宅のようなリラックスできる環境で増えるというお子さんもいます。発症は幼児期~小児期が多く、成人期までに軽快、消失してしまう方が多いとされています。一過性で1年以内に症状が消失してしまうこともよく見られるので、軽い症状であれば、指摘したり叱ったりせず、見守っていただくのがよいと思います。日常生活に影響が出るような場合(大きな声で叫んでしまったり汚言があり周囲への影響がある、チックによる体の動きが大きく苦痛がある、本人がとても気にしていたりチックのせいで自己肯定感が低下しているなど)や長期化する場合には、薬剤による対症療法や認知行動療法などが行われることもあります。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略
2024年01月15日自閉症娘、中学入学で部活デビュー!広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)のある娘は、中学1年生。中学生になってから、自分の意志で部活を始めました。Upload By SAKURAいろいろと苦手が多い娘。初めは娘が入部することで、何かトラブルが起きないか、迷惑をかけるのではないか、心配していましたが、顧問の先生から話を聞いたり、娘の楽しそうな様子を見て、部活動を通じていろんな経験をしてくれるだろうと、私たちも嬉しく思っていました。Upload By SAKURAある日、ふとした疑問が……そして、入部してしばらく経った頃……Upload By SAKURA中学の2、3年生に「先輩」をつけて話す娘を見て、「あーさんも先輩後輩の関係に入ったんだな~」と感慨深いものを感じていたのですが……ふと思いました。Upload By SAKURA「先輩」はつけているけど……敬語は?使ってる?気になった私は、娘に確認してみることにしました。娘、先輩に対してタメ口なことが発覚!?Upload By SAKURA娘は察することが苦手。暗黙の了解で理解することはできないのです。周りを見ることも苦手なため……Upload By SAKURA同級生と先輩の会話を聞いて、合わせるということもできていませんでした。私たちは娘に話をしました。Upload By SAKURAUpload By SAKURAUpload By SAKURA中学生になり、「これはこう」という決まりきったことだけを教えるより、いろんな背景や事情も教えた方がいいと思っていましたが、娘にとっては混乱するようでした。様子を見て、教えていきたいと思います(笑)執筆/SAKURA(監修:初川先生より)中学生になったあーさん、部活に入ったのですね。中学生になると突然上級生の敬称として「先輩」がつき、敬語で話すことになりますね。小学校の時は「さん」「くん」づけで敬語もなく遊んでいたのに、途端に文化が変わる感じがありますが、よくよく考えると戸惑ってしまうのも無理はないなと感じます。そうした、昨日まではこれでよかったのに、今日から(中学生になったら)こうなるという変化も、誰もはっきりとは教えてくれないもの。多くの子たちはなんとなく状況を見ながら、中学生としてうまくなじむ流儀を身につけてゆくのでしょうが、暗黙の了解や空気を読むことが苦手なASD特性のあるお子さんにはそもそもそこに気づかずにいるかもしれません。そうした独特の文化、そして関係性のように深まったら砕けた言葉でも構わないといった“ルールに幅や変化の余白があるもの”の教え方の難しさがこちらのエピソードでよく伝ってきますね。まずはシンプルなルールから教えて、アドバンスなルールはその都度あるいは慣れてから教えていく。それで良いと思います。敬語を使わないことで不利益や誤解が生じる可能性が(残念ながら)あるので、まずは年上の人には敬語を使うのだと伝える。中学校生活のみならず、それ以降でも汎用性の高いスキルとして使えますね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年01月10日弟ふーが発熱。解熱後兄弟同じ寝室に寝かせたら、長男も発熱して急に寒くなった秋の日、弟のふーが鼻水を出し始めました。やがて発熱したふーは、1週間保育園を欠席しました。幸いにもインフルエンザではありませんでした。ふーの熱も下がり明日から保育園に行こうという日、それまで隔離していたふーを、いつものようにミミの隣で寝かせました。翌日のことです。ミミが体調不良を訴え、高熱が出てしまいました!私は(ふーからうつっちゃったのかな……?もう少し隔離しておけばよかった……?でもミミのクラスでもインフルエンザが大流行してるし、どこからうつったかは分からないな……)と思いつつも、二人連続の発熱にガックリ。落ち込みつつも、子どもがいるとこれもよくあることですので、すぐ切り替えてミミを看病をしていました。「弟のせいだ」と高熱で苦しみながらブツブツ言い続ける長男のミミUpload By taekoミミの熱は高く、とてもつらかったと思います。苦しそうに寝込みながらミミは「ふーちゃんのせいだ」とブツブツ。つらい原因を弟のせいにしていました。私は、「ふーからうつったとしたら仕方ないよね。でもミミは学校に行ってるから、学校でうつったかもしれないし、私からかもしれない。これは分からないよね」と言いました。それでも納得がいかないミミは「ふーちゃんのせいだ!」。つらいのは分かるので多少は仕方がないことかもしれませんが、ただただ弟を責め続けるミミの様子を私は悲しく感じていました。インフルエンザ検査を嫌がり「弟なんていなければ良かった」とまたマイナス発言。その言葉を聞いた先生は?ミミの熱が高いので、かかりつけの小児科でインフルエンザの検査をすることになりました。Upload By taeko先生は手袋をはめ「お母さん、押さえてて!」とただならぬ雰囲気。女性の職員さんも一緒にミミを押さえてくれました。一方、過去にやったインフルエンザ検査の痛みを思い出したようで、本気でもがくミミ……。4年生になったミミは力強く、私と職員さんでは押さえきれず、ミミは床にずり落ちたりと、もうすったもんだでした。そんなドタバタを越えて、ようやく検査できました。ミミは検査が痛いことや羽交締めにされたことなどが悲しくて、ここでも「ふーちゃんのせいだ、弟なんていなければ良かった」とマイナス発言……。私はどうしたものかと溜息です。するとそんな私に気づいた先生が、私に(いつもこうなの?)と言うように目くばせしてくれました。こちらの先生は、ミミが赤ちゃんの頃から診てくれているので、ミミのASDの特性をよく分かってくれています。私が「つらいことがあるとマイナス発言するんです」と伝えると、先生はなるほどと納得したようで、ミミにこう言ってくれました。「弟がいて良かったんだよ、1人より楽しいことが増えたと思うよ。あと、弟くんはインフルエンザじゃないから、もしインフルエンザだったら、きっと学校でもらってきたね」さらに「よく考えてごらん?まだ弟くんが赤ちゃんだった頃、まだ免疫も弱くて風邪の経験もない赤ちゃんは、きみからいっぱい風邪をもらっていたと思うよ。病気は上の子から下の子へうつるほうが多いんだ。むしろ、下の子から免疫がある上の子にはうつりづらい。つまり、きみの方が弟くんにうつした回数のほうがよっぽど多いはずだよ」と冷静に伝えてくれました。Upload By taekoミミはこの先生の発言に納得したようでした。反論することもなく、検査結果が出るまで大人しく待っていてくれました。私は個室でミミを抱きしめて待ちました。ミミの検査の結果は?ミミの検査の結果はズバリ、インフルエンザでした!ふーからうつったのではなく、おそらく学校でもらってきたのでしょう。そして、その後はふーへマイナス発言することはありませんでした。きっとミミは熱を出したとき「ふーからうつったに違いない」と思い込み(無理はない状況ではありましたが)、熱でつらい状況を自分だけで抱えられず、自分以外を責めることでなんとか堪えていたのかなと思いました。そして、先生から理路整然と説明された内容に納得し、それで弟へのマイナス発言が消えていったのでしょう。自分で違うと納得できれば、むやみに相手を責めたりしないようです。やがてミミも熱が下がり、食欲も戻りました。朝ごはんにベーコンを出したところ、ベーコン大好きなふーはミミにスリスリ頬ずりをして、ミミにおねだり。ミミはふーに自分のベーコンをひとつあげていました。優しいミミに戻って良かったです。今後もマイナス発言をすることがあると思いますが、悲しい気持ちを聞いた上で、お互いの良いところを伝え続けようと思いました。Upload By taeko執筆/taeko(監修:鈴木先生より)困ったことがあると他人のせいにしてしまうなど、自己中心的であったり、マイペースさといったものは、ASDのあるお子さんに見られることが多い傾向にあります。このような発言は、学校など今後ほかの場面でも見受けられるかもしれません。マイナスではなくプラス思考になるように見方を変えていく必要があります。それには当院でもやっていますが、感情(アンガー)コントロールプログラムの受講をお勧めしています。怒りを他人にぶつけるのではなく、自分の中で消火していく方法を学ぶのです。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年01月09日小学校入学直後から始まった「行き渋り」現在小学6年生のわが家の長女『姉子』は、赤ちゃんの頃から繊細なところはあったものの、幼稚園の時は楽しく園生活を送っていました。そして、いざ小学校に入学!「さあ、きっとこのまま楽しく小学校に通うはずだし、私も幼稚園の送り迎えから解放されるぞー!」と思っていました。最初の頃は、保護者や先生に見守られて集団で登下校して楽しそうにしていた姉子。しかし、入学から1週間ほど経つと、朝泣き出すようになり、登校前に腹痛や頭痛を訴えるようになりました。Upload By スパ山けれども、一旦登校してしまえば、そのまま学校で過ごして帰ってくるので、朝の登校は私がつき添い、校門まで先生に迎えに来てもらうという形になりました。当時はほぼワンオペ育児だったので、下のきょうだいたちの送迎もあり、姉子を送ったらすぐに家に戻らなければならず、校門で泣いている姉子を先生に半ば強引にお願いして帰ることもありました。第一子だし、まだ1年生だから「最初はこんなもんだろう」と、私は楽観的に思っていました。それが2学期になり、3学期になり……、もう他の同級生は一人で登下校するのがへっちゃらになっているというのに、姉子の行き渋りはずっと変わりませんでした。親としては放っておくわけにもいかないので、なだめたりすかしたり、あの手この手で登校させようと必死でした。ある日突然始まった「チックの症状」Upload By スパ山ある日突然、姉子が目をキョロキョロ動かすようになりました。さらに、まるで何かに引っ張られるように首を振るようになりました。それを見た私は、学生の頃に児童発達関係の専攻をしていた経験から、「あ、チックだ」と思いました。チックは癖のようなもので、幼児期から青年期にかけて現れる子がわりと多い症状だそう。原因など解明されていないことも多くありますが、決して育て方が悪いとか、愛情不足などではないと言われています。姉子本人も、出したくて出しているわけでもないので、止めることもできません。指摘すると悪化することもあるらしいので、「やめなさい」「またやってるよ」など言わず、そっと『あたたかい無視』をすることでほとんどの場合、自然におさまっていくと習いました。でも、いくら知識があったとしても、わが子にチックが出たとなるとやはり不安だったので、念のため、かかりつけ医に診てもらおうと思い、姉子に気づかれないように気をつけつつ、チックの様子を動画に撮っておきました。そして予防接種のついでに動画を見てもらうと、「チックが出やすい年齢だし、そのうちおさまるので指摘せず見守っていい」と、お医者さんからもアドバイスをいただき、待つことにしました。学校の先生方にも姉子のチックの症状について伝え、配慮していただきました。低学年だったからなのか、クラスメイトから指摘されることもなく、症状は良くなったり悪くなったりを繰り返したものの、姉子のチック症状は1年ほどで完全に出なくなりました。小学生になって初めての個人懇談で「発達検査」を薦められるUpload By スパ山姉子にチックの症状が出始めた頃とほぼ同じ時期に、小学生になって初めての個人懇談会がありました。その時に初めて担任の先生から姉子の学校での様子を聞いた私。それは、「本当に姉子のことなのか?」と、耳を疑いたくなるようなことばかりでした。例えば、「名前を呼ばれた人からプリントを取りに行く」のような全体指示が伝わりにくく、呼ばれていないのに取りに行ってしまい、別に叱られていないのに、嗚咽が止まらないほど大泣きしたり、ほとんどのテストが白紙だったり、授業中に教室から飛び出して校舎の外で泣いていたなど……。行き渋りはあったものの、登校さえしてしまえば、一日学校で過ごして下校できていたので、何も問題なく学校生活を送っているものだと私は思っていました。そして担任の先生から「発達検査(WISC)を受けてみてはどうでしょうか」と言われ、そこで初めて姉子にも発達障害があるのかもしれないと思いました(2歳下の弟のハジュがすでに発達障害の診断を受けていた)。まさに寝耳に水。いや、寝耳に氷水くらいの衝撃でした。正直なところ「あ、この子もか」と目の前が真っ暗になりました。発達検査で凸凹が分かった!Upload By スパ山すぐに発達支援センターへ相談に行き、2年生になってすぐWISCを受けました。発達支援センターはすでに弟が通っている所で、姉子も何度か付き添って行ったことがあるので、心理士さんも弟の担当をしてくれている顔見知りの方にお願いしました。姉子が私と離れることを激しく嫌がったので、発達検査に同席させてもらいました。姉子は緊張がとても強く、一つの質問に3分~4分ほど黙って考えこんでしまうので、だいたい90分程度だと言われていた検査に2時間半もかかってしまい、終わったときにはぐったりしていました(それに根気よく付き合ってくれた心理士さんには感謝しかありません……)。結果はかなり凸凹があり、知的能力についてはボーダーかどうかギリギリのところ。しかし、検査中の緊張の強さから正確に判断できないとのことで、しばらく様子を見ることになりました。検査の結果や検査中の姉子を見て、今まで本人は相当しんどい思いをしてきたことが分かりました。私は姉子に申し訳ない気持ちでいっぱいで、今まで気づかなかった自分をすごく責めました。行き渋りやチックは姉子から出ていたSOSだったことにやっと気づくことができたのです。そして、発達検査を受けたことで姉子の特性や困り事を知ることができたので、「上手にサポートできれば学校生活も楽しめるかもしれない」と、淡い期待を抱いていた頃、コロナ禍が始まってしまったのです……。コロナの影響でさらに大変な事態になってしまったわが家。そのお話は別の機会に書きたいと思います。執筆/スパ山(監修:初川先生より)姉子ちゃんの小学校入学した後のエピソードをありがとうございます。幼稚園保育園から小学校という場に変わり、朝校門や児童玄関で泣いてしまうお子さんは結構いらっしゃいます。保護者が玄関などまで送っても泣いてしまい保護者と別れがたいお子さんに対して、保護者が笑顔で去りながら先生方にお子さんを託すという方法はよく取られる方法です。それで朝の会や1時間目頃までに気持ちが切り替わり教室へ入れる、活動に参加できるのであればよいかなと思います。それ以降まで涙が止まらない場合などは別のやり方も検討してみるのもよいでしょう。そうして学校というものに慣れていくことが新入生の時期には通過するプロセスではあります。チックに関しては、どういう時にチックが出やすいか観察してみるのは有効です。家でも学校でも出るのか、緊張したときだけなのか、逆にリラックスしたときにでるのかなどです。いずれにせよ、何らかストレスが過度にかかっているのではないかなと気を配りながら、チック自体はスパ山さんがされたように本人には指摘せず、見守るのみにしていく。そうした対応が一般的です。頑張りすぎているサインかもしれないと思って生活を見直してみたり、先生に学校での様子を聞いてみたりするのもよいでしょう。個人懇談会にて、学校での姉子ちゃんの苦戦する様子を知ったとのこと。だいぶ驚かれたことと思います。学校、集団生活、一斉での指示理解、決められた活動に取り組むという設定……そうしたものの何かにつまずきが見られた、あるいはとても苦手としているということでしょう。帰宅するとほっとして、学校でのいろいろを良くも悪くも周囲に感じさせないという面もあったのでしょう。気になることがある場合(行き渋りもそうですし、そもそも幼少期の様子から学校や集団生活の中での苦戦が想定される場合など)は、連絡帳や電話などで、お子さんの学校での様子を(懇談会を待たずして)聞いてみてもいいですし、先生のほうで気になることがあったら教えてほしいと頼んでおくのも一つです。発達検査によって分かること・分からないことありますが、まずはざっくりとした知的レベルや得意不得意に関して客観的に掴むには有効です。検査受検にあたっても、姉子ちゃんの抵抗はなかなかのものだったのですね。新奇場面(新しく、珍しい場面)への苦手さ、見通しのつかなさなどが強いとなかなか検査者と二人きりで検査室に入れないことがあります。それでも検査の公平性を保つためにも基本的には保護者とは分離して実施できるよう、最大限工夫するのですが、なかなか難しかったからか保護者が同席した形での実施になったということですね。こうした場合は少数で、基本的にはお子さん一人で受検するものになります。そうした緊張の強さ、そしてなかなかに熟考・長考したというところで、分かっているのに答えられなかった可能性などが浮上するため、全体として参考値扱いになったのではと想像します。ただ、指示を聞いて、期待される回答や言動を取るということや初めての環境で良く知らない人と、というところの掛け合わせでかなり困難が生じやすいことがよく分かり、ということは学校生活もなかなかにしんどい思いをしながら過ごしている可能性が想定されたということですね。家庭での生活が姉子ちゃんにとって安心安全で、そこまでの不適応を家庭の中では出さずにやってこられたからこそ、学校のような集団の場では苦手さが重なっていたけれど家庭からは見えにくかったのでしょう。気づいてあげられなかったという後悔の思いも語られていますが、ただ、「家庭では楽しそうに過ごしていたんだよね」というところは姉子ちゃんにとって過ごしやすい環境を提供できていたからこそでもあります。行き渋りやチックがSOSであったのはそうかもしれませんが、気づくのに遅すぎることはありません。気づいてからの対応が大事です。検査の結果や検査時の様子もふまえて、学校での支援や家庭でのサポートが姉子ちゃんに合ったもので充実してゆくといいなと思いました。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年01月08日順調だった小学校時代、しかし中学入学後トラブルが増えた自閉症息子。勉強に部活と複雑に……10歳でASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けた息子の話です。小学校では通常学級に通っていましたが、そこでは解決できないような目立ったトラブルはありませんでした。しかし中学に入ってからは、勉強、部活にとトラブルが増えていき、対応に苦慮しました。小学校まではなかった学習トラブルが!アルファベットは鏡文字だらけ!小学生の頃からバランスの取れた字は書けませんでしたが、それでも文字を書くこと自体に困っておらず、特に対策もしていませんでした。しかし、中学1年生になると、教科書のルビが見えていないことが発覚。さらに画数の多い漢字についても、読めるけれど形がよく分からないので上手く書けず、本人は困っていたそうで……。そこで中学2年生になってからは通級指導教室に通い、授業やテストではルーペを使わせてもらっています。また、教科によっては拡大教科書を使ったり、授業で使うプリントを拡大コピーしてもらうこともあります。拡大したものを使うことで、ずいぶん楽になったようです。中学から本格的に始まった英語にはとても苦労しています。ローマ字のように、音をそのまま書けばいいわけではないので、スペルの綴りミスが頻発。さらに、アルファベットは、『b』と『d』、『p』と『q』、『a』と『u』をよく間違えます。『J』『N』『S』は鏡文字です。文法も、助動詞の使い方で混乱するなど、日本語とは違うため大変なようです。Upload By ユーザー体験談ただ、音読は得意なため、英語のスピーキングは流暢。ここでも得意不得意の凸凹を感じています。勝利至上主義の厳しい運動部へ入部。先生に配慮をお願いすると「任せてください!」と返事をしてくれたけれど……また、中学に入ると息子はソフトテニス部に入りました。顧問は若い女性の先生で、試合に勝つために厳しく、熱心に指導していました。息子がそんな厳しい練習をしている部活に入ると思っていなかった私。心配はありましたが息子の希望だったので、見守ることにしました。幸いにも部員は先輩を含めみんな優しかったようです。顧問の先生へは、最初に2つ配慮のお願いをしました。曖昧な表現がわからない場合があるので、できるだけ具体的に指導してほしいこと、疲れていることに気づかないので、一定の時間ごとに休憩を入れさせて欲しいことです。先生は「分かりました!大丈夫です、任せて下さい!」「ほかにもそういう子がいるので大丈夫です」、大会前には「少しでも息子君が活躍できるようにしたいと思います!」と言ってくれ、理解をしてくださっている感じでした。Upload By ユーザー体験談ただ、定期的にお便りを出してくれるのですが、「ミスが多くて気持ちが悪いプレーがある」、「このままでは、いつまでたってもあの学校には勝てない」、「気持ちで負けている」というような内容が多く、とにかく勝ちにこだわっている様子。もし部活でもこんな感じだとしたら、息子に合っているとは思えないし、つらい思いをしている子もいるんじゃないかと心配でした。指導されないまま半年以上放置されていた?顧問の先生に不信感が爆発入部して半年ほどたった10月のことです。たまたま部活の様子を見ていたほかの保護者の方から、「息子君、もしかして打ち方を知らないんじゃないの?」と心配そうに声をかけられました。まさかと思い私も様子を見て見ると、本当に息子が打ち方を知らないままテニスをしていたことが分かりました。入部して半年以上、もうすぐにシーズンオフなのになぜ打ち方を知らないの?大会や練習試合も打ち方を知らないまま出ていたの?誰も打ち方が違うって教えてくれなかったの?疑問が頭に浮かびました。私はあくまでも冷静に、責めるような言い方はせず先生に聞いてみました。すると、「打ち方のおかしい子が何人かいます。シーズンオフにきちんと指導するので、それまで待ってください」とのこと。息子以外にも打ち方を知らない子がいるかもしれないということにびっくりしました。下手な子どもの指導は後回しだったのかと、先生に対してかなり不信感を覚えてしまいました。息子は、誰にも打ち方が違うと言われたことがなかったそうで、事実を知ってショックを受けていました。その影響か、ようやく学校に慣れて落ち着いてきたのに、また学校を休むことが増えました。部活も出られずに帰ってきて、うつむきながら「打ち方が違うって教えてもらえなかったのは、やっぱ違うと思う……」と呟いていました。その後、副顧問の先生が打ち方を知らなかった子どもたちを集めて指導してくれ、何とか部活に出られていたのですが、ある日、お便りをもらってきました。「努力の仕方を間違えると、どんなに頑張っても上達しません。正しい努力ができるよう、自分で考える力をつけて下さい」というような内容でした。先生にそんなつもりはなかっただろうとは思いますが、なんだか「打ち方を知らないのは、考える力がない本人が悪い」と言われているように感じました。息子はお便りを読んで、「部活では『努力が足りない』って言われるし、どうしたらいいか分かからない……」と悩んでしまい、とうとう「部活がつらい」と言い出しました。私もこれ以上は無理だと思い、しばらく部活を休ませることにしました。Upload By ユーザー体験談休部から自分の意志で復帰した息子の成長に感動息子には「3月いっぱいくらいまで休んでみる?先のことはまた考えよう」と伝え、息子もしばらくのんびりしていましたが、2月頃、突然「部活出てきた」と復帰しました。私や事情を知っているスクールカウンセラーの先生などは驚いて、部活に復帰したことをかなり心配しましたが、本人は戻れたことが嬉しかったようです。復帰したいということを顧問の先生に伝えたら、先生は息子に謝罪してくれて、息子も「やっと顧問の先生にちゃんと教えてもらえるようになった」と嬉しそうでした。部活で配られていたお便りは、復帰した頃にはなくなっていました。Upload By ユーザー体験談数ヶ月休んでいたので、復帰するには勇気が必要だったと思いますが、自分の意志で復帰して本当に偉かったと思います。以前の息子なら、そのまま辞めていたかもしれません。どうやら「辞めてもいい」と思っていた私より息子のほうがしっかりしていたようです。その後、異動のために顧問の先生が変わりました。息子は今、楽しく部活に参加しています。中学校に入ると今までなかったようなトラブルがあり、問題も複雑になり対応に苦労しましたが、その分息子も大きく成長したように感じます。これからも、困ったことがあったらSOSを出せ、みんなと気持ち良く助け合える関係をつくれるような力を、身につけていってほしいと思います。イラスト/星河ばよエピソード参考/こぺはは(監修:鈴木先生より)本人は努力していても「努力が足りない」と言われると自尊心が下がります。少しでも努力した分を褒めてあげればよかったのです。できないことよりもできることを褒めてスモールステップでできたことを伸ばしてあげるということは、学習面でも同じです。たとえテストで30点だったとしても「よく30点取れたね、次回は40点を目指そうね」でいいのです。またASDには発達性協調運動症という不器用さが併存していることも多々あり、球技が苦手なお子さんも多くいます。無理せず少しずつ伸ばしていけばいいのです。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2024年01月07日1歳半の息子、発達に気になるところが……。1歳半健診で相談しよう!前回の記事で書いたように、赤ちゃんの頃から発達に気になるところがあった息子のたーちゃん。1歳半の頃にはさらに、癇癪、パニック、こだわり、偏食、異食などもでてきており、自宅保育をしていた私はノイローゼ気味でした。Upload By みかみかん1歳半健診ではたーちゃんの様子を専門の方に見てもらって、たくさん質問して不安を解消しようと意気込んでいました。聞きたいことや話したいことをメモにまとめたり、健診当日に向けてしっかり準備をしていました。万全な対策をして、いざ1歳半健診へ!たーちゃんはこの頃から不安感が強めで、人見知りと場所見知りがひどく、パニックや癇癪になることもありました。なので無理をさせないように外出は慣れた場所ばかりでした。1歳半健診が市の児童館で実施されると知ってからは、少しでもたーちゃんが場所と雰囲気に慣れてくれたらと思い、週に何度かその児童館に遊びに行きました。健診当日、いつも通り機嫌よくたーちゃんは児童館へと入っていきました。場所に慣らしておいた努力が報われたかもしれない……と安堵しながらホールの扉を開けると、そこではたくさんのお子さんと保護者が健診を受けていました。場所見知りとパニックが起きてしまう……その様子を見たたーちゃんは、いつもと違う雰囲気に気圧されたのか、激しく泣き始めてしまいました。Upload By みかみかん裸足で外に出ていってしまう勢いでパニックになり、なんとか抱っこして抑えている私は「まさか」「やはり」「なんで」が混ざった感情でぐちゃぐちゃでした。他に泣いている子どもはおらず、楽しそうにお友達とおもちゃで遊んだりしており、保護者の方も談笑しながら順番を待っていました。その中でひときわ大きい声で泣いて暴れるたーちゃんにチラチラと向けられる視線がつらかったです。大人2人がかりでの身体測定……なんで他の子と同じようにできないの?その後も私や職員の方がいくらなだめてもたーちゃんが泣き止むことはありませんでした。大人2人がかりで泣いて暴れるたーちゃんの身体計測をしている様子を見るのもつらく、もう帰ってしまおうかとも考えました。しかし、たーちゃんにはつらい思いをさせてしまうけれど、ずっと悩んでいた発達についてしっかりと相談したいと心に決めていました。私も頑張るから最後の問診まで頑張ろうと、暴れるたーちゃんを抱きしめていました。待望の問診。たくさん聞きたいことや話したいことがある!しかし……問診に呼ばれた時にも、まだたーちゃんは泣いて暴れており、私は疲れきっていました。心理士さんが質問をし、私が答えますが、ずっと大声で泣いているたーちゃんを抱えたままではまともに聞き取ることすら難しかったです。Upload By みかみかん他のお子さんは、積み木ができるか、指差しができるかなどもその場で観察されていましたが、パニック状態のたーちゃんができるはずもなく。1歳半の時点で「ワンワン」しか発語がなかったので、言葉の遅れも心配しましたが、心理士さんからは「様子見しましょう」としか言われませんでした。そして、「発達が気になったら電話して」と電話番号が書かれた紙を渡され、1歳半健診は終わりました。まともに健診を受けられなかったことにショックを受ける児童館を出て夫と会うと、たーちゃんはやっと泣き止みました。他のお子さんがみんなできている健診もまともに受けられなかったことや、他のお子さんとの違いを目の当たりにしたショックで、夫の運転する車内で私は泣きそうでした。発達について不安に思っていた気持ちが、確信へと変わっていきつつありました。療育に繋がった現在のたーちゃんと私そして2歳になる前に、やはり療育につながりたいと思い、案内された電話番号にかけて発達についての相談をしました。それから親子教室や民間の療育につなげていただき、少しずつ私のメンタルも回復していきました。1歳半健診では「ワンワン」しか言えなかった息子も、今ではうるさいくらいおしゃべりです。Upload By みかみかん初めての場所を不安がる時もありますが、パニックを起こすことはほとんどなくなりました。発達について他のお子さんと違うなと思うこともありますが、個性だと思えるようになってきました。1歳半健診の時にはショックで受け入れられなかったけれど、時間をかけて私も受容できたのだと思います。1歳半健診を終えて落ち込んでいる保護者の方へ……1歳半健診で「様子見」「要観察」と言われた保護者の方、たーちゃんのようにお子さんが泣きっぱなしだった方、今は気落ちされているかもしれません。少し動けるような気持ちになって、やはり発達が気になると思ったら、ぜひ誰かに相談してください。一人で抱え込まず、助けを求めた方が良いと私は思います。差し伸べた手は、誰かがきっと握ってくれます。執筆/みかみかん(監修:新美先生より)1歳半健診の時のエピソードを聞かせてくださりありがとうございます。乳幼児健診は、身体的な不調・疾患を見つけると共に、いわゆる発達の遅れや偏りの見られるお子さんについて養育不安のある保護者の相談を受け、専門機関につなぐといった役割があります。大人数で決められた形式で行われるので、いつもと違う環境で落ち着かないお子さん、多動のあるお子さん、人見知りの強いお子さんにとっては、正直なところとても侵襲的な環境であることは事実です。発達障害特性のお子さんを見つけることが重要視されるずっと以前から同じようにやってきており、わざとそういう環境をつくって特性が目立ちやすくしているというわけではないのですが、これを工夫して構造化して、人数を少なくして、嫌な思いをさせないようにという方向にはなかなか話が進んでいません。実際、健診で嫌な思いをしたという話は本当によく聞き、申し訳ない気持ちになります。ただ健診をきっかけに地域の保健師とつながり、お子さんに必要な情報にたどり着いてもらえるよう、実施主体の市町村担当者も苦心されていることとは思います。みかみかんさんのように、健診でショックを受けたけれども、それをきっかけにして相談や専門機関につながってよかったと思えるのであれば幸いです。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年01月04日自閉症息子、分かりづらい気持ちを、表情マークで表現現在、小学2年生の長男けんとは、自閉スペクトラム症と3歳の時に診断を受けました。けんとには構音障害もあり、言葉が不明瞭なことに加え、思っていることを言葉に出して伝えるのが苦手です。楽しそうな時は笑顔でピョンピョン飛び跳ねたり、イヤそうな時は、その場から逃げ出したりするので、その様子を見て親が気持ちを察知。「うれしかったね」とか「怖かったのかな?」と予想した気持ちをけんとに質問していましたが、うれしいのか、悲しいのか、何が怖くて、イヤだったのか、どんな感情を持っているのかというのは、小さな頃からとても分かりづらい子でした。Upload By ゆきみ小学校2年生から通い始めた放課後等デイサービスでは、その日の終わりに「今日の感想、気分」を提出する課題があります。感想を書けるようになっている記入欄と、その下にニコニコ笑顔のマーク、プンプン怒り顔のマーク、悲しそうな泣き顔のマーク、困っている顔のマークが書いてあり、その日の気分に自分で丸をつけます。けんとは、放課後等デイサービスでの活動を楽しんでいることが多く、感想のところには「かくれんぼが楽しかった」などと書き、その下はほぼ毎回、ニコニコ笑顔マークに丸がついています。ニコニコしていたのに、怒っていた?Upload By ゆきみ通っている放課後等デイサービスでは、迎えに行った時、今日の子どもの様子を聞けるフィードバックがあります。ある日「今日の感想、気分」を書く課題で、けんとが珍しくプンプン怒り顔のマークに丸をつけていました。その課題を見た先生がけんとに、なぜプンプンマークに丸をつけたのか事情を聞き、フィードバックの時に私に教えてくださいました。どうやらお友達に押されてしまったらしく、それが嫌だったようです。しかし、その日の放課後等デイサービスでのけんとは、とてもニコニコ楽しそうに過ごしていたらしく、「怒っている素振りがあったり、嫌な気持ちを抱えていたり」という様子は一切感じられなかったとのこと。言葉で上手く表現できないだけでなく、態度でも分かりづらい感情が隠れているのだと知りました。それ以来「けんとの他にも隠れている感情が見つかるかもしれない……。そして、この表情マークで気持ちを伝え合うことで、人の気持ちに気づくきっかけになるかもしれない…」と思い、不定期ですが、家族でどこかへ遊びに行ったあとなどに、けんとに感想を聞いて、本人が気分マークに丸をつけるというやり取りを始めてみることにしました。『自分の気持ち』『人の気持ち』伝えて分かることUpload By ゆきみ休日、家族でアスレチックへ行った時のことです。身体をいっぱい動かして帰宅し、家族でテーブルに集まり、さっそく今日の感想や気分をみんなで伝え合うことをしてみました。まずは私の番。その日、アスレチックの途中でヘビに遭遇したので、その出来事に触れながら「ママは、今日はとっても楽しかったのでニコニコ笑顔マークに丸!だけど、途中でヘビがいてビックリもしたし、怖かったし……、たくさんの気分があったよ」と、私の気持ちを伝えました。そして、けんとの気持ちを聞いてみると、「ビックリしたけど、ヘビに会えてうれしかった」と言いながら、なんとニコニコ笑顔のマークに丸をつけたのです。私は怖くて必死でしたが、けんとの言葉を聞きながらその様子を思い返してみると、ヘビを見つけた時、確かにけんとは笑っていました。「怖くなかったの?」と聞いてみると「怖くなかった」と。けんとにとっては、初めてヘビが見られてうれしかったのだと知ることができました。私は、自分がヘビが怖いからといって、「けんとも怖かっただろう」と勝手に決めつけていたのです。でも、それは、私の感想。人の思いはそれぞれなのだと、私自身も改めて気づかされた出来事になりました。人に気持ちを伝えようとしている?「イヤだよ、やめて」が言えるようにけんとは小学2年生になりました。最近、本人が以前よりも「人に伝えよう」という気持ちを持つようになったと感じます。学校や放課後等デイサービスなどで、人との関わりを通してさまざまなことを学び、その成果がでてきているのか、つたないながらも自分の気持ちを伝えてくれることが増えてきました。Upload By ゆきみ1年生の頃は学校でギュっとお友達に後ろから抱えられた時、されるがままだったのですが、最近ではお友達に「イヤだよ。やめて」と言えるようになってきたようです。気持ちを伝えられることが増えてきたことで、新たな友達とのトラブルも出てきたりしているようですが、成長したからこそだと思っています。とは言え、まだまだ気持ちを言葉や態度で伝えることが苦手そうな、けんと。その時の感情を伝えたり、隠れた想いを態度で表現したりする方法などを、これからも少しずつ学んでいってくれたらと祈りながら、長い目で成長を見守りたいです。私もこれから起こる出来事を通して、子どもたちと一緒に、その時に感じた想いを伝え合ったりしながら、十人十色な人の感じ方を話し合っていけたらいいなと思っています。執筆/ゆきみ(監修:藤井先生より)自閉スペクトラム症の特徴の一つに自分の気持ちを表現するのが苦手ということがあります。言葉の有無に関係なく、表情の理解や、自分の気持ちを理解するのが難しいお子さんもいます。今回のコラムのように、ゆきみさんとけんとさんが感情を表現する絵カードなどで表現を促すのも良い方法ですね。構音障害があるとのことなので、音声で表現するのが難しい場合には絵カードを用いたコミュニケーション(PECS)なども有効かもしれませんね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年12月26日2回の予防接種、鼻ぐりぐりの検査……インフルエンザには大変要素が多すぎる!?Upload By よいこASD(自閉スペクトラム症)のある長男あーは病院が大の苦手です。まだ幼かった頃は、椅子に座るのもイヤ、静かにしていることもできない、聴診器コワイ、薬も飲めない……。インフルエンザが流行するこの季節は、私もあーも毎年戦々恐々としています。まず予防接種が鬼門。注射嫌いなのに、流行期の直近で2回打たねばならないインフルエンザの予防接種は大変オブザイヤー……!まだ小さかった頃は、あーが暴れないように私が抱え込んでどうにかなったけれど、幼稚園も年長あたりになってくると、病院の診察室に入ることすらできなくて、大泣きしながら走り回って逃げて、受付のすみっこでようやく注射を打ってもらったこともありましたね……(遠い目)。そんな苦労をして予防接種を受けても、かかってしまうのがインフルエンザです。というか、冬は高熱が出て病院を受診すると、とりあえずインフルエンザの検査をしますよね。あーは鼻に棒を突っ込んでぐりぐりするあの検査がとにかく苦手で……。いや分かるよ、お母さんも苦手だよ。痛くて怖いよね。でもなあ……。いつかの高熱で受けた検査が激しくトラウマ化したあー、熱が出た時点で絶望してしまいます。「あの検査する?あれイヤだ。あの検査したくない」と高熱でうつろな目と意識の中、エンドレス怖がり&確認……。お母さんも目がうつろに……。Upload By よいこパニック回避のため母が見つけ出した秘策!ということで……わたし、秘策を用意しました!いつかのネット検索で知ったやり方……なんと、かんだ鼻水で検査してもらうやつ!!!※医療機関によって対応可能なところとそうでないところがあるようです。幼稚園の頃のあーは鼻をかむことができずいつも拭き取っていたのですが(そして小6の今もあんまりうまくない)、鼻かみをこなせばあの検査をしなくて済むと理解すると、めっちゃ頑張って鼻をかんでくれました!えらい!えらいぞー!!(できて当たり前と思われがちな鼻をかむこと……あーにとっては一大事なのです。)まあ、先生が出た鼻水に例の棒をつけて検査するんですが、その棒が出た途端に大パニックになって診察室を駆け出していきましたがね(苦笑)。鼻がかめても立ちはだかるお薬問題。Upload By よいこそしてお薬問題です。インフルエンザにかかるとよく処方される「タミフル」は、子どもの場合、体重の関係で錠剤ではなく散剤(粉のタイプ)が多いかと思いますが、これがまたすごく苦い!!!チョコのアイスやいちごヨーグルトなんかに混ぜてみるんですけど、全てあーはNG……。我慢して飲む、はどうしてもできないあーなのです。ということでインフルエンザにかかったら最後、薬なしで治すしかないあーです……当然お薬を服用するより治るまでに時間がかかる……。こんな調子で、子どもが病気になると親もしんどくなりがちなんですが、最近のあーは病気の時の対処法を身につけたんです!親もしんどい子どもの病気。だけど最近は対処法を編み出して……!?Upload By よいここれまでの経験でお風呂に入れないことも分かっているので、身体は蒸しタオルでよく拭いて、あったかいお茶飲んで、嘔吐用の洗面器持って自分の部屋にこもって静かに一人で寝てくれて、しんどくて体動かない時はスマートスピーカーで音楽を聞いたりして(声だけで指示できるから)!……よくぞここまで成長した……!多分、ASD(自閉スペクトラム症)の特性ゆえの「病気の時」ルーティンが発動してるんだろうな……(病気の時はお風呂に入らない、お腹が緩い時は大好きな牛乳は控える、無理して食べない、吐くかもしれないから準備する、など)。こだわりで大変なことのほうが多いけれど、決まりが守れるっていうのは悪いことばかりでもないなあと思ったり。それでも!健康にこしたことはありません!みなさん、手洗いうがいで充分予防して、冬を乗り切りましょうー!!執筆/よいこ(監修:藤井先生より)よいこさんのコラムを通じて、各ご家庭のご苦労を想像しました。予防接種も、インフルエンザの検査もなるべく負担なく行えるようになると良いのですが、クリニックでもいろいろ工夫していますが、嫌がられることもしばしばあります。インフルエンザの検査については、鼻をかむことができるお子さんの場合は、ティッシュにラップをつけて、鼻をかむことで、ラップについている鼻水から検査することもあります(主治医の先生に確認してみましょう)。診察や検査など嫌だなと感じながらも、お子さんがクリニックに来てくれたこと頑張りを認め、ねぎらうしかできませんが、少しずつクリニックに慣れてくれて、成長する姿を拝見できることは、小児科医として冥利に尽きます。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年12月26日3回の発達アセスメントの結果中学2年生の太郎は、ASD(自閉スペクトラム症)と協調性運動症の診断があり、学習障害がある可能性についても医師から説明を受けています。太郎は過去に3回、発達アセスメントを受けています。3歳・11歳・13歳の時です。この3回とも検査結果には大きなずれはなく、知的発達は平均的な範囲にあるという結果でした。Upload By まゆんしかし、ここで私がいつもひっかかっているのが社会的年齢の低さです。知的発達は平均的な範囲ではあるけれど、生活を一人で行えるかというと、とても厳しいように感じるからです。Upload By まゆんなぜ知的発達は平均的な範囲にあるのに社会的年齢が低いのか。療育センターなどでも説明を受けたのですが、それは言語理解の弱さと関係があるようです。言語理解についての検査の結果では、年齢の半分程度のレベル。これがコミュニケーション能力の弱さともつながっているため、日常生活全般に支障をきたしているという見解になるようです。コミュニケーションだけではなく、読み解く力も強くはないため文章問題や案内の文字などの理解も困難となっています。一方で太郎には得意なことがあります。視覚的な推理(目で見て情報を捉えること)です。幼少期からブロック遊びを得意として写真を見ただけで同じように組み立てることができますし、動画に釘づけになる傾向もあります。こういう得意不得意、凸凹を総合的にみて、知的発達は平均的な範囲にあるという結果がいつも出ているようです。Upload By まゆん母としては、何とも言えない気持ちになります。この社会的年齢はこのままなのか、それとも伸びていくのか。医師からは、言語理解については今後大きく伸びる可能性は低いのではと説明がありました。ということは……社会的年齢もこのままではないのか?そう考えることもあります。Upload By まゆん中学卒業後の進路はどうする?今考えている高校進学の選択肢は二つ。発達障害に対しての理解がある普通科高校と、通信制高校です。Upload By まゆん発達障害に対して理解のある普通科高校は少ないというのが現状です。主治医の先生からすすめられた普通科高校は、自宅から電車で50分ほどかかる所にあります。乗り物酔いやイレギュラーな出来事に対応が難しい太郎にとっては一人での電車通学がどのように影響するかと心配もあります。一方の通信制高校は、幸いにも私たちが住んでいる地域に複数あり、発達障害に対して理解があるところが多いようです。私は、通学日数を選べたり個人授業を受けられたりする学校であれば、太郎に合っているのでは……という印象です。ただ、中学校の個人面談で相談したところ、担任の先生は通信制高校ならではの難しさも感じているようでした。別の機会に詳しく聞いてみようと思ってます。太郎は「高校は行きたい」と意欲をみせてくれます。しかしどのような高校に行きたいかなど具体的な目標はありません。来年4月から、太郎は中学3年生になります。まずは一緒に自分たちの足で高校を見に行って少しでも具体的なイメージ持ち、二人で未来を築いていけたらと思っています。十人十色だから知的発達は平均的な範囲にあるけれど、学校生活を送ることが難しい。そのような場合、どのような高校を選択して、将来の就労など決めていっているのかが気になり、放課後等デイサービスで話を聞いたりもします。そしてやっぱり、発達障害といっても個人の特性があるため太郎には当てはならないなあと思うことが多いです。十人十色。太郎に合った環境を二人で考えて、あとは太郎と私の持っている力で周りを変えていけたら……。心配事は尽きないけれど、そう思っています。執筆/まゆん(監修:新美先生より)知能検査で測れる知的な能力と、生活を自立して行えるかという社会的年齢(適応行動尺度ということもあります)は必ずしもリンクしません。むしろ発達障害がある方は、一般的に知的能力に比して、社会的年齢(適応行動尺度)が低いことは多いようです。知的な能力は経時的に大きく変化することは少ないですが、適応尺度は、ある時を境に変化するということもあります。生活の環境が変わったり、本人が自覚して工夫をし始めたといったきっかけで自分でできることが増えると数値は上がります。逆に不適応を起こして抑うつ状態になったなど、以前にできていたことができなくなることもないとは言えません。一方で、工夫しても環境を整えても難しく大きくは変わらない分野が個人ごとにはあるという面もあります。高校の進路に関しては、知的能力や学習の成績だけでなく、学習スタイル、提出物の量や質、校風(教員の生徒に対する態度や、学生同士)、行事の量や質、通学手段・時間、自由な時間の多少など、さまざまな観点から見ていくことが必要ですね。候補になるところを見学して、ご本人に合うところが見つけていけるといいですね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年12月25日