DSM-5とは?出典 : とは、米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルです。正式には「精神疾患の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」といいます。本来はアメリカの精神科医が使うことを想定したものですが、事実上、国際的な診断マニュアルとして使われています。DSMの初版(DSM-I)は1952年に出版され、以降数回にわたって改訂版が発行されてきました。DSM-5は、2013年に公開された第5版です。なお、第4版(DSM-IV, DSM-IV-TR)まではローマ数字が、第5版(DSM-5)からはアラビア数字が、それぞれ正式な表記です。第二次世界大戦中、兵士の適性検査や帰還兵の治療において精神科医が重要な役割を果たしました。平たく言えば、このときに使われた診断マニュアルが、現在のDSMのもとになっています。第3版(DSM-III)以降、DSMは、精神医学に「共通言語」を与えるという目標を明確に掲げてきました。これは、精神科医の「カン」に頼るのではなく、統一された基準を作り、それにしたがって根拠に基づいた医療行為がなされる環境を整えようということです。この方針が、現在に至るまでDSMのあり方を支えています。これについては、米国精神医学会の説明が簡潔でわかりやすいので引用します。「『精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)』は、アメリカや世界の多くの国々で、ヘルスケア専門職(health care proessionals)が精神障害の診断に対する権威ある指針として使っているハンドブックです。DSMに書かれているのは、精神障害を診断するための記述、症状、その他いろいろな基準です。DSMは、臨床医に共通言語を与えています。臨床医はこれを使って、患者について情報交換し、精神障害の研究に使えるような一貫した信頼できる診断を与えています。また、DSMは研究者にも共通言語を与えています。研究者はこれを使って、将来[診断基準を]どのように改訂できるか研究し、投薬治療やその他の医学的介入の発展を促しています。」(DSM-5: Frequently Asked Questions | American Psychiatric Association.より上記は発達ナビ編集部による抄訳) Frequently Asked Questions | American Psychiatric Association.また、作られた診断基準が適切かどうかを見直し、場合によっては修正することも、DSMが「共通言語」として機能し続けるためには重要でした。そのために、DSMは大規模・小規模な改訂を繰り返してきました。有名な例では、かつて精神障害としてリストアップされていた「同性愛」が、1974年に削除されたという事例があります。DSM-5の内容は?出典 : では、まず、精神障害が大きく22カテゴリーに分類されます。その下に、一つひとつの診断名が挙げられています。たとえば、ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)は、DSMでは「神経発達症群/神経発達障害群」という大分類の下にあります。「神経発達症群/神経発達障害群」には、ADHDのほかに、・知的能力障害群(知的障害)・コミュニケーション障害群(吃音など)・自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害・限局性学習症/限局性学習障害(ディスレクシアなど、いわゆる「学習障害」)・運動症群/運動障害群(発達性協調運動障害、チックなど)が含まれます。どうしてこれらの障害が同じグループに含まれるのか、疑問を持たれる方もいるでしょう。「神経発達障害群」というグループ名が示すように、このまとめ方の背後には、これらの障害はみな神経の発達のしかたという共通の原因に関連しているのではないかという仮説があります。もちろん、これは現在の仮説ですから、DSMの改訂によって今後分類方法が変わることもあるでしょう。DSM-5ではどのような改訂があったの?出典 : 年のDSM-5発表は、1994年にDSM-IVが発表されてから実に19年ぶりの全面改訂でした(ただし、小規模な改訂は繰り返されてきました。とくに、2000年には、DSM-IVの文言のみを大幅に書き換えたDSM-IV-TRが発表されました)。そのため、近年の精神医学の進歩や認識の変化によって、大きく書き変えられたところがいくつかあります。また、英語で書かれたDSM原著だけでなく、日本語訳においても、大きな変化がありました。ここでは、それをいくつか紹介します。最もよく知られているのは、「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)」という概念が導入されたことでしょう。「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」は、DSM-IV-TRで「自閉性障害」「アスペルガー障害」「広汎性発達障害」などと呼ばれていたいくつかの障害をすべて含むものです。つまり、DSM-5では、これらの障害は別々のものではなく、連続した障害なのだ、という見方を新たに採用したのです。「スペクトラム」(連続体)という見方は、DSM-5でとくに重視されている見方です。これは、診断項目に「当てはまるか、当てはまらないか」を判断するよりも、それらに「どの程度当てはまるか」を判断するほうがが適切だろうという考え方です。こうした考え方は、診断名としてはもちろん、診断方法としてもDSM-5を特徴付けている点のひとつです。ところで、「自閉症スペクトラム障害」と「自閉スペクトラム症」と併記されていますが、DSM-5においては、どちらも正しい表記です。DSM-5の日本語訳では、英語の disorder をどう訳すかがはっきりと決まっておらず、「障害」と「症」が併記されています。翻訳の段階では、「障害」をすべて「症」に変えることが提案されました。これは、「障害」という言葉が持つネガティブなイメージを避けることを意図した提案です。しかし、ネガティブなイメージを避けすぎると、今度はかえって過剰診断という別の問題を引き起こすのではないか、という懸念がありました。そうした議論を踏まえて、結局「障害」と「症」が併記されることになりました。日本精神神経学会精神科病名検討連絡会「DSM-5 病名・用語翻訳ガイドライン(初版)」『精神神経学雑誌』116巻、第6号(2014年)429–57ページ高橋三郎・大野裕監訳『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院、2014年DSM-5はどこで使われているの?いつ必要になるの?出典 : が使われるのは、主に、精神医学を研究したりそれを応用したりする場面です。こうした事情は、日本でも世界の他の国々でもそれほど変わりません。医師がDSMに基づいて診断をしていると、患者にとってはどのようなよいことがあるのでしょうか。最も大きいのは、DSMが「共通言語」として機能することによって、精神科医一人ひとりが独自に診断をするということがなくなり、どの病院・医院でもそれなりに統一された医療行為を受けることができるという点にあるのではないでしょうか。しかし、行政や司法の場で主に使われるのは、DSMではなくICD(国際疾病分類)です。詳しくは下で説明しますが、ICDは、国連の専門機関であるWHOが発表している疾病分類マニュアルです。たとえば、発達障害者支援法は「発達障害」をICDに基づいて定義しています。[…]法の対象となる障害は、脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)における「心理的発達の障害(F80–F89)」及び「小児〈児童〉期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(F90–F98)」に含まれる障害である[…]発達障害者支援法の施行について|文部科学省読者のみなさんにとって、「支援やサービスを受けるためにDSMの診断が必要だ」というケースは、あまりないかもしれません。障害年金や障害者手帳のような福祉制度の場合にも、民間の保険会社の場合にも、多くの場合、求められるのはICDの診断コードです。どうやってDSM-5の原文を見るの?診断名の調べ方は?出典 : 残念ながら、DSMの英語原文も日本語訳も、ウェブ上で見ることはできません。DSMは米国精神医学会の著作物であり、一般の書籍と同じように著作権の対象となっています。日本では日本精神神経学会によって日本語版用語監修が行われ、書籍が出版されています。『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(DSM-5の日本語訳) and Statistical Manual of Mental Disorders, fifth edition (DSM-5の英語原文)DSMとICD(国際疾病分類)の違いって?出典 : のほかにも、国際的に使用されている疾病分類があります。有名なものに、世界保健機関(WHO)が作成するICD(国際疾病分類)があります。ICDの最新版として、1990年に発表された第10版(ICD-10)が使用されています。また、2018年には第11版(ICD-11)の発表が予定されています。国際統計分類第 11 版(ICD-11)改訂にむけて|WHO健康開発総合研究センターDSMとICDは、しばしば列挙して参照され、またどちらも国際的に使用されています。両者の違いを挙げるとすれば、以下のようなものがあります。1. 作成機関: DSMは米国精神医学会が作成しています。これに対して、ICDを作成しているのは、国連の専門機関であるWHOです。ただし、DSMがアメリカ国内でしか通用しないわけではなく、事実上どちらも国際的に広く使われています。2. 分類範囲: DSMは精神障害のみを対象とした分類です。これに対して、ICDは身体的疾患を含むすべての疾患を対象としています。3. 使用場面: 日本の行政機関では、ICDが採用されています。たとえば、福祉制度に関する書類には、DSMの診断名ではなくICDの診断コードを書くことになります。とはいえ、実際には、ICDとDSMのどちらを主に使うかは医師・医療機関ごとに異なっています。大まかに言って、ICDのうち精神障害や発達障害に関連するコード(F00–F99)にDSMが対応しています。個々の障害(疾患)の分類方法や診断基準について、DSMとICDの間にはそれほど大きな違いはないと考えてよいでしょう。ただし、「自閉症スペクトラム障害」のような新しい概念については、DSMとICDが必ずしも対応しているとは限りませんので、注意が必要です。おわりに出典 : は、精神科医の診断マニュアルとして作成されたものです。その中には、精神医学に関する最新の知見や、まだ議論の決着がついていない事柄が多く含まれています。これらは、精神医学に関する膨大な知識と訓練がなければ、理解することも使うことも難しい内容ばかりです。読者のみなさんにとっては、DSMに基づく診断がしっくりくる場合もあれば、納得いかない場合もあるでしょう。また、「自閉症スペクトラム障害」のように、改訂によって診断名が大きく変わることに疑問を抱く方もいるでしょう。しかし、これらは精神医学そのものが発展途上にあることの証拠でもあります。精神医学の世界では、以前より格段に多くのことが明らかになったとはいえ、それでもわからないことが多くあります。私たちが普段目にするのはICDですが、DSMには、そうした医学研究の苦労が現在進行形で現れているのではないでしょうか。
2017年04月25日英シンガーソングライターのエド・シーランが、自身の楽曲「フォトグラフ」の著作権侵害を巡って2,000万ドル(約22億円)を求められていた裁判にようやく決着がついたようだ。2016年にソングライターのマーティン・ハリントン氏とトーマス・レナード氏は、エドの楽曲「フォトグラフ」が、2人が作曲し英版『Xファクター』の勝者マット・カードルの名のもとで2012年にリリースした「アメージング」の盗作だと主張する裁判を起こしていた。ハリントンとレナードは、「アメージング」のコーラス部分と、権利を侵害している「フォトグラフ」は39個の共通の音があり模倣していることが明らかだと訴えていた。BBCの報道によると7日、カリフォルニア州の裁判所は和解条件を施行するという形でこの訴訟終止符を打ったという。とはいえ、ハリントンとレナードの弁護士を務めたリチャード・ブッシュ氏は和解条件についてコメントすることを避けている。その一方で、問題となっている曲を歌ったマットは昨年、ツイッターで自身はこの裁判にまったく関与しておらず、エドのことを音楽の「天才」であると称賛していた。「みなさん、どうか記事をしっかりと読んでください。これは僕の裁判ではありません。エド・シーランは本当に天才的で彼の成功は100%すべて受けるべきものなんです」(C)BANG Media International
2017年04月13日「ルパンのキャラクターイメージは『007』シリーズのジェームズ・ボンドです。本家はスパイなので、ルパンはその泥棒版。クールで天才。そして『007』と同じく女好き(笑)。でも下品じゃなくて上品な色気を前面に出した漫画にしたい。さらにアクションあり、コミカルでユーモアのある読み物にしたいと思っていました。だから主人公のルパンは、できるだけ、わかりやすい性格のほうがいいかな、という感じでしたね」 そう語るのは、『ルパン三世』の原作者のモンキー・パンチ先生(79)。「とりえず3カ月やってみようか」−−。’67年、創刊された『漫画アクション』(双葉社)の編集長の一言から始まった漫画『ルパン三世』。当時、まだ新人だったモンキー・パンチ先生は、新たな漫画誌の連載企画として『ルパン』を提案するも、「今さらルパンは古いだろ」と、却下されかけたが、「『007』と『怪盗ルパン』をミックスさせた漫画を描きたい!」と再度アタック。編集長から「やってみようか」とGOが出た。 それからはや50年……。今や海外でも大人気の『ルパン三世』。50年にもわたりその人気を支えているのは、個性豊かなキャラたち。その生みの親であるモンキー・パンチ先生が、知られざる主人公・ルパン誕生の秘話を本誌に明かしてくれました! 「(『ルパン三世』の)タイトルの由来?じつはいいかげんなんです(笑)。’67年ですから、アルセーヌ・ルパンの、だいたい孫世代あたりが活躍しているという設定でいいんじゃないかな〜、と。ただ当初、ルパンはアルセーヌ・ルパンの孫ではなかった。“ルパン三世”という“あだ名”だったんです。双葉社の担当編集者から、『面倒臭いから、孫にしちゃえ』と。僕が“大丈夫ですか?著作権とか引っかからないですか?”って聞いたら、『オマエの漫画がフランスに行くと思ってるのか?』って(笑)」 日本の漫画が、海外にまで進出することになろうとは誰も思いもしなかった時代だった。 「編集部がそう言うなら孫にしちゃおうか……と。それで『ルパン三世』は孫になった(笑)。名前自体、完全にアルセーヌ・ルパンに由来してますからね。ただ、いま思うと、やはり孫ではなく“あだ名”にしておけばよかったかな〜と。そのほうがストーリーの幅に広がりが出るからね」 当時『ルパン三世』を連載するとき、最初に考えたのは、ストーリーを1話完結にすること。 「僕は“次号に続く”という話はやりたくなかった。途中から読み始めた人でもわかるようにしたかったんです。そういう意味では、毎週ストーリーの流れを作っていくうちに、ルパンやほかのキャラクターの性格が自然にできあがっていった感じかな〜。あまり計算しすぎても、読者に見透かされますからね」
2017年03月26日日本音楽著作権協会(JASRAC)が、音楽教室などから著作権料を徴収する方向で検討していることを受け、大手音楽教室などの企業や団体はこの方針を反対するための「音楽教育を守る会」を結成しました。その他、アーティストや作詞家からも、「子どもには無料で使ってほしい」と言う声があがっています。実際に音楽教室に通わせている人もいる親の意見を聞いてみましょう。Q.音楽教室への著作権請求、どう思う?1.請求すべきだと思う 9.9%2.請求すべきではないと思う 61.4%3.わからない・どちらとも言えない 28.7%過半数以上の人が請求すべきではないと思うと回答しました。カラオケなどの営利目的での使用で著作権請求するのはいいとして、音楽教室での使用まで含むのはどうなの? そして、なぜ今になって? という疑問があるようです。■楽譜からも取っているのにさらに取るなんて!ピアノ教室などで使用する楽譜にはすでに著作権料が含まれています。当然子どもが習うときにもその楽譜を買っているわけですから、さらに著作権請求をするというのが理解できないという人が多数派。「楽譜には著作権料発生してますよね。さらに、それを使用する教室から取るんですか? 二重取りではないんでしょうか?」(千葉県 40代女性)「演奏するための著作権といった感じでしょうか。確かに音楽教室は恩恵受けてますが、レッスン料に上乗せされるのはどうかなと」(広島県 40代女性)「楽譜で払ってるのに。なんだかんだお金が欲しいだけなのに、もっともらしい理由をつけようとしてあさましいと思います」(神奈川県 40代女性)■なぜ今さら? JASRACへ不信感を抱く人も今まではよかったのになぜ今さら徴収するのか、ということを疑問に思う人もいました。急に「それ違反ですから、お金払ってください」なんて、お金目的と思われても仕方ないのかもしれません。「なぜ今さらこういうことが問題になるんでしょうか? 請求すべきなら、もっとずっと以前からされるべきじゃないんでしょうか」(東京都 40代女性)「ちょっとせこくないですか」(愛知県 30代女性)「今さら徴収するなんて、お金目当てと思われても仕方がない気がする」(千葉県 30代女性)■音楽教室は演奏ではなく練習営利目的での演奏に著作権料が発生するのはいいとして、教室での演奏にまで発生してしまうというのはおかしいという冷静な意見を言う人もいました。音楽教室での演奏は、あくまで練習ですよね。「音楽をはじめ、著作物には著作権があり、お金がかかることは当然だと思います。しかし、教室での演奏、つまり練習にも著作権料が発生するというのは違和感を感じます。教室では『著作権のある音楽』に対して授業料を払うのではなく、先生の指導に対して支払うのですから」(神奈川県 40代女性)Q.音楽教室への著作権請求、どう思う?アンケート回答数:7090件 ウーマンエキサイト×まちcomi調べ
2017年03月07日最近はスポーツ会場にカメラを持って登場し、パシャパシャと撮影している一般人をよく目にします。そのような人たちはたいていTwitterやブログなどのWeb媒体に画像をアップしています。スポーツやライブの写真で気になるのが、選手の後ろに写っている観客の顔。丁寧にモザイクをかける人も多くなってきていますが、未処理のまま投稿している人もいます。この場合、肖像権を侵害しているように思えます。また、スポーツ選手や芸能人についてもプレーや舞台裏のオフショットを勝手に撮られてアップロードされることがあり、不愉快に思っている人もいるそうです。このような行為は法律的に見てどうなのでしょうか?銀座ウィザード法律事務所の小野智彦弁護士に見解を伺いました。 Q.スポーツの観戦中の観客や選手のオフショット写真をSNSに勝手にアップ…肖像権の侵害では?*画像はイメージです:観客については一定の要件を満たせば肖像権の侵害にはなりません。有名人については、パブリシティ権があり、これを侵害する可能性があります。「以下の法律が該当します。(付随対象著作物の利用)著作権法第30条の2 写真の撮影、録音又は録画(以下この項において「写真の撮影等」という。)の方法によつて著作物を創作するに当たつて、当該著作物(以下この条において「写真等著作物」という。)に係る写真の撮影等の対象とする事物又は音から分離することが困難であるため付随して対象となる事物又は音に係る他の著作物(当該写真等著作物における軽微な構成部分となるものに限る。以下この条において「付随対象著作物」という。)は、当該創作に伴つて複製又は翻案することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該複製又は翻案の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。2 前項の規定により複製又は翻案された付随対象著作物は、同項に規定する写真等著作物の利用に伴つて利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。つまり①写り込んだ他人の「著作物」を分離することが困難であること(分離困難性)②写り込んだ他人の「著作物」が、作成する写真や動画等への影響が軽微(軽い)であること(軽微性)③写り込んだ他人の「著作物」の著作権者の利益を不当に害しないこと(利益不侵害性)これらの要件を満たせば、肖像権侵害にはならないということになります。芸能人やスポーツ選手の場合は、肖像権とは別に、その肖像自体に“顧客吸引力”があり、財産的価値があります。これは、“パブリシティ権”と言い、判例でも認められているものです。したがって、こういう方達の肖像を勝手に使うことは、パブリシティ権の侵害となり、莫大な損害賠償請求をされることがありえます」(小野弁護士) 一般人については要件を満たせば肖像権侵害にはならないようですが、有名人の場合はパブリシティ権の侵害と判断される場合があるようです。そのあたりを留意しながら、ネットに画像をアップしてください。 *取材協力弁護士:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*den-sen / PIXTA(ピクスタ)
2017年03月03日「じつはトランプ大統領との日米首脳会談を終えた安倍首相が帰国して最初に会った民間人は、なべおさみさんだったんです」(政治部記者) 帰国翌日の国会審議を終えた2月14日夜。安倍晋三首相(62)が向かったのが、東京・目黒雅叙園で開かれていた、なべおさみ(77)のパーティだった。 じつはこの2人、父親である故安倍晋太郎・元外相の代から家族ぐるみの付き合いだという。なべおさみ本人が、当日の様子を明かしてくれた。 「総理は、米国滞在中もわざわざ『スケジュールはとってあります。必ず出席します』と、念押しのメールを送ってくれたんですよ。本当にありがたくてね」 その言葉どおり、国会を終えて会場に駆けつけた安倍首相はサービス精神満点だった。 「昭恵夫人が総理と大統領とのツーショット写真を大統領専用機内で撮り、ご自分のフェイスブックに掲載しているんです。ある人が『あの写真をいただけませんか』と話しかけたら、総理は『私に著作権がないんですよ』と言い、周囲を大爆笑させていました」(なべ) 安倍首相は記念撮影にも気軽に応じ、気さくさに驚いた出席者も多かった。 「ある人が『大統領とのゴルフはいかがでしたか?』と聞くと『2人きりで回ったので……国家機密です。(話しては)信頼関係が壊れます』。みなさん大爆笑でした。いやあ、気配りもセンスもさすがです」(なべ) このパーティーの正式名称は、『おさみ・瑠美子夫妻幻の金婚式』。なべが続ける。 「本当はこの日、瑠美子(元女優の笹るみ子さん)と金婚式のお祝いをするはずだったのですが、女房は半年の入院生活の末、昨年10月に肺炎で死んじゃって。総理も去年9月に見舞いに来てくれました。声が出なくなった女房がなけなしの力で書いた『不安です』という乱れた文字を見て、総理は後ろを向いてハンカチで目を押さえていました。『来年の金婚式にはぜひ呼んでね』と帰って行ったその約束を、総理は本当に果たしてくれたんです」 深く感謝するなべだった。
2017年02月24日*画像はイメージです:新規開設したキュレーションサイトや、個人ブログ、クラウドソーシングでクライアントに提出する原稿――数をこなして、てっとり早くアクセスや賃金を稼ぐのに用いられているのが、他人の書いたWEB記事の無断コピペ流用です。ネットの記事はもちろん、ライターが撮影した写真までマルパクするのに、ほんの10秒もかかりません。デジタルの世界ではこのコピペが簡単なので、ふだん企業が開設している商業サイトに記事を提供しているプロライターが、ある日、自分の記事が丸ごとコピーされているのを知って仰天することが多々あります。提携先に転載されることはあっても、記名と出典元は明らかにされていますが、出典元はなく、記名も替えられていた時はどうすればいいでしょうか?著作権問題に詳しい、パロス法律事務所の櫻町直樹弁護士に対応方法をお訊きしました。 ■明確な著作権の侵害!記事の差し止めを請求「無断でブログに記事を転載(盗用)してネットユーザーに閲覧させることは、記事という「言語の著作物」(著作権法10条1項1号)の著作権(より具体的には送信可能化権・公衆送信権。著作権法23条1項)を侵害する行為ですから、元の記事の著作権を有する者が差止め(削除)請求することができます」(櫻町弁護士)元の記事が商業サイトの中で掲載されており、記事執筆者が著作権をサイト運営者に譲渡している場合は、サイト運営者が著作権者として差し止め請求の主体となるそうです。プロライターが記事執筆の対価を得ている場合、こうした契約になっている場合がほとんどでしょう。では個人の記事がマルっとコピペされていた場合はというと、個人が著作権者となります。こういった場合、請求先はどこになるのでしょうか?「請求先は、個人ブログなら盗用したブログ主個人と、ブログサービスを提供している会社の双方が考えられます。連絡先が記載されていない個人ブログもありますので、そのような場合にはブログサービスを提供している会社に請求することになるでしょう。」(櫻町弁護士) ■相手が個人なら個人とブログサービス提供会社へ通告!ブログサービスを提供している会社への通告には、プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会が策定、公表している『著作物等の送信を防止する措置の申出について』を用いると手続きがスムーズになる場合があるということなので、活用をお薦めします(会社によって書式への記載例を掲載している場合もあります)。「その際、自分が著作権者であることを示すための資料として、元の記事が掲載されている画面のキャプチャ(URLや掲載日なども分かる形)を印刷したものと、著作権侵害がされていることを示すための資料として、盗用された記事が掲載されている画面のキャプチャ(こちらもURL等が分かる形)を印刷したものも、あわせて送付するのがよいでしょう」(櫻町弁護士) ■著作権侵害の罰則は意外に重いところで、この丸ごと盗用ですが、どんな罪に問われるのでしょうか?「著作権の侵害には罰則が規定されており、今回のケースのような著作権侵害の場合は“10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科”(著作権法119条1項)と、かなり重い刑罰が科せられる可能性があります。また、実際に逮捕されている例もあり、軽い気持ちで著作物を盗用すると、想像以上に重い罪になる可能性があると考えたほうがいいでしょう」(櫻町弁護士)コピペの作業自体があまりにも簡単なので、刑も軽いと思ったら大間違いなのです。 ■慰謝料を請求することはできるか?最近ではInstagramやブログなどからプロ・アマを問わず写真を盗用しているケースも増えており、中には商業サイトがこれを大々的に行っていて、問題視されています。これに関しても記事盗用と同じくただちに掲載差し止めを求めると共に、有料フォトサービスなどに登録している場合は、そのサイトに交渉を任せたほうがいいでしょう。なお、著作物盗用は実に不快なので「慰謝料」をふんだくりたくもなりますが、損害が財産的損害にとどまる場合、一般に、慰謝料が認められる可能性は低く、著作権侵害の場合も、認められにくいのが現状です。「ただし、『著作者人格権』(公表権、氏名表示権、同一性保持権)については、相続・譲渡できない一身専属的な権利であり、著作者の人格的な利益を保護するためのものという性質から、それが侵害された場合には精神的苦痛が生じたということが言いやすく、慰謝料が認められることが多いといえます」(櫻町弁護士)著作者の名前をまったく別の人間の名前にしていたりすれば、この「著作者人格権」を侵していることになり、これに対して慰謝料を請求することも可能と言うことです。個別のケースにもよりますので、弁護士に相談のうえ、自作の著作権を守りましょう。 *取材協力弁護士:櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。ブログ「ネットイージス.com」)*取材・文:梅田勝司(千葉県出身。10年以上に渡った業界新聞、男性誌の編集を経て独立。以後、フリーのライター・編集者として活躍中。コンテンツ全般、IT系、社会情勢など、興味の赴く対象ならなんでも本の作成、ライティングを行う。)【画像】イメージです*Sielan/ Shutterstock
2017年02月17日ネイル画像の無償提供サイト『ミチフォト』リリース国内で1点1点手作りしたネイルチップ(つけ爪)の専門店「ミチネイル(michi Nail)」を運営する株式会社ミチは、2017年2月14日よりネイル写真サイト『ミチフォト(michi PHOTO)』をリリースし、ミチネイルで販売されたネイル画像の無償提供を開始した。ネイルチップ専門店「ミチネイル」は、“働く女性を応援する”というビジョンのもと、全国にいるプロネイリストにクラウドソーシングでネイルチップ作成を依頼し、ネイルサロンと同クオリティのネイルチップを手頃な価格にて、店舗やECサイトで販売している。ミチネイルで販売された全てのネイルチップ画像を提供『ミチフォト』に提供される写真はプロのカメラマンが撮影したものであり、「ミチネイル」で販売された全てのネイルチップ画像を見ることができる。また、サイト内のネイル画像は全て著作権フリー素材として使用することが可能だ。登録されているネイル写真は5,000枚以上もあり、毎週流行のネイルが追加されることとなっている。(画像はプレスリリースより)【参考】※株式会社ミチプレスリリース(ValuePress!)
2017年02月17日*画像はイメージです:日本人にすっかり定着した短文投稿サイト『Twitter』。その手軽さから日常生活やスポーツの模様など、様々な画像もアップされています。そんな画像が、知らない間にほかのサイトに使われていた。Twitterに限らず、ブログなどでも自身が撮影した画像が無断で使われるケースが、稀に発生しています。また、最近はツイートをまとめサイトなどで“引用”という形で掲載されることも。この2つの事案、法律的にみてどうなのでしょうか?インターネット問題に詳しい法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士にご意見を伺いました。 ■画像を無断で転載することは?まず、画像の無断転載はどうでしょうか?「原則的に著作権法違反と言えます。個人の撮影した写真であっても基本的に撮影者に著作権があるといえることが一般的であり、それを無断で利用することは許されません。著作権者に無断で使用している時点で、コピーしているので、複製権侵害、HPで利用されている点で公衆送信権侵害などが成立しているということになります。ちなみに、私的利用は許されるとされていますが、私的利用は家庭内などでの利用を前提にしており、ネット上での利用は私的利用に含まれません。また、著作権法は親告罪とされているため、告訴がなければ起訴されないということにはなっていますが、罪としては、“10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科”となっています(著作権法119条1項)」(清水弁護士)やはり、原則的に個人撮影した画像を無断で使用することは違法となります。「あの写真良いなあ、使いたいな」と思った場合は、必ず撮影者に確認し許可を得なければなりません。昨今同じような事案で無断使用者を提訴したケースが相次いでいますから、認知している人がほとんどであるとは思いますが、もう一度「画像の無断転載は違法」ということを認識しましょう。 ■ツイートの引用はどうなの?次にツイートの引用について聞いてみました。「著作権法上、引用の要件を満たしていれば許諾不要で利用可能です。引用が許されるためには、①公表された著作物であること②公正な慣行に合致すること③目的が正当な範囲にあることが求められています。もっとも、その意味するところは必ずしも明らかではなく、裁判実務上では①引用された部分が明確であること(明瞭区別性)②引用する側が「主」で,引用される側が「従」といえる関係にあること(主従関係性)が重視されています。ツイートを直接貼り付けサイトで公開している場合、引用部分が明確になっており、埋め込みでURLリンクもあるのであれば、①を満たし主従関係も明確と言えるため。②を満たすと考えられます」(清水弁護士)清水弁護士によると、まとめサイトなどでのツイート引用は明瞭区別性があり、主従関係が明確であれば問題はないようです。画像無断転載は全面NG、ツイートは条件を満たしていれば引用可。よく覚えておきましょう。 *取材協力弁護士:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*cifotart / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月09日音楽の著作権を管理するJASRACが、音楽教室での演奏について著作権料を求める方針を示し、批判を浴びているようです。未来の作曲家やミュージシャンを養成する機関である音楽教室にまで「カネ」を請求することについて、「日本の音楽文化を衰退させるものだ」と批判が噴出。今後音楽教室側は団体を作り、反対活動を展開していくようです。賛否両論ありますが、誰もが最初は名曲を演奏することで楽器の使い方を覚え、音楽家やミュージシャンとなるもの。その芽をつむようにも思う行動は、やはり歪に思えてしまいますね。真似といえば「替え歌」もその一種です。最近は様々な曲の替え歌を歌い、それをYouTubeなどの動画サイトに投稿している様子を目にします。これもやはり、著作権の侵害ということになるのでしょうか?法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士にご意見を伺いました。 Q.替え歌を歌ってYouTubeに公開…これは法的に問題ないの?*画像はイメージです:著作権の侵害になる可能性が高いですが、例外もあります。「歌詞にも著作権があるため、替え歌をすることは、著作権のうち翻案権侵害、著作者人格権のうち同一性保持権を侵害する可能性があります。もっとも、著作権は原則として50年で消滅するため、50年経過していれば問題になりません。また、作者不明なものについても著作権の帰属が不明なので、問題になりません。なお、YouTubeなどは著作権管理団体と契約して、その団体が管理している楽曲であれば原則として自由に使って良いことになっていますが、翻案権や著作者人格権の管理まではしていない関係で、許諾もできず、結果、問題になるということになります。したがって、個別の許諾を取る必要があります。また、販売する際も、個別の許諾を取ることが必要です」(清水弁護士) 基本的には著作権の侵害になりますが、50年経過しているものや動画サイトが契約・管理している楽曲、そして個別に作曲家などに許可をとれば公開・販売することもできるよう。ちなみに、替え歌の元祖・嘉門達夫さんは個別に作詞作曲者や管理者に許可とり、許されたものだけをCD化しているそうです。替え歌を作ることも才能ですが、「権利」にも気を配らないといけないのですね。 *取材協力弁護士:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*I000s_pixels / Shutterstock
2017年02月06日もっと自由に、もっと気軽に、語り合える場所にしていきたい。Upload By 発達ナビ編集部本日1月26日、LITALICO発達ナビはオープン1周年を迎えました!オープンから今日まで、たくさんのユーザーさんからの応援の声やアドバイスをいただきながら運営して参りました。1年間、本当にありがとうございました!記念すべき1周年の日に、発達ナビから新しい機能をリリースしました!【新機能はこちら】発達ナビトップページからオレンジ色のボックスをチェックしよう!「発達障害にかかわりのある発達ナビユーザーさん同士だからこそ、共に語り合えることがある」という趣旨のもと、気軽に投稿し、交流できる新たな機能です。発達ナビの新コーナー「みんなのアンケート」って?Upload By 発達ナビ編集部気になる新機能の名前は「みんなのアンケート言いたい!聞きたい!」というアンケートコーナーです!現在、発達ナビのトップページである「タイムライン」には、FacebookやTwitterのようにフリーテーマで気軽にだれでも投稿ができるようになっています。今回の新機能は、「発達ナビユーザーさん同士だからこそ、他のみんなにも意見を聞いてみたい、考えや工夫を教えてほしい!」という具体的なテーマを設けて、みなさんから投稿を募集するというものです。これまでのようなフリーテーマでの投稿だけでなく、発達ナビユーザーさん同士で、同じテーマに紐付けて子育ての考えや出来事を共有していくことができます。笑いあり、涙あり、学びあり…!と様々なテーマを考えておりますので、ぜひみなさんも参加してみてくださいね。例)・これってADHDだから?何年たっても変わらない「わたしあるある」を募集!・子どものかんしゃくはいつ起こる?!発生エピソードを5・7・5で大募集「かんしゃくカルタ」・療育手帳の取得、家族でどんな話しをした?みんなの体験談を教えてください「みんなのアンケート言いたい!聞きたい!」はどこにあるの?「みんなのアンケート」の募集テーマは、タイムライン上に以下の図のようなオレンジ色のボックスで掲載されています。テーマは一定期間で次々と変更していく予定です。Upload By 発達ナビ編集部「みんなのアンケート」にはどうやって投稿するの?オレンジ色のボックスをクリックしていただくと、アンケート投稿の一覧ページにうつります。一覧ページにある投稿フォームを使って、投稿内容を書き込んでいただく仕様になっています。Upload By 発達ナビ編集部投稿していただいた内容は、タイムライン上、アンケート投稿一覧、ご自身のマイページの3つに表示されます。タイムライン上は、新着の投稿から表示されるようになっていますので、マイページの投稿履歴からの確認がおすすめです。タイムライン上かご自身のマイページから、アンケート投稿のグレーボックスをクリックしていただくと一覧でみることができます。Upload By 発達ナビ編集部マイページの投稿履歴にはこのように表示されます。Upload By 発達ナビ編集部タイムライン上かご自身のマイページから、アンケート投稿一覧へ移動します。そこにある投稿フォームより再度入力をお願いします。Upload By 発達ナビ編集部みなさんの投稿、お待ちしております!さっそくアンケート投稿をしてみるご利用上の注意事項のご案内 利用規約・ガイドラインについて投稿いただく際の注意事項は以下の通りです。【1】タイムラインの投稿は、誰にどこまで公開されるの?・ログインをしていないユーザーさんも一部閲覧可能です・コメントや♡を出来るのは、会員ユーザーさんのみとなります【2】 テキスト・画像を投稿するときの注意事項は?タイムラインにご投稿いただく際は、他者の著作権を侵害することの無いよう、以下の点にご留意ください。◇テキストについて書籍や記事等で他者が執筆した文章を投稿する場合、"引用符"で区切った上で出典を明記するなど、引用の要件に注意して、無断盗用・剽窃の無いようご注意ください。気軽な日常の投稿はじめ、ご自分で書き下ろしていただいた文章はお気軽にご投稿いただいて大丈夫です。◇画像について他者の著作物である画像の無断転載はご遠慮ください。・ご自分で撮影された写真など、ご自分に著作権がある画像・フリー素材サイトの写真など、自由利用が許可された画像などはご投稿いただいて大丈夫です。文化庁: 「著作権なるほど質問箱」【3】利用上の規約やガイドラインはあるの?LITALICO発達ナビ全体で、ユーザーの皆さまに守っていただくルールとして、「利用規約」がございます。一人ひとりの権利を守り、サービスを安全に維持・運営していくための、運営会社である株式会社LITALICOと、お客様であるユーザーの権利義務関係を定めた大切な「お約束」です。こちらも併せてご確認の上、タイムライン投稿をご利用ください。りたりこ)発達ナビ利用規約また、医療情報を含む投稿に関しては、以下のガイドラインもご参照ください。ユーザーさまによる医療情報に関する投稿の取り扱いについてこちらは2017年1月26日時点の仕様となっており、以降デザインや機能などの変更をする場合もございます。ご理解のほどお願いいたします。
2017年01月26日*画像はイメージです:月29日から冬のコミックマーケットが開幕しますね。昨今はその注目度が増しており、東京ビッグサイトには日本からはもちろん、世界から多くの人々が集まります。様々な問題も指摘されていますが、やはり参加するのは楽しいものです。今年はあの叶姉妹も参戦を匂わせるなど有名人も注目。企業も出展しており、その規模は年々大きなものになっています。そんななか、重大な問題とされているのが権利の問題。既存のキャラクターを使用して創作された作品、いわゆる「二次創作」については著作権を侵害しているのではないかとの指摘があります。コミケの根幹を揺るがす問題だけに、気になるところ。一体現行の法律ではどのような解釈になるのでしょうか?パロス法律事務所の櫻町直樹弁護士に見解を伺いました。 ■二次創作は著作権の侵害になる?二次創作は著作権の侵害になるのでしょうか?「コミックマーケット、いわゆる「コミケ」で販売されている雑誌には、商業作品として発表されている漫画やアニメのキャラクターを利用して描かれた作品が掲載された「(漫画・アニメ系)同人誌」と呼ばれるものがあります。漫画等に出てくる(具体的な絵として表現されている)キャラクターは、「美術の著作物」(著作権法10条1項4号)にあたると考えられていますから、著作権法の保護の対象となります。ですから、例えば、漫画等のキャラクターを著作権者に無断で利用した作品を同人誌に描き、それを販売することは複製権(著作権法21条)を侵害する違法な行為になりますし、無断でキャラクターの画像をインターネット上に掲載すれば公衆送信権(著作権法23条)の侵害になります。また、キャラクターを改変することは、翻案権(著作権法27条)侵害になります(ただし元になったキャラクターが持つ「表現形式上の本質的な特徴」を感じられるかどうかという観点からみて、単にアイデアが共通しているにすぎない場合や、ありふれており創作性が認められない部分が似ているにすぎないような場合には、著作権侵害が否定されることもあります)。」(櫻町弁護士)どうやら既存のキャラクターをそのまま複製し販売することや、ネットに流す行為は、著作権の侵害になるようです。逆に、「ちょっとあの作品と似ているなあ」くらいのレベルであれば、侵害にあたらないようです。 ■自分の趣味で書くレベルなら問題なしさらに櫻町弁護士に、二次創作物の著作権侵害の現状についての意見を聞いてみました。「好きなキャラクターを自分が趣味で描くこと自体は、何ら問題ありません。しかし、それを不特定多数に公表したり、さらにはそれによって利益をあげるという形になってしまえれば、そうした行為が著作権侵害にあたることは当然と思います。現状は、そうした行為について都度著作権者が差止めや損害賠償等を求めることが時間・労力・コストがかかり、困難な場合もあることから「黙認」されているに過ぎないといえます。他人の著作物に対する尊敬の念があれば、きちんと許諾を得て利用するというのが、創作に携わる人が最低限守るべきことなのではないかと思います(例えば、キャラクターの認知度が高まるから著作権者にとってもメリットがあるという意見は著作権者が言うなら理解できますが、利用している方が言うものではないと思います)。例えば一案として、著作権者の許諾を得るということがスムーズにできるように、楽曲を管理しているJASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)のような、キャラクターの著作権について一元的に管理し、利用者からは著作権料を収受、それを著作権者に支払うという仕組みがあるとよいかもしれませんね。」(櫻町弁護士)現在の状況は「黙認状態」で、原作をそのまま複製した作品を販売し利益をあげたり、ネットで公開するなどの行為は原作者が訴えを起こせばやはり著作権侵害として損害賠償を請求することができるようです。櫻町弁護士もおっしゃられていますが、アニメなどキャラクターの著作権を一元管理する組織があってもいいかもしれませんね。 *取材協力弁護士:櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。ブログ「ネットイージス.com」)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*naonao / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月28日発達ナビから新機能リリースのお知らせ!Upload By 発達ナビ編集部いつも発達ナビをご利用いただきありがとうございます。発達ナビ運営事務局より、新機能の試験リリースのお知らせです。今回ご紹介するのは、会員ユーザーさん限定の新機能、「タイムライン」への投稿機能です!「タイムライン」に投稿出来るようになりました!Upload By 発達ナビ編集部発達ナビの「ホーム」画面には、コラムやQ&Aなど、発達ナビ内のコンテンツが閲覧できる「タイムライン」を掲載しています。今回のリリースでは、そのタイムライン上に、ユーザーの皆さんが自ら投稿をすることができるようになりました。FacebookやTwitterと同じように、フリーテーマで気軽に投稿することができます。また、投稿に対してユーザーさん同士でコメントし合うことも可能です。・夜寝る前に、お子さまの成長を実感したところについて日記のように投稿してみる・お出かけ先での思い出の写真を投稿してみる・クリスマスなどのイベント事でのできごとを投稿してみる・2016年、感動したことや大失敗エピソードなどを投稿してみるなどなど、自由なテーマで気軽に投稿してみてください!どうやってタイムラインに投稿するの?ここでは、タイムラインへの投稿方法を画像と一緒にご紹介します。Upload By 発達ナビ編集部Upload By 発達ナビ編集部Upload By 発達ナビ編集部Upload By 発達ナビ編集部発達ナビ: タイムライン投稿ページタイムラインには何を投稿したらいいの?出典 : 「Q&A」コーナーで相談するような困りごとや問題でもないし、「コミュニティ」のような、テーマや話題の流れに沿った投稿でも無い…でも、「ちょっと聞いてよ!」と思わず誰かに喋りたくなる。そんな気持ちになることが、日常生活の中でもあると思います。タイムライン機能では、FacebookやTwitterのように、カジュアルにご自分のことや身近な出来事を投稿することができます。LITALICO発達ナビには、お子さんやご自分の発達特性について悩んでいる方々や、そうした悩みや困りごとを乗り越えてきた方々が集まっています。日常の些細な出来事であっても、似たような境遇や体験がある方々が集まっているからこそ、共感し合えることがある。そんな思いからタイムライン機能をリリースしました。ぜひお気軽に、ご投稿いただければ嬉しいです。共感する投稿があったら、♡を送ったり、コメントをしてみてくださいね。タイムラインご利用上の注意事項のご案内ここでは、タイムラインへ投稿する際のご注意事項をお伝えします。→非ログインユーザーにも見える→コメント・♡は、会員ユーザーのみタイムラインにご投稿いただく際は、他者の著作権を侵害することの無いよう、以下の点にご留意いただければ幸いです。◇テキスト書籍や記事等で他者が執筆した文章を投稿する場合、引用符""で区切った上で出典を明記するなど、引用の要件に注意して、無断盗用・剽窃の無いようご注意ください。気軽な日常の投稿はじめ、ご自分で書き下ろしていただいた文章はお気軽にご投稿いただいて大丈夫です。◇画像他者の著作物である画像の無断転載はご遠慮ください。・ご自分で撮影された写真など、ご自分に著作権がある画像・フリー素材サイトの写真など、自由利用が許可された画像などはご投稿いただいて大丈夫です。文化庁: 「著作権なるほど質問箱」利用規約・ガイドラインもご確認ください「LITALICO発達ナビ」全体で、ユーザーの皆さまに守っていただくルールとして、「利用規約」がございます。一人ひとりの権利を守り、サービスを安全に維持・運営していくための、運営会社である株式会社LITALICOと、お客様であるユーザーの権利義務関係を定めた大切な「お約束」です。こちらも併せてご確認の上、タイムライン投稿をご利用ください。りたりこ)発達ナビ利用規約また、医療情報を含む投稿に関しては、以下のガイドラインもご参照ください。ユーザーさまによる医療情報に関する投稿の取り扱いについてもっと気軽に、もっと自由に発達ナビを楽しんでいただけますように発達ナビの新機能「タイムライン」への投稿機能をご紹介いたしました。ユーザーの皆さんが、もっと気軽に、もっと自由に投稿・交流できる場所を作りたいと思ってリリースした新機能です。クリスマスイベントや、一年の振り返りを発達ナビで投稿してみませんか?みなさんの素敵な投稿を楽しみにしております。投稿機能もあくまで試験リリースです。機能の改善要望やご意見をいただきながら、今後も検討・改善を進めていきたいと思います。機能改善へのご要望があれば、以下のお問い合わせ窓口にお気軽にご連絡ください。発達ナビ運営事務局発達ナビ: ご意見・ご要望窓口発達ナビ: タイムライン投稿ページ
2016年12月20日株式会社DeNAの医療サイト『WELQ(ウェルク)』が無断転載や誤情報を拡散した問題を口火となり、キュレーションメディアのトラブルが世間を騒がせています。その流れで、LINE株式会社が運営する『NAVERまとめ』に対して、記事を無断転載された側からの削除依頼への対応がどうなのか疑問を呈する記事「なぜ無断転載された側に手間を要求?「NAVERまとめ」の“トンデモ”削除対応、理由を聞いた」を『ねとらぼ』が配信し、話題になっています。LINE社の対応に具体的にどのような問題があったのか検討してみましょう。*画像はイメージです:■本人確認は必要不可欠記事では削除依頼をしたところ、LINE社から下記2点を求められたと報じられています。(1)権利を侵害しているNAVERまとめの画像・テキストのURLを指定すること(2)出典のURLに、「このページ内の画像をNAVERまとめに転載することを禁止します」など、転載禁止の旨を追記することまず、(1)については、削除依頼を受けた側としても、どこが問題の記載があるか分からない以上、極めて正当な要求でしょう。ただし記事によると、削除をLINE社に依頼した側としては、最初から「出典URLと無断利用されたNAVERまとめのURLも添えた」ということなので、この点を改めて要求されるのはおかしいといえます。次に、(2)については、「申告者が本人かを確認するため」にしていたようですが、本人確認の方法はこれ以外の方法でも十分可能であり、なぜNAVERまとめだけ特別扱いするような記載をしなければ行けないのかという点で、必ずしも適切とは言えないと言えると思います。もっとも、著作権者以外からの請求に応じる理由はないため、確認は必要不可欠であり、何らかの本人確認のための手間を惜しむことはできないといえます。“侵害された側が負担を負うことが不当”という素朴な感情は理解できるのですが、自分の権利を守るためには、自分からきちんと主張立証をしていくことが必要なのです。 ■削除依頼ステップが明示されていない?また記事によると、削除依頼フォームの場所が分かりづらく、「出典ページ上に確認番号を記載する」ということは明記されていないと指摘されています。個人的な感想と経験を言えば、削除依頼フォームはまとめの一番下に表示されているので、必ずしも分かりづらいとはいえないのではないかなと思っています。他方で、「出典ページ上に確認番号を記載する」という点はたしかに明記されておらず、また、どのような流れで手続きが進むのかも一般の方には分かりづらいと思います。この点を踏まえて、一般の方から見てももっと分かりやすい案内をした方が、双方にとって余計な手間が減って良いのではないでしょうか。 *著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)【参考】ねとらぼ:なぜ無断転載された側に手間を要求?「NAVERまとめ」の“トンデモ”削除対応、理由を聞いた【画像】イメージです*sabelskaya / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月19日先月29日にキュレーションメディア「WELQ」が全記事を非公開にしたことを口火に、「NAVERまとめ」でも無断転載が問題になったりと、インターネット上の記事等に関する著作権に関し、注目が集まっています。いわゆる“コピペ”をしたら著作権侵害になるだろう、といった想像はつくかと思いますが、実際、著作権というものに対して、なんとなく抵抗を感じる方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、著作権についての基本的な考え方について解説していきたいと思います。また、日常生活でやってしまいがちな著作権侵害についても触れたいと思いますので、ご覧ください。*画像はイメージです:■著作権の法的な定義とは?「著作権」という言葉は日常生活でもよく耳にすると思いますが、法律上の定義を確認しておきましょう。「著作権法」という法律に、以下の規定があります。 著作権法17条著作者は、次条第一項、第十九条第一項及び第二十条第一項に規定する権利(以下「著作者人格権」という。)並びに第二十一条から第二十八条までに規定する権利(以下「著作権」という。)を享有する。 「第二十一条から第二十八条までに規定する権利」というのは、具体的には、複製権、上演権及び演奏権、上映権、公衆送信権、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳権・翻案権、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利です。色々とありますね。ただし、何にでも著作権が認められるという訳ではなく、著作権が認められるのは「著作物」にあたるものだけです。著作物についても著作権法に規定があり、法2条1項1号に「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と規定されています。ちょっと、抽象的で分かりにくいかもしれません。法律というのは社会を規律するためのルールであり、様々なケースへの適用が前提となりますから、ある程度抽象的にならざるを得ないところはあるのですが、著作権にはちゃんと「例示」があって、10条で以下のとおり規定されています。 第10条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物二 音楽の著作物三 舞踊又は無言劇の著作物四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物五 建築の著作物六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物七 映画の著作物八 写真の著作物九 プログラムの著作物2 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。3 第一項第九号に掲げる著作物に対するこの法律による保護は、その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。この場合において、これらの用語の意義は、次の各号に定めるところによる。一 プログラム言語プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系をいう。二 規約特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別の約束をいう。三 解法プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法をいう。 ■著作物であるかの判断となるポイントは?著作物であるかどうかを判断するポイントになるのは、「思想や感情が創作的に表現されているかどうか」ですが、中にはそれが微妙なものもあるでしょう。しかし、インターネット上に投稿されている「記事」や「画像」(写真、イラスト、CG等)については、基本的には「著作物」にあたると考えたほうが無難でしょう。そうした他人の著作物を無断で使う(自分のブログに載せる等)ことは、著作権を侵害する行為になりますから、差止め(著作権法112条)や損害賠償請求がなされる可能性があります(著作権法には罰則もあり、著作権侵害については10年以下の懲役、500万円以下の罰金(またはこれらを併科)というかなり重いものが規定されています(法119条1項))。ただし、著作権法には「公表された著作物は、引用して利用することができる。」(法32条1項)という規定がありまして、著作権を持っている人の承諾を得ていなくても、著作権法が定める「引用」にあたるときは、著作権侵害にはありません。 ■適切な「引用」はどういった要件を満たす必要がある?では、どういう利用方法ならば「引用」といえるのかですが、著作権法32条1項では、上にあげた条文に続けて「この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」と規定されています。具体的には、たとえば論文を執筆している場合に、その論文の中で他人の論文に言及し、それについて考察するために文章を掲載する、といったケースが考えられるでしょうか。そして、適法な「引用」と認められるためには、以下の条件を満たす必要があるとされています。 (1)引用する必然性があること(2)他人の著作物を引用した部分が明確に分かるよう、括弧をつける等して自分の著作物と区別されていること(3)自分の著作物が「主」、他人の著作物を引用した部分が「従」という関係にあること(4)引用した部分の出典(著作者、著作物のタイトル、サイト名、URL等)が明示されていること(著作権法48条) ちゃんと「引用」するためには、けっこう色々な点に気をつける必要がある、ということがお分かりいただけるでしょうか。例えば、「インターネット上で見つけた記事を自分のブログに転載する」場合には、上に述べた「引用」の条件を満たすよう必要がありますから、記事を全文コピペして「こんな記事がありました!」など申し訳程度のコメントを付記した程度では、「引用」とは認められないと考えたほうがよいでしょう。 ■SNSアイコンでの使用やブログへの画像アップロードも注意また、「漫画やアニメのキャラクター画像を自分のブログに載せること・SNSのアイコンとして使用すること」については、「引用する必然性がある」ということを示すのが難しく、やはり、「引用」とは認められない可能性が高いと思われます。なお、「私的使用」(他人の著作物につき、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする場合。著作権法30条)にあたるときも著作権侵害にはなりませんが、インターネット上の記事・画像は不特定多数が閲覧可能なものですから、「個人的に又は家庭内といった限定的な範囲での利用にとどまる」とは言い難く、「私的利用」にもあたらないと考えられます。インターネット上では、容易にデータのコピー、転載ができることから、ついつい「このくらいなら問題ないだろう」などと考えて他人の著作物を承諾なく載せてしまいがちですが、「引用」の条件がちゃんと満たされているか、考えてみることが必要でしょう。 *著者:弁護士 櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。ブログ「ネットイージス.com」)【画像】*Ushico / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月18日DeNAが運営する医療・健康情報サイト「 ウェルク(Welq)」への、不確かな情報を元にした記事を大量公開していたことに対する批判が発端となり、一般ユーザーが投稿した記事を掲載するいわゆる「まとめサイト」や「キュレーションサイト」と呼ばれるWEBメディアへの法的責任に注目が集まっています。またこの批判を受けて、12月に入ってからは、DeNAをはじめ「まとめサイト」や「キュレーションサイト」を運営する企業では、記事を非公開化する流れを拡大させつつあります。これらのもっとも重大な問題点として、「他者コンテンツを盗用した」ということが挙げられます。自分が作ったコンテンツが、無断で使われている…しかも、それでお金を儲けている…コンテンツホルダーとしては、許せないですよね。そこで、自分の著作権が侵害された場合に、どういう対処法があるのか、解説していきます。*画像はイメージです:■盗用された著作物の「削除と損害賠償」を請求する方法自分のコンテンツをパクった者に対して、盗用コンテンツの削除や損害賠償を請求することが考えられます。とはいえ、削除は分かるけど、損害賠償と言われても、いくら請求していいのか分からないと思われるかもしれません。しかし、著作権法では、著作権を侵害した側が、それによって利益を得ていた場合には、相手方の利益額を損害賠償できるという規定があります。また、相手方の利益額が分からなくても、いわゆる著作権のロイヤリティ金額を損害賠償できるという規定もあります。なので、そのような法律に基づいて、自分に有利な金額の損害賠償請求をしましょう。具体的な請求方法は、下記のような流れが想定できます。①侵害している者に対して、内容証明を送付し、金額などの交渉をする②相手方が交渉に応じない、又は返答がない場合には、訴訟する ■盗用コンテンツが別のウェブサービスに拡散されたときに「削除要求」する方法盗用されたコンテンツが、ブログサービス(アメブロ、ライブドアブログなど)やECサイトに掲載されるといった例は多いです。このような場合には、サービス運営事業者に対して、自己の著作物が侵害されている旨を通報し、盗用コンテンツの削除を要求することが考えられます。このようなサービスには、権利侵害を通報するフォームがあることが通常なので、 そこから入力して通報することが出来ます。また、事業者に対して、内容証明などの方法で、削除要求するなどの方法もあります。 ■「警察へ刑事告訴」するための準備方法著作権侵害があまりにひどい(コンテンツを丸々パクられた)ようだと、著作権法違反で警察に刑事告訴という手段もあります。刑事告訴する場合には、必ずを次の3つを準備して、警察にいきましょう!①これまでの経過②自社が著作権者であることの証拠③著作権侵害の証拠(ネットの画面をプリントアウトするなど)警察も数多くの事件を抱えているため、手ぶらでいってもほぼ相手にされません。きっちり証拠を見せて、事件化してほしい旨を警察官に伝えることが大事なのです! ■コンテンツがパクられたら「Google」へ削除の申し立てまた、自分のコンテンツが盗用された場合には、上記のように法的に様々な方法がとれますが、Googleに申請して、検索結果から削除してもらう方法もあります。これは、削除や損害賠償などのように、直接的なものではないですが、検索結果から削除されるため、自分のコンテンツ盗用の影響を最小限にとどめるという意味が有用です。「削除申し立てフォーム」は以下になります。著作権侵害の報告: ウェブ検索 *著者:弁護士 中野 秀俊(グローウィル国際法律事務所。弁護士になる前、システム開発・インターネット輸入事業を起業・経営。IT・経営・法律に熟知していることから、IT・インターネット企業の法律問題に特化した弁護士として活動している。ブログ「IT・インターネット法律ブログ」)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月13日photo by 編集部大学在学中の2002年に、友人と共にIT系のベンチャー企業を設立した経験を生かして、現在でもIT企業のサポートを多くこなしている中野弁護士。弁護士になるまでの苦労や失敗が、今の業務にどう結びついているのか伺いました。中野秀俊(なかの ひでとし)弁護士グローウィル国際法律事務所は、元IT企業経営者であり現在も会社の経営者である中野秀俊弁護士が、クライアントにとって理想の法律事務所を実現したいという思いから設立。 ■学生時代に立ち上げたベンチャー企業が倒産…その失敗から学んだものとは?___弁護士を目指したきっかけについて教えてください。私は、2002年に早稲田大学の政治経済学部経済学科に入学したのですが、入学して間もなく友人と二人でIT企業を立ち上げました。事業内容は、システム開発の受託から始まって、Webサービスを自分たちで立ち上げたりしました。友人と二人で共同代表をしながらエンジニアも営業も行うといった感じです。その学生ベンチャーは、一時期上手くいっていたのですが、大学4年のときに、倒産してしまいました。倒産の一番のきっかけになったのが、インターネットを使った輸入事業の失敗です。これは、ネットで海外の商品を仕入れて売ると行ったサービスだったのですが、先に商品を売ってしまってから後から仕入れるというシステムをとっていました。しかし、このシステムが仇となり、結局品物が入ってこないことによって、取引相手との間で、違約金が発生してしまったのです。当時は、きちんと契約書などにも目を通していなくてハンコを押していました。契約書の中には、かなり高額な違約金の条項もあって、それが払えないことでキャッシュフローがおかしくなり、事業が回らなくなったのです。この失敗は、最初の時点で、契約書をしっかりと見ておけば防げたことでした。また、今思えばトラブルになった後も、法律を知っていればいろいろと対策できることもあったと感じます。この倒産は、法律がわからなくてダメになってしまった部分も多々あったので、今度は法律面でベンチャー企業を支える側になろうと思ったのが、弁護士を目指すきっかけです。 ___経済学部から法律の世界への転身で、苦労したことはありますか?ちょうど当時はロースクール制度が始まったばかりで、制度移行の過渡期でした。私は、学習院大学のロースクールに通ったのですが、その後、司法試験の合格までには4年ほどかかりましたね。最初、法律は全くわからない状態だったので、正直なところ、本当にしんどい思いをしました。しかし、そのときの経験から、一般の人には法律用語はさっぱりわからないということが身にしみてわかっているので、専門用語を使わずにクライアントに説明するという今の基本姿勢は、あの時の経験がいきているかなと思います。 ■会社経営の経験から身についたスピード感を弁護士業でも活かす___仕事における信条、ポリシーについて教えてください。よくクライアントに言われるのは「対応が早いですね」ということです。弁護士は、スピード感がない方も多いですからね。私は会社経営をしていたので、スピード感は非常に大事だなと、実感しています。IT企業のクライアントは特にスピードが重視されるので、法律相談だったら24時間以内に回答する、契約書のチェックだったら基本的には1日~2日くらいで回答するといったことは、心がけていますね。今も法律事務所とは別に、会社も経営していますし、ITベンチャー企業の経営者だった経験があるので、単なる法律論で終わらせないようにしています。法律ではダメなのですよというのは、とても簡単なのですが、経営者は、それは求めていないだろうなと考えています。ダメということではなくて、それでは、どうしたらいいかという解決法や、代替案も必ず模索し提案するところまで、サポートするように心がけています。 ___大学で経済学を学んでいたそうですが、今でも役立っていることはありますか?私は、あまり大学に行っていないので(笑)そこは、なんとも言えません。ただ、学生ベンチャーをやっていたという経験によって、経営者の気持ちもすごくよくわかるというのはありますね。綺麗事だけでは、ビジネスは立たないということも、肌で感じています。経営者にアドバイスするときは、自分が経営者だったら、どういうアドバイスを受けたいかなという視点でいつも回答していますね。経営者は「法律はこうなっています」といった通り一辺倒の回答は絶対聞きたくないと思います。また、レスポンスが遅いといったことも、絶対嫌なので、経営者の立場になって対応するように常に考えていますね。 *取材協力弁護士:中野秀俊(なかの ひでとし)弁護士1984年生まれ。埼玉県出身。城北埼玉高校卒業。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。学習院大学法科大学院修了。大学在学中の2002年に、友人と共にベンチャー企業を設立。その事業の失敗を契機に、弁護士を目指す。グローウィル国際法律事務所代表弁護士。みらいチャレンジ株式会社代表取締。SAMURAIINNOVATIONPTE.Ltd(シンガポール法人) CEO。東京弁護士会インターネット法部会会員。著書に「ここをチェック!ここをチェック! ネットビジネスで必ずモメる法律問題」「有利な契約・利用規約を結ぶためのビジネス契約書 つくり方とチェックポイント」(いずれも、日本実業出版社)などがある。「グローウィル国際法律事務所」一門一答Q&A___事務所の理念を教えてください。法人のクライアントに関しては、企業の「攻め」と「守り」を支援しますということを理念としています。「攻め」の部分は、「みらいチャレンジ株式会社」のほうで、資金調達や人災採用とか、M&Aの仲介などを行っています。「守り」の部分は当事務所で、法律の部分を支援しています。事務所名に「国際」という名称を入れているのは、国際的な案件にしても対応できるということを伝えたいからです。私は、シンガポールでも会社を持っているのですが、IT企業だけではなく、日本企業は、近年、東南アジアなどに進出しているケースが多いです。そうすると、契約書のレビューで英文契約書も見るといった対応も必要になってくる。知財の問題なども、海外の法律に関して精通しておく必要があります。海外の弁護士とのネットワークもあるので、例えばタイで新しいサービスを展開したいという案件に対しては、タイの弁護士と一緒に法律の調査をして、マーケットの調査もするといった対応もしていますね。___一番依頼が多い分野は何ですか?IT企業のシステム開発の法律関係、著作権などの知的財産権関係、労務問題が多いですね。もちろん。他にも債権回収や、契約書のチェック対応などもあります。___一番依頼が多い相談内容は何ですか?2つあって、一つは例えば契約書など、ビジネスモデルの法的なチェックをしてくださいという予防面の相談です。もう一つは、紛争になりかけている事案に関する相談です。ビジネスチェックのときに、行政の相談窓口に一緒にいきましょうというケースもありますね。___初回の相談料はいくらですか?基本、法律相談は、1時間1万円をいただいています。相談料は法人も個人も一緒です。具体的に訴訟をしてくださいとか。交渉してくださいということになれば、ちゃんと事前に見積もりをして、よければ契約といった流れですね。値段も顧問契約だったら、例えば5万円だったら、ここまでやりますという感じでホームページに明確に出していますので、あとから追加料金ということはないです。個人の案件も、旧弁護士会の基準が基本に算定しており、費用説明書を作り、なぜこの金額になるのかを分かりやすく説明しています。もちろん、追加料金はありません。___着手金と報酬金の目安は?訴訟になった場合は、いくら請求しているのか、または請求されているのかによって異なります。だいたいですけど、着手金が、請求する・された金額の5〜10%ぐらいのイメージです。もちろん、これは金額によります。報酬金は、訴える側だったら実際に回収した額の10〜15%くらいの、訴えられた側は、減額した額の10~15%くらいのイメージですね。 *取材・文:塚本建未(トレーニング・フットネス関連の専門誌や、様々なジャンルのWebメディアを中心に活動するフリーランスライター。編集やイラストも手がける。塚本建未Website 「Jocks and Nerds」)【画像】*編集部
2016年12月05日11月30日に、権利者の許可なく、書籍を電子データ化し販売を行う、いわゆる“自炊”を代行する業者が逮捕されたという報道がなされました。差止や損害賠償などを求める「民事」の事件はこれまで何度か報道されましたが、逮捕など「刑事」の事件が報道されたのは今回が初のようです。“自炊”で逮捕に至るのか、疑問に思われるか方や不安をおぼえる方もいらっしゃると思いますので、今回は“自炊”の問題点についてまとめてみます。*画像はイメージです:■そもそも「自炊」ってどんな行為?“自炊”とは、本や雑誌などをスキャナなどを使ってデジタルデータにする行為です。タブレット端末などの普及により、本や雑誌をデジタルデータとして閲覧することがますます便利となりました。また、デジタルデータは場所をとらないのでスペースの節約ができ、劣化もしません。このような理由から、手持ちの本や雑誌をデジタルデータ化する行為、つまり“自炊”は一般的なものとなっています。ただ、“自炊”の作業は楽ではありません。一般的な“自炊”の方法は、背表紙を裁断するなどしてページをばらばらにし、それをスキャナに流すというものです。一冊だけでもそれなりの労力を使うものですから、これを膨大な量の本や雑誌について行おうとすると、かなりの手間と時間がかかってしまいます。そこで登場したのが“自炊”の作業を本人に代わって行うとする業者で、これが「自炊代行業」と呼ばれるものです。 ■「自炊」は違法なの?「私的使用のための複製」(著作権法30条)にあたる限り、“自炊”は違法ではありません。合法であるためのポイントは、①私的使用目的で行うこと②使用する者が自分で行うことこの2点です。つまり、自分で楽しむために自分で作業を行う限り、違法ではありません。一方、自炊代行業は、このうちの②が欠けますので、違法と判断されます(2016年に最高裁で確定しました)。ただ、自炊代行業も一定のニーズがあるところで、これを違法と判断することは時代に合わないなどといった批判も根強く、“自炊”についての議論が終わったわけではないようです。 ■今回のケースは何が問題だった?報道によれば、今回逮捕された自炊代行業のケースは、“自炊”によって得られたデータを他人に転売などしていたという点が特徴です。つまり、②が欠けるばかりか、そもそも①すら欠けていたというケースです。自炊代行業肯定論の根拠となっているのは、“業者は顧客の作業を手伝っているだけ” つまり “業者側は得られたデータは使用せず、データはあくまで顧客が私的使用をするためだけのものである” というものでした。今回のケースは、業者側もデータを販売するなどしていますから、そもそも私的使用目的ですらなく、どのような考え方によっても違法となる悪質なものでした。 ■安心して「自炊」を行うためには?やはり自分自身で“自炊”の作業を行うのが無難でしょう。(“自炊”の目的で裁断機やスキャナを貸し借りする行為は適法です)近しい人に手伝ってもらって一緒に作業を行う程度であれば許され得るでしょうが、自炊代行業を利用する際はやはり著作権に留意しなければいけません。他人の著作物を無断で複製して販売するなどの行為は犯罪ですから、注意しなければ思わぬところで犯罪に巻き込まれることもあります。著作権違反の責任は決して軽いものではありません。“自炊”を行う際は、ルールやマナーを正しく守って行いましょう。 *著者:弁護士 渡辺 泰央(四谷コモンズ法律事務所。インターネットトラブルやWEBに関する事案を多く取り扱う。運営サイト「WEBに関わる法律講座」)【参考】古書店へ転売も、書籍の「自炊代行業」男性を逮捕 (平成28年11月30日一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)HPより)【画像】*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月03日DeNAが運営する医療・健康情報WEBメディア「WELQ(ウェルク)」が11月29日の夜に全ての記事を非公開としました。背景には、不確かな情報を元にした医療・健康系の記事を大量に公開していたことに対する批判が集まったことがあります。問題は、都の福祉保健局がDeNA担当者を呼び出す事態にまで発展しています。本件ではどのような点が具体的に問題とされたのか考えてみましょう。*画像はイメージです:■認められた効果・効能等以外を表示してはいけないWELQでは、医学的根拠が必ずしもないにもかかわらず、効果や効能を謳う内容が掲載されていました。薬機法68条は、1項で「何人も」虚偽又は誇大な記事を広告・記述・流布してはならないとし、2項で「医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事」の広告等も禁止しています。医薬品の販売をしているわけではないから問題ないのでは?と考える方もいるかもしれませんが、禁止されている主体は「誰でも」であり、また禁じられるのは「広告」に限りません。したがって、ウェブ記事であってもこれに当たることになるのです。なお、記事には「ようです」といった形で結論を断定していないものも多かったようなのですが、記事全体としてみれば効果・効能等を表示しているとみなすことができるのであれば、これに抵触する可能性があります。 ■他の記事からの盗用はいけないまた、記事はインターネット上にある記事をほとんど丸々コピーして、語尾だけ変えるといったことをしているようですが、この点は著作権法に抵触しています。インターネット上に公開されているからといって、それを勝手に使って良いかというと、当然そのようなことはありません。私的使用は許されますが、インターネット上に公開することは公衆送信権という権利を侵害するため、許されません。そのため、侵害にならないためには、適切な「引用」といえることが必要です。裁判実務上、引用された部分が明確であること(明瞭区別性)、引用する側が「主」で,引用される側が「従」といえる関係にあること(主従関係性)が重視されています。語尾だけ変えた記事は、このいずれも満たしていないため、適切な「引用」とはいえませんので、この点も問題といえます。なお、しばしば「無断利用」といわれたりしますが、適切な「引用」は事前・事後に許可を求めることは不要なので、「無断」かどうかという点は問題になりません。 *著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)【画像】イメージです*studiostoks / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月02日「2ちゃんねる」や「ニコニコ動画」などの投稿型サイトの誹謗中傷やプライバシー侵害が後を絶ちません。これらの俗に言う「炎上」騒動はインターネットが普及し、かつ匿名性の強いユーザー参加型サイトが多くなったことが大きな要因として挙げられるようです。そんな「炎上」が話題になるとき、しばしば取り上げられるのが“サイト管理者の責任”です。例えば、他人を誹謗中傷するような情報が電子掲示板に投稿されたとき、責任を負うべき人はその投稿をしたユーザーです。しかし、このような場合、情報を掲載していたサイト管理者には、全く責任はないのでしょうか。今回は、他人の権利を侵害するような情報が投稿されたとき、サイト管理者が負うべき法的責任について解説してみます。*画像はイメージです:■そもそも、サイト管理者が責任を負うことはある?“他人の権利を侵害するような情報を投稿したのはユーザーであって、サイト管理者は無関係”と考えている方も、中にはいらっしゃると思います。しかし、過去の裁判例には、サイト管理者に数百万円の損害賠償を認めたものがあります。この裁判例のケースは投稿された情報が名誉毀損にあたるものでしたが、プライバシー権侵害や著作権侵害のケースであっても同じように考えられます。ユーザーから投稿を受け付けるようなサイトの管理者は、口コミサイトであれ動画サイトであれ、投稿されたコンテンツについて責任を負うことがあるのです。 ■サイト管理者が果たすべき3つの義務とは?投稿型サイトの管理者がこのような責任を負う理由として、サイト運営にあたって大きく分けて次の3つの義務が課せられているためです。(1) 削除義務投稿された情報が他人の権利を侵害するものである場合、サイト管理者は、そのような情報を“削除する義務”を果たす必要があります。サイト管理者がこの削除義務を負うケースは、被害を受けた人に「差止請求」が認められる場面です。例えば、著作権侵害や商標権侵害がなされたとき、被害者に「差止請求」が認められることは法律に明記されています。また、法律に明記されているものでなくとも、「差止請求」が認められることがあります。名誉権やプライバシー権などの「人格権」が侵害されるケースが典型です。名誉毀損やプライバシー侵害を理由とした削除請求は多くなされていますが、これらは、実は解釈によって認められるものなのです。法律に明記されていくとも“削除義務”が認められることがあるために、サイト管理者が対応に苦慮することがあり、また削除が妥当かどうかの議論もしばしば生じるのです。(2) 発信者情報開示義務匿名で投稿がなされた場合、被害を受けた人は発信者が誰か分かりません。そこで、発信者を特定するために、サイト側に発信者に関する情報の開示を求めることがあります。この開示請求は、いわゆるプロバイダ責任制限法に定められているもので、この法律の要件を満たす場合には、サイト管理者に発信者の情報(IPアドレスなど)を開示する義務が認められることになります。(3) 損害賠償義務サイト管理者は、情報の掲載によって被害を受けた人に対して直接損害賠償義務が認められることがあります。例えば先ほど述べた裁判例では、サイト側が削除義務を怠ったために、損害賠償義務があると判断されています。 このように、投稿型サイトの管理者もさまざまな法的責任を負うことがあります。(上に挙げたものは民事的なものですが、場合によっては逮捕などの刑事処分を受けることもあります)“サイト管理者は法的責任を負うことはない”と考えることは決してできませんので、注意しましょう。 ■投稿型サイトは、板挟みでもある“サイト管理者の責任”を考えるとき、ひとつ注意すべき点があります。情報を投稿したユーザーが常に“悪者”というわけではないということです。インターネット上に情報を投稿することによって、自身を表現したり、社会にメッセージを訴えるユーザーも多くいます。そのような投稿に関して、他人に対するネガティブな内容を含むからといって、安易に削除したり情報開示したりしてしまうと、今度は投稿したユーザーの正当な利益を害することになります。場合によっては、「表現の自由の侵害」や「プライバシー侵害」などとして、投稿者から損害賠償請求を受けることもあり得るのです。つまり、投稿型サイトの管理者は、情報を投稿するユーザーと、その情報に触れるユーザーの“板挟み”の状態にあるといえます。 ■投稿型サイトの適切な運営とは削除請求や開示請求がなされたとき、法的に見て適切な対応がなされているかがポイントです。投稿型サイトの管理者は、ユーザーによって投稿されたものすべてを監視するまでの法的義務はないとされています。しかし、そうであるからこそ、削除請求や開示請求には適切に応じることが求められるのです。“サイト管理者の責任”を考えるときは、違う立場のユーザーの板挟みにあるという状況を理解し、どちらのユーザーにも偏らないバランスを考えることが重要な視点といえるでしょう。 *著者:弁護士 渡辺 泰央(四谷コモンズ法律事務所。インターネットトラブルやWEBに関する事案を多く取り扱う。運営サイト「WEBに関わる法律講座」)【画像】イメージです*saki / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月26日前回の企画展「Modern Beauty展」も大盛況のうちに終了した箱根ポーラ美術館。2016年度後半の企画展は、19世紀後半〜20世紀のパリが舞台。「ルソー、フジタ、写真家アジェのパリ − 境界線への視線」と題した本展覧会では、ルソー、フジタ、アジェの3人の芸術家を中心に取り上げています。彼らを「パリ」と「境界線」という共通点を紐解いてみましょう。「時代の大きな変化」に芸術家として生きていた彼らの作品は、現代を生き抜くヒントになるかもしれません。◆見どころ1芸術家が捉えつづけたパリ市周辺部の「境界線」19世紀中期から20世紀初頭にかけ、パリ市は周囲を壁に取り囲まれていたそう。その間、パリ市の人口増加に伴い貧富の差も拡大。煌びやかな中心部とは異なり貧困層が住むパリ市周辺部で作品を作り続けた人物が、今回の3人です。日曜画家として活動していたアンリ・ルソー、渡仏し戦前すっかり画会を代表する日本人と名声を手に入れたレオナール・フジタこと藤田嗣治、そして写真家として大器晩成となったウジェーヌ・アジェ。同じパリ市周辺部の「境界線」を題材にしていたにも関わらず、彼らの作品は三者三様でした。殊に、日本から渡仏したフジタにとっては日本人であるという来訪者としての自意識と、貧困者という街にとっての異物とを、重ね合わせていたと言われています。 ◆見どころ2紆余曲折の末にたどり着いた「写真」が絵画に与えた多大な影響3人の中で、学芸員の方も「有名でなかったからどう取り上げればいいか戸惑った」と苦笑いするほど知名度の低い写真家アジェ。演劇人を目指すものの一向に目が出ず写真に手を出したのが30代半ば、という苦労人でした。1898年(このときすでに41歳!)以降、19世紀のパリの姿を撮影することを使命として写真に打ち込み地位を確立していったそう。20kgするカメラを抱え、パリ郊外の建造物、公園、道路、店先、看板、室内、路上で働く人々を撮影していきました。そのうち彼の作品は美術館や公的機関、画家や室内装飾家、建築家などに買われていったのだとか。いつでもどこでも気軽にスマホで撮れるわけではなかった時代、仕事資料として重宝される商売も需要があったというわけです。晩年は、マン・レイに見い出されたことを機に、ジョルジョ・デ・キリコらのシュルリアリストたちに影響を与えていたというから驚きです。また、アジェの残している顧客リストには名を連ねていないものの、フジタの手記にはアジェが記録写真販売の訪問営業に来たという記録が残っているんだとか。こういった系譜を知っていくのも体系的に作品を見ることのできる企画展ならではですね。 また、レオナール・フジタは、昨年の東京国際映画祭 (TIFF) でオダギリジョー主演映画「FOUJITA」が放送されたことも記憶に新しい方もいらっしゃるのではないでしょうか。「アッツ島玉砕」に代表される通り、2度の世界大戦に人生を翻弄された挙句、フランスへ帰化した1人です(日本を去る時の名言と、土門拳が撮影した空港写真が最高にかっこいいのでぜひ見ていただきたい)。そういった経緯を鑑みると、半世紀以上が経過した今こうして邦美術館で彼を目にする機会が増えたことは、喜ぶべきことかもしれません。ちなみに、著作権が厳しいフジタの作品は今も数多くの作品が未だ「著作権有効」であるため。なのでこの記事に1枚もフジタの作品画像は掲載されていません。「小さな職人たち」シリーズをはじめ作品を見るためには現場で確かめるのみ!乳白色だけでないフジタの作品を、貴重な絵画・写真の数々をぜひご自身の目で確かめてみてはいかがでしょう?そのほかにも、企画展をモチーフに考案された限定のコース料理や19世紀末に使われていたピンホールカメラを作るワークショップなど、多角的に展示会を楽しめる催しが用意されているので要チェック。すぐには行けない!という方は、ポーラ美術館のInstagram(@polamuseumofart) のフォローもおすすめ。貴重な貯蔵品や企画展示の様子はもちろん、建造物としても有名な美術館の写真や「森の遊歩道」の季節の移り変わりもチェックすることができます。 「ルソー、フジタ、写真家アジェのパリ ー 境界線への視線」会 期 : 2016年9月10日(土)~ 2017年3月3日(金)※会期中無休主 催 : 公益財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館 特別協力 : 川崎市市民ミュージアム、東京国立近代美術館、横浜美術館 後 援 : フランス大使館、アンスティチュ・フランセ企画展HPポーラ美術館Address神奈川県 足柄下郡 箱根町 仙石原小塚山1285Tel0460-84-2111Open9:00-17:00(入館は16:30まで)無休(展示替えのための臨時休館あり)美術館HP Text. Midori Tokioka
2016年11月13日ポーラ美術館所蔵の『レースの帽子の少女』が撮影可能になったニュースも新しいルノワール。ルノワールと40歳の年齢差をもちながら師弟関係を築いた梅原龍三郎とのふたりの関係を描いた展示会『拝啓 ルノワール先生 ―梅原龍三郎に息づく師の教え』が現在、東京・三菱一号館美術館にて開催中です。みどころ1パリで才能開花した「画壇のライオン」梅原龍三郎梅原龍三郎は、1888年に染物問屋の次男として京都に誕生。浅井忠に師事したのち渡仏。パリのアカデミージュリアンに入学しますが、ほどなくしてルノワールと師弟関係を築くことに。現地で学んだ油画に日本のテイストを取り入れることで、大胆なタッチに色鮮やかな世界観をもつ特有の作品を数多く世に発表しました。本展では彼とルノワールとの師弟関係を特集しています。みどころ2ルノワールとの”奇妙な”師弟関係20世紀初頭、パリのルノワールの自宅がふたりの出会いの場になりました。出会った当時ルノワールはすでに還暦を過ぎ(上写真参照)。痩せ型でヒゲが生えてて、晩年は車椅子で生活していたルノアールは、年齢よりも老いてみられることが多かったそう。梅原はルノワールから技術的なことを1から教わらず、それでも彼の趣味(テイスト)についてはしっかり理解していた模様。ルノワールの《バラ》を彼の好きな18世紀のアンティークの額に額装していたというストーリーも、奇妙ながら微笑ましい逸話です。みどころ3ピカソやジョルジュ・ルオー、同時代の貴重な絵画も生存中も作品が売れていた梅原は、画家にありがちな "貧乏な一生" を送ったアーティストではありませんでした。稼いだ資金を元手に、数多くの絵画を蒐集したコレクターとしても知られています。浅井忠に師事したことで影響を受けた大津絵や、交友のあったピカソやジョルジュ・ルオーら20世紀を代表する貴重な作品も数多く展示されています。(※両者ともに著作権有効のため媒体掲載不可です。ぜひ直接美術館でご覧ください。)おまけ10月30日まで無料バスが走行中、ヴァーチャルツアーも現在開催中(10月22日〜10月30日)の EDO TOKYO NIPPON アートフェス2016開催に伴い、無料バスが走行中。出光美術館、三井記念美術館、三菱一号館美術館、東京ステーションギャラリーを無料バスで巡回することができます。(1周30分)バス運行期間:10/22~10/30 11:00-18:00(木・金は19時まで)※10月24日(月)は全館休館。バスも運休。秋風に吹かれてアートをめぐるデートができるのもいまの季節ならではの楽しみ方。行ったことないからデート場所には選べない!という方は、事前にヴァーチャルツアー(動画は「三菱一号館美術館名品選2013」展の風景になります)で下見で抜かりなく。「拝啓 ルノワール先生 ―梅原龍三郎に息づく師の教え」会 期 :2016年10月19日(水)〜 2017年1月9日(祝・月)主 催 : 三菱一号館美術館、朝日新聞社協賛 : 大日本印刷企画協力: キュレイターズ『拝啓 ルノワール先生 ―梅原龍三郎に息づく師の教え』公式HPへ 三菱一号館美術館Address〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-2Open10:00〜18:00(※入館は閉館の30分前まで)休館日毎週月曜(祝日・振替休日・展覧会会期中最終週の場合は開館) 三菱一号館美術館 公式HPへ Text. Midori Tokioka
2016年11月13日キャリー・マリガンが主演を務め、女性には投票権も親権さえも認められていなかった時代の女性参政権運動を描いた『未来を花束にして』(原題:『Suffragette』)。このほど、その予告編映像が解禁となった。1912年イギリス・ロンドン。24歳のモード・ワッツは、洗濯工場で働く同僚の夫と幼い息子と3人で暮らしていた。ある日、モードは、サフラジェット(女性参政権運動の活動家)である友人の代わりに公聴会で証言をすることになる。それを機に彼女は、WSPU(女性社会政治同盟)のリーダー、エメリン・パンクハーストの演説を聞き、デモにも参加するように。しかし、夫から家を追い出され、息子に会うことまで禁止され、さらに工場長からクビを宣告される…。20世紀初め、ロンドンで先鋭化していた女性参政権運動の活動家、サフラジェットたちを描く、実話を基にした本作。主人公は、洗濯工場で働く若き母親モード。あるとき“別の生き方があるのでは?”と疑問が芽生え、愛する我が子には自分とは異なる人生を歩んでほしいと、行動を起こすべく運動に身を投じていく。そのモードを凛として演じたのは、『17歳の肖像』『華麗なるギャツビー』のキャリー・マリガン。また、女性運動の指導者エメリン・パンクハーストには、オスカー女優メリル・ストリープ、モードの同志のイーディスにはヘレナ・ボナム=カーター。モードの夫には、ベン・ウィショーと豪華キャストが集結。監督はサラ・ガヴロンが務め、脚本は『マーガレット・サッチャー鉄の女の涙』のアビ・モーガンと、強力な女性チームが語り継ぐべき物語を完成させた。2016年、日本では6月に18歳以上が投票した参院選が初めて実施され、8月には女性初の小池百合子・東京都知事が就任。いまでは当たり前となった1票に、命をかけ、自分たちの意思で社会を変えていった女性たちの心揺さぶられる物語には、予告編のラスト、メリルから「すべての娘たちはこの歴史を知るべきでありすべての息子たちは胸に刻むべきだ」とコメントも寄せられている。『未来を花束にして』は2017年1月27日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年10月16日現在開催中のトロント映画祭で、アン・ハサウェイが主演するSFスリラー『Colossal』の北米配給権を中国企業が買い付けたことが、業界で話題を呼んでいる。その他の情報その中国企業の名前は、現在、明らかにされていない。買い付け金額は、500~700万ドルあたりではないかと見られている。2017年に大規模な公開をすることも約束しているようだ。もちろん、中国企業がアメリカの映画館に自ら配給するのは現実的に難しく、この会社はアメリカの新しいスタジオに投資するようで、実際の配給業務は、そのスタジオが行うことになると思われる。最近、中国とハリウッドは急速に関係を近づけているが、このようなディールは、初めてのことだ。『Colossal』には、ほかに『ダウントン・アビー』のダン・スティーヴンスなどが出演。監督は、スペインのナチョ・ビガロンド。文:猿渡由紀
2016年09月15日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「18歳からの選挙権」です。***公職選挙法が一部改正され、70年ぶりに選挙権の年齢が引き下げられました。いよいよ、満18歳から投票できるようになります。少子化が進むなか、未来を担う若い世代が政治に参画できるようになるというのは、喜ばしいことですね。ただ、今年18歳、19歳になる人の数は約240万人で、有権者全体の2%にすぎません。ですから、これを機に政策がいきなり若い人向けにシフトするということはないでしょう。10代の有権者が生まれるということは、政党にしてみれば新たな支持者を囲い込めるチャンス。高校生や大学生を対象にボランティアを募ったり青年部を作るなど、どの政党も積極的にアプローチをかけています。世界的に見ると、191か国・地域のうち9割以上の国で、選挙権の年齢を18歳以上にしています。日本の有権者の年齢が20歳以上だったのは、成人年齢が20歳だからです。選挙年齢の引き下げは、国民投票の年齢が満18歳以上に定められたことがきっかけになっていますが、政府は将来的に、日本の成人年齢を18歳にすることも検討中。そうなれば、少年法も改正されますし、国民年金保険料を納める義務も18歳から課せられます。少子高齢化対策として、国は、働ける人、税金を払える成人の数を増やしたいんですね。18歳選挙は夏の参議院議員選挙から始まります。本番を前に「模擬選挙」を実施している学校もあります。議題に合わせて、生徒同士で議論を戦わせ、多角的な視点から、どこに投票するか考えをまとめる力を養うというもの。日本人はディベート下手ですよね。自分の意見が否定されると人格まで否定されたように感じて、人間関係に支障が出てきたり。感情と切り離して議論することは大切です。皆さんも、今日のランチをどこにするかというような身近なテーマでも、お友達とディベートをしてみてはいかがでしょう?汚職問題などを機に政治不信が募り、若者の政治離れに拍車がかかって、今、20代30代の投票率の低さが問題になっています。10代の政治参加に刺激されて、20代30代の政治意識が高まることも期待されているんです。◇ほり・じゅんジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年6月29日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年06月26日●「著作権侵害」は身近に起こりうるアドビ システムズは3日、最新のAdobe Stockに関するサービスに関する記者説明会を開催した。同社のストックフォトサービス「Adobe Stock」の最新アップデート内容やデモンストレーション、「ストックフォト」サービス全般についての紹介のほか、弁理士・栗原潔氏(テックバイザージェイピー)による「素材写真利用における著作権法上の留意点」についての講演が行われた。ここでは、会場での様子をレポートする。○「著作権侵害」は身近に起こりうる説明会の冒頭に行われたのは、ITや知財関連に詳しい弁理士・栗原潔氏(テックバイザージェイピー取締役)による「素材写真利用における著作権法上の留意点」と題された講演だ。栗原氏は「著作権法」について「SNSなどに写真などを掲載する場合など日常生活においても身近な存在でありながら、その中身は非常に複雑でかつ罰則も厳しいものだ」と述べた。著作権侵害をすると、差し止めや損害賠償、刑事罰を受けることになり、損害賠償は著作権法独自の損害推定規定により高額になるケースがあるという。刑事罰についても、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金(あるいはその両方)が課せられるという重い罪となるので(法人の場合は3億円以下の罰金)、決して軽く考えてはいけないとのことだ。その一方で、著作者に許諾を得ずに使用できるケースもあり、日本の場合は「著作権法に規定されているかどうか」がポイントとなる。とても明確であるが、世の中の変化に追随しにくいのが問題だ。一方、アメリカの場合は「公正な利用(フェアユース)」であるかどうかで判断され、グレーゾーンの場合は裁判で争われるということだ。また、「写真」が著作物であるかどうかについて、「著作権法では写真を著作物のひとつとして例示されている」と述べた。素人のスナップ写真やブツ撮り写真であっても、裁判では著作物とされるケースがほとんどだという。なぜなら、構図や照明などの決定、シャッターのタイミング等に撮影者の個性が発揮されるためだ。ただし、すべての写真が著作物というわけではなく、機械的に複写しただけの写真(例えば、防犯カメラの映像や自動撮影の証明写真など)は基本的に著作物にはあたらないとのことだ。一方、著作物である写真を自由に使えるケースとして、「私的使用目的複製」(個人的や家庭内など限られた範囲内での使う場合には使用者自身が複製可能)、「引用」(報道や批評、研究などの正当な範囲)、「検討の過程」(ライセンス検討の過程において必要と認められる限度においての利用)、「報道目的」(時事の事件を報道する場合)の4つを挙げた。写真の著作権侵害が問題となった事例として、昨年の「五輪エンブレム事件」でのコンペ資料において海外ブログの写真の無断利用が発覚し、結果的に佐野研二郎氏サイドに対する信用が失墜させ、それが五輪エンブレム採用の取り消しにつながったことを挙げた。「社内限定使用の資料だった」という言い訳が通じるかという問題については、この場合は業務上の複製であるため、「私的使用目的複製」ではないとするのが多数派だという。栗原氏は「社内のみの利用において著作物利用の許諾を取るケースが一般的であるかどうかは別として、法律的には違法」と述べた。また、ふたつめの事例として、某ストックフォト販売会社が著作権を有するWeb素材を許諾なしで利用していた法律事務所を提訴した事件を紹介。このケースでは著作権侵害による差し止めに加えて、損害賠償請求についても認められたという。法律事務所側の「無料素材としてアップされていたので許諾は不要と思っていた」という言い訳が認められず、「ある程度の経験を持つWeb制作者であれば、利用する素材が著作権許諾を得たものであるかどうかの一定の注意義務を負うべき」との判断が下されたということだ。これらのことから、権利処理を行っていない素材写真の利用はリスクが高く、たとえ社内限定であっても違法性が高いことや、これまで問題とされなかったので大丈夫だろうという安易な発想は危険だと述べた。さらに、素性の怪しい"無料サイト"の利用について、その危険性を注意喚起したのに加え、Web上の個人の写真を使う際は撮影者に了解を得るだけでなく、写真の著作権者が本当にその人物であるかの注意義務は果たす必要があると語った。結論として、「ストックフォトサービスの活用を積極的に推進すべき」と語り、講義を締めくくった。●そもそも、ストックフォトとは?○ストックフォトは、「画像」そのものでなく「使用する権利」を購入次に、アドビ システムズの青野薫子氏が登壇し、「ストックフォト」サービス全体についての紹介となった。ストックフォトには、手頃な価格で価格交渉も容易な「マイクロストック」(ロイヤリティフリー)と、価格は高いが独占契約も可能な「マクロストック」(ライツマネージ)の2種類があることや、「画像を買うのではなく使用する権利(ライセンス)を買うものである」という説明がなされた。「ロイヤリティフリー」は、使用期間や地域の制限がなく、デザインとしての使用が可能(著作権は制作者にあるため、ロゴやトレードマークとしては使用不可)なライセンス形態のことで、「通常ライセンス」と「拡張ライセンス」の2種類あると紹介された。「通常ライセンス」は、マーケティング用、広告用、販促用、プレゼンテーション用といった商用利用が可能で、印刷部数(コンテンツを印刷または表示できる回数)が50万部以下に制限されるという。一方の「拡張ライセンス」では、50万部以上の印刷・表示が可能(テレビ放送や映画で使用された画像の視聴者数にも適用される)で、その画像をマグカップやTシャツなどに印刷した商品販売などの利用も可能とのことだ。ちなみに、「人物写真」に関しては「性風俗関係」や「タバコ広告」、「政治色の強いもの」、「モデルが誤解を招くもの」などの用途では使用できないということだ(Adobe Stockで販売されている写真の場合)。○Adobe Stockが3つの進化- 検索性の向上と4K動画、拡張ライセンスの販売続いて、アドビ システムズの栃谷宗央氏が登壇し、同社のストックフォトサービス「Adobe Stock」についての紹介となった。同サービスは昨年6月に登場して以来、さらに進化し、昨年11月の時点で4,500万点のロイヤリティフリー素材を提供しているという(昨年6月は「4,000万点」とされていた)。また、Photoshop CCやIllustrator CCなど、アドビの主要アプリと密接に連携した唯一のストックフォトサービスであることにも言及。Creative Cloudデスクトップアプリ内で直接Adobe Stockの画像を検索、試用、購入できるのと同時に、同社のモバイル用アプリとも連携することや、組織・企業内で画像を共有できる点についてアピールした。さらにエンタープライズ向けとして、企業内でライセンス画像管理をスマート行える機能や独自のAdobe IDを作らなくても企業のドメインを使ってCreative Cloudを活用できる「シングルサインオン」にも対応している点についてもポイントであると語った。また、ここ最近のアップデートにより「検索性の向上」、「4Kビデオ素材の提供」、「拡張ライセンスの提供」という3つの新機能およびサービスが追加されたことが紹介された。「検索性の向上」は、写真を探す際に、Webブラウザ上で検索条件を絞り込める「検索設定」メニューが追加されたことを指す。これにより、より短時間で精度の高い素材検索が可能になったとしている。絞り込み条件には、画像の方向(縦長、横長、正方形、パノラマ)、セーフサーチ、人物が含まれているかどうか、カラーの指定、カテゴリを指定することが可能だ。また、「4Kビデオ素材の提供」は、2月5日より開始された高精細な4Kビデオ素材の販売についてだ。これにより、企業内での利用やビデオ、CM、テレビ番組、Webサイトでの商用利用するためのビデオクリップとして活用できるようになった。ちなみに、4Kビデオ素材は1点につき2万4,980円にて販売されている。「拡張ライセンスの提供」は、2月22日より、写真、ベクトル画像、イラストについて、前述した「拡張ライセンス」の販売がスタートした件だ。拡張ライセンスを購入すると、通常ライセンスと同等の権利のほかに、50万回以上のコンテンツの印刷・表示に対応するほか、素材を使用し販売・配布を目的とした製品やサービスを制作することが可能となる。拡張ライセンスの販売価格はコンテンツ1点につき7,980円となっている。○デスクトップアプリやモバイルアプリとの連携の良さを披露最後に、同社のCreative Cloudエバンジェリスト・仲尾毅氏が登壇し、Adobe Stockとアドビ製アプリとの連携についてのデモンストレーションへと移った。Adobe StockのWebサイト上で写真をキーワード検索したのち、新たに追加された「検索設定」オプションから「カラー」で特定の色を指定すると、その色を基調とした画像がリストアップされる様子が披露された。また、ライセンス購入時に「拡張ライセンス」を選択できるようになっていることや、ビデオ素材の検索結果に「4Kビデオ」が含まれること、HDと4Kの両方が用意されているビデオ素材ではどちらをかを購入するかを選択できることについても触れた。続いて、いくつかのプレビュー画像をCreative Cloudライブラリに保存したのち、アプリケーションからのAdobe Stockの連携方法が紹介された。「ライブラリ」パネルに並ぶプレビュー画像はCreative Cloudライブラリに保存されているものが読み込まれており、ほかのデバイスからアクセスした場合にも同じプレビュー画像が表示されるということ、さらに「共同利用」も可能であることなどが紹介され、アプリのライブラリパネル内からも、Adobe Stockの素材を検索できる様子などが披露された。さらに、iOS用モバイルアプリ「Creative Cloud」からAdobe Stockの画像を検索、ダウンロードできることや、iOS用アプリ「Adobe Comp CC」上からCreative Cloudライブラリ上の画像を読み込んで配置して作成したカンプを、「Creative Sync」によってデスクトップ版「Illustrator CC」上で開ける様子などを披露。Adobe Stockとデスクトップアプリ、あるいはモバイルアプリとの連携がより強化されたことを強調した。○Creative Cloudの契約をやめても購入素材は使用可能最後に再び栃谷氏が登壇し、Adobe Stockの製品ラインナップと価格について紹介された。まず栃谷氏がよく質問されるという「Creative Cloudのサブスクリプションを解約した場合、Adobe Stockで購入した画像はどうなるのか?」という件に対しての回答として、「Adobe Stockの場合はあくまでもライセンスを購入するものなので、Creative Cloudを解約した場合でもダウンロードした画像は永続的に使用できます」と説明した。Adobe Stockのライセンス価格は、単品購入の場合は1枚 1,180円だが、Adobe Creative Cloudのメンバー(すべてのプランが対象)なら、10点の画像を3,480円/月(年間プラン、月々払い)で購入できる定額制プランを利用できる。同プランでは、11枚目からは1枚当たり348円で追加購入可能。(Creative Cloudの非メンバーは5,980円/月、追加画像は598円/枚)。ちなみに、同プランでは使用枚数が10枚に満たなかった場合、最大120枚まで繰り越せる。このほかにも、大量の素材を扱うユーザー向けに、750点の画像を2万4,980円/月(年間プラン、月々払い)、もしくは2万9,980円(月々プラン)で利用できるプランも用意されている。また、新たに提供を開始した「拡張ライセンス」は7,980円/点、単品HDビデオは7,980円/点、単品4Kビデオは2万4,980円/点となっている。なお、アドビ システムズは現在、Adobe Stockが1ヶ月分無料になるキャンペーンを実施している。Creative Cloud 個人版ユーザー向けには、Adobe Stock(年間プラン)を購入すると1ヶ月分(画像10点)が無料(購入後にAdobe Stockの初月料金の3,480円が自動返金)、Creative Cloud グループ版ユーザー向けには、10点画像が無料で利用可能な「Adobe Stockお試しキャンペーン」を実施しているということだ。
2016年03月04日ピクスタは10日より、 新たに写真・イラスト・動画素材のマーケットプレイス「PIXTA」の素材を購入する全会員を対象に、 権利侵害(著作権侵害、 肖像権侵害など)が発生した場合、これに起因する損害を補償する「安心補償サービス」を開始する。「安心補償サービス」は、 PIXTAで購入したデジタル素材(未加工のもの)に権利侵害(著作権侵害、 肖像権侵害等)が発生した場合に、 これに起因して購入者(会員)が被った損害を一定の条件においてピクスタが補償するというもの。同サービスを利用するにあたっての追加費用は不要。素材を最初にダウンロードした日から1年間を有効期限として、自動的に開始される。補償限度額は、会員ごとの総計で100万円まで。購入者である会員が利用規約等に違反していないこと等を条件に補償する。今回「安心補償サービス」を開始した背景には、昨今の社会的な著作権侵害に対する意識の向上や、企業のコンプライアンス意識の高まりを受け、多くの企業が日々使用するデジタル素材の著作権や肖像権について、 今まで以上に意識を向けるようになったこと、そして素材購入者のクリエイティブ活動をサポートすることで、同社のブランド価値を向上させたいという狙いがあるとのこと。また、同サービスの開始に合わせ、ピクスタ主催の無料セミナー「いまさら聞けない!クリエイティブの現場で必要な著作権入門」を開催。主にデザイナーやディレクターなどクリエイティブ業界の担当者を対象に、 デジタル素材を利用する上で知っておくべき権利の基礎知識として、「デジタル素材の著作権者は誰か、 購入したら著作権はどこに帰属するのか」、「そもそも「フリー素材」とは何がどこまで「フリー」なのか」、「被写体の肖像権はどうなっているか」などのトピックについて、過去に起きた訴訟の判例を交えながら語られる。なお、セミナーの開催日時は12月16日 19:00~(受付18:30~)、会場は東京都・渋谷のピクスタ 3Fセミナールーム。事前申込制で、Webページより手続きが可能となっている(12月15日 14:00締め切り)。
2015年12月11日レオナルド・ディカプリオが、先日発覚したフォルクスワーゲン社のディーゼル排ガス規制不正問題についての映画化権を取得した。「Hollywood Reporter」誌によると、レオナルドの製作会社「Appian Way」とパラマウント・ピクチャーズ社は、フォルクスワーゲン社が自社のディーゼル車に不正なソフトウエアを搭載していた問題について「New York Times」のジャック・ユーイング記者が執筆中の本の映画化権を取得した。フォルクスワーゲン社が、アメリカの自動車排ガス規制対策としてディーゼル車に不正なソフトウエアを搭載していたことは先月、アメリカの環境保護庁によって明らかにされた。以来、全米だけでリコール対象はおよそ50万台、全世界では1,100万台にもなると見られ、同社の前CEOが引責辞任している。地球の温暖化対策や絶滅の危機にある動物の保護など、環境保護活動に熱心なレオナルドにとって、これは絶対に手掛けたいテーマだろう。現時点では、映画化はドキュメンタリーになるのか、フィクションか、監督や出演などについても未定。レオナルドは「Netflix」でも環境問題をテーマにしたドキュメンタリー・シリーズのプロデュースにあたる予定だ。(text:Yuki Tominaga)
2015年10月15日●「お財布」と「心」を守る著作権東京五輪のエンブレム取り下げ問題をきっかけとして、創作物を作る側だけでなく制作を依頼する側、ひいてはそれらを受け取る側にまで、広く「著作権」に対する注目が集まっている。そんな中、農林水産省が不定期で実施している広報関連の勉強会において、「著作権」の基本について解説するセミナーが9月初旬に開催された。これは事件の以前より予定されていた会で、テーマと時勢の一致は偶然とのこと。しかしながら結果として、「著作権」を今知りたいと考える同省の職員で会場は満員となった。本稿では、今だから知っておきたい著作権の基本と事例について解説した、同セミナーの内容をレポートする。今回講師を務めたゲッティイメージズの杉渓言久(ときひさ)氏は、同社で実務をこなしながら、AIPE認定知的財産アナリストの資格を持ち、写真著作権に関する修士論文を執筆した実績もある人物。この勉強会が行われたのは、広報誌やポスターの制作、Webサイトの更新など情報発信を行う場面において、撮影あるいは購入した写真を使うことが多く、それにあたっての問い合わせが各所より寄せられ、農水省広報がゲッティイメージズ側に講演依頼をしたのがきっかけだという。○著作権のふたつの柱著作権は、創作性が認められる表現に対して与えられる、法律で決められた権利。しかし、「著作権」とは大きく分けて、「人格的な権利」と「財産的な権利」がある。杉渓氏は、「著作権には、"心を守る"権利と、"お財布を守る"権利のふたつがあります」と解説。正式名称で言えば、"心を守る"のが「著作者人格権」、"お財布を守る"のが「著作財産権」だ。「著作者人格権」は著作権者自身の「人格」を守るための権利で、譲渡や相続をすることが不可能。一方、「著作財産権」は「財産」であり、譲渡・相続が可能となっている。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)で著作権の保護期間の延長が問題となったのは後者の「著作財産権」であり、これによる得失が争点となっている。「写真」の利用に関して押さえておきたいのは、「著作権」と「被写体の権利」があるということ。被写体となった人物の権利は「肖像権」で保護されるが、「肖像権」を明文で定めた法令・条約はなく、これまで積み重ねられてきた判例によって認められた権利だ。「写真」の撮影・利用に際し、その被写体であるヒト/モノの権利について考慮することが重要だという。「肖像権」は全ての個人に認められる権利だが、そのうち著名人など顧客誘引力のある人にとっての財産的側面を「パブリシティ権」と言っている。著名人の写真利用に関して「パブリシティ権」が問題となるケースがあるが、このような肖像の利用が常にパブリシティ権侵害となるわけではなく、時事報道、論説、創作物等に使用されることが正当な表現行為として受任すべきとされる場合もある。例えば、アイドルグループ「ピンクレディ」の写真が雑誌記事に無断利用されたことを同グループが訴えた裁判では、最高裁判所は、「専ら肖像等の有する『顧客誘引力』」の利用を目的とする場合には違法とする一方、この事案では、ピンクレディの『顧客誘引力』を直接利益に利用する目的としたものではないから、権利侵害はないという判断となった。つまり、著名人のブロマイドなど、肖像を直接商品や広告に無断利用した場合は侵害となるが、雑誌記事は「表現」の一環であるという判断となった。判決では、パブリシティ侵害となりうる類型として、「肖像自体が鑑賞の対象となる商品として使用する場合(ブロマイド等)」、「商品等の差別化を図る目的で商品に写真を付す場合」、「肖像等を商品等の広告として使用する場合」という3つのケースが挙げられた。モノの権利(モノのパブリシティ権)は、現在のところ未だ確立していないという。法律上、動物はすべて「モノ」として扱われるのは知られたところだが、有名な競走馬の名前を使う権利を争った裁判で、最高裁は、パブリシティ権が人格権に根ざすことを前提に、モノ(この場合は著名競走馬)のパブリシティ権利が否定されている。ちなみに建築物は、著作権法上は原則自由に撮影可能。ただし、著作権以外の権利を理由として、クレーム等が申し立てられるリスクはあるとのことだ。●過去の事件から、著作権侵害の傾向を知る○著作権にまつわる象徴的な判例セミナー中では、著作権にまつわる裁判の裁判例が紹介された。写真の著作権に関する著名な裁判例として、「スイカ写真事件」が挙げられた。これは、スイカを撮影したふたつの写真について、先に発表した権利元が、後に発表した人物を訴えたというものだ。判決は、被写体に関し、素材の選択、組み合せ、配置が類似していることを理由として、慰謝料100万円の支払いが命じられた。これが、「被写体の選択や配置」に創作性を認めたはじめての判決となった。一方、同じく「被写体の選択や配置」を問題にした裁判で、異なる判決が出されたのが「廃墟写真事件」だ。廃墟は被写体としてメジャーで、これをテーマとした写真集はいくつも出されているが、この裁判では、同じ場所・建物で撮影し、写真集を出版した写真家を、先に撮った写真家が著作権侵害で訴えた。ここまでは、「スイカ事件」と流れは同じだ。結果、判決は「非侵害」。著作権侵害は認められなかった。「廃墟の選択はアイデアであり、それぞれの被写体や構図、撮影方向そのものは、表現上の本質的な特徴ということはできない」とされた。スイカと廃墟、ふたつの裁判は一見すると類似の内容と思われるが、対比することで、「アイデア」と「表現」の2分論を象徴する事例となっている、と杉渓氏。廃墟事件は、被写体の選択そのものは著作権の保護が認められないという結論となり、スイカ事件は被写体の選択に加え、配置について創作性を認め、著作権の保護を与えたということになる。「著作権はアイデアを保護せず、表現を保護する」のであるが、これは、このような裁判例にも現れているという。○写真をトレースてた描いたイラスト、著作権侵害になる?また、写真の撮影ではなく、「他者が撮影した写真を元に絵を描いた場合、元の写真家の許諾は必要となるか?」という問題についても、判例を元に解説が行われた。絵を描くという異なる手法を用いた模倣の場合、どのような結果になるのだろうか。ここで紹介された「祇園祭写真事件」では、雑誌の表紙を飾った祇園祭の写真を元に描かれたとみられる水彩画が問題となり、撮影者が絵を描いた人物を訴えた。そして、判決は「侵害」。写真に写っている要素(被写体となった人物や構図)との類似が多いことから、写真家の「表現」を水彩画家が剽窃した、という判断が下された。杉渓氏は、この判例を挙げて、「他人の写真を無許諾でイラストにしたり、CGにしたりすると、著作権侵害になり得る」と指摘。表現手法の相違ではなく、「表現上の本質的特徴」が類似しているかどうかが争点となるようだ。それでは、インターネットで見つけた写真の構図を参考に、新規で広告用撮影をすることについては、どうだろうか。同じ「写真撮影」という手法だが、撮影自体は別途行っているため、新規撮影をした側の著作物と見なされるのだろうか。実際にゲッティイメージズと広告代理店とのあいだに同種の事案があり、同社の写真の被写体の服装や撮影地を模倣していた代理店とは、「Artistic Reference(参考料)」の支払いによって和解したという。著作権には、オリジナル作品を改変して「二次的著作物」を作る(翻案権)という権利があるが、本件は翻案を事後的に許諾したとの評価ができる。本来、著作物を翻案して利用する場合、事前に著作権者の許諾を受けるべきであり、そうしなければ著作権侵害に問われることになる。なお、著作物の無許諾での利用かどうかは、両者の「類似性」、および該当の写真を見たかどうかという「依拠性」によって判断されると解説した。これは、写真の場合も同様で、類似の構図で撮影された写真でも、他の先行写真を参考にしたものではなく、撮影者がたまたまそのような構図で撮影した場合、「依拠性」が認められないため、著作権侵害とはみなされない。●こんな時はどうしたら?実務で役立つ権利のはなし○実務で役立つ権利のはなしここからは、実際にゲッティイメージズで販売されている写真などを用いて、実務に参考となる知識が列挙されていった。同社だけでなく、国内外さまざまな提供社から販売されている「ストックフォト」。撮影せずに素材写真を探せるのは便利だが、こうした素材を使うときにも、気をつけたい権利がある。販売されている写真だから、写っている人物も素材となることまで了承済みだろう…と思いこみやすいところだが、"撮影こそ了承したが、写真の販売は了承していない"というケースもあるそうだ。被写体が商用利用を確認していない写真を広告などに利用すると、被写体から肖像権侵害を訴えられることもある。そのため、杉渓氏は購入前に「モデルリリース」を取得していることが、素材のWebページに明記されているかを確認することを勧めた。「モデルリリース」とは、被写体たる人物から自分の写った写真の商用利用に関する許諾である。書面での説明・サインが主流だったが、昨今はスマートフォンアプリでの確認をするケースもあるのだとか。多くの人が走っているマラソン大会の様子を俯瞰で撮影した写真では、ゲッティイメージズ側がランナーたち全員にモデルリリースの確認を取ったのだという。また、農水省の広報誌「aff(あふ)」掲載の写真について、杉渓氏が直接権利関係の問題の有無を解説する場面もあった。イベントに集まった人々を後ろから撮った写真に「肖像権」は適用されるかどうかという疑問には、「(顔が正面から写り込むなど)個人判別ができなければ、肖像権は問題にならない可能性が高い」というコメントを寄せた。一方、農家の人々がカメラ目線で写っている集合写真に対しては、「取材内容や掲載先について説明がされている可能性が高く、自分の写真が利用されることに対する黙示の許諾が認められるケース。そのため、「モデルリリースをいただくに越したことはないが、なくても権利侵害と言われることはないだろう」と語った。そのほか、市長らによるテープカットの写真は、「取材向けにセッティングされた場面であり、その撮影・公表は当然予測の範囲内であるから、許諾書をもらうようなシーンとはいえない」とのことだった。最後に、ゲッティイメージズが行っている権利処理サービスと事例の紹介が行われた。ゲッティの中でも、古い写真の中にはモデルリリースがないものもある。それを利用する場合、ゲッティのライツ部門が利用者に代わって使用許諾を得る「ライツ&クリアランス」というサービスがある。象徴的な例として、フランスの名所・エッフェル塔は、昼間の様子はパブリックドメインとなっていて、誰でも撮影し、発表することができる。驚くことに、これが夜になると話が一転。建物自体はパブリックドメインだが"ライティングに芸術性がある"ということで、著作権が発生するため、夜のエッフェル塔の写真を利用する場合には、著作権料が発生する。そのほか、非常に古い写真など、権利者を特定するのが困難な写真を利用する場合には、仮に被写体などからクレームが入った場合、ゲッティ社内の専門家が対応する「免責サービス」もあるということだった。ストックフォトというと膨大な写真を提供するコンテンツ提供サービスというイメージが強いが、杉渓氏は、「弊社は写真を売る側でもありますが、写真や映像を売りたい側/買いたい側のニーズをマッチングさせる業務を行うという面もあります」とコメント。商用利用を行う際には、単なる素材としての利用だけでなく、リスク回避も提供サービスのひとつだと語って、場を締めくくった。
2015年10月15日意外と知らない社会的なテーマについて、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは、「集団的自衛権」です。* **世論調査では反対意見も多かったのですが、「安全保障関連法案」が衆議院で採決され、与党議員の多い参議院での審議を経て、可決成立する見通しです。今回は法案のなかの「集団的自衛権」についてお話しします。「集団的自衛権」とは、自分の国が直接攻撃されていなくても、緊密な関係にあるほかの国が、別の国から攻撃を受けたときに、軍隊を送って一緒に戦う、というものです。実は、国際社会で認められた独立国であれば、どの国も「集団的自衛権」を持つことを国連憲章(国際連合で決めたことを記したもの)で認められているんですね。ただ日本は、憲法9条のなかで「戦争の放棄。陸海空軍を持たない。武力を行使しない」とはっきり明言しているので、集団的自衛権の権利は持っているけれど、それを実際に使うこと(行使)はできなかったんです。集団的自衛権について近年、国会で論じられるようになったのは、アメリカからの強い要請があるからともいわれています。最近オバマ大統領は、欧州や中東を訪問し、「集団的自衛権を行使して助けてくださいね」とお願いして回っています。というのも、ロシアのクリミア半島やイスラム国など、米軍が攻撃されるかもしれない場面が世界中で増えているからなんですね。中国や北朝鮮に対しても、一方的に攻撃されないよう、「抑止力」として、集団的自衛権を使えるようにしたいというのが安倍総理の考えです。まずは、憲法を改め、行使できるようにしようとしたのですが、憲法を変えることに対して反発が強かったので、「集団的自衛権を行使しても、憲法違反にはならない」という拡大解釈説を唱え、今回の法案提出に至りました。集団的自衛権が行使できるようになると、自衛隊員が死の危険にさらされる。軍備を拡張することになり、軍事予算が増える。少子高齢化で自衛隊員が足りなくなると、将来的に「徴兵制度(兵隊になることを義務づける制度)」につながる可能性があると野党から反対の声が挙がっています。「戦争をしない国」という日本のブランドがなくなったとき、テロの標的にされる可能性も出てきてしまうんですね。◇ほり・じゅんジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2015年8月26日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2015年08月25日