「Netflix」とテレビ東京の強力タッグで贈る、「RADWIMPS」野田洋次郎主演の新ドラマ「100万円の女たち」。この度、本作の主題歌を「第40回日本アカデミー賞」最優秀アニメーション作品賞を受賞した『この世界の片隅に』の音楽を担当したコトリンゴが手掛けることが分かった。道間慎(野田洋次郎)は売れない小説家。半年前から5人の謎の美女たちとひとつ屋根の下で暮らしている。女たちは家賃兼生活費として毎月100万円もの大金を慎に支払う。この共同生活にはいくつかルールがあり、彼女たちに対する質問は一切禁止されている。5人の美女たちの年齢は10代から30代と幅広いが、彼女たちがなぜこの家に集まってきたのか、普段は何をやっているのかなど一切は謎に包まれている…。しかし、彼女たちとの奇妙な共同生活を通じ、女たちの過去や存在理由などが少しずつ解明されていく。同時に彼自身の身にも思いもよらなかった変化が起き始め、彼を取り巻く環境はどんどん変わっていく。そしてある日、美女たちとのちょっと奇妙な共同生活に幸せを感じ始めていた慎に、すべてを崩壊させる事件が起きる――。木曜深夜にドラマ枠「木ドラ 25」を新設し、その第1弾として配信&放送される本作は、「ビックコミックスピリッツ」(小学館)にて連載された青野春秋の同名コミックを基に、謎が謎を呼ぶ密室ミステリードラマを描いていく。主演には「RADWIMPS」のボーカルで、『トイレのピエタ』では日本アカデミー賞新人俳優賞受賞するなど役者としても類まれな才能を開花させた野田さん。テレビドラマ初出演&初主演となる今回は、ある日どこからともなくやってきた全く素性の知れない5人の美女たちと、ひとつ屋根の下で暮らすことになる、売れない小説家・道間慎役を演じる。そして今回、本作の主題歌を『この世界の片隅に』のテーマをはじめ、劇中歌、BGMの全てを手掛け、第40回日本アカデミー賞優秀音楽賞、毎日映画コンクール音楽賞、おおさかシネマフェフティバル音楽賞を受賞したコトリンゴさんが書き下ろすことが決定。コトリンゴさんは、「主人公である道間さんの流され漂っている感じ、割り切れない感情、それからミステリアスな状況をどう表現できるだろうと思い試行錯誤しています。どうぞ、お楽しみに!」とコメントを寄せている。主題歌決定にはすごく悩んだと言うプロデューサー・五箇公貴は、「今回、野田さんにはRADの全国ツアーの合間を縫って連続ドラマの主演をやっていただくという、相当な負担をかけることになります。その上楽曲を書き下ろして頂くということは、当初から現実的ではないなと思っていました。もちろん『RAD』の楽曲という選択肢は浮かんだけれども書き下ろしができない中で、果たしてその選択肢が正解なのか。野田さんご本人とも議論しましたし、悩みました」と明かし、「悩みながら脚本を作っていく過程で、ふと今回のテーマは女性が歌うべきなんじゃないかという思いがどんどん強くなっていきました。その上で、このドラマはショッキングなことが沢山起こるストーリーなので、見終わったときにやさしい気持ちになれると読後感がいいなと考えました。そしてドラマの中で野田さん演じる主人公の慎が書いている小説、『漂う感情』の世界観も音楽で表現できたらかなり素敵な作品になるのではないかという思いに至りました。そう思ったら私の中で主題歌は『コトリンゴさんしかいない!』となっていました」とコトリンゴさん起用までの経緯を語った。木ドラ25「100万円の女たち」は4月7日(金)よりNetflixにて独占配信開始、13日より毎週木曜日深夜1時~テレビ東京ほかにて放送。(cinemacafe.net)
2017年03月10日3月6日、大西洋・三越伊勢丹HD社長が2020年に向けた情報交換会のために、丸川珠代東京オリンピック・パラリンピック担当大臣を訪問した。2020年東京大会の盛り上げに向けて、幅広い分野の有識者からヒアリングすることを目的に行われている今回の意見交換会では、三越伊勢丹グループが2011年度より「JAPAN SENSES」を営業施策として展開し、2015年からは「this is japan.」を企業メッセージとして提案してきた背景を大西社長が説明した。当日、大西社長がスーツの胸ポケットにしていた世界最軽量のオーガンジー“天女の羽衣”のポケットチーフを手にして、日本のモノ作りの先進性から話題はスタート。「海外に向けて日本の優れたモノを紹介することも大切なのだが、我々のこのプロジェクトは日本人に向けてもっと日本の良さを伝えることも目的としたもの。各地方の伝統工芸やクラフツマンシップをもっと国内に向けて紹介して、つなげていくことが小売業の使命であるとともにオリンピックの成功にもつながっていくのでは」と大西社長はその考え方を披露した。「オリンピック・パラリンピックがスポーツの祭典であるとともに文化の祭典であるという側面をもっと視野を広げながら膨らませていきたい」と丸川大臣も“レガシー”の重要性を確認していた。Text:野田達哉
2017年03月07日福園英貴が2017-18秋冬よりスタートする新ブランド、ウィーウィル(WEWILL)のデビューコレクションが2月6日、南青山のIDOLで発表された。同氏は2002年にアントワープ王立芸術学院を卒業後、ウェアラバウツ(WHEREABOUT)を立ち上げ、その後は、タケオキクチ(TAKEO KIKUCHI)や、ウィメンズのネイル(NAILS)など、アパレルブランドのデザインを手掛けてきた。今回発表された新ブランドは、ライダースをシンメトリーにデザインしたネイビーのレザージャケットにハイウエストでわたりをゆったり採ったペグトップパンツに目覚まし時計を持ったモデルでショーがスタート。ベレー帽に足下はホワイトソックス、エナメルのプレーントゥ。コレクション全体が黒、ネイビー、グレー、ベージュと落ち着いたトーン。アイテムもパーカー、デニムジャケット、タートルニット、チェスターコートとミニマムなリアルクローズが続いた。ナチュラルショルダー、ビッグシルエットというエフォートレスなスタイルを、強さと静けさ、美しいフィニッシュでまとめている。TシャツにプリントされたKROY WENはニューヨークのミラーワード。東京の地下の空間で見るとアジアの言葉に見える。Text: 野田達哉
2017年02月15日会場にいるボーダーシャツを着ている観客を集め、シャツをメディアにして曲を演奏してしまう。そんな驚きの実験を行ったのは、エレクトロニコス・ファンタスティコス!(Electronicos Fantasticos!)の和田永。イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)のパリコレクションショーの音楽を担当していることでも知られるオープンリールアンサンブル(Open Reel Ensemble)の主催者である。自身で開発したこの「ボーダーシャツサイザー」はビデオカメラの映像端子をギターアンプに繋ぎ、ボーダーシャツを映すとノイズの音程が変化するというもの。2月11日、六本木ヒルズ52階で行われた最新テクノロジーアートの祭典、MAT(MEDIA AMBITION TOKYO 2017/メディア アンビション トーキョー2017)の特別イベント「デジタリースケープ」で行われたこのライブでは、実際にその場で客のボーダーシャツを映し、ボーダーのピッチで音の高低を作り、ボーダーシャツを揺らすことでビブラートをかけ、全員で合奏を実演した。この、エレクトロニコス・ファンタスティコス!は廃材となった古家電を楽器として再生させる和田永のプロジェクトとして2015年にスタート。今回MATで行われたパフォーマンスは、その代表的な楽器であるブラウン管テレビから発せられている電磁波を自身の体に付けたコイルを使ってキャッチし、打楽器のようにして演奏、ギターアンプから鳴らすという「Braun Tube Jazz Band」のパフォーマンスでスタート。「ボーダーシャツサイザー」はテレビの縞模様が音に変換できるのなら、ボーダーシャツでも出来るはずという発想がきっかけで開発がスタートとしたいう。ボーダーシャツがウエアラブルメディアとなったわけだ。ちなみに縦のストライプはノイズになるのでダメだという。パフォーマンスの最後は換気扇を使い、オーバーヘッドプロジェクターとで光と映像を音に変換する荘厳な演奏で終了。この「換気扇サイザー」はオーストリアで毎年開催されている最も歴史のあるメディアアートフェスティバル「アルスエレクトロニカ」で2016年に演奏され、大きな話題を呼んだ。Text: 野田達哉
2017年02月14日ヌメロ ヴェントゥーノ(N°21)の2017-18年秋冬メンズコレクションが1月16日、ミラノで発表された。前シーズンはプレゼンテーション形式での発表。今回がショー形式での発表となった。その意図は「今回のコレクションはある一時代のカルチャーに由来していますが、そこには、このコレクションが現状に変化をもたらすきっかけとなり、同時に論議を促す契機になれば、という願いも込められています」というデザイナー、アレッサンドロ・デラクア(AlessandroDell'Acqua)によるコメントからも読み取れる。“一時代のカルチャー”とは70年代のデモや政治的集会のイメージ。デラクアが今シーズンのテーマとして「多様性」「自由」「抗議」「団結」を打ち出したのは、70年代の“デモ”に参加した人々の人間像に共感したからだという。図らずもプラダが今シーズン発表した70年代へのオマージュとダブる。1949年ミラノ生まれのミウッチャ・プラダ、1962年にナポリ生まれのデラクア。表立ってファッションにメッセージ色を打ち出してこなかったミラノで、政治的な背景がテーマに据えられているのが興味深い。シープスキンとナイロンのマウンテンパーカー、迷彩とチェックのMA-1やシャツジャケット、ネオプレンとナッパレザーやウールのコートなど異素材、異質なパターンとの組み合わせを過剰になり過ぎず、都会的に仕上げられている。それはキャメルのコートに迷彩のニット、ピーコートやダッフルに施されたベルトストラップなどのミリタリーモチーフ、オーバーサイズの中綿ジャケットやレイヤードされたチェックシャツなど、さまざまな70年代のディテールや素材感が引用としてベースとなっている。刺繍の施されたフード、カーディガンのステッチ、トレッドソールとスタッズがアクセントとなったシューズ、同ブランドのベースとなるシンプルな黒のパンツから覗く足首のエルラインまで、デラクアらしいこだわりは、2000年以降のヒップホップやスケートカルチャーとはまた違った、デラクアらしいストリートカジュアルの再解釈を感じさせる。Text: 野田達哉
2017年02月02日フランチェスコ・ラガッツィ(Francesco Ragazzi)が手掛けるパーム・エンジェルス(Palm Angels)が1月16日、ミラノでの2017-18年秋冬コレクションを発表した。2年前にブランドをスタート、この2シーズンはパリでコレクションを発表していたが、今シーズンよりミラノに発表の場を移した。ラガッツィはモンクレールのアートディレクションも手掛けており、同ブランドの生産背景が、マルセロ・バーロン カウンティ・オブ・ミラン(MARCELO BURLON COUNTY OF MILAN)やオフ-ホワイトc/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)と同じイタリア企業ということもあって、コレクションにはマルセロ、ヴァージルも駆けつけ、ミラノメンズデビューを祝った。ブランド名はラガッツィ本人によるLAのスケートカルチャーを撮った写真集から付けられたことでも知られるように、ベニスビーチやマリブビーチのスタイルをベースに、ゴールド、シャイニーな素材使いをアクセントにしたラグジュアリーストリートの流れのコレクション。今シーズンは“Palm Angels”のロゴウエアがクローズアップ。これまでからもボブ・マーレーなどをアイコンに使用するなど、ブリティッシュ・ジャマイカンなスタイルをヒントにアメリカンスポーツウェアをミラノクオリティーで提案している。パンツはフレア、ウェアはフルにジップアップされたギャングスタイルで、アイテム単品はラガマフィン、オールドスクールのヒップホップスタイルからのヒントを感じさせる。オーバーサイズの緩いウールのロングコート、ライトなエアフォースジャケット、トラックコート風ジャケットスーツ、ピンストライプのダブルブレストスーツなど、明らかにルールを逸脱したワードローブの破天荒さは、ショーに集まる層とともに、ミラノのストリートの新しいムーブメントの始まりを予感させる。Text: 野田達哉
2017年02月01日エトロ(ETRO)の2017-18年秋冬メンズコレクションが1月16日、ミラノで発表された。今シーズンのインスピレーションソースは「山」。ショーは同ブランドの公式サイトでライブストリーミング配信され、コレクションテーマに沿ったデジタル作品が会場ではシンクロした。プリントのベルベットのガウンコートにパンツのセットアップ、山岳モチーフがコラージュされたパーカーや山の動物がコラージュされたニットにチェックのキルト、鮮やかなプリントがミックスされたリュックにマウンテンブーツ。クリエイティブ ディレクター、キーン・エトロ(Kean Etro)の目指した世界はアウトドアとしてのマウンテンと、70年代のヒッピーカルチャーに影響を与えたアジアの山の神秘的で幻想的な側面。そして自然の美しさ。クラシックなテーラードコートはピクセル画で山岳風景がウエストに描かれ、着物スタイルのロングコートもバックルストラップ。ゆったりしたパッチワークのナイロンのパンツや、クラシックなペイズリーやオパール加工のベルベットに合わせられた高密度ナイロンも、多様な色使いで、熊やオオカミ、鹿などモチーフがコラージュされる。フィナーレにはペイズリーのスノーボードとスキー板が登場し、ネクタイ柄がコラージュされたバックパック、エトロのファブリックがパッチワークの寝袋はグランピングの主役となりそうだ。Text: 野田達哉
2017年01月31日アーティスティック・ディレクターにアレッサンドロ・サルトリ(Alessandro Sartori)が復帰したエルメネジルド ゼニア(Ermenegildo Zegna)の2017-18年秋冬コレクションが、1月11日ミラノで発表された。毎シーズン、ミラノメンズファッションウィーク初日にコレクションを発表してきた同ブランドだが、今回は日程を1日前倒しし、ピッティウオモの最終日となる金曜夜にショーを開催。会場には現代美術作家のアンゼルム・キーファー(Anselm Kiefer)の巨大な作品がセットされ、床にはメタリックバーでヘリンボーンが描かれるという凝りよう。サルトリ復帰のアニバーサリーがミラノメンズの前夜祭を飾った。コレクションはため息が出るほどの高級素材が贅沢に使用された、エフォートレスなアーバンなワードローブ。すべてが軽やかでシンプルで、年代や文化の差を超えて共有するエレガントさが際立った。トップスはしっかりしたショルダーラインで、ボトムはジョガーパンツやゆったりしたウールのパンツまで、柔らかなシルエットでまとめられている。カラーは淡いグレーからキャメル、レンガ、ブルーとアーシーな単色の組み合わせ。カシミアとアルパカのフェルト”カゼンティーノ(Casentino)”、フェルトのカシミアジャージ、紙のように薄くなめされたベビーカーフスキン、カシミアシルクの幾何学柄のジャカードニット、ウールとナイロンのキルティングなど、世界最高峰を誇る素材メーカーである同社のDNAを最大限に生かしつつ、クラシックをバックヤードにしまい込んだ新しい表現は大きな拍手を持ってミラニスタに迎えられた。このコレクションで発表されたラインの一部はグローバルショップで「メイド・トゥ・メジャー」で6週間の納期でオーダーを受け、「シー・ナウ・バイ・ナウ」の世界的な流れに対応が図られている。Text: 野田達哉
2017年01月31日ニール バレット(NEIL BARRETT)の2017-18年秋冬コレクションが1月15日、ミラノで行われた。自身のアーカイブの再構築を図った今回のコレクションは、初めてウィメンズを同時に発表。ドロップショルダーでオーバーサイズののトップスにスリムなボトム、細身のジャケットにはワイドシルエットのボトムスと、同ブランドのシグニチャースタイルをベースにまとめ上げた。同ブランドの重要なヘリテージである伝統的なテーラードジャケットには、サイドにラインの入ったウールのトラッキングパンツが今シーズンの代表的スタイル。裾のサイドにはスナップボタンが施されており、80年代にID誌、FACE誌といったストリートマガジンで活躍したクリエイティブ集団バッファローのスタイリングを、同時代を経験したニールらしい再解釈で提案。コートにオーバーレイされたダウンジャケットや、シングルジャケットなどの代表的なフェイクレイヤードのスタイルは健在で、黒をベースにイエロー、赤、オレンジを効果的にミックス。テーラード×スポーツのスタイリングはウィメンズも同様。ウール、カシミア、ビスコースウールギャバジン、フランネルのチョークストライプと高密度ナイロンとの組み合わせが、美しい光沢とシルエットを生み出しており、インターシャのモヘアも、ロックテイストでスタイリッシュなアイテムに仕上がっている。ショーのオープニングにはキュア(The Cure)の「ア・フォレスト(A FOREST)」、エンディングにスージー&バンシーズ(Siouxsie & the Banshees)の「ハッピーハウス(HAPPY HOUSE)」といずれも1980年に発表された曲を使用し、自身のカレッジ体験とともにブランドを総括。スージー&バンシーズのツアーイメージを使用したアイテムは新たな話題を集めそうだ。Text: 野田達哉
2017年01月30日1月15日に発表されたプラダ(PRADA)の2017-18年秋冬メンズコレクションは、70年代を彷彿させるアイテムが次々と発表された。Vネックのチャコールグレイのセーターにサックスブルーのボタンダウンシャツ、イエローベージュのコーデュロイパンツに幅広のファーベルト。シンプリシティに徹したノーブルなスタイルでショーはスタートした。ファーストルック同様にセットアップされたコーデュロイのジャケットはビッグラペルで、フラップポケットのレザーヨークのディテールとミニバッグとのコーディネートなど、ウィメンズ同様フォトジェニックなこだわりに満ちている。レザーでパイピングされたポケットは今シーズンのシグニチャーとなっている。当時のアメリカンムービーのワンシーンのような少し褪せたアーシーなカラー。メンズと対照的にウィメンズは強いカラーパレットで、共有されたデザインとカラーの対比のバランスが見事。絵画モチーフのニットとネイティブモチーフな大ぶりのアクセサリーが胸元の主役となるハイウエストでマークされたウールコートや、ウエストとショルダーが切り替えられたスペンサー丈のブルゾンなどレトロな世界観のリユースは、繰り返す時代へのメッセージを強く感じさせる。Text: 野田達哉
2017年01月30日エム・エス・ジー・エム(MSGM)の2017-18秋冬メンズコレクションが1月16日、ミラノで発表された。今シーズンの気分は“スローンレンジャー”。ブリティッシュなモチーフやテイストが、デザイナー、マッシモ・ジョルジェッティ(Massimo Giorgetti)らしい、少しひねったポップなアイデアで次々に登場した。ファーストルックは、クリースが白落ちしたウオッシュデニムにダウンベスト。足元はホワイトソックスに黒のタッセルスリッポン。頭を覆ったスカーフはポロ柄で、ダウンベストの背中は大きな市松のツートーン。ブリティッシュグリーンのトラックスーツにネイビーのチェスタコートのモデルもニット帽の上にスカーフで覆ったスタイル。それぞれのアイテムは英国のサッカースタジアムに居そうな若者を想像させ、ストリートの定番がMSGM風のいたずら心で組み合わされていく。ファーコート、ダッフルコートにトラックスーツを合わせ、B3にはホワイトソックスに黒のタッセルスリッポン、グレンチェックのショートパンツとジャケットには真っ赤なフーディーという“違和感”がスタイルとして定着していく。ラガーシャツ、ハンティングジャケット、ジョッキー用キルティング、ゴルフスラックス、アーガイルニット、フェアアイル柄などさまざまな英国モチーフを、70~80年代のミラノのデザイン集団メンフィスを回帰させるポップなカラーで可愛い大人の楽しいカジュアルアイテムが並んだ。シンプルなキャメルや、ブラウンのワントーンコーディネート、キャメルやグレイと白のシンプルなスタイルでバランスを取りつつ、白黒のツートーンが今シーズンのアイコニックなパターンとしてスパイスになっている。Text: 野田達哉
2017年01月29日モスキーノ(Moschino)の2017-18年秋冬メンズコレクションが、1月14日ミラノのパラッツォ・リッタで発表された。垂れ下がった配電コードと点滅するライトと白の防護服を着たスタッフ。焦燥感を与える空気感の中、ショーがスタートした。SFアニメ『トランスフォーマ』のレーザープリントのロングジャケット、スーツにシルバーの手袋、コンバットブーツと宇宙大戦争さながらのコスチュームプレイは、まさにデザイナーのジェレミー・スコット(Jeremy Scott)の得意な世界。このアニメプリントはウィメンズのチュールポンピングされたカクテルドレスにも展開され、黒のベレー、黒のハーネスと合わせられミリタリーをベースにしたストーリーがスタートする。モスキーノを代表する手描きの花のドレスはカーキのドリルコットンに黒のラテックスプリントが施され、カウントダウンをイメージさせるデジタルの数字のコラージュもカクテルドレスに。すべてのモチーフはメンズのコート、ジャケット、パンツなどにも共有され、フォーマルシーンではアイコニックな表情のアクセサリーとしても効果を発揮している。オリーブのコットンドリルとパラシュートシルクのジャンプスーツ、バラの花のコラージュプリントされたトラッカージャケット、フレスコ画のフードブルゾンなど、ベーシックなリアルクローズがモスキーノのスペーシーなミリタリーグッズとして“トランフォーム”していくコレクションは、シーズンごとのエピソードが積み重なるよう。スタイリングの仕上げにはジュディ・ブレイムのハンドメイドのヘッドピースというパンキーなオプションまで加わった。Text: 野田達哉
2017年01月28日トッズ(TOD’S)の2017-18年秋冬コレクションが1月15日、ミラノメンズファッションウィークにおいてインスタレーション形式発表された。毎シーズン、1930年代に建てられた豪邸ヴィラ・ネッキ(Villa Necchi)で発表される同ブランドの新作は、建物同様、メイド・イン・イタリーの威信をかけたサルトリアルの職人技術が大きくフィーチャーされている。美しくコーティングされトリートメントされたレザーを細かなステッチワークで軽くダウンジャケットに仕上げたパッシュジャケットは、クラシックに回帰する今シーズンのメンズの流れの中で、同ブランドを代表するアイコニックなウエアとして注目される。独特のワキシングで深いカラーリングが生み出され、ブルー、グレイ、ブラウンまで都会的なアイテムに仕上がっている。また、ラバーソールのモカシンやワークブーツ、ムートンのバッグなど、ラグジュアリーかつオフタイムなアイテムが充実。美しくエイジングされたレザーに磨き上げられたドレスシューズラインとともに、ナッパレザーを使ったウィンターゴンミーニも登場し、人気を集めそうだ。また、同会場では今春同社が発売する書籍『Timeless Icons』の写真展もカクテルパーティー形式で行われ、ミック・ジャガー、ロバート・デニーロなど時代を経ても色褪せない写真が会場の話題を集めていた。Text: 野田達哉
2017年01月27日マルニ(MARNI)の2017-18年秋冬メンズコレクションが、1月15日ミラノで発表された。ブランド創設者でありデザイナーのコンスエロ・カスティリオーニ(Consuelo Castiglioni)が退任し、昨年10月に新クリエイティブ・ディレクターに就任したフランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)によるファーストコレクション。デジタルサイネージのトンネルを抜けて出てくるモデルたちは、2002年に初めてコレクションが発表されたマルニのこれまでのメンズコレクションのパッションを、すべてパーツにしてマッシュアップしたようなにぎやかしさ。ファーストルックは深い赤のジャケット&パンツに違和感のある太いナッパレザーのベルトをジャケットの上から締めたコーディネート。次々に登場するモデルたちは、すべてがサイネージのピクセルのように、様々なカラー、エレメントが忙しく交錯するように流れ出してくる。しわくちゃのチェックのウールコートにファー付きレザーのポシェットを斜めがけ、チェックのシャツのカラーに添えられた尻尾、70年代風の古着のパッチワークファーブルゾン、ニューウェーブ風ジオメタリックシャツ、ハイウエストの幅広コーデュロイパンツ、ストライプのパジャマスーツ、それらがあるときは間違ったコードのように組み合わせられる。幼い子供がキーボードを叩いて生まれる1+1の多様なコーディネートは、おもちゃ箱をひっくり返した大人のレゴウエア。しかしながら、マルニがデビュー以来提案してきた新しい男性像は、まさにこのイメージの中に住んでいる。Text: 野田達哉
2017年01月27日ディーゼル ブラック ゴールド(DIESEL BLACK GOLD)の2017-18秋冬コレクションが1月14日ミラノメンズファッションウィークで発表された。コレクションのテーマとなったのは「アーバン忍者」。ファーストルックとなったブランドのシグニチャーアイテムであるバイカージャケットの合わせは着物を連想させる打ち合わせ。ノーカラーで羽織のシルエット、家紋や帯を連想させるベルトなど和からのインスピレーションソースが全面に打ち出されている。着物合わせはコートやボマージャケットなど多くのアイテムに使用され、各アイテムにもう一つの今シーズンの特徴ともいえるビッグフードでスタイリングが形成されている。家紋(モノグラム)はパンツにもあしらわれ、ブルゾン、刺し子風にキルティングされたインディゴなど、強く“ジャパン”を感じさせるアイテムで構成された。日本の武道から着想したというアイデアソースは、ショーの音楽に使用されていたドラムンベースのアンセムとして有名なフォーテックの『2 Ten 1 Ryu(二天一流)』のミュージックビデオへのオマージュも感じさせる。同時に発表されたウィメンズのカプセルコレクションでも、幅広ベルトをあしらったレザードレスや、キルティングナイロンをセットしたデニムのチュニックトップ、フェミニンなエプロンドレスやプリーツのミニなどにすべてバイカーブーツを合わせ、クリエイティブ・ディレクターのアンドレアス・メルボスタッド(Andreas Melbostad)による、ブランドの明確なアティチュードが示されている。Text: 野田達哉
2017年01月25日マルセロ・ブロン カウンティ・オブ・ミラン(MARCELO BURLON COUNTY OF MILAN)の2017-18秋冬コレクションが1月15日ミラノで行われた。今回、デザイナーのマルセロ本人からのリクエストで、モデルの秋元梢がミラノコレクションデビューを果たした。会場はミラノ中心部のThe Mallでマルセロが2年前にミラノメンズのデビューを果たした同じ場所。デビュー時同様、会場の赤い照明は同じながら、コレクションの内容はこれまでとは一変した新しいブランド像を打ち出した。従来のグラフィック、アスレチックスポーツアイテムの要素が後退し、モードブランドへの宣言を感じさせるコレクションとなった。全体にオーバーサイズでビッグシルエット、MA-1はウエストベルトでマークし、各アイテムはチェストストラップやショルダーストラップなどさまざまな機能で、ビッグポケットのカーゴパンツやプリーツのボトムスとともに、着こなしに多様性を持たせている。カラーはバーガンディー、ミリタリーカーキ、グレイ、ブラックのワントーンコーディネートで、素材はナイロン素材からコットン、レザー、ウォッシュド・ギャバジンなどほぼ無地での提案。これまで自身のルーツであるアルゼンチン・パタゴニアからのアイコンとしてシグニチャーアイテムとなってきたアニマルグラフィックは、今回ジャケットやコートに大きくプリントされた大蛇に集約。時空を超えるガウチョスタイルは、 “ニュールネッサンス”というテーマで、今回のコレクションを表現した。Text: 野田達哉
2017年01月25日モンクレール ガム・ブルー(MONCLER GAMME BLEU)の2017-18秋冬コレクションが1月15日、ミラノで発表された。毎シーズン、明確なスポーツシーンを凝った表現で披露する同ブランドの、今シーズンのテーマは登山。ショー会場には雪が降り積もり、ロッククライミングのロープでつながったモデルが、ランウェイのコースを作っている。ランウェイを歩くモデルたちは雪の中の行軍でウォーキングの速度はきわめてスローペース。よく見るとパンツもボンテージパンツのようにロープでつながっており、全身をさまざまなこの登山用ロープがカラビナとウェアに潜んだループとで緊縛されている。各アイテムにはこの登山用ロープのグラフィックが使用されており、ストライプはほぼダイヤゴナルでジャケットのスーツ、チェスターコート、ピーコートなどテーラードピースに落とし込まれている。そのテクニックもツィード、ジャカード、ブークレ、インターシャ、ウールプリントとさまざまな表現で、ダウンアイテムとしての機能性とラグジュアリーさがテクニカル素材とカシミアなどとの混紡素材で軽やかにレイヤードされている。オーバーサイズのボマージャケットやジャンプスーツ、コットンコーデュロイやコットンツイル、薄い透け感のあるナイロンジャケットなども新鮮だ。ショー終了後、会場内でモデルは残り、来場者が写真を撮れるインスタレーション形式の演出も定着し、トム・ブラウン(Thom Browne)マジックの種明かしがすぐに見られるのも楽しみだ。Text: 野田達哉
2017年01月24日野田秀樹が故・十八代目中村勘三郎へのオマージュの意を込めて書いたNODA・MAP『足跡姫~時代錯誤冬幽霊~』が開幕。公演に先立って、17日に公開舞台稽古が行われた。NODA・MAP『足跡姫~時代錯誤冬幽霊~』チケット情報物語の時代は江戸。幕府から御法度とされている女カブキが、河原で上演されている。三、四代目出雲阿国座の看板踊り子、三、四代目出雲阿国(宮沢りえ)と、踊り子ヤワハダ(鈴木杏)が妖艶な踊りを見せるこの女カブキを、歌舞伎の『伊達の十役』ならぬ、“伊達の十役人”(中村扇雀)は様々に役を変えながら取り締まろうとする。阿国の弟、淋しがり屋サルワカ(妻夫木聡)ら男たちが踊り子達にすり替わり難を逃れるが、サルワカは一座の座長、万歳三唱太夫(池谷のぶえ)の逆鱗にふれ、一座に紛れ込んだ、腑分けもの(野田秀樹)、戯けもの(佐藤隆太)ら、さらには阿国までが、一座を追い出されそうになってしまう。そこで弟の窮地を救い、一座に残るべく、阿国は座長に嘆願し、出雲阿国座の再興の夢を託して、サルワカに女カブキの「筋」となる台本を書かせる。しかし、大衆をあっと言わせる「筋」など書くことができないサルワカの前に、売れない幽霊小説家(古田新太)が現れ、サルワカの台本に手を加え、その「筋」が、座長に気に入られて、新作「足跡姫」が上演されることに……。舞台には、花道やスッポン、下座音楽や大向こうなど、歌舞伎の趣向がたっぷり。その中に野田流のテンポの良い言葉遊びが混じり、さらに、幕府への謀反を企てた由井正雪、歌舞伎の創始者である出雲の阿国ら、実在の人物の名が虚構と溶け合って、重層的な世界を作っていく。そこには、芸術への情熱や、冒険心、反骨精神などが溢れている。これらは全て、十八代目勘三郎が目指したもの、あるいは、勘三郎という存在に人々が求め託したものだ。つまり、彼は直接的には登場しないが、舞台のそこここにその面影が、足跡がある。観客は、ひたむきな阿国を鮮やかに演じる宮沢、無邪気なサルワカを瑞々しく演じる妻夫木、コミカルな演技と共に能風の所作や殺陣でも魅せる古田、出演者中唯一の歌舞伎俳優である扇雀ら俳優達の生き生きとした演技に引き込まれ、やがて、野田の舞台芸術への強い想いを目の当たりにするだろう。人は皆、辛い現実を前にした時、これは虚構であってほしいと願う。一方で舞台人は常に、虚構を現実であるかのように演じたいと願う。野田は戦友の死を通して、今回の『足跡姫』に、先人の肉体が滅びても残った者が連綿と継いでいく芸能や精神と、一回毎に終わってはまた始まる舞台そのものを重ねた。野田が舞台を通して描く、死と再生という無限の物語は、観た後も私達の胸にどこまでも響き続ける。まるで足跡のように。取材・文:高橋彩子
2017年01月24日ドルチェ&ガッバーナ(Dolce&Gabbana)が1月14日に発表した2017-18秋冬メンズコレクションは、モデルにミレニアル世代のスターが勢揃いした。彼らを一目見ようと会場前には大勢のファンが列を成し、グッチ(GUCCI)、ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)、ジル・サンダー(JIL SANDER)が今季よりミラノメンズファッションウィークのメンバーから抜けた寂しさを振り払うようなゴージャスで楽しさあふれるエンターテイメント性あふれるコレクションを披露した。ショーはYouTubeへの投稿で有名になった20歳のシンガー、オースティン・マホーン(Austin Mahon)のライブでスタート。ファーストルックは動画投稿サイトVineで一躍人気を得、インスタグラムで1760万人のフォロワーを持つキャメロン ダラス(Cameron Dallas)。起用された49名のミレニアルズには、ボブ・ディランの孫レヴィ・ディラン(Levi Dylan)、シンディ・クロフォードの息子のプレスリー・ガーバー(Presley Gerber)、ジュード・ロウの息子ラファティ・ロウ(Rafferty Law)、ライオネルリッチーの娘 ソフィア・リッチー(Sofia Richie)、シルヴェスタ・スタローンの娘システィーン・スタローン(Sistine Stallone)とソフィア・スタローン(Sophia Stallone)などが顔を揃えた。コレクションはドルチェ&ガッバーナのアイコニックなアーカイブを散りばめた宝石箱をひっくり返したようなアイテムが次々に登場する。クラシコのサルトリアに基づいたスーツ、コートをタキシードとともに登場させながら、アニマルのフーディーズ、アニマル柄のニット、パジャマスーツにロングのダウン、ガウンコートなど90年代のD&Gへのオマージュにあふれた112ルックが展開された。Text: 野田達哉動画引用元: (ドルチェ&ガッバーナオフィシャルYouTube:
2017年01月23日サルバム(SULVAM)の2017-18年秋冬コレクションが1月12日、イタリア・フィレンツェで開催中のピッティ・イマジネ・ウオモ91(Pitti immazine Uomo)で発表された。2年前にミラノにおいて生地の見本市であるモーダウニカの招待で新人デザイナーのコレクションとして合同ショーに参加しているが、海外でのフルコレクションの発表は今回が初めて。高密度に管理されつつある現代社会から解放への叫びなのか、解かれて引きずるスニーカーのシューレースは、チョーカー風に首に巻かれたり、ドローストリングスとしてアウターやパンツから垂らされたりと、隠喩的だ。ビッグシルエットのカモフラージュ柄のコート、複雑にパターンを切り替えステッチワークされたパンツ、オーバーサイズのストライプシャツはカットワークでシルエットに変化を持たせている。生地の重みをシルエットに生かしたニットなど、すべてのアイテムが緩やかな打ち込みの素材を重ねたり、切り離したりすることで、ハイスピードな産業構造に反旗を翻しているようなコレクション。デザイナーの藤田哲平は山本耀司のコレクションのパタンナーを務めた後、2014年に独立しブランドをスタート。2015年に「Who is on Next Dubai」でウィナーとなり、昨年6月のピッティウオモに招待されブース出展。今回、JFW(ジャパン・ファッション・ウィーク協会)の支援を得て、ランウェイ開催となった。現地での記者会見で「ナポリの伝統とはまた違った新しい洋服の作り方、アントワープ6が影響を受けたというヨウジヤマモトの解釈とは違う時代に沿ったアイテム、“ストリート”とは違う日本の服飾の線上にある新しいモードの王道たるランウェイを見せる」と話し、32歳という自身の年齢を評して「海外のデザイナーたちと比べると若手とは言えない年齢」と日本の現状への危機感も覗かせた。Text: 野田達哉
2017年01月21日最終日こそ小雨となったものの、初日から天候に恵まれた第91回ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO 91)。伊フィレンツェで毎年1月第2週(今年は10日から14日)に行われるこのメンズファッションの合同展示会は、ファッションスナップの聖地として知られている。特にこの数年の加熱するスナップブームで、世界中からメンズのバイヤーやプレス、ブロガーたちが押し寄せ、この4日間だけで雑誌の特集が出来てしまう盛り上がりよう。今年も大勢のスナッパーが集まったが、暖冬だった昨年に比べて気温の低さからか、コートにマフラー、ニット帽の防寒スタイルが目立ち、着飾ったピーコックたちの社交場だったメインパビリオン前は比較的落ち着いた印象。カラーがテーマだった前シーズンに比べ、来場者のスタイルは全体的にシックになり、黒が目立った。とはいうものの、会場内はお洒落を楽しむことに人生を賭けたファッショニスタたちが年に2回のお互いの変化をたたえ合う。それぞれのスタイルをリアルに楽しむシーンは、バーチャル化の波が押し寄せるファッション業界にとって、貴重な場であることに違いない。モードを席巻するユースカルチャーのトレンドと、クラシコのミックススタイルがクロスしていく時代。会場となったフォルテッツァ・ダ・バッソ内の2017年最初のスナップを集めてみた。Text & Photo: 野田達哉
2017年01月21日1月10日にイタリア・フィレンツェで開幕した第91回ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO 91)が4日間の日程を終えた。1,220ブランド(内海外ブランド540ブランド)が参加する世界最大のメンズファッションの合同展示会には、今年は約2万4,300人が来場した。今回のテーマは「Pitti Dance Off」。パーソナルなスタイルをコンテンポラリーなファッションで表現する方法として“ダンス”がクローズアップされ、メインビジュアルにフィンガータット(指先で行うダンス)が起用されたが、会場内でもダンスのパフォーマンスが各エリアで行われた。ポール・スミスがPSの初のプレゼンテーションで24年ぶりにピッティのゲストに1993年以来となるピッティのゲストデザイナーとして参加したポール・スミスまた、公式イベントとしてポール・スミス(Paul Smith)が1993年以来、久々にピッティのゲストデザイナーとして招待。今春よりスタートするディフュージョンライン「PS」の世界初となるプレゼンテーションを開催した。アクロバットダンスチームを起用し、デビッド・ボウイ、プリンス、ジョージ・マイケルなどの曲とともに、コレクションの一部をパフォーマンスで発表した。同ブランドのデザインコンセプトのひとつである自転車などのテーマを盛り込みつつ、コーデュラのハイテク素材を使用し、防水・防しわなどの機能を備えた軽量ジャケット、スーツなどをポール・スミスらしく、エンターテイメント性とユーモアで表現。服そのものではなく、ブランドの背景にあるDNAや、ライフスタイルの提案がプレゼンテーションの大きなトレンドとなりつつある時代性を踏まえての演出となった。メインパビリオンを構成するクラシコブランドの2017-18秋冬シーズンの傾向は、アーガイルやハウンドトゥース、市松、ヘリンボーン、フィッシャーマンといった英国トラッドのモチーフが目立ち、全体にカシミア、ベビーアルパカ、モヘアといった高級獣毛混のウール素材を中心にしたミックス、ブレンドがキーワード。従来以上に軽さとやわらかさを強調したアイテムの提案が継続している。また、スポーツウェアの提案が幅を広げ、ハイテク素材使いでの差別化、スニーカー、ワークブーツのスタイリングが主流になっている。ベージュ×グレーを打ち出したブルネロ・クチネリブルネロ・クチネリ2017-18秋冬コレクションブルネロ・クチネリ (BRUNELLO CUCINELLI)ではシーアイランドコットンを使ったソフトコーデュロイのアイテムが、今回のプレゼンテーションのテーマとして打ち出された。スタイリングはベージュ×グレーのコーディネートでフレッシュなイメージ。ガーメントダイのシャツや新たにウールのデニムも発表し、メゾンが提案するラグジュアリー&コンフォートのライフスタイルをブース全体で表現している。ハイテク素材で機能強化、人気ラインを充実させたヘルノヘルノが2017-18秋冬よりスタートする「MAGMA」シリーズ日本でもこの数シーズン、メンズが売り上げ好調なヘルノ(HERNO)は一昨年発表した超軽量ダウン「7デニール」のさらに軽量化を図った「5デニール」を発表。10年前に20デニールの軽量ナイロンダウンを発売したことを記念して、アニバーサリーモデルとして5色展開される。他にもレーザーカットした高密度ナイロン素材を熱ではなく超音波で接着した新技術のダウンジャケット「MAGMA」、ゴアテックスを使用してハイスペックなアーバンマウンテンウェアとして日本でも人気の「ラミナー」シリーズからは、ゴアテックスに変わるより軽量化を図った新素材イグルーラインを発表。技術の進化によって機能を訴求した新商品が、数多く提案されている。新たな市場開発に向け、アルテアからミレニアム世代に向けた新ラインアルテアが発表したプライスコンシャスなニューラインイタリアを代表する伝統的な物作りで、専業ファクトリーブランドからトータルブランドへと成長を果たしてきたクラシコ系ブランドだが、市場の成熟化とイタリア国内及び欧州の長引く不況から、新たなマーケット戦略を図る動きもある。1892年創業という歴史を誇るネクタイ専業メーカーからこの数シーズンニットジャケットなどで市場を拡大してきたアルテア(Altea)は、Tジャケットを開発した日本人デザイナーを起用し、2017-18秋冬より新たなラインをスタート。芯地や裏地を省き、工程に大幅に効率化したことでコストを抑えたジャケットとセットアップの2ラインで、「ミレニアム世代にも買いやすい価格帯を目指した」(ルカ・サルトリ・アルテア社長)というイタリア国内で約400~500ユーロ程度で販売される予定だという。ナポリから世界を制覇したレジェンド、チロ・パオーネの世界チロ・パオーネの特別イベント「TWO OR THREE THINGS I KNOW ABOUT CIRO(チロに関する2つか3つの知っていること)」前述したが、今回のピッティで目立ったのが、世界的なファッション市場の流れがライフスタイルへ向かっていることから、アイテム、トレンドの提案以上にブランドのDNAを再確認、最訴求する動きが強まっている。同展の公式イベントとして行われたキートン(Kiton)のファウンダーであり、現在のイタリアブランドのファッションシステムを誕生させた功労者としてチロ・パオーネ(Ciro Paone)の特別イベント「TWO OR THREE THINGS I KNOW ABOUT CIRO(チロに関する2つか3つの知っていること)」が開催された。同イベントでは、洋服はキートンを代表するスーパーファインウールのネイビージャケットをサイズ違いで展示するだけにとどめられた。それ以外の展示セクションでは、ファッションのアイデアが生まれる現場であったチロ本人の食卓、生地が裁断される現場の匂い、アイロンの蒸気、端布が散乱した床などをインスタレーションで展示するなど、ナポリが生んだイタリアを代表するファッション企業家の人生をフィレンツェらしいアート表現で称えた。同イベントのアートディレクションを担当したアンジェロ・フラッカヴェント(Angelo Flaccavento)は「ファッションだからと、服だけを見せる展示は既に魅力を失っている。その背景を含めて見せる楽しさが必要」と説明する。6つのブースに分かれた最後の部屋はキートン社のファブリックで作られたイタリアの国旗、屋外テラスには伊達男で女性にモテたというレジェンドの名を呼ぶ女性の甘い声がスピーカーから流れているというユーモアで来場者を和ませた。Text: 野田達哉
2017年01月20日今シーズンよりギョーム・メイアン(Guillaume Meilland)がデザイン・ディレクターに就任したサルヴァトーレ フェラガモ(Salvatore Ferragamo)の2017-18秋冬メンズコレクションが、1月15日ミラノで発表された。G・メイアンはルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)、イヴ・サンローラン(Yves Saint-Laurent)、ランバン(LANVIN)それぞれのメゾンでメンズウェアのキャリアを積んだ。英国調のウールコートはロング&リーンと、ゆったりしたボリュームを持たせたシルエットが特徴。コートはさまざまなバリエーションで展開され、大きなラペルがやわらかな襟元を形作る。どれもがスーパーファインウール、カシミアのテクスチャーを生かした光沢感のある素材に、流れるドレープが特徴。クラシカルな素材のテクスチャーを残した太めのストライプのコートも、軽さを感じさせる。同系色のチェックなど全体を通して無地に見えるトーンが中心でグレー、ブルー、茶系を中心に赤を挿し色に落ち着いたカラーパレット。ピーコートやフライトジャケットなどのミリタリーアイテムも上品なサルトリアルな伝統を感じさせる。トレンドを支配するフーディーなどのスポーツウェアやエッジィなモード表現を抑え、テーラードを基本にしたウェアはジャケットの短めの丈や、ジップアップなど若々しさをディテールに取り入れつつ、アーバンなクラシック指向へ回帰。カシミアのケーブルニットのコーディネートもすべてがクラフツマンシップのブランドヒストリーに紐付いているように見える。シャークソール風のシューズのラバースタッズが、フェラガモの新たなストーリーの始まりを感じさせる静かで穏やかなコレクションとなった。Text: 野田達哉
2017年01月19日元AKB48で女優の前田敦子とロックバンド・RADWIMPSの野田洋次郎が1日、それぞれ自身のツイッターを更新し、一部で報じられた交際報道を否定した。前田は「全く、ないですよ!!」と否定。「そんな根も葉もない噂で出ちゃうと相手方にも、ファンのみなさんに申し訳ないです。全くありませんよ」と続け、「なんで!! びっくり!! !! !!」と驚いた。野田も「なんだろう。熱愛報道みたいなのが出てるみたいですがまったくの事実無根です」と否定。「正月早々。相手方にも申し訳ないので、伝えさせてもらいます。なんだかなぁ」とつぶやいた。
2017年01月01日クリスチャン ルブタン(Christian Louboutin)の国内初のメンズオンリーブティックが11月25日に銀座5丁目にオープン。12月5日にデザイナーのクリスチャン・ルブタン本人が来日し、国内14店舗目となる同店を訪れた。ショップデザインはルブタンの店舗デザインをグローバルに手掛けているニューヨークのデザインユニット212BOXが行い、通りに面して広く開いた1、2階のファサードにルブタンレッドとメタリックなマテリアルが映え、クリスマスに向けて、銀座の街にまた一つ華を添えた。クリスチャン ルブタンのメンズアイテムはこれまで2010年に銀座7丁目にオープンした旗艦店と伊勢丹新宿店などで扱われており、売り上げの約35%を占めるまでに成長。シーズンを重ねるごとにファンも拡大していることから、今回、新たにメンズをスピンオフ。従来の店舗とはまた違ったストアデザインで提案が図られた。船舶照明をイメージさせる2階のライトや、ソファ、椅子、光で印象を違えたメタリックな壁面など、ミニスパイクやゴールド、シルバーがシグニチャーとして人気の高いメンズの世界観をラグジュアリーに演出している。階段の壁面にはルブタン自身がコレクションしてきたというメキシカンマスクを、古いもでは300年以上前のものが30体ディスプレイされ、近年ロンドンのデザインミュージアムやカナダのトロントでも回顧展が開催され、話題を集めた同ブランドのデザインフィロソフィーの一端を知ることを出来る。また、同店のオープンを記念して、カモフラージュ柄のウォレットとクラッチ、斜めがけなどが出来る3ウェイバッグ、ジュラ紀の恐竜から発想を得たと棘シリーズのスニーカーとシティシューズが同店限定アイテムとして販売されている。Text:野田達哉
2016年12月21日東京南青山・骨董通りの一本裏通り、突き当たりになる路地の奥からコンクリート打ち放しの高い壁に反射する自然光がまぶしい。10月22日にオープンしたブラミンク トーキョー(BLAMINK)は、いまだホームページも設置されていないながら、スタイリストを始めとする多くの洋服好きのSNSのタイムラインで話題を集めている。2層80坪の店内にはやさしい光が差し込み、ゆったり商品をみせる贅沢な空間は美術館のように細かく計算されている。2階フロアの5メートル近くある天井高と白い梁と鉄の窓枠やスチールとガラスのショーケースが無機的な空間に表情を与える。壁際に置かれたヴィンテージスピーカーから流れるジャンルや時代を超えた音楽は、不思議な時間を描き出す。ブラミンクはドゥロワー(DRAWER)を立ち上げたデザイナーの吉武味早子(よしたけみさこ)が13年間ディレクターを務めたドゥロワーを退任したことにともない、新たにクリエイティブディレクター、チーフデザイナーしてスタートさせたブランド。ユナイテッドアローズの関連会社として昨年設立されたデザインズ(Designs)が運営し、消費的なファッションと距離を保ちながら「本質的な洋服の価値を純粋に追い求める」ことをテーマに真摯な物作りをコンセプトに掲げている。デビューとなった16-17AW、次の17SSコレクションはこの南青山のフラッグシップショップでのみ販売される。「表通りから1本入った人通りの少ない路面で、四角くて天井が高い物件」という条件で選ばれたという店舗は、図らずも同じユナイテッドアローズグループ内のクロームハーツの向かい。店舗デザインはワンダーウォールの片山正通が担当した。1階の床はパリ南部のル・コルビジェの設計によるパリ国際大学都市ブラジル学生会館のオマージュ、階段下のブックコーナーにはエルワース・ケリーやマーク・ロスコのヴィンテージ本が並べられ、2階のソファはポール・ケアホルム(Poul Kjaerholm)のソファPK31とテーブルPK61。スピーカーのJBLパラゴンから流れるのはトーキングヘッズやOMDといった80年代ニューウェーブからエリック・サティなどのクラシック、ジャズまで幅広い。選曲は片山同様、ドゥロワー時代からの付き合いとなる大沢伸一。チリー・ゴンザレス(Chilly Gonzales)によるゲーンズブールの曲にブラミンクのワードが組み込まれたエディットバージョンなど、ブランドのコンセプトに合わせた凝った趣向が潜んでいる。ブックセレクトはpostの中島佑介がサポートしており、吉武自身の趣味が店舗全体に埋め尽くされている。洋服はそのこだわりが詰まったオリジナルのアイテムを中心に、今秋冬はリバティプリントのベロア、英国のフォックスブラザーズのフランネルのスーツなど英国のテーラーリングを生かしたアイテム、カシミアニットもサーマルのプルオーバーやケーブルニット、高密度コットンのブラウス、キャメルのコート、チノパン、デニムまでオーセンティックなアイテムが“時代の気分でチューニング”。“普遍的なトラディショナルマインドを高揚させる”生地や、シルク、カシミア、モヘアなどの素材を作りの精度にこだわった“クオリティクローズ”が並ぶ。ドレスやテーラーメイドのオーダーメイドサービスも行われている。バイイングアイテムでは、シャルベ(CHARVET)のシャツ、J&Mデビッドソン(J&M Davidson)のバッグ、フラテッリ ジャコメッティ(F.LLI Giacometti)の靴、バリー(Barrie)のニット、マリー エレーヌ ド タイヤック(Marie Helene de Taillac)のアクセサリー、サイ(Scye)のライダースジャケット、バブアー(Barbour)のオイルドジャケットなどが今秋冬は展開されており、“顔の見える作り手”からセレクトされているブランドのルックカードにはルーマニアの彫刻家コンスタンティン ブランクーシのこんなフレーズが引用されている。“ほんとうに現実的なものは、事物の外から見えるかたちではなく、そのなかにひそむ本質である”。海外のファッショニスタからも評価の高い吉武の審美眼と、日本のサブカルチャーを海外に認めさせた第一世代ともいえるクリエイターたちによる「クール」の本質ともいえる無国籍なラグジュアリー気分。それを伝える“洋服屋”の矜持が、青山の裏通りから静かに発信されている。Text: 野田達哉
2016年11月14日ストリートでゲリラ的にファッションショーを行う「ザ・ハプニング(The HAPPENING)」が11月5日、渋谷センター街とSHIBUYA TSUTAYAで17SSコレクションのインスタレーションを行った。同プロジェクトは2014年に第1回目が行われ、今回が6シーズン目、6回目の開催となる。作品を披露したデザイナーは計7名。KOSHIRO EBATA(江幡晃四郎)、MEG MIURA(メグミウラ)、TAKUMA(タクマ)の3名が前回から引き続き参加。セレクトショップのdog、XANADUからの推薦デザイナーとして、VANESSA NAOMI(ヴァネッサ ナオミ)、QUALWIN(クオルウィン カツ アヤノ)、TENDER PERSON(ヤシゲ ユウト)とマスクデザイナーのKOTARO SAKAZUME(コータロー サカズメ)の4名が初参加し、各デザイナー2~6体、計23体の作品が発表された。渋谷センター街では初めてのストリートファッションショーとなった今回のプロジェクトは、渋谷センター商店街振興組合、渋谷観光協会、SHIBUYA TSUTAYAが全面的にサポート。2020年の東京オリンピックに向けて、渋谷からの文化発信を目的にファッションのインキュベートを目指すTSUTAYAが中心となって、これまで許可の下りなかったセンター街でのファッションショーを警察の許可を得て実現した。ショーは16時にスクランブル交差点の正面のTSUTAYAからスタート。センター街約80mをモデルとダンサーが警備員に守られながらパフォーマンス。その後TSUTAYAの6,7階のブック売り場、カフェを使用してインスタレーションが行われた。発表されたコレクションは「山本寛斎をリスペクトしている」というヴァネッサナオミの着物や帯、資材をチャンプルーしたアッサンブラージュのようなコスチュームからスタート。構築的なシルエットを柔らかな曲線とフォトプリントでデニムの新しい表現を試みたKOSHIRO EBATA、アフリカのトライバルなモチーフをクチュールラインとして立体的に仕上げたMEGMIURA、配水管のプラスティックパーツを使いDIYとファッションをジョイントさせたTAKUMA、レースとメタリックな素材をクラシカルなドレステクニックで未来的に表現したQUALWIN、東京らしいストリートファッションとモードをカットアップしたTENDER PERSONと、見せ方はイベントとしての統一感が図られつつも、それぞれオルタナティブな作品が陶器のマスクとコラボレーションされ、発表された。前回は地下鉄銀座線のコンコースと車両内、今回は日本一の雑踏を誇る渋谷センター街でと、まさにハプニング性は初志貫徹。しかしながら、いずれも公共の場所での開催で、ゲリラと言えども行政への許可を得ており、その分制約も多く「今回は音楽の使用が難しく、実現できなかった」と同プロジェクトを主宰するスタイリストの伏見京子氏。今年9月には上海モダンアート美術館McaMに招待され、16AWコレクションを中国のパフォーマンス集団と共演するなど、活動は海外でも知られ始めているが、路上でのゲリラパフォーマンスは今回が最後となる予定。「若手デザイナーがお金をかけずにパブリックなスペースでショーを発表する方法として、路上でのショーを始めたが、最近はストリートでのショーが増えており、表現の方法を変えていく必要があると考えている」と伏見氏。当初は日本国内のファッション業界の若手のインキュベーションのシステムに一石を投じるべくスタートした同プロジェクトも3年が経過。今シーズンはJFW(一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構)が主催するAFWT(アマゾンファッションウィーク東京)の公式スケジュールとして、パリからのゲストデザイナーKOCHEが原宿で路上ショーを開催した。クラウドファウンディングでのショー開催など、いち早く社会の動きをとらえた運営で刺激を与えてきた同プロジェクトも新しいステップを迎えている。Text: 野田達哉
2016年11月07日「自分が演劇を本当に志したいと思うきっかけになったのが野田さんの作品なので、どこか“ホーム”に帰るような感覚があります。帰るからには、成長した姿を見せなくてはというプレッシャーもありますし、今までNODA・MAPを見てくださった方たちが見たことのない、新しい私として表現したいですね」NODA・MAP第21回公演 『足跡姫』チケット情報約3年ぶりにNODA・MAPに参加する心境を、そう話す宮沢りえ。2004年の『透明人間の蒸気』以来、自身にとって7作目の野田秀樹作品『足跡姫~時代錯誤冬幽霊~』(あしあとひめ ときあやまってふゆのゆうれい)に、初共演となる妻夫木聡ら充実のキャストで挑む。「稽古場でアイディアを提供し合ったり、挑発し合えることが、すごく楽しみです。自分が出した音に響いてくれる人がいて、その反応がまた私に響いてくる。そうやってお互いが鳴らし合う鐘が、より高いところへ行くガソリンになる。妻夫木さんは、その鐘にいちばん大切な“誠実さ”が溢れている人。ハッとするような瞬間が、積み重なっていくといいなと思っています」絶大な信頼を寄せる古田新太との共演も心強い。二心同体の役を演じた『MIWA』をはじめ、「なぜかカップリングされることが多いんです」と笑顔を見せる。「古田さんは、大きな視野で周りを客観的に見る目をちゃんと持ちながらも、挑戦することを恐れない人。頼もしいし、負けていられない気持ちになります。トランポリンを使った今回のチラシの撮影でも、先に撮り終えた古田さんと妻夫木さんがとても上手だったと聞いたら俄然、闘争心が湧いてきて。お陰でたくさん跳んで、筋肉痛になりました(笑)」江戸時代が舞台になる本作品。野田によると、“残ることのない、肉体を使う芸術”をモチーフに、生前深い親交があり、歌舞伎『野田版 研辰の討たれ』などをともに生み出した故・中村勘三郎へのオマージュを書き下ろすという。「野田さんがそれを照れたりせず潔く表明されたことに、まず驚きましたし、感動しました。こういう具体的な言葉を発表するのは、とてもエネルギーの要ること。野田さんの新しい挑戦に対する意気込みを感じます」「心と体をストレッチして」そんな野田の思いに応えたいという宮沢。「1+1=2にならないのが野田さんの作品で、肉体から湧き出るとても創造的な表現が常に求められます。1+1=100になっても、0になっても、それに対してピタッと吸着できる自分でありたいし、できれば時折、野田さんのイメージをいい意味で壊せるくらいでありたい。“そんな見せ方もあるんだ!”と驚く野田さんの顔が見られるように、脳みそを柔軟にして稽古に臨もうと思います」公演は1月18日(水)から東京芸術劇場 プレイハウスにて。チケットの一般発売は12月10日(土)午前10時より。なお、チケットぴあでは11月3日(木)午前11時まで無料会員向けインターネット抽選先行「プレリザーブ」を受付。取材・文/岡﨑 香
2016年11月02日ユマコシノ(YUMA KOSHINO)が10月21日、渋谷ヒカリエで17SSコレクションを発表した。今シーズンのテーマは「オプティカル・イルージョン(Optical Illusion)」。エッシャーの絵画からヒントを得たという、視覚的な錯覚をプリントやジャカードなどの素材表現、パターンワークで表現した。ツイードやデニム素材はミックスヤーンの表現ながら遠目ではグレイッシュなワントーンに見える表現。レイヤーにファブリックを重ねてボリューム感を持たせながら、カッティングでシャープに見せるなどテーマ性を生かしたルックが続く。カラーブロックとジャングルプリント、チェック、ストライプをグラフィカルに処理したトロンプルイユのワンピースや、ドレスに合わせたデニム使いのパッチワークジャケットもパワフルな色使いながらキュートな印象。プリーツのドレスやスカートの曲線はエッシャーの流れる水のモチーフを連想させ、スカートのヘムラインも見る角度によって様々な形や柄を描き出している。Text: 野田達哉
2016年10月30日銀座に自身のギャラリー、KHギャラリーを2012年にオープンして以降、アーティスト小篠弘子としての活動と、デザイナーヒロココシノとしてのアーカイブは、シーズンを重ねるごとにその距離を縮めている。10月20日、東京・恵比寿ガーデンホールで発表された17SSコレクションは「BOUNDARY~あたりまえへの挑戦~」をテーマに、キュビズムをスポーティで表現した。ショーはお決まりの花道スタイルのランウェイを設けず、シアター風に中央にスクエアの平面のステージをライティングで描き出す。光のインスタレーションは昨年京都、今年は芦屋でコラボレーションしているアーティスト集団サークルサイド(circle side)の作品。現在、滋賀県近江八幡市で行われている展覧会「BIWAKOビエンナーレ2016 見果てぬ夢」で「Resonance」という作品を発表している。コレクションは大胆な曲線とアシンメトリーな表現で、ジャージー素材をドレスやスキニーなパンツスタイルなどでラインナップ。デニムやメッシュ、ビッグシルエットといったシーズントレンドをさらりと取り入れながら、アートとの境界線をモードで遊んだゆとりのコレクション。アートモチーフは自らの絵画からのカットアップ、表面変化のあるニットやオプティカルプリント、ストライプやチェックを幾何学的に組み合わせることで、二次元と三次元を揺蕩う。なお、ヒロココシノ(HIROKO KOSHINO)は9月1日付けで代表取締役社長に長女の小篠由佳が就任。前社長の小篠弘子は代表取締役会長となり、アーティストワークに専念できる体制が新たにスタートした。Text: 野田達哉
2016年10月28日