特別支援学級?通常学級?悩んだ就学問題現在6歳の息子は、4歳でADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けました。幼稚園へは楽しく通っていたものの、切り替えの苦手さ、こだわり、癇癪、見通し不安など問題が盛りだくさんだった息子。小学校入学にあたっては進学先に頭を悩ませていました。最初は小人数で指導してもらえる特別支援学級の方が息子も落ち着いて過ごせるのでは?と思っていましたが、住んでいる自治体には情緒学級がなかったため療育の先生、かかりつけ医の先生に相談しました。すると、息子は新しいことを学ぶのに喜びを感じるタイプであること、学校でみんなと学びたいという気持ちが強いことから、通常学級が好ましいとみなさん同意見でした。そこで通常学級に席を置きつつ通級指導教室で感情のコントロール方法を学ぶほうが合っているのではないかということになり、わが家の希望は通常学級+通級指導教室に決定しました。そして、年長の9月就学相談へ臨んだのですが……。Upload By ユーザー体験談「通級指導教室は必要ない」就学相談でこちらの希望は聞いてもらえず就学相談は自治体の就学科の担当者1名と私(母)、2名で行いました。最初に私が通常学級に所属しながら通級指導教室に通いたいと希望したところ、以前受けた知能検査結果を見ながら「知的な問題がないので、通級指導教室は必要ないと思います」とバッサリ。そして今では通常学級でもある程度配慮が受けられるからと熱く説明されました。・声かけ・座席配慮・答案用紙にバツをつけない・癇癪の時に別室などで対応するその他の要望もできる範囲で聞いてもらえるとのこと。私が圧倒されていると、さらに続けて特別支援学級や通級指導教室には予算に限りがあると説明され、あまり人数を増やしたくない……という雰囲気をひしひしと感じてしまった私。その後も「まだ入学まで半年あるから成長するかもしれませんよ?」「就学前健診で学校側から言われたら通級指導教室を考えればいいのでは?」などと言われたため、こちらの話す時間もほぼ取れず終了してしまいました。これで通常学級に通うことが決定してしまったのです。Upload By ユーザー体験談本当にこれでよかったの?悩んだ母は電話をとった!本当にこれでよかったのか……とても悩みました。就学前健診の時に再度学校側に相談することも考えましたが、今回の就学相談で療育の先生、かかりつけ医の先生から勧められていたことがちゃんと伝わっていたのかも自信がありませんでした。このままモヤモヤしていても仕方がありません。やっぱりもう一度伝えなければと思った私は、勇気を出して電話をすることにしました。緊張しながら「先日の就学相談では通常学級を進められたのですが、やはり通級指導教室にも入りたいと思っておりまして……。就学相談をもう一度お願いしたいのですが」と話したところ、「では二次面接をしましょう」とあっさり二次面接を受けられることになりました。今度はきちんと自分の思っていることを伝えようと面接に行くと、前回とは別の方が担当でした。面接ではすでに通級指導教室に行くことを決めていたかのように話がスムーズに進み、通級指導教室が無事決定。力んでいたので拍子抜けしましたが、電話をしてよかったと本当にほっとしました。楽しみにしていた小学校。でも入学式では奇声と大癇癪を起こしてしまい……入学までは学校生活に関する絵本を読み聞かせたり、幼稚園と学校の違いを話したり、小学校がどういうところかイメージがつくようにしていました。幼稚園のようにいつも先生がついてくれるわけではないこと、自分で自分のことをしたり、みんなと同じように行動することが増えること、遊べるのは休み時間だけ、授業中は席に座って話を聞くなど息子には難しいことが多い状況だと話していましたが、その時は「できるよ」「勉強楽しみ」など前向きな発言が多くありました。また学校を見学し、学校内の雰囲気も味わってもらいました。そして迎えた入学式当日。学校を楽しみにしていた息子でしたが、初めてのことへの不安から学校に着いた途端に不機嫌になってしまいました。受付が終わると親はホールへ、子どもは教室へと離れ離れになったためその後どうしていたかはわかりませんが、入場は泣きながら先生につき添われて入場、席に着きしばらくすると奇声を上げて癇癪を起こしてしまいました。初めて見るくらいの癇癪と奇声で、私もビックリするほどでした。Upload By ユーザー体験談先生がホールの外へ連れ出してくれたので私も外に出てつき添いましたが、癇癪は全くおさまりません。支援コーディネーターの方が居たので一緒に校内を散歩させてもらい、式が終わる頃ようやく落ち着きました。この時の私は疲労困憊。もう疲れと悲しみでいっぱいでした。不安にならないようにといろいろ準備をしましたが、息子には事前の対策は効果なかったようです。もし今就学前に戻れるなら、入学式のイメージや大勢の人の中に入るということをもっともっと具体的に本人に伝えてあげたりイメージできるように考えてあげればよかった……と思っています。困りごとが多い息子が楽しく過ごせる居場所へ入学後、通常学級で実際に受けられた配慮は、座席を1番前にしてもらうこと、支援員にほぼ専属でついてもらうこと、見通しを立てられるよう予定を伝えてもらうなどでした。それでも息子は勝敗や順番にこだわって泣きわめいたり、プリントを破いたり、ときには全く関係のない子を叩いてしまうことも……。そんな息子の行動のため、授業も度々止まってしまっていたようです。Upload By ユーザー体験談学ぶことは好きだけれど、息子に集団行動は難しかったようでした。本人はみんなと勉強したいと頑張ってはいましたが、それ以上の配慮を求められる状況ではなかったため、1年生の2学期から情緒学級のある学校へ転校しました。問題行動はまだありますが、幸いにも癇癪の頻度は減り、癇癪になっても自分で切り替えができるようになってきています。勉強はゆっくりになってしまい不満もあるようですが、一方で楽しいことも増えたようで、母としてはホッとしています。就学前は就学先について悩みましたが、入った後も引き続き試行錯誤中です。今は息子が楽しいと思うことが少しでも増えていってくれればと思い、これからも息子の学校生活をサポートしていけたらと思っています。イラスト/taeko※エピソード参考者のお名前はご希望により非公開とさせていただきます。(監修:鈴木先生より)残念なことに、自治体や教育委員会は子どもファーストではなく定員・予算ファーストとなってしまう場合があるようです。神経発達症を診断できる小児科医が増えてきたためか、診断が増えると特別支援学級のニーズが高まり、受け皿が限られていることからこういう事例が増えています。しかし、あくまでも子どもファーストで教育する必要があるのではないでしょうか。理解のある市町村では特別支援学級の教室を増室して対応しています。残念ながら、その市町村の教育に関わる予算次第ということです。教員数も含めて市議会で議論する必要があります。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年11月17日やたらとエビ反りする新生児期39週3400gで生まれた息子。よく寝るタイプではないけど、ミルクをよく飲み、声を出したりモゾモゾしたり、元気いっぱいな赤ちゃんでした。そんな息子ですが、私はあることが気になっていました。それは、やたらと体を反らせること。Upload By ネコ山抱っこしていても息子は何だか力が入ってしまうようで、腕の中でよくのけ反っていました。布団に寝かせていても、仰向けで大人しくしていることはまずなく、モゾモゾしたり上向けにのけ反ったり。そして、泣くときは最大級にエビ反り。新生児期のうちから寝返りしてしまうのではないかと思うくらい、泣きながらそり返り、体ごと横向きになっていました。あまりのエビ反りに驚きましたが、初めての子育てということもあり「赤ちゃんってこんなもんなのかな……?」とあまり気にしていませんでした。保健師の新生児訪問で息子が生後1ヶ月を過ぎた頃、市の保健師による新生児訪問がありました。身体測定などをしたあと保健師さんから「何か困っていることはありますか?」と聞かれました。とりあえず発育も良好だしこれといって困り事はなく、初めての育児で分からないことだらけと答えると、保健師さんは息子を抱く私の姿を見て「もしかして抱きにくい?」と一言。すごく反り返ってしまうことを伝えると「まんまる抱っこが良いよ」とアドバイスをくれました。まんまる抱っこは、反っている状態から挑むには抵抗がありましたが、いざやってみると息子は心地よさそう……!それからまんまる抱っこを意識して抱くと、今まで反り返って抱きにくかった息子をなんとか腕の中に収めておくことができるようになりました。Upload By ネコ山反りすぎて生後3ヶ月で寝返り!首もすわっていないのに……保健師さんのアドバイスのお陰で以前より息子を抱っこしやすくなりましたが、布団に寝かせているときや泣くときは依然としてエビ反りのまま。加えて、息子は生後1ヶ月半頃から手足を激しくバタつかせる子で、首もすわらないうちからとにかく動きたがっていました。そんな息子はついに、わずか生後3ヶ月で寝返りができてしまったのです!(寝返りができる目安は一般的に生後6ヶ月と言われています)成長してどんどんと力がついてきた息子は、エビ反りをした勢いでうつ伏せになるようになっていました。しかし首すわりがまだ不完全なため、うつ伏せの状態で顔を上げることができません。「このままでは窒息するのでは!」 と、私は慌てて息子を仰向けにしました。Upload By ネコ山その日から私は息子が起きているときは一瞬も目を離せなくなりました。起きている間は繰り返し寝返りをするようになり、寝返りをする息子をひっくり返しては仰向けに戻すことの繰り返し……。窒息するのが心配でトイレに行くのも困難に……。寝返りしても首が上がらず窒息しないように、首すわりを促すと聞く遊びを取り入れてみたりと、いろいろ試してみました。結果、生後4ヶ月過ぎにはしっかりと首がすわり、寝返りしても首を上げていられるようになりましたが、その間に何事もなくて本当に良かったです。検索すると……首がすわる前に寝返りしてしまったこと、新生児期からエビ反りすることが気になり、思わずインターネットで検索すると『脳性麻痺』や『自閉症』の文字が。思いがけない文字にショックを受けましたが、1ヶ月健診も3ヶ月健診でも全く問題なしの息子。「検索結果が全員に当てはまるわけではないし」と気にしないことにしました。成長と共にエビ反りしなくなる、何だったんだろう?Upload By ネコ山それから息子は順調にずり這いやお座りをし、1歳ちょうどで一人歩きをし始めました。エビ反りは、首がすわった生後4ヶ月を過ぎた頃にはあまり見られなくなり、ずり這いやお座りをし始めた頃にはほぼなくなりました。その後1歳半健診で発達の遅れを指摘され、4歳の頃にADHD+ASDの傾向があると言われた息子。『新生児のエビ反り』とインターネット検索した時に出てきた『自閉症』という検索結果について、当時は気にしていませんでしたが「やっぱり関係あったのかなあ?」と今になって疑問に思うのでした。執筆/ネコ山(監修:新美先生より)新生児期から乳児期早期の「エビ反り」の思い出について詳しく教えて下さりありがとうございます。後に発達障害と診断される方のなかに、乳児期に反り返りが強かったというエピソードをお持ちの方は通常よりは高率にいるようです。このため、発達障害のチェックリストみたいなものに、乳児期に反り返りが強かったというようなチェック項目があったり、『新生児のエビ反り』と検索すると、「自閉症」というワードが並んだりするかもしれません。ですが、記事にも書いていただいたように、反り返りが強い=発達障害というわけではありません。もし、新生児期~生後4ヶ月の時点で反り返りが強いということで受診されても「自閉症です」などと診断されることはないと思います。反り返りが強いお子さんはどちらかというと過敏だったり、若干体の使い方が不器用だったりするお子さんが多いかもしれないですが、それも必ずしもそうではないです。記事を読んで、「そういえばうちの子もそうだったな」と思い出す方もいらっしゃると思いますが、あの時早く気づけばよかったなとか、相談した時にスルーされたことを残念に思うなど、後悔のネタにする必要は全くないです!「そういえば抱っこしにくくて大変だったよなー」などと思い出して共感していただけるといいなと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年11月13日「ちょっと」「少し」が理解できない息子、2歳過ぎで支援センターへ現在8歳の息子は、3歳で自閉スペクトラム症(ASD)、ADHD(注意欠如多動症)の診断を受けました。見通し不安がある息子は数字にこだわりがあり、「ちょっと」「少し」が理解できずパニックになるため、あと何分、何回など具体的な数字を使って説明するようにしています。2歳を過ぎても言葉が出なかったこと、動作や言葉の模倣がないこと、他人が公園に入ってくると追い出そうとするなど人との距離感が独特だったことから、2歳すぎに発達支援センターへ相談に行きました。予約から面談当日までの間に言葉が出始めたので、もう支援センターに行く必要はないかと思っていましたが、こだわりが強く様子見が必要とのことで、定期的に通うようになりました。入園式もこれで安心?入園前の民間幼児教室ではまさに優等生幼稚園入園前に小集団を経験したほうがよいとアドバイスをもらい、プレ幼稚園のような民間の幼児教室へ2歳から入園前の1年間通いました。1年の半分は親子通園、後半は母子分離でした。朝の挨拶、お名前呼び、その日の活動、ダンスとだいたい流れが決まっており、お名前呼びのあとにその日の活動内容を具体的に話してくださったり、最後に次回の活動内容の告知があったので、息子は落ち着いて参加できていました。隣の椅子の子が手を動かすだけでテリトリーを侵害されたと感じ、不安がるなど人との距離感が妙ではありましたが、母子分離でさみしがることはあれど大泣きすることもなく、先生の指示を最後まできちんと聞いてから行動するので、教室では優等生扱いでした。なお、児童館での幼児クラスの活動では、部屋から出ようとする、部屋の後ろを走るなどして参加できませんでした。今思うと活動の内容、順番が毎回違うこと、お遊戯や体操が季節によって変わることから、見通しが立たず、不安だったのだと思います。でも幼児教室では模範生と言われるくらいに落ち着いていたので、入園式も大丈夫だろうと思っていました。Upload By ユーザー体験談夫婦で愕然……。入園式で、息子の人生初の大パニックそして入園式がやってきました。息子から「だいたい何分くらい?何をするの?」と聞かれたのですが、私の説明と違うとパニックを起こすだろうと思ったので、「お母さんも初めてだから何分かは分からないんだ。時計の針がぐるっと一周して長い針が6にくるまでには終わるよ。たぶん先生のあいさつ、園長先生のお話、写真撮影の3つはあると思う。ほかにもお母さんの知らないことがあるかもしれない」と幅を持たせた説明したところ、「分かった」とうなずいてくれ、入園式開始まで1人で園児席に落ち着いて座っていました。Upload By ユーザー体験談しかし、入園式には来賓挨拶や在園児の言葉などがあったのです。親としては誤差の範囲でも、息子にとっては予想外の大事件だったようで大パニックになってしまいました!式の途中から泣き出したのですが、泣くだけでなく「あと何分?」「先生のあいさつはまだ?」と何度も繰り返していました。ほかにも泣く子はいたのですが、式の途中で行われた先生との手遊びなどで落ち着いていくなか、息子の泣き声はより大きくなってしまい……。息子の横に担任の先生がかけつけてくれ、落ち着かせようと話しかけてくれたのですが、「あと『もうちょっと』だよ」など息子の望む答えではなかったので、だんだん激しく泣き、怒って先生をぽかぽかたたき始めてしまいました。Upload By ユーザー体験談私も夫も、大パニックを起こした息子を見たのはこれが初めてでした。式後半からは息子の隣に私がかけつけ、膝の上にのせ、「まだ6まで針が来ていない、先生の挨拶のほかにもお母さんの知らないイベントがあるらしいよ」と説得したことで、泣き方は多少はおさまりましたが、最後まで泣いていました。ただ、式が終わったらけろっと「やっと終わった。もう帰っていい?」とあっさりしていました。ただ私たち夫婦にとって、泣いて怒る息子の姿は衝撃的で、目を閉じてもその光景が消えることはありませんでした。一緒に困りごとを目撃した私と夫。このことで夫婦関係に変化が入園式のあと夫と相談し、医療に一刻も早くつながることを目指しました。それまで仕事で家にほとんどおらず、息子の様子をほぼ知らなかった夫は、私が話す息子のこだわりは私の気にしすぎだと思っていたところがありました。発達支援センターに定期的に通っていたことも、当初の悩みの種であった言葉の遅れが解消してからは無意味だろうと言っていました。私が息子に困りごとがあると思い込み、大騒ぎして障害児に仕立てようとしているのではないかと言われたこともありました。しかしながら入園式でのパニックを見て、息子本人が困っていることに気づき、親が手助けできることはやってやりたいと言ってくれるようになりました。受診の状況や、幼稚園とのやりとりの話について関心をもって聞いてくれ、2人でどうするかを考えられるようになり、私は心からほっとしました。Upload By ユーザー体験談児童精神科を受診し診断へ。問題なく幼稚園時代を過ごし小学生へ……その後はすぐに児童精神科を受診し、自閉スペクトラム症(ASD)の診断を受けました。幼稚園の先生方には丁寧に対応してもらったため、幸いにもスムーズに通い、無事卒園しました。そして小学校の入学式では希望者のみの前日リハーサルに参加し、当日は落ち着いて参加できました。入園式の大パニックの経験をいかすことができ、何事もなく終わってほっとしました。小学校の1年、2年生のあいだは週に2時間、通級指導教室に通い、通級指導教室の担任、通常学級の担任との3人共有の連絡帳のおかげで、ちょっとした困りごともいち早く先生方に伝えられ、即座に対応してもらえました。このことで、「困ったときは先生が助けてくれる」安心感が息子の中でアップしたこともよかったです。私の住む地域では通級指導教室は原則1年限り(延長しても2年まで)とのことで、2年生で通級を卒業しました。3年生の今は問題なく学校に通っていますが、もし困りごとが目立つようなら、再入級を打診するつもりです。「困ったことは工夫すれば対処できる!」ことを経験してのびやかに育ってほしいです入園式以前は、自閉スペクトラム症(ASD)だとしても困り感は少ないだろうと思っていました。数字に強く、文字が読めるようになったのも早かったですし、語彙も豊富でよくしゃべるし、IQも高めだったので安心していた部分もありました。ですが、入園式の様子を見て、できることとできないことの凸凹が激しいところがあると痛感しました。早めに医療とつながり、診断名がついたことで、親や本人のわがままではなくできないことがあると学校側に伝えられたことは助かりました。今も息子にはしつこいくらいに予定を伝え、一緒に確認することで、息子が誤解する余地を与えないように気をつけることでパニックを防いでいます。今後、息子には困ったときに「困っています」と自分で言える子になってほしいです。匂いに敏感で通れない場所があったりするのですが、エッセンシャルオイルを持ち歩くことで通ることができるようになりました。こんな風に困ったことがあっても工夫すれば対処できるといった経験を積みながら、自分でどうすればよいかを考えられるようになってほしいです。願わくば、自身の特性に引け目を感じないでのびやかに育ってくれればと思います。イラスト/海乃けだまエピソード参考/いこま(監修:鈴木先生)神経発達症のお子さんは「ちょっと」とか「少し」のような抽象的な表現の理解が苦手です。具体的に30秒とか時計で示すか、砂時計などを利用して視覚的に訴えることが必要となります。早めに診断することで今後の方向性もわかり、前もって対処することも可能になります。世間のASDに対する理解が広まれば、「自分はASDなので〇〇なことは苦手です」とか「具体的に話してください」などと普通に自己紹介できる社会になっていくのではないかと常々思っています。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年11月09日寝つきが悪い、激しい後追い…赤ちゃんの頃から繊細だった長女。初めての育児で悩み続けた日々現在小学6年生のわが家の長女『姉子』は、赤ちゃんの頃からとにかく繊細な子どもでした。一日のなかでも機嫌の良い時間が短く、寝つきも悪い、やっと寝たかと思ってもすぐ起きては泣き、手間暇かけてやっと熟睡に持ち込んでも、“膝のパキ音”だけで完全覚醒するような赤ちゃんでした。私は姉子が初めての育児だったので「赤ちゃんとはこういうものなんだ」と思っており、どうにかご機嫌になってくれないかと日々試行錯誤していました。そして、姉子がハイハイできるようになると、トイレも食事もできないほどに私を追いかけて来て、後追いがかなりひどかったと思います。言葉が出るのも少しゆっくりだったものの、1歳半健診の時には「姉子ちゃーん」の呼びかけに3回に1回くらいの成功率で「はい」と返事ができていました。それでも日常的に機嫌はあまり良くなく、なんで泣いているのか、なにが正解なのか、なにをすれば笑ってくれるのか……。子どもが産まれたら『いいお母さんになりたい』と強く思っていたことも重なって、私は悩み続けていました。Upload By スパ山小学1年生の冬、「発達検査を受けてみては?」と担任から急に言われて2歳3歳と年齢が上がるにつれ、夜泣きや後追いは少しづつ減っていきました。そして姉子が3歳の時に弟が生まれ、年少から幼稚園に通うようになると、「お姉さんになった」という自信をつけたようで、楽しく幼稚園生活を送っていました。年少の途中で夫の仕事の都合で転勤があり引っ越しをしましたが、転園した幼稚園でもすぐに馴染んでいたように見えました。相変わらず言葉はゆっくりだったものの、少しづつ増え、コミュニケーションがとれるようになってからは笑顔になってくれることも多くなりました。私はそんな娘を見て「ひょうきんで明るい子になったなあ」、とうれしく思っていました。しかし、小学校に入学してすぐに行き渋るようになりました。そのため、私がつき添って登校をして、校門まで先生に迎えに来てもらうという形で小学校生活をスタートしました。私は「小学生の頃は、最初はこんなもんだろう」と、のん気に思っていて、その時は何も心配していませんでした。そして小学1年生の冬、個人懇談会で担任の先生から学校での様子を聞いて、本当に姉子のことなのかと私は耳を疑いました。全体指示が伝わりにくい、少しのことで大泣きする、ほとんどのテストが白紙、授業中に教室から飛び出して校舎の外で泣いていたなど……。そして担任の先生から「発達検査(WISC)を受けてみてはどうでしょうか」と言われ、そこで初めて姉子にも発達障害があるのかもしれないと思いました(弟のハジュが既に発達障害の診断を受けていた)。まさに寝耳に水。いや、寝耳に氷水くらいの衝撃でした。正直なところ「あ、この子もか」と目の前が真っ暗になりました。そして同時に、乳児期からの育てにくさを思いだし、何となく腑に落ちる点もありました。すぐに発達支援センターへ相談に行き、2年生になってすぐWISCを受けました。結果はかなり凸凹があり、これまで相当しんどい思いをしてきたのではないかということが分かりました。私は姉子に申し訳ない気持ちでいっぱいで、今まで気づかなかった自分をすごく責めました。そして、わずかにあった母親としての自信のようなものを完全に失ったのでした。Upload By スパ山小学2年生で自閉スペクトラム症と診断。ストレスがかかり、分離不安症と睡眠障害にも……発達検査を受けた翌年、姉子が小学2年生の夏にまた転勤がありました。今度は地方から都心部への引っ越しです。姉子も、都会の小学校に転校したことで環境がガラリと変わりました。姉子は、ストレスからか眠れないことが増え、食事もとれたりとれなかったり……。学校も休みがちになっていきました。そして、引っ越しをしたことで病院も変わり、また一から診察予約をして順番待ちをすることに。発達外来の予約が取れたのは、なんと9ヶ月後でした。その頃には、姉子は小学3年生になっていました。やっと初診の日を迎え、そこからまた検査の予約を取り、2回目のWISCを受けました。やはり凸凹がある結果となり、そこで自閉スペクトラム症と診断されました。さらにコロナ禍で、学校や世の中のただごとではない雰囲気を感じ取った姉子は、登校することはおろか、外出もできなくなりました。姉子はただでさえ小柄なのにどんどん痩せていき、夜泣きをするようになりました。そんな姉につられるようにきょうだいたちも夜泣きをして、寝不足から家族全員が「ここはどこ? 私は誰?」みたいな状態で、ぼんやりした日々を送っていました(当時の記憶があやふやです)。そして、何度目かの通院で姉子は分離不安症と睡眠障害の診断を受け、投薬治療を開始することになりました。医師から診断を受けた時、私の想像をはるかに超えた不安を娘は感じているのだと知り、「この子が消えてしまうのではないか」という気持ちに襲われました。そして、「なんとかして生きてほしい、この子を助けたい」と必死でした。Upload By スパ山小学3年生で再び転勤。3つ目の小学校へ転入そして姉子は、だんだんと回復に向かい、母子登校をしつつ学校にも足が向くようになりました。声をかけてくれるクラスメイトもいて、手を振ったりできるまでになりました。食事や睡眠がとれるようになると、笑顔になることも増え、周囲の協力もあって少しずつ姉子らしさを取り戻していきました。しかし、やっと2つ目の小学校にも慣れてきたタイミングで、またもや夫に転勤辞令が出たのです。姉子は小学3年生で、3つ目の小学校へ転入しました。ここでも母子登校を続けていましたが、やはり環境の変化が与える影響は大きかったようです。すぐ家にこもるようになりました。私は、「前の学校の転入時のようになってはならない!」と思い、SNSやインターネット、役所や病院など……思いつく限りの所で相談をして情報を集めました。そして姉子と一緒に悩みに悩みぬいて、小学4年生に進級するタイミングで特別支援学級へ転籍をしました。小学6年生になった現在は4年生で特別支援学級に転籍した頃は、最初は母子登校から始めました。じっくりゆっくり姉子のペースに合わせて、『焦らずあきらめず、ときどきほんの少し背中を押す』というスタイルで、先生方にも協力していただきました。6年生になった現在では、学校の委員会活動をしたり、下級生の子どもたちの面倒を見たり、私から離れて修学旅行に行ったり(心配で私のほうが一睡もできず(笑))と、姉子の成長に驚きの毎日です。何度もぶつかった大きな壁をぶち破ってはないけれど、その壁に緩やかな階段をつくってみんなでゆっくり乗り越えてきたから今の姉子が笑っているんだなと思います。この個性にあふれる姉子と出会えたこと、どこでもなく、私のもとに生まれてきてくれたことを感謝しています。『いいお母さんとは何なのか』、それは今も分からないのですが、これからも子どもたちの一番の味方でいたいと思っています。Upload By スパ山執筆/スパ山(監修:森先生より)環境の変化には、大人だって戸惑いがあります。スパ山さんのように、役所や病院などで相談をしてできる限りの情報を集め、頼れるところは全て頼る姿勢はとても大切です。ゴールは「学校に行くこと」ではありません。お子さんが笑顔で過ごせるように、お子さんのペースを尊重しながらゆっくり環境に慣れることができるよう、まずは睡眠食事などの生活を整えていくことです。「何度もぶつかった大きな壁をぶち破ってはないけれど、その壁に緩やかな階段をつくってみんなでゆっくり乗り越えてきた」と言える子育て、大変素晴らしいですね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年11月06日医師の診断を受けるため、療育医療センターへUpload By プクティわが家の長男は、4歳の時に発達支援センターで知能検査を受け、精神年齢が約2歳遅れていることが分かりました。その際、IQの数値から「療育手帳」を申請することができると案内してもらいました。療育手帳を持っていると、今後いろいろと話がスムーズに進む場合が多いとのことだったので、さっそく申請することにしました。私たちの住んでいる自治体では、療育手帳の申請には「医師の診断書」の提出が必要でした。息子のことを詳しく診てもらいたかったこともあり、すぐに専門病院である療育医療センターに診察の予約をしました。しかし、発達支援センターや療育施設と同様、療育医療センターもとても混んでいるようで、診察の予約が取れたのは、最短で3ヶ月後だったのでした……。3ヶ月待ちの療育医療センター。いよいよ診察開始Upload By プクティ3ヶ月後、待ちに待った診察の日がやってきました。どのような診察が行われるのかドキドキしながら診察室へ……担当してくださったのは男の先生でした。診察室は特に普通の病院とは変わらず、ただ部屋の隅にちょっとした畳のスペースがありました。先生とのお話中、なかなかじっと座れずだらだらしている息子を見かねて、その畳のスペースでお絵描きさせてもらえることに。おかげで、息子はお絵描きに夢中になり大人しくしてくれていたので、私たちは先生とのお話に集中することができました。Upload By プクティ先生とのお話は、事前に記載しておいてほしいと言われていた息子に関する成長の記録と、知能検査の結果を元に進んでいきました。Upload By プクティ先生は非常に慣れているようで、息子の様子を少し見ただけで即座に判断していてすごく説得力がありました……。私たちが心配していた多動も集中力も心配ないとのことで、「好きなことへのめりこむ集中力があるのだから、集中できないことに関してはまだ楽しさを見いだせていないだけ。なので、周りが興味を持てるようサポートしていくことが必要」というお話でした。医師の診断結果は・・・?Upload By プクティそして診察の結果は、IQの低さや息子の様子から、ASDやADHDの疑いもなく、診断を出すとしたら知的発達症(知的障害)に該当するとのことでした。こうして診断名も分かり、診断書もいただき、無事療育手帳の申請をすることができたのでした。執筆/プクティ(監修:新美先生より)診断名決定と療育手帳取得についてのエピソードを聞かせていただきありがとうございます。療育手帳の取得の手順や基準は、都道府県によって若干異なることがあります。プクティさんの地域では、療育手帳取得のために、療育医療センターでの医師の診断が必須なんですね。プクティさんは、診察の日を「待ちに待った」と書いておられますから、息子さんについて有用なアセスメント、診断名が分かることに期待していたのですね。診断名が分かることで、息子さんについての見通しが持てたり、手帳を取得することで受けられる支援の幅が増えるなどメリットがありますよね。診断が出ること自体を不安に思ったり、手帳の取得を迷ったりする方もおられると思いますので、プクティさんのエピソードも一つの参考にしていただければと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年11月05日水ソムリエと化した息子ですUpload By 丸山さとこある日、学校から帰ってきた中学生の息子のコウが「学校の水は、飲む場所によって味が全然違う」と言い出しました。「そんなに違うの?」と聞くと、「お母さんも一度飲んだら分かるよ」とうなずきつつ、さらに詳しく説明してくれました。「1階の水が冷たくておいしい。特に北校舎前の水道水は日陰にあるから、一番水が冷たくておいしい。においもあまり感じない。3階の水はねー、ぬるくてまずい。サビのにおいを感じるような気がする」Upload By 丸山さとここのように水場ごとの味の違いをとくとくと語るコウを面白く思いながら、私は「あぁ、よかった。コウは学校で水を飲んでいるのだな」と胸をなで下ろしました。なぜなら、神経発達症(発達障害)の感覚鈍麻によるものなのか、コウは小さな頃から喉の渇きを自覚しにくい傾向があったからです。水分をとらない息子と、熱中症の危険性にハラハラする私ADHDの特性からか何かと忘れ物が多いコウですが、その中でも特に心配になる忘れ物が水筒です。体操服であれば学校から借りたり授業を見学したりして対応することが可能ですし、箸やマスクは予備を持つことができます。宿題を忘れても授業を受けることはできます。ですが、水筒の忘れ物は健康面への影響があるため、「何とかなるだろう」で済ませることはできません。家庭でできる対策として、水筒を3本用意しつつペットボトル飲料を常備するようにしています。Upload By 丸山さとここのようにさまざまな工夫をしてコウに水分を持たせるようにしても、ほとんど飲まないまま帰って来ることはよくありました。コウも知識としては水分摂取の大切さや熱中症の危険性を理解しているのですが、「喉が渇かない」という体感のほうを優先してしまうため、なかなか水分をとることが身につかない状態でした。Upload By 丸山さとこそんなコウでしたが、8月に入り暑さが本格的になると少しずつ水を飲むようになり、「見て、水筒がほぼ空だよ!」と自慢する日も出てくるようになってきました。「あまり熱心に褒めると『褒められるために水を捨ててから帰る』などのつじつま合わせをしかねないな」と考えた私は、極力大きく褒めないよう心がけることにしました。その上で、「へ~、コウが水筒を空にするくらい、今日は暑かったんだねぇ!」などの感想を伝えるようにしました。そのかいあってか、たまたまそういう時期だったのか、コウは今年の夏から少しずつ水を飲むようになっていきました。自分で考えて対処したコウに、少しホッとしましたこうして水を飲めるようになったはずのコウでしたが、学校での生活は私には見えないため、本当に水を飲んでいるのか今までは分かりませんでした。だからこそ、「学校の水は、飲む場所によって味が全然違う」というコウの発言にはリアリティを感じてうれしく思いました。また、水筒を忘れた・中身を飲み切ったという状況に対してコウが『美味しい水場を探す』という一工夫を入れたことには、「小さなピンチがあっても楽しみながら対処している様子が見えるようだ」と感じて少しホッとする気持ちになりました。Upload By 丸山さとこ執筆/丸山さとこ(監修:藤井先生より)暑くても水分摂取をしないという相談はときどき伺います。ご自身の体調の変化に気づきにくいお子さんもいるので、喉が渇いたらよりは、休み時間に一口飲むなど、具体的に飲んだほうが良い時間を提示して対応する場合もあります。コウさんは、少しずつ水筒のお水を口にすることができるようになり、水筒を忘れたときには、学校の水道水でも対応ができるようになっていたのですね。水ソムリエと化したエピソードから、小さなピンチに対処できるようになったと成長を見つけたさとこさんの、見守り方も素敵です。コラムを読ませていただきありがとうございました。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年11月02日発達障害のある次男の中学校生活がいよいよスタート!Upload By スガカズ発達障害(ADHD、LD)のある次男はこの春から中学校の通常学級に通っています。希望していた週一回の特別支援教室(通級指導教室)にも無事に通えることになりました。次男は昔から、環境の変化が苦手です。環境の変化があるときに対人関係のトラブルが起こりやすくなります。小学校に入学してからは大人(今回の場合は学校の先生など)とのトラブルが大半で、小学校低学年の頃はかんしゃく(暴言、物にあたる)や脱走がときどきありました。そのため、「次男の特性をあらかじめ知ってもらっていたほうがトラブルを未然に防げる」と思い、次男の特性などを中学校に事前に共有しています。学校生活スタート。本人の気持ちは……?次男は小6の秋におこなった、特別支援教室(通級指導教室)の体験での自己紹介で「中学校に入ったら怒るのをなおしたい」と言っていたり、入学直前には「中学校に入ったら新しい友達をつくる」「どんな学校なのか楽しみ」と話していました。小学校卒業前から本人の情緒は比較的安定していて、中学校に通ってからも不安定になることはありませんでした。知らない人も多く小学校とは違った環境でしたが、よい緊張感をもって中学校に通い始めました。入学から1ヶ月ほど経つと、クラスにも徐々になじめるようになり、新しい友達も増えました。また、クラス担任は次男との関わり方が上手く、次男自身も担任を好意的に思っているようで、大きなトラブルもなく毎日学校に通うことができています。Upload By スガカズただ、昔から朝は苦手で、緊張感がなくなった現在は、遅刻が目立つようになりましたが……。部活動はソフトテニス部に入部しました。体を動かすことは昔から得意だったので、テニスは未経験でしたが、どんどんできることが増えていきました。週5日の練習や、休日の試合など熱心に活動しています(平日の朝は遅刻が目立ちますが試合の朝は不思議と遅刻しません)。一度だけ、体育の先生と意思の疎通がうまくいかず、泣いて授業を抜け出したことがありましたが、その際には担任が次男に事情を聞き、学校で話し合って解決することができました。授業は前向きに参加しており、小学校の頃と比べると大きな成長を感じています。初めての定期テストと、課題提出7月、次男にとって人生で初めての定期テストがありました。次男は書字障害があり、文字を書くことが困難なため、書字を含めた勉強が苦手です。ただ、小6の頃から毎月療育に通っており、そのお陰で、文字を書く困難さは改善されました。小学校の頃はノートが真っ白だったのですが、中学校では、困難さを抱えつつも努力して書こうとしているようです。次男の中学校は、普段は課題が出ないのですが、定期テストの日に、課題の提出を求められます。小学校に通っていた時は、宿題の内容を担任の先生と話し合って調整してもらっていました。ですが、中学校では課題の範囲が学年で決まっており、次男だけ調整することは難しいということでした。また、この時期の子どもは友達との時間を優先しがちなので、本人が家にいない時間が増えました。そのため、課題に取り組める時間の確保が難しかったです。Upload By スガカズ【1週間の間にこなす課題】・国語漢字20ページ・数学50ページ・英語20ページ全ての問題を解いて丸つけ間違ったところはノートにやり直して提出結局、締め切りが1週間という限られた時間で次男が課題をこなすことはできませんでした。数学、英語はなんとか提出できましたが、国語の課題は手をつけられなかったので、未提出です。また、テストに向けた復習をする時間はまったくありませんでした。そもそも私は「次男は中学校でテストを受けてくれるのだろうか?」といった疑問がありました。中学校のテストは小学校の時よりも長時間の集中力や、見通しが求められます。もともと小学校でのテストが、書字の困難さを含めさまざまな理由から、白紙のままで0点で返ってくることも珍しくなかったのです。そのため、数日間、みんなと同じようにテストを受け続けることは難しいのでは?と、私は思っていました。Upload By スガカズ期末テストは3日間あったのですが、本人は3日間乗り越えることができました。国語は白紙に近い状態でしたが、受けてくれただけで、十分だと思いました。はじめての定期テストを終えて気付いたこと・漢字にルビがふられていた→ルビふりのお願いはしていませんでしたが、学校側で学習障害(LD)の生徒向けの対応をしてくれていました。・テスト時間の延長は個別で対応ができる→後日、テスト結果を持参して療育に相談しに行った際に、テスト時間の延長ができるかもしれないという話になりました。実際に学校に質問したところ、別室に移動して受けることができるということでした。今のところ本人の当日の意向から、延長の対応はしないでテストを受けています。・プリントをホチキス留めしてプリントの順番がバラバラにならないようにする。→国語のプリントが右とじのスクラム製本だった(ホチキス留めされていなかった)。テスト中にプリントを落としてしまい、順番が分からなくなったので、問題の意味が理解できなかったから白紙に近かったのだそう。学校には、ホチキスを持参する旨を共有した。ホチキス留めをしただけで2学期の国語の中間テストは解いた問題の数が増えた。初めての課題提出で気づいたこと・課題の範囲は先に知ることはできないが、どのワークを使うのかは分かったので、得意な教科は、時間がある時に少しずつ進められるとよい→とは言っても次男の特性から、声かけが重要ですが、「先生から言われてないからやらなくてもよい」と自己判断する場面があったので、先生から「中学生は自主的にやらないといけない」と次男に伝えてもらいました。Upload By スガカズ本当によかったと思うことは、「クラス担任との相性がよい」ということです。次男が通うソフトテニス部の顧問をしているので、テスト後の部活に参加する条件が「数学の提出を完了させること」だったそうです。好意をもっている先生に言われてしまったこと、部活に早く参加したい気持ちが、本人を動かしているんだろうと思います。テストの結果にはあまりこだわりませんが、提出できる課題を少しずつ増やせればいいなと思います。執筆/スガカズ(監修:井上先生より)中学生活で初めての定期テスト、親御さんもお子さんもかなり不安だったと思います。スガカズさんも触れておられましたが、書字障害や感覚過敏など医師や専門機関の診断、所見や意見書があれば、話し合いによって解答欄の拡大や別室受検など症状に応じた合理的配慮が可能になる場合があります。また、提出物に関しても手書きではなく、パソコンやタブレット端末の活用で代替するなども考慮されるかもしれません。合理的配慮の際には、実施前に本人が納得すること、実施したあとに本人の意見を取り入れながら改善していくことが大切です。周囲の生徒と異なる支援を受けることが本人の心理的な不安につながる場合もありますので、お子さんの思いを尊重しながら本人のペースで進めていかれるとよいと思います。スガカズさんも書いておられるように教師との信頼関係も何より大切ですね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年11月01日脳のタイプ僕は、人間はさまざまな「脳のタイプ」をもっていると思っています。つまりいろいろなタイプの人がいる、ということです。当たり前だよと、言われるかと思いますが、すでに知られている「発達障害」って、そのいろいろな人のなかのあるタイプ(特性)を言っているのです。すでに1977年にトーマスとチェスは子どもの気質を研究し、平均的な子以外に、育てやすい子、気難しい子、順応の遅い子が一定の割合で存在しているという結果を出しています。子どもはあるいは人間は十人十色というわけです。でも、そのなかで、現代社会を生きていく中で、「生きづらさ」を抱えてしまう子どもがいます。その子どもたちの行動や感情表現、あるいは物の見方、感じ方、考え方や気づき方などから、いくつかのタイプ分けをして、そこに名前をつけたものが「発達障害」となりました。個性とも言えるのですが、この名前がついた脳のタイプをもつ人は、現代社会でよく理解していただき、適切な関わりをしていただくことで、生活のしにくさが、ある程度安定すると思われます。脳のタイプを理解することは、その方の生活を安定させる一歩になります。「彼を知り己を知れば百戦殆からず」というように、まずは相手をよく知ることです。ただし、脳のタイプといっても、きちんと分別できるものではなく、ここにも十人十色の混合色が混じり合います。どれほど似た者同士であっても、まさに一人ひとり異なる世界を持っています。特性としての理解Upload By 田中 康雄かといって、千差万別、いろいろだねとなると、あまりにも漠然としていて、理解と適切な対応の基本形が見えてきません。何事も基礎は大切です。そこでそれぞれの「発達障害」のタイプについての理解は重要です。このタイプは、こだわりや対人関係が苦手で、特定の感覚が鋭すぎたり鈍かったりするようです。このタイプの子どもたちと出会うと、僕は彼らの心にあるいいようのない不安感を感じてしまいます。こだわりは不安を軽くする自分の世界観であり、対人関係になじまないのも、状況が見えない不安からであり、感覚の鋭さは不安の強い自分を守る諸刃の刃のようなものと、僕は仮に理解しています。とても繊細で慎重な子どもと思うことで、こちらも無理に関わろうとか、急に距離を詰めるような関わりを控えることで、少なくとも不安を強めないようにします。Upload By 田中 康雄このタイプは、じっとしていることが苦手で、考えるまえに行動が先になり、集中注意が行き届かず、生活では注意やお叱りを頻回に受けてしまいます。本人は注意されても次の瞬間に別なことに気が移ってしまうので、周囲からすると、反省しない子と、また評判を落としてしまいます。でも、僕は、彼らがとても豊かな発想力をもち、いざというときにびっくりするほどの力を発揮することも知っています。でもそんな彼らが日々の失敗と叱責にこころを痛め、悩み、自分を責めているようにも感じます。時々、彼らの笑顔がこころから発せられていないこと、さらには笑いながら涙することにも再三遭遇しています。Upload By 田中 康雄このタイプは、知的な能力な維持しているのに、学習で獲得する「読み・書き・計算」がなかなか身につかず、学校生活がつらくなってしまいます。決して努力不足ではありません。僕が昔関わった子は、「漢字を1つ覚えると2つ忘れてしまう」と言いました。その時の寂しげな笑顔が忘れられません。Upload By 田中 康雄このタイプは、いわゆる運動神経が鈍いと言われ、昔は運動オンチと言われていました。かくよう僕がまさに運動オンチでした。この協調運動は体育の授業だけでなく、鉛筆が上手に持てない、リコーダーが吹けない、コンパスが使えないなど、さまざまな場面で不器用さを発揮します。そしてこの「できなさ」は、その子にとって「恥ずかしい」体験としてこころに植え付けられます。Upload By 田中 康雄特性の理解から、その子の思いを想像する今回監修させていただいた『発達障害・グレーゾーンの子どもが見ている世界」は、そんなタイプをもつ子どもたちが、どんな気持ちで日々を送っているかを考えてみたものです。こうした特性のない人からすると、なぜそんな感じ方、考え方をするのか、どうしてこれができないのか、きっと不思議なことでしょう。でも、こうしたタイプがある方からすると、逆に、どうしてそれができるのか?なぜそんな風に感じて、考えるのか、不思議でなりません。この本のChapter1では、そんな子どもが見ている、感じている日常を想像してほしくて、16の「ナゾ行動」にたいして、子どもの世界をそれぞれ2つほど展開しました。十人十色といっても、1つのナゾ行動に対して10も20も展開していては、本書がこの10倍以上の厚さになってしまいます。ここに示したナゾ行動の説明は一つの仮説にすぎず、こんな子もいるよ、という提案です。もっともっと、別の理由を持った子どもはたくさんいます。わが子の、保育士や教師の方なら目の前の子どもたちの、その言動の理由を想像して探ってみませんか?あるタイプだからこの言動でなく、Aくんだからこの言動、そうかBくんだからそうしたのか、と思えるようになれば、なによりもAくん、Bくんが、分かってくれたと思って、とても喜んで、安心してくれると思います。例えば、ナゾ行動8にあるような、遊びのルールが守れないというナゾ行動にも、守れないという以前に、そのルールが理解できていない場合や、分かっていても自分の思い通りにしたくて結果ルールを確信犯的に破ってしまう場合もあります。Upload By 田中 康雄Upload By 田中 康雄このようにある場面の言動を、その子はどのような理由から表出しているのか、日々の言動を観察し、あれこれと心情を想像し、こんな気持ち?あんな気持ち?と考え続ける。そうすることでその子の理解が進んでいくと、僕は思うのです。注意や叱ることの前に、「そうか、こうしたかったんだね」「もしかして、こんな気持ちだったのか」と、子どもの思いに少しでも近づき、思いを重ねようとするだけで、きっと、その子は、安心する、守られている、と感じるのではないでしょうか?脳のタイプを知ることは前提として大切です。同時に、一人ひとりの生活の癖、関係の取り方など生活から見えるその子の有り様を、重ねることで、多面的に、そしてより深く、子ども理解が進むように思います。どんなことにも、わけがある。そこに、その子の唯一無二の「思い」が隠れていると、僕は信じています。ナゾ行動に隠れた意味を考えるとき、保育士や教師の方であれば、複数人であれこれと考えてみるのも一つです。僕たち応援する大人も、みな十人十色なので、想定外の仮説が聞けるかもしれません。こうした議論は僕たちの理由を知るための引き出しを増やすことになります。分からないときは、その子に聞くのも大事です。実は、きちんと説明できるかもしれません。想像しましょう。話し合いましょう。分からないことは聞きましょう。そして、何事もよいと思ったことを試してみましょう。僕たちができることは、いつも「仮に理解している」に過ぎません。でも「実際に」支援することで、その子を理解することができるものです。その叩き台の一つが、本書の16のナゾ行動です。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年10月30日930グラムで生まれた早産児の息子の子育てUpload By 鳥野とり子在胎27週930グラムで生まれた息子のねこ太。現在小学校1年生になり、体重は少し軽めだけど身長は平均ど真ん中でスクスク成長中。ADHDグレーゾーンで特別支援学級に在籍していて、週4で放課後等デイサービスも利用しています。年齢を重ねるにつれて大きな困り事は殆どなくなりましたが、小さな困り事がいくつかあるので、学校の先生や療育の先生と相談しながらどうしたらねこ太が過ごしやすくなるのかを模索中です。息子の乳児期、私の中で膨らんでいった違和感Upload By 鳥野とり子赤ちゃんの頃の息子は【寝ない】【飲まない・食べない】子で育児に苦戦する日々でした。それでも目は合っていたし、あやしたら笑うので「これはこの子の性格なのかな?」とそこまで気にすることはなく過ごしていました。でも断乳しても離乳食を食べなかったり、夜泣きが一向に収まらなかったりと、少しずつ私の中で違和感を感じるようになってきました。発達遅滞は早産児あるあるだけど……Upload By 鳥野とり子ねこ太は運動発達が特に遅く、首すわりは生後10ヶ月頃、ハイハイをしたのは1歳を少し過ぎてからでした。出産時のNICUにいた頃から主治医に「ねこ太くんは運動発達が遅いと思う」と言われていたので、この位の発達遅滞は想定の範囲内でした。しかし、1歳3ヶ月でつかまり立ちができるようになった後はいつまで経っても歩く気配がなく、ずっとハイハイのまま。早産児健診のたびに「伝い歩きもしているしもう少し様子を見よう」「そろそろ歩けそうだから……」と様子見を繰り返していましたが、満2歳を迎えた頃ついに主治医から「さすがに遅いので、PT(理学療法)を開始しましょうか」とリハビリを勧められました。2歳2ヶ月でPTリハビリと児童発達支援の利用を開始!Upload By 鳥野とり子発達障害は支援に繋がるまでに時間を要することが多いと聞いていましたが、ねこ太は運良く希望する施設に空きがあり、主治医からのリハビリの提案から2ヶ月後にはPTリハビリを開始することができました。そして運動発達だけでなく、「バイバイの手がぎこちない」「呼んでも振り向かない」など、ほかの発達にも遅滞がありそうだったので、すぐに受給者証の申請をして児童発達施設を調べて見学に行き、4ヶ月後には療育を開始することができたのです。今思うとすごいスピードで動いたなと思います。療育を開始してひと安心かと思いきや、この頃からねこ太の特性がどんどん濃くなり多動が激しくなっていくとは、この時の私は思いもしていなかったのでした……。母も息子も日々アップデートUpload By 鳥野とり子そんな息子も現在小学校1年生。療育やリハビリのおかげで、どんどんできることが増えて毎日楽しく過ごしています。でも特性が消えたわけではないので、何か困り事が出てきたらその都度療育の先生や発達外来の先生に相談しています。初めの頃は特性に対して戸惑うことだらけでしたが、先生方のアドバイスのおかげで息子の個性に寄り添って過ごせるようになりました。それでもまだまだ至らないことだらけで、本を読んだりインターネットで情報収集をして息子と一緒に日々アップデートをしています。私は息子の発達に対してどうしたら良いのか分からないことだらけで、たくさん悩んでたくさん戸惑いました。そんな時、私はLITALICO発達ナビで知識を得たり、先輩ママさんの体験を読んで気持ちが救われたことが何度もあります。今度は私が同じような境遇の方のお力になれるようなコラムをお届けできればと思います。執筆/鳥野とり子(監修:鈴木先生より)27週930gは週数相当の発達です。決して子宮内での育ちが悪かったわけではありません。ですが、1000g未満で出生したお子さんには発達の遅延がみられる割合が多いとの報告があります。NICU医療の進歩もあり、モニターのアラーム音を下げて保育器内の音環境を整えストレスの少ない状態を保つようにしたり、適切に栄養補充したりすることで、健やかに発達・発育ができるよう試みています。なお、小児科医は発達の観点から新生児の体重よりも脳の発達の指標である頭囲を重要視します。頭囲が週数相当で正常であるかをみています。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年10月30日幼稚園では理解が得られなかった息子。就学へ向けて少しでも過ごしやすくなるよう「練習」をしました!現在は7歳の息子は3歳で聴覚過敏気味、視覚優位の自閉スペクトラム症、ADHDの診断を受けました。現在は通常学級在籍、特別支援教室に通っていて、粗大運動がぎこちないところがあるのですが、発達性協調運動症(DCD)の診断名まではつかないと言われています。幼稚園の頃は、無理解な先生が多く、「息子にほかのお子さん方と同じことを求めるのは難しいと思うんです。頑張って頑張っても頑張っても、ほかのお子さんの足元くらいにしか到達しない。ほかのお子さんの6~7割いけば十分だと思っています」とお伝えしても、「子どもはみんな同じ。特別扱いはできません。発表会等の行事も経験させたいので疲れていても幼稚園を休ませないで下さい、甘やかさないで下さい。こんなんじゃ小学校上がってからが心配です」と言われ続け、お迎えの時には、あれができないこれができないと、できないことばかり報告される日々……。できないことは息子や親の努力不足といわれつらい思いを抱えていました。Upload By ユーザー体験談そんな状態だったので、小学校では息子ができることも増やして自信をもって過ごせるように、学校側と連携がとれるように、就学へ向けて家や療育でいろいろと練習をしてきました。今回は、わが家が行ったことと、小学校入学前の校長先生との面談から1年生になった今の様子をご紹介します。就学までに一歩一歩!わが家で取り組んだ3つのこと就学までを目標に取り組んだことは大きく3つあります。トイレと着替え、そして連絡帳の書き方です。息子は年長になっても用を足すときは洋式トイレに座ってしていました。立って用を足すと、おしっこが飛び散ってしまい、濡れることに過敏な息子はパニックになってしまうからです。そこで絵を使いました。1.どの位置に足を置くかを示す2.ズボンとパンツは膝下まで下ろす(おしっこが飛んで濡れてパニックになるので)3.膝を少し曲げるこれらを毎日見せて教えてました。幼稚園では、子ども用の立ってするトイレに抵抗があったようで、大人用を特別に使用させてもらっていました。回数を重ねるごとに飛び散ることも減っていきました。Upload By ユーザー体験談年少の頃から、「自分で脱いで自分で着替え自分でたたむ」ことを毎日幼稚園で実施していたので、家庭でもそうしました。うまくできないところは手伝う、頑張ったら褒める、を繰り返しました。ただ、息子に疲れが見える時は、家庭では無理にさせませんでした。たたみ方は、幼稚園の先生が絵に描いてくれていたので、家庭でもそのやり方に合わせました。また、年長の頃からタイマーを使って着替えトライアルを開始!成功するごとにじょじょに時間を短くしていきました(例えば10分→5分)。時間内に一人で着替えができたらご褒美シールをつけ、たまったらご褒美をあげるを繰り返し、今では、一声かけたら2分で着替えられるようになっています。ただ、気分が乗らないと時間がかかりますが……。年長の冬頃からは連絡帳の練習も始めました。通っていた療育の小集団で連絡帳を書く練習をさせていただくのと、自宅でも「学校ごっこ」として、ホワイトボードに時間割を書き、それを写す、できたらご褒美ポイントをつけるといったことを遊びを通して行っていました。小学生になった今は、しっかり連絡帳を書いてこられるようになっています。就学前の面談で、校長先生に息子のことをしっかり説明そして就学前健康診断の際には、息子と私と校長先生とで面談をしました。私は準スーツのような動きやすく落ち着いた服装で参加。気合いが入って体がガチガチに固まっていました。面談には診断名が書いてある診断書と発達検査の結果を持って行き、子どもの性格、幼稚園や家庭ではこんなことに困っている、でも、こうしたらスムーズに行く、というような内容を説明しました。面談中の息子は、目を輝かせてウロチョロしながら、目新しい教室で好奇心をかき立てられて「これは何?」と質問攻めでした。そんな様子も校長先生に見て頂くことができたので、なぜ息子がこのような動きをしているのかを説明し、このようなときはこういう声かけをして頂けたら望ましい行動に移れますと、たまたまですが先生の前で普段の対応の仕方を実践でき、よかったと思います。校長先生は、うんうんと穏やかににこやかに返答してくださり、ほっと安堵しました。Upload By ユーザー体験談また、良い機会だと学校のトイレを使用させてもらいました。1度でも経験があると違うので、ありがたかったです。無事小学校へ入学。担任の先生は?支援員の先生は?校長先生には理解していただけたはずと安心していたのですが、担任の先生はどういう方なんだろうと不安でした。ドキドキしていましたが、担任の先生は息子と似たような特性がある生徒さんを受け持ったことがある方でした!先生ご自身もイヤイヤ期のお子さんを子育て中で、してはいけないことは叱るけど、なぜそれをしてはいけなかったのか、どうしてそれをしたのか、今度からどうするか、を会話するような形で息子と向き合って頂けました。フランクな会話の仕方が息子にはよかったようです。先生のおかげで、息子は、嫌なことがあっても教室を飛び出さず、先生がパッと見てすぐに見つけられる範囲内に留まるようになりました。信頼関係が構築されていたのだと思います。また、望ましい行動を楽しく行えるように、『今日のミッション』という形で導いていただけました。苦手だった運動も、楽しめるようなコツを教えて頂き、周りのお友達の動きも見て覚えられるまでに成長しました。また、支援員の先生にも恵まれました。こだわり行動でなかなか教室にスムーズに行くことができない息子を見て、「これはルーティーンだから」と発達障害に詳しくないほかの先生方にも伝えて頂き、「ルーティーンやったら行こうね!できたね!」と、毎日息子に寄り添っていただけました。Upload By ユーザー体験談たった一学期の間に急成長を遂げ、周りも驚くほどでした。やっぱり環境調整が大事だと痛感しました。先生方に恵まれた1年生。発達障害に詳しくない先生にはどう伝えればいいか模索中です校長先生も1年生の時の担任の先生も、特別支援の経験があり理解していただける方だったのでこちらの希望が伝わりやすかったですが、経験が浅い先生や、教員歴が長くても発達障害に無理解な対応をされる先生にどのように伝えていけばいいかは現在も模索中です。息子は学校で嫌な出来事があっても「仕方ない」と言い、目の前の楽しいことに切り替えて、不登校になることもなく毎日楽しいと学校に通っています。息子の子育てをしてまだ7年ですが、いろいろと嫌なことを言われ嫌なことをされ、胸がえぐられるようなつらい思いを何度もしてきました。でも、つらいことがあっても楽しいことに夢中になる息子です。これからはつらい思いより楽しい思いを増やしてほしい、失敗して責められる経験より成功体験『できた!』を多く積んでほしい、わくわくする気持ちを忘れないでほしい……いつもそう願っています。イラスト/吉田いらこエピソード参考/七転八起(監修:藤井先生)「できた」を多く積むことができるように、息子さんにあったペース、スモールステップで「できた」を積み重ねる工夫に溢れるコラムをありがとうございます。合理的配慮を求めることができるようになったとはいえ、小学校や園によっては、環境調整が難しいと言われる場面もあるのかもしれません。環境調整の大切さを息子さん自身の成長が示していると思います。ときには、療育先や医療機関などからの情報提供書なども用いて、環境調整について学校や園と模索されると良いと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年10月28日言いたいことを文章にするのが苦手なコウですUpload By 丸山さとこ中学生の息子のコウは学校から帰った後、学校で起きたことを話してくれることがあります。その話は友達との間で起きた楽しいことや感心したこと、授業で疲れたこと、部活動で頑張っていることなどさまざまです。楽しい話から愚痴までコウの話を聞くのは面白いものですが、できれば聞きたくない話もあります。「お母さん、〇〇を学校に置いてきちゃった」から始まる忘れ物の話です。置いてきた物のバリエーションは広く、体操服・給食袋・宿題・筆箱・傘・保護者宛てのプリント・水筒などいろいろとあるのですが、先日はコウが「お母さん、ふくらはぎを学校に……」と言いよどんでいたので、思わず「置いてきちゃったの…?」と聞いてしまいました。コウに「そんなわけなくない?」と突っ込まれて「そんなわけないけどさ~!」とひとしきり笑った私。「でもね、今のは完全に『〇〇を学校に置いてきちゃった』のパターンだったじゃない?」と言うと、コウはどうも今ひとつ納得いかないようでした。後日、夫や私の母から「それは『ふくらはぎを学校に置いてきたの?』ってなるね」と言われたことでようやく納得できたコウでしたが、どう言えば伝わりやすかったのか?と考えると、すぐには思いつかないようでした。どうやらコウとしては、話している途中で言葉に詰まらなければ「ふくらはぎを学校にいる途中で小まめに揉んでいた」と言いたかったらしいのです。「学校『に』って言ったから、そのあとが上手く続かなかったんじゃない?ふくらはぎを学校『で』小まめに揉んでた……であれば伝わるんじゃないかな?」と私が提案すると、コウは「確かに!」と、うなずいていました。Upload By 丸山さとこコウは小学生の頃『てにをは』を使うことが苦手で、日常会話や作文などの学習中につまずくことがしばしばありました。ですが、コウ自身に困っている実感はありませんでした。『てにをは』を適切に使わないと相手に話が通じにくいことに、あまり気がついていなかったそうです。そんなコウも中学生になった今では「あれ?」と引っかかるような『てにをは』の使い方はずいぶん減ったと思っていたのですが、「今でもふとしたときに、こんがらがることがあるのだな」と改めて思う出来事でした。「てにをは」が苦手だと、話が迷走しがちになるようです神経発達症(発達障害)がある子どもの中には、『てにをは』の使い分けが難しい子どもがしばしばいると聞いたことがあります。今思い返すと、コウもその一人だったのかもしれません。小学生の頃のコウは、「お父さんが僕にあげてくれたの」などの不思議な『てにをは』の使い方をすることがよくありました。Upload By 丸山さとここれはコウがお父さんからビー玉をもらったときの発言だったため、「お父さんが僕に“あげる”をしてくれた」という文の組み立て方なのかな?と思いました。「”教える”をしてくれた→教えてくれた』『”遊ぶ”をしてくれた→遊んでくれた』などの文と同じパターンの考え方をしたのだと考えると、「コウなりの理屈はあるのだろうな」と感じます。ですが、コウが「お母さんにくれた色鉛筆で塗ったよ」と言って描いた絵を見せてくれたときは、「途中で文がねじれてない?」と首をかしげたくなりました。・お母さんがくれた色鉛筆で塗ったよ・お母さんにもらった色鉛筆で塗ったよという2つの文が、途中で入れ替わってしまったように感じたからです。そのため、コウから言われたときは「あれ?」と引っかかったものの、何がおかしいのかその場では分かりませんでした。Upload By 丸山さとこ会話中の発言というものは、発言そのものだけではなく『相手に関して知っている情報』や『その場の状況』も併せて解釈し、理解するものです。そのため、幼い子どもの疎い発言であっても、周囲の大人はある程度意図を汲むことができます。共にASDとADHDがある私と息子であっても、暮らしの中で共有している情報の多さから『相手が伝えようとしていること』を何となく理解できてしまうところがあります。そのため、コウ独特の言い回しに慣れるまでは、「今の言い方は何か変だな?」と思ってもどこがおかしいのは分からず、突っ込むことができませんでした。意識的にコウの発言を聞きとめるようにすることで、私も少しずつコウの話し方のどこに違和感を覚えたのか分かるようになっていきました。そうして、コウの言いたかったことをさり気なく言い直すことができるようになりました。Upload By 丸山さとこ小学生の頃のコウは指摘や注意に対する反発や混乱が強かったため、「その言い方は間違っているよ」などの強い否定を含んだ言い方は避けるように気をつけつつ、小まめに言い直すことを心がけました。「お父さんにもらったんだね」「お父さんがくれたんだね」「お父さんが『あげる』って言ったの?」などと言い直すことを繰り返すうちに、コウも自ら「今のは、『お父さんにもらった』って言ったほうが分かりやすいかな?」と考えて言い直すようになっていきました。少しずつ変化していった、コウの「てにをは」の使い方このように『てにをは』の使い方があやしかったコウですが、小学校高学年あたりから少しずつ「今のはこう言うといいかな?」と考えて言い直すようになり、中学生の今は不思議な文章をつくることもかなり減りました。「ふくらはぎを学校に……」と言いよどんでしまったのも、コウがある程度『てにをは』を理解してきたからこそだろうと思います。「ふくらはぎを学校で揉んでた」と言いたいところを「学校『に』」としてしまったことで、後に続く言葉が分からなくなってしまったそうです。Upload By 丸山さとこ「少しずつ『てにをは』を使い分けられるようになってきたのはどうしてだろう?」とコウに聞いてみると、「国語の授業で文法を習ったのは大きいと思う。ちゃんとルールがあるんだなって分かった」と答えてくれました。国語の授業で学んだ文法を使って日常生活の中で試行錯誤していくことで、少しずつパターンをつかんできたのかもしれません。執筆/丸山さとこ(監修:初川先生より)「てにをは」の難しさについてのエピソードをありがとうございます。てにをは(助詞)の使い方も難しいですが、おそらくは「主体をどこにおいて最後までねじれずに文を組み立てるか」というところで、つまずきやすかったのかもしれないですね。「お父さんにくれたお菓子」だと、最初は「お父さん」を言っているから、「お父さんにもらった」と自分をそのまま主体で語ればよいのですが、お父さんのイメージが強くなるとお父さんが主体化して「お父さんがくれた」当時の状況から「お父さんにくれた」と混ざってしまった感じがします。すぐに指摘してしまうと反発を生むということで、配慮しながら言い直すプロセスを経て、今やお互いに折々に確認しながら話されるようになったとのこと、何よりです。ただ、これはなかなか高度なやりとりだなと思うので、どのご家庭でもできるかというと、なかなか難しい面もあるかもしれません。「てにをは」の難しさが多く表れる場面はおそらく、修飾語となるときだと思いますが、何かの言葉にかけていく話し方を選ぶのももちろんいいのですが、分けて話すのも1つの道かもしれないとは感じました(「お菓子食べてもいい?お父さんがくれたお菓子」)。中学生になったコウくんは、国語で文法を習うことで、このあたりのルールが整理されてきたとのことも何よりです。国文法を系統立てて習うのは小学生ではなく中学生になってからなのですよね。ただ、学校の授業ではそこまで明示して扱いませんが、小学生用の市販の国文法テキストや作文ドリルのようなものでは、このあたりが扱われています。小学生のうちにと思われる場合は書店でそうしたものをまずは眺めてみていただければと思います(低学年用のものでも、助詞を2択から選ぶ問題などが出ていたりして、分かりやすいです)。あるいは、英文法を習う際に、自動詞他動詞、助詞の扱いを知り、このあたりがクリアされる場合もあるかなと感じました。最近は英単語をイラストや図で理解する本も出ていますが、そうしたもので理解したほうが整理されるお子さんも(中学生以降では)いらっしゃるかなと思いました。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年10月24日2人兄弟を育てるゆーとぴあさん。2歳児健診で長男は言葉が遅いと発達相談を受け、次男は多動傾向がありました。次男は保育センターの親子教室などに自主的に参加して幼稚園に備え、入園当初こそ不安があったものの、すぐに幼稚園に慣れてひと安心。しかし、次男の担任の先生から発達医療センターに行くように告げられ、長男もほぼ同時期に発達医療をすすめられて困惑します。ママ友から通っている幼稚園の園長は支援級をすぐにすすめることで有名と聞かされたゆーとぴあさん。長男の就学のため小学校の特別支援級を見学し、知能検査を受けた結果、普通級という結果に。支援級の覚悟も持っていたゆーとぴあさんは複雑な感情に。長男の検査が終わったと思ったらすぐに次男の検査のため兄弟で病院の診察をすすめられ、2人を連れて児童発達センターへ向かいました。診察を受けて医師にすぐに兄弟それぞれの性質とその対応方法についての助言をもらい、驚くゆーとぴあさん。発達障害は6割は遺伝だと話し、長男と母親(ゆーとぴあさん)はADHDで薬の服用で楽になるだろうとのこと。次男と父親は多動の可能性があり、多動は一定の年齢を過ぎると収まるので大丈夫と言ってくれました。自分は多動でないことから次男の育て方に行き詰まっていましたが、「多動の子は将来働き者」というこの言葉に力をもらったのでした。 「だから言ったじゃないですか」え、そこって大事? ※adhd→ADHD(一般的には大文字で表記されます) 児童発達センターでの診察が終わるとすぐに実施された幼稚園での面談。長男がADHD、次男が多動性障害と診断を受けたことを報告し、ゆーとぴあさんが多動の子は将来働き者になるとの言葉に救われたことも伝えます。しかし、園長は話を最後まで聞くことなく、やっぱり自分の言った通りだと得意げに担任の先生に話していました。 「だから言ったじゃないですかー」病院からの診断結果を受けて、さも自分の手柄のように話している園長を見て違和感を覚えますが、一方で長男と次男それぞれの担任からの報告、病院や検査報告を急かしてくることにずっと疑問がありました。その急ぐ理由が園長からの指示だったことに合点がいきました。 ある日、幼稚園の図書ルームにてPTAの仕事である本の整理をしていたゆーとぴあさん。これまで見かけたことのない本を見つけます。それは園児向けではなく、保護者が読むための発達障害の本でした。そこへ園長がやってきて、その本を入れたのは自分であることと、本が私物であることを話してきました。 さらに園長は自身が発達障害について勉強していることや、発達障害の子が最近増えていること、研究や考え方も変わっていることを話した上で、ひと言、「ゆーとぴあさんも読んでくださいね」はいと答えましたが、言われなくともずっと前から発達障害の本や情報を探し続けているゆーとぴあさんは、またもモヤモヤを抱えるのでした。 ◇◇◇ 病院の診察報告のための面談に幼稚園へ出向いたゆーとぴあさんでしたが、園長は兄弟の診断結果が自分の見たてと合っていることを手柄のように話すことに違和感を覚えます。幼稚園が早めに気づいて専門機関への受診をするように指導をおこなうことも大事ですが、もっと大事なのは医師の助言に救われたように、ゆーとぴあさんの気持ちに寄り添ってあげることではないでしょうか。ママの不安な気持ちにも耳を傾けてほしかったですよね。次の話ゆーとぴあさんの連載は、以下のサイトからもご確認いただけます。ぜひチェックしてみてくださいね。 著者:マンガ家・イラストレーター ゆーとぴあ
2023年10月18日2人兄弟を育てるゆーとぴあさん。2歳児健診で長男は言葉が遅いと発達相談を受け、次男は多動傾向がありました。次男は保育センターの親子教室などに自主的に参加して幼稚園に備え、入園当初こそ不安があったものの、すぐに幼稚園に慣れてひと安心。しかし、次男の担任の先生から発達医療センターに行くように告げられ、長男もほぼ同時期に発達医療をすすめられて困惑します。ママ友から通っている幼稚園の園長は支援級をすぐにすすめることで有名と聞かされたゆーとぴあさん。長男の就学のため小学校の特別支援級を見学し、ウィスク検査(IQテスト)を受けた結果、普通級という結果に。支援級の覚悟も持っていたゆーとぴあさんは複雑な感情に。長男の検査が終わったと思ったらすぐに次男の検査のため、兄弟で病院の診察予約をすすめられました。兄弟2人を連れて児童発達センターへやってきたゆーとぴあさん。診察室に入ると次男はじっとしてられず自由に動きまわり、長男はルールを守らなくても次男が許されることにイライラしています。それを見ていた医師は、2人の対応について的確な助言をゆーとぴあさんにかけてくれました。また、長男に注意不足の傾向があり自分自身もそうであると伝えると、発達障害は遺伝であることが多いと言い、2人ともADHDの可能性があり薬を飲むことですっきりすると教えてくれます。そしてなんと医師自身もADHDだと明かしてくれました。 まさか夫のことを聞かれるとは思わなかったーー 次に次男の様子を尋ねられたゆーとぴあさん。多動がひどいこと、家にいても出ていってしまうため目が離せないこと、自分が多動でないことから次男の気持ちがわからず、育て方に困っていると暗い表情で答えます。 「旦那さんはどんな感じですか?」夫のことを聞かれたのが予想外だったのか、一瞬間を置いてから口うるさいけれど働き者で家事も手伝ってくれ仕事もテキパキこなし、片づけるのが苦手なゆーとぴあさんは助かっていると答えました。 すると医師はなるほどと相づちを打ち、多分夫は多動で次男は夫に似たのだと言い、多動は一定の年齢を過ぎるとだんだんと収まるので大丈夫と教えてくれました。「多動の人は働き者なんです。だから次男くんも将来働き者になって、お母さんを助けてくれると思いますよ」 その言葉にこれまでの苦悩やつらい思い、そして報われた思いが重なり合って涙があふれます。「多動の子は働き者」この言葉がゆーとぴあさんの心の支えとなったのでした。 ◇◇◇ 同じ兄弟の発達障害でも、長男はゆーとぴあさんの性質を受け継いでいるため、子どもの気持ちにも寄り添いやすい面がありましたが、次男の多動については理解が追いつかないと告げました。その次男は家事や片付けが得意な夫の性質を受け継いでいる可能性があり、多動は一定の年齢を過ぎれば収まってくると言う医師。多動の次男は働き者となって将来お母さんを助けてくれるとの言葉に、他人はもちろん家族にも本音を吐き出せなかったゆーとぴあさんの心のこわばりが少し緩みました。これでまた歩み出せるといいですよね。次の話ゆーとぴあさんの連載は、以下のサイトからもご確認いただけます。ぜひチェックしてみてくださいね。 著者:マンガ家・イラストレーター ゆーとぴあ
2023年10月17日2人兄弟を育てるゆーとぴあさん。2歳児健診で長男は言葉が遅いと発達相談を受けます。次男は言葉の遅さに加えて多動傾向があるものの、健診では問題なしとの診断に納得がいかず、保育センターの親子教室などに自主的に参加して幼稚園に備えました。入園当初こそ不安要素がいっぱいの次男でしたがすぐに幼稚園に慣れ、ひと安心。しかし、担任の先生から問題行動の報告があり、発達医療センターに行くように言われ、長男もほぼ同時期に発達医療をすすめられて、就学のため小学校の特別支援級を見学。次に受けるウィスク検査(IQテスト)でほぼ決まるという長男の就学先は、普通級という結果に。すると園長は不服な様子で次は次男の検査をすすめてきてーー。病院から兄弟2人の診察予約が取れたという連絡が入り、次男の担任の先生に報告すると安心した様子。さらに診察結果はすぐに連絡するように伝えられました。予約も診察結果も頻繁に状況確認をしてくる幼稚園。何をそんなに急いでいるのでしょうか? 医師「僕もADHDなので」ーーえ、そうなんですか? ※adhd→ADHD(一般的には大文字で表記されます)※親がADHDの場合、その子どももADHDである可能性は非ADHDの親の場合と比べると5~10倍高いと言われています。親がADHDの場合、50~80%(平均70%)の確率で遺伝するという研究結果もありますが、ADHDは遺伝要因だけで発症するわけではなく、環境要因も組み合わさるとされています。 病院(児童発達センター)を予約してから半年、診察日に兄弟2人を連れて行ったゆーとぴあさん。1時間以上の待ち時間を経てようやく診察室へ。 じっとすることが苦手な次男はすぐに部屋から出てしまうので、スマホを見せようとすると、弟ばっかりズルいと長男。次男はそういう子だから仕方ないと言い聞かせますが、いつもガマンしている長男は納得いきません。結局、次男はプレイルームで待機。 その様子を見ていた医師が、長男は自分はルールを守るのに弟は許されることに矛盾を感じており、それが長男のかんしゃくの一因になる可能性もあるため、ルールは守ったほうがいいと言われます。 ほんの数分で兄弟の状況を見抜く医師に感動するゆーとぴあさん。他に何か困っていることはないかと聞かれ、忘れ物や落とし物など注意不足の傾向があり、自分自身がそうであるため、長男は遺伝かもしれないと思っていると伝えました。 「長男くんは多分ADHDで、ママもそうなんじゃないかなと思います」発達障害の6割は遺伝だと言われていると伝えられ、なんと医師自身もADHDだと聞きゆーとぴあさんは驚くのでした。 ◇◇◇ 幼稚園のすすめにより児童発達センターの診察を受けにきたゆーとぴあさん。兄弟2人を連れてくるのは大変でしたが、医師による兄弟それぞれの特性を見抜いた適切な言葉に感動します。これまで相談しづらかった悩みについて、この先生ならじっくりと耳を傾けてくれそうなので、いろいろ話せるといいですよね。 小児科専門医の松井先生によると、「多動傾向、注意欠陥等の症状は小児科外来でもよく見かけます。ご両親も似たような性格だと感じたり、ご自身もADHDだとおっしゃる方もいらっしゃいます。医師の中にもADHDの人がいて、そういう人は新しいことに積極的に取り組まれており、それはADHDの良い面でもあります。主人公のお子さんも大変なこともありますが、良い面もあることをみてあげることが大切です。周囲の人が困ってしまったり、本人もつらい思いをするのであれば、服薬するのもひとつの手段。それで楽になれば自己評価も高くなり、周りの方も安心するでしょう」とのこと。薬などの使用も選択肢に入れて、ゆーとぴあさん親子が少しでも楽になるといいですよね。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。次の話ゆーとぴあさんの連載は、以下のサイトからもご確認いただけます。ぜひチェックしてみてくださいね。 監修者:医師 神奈川県立こども医療センター 産婦人科 松井 潔 先生 著者:マンガ家・イラストレーター ゆーとぴあ
2023年10月16日環境の変化が苦手で聴覚過敏が強い娘。避けて通りたいNO.1行事は運動会!わが家の10歳の娘は、小3から不登校を選んでいます。6歳で自閉スペクトラム症、ADHDの診断を受けた娘は、元々は「積極奇異型」で、知らない人にもガンガン話しかけていくタイプでした。しかし、幼稚園や小学校で合わない環境で無理をさせたためか過剰適応が激しくなり、周りに合わせられない自分に劣等感を持つようになりました。家庭では、ユーモア溢れる好奇心旺盛で明るい様子の娘なのですが、外では感覚過敏や不安が強くなるという面があります。そんな性格の娘なので、幼稚園の頃から行事が苦手でした。特に運動会!人が多かったり普段と違う環境が苦手であり、また聴覚過敏もあるため、運動会はできたら避けて通りたい行事NO.1でした。集団行動を重視する幼稚園に入園。初の運動会前から癇癪が激しくなり、園に相談したら…幼稚園入園の際、発達障害の知識が全くなかった私は、(就学に備えて集団行動に慣れさせるほうがいいだろう)と、多動傾向が強い娘を集団行動を重視する幼稚園に入園させました。入園直後から毎日激しく行き渋り、無理やりバスに乗せる日々。娘はさぞかしストレスを感じていたと思います。そして運動会前になると練習で疲れているのか、帰宅後にひどい癇癪を起こすようになりました。Upload By ユーザー体験談幼稚園に相談したのですが、みんなと同じようにやるということを大事にしている園だからなのでしょう、心無い言葉を投げかけられてしまいました。配慮を受けるどころか、逆に娘に練習を無理強いするような形になってしまいました。もちろん癇癪は増える一方……。そして運動会当日、娘が出るお遊戯の時間では、最初だけは少し踊っていたのですが、すぐ踊りもやめぼーっとただ立っているだけ……。(このままずっと立ってるだけなのかな……)と固唾をのんで見守っていると、急にしゃがみこんだと思ったら、園庭の砂をいじりだしました。(ああ、やっぱりお遊戯は難しかったか……)と思いました。Upload By ユーザー体験談ただ、年少さんの時はほかにも同じようなことをしているお子さんも多かったため、私自身はあまり問題に感じなかったのです。きっと来年には成長して参加しているよね、というくらいでした。特別支援学級では、教室の床にステップの足型と番号のシールを貼ってダンスを特訓その後、年中の運動会では目立ったことはなく無事に終了、年長ではリレーでの入場直前に大泣きして断固拒否!結局不参加となりました。この頃には娘に特性があるかもしれないと分かっていたので、就学相談を経て、娘は少人数で個別対応してもらえる特別支援学級に入学しました。これでどうにかやっていけるかと思ったのですが、娘は学校という場に馴染めず、入学後まもなく行き渋りがはじまり、小3からは完全な不登校となりました。聴覚過敏のため学校のどこにいてもうるさいと感じてしまうことや、触覚過敏で教科書やノートや粘土などさわれないものが多いことも、学校がつらい原因だったと思います。ただ、特別支援学級では手厚く見てくださり、小1のときの運動会前は通常学級より早くからダンスを教えていただくことができました。教室の床にステップの足型と番号のシールを貼るなどの工夫をして教えていただいたおかげで、苦手なダンスも覚えることができた娘。苦手ながらも前向きに取り組むことができ、この年が一番自信をもって臨めた運動会だったと思います。Upload By ユーザー体験談聴覚過敏も不安も強いため、運動会自体は楽しくはない様子でしたが、コロナ禍で短時間の運動会だったためどうにか乗り切りました!運動会で倒れてしまった娘。娘が書いた渾身の作文には……。小2では、前年の様子を踏まえてくださった先生から、自分の出番以外は空き教室で過ごすことを提案していただきました。これ幸いと、運動会中は私が付き添って教室で過ごし、出番の時だけ入場門に連れて行って参加することができました。無事参加できてよかったと思ったのも束の間、自分の番だけでも極度に疲れてしまった娘は、教室に戻る時にはぐったり……。そして床に倒れ込んでしまいました……。こんなに疲れてしまっていたなんて……娘にとって運動会は本当に、本当につらいものなのだと、可哀そうになりました。もっと理解しなければと、運動会に出ること自体を見直した方がいいと思いました。Upload By ユーザー体験談そして運動会後、娘は「運動会」をテーマに作文を書きました。内容は「運動会がどんなに嫌だったか」。その渾身の文章からは、本当に嫌で嫌でたまらなかった娘の気持ちが伝わてきました。先生からは気持ちがよく書けていると褒めていただきました。これもあって、翌年は運動会自体を欠席してもよいのではないかと先生とは意見が一致。(もう一生この子の運動会は見られないかも……)と思うと、寂しい気持ちがないことはないのですが、娘にとって運動会はただのつらい行事です。娘が今後運動会に参加するつらさを味わわなくていいことのほうが、よほど喜ばしいことでした。現在不登校の娘、今は親子でハンドメイド作家として活動中!小1・小2の頃は行き渋りがありながらも、担任の先生が娘の気持ちに寄り添ってくださる方だったので、休み休みどうにか学校に通えていました。しかし、小2の終わりでその先生が異動されてしまうと娘はどんどん学校に行けなくなり、小3の6月から完全に不登校になりました。現在の娘は、家で安心して過ごせているようです。そして、家にいる時間を利用して親子でハンドメイドを始めました。娘とのハンドメイドの時間は楽しく、かけがえのない時間です。今では親子でハンドメイド作家として毎月イベントに出店するようになりました!娘にとって運動会はつらい行事でしかありませんでした。小3では「運動会に出ましょう」と言われるのではないかと不安に感じていましたが、特にそのようなこともなく、親子ともにほっとしました。娘には感覚過敏や自分の特性を理解して受け入れて、自分に合う環境を選んでいけるようになってほしい。そして、自分のやりたいことを自分で見つけて、めいっぱい人生を楽しんでもらいたいと思っています。私も娘によりそい、できる限り支えていきたいと思います。イラスト/keikoエピソード参考/MIKKO(監修:鈴木先生より)ASDのお子さんは、園の発表会を皮切りに小学校では運動会の嫌いなお子さんが多いようです。特に同じことを繰り返す練習の嫌いなことが多いのですが、さほど練習していなくてもASDのお子さんは本番には強いという特徴が見られます。こういう行事が嫌いな理由の一つに大勢の人が来て見られるのが嫌という対人恐怖や視線恐怖(社交不安症)があります。日頃からクラス代表で発表したり、日直をしたりすることが苦手なことが多いのです。周りから注目されるのを嫌う傾向があります。また比較的多い理由のもう一つに音過敏もあります。特に運動会はピストルの音やスピーカーで流れる大音量の音楽やマイクのキーンという音などを特に嫌がります。おまけとして運動会後に疲れのせいか不登校になるケースも多々見られます。ただでさえ2学期は期間が長いので行事も多く疲れやすいのです。特に起立性調節障害を併存しているお子さんには馬力がないため不登校が多くみられます。運動会の嫌な子には文化祭という選択肢があってもいい時代にそろそろなってきたのではないでしょうか。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年10月14日【幼稚園年少の頃】運動会で何をやるのか分からない現在幼稚園年長の息子はADHD+ASDの傾向があり、5歳の時にグレーゾーンと医師から言われています。そんな息子は年少クラスから幼稚園に入園し、先生方のサポートのおかげで楽しく園で過ごせているようでした。そして、幼稚園に入園して初めての運動会の季節がやって来ました。息子は年少の頃から集団行動が苦手で口頭指示が通りにくかったので「みんなと一緒に行動できるのかな……?」と不安もありました。でも、親としては初めての運動会をとても楽しみにしていました。しかし運動会の日が近くなっても、息子はなんの競技や演目をやるのか教えてくれません。Upload By ネコ山結局運動会の1週間前になっても息子に聞いても分からず、しかたなく幼稚園の先生に聞くとダンスと徒競走をやることが判明。また入場行進では、担任の先生か補助の先生が息子と手を繋いでくれるとのことでした。3歳の頃の息子は目についた興味のあるものに突進していました。運動会の行進中も列から離れて行きかねないので、手を繋いでもらえて助かるなと安心しました。Upload By ネコ山【幼稚園年少】初めての運動会当日がやってきた!息子にとって初めての運動会の日がやって来ました。朝、息子に「運動会頑張ってね!」とエールを送りましたが、反応が薄い。果たして息子は今日が運動会ということが分かっているのだろうか……。運動会が始まると、手を繋いでもらいながらニコニコで入場する息子。徒競走も元気いっぱいに走り切っていました。しかし、年少クラスのダンス演目ではほとんど踊らず、足元の砂をいじっていました。少しがっかりはしましたが、迷子になったり急に走り出したりしていた未就園児の頃の落ち着きのない息子を見てきた私としては「その場を離れなくてエライ‼︎」と心の中で拍手喝采でした。Upload By ネコ山【幼稚園年中】運動会前、荒れる息子年中クラスに進級し、2度目の運動会の季節が来ました。この頃は落ち着きのない姿は大分薄れ、こだわりや癇癪、切り替えの悪さが目立つ時期で、息子の接し方に大変苦労していました。例えば、幼稚園でも自由遊びの時間が終わると癇癪を起こしたりなど……。運動会の練習が始まると、息子自身も練習がキツいらしく、日に日にイライラするように……。家や幼稚園で、ちょっとしたことでも癇癪を起こすようになりました。夏休み前までは自由に遊べていた時間に、毎日毎日したくもない運動会の練習をしなくてはならない。指示されたことをやるよりも、自由に自分の考えたことを形にすることが好きな息子にとって、運動会という行事は苦行だったのかもしれません。そんな息子の様子を見ていたので、年中の運動会はどうなるのか……まさかボイコットしたりしないよね……!?と不安でした。【幼稚園年中】不安で迎えた運動会当日とうとう不安な運動会の日が来ました。朝、息子に「お母さんたち応援してるよ!」とエールを送りましたが「……うん」と、生返事が返ってきました……。運動会が始まると、昨年とは違い一人で入場行進する息子。しっかり集団行動している姿に成長を感じましたが、その表情は暗く……。それからもダンスや徒競走、年中クラスの競技をそつなくこなす息子でしたが、閉会まで終始無表情でした。また、競技の入れ替えに伴い園児が移動する機会が多く、切り替えが苦手な息子にとってはイライラポイントが貯まるようでした。癇癪を起こさず、ずっと我慢していた息子でしたが、運動会閉会後は年中さんのお部屋で大爆発していたようです。どうやら運動会は楽しめなかったようですが、やることはやっていた息子。とても偉いと思います。Upload By ネコ山もうすぐやってくる、年長の運動会は……??昨年の年中の運動会での経験から、年長になった今年も、運動会の練習時期は荒れそうな予感がしています。しかし、年中の頃と比べて切り替えが格段に上手になってきていることや、息子から「今日はダンスをやった」とダンスの振りを見せてくれたり、運動会の話をしてくれたりするので、もしかしたら今年は息子も運動会を楽しめるかもしれません。年長クラスになると運動会での競技や演目が増えるからか、降園後は疲れをみせている息子。幼稚園最後の運動会に向けて、見守っていきたいなと思います。執筆/ネコ山(監修:室伏先生より)年齢ごとの運動会のエピソードと、息子さんの成長のご様子を共有してくださり、ありがとうございます。ADHDやASDの傾向があるといっても、困りごとや苦手なことはお子さんによって違いますし、年齢によっても変化していきます。その中で、できていないことにばかり目が向いてしまい、焦りや不安が募ってしまうことも少なくないと思います。年少さんの時の息子さんはダンスは踊らなかったけれど一生懸命その場に留まり、年中さんの息子さんは楽しめなかったけれど一生懸命競技をこなされたのですね。いろいろなストレスがありながら、一生懸命頑張られた息子さん、素晴らしいです。そして、きっと不安などもあったでしょうに、息子さんのできていることに目を向けられて、あたたかく見守られてきたネコ山さんのお気持ちが素晴らしいと思いました。今年こそは、息子さんが心から運動会を楽しめるよう、私も応援していますね。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年10月11日発達のゆっくりな息子に、母としての自信を失い、育児の楽しさも感じられなくなっていた頃自閉スペクトラム症(ASD)・ADHDと診断されている長男ハル(高1)がまだ1歳半だった頃のことです。当時の私は、言葉や運動面の発達がゆっくりで、落ち着きのないハルの育児に悩み、母としての自信をすっかり失くしていました。自信が持てない中でも、もちろん毎朝「今日も頑張らなきゃ」と気持ちを保とうと必死でしたが、次第に「どうしたら“子どもを可愛い”って、純粋に思えるんだろう」と、そんなことすら分からなくなっていきました。母としてハルに何ができるか、家の壁にリストを書いて貼ったり、自分だけで試行錯誤する日々。そもそもこんな私を、ハルは「ママだ」と思ってくれてるのだろうか……。心の中では自信が持てぬまま、毎日の育児は忙しく怒涛のように過ぎていきました。Upload By 安田ふくこ2歳で運動面の発達が進むも、今度は多動に振り回され……2歳になった頃、ハルは歩くことも走ることも急激に上達してきましたが、今度は少しでも目を離せば、道路などへ飛び出していってしまうようになり、私は常に神経を尖らせていました。危険がなく、人になるべく迷惑のかからない動き回れる場所を日々必死に探し、落ち着きないハルの行動を制して、周囲にはペコペコ謝りながら日々を過ごしていました。外遊びや買い物から帰宅しても、何度も私を呼んでは手を引き、電車のおもちゃやブロックで一緒に遊びたがるハルに付き合って、家事はちっとも回らずにたまる一方……。Upload By 安田ふくここんな調子でハルに振り回されていた私とは対照的に、仕事から帰宅してすぐにソファに座り、テレビを鑑賞しながらリラックスしてお酒を飲んでいる夫。ついイライラして「家にいられる時間は、もう少しハルと遊んであげてよ」と不満をぶつけたことがありました。ですが、その頃の夫は仕事のことで頭がいっぱいだったので、「じゃあ俺はいつ自分を休めることができるんだよ!?育児とか家事とか……ふくこは母親ならできて当たり前なことを、なんでそんなにできないわけ?俺だって仕事が大変なんだ!」と、夫婦で言い合いになってしまいました。そんなことがあったって、当然次の日の朝は来る。毎日「今日私はハルに何ができるか」を考え、ただ頑張るしかありませんでした。2歳8ヶ月で2語文を話すように。息子に初めて「パパ」と呼ばれた夫は……転機となったのは、ハルが2歳8ヶ月を過ぎた頃。この頃になって、やっとハルは2語文くらいしゃべるようになったのです。意思の疎通がしやすくなるし、私はもちろんうれしかったのですが、夫はそれ以上にうれしかった様子でした。ある日、私に向かって、「こんなこと言ったら叱られるかもしれないけど……ハルに『パパ』って言われて、正直やっっっと『父親としての実感』が湧いてきた。多かれ少なかれ、男ってこういうところあるよな。いや~本当申し訳ない!」などと言ってきたのでした。私もその頃は夫の気持ちを優先しなければと思っていたし、夫も素直に気持ちを打ち明け謝ってきたので、どこかモヤっとしつつも笑っていましたが……。Upload By 安田ふくここのセリフは、今だったら怒ってしまうかもしれません!私だっていくら体は母親になったといっても、初めての妊娠は分からないことや怖いことだらけでした。毎日どんなに気をつけて過ごしていたか。さらに子育ては全然育児書通りになどいきませんでしたし、発達に遅れがあればなおさら悩みます。当時はインターネット検索もほとんどできず、今のように情報もないまま、私は自分の育児が正しいのか不安でいっぱいになっていました。そんな私に対して無自覚でも追い詰めるようなことを言ってきたにもかかわらず、夫ときたら……「今頃ようやく父親の実感って……遅いだろ!」と過去に戻ってツッコミたい気分です(現在は遠慮なくツッコんでます)。言葉の発達が進み、だんだんと育児の楽しさを感じられるように。でも、同年代の子どもとの発達の違いには気づかず……周囲からは遅れながらも、2語文以上おしゃべりができるようになってからは、以前よりもずっとハルが何を考えて行動してるのか分かるようになりました。「◯◯、行ってみたい」「□□、好き」と言われれば好みもすぐ分かるし、「△はイヤよ!怖いからぁ」と言われれば、次からは避けることもできる。そうはいっても、じっと黙って意味不明なときも多かったですが……そんなときは「ハルは何を考えているのだろう?」と一緒に考えました。うれしそうなハルを見て「よかったねぇ」と言えば、「ママ、ありやとう(ありがとう)!」と満面の笑みを返してくれる。そんなやり取りだけで心がとても温かくなり、初めての育児に対して抱いていた孤独感は、少しずつ薄れていきました。ですが、ママ友など周囲とのお付き合いを自ら遠ざけていたため、ほかのお子さんと比較して苦しむことも少なく、ハルの成長を喜ぶことができていた反面、『微妙な』会話のキャッチボールのしづらさや、こだわりの多さなど……ハルと同年代の子どもたちとの違いに、私はなかなか気づいてやれませんでした。幼稚園に入園。周囲との違和感を感じたけれど、「よくある個人差」と言われ……幼稚園は、「とにかく外遊びが好きなハルには、園庭が管理されてて広い所がいい。ほとんど私としか過ごしてなかったから、たくさんの先生や友達と出会えると良いだろうな!」そう考えて、先生も生徒も人数が多く、園庭が広くてステキな園を選びました。入園前の三者面談ではハルの発達について特に指摘はありませんでしたし、入園してからも先生側からは何も問題視されていませんでした。ところが、ハルが幼稚園に入園してしばらくすると、私は周囲との違和感を感じるようになりました。他害や暴れるなどの内容は一切なかったのですが、噛み合わない一方的な会話をしたり、みんなで自由遊びをする時間になると1人でウロウロしていたり、スキー教室での靴の履き方など(つまりいつもと違うことがあると)、なかなか覚えられなかったり……。夫や実母に相談しても、やはり「子どもなんて皆そんなもんでしょ。コミュニケーションはうまく取れなくて当たり前。障害だなんて……考え過ぎだよ!」とその時も言われました。園の先生や保健師さんに相談しても「そうですか?うーん、発達に遅れなど特にないと思いますけど。子どもには、みな個人差がありますし!」としか返されませんでした。この当時は私自身も、周囲からそう言われれば「また……私の考え過ぎだ」と思ってしまったのです。Upload By 安田ふくこ発達に関して、どこまでが『個人差』で、どこからが『障害』なのか。それはハルが大きくなった今でも、自問することが多いです。幼稚園では目立った困りごともなく、集団行動もできていたハルは、幼稚園を卒園して地元の公立小学校の通常学級に入学しました。私は違和感を感じながらも「小学校もきっと大丈夫だ」と自分に言い聞かせていました。しかし……恐れていた通り、小学校に入学したハルには、大きな試練が待っていたのです。ハルの小学校生活については、また別の機会に書かせていただきます。執筆/安田ふくこ(監修:初川先生より)ハルくんの幼児期の様子、そしてハルくんの子育てに奮闘されるエピソードをありがとうございます。ふくこさんも書かれている通り、母親は妊娠中から分からないことが多々立ち現れ、そのたびに不安になったり、どうにか対処してやり抜いたり。母としてわが子にどうしたらよいのかを(これも個人差はあるとはいえ)ずっと考えながら生活していますね。お子さんと過ごす時間が長く、お子さんの成長を小さな目盛りで見つけられる良さがある反面、それは、周囲の同年代のお子さんたちとの差にも気づくほどの観察眼を持つということでもあり、特に、教科書通りの発達・発育とは違う経過をたどるお子さんを育てている場合はそのあたりがつらく感じてしまうことがありますね。そういうとき、もっとも身近なパートナーたる夫という存在には、その不安などを一緒に抱えてもらえるだけで、気になること自体はすぐに消えずとも、また頑張ろうと思えることもありますが、しかし、ふくこさんの場合には、ハルくん幼少期はそのあたりが共有できなかったのですね。私は読んでいて夫さんに軽くイライラしたり、横からツッコミを入れたくなる気持ちになったりしましたが、ただ、同じような境遇で孤軍奮闘しながら頑張っている読者の方々もいらっしゃるのではと思いました。今まさに幼児期のお子さんを育てている読者の方にお伝えしたいところで言うと、さまざまな不安や懸念に対して、ご家族や園の先生などと相談などされる際に、特にご家族に対してなどは「障害」という言葉を出さずにその不安や懸念、また「ほかのお子さんとの違和感」を語られたほうが、もしかしたらうまく伝わりやすい面もあるかもしれません。それほど未だに「障害」という言葉の持つ威力やそれぞれの理解、イメージには差があり、その言葉自体が相談によって安心する繋がりを得ることの障壁になる面もあるかもしれないと感じます。また、園の先生や支援職の人の「大丈夫」「気にするほどではない」といった言葉が安心につながることもありますが、大丈夫だと思えないから相談しているのにという前提を振り返ると、意外と安心につながらなかったりしますよね。子育てこれで大丈夫、この子の育ちこれで大丈夫と思えないからご意見をうかがっているわけで……。大丈夫と思えない母の気持ちに寄り添いながら、一緒に子育てを見守ってくれる(大丈夫という言葉で終わらずにその後も不安になったら、違和感を感じたら都度話せる)関係の人が見つかるといいなと思いました(これは支援職である私自身への自戒の言葉でもあります)。お子さんの様子を細やかな目盛りで見てくださっている養育者の方の気づきは、とても意味のある、そして大切な気づきだと思っています。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年10月07日子どもらしいと思っていた「好奇心」が、「周り迷惑をかけるもの」という心配事に変化していった乳幼児期現在6歳(小1)の息子は、5歳でADHD、自閉スペクトラム症(ASD)と診断を受けています。好奇心が強く真面目、こだわり強めの息子です。赤ちゃんの頃から息子は好奇心旺盛で、目についたものは触る、口に入れる、ボタンを押す、キッチンに忍び込んで粉類や米をぶち撒ける、トイレに手を入れてバシャバシャする、トイレットペーパーやティッシュを全部出して散らかす……と元気いっぱい!これも成長だと思って、周りに迷惑にならなければどんどんやって構わないと考えていた私は、息子の気の済むまでやらせていました。特別発達面について気になるところはなかったのですが、1歳半健診の時、言葉の遅れについて指摘を受けました。息子は当時5、6個程度の単語(パパ、ママ、ごはん、お水など)と、「ま」の一言でいくつかのものを表していたためです。この健診の流れで個別発達相談を受けるよう提案されたので、以降そちらに通うことになりました。その後、どんどん語彙も増えて行き、ひらがな、アルファベットすら読めるようになり意思疎通も問題なく行えていたのですが、2歳過ぎた頃から、ほかの子どもと比べると、一つの遊びに集中できず、あるおもちゃで遊び始めたと思ったらすぐ別のおもちゃで遊ぶなど、落ち着きがない様子が気になるようになりました。そして3歳以降は好奇心からか公園で知らない大人に話しかけたりしつこく質問するように。また、お友達に噛みつく出来事があったり、お友達が作ったものを壊してしまったり、息子の好奇心が「周りに迷惑をかける」ことが増えていったのです。Upload By ユーザー体験談私は息子からなるべく目を離さず、息子が行きそうだなと感じたらストップをかけ、周りの人たちに気を遣い動く日々を過ごすようになりました。先生「残念な結果になった」。撮影が入りビデオ販売が予定されていた発表会で息子が……幼稚園入園後、息子は集団行動ができず教室から出てしまったり、順番待ち、お遊戯などを嫌がって泣いてしまうことが続きました。毎日のようにお迎えの時に先生から本人の目の前でできなかったことややってしまったことの報告を受けました。迎えに行くといつもニコニコして外を見ていた息子でしたが、次第に窓際には居なくなり、帰りのお支度ができずに教室の端に残されて泣いていることが多くなりました。撮影したビデオの販売が予定されていた発表会で息子が動いたために、ほかの子どもたちの視線がそちらにいってしまい、「残念な結果になった」と先生から言われました。そして、入園して5ヶ月たった頃、年中になると補助の先生が居なくなるので登園しても職員室で過ごすことになるなど、実質退園勧告を受けるようになりました。周りに発達障害の子どもを持つママ友もいませんでしたし、保健所の発達相談で初めて「療育というのがありますよ」と教えてもらったものの、療育のリストはくれましたが詳しいことは教えてもらえませんでした。私も知識が全くなく、どう質問したら良いのかさえわかりませんでした。ひたすら『発達障害』というワードをネットで調べたところ、とにかく療育を受けさせる必要があると思いました。発達支援センターは初回面談が半年以上先、療育はどこもいっぱいで……。でも、ネットで情報を集めて、なんとか空きのあった所に申し込みました。転園先も主にネットで検索し、障害児を受け入れて加配を付けられることを条件に探し、見学と面談をしてそちらに移ることになりました。この幼稚園と療育につながり、私は発達障害への知識を得ていきました。Upload By ユーザー体験談小学校では「ほかの子と違う対応はするべきでない」と断言する担任の先生に落胆そして小学校へ入学、初めは何とか授業にも参加できていたと思っていたのですが、7月に校長、副校長、担任との面談が行われ、「癇癪を起こして授業が止まってしまう」「癇癪の原因は分かりやすいが、ほかの子と違う対応はするべきでない」と担任の先生から断言されてしまいました。面談の席での発言なので、学校側の総意なのだと解釈しました。Upload By ユーザー体験談担任からは入学直後の面談で「特別扱いできない」とも言われていましたので、私もあまり要望はしておらず、全体のルールを変えるなどの対応は不要と伝えてはいました。ですが、個別の配慮もここでは特別扱いになってしまうのかと、この発言を聞いて今のクラスはで息子を受け入れてもらえないのだと落胆しました。私は5月まで授業中に付き添いもしていました。そこでたびたび目にしたのは、先生が何度か注意しても、なかなかやめられないときは校長室まで引き摺られて行き、先生たちから怒られるという場面です。息子は、その経験からまた同じようなことをされるのではないかという恐怖を抱くようになり、学校に対する不安が強くなっています。勘違いされて怒られたこともありました。息子に対して、担任の先生は常にイライラしている様子が伺えました。もう、息子の存在が受け入れてもらえないのだなと感じました。そうこうするうちに、校長から「この学校には特別支援学級がないので、別の学校の特別支援学級を見学してみてはどうでしょうか」とすすめられました。小学校は味方の居ない場所に……。通常学級でがんばる?引っ越す?私がした決断は確かに、息子は衝動性からクラスの子どもを傷つけてしまう可能性がありますし、癇癪で迷惑をかけているということを申し訳なく思っていました。でも、癇癪を起こすのは教室だけです。自宅、療育、通級指導教室では落ち着いて過ごせていました。特性を理解してもらえない、配慮なくみんなと同じように同じことを強要されても、息子には難しかったのでしょう。公立校なのでさまざまな制限があるのもわかりますし、もちろん息子だけに対応するのは難しいことは理解しているつもりですが、面談で話を聞いてとても悲しくなりました。今住んでいる自治体の特別支援学級は情緒学級がなく、知的学級しかありません。情緒学級のある自治体への引越しも考えましたが、すぐには動くことができない状況です。息子は知的面での遅れはなく、むしろ今は勉強したいと意欲的です。できれば配慮を受けて勉強をさせてあげたいのですが、それでも今の学校にいたら、息子の味方が居ない場所で無理をすることになります。担任の先生が配慮しないと断言した以上、苦しい状況にいても成長に繋がらないと考え、本人は嫌がりましたが情緒級の特別支援学級のある自治体へ転校することに決めました。それしか選択肢がないと思いました。Upload By ユーザー体験談息子の心を傷つけてしまった……。いつか楽しい時間が記憶として残る環境に息子を置いてあげたい私は、息子の発達障害を受け入れていたつもりでしたが、どこかほかのの子と同じような経験をして成長して欲しいと言う気持ちがあり焦っていたのだろうと思います。今回、幼稚園に続いて小学校も変わるという経験をさせてしまい、息子の心を傷つけてしまいました。特別支援学級では息子の気持ちをよく考えながらのんびりと成長を見守っていけるようにしたいです。多少のことは笑顔で対応してあげたいです。将来はどうなっていくのか今は想像もつきません。私自身も不安しかありませんし、どう育って欲しいかも具体的に考えられませんが、近い将来、今までの嫌な記憶が少しでも和らいで、楽しい時間を過ごして、それが思い出として記憶に残ってくれたらと思います。穏やかに過ごせる環境に、息子を置いてあげたいです。イラスト/taekoエピソード参考/なのはな(監修:藤井先生より)貴重な体験談を読ませていただきありがとうございます。息子さん、親御さんのお気持ちが伝わってくる内容でした。発達障害があるお子さんへの合理的配慮を推進する法律が施行されたのが、平成28年4月です。しかし、障害のあるお子さんへの合理的配慮が細やかにされているかというと、まだ自治体によっては知的障害がない発達障害へのお子さんへの配慮がまだ行き届いていない様子も伺えます。主治医からの意見書や診療情報提供書などで、学校との連携をとられている方もいらっしゃいます。もし、主治医がいらっしゃる場合には、相談されるのも良いかなと思います。息子さんが少しでも穏やかに過ごせる環境が見つかることを願っています。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年10月05日息子のハジュは3歳の時に自閉スペクトラム症と診断されました現在小学3年生のわが家の長男ハジュ、赤ちゃんの頃はとてもよく眠る子でした。お腹が空く時間になってもまったく目覚める気配がなく、よく起こして授乳をしていました。あるとき、何度起こしても目を覚まさないため、寝ているにもかかわらず授乳をしてみたら……口からミルクがダバー。あとになって分かるのですが、ハジュには感覚鈍麻があったようで空腹や満腹の感覚がかたよっていたのかもしれません。そして、いつも上機嫌!あやさなくてもニコニコとよく笑い、誰もいない場所に向かって笑っていることもあったので妖精さんでも見えているのかな?と思っていました(のんきな母)。夜泣きもそれなりにありましたが、基本的によく寝る子どもだったので、とても育てやすく感じました。今思えば、いつもニコニコしているので呼びかけに反応していると思い込んでいたのかもしれません。Upload By スパ山まるで爆弾!?急な癇癪、吐くまで泣き続けた1歳を過ぎた頃なんか変だな?と思ったのは1歳を過ぎた頃でした。3歳年上の長女が1歳だった頃に比べて、意味のある言葉は何も話さないし、指さしもしないことに気がつきました。そして、何か気に入らないことがあると、激しく頭を壁や家具にぶつけたり、地面へ叩きつけたりしていました。しかも、何が気に入らないのかが親にはさっぱり分からない。まるでいつ爆発するか分からない爆弾を抱えているようでした。スイッチも解除方法もわからない!吐くまで泣き続けていました。「誰か爆発物に詳しい方はいらっしゃいませんかー!?」と叫び出したいような状況でした。かかりつけの小児科の先生に予防接種のついでに相談したところ「まあ、男の子はいろいろ遅いって言うから」と言われ、「なるほど男の子とはそういうものなんだ」と思っていました(のんきな母再び)。Upload By スパ山遅れて受けた1歳半健診……療育と出合う転勤族のわが家は、1歳半健診のタイミングと引っ越しがかぶり、現住所でも転居先の健診日でも、1歳半では受けることができませんでした。ようやく受けることができたのは、ハジュが1歳11ヶ月の時でした。そして健診の日。健診会場にいるのはほとんどが1歳半の子どもたち。お膝に座って絵本を読んだり、「かして、どうぞ」とお話する子どもまで……!えっと、確認ですがみなさん生まれて1年と半年ってことでOK?と混乱する私。いっぽうで息子のハジュは広い会場に大興奮!端から端まで走ったり、机に上ったり。落ち着かせようとしても、空を舞う竜のごとく腕の中を通り抜けてあっという間に廊下へ!!長女も1歳半健診は受けていますが、明らかにハジュは何かが違う……感じたのでした。健診で診察をしてくれたお医者さんが「え!?もうすぐ2歳!?一個も言葉出てない!?」と驚いたように話したことで、「男の子はいろいろ遅い」説は一体なんなんだ!?みんなこうじゃないの!?と、どんどん不安になっていきました。そして心理士さんと面談し、療育と出合うことになったのでした。Upload By スパ山やっと出た自分の言葉!3歳の頃3歳になったハジュは、グループ療育に通いつつ、地域の幼稚園に入園しました。この頃は、石や砂、粘土、ビーズなどを口に入れるようになり、加配の先生についてもらい、危険のないように園生活を見守っていただきました。そして幼稚園入園後、ずっと喃語状態だったハジュが「(は)い!」と返事をするように。みるみる言葉が増え、不明瞭だったり、オウム返しだったりしながらも、受け答えできるようになってきました。数字も大好きになり、「おかあさん」より先に1~100を言えるようになりました。いっそのこと私の名前を数字に改名したかったです。そして初めておしゃべりらしい言葉が出たのが「今日の給食なんだった?」に対しての「すっぱらっちぃ(スパゲッティ)」です。はい、もう耳を疑いました。大号泣です。(あまりにもうれしくて「スパ」を取って現在のペンネームにしました。そしてしょっちゅうスパゲッティが食卓に登場)Upload By スパ山現在は特別支援学級へ現在ハジュは、地域の小学校の特別支援学級の3年生です。相変わらず数字が大好きで、お友達もたくさんでき、元気に過ごしています。私も、信頼できる先生や、SNSを通じてママ友と出会うことができ、みんなから支えられてひとりじゃないんだなと思うことができました。こんな私たち家族の日常をお届けし、「自分だけじゃないんだ」と少しでも共感してもらえるような記事を書いていけたらと思っております。そして、あわよくばクスっとしていただければ幸いです。執筆/スパ山(監修:室伏先生)ハジュくんの乳児期から現在に至るまでの成長のご様子を、お母様のお気持ちを交えて共有くださり、ありがとうございました。発達障害を抱えるお子さんの多くは、乳児期には特性が分かりづらいことが多いです。乳児期を過ぎると、違和感やあれ?と思うことが増えていくのですが、親御さんは、療育や診断に繋がり見立てや診断がつくまで、不安や戸惑い、迷いなどを感じられ、診断がついてからは落胆や見通しがたたない先々への不安など、さまざまな想いを抱えられると思います。それらを乗り越えて、頑張られている親御さんのお気持ちやその変化、そしてハジュくんの成長の様子や、毎日を楽しく過ごすハジュくんの今を共有くださることは、多くの親御さんにとって安心や励みになることと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年10月03日好きなことには過集中!やるべきことには注意散漫!Upload By 丸山さとこ現在中学生の息子コウには、ASDとADHDがあります。ADHDの特性によるためなのか、意識的に集中力をコントロールして物事に取り組むことが苦手です。趣味に関しては過集中して寝食を忘れて取り組むいっぽうで、宿題など『意識的に集中しなくてはいけない作業』では、雑談を始めたり消しゴムをコロコロ転がしたりして気が散ってしまいがちです。コウは書字が遅く疲れやすいため、小学校の宿題では漢字の書き取りなど『書く量』の多さで苦戦していました。高学年になると書き取りノートのマスの数も増えるため、3~5行書いたところでコウの気持ちが折れてしまうようになりました(日によっては5文字程度で力尽きてしまいます)。そんな様子を見ていた私は「苦手な作業だし、集中しづらいのも無理はないのかな」と思っていました。ところが、中学生になった今、コウは「宿題は嫌じゃない」と言います。なぜなら、中学校の宿題はプリントが主体のため、小学校の宿題に比べて書字の量が少ないからです。実際、コウは宿題を進めながら「興が乗ってきた!」と言うこともよくあります。そんなときは、数分で宿題を終えることも珍しくありません。でも、宿題が進まない日ももちろんあります。進まないなかでも、グニャグニャしながらも頑張って机に向かっているコウを見ていると、「集中できるか否かは、コウ本人にとってコントロールが難しいことなのだろう」と感じています。宿題が、出せないままに、はや中2……(五七五)Upload By 丸山さとこ私は実家が遠方にあるため、夏休みと冬休みはコウをつれて1~3週間と長めの帰省をしています。その間は私の外出中などは、私の母がコウを見ていてくれることがあるのですが、先日帰省した際は「コウ君宿題してるみたいだけど、さっきから伸びたり縮んだりしているだけで全然進んでない」と母から報告の電話を受けて笑ってしまいました。グニャグニャしながら机に向かい、伸びたり突っ伏したりを繰り返しているコウの姿が目に浮かぶようでした。Upload By 丸山さとこそんなコウの宿題風景を前にしても、最初私の祖母だけは「こっちに来たときくらいノンビリしたらいいよ」と言っていました。ですが、滞在して数日たつと、そんな祖母まで「コウ君、宿題しなくて大丈夫かね?」と言うようになりました。コウの周りの大人たちがつぎつぎとしびれを切らしていくのを見ると、「コウの宿題を見ていて焦るのは私だけじゃないんだ!」と、少し面白くなりました。それでも、コウの宿題への取り組み方や集中力のなさを『やる気や真面目さの問題』にはしたくないと私は考えています。というのも、コウは小学校高学年の頃『宿題が進まない』現実と『宿題は絶対やらなければいけない』という考えと、『宿題は苦痛なのでやりたくない』という思いとの板挟みに合い、気持ちが不安定になったことがあったからです。ときには「宿題をできない僕はダメなやつだ」と絶望して泣くこともありました。そんなコウが、中学生の今「宿題は嫌いじゃないよ。やるのも出すのも忘れちゃうけどね!」と笑って言えるようになったのは、長い目で見れば良い変化なのではないかと思います。Upload By 丸山さとこ「集中力の補助線」を利用しながら試行錯誤している毎日です中学生になった現在も相変わらず宿題に集中できないコウですが、私に説明しながら解くことで集中の取っ掛かりをつくったり、雑談をしながら進めることで『気が乗らないことに取り組む苦痛』を和らげたりするなど、コウができる工夫は増えてきました。今はそうして私を集中力の補助線にしているコウですが、だんだんとそれをアイテムや自分自身への声かけで代用するようになっていくのではないかな? と思います。タイマーをかけて「よし、やるぞ!」と気合を入れたり、私に向かって動画配信者風に解説をしたりしながら宿題を進めるコウの姿を見て、頼もしく感じています。Upload By 丸山さとこ執筆/丸山さとこ(監修:藤井先生より)「集中力の補助線」という表現がとても良いですね。コウくんにとって、さとこさんの声かけが、集中力の補助線になっているのですね。自治体、学校によっては宿題がないところも出てきています。自主学習といって、お子さんが興味あることに取り組み、家庭学習を行うことを主体にしているようです。学校からの宿題には取り組めなくても、興味あることの延長線上の学習なら取り組めるお子さんもいます。宿題を極端に嫌がる場合には、宿題の内容の工夫について、学校と相談すると良いと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年10月02日アトピー性皮膚炎とは?原因も解説アトピー性皮膚炎とは、皮膚の上層にかゆみを伴う湿疹が慢性的に繰り返し生じる病気のことです。乳幼児期に生じて成長と共に症状が落ち着くことが多いですが、まれに成人してからも症状が表れる場合があります。アトピー性皮膚炎の原因は遺伝などが挙げられていますが、まだ明確にはなっていません。さまざまな要因が絡んでいると考えられており、花粉症や喘息のある子どもや、家族にそのような症状のある子どもに発症することが多いことが分かっています。発症すると皮膚に赤みのあるぶつぶつができたり、乾燥して皮膚がむけたりといった症状が表れます。強いかゆみが伴うため、子どもが皮膚をかいてしまうことで、症状が悪化することも多くあります。アトピー性皮膚炎によるかゆみがあることで、子どもが夜眠ることができなくなり、身体の成長に影響が出たり、日中の園や学校での活動に影響が出ることも考えられます。また、顔に症状が表れている場合は、白内障などの合併症を発症することもあります。そのため、早めに病院を受診し、適切な治療で症状を改善させていくことが大切です。参考:アトピー性皮膚炎(湿疹)|MSDマニュアル家庭版参考:アトピー性皮膚炎|国立成育医療研究センターアトピー性皮膚炎と発達障害の関連性発達ナビでは「わが家の「アレルギー事情」アンケート&エピソード募集!」としてアレルギーについてのアンケートを募集いたしました。今回はその結果をご紹介いたします。(2023年9月5日~9月7日までに実施/発達ナビ会員65名が回答)Upload By 発達障害のキホン「子どもに発達障害があり、なんらかのアレルギーがある」と答えた方が77%と一番多い結果となりました。多くのご家庭が発達障害とアレルギーに関して悩んでいるようです。参考:わが家の「アレルギー事情」アンケート&エピソード募集!実際にアトピー性皮膚炎がある子どもは、ADHD(注意欠如・多動症)などの発達障害を併存していることが多いと言われています。参考:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021|日本皮膚科学会発達障害のある子どもは感覚過敏などの特性が見られることが多く、アトピー性皮膚炎のかゆみに対して強い力でかいてしまうことがあります。そのことで、皮膚の傷が深くなり、治りが遅くなることもあると言われています。そのため、アトピー性皮膚炎に発達障害が伴う場合は、子どもの特性に合わせた治療を行うことや、心理療法も組み合わせて行っていくことが大事と言われています。もし、アトピー性皮膚炎のほかに発達で気になることがある場合は、受診時にそのことも伝えるようにしましょう。アトピー性皮膚炎の症状とは?これは初期の症状?代表的な症状も解説アトピー性皮膚炎は乳幼児期に発症することが多く、通常は生後4ヶ月未満から症状が表れてきます。症状は早期(急性期)と慢性期(後期)といった時期によって異なっています。早期では、赤いじゅくじゅくとした発疹や水泡が生じ、1~2ヶ月続きます。慢性期では、かゆい部分をかくことによって皮膚が固くごわごわした状態になります。年齢によって症状が表れやすい箇所が異なっています。乳幼児では顔から頭皮、首、手、足と広がっていき、年長の子どもや成人の場合は特定の場所に繰り返し表れ、特に首の前面、肘の内側、膝の裏が多いと言われています。また、アトピー性皮膚炎には合併症が多いことでも知られていて、先ほど紹介した白内障のほか、掻いた傷口から細菌が入ることで感染症を引き起こすこともあります。ほかにも、アトピー性皮膚炎のある方が単純ヘルペスウイルスに感染すると、通常よりも重い症状が表れると言われています。参考:アトピー性皮膚炎(湿疹)|MSDマニュアル家庭版アトピー性皮膚炎の治療方法とは?ステロイドを使うの?アトピー性皮膚炎の症状を改善するためには、ステロイドなどを用いた治療やスキンケア、悪化要因の除去などを行っていきます。アトピー性皮膚炎の治療では、ステロイド外用薬を用いた薬物療法がよく行われます。主にコルチコステロイドという種類のステロイドの軟膏を直接患部に塗っていき、皮膚の炎症を抑えていきます。コルチコステロイドには副作用もあるため、子どもの様子も見ながらほかの治療法に変更することもあります。ほかの治療法としては、光線療法といって紫外線を照射していく方法や、内服薬、注射などを用いた治療法があります。治療は基本的には家庭で行っていきますが、症状が重い場合には入院する場合もあります。アトピー性皮膚炎の症状の改善や予防のためには、適切なスキンケアをしていくことも大事です。ここでいうスキンケアとは、皮膚を清潔にすることと保湿することを意味しています。皮膚を洗う際には専用のせっけんを使用し、拭くときはごしごしとせずに軽くたたくように水分を取り、まだ湿っているうちに保湿剤を塗っていきます。スキンケアをする際には以下のような点を心がけていきましょう。・皮膚を洗う際に洗浄力の強いせっけんは避ける・入浴は1日に1度にする・皮膚を拭くときはごしごしとこすらずに、軽く叩くように水分を取る・皮膚が湿っているうちに保湿剤を塗るアトピー性皮膚炎には症状を悪化させる「悪化因子」と呼ばれるものがあり、それらを取り除くことも予防や改善のために大切です。悪化因子にはダニやカビ、ほこり、ペットの毛、ストレス、風邪による体調不良などがあり、子どもによって何が因子となるか異なっています。日常生活における悪化因子を取り除くには、以下のような対策が有効と言われています。・熱湯を使って寝具を洗う・ぬいぐるみやカーペットといったほこりなどが付きやすいものを取り去る・ペットを飼わないようにする、飼っている場合は部屋を分けるなど子どもから遠ざける・子どもがよく過ごす場所に空気清浄機を設置する・湿気の多い場所に除湿器を設置する・子どもの精神的なストレスを減らしていくこのように、アトピー性皮膚炎ではステロイドなどの薬物療法、スキンケア、悪化因子の除去を行いながら症状の改善を目指していきます。参考:複数科間の連携によるアレルギー診療アトピー性皮膚炎を例として|小谷 信まとめアトピー性皮膚炎は皮膚にかゆみを伴う赤みのある湿疹などができる病気で、子どもに多く見られます。合併症が多いことでも知られており、皮膚をかくことで傷ができてほかの感染症や白内障などを発症することがあります。また、発達障害と併存することもあり、その場合は感覚過敏の特性などによって、強くかいてしまうことも考えられます。アトピー性皮膚炎は治療を行うことで症状を改善させることが可能な病気です。子どもに皮膚の赤みなど気になる症状が見られたら、早めに病院を受診するようにしましょう。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年09月27日発達の遅い息子をワンオペ育児していた私。のちに産後うつに……現在中学1年生の息子は、7歳の時に自閉スペクトラム症(ASD)、ADHDの診断を受けました。息子は乳幼児期から発達の遅れが目立ちました。まとまって寝ない、抱っこを海老反りして拒否する、両親やほかの人がいても気にならないのかコミュニケーションを一切とらない……など、さまざまな問題がありました。おとなしいけれど、育てづらい……そんな印象です。この時期、私はワンオペ育児で心身ともに疲弊しており、のちに産後うつと診断されました。当時はどんどん感情が麻痺していく中、息子はこのままで大丈夫なのか、どうすればいいのかといろいろな支援施設を訪ねる日々でした。Upload By ユーザー体験談生後半年頃から成長曲線から外れ発育相談へ。「体重を増やせ」と言われるも、離乳食を食べてくれない息子Upload By ユーザー体験談生後半年頃からでしょうか。身長や体重が成長曲線に沿って増加しなくなりました。発達もおすわりまでは順調でしたが、はいはいから少しずつ遅れていき、1歳になっても立たず、喃語も出ません。「ちょうだい」「どうぞ」などというやりとりもできず、体の成長とコミュニケーションの発達に遅れが出ているのではと感じていました。そんな中、一番気になっていたのは離乳食が進まないこと。1歳になっても7ヶ月目くらいの食事しかとらず、手づかみ食べもなし。親がスプーンで運んだものしか食べませんでした。心配になった私は、まずは近くの公民館の発育相談に行きました。主に、体重や身長が増加しないこと、離乳食が進まないことを相談しました。その次は保健センターの発育相談に行き、同様のことを説明。最終的には保健所の発育相談にも行きました。どこに行っても言われたのは「とにかく体重を増やすこと」でした。これは私が頑張らなければいけないと、必死で離乳食作りをしましたが、本人は食への興味が無いようでなかなか進みません。いくら時間をかけて作っても、全然食べてくれないこともありました……。私は心も体もどんどん追い詰められていきました。1歳半健診より前にやることになった発達検査Upload By ユーザー体験談当時、私は定期的に保健師さんの訪問を受けていました。公民館、保健センター、保健所などで相談したことを話したところ、その保健師さんから離乳食だけでなく発達の遅れが気になるとの指摘を受けました。離乳食の遅れも、発達が関係していることかもしれないと言われた私は、1歳半健診が間近に迫っていたものの、それより少しでも早く発達が専門の支援員さんに息子を見てもらいたいと、保健センターを受診。そしてそこで『発達が半年ほど遅れている』ことが分かったのです。発達や発育の遅れを指摘されても、このときの私は悲しいとか悔しいとかそういう感情がわいてきませんでした。やっぱりそうなんだというくらい。すでに感情が麻痺してしまっていたのだと思います。発達検査の後に受けた1歳半健診では……ほかの子より半年遅れていると分かったことで、私は覚悟しました。1歳半健診でほかの子をみたら、息子との違いにびっくりするだろうことを……。実際に健診に行ったら、ほかのお子さんは元気に歩き回ったり、お友達と仲よさそうに遊んでいたり、自分の水筒を自分で持っていたり……。なにより、何らかのおしゃべりをしていたので、そのすべてができない息子と比べると、まるで別の世界にいるようでした。本当に別の世界の出来事……、周りのお子さんとの違いに、もはやショックを受ける気力すらありませんでした。Upload By ユーザー体験談そして受けた1歳半健診は、すでに発達の遅れを指摘されていてフォローアップが済んでいるということで、淡々と終わりました。いろいろな方の支えてもらい育児をしている……そんな状況が私を前に向かせてくれるようにその後の私は、いろいろな方から受けたアドバイスを実行するだけで精一杯。発達支援につながり、教えてもらったアドバイスを実行したりさまざまなことをやりました。ただ、それまでワンオペでしたが、ほかの方と一緒に息子を育ててもらっている……という気持ちが私を慰めてくれました。今、子どもは2歳過ぎまで話をしなかったのが嘘のようによく話をします。ただ、今もコミュニケーションの発達には難があります。これから先も社会にどのように関わっていけるのかは未知数です。これからも息子が少しでも社会に関わっていけるように、いろいろな方の支えを受けながら、育児を頑張りたいと思います。イラスト/吉田いらこエピソード参考/ころぼっくる(監修:鈴木先生より)母子手帳には1歳半や3歳時健診の左側に親がチェックする項目が列挙されています。最後に「子育てに困難を感じましたか」という項目があり、私はそこを一番重要視しています。普通なら「いいえ」に〇がついているのですが、私の外来に来るお子さんについては「どちらともいえない」や「はい」に〇のついているケースが多々見受けられます。それでも健診担当の保健師さんからは何もコメントのもないまま通過していることが多いのが現実です。できるだけ早期に介入し、療育を開始するのが望ましいのですが……。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年09月27日言葉も早く、目も合ったけど...言いようのない違和感があった幼少期長男あーは3歳半健診で自閉スペクトラム症(ASD)疑い、4歳で正式に診断されました。 そこから紆余曲折を経て、今は特別支援学級(情緒障害学級)在籍の小学6年生。健康と折れない心が取り柄のあーくんも、来年からは中学生です。1、2歳頃のあーは、言葉も早く目もよく合う子どもで、いわゆる発達障害の代表的な症状が出現していませんでした。でも、言いようのない違和感は、その頃からずっと付きまとっていたように思います。例えば、真夏の炎天下で1時間でも2時間でも用水路に石を投げ入れ続ける。何度呼んでも振り向かない。「自分でしたい」という欲がなく(いわゆるイヤイヤ期がない)、なんでもずっと人にやってもらっていて、それに対する疑問がない。きちんと座ることができず常に軟体動物のよう……。どんなに言い聞かせても、時に(時にでもないけどよ)怒っても伝わっている感じもなく、私の怒り声が全く聞こえていないか、あるいは聞こえたとしても怒られたこと自体にショックを受けて泣くかのどちらか……。私はそんなあーの様子にイライラを募らせて、ただただ親子仲が不穏になっていく日々を過ごしていたのでした。Upload By よいこ幼稚園入園式でのハプニング!そんな長男あーも3歳になり、幼稚園へ入園する時がやってきました。お友達ができるのか、先生の言う通りに動けるのか(一斉指示が通るか)、みんなと同じ行動ができるのか……不安半分、期待半分で入園の日を迎えました。なんといっても第一子の入園式、キラキラの思い出に……なるはずでしたが、教室で同い年の子どもたちがみんな大人しく座っている中、あーは1人走り回り、式本番では見かねて押さえつけようとした夫のメガネを破壊、私の借り物のコサージュも破壊……!もうご家庭では手に負えない!と市の3歳半健診で前のめりに相談しましたが、児童精神科の受診はなんと半年待ち。その後、ようやく自閉スペクトラム症の診断が出て、療育へとコマを進めることができたのでした。Upload By よいこ実は、長男あーだけではなかった…次男いー、そして両親にも特性が?長男あーの怒涛の育児に追われる中、4歳差で誕生した次男の「いー」。あーと比べて、なんて穏やかで育てやすい子なの!と思っていた私ですが、実はいーにも特性があり、のちに「不注意優勢型のADHD」であることが発覚。かく言う母の私も、大人になってから発達検査を受けてADHDグレーゾーンということが分かりました。さらに、夫も未診断ながら、発達の偏りがかなり強めなタイプなんです。そんな4人が集まった発達凸凹ファミリー、斜め上の出来事がたーくさん!起こります。もう私のお腹はいっぱい……主にASD長男あーのエピソードが中心とはなりますが、いろいろ話を聞いてやってくださいよ。Upload By よいこ執筆/よいこ(監修:森先生より)ひとことで「発達障害」といっても、その表れ方は多種多様、度合いもさまざまです。症状の出方や程度が異なるのがスペクトラムと言われる所以です。発達障害の原因はまだ分かっていませんが、遺伝的な要素と環境的な要素が絡み合っていると考えられているため、遺伝子も環境も近い家族は、どうしても発達の傾向が似ている場合が多くなってきます。家庭内の一人が支援に結びつくと、家族のほかのメンバーも発達の偏りを自覚しやすく、結果的にお互いを理解するきっかけとなることも多いのです。発達障害の診断がなかったとしたら、そのようなきっかけもなく過ごしていたかもしれません。発達障害があろうとなかろうと、家族といえども価値観も考え方もそれぞれに違うのに、そのことに気づかずに暮らしている家庭もたくさんあるわけです。家族のメンバーがそれぞれに違うことを理解しあえるということは、かえってラッキーなことかもしれませんね。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年09月26日「特性=障害」とはならないまずはみなさん、「発達障害」という言葉はすでに知っていると思いますが、これにはいくつか種類があって、大きくは次の3つです。1.自閉スペクトラム症(ASD)2.注意欠如多動症(ADHD)3.学習障害(LD)今回は、なかでも1.自閉スペクトラム症(ASD)について取り上げていきます。なぜなら、「自閉スペクトラム症」の特性やコミュニケーションがとりわけ理解されづらく、「普通、分かるでしょ?」というのが、分からないタイプの子たちだからです。Upload By 本田秀夫なお私は「発達障害」は病気というより、「少数派の種族」のようなものととらえています。また、「特性=障害」とはならないため、障害(Disorder)を除いて、「自閉スペクトラム(AS)」、「注意欠如多動(ADH)と呼んだりもします。このコラムのなかでも、以降は『マンガでわかる発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』と同様に「自閉スペクトラム」と呼んでいきます。Upload By 本田秀夫自閉スペクトラムの特性のあるお子さんは、園や学校での集団活動で、周りとペースが合わないこともあります。そんなお子さんのことを理解してもらうために、今回は、直観的に理解しやすいマンガをまじえてお伝えしていきます。皮肉や言外のメッセージが通じないUpload By 本田秀夫このマンガで親が言いたいのは、「誰が洗うと思ってんの?(洗うのはあなたじゃなくてお母さんでしょう?こんなに汚してしまったら、お母さんは大変なのよ。ケロッとした顔をしていないで、少しは反省したところを見せなさい)」というようなことですよね。そのような「含み」を込めて、「誰が洗うと思ってんの?」と問いかけているわけです。ところが子どもは、その一切合切の含みがわかっていない。申し訳なさそうな態度をとるわけでもなく、服を洗うのは「洗濯機」だという事実だけを答えています。遠回しな注意より、世渡り術やこぼさないコツをおそらくこの子には自分がとがめられているという認識がありません。このようなやりとりは、自閉スペクトラムの特性がある子によく見られることで、私たち支援者にとっては「あるある」です。子どもはふざけているわけではないので、反論したり叱ったりしないで、マンガのようにおだやかに受け止められたら理想的だと思います。遠回しに注意するのはやめて、「こういう場面では形だけでも謝罪する」という世渡り術を具体的に教えてもいいかもしれません。さらに毎日の生活のなかで、飲み物をこぼさないようにするコツも教えていければ、言うことはありません。言外のメッセージに気づかないケース相手の言っていることの「言外のメッセージ」に気づかない例は、ほかにもあります。・自転車に乗っている幼稚園の友達が転んだのを見て、自転車に「大丈夫?」と声をかける・公園の砂場でひとり遊びをしているときに、友達から「1人なの?」と声をかけられ、「4人家族だよ」と答えるいずれの場合も当人の立場で考えてみると、その子たちなりの筋が通っています。先の洗濯機の例では、母親はスイッチを入れるだけで、実際に服を洗うのは洗濯機だという、より正確な答えを出していますし、友達が乗っていた自転車の損傷を心配してもいいはずです。そして、「4人家族」と答えるのは、理屈の上では必ずしも不正解ではありません。気づかなかったら、はっきり教えてあげるしかし、多くの人に「どこか変」と思わせるのは、なぜでしょう?実は、「誰が洗うと思ってんの?」の質問には「謝りなさいよ!」のメッセージが、「1人なの?」という質問には「1人なら一緒に遊ばない?」というメッセージが込められています。また、「大丈夫?」と声をかけるのは、「私は心配していますよ」というメッセージを伝える目的があるからです。自転車に対しては、そのような目的は不要です。「普通、分かるでしょ?」が分からないのが自閉スペクトラム症の子どもたちの特性です。言外に込められたメッセージに気づかなかったら、そこははっきりと具体的に教えてあげてほしいと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年09月25日乳幼児の頃から、 “手を使うおもちゃ”で遊ばなかった息子現在6歳・年長さんの息子は、3歳9ヶ月で「新版K式発達検査」を受けたところDQが80で3歳0ヶ月相当、境界域であることが分かりました。息子には手先の不器用さがあります。ひらがなは書けるもののアンバランスだったり、距離感をとらえにくいのか、ものを手渡す際相手の鼻先まで持って行ったりするようなときもあります。ボール遊びや縄跳びも苦手です。乳幼児の頃の息子は、何かによじ登ったり、飛んだり、踊ったり、体全体を使うことは好んでやっていたのですが、積み木やボタンを押したりカギを開けたりする手を使うおもちゃにはほとんど手を伸ばしませんでした。その頃は「発達の遅れがあるかも?」とは思っていませんでしたが、息子の手先の不器用さはこの頃からつながっていたのかもしれない……と今振り返ると感じます。そしてこの手先の不器用さがネックになり、なかなか習得できなかったのは「はしの持ち方」です。私も周りの目を気にしすぎて、いらない心労を抱えてしまったと思います。「できないから、やだ!」おはしの練習を全力で拒否!息子が年少クラスの9月頃、通信教育のワークブックにおはしの練習ができる付録がついていました。いい機会だと思った私は、これを使っておはしの持ち方を練習することにしました。プレッシャーをかけないように、楽しく、気楽に練習できるように努めました。付録も楽しくやるものだったので、幼児には取り組みやすかったと思います。ですが、これがなかなかうまくいきません……。やはり手先が思ったように動かせない、力の入れ方などにも不器用さが出てしまうようなのです。息子は嫌なものはテコでもやらない性格。かつ、失敗すると必要以上にクヨクヨしたりイライラしたりして、ヘソを曲げてしまうところがあるのですが、このおはしの練習でもヘソを曲げてしまいました。何度勧めても「できないから、やだ!やらない!」とかたくな……。私はこの息子の様子をみて「無理強いすることもないか」と、おはしの練習はもう少し待つことにしました。Upload By ユーザー体験談義弟「おはしを使ってみようか」、実母「甘やかしすぎ」二人から言われた言葉にモヤモヤする私……わが家のお正月は、私の実家に妹一家と私の家族が集まって食事をするのが恒例です。その中のメンバーである妹の夫(義弟)は、ちょっと厳しい人のようで、妹からは娘である姪っ子(当時小1)が小さな頃から、おはしの持ち方を厳しく指導していたと聞いていました。息子が年中だったお正月のことです。フォークを使っている息子を見た義弟が「おはしを使ってみようか」と息子に声をかけました。義弟の口調は優しくて、決して息子をとがめるような物言いではなかったのですが、ちょっと緊張が走った私。その時、姪がとっさに「パパ!(おはしがうまく使えなくても)怒らないであげてね!」と息子をかばうような声がけをしてくれました。姪の反応を見た私は(おはしの持ち方に厳しいって本当なんだ。息子がまだおはしを持てていないこと、あとでなんか言われてそうだな……。事実だから仕方ないけど……)とちょっと胸が苦しくなってしまいました。幸いにも当の息子はまったくその空気を察しておらず、「え~、おはし使うのやだ~」と超マイペースにフォークを使い続けていました。姪の発言があったからか、義弟はそれ以上何も言いませんでした。Upload By ユーザー体験談しかしこの時同席していた実母は「やっぱり息子くんを甘やかしすぎなんじゃないの?無理してでもおはしを練習させたほうがいいんじゃない?」と私に注意してきました。両親は、私の仕事の関係で週2回息子を預かってくれているので、息子の発達のことや不器用さのことも把握しています。とはいえ、母はメンツや体裁にこだわるタイプなので、義弟に指摘されたことで「体裁が悪い」「もっとちゃんとはしの練習をさせておくべきだった」と思ったのだろうと思います。私は、何とも重たい気持ちになってしまいました。Upload By ユーザー体験談息子の不器用さを理解してもらえない環境?私はどうすべき?この後、私はモヤモヤしていました。(妹や義弟は姪のような優等生を日常的に見てきている。そんな人たちに息子の不器用さや、言って聞かせることの難しさを理解してもらうのは難しいんだろうな。息子がおはしを使わないのは、わが家のしつけがなっていない、指導する根気が足りないからって思われているんだろうな……)(母は、私や妹の「人より劣っている部分」を強くけなしたり、逆に「人より優れている部分」に対してすごく得意になる傾向があった。何かと人より遅れがちな息子を今後どんなふうに受け止めていってくれるんだろう……。受け止めきれなくなったときは、また今回みたいに私に「しつけがなってない」って怒るのかな……)そんな考えが頭の中でグルグル回ります。……とはいえ、妹夫婦からそうした態度で接してこられたことはなく、私が勝手に卑屈になっているだけ。なぜそう卑屈になってしまうか考えたところ、「まだ無理強いすることもないか」と思いつつも、私も実は息子の不器用さに焦りを感じているのです。そんな自分に気づくことができました。また、私は義弟からはし使いを指摘されることが嫌というより、「そうした出来事をきっかけに、母が私の育児にあれこれ言ってくる可能性が高いこと」が引っかかっていることも自覚。となると、これは息子がはしを持てないことが問題というより、自分の気持ちの問題であり、自分の軸をしっかりもてば、このモヤモヤは解消できるかもしれないと気を持ち直しました。息子にあったタイミングで背中を押す。そんな子育てをしていきたい!私は今まで通り、息子の不器用さを感じても深追いしてやり方を細かく指導することはせず、息子がその気になるまで待ち、興味を持ったら教える方法を続行することにしました。そして年長(6歳)になった息子は、こども園のお昼の時間にみんながおはしを使い出したことに刺激を受けたようで、最近ようやくおはしを持つようになってきました。これが息子のおはしの練習をするベストタイミングだったのだと思います。普段は正しく持てていますが、ときどき下側のはしを薬指で支えるのがうまくいっていなくて、握りばしになっています。あと、そうめんのような、おはしでつかみにくい料理だと、トレーニングばしに持ち替えたがります。それでも嫌がることなく、どう持てばいいか試行錯誤している息子を見ると、その姿がほほえましいです。Upload By ユーザー体験談またお正月にみんなで集まるときは、息子にはおはしを使わせようと思っています。使い方がまだ完璧じゃないので、義弟から何か注意を受けるかもしれませんが、息子にとっては、私や夫以外の人から注意を受けることも貴重な体験かもしれないと、私自身も思えるようにもなりました。息子は臆病なところがある一方で、好奇心が旺盛。その好奇心を大切に、いろんなことに挑戦してみてほしいと思っています。そのためにも、息子が「頑張りたい」「やってみようかな」と思っている瞬間を見逃さず背中を押す、あるいは、いろんな人との関わりを増やして、刺激を受けながらモチベーションを上げていってもらえればと思います。イラスト/カタバミエピソード参考/苗(監修:森先生)DQとは「発達指数」のことで、日常生活や対人関係における子どもの能力の指標のこと。もちろん数値は目安に過ぎず、発達は早いけれどもおはしを使うのが苦手な子どももいますし、その逆もありえます。おはしを上手に使えなくても、フォークを使うなどして食事ができれば全く問題はないはず。おはしの使い方それ自体にこだわっても仕方ないのですが、そうはいってもおはしの使い方は友達や親戚と食事をする場面で気になりやすい部分ですよね。できるようになるタイミング、やりたいと思うタイミングは一人一人違います。落ち着いて練習できるように、お家での食事ではおはしを使ってみようか?と声かけを頻繁にしてあげるのがいいのではないでしょうか。ただし、無理強いは禁物です。厳しく言われると、食事そのものに苦手意識を持ってしまうでしょう。姪っ子さんは父親である弟さんからおはしの使い方を厳しく指導されたようなので、思うところがあったのでしょう。大切なことは本人も周囲も楽しく食事をすることで、食器の使い方はあくまでもそのための手段であることを忘れないようにしたいですね。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年09月24日学校を休ませていい?悩む保護者へ精神科医の回答が届く!「学校休んだほうがいいよチェックリスト」【LINEにて無料利用可】Upload By 発達ナビニュースお子さんから「学校休みたい」「学校行きたくない」と言われたとき、休ませていいのか、どう対応すべきか多くの方が迷われるのではないでしょうか。そんな保護者、教員の方々などに向けたサービス「学校休んだほうがいいよチェックリスト」が2023年8月23日にリリースされました。こちらは不登校専門紙・不登校新聞、個別指導塾のキズキ共育塾、オンラインフリースクールのBranchという不登校のお子さんやご家族を支援している3社が開発し、国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センターの松本 俊彦先生が監修されたチェックリストで、LINEにて無料で利用できます。不登校による深刻な問題として、学校を休むべきときに保護者が子どもを無理に登校をさせ続ける「過剰適応」というものがあります。これによって子どもは追い詰められ、うつ病や自殺といったリスクが高まってしまいます。しかしこの「学校休んだほうがいいよチェックリスト」を使い、休むべき基準を知ることで過剰適応を防ぐことが可能です。「学校休んだほうがいいよチェックリスト」は、不登校の予兆となる20個の質問に「はい」「いいえ」で答えることで、お子さんの状況に応じて、監修の先生からの回答が届きます。チェックリストを利用することで、休んでもいい基準を事実ベースで客観的に判断することができます。Upload By 発達ナビニュース子どもは適切に休むことができれば元気を取り戻すことができます。不登校を恐れ過ぎず、適切に子どもを休ませる判断の一助として、このサービスを利用してみませんか?※「LINE」はLINE株式会社の商標または登録商標です。※クリックすると、発達ナビのサイトから「学校休んだほうがいいよチェックリスト」のページに遷移します。※このチェックリストは3社が非営利で運営しているため、開発と運営のためクラウンドファンディングを実施しています。ご興味のある方は以下寄付ページをご覧ください。※クリックすると、発達ナビのサイトから「READYFOR 学校休んだほうがいいよチェックリスト」のページに遷移します。3,847の事業者が導入!障害のある人に向けたデジタル障害者手帳「ミライロID」Upload By 発達ナビニュース2019年に登場した障害のある人に向けたデジタル障害者手帳「ミライロID」を導入する事業者が、2023年8月31日時点で3,847に達しました。250以上の自治体での手続きや各種交通機関での利用のほか、レジャー施設、ショッピングやグルメなどさまざまな場所でご利用いただけます。「ミライロID」は障害者手帳を登録できる無料アプリ。障害者手帳を持ち歩くことなく、またカバンから出し入れする手間もなく、スマートフォンで素早く提示することができます。音声読み上げにも対応しています。「ミライロID」に登録できる障害者手帳は、「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」の3つ。障害種別によって、一人ひとりに合わせた情報も受け取ることができます。また、保護者がお子さまの障害者手帳を登録することも可能です(ただし、一つの障害者手帳を複数の端末で登録することはできません)。そのほか、レジャー施設、ショッピングやグルメなどでお得に使える電子クーポンを利用することができたり、障害者割引価格のチケットをオンラインで購入することも可能。車いすなどの福祉機器の仕様や必要なサポートの内容を登録すれば、窓口での伝達をスムーズに行えます。また、施設のバリアフリー情報も確認できるので、外出時の負担を減らしてくれます。Upload By 発達ナビニュース「ミライロID」の利用方法は3ステップ1. 「ミライロID」のアプリをスマホにダウンロードする2. お持ちの障害者手帳を撮影し登録します(顔写真の掲載された障害者手帳のみ登録可能)3. 導入施設でミライロIDの提示や、クーポン・チケットの利用ができます。※アプリは無料で使用できますが、ご利用の際に通信量に応じたパケット通信料金が発生します。使える場所の一覧や詳細のご利用条件は、以下より確認できます。WEBページ:アプリ:画面下部の「使える場所」をタップ暑さも和らいで外出には絶好の季節の秋、「ミライロID」を利用してお出かけしてみてはいかがですか?※クリックすると、発達ナビのサイトから「ミライロID」のページに遷移します。暗闇の中、五感を使って楽しむ「秋を感じる 見えない東北の旅」、食のマインドフルネスを体感「『一粒』大地の恵みを感じ一粒米(イチリュウベイ)のいのちを頂く」開催/ダイアログ・イン・ザ・ダーク2023年秋のプログラム「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」は、純度100%の真っ暗闇の中で見ること以外の感覚を使い、一緒に参加する仲間たちと共に、さまざまなシーンを体験するエンターテイメント。体験を案内するのは、普段から目をつかわないで生活をしている、視覚障害があるアテンドスタッフです。1988年、ドイツの哲学博士アンドレアス・ハイネッケの発案によって生まれ、これまで世界で900万人以上が体験しています。「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の「暗闇」はいつも同じではありません。季節など、テーマに合わせて、さまざまな体験を暗闇の中ですることができます。2023年の秋には2つのプログラムが開催中です。Upload By 発達ナビニュース紅葉する木の葉、季節の移ろいを知らせる虫たちの鳴き声、優しい川のせせらぎ……9月から始まったのは、暗闇の中にある東北の豊かな秋を感じるプログラムです。8人1グループになり、視覚障害者のアテンドと一緒に五感を使って東北への旅情を味わってください。〈詳細〉「秋を感じる 見えない東北の旅」開催期間:2023年9月7日(木)から11月23日(木・祝)体験時間:90分会場:ダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」東京都港区海岸1丁目10番45号アトレ竹芝シアター棟1Fチケット:大人:3,850円学生:2,750円小学生:1,650円(税込)※クリックすると、発達ナビのサイトから「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」のページに遷移します。Upload By 発達ナビニュース昨年好評を博したプログラム「『一粒』大地の恵みを感じ一粒米(イチリュウベイ)のいのちを頂く」が、神宮外苑前「内なる美、ととのう暗闇。」で再登場します。こちらは、「食のマインドフルネス」を体験できるプログラム。私たちが当たり前すぎて普段忘れがちな「いただきます」「ごちそうさま」の本来の意味を感じることができます。暗闇の中で、米一粒と自分の関係を改めて捉えなおしてみませんか?〈詳細〉「『一粒』大地の恵みを感じ一粒米(イチリュウベイ)のいのちを頂く」開催期間:2023年9月16日(土)~2024年1月8日(月・祝)体験時間:90分会場:三井ガーデンホテル 神宮外苑の杜プレミア 2階東京都新宿区霞ヶ丘町11番3号チケット:大人:5,500円(税込)※18歳未満はご体験いただけません。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年09月23日ほかの子どもとの差を感じてしまう展示物。不器用なわが子たちわが家には自閉スペクトラム症とADHDのある18歳の息子と、自閉スペクトラム症と場面緘黙、斜視がある15歳の娘がいます。二人とも1歳半健診で要観察となりました。診断らしい診断は小学校に入ってから受けましたが、下の子は幼稚園ではなく療育園に通っていました。そんな二人はそろって不器用さがありますが、それぞれ不器用な箇所は異なります。息子は粗大運動は得意なので走るのも速いのですが、手先が不器用。そして、体育ではあまり困ることはないものの、よく転びます。一方娘は手先は器用な面もあるのですが、転びまくり、ケガしまくりです。成長するにつれて多少は改善されてきていますが、それぞれの不器用さは今も継続中です。小学校の頃は授業参観の展示物を見るのをとてもつらく感じていました。絵、習字、作文の文字などが下手で、ほかの子どもたちの展示物と比べると全く違うのです。一人だけ幼稚園から成長してない子どもがいる……という印象でした。Upload By ユーザー体験談大きくなるにつれ読める文字が書けるようになったので、現在は書字に問題は感じていないのですが、当時の私はそんな未来のことまで考えられず、わが子たちと他人との差ばかり目について落ち込んでいたのです。今なら、子どもたちはちゃんと成長するよ、そんなに苦しまなくてもいいよと伝えてあげたいです。そのスプーン何もすくってないよ⁉空のスプーンを口に運ぶ息子にびっくり!息子の忘れられないエピソードは“スプーン事件”です。指先が不器用だった息子は、長くスプーンを使っていました。ですが、スプーンもなかなかうまく使えないので、食べ物をすくえないことが多々ありました。ですが、すくったつもりなのか、何ものっていないスプーンをそのままパクっと口に持っていくのです。その光景を見たときは「そのスプーン何ものってないよ!?」とびっくりしてしまいました。Upload By ユーザー体験談これくらい不器用だったので、箸が使えるようになるか心配だったのですが、これには救世主が登場しました。幼稚園の先生です。先生が丁寧に2年間、毎日毎日、とにかくゆっくり、叱らず焦らず指導してくれました。先生が見つけてくれた使いやすい箸は、ニスなどで塗られていない四角の握りやすいもの。手のサイズに合わせて長さにもこだわってくれました。これを使い「特別なお箸だよ」「きっとうまくいくね」とポジティブな雰囲気で誘ってくれ……なんと小学校入学前にお箸を使えるようになったのです!息子の不器用さを思うと、箸が使えるなんて奇跡……と思わざるをえません。幼稚園の先生には、今も感謝してもしきれないです。Upload By ユーザー体験談また、運動神経の良さに助けられている面はありつつも、いろいろとバランスが悪い息子。ただ道を歩いているときも、よく溝に落ちてしまいます。そして運動会では転ぶ転ぶ……。徒競走などでは誰かに近づくと距離感が掴めないのか転びがちです。そこから立ち上がって追い上げると、今度は自分の足につまづき転がりながらもでんぐり返しで起き上がり再度追い上げ……。だいたいいつも2位か3位争いをしていました。転ばなかったら1位になれたと思うのですが、惜しいですよね。息子も悔しそうにしていました。遠足で20回以上……頻繁に転ぶ娘。同じ場所ばかりケガをして娘は指先は息子に比べれば器用なのですが、驚くほど頻繁に転びます。遠足ではだいたい20回以上転んでいます。膝のキズが絶えません。いつも膝の同じ場所をケガした結果、その場所からクマの毛のように太い毛が生えてくるほど……!「膝を守るんだ」という意志なのでしょうか!?先生もびっくりしていました。Upload By ユーザー体験談また、転びすぎてキズがひどくえぐれてしまうと、赤く腫れあがってしまうこともあります。そういうときは、治療は半年コース。塗り薬を出してもらい半年欠かさず塗り続けます。なぜここまで転ぶのか……不思議に思っていたのですが、中学になって斜視が発覚しました。もしかしたらこれも娘の転倒に影響があったのかもしれません。二人の不器用さを克服させたい!母がチャレンジしたこと小さな頃から二人とも不器用さを指摘されていたため、私もいろいろなことを試しました。体操教室やスイミングにも行きましたが、苦手だと最初からわかっていることはやりたくありませんよね。コーチには不器用であることなど状況を伝えて見てもらっていましたが、プールでは静かにおぼれたり、何もしていないのにプールサイドから落ちたりとなかなかうまくいきませんでした。療育でも運動をしてくれるところがありますが、当時はなかなか空きがなかったため、私はよく子どもたちをアスレチックに連れて行きました。ハイハイ運動をしたり、丸太渡りやトランポリンでバランス感覚を鍛えたり……。また、100均のものを使って指先訓練用のアイテムを作り、箸で掴むゲームにも取り組みました。これらが具体的にこういう効果を上げたということは言えないのですが、遊びに取り入れて取り組めたので楽しい思い出にもなり良かったと思います。むしろ、もっとたくさんやっていればと思っています。不器用さのある2人だけど……これからも笑って元気に過ごしてほしい不器用な二人ですが、大きくなるにつれてやれることも増えています。小さい頃、私が小学校の掲示物の前で感じた切なさは、私の中ではもう吹き飛んでいます。不器用さもそれぞれですが、性格も正反対な兄妹。母としては、二人とも不器用さを苦にせず、失敗してもくじけず、笑って元気に成長していってほしいです。イラスト/星河ばよエピソード参考/梛丹(監修:鈴木先生より)母子手帳には1歳半や3歳時健診の左側に親がチェックする項目が列挙されています。最後に「子育てに困難を感じましたか」という項目があり、私はそこを一番重要視しています。普通なら「いいえ」に〇がついているのですが、私の外来に来るお子さんについては「どちらともいえない」や「はい」に〇のついているケースが多々見受けられます。それでも健診担当の保健師さんからは何もコメントのもないまま通過しています。できるだけ早期に介入し、療育を開始するのが望ましいのですが……。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年09月21日遊具で遊ぶことが苦手だったコウUpload By 丸山さとこ神経発達症(発達障害)があるコウは、体を動かすことが苦手なようです。中学生になった現在は「運動が苦手で少し不器用だな」と感じるくらいで普段は大きく気になりませんが、保育園の頃は遊具で遊べないレベルの不器用さが目立っていました。そんな動きの不器用さも相まってか、足元が狭いところや不安定なところでは慎重に歩きたがっていたコウ。高いところは特に苦手で、5歳の頃に集合住宅の1階の部屋から2階建ての家に引っ越した時は、階段を数段登ったところで「落ちちゃうよ~!」と動けなくなっていたほどでした。それくらい『動きの不器用さ・高いところへの恐怖心』があるコウにとって、公園は石や落ち葉やどんぐりを並べるところでした。公園や保育園などの子ども用の遊具は大体高いものです。おおむねどこの公園にもある3大遊具の滑り台、ブランコ、ジャングルジムで遊べないとなると、体を動かすことを促したい親としても「散歩しよう」としか言えない状態でした。Upload By 丸山さとこ散歩中に植物や水を眺めたり、樹木にかけられた樹種の名札や解説を読んだりして過ごしつつ、「この子はこういう感じなのか~。これはそういう個性なの?」と漠然と思っていました。お母さんの安全保証つき?地道な滑り台の練習開始!そんな風に散歩しては石やどんぐりを並べるだけでも、「まぁコウがそれを好きならそれでいいか……」と流していた私でしたが、療育園に通うようになってから、少し考えが変わりました。というのも、コウが通っていた療育園での粗大運動の時間(室内遊具での全身を使った遊び)は結構スパルタで、泣いても叫んでも徹底して取り組ませるスタイルだったからです。Upload By 丸山さとこその特訓風景を見ている内に「このままでは遊具を見ただけで泣き叫ぶようになり、公園の前を歩けなくなるのではないか……?」と心配になった私は、近所の公園でコウと滑り台の練習を始めました。滑り台のてっぺんで座ったコウの体を私の両手で挟むように支えながら、コウに安全性を説明しました。「絶対にゆっくりしか滑らないので安全です」「怖くないようにします」「怖すぎたら途中でも抱き上げて中断できます」Upload By 丸山さとこそうして実際に途中で抱き上げたり滑り台の途中で止めたりして『コウが嫌だと思えばいつでも安全に中断できること』を証明すると、コウは「本当かな……?」という表情をしつつも練習につき合ってくれました。コウが泣かない程度の地道な練習を続けたところ、意外にも数日で滑れるようになりました。「やったー」と言い、跳ねてうれしそうにニコニコするコウに「もう1回滑る?」と聞くと「滑らない」とのお返事で、その素っ気なさにコウらしさを感じつつ家に帰りました。Upload By 丸山さとこ次の日もすんなりと滑れたため滑り台は克服できたのかと思いきや、ほかの滑り台は完全拒否でした。私から見れば『大体同じ高さで同じつくりの滑り台』も、コウにとっては『全く別の滑り台』だったようです。「ほかの滑り台はどんな感じかな?調査しに行こう」とコウに言いながら(これまた無理のない範囲で)いくつかの公園を回って複数の滑り台にチャレンジしていき、1ヶ月経った頃にはベーシックな形の滑り台であれば大体滑れるようになりました。こうして、ブランコ、はしご、ロープの遊具などを少しずつ克服していったコウは、休日に市内の大型公園へ行くと喜んで遊ぶようになりました。喜んで遊ぶといっても、年齢相応の動きではありません。膝程度の高さであっても必ず何かにつかまりながらソロリソロリと降り、階段は一段ずつ足を揃えて登るなど、『動きの不器用さ』はその後も目立ちました。動きの不器用さは今でもあるけれどUpload By 丸山さとこ中学生になった現在のコウも、歩く姿を遠目に見て「多分コウだな」と分かるような歩き方をしています。それでも、あの時に遊具で遊べるようになったことは、親子共に「練習してできるようになることもあるんだな」という微かな自信になったと思います。それと同時に、「練習しても(少なくともその時点では)どうにもならないこともあるんだな」という『現状の受け入れ』の土台も整ったような気がします。『〇〇ができるのなら□□もできるだろう。〇〇ができないなら□□もできないだろう』という見通しが立たない育ち方に親子で翻弄されながら、そのときどきにできることを試していきたいなと思います。Upload By 丸山さとこ執筆/丸山さとこ(監修:鈴木先生より)球技などの運動が苦手で不器用なお子さんは、発達性協調運動症と診断されることが多いです。発達性調教運動障害があるお子さんへの支援は、病院のリハビリなどでは感覚統合訓練をOTと呼ばれる作業療法士さんが実施しています。また、私のクリニックでは音楽療法の中に感覚統合も含めてトレーニングと評価を行っています。病院へ行けない場合は、公園の遊具やアスレチックなどでトレーニングすることもできますので、親子で楽しみながら取り入れてみることもお薦めですよ。もし、お子さんの様子が気になる親御さんがいらっしゃいましたら、今後きちんと向き合うためにも、ASD、ADHD、発達性協調運動症など具体的な診断、医師の診察を受けられることも視野に入れられてはいかがでしょうか。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年09月19日学習障害当事者37の工夫を収録ーー『LDの子が見つけたこんな勉強法「学び方」はひとつじゃない!』本書は、学ぶうえで困難さを感じたことのあるLDがある当事者とその家族の協力を得て、学校生活で困った具体的な場面と、その困りごとに対しての工夫をまとめた一冊です。1章では「私たちが勉強するときにしていた工夫」として、37の工夫を紹介。「読み」「書き」「暗記」などの事例と共に、診断名と困ったこと、それぞれの具体的な工夫がイラストも交えて分かりやすくまとめられています。また、工夫に対して、応用のポイントやヒントとなるコメントもついています。2章では、学校生活や合理的配慮について、事例からさらにふみこんだ当事者へのインタビューが掲載されています。社会人となって働いている大人から、現役の学生、保護者、年代もさまざまな当事者の工夫が数多く紹介されています。ほかにも障害者支援に携わる支援者からのメッセージに加えて、編著者の野口晃菜さん、田中裕一さんの対談も収録。子ども自身が困った時に、誰に相談するかをイメージする手助けにもなるでしょう。「授業中に板書が終わらない」「漢字を覚えられない」「勉強がおもしろくない」。 学校生活や授業で、「なんだかしんどい」「どうしたらいいか分からない」と疎外感を感じている子どもや、サポート法が分からず迷っている保護者に寄り添う一冊です。『起立性調節障害お悩み解消BOOK 「朝起きられない」子に親ができること!』起立性調節障害がある子どもは、中学生の10%を占めているといわれ、思春期に発症しやすい身体の病気です。症状は、頭痛・めまい・怠さ・朝の起きにくさなどがあり、症状が強くなると、学校に行きたくても身体が思い通りにならず、遅刻や欠勤を余儀なくされてしまうことも多いといいます。著者の吉田誠司先生は、2014年に起立性調節障害に関する研究で医学博士号を取得し、現在は、大阪医科大学小児科で心身症外来を担当する子どものこころの専門医です。本書は吉田先生がこれまでの診療のなかで得た当事者や保護者の経験がまとめられており、また、それぞれの場面で保護者が抱える悩みや、その悩みに対する対処法なども紹介されています。第1章では、起立性調節障害の仕組みを自立神経機能から解説。第2章は、食事・運動・睡眠など非薬物療法のポイントなど治療について、第3章では子どもが家で1日過ごすときに親子で意識したいこと、第4章では学校との関わり方や、学校選びや受験のポイントまで組み込まれています。起立性調節障害の症状のために学校に通えない、また、やりたいことができずつらくく悲しい思いをしている子どもや保護者もいることでしょう。本書は、起立性調節障害という疾患を知り、症状の改善と、学業や将来のこと、家庭での過ごし方、そして当事者である子どもとの接し方など、保護者が抱えるさまざまな悩みの解消の一助となるのではないでしょうか。『子どもたちはインターネットやゲームの世界で何をしているんだろう?児童精神科医からみた子どもたちの「居場所」』本書は、ゲームやアニメ、マンガの愛好家であり、子どもとゲームやインターネットとの関わりについて各方面での発信にも力を注ぐ児童精神科医の関正樹先生が、子どもたちの「居場所」としてのゲーム・インターネットの世界について、最新鋭の調査データや研究、そして臨床事例を交えて解説した一冊です。本書では、インターネットやゲームの世界に子どもたちが傾倒するには、その子どもたちなりの背景があると記されており、子どもたちがゲームやインターネットに没頭していく過程が丁寧に分析されています。そして、大人がその世界を知るために気をつけておきたいポイントを取り上げると共に、事例などを通じて子どもたちにとっての「居場所」としての意義を提案し検討するという形が取られています。また、本文中には、「ストリートファイター」や「スプラトゥーン」など実際のゲームも事例として登場し、ゲーム愛あふれる関先生ならではの視点も見どころの一つです。ゲームやインターネットの世界について網羅的に記述されている本書では、発達障害・不登校の子どもたちとインターネットやゲームの世界についても取り上げられています。「居場所」を求める子どもたちのなかには、リアルの世界で大きく傷ついたり溺れそうになっている子どももいるのかもしれません。SNSで胸のうちをつぶやかざる得ないときにも、それを責めるのではなく、共感的にその背景に目を向けることの重要性も記されています。本書は、目の前にいる子どもと接していく参考になると共に、子ども・青年たちに関わる支援者や臨床家や教育現場の教師など、「子どもの居場所のあり方」について関心のある多くの方にぜひ手に取ってもらいたい一冊です。子どもも家族も楽しい食事時間を過ごしてほしいーー『ダウン症のある子どもの離乳食から食事へー食べる機能を育てるためにー』ダウン症(21トリソミー)とは700人から1000人に1人の発生頻度と言われる21番染色体が1本多く存在することで起こる疾患です。ダウン症がある子どもは低緊張のため、哺乳力が弱いだけではなく、口唇を閉鎖する力も弱く、舌も突出しやすく、また咀嚼の発達自体もゆっくりで丸呑みしやすいといったことも多い傾向があるため、離乳食や食事の進め方にも注意が必要だとされています。本書は、日本ダウン症療育研究会会長であり大阪医科薬科大学小児科名誉教授の玉井浩先生が監修した、「ダウン症のある子どもの離乳食や食事はどうやって進めていけばよいか?」ダウン症のある子どもの家族の悩みに答える実践的な解説書です。食べさせ方や座り方、食事道具の選び方や使い方をはじめ、家族や保育者からよくある相談や困りごとをまとめた41のQ&Aなどをイラストや写真を交えて分かりやすく解説。さらにQ&Aでは成人になってからの食に関する悩みについても記されています。また、巻末付録には成長曲線(0〜36ヶ月・0〜18歳)も掲載。「子どもも家族も楽しい食事時間を過ごしてほしい」という想いを込めて書かれた本書。ダウン症がある子どもやその家族を支える医師や看護師、栄養士などの医療従事者、保育士をはじめとする保育関係者に、手元においてもらいたい一冊です。『「共感」からはじめる 発達障害のある子どもの支援教室における行動―情緒の問題を解決する6つのステップ』発達障害のある子どもの暴言や暴力、パニック、さらにゲーム依存といった行動上の問題の背景には、障害からくる特性だけではなく、養育環境や対人経験などのさまざまな要因が絡んだ子どもの情緒面の苦しみがあるのではないでしょうか。本書は、小中学校の通常学級や特別支援学級で発達障害のある子どもと関わる教員や支援者が、子どもが起こす行動上の問題の先にあるその背景を理解し、子どもの情緒に共感して適切に関わり、効率的な支援が行えるようになるための6つのステップを解説しています。著者は、宮城教育大学大学院教育学研究科教授の植木田潤先生。本書のなかでは、植木田先生が25年以上にわたり継続してきた教育相談やカウンセリングのなかで培ってきた事例も組み込み、事例理解を通じて「共感からはじめる支援」を体感できる内容となっています。また、障害特性や目に見える行動だけではなく、養育環境や対人経験といった「育ちの軌跡」や、それらによって生じた価値観などにも注目し、子どもだけではなくその家庭との関わり方のポイントや具体的な支援方法についても詳しく解説されています。発達障害がある子どもたちが示す行動上の問題は、実は、子どもたちの発する救済信号かもしれません。本書は、その行動や情緒の問題の背景にある子どもたちの想いや願いを理解し、支援しようと日々奮起している教員や支援者に読んでほしい一冊です。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年09月17日2人兄弟を育てるゆーとぴあさん。2歳児健診で長男は言葉が遅いと発達相談を受け、親子教室に通います。次男は言葉の遅さに加えて多動傾向があるにも関わらず、健診で問題なしと言われたことに疑問を抱き、後日保育センターに相談して長男と同じ親子教室に通うことにしました。それでも次男が心配で、同時にほかの施設の教室にも参加させ幼稚園に備えました。入園式は制服を身につけるのを嫌がり、抱っこしていないと走り出してしまう状態で通園に不安を覚えます。予想に反して次男はすぐに幼稚園に慣れたものの、先生から次男の問題行動の報告を受け、発達医療センターへ行くように言われます。さらになんと長男まで発達医療で診てもらうように言われ、就学のため特別支援級の見学に参加するように予定を組まれてボーゼンとするのでした。帰宅して夫に長男について、幼稚園での面談の報告をすると、見学して息子に合っていれば支援級でも構わないのではと冷静な返答。数日後、義理の叔母が家に押しかけ長男が支援級に入ることになったのかとまくし立てます。長男の発達障害は母親のゆーとぴあさんが原因なのではと、不躾で勝手な決めつけでものを言う義理の家族に怒りと悔しさを募らせるのでした。 お父さんってもしかして? ただ質問しただけなのにーー 義理の叔母の言葉が引っかかり、図書館で大人の発達障害について調べるゆーとぴあさん。専門書に発達障害は遺伝するという記述を見つけます。自身が発達障害であるならば、両親のどちらかも発達障害の可能性があるのかもしれません。 それを確かめるべく、母親に聞こうと実家を訪ねて質問します。すると母は、ゆーとぴあさんは少し変わっているので発達障害かもしれないと思っていたと笑って答えますが、加えて遺伝なのかと聞くと途端に険しい表情に。 「亡くなったお父さんって発達障害だったのかな?」「うちのお父さんはそんなんじゃない!」 すぐに発達障害のせいにする最近の人の風潮に怒りをあらわにします。相談のつもりで聞いたのに、逆ギレのような受け答えをされてゆーとぴあさんは呆気に取られるのでした。 ◇◇◇ 息子の未来を考えるために相談したかっただけなのに、「発達障害」に対する世代からくる考え方の違いからか、議論の入り口にも立てない状態でした。ゆーとぴあさんの発達障害の可能性はすぐに受け入れましたが、父の可能性は受けつけず逆ギレした母。もちろん不確定の要素で、責めているわけでもないのに、子どもとしてこの状況はあまりに悲しいですよね。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 ※ADHDについてADHDの症状は最終的な神経経路で起こるとされ、原因は様々とされています。乳児期の外傷、分娩時の問題、妊娠中の薬物や飲酒、遺伝的な可能性等が記載されていますが、原因がわからないことがほとんどです。ADHD以外に自閉症スペクトラムの症状がある場合は、精神科や小児神経科等で診察を受けてみるのもよいでしょう。 ゆーとぴあさんの連載は、以下のサイトからもご確認いただけます。ぜひチェックしてみてくださいね。 監修者:医師 神奈川県立こども医療センター 産婦人科 松井 潔 先生 著者:マンガ家・イラストレーター ゆーとぴあ
2023年09月15日