育児をするうえで避けては通れない寝かしつけについて、これまで3回にわたり、子どもの睡眠コンサルタント・愛波文さんにお話をうかがってきました。最終回となる今回は、ママの悩みにお答え! お子さんの保育園・幼稚園の入園、ママの仕事復帰などで生活が変わると、子どもがなかなか寝てくれなくなったというお悩みをよく聞きますね。そんな時に応用できる、スムーズな寝かしつけのヒントやコツを教えてもらいました。お話をうかがったのは…愛波 文(あいば あや)さん子どもの睡眠コンサルタント。APSCアジア/インド代表。IMPI日本代表。一般社団法人日本妊婦と乳幼児睡眠コンサルタント協会代表理事。慶應義塾大学卒業。2012年に長男出産。夜泣きや子育てに悩んだことから乳幼児の睡眠科学の勉強をはじめ、米国IMPI公認資格(国際認定資格)を日本人で初めて取得。2015年に次男を出産。現在、2人の男の子の子育てをしながら、子どもの睡眠に悩む保育者のコンサルティングや個別相談、日本人向けに子どもの睡眠教育プログラムを提供。IMPIと提携し、オンラインで妊婦と子どもの睡眠コンサルタント資格取得講座の講師も務めている。著書に『ママと赤ちゃんのぐっすり本 「夜泣き・寝かしつけ・早朝起き」解決ガイド』(講談社)がある。 ・ホームページ(Sleeping Smart) ・オフィシャルブログ ・Instagram ・Twitter ■子どもが不眠? 生活が変化しても「トータル睡眠時間」は確保――例えば、子どもが保育園・幼稚園に入園し、ママも仕事復帰。そういった時の子どもの寝かしつけには、どんなアドバイスがありますか?愛波さん:ママが仕事に復帰すると、これまでのお子さん中心の生活から、仕事と育児の二本立ての生活に激変しますよね。ママはもちろん、お子さんの心境にも変化が出て当然。夜泣きなど、睡眠トラブルが出てもおかしくありません。もし現在、トラブルに悩まされているようでしたら、まずは、睡眠時間をしっかり確保することから始めてみましょう。――大抵の保育園では昼食後、お昼寝の時間がたっぷり設けられていますよね。愛波さん:そうですね。ですから、担任の先生にお子さんの普段のお昼寝状況を確認して、十分睡眠がとれていないようでしたら、帰宅後の就寝時間を早めるようにしましょう。復帰前と復帰後、昼寝の時間を含めた1日のトータル睡眠時間が同じになるのが理想です。週末もしっかりお昼寝の時間を設けましょうね。■お迎えが遅くなった時の奥の手「とりあえず、おにぎり」――お迎えが遅くなる場合はどうでしょう? 夕食の時間もずれ込み、就寝時間もその分、遅れてしまいそうですが…。愛波さん:子どもは疲れすぎると癇癪(かんしゃく)を起こしたり、寝ぐずりしたり、夜泣きにつながるケースがあります。例えば、お迎え時におにぎりやパンなどを用意して、帰宅途中にベビーカーなどで食べさせてしまうのもおすすめです。これなら子どもも空腹になりすぎず、機嫌も損ねません。帰宅後の夕食は具だくさんみそ汁などの簡単なものでフォローすれば、就寝時間を早めることができ、寝かしつけもスムーズにいくはずです。子どものリズムが整うまでと割り切って、最初のうちは適宜対応してください。お子さんも、徐々に保育園のリズムに慣れてくるはずです!――確かに、子どもが保育園に慣れるまでの数カ月と思えば、ママも乗り切れそうですね。愛波さん:そして特に大切なことは、ママ自身があせったり無理しすぎないこと。仕事復帰直後、ママも緊張するのは当然ですが、子どもはそんな気持ちをすぐ察知します。ママの心が不安定だと、子どももぐずることが多くなり、睡眠トラブルにつながることも。仕方のないことですが、できることならママも子どももご機嫌でいたいですよね。そのためにも、もしママ自身がイライラしていると感じたら、まずは深呼吸をして。心を落ち着かせてから、子どもに接しましょう。日中一緒にいられなかった分、帰宅後はギューっとハグをしてあげたり、「大好きだよ」と声をかけてあげて愛情表現をしてあげてください。私もワンオペ育児時代に痛い思いをしているので、ママたちの気持ちはよくわかります。ぜひとも無理をしないで。そしてママ自身もたっぷり睡眠をとって、心と体をしっかり休養させてあげてください! ■お昼寝や夕方のちょい寝…夜なかなか寝てくれない時はどうすれば?――「保育園で長時間お昼寝をしてくるため、逆に夜寝てくれなくて困る」という声をママたちからよく聞きます。愛波さん:アメリカの保育園では、年中〜年長さんクラスになるとお昼寝はなくなるのですが、日本の保育園はお兄さん、お姉さんでもお昼寝はあるんですね。私もよく相談を受けますが、これに関しては私も頭を抱えてしまいます…。対策としては、就寝までにたくさん体を動かすこと。保育園から寄り道をしながら帰ったり、帰宅後、家族でお相撲ごっこをしたり、適度な運動をすると、自然と眠気も生じてくるでしょう。――逆に、2〜3歳くらいのお子さんで、保育園ではまったく寝ず、帰宅したとたん、夕ごはんも食べずに寝てしまう子もいるようです。愛波さん:このケースに関しては、保育園のお迎えの帰路で寝かしつけをして、30〜40分くらい仮眠させてあげましょう。中途半端な時間に寝てしまうと、夜寝てくれないのでは? と心配になるママもいますが、以前お話したとおり、疲れすぎが寝ぐずりや夜泣きの原因になってきます。短時間の適度な睡眠は脳をリフレッシュするので、かえって夜の寝かしつけがスムーズになりますよ。ただし、3歳以降の場合、保育園の帰りに仮眠してしまうと、夜なかなか寝てくれなくなってしまうことがあります。その場合は、先でご紹介した“おにぎり作戦”を応用しましょう。保育園の帰路でおにぎりや軽食を与えて気をまぎらわし、帰宅後に具だくさんみそ汁でフォローし、早く就寝させるといいでしょう。■バナナや牛乳がおすすめ「睡眠と食べ物の関係」――ちなみに、子どもの睡眠にあまり良くない食べ物ってあるのでしょうか?愛波さん:アイスクリームやチョコレートなど、甘いものは消化に時間がかかるのでおすすめしません。揚げ物などの脂っこいおかずも、胃に負担がかかるのでなるべくなら避けたいところですね。逆に、バナナや牛乳などは良い睡眠をうながすので、おやつなどに最適。また、しらす干しや大豆製品、海藻類など、鉄分やマグネシウムを豊富に含む食材も、良い眠りにつながる食材といわれています(※)。こちらも意識してとりたいですね。――まだまだうかがいたいことはたくさんありますが、最後に一言。ママたちにメッセージをお願いします。愛波さん:日本のママたちは、本当に毎日頑張っていると思います。特に小さなお子さんをお持ちのママにとって、寝かしつけはひと苦労だと思いますが、ほかのママたちも同じ悩みを抱えています。あせらず、私の提案する改善法を実践してみてください。そして肩の力を抜いて、毎日をハッピーに過ごしてくださいね。愛波さんのお話はいかがでしたか? ママたちにとって、夜の寝かしつけは毎日が真剣勝負ですよね。子どもがぐっすり眠らないのには、ちゃんと原因や理由があります。わが子の寝かしつけについて、これまでひとりで頭を抱えていたママたちも、愛波さんのアドバイスにホッと心が軽くなったのではないでしょうか。ぜひ日々の寝かしつけに取り入れてみてください!参考図書: 『ママと赤ちゃんのぐっすり本「夜泣き・寝かしつけ・早朝起き」解決ガイド』 (講談社)愛波 文著/西野精治監修 1,200円(税別) これまで経験値でしか語られてこなかった赤ちゃんの睡眠対策。日本人で初めて子どもの睡眠コンサルタント国際認定資格を取得した著者と睡眠研究のエキスパート西野精治先生が、科学的エビデンスに基づいて日本人の生活スタイルに合わせた解決方法を紹介。夜泣き、寝ぐずり、早朝起きなど、ママやパパを悩ませる赤ちゃんたちの睡眠トラブルを解決します。※参考文献:1.Dawn M Richard,1 Michael A Dawes,1 Charles W Mathias,1 Ashley Acheson,2 Nathalie Hill-Kapturczak,1 and Donald M Dougherty1Int J Tryptophan Res,L-Tryptophan: Basic Metabolic Functions, Behavioral Research and Therapeutic Indications 2009; 2: 45–60.2. Yawen Zeng,1,* Jiazhen Yang,1,2 Juan Du,1 Xiaoying Pu,1 Xiaomen Yang,1 Shuming Yang,1 and Tao Yang1Strategies of Functional Foods Promote Sleep in Human Being; Curr Signal Transduct Ther. 2014 Dec; 9(3): 148–155. 取材・文/長谷部美佐
2018年08月09日子育て中のママを悩ませる毎晩の寝かしつけ。夜中に何度も泣きぐずったり、早朝起きをしたり…。子どもの睡眠トラブルの多くには原因があることを、 前回 までのインタビューで睡眠コンサルタント・愛波文さんに教えていただきました。今回は、愛波さんが著書を出版するきっかけとなったニューヨークの子育て事情をお聞きします。日本とアメリカ、ママたちの意識やライフスタイルに違いはあるのでしょうか?お話をうかがったのは…愛波 文(あいば あや)さん子どもの睡眠コンサルタント。APSCアジア/インド代表。IMPI日本代表。一般社団法人日本妊婦と乳幼児睡眠コンサルタント協会代表理事。慶應義塾大学卒業。2012年に長男出産。夜泣きや子育てに悩んだことから乳幼児の睡眠科学の勉強をはじめ、米国IMPI公認資格(国際認定資格)を日本人で初めて取得。2015年に次男を出産。現在、2人の男の子の子育てをしながら、子どもの睡眠に悩む保育者のコンサルティングや個別相談、日本人向けに子どもの睡眠教育プログラムを提供。IMPIと提携し、オンラインで妊婦と子どもの睡眠コンサルタント資格取得講座の講師も務めている。著書に『ママと赤ちゃんのぐっすり本 「夜泣き・寝かしつけ・早朝起き」解決ガイド』(講談社)がある。 ・ホームページ(Sleeping Smart) ・オフィシャルブログ ・Instagram ・Twitter ■子どもの眠り「添い寝か、親と別々か…どっちがいいの?」――日本では添い寝をしているママが多いですが、アメリカではいかがでしょう? 幼い頃から子どもは自分の部屋で寝ているイメージがありますが。愛波さん:やはり夫婦と子どもは別々に寝るのが一般的ですね。親子が別々に寝るメリットは、夫婦間のプライベートスペースが保たれることです。親の気配で子どもを起こしてしまう心配もありません。デメリットとしては、授乳や泣いた時に、親がその都度子どものところに行かなくてはいけないことでしょうか。ただ、赤ちゃんのうちは別の寝床でも、同じ部屋で寝ることが多いです。アメリカの小児科学会でも1歳までは「親子同室、寝床は別」をすすめているのですが、これは乳幼児突然死症候群のリスクを考慮してのこと。同室なら、赤ちゃんに何か異変が起きてもすぐ対応できますからね。一方、添い寝の場合は、ママの隣で寝ているので安心して眠れる、子どもの要求にすぐ対応できる、授乳が簡単にできる、などのメリットがあります。ただ、窒息やベッドから落ちてしまうなどの危険性もありますから、安全面に注意を払う必要がありますし、添い寝や添い乳をしている場合、夜中に頻繁に起きてしまう確率が上がりますので、親が睡眠不足になるデメリットも否めません。――それぞれにメリット・デメリットがあるのですね。アメリカでは別室が支持されているのはどんな理由からでしょう? 愛波さん:前述のとおり、安全面のこともあると思いますが、何よりアメリカのママたちは、母親であると同時に、一人の女性としての意識がすごく高いんです。つまり、四六時中子どもの面倒を見るのではなく、育児と仕事、それにプライベートの時間を分けて考えているため、自然と親子別室が当たり前になるのだと思います。そのため、2週間くらいかけて子どもがひとりで寝られるように、ねんねトレーニングをする親が多いですね。ねんねトレーニング中に子どもが泣いてしまうこともありますが、睡眠の土台が整っていれば自信を持ち続けることができます。一貫性をもって続けることで、「大好きだよ、おやすみ」と言うだけで子どもは1人で朝までぐっすり寝てくれるようになるんですよ。そうやって、アメリカのママたちは、子どもを寝かしつけた後、プライベートの時間を楽しみます。ベビーシッターに子どもをみてもらい、夫婦で映画を観に行ったり、パパにお願いして自分一人でヨガに行ったり。自分の時間がきちんと毎日あり、心が満たされているから、育児疲れになることも少ないのでしょうね。■「子どもの眠りってなに?」マタニティ時期から予習――日本だと、家族や子どもを残して自分だけが楽しむなんて、なんだか負い目を感じてしまいそうですが、そんなネガティブな意識はないのですか?愛波さん:ありませんね(笑)。育児に関しては「ママがハッピーなら家族もハッピー」という考えなので、自分を犠牲にしてまで育児をするなんて発想はあまりないような気がします。できないものはできないときっぱり割り切り、その分、民間のサービスを利用するなどしてフォローをします。日本ではサービスにお金を払うことに対して抵抗を感じる方が多いようですが、アメリカでは普通のことです。私がサンフランシスコでワンオペ育児をしていた頃、地域のコミュニティセンターのママたちがみんな輝いて見えたと以前言いましたが、あれは間違っていなかったんですね。心の余裕が表情に出ていたんです。――自分の時間を確保してリフレッッシュするためにも、子どもの寝かしつけはとても重要なんですね。愛波さん:そうだと思います。だから、アメリカのママたちはみんな、寝かしつけの知識を出産前にある程度身につけておきますし、子どもの睡眠に関する本も、日本とは比べものにならないくらい出版されています。おかげさまで、私もママ友から紹介してもらった一冊を機に、子どもの睡眠トラブルを改善することができました! ■「ママがハッピーなら家族もハッピー」人やサービスに頼るのもアリ――ちなみに、アメリカのママたちも働いている方は多いのでしょうか?愛波さん:もちろん! 私の周りのママたちもバリバリ働いていますよ。みなさん向上心が高く、話しているとすごく刺激になります。育児と仕事、それにプライベートの時間の使い方がうまくて。生活にバランスが取れていて、私も見習うことが多いです。――まずはママの幸せを優先。すると寝かしつけもスムーズになり、結果として家族みんながハッピーになる。理想的な考え方ですね。愛波さん:本当にそう思います。日本のママたちも、まずは肩の力を抜いて、時には人の力も借りながら育児を楽しんでみてください。そうすれば寝かしつけも以前よりスムーズになり、結果としてママもラクになるはずです。日本とアメリカ、それぞれに育児のスタイルや考え方があると思いますが、共通して言えるのが、ママ(保育者)の幸せがとても大事。これだけは断言できます。以前、アメリカ映画を観た時に、子どもを寝かしつけてから夫婦でデートにでかけるワンシーンがありましたが、あれは間違っていなかったのですね。日本では子どもをベビーシッターに預けて夫婦で外出する光景はあまり見かけませんが、子どもができたとたん夫婦仲が悪くなった…なんて悲惨な話もあるくらいですから、アメリカの育児スタイルを参考にしてみるのも一案かもしれません。参考図書: 『ママと赤ちゃんのぐっすり本「夜泣き・寝かしつけ・早朝起き」解決ガイド』 (講談社)愛波 文著/西野精治監修 1,200円(税別) これまで経験値でしか語られてこなかった赤ちゃんの睡眠対策。日本人で初めて子どもの睡眠コンサルタント国際認定資格を取得した著者と睡眠研究のエキスパート西野精治先生が、科学的エビデンスに基づいて日本人の生活スタイルに合わせた解決方法を紹介。夜泣き、寝ぐずり、早朝起きなど、ママやパパを悩ませる赤ちゃんたちの睡眠トラブルを解決します。取材・文/長谷部美佐
2018年08月02日育児をしていると、どんなにかわいいわが子でも、思うようにいかずイライラしてしまうことがたくさん! 人によって悩みのタネは違いますが、多くのママが口をそろえて訴えるのが、子どもの寝かしつけ。日中、たくさん遊んだからよく寝てくれると思いきや…深夜に何度も起きて泣きぐずったりと、大人では理解できない行動をとるのが子どもです。どうして子どもはなかなか寝てくれないの? そのメカニズムと解決策を、子どもの睡眠コンサルタント・愛波文さんにうかがいました。お話をうかがったのは…愛波 文(あいば あや)さん子どもの睡眠コンサルタント。APSCアジア/インド代表。IMPI日本代表。一般社団法人日本妊婦と乳幼児睡眠コンサルタント協会代表理事。慶應義塾大学卒業。2012年に長男出産。夜泣きや子育てに悩んだことから乳幼児の睡眠科学の勉強をはじめ、米国IMPI公認資格(国際認定資格)を日本人で初めて取得。2015年に次男を出産。現在、2人の男の子の子育てをしながら、子どもの睡眠に悩む保育者のコンサルティングや個別相談、日本人向けに子どもの睡眠教育プログラムを提供。IMPIと提携し、オンラインで妊婦と子どもの睡眠コンサルタント資格取得講座の講師も務めている。著書に『ママと赤ちゃんのぐっすり本 「夜泣き・寝かしつけ・早朝起き」解決ガイド』(講談社)がある。 ・ホームページ(Sleeping Smart) ・オフィシャルブログ ・Instagram ・Twitter ■寝ぐずり、夜泣き…子どもはどうして寝るのが下手なの?――寝つくまでに時間がかかったり、早朝起きてしまったり、子どもの睡眠トラブルが絶えません。そもそもどうして、子どもは上手く眠れないのでしょう?愛波さん:大人は疲れたらその晩はぐっすり眠れますが、子どもはその逆で眠れなくなってしまうんです。というのも、疲れすぎると目覚めをうながすホルモン、コルチゾールが過剰に分泌されてしまうため、興奮してしまうんですね。こうなってしまうと大変で、なかなか寝つけなかったり、早朝起きしてしまうなどの結果を招くんです。――ということは、疲れすぎないようにすればいいのでしょうか?愛波さん:すこしニュアンスが違いますね。疲れすぎないようにするのではなく、疲れすぎる前に眠らせるのがコツです。ただ、小さなお子さんはまだ言葉がしゃべれませんので、疲れているかどうか判断するのは難しいですよね。そこで注意して見て欲しいのが、以下に挙げられる子どもの眠い時のしぐさです。・あくびをする・目をこする・目を大きく開ける・おもちゃに興味を示さなくなる・転ぶ・ぐずる・背中をそらせるほかにも、子どもによっていろいろなパターンがありますが、こんなしぐさをし出したら眠くなってきた証拠。理想としては、このようなしぐさをする前に寝かしつけることですが、そのサインを見逃さずに睡眠へ誘導できるといいでしょう。特に就寝前は興奮させすぎないでくださいね!――なるほど。疲れすぎる前に寝かせる。まずはこのキーワードを頭に入れて寝かしつけをすれば、ある程度、睡眠トラブルは改善できそうですね。愛波さん:ただ、寝ぐずりの原因はいろいろありますので、疲れすぎる前に寝かせれば大丈夫、とは言い切れません。これを踏まえたうえで、睡眠の質を上げる“睡眠の土台”を整える必要があります睡眠の土台には下記のとおり、3つの要素があります。【睡眠の土台】1) 寝室など睡眠にかかわる環境(睡眠環境)2) 子どもとのコミュニケーションやママなど保育者の心の安定(幸福度)3) 生活リズム(ねんねルーティン)睡眠の土台について、一つずつ解説していきましょう。 ■「子どもの眠り」土台つくり1:明るさ・温度・音楽愛波さん:まず、1)の「睡眠にかかわる環境」ですが、子どもが朝までぐっすり眠るためには、寝室の環境が重要になってきます。就寝時の照明はすべて消すのが基本。遮光カーテンをつけて、真っ暗な状態で朝まで眠らせるのが理想です。ただ、真っ暗だと夜中の授乳やおむつ替えが困難な場合は、足もとを照らす おやすみライト を利用してみましょう。音に関しては、無音の方が睡眠には良さそうですが、なかには不安を感じる子もいます。特に月齢の低い赤ちゃんにその傾向が強く、そのような場合は、安心して眠れる ぐっすりノイズ を流すのがコツ。テレビやラジオの砂嵐の音や波の音などが該当するのですが、換気扇の音や専用のCDなどを代用するのも手。流す時は、寝かしつけから朝起きるまで流しっぱなしにすると、たとえ夜中に起きたとしても、子どもは安心してまた眠りにつく確率が上がります。また、室温は一年を通して20〜22度を目安に、子どもの様子を見ながら適宜エアコンの温度を調節してください。私のところに相談に来られるママたちからも、「室温を下げて涼しくしたら夜泣きがなくなった」という報告をたくさんいただいています。――少し寒いぐらいのほうが子どもにはちょうどいいとは意外です! これもすぐ実践できそうですね。愛波さん:睡眠環境はほかにも整えるべきことはありますが、まずは身近な照明と音、室温の改善を実践してみるのがいいでしょう。■「子どもの眠り」土台つくり2:ママの幸せ愛波さん:続いて、2)の幸福度について話をすすめますね。幸福度とは、心がどれだけ満たされているか、その度合いのことです。 前回の記事 でも触れましたが、私自身、心が満たされていない時は育児に対しても消極的でした。それが寝かしつけの改善を機にハッピーになり、子どもにも優しく接することができるようになったのです。つまり、ママの心が満たされていれば子どもの心も安定して、結果として寝かしつけがスムーズになるというのは科学的にも証明されています。(参考文献: Wendy A. Hall, Melissa Moynihan, Radhika Bhagat and Joanne Wooldridge, Relationships between parental sleep quality, fatigue, cognitions about infant sleep, and parental depression pre and post-intervention for infant behavioral sleep problems,BMC Pregnancy and ChildbirthBMC series – open, inclusive and trusted201717:104 )逆に、ママ自身が疲れていたり忙しすぎると心に余裕がなくなり、その気持ちが子どもにも伝わり、ぐずったり睡眠トラブルが起こりやすくなると言われています。そのため、睡眠不足になり、悪循環におちいることも…。親子にとってどちらが幸せなのか、言うまでもありませんね。――では、ママの幸福度を上げるにはどうしたらいいでしょうか?愛波さん:日頃、頑張りすぎているのですから、時には、ママや妻をお休みしてはいかがでしょうか。家事の手抜きをしたり、パパや公共のサービスに育児を助けてもらうなどして、ママ自身がリフレッシュする時間を設けてみましょう。ママがご機嫌なら、子どもも安心して眠れるのではないでしょうか。■「子どもの眠り」土台つくり3:生活リズム――仕事や育児に没頭しすぎると、いつの間にか心も体も疲弊してしまいますからね。もっと気楽に過ごすことも大切ですね。愛波さん:土台1)、2)が理解できたら、最後は3)の生活リズムの見直しです。子どもは、次に何をするのかわかっていると安心しますし、体もその流れに慣れて、リズムができます。つまり、寝るまでの流れ(ルーティン)をつくっておくことが大事なのです。例えば…お風呂に入る→パジャマに着替える→絵本を2冊読む→ぐっすりノイズをつける→電気を消す上記のような流れはいかがでしょうか? このルーティンは新生児からでも始められます。とにかく一貫性をもって毎日続けることで、いつのまにかママと子どもの寝る前の“儀式”になり、寝かしつけもスムーズになるでしょう。こちらもぜひ、毎晩意識してトライしてみてください!睡眠には精神を活発にしたり落ち着かせる作用があるほか、疲労回復、記憶力アップ、ストレス解消、肥満を防ぐなど、さまざまなメリットがあるそうです。逆に睡眠不足は集中力の低下、イライラして短気になる、自主的に遊ぼう・学ぼうという能力の低下などを招くそうです。大切なお子さんの将来のためにも、あらためて普段の睡眠を見直してみてはいかがでしょう。もしトラブルを抱えているようでしたら、まずは睡眠の土台づくりから試してみてもよさそうですね。参考図書: 『ママと赤ちゃんのぐっすり本「夜泣き・寝かしつけ・早朝起き」解決ガイド』 (講談社)愛波 文著/西野精治監修 1,200円(税別) これまで経験値でしか語られてこなかった赤ちゃんの睡眠対策。日本人で初めて子どもの睡眠コンサルタント国際認定資格を取得した著者と睡眠研究のエキスパート西野精治先生が、科学的エビデンスに基づいて日本人の生活スタイルに合わせた解決方法を紹介。夜泣き、寝ぐずり、早朝起きなど、ママやパパを悩ませる赤ちゃんたちの睡眠トラブルを解決します。取材・文/長谷部美佐
2018年07月18日新米ママの毎日は、すべてが赤ちゃんペース。自分の時間なんて皆無に等しいですよね。なかでも、多くのママが頭を抱えるのが寝かしつけ。やっと寝たと思ったら、数時間後に起きてぐずったり、夜泣きを繰り返したり…。育児の中でもとくにママを悩ませる寝かしつけの改善法について、日本とアメリカで子どもの睡眠コンサルタントをしている愛波文さんにお話をうかがいました。お話をうかがったのは…愛波 文(あいば あや)さん子どもの睡眠コンサルタント。APSCアジア/インド代表。IMPI日本代表。一般社団法人日本妊婦と乳幼児睡眠コンサルタント協会代表理事。慶應義塾大学卒業。2012年に長男出産。夜泣きや子育てに悩んだことから乳幼児の睡眠科学の勉強をはじめ、米国IMPI公認資格(国際認定資格)を日本人で初めて取得。2015年に次男を出産。現在、2人の男の子の子育てをしながら、子どもの睡眠に悩む保育者のコンサルティングや個別相談、日本人向けに子どもの睡眠教育プログラムを提供。IMPIと提携し、オンラインで妊婦と子どもの睡眠コンサルタント資格取得講座の講師も務めている。著書に『ママと赤ちゃんのぐっすり本 「夜泣き・寝かしつけ・早朝起き」解決ガイド』(講談社)がある。 ・ホームページ(Sleeping Smart) ・オフィシャルブログ ・Instagram ・Twitter ■赤ちゃんの寝かしつけに疲弊する日本のママたち――愛波さんのところへ相談にくるママは、アメリカと日本で違いはあるのでしょうか?愛波さん:まったく違います! アメリカでは寝かしつけ本はとてもポピュラーで、ママたちも子どもの睡眠について、ある程度、予備知識があります。そのため、彼女たちは今後、寝かしつけに悩まないための“予防策”として、私のところに相談に来られます。ママ達も知識を身につけることに対して意欲的で、全体的にポジティブな印象を受けますね。一方、日本のママは、育児も家事もすべてひとりでこなし、そのうえ寝かしつけも思うようにいかない…。そんな心も体も極限の状態で来られる方が目立ちます。最後の砦(とりで)のような感覚で私のところに来られるので、お子さんの寝かしつけ以前の問題として、まずはお母さんの心のケアから始めることが多いですね。少し話を聞いてあげただけでも、みなさんホッとするのか、その後「寝かしつけが思うようにいった」なんて声を聞くこともよくあります。――今回、 『ママと赤ちゃんのぐっすり本「夜泣き・寝かしつけ・早朝起き」解決ガイド』 を出版されようと思ったのも、そんな日本のママたちの育児事情も少なからず関係しているのでしょうか?愛波さん:そうですね。ニューヨークで暮らしていて思うのは、日本のママたちは頑張りすぎているんじゃないかなって。育児も家事も完璧にこなし、そのうえ仕事もしている。私も、辛い育児経験があるのでわかるのですが、もっと人やサービスに頼って、ママ自身が楽にならないとやっていけません! アメリカでは「Happy Mom,Happy Family」(ママがハッピーなら家族もハッピーになる)という言葉がありますが、本当にその通りだと思います。まずは、ママ自身の心に余裕ができるように。そんな願いも込めて、今回寝かしつけ本を出版させていただきました。■アメリカでワンオペ育児「私も寝かしつけに悩む一人でした」――最初は、どうして子どもの寝かしつけに着目したんですか?愛波さん:現在、私は家族とともにニューヨークに住んでいるのですが、以前は主人の仕事の関係でサンフランシスコにいました。そこで長男を出産し、当初はこれから赤ちゃんとのバラ色の生活が始まるのだとひとり幸せに浸っていたのですが…それは想像に過ぎませんでした(笑)。主人は仕事が忙しく、また親族も日本にいるので頼る人が近くにおらず、まさに絵に描いたようなワンオペ育児をしていました。息子と私、1対1の生活に日に日に孤独を感じるようになり、さらに追い打ちをかけるように、生後7カ月頃から夜泣きがひどくなり始めたんです。当時は子どもの睡眠に関する知識がなかったので、ただひたすら抱っこをしてあやす日々。気づいたら、息子の泣き声に恐怖すら感じるようになっていました。パンク寸前になった私は、このままではダメだと思い、地域のコミュニティーセンターに顔を出してみたんです。そこで出会ったママたちは、とにかく元気で明るく、疲れ切った私とのギャップに衝撃を受けました。彼女たちに育児に関する悩みを打ち明けたところ、あるママから一冊の本を紹介されました。それが子どもの睡眠に関する本だったんです。 ■知ることで劇的に変わった「息子の睡眠」――睡眠本…専門書のようで、なんだか難しそうですね。愛波さん:いいえ、誰でも手軽に読める一般書ですよ。先ほどもお話したように、アメリカは日本と違って子どもの寝かしつけに関する本がとても普及しているんです。書店では壁一面に「寝かしつけ本」のコーナーがあるくらい! しかも内容もバラエティに富んでいて、なかでも科学的根拠に基づく理論的なものが定着しています。――ママ友から紹介された一冊も、理論的な内容だったのですか?愛波さん:そうなんです。科学的な視点からつづられているもので、私にはとても新鮮でした。その一冊をきっかけに、子どもの寝かしつけに関する知識をもっと身につけたいと思うようになり、関連する本を15冊ほど買って一気に読みあさりました。著者によっていろいろな考え方がありますが、自分なりに解釈したうえで、泣きぐずるわが子に、専門書のノウハウを実践してみたんです。――息子さんが生後7カ月の頃でしたよね。結果はいかがでしたか?愛波さん:まずはぐっすり眠れるように、土台となる寝室の睡眠環境やスケジュール、自分の幸福度などを2カ月かけてじっくり改善していきました。その時点で、すでに夜泣きの回数は減っていたのですが、なんと生後10カ月になった頃には、朝までぐっすりひとりで寝てくれるようになったのです。あの時の感動は今でも忘れられませんね。寝かしつけの呪縛から解放された私は、みるみる元気になっていきました。自分が満たされているから、息子にも主人にも、まわりのみんなにも優しく接することができる。心からそう思いました。わが子の寝かしつけができるようになった自信から、私はますます子どもの睡眠について興味を持つようになっていったのですが、そんな折に出会ったのがIMPI(International Maternity & Parenting Institute)でした。2009年にアメリカで設立された、子どもの健康的な睡眠習慣の確立を目的とした機関です。オンラインで勉強を始め、子どもの睡眠コンサルタントの資格、米国IMPI公認資格を取得。今ではアメリカと日本のママ向けに、子どもの睡眠に関する教育プログラム、コンサルティング、個別相談、セミナー等を提供しています。確かに、日本のママたちは朝から晩までフル回転しているイメージがありますよね。しかし、ママの心に余裕がなければ、寝かしつけも思うようにいかなくて当然。それでは、ママがハッピーになれば、わが子もぐっすり眠るようになるのでしょうか? 次回は、愛波さんに寝かしつけのノウハウをうかがいます。参考図書: 『ママと赤ちゃんのぐっすり本「夜泣き・寝かしつけ・早朝起き」解決ガイド』 (講談社)愛波 文著/西野精治監修 1,200円(税別) これまで経験値でしか語られてこなかった赤ちゃんの睡眠対策。日本人で初めて子どもの睡眠コンサルタント国際認定資格を取得した著者と睡眠研究のエキスパート西野精治先生が、科学的エビデンスに基づいて日本人の生活スタイルに合わせた解決方法を紹介。夜泣き、寝ぐずり、早朝起きなど、ママやパパを悩ませる赤ちゃんたちの睡眠トラブルを解決します。取材・文/長谷部美佐
2018年07月08日