宿泊予約サイト Booking.com(以下ブッキング・ドットコム)は、LGBTQ+の当事者の方々について学ぶことを目的とした「Travel Proud」プログラムの日本語版の提供開始に伴い、4月19日に発表会を開催しました。当日はゲストとして、ドラァグクイーンとして活躍するドリアン・ロロブリジーダさん、作家、トラベルライター、クリエイターのカラム・マクスウィガン(Calum McSwiggan)さん、宿泊施設「all day place shibuya」の支配人、飯島亮さんが登場しました。■LGBTQ+当事者の方への理解を深める「Travel Proud」「すべての人に、世界をより身近に体験できる自由を」を企業理念に、多種多様な宿泊施設や旅ナカ体験、旅行中のシームレスな移動手段を提供する宿泊予約サイトのブッキング・ドットコムは、パートナー施設向けにLGBTQ+の当事者の方々について学ぶことを目的とした「Travel Proud」プログラムの日本語版の提供を開始しました。ブッキング・ドットコムが2023年に実施した日本を含む世界27ヵ国の11,555人のLGBTQ+旅行者を対象に行った調査によると、日本人のLGBTQ+旅行者の60%が「旅先選びの際に自身の安全とウェルビーイング(心身および社会的な健康など幸福)を考慮する必要がある」と回答しました。この数字は前年の48%から大幅に増加しており、世界平均の80%に近づいています。この調査結果は、日本のLGBTQ+旅行者の意識が向上し、安全で快適な旅行を求める声が高まっていることを示唆しています。ブッキング・ドットコムが提供する「Travel Proud」の中核は、日本語で利用できる無料のオンライン・トレーニング・プログラム「Proud Hospitality」です。このプログラムは、LGBTQ+の旅行者が旅行中に直面する独自の課題や障壁に焦点を当てており、パートナー宿泊施設はトレーニングの課程を修了することで「Proud Certified」の認証を取得することができます。このプログラムでは、実践可能なスキルとテクニックを学ぶことが可能で、LGBTQ+の旅行者に対して自信を持ってサポートするための「Travel Proud Customer Toolkit」など、追加リソースへのアクセスも含まれます。コース修了後、「Proud Certified」の認証を取得したパートナー施設には、宿泊施設リストに「Travel Proud」バッジが付与されることになります。旅行者は、宿泊施設ページにある「Travel Proud」バッジを参照することで、どの施設が「Proud Certified」の認証を取得しているのか、ひと目で判別することができます。さらにブッキング・ドットコムは、インクルーシブな言葉遣いを採用しているため、ほとんどの場合、予約時に性別の指定は不要で、ジェンダーに関する選択肢も幅広く提供されています。■誰もが安心して楽しめる旅行体験を目指して発表会では、ゲストとして、LGBTQ+の当事者で自分自身の軸を持ちながらドラァグクイーンとしても活躍されているドリアン・ロロブリジーダさん、LGBTQ+当事者で作家、トラベルライター、クリエイターのカラム・マクスウィガン(Calum McSwiggan)さん、また本プログラムをいち早く導入し、認証を取得している宿泊施設「all day place shibuya」の支配人 飯島亮さんが登場し、当社のアジア太平洋地域担当マネージング・ディレクターのローラ・ホールズワースさんとともに、それぞれの視点からジェンダーやセクシュアリティに関わらず誰もが安心できる旅行の楽しみ方についてパネルトークを実施しました。ブッキング・ドットコムのアジア太平洋地域担当マネージング・ディレクターであるローラ・ホールズワースさんは、「当社にとって重要地域である日本で、好評を博している『Travel Proud』プログラムを開始できることを嬉しく思います。日本において、私たちの予想を上回る申し込みがあったことを受けて、私たちは、すべての人のために、すべての人による、真にインクルーシブな旅のプラットフォームと体験の創造を目指しています。日本の宿泊施設パートナーと協力し、旅行者が日本での旅路で、自分自身であることを心地よく歓迎されるよう支援してまいります。どこから来ている、誰を愛しているか、どのような自認をしているかに関わらず、素晴らしい体験をしてもらいたいと思っています」とコメントしました。日本初の「Proud Certified」認証取得施設の一つである「all day place shibuya」の支配人 飯島亮氏は、「『Proud Certified』の認証を取得することができ光栄に思います。Travel Proudの認証を受けることで、LGBTQ+フレンドリーな宿泊施設であることをお客様に知っていただくことができますし、安心して泊まっていただけると感じています。また、プログラムを受けたことで、今まで知る機会がなかったLGBTQ+当事者に対する知識をスタッフが身につけることができ、不安なくサービスを提供できるようになったことは大きな成果だと感じています。今後もTravel Proudの認証を受ける宿泊施設が増えることを私も望んでいます」と語りました。また、LGBTQ+の当事者であるドリアン・ロロブリジーダ氏はパネルトークの中で、「私にとっての旅とは、心の洗濯だと思っています。また、旅先の体験が心の栄養補給だと思っています。私のパートナーはトランスジェンダー男性なのですが、海外旅行の際にはパスポートの性別と見た目の性別が異なることで多くの不都合を感じています。また、旅行で温泉宿に出かける際には、大浴場が使えないため家族風呂や貸切風呂のある宿を探すようにするなど、宿を選べない、選ばない要因になってしまうこともあります。当事者にとっても、遠慮ではなく配慮が宿泊施設から感じられることで、旅先での体験が素晴らしいものになると感じています」と語りました。さらに、世界中を旅しているカラム・マクスウィガン氏は、「Travel Proudの認証を受けている宿泊施設とそうでない宿泊施設の違いは、LGBTQ+であることを完全に受け入れられているか、信頼感を感じるかです。信頼を勝ち取るのは難しいことですが、Travel Proudの認証を受けた宿泊施設は、毎回自分の期待を上回るような体験ができました」と語りました。ブッキング・ドットコムの「Proud Hospitality」トレーニングと「Travel Proud」バッジは、2021年から開始しました。同トレーニングは現在、日本語のほか、英語、イタリア語、フランス語、スペイン語、ブラジル・ポルトガル語、ドイツ語でも受講が可能です。現在、120を超える国と地域、12,000を超える都市に65,000を超えるProud Certifiedの認定を取得しているパートナー宿泊施設があります。■プログラム概要「Travel Proud」URL:
2024年04月26日2023年7月27日、タレントのはるな愛さんがSNSを更新。自身の性的指向などを公表するカミングアウトについて言及しました。はるな愛「縛られない生き方を」性別適合手術を受けたことを公表している、はるなさん。芸能人としてデビュー後も、積極的に性の多様性について発言してきました。はるなさんは、同日の投稿で「カミングアウトする人。カミングアウトしない人。それぞれの生き方がある」としたうえで「カミングアウトに縛られない生き方をしてほしいなぁ」とつづっています。また、「自分はどう生きるか!」と、あくまでも自分自身の考えを大切にすることの重要性を説きました。カミングアウトする人。カミングアウトしない人。それぞれの生き方がある。カミングアウトアウトに縛られない生き方をしてほしいなぁ。1秒1分1日と性別は安定しないと思う。これからも自由に生きてほしい。自分はどう生きるか!!! #カミングアウト — はるな愛 (@haruna_ai0721) July 27, 2023 はるなさんがカミングアウトについて言及した前日の26日には、パフォーマンスグループ『AAA』のメンバーである、與真司郎(あたえ・しんじろう)さんが同性愛者であること自ら公表し、話題を呼びました。性的指向などについて公表することは、当事者にとって、難しい問題です。事情があって公表できない人、自らの意思で公表しない人、多くの選択肢があります。どうするかは自分次第ですが、どんな選択をしてもその意思が尊重され、批判されることのない世の中になることを、当事者のみならず、多くの人が願っているはずです。[文・構成/grape編集部]
2023年07月27日2023年7月26日、パフォーマンスグループ『AAA』の與真司郎(あたえ・しんじろう)さんが、東京都渋谷区にある『LINE CUBE SHIBUYA』でファンに向けたイベント『與真司郎 announcement』を開催。イベントの中で、與さんは自身が同性愛者であることを公表しました。イベント後、與さんはSNSで改めて自身の思いを投稿しています。ファンのみなさんへ、今日は僕にとって一つの節目となる一日でした。僕は長い間とある不安と闘っており、自分の一部を受け入れることに苦労していました。でも、さまざまな葛藤を乗り越え、今やっとみなさんにこのことを打ち明ける決意ができました。それは、僕がゲイであるということです。カミングアウトを決意するまでに、すごく時間がかかりました。自分ですら、自分のセクシュアリティーを受け入れることができませんでした。でも、悩みに悩んだ結果、ファンのみなさんをはじめ、僕が大切にしている全ての人達、そして僕自身のためにも本当のことを受け入れ、それをきちんとみなさんに伝えることが僕なりの誠意だと思いました。そして、僕と同じ境遇に置かれている方々にも勇気を持つキッカケになってほしいと思いました。自分は一人ではないということをわかってほしかったです。shinjiroatae1126ーより引用また、イベントでの與さんのスピーチは、同月27日にウェブサイトに掲載予定であることも発表。最後に、與さんはファンをはじめ、家族やほかのメンバーそしてスタッフらへ、感謝の言葉とともに「これからも応援していただけたら嬉しいです」とつづっています。今日はみなさんの顔を直接見ながらこのことを伝えたいと思い、このイベントの場を設けさせていただきました。そして、今日来れなかったみなさんにも僕からの言葉を届けたいと思い、明日ウェブサイトにスピーチの映像を載せようと思っています。プロフィールにリンクを貼っておきます。長年エンターテインメント業界でお仕事をさせていただいて、これまでたくさんの出来事がありましたが、その中でもファンのみなさんと築き上げてきた思い出が間違いなく一番印象に残っています。そして、支えて下さったみなさんに心より感謝しております。そして、今日この日を迎えるまでずっと支えてくれた家族、友達、スタッフのみんな、そして今日来てくれたメンバーも、本当にありがとう。これからも応援していただけたら嬉しいです。與 真司郎shinjiroatae1126ーより引用※画像は複数あります。左右にスライドしてご確認ください。 この投稿をInstagramで見る SHINJIRO 與 真司郎(@shinjiroatae1126)がシェアした投稿 イベントでは、涙ながらにスピーチをした與さんに、ファンからは前向きなコメントも。同性愛者である以前に、1人のアーティストとしての與さんを今後も応援し続けるといった内容のコメントが寄せられています。また、同じく『AAA』のメンバーである西島隆弘さんは、與さんのスピーチでの言葉を引用し「Your happiness begins tonight. We’re always by your side.(今夜から、あなたの幸せが始まります。私たちはいつもあなたのそばにいます)」とTwitterを介してメッセージを送りました。Respect you!Your happiness begins tonight.We're always by your side. — Nissy_staff (@NissyStaff) July 26, 2023 同性愛者であることを周囲に公表するか否かは、本人の自由です。「公表しない」という選択もまた、優先されるべきものでしょう。しかし、環境や周囲との関係性など、さまざまな事情から公表をしたくてもできない人にとって、與さんの「1人ではない」という言葉に背中を押され、勇気をもらった人も少なくないはずです。與さんという存在が、それぞれの選択を、本人の意思で決められ、そして尊重される世の中への一歩になってほしいと願わずにはいられません。[文・構成/grape編集部]
2023年07月27日世界No.1求人検索エンジン※「Indeed (インディード)」の日本法人であるIndeed Japanは6月22日、働く上で障壁に直面することの多いLGBTQ+当事者の人たちの働き方や仕事探しを支援するため、ライフマガジン『BE』第二弾を発行しました。※出典:Comscore 2022年9月総訪問数■ライフマガジン『BE』とは同社は、“We help people get jobs.”のミッションのもと、LGBTQ+コミュニティを含むすべての人がその属性や置かれた環境に限らず、自分に合った仕事が得られる社会の実現を目指し、さまざまな取り組みを行なっています。2021年より、働く上で障壁や偏見に直面することの多いLGBTQ+コミュニティの人々の仕事探しや働き方を支援し、障壁や偏見をなくしていくための取り組みとして、『Indeed Rainbow Voice』プロジェクトをスタート。そして、2022年には、その一環として、LGBTQ+当事者の人たちが職場や仕事探しにおいて直面する課題や不安、良かったことやうれしかったことなどを知り、理解するきっかけをつくるため、LGBTQ+当事者のさまざまな「声」を集めたライフマガジン『BE』を創刊しました。今年はさらに取り組みを発展させ、LGBTQ+当事者だけでなく、支援したいと考える人や雇用する企業などを含むさまざまな人たちの声を集め、それらの声をもとに『BE』第二弾を発行しました。■冊子の無料配布+デジタル版を無料公開!第二弾となる今年は、LGBTQ+当事者の人たちが自分らしく働く姿を紹介する「BE WORK GALLERY」と、企業におけるLGBTQ+当事者の従業員への支援やダイバーシティ推進の取り組みに向けた課題や方法をまとめた「BE for WORKPLACE」の2つのテーマで構成。冊子の無料配布を開始するとともに、特設サイトでデジタル版を無料公開しています。また、『BE』をきっかけに、LGBTQ+の当事者を含む全ての人が自分らしく生き生きと働ける社会に向けて、LGBTQ+コミュニティやアライ※1、企業の担当者などさまざまな人たちがともに考え、想いを共有する場としてコミュニティスペースを「文喫 六本木」に6月22日〜7月6日の期間限定でオープン。『BE』を無料配布するほか、“自分らしく生きる・働く”をテーマとしたブックフェア、トークイベントやワークショップを展開しています。※1アライ:LGBTQ+当事者ではないが、当事者のことを理解・共感し支援する人■ライフマガジン『BE』第二弾の制作にあたって『BE』第二弾は、さまざまな人たちの声を元に、LGBTQ+当事者のみならず、ともに働くアライや企業の担当者も広く活用できるものを目指し、制作にあたってLGBTQ+当事者を対象とした調査※2、および企業の人事担当者を対象とした調査※3をそれぞれ実施。LGBTQ+当事者を対象に実施した調査では、LGBTQ+当事者の人たちが職場において生きづらさを感じている現状や、当事者であることでやりたい仕事に就くこと・続けることを諦めた経験があることが明らかになりました。その結果を受け、LGBTQ+当事者の人たちが「自分らしく働く」ことについて考えたり、今まで気づいていなかった仕事や働き方と出会ったり、自分の新しい可能性を知るきっかけを作れないかと考えました。そこで、『BE』第二弾では、31人のLGBTQ+当事者がさまざまな仕事の中で、自分らしく働く姿を紹介する『BE WORK GALLERY』を制作しています。また、企業向けに行なった調査では、企業がLGBTQ+当事者の従業員を支援する取り組みを実施する上で「何から始めたら良いか分からない」「取り組むための情報が不足している」などの課題が明らかに。そこで、企業や一緒に働く人たちの新たな気づきや取り組みに向けた一歩となるようにとの思いから、企業が取り組みを実施する上での方法や工夫をまとめた『BE for WORKPLACE』を制作しました。『BE』第二弾はこれら2つのテーマが1冊にまとめられており、冊子の表と裏どちらからでも各テーマを読み進められるユニークな作りになっています。※2:Indeed「LGBTQ+当事者の仕事や職場に関する意識調査※3:Indeed「企業のLGBTQ+当事者の従業員への取り組みに関する意識調査■ライフマガジン『BE』第二弾 概要発刊日:2023年6月22日価格:無料発行:Indeed Japanページ:100ページ<冊子版>設置・配布場所:文喫 六本木(東京都港区六本木6-1-20 六本木電気ビル1F)設置・配布期間:2023年6月22日〜7月6日※なくなり次第、配布終了となります。<電子版>電子版公開URL:電子版公開期間:2023年6月22日〜(公開終了日未定)(エボル)
2023年06月27日5月18日に自民党と公明党が国会に修正案を提出し、「LGBT理解増進法案」成立に向けた議論が加速している。そんななか、LGBTを巡るある“持論”が波紋を呼んでいる。それは5月8日午後10時30分ごろにTwitterで呟かれた以下の投稿だ。《今のうちに警鐘を鳴らしておく。オウム真理教の時も、地下鉄サリン事件の前からそのヤバさに気付いて社内外で騒いだが、誰も本気にはしてくれなかったからね》この呟きの主は報道カメラマンの原田浩司氏。この呟きに原田氏は下記のように発言を続けていく。《今回のLGBTに関する報道を見ていると、1980~90年代、マスコミがオウム真理教をサブカルチャーとして持て囃していたことを思い出す。マスコミには、新しいものを有り難がる習性みたいなものがある》(この投稿は現在は削除されている)《とにかくね、何か変だと感じた直感を大事にして欲しい。 当時、オレもオウム真理教信者、彼らが乗っ取ろうとした熊本県・波野村の村人たちの証言を耳にしながら、写真にも記事にも反映出来なかった。 その結果が、地下鉄サリン事件だ。これは、背負っていくしかない》《今、LGBT運動に加担している同業者たちに、その覚悟はあるのかと問いたい》《今の勢いのまま、LGBT運動が進むことに対する危惧です。個人的には、オウムの件と近いものを感じざるを得ません》そう締めくくり、最後の投稿ではロイターの「トランスジェンダーの未成年米で治療件数が急増」という記事を紹介している。この記事は、米国の未成年者が性別適合のためのホルモン治療や手術などの医療やケアを受ける件数が増加しているという客観的な数字を示す内容だ。原田氏は、国内では雲仙・普賢岳災害、オウム真理教事件、2度の大震災などを、国外ではパレスチナ紛争、ルワンダ内戦、インドネシア動乱、イラク戦争、エジプト革命などを取材。日本新聞協会賞を2度受賞するなど、数々の功績を残している。共同通信社では編集委員も務めており、先日行われたG7広島サミットにも取材に参加するなど最前線で活躍する人物だ。そんな実績のある原田氏だが、多くの被害者を出し最後は解散命令まで出されたカルト宗教団体であるオウム真理教とLGBTの社会運動を同列視しているとも受け取れる発言をしたことで、ネット上では批判が続出。発言は差別的であり、LGBTへの憎悪を助長させるのではないかと危惧する声が。《LGBTはカルトやテロ集団ではない。性的指向は宗教じゃない》《LGBTは宗教や思想ではないですし、自らの意志でLGBT当事者になる人はいません。テロ組織のオウム真理教とLGBTを結びつける考え方は差別的ですし、こういった発言があるから「LGBTへの差別を無くす法案が必要」って声も大きくならざるを得ないんですよ》《こういう人がいるから、理解増進は必要だろう。こういう人たちがLGBTQの方々に危害を加えるような憎悪をインフレーションさせないように》個人のアカウントでの投稿とはいえ、編集委員という責任ある立場のカメラマンがこのような発言をしていることについて、共同通信社はどう考えるのか。見解を求めたところ、下記のように回答があった。「個人アカウントによる私的な論評ではありますが、誤解を招くことがないように、慎重な表現での発信を心がけるよう本人に伝えました」また、原田氏は16日に当該投稿への批判に対して、ツイッターで“真意”をこう説明している。《メディアの報道姿勢を揶揄したつもりでした。言葉足らずで、不愉快にさせて申し訳ありませんでした。ちなみに同性婚は賛成する方です。どうしても分からないのは、国内外でLGBT運動が進むにつれ女性や子どもの権利が侵されていくのに、その問題をスルーしたまま立法化を急かしていることです》
2023年05月25日求人検索エンジン「Indeed (インディード)」の日本法人Indeed Japanは、全国のLGBTQ+当事者1,000名を対象に、意識調査を実施しました。同社では4月20日より、ダイバーシティのある働き方を推進するプロジェクト「Indeed Rainbow Voice 2023」をスタート。同取り組みにあたって、LGBTQ+コミュニティの人たちの仕事探しや職場において直面している困難や課題、職場に求めることなどを明らかにするため、今回の調査を実施しています。■「職場で生きづらさを感じる」LGBTQ+当事者は約4割で、非当事者の約1.5倍全国の20~50代の人々を対象に、現在または直近の職場について尋ねたところ、LGBTQ+当事者の約4割(39.1%)、非当事者(シスジェンダーかつヘテロセクシュアル)の26.8%が「職場で生きづらさを感じる」と回答し、LGBTQ+当事者が非当事者の約1.5倍の結果となりました。LGBTQ+当事者は非当事者よりも、職場において困難を抱えている可能性が高いことが示されました。■LGBTQ+当事者の3人に1人が「不安やストレス、嫌な思いを経験」「LGBTQ+当事者であることがきっかけで、仕事探しや職場において不安やストレス、嫌な思いをした経験」について尋ねたところ、3人に1人以上(33.5%)が経験したことがあると回答。また、仕事探しや職場において感じた不安やストレスなどに対し、どのような対策をしたかという問いに対しては、35.5%が「誰にも言わず/何もしなかった(自分の心のなかにとどめた)」と回答しました。64.5%は何らかの対策をしており、最も多かったのは「公的・民間の窓口など社外の人や組織に相談した」12.5%で、他にもLGBTQ+コミュニティや友人などへの相談も上位となりました。一方で、全体の約5人に1人(21.5%)が「転職/退職(転職活動の開始を含む)」を選択した経験があることも明らかとなりました。■働くLGBTQ+当事者の7割以上が「職場でカミングアウト」していない現在の職場において、同僚や上司に対してカミングアウト(自身の性自認や性的指向を誰かに打ち明けること)をしているかを尋ねたところ、有職のLGBTQ+当事者の7割以上(75.8%)が「カミングアウトをしていない」と回答しました。この結果より、企業(職場)からは、LGBTQ+当事者の存在が「見えづらい」状況が考えられます。そのため、企業(職場)においてLGBTQ+当事者がいる前提での環境づくりやコミュニケーションが進みにくいことで、LGBTQ+当事者が職場で感じる不安や生きづらさにつながっているという可能性も考えられます。■LGBTQ+当事者の3割以上が「やりたい仕事に就くことを諦めたことがある」LGBTQ+当事者の3割以上(31.5%)が「当事者であることで、やりたい仕事に就くことを諦めたことがある」と回答しました。■「やりたい仕事に就くことを諦めたことのある」約8割が「応募前」に諦めた経験LGBTQ+当事者であることで、仕事に就くことを諦めた経験のある人のうち、約8割(78.1%)が「仕事に応募する前に諦めた」と回答しました。やりたい仕事に就くことを諦めたLGBTQ+当事者は、仕事に応募する前の段階で何らかの障壁に直面している可能性があることが明らかになりました。■「諦めた」理由1位は「多様な性のあり方について理解のない発言」「LGBTQ+当事者であることで、やりたい仕事に就くことを諦めた理由」は、1位が「男性らしさ・女性らしさの決めつけなど、多様な性のあり方について理解のない発言をされた」17.1%、次いで「求人を調べているとき、採用企業にLGBTQ+に対する制度があるかわからなかった」「勤務中の髪型、化粧、服装(制服着用など)などの要件が希望と合わなかった」が共に13.1%という結果でした。◇LGBTQ+当事者が「やりたい仕事に就くことを諦めた理由」・1位「男性らしさ・女性らしさの決めつけなど、多様な性のあり方について理解のない発言をされた」17.1%・2位「求人を調べているとき、採用企業にLGBTQ+に対する制度があるかわからなかった」13.1%・2位「勤務中の髪型、化粧、服装(制服着用など)などの要件が希望と合わなかった」13.1%・4位「志望している業界やその企業について、古典的な価値観のまま・多様性が担保されていなかった」11.4%・5位「求人を調べているとき、採用企業がLGBTQ+フレンドリー(LGBTQ+を理解し寄り添い、支援する企業)かわからなかった」10.9%・5位「求人を調べているとき、採用企業の従業員にアライ(LGBTQ+を理解し寄り添い、支援する人)がいるかどうかわからなかった」10.9%企業における多様な性に対する理解が低いことや、LGBTQ+当事者に向けた制度の有無がわからないこと、働く上での要件などが、LGBTQ+当事者がやりたい仕事に就くことの妨げになっている可能性が明らかになりました。■4人に1人が「当事者であることで、やりたい仕事を続けることを諦めたことがある」さらに「LGBTQ+当事者であることで、やりたい仕事を続けることを諦めた経験」について尋ねたところ、約4人に1人(24.4%)が、経験があると回答しました。■「やりたい仕事を続けることを諦めた」理由1位は「見た目の性別で決めつけた発言や扱い」「LGBTQ+当事者であることで、やりたい仕事を続けることを諦めた理由」は、1位「見た目の性別決めつけた発言や扱いをされた」(15.7%)、2位「差別的な発言・行動をする上司・同僚がいた」(14.2%)、3位「LGBTQ+当事者の社員/事例がなく、制度や環境について会社に希望・意見を伝えづらい」(13.1%)という結果でした。◇LGBTQ+当事者が「やりたい仕事を続けることを諦めた理由」・1位「見た目の性別で決めつけた発言や扱いをされた」15.7%・2位「差別的な発言・行動をする上司・同僚がいた」14.2%・3位「LGBTQ+当事者の社員/事例がなく、制度や環境について会社に希望・意見を伝えづらい」13.4%・4位「性自認や性的指向に関連するハラスメントを防止する取り組みがなかった」12.7%・5位「本当はもっと長く働きたくても、長く同じ職場で働けない」11.2%■仕事を諦めないために求めること1位は「差別的な発言・行動をする上司・同僚がいない」LGBTQ+当事者がやりたい仕事を諦めないために、企業や職場に求めることを尋ねたところ、1位「差別的な発言・行動をする上司・同僚がいない」(24.7%)、2位「カミングアウトしない人も、職場の居心地がよい」(23.8%)、3位「カミングアウトしない人も、職場での人間関係を深められる」(20.1%)でした。◇LGBTQ+当事者がやりたい仕事を諦めないために企業や職場に求めること・1位「差別的な発言・行動をする上司・同僚がいない」24.7%・2位「カミングアウトしない人も、職場の居心地がよい」23.8%・3位「カミングアウトしない人も、職場での人間関係を深められる」20.1%・4位「仕事の幅・選択肢が増えて、仕事内容にも満足できる仕事・職場がみつかる」19.0%・5位「制度としても、文化としても、自由な服装やファッションが認められている」18.8%■安心して働くために求めること1位は「特定のジェンダー観に縛られずに働ける職場」また、今よりもっと違和感や生きづらさを感じず安心して働くために、企業や職場に求めることを尋ねたところ、1位「誰もが自由な服装や髪型・言葉遣いなど、特定のジェンダー観に縛られずに働ける職場」(21.1%)、2位「カミングアウトしなくても不利がないような制度や従業員の意識がある職場」(19.9%)、3位「自分を理解してくれ、今後の仕事・キャリアの相談に乗ってくれる人(LGBTQ+かを問わず)がいる職場」(15.4%)でした。◇今よりもっと違和感や生きづらさを感じず安心して働くために企業や職場に求めること・1位「誰もが自由な服装や髪型・言葉遣いなど、特定のジェンダー観に縛られずに働ける職場」21.1%・2位「カミングアウトしなくても不利がないような制度や従業員の意識がある職場」19.9%・3位「自分を理解してくれ、今後の仕事・キャリアの相談に乗ってくれる人(LGBTQ+かを問わず)がいる職場」15.4%・4位「自由にカミングアウトできる職場環境」15.3%・5位「LGBTQ+の存在を想定した言動などコミュニケーションがあたりまえな職場」13.7%・5位「同性パートナーを法律上の異性婚夫婦と同等に扱う社内制度が導入されている職場」13.7%LGBTQ+当事者が、やりたい仕事を諦めず、また生きづらさを感じずに働くために企業や職場に求めることは、多様な性のあり方に対する理解や意識の浸透、そしてカミングアウトの有無に関わらず働きやすい制度や環境であることがわかりました。◇仕事探しまたは仕事をしているときに感じた不安やストレス、嫌な思い・面接でカミングアウトしたところはすべて不採用。カミングアウトしなかったところはすぐに採用された。差別されているんだなと思った。・就活で面接のお願いのために電話をしたときに、こちらからカミングアウトした途端「うちの会社はそういうのはいらないから」と笑って言われて電話を切られた。その後は、そのことがトラウマになって就活できなくなった。・面接で髪を丸坊主の手前まで短くしないと採用しないと言われた。・女性の制服が強制されるところでは、自分自身の違和感を感じて、働きづらいと感じた。・異性の恋人を前提として、恋人の有無を聞かれたり、社内のバーベキューパーティーに恋人を呼ぶように言われる。・「店員さん」や「○○さん」って呼ばず、「お姉さん」と声をかけられたのが思いのほか苦しかった。◇企業(職場)への意見や求めること・企業としてだけではなく、社会貢献として、勤務している社員やその家族、取引先の関係者が勤務時間外であっても、多様性における配慮に欠けた言動をしないように、定期的に社内外で講習などを行なってほしい。・「LGBTQ+という特別な人たちがいる」のではなく、「人には人の数だけ性がある」ということを理解する。会社を挙げてSNSなど一般の人からも目につくところでLGBTQ+コミュニティを支援していることを発信してほしい。・LGBTQ+の人たちが世の中に沢山いること自体が当たり前の事だと、全ての人が思える社会づくり。自分の価値観も、他人の価値観も、受け入れられるべきものだと、企業や会社の人ひとりひとりが何度も発信していってほしい。■調査概要・調査主体:Indeed Japan・調査対象:全国の20~50代 30,643名、うちLGBTQ+当事者※1,000名※総人口から無職(専業主婦・主夫や学生を含む)かつ(今後の)就労の意志のない人を除いた人※シスジェンダーかつ非ヘテロセクシャル(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、パンセクシャル、アロマンティック・アセクシャルなど、性的指向においてクエスチョニングのいずれか)、トランスジェンダー、エックスジェンダー、クエスチョニングにて均等割付を実施。・調査方法:インターネット調査・調査期間:2023年3月17日~3月27日(エボル)
2023年05月06日トランスジェンダーをはじめ、性的少数者への理解をうながすことを目的にした法律、通称『LGBT理解増進法案』をきっかけに、世の中からさまざまな意見が寄せられている2023年3月現在。特に、こころと身体の性が一致しないトランスジェンダーの公共トイレや公衆浴場の利用をめぐっては、犯罪に悪用される危険性を指摘する声があがるなど、ネット上で多くのコメントが飛び交っています。しかし、実際にトランスジェンダーとして生きている人にとっては、身体の性に合わせて施設を利用することに精神的苦痛を覚えている人もおり難しい問題です。そんな中、俳優の橋本愛さんが、Instagramのストーリーズ機能でトランスジェンダーについて言及し、後に謝罪したことが議論を呼んでいます。橋本愛、トランスジェンダーめぐる発言に「本当に心からごめんなさい」2023年3月5日、24時間で投稿が消えるストーリーズで、公共のトイレや公衆浴場では、「身体の性に合わせて区分するほうがベターかなと思っています」と自身の意見を記した橋本さん。一方で「もしかしたら当事者の人たちにとっては、我慢を強いられるような気持ちになるかもしれず、想像すると、とても胸が痛くなります」と、理解を示す文章もつづっています。入浴施設や公共のトイレなど、そういた場所では体の性に合わせて区分する方がベターかなと思っています。もしかしたらLGBTQ+も方々にとっては我慢を強いられるような気持ちになるかもしれませんし、想像するととても胸が痛くなります。けれど私は女性として、相手がどんな心の性であっても、会話してコミュニケーションを取れるわけでもない公共の施設で、身体が男性の方に入って来られたら、とても警戒してしまうし、それだけで恐怖心を抱いてしまうと思います。そんな態度をとって傷つけたくもないですし、その制度を悪用した犯罪が発生することは絶対に阻止しなければならないと思います。この件に関しては、LGBTQ+の当事者の方々が自ら、特に女性にとってリスクが高いと声を上げてくださっているのをお見かけするので、その気持ちに深く感謝しています。ai__hashimotoーより引用これに対し、一部で「差別だ」と指摘する声があがったといいます。その後、橋本さんは自身の発言を謝罪し、ストーリーズに投稿しました。ヘイトの気持ちなどまったくなくても、あらゆる観点から色んな人の気持ちを考えてやっと言葉にしても、無自覚に人を傷つけてしまったこと、反省しています。勉強になりました、教えてくれてありがとう。傷つけてしまった方々、ごめんなさい。ai__hashimotoーより引用また、最新の投稿でも「本当に、心から、ごめんなさい」とつづっています。とても有難いご意見をたくさんいただき、トランスジェンダー差別について、昨晩からたくさんたくさん調べました。一晩で得た知識や知見など極めて微々たるものだと思うので、今はまだ言葉にすることを控えますが、自分の犯した失敗の原因、問題点、そしてこれから自分が持つべき指針について考えました。今一つだけ確かに言えることは、まったく別のことで、私の中にまだ、解決されるべき課題が残っていたことです。あるトラウマの根が、関係のないところにまで結びついてしまうほど蔓延っていたことに気づき、昨夜、断ち切りました。私の思想と視野が、やっと、一致し始めてきたところです。もう二度と、考えの至らないまま発言をしてしまわないために、何よりこの世界に生きる誰かをこえ以上傷つけてしまわないために、今私が約束することは、今後必ずアップデートし続け、学び続け、そして行動し続けるということです。本当に、心から、ごめんなさい。本当にごめんなさい。学びの機会をくださり、本当にありがとうございます。ai__hashimotoーより引用自身の発言を謝罪する事態となった橋本さんですが、ネット上では擁護の声も目立ちます。トランスジェンダーの公共トイレや公衆浴場の利用は、『LGBT理解増進法案』をきっかけに注目を集めており、今回も橋本さんの意見に共感する声、一方で疑問視する声が寄せられました。【共感する声】・1人の意見であり、発信することは間違っていない。ましてや差別とみなして、口をふさぐことなんてあってはならない。・相手がどういう人かも分からないのだから、警戒してしまうのは当然。公衆浴場なんて裸なんだから、余計怖いだろうに。・橋本さんの意見の、何が間違っているのだろう?【疑問視する声】・橋本さん自身も「我慢を強いられるような気持ちになるかも」といっている。そんな思いを、どちらかだけに強いる状況はおかしい。・この場合、発言力がある人が投稿したことが問題なのかもしれない。少なからず、橋本さんの考えに引っ張られる人はいると思う。・いっている意味は分かるけど、じゃあ実際に利用したくてもできない人はどうすればいいの?どちらか一方が我慢を強いられる状況が正しいとはいえないでしょう。しかし、状況を改善するため、誰もが納得できる答えを見つけるのは容易なことではありません。また、どちらの立場であれ、意見を発信しなければ、問題が議論されることすらないはずです。今回、橋本さんが発信した意見は、『LGBT理解増進法案』をめぐる議論に一石を投じ、私たち一人ひとりが考えるきっかけとなったはずです。[文・構成/grape編集部]
2023年03月06日『LGBT理解増進法案』をめぐり、国会はもちろん世論もゆれています。正式名称を『性的指向および性同一性に関する国民の理解増進に関する法律』とする同法案は、その名の通り、性的少数者への理解をうながすことを目的にしたもの。一方で、『差別』の文言を入れるか否かについて国会で意見が割れ、また世論も賛否両論さまざまです。そうした状況もあってか、2023年3月2日、元タレントで現在はクリエイターとして活動する、おかもとまりさんがTwitterに投稿した内容が注目を集めています。おかもとまり「これって差別なんですかね」おかもとさんは、女子トイレを利用した際、容姿は男性の人がトイレの個室から出てくる場面に遭遇したことが、何度かあったといいます。こころの性が女性の可能性もあるものの、おかもとさんは「一瞬だけ身構えてしまった」と正直な思いをつづりました。また、自身の思いを知人に話したところ「差別はよくない」と注意を受けたともいい、「これって差別なんですかね…。こういう問題は難しい」と複雑な心境を明かしています。見た目が男性の方が、女子トイレの個室から出てきて遭遇したことが何度かあります。心が女性なのかもしれないですが、一瞬だけ身構えてしまったことを知り合いに話したら差別は良くないよと言われました。これって差別なんですかね…。こういう問題は難しい— おかもとまり (@okamotomari1989) March 1, 2023 多くの人が認識しているであろう『差別はいけないこと』という思い。しかし、何をもってして『差別』とするかは、意見が分かれます。多様な性のありかたを理解すること自体は必要ですが、それにより生じる問題もゼロではないでしょう。おかもとさんの差別をめぐる投稿は反響を呼び、賛同する声や同じく「難しい」と悩む声、さまざまな意見が寄せられています。【共感する声】・妹と姪は、ショートカットでボーイッシュな服装というだけで、女子トイレで悲鳴をあげられることがあります。本人たちはもう慣れたと平静を装いますが、年齢を考えると、本人たちの心が心配です。・おかもとさんの意見に賛成です。身につけざるを得ない警戒は、まったく差別じゃない。・これは逆もしかりだと、男である自分は感じます。急に女性がトイレに来たら驚くかと…。【疑問視する声】・もしかしたら、男の人のような容姿をした女性だったのでは。見た目だけで、男性だと決めるのもまた別の問題が出てくる。・世間には隠していて、男性としての容姿のままな人もいるわけで…。・身構える気持ちも分かるけど、その知人は「嫌だ」という意味合いにとらえたのかもしれない。排除するという考えが、差別なのかも。LGBT当事者たちも声をあげており、さらに深い議論を交わす必要性が求められている『LGBT理解増進法案』。誰もが納得できる答えを導き出すのは、容易なことではありません。しかし、誰もが生きやすい社会を『理想』のままにしておく時代は、終わりが近付いています。難しい問題だからこそ、さまざまな意見が出るのは当然のこと。他人事とは思わず、「自分ならば」という視点で『LGBT理解増進法案』について考える時が、今なのではないでしょうか。[文・構成/grape編集部]
2023年03月03日2021年12月現在、人それぞれ好みがあるように、 セクシュアリティについても、多様性が尊重されるような社会に変化しています。ゲイやレズビアン、バイセクシュアル、トランスジェンダー以外にも、さまざまなセクシュアルマイノリティが存在していて、最近では『LGBTQ+』や『SOGI』と呼ばれることが増えてきました。いと(@yawayorozu992)さんは、セクシュアルマイノリティの青年。パートナーと同棲するために、不動産会社へ行きました。自分のセクシュアリティを話すことに抵抗があった、いとさんは、「友人同士のルームシェアです」と伝えて部屋を探しますが、なかなか決まりません。そこで、正直に同性カップルということを明かすと…。彼氏と同棲する事になって、正直に話すのは抵抗があって友人同士のルームシェアって不動産屋の人に伝えて探してたんだけど、なかなか友人同士のルームシェアって出来ないみたいで、正直に同性カップルですって伝えた途端すぐに審査通って驚いた世の中ってこんなにも寛容だったのかって嬉しくなった— いと (@yawayorozu992) November 24, 2021 すぐに、審査が通ったのです!セクシュアルマイノリティを告白するのは、勇気が必要だったのではないでしょうか。イヤな顔をされたり、冷たい態度をとられたりするかもしれないという、マイノリティゆえの怖さがあったかもしれません。投稿者さんは驚きとともに、次のようにつづりました。「世の中ってこんなにも寛容だったのかって嬉しくなった」セクシュアルマイノリティとして生きていく中で、いろいろな出来事があったのでしょう。「自分たちが思うより世間は好意的なんだ」と、投稿者さんは感じたそうです。2人が一緒に暮らせることに、多くの人がコメントしました。・本当によかったね、優しい世界。・すごい!なんか嬉しい!・とっても温かいお話、末永くお幸せに。どんなセクシュアリティであっても、「好きな人と一緒にいたい」という気持ちは変わらないでしょう。手をつないだり、デートをしたり、自由に愛し合うのは、誰にとっても当然の権利です。セクシュアルマイノリティであっても、そうでなくても、自分らしく生きられるような社会であってほしいですね。[文・構成/grape編集部]
2021年12月01日まだまだ海外旅行が気軽にできないなか、せめて異国の風を感じたい人にオススメのイベントと言えば、11月18日から21日まで開催される「ドイツ映画祭 HORIZONTE 2021」。厳選された注目のラインナップから、オープニングを飾る話題作をご紹介します。『未来は私たちのもの』【映画、ときどき私】 vol. 430イラン系移民の両親を持つミレニアル世代の青年パーヴィスは、両親がドイツで築いた安定した環境のもとで暮らしていた。しかし、地方での生活に退屈さを感じ、出会い系アプリのデート、レイヴやパーティで暇つぶしをする日々を送ることに。ある日、万引きがバレて、社会奉仕活動を命じられたパーヴィス。難民施設で通訳として働くなかで、イランからやってきた兄妹バナフシェとアモンに出会う。微妙なバランスを取りながら絆を深める3人は、ドイツにおけるそれぞれの未来が平等でないことに気づき始めるのだった……。昨年のベルリン国際映画祭では2部門で受賞に輝くなど、高い評価を得ている本作。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。ファラズ・シャリアット監督本作で長編デビューを飾ったシャリアット監督。映画の主人公同様に、性的マイノリティであることを公表しており、挑戦的で過激な描写でも話題となっています。今回は、自伝的要素の強い物語を描いた理由や日本のアニメから受けた影響などについて、語っていただきました。―まずは、映画祭のオープニング作品に選ばれたお気持ちからお聞かせください。監督本当にうれしく思っています。ただ、以前からずっと行きたかった日本に行けないことは、非常に残念ですね。とはいえ、私の作品が実際に映画館で上映されるのは喜ばしいことなので、そのことからはパワーをもらっています。いまはとにかくドキドキな気持ちでいっぱいです。―監督デビュー作にして、ここまで注目を集めることは想像していましたか?監督この作品はアートマネジメントや文化論を学んでいる仲間たちとDIYのような感じで作ったので、私たちにとっては本当に大きなサプライズでした。誰ひとりとして映画を勉強した者はいませんでしたし、お金もないなかで「とにかく作ってみよう!」という感じで始めたので。完成させられるか最後までわからないほどの状況だったにもかかわらず、国内外で大きな注目を集めたことはうれしいです。―ご自身のキャリアにとっては、非常に意味のある作品になったのではないかなと。監督確かに、私たちに新たな可能性をもたらしてくれたので、この映画が与えてくれたものは大きかったですね。しかも、上映を続けるなかで、観た方から「自分にとって非常に重要な意味を持つ作品になった」という声もたくさん上がったので、この映画自体がみんなの“扉”を開いてくれるものになったと思います。この作品では、家族の歴史の一部が語られている―監督はこれまでにいろいろな芸術を学んできたそうですが、今回映画を作ろうと思ったのはなぜでしょうか?監督もともと私はメディアと演劇と美術にまたがった勉強を大学でしていたので、映画に特化して勉強していたわけではありませんが、この題材に関しては映画という手法を使いたいと考えて、作ることにしました。ただ、昔から演劇にはずっと関心があったので、劇中でも演劇的な構成は意識しています。映画に関して言えば、今回の制作過程のなかでいろいろな技術を身に着けることができたのは、とてもラッキーだったなと。今後も映画作りは続けていくつもりですが、それだけにとどまらずアクティビスト的なアプローチを含めて幅広く活動していきたいと思っています。―本作では移民や性的マイノリティの描写に関して、自伝的な要素が含まれているということですが、ご自身のことを赤裸々に語ることに対する抵抗はなかったのでしょうか。監督実は、これまで何年にもわたって私は自分の家族と一緒に短編のドキュメンタリーやミュージックビデオなどの作品を制作してきました。そういった経験があったので、今回の映画を作るためのベースはすでにできていたと言っても過言ではありません。劇中で、主人公の両親役は実際に私の両親が演じてくれましたし、この作品に対してもポジティブにとらえて、サポートしてくれました。なぜなら、これは私たち家族の歴史の一部が語られている作品でもあるからです。ドイツでは移民の経験がきちんと語られてこなかった―そういった背景があったのですね。監督私の両親は第一世代としてイランからドイツに移住し、私が第二世代になりますが、これまでドイツでは私たちのような移民の経験がきちんと語られることはありませんでした。そういう意味でも、両親はこの映画を作ることの重要性を理解してくれたんだと思います。だからこそ、映画のなかに自伝的なことを取り入れることにもあまり抵抗がなかったのかもしれませんね。それよりも、重要だったのは、ただ自伝を映画化するのではなく、フィクションを入れるうえで、社会を変えるようなポテンシャルを持った作品にすること。そのあたりは、意識していた部分です。―劇中では、日本のキャラクターである「美少女戦士セーラームーン」のコスプレシーンが印象的でした。監督は日本のアニメファンでもあるそうですが、セーラームーンとの出会いについて教えてください。監督私が初めてセーラームーンを見たのは、幼稚園の頃。ドイツのテレビで放映されていたのですが、それ以来、私の青少年時代において、もっとも偉大な番組と位置づけています。なぜなら、セーラームーンは私にとって自分のアイデンティティを作っていく過程で、大きな助けとなったものだから。セーラームーンは金髪で青い目をしているので、見た目は私と全然違いますが、ほかの番組で私のアイデンティティに訴えかけてくるものはひとつもなかったので、非常に衝撃的な出会いでした。セーラームーンは、ミレニアル世代にとって“事件”―どのあたりが、そう感じさせたのでしょうか?監督もちろんスーパーパワーの持ち主であることも惹かれた理由でしたが、セーラームーンが変身したり、何か秘めたところを持っていたりする姿は、ゲイである私や性的指向が定まっていないクィアの人たちには、ピンとくるものがあるんです。これはドイツ国内だけでなく、国外でも特にクィアの間でセーラームーンの人気は高く、共感する部分があると言われています。あとは、ビジュアル面においても美的感覚を豊かにさせてくれますし、変身のプロセスも興味深いですよね。そういったところも、クィアの文化とつながるところがあるのかなと。セーラームーンは、ミレニアル世代のポップカルチャーにおいて、ある種の“事件”でもあったので、この作品でセーラームーンを使うことによって、自分たちの一部が映画のなかにあると感じてくれる人がいるのではないかと考えて入れました。―興味深いですね。冒頭では実際に監督が子どものころにセーラームーンの衣装を着て踊っている映像が流れ、とてもかわいかったです。ただ、イランでは性的マイノリティに厳しいと言われているそうですが、そのあたりについてはいかがでしょうか。監督確かに、イランではホモセクシュアルやクィアに対して、非常に厳しく、いまだに弾圧されることもあります。ただ、私の両親はドイツに住んですでに30年。「どんな人も排除せずに、みんなで一緒のコミュニティに暮らしていきましょう」という考えを持っています。だから、あのセーラームーンの衣装も、両親が買ってプレゼントしてくれたんですよ。そんなふうに、クィアの私と両親がとてもオープンで親しい関係であるということを最初に示すためにも、父が撮ってくれた映像を使うことは、私にとってすごく重要なことでした。フィクションの世界だけで起きていること、という思い込みを観客にさせないためにも、必要なシーンだったと思っています。世界は思ったよりも、早く変えられると気がついた―なるほど。ちなみに、そのほかにも日本の文化で好きなものはありますか?監督劇中でもお寿司を食べるシーンがいくつかありますが、私だけでなく、ドイツに住む多くの人たちが日本のファンだと言えるでしょう。ジブリをはじめ、多くのアニメ作品が人気ですし、料理や音楽、ゲームといった幅広い分野に渡って、影響を受けているはずです。そういったものに子どもの頃から触れているだけに、私たちにとって日本は重要な文化的経験を与えてくれる国と言えるのではないかなと。私は幼少期からのいろんな経験を通して、芸術の道を選ぶことにしましたが、日本の文化もたくさん蓄積されているインスピレーションのひとつとなっています。―それでは最後に、この映画を通して観客に伝えたいことがあれば、メッセージをお願いします!監督この映画では、3人の主人公とともに、3つの世代も出てきますが、出身や年齢や過去に関係なく、ともに共通の未来を構築しよう、という強い願いを込めています。私がコロナ禍で気がついたのは、「世界というのは、実は思ったよりも早く変わることができるんだ」ということ。以前は人種やジェンダー、LGBTQに対する差別は、どんなに努力してもすぐに変えることはできないだろうと諦めていたこともありましたが、パンデミックを経験したことによって、みんなで世界を変えることが可能であるとわかりました。そういう意味で、いま私は未来に対して希望を抱けるようになったので、みなさんにも同じように希望を感じてほしいです。ポップでスタイリッシュな移民映画が新たに誕生!観る者の心を動かすのは、過酷な状況のなかでも、自らの手で未来をつかもうともがき続ける若者たちの姿。ときには先が見えずに苦しむことがあっても、長いトンネルを抜ければ、誰もが「未来は自分たちのもの」と感じられる瞬間に出会えるはずだと背中を押してくれる1本です。取材、文・志村昌美作品情報「ドイツ映画祭 HORIZONTE 2021」11月18日(木)~21日(日)渋谷ユーロライブにて開催© Juenglinge Film
2021年11月16日「LGBT」という言葉を聞くことが増えたり、ジェンダーレスな人たちの活躍を目にしたりする機会が増えていませんか?「性の多様性」とはいうけれど、子どもたちにどうやって教えてあげればいいのか、悩んでいる人は多いのではないでしょうか?今回は、長崎県人権・同和対策課が発行する「多様な性への理解と対応 ハンドブック」を元に、親だからこそ知っておきたい性の多様性について、考えてみたいと思います。■性の多様性って?一般的に「性別」とは生まれ持っての性差を指します。「性別」では、男性か女性の2択だけですが、現代には、「性のあり方」を理解するために必須な3つの要素をご紹介します。<性のあり方を理解するための3つの要素>からだの性別:からだ(出生届・戸籍)の性性的指向:どういった対象を好きになるか?性自認:自分の性別をどう捉えているのか?これらの要素の組み合わせによって、さまざまなセクシュアリティが存在します。その他にも、性自認や性的指向がはっきりしない人、決めたくない人、女性とも男性とも認識していない人など、さまざまな性のあり方が存在します。この3つの要素を元に考えてみると、自分の性に違和感がない人や異性を好きになる人といった多数派の人もまた、多様な性の当事者であることがわかります。「多数派か少数派か」という2択ではなく、みなが多様な性の当事者だという事実を一人ひとりが受け止めていくことから「多様性」について考えてみるといいかもしれません。■性的少数者はどんな悩みを抱えているの?2020年に電通が行った調査(※1)によると、性的少数者は日本のなかでは8.9%という結果に。その他の調査でもおおむね10%程度の結果が多く(※)、およそ10人に1人が性的少数者であることがわかります。※国や民間の研究機関などによる統計データは、その数にばらつきがあり、はっきりしていません。2019年に長崎県が実施したアンケートから、人数の少なさや偏見、理解のなさから、生きづらさを抱えている人の実態が明らかになりました。アンケートに回答いただいたのは、トランスジェンダー85名(*1)、非異性愛者168名(*2)、性別違和感のない異性愛者435名、性的少数者 253名で、回答者は688名になります。*1トランスジェンダーの中には、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル等の性的指向の方もいますが、この調査では、そのような方も含めてトランスジェンダーに分類しています。*2本アンケートにおいて、性別違和感がなく、異性愛者以外の性別指向を選択された方このアンケートの結果によると、トランスジェンダーで43.5%、非異性愛者では45.8%の方が、「性的少数者であることが要因で暴力などを受けた経験がない」と答えています。逆をいえば半数以上の回答者は暴力などのつらい経験をしていることになり、その割合の高さには驚かされます。また、6割以上の方が、「学校の同級生・先輩・後輩など」から暴力などを受けたとしています。そして一番の理解者であってほしい家族である「父母」からの暴力などが3番目に高く、つらい現状がうかがえます。さらに、「死んでしまいたいと思ったことがある」と回答した人が、トランスジェンダーで61.2%、非異性愛者で51.8%にも上り、続いて多かったのは、「将来に希望を持つことができない」という回答でした。性的少数者であるという事実だけが影響したかどうかははっきりしませんが、この数値は非常に高く感じられます。性的少数者の人たちが抱える苦悩の一端が読み取れます。■覚えておきたい心構え3つ親としては、子どもにそうした様子が見られた場合も想定した対応の仕方として、リーフレットでは3つのアドバイスが送られています。【大切にしたいこと】●肯定的な言葉を使う●カミングアウトを肯定的に受け止める●アウティング(他言)しない具体的にどのようにすればいいのでしょうか?▼肯定的な言葉を使う性自認や性的指向を表現する言葉が多くある中で、中には性的少数者が不快に感じてしまう否定的な言葉もあります。<差別用語の代表例>「普通の人」や「ホモ」、「オカマ」、「オネエ」、「レズ」、「オナベ」、「ニューハーフ」<肯定的な言葉>「レズビアン」、「ゲイ」、「バイセクシャル」、「トランスジェンダー」これまで意識せずに使ってきた言葉には、その気がなくても相手を傷つけてしまう可能性があります。こういった情報をきちんと自分の中で取り入れていくことの必要性がわかります。▼カミングアウトを肯定的に受け止める自身の性自認や性的指向を他の人に打ち明けることを「カミングアウト」といいます。カミングアウトは大変勇気がいるため、信頼している相手だからできる場合が多いようです。だからこそ、もしカミングアウトされたら、肯定的に受け止めてあげましょう。▼アウティング(他言)しない「アウティング」とは、他人の性自認や性的指向を本人の許可を取らずに他の人に話すことをいいます。当事者が意図しないところで、個人のセクシュアリティが知られてしまうと、当事者が傷つき、精神的に追い込まれてしまう可能性もあります。SNSなどでの発信にも十分に注意したいですね。ここまで、性の多様性について、長崎県が発行したリーフレットを元に学んできました。性的少数者の中には、幼少期に学校や家庭の中で理解してもらえず、つらい思いをした人が多くいることもわかりました。性的少数者が自分の性別に違和感を自覚しはじめる時期については、56.6%が「小学校入学以前」だというデータ(※2)もあり、幼い頃から自らの性について思い悩んでいる子どもが多いことがわかります。そうした子どもたちに対して、周囲の大人がどのように受け止めるかは、その子どもの将来にも大きく影響してくるといえそうです。また、子どもに正しい知識と対応方法を教えてあげることで、子ども自身にも差別意識がなくなり、多様な性を柔軟に受け止められることにつながります。まずは親が知識を身につけ、子どもたちにも伝えていくことで、多様な性が当たり前の社会を、軽やかに進んでいってくれることでしょう。【多様な性への理解と対応 ハンドブックとは】長崎県では、多様な性のあり方への理解を深める一環として、県内の性的少数者支援団体「Take it! 虹」(ていく いっと にぃじぃ)と協働して、性の多様性に関する正しい知識や対応などについて、わかりやすく解説したハンドブックを作成。このハンドブックは「令和2年度人権啓発資料法務大臣表彰」の「出版物部門」において「優秀賞」を受賞。長崎県: 「LGBT等(性的少数者)について正しい理解をしましょう」 ※1.データ参照元:電通ウェブサイト 「電通、「LGBTQ+調査2020」を実施」 ※2.データ参照元:公益社団法人 日本小児保健協会 「性同一性障害と思春期」/中塚幹也
2021年11月05日多様性やLGBTについて知ったり、考えるきっかけとなる絵本を親子で読んでみたりするのははいかが? 言葉で説明するのは難しいテーマだけど、絵本でなら子どもが楽しく読みながら学べて、そして考えることができるはず。絵本を紹介してくれたのは、モデルで絵本ソムリエのアンヌさん。多様性とLGBTの内容がスッと入ってくるストーリーと、可愛い絵で描かれているものをそれぞれ4冊ずつピックアップ。親子でぜひ読んでみて。<contents>#01多様性がテーマの絵本4選#02LGBTがテーマの絵本4選多様性がテーマの絵本 #01世界には自分と違う見た目や価値観を持つ人がいっぱいいる!『せかいのひとびと』 世界中の人々の肌や目の色などの見た目のほか、価値観や文化など、それぞれの違いがひと目でわかる絵がたくさん描かれた絵本。子どもに限らず私たちは日常のなかで、よりたくさん目に触れたものを“常識”として認識してしまいがち。例えば、肌の色は黄色で、目の色は黒色、足は2本で、指は5本であること。それ以外は、無意識に“変わっている”と捉えてしまったり……。こちらの絵本を読み、世界を見渡してみると、みんなに違いがあること、そしてそれがおかしなことじゃないということに改めて気づかされる。子どもたちにとっての常識が広がるきっかけになるはず!アンヌさんのコメント「世界には数えられないほどの違いがあるとわかる図鑑のような絵本。鼻も、髪型も、遊び方も、信じてる神様だってそれぞれです。この多様な世界に生きることがどれほど素敵か。説得力のある言葉と繊細な絵で描かれたロングセラー」『せかいのひとびと』作:ピーター・スピアー、訳:松川 真弓(評論社)対象年齢:6歳くらいから多様性がテーマの絵本 #02同じ仲間でもそれぞれ個性がある!『みんな おなじ でも みんな ちがう』 ソラマメ、たまご、サクランボなど、同じ種類の動植物が、見開き2ページにたくさん並べられている絵本。並べられているから、同じ種類でもみんな見ためがちょっとずつ違うことに気づくはず。親子でそれぞれの違いを見つけながら、楽しく読んでみてはいかが? 人間だって同じ種類の生き物だけどそれぞれ違いがある、ということを親子で話し合いたい。アンヌさんのコメント「多様性がひと目でわかる、なるほど納得のユニークで奥の深い写真絵本。アサリの貝殻でも、ひまわりの種でも、うずらの卵でも、みんなそれぞれ大きさや柄があって違う。考えさせられます。同じということ、違うということについて」『みんな おなじ でも みんな ちがう』文:奥井一満、写真:得能通弘、AD:小西啓介(福音館書店)対象年齢:4歳から多様性がテーマの絵本 #03メガネも歯ぬけも髪がなくてもみんな個性!『ええやん そのままで』 車いすの子や盲導犬を連れている子、髪の毛がない子などがカラフルな絵で描かれており、それぞれの個性に対して「ええやん そのままで」と関西弁で肯定していく絵本。自分や他人の個性を認めることを楽しく学べる。アンヌさんのコメント「『ええやん』という関西の言葉で訳されたリズミカルな励まし。小さくたって、メガネだって、たまにはお風呂でランチしたって……。自分の個性、多様な他者を温かみとおかしみで包み込んでくれるような作品。子どもも大人もきっと自分と周りが好きになります」『ええやんそのままで』作:トッド・パール、訳:つだゆうこ(エルくらぶ)対象年齢:3歳から多様性がテーマの絵本 #04個性に悩むカメレオンの姿が描かれたストーリー『じぶんだけのいろ』 動物にはたいてい決まった肌の色があるけれど、カメレオンは行く先々で変化する。こちらの絵本では、決まった肌の色がないカメレオンが、みんなと違うということに悩んでいる姿が描かれる。カメレオンの気持ちを親子で考えながら読んでみてはいかが? 内容はもちろん、アートのようなおしゃれな絵で飾りたくなる1冊。アンヌさんのコメント「オウムは緑。ブタは桃色。みんなは自分の色があるのに、カメレオンは行く先々で色が変わります。そのことになげいていると、目の前にもう1匹のカメレオンが! 自分らしさって、なに? みんなそれぞれでいいんじゃない? 絵のタッチも魅力的な作品」『じぶんだけのいろ』作:レオ・レオニ、訳:谷川 俊太郎(好学社)対象年齢:特になしLGBTがテーマの絵本 #01王子様と王子様の恋愛ストーリー『王さまと王さま』 < 王子様が王子様に恋をして結婚する >というストーリーが描かれる。こちらの絵本の1番の見どころは、王子様同士の結婚を、王女様などの周りの人間が驚くことなく受け入れている様子まで描かれているということ。子どもたちがこれを読めば、男性同士が結婚することも“普通のことなんだ”と認識できるはず。アンヌさんのコメント「王子様と王子様が一緒になる昔話スタイルのお話だってあるべきです。何も驚くことはありません。そんなテンションの語り口と、多様性を尊重する内容はとても現代的。そしてデッサンとコラージュを用いた絵もおしゃれで見入ってしまいます! 」『王さまと王さま』作:リンダ・ハーン、スターン・ナイランド、訳:アンドレア・ゲルマー・眞野 豊(ポット出版)対象年齢:特になしLGBTがテーマの絵本 #02パパがふたりの家庭は変なことじゃない!『マチルダとふたりのパパ』 こちらの絵本の主人公、マチルダにはパパがふたり。その事実を知ったマチルダのお友達は、< ふたりもパパがいるマチルダのお家はきっとおもしろいことがいっぱいあるはず >と思い、ワクワクしながらマチルダのお家へ。でも、行ってみてガッカリ……。それは自分のお家と全く変わらない暮らしをしていたから。さまざまなカタチの家族があるということを、ストーリーを通して知ることができる絵本。アンヌさんのコメント「パールはマチルダと友達になりました。ある日、招待されてお家に行ってみると、期待はずれの展開に。どんな家族もそれぞれだけど、同じように“普通”だと伝わるチャーミングな作品です。見返しの部分にもさまざまな家族構成の絵が」『マチルダとふたりのパパ』作:メル・エリオット、訳:三辺律子(岩崎書店)対象年齢:5才くらいからLGBTがテーマの絵本 #03家族の数だけ家族のカタチがある『いろいろいろんなかぞくのほん』 シングルファーザー&マザー、おじいちゃんっ子、おばあちゃんっ子などなど……。家族の数だけ家族のカタチがあるということを、チャーミングな絵とともに表現した絵本。いろいろな家族のカタチがあることを絵本を通して知ることができたら、家族のイメージが凝り固まることはなくなるはず。アンヌさんのコメント「私たちの周りをよく見てみると、実際にはいろいろな家族のカタチがあるんだと目を開かせてくれる作品。ママがふたりの家、パパだけの家、それに住む家も食べるものもさまざまです。たくさんの違いをユーモアたっぷりに映し出し、違うことへの抵抗がなくしてくれます」『いろいろいろんなかぞくのほん』文:メアリ・ホフマン、絵:ロス・アスクィス、訳:すぎもと えみ(少年写真新聞社)対象年齢:小学校低学年からLGBTがテーマの絵本 #04オス同士のペンギンたちが恋をし子どもを授かるためにしたこととは……『タンタンタンゴはパパふたり』 オスのペンギン同士が子育てをする様子が描かれた1冊。オス同士なので、もちろん妊娠することはできないけれど、飼育員さんがあることをしてふたりは子どもを授かることができる。男同士が恋愛をするだけでなく、子どもをつくる問題にまで踏み込んだ、ディープな内容をやさしいタッチの絵とやわらかい言葉で表現した絵本。アンヌさんのコメント「ニューヨークセントラルパークの動物園にはいろいろな家族がいます。とりわけ飼育員の目を引いたのが、仲よしのロイとシロ。2匹のオスペンギンもみんなと同じように巣をつくり……。実話に基づいた作品ですが、動物の世界にもこういうことがあるのだという驚きがあり、そして家族は多様だという認識が自然に育つ作品です」『タンタンタンゴはパパふたり』作:ジャスティン・リチャードソン、ピーター・パーネル、絵:ヘンリー・コール、訳:尾辻かな子、前田和男(ポット出版)対象年齢:特になし教えてくれた人Anne(アンヌ)さんモデル・絵本ソムリエ。1971年東京生まれ。14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒。 映画、エッセイ、旅、ワインなどのコラム等の執筆を手がける。出産を期に子供の発育と絵本の読み聞かせに関心を持ち、地域での読み聞かせボランティアとしても活動中。6歳の息子に読んで聞かせた本は793冊1202話。現在所持する絵本は約1000冊。
2021年08月31日千葉県浦安市にあるテーマパーク『東京ディズニーシー』は、海にまつわる物語や、伝説からインスピレーションを得ています。東京ディズニーシーにあるアトラクション『タートル・トーク』では、ディズニー映画『ファインディング・ニモ』に登場する、ウミガメのキャラクター・クラッシュと話ができるとして人気です。クラッシュに質問をすると、軽快なトークで楽しませてくれます。同性婚の実現に向けて活動をしている、『Girls Right TV』(@narumi_jenny)の、なるみさんとジェニーさん。クラッシュから話を振られ、「いつか同性婚ができるかな?」と質問したといいます。2021年8月現在、日本では法的に同性婚は認められていません。クラッシュはこの質問に対し、どのように答えたかというと…。海にもいろんな魚がいてお互い言葉は通じないけどみんな仲間だよ。周りの目も気になるかもしれないけど、パートナーが一番大切だから、目の前のパートナーにしっかり愛を伝えてね。みんな2人に応援の拍手を。「いつか同性婚出来るかな?」感動してうろ覚えだけどクラッシュが答えてくれた❤️「海にもいろんな魚がいてお互い言葉は通じないけどみんな仲間だよ。周りの目も気になるかもしれないけど、パートナーが一番大切だから、目の前のパートナーにしっかり愛を伝えてね。みんな2人に応援の拍手を」 pic.twitter.com/IQaRw5nLgG — Girls Right TV #なるジェニ (@narumi_jenny) July 13, 2021 2人の相談に、「周りの目が気になったとしても、しっかり愛を伝えてほしい」とエールを送ったのです。クラッシュの神回答に、「さすがディズニー」「一番大切なことを教えてくれている」「マジ半端ねぇな!」などの声が上がっています。また、「お前たち。最高だぜ!」というクラッシュの決めセリフにちなんで、「クラッシュ、最高だぜ!」といった声も相次いで寄せられていました。クラッシュの助言は、2人の心を軽くしてくれたことでしょう。[文・構成/grape編集部]
2021年08月16日性別や間柄にとらわれない“ジェンダーレスな関係”を描いたエンタメ作品の数々。ラジオパーソナリティ・キニマンス塚本ニキさんが教えてくれました!自分らしくいるために多様な関係性を読み解く。「2015年にアメリカ全土で同性婚が認められたことで、日本でもLGBTなど、多様な性について考えられるようになりましたが、まだまだ新しい価値観を受け入れるのは容易なことではないと思う。だからジェンダーやさまざまな価値観の違いを描いた作品を通して、自分ごと化して、理解を深めてほしい」とキニマンス塚本ニキさん。また多様な関係性を認めると、自分らしくいられることに繋がる場合も。「たとえばドアマンと住民、店員と客といった、恋人や友人のような間柄を表す言葉は存在しないけれど、何気ない日常の中で育まれたフラットな関係に一つの関係性を見出すと、人生が豊かになることもあります」自由を望む女性の幸せを追い求める姿がリアル。ドラマ:『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』鬼才スパイク・リー監督の初期の傑作をリメイク。芸術家のノーラには、タイプの違う3人の恋人がいて…。「3人との関係が心の拠り所になっている一方で、自分のキャリアや黒人女性としてのアイデンティティなど、葛藤や悩みが描かれ、自由で縛られない生き方について考えさせられる作品」Netflixオリジナルシリーズ『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』シーズン1~2独占配信中アラサー漫画家の嘆きや苦しみが赤裸々に!漫画:『迷走戦士・永田カビ』交際経験のない漫画家が、一人で結婚式を挙げた結果、自分には謎のハードルが存在することに気づく。「これは、自己との関係性に焦点を当てた作品。自己分析しながら、満たされないことに対しての果てしない探求が描かれています」。永田カビ著双葉社1000円性に悩み苦しむ少年と多様な人々との交流を描く。漫画:『しまなみ誰そ彼』自分がゲイであることを周りに隠している高校生の少年と、尾道の空き家再生プロジェクトを通して出会う人々との物語。「社会や世間にはびこる差別意識に対して、偏見を受けた当事者の視点で描かれています。目線を変えて読むことができるので、多様性を受け入れるきっかけになるかもしれない」。鎌谷悠希著小学館全4巻693円~さまざまな関係を描いたオムニバスドラマ。ドラマ:『モダン・ラブ ~今日もNYの街角で~』ニューヨーク・タイムズ紙の人気コラムに投稿されたエッセイをドラマ化。「型にはまらない関係性が1話完結で描かれていて、人間関係って本当に多様で、だからこそおもしろいのだと気づかされます」。シーズン2もAmazon Prime Videoにて8/13から独占配信開始。©Amazon Studiosキニマンス塚本ニキさん英語翻訳、通訳業を中心に活動。TBSラジオ『アシタノカレッジ』(22:00~)の月~木曜のパーソナリティ。※『anan』2021年7月21日号より。(by anan編集部)
2021年07月18日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「LGBT法案」です。LGBTと一括りではなく個別の課題解決を。与野党合意で進められていた、性的少数派をめぐる「理解増進法案」は自民党内の強い反対を受け、今国会での提出を断念しました。オリンピック憲章では、いかなる差別も認めず、ジェンダー平等を謳っています。オリンピック開催国でありながら、この法案が成案できないというのは恥ずかしい状況だと思います。2014年のソチオリンピックでは、ロシア政府が同性愛を認めないとLGBT運動を弾圧したため、各国の首脳は抗議の意を示し、開会式の参加をボイコットしました(日本は参加していました)。自民党内でも、稲田朋美議員をはじめ、LGBT当事者と対話を重ねてきた議員はなんとか成案させようと与党幹部に詰め寄りましたが、「家族観が壊れる」など、ベテラン議員からのクレームがついて進みませんでした。もともと野党は、ヘイトスピーチや、同性愛者という理由で入居を拒否されたり、社内で差別を受けたりすることを禁止する「差別解消法案」を提出していました。それに対して自民党はLGBTの人々の実情をまず知ってもらおうと「理解増進法案」を進めていました。結局、自民党案を修正する形で与野党合意したのですが、「差別は許されない」という文言に対して、与党内の保守派が「権利を与えることで、権利を極度に主張されると訴訟が起こり、かえって分断を生む。何をもって差別とするかを定義づけないかぎり法案は認められない」と強硬姿勢を崩さず、国会提出も叶わなかったのです。たとえ法律ができたとしても、差別感情を持つ人の意識が一変するわけではありません。理解を深めるためには、対話や交流の場を増やすことが肝要なのだと思います。残念なのは、この制度を決める国会議員の中に、公表しているLGBT当事者がほとんどいないということです。議員の多様性のなさにも問題があると言わざるを得ません。最初からLGBT法案に賛成か反対か、という二択から始めるのではなく、もっと小さな主語で、性別の問題で困っているさんの課題に対処するには、どんな方法があるのか。具体策を一つずつ見出すことが、状況改善の糸口になるのかもしれません。堀潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2021年7月21日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2021年07月17日梅雨真っ只中だと、つい気分までジメジメしてしまうことはありませんか?そこで、今回ご紹介するのは、フランスから届いたカラッと晴れやかな気分にしてくれるオススメの注目作です。『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』【映画、ときどき私】 vol. 396オリンピックの銀メダリストとして活躍していた水泳選手のマチアス。ある日、同性愛者への差別発言によって世界水泳大会への出場資格をはく奪され、罰としてゲイのアマチュア水球チーム「シャイニー・シュリンプス」のコーチをすることとなる。彼に課されたミッションは、弱小チームを3か月後にクロアチアで開催されるLGBTQ+のオリンピック“ゲイゲームズ”に出場させることだった。ところが、メンバーは勝ち負けにこだわらないパーティ好きなお調子者ばかり。マチアスは適当にやり過ごそうとしていたが、悩みを抱えながら明るく生きるメンバーたちと触れ合うなかで、少しずつ心を開いていくことに。次第にまとまってきた彼らを待ち受ける結末とは!?本国フランスでは、2019年に公開され、初週動員数No.1に輝くなど、大ヒットとなった本作。そこで、実在するゲイの水球チームにインスパイアされて誕生した物語の裏側について、こちらの方々にお話をうかがってきました。セドリック・ル・ギャロ監督 & マキシム・ゴヴァール監督共同で監督と脚本を務めたのは、実生活で「シャイニー・シュリンプス」に7年間所属しているセドリック監督(写真・左)とプロデューサーの紹介によってセドリック監督と運命の出会いを果たしたマキシム監督(写真・右)。作品が完成するまでの道のりや実際のメンバーたちによる驚きのエピソード、そして日本への思いについてお話いただきました。―今回、おふたりでの共同作業は、どのように進められたのでしょうか?2人だったからこその強みなどがあれば、教えてください。マキシム監督まず、僕はセドリックとは違ってチームのメンバーでもないし、ゲイでもないので、脚本を書くにあたっては、僕が彼にインタビューをするような形式を取りました。そうすることで、彼にとっては普通のことでも、外から見たらおもしろいと感じることを見つけられるのではないかなと。それから、最初に同性愛者へ理解のなかったマチアスを描くうえでも、当事者ではないからこそ僕の意見が活かせると思ったのも理由です。なので、セドリックが素材で、僕が視点というバランスで作業を進めていきました。―なるほど。その過程で、意見が食い違うことはありませんでしたか?セドリック監督どういう流れでストーリーを展開させるかということや映画のトーンに関しては、最初から僕たちの意見は同じでしたね。もちろん、細かい部分やセリフの言い回しなどで話し合わなければいけないときも多少ありましたが、作品の方向性やアイディア、ユーモア、感情の部分などの本質的なところは一緒だったかなと。違いといっても、本当にちょっとしたことでした。ただ、フランスでは「悪魔はディテールに潜む」と言いますからね……。マキシム監督そうだね(笑)。世界選手権の結果については意見が正反対にわかれましたが、それぐらいかなと思います。今回、僕たちが目指したのは、LGBTQ+のコミュニティの人たちだけではなく、誰もが楽しめる作品にすること。そのために、お互いにインスピレーションを与えながら、修正をかけていくことを心がけました。結果的に、現実を裏切ることのない楽しい作品に仕上がったと思っています。勝つことより大事なのは、一緒に体験すること―映画のなかに、実際のチーム内で起きた出来事が反映されているシーンなどもありますか?セドリック監督具体的なエピソードというのはありませんが、チームのスピリットや雰囲気というのは、そのまま活かされていると思います。特に、試合に勝つことよりも、みんなで一緒にいることや笑い合って過ごすことの大切さを重視しているところは、まさに僕のチームと同じですね。―個性豊かなメンバーが繰り広げるウィットに富んだ会話のやりとりも、非常に面白かったです。モデルになっている方はいますか?セドリック監督実際のチームには35人のメンバーがいて、20代の学生からすでに退職した60代の人まで、幅広い年代で構成されています。本当に多様性に富んだ人たちが集まっているチームなので、映画のキャラクターはそれぞれのメンバーの個性を散りばめて作り上げました。劇中で、ジャンという人物が「世の中には、ゲイじゃないのに不幸な人もいるんだよ」といったことを言いますが、それは僕のチームメイトがよく「ゲイで幸せだ」といった言葉を口にするので、それが基になって生まれたセリフです。―マキシム監督は、実際のチームと一緒に時間を過ごすなかで新たな発見もありましたか?マキシム監督僕が驚いたことは、2つありました。まずひとつめは、スポーツに対する考え方がまったく違うこと。僕は体育会系なので、どうしても勝つことに重きを置いていますが、彼らは勝つことに全然興味がないんですよね。なぜなら、彼らにとって大事なのは、行動をともにし、体験をシェアすることだからです。それを知ったとき、「この映画を撮る価値はある」と確信しました。もうひとつは、おもしろかった話なんですが、セドリックの友達のひとりにコスプレ好きがいて、トーナメントに出発する際、衣装を詰め込んだ大きなスーツケースを持ってきたんです。それほど衣装を持ってきたにもかかわらず、唯一持ってくるのを忘れたのが競技用の水着でした(笑)。でも、これこそまさにチームの精神性を体現している出来事だなと感じたので、僕の大好きなエピソードです。理解し合うのに必要なのは、お互いに対する寛容さ―ますます「シャイニー・シュリンプス」を好きになるお話ですね。セドリック監督は、チームに入ったことでご自身の人生にどのような変化がありましたか?セドリック監督実は、このチームに入るまで、僕にはゲイの友達がいませんでした。もちろん普通に友達はいたので、決して不幸だったわけではありません。でも、同じ価値観や思考を持っている友達の存在が、人生においてこんなにも大事なことだとは知りませんでした。それまで自分が経験してきたことを自由に話せることも、それを共有してお互いにアドバイスし合えることも、自分にとってこんなに大きなことだったとは考えもしなかったので。それに、彼らは他人と違うことに対してとてもオープンマインドなので、これまでだったら人と違うと敬遠されていたものが、むしろ違うことを褒めてくれるのです。そういう考え方のおかげで、自分のことをより“開拓”できるようになったのではないかなと思います。あとは、こうして日本から取材を受けていること自体、人生が大きく変わった証拠ですよね(笑)。―劇中では、同性愛者に偏見があったマチアスがどんどん変わっていく姿が描かれていますが、そんなふうに違う者同士がお互いを理解しあうのに必要なことは何だと思いますか?セドリック監督まず大切なのは、寛容な心だと思います。ただ、どちらかが寛容さを持てばいいというわけではありません。つまり、お互いが相手の社会に対して寛容な心を持つことが必要だという意味です。たとえば、いまはSNSで相手を中傷した場合、傷つけられた人はすぐに激しく反論してしまいがちですが、その前に「なぜ自分は傷ついたのか」ということをきちんと説明するべきだと僕は思っています。社会にはまだ同性愛に嫌悪感を抱いている人や道理が通じない人もいますし、そもそも同性愛に対してまったく知識がない人もいるので、そういう人たちには、まず教えるところから始めるべきなのかなと。特に、SNSだとヒートアップしやすいので、対立してしまうかもしれませんが、罵倒し合うのではなく、わかってもらう努力をする必要もあるように感じています。だからこそ、それぞれの人物の人生をじっくり描ける映画を通して理解してもらいたいです。マキシム監督セドリックが言ったことに付け加えるなら、大切なのは好奇心。相手のことを無視したりすることなく、好意的な目線を持つことも重要だと僕は考えています。日本での撮影がいまから楽しみで仕方ない―ありがとうございます。話は変わりますが、エンドクレジットでセーラームーンのコスプレをしている写真が非常に気になりました。実際の試合のときに撮られたものですか?セドリック監督セーラームーンの衣装は、パリのトーナメントのときに僕たちが実際に着ていたものです。僕のチームはみんなコスプレがすごく好きで、つねに新しいアイディアを探していますからね。おそらくそれは、メンバーのひとりに日本のカルチャーオタクのような人がいて、彼が日本のアニメや歌が大好きなので、その影響もあると思いますが。とはいえ、フランスでも僕らの世代は日本のアニメが大好きで、小さいころは「セーラームーン」はもちろん、「キャッツ・アイ」とかもよく見ていました。そういったこともあって、劇中にも取り入れることにしたんです。マキシム監督もしかしたらですが、第2弾でセーラームーンが再登場するかもしれませんよ。―それはどういう意味でしょうか?セドリック監督実は、本作の続編は日本での撮影を予定しているんですよ!そのときにセーラームーンを登場させるかどうかをいま話し合っていて、アイディアとして盛り上がっているので、みなさんがスクリーンで見れる可能性は高いんじゃないかなと思います。―次回作でのコスプレも、日本を舞台にどのような展開が繰り広げられるのかも楽しみにしています!セドリック監督うまく行けば、今年の10月に日本で撮影をすることになりますが、僕たちもキャストたちも日本のカルチャーのファンなので、「早く日本に行きたいね!」と話しているところです。マキシム監督そうだね。僕は日本の伝統と近代性のコントラストや料理、音楽など、すべての文化が大好きです。もちろん、日本の女性もね(笑)。なので、日本に行けることが夢のようです。セドリック監督僕は日本の楽しいゲイのみなさんのことも好きですよ(笑)。以前、1度だけ仕事で日本には行ったことがありますが、滞在時間が48時間くらいしかなかったので、また絶対に戻ってきたいと思っていました。本当に、楽しみにしています。笑いと感動が止まらない!さまざまな悩みを抱えつつも、ユーモアとノリで我が道を突き進む「シャイニー・シュリンプス」のメンバーたち。自分が目指すべき“ゴール”とは何かを決められるのは、自分だけだと気づかせてくれるはず。笑いながら、思わず涙が出ちゃう最高のラストシーンも必見です。取材、文・志村昌美笑顔にしてくれる予告編はこちら!作品情報『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』7月9日(金)全国公開配給:ポニーキャニオン、フラッグ© LES IMPRODUCTIBLES, KALY PRODUCTIONS et CHARADES PRODUCTIONS
2021年07月08日6月は「プライド月間」と呼ばれ、LGBTの権利について啓発を促す活動が世界各地で行われています。そんななかでオススメしたいのは、海外でも高く評価されている話題のドキュメンタリー映画『息子のままで、女子になる』。今回は、こちらの方々にお話をうかがってきました。サリー楓さん&杉岡太樹監督【映画、ときどき私】 vol. 388建築デザイナーやモデル、コメンテーターなど、幅広い分野で活躍し、トランスジェンダーの新しいアイコンとして注目を集めているサリー楓さん。本作では、楓さんの新たな挑戦や日常生活だけでなく、初めて家族と対話する瞬間にまで杉岡監督が鋭く切り込んでいます。そこで、おふたりに撮影の裏側や多様性のある社会に必要なものについてそれぞれの思いを語っていただきました。―約1年半にわたる密着となりましたが、ご自身で作品をご覧になっていかがでしたか?楓さん今回は、私のライフイベントが次々と発生するところにたまたまカメラが居合わせていただけなので、私にとっては日常の記録みたいな感じでしたね。ただ、自分では普通だと思っていたのに、私は日常を過ごすことにこんなにもエネルギーを使っていたんだということを改めて知りました。―最初に楓さんに会ったとき、監督はどのような印象を受けましたか?監督まずは、フォトジェニックな存在だと思いました。彼女は外見的な美しさを持ち合わせているだけでなく、内面にあるものが表情や動きにそのまま出るタイプだったので、撮る人間からすると最高の被写体だなと。撮っていて楽しいと感じる人じゃなければ、もしかしたら1回目の撮影でやめていたかもしれませんね。―撮影するなかで、忘れられない瞬間といえばどの場面ですか?監督やっぱりお父さんとのシーンですね。あの場にいた全員が極限状態だったと思います。楓さんとお父さんだけでなく、もし僕にもカメラが向けられていたら僕もすごい表情になったいたんじゃないかなというくらい。でも、あのシーンを見れば僕らがどういうことを訴えたいのかというのは伝わると思っています。当事者とその親御さんにも発信したいと感じた―とはいえ、楓さんとしては葛藤もあったのではないでしょうか?楓さん実は、私は両親が出ることに最初は大反対でした。これまで両親とジェンダーについて話すことをずっと避けていたというのもありますし、そういう気まずいことをあえてカメラの前ですることが嫌だったからです。でも、トランスジェンダーのリアリティを伝えるためのドキュメンタリーなのに、親子関係という一番リアルな部分が映っていなければ、何も伝わらないんじゃないかなと。そこが腑に落ちてから納得はしましたが、内心では「両親が『出るわけないだろ』と断ってくれないかな」と期待していました(笑)。監督あはは!それは残念だったね。楓さん両親が出ると言ってから私にとっての"地獄"が始まったわけですが、それによってトランスジェンダー当事者だけでなく、カミングアウトされた親御さんに向けても発信できるのではないかと思うようになりました。ある日突然、自分の子どもにカミングアウトされたお父さんやお母さんは、当然困惑しますよね。おそらくそこでほかにも同じような親子がいるのかを調べると思いますが、そのときにこういう映画があるのとないのとでは、理解度が違うのではないかなと。当時、私に乗り越えられるかどうかわからない壁でしたが、いまはやってよかったなと感じています。ちゃんと乗り越えられたどうかは自分ではわかりませんが……。監督ゴールはないかもしれないけど、僕から見ると乗り越えていたと思うよ。だから、いまこうしてインタビューを受けることになっているんじゃないかな。楓さん私が勇気を出したとか、努力をしたというよりも、両親がこの話に乗って来たことで、ジェットコースターに乗せられちゃったみたいな感じです(笑)。監督(笑)。ただ、僕からも補足したいのは、彼女が抱えていた親子関係というのは、日本のLGBT当事者における懸念事項の大きな部分を占めていると言われていて、多くの人が共有できることだという思いから撮りたいと伝えました。それともうひとつの理由は、(映画の中で出てくる)講演活動やメディア出演のなかで彼女は「自分のジェンダーを親に認めてもらえない」という話をするのですが、それを一面的に発信するのは、フェアではないと思ったから。なので、もし出演を断られたとしても、お父さん自身の言葉を聞くアプローチはするべきだと考えていました。なぜなら、それが表現をする人間としての責任だと感じていたからです。事なかれ主義で自分だけ逃げたくなかった―なるほど。作品のなかでもお父さんのリアルな表情は非常に印象的でした。監督お父さんが本当にすごいなと思ったのは、初めてレストランで会ったシーンを撮影したとき。映画では空席から始まって、楓さんとご両親が入ってくるんですけど、その前に挨拶や「ここから入ってくる振りをしてください」といった打ち合わせがあったわけではなく、お店に入ったらいきなり撮影が始まっているという状況だったわけですよ。内心はどう思われていたかわかりませんが、何も言わずにそれを受け入れてくれたところに楓さんへの愛や親としての責任といった大きな何かを感じました。―実際、この映画を経て親子関係は変わりましたか?楓さんそうですね。それまではジェンダーについては触れてはいけないとモヤモヤしていましたが、いまはそれがなくなって話しやすくなったようには感じます。でも、以前の私たちのようなぎこちない親子関係というのは、おそらく日本中にたくさんあるんじゃないかというのは、今回の撮影を通じて考えるようになりました。私はたまたまこういう機会があったので、乗り越えられましたけど、実は私もずっと避けてきたことでしたから。同じようなことに思い悩んでいる人はたくさんいるはずなので、いまはそういう方々にこの映画が届けばいいなと思っています。―これまでに私もトランスジェンダーの俳優さんや監督に取材したことがありますが、どこまで踏み込んでいいのかについて悩んだことがあります。監督はどのような意識をされていましたか?監督事前に楓さんにも伝えたのですが、僕はカメラを持ったらブレーキが効かないタイプだという自覚がありますし、そもそもカメラは“暴力的な装置”だとも思っています。なので、もしかしたら傷つけてしまうことがあるかもしれないから、それが起きてしまったときはきちんと教えてほしいというのは伝えました。撮影の合間でも、不当な扱いをされていると感じないか、差別的なことを言われたと感じないか、ということは何度も楓さんに確認しながら進めるようにしました。ただ、そのいっぽうで僕が勝手にボーダーを決めて「これ以上は踏み込まない」とすることは僕のエゴなのではないか、という思いがあったのも事実です。覚悟を決めてカメラの前に立ってくれている人に対して、事なかれ主義で自分だけ逃げるのは失礼なのではないかと。なので、「自分が聞きたいことは聞く、撮りたいものは撮る」という部分も同時に心がけてはいました。ジェットコースターのような作品に仕上がった―そういう監督だから、楓さんも自分をさらけ出せた部分もあったのでは?楓さん私としてはさらけ出さなきゃというよりも、ただありのままでいただけですね。監督が“いじわるな人間”であることは知っていたので(笑)。監督あはは!楓さん最初はカメラの前でいつもよりもメイクをがんばって気合いを入れていましたが、それもだんだん飽きてきて、スッピンを1回撮られたらどんどん気が抜けていってしまって。でも、そういう瞬間が一番リアリティがありますよね。ちなみに、私的に映画に使ってほしくない映像が全体の5%あったとしたら、その5%全部が使われていました……。なので、映画を観たときに「あれもこれも映ってるの!?」みたいな(笑)。でも、最初から“いじわるジェットコースター”に乗ってしまったとわかっていたので仕方ないですよね。監督ただのジェットコースターから、いじわるジェットコースターになってきましたけど……。インタビューの終わりにはすごいことになってそうだな(笑)。楓さん(笑)。まあ、自分からジェットコースターに乗ったのに、「なんでここで落ちるんですか!」とクレームをつけられないですからね。観る方によっては、泣いてスッキリしたという人もいれば、落ち込む人もいるかもしれませんが、ジェットコースターのようだということだけは伝えておきます。監督そうだね。メリーゴーランドやティーカップだと思っていたら、振り落とされるかもしれないね。世の中にある間違ったイメージを払拭したい―では、みなさんには覚悟してご覧いただくということで。劇中で楓さんは、「世の中に広がっているトランスジェンダーのイメージが間違っている」とおっしゃっていましたが、実際にはどのような違和感を抱かれていますか?楓さん私がカミングアウトしたのは大学院生のときですが、当時はまだトランスジェンダーという言葉がいまほど普及していなくて、私もLGBTという言葉を知ったことでようやく自分が何者であるかを知ったほどでした。大学では、私より先にカミングアウトしていた方がいたのですんなり受け入れられたんですが、それ以外のところだと、「どんだけ〜」とか言われたり、「男の声出してみて」とかおもしろいことを求められたりすることが多かったですね。あとは、逆に「それはつらかったね」という反応もありましたが、私としては「そんな山あり谷ありみたいな人生送ってませんけど……」みたいな感じでした。そんなふうに、カミングアウトした瞬間に突然エンターテインメントみたいな扱いをされたり、感傷的に見られたりすることに違和感があったんです。でも、その原因はトランスジェンダーで検索したときに芸能情報のようなものはたくさん出てきても、就職や実生活の役に立つような情報がまったく出てこないことにあるんじゃないかなと。このままだとカミングアウトしようとしている人が私と同じような思いを味わうことになると思ったので、ロールモデルとして参考にしていただけるように、ブログやSNSを使って発信することにしました。カミングアウトされる側にも伝えたいことがある―当事者の方々には大きな助けになったと思います。ただ、いっぽうでカミングアウトされる側の情報が少ないことも、どういう対処をしていいかわからない原因かもしれません。そのことについて楓さんから伝えたいことはありますか?楓さん自分らしくいることや多様性がこんなに肯定される時代ってこれまでなかったんじゃないかなと感じています。だからこそ、誰かにカミングアウトされたときに、「“LGBTフレンドリー”が目指されている時代だから、受け入れなきゃいけない」みたいに気負ってしまって、本当はまた受け入れられていないのに、理解した振りをしている人もいるのではないかなと。でも、そんなふうに装ってしまうことほど悲しいことはないと思っています。たとえば、私の父はカメラの前でも嘘つくことなく、「自分はまだ理解できていない」といったことを言っています。確かに、18年間ずっと息子として一緒に生活してきたのに、突然「女子です」とメイクして現れた息子を急には受け入れられないですよね。多様性が尊重されている時代だから受け入れなきゃというよりも、自分なりに考えてわからないことがあれば、「わからない」とちゃんと伝えたほうがいいと私は思っています。そうしないと、お互いに学び合う機会を失って、表面的な理解だけにとどまってしまうと感じているからです。―正直に話してくれている相手には、正直な思いを伝えたうえで向き合うことのほうが大事なんですね。監督ただ、これは親子だから言える部分もあるのかなとは思います。他人が同じことをした場合、それが許されるのかな?楓さん確かに、難しいところかもしれないですね。家族や親友にカミングアウトされたとき、受け入れるのが困難な場合もあると思いますが、その裏には「就職活動で不利にならないかな」とか「これが原因でいじめられないかな」といった相手を気遣うがゆえに想像力が働くこともあるじゃないですか。つまり、守りたい相手の幸せを願うからこそ理解が示させない場合もあるので、私は理解が示せないことが一概に悪だとは思っていません。だから、理解できる人がいい人で、できない人が悪い奴みたいな単純な話ではないのかなと。理解できない人にもできないなりの愛や思い入れがそこにはあるのだということも、この映画を通して発信していけたらいきたいですね。無理に自分らしく振る舞わなくてもいい―非常に興味深いお答えをありがとうございます。では、多様性の尊重される社会に必要なのはどんなことだとお考えですか?監督僕は、寛容さだと思います。さまざまな価値観が肯定されようとしているいまの時代は自分が承服できないものであふれているという側面もあるはずなので、ストレスを感じている人も多いかもしれません。でも、そこにストレスがあったら、おそらく多様性がある社会で生きるのは難しいので、自分が受け入れられないものに対しても、「だからこそ世界は豊かだよね」と、でこぼこ道の人生を楽しめるマインドになれたらいいですよね。楓さんまず「多様性」という言葉はLGBTや弱者のためのものではなく、他者を認めず排除しようとしている人や多様性を望まない人たちも含まれると私は考えています。それこそが多様性なので、誰が間違いとかではなく、それぞれが一人称の視点を持つことが必要だと思います。あと、いまは自分らしさや他人と違うことを求められることが多いですが、あまり多様性に理想を抱きすぎないというのも大事かもしれません。もちろん人と違うということが自分らしさにもつながっているところはありますが、「人と違わなきゃいけない」と思いながら発見する自分らしさは、結局のところ自分らしさではないと思います。奪われそうになっても絶対に譲れないものや削っても削っても自分の内側にある”燃え残った芯”のようなもの、それこそが本当の自分らしさだと私は思っています。ただ、「無理に自分らしくしなくてもいいんじゃない?」というのも付け加えたいですね。自分らしくしないという決断もありだと思うので、そういう選択肢がある社会になったら素晴らしいんじゃないかなと。監督確かに、自分らしさなんて自然と生まれてくるものなので、そこで焦らなくていいと僕も思います。いっぽうで、「あれはダメ」とか「こうしなきゃいけない」とか周りから言われることもありますが、これから未来で活躍する人たちには窮屈な思いをせずにありのままの自分でいてほしいですね。そういったこと含めて、まずはこの映画を観ていただければ、わかると思います(笑)。インタビューを終えてみて……。この作品を通して、何でも言い合える“戦友”のような関係になったことが感じられる楓さんと杉岡監督。ユーモアを交えつつも、核心をついたひと言ひと言は、どれも興味深いお話ばかりでした。今後もおふたりがどのような発信をされていくのか、注目していきたいと思います。決められるのは自分自身だけ!誰もが葛藤や挫折を経験する日々のなかで、自らの手で道を切り開いていく楓さんの姿に、自分のなかにも眠っていた“何か”が目覚めていくのを感じられるはず。ジェットコースターのような106分の先に、新たな自分と出会ってみては?写真・安田光優(サリー楓、杉岡太樹)取材、文・志村昌美サリー楓ヘアー&メイク/TAYAストーリー男性として生きていくことに違和感を持ち続けていた楓は、これからの人生を女性として生きていくと決断する。幼いころから夢見ていた建築業界への就職も決まり、新たな人生は動き始めていた。そんななか、ビューティコンテストへの出場や講演活動がきっかけとなり、メディアでも注目を集める楓。セクシャルマイノリティの可能性を押し広げたいと語るいっぽうで、父親に認められたなかった息子というセリフイメージから抜け出せずにいた。そして、自分らしい未来を手にするため、ある決断をすることに……。心を揺さぶる予告編はこちら!作品情報『息子のままで、女子になる』6月19日(土)より、ユーロスペースほか全国順次公開配給:mirrorball works© 2021「息子のままで、女子になる」写真・安田光優(サリー楓、杉岡太樹)
2021年06月18日LGBTQ+をテーマとした映画を、ジャンルを問わず国内外からセレクションして上映する「第29回レインボー・リール東京(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)」の上映プログラムが決定。全14作品の内、13作品が日本初上映となる。シネマート新宿では8作品を、シネマート心斎橋で7作品を上映。また、アジア・太平洋地域の新作短編映画を紹介するプログラム「QUEER×APAC 2021」では、6作品をオンライン上映する。世界各国で受賞、評価された作品が並ぶ充実のラインアップとなっている。新型コロナウイルスによるコロナ禍の状況は、映画館の休業や、新作映画の公開延期など、映画業界に大きな影響をもたらしている。また、日本のLGBTQ+においても、今年3月に札幌地方裁判所が「同性婚を認めないのは違憲」とする判断をした一方、5月にはLGBT理解促進法案の国会への提出が見送られたことも物議を醸した。いまこそ、大きなスクリーンで、あるいはオンラインでも、多様性溢れる世界中の優れた作品に触れることのできるチャンスとなっている。『世紀の終わり』2019・アルゼンチン★日本初上映バルセロナで偶然出会ったアルゼンチン人とスペイン人の男性2人。一夜だけに見えた男たちの関係は、20年にわたる壮大な愛の記憶を呼び起こす。時間の概念を巧みに操り、恋人との過去・現在・未来を描いた究極のラブストーリー。『WEEKEND ウィークエンド』(第21回上映)や『君の名前で僕を呼んで』を彷彿とさせる本作は、各国の映画祭で上映され人気を博した。2019年を代表する作品。『ストロベリーミルク』2020・オーストラリア★日本初上映母を自殺により亡くし、独りで家に取り残された16歳のクローディア。外の世界を知らない彼女が、グレースという同い年の少女に出会う。家族と衝突し、家に居場所のないグレースもまた独りだった。彼女たちは閉ざされた森の中で2人だけのカラフルな世界を築き上げていく。2人の愛おしい夏の日々は瞬く間に過ぎ、やがて…。叙情的な映像美で少女たちの初恋とシスターフッドを描いた、オーストラリアの新星ケイティ・ファウンド監督の長編デビュー作。『ノー・オーディナリー・マン』2020・カナダ★日本初上映1940年代から50年代に活躍したのち表舞台から姿を消したジャズミュージシャン、ビリー・ティプトン。1989年に死去後、「キャリアのために性別を隠していた女性」と報じられ、ビリーの家族に世間から好奇の目が向けられる。彼がトランス男性だった事実は語られることなく…。本作はビリーの人生を再構築し、その素顔に迫るドキュメンタリー。トランスジェンダーの文化人が多数登場し、ビリーがトランスコミュニティに遺したレガシーをふり返る。『親愛なる君へ』2020・台湾★日本初上映※特別先行上映 7月23日(金・祝)シネマート新宿・心斎橋ほか全国順次公開老婦・シウユーの介護と、その孫のヨウユーの面倒をひとりで見る青年・ジエンイー。血のつながりもなく、ただの間借り人のはずのジエンイーがそこまで尽くすのは、2人がいまは亡き同性パートナーの家族だからだ。しかしある日、シウユーが急死してしまう。病気の療養中だったとはいえ、その死因を巡り、ジエンイーは周囲から不審の目で見られるようになる。警察の捜査によって不利な証拠が次々に見つかり、終いには裁判にかけられてしまう。だが弁解は一切せずに、なすがままに罪を受け入れようとするジエンイー。それは全て、愛する“家族”を守りたい一心で選択したことだった…。金馬奨3部門受賞をはじめ、台北映画奨、台湾映画評論家協会奨でも受賞するなど、大きな話題を呼んでいる本作が特別先行上映作品として登場。『シカダ』2020・アメリカ★日本初上映ブルックリンに住むベンは、日々の仕事を渡り歩きながら、様々な男女と一夜限りの肉体関係を持ち続けていた。ある日、ベンは古書店で黒人のサムと出会う。蝉の声が響き渡る夏の間、ベンとサムは急速に関係を深めていくが、次第にそれぞれが抱えるトラウマが2人の前に立ちはだかる。監督・主演のマシュー・ファイファーが自身の幼児期の体験とサム役のシェルダン・ブラウンの実体験をベースに描いた、痛切で親密なラブストーリー。『恋人はアンバー』2020・アイルランド★日本初上映90年代半ば、アイルランドの田舎町。高校生のエディは父の後を継いで軍隊に入ることを望み、アンバーは自由な大都会ロンドンに引っ越すことを夢見ている。2人の共通点は同性愛者だということ。周囲にセクシュアリティを悟られないようカップルを演じることにしたエディとアンバーだが、やがて2人の“理想的”な関係は崩れ始め…。自分らしく生きることにもがく10代の男女の友情をハートウォーミングに描いた青春映画の傑作。『叔・叔(スク・スク)』2019・香港★日本初上映退職が間近に迫ったタクシー運転手のパクと、すでに引退しているシングルファーザーのホイ。2人の出会いが長年抑制し続けてきた感情を呼び起こす。しかし、一緒に将来を築くには乗り越えなければならない壁がいくつも存在していた。同性愛とエイジングという問題を当事者やゲイ・コミュニティなど多角的な視点から描く。第70回ベルリン国際映画祭など各国の映画祭で上映され、中華圏で最大の映画賞である金馬奨で5部門にノミネートされた話題作。『であること』 2020・日本海外コーディネーターとして、テレビ業界で生きる西山ももこは、日々の仕事の中で、ふと疑問を持つ。西山はLGBTQにカテゴライズされている人たちに、彼らが積み重ねてきた内省や思索を聞くべく、訪ね歩くことを決意。友人をはじめとした9人に率直な疑問を投げかけ、自分自身“であること”を聞くうちに、西山はさらなる疑問を持ち始める。対話をくりかえす中で、「LGBTQ」「マイノリティ」「男と女」…様々な言葉で区別してきたものの境界線は、次第に曖昧になっていく…。数々のテレビ放送に関する賞を受賞してきた和田萌が、独自で多様な生き方をしている人々を追ったドキュメンタリー。QUEER×APAC 2021 ~アジア・太平洋短編集~【オンライン上映のみ】★日本初上映アジア・太平洋地域の新作短編映画を紹介するプログラム。今年は特別にオンライン版で上映。各国のフレッシュな才能による、新しいクィア表現を堪能してみては。『フロス』2019・中国ティンは新しい恋人のマークの“歯”にフェティッシュなまでの強い性的魅力を感じていた。ティンはマークにこのことを打ち明けたいと思っているが…。『リップスティック』2019・台湾/韓国隠し持っていたリップスティックを同級生に見つけられ、ひどいイジメに遭う高校生。ある日、コインランドリーで出会った少女と出会い、2人でトンネルに入っていく。『ウィッグ』 2019・インドアルティカは自立したキャリアウーマン。仕事帰りによく見かけるセックスワーカーのトランス女性を助けたことをきっかけに、自分自身の偏見と向き合う。『キラン』2021・パキスタンもうすぐ花嫁になる女性に、メヘンディ(ヘナタトゥー)を施す絵師のキラン。女性と親密な時間を過ごすうち、キランはあることを思いつく。『アイス』2019・韓国覚醒剤(アイス)の取引のため地方へ向かう2人の男たち。途中、覆面警官に追われているのではないかと怯えるが、取引を約束した場所までたどり着く。『ストレンジャーズ』2019・オーストラリア老人ホームに入居中の母親が入居者の女性と同じベッドに寝ていたと連絡を受け、困惑する娘と息子。対応を探る職員は…?第29回レインボー・リール東京(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)は7月16日(金)~7月22日(木・祝)シネマート新宿にて、7月23日(金・祝)~7月29日(木)シネマート心斎橋にて(各会場:計7日間 合計:14日間)開催。オンライン上映作品・配信期間:7月16日(金)19時~7月29日(木)23時59分まで。(text:cinemacafe.net)
2021年06月16日世界各国で、セクシュアルマイノリティ(通称:LGBTs)など、いろいろなマイノリティに対する考え方は徐々に変わってきています。「人権や多様性を尊重する」というのは、一見当たり前のように感じるもの。しかし根深い差別意識や偏見によって、なかなか社会に認められないのが現状です。2021年5月24日、自民党はLGBTsへの理解を促進するための法案について審査を行いました。議論では肯定的な声も多い中、「人間は生物学上、種の保存をしなければならず、LGBTsは背いている」という意見も。懸念について国会で議論することを条件に、法案は了解されました。日本の『多様性への理解』に有働由美子アナがズバリ同日に放送された情報番組『news zero』(日本テレビ系)では、今回の審査について特集。そこで、1本の動画を紹介しました。映っているのは、2013年にニュージーランドで行われた、同性婚を認める法案審議での議員の発言。議員は「私たちがやろうとしているのは、愛し合う2人の結婚を認めることだけ」「この法案は関係のある人には素晴らしいもので、関係のない人は今まで通りの人生が続くだけだ」と、同性婚に肯定的な意見を述べました。このスピーチは以前からネットで何度も話題になっており、多くの人から議員の言葉を称賛する声が上がっています。番組のメインキャスターである有働由美子アナウンサーは「まさにこの言葉に尽きるんじゃないかと思う」とスピーチに共感。続いて、解説の小野高弘さんはこのようにコメントしました。今自民党の会合で話し合っているのは、『差別禁止』よりもっと手前の段階ですよね。「理解を促進しましょう」っていう、そういう法案についてなんです。もう、それですら揉めてきたわけですよね。news zeroーより引用紹介したスピーチは8年前のものであり、性的指向に対する差別を禁ずる国が多数存在する現状。小野さんの言葉を受け、有働アナは最後にこのような言葉でコーナーを締めくくりました。まあ、この段階の議論で揉めている日本で、あと2か月で多様性を掲げたオリンピック、パラリンピックが開催されます。news zeroーより引用東京五輪はコンセプトの1つとして『多様性と調和』を掲げています。「LGBTsへの理解を促進する」という段階で議論をしている日本への皮肉ともいえる有働アナの言葉は、ネットでまたたく間に話題になりました。・最後にさらっとキレキレなブラックユーモアをいう感じがかっこいい。・リアルタイムで番組を見ていて、このひと言で「おお!」ってなった。・本当に、かなり遅れた段階で揉め続けてるんだよね…と思うと悲しい。人はいろいろな性質を持って生まれてきます。異なる人生を歩む人が幸せになったからといって、自分の幸せや権利が妨害されるわけではありません。多様性を認めるということは、1人でも多くの人が幸せになれる社会につながるのではないでしょうか。[文・構成/grape編集部]
2021年05月28日今国会での成立に向けて与野党が準備していた、LGBTといった性的少数者に対する理解増進に向けた法案。それについて5月20日、自民党が審査を行った。しかし、“LGBT理解”をテーマにしたその会で驚きの意見が飛び交ったようだ。修正協議によって新たに「性的指向や性自認を理由とする差別は許されない」という文言が追加されることとなった同案。しかし『日テレNEWS24』によると、出席者からこんな声が上がったという。「『許されない』と明記されることで、権利を主張する人が出て、裁判をあちこちで起こす」「人間は生物学上、種の保存をしなければならず、LGBTはそれに背くもの」また『TBS NEWS』によると、会場は法案に反対する議員が大勢を占めており、なかには「道徳的にLGBTは認められない」と話す出席者もいたという。「権利を主張するから」と“差別は許されない”との一節に難色を示す。そして「種の保存に背いている」といい、「道徳的でない」とも決めつけるーー。ネットでは、「自民党は性的少数者への差別をよしとするのか」と疑問視する声が上がっている。《「差別は許されない」と言うかどうかのレベルで自分の国が止まっていること、本当にがっかりします》《差別は許されない社会を許さない議員、いったい何のために存在しているのか》《差別の温床は自民党内部にあったのですね》《場合によっては差別しても大丈夫ですよとか言って欲しいの?》■18年には杉田水脈議員の「生産性がない」発言も自民党といえば18年に発刊された「新潮45」8月号のなかで、杉田水脈議員(54)がLGBTについて「生産性がない」として、税金の使い方に関する持論を展開。そのことから自民党本部前を筆頭に各地でデモが発生し、同誌が休刊となるなどの大きな動きが生まれた。そして今回、「種の保存に背く」との声が飛び出した。そのため、「あれから全然進歩してない」と呆れる声も上がっている。《生産性がどうのと言い出した時点から何も進歩がないのも良くわかる》《「生産性がない」と言ってた時期から1ミリも進歩してなくて憐れ》《「道徳的に認められない」って「生産性がない」以上に強烈なワードだね。あれから3年経つけど自民党の「理解」なる概念のレベルの低さがわかる》《差別意識が凄すぎてヤバい》
2021年05月21日幼少期のトランス・アイデンティティに対する認知と受容を喚起するフランスのドキュメンタリー映画『リトル・ガール』(原題:Petite fille)の日本公開が決定。シーン写真も到着した。サシャは2歳を過ぎた頃から自身の性別の違和感を訴えてきたが、学校では女の子としての登録が認められず、男子からも女子からも疎外、バレエ教室では男の子の衣装を着せられてしまう。そして、7歳になってもありのままに生きることができないサシャ。家族はそんな彼女の個性を支え、周囲に受け入れさせるため、学校や周囲へ働きかけるが…。本作の監督を務めたのは、これまでもジェンダーやセクシュアリティに目を向けた作品を撮り続け、世界中の映画祭で高い評価を受けるセバスチャン・リフシッツ。性と身体の不一致は、肉体が成長する思春期に起こるのではなく、幼少期に自覚されることについて取材を始めていた過程でサシャの母カリーヌと出会い、この作品が生まれた。本作は、2020年ベルリン国際映画祭で上映後、モントリオール国際ドキュメンタリー映画祭のピープルズ・チョイス賞やインサイド・アウトLGBT映画祭の観客賞(ドキュメンタリー長編)など、世界中で様々な映画賞を受賞。劇場が封鎖されたフランスでは、TV局ARTEにて放送され、視聴者数1,375,000人と、その年のドキュメンタリーとしては最高視聴率(5.7%)を獲得、オンラインでも28万回以上の再生数を記録するなど大きな反響を呼んだ。男の子の身体に生まれたけど、女の子になることを夢見ているサシャ。公開されたシーン写真では、一番自分らしくいられる洋服を着て庭で幸せそうにダンスをする場面や、お気に入りのピンクのヘアクリップをつけている姿、母と過ごす優しい時間が切り取られている。一方、バレエ教室にて、女の子用の衣装を着させてもらえず、女の子たちを少し切なげに見つめる場面も到着。どれもまだ幼くても本当の自分であろうとする意志が感じられるカットとなっている。『リトル・ガール』は11月19日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて順次公開。(cinemacafe.net)■関連作品:リトル・ガール 2021年11月19日より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて公開
2021年05月19日生きづらいのがデフォルト。そんな不器用な魂の成長記録。少年アヤさんによる、『ぼくをくるむ人生から、にげないでみた1年の記録』をご紹介します。「昔は人からひどいことをされても傷つきませんでした。隠したり、繕ったりしてばかりで、つねに自分を抑圧していたので、心が動かなくなっていたんです。けど20代半ばで、はじめて痛めつけられた時に怒りが湧いて。自分は自分のために怒れるんだと発見したのが、ターニングポイントでした」と語る少年アヤさん。そんな彼は20代最後の日々をどう過ごしたのか。新作『ぼくをくるむ人生から、にげないでみた1年の記録』は、毎日つけている日記をまとめた一冊だ。「忘れてしまうこと、流れ去っていくことがもったいなくて、日記は毎日細かくつけているのですが、20代最後の1年は本当に色々なことがあったので、改めて外に向けても書いてみたくなりました」すべて実体験だが、これがまるで小説のよう。人間関係の再構築の記録、精神的な成長記として胸を熱くさせる内容になっている。1年の間にいくつも大きな出来事がある。ひとつは、疎遠だった中学時代からの女友達との再会だ(そのうちの一人、まゆちんの言動が最高)。「ゲイであることも、助けが欲しかったことも言えず、卒業してからはずっと連絡を絶っていたんです。でも10年ぶりに再会したら、あっさり受け入れてくれて。正直もう、人生このままエンディングかと思いました(笑)」恋にも落ちた。だが、デートの直前に「無理」となってドタキャンするなど、アヤさん、かなり情緒不安定。なぜここまで幸せから遠ざかろうとするのか、もどかしくなる。「幸せという実感から、ほど遠いところで生きてきたので、どうしても恐れを抱いてしまう。マイノリティにとっては、わりとありふれた心の動きかもしれません」そんな状態からどのように関係を築いていくかも読ませる。そこには、周囲の偏見や、相手のカミングアウトの問題も含まれている。アヤさんはすでに家族にゲイだと伝えているが、彼らとの関係も変わっていく。「家族は多分、ぼくがゲイであることを、わかっているけどわかっていない、という感じで。いざ恋人ができた時に、改めて動揺したようです。特に父とはここ数年でやっと関係を作り直したところだったので、社会の模範によって引き裂かれるのが悔しくて」終盤、母親がアヤさんにむき出しの言葉をぶつけてくる。そのなかの「もっと好きに生きろ」という言葉はきっと、迷いを抱えた読者の心にも突き刺さるはずだ。また、自身の内面と向き合ってきた著者が、弱い立場の他者へも目を向けていく様子が印象的。「友人たちと赤ちゃんを連れて出かけると、本当におじさんに舌打ちされたり、いやな絡み方をされたりする。改めてそばで経験して、とてもショックでした。そんな友人たちが、“私たちの代わりに書いて”と言ってくれたことも、本書を書こうと思った理由のひとつです」やがて、まゆちんが職場で、あるルール変更を勝ち取るなど、希望をもたせる展開も待っている。「自分について書くということは、すごく狭いようで、実は社会の姿や、時代の空気も炙り出せる。それを、この本で改めて示すことができたと思っています。これからも愛すべき他者たちと関わり合いながら、健やかに生きていきたい。それが自分の使命だとも思います」健やかでいてほしい。本書を読めば、誰もが思うはずだ。しょうねんあやエッセイスト。平成元年生まれ。ブログが人気を博し、それを書籍化した『尼のような子』でデビュー。著書に『焦心日記』『ぼくは本当にいるのさ』『なまものを生きる』『ぼくの宝ばこ』など。『ぼくをくるむ人生から、にげないでみた1年の記録』ずっと会えずにいた友達、本気で好きになった相手、そして家族…。人との関わり合いのなかであがき、自分と他者を見つめ直した胸熱な1年の記録。双葉社1760円※『anan』2021年5月19日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2021年05月16日「EUフィルムデーズ2021」が5月28日(金)より東京とオンライン会場で、6月17日(木)からは京都にて開催されることが決定。ラインアップも公開された。「EUフィルムデーズ」は、“映画で旅するヨーロッパ”をテーマに、日本初公開作品や見逃してしまった近作など、EU加盟国の映画を一挙に上映する映画祭。19回目となる今年は、東京・国立映画アーカイブ、京都・京都文化博物館での開催と共に、オンラインでも開催。EU加盟国より最多の26か国が参加し、日本初公開の11作品を含む、選りすぐりの全27プログラムを上映、および一部オンライン配信する。注目の日本初公開作品は、19か国を自転車で旅する発見と挑戦に満ちたドキュメンタリー『オーストリアからオーストラリアへふたりの自転車大冒険』。1950年代から現在までルクセンブルクの女性運動の歴史を記録し、女性をめぐる環境の何が変わり、何が変わらないかを浮き彫りにする『彼女たちの物語』。18歳の少年が、自身の性的アイデンティティを明かせず苦悩する、スロヴェニア初のLGBT作品とされる『ことの成り行き』。ルイス・ブニュエル監督が収入を失い路頭に迷ったとき、友人の宝くじが当たった賞金で糧なき土地を撮影したことをアニメーションで描いた『ブニュエルと亀甲のラビリンス』など。ほかにも、アニメーション映画『ウルフウォーカー』や、『イーダ』のパヴェウ・パヴリコフスキ監督による『COLD WAR あの歌、2つの心』。『ナポリの隣人』、『この世界に残されて』、『ザ・ライフルマン』ほか、様々な作品がラインアップされている。「EUフィルムデーズ2021」は5月28日(金)~6月20日(日)国立映画アーカイブにて、6月17日(木)~7月4日(日)京都文化博物館にて、5月28日(金)~6月25日(金)オンラインにて開催。(cinemacafe.net)
2021年04月18日三重県の自民党所属の小林貴虎県議(47)による、同性カップルの個人情報晒しが波紋を広げ続けている。小林県議は3月7日、Twitterに同性カップルについて《婚姻と同等の権利をよこせと言うことなら、同等の責任を果たさなければその資格はないでしょう》などと投稿。それに対し、同性カップルが公開質問状を送付したところ、小林県議は自身のブログで公開質問状や個人情報などを3月30日に無断で公開した。各報道によると、同性カップルは、その翌日の31日に小林県議と面会し、削除を要請したものの、小林県議は、「公開質問状を取り下げたら、こちらも削除する」と拒否したという。しかし一連の騒動が5日に報道されると、小林県議は同日午後「私の周辺の方々に迷惑がかかっている」などとして画像を削除していた。小林県議は個人情報を無断公開したことについて、以下のように弁解している。《ご自身が性的少数者であるということを公言されて、今のパートナーシップ制度を使って、地元の新聞などに取り上げられて、パートナーシップ制度の導入の要望に来る人たちなんです。この方たちは、自分の性的指向を公表して講演会活動をしている人たちです。私としては、死ぬまでクローゼットで、誰にも自分の性的指向を公表しない方の住所や、(2人が)性的少数者ということを公表したわけではなく、そもそも(2人は)公にLGBT活動している人たちです。初めから公開質問状ということですから、私は公開させていただいたつもりです》(『AERA dot.』4月5日配信記事)“性的志向を公にしているのだから公開は問題ない”という持論を展開した小林県議。しかし、三重県の岡本栄伊賀市長は6日に「明らかに人権侵害だ。許されない」と糾弾するなど、批判の声は強まるばかりだ。実際、小林県議の行為は法的にどのような問題があるのか、神田お茶の水法律事務所の上谷さくら弁護士に聞いた。「住所は個人情報の中でも大事なものです。本人の承諾なく載せることはプライバシーの侵害に当たります。質問者の2人は性的指向を開示しているのでアウティングに当たらないという主張もありますが、そもそも性的指向に関係せずとも、住所を世界中に晒すというのは重大なプライバシー侵害です。プライバシー侵害は法律で直接規定されているものではなく、憲法13条の幸福追求権のひとつとして保障されると考えられています。今回の小林議員の行為は、民法上の不法行為に当たる可能性があります。民事で裁判を起こした場合、慰謝料として認められる金額は大きくなくても、『プライバシーの侵害に当たる』と認定される可能性が高いでしょう」また、プライバシーの侵害以外にも問題があると、上谷弁護士は指摘する。「どういう立場の人間であるか、身分を明かして議員に質問するというのは大事なことです。しかし、だからといって受け取った側がその情報を自由にしていいということではありません。質問者の個人情報を無断で晒す行為は、一市民である質問者に対して権力者が報復し、脅しているように感じるので、市民が萎縮して、匿名でなければ質問できなくなってしまいます。その観点からも、小林議員の行為は正当化できません。今回の場合、すでに掲載を取り下げているので刑事罰に問われることはないと思いますが、同様の行為は、事情によっては刑法上の名誉毀損や脅迫に当たるケースもありえます」掲載は取りやめたものの、いまだ反省している様子のない小林県議。県議でありながらの“憲法違反”にどう向き合うつもりなのだろうかーー。
2021年04月09日2021年4月3~4日に、オンラインの舞台『SUPER FLAT LIFE -スーパーフラットライフ-』が上演されました。同作は俳優・秋元才加さんを主演に迎え、『結婚』をテーマにLGBTなどの難しい題材を取り込みながら、新しい価値観の提案に挑んだ異色作です。「普通の結婚を」と考えていた女性が、女友達と結婚すると決めた理由同作の主人公・棚橋エリは、『普通の結婚』を希望している30歳目前の女性です。結婚を考えていた恋人に突然、別れを告げられ、婚活サイト『SUPER FLAT LIFE』に登録。すると、同サイトの性別不詳の支配人・アキラが理想の結婚相手を提案してくれるのですが、その相手は『同性婚を望む超合理主義者の女性』『別居婚を求める男性』『バツイチのレズビアン』『契約結婚を求める男性』など、エリにとっては『普通』ではない人ばかりでした。さらに、結婚を考えていた恋人が実はゲイだったという事実も発覚し、困惑するエリ。最終的には、現代では『普通』ではない、女性の友人と事実婚をするという道を選ぶことになります。奇をてらったようにも思える結末ですが、視聴者が物語を見ているうちに自然と「なるほど、そういう道もあるのかもしれない」と感じられるような構成になっているのが、同作の肝です。自分が考える『普通』が、ほかの人の『普通』とは限りません。そういった、当たり前のはずなのに理解することが難しい事実に改めて気付かされ、何が自分の本当の幸せなのかを、同作は考えさせてくれます。性別、セクシャリティ、未婚や既婚…。これまでの常識を取り払った、まさしく『スーパーフラット』な考えを提案している同作。誰かに作られたルールを頭から取り払った時、あなたが本当に求めるものはなんでしょうか。同作は視聴者も自由にコメントができるようになっており、このような声が上がりました。・もともと結婚願望はなかったけれど、この作品を見て結婚もいいのではと思えるようになった。・こういう、現代ではなかなか話せないことを相談しあえる場があってもいいと思った。・とても素敵な作品。こんな価値観があるのだと気付かされた。・今は斬新な作品に見えるけれど、将来的には普通と思えるものになってほしい。秋元才加「同作を通じて、みんながよりよく幸せに暮らせる方法について考えられれば」同作で主演を務めた秋元才加さんはもともとLGBTへの理解を持ち、さまざまな番組やSNSで、支援の言葉を語ってきた女性です。そんな秋元才加さんは同作で主演を務めるにあたり、このように語りました。『SUPER FLAT LIFE -スーパーフラットライフ-』で描かれる『結婚観』というテーマは個人的にすごく興味のある話題でしたし、結婚制度やセクシャリティについて深く切り込んだ作品に関わるのが初めてだったので、すごくやりがいを感じました。私の演じる棚橋エリは、常識だったり、世間体の枠に自らをハメこんでいる女性で、劇中にはそういったみなさんにも共感してもらえるポイントがたくさんちりばめられています。この作品が、結婚についてや、性別関係なくみんながよりよく幸せに暮らせる方法について考えるきっかけになればいいなと思います。秋元才加さんの「この作品が、結婚についてや、性別関係なくみんながよりよく幸せに暮らせる方法について考えるきっかけになればいい」との言葉どおり、同作を見た人は新しい価値観を知り、改めて考えさせられたようです。最近では、2021年3月にトランスジェンダーを題材にした、草なぎ剛さん主演の映画『ミッドナイトスワン』が『日本アカデミー賞』最優秀作品賞に輝きました。こういったことや、『SUPER FLAT LIFE -スーパーフラットライフ-』に高評価の声が寄せられている事実を考えると、少しずつですがLGBTへの理解が深まっていっているのかもしれません。『SUPER FLAT LIFE -スーパーフラットライフ-』のリアルタイムでの上演は終了しましたが、2021年4月11日までは、アーカイブで有料鑑賞することができます。「新しい価値観に触れたい」と感じた人は、ぜひチェックしてみてください。SUPER FLAT LIFE-スーパーフラットライフ-[文・構成/grape編集部]
2021年04月05日つらい思いを抱えている人にーー『明日、学校へ行きたくない言葉にならない思いを抱える君へ』子どもの自死が一番多いのは夏休み明けの9月1日…この本はそんな「9月1日問題」から子どもたちの命を守るための取り組みのひとつ、ニコニコ生放送番組『明日、学校へ行きたくない』をもとに書籍化された本です。本書では、不登校、DV被害、いじめ、将来のことなど、当事者の子どもたちや保護者、かつてそうだった大人たちの投稿を元に、「こども六法」を出版し、法教育を通じたいじめ問題の解決を目指している山崎聡一郎さん、カウンセラーとして多くの人の悩みや不安を聞いてきた公認心理士、臨床心理士信田さよ子さん、脳と心の関係を探求し、子どもの脳の発達や個性を発揮する学びについて社会に発信している脳科学者茂木健一郎さんの三人の専門家とともに一緒に考え、語る形で進んでいきます。山崎さんの「まず生の声をていねいに聞いていきたい」という言葉通り、寄せられた投稿に対して解決方法を提示するだけではなく、ひとりひとりの声に真摯に耳を傾けて寄り添うようなアドバイスが印象的な本書。学校へ行きたくない、生きづらいなど、うまく言葉にできないモヤモヤにそっと寄り添う『居場所』になってくれそうな一冊です。発達障害のある子どもとゲームの関わり方を解説『ゲーム・ネットの世界から離れられない子どもたち』ICTとはどんなもの?という基本的な説明から、発達障害のある子どもとICTの関係、子どもの特性別のネットやゲームとの関係、ICTと付き合っていくために必要不可欠なリテラシー問題などを詳しく解説しています。「ゲームがうまくいかず暴言を吐く」「スマホばかりで昼夜逆転、朝起きられない」など『わが子はゲーム依存?』と悩んでいる家庭が増えています。まずは大人が子どもの世界を知り、親子でICTとうまく付きあっていくきっかけを考えてみてはいかがでしょうか。「依存かな?」と思ったときに親ができること、適切な支援方法など、これから欠かせない存在となっていくICTを前向きにとらえていくための参考になりますので、子育て中の方、学校の先生、福祉関係者の方など様々な方に読んで頂きたい一冊です。その就職活動、「得意」を活かせてますか?『ちょっとしたコツでうまくいく!発達障害の人のための就活ハック』発達障害特性のある人は就職活動においてもその特性ゆえにうまくいかないことが往々にしてあります。この本には、発達障害のある人や働きづらさを抱えた人の就職活動を支援し、発達障害支援や障害者雇用に関わるセミナーやコンサルティングを多数手がけてきた、就職のプロたちが教える就職活動をうまく進める知識や工夫、『就活ハック』が詰まっています。自分の強み、発達特性を知るところから始まり、エントリー方法や見出しなみやマナー、面接の対策など就職活動の流れを表やイラストを使い分かりやすく説明。今急増しているオンライン面接についての対策も紹介されています。発達特性別の向いている仕事一覧などもあるので、特性の苦手をカバーしながら得意を活かせる『就職ハック』が見つかる一冊です。今日からすぐにチャレンジできる!『1日5分で運動能力と集中力が劇的アップ 5歳からの最新!キッズ・トレーニング』運動能力の発達は脳の発達にもつながると言われています。子どもにとって、基本的な運動は野球やサッカーなどのスポーツにつながる運動能力をアップさせるのはもちろん、脳を適度に刺激して集中力(学力)を上げることに役立ちます。子どもからトップアスリートまでの競技サポートをするトレーナーが紹介するキッズトレーニングは、身体感覚を育てる9つのパーツ別体操、全身を協調して動かす6つの運動感覚、運動能力を上げるための12の運動機会と段階別に紹介されているので、子どもの発達状態に合った体操を始めることができます。科学的な研究結果をベースに作られたトレーニング内容は未就学児~小学生のこどもにぴったり。簡単にできて、運動能力が伸びるコツが盛りだくさんです。すべてのワークは図解はもちろん、動画(QRコード)もついているのでとてもわかりやすく、今日からすぐにチャレンジできる一冊です。性への教育と介入を伝える『性の教育ユニバーサルデザイン 配慮を必要とする人への支援と対応』人の性体験には大きな自由度と多様性があります。この本では配慮を必要とする人たちへの支援と対応、教育などを解説しています。本書は4部に分かれており、1部は性体験の自由度と多様性を各世代の人々の語りを通して紹介する『いっぱいあってな』、2部は配慮を必要とする人たちが持っている知識の現状や教え方、教材などを使った実践方法などを紹介する『教育』、3部は男性、女性それぞれの性的逸脱行動の事例とその対応を解説した『介入』、そして4部ではLGBTの人との面接などで留意すべき事項を中心にその対応の道筋などを提示していく『LGBT』で構成されています。研修会や講習会などで、実際に保護者や教員のかたから受けた質問など、気になるけど聞きづらい性の問題に対する答えがたくさん詰まっています。従来の性に関する支援書とは一味も二味も違う、性の学習法と性への介入法、そのすべてを伝える一冊です。
2021年04月03日性教育アドバイザーとして活躍し、とにかく明るい性教育【パンツの教室】協会代表理事や『お母さん!学校では防犯もSEXも避妊も教えてくれませんよ!』(辰巳出版)の著書を出版されている、のじまなみさんが男の子の「性教育」について教えてくれました。 親のためにも子どものためにも早めに伝えておきたい「精通」の話我が子を性犯罪の被害者にも加害者にもさせないために、そして他者を思いやれる人間になれるように親ができることが「性教育」とお伝えしてきました。しかし、とりわけお母さんにとって、男の子は謎多き生き物。体の仕組みもよくわからないし、思春期に起こる第二次性徴についてもほとんど知らない方が多いでしょう。 今回は思春期を迎える前に特に男の子に伝えておきたい「精通」「マスターベーション」「アダルトコンテンツ」についてお話しします。 お母さんにとっても子どもにとっても未知の世界、「精通」ってどんなもの?男の子が第二次性徴を迎えると、体つきの変化や声変わり、体毛が濃くなるなどの変化に加え、あるビッグイベントが起こります。それが「精通」です。しかし、経験者であるお父さんならいざ知らず、お母さんにとって「精通」はまるっきり未知の世界なのではないでしょうか。もしかしたら学校で習ったことがあるかもしれませんが、ほとんど記憶にない方も多いでしょう。そこで、この機会にぜひ「精通」について理解を深めていただければと思います。 個人差がありますが、だいたい思春期を迎える12歳頃を目安に「精通」を迎える子が多いといわれています。しかし中には、「おちんちんをいじっていたら何か出てきた」という具合に、精通とまではいえない経験をかなり早い年齢で迎えるお子さんもいます。また精通は「夢精」か「マスターベーション(自慰)」で起こることがほとんどですが、精通のことを知らないと、「性器から膿(うみ)が出た!」「自分は病気かもしれない」「エッチなことを考えていた自分は最低の人間だ」などと、ショックを受けたり自分を責めてしまったりするお子さんが少なからずいます。 しかし、精通は“大人になった証”であり、とても喜ばしいことです。そんな喜ばしいことがお子さん本人にとってショックな出来事にならないためにも、3歳頃から段階的に、男性器の働きや形について話すなかで、精通のことにも触れておきましょう。例えばお子さんから「なんでママにはおちんちんがないの?」と聞かれたとき、こんなふうに伝えてみるのはいかがでしょうか。――「女の人と男の人の体が違うことによく気が付いたね! じつはおちんちんは、男の人だけにある特別なものなんだよ。もっとお兄さんになると、おちんちんのトンネルが開通して、おしっことは違う『精液』というものがおちんちんから出てくるようになるんだ。これは『大人になった証拠』なんだよ!」 そこまで言わなくても……と思うかもしれませんが、性の話を「卑猥」と思わない幼少期のうちに、ぜひご家庭で伝えてみてください。学校の授業で教わる前にお子さんが精通を迎える可能性もありますし、どこからか言葉を覚えてきてこっそりインターネットで調べ、誤った情報にたどり着く危険性もあります。「まだ早い」と思わずに、早めに伝えておきましょう。 息子が精通を迎えたら伝えたいことと、やってはいけないこと察しの良い親御さんなら、お子さんが精通を迎えたことにすぐ気が付くかもしれません。洗濯物の下着が不自然に濡れている、洗濯物に下着が入っていない、などなど……。しかしこんなときに、「これ何?」ときいたり、「パンツはどこにやったの!」と叱ったりすることがないようにしたいものです。お子さんが精通を迎える前に、幼いうちから「もし精通があったら、下着は軽く手洗いして洗濯に出しておいてね」とさらりと伝えておけると、お互いに余計なストレスや気遣いがいりません。小さいうちから自分の下着は自分で洗う「パンツ洗い」もおすすめしています。 そして、精通を迎えた男の子がマスターベーションをするのは「普通のこと」だと、親子ともども知っておきましょう。マスターベーションは悪いことではありません。たくさんしたからといって健康に影響があったり、「ヘンタイだ」などということもまったくありません。ですから、お子さんが思春期を迎えたら、一人になれる時間と場所を用意してあげることも親の気遣いです。お風呂やトイレが少し長くなっても、小言を言わないであげてください。ましてノックもなしに部屋のドアを開けるのは絶対にNGです。 そして、マスターベーションのためにアダルトコンテンツ(エロ本やAVなど)を見るのもごく自然なことです。これも責めたり詮索したりしないでください。ただし、小学生などのまだ分別がつかない年齢であれば「善悪の区別がつくようになるまで見ないでほしい」と伝えたほうが良いでしょう。また、アダルトコンテンツの内容を鵜のみにしないこと、つまり「アダルトコンテンツは男性向けに作られたファンタジーであって、実際の女性はもっと大切にしなければならない」ということも、できれば伝えておきたいものです。そんな話ができるためにも、幼少期のうちから性教育をして、なんでも話せる親子関係を築いておくことが大切ですね。 大人の仲間入りをした息子に知ってほしい「命」のことお子さんが精通を迎えたら、親御さんから伝えていただきたいことがあります。それは「これで大人の仲間入りだね!」という祝福の言葉と、「あなたは子どもをつくれるようになった」ということです。前回、生理の話でもお伝えしましたが、小学生であれ中学生であれ、初潮と精通を迎えた男女同士であれば妊娠の可能性はゼロではありません。「うちの子にかぎって……」という気持ちはわかりますが、大切なことですので、親の口からしっかりと伝えましょう。 私は3歳からの性教育をするうえで「明るく楽しく」をモットーにしていますが、初潮と精通を迎えた子どもに「命」の話をするときばかりは、少し改まるくらいでも良いかもしれません。避妊の話、性感染症の話、中絶の話、そして不妊治療やLGBTの話……。子どもが精神的にも成長したからこそ伝えたい、命と尊厳についての大切な話がたくさんあります。詳しくはぜひ拙著『お母さん!学校では防犯もSEXも避妊も教えてくれませんよ!』(辰巳出版)をお読みいただければと思います。 「精通」をはじめとした男の子の心身の成長についておわかりいただけたでしょうか? 男の子の性教育に迷ったら、ぜひ参考にしてみてください。 イラスト:おぐらなおみ(『お母さん!学校では防犯もSEXも避妊も教えてくれませんよ!』より) 著者:カウンセラー 性教育アドバイザー のじまなみ性教育アドバイザー。とにかく明るい性教育【パンツの教室】協会代表理事。著書の『お母さん!学校では防犯もSEXも避妊も教えてくれませんよ!』(辰巳出版)は7万部を超える話題作となる。著書『男子は、みんな宇宙人!世界一わかりやすい男の子の性教育』(日本能率協会マネジメントセンター)、『赤ちゃんはどこから来るの?親子で学ぶはじめての性教育』(幻冬舎)、『「赤ちゃんてどうやってできるの?」にきちんと答える親になる!』(日本図書センター)。
2021年03月26日タレントとしてさまざまなバラエティ番組で活躍するSHELLYさん。「日本の若い世代に性教育を行いたい」と公言するなど、最近では、社会的発言が話題になることもあります。SHELLY、性行為をめぐる『間違った常識』に苦言称賛の声相次ぐ「セックスは権利じゃない」そんなSHELLYさんが、自身のYouTubeチャンネルで『バラエティ番組の現場で意識していること』という動画を公開。バラエティ番組などで見られる、人の性的指向や性自認、容姿や体格などを笑いのネタに変えることに関して、持論を展開しました。SHELLY、笑えないいじりに遭遇した時に意識していることバラエティ番組にかぎらず、会社や学校でも、誰かが面白いことをいうと、その場にいる人たちは笑わなければいけない空気感があると指摘するSHELLYさん。だからこそ、SHELLYさんはあえて笑わないことを意識しているのだといいます。本人が変えられないことで、みんなで笑うのって古くない?SHELLYのお風呂場ーより引用一方で、古い価値観にとらわれている人たちに対してもSHELLYさんは理解を示しました。「あのジジイは何も分かってないからもういいよ、無視」ってやるのってすごい簡単だよね。そうしたくなる気持ちもすごく分かる。けど、私がそういう時にすごい思うのは、もし自分の父親だったらとか、自分のおじいちゃんだったらとか、おばあちゃん、おばさんとか。もしかしたらそのルールの中で一生懸命生きてきてるから、そのルールの中で生きてきた人たちにとっては、今のルール(考え方)が、そんなすぐに受け入れられない。私たちが先に気付いちゃっただけなんだよね。SHELLYのお風呂場ーより引用気付いてない人たちを切り捨ててしまうだけでは、分断が起きて、ただ嫌な世の中になるだけど語るSHELLYさん。また、同じ価値観や考えを持っている人同士で集まっていても、何も問題の解決にはならないとSHELLYさんは語ります。急に世の中を変えるのではなく、徐々に粘り強く新しい考えにあわせていけるように動くことが大切だとするSHELLYさんの持論は反響を呼び、動画にはさまざまなコメントが寄せられました。・テレビに出てる人がそういう意識でいてくれるのはすごく嬉しいし、SHELLYさんのような考えが広まればいいのになって思います。・バラエティ番組のLGBTいじりの風潮が変わってきたおかげで、こないだ学校の先生が笑いをとろうと発言をした時、誰も笑いませんでした。SHELLYさんのそうした気遣いは、世の中に届いています!・性教育にしてもいじめにしても、『寝た子を起こすな』教育が好まれてきた日本であえて『優しく起こす』と主張できるSHELLYさん、本当にかっこいいです!多くの反響を呼んだ、SHELLYさんの主張。賛同や称賛の声が多く寄せられている点に、社会の風潮が変わりつつあることを実感します。しかし、すぐにこれまでの『当たり前』を変えるのは難しいこと。不快に感じる言動は、これからも日常の中のどこかしらで目にするはずです。そんな時、私たちは何を思い未来に向けてどんなアクションをとれるのでしょうか。SHELLYさんが動画で強く語った思いは、多くの人に大切な気付きを与えてくれたはずです。[文・構成/grape編集部]
2021年03月18日近年、世界ではセクシュアリティの多様性について理解することの大切さが求められてきています。しかし、自分がLGBTQ+(性的少数者)であることを家族や周りの人に打ち明けるのは、多くの人にとってやはり勇気がいることなのかもしれません。孫がゲイだと知った祖父の思いは同性愛者であるトラヴィスさんは祖父に自分がゲイであることを打ち明けました。彼はカミングアウトをした後に祖父からもらった返信をTwitterに投稿。大きな反響が上がっています。finally came out to my grandpa and his response is so pic.twitter.com/Tec7DarfA2 — trav (@chipotletwink) March 2, 2021 トラヴィス、きみは「ついに打ち明けた」というと思うけど、私たちは何年も前からそうじゃないかと気付き始めていたよ。これは簡単に隠せることではないし、だからといって私たちが聞き出すことでもなかった。ママがいったとおり、私たちは気にしない。きみを愛しているし、きみに幸せでいてほしい。きみが人生で選んだことがどんなことでも、成功を祈って応援するよ。私はただ、きみに自分を過小評価してほしくないんだ。もし私たちにこの話題を切り出すことに不安やストレスを感じていたとしたら、本当にすまなかったね。これまでに何度も、悩みがあったら何でもおじいちゃんに話していいんだよと伝えてきたつもりだったんだ。2021年になっても、きみたちの進む道は厳しいものになるかもしれない。批判や偏見に直面する可能性が少ない異性愛者のほうがずっと生きやすいからね。エンリケはとてもいい人そうだね。うちに連れてくるならいつでも歓迎するよ。愛しているよ。@chipotletwinkーより引用(和訳)この投稿には22万件を超える『いいね』が集まり、トラヴィスさんへの祝福と共感の声が相次ぎました。・おめでとう。幸せになってくれ!・これが無償の愛ね。おじいさんがあなたのことを誇りに思っているのが伝わる。・泣いてしまった。こんなおじいさんが欲しい。トラヴィスさんはおじいさんからのメールを紹介した後、恋人のエンリケさんとのツーショット写真を投稿しました。and this is my amazing boyfriend enrique @Onrickk pic.twitter.com/cE4N3qKViH — trav (@chipotletwink) March 3, 2021 トラヴィスさんによると、父親に打ち明けた時はいい結果にならなかったのだそう。それだけに祖父の思いには感謝しているといいます。かわいい孫へ、どんなことがあっても変わらない愛情とサポートを伝えた祖父。大好きな祖父が味方になってくれたことは、トラヴィスさんにとって自分らしく生きるための大きな支えとなることでしょう。[文・構成/grape編集部]
2021年03月10日女性蔑視発言で、東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長を辞任した森喜朗氏(83)。後任に日本サッカー協会相談役の川淵三郎氏(84)を指名するも、“透明性に欠ける”として一夜で白紙となった。各メディアによると、御手洗冨士夫氏(85)を委員長とする候補者検討委員会は2月16日、後任会長の選考を開始。17日の午後には、橋本聖子五輪相(56)が候補として一本化されたことが一斉に報じられた。橋本氏が要請を受ければ、正式に決定となるという。森氏の問題発言をめぐっては、各方面のトップ陣にも意見が求められた。そんななか、経済同友会の桜田謙悟代表幹事(65、SOMPOホールディングスグループCEO)の発言が波紋を呼んでいる。桜田氏は16日の定例記者会見で、森氏について「一言でいうと論外」と一蹴。後任会長にふさわしい人物像として、「森氏が醸し出した間違った印象を払拭できるような人。ジェンダーについて真剣に捉えていることがわかるような人が良いと思う」と考えを述べた。また桜田氏は日本が生産性を上げるためには、「イノベーションが必要であり、イノベーションのためにはダイバーシティが必要である」と指摘。続けて「ダイバーシティとはLGBTを含めたジェンダーだけでなく、国籍や年齢等の全てを含めたもの」とコメント。そして、「今回の問題ではジェンダーという部分で手をこまねいているが、ダイバーシティを推進しなければ組織の存続すら危ういとの危機感を持つべきである」と警鐘を鳴らした。■女性側にも原因がない訳でもない多様性の重要さを訴える桜田氏。だがいっぽうで、企業で女性の役員登用が進んでいないことについて「女性側にも全く原因がない訳でもない」と付け加えた。「与えられれば(チャンスを掴みにいく)という方はいるが、自ら(チャンスを)取りに行かれる方はまだまだ多くないように感じている」と述べた。「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと発言した森氏を、「論外」と一蹴した桜田氏。そのいっぽうで“チャンスを掴めないのは女性側の責任”と原因を押し付けるような物言いは、盛大なブーメランとなっているようだ。ネット上では、非難の声が上がっている。《「原因がないことはない」という姑息な言い回しが、すごくイヤ。ハッキリ言えば「女だから当然だ」でしょ。チャンスを取りに行くも何も、女というだけでチャンスを奪っている。そんな企業の代表ということだ。原因は、あなた方だよ》《出たよ、女性のせい。採用時や仕事に於いて、女性を同様に待遇してきたのか、が問われるんじゃないの?例えば結婚しても働き続けられる企業なのかとかも問題なんですよ、おわかり?》《そんなことはどうでもいい。ルールや制度がまだまだ抑圧的なままで、なぜ変えないのかが問題だ。桜田、お前は森と同じで「論外」なんだよ》「森氏の発言について、根本的に何が問題なのか理解していないトップが見受けられます。例えば経団連の中西宏明会長は、『日本社会にはそういう本音がある』や『こういうのを取り上げるSNSは恐ろしい』と一笑に付しました。二階俊博幹事長も森氏が原因で辞退したボランティアに対して『瞬間的』と発言。『落ち着いて静かになったら、その人たちの考えも変わる』と重く受け止めていない様子でした。こうした日本を牽引する重鎮たちの“失言リレー”は、いつまで続くのでしょうか」(社会部記者)
2021年02月17日