東京都に本社を置く大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社(以下 大江戸温泉物語)が展開する【大江戸温泉物語Premiumシリーズ】から、8つ目の宿となる【大江戸温泉物語Premium あたみ】が登場いたします。【大江戸温泉物語Premium あたみ】※旧大江戸温泉物語 あたみ公式サイト : ■オープン日:2024年7月22日(月)■所在地:静岡県熱海市咲見町8-3■総客室数:76室(定員338名)■宿泊料金:18,900円(消費税込)~※1室大人2名利用時の1名料金■予約開始日:2024年4月15日(月)■ご予約方法>電話 050-3852-4806(9:00~19:00)>公式サイト 2023年にスタートした【大江戸温泉物語Premiumシリーズ】は同年、3つの宿を開業いたしました。2024年は今月、4月22日に石川県に開業する【大江戸温泉物語Premium 山下家】を皮切りに、5つの宿をPremiumシリーズの宿としてリニューアルオープンいたします。既にPremiumシリーズへの仲間入りのご報告をしておりますPremium伊勢志摩(三重県)・ホテル壮観(宮城県)・鬼怒川観光ホテル(栃木県)に次いでオープンする【大江戸温泉物語Premium あたみ】は静岡県初のPremiumシリーズの宿となります。大江戸温泉物語Premiumシリーズとは : 東京からも新幹線で約50分。熱海駅からも徒歩でアクセスでき、昭和レトロなお店やインスタ映え必至の行列店が軒を連ねる2つの商店街も徒歩圏内。アクティブな熱海観光と、のんびりした温泉宿滞在の2つが叶う【大江戸温泉物語Premium あたみ】(以下Premium あたみ)の魅力の一部をご紹介いたします。【プレミアムラウンジ】Premiumシリーズの宿の特徴のひとつがプレミアムラウンジです。ご到着時や湯上り、夕食の後に、ビールなどのアルコールやソフトドリンクをご自由にお楽しみいただける空間です。利用料金が宿泊料金に含まれるお得なサービスですが、宿ごとの魅力を最大限に活かしたラウンジの雰囲気もお楽しみください。「南国気分を味わうオーシャンビューの温泉宿」を掲げるPremium あたみ。ロビーからも目の前に広がる海を眺める開放的な空間となります。エントランスを抜けると目の前に広がる海を眺める開放的な雰囲気のロビーロビーに設置された暖炉に火が灯る夕方には全く異なる雰囲気をお楽しみくださいまた大浴場のフロアには湯上りラウンジをご用意いたします。青い天井に映し出される魚が、まるで海の中にいる気分にさせてくれる、小さなお子様にも楽しんでいただける空間です。こちらも冷たいお飲み物やアイスキャンディーをご用意。湯上りのクールダウンのひと時をお楽しみください。詳細はこちらから : 【レストラン】朝夕のグルメバイキングをお楽しみいただくレストランも装いを新たにいたします。海側のエリアは、大きく海への開いた船のデッキをイメージした空間に、ライブキッチンやブッフェボードが並ぶエリアは豪華客船のダイニングをイメージした空間へと生まれ変わります。大海原に出航するようなわくわくする気分と一緒に、食事をお楽しみください。海側エリアの客席は景色もご馳走です豪華客船のダイニングをイメージした空間へ【客室】一部客室をリノベーションいたします。オーシャンビューの客室を、海の青さや砂浜をイメージさせる和モダンルームにリノベーションいたします。青とベージュのスタイリッシュな雰囲気だけでなく、畳スペースにベッドを配した使い勝手の良さも魅力の客室です。海をイメージさせる青がアクセントカラー【変わらぬ魅力温泉】日本三大温泉のひとつ、熱海の湯を楽しむ「光彩の湯」と「万丈の湯」、2つの大浴場は朝夕、男女入替でご利用いただけます。趣の異なる空間で思う存分温泉時間をお楽しみください。シックな色合いの浴槽とナチュラル素材の囲いが和風モダンの雰囲気を醸す「光彩の湯露天風呂」。日中は窓から海を眺めることができます。詳細はこちらから : 【夏ならではのお楽しみ海水浴】街中ロケーションでありながら、熱海サンビーチにも徒歩約5分でアクセスいただけます。海水浴の後、汗や砂を流すために、すぐにお風呂に入りたい方にも便利なロケーションの宿です。本格的な夏休みシーズンに突入する時期に開業日を迎える【大江戸温泉物語Premium あたみ】。夏の海も、街中散策も、温泉もグルメバイキングも、欲張りに楽しめる宿を是非チェックしてみてください。【大江戸温泉物語の宿にお得に泊まる】早めのネット予約で割引♪早宿60 日にちが合えば割引でお得!得旅プラン 【会社概要】■会社名 大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社■所在地 〒104-0061東京都中央区銀座7-16-21銀座木挽ビル5階■設立年月日2017年12月5日(創業2001年11月)■資本金 100百万円(2023年2月末日時点)■代表取締役 橋本啓太■事業内容 全国で温泉旅館、ホテル、温浴施設、テーマパークの運営事業を展開(全国38施設。2023年12月現在)■URL 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2024年04月09日東京都に本社を置く大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社(以下 大江戸温泉物語)が運営する大江戸温泉物語Premium 汐美荘(以下Premium 汐美荘)が3月8日より【にいがた応援旅割キャンペーン】の予約受付を開始いたします。元日の能登半島地震の影響による北陸三県および新潟県の観光需要の落ち込みに対し、国土交通省 観光庁が実施する支援事業「北陸応援割」がスタートいたします。本リリースでは新潟県の宿泊施設に最大50%割引で宿泊できる【にいがた応援旅割キャンペーン】の詳細、および対象施設となるPremium 汐美荘の魅力をご紹介いたします。【にいがた応援旅割キャンペーン】■実施期間:2024年3月16日(土)~4月26日(金)※予算上限に達した時点で予約受付は終了■予約開始日:2024年3月8日(金)10:00~※公式サイト専用プラン予約受付開始時刻■割引対象者:全国47都道府県にお住まいの方および海外からの訪日旅行者の方■割引補助額:旅行・宿泊料金の50%(1旅行予約、1名につき20,000円上限)■公式サイト専用プラン にいがた応援旅割キャンペーン詳細 : 【にいがた応援旅割キャンペーンを使って行きたい!Premium 汐美荘の魅力】魅力①新潟市内から特急電車で1時間弱でアクセス可能な海辺の温泉地、瀬波温泉の宿、Premium 汐美荘。瀬波海岸が目の前180度に広がるロケーションに佇むPremium 汐美荘の魅力の一つは、水平線に沈むダイナミックな夕日が観賞できる点です。2022年3月には、楽天トラベル「夕日が見られる人気の旅館ランキング」で全国第1位を受賞したお墨付きの絶景をお楽しみいただけます。受賞報告リリースはこちらから これまで、自然が織りなす絶景を、露天風呂や客室からお楽しみいただいておりましたが、2023年6月に登場したプレミアムラウンジから、さらにゆったりとお楽しみいただけるようになりました。プレミアムラウンジは夕日を眺めるだけでなく、ご到着時やお風呂上りに、こしひかり玄米茶やコーヒーなどのソフトドリンク、生ビールやワインなどのアルコール、軽いおつまみを自由にお楽しみいただくことができます。日常ではなかなか見ることができない水平線に沈む夕日というダイナミックは風景を、お好きな飲み物を片手に楽しむ非日常のひと時をお過ごしいただける宿です。水平線に沈む夕日。圧巻の風景を楽しむプレミアムラウンジ。ドリンクの他にも軽いおつまみも無料でお楽しみいただけます。魅力②大江戸温泉物語の各宿でお客様から高い評価をいただくグルメバイキング。なかでもPremium 汐美荘(旧大江戸温泉物語汐美荘)は「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選料理部門」において、2021年から2024年まで4年連続で入選を果たす料理自慢の宿です。入選報告リリースはこちらから 【にいがた応援旅割キャンペーン】の期間中は春のまんぞくバイキングを開催中。心躍るご馳走メニューや、地元・村上名物を使った味、春ならではの食材を使ったほっと落ち着くメニューなど、バラエティ豊かな美味しさでお客様をお迎えいたします。春のまんぞくバイキング : 低温でじっくり火を通した、しっとりした食感のローストビーフ。新潟名物の車麩と春の味覚、蕗を煮びたしに。滋味溢れる美味しさをお楽しみください。元日の能登半島地震の影響を受け、北陸3県、そして新潟県の観光業も深刻なダメージを受けていると報道されています。【にいがた応援旅割キャンペーン】を上手に活用して、新潟県の宿泊・観光業を応援する旅を全国の皆様に是非、ご案内ください。温泉とグルメバイキング、ダイナミックな夕日を楽しむ宿、Premium 汐美荘でお客様をお待ちしております。※料理写真はイメージです。※仕入れ状況により、提供期間・料理内容は変更となる場合がございます。【大江戸温泉物語の宿にお得に泊まる】早めのネット予約で割引♪早宿60 日にちが合えば割引でお得!得旅プラン 【会社概要】■会社名大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社■所在地〒104-0061東京都中央区銀座7-16-21銀座木挽ビル5階■設立年月日 2017年12月5日(創業2001年11月)■資本金 100百万円(2023年2月末日時点)■代表取締役 橋本啓太■事業内容 全国で温泉旅館、ホテル、温浴施設、テーマパークの運営事業を展開(全国38施設。2023年12月現在)■URL 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2024年03月07日6月24日【大江戸温泉物語Premium 伊勢志摩】が三重県にリニューアルオープン。東京都に本社を置く大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社(以下 大江戸温泉物語)は、2023年から展開する「Premiumシリーズ」5つ目の宿となる【大江戸温泉物語Premium 伊勢志摩】を6月24日、三重県にリニューアルオープンいたします。これに先立ち、本日3月4日より宿泊予約を開始いたします。【大江戸温泉物語Premium 伊勢志摩概要】※旧大江戸温泉物語 伊勢志摩■オープン日 :2024年6月24日(月)■所在地 :三重県志摩市浜島町浜島1035■客室数 :83室(定員382名)■宿泊料金 :18,900円(税込)~※1室大人2名利用時の1名料金■予約開始日:2024年3月4日(月)■ご予約方法電話 050-3385-8660(9:00~19:00)公式サイト https:// iseshima.ooedoonsen.jp/plan/大江戸温泉物語は全国35(*1)の温泉宿を自社調査の結果に基づき、ハードやご提供するサービスに準じた料金設定で2ブランド2シリーズに分類し、2023年に本格的に運営・営業をスタートいたしました。既存の【大江戸温泉物語ブランド】に属するのは、従来通り手頃な料金で温泉旅をお楽しみいただける<大江戸温泉物語スタンダードシリーズ>。同じく、【大江戸温泉物語ブランド】に属し、スタンダードシリーズにプラス4~5千円(*2)程度の料金のお支払いで滞在いただける<大江戸温泉物語Premiumシリーズ>。そして、2023年から本格的に展開を開始した、ワンランク上の滞在をご体験いただける温泉リゾートホテルブランド【TAOYA】となります。*1 君津の森は、人工温泉光明石の湯(天然温泉ではございません)。*2 ご宿泊条件(日程、人数、部屋タイプなど)により料金は変動いたします。大江戸温泉物語2ブランド2シリーズ体系図スタンダードシリーズの特徴と宿一覧 : Premiumシリーズの特徴と宿一覧 : TAOYAブランドの特徴と宿一覧 : <スタンダードシリーズ>から手の届きやすい範囲での料金アップにも関わらず、プレミアムラウンジでアルコールなどを自由にお楽しみいただけるという充実のサービスに評価をいただくPremiumシリーズ。本リリースでは、新たに仲間入りする【大江戸温泉物語Premium 伊勢志摩(以下Premium 伊勢志摩)】のリニューアルポイントと魅力をお伝えします。【Premium 伊勢志摩のリニューアルポイント】【新設】プレミアムラウンジリアス海岸が織りなす風光明媚な風景を望むPremium 伊勢志摩。このロケーションを活かしたプレミアムラウンジが登場します。暖炉が設置されたラウンジの外には、水盤の先に穏やかな英虞湾を眺める水盤デッキを設えました。水平線から朝日が昇る朝、陽光にきらめく海を眺める日中には水盤デッキで潮風を感じながら、夜は暖炉に揺れる炎を眺めながら、アルコール、ソフトドリンクなど無料のラウンジサービスをお楽しみください。中央に暖炉を設えた落ち着いたトーンのラウンジからも海を一望いただけます。更に身近に海を感じる水盤デッキ。【リニューアル】大浴場前述の通り、Premium 伊勢志摩の最大の魅力はそのロケーション。青い海とリアス海岸が織りなす風景は大浴場からもお楽しみいただけます。水平線から昇る朝日、静かな夜の海の上に浮かぶ月、夜釣りをする沖合の漁船の灯りをぼんやりと眺める非日常の温泉体験をよりお楽しみいただくために、男性用大浴場に「月見デッキ」を新設いたします。しっかり温まった体を月見デッキでクールダウン。海を眺める<ととのい時間>をご堪能ください。温泉で温まった体を潮風を感じながらクールダウン。至福の温泉時間をお楽しみください。女性大浴場は薬湯をお楽しみいただいていた内湯を半露天風呂にリノベーションいたします。露天風呂、内湯、そして半露天風呂。いずれの浴槽からも海を眺めながら温泉をお楽しみいただけます。女性大浴場に登場する半露天風呂。露天風呂、内湯と全ての浴槽で海を眺める湯あみをお楽しみください。【リニューアル】客室全83室のうち、17室を和ベッドルームにリノベーションいたします。畳の上にベッドを配した人気の客室タイプは、お休みの時はベッドの利便性を、寛ぎ時間は畳に思いきり手足を伸ばせる快適性を兼ね備えた客室です。お喋りも旅の大きな楽しみのひとつ、という女子旅や、赤ちゃんや小さなお子様のいる家族旅などにお薦めの客室です。利便性と快適性を兼ね備えた和ベッドルーム。【変わらぬ魅力】海の幸を楽しむグルメバイキング風光明媚な英虞湾を望むロケーションを活かしたリニューアルによりハード面の魅力を強化して誕生するPremium 伊勢志摩ですが、リニューアル前と変わらぬ魅力は海鮮メニューを存分に楽しめるグルメバイキングと、その料理の美味しさです。全長約24メートルのコの字型のライブキッチンを配したレストランでは、海の恵み、山の幸を使ったメニューの他にも、志摩地方の郷土料理など、旅先ならではの美味しさをお楽しみいただけます。全長約24メートル。コの字型のライブキッチンから出きたての美味しさをご提供いたします。海鮮メニューもたっぷりとご用意いたします。本リリースでご紹介したPremium 伊勢志摩に先んじて、4月22日には石川県加賀市に「大江戸温泉物語Premium 山下家」がオープンいたします。Premium 山下家情報はこちらから : Premium 山下家、伊勢志摩に次いで、2024年内に複数のPremiumシリーズの宿のオープンを予定する大江戸温泉物語。より多くの方に「行ってみたいね。」「また、来たいね。」と思っていただける宿の運営とサービスの提供にご期待ください。※画像は現時点の物で実際とは仕様が異なる場合がございます。※料理写真はイメージです。【大江戸温泉物語の宿にお得に泊まる】早めのネット予約で割引♪早宿60 日にちが合えば割引でお得!得旅プラン 【会社概要】■会社名大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社■所在地〒104-0061東京都中央区銀座7-16-21銀座木挽ビル5階■設立年月日 2017年12月5日(創業2001年11月)■資本金 100百万円(2023年2月末日時点)■代表取締役 橋本啓太■事業内容 全国で温泉旅館、ホテル、温浴施設、テーマパークの運営事業を展開(全国38施設。2023年12月現在)■URL 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2024年03月04日チーム一丸となってKEIイズムを具現化伝統と革新、そして日本の美学を融合優美な雰囲気のなか、美食と景色を堪能チーム一丸となってKEIイズムを具現化六本木ミッドタウン内、リッツカールトン東京の45階にあるフレンチダイニング【Azure 45】。外資系ホテルといえば、フランスのスターシェフを冠にするのが定石でしたが、今回、お店はパリに構えているものの、日本人の三つ星シェフを監修者に迎えたというのは画期的な出来事です。監修者となった小林圭氏は、2011年に【Restaurant KEI】を開いた翌年にミシュラン1つ星を獲得するなどオープン当初から世界的に注目される存在でした。そして2020年、ついに3つ星に輝いたというニュースは、フランス国内でアジア人シェフの初の快挙ということもあって大きな喜びを日本に届けてくれました。1977年生まれ。1998年に21歳で渡仏した小林圭氏は、ジル・グジョン、アラン・デュカスという現代の巨匠の元で研鑽を積み、2011年、パリで自身の店を開きましたオープンにあたって、「フランス料理の美食の文化とその歴史を作ってきた偉大な巨匠にインスパイアされ、伝統的なフランス料理を現代的に解釈して生み出す新しい世界観を日本のリッツで伝えられることを嬉しく思う」と小林氏は話していました。その想いを託されているのが実際に厨房で指揮を執る料理長の村島輝樹氏です。「ホテルのレストランは緊張する、特別な日に食事に行く、というような敷居の高さを払拭したいと思っています。また、スターシェフの店で選ばれるのでもなく、フランス料理を食べる機会が少なかった人たちにも、【Azure 45】の料理やサービスで満足していただきフランス料理に興味を持つきっかけになってくれたら嬉しいですね。そのためにチーム一丸となって努力することが私たちの務めだと小林シェフと話しています」と村島氏。「フランス料理は難しいものではなく、五感をフルに使って楽しめる感性を刺激するもの。そういったことを伝えていくのが私たちの使命」と熱く語る村島氏外資系高級ホテルのメインダイニングというと価格も相当にお高くなると思いきや、ディナーコースは税・サービス込みで19,800円から、ランチは14,800円のコースもあります。「雰囲気やサービスのクオリティはもちろん、眺望もこの通り素晴らしいでしょう?「えっ、お得じゃない?」と喜んでもらい、また足を運んでいただけるレストランにしていきたいですね。小林シェフからは、星の評価ではなく、何よりも来てくださるお客様がいい時間を過ごし、満足していただけるために何をすればよいかをスタッフ一人一人が考え、お客様にとって世界一のレストランにしていこうと言われています」。ハイグレードのワインをグラス3種9,800円からペアリングで楽しめる伝統と革新、そして日本の美学を融合し新しい世界観を伝える小林氏が村島氏を料理長に抜擢した理由は、技術の高さはもちろんですが、フランス料理の歴史、伝統にも深く理解があるということも大きかったそうです。「小林シェフと同様に1990年代から本場フランスで修業し、同じ時代を進んでいたこともあってクラシックもかなり勉強しながら、小林シェフはアラン・デュカス、私はジョエル・ロブションという革新的な現代の巨匠の元で仕事をしていました。そういった背景も相まって料理を考えるイメージに共通性が多く、阿吽の呼吸で分かり合うことができるようです」と村島氏。クラシックな技法も熟知し、リスペクトしながらも現代の嗜好に合わせて繊細さ、軽やかさを出せるように工夫を重ね、さらに日本の感性、美学なども融合していくというのが2人のスタイル「私のスペシャリテ、仔鳩のローストですが、低温調理をしたあとに0℃前後で数日寝かせて身質をしっとりさせ、繊細なテクスチャーに持っていくという手法が偶然にも小林シェフと同じだったんです。ただ、私は3日間寝かせていましたが、小林シェフに1週間寝かせるともっといいよ、とアドバイスを受けてより繊細さが増しました」(村島氏)コースのメインで出されるしっとりなめらかな食感の『ランド産仔鳩のロースト』しっとり優しい口当たりの小鳩にほどよく絡む内臓を使った濃度のあるサルミソース、そしてトッピングされたナッツ類、下に敷かれたいちじく、アンディーブ、レンコン、スパイスなどさまざまな要素の食感や風味がアクセントになり、コースのフィナーレとはいえ食べ疲れることもなくするすると喉を通っていきます。「小林シェフは「伝統と現代性、食感と風味の完璧なバランスを追求し続けよう」と常に私たちに話しています。そのKEIイズムを具現化する努力が日々この厨房で繰り広げられています」(村島氏)『マグロのカネロニ』(前菜)。「キャビアをよりおいしく食べてもらうことを追求した一品です」と村島氏。季節によってはマグロのかわりに海老を使うことも「マグロの上にキャビアをトッピングするだけではキャビアの良さが伝わりづらい」と考え、キャビアを包み込むねっとりとした食感に加えてマグロとも相性の良いアボカドを使って、マグロのタルタルのロール仕立てにした前菜。下に敷いてあるのはリンゴのスライス。この甘味と酸味も重要な要素です。キャビアの塩気はまろやかになり、旨みがアボカドに溶け込み優しい味わいに。アボカドという親しみのある食材も、キャビアと合わせると優美で華やかな印象に変身。この一皿も食感のバランスや風味のバランスが見事、と感心させられました。釣りが趣味だという村島氏は、魚の扱いも見事です。身の厚いクエは、表面が乾かないよう気を配りながら、何度もオーブンから出し入れしてゆっくりゆっくり蒸しながら火を入れ、最後に皮目をパリッと焼いて食感のバランスを整えています。仕上げに蛤と昆布のだしをかけていただく日本的な感性が光る一皿、『クエ 蛤のだしで』「クエは日本では鍋料理で親しまれています。なので、ソースで食べるよりも温かな液体に浸して口に入れた方が、クエらしさをよりおいしく味わっていただけるのではないかと。クエの可能性を追求した一皿です」と村島氏。鍋料理を彷彿させるだしや和を感じる食器を使うことで、日本人客には親しみやすさを、外国人には日本の精神を伝え、日本人シェフだからできる新しいフレンチの表現を体感させてくれています。食材の魅力や可能性を追求したコースの最後を締めくくるデザートも五感に響く印象的な味わいで食後の余韻を長引かせてくれます。『フランボワーズのヴァシュラン フランボワーズとバラのコンフィチュール』小林圭氏のスペシャリテとして人気のメレンゲのデザート「ヴァシュラン」を、ペストリーシェフの小堀真弓さんがフランボワーズのメレンゲで1枚1枚花びらをつくり、大輪のバラの花で表現。フランボワーズのソルベ、ココナッツムースの組み合わせで、ゴージャスですが味わいは繊細で軽やかです。コースを締めくくる『タルトショコラ』食事の最後でもすっきりと食べられる、口溶け滑らかな温かいチョコレートです。チョコレートは、ヴァローナ社のセミビター、フルーティな酸味のあるもの、持続性のある香りがあるもの3種をブレンド。枯れ葉をモチーフにした、季節感のあるパリパリのチュイルを崩しながら頂きます。優美な雰囲気のなか、美食と景色を堪能最先端のフレンチを堪能できるレストランとして生まれ変わった【Azure 45】。ホテル全体のコンセプトと同様に西洋と東洋が融合した極めてエレガントな設え、ムーディーな照明はもちろん、ホテルならではの丁寧で安定感のあるサービスなど、何拍子も揃って思い出深い時間を過ごすことができます。どのテーブルからも最高の眺望を眺められるレイアウトアジュールはフランス語で「青」の意味。天井が高く、広い窓の向こうに広がるのは空の色に因んだ店名なのです。その空の色、そして景色もランチタイムとディナータイムで大きく表情を変えます。ランチタイムは東京湾に続く街並みや、天気がいい日なら房総半島を望むことができます2名席はどの席も景色がよく見えるように、窓に向かってセッティングされています世界中の人々が訪れる東京のラグジュアリーホテルのメインダイニンで、日本人シェフが表現するフレンチというのは極めて画期的です。今後このような流れで日本のフレンチシェフの活躍の場が、世界的な視野を持って次世代へ継承されていくことこそ小林氏、村島氏の願いです。「伝統と現代性、食感と風味の完璧なバランスを追求」することを標榜している小林氏ですが、複雑になり過ぎず、わかりやすいおいしさであることも大切にしているそうです。コースが進むうちにそういったKEIイズムも理解できるようになり、食べ終わる頃にはファンになっていること間違いなしです。ホテルというちょっと贅沢な場所ですが、記念日だけでなく、季節ごとに訪れてみてはいかがでしょう?Azure 45【エリア】六本木【ジャンル】フレンチ【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】26000円【アクセス】六本木駅
2024年01月05日新次元まつ毛ケア成分株式会社シーオーメディカルは11月27日、同社が取り扱っている「湘南美容まつ毛美容液PREMIUM」を全国で販売開始すると発表した。「湘南美容まつ毛美容液PREMIUM」は大人気の「湘南美容まつ毛美容液」をグレードアップしたアイテム。新次元のまつ毛ケア成分である「毛根幹細胞培養液」を取り入れ、毛周期の成長期だけでなく退行期や休止期にもアプローチできる商品である。また、ミネラルを豊富な海洋深層水をベースに厳選した美容への成分を12種類配合しており、豊かな成分が理想のまつ毛へと導いてくれる。全国で購入可能株式会社シーオーメディカルの「湘南美容まつ毛美容液PREMIUM」は、税込み価格3,740円のアイテムである。2023年11月27日より公式ECサイトや楽天市場およびAmazonの公式店舗で取り扱いを開始し、全国のマツモトキヨシグループやココカラファイングループの店舗などでも順次取り扱いを開始していく。「湘南美容まつ毛美容液PREMIUM」は通常版以上に成分をパワーアップしているアイテムで、ヘアケア製品に配合されるような成分や、スキンケア成分で注目のナイアシンアミドなども配合。同社では全国発売のこの期に、まつ毛ケアに悩んでいる人に是非試してみてほしいとしている。(画像はプレスリリースより)【参考】※株式会社シーオーメディカル公式ホームページ
2023年11月28日大人のPREMIUMなモンブラン !「PREMIUM 丹波栗モンブラン」 10月3日 登場!「PREMIUM 丹波栗モンブラン」918円(税込)京都 パティスリー洛甘舎(ジェイアール京都伊勢丹店)にドレスを纏った大人のモンブランが登場!「PREMIUM 丹波栗モンブラン」3種類のお酒を合わせた大人のプレミアムなモンブランです。マロンガナッシュ、ラム酒入り生クリーム、ブリュレをガトーショコラの土台に乗せ、こだわりのマロンリキュール入り生クリームとブランデー入りマロンクリームの二色のマロンペーストでドレスアップしました。旬の丹波栗と併せてご堪能ください。パティスリー洛甘舎「和魂洋才」をコンセプトに、「和」の素材に「洋」の技巧を凝らしたスイーツをお届けします。洋菓子に、京都らしい「和」の要素を加えることで、新しく、さらに美味しい「パティスリー洛甘舎」のスイーツが生み出されます。 大切な方への贈り物に「パティスリー洛甘舎」だからこそ生み出せる「和魂洋才」のお菓子を!【会社概要】本店 : 京都市中京区三文字町227-1藤六ビル1F(東洞院通六角西北角) TEL 075-708-3213イートイン有/店長:小久保叶望URL: ジェイアール京都伊勢丹店 : 京都市下京区東塩小路町ジェイアール京都伊勢丹地下1F洋菓子売場【お客様からのお問い合わせ先】パティスリー洛甘舎店長小久保叶望TEL:075-708-3213e-mail: info@rakkansha.jp 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2023年10月10日林技研株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:林 基弘)は、2023年9月7日より、腎ケアをサポートする天然由来のサプリメント『PREMIUMイヌトウキ』がわずか、販売開始半年で「品質と安全性」に優れ安心して使用することができる基準作りを目的とした制度「日本成人病予防協会推奨品」として認定されましたので、下記のとおりお知らせいたします。認定時での佐野理事長と林代表日本成人病予防協会承認品マーク■背景現在日本において、慢性腎臓病(CKD)は約1,330万人。成人の8人に1人が罹患しているといわれ、新たな国民病といわれております。腎臓の機能が低下すると、体内に有害な老廃物が溜まることで様々な健康リスクが発生します。2023年3月に発売した「PREMIUMイヌトウキ」は、健康な腎ケアをサポートするサプリメントです。開発者の林 基弘(当社社長)は、自身が30ケ月で健康な腎ケアができるようになった経験から、本製品の開発に着手。8年間の開発期間と3年間の試験期間を経て開発され、一般市場向けに販売を開始した商品です。PREMIUMイヌトウキ商品写真1PREMIUMイヌトウキ商品写真2【日本成人病予防協会推奨認定制度について】「推奨選定制度」は「医学団体 日本成人病予防協会」が、国民の健康維持増進に欠かせない健康管理に関する商品やサービスに対し、各分野の専門家による厳格な審査を行い「品質と安全性」に優れ消費者が安心して使用することができる基準作りを目的とした制度です。■『PREMIUMイヌトウキ』概要開発までには多くの困難があり、絶滅危惧II類であるこの植物を、5年間根腐れさせず花も咲かせずに大量に生産することは、困難の連続でした。天然由来の成分は恩恵を感じるまでに相当な時間を要するものですが、早くしすぎると健康上の影響が出る恐れもあり、それらの安全性を確認するため、様々な試験を重ねてきました。最終的に「南米産のマカ」を配合した『PREMIUMイヌトウキ』の開発と適正摂取量の計算方法の数式化に成功。これにより、多くの現代人が抱えている「疲れ」「むくみ」「だるさ」「太りやすさ」など、健康上の悩みの原因と言われている「腎機能の低下」をサポートする商品が完成しました。その後の活動は以下の通りです。2021年4月 PREMIUMイヌトウキの完成2022年11月 第29回日本未病学会学術総会(於:順天堂医科大学)にて「論文および商品」の展示2023年3月 全国通販事業の開始2023年4月 放送の某局の朝ドラでの採用(当社サンプル植物の提供)2023年5月 「ビューティーワールド ジャパン 東京2023」での出展2023年9月 日本成人病予防協会推奨品に認定現在年間2,000袋を超える商品として成長を続けており、今後はその重要性の認知向上に伴い、さらに需要が高まると考えております。今後の課題は、原料の量産が難しく、現状生産能力が50,000袋しかないことです。PREMIUMイヌトウキ商品写真3■商品概要商品名 : PREMIUMイヌトウキ内容量 : 180粒(0.25g/1粒)1日の摂取量: 6~24粒/1日(標準摂取量は12~15粒/1日)主な成分 : 国産イヌトウキ(5年根)1500mg+南米産マカ1500mg(12粒中)価格 : 16,200円(税込):1袋の場合サイズ : タテ200mm×ヨコ120mm (チャック付き 乾燥剤入り)URL :<PREMIUMイヌトウキ> <PREMIUMイヌトウキ通販サイト「Ulyssesオンラインショップ」> <PREMIUMイヌトウキ楽天市場「美と健康のお店HanaUly」> 『林技研株式会社:PREMIUMイヌトウキが日本成人病予防協会承認品に認定』公式動画(制作:日本成人病予防協会) 日本成人病予防協会制作YouTube■会社概要商号 : 林技研株式会社代表者 : 代表取締役 林 基弘所在地 : 〒160-0021 東京都新宿区歌舞伎町2-3-21 明治通りビル606号室設立 : 2010年10月事業内容: 療術業、サプリメント販売業、建設業資本金 : 500万円URL : カイロサロンUlyseeed東京本院 カイロサロンUlyseeed大阪分院 林技研株式会社「内装工事のプロ集団」 【本商品に関するお客様からのお問い合わせ先】林技研株式会社(カイロサロンUlyseeed東京本院)Tel:03-6233-8370 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年09月26日「PREMIUM葡萄ショート」で気分はブドウ園のど真ん中!最高級葡萄がゴロッゴロッと入っています。8月29日より新登場!「PREMIUM葡萄ショート」918円(税込)パティスリー洛甘舎(ジェイアール京都伊勢丹店)へ葡萄狩りに行きませんか?最高級「シャインマスカット」と「ナガノパープル」を贅沢に6個分をゴロッゴロッと散りばめています!フルーティーな生地と葡萄に合わせた絶品生クリームをお楽しみください。貴女を葡萄の園へ誘います。洛甘バターサンド<マロン>(写真右端)297円(税込)葡萄狩りに飽きたら、季節先取りの栗拾いはいかがでしょうか。9月末にリリース予定の「洛甘バターサンド<マロン>」は、マロンペーストをふんだんに使用し、渋皮栗を合わせたバタークリームが絶品です。生地にもマロンペーストを練り込んで作っています。乞うご期待!パティスリー洛甘舎「和魂洋才」をコンセプトに、「和」の素材に「洋」の技巧を凝らしたスイーツをお届けします。洋菓子に、京都らしい「和」の要素を加えることで、新しく、さらに美味しい「パティスリー洛甘舎」のスイーツが生み出されます。 大切な方への贈り物に「パティスリー洛甘舎」だからこそ生み出せる「和魂洋才」のお菓子を!【会社概要】本店 : 京都市中京区三文字町227-1藤六ビル1F(東洞院通六角西北角) TEL 075-708-3213イートイン有/店長:小久保叶望URL: ジェイアール京都伊勢丹店 : 京都市下京区東塩小路町ジェイアール京都伊勢丹地下1F洋菓子売場【お客様からのお問い合わせ先】パティスリー洛甘舎店長小久保叶望TEL:075-708-3213e-mail: info@rakkansha.jp 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2023年08月29日フロマージュの最高峰「PREMIUM<ギフトBOX>」が、「母の日」5月14日に新登場!!!パティスリー洛甘舎(本店:京都市中京区)から「母の日」に最適なケーキギフトが登場!お母様への感謝に、最高峰のフロマージュ(チーズケーキ)ケーキをプレゼントすれば喜ばれること請け合いです。カマンベール、リコッタ、クリームチーズの厳選した3種類のチーズの濃厚な味わいを、フリュイルージュのアクセントで。カマンベール、リコッタ、クリームチーズの厳選した3種類のチーズの濃厚な味わいは、他の追随を許しません。パティスリー洛甘舎のPREMIUM CAKEを大切な方へのプレゼントに。パティスリー洛甘舎「和魂洋才」をコンセプトに、醤油やきなこ、お餅などの「和」の素材を用い、「洋」の技巧を凝らし昇華させた菓子の数々は、若きパティシエ達がこだわり抜いた逸品ばかり・・・。大切な方への贈り物に最適な、ひと味違う「和魂洋才」のお菓子です。洗練された店内に並ぶ至高のスイーツをぜひご賞味ください。【会社概要】本店 : 京都市中京区三文字町227-1藤六ビル1F(東洞院通六角西北角) TEL 075-708-3213イートイン有/店長:小久保叶望URL: ジェイアール京都伊勢丹店 : 京都市下京区東塩小路町ジェイアール京都伊勢丹地下1F洋菓子売場【お客様からのお問い合わせ先】パティスリー洛甘舎店長小久保叶望TEL:075-708-3213e-mail: info@rakkansha.jp 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2023年04月13日今秋リニューアルしたばかりの「PREMIUMモンブラン」が大人気!秘密はフリフリのモンブランドレスPREMIUM モンブラン918円3種類のお酒を合わせた大人のモンブラン3種類のお酒を合わせた大人のプレミアムなモンブランです。マロンガナッシュ、ラム酒入り生クリーム、ブリュレをガトーショコラの土台に乗せ、こだわりのマロンリキュール入り生クリームとブランデー入りマロンクリームの2色のマロンペーストで包みました。旬の丹波栗と併せてご堪能ください。「和魂洋才」をコンセプトに、醤油やきなこ、お餅などの「和」の素材を用い、「洋」の技巧を凝らし昇華させた菓子の数々は、若きパティシエ達がこだわり抜いた逸品ばかり・・・。大切な方への贈り物に最適な、ひと味違う「和魂洋才」のお菓子です。洗練された店内に並ぶ至高のスイーツをぜひご賞味ください。【会社概要】本店 : 京都市中京区三文字町227-1藤六ビル1F(東洞院通六角西北角) TEL 075-708-3213イートイン有/店長:小久保叶望URL: ジェイアール京都伊勢丹店 : 京都市下京区東塩小路町ジェイアール京都伊勢丹地下1F洋菓子売場【お客様からのお問い合わせ先】パティスリー洛甘舎店長小久保叶望TEL:075-708-3213e-mail: info@rakkansha.jp 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年10月31日広東料理の真髄、それは受け継がれてきた調理技術16歳のときに、料理人の道に入り、以来62年広東料理一筋の譚彦彬シェフ。戦時中に生まれ、戦後復興期、バブル景気、リーマンショック、コロナ禍と、激動の時代を料理人として生きてきました。【赤坂璃宮】をつくり、25年という節目を迎えた今、ずっと変わらないのは、「本場に負けない広東料理をつくりたい」という思いだと振り返ります。「オープン当時は、本場そのものの料理を出しても、お客様に受け入れていただけないこともありました。そこで、日本人の方にも喜んでもらえるように、四季折々の日本食材を取り入れ、自分なりに”うまい”と思う食材を組み合わせて、創意工夫を重ねてオリジナルの料理もたくさん作りました。そうした料理を、”これは、広東料理じゃないよ”って言う人もいたけれど、私は、こうした料理も正真正銘の広東料理だと胸を張れます。そもそも、料理というものは日々進化するもの。どんなジャンルでもその時代のシェフたちが創意工夫を凝らして積み上げて作られていくものですから」と話してくれました。【赤坂璃宮 銀座店】店内広東料理とは何か。その質問を自分なりに突き詰め、辿り着いた答えは、広東料理独特の調理技法にその真髄があるということでした。日本の食材を使ったり、組み合わせる食材や調味料は独自で編み出したものだけれど、基本の調理技法は頑なに守る。それが譚流なのです。「大きな鍋で一気に香りをたたせて炒めたり、蒸しあげたり、乾貨を伝統的な手法で戻して味を出したりという独自の技法があります。味の要となるスープなども本場同様に手間をかけてつくります。そうした広東料理の基本は崩しません」ここで少し、広東料理の調理技術の幅広さをご紹介しましょう。まず、はずせないのが「炒(チャオ)」。読んで字のごとく炒め物ですが、炒を制すれば一人前。そう言われるほど、最も重きを置かれる技術です。しかも、この「炒」も一筋縄ではいかないのです。「油泡」「清炒」「炒」「煎」「爆」など、炎の扱い方、炒め方が違う技術が多数存在。一瞬の火の入り具合の見極め方を会得するのはなかなか難しいといいます。『広東名菜 赤坂璃宮 譚彦彬の味』より。ハタの炒め物は「油泡」で「油泡」は、副菜などは加えず主となる食材のみ優しく炒める手法。「清炒」は野菜や魚介などをシンプルに塩で炒めること。さらに「煎」は、少量の油で食材の両面を炒り焼きにすることを言い、太刀魚などの魚、牛肉など厚みのある食材を焼く際に用いることが多い技法です。広東料理の味のベースとなるスープ「湯」も、「頂湯」「上湯」「二湯」「例湯」と、実にさまざまな種類があります。「頂湯」は、広東料理でも最上級のスープのこと。あらかじめとっておいた上湯に、豚肉と丸鶏、金華ハムを加え、6時間蒸籠で蒸した黄金のスープです。一方、「二湯」は上湯をとった残りのガラに、豚スネ肉、丸鶏などを加えて6時間ほど炊いた、炒め物からカジュアルなスープにまで幅広く使う万能調味料的なスープ。「例湯」は、食材を水から煮込み、その食材の旨みと味わいでスープにするレストランの日替わりスープを指します。また、スープは、広東料理の華である乾貨を代表するフカヒレなどにも使われます。戻したフカヒレにじっくりと時間をかけてスープの旨み吸わせて味を凝縮した味わいは、広東料理ならではの美味です。『広東名菜 赤坂璃宮 譚彦彬の味』より、『フカヒレの煮込み』。黄金色に輝く太い繊維質の魚翅を麺の如く味わうのが、広東料理ならではほかにも、「蒸(蒸す)」「炸(揚げる)」「白灼(湯引き)」「拌(和え物)」など、さまざまな調理法がありますが、それは、『広東名菜赤坂璃宮譚彦彬』をぜひご覧ください。中国料理の技法の幅広さに触れられると共に、それぞれの調理法にプロならではの丁寧な下拵えと、それぞれの調理のコツ・技法がレシピとして掲載されています。さて、最後に譚さんが、特別に家庭でも比較的に簡単にできる炒め物1品を本から紹介してくれました。この、『豚バラ肉とネギ生姜の炒め物』は「爆」と呼ばれる炒め方で調理します。「爆」は、強火で瞬時に炒める調理法のこと。素材の食感や持ち味を損なわぬよう、強火でスピーディに炒めてください。そして、炒める前の下味をつける行程など、手順を省かずに、丁寧につくることが、プロの味に近づく秘訣です。赤坂璃宮人気の一品!『豚バラ肉とネギ生姜の炒め物』『豚バラ肉とネギ生姜の炒め物』。家で作る場合は、何度も挑戦して、炒め方を研究してみよう材料材料(3人分)豚バラ肉(3cmの短冊切り)250gしょうがスライス6枚長ネギ(3cm 幅に切る)12切れ[豚肉の下味用A]溶き卵大さじ1醤油小さじ1胡椒 少々片栗粉 少々ピーナッツ油 大さじ2[合わせ調味料B]二湯(なければ水)大さじ1醤油 大さじ1/2砂糖 小さじ1/3コショウ少々片栗粉少々ピーナッツ油大さじ2塩漬け生胡椒小さじ1紹興酒 大さじ1ゴマ油小さじ1作り方1. 豚バラ肉はボウルに入れ、A のピーナッツ油以外の材料を加えてもみ込み、下味をつける。次にA のピーナッツ油を回し入れてさらに混ぜる。2. 180℃に熱した揚げ油で、ショウガをさっと揚げる。続けて1 も、八分通り火が入るように油通しする。ザルにあけ、余分な油を切る。3. B をよく混ぜておく。4. よく熱した鍋にピーナッツ油を入れ、長ネギを焼く。色づいたら2 のショウガと塩漬け生胡椒を炒めて香りをたたせ、2 の豚バラ肉を加える。5. 紹興酒を入れてさっと炒め合わせ、3 を加えて炒め、仕上げにゴマ油を振り入れる。赤坂璃宮銀座店【エリア】銀座【ジャンル】広東・香港料理【ランチ平均予算】3000円【ディナー平均予算】12000円【アクセス】銀座駅 徒歩3分『広東名菜 赤坂璃宮譚彦彬の味』詳細料理人人生60年を超えてもなお、進化し続けている譚彦彬氏、集大成の一冊。譚氏は広東料理の第一人者であり、数々の名作料理を生み出してきました。氏が総料理長を務める「赤坂璃宮」は今年10月、25周年を迎え、それを記念する本書では、半生を振り返る自伝を掲載。調理技法別に構成され、美しく迫力ある料理写真とともに料理レシピ85品を掲載しています。『広東名菜 赤坂璃宮譚彦彬の味』6,930円/世界文化社刊
2021年12月05日日々の鍛錬と研究から生まれる、研ぎ澄まされた美味神は細部に宿る。「フォーシーズンズホテル丸の内 東京」に新しくメインダイニングとして登場した【セザン】ダニエル・カルバートシェフの料理から真っ先に浮かんできたのがこの言葉でした。端正で、清らかで、ストイックさを感じる皿の数々。凛とした美しい料理は、一口食べれば、驚きの香りや食感などが潜んでいて、静かな見た目とは相反し、口のなかでは急に饒舌になっていきます。香港で会った時には、すごく柔らかい印象だったシェフ。けれど、この緊張感がみなぎる精緻な料理をつくるなんて、きっと鍛錬を繰り返し、美しく磨かれた日本刀をつくる、刀鍛治みたいな人なのではないだろうか。そんなイメージを勝手に抱いてしまうほどに、ディティールにまでみなぎる美意識が印象的だったのです。シェフのダニエル・カルバート氏33歳。イギリス・サリー出身シェフ・ダニエル・カルバートはまだ33歳のイギリス人。けれど、すでに、生きてきた半分の年月を料理人人生に注ぎ込み、確実に世界が認める実力を身につけてきた人物です。16歳のときに料理の道に進み、ロンドンの人気レストランでの修業を経て、海外に飛び出します。ニューヨークでミシュラン3つ星「Per Se」(パー・セ)では最年少で副料理長に。その後、パリのミシュラン3つ星「エピキュール」(ホテル・ブリストルのメインダイニング) に移り、なんとスタージュから再スタート。さらに、その後香港でネオビストロを売りにした【ベロン】のシェフとなり、2020年には「アジアベストレストラン50」で4位に。そしてこの7月から【セザン】のシェフに就任しました。今、世界を食べ歩くフーディたちが注目しているシェフの一人といって間違いないでしょう。オーガニックな雰囲気のダイニング。テーブルはレザー地が張られているそんな彼が、自分の次の舞台として選んだ地が東京でした。2020年1月、「フォーシーズンズホテル丸の内 東京」のオーナーである、リチャード・リー氏から話をもらったときに、即答で東京行きを決めたそう。東京行きに迷いはなかった?という質問に、「ロンドン、ニューヨーク、パリ、香港、そして東京。世界でこれ以上行くべきところはある?」との返事。彼にとって東京は、“世界の都市BIG5”の最後の一つだったと話します。『フォアグラトリュフ』。クラシックな手法だが味わいは軽やかに仕上げたフォアグラにトリュフをたっぷりと。付け合わせはブリオッシュと塩というシンプルな一品香港のネオビストロ【ベロン】時代から、日本の食材なども積極的に取り入れて料理をしていたカルバート氏。ずっと大切にしてきたことは、“手に入りうる最高の食材の持つ魅力を活かし、自分のなかに積み上げてきた経験や技術でベストな料理に仕上げる”こと。細やかなディテールは忍ばせるけれど、あくまでシンプルに。その信念は、東京に来ても変わりません。2020年11月に東京に移住してまず始めたことは、できるかぎり精力的に日本の生産者やレストランを巡り、日本の旬の食材や、その調理法などに触れていくことでした。北海道のとうもろこしを1週間乾燥させ、挽いてつくる自家製サワードゥ ブレッド。酵母はシェフが数年育てているものを使用「北海道では、エレゾ社で最高のシャモを見つけることができました。すばらしいハンターの方とも知りあいになった。栃木では【オトワ レストラン】にも行きましたし、金沢では【すし処 めくみ】の山口さんにおめにかかって、一緒に市場に行き、魚のことをたくさん教えてもらいました。日本では四季それぞれに魚の旬があって、鮨屋では細やかに季節ごとの魚を楽しむでしょう?そうしたこと一つ一つが学びになりました。なにごともバランスですが、できるかぎり日本の食材を使って料理をしたいと思っています」ここ、【セザン】では、そうしてシェフ自らが見つけてきた食材の数々が、世界中を飛び回ってきた彼なりの経験で料理され、あっと驚くような魅力的な一皿となって登場します。シャモに詰め物をして香草やきのこ、ヴァンジョーヌで1週間漬け込み茹でた『北海道エレゾ社シャモモリーユヴァンジョーヌ』例えば『北海道エレゾ社シャモモリーユヴァンジョーヌ』は、モリーユ茸をつめたシャモを、タイムやモリーユ茸とともにヴァンジョーヌに1週間漬けた後、しっとりと茹で上げた料理。クラシックなフランス料理がベース? かと思いきや、実はこれ、上海料理の「酔っ払い鶏」の技術をアレンジしたもの。けれど、見た目も味わいも、紛れもなく現代に昇華させた軽やかな現代のフランス料理なのです。ヴァンジョーヌの風味がしっとりとしたシャモの身に染み込み、トリプルコンソメとヴァンジョーヌ、モリーユのソースとともにいただくと、これが実にきれいな味わい。口の中ではソースの香りとコクが幾重にも広がっていきます。これは、また食べたい!一人分ずつに切り分けて、最後にはトリプルコンソメとヴァンジョーヌでつくったソースをかけて「香港にいたときにも、食べ歩いたり、中国人の料理人の友人から聞いたりして中国料理の手法も学びました。私はイギリス人ですから、『フランス料理はこうでなくちゃいけない』というような固い考えは一切持っていません。大切なことはシンプルさ。ですから、すばらしい食材に対して、自分が知っているベストだと思うテクニックを使い、必要なことだけを取り入れて料理するだけです」。そんな彼の考え方は、デザートにも現れています。最初のデザートとして登場したのは、一見普通のカットした宮崎マンゴー。メートル・ドテルの方にたっぷりと生クリームを盛り付けてもらい、マンゴーの実の部分にスプーンをいれると、サクッとした手応えが。中には、なんとメレンゲとシャーベットが隠されていました。デザートの『宮崎県産マンゴーショートブレッドクレームシャンティ』「【松川】で食事をしたとき、デザートはカットしたフルーツが登場しました。それがとてもシンプルで美しいと思いました。日本料理のコースの最後はデザートとしてフルーツが出てくるんですよね?これは、宮崎マンゴーの魅力を伝えたくて、日本料理のコースの水菓子のようなイメージでつくったデザートです」一見シンプルで正統派。けれど、高い技術、食材の合わせ方のモダンなセンスが一つの皿に満ちている。そして、味わいは、非常にクリーンで香り高く軽やか。そんな印象は、前菜からデザートまで、徹頭徹尾貫かれています。そしてコースの随所には、シェフの溢れる好奇心で見つけた、日本のエッセンスが生き生きと散りばめられていました。食事中はぜひ、銘醸シャンパンが並ぶ「シャンパントローリー」から好みのシャンパンを選んで「日本に来たからといって、意識的に日本らしさを出すようなことは一切していない」というカルバート氏ですが、彼がつくる料理からは、日本で感じた驚きや感動が、言葉にせずとも溢れ出しています。それこそが日本で生まれる【セザン】の味なのでしょう。氏に、これから東京でやりたいことは?と聞くと「変わらずにこれからも、精力的にさまざまな日本の生産者のもとを訪れ、旅に出てもっといろいろと学びたい」とのこと。これから生み出されるであろう、彼の眼差しを通した、新しい日本の魅力を感じられる料理を楽しみに、また訪れたいと思いました。ちなみに、ダイニングの隣には、シャンパンを楽しめるサロンが併設されています。食事前にはこちらで一杯飲みながら、待ち合わせるのも素敵です。セザン(SEZANNE)【エリア】丸の内【ジャンル】フレンチ【ランチ平均予算】9250円【ディナー平均予算】24500円【アクセス】東京駅 徒歩4分撮影/岡本裕介
2021年08月19日二人のシェフの響宴。佐賀の恵み溢れる、二日だけのガストロノミーイベント2021年7月3日。佐賀県有田町で、フーディたちが集うガストロノミーイベントが行われた。佐賀でガストロノミーイベント?と意外に思う人もいるかもしれない。会場となった【arita huis】実は佐賀はその恵まれた地理と気候によって、さまざまな良質な農作物や魚に恵まれている。海は豊かな有明海と玄界灘に面し、有名な有明海苔や唐津の雲丹はもちろん、クエや鯖など魚の質もいい。山畑に目を向けてみると、日本最古の田んぼが遺跡として残るなど、農業を営んできた歴史もとても古い。さらに江戸時代に本格化した有明海の干拓で広がった平野は、ミネラルが豊富な上に、脊振山系の澄んだ水が流れ込み、「米づくり日本一」にも輝いた実績を持つ日本屈指の米どころだ。そして、400年以上の歴史を誇る磁器「有田焼」の生産地でもある。こうした豊かな食材と歴史ある器、自然と独自の文化を結集し、これから先の未来へ繋げるイベントとして行われたのが今回の「USEUM SAGA」なのだ。イベント中の【arita huis】オープンキッチンの様子「USEUM SAGA」とは、美術館(MUSEUM)に飾るような器を使い(USE)、才能溢れる料理人が佐賀県食材を使った料理を楽しむことがテーマ。そんなイベント会場となったのは、【arita huis(アリタハウス)】。有田焼専門店がずらりと並ぶ有田の人気スポット「アリタセラ」内にあるレストランだ。そして、今回の主役となるシェフは二人。一人は【arita huis】の増永琉聖さん。あくなき探求心で新しいフランス料理を日々考え、22歳でシェフに抜擢された実力の持ち主だ。そしてもう一人のシェフが、東京の【abysse(アビス)】の目黒浩太郎さん。実は、目黒さんのイベント参加は、増永さんからのたっての希望で実現したもの。増永さんは魚の料理を得意とするが、そんな増永さんが注目し、憧れていたのが、すでに魚料理に定評のある目黒さんだった。その思いを受けて、目黒さんは考えた末、イベントへの参加を決意したという。このイベントは、県内の有望な料理人とそのチームが県外の実力派シェフとともに料理をする機会を作ることで、若手のスキルアップを目的とした取組みという側面もあると聞いた。今回は、目黒さんが佐賀に打ち合わせに来た折に、二人で話し合いながらさまざまな佐賀県の食材に触れ、使ってみたいものをセレクトし、それぞれが一皿のメニューを考える。その料理をコースに組み込み、ゲストに楽しんでもらう仕立てとなった。コース2品目「竹崎蟹/唐津レモン」(増永さん作)器・井上萬二「ローカルガストロノミー」という言葉が聞かれるようになって久しいけれど、最近私自身、興味があるのは断然地方の食やレストランだ。佐賀の豊かな食材を、二人のシェフがどんなふうに料理をするのか。期待に胸を膨らませながらテーブルについた。目の前のオープンキッチンからは、シェフたちの熱気がガンガン伝わってくる。最初に運ばれてきたのは目黒さんがつくった「雲丹/煎茶」という料理だ。副島園の煎茶を練り込んだパスタに、ちょうど旬の唐津の赤ウニがのせられている。煎茶の苦みと香りに、ウニのなめらかな甘みがうまく合わせられてさっぱりとしたおいしさだ。この鮮度の良いウニの甘みや鮮やかな茶の香りは、現地で食べる醍醐味だろう。次の料理は、増永さんがつくった「竹崎蟹/唐津レモン」。器はなんと人間国宝の井上萬二ではないか。そこに、カットした木片を器にし、モダンな“蟹コロッケ”とでも呼びたくなる料理が美しく盛られている。斬新な器の使い方に感心しながら、料理を食べると、カブのクリームに蟹が甘やかに交じり合い、ふわりとエキゾチックで爽やかな香りが口に広がる。聞けば、レモンリーフ、そしてレモンも使っているという。端正な器と、フレッシュな感性が融合した世界は、なかなか刺激的だ。3品目「コハダ/発酵トマト/ほうれん草」(目黒さん作)器・「2016 /」(Pauline Deltour)目黒さんの「コハダ/発酵トマト/ほうれん草」も、面白い。主役はコハダ。実はコハダは東京市場で流通している40%が佐賀県産のもの。そのため獲れたコハダはほとんどが豊洲にいってしまい、地元ではあまり食べられないのだという。そんなコハダを赤酢でマリネし、アスパラガスを添え(実はアスパラガスの生産量も国内2位を誇る)発酵トマトとほうれん草のソースを大胆に敷いた皿で登場した。こうした食材のバックストーリーを知れば、目の前の料理がもっとおいしく感じ、そして色鮮やかに記憶に残る。ちなみに、大胆なソースの模様が面白いと言ったら、目黒さん「窯元でろくろを借りて、厨房でろくろにお皿を乗せてソースを敷きました」と笑顔で教えてくれた。5品目「剣先イカ/自然薯/フロマージュブラン」(目黒さん作)器・「1616 /arita japan」酒器・「やま平窯」視覚的な美しさを大切にしていることは、目黒さんの他の料理からもうかがえる。5皿目の「剣先イカ/自然薯/フロマージュブラン」は世界が魅了された有田焼の白磁の“白”をイメージし、“白い料理をつくりたかった”という思いが現れた美しい一皿。見た目だけでなく、味も抜群だ。昆布のオイルでマリネしたイカに、白キクラゲ、白いとうもろこしなどをあわせてフロマージュブランのソースを添えているのだが。旨みをのせたイカにクリーミーな酸味が驚くほど良く合う。そして、時折顔を見せるキクラゲやとうもろこしの食感が楽しい。9品目「金桜豚/味噌/コンソメ」(増永さん作)器・15代酒井田柿右衛門一つのコースで二人のシェフの料理を味わっていると、それぞれの個性がお皿から伝わってくるのも面白い。目黒さんの“発酵や旨みを重ねて深くなる料理”の印象とはまた違い、増永さんの料理は、シンプルだけれど、香りの余韻が長く続く。そんな増永さんの料理で印象的だったのは「金桜豚/味噌/コンソメ」だ。豚肉をゴロッとかたまりでローストし、下には蓮根餅を忍ばせて。鶏のミンチでとったスープにカツオとサバでとっただしをあわせたコンソメをかけていただくのだが、これが、実においしい。コンソメをかけたばかりのときは、すっきりとしているスープが、しばらくすると豚肉の脂が溶けて混じり合い、どんどん味が甘く濃厚に変化していく。そしてふっと、ハーブの香りが鼻をくすぐる。そのスープをソースがわりに豚肉を食べると、やはり印象がどんどん変わっていく。さらに、そのスープを吸った蓮根餅が抜群なのだ。白磁の第15代酒井田柿右衛門の茶椀が意外にもしっくり馴染んでると思えるのは、この料理が、ボリューム感がありながらも、澄んだ繊細な部分を持つからかもしれない。11品目「夏クエ/実山椒/花山椒」(目黒さん作)器・14代中里太郎右衛門そして、コースのクライマックス、目黒さんの「夏クエ/実山椒/花山椒」も印象に残る一皿だった。14代中里太郎右衛門の器に盛り付けられた美しいクエは、大胆にシンプルに焼きあげられている。添えられているのは、ツルムラサキと実山椒のソースと花山椒のピクルスだ。夏のクエは脂が少なくさっぱりとしている。実山椒や花山椒が生み出す野生的な野山の香りと刺激が、しっとりと仕上げた夏のクエの蛋白な味を爽やかに引き立てる。13皿目「チョコレート/ほうじ茶」(増永さん作)器・「2016 /」(Kirstie van Noort)13皿を締めくくるデザートは、目黒さんの「南高梅」のサバランに、増永さんの「チョコレート/ほうじ茶」。「チョコレート/ほうじ茶」は、チョコレートのテリーヌにクローブなどのスパイス、副島園のほうじ茶で香りをつけたもの。上にはかわいらしいそばの花があしらわれていた。香ばしい炒ったほうじ茶の香りがするチョコレートを食べながら、最初のスターターが副島園の煎茶の料理で始まったを思い出す。同じ茶園のお茶の料理で始まり、そしてお茶のデザートで終わる、というのが二人のシェフのこのコースにかけたお互いのメッセージの交換のように感じ、13皿の料理の数々が一気に走馬灯のように蘇った。振り返ってみると、魚や肉はもちろん、野草、きのこから、シナモンなどのスパイスにフルーツまで!あのおいしかった魚も、お肉も、野菜も全部県産のだったということに素直に驚く。そして、しみじみと、佐賀は様々な食材に溢れている土地なのだと実感。コースを通し、豊かな佐賀の海山を駆け巡る旅をしたような気持ちになった。左上が目黒浩太郎シェフ、その隣が増永琉聖シェフ。ほか【abysse】から3人のスタッフが佐賀入りし、【arita huis】のスタッフとともに、イベントをつくりあげた。改めて思うが、日本の地方は、本当に豊かだ。それぞれの歴史や文化があり、それぞれの自然が育んできた恵が溢れている。その豊かさに、外からの人達の視点も交えて、今までにない角度で光を当て、新しい魅力を表現していることに触れられるのも、こうしたイベントの魅力だろう。その土地に眠るさまざまなストーリーは、知れば知るほど面白い。そしてその魅力を知ればまた、この地を身近に感じ、再訪したくなってしまう。この「USEUM SAGA」は場所を変えて年内にまた行われるという。知られざる佐賀の魅力にぜひ触れに出掛けて欲しい。「USEUM SAGA」問い合わせサガマリアージュ推進協議会までメールでお問い合わせをryuutsuu-boueki@pref.saga.lg.jp撮影/神林 環
2021年07月22日“シャリは人肌に限る”。これが、これまでの鮨飯の通説だろう。冷えた酢飯は論外。ホカホカの酢飯に対しても批判的な風潮が強かった中、その常識を打ち破るような鮨店が彗星の如く現れた。今から5年ほど前にオープンした東銀座【すし佐竹】がそれだ。ご主人・佐竹大さんの握る“熱いシャリ”が評判を呼び、それにより、酢飯に対する概念が少しずつ変わってきた…と言ってもいいかもしれない。なぜなら、その後、ネタと酢飯の温度帯を意識する鮨店が少しずつ増えていったからだ。酢飯の温度で鮨だねの味わいが変わる。当たり前といえば当たり前の事実を改めて見直したそれは、ある意味、コロンブスの卵的な新たな発見だったのかもしれない。マグロ仲卸の雄「やま幸」から仕入れる天然本マグロ。写真は、鳥取境港産。旋網(まきあみ)で上がった95kgの本マグロ。これで約7.5kgその【すし佐竹】が店を閉めたのは、去年の2月のこと。そして1年3ヵ月の充電期間を経て、この5月27日、新たな幕開けを迎えた。場所は、以前と同じ東銀座。だが、設いはぐっとバージョンアップした。新橋色(ターコイズブルー)の暖簾をくぐれば、そこは別世界。すがすがしい木の香りに包まれつつ、迎え入れられるのは無駄な装飾を排した凛々しい店内。潔いまでのピュアな空間で、一際目をひくのは、吉野檜の一枚板も見事なカウンターだろう。シンプルでいて、細部にまで行き届いた設えは、どこかその握る鮨にも通じるものがある。伝統の江戸前鮨の仕事はしっかりと継承しながらも、素材一つ一つに対する細やかな手間ひまや微調整に、佐竹さんなりの素材に対する思い入れの深さを感じるのだ。まだ湯気の上がるホカホカの酢飯は、粘りと歯応えのバランスのとれたつや姫を使用。2種の赤酢は、ミツカンの“三ツ判山吹”と“優選”を使用例えば、今が旬のアオリイカ。両面に細く切り目を入れたそれは、イカ本来の甘味が、より濃密に引き出され、また、鮨屋の華ともいえるマグロにいたっては漁法にまで目を向ける拘りよう。曰く「味の濃い定置網や旋網漁のマグロを扱うようにしている。」そうで、それも漁法によって捕れるマグロが棲む海深が違い、それによって餌も変わってくるからだ。このように、一つ一つの鮨だねと真摯に向き合い、持ち味をいかにして最大限に引き出すか、を常に考える佐竹さん。だが、その真骨頂は、むしろ“酢飯”にある。以前の店でブレイクした“熱い酢飯”は、新生【佐たけ】でも健在。否、バージョンアップしたと言ってもいいだろう。「この店では、本物を残していくために若手の育成にも力を入れていきたい。」とは佐竹さん。佐竹イズムを担う若き後継者が羽ばたく日が楽しみだ「(熱いシャリは)実は、偶然の産物なんです。毎日、店のオープン前には必ず、マグロを一貫握って味見をするのですが、ある日、仕込みが押してシャリ切りが間に合わず、店を開ける直前になってしまったんです。でも、味見をしないわけにもいかない。仕方なくできたてホカホカのシャリで大トロを握ったんですが、これが想定外のおいしさで…。思わず、オッと心の中で叫びましたね。「けっこうイケルんじゃない?って。」とは佐竹さん。とはいうものの、湯気の立つ酢飯など前代未聞。そこで、最初は常連客にだけ出し、リアクションを見ていたのだとか。「食べていただいたお客様の反応も思いのほか良くて。それなら、熱いシャリを定番にしようと思ったわけです」ホカホカの酢飯に合わせ、握りの初っ端に供される大トロ。脂の最も強い部分だが、それが熱でとろけ、力強い酢飯とダイナミックなマリアージュを見せてくれるかくして、「佐竹」名物の熱い握りが誕生したわけだが、そこは凝り性な佐竹さんのこと。温かい酢飯に合わせ、炊き加減や酢の調合も微調整。現在の形に辿り着いたわけだ。が、ただ単に奇をてらったわけでは決してない。そこには、“鮨の主役はあくまでもシャリ”という佐竹さんの確固たる信念があるのだ。「まずは、自分の理想とするシャリを決め、それに合った鮨だねを選ぶ。それが、本来の握りのあり方だと思っています。」とは佐竹さん。しっかりとした力強い酢飯が理想だそうで、目指すは口中でほどけるのではなく握りではなく咀嚼する鮨。佐島のアオリイカ。一度、マイナス60℃で急速冷凍して細胞を壊し、甘味をより引き出しているそこで選んだ米は、冷めてもおいしい山形のつや姫。塩と2種の赤酢のみで仕上げた酢飯は、砂糖は一切入っていないものの、噛み締めるほどに米本来の甘味と旨みがじんわりと舌に広がる。美味しい酢飯だ。これを60℃前後の温度から、徐々に冷めるに従い、その温度に合わせた鮨だねを握っていくわけだ。そして、その温度の波は、全部で15貫が出るコースの中で計4回ある。「以前、1人でやっていたときは2回が精一杯でしたが、スタッフが増えたおかげで、シャリの温度管理がスムーズにできるようになった。」からだ。つまみの最後に供される『甘鯛の煮おろし』。サクッと軽やかに揚げた繊細なアマダイの身に、品の良い昆布とカツオだしが優しい旨みをそえる。人気の一品筆者が訪れた日の内容は次の通り。最初は大トロで始まり、赤身、アジ、カスゴと来て、次にトロで第2波。ここで最初の熱い酢飯チェンジがあり、続いて車エビ、コハダ、イカでまたチェンジ。第3波は炙った金目鯛からスタートし、大助、白甘鯛とり貝で一段落。オーラスは、大トロ、ウニ、最後のアナゴのためだけに、酢飯をチェンジ。そしてタマゴでフィニッシュという構成だ。この最後の大トロは、最初のそれと違い完全に常温に戻した状態で握るため、ホカホカの酢飯との相性もマックス。見事、味の大団円を迎える趣向となっている。奈良の宮大工が手で削ったという一枚板のカウンターが清々しい。他に個室カウンターも用意されている温かいときは、心持ちホワッと空気を含んだ酢飯に大トロの脂の旨みが、その熱ととみに口中でとろけ、冷めるに従い締まりゆく酢飯のやや硬めな食感にはイカやとり貝といった歯切れ良い鮨だねが小気味良くフィット。そのバランスも上々だ。また、コースの前半には、カスゴやコハダ、車エビといった江戸前鮨の王道系握りが続き、その後、炙りものや大助などの変化球で攻め、最後はウニやアナゴの濃厚な鮨だねで締めるー。というように握りの流れも巧妙。それは、握りの前哨戦ともいえるつまみも同様。さっぱりとしたトマトのおひたしから始まり、旬の刺身や焼きもの、オリジナルの味噌漬け鯨ベーコン等々こちらも温度感を大切にしたつまみの数々が、主役の鮨を邪魔することなく華添える。それに合わせた日本酒、ワインも豊富に揃っている。定番の芝エビではなく、ホタテ貝のすり身を入れて焼いた佐竹オリジナルの薄焼き卵。「ホタテ貝の方が甘味もあり、臭みも少ないから」とは佐竹さん「これからは、自らのイズムを受け継ぐ若手の育成にも力を入れていきたい。」と語る佐竹さん。継承と進化をモットーに、100年後も残るスタンダードな鮨を見据える一途な姿勢がそこにある。佐たけ【エリア】新橋/汐留【ジャンル】鮨・寿司【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】38500円【アクセス】新橋駅 徒歩8分
2021年07月12日この1年半、外食を取り巻く環境が劇的に変わるなかで、レストランメイドのお取り寄せが、新しいレストランの楽しみ方のとして定着してきました。それぞれのお店の味を自宅で簡単に食べられるのは、日常がちょっと贅沢な気分になって嬉しいですよね。私自身、仕事も含め、そうしたレストランのおいしいお取り寄せを数多く食べる機会がありました。今回は、そのなかでも特に私が最近ハマっているお気に入りをご紹介します。【薪焼 銀座おのでら】のダイニングから、キッチン奥に薪窯を見ることができるそのお気に入りとは、去年ミシュラン1つ星を獲得した【薪焼 銀座おのでら】のバスクチーズケーキです。【薪焼 銀座おのでら】はシェフ・寺田惠一さんが、モダンフレンチを基軸に、薪の火を自在にあやつり、食材の魅力を生かしたクリエイティブな料理がいただけるお店。バスクチーズケーキは、コースの締めを飾るデザートです。ふわりと漂う薪の香、一口食べたらとろけるような滑らかな口溶け。追いかけてほのかに香る青柚の風味。最初にこのチーズケーキを一口食べた時に、“やっと出会えた”と、あまりのおいしさに思わずつぶやき、一瞬にして恋に落ちてしまいました。表面は真っ黒に焼き上げ、中は滑らかに仕上げるのがバスクチーズケーキの特徴今ではすっかり日本でもお馴染みとなったバスクチーズケーキですが、私が最初に出会ったのは、6年前のスペインバスク・サンセバスチャンでのこと。友人に「ものすごくおいしいチーズケーキがある」と連れていかれたのが【ラヴィーニャ】というバルでした。そこの名物がこの真っ黒に表面を焦がしたチーズケーキ。真っ黒な見た目のインパクトもさることながら、キャラメルのような香ばしい香りと、とろっとしたクリーミーなチーズケーキのハーモニーにすっかり魅了されてしまい、忘れられない味となりました。その後、日本にこのバスクチーズケーキ・ブームが到来。様々なものが登場し、いくつか食べてはみたものの、どれもこれもあの味を超えるものに出会えない……。そんなときに、現地の味を思い出し、さらに、おいしさはそれを超えたかもしれない!?とハッとしたのが、【薪焼 銀座おのでら】のバスクチーズケーキだったのです。‟これ、お取り寄せできないかなあ”と密かに思っていたところ、なんと今年の4月から購入可能に!!!チーズケーキを焼くのは、ナラの薪で。火は細やかに調整「実は前から要望も多くいただいていたのですが、商品化するには時間がかかりました」と寺田さん。このチーズケーキをつくる上で、寺田さんがこだわったのは、“フレッシュなチーズケーキを、薪で香りをつけながら焼き上げる”こと。そう聞くとなんてことなさそうですが、チーズのフレッシュ感を保ち、焼きあげる薪の香りをどうつけていくかのバランスが難しいのだとか。フレッシュなケーキ本体は、ミルキーで、なめらかなオーム乳業の九州クリームチーズをたっぷりと使用。この風味となめらかさを最大限生かすために、通常チーズケーキに入る小麦粉もレモン汁をしていません。入っているのは、クリームチーズ、卵に、生クリーム、そして練乳とバニラビーンズ、砂糖だけ。そのケーキを一気に強火で表面をしっかり焼いてから、香りの良いナラの木をくべた薪窯の上段で香りを纏わせ、火の前につきっきりで焼き上げていきます。そうすることで、パンチのある薪の香りと、滑らかでフレッシュなケーキとの対比が生まれたおいしさが生まれるのです。そのレストランで食べるそのままのおいしさを閉じ込めて、お取り寄せで届けるためにもいろいろと試作を重ね、ようやく実現したのだと教えてくれました。自宅には木箱入りで届きますさて、そんな待望のチーズケーキがお取り寄せができるようになったと聞き早速オーダー。自宅には木の箱に入ったケーキが冷凍の状態で届きました。蓋を開けると、パックに入っているにもかかわらず、ふわ0と薪のいい匂いが!‟冷蔵庫で一晩解凍すると、ちょうどよい状態になります”と説明書きが入っている通りに冷蔵庫に入れたけれど、正直このいい香りがかなり危険。いますぐ食べたい欲求に火がついてしまい、何度フライングして食べようとした自分を制したことか(笑)。小麦粉は一切使わずに焼き上げた滑らかさが伝わる断面待ちに待った翌日、いよいよケーキ入刀です。パックから出すとますます香ばしい、焦がしたキャラメルのような香りが立ち上り、包丁で切る感触から、すでにケーキの滑らかさが伝わってきます。まずは6分の1くらいにカットして実食。お店でいただくのと遜色ない薪の香り、そしてフレッシュで優しいなめらかな口溶け。あっという間にペロリとたいらげ、気がつけばもう1ピースカットして食べてしまいました。いや、危険です。これ、ほっとくと一人でいくつも食べてしまいそう。ちなみに、お店ではケーキに柚の皮をすりおろしたものをかけていただきます。そのままでもおいしいけれど、季節の柑橘の皮をすりおろして、サッとかけるとよりケーキのフレッシュさが際立ちます。寺田シェフも「柚がない場合はレモンでも。ぜひ、お取り寄せしたときには、この一手間をかけてみてください」とのこと。毎週月曜日受付での販売ですが、人気ですぐに売り切れてしまうケーキ。買うことができたら、レモンを買いに走って、家でレストランのデザートの味を堪能してくださいね。それから、最後に。グルテンフリーなので、グルテンフリーを実践している方へのギフトにもオススメですよ。【薪焼 銀座おのでら】バスクチーズケーキ取り寄せ方法ECサイトからの購入。※毎週月曜日、11:00~受付開始。数量限定にて販売。薪焼銀座おのでら【エリア】銀座【ジャンル】フレンチ【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】25000円【アクセス】東銀座駅 徒歩1分
2021年07月01日従来の枠を超えて、日本ならではの本場を超えるイタリア料理をつくりたい西麻布の裏路地に現れる白い建物。扉を開けると、迎えてくれるのは、ジャコメッティやレオナール・フジタの絵画。ピエール・ジャンヌレの椅子がさりげなく置かれたサロンスペースを通り抜け、奥のダイニング・カウンターへ足を運べば南イタリアの街並みを思わせるような、真っ白な壁と紺色の天井のコントラストに目をうばわれる。ダイニングの舞台は白くて広い大理石のカウンター。異国の世界に迷いこんだような贅沢な席に座ることが許されるのは、一晩たったの6人のみ。カウンター越しにはキビキビと働いているスタッフの様子が見て取れる。「ようこそ」と笑顔で迎えてくれた湯浅一生シェフは黒いタブリエ姿。カウンターに座る他のゲストとも自然と馴染み、洗練とリラックスがバランス良く混じり合う心地よさは、誰かの邸宅に招かれたような気分になる。店内を飾る、現代の“違い棚”。さりげなく飾られているアートピースは博物館級のものシックなインテリアは“どこかのイタリアの小さな街”をイメージしたのだそうだ。天井の深い紺色の天井は、京都の「HOSOO」の西陣織を施したもの。テーブルから目をあげて飛び込む漆喰の壁には、モダンな“違い棚”に、美しいフォルムの素焼きの器が。聞けば、なんと本物の「須恵器」だという。店内のそこかしこに、研ぎ澄まされた美意識を感じる。日本の歴史が育んできた本物のアートピースや意匠を感じられるのもこの店の魅力だろう。シェフの湯浅一生さん湯浅シェフはトスカーナやエミリア・ロマーニャで働いたのち、【SALONE 2007】を経て【ビオディナミコ】のシェフを務めた人物。当時、日本にいながらにして、イタリア以上にイタリアの風を感じるような郷土料理をどう表現するかということに心を砕いていた。そうした日々のなかで、“日本でイタリア料理をつくる意味”について自分なりに考えるようになったという。現地そのもののリチェッタを再現するだけなら、誰でもできる。日本でやるからには、自分なりの視点でイタリアらしさを表現してみたい。さらには、日本でしか食べられない、現地を超えるおいしいイタリア料理をつくってみたい。そんな思いを抱いていたときに縁があり、とんとん拍子に開業が決まった。この日届いた食材。近江牛、広島の川俣シャモ、「ヨーロッパ野菜研究会」のアーティチョーク、豊洲から届く鮑や金目鯛など開業までの6ヶ月間、まずは日本の食材を知ることから行動に出た。全国の志高い生産者を知る“食材ハンター”の力を借りながら、さまざまな生産者を訪ねて縁をつくっていった。そこから開業までも止まってはいない。湯浅シェフがユニークなのは【湯浅一生研究所】というラボを4ヶ月限定で密かにオープンし、ゲストを巻き込みながらメニューをブラッシュアップしていったこと。集めた食材を生かし、湯浅シェフ自身が楽しみながら、イタリアの郷土料理らしさを感じさせながらも、もっと自由に、もっとおいしくと時間をかけて研究した集大成が【ISSEI YUASA】の料理にはつまっているのだ。魯山人の器に盛り付けられた『カチュッコ』そんな研究の“成果”は店のスペシャリテ『カチュッコ』ひとつ取ってもよくわかる。『カチュッコ』とは、魚介をたっぷりトマトで煮込んだブイヤベースのような素朴なトスカーナの郷土料理なのだが、ここでは実にエレガントな味わいで登場する。聞けば、具材の金目鯛は90度でシットリ蒸し上げ、はまぐりは65度で火を入れるなど、一つ一つの食材に合わせた温度で火を通す。さらにベースとなるスープは、あさりのだしに旨みのボタンエビと香りのジャコエビ2種をつかったエビのだし、魚の骨からとっただしにハマグリのだしを合わせ、本枯節を隠し味に加えている。その後は従来のカチュッコと同じ要領で仕上げていく。目の前にサーブされた『カチュッコ』は、素朴な現地のものとはまったく違う味だった。魚介の力強さを感じながら、雑味をほとんど感じない。それは湯浅シェフの丁寧かつ独自につきつめた調理のなせる技だろう。ブルゴーニュの赤ワインと合わせたくなるような澄んだ旨みが印象的だ。魯山人の器で供されるのもまた、なんとも面白い。ちなみにこちら、ワインの品揃えもすごい。豊富に揃うグランヴァンをゆっくり楽しむのもいいが、相談すれば料理にピタリと合うワインをグラスで出してくれる。ぜひ相談して合わせて楽しんで欲しい。手打ちパスタを使った『羊のパスタ』。器は岩崎龍二氏のもの一方、「コース一番のクライマックスはパスタです」と湯浅シェフが胸を張る2種類のパスタは、現地の風を感じる王道のもの。パスタはイタリアで修業したときにに感動した味をベースに考えていると湯浅シェフ。たとえばこの日はシンプルな『羊のパスタ』が登場した。ロングパスタは栃木の「パワードエッグ力丸君」という濃厚な卵のみで手打ちしたもの。北海道の羊のスネ肉はソフリット、白ワインとともに煮込み、シチリアンルージュトマトを加えさらに煮込む。ペコリーノチーズを加えて、オレガノで香りをつけている。羊のやさしいミルキーな香りとパスタを咀嚼したときにふわりと感じる卵の風味がたまらない。噛んだ時のプチッとした歯応えも手打ちパスタならではの醍醐味だ。『チョウザメのカルパッチョ』。カトラリーもオーダーした特注品さらにコースの途中には、『チョウザメのカルパッチョ』など面白い食材も登場する。この料理は、広島に食材探しにいったときにチョウザメに出会ったことから生まれた。「キャビアは食べたことあっても、チョウザメは食べたことある人なかなかいないんじゃないでしょうか。こうした食材としてあまり認知されていないものに出会うと、俄然料理したくなりますね」と笑う湯浅さん。チョウザメは昆布で締めて5日寝かして、神の島レモンとシチリアのオリーブオイルでつくったレモンオイルをかけ、ポーランドのキャビアを乗せている。イタリア料理という枠を飛び出して自由に羽ばたき、楽しみながら突きつめていく“湯浅ワールド”。日本でしか食べられない洗練のイタリア料理は、今後どんなふうに変化していくのだろうか。【ISSEI YUASA】という洗練された世界にちりばめられた、日本のエッセンスに触れると、日本という国をますます知りたくなってくる。自分の感性を解き放ち、ぜひその世界を楽しんで欲しい。ISSEI YUASA【エリア】西麻布【ジャンル】イタリアン【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】25000円【アクセス】六本木駅 徒歩10分撮影/佐藤顕子
2021年06月25日“レストランの専属農園”を持つことは、日本にきてまずやりたかったこときっかけは母親が見つけた一本の動画。山梨の農家との出会い皮から水分一滴まで無駄にせず、野菜の魅力を最大限に引き出す“レストランの専属農園”を持つことは、日本にきてまずやりたかったことダイニングからは皇居外苑の豊かな緑とお濠が一望できる2015年に定められたSDGs達成のため、社会全体が未来の地球のために様々な形で問題解決に取り組みはじめ、環境配慮への意識が浸透してきていることを感じている人も多いのではないだろうか。飲食業界もしかり。2020年版の仏版ミシュランガイドから登場した、グリーンスターマークもそうした動きを象徴しているだろう。このグリーンマークは、フードロスの削減、森林活性化に寄与、環境に配慮する生産者の支援、絶滅危惧種の保護などの取り組みを積極的に推進している店に与えられるマークで、フランスではミシュラン三つ星の【ミラズール】、【アルページュ】、【アラン・デュカス】などが初受賞。日本でも2021年度版のミシュランから導入され、【カンテサンス】、【シンシア】、【フロリレージュ】などが受賞した。シェフのマルタン・ピタルク・パロマー氏、29歳こうした流れもあり、ここ数年で、一気にフードロスの軽減や環境に配慮した生産者の支援などを独自で行うレストランが増えたように思う。マルタン・ピタルク・パロマー氏は、グリーンスターを初獲得した【アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ】でデュカス氏から薫陶を受け、日本にオープンするフランス料理【エステール】のシェフを任された人物。そうした環境に配慮する生産者とともに進化していく意識は当然のようにあったのだろう。山梨の農家「白州杜苑(はくしゅうとえん)」と提携をしたのは、来日からわずか一年半後のことだった。「フランスでは、格式あるレストランが自分の畑を持つことは珍しくありません。私が働いていた【アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ】ではベルサイユ宮殿にオーガニックの畑があり、そこを管理する農家とともに野菜をつくり、その野菜を様々な形で調理します。レストランの生ゴミなどはコンポストで肥料にして、畑に戻すという循環もありました。質の良い、オーガニックな野菜はなかなか手に入らない。ですから、自分も自然とそうした環境を作りたかったのです」と語る。実際、前出のグリーンスターを獲得している三つ星【アルページュ】はレストランが本格的な畑を持った先駆けだし、同じく三つ星を持つマントンの【ミラズール】も自店の隣に、素晴らしい果樹園や畑がある。筆者が【アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ】を取材したときに、シェフのロマン・メデー氏が厨房で見せてくれたのは、ずらりと並ぶ野菜のピクルスやオイル、発酵調味料。それらはすべてベルサイユ宮殿の自社の畑の野菜で作ったものだった。野菜そのものが食材になるのはもちろん、料理の隠し味になる調味料としても欠かせないと教えてくれたのを思い出した。きっかけは母親が見つけた一本の動画。山梨の農家との出会い南アルプスの麓で有機野菜をつくる「白州杜苑」の畑レストランと提携する農家を探す上で、マルタン氏がこだわったのは「有機栽培で少量多品種つくっている」かつ、「こちらの欲しい野菜づくりにともに挑戦してくれる」こと。しかし、日本語も話せない。土地勘もない。生産者のつながりももちろんない。どうやって探そうと考えていたところ、なんと、その糸口はフランスに住む母親がもたらしてくれた。ある日、「この農家さん、きっといい農家さんよ」と母親からYou Tubeが送られてきた。見てみると、山梨県・北杜市に住む若い農家の方が美しい環境のなか、きれいなオーガニック野菜をつくっていた。「母親は、僕がそうした農家さんを探していることを知っていて、You Tubeでフランス語の字幕がついている動画をみつけて連絡してくれたんです。すぐに連絡をしてみたら、オープンマインドな方で話を聞いてくれることに。とんとん拍子に話がまとまりました」。多種類の大根にカステルフランコや豆など、「白州杜苑」から届いた野菜彼らが足を運んだ農園「白州杜苑」は、南アルプスの山々に囲まれた長閑な畑だった。主人は農家・中嶋勇一郎氏。ファッション業界に長くつとめたのち、転職。野菜を扱う仕事をしたいと思ううちに農家となり、2015年からこの地で農業を営んでいる。マルタン氏が訪れて、まず感激したのが畑に使う雪解け水。山からの水を畑に流れるよう水路をつくっていて、そのきれいな水が印象に残った。食べてみたら、この水で育つ野菜が文句なくおいしかった。標高が高いため虫もつきにくく、日照時間も長いという有機野菜がよく育つ環境であることも実感した。そして、自分のヴィジョンを話すと、その熱意を受け入れてくれた中嶋さんの人柄にも惚れた。パズルのピースがカチッとはまるかのように、探していた生産者と巡り合い、提携話はスムーズに進んだという。それから、ともに【エステール】のための二人三脚の野菜作りがはじまった。まず、マルタン氏がつくって欲しい野菜のリストを出す。中嶋さんがつくったことのない西洋野菜については、種を探すことから始める。育てたことがないから、うまく育たないこともなかにはあるけれど、二人ともに、「まずはやってみよう」精神でチャレンジするのだという。「今年思うようにできなかったら、その理由を考えてまた来年挑戦しよう。そんな風に試行錯誤してやってます。ともに育て、すこしずつ自給率をあげていくことを目指しています」皮から水分一滴まで無駄にせず、野菜の魅力を最大限に引き出すスターターに登場する「エステールの農園から届いた苦味の効いたハーブサラダ 田舎風ベーコン 鰯の燻製」こうして丹精込めて育てられた野菜が、2021年の3月から様々な料理となって【エステール】のコースに登場した。自身もともにつくりあげた野菜は思い入れもひとしおだろう。スターターのハーブサラダは「白州杜苑」の野菜の魅力をたっぷりと味わえる一皿。使われている野菜はカステルフランコやミニロメインレタス、トレビスなど10種類近く。フレッシュな歯応えとみずみずしさを味わって欲しいミニロメインレタスやチコリは生で、凝縮した味わいを出したいトレビスはベーコンや人参でとった出汁で蒸し煮にしてあわせている。サニーレタスなどの葉野菜は5~6種類合わせてピュレに。そこにベーコンやいわしの薫製をアクセントに加え、菊やホリッジの花で香りを添えている。有機野菜の力強さとみずみずしさが、多面的な魅力となって一皿ににぎやかに盛り込まれ、これぞガストロノミーならではの野菜料理だ。アスパラガスが持つ様々な魅力を堪能できる「プロヴァンス産アスパラガス米糠雲丹」【エステール】のコースは、パリの【アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ】同様、野菜を中心に構成されている。そして次々に繰り出される野菜の料理が実に魅力的な味わいで、まったく飽きない。そこに、マルタン氏の野菜への愛情が透けて見える。たとえば、このアスパラガス。こちらはフランス産のものだが、この一皿に膨大な時間をかけて抽出したアスパラガスの魅力がつまっている。まず、メインのアスパラガスはなんと“ぬか漬け”にし、そのあとグリルし香ばしさをくわえた後、ブイヨンで蒸して色鮮やかに柔らかく仕上げる。上に乗っているチップスは、コールドプレスで絞ったアスパラのジュースで米をお粥状にし、それを乾燥しバーナーで炙ってチップスにしたもの。粉末はアスパラの皮などを乾燥させてパウダー状にしたものだ。うにとアスパラをまとめるソースは、ウニとアスパラのピュレ、それに麹をブイヨンで伸ばし、ミキサーにかけてこしたものだ。“アスパラガス”という野菜が持つ、香り、食感、みずみずしさ、旨味、すべての要素が食べるそばから次々に顔を出す。ウニはそれを引き立てる脇役。アスパラのジュース一滴、皮一枚たりとも無駄にせず、美しい一皿にまとめ上げている。この日のメイン『栃木産和牛茄子と紫蘇』“ぬか漬け”などの日本料理のエッセンスなども積極的に使うマルタン氏の料理だが、“フランス料理”としての芯はきっちりとある。ときに大胆なことも取り入れながらブレない料理の芯はいったいどこにあるのだろう。マルタン氏に聞くと、「僕はとてもオープンな人間です。日本はもちろん、デンマークでも、スペインでもいろんな国の調理方法や、食材の扱い方も、それがおいしくする必要なものであればどんどん取り入れます。フランス料理としては、やはりソースは大切ですね。一皿のメインとガルニチュール(添えの料理)をつなぐのはソースだと思っています。けれど、そのソースは昔ながらのフランス料理のものではなくて、進化したもの。モダンで、今の食材の香りや味の良さを引き出すものを日々研究しています。野菜をつかった発酵調味料やオイルなども、そうしたソースには欠かせません」と答えてくれた。日本の生産者とタッグを組み、ホテルレストランとしては珍しい有機野菜の専属農園を持つなど、新しい挑戦をしながら、日本で新しいフランス料理の形を提案するマルタン氏。その美しく、新しい料理は、日本の四季が育む野菜の魅力を、驚きと刺激とともに教えてくれる。フランス料理エステール【エリア】丸の内【ジャンル】フレンチ【ランチ平均予算】15000円【ディナー平均予算】30000円【アクセス】大手町駅 徒歩3分
2021年06月07日タルタルからメンチカツ、ステーキからユッケまで!黒毛和牛のめくるめく世界料理長を務めた前職の焼肉レストランで、カウンター越しにゲストの目の前で和牛を調理。次々に繰り出される多彩な料理とその臨場感溢れるパフォーマンスが評判を呼び、かぶりつきのカウンター席を希望する常連客が続出。いつしか“岡田前”と呼ばれるようになったこのプラチナシートの名を、そのまま店名に冠したのが、ここ。今年の2月、バレンタインデーにオープンした麻布十番の肉割烹【岡田前】だ。麻布十番商店街の新しいビルの地下。今年2月14日にオープンしたばかりながら、早くも連日満席の賑わいぶりだ。「和牛は日本が世界に誇る食文化。ここではその魅力を存分に味わってもらうと共に、和牛ならではの美味しさを広めたい。」こう熱く語るのは、その“岡田前”の当事者こと岡田賢一郎シェフ。知る人ぞ知る肉のスペシャリストだ。高校時代、アルバイトで入った焼肉店に心惹かれ、一旦は電気屋に就職するも焼肉店へとリターン。飲食の世界一筋30有余年。齢56にしての新境地は、ある意味、料理人生の集大成ともいえるのかもしれない。コースに登場する肉は、日によって変わるが、日本三大牛が中心。写真は、神戸牛のサーロイン(下)、松阪牛のイチボ(右上)、熊本産黒毛和牛のタンイクラがたっぷり載ったコンソメフランから始まるおまかせのコースでは、締めの手打ちそばやデザートに至るまで約13~14品が登場。その中には、ステーキはもちろんタルタルやユッケ、メンチカツにすきやきetc.。和牛料理が目白押し。それも「和牛料理の可能性を追求したい、和牛のいろいろな部位を様々な調理法で楽しんで貰えればー。」との岡田シェフの思いゆえ。オーナーシェフの岡田賢一郎さん、56歳。「鮨職人のようにお客様とコミニュケーションを大切にしながら、美味しい和牛料理を提供していきたい。」と意欲的に語る。例えば、名物のタルタルとユッケ。一見、似たり寄ったりの生肉料理のように思えるが、岡田シェフの手にかかれば、全くニュアンスの違った一品となる。カリッと焼いたバケットにのせられたタルタルは、とろける美味しさを味わって欲しいとの思いから霜降りのサーロイン(取材日は神戸牛)を使用。これを細かく刻み、ブルーチーズや食用花のペンタス等々を混ぜたそれは、ワインを呼ぶ大人の味わいだ。コースの前半に登場する『タルタル』は、ブルスケッタスタイルにバケットにのってお目見え。サーロインを細かく刻み、オリーブオイルやブルーチーズ、などを混ぜている。一方、ユッケはご飯の友。こちらは赤身系の肉を用い(取材日は松阪牛のイチボ)、しっかりとした食感を楽しめるようにと細切りにし、やや甘辛のタレとあえている。これを白飯に乗せ、これでもか!と言わんばかりにキャビアをトッピング。焼肉店定番のユッケも、ここでは、ラグジュアリー感を纏いスペシャリテにふさわしい一皿となっている。岡田シェフのスペシャリテ一つ『ユッケご飯』。こちらは赤身系の肉を細切りにし、甘辛のタレで和えている。土鍋で炊きたてのご飯は、新潟魚沼のコシヒカリ。ほんの少し加えた卵黄が隠れた味のまとめ役になっている。贅沢な味といえば、和牛の舌を丸ごと目の前で捌く牛タンも見逃せない。タン元の太い部分を、タン刺しと炭火焼の2つの調理法で表現。タン刺しは、心持ち薄めにスライスしてトリュフと共に仕立てる一方、炭火焼きの方は厚めにカット。焼きたてにかぶりつけば、牛タンならではのサクリとした歯応えも心地よく、香ばしさを伴った肉汁が舌を潤す。鼻に抜ける独特の風味がまた格別だ。『タン刺し』にはトリュフ。トリュフの産地は季節で変わり、取材日はブルガリアのトリュフを皮を剥いて使用。能登のお塩またはポン酢に山葵を添えて密やかなムードが漂う店内でひときわ目を引くのは店内中央に設えた大きなチャコールオーブンの「ジョスパー」。スペインのレストランでは、古くから愛用されているそうで、500℃にもなる高温で、肉を一気に焼きあげられる優れものだとか。このチャコールオーブンを中心に、左右にカウンター席が8席づつ用意されている。ここで、文字通り岡田シェフが、時間差で左右のカウンターに立ち、ゲストの目の前で肉を捌き、切り分け、盛り付けてサービス。臨場感溢れるその一連のパフォーマンスを見ているだけで、次第に気分が高揚してくる。スペイン直輸入のチャコールオーブン“ジョスパー”。炭は、火力の最も強いウバメカシの紀州備長炭を使用。日々、理想の焼きあがりを目指し、精進している。そして、ハイライトは、やはりステーキ。サーロインとヒレ、或いは腿肉やランプというように霜降り系と赤身系の異なる2種の部位を楽しめるのも、肉ラバーには嬉しい限りだ。肉は主に、松阪牛、近江牛、神戸ビーフの3種類を厳選。食後感が重くならぬよう、あえてサシが控えめなランクを選んでいるそうだ。とはいえ、否、だからだろうか、肉の味が強いのだ。5cmほどの厚さで焼く塊肉は、最初は炭が直接当たらない場所でゆっくりと火を入れ、遠赤外線効果で中に熱が通ってきたところで今度は炭火にかざし、3~4回出し入れしながら肉を休ませつつ焼きあげていく。サクッとした歯応えと溢れ出る肉汁に目を見張らされる牛タンステーキ肉の旨味が噛み締めるほどに広がる神戸牛のサーロインステーキ茶褐色の焼き色もシズル感たっぷりのサーロインは、周りの香ばしさに対し、中はしっとりと潤いを帯びた真紅色。和牛なればこその甘やかな芳香が胃袋を魅了する。口にすれば、口中にじんわり沁み通る肉汁の味の濃さに心奪われるはずだ。サーロインでありながら、いわゆる“とろけるように柔らかな美味しさ”ではなく、適度な歯応えを兼ね備え、噛み締めるほどに肉本来の力強い旨味が印象的だ。お土産の『ローストビーフサンド』。ローストビーフは、もも肉を使ったもちろん自家製。パンは、メゾンカイザー謹製とあればお味の方は保障付き。山葵マヨネーズが効いている。この他、揚げたてアツアツのメンチカツに生うにをたっぷりのせた通称『うにメンチ』も人気の一品。聞けば、コースを一通り食べたところで、1人あたりおよそ350g余りもの牛肉を胃袋に収めたことになるのだとか。しかし、お楽しみはまだ終わらない。岡田前謹製『ローストビーフサンド』と『タンシチュー』が、もれなくお土産に付いてくるのだ。最後のお楽しみは、自宅でご家族と一緒にどうぞという配慮も気が利いている。麻布十番肉割烹岡田前【エリア】麻布十番【ジャンル】和食【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】30000円【アクセス】麻布十番駅 徒歩5分
2021年05月28日旬の食材のチカラを感じる、創意あふれる日本料理を2019年5月。惜しまれつつ店を閉じた三軒茶屋【鈴しろ】。上質な和食を楽しめる居酒屋として多くの酒仙に愛され、予約が取れないほどの人気を博していたにもかかわらず、あえて店を閉めたのには、ご主人・渡邊大将氏の秘めたる思いと志があったからだ。アラスカヒノキの一枚板のカウンターがひときわ存在感を示す店内は、まるで舞台のよう。この広さで6席。ゆったりとした気分で食事を楽しめる。「【鈴しろ】の5年間では、お客様に育てられ、いい勉強をさせてもらいました。でも、いろいろな店を食べ歩くうち、素材をはじめ自分の料理をもっと突き詰めたい、より高みを目指したい。そう思うようになったんです。でも、以前の店のままではスペース的にも価格的にもちょっと無理がある。そこで、思い切って新たな場所でチャレンジしてみることにしたんです。」清しい笑顔でそう語る渡邊氏。だが、コロナ禍の影響もあり、気がつけば、1年以上があっという間に過ぎていた。やっとオープンにこぎつけたのは今年の1月。しかし、その空白の1年8ヶ月を無為に過ごしていたわけでは決してなかった。その間、持ち前の好奇心と強かさで武者修業。代官山【サンプリシテ】や西麻布【4000 Chinese Restaurant】など異ジャンルの店で研修していたという。中でも【サンプリシテ】は、フレンチの魚の熟成に興味があった渡邊氏にとって、是が非でも研修したい一軒だったという。曰く「相原薫シェフとはまったく面識がなく、ほぼ直談判だったにもかかわらず快く受け入れていただきました」とのこと。生来の食いしん坊で、学芸大学【件】で、料理の基礎は学んだものの、そのあとはまったくの独学。「【鈴しろ】の料理の発想は、食べ歩きの中から思いついたものが多かった」と語る。できる限りお客様に出す直前に鰹節を削り、だしをとるよう心がけているというご主人の渡邊大将氏。削りたての鰹節のふくよかな香りがあたりに立ち込める。これもご馳走。【鈴しろ】改め【わたなべ】の名で心機一転。この1月21日にオープンした新店は、白金高輪駅から徒歩2分。和食店とは思えぬ煉瓦造りの外観に、うっかりすると通り過ぎてしまいそうだが、一歩中に入れば、一枚板の見事なひのきのカウンターが目に入る。この客席カウンターからさらに間を置いて調理用のカウンターが設えられ、その奥には炭台も置かれ、と、店内の趣はいわば劇場型。天井も高く、ゆったりとした空間は、外の喧騒を忘れさせてくれる。『白エビのビーフン』。細かく刻んだ新生姜を隠し味に熱した太白胡麻油で和え、白エビも生と甘味を出すためにボイルしたものの 2タイプを混ぜるなどシンプルに見えて、見えないところで一手間かけている。“素材を生かす”“できるだけシンプルに”そして“オリジナリティがあること”。これが、料理に対する渡邊氏の信条だ。そこから“自分らしい料理“を紡ぎだそうと、常に思いを巡らしている。先付けから〆めの土鍋ご飯に至るまで全10品ほどが登場するコースの料理は、まず、盛り付けの清楚な美しさに目が惹かれる。例えば、コース2品目の『白エビのビーフン』。いきなりビーフン!と思いきや、その様相はビーフンのイメージを完全に覆す。器に入ったそれは、白エビと白いビーフンが絡み合いつつタンバル状にまとめられ、見るからに涼やか。所々に散らばる緑はシブレット。口にすれば、新生姜の淡い風味がアクセントとなり、白エビのたおやかな甘味を殺すことなく引き立てている。見た目はシンプル、かつ、素材の風味を生かしつつも、意表をつく味の構成は確かに創意的だろう。『あいなめの葛叩き』。天然真昆布とマグロ節でとるだしの旨みをストレートに味わえるお椀は、まさにコースのハイライト。あいなめは、吉野葛で葛うちしている。続くお椀は『あいなめの葛叩き』。椀種であるあいなめ以外は針ネギと木の芽の吸い口のみと、こちらも実に飾り気がない。だが、口元に寄せれば馥郁とした香りが鼻先をくすぐり、口にすればはんなりとした旨みの余韻が舌に広がる。もうそれだけで十分。他に何かを入れればかえって邪魔になるとさえ思わせるその味は、デリケートで雑味なく品がある。鰹節とはひと味違うその風味を問えば、こんな答えが返ってきた。「だしは酸味をたたせず旨みだけ欲しいので、マグロ節と天然の真昆布を使っています。鰹節は本枯節をほんの少しだけ」だそうで、できる限り、お客様一組一組に対し、出す直前に鰹節を削り、出汁を引くのも渡邊氏のこだわりの一つだ。削りたてのマグロ節。鰹節よりも味わいはたおやかだが、旨みは強い。だしは和食の命――の言葉を地でいくように、渡邊氏の料理には、先の椀ものの他にも、さまざまな形でこのだしが使われている。旬のホタルイカを肝ごと混ぜ入れた『ホタルイカのお粥』に早や名物となった『グラタン』(内容は季節変わり)等にもさりげなく使われ、味の骨格を支えている。『金目鯛の炭火焼』。まるでフレンチの一皿のように艶やかな盛り付けも、同店の魅力の一つ。金目鯛のアラからとっただしは、いわばフュメ・ド・ポワソン。スープ仕立てという趣向もフレンチを彷彿とさせるものの、味わいは、まぎれもない和の風味。とはいえ、そこは“素材の味を生かす”がモットーの渡邊氏のこと、料理に応じてだしを変えるひと手間は惜しまない。「フレンチでは、魚の料理にはその魚からとっただしでソースをつくる。それなら、和食でも通用するのではと思って、金目鯛の料理には金目鯛のアラからとっただしを使っている。」そうだ。蟹と花山椒が浮かぶだしに、炭火で焼いた金目鯛が浮かぶその一皿は、一見してフレンチのよう、だが、味わいは純然たる和。炭火ならではの皮の芳ばしさに対し身はふっくらと柔らかく、そこに滋味豊かな金目鯛のだしがじんわりと旨みを添える。花山椒のほのかなしびれが季節を伝えるアクセントとなっている。『マグロ節のおかか卵かけご飯』。おかかは、鰹節ではなくマグロ節。黄身は埼玉・深谷の田中農場の新鮮かつ良質な産みたて卵を使用。米は島根・隠岐の藻塩米。いずれの料理も18,000円(税込)のコースから。さて、〆めは、土鍋で炊き立ての白飯が、花山椒ハンバーグなどのおかずとセットになった定食スタイル?で登場。だが、お楽しみはそれだけではない。さらにプラスαのご飯ものが3種類も用意されている。『マグロ節のおかか卵かけご飯』に、『すじ青のりのお茶漬け』『キーマ鴨カレー』の中からお好みをどうぞ、というシステムだ。中には、3種類全部を所望する強者もいるそうで、もちろんそれもOK。遊び心のある趣向は掉尾を飾るには十分だろう。ご主人の渡邊大将氏、37歳。山梨県富士吉田市出身。おでんが人気の居酒屋、学芸大学【件】で修業後独立。三軒茶屋に【鈴しろ】を開き、5年間腕を振るうも、2019年店を閉め、2021年1月21日に、ここ【わたなべ】をオープンする。「最後までおいしく食べられるよう、常にやりすぎないよう気をつけています。」とは渡邊氏。そこには、気をてらわず、真摯に素材と向き合おうとするひたむきな思いが潜んでいる。わたなべ【エリア】白金/白金台【ジャンル】和食【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】25000円【アクセス】白金高輪駅 徒歩1分
2021年05月24日手軽にいろいろ楽しめるザクロペースト株式会社ez-es(エズエス)は、「Premiumザクロペースト」を5月20日(木)より新しく発売する。美と健康に欠かせない存在として太古の昔から親しまれ、希少性の高いイラン産のザクロを低温濃縮したものだ。ザクロペーストは、皮が薄く種も柔らかいイラン・サーヴェ産マラス種、厳選された無農薬栽培のザクロを使用。皮や種ごと細かく砕き、成分を損なわない低温濃縮法でペースト状にしたものだ。摂取する目安は1日ティースプーン1杯程度で、水やお湯、炭酸水で割って飲んだり、サラダのドレッシング、お肉のソースに使用したり自由にアレンジできる。保存料・添加物などは一切使用していないため、安心して手軽に楽しむことが可能だ。体の内側からキレイにする、女性のためのフルーツザクロは抗酸化作用のあるポリフェノールが豊富で、ほかにも活性酸素の増加を抑えるアントシアニン、疲労回復やむくみを予防するミネラル、血行を促進する葉酸、ビタミン類などが含まれている。まさに「食べる美容液」だ。イランでは、ザクロは約5000年の歴史を持ち、宝石のような美しさと栄養価の高さから「女性の果実」と呼ばれている。現在でもホルモンバランスを整えインナーケアとして食されている。「Premiumザクロペースト」はオンラインショップ「Beaute Beaute online shop」で購入することができる。(画像はプレスリリースより)【参考】※株式会社ez-esの公式ホームページ※「Premiumザクロペースト」商品紹介ページ
2021年05月22日北欧のエッセンスが散りばめられた、春田シェフが作る美しく驚きのあるフランス料理と、ソムリエの小澤さんが選ぶワインがつくる世界感が魅力的な【Crony】(クローニー)。オープンしてすぐにミシュラン一つ星を獲得した人気店だ。その【Crony】(クローニー)がオープン4年を機に、2月に移転open。ますますパワーアップしたと聞いて、早速訪れてみた。新しい店は、大通りから一本裏通りに入ったところにある、ガラス張りの一軒家だ。以前の地下にあったときに”大人が集う隠れ家感”とはまた違う、堂々としたシックな外観。都心の一等地に建つ一軒家レストランというラグジュアリーな佇まいに、自然と期待値も上がる。2階のシックなダイニング中央のドアを開けると、左側にオープンキッチンが。ここでは春田シェフが率いるチームがキビキビと料理をつくっている様子が見てとれ、一気にレストランという非日常の臨場感に引き込まれる。その奥にはゆったりとしたウエイティングスペース。そして正面には、2階のメインダイニングへ続く階段が、これから始まる至福の世界へとゲストを誘っている。2階に上がると、高い天井と窓ガラスの開放感あふれるスペースにテーブルが配され、心地よい空気が流れている。土壁や木のテーブルなどオーガニックなインテリアが醸し出す雰囲気は、かつて訪れた北欧のレストランのようだ。この日のメニュー。眺めているだけでも楽しい席に案内され、テーブルに着くと、温かみのある木のトレーの上にメニューが。以前のお店にはメニューがなかったから、おや?と思うと、ソムリエの小澤一貴さんが「このお店から、メニューを置くことにしたんですよ」と話してくれた。実は、店名の【Crony】とは”茶飲み友達”という意味。それは店と、お客さま、そして、食材をつくってくれる生産者、皆が茶飲み友達のように心地良く地繋がっていければいいな、そんな思いが込められている。「その思いを形にして伝えたくて、メニューをつくることにしました」とのこと。眺めてみると、そこには使われている食材と、その生産者さんの名前がずらり。以前から、日本の食材を積極的に使っていたが、移転に際し、春田シェフと小澤さんが改めて生産者のもとを訪れたことで、その想いをもっと多面的に表現し、伝えられないかと試行錯誤したのだという。コースの中の一品。『ほうれん草帆立貝』「料理は、出会った食材から閃くことが多いですね」とはシェフの春田理宏さん。たとえば、このほうれん草と帆立の一皿。生産者を訪ねて、とてもおいしそうなほうれん草に出会ったことで生まれた一皿だ。付き合いの長い八百屋さんの紹介で、秋山さんという農家を訪れた春田さん。ふと見ると、とてもおいしそうなほうれん草があった。聞けば、育て方に工夫をしており、味が濃い昔ながらのほうれん草を目指して作っているという。食べてみると、本来の苦みや青臭さがきちんと表現されている、とびきりおいしいもので驚いたのだそうだ。その濃厚なほうれん草本来の味わいを生かしたいと、表現したのがこの料理だった。”帆立貝はあくまで脇役”と春田さん。ナチュラルな帆立貝の甘みと食感があることで、ソースに込めたほうれん草の力強い味わいを引き立てている。1階のオープンキッチンで料理をする春田シェフそんな素材を生かし、研ぎ澄まし、洗練度を増していく春田さんの料理に、ぴたりと合うワインのセレクトもまた、【Crony】(クローニー)の魅力だ。ソムリエ・小澤さんが、さまざまなアプローチで思いがけないペアリングをすすめてくれるのだが、そのワインのストーリーの話が実に楽しい。西麻布のオープン以来、【Crony】(クローニー)名物のコースの途中に登場する、天然酵母と日本酒を使ったサワドゥブレッドにあわせるのは、なんと、日本酒酵母を使用したチリワイン。「日本酒酵母を使って、チリでワインつくっている方がいるんですか!?」と聞くと、作り手は、『シャトー・ムートン』や『オーパス・ワン』を手掛けた名醸造家で、現在はチリでワインを造るパスカル・マーティーという人物だという。ちなみに、こちらのサワドゥブレッドは、以前の店からバージョンアップして登場。各ゲストごとに、ホールで焼いたものが運ばれてきて、目の前で切ってくれる。(食べきれない!と焦ることなかれ。食べられないのはお土産にしてくれる)。ふわりと漂うサワードゥ独特の香り(ほんのり日本酒のような香りがするのは気のせい?)でまずうっとりし、食べれば、外側はガリっと、中はもっちり、しっとり。ペアリングしたワインとあわせると、すっと溶けあうようにお腹におさまっていく。ソムリエの小澤一貴さんコース中盤で登場する、同店名物の『サワドゥブレッド』ちなみに、このサワドゥブレッドは、コースの中盤に登場する。クローニーのコースは、全18品。見た目が美しい北欧やフランスのエッセンスが散りばめられた前菜の数々から始まり、食材の香りやみずみずしさが際だつ野菜の皿をへて、サワドゥブレッドで一拍。その後、絶妙な火入れで素材の味を極限まで引き出し、旬の日本らしい季節感を添えた、魚や肉の料理に続く。それはまるで、季節を編んで生まれる音楽のよう。最初のかわいい前菜から軽やかに始まり、どんどんクライマックスのメイン料理へクレッシェンドしていく。この日の料理『白アスパラガス 桜 桜鱒』白アスパラの甘みとしっとりとした鱒が溶け合うコースの最後を飾るのが、あらたなスペシャリテになりそうなデザート『長田さんの緑茶 本みりん』だ。風にそよぐ茶葉のようなデコレーションをされた見た目も美しいこのデザートには、食材に敬意を払う店のメッセージが込められている。【Crony】では、コースが始まる前に、ゲストに”茶飲み友達”の印として、一杯の緑茶を出すところから始まる。そして、こちらのデザートは、この緑茶を抽出した後の茶葉を利用して作られたもの。生産者の方からいただく全ての命を無駄にしたくない。いただけるものは最後まで美味しく料理としてまっとうさせる。ほんのりと緑茶の苦味と香りが口に広がる、美味の中には、そんな素敵なストーリーが隠れているのだ。デザートの『長田さんの緑茶 本みりん』こうしたフードロスなどの環境への配慮は、移転後新たにフォーカスしたことなのか、とシェフに聞いてみると、「食のサスティナビリティについては、以前の店から普通に取り組んでいました」と春田さん。そもそも、フランスやデンマーク、アメリカと海外経験の長かった春田さんにとって、そうした意識というのは、あたりまえにあるもので、声高に叫ぶものではなかったという。けれど日本では、そうした思いや、考えを”伝えていく”という重要性にも気がついたと春田さんと小澤さんは語ってくれた。食を通じてさまざまな体験ができるようになった今、こうしておいしく、楽しく、ゲストがレストランから様々なメッセージを受け取るのは、今のレストラン体験の一つの楽しさであることは間違いないだろう。”お客さま”というかしこまった距離感ではなく、大切な”茶飲み友達”として心地良いもてなしをうけて、食事を終えるころには、なんだか地球にも、人にも、もっと優しくなれる気持ちになるから不思議だ。窓際の席からふと見上げると光る東京タワーが美しい。日本て、思った以上に素晴らしい国なのかもしれない。コロナ禍が過ぎて、海外から友人が来れる日が来たら、真っ先にここでひさしぶりの再会を祝いたい。そんな気持ちになって店を後にした。
2021年05月17日毎日でも通いたくなる、駒形にできたフレンチ・ビストロ数多の料理人から熱い視線が注がれる滋賀の精肉店「サカエヤ」。その肉に特化した肉ビストロとして肉ラバーのハートをガッチリ掴んでいた池尻大橋の【オーオン・ブーシュ】。ここで、腕を振るっていた肉焼きスト、河村神賜シェフが浅草で独立したらしい!そんな風の噂を耳にしたのは、3月始めのこと。聞けば、3月6日のランチから早くもスタートとのこと。早速、足を運んでみた。3月6日にオープン。白壁に【ETAPE】と印されたシルバー色(orステンレス)の看板がおしゃれ。店内はカウンター6席に4人がけのテーブルが一卓。場所は浅草。とは言っても、昨今のビストロスポット“観音裏界隈”ではなく、隅田川を渡った東駒形。エッフェル塔ならぬスカイツリーを見あげつつ吾妻橋を渡れば、飲食店もまばら。どこか下町的長閑さが漂う中、ポツンと佇むシンプルモダンな一軒。ここが、目指すビストロ【エタップ】だ。河村シェフのこだわりの一つが、この“オピネル”のナイフ。奥様の故郷サヴォア地方から取り寄せたものだ。こじんまりとした店内には、無駄な装飾がなく周囲の光景に溶け込むかのようにシンプル。だが、アンティークな趣の波打つガラスを配した扉に温もりのあるウッディなカウンター、座り心地の良い皮張りのカウンターチェアとさりげなく粋。そして、カウンターに置かれた小さな黒板に目をやれば、『エビとブッラータ』や『生姜のスープ』、『特製ブイヤベース』、『滋賀近江牛ランプ』等々手書きのメニューがずらり。コースも5,000円から用意されてはいるものの、ここではアラカルトで楽しむのが得策だ。その日の気分、お腹の調子に合わせて自分の好きなものを好きなようにオーダーする。それでこそ、食いしん坊の本懐と言うものだ。カウンター上に置かれた小さな手書きの黒板メニューが可愛い。ランチタイムには、3,000円のコースのほか手軽なワンプレートランチもある。品数こそそれほど多くはないものの、そこは少数精鋭。魅力的な皿が並ぶ中、今回は、のっけから気になっていた『ウニのパンペルデュ』、新作の『サラダコンポゼ』に河村シェフの自信作『特製ブイヤベース』。そして、やっぱり肉でしょ、ということで、「サカエヤ」の肉匠新保吉申さんが選んだ『滋賀近江牛ランプ』の4品を選んでみることにした。店主の河村神賜シェフは、大阪出身の35歳。父親がパティシェだったことから、自然と料理の世界に。大阪のリーガロイヤルで修業後、パリへ。まずは、グラスのスパークリングで乾杯。早速運ばれてしたのは『ウニのパンペルデュ』だ。本来、スイーツになるはずのパンは牛乳と卵を混ぜた中に、砂糖ならぬ塩とうにを溶かしこんだアパレイユを浸してある。それを、バターとオリーブオイルでこんがりと焼き上げ、ほうれん草やマスカルポーネをのせているのだが、更にウニもトッピング。かなり贅沢な大人のフレンチトーストに仕上がっている。アツアツを口に入れるや、もちっとしたパンの食感と共に口に広がる濃厚なウニの甘み。そして仄かに漂う磯の香りや僅かに感じるほうれん草のほろ苦さが全体の味を引き締めている。河村シェフによれば、「修業先のパリの一つ星レストラン【キ・プリュン.ラ・リュンヌ】で出していたウニのアイスクリームをアレンジしてみた。」のだとか。そう、河村シェフは、若干35歳ながらパリで8年間みっちりと研鑚を積んだ実績の持ち主。その時に知りあったのが、今、お店でサービスを担当するフランス・サボア生まれの奥様。だからなのだろうか、どことなく、パリのネオビストロのような趣も感じさせる。『サラダコンポゼ』1,800円、料理はいずれも一皿2人前で写真は半量の950円。「これからは野菜にも力を入れていきたい。」と語る河村シェフの思いを反映した一皿。兵庫のよつばfarmから取り寄せている野菜が満載。白ワインビネガーとオリーブオイルのシンプルなドレッシングで。お次の新作『サラダコンポゼ』は、平たく言えばミックスサラダ。しかし、ただの生野菜を混ぜただけでは決してない。焼いたりゆでたり、種類によって調理法を変えた野菜が皿にどっさり。野菜の種類は、その時々で変わるそうだが、常時10種類以上は入る華やかさ。訪れた日は、ロッサトレビス、のらぼう菜に紫ラディッシュetc.。人参だけでも、紫に黄色など3種類も入る、まさに野菜が主役の一皿だ。『特製ブイヤベース』2,000円。写真は半量の1人前で1,000円。撮影当日の魚は、真鯛。魚はヒラメなど白身魚をメインに日々変わる。ブイヤベースにも野菜がたっぷり。肉ビストロ出身のイメージが先行し、つい、ステーキに目が行きがちだが、実は、この『特製ブイヤベース』こそが河村シェフの隠れたスペシャリテ。海老や貝など複数の具材が入る通常のそれとは違い、具はその日に仕入れた単一の魚のみ。ベースとなるスープ・ド・ポワソンも然りで、この日は真鯛。それも、身の部分だけでなく、アラなども余すところなく使い切って作る贅沢さが味の秘訣だ。だからなのだろう。スープ・ド・ポワソンならではの海の芳香と深い旨味を感じさせつつも、後味のキレがいい。洗練させすぎず、ほどよく郷土的色合いを残したその程合いの良さはさすが。上に乗せたチョリソがアクセントとなっている。綺麗な焦げ目がつくように、フライパンの中で油をかけ回しながら、周りをカリッと焼き上げていく。これが、フレンチのアロゼの手法。さて、オーラスは、件の『滋賀近江牛のランプ』。飼育期間2年半の処女牛だ。もちろん「サカエヤ」の新保さんが手当した肉だ。河村シェフは、その200gの塊を、まずはフライパンでこんがりと綺麗な焦げ色が付くまでアロゼ。その後、200℃オープンで2分。次にオーブンから取り出し休ませるせことまた2分。これを3回繰り返し、見事なロゼ色に焼き上げたステーキは、霜降りのいわゆるとろけるような肉とは一味違う噛み締めるおいしさが、何と言っても持ち味。味わうほどに肉汁が舌に広がり、肉本来の濃い旨味が後を引く。ソースはフォン・ド・ボー、付け合わせはドフィノワ(じゃがいものグラタン)とクラシックな一皿にまとめている。ちなみにワインは、フランスを中心にグラスも赤白3種類ほどが用意されている。アロゼしたのち、オーブンで休ませながら焼き上げた『滋賀近江牛のランプ』4,000円。写真は半分の1人前で2,000円。付け合わせのドフィノワ(じゃがいものクリームグラタン)も優しい味で美味しい。「下町ののんびりした雰囲気が好きで、この街を選びました。地元人に愛される店にしたいですね。」との河村シェフの言葉を反映する様に、オープンして1ヶ月足らずのうちに3回も足を運んだゲストもいるとか。飲んで食べても、諭吉さん一枚でお釣りがくる値頃さを考えれば、それも納得。価格以上の満足度を与えてくれる、“カリテプリ”な一軒だ。兵庫県四葉ファームの元気な野菜たち。無農薬無化学肥料で育てた野菜は、みずみずしく味が濃い。小さなビーツや、ロッソトレビスなど珍しい野菜も。採れる野菜も豊富だ。エタップ(Etape)【エリア】押上/スカイツリー周辺【ジャンル】フレンチ【ランチ平均予算】2300円【ディナー平均予算】7500円【アクセス】浅草駅 徒歩6分※緊急事態宣言中の場合、営業時間が変更されている可能性があります。最新の営業時間はお店に直接お問い合わせください
2021年05月06日御殿場まで足を延ばして小林圭さんは、パリでアジア人初のミシュラン3つ星シェフとして話題になりましたが、その小林さんと和菓子屋「とらや」がタッグを組んだ店が御殿場にできるということで、オープン日のランチに伺いました。その名もメゾンケイ【Maison KEI】。小林シェフと「とらや」の関係は、「とらや」パリ店に勤務していた現社長との出会いから始まったそうで、気鋭のフレンチシェフと伝統の和菓子店との出会いから10年の時を経て、今の形が出来上がったといいます。御殿場なので、都内からちょっと足を延ばすだけで、パリの郊外気分を味わえる気がして、車を走らせました。1時間半ほどのドライブの後、目の前に雪を抱いた雄大な富士山をながめながら小林シェフの料理をいただいた一日は素敵な体験になりました。「一刻も早くコロナが落ち着いてほしいです。僕はまたパリにもどって自分のレストランを開けなければなりませんが、またすぐ帰国します。ぜひこの空間で料理を楽しんでください」。そう言って小林シェフは、こちらでシェフをつとめる佐藤さんを紹介してくれました。佐藤シェフはパリで小林シェフのもとで働いていた人です。場所も料理も素晴らしかったので、今度は花見のころに伺おうとその場で予約。今度は飲みたかったので電車でくることにしました。調べてみると、新宿からふじさん3号という特急に乗ると、12時24分に御殿場駅に着きます。そこからタクシーに乗れば10分ほどで【Maison KEI】。なので、3月終わりの空いている日の12時40分にランチを予約しました。アペリティフは電車の中でさて桜の時期がやってきて、それも今年は開花が早く、3月末はちょうど満開。電車に冷えたシャンパンを持ち込み車窓の桜を肴にアペリティフとします。長閑な日で、電車もガラガラ、ハーフのボトルがなくなったころに富士山が見え、御殿場着です。富士山の大きさに改めて驚きながら、予定通りに【Maison KEI】に到着。お店のまわりの桜も満開です。「とらや」とはゆかりの深い内藤廣さん建築のこのメゾンは、さながら郊外の美術館の風情で、ダイニングルームには光があふれています。目の前に富士山を眺められるように席が配置されていて、運がよければ絶景のなかでのランチとなります。ランチは4皿(Decouverte出会い)と6皿(Voyage旅)のコースに分かれていて、6皿をいただくことにします。場所と料理を考えたら、値段はとてもリーズナブルで、それぞれ3,500円、6,800円。メインで出てくる鶏料理をLYB豚に変えたら1,400円、和牛に変えたら3,200円が加算されますが、お酒をペアリングでいただいても1人1万円するかしないか。カジュアルラインとはいえ、ミシュラン3つ星シェフが創造する料理をこの環境でこの値段でいただけるなんて、予約が取れないのも頷けますね。富士を見ながら優雅なランチ富士の水で喉を潤し、軽くシャンパンをいただいているとグジェールが出てきます。チーズはコンテで24か月熟成されたものとか。コンテ好きにはたまらないふくよかさ。それとマッシュルームのスープには地元のハムが味の深みを与えているようで、シャンパンが一気になくなります。そして早くも【Maison KEI】のシグネチャーサラダ『ジャルダン・ドゥ・レギューム・クロッカン(庭園風季節のサラダ)』の登場。ここでは静岡の野菜中心に構成されており、レモンの泡に数種類のソースが実に美しく、テーブルで黒オリーブのグランブルがかけられます。混ぜて食べるのですが、味と彩りと食感のハーモニーの素晴らしさは、この一皿のためだけにここを訪れてもいいと思わせるほどのものだと思います。いきなりメインが来てやられてしまった感じ。次のアスパラに合わせてくださいと余市のケルナーが注がれました。アスパラはヨーロッパでは春を告げる野菜です。今回は炭火焼にしたものにうるいのソテーが添えられ、アンチョビ入りのヨーグルトソースでいただきます。うるいは日本の春を代表する野菜。早春の苦みを感じる爽やかな日仏コラボの一皿です。そして魚料理が出てきました。金目鯛のうろこ焼きです。外はパリパリ、中はしっとりの定番に、アラの出汁で取ったエスニックなソースが添えられています。普段魚はサスエ前田魚店からの仕入れで、駿河湾のものを使っているそうで、食材の対応も細かく丁寧に行われているようです。霞んだかと思えばまた現れる目の前の富士山は、まだまだ雪に覆われていますが、のどかな風景の中にちらほら見える桜が彩を添え、幸せな眠気が訪れます。メインは鶏の胸肉です。通常のコースで出されるもので鶏胸肉の塩麹付けを低温調理したもの。葱とわさびが添えられ、テーブルで塩麹のソースをかけていただきます。胸肉は雑味を感じない柔らかで綺麗な食感で、お米で育てられた鶏だとか。赤ワインは長野のメルローを合わせてもらいました。季節ごとに楽しみたい景色とお皿まだまだ食べられそうでしたが、デザートの時間になりました。ヴァシュランです。実に「とらや」とのコラボらしい作品で、イチゴと白みそのアイスを使い、あんことフランボワーズの羊羹が入っていて、あんこのソースがテーブルでかけられます。崩しながらいただくのですが、渋いお茶があってもいいかと思うような和菓子感が残りました。初日に来たときは確か白かったメレンゲが今回は桜色。季節が変わったんですね。実は私も35年ほど前にパリに住んでいたことがあり、そのころパリの「とらや」の方にお世話になった記憶があります。それがふとよみがえってきました。日本を代表する老舗和菓子店は、かなり昔からフランスとの交流に力を入れてきていたのです。そんな長い歴史のなかから今回、日本人初の3つ星シェフとコラボして素敵なひとつの形が生まれたということでしょうか。いろんな可能性を感じました。夜はまた違う顔を見せるのでしょう。ゴルフや温泉帰りに来るのもいいと思います。私は富士を眺めて飲みたいから、次も昼の予約を入れてきました。季節ごとに変わる窓の外の風景とお皿を楽しみたい。ちょっとした別荘気分ですね。春の日の豊かな郊外の風景です。
2021年04月22日京都という枠を外したことで自由になった世界銀座3丁目のビルの7階、エントランスを入ると、京都そのままの空気が流れる瀟洒な数寄屋造りの空間が広がる。先付が供され、一口、口にする頃には、誰しも京都にいるような気にさえなってくる。京都下鴨で生まれ育った藤山氏は、料理人を目指して、京都の割烹に入店。その後縁あって、【和久傳】の門をくぐり、【室町和久傳】、【高台寺和久傳】、などの料理長を務めたのち、総料理長として、和久傳を約20年まとめてきた。それだけ京都一筋で料理の道を歩んできた藤山氏が東京の銀座に店を出すと聞いて、驚かなかった人はいないだろう。しかしながら、ここ東京の店で食事を始めれば、京都で食事をしていたときと、何一つ変わらない、しっとりとした空気感が醸し出される。そんな雰囲気をお客さんはもとより、藤山氏もとても喜んでいる。店主の藤山貴朗さんではなぜ、敢えて、東京で独立したのか、と言う原点ともいえる質問を改めてぶつけてみると、「せっかく独立するなら、心機一転、自分の知らない土地で挑戦して揉まれてみたいと思うようになったんですね」と言う答えが返ってきた。京都を離れ、東京で店をやっていても、京都にいるときとほぼ同じ、距離感、時間の感覚で、必要な素材が使えるのは、ストレスがなくてすごくありがたいと話す。「蟹はもちろん、今日お出しするあわびもほぼいつも丹後ですね。水は丹後の蔵元から、仕込み水を送ってもらって、それでだしをとっています。だしだけはどうしても、東京の水ではうまいこと調整できなくて」と藤山さん。京都から数寄屋作りの職人を読んで仕立てた店内一方、東京にきて、素材の京都しばりがなくなり、面白くなったともいう。新しい生産者の出会いもあり、いろいろな食材をためしてもきたそうだ。独立する前1年は日本中を巡り、さまざまな生産者を紹介してもらったり、海外でイベントにトライもしたそうだ。そんなことも、考え方や視野の広がりの後押しになったのだろう。例えば、料理に添えられているキャビア。岐阜県中津川でチョウザメを育てている、大山晋也さんから仕入れたものを自分で加工して使用している。「これまでもキャビアは使ってきましたが、なるべく海外の食材は使いたくないという考えもあって、もう一つしっくりしていなかったのですが、日本のチョウザメであれば、堂々と使えます。それも、自分で処理したものならなおさらです。きっかけは、お客さんでいらした大山さんに勧められて、自分で塩をあててみたら、いい塩梅に仕上がったので、これはいいと強く思いました。柔らかな塩味と、味の透明感が市販品とは全然違います。」『あわびとホワイトアスパラガスのキャビア卵黄クリームがけ』。コースの中では、焼きものの一つとして供される。今日も、届いたばかりのチョウザメが、でんとまな板の上にのっている。聞けば、身は、味噌漬けにして使うという。適度に脂ものって、充分に美味しい身なので、味噌漬けにはもってこいだという。興味を持ってくださるお客様には、締めのご飯のときに焼いてお出しするという。こうした使い方にも、素材への愛が感じられるではないか。自家製のキャビアは、炭火で焼いた旬の佐賀のホワイトアスパラガスと、丹後の蒸し鮑を合わせ、炭火卵黄、だし、塩、酒を湯煎にかけてふっくら泡立てたソースの上にったっぷりかけて登場する。なんとも贅沢な逸品だ『夏みかんの貝寄せ』この日撮影した2品目は、丹後から送ってもらった夏みかんを使った『夏みかんの貝寄せ』。夏みかんを綺麗にくり抜き、中には、まさに今が旬の貝類を入れて、夏みかんの果肉を散らし、土佐酢と冷水のジュレをかけた品だ。貝は見事な赤貝と、本ミル貝は生で、蛤はごくレアに酒煎りして、それぞれ食べよく包丁をいれている。夏みかんの酸味と貝の旨みやミネラル感がなんとも相性がよく、見た目にも美しい春の味だ。こちらは、先付けとして供される。開店以来の人気メニュー、『焼きフカヒレのあんかけ』そして、今や【銀座ふじやま】のスペシャリテになりつつある、『焼きフカヒレのあんかけ』は必食の一品。気仙沼から仕入れた極上のフカヒレを充分に戻してから、だしをたっぷり含ませながら煮て、にこごりにする。その際のだしは、かつおと昆布をメインに、干し貝柱、干し海老、干し椎茸なども、程よく合わせる。フカヒレにさっと焼き目をつけてから、あんを加減をみながらだしでのばしてとろりとかけて出来上がりだ。複雑な味わいのあんと、旨みをぎりぎりいっぱいまで含ませたフカヒレの滋味豊かなこと。コースの最後に出して、炊き立てのご飯を一口よそってもらい、一緒に食せばもうたまらない。これは、銀座店を開いてから新しく始めた料理だそうだが、その心は、今まで扱ったことのない食材で新しい一品を作りたかったということ。その際にも、京都にしばられる必要がないので、自由に考えられたそうだ。藤山さんの美意識を感じる店内キャビアにしても、フカヒレにしても、今の銀座ふじやまを代表する素材といえそうだ。これまでの京都と寸分変わらぬ雰囲気の中に、少しずつではあっても確実に吹き込まれている新風。これが、銀座ふじやまを確実により魅力的に変化させている。東京にいながらにして、季節感を味わってほしいと、素材から器、店の設えまで、藤山氏の美意識がすみずみにまで感じられる店内で、先付、中皿、椀、向付、焼きもの、しのぎ、鍋などの主菜、ご飯、甘味、主菓子、抹茶と続くコースを味わえば、まさに満ち足りたという言葉にふさわしい、感動が味わえることは間違いない。銀座ふじやま【エリア】銀座【ジャンル】日本料理・懐石・会席【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】48000円【アクセス】銀座駅 徒歩5分
2021年04月20日日本の米の価値を上げ、その素晴らしさを世界に広めたかったネタにする魚に応じてオイルと塩を使い分けるすし屋のつまみにアクアパッツァ!?日本の米の価値を上げ、その素晴らしさを世界に広めたかった2020年7月、東京・銀座に誕生した【米菜°sakura 織音寿し(ベイサイドサクラ オリオンズシ)】は、各国のオイルと塩で食べる、世界で初めての「オイル寿し」の店。イタリア スローフード協会国際本部が主催した「テッラ・マードレ 2006」において世界の料理人1000に選出されるなど、国内はもとより世界にもその名を馳せるイタリアンの第一人者、奥田政行シェフがワインとペアリングさせるために考えたものだ。奥田政行シェフ。山形・庄内の【アル・ケッチャーノ】をはじめとする5店舗を切り盛りするほか、庄内の食材を広めるべく多忙の日々を送っている。最初に断っておくと、オイル寿しとはけしてオイリーなすしではない。ネタに合わせてオイルとすしを使い分けることで、すべてが引き立て合い、ハーモニーを奏でる新感覚のすしである。口にしたことがなければ味わいの想像がつかないかもしれないが、奥田シェフは笑ってこう言った。「まずいはずがないんですよ。だって、オイルに酢飯の糖分を合わせることは、生クリームに砂糖を入れているようなものでしょう?そこに塩を加えたら、ヴィネグレットソースになる。ほら、美味しい。それにね、魚でも野菜でも、素材がよければ、塩で食べるのが一番味わい深いんですよ」料理のメニューはコースのみ。夜は1万2,000円0。写真はオイル寿しの一例『セビーチェ』。寒平目をレモン果汁で締めて、シチリア産のオリーブオイル、パセリと共に味わう握りだ。オイル寿しの店をやるきっかけとなったのは、イタリアのジェノヴァを訪れたときにすしにオイルを塗って出したところ、スタンディングオベーションに包まれたこと。そして、その後、アメリカや中国からもオファーが届き、需要があると感じたそうだ。「僕は昔から日本古来の米の価値を上げたいと思ってきました。そうしなければ、後継者がいなくなって米作りが廃れてしまう。彼らの反応は、可能性を見出すのに十分なものでした。そこで、もともと東京オリンピックが開催される予定だった2020年に、江戸前ずしの聖地である東京の銀座に出店したのです。ちなみに、すしの表記を“寿司”ではなく“寿し”としたのは、オイル寿しが新感覚のすしだから」(奥田シェフ)。庄内浜を中心に主に日本海側で獲れた魚を使用。ネタにする魚に応じてオイルと塩を使い分けるでは、実際のところ「オイル寿し」には塩とオイルがどのように使われているのか。店に用意されているオイルは10種類以上、塩は100種類以上。オイルはすしネタにする魚の味や香りに共鳴するものを吟味して選ばれている。付け場には世界各地から取り寄せられたバラエティ豊かなオイルが並ぶ。職人が刷毛でネタに塗るのをカウンター越しに眺めるのは新鮮だ。参考までに、ある日のすしネタとオイルの組み合わせの例をご紹介しよう。ヤリイカ×ショウガオイルマアジ×スペイン エグレヒオ(オリーブオイル)クルマエビ×ベルガモットオイルメジマグロ×ニンニクオイルウニ×ブラッドオレンジオイル組み合わせる上でのポイントは、奥田シェフによれば「ネタにする魚の特徴を見抜くこと」。鮪の赤身なら鉄分と酸味があるので、その酸味を中和するために丸い味のニンニクオイルを使用する。また、塩については、鮪の酸と同化するような酸味のあるタイプが適しているため、石川県能登半島で作られる竹炭塩を選ぶ、という具合だ。なお、ペアリングするワインはピノ・ノワール。「赤身の握りを食べた後に丸みのあるワインを飲むと、口の中に残る酸味がぐっと引き締まる。これが、僕が考案するオイル寿しの世界観。食材の共鳴です」(奥田シェフ)。塩のストックは100種類以上と教えられたが、奥田シェフが見せてくれたメイクボックスのごとき塩コレクションを数えると、300種類以上(!)はありそうだった。すし屋のつまみにアクアパッツァ!?「オイル寿し」だけでも相当に新鮮なすし体験だが、この【米菜°sakura 織音寿し】を唯一無二の存在たらしめている要素は他にもある。つまみもそうだ。なんとこちらでは握りと握りの合間にバーニャカウダやアクアパッツァなど、魚を使った温製のイタリア料理が小皿で登場するのである。これについて奥田シェフは次のように話してくれた。「冷製の料理を口にすると、人は自分から味を探しに行きます。それに対して、温製の料理は味が向こうからやってくる。すしを食べつつ、イタリアンのつまみを味わうと、攻めと守りが逆転して、また食べられるようになるんですよ」旬のメバルを使ったアクアパッツァ。セロリとドライトマトを用い、軽い味わいに仕立てている。たしかに。筆者は実際におまかせ握り10貫とつまみ2品、デザートが付いたランチコース『浜風』(6,500円)を試してみたところ、味わいに緩急のついた構成のおかげで最後まで飽きることなく楽しめた。せっかくなのでとコースに合わせてワインのペアリングをお願いしたところマリアージュの感動が増幅し、もっと、もっとと、つい欲張って握りを追加で所望してしまった。店でストックするワインと日本酒の一例。山形産などの日本ワイン、五大シャトーのワイン、サンマリノやグルジアのワインなど、世界各国のお酒をラインナップしている。ワイン&日本酒のペアリングコースは1万円~。ネタ、オイル、塩、米、酢、ワインが口内調理でマリアージュされて、新鮮な口福をもたらす奥田シェフの「オイル寿し」。「食べに来てくださった方はわけがわからないから、2度、3度と足を運ぶんです」と奥田シェフは愉快そうに笑っていたが、近々、また食べに行ってみたいと思っている筆者は、その奥田マジックにすっかりハマってしまったクチ、なのだろう。店内はカウンター8席のみ。米菜°sakura織音寿し【エリア】銀座【ジャンル】鮨・寿司【ランチ平均予算】8000円【ディナー平均予算】25000円【アクセス】銀座駅 徒歩5分
2021年04月17日日本発、世界に誇れるフランス料理を銀座から届けたい憧れのレストランは、いつの時代にも銀座にある。かつて、数寄屋橋交差点のソニービルに【マキシム・ド・バリ】という名店があった。パリのベル・エポックの雰囲気そのままの店がオープンしたのは1966年のこと。手に入らないフランス産の食材を使い、ミシュラン星付きのフランス人シェフが料理をつくり、パリのエッセンスそのものが味わえるレストランは、「大人の社交場」として名士やセレブリティたちの間で瞬く間に評判になった。その名店は、2015年に惜しまれながら閉店をし、その長い歴史に幕を閉じた。かの名店がオープンした当時から、実に55年の時が流れ、時代は変化し、ずいぶんとレストランを取り巻く環境も、人々の好みも、レストランを楽しむ人々の風景も変わったように思う。レストランからは銀座のランドマーク、和光の時計台を間近に眺められる流通が発達し、人々が国境を気軽に跨げるようになった今(コロナ禍で今は海外へはいけないけれど)、海の向こうの食材も簡単に手に入るようになり、海外で修行する日本人の料理人も珍しくなくなった。日本の美食を楽しみに海外の人々が頻繁に訪れるようになり、本場そのものの味を食べたいならば、飛行機に乗って気軽に食べに行ける時代になったのだ。2020年12月にオープンした【ラルジャン】はそんな時代の変化を映し、新たに登場した現代のグランメゾンの一つだろう。“海外の本場のスタイルで、本場そのものの味が食べられる”という特別な体験は、徐々に“日本の食材や食文化を踏襲し、日本でしか表現できない料理を楽しんでもらう”というその国の食文化や食材を表現した新しい料理にシフトしてきている。そんな高級レストランの大きな変化がここ銀座でも起きている。それは、世界を舞台に活躍する日本人シェフが増え、世界を見てきたからこそ、“日本”という国の素晴らしさに気づいた証。そんな魅力を日本人のみならず世界の人にも知ってほしいという彼らの自信の表れでもあるに違いない。【ラルジャン】のシェフ、加藤順一氏もまさにそんな一人だ。座席には、その日に決まったメニューが添えられている「日本から生まれるフランス料理を、この店から世界に発信したいのです」と語る加藤順一シェフは、【タテル・ヨシノ】の吉野建シェフの薫陶を受け、その後パリの三つ星【アストランス】、デンマークの二つ星【AOC】など世界で働いたのち、帰国後【スブリム】のシェフに就任。ミシュラン一つ星を同店にもたらした人物だ。古典的なフランス料理基礎を用いつつも、北欧らしい軽やかなプレゼンテーションやテクニックでつくる、現代的で軽やかな料理が加藤シェフの持ち味。世界に一度出たからこそ、日本の食材の魅力に目覚め、そしてそれを使いながら日本でしかできないフランス料理をつくり、銀座という世界の人々が集まる街で勝負したいと思ったという。『発酵マッシュルームのスープ』合わせるのは、赤ワイン「Chateau Haut-Marbuzet 2007」。きのこの腐葉土のような香りと、熟成した香りが良く合う『発酵マッシュルームのスープ』は、そんな加藤シェフが感動した日本の食材の一つ、マッシュルームが主役の一皿。【スブリム】時代からのスペシャリテで、その頃からの常連さんが、この料理を楽しみに訪れるという名刺代わりの一品だ。「この料理は、僕が少しだけ働いていた【BIOS】(現在は閉店)という富士宮にあるレストランで出合ったとれたてのマッシュルームのおいしさを、料理にしたいと考えたものなんです。新鮮なマッシュルームってピンク色で歯触りが全然違うって感動したんですね。だから、この料理は生のマッシュルームが主役なんです」。器の中には、富士宮の農家さんから取り寄せているという小ぶりの温卵、それに、発酵させたマッシュルームのエキスを使ったスープが注がれ、ソテーしたマッシュルーム、その上には生のマッシュルームがたっぷりとのせられている。発酵させたスープの複雑で濃厚な味わいが、さくっとした歯触りのクリアなマッシュルームをより引き立てて、多重奏のような味の波、そして食感が口に広がる。加藤順一シェフ38歳スープ前までの前菜は、北欧スタイルらしい美しく小さなお料理が並ぶが、メインは、フランス料理らしい、クラシカルな側面を感じるボリュームあるものが登場する。この日、メインとして登場したのは、美しい羊の一皿。なにげなく見える料理だが、ここにはシェフが「うちはグランメゾン」と胸を張る、技術と手間がかけられている。主となる羊は、北海道の「羊丸ごと研究所」という牧場の羊。頭数が少なく、生産量の5%しか北海道の外には出ない希少なサフォーク種だ。そのセルダニョ(腰に近いロース)を、掃除してロース肉の部分だけにし、羊の脂でソテーしたほうれん草とギョウジャニンニクを巻く。さらに、バラ肉を薄く伸ばしたもので外側を巻いて、凧糸で縛ってフライパンで焼き目をつけてオーブンに。タラの芽のフリット、ごぼうの木の芽あえ、クレソンやナスタチウムなどで作ったハーブのブーケと、ジャガイモとチーズをあわせたテリーヌ“ポム・アンナ”を添えて。ソースは、フランス料理王道の羊の骨からとったソースと、美しい緑色が印象的な北欧風のハーブのソース2種がかけられている。春の羊は繊細で柔らかな優しい味わい。それを、山菜のほろにがい香りがミルキーな羊を包み、ソースと合わせて食べれば、まさにこれは、日本の春を感じるフランス料理だと感じる。『酒井さんの羊、山菜』日本の食材、フランス料理の技法、北欧のテクニックが融合した加藤シェフならではの一皿続くデザートも、日本の魅力的な食材を、フランス料理に昇華させて登場。よもぎの蒸しパンのクランブル、バターミルクとキャラメル状にしたヨーグルトのパウダーで、早春の雪が残る苔むした日本庭園のように仕立てられたデザートの正体は、よもぎとヨーグルトのシャーベット。日向夏のジュースとクリームがアクセントだ。さっぱりとしながらも、よもぎの香りが鼻腔をくすぐり、ここでも日本の春を感じることができる。コースの料理は、食べた印象はフランス料理、だけれど、どこか日本的な香りが印象に残る。そんな加藤さんの料理は、ただ単純に日本の食材を使って、そのままフランス料理に仕立てたものとは一線を画す調和がある。その秘密を聞くと、「日本の食材は繊細。下ごしらえも、処理もフランス料理の技法ではその良さを殺してしまうこともある。だから、和食の料理人の方に教えてもらった技法を使ったり、自分なりに工夫したりして、より魅力的に仕立てることを意識しています」と答えてくれた。この日のデザート『よもぎ、ミルク』これらの魅力的なコースは、「ぜひワインとともに楽しんでほしい」と加藤シェフ。こちらのワインは、絶妙なセレクトにファンが多い【Crony】小澤一貴さんが監修。軽やかでありながらも、フランス料理の骨格はしっかりとある料理に合わせるのは、フランスを中心としたワインだ。それを、お客様の要望を聞きながら小倉希望ソムリエがゲストにあわせておすすめをしてくれる。「僕がアストランスで働いていた時、ソムリエがお客様の食べている様子や、彼らからのリクエストを聞き、厨房に逐一報告すると、それに合わせてシェフが料理のソースをどんどん変えていく。そんなことがあたりまえでした。これが、フランスの三つ星、グランメゾンなんだと感動したんです。ここは、日本のグランメゾン。そんなきめ細やかな対応もしていきたいですね」と意欲を覗かせる。とはいえ、特別な気分が味わえるのに、肩肘張らずにリラックスして楽しめるのも令和時代らしい、このレストランの魅力だ。ちょっと特別な日。”日本から発信するフランス料理”を体験できる、銀座の新しいグランメゾンへ、ぜひドレスアップして、訪れてみてはいかがだろうか。レストランラルジャン(L’ARGENT)【エリア】銀座【ジャンル】フレンチ【ランチ平均予算】12000円【ディナー平均予算】25000円【アクセス】銀座駅
2021年04月02日2021年度「アジアのベストレストラン50」の授賞式がザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜で行われた。この賞はこれまでにシンガポール、バンコク、マカオ等で授賞式が開催されてきたが、時節に鑑み今回も、参加する関係者を絞った会場でのオンラインストリームによるバーチャルセレモニーとなった。今回は前回までとはちがい、前もってベスト51~100位の発表が行われていた。日本勢では、51位に【日本橋蠣殻町 すぎた】(東京、寿司)、53位に【カンテサンス】(東京、フレンチ)、54位に【イル・リストランテ・ルカ・ファンティン】(東京、イタリアン)、57位に【鮨 さいとう】(東京、寿司)、64位に【ヴィラ・アイーダ】(和歌山、イタリアン)、71位に【天寿し 京町店】(福岡、寿司)、83位に【エテ】(東京、フレンチ)、85位に【スガラボ】(東京、フレンチ)、91位に【チェンチ】(京都、イタリアン)といったレストランがランクイン。この賞には珍しい顔ぶれがあったりするが、移動制限のなかでのフーディーたちの動向が伺えて興味深い。諸外国も同様で、ローカルを進化されるような動きがみられる。東京で行われたバーチャルイベントで集合した日本人受賞シェフたちこの流れでいくと1位から50位はどうなるのか。授賞式ではそこに注目が集まった。当日は授賞式が始まる前に、まず51位から100位までのシェフとレストランが紹介され、授賞式に参加した【ヴィラ・アイーダ】の小林寛司シェフ、【エテ】の庄司夏子シェフ、【チェンチ】の坂本健シェフらが登壇してコメントした。小林シェフや坂本シェフは今回初めてランクインしたことで、地方で活躍するシェフに希望を与えると喜びを語った。やはり今回の移動制限により、国内、とくに地方のレストランにスポットが当たるいいきっかけとなったようだ。昨年アジアのベストパティシエ賞を受賞した庄司シェフは、この賞でレストランが評価されたことへの感謝と、これが女性シェフの活躍の一助になれれば嬉しいと語った。左から【ヴィラ・アイーダ】の小林寛司シェフ、【エテ】の庄司夏子シェフ、【チェンチ】の坂本健シェフ時間が来るとモニターからバーチャルセレモニーが流され50位から順に賞は発表された。ここも日本勢を列記していけば、35位に【日本料理龍吟】、30位に【ラ・メゾン・ド・ラ・ナチュール・ゴウ】、27位に【オード】、19位に【レフェルヴェソンス】、12位に【茶禅華】、9位に【NARISAWA】、8位に【ラシーム】と発表が続き、最近のトップ争いに常に登場する【フロリレージュ】が7位、【傳】が3位という結果になった。移動制限のもと、国内のいい店が深堀されている印象だ。部門賞も同時に発表された。ハイエストクライマーに輝いたレフェルべソンスの生江史伸ェフは言う。「前回48位だったので驚いている。コロナ期にみんながばらばらになっていたのをなんとかつなぎとめたことが評価されたようだ。ラッキーな温かい賞だと受け止めたい」【レフェルヴェソンス】の生江史伸シェフこの時期、自宅にいてファインダイニングを楽しめる「Fine Dining at Home by S.Pellegrino」という試みもなされたが、新設された「エッセンス・オブ・アジア」という特集は、なんといっても今回の目玉なのだろう。あえて順位をつけず、地域社会と食文化に貢献してきたレストランが多く選出されている。時流に流されがちな食文化のベースをしっかりとらえようとした試みは、まさにこの時期を象徴した動きだろう。日本からは、【なつかしゃ家】(奄美大島)、【本家尾張屋】(京都)、【パセミヤ】(大阪府)、【イートリップ】(東京)、【シンシアブルー】(東京)、【すし大】(東京)といった6店舗が選出されている。選考基準は「アジアのベストレストラン50」のノミネートされたシェフや、「50 Best’s Academy Chairs」などの推薦によるもので、パキスタンから日本までの20か国・地域の49都市にあるレストランが紹介された。7位にランクインした【フロリレージュ】の川手シェフは、台湾の【ロジー】をはじめ若い世代がランクインしてきていることに可能性を見出しているとコメント。3位の【傳】の長谷川シェフも、「おちついたら食べに行きたいお店が見えた」と語った。「でも、僕がみんなにぜひ行ってほしいと紹介してたザ・チェアマンが1位になった」と笑いを誘うことも忘れない。1位を獲得した香港の【ザ・チェアマン】オーナーシェフのダニー・イップ氏昨年の1位、シンガポールの【オデット】を抑え、初めて1位を獲得したのが香港の【ザ・チェアマン】。これは予想外だ、との声も会場では聞こえたが、次のトレンドをにらんだ動きがここにあるようだ。「アジアのベストレストラン50」ランキング2021年の順位は以下の通り。9位【ナリサワ(Narisawa)】東京11位【ソーン(Sorn)】バンコク16位【Vea】香港*Art of Hospitality Award17位【ネイバーフッド(Neighborhood)】香港18位【インディアン・アクセント(Indian Accent)】ニューデリー20位【ヌサラー(Nusara)】バンコク *New Entry22位【フヘフイ(Fu He Hui)】上海28位【カプリス(Caprice)】香港*Re Entry29位【ミニストリー オブ クラブ(Ministry of Crab)】コロンボ31位【クラウドストリート(Cloudstreet)】シンガポール*New Entry32位【マスク(Masque)】ムンバイ*New Entry34位【7th Door】ソウル*New Entry36位【Born&Bred】ソウル*New Entry39位【アンアン サイゴン(Anan Saigon)】ホーチミン40位【ラビリンス(Labyrinth)】シンガポール *New Entry & Flor de cana sustainable restaurant41位【ユーフォリア(Euphoria)】シンガポール *New Entry42位【ジャーン by カーク・ウエスタウェイ(Jaan by Kirk Westaway)】シンガポール43位【韓食空間(Hansikgonggan)】ソウル44位【モノ(Mono)】香港 *New Entry45位【祥雲龍吟】台北46位【ガア(Gaa)】バンコク48位【セブンス・サン(Seventh Son)】香港51位~100位52位【ウルトラバイオレット】上海55位【80/20】バンコク56位【Nihonbashi】コロンボ58位【ブカラ(BUKHALA)】ニューデリー59位【Samrub for Thai】バンコク60位【メタ(META)】シンガポール*One to Watch Award61位【新c/Xin Rong Ji】上海62位【ジェイ フェイ(Raan Jay Fai)】バンコク63位【ロカヴォール(Locavore)】バリ65位【トクトク(TocToc)】ソウル66位【デワカン(Dewakan)】クアラルンプール67位【Mosu】ソウル69位【Ensue】深W370位【ペースト(Paste)】タイ・バンコク72位【ジュオク(Joo Ok)】ソウル74位【ル ノルマンディ(Le Normandie)】タイ・バンコク75位【泰安/Taian Table】上海76位【新c/Xin Rong Ji】台州77位【エソラ(Esora)】シンガポール79位【Baan Tepa】バンコク81位【Avartana】インド・チェンナイ82位【Da Vittorio】上海84位【アントニオス(Antonio’s)】フィリピン・タガイタイ86位【オンジウム(Onjium)】韓国・ソウル87位【エクリチュール(Écriture)】香港88位【天]法国餐S/Robuchon au Dôme】マカオ89位【金沙庁/Jin Sha】中国・杭州92位【ジェン(gēn 根)】マレーシア・ペナン93位【甬府/Yong Fu】中国・上海94位【キャンドルナッツ(Candlenut)】96位【Aragu】モルディブ97位【Quince】タイ・バンコク98位【Tung Dining】ベトナム・ハノイ99位【ナドディ(Nadodi)】マレーシア・クアラルンプール各部門賞◆注目のレストラン賞(One to Watch Award):【メタ(Meta)】シンガポール◆アイコン賞(Icon Award):Supinya ‘Jay Fai’ Junsuta シェフ【ラーン・ジェーファイ(Raan Jay Fai)】バンコク◆ホスピタリティ賞(Art of Hospitality Award):【Vea】香港◆最優秀女性シェフ賞(Best Female chef):DeAille Tamシェフ【オブスキュラ(Obscura)】上海◆サステナブル・レストラン賞(Sustainable Restaurant Award):【ラビリンス(Labyrinth)】シンガポール◆最優秀パティシエ賞(Best Pastry chef):【アンジェラライ(Angela Lai)】台北Essence of Asiaについて:2021年には、今年の「アジアのベストレストラン50」の発表に合わせて、「Essence of Asia」コレクションが発表されました。授賞式に先駆けて発表された「Essence of Asia」コレクションは、アジアのガストロノミーの精神を代表するレストランを表彰するものです。ランク付けされていないこのコレクションは、昨今の危機的状況の中で、あるいは継続的に、地域社会や地元の料理にポジティブな影響を与えているレストランにスポットライトを当てています。アジアの食のエコシステムに欠かせないこれらのカジュアルレストランは、料理の伝統を守り、本物の味を尊重し、地域社会との重要なつながりをもたらします。「アジアのベストレストラン50」の選出方法についてアジアの外食産業に影響力を持つ300名以上が構成する「アジアのベストレストラン50アカデミー」メンバーの投票により決定されます。各地域のフードライター、料理評論家、シェフ、レストラン経営者、著名な美食家などから構成され、男女比率を50:50としている評議委員会があります。今年の投票では、旅行の機会が限られていることを考慮して、現地での食事に重点を置いた投票を行いました。
2021年03月26日食材を見極め、江戸前の仕事でうまい寿司を握る、ミシュラン一つ星を獲得した1万円台の本格江戸前寿司今や、すっかりグローバルフードとしての市民権を得た“sushi”。中でも、江戸前鮨は世界のフーディ達の垂涎の的。その技術を学ぼうと、海を越え日本の土を踏む異国の料理人も少なくない。麻布十番に店を構えて2年余、僅か一年でミシュランの星を得た【すし家祥太】のご主人、ムン・ギョンハンさんもその一人だ。オープンは2019年11月。フラットな白木のカウンターも清々しく、スッキリとした内装の店内。鮨と真摯に向き合える空間だ。オープンした翌年にミシュラン星を獲得韓国は大邱近くの町に生まれ育ち、鮨の存在さえ知らなかったムンさんが、鮨に魅せられたきっかけ、それは、中学3年生の時に読んだ日本の漫画だった。寺沢大介による大人気漫画「将太の寿司」がそれで、主人公の生き様に感動。と共に、まだ見ぬ鮨への憧れで頭がいっぱいになったムンさん。鮨職人を目指し、調理師学校を卒業後、ソウルで一番と言われる高級鮨店に修業に出る。しかし、やはり本場で学びたいとの思いは募るばかり。挙句、24歳で渡日。コネも無いまま鮨屋の門戸を叩いた。マグロはアイルランド産。赤身は切りつけてから煮切りに軽く、くぐらす程度に漬け、“づ”にして握る。「こうした江戸前の鮨の仕事が好きなんです。」とはムンさんだが、日本語もろくに話せない韓国の青年を雇う店はなく、「半年ほど頑張ってみたのですが、所持金も底をつき、諦めて韓国に帰ろうと思ったんです。」そんなムンさんに鮨の神様が微笑んだ。最後に本物の美味しい江戸前鮨を食べて帰ろうと残金3万円を握りしめ、「かねさか」傘下の一軒、銀座「すし家」のランチを食べに出かけたのだ。鮨をつまみつつ、店の主人と身振り手振りで事の次第を話すうち、思いが通じたのか、そのご主人が本店「かねさか」の大将金坂真次氏を紹介してくれることにー。金坂氏から何を聞かれても、ただひたすら「頑張ります」を繰り返すムンさんの熱意に「かねさか」の大将もほだされたのだろう、その場で修業が許された。カウンターに置かれた焼き物の皿が付け台代わり。ここに握りが置かれていく。コースは、つまみ2品、握り14貫が基本だが、追加もOK。つまみも607品ほどを常備しているこうして、「かねさか」系列の店で研鑽を積むこと9年。2019年11月、ようやく念願の独立を果たしたムンさんが選んだ場所は、食の感度の高い人達が集まる街、麻布十番。店名は【すし家 祥太】に決めていた。カウンター7席のこじんまりとした店内は、白木のカウンターも清々しく、シンプルながらもどこか品の良さが漂う。握りが大好きというムンさんだけに「つまみよりも握り中心の店にしたかった」そうで、お任せのコースでは、つまみが2品ほど出るものの、メインはあくまで握り。江戸前鮨の華、マグロやコハダを含め、煮ハマグリにカツオの藁焼き、カンヌキ(大きめのさより)の昆布じめ等々旬の鮨だねがタイミングよく付け台に置かれていく。その数全部でおよそ14貫。太刀魚の酒盗焼き”は、コースに出すつまみの定番メニュー。写真は、静岡産の太刀魚に酒盗をのせて焼いたもの。もう一品は、小つぶ貝の煮物などその日によって変わるそして、最後に定番のねぎま汁が出て、なんとお会計は13,000円!高騰化が続く鮨業界にあって、この値段設定は実に良心的だろう。そこには「普通のサラリーマンの人でも、ちょっと頑張れば食べに行ける、それくらいの値段設定にしたかった。」とのムンさんの思いが込められている。とはいえ、安かろうそれなり、では決してない。魚のクォリティを落とさぬための努力は惜しまない。平貝や赤貝、コハダ、サバに鯛など丁寧に下拵えされたその日の鮨だねの数々が、きれいに並ぶ木箱は、まるで海の幸の玉手箱のよう仕入れ先は、修業先の「かねさか」と同じ。だが、朝一番に豊洲に出かけ、質は変わらずとも、形がちょっと悪かったり大きさが不揃いだったりで、通常より安価になっている魚介を仕入れ、丁寧な下拵えてそれをカバーする。また、(鮨屋が)高額になる最大の要因であるマグロは、国産ではなく質の良いアイルランド産を用い、ヅケにして旨味を補うなど江戸前ならではの仕事を施すことで、魚介の味をブラッシュアップさせているのだ。それは、カスゴやサヨリといった小魚にこそ存分に発揮されている。コースでは、この赤身のづけと中トロとマグロの握りが2種類登場する。水温10℃以下の極寒の海で育つアイルランド産の天然本マグロは、引き締まった身も旨さの一つムンさんが一番好きだというコハダの握り。年間を通して扱うコハダは、その時々で産地が変わる。撮影当日は大阪湾のコハダ。秋田小町と赤酢のみで仕上げる酢飯とのバランスも良い。中でも、ムンさん肝入りの一品といえばコハダ。「コハダは、一年を通してサイズや脂ののり、皮の柔らかさも変わってきます。時々の(コハダの)状態を見極め、塩や酢で〆る時間を微妙に調整する。その〆め加減が難しくもあり、また、面白いところですね。」ムンさん自身は、夏場の新子より、冬場の脂ののった大きめのコハダが好きだとか。ちなみに写真は、大阪湾のコハダ。塩で20分ほど〆たのち、酢にさっと通し、3日ほど寝かしている。程よい酸がコハダ特有の鯔背な香りと脂の旨味を引き立て、赤酢と塩のみで仕上げた温かな酢飯と共に口中でホロリと解ける美味しさ!まさに口福の一瞬だろう。「若い方にも、江戸前の寿司を楽しんで欲しい」とムンさんイマドキの流行りの鮨ではなく、江戸前のスタンダードな鮨に興味があると語っていたムンさんだが、鮨への思いは更に広がりを見せているようで、「今は、地方の鮨を北から南まで食べ歩いてみたいと思っています。鮨も、それぞれの地方で色々な特徴があるでしょう。それを見てみたい。」そう目を輝かす。鮨への飽くなき探求はまだまだ続きそうだ。すし家祥太【エリア】麻布十番【ジャンル】鮨・寿司【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】20000円【アクセス】麻布十番駅 徒歩5分
2021年03月17日「一瞬の香りやおいしさを捉えて、時差なくゲストに届けたい」最初の一皿、『さといもと白粥』のシンプルで滋味深い味に、きっとこの店を好きになると予感はしていた。その予感が確信に変わる瞬間は、お椀物が出る直前にやってきた。「どうぞ、まずこちらを飲んでみてください」。手元の小さな盃に湛えられた黄金色の液体は、今目の前でとったばかりのだしだ。口元に近づけると、ふわりと優しい鰹節の香りが鼻をくすぐる。口に含めば、鰹の香りに混じって、昆布の旨みと自然の塩み、そして水の甘みがまろやかに融合し、完璧に調和している。調味もなにもしてない無垢なだしは、もうこれ以上ないくらいの澄んだ味わいで、追いかけてくる深みが体にじんわりと染み込んでいく。鰹と昆布だけなのに、なんておいしいんだろう。カウンターの目の前で取る、一番だしだしのおいしさがひときわ身にしみるのは、日本人のDNAからだろうか。それにしても、こうした素材の魅力を組み合わせて生まれる"奇跡のような"味に出合うたび、最初に考えた昔の人々は、どうやってこの作り方にたどりついたのだろうと思いをはせてしまう。けれど、そんな先人たちが見つけた美味の方程式を、もっとおいしく、洗練させていくのは、続く現代に生きる料理人たちだ。先人からの知恵を自分なりに突き詰め、磨き、自分たちの味にして、どんどん料理は進化していく。店主の伊藤龍亮さん、38才。ソムリエの資格も持つ【炎水】の店主、伊藤龍亮さんは【日本料理 龍吟】で9年半働き独立。最初はサービスを2年、次の4年を煮方、3年を炭焼き場と要のポジションを任され、副料理長として同店を支えてきた。師匠の山本征治さんからは、自分の目の前にあるものではなく、例えば椀ものなら、ゲストがふたを開けた時に感じる香り、味わいをどう感じて欲しいか、完成形を考えて料理をすることを徹底的に教え込まれた。自分の店を出すと決めたとき、毎日、だしをとる日々のなかで、ゲストがおいしいと感じる究極の椀物について、ずっと思いを巡らせたという。まず、削りたての鰹節のいい香りを伝えたいから、一組ごとに鰹節を手削りにしてだしをとろう。そして鰹節の香りは欲しいけれど、鰹節が勝つのではなく、昆布のまろやかな旨みを出したい。それには、鰹節の削る幅を広く、長くすれば、温めた昆布だしと合わせるときに、一気に香りをうつし、適度な旨みを残し、理想的なだしが取れるかもしれない……。そうして日々、試行錯誤しながら納得のいくだしを模索していった。削られたばかりの鰹節。一片が長く、艶がある。「薄すぎても厚すぎてもダメなんです。削るというより、適度に薄く均一に切るイメージですね」と伊藤さんそこで、こだわったのが、鰹節を削る道具だ。既成のもので納得のいくものは一つもない。探しに探し、薄く削れるカンナを作る大工道具の職人と巡り会う。そして、ようやく思い通りの鰹節カンナをつくってもらうことができた。使う鰹節は、指宿にある酒井商店のもの。カビつけをし、5回天日干しをした本枯れ節。保管にも気を使い、わずかな水分が中に残っている状態で削る。一組ごとに目の前で見事にリボン状に削り上げられた鰹節は艶があり、薄いのにへたらない。そんな理想の鰹節に合わせるのは、品がいいが旨みもしっかり出る奥井海生堂の蔵囲の利尻昆布。さらに水は、その旨みを出すために、超軟水の鹿児島の垂水の水を取り寄せている。温めた昆布だしに鰹節を加えると、いい香りがカウンター全体を包む。それを、ほんのひと息置き、こし器を使わずそのまま静かに別鍋にだしを移していく。目の前で繰り広げられる伊藤さんの流れるような所作は、まるでお茶のお点前を見ているかのようだ。おいしさを突き詰めた黄金の一滴には、まさに魂が入っている。とある春の日のメニューから。『あわびと車海老の真丈』こうしてとっただしを、伊藤さんは必ずゲストに一口飲んでもらう。それは、鰹節の余韻が長く続く香り、まろやかな旨みのだしの味を最初に味わってもらいたいから。そして、後に続く、椀物になったときの味の違いを感じてほしいからだ。無垢なだしは、椀物として料理になると、自分の存在感を潜め、主となる素材の魅力をぐんと引き出し、そっと寄り添い、違う表情を見せる。この日の椀種は、徳島のアワビと海老真丈。6時間蒸したというアワビは、歯をあてるとしっとりと柔らかく、素材そのものの塩味がほどよく中まで染み込んでいる。海老真丈は優しい甘さがあり、添えのうるいの苦味はいいアクセントだ。磯の香り、海老の香り、うるいのほろ苦い香りを、だしが一つにまとめて、調和する。素材の味が染み出し、だしは、どんどん春を湛えた味に変化していく。スペシャリテの『金目鯛の炭火焼』箸休めの野菜の塩もみが添えられている師匠譲りの妥協のなさで突き詰め、日本料理の技術を磨き、進化させ、自分なりに洗練させていく伊藤さんの手腕が発揮されているのは、むろん椀物だけではない。【炎水】という店名にもあるように、炭火焼きにもそのセンスが光る。スペシャリテだという炭火で焼いた金目鯛の身は、香ばしい炭火の香りに包まれ、しっとり、ふっくらとした焼き上がり。対して皮は薄いガラスのような感覚を感じるほどパリッと焼き上げられている。「金目鯛は、焼くのがとても難しい魚です。油断をするとあっという間に火が通ってしまい、ただの焼き物になってしまう。だから、金目鯛の肉汁が身の中でまだ"踊っている"うちに火からはずします。タタキと焼き物の中間のようなイメージですね。皮はパリッと仕上げたいから、皮の部分をすこし乾かすひと手間を加えて焼いています」と伊藤さん。ちなみに、焼いた皮目を前にした独特の盛り付け方は、箸を入れたとき、皮目のパリンと割れるような感触を楽しんでほしい、という思いから。こうした、お客さまが食べるときの細部まで思いをめぐらし、心を砕く考え方は師匠の山本さんの教えが大きいという。ボリュームたっぷりの締めのうなぎごはん。ゆくゆくランチができるようになったら、ランチでも出したいと構想中そして、最後のクライマックスはごはんものでやってきた。全14品の食事の最後を飾るのは、ボリュームのあるうなぎ。"白ごはんといっしょに食べてほしいから"と、地焼きではなく、一度素焼きしたものを、蒸してから蒲焼きにしているという。外側は香ばしく焼き上げているのに、中はふっくら。そのふっくらとした柔らかい身が、ごはんに溶け合うように馴染み、口のなかでやさしく混じり合う。もうお腹いっぱい!と思っていたけれど、食欲を掻き立てる香りと軽やかな焼き方でするりとお腹におさまってしまうから不思議だ。ミニマルかつ温かみのある木の内装。個室もあり水菓子をいただいてお茶を飲みながら、その日のコース料理に思いを馳せる。奇をてらったものは一つもない。むしろシンプルなものばかりなのにまるで残像のように、それぞれの香りや食感や味が記憶に鮮明に残っている。そんなことを考えていると、伊藤さんは最後にこう話してくれた。「その瞬間にしかない香りを出すのが和食の真骨頂なんです。だからこそ、そこをお客さまに伝えたい。ピントが合うように"今、ここがおいしい"と感じる瞬間をとらえて時差なく届けたいんです。まだまだ道半ばですが、そこを考えて旬のおいしいものをお出ししていきたいですね」炎水【エリア】中目黒【ジャンル】和食【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】35000円【アクセス】中目黒駅 徒歩5分
2021年03月01日ライヴと共に味わえるジャズクラブ&レストラン毎夜、一流のミュージシャンの熱いステージを楽しむことができる南青山のライヴハウス、【ブルーノート東京】。シックさと華やかさが交錯する空間で体感できるライヴは、多くの音楽ファンを魅了している。加えて人気なのが、カジュアルなアペタイザーからフレンチ・テイストのフルコース、季節感のあるデザートまで用意されたフード・メニューだ。そんな【ブルーノート東京】の料理と変わらぬ美味を、自宅で味わうことができる“食”のオンラインサービス「STAR TABLE」が、2020年8月にオープン。週末にフルコースのディナーが届く「Weekend Dinner Course」が話題になっている。食べる前に温めて盛り付けるだけ遊び心のあるフルコース・ディナー2020年8月にオープンした“食”のオンラインサービス「STAR TABLE」「Weekend Dinner Course」は、フレンチをベースにした遊び心のあるフルコースのディナー。冷蔵で届く調理済みの食材キットを湯煎などで温めて盛り付けるだけで、プロの料理が堪能できる。そのメニューを中心となって考案しているのが、ブルーノートグループのシェフを統括し、自らも腕をふるう長澤宜久シニアシェフだ。長澤シニアシェフは、フランス各地の名店で経験を積み、帰国後は東京・南青山の伝説のフレンチレストラン【アディング・ブルー】のシェフに就任経歴をもつ。彼が率いるチームがモットーにするのは、素材自体の持ち味を活かしつつ、遊び心のある料理を時代に合ったスタイルで提供すること。「Weekend Dinner Course」のメニューにも、その志が貫かれている。「Weekend Dinner Course」は3ケ月ごとに内容を一新され、現在は新メニューが予約販売中である。ディナーと一緒にブルーノート東京のライブも自宅で届いた「Weekend Dinner Course」を週末ディナーとしていただくだけでも贅沢な気分になれるが、併せて「お家でブルーノート東京体験」という楽しみ方もできる。現在、ブルーノート東京では、ジャズを中心とした多様なトップ・アーティストたちによる渾身のプレイをライヴ・ストリーミングで観ることができる「LIVE STREAMING from BLUE NOTE TOKYO」を実施中。ウェブサイトからライヴ配信視聴と「Weekend Dinner Course」を一緒にオーダーすることで、自宅にいながらブルーノート東京でのライウ0とディナーが堪能できるというわけだ。リッチな気分でひとりディナーを楽しむもよし、家族の祝い事や感謝を伝える日にプレゼントとして用意するのもいい。そうそう、シャンパンや好みのワインを用意するのも忘れずに。ニューノーマル時代の週末の夜の過ごし方のひとつとしてオススメしたい。「Weekend Dinner Course vol.1」※盛り付け例。食器類は付属しません。受注受付や到着日はオンラインストア「STAR TABLE」で確認をブルーノート東京【エリア】表参道/青山【ジャンル】フレンチ【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】10000円【アクセス】表参道駅 徒歩8分この記事を作った人TEXT:堀 けいこ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・MEN’S Precious編集部名品の魅力を伝える「モノ語りマガジン」を手がける編集者集団です。メンズ・ラグジュアリーのモノ・コト・知識情報、服装のHow toや選ぶべきクルマ、味わうべき美食などの情報を提供します。記事元:MEN’S Precious
2021年02月20日