2016年4月13日 19:11
親になって「働く」と向きあう (13) 産休・育休から職場復帰後、「やる気がない」と誤解される理由
先日とある企業の人事担当者からこんなお話がありました。「エース級と呼ばれていた女性社員が、出産後に復帰したら働きぶりがガラリと変わってしまって……」。
このエース級と呼ばれていた女性は、指示がなくとも率先して動いて、同僚の仕事が遅れていたらカバーし、自分がコミットした成果を着実に上げる。そんな働き方を出産前までしていました。産後は予定通り復帰したものの、以前ほど仕事への意欲が感じられないというのです。
彼女の働く意欲が本当に減退したのかはさておき、周囲は「以前の彼女とは違う」と感じて少なからず困惑している状況です。きっと彼女自身も、周囲のそんな空気は察知していると思います。
○仕事への意欲低下は本当?
私たちの働き方、いわば「スタイル」はそれぞれ異なります。
そのスタイルは外からも見えやすいので、周囲の人は相手のスタイルを見て「あの人は仕事が好きだよね」といった風に勝手に位置付けていくものだと思います。
これとは別に、同じく一人ひとりが持っているものとして、何のために働くのかという仕事における「目的」があります。これはスタイルとは違って、外からは非常に見えにくいもので、基本的には本人が口に出して言わなければ分からないものです。この「目的」が見えないので、周囲はスタイルからその人の目的を勝手に推測します。いわゆるバリキャリ・ゆるキャリと言われる分け方も、外から見た誰かが勝手に分類したものではないでしょうか。
このように他人から見えるのは仕事のスタイルでしかないので、産育休から職場復帰したものの、これまでより早く退社するようになったり、今まで1人で完結していた仕事を同僚に振ったりするようになると、周囲は「あの人なんか変わった……」と違和感を感じるようになるのです。
実際には「スタイル」だけでなく「目的」も同時に変化していることが多いのですが、ここで問題なのは、スタイルの変化だけが目立って、目的が変化したことに周囲の誰も気づいていないことです。そうこうしている間に、周囲は仕事のスタイル変化から勝手にネガティブな推測を始めます。
その結果として、冒頭の人事担当者の発言のように「以前は意欲的だったのに、最近やる気が感じられないなぁ」などと捉えられてしまうのです。
○職場では、出産後の価値観の変化を伝えよう
出産というライフイベントが母親に与える影響は大きく、価値観がガラリと変わることだって珍しくありません(むしろ、変化して当たり前だと筆者は思っています)。