コミックエッセイ:おかっぱちゃんの子育て奮闘日記
「どうなる? 無職のお父さん~後半~」 おかっぱちゃんの子育て奮闘日記 Vol.32

「東京おかっぱちゃんハウスで、カフェを始める」。そう決めた夫は、それからというものの、お料理のレシピ本を買ってきて、毎日のように料理に励むようになった。決して得意とは言えないことを、自らやり始めた事にわたしは驚きを隠せなかった。
包丁の研ぎ方も、人参の皮の剥き方もおぼつかない手つきだった人が、毎日作業に励む事でうまくなっていく。そして、仕上ったお料理はどれも美味しいではないか。
これならお客さまにお出ししても喜ばれそう。献立のバリエーションも増えていった。料理家の友人にアドバイスをもらいつつ、夫は確実に腕を上げていったのだ。
失礼な話だが、正直、わたしは人はなかなか変われないものだと思っていたし、夫はずっと会社員のまま、好きなことを仕事にできない人だと思っていた。
しかしながら、目の前で夫が変わっていく姿を見ていると、努力次第で人は変われるものなのだなぁ、と深く反省し、わたしはふと、自分のことを振り返った。
「あぁ、そうだ。わたしも師匠がいるわけでもないし、美術大学に通った訳でもない。ただただ絵を描く事が好きだから、仕事にしようと思ったんだ」。
これまでの私は、自己流でどうにかなった。がむしゃらに動き続けた結果、良い方向に進んだ。こうじゃなきゃいけないことなんて、そもそもないんだった。
夫の仕事がこれから先、どうなるかなんて誰にも分からない。不安だって大きい。こどもがいる状況で、30代から未経験の仕事を始めるなんて、世間的に言ったら信じられない事かもしれない。
だけど、やってみないことには結果なんて出ないのだから、ダメもとでなんでもトライしたらいいと思う。努力したのに、うまくいかなかったら仕方ない。また違う道を歩めば良い。
それは学生でなくても、親になったわたしたちにだって言える事。そういう挑戦する気持ちはいくつになっても持っていたいものだ。親になったからって諦める必要はないんだ。夫の夢が叶ったら、家族にとってもそれは喜ばしい事だ。
大人になると、どんどん、どんどん落ち着いてきてしまう。暮らしの安定を求めてしまう。本当はこうしたいのに、こどもがいるからわたしには出来ない。そんなことを思いがち。世間体が気になって、チャンスを逃してしまいがち。
お母さんになっても、お父さんになっても、本当はできることが沢山あるように思う。