2022年12月1日 14:15
自閉症のわが子の「オウム返し」「抑揚のない話し方」をなおしたい?それは親のエゴかもしれないから…
と覚えている品種を順に言うばかり。
けれども、「ママ、このリンゴ美味しそうだね。買って~買って~」と言うことはありませんでした。
21歳になった息子は、会話はできるようにはなりましたが、相手に共感を求めるこういった言葉は今も言うことはありません。
そんな息子でしたが、初めての言葉らしい言葉は5歳のとき、デパートの讃岐うどんのお店に連れて行ったときのこと。
息子が食べていたうどんの器には、あと1本だけ、うどんが残っていました。その器を、店員が「お下げいたします」と持って行こうとした瞬間、店員に向かって「まだ食べる!」と大きな声で叫んだのです。
自分の意思をはっきりと示し、まっすぐと相手に届く言葉でした。
オウム返しはコミュニケーションではない?
息子が特別支援学校高等部のころ、自閉スペクトラム症があるクラスメートの親御さんとお子さんと一緒に動物園に行きました。するとそのお友達は、パンダの檻の前で
「友達の眼鏡をとってはいけません」
「友達の眼鏡をとってはいけません」
「友達の眼鏡をとってはいけません」
と、授業中に担任から注意された言葉をずっと唱え続けました。
なぜずっと先生の言葉をオウム返ししているの?
なぜ以前言われた言葉を、動物園という状況で言うの?
なぜずっと繰り返し唱えるの?
「これはコミュニケーションではない。聞いた言葉をただ繰り返しているだけ」と親御さんは悲しそうに言いました。
確かにそうだったのかもしれませんが、もしかしたら、一緒に動物園に来たクラスメートと並んでパンダを見ながら先生に言われた場面を思い出し、「お母さん聞いて、先生が『友達の眼鏡をとってはいけません』と言っていたよ」と伝えたかったのかもしれません。
息子やほかの自閉スペクトラム症のある子どもたちのことを知れば知るほど、「抑揚とか声の大きさまで含めた会話を要求したり、期待したりすることは難しいのかな…」「そもそもそうした話し方を期待すること自体、親のエゴなのかな」と思うのです。
執筆/立石美津子
(監修鈴木先生より)
言葉を発せなくとも、お子さんが「あー」とか「いー」とか何か声を出したら、それに反応するように親御さんも「あー」とか「いー」と言うように心がけてみてくださいと、健診の時にお伝えしていました。難聴がなければ母音は認識しているからです。
新生児期でも名前で呼んであげることが大切です。