2022年2月28日 13:00
子どもの脳は周りの環境に適応しながら変化していく脳研究から見えてくるバイリンガル環境づくりのポイント
ということです。
「モノリンガルであっても、ボキャブラリーが少ない子どもはいますよね。一方、バイリンガルであっても、ボキャブラリーが多い子どももいます。そこで、ボキャブラリー量が同じくらいのモノリンガルとバイリンガルを比べてみると、まったく差がないんです。バイリンガルは、たしかにモノリンガルよりも、ボキャブラリーの学習が遅れるかもしれませんが、その『遅れ』は、バイリンガル特有の発達の過程であって、劣等感を抱くようなことではありませんし、気にしなくていいと思います。」と話しています。
最後に池谷教授に、子どもの「環境を整える」うえで、親はどのような姿勢・考え方で子どもの言語発達や第二言語習得を見守るべきか、伺いました。
■ 親が「できること、できないことを見極めること」がバイリンガル環境をつくるポイント
「You can lead a horse to water, but you can’t make him drink. (馬を水飲み場まで連れていくことはできるけれど、水を飲ませることはできない)」という英語のことわざがあります。つまり、馬を引っ張っていけば水飲み場に連れていくことはできるけれど、「水を飲め」と言ったところで馬が飲んでくれるわけではありません。
親はつい過干渉や過保護になってしまいますが、自分が干渉することによって子どもが変わることと変わらないことをしっかり見極める必要がありますね。
親ができることは意外にも限られています。親が介入して改善できること、できないことをしっかり線引きしておくと、親はストレスが減ります。すると、子どもにイライラしてむやみに怒ることもなくなり、子どもが本来もっている能力にブレーキをかけたり、子どもがすねたりひねくれたりすることもなく、子どもが英語嫌いになる可能性も減ると思います。
池谷教授のお話からは、子どもにとってより良いバイリンガル環境をつくるためのヒントが伺えました。二つの言語に触れて育つ子どもは、自然と二つの言語を聞き分け、使い分けられるようになっていき、脳の発達にとって負担になるということはないことがわかりました。この点を理解しておけば、「バイリンガル環境は脳の発達に悪影響を与える」、「バイリンガルはモノリンガルよりも劣っている」という偏見をなくし、バイリンガルの子ども本人にも劣等感ではなく自信をもたせることができます。