2019年12月4日 19:50
歯並びがコンプレックス…高校生の群像劇を描いた『真夏のデルタ』
あの頃の景色やにおいが蘇る、未熟で無防備な高校生の群像劇を描いた綿貫芳子さんのコミック『真夏のデルタ』が話題だ。
「たとえばホクロやソバカス、小さい頃につけちゃった傷痕とか、一般的に良しとされる美しさとは違うものに愛おしさを感じます。コンプレックスに感じていることも含めてその人を構成している一部で、魅力で、取り去ったり治したりする行為も含めて面白いなぁと思うのです」
歯並びがコンプレックスの椎葉は、空気を読んで言いたいことを呑み込んでいるような女の子。あるとき、勉強も運動もできる人気者の彼氏・三辻から歯並びを茶化されてしまう。
「歯は柔らかい人体のなかで一番硬く、攻撃的で原始的なエネルギーの象徴みたいだと思うのだけど、普段は隠されている。歯を出発点に、主人公たちの表からは見えない隠れた攻撃性を描いてみたかったんです」
そんななか三辻と同じクラスで変わり者扱いされている美術部の伸が、デッサンのために歯を触らせてほしいと依頼。半ば強制的に応じさせられるものの、なぜか椎葉は伸の前だと言いたいことを言えるのだった。
「10代とか20代前半の頃の特徴といえる困難のひとつって、他者との関係やそれを受け取る心の一番柔らかい部分の感受性が剥き身で、擦れていないところにある気がします。