2020年3月28日 20:40
話題の小説『デッドライン』作者が考える“色気のある文章の特徴”
性に関しての描写に限らず、色気が漂いドキドキさせられる、そんな文章があります。文字と文字、あるいは行間に潜む色気を見出し、味わう。その喜びとは、どんなもの?
小説『デッドライン』から考える、“色気のある文章”とは?
昨年秋に発売され、芥川賞候補にもなった千葉雅也さんの初の小説、『デッドライン』。青春小説としての評価が高い一方で、文体の色っぽさもおおいに話題になっています。激しいセックス描写も出てこないこの小説に、なぜ色気が漂うのか。まずはそれを考えます。
修士論文の締め切りが迫る、大学院生の“僕”の日々。
舞台は2000年代初期の東京。
主人公の“僕”は、大学院で哲学を学ぶゲイの青年。“僕”は、高校からの友人と深夜にドライブをし、大学院やその他の友人たちと自主映画を作り、授業で哲学を論じ合い、また行きずりの男性と体を重ねることも。そんな中、修士論文の提出期限が刻々と迫ってくる…というのが、物語のあらすじ。
映画のような唐突な場面転換、カギカッコを使わない会話表現と、それによる視点の不思議な移動…。散文が続いていくような不思議な構造の隙間に、ふっと何かが現れ、そしてまたふっと消える、危うい雰囲気。