2020年4月2日 19:00
中国の名匠が訴える「大国が作り上げた悲劇的な過去」
それによって、「何人か子どもを産んで、大家族を作ろう」などとは考えなくなったため、私たちはまるで水の中にいる魚のようになったのです。
その過程で、中国人たちは、自身の両親や兄弟姉妹だけでなく、ほかの人々の人生が変化するのを目の当たりにしてきました。職場から解雇された人もいれば、土地を失った農家の人たち、いっぽうで自ら仕事を生み出した人など、いろいろでしたが、すべてはこうした社会の変化によるもの。だからこそ、私は個人に与えたさまざまな影響を映画のなかで見せたいと思いましたし、個人にしっかりと注目することで、社会全体の変化を映し出すことができると考えたのです。
過去による変化は現代にも影響を与えている
―主人公たちは、息子の悲劇だけでなく、時代にも翻弄された人生を送ることになり、いまお話しのあった一人っ子政策も要因のひとつとなっています。監督は、この政策が中国全体に与えた影響をどう受け止めていますか?
監督中国の一人っ子政策は、人間社会でかつて一度も存在しなかったものですが、1970年代の終わりから2015年まで、中国はこの政策によって大きな影響を受けています。政府がこの国家政策に終止符を打ったとき、今後は同様のことが人間社会で繰り返されるべきではないとさえ思いました。