2020年7月14日 20:00
“自己責任”への疑問がきっかけに 小説『昨日壊れはじめた世界で』
「世界は壊れはじめている」。そう言われたら絶望する?それとも?香月夕花さんの『昨日壊れはじめた世界で』は、思い通りにいかない人生を見つめ直す大人たちの物語。
ままならない人生と向き合いながら、小さな一歩を踏み出す大人たち。
40代の大介は幼馴染みと再会し、小学生時代の出来事を思い出す。同級生4人と忍び込んだマンションの最上階で、住人の男に「世界はもう、昨日から壊れはじめている」と告げられたことがあったのだ。
「発想の発端は、よく言われる“自己責任”という言葉です。人はいつどこで生まれてどんな能力を持つのか選べないのに、それを責める人が多いと感じていて。ままならない状況の中でも生きる人たちを描いて、読む人にその大変さを追体験してもらいたいなと思いました」
大介をはじめ、大人になった彼らの視点から今と過去が描かれる連作短編集。
なかには大介に存在すら忘れられていた恵という女の子もいる。
「実は最初に構想したのは4話目の恵の話です。ないものにされている人の話を書こうと思いました」
マンションの住人の男については、
「私は神様の存在を信じているわけではありませんが、もしも神様が実際にいたらどんな人だろう、と考えました。