2022年1月30日 21:10
遠野遥の最新作は“奇妙な寄宿制学校”が舞台 読者の胸をざわつかせる主人公たちの言動とは
ルールやマナーを尊び、自ら規律に依拠する人間の自己愛を、独特の筆致で描くのが遠野遥さんの小説スタイル。新刊『教育』でも、安易に共感できない主人公たちの言動が、読者の胸をざわつかせる。
規律と欲望の相克から変質していく主人公を追う新感覚のディストピア。
本書の舞台は、超能力の成績が校内での待遇も居心地の良さも左右する、奇妙な寄宿制の学校だ。
「Perfumeの『Spending all my time』は、部屋に閉じ込められている3人が、制服のような衣装を着て、超能力の訓練をしているようなMVなんですね。そこから着想を得ました」
主人公の佐藤は、ルームメイトの羽根田や、仲のいい女子の真夏、同じ翻訳部に所属する海らと、正しさや幸せを求めてサバイブしていく。
だが、1日3回以上のオーガズムを推奨するこの学校では、寄宿生たちにポルノビデオを供給するし、性的な交流は盛んで、半ばオープンな部屋で行われる。透視のような超能力試験は重要科目だ。
抑圧と自由がねじ曲がった彼らの日常を見届けたくて、ページを繰る手が逸る。
「集団内の規則や慣例は、外から見たら驚くほど変な話も結構ありますよね。けれど『それがルールだから』と言われている空間内にいると、さしたる疑問も持たずに従ってしまったり。