2022年7月11日 19:10
表現の自由はどこまで許される? 創作と性加害をめぐるコミック『恋じゃねえから』
前作『1122(いいふうふ)』では、公認不倫を選択した夫婦の顛末を描き、無自覚に抱いていた価値観を大きく揺さぶってくれた、渡辺ペコさん。本作『恋じゃねえから』はその連載時から「長く気になっていた」といういくつかの事象をモチーフにしている。ひとつは、タイトルにも冠している「恋」について。
「恋だから」「アートだから」とないがしろにされてきたこと。
「ドラマなどが顕著だと思うのですが、フィクションにおいて恋愛があまりにも重要視されているように感じるのです。そんなにみんな、恋に重きを置いているのかな?それって幻想みたいなものなんじゃないかな?と気になっていました」
もうひとつは「表現者のエゴ」。
「メディアにアクセスする手段を持っている作家は、新しい作品を発表することで、関心のあることや自分の意見を更新できますよね。だけど望まない形でその作品のモデルにされた人は、ずっと晒され続け、搾取され続けてしまう。
私自身が年齢を重ねるにつれ、そのことに疑問と危うさを感じるようになったんです」
恋と芸術的表現に共通しているのは、感覚を優先しがちな点。
「どちらも異を唱えたり、言葉で説明しようとすると、野暮だとか頭が固いと思われがちですよね。