コード・レス・ドレス・コード 今日の自分を奮い立たせる古着たち
■白黒つけたい日 は「水玉のワンピース」
前の持ち主の想像図
水玉模様の胸にひだ飾りがついている。素晴らしいフリルの頂点に四角い襟が端然と立ち上がる。
今時珍しいほどノーブルに作られたワンピース。この服はかつて、私の友達のお祖母さんの持ち物だった。
私はこの衣装の持ち主に一度も会ったことがない。
数年前の夏、友人の家族が避暑のために使っていた家に泊めてもらい、お祖母さんが着なくなった服を譲っていただいたのだ。若者のためのドレスから大人用の外套まで、あまり使われていないらしい広い和室に、さまざまな年代の服がかけられていた。
連れてきてくれた友人の背中にワンピースをこっそり当て、彼女の目鼻立ちを手がかりに、見知らぬひとりの少女を想像する。
無限に並べられた服の分だけ、脈々と時間が流れていくみたいだった。
今の私のコーディネート
春夏シーズンの婦人服売り場で買い物をしたことがある人ならわ分かると思うが、夏、白い水玉模様、ぱりっとしたフリル、……といえば、まあ、マリンなのだ。だから大抵、紺色や群青色が使われる。
しかしこんなに楚々とした佇まいでありながら、譲り受けたワンピースは真っ黒だった。
今まで曖昧にしていた決断を迫られる日、妙な頑固さを借りたくて私はこの服を着る。