2022年7月26日 12:30
【『初恋の悪魔』感想2話】これは私の物語、そしてあなたの物語 ・ネタバレあり
事件の真相を解き明かしたあと、悠日は夜の公園で星砂を相手に、淡々とこれまで誰にも語らなかった兄に対する自分の心情を打ち明ける。
このセリフが、坂元脚本の真骨頂のような見事さであり、少し長いが引用する。
欲しいものを手に入れた人と、手に入らなかった人がいて。一番欲しいものが手に入らなかった人は、もう…他になんっにも欲しくなくなってしまう。
あ、僕はもう十分です。やあ、結構です結構です。僕はもうこれでいいんで。満足なんで。
皆さんで楽しんでください。…顔はね。笑ってるんです。
でもそんなの、上っ面で。心ん中じゃ、心の中では。俺を、笑うな。俺を、馬鹿にすんな。俺に、アドバイスすんな。
俺に偉そうにすんな。もっと俺を尊敬しろ。いや、なんかそういうねえ、ひんまがったやつだから。
兄は死んでしまったんだなあって。
初恋の悪魔ーより引用
「自分は勝たなくていい、人を勝たせてあげる人生でいいのだ」と笑い、達観して語っていた悠日の、言葉一つ一つから血が噴き出すような生々しい独白である。
もしも何かで自尊心がずたずたになって、心が瀕死になってしまったら、それでも生きていくためには、自分が負けたんじゃない、負けを自分の意思で選んでいるのだと痛みから目を逸らして、自分に言い聞かせなければ生き延びられない。