2023年3月10日 18:13
【『大奥』感想9話】冨永愛と三浦透子、綾なす演技が描く決断の覚悟
思えば、吉宗にとって久通の言葉は少なからず重みがあると知った上で、加納久通は最後まで娘の中で誰が将軍に相応しいという名指しはしなかった。
吉宗に直接問われ、答えず「頑固だのう」と苦笑いされながらも、名指しは拒んでいた。
それは、将軍として国を背負う凍るような孤独を、その果てしない重さを、一度でも自分で背負った者だけが、重みを託すに足る誰かを知るだろうという久通なりの『一線』だったのではないかと思う。
滅びぬ道への舵取りは、弱いものの苦しみを知り、思い通りにならない政(まつりごと)の苦しみに耐えうる女に託された。
幼い吉宗が呟いた「五万石ほどの大名にでもなれれば、そなたの忠義に報いることが出来るのに」と、鬱屈した家重が泣いた「役に立たないのなら死にたい」という嘆きは、母と娘の表裏の一枚だったのである。
※写真はイメージ
先月下旬、このドラマ10『大奥』の2期の制作が発表された。
美しく、時に哀しく、胸に迫るこの物語に、秋以降再び会えることを大変喜ばしく思う。